警察・消防委員会速記録第六号

平成十四年六月二十一日(金曜日)
第十一委員会室
   午後一時四分開議
 出席委員 十三名
委員長三原 將嗣君
副委員長名取 憲彦君
副委員長石井 義修君
理事宮崎  章君
理事小山 敏雄君
理事秋田かくお君
中嶋 義雄君
いなば真一君
土屋たかゆき君
花川与惣太君
清原錬太郎君
藤井 富雄君
田中  良君

 欠席委員 一名

 出席説明員
警視庁警視総監野田  健君
副総監警務部長事務取扱人見 信男君
総務部長岩橋  修君
交通部長福島 和夫君
警備部長和田 康敬君
地域部長濱口 征三君
公安部長米村 敏朗君
刑事部長米田  壯君
生活安全部長渡辺  晃君
組織犯罪対策本部長宮本 和夫君
総務部企画課長関根 榮治君
総務部会計課長鹿倉 則彰君
消防庁消防総監杉村 哲也君
次長白谷 祐二君
総務部長中村 正弘君
警防部長関口 和重君
防災部長鈴木 正弘君
救急部長水崎 保男君
予防部長鈴木 淳雄君
指導広報部長櫻岡 正規君
装備部長三上  進君
総務部企画課長佐藤 行雄君
総務部経理課長稲葉 義行君

本日の会議に付した事件
 警視庁関係
  付託議案の審査(質疑)
  ・第百七十七号議案 警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
  ・第百七十八号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
  ・第百七十八号議案に対する修正案
 消防庁関係
  付託議案の審査(質疑)
  ・第百七十九号議案 火災予防条例の一部を改正する条例
  ・第百八十号議案  特別区の消防団員に係る退職報償金に関する条例の一部を改正する条例
  ・第百八十一号議案 特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
  付託議案の審査(決定)
  ・第百七十七号議案 警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
  ・第百七十八号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
  ・第百七十九号議案 火災予防条例の一部を改正する条例
  ・第百八十号議案  特別区の消防団員に係る退職報償金に関する条例の一部を改正する条例
  ・第百八十一号議案 特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
 請願陳情の継続審査について
 特定事件の継続調査について

○三原委員長 ただいまから警察・消防委員会を開会いたします。
 最初に、傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上おられるようですので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○三原委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、警視庁及び東京消防庁関係の付託議案審査並びに請願陳情及び特定事件の閉会中の継続審査及び調査の申し出の決定を行います。
 この際、傍聴人の方々に申し上げます。
 傍聴人の方々は、東京都議会委員会傍聴規則を守って、静粛に傍聴をお願いします。傍聴人は、可否を表明したり、騒ぎ立てるなど、議事の妨害となる行為をすることは禁じられております。委員会傍聴規則等に違反する場合には退場を命じることがありますので、念のため申し添えておきます。どうぞご協力のほどお願いいたします。
 これより警視庁関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百七十七号議案及び第百七十八号議案を一括して議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○岩橋総務部長 去る六月六日、当委員会から要求のありました資料につきまして、お手元に提出のとおり準備いたしましたので、ご説明申し上げます。
 まず、1の第五条の二関係についての(1)懇談会報告書の迷惑相談件数や内容と、ストーカー規制法で警察庁が示した件数・内容は大きく異なっているが、それぞれどう異なるのかについてであります。
 都民生活における迷惑行為等対策についての報告書にある、平成十三年中に当庁に寄せられましたつきまとい等の相談事案は約千八百件であり、このうち恋愛感情等が原因とされるものは約千百件で、全体の約六一%であります。
 この中で、ストーカー規制法に該当すると思われるものが六百二十八件、恋愛感情等に基づくとされるものの、同法に該当しないと判断されるものが約五百件であります。また、全体の約千八百件からこの約千百件を差し引いた約七百件の中に、改正条例案の対象となるものが含まれていることになります。平成十三年十二月に墨田区で発生した殺人事件のような事案には、本条例案が適用できるものと考えております。
 一方、警察庁が示した件数は、平成九年一月から平成十一年六月末までに各都道府県警察が認知した悪質つきまとい事案のうち、社会通念上相当の悪質性が認められるものの、当時の刑罰法令による検挙は不可能であった事案の調査結果によるものと承知しております。
 当時、この種の事案として把握されていたものは八百二十二件、このうち恋愛感情等が原因とされていたものが五百九十件で、全体に占める割合は七一・八%となっております。また、動機が判明していた六百六十九件の中で恋愛感情等が原因とされていたものが占める割合は八八・二%となっております。
 調査の時期や範囲等は異なりますが、恋愛感情等が原因とされる件数の占める割合を比較いたしますと、当庁が約六一%、警察庁が七一・八%でありますので、大きく異なってはいないと思われます。
 次に、(2)のねたみ・うらみその他の悪意の感情を充足する目的でなされたつきまといについて、〔1〕「職場、学校、地域社会における関係」、〔2〕「売買、雇用、貸借の契約関係」、〔3〕「交通事故の不法行為関係」ごとに、当庁が把握している件数及び内容についてであります。
 悪意の感情を充足する目的でなされたものであるか否かについては、統計をとっていないため実態が明らかでないことから、ただいまご説明いたしました(1)の改正条例案の対象となる事案を含んでいると考えられる約七百件の相談事案について記録を調査いたしました。
 その結果、ご質問の三つのケースに該当する相談事案は百二十四件で、そのうち、ねたみ、恨みその他の悪意の感情が背景にあると判断できたものは二十八件でありましたが、当時は相談受理時にこの種感情について厳格に聴取していなかったことから、実際はこれ以上あるものと推測されます。
 なお、ケース別の詳細については、次の表にその件数や具体例をお示ししております。
 次に、(3)の各項目の「等」とは、具体的にそれぞれ何を示すのかについてであります。
 地域社会等の「等」とは、条文に列挙されている職場、学校、地域社会に類するものをいい、具体的には、幼稚園、通勤経路、通学経路などがこれに当たります。
 契約関係等の「等」とは、条文に列挙されている売買、雇用、貸借以外の契約関係をいい、具体的には、請負、委任などがこれに当たります。
 交通事故等の「等」とは、条文において示されている交通事故以外の不法行為全般を指し、不法行為とは、民法第七百九条に規定されている、故意または過失により、他人の権利を侵害し、損害を与えることをいい、およそ損害賠償請求の原因となるものすべてを含むものであります。
 最後に、2の濫用禁止規定についての、「迷惑防止条例」改正案には濫用禁止規定がないが、その理由とストーカー規制法や軽犯罪法の濫用禁止規定についてであります。
 本条例の運用に当たり、乱用しないことが当然であるので、あえて規定しなかったものであり、また、警察官職務執行法第一条第二項などにおいて、その旨既に規定されているところでもあります。
 ストーカー規制法や軽犯罪法の乱用禁止規定については、次の表にそれぞれの内容と異なる部分をお示ししております。
 以上で説明を終わらせていただきます。

○三原委員長 説明は終わりました。
 ただいま議題となっております議案中、第百七十八号議案に対し、中嶋義雄委員外十二名から修正案が提出されました。案文はお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

修正案の提出について
第百七十八号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
 右議案に対する修正案を別紙のとおり東京都議会会議規則第六十五条の規定により提出します。
  平成十四年六月二十一日
(提出者)
 中嶋 義雄  いなば真一  三原 將嗣
 宮崎  章  土屋たかゆき 花川与惣太
 清原錬太郎  小山 敏雄  名取 憲彦
 石井 義修  藤井 富雄  大山  均
 田中  良
警察・消防委員長殿

第百七十八号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例に対する修正案
 第百七十八号議案 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例の一部を次のように修正する。
 改正規定を次のように改める。
 第五条の二を加える改正規定、第八条第一項第三号を加える改正規定及び第九条を加える改正規定を削る。
(提案理由)
 つきまとい行為等の禁止について、時間をかけて慎重に検討する必要がある。

○三原委員長 これらを本案とあわせて議題といたします。
 これより要求資料を含め、本案及び第百七十八号議案に対する修正案に対して一括して質疑を行います。
 発言を願います。

○宮崎委員 当委員会に付託されました第百七十八号議案、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例に対する修正案の提出に当たり、意見を申し述べます。
 付託された条例案は、つきまとい行為等及びピンクビラ配布行為等の迷惑行為の規制が提案されています。
 これらの行為は、近年、特に顕著に見られるようになった都民生活を脅かす迷惑行為であり、社会的にも規制の必要性についての論議が高まっているところであります。さらに、これらの行為の規制については、多くの都民の声が寄せられ、これに賛同する強い声が我が党内にもあったことは事実であります。
 特に、尊い人命が失われたことを契機として検討が開始されたつきまとい行為等の規制については、早急に適切な措置を講ずる必要があることは自明の理であります。しかし一方では、都民の自由な活動や表現という基本的人権にかかわるものであり、その規制に当たっては慎重に取り扱わなければなりません。
 都民の日常生活における活動は多種多様であり、それらの中のある種の行為や活動を規制するとしたら、その規制が都民生活の安定と法的信頼をもたらすものでなければなりません。特に、つきまとい行為等については、反社会性とされる対象行為の種類、行為の内容、判断基準や程度などが明確でなければ、都民の正当な行為や活動との区別ができなくなります。つきまとい規制のように、人権にかかわる新たな規制が盛り込まれた場合、真摯な議論を時間をかけて慎重に重ね、よりよいものにしていく必要があるという意見も党内にはあり、都民の人権を擁護する立場、つきまとい行為等の法的規制について十分慎重な検討が必要であると考え、修正案を提出をいたしました。
 なお、今後、提案にあるような売買、貸借や契約関係、また交通事故等の不法行為等関係などの限定された方でつきまとい行為等の同様の事例が頻発し、都民が不安を抱き、都民から規制の要望があったときには、再度、条例の制定を急速に検討すべきであることも申し添え、東京都議会自由民主党の意見といたします。

○田中委員 第百七十八号議案、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例に意見を述べさせていただきます。
 もとより私たち都議会民主党も、迷惑行為を防止し、都民の安寧な生活を確保することは極めて重要なことと考えており、目に余る暴走族の落書きやピンクビラ配布行為等の禁止措置、盗撮行為等に対する罰則強化は時宜にかなったものであると考えています。
 しかし、議案に盛られたつきまとい行為等の禁止規定については、あまりにも対象を広範囲にとらえており、かつ罰則も事前の警告、禁止命令のない直罰規定となっていることに疑義を持たざるを得ないため、同規定並びにこれにかかわる罰則・援助規定を削除する修正案を提案させていただくものであります。
 警視庁におかれましては、つきまとい行為等の禁止規定について今後改めて検討されることと思いますが、各界の意見にも耳を傾け、議会とも事前に十分ご協議をいただき、大方の賛同の得られるものに仕上げていただくよう求めるものでございます。
 また、暴走族やピンクビラであるとの判断については客観的かつ厳密に行われるよう求めるものであります。
 暴走族については、客観的な判断に基づく暴走族名を規則に明示することや、ピンクビラについても指導、教養のみで現場の警察官に判断をゆだねるのではなく、規則に具体的に例示するなど、現場の警察官を支える措置についても検討されるよう求めるものであります。
 以上で、都議会民主党としての意見を終えます。

○石井委員 これより、百七十八号議案に修正案を提出いたしましたが、公明党の立場から修正案提出の意見を開陳いたします。
 今回、いわゆる迷惑防止条例案の中で、落書き行為またピンクビラの配布行為、さらに盗撮行為について、新たに規制を加えることは時宜を得たものと考えております。しかしながら、五条の二、すなわち、つきまとい行為の規制につきましては、時間をかけて検討する必要があるという立場を私たちはとっております。
 それはすなわち、つきまとい行為の規制につきましては、これは墨田区で逆恨みが原因で母子が殺害された事件をきっかけに、この再発防止を目指して条例案が提出されたと聞いております。今回、本条例案の提出は、こうした忌まわしい事故の再発防止を目指して、当局が懸命な努力をされてきたものと思っております。そのことは認識し評価するものであります。
 しかしながら、今回提出をされております条例案は、つきまとい行為の対象が、職場、学校、地域社会、売買、雇用、賃貸関係そして交通事故等の不法行為に起因するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の犯行というふうに定義されておりますが、非常にその間口が広くなっています。そういたしますと、社会生活万般にわたって活動しているマスコミ報道関係、また労働団体、政治運動、社会運動等が規制されることになりかねない、このような懸念も考えられるわけであります。それは、本来この条例が意図したものとは逆の方向に行きかねない、そういう側面を持っております。
 したがって、私たち公明党は、自民党、民主党とも協議をし、そして今後広範な都民の意見も聞いて、条例が求める本来の趣旨に沿うような条例になるように、時間をかけて結論を出すべきであると、このような結論に至りました。
 このようなことで、五条の二及びその関係条例を削除する修正案を提出したところであります。
 以上です。

○秋田委員 私は、迷惑防止条例の改定案の五条の二項について、つまりつきまとい行為の禁止についてお伺いしたいというふうに思います。
 私は都会議員になって二十一年にことしなりますが、この間、ほんの短期間に私たちのところに寄せられた要望書はこんなにたくさんあります。約二百九十六ですから、三百団体ですね。こんなに短期間に集中してこういうものが寄せられたというのは、初めての経験でした。そういうほど大変なものだったんだろうというふうに思いますが、労働組合や、あるいは住民運動団体、法曹界の各界各層の皆さんがここに意見を寄せられております。
 この内容はほとんどが、反対をして廃案にしてもらいたい、そういうものでありました。恐らく各会派の皆さんのところにも行っているんじゃないかというふうに思います。私たちのところへこれだけ来たんですから。
 そういう急速な都民の運動の広がり、そして世論となって押し寄せてきたのはどういうことかといえば、これは、本条例案の改定の内容が、憲法で保障する基本的人権や自由の関係で根本的欠陥、重大な問題点を持っているということをあらわしているんじゃないでしょうか。
 条例改定案の内容を知った多くの都民、団体が、つきまとい行為等を規制するとの名目で、労働組合の解雇撤回や抗議行動、あるいは公害企業に対する面会の要求や電話をかけること、ファクスを送ること、日常的に行っていることが、不安または迷惑を覚えさせる、こういう行為として罰則をされる危険があることを感じたからではないでしょうか。
 こうした世論の高まりの中で、我が党を含め多くの会派が本会議の代表質問でこれを取り上げました。我が党は既にその質問の中で、つきまとい行為等の規制を設ける今回の条例改定案は取り下げるべきだと、こういう態度を表明してまいりましたが、改めてつきまとい行為等の規制を削除、廃案にするという立場から質問をさせていただきたいと思います。
 まず、条例改定案が対象としている範囲についてお伺いをいたしますが、職場、学校、地域社会における関係、売買、雇用、貸借等の契約関係、交通事故等の不法行為関係について、それぞれ具体的にどんなことがあるのかご説明をいただきたい。

○渡邉生活安全部長 まず、職場、学校、地域社会等における関係であります。
 職場、学校、地域社会等、都民が日常生活を送る上で属しております人的な集合体における他者との関係をいいます。具体的には条文に列挙されております職場、学校、地域社会のほか、通勤通学経路、塾、カルチャースクールなどが該当いたします。
 次に、売買、雇用、貸借等の契約関係であります。社会生活における各種契約に関して生じる他者との関係を指しておりまして、具体的には、条文において列挙されております売買、雇用、貸借のほか、請負、委任などが該当いたします。
 次に、交通事故等の不法行為関係でありますが、社会生活における不法行為、すなわち故意または過失により他人の権利や利益を侵害し、損害を与える行為に関して生じる他者との関係をいいます。具体的には、例示の交通事故のほか、不法占拠、債務不履行、医療過誤などがこれに該当いたします。

○秋田委員 つまり、都民生活のすべてにかかわる極めて広い規定となっておりますね。なぜこのように社会的人間関係を網羅するような広い規定としたのか、よくわかるようにお答えをいただきたいと思います。

○渡邉生活安全部長 いわゆるストーカー規制法には、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等を規制対象としておりますが、本条例案の場合には、都民生活の上で生起するつきまとい等につきまして、その原因関係の代表的なものを取り上げて規定した上で、その目的の面から、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的で行われるつきまとい行為等に絞り込んで規制対象としたものであります。

○秋田委員 目的の問題については後でお伺いをしますが、念のために聞いておきますけれども、それでは、政治活動や宗教活動の扱いについてはどうなっているんでしょうか。

○渡邉生活安全部長 この条文案におきましては、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的で行われる行為を規制するものであります。これに該当しないお示しの正当な行為は、本条例の規制対象に含まれることはあり得ないと考えております。

○秋田委員 今の説明によりますと、政治活動や宗教活動に起因するものは、結果としては規制対象ではないけれども、そもそも、条例案の範囲外ではなくて、原因関係の対象に入れている、こういうことになっていますね。全く驚きました。対象の範囲は、社会的人間関係だけでなくて、政治的、宗教的人間関係のトラブルにも及ぶということになってしまいます。
 それでは、専ら特定の者に対するとしているが、ここでいう特定の者には法人、団体、企業を含むのか、会社の社長などの法人の代表者はどういうようになるんでしょうか、お聞かせをいただきます。

○渡邉生活安全部長 ここにいいます特定の者というのは、自然人をいいまして、法人、団体、企業を含むものではありません。
 なお、法人の代表者が該当するかという点につきましては、当該者が自然人であれば、特定の者に当たることはあります。

○秋田委員 つまり、法人や企業、団体は含まないが、会社や団体の代表者は一人しかいないんですね、代表者というのは。だから、自然人、つまり、個人であるということはわかり切っていますね。したがって、会社の社長などは特定の者に該当するということを、今おっしゃったんだと思うんですね。個人的人間関係だけではなくて、会社の社長と労働者の関係も問題になることを意味することになると思います。
 これまでの質疑で明らかになったことですけれども、条例案の規制対象範囲は、あらゆる社会的人間関係を網羅するもので、極めて広いものとなっております。原因関係だけではなくて、処罰対象とされる具体的行為についても、極めて広いものとなっております。
 条例案では、処罰対象として、不安または迷惑を覚えさせるような行為として、つきまとい・待ち伏せ・立ちふさがり・見張り・押しかけ、面会の要求、電話やファクス、文書・図画その他の物品の送付や知り得る状態に置くこと、こういう四項目にして挙げておりますけれども、これらの行為は、その多くが日常的に行われている行為や行動であります。
 しかも、ストーカー規制法では、汚物、動物の死体、その他著しく不快なものを送りつけるとか、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉を害するなど、具体的に限定をしておりますけれども、条例改定案はこれらの限定規定は全くありません。ストーカー規制法より広いものとなっていることも重大だと思います。
 では、立法事実に関して伺いますが、委員会資料要求でも示されておりますけれども、警視庁に寄せられたつきまとい等の相談件数と、ねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的に該当する数、職場、学校、地域社会等における関係、それから売買、雇用、貸借等の契約関係、交通事故等の不法行為関係、それぞれについているこの「等」に関する部分を含めると、どういうふうになりますか。

○渡邉生活安全部長 先ほど総務部長の説明にありましたように、平成十三年中に警視庁に寄せられましたつきまとい等の相談事案のうち、約七百件の中に今回の改正条例案の対象となり得るものが含まれているということになります。
 このうち、悪意の感情を充足する目的でなされたものの該当数につきましては、統計をとっておりませんので、実態が明らかではありませんが、この約七百件の相談事案について調査いたしましたところ、ねたみ、恨み、その他の悪意の感情が背景にあると判断したものは三十八件となっております。
 この三十八件の、起因する関係別の内訳につきましては、「等」に関するものも含めまして、職場、学校、地域社会等における関係が二十四件、売買、雇用、貸借等の契約関係が七件、交通事故等の不法行為関係が七件というふうになっております。
 なお、これらは記録上判断されるものでありまして、実際はこれ以上あるものと推測をしております。
〔発言する者あり〕

○秋田委員 ちょっと黙って聞いてくださいよ。
 資料で示されている「等」を含めても、昨年警視庁に寄せられた相談約七百件のうち、条例改定の対象となるねたみ、恨み、その他の悪意の感情に該当する数は三十八件だった。五・四%という説明でしたね。
 ところで、十八日の代表質問で警視総監は、つきまとい行為については、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的で行われるものに限って規制するとしているので、正当な権利行使に基づく環境保全、景観確保などの市民運動、労働運動や取材活動が規制対象となることは全くない、こういうふうに答弁されました。つまり、規制対象の範囲や行為は極めて広くても、結果として規制が限定されている根拠として、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的に限られることが挙げられております。
 しかし、問題は、この悪意の感情とは、人間の心の中、内心の感情の問題であり、極めて難しい問題だと思います。
 そこで、条例案が違法とされ、規制される悪意の感情を充足する目的について伺います。専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的というのは、どのように判断をなされるのですか。

○渡邉生活安全部長 まず、先ほど三十八件という話を申し上げましたが、これは先ほども申し上げたように、記録上判断されるものの件数でありまして、これ以外にも相当数あるというふうに私どもは推測をしておる、こういうことであります。
 それから、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的につきましては、客観的証拠あるいは関係者からの事情聴取内容等に基づきまして、行為に至った背景、行為の態様、行為の内容、こういったものを明らかにして、これらを総合的に勘案をして適正に判断できるものと考えております。

○秋田委員 三十八件よりちょっと多いだろうと。相当多いというけれども、そんなに倍にも三倍にもなるということじゃないでしょう。ちょっと多いというぐらいの程度でしょう。
 じゃ、そこで聞きますけれども、具体的な事例で、例えば雇用者から不当解雇された者が不当解雇撤回を訴えて抗議行動をした場合、規制の対象になるんでしょうか。

○渡邉生活安全部長 ただいまお尋ねのケースにつきましては、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的とはいえませんので、規制対象外となります。

○秋田委員 悪意の感情について適正に判断するというんですが、怒りの感情を伴う抗議行動は合法、そして、専らねたみ、恨み、その他の悪意の感情を充足する目的と判断すれば違法で規制の対象、こういうことになりますね。
 この条例案の合法、違法の境界線は、人間の内にある内心の感情の問題になってくるわけです。人間の心の中の感情を切り分けて正確に判断することは、だれにもできない問題だろうというふうに思うんですね。ましてや、現場の警察官にその判断をゆだねることはできない。その判断が間違えば、市民の行動や労働運動、マスコミの取材活動など、憲法が保障する国民の権利が侵される危険をはらんでいる。
 このように、一番肝心な合法、違法の判断を、人間の内にいる内心の感情を切り分けなければならない本条例は、法的に根本的に欠陥があるといわざるを得ない。したがって、本条例のつきまとい行為の禁止の条項は削除して、廃案にすべきだと思います。
 最後に、ピンクビラの新たな規制、落書き行為の新たな規制及び条例の乱用禁止規定について、一言申し上げます。
 ビラという表現、宣伝手段を規制するものでありますから、表現の自由、国民の知る権利の保障、そして営業の自由などを侵害するおそれがないか、慎重に検討しなければならないと考えます。
 ビラの定義規定によって、若手の写真家や画家が裸婦を撮影したり、かいたりして、写真展や美術展を行うという、それを印刷した案内のビラ、これを通行人に配布する行為などが除外できるかなど、問題が残ります。
 暴走族の落書きについても、だれが暴走族と認定するのか。また、暴走族の落書きだけを取り締まるという点では、法のもとにおける平等の原則など、慎重に検討する必要があると考えます。
 しかも、迷惑防止条例には、ストーカー規制法や軽犯罪法にある乱用禁止の規定がないことから、冤罪を生む危険も十分に考えられます。
 したがって、我が党は、つきまとい行為の禁止条項を削除する修正案に賛成ですけれども、条例改定案に乱用禁止規定を入れることを求めて、私の質問を終わります。

○三原委員長 ほかに発言はございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び修正案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認め、本案及び修正案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で警視庁関係を終わります。

○三原委員長 これより東京消防庁関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百七十九号議案から第百八十一号議案までを一括して議題といたします。
 本案については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で東京消防庁関係を終わります。

○三原委員長 これより付託議案の審査を行います。
 第百七十七号議案から第百八十一号議案まで及び中嶋義雄委員外十二名から提出の第百七十八号議案に対する修正案を一括して議題といたします。
 本案及び修正案については、既に質疑を終了しております。
 これより採決を行います。
 初めに、第百七十八号議案を採決いたします。
 まず、中嶋義雄委員外十二名から提出された修正案について採決をいたします。
 本修正案のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認めます。よって、修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決した修正部分を除く原案について採決をいたします。
 修正部分を除くその他の部分を原案のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認めます。よって、修正部分を除くその他の部分は原案のとおり決定をいたしました。
 次に、第百七十七号議案及び第百七十九号議案から第百八十一号議案までを一括して採決いたします。
 お諮りいたします。
 本案は、いずれも原案のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認めます。よって、第百七十七号議案及び第百七十九号議案から第百八十一号議案までは、いずれも原案のとおり決定いたしました。
 以上で付託議案の審査を終わります。

○三原委員長 次に、請願陳情及び特定事件についてお諮りいたします。
 本日まで決定を見ていない請願陳情並びにお手元配布の特定事件調査事項につきましては、それぞれ閉会中の継続審査及び調査の申し出をいたしたいと思いますが、これに異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 なお、委員の派遣が必要な場合には、その取り扱いを委員長に一任いただきたいと思います。ご了承を願います。

○三原委員長 この際、両庁を代表いたしまして、野田警視総監から発言を求められておりますので、これを許します。

○野田警視総監 警視庁及び東京消防庁を代表いたしまして、ごあいさつを申し上げます。
 ただいまは、当委員会に付託されておりました両庁関係の各議案について、熱心なご審議の上、それぞれご決定をいただき、まことにありがとうございました。
 両庁を取り巻く現下の情勢は、一段と厳しさを増しておりますが、私どもは、皆様方から賜りました貴重なご意見を今後の業務運営に反映させまして、引き続き首都の治安維持と都民生活の安全確保に最善を尽くしてまいります。
 とりわけ、現在開催中のワールドカップサッカー大会については、安全かつ円滑な運営の確保に向けて、両庁とも全力を挙げて各種対策に取り組んでおり、今後も、本大会に伴う警戒に間隙が生じないように万全を期してまいります。
 委員の皆様方には、今後とも両庁に対する一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、ごあいさつとさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○三原委員長 発言は終わりました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後一時五十二分散会

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