平成十二年東京都議会会議録第三号

○副議長(五十嵐正君) 四十七番宮崎章君。
   [四十七番宮崎章君登壇〕
   [副議長退席、議長着席〕

○四十七番(宮崎章君) 初めに、社会人経験のある教員の採用についてお伺いをいたします。
 現在、学校においては、いじめや不登校などの問題に加え、生徒の自己中心的な行動や学習規律の乱れなど、いわゆる学級崩壊や中途退学などが見られます。
 教育は人なりといわれるとおり、教育環境を決定する大きな要素こそ教員の質であります。したがって、これからの教員は、変化の時代を生きる社会人に必要な資質、能力を当然のことながら兼ね備えていなければならないと考えます。
 そこで、石原知事にお伺いしますが、知事が重要な政策課題として掲げる心の東京革命の取り組みの中で指摘されているように、子どもたちが社会の基本的なルールを守ることや、正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくむよう社会全体で取り組むことが大変重要であると思います。まして、学校教育の任に当たる教員は、豊かな人間性を持ち、バランスのとれた社会性を有することが非常に大切であると思いますが、知事の求める理想の教師像とはどのようなものか、ぜひ、知事自身のお言葉でお答えをいただきたいと思います。
 昨年十二月十日に、文部省の教育職員養成審議会から、採用選考の多面化として、社会人経験のある教員の採用、すなわち民間企業等の勤務経験を有する者の採用を一層促進する観点から、一定の採用枠を設けた選考を実施することも有意義であるとの答申が出されたところであります。
 そこで、お伺いしますが、新しい取り組みの一つとして、多様な人材を投入し、学校の課題解決に当たるために、社会人の多様な社会経験を学級経営や教科学習等に生かすことが大切であり、民間企業等の経験者の採用を一層促進し、学校現場で活用する方向で検討すべきと考えますが、所見をお伺いをいたします。
 次に、介護保険制度の円滑な実施に向けての課題についてお伺いをいたします。
 いよいよ来月から、都民の期待を担って介護保険が実施されます。保険制度のもとでは、介護サービスは、行政がサービスの内容などを決定する措置ではなく、利用者みずからの意思により選択する契約により提供されることになります。また、サービスの提供主体として、株式会社やNPOなど多様な事業者の参入が可能になります。これにより、利用者の選択を受けるため競争原理が働き、サービスの効率的な提供が期待されます。
 しかし、その一方で、これまで措置という仕組みで成り立ってきた福祉の世界では、当事者の意思に基づく契約によるサービスの利用にはなじみがなく、未知といっても過言ではありません。また、介護が必要な高齢者は、情報量はもとより、事業者と心理的にも対等の立場になりがたいハンデがあります。さらに、適切な判断の前提となる情報も得にくいのが現状ではないでしょうか。民間事業者の参入により、効率的にサービスが提供され、都民にとってもサービスを選択できるという制度本来の長所が期待できる反面、過度の競争等によるデメリットも懸念されます。利用者としての高齢者を保護するとともに、事業者の健全な育成を図ることが求められております。
 そこで、まず、利用者である高齢者が安心して事業者と契約を締結できるようにするには、都はどのような取り組みを行っているのか、お伺いをいたします。
 次に、情報提供体制についてお尋ねをいたします。
 高齢者が安心して介護サービスを利用するためには、適切な判断のための前提として、必要な情報が十分提供されることが求められます。来月から、利用者がサービスを選択して、契約による提供を受けることになりますが、現時点ではどのような情報提供の仕組みが築かれているのかもお伺いをいたします。
 さらに、民間事業者の参入で競争原理が働くことでサービスの質の向上が図られ、利用者にとって満足度の高いサービスが提供されることが期待されます。介護保険制度を利用する過程で生じるトラブルの防止に万全の対策を講ずることはいうまでもなく大切でありますが、さらに一歩進めて、積極的にサービスの質の向上に取り組むべきと考えます。
 そこで、お尋ねをいたします。利用者の満足を高め、サービスの質の向上を図るための取り組みの状況はどうなっているのか、お伺いをいたします。
 次に、立川市の総合的なまちづくりについてお伺いをいたします。
 本年一月、多摩地域の住民が待ち望んでいた多摩都市モノレールが全線開業いたしました。これまで一時間以上かかっていた東大和から多摩センターまでわずか三十六分でつながり、沿線住民の生活圏が飛躍的に広がることになり、まちづくりが進められている日野市や立川市にとっても、地域の活性化に大きく貢献していくものと考えております。
 また、立川市は、八王子市とともに業務核都市として指定されており、立川駅北口の土地区画整理事業や立川基地跡地再開発事業など、多摩の中心としてふさわしいまちづくりが進められてきました。首都機能移転反対を掲げる中で、八王子・立川業務核都市は、横浜・川崎、大宮・浦和、千葉の各業務核都市とともに、首都圏における高次都市機能の一翼を担うにふさわしい重要な地域として成長することが期待されているのであります。多摩都市モノレールの全線開業は、この期待にこたえる大きなインパクトとなりますが、立川市のまちづくりはまだまだ途上にあるといわざるを得ません。特に多摩地域における広域連携の視点からは、まちづくりの早期熟成化を促す施設誘導及び地域の整備や広域防災基地を初めとする諸施設へのアクセス機能の向上など、課題が山積をしております。今後、これらの課題解決のためには総合的に取り組む施策が必要と考えます。
 そこで、お伺いしますが、昨年十二月に、関係局のご支援もあり、立川市が建設大臣から都市再構築総合支援事業制度に基づく都市・居住環境整備重点地域に指定されたと聞いておりますが、この制度のねらいと意義はどのようなものか、お伺いをいたします。
 また、この重点地域に指定されたことにより、立川市のまちづくりに対してどのような効果があるでしょうか。
 そして三点目として、今後、指定を受けた立川市はどのような取り組みを行い、東京都としてはどのように市を支援していくことになるのでしょうか、お伺いをいたします。
 立川駅周辺地域における総合的なまちづくりにおいては、市に対する支援だけではなく、東京都自身の取り組みも重要であります。都の行う道路等の基盤整備事業は広域的かつ根幹的なものであり、施策の総合的展開を可能ならしめ、広域防災拠点の諸機能も十分発揮させる、いわばまちづくりのかなめとなるものであります。この点から、私は、広域的な都市計画道路整備と周辺まちづくりについて、さらに具体的にお伺いをいたします。
 まちづくりを広域的地域連携の視点で見ると、東側では中央線連続立体交差事業は進んでおりますが、反面、西側では、青梅線と通称貨物線により地域が分断されていることから、南北の連携が困難であり、立川市のまちづくりの大きなネックとなっております。さらには、この地域分断が、広域防災拠点の持つ広域機能を発揮する上でも支障となっております。
 このような課題の解決のためには、立川基地跡地を南北に走る立川都市計画道路三・一・三四号線の整備が急がれることから、この道路は、平成十七年度までに完成または着手すべき前期事業化予定路線に位置づけられており、現に青梅線の北側区間では着々と整備が進んでおります。
 その反面、青梅線南側区間については、東京都施行の立川富士見町地区土地区画整理事業を前提にした道路整備が予定されておりますが、依然として整備が進んでおりません。この整備のおくれは、駅周辺のまちづくりの進捗による急激な自動車交通量の増加や青梅線の運行本数の増加による踏切遮断時間の増大と相まって交通渋滞を引き起こしており、生活環境、商業地域の活性化などに対し多大な影響が出ております。約四十二ヘクタールの地域を対象とした土地区画整理事業の施行により道路整備を実施することは、関係地権者の数も多く、長い時間を要するものと考えられます。
 そこで、これまでの土地区画整理事業手法だけにこだわらず、都市計画道路の整備を先行的に行っていくことを検討する段階に来ていると考えますが、所見をお伺いいたします。
 しかし、その場合でも、道路だけを単独で整備すればそれでよしというわけではありません。これまでの区画整理事業手法は見直すとしても、地権者の協力を得て円滑に事業を進めるためには、幹線道路とその沿道地域の整備をあわせて行うことが最善ではないでしょうか。また、交通渋滞を解消するためには、道路と鉄道との立体化が不可欠でございます。早期の道路整備と鉄道立体化及び沿道のまちづくりが一体に進められるよう、新たな手法を工夫すべきであると考えますが、所見をお伺いいたします。
 多摩の農業振興についてお伺いをいたしたいところでございますが、時間の関係上取りやめさせていただきます。
 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 宮崎章議員の一般質問にお答えいたします。
 私にとっての理想的な教師像ということでありますが、これは非常に、いうになかなか難しい問題でありまして、私自身は実は中学、高校、本当に嫌々過ごして、高校のときは学校を一年サボりました落ちこぼれでありまして、ということは、その時期に余りいい教師に会ったことがなかったということの裏返しだと思いますが、実在する学校の先生、そしてまた学校というものの理想像をあえて挙げれば、私は、吉田松陰と彼が主宰した松下村塾というものをどうしても考えざるを得ません。私は、人間の価値というのは、他人との違い、つまり人間の個性、感性というものでありまして、それを、吉田松陰をそんたくしながら、結果としてあそこからすばらしい逸材がたくさん輩出しました。なかなか社会的手段としての教育ということになりますと、扱う生徒の数も多うございますから、結局画一化という、本来あってはならない結果を一種の本質的な矛盾として教育にもたらすと思いますけれども、しかし、それでもなお、やはり人間の違い、他人との違い、感性、個性というものをはぐくんでくれる、そういう教師が、私は、結局人生にとって最も価値のある指導者だと思います。
 ほかのことは局長がお答えいたします。
   [東京都技監成戸寿彦君登壇〕

○東京都技監(成戸寿彦君) 都市計画に関します三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都市再構築総合支援事業制度についてでございますが、この制度は、大都市のリノベーションを推進することを主なねらいといたしまして、整備の必要性の高い重点地域において、地方公共団体等が行う都市基盤施設や面的整備事業などに対し、通常の国庫補助に加え、重点的かつ総合的に国が支援を行うものでございます。都といたしましては、この制度の活用により、業務核都市の育成や木造住宅密集地域の整備等を図っていくことといたしております。
 次に、重点地域指定の効果についてでございますが、立川を業務核都市としてさらに育成していく上で、多摩都市モノレールの開業や土地区画整理事業の実施により発展しつつある立川駅周辺とそれを取り巻く地域の総合的な整備を進めることが重要でございます。今回立川が重点地域に指定されたことによりまして、業務核都市としての拠点形成を促進するペデストリアンデッキ等の都市基盤施設や面的整備事業への新たな国庫補助の導入が可能となりますので、立川を広域連携拠点として一層強化することができると考えております。
 最後に、立川市の取り組みと都の支援についてでございますが、本事業の実施に当たりまして、立川市では重点地域の整備を行うための基本計画を策定し、さらに、この地域の中で特定地区を指定して都市基盤施設整備等を集中的に行うことといたしております。都は、事業の円滑な推進を図るため、基本計画策定に際して市への適切な指導助言を行うほか、事業主体となる市の要望等を踏まえ、国庫補助の積極的な確保に向け、国との協議、調整を行ってまいります。
   [教育長中島元彦君登壇〕

○教育長(中島元彦君) 民間企業等経験者の教員採用についてでございますが、民間企業等に勤務経験を有する個性豊かな人材を教員として採用し、その経験を子どもの社会常識の育成や学級経営に生かし、学校組織の活性化を図ることは、大変重要であると認識しております。都教育委員会は、現在、英語教員については海外活動歴等を有する者を対象とした特別選考を実施しておりますが、さらに選考方法について工夫を加え、民間企業等の経験豊かな教員採用の早期実施を目指してまいります。
   [多摩都市整備本部長久保田康治君登壇〕

○多摩都市整備本部長(久保田康治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 立川富士見町地区土地区画整理事業と都市計画道路の整備についてのお尋ねでございますが、都は、これまで、この地区において、土地区画整理事業によるまちづくりについて検討してまいりましたが、関係地権者が膨大であること、及び堅牢建築物が増加していることなどから、事業化が困難な状況になっています。都としては、災害時における広域防災拠点の機能保持の重要性等を考慮すると、地元の合意形成を図りながら、都市計画道路整備を優先する手法を検討していくことが必要と考えております。
 次に、道路整備と鉄道立体化などを一体的に進める手法についてですが、都としては、事業の円滑な推進のため、ご指摘のように、都市計画道路の整備を優先しつつ沿道のまちづくりをあわせて進める新たな手法を検討する必要があると考えています。また同時に、道路と鉄道との立体化についても鉄道事業者等関係機関と調整を図り、その事業化に向けて努力してまいります。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇〕

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 介護保険に関します三点のご質問にお答えします。
 最初に、高齢者とサービス事業者との契約についてでございますが、高齢者が安心して介護サービスを利用できるためには、事業者との間で適切な契約が結ばれるとともに、事業者による適正なサービスの提供が必要でございます。
 このため、都は独自に、指定事業者向けの業務のガイドラインとあわせ、訪問介護など六種類の介護サービスにつきまして、利用者と事業者の権利義務関係を明確にしたモデル契約書を作成しているところでございます。
 なお、制度実施後におきましても、引き続き契約内容等の状況の把握を行い、必要に応じて改定を行ってまいります。
 次に、情報提供の仕組みについてですが、都は、昨年十月に、東京都介護サービス情報提供システムを稼働しました。このシステムから提供する情報は、都が指定するサービス事業者に関する情報や、介護保険に関する最新ニュースなどでございます。区市町村や介護支援事業者は、これらの情報をもとに、住民への広報活動や相談業務に活用するとともに、介護サービス計画の作成ができる仕組みになっています。
 今後とも、区市町村、サービス提供事業者と協力しながら、高齢者施策全般の情報や施設の空き情報などを初め、提供情報の内容を充実してまいります。
 最後に、サービスの質の向上を図るための取り組みでございます。
 利用者が質のよい事業者を選択するためには、サービス内容に関する情報提供が必要です。また、事業者に義務づけられたサービスの自己評価に加え、サービスを客観的に評価する仕組みも不可欠であると考えております。そのため、都は、第三者によるサービス評価制度について検討を進めているところでございます。
 今後、さらに、事業者に対する指導検査体制の充実を図り、利用者が安心してサービスを利用できるよう努めてまいります。

○議長(渋谷守生君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時八分休憩

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