平成十二年東京都議会会議録第四号

   午後一時一分開議

○議長(渋谷守生君) これより本日の会議を開きます。

○議長(渋谷守生君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(渋谷守生君) 謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民田中澄江氏には、昨日逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(渋谷守生君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第一号、東京都都税条例の一部を改正する条例外条例一件、知事より、東京都収用委員会委員の任命の同意について外人事案件六件がそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(渋谷守生君) 昨日に引き続き質問を行います。
 八十七番田村市郎君。
   [八十七番田村市郎君登壇〕

○八十七番(田村市郎君) 自由民主党の田村市郎でございます。
 まず初めに、横田基地の排気ガスについてお伺いします。
 先日、日本人としてアメリカの宇宙船「エンデバー」に乗り込み、宇宙で何日もの間過ごした毛利さんが、帰還した際のメッセージの中で、全世界の人々に対し、地球環境の大切さを切々と訴えておりました。まだ記憶に新しいところであります。
 また、一九九七年十二月、世界各国が力を合わせて、大気中の温室効果ガスの濃度を一定程度以上にふやさないようにするための地球温暖化防止京都会議、通称京都会議が開かれ、二〇〇八年から二〇一二年の期間の主要国の排出削減目標をそれぞれ決め、日本は六%の削減目標となったと聞いております。
 京都議定書においては、六種類のガスが削減対象となっておりますが、我が国の温室効果ガス排出の約九一%は、そのうちの一つであります二酸化炭素です。この二酸化炭素は、産業、民生、運輸、発電所などにおける石炭、石油等の燃焼に伴うものが全体の九三%を占めており、温室効果ガスの中でも、最も温暖化への影響が大きいといわれております。その対策としては、生産設備や自動車、電気器具などのエネルギー効率の向上、燃料の変更などが挙げられると聞いております。
 知事は、就任以来、都民の健康を守るため、自動車排出ガス対策を中心とした都独自の環境対策に取り組んでこられ、これについて高く評価するところであります。
 さて、私どものまちには、米軍の横田基地がございます。私どもは中の様子がわかりません。横田基地は治外法権ということで、よくわからないのが現状であります。
 しかし、ここに来て、神奈川県の米軍厚木基地に隣接する民間の廃棄物処理施設による環境汚染が、日米両政府間で大きな問題になっていることはご承知のとおりであります。人の健康にかかわる環境問題だけに、国境はなく、一日も早い解決を願うところですが、横田基地の中にも、当然ながら、都の環境政策にかかわる燃焼施設がありますので、都内にありながら、有害ガス排出の有無が確認されていないことは、基地周辺に住む我々にとって不安要因の一つとなっております。
 そこで、米軍横田基地内の燃焼施設について、私なりに聞きましたことを申し上げます。
 米軍横田基地では、年間一万五千キロリットル、ドラム缶で七万五千本の軽油がたかれているとのことで、この量は、日本の企業ですと、大気汚染関係では大気汚染防止法と東京都公害防止条例、ボイラー窒素酸化物排出低減指導要綱の法律、規則、指導が適用される規模の工場に匹敵します。
 大気汚染防止法の中に、伝熱面積十平方メートル以上が入るばい煙発生施設を対象に、硫黄酸化物、ばいじん、窒素酸化物など六種類がある有害物質について、排出基準が定まっており、横田基地は、ばいじんについては、排気ガス一平方メートル当たり〇・〇七グラムが基準値となります。
 次に、東京都公害防止条例では、指定作業場を規制の対象として、横田基地は、規模的にこれに該当すると思われます。
 ばい煙については、伝熱面積五平方メートル以上のボイラーが、ばい煙発生施設となります。横田基地では、伝熱面積百平方メートルのボイラーが十四基あると聞きます。
 推定一日平均八万リットル、つまりドラム缶四百本相当の燃料をたいているので、ばいじんは、一立方メートル当たり〇・一五グラム以下でなければなりません。また、一日に二千リットル、すなわち、ドラム缶十本相当以上の燃料を使用する施設の燃料は、硫黄含有率〇・八%以下の燃料を使用しなければならないことになっており、有害物質である窒素酸化物は、一二〇ppm以下と定められています。
 燃料用揮発油、灯油または軽油の五万リットル以上の貯蔵は、蒸発防止設備を義務づけており、横田基地はこれに該当すると思われます。
 三つ目のボイラー窒素酸化物排出低減指導要綱では、都内の窒素酸化物の環境基準が未達成の状況が続いていることから、東京都では、伝熱面積十平方メートル以上のボイラーを対象に窒素酸化物の排出について指導基準を定めています。
 これらの適用地域については、横田基地のある西多摩郡瑞穂町も含まれておりますので、窒素酸化物の基準を一二〇ppm以下にする必要があると思います。また、大気汚染防止法第十六条には、ばい煙等の測定が義務づけられており、その測定頻度は、横田基地ほどの燃料使用量ですと、硫黄酸化物、窒素酸化物では、ばいじん濃度、有害物質は二カ月に一回以上の測定が義務づけられています。
 以上、該当する規制値を挙げると、ばいじん一立方メートル当たり〇・〇七グラム以下、窒素酸化物は一二〇ppm以下、燃料の硫黄含有率は〇・八%以下となっております。
 なお、一般的なボイラーの燃焼技術では、窒素酸化物一六〇ppm、ばいじん一平方メートル当たり〇・一グラムが排出の最低値であり、これから類推すると、横田基地内においては前述の規制値を上回っていると思われます。
 現行の日本の法律では、横田基地から排出される排気ガスを計測することができない、すべて予測であります。しかし、前にも申しましたが、環境汚染が大きな社会問題になってきたにもかかわらず、基地内の燃焼施設の有害ガス排出の有無が確認されていないことは、基地周辺に住む我々にとって大変大きな不安要因の一つとなっております。
 そこで、知事並びに関係局長にお伺いします。
 まず初めに、ご説明いたしました横田基地の排気ガスについて、都として現状をどのように把握しているのか、お伺いします。
 次に、知事の施政方針にありますように、都の環境政策の一環として、東京都から働きかけをして、あらゆる機会をとらえ、この問題について、お互いの情報交換なり、現況についての認識を深めるための話し合いの場を設けることができないのかどうか、その話し合いの場に、近隣の関係行政機関も参加できるようにしてはどうか、お伺いします。
 次に、たびたび一般質問や委員会にて質問いたしております、スギ花粉対策と多摩の林業振興等についてお伺いします。
 長期予報によると、ことしは、例年になくスギ花粉の飛散量が多い年であるとのことですが、花粉症でお悩みの方にとっては、まことに憂うつな季節の到来であります。花粉症は、大気汚染や食生活の変化等が、複合的に作用して発症するともいわれておりますが、スギ花粉の増加が花粉症の大きな原因の一つであることは間違いありません。
 知事は、都民の健康を大変気遣われ、都内を走るディーゼル車に対し、排気ガス浄化装置の取りつけの義務づけを打ち出し、最近、新聞等で発表されました。
 本定例会の施政方針の中に、ディーゼル車規制の検討案を取りまとめ、今後実施すべき具体的な規制の内容と、取り組みのスケジュールを明らかにした旨を説明されました。
 多くの有識者がいわれるのには、排気ガスとスギ花粉とがミックスされると、相乗効果により、なお一層人体に及ぼす影響は強烈になるとのことであります。
 多摩の森林は、戦後の復興と地域林業の活性化を目指して、主に昭和三十年代後半から昭和四十年代にかけて植林されたものであり、青梅林業として知られた多摩地域は、杉の生育に適しているところが多く、今日、その杉の大半が三十余年を経て最も成長し、活発に開花する時を迎えております。しかも現在、林業を取り巻く経営環境が悪化しているため、間伐、枝打ちなどの手入れのされない森林が増加しており、このことがスギ花粉の増加に拍車をかけております。
 改めて申し上げるまでもなく、東京都の面積の四割を占める多摩の森林は、木材の供給や水資源の涵養等、都民生活にとってかけがえのない財産であります。森林の公益的機能を確保するためにも、適正な保育管理が必要ですが、木材の長期低価格による林業の経営環境の悪化、並びに東京都の財政悪化による間伐等の保育管理に対する補助金の減少が、林業者の経営意欲をますます減退させ、管理が放棄された森林が増加しているのが現状です。東京の森林は、今まさに荒れなんとしております。森林の整備は、都政にとり緊急の課題であります。
 そこで、冒頭申し上げたスギ花粉対策と林業振興策についてお伺いします。
 第一点は、公的関与による森林の管理についてであります。
 多摩地域の森林は、五万ヘクタールに及び、その六割の三万ヘクタールが杉、ヒノキの人工林であります。これらの人工林は、計画的な管理を行うことを前提に造成されたものですが、この森林が森林所有者のみによっては管理ができない状況になっております。
 何ゆえならば、森林の七五%が民有地であり、前述したとおり、木材価格の長期低迷は経営意欲を低下させており、したがって、保安林等、公益的機能が高い森林については、公的関与による施策を講じていく必要があると思います。従来から実施してまいりました分収林事業は、森林を都民全体で支えていくというコンセンサスのもとに、将来にわたり安定した森林づくりを行っていく上で、極めて効果的な方法であると考えますが、この点についてお伺いします。
 第二点は、先ほど指摘した、手入れ不足に伴うスギ花粉対策と間伐についてであります。
 前に申し上げたように、林業を取り巻く経営環境が悪化する中で、森林所有者は経営意欲の低下を来しており、森林の管理の実施主体である森林組合も、事業量の減少や労働力の高齢化、減少によって、組合の経営も苦境に立たされております。
 このためには、間伐を積極的に推進することが急務であり、都は、森林組合の育成支援を含め、間伐の推進をどのように取り組んでいくのか、また、具体的に、スギ花粉対策をどのように進めていくのか、ご所見をお伺いします。
 第三点は、林業経営、森林保全に不可欠な林道、作業道の整備についてであります。
 東京都の森林地帯は、急峻な場所が多く、林道、作業道の開設に多大な経費を要するため、他県に比べて低い開設率となっており、このことが林業経営の圧迫要因ともなり、森林整備が立ち行かない原因となっております。路網の整備は、林業生産コストの削減効果が大きいことから、意欲を持って林業経営に取り組む箇所において重点的に整備の推進を図る必要があると思います。
 一方、都の林道、作業道は、経営効率としての側面からだけでなく、他県の林道と異なり、都民唯一の観光道路でもありますので、公益的機能を確保していくための管理道として位置づけ整備していく必要があると考えます。こうした観点から、これまで以上に、林道、作業道の整備を力を入れるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 地域的規模での環境問題の顕在化などに伴い、再生産可能な木材の供給のみならず、水や大気の浄化、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収などを良好に保つ機能を持つ森林については、循環型社会の基盤として、その機能の維持増進を図っていくことが必要となっております。
 都財政の悪化の中で、森林、林業関係の予算も非常に厳しい状況にありますが、まさに崩壊の危機に瀕している東京の森林、林業に対して、抜本的な施策を講ずることは、都政の緊急な課題であり、同時に、ディーゼル車の排気ガス浄化装置の取りつけの義務づけと同様に、横田基地の排気ガスについても、知事の英断により、一日も早く解決されんことを切に望みまして、私の質問を終わります。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田村市郎議員の一般質問にお答えする前に、一言弔意を申し上げます。
 昨日、名誉都民の田中澄江さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 それでは、質問にお答えいたします。
 私は、かねてから横田の基地としてのあり方に関心を持ってまいりましたが、今質問を受けまして、初めて、米軍の基地の中でもボイラーによる多量の軽油消費について知らされました。また一つ勉強させていただきますが、大気汚染問題を初めとする環境問題への対応は、これはもう地域住民の安全と安心のために極めて重要なことでございます。米軍施設といえども、日本国内に存在する以上、周辺地域の環境面に十分配慮するのは当然であります。かつて、何年か前、横須賀の米軍基地のPCBの問題がクローズアップされましたが、本質同じ問題だと思います。
 都はこれまでも、地元五市一町とともに国及び米軍に対して、基地における環境問題や環境対策の適切な情報提供や法の適用について、文書でも要請し、話し合いを行ってきました。今後は、周辺市町と連携しながら、より一層強い要請をしてまいりますが、みずからの手による調査、測定も果たして可能かどうかわかりませんが、いずれにしろ的確な情報の提供を強く求めるつもりでございます。
 私、かつて横田に何年か前に行ったときに、看板が出ておりまして、あの基地の地籍はカリフォルニアだそうで、もうその看板はこのごろありませんが、しかし、地籍が何であろうと、日本の国内における米軍の基地でありまして、日本の市民が重大な関心を持っている環境問題に対する当然の責任は、アメリカ軍が認識すべき問題だと思います。そう心得て、これからも周辺市町と連携しながら、一層強い要請をしてまいるつもりでございます。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [環境保全局長齋藤哲哉君登壇〕

○環境保全局長(齋藤哲哉君) 米軍横田基地内の施設からの排気ガスの現状把握についてでございます。
 米軍の施設に対しては、大気汚染防止法や廃棄物処理法等が適用されないため、廃棄物焼却炉やボイラー等からの排出ガスの実態の把握ができない状況にございます。
 しかし、周辺地域の大気汚染を防止するためには、基地内の発生源の実態を知ることが必要でありまして、このため、国や米軍に対し、今後とも、横田基地における廃棄物焼却炉やボイラー等から排出される汚染物質の状況を把握できるように求めてまいります。
   [労働経済局長大関東支夫君登壇〕

○労働経済局長(大関東支夫君) 多摩の林業振興につきまして、三点のご質問にお答えいたします。
 まず、分収林事業についてのお尋ねでございますが、この事業は、森林所有者が自力で管理できない人工林を対象にいたしまして、都と森林所有者が共同で森林の管理を行うものでございまして、安定した森林づくりを行う上で大変効果の上がっている事業でございます。
 近年、長期にわたる木材価格の低迷の中で、従来のような事業の実施が困難になってきてはおりますが、収益性や森林の持つ公益的機能の確保の観点から、今後も必要な分収林事業を展開してまいります。
 次に、間伐の推進とスギ花粉対策についてでございますが、間伐や枝打ちなどの手入れが十分に行われていないことが、大量の花粉を飛散させている大きな原因となっているわけでございます。
 これまで都は、森林組合などが行う間伐経費の助成を通じまして、間伐を必要としている人工林の四割を超える約一万ヘクタールを整備してまいりました。
 今後とも、緊急雇用対策事業等も活用いたしまして間伐を推進するとともに、花粉量の少ない杉や他の樹種への転換を図り、健全な森林の維持に努めてまいります。
 次に、林道、作業道の整備についてでございますが、林道や作業道は、林業経営の安定や森林の適正な管理などにとって欠くことのできない重要なものでございます。このため、都では、市町村と連携いたしまして、計画的に林道や作業道の整備を行ってまいりました。
 多摩の山林の多くは民有地であることからも、平成十二年度からは、採算性が高く、かつ林業者が意欲的な経営を目指す地域を対象といたしまして、重点的に林道や作業道の整備を進める考えでおります。
 今後とも、森林の公益的機能を確保する観点も含めまして、林道や作業道の整備を効果的に進めてまいります。

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