平成十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(渋谷守生君) 百十番桜井武君。
   [百十番桜井武君登壇]

○百十番(桜井武君) 私は、男女平等の推進につきましては最も理解の深い者であります。
 東京都は、かねてから、男女平等に向けて積極的に取り組み、大きな成果を上げてまいりました。しかし、現実には、女子学生に就職の機会も十分に与えられないなど、女性が能力を持ちながらそれを十分に発揮できない状況は、まだまだ残されております。少子高齢化が進み、経済的にも大変厳しい局面を迎えている今、東京を活力あるまちとして発展させていくには、女性を含め一人一人の都民に持てる力を十分に発揮してもらう必要があります。
 国においては、この六月に男女共同参画社会基本法が制定されました。東京都においても、男女平等参画に関する条例を平成十二年第一回定例会に提案される予定と伺っております。条例の制定は、男女平等参画の実現のために重要なことだと思います。条例ができることによって、都民や企業の意識や行動が実際に変わり、また社会の仕組みも変わっていかなければなりません。男女平等参画社会の実現に向けて、実効ある条例を制定すべきと考えますが、所見を伺います。
 ところで、働く女性が子どもを保育園に預けようとしても、あきがない、子どもが病気になればなおさら預かってくれないという相談をよく受けます。保育園は、働く女性を支えていくために非常に重要でございますが、この問題についてどのように対応していくのか伺います。
 次に、教員の人事考課制度について伺います。
 現在、学校では、いじめ、登校拒否、暴力行為、学級崩壊、極めて厳しい問題が生じております。家庭や地域などの要因も重なった複雑困難な課題であると認識していますが、やはり基本的には、教育は教員の指導力いかんであると考えます。これまで以上に教員に持てる力を発揮してもらわなければなりません。やる気や能力を引き出すとともに、真摯な努力には報いていける仕組みが必要であります。
 先日、教員等人事考課制度導入に関する検討委員会が、教員の能力開発に向けて、自己申告と業績評価に基づく人事考課制度に関し最終報告を出しました。教育改革を担う人材を育成していくために、この制度をぜひとも一日も早く導入すべきであります。
 この報告を受けて、今後どのように取り組み、いつから人事考課制度を導入するのか、積極的な答弁をお願いします。
 次に、破綻信組の処理について質問します。
 旧二信用組合、コスモ信用組合問題について伺いますが、昨今、新聞等で、破綻した旧二信組、コスモ信組の二次損失等の処理策として、国から東京都に対し三百億円の拠出が求められているとの報道がなされております。このような処理策に対しては、重大な懸念を覚えるだけではなく、国に対しまして深い憤りを感じざるを得ません。
 これらの問題は、いわゆる金融三法が制定される前に発生したものであります。当時は、現在のような破綻処理のルールや公的資金による負担に関する法の定めがなかったため、東京都信用組合協会が債権回収業務を行うという、処理スキームを緊急につくって、それに沿って破綻処理が行われたわけでございます。
 一方で、コスモ信用組合の問題のわずか一カ月後の平成七年八月に破綻した大阪の木津信用組合については、いわゆる金融三法が適用されまして、一兆円ですよ、一兆円を超える公的資金による破綻処理がなされました。大阪府は、このためにわずか一円も財政支出を行っておりません。
 現在、東京都信用組合協会が行っている債権回収業務につきましては、既に一千億円ほどの二次損失が見込まれており、協会の正常な運営に支障を来すばかりでなく、協会への資金の貸し手である全国信用協同組合連合会の経営基盤も根底から揺らぎかねないものとなっており、全国の信用組合への影響は必至であると聞いております。
 東京都におきましては、こうした経緯も踏まえ、破綻処理制度が未整備なために緊急避難的に対応した旧二信用組合、コスモ信用組合についても、基本的に国の責任により処理されるべきとの考えのもと、そのための法改正を含めた制度改正を国に対して再三再四要望してきたところでございます。
 しかるに、今般、国は、旧二信用組合にまでさかのぼり、東京都に財政負担を求めようとしております。これまでの経緯と都のたび重なる要望の趣旨を全く無視した、まことに筋違いの対応であるといわざるを得ません。旧二信用組合及びコスモ信用組合の問題については、国が法改正も含めた制度改正を行い、あくまでも国の責任で処理されるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、都区制度改革について伺います。
 平成十二年四月に実施される都区制度改革まで、あと残すところ四カ月を切りました。今回の改革は、行財政面における特別区の自主性、自立性を強化し、住民に身近な事務を特別区に移管し、あわせて特別区を基礎的な地方公共団体として位置づけるもので、地方自治制度の面からも住民生活の面からも非常に大きな意義を持つものであります。この改革を、特別区の行政サービスを受ける立場の住民の目から見たとき、特別区が、いかに都の内部団体的な位置づけから脱皮し、その自主性、自立性を発揮して行政運営を行うことができるかが、改革の成否を決める大きな判断基準になります。
 こうしたことから、特別区がみずから自主性を発揮していかなければならないことはもちろんでありますけれども、東京都としても特別区に対する不必要な関与を排し、特別区が自主的な行政運営を実施できる財源的な裏づけをしていくことが求められています。今、都区間で税財政制度についての協議が行われておりますが、早期に合意できることを期待するものであります。
 そこで伺いますが、移管経費の大部分を占めると思われています清掃事業の経費について、現在、都区間の協議はどの程度まで進んでいるのか、残された課題をどのように解決しようとしているのか伺います。
 特に住民生活にかかわりの深い国民健康保険事業の財源については、都区間に意見の隔たりが深いようであります。この財源は、都区制度改革によって都区財政調整で標準算定されることだと思いますが、これまで都が特別区国民健康保険事業を条例により調整してきた経緯にも一定の配慮をし、円滑な事業移行を図るべきであると考えますが、所見を伺います。
 さらに、十一月、都は、区長会に対し福祉施策の新たな展開等を説明し、福祉施策等の見直しについて提案したところであります。この中には、昭和五十五年度以降において特別区の事業と位置づけられている老人福祉手当を初めとして多くの事業があり、現行の都区財政調整制度において基準財政需要額として算定されています。
 仮に特別区が都と歩調を合わせて事業を見直すこととした場合であっても、財調上の需要算定相当額については、区側が求める需要を充てるべきでありますが、東京都はどう考えているのか伺います。
 次に、シティーセールスでございますが、知事は、常々日本全体に元気がない、日本が元気になるためには日本の首都である東京を元気にしなきゃならないといわれております。そのために、羽田空港の国際化、横田基地の軍民共用化、債券市場の創設、東京外郭環状道路の整備などを進めようとしております。これらのことについては、まだまだ論議のあることでございますけれども、知事の頭の中には、将来の東京の都市像が描かれていると思いますが、熱く輝く元気のある東京にしていくためには、シティーセールスが不可欠であると考えておられるのではないかと思いますが、知事の所見を伺います。
 次に、国内の観光地を抱える各自治体は、観光客の誘致に血眼になっております。観光客の増減は自治体の収入に直結し、自治体にとって死活問題となるからであります。どこの観光地も国内観光客の低迷にあえぎ、台湾や韓国などアジアからの誘致に乗り出している自治体もふえつつあります。
 翻って東京はといえば、これまで右肩上がりの経済成長に助けられ、地方ほど深刻な問題にはならず、観光振興には余り力を入れてこなかったのが実態であります。しかし、これまでのような経済の成長は望めず、景気の低迷が長引いている現在、あらゆる知恵を絞って収入の道を探ることが求められており、その一つが観光振興であると考えられます。
 我が会派の藤沢議員の代表質問にもありましたが、観光は経済波及効果が大きく、雇用、税収効果も高い、しかも波及するすそ野も広いといわれています。運輸省の調査によると、観光の経済波及効果は、生産効果で二・四倍、雇用創出効果で二・二倍、税収効果で二・七倍と試算されております。シティーセールスを積極的かつ恒常的に進めていく上で、何も東京都がすべてをやる必要はありませんが、それぞれの地域、民間企業が努力し、それらをバックアップするとか、うまく連携させるとか、東京全体の売り込みを戦略的に行うとか、そういった役割を果たしていただきたいと考えておりますが、所見を伺います。
 東京は、文化、芸術の集積地であり、ファッション、グルメ、何でもあるところで、逆に何を見ればよいか迷うほどであります。本当の見どころは、観光マップなどではわからないと思います。こういった地域の特性を生かしまして、付加価値をつけた売り込み方が必要であると考えますが、所見を伺います。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 桜井武議員の一般質問にお答えいたします。
 旧二信用組合、コスモ信用組合問題に対する都の基本的な考え方についてでございますが、これらの三つの信用組合の処理については、法の定めがなかったため緊急避難的に対応されたものであります。このため、都は国に対して根本的な解決を図るため、債権回収業務の一元化とともに、二次損失への対応については、法改正を含めた制度改正を再三にわたり強く要望してまいりました。
 既にもうお答えいたしましたが、日本の信組を含めて金融機関というものを荒廃させた責任は、あくまでも国にございますから、これ、当然ですが、国というものが積極的に責任をとらなくちゃならないと思います。
 既にお聞き及びかもしれませんけれども、次官と副知事レベルでの接触、要請がございましたが、これは拒否いたしました。金融システムの安定のための制度が整備された今日、法改正を含め、国の責任による、あくまでも国の責任による根本的な解決が急務であり、二次損失についての新たな財政負担は、到底都民の理解を得られるものでないと思っております。
 次いで、シティーセールスについてでありますが、グローバリゼーションに対応し、世界に大きなプレゼンスを持つ魅力的な東京に転換していくためには、これを売り出していくシティーセールスが重要でございます。このために、このたび策定した危機突破・戦略プランにおいて、東京の魅力を世界にアピールするために、東京イメージアップ作戦やアジアとの連携の強化に取り組むこととしております。
 また、東京を世界に開かれた顔のある都市にするために、今後も積極的にシティーセールスを展開していくつもりでございますが、しかし、外に向けての努力だけではなくて、売り出す東京の内側の努力も必要だと思います。例えば、ホテル代が総体的に東京は高い、あるいは新しい観光資源の開発なり紹介というものを、もっともっと積極的にしていく必要もあるんではないかと思っております。
 いずれにしろ、総体的に退潮の兆しの濃い東京というものを、二十一世紀においてもアジアの希有なるワールドプレーヤーとして、グローバルプレーヤーとして維持するために、シティーセールスは非常に重大な都の仕事と心得て積極的に取り組んでいくつもりでございます。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [生活文化局長今沢時雄君登壇]

○生活文化局長(今沢時雄君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、男女平等参画に関する条例についてでございます。
 都が条例を制定いたしますことは、男女平等参画推進の契機となりまして、活力ある社会の実現につながるものと認識しております。このため、条例案の作成に当たりましては、男女平等参画の基本理念、都民、事業者、行政の責務、男女平等参画社会実現に向けた都民、事業者を含めた総合的な計画の策定、また、民間事業者における平等参画の促進などを柱として検討を進めているところでございます。
 次に、東京のシティーセールスについてでございます。
 ご指摘にございましたとおり、その展開に当たりましては、行政、関連団体や民間企業が一体となった積極的な推進が不可欠でございます。都といたしましては、この十一月に発足いたしました観光関連の企業を主体とする東京シティーセールス・キャンペーン推進協議会などと連携いたしまして、今後、観光客の増加が予想されますアジア地域を重点に観光・コンベンションの誘致宣伝活動を積極的に展開するなど、効果的なシティーセールスを推進してまいります。
 次に、地域特性を生かした観光資源の活用でございます。
 東京には、江戸東京四百年の歴史の中で培われた伝統文化から最先端の産業まで、多様な観光資源がございます。シティーセールスに当たりましては、これらを活用していくことが重要であると考えております。このため、例えば江戸文化をテーマとするルートづくり、先端的な技術が見られる工場やショールームの見学など、さまざまな観光資源を紹介する仕組みをつくり、内外からの来訪者のニーズに合わせた活用を図ってまいりたいと考えております。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇]

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 保育施策の充実についてのお尋ねでございますが、子育てと仕事の両立を支援していくために、保育施策の充実は極めて重要であると認識しております。
 保育所をめぐる状況といたしましては、十月ごろには入所待機児童数が一万人以上を超える年が現在続いております。この待機児を早急に解消することが必要でございます。
 また、都内保育所の約三割で実施している延長保育につきましても、全園での早期実施を目指すとともに、休日の保育や病気回復期にある児童の保育など、多様な保育ニーズに対応するよう、実施主体である区市町村と連携しまして保育施策の推進に努めてまいります。
   [教育長中島元彦君登壇]

○教育長(中島元彦君) 教職員の人事考課制度の導入についてのお尋ねでございますが、現在、学校では、いじめや不登校など、さまざまな教育課題の解決に向けて懸命に取り組んでいる教員がいる一方、児童生徒の変容に対応できないなど、持てる力を発揮できない教員もいるのが実情でございます。
 ご指摘のとおり、教員の能力を引き出すとともに、真摯な努力に報いていくための仕組みとして、新たな人事考課制度を早急に導入し、教員の資質能力の向上と学校組織の活性化を図る必要がございます。このため、速やかに規則を制定し、また、評価者訓練を実施するなど、平成十二年四月からの制度導入を目指して、鋭意準備を進めてまいります。
   [総務局長横山洋吉君登壇]

○総務局長(横山洋吉君) 都区制度改革に関する三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、清掃事業経費についての都区間の協議状況と残された課題についてでございますが、清掃事業の移管経費につきましては、都区財政調整制度の基準財政需要額として標準的に算定することを基本とすることなど、都区間で基本的な考え方は一致しております。しかし、職員費やあるいは施設整備費等、具体的な算定の範囲及び算定方法につきましては、現時点では意見の一致を見ていない状況でございます。
 これらの残された課題につきましては、現在、都区間で鋭意協議を進めているところでございまして、今後、できる限り早期に合意が得られるよう、最大限の努力を払ってまいります。
 次に、特別区国民健康保険事業の財源についてでございますが、都区制度改革後の特別区国民健康保険事業の財源につきましては、保険料の適正化を図りつつ、独立した保険者としての特別区及び府県としての東京都が、それぞれの責任、役割を明確にして、適切に対応することが必要であると考えております。
 都としましては、この基本的考え方に基づきながら、制度改革時において、特別区が安定的な事業運営を行うのに支障のないよう配慮してまいります。
 次に、福祉施策の新たな展開等に伴う都区財政調整上の対応についてでございますが、福祉施策の新たな展開に関する見直し事業等につきましては、現在、都区間で鋭意協議を進めているところでございます。
 今後、こうした協議の状況を踏まえまして、都区財政調整における基準財政需要額の対応につきましても、特別区と十分に協議をしてまいります。

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