平成十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(渋谷守生君) 四十四番野田和男君。
   [四十四番野田和男君登壇]

○四十四番(野田和男君) 初めに、都市防災に関連してお伺いいたします。
 阪神・淡路大地震が発生してから、来年一月で丸五年が経過しようとしています。最近では、本年の夏にトルコ、そして台湾で、相次いで二度にわたり大地震が発生し、多くの被害をもたらしたことは、我々の記憶に新しいところであります。
 こうした大地震の被災状況を見るまでもなく、東京を災害に強いまちにすることは緊急の課題であり、財政が厳しい中でどのように進めるかが問題ではないかと思います。
 既に東京都では、災害時の大規模火災から都民の生命を守るため、百七十二カ所の避難場所などを指定していますが、五年ごとの避難場所の指定拡大により、徐々に改善されてきているとはいえ、この中には、避難所まで三キロメートル以上歩かなければならないところとか、一人当たり有効面積が一平米に満たない避難場所もまだ幾つかあります。
 都は、平成十四年度の新規指定拡大に向け、避難場所の改定作業を進めていますが、一方、私の地元杉並区のように、避難場所に指定されている企業グラウンドや、整備すれば避難場所になるような工場跡地などが、最近のリストラなどによりまして売却されようとしている現状も見逃せません。このような危惧を抱いて、私は、本年の第一回定例会において、避難場所の安定的な確保について要望したところであります。
 そうした中で、このほど建設省が防災公園街区整備事業という新しい制度をつくったということを聞いております。この制度は、都市の構造的な防災機能の強化を図るため、都市基盤整備公団が、防災機能が不十分な、例えば木造密集市街地などに防災公園を緊急に整備し、その費用に国庫補助を導入するとともに、残りの経費は、長期据え置きの後に地方公共団体が支払えればよいという制度であるようでございます。
 なお、この事業は、国の本年度の第二次補正予算に盛り込まれております。一昨日衆議院を通過し、本日参議院を通過すると思いますが、その実施は確実となります。
 私は、常日ごろから、災害時に大きな機能を果たす公園などの公共のオープンスペースの確保を訴えてまいりましたが、今回のこの制度を活用すれば、避難場所を新たに確保でき、都が防災まちづくりを進める上において効果的なのではないかと思いますので、この防災公園街区整備事業に関してお伺いいたします。
 今回、国の方で検討している防災公園街区整備事業というのはどのような制度なのか、また、事業期間をどのように予定されているのかをお伺いいたします。
 また、防災公園を都市基盤整備公団がつくる場合には、必ず住宅をつくらなければならないと聞いていますが、その住宅地の規模はどのくらいなのか、お伺いいたします。
 さらに、防災公園だけでなく住宅などをつくらなければならないとすると、地元の区や市の都市計画に少なからぬ影響を与えると思われますが、区や市の意見はどのように反映されるのか、お伺いいたします。
 そして、この制度に対して東京都としてはどのように取り組むつもりか、その考え方についてお伺いいたします。
 最後に、この制度を適用できる場所の多くは区や市の事業となると思われますが、区や市の反応はどうなのか。また、この制度を区や市が防災まちづくりに活用しようとした場合、都としても最大限の協力をする必要があると思いますが、都はどのような支援を行えるのか、お伺いいたします。
 以上、何点か質問をいたしましたが、都を初めとし、各区や市も財政再建に厳しく臨んでいることは十分承知していますが、防災まちづくりを進めるため、後顧の憂いのないよう、この防災公園街区整備事業も一つの手法として活用するなどして、都民の安全を確保する施策に積極的に取り組まれるよう強く要望して、次の質問に移ります。
 次に、税制についてお伺いいたします。
 本年度の都税の歳入予算は四兆四百四十九億円でありますが、そのうちの約三分の一を法人都民税と法人事業税のいわゆる法人二税が占めております。法人二税の状況を見ますと、この二税が都税に占める割合は、昭和六十三年度で五六・五%でありましたが、平成十一年度の予算では三四・七%となっております。また、法人二税の税額ベースで見ましても、平成元年度には二兆六千八百億円であったものが、平成十一年度予算では一兆四千四十億円と、ほぼ半減しています。
 今後景気が回復しても、法人が抱える過去の欠損金の繰り越しなどを考えれば、税収の回復までにはまだ相当の時間がかかるものと予想されます。都民サービスの維持向上を図ることが強く求められている現在、財政面を見る限り、明るい展望があるとは決していえません。
 そのような状況の中で、東京都は現在、財政再建に向けて歳入歳出の両面にわたり果敢な取り組みを始めております。歳入面においては、国から地方への税源移譲、地方交付税不交付団体に対する財源調整措置の廃止を中心に取り組むとしています。
 地方税財政制度の改善については、都議会においても、全議員によって構成される議員連盟が設立されているところであり、議会と執行機関が力を合わせてその実現を目指していくことは、真の地方分権を進める上において大いに意義のあることと考えます。
 私は、こうした取り組みとともに、税負担の公平確保を図りつつ、財源確保を行うための方策を講ずることが重要であるという観点に立って、日本銀行に対する法人二税について質問をいたします。
 ご案内のとおり、日本銀行は、資本金一億円の株式会社形態の法人であります。その株式は店頭登録されております。昨日現在の株価は十一万円であり、出資者も、国、金融機関、個人株主など約四千人に及んでいます。
 また、日本銀行は、剰余金といういわば利益の中から、毎年、株主に対して配当金を支払っています。この配当金は、出資額の五%以内と定められております。さらに、この剰余金の中から、国庫に対して納付金を納めることとされているわけでありますが、この日本銀行の国庫納付金は、日本銀行法に設けられた特別規定によって、所得計算上、損金とされているために、地方税の課税権が侵食されているのであります。納付金の形態をとるにせよ、法人税という税金の形態をとるにせよ、国には収入が入るわけでありますが、地方団体に対する日本銀行の納付金制度はありません。その結果、各種の行政サービスを提供しているにもかかわらず、地方団体には日本銀行からほとんど法人二税の税収が入らないという現象が、現実に起きているのであります。
 平成十一年三月期を例にとりますと、国の当初予算では、日本銀行の国庫納付金は四千八百九十億円でありましたが、最終的には約一兆円ふえ、一兆四千三百六十億円が国庫に納付されました。この平成十一年三月期には、日本銀行は一兆三千八百億円を超える当期純利益を計上したわけですが、結果を見れば、東京都を初めとする地方団体に対する日本銀行の法人二税の納付額はほぼゼロになった上、昨年十一月に一たん予定申告納付された税額に加算金までつけて還付することを余儀なくされました。法人二税の課税額が特別規定によって減額されているのにもかかわらず、還付を受ける条件は一般の法人と同じであるため、東京都から十七億円もの還付加算金を受け取ったことは、記憶に新しいところであります。
 国への納付金制度は意味のあることと考えますが、平成六年三月期以降、最近五年間における日銀納付金の状況を見ますと、最大は平成十一年三月期の一兆四千三百六十億円、最小は平成八年三月期のゼロと幅があります。
 全国地方団体への法人二税の納付額は、資本金と従業員数に応じて支払う法人住民税均等割を除き、平成六年三月期から平成七年九月期までほぼゼロという状況が続いておりました。また、均等割の額にしても、東京都分は百万円に満たないのであります。平成八年三月期から平成十年三月期まで、ようやく状況が改善され、地方団体に対して総額で毎期五百億円を超す法人二税の納付が行われるようになったのでありますが、本年三月期には、またほぼゼロに逆戻りしたのであります。
 地方団体の提供するサービスに対しては、株式会社はもとより、収益事業を行えば、公益法人や人格のない社団なども事業税負担を行っているのであります。それにもかかわらず、日本銀行のみが応分の負担をしていない、このような特別な措置は、極めて不公平、不合理であります。日本銀行の国庫納付金相当額を法人事業税などの課税対象とするよう、制度を改めるべきであります。
 地方団体が関与しないところで、国と日本銀行が決めた国庫納付金によって地方財政が影響を受けることのないよう、ぜひとも速やかにその是正を図るべきであります。
 東京都が、全国に対する発信基地となりまして、関係する地方団体とともに、制度の是正を国に対して強力に働きかけるべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 野田和男議員の一般質問にお答えいたします。
 ご指摘の日本銀行の国庫納付金についてでありますが、私のような門外漢には非常に理解に遠い話で、いわれて調べてみますと、これは摩訶不思議というか、面妖というか、実に一方的な、けしからぬ仕組みでありまして、要するに、本来なら、普通の企業が法人二税として東京に納めるべき、納め切るものを、日銀法の特例規定というんでしょうか、それで国が持っていっちゃう。しかも、一時、東京の手にあった間の金利というんでしょうか、加算金がべらぼうな率でありまして、それまで払わされるというていたらくであります。
 先般、全国知事会におきましても、県によっていろいろ額が違うんでしょうが、いずれにしろ、けしからぬ話でありますから、本年の九月に、全国知事会でも、この国庫納付金相当額を法人二税の課税対象とするように強く要望いたしまして、途端に加算金の率は下がったんですけれども、依然として根本的には是正されておりませんが、とにかく、国と日銀の協議によって勝手に左右される国庫納付金の額が、法人二税の税収に大きな影響を与えているようなこういう制度は、何としても是正すべきだと思って、私みずから総理大臣に強く要望もいたしました。
 今後とも、地方税収の安定的確保を図るため、全国の自治体と連携を図りつつ、都議会の協力を得ながら、国に対して制度の見直しを強く働きかけていくつもりでございます。
 その他の質問については、東京都技監から答弁いたします。
   [東京都技監成戸寿彦君登壇]

○東京都技監(成戸寿彦君) 防災公園街区整備事業に関します五点のご質問にお答えいたします。
 まず、制度及び事業期間についてでございますが、国では、避難場所等が不足している市街地におきまして、地方自治体にかわり、都市基盤整備公団が、おおむね一ヘクタール以上の防災公園を緊急に整備するとともに、市街地の整備改善を行おうとする制度を検討しております。公団が整備した防災公園は、おおむね十年後に地方自治体が買い取る制度になるというふうに聞いております。
 なお、国の本年度の二次補正予算の決定後、国から制度の詳細が通知されるものと理解をしております。
 次に、この制度におきまして公団が整備しなければならない住宅地の規模についてでございますが、公園以外の住宅地などの規模は、取得する用地の五割を超えてはならないとされておりますが、面積についての具体的な数字は、今後明確にされると理解しております。
 また、区や市の意見の反映についてでございますが、防災公園街区整備事業を進めるに当たりましては、都市基盤整備公団に対し、地元自治体が事業の実施を要請することになっておりますので、この過程におきまして意見は十分反映されるものと考えております。
 さらに、防災公園街区整備事業の制度に対する都の取り組みについてでございますが、都が整備する公園の規模は原則として十ヘクタール以上でありまして、十ヘクタール未満は区市町村となっております。都が整備する公園につきましては、この新しい制度の条件を満たす用地があるかどうかなど、制度の確定を待って、今後総合的に検討してまいります。
 最後になりますが、区市の反応と都の支援についてのお尋ねがございました。
 これまで、国から収集いたしました情報を区市に提供してまいりましたところ、数区から、制度の確定を待って具体的に検討したいという意向が示されております。
 都といたしましても、区市がこの防災公園街区整備事業に取り組むに当たりましては、既存制度の活用等を検討するとともに、区市と国や都市基盤整備公団との連絡を密にしながら、事業の推進に協力をしてまいります。

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