警察・消防委員会速記録第三号

平成三十年三月十九日(月曜日)
第十一委員会室
午後一時開議
出席委員 十三名
委員長大津ひろ子君
副委員長橘  正剛君
副委員長石毛しげる君
理事両角みのる君
理事吉原  修君
理事中村ひろし君
細谷しょうこ君
東村 邦浩君
中嶋 義雄君
増子ひろき君
尾崎 大介君
高島なおき君
大山とも子君

欠席委員 なし

出席説明員
警視庁警視総監吉田 尚正君
総務部長池田 克史君
警務部長古谷 洋一君
交通部長田中 俊恵君
警備部長下田 隆文君
地域部長中川  司君
公安部長新美 恭生君
刑事部長松岡 亮介君
生活安全部長市村  諭君
組織犯罪対策部長森内  彰君
総務部参事官企画課長事務取扱宮橋 圭祐君
総務部会計課長上野 良夫君
東京消防庁消防総監村上 研一君
次長安藤 俊雄君
理事兼警防部長事務取扱松川 茂夫君
企画調整部長清水 洋文君
総務部長松井 晶範君
人事部長西村 隆明君
防災部長鈴木 浩永君
救急部長森住 敏光君
予防部長柏木 修一君
装備部長阿出川 悟君
企画調整部企画課長川田  進君
企画調整部財務課長西原 良徳君

本日の会議に付した事件
警視庁関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為 警視庁所管分
付託議案の審査(質疑)
・第七十二号議案 東京都水上安全条例
・第七十三号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
・第七十四号議案 警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
東京消防庁関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、債務負担行為 東京消防庁所管分
付託議案の審査(質疑)
・第七十五号議案 東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
・第七十六号議案 東京都消防関係手数料条例の一部を改正する条例
・第百十九号議案 特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例

○大津委員長 ただいまから警察・消防委員会を開会いたします。
 この際、傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名でございますが、傍聴希望者が定員以上でございましたので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大津委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○大津委員長 予算の調査について申し上げます。
 平成三十年度予算は、予算特別委員会に付託されておりますが、本委員会所管分について、議長から調査依頼がありました。
 公文の写しはお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

平成三十年三月十五日
東京都議会議長 尾崎 大介
警察・消防委員長 大津ひろ子殿
予算特別委員会付託議案の調査について(依頼)
 このことについて、三月十五日付けで予算特別委員長から調査依頼があったので、左記により貴委員会所管分について調査のうえ報告願います。
     記
1 調査範囲 別紙1のとおり
2 報告様式 別紙2のとおり
3 提出期限 三月二十二日(木)午後五時

(別紙1)
警察・消防委員会
 第一号議案 平成三十年度東京都一般会計予算中
歳出
繰越明許費
債務負担行為
警察・消防委員会所管分

(別紙2省略)

○大津委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、警視庁及び東京消防庁関係の予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 これより警視庁関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案、平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為、警視庁所管分及び第七十二号議案から第七十四号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○池田総務部長 去る二月十九日に当委員会から要求のありました、自転車ナビマーク、自転車ナビラインの整備計画と整備状況の推移につきましては、お手元の資料のとおりでございます。よろしくお願いいたします。

○大津委員長 説明は終わりました。
 この際、傍聴人の方々に申し上げます。
 傍聴人の方々は、東京都議会委員会傍聴規則を守って、静粛に傍聴をお願い申し上げます。ご協力をお願いします。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○石毛委員 迷惑防止条例改正案については、都民ファーストの会の代表質問において、都民の安全を図るに当たり、本条例を施行する上での効果について、警視総監に質問をさせていただきました。本条例の改正により、人身安全関連事案の前兆段階における取り締まりが可能になることから、さらなる都民生活の安全につながる旨の答弁をいただきました。
 都民生活の平和を守る重要性がますます高まり、こうした事案の取り締まりが喫緊の課題となっており、命と安全を守るためには、本条例の改正は必要なものと考えております。
 そこで、改めて、本条例を改正する必要性と効果についてお伺いいたします。

○市村生活安全部長 盗撮行為の規制につきましては、スマートフォンの普及等を背景に、現行の規制場所であります、公共の場所以外の場所での盗撮行為が多発しており、盗撮画像が流出した場合、二次被害を招くおそれもあることから、規制場所を拡大する必要があると考えたものです。
 東京二〇二〇大会を控え、首都東京に注目が集まり、国内外からの来訪者の増加が予想されますところ、これまでは規制場所となっていなかった宿泊施設の個室、つまりプライベート空間にも規制が及ぶことにより、都民のみならず、都内に滞在する方々にとりましても、安全が確保されるものと考えております。
 また、つきまとい行為等の規制につきましては、現行条例では規制対象とならないつきまとい行為等が発生していることから、SNSの連続送信やうろつき行為等の広く都民に不安を覚えさせるような行為を、新たに規制対象とするものです。
 治安課題の一つである人身安全関連事案に対する体制の構築と、迅速かつ的確な対応を図っているところ、本改正により、前兆となる事案の段階における取り締まりが可能になることから、さらなる都民生活の安全の確保につながるものと考えております。

○橘委員 それでは、私の方からは、迷惑防止条例改正案について、何点か質問いたします。
 日進月歩の技術革新によって、新たな技術、精巧な機械による盗撮行為は、ますます巧妙化しているように思います。学校の更衣室等での盗撮、またカラオケボックスでの盗撮等が多発しているし、また、こうした行為に対する規制の強化は社会的要請ともなっているように私は思います。
 また、つきまとい行為などの形態も悪質化、巧妙化、多様化しておりまして、重大な犯罪につながる事例も多く見られるようになっております。
 こうした行為に対する法的な規制というのは、社会状況の変化、技術の進歩などを踏まえて、迅速的確に対応する必要があると考えます。都民生活の安全を脅かす犯罪が変化している中で、現行の迷惑防止条例では、これら犯罪の変化に十分な対応ができないとして、改正案が今定例会に提出されたと承知しております。
 そこで、迷惑防止条例の改正に当たりまして、警視庁として、今この時点で改正を行う必要があると判断したその背景と、改正によって、新たに規制対象に加えるとしている行為について、どのような対応をしていくのか、これについて説明を求めます。

○市村生活安全部長 今回の改正により、盗撮行為の規制につきましては、スマートフォンの普及や撮影機器の小型化、高性能化を背景といたしまして、現行条例では規制されていない場所での盗撮行為が多発していることから、学校や会社等のトイレ、更衣室等のほか、プライベート空間である住居、ホテル客室での盗撮行為を、新たに規制対象とするものであります。これにより、東京二〇二〇大会を控え、プライベート空間にも規制が及ぶことになり、都民のみならず、都内に滞在する方々にとりましても、安全が確保されるものと考えております。

○橘委員 オリンピック・パラリンピックの際には、世界中から観戦者、また観光客、こういった方々が大勢いらっしゃいますので、日本の迎える側として、そうした細かな配慮、また犯罪を未然に防止するという、そんな観点も重要だろうと思います。ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 それから、二点目の質問に移りますけれども、今回の条例改正案は、つきまとい行為等に関する幾つかの行為の形態が、規制対象として追加されているわけであります。都民生活の安寧と地域社会の安全を脅かす行為に対しては、曖昧な対応であってはならないし、また、必要な対策は十分に講じなければならないと思います。社会状況の変化に対応して、先手先手と、日常生活の安全・安心対策を講じてもらいたいというのは、都民の切なる声であると思います。
 しかし、一方では、今回の条例改正案の規定には、条例が本来追求しようとする目的を逸脱して、政治活動、組合活動、報道、表現の自由あるいは各種の社会活動まで規制されかねない面がある、そういう側面があるとの意見も一部にあるようでございます。
 この件に関しましては、平成十五年の条例改正の際に、本来の目的を逸脱して他の目的のために濫用することがあってはならないという濫用防止規定が設けられたと承知しております。
 この濫用防止規定を踏まえまして、今回の条例改正に当たって、都民生活の安寧と地域社会の安全の確保の観点から、警視庁としてどのような運用を行っていくのか、見解を求めます。

○市村生活安全部長 今回追加される、みだりにうろつく行為を含む、本条例に規定するつきまとい行為等の規制につきましては、第五条の二第三項に、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用することがあってはならないとの濫用防止規定が定められており、これにより、本条例を適切に運用していくものであります。
 さらに、同一項に規定されているとおり、正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の認定が前提条件となっております。そのため、正当な理由により行われる政治活動、組合活動、報道、表現の自由、あるいは各種の社会活動は、取り締まりの対象となるものではありません。
 警視庁といたしましては、これらの規定を遵守し、都民の皆様からの信頼をいただきながら、引き続き都民生活のさらなる安全の確保に向けて、各種取り組みを推進してまいります。

○橘委員 今、答弁いただきましたように、この濫用防止規定については、厳格に運営するようにこの席で私からも要望し、質問を終わります。

○吉原委員 私の方からも、迷惑防止条例の一部を改正する条例案について、何点か質問をさせていただきます。
 そもそも迷惑防止条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、都民の生活の平安を保持することを目的としているわけであります。
 最近のICTの急速な発展など、社会情勢は目まぐるしく変わってまいりました。現行の迷惑防止条例では対応できないつきまとい行為等に関する相談が、警視庁には多数寄せられているとお聞きをしているところであります。
 しかし、今回の条例案に、つきまとい行為等が規制の対象外となれば、都民あるいは被害者は著しく不安を覚えることになります。また、人身安全にかかわるような重大な事件につながることも懸念をされているわけであります。都民の不安を解消し、平穏な生活を保つためにも、社会情勢に即した本条例の見直しが必要であると考えております。
 つきまとい行為等の規制については、平成十五年の新設以来、今回が初めての改正案であります。
 そこで伺いますけれども、つきまとい行為等の態様の追加について、どのような理由で追加されることになったのか、詳しく教えていただけますでしょうか。

○市村生活安全部長 近年のスマートフォンの普及やSNS利用者の増加等を背景に、コミュニケーション手段が多様化しましたことから、つきまといなどの直接的な行為のみに対する現行の規制では、十分な対応を期することが困難となっております。
 そのため、つきまとい行為等につきましては、都民等の平穏な生活を害し、被害者に不安を覚えさせる事案であることから、住居等の付近をみだりにうろつくこと、監視していると告げること、電子メール、SNS等を連続送信すること、名誉を害する事項を告げること、性的羞恥心を害する事項を告げることを、今回、新たに規制対象として追加するものであります。

○吉原委員 ただいまご答弁いただきました、住居等の付近をみだりにうろつくことなど、五項目の規制対象が追加されて、つきまとい行為等の規制が拡大することになるわけであります。これは、かつてもこの委員会で議論がありました。都民生活の安全を確保するという観点から、必要なことだと考えております。
 しかしながら、一方、この規制の拡大については、一部の方々から、市民運動、さらには報道関係者の取材活動などを規制するものだという意見や論調も出ているわけであります。今回の条例改正によりまして、表現あるいは言論の自由等に対する侵害は、当然あってはならないものと考えています。
 警視庁としてはどのように考えておられるのか伺います。

○市村生活安全部長 今回追加される、みだりにうろつく行為を含む、本条例に規定するつきまとい行為等の規制については、第五条の二第一項に、正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の認定が前提条件となっており、お尋ねのような正当な理由により行われる市民運動や取材活動等は、取り締まりの対象となるものではありません。
 さらに、同三項に、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないとの濫用防止規定が定められていることから、これにより本条例を適切に運用していくものであります。
 警視庁としましては、つきまとい行為等に関して、都民に不安を覚えさせる新たな行為態様を規制対象として追加することにより、さらなる都民生活の安全の確保につながるものと考えております。取り締まりに際しては、これらの規定を遵守し、首都東京の治安課題の一つである人身安全関連事案に対して、迅速かつ的確な対応を図ってまいります。

○吉原委員 今回のこの条例改正につきまして、さまざまな方面から、私どもの方にも反対の要望、要請をいただいているところでもございます。
 そういう中にあって、憲法問題についても指摘をいただいているわけでありますけれども、憲法第三章で国民の権利及び義務について記されているわけでありますけれども、その中の第二十一条には、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障するなど、そして第二十八条には、勤労者の団結権などのことが記されているわけでありまして、それを保障する、こういうことが書かれております。
 さらには、憲法第九十四条、地方公共団体の権能について保障し、これを規定しているわけであります。
 今回のこの条例改正案に当たって、これらを侵害するものであってはならないと思いますけれども、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。

○市村生活安全部長 憲法第二十一条及び第二十八条との関係については、ただいま申し上げた理由から、これらを侵害するものではないと考えております。
 また、憲法第九十四条との関係については、判例において、条例が法令とは別の目的の規律を意図する場合のほか、同一の目的であっても、法令が地方の実情に応じた別段の規制を容認する趣旨である場合、条例は法令に抵触しない旨、判示されているものと承知しており、今般の条例改正はこれを侵害するものではないと考えております。

○吉原委員 ただいまの答弁をお伺いいたしまして、安心をしたところでございますので、一部の方々が懸念している状況にはならない、こういうことがよくわかりました。
 警視庁においては、本条例を適切に運用していただいて、何よりも都民生活の安全・安心、この確保をさらに確実なものにしていただきたいと思います。あわせて、重大事案に発展するおそれのある人身安全関連事案についても、今まで以上に迅速かつ的確な対応をしていただきまして、都民そして国民の治安を確実なものにしていただくことを切にお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

○大山委員 私も迷惑防止条例の改定について伺います。
 とりわけ問題なのは、五条の二、つきまとい行為の禁止についてです。つきまとい行為に関する規制は、二〇〇二年、第二回定例会に提出をされて、規制対象が余りにも広いために、憲法が保障する人権侵害であるとの世論が大きく広がって、実質的に廃案になりました。翌年、若干の規制要件の厳格化を経て、つきまとい行為が現行の迷惑防止条例に盛り込まれましたけれども、規制される範囲が広いこと、直罰規定という規制強化のあり方、労働運動や市民運動への濫用の危険性などの問題点は残ったままでした。
 今回の改定についても、多くの皆さんが反対を表明して、二月二十四日には自由法曹団東京支部が、第四十六回定期総会で、反対の意見書を発表しています。また、多くの皆さんが反対の意思を表明しています。今もお話がありましたけれども、皆さんのところにもきっとたくさん来ているんだと思います。
 これ、団体の皆さんから来たもの、それからこれは個人の皆さんから来たもの、こんなです。数えている端からふえていくという状況になっています。これ、数えました。(発言する者あり)同じことを心配しているんです。数えたんです。現在、団体からは百五団体。団体ですから、背景には多くの方々がいます。弁護士の事務所、それから労働組合関係、さまざまな市民団体、そして商工業者の団体や女性団体など、多方面からの要請です。同時に、個人の方々からは百六十一人です。要請のファクスやメール、こんなに届いています。合計すると二百六十六です。
 さらに、きょう午前中に要請に見えた方々は、急遽署名を集めたとのことでした。三日間で八百五十八筆集まったとのことです。署名を集め始めたら、署名してくれるだけじゃなくて、その署名してくれた方が署名を集める人になる、そういう方がふえていった、そう話をされていました。一部だという発言がありましたけれども、一気にこれだけの世論が広がるというのは、多くの皆さんが自由と民主主義を守りたい、憲法に保障された人権を踏みにじられたくない、だからこの条例は廃案にとの思いで、まさに主体的に行動をしていらっしゃるんです。
 警視庁は、この多くの方々の意思をしっかりと受けとめるべきであるということを、まず最初に厳しく指摘しておきます。
 質問しますけれども、重大な問題は--つきまとい規制は、正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的でとなっています。これが最大の問題です。ねたみ、恨みといった内心の感情が犯罪の成否の分水嶺になる。ですから、正義の鉄槌だとか一時的な衝動なら犯罪にならないけれども、恨みの鬱憤晴らしだったら犯罪になるということです。
 しかし、その人の内心がどうやってわかるんでしょうか。

○市村生活安全部長 つきまとい行為等の目的の認定につきましては、個々の事案に応じて、法と証拠に基づいて判断することとなります。

○大山委員 法と証拠に基づいて判断するとご答弁されましたけれども、私は、その人の内心が、その法と証拠に基づいてどうやってわかるんですかと、こう聞いているんです。
 具体的に伺いましょうか。これは、先日もらった条例解説の紙です。名誉を害する事項を告げることというところの事例で出ているのは何かといいますと、行為者は職場の研修会や会議に参加するたび、主催者である相手方の自宅に、仕事も不倫もやりたい放題などと書いた手紙を送りつけたものというのがあるんですね。この場合、この行為をしている本人の内心はどうやってわかるでしょうか。不倫はやめなさいよと忠告しているのか、それとも悪意を持った嫌がらせなのか、どうやって判断するんですか。

○市村生活安全部長 具体的には、個々具体的な事案について、つきまとい行為等の態様、行為者の言動、背景となる客観的な事情、例えば当該行為が行われることになった原因、これまでに行われた当該行為の回数及び頻度、当該行為から推認される行為者の目的等を、総合的に勘案して判断することとなります。

○大山委員 行為者の内心を判断するものは、今ご答弁した回数や頻度や当該の行為から推認するということですけれども、何度も何度もその手紙を送ったのは、ただしつこい性格だからかもしれません。何とか不倫をやめさせようとしてしつこく送ったのかもしれません。結局、答弁しているように、推認、つまりこれまでにわかっている事柄などから推しはかって、事実はこうであろうということでしかありません。つまり、その行為から内心ははかれないのです。
 これは、この条例の最初からの大問題です。条例をつくっても立件できないということじゃないんでしょうか。犯罪として有罪にするには、この内心、ねたみ、恨みその他の悪意の感情の充足であることを証明しなければなりません。被疑者は、恨みではなく、憤りからだ、こう主張するでしょう。悪意の感情の充足が目的ではないから無罪だ、こう主張するんじゃないんでしょうか。有罪となるには、被疑者が一貫して、確かに恨んでいて鬱憤晴らしのためにやりましたと自白し続けるケースでもなければ、有罪にすることはできないんじゃないんでしょうか。

○市村生活安全部長 つきまとい行為等の目的の認定は、個々の事案に応じて、法と証拠に基づいて判断しておりますので、お尋ねのように、自白をし続けるケースでなければ取り締まり対象とはならないということではありません。

○大山委員 自白しなくても取り締まりの対象になるということでは、さらに取り締まりの対象が広いということではありませんか。しかも、それを判断するのは、まだ個々の事案に応じて、法と証拠に基づいてということですね。外にあらわれた行為は同じでも、内心によって処罰するかしないかの分かれ道になるのです。内心の感情がわかるのは本人でしかありませんから、自白によって立証しなければなりません。結局、自白の強要が行われる可能性が高いのではないでしょうか。

○市村生活安全部長 つきまとい行為等の目的の認定については、供述を含むあらゆる証拠に基づいて判断されるものでありますので、自白のみで判断されるものではありません。

○大山委員 そんなこといいますけれども、迷惑防止条例のつきまとい規制は、内心のねたみ、恨みその他の悪意の感情の充足なのかどうかが、犯罪なのかそうでないのかの分かれ道なんですから、結局、自白の強要が行われる可能性が高いと指摘せざるを得ません。これは、二〇〇三年以来、この条例が持っている重大な問題点です。だから、多くの皆さんが心配しているし、反対をしているんです。
 このような重大な問題点の解決はないまま、五条の二、一号に、みだりにうろつくこと、二号は、その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知り得る状態に置くこと、四号は、電子メールやSNSの送信、六号は、名誉を害する事項を告げること、七号は、性的羞恥心を害する事項を告げることを加えて、罰則規定を強化することです。
 改正案、五条の二、一号に、住居の付近をみだりにうろつくこと、それから四号の電子メール送信等の行為を規制対象に加えることは、二〇一六年に改正したストーカー規制法に対応する改正と思われます。しかし、改正案一項二号、行動監視事項の告知や、六号の名誉を害する事項の告知、そして七号、性的羞恥心を害する事項の告知は、現行条例が制定された当時から、既にストーカー規制法の規制対象になっていた行為ですが、現行条例の規制対象からは除外していたものです。
 現行条例が、それらの行為を規制対象から除外していた理由は何でしょうか。そしてまた、改正案がこれらの行為を、今回、規制対象に加える理由は何でしょうか。

○市村生活安全部長 改正案第五条の二第一項第二号及び同条同項第六号につきましては、現行の同条同項第一号のつきまとい行為等や、改正案では同条同項第三号となる粗野または乱暴な言動といった直接的な行為で対応できると考えられたことから、平成十五年当時には規定しなかったものであります。
 改正案の第五条の二第一項第七号は、男女関係に起因するものが多いと思われたことや、卑わいな言動であれば、本条例第五条第一項第三号の卑わいな言動により対応できると考えられたことから、規定しなかったものであります。
 しかしながら、平成十五年当時にはなかったスマートフォンが広く普及して、SNS利用者の増加等によりコミュニケーション手段が多様化するなどして、社会情勢が変化し、場所や時間の制約なしに、直接的な行為に出ることなく、改正案第五条の二第一項第二号及び同条同項第六号の行為を容易に行ったり、男女関係に関係なく、改正案同条同項第七号の行為を行い、相手方の権利を侵害するおそれがあることから、今回、規制対象にすることとしたものであります。

○大山委員 SNSなどで、容易に監視していることを告げることや、名誉を害する事項を告げることができるようになったからということですね。
 条例案の提案説明のとき、悪意の感情等により、つきまとい行為につきましても、現行条例の行為類型では対応できない事案が増加しているとの説明がありました。現行条例施行以降、現在に至るまで、現行条例では対応できない改正案一項一号、二号、六号、七号に該当する行為類型による相談事案は、毎年ごと、各号の行為類型ごとにそれぞれ何件あったでしょうか。そのうち、重大事件に発展した事案はどのような事案があったでしょうか。そして、重大事案に発展する前に解決した事案があれば、それはどのような方法ないし現行法令で対応したんでしょうか。

○市村生活安全部長 各号に関連する相談につきましては、平成二十九年は第一号が十七件、第二号が百三十九件、第六号が五百二十二件、第七号が六十九件、平成二十八年は第一号が十三件、第二号が百二十一件、第六号が六百二件、第七号が七十六件、平成二十七年は第一号が十一件、第二号が百七件、第六号が四百四十三件、第七号が九十五件を、それぞれ受理しております。
 各号の追加行為に該当する事案から、重大事件に発展した事案につきましては、統計がないため、回答いたしかねます。
 相談者が相談した内容や行為者との関係に伴う不安等が解消されたか否かにつきましては、相談内容からは正確に判断することができませんので、回答いたしかねます。

○大山委員 相談の件数はわかるけれども、それが重大事件に発展したかどうかということはわからないということですね。先ほども見ました条例のこの解説の紙には、つきまとい行為等の規制強化について、重大事件に発展するおそれがあり、早急な対応が必要、だから改正するという説明でした。しかし、この三年間の相談件数はわかるけれども、それが重大事件に発展したのかさえ把握していないということですから、条例改正する必然性もわからないということではないでしょうか。
 そもそもつきまとい行為の犯罪としての成立要件の基本は、先ほど触れたように、ねたみ、恨みその他の悪意の感情の充足です。先ほど答弁されたそれぞれの件数について、ねたみ、恨みその他の悪意の感情によってということは、どのように、その件数を出したときに判断したんですか。

○市村生活安全部長 先ほども申し上げましたとおり、当該件数につきましては、各号に関連する相談件数を答弁したものであります。
 具体的には、新規に追加する第一号のみだりにうろつく行為については、受理をした生活安全相談のうち、うろつきという語句の含まれる相談を抽出し、その中から、悪意の感情等に関連する相談を抽出するため、ストーカー、DV、虐待等に関連する相談を除外し、嫌がらせ等の語句を含む相談を抽出して集計したものであります。
 その他の新たに規制対象となるつきまとい行為等につきましても、同様の方法により集計したものです。

○大山委員 一号の場合だったら、まず、うろつきで検索して、次に該当しないストーカー、交際、恋人、DV、虐待などを除外する。残ったものの中から、嫌がらせ、迷惑、いたずらで抽出したということですね。つまり、この件数は、迷惑防止条例のつきまとい行為の禁止に直接該当するものではないし、迷惑防止条例の改正が必要な理由にもなりません。
 二〇〇三年に修正されて成立した現行の条例はどうなっているでしょうか。現行条例施行以降、現在に至るまで、現行条例一項一号ないし四号により起訴した件数、逮捕した件数、家宅捜索した件数、事実行為による注意、指導、警察官職務執行法による警告をした件数、相談のみで終わった件数は、各年ごとに、各号の行為類型ごとに、それぞれ何件あったでしょうか。

○市村生活安全部長 起訴件数につきましては、警視庁では把握いたしておりません。
 第一号ないし第四号の対応件数、捜索、差し押さえ等をした件数につきましては、統計がないため、回答いたしかねます。
 また、第一号ないし第四号に関連する相談につきましては、平成二十九年は第一号が二千六百四十件、第二号が四千四百八十六件、第三号が二千九百七十二件、第四号が二百七件を受理しており、平成二十八年は第一号が三千二十二件、第二号が四千七百九件、第三号が三千六百二十三件、第四号が二百三十件を受理しておりまして、平成二十七年は第一号が二千六百三十八件、第二号が四千三百二十四件、第三号が三千二百九十三件、第四号が百五十八件を受理しております。

○大山委員 把握されているのは、相談件数のみということですね。迷惑防止条例が果たして役に立っているのかということなどは把握もしていないということですね。
 二〇〇三年九月三十日の警察・消防委員会の質疑で、秋田かくお委員が、本会議で、警視総監は、正当な労働運動、市民運動、取材活動などが対象外であることがより明確になったものと考えると答弁されましたが、正当でない労働運動、市民運動、政治活動はあるんでしょうかと質問したことに対して、友渕生活安全部長は、本会議では、労働運動、市民運動、取材活動の中には正当でないものがあると答弁したのではなく、労働運動、市民運動、取材活動は正当な権利行使に基づくものとして対象外であることを答弁したものでありますと答弁しています。
 先ほど伺った現行条例五条の二、一号から四号の起訴事案、逮捕事案、家宅捜査事案、注意、指導、警告事案、相談のみ事案の中に、労働運動、市民運動、取材活動、政治活動、宗教活動は含まれているんでしょうか。含まれているとすれば、それぞれ何件でしょうか。

○市村生活安全部長 起訴された事案の件数につきましては、警視庁では把握いたしておりません。
 また、逮捕事案、捜索、差し押さえ等をした事案、注意、指導、警告事案及び相談事案における労働運動、市民運動、取材活動、政治活動、宗教活動の有無や件数につきましては、統計がないため、回答いたしかねます。

○大山委員 労働運動、市民運動、取材活動は、正当な権利行使に基づくものとして対象外と答弁しているのに、実際どうだったのか、その実態も把握していないということですね。
 確認しておきたいんですけれども、先ほどもありましたが、二〇〇三年九月三十日の警察・消防委員会での警視庁の答弁、労働運動、市民運動、取材活動は正当な権利行使に基づくものとして対象外であるということを答弁したものでありますという見解は、変わりありませんね。再度確認します。

○市村生活安全部長 お尋ねの答弁に変わりはございません。

○大山委員 労働運動、市民運動、取材活動は正当な権利行使に基づくものだから、本条例案の対象外であるということ、再度確認しました。くれぐれも答弁を破るようなことがないように、厳しく求めておきます。
 同じ日の警察・消防委員会の質疑で、条例一項の正当な理由なくとの要件に関して、秋田委員の質疑で秋田委員が、正当な理由の中には、憲法が保障する諸権利の行使など、社会的相当行為の全てが含まれているんでしょうかと聞いたら、友渕部長は、正当な理由の中には、憲法が保障する諸権利の行使やその同等の行為は、全て含まれているものと考えております。秋田委員、ということは、憲法が保障する諸権利の行使など、社会的相当行為は本条例の対象外と確認してよいですね。友渕部長、憲法が保障する諸権利の行使などは、正当な理由のある行為であり、本条例案の対象外でありますとの確認がされています。
 先ほどの現行の一号ないし四号のケースでの起訴事案、逮捕事案、家宅捜索事案、注意、指導、警告事案の中に、行為者から正当な理由があると争われた事案はそれぞれ何件あるでしょうか。
 また、相談のみの事案の中に、警察が正当な理由があると判断した事案は何件あるでしょうか。それぞれ、そこで問題となった正当な理由の内容はどんなものだったでしょうか。

○市村生活安全部長 起訴事案につきましては、警視庁では把握いたしておりません。
 また、相談事案の中に、警察において正当な理由があると判断した事案の件数や事案の内容につきましては、統計がないため、回答いたしかねます。

○大山委員 これも把握していないし、統計もない。そして、正当な理由があるかないかを判断するのは警察官です。条例一項の、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的でとの要件に関して、その同じ日の警察・消防委員会の質疑で、友渕部長は、個々具体的な事案において、つきまとい行為等の態様、行為者の言動、背景となる客観的な事情、例えば、当該行為が行われることになった原因、これまで行われてきた当該行為の回数及び頻度、当該行為から推認される行為者の目的などを総合的に勘案して判断することになりますと答弁しています。
 先ほどの五条の二、一号ないし四号の起訴事案、逮捕事案、家宅捜索事案、注意、指導、警告事案において、この主観的要件をどのように立証したんでしょうか。そのうち、行為者の自白がない事案は何件あるでしょうか。

○市村生活安全部長 起訴事案につきましては、警視庁では把握いたしておりません。
 一般論といたしまして、逮捕、捜索、差し押さえ等の強制捜査は、個々の事案に応じて、法と証拠に基づきまして判断いたしております。また、行為者の自白がない事案につきましては、統計がないため、回答いたしかねます。

○大山委員 これも把握していないし、統計もない。ストーカー規制法が、警告、禁止命令といった行政措置を制度化しているのに対して、この条例は直罰のみの制度となっている。このことに関して、やはりその二〇〇三年の警察・消防委員会の質疑で、友渕部長は、個々具体的な事案の内容に応じて、事実行為による注意、指導や警察官職務執行法による警告を行うことはあると考えておりますと述べています。
 先ほどの一号ないし四号のケースで、注意、指導、警告事案において、起訴、逮捕、家宅捜索といった強制措置をとられなかった理由は何でしょうか。注意、指導、警告にとどまらず、起訴、逮捕、家宅捜索という強制措置をとる基準、指標はどのようなものでしょうか。

○市村生活安全部長 起訴基準につきましては、警視庁はお答えする立場にはありません。
 一般論といたしまして、逮捕、捜索、差し押さえ等の強制捜査は、個々の事案に応じて、法と証拠に基づきまして判断いたしております。

○大山委員 これもまた把握していない、お答えする立場にないということですけれども、一度、実質的な廃案になって、必要だからとやっと成立させた迷惑防止条例なのに、その実績がどうなっているかも把握していない、統計もない。これでは果たして役に立っているのか、立っている条例なのかもわからないのではないでしょうか。
 同じような、しかし対象は恋愛感情と特定しているストーカー規制法に関連して、警察庁だってストーカー規制法違反で検挙した件数、ストーカー規制法に基づく対応、警告件数や禁止命令件数等、統計を発表しています。そのほかに、いわゆるテロ等準備罪の容疑での逮捕状を請求し、発布された事例、起訴された件数はゼロであると、質問趣意書で答弁をしています。
 警視庁にとっては、せっかく成立させた迷惑防止条例が役に立っているかどうかも判断できないではありませんか。統計がないんでしょうか。それとも、起訴、逮捕、家宅捜索、注意、指導、警告などは、テロ等準備罪と同様にゼロだったんでしょうか。この条例が役に立っているかどうかも、客観的に議会にも説明もできないんですから、廃止した方がいいんじゃないでしょうか。
 ところで、条例二項の、警視総監または警察署長は、前項の規定に違反する行為により被害を受けた者またはその保護者から、当該違反行為の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申し出があったときは、東京都公安委員会規則で定めるところにより、当該申し出をした者に対し、必要な援助を行うことができるとの規定に関して、この間の二〇〇三年の警察・消防委員会の質疑で、友渕部長は、つきまとい行為等に係る再発の防止に資する物品の教示または貸し出しを行うことなどを検討しております、こう答弁しています。
 現行条例の施行後、現在まで、この同項による援助、これは何件実施されたでしょうか。実施された援助はどのようなものでしょうか。その援助により再発防止の効果はあったんでしょうか。

○市村生活安全部長 過去三年間の統計では、援助をした実績は把握いたしておりません。

○大山委員 資料が保管されている過去三年間では、援助を求められたこともしたこともないということですね。
 六号で、その名誉を毀損する事項を告げ、またはその知り得る状態に置くことがつけ加えられていますけれども、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で反復して行う以外の名誉毀損行為は、刑法上の名誉毀損と、その行為の内容は同じものなんでしょうか。

○市村生活安全部長 本条例の改正案第五条の二第一項第六号に規定する行為は、行為の相手方に社会的評価を害し、名誉感情を害する事項を告げる行為をいいます。したがいまして、本行為は、刑法の名誉毀損のように不特定または多数の者が認識し得る状態に至る方法で行ったり具体的な事実を示す必要はなく、行為の相手方に認識されれば足りることから、刑法の名誉毀損と同じ行為とはいえないものであります。

○大山委員 刑法の名誉毀損罪のように、広く不特定多数の者が知らなくても、具体的な事実を示すこともなく、より広い範囲が犯罪となるというわけですね。正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的という内心は、警察官の主観で判断をし、しかもより広い範囲では、広いものを直罰するということです。
 法律や条例をつくるときには、どうしてその法律や条例が必要であるのかということを支えている事実、これが必要です。ところが、今までの質疑で明らかになったように、条例改正が必要であるという事実を示すことができません。
 さらに重大なことは、名誉毀損罪で処罰の対象としていない行為までも処罰範囲としており、刑法の規則を上回る、規制を上回るものであるわけです。法律の範囲内で条例を制定することができるとしている憲法九十四条に反するものです。
 監視していることを告げること、名誉を害する事項を告げ、その知り得る状態に置くことについて、これまでの質疑で明らかになったように、名誉毀損罪よりも処罰範囲は広く、知り得る状態に置くということで、あらゆることを含まれることにするわけです。
 例えば、市民が国会前で安倍首相を批判する集会やデモを行ったり、労働組合が会社の前で集会を開いて会社の批判をしたり、会社に対する告発、抗議のビラを配ったりすること、政治家などに対して、インターネット上で抗議や批判をすること、マスメディアが取材対象の付近を調べること、市民オンブズマンが監視活動を行うことなどが繰り返された場合、警察が正当な行為ではないと判断したら、直罰ですから、逮捕される可能性が生じます。たとえ裁判で有罪にならなくても、一般市民が逮捕されるような事態になれば、市民運動は萎縮してしまうんじゃないんでしょうか。

○市村生活安全部長 今回追加される、みだりにうろつく行為を含む、本条例に規定するつきまとい行為等の規制については、第五条の二第一項に規定されているとおり、正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の認定が前提条件となります。そのため、正当な理由により行われる行為は、その規制対象となるものではなく、さらに同三項には濫用防止規定が定められていることから、これにより適正に運用していくものであります。
 警視庁としては、引き続き、都民生活のさらなる安全の確保に向けて、本条例を適切に運用してまいります。

○大山委員 濫用防止規定があるんだ、適正な運用をするんだといいますけれども、二〇〇三年九月の警察・消防委員会の質疑で、警視庁は、いささかも権限濫用といったことのないように教養の徹底を図りたいと考えておりますと答弁しています。
 現行条例施行後、現在まで、各警察署における講習会や本部員による巡回教養等は、各年度にどの警察署において、それぞれ何を何回実施したんでしょうか。一回当たりの所要時間やその内容はどんなものですか。

○市村生活安全部長 つきまとい等を禁止する条文を新設して以降、幹部になる際の研修や捜査員への研修等、機会を見て教養を実施しておりますほか、現場への巡回指導や支援を行っております。
 教養等の実施時間、回数、具体的な内容につきましては、統計がないため、回答いたしかねます。

○大山委員 濫用防止規定があるからいいといいますけれども、それを保障する教養等をどれぐらいやったのか、具体的な内容なども統計がないということですね。また、正当な理由により行われる行為は規制対象とするものではないといいますけれども、現行条例の第一号ないし四号について、行為者から正当な理由があると争われた起訴事案については把握していないし、相談のみの事案の中に、警察が正当な理由があると判断した事案の件数やその内容については、統計がないから回答できないと先ほど答弁されました。
 何より、濫用防止規定が盛り込まれているということは、運用方法によっては、都民の自由を過度に制限する可能性が高いからではありませんか。立法事実も示さない、統計も示さない、こんなことで条例を出すこと自体、議会を軽視しているということをいわざるを得ません。まともな審議もできないじゃありませんか。都民に責任を持たないということになってしまいます。
 この条例は撤回することを求めて、迷惑防止条例については終わります。
 あともう一つだけ、自転車のことです。
 自転車ナビマークと自転車ナビラインの整備計画と整備状況の推移の資料をいただきました。自転車を利用する人が多くて、庶民の足としては大変便利なものです。電動アシストつきの自転車が一般化してからは、坂道でも楽に走れるので、お子さんを乗せた方も利用する方が多くいます。スポーツタイプの自転車の方もよく走っています。
 自転車事故を防ぐためにも、自転車のルールを守ることは重要です。長いこと自転車は歩道という状況が続いて、今も歩道を走る自転車は多いわけです。高齢者だとか小さい子供を乗せている方などは、車道では危険ですから歩道を走りますが、基本的には、自転車は車道。車道で自転車が安全に走れるように環境を整備することが重要だと思っています。
 自転車の専用レーン等の整備は必要ですし、車道にナビマークをつけることもその一つです。資料で出していただいた自転車ナビマーク、ナビラインも、徐々に整備が進んでいるようです。
 具体的に伺うんですけれども、都庁の第二庁舎の南側の道が渋谷区の方に続いています。水道道路というんですけれども、この道路に面して区立のこども園もあります。朝の登園が集中するときなどは、保護者や子供たち、そして歩道を走る自転車が混在して、とても危ない状況になっているんです。
 この道路の車道に、実はナビマークなどが整備されているんです。しかし、同じつながっている水道道路なんですけれども、場所によって表示が違うんです。都庁から進んでいって、こども園の前も含めて、山手通りを越えて渋谷区に入って、一つ目の信号までは、自転車ナビマークと矢印だけです。自転車のマークと矢印だけのナビマークです。しかしその先は、車道に白線が引かれていて、その内側、歩道側は水色に塗ってあって、そこに自転車のマークと矢印が塗装されているんですね。自転車専用通行帯になっているんです。
 地域の住民の皆さんから、車道と色分けされた自転車専用通行帯の方が安心して走れるし、そうすれば歩道ではなくて、車道を通行する自転車が多くなるのではないかと、こう意見が出ているんですね。
 せっかく一つながりの道路なんですから、同じように、自転車専用通行帯で統一するべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

○田中交通部長 ご質問の水道道路につきましては、平成十九年度から、渋谷区本町一丁目から笹塚二丁目までの約二千二百メートルの区間において、車線の数と幅を見直し、カラー舗装をするなどして、自転車と自動車を視覚的に分離する自転車専用通行帯が整備されているところであります。
 一方、車道の幅が十分でないなどの理由により、自転車専用通行帯が設置できない道路につきましては、車道の左端に自転車が通行すべき位置と方向を示す自転車ナビマークを設置し、自転車通行ルールの周知、自動車ドライバーに対する自転車保護意識の醸成を図っております。
 なお、お尋ねの水道道路のうち、現在は、自転車専用通行帯が整備されておりません新宿区西新宿三丁目から渋谷区本町一丁目までの約五百四十メートルの区間につきましても、道路管理者と連携しながら、設置可能な区間については、自転車専用通行帯の整備を検討してまいります。

○大山委員 自転車専用通行帯になっている側の道路とナビマークだけの側では、車道の幅が違うのかなと思うと、そうでもないんですね。ぜひ、自転車専用通行帯で整備していただくことを求めておきます。
 同時に、ほかの道路にも自転車専用通行帯での整備、それから自転車が安全に車道を走れる整備を広げていただくことを求めておきます。
 終わります。

○中村委員 それでは、私からも、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などの防止に関する条例、いわゆる迷惑防止条例の改正案について質問いたします。とりわけ条文の中で、第五条の二第一項第二号で新たに追加になる、みだりにうろつくについて質問いたします。
 この迷惑防止条例の第五条の二、つきまとい行為などの禁止の項目については、これまでもさまざまな経過がありました。二〇〇二年六月に、暴走族の落書きやピンクビラ廃止の禁止などとともに提案されました。しかし、余りに対象が広範囲であることから、議会でこの部分を削除する修正をした上で可決をしました。その後、二〇〇三年九月に、正当な理由なくという文言を加え、規制される行為を限定し、濫用防止の項目を追加した条例案が再度提案され、可決をし、現在の条文になっています。
 今回は、この条文に、みだりにうろつくなどの文言を追加し、提案がされました。そこで、今回も追加になる文言について、適切な運用がされるものか質疑をしたいと思います。条例を定めるには、なぜその条例を定めなければならないのか、すなわち立法事実が必要になります。
 そこで、今回の改正についてどのような状況があるのかを、まず伺いたいと思います。
 このみだりにうろつく行為が違法として追加になることについて、SNSの普及や盗撮機器の小型化のような技術の進歩もありますが、みだりにうろつくこと自体については最近の話ではありません。相手に危害を加えるつもりなら、殺人、傷害、暴行などの刑事罰での取り締まり、また行為そのものを脅迫、威力業務妨害等で取り締まりはできないのでしょうか。なぜこの時期に条例改正の必要があるのか、具体的事例を含めて見解を伺います。

○市村生活安全部長 みだりにうろつく行為につきましては、直ちにご指摘のような犯罪行為に該当するものではないことから、罰責をもって取り締まりを行うことは困難であります。この点、行為者が人間関係のトラブルから被害者の自宅周辺をうろつく等の行為を繰り返すなど、みだりにうろつく行為については、既に規制されている待ち伏せや見張りと同様、被害者が著しく不安を覚えるものであるにもかかわらず、規制の対象外とされており、この種事案への速やかな対応が喫緊の課題となっていたものです。
 首都東京の治安課題の一つである人身安全関連事案に対する迅速かつ的確な対応を図っているところ、今回、本行為を新たに規制対象とすることで、さらなる都民生活の安全につながるものと考えております。

○中村委員 人身安全関連事案に対する迅速かつ的確な対応を図るための改正ということの答弁でした。
 もとより警視庁の皆様が、昼夜を問わず、都民の安全を守っていただいていることは敬意を表します。ただ、そのためには、犯罪を取り締まろうとする意図のある行為と、それに該当する条文が完全に一致をし、拡大解釈や濫用する余地がないようにすることが重要です。
 日本の刑事法は罪刑法定主義に基づいており、犯罪となるには、あらかじめ明確に法令で定めておかなければなりません。すなわち、どのような行為をすれば犯罪になるか明確ではなく、曖昧でわかりにくいとすると、法律を犯さないように行動しようと思っても、行動できなくなってしまいます。本来は、誰が読んでもわかることが大切なのですが、わかりにくい場合に、最終的に判断するのは裁判所です。その際、立法者の意思がどうであったのかという提案者の議会での答弁が、裁判上、大変重要になります。
 そこでまず、みだりにうろつくについて伺います。
 みだりにうろつくとは、具体的にどのような行為が違法に当たるのでしょうか。また、被害者の居所に本人がいることや、被害者がみだりにうろついていることを認識することは必要なのでしょうか。見解を伺います。

○市村生活安全部長 みだりにうろつくのみだりにとは、社会的相当性がないような態様をいい、うろつくとは、当てもなく移動することをいいますので、例えば、被害者の自宅付近をわざわざ周回して通勤したり、被害者の自宅前路上を行ったり来たりすることが本行為に該当するものと認められます。
 なお、本条例におきましては、悪意の感情等により、つきまとい行為等を反復した場合、取り締まりの対象と認められます。また、みだりにうろつく行為については、広く都民等に不安を覚えさせるものであって、社会通念上、容認されないものであれば足り、被害者が在宅しているか否かは問いませんし、被害者本人による本行為の認識も必要ありません。

○中村委員 悪意の感情等によりとか、反復した場合が対象になっているとのことですから、これはかなり厳格な運用が求められます。すなわち、ただ単に歩いていたとか散歩していたとかいうだけでは、たとえ明らかに怨恨がある客観的事実があったとしても、そのことのみで取り締まることがないようにしなければなりません。逆に、うろつかれた側から、恨みのある相手がたまたま歩いているというだけで警察に通報して、そのまま取り締まってしまうような冤罪を生んでもならないので、これは慎重な運用が必要かというふうに思っています。
 さて、先ほど述べた二〇〇三年改正の際の議論で、当時の民主党の代表質問に対して、当時の警視総監が、正当な労働運動、市民運動、取材活動などが規制対象外であることがより明確になったものと考えておりますとの答弁を得たため、当時は改正案に賛成をいたしました。ただ、このストーカー規制法に規定されている警告、中止命令、公安委員会の関与などが盛り込まれず、直罰規定のみになっているため、現場の警察官が誤って運用しないような適切な運用もその際求めました。
 その後、小金井市女子大生ストーカー刺傷事件を受けて、二〇一七年一月に、ストーカー規制法改正がされ、被害者の告訴なしで起訴できる非親告罪に変更されました。もとより、この条例による犯罪は非親告罪であり、直罰規定のままですから、これまで以上に適正な運用を求めます。
 さて、先ほどまでの議員の質問等でも、国会前のデモ等を含めて、適正な運用をするということなので、当然これは規制対象外になるということだとは思っていますが、改めて全体について質問いたします。
 二〇〇三年改正の際に、つきまといの際に正当なと限定し、濫用規定を追加していますので、今回追加になった、みだりにうろつく行為についても、当然この規定は同様に採用されます。とはいえ、一度立法化されると解釈が拡大されるおそれがあるので、ここでは、みだりにうろつくについてもきちんと確認しておきたいと思います。
 第五条の二の第三項で、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないと規定されています。しかし、政治活動、労働活動、市民運動、取材活動などにおいて、憲法が保障する言論の自由は、たとえ第三項がなくても、第一項そのものの規定自体で濫用があってはなりません。
 今回の改正で、政治活動、労働運動、市民運動、取材活動が規制されることはあってはなりませんが、見解を伺います。

○市村生活安全部長 今回追加される、みだりにうろつく行為を含む、本条例に規定するつきまとい行為等の規制については、第五条の二第三項の濫用防止規定の適正な運用のほか、同一項に規定されているとおり、正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の認定が前提条件となります。そのため、正当な理由により行われる政治活動、労働運動、市民運動、取材活動等は、その規制対象となるものではありません。
 警視庁としましては、引き続き、都民生活のさらなる安全の確保に向けて、本条例を適正に運用してまいります。

○中村委員 今のご答弁の中で、政治活動や労働運動、市民運動、取材活動がこの条例の規制対象になるものでないということを、改めて確認させていただきました。これらの憲法が保障する活動というのは本当に重要なものですから、いかなることがあろうと、これは制約をしてしまってはならないというふうに思っております。
 以上、質問を終わります。

○大津委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大津委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で警視庁関係を終わります。

○大津委員長 これより東京消防庁関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案、平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、債務負担行為、東京消防庁所管分、第七十五号議案、第七十六号議案及び第百十九号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求しました資料は、お手元に配布してございます。
 資料について理事者の説明を求めます。

○森住救急部長 それでは、資料のご説明をいたします。
 表紙を一枚おめくりください。
 初めに、消防署所数と救急資格者数等の推移についてご説明いたします。
 こちらは平成二十年から平成二十九年までの十年間の推移を、各年四月一日現在であらわしております。
 表の右側、平成二十九年の欄をごらんください。上から順に、消防署所数は二百九十二、そのうち救急隊が配置されている署所数は二百三十六です。救急隊数は十年間で二十二隊ふえ、二百五十一となっています。また、救急資格者数は六千四百二十九人、救急救命士は毎年増強し、十年間で六百五十三人ふえ、二千三百四十二人となっており、全ての救急隊に救急救命士が配置されております。
 一枚おめくりください。
 次に、救急隊数と救急資格者数についてご説明いたします。
 こちらは、平成二十九年四月一日現在における救急隊と救急資格者の数を、消防署別にあらわしております。
 右側の表の下段に合計があります。救急隊数は二百五十一、救急資格者数は各消防署のほかに、救急機動部隊、そして米印その他で示す本部庁舎勤務等の救急資格者も含めて、六千四百二十九人となります。
 詳細内訳につきましては、表記載のとおりでございます。
 最後に、もう一枚おめくりください。
 救急活動時間についてご説明いたします。
 こちらは、平成二十五年から平成二十九年までの過去五年分、それぞれ各項目の平均値をあらわしております。
 表上段の用語を解説いたします。まず、出場から現着とは、救急隊が消防署所等を出場してから救急事故の現場に到着するまでの時間、現着から現発とは、救急隊が救急事故の現場に到着してから病院に向けて出発するまでの時間、現発から病着とは、その後、病院に到着するまでの時間でございます。
 平成二十九年速報値の欄をごらんください。出場から現着までは七分十九秒、現着から現発までが二十分五十秒、現発から病着までが十分十七秒となっており、いずれも平成二十五年と比較して短縮しております。
 以上で説明を終わります。

○大津委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○大山委員 救急隊に関する資料を今、いただきました。ありがとうございました。
 到着時間や搬送時間を短縮するために本当に努力していらっしゃることに敬意を表しています。
 救命救急士も十年間で約一・四倍にふえて、出場から現着までの時間が五年間で三十五秒短縮しているということですね。命を救うためには、いかに早く現場に到着できるかということが重要だということです。
 さまざまな対応をしているのでしょうけれども、近くに救急車がいることは重要な要素です。
 東京消防庁は、時間によって待機場所を変える救急機動部隊を、東京駅周辺及び新宿を起点として運用していますけれども、具体的にどのような効果があったでしょうか。

○森住救急部長 東京消防庁では、平成二十八年に、救急需要に応じ待機場所を変える救急機動部隊を発隊させ、現在、昼間は東京駅、夜間は新宿を拠点に活動をしております。
 発隊前の平成二十七年と平成二十九年速報値で平均現場到着時間を比較すると、東京駅周辺で一分三十六秒、新宿の拠点周辺においても一分十二秒短縮しております。
 また、東京駅待機所、新宿拠点ともに、周辺二キロメートル以内に配置している他の救急隊がそれぞれの現場に到着する時間も短縮されるなど、救急機動部隊の波及効果が認められております。

○大山委員 現場到着時間の平均が秒単位での短縮ですから、一分以上の短縮というのは重要な前進だと思っています。拠点の周辺でも、それから周辺二キロ以内に配置している他の救急隊にもよい効果があらわれているということですね。救急隊、救急車の配備場所がより多くなることが、周辺への効果もあるということが示されていると思っています。
 来年度予算案では、救急隊の効果的な運用ということで、町田駅周辺に同様に配備するという提案ですけれども、救急隊の現場到着時間短縮に向けた今後の取り組みというのはどうしていくのか伺います。

○清水企画調整部長 東京消防庁では、これまで救急隊の計画的な増強や救急機動部隊の発隊など、現場到着時間の短縮に取り組んでまいりました。
 来年度は、救急隊を六隊増強するほか、変化する救急需要に対応するため、消防署所に配置している救急隊につきましても、消防署管轄内で待機場所を変更する機動的な運用を試行するなど、現場到着時間の短縮に向けて積極的に取り組んでまいります。

○大山委員 以前、「東京の消防白書」というのをいただいたんですけれども、その中には、救急隊員の行う主な救急処置としては、人工呼吸や胸骨圧迫、止血、固定処置、酸素吸入及び保温などのほか、経鼻エアウエーによる気道確保、喉頭鏡、鉗子等による異物除去、ショックパンツによる血圧保持等があります。また、救命救急士は、心肺停止状態に陥った傷病者に対し、AEDを用いた除細動や、乳酸リンゲル液を用いて静脈の流れを確保する処置を行い、呼吸がとまった状態の人に対してはラリンゲルチューブ等を用いて気道を確保する処置などを行っています、こう書かれています。いずれも、一刻も早く措置することが、よりよい予後や救命につながるということですね。
 待機場所の確保なども含めて、困難もあるでしょうけれども、全体の救急隊、救急隊員の着実な増員とともに、待機場所をふやしていくということも引き続き進めていただきたいことを求め、終わります。

○中村委員 東京消防庁の来年度の予算案の審議に際して、何点か質問します。
 消防庁の役割として、火災から都民の生命を守るのが何より重要です。ただ、消防庁の発表によると、ことしに入り、大変残念ながら、三月十八日現在で、住宅火災における死者は三十二名となり、昨年の同時期と比較すると十三名の増加で、一・五倍を超え、急増しているとのことです。消防庁も消火活動には全力で当たられたと思いますが、大変残念なことに、この住宅火災で亡くなられた三十二名のうち、住宅用火災警報器等を設置していたのは十一名で、二十一名は設置していなかったのです。改めて、住宅用火災警報器の一〇〇%設置への取り組みを求めるものです。
 ところが、この住宅用火災警報器について、新築に続いて、既設の一般住宅に設置が義務化されたのは二〇一〇年四月で、既に八年近くが経過をしています。日本火災報知機工業会によると、機器本体の目安は十年とのことで、あと二年です。設置に向けて、消防庁が懸命に広報してもまだ一〇〇%になっていないことを考えると、機器の交換を呼びかけるのは困難をきわめることが想定されます。もちろん、十年たってすぐに動かなくなるのではないのですが、義務化する前から設置されているものがあることを考えると、機器が使えても、それ以前に電池が切れていれば、当然効果がなくなりますので、定期的な点検も必要です。
 東京でオリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年、四月は、住宅用火災警報器が義務化されて十年目の年となりますが、この住宅用火災警報器の普及啓発についての東京消防庁の取り組みを伺います。

○鈴木防災部長 住宅火災による被害低減のためには、住宅用火災警報器の設置が重要であることから、東京消防庁では、パンフレットや区市町村の広報誌など各種媒体を活用し、広報を行ってまいりました。
 また、消防職団員の戸別訪問による設置の働きかけや、町会、自治会への共同購入依頼など、積極的に設置促進に取り組んでまいりました。
 その結果、消防に関する世論調査では、平成二十七年以降、設置率は八割を超え、住宅火災による死者が減少傾向にあるなど、効果があらわれております。
 今後とも、住宅用火災警報器の設置を促進するとともに、設置された機器につきましては定期的な点検を呼びかけるなど、適正な維持管理の周知に努めてまいります。

○中村委員 この間も広報活動していただいたんですが、なかなか一〇〇%になっていない状況です。
 今、答弁の中で、点検を呼びかけるとか、適正な維持管理ということもお話をいただきました。これはなかなか新しくつけるという部分は、ある意味でわかりやすいんですけれども、あるものを変えていくのは大変なことだというふうに思っています。特にこれは日常的に使っている機器ではないので、十年たってすぐに動かなくなるわけではないとはいうものの、動かなくなっていることに気づかないということがあるわけですから、こういった点では、これからより一層、こういった普及啓発等、まさしく十年過ぎる二〇二〇年のオリンピックのころには、本当に切れ始めるものが出てきてしまう可能性もありますので、より普及啓発をきちんとやっていただきたいと思っています。
 また、昨年の八月、中央区の築地場外市場で、建物の全焼火災が発生しました。飲食店で調理後に火は消していたのですが、長年の熱で壁の中に熱が残り、火災が発生したものです。また、老朽化した木造店舗が密集していたこともあり、周辺の店舗に延焼し、大火災となってしまいました。
 また、一昨年十二月には、新潟県糸魚川市で店舗から発生した火災が強風にやられて大火災につながってしまいました。
 今後も、都民の生命、安全を守るために、火気を使う飲食店、とりわけ老朽化した店舗や狭隘な店舗における火災の予防について、厨房機器を壁に近づけて使用しないよう啓発することが必要です。来年度は、熱画像直視装置を五台購入するとの予算も計上されていますが、都内にある店舗数を考えると、啓発にも効果的な方法が求められます。
 先日、総務局が、各丁目ごとに火災の危険度判定を発表しましたが、より危険な地域を重点的に点検を行うことも考えられます。
 この築地場外の火災や糸魚川の火災を受けて、飲食店における火災予防対策について東京消防庁の取り組みを伺います。

○柏木予防部長 築地場外市場の火災や糸魚川市の火災は、いずれも火元が小規模な飲食店であることから、東京消防庁では、小規模飲食店の出火防止対策が重要であると認識しております。
 当庁では、築地場外市場の火災を受けて、類似の飲食店に対する立入検査などを実施し、厨房設備や消火器の取り扱いなどを重点に指導を行ってまいりました。
 一方、国では、小規模飲食店に消火器の設置を義務づける予定であり、当庁では、来年度に、その対象となる小規模飲食店の火気管理などに関する実態調査及び火災予防の啓発などを行うこととしております。

○中村委員 築地場外市場の火災でも、まさに消したのにもかかわらず火災が起きたということもあったわけですから、本当にこれはしっかりと注意喚起を促していただきたいと思っています。とりわけ、小規模店主の方にも、どうしても小さいお店の場合、商店街全体も古いことも多いので、そこから火が出れば全体に広がってしまうということもありますので、普及啓発をぜひともしていただいて、都民の皆様の生命、安全を引き続き守っていただくようお願いをいたしまして、質問を終わります。

○大津委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大津委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で東京消防庁関係を終わり、これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時二十七分散会

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