平成十一年東京都議会会議録第十六号

平成十一年十二月一日(水曜日)
 出席議員(百二十四名)
一番織田 拓郎君
二番中嶋 義雄君
三番服部ゆくお君
四番真鍋よしゆき君
五番吉住  弘君
六番松原 忠義君
七番中西 一善君
九番大西由紀子君
十番竹下 友康君
十一番馬場 裕子君
十二番福士 敬子君
十三番山本  信君
十四番くぼた 光君
十六番木内 良明君
十七番藤井  一君
十八番東野 秀平君
十九番原   環君
二十番田代ひろし君
二十一番三宅 茂樹君
二十二番川井しげお君
二十三番いなば真一君
二十四番菅原 一秀君
二十五番高島なおき君
二十六番藤田十四三君
二十七番大河原雅子君
二十八番沢西きよお君
二十九番西条 庄治君
三十番土屋たかゆき君
三十一番田中 智子君
三十二番浅川 修一君
三十三番清水ひで子君
三十四番吉田 信夫君
三十五番かち佳代子君
三十六番鈴木貫太郎君
三十七番森田 安孝君
三十八番谷口 卓三君
三十九番今井 悦豊君
四十番町田てるよし君
四十一番吉野 利明君
四十二番倉林 辰雄君
四十三番遠藤  衛君
四十四番野田 和男君
四十五番樺山 卓司君
四十六番黒須 隆一君
四十七番宮崎  章君
四十八番野村 有信君
四十九番藤田 愛子君
五十番田島 和明君
五十一番寺山 智雄君
五十二番林  知二君
五十三番和田 宗春君
五十四番藤岡 智明君
五十五番古館 和憲君
五十六番小竹ひろ子君
五十七番小松 恭子君
五十八番前沢 延浩君
五十九番大木田 守君
六十番曽雌 久義君
六十一番石川 芳昭君
六十二番白井 常信君
六十三番前島信次郎君
六十四番比留間敏夫君
六十五番新藤 義彦君
六十六番近藤やよい君
六十七番鈴木 一光君
六十八番小礒  明君
六十九番羽曽部 力君
七十番古賀 俊昭君
七十一番山崎 孝明君
七十二番山本賢太郎君
七十三番白井  威君
七十四番藤川 隆則君
七十五番坂口こうじ君
七十六番島田  久君
七十七番小林 正則君
七十八番大山とも子君
七十九番曽根はじめ君
八十番たぞえ民夫君
八十一番松村 友昭君
八十二番丸茂 勇夫君
八十三番五十嵐 正君
八十四番石井 義修君
八十五番萩谷 勝彦君
八十六番桜井良之助君
八十七番田村 市郎君
八十八番佐藤 裕彦君
八十九番三原 將嗣君
九十番星野 篤功君
九十一番大西 英男君
九十二番花川与惣太君
九十三番井口 秀男君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十七番大山  均君
九十八番山崎  泰君
九十九番尾崎 正一君
百番嶋田  実君
百一番東ひろたか君
百二番野村 友子君
百三番池田 梅夫君
百四番村松みえ子君
百五番植木こうじ君
百六番土持 正豊君
百七番中山 秀雄君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番松本 文明君
百十二番藤沢 志光君
百十三番川島 忠一君
百十四番矢部  一君
百十五番内田  茂君
百十六番内藤  尚君
百十七番三田 敏哉君
百十八番渋谷 守生君
百十九番田中 晃三君
百二十番奥山 則男君
百二十一番三浦 政勝君
百二十二番河合秀二郎君
百二十三番田中  良君
百二十四番西田ミヨ子君
百二十五番渡辺 康信君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(一名)
七十六番 島田 久君
 欠員
八番 十五番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山やすし君
出納長佐々木克己君
東京都技監都市計画局長兼務成戸 寿彦君
政策報道室長柿沼 伸二君
総務局長横山 洋吉君
財務局長木内 征司君
警視総監野田  健君
主税局長大塚 俊郎君
生活文化局長今沢 時雄君
環境保全局長齋藤 哲哉君
高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤 信之君
衛生局長今村 皓一君
労働経済局長大関東支夫君
住宅局長戸井 昌蔵君
建設局長古川 公毅君
消防総監池田 春雄君
教育長中島 元彦君
港湾局長浪越 勝海君
清掃局長安樂  進君
交通局長横溝 清俊君
水道局長赤川 正和君
下水道局長鈴木  章君
都立大学事務局長土肥 謙二君
多摩都市整備本部長久保田康治君
中央卸売市場長大矢  實君
選挙管理委員会事務局長鳴川 智久君
人事委員会事務局長中山 弘子君
地方労働委員会事務局長歩田 勲夫君
監査事務局長石綿 昌男君
収用委員会事務局長斉藤 好平君

十二月一日議事日程第一号
第一 第百八十六号議案
東京都個人情報の保護に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百八十七号議案
職員の服務の宣誓に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百八十八号議案
職員の分限に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百八十九号議案
職員の職務に専念する義務の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百九十号議案
職員の定年等に関する条例の一部を改正する条例
第六 第百九十一号議案
職員団体のための職員の行為の制限の特例に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百九十二号議案
職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
第八 第百九十三号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第九 第百九十四号議案
職員の懲戒に関する条例の一部を改正する条例
第十 第百九十五号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例
第十一 第百九十六号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例
第十二 第百九十七号議案
審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第百九十八号議案
東京都議会議員の選挙におけるポスター掲示場の設置に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第百九十九号議案
東京都議会議員の選挙における選挙公報の発行に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百号議案
東京都議会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第十六 第二百一号議案
東京都公債条例の一部を改正する条例
第十七 第二百二号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第十八 第二百三号議案
東京都計量検定所設置条例の一部を改正する条例
第十九 第二百四号議案
東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例
第二十 第二百五号議案
東京都教育委員会組織条例
第二十一 第二百六号議案
東京都教育委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第二十二 第二百七号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第二十三 第二百八号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第二十四 第二百九号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第二十五 第二百十号議案
義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
第二十六 第二百十一号議案
東京都文化財保護条例の一部を改正する条例
第二十七 第二百十二号議案
東京都スポーツ振興審議会に関する条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百十三号議案
東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第二十九 第二百十四号議案
東京都国土利用開発審議会条例
第三十 第二百十五号議案
東京都都市計画地方審議会条例の一部を改正する条例
第三十一 第二百十六号議案
東京都再開発地区計画等の案の作成手続に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第二百十七号議案
東京都開発審査会条例の一部を改正する条例
第三十三 第二百十八号議案
東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第二百十九号議案
東京都自動車排出窒素酸化物総量削減計画策定協議会条例の一部を改正する条例
第三十五 第二百二十号議案
東京都廃棄物の処理及び再利用に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第二百二十一号議案
東京都の福祉地区及び福祉に関する事務所設置条例の一部を改正する条例
第三十七 第二百二十二号議案
東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
第三十八 第二百二十三号議案
特別区国民健康保険事業調整条例を廃止する条例
第三十九 第二百二十四号議案
東京都立ナーシングホーム条例
第四十 第二百二十五号議案
東京都立養護老人ホーム条例
第四十一 第二百二十六号議案
東京都立老人医療センター条例
第四十二 第二百二十七号議案
東京都立板橋看護専門学校条例
第四十三 第二百二十八号議案
東京都養育院条例を廃止する条例
第四十四 第二百二十九号議案
東京都営空港条例の一部を改正する条例
第四十五 第二百三十号議案
東京都住宅基本条例の一部を改正する条例
第四十六 第二百三十一号議案
沿道区域指定の基準に関する条例の一部を改正する条例
第四十七 第二百三十二号議案
東京都水防条例の一部を改正する条例
第四十八 第二百三十三号議案
東京都市計画事業亀戸・大島・小松川第三地区第二種市街地再開発事業施行規程の一部を改正する条例
第四十九 第二百三十四号議案
東京都市計画事業亀戸・大島・小松川第五地区第二種市街地再開発事業施行規程の一部を改正する条例
第五十 第二百三十五号議案
東京都市計画事業白鬚西第三地区第二種市街地再開発事業施行規程の一部を改正する条例
第五十一 第二百三十六号議案
東京都市計画事業赤羽北地区第二種市街地再開発事業施行規程の一部を改正する条例
第五十二 第二百三十七号議案
東京都市計画事業北新宿地区第二種市街地再開発事業施行規程の一部を改正する条例
第五十三 第二百三十八号議案
東京都地方公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第五十四 第二百三十九号議案
東京都給水条例の一部を改正する条例
第五十五 第二百四十号議案
東京都工業用水道条例の一部を正する条例
第五十六 第二百四十一号議案
東京都テレホンクラブ等営業及びデートクラブ営業の規制に関する条例の一部を改正する条例
第五十七 第二百四十二号議案
都立羽田地区総合学科高等学校(十一)建設工事請負契約
第五十八 第二百四十三号議案
都営住宅一一H-一〇七東(勝どき一丁目)工事請負契約
第五十九 第二百四十四号議案
美山トンネル(仮称)整備工事請負契約
第六十 第二百四十五号議案
荒川横断橋梁(仮称)鋼けた製作・架設工事(その四)請負契約
第六十一 第二百四十六号議案
東京都板橋清掃工場プラント更新工事請負契約
第六十二 第二百四十七号議案
東京都足立清掃工場プラント更新工事請負契約
第六十三 第二百四十八号議案
当せん金付証票の発売について
第六十四 第二百四十九号議案
水道事業の事務の委託について
第六十五 第二百五十号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十六 二百五十一号議案
職員の給与の特例に関する条例
第六十七 第二百五十二号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六十八 第二百五十三号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十九 第二百五十四号議案
学校職員の給与の特例に関する条例
第七十 第二百五十五号議案
東京都公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例
第七十一
平成十年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について

   午後一時開会・開議

○議長(渋谷守生君) ただいまから平成十一年第四回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(渋谷守生君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、前島信次郎君を八十三番から六十三番に、五十嵐正君を六十三番から八十三番に、それぞれ変更いたします。

○議長(渋谷守生君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   十番 竹下 友康君 及び
 六十六番 近藤やよいさん
を指名いたします。

○議長(渋谷守生君) この際、謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民岩本薫氏には、去る十一月二十九日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(渋谷守生君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(會田紳次君) 平成十一年十一月二十四日付、東京都告示第千二百八十五号をもって、知事より本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案七十件の送付がありました。
 次に、東京都選挙管理委員会委員長より、東京都選挙管理委員及び同補充員の任期について、来る平成十一年十二月二十二日をもって任期を満了するとの通知がありました。
 次に、知事より、平成十一年第三回定例会の会議において同意を得た東京都監査委員及び東京都教育委員会委員の任命について発令したとの通知がありました。
 次に、知事より、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、変更の通知がありました。
 次に、東京都人事委員会より、平成十一年十月六日付で、都の一般職の職員の給与等について勧告がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について報告がありました。
 内容は、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告についてであります。
 次に、知事より、地方自治法第二百四十一条第五項の規定により、平成十年度東京都区市町村振興基金、東京都土地開発基金及び東京都用品調達基金の運用状況に関する調書等の提出がそれぞれありました。
 次に、監査委員より、平成十一年度各会計財務監査平成十年度執行分その二及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。
 最後に、特別区に執行委任した事務に関する監査結果の報告が、葛飾区外二十二区より四十三件提出されました。

○議長(渋谷守生君) この際、議員の表彰について報告いたします。
 平成十一年十月二十八日付をもちまして、全国都道府県議会議長会において、自治功労者として表彰を受けられました方々をご報告申し上げます。
 在職三十年以上、萩谷勝彦君。
 在職十年以上、白井威君、野村友子さん、東ひろたか君、森田安孝君、鈴木貫太郎君、植木こうじ君、松本文明君。
 ここに謹んで敬意を表します。
   〔拍手〕

○議長(渋谷守生君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第三回定例会に提出されました、大西由紀子さん、福士敬子さん、藤田十四三君、藤田愛子さん及び坂口こうじ君の文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(渋谷守生君) 次に、先般の人事異動に伴い、異動のありました説明員をご紹介いたします。
 高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(渋谷守生君) 以上をもって説明員の紹介は終わりました。

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の行財政改革基本問題特別委員の辞任及び専任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員より、それぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました特別委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。
   行財政改革基本問題特別委員辞任・選任名簿

○辞任
 竹下 友康君(民主) 大河原雅子君(生ネ)
 黒須 隆一君(自民) 花川与惣太君(自民)
 嶋田  実君(民主) 内藤  尚君(自民)
 渋谷 守生君(自民)
       〔以上 平成十一年十月一日付〕

○選任
 三宅 茂樹君(自民) 町田てるよし君(自民)
 野村 有信君(自民) 寺山 智雄君(民主)
 清原錬太郎君(自民) 尾崎 正一君(民主)
 矢部  一君(自民)
       〔以上 平成十一年十月一日付〕

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の地方分権推進特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員より、それぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました特別委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。
   地方分権推進特別委員辞任・選任名簿

○辞任
 いなば真一君(自民) 遠藤  衛君(自民)
 野田 和男君(自民) 樺山 卓司君(自民)
 野村 有信君(自民) 藤田 愛子君(生ネ)
 小林 正則君(民主) 大西 英男君(自民)
 清原錬太郎君(自民) 奥山 則男君(自民)
       〔以上 平成十一年十月一日付〕

○選任
 馬場 裕子君(民主) 菅原 一秀君(自民)
 吉野 利明君(自民) 比留間敏夫君(自民)
 鈴木 一光君(自民) 星野 篤功君(自民)
 井口 秀男君(自民) 小山 敏雄君(自民)
 大山  均君(自民) 桜井  武君(自民)
       〔以上 平成十一年十月一日付〕

○議長(渋谷守生君) 次に、東京都議会友好代表団について申し上げます。
 本議会を代表いたしまして、去る十月十九日から二十三日まで北京市へ、去る十一月八日から十二日までソウル特別市へ、それぞれ友好代表団を派遣いたしました。
 友好代表団を代表いたしまして、それぞれ報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
 北京市訪問東京都議会友好代表団副団長三田敏哉君。
   〔百十七番三田敏哉君登壇〕

○百十七番(三田敏哉君) 東京都議会友好代表団の北京市訪問についてご報告申し上げます。
 渋谷守生議長を団長として、各会派代表から成る友好代表団八名は、張 健民北京市人民代表大会常務委員会主任の招請を受け、平成十一年十月十九日から二十三日までの五日間、北京市を訪問いたしました。
 この代表団は、今年度、友好都市提携二十周年を迎えた東京都と北京市との友好交流をより一層推進するとともに、両都市に共通する課題であるごみ・環境問題及び都市の魅力について、視察及び意見交換を行うことを目的といたしました。
 これら訪問の具体的な内容につきましては、報告書として取りまとめ、本日、皆様方のお手元にお配りいたしておりますので、私からは、その概要についてご報告を申し上げます。
 まず、友好交流の推進についてでございますが、最初に張 健民北京市人民代表大会常務委員会主任及び常務委員会関係者を表敬訪問し、東京・北京両都市が昭和五十四年に友好都市提携を締結して以来実施してまいりました議会同士の交流を初め、文化、経済、教育、スポーツ、医療、行政管理などの広範な分野における多彩な交流の成果を確認し合いました。
 また今後、東京都と北京市との友好交流と日中両国の理解と友情を一層推進していくために、東京都議会と北京市人民代表大会常務委員会とがさらに強固な相互協力と信頼関係を築いていくべきと話し合い、意見の一致を見ました。
 続いて友好代表団は、劉 淇北京市長及び北京市人民政府関係者、並びに日本の国会に当たる全国人民代表大会常務委員会の何 魯麗副委員長を表敬訪問いたしまして、東京・北京及び日中両国の一層の友好親善に努めました。
 なお、これらの模様は、現地の新聞等で報道され、北京市民に広く紹介されておりました。
 また、ことしは特に、東京・北京友好都市提携二十周年を記念して、東京消防庁も技術協力しております北京消防訓練センターの開所式への出席や、北京市が力を入れている緑化に協力するため、かつては荒涼とした地であったという世紀林において記念植樹を行いました。
 さらに、北京の名門中学であり、日本の高等学校に相当する北京一〇一中学を訪問いたしました。生徒たちは百点満点を超える学校を目指すことから一〇一と名づけられたこの学校では、高校生短期交流事業で滞在中の六名の東京都立高校生が、北京市の高校生と一緒に行動している姿に接することができました。まさに二十一世紀の主役となる若い世代の交流の大切さを実感いたしたところでございます。
 次に、ごみ・環境問題についてでございますが、北神樹ごみ埋立処分場において、北京市の清掃事業の現状や処分場の概要について説明を受けた後、実際に処分場を視察いたしました。そして、意見交換を行ったほか、北京市の大気汚染についても、その実態や対策を把握し、意見交換をしてまいったところでございます。
 さらに、魅力ある都市づくりについてでは、北京市が最近特に力を注いでいる観光の現況について、故宮、天安門広場、万里の長城、頤和園等を視察し、今後の東京の観光振興のあり方を考えていく上で参考となりました。
 以上、北京市訪問の概要を申し上げましたが、友好代表団一同は、この二十年間、東京・北京両都市が営々と築き上げてきました成果が、両都市の友好関係の一層の緊密化と日中両国の友好親善に極めて大きな貢献を果たしていることを改めて確認するとともに、今回の訪問を通じて、両都市の揺るぎない友好関係のきずなが一層深まったことを確信しております。
 今後とも、両都市は、大都市が持続的に発展していくために、技術や知識の交流をさらに進めるとともに、我々議会に籍を置く者といたしまして、ともにその方策について大いに意見交換をしていく必要性を実感いたしました。
 なお、今回の訪問において、特に中国側から、両都市及び日中の末永い友好関係を重視している旨の発言が多く聞かれました。いうまでもなく、都市間の交流は、世界平和の第一歩であります。友好代表団一同は、日中両国の平和のため、ひいてはアジア、そして世界の平和のために、今後とも両都市が相互理解を一層深め、さまざまな分野において友好交流を拡大、発展させ、その成果を次の世代に引き継ぐことを心から願っております。
 最後に、このたびの訪問に当たりお世話をいただきました、北京市人民代表大会常務委員会主任、秘書長及び法制工作委員会主任並びに北京市長を初め多くの方々に対して、団員一同、心より厚く御礼を申し上げまして、私の報告とさせていただきます。
 以上です。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 続きまして、ソウル特別市訪問東京都議会友好代表団団長五十嵐正君。
   〔八十三番五十嵐正君登壇〕

○八十三番(五十嵐正君) 東京都議会友好代表団のソウル特別市訪問についてご報告申し上げます。
 各会派の代表から成る友好代表団八名は、金 箕英ソウル特別市議会議長の招請を受けて、平成十一年十一月八日から十二日までの五日間、ソウル特別市を訪問いたしました。
 このたびの代表団は、東京都とソウル特別市との友好交流をより一層推進するとともに、両都市に共通する課題である経済、文化における対日開放施策や都市基盤の整備及び都市観光施策を基本テーマとして、精力的に関係者との会見及び意見交換を行い、関係施設等を視察してまいりました。
 これら訪問の具体的な内容につきましては、報告書を取りまとめ、本日お手元にお配りしておりますので、私からは、その概要についてご報告を申し上げます。
 まず、友好交流についてでございますが、最初に金 箕英ソウル特別市議会議長及び市議会関係者を表敬訪問し、一九八八年に友好都市提携を結んでから今日まで、幅広い分野における交流が行われ、両都市の相互理解と友好が一層進展したことを確認し合いました。
 また、この後開かれた懇談会では、財政の悪化、交通渋滞などソウル特別市が抱えている五つの課題について紹介され、さらに介護制度を含む高齢者問題、青少年育成問題など両都市に共通する課題についても、相互に活発な意見交換を実施してまいりました。
 続いて友好代表団は、康 泓彬ソウル特別市副市長を表敬訪問して、今後の東京都とソウル特別市との交流について精力的に意見交換を行い、一層の友好親善に努めてまいりました。
 次に、テーマ別の視察及び意見交換でありますが、経済、文化における対日開放施策については、韓国へ進出している日本企業を訪問して企業の視察を行うとともに、ソウル特別市からも外国人投資環境の説明を受け、問題点の把握に大変参考となりました。
 都市基盤の整備については、交通渋滞対策や住宅問題に関して、実際に現場を視察し、市民との交流の中で学ぶことができたことは大きな成果でありました。
 また、羽田の国際空港化やシャトル便の運行などについても、関係者との意見交換を通して、ソウル特別市でも共通の願いがあることを確認できました。
 都市観光施策についてでありますが、訪韓日本人が二百万人を超え、海外渡航先が世界で一位となっている韓国の状況について、韓国観光公社の訪問、調査を行い、また、二〇〇二年に開催されるワールドカップサッカー競技場の建設現場などを視察してまいりました。
 特に、ワールドカップサッカーの開催を軸として、シティーセールスを積極的に展開していこうとするソウル特別市の姿勢は、東京都における観光施策を展開していく上で大変参考になったところであります。
 以上、ソウル特別市訪問の概要を申し上げましたが、今回の訪問により、この十一年間、両都市が営々と築き上げてきた揺るぎない友好関係のきずなが一層深められたものと確信しております。
 また、明年の二〇〇〇年はソウル特別市を東京都にお迎えする年となりますが、今後とも、両都市が持続的に発展していくためには、お互いの都市問題と、その解決策について大いに議論し、意見交換を行い、みずからの政策形成に結びつけていくことが重要であると認識いたしました。
 なお、このたびの私ども友好代表団の提唱により、ソウル特別市議会でも韓日議員連盟をつくるため、今後検討されることが決まるなど、これからさまざまな分野で両都市の友好交流がさらに深まり、二十一世紀に向けて拡大、発展していくことを強く確信した次第であります。
 最後に、このたびの訪問に当たりお世話いただきました、ソウル特別市議会議長、副議長並びにソウル特別市副市長を初め多くの方々に、団員一同、心より厚く御礼を申し上げまして、私の報告とさせていただきます。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 以上をもって東京都議会友好代表団の報告は終わりました。

○議長(渋谷守生君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十二月十六日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十六日間と決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十一年第四回都議会定例会の開会に当たり、都政運営に対する所信を申し述べ、都議会並びに都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 天皇陛下におかせられましては、本年御在位満十周年を迎えられ、去る十一月十二日、天皇皇后両陛下ご臨席のもとに記念式典が挙行されました。首都東京の知事として、一千二百万都民とともに、心よりお祝いを申し上げます。
 十一月二十九日、名誉都民の岩本薫さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 初めに、台湾大地震について申し上げます。
 九月二十一日、台湾中西部で大地震が発生し、甚大な被害がもたらされました。多数の犠牲者に対し、深く哀悼の意を表します。また、被災者の皆様にお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く大災害の痛手から立ち直られることを心から願っております。
 東京都は、見舞金の贈呈や支援物資の提供を行うとともに、被害状況、応急対策、さらには震災復興に向けた取り組みなど、今回の地震の実態を詳しく調査するため、専門家などによる調査団を派遣いたしました。
 私も、復興のための都市計画に関する協力要請を受けて、被災地を視察し、大地震のすさまじさに言葉を失うと同時に、初動時の救援活動が的確に行われたことなど、多くの示唆を得ることができました。
 東京区部直下での大規模地震に備えるため、来年九月三日に実施する東京都総合防災訓練などに、これらの教訓を生かしてまいります。
 次に、首都移転問題について申し上げます。
 国会等移転審議会における移転先候補地の選定作業は、当初の予定よりおくれており、答申はまだ行われておりません。この問題に対する都民や国民の認識は極めて低く、このまま国が手続だけを進めれば、我が国の将来に取り返しのつかない禍根を残すことは明らかであります。
 首都移転については、国に対して、この際勇気を持って白紙撤回するよう、改めて強く申し入れます。
 首都移転は、首都東京の問題だけではなく、国家全体を危機に陥れかねぬ、極めて重大な問題であります。
 去る九月、私は、衆議院の国会等移転特別委員会において、移転に反対する側の知事として初めて意見表明を行いましたが、この場での議論を通じて、国家的見地に立った論理展開や、広く国民全体に議論を喚起していく運動の必要性を痛感いたしました。
 このため、都議会を初め区市町村、民間団体などと一体となった、首都移転に断固反対する会を直ちに発足させるとともに、全国の自治体に移転反対を呼びかけることとし、副知事を筆頭に幹部職員が多くの自治体を訪問して協力を要請いたしました。
 あわせて、内閣法制局や特別委員会の委員に対して、これまで明らかにされていない首都の定義や天皇の国事行為に与える影響などについて、文書で質問を行いました。その結果、首都移転に断固反対する会のメンバーからの回答を除いては、納得のいく回答はいまだにほとんどなく、いかにも国民的議論が不十分であるという印象は否めません。
 我が国は現在、六百兆円にも上る膨大な借金を抱えております。また、低経済成長社会を迎え、新たに生み出される国富に限りがある中で、福祉、環境、情報など、新時代を切り開き、豊かな国民生活を確保していくためのさまざまな対応を迫られております。国際社会で強い影響力を発揮できる国力も維持していかなくてはなりません。莫大な投資を行い、時間をかけて新しい首都を建設することが許される国家的状況にないことは明白であります。
 今、我が国が選択すべき道は、地方分権と規制緩和を徹底的に進め、それぞれの都市や地域が、これまで培ってきたストックを最大限に生かしながら互いに個性を競い合い、最少の投資で最大の効果を生み出す国土づくり、都市づくりを進めることであります。現在進められている首都移転計画は、バブルが生んだ不良債権と同様、将来大きな負の遺産となりかねません。
 都民や国民の皆さんの中には、首都移転の意義と進め方について、大きな疑問と強い不信を抱いている方が大勢いることと思います。私は、来る十二月十七日、こうした全国からの声を結集し、首都移転に断固反対する国民大集会を開催いたします。日本の将来のあるべき姿を真剣に考えていくため、都民の皆さんはもちろん、全国の皆さんにもご参加いただくよう、お願い申し上げます。
 我が国の首都機能は、これまで東京を核として、東京圏を構成する七都県市が分担、連携しながら、その役割を担ってまいりました。
 したがって、日本全体の視点から首都のあり方を考える上では、東京圏みずからが、圏域全体の将来構想を国民にわかりやすく示していく必要があります。
 私は、人口三千三百万人を擁する東京圏が、これからも政治、経済、文化などの諸機能の中心にふさわしい圏域であり続けることが、我が国全体の国際競争力の強化や経済の活性化を図るために不可欠であると考えます。そのためには、東京圏全体の多彩な拠点都市が適切に役割を分担しながら、二十一世紀の首都機能を十全に発揮できる地域づくり戦略を明らかにしなくてはなりません。
 こうした観点に立って、先月開催された七都県市首脳会議において、首都を引き続き担っていくための東京圏のあり方について、直ちに調査に着手することを決定いたしました。
 二十一世紀は、超音速旅客機や情報ハイウエーなどにより、既存の空間構造が大変革を遂げる時代であります。東京圏もこれまで蓄積されてきたストックを十分に活用しながら、衣がえを図っていかなければなりません。
 私は、五十年先を見据えた東京のあるべき姿を明らかにすると同時に、七都県市相互の連携を一層緊密にしながら、既成市街地の再構築、圏域内での移動時間の短縮、東京湾沿岸域の有効利用など、メガロポリスが持つ潜在的な力を引き出すための方策に、全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、行財政改革に向けた当面の取り組みについて申し上げます。
 財政再建をなし遂げるためには、何よりもまず、最少のコストで最大の行政効果が発揮できるよう、都庁が一丸となって、さらなる徹底した内部努力を行い、行政コストを可能な限り縮減していかなくてはなりません。また、懸命な内部努力の推進があってこそ初めて、聖域を設けることのない厳しい施策の見直しや再構築に、都民や区市町村の理解と協力が得られるものと思います。
 私は、こうした姿勢を都民の皆様にお示しするために、都政史上かつてない、給料の四%削減を含む、全国で最も厳しい内容となる職員給与の削減を、すべての職員を対象に時限的措置として実施することといたしました。
 今回の措置は、都みずからによる自主的な財政再建の第一歩となるものであります。私は、都財政最大の危機を克服し、東京を再生していくため、職員一人一人がこの非常事態を十分に認識し、それぞれの立場で最善を尽くしてくれることをかたく信じており、職員とともに全力を挙げて財政再建に取り組んでいく決意であります。
 都民に信頼される都政を実現していくためには、時代を先取りし、限られた財源や人材を機動的かつ効率的に活用しながら、都民にとって最大の成果を上げていくことが求められております。しかしながら、現在の都庁の行政体質の中には、職員みずからも指摘する多くの課題があります。都庁内部や外部との情報ネットワークのおくれ、仕事に対する創意工夫への評価の欠如、意思決定に要する時間のロス、自発的な見直しが行われにくい仕組みなどを改善していくことが急務であります。
 今後、私は、スピードの重視とコスト意識の徹底、それがもたらす成果の重視を、都庁の体質を変えていくための基本的な視点とし、各職場において職員一人一人に改革の意識を浸透させるとともに、都庁の行財政システムを根本から見直してまいります。
 行政改革を進めるに当たっては、職員一人一人がこれをみずからの課題として受けとめ、取り組むことが必要です。このため、それぞれの職場で改革推進ミーティングを設置し、みずからの仕事を見詰め直しながら、問題点を解決するための方策の検討を開始いたしました。今後、各職場における行政改革への取り組みを活発化し、人事制度や予算・会計制度、執行体制などの改革を進めてまいります。
 東京都の行政活動を客観的に評価するため、九月から行政評価制度の試行を実施しております。今後、試行を拡大していくとともに、政策上の目標を示した東京都政策指標を設定し、行政評価の基本的な指標に位置づけることにより、制度の充実を図ってまいります。
 地方分権については、来年四月に迫った地方分権一括法の施行による分権改革に対応するため、既に国の政令等の改正が行われた事務に関する条例の制定及び改正を、今定例会に提案しております。また、都から区市町村への一層の権限移譲を進め、区市町村の自主性、自立性の向上を図るため、来年九月を目途に第二次東京都地方分権推進計画を策定し、都みずからが積極的に、分権時代にふさわしい新たな関係を構築してまいります。
 都区制度改革については、まず清掃事業の移管に関し、これを来年四月に特別区へ円滑に引き継ぐため、移管後と同様の執行体制による試行を、二月末から行うことといたしました。また、清掃事業を除いた事務事業の具体的内容と範囲を確定し、これに伴い必要な条例の改正を今定例会に提案しております。新たな都区財政調整制度の構築に当たっては、都区双方ともに厳しい財政状況の中ではありますが、安定的な都区関係を維持し、適切な財源配分とするため、引き続き、早期合意に向けて、都区間の協議を鋭意進めてまいります。
 次に、過日策定した危機突破・戦略プランについて申し上げます。
 このプランは、東京が直面する危機を打開するため、緊急かつ戦略的に対処すべき課題に焦点を絞り、当面、重点的に取り組む具体的な施策を取りまとめた、二十一世紀への第一ステップとなる計画であります。
 首都東京が直面している危機は、雇用や健康、教育、老後への不安など、都民生活に直接及ぶ危機に加えて、産業活動の停滞を初めとする日本の牽引車としての危機が重なり、いわば危機の二重構造をなしていることが大きな特徴となっております。
 今、東京に必要なことは、潜在的な力を掘り起こし、本来の能力を思う存分発揮させることであります。このことを通じて、二十一世紀においてもアジアを代表するグローバルプレーヤーとして、その存在を世界に示すとともに、都民生活に希望の光をともすことが可能となります。
 プランでは、こうした認識のもとに、現在の危機を乗り越えるための五つの戦略を立て、当面早急に取り組むべき施策、事業を二十八の政策の苗として植えております。また、今日の財政危機を招いた要因の一つでもある都庁の行政体質を根本から見直していくため、抜本的な改革に向けた取り組みの方向性をお示ししました。私は、これらの苗が育ち、豊かな実りのときを迎えるまで、粘り強く東京の再生に取り組んでいく覚悟であります。
 東京の未来を切り開いていくためには、まず目標とすべき望ましい東京の姿を掲げなければなりません。私は、第一に、だれもが創造力を発揮できる東京、第二に、都民が安心して生活できる東京、第三に、先駆的なメッセージを発信できる東京を提起いたしました。
 望ましい東京の姿を実現するためには、自立した個人が失敗を恐れずに行動できる環境のもとで、その努力の集積が社会の発展に結びつくと同時に、社会が生み出すさまざまな成果が個人の人生の充実のために生かされる、いわば個人と社会の発展的相乗関係が必要であります。これからの都政は、活力と安心、自立と連帯を兼ね備えた東京の実現を目指して、都民の皆さんとともに前進してまいります。
 このプランは、変革を進める基点の書ともなるものであります。今後、私は、プランで示した基本的な考え方や具体的な取り組みを足がかりとして、総合的、体系的な都市構想を来年度に策定いたします。その中で、東京の目指すべき中長期的な将来像を描くとともに、未来を切り開くためのビジョンと政策展開の道筋を明らかにしてまいります。
 次に、危機を突破するための戦略に基づく、当面取り組むべき政策の展開について申し上げます。
 東京都は、昭和四十年代に、全国に先駆けた福祉施策を開始し、その後の国や他の地方自治体の施策を先導する役割を果たしてまいりました。特に、福祉手当や医療費助成などの経済給付的事業は、不十分であった国の所得保障を補完すると同時に、介護サービスが不足している中で、経済的負担の軽減を通して、福祉水準を確保する役割を担っていました。
 しかし、今日では、国の社会保障制度やホームヘルプサービスなどの一定の充実が図られる中、こうした事業の見直しが必要になっています。都民の所得水準も総体的に向上しており、平均的な所得に関しては、高齢者と他の世代との格差がなくなりつつあります。
 都財政の大幅な伸びが期待できない中で、子育てや介護への支援を初め、今後ますます増大が見込まれる在宅サービスなどのニーズに対応していくためにも、現在の社会経済状況を踏まえた施策の見直しを図っていかなくてはなりません。
 私は、社会の活力を保ちつつ、だれもが人間としての尊厳を持って安心して暮らせるよう、自分の生活は自分の責任で営むことを基本とした上で、あくまでも自助努力だけでは生活が困難な方々を、社会が連帯して支える安心の仕組みが必要であると考えます。個人の自立・自助を基本としつつ、地域、民間、行政などが社会的に連帯して支援する、自助、共助、公助が適切に組み合わされた福祉システムの構築が求められているのであります。
 今、自治体にとって重要な課題は、民間団体や企業の役割を重視しながら、地域の実情や利用者のニーズに即したきめの細かいサービスの供給を確保するとともに、健康の維持や社会参加の促進など、住民が生きがいを持って暮らせるような取り組みを推進していくことであります。
 私は、経済給付的事業を、社会経済状況の変化への対応、国の社会保障制度との整合、負担の公平性の確保などの観点から見直す一方、緊急性、必要性の高い在宅サービスを中心とした、福祉サービスの量的、質的な一層の充実に向け、施策の転換を図ってまいります。
 来年四月から、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みとして、いよいよ介護保険制度が実施されます。この制度では、利用者自身による選択、主体性の尊重を基本として、福祉、保健、医療にわたる介護サービスが、多様な事業者から総合的、効率的に提供されることになります。
 都の役割は、保険者となる区市町村と連携を密にしながら広域的な調整を行い、介護サービス基盤の整備などを支援していくことにあります。このため、年度内に介護保険事業支援計画を策定し、介護保険施設の整備目標と主な在宅サービスの基盤整備の方向を明らかにいたします。また、介護サービス情報提供システムや、サービスを客観的に評価する第三者評価のモデル事業の実施、権利擁護のための仕組みの整備など、利用者本位のサービス利用を支える仕組みをつくってまいります。
 現代は、精神的な価値よりも金銭的・物的価値、社会的責任よりも権利意識が優先するなど、社会における価値のバランスが崩れ、自己中心的な生き方が蔓延しております。また、家庭や学校そして地域での子どもの育成にかかわる教育力が著しく低下し、これを助長する社会風潮も目に余るものがあります。
 過日発生した、若い未熟な母親による幼女殺害という痛ましい出来事は、まさにこうした社会のゆがみを象徴しているといっても過言ではありません。今や、若い親たちも子どもたちも、社会を生きていく上での基本的なルールを守れず、欲望や衝動を抑制する耐性や、言葉による問題解決能力を失いつつあります。
 私は、この危機的状況を克服する取り組みの必要性を、父親、母親そして社会全体に問いかけたいと考え、心の東京革命を提唱してきましたが、先月、その推進に向けた取り組みの方向素案を発表いたしました。心の東京革命とは、次代を担う子どもたちに対して、親と大人が責任を持って正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくみ、人が生きていくための当然の心得を伝えていく取り組みであり、東京都が全国に先駆けて展開していきたいと思います。
 今回の素案では、取り組みを推進していくための原則として、親と大人が責任を持つ、社会全体で取り組んでいく、幼児期からのしつけを重視する、多くの体験、経験を重ねさせていく、の四つを提起し、これらを踏まえて、家庭、学校、地域、そして社会全体が、その教育機能を発揮させていく具体的な施策を掲げております。
 とりわけ、幼児期の子どもに最も大きな影響力を持つ母親への意識啓発を重点的に行うため、MXテレビなどによる育児やしつけに関する啓発番組の放送、子育てマニュアルの作成などを進めます。また、都内の小中学生を中心にさまざまな体験活動を行うトライ&チャレンジふれあいキャンペーン、福祉施設や病院など都庁職場を活用した体験学習、さらには、家庭や地域の教育力を強化するため、子ども家庭支援センターの整備、ユースワーカーの養成などに取り組みます。
 また、心の東京革命を都民と一体となった社会的ムーブメントとして効果的に展開していくため、毎日きちんとあいさつさせよう、他人の子どももしかろうなど、わかりやすい標語による心の東京ルールを作成し、これをキャンペーンに活用することといたしました。
 今後、推進体制の整備を図るため、区市町村や関係者団体の参加を得て、心の東京革命推進会議を設置するとともに、今回の素案について、広く都民の皆さんや関係者からご意見をいただき、来年六月を目途に、心の東京革命の取り組み方針・行動案を策定いたします。
 八月末から三カ月にわたって展開したディーゼル車NO作戦は、インターネット上で熱心な議論が交わされるなど、東京だけではなく全国でも大きな反響を呼び、都民や事業者などから、延べ一千件を超える意見や提案が寄せられました。
 また、海外からも東京の取り組みは注目されております。近年では、ヨーロッパでも、ディーゼル車排ガス規制は大幅に強化されており、大型貨物車が排出する粒子状物質に対する規制値は、現在、将来とも、日本よりもはるかに厳しくなっております。
 私は、改めて、この問題に対する各方面の関心の高さを思い知らされると同時に、ディーゼル車対策の強化が急務であることを痛感いたしました。
 最近発表された調査によれば、東京では、ディーゼル車から排出される微粒子が、肺がんによる死亡原因の実に一六%を占めると推計されており、全国で見た場合の九%を大きく上回っております。都民の健康への深刻な影響を考えると、現在のディーゼル車は、東京での利用にふさわしくないといわざるを得ません。
 私は、都内を走行するディーゼル車に、ガソリン車などへの代替や微粒子を除去する装置の装着を、一定の猶予期間を置いた上で、順次義務づけてまいります。また、ディーゼル車への経済的優遇措置となっている軽油引取税の是正を国に要請するなど、都民一人一人に対して自動車の使い方の転換を促す、経済的手法の導入を図ってまいります。
 この問題の解決には、自動車メーカーの理解と協力が欠かせません。排ガス浄化や燃料改善の早期実現によって、ディーゼル車の環境への負荷をより少なくしていくことが大切です。昨日、私は、各ディーゼル車メーカーの代表と意見交換し、技術開発などについて要請をいたしました。
 今後、都民の皆さんや事業者の方々などからいただいた意見や提案、議論を踏まえて、東京が選択すべきディーゼル車対策の基本的な考え方を早急に取りまとめ、新たな展開方針をお示ししてまいります。
 今日の環境問題は、自動車公害に見られるように、都民が被害者であると同時に、加害者の側面もあるなど、かつての産業型公害とはその性格が異なっております。このため、工場などの固定発生源に対する規制を中心としたこれまでの仕組みでは、十分に対応することができません。
 去る十月、東京都環境審議会から、こうした観点を踏まえて、現行の公害防止条例の全面改正を目指した「中間のまとめ」が公表されました。この中では、自動車使用の制限を初め、二十一世紀を見据えた先駆的な仕組みを積極的に導入すべきことが示されております。
 例えば、自動車公害対策に加えて、ダイオキシン類対策として、小型焼却炉に対する使用禁止を含む厳しい規制を設けることや、環境負荷の低減に向けた総合的な管理や配慮を事業者等に求める、新たな制度の導入を求めております。
 今後、年度内に審議会から最終答申をいただいた上で、さらに検討を積み重ね、来年中の条例改正に向けて全力を尽くしてまいります。
 我が国の中小企業が持つ技術力を評価し、多様な資金調達の道を開くためのさまざまな試みが活発になっています。私は、この間の東京都の取り組みが、民間の新たな市場創設の動きや政府の対応を加速させ、先導的な役割を果たしてきたものと考えております。
 かねてより検討を進めてまいりました債券市場の創設については、本日、第一弾の債券発行の具体的なスキームを公表いたしました。我が国で初めて、行政主導により、数多くの中小企業への新規融資をもとに証券化し、来年三月を目途にローン担保証券を発行いたします。
 また、将来性のあるベンチャー企業を育成するため、都や国内外のベンチャーキャピタルなどの出資により、経営コンサルティング機能を備えた投資事業有限責任組合を設立し、民間からの投資の呼び水となる資金の供給、民間投資ノウハウの活用、さらには都の施策との効果的な連携を進めてまいります。
 産業振興ビジョンの「中間のまとめ」を、先月、発表いたしました。新たな策定手法として、インターネットにより政策提案を公募したチャレンジ・プロジェクトには、地域や事業者の知恵と力が満ち満ちております。
 例えば、大田区の企業からは、最新の情報技術を駆使し、技術や製品に関する情報を共同で国内外に受発信するシステムが提案されております。私は、個々の企業や行政だけでは解決できない問題に、地域のネットワークを活用していく試みとして、こうしたアイデアの持つ可能性を高く評価いたします。
 東京の産業、都市活動を支える道路は、容量を上回る自動車交通量に加えて、路上駐車による通行の阻害などもあり、慢性的な渋滞に見舞われております。このため、交通事故の多発や健康への悪影響、環境問題の発生に加えて、渋滞による経済損失は、年間実に約四兆九千億円にも上っております。こうした自動車交通に伴う諸問題を解決に導くためには、交通容量の拡大と交通需要の調整の両面から、交通円滑化対策を重点的、総合的に展開していくことが必要であります。
 そのために、まず、通過交通の都心部への流入を避けることで、交通の円滑化に大きな効果を発揮する、首都圏中央連絡道路、東京外郭環状道路、首都高速中央環状線のいわゆる三環状道路について、国及び関係自治体と連携を図りつつ整備の促進を図ります。
 とりわけ、整備がおくれている東京外郭環状道路については、地域環境の保全やまちづくりの観点から、自動車専用部の地下化を基本として、計画の具体化に取り組んでまいります。また、自動車の利用者を公共交通機関の利用に誘導するために、鉄道や地下鉄、新交通システムなどを体系的に整備するとともに、乗り継ぎなどの利便性の向上を図ります。
 先月、東京の交通改善の基本的な考え方を総合的、体系的に示した交通需要マネジメント東京行動プランの案を公表いたしました。このプランでは、現在、時速十八・五キロにとどまっている区部の平均走行速度を、二〇一〇年までに二十五キロ以上にすることを目標に設定しております。自動車交通量を現在の水準に抑えるため、交通需要を調整する手法として、駐車マネジメントや混雑地域におけるロードプライシングの導入など、九つの重点施策を掲げました。
 今後、広く都民、事業者の皆様からご意見を伺いながら、来年の二月に最終的なプランを策定いたします。
 港湾、空港、流通業務施設、道路などの物流機能は、産業経済を支える基盤であり、物流のトータルコストの低減に向けて、ハード、ソフトの両面から取り組みを進めていくことが必要です。私は、首都圏全体を視野に入れ、物流の効率化を推進するための総合的な施策の検討に着手し、来年度策定する都市構想において、その基本的な考え方を明らかにしてまいります。
 首都圏における国際航空需要が増加の一途をたどっている中で、国内はもとより、近隣アジアなど、海外からも羽田空港への国際線の乗り入れを求める声が高まっております。羽田空港は、沖合展開事業の進展により、空港容量が拡大するとともに、来年三月の新B滑走路の完成を機に、全滑走路の二十四時間使用が検討されるなど、改めて国際線が就航できる空港に生まれ変わりつつあります。こうした時期をとらえ、その早期実現に向けた諸活動を展開してまいります。
 十月には、横田基地の軍民共用化による効果や影響などを分析した、調査結果を公表いたしました。二〇一五年の横田飛行場の民間航空需要は、年間約二万便と予測され、その場合の騒音影響範囲は、今回の推計では、米軍機の騒音が最大値となるケースと重ねても、現在既に設定されている防音対策の区域を越えないものと考えられます。経済効果は、生産誘発額が約千四百億円、雇用誘発が約八千三百人と推計されます。
 また、先月には、横田基地の民間利用を考える会を発足させました。軍民共同利用のあり方と、それに伴う環境への影響、多摩地域の都市づくりに及ぼす効果、産業や雇用への波及など、幅広い視野から継続的に協議を行い、世論喚起のための諸活動を展開してまいります。
 東京が、国際社会の中で強い影響力を持つ首都であり続けていくためには、都市の核となる一定の定住人口を確保するとともに、国際都市に必要な諸条件を整え、東京の都市としての魅力と活力を一層高めていくことが必要です。
 私は、まず、既成市街地の再構築を推進するため、都心部における望ましい職住バランスの目標や、都心居住を推進する上での具体的な方策などを検討し、来年度策定する都市構想の中で、その方向性を明らかにいたします。また、都心部の機能更新とあわせて、東京臨海地域の再編整備を進めます。
 二十一世紀の魅力ある首都東京を創造する象徴として、都心の再生は急務であります。このため、日本の表玄関ともいえる東京駅舎の復元や行幸通りの景観整備などを、民間投資活動を誘発、促進しながら展開してまいります。あわせて、周辺の民間建築物の更新を計画的に誘導し、にぎわいと活力にあふれた都心の再生を図ります。
 人々の国際的な移動と交流がますます活発化し、多くの都市が世界の人々を引きつける魅力づくりを競い合っている中で、外国人の滞在しやすい環境の整備のおくれは、東京の国際競争力を低下させる大きな要因となっております。
 今後は、積極的なシティーセールスを展開するとともに、来訪者の受け入れ環境の改善や文化的魅力の向上などを図り、東京を世界に大きなプレゼンスを持つ都市に転換していかなくてはなりません。
 このために昨日、観光関連の団体や企業などを主体とする東京シティーセールス・キャンペーン推進協議会が発足し、誘致宣伝活動などを展開していくことを決定いたしました。
 また、東京の活力を高め、世界に向けて文化を発信する魅力ある都市とするため、都の文化政策の総合的、戦略的な取り組みを示す文化政策に関する基本方針を来年度に策定いたします。
 芸術文化の一層の振興を図るためには、企業や市民が芸術文化活動を支える社会的な仕組みを整備していかなくてはなりません。私は、こうした活動に対する支援の一環として、芸術文化団体への寄附金に対する税制上の優遇措置の拡充を国に強く要望してまいります。
 現代の科学技術文明は、人間社会に恩恵をもたらすだけではなく、さまざまな危機をもはらんでおります。コンピューターの誤作動が心配される西暦二〇〇〇年問題については、七月に危機管理プロジェクトを策定し、事前の対策に万全を尽くしてまいりましたが、さらに不測の事態の発生に備えるため、十二月二十七日から一月四日までの期間、災害対策本部を設置いたします。
 特に、元旦の午前零時以降に、事故や災害の発生が最も危惧されることから、三十一日の十七時から元旦の十二時までの間は、全庁的に非常配備態勢をとり、情報収集や初動対応の準備に当たってまいります。
 ことしも残すところあと一カ月となりました。現下の経済情勢を見ると、依然本格的な景気の回復には至らず、大型合併や大規模な再建計画に象徴されるように、多くの企業がまさに生き残りをかけた必死の改革を断行しております。
 私は、東京のかじ取りを預かって以来、首都東京から新しい変革の歴史をつくり出すという強い決意のもとに、ディーゼル車NO作戦の展開、新たな債券発行の仕組みづくり、横田基地の軍民共用化に向けた取り組み、都立高校の学区制の見直しなど、首都東京の責務として、常に国や他の自治体をリードする姿勢で都政運営に臨んでまいりました。
 しかしながら、都政の改革はまだ緒についたばかりであります。都政史上かつてない未曾有の財政危機の中で、都庁みずからが厳しい自己改革を果たすとともに、山積する難題を解決し、都民の希求や東京への期待にこたえていかなくてはなりません。
 もとより、行政とは、社会の利害関係のぶつかり合いや衝突を、議会や都民と一体となりながら、調整して新しい価値を生み出していくものであり、そこに新しい政策の源があると考えます。また、抱える問題が複雑で困難なものであるほど、強くはっきりとしたメッセージを発信し、理解を求めていく姿勢が問われます。
 私は、政策の苗を着実にはぐくんでいくとともに、みずからがグッドコミュニケーターとなり、さまざまなメディアを通じて、東京の抱えている問題をわかりやすく伝え、広範な議論を喚起しながら、都民の皆さんとともに新しい都政を築いてまいります。
 東京の確かな未来を切り開いていくため、改めて、皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
 本定例会には、条例案六十二件、契約案六件など、合わせて七十件を提案しております。よろしくご審議をお願い申し上げます。
 以上をもって私の発言を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(鈴木一光君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこの程度をもって散会し、明二日から七日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこの程度をもって散会し、明二日から七日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十二月八日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時五十九分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一一財主議第四三一号
平成十一年十一月二十二日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 渋谷 守生殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十一年第三回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   大西由紀子議員
   福士敬子議員
   藤田十四三議員
   藤田愛子議員
   坂口こうじ議員

平成十一年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 大西由紀子

質問事項
 一 建築紛争とまちづくり
 二 子どもの権利と学習指導要領の運用について
一 建築紛争とまちづくり
 都市計画の規制緩和、都心居住、中心市街地活性化など、近年の大都市市街地をめぐる動きは、形態規制の緩和を促してきたと見られています。
 これに対応して、日照・通風障害、プライバシー侵害、景観破壊などを懸念する動きも強まり、結果としてマンションやオフィスビル建築などに際して「建築紛争」が都内各地で発生しています。

 都市計画は本来、隣地に何が建つか不安に感じなくても済むように、街の完成像をあらかじめ示す計画です。
 したがって、こうした建築紛争は、広い意味で都市計画の不十分さがもたらしているともいえるのです。
都内でも各自治体で進んでいる、都市計画マスタープランは、自治体主導のきめ細かな都市計画によって、上記の都市像をより的確に示すことを目的の一つとしています。
 このような意味で、都市マスタープランの制定が進んでいることに期待しつつ、現実の建築紛争の解決に関連して、以下質問を行います。
 1 高層建築、マンション建設などに伴って発生するいわゆる建築紛争について、実態をどのように把握しているか、伺います。
 2 近年の、都市計画の用途地域変更など規制緩和に伴って、隣接の低層住宅地などとの間に生じた建築紛争の状況を、どう把握しているのか、伺います。
 3 こうした建築紛争を未然に防ぐべく、地区計画や建築協定で、建築物の形態についてルール(規制)を定めた事例について、どのように把握していますか。
 4 現行の用途地域制では、東京都においては、容積率の充足率は高くありません。
残った容積率を埋めるべく建築物が建つと、隣接地域に、景観悪化、圧迫感、プライバシーの侵害、日照妨害、通風障害などの影響を及ぼすことが少なくありません。
このような問題を防止するために、用途地域や、それに伴う形態規制においては、近隣間に紛争を引き起こさないような配慮が必要と思いますが、都としてどのような方針で望んでいるのか、伺います。
 5 ア 国立市中三丁目の、東京海上火災跡地(五千坪)には、十八階建てマンションの建築計画があり、近隣住民や、市民は過度な景観破壊に、反対や見直しを求める活動を始めています。
先般国立市議会においても、マンション建設見直しを求める五万四百七十八筆の陳情が採択され、市長も陳情の趣旨を踏まえて対応する旨表明しました。
 都においても、こうした国立市や市民の対応を充分に尊重するべきと考えますが、いかがでしょうか。
 イ 前掲当該案件について建築確認申請の動きはあるのか、伺います。
 ウ また、今後建築確認が申請された場合に、地元のこうした動きを踏まえて、どのように対処するつもりでしょうか。
 事業者が、国立市や、近隣住民と十分に話し合い、合意を形成するよう指導するべきと考えますが、いかがでしょうか。
 エ また、仮に、市の要綱や条例を十分に尊重せずに、業者が建築確認申請を行おうとしたり、あるいは近隣住民など関係者との話し合いが不十分なままに申請を行うとしても、都としては、安易に確認手続きに入るべきではないと考えますが、いかがでしょうか。
二 子どもの権利と学習指導要領の運用について子どもの権利条約は、一九八九年十一月国連総会で採択され、日本では九四年に批准し、五年が経過しました。
 しかし、日本政府が提出した、条約の実施報告書について、国連子どもの権利委員会で審査され、二十二項目にわたる是正を求める勧告がなされました。
その中でも「日本の過度の競争社会のストレスが、子どもたちの情緒障害をもたらしている」という指摘がなされました。
 現に全国の不登校児は十二万人を越え、都でも約一万人を数えるほどです。
 私たちは、学校を中心に子どもが多様性を認めあい、その子育ちを支援する仕組みを作りつつ、子どもの権利が位置づく社会をめざすべきです。
 このような点で、子どもの自己決定を支援するためにも、子どもの思想・良心の自由は、いかなる場にあっても前提とされる必要があります。
 先頃、国旗・国歌の法制化がなされました。
 国旗・国歌の制度化そのものの問題、そして、これを「日章旗」「君が代」とすることの問題など、大きく世論が分かれたことはいうまでもありませんし、したがって国民的議論について、不十分でありました。
このことが教育の現場にマイナスとして持ち込まれることについて大きく危惧します。
 従来より、国旗・国歌について文部省は「学習指導上の問題」としてきましたが、これが、子どもにとって現実的な圧力となると、思想・良心の自由に大きく係わっていると言わなくてはなりません。
以上の点を踏まえ、左記のように質問します。
 1 学習指導要領に基づいた教育を行うにあたっては、憲法や子どもの権利条約に定められた、子どもの思想・良心の自由は、基本的前提であると考えますが、いかがでしょうか。
 2 憲法や子どもの権利条約に定められた、良心・思想の自由は、教育現場において尊重されるべきものと考えますが、具体的にどのように進められているのか、伺います。
 3 今回の法制化について、国会の政府答弁でも何ら「義務づけを行うことを考えていない」とされています。これまでの卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の指導の根拠はなにか。また、今回の法制化によって、この指導の取り扱いは変わることがあるのか、伺います。
 4 今回の国旗・国歌の法制化にあたって、児童生徒の思想・良心に係わる自由について、平成六年十月の政府統一見解は変わらないとする国会答弁がありました。教育庁の見解を伺います。
 5 国歌・国旗の指導にあたって、児童生徒が、その良心・思想にもとづき例えば国歌を「斉唱しない」などの態度をとったとしても、このことにより、いじめや差別等の問題が起こったり、成績等に関して不利益などがあったりしてはならないと考えますが、いかがでしょうか。
 以上

平成十一年第三回都議会定例会
大西由紀子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 建築紛争とまちづくり
 1 高層建築、マンション建設などに伴って発生するいわゆる建築紛争について、実態をどのように把握しているか、伺う。

回答
 中高層建築物の建築に伴い、平成十年度に都が所管しております区部及び多摩地域の標識設置届出件数は、七百三十九件です。
 この建築計画に伴い、都が日照阻害、電波障害等に係る陳情を受理しました建築紛争件数は百四十九件で、標識設置の届出件数に対する割合は約二〇%です。

質問事項
 一の2 都市計画の用途地域変更など規制緩和に伴って、隣接の低層住宅地などとの間に生じた建築紛争の状況をどう把握しているのか、伺う。

回答
 中高層建築物の建築に伴って生ずる建築紛争について、都の建築紛争予防条例では、「日照、通風及び採光の阻害、風害、電波障害等並びに工事中の騒音、振動等の周辺の生活環境に及ぼす影響に関する近隣関係住民との間の紛争をいう」と規定しております。
 平成十年度に都が扱った建築紛争件数は百四十九件ですが、紛争内容は、日照阻害、プライバシー・圧迫感、電波障害が主なもので、その他として駐車場の出入口、ごみ置場、樹木の保存、街並みといったものも含まれております。
 また、平成八年に行われた用途地域の一斉見直しの前後における建築紛争件数は、平成七年度二百五十件、平成八年度百九十八件、平成九年度百四十件となっております。

質問事項
 一の3 建築紛争を未然に防ぐべく、地区計画や建築協定で、建築物の形態について、ルール(規制)を定めた事例について、どう把握しているか、伺う。

回答
 東京都における地区計画の都市計画決定状況は、平成十一年三月末現在で三百二地区となっております。
このうち、建築物の形態制限として、建築物の高さの限度、壁面の位置の制限、建築物の形状・色彩等の意匠の制限を定めている地区は、それぞれ、地区計画全体の五七%、八五%、七九%です。
 建築協定は、建築物の配置、形態、意匠等について協定を締結するもので、平成十年七月末までに認可した地区は百六十六地区で、このうち廃止の認可済み及び期限切れの地区が四十四地区あり、現在有効な地区は百二十二地区あります。
 なお、建築協定の期限切れにより建築協定から地区計画に移行した地区は八地区となっております。

質問事項
 一の4 用途地域やそれに伴う形態規制においては、近隣間に紛争を引き起こさないような配慮が必要と思われるが、都はどのような方針で臨んでいるのか、伺う。

回答
 東京都における用途地域の指定・変更は「用途地域等に関する指定方針及び指定基準」(平成五年九月)に基づき行っております。
 この中では、近隣間の建築紛争の防止等に配慮して、各種の住居専用地域と商業地域、工業地域又は工業専用地域とは、原則として相互に接して定めないこととしております。
 さらに、環境の良好な居住空間を確保すべき地域については、住環境の悪化をもたらすおそれがある施設の混在を防止して、できるだけ住居の専用性を高めるという観点から、各種の住居専用地域を指定し、あわせて地区特性に応じた適切な建ぺい率・容積率の指定及び高さ制限等を行うこととしております。

質問事項
 一の5 国立市中三丁目のマンション建築計画についてア国立市中三丁目のマンション建築計画では、近隣住民などが反対や見直しを求める活動を始めている。
国立市議会においても建設見直しの陳情が採択され、また、市長も陳情の趣旨を踏まえ対応する旨表明した。
都は、こうした国立市や市民の対応を尊重すべきと考えるが、如何か。

回答
 国立市中三丁目の東京海上火災跡地のマンション建築計画に対する国立市及び近隣住民の意向については、都としても認識しており、今後、建築紛争予防条例の手続の中で、事業者に対し適切に指導してまいります。

質問事項
 一の5のイ 当該案件について、建築確認申請の動きはあるのか、伺う。

回答
 本件に係る建築確認申請書については、平成十一年十一月十二日現在、都へ提出されておりません。

質問事項
 一の5のウ 今後、建築確認が申請された場合、地元のこうした動きを踏まえ、どう対処するのか。
事業者が、国立市や近隣住民との話し合い、合意を形成するよう指導すべきと考えるが、如何か。

回答
 都としては、事業者に対し、国立市との協議を行うとともに、建築紛争予防条例の趣旨を踏まえ、誠意をもって近隣住民と話合いを行うよう指導してまいります。

質問事項
 一の5のエ 仮に、業者が市の要綱や条例を尊重せず建築確認申請を行ったり、近隣住民などとの話し合いが不十分なまま申請を行おうとしても、都は安易に確認手続に入るべきでないと考えるが、如何か。

回答
 建築確認申請については、法的要件が整っていれば、都は受理を拒むことは出来ないこと、また、当該建築計画が、建築基準法及び建築基準関係規定に適合しているものは、法定期限内に確認済証を交付しなければならない制度となっております。
 都としては、建築紛争の解決に向け、事業者に対して、国立市と協議を行うとともに近隣住民と誠意をもって話合いを行うよう指導してまいります。

質問事項
 二 子どもの権利と学習指導要領の運用について
 1 学習指導要領に基づいた教育を行うに当たり、憲法や子どもの権利条約に定められた子どもの思想・良心の自由は、基本的前提であると考えるが、如何か。

回答
 (教育長)学校においては、学習指導要領に基づいて具体的な教育課程を編成し、適切な教材を用いて児童・生徒に必要な教育内容を教えることになっています。
 その際、思想及び良心の自由も含めて、児童・生徒の基本的人権は、当然尊重されるべきものと認識しています。

質問事項
 二の2 憲法や子どもの権利条約に定められた良心・思想の自由は、教育現場において尊重されるべきものと考えるが、具体的にどのように進められているか、伺う。

回答
 (教育長)都教育委員会は、教育目標達成のための基本方針の第一に人権尊重の教育の推進を掲げ「日本国憲法及び教育基本法の精神に基づき、また児童の権利に関する条約等の趣旨を尊重して」と規定し、子どもたちが、生活体験や自然体験などを通して、生命の重さ・大切さを学ぶとともに豊かな人間関係をはぐくんでいくことができるよう、多様な活動の機会や場の充実を図っています。

質問事項
 二の3 これまでの卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の指導の根拠は何か。
 また、今回の法制化により、この指導の取扱いは変わることがあるのか、併せて伺う。

回答
 (教育長)都教育委員会は、これまで学校教育における国旗及び国歌に関する指導について、児童及び生徒が、我が国の国旗及び国歌の意義を理解し、諸外国の国旗及び国歌も含め、これらを尊重する態度を身に付けることができるようにするために、学習指導要領に基づいて実施してきました。
 法制化に伴い、これまでの国旗及び国歌に関する指導の取扱いを変えるものではありませんが、学校教育においても国旗及び国歌に対する正しい理解がさらに進むものと考えており、今後とも、学校における国旗及び国歌に関する指導が、一層適切に行われるよう努めます。

質問事項
 二の4 今回の国旗・国歌の法制化にあたり、児童生徒の思想・良心に係わる自由について、平成六年十月の政府統一見解は変わらないとする国会答弁があったが、教育庁の見解を伺う。

回答
 (教育長)都教育委員会は、従前から、学習指導要領の趣旨に基づき、国旗掲揚・国歌斉唱が適切に実施されるよう指導をしてきたところですが、このことは、児童・生徒が、国旗・国歌の意義を理解し、尊重する態度を育て、すべての国の国旗と国歌に等しく敬意を表する態度を育てることが目的であり、御指摘の政府統一見解と同様に、児童・生徒の内心まで立ち入って強制しようとする趣旨のものではないと認識しています。

質問事項
 二の5 国旗・国歌の指導に当たり、児童生徒が、その良心・思想に基づき、たとえば国歌を「斉唱しない」などの態度をとったとしても、これにより、いじめや差別等の問題が起きたり、成績に関して不利益などがあったりしてはならないと考えるが、如何か。

回答
 (教育長)児童・生徒が、単に「斉唱しない」ことを理由に、いじめや差別を行ったり、あるいは児童・生徒自身の成績に影響を及ぼしたりすることは、あってはならないことと考えます。

平成十一年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 福士敬子

質問事項
 一 新海面処分場について
 二 東京スタジアムの買い取りについて
一 新海面処分場について廃棄物の海面埋め立てによる処分に関しては、さまざまな角度で問題点を検討する必要がある。
 中央防波堤外側埋立地での廃棄物処理終了後、東京都二十三区の廃棄物処分場として計画されている新海面処分場においては、特に以下の点に関して検討を行う必要があると考えられる。
 埋め立てにあたって適切な補償を行う必要がある。
 漁業関係者の生活権を奪っての公共施設づくりであり、補償がなされなかったり、逆に過大な補償がなされるといったことがあってはいけない。
 また、補償決定の経緯が明らかにされなければいけない。
 今月二十四日早朝、熊本県不知火町では、台風十八号による高潮災害で十二人が瞬時に波にさらわれ命を落とした。
 こうした高潮の発生は海岸線や海底の形状といった地形によって大きく左右されることが指摘されており、埋め立てによって高潮が発生しやすい地形を作り出すことがないように留意しなければならない。
 埋立地の地形は、豪雨時の河川の水流を妨げず、海水の逆流を防ぐ形で決定する必要がある。
 環境汚染に対する対策は、廃棄物処分場における最重要課題の一つである。
 陸上の廃棄物処分場では、周辺住民と処分場の距離が近く、汚染物質が直接周辺住民に与える影響が強いが、同時に周辺住民による監視や汚染実態の調査が行われやすい。
 これに対して、海上埋め立て処分場では廃棄物と住民との距離が遠いため、直接的な被害が見えにくい。
 このため、汚染物質の流出事故が起きた場合でも、事故の実態を住民がつかみにくいのである。
 また、海面処分場で汚染物質の流出事故が起きた場合には汚染が広範囲に拡散することになる。
 こうした事態を防ぐため、処分場から汚染物質が流出するなどの事故がおきないようにする必要がある。
 廃棄物の処分については、長い間減量が最重点課題であった。
 一九八〇年代からダイオキシン汚染が問題となり、ゴミの組成に目が向けられたものの、プラスチック類も含む可燃物の焼却処分から脱却せず、結局ダイオキシン発生の原因となる焼却温度の管理に視点が集中したきらいがある。
 しかし、焼却処理残灰の埋め立て後には土壌汚染の源となり、日の出町処分場の問題に象徴されるように、たとえ処分を強行しても後世に禍根を残すことになる。
 こうした点を踏まえて、ゴミ減量を含めた長期的な視点で埋め立て計画を考える必要がある。
 船舶の運行や港湾活動は、重要な経済活動であり、埋め立てによる港湾水面の減少によって、これらの活動に悪影響を与えることは可能な限り避けなければいけない。
 また、城南島海浜公園、若洲海浜公園は東京都民が直接水平線を見渡すことができる数少ないレクリエーション施設である。
 埋め立てが進むことによりこれらの海浜公園からの視線が廃棄物処分場によってさえぎられることになるが、こうした景観破壊は必要最小限に抑える必要がある。
 港湾施設、海浜公園を含む水辺空間における活動を阻害しない形で埋め立て計画を進める必要がある。
 このような観点からお伺いする以下の質問にお答えいただきたい。
 1 新海面処分場にともなう漁業補償に関して
 ア 新海面処分場建設にあたって、漁業関係者とどのような交渉が行われたか、具体的な経緯はどうなっているか。
 イ 覚書などは取り交わされたか。取り交わされたとすればその具体的内容はどのようなものか。漁業関係者に対して漁業補償が行われたならば、その具体的内容はどのようなものか。また、実際の漁業関係者に適切に補償がなされたかどうかお答えいただきたい。
 2 埋立地形状に関して
 ア 埋め立てによる海流変化により、洪水等の災害が発生することはないか。豪雨時における埋立地周辺水域に流入する河川の水流対策、海水の逆流に対する対策はなされているか。
 イ また、千葉県との境界問題はどのような形で決着したのかどうかお答えいただきたい。
 3 護岸の遮水性および安全性に関して
 ア 中央防波堤外側埋立地その二において、護岸に亀裂が入り汚水流出問題が発生したという話を聞くが、亀裂が入った原因は何か。また、その際どのような補修が行われたのか。
 イ 護岸建設にはどのような工法があるか。それぞれの工法において遮水性、耐久性、コストはどの程度異なるかお答えいただきたい。
 4 新海面処分場以降の廃棄物処理に関してア 新海面処分場の埋め立て可能年限の予測はどうなっているか。
 イ 各ブロックごとの供用開始時期、埋め立て終了時期、処分する廃棄物の種別はどうなっているか。
 ウ 新海面処分場は東京湾の最後の廃棄物埋め立て処分地とされているが、新海面処分場以降の東京都の廃棄物処理計画はどうなっているかお答えいただきたい。
 5 港湾施設への影響に関して 新海面処分場建設に際し港湾水面が減少したが、水面減少により港湾活動にどのような影響があったか。また、港湾水面の減少について港湾局の見解はどのようなものかお答えいただきたい。
二 東京スタジアムの買い取りについて東京スタジアムの買取りは建設・運営計画を根本から覆するものであり、将来にわたって都財政に大きな負担を与えることが懸念される。
 基本計画の策定から、わずか三年でこれほど重大な計画変更が必要になる例はめずらしく、計画立案の過程を詳らかに検査して責任の所在を明らかにする必要がある。
 営業が開始されるまえから公金の追加投入が必要となったこのたびのような事例においては、当初の事業計画のどこに誤りがあったのかを明らかにすることが重要である。
 収容人員五万人規模のスタジアム経営はたいへん困難であることが知られているが、計画策定の過程においてどのような採算の目算があったのだろうか。
 また、株式会社東京スタジアムの取締役会は採算の目算が誤りであったことをどのように認識していったのか、大株主として知る立場にあった都がどのように把握してきたのかは重要な点である。
 その後の経済環境の変化に対応してどのような努力がなされたかは、公金の追加投入を決めるうえで是非とも知る必要がある。
 都民の税金を預かるものとして、計画変更にあたって破綻の原因がどこにあったのかを認識していなければならない。
 失敗の理由も判断できないでいては、追加投資も無駄になる可能性が高いからである。
 抜本的な見直しを行うためには、意思決定を拘束する権利と義務の関係をすべて白日の下にさらして考えなければならない。
 自由な意思決定ができないでいては、最善の解決策を求めることなど到底できないからである。
 東京スタジアムを買い取るというが、工夫によって採算が見込まれるものまで買い取りの対象とすることはない。
 支払いの対象となる施設にはどのようなものがあるのか詳細に検討する必要がある。
 買い取りによって公の施設となることで、株式会社東京スタジアムは固定資産税の支払い義務を免れ、減価償却費も計上することなく、純粋な民間企業に比べ会計上利益を計上しやすい会計処理が可能になる。
 企業経営の考え方を採り入れると公言する都は、株式会社東京スタジアムが一般企業に比べてどれほど有利な計算をしているか、常に明らかにしてその経営成績を判断し、利益処分に目を光らせる必要がある。
 また、将来にわたって発生する施設の維持修繕にかかる歳出は、会計理論上算出される減価償却費とは別の問題である。
 スタジアムの買い取り後は、株式会社東京スタジアムに無償で施設を貸し付けるということだが、現実に発生し、支払う施設の維持修繕にかかる費用についても、視野に入れたうえで検討しなければならない。
 その上で、当初の事業計画による将来の見通しと、このたびの計画変更による事業計画による見通しとを比較対照することが必要である。
 これについては、三年から五年の予測を理由とともに示すのが通常である。
 このような観点からお伺いする、以下の質問にお答えいただきたい。
 1 東京スタジアムの採算性について
 基本計画立案の過程において、収容人員五万人規模のスタジアムの採算に関してどのような条件を検討し たのか。採算の条件を抽出した根拠とともに、経営の参考としたスタジアム名を諸外国の例も含めて明らかにしていただきたい。また、採算の条件のうち、もっとも大きな制約条件とされたものと、それを克服するためにどのような方策が計画されたのか。
 2 経済環境への対応について
 一九九五年に都がまとめた基本計画は、その後どのように経済環境の変化を吸収していったのか。計画を具体化する過程でどのような検討と努力がなされたのか。これを検討した会議の名称と意思決定の変遷を、日付を示しながら明らかにしていただきたい。
 3 計画変更の原因について
 基本計画の発表からわずか三年でこのような大規模な変更が必要となった原因はどこにあると認識しているか。
 4 意思決定の自由について
 株式会社東京スタジアムが都、区市町村、民間企業と交わした書類にはどのようなものがあるのか。契約書のほかに、都の意思決定に影響するものがあれば明らかにしていただきたい。
 5 買い取りの対象について
 東京スタジアムの買取価格の内訳を詳細に示していただきたい。
 6 減価償却費等について
 東京スタジアムは将来にわたって都の公の施設となるのか。その場合に形式上帳簿から見えなくなる減価償却費はいくらか。各会計年度に期間配分される金額と残存価格を示していただきたい。
 7 維持修繕のための費用について
 多摩都市整備本部の報告によると、都は買取り後の東京スタジアムを無償で株式会社東京スタジアムに貸し付けるということだが、施設の維持修繕のための費用は毎年いくら発生し、誰がどのように負担していくのかお答えいただきたい。
 8 事業計画の比較検討について
 都が東京スタジアムを買い取り、株式会社東京スタジアムが運営費を負担するというが、株式会社東京スタジアムの筆頭株主である都は最終的に運営に責任を持つことは免れない。都が東京スタジアムを買い取らなかった場合と買い取った場合の両者について、株式会社東京スタジアムの事業計画にどのような金額差が生じるのか。完成後五年間の資金計画と利益計画を示しながら、どのように事業が展開されるのかを明らかにしていただきたい。
 9 組織等の見直しについて
 東京スタジアムの購入代金支払い完了後に株式会社東京スタジアムのあり方について抜本的な見直しを行うとしているが、抜本的な見直しとはどのような内容を指すのか。筆頭株主でありながら、購入代金の支払いが完了するまでの二十年間、抜本的な見直しを行わない理由は何か、お答えいただきたい。
 以上

平成十一年第三回都議会定例会
福士敬子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 新海面処分場について
1 新海面処分場に伴う漁業補償に関して
 ア 新海面処分場建設にあたり、漁業関係者とどのような交渉が行われたのか。その具体的な経緯はどうなっているのか、伺う。

回答
 新海面処分場整備に当たっては、関係漁業者と新海面処分場の整備工事に伴う漁業上の損失に係る補償について交渉を行いました。
 具体的には、平成四年二月から協議を開始し、平成九年七月に関係漁業者と合意に達しました。

質問事項
 一の1のイ 覚書などは取り交わされたのか。
 取り交わされたとすればその具体的内容はどのようなものか、また、漁業関係者に対して、漁業補償が行われたならば、その具体的内容とそれが適切に行われたかどうか、伺う。

回答
 新海面処分場に伴う漁業補償に関し、関係漁業者と協定を結んでいます。
 また、補償については、「東京都の事業の施行に伴う損失補償基準」に基づき適切に行いました。
 内容については、法人・その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であり、その具体的内容を公開することにより、相手方の事業運営上の地位等が損なわれるおそれがあること、また、公開することにより関係当事者間の信頼関係が損なわれ、将来の同種の事務事業の円滑な執行に支障が生ずるおそれがあることから公開を差し控えさせていただきます。

質問事項
 一の2 埋立地形状に関して
ア 埋立による海流変化により洪水等の災害が発生することはないか。
 豪雨時における埋立地周辺水域に流入する河川の水流対策、海水の逆流に対する対策はなされているのか。

回答
 新海面処分場の位置及び形状は、東京都港湾審議会に設置した学識経験者等からなる「海面処分場検討部会」において、河川水理、高潮等について技術的解析を行うなど専門的見地から検討するとともに、河川管理者等との協議を経て決めています。
 現在の新海面処分場の位置及び形状により、洪水等の災害が発生するおそれはありません。

質問事項
 一の2のイ 千葉県との境界問題は、どのような形で決着したのか、伺う。

回答
 新海面処分場の整備に際しては、処分場予定地にある検疫区域を移設する必要があるため、千葉県と境界問題について協議を行った結果、平成七年に、港域の変更及び検疫区域に移設について、千葉県の同意が得られ、新海面処分場の建設に着手することとなりました。
 なお、千葉県との境界問題については、今後とも都県間で協議を継続し、解決に向けて努力することとしております。

質問事項
 一の3 護岸の遮水性及び安全性に関してア 中央防波堤外側埋立地その二において、護岸に亀裂が入り、汚水流出問題が発生したという話を聞くが、亀裂が入った原因は何か。
 また、その際どのような補修が行われたのか、併せて伺う。

回答
 この処理場の護岸は、直径約一・三メートルの鋼管矢板を二十メートルの幅で堅い地盤まで打込んだ二重鋼管矢板式構造としており、鋼管矢板の継手部にモルタルを充填するとともに、処理場側には止水鋼矢板を打設するなど、止水に対しては万全を期しております。
 また、処理場から生ずる汚水は、いったん排水処理施設に集められ、中間処理したのち下水処理場に送っているので、汚水が海に流れ出ることはありません。
 ご質問の護岸の亀裂とは、上部コンクリートのひび割れのことと思われますが、これはこの処理場の地域は、軟弱層の厚さが場所によって違うなど、地盤条件が一様でないこと等から、一部の箇所で護岸に変位が生じたため発生したものと考えられます。
 ただし、上部コンクリートは、鋼管矢板の錆止めのためと、波によって海水が処理場に入らないようにするため設けているもので、この部分のひび割れが汚水漏れにつながることはありません。
 補修については、通常の護岸の管理の一環として、エポキシ樹脂系ボンドの注入等を行っています。

質問事項
 一の3のイ 護岸建設には、どのような工法があるのか。
 それぞれの工法において、遮水性、耐久性、コストはどの程度異なるのか伺う。

回答
 護岸建設の工法には、ケーソン式護岸、二重鋼管矢板式護岸、鋼セル式護岸など各種の工法があります。
 新海面処分場については、護岸の遮水性、耐久性、コスト等の点からケーソン式と二重鋼管矢板式の構造型式を選定しております。
 遮水性、耐久性については、ケーソン式及び二重鋼管矢板式の両構造とも十分に備えております。
 この二つの型式から、土質条件、水深等に対応する適切な工法を採用しております。

質問事項
 一の4 新海面処分場以降の廃棄物処理に関して
ア 新海面処分場の埋立て可能年限の予測はどうなっているか。

回答
 新海面処分場における廃棄物等の埋立ては、現行の埋立処分計画の計画期間である平成二十三年度までは対応可能ですが、その後については、経済動向やリサイクル施策の進展等により、埋立処分量が変動する可能性があるため、埋立可能年限の明確な予測は、現段階では困難です。
 昨年策定した廃棄物等の埋立処分計画では、埋立処分量の変化に適切に対応するため、概ね五年ごとに見直すこととしています。

質問事項
 一の4のイ 各ブロックごとの供用開始時期、埋立て終了時期、処分する廃棄物の種別はどうなっているか。

回答
 新海面処分場は、汚水処理の負担を軽減するために、しゅんせつ土、建設発生土の処分を先行し、陸域化した後、廃棄物を埋立処分することとしています。
 そこで、平成十年五月に策定した廃棄物等の埋立処分計画に基づき、AからGの七ブロックに分け、段階的に各ブロックの整備を進めています。
 A、Bの二ブロックは既に供用開始しています。
 新海面処分場に埋立処分する廃棄物等の内、しゅんせつ土は、埋立方法等の関係から、各ブロックの受入量に限界があり、Bブロックは平成十二年度に、Cブロックは平成十七年度にしゅんせつ土の埋立処分が終了する予定です。
 このため、Cブロックを平成十三年度に、Gブロックを平成十八年度に、供用開始する必要があります。D、E、Fの三ブロックの供用開始は、十八年度以降になります。
 廃棄物等の埋立終了時期については、十二年度予定のAブロックを除く他のブロックは、平成二十四年度以降と見込まれます。
 廃棄物等の種別は、A、B、C、D、Eの五ブロックが、一般廃棄物、産業廃棄物、上下水スラッジ、しゅんせつ土及び建設発生土、F、Gの二ブロックが、しゅんせつ土及び建設発生土です。

質問事項
 一の4のウ 新海面処分場は、東京湾の最後の廃棄物埋立処分地とされているが、新海面処分場以降の都の廃棄物処理計画は、どうなっているか、伺う。

回答
 新海面処分場以降の新たな処分場を東京港内に確保することは、極めて困難な状況にあるため、廃棄物の発生排出抑制や資源化により可能な限り新海面処分場の延命化を図る必要がありますが、将来的には、都県域を越える広域的な対応が必要だと考えています。
 都は、七都県市首脳会議の場で廃棄物の広域処理に関する検討・協議をしていますが、平成十年十一月に開催された第三十九回会議で、これまでの検討結果のまとめを行いました。
 まとめでは、都県域を越える広域処分場については、七都県市が「資源循環型社会」を構築するために、廃棄物の徹底した発生排出抑制並びに資源化及び適正処理を積極的に進める過程において、最終処分量の削減効果及び処分場の残余容量や将来見通し等について定期的に調査・検討を行うこととし、その結果、広域処分場の必要性を確認した時点において、その設置について検討・協議を行うこととしています。

質問事項
 一の5 港湾施設への影響に関して新海面処分場建設に際し、港湾水面が減少したが、水面減少により、港湾活動にどのような影響があったか。
 また、港湾水面減少についての見解も併せて伺う。

回答
 新海面処分場の水域は、船舶の航行や検疫区域などに利用されていたことから、東京都港湾審議会に設置した学識経験者等からなる「海面処分場検討部会」において、処分場の具体的な位置及び規模を検討し、検疫区域の移転など港湾機能との整合を図ったため、港湾活動への影響はありません。
 東京港は、都民生活と都市活動を支える重要な物流機能はもとより、廃棄物処分場の確保やレクリエーションの場の提供などの役割を果たしております。
 このような、多様なニーズに応えながら東京港の貴重な港湾水面を有効に活用してまいります。

質問事項
 二 東京スタジアムの買取りについて
1 東京スタジアムの採算性について基本計画立案の過程において、スタジアムの採算に関して、どんな条件を検討したのか。採算の条件を抽出した根拠と、経営の参考としたスタジアム名を諸外国の例も含め、明らかにされたい。また、採算の条件のうち、もっとも大きな制約条件としたものと、その克服のため、どんな方策が計画されたか、併せて伺う。

回答
 東京スタジアムの採算につきましては、平成五年十二月に設置された武蔵野の森競技場建設検討委員会において、次のように試算しています。
 まず、収入については、主にプロサッカーなどの開催試合数や、入場人員、入場料を基に試算しています。
この収入を確保する上で、都民利用の確保と天然芝の採用により使用日数や使用形態が限定されることが主な制約条件となります。
 そのためコンサートの誘致、芝生の養生方法の工夫及びコンコースを利用した催し物など芝生以外の施設を利用した使用方法を検討し、収入の確保に努めることとしています。
 次に、支出については、主にスタジアムの建設費や維持管理費、借入金の利率を基に試算しています。
 これらの条件を設定するに当たっては、海外のスタジアムよりも規模など類似点の多い国立霞ヶ丘競技場などの事例を参考としております。
 なお、ご質問の中の基本計画は、施設の概要についてまとめたものであり、東京スタジアムの採算については触れていません。

質問事項
 二の2 経済環境への対応について一九九五年に都がまとめた基本計画は、その後どう経済環境の変化を吸収していったか。また、計画を具体化する過程で、どんな検討と努力がなされたのか、これを検討した会議の名称と意思決定の変遷を、日付を示しながら明らかにされたい。

回答
 東京スタジアムの建設計画を具体化する過程で、都が経済環境の変化に対応するために検討した最近の主な会議は、東京スタジアムの建設・運営方式の変更を議題とした平成十一年八月二十日及び同年九月九日の政策会議です。

質問事項
 二の3 計画変更の原因について基本計画の発表から、わずか三年でこのような大規模な変更が必要となった原因は、どこにあると認識しているか。

回答
 東京スタジアムの建設・運営方式の変更理由としては、本年春以降、金融監督庁が策定した「金融検査マニュアル」や自治省が発表した「第三セクターに関する指針」に従い、金融機関が第三セクターに対する融資に厳しい姿勢で臨むようになり、スタジアムの建設資金の借入れが困難になったこと及び株式会社東京スタジアムの経営見通しがより厳しくなったことがあげられます。

質問事項
 二の4 意思決定の自由について株式会社東京スタジアムが、都、区市町村、民間企業と交わした書類にはどのようなものがあるのか。
 契約書のほかに都の意思決定に影響するものがあれば明らかにされたい。

回答
 株式会社東京スタジアムは、都とは都有地の無償貸付契約を、民間会社とは工事請負契約を締結していますが、これらの契約書を含め、都の意思決定に影響を与える書類はありません。

質問事項
 二の5 買取りの対象について東京スタジアムの買取価格の内訳を詳細に示されたい。

回答
 買取り価格の内訳については、工事を一括発注している関係もあり、現段階ではお示しできませんが、来年秋以降に予定している所有権移転後の公有財産台帳の作成等を通じて、明らかにしてまいります。

質問事項
 二の6 減価償却費等について東京スタジアムは、将来に渡って都の公の施設となるのか。
 その場合に形式上帳簿から見えなくなる減価償却費はいくらか。
 各会計年度に期間配分される金額と残存価格を示されたい。

回答
 都は、東京スタジアムの所有権を取得した後、柔軟で効率的なスタジアム運営を行うため、東京スタジアムを地方自治法上の公の施設としてではなく、普通財産として同法第二百三十八条の五第一項に基づき、株式会社東京スタジアムに貸し付けることとしています。
 仮に会社が所有するとした場合、その減価償却費については、構築物や設備ごとに償却期間が異なるため、現段階で正確な減価償却費を算出することはできませんが、全ての施設をスタジアム本体の償却期間である四十五年間で償却したと想定すると、定額法による毎年の償却費は約六億三千五百万円、償却後の残存価格は約二十一億円と試算されます。

質問事項
 二の7 維持修繕のための費用について都は、買取り後の東京スタジアムを無償で株式会社東京スタジアムに貸し付けるということだが、施設の維持修繕のための費用は、毎年いくら発生し、誰がどのように負担するのか、伺う。

回答
 東京スタジアムの維持管理費は、他の競技場の例を参考に推計しており、開業初年度は、概ね年間六億三千万円と見込んでいます。
 この費用は、株式会社東京スタジアムがスタジアムの運営による収益で賄うこととしています。

質問事項
 二の8 事業計画の比較検討について都が東京スタジアムを買い取らなかった場合と、買い取った場合の両者について、株式会社東京スタジアムの事業計画にどのような金額差が生じるのか。
 完成後五年間の資金計画と利益計画を示しながら、どう事業が展開されるか明らかにされたい。

回答
 事業計画について試算すれば、都が東京スタジアムを買い取った場合、スタジアムの開業初年度にあたる平成十三年度の会社の収支は、収入が約八億六千万円、費用が約八億九千万円、税引後利益で約四千万円の赤字になります。
 また、開業五年目では、収入が約九億七千万円、費用が約九億四千万円、税引後利益で約三千万円の黒字になる見込みです。
 なお、買い取らなかった場合については、現時点で公表できる資料はありません。

質問事項
 二の9 組織等の見直しについて東京スタジアムの購入代金支払い完了後に株式会社東京スタジアムのあり方について、抜本的な見直しを行うとしているが、どんな内容なのか。また、筆頭株主でありながら、購入代金の支払いが完了するまでの二十年間、抜本的な見直しを行わない理由は何か、併せて伺う。

回答
 株式会社東京スタジアムの組織は、現在は建設中心の体制となっています。
 しゅん工後は主に運営業務を行うことになるため、営業体制を強化することとし、その後も随時、組織等について必要な見直しを行います。
 また、購入代金の支払いが完了する二十年後に、その時の社会経済情勢や会社の経営状態を踏まえて、改めて会社のあり方について抜本的な見直しを行うこととしています。

平成十一年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 藤田十四三

質問事項
 一 周辺事態安全確保法と都の対応について
 二 清掃行政について
 三 ディーゼルカーNO作戦について
 四 高齢者福祉について
 五 株式会社キリンビール東京工場跡地問題について

一 周辺事態安全確保法と都の対応について
 1 周辺事態安全確保法(「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」)は、平成十年四月以来約一年余にわたる国会審議を経て今年五月可決成立、公布され、先月二十五日に施行となりました。私は、従来から、この法律のもととなる新ガイドラインそのものが、日米安全保障条約 をはるかに踏み越えた内容であると考えており、これまでにも様々な懸念を表明し続けてきました。特にこの法律は、日本の民主主義と国民の基本的人権に対して重大な影響を及ぼし、住民福祉の向上を目指すべき地方自治体の立場との矛盾が生じるおそれがあり、法が施行されたことによって、この懸念がいよいよ現実のものとなってきました。そこでまず、法案が審議され、可決成立、公布、施行に至るまでの間、東京都として「周辺事態安全確保法(案の時期も含めて)」に対してどのような懸念をいだき、国等に対してどのような対応を行ってきたのか、伺います。
 2 次に、国は、法の施行に際して、「同法第九条解説(案)」を全国の自治体等に提示しております。そこには、地方自治体や民間に要請する協力項目の例として十三の事項があげられていますが、一方で、協力の内容については事態毎に異なるものであり、予め具体的に確定される性格のものではなく、これらのものに限られないとされています。いわゆる「周辺事態」の際には、「後方支援」の名のもとで、米軍から我が国の地方自治体に港湾、空港、病院の使用など、幅広いかたちで協力を求めてくる事態が予想されます。にもかかわらず、「解説(案)」の内容は、住民はもとより、地方自治体や民間企業にとっても、不 透明な部分が多すぎると言わざるを得ません。内閣安全保障・危機管理室には、自治体などから、「解説(案)」に対する膨大な質問が届いているやに聞いております。これはまさに、周辺事態安全確保法に対 する懸念や不安が、なお完全に解消されていないことの証しではないでしょうか。そこでお尋ねしますが、この「解説(案)」からどのようなことがわかり、また、その内容は、地方自治体がいだいている懸念等に十分応えるものとなっているのかどうか、あわせて伺います。
 3 また、政府は、法施行の前日である先月二十四日、周辺事態安全確保法に関連し、「地方自治体の長は、同法に基づく国からの協力要請に対し、地方議会の決議や住民からの請求を理由として拒むことはできない」という見解を明らかにしました。我々地方議会を担う者の立場からすれば、全くもって議会や住民を軽視あるいは無視するものであり、断じて許し難い回答であると言わざるを得ません。まさに地方自治の危機であります。このような状態では、実際の協力要請の際には、地方自治体の適正な判断はもとより、議会や住民が意見表明する間もなく、緊急性の名のもと様々な協力を求められるおそれがあります。そこで、東京都として、今後このような事態にどう対処していく考えか、伺います。いずれにせよ、地方自治体にとって何よりも大切なことは、地域住民の生活と安全を守っていくことであり、自治体は住民生活への影響を十分考慮し、同法に基づく国からの協力要請の内容が住民福祉を損なうようなものである場合には、協力要請を断固として拒否すべきであるということを強く主張いたします。
二 清掃行政について東京のごみ問題は、大量生産、大量消費の時代に端を発し、最終処分場が不足する事態となり、その処分量が深刻な状況となっております。また、ごみが質的に多様になってきたことから、ごみを分別し、資源として回収できるものは再生資源として活用するなど、ごみの減量化を図る施策が実施されております。一方、ダイオキシン対策は、都の重要施策に位置づけられ、発生源対策を中心とした削減対策が講じられているところであると聞いております。そのような中で、平成十一年七月十九日付の職員向けの広報誌において、清掃局長が発言されたことにつきまして、その真意を含めいくつかの点についてお伺いします。
 1 区部のごみの量は平成元年をピークに減少しているということですが、最終処分場は依然として厳しい状況であります。最終処分場の延命策として、ごみ減量のため、ごみの排出を抑制し、より一層のリサイクルを推進することが必要です。ごみの発生そのものを抑制することは勿論ですが、分別によるごみ収集がきわめて重要であると考えます。今後、最終処分場が深刻な状況になっていくなかで、清掃事業は特別区に移管され、区独自の判断で処理できることになるわけですが、現行の分別によるごみの収集方法は継続されるのか、伺います。
 2 ごみの減量とリサイクルを推進していくためには、都民、事業者、行政が連携して取り組んでいくことが求められるところです。そのため、都は、様々な普及・啓発活動を実施していると聞いております。ごみ処理の問題は、都民や事業者の協力に負うところが大きく、こうした活動を通じて、都民と事業者の理解と協力を得ていくことが重要であります。都民や事業者の理解と協力は、行政に対する信頼から生まれるものであり、その信頼に応えることは、行政が事業を推進していく上で何よりも重要であると考えます。前述の職員向け広報誌において、清掃局長は、柳泉園組合が分別して収集した不燃ごみを可燃ごみと一緒に焼却していた問題について、「市民との信義則は大事だが、問題の一面にすぎない。」との意見を述べていました。こうした発言が清掃行政において築き上げられてきた住民との信頼関係を大きく損ない、今後の事業推進に大きな影響を与えるのではないかと強く危惧します。都は、今後も住民との信頼関係を維持するために、どのような普及・啓発活動を続けるのか、また、市町村に対し、財政援助や指導を行う立場から、市町村が行う不燃ごみの取扱いや分別収集について、どのように取り組んでいくのか、伺います。
 3 ダイオキシン問題は、その発生から影響まで、未だに十分解明されているとは言えませんが、主要な発生源は廃棄物の焼却過程にあると考えられています。そこで都は、廃棄物の減量・再資源化を促進するため、東京ルールによる資源回収、事業者自己回収の促進など、廃棄物の発生・排出抑制を図っていると聞いております。一般的に塩素を含むプラスチック類を焼却すると、ダイオキシン類が発生するといわれているところですが、一般には、プラスチック類のどの製品に塩素が含まれているか、わからないのが現状であり、可燃、不燃の分別すら、厳格にはできていないと思われます。このような状況の中で、今後、都はプラスチック 類を含めた不燃ごみの取扱いについて、どのように取り組んでいくのか、伺います。
三 ディーゼルカーNO作戦について
 1 先般都が発表した、都内からディーゼルカーを駆逐するとの発表は、都民に大きな波紋を投げかけました。とりわけディーゼルエンジンを主体とするトラックを使用して業を営む運送業界は、大いに動揺しております。私もいきなりの話しなのでディーゼルカーの功罪について、にわかに判断しかねています。ディーゼルカーの吐き出す黒い煙が人体に悪影響を及ぼすであろうことは、素人ながら分かりますが、具体的な危険の蓋然性が分かりません。どのくらいの量によって、どのような影響がでるのか教えて下さい。そして、東京の現状がどのようになっていて、それが具体的にどのような問題をおこしているのか、あるいは起こしそうなのか、併せてお聞きします。
 2 今回の作戦を実行すると、一体どのくらいの都民が影響を受けるのでしょうか。先に述べた運送関係者が影響を受けることは間違いないと思われますが、その他にも直接間接を問わず多くの都民の生活に大きな影響を与えるものと推測しますが、実態はどうなのか伺います。そして、このように重大な作戦を策定するにあたっては、当然ながら都民各界の意見を踏まえた上でのことと思いますが、ここにいたるまでの経緯をお伺いします。
 3 環境問題については、その先進国であるヨーロッパでは、環境に優しい車として優れたディーゼル車の開発を積極的に進めていると聞いています。そして、現在かの地では約四〇%の車がディーゼル車だそうです。確かに燃費の点ではガソリン車よりもディーゼル車に軍配が上がるようです。地球温暖化が世界的に叫ばれている今日、ディーゼル車悪玉論は国際社会の理解を得られるのでしょうか。
伺います。
 4 都は今回知事部局の車両を全てガソリン車に切り替えると発表しましたが、最も多くのディーゼル車を抱える交通局や小型トラックを使用している清掃局等々都庁内部でも大きな影響があろうかと思います。財政難の折り、どのような策をお考えか伺います。
 5 「ディーゼル車NO」五つの提案の中に、都内ではディーゼル車は乗らない、買わない、売らないと記されていますが、これは行政が率先して不買運動を行っていることにはならないのでしょうか。ディーゼル車の製造販売自体が合法的なものとして認められている以上、このようにヒステリックな提言は、適法な業務行為に対する不当介入にはならないのでしょうか。見解を伺います。
 6 私も環境問題は、見過ごすことのできない重要問題であることは、重々認識しております。そして、ディーゼル車を含む自動車公害が問題の最たる原因であるとも思います。また、この問題については、知事と同様もしくはそれ以上の危機感を抱いております。しかしながら、人と車の関係は、現代社会において車が必要不可欠な輸送手段である以上、全て一刀両断に片づけられるものではないのでしょうか。この問題は、人間の生き方の問題であり、高度な文明社会に対する問いかけでもあります。今回の作戦が、そうした意味において、あまりにも経済効率優先の車社会に一石を投ずることに主眼をおいておられるのなら、問題提起としては大いに賛同いたしますが、民意を無視した一方的なやり方でこの問題を解決されようというのであれば、それは民主社会に対する冒涜ではないかと思いますがいかがでしょうか。見解を伺います。
四 高齢者福祉について
 1 介護保険審査会について
 いよいよ来年四月から介護保険法がスタートします。制度については、様々な問題点が指摘されていますが、最も危惧される事柄の一つに、要介護認定にかかわるものがあります。介護を必要とする被保険者が、どの程度の介護を必要としているのかの判断に際し、法では、認定調査員の調査と市町村が設置する介護認定審査会の判定により決められることとなっています。しかしながらこれに関しては、市町村の認定調査員の質等が必ずしも均等でないこと、要介護の調査が原則一人で行われること、調査の方法もまちまちであることなどから、かなり調査結果にバラツキが出るのではないかという不安があります。介護認定審査会の判定を経るとはいうものの、マークシート方式による調査員の第一次調査にかなりのウエイトがかかることは確かであり、一人のお年寄りの生活がそれによって左右されてくるかと思うととても気がかりであります。そして、この要介護の決定は、市町村の 行う行政処分でありますから、行政不服審査請求による救済の道が開かれており、その役割を担うのが都道府県に設置される介護保険審査会であります。こうしてみると、この介護保険審査会は、非常に重要な役割を担った組織であり、市町村の行う介護認定が先程のようにとても不安定なものである以上、この審査会の役割は極めて公平な判断を求められると思われます。審査会の委員には、市町村代表委員と被保険者代表委員、そして公益委員の三者が就任することになっております。恐らく、市町村代表委員と被保険者代表委員は互いに対立するでしょうから、最後の判断はこの公益委員に委ねられることになりましょう。法ではこの点を考慮してか、審査会の委員長には公益委員が就任するよう定められております。かように、この公益委員の位置づけは正に介護保険制度の根幹をなす重要なものであり、その選任は極めて慎重かつ公平に行われるべきであると思います。公益委員の人選について、いかなる方法で行うのか、具体的に説明して下さい。また、法によれば、審査会には専門調査員をおくことができるとなっていますが、設置の有無と、もし設置するとすれば、どのような人物を何人 ぐらい設置するのか、その選考方法はどうするのか、併せてお伺いします。
 2 福祉施策の再構築と介護保険制度について先に発表された「福祉施策の新たな展開」によりますと、これからの福祉は、都民の選択と責任に基づく自立自助を基本とするとされております。私は、これは裏を返せば、行政としては、多くの選択肢を用意するとともに、都民の権利を明確にし、自立自助ができるような基盤を整備することを都が方針として打ち出したものと理解いたしました。介護保険制度は、利用者本位と在宅福祉の重視をその基本理念としております。都のこれからの福祉施策方針と介護保険の理念は奇しくも一致するわけですが、そうであるならば、都は自らの施策として、介護保険制度の柱となる在宅サービスの充実強化について大いなる責任があると思います。
今後都としてどのように対応していくのか所見を伺います。
 3 在宅サービスの充実と住宅の充実について都のこれからの福祉施策の展開においては、住宅政策が一つの鍵を握っているとも言えましょう。折しも先般国土庁から発表された資料によりますと、東京の住宅価格はニューヨーク、パリの約四倍だそうです。在宅サービスを唱えても、在宅自体に難があるのでは、今後の福祉施策や介護保険制度の展開が極めて危うくなります。住宅政策における最も頭の痛い問題は土地価格であり、それが都だけでは解決することは難しい問題でもあることは承知しておりますが、もし、ニューヨークやパリ並に住宅が手に入れば、都民の生涯設計における負担は大幅に改善され、その分で豊かな老後を過ごせることになりましょう。住宅問題の解決は、単に暮らしを豊かにするだけでなく、福祉施策にとっても非常に有効な手段であると思います。都民に安価で良質な住宅を提供するために、何が問題であり、今後どのようにされるお積もりか、伺います。
五 株式会社キリンビール東京工場跡地問題について最後に、北区堀船四丁目二番で永年操業していた株式会社キリンビール東京工場移転の跡地に新たに進出を計画している「読売新聞」「日刊スポーツ」「日本製紙」など三事業がすすめようとしている「北区堀船印刷関連施設建設事業」に関連して何点かおたづねいたします。周知のとおり、北区堀船四丁目二番で操業を続けていた株式会社キリンビール東京工場が昨年八月をもって閉鎖し、その後、同敷地に読売新聞社、日刊スポーツ印刷社、および日本製紙株式会社の三社が前述の開発計画を進めることが明らかにされています。私は、従前のビール生産工場とは異なる操業形態、特に夜間、深夜、早朝に集中する操業開始後の関係車輌二~四トンのディーゼル車約三百台という膨大な走行計画、従来乗り入れられたことのない二十トン車を一日二十五台も走行させるという計画は、振動、騒音に加えて排気ガス公害など、将来にわたり、沿線住民の生活環境全般の破壊がさけられなくなる結果につながるとうけとめ、この事態に大きな懸念と不安を抱いています。東京都が『生活都市東京構想』の中で、「窒素酸化物、浮遊粒子状物質などによる大気汚染の主な改善策として、自動車の排出ガスを抑えるために、自動車交通量の抑制を図るとともに、排出ガスの少ない低公害車を大量に普及させる仕組みをつくっていく」と表明されていること。並びに、先に石原知事が公にした「ディーゼル車NO作戦」と、このプランに基づいて早急に打ち出されるものと考えられる環境保全のための施策の具体化を視野に入れるとき、本計画は東京都が進めようとしているこうした環境保全行政施策にことごとく逆行するものと言わざるを得ません。この観点から、東京都が次の措置をとるよう強く要求して夫々答弁を求めます。
 1 「北区堀船印刷関連施設建設事業」を進めようとしている読売新聞など三社に対し、当該計画を白紙撤回するよう行政指導すること。
 2 北区で堀船地区を「みどりの極端に少ない地区」とみなし、本年度中に改訂する『北区みどりの基本計画』に、当地区を「緑化重点地区」に指定する方向と仄聞いたしておりますが、実態としては、堀船二丁目十三番地に都市計画法に定める「新堀船公園」の設置計画があるものの今日まで具体化しておりません。キリンビール東京工場の撤退という好機をとらえ、この跡地を「新堀船公園」建設用地として当該地に確保し、既存の北区立白山堀公園と一体的に整備するなど、北区と協同し当地区の緑化の推進、防災対策の充実を図ること。
 3 次善の策として、次のことについて読売新聞など三社に対する行政指導等を強めること。
ア 東京都環境影響評価条例に基づく手続きを、本年六月改正の「改正条例」に基づいて実施すること。
イ 前記、深夜から早朝にわたる二~四トン車の約三百台近い走行と一日二十五台と予定される二十トン車の走行を、接続する他路線や河川を利用した計画を具体化して全面的に代替えするよう指導するとともに、東京都としてもこの受入態勢を前向きに検討すること。

平成十一年第三回都議会定例会
藤田十四三議員の文書質問に対する答弁書

質問事項  一 周辺事態安全確保法と都の対応について
1 法案が審議され、可決成立、公布、施行に至るまでの間、都として「周辺事態安全確保法(案の時期も含めて)」に対してどんな懸念をいだき、国等に対してどんな対応を行ってきたか、伺う。

回答
 周辺事態安全確保法に基づく国以外の者の協力については、住民生活や地方公共団体の業務運営への影響が考えられます。
 このため、同法案審議の段階においては、「地方公共団体への適時、的確な情報提供、意見聴取等による実情把握及び地方公共団体の意向の十分な尊重」について国に要請しました。
 しかし、法案成立後においても、周辺事態が具体的にどのようなものであるかが明確にされていないため、「地方公共団体への積極的な情報提供、協力要請の際のマニュアル等による十分な説明及び地方公共団体の意向の十分な尊重」について、都の国に対する施策及び予算に関する要望の中で要請を行ったところです。
 また、「全国知事会」や「渉外知事会」などの関係団体を通じても同様の趣旨で緊急要望等を行ったところです。

質問事項
 一の2 国は、法の施行に際し、「同法第九条解説(案)」を全国の自治体等に提示している。
 この「解説(案)」からどんなことがわかり、また、その内容は、地方自治体が抱いている懸念等に十分応えるものとなっているか、併せて伺う。

回答
 同解説(案)では、同法第九条に定められた「国以外の者の協力」について、想定される協力の内容や、協力要請のプロセス等が示されています。
 具体的には、規定の基本的な趣旨、第九条第一項から第三項までの解説、要請される協力の具体的種類・内容(十三項目の例示)、協力要請のプロセス、協力を要請された場合の対応、損失に関する財政上の措置などについて、概要の説明やQ&A形式による解説がなされています。
 この解説書によりある程度の基準が示されたところですが、個々具体的なケースにおける調整基準、提供対象施設の範囲などが必ずしも明確であるとは言えません。
 このため、都として国と意見交換を行うとともに、「渉外知事会」等の各団体を通じて国に質問を提出したところです。

質問事項
 一の3 政府は、周辺事態安全確保法に関連し、「地方自治体の長は、同法に基づく国からの協力要請に対し、地方議会の決議や住民からの請求を理由として拒むことはできない」という見解を明らかにした。これは、議会、住民を軽視、無視するものであり、許し難い。都としては、今後このような事態にどう対処するのか、伺う。

回答
 周辺事態安全確保法第九条第一項による協力を国から求められた場合、法令の範囲内において協力を行うこととなりますが、施設等の適正な管理運営に支障をきたす等の正当な理由がある場合には協力を拒否できることとなっており、個々の具体的事例に即して、関係法令に基づき合理的に判断すべきものと考えています。
 この判断を適正に行うためにも、協力要請の際、マニュアル等により、その内容・手順が具体的に示されるなど、事前に十分な情報が提供されることが重要であると認識しており、今後とも、このことについて、国に対し要請を行っていきます。
 また、平素から、国(関係省庁)と地方公共団体との意見交換や情報交換ができるような仕組みを講じるよう併せて国に対して要請していきます。

質問事項
 二 清掃行政について1 区移管後も現行の分別によるごみ収集方法を継続するのか、伺う。

回答
 区移管後のごみの収集方法については、最終的には特別区の判断によりますが、清掃事業を混乱なく円滑に行うために、二十三区統一した現行の分別区分による収集方法を引き継ぐことを、都区で確認しております。

質問事項
 二の2 都は今後も住民との信頼関係を維持するため、どのような普及・啓発活動を続けるのか、また、都は、市町村に対し、財政援助や指導を行う立場から、市町村が行う不燃ごみの取扱や分別収集について、どう取り組むのか。

回答
 都の普及・啓発活動についてですが、清掃事業を推進する上で、都民、事業者との信頼関係は何より大切なことと考えています。
 そのため、清掃施設見学会、こどもごみ会議、マイバッグキャンペーン、新聞、雑誌、ポスターなどを活用したごみ減量キャンペーンなど様々な普及・啓発活動を展開しています。
 また、地域に密着した取組が重要であるため、住民の自主的組織である「清掃協力会」と連携したごみ減量検討会の開催、区と連携したごみ減量キャンペーンに取り組んでいます。
 さらに、ごみの減量や排出方法などについて、より一層の理解と協力を得るため、都民・事業者との対話を中心とするきめ細かな「ふれあい指導」を各清掃事務所において展開しています。
 今後とも、信頼関係を一層深めていくため、普及・啓発活動の充実に努めていきます。
 また、市町村の不燃ごみの取扱などへの都の対応についてですが、清掃事業は市町村の固有事務であり、不燃ごみの取扱や分別収集の方法については、市町村が地域の特性等を踏まえて実施するものです。
 不燃ごみの適切な取扱やごみの分別収集は、ごみの適正処理や減量・リサイクルを推進する上で重要であり、都としては、清掃事業の円滑な推進のために、市町村が行う施設整備やごみ減量化促進対策に対する補助を行うとともに、必要な情報提供や技術的助言などにも努めています。
 今後とも、引き続き市町村に対して、必要な支援を行っていきます。

質問事項
 二の3 プラスチック類が、可燃、不燃の分別すら厳格にできていない状況の中で、今後、都はプラスチック類を含めた不燃ごみ取扱について、どう取り組むのか、伺う。

回答
 プラスチック類を含む不燃ごみについては、東京ルールⅠによるびん、缶の回収やペットボトルの店頭回収等を通じて、今後とも一層の資源化・減量化を図っていきます。
 また、消費者による商品選択や分別排出を容易にし、リサイクルが促進されるよう、製品の素材表示の義務付けを国に要望しているところです。
 なお、プラスチック類は埋立処分場への負荷が大きいため、今後のリサイクル技術の進展等を踏まえ、適切な処理方法を検討していきます。

質問事項
 三 ディーゼル車NO作戦について
1 ディーゼル車の吐き出す黒い煙の具体的な危険の蓋然性については、どれくらいの量でどんな影響が出るのか。
 また、東京の現状がどうなっていて、それが具体的にどんな問題を起こしているのか、あるいは起こすのか併せて伺う。

回答
 窒素酸化物や浮遊粒子状物質による東京の大気汚染は、環境基準の達成率が低く、ここ十数年、改善が進んでいません。
 これらの物質については、気管支ぜん息など呼吸器に対する害を引き起こす原因物質として疑われています。
 その主な原因は、自動車からの排出ガスですが、中でもディーゼル車は、走行量では全自動車の二割程度であるにもかかわらず、窒素酸化物の約七割を占めるなど、最大の要因となっています。
 ディーゼル車は、特に物流の面で、東京の暮らしを支える重要な役割を果していますが、東京の大気汚染を改善するためには、現在のディーゼル車は、今のままでは東京での利用に適さないと考えております。
 このため、都は、ディーゼル車問題などについて都民や事業者に考えてもらうとともに、自動車使用のあり方を根本から考えてもらうための提案型のキャンペーンとして「ディーゼル車NO作戦」を開始しました。

質問事項
 三の2 今回の作戦を実行すると、どのくらいの都民が影響を受けるのか、その実態を伺う。
また、ここに至る までの経緯も併せて伺う。

回答
 窒素酸化物や浮遊粒子状物質による東京の大気汚染は、深刻な状況にあり、その主な原因は、自動車とりわけディーゼル車からの排出ガスにあります。
 一方では、現在の事業活動や日常生活は、物流などの面でディーゼル車に多くを依存していますが、大気汚染の改善のためには、ディーゼル車の排出ガスがもたらす影響について正しく理解してもらうとともに、都民や事業者に、より低公害な車の利用を促すなど、自動車の使用のあり方を変えてもらう必要があります。
 このため、今回、「ディーゼル車NO作戦」を開始したところであり、今後も、ディーゼル車問題について活発な議論の輪を広げ、多くの都民や事業者の理解と協力が得られるように努め、自動車公害対策を推進してまいります。

質問事項
 三の3 ディーゼル車悪玉論は、国際社会の理解を得られるのか、伺う。

回答
 窒素酸化物や浮遊粒子状物質による東京の大気汚染の主な原因は、ディーゼル車にあります。
 一方、ディーゼル車は、二酸化炭素の排出がガソリン車に比べ約二割少ないため、地球温暖化対策の面からはむしろ、ディーゼル車を優遇すべきとの議論があることは承知しています。
 しかし、窒素酸化物や浮遊粒子状物質は、気管支ぜん息などの原因と疑われており、都民の健康を守るためにはディーゼル車対策の強化が必要です。
 二酸化炭素の削減については、ガソリン車を含めた燃費の改善や、交通量の抑制策などによって、総合的に対応すべきものと考えています。

質問事項
 三の4 知事部局の車両を全てガソリン車に切り換えると発表したが、財政難の折り、どのような策を考えているのか、伺う。

回答
 「ディーゼル車NO作戦」では、都民や事業者の理解と協力をお願いすることとなるため、厳しい財政状況ではありますが、都の率先行動として知事部局で保有するディーゼル車のうち、購入年次が古く、ガソリン車への代替が可能な小型の車両約四十台を、本年度中に緊急にガソリン車に買い換えることにいたしました。

質問事項
 三の5 「ディーゼル車NO作戦」の五つの提案の中に、都内ではディーゼル車には、乗らない、買わない、売らないと記されているが、これは行政が率先して不買運動をしていることにはならないのか。
 このような提言は、適法な業務行為に対する不当介入にはならないのか、伺う。

回答
 「ディーゼル車NO作戦」では、ディーゼル車の排出ガスの環境への影響の大きさを考慮し、現在のディーゼル車は、今のままでは東京での利用に適さないという考え方の下に、五つの提案を行っています。
 このうち、「都内ではディーゼル乗用車には、乗らない、買わない、売らない」との提案は、ディーゼル乗用車にはガソリン車等の代替車があることや、都内のディーゼル乗用車の登録台数が約十九万台と多く、環境への影響が懸念されることなどから、都民等が新たに乗用車を購入し、または、買い換えるときには、ディーゼル車よりも環境への負荷が少ないガソリン車等の選択ができないものかとの問題を提起したものであります。
 また、同様の趣旨から、自動車販売業者に対しても「ディーゼル乗用車は出来るだけ売らないこと」について協力を求めることが必要と考え、問題提起をしたものです。
 今後、議会をはじめ都民の事業者の意見や議論を十分に踏まえ、具体的なディーゼル車対策を推進してまいります。

質問事項
 三の6 今回の作戦が、民意を無視した一方的なやり方で問題を解決しようとするのならば、それは民主社会に対する冒涜である。見解を伺う。

回答
 「ディーゼル車NO作戦」は、ディーゼル車の排気ガスが深刻な影響をもたらしていること、ディーゼル車が東京の物流を支えていることなどについて、都民や事業者に考えてもらうとともに、自動車使用のあり方を根本から考えてもらうための提案型のキャンペーンであり、その過程で広く都民から意見を求めることとしています。
 すでに、インターネット討論会や公開討論会で多くの方々から様々な意見や提案等をいただいていますが、そうした意見や提案等は、自動車使用に関する東京ルールの策定や東京都公害防止条例の改正など、今後の施策に反映してまいります。

質問事項
 四 高齢者福祉について
1 介護保険審査会について介護保険審査会の委員長には、公益委員が就任するよう定められている。公益委員の選任について、いかなる方法で行うのか、伺う。
 また、専門調査員の設置の有無と、設置するとすれば、どのような人物を何人ぐらい設置するのか、その選考方法と併せて伺う。

回答
 介護保険審査会の委員構成については、厚生省が示した「介護保険審査会運営指針(案)」の中で、委員の選任分野等についての考え方が明らかにされています。
 これによれば、公益を代表する委員については、「保健医療福祉の学識経験者」及び「法曹関係者、行政経験者等紛争解決について見識のある者」が例示されています。
 都では、介護保険審査会の設置に当たり、こうした厚生省の示す指針に沿って、委員を選任したところです。
 また、要介護・要支援認定に関する審査請求を迅速・正確に処理するためには、審理の過程において、特に医学的な専門調査が必要なケースもあると考えています。
 このため、都では、十一月一日付けで老人医療を専門とする医師三名を、専門調査員に任命したところです。

質問事項
 四の2 福祉施策の再構築と介護保険制度について介護保険制度は、利用者本位と在宅福祉の重視を基本理念としており、都のこれからの福祉施策方針と一致するが、そうならば都は自らの施策として、介護保険制度の柱となる在宅サービスの充実強化について責任がある。今後、都としてどう対応していくのか、所見を伺う。

回答
 都は、高齢者が介護を必要とするようになっても、身近な地域で住みつづけることが基本であると認識しています。
 そのため、「福祉施策の新たな展開」においても、基本的方向として、在宅サービスに重点をおいた福祉を目指しているところです。
 在宅サービスの基盤については、区市町村が現在作成している介護保険事業計画と調整の上、都が年度内に作成する介護保険事業支援計画及びそれを包含する老人保健福祉計画において、整備目標等を明確に定めることとしています。
 都は、今後とも、広域的自治体の役割として、在宅ケアの核となる人材の育成に努めるとともに、区市町村が、基盤整備を計画的かつ着実に進められるよう、積極的に支援してまいります。

質問事項
 四の3 在宅サービスの充実と住宅の充実について住宅問題の解決は、福祉施策にとって有効な手段である。都民に安価で良質な住宅を提供するためには、何が問題で、今後どうするのか、伺う。

回答
 住宅は、生活の基盤であり、住宅のありようは、都民生活の質と密接に関連しています。
 東京の住宅問題は、狭い・高い・遠いと表現されるように、全国的に見ても、住宅の専用面積が小さく、住宅費負担が重く、通勤・通学に時間がかかるというもので、地価が大きな原因となっています。
 都では、これまでも、低所得層に対して低廉な家賃の都営住宅の供給などを、また、中堅所得層に対しては、高い地価を直接的には反映させない都民住宅の供給などを進めてまいりました。
 今後、高齢化が一層進む中で、都としては、住宅に最も身近なところで福祉施策との連携が図られるよう、区市町村の住宅施策を支援するとともに、都営住宅の建替えに当たっての特別養護老人ホームなどの社会福祉施設の併設や、都営住宅の建物の躯体を残してバリアフリー化など内部を抜本的に改めるスーパーリフォーム事業を進めてまいります。
 また、バブル期に比べ著しく地価が下落している今こそ、民間事業者による良好な住宅ストックの形成が期待できることから、高齢者向け優良賃貸住宅制度など民間の活力を活用した様々な手法を用いるとともに、民間事業者等が参加している「東京都住宅バリアフリー推進協議会」の活動を支援することにより、低廉で、良質な住宅が都民に供給されるよう努めてまいります。

質問事項
 五 株式会社キリンビール東京工場跡地問題について工場跡地の開発計画を進めることは、沿線住民の生活環境全般の破壊が避けられなくなる結果につながるものであり、また、都が進めようとしている環境保全行政施策に逆行するものである。この観点から、次の措置をとるよう要求し、答弁を求める。
1 「北区堀船印刷関連施設建設事業」を進めようとしている読売新聞など三社に対し、当該計画を白紙撤回するよう行政指導すること。

回答
 本事業は、東京都環境影響評価条例の対象事業であり、事業者においては、条例に基づき環境影響評価書案を提出する準備を進めていると聴いています。
 この条例は、事業の実施に際し、環境への影響をできるだけ少なくするための手続を定めたものであり、環境影響評価書案が提出された段階で、住民等の意見に配慮し、極力、環境影響の軽減が図られるよう手続の適切な運用に努めていきます。

質問事項
 五の2 跡地を「新堀船公園」建設用地として当該地に確保し、既存の北区立白山堀公園と一体的に整備するなど、北区と協同し、当地区の緑化の推進、防災対策の充実を図ること。

回答
 十ha未満の公園の計画決定及び整備につきましては、区が行うこととなっており、東京都は、このような区の公園整備に対しまして、特別区都市計画交付金の交付のほか、国庫補助について国に積極的に働きかけるなど、区の負担を軽減するよう支援してきているところです。
 当該地の緑化の推進と防災対策の充実につきましては、今後の北区の意向を踏まえて、適切に対処してまいります。

質問事項
 五の3 次善の策として、次のことについて読売新聞など三社に対する行政指導を強めること。
ア 東京都環境影響評価条例に基づく手続を、本年六月改正の「改正条例」に基づいて実施すること。

回答
 東京都環境影響評価条例は、昨年十二月に改正され、本年六月から施行されました。
 この改正に伴い、新たに環境影響評価調査計画書に係る手続が設けられましたが、この手続については、事業者が既に環境影響調査等を行っている場合には、適用しない旨の経過措置が設けられています。
 本事業については、本年九月二日に、事業者から経過措置に基づく届出がなされており、審査の結果、要件を満たしていると認められたので、新条例に定める環境影響評価調査計画書に係る手続は行わないこととなります。
 しかしながら、環境影響評価の項目の選定や予測・評価方法などについては、環境影響評価手続を運用する中で、必要に応じ、事業者に対し、新しい技術指針等の内容に配慮するよう求めていきます。

質問事項
 五の3のイ 深夜から早朝にわたる関係車両の走行を、接続する他路線や河川を利用した計画を具体化して全面的に代替えするよう指導するとともに、都としてもこの受入態勢を前向きに検討すること。

回答
 ご指摘の事項については、環境影響評価手続の中で、事業者の見解を求め、この見解に対する住民等の意見を聞くことを予定しています。都としては、この意見を踏まえ、事業者に対し、関係機関と十分協議するよう指導・助言等を行っていきます。

平成十一年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 藤田愛子

質問事項
 一 不燃ごみ杉並中継所について
一 不燃ごみ杉並中継所について
 九月十四日に杉並区はこれまで調査を行ってきた、いわゆる「杉並病」についての疫学的調査結果を発表しました。それによれば、他の三地域(久我山、永福、和田)と比べて井草地域に多愁訴、目・皮膚、呼吸器の異常が多く見られたとなっています。この地域間の違いは明らかで、区としても医療相談窓口を設置したり、「井草の森住民懇談会」を作っていくことを提案しています。しかし、ここ一年間は健康被害は沈静化しているとして、都に中継所の稼働を停止して原因を調査することは求めないとしています。都は、「区の努力は多とするものの原因が明らかになったとは言えないし、沈静化していることを見れば一時停止をして原因究明する必要性はない」としていますが、医学的、科学的な徹底した調査によって原因を究明するための検討委員会の設置を決めたことは大いに評価するところです。三年半たってやっとここまできたとの感がありますが、この検討委員会を実効あるものとするために、以下の質問をします。
 1 検討委員会を全庁的に立ち上げるとのことだが、二〇〇〇年四月にはこの中継所は区に管理が移管されるが、検討委員会の目的と設置日時及び検討期間を伺う。
 2 現在、住民から公害等調整委員会に原因裁定を求める申請が起こされているが、この検討委員会と公調委との関係を伺う。どちらかが先に結果、結論を出したときはどのような判断を下すのか併せて伺う。
 3 検討委員会のメンバーには〔1〕患者〔2〕医学的研究者(毒性、中毒、疫学、化学物質過敏症、アレルギー等)〔3〕動植物研究者〔4〕施設設計(流体物理学、物質の移動に関する等)〔5〕化学分析研究者〔6〕プラスティックや不燃物に出される有害廃棄物一般についての研究者に参加していただきたいが、いかがか。
 4 科学的調査については、まず都の環境科学研究所が主体となって実施すべきと考えるが、いかがでしょうか。
 5 他の中継所は問題がないとされているが、原点に戻り、もう一度中継所内の構造上の問題、空気の流れ、フィルターについた物質の分析をすべきと考えるがいかがか。
 6 都は問題解決のためにはすべてのデータをだすとしているが、前回の公調委で住民側弁護士から半揮発性物質のガスクロマトグラフィーのフロッピーを提出してほしいとの要望があったが、廃棄したと答えてい るのは証拠隠滅ではないのか、見解を伺います。原因究明は未だにされていませんが、健康被害を起こしている方がいる事実は消せません。未然防止、疑 わしきは使用せずの原則を貫くべきと考えます。
 以上

平成十一年第三回都議会定例会
藤田愛子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 不燃ゴミ杉並中継所について
1 検討委員会を全庁的に立ち上げるとのことだが、二〇〇〇年四月にはこの中継所は区に移管されるが、検討委員会の目的と設置時期及び検討期間を伺う。

回答
 都では、これまでも杉並中継所及びその周辺の環境調査を実施してきましたが、健康被害の原因は明らかになっていません。
 このため、杉並中継所周辺で生じた環境問題や健康影響の原因の究明と、現在の状況や健康影響についても明らかにしていくことを目的として、本年十一月に専門家で構成する杉並中継所周辺環境問題調査委員会を設置したところです。

質問事項
 一の2 現在、住民から公害等調整委員会に原因裁定を求める申請が起こされているが、この検討委員会と公調委との関係を伺う。また、どちらかが先に結果、結論を出したときは、どのような判断を下すのか、あわせて伺う。

回答
 公害等調整委員会の原因裁定は、杉並中継所の排気と健康被害との間に因果関係があるかどうかについて判断するものです。
 一方、都の調査は、井草森公園周辺住民の健康被害の原因について総合的に原因究明しようとするものです。
 都の調査結果については、これまでと同様、公害等調整委員会に提供するとともに、公害等調整委員会、都の委員会それぞれの結論が出た段階で都としてそれぞれ判断をしていきます。

質問事項
 一の3 検討委員会のメンバーには、〔1〕患者、〔2〕医学的研究者(毒性、中毒、疫学、化学物質過敏症、アレルギー等)、〔3〕動植物研究者、〔4〕施設設計(流体物理学、物質移動に関する等)、〔5〕化学分析研究者、〔6〕プラスチックや不燃物に出される有害廃棄物一般についての研究者に参加願いたいが、如何か。

回答
 本年十一月に設置した杉並中継所周辺環境問題調査委員会は、公衆衛生、疫学、環境科学、大気環境及び法律の各分野の研究者や専門家十二名により構成しています。

質問事項
 一の4 科学的調査については、まず都の環境科学研究所が主体となって実施すべきと考えるが、如何か。

回答
 調査は、環境科学研究所等の関係研究機関の職員の参加も得て実施しているところです。

質問事項
 一の5 他の中継所は問題ないとされているが、原点に戻り、もう一度中継所内の構造上の問題、空気の流れ及びフィルターについた物質の分析をすべきと考えるが、如何か。

回答
 杉並中継所と同形式の中継所は、他に三園、希望丘、葛飾、新宿等があり他都市でも数多く採用されています。
 また、ごみに直接触れる空気は、集塵・活性炭脱臭機で、作業空間の空気についても活性炭フィルターで処理し排出しています。
 なお、周辺環境への影響の有無を調査することが最も重要であると考え、これまで排気や排水について調査を実施してきましたが、フィルター付着粉塵についても、どのような物質が付着されたか把握するための調査の実施に向け、その方法について検討していきます。

質問事項
 一の6 都は、問題解決のためにはすべてのデータを出すとしているが、前回の公調委で住民側弁護士から半揮発性物質のガスクロマトグラフィーのフロッピーを提出してほしいとの要望があったが、廃棄 したと答えているのは、証拠隠滅ではないのか、伺う。

回答
 環境調査の解析に用いるガスクロマトグラフ質量分析計の生データ電子媒体は、分析機器付属ソフト以外では読み取れません。
 このため、委託契約上、受託者に保管を義務づけていませんでした。
 ただし、委託会社に確認・依頼し、保管されていた生データについては、住民の要望に応じ、公害等調整委員会を通じて全て提供してきました。
 また、平成十一年度からは生データの保管を契約上義務付けたところです。

平成十一年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 坂口こうじ

質問事項
 一 田無市・保谷市の合併協議と東京都の支援策について
一 田無市・保谷市の合併協議と東京都の支援策について
 一九九九年(平成十一年)九月二十日、田無市・保谷市の両市議会は、合併について、これまでの任意の合併協議会に代わり、地方自治法に基づいて合併を話し合う合併協議会(法定協議会)の設置を議決しました。
 田無市議会では賛成十七、反対六、保谷市議会では賛成十六、反対五、欠席一という結果で、戦後浮かんでは消えた「合併」が、いよいよ現実性を持つものとなってきました。
 そこで以下知事及び関係局長に質問します。
 1 戦後東京都における自治体合併の歴史的評価と二十一世紀に向けての展望について
 市町村合併は、地方自治法に基づいた「廃置分合」であり、合併特例法では「二以上の市町村の区域の全部もしくは一部をもって市町村を置き、または市町村の区域の全部もしくは一部を他の市町村に編入 することで市町村の数の減少を伴うもの」と定義されています。
 合併が実現すれば、一般的には、行財政基盤の強化、行政サービスの向上、地域の一体的な整備、効率的で重点的な投資の実現などが可能となりますが、他面、行政と住民との距離の拡大やコミュニティの希薄化などの可能性も懸念されるところであり、その評価は歴史的検証に委ねざるをえないこととなります。
ア そこで伺いますが、戦後東京都における自治体合併にはいかなるものがあったか、又その歴史的な評価はいかなるものか伺います。
イ 近年では、一九九五年(平成七年)九月一日に、秋川市(人口五万四千百二十六人)と五日市町(人口二万二千二百五十二人)が合併し、あきる野市(人口七万六千三百七十八人)が誕生していますが、新市建設計画は着実に進み、期待された合併の効果が上がっていると評価されるか否か伺います。
又その理由についてもお答えください。
ウ さらに二十一世紀に向け、国は、現在の三千二百余の自治体を千程度にしていきたい方針のようであるが、その動向とこれからの展望について伺います。
 2 田無市・保谷市の歴史と合併協議について
 田無市は、かつて江戸時代青梅街道の宿場町、そして北多摩地区の人々の生活を支える商業の拠点として栄えてきた古い歴史を誇るまちです。
一八七九年(明治十二年)町制を施行し田無町に、一八九三年(明治二十六年)神奈川県から東京府に編入、一九六七年(昭和四十二年)市制を施行し田無市となりました。
 他方、保谷市は、かつて江戸時代幕府の開墾対策の一環として一七二二年(享保七年)に、新田開発(武蔵野新田八十二カ村)が命じられ、一七三六年(元文元年)には、大岡越前守が上保谷新田、下保谷 新田の検地を行いました。
 一八八九年(明治二十二年)上保谷村、上保谷新田、下保谷村が合併し保谷 村に、一九〇七年(明治四十年)埼玉県から東京府に編入、一九四〇年(昭和十五年)町制を施行し保 谷町に、一九六七年(昭和四十二年)市制を施行し保谷市となりました。
 一九九九年一月一日の田無市の人口は七万七千四十二人、保谷市の人口は十万一千六十八人で、合併が実現したとしますと人口約十八万人の新市が誕生することになります。
 そこで伺いますが、都は両市の歴史と特徴、合併協議の経緯、任意の協議会である「田無市・保谷市合併推進協議会」の協議についてどのような認識で対応してこられたのか伺います。
 3 田無市・保谷市と多摩北部地域の現状と課題について
 東京都内二十七市の比較からみた両市の特徴をあげると、田無市は工業出荷額が大きく「工業の都市」、他方保谷市は小売販売額が大きく「商業の都市」と評価でき、逆に、田無市では商業の活性化が、保谷市では工業の振興が課題といえます。
 財政力指数から見ると、ともに「財政的に自立した都市」と評価できそうですが、近隣都市との地域間競争の激化や、まちづくりにおける独自性を発揮するためにも一層の財政力の強化が望まれます。
 両市とも人口が伸びている点に強みがありますが、高齢化率は二十七市の中で高い方ですし、人口一人当たり都市公園面積は、二十七市平均が五・〇五平方メートルであるのに対し、田無市は一・二二平方メートル、保谷市は 〇・四二平方メートルと極めて狭く、高い質をもった住宅都市を目指すためにも公園整備が大きな課題となっています。
ア そこで伺いますが、都は、田無市及び保谷市の現状と課題をどのように把えているか、又これまでどのような対策をとってきたのか伺います。
イ さらに東京都全体からみると、この地域には、所謂「三多摩格差」に加えて「多摩内格差」(「たまらない格差」)があり、都政の中でも再三議論をしてきたところである。
都市基盤の整備を含め多摩北部地域の面的整備と生活心の育成をどうはかっていくお考えか、知事の決意を伺います。
 4 両市合併の必然性と必要性について東京都では地方分権を着実に進めるため、平成十一年七月に「第一次東京都地方分権推進計画」を策定しました。
 特に、市町村への権限委譲については、人口規模に応じて段階的に行うものとされ、人口二十万人以上の市に関しては、開発行為の許可や建築の許可などを含め、多くの権限委譲がなされる予定であります。
 そこで伺いますが、これら地方分権の動向、少子・高齢化の進展、高度情報化社会の到来、環境問題・個性化へのニーズの高まり、地域間競争の激化、地形的な特性等をふまえるならば、両市の合併には、かなりの歴史的必然性と、地域としての必要性があるものと考えるが、都の基本的な認識及び考えを伺います。
 5 両市合併の効果について平成十一年八月、田無市・保谷市合併推進協議会は「田無市・保谷市新市将来構想」(一人ひとりが輝くまち―田無市・保谷市合併にむけて―)を発表しました。
 その中で、田無市・保谷市における合併効果について、財政力強化、行政力強化、地域一体的なまちづくりの実現、行政サービスの向上、住民負担の軽減などが多角的に検討され、その効果の検証がなされている。
他方デメリットについても、市民意見の反映、行政サービスの低下、中心部・周辺部問題等について一定の検証がなされています。
 そこで伺いますが、都としてこれらを総合的にみて合併による効果が大きいと評価されますか、小さいと評価されますか所見を伺います。
 6 新市将来構想と東京都の支援策について
 両市の合併によって誕生する新市は、二十一世紀の東京都において最初の合併によって生まれる市となります。
 新市のまちづくりの基本理念は「二十一世紀を拓き、緑と活気にあふれ、一人ひとりが輝くまち」となりました。
 まちづくりの将来像としては、〔1〕地域の中で支えあう福祉のまち、〔2〕環境にやさしく美しいまち、〔3〕若者を育てるまち、〔4〕安全で快適なまち、〔5〕さまざまな産業が育つまち、〔6〕市民が参加する活力あるまちが描かれ、これを実現するための基本的な考え方として、〔1〕市民参加のまちづくり、〔2〕生活圏を重視したまちづくり、〔3〕仕組みを重視したまちづくりの方向が明示されました。
 そこで伺いますが、合併市町村まちづくり推進事業費(十年間)の総額は二百四十一億円と推計されていますが、合併特例法の改正による合併特例債発行や地方交付税の特例措置(合併算定替)の延長はもとより、「たまらない格差」を是正し、新市のまちづくりに、はずみがつくような東京都としての支援事業、例えば、東大田無キャンパス内の宇宙線研究所など三施設移転跡地への都立公園等の整備を合併記念事業として行うことなど、両市の合併に向け特段の支援策を行うべきと考えますが、知事及び関係局長の誠意ある答弁を求め、私の文書質問を終わらせていただきます。

平成十一年第三回都議会定例会
坂口こうじ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 田無市・保谷市の合併協議と東京都の支援策について
1 戦後東京都における自治体合併の歴史的評価と二十一世紀に向けての展望について
 ア 戦後東京都における自治体合併には、どんなものがあったか、またその歴史的な評価はどうか、伺う。

回答
 都内においては、いわゆる昭和の大合併と呼ばれる昭和二十八年の町村合併促進法制定を契機に大幅な合併が行われ、昭和二十八年当時八十四あった市町村が、昭和三十六年末の段階で四十二市町村となりました。
 最近では、平成七年九月に、秋川市と五日市町の合併が行われたところです。
 これら一連の合併は、関係市町村の行財政基盤の強化や住民サービスの向上が図られるなど、地方自治の進展から見て、それぞれ意義あるものであったと認識しております。

質問事項
 一の1のイ 一九九五年九月一日に、秋川市と五日市町が合併し、あきる野市が誕生したが、期待された合併の効果が上がっていると評価するか否か伺う。また、その理由も併せて伺う。

回答
 秋川市と五日市町は、ともに秋川流域に位置しており、従来から経済・文化などの面や市民生活において、地縁的・歴史的に強い結びつきがあったことから両市町による合併が実現したものです。
 両市町の合併により、将来を見据えた広域的なまちづくり等が可能となり、高齢者在宅サービスセンターの設置等による住民サービスの充実や行財政基盤の強化が図られるなど、合併による効果は着実に上がっていると考えております。

質問事項
 一の1のウ 国は、現在の三千二百余の自治体を千程度にしていきたい方針のようだが、その動向とこれからの展望について伺う。

回答
 国は、昨年五月に地方分権推進計画を策定し、この中で「行政の広域化の必要性に対し、市町村合併が効果的である」ことを明らかにし、これを受けて、本年七月、市町村合併特例法を改正するなど、市町村合併を積極的に推進していく方針を打ち出しているところです。
 地方分権の推進や少子・高齢化の進展などの社会経済情勢の変化の中で、市町村は、今後、行財政基盤の強化や広域的な対応が必要となってくるため、その意味から、合併の気運が高まっていくものと予想されます。

質問事項
 一の2 田無市・保谷市の歴史と合併協議について都は、両市の歴史と特徴、合併協議の経緯、「田無市・保谷市合併推進協議会」の協議についてどのような認識で対応してきたのか伺う。

回答
 田無市と保谷市両市においては、ご指摘のとおり、歴史的沿革の中で、それぞれのまちが形成されてきましたが、その地形的特性などから、これまで合併について様々な議論が行われてきました。
 今般、こうした土壌の上に合併気運が急速に高まり、両市による任意の協議会から、法定協議会が設置されるところまで到達したことは、自主的に合併を進めていく上で意義のあることと考えております。
 都は、これまで、両市に対して、合併に係わる必要な助言や情報の提供などを行い、両市の合併に向けた協議が円滑に進むよう支援してきたところです。

質問事項
 一の3 田無市・保谷市と多摩北部地域の現状と課題について
ア 都は両市の現状と課題をどうとらえているか、また、これまでどんな対策をとってきたのか、併せて伺う。

回答
 田無市・保谷市は、戦後、都市化の進展により急激に宅地化し、現在は、住宅が中心となった地域でありますが、一方で地域特性に応じ、商店街や工場も立地しております。
 こうした都市機能を生かしながら、今後のまちづくりを進めていくためには、御指摘のとおり、公園の拡大などの都市基盤の整備、商工業の振興、両市の財政力の強化などが、大きな課題であると認識しております。
 これまで、都としては、都市計画道路・調布保谷線の整備や東伏見公園の都市計画変更など都市基盤整備に取り組むとともに、街おこし推進事業や元気だぜ商店街事業など各種の商工業振興対策を実施してまいりました。 また、両市の円滑な財政運営が図られるよう、調製交付金や振興交付金などにより財政補完を行ってきました。

質問事項
 一の3のイ 両市の地域には、「三多摩格差」に加え、「多摩内格差」がある。
 都市基盤の整備を含め、多摩北部地域の面的整備と生活心の育成をどう図っていくのか、知事の決意を伺う。

回答
 魅力と個性に満ちた北多摩北部地域を創造していくためには、道路や公園などの整備とともに、これらの都市基盤を含めた面的な整備を促進することが重要であると認識しております。
 都は、これまでも、この地域の都市基盤の整備に努めるとともに、地域のまちづくりである市街地再開発事業等への支援を行ってまいりました。
 今後とも、地元市に連携しながら、南北道路等の着実な整備や面的整備への支援を行うなど、地域の発展に向けて積極的に取り組んでいくとともに、地元市が進める身近な生活圏におけるまちづくりに対しても、都は、広域的な立場から、ノウハウの提供をはじめとする支援を行ってまいります。

質問事項
 一の4 両市合併の必然性と必要性について両市の合併には、歴史的必然性と地域としての必要性があると考えるが、都の基本的な認識及び考えを伺う。

回答
 両市の合併にあたっては、ご指摘のとおり、両市に係る歴史的な沿革や地形的な特性なども踏まえつつ、また、地方分権の推進、少子・高齢化の進展等の時代状況の変化を見据えながら、本格的な検討がなされてきているものと認識しております。

質問事項
 一の5 両市合併の効果について田無市・保谷市合併推進協議会が発表した「田無市・保谷市新市将来構想」の中に、合併効果について、一定の検証がなされている。
 これらを総合的に見て、都として合併による効果が大きいと評価するか、小さいと評価するか、伺う。

回答
 ご指摘のとおり、両市による任意の協議会において新市将来構想が策定されました。
 この新市将来構想を踏まえながら、今後、法定協議会において具体的な合併効果について検討されることになりますが、一般的には、合併によって、広域的な視点に立ったまちづくりが展開できる、行財政基盤が強化される、また、住民にとっては、広域的にサービスを享受できる等のメリットが期待されており、合併効果は十分あるものと認識しております。

質問事項
 一の6 新市将来構想と都の支援策について都として、両市の合併に向け、特段の支援策を行うべきと考えるが、所見を伺う。

回答
 現在、田無市・保谷市の法定協議会において「新市建設計画」策定に向けて、各種のまちづくりのための具体的な事業の内容を検討中であります。
都としては、今後、その検討の推移を見極めながら、都の財政状況なども踏まえつつ、適切に対処してまいります。

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