平成十一年東京都議会会議録第十八号

○副議長(五十嵐正君) 十二番福士敬子さん。
   [十二番福士敬子君登壇]
   [副議長退席、議長着席]

○十二番(福士敬子君) 自治市民'93といたしまして、東京スタジアムの運営について伺います。
 冒頭、第三回定例会の私の文書質問の回答と新聞報道と食い違っている点について、まず確認をいたします。
 本年八月二十一日の朝日新聞では、都は、三セク設立時に赤字が出た場合は補てんするという覚書を交わしていると伝えていますが、文書質問では、ないとのお答えでした。覚書の有無を、この場で明確にお答えください。
 さて、本年九月、都は、東京スタジアムの建設・運営方式を変更し、その買い取りを決定しました。基本計画の発表からわずか三年でこのように大きな変更が必要になった理由として、さきの三定での私の文書質問に対する回答にもあるように、金融機関からの建設資金の借り入れが困難になったこと、スタジアムの運営主体である株式会社東京スタジアムの経営見通しが厳しくなったことが挙げられています。
 そもそも、二〇〇二年のワールドカップ開催の候補地でもない東京スタジアムに、なぜ五万人規模の施設が必要であったのか。また、プロサッカーチームの本拠地となるにしても、過剰な施設ではないのかという疑問を抱かずにはいられません。
 このたびの建設・運営方式の変更の原因は、当初の計画の見通しの甘さにあると考えざるを得ませんが、どのような運営計画によってこの大規模なスタジアムが計画されたのか、お尋ねいたします。
 次に、買い取り後の株式会社東京スタジアムの運営の見通しについて、私の文書質問に対する回答では、都がスタジアムを買い取ることによって、開業後の年度に四千万の赤字であるものが、五年後には三千万円の黒字に転じるという大変楽観的な見通しです。赤字についても、繰り延べ資産等の償却による赤字決算であるという担当局の説明ですから、営業収支としては初年度から黒字であるということになります。
 しかし、天然芝を採用することによって、年間使用日数は百日程度しか見込めない一方で、年間の維持管理費は六億三千万円かかります。スタジアムの収入は、主にプロサッカーの競技場使用料に依存していますが、一試合で八千人程度の集客力しかない現在のプロサッカー人気を考えると、都の見通しには非常に懐疑的にならざるを得ません。
 先行事例として、九六年に五万人収容のスタジアムに改修された大阪市長居陸上競技場を見ると、改修後の六月から十二月の間にも、Jリーグ・オールスター戦、ユース選手権、ウルグアイ代表との国際親善試合など、大きな大会を精力的にこなしており、翌九七年には、なみはや国体の会場となりました。
 都は、どのような理由で黒字になると判断したのか、現在決定している大きな大会には何があるのかも含めてお答えください。
 都は、スタジアムの買い取り条件として、それ以上の資金援助はしないとしております。しかし、私がこれまで申しましたように、スタジアム買い取り後の会社の経営見通しは決して楽観すべきものではありません。会社の経営が行き詰まったとき、会社の筆頭株主である都が、再び何らかの支援を求められる場合もあり得るのではないでしょうか。追加的な資金提供を行わないという都の明確な答弁をお願いいたします。
 第三セクターといえども、運営に困難があれば速やかに明らかにし、場合によっては都民の協力を仰ぎながらPR活動に尽力し、現場の奮闘に報いることも必要ではないでしょうか。その前提として、行政と議会が同じ土俵で議論できるよう、行政が持つ情報は意思決定の過程に至るまで、可能な限り議会に提供されるべきです。
 スタジアムの買い取りにかかわる比較検討資料を求めた私の文書質問に対して、都の回答は、現時点で公表できる資料はないというものでした。議会に対する現時点の非公開という理解に苦しむ回答がなされるとは、情報公開を進める都のあり方として、何とも残念なことです。年明けから情報公開条例も施行されることですし、一日も早い改善が必要であることをこの場で知事に申し上げて、この質問を終わります。
 次に、新規に実用化の検討が考えられている健康・福祉関連のICカード化について質問いたします。
 保健、福祉、医療の各機関での健康情報、診療情報等を、高齢者が健康管理に役立てるというICカードの実用化を進めようとのことですが、現場の具体的な要望が希薄であるように思います。まずシステムありきでは、批判の多い介護認定ソフトウエアのように、高い買い物になってしまうおそれがあります。ICカードによる情報の集積と電子化は、情報の高度利用と効率化を可能にする一方で、情報が漏えいした場合の被害を大きくいたします。病歴や投薬履歴など個人のプライバシーにかかわる情報は、むやみに集積しないということも、情報化時代の一つの知恵だと思います。
 都民が求めているのは、人のための福祉サービスです。肝心な福祉サービスの予算を削減しておきながら、貴重な予算を管理部門に費やすような本末転倒なことはすべきではありません。
 ICカードを利用した出雲市の総合福祉カードでは、データの入力時間やプライバシー保護に多くの問題があり、当初の目的である医療情報の入力は断念され、計画の大幅な見直しを迫られました。現在では、高齢者、障害者の診療予約に応用した大阪市西成区の実験、在宅介護に応用した福岡市の実験が継続中です。これらの先行事例をどのように考え、今、実用化の検討を進めるに至ったのかお尋ねして、質問を終わりますが、事業の企画に際しましては、しっかり情報を集め、真に都民のための施策を進めていただくよう申し添えておきます。(拍手)
   [多摩都市整備本部長久保田康治君登壇]

○多摩都市整備本部長(久保田康治君) 東京スタジアムに関するご質問にお答えいたします。
 まず最初に、株式会社東京スタジアムとの覚書についてのお尋ねでございますが、ご指摘のような、都が赤字補てんをするという覚書は交わしておりません。
 次に、東京スタジアムの運営計画についてのお尋ねですが、当初、会社を設立するに当たり、都は事業計画及び収支計画を作成いたしました。その中で、収入については、主にプロサッカー、イベントの使用料などをもとに、また、支出につきましては、五万人規模のスタジアム建設費や維持管理費などをもとに試算し、経営の見通しを立てたところであります。
 しかし、Jリーグの観客動員数の低下や本年からの金融監督庁の指導などにより、会社において金融機関から建設費の借り入れが困難になったことから、今回の建設・運営方式に変更したものでございます。
 次に、東京スタジアムの今後の経営についてのお尋ねですが、経営が黒字に転換する理由は、主に競技場使用料収入、広告料収入などが年々増加すると見込めるためであります。
 また、現時点でスタジアムの使用が確定しているものとしては、ここを本拠地といたしますJリーグFC東京の公式戦が年間十数試合ございます。
 次に、都の支援についてのお尋ねですが、東京スタジアムの建設・運営方式を変更するに当たり、会社の収支を試算した結果、健全な経営が可能であり、運営費に対する支援は考えておりません。都としては、イベントの誘致など、側面からの協力は行ってまいります。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇]

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) ICを活用した高齢者の健康・福祉カードについてのお尋ねでございますが、疾病や寝たきり予防のためには、高齢者が元気なうちから適切に健康管理を行うことが重要でございます。ICカードに健康情報等を記録し、活用する仕組みは、そのための有効な手段の一つと考えております。
 その導入に当たり、個人情報の保護や関係者との合意形成など課題を整理し、実用化の方策について検討することとしております。

○議長(渋谷守生君) 以上をもって質問は終わりました。

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