平成十二年東京都議会会議録第三号

   午後三時三十一分開議

○副議長(五十嵐正君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十二番林知二君。
   [五十二番林知二君登壇〕

○五十二番(林知二君) 一般質問を行います。
 今、南極の氷がどんどん解け出しております。高さ数十メートル、幅三十キロから四十キロメートル、長さ百五十キロメートルにも及ぶ棚氷が崩れ、赤道へ向け流れ出し、いずれは解けてしまいます。南極の平均気温は二度C以上も高くなっているということです。
 石原知事は、都民の健康を守る努力をしなければならないとして、浮遊粒子状物質を削減するために、ディーゼル車の使用を規制しようとしています。大胆な生産調整も含め て、もっと早く取り組まなければならない課題だったと思います。
 この数百年の間に、人間はどれだけ地球を汚染し痛めつけてきたか、二十一世紀を前にして、しっかりと思い至らなければなりません。今後五十年、百年は、絶対に自然に手を加えない、美しい地球を回復する努力が世界各地で行われる、そういう二十一世紀にしたいものです。
 二月二十四日、私たち都議会民主党は、東京のオアシスである奥多摩町、檜原村へ行ってきました。そこで日照権問題が起こっていることをご存じでしょうか。
 杉の木が伸び過ぎて、山合いの民家の日照を阻害する。山の経済価値がゼロになってしまったので、杉の木は伐採されずに伸び放題。仕方なく、日照を確保するために、役場が伐採をしているのです。
 森は、多くの酸素を供給したり、自然のダムの役割を果たしながら、源流をつくり出します。あの荒れた山を見ますと、山を守る努力をしなければならないと強く感じました。
 さて、昨日も議論が多くあったところですが、私も、臨海副都心開発、特に有明北地区の埋立事業については疑問を感じざるを得ません。臨海副都心開発は、テレポート構想当時は四十ヘクタールの開発規模でスタートしたのが、バブルとともにどんどん膨らんできたと聞いています。
 私も、過去へさかのぼって調べれば調べるほど、一貫したしんがなく、いかにも乱暴にいろいろな計画がつけ加えられてきたなあと思います。
 この有明北地区の埋立事業にしても、バブルの絶頂期、昭和六十三年に、東京港第五次改訂港湾計画で、約四十一ヘクタールの埋め立てを決めたわけです。昭和六十三年の社会状況、計画を策定した関係者の精神状態を思いますと、平成十年の第六次の改訂で、埋立面積を六ヘクタール減らしただけで事足れりとすることに、疑問を感ずるわけであります。
 昭和六十三年から現在までの十余年の間、東京都はどのように変化したでしょうか。財政面でも、多額の借金を抱え込んでしまいました。ほとんどの基金を取り崩してしまい、都債の残高も七兆円を超えてしまっています。今日では、職員の給与や期末手当の削減まで余儀なくされ、福祉施策、高齢者施策にまで影響が及んでいます。
 私は、基盤整備のほぼ終わった地域は、どんどん開発、利用を進めるべきだと思いますが、新たに着手する事業に関しては、本当に必要な事業なのか、今、実施しなければならない事業なのか、立ちどまる勇気が必要だと考えます。
 また、これまで数回にわたって陳情が出され、江戸前のハゼを守ってほしい、昭和五十九年に東京都の伝統工芸に指定され、次いで平成三年に通産省から国の伝統工芸品として認定された江戸和竿、その職人が、東京に二十人、川口に十人程度いるそうですが、その江戸和竿の仕事を取り上げないでほしい、遊漁船、屋台船業者の生活を守ってほしいというものでありました。
 東京都も、水域環境への配慮として、近自然型ブロックを備えた護岸、干潟機能を持った緩傾斜型護岸だとか、干潟機能を持った潮入り、海底の土砂を再度現地に覆土して、海の生物の生育環境の創出などとうたっています。このことは、この水域の自然が豊かであることの証左なのでしょうが、それらはあくまでもお金のかかる人工的築造物であり、自然ではありません。
 平成十二年度には、臨海副都心を含む臨海部全体を対象として、新たな開発整備ビジョンを策定することでもありますので、有明北地区の埋立事業については、勇気を持って立ちどまり、再考すべきと考えます。
 自然に対し大変理解のある石原知事の見解を伺います。
 その新たな開発整備ビジョンを策定するに当たり、特色ある海上公園という点で申し上げたいと思います。
 海上公園ガイドを見ますと、本当に多くの海上公園があり、都民のすばらしい憩いの場として、それぞれ役に立っていることと思います。その中で、野球、テニス、水泳など各種スポーツのできる公園、自然や野鳥の観察、釣りのできる公園など、特色のある公園も少なくありません。
 近年、獣医師会、馬術連盟、障害者乗馬を進めているRDAなどの団体や個人の方々から、馬や小動物との触れ合いのできる公園が欲しいとの声を耳にします。
 馬術競技もできる、障害のある子どもも健常な子どももポニーに乗れる、一般の人々も乗馬を楽しむことができる、そして、幼児は小動物と触れ合うことができる、そんな動物を主体にした公園があってもよいのではないでしょうか。
 世田谷にある馬事公苑は、東京オリンピックの馬術競技場でしたが、中央競馬会との関係や、市街化が進む中で使い勝手が難しくなってきていると聞いています。中央防波堤内側埋立地は、あと三年から五年くらいで地盤沈下がおさまり、公園としての造成が可能だと伺っていますが、その中央防波堤内側海浜公園八十七・九ヘクタールの一角に、青い海をバックに馬が走り、草をはむ、虐待されない元気な小動物と触れ合える特色ある海上公園、そして、公園造成には民間の資本も大いに注入し、また、運営にもNPOなどの民間の人たちの力をかりる、そんな公園も大変すばらしいと思うのですが、いかがでしょうか。
 次に、築地市場の再整備について伺います。
 築地市場の再整備については、これまで、現在地での再整備の方針が再三確認されてきましたが、昨年十一月の築地市場再整備推進協議会において、これまでの方針を変更し、移転整備の方が合理性と実現性が高いとの移転方針を示しました。
 こうした動きに対して、築地市場のある中央区や中央区議会は、現在地再整備の強い申し入れを行うとともに、短期間で十万五千名の反対署名を集め、十二月十五日には、築地市場移転断固反対決起集会を開催しています。
 石原知事は、首都機能移転については、歴史や文化に対する冒涜だと強く反対していますが、中央区民にとっては、築地市場についても同様の目で見ているわけであります。知事が、築地市場の過密化や老朽化、ガソリン車が行き交っていることをもって築地市場を文化的でないとするならば、過密や自動車公害の問題を抱えている首都東京も同じではないでしょうか。
 築地市場は、昭和十年に開設されて以来、市場関係者や地元区など関係機関の長い間の努力により、今や世界に通用する築地ブランドとなっています。石原知事は、歴史的、文化的視点から、今の築地市場をどのように認識しているのか、見解を伺います。
 この間、地元中央区は、有形無形に築地市場を支えてきたのです。また、場外市場も、地元住民や築地市場と共存、協力関係を築き、互いに発展してきたのです。地方分権あるいは地方主権というのであれば、東京都は、地元自治体である中央区の意思を最大限に尊重すべきであると考えます。これまでの築地市場に対する地元中央区の区民の思いや期待について、東京都はどのように考えているのか、伺います。
 移転の有力な候補地として挙がっている豊洲地区は、豊洲・晴海開発整備計画により、既に区画整理事業などの事業が進行しています。中央区からの抗議文の中では、移転先の四十ヘクタールの用地をいかに、どのような手順で確保するのかなど五つの疑問について、昨年中に回答するように求められていましたが、いまだに明確な回答がありません。東京都としては、この五つの疑問について、特に用地の確保について、どのような見通しがあるのか、早急に誠意ある回答を示すべきと考えますが、見解を伺います。
 仮に豊洲に移転する場合であっても、その時期は、豊洲地区の幹線道路等が完成する平成二十七年以降といわれていますが、流通環境の変化はこれからも著しく進むものと考えています。今後の市場を取り巻く環境の変化や、関係機関、関係業者の意見など十分に踏まえて、この問題に対処していくことを要望しておきます。
 次に、大江戸線の光が丘から大泉学園町方面への延伸について伺います。
 本年一月に出された国の運輸政策審議会答申で、大江戸線の光が丘から大泉学園町間の延伸区間は、二〇一五年までに整備着手することが適当である路線として位置づけられ、私たち地元住民の国への要請活動が報われ、私自身も大変喜んでいるところです。
 大江戸線の環状部については、知事の施政方針にもあったように、本年十二月の全線開業によって、東京の鉄道による公共交通ネットワークが劇的に変わり、東京の将来の活性化に大きくつながるものと期待しています。
 このように環状部の開業にめどが立ったことにより、次は、練馬区住民の長年の悲願である、光が丘から大泉学園町間の延伸の一日も早い実現が強く望まれているところです。この鉄道の整備によって、交通不便地域の解消と沿線のまちづくりに大きく寄与するものとして、地元住民は待ち望んでおります。地元では、大江戸線が建設される補助二三〇号線の用地測量等が行われていることから、いよいよ延伸の実現の機運も盛り上がってきております。
 東京都は、これまで、事業化についてどのような取り組みをしてきたのか、今後どのような取り組みをするのか、あわせてお伺いをいたします。
 最後に、二月十五日の各紙の夕刊に、「名誉毀損で自民都連幹部起訴 東京地検」とか「自民都連幹部を起訴 都知事選で石原知事を中傷」といった見出しの記事を、多くの都民が目にしました。これが新聞に報道された後、私は、有権者の人たちから、知事選のときにあんな妨害をされていたのだったら、石原さんはどうして自民党議員のポスターに自分の写真を使わせるのかねということをいわれました。(発言する者あり)本当なんです。現に、私の関係しております東京九区、十区でも、石原知事と握手をしている大きなポスターだとか、顔写真と推薦文が印刷された短冊型のステッカーがどんどん張り足されております。当然、石原知事の承諾を得た上でのことだと思いますが、町で生活をする普通の人たちの感覚では、あんなに妨害をした人が、あるいはされた人が、まだ知事選が終わって一年もたたないのにと、ますます政治不信を募らせていることも理解できます。
 石原知事に投票した百六十六万有余の人たちはもとより、多くの都民が、東京に大統領が出現したと大きな期待を寄せております。どうか、こうした素朴な都民の感覚を大切にしていただきたいことを、老婆心ながら申し上げます。
 私たち都議会民主党は、東京都知事選挙では石原知事を応援できませんでしたが、二十一世紀に向けて都政の大きな転換が求められている中で、都民福祉の向上、市民自治の推進、活力ある東京を築く立場から、建設的な対応をしていきたいと存じます。
 ありがとうございました。終わります。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 林知二議員の一般質問にお答えいたします。
 有明北地区の埋立事業を再考すべきであるとのことでございますが、私自身も、新来の知事として、これについてはいろいろ考え、検討をしてまいりました。
 しかし、既存の臨海の他の部分とこの該当地域は非常に強い関連性がございまして、現行の埋立計画も、都民も参加した懇談会や都議会の特別委員会の十分な論議も踏まえ、平成九年に、埋め立ての規模縮小などの変更をして決定したものと承知しております。
 有明北地区の水域は、埋立地に三方を囲まれて、人工的に整備された区域であり、長 年、貯木場としても利用されてきましたが、今、外材の輸入の形が変わりましたので、全く使われないスペースになってしまいました。
 今後も、生態系に配慮した護岸も整備して、都民が水と緑に親しめる水辺空間とすることとしております。
 この事業は、住、商、業の多様な機能を備えた、活力のある新しいまちづくりを進めるために、また、これは大事なことでございますが、東京全体の交通ネットワークの整備にも欠かせない部分でございまして、計画どおり着実にこれを推進していくつもりでございます。
 築地市場に対する認識についてでありますが、首都圏の基幹市場である築地市場は、古くからの歴史と伝統を有し、地域のシンボル的存在にもなっていることは、十分承知しております。
 しかし、寺社仏閣ならば、信仰の対象として、観光の対象として、古いにこしたことはございませんけれども、この市場、現況、非常に古くなりまして、狭小にもなりました。狭隘になりましたし、中で使われているガソリン車等々のそういう機能からしても、決して環境的に良好なものと思えませんし、かつまた危険でもございます。それから、かなり多くの部分に、アスベストという非常に危険な製品が使われておったりしまして、必ずしも好ましい状況にはございません。
 築地市場の歴史的、文化的視点も重要でございますけれども、将来の市場機能を見据えた整備を適切に行っていくことこそが、食の文化の発展につながるものと考えております。
 仮にですよ、仮に他のどこかに移したとしても、ブランドとしての築地というものが惜しみがたいならば、新築地というブランドでもつくったらいかがかと思います。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [港湾局長浪越勝海君登壇〕

○港湾局長(浪越勝海君) 中央防波堤内側の埋立地についてでございますが、現在、臨海地域を対象とする新たな開発整備ビジョンを策定しているところでございまして、中央防波堤内側埋立地の緑地のあり方についても、この中で検討していくこととしております。
 ご提案につきましては、今後の課題として研究してまいります。
   [中央卸売市場長大矢實君登壇〕

○中央卸売市場長(大矢實君) 築地市場に関する二つのご質問にお答えを申し上げます。
 まず、築地市場に対する地元区民の思いや期待につきましては、十分承知をしております。今日の築地市場が、中央区や地域住民及び場外市場との深いかかわりの中で発展してきたことも、よく認識をしております。また、地元自治体である中央区からの築地市場再整備に対する要望内容についても、十分理解をしております。
 しかし、築地市場は、一千二百万都民の台所として重要な役割を担っている市場であり、その役割を将来も果たしていけるかどうかといった視点で、総合的に再整備問題を考えていくことが大切であると考えております。
 今後とも、地元区を初め関係者と十分協議してまいります。
 次に、用地確保の見通しについてのお尋ねでございますが、現在地での再整備は、さまざまな問題を抱えていることから、現在、市場を移転するとした場合、どのような影響や課題があるかについて、総合的に検討、整理を進めているところでございます。
 移転整備の候補地である豊洲地区における用地確保の可能性についても、各種計画との整合性などを考慮しながら検討しているところであり、これらの推移を見きわめた上で、地元区を初め関係者と協議を進めてまいります。
   [交通局長横溝清俊君登壇〕

○交通局長(横溝清俊君) 地下鉄大江戸線の大泉学園町への延伸に向けての取り組みについてのお尋ねにお答え申し上げます。
 交通局では、これまで、地質調査を実施するとともに、地元練馬区が主催するまちづくり懇談会へ参加してまいりました。
 また、大江戸線の導入空間について、関係機関と調整を行い、補助二三〇号線の道路地下利用計画に位置づけられるなど、免許申請のための諸準備を進めてきたところでございます。
 今後、さきの運輸政策審議会答申を踏まえ、引き続き、地元区や関係機関の協力を得て、計画の実現に向けて努力してまいります。

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