警察・消防委員会速記録第六号

令和四年六月十日(金曜日)
第十二委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長中嶋 義雄君
副委員長荒木ちはる君
副委員長酒井 大史君
理事東村 邦浩君
理事宇田川聡史君
理事小山くにひこ君
とくとめ道信君
小磯 善彦君
三宅しげき君
高島なおき君
増子ひろき君
尾崎 大介君
西沢けいた君
和泉なおみ君

欠席委員 なし

出席説明員
警視庁警視総監大石 吉彦君
総務部長滝澤 幹滋君
生活安全部長青山 彩子君
総務部参事官企画課長事務取扱高口 雅人君
総務部会計課長長坂 雄太君
東京消防庁消防総監清水 洋文君
次長吉田 義実君
企画調整部長岡本  透君
総務部長石川 義彦君
人事部長川田  進君
企画調整部企画課長古賀 崇司君
企画調整部財務課長浅見 匡哉君

本日の会議に付した事件
警視庁関係
付託議案の審査(質疑)
・第百五十四号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
東京消防庁関係
付託議案の審査(質疑)
・第百五十五号議案 東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
・第百六十六号議案 特種用途自動車(救急車)の買入れ(その一)について
・第百六十七号議案 特種用途自動車(救急車)の買入れ(その二)について
・第百六十八号議案 特種用途自動車(救急車)の買入れ(その三)について
・第百六十九号議案 撮影機外三点の買入れについて
付託議案の審査(決定)
・第百五十四号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
・第百五十五号議案 東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
・第百六十六号議案 特種用途自動車(救急車)の買入れ(その一)について
・第百六十七号議案 特種用途自動車(救急車)の買入れ(その二)について
・第百六十八号議案 特種用途自動車(救急車)の買入れ(その三)について
・第百六十九号議案 撮影機外三点の買入れについて
特定事件の継続調査について

○中嶋委員長 ただいまから警察・消防委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、警視庁及び東京消防庁関係の付託議案の審査並びに特定事件の閉会中の継続調査の申出の決定を行います。
 これより警視庁関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百五十四号議案を議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○和泉委員 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、いわゆる迷惑防止条例の一部を改正する条例について質疑します。
 本条例は、ストーカー規制法が規定する付きまとい行為を規制の対象外としています。であるにもかかわらず、ストーカー規制法の改正と同様の条例改正を行うのはなぜでしょうか。その理由について伺います。

○青山生活安全部長 今回の改正に至りました経緯につきましては、昨年、令和三年、ストーカー規制法について、GPS機器を用いた位置情報の無承諾取得を規制の対象に加えるなどの改正が行われたところ、悪意の感情を充足する目的で行われるものを規制している本条例においても、最近の都内の実情を踏まえると、ストーカー規制法と同様に規制対象行為を拡大することが必要と判断したため、改正しようとするものでございます。

○和泉委員 都内の実情を踏まえて規制対象を拡大するとのご答弁ですけれども、今回の条例改正に係る規制がこれまでなかったために、条例の適用ができず、トラブルを解決あるいは回避できなかった、そういう実例はあるんでしょうか。
 A3判で資料として配布された改正条例案の概要の中の条例改正の必要性にも、悪意の感情を充足する目的で行われるものを規制している本条例においても、最近の都内の実情を踏まえ、ストーカー規制法と同様に規制対象行為の拡大が必要との記載があります。
 今回、条例改正部分の場所的な要件、住所等に追加される現に所在する場所と、行為の要件に追加される文書を送付する行為、これについて、ただいま答弁にありました最近の都内の実情とはどういうものか、具体例についてお答えください。

○青山生活安全部長 本条例案の現に所在する場所及び文書を送付する行為に関する具体例を申し上げます。
 例えば、現に所在する場所につきましては、交友関係のトラブルから友人に恨みを抱いた者が、いずれかの方法により得た情報を基に当該友人が食事をしている飲食店に押しかけたもの、文書を送付する行為につきましては、施設の運営に不満を持つ者が、運営者に一方的に恨みを抱き、拒絶の意思を伝えられたのにもかかわらず、事実無根の文書を複数回送付したもの等がございます。

○和泉委員 私がお聞きしたかったのは、その際にどのようなことが起こって、条例の規制対象となっていないために解決ができなかった、事態の収拾がつかなかった、そのような事例があるのかということだったんですが、お答えはいただけませんでした。
 実行手段の行使をもって相手が負傷する、死亡する。そのようなことがあれば、それは刑法が適用されるはずですから、恐らくそこまではいかずに、何らかの解決を得たのだというふうに思います。
 今ご答弁いただいたいずれの具体例も、果たして処罰の対象に加える必要がある実情といえるのか、ただいまのご答弁の限りでは判然としません。
 続けて伺いますが、本条例の第五条の二の適用に当たり、相手方の承諾なく、その所持するGPS機器等に係る位置情報を取得する行為の規定が、現行の条例にないことによって解決できなかった、そのような事例があるのかどうかについても伺います。
 本条例案の、相手方の承諾なく、その所持するGPS機器等に係る位置情報を取得する行為等に係る都内の実情について、具体的にご答弁ください。

○青山生活安全部長 本条例案のGPS機器を用いた位置情報無承諾取得等に関する具体例を申し上げますと、例えば、業務上のトラブルで取引先の社員に恨みを抱いた者が、当該社員が使用する社用車にGPS機器等を取り付けた上、その位置情報を取得したもの、会社を退職した者が、在職中における元同僚の言動に恨みを抱き、当該元同僚の自転車にGPS機器等を取り付け、自宅を調べようとしたもの等がございます。

○和泉委員 もちろん相手方の承諾もなく、GPS機器などを勝手に相手の持ち物につけて、相手の所在を常時把握しようとするなどということは、恨みや妬み、悪意の感情の充足という目的があろうとなかろうとプライバシーの侵害であり、許されるものではありません。
 しかしながら、これもまた現行条例の下で解決できなかった案件といえるのかということについては疑問が残るところです。
 また、今回罰則はつかないものの、付きまとい行為を行うおそれがある者から調査の依頼を受けるなどして、その相手方の秘匿情報を提供することについても禁止する規定が改正案に盛り込まれています。
 付きまとい行為等をするおそれがある者への情報提供の禁止は、今回のストーカー規制法の改正に伴ったものではありません。
 これについて、実際にストーカー行為等以外で、どの程度、都内の実情があるのかということについても確認したいと思います。
 住民基本台帳閲覧制限等の支援措置が行われた事例は、どのくらいあるんでしょうか。

○青山生活安全部長 住民基本台帳の閲覧等に係る支援措置につきましては、配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及び迷惑防止条例の付きまとい行為等を含む、これらに準ずる行為の加害者が、住民基本台帳の閲覧等の制度を不当に利用して、その被害者の住所を探索することを防止し、被害者の保護を図るための制度であり、被害者の区市町村に対する申出により措置が講じられているものと承知しておりますが、警視庁の所管事務ではないため、その事案数等は回答いたしかねるところでございます。

○和泉委員 把握していないのではなくて、回答いたしかねるということです。ストーカー行為等以外で、住民票閲覧制限が行われた事例がどのくらいあるのか、これにもお答えをいただけないということです。
 もう一つお聞きしておきたいと思いますが、ストーカー行為等以外で付きまとい行為を行うおそれがある者から、調査の依頼を受けるなどして、その相手方の秘匿住所等について情報提供する事案の具体例を示していただきたいと思います。

○青山生活安全部長 本条例案の付きまとい行為等に係る情報提供に関する具体例を申し上げますと、例えば、職場トラブル等で同僚に恨みを抱いた者が、当該同僚の住所等の調査を依頼し、その依頼を受けた者が当該同僚の住所等の情報を提供したもの、家族間トラブルで秘匿避難した被害者の親族等が、加害者からの求めに応じ、当該被害者の住所等の情報を提供したもの等がございます。

○和泉委員 例えば、探偵事務所などが、付きまとい行為等を行うおそれがあると知っていながら調査を受け、情報を提供したということになれば、探偵業法に抵触する可能性があります。
 親戚による情報提供も、行為者に対する警告や禁止命令の規定があれば、相当程度防止できるんじゃないでしょうか。
 都内の実情を踏まえた条例改正であるということは、実際に条例改正を行わなければ事態の解決ができない実情があったはずだというふうに思い、るるお聞きしてまいりましたけれども、いずれも具体的なことにはお答えいただけない。立法事実があるのか、どうしても改正しなければならない都内の実情なるものがあるのかということに疑問を拭えません。
 ストーカー規制法は、ストーカー行為を規制し、相手方の自由及び名誉に対する危害の発生を防止する、これを目的の一つとしています。
 そのために、相手方の申出により、国家公安委員会規則による警告ができ、申出または職権による所定の手続を経て禁止命令等ができ、被害防止のための相手方への援助や配慮、国や地方公共団体の配慮などが規定されています。
 本条例では、実際の危害を防止するためのこのような手続がほぼ規定されていないのはなぜでしょうか。

○青山生活安全部長 ストーカー規制法は、好意の感情等を充足する目的による行為を規制対象とするものであり、被害者が恋愛感情等の関係があった行為者のことを考慮して処罰されることをためらうこともあるため、法律の仕組みとして、警告、禁止命令といった行政措置と、直罰の両者の仕組みを設けたものと承知しております。
 一方で、本条例の付きまとい行為等の禁止に係る規定は、正当な理由がなく、専ら、妬み、恨みその他の悪意の感情を充足する目的による行為を規制対象としていることから、ストーカー規制法と異なり、警告、禁止命令といった行政措置を創設する必要性が認められないため、直罰のみとしたものでございます。

○和泉委員 ストーカー規制法は恋愛感情等によるものであり、本条例は、正当な理由のない、専ら、妬み、恨みその他悪意の感情を充足させる目的によるもの、この違いなのだというご答弁でしたけれども、先ほどご答弁いただいた具体的事例を見ましても、前提に当事者同士に何らかの関係性があることが多いのではありませんか。
 ただいまのご答弁も、警告、禁止命令といった行政措置を行わなくていい理由として腑に落ちるものではありません。
 そもそも、本条例に規定される妬み、恨みその他の悪意の感情を充足させる目的とした行為か否か、これを正確に判断することは極めて困難であり、それを直罰をもって規制しようとする本条例第五条の二は、二〇〇二年、二〇〇三年、二〇一八年の改定の際に、いずれも大きな問題となりました。
 二〇〇三年の条例改定で加えられた第五条の二第三項の、都民の権利を不当に侵害しないよう留意し、その本来の目的を逸脱して、ほかの目的のためにこれを濫用することがあってはならない、この規定はどのように担保されているのか伺います。

○青山生活安全部長 本条例の適正な運用の在り方につきましては、平成三十年時の本条例改正に際し、その運用に当たってのガイドラインとなる通達を発出し、指示を徹底しております。
 同ガイドラインでは、各警察署が付きまとい行為等に関する相談等を受理した段階で、必ず本部の人身安全関連事案事態対処チームに速報させ、対処方針等を決定することを明記しており、付きまとい行為等の相談等に当たっては、本部の指導の下、多角的な検討を行い、より慎重な判断をしております。
 さらに、適用上の留意事項として、正当な理由があり、表現の自由で保護されるような各種活動は本条例の対象とならないことなど、本条例に定める濫用防止規定について重ねて明記しております。
 なお、同ガイドラインについては、警視庁ホームページに掲載して、広く都民の皆様にも周知を図っているところでございます。
 警視庁といたしましては、本条例の適正な運用をさらに徹底してまいります。

○和泉委員 今回の改正部分である第五条の二は、二〇〇二年に第五条の二を加えることを含めた条例改正案が提出をされましたが、議会から、この部分を削除するという修正案が全会一致で、全員一致で可決され、原案から削除されました。
 修正案の提出に当たって、労働団体、政治団体、社会運動団体が規制されることになりかねない、都民の自由な行動や表現という基本的人権に関わるものであり、その規制に当たっては慎重に取り扱わなければならない、憲法で保障される基本的人権や自由の関係で根本的欠陥、重大な問題点を持っているなどの意見が出されました。
 翌年の二〇〇三年第三回定例会において、警視庁は、再び第五条の二の追加を議会に提案をし、警視総監が、正当な理由なくという文言を加え、正当な労働運動、市民運動、取材活動などが規制対象外であることがより明確になった、運用については、都民の権利を不当に侵害しないよう留意し、その本来の目的を逸脱して、ほかの目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないと、濫用防止規定を設けた趣旨にのっとって、いささかも権限濫用といったことのないように、適切な運用に努めてまいると答弁されています。
 このような条文を付け加え、ガイドラインでも規定しているということは、この条例が根本的に都民の権利を不当に侵害する危険性を伴う条例であることを物語っています。
 折しも国会では、悪質な誹謗中傷対策として、侮辱罪を厳罰化する刑法改定案が審議されており、言論を萎縮させ、表現の自由を侵害する危険性が厳しく指摘されています。
 いうまでもなく、国民の権利と自由は憲法の理念に照らし、最大限尊重されなければなりません。制限が必要な場合も、必要最小限のものでなければなりません。
 警視庁の現場の皆さんが、現行の条例の下においても十分に事件の未然防止のために力を尽くされていると、そうであろうということは質疑を通じて十分分かりました。その一方で、規制対象を拡大する必要性に説得力のある説明は行われませんでした。
 そのような状況の下で、ストーカー規制法の改正と同様の規制対象の拡大には賛成することはできません。
 本条例に反対の意見を表明して、質疑を終わります。

○中嶋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中嶋委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で警視庁関係を終わります。

○中嶋委員長 これより東京消防庁関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百五十五号議案及び第百六十六号議案から第百六十九号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○中嶋委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中嶋委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で東京消防庁関係を終わります。

○中嶋委員長 これより付託議案の審査を行います。
 第百五十四号議案、第百五十五号議案及び第百六十六号議案から第百六十九号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に質疑を終了しております。
 これより採決を行います。
 初めに、第百五十四号議案を採決いたします。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○中嶋委員長 起立多数と認めます。よって、第百五十四号議案は原案のとおり決定いたしました。
 次に、第百五十五号議案及び第百六十六号議案から第百六十九号議案までを一括して採決いたします。
 お諮りいたします。
 本案は、いずれも原案のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中嶋委員長 異議なしと認めます。よって、第百五十五号議案及び第百六十六号議案から第百六十九号議案までは、いずれも原案のとおり決定いたしました。
 以上で付託議案の審査を終わります。

○中嶋委員長 次に、特定事件についてお諮りいたします。
 お手元配布の特定事件調査事項につきましては、閉会中の継続調査の申出をいたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中嶋委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○中嶋委員長 この際、両庁を代表いたしまして、大石警視総監から発言を求められておりますので、これを許します。

○大石警視総監 警視庁並びに東京消防庁を代表いたしまして、一言ご挨拶を申し上げます。
 ただいまは、当委員会に付託されておりました両庁関係の議案につきまして、ご決定をいただき、誠にありがとうございました。
 私どもは、委員の皆様方から賜りました貴重なご意見を今後の業務運営に十分に反映させますとともに、都民の皆様のご理解、ご協力を得ながら、引き続き世界一安全な都市東京の実現を目指してまいります。
 また、両庁では、風水害の発生が懸念されるこの時期を捉えまして、来週、関係機関等と連携して、災害警備総合訓練を実施いたします。
 こうした訓練を実施することによりまして、大規模災害時に都民、国民の皆様の生命、身体を守り抜くことができるよう、対処能力の向上にさらに努めてまいりたいと考えております。
 終わりに、今後とも両庁に対するより一層のご支援とご理解を賜りますよう、重ねてお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。
 大変ありがとうございました。

○中嶋委員長 発言は終わりました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後一時二十五分散会

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