平成十二年東京都議会会議録第三号

○副議長(五十嵐正君) 四番真鍋よしゆき君。
   [四番真鍋よしゆき君登壇〕
   [副議長退席、議長着席〕

○四番(真鍋よしゆき君) 銀行業に対する外形標準課税について、私の意見を申し上げ、知事のご所見を伺います。
 昨日の知事のご答弁、また、これまでの都の説明によりますと、バブル期には二千二百億円、現在百億円程度と、銀行業の税収動向が極めて不安定であり、応益課税としての法人事業税の機能が喪失していること。ここ数年にわたって、最終利益を計上する以前の臨時損失、とりわけ不良債権処理にかかわる損失額が多額に及ぶため、十分な利益を上げながらも所得が生じておらず、こうした状況は、今後数年にわたって継続することが見込まれること。これは、法人事業活動と地方行政サービスとの幅広い受益関係に着目し、法人の事業活動規模をできるだけ適切に表すべきという、法人事業税の課税標準の原則に著しく反しているとともに、負担の公平を著しく損なうものであること。したがって、こうした事業の状況にかんがみ、銀行業に対して所得課税を続けると、事業の活動量を踏まえた適正な課税が困難となることから、現在、法律に基づき収入金課税が行われている電気、ガス、生保、損保の四業種と同様、外形課税を行うことが適当であるとの理由で、この提案がなされたわけであります。
 都の説明の重要な点は、銀行が十分な収益を上げながらも、所得が生じていないという指摘であると思います。なぜこのような状況になったのか。それは、バブルの後始末のため、国が銀行に公的資金を導入するに際し、経営健全化計画を銀行に立てるよう指導し、その計画のもと、不良債権処理等を図っていくことにより生じました。すなわち、十分な収益から国が認めた健全化計画にのっとった人件費などが除かれ、国指導の不良債権処理を行い、これにより所得が生じないという状況となり、自治体の財源の大きな柱である法人事業税の大減収につながったわけであります。国の銀行への指導のあり方に問題はなかったのか、甚だ疑問であります。
 自治体の財源確保にどのような影響を及ぼすのかの配慮があれば、いや、それだけではなく、社会の常識として、不良債権を大量に抱え、税金まで費やした企業は、血のにじむような努力をしなければならないという確固とした理念に基づいていたならば、銀行の経営健全化計画への指導ももっと厳しくあったと考えますし、そうであったならば、銀行に対する世間の批判も、もっと緩やかであったかもしれません。しかし、残念ながら、結果として国の政策により財源が減収し、都自身の内部努力を徹底しても、なお財源不足であるならば、知事として都独自の課税措置に踏み切るしか道はないと考えられ、今回の決断をされたと私は思いますが、知事のご所見を改めてお伺いいたします。
 昨日もお話がありましたが、この銀行への外形標準課税の提案は、その後、政府税調、全国知事会などで、全国一律、全業種に対する外形標準課税の導入の動きに拍車をかけているように見えます。しかし、地方税源の充実確保には、外形標準課税しか選択肢はないのでしょうか。厳しい経済状況の中、全業種に外形標準課税が導入された場合、特に中小零細企業に深刻な影響が予想されます。
 また、そもそも事業税の外形標準化で地方財政問題が根本的に解決されるのでしょうか。むしろ政府は、本格的な分権的税制改革を回避するために、事業税の外形標準化に税源移譲問題を矮小化してきたとの指摘もあります。例えば国税である相続税は、極端な地域格差を生みながら、地方税への移譲の話も浮かんでは消えています。国の基幹税の移譲により、根本的に国と地方の税源の仕組みをつくり直し、財源の伴った真の地方自治の確立が求められていると思います。
 昨日、知事は、独自のルートで、国の導入はだめであろうとの見通しも示され、取り越し苦労かもしれませんが、知事の今回の提案が、全国一律、全業種に対する外形標準課税の呼び水になりはしないかと心配する声も多く聞かれます。
 そこで、改めて知事にお伺いします。知事は、全国一律、全業種への外形標準課税導入について根本的にどうお考えなのか、また、地方税源の充実確保はどのように実現されたらよいとお考えなのでしょうか、お尋ねします。
 ところで、銀行に対する外形標準課税の導入にあわせ、知事は、新築住宅を対象に、固定資産税の減免制度を五年間実施すると表明されました。景気刺激策となり、良質な住宅ストックの形成に資するとのお考えには賛同するものでありますが、ご承知のとおり、固定資産税は市町村税であり、特別区制度という都特有の制度により東京都に納められ、都区財政調整の財源となっています。五年間で四百億円の減免と試算されていると伺っておりますが、都区財政調整の原資の減収という影響が出ることは免れないと思います。私は、先ほど国の地方に対する配慮の必要性を申し上げましたが、それと同じく、この場合、都が特別区に対しての配慮があると信じておりますが、いかがお考えでしょうか、お尋ねいたします。
 次に、幼稚園について私の考えを述べさせていただき、ご見解をお伺いしたいと思います。
 幼児教育は、古くから私立幼稚園が担ってきましたが、ベビーブームの折、幼稚園への入園希望者が私立幼稚園の定員を超えてしまい、私立幼稚園を補完するための公立幼稚園が次々と設置されたと私は理解しております。
 しかし、月日は流れ、少子化が進み、ピーク時には二十五万十七人いた私立幼稚園の園児も、現在は十五万三千二十九人と約十万人近く減少し、同じくピーク時には三万四千八百四十四人いた公立幼稚園の園児も、一万五千三百五十五人と約二万人近く減少しています。平成十一年五月一日現在の私立幼稚園の定員数十八万五千九百五十三人は、私立、公立合わせた同日現在の園児数十六万八千三百八十四人を約一万八千人も上回っています。数字だけ見れば、私立幼稚園の定員数で十分幼稚園児を受け入れて余りある状況であります。
 これまでもいわれてきたこととは思いますが、また、一部の地域においては事情もまた異なりますが、総括的に、子どもが多いときに補完的につくられた公立幼稚園は、その意味において役割は既に果たしたといえます。
 一方、昭和五十四年一千九十園あった私立幼稚園は、現在九百二十三園となり、百六十七園が廃園しています。廃園に至ったいろいろな事情はあったと思いますが、少子化に伴い公立との共存ができず、廃園した幼稚園もあります。
 そもそも民間が担っていた幼稚園経営に、補完的に公費を使い設置された公立幼稚園は、少子化とともにその役割を終え、もとの民間幼稚園に幼児教育を託するのが当然の帰結と考えます。にもかかわらず、公立幼稚園の数は昭和六十三年の三百九園が、減少したとはいえ、まだ二百五十七園設置されており、定員充足率約七〇%と、私立の約八二%の充足率を大きく下回りつつ運営されています。
 地域によっては、公立幼稚園がなければ、その地域の幼児教育が果たせないところもあるでしょう。そのような事情も考慮しつつ、設置者である各自治体は、当然のことながら民間に担ってもらえるものは民間にお任せするとの考えで、公立幼稚園を今以上に廃止、縮小するよう願うものであります。
 また、認可権を持つ東京都も、幼児教育全般を見渡し、公の役割は何かとの視点から公立幼稚園のあり方を示してほしいと思いますし、また、区立幼稚園の運営費、改修費に税金から成る財政調整交付金が使われ、教員は公務員であり、現時点では都に任命権があることを考え合わせ、ご見解を伺いたいと思います。
 なお、公立幼稚園は保護者の負担が私立に比べ軽く、公立がなくなった場合、負担が大きくのしかかってくるとの意見も聞きますが、負担が軽いのは税金で運営されているからで、公立幼稚園にかかっていた経費の一部でも私立幼稚園の保護者への補助に回せば、現行の保護者への補助の上乗せができ、結果として、私立に入っても負担が大きくならない仕組みができるはずであります。また、そうなってほしいと願うものであります。
 知事は、施政方針演説で全国に先駆けて私立幼稚園における早朝預かり保育などを支援していきますと述べられましたが、民間施設を活用し、子育て支援を行う施設に大いに期待いたします。
 この内容を伺いますと、ファミリーサポート事業として、モーニングサポート、朝七時から九時、イブニングサポート、午後二時から七時、サマータイムサポート、夏休みの預かり保育、午前九時から午後二時の、三種類の預かり保育が行われるとのことです。
 現在も、既に四百十二園で預かり保育は実施されており、中でもアルバイト、パートに勤める方々にとても喜ばれています。また、保育行政にも好影響を与えており、保育園入園希望者の受け皿ともなっており、入所待機者の解消に一役買ってもらっているとの保育関係者の声も聞きました。
 平成十二年度は、モーニングサポート三十六園、イブニングサポート四百五十園、サマータイムサポート十八園で実施予定で、年々ふやしつつ、平成十六年にはそれぞれ百園、六百園、五十園で実施予定とのことですが、受け入れ幼稚園の希望があれば、その意欲があるところに、財源の問題もあろうかと思いますが、前倒ししてでも実施することを考えてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 知事は、施政方針演説で、ゼロ歳児保育や延長保育の充実を図ってまいりますとも述べておられますが、とても必要なことと思います。就学前の子どもを持つ保護者への支援は大きな社会ニーズでありますが、保育は福祉局、私立幼稚園は総務局、公立幼稚園は教育庁と、都においても大きく所管が分かれております。
 しかし、子育て支援という目的にそれぞれが向かっている中、局を超えて連携し、効率的な、しかも実効性のある施策を展開していく必要があると思いますが、この点、今後都はどのように取り組んでいくのか、ご見解を伺います。
 続いて、都市基盤整備についてお尋ねいたします。
 先日、大阪府堺市で四歳の男の子が弟の落とした靴を拾いに踏切に戻り、電車にはねられ亡くなるという大変痛ましい事故のニュースが全国に報じられました。人間が宇宙に行く時代に、竹の棒がチンチンチンとおりてきて、救急車も消防自動車までも、その棒が上がるまでただひたすら待つ踏切、この踏切のために、今までいかに多くの人が悲劇に見舞われたことでしょうか。
 踏切をなくす技術を我々は持っています。しかし、なぜなくならないのか。例えば、京王線の場合、このたび調布駅付近で連続立体交差化事業が実施されようとしており、大変喜ばしいことですが、世田谷区内は一部を除き、昭和四十四年に都市計画決定されているにもかかわらず、見通しすら立っておりません。現在の事業費等の規模ベースで進むとしても、既存の事業を行うだけでかなりの年数がかかると思われます。沿線住民は、昭和四十四年から三十年間も待たされた上に、さらにまた相当の期間を歩行者も車も踏切で待たされなければならないのでしょうか。
 ここで発想を転換して、計画どおりの高架複々線化事業を、例えば段階的に行うこととして、二線高架事業をまず実施することは考えられないのでしょうか。また、交差点改良すいすい一〇〇プランのごとく、あかずの踏切解消一〇〇プランを作成し、道路をアンダー化等にして緊急避難的に踏切をなくせないかなど、現状の閉塞した状況を何とか打ち破る手段を講じる必要があります。先ほど、我が党の宮崎議員からもそのような指摘がありました。踏切解消が一刻の猶予もない場所が都内各所にあるだけに、都の英知を結集し、踏切解消に臨んでいただきたいと熱望いたしますが、お考えはいかがでしょうか。
 最後に、都市基盤に不可欠な新公共交通整備について伺います。
 去る一月二十七日に運輸政策審議会の答申が出されましたが、区部周辺部環状公共交通、いわゆるエイトライナーとメトロセブンについて、今後整備について検討すべき路線として正式に位置づけられました。このことは、本路線の実現化に向けて一歩前進したものと私は受けとめています。
 そこでお尋ねしたいのですが、答申には、長大路線であり、今後の輸送需要等を踏まえて早期に優先着工区間を決定するとあり、段階的整備を前提とするような表現になっております。また、事業費の問題も指摘されたとのことですが、従来の考え方の地下鉄にこだわることなく、モノレール、新交通システム、LRTなど、地下鉄に比べれば事業費が軽減できるシステムを対象としたコスト縮減に関する検討も必要と考えます。そこで、整備方策とコストに関する都の検討方針について伺います。
 区部周辺公共交通は、東京の交通機能と都市機能の向上に大きく寄与する路線であり、二十一世紀の東京にふさわしい鉄道ネットワークを形成するものであります。本路線の実現化に向け、今後都はどのように取り組んでいくのかお伺いして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 真鍋よしゆき議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、外形標準課税の導入についてでありますが、まさに真鍋議員の分析のとおりのプロセスの判断で、こういう措置をとりました。現在の都財政にとって安定的な税収確保は急務でありまして、一方、繰り返して申しましたように、地方分権一括法は成立いたしましたが、一番大事な地方税源の充実確保は、中長期ということで棚上げされております。こうした状況下において、みずからの財源確保に知恵を絞ることは、責任のある立場として当然でございまして、今回、都独自の課税措置に踏み切ることを決意いたしました。決して、銀行憎しであるとか、ましてポピュリズムなどというものではございません。
 次いで、今後の地方にかかわる税制についてでありますけれども、まず、法律によって何か新しい制度を創設して行う全般的な外形標準課税というものは、私の分析では、なかなか至難なことで、実現不可能ではないかと思います。
 ただ、いずれにしても議論はされることでありましょうが、景気の動向及び中小企業の負担を配慮しませんと、これは軽率にはできないことだと思います。
 しからば、どういう代替案があるかということでありますけど、なかなかこれもいうに難しいんですが、私はかねてからいっておりますように、地方の時代、地方の主権ということならば、それぞれの地方自治体が、それぞれの地域性に応じた個性というものを持たなくちゃいけない。それはいろいろなゆえんがあるでしょうけれども、やはり教育事業であるとか、文化事業というものが象徴的な意味合いを持ってくると思います。そういったものに対する寄附行為というものが、外国などではほとんどもう無税ということで行われておりますけど、日本の場合にはこれに課税がありまして、こういったものをせめて改良して、もっと強いインセンティブをつけてくれということを先般の全国知事会でも申しましたが、余り確実な反応がないというのが現況でございます。
 なお、その他の質問については関係局長から答弁いたします。
   [東京都技監成戸寿彦君登壇〕

○東京都技監(成戸寿彦君) 都市計画に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内の踏切解消策についてでございますが、お話のような痛ましい事故を防止する観点からも、踏切の解消は重要な課題であると認識いたしております。
 その事業化に当たりましては、市街化の状況や踏切の連たん性、地形状況など、地域特性に応じたさまざまな整備手法を選択していく必要がございますが、いずれの場合も多額の事業費を必要とするのが現実でございます。
 このため、都といたしましては、事業の緊急性、財政状況等を総合的に勘案いたしまして、地元自治体とともに、暫定的な措置も含め踏切解消に取り組んでいきたいと考えております。
 次に、区部周辺部環状公共交通の整備方策とコスト縮減の検討についてでございますが、本路線は、広域交通ネットワークの形成や都市機能の分散化など、東京の均衡ある発展に大きく寄与する路線であると認識しております。
 本路線の整備については、ご指摘の点も含め、輸送需要の動向、導入空間の確保状況、事業採算性などを見きわめるとともに、関係区の意向等を踏まえながら、今後検討してまいります。
 最後に、区部周辺部環状公共交通の今後の取り組みでございますが、本路線は、事業主体の確立、膨大な事業費の確保、事業採算性の向上、沿線地域のまちづくりとの整合など、多くの克服すべき課題がありますことから、さきの運輸政策審議会答申におきましても、今後整備について検討すべき路線と位置づけられたわけであります。
 本路線の整備に当たりましては、国の支援を初め、関係区等の積極的な取り組みが不可欠でございます。このため、今後とも国と連絡調整を深めるとともに、関係区との連絡会を通じて協議、調整を進めてまいります。
   [総務局長横山洋吉君登壇〕

○総務局長(横山洋吉君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、固定資産税の減免等によります都区財政調整の財源への影響についてでございますが、固定資産税等の減免措置及び法人事業税の外形標準課税の実施に伴いまして、財調交付金の原資でございます固定資産税につきましては平成十三年度分の税収から、また、市町村民税法人分につきましては平成十四年度分の税収から影響が及ぶことになると見込まれております。
 都としましては、今後、都区財政調整の財源への影響について的確に把握いたしまして、必要に応じて特別区側と協議をしてまいります。
 次に、私立幼稚園におけるファミリーサポート事業についてでございますが、少子化、核家族化の進行など、幼児を取り巻く環境の変化に伴いまして、保護者の保育に対するニーズが多様化しております。このため、私立幼稚園における現行の預かり保育推進事業を拡充しまして、平成十二年度に、全国に先駆けて早朝の預かり保育を実施いたすものでございます。
 なお、この事業は、当面平成十六年度を目標年次としているものでございますが、ご指摘の点も踏まえまして、弾力的に対応してまいります。
   [教育長中島元彦君登壇〕

○教育長(中島元彦君) 公立幼稚園のあり方についてでございますが、東京都の幼稚園教育は、園児数の約九割を私立幼稚園が担っており、ご指摘のとおり、今後も私立幼稚園は極めて重要な役割を果たしていくものと考えております。
 一方、公私の役割分担も含めて、公立幼稚園のあり方につきましては、適正配置など、お話のとおり基本的には区市町村がみずからの責任において検討すべきでありますが、都教育委員会としましても、各区市町村が保護者の多様な保育ニーズや地域の実情を十分に踏まえ、適切な教育環境整備を図るよう、指導、助言していく考えでございます。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇〕

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 子育て支援についてのお尋ねでございますが、核家族化や都市化の進展に伴い、家族や地域の養育機能が低下する中で、地域の実情に応じ、多様な都民の子育てニーズに対応することが必要でございます。
 このため、国の指針で示されている保育所と幼稚園との施設の共用化など、今後とも関係局や区市町村と十分連携し、実効ある施策の推進を図ってまいります。

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