警察・消防委員会速記録第十二号

平成十六年十二月十三日(月曜日)
第十一委員会室
   午後一時七分開議
 出席委員 十二名
委員長こいそ 明君
副委員長橋本辰二郎君
副委員長名取 憲彦君
理事田島 和明君
理事清原錬太郎君
理事秋田かくお君
石井 義修君
藤井 富雄君
内田  茂君
田中 晃三君
尾崎 正一君
土屋たかゆき君

 欠席委員 一名

 出席説明員
警視庁警視総監奥村萬壽雄君
総務部長加地 正人君
警務部長佐藤 正夫君
交通部長関根 榮治君
警備部長石田 倫敏君
地域部長弘光  朗君
公安部長末井 誠史君
刑事部長井上 美昭君
生活安全部長柴田  健君
組織犯罪対策部長栗生 俊一君
総務部企画課長藤原  孝君
総務部会計課長石田 唱司君
東京消防庁消防総監白谷 祐二君
次長予防部長事務取扱関口 和重君
総務部経理課長野原 英司君

本日の会議に付した事件
 警視庁関係
付託議案の審査(質疑)
・第二百四十四号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
・第二百四十五号議案 性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
付託議案の審査(決定)
・第二百四十四号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
・第二百四十五号議案 性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
 請願陳情の継続審査について
 特定事件の継続調査について

○こいそ委員長 ただいまから警察・消防委員会を開会いたします。
 初めに、今後の委員会日程について申し上げます。
 お手元配布の日程のとおり、理事会において申し合わせましたので、ご了承を願います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、警視庁関係の付託議案の審査並びに請願陳情及び特定事件の閉会中の継続審査及び調査の申し出の決定を行います。
 これより警視庁関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第二百四十四号議案及び第二百四十五号議案を一括して議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布をしてございます。
 資料について理事者の説明を求めます。

○加地総務部長 去る十一月二十五日、当委員会から要求のございました資料につきましてお手元に提出のとおり準備いたしましたので、ご説明申し上げます。
 まず、一ページ目、第1の客待ち行為の禁止についてでございますが、客引き目的の客待ちにつきましては、(1)のとおり、岡山県の、いわゆる迷惑防止条例第五条第二項で、わいせつな行為の提供等につきまして、客引き目的の客待ちが禁止されております。同条第三項の警察官の中止命令に違反した場合に罰則が適用されることとなっております。適用事例につきましては、(2)のとおりでございます。
 次に、資料二枚目、配布等目的所持の禁止についてでございますが、(1)のとおり、宮城県ピンクちらし根絶活動の促進に関する条例第三条第三項に、「何人も、まき散らしを行う目的でピンクちらしを所持又は携帯してはならない。」と規定されておりまして、本年五月一日から罰則が適用されております。適用事例につきましては、(2)のとおりでございます。なお、本年十月末現在、まき散らし目的所持違反の検挙は、本件を含めまして四件であると聞いております。
 以上で説明を終わらせていただきます。

○こいそ委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○秋田委員 ただいま議題となっております公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、いわゆる迷惑防止条例の一部を改正する条例及び性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例、いわゆるぼったくり条例の一部を改正する条例について質問をいたします。
 二つの条例「改正」案は、直接には、いわゆる性風俗営業への規制を目的とするものです。私は、適正な規制は賛成の立場であります。しかし、今回の改正案には、公共の空間や営業活動への警察のかかわる問題を内包し、構成要件の明確性や、行為と罰則の均衡などの刑罰法規のあり方としても、慎重に検討すべき重大な問題等を含んでおります。
 以下、重要な問題に絞って質問をさせていただきます。
 第一に、迷惑防止条例の指定区域内における性風俗店などの客待ち行為の禁止についてであります。改正案では、七条の三項で、指定区域内において、わいせつ行為等の客引き、卑わいな異性接待酒類飲食業の客引きを行う目的で、公衆の目に触れるような客待ちをすることを新たに禁止するとしております。
 新たに加えようとしている指定区域とは、どこを指定区域とする予定であるのか、お聞かせください。

○柴田生活安全部長 指定区域についてでありますが、都内の主要な繁華街や風俗営業店等が密集する区域につきまして、不当な客引きや客待ち行為が頻繁に行われ、地域住民等に著しい迷惑や不安を及ぼしている状況等を勘案して、客待ちの規制を行う必要性が高いと認められる区域が指定されることとなると考えております。

○秋田委員 それでは、客引き、客待ちなどの目的で、うろつき、たむろする行為と、単に通行し、立ちどまる行為とは、外形上どのように区別するんでしょうか、お答えください。

○柴田生活安全部長 たたずんだり、うろついたり、数人でたむろして、客となる者や客にしようとする者を物色するなどの行動パターンや服装、所持しているビラ等の内容等により、客待ちをしている者であるか否かを判断していくこととしております。

○秋田委員 それでは、各客引きの目的はどのように判断するんでしょうか、お聞かせください。

○柴田生活安全部長 目的の判断でありますが、捜査員による内偵捜査を初め、客待ちをしている者の言動、行動パターン、所持しているビラ等の内容等により、客引きを行う目的の有無を判断していくこととしております。

○秋田委員 犯罪構成要件である警察官の中止命令は、どのような方法で行われるのでしょうか。

○柴田生活安全部長 原則として、書面を交付して行う予定でございます。

○秋田委員 しかし、この提案説明のときに、総務部長さんは、有識者の方々による懇談会を開催しましたところ、迷惑防止条例などを改正して、迷惑行為に対する規制の強化や新たな規制の盛り込みにより対処することが、当面最善の方法であるとの提言をいただいたから、この条例を提案したんだ、こういうふうに説明がありましたけれども、この繁華街等における迷惑行為対策懇談会の報告書でも、うろつき、たむろする行為を規制することは、自由を制限する度合いが強い、こう指摘せざるを得なかった問題であります。新聞でも、客待ち行為の禁止については、都庁内でも慎重な意見があると報道されております。
 幾ら指定区域を限定しても、繁華街をうろつき、たむろする行為自体を規制することは、内心の目的を犯罪成立のメルクマールとして、外形的には単に繁華街を通行し、とどまる行為自体一般を規制対象とするに等しく、都民、国民の自由、権利に対する過度の制限といわざるを得ません。
 第二は、ピンクビラなどの配布等を行う目的で、ピンクビラ等を所持することを新たに禁止する問題についてであります。ピンクビラ等の配布の目的は、どのように判断するのか、お伺いをいたします。

○柴田生活安全部長 目的をどのように判断するかということでありますが、所持しているピンクビラ等の枚数やピンクビラ等の状態にしわがなく、いつでも掲示できるよう両面テープを張ってある状態か否かなどを確認いたしますとともに、所持している者に対する事情聴取、裏づけ捜査、目撃者の供述等から総合的に判断いたしまして、配布等の目的について立証していくこととしております。

○秋田委員 それでは、ピンクビラなどの配布の目的があれば、一枚所持していても違反になるんでしょうか。

○柴田生活安全部長 配布等の目的があれば、一枚所持していた場合も違反は成立いたします。

○秋田委員 ピンクビラなどの所持について、報告書は、歌舞伎町などは取り締まり実務上の問題点として、ピンクビラを所持している者を発見した場合であっても、配置、掲示等の行為の現場を現認しなければ条例違反として問擬できないことから、ピンクビラの配布、配置等の実行行為者を特定するための視察内偵に多大な労力を要している状況にある、こう述べております。
 しかし、配置や掲示等が行われて初めて迷惑行為となるのであって、労力の軽減という取り締まりの都合から、迷惑行為、つまり犯罪実行行為の予備段階である所持自体を、しかも内心の目的を犯罪成立のメルクマールとして取り締まるというのは、明らかに刑事罰の謙抑性に反すると指摘せざるを得ません。
 第三は、暴力団員による地回りの行為などに対する規制の強化の問題です。改定案五条二項の行為全体を重罰化する立法事実はどういうことなんでしょうか。

○栗生組織犯罪対策部長 ご指摘のあった条例案第五条第二項の行為につきましては、放置しておきますと、脅迫、恐喝、業務妨害等に至りかねないものでありますとともに、地回り行為等に対する規制の実効性を確保する必要があり、最近におけるこの種の行為に対する社会の認識や、いわゆる迷惑防止条例における罰則の状況等を勘案し、罰則に係る規定についても改めようとするものでございます。

○秋田委員 先ほどの報告書でさえ、地回り行為等それ自体を規制するとなると、暴力団の活動を規制する暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律によるべきではないか、同法で禁止していない行為を条例で禁止することが妥当かなどの議論が生じるところだ、こういうふうに述べているように、本来、国の法律で解決すべき問題であることを申し上げておきたいと思います。
 しかも、現行条例では、五条二項の違反行為があれば、脅迫や恐喝、業務妨害等に至る前に、ほうっておかずに検挙できるのであって、脅迫、恐喝、業務妨害等の事前抑止は五条二項違反行為全体を重罰化する根拠にはならないことを指摘しておきます。
 さらに、条例改定案では、具体的にどのような言動が暴力団の威力を示す言動となるのか、不明確であります。暴力団員ではない何人の言動も規制される以上、条文上、だれにでも違反行為が明確にわかる必要があると思います。
 そこで、伺いますが、次に暴力団のかかわりについて、このたびの改定案では、暴力団の威力を示す言動が加えられましたが、暴力団の威力を示す言動とは具体的にはどのような言動なのか、お答えください。

○栗生組織犯罪対策部長 ご質問の暴力団の威力を示す言動につきましては、例えば、暴力団の構成員であることを告げる、また暴力団の構成員であることをあらわすような物品を見せるなど、こういったものがこれに当たるものと認識しておる次第でございます。

○秋田委員 報告書は、深夜の繁華街を数十人から百数十人以上の集団の隊列を組んで、不気味に練り歩くという例を挙げていますが、それがどうして暴力団の威力を示すことになるのか。また、さまざまな団体の要請行動などが該当することにならないのかどうなのか、そこをお伺いしたいと思います。

○栗生組織犯罪対策部長 報告書中、ご指摘の点につきましては、多数の暴力団員による典型的な地回り行為をいう趣旨と理解しておる次第でございます。
 また、暴力団に係るもの以外は、暴力団を標榜する場合はともかくといたしまして、想定しがたいものと考えておる次第でございます。

○秋田委員 それでは、市民団体や労働組合などのパレードや抗議行動などは、対象外ということになりますか。

○栗生組織犯罪対策部長 ご指摘のような行為につきましては、暴力団の威力を示すものとは認められませんので、本条例案の規制対象とはならないものと考えております。

○秋田委員 市民団体や労働組合などのパレードや抗議などが対象外というのは当然です。しかし、本条例の改正案は、暴力団のみに適用されるものではなくて、公共の空間で不安を覚えさせるような言動が禁止されるのは何人もであって、暴力団のうろつきを理由に、極めて抽象的でどのようにでも適用できる、不安を覚えさせる言動の禁止を重罰化するとされています。これは、公共の空間を警察の監視と規制のもとに置くことを意味しており、市民生活や言論、表現活動、国民の権利などを不当に侵害する乱用が絶対に起こらないように、厳しく指摘をしておきたいと思います。
 第四は、ぼったくり条例改正案の警察官の立ち入り権の問題であります。
 今回のぼったくり条例改正で規制する迷惑防止条例の改正に伴う規制対象は、同条例七条の一項一号、三号、同五号、同条三項、同条例七条の二第一項の違反行為にかかわるものに限定されているのに、ぼったくり条例改正二条一項の三号の営業は、客の性的好奇心に応じてとか、異性による客の接待などの限定をせずに、都内全域の客の接待をして客に飲食をさせる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業、その全体を対象にして、警察官の立ち入り、質問などの規制をするのはなぜでしょうか、お聞かせください。

○柴田生活安全部長 立ち入りについてのお尋ねでございますが、ぼったくり条例改正案第八条は、第一項及び第二項におきまして、この条例の施行に必要な限度においてと規定しております。したがいまして、例えば、改正迷惑防止条例に違反する客の誘引行為が行われた場合に、公安委員会が行政処分を行うに当たりましては、都内全域の客の接待をして客に飲食をさせる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業全体が同条に基づく報告及び立ち入り等の対象となり得るものではなく、客の誘引行為の規制対象営業であります性風俗店やセクシーパブ等に限られるということになります。

○秋田委員 それでは、性風俗店やセクシーパブなど、これ以外の酒類提供店舗は対象外と受けとめてよろしいんでしょうか。

○柴田生活安全部長 性風俗店やセクシーパブ等以外の酒類提供店における客の誘引行為につきましては、改正迷惑防止条例違反とならないことから、当該行為に基づいて公安委員会が行政処分をするために立ち入り等を行うことはできません。

○秋田委員 風適法や暴対法ですら規制の対象とされていないものを、都民の体感治安の回復や清浄な風俗の環境の保持などの抽象的な法益保護の名目で、外形的には何ら違反でない、単に通行したりとどまったりしている客待ち行為を、内心の目的をメルクマールとして犯罪として処罰すること、また、行為自体は迷惑ではなくて、犯罪事実行為に至らない予備段階であるピンクビラの所持を、内心の目的をメルクマールとして犯罪として処罰すること、暴力団の地回り行為などの規制強化を立法事実としつつ、暴力団でない者の行為を処罰し、多数で不安を覚えさせる行為全体を重罰化するなど、重大な問題点があります。
 特に、私は、本委員会の条例改定案の審議のたびに指摘をしてまいりましたが、合法と違法の境界を、人間の内心の目的、内心の情だけで切り分けることの問題があります。
 今回の改定案においても、客観的には、自由に属する公共空間での行為を内心の目的、内心の情のみによって摘発、処罰しようとする条例改定は、重大な問題をはらんでおり、反対であることを表明しておきます。
 最後に、乱用防止について申し上げておきます。
 本条例改定案では、軽犯罪法四条で規定されている「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」という乱用防止規定や売春防止法四条、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律十条などに規定される適用上の注意、すなわち、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないとの条項を盛り込むなどの配慮もされておりません。
 私は、本条例案には、こうした乱用防止規定を当然盛り込むべきであることを強く要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

○こいそ委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○こいそ委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で警視庁関係を終わります。

○こいそ委員長 これより付託議案の審査を行います。
 第二百四十四号議案及び第二百四十五号議案を一括して議題といたします。
 本案については、既に質疑を終了しております。
 これより採決を行います。
 第二百四十四号議案及び第二百四十五号議案を一括して採決いたします。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、いずれも原案のとおり決定することに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○こいそ委員長 起立多数と認めます。よって、第二百四十四号議案及び第二百四十五号議案は、いずれも原案のとおり決定をいたしました。
 以上で付託議案の審査を終わります。

○こいそ委員長 次に、請願陳情及び特定事件についてお諮りいたします。
 本日まで決定を見ていない請願陳情並びにお手元配布の特定事件調査事項につきましては、それぞれ閉会中の継続審査及び調査の申し出をいたしたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○こいそ委員長 異議なしと認め、そのように決定をさせていただきます。

○こいそ委員長 この際、所管両庁を代表いたしまして、奥村警視総監から発言を求められておりますので、これを許します。

○奥村警視総監 警視庁並びに東京消防庁を代表いたしまして、ごあいさつを申し上げます。
 ただいまは、当委員会に付託されておりました議案につきまして、原案どおりご決定をいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 さて、ことしも年の瀬が迫りつつありますが、両庁では、例年この時期、都民の方々が平穏のうちに明るい新年をお迎えになることができますよう、組織を挙げまして年末年始の特別警戒を実施しております。委員の皆様方には、近く警戒実施状況をご視察いただくことになったところでありますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 都内の治安情勢及び消防情勢につきましては、依然として厳しい状況にありますが、委員の皆様方から賜りました貴重なご意見を今後の業務運営に十分反映をさせまして、首都の治安維持と都民生活の安全・安心の確保に全力を尽くしてまいる所存でございます。
 委員の皆様方には、今後とも一層のご指導、ご支援を賜りますようお願いを申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

○こいそ委員長 発言は終わりました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後一時三十七分散会

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