平成十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(渋谷守生君) 百一番東ひろたか君。
   [百一番東ひろたか君登壇]

○百一番(東ひろたか君) 私は、まず初めに、特に手厚い医療的なケアを必要とする重症心身障害者施設である東部療育センターの早期建設について質問をいたします。
 重症心身障害者の療育施設は、これまで、都立府中療育センターを初め、都内各地に十五カ所が整備されてきました。ところが、江東、墨田、江戸川、中央の四つの区を中心とする東京東部地域は、今なお、全くの空白地域のまま取り残されているのであります。重い障害を持ち、常に医療とのかかわりが必要な重症心身障害者と家族の皆さんは、総合的な機能を持つ東部療育センターの一日も早い建設を待ち望んでおります。
 既に一九九五年三月に、東京都の児童福祉施設等検討委員会の最終報告では、次のように指摘しております。入所待機中の重症障害者は、在宅において療育を行わざるを得ないが、常に生命の危険と隣り合わせの生活を余儀なくされているため、親の不安もはかり知れない。そして、東京都における施設の設置状況は、全国平均よりも相当低い状況にあり、新たな施設整備の必要性が明らかである。さらに、その最終報告は、区東部が、重症障害者の入所施設、通所施設を初め、肢体不自由施設などもないことから、最も有力な施設整備の候補地と考えられると確認をしているのであります。
 それから間もなく五年が経過します。東京都は、九七年三月には江東区新砂に土地を確保しましたが、その後、建設は先延ばしにされたままであります。いまだに基本設計すら着手されておりません。その間にも、東部地域の幾人もの重症障害者の方が、入所待機のまま命を失いました。介護の疲れから、親が病気で倒れることも少なくありません。
 先ほど申し上げた検討委員会最終報告が指摘しているとおり、重症心身障害者の家族の苦労は並大抵のものではないのであります。私が話を伺った方は、このように訴えております。四十二歳になる私の娘は、寝たきりで、食べることも動くことも一人ではできません。毎日、吸引器を使ってたんを取り、食事も時間をかけてチューブで注入しています。親の私も七十になり、体ももうもたなくなってきている。私が先か娘が先かと、いつも思う毎日だ。いっときのおくれは一生のおくれになります。東部療育センターはなぜできないのですか。一刻も早くつくってください。
 石原知事、あなたは、この切なる声をどのようにお聞きになりますか。
 重症の障害者は、症状が急変することもよくありますが、普通の病院ではなかなか診てもらえません。東部地域は関連施設がないため、そのたびに、板橋や北区、さらには遠く府中や東大和の療育センターまで、車いすやストレッチャーに乗せて車で通うということも日常茶飯事であります。
 こうした切実な要求を背景に、九六年十一月には、東部地域の総合的な重症心身障害児施設等の早期建設に関する請願が、都議会で全会一致で採択されております。これには五万二千六百三十八人もの方々が署名されたのです。その後も、東部地域選出の都議が、文字どおり超党派で、繰り返し、都に早期建設を申し入れてまいりました。地元の江東区長も、区民を代表して知事あての要請書を提出しているところであります。
 今すぐ着手しても、完成までに四年はかかるのです。関係者はまさに一日千秋の思いで、その日を待ち望んでいるのであります。
 知事は、東部療育センターの建設の緊急性についてどう認識されているのか。直ちに設計に着手し、本格予算を組んで、一日も早い建設を実現すべきであります。答弁を求めます。
 東部療育センターが完成するまでの緊急の対策も必要です。葛飾区の四つ木には、昼間の通所だけの施設である、よつぎ療育園があり、東部地域の在宅の重症障害者も通っておりますが、定員は二十人にすぎません。既に満杯で、待機者が多数いる状態であります。その上、来年三月には、墨東養護学校、江戸川養護学校の卒業生のうち四人が、よつぎ療育園の利用を希望しています。もはや限界であります。
 このままでは、常に生命の危険と隣り合わせの生活を余儀なくされている在宅の重症障害者が、入所施設どころか、昼間だけの通所のサービスを受けることもできないまま、二十四時間、三百六十五日の介護の苦労を、家族が一身に背負わざるを得ないのであります。
 よつぎ療育園の分室や、緊急の場合の一時入所の拡充など、在宅支援の緊急対策はどうしても必要であります。対応を伺います。
 次に、養護学校の改修問題について伺います。
 私の地元の江東養護学校は、開校して二十一年になりますが、生徒がふえ続けているのに施設の増築や改修が先送りされてきたために、すし詰めの状態になっております。私も先日、直接見させていただきましたが、図書室、音楽室、美術室、生活訓練、言語訓練室など、ほとんどの特別教室や職員休憩室などが、カーテンで区切られただけで教室に転用されております。図書室の本は、置き場がないため、廊下の本棚に並べられているありさまであります。それだけではありません。もとの音楽室を使用している教室は、廊下に面していないため、避難路がありません。消防署からは、毎年、防災上危険であるとして指摘を受けてきましたが、何ともすることができません。
 先生方も大変です。職員室に至っては、小さいサイズの机にかえて、五十人程度の容量の部屋に、何と倍近い八十九人が詰め込まれ、毎日、ぎゅうぎゅう詰めの中で学校運営に携わっているのです。校長先生は、これでは児童にも親にも職員にも大変申しわけないといっておられました。
 開校当時三十九人であった児童生徒が、現在百六十七人、実に四・二倍に膨れ上がっているのですから、施設を増設しない限り、問題は解決されません。
 今、障害児学校はどこでも、医療的ケアが必要な子ども、重度の障害を持つ子どもが年々ふえ続け、中でも、知的障害養護学校に在籍する児童生徒の数は、横ばいどころか増加の傾向にあります。これは、養護学校の希望者全員就学の実施以来、障害のある子どもの実態に即した養護学校の教育への理解が深まり、期待が高まっていることの証明でもあります。問題は、このような期待と生徒がふえ続ける現実に、都が積極的にこたえようとしていないことです。
 しかも、江東養護学校についていえば、江東区に貸し付けていた土地が戻ってきており、用地は確保されています。先延ばしする理由はありません。知事、それでも増築は必要ないとでも思っていらっしゃるんでしょうか。
 知事、江東養護学校の教室不足を緊急に解決するために、直ちに増築に着手することが必要だと思いますが、お答えください。
 あわせて、養護学校の児童生徒への就学奨励費、学校の管理運営費について伺います。
 そもそも就学奨励費は、親の負担を軽減するために、宿泊生活訓練費や校外学習費、補助教材費、卒業記念アルバム費などについて、都が独自に補助、充実させてきたものです。ところが、石原知事が今回打ち出した財政再建推進プランに基づく来年度予算局見積もりでは、卒業アルバム費は廃止、その他については、所得に応じ全体の四割の生徒が削減の対象とされており、多くの父母や学校関係者から心配の声が寄せられています。
 例えば宿泊訓練の場合、障害児に豊かな社会経験や集団活動を保障し、自立に向けた貴重な学習の場でありますが、ボランティアを頼むので、その宿泊費や、リフトつきバスや、時には障害者用の携帯トイレを運ぶトラックの借り上げなど、大変な費用がかかります。その参加費を受益者負担だと保護者にかぶせることは、突き詰めていけば、障害が重く費用のかかる子ほど高い負担をすることにつながり、どんなに障害の重い子も教育を受ける権利を保障するという、全員就学の精神とは全くかけ離れたものになりかねません。
 さらに、学校の管理運営費、中でも歩行器やテープレコーダー、マットなどを購入するための備品購入費は、六六・五%も削減するといいますが、計画的な購入を考えていたのに、こんなに減らされたのでは何もできないと、悲鳴が上がっております。
 障害児への就学奨励事業や養護学校の管理運営費は、拡充こそすれ、削減などあってはなりません。所見を伺います。
 最後に、江東内部河川の整備について伺います。
 隅田川と荒川に挟まれた、いわゆる江東三角地帯は、東京湾の水面よりも低い土地が多く、かつては、高潮とともに内部河川からも浸水し、多くの水害に見舞われてきました。江東内部河川整備事業は、一九七一年から、それまでの高潮対策事業から独立して実施されてきたものです。今年度は、江戸川、墨田、江東区の三区に接する旧中川、北十間川の整備が進められていますけれども、事業が始まってから三十年たった今日でも、西側の護岸が六割完成しているとはいえ、東側に至っては二割にも満たないという到達であります。
 私の地元の小名木川のコンクリート護岸は、非常に老朽化し、消防署の職員からは、直下型地震が来れば、もうもたないとまで指摘されています。直ちに耐震護岸整備が求められているにもかかわらず、今は、亀裂をコンクリートで埋めるといった応急的な措置がとられているだけです。江東区からも、早期着工を求める要望が東京都に寄せられています。工事がおくれている原因は、都が予算を毎年のように削減しているからです。九二年に五十九億円であったものが、今年度は二十億円と、三分の一にすぎません。事は緊急を要します。財政が厳しいなどといって先送りするのではなく、必要な予算も確保して、計画を前倒ししてでも整備を促進することを求めます。
 内部河川の整備の上であわせて問題になっているのが、これらの河川にかかっている、いわゆる太鼓橋の解消であります。江東区の中心部にある、区役所の近くの横十間川にかかる井住橋では、橋の向こう側の見通しがないために、車の正面衝突など交通事故も多発しております。江東区には、こうした太鼓橋が幾つも残っています。
 小名木川にかかっている通称丸八橋は、若い人でさえ、自転車に乗ったままでは渡れないことも多く、ましてや高齢者などは、雨や雪の日など、怖くて通ることができないという状況です。区では、そのため、勾配の緩やかな人道橋を計画していましたが、護岸整備が進まないことが一つのネックとなって、着手できていません。
 太鼓橋の中には、既に船の通航などなく、今のような高さを必要としていないものも既にあります。太鼓橋についても、だれもが安心して通行できるよう、実態に合わせ、かけかえを含めた改善を図っていくことが求められているのではありませんか。答弁を求めます。
 以上、私が取り上げた問題は、いずれも必要性と緊急性に迫られているものばかりです。それにもかかわらず先送りされているのは、都が、大型開発には熱心でも、これら都民の生活に欠くことのできない公共事業については極めて冷たい姿勢をとってきたことのあらわれなのであります。しかも、重大なことは、知事が発表した財政再建推進プランが、財政が厳しいとして、このような生活密着型公共事業をさらに後退させようとしていることです。
 私は、知事に、これらの都民生活に密着した公共事業をこそ優先し、予算を確保すべきであると声を大にして申し上げたいのであります。知事の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 東ひろたか議員の一般質問にお答えいたします。
 公共工事の予算確保についてでありますが、財政再建推進プランが目指す財政構造改革を進めるに当たっては、経常経費、投資的経費を問わず、都の行うすべての施策について、聖域のない見直しを行う必要があると思っております。
 投資的経費については、都の財政力で対応可能な範囲に抑制していく考えでありまして、事業の必要性、緊急性、つまり都民生活への密着性を十分に勘案の上、財源を重点的、効率的に配分していくつもりでございます。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [衛生局長今村皓一君登壇]

○衛生局長(今村皓一君) 東部療育センターについての三点のお尋ねにお答えいたします。
 まず、区東部地域には、重症心身障害児のための入所施設や通所施設がございません。その必要性については十分認識しております。
 このため、都では、ご指摘のとおり、既に建設用地を確保しているところでございます。
 また、東部療育センター建設につきましては、昨年五月、学識経験者や関係団体の代表者等による都立重症心身障害児施設検討委員会を設置いたしまして、区東部地域に設置する重症心身障害児施設の役割や機能等を含め、検討を進めているところでございます。
 今後、今年度中に予定されている委員会報告を踏まえ、引き続き建設に向け努力してまいります。
 次に、重症心身障害児への在宅支援についてのお尋ねでございます。
 障害を持つ方々が、家族とともに地域の中で生活し続けるためには、在宅サービスが非常に重要な役割を果たしております。
 このため、都では、通所施設における訓練、緊急入所や訪問看護の実施など、関係機関の連携、協力を十分図りながら、在宅サービスの充実に取り組んでおるところでございます。
   [教育長中島元彦君登壇]

○教育長(中島元彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、江東養護学校の増築についてでございますが、江東養護学校につきましては、重度重複学級数が増加したことなどから、多くの特別教室を普通教室に転用している状況にございます。
 今後、入学者の動向、児童生徒の障害の多様化の実態などを踏まえ、増築について検討してまいります。
 次に、盲・聾・養護学校における就学奨励費や管理運営費についてでございますが、就学奨励費は、児童生徒の就学に伴う経済的負担を軽減するため、国庫補助事業として、給食費、学用品費、修学旅行費などの経費を、保護者の負担能力に応じ支給しているものでございます。
 都におきましては、これに加え、都単独の就学奨励費として、例えば、宿泊を伴う生活訓練費につきましては、保護者の負担能力にかかわりなく、すべての児童生徒を対象に全額支給をしております。しかし、社会経済状況の変化や負担の公平の観点から、保護者の所得に応じて支給するなど、その見直しを図ることとしております。
 また、学校の管理運営費につきましては、教育水準を維持しながら、創意工夫を凝らし、効率化の観点から経費の節減に努める必要があると考えております。
   [建設局長古川公毅君登壇]

○建設局長(古川公毅君) 江東内部河川の整備についてですが、ご指摘の小名木川を含む東側地域の河川については、平成五年に、河川の水位を、周辺地盤の高さ程度のAPマイナス一メートルまで下げたことにより、大地震による水害に対する地域の安全性は確保しております。
 河道の整備については、現在実施している旧中川などに引き続き、順次進めてまいります。
 取りつけ道路が急勾配である太鼓橋についてですが、舟が航行している、いわゆる舟航河川にかかる橋梁については、けた下高さの制限や遊歩道の確保などのため、当面、改善は困難です。
 既に舟航がなく、公園などに利用されている河川にかかる橋梁については、これまでも、地元区からの要望を受け、関係機関及び地先住民などと合意が調った箇所から逐次改善してきております。

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