平成十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(渋谷守生君) 九番大西由紀子さん。
   [九番大西由紀子君登壇]
   [議長退席、副議長着席]

○九番(大西由紀子君) 後を絶たない児童虐待の背景には、子どもにとっても、大人にとっても閉塞的な地域社会があります。いじめや幼児虐待から子どもを守り、子ども自身が育つことを支援する新たな仕組みが地域社会の中に必要であり、子ども自身も参加した子どもの権利条例は不可欠です。知事の公約を具体化した心の東京革命の取り組み方向素案がさきに示され、来年六月に取り組み方針・行動案としてまとめられる予定になっています。
 そこで伺います。心の東京革命を進めるに当たって、子どもの権利条約でいう児童の最善の利益についてどのように認識しておられるのか、知事の見解を伺います。
 次に、昨年、国の児童扶養手当の所得制限の引き下げに続き、都では、平成十二年度の予算編成においては、福祉施策の見直しに、ひとり親家庭への育成手当の見直しが挙がっております。まさにこの不況下にあって、ダブルパンチを受けています。
 現実に、ひとり親家庭の自立を最も大きく阻害している要因は、経済的困難であり、それに対しての支援は不可欠です。パートのかけ持ち等で子どもを育てているひとり親家庭への育成手当については、これまで大変評価しておりました。育成手当は、子どもの育ちを保障する子ども自身の最低生活費として、また、子どもたちの生きる権利として社会的に負担されるべきものであると考えております。子どもの生活のセーフティーネットとして機能し、貧困の再生産を断ち切るための子どもの施策として現行水準は守られるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、まちづくりについて伺います。
 現在の分権議論の多くが、国から都道府県への分権を主としているの対して、まちづくりについては、住民に最も近い自治体である市区町村が中心となるべきとされています。市区町村都市計画審議会の法制化、市区町村における都市計画決定事項の増加などの動きは、まちづくりへの市民参加をさらに大きな流れにするという観点からも評価でき、拡充されるべきと考えています。
 また、市区町村がみずからのマスタープランを描くことができるようになりました。今後、その中で、地域の住民の創意によって、いたずらに開発が進むことを防止することを目的とした土地利用の方針や、都市基盤施設の容量から土地利用を抑制する土地利用方法の方針を示すということも必要だと考えております。
 そして、東京都は、この地方分権の動きを好機ととらえ、市区町村のまちづくり行政の充実を積極的に支援し、連携していくべきです。
 これからのまちづくりは、道路などを整備する線的なまちづくり、区画整理やゾーニングなどの面的なまちづくりから、建築物、構造物や町並み、景観の美しさを重視した立体的なまちづくり、さらに歴史的街区の保存などを行う四次元的なまちづくりへと進化しているといわれています。今後、市区町村と連携協力して、景観保全、町並み保全に都も力を入れ、進めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
 地方分権の時代にあって、景観の維持や居住環境の保全などの視点に立った地域主体のまちづくりを支援していくために、都は、開発事業者と地域住民とが協議、調整するための仕組みの整備に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、水循環について伺います。
 都市化の中で、雨水が浸透しにくい状況が自然の水循環を妨げ、都市型水害なども起きています。雨水の一部は、地下へ浸透して地下水として保留され、自然の水循環を形成する重要な要素の一つであります。
 そこで、伺います。宅地に降った雨水を集めて地中に浸透させるために、都は、市区町村とともに貯留浸透施設の設置に係る補助を実施してきました。しかし、この制度を廃止されるとのことですが、これは今までの施策を後退させることになると思いますが、いかがでしょうか。
 次に、関連して、多摩地区水道事業の都営水道への統合に伴う地下水の活用について伺います。
 これまで急激な都市化に対応した多摩水道事業の都営水道への統合については、都と多くの自治体との協議が重ねられてきました。しかし、都営水道への統合に当たっては、料金の問題だけではなく、地域で位置づけられてきた地下水の問題に大きな関心があります。来年四月に都営水道への統合が予定されている調布市においても、統合に当たって、市民は今までどおりの安全でおいしい地下水の継続的活用を望んでいます。
 そこで、伺います。地下水は自然の水循環を形成する重要な要素で、地下水の保全は市民の強い要望です。このため、今後も地下水涵養に一層努め、将来にわたって地下水を水道の水源として積極的に活用していくべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、緊急雇用対策について伺います。
 景気低迷の中、失業率は四・六%近くにも上っています。高年齢失業者のうち、いわゆる非自発的失業者は五・%を超えているともいわれています。
 さて、このような中、政府の産業構造転換・雇用対策本部において、地方自治体に対する緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を決定し、特別交付金二千億円が補正予算に組み込まれました。そして、政府は、事業の委託先としてNPOを積極的に使うことを提案していましたが、東京都としてはどのように働きかけ、実現させようとしたのか、伺います。
 また、東京都分の交付金は九十一億円と全国一で、NPOの認証も、どの自治体よりも多いにもかかわらず、NPOへの委託は全くないと聞いています。介護保険の開始を目前にして、本来ならばNPOが参入して地域に雇用を創出できるチャンスであるのにもかかわらず、都が意識的に計画づくりをしてこなかったのは、NPOを行政のパートナーとして位置づけていないといわざるを得ません。
 今回の事業は、平成十三年度までの三カ年とされていますが、今後二年間の事業計画においては、NPOを活用した雇用創出を図る必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 以上を伺って、私の質問を終わります。
 なお、答弁によって再質問を留保いたします。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 大西由紀子議員の一般質問にお答えいたします。
 心の東京革命についてでありますが、心の東京革命は、次代を担う子どもたちに対し、親と大人が責任を持って、人が生きていく上での当然の心得を伝えていきたいと思っております。
 そうした取り組みを通じて、子どもたちが社会の一員として自立して生きていけるように育成していくことは、子どもたちのためにも極めて意義のあることであると認識しております。
 でありますから、大人が子どもに対して当然その最善の利益を提供すべきでありますが、しかし、子どもにとっての最善の利益なるものは、必ずしも子どもを甘やかすことではないと思います。賀川豊彦さんの言葉にも、子どもにはしかられる権利があるとあります。そう思って、私は子どもの最善の利益というものを理解し、解釈し、そしてまた、心の東京革命を具体的に遂行していきたいと思っております。
 他の質問については、東京都技監並びに関係局長から答弁いたします。
   [東京都技監成戸寿彦君登壇]

○東京都技監(成戸寿彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、まちづくりに当たっての景観形成や町並みの保全についてでございますが、都におきましては、平成九年度に東京都景観条例を制定いたしますとともに、昨年度、重要文化財の保存に関する特定街区運用基準の改正を行うなど、景観形成や町並み保全のまちづくりを推進してまいっております。
 また、例えば地区計画などにおきましては、住民参加により策定されたマスタープランなどを踏まえ、区市町村と協議、調整を進め、地域の特性に合った景観づくりを行っているところでございます。
 今後とも、景観形成や町並み保全のまちづくりに当たり、区市町村との連携を強めるとともに、その取り組みについての技術的支援に努めてまいります。
 次に、まちづくりにおける協議、調整の仕組みづくりについてでございますが、地域のまちづくりを進めるに当たりましては、情報提供の体制を整えていくことはもとより、住民と事業者などの幅広い合意形成を図るための仕組みを充実させることが重要であると認識しております。
 現在、国が行っております都市計画制度の見直し作業の中でも、こうした観点から、都市計画の決定システムのあり方について議論がなされております。都といたしましても、今後、東京の新しい都市づくりビジョンを策定していく中で、国の動きも踏まえながら、具体的に検討してまいります。
 最後に、貯留浸透施設への都の補助制度の見直しについてでございますが、この制度は、宅地への貯留浸透施設の設置が、総合的な治水対策として重要であるとの認識のもとに、区市が行う個人住宅への助成事業に対し、都が補助してきたものでございます。
 しかし、制度開始から既に七年を経過いたしておりまして、地域住民へ普及啓発するという都の先導的役割は達成したと考え、今後は、事業主体である区市において実施するよう見直すこととしたところでございます。
 都におきましては、引き続き広域的行政の立場から、民間の大規模施設への貯留浸透施設の設置指導及び公共施設での雨水流出抑制対策に一層努力をしてまいります。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇]

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) ひとり親家庭に対する児童育成手当についてのお尋ねでございますが、今回の育成手当の見直しは、社会的公平性の確保などの観点に立って、支給対象を国の児童扶養手当と同一の所得制限に設定することとしたものでございます。
 こうした見直しを行う一方、今後とも、ひとり親家庭ホームヘルプサービス事業などの在宅サービスを充実し、総合的なひとり親家庭施策の一層の推進に努めてまいります。
   [水道局長赤川正和君登壇]

○水道局長(赤川正和君) 調布市の水道事業の統合に伴う地下水の活用についてお答えいたします。
 地下水は、平常時はもとより、渇水時や震災時においても身近に利用できる貴重な水源であることから、これまでも地盤沈下及び水質の動向に十分配慮しながら、可能な範囲で活用してきたところであります。
 調布市の地下水につきましても同様に、今後とも活用していく考えであります。
   [労働経済局長大関東支夫君登壇]

○労働経済局長(大関東支夫君) NPOに関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都の緊急雇用対策におけるNPOの活用についてのお尋ねでございますが、今回の緊急地域雇用特別交付金事業は、民間企業、NPO等に事業を委託し、雇用、就業機会の創出を図ることを目的に実施しているものでございます。
 このため、都といたしましては、NPO団体に対する説明会を開催するとともに、区市町村に対する説明会におきましても、都内の特定非営利活動法人認証団体一覧を提供するなど、機会をとらえ、NPOの活用促進について啓発をしてきたところでございます。
 また、受注機会の公平性を図る観点から、先般、都の十一年度事業計画についても、広く都民に周知したところでございます。
 次に、NPOを活用した雇用創出を図る必要があるというお尋ねでございますが、緊急地域雇用特別交付金事業につきましては、都及び区市町村において、教育、文化、福祉、環境・リサイクル等のさまざまな分野において事業が計画されているところでございます。
 個々の事業の委託先につきましては、それぞれの事業内容に応じ、確実な事業の履行能力があり、より雇用創出効果が期待できる企業及びNPO等を選定することが必要であると考えております。
 今後も、庁内各局を初め、各区市町村に対し、NPOの活用について、さらに啓発を進めてまいります。
   [九番大西由紀子君登壇]

○九番(大西由紀子君) 再度、子ども施策について、知事ご自身のお考えを伺いたいと思います。
 子どもの最善の利益は、単に子どもを甘やかすとか、わがままにするということではないと考えております。国が批准しました子どもの権利条約そのものにも、子どもの最善の利益というものが盛られております。その意味で、子どもの最善の利益という原則そのものをどのようにお考えなのか。それと、今回、心の東京革命の中での整合性も含めて、再度お聞きしたいと思います。
   [知事「具体的にどう、最善の利益、あなたは」と呼ぶ]

○九番(大西由紀子君) これはちょっと、答弁です、お聞きしたいと思います。
   [発言する者あり]
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 質問がよくわかりませんが、子どもにとっての最善の利益は、子どもにとっての最善の利益であります。その中には、当然しかられる権利の履行も含まれていると思います。

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