平成十一年東京都議会会議録第十七号

○副議長(五十嵐正君) 五十番田島和明君。
   [五十番田島和明君登壇]
   [副議長退席、議長着席]

○五十番(田島和明君) 私は、都議会無所属クラブを代表し、当面する都政の重要課題について質問をいたします。
 一九九九年もあと二十日余りで終わろうとしています。もとより、二〇〇〇年以降の歴史がどのように変転していくのか、予測するのは難しい作業ですが、二十世紀から二十一世紀にわたる四年間を任期として誕生した石原都政が、将来に負のツケを残すような都政であってはならない、これだけはいえると思うのであります。
 さて、石原知事が誕生して七カ月、既に来年度予算の編成作業も始まり、いよいよ本格的な石原都政がスタートするわけですが、その当面の方針が、本定例会直前に発表された危機突破・戦略プランであると受けとめております。
 その危機突破・戦略プランに示された現状認識、また戦略と示された方針も、論としては十分理解できるとともに、否定するものではありません。しかし、この危機突破・戦略プランを確実に推進しようとするならば、組織改編などを含む大胆な構造改革が求められると考えます。この点について、知事の基本的な姿勢をまずお示しいただきたいと思います。
 危機突破・戦略プランから、石原知事の目指す東京都の将来像は、グローバルプレーヤーたる世界都市東京と推測するのですが、まずこの点を確認した上で、質問をいたします。
 新聞報道によれば、知事は海外事務所の全廃を考えておられるようですが、それが本意だとすれば、グローバルプレーヤーとしての都市を目指し、また都経済活性化への一方策として、積極的な都市セールス、また中小企業等の技術セールス等の活性化を図ろうとの方針とは、矛盾する考えと指摘せざるを得ません。積極的な都市セールスや経済活動を進めようとするやさきに、すべての海外事務所を廃止すれば、それは撤退としてしか受けとめられず、マイナス効果しか生まれないことは明らかです。
 一般的あるいは儀礼としての国際交流であれば、知事一人が忙しい思いをした、で済むでしょうが、都市セールスや中小企業の技術セールスなど、東京都の活性化につなげるための実を上げようとするのであれば、それこそ、知事一人が東奔西走してもどうなるものでもないと考えます。
 だからといって、現在の海外事務所のあり方をそのまま認めるものではありません。文化、芸術の交流窓口にとどまらず、積極的な経済活動も行う機能を持たせるべきであります。そのためには、今ある海外事務所を知事直轄の部署とし、職員の駐在期間についても考え直す必要があります。
 本当に東京をグローバルプレーヤーとしての世界都市にしようとするのであれば、全廃ではなく、情報の収集、発信やシティーセールス等の拠点としての活用を進めることこそ本筋であると考えます。知事のご所見のほどをお伺いします。
 次に、介護保険制度の導入に関する問題についてであります。
 介護保険制度は、そもそも、家庭では支え切れない過酷な介護を、社会全体で支えていけるようにしようというところに最大の目的があったはずです。しかるに、今国が行おうとしている見直しは、介護の社会化に逆行するばかりか、苦しい財政状況の中で基盤整備を進めてきた区市町村の努力に水を差すだけでなく、地方分権を後退させるものであります。
 地方自治体を混乱させるような国の動きは、決して容認できるものではないことを、この際強く申し上げておきます。
 さて、高齢者介護の問題の今後を考えるとき、最大の課題となってくるのが、増加する一方であるひとり暮らしや夫婦二人だけの高齢者に対する対策をどうするのかということであると思います。ひとり暮らしや夫婦二人だけの高齢者にとって、巡回型の介護サービスだけでは、日々の暮らしから不安がぬぐい切れないのが実際だと思うのです。こうした問題の解決策の一つとして、私は、共同居住を積極的に進めるべきだと考えるのであります。
 共同居住の一つの例として、最近特に注目されている痴呆性高齢者グループホームがあり、介護サービスの新しいあり方として非常に期待されていることは、知事もご案内のことと思います。
 いうまでもなく、この痴呆性高齢者グループホームは、中程度までの痴呆のある高齢者が、五人から九人ぐらいで一つの住宅に住み、二十四時間の専門的な援助のもとで、それぞれ料理、掃除、庭仕事などを可能な範囲でみずから行い、一つの家庭といった落ちついた雰囲気の中で生活を送るものです。現在あるそれぞれのグループホームでは、高齢者本意の暮らし方、過ごし方ができ、痴呆の進行も穏やかになるなど、よい結果が出ていると聞いております。
 また、特別養護老人ホームなどでも、少人数でのケアを行うグループユニットケアが進められていると聞いていますが、従来型の集団生活ではなく、自由で家庭的な生活環境を整え、個人個人の過ごし方を尊重することが、介護する側にとっても負担の軽減になるようであります。
 近年、ひとり暮らしや高齢者夫婦のみの世帯が増加傾向にあることは明らかです。また、近所づき合いも希薄になっております。地域社会が成り立ちにくくなっている現実を見るとき、私は、このグループホーム的な住居、共同性のある住宅の提供を、福祉施策の一方策として考えるべきではないかと思うのであります。
 個人のプライバシーが確保されるつくりであっても、一つ屋根の下で生活すれば、疑似的であれ、家族的な感情が生まれたり、昔の長屋にあったようなつき合いも可能になるのではないでしょうか。
 グループリビング、グループハウス、コレクティブハウジングなどの名称で、民間ではそうした試みがされていますが、都としても、福祉施策として、このような共同居住型住宅をより積極的に進めるべきだと考えますが、現状と将来に向けての考えをお聞かせください。
 私は、こうした共同居住型住宅の拡充は、在宅サービスが主流とされている介護保険制度の上からも、サービス提供の効率化が図られると考えます。今、比較的老朽化した都営住宅などでは、入居者全体が高齢化しているところが多いと聞いています。そうした住宅は、改築の際、思い切って共同住宅型にする、また、多人数世帯向きの住宅も、そのままグループホームとして活用することも考えられます。
 それも、高齢者になり、身体状況が虚弱になってからこのような住まい方をするのではなく、その前の段階から、互いに支え合う暮らしが可能な環境を整えていくことも考えるべき時期に来ていると思います。シングルライフも増加傾向にあります。多世代を対象とした共同居住について、公営住宅でも検討してはどうでしょうか、所見のほどを伺います。
 次に、防災対策についてであります。
 ことしは、トルコや台湾など世界各地で大規模な地震が発生し、多くの犠牲者が出ました。幸いなことに、日本では大きな地震はありませんでしたが、熊本県の不知火湾で、台風による高潮被害で多くの被害者を出したことは記憶に新しいところです。この不知火湾の災害は、私たちにとっても大きな警鐘であったと思います。
 これまで、東京都の災害対策といえば、どうしても地震災害を想定した内陸部に注目がいっていたと思うのです。しかし、そうした震災時における救援物資等の輸送基地としての東京港の重要性から、港湾施設整備は図られていますが、高潮対策についても、いま一度注目すべきだと思うのです。
 事実、東京港の水門、排水機場は、昭和三十四年の伊勢湾台風を教訓に、以降、昭和四十年代初めまでに集中的に整備されたもので、既に更新の時期を迎えていると思われますが、老朽化対策はほとんど加えられていないのが現実だと思います。
 仮に整備に取り組むとすれば、かなりの大規模改修となることは間違いないと思われますが、行うとすればどれほどの規模になり、早急なる取り組みが可能かどうか、忌憚のないところをお示しください。
 さて、十一月二十四日の都庁の玄関口でもある新宿駅西口横の思い出横町の火災は、都民に大きな衝撃を与えたと思います。災害に遭われた方々、けがをなされた方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 火災発生時、その密集度、路地の狭さから、接近しての消火活動が展開できず、類焼を許してしまったことは、木造住宅密集地域や密集繁華街の防災対策を進める上で大きな教訓を残したと思うのであります。都内に数多くある思い出横町型の密集繁華街は、防災上問題があるにしても、密集型であればこそ、繁華街として魅力があるというジレンマもあります。
 そうした点も考察して、消防車等が進入、接近しにくい密集繁華街の防災対策、中でも初期消火対策に対し今後どのように取り組まれるのか、今後の強化策についてお聞かせください。
 最後に、福祉施策の見直しについて申し上げます。
 知事は、本定例会の所信表明の中で、経済給付的事業の見直しを提言なさいました。知事の提言をまつまでもなく、都議会無所属クラブとしても、かねてから自助、共助、公助のバランスのとれた福祉社会の構築を急ぐべきであると主張してまいりました。その立場からすれば、今回の知事提案の福祉施策の見直しとは、考え方の基本において軌を一にするものであります。そして、経済給付的事業の見直しが避けて通れない課題であることも認識しております。
 しかし、問題は、経済給付的事業の対象者の大半が社会的弱者の立場におられる方々であるという事実であります。そして、社会経済状況の変化に最も深刻な影響をこうむっている方々であるということでもあります。そのことを十分考慮した上での取り組みが必要です。激変となることだけは避けるべきであります。
 そのことを最後に強く申し上げ、私の都議会無所属クラブを代表しての質問を終わります。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇]

○知事(石原慎太郎君) 田島和明議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、危機突破・戦略プランの推進に向けた都政の構造改革でありますが、このプランを確実に推進していくためには、都庁の抜本的な構造改革が不可欠であると認識しております。ただ、これはなかなか早急にできませんで、そのための現状把握に今まで時間をかけてまいりましたが、そろそろ皆さんのご意見も仰ぎながら、十分に機能していく新しい構造というものを都庁に持ち込む努力をしたいと思っております。
 このために、既に行政評価制度の試行や監理団体の改革などについて取り組みを進めております。行政改革の全体像は、何といっても外郭団体とも連結したバランスシートなどを活用して、現行の事業や組織の課題を洗い出すとともに、来年度策定する都市構想の内容を踏まえて、新たな行政改革大綱ともいうべき都政改革ビジョンを策定し、新しい東京都の構造についても明らかにしていきたいと思っております。
 次いで、東京都が構えております海外事務所についてでありますが、まさにグローバル化の時代であり、国際的に東京の力量を発揮するそういうニーズが迫られておりますが、といって私は、既存の海外事務所というものについて十全な評価をするわけにはいきません。
 現在、交流事業の連絡調整や中小企業支援のために海外に確かに事務所や駐在員を置いてありますが、しかし、こういった業務活動のあり方については、いろいろその内容、効果に問題があると認識しております。
 このため、経済のグローバル化に対応し、東京がグローバルプレーヤーとして活躍していくためにも、例えばシティーセールスもそうでありますが、海外活動を行う中小企業の振興のためにも、より効果的な方策について抜本的に検討しなくてはならないと思っております。
 日本の外務省の在外公館が有名無実で、ほとんど役に立たない事態を見ましても、私はやっぱり東京の、いわば東京都の在外公館は、むしろ人間と建物を張りつけておくんじゃなしに、あくまでも都庁の中から人選しまして、有能な移動大使のような人材を何人か育てていく方が、それで緊急の場合には担当の局長が同行する、関係の民間の方々にも行っていただく、場合によっては議会の方々の同伴を願って、そこでアクティブな積極的な活動を展開した方がはるかに効果をもたらすものと私は思います。
 そういうものを踏まえまして、関係の局は、それぞれ既得の権利ですから、固執するかもしれません。これは、やっぱり東京全体のために思い切って洗い直しをする必要があると思っております。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇]

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 介護保険と高齢者介護に関連しまして、共同居住への支援についてのお尋ねでございますが、ひとり暮らしや虚弱な高齢者などがふえる中で、ご指摘のとおり、互いに協力し合う形で共同生活をしていくことは、大変有意義なことと考えております。
 こうした住まい方を希望している高齢者が、在宅介護支援センター等の調整のもとで、多様な在宅サービスを活用しながら、安心して地域で生活できるように支援していく必要があります。
 都といたしましては、今後とも、区市町村等と十分に連携しながら、新たな住まい方としての共同居住の方式を積極的に促進してまいります。
   [住宅局長戸井昌蔵君登壇]

○住宅局長(戸井昌蔵君) 公営住宅における多世代を対象とした共同居住についてのお尋ねにお答え申し上げます。
 個人の独立した生活を確保しながら、共同生活のための空間を持ち、ともに支え合う暮らし方は、高齢社会に対応するための居住形態の一つとして認識をしております。
 公営住宅における多世代を対象としたこのような居住形態につきましては、入居者の選考や入居後の運営など、管理面の課題がございますけれども、今後、国や区市町村と連携しながら研究をしてまいります。
   [港湾局長浪越勝海君登壇]

○港湾局長(浪越勝海君) 東京港の水門、排水機場の整備についてのお尋ねでございますが、これらの施設は、高潮対策のかなめとして、都民の生命と財産を守るという使命を果たしており、その良好な維持管理に努めているところでございます。
 東京港には、十九カ所の水門と四カ所の排水機場がありますが、そのほとんどがおおむね整備後三十年以上を経過しており、ご指摘の老朽化対策のみならず、耐震性向上を含めた大規模改修が必要となってきております。
 その整備に当たっては、事業規模として全体で四百五十億円程度と見込まれており、厳しい財政状況下ではありますが、事業の着実な推進を図っていく必要があると認識しております。
 このため、国に対して国庫補助の一層の拡充を働きかけるなど、事業実施に向け、鋭意取り組んでまいります。
   [消防総監池田春雄君登壇]

○消防総監(池田春雄君) 密集繁華街の防災対策についてでございますが、西新宿一丁目で発生した思い出横町の火災は、間取りが複雑など消防活動障害が多く、二十九店舗、七百二十三平方メートルが焼損したものでございます。
 ご指摘のとおり、都内には戦後間もなく建てられたもののうち、現行法令の適用が及ばない密集繁華街が幾つか存在しております。当庁といたしましては、このような地域に対して、立入検査や警防調査を行い、きめ細かな消防対策を樹立しているところでございます。
 今後、さらに春、秋の火災予防運動等をとらえまして、重点的に防火防災思想の高揚を図るとともに、店舗相互の協力体制の確立や発見、通報、初期消火等の訓練指導を徹底してまいります。

○六十七番(鈴木一光君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこの程度にとどめ、散会されることを望みます。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   [「異議なし」と呼ぶ者あり]

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 念のため申し上げます。
 ただいまご着席の方々には改めてご通知いたしませんから、さようご了承願います。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時二十一分散会

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