平成十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(渋谷守生君) 四十番町田てるよし君。
   [四十番町田てるよし君登壇]

○四十番(町田てるよし君) それでは、発言通告に基づきまして一般質問をさせていただきます。
 冒頭、高尾山を詳解した本の一節を引用させていただきますけれども、海抜五百九十九・三メートルの高尾山。山頂はこんもりした広場になっており、数軒の茶店、中西悟堂の歌碑などがあり、登る途中の木々の間に見え隠れしていた風景も、ここに立てば一望のもとに見渡せる。別名十三洲見晴らし台ともいわれる。眼下には関東平野が広がり、大都市東京が箱庭のように見える。北には秩父連山が続き、西にはアルプス、三ツ峠、富士山を眺め、南を望めば丹沢山塊、そして相模湾、江ノ島、三浦半島、房総と眺めることができる。これが高尾山山頂から眺めた風景でもあります。
 ご存じのように、公園と申しますと、都市公園と自然公園に分かれるわけでありまして、特に自然公園の中には、国立公園、国定公園、そして都立公園という格付がなされているわけであります。高尾山につきましては、昭和四十二年十二月に、都立公園から国定公園に格上げされたというわけであります。
 今日では、年間約二百五十万人の人が訪れる、大変都民に身近な山でありまして、実は武蔵野の土屋市長さんは、毎年一月三日の午後に高尾山におみえになるんですね。スニーカーをはいてジャンパーを着て、高尾山を夕方散策されて、翌日四日からがちょうど仕事始めですから、そういった面でリフレッシュされて帰られるということですから、まさに高尾山が身近であるということがおわかりかとも思います。
 ただ、残念ながら、最近では利用者から幾つかの指摘もいただいておりまして、駐車場が足りませんよということで、特にシーズン中は国道二〇号が大変長い距離を渋滞してしまうという一面がありますし、また最近、木が伸び過ぎてきて、先ほどいったように眺望が余りよくないということで、残念ながら、訪れて、以前に比べて眺めが悪くなったよという、こんなようなご指摘をいただいておるんです。
 ただ、東京都を中心にいろいろとハード面もしっかりやってきていただいておりまして、例えば、山でありながら、トイレの水洗化の整備とか、あるいはまた遊歩道の整備も行っておりますし、今、水道局としては、山頂まで公共水道を引いていこうという、こういった取り組みもされておるわけであります。
 そこで、知事にお伺いしたいんでありますけれども、自然公園法の中の第一条の「目的」がございますが、この中で、いわゆる「利用増進を図り」ということがあるわけなんですね。ですから、これをとらえたときに、身近なレクリエーションの場である高尾山||知事は、この自然公園法の利用増進を図りということを考えたときに、どう認識をされておるのか、お伺いしたいと思います。
 それから、所管局にお尋ねしたいんですけれども、明治の森高尾山国定公園ということですが、今後の取り組みについてはどのようにお考えなのか、あわせてお伺いしたいと思います。
 既に、国定公園に指定がされまして三十年余り経過したわけであります。当時、明治百年を記念して、東京都では高尾山、そして大阪では箕面ということで、それぞれ二つ国定公園に指定をされたわけなんですね。そこを東海自然歩道ということで、それぞれ自然公園をつなぎながら行けるような、そういうプランの中で成ったわけでありますけれども、高尾山は今日、ご存じのように、新緑、もみじ、そしてまた、都の重要文化財がある大変歴史的な山でもあるんですね。そういった中で、私は、もう指定されてから三十年たって、大分時代環境も変わってきたのかなと思うんですけれども、それを思ったときに、今後、この高尾山については新たなプランの策定が私は必要だと思うんですが、それについてのご見解をお聞きしたいと思います。
 次に、地方税財政制度についてお伺いしたいと思いますが、十二月一日に東京都の広報の特集号が出されまして、これは財政問題特集ということで、「東京都が財政再建団体に転落したら…」ということで、都民の皆さんに広報を通じて東京都の財政状況を知らしめたわけでありますけれども、現在、東京都は財政の危機的な状況にあります。このままでは、地方自治体の倒産ともいうべき財政再建団体への転落も避けられません。財政再建団体になると、数多くの事業を廃止したり、サービス水準を引き下げざるを得なくなり、都民の皆さんの生活にも大きな影響を及ぼしかねませんという、こういう広報で、東京都の財政が大変ですよということなんですが、何ゆえ財政がこういう危機的な状況になってしまったか。
 振り返りますと、昭和二十四年に、いわゆるドッジ・プランを受けてシャウプ勧告がなされたわけですよね。このときに、シャウプ博士が日本を見て、大変日本の地方自治が未熟である、三割自治なんていうものではなく、当時は五分の一自治だといわれたくらい大変未熟だったんですね。日本の民主主義を確立していくためには、やはり独立した地方行政が必要であると。それには何が必要かとなったら、やはりそこに独立した財源を持たせなければならない。そこで、このシャウプ勧告の中で、いわゆる地方の独立税と平衡交付金という大変新しい制度を創設して、地方に対する財源をきちっと持たせたのがシャウプ勧告なんで、まさに世界に例を見ない私は民主的な制度だと、このシャウプ勧告を思っておりますし、この税の設立もそう思っておるんですけれども、このいわゆるシャウプ勧告につきまして、石原知事はどのようなご認識をお持ちか、お聞きしたいと思います。
 シャウプ勧告でいわれた平衡交付金というのは、いわゆる下からの積み上げというものを大変大切にしたわけですね。地方の格差を穴埋めしていく、いわゆるナショナルミニマムをどうやったらできるだろうということで、そういったねらいの中で行われて、その後昭和二十九年に、いわゆる地方交付税に衣がえをされて進んできたわけですけれども、残念ながら今日の地方交付税制度というのは、まず国税の中の一定割合というものが逆に決められてしまって、それを難しい制度の中で再配分をしていくような、こういう、残念ながら地方交付税の本来の目的からは大分離れた形になってきてしまっているのが今の地方交付税制度かなという、こういう認識を私は持っておるんですね。
 元来、地方自治というのは、できれば住民の皆さん方が直接負担をした地方税で運営をされていく、それによって住民が責任と関心を持ち、また、地方自治そのものを身近に感じてくるのが、私は地方自治の本来の姿であると思うんですね。
 ところが、今の地方交付税というのは、いわゆる地方自治体の財源を地方交付税に過大に依存し過ぎてしまっているということなんですね。まさに地方自治が私は危機的状況にあると思うんです。
 そこでお伺いしたいんですが、平成十一年、もう交付税の算定結果が出たと思うんですが、この結果がどのような数字であったかということと、あわせて自治体に対する地方交付税への依存割合ですね、恐らくかなり交付税に依存し切って財政運営をしている自治体があると思うんですが、この依存割合についてお伺いをしたいと思います。
 また、今日の地方税財政制度のいわゆるひずみというものを当局はどのようにとらえておるのか、お伺いしたいと思います。
 この四月から、いよいよ地方分権の一括法が施行されるわけであります。先ほど知事も、行政には予算が伴うものだということで、やはり財源の必要性というものを認識されておると思うんですが、先ほどのシャウプ勧告ですけれども、今回の地方分権、また特に一括法の施行というのは、まさにシャウプ勧告で積み残したもの、当時、国と地方の事務配分はされずに五十年間来てしまったのが、今の日本の地方自治なんですよね。
 ですから、改めてシャウプ勧告の積み残した課題を今ここでやろうということですけれども、このシャウプ勧告の理念に立ち返ったときに、私は、やはり地方税財政制度の抜本的な改革を、三千三百自治体の先頭に立って東京都が機関車のように引っ張っていただいて、国に働きかけをするべきだと思いますけれども、石原知事の決意をお聞きしたいと思います。
 次に、多摩の道路行政についてお伺いしたいと思います。
 過日、危機突破・戦略プランというのが出まして、その中で都道の重点整備ということで、選択と集中の徹底ということが出ているんですね。特にその中で、主として多摩地域において、右折交通による車線の閉塞が渋滞の原因になっている。要するに、曲がる車があるために渋滞の原因になりますよということで、交差点を百カ所改良していこうという、交差点すいすいプラン一〇〇の推進ということがこの中に載っているんですね。
 私は、知事がよくいわれるいわゆるコストとスピード、まさにこのすいすいプランはその一つかなという理解なんですね。ここに星野先生の地元の小平の例が出ているんですが、今まではこの交差点で三回信号待ちしていたんですね。そうすると、三分八秒かかっていたらしいんですよ。ところが、このすいすいプランによって、右折車がスムーズになると、わずか一回の待ち時間で十六秒で通過できるということですから、大変時間的に効率がよくなったということなんですね。ですから、この危機突破・戦略プランに知事が、交差点すいすいプラン一〇〇、特に多摩地域の道路に対して大変力を入れるということで載せたわけですけれども、知事のまず所見をお聞きしたいと思います。
 それから、多摩地域の渋滞解消に大変効果があるということで、現在、事業に取り組んでおるわけでありますけれども、今後のすいすいプラン一〇〇交差点改良事業、これに対する今後の取り組みについては、どのように取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
 きょうは、私の地元からも多くの傍聴の方がお見えになって、石原知事の答弁をお聞きしようということで、わざわざ八王子くんだりから、こちらまで来てくれたということでございます。
 最後に、その私の地元八王子市内で、この交差点改良事業、現在どのような状況であるのか、あわせてお伺いをいたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 町田てるよし議員の一般質問にお答えいたします。
 私も、二度ほど高尾山に参ったことがございます。身近なレクリエーションの場として、大変すばらしい場所だという印象がございますが、明治の森高尾国定公園に指定されておりまして、まだまだ非常に豊かな自然が残っているという印象が強うございました。
 東京都の文化財にも指定されております薬王院仁王門ですか、歴史的、文化的な資源もあったりして、都心に近く非常に交通の便もよいので、いろんな方々が手軽にハイキングに行っていらっしゃる、東京都にとっても非常に大事な野外レクリエーションの場であると認識しております。
 都民の貴重な財産として、あくまでも自然との調和を図りながら、多くの都民の利用の増進に努めていきたいと思いますが、これまた、人がたくさん行くと、やっぱり相対的に並行して荒廃が進むといううらみもございます。
 たしか私が環境庁におりましたときに、高尾山から発する東海自然歩道ですか、これができたという記憶がございますけれども、いずれにしろ、これをうまい形で多くの都民に利用していただく、そういう施策を講じていきたいと思っております。
 それから、シャウプ勧告に対する認識についてでありますけれども、これはまことに古いけれども懐かしい、大事な問題をまた提起されたわけでありますが、やっぱりこのシャウプさんの勧告というものの根底にあったのは、アメリカにおける州の権限というものの意味合いを踏まえた発想だったと思います。
 ということは、ようやく日本にも地方分権の時代が参りまして、この時点で、非常に以前の話ではありますけれども、シャウプ勧告なるものの意味合いというものを、私たちもう一度再認識して、決して古色蒼然たる提案ではなしに、まさに今の日本にこそ生きてくる勧告であったと思います。これを大いにそしゃくして、今後、地方分権を推進し、自治体がみずからの責任とみずからの財源で主体的に施策を展開するためにも、やはりこういった精神を踏まえて、発想を踏まえて、地方税財源の拡充、確保にいそしんでいきたいと思っております。
 次いで、地方税財政制度の抜本的改革への取り組みについてでありますが、都を含めて地方自治体が、地方主権に相ふさわしい自主・自立的な財政運営を行うためには、地方への税源の移譲など、地方税財政制度の抜本的な改革が不可欠であると思います。そのために、これまでも私自身が先頭に立って、国に対して強く要請してまいりました。
 今後とも、おっしゃるとおり、都議会初め区市町村、全国の三千三百団体に及ぶ地方自治体の総意を結集して、時代というものを本質的に、機能的に変えていく地方主権というものを確立するための、何といっても行政のための不可欠な財政というものの裏打ちを獲得していきたいと思っております。
 それから、交差点すいすいプランでありますが、これは、多摩地域に限らず東京全体にとって必要なことでありまして、私が議員時代に、大田区の第一京浜でしたか、一カ所、右折の路線を講じただけで、驚くほどボトルネックが解消された経験がございます。新しい道路をつくるのも、財源の問題がありまして大変でございますけれども、今ある道路をちょっと拡幅する、ちょっといじる、トリムすることで、随分交通というものの機能が上がってくると思いますので、一番安上がりで一番効果のある、つまり右折路線の数をふやすということを、都としても努めていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [建設局長古川公毅君登壇]

○建設局長(古川公毅君) 高尾山の整備についてですが、昭和四十二年、国定公園に指定されて以来、自然研究路やビジターセンターを配置するとともに、トイレや休憩所などの施設の充実に努めてきたところです。
 今後とも、利用者の要望を踏まえ、山頂周辺や尾根筋での樹木の間伐による眺望の確保、遊歩道や案内板の整備などを行い、高尾山を快適かつ安全に利用できるように努めてまいります。
 高尾山の利用者のための計画についてですが、自然との調和を図りながら、高尾山一帯の魅力を高め、より一層快適な利用を図るためのプランを策定することは、意義のあることと考えます。
 今後、地元市や各種団体の関係者などと連携を図りながら、適切に対応してまいります。
 交差点すいすいプラン一〇〇事業の今後の取り組みについてですが、平成十年度末までに十九カ所を完成し、現在八十一カ所において事業中です。本事業の実施に当たっては、ガソリンスタンド、商店などが立地する交差点部の用地取得が隘路となっています。
 今後、地元の事情に精通した市や町の強力な支援を得ながら、限られた事業費とマンパワーをより効果的、重点的に投入し、用地の早期取得に努め、事業の推進を図ってまいります。
 八王子市内での取り組み状況ですが、八王子市内においては十二カ所を計画し、現在、片倉交差点、小田野交差点の二カ所が完成し、渋滞解消に効果を上げています。さらに、平成十二年度末までに二カ所完成の予定です。残る八カ所についても、地元市や関係住民の理解と協力を得て、鋭意事業を推進してまいります。
   [財務局長木内征司君登壇]

○財務局長(木内征司君) 地方税財政制度に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、地方交付税の交付状況等についてでございますが、本年七月に自治省が発表いたしました平成十一年度普通交付税の算定結果によりますれば、東京都以外のすべての道府県及び全市町村の約九七%までが交付税の交付団体となっております。
 また、約半数の道府県で、地方税よりも地方交付税に依存する割合が高くなっており、中には一般財源の七割以上を交付税が占めている県もございまして、地方団体の自主財源が著しく不足している状況がうかがえるわけでございます。
 次に、現行の地方税財政制度に対する認識についてのご質問でございます。
 現行制度のもと、国と地方の間での事務配分の比率と税源の配分の比率がほぼ逆転するなど、戦後五十年以上を経て今日、その仕組みは制度疲労を来しておりまして、地方自治体の自主性、自立性の観点から、その抜本的な改革が必要であろうというふうに考えております。
 ご指摘の地方交付税制度につきましても、自治体間の財源の調整を図る上で一定の役割を果たしているものの、一方では、ほとんどの自治体が交付団体となっており、自治体の自立的な、あるいは自主的な財政運営を阻害している面もあるのではないかというふうに認識しているところでございます。

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