平成十二年東京都議会会議録第二号

   午後七時二十二分開議

○議長(渋谷守生君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十二番河合秀二郎君。
   [百二十二番河合秀二郎君登壇〕

○百二十二番(河合秀二郎君) 私は、都議会民主党を代表して、石原知事による初めての予算となる平成十二年度予算案並びに都政の主要課題について、知事並びに関係局長に伺います。
 まず、これからのこの国のあり方について、知事の見解を伺いたいと思います。
 知事は、さきの施政方針において、中央集権的な政治・行政システムが、自治体や企業そして個人の自立を阻み、新しい発想やチャレンジ精神が生まれにくい土壌をつくってきたとし、自立した個人が創意を生かし、リスクへの挑戦と成果が評価される社会を築き上げることが大切とされました。このこと自身は私たちも同意できるものであり、知事の国家の自立へのいら立ちも理解できるものであります。しかし、知事は、国家体質の自発的な変革の先に、どのような国家像を想定しているのでしょうか。
 例えば、私たち民主党は、十の州と千の基礎的自治体から成る分権連邦型国家と、情報公開の徹底による新民主主義の確立と、社会の再生を提案していますが、知事の描く国家像とはどのようなものか、見解を伺います。
 また、知事は、「亡国の徒に問う」との著作で、日本にもともと住んでいたのはアイヌ民族であり、そこへ朝鮮半島系の人々、大陸系の人々も入り込み、そうして混交して生まれたのが日本であって、アメリカが単一民族でないのと同じように、日本も決して単一民族ではない、基層では、日本の文化、社会は多様多元的ですと書かれています。
 かつての江戸の町は、全国各藩から、この多様多元的な人材を吸引することによって、その活力を生み出してきました。そして、今、私たちは、私たちの住む東京を、アジアを初めとした世界各地から多様多元的な人材が集う都市として築き上げていくことが、二十一世紀の新しい活力を生み出していくものと考えます。都市構造や、快適な生活を送るための都市環境の問題もありますが、何よりもこの国の閉鎖性を打破し、多様性を許容する環境を整備していくことが重要です。
 東京都も、外国人都民会議を設置し、在日外国人の要望を都政に取り入れてきていますが、今後はさらに、国際的、地球的規模での交流のネットワークづくりを進め、世界の人々を積極的に受け入れ、多様多元的な人材がともに暮らせる活気に満ちた東京を実現していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 小渕総理の委嘱による「二十一世紀日本の構想」懇談会は、上から下へ、あるいは官から民へという官尊民卑型の統治、統制して治める統治から、自発的な個人によって担われる多元的な社会で、自己責任で行動する個人とさまざまな主体が協同して、これまでとは異なる公を創出する協治、協力して治める協治への転換を提案しています。
 この国が、一定の権力を議会と行政にゆだねている以上、統制し治める統治の要素があることは当然ですが、そこに協力して治める協治の要素を拡大していくことが、これからのこの国のあり方であるべきであります。
 知事は、正当なプロセスを経て合意された公益的な事業は、個人の権利をいたずらに許容することなく、迅速な実行こそが優先されるべきとされましたが、それは、統制し治める統治の理念ではなく、協力して治める協治の理念に基づいてなされるべきであります。必要な情報を公開し、多くの人々と協議を積み重ねるプロセスを十分に行うことが、公益の合意を確たるものとし、迅速な実行を可能にするのだと考えます。知事の見解を伺います。
 次に、平成十二年度予算案について伺います。
 平成十二年度予算案は、歳入歳出の両面にわたる徹底した見直しを行った結果、千九百四十億円の財源を確保したが、なお三千二百億円もの財源不足が生じているとされています。財政再建プランの目標額に対する達成率も三〇・八%、いまだ三分の一しか達成できていません。
 そこで、基本的な疑問を持たざるを得ないのですが、財政再建プランが示されているとはいえ、前日の決算が翌朝には示されるという民間企業の実態を見るならば、今回の予算編成、財政構造改革には、まさに経験と勘に基づいて、日々こつこつ努力すればいずれ報われるという手工業的な印象を持たざるを得ないのであります。
 既に、バランスシートの作成に取り組み、個々の施策や施設に着目したバランスシートの作成や、損益計算書に当たる財務諸表の作成の方向は出されているのですから、これらの取り組みをさらに促進し、具体的な財政評価に活用するとともに、一層の財務情報の開示を進め、財政の透明性を確保するなどといったことを早期に具体化すべきであります。知事の見解を伺います。
 さて、知事は、今回の予算案について、数字だけを見れば超緊縮型の予算だが、都政の抱える課題を先送りすることなく、構造転換に向けて踏み出した改革型の予算であると述べられました。確かに、福祉施策の再構築を初めとして、社会経済状況の変化を踏まえて施策の再構築を図りつつ、在宅福祉サービス等の充実、多様で柔軟な教育、意欲ある取り組みを支援する産業政策、健康で快適な都市環境づくりなど、新たな行政需要にも積極的に対応されている点もあります。
 しかしながら、私たちも含めて、施策の費用対効果から見れば、まだまだ考えなければならない課題もあります。目先にとらわれず、各種施策の費用対効果を冷静に分析し、選択していく必要があると考えますが、見解を伺います。
 各種施策の効果分析という意味では、十二年度に試行を拡大し、十三年度から本格実施するという行政評価制度は有効な制度です。十二年度は、評価結果の活用方法やフォロー体制の検討を含め、十三年度の本格実施に向けた取り組みを進めるとされましたが、それらの試行結果は、施策の見直しや予算編成に反映されるのかどうか、見解を伺います。
 また、知事は、さきの「石原知事と議論する会」において、都立の大学等を統合して、新しい大学を創設する方針を打ち出されました。私たちは、これまで、東京都の試験研究機関の人材、研究開発力、技術などの資源をネットワークによって統合し、東京の産業の活性化に資するよう主張し、東京都の学術研究の中心である都立の大学等が、このようなネットワークの中核的役割を担うことを期待してきました。既に、共同研究や共同による行政サービスも進められていますが、改めて、都立の大学等が果たすべき役割が問われてきているのだろうと思います。
 知事は、教育改革全体を視野に入れながら、都立の大学等の統合をお考えのようですが、既に述べた役割に加えて、大学のみならず、企業も情報を公開し、ネットワーク上で相互に付加価値を加えることによって、新技術、新製品をつくり出すというような役割を都立の大学等が果たすことも意義あることだと思います。
 このような視点をも踏まえ、知事は、都立の大学等の統合についてどのようにお考えなのか、見解を伺います。
 次に、国と自治体とのかかわりと外形標準課税について伺います。
 このほど石原知事が編成された予算を国の予算と比較してみますと、一般会計で、東京都がマイナス四・九%に対し、国はプラス三・八%で、八十四兆九千八百七十一億円にもなっています。その財源は、東京都が一般財源で六七・五%、都債で六・七%を賄っているのに比して、国は一般財源で五七・三%、国債が何と三八・四%にも達しています。地方債、国債の現在高で見ますと、東京都七兆六千二百四十二億円に対して、国は約三百六十四兆円であります。都政と国政とを同列に比較することはできませんが、いかに景気対策が必要とはいえ、国の予算は、景気刺激効果の落ちている従来型の公共事業に縛られ、大盤振る舞いに終始した、未来への希望のない予算といわざるを得ません。知事は、この国の予算並びに財政運営についてどのようにお考えか、まず伺います。
 このような小渕政権に対して、アメリカの格付会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、二月十七日、日本国債の格付を引き下げの方向で見直すと発表しました。東京市場では、円相場が一ドル百十円台に下落しました。これは、国の財政赤字の増大だけではなく、十二年度に必要な地方交付税の不足分八兆円を、資金運用部からの借り入れではなく、民間金融機関から借り入れるという政府の方針が報じられたことがきっかけだといわれています。
 これは、税収減とともに、本来、国税収入の一部を財政基盤の弱い地域に再配分し、財政力の格差を縮める役割を持つ交付税制度が、今や、全国にくまなく資金を配る補助金的色彩を強め、自治体の九五%以上が交付団体となるに至ったためです。このような支配と依存の関係は、各自治体の自立を阻害し、より一層の分権改革の障害となっています。地方交付税制度の改革や税財源の移譲を初めとした地方税財政制度の抜本的な改革の必要性を広く都民に訴えていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 今回、知事が決断された、銀行業等に対する外形標準課税の導入は、このような状況に対する鋭い問題提起であり、将来世代の借金となる国債を乱発しながらも、肝心な課題を先送りし続ける政府を告発するものであります。
 外形標準課税は、本来、全業種を対象に広く薄く課税すべきという批判がありますが、これは、現行地方税法そのものの改正にかかわる問題であり、すぐれてその権限は政府と国会にあります。
 今回の銀行業等に対する外形標準課税の導入は、現行地方税法の枠内で特例規定を適用できる業種ということで、銀行業等を選択したものであると理解しています。しかも、その負担額は、過去十五年間の平均的負担額であるということですから、著しく均衡を失するものではないと考えています。しかし、五年間の時限措置ということについて、中には、五年後に景気がよくなったら、もとの課税方式に戻すのだろうという意見もあるようですので、この点についての見解を求めるものであります。
 また、本来自治体の税である地方税法の制定権が国にあるということ、そのこと自身がおかしいのであって、国は一定の標準を定め、その標準に沿って、自治体が地方税に関するみずからの課税自主権を行使すべきなのであります。ところが、政府・自民党の中には、課税自主権の乱用を防ぐために地方税法を改正しようとか、中には、課税標準の特例規定まで削除してしまえなどという乱暴な意見さえあるやに聞いています。このような分権改革に逆行するような意見に対して、知事はどのようにお考えか、見解を伺います。
 その他、細目につきましては、財政委員会や予算特別委員会において十分な審議を行い、私たちとしての最終結論を出したいと考えております。
 次に、心の東京革命に関連して、青少年問題について伺います。
 親と大人が責任を持って子どもたちに社会のルールを伝えることの重要性を都民に啓発することが、残念ながら必要であるといわざるを得ない昨今の状況があります。しかし一方、今や、単に大人と子どもの関係だけでは律することができない社会環境があるということも認識すべきです。
 私は、現在のマスメディアの状況を大変危惧しているものであります。テレビによる性表現や残酷シーンの問題はいわれて久しいわけですが、最近は殊にテレビゲームやインターネットの普及により、有害な情報に青少年が簡単に触れることができるという状況があります。
 知事は、昨今のメディアの青少年への影響についてどのように認識しているのか、かつて、メディアを通じて若者群像を描き時代の寵児となられた知事の見解を伺います。
 表現の自由があるとはいえ、余りにもひどいものについては、行政としての何らかの意思表示は必要なのではないでしょうか。直接的な規制は難しいといっても、例えば、青少年保護の観点から、メディア全般に対して都民が意見を表明できる場を設け、広く議論することなども検討すべきだと考えます。
 殊に緊急に手をつけるべきは、書店やコンビニエンスストアにある一部の雑誌の問題であります。せめて、成人向け雑誌を一般雑誌とは別にして、少年の目に入らぬように陳列するなどの最低限の処置を講ずるよう指導すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、電車の中づり広告などでも、あからさまな性表現や他人を誹謗する言葉が非常に目につきます。このようなものに鈍感な社会が、セクハラや人権の軽視を生み出す背景にあるといえるのではないでしょうか。この際、都庁の足元からできることとして、少なくとも都営交通での広告表現についてそのあり方を検討し、表現のあからさまなものについては再考を促し、改善が見られない場合は掲示を拒否するなどの対応をとるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、男女平等施策について伺います。
 男女平等参画基本条例案が本定例会に提案されています。東京都が全国に先駆けて、男女平等参画に関する条例を制定することは大変意義深いことであり、これまでの議論を踏まえた施策が着実に実行されることを強く要望するものであります。
 さて、国の男女共同参画社会基本法では、地方公共団体の責務として、その区域の特性に応じた施策を策定し、実施する責務を有するとありますが、東京都は施策の展開に当たり、東京都としての区域の特性をどのようにとらえているのか伺います。
 条例の実効性を上げるためには、問題のあった場合には、東京都がいかに適切に対応するかにかかっていると考えます。都民が都に対し相談や申し出を行う場合、その受け皿として専門的な立場から適切に判断する機関が必要と考えますが、都民の申し出等に対し、具体的にどのような体制で望むのか伺います。
 今回の予算案では、男女平等に関する訴訟支援の実施が認められておりません。十一年度に試行し、実績もある本制度を同条例がスタートする十二年度に本格実施しないのは、男女平等施策の後退といわざるを得ません。知事は、男女平等参画基本条例を今制定する意義についてどのように認識しているのか、改めて伺います。
 次に、高齢、福祉施策の見直しについて伺います。
 十二年度予算案では、私たちの要求がおおむね取り入れられてはおりますが、不十分な点も見られますので、幾つかの問題について質問したいと思います。
 まず、今回の見直しが単なる高齢、福祉施策の切り捨てではなく、現金給付的な施策から在宅サービスへの転換というのであれば、その道筋を明らかにする必要があります。二十一世紀高齢社会ビジョン、福祉改革ビジョンがそれぞれ示されてはおりますが、それらの施策がいつ、どのくらいの規模で実施するのかが定かでありません。私は、早期にこれらのビジョンに基づく実施計画を明らかにするなど、具体的な福祉施策の道筋を都民の前に示すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、私たちが反対を表明していた子育て世帯への支援、乳幼児医療費助成については対象年齢が引き上げられるなど、私たちの主張が取り入れられたものとして評価するものであります。
 しかし一方で、障害者施策については一部の手直しがあったものの、それでも障害者とその家族には大きな負担を強いるものとなっています。障害者の人たちは、一般の人たちと比較しても医療にかかる頻度も高く、こうした人たちに一割負担はまだしも、所得基準の引き下げにより二割、三割の負担を強いるというのは納得できません。私たちは、障害者医療費助成制度の見直しによって、障害者やその家族の負担が多大になることのないよう十分な配慮を求めるものですが、見解を伺います。
 また、障害者医療費助成と同様、各種手当の所得基準についても、一律に国の特別障害者に準じた基準に引き下げられています。現金給付的なサービスから在宅サービスへの転換を図ること自体は賛成ですが、見直しだけが先行し、充実すべき在宅サービスが実現しなければ、単なる福祉の切り捨てに終わってしまいます。
 東京都は、障害者の地域生活の支援として、ホームヘルプサービスを二十四時間巡回型にすることや、平成十六年までに利用時間を現在の一・五倍にすること、また、ショートステイのサービス量を二倍にすること、障害者地域生活支援センターを平成十七年までに八十カ所設置するなどのメニューを示しております。私は、こうしたサービスが着実に実施されなければ、見直しに対する都民の理解は到底得られないと考えますが、見解を伺います。
 さて、現在、東京都は、衛生局改革アクションプランを掲げ、施策の再構築、都立病院等の役割の明確化、監理団体の総点検、業務運営方法等の改善を柱とする見直し作業に着手しています。昨年十一月に示された第一次アクションプランに基づき、十二年度予算案では医療費助成の見直しが提案される一方で、救急医療体制や土曜医療体制の充実にも取り組まれています。
 石原知事は医療改革に関心をお持ちのようですが、トップダウンによる突然の決定は、医療の現場に大きな混乱をもたらしかねません。関係機関との十分な協議を踏まえながら、医療改革に着実に取り組むことを求めるものですが、知事の見解を伺います。
 昨年は全国で医療事故が相次ぎ、東京都でも都立広尾病院において、薬剤の取り違えが原因による入院患者の死亡事故が発生し、大きな社会問題となっています。また、現在のシステムでは、医師の行った医療行為に疑問を持った人が十分に相談できる窓口がなく、中には泣き寝入りせざるを得ないことも少なくないようであります。
 社会福祉基礎構造改革により、権利擁護制度や苦情処理の仕組みといった利用者保護制度の創設が進む中で、医療の分野においては、こうした取り組みが不十分です。広尾病院の医療事故を受け、東京都においても、医療事故予防対策推進委員会を設置し、医療事故予防対策に取り組んでいるところですが、私は、さらに、医療サービスの利用者の権利擁護制度や苦情処理の仕組みといった利用者保護制度を創設すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、環境問題について伺います。
 昨年の今ごろは、ちょうど所沢のダイオキシン問題がマスコミで大きく取り上げられていました。あれからもう一年になります。最近では、我が国の産廃処理業者によるフィリピンへの産業廃棄物不正輸出が問題となり、事は非常に深刻な問題をはらんでいることが、図らずも証明されたわけであります。
 ことし一月には、ダイオキシン類の環境汚染問題の解決に向けて、その排出量の削減を目指したダイオキシン類対策特別措置法が施行されました。この新たな規制の動きを受け、ダイオキシン類対策について知事はどのような基本認識を持ち、どのように対応していくのか伺います。
 また、廃棄物処理法による焼却施設の構造、維持管理基準が平成十四年から強化されることになり、その結果、基準に適合しなくなる施設がかなり出るのではないかと思われます。処理業者の多くは中小零細企業であり、資金や技術的な問題を抱えているところもあると思われますが、設備の更新を迫られる業者に対し、東京都はどのように改善を指導し、支援していくのか伺います。
 あわせて、どうしてもコストの問題等で廃業せざるを得ない施設が多く出た場合、処理業者の不足という事態を招きかねません。その結果、処理業者の少数寡占化が進み、設備更新にかかる費用も合わせ、廃棄物処理にかかるコストの増大が懸念されます。また、それゆえに、ますます悪質な不法処理業者の暗躍する素地を残すことにもなりかねません。東京都は、このような不法処理業者についてどのように認識しているのか、また、今後どのように対処していくのか伺います。
 現在、東京都は、公害防止条例の改正に向けて検討中であり、昨年十月には環境審議会の中間のまとめが出されました。このまとめの中には、事業者に自主的な環境負荷の低減を求め、環境負荷の大きい事業者に対しては、環境負荷の低減計画書の提出を義務づけるとあります。しかし、環境負荷を抑制し、適正な管理を確保するためには、こうした義務づけや事業者の努力に期待するだけでは不十分ではないでしょうか。真に有効な規制のためには、事業者や排出者にとって、環境負荷を抑制するインセンティブが働くような方策を検討すべきと考えますが、東京都の見解を伺います。
 結局、ダイオキシン問題にしても環境ホルモンの問題にしても、ごみが大量に出る社会の仕組みに問題があるわけでございます。使い捨て生活の目先の利便性には、長期的な環境への影響、ひいては私たちの健康を犠牲にして決して見合うものではないということを認識した上で、市民の生活スタイルを見直すことが必要ではないでしょうか。ごみの出口の部分の規制を強化することは結構ですが、もっと抜本的に生活スタイルを見直すシステムづくりを検討すべきと考えます。そういう意味で、環境問題の解決には都民の合意形成が欠かせないわけであります。現在検討されている公害防止条例の改正においても、規制的手法だけではなく、都民が参加し得る仕組みを明確に規定すべきと考えますが、都は今後の公害防止施策の中で都民の声をどのように反映させていくのか伺います。
 また、尼崎公害訴訟の神戸地裁判決で、排ガス有害物質の排出差しとめ命令が出たのは記憶に新しいところです。私たちは、自動車公害の深刻な事態を改めて認識すべきであります。知事はさきに、ディーゼル車への微粒子除去装置、DPFの装着の義務を初めとした取り組みのスケジュールを明らかにされました。確かに規制が技術開発を促進する面もありますが、今後、都外ナンバー車への実効性、中小企業対策などの課題も残されています。知事は、施政方針でも行政の迅速な対応の重要性を述べられましたが、改めて自動車公害問題の解決に向けての知事の決意を伺います。
 さきの判決は、自動車を使用する都民にとっても重大な意味を持っています。自動車公害についても、都民にとって車の利便性と比較しても、割の合う経済的インセンティブと環境への理解が必要なのはいうまでもありません。先日、東京都はTDM東京行動プランを策定し、ロードプライシングという戦略的な取り組みを掲げています。この施策については、海外ではシンガポールなどで取り組まれ、大きな効果を上げていると聞いています。しかし、東京のような巨大で、区切りなく広がっている都市における導入は、大きな困難を伴うと考えられますが、見解を伺います。
 ロードプライシングは、自動車で都心部に入ろうとする都民、事業者に新たな負担を求めることになりますが、都民や事業者にとって負担に見合う環境改善の効果についての理解が必要なことはいうまでもありません。都民の協力を得ていくためには、課金による収入の使途について、あらかじめ明らかにしていくことなどが重要であると考えますが、見解を伺います。
 自動車公害対策に関連して、大気汚染健康障害者医療費助成について伺います。
 大気汚染によるぜんそくなどに苦しんでいる人たちへの対策も充実させていく必要があります。しかし、東京都の大気汚染医療費助成制度の認定患者の対象人口に占める割合を見た場合、区部よりも多摩地区の方が高く、島しょもさほど変わらない数字となっています。区市町村別の認定患者の割合も、保谷市、東村山市、大島町が高くなっており、大気汚染との因果関係が求めにくい結果となっています。専門家の中には、公害認定に関する行政のずさんさを指摘し、原因抗原を確定し、それを除去あるいは回避することによって、アレルギーによる成人ぜんそく患者の症状が一切なくなったという症例を紹介している人もいます。私たちは、抗原が確定できて、それが治療できるのであれば、まずはぜんそくなどに苦しまないように施策を講じ、その上で、本当に大気汚染が原因で苦しんでいる人たちには、対象年齢を引き上げるなどの医療費助成制度の充実を図るべきだと考えますが、見解を伺います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終えます。知事並びに関係局長の誠意ある答弁をお願いします。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 河合秀二郎議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、私が描いている国家像についてでありますが、トインビーがその名著の「歴史の研究」の中で、どんな巨大な立派な国家でも、やがては衰弱し、滅亡もすると。しかし、その衰弱の原因は決して不可逆的なものではないともいっていますが、一番国家の滅亡にもつがりかねないその要因は、国家が自分で自分のことを決定できなくなる、それが致命的なものになり得るということをいっております。
 私、今日の日本を眺めてみますと、自分で自分のことが決定できない、いつもきょろきょろきょろきょろ周りを見て、他人の顔をうかがいながら、何か本当の自己決定ができないような気がいたしますけれども、私は、日本にもう少しちゃんとしてもらいたい。今日、日本に限らず混迷の世紀末という状況でございますけれども、こうした状況の中では、やはりみずからの運命を自分で決定できる国家であるということが、つまり、自分の意思をきちっと持つということが、私は国家が栄えていくための絶対必要要件だと思います。
 こうした点から、日本はまだまだ高い技術力も持っておりますし、あるいは、国の財政は疲弊しておりますけれども、国民全体が持っている金融資本、つまり、流れているお金は世界の金融市場の三分の一強もあります。こういった持てる力というものを自覚して、余りうぬぼれる必要もありませんけれども、もっと自分の力を踏まえて戦略的な目標というものを持つ、そのためにも個人のすぐれた発想や挑戦する精神というものを社会的、国家的に十全に保障するという、そういう国家が望ましいと思います。
 また、国政が停滞する中で、それを構成している一つ一つの地方自治体が地方主権の視点に立って主体的に政策を実行することでも、日本全体を活性化することができるし、まして東京は日本の首都でありますから、東京としてのそういう主体というものをはっきり自覚して、都政というものを遂行していくべきだと私は思います。
 私は、首都東京の再生、創造を通じて、国や社会を動かすメッセージを発信して、二十一世紀の日本のあり方を提起してまいりたいと思っております。
 次いで、外国人も含め、多様な人々がともに暮らせる活気に満ちた東京の実現とおっしゃいましたが、これはまことに賛成であります。
 国際化、ボーダーレス化が進んでいく中で、今後、時間的、空間的に世界はますます狭くなりますし、人的交流はますます大きな規模で進んでいくと思います。
 東京が魅力のある国際都市として発展していくためには、外国人も住みやすい、そして、外国人も活躍できる都市にしていくことが肝要であると思います。
 今後とも、既存の外国人都民会議などを初め各方面の意見を伺いながら、活気のあるダイナミックな都市東京を実現していきたいと思っております。
 次いで、公益的な事業に関する合意形成とその迅速な実施についてでありますが、公益的な事業については情報公開を徹底し、そして、計画段階から評価制度の充実をし、そうした適正な手続を重ねるとともに、その案件に関する関係者の合意形成をできるだけ速やかにすることが肝要であると思います。
 また、空港や広域幹線道路など、施設整備による便益が広範囲に及ぶ事業には、できるだけ地域だけではなくて、多角に多くの人々の意見を反映させていくことも必要であると思います。
 いずれにしろ、正当なプロセスを経た上で合意された以上、それを速やかに実施し、公共の利益を早期に実現することこそ、新しい公共のあり方として求められるべきものだと私は思います。
 私は、東京の都市空間の有限性と公共性を十分に踏まえ、社会資本整備における合意形成のルールづくりや、財産権と公共の福祉のバランスの確保に努めていきたいと思っております。
 かつて美濃部知事の時代に、有名な言葉で、一人の人間が反対する限り、橋はかけるなという言葉が大変もてはやされましたが、しかし、これは後段がありまして、スペインのことわざですが、ただし、反対した人間は冬でも川は泳いで渡れと。私は、多数原理というもので議会も動いております、民主主義社会というのは、それがなければ円滑に運用できないと思います。そういう原理を踏まえていくことこそが、私は行政が実を上げることの要件だと思っております。
 また、財務情報の開示等についてでありますが、都はこれまで、財政状況を広く理解していただくため、予算や決算の公表の際に、その具体的内容や財政分析の結果なども公表してまいりました。また、随時、財政の実情や財政運営の考え方も明らかにしてまいっております。
 また、私になりましてから、参与に中地氏を迎えました。東京全体の公会計としてのバランスシートというものの作成をお願いして、まず、九年度決算に続き、十年度決算をベースに作成を行っておりますが、損益計算書などの財務諸表の作成や、個々の施策に着目したバランスシートの作成等について、外郭団体も含めてですが、関連したその決算というんでしょうか、そういう独特の公会計というものを東京都を舞台に実現していきたいと思っております。
 先般、ことしから初めて導入されました外部監査の報告が、東京の有力な公認会計士の筆谷さんを中心に、ごく限った対象について行われましたが、これはちょっと非常識きわまりないような案件があちこちありまして、これが初めて具体的に提示されたということは、私は非常に望ましい情報公開であると思いますし、これを踏まえて都内のこれからの努力というものが展開されていくべきだと思っております。
 いずれにしろ、今後とも、より実態に即した財政分析や財務情報の一層の開示を進めていきたいと思っております。
 次いで、費用対効果を踏まえた各種施策の選択の必要性についてでありますが、十二年度予算の編成に当たっては、すべての施策について、時代変化への適合性や費用対効果などの視点から、精査、点検を行い、七十八事業については廃止、休止するなど、徹底した見直しを行ってまいりました。
 今後とも、都政の将来を見据えつつ、最少の費用で最大の行政効果が発揮できるよう、施策の選択と再構築に努めていきたいと思っております。
 次いで、東京の産業活性化に資するために、都立の大学が今後果たすべき役割についてでありますが、教育の、しょせん終点は大学でありまして、今日、小学校、中学、高校、大学すべて問題はございますけれども、まず東京からひとつ、東京が管轄しております大学を思い切って変えることで、そこから遡行する形で高校、中学、小学校というもののあり方が是正されていくのではないかという期待をしております。
 ということで、教育全体の改革を推進していくために、その一つのよすがとして都立の四つの大学を、どういうふうになるかわかりませんが、束ねる形ででも、思い切ったドラスチックな、どうしてもあの学校が未来的なんで行きたいというような、そういう大学の造形を東京から始めていきたいと思います。
 先般、佐藤君という、なかなかの文部省の次官と会って話をしました。彼にその話をしましたら、自分も国立大学については思い切った改革をやろうと思って案を提出したが、東京についてもぜひ協力したいし、ひとつ期待をしていますということでありましたが、いずれにしろ、この改革の中の一つとしても、都立大学の研究成果、あるいはそこで育った人材を積極的に活用し、産業活性化のために役立てていく、そういうシステムというものをつくってまいりたいと思います。
 世界で評判になったようなシリコンバレーの後ろには、陰に陽にスタンフォードという非常にすぐれた大学がバックアップしておりますが、こういった一つの連携というものが、東京がこれからつくり直していく大学と、東京のあちこちで画期的な試みをしている若い人たちの間に持たれることで、私は、東京の産業全体、日本の産業全体の活性化に資すること大だと思っております。
 加えて、今回の新しい債券市場形成のために準備しております、今までなかった形の、日本の、東京の中小企業の技術を含めたデータベースというものも、大学などにも活用してもらって、こういうものが幾つか媒体として重なり合って、日本の持っているいろんな技術というものがもっと複合的に開発されながら、産業を興していくということを期待している次第でございます。
 国の予算と財政運営についてでありますが、余り国のことをとやかくいう必要はありませんけれども、国の十二年度予算については、おっしゃるとおり、我が国経済を民需中心の本格的な景気回復軌道につなげていくということで、相も変わらず公共事業を起こして、しかもそれは、私たちかつて国会議員時代、自民党におりましたときに、仲間と諮って、新社会資本というものも幾つか提唱しましたが、それはそのときも非常に大蔵省の抵抗に遭いましたけれども、そういったものを外して、相変わらず、今さらケインズか、というような形の予算の使い方しかしていない。
 これと対照的に、東京としては、この東京を混迷から再生へとよみがえらせるための足がかりとして、財政再建を行い、財政の構造改革を進めることが必要であるということで、平成十二年度の予算の編成は、国と対照的に、非常に緊縮型のダイエット、体をやせようという形の予算といたしました。
 いずれにしろ、まだまだ第一歩を踏み出したばかりでありまして、国は国としても、東京都は、むしろ国に範を示すぐらいのつもりで、こういった堅実な、着実な、むだを省いた予算というものをつくっていきたいと思っております。
 それから、地方税財政制度の改善についての都民のご理解が欲しいということでありますが、これはまことにそのとおりですけれども、なかなか税財政というのは素人にはわかりにくいものがあります。ただ、外形標準なども含めまして、具体的な形で提示することで、賛否両論あるかもしれませんが、都民を巻き込んだ、それを反映した議会でのかんかんがくがくの議論の中から、都みずからの責任と主体性で、地方主権を確立するための新しい施策を展開していく、そのための新しい税財政制度の改善というものも行われていき得ると思っております。その実現に向けては、議会の協力はもとより、都民の皆さんの理解と支援を得ることが必要であると思っております。
 したがって、今後、発足後半世紀を経て、制度疲労の見られる地方税財政制度の実態や、待ったなしの改革の必要について、議会を通じ、あるいはメディアを通じて、広く都民に理解を求めるよう私も努力いたしますし、また議員の皆さんにもご努力願いたいと改めてお願いいたします。
 次いで、銀行業に対する外形標準課税でありますが、五年の措置としたのは、前にも答弁いたしましたけれども、口ではいっていますけれども、実現できるかどうかわからない国の外形標準課税の動向――私は私なりに情報をとりましたが、これはだめですな。そういうものを見越して、とりあえず五年間という形でやります。
 その間、景気の動向も変わるでしょうし、また、何かのはずみで外形標準課税なるものが、日本全体の地方自治体の要望に応じて、都がやっているとは違った形で実現されるかもしれません。それはまたそれでしんしゃくしまして、決して無視することなく、都は都で、その姿勢をとらえながら、都の姿勢をとっていきたいと思っております。
 五年後の課税のあり方については、先ほど申しましたが、その時点において都議会の判断を改めていただくものでございます。
 課税自主権を制限しようとする意見についてでありますが、もしそういうことを国が国会で、そうばかなことはしないと思いますけれども、そんなことをすれば、まさに自殺行為でございまして、地方の自治と分権の流れに逆行するこっけいな試みになると思いますが、たまたま今、情報が入りまして、きょう、国会の地方行政委員会で、地方税についてるる書いてありますけれども、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小する観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、国と地方の税源配分のあり方を見直し、地方税源の充実確保を図ることと。まあ、ありがたいにはありがたいようなあれですが、こういう決議をしたようでございます。
 次いで、有害情報の青少年への影響についてでありますけれども、人間というのは、もともと本質的に非常に保守的なものですから、新しい風俗にみんなまゆをひそめます。私が世の中に出たときもそうでありました。しかし、現今の東京にはんらんしている状況はちょっと限界を過ぎておりまして、どう考えてもちょっと困ったものだという気がいたします。
 先般も、実は警視庁の視察に参りまして、新橋の別館で、コンピューター犯罪に関するいろいろ実情を知らされて、改めてショックを受けました。
 一方では、コンピューター教育というのは、これからの文明国家にとって不可欠なものでありますから、日本はそれでかなりおくれておりますが、しかし、そういう教育を徹底することで、我々と違って、若い人の方がはるかにコンピューターのハンドリングには精通し、進む――現にこの間、国防総省ですか、アメリカの重要な機関に侵入したハッカーは、本当に十代の若い少年だったようでありますが、そういう少年たちが手なれたコンピューターの操作で、勉強するのは結構ですけれども、同時に、ちょっと頭を休めるためにポルノを見るとか、驚くことには麻薬の販売広告が出ていまして、しかも、それは非常に巧緻な暗号でできていて、警視庁といえどもなかなか判読ができない。やっとそれを解いて行ってみたら、逃げられた後だという、そういう非常に苦い体験を知らされて、暗然といたしました。
 いずれにしろ、さっきご提案ありましたように、東京都内を走る地下鉄であるとか、省線――省線というのは古いんですか、(笑声)JRの電車に、中づり広告その他に非常に際どいものがあります。ああいったものは、やっぱり公共の――別に、眺めるのは若い者ばかりじゃなしに、年配の人もいますけれども、そういった一つの規制というんでしょうか、これは決して言論の統制につながらぬと思いますから、ある常識的なラインというものを考えるということも、そろそろ考えなくちゃいかぬかなと。
 これはしかし、皆さん、賛否両論おありでしょうから、この議会で活発なご討論をいただきまして、新しい条例なりを日本に先駆けて東京都がつくるということも、また東京の一つの新しい姿勢を表示するものになるのではないかという気がいたします。
 それから、男女平等参画基本条例の制定の意義についてでありますが、男と女というのは決して等質ではありません。しかし、同格であります。その互いの違いを認めつつ、個人の人権を尊重することは当然のことであります。
 男女が対等な立場で政治、経済、社会のあらゆる分野に参画し、その個性と能力を十分に発揮できる機会を確保することは、社会のダイナミックな運営のためにも不可欠なことであります。
 条例を制定することは、こうした男女平等参画社会の実現を図るために、大変意義のあることと思っております。
 次いで、医療改革についてでありますが、これは決してトップダウンでやるつもりはございません。ただ、現実に土曜、日曜に、どんな大病院といえども、ごくごく例外を除いて、そこで完全な治療なり手術をしてもらうことはできない。これは日本のような先進国であり得ないことでありまして、現に、大分前になりますけれども、現職の大平総理大臣が、東京都内の有名な総合病院に入って、土日ろくな手当てをしてもらえずに、結局亡くなった、こういう恐ろしい現実があるというのは、私、ちょっと考えられないと思います。
 とにかく、私がいつもいっていることですけれども、お医者さんは、自分たちのステータスは何であるかと、どういうふうに自覚しているか知りませんが、いずれにしろ、警察官と消防官と全く同じでありまして、土日であろうと何であろうと、とにかく危急に応じて施療してもらわなかったら、何のための病院か医者かわからない。しかも、警察官も消防官も、一たん緩急のときには自分の命を代償に、火中に飛び込み、犯罪の担当をするわけでありますが、お医者さんはせいぜい厄介な手術をするだけであって、それで死ぬわけじゃないんだ。死ぬかもしれないのは患者の方でありまして、私、そこら辺のところは日本のお医者さん、全部とはいいませんけれども、大きな勘違いをしていらっしゃるんじゃないかと思いますので、まずは世論というものから立ち上げて、医療従事者の意識改革に取り組む。そして、東京における救急医療体制の充実や都立病院の改革など、都民が安心して暮らすことのできる医療提供体制の確立を目指したいと思って、各種団体や関係機関とも十分協議しながら、場合によっては強くお願いしながら、その実現に努めていきたいと思っております。
 次いで、特別措置法の施行を受けての、都のダイオキシン類対策の基本認識、対応についてでありますが、都民の健康と安全な環境を守るため、ダイオキシン類の排出削減を一層進めていくことは、都政の重要な課題と認識しております。
 このため、発生源に対する規制、指導を強化するとともに、モニタリングの拡充によって、環境への汚染状況の的確な把握に努め、都民に適切に情報を提供していくなど、総合的なダイオキシン類対策に全力で取り組んでいかなくてはならぬと認識しております。
 次いで、自動車公害問題解決に向けての決意でありますけれども、自動車公害問題への対応は、これまで、国を含めて決して十分とはいえませんでした。私は、知事就任以来、深刻な都民の健康被害を防ぐことが、何といったって生命、健康の問題でありますから、何よりも優先すべき課題と考え、ディーゼル問題にも取り組んでまいりました。
 ディーゼル車NO作戦の展開や世論の高まりを背景に、先日、ディーゼル車規制の検討案を取りまとめまして、近く予定される環境審議会の答申を踏まえ、本年中に公害防止条例を大々的に改正するつもりでございます。
 今後、国に対しては、軽油に係る税制の改正、軽油の低硫黄化などを求めるとともに、メーカーに対しては、DPFの一層の開発、供給を促し、より低廉で効果的な、そういった器材の供給や規制手法の確立など課題を解決して、都民の健康のために、生命のため
に、ディーゼル車規制を実現する決意でございます。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [総務局長横山洋吉君登壇〕

○総務局長(横山洋吉君) 行政評価の試行結果の反映についてでございますが、本年度の試行結果につきましては、評価結果を予算の編成や事務事業の見直しに、可能な限り反映させたところでございます。
 十二年度の試行におきましても、評価内容を充実しまして、関係部署と連携して、予算編成や事務事業の見直しに一層活用してまいります。
   [生活文化局長今沢時雄君登壇〕

○生活文化局長(今沢時雄君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、コンビニエンスストアなどにおける成人向け雑誌の販売方法の指導についてでございます。
 都は、関係業界と定期的に意見交換を行い、青少年に有害な図書を販売しないよう要請いたしますとともに、毎月、立入調査を行い、陳列、販売方法などについて指導を行っておりますが、実態はお話のとおりでございます。
 今後とも、より一層実態の把握に努めますとともに、区分陳列等自主規制の徹底について、関係業界に対する指導に努めてまいります。
 次に、男女共同参画社会基本法にいう区域の特性についてでございます。
 東京の特性といたしましては、主として政治、経済、メディア等の機能が集中しており、就業を初め、多様な生き方を選択できる機会が多いことなどが挙げられますが、今後、施策の展開に当たりましては、東京の特性について十分に把握し、施策の充実に努めてまいります。
 三点目は、都民の申し出についてでございます。
 条例制定を契機といたしまして、雇用や福祉など幅広い分野にわたりまして、相談あるいは意見が寄せられるものと考えておりますが、これらの相談などにつきましては、東京ウィメンズプラザを初め、都の関係機関がこれまで以上に緊密な連携をもって効果的に対応してまいりますとともに、男女平等参画社会の実現に向けまして、施策の反映に努めてまいります。
   [交通局長横溝清俊君登壇〕

○交通局長(横溝清俊君) 都営交通における車内広告のあり方についてのお尋ねにお答え申し上げます。
 交通局では、これまで広告物の掲出に当たりましては、掲載基準を定め、その適切な取り扱いに努めてきたところでございます。
 また、先般、関東交通広告協議会を通じまして、日本雑誌協会に対し、雑誌広告の性表現について自粛を要請するとともに、同協議会においても、広告取扱基準の運用の強化を検討しているところでございます。
 今後とも、他の鉄道事業者と連携を図りながら、青少年の健全な育成という観点からも、掲出の拒否も含めまして適切に対応してまいります。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇〕

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 三点のご質問にお答えします。
 最初に、福祉改革ビジョン及び二十一世紀高齢社会ビジョンの実現の道筋についてでございます。
 このビジョンは、福祉改革の実現に向け戦略を提示し、施策展開の指針として策定したものでございます。今後は、これを着実に推進していく必要があると考えております。そのためには、どれだけの質と量のサービスを、いつまでに提供できるようにするのか、さらに、それを実現するためにどういう手だてを講ずるのかなどの点につきまして、方針を定めることが必要であると考えております。
 今後、これらの実現に向けた取り組み方針を、できるだけ早期に策定していきます。
 次に、障害者医療費助成制度の見直しについてでございますが、今回の施策の見直しは、国の社会保障が不十分だった昭和四十年代に、それを補完する背景を持ちながら実施されてきた都独自の福祉施策について、国の年金、手当制度の充実や、医療保険制度等をめぐる状況変化などを踏まえ、負担の公平などの観点から行うものでございます。
 同時に、新たに策定した福祉改革ビジョンなどに基づき、在宅サービスを中心とする福祉サービスの格段の充実を図ることとしたものでございます。所得基準の内容や一部負担の導入については、低所得者への配慮を行ったことなどにより、都民の皆様にご理解、ご協力をいただけるものとなっているものと考えています。
 次に、障害者の地域生活支援のための在宅サービスの充実についてでございます。
 今回の福祉改革は、これまでの行政が決定する福祉から、都民みずからが選択し、利用する福祉に転換する大きな流れの中で、これを実現するに足りるサービスの質と量を確保するとともに、それを支える仕組みと基盤をつくるために行うものでございます。
 したがいまして、今回の取り組みに当たっては、施策の見直しとあわせて、新たに策定した福祉改革ビジョンに基づき、障害者の自立支援に向けて、ご指摘の二十四時間巡回型等を含むホームヘルプサービスやショートステイ等を初めとして、知的障害者ガイドヘルパーや重度生活寮など、在宅サービスを中心とする福祉サービスの格段の充実を図ることとしたものでございます。
 今後、その着実な実施に向け、積極的に取り組んでまいります。
   [衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 医療関係の二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、医療サービス利用者のための権利擁護制度や苦情処理の仕組みについてのお尋ねでございます。
 医療の高度化や患者意識の変化に伴い、インフォームド・コンセントに基づく医療など、患者中心の医療の実現が求められております。また、これとあわせて、市民が中心となった、いわゆる医療オンブズマンの活動もあらわれ始めております。
 今後は、これまで行ってきた診療情報の開示や苦情処理などの取り組みをさらに一層推進するとともに、福祉サービスにおける利用者保護制度も参考にしながら、患者にとって、より望ましい医療のあり方について、関係者等と議論を深めてまいります。
 次に、大気汚染医療費助成制度についてのお尋ねでございます。
 都の医療費助成制度は、健康被害に対する原因者負担に基づく補償制度とは異なり、ぜんそく等に罹患した発育途上にある年少者に適切な受療の機会を提供し、治療の促進と症状の軽減を図ることを目的としたものでございまして、引き続き現行制度を維持してまいります。
 今後、大気汚染の原因者の責任を明確にした上で、原因者責任と適正な負担のあり方、救済すべき対象の範囲や年齢、その認定の方法など、制度全般にわたる総合的な見直しを検討してまいります。
   [清掃局長安樂進君登壇〕

○清掃局長(安樂進君) 産業廃棄物焼却施設の改善指導についてのお尋ねでございますが、平成十四年から焼却施設の構造・維持管理基準がさらに強化されるため、今年度は都内にある五十九のすべての焼却施設に立入指導を行い、施設の改善を指導いたしました。
 現時点におきましては、平成十四年から適用される基準のうち、ダイオキシン類の排出基準につきましては、既に八割以上の施設がクリアしておりますが、その他の基準も含め、いまだに基準をクリアしていない施設が相当数残されております。
 これらの施設の改善に当たりましては、ご指摘のとおり、技術的な問題や資金面での問題を抱えておりますので、引き続き立入指導を行い、施設に合ったきめ細かな技術指導を行うとともに、各種の融資制度や税法上の特例措置などについて情報を提供し、具体的な相談に応じてまいります。
 次に、不法処理業者に対する認識と対応についてのお尋ねでございますが、ご指摘のようにダイオキシン類の規制が強化されたため、基準に適合せず、廃止せざるを得ない施設が出てきております。この結果、処理施設が不足し、不法投棄などが増加することが懸念されております。現に、平成十年度における全国の不法投棄件数は、前年度の五割増しに達しております。
 このような不適正処理を未然に防止していくために、都は今後、処理業者に対して立入指導を一層徹底するとともに、行政指導で改善が見込めない場合には速やかに行政処分を行うなど、適正処理の確保に努めてまいります。
 また、不法な処理業者がはびこる一因として、排出事業者の処理責任が不明確であるという問題があります。
 これに対処するため、排出事業者に最終処分までの確認義務を課すとともに、罰則を強化する廃棄物処理法の改正が今国会で予定されており、都は、この法改正を受けて、悪質な不法処理業者の根絶に努めてまいります。
   [環境保全局長齋藤哲哉君登壇〕

○環境保全局長(齋藤哲哉君) 環境問題についての二点についてお答え申し上げます。
 まず、環境負荷の低減の推進についてでございますが、環境負荷の低減は、生産、在庫、流通など事業活動のさまざまな分野で行われるべきものであり、必要な規制を設けるとともに、事業者において自主的に環境負荷の低減に取り組むことが重要と考えております。
 これを促すため、例えば、すぐれた取り組みの内容について都民に明らかにするなど、ご指摘のように、インセンティブが働く方策について検討しているところでございます。
 次に、公害防止施策の中での都民の声の反映についてでございますが、今日の環境問題は、事業活動や都民生活に密接なかかわりを持っており、その解決には、都民、事業者、行政が連携し、経済社会システムやライフスタイルを環境負荷の少ない仕組みに変えていくことが必要であります。
 このため都は、都民、民間団体などから成る環境保全推進委員会や環境パートナーシップ東京会議の活動などを通じて、都民の参画を進めてまいりました。
 今後、積極的な情報提供を進め、都民との連携を強化する中で、公害防止施策への都民意見の反映に努めてまいります。
   [政策報道室長柿沼伸二君登壇〕

○政策報道室長(柿沼伸二君) ロードプライシングに関します二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、導入に伴う困難性についてでございますが、ロードプライシングは、我が国におきまして前例がなく、また、東京のような大都市で実施するには、ご指摘のように多くの困難が伴うものと予想されます。
 しかしながら、東京のように都市機能が都心に集積し、また交通が集中する都市においてこそ、自動車利用の抑制を経済的に誘導するロードプライシングが必要である、このように考えています。
 東京の自動車交通の危機的状況を改善するには、このロードプライシングを壮大な社会的な試みとしてとらえ、実現に向けて最大限の努力をしていきたいと思っております。
 次に、ロードプライシングの課金収入の使途についてでございますが、ロードプライシングは、経済的なインセンティブを利用して自動車利用の抑制を図る施策でありますが、収入を得ることを目的としているものではございません。
 しかしながら、都民に負担を仰ぐことになるものでございますので、この収入につきましては、交通の円滑化や都市環境の改善など、ロードプライシングを含むTDMの趣旨に沿った活用をしていくということが、都民の理解が得られることになるんじゃないだろうか、このように考えております。

ページ先頭に戻る