オリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会速記録第四十一号

令和三年二月五日(金曜日)
第十五委員会室
午後一時開議
出席委員 二十三名
委員長小山くにひこ君
副委員長上野 和彦君
副委員長吉原  修君
副委員長伊藤 ゆう君
理事小林 健二君
理事白戸 太朗君
理事両角みのる君
理事あぜ上三和子君
理事山崎 一輝君
栗林のり子君
奥澤 高広君
のがみ純子君
桐山ひとみ君
川松真一朗君
山口  拓君
とや英津子君
池川 友一君
藤井あきら君
滝田やすひこ君
入江のぶこ君
木村 基成君
秋田 一郎君
高島なおき君

欠席委員 なし

出席説明員
オリンピック・パラリンピック準備局局長中村 倫治君
次長理事兼務延與  桂君
次長小池  潔君
次長理事兼務福崎 宏志君
次長総務部長事務取扱佐藤 智秀君
技監荒井 俊之君
理事西村 泰信君
理事中澤 基行君
調整担当部長菅原 雅康君
大会企画調整担当部長中嶋 初史君
自治体調整担当部長小池 和孝君
計画推進部長田中  彰君
運営担当部長末村 智子君
運営調整担当部長三浦 幹雄君
ボランティア担当部長小高 都子君
競技・渉外担当部長川瀬 航司君
事業推進担当部長丸山 雅代君
パラリンピック部長越  秀幸君
大会施設部長鈴木 一幸君
開設準備担当部長利用促進担当部長兼務柏原 弘幸君
選手村担当部長斉藤  有君
輸送担当部長村田 拓也君
スポーツ推進部長鈴木 研二君

本日の会議に付した事件
第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の開催に向けた調査・検討及び必要な活動を行う。
報告事項
・輸送運営計画V2の更新案について(説明・質疑)
・大会経費V5(バージョン五)について(質疑)
・会場周辺交通対策の更新及び練習会場ルート・代替ルートの公表について(質疑)

○小山委員長 ただいまからオリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会を開会いたします。
 これより第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の開催に向けた事項について調査を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、報告事項の聴取を行います。
 初めに、先般の人事異動に伴い、本委員会に出席する幹部職員に異動がありましたので、オリンピック・パラリンピック準備局長から紹介があります。

○中村オリンピック・パラリンピック準備局長 一月一日付の人事異動によりまして、当局の幹部職員に異動がありましたので、ご報告申し上げます。
 担当部長で特命担当の松本祐一でございます。松本は輸送担当部長を兼ねてございます。
 なお、松本につきましては、所用ため、本日の委員会を欠席しております。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○小山委員長 紹介は終わりました。

○小山委員長 次に、理事者から、輸送運営計画V2の更新案についての報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 それでは、私から、輸送運営計画バージョンツーの更新案についてご説明いたします。
 お手元の資料をごらんください。
 1、経緯についてでございます。
 都及び組織委員会は、大会輸送の基本的な考え方や具体的な取り組みなどを取りまとめた輸送運営計画V2を二〇一九年十二月に公表しております。
 本年一月十八日に、国や関係機関などから構成される輸送連絡調整会議を書面で開催し、輸送運営計画V2のうち、東京圏に関する更新案について委員から意見集約を行いました。委員の意見を反映した更新案を一月二十九日に公表いたしました。
 2、輸送運営計画V2の更新案についてでございます。
 (1)、更新の概要につきましては、競技スケジュールの更新、練習会場など延期後に公表された事項への対応なども踏まえ、所要の更新を実施しております。
 なお、昨年四月以降の交通量の状況などから、交通需要マネジメント、いわゆるTDMや、交通システムマネジメント、いわゆるTSMなどで構成する交通対策の考え方、実施方針などはこれまでと同様としております。
 次に、(2)、主な更新事項でございます。
 〔1〕、交通マネジメントの取り組み方針にかかわる事項につきましては、新型コロナウイルス感染症対策調整会議における中間整理に基づきまして、輸送運営上の感染症対策の基本的な考え方を提示しております。
 次のTDM等の広報につきましては、感染状況を踏まえながら、オンラインを活用した企業向け説明会や業界団体などへの働きかけから実施することとしております。
 〔2〕、観客向けアクセシビリティーの取り組みにつきましては、一部の都内会場におきまして、車椅子利用者等向けにUDタクシーなどを活用した事前予約制シャトルを運行することとしております。詳細は今後検討してまいります。
 〔3〕、都庁発注工事の調整に関する取り組み方針の更新につきましては、大会期間中に実施予定の路上工事の抑制対象に、練習会場へのルートや聖火リレーなどを追加しております。今後、業界団体などに説明を行ってまいります。
 〔4〕、会場周辺交通対策の更新、〔5〕、練習会場ルート、代替ルートの設定は記載のとおりでございます。
 ページをおめくりいただきまして、最後に3、今後の予定でございます。
 地方会場を含め、輸送運営計画V2を更新したものを都及び組織委員会のホームページにおきまして、二月中を目途に公表を予定しております。また、今後も必要に応じまして、内容を適宜更新してまいります。
 一枚おめくりください。詳細につきましては、参考資料1として、各章における主な更新内容を、また参考資料2として、輸送運営計画V2の更新案を添付しております。後ほどご参照いただければと存じます。
 説明は以上でございます。

○小山委員長 報告は終わりました。
 それでは、報告事項、輸送運営計画V2、バージョンツーの更新案について外二件に対する質疑を一括して行います。
 本件につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 去る十二月二十三日の当委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明いたします。
 お手元に配布してございますオリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会要求資料をごらんください。
 表紙をおめくりいただき、資料1、経費増減(V4とV5との比較)をごらんください。
 十二月二十三日の当委員会にご報告いたしました資料第1号、大会経費バージョンファイブについての四ページ、経費増減(V4とV5との比較)の主な内容に増減金額をお示ししたものでございます。
 続きまして、一枚おめくりいただき、資料2、経費増減(東京都負担分、V4とV5との比較)をごらんください。
 先ほどの経費増減(V4とV5との比較)と同様に、東京都負担分の主な内容に増減金額をお示ししたものでございます。
 一枚おめくりいただき、経費増減(組織委員会負担分、V4とV5との比較)をごらんください。
 先ほどの東京都負担分と同様に、組織委員会負担分の主な内容に増減金額をお示ししたものでございます。
 続きまして、一枚おめくりいただき、資料3、新型コロナウイルス感染症対策関連をごらんください。
 大会経費V5における新型コロナウイルス感染症対策関連の経費について、項目別に金額をお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。

○小山委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○滝田委員 延期となったオリンピック・パラリンピックまで半年を切りました。未知のウイルスである新型コロナウイルス感染症の流行によって一年の延期となり、さまざまな対応が必要となったことに加えて、先が見通せない中でも、大会の開催に向けて準備を進めている職員の皆様方のご尽力に心より敬意と感謝を申し上げます。
 今後も安全に大会を開催するために、さまざまなことを想定しなければなりません。特に、選手、アスリートの皆様方が安心して競技に打ち込める環境は大会開催の大前提であり、しっかりと準備をするとともに、対策等について丁寧に共有し、不安の払拭にも努めていただきたいと思います。
 まさに一昨日には、詳細なプレーブックが示されました。今後、選手やメディア関係者を対象としたものが作成されていくということでありますが、具体のものが出てきたことで、不確かさが減って、選手が競技開催できる環境にあるのだという安心感につながっていくものと思います。
 さて、我が会派で改めて、大会に出場予定の日本人選手の声も伺いました。引用して紹介をいたします。
 ワクチンについて義務化すべきかどうかといったことや、無観客とすべきではないかといったことなど、さまざまな議論が出ていると承知をしていますが、選手としては、この大会に命をかけています、大会がなくなるリスクや出られなくなるリスクを減らすことができるのなら、それらがどういう形に決まっても、全くもって気にならない、僕は大会で競技がしたい、それが全てですとおっしゃっていました。
 ワクチンを打てというのであれば打つし、選手ができることであれば何でも協力をする、無観客でもよいから、とにかく競技ができる場をつくっていただけるのであれば全力を尽くす、そのような覚悟で選手は取り組んでいるとおっしゃっていました。
 そうした選手、アスリートの声、競技大会にかける思いを受けとめて、私たちは選手、アスリートの皆様方が安心して競技に打ち込める環境を最優先に確保していくべきではないでしょうか。それが大会を開催する土台、大前提ではないでしょうか。
 その上で、今後の国内外の感染状況については、いまだ予測し切れないところでありますから、観客については無観客も含めて、さまざまなシナリオを選択肢として準備すべきです。観客を入れた大会はどのような形であれば安全に実施ができるのか、さまざまな観点から冷静に分析、精査をした上で判断をしていくべきです。
 まず前提となる選手、アスリートの安全についてです。
 大会の開催に当たっては、世界各国から参加する選手、アスリート及び関係者の安全が大前提となります。入国から競技の準備、実施、そして帰国まで、選手等が安心して準備と競技に集中できる環境を確保するべきですが、対策について伺います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会の開催に向けて、アスリートが万全のコンディションでプレーし、大会関係者や観客など全ての方にとって安全・安心な環境が提供できるよう準備を進めていくことが重要でございます。
 そのため、国、都、組織委員会等で構成される調整会議におきまして、出入国管理や入国後の移動、行動ルール、健康管理の徹底などの対策を幅広く議論し、中間整理として取りまとめたところでございます。
 出国前、入国時等に検査を行うほか、入国後も、ホストタウン、選手村、大会への参加等を経て、出国まで、それぞれの場面ごとに用務先や移動方法を限定するなどの行動管理や、各国選手団が選任する衛生管理責任者を通じた健康管理を行うなど、対策の徹底を図ってまいります。
 徹底した感染防止策を行った上でもアスリート等に感染者等が発生した場合、選手村総合診療所内の発熱外来等で迅速に対応するとともに、保健衛生拠点機能と組織委員会感染症対策センターとが連携し、大会に係る感染症対策を一元的に推進してまいります。
 引き続き、国、組織委員会などの関係者と連携し、選手等が安心して準備と競技に集中できる環境の実現を目指してまいります。

○滝田委員 今、概要を答弁いただきましたが、内容についてもう少し詳しくお聞きをいたします。
 出入国時等の検査や行動管理、健康管理などの対策を徹底するということでありましたが、具体的な取り組み内容について伺います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 中間整理では、出入国時の検査として、海外から入国するアスリート等について、出国前七十二時間以内に検査を受けて陰性証明を取得するほか、入国拒否対象国、地域からの入国者には、入国時にも検査を実施することを基本としてございます。
 入国後も、ホストタウン、選手村等を安全・安心な環境とするため、アスリート等に対して定期的な検査を実施することとしてございます。
 行動管理は、移動先と移動手段等を記載した活動計画書や行動計画を遵守する旨の誓約書をアスリート等が提出し、用務先や移動方法を限定することとしております。
 また、入国後の移動は原則として公共交通機関を利用せず、専用車での移動とし、遠隔地等で公共交通機関の利用がやむを得ない場合には、乗客とのフィジカルディスタンスを確保すること等、対策をした上で、限定的に使用を認めることとしております。
 健康管理は、アプリを活用した健康状態の報告をアスリート等に求めるとともに、陽性判明時に陽性登録を行うための接触確認アプリの利用などにより管理していくこととしております。

○滝田委員 具体的な説明をありがとうございました。選手等の皆様にはご不便をおかけするところはありますけれども、検査や健康観察を定期的に実施するということや、行動範囲に制限が設けられるということで、かなり厳しく対応をいただくということがわかりました。
 入国してから国内での準備、競技の実施、そして帰国するまで、健康で最高のパフォーマンスを見られるようにしていただきたいというふうに思います。
 新型コロナウイルス感染症に関する選手や関係者等の安全を確保するための対策に必要な経費として、どのようにV5予算で計上しているのかお伺いしたいと思います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5では、調整会議の中間整理を踏まえ、大会運営における新型コロナウイルス感染症対策関連の経費を計上しております。
 このうち、アスリートや大会関係者に関する対策については、検査体制等の整備として百六十億円、競技運営、選手村における対策として百三億円、飲食提供場所における対策として三十五億円、リモート取材のための環境整備として五十二億円、宿泊施設における対策として百二十五億円などを計上しており、これらの中で対応していくこととなっております。
 いずれも組織委員会において対策を実施し、国と東京都がそれぞれの負担区分に応じて負担することとなっております。

○滝田委員 観客に関するコロナ対策費用との間では明確に切り分けができないという中で、選手、関係者等に対する対策がメーンである項目についてお答えをいただいたというふうに理解をしております。経費の規模感としては、今ご答弁があった合計金額としては五百億円弱であったかというふうに思いますが、こちらの中から選手等に対するコロナ対策をしていくということで、予算で想定をしているということが理解をできました。
 選手、アスリートに関してのコロナ対策の具体的な内容や予算について伺いました。徹底した内容で、予算もしっかりと確保しているというふうに思います。こうした取り組みについて、国内も当然として、国際的にもしっかりと伝えていくことが非常に重要であります。
 開催国、開催都市である我が国、そして東京の感染状況や対策に関して、派遣各国や競技団体との間で選手等の安全が適切に確保されることについて、取り組み内容を示し、意見を取り入れるなど、派遣各国や国際競技団体等の国際的な理解を得られるよう取り組むべきでありますが、見解を伺います。

○川瀬オリンピック・パラリンピック準備局競技・渉外担当部長 東京二〇二〇大会の成功のためには、我が国の新型コロナウイルス感染症対策を、各国のオリンピック及びパラリンピック選手団や国際競技団体などの大会関係者に正しく理解してもらうことが極めて重要であります。
 そのため、都は、国や組織委員会と連携し、新型コロナウイルス感染症対策調整会議で議論を深め、IOC、IPC、大会関係者とも適宜意見を交換しながら、昨年十二月に中間整理を取りまとめ、大会時の新型コロナウイルス対策と今後の工程表を明らかにいたしました。
 また、今月三日には、この中間整理をもとにして、大会期間中の新型コロナウイルス対策に関するルールを定めた競技団体向けのプレーブックの初版が組織委員会、IOC、IPCから公表されたところであります。
 今後も国、組織委員会、IOC、IPCと協力し、大会関係者の理解と安心感を得られるよう、適切な情報提供などに積極的に取り組み、大会を成功に導いてまいります。

○滝田委員 繰り返しとなりますけれども、選手が安全に競技できる環境にあることがまず最優先、土台であります。これらの対策が講じられることについて、都民、国民や各国選手等に対して丁寧に伝え、理解を求めていくことが極めて重要でありますので、今後も折に触れて発信していくよう求めます。
 次に、観客についてです。
 大会の延期に伴う払い戻しの受け付けを昨年末に実施したところであります。組織委員会が公表した数字では、一般向け販売分で、オリンピック約四百四十五万枚のうち約八十一万枚、パラリンピックは約九十七万枚のうち約二十万枚の払い戻しが行われるということです。競技ごとのばらつきがあると思われますが、国内一般向け販売数の二割程度に当たります。
 国内一般向けの販売以外には、いずれも枚数は非公表でありますけれども、海外販売やスポンサー席などもあることから、観客総数からの減少はさらに限定的で、恐らく一割から二割の間程度であろうというふうに思われます。
 一方、観客について、上限なし、五〇%観客あり、無観客の三段階のシナリオを検討しているとの報道も先日ありました。
 その三段階とは別としまして、国内外の感染状況を見きわめながら、無観客も含め、さまざまなシナリオを考えて進めていくことは当然必要なことであると考えます。観客について、観客数の上限に加えて、国外からの観客を受け入れるかどうかも重要な論点でありますが、国内外の感染状況が見えない中で、今後どのように対応していくのか伺います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 観客数の上限につきましては、中間整理において、国内外の感染状況やスポーツイベントの開催状況等も踏まえ、国内の上限規制に準じて、この春までに最終的に決定することとしてございます。
 また、外国人観客の取り扱いについては、観客の安全と地域の安全の両立を図っていくことが重要であり、各国の感染状況等を踏まえ、適切な防疫措置等を講じることとし、今春までに具体的措置の内容を決定することとしております。
 観客の安全を確保するため、現在、中間整理に示した工程表に沿って、競技会場等における感染防止策の徹底や、観客に健康管理を求めるなどの対策につきまして、国、組織委員会等と連携し検討を進めており、今春の観客の取り扱いに係る決定を踏まえて精査してまいります。

○滝田委員 今春、この春までに観客数の上限や外国人観客の取り扱いなどについて、具体的な措置内容とあわせて決定をしていくということでありました。そうした状況の中で、観客の安全を守り、感染拡大を予防する対策について必要な経費として、どのようにV5予算で計上されているか伺います。あわせて、観客数の上限により対策費用がどの程度変わってくるか見解を伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5では、検温、消毒、誘導などの対策として二百四十七億円、コロナ対策に関する表示等として二十二億円、コロナ対策物品等として百三十八億円などを計上しており、観客に関する対策については、これらの中で対応していくこととなっております。いずれも組織委員会において対策を実施し、国と東京都が負担することとなっております。
 観客数の上限については、調整会議における中間整理において、国内外の感染状況等を踏まえ、国内の上限規制に準じることを基本として、最終的な決定は今春までに行うこととしております。
 大会経費V5をもとにして、関係者と連携し、経費削減や収入確保などの努力を行うとともに、コロナ対策の具体化を図り、安全・安心な大会の実現に向けて取り組んでまいります。

○滝田委員 観客数の変化によってどの程度費用が変わってくるのかということは、これから春に向けて、さまざま決定されてくる中で見えてくるということというふうに理解をいたしました。
 観客数の変更によりチケット収入に減少等が起こりますが、V5予算において、観客数はどのような想定で収入に反映されているのか、また昨年末にチケットの払い戻しが行われましたが、その取り扱いはどうなっているのかお伺いをいたします。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 観客の取り扱いは、この春までに決定されることとなっておりまして、払い戻されたチケットの取り扱いにつきましても、組織委員会は今後具体的な対応を検討するとしております。このため、V5予算のチケット売り上げにつきましては、V4と同額の九百億円が計上されております。

○滝田委員 V5予算のチケット収入九百億円には、昨年末の払い戻し分は反映されていないベースであるということが確認をできました。さまざまなシナリオがあり得ると思いますが、仮に観客数に上限を設ける場合には、販売が既に決まっているチケットに対して、実際に来場できる観客数まで絞り込みを行わなければなりません。公平で透明な対応を求めたいというふうに思います。
 さて、顔が見えている選手、関係者に向けての対策と異なり、不特定多数となる観客に向けての対策においては、実効性を高めることも課題となります。安全・安心な大会に向けて、観客に対する対策を具体化し、実効性を担保していくことが必要でありますが、今後どのように対応していくのかお伺いをいたします。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 中間整理を踏まえ、観客の安全と地域の安全との両立を図る観点から、観客に守っていただくルールについてガイドラインを定め、SNS等を活用し、会場来場前から周知を図ってまいります。
 会場内では、大型ビジョンや場内アナウンス等でルールを呼びかける等、基本的な感染防止策の徹底を図ってまいります。その上で、再三の注意にもかかわらず聞き入れられない場合には、入場拒否、退場措置も含めた対応を検討しているところでございます。
 また、入場時の体調チェックなど、体調が悪い観客は入場を控えていただく仕組みや、健康観察のアプリ等の導入を初めとした具体的な措置につきまして、感染症の専門的知見も踏まえ、国、組織委員会等と連携し、検討を進めてまいります。
 外国人観客につきましては、入国前後の検査、健康管理や、入国後の行動管理等の遵守について誓約書で確認することなど、実効性の担保方法等につきまして検討を進めてまいります。

○滝田委員 実効性の担保ということは非常に重要でございますので、引き続き、国の方とも連携しながら検討を深めていただきたいと思います。
 先ほどの答弁の前半は、観客全般について、会場や会場周辺における取り組みをお答えいただいたというふうに理解をいたしました。また、後半は、外国人観客についての措置についてお答えをいただいたものというふうに思います。
 それらに加えて、国内の観客に関して、国内の往来が相当数発生することに対しても、感染拡大につながらないよう対策が必要ではないでしょうか。
 検査、ワクチン、アプリなども含めて、どのように対策強化をするのか、これは国が広域的に取り組む必要もありまして、国に対しても検討を要請するように求めておきます。
 新型コロナウイルス調整会議において、十二月に示された中間整理では、今後の対応課題とされたものもありますが、どのような課題が残されているのか伺います。特に、都内の医療資源も使用することになる中で、保健衛生、入院、療養体制の確保について方針を伺います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 中間整理における今後対応すべき課題といたしましては、アスリート等に係る検査、入院、宿泊療養体制の確保、組織委員会感染症対策センターと保健衛生の拠点機能等の具体化などがございます。
 お尋ねの保健衛生につきましては、選手村などアスリート等の滞在が集中する地域の行政上の保健衛生機能を強化するため、保健衛生の拠点機能を構築し、アスリート等の健康観察、入院、搬送調整、濃厚接触者の特定などの疫学調査を適切、円滑に実施いたします。
 入院、療養体制に関しましては、大会指定病院等における患者の受け入れについて、組織委員会とともに、東京都医師会、救急、感染症医療の専門家等からも意見を聞きながら、感染状況や地域医療への影響等を踏まえ、調整を進めております。
 軽症、無症状者の宿泊療養先につきましても、福祉保健局、組織委員会と連携し、感染状況を踏まえ、確保に向けて調整してございます。
 今後とも、関係機関の協力を得ながら、安全・安心な大会に向けた準備を着実に進めてまいります。

○滝田委員 選手、関係者等や観客の保健衛生は非常に重要であるということはいうまでもありません。しっかりと拠点を整備して、大会に関する保健衛生、入院、療養体制について対応する必要があります。
 選手、アスリートだけで約一・五万人、その他関係者やボランティア、観客はさらに数百万人規模となり、これらに対応するための医療拠点や資材など、さまざま必要となりますが、何よりも逼迫する可能性があるのが医師、看護師であり、そもそも当初から大会に必要と想定していたものに加えて、どの程度の規模で必要となるのか見解を伺います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会時に必要な保健医療体制の検討に当たりましては、国、組織委員会とともに、関係機関、医療の専門家等からも意見を聞きながら調整を進め、昨年十二月に中間整理として取りまとめました。
 競技会場における医療体制につきましては、福祉保健局が策定した大規模イベントにおける医療・救護計画ガイドラインにおきまして、会場ごとに、収容人員一万人当たり観客用救護所を一カ所設置し、医師二名、看護師四名を基本に、会場規模に応じ、適宜増員して配置することとしております。本ガイドラインに基づき、組織委員会が観客用医務室を設置し、医師、看護師を配置いたします。
 また、組織委員会が各会場に選手用医務室を原則一カ所設置し、選手村には選手等を対象とした総合診療所を設置し、業務の効率化を図りながら、コロナ対応に必要な体制を整えるため、発熱外来などを設置いたします。
 ラストマイルの医療、救護体制につきましては、観客利用想定駅から各会場までの距離、観客数、ルート周囲の環境等、会場ごとに状況を勘案し、コロナの感染状況も踏まえ、医師、看護師などの配置を都が検討しております。
 こうした大会運営に係るコロナ対策に必要な医療スタッフの確保につきましては、組織委員会とともに、東京都医師会、救急、感染症医療の専門家等からもご意見を伺いながら、感染状況や地域医療への影響等を踏まえ、調整を進めております。

○滝田委員 都内の新型コロナ対応、そして通常の医療提供をしながら大会に対応しなければなりません。都内の医療資源だけでは到底十分ではなく、国による広域的な確保や調整が必要です。医師会や専門家の皆様のご意見を聞きながら、しっかりと国や他県などとも連携して対応することを求めます。
 次に、会場関係、大会関係の経費について聞いていきます。
 会場関係、大会関係に関するV4予算からV5予算への経費増減は、延期に伴う費用増加と大会の簡素化にかかわる経費削減効果を反映したものと理解しておりますが、主要な経費の増減について概要を伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5につきましては、大会の簡素化の成果や既存契約の見直し等を踏まえ、組織委員会において延期に伴う追加経費を算出してきたところでございます。
 大会の簡素化では、おおよそ三百億円の経費削減を図っており、その主な内容は、会場における仮設オーバーレイの仕様の見直し及びサービスレベルの引き下げ等で百五十億円、競技会場、選手村等のルックの削減で十億円、聖火リレーの実施方法の簡素化で八億円、大会関係者の人数の調整で十億円、組織委員会スタッフの要員計画の最適化で三十億円となっております。これらにより都の負担は六十億円の減となっております。
 一方で、延期に伴い増加する経費がございまして、可能な限り経費の抑制が図れるよう、既存契約の見直し等を行った結果として、V5はV4と比べ、競技会場等における仮設オーバーレイのリース、レンタル、一時撤去、再設置など、会場関係で一千五十億円の増、輸送スタッフ支援等や、会場、競技運営、競技用備品の保管、人件費など、大会関係で一千三十億円の増となっております。

○滝田委員 大会の簡素化に伴う経費の削減について詳細をご説明いただきました。また、一年延期に伴って必要となったのは、仮設等の再設置や、会場や人員を延長するなどにかかる見込みのものというものが計上されているというふうに理解をいたしました。
 収入の増減について、増収見込み額七百六十億円の内訳を確認するとともに、百五十億円となっている収支調整額の取り扱いについて伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5では、組織委員会が可能な限りの増収努力を行い、V4からの追加収入として七百六十億円の増収見込みを計上しております。
 その内訳は、興行中止保険による保険収入が五百億円、国内スポンサーからの追加協賛金が二百二十億円、その他ライセンシング収入などで四十億円となっております。
 また、組織委員会の負担のうち、同委員会の経費削減努力や増収努力によっても賄い切れない費用について都が負担する収支調整額を計上しております。これにつきましては、組織委員会が経費削減や収入確保について、今後も可能な限りの努力を行っていくことが必要でございます。
 都がその取り組みを確認していくため、組織委員会のキャッシュ・フローについて継続的に確認するとともに、収入、支出両面における月次での確認をより厳密に行っていく仕組みを検討してまいります。

○滝田委員 組織委員会の収支不足額について東京都が負担するという形になっていることに関しては、かねてより我が会派では懸念を示してまいりました。延期に伴う経費分担の合意形成において、大会の延期という異例の事態があったことから、都の負担やむなしと判断したことについては理解をいたします。
 一方、今回のV5予算で既に組織委員会の収支が不足する見込みとなったわけであります。今後さらなる東京都負担、都民負担が増大していかないように、経費の管理を徹底することが必要です。
 また、観客数を絞り込むこととなった場合における、さらなる収入減少については、関係者間で適切な負担となるよう協議されることを求めます。
 延期に伴う会場関係、大会関係の経費の増額について、その中身の個々の事業はもちろんのこと、また特にコロナ感染症対策については、V5予算の策定段階において、対応が定まっていないところも多く、今後精緻化していく必要があります。
 我が会派ではこれまでも、予算の計上金額が粗く、経費の管理が緩くなりはしないのか、懸念を指摘し、事業の一件一件を都としてしっかりと見て、適切な支出の管理をしていくべきであると、この特別委員会の中でも強く申し上げてまいりました。そして、その成果の一つとして、共同実施事業管理委員会におけるチェック機能が強化されてきたと理解をしております。
 共同実施事業管理委員会及びその中の東京都作業部会など、各種経費を管理していくための仕組みについて取り組み状況を伺うとともに、延期に伴う費用やコロナ対策費用などのV5で新たに計上された追加費用等に対して、どのように取り組んでいくのか伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 共同実施事業につきましては、東京都と国の資金を使用して組織委員会が事業を行うことから、これを適切に執行し管理することにより、コスト管理と執行統制の強化を図ることを目的として、東京都、国、組織委員会の三者により共同実施事業管理委員会を設置しております。この委員会のもとに東京都作業部会とパラリンピック作業部会を設置し、これまで東京都作業部会は七十八回、パラリンピック作業部会は十回実施し、個々の案件について経費の精査と確認を行っております。
 今回の追加経費のうち、延期に伴う経費につきましては、引き続き、東京都作業部会とパラリンピック作業部会で経費の精査と確認を行うとともに、新型コロナウイルス対策関連の経費につきましては、新たに作業部会を設置し、経費の精査と確認を行ってまいります。

○滝田委員 非常に地道な取り組みではありますが、都民、国民の負担のもとで実施をする大会でありますので、経費の精査、削減の徹底については最後まで緩めずに対応していただくように求めておきます。
 最後のテーマになりますが、輸送運営計画V2の改定についても幾つか伺います。
 輸送運営計画V2の更新案の中で主な改定箇所は何か、そのうち特にコロナ対策としてはどのように考えているのかお伺いをいたします。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 先日公表した輸送運営計画バージョンツーの更新案では、延期後の競技スケジュールや練習会場の公表などを受け、所要の更新を実施いたしました。
 主な更新箇所といたしましては、会場周辺交通対策における通行規制エリアの制限緩和、練習会場ルート、代替ルートの新たな設定とこれに伴う都庁発注工事の調整対象路線の見直し、また車椅子使用者向けアクセシブルシャトルの具体的な運用方法などでございます。
 新型コロナウイルス感染症対策といたしましては、組織委員会が移動時の感染リスクの最小化を図り、安全で安心な大会を支える輸送サービスを提供することとし、新型コロナウイルス感染症対策調整会議での検討などを踏まえまして、輸送運営上の感染症対策を検討することとしております。

○滝田委員 更新案では、大会の延期決定に伴い必要な更新を行うとともに、検討の進捗のあったものについても記載がされていると理解をいたしました。特に我が会派ではこれまで、車椅子利用者等も含め、観客の誰もが会場にアクセスしやすい取り組みを行うべきと求めてまいりました。
 そこで、観客のアクセシビリティーの改善として、特にアクセシブルシャトルの取り組み内容と今後の予定をお伺いします。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 アクセシブルシャトルにつきましては、最寄り駅から会場までのアクセシブルルート上においてエレベーターの混雑が見込まれるなど、一定の条件に該当する会場で、主に車椅子を使用する観客の方を対象に運行することとしております。利用者一人一人のニーズに即したサービスの提供に向け、主にUDタクシーや福祉タクシーを使用し、観客が利用しやすいよう、確実に乗車できる事前予約制とすることを予定しております。
 今後、交通管理者などの関係者と運行ルートや乗降場等の調整を進め、アクセシブルシャトルの運行について具体化を図り、観客への周知を行ってまいります。

○滝田委員 また、輸送運営計画においては、TDM、交通需要マネジメントの取り組みが重要でありまして、これまで我が会派の質疑でも重ねて取り上げてまいりました。今般のコロナの影響によりまして、テレワークや時差出勤などの多様な働き方について、都民、事業者の蓄積が進んでまいりましたが、改めて大会期間中の協力を中小企業等も含めて促し、レガシーとして、テレワークや時差出勤のさらなる定着や、TDM、交通需要マネジメントの社会実装につなげていくべきですが、見解を伺います。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 都は、円滑な大会輸送と経済活動の両立を図るため、これまでもテレワークや時差出勤などの取り組みを含む交通需要マネジメント、いわゆるTDMにつきまして、企業や業界団体にご協力いただけるよう、五百回を超える説明会や個別コンサルティングなどを実施してまいりました。
 また、企業との連携を深め、取り組みを促していく二〇二〇TDM推進プロジェクトには、一月末時点で五万を超える団体、企業に参加いただいているほか、中小企業や商店街に向け、主に物流面での対策を呼びかける物流TDM実行協議会では、専門家による個別コンサルティングを実施するなど、きめ細かく対応しております。
 今後もオンライン説明会やメールマガジンなどの活用により、企業に向けて情報提供を丁寧に実施していくとともに、広く都民向けにも広報を行っていくなど、関係各局とも連携しながら、感染症対策にも有効なテレワークや時差出勤などの取り組みがより一層社会に定着していくよう取り組んでまいります。

○滝田委員 最後に、大会の開催に向けて、選手、アスリートの安全を確保し、競技に集中できる環境を全力で整えるとともに、観客の安全を守り、感染拡大につなげないことは最も重要でありますが、選手、アスリート、大会関係者やボランティア、そして観客の健康、安全を守り抜く決意を改めて局長にお伺いいたします。

○中村オリンピック・パラリンピック準備局長 新型コロナウイルス感染症という困難な状況において、延期となった大会を成功に導くためには、都は、選手、大会関係者、観客、あるいは都民といった全ての方々にとりまして安全・安心な環境を提供することを最優先に準備を進めております。
 しかしながら、新型コロナ対策は東京都のみで行えるものではありません。このため、国のイニシアチブのもとに、組織委員会、JOC、JPC等で構成いたします調整会議において、出入国ですとか、輸送、競技会場など、それぞれの行動の場面に応じた感染防止策や、大会時の保健医療対策等を幅広く議論し、工程表とあわせて中間整理として取りまとめたところでございます。
 現在、この工程表に沿いまして、医療、感染症の専門家ですとか、区市町村、各事業者、関係団体等とも緊密に連携しながら対策の具体化を進めております。
 現在、都では、感染防止を食いとめるために全庁挙げて、現下の新型コロナウイルス対策に全力を尽くしているところでございます。当局におきましても、療養施設の運営ですとか、あるいは保健所のサポートですとか、給付金の事務ですとか、さまざまな分野で組織委員会とともに積極的に協力を行っているところです。こういった実績につきましては、私も直接報告を受けているところでございますが、現場の困難さとともに、大会運営にとってもプラスになるものと、こういう形で報告を受けているところでございます。
 いずれにいたしましても、引き続き、国、組織委員会等関係者と連携しまして、選手、大会関係者、あるいは観客、都民など全ての方々にとって安全・安心な大会の実現に向けまして、着実に準備を進めてまいります。

○滝田委員 局長からのしっかりとした力強い決意の答弁をいただきました。何としても選手、アスリート、大会関係者やボランティア、そして観客の健康、安全を守り抜き、大会を開催できるよう、あらゆる手段を尽くしていただきたいと思います。
 さて、最後に一言申し上げます。
 コロナ禍における東京二〇二〇大会の成功のためには、都民、国民の皆様の理解と共感を得ることが必要不可欠です。そのような中、組織委員会のトップである森会長が、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかるなど、女性蔑視と受け取られても仕方のないご発言をされたことは極めて深刻な問題です。
 森会長はご発言を撤回されましたが、その記者会見の場でも、質問する記者に対して、おもしろおかしくしたいのではないかというご発言をされるなど、真摯に反省されているのか疑問の声も上がっております。
 オリンピック憲章には、全ての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければいけない、このオリンピック憲章の定める権利及び自由は人種、肌の色、性別などの理由による、いかなる種類の差別も受けることはなく、確実に享受されなければならないと規定をされています。
 森会長のご発言がこのようなオリンピック憲章の趣旨に反することは明確であり、世界に広く発信されてしまったことは、日本、東京の国際的信用を失墜させ、東京二〇二〇大会の成功に極めて大きな支障を来すものです。現に、開催都市である東京都に対しても、既に多くの抗議の声が寄せられており、大会ボランティアの辞退の申し出もあると聞いております。
 世界経済フォーラムの公表するジェンダーギャップ指数では、日本は百五十三カ国中で百二十一位と世界最低水準となっています。私たち都民ファーストの会東京都議団は所属議員の約三割が女性でありますが、内部の議論で時間がかかるという事実はなく、多様な意見が政策議論の質の向上に寄与をしています。
 改めて、都から組織委員会に対し、オリンピック憲章の趣旨を組織委員会の内部で徹底することを強く求めるべきです。
 あわせて、コロナ禍の中での都民、国民の理解と共感を得られる大会の成功のため、森会長のトップとしての適格性を含め、現在の体制が本当に最適であるのか、組織委員会に対して東京都からも真摯な自己検証を求めるべきと強く指摘をして、質問を終わります。

○川松委員 まず、更新されました大会輸送計画V2について伺います。
 東京二〇二〇大会の喫緊の課題はコロナ対策であります。安全・安心な大会の開催を目指し、万全の体制を確保する必要がございます。
 その上で、大会開催のために重要な課題は輸送です。従来から指摘しているとおり、大会期間中の関係者の安全で円滑な輸送と、物流を含めた都市活動の安定との両立を図らなければなりません。
 今回、大会延期を踏まえて、二〇一九年の十二月に公表されました輸送運営計画V2が更新されたということでございました。大会時の関係者輸送を円滑に行うためには、TDM、ロードプライシング、TSMなどの交通対策が重要であります。コロナ禍での交通状況変化の動き等も踏まえ、これらについて、今回更新されたバージョンではどのような取り扱いとなっているのか伺います。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 都と組織委員会では、学識経験者の意見も伺いながら、昨年の交通状況の分析と今夏の見通しについて検討してまいりました。
 鉄道利用者は、テレワークの実施によるラッシュ時の利用者の減少などにより、例年の約七割程度で推移しております。
 また、道路交通では、タクシーや大型車が減少する一方で乗用車が増加し、休日に渋滞が発生するなど、既に例年と同程度の交通量が発生しております。
 物流については、企業向け物流がやや減少する一方で、家庭向け宅配の取扱量が増加している中、宅配時の再配達が減少するなど、効率化も進んでおります。
 こうした状況ではございますが、この夏に向けては円滑な大会輸送を確実に行うため、例年並みの交通量にも対応できるよう準備を進めることとしました。
 このため、公共交通を含めた交通需要マネジメント、いわゆるTDMや首都高の料金施策、交通システムマネジメント、いわゆるTSM等で構成する交通マネジメントの考え方は、これまでと同様といたしました。

○川松委員 ありがとうございます。つまり基本的には、従前の計画の考え方、実施方針を踏襲するということと認識いたしました。しかしながら、今後もコロナの状況、あるいは経済環境によって、交通の状況というのは変化していきます。
 東京都においては、状況の変化に応じた柔軟な対応を実施できるよう準備を進めていただきたいと思います。
 また、報告では、今回新たに練習会場ルートと代替ルートが設定されてございます。現在も都内の幹線道路を通行していますと、TOKYO二〇二〇と書かれたピンク色の看板が目に入ってくるわけでありますが、これによって、大会時に選手等が移動で使用する道路なんだということ、つまりこれが大会ルートまたは練習会場ルートだということはわかるんですけれども、では、今回新たに設定された代替ルートというのは、その言葉だけではどのような性格のものなのかよくわかりません。改めて代替ルートについて詳しく教えていただきたいと思います。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 これまで輸送運営計画バージョンツーでは、選手村と主に競技会場を結び、選手や大会関係者が利用する大会ルートを設定しておりました。これに加え、今回、更新案において、大会ルート上で事故などが発生し、競技会場までの輸送に遅延が想定される場合などに限って、迂回利用するルートとして代替ルートを設定いたしました。
 代替ルートにおいては原則として専用レーンや優先レーンなどの交通規制は行いませんが、該当する路線に看板を設置し、周知することとしております。

○川松委員 今のご答弁で、代替ルートは予定されていた大会ルートが使えないときに使用する暫定的なものである、原則として交通規制は行われないということでございました。
 そうすると実際に運用される機会は少ないんじゃないかなと考えられますが、大会ルート、代替ルートなどさまざまなルートがありますけれども、いずれにしても、そのルートがかかっている自治体の住民にとっては違いがわかりにくいかもしれません。交通規制がたくさんかけられて生活に支障が出るといわれることのないよう、それぞれの意味合いや規制の内容について丁寧に説明をすべきだと考えますけれども、対応はどうなっているのか伺います。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 これまでも大会ルートの設定に当たっては、業界団体や個別の企業のほか、特に競技会場周辺では地元の町会などに丁寧に説明し、理解を求めてまいりました。
 今後も大会ルートに加え、代替ルートや練習会場ルートなどについて、それぞれの意味合いや運用方法の違いについて説明し、業界団体や企業に協力が得られるよう理解を求めてまいります。また、地元に対しましても、区市と連携しながら丁寧に説明をしてまいります。

○川松委員 大変重要な点でありまして、大会成功のために、都民、事業者の皆様に輸送への理解、ご協力をいただくことが不可欠であります。ぜひ丁寧な対応を引き続きやっていっていただきたいということを要望しておきます。
 また、この大会ルートに加えて、練習会場ルートと代替ルートなどが設定されたことに伴って、都庁発注工事の取り組み方針も更新されました。今後、国やほかの自治体、民間発注の工事などにも、都庁発注工事と同様の措置を呼びかけると聞いてはいますけれども、今後、関係する建設業団体などの事業者に対して、どのように理解と協力を求めていくのか伺います。

○村田オリンピック・パラリンピック準備局輸送担当部長 工事調整は、工事に伴う車線規制などによる交通混雑を最小限に抑えるため、年間発注量を減らすことなく、発注時期の調整や工事車両の削減などをお願いしていくものであり、工事等に関連する事業者などのご協力が不可欠でございます。
 都や国、他の自治体発注の工事のみならず、区部を中心とした民間工事による車両の往来につきましても、交通への影響があることから、これまでも建設業団体を初め、不動産、建設資材などの業界団体にも広く協力を呼びかけてまいりました。
 引き続き、国や関係自治体、関係各局と連携し、工事にかかわる団体、事業者などに、オンラインによる説明会や建築確認時の周知を通じて、大会輸送に関する情報提供と工事調整に係る更新内容など具体的な説明を行い、協力を呼びかけてまいります。

○川松委員 延期の決定前のことでありますけれども、我が会派では各業界団体の皆様に集まっていただいて、大会への協力のお願いとあわせて、輸送であったり、工事の調整について情報提供をさせていただいたわけでありました。
 現在、多くの業界団体から大会に向けて粛々と準備を進めていると聞いていますけれども、活動への影響の大きい輸送の動きについては情報提供を求められています。都には、さまざまな工夫や対策をしながら、こうした団体向けの情報提供を迅速かつ丁寧に行っていただきたいということを要望しておきます。
 それでは、次に、大会経費V5について質問いたします。
 本経費は昨年末に公表されたわけですが、延期に伴う経費や新型コロナ対策などの追加経費も含めて、都と国、組織委員会の三者で協議し、大きな混乱なく整理されました。これは関係者が大会の重要性を十分認識されるとともに、どうにか成功させたいという共通の思いのもとで取り組まれた成果にほかなりません。理事者の方々の努力を改めて評価したいと思います。
 そこで、この大会経費V5は、延期に伴う追加経費やコロナへの対応などさまざまな課題を踏まえて策定されたものですが、まず最初に、V5の経費を東京都としてはどう位置づけているのか、その認識を伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 未知の感染症により、直前になって大会が延期されるという状況におきまして、追加で必要となる経費や、新型コロナウイルス感染症への対応など、さまざまな困難な課題がございました。大会の準備を再度進めていくためには、IOC、組織委員会、国、東京都などの関係者が緊密に連携し、協力しながら課題に取り組んでいく必要がございました。
 そうした中、大会経費につきましては、IOCなどの協力を得ながら、全ての大会関係者とともに大会の簡素化に取り組み、経費の抑制、削減につなげてまいりました。
 また、新型コロナウイルス感染症対策につきましては、国のイニシアチブのもとに設置した調整会議において、専門家の助言をいただきながら、国内の関係者が幅広く議論を行い、中間整理を取りまとめいたしました。
 昨年十二月四日の追加負担についての合意は、こうした取り組みがあって、組織委員会、国、東京都がそれぞれの役割を果たしながら、一体となって取り組む必要があるという基本的な考え方を共有した上で合意したものでございまして、大会経費V5は、その合意に沿った形で策定されたものでございます。
 今後とも、関係者が一体となって、安全・安心な大会の実現に向けて準備を進めてまいります。

○川松委員 延期決定後のさまざまな動きを反映するとともに、新型コロナ対策に万全を期すという目的を踏まえて策定されたというものでございますね。
 大会成功のためには安全・安心の確保が最優先となります。この大会におけるコロナ対策については、国主導のもと、去年十二月に中間整理が公表されました。先日の本委員会で会派から指摘しましたが、中間整理は対策を進めていくための起点、スタートラインです。さきに示された工程表をもとに、関係者と一体となって、内容の具体化と進行管理を着実に行っていただくよう求めておきます。
 現在、東京都は緊急事態宣言下にあり、期間も延長されることとなりました。このような現状を踏まえ、大会時のコロナ対応のため、都内の病床や医療関係者がさらに不足するのではないか、あるいは大会が優先され、都民含め、首都圏の医療体制が悪化するのではないかという不安の声が多数寄せられております。
 さきの委員会において、アスリートへの対応については感染症対策センターと選手村総合診療所、そして保健衛生の機能拠点が設置され、これらが連携して対策を講じるという説明がございましたが、いま一度、これら大会時に必要な医療体制を構築するためには、関係する、既に皆さん方も動いてきたと思いますけれども、都内の医療機関や医師会等の関係の施設、あるいは関係各者の皆様の理解、協力を得ながら進めなければ、この体制をつくっていけないわけでありますけれども、現状において、都として医療体制、コロナ対策をしながら、あるいはコロナ以外の皆様の対策をしながら、そしてオリンピックの対策の医療体制をどう進めていくかというオペレーションについて、どう調整を進めているのか伺います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会時に必要な保健医療体制の検討に当たりましては、国、組織委員会とともに、関係機関、医療の専門家等からもご意見を伺いながら調整を進め、昨年十二月に中間整理として取りまとめたところでございます。
 アスリート等の健康観察、入院、搬送調整、疫学調査の実施のため構築する保健衛生拠点につきましては、人員、施設の確保、関係機関との連携体制の構築等につきまして、福祉保健局、組織委員会、保健所等と調整を進めております。
 選手村総合診療所、会場内医務室、ラストマイル等における医療体制の確保に当たりましては、救急、感染症医療の専門家等からのご意見も伺いながら、感染状況や地域医療への影響等を踏まえまして、東京都医師会、各医療機関等と調整を進めております。
 今後とも、地域の状況を踏まえながら、各医療機関等に丁寧に調整を行い、安全・安心な大会に向けた準備を着実に進めてまいります。

○川松委員 我が会派では、去年の十月八日のことですけれども、大会期間中の選手への対応のために、地域の保健機能に影響が出ないよう、専用の保健所機能の設置強化を求めておりまして、中間整理にもその旨が盛り込まれています。
 今、部長から答弁いただいたように、関係各機関との調整を進められているということでありますけれども、私の認識では、今話が出た福祉保健局自体は、もう目の前のこのコロナのことに常に日々追われていて、現時点でも福祉保健局内が大混乱しているときに、どういうふうにオリンピック・パラリンピック準備局がかかわっていくのか。
 要は、まち場の医療機関の負担をふやさないということも大切ですけれども、福祉保健局は福祉保健局で今走り出している一つのこのコロナ対策の路線をあんまり刺激すると、実は皆さん方の調整のために福祉保健局がさらにパニックに陥る可能性もあるので、ここは本当に皆さん方主導でこの医療体制をつくっていくと。特にオリンピック・パラリンピック準備局の皆さんは、東京都医師会とも、福祉保健局とは別のラインでも調整されているでしょうから、こちらはこちらで体制をつくっていくんだという気持ちも含めながら、この体制を進めていっていただきたいと思います。
 これは大会に必要な医療体制の確保ということで当然の話ですし、それと同時に、今ちょっとお話しした十月に我々が提案しているような、地域医療に影響を及ぼさない、つまり都民の皆様、あるいは首都圏の皆様の救える命を救えなくなるようなことに絶対陥らないように、慎重に、かつ大胆にスピーディーに調整を進めていっていただきたい、関係者と丁寧に調整をしていただきたいということをお願いいたします。
 こういった新型コロナ対策に関する経費として、大会経費V5では新たに新型コロナウイルス感染症対策関連として、都と国で九百六十億円を計上されています。そのうち東京都は四百億円、国が五百六十億円となっていて、国の負担が多くなっているんですが、これはどのような考え方によるものなのか。国が負担する事業にはどういったものがあるのか詳しく教えていただきたいと思います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5における新型コロナウイルス感染症対策関連の経費につきましては、東京都及び国がそれぞれ二分の一相当額を負担することを基本としております。
 ただし、アスリート等に係る検査体制の整備や、組織委員会が設置する感染症対策センターなどに要する経費につきましては、国が実施する水際対策と同様、大会の感染症対策の中心的機能を果たすことから、国が全額を負担することとなっております。この結果、全体の九百六十億円のうち、国の負担が五百六十億円、都の負担が四百億円となっております。

○川松委員 ありがとうございます。国においては、この国難といえる情勢を踏まえて、新型コロナウイルス感染症対策の中心的機能については、その役割、責任を果たすということが今わかりました。組織委員会においても、IOCとの交渉などにより不断の見直しを行い、三百億円の経費増を圧縮したことは承知しております。また、スポンサーとの協議により増収を図るなど収入努力を重ねて、今回の発表に至ったものだと私は理解しております。
 その上で、東京都としても開催都市の責任を果たすとともに、都民の皆様、国民の皆様の将来のため、必要な追加経費の負担を決めたわけです。これは大会の成功に、そしてその先の東京、日本の再生に必要な経費であると考えているということを私はここで述べておきます。
 そして、この大会経費V5で大会の全体経費及び分担が決まったことで、大会準備への大きな道筋が示されたということにもなります。
 しかし昨今、この感染の拡大を受け、大会についていろんな声が聞かれます。例えば、観客の扱いはどうするんだ、あるいはテストイベントの運営はどうするんだ。もう半年後に迫った大会開催に向けて、こういった課題を一つ一つ解決していく必要があるわけですけれども、どのようにこれを関係者と検討し、そして準備を進めていくのか、このことについても教えていただきたいと思います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会における新型コロナウイルス感染症対策につきまして総合的に検討、調整するため、国、組織委員会、JOC、JPC、感染症の専門家等で構成する調整会議において幅広く議論し、中間整理として取りまとめたところでございます。
 観客数の上限や外国人観客を含めた観客の取り扱いにつきましては、中間整理におきまして、観客の安全と地域の安全の両立を図る観点から、国内外の感染状況等を踏まえて今春に決定することとしておりまして、現在、国、組織委員会等関係者との連携のもと、水際対策、行動、健康管理等の対応、実効性の確保に向けて、対策の具体化を進めております。
 また、テストイベントにつきましては、四月三日の車椅子ラグビーを皮切りに開催されることとなっており、競技運営等のテストに加えまして、中間整理の内容を踏まえた新型コロナウイルス対策が行われる予定でございまして、組織委員会、競技団体等と連携し、しっかりと検証してまいります。
 今後も関係者と連携し、中間整理で取りまとめた工程表に沿って、安全・安心な大会に向けた準備を着実に進めてまいります。

○川松委員 ぜひこれは都民の皆様、国民の皆様に丁寧に説明をしていただき、多くの皆様のご理解とご協力を得ながら準備を進めていっていただきたいということを要望しておきます。
 今、社会はコロナに直面し、苦しい状況にあります。しかし、都民の皆様、国民の皆様の将来のことを考えて、日常生活と経済活動の回復を目指した取り組みも進めなければなりません。そして、東京二〇二〇大会以外にその役割を担えるものはないんではないかというふうに思います。
 この東京二〇二〇大会にはいろいろな意味があります。百年前に開催されたアントワープ大会を例に、世界の連携と復興の象徴ともいわれています。
 また、招致から一貫して、東日本大震災の被災地を支援する復興五輪という大きな意義もあります。
 さらにこれらに加えて、東京には大会を開催するもう一つの目的があります。それは、世界一の都市東京を創造することです。大会を通じて、まち、あるいは都民の皆様の意識に変革を促す。そのことで首都東京、この都市を次のステージに高めることも本来のこの大会の大きな目的でございました。
 大会は東京という都市を飛翔させるための跳躍台であります。大会を招致、大会開催を目指してきたからこそ、東京は生まれ変わるチャンスがあるんだと思います。東京二〇二〇大会を通じて東京にどのようなレガシーが残されるのか、今の考えを聞かせてください。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 大会を契機に成熟した都市として新たな進化を遂げるため、都はこれまで、二〇二〇年に向けた東京都の取り組みを取りまとめ、大会の成功はもとより、大会後のレガシーを見据えたさまざまな取り組みを推進してまいりました。
 具体的には、新規恒久施設につきまして、東京の新たなスポーツの拠点として将来にわたり有効活用すべく整備を進めますとともに、世界で初めて二度目の夏季パラリンピックを開催する都市として、真の共生社会の実現に向けたバリアフリーのまちづくりを進めてまいりました。
 また、ボランティア文化の定着や持続可能な資源循環型都市の実現、オリンピック・パラリンピック教育を通じた次代を担う人材の育成など、ハード、ソフトの両面で取り組みを推進してまいりました。
 さらに、これまで積み重ねてまいりました円滑な大会輸送と経済活動の両立を目的としたTDM、テレワーク等スムーズビズの取り組みや、大会に向けた新型コロナ対策などの取り組みは、これからの都民の安全・安心な暮らしの実現にも寄与するものと認識しております。
 ハード、ソフト両面にわたる多面的な取り組みを都市のレガシーとして発展させ、大会が東京、さらには日本全国の活力を高める契機となりますよう、組織委員会など関係者と連携し、着実に取り組みを進めてまいります。

○川松委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 今から半世紀前の一九六四年大会は、日本にとっては戦後の復興から立ち直った東京という都市を国内外にアピールするとともに、その後の本格的な高度経済成長期につながる大会となったわけです。
 二〇二〇年大会の開催は、当時、都内の人口減少局面に突入することが予想されていた二〇二〇年というタイミングにあって、東京に多くのレガシーを残すとともに、その先の成長を目指したものでありました。そのことを忘れてはなりません。
 二〇一九年、一昨年に開催されたラグビーワールドカップは、国内十二都市で開催され、四十四日間にわたりこの大会が行われました。経済波及効果は六千四百六十四億円といわれています。
 当初、ラグビーはヨーロッパの伝統のスポーツであり、日本での開催は成功しない。国内外でいわれ続けた難しい状況にありました。その中で、日本ラグビー協会による招致の成功を経て、組織委員会と各開催都市、あるいはさまざまな地域が連携することによって、ラグビー創始国以外、アジアで初めてとなる大会の開催に至りました。
 ただ、その大会中には、台風の影響を受けて、当初予定していた四十八試合のうち三試合が中止となりました。しかし、多くの関係者、開催都市が一体となり、まさにスクラムを組んで困難を乗り越え、大会を世界中から大成功といわれるまでの盛り上がりに導いたわけです。
 アジアで初の大会を日本で、そして開幕戦を東京で開催できたことは、ラグビーのみならず、日本のスポーツ振興において、そして東京の発展にとって大きな意義があったはずです。今般の東京大会も同じです。オリンピック・パラリンピックは東京だけでなく、被災地や全国の自治体にとっての悲願でございます。
 東京大会は、コロナ禍の先にある東京、そして日本の経済再生の切り札です。この東京大会なしに、その後の日本の成長は現時点で考えられません。また、大会は、世界中のアスリートへの支援につながります。そして、それを見て、次の時代に挑もうとする世界中の子供たちの笑顔と希望へとつながっていくのです。
 招致から今日に至るまでさまざまな困難がありました。しかし、その都度、関係者で協力し合い、ここまで何とかやってきたわけです。大会の成功のために、国、組織委員会初め、関係者が一体となって、ラグビーならワンチーム、全員野球、いろんな言葉があるかもしれませんけれども、とにかく皆が一つになって取り組むことが肝要です。
 改めて、この大会の成功に向けた中村局長の決意を伺いたいと思います。

○中村オリンピック・パラリンピック準備局長 延期となりました東京二〇二〇大会を安全・安心な大会として開催するためには、ご指摘のとおり、組織委員会、国、そして東京都が一体となって取り組みを進める必要があります。
 そのため、延期に伴う諸課題やコロナ対策について、関係者と思いを一つにして、これまで以上に緊密に協議、調整を重ねてまいりました。先ほど部長からも答弁がございましたが、その結果といたしまして、大会経費につきましては、IOC、IPC、組織委員会等の関係者とともに、これまで以上に踏み込んだ簡素化に向けた見直しにつながっております。
 また、延期に伴います追加経費の負担につきましても、組織委員会、国、東京都の三者がそれぞれの役割を果たしながら一体となって取り組む必要があるという基本的な考え方を共有し、合意することにつながっております。
 さらに、最大の課題であります大会のコロナ対策につきましては、国、組織委員会、東京都等が新型コロナウイルス感染症対策調整会議において幅広く議論を行い、昨年十二月、中間整理を取りまとめたところでございます。現在、工程表に沿いまして、関係者とともに対策を進めているところでございます。
 この大会は招致のときから、都のみならず、全国の自治体の協力を得ながら行ってまいりました。こういったようなこともあり、この中間整理を受けまして、都内の区市町村や会場所在の関係自治体などとも意見交換を行いながら、実務的な課題解決に向けた調整を行っているところでございます。
 おっしゃるように、振り返りますと、二〇二〇大会はこれまでもさまざまな課題に直面してまいりました。しかしながら、その都度関係者と一体となって立ち向かって、ここまで準備を進めてきたところでございます。
 現下の新型コロナウイルス対策にも全庁挙げて取り組んでいるところでございまして、これを乗り越えた安全・安心な大会開催に向けまして、引き続き、IOC、IPC、国、組織委員会、関係自治体等と一層強く連携協力するとともに、局職員一丸となりまして、レガシーも見据え、全力で取り組んでまいります。

○川松委員 局長、ありがとうございました。きょうさまざまな角度からいろんな質問をさせていただきましたけれども、各部長から答弁いただいたように、それぞれの専門部署でとにかくこの大会に向けてできることを一〇〇%取り組む。もちろん一〇〇%以上のことを取り組んでいくわけですけれども、本当にこのコロナ禍においてさまざまな困難があります。さまざまな課題があります。それを乗り越えた上で、今、局長お話しになったように、IOC、IPC、国、組織委員会、関係自治体、とにかく関係者一体となって、繰り返しますけれども、この大会を成功させるために頑張ってまいりましょう。
 以上で私の質問を終わります。

○のがみ委員 最初に、コロナ対策について質問をさせていただきます。
 アメリカのIOC委員などは、新型コロナウイルスのために無観客になっても開催してほしいとの声が高いそうです。五輪はテレビでも最も広く視聴されているスポーツイベントでありまして、開会式や閉会式は参加を縮小して、選手は競技数日前に現地入りして試合を行って、終了後はすぐに帰国する。そういう方法もあり得るというようなコメントを発している人もいます。
 選手のワクチン接種については、入手不可能な国からの参加選手についてはIOCが必要分を用意するなど、接種を希望するなどは検討してほしいという声も上がっております。
 観客が外国からの場合、水際対策が大混乱とならないような対策が必要です。東京二〇二〇組織委員会は、安全・安心な東京二〇二〇年大会の成功に向け、対策を規定したプレーブックを公表しております。
 英語で書いてあるので、ちょっと読みました。そして、これは春に一度更新して、そして大会が近づくにつれ、必要に応じてまた変更していくということで、このプレーブックを参考にしながら、選手がどういう行動をとったらいいかというのは詳しく出ておりました。
 観客数の上限規制については、あくまでも日本の上限規制に準ずるべきです。日本の感染状況がどうなっているかが一番の課題になります。
 現在、首都圏は緊急事態宣言が発令中で、スポーツイベントの開催自体は上限五千人で許容されております。原則屋内では定員の五〇%以内か、あるいは五千人ということで、少ない方の人数になります。屋外では、人と人との距離を二メートルあけるように求められております。歓声は上げないということで。水際対策においては、二〇二〇年十二月二十八日から、全ての国について、日本国籍を持たない外国人の新規入国を禁止しております。大会の安全・安心が確保できているのかということです。
 オリンピックは実施についてはいろいろな懸念があり、心配もされておりますが、実施の方向に私自身は考えております。コロナ対策を万全にして、観客受け入れに向け、感染防止対策に加え、発症時対応などもいろいろな場面を想定して検討しているのか、まず最初にお伺いいたします。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会の開催に向けまして、選手、大会関係者、観客など全ての方にとって安全・安心な環境が提供できるよう準備を進めていくことが重要でございます。現在、観客向けルールづくりや感染防止対策に加えまして、徹底した感染防止策を行った上でも感染症の疑い例が発生した場合に備えまして、ボランティアによる声かけなどの一時的対応、観客用医務室での対応等につきまして、医療の専門家の意見も踏まえながら手順を策定してございます。
 また、観客数の上限や外国人観客を含めた観客の取り扱いにつきましては、中間整理において、国内外の感染状況や、我が国の海外との往来に係る状況等を考慮し、今春までに決定することとなってございます。
 こうした決定を踏まえまして、引き続き、国、組織委員会等の関係者と連携し、観客が安心して大会に参加できるよう、対策の具体化に向け着実に取り組んでまいります。

○のがみ委員 全て春に決定ということです。今、大変なコロナが少しずつ減っておりますけれども、誰が見ても、よかったな、少なくなったな、重症者が少なくなったなというような状況になることを私は祈っております。
 次に、レガシーについて質問させていただきます。
 大会を通じて、将来にレガシーを残していくことも重要と思っております。今回の大会に向け、多くの新規恒久施設が整備されました。大会での活用が期待されるとともに、その後はレガシーとして、都民のスポーツの拠点となります。大会後の都民利用が今から待ち遠しいと思っておりますが、大会が延期されたことを受け、大会への機運醸成やスポーツ振興の観点からも、大会までの限られた期間であっても都民に利用していただき、施設を知ってもらうことが重要です。
 私の体験では、カヌー・スラロームセンターでラフティングを体験させていただきました。お値段も三千円ぐらいで安かったと思うんですけれども、急流に身を委ねて、非常に速いスピードの中で、すごい楽しい経験で、またぜひやってみたいなと思った次第でございます。そういうふうに、延期を受け、都民開放のこれからの今後の取り組み状況についてお伺いいたします。

○柏原オリンピック・パラリンピック準備局開設準備担当部長利用促進担当部長兼務 新規恒久施設が大会後も広く都民に利用され、レガシーとして親しまれる施設としていくために、東京二〇二〇大会の延期期間中にできるだけ多くの方々にご利用いただくことは重要でございます。
 各施設では、既に設置が進んでおります仮設物の安全対策や、新型コロナウイルス感染症拡大防止につきまして、組織委員会を初め関係者と調整を進め、準備が整った施設から順次利用を開始いたしました。
 これまでに六つの新規恒久施設全てにおきまして大会前の施設利用を実施しており、競技団体によります大会や練習会のほか、一般都民の皆様を対象といたしまして、例えば、今、先生もご指摘いただきましたが、カヌー・スラロームセンターでのラフティング体験や、東京アクアティクスセンターでのプール利用など、さまざまな取り組みを実施してまいりました。
 ご来場いただきました方々からは、大会後も施設を利用したいといった声をいただくなど、ご好評をいただいておりまして、こうした実績を今後の施設運営に生かしまして、多くの都民に利用される施設としていくよう取り組んでまいります。

○のがみ委員 いろいろな議連の視察で、これらの新規恒久施設を視察させていただいた際に、いずれもバリアフリーへの配慮がなされていたことを確認いたしました。大会を契機にバリアフリーや共生社会への理解が広がることが重要です。
 そのためには、大会後も、新規恒久施設を初め大会に向け整備した都立競技施設が、障害のあるなしにかかわらず、多くの人たちに競技観戦やスポーツを親しむ場として広く利用されていくことが大切だと考えております。
 大会に向けて、都が整備した競技施設のバリアフリー化に向けての取り組みについてお伺いいたします。

○越オリンピック・パラリンピック準備局パラリンピック部長 都は、新規恒久施設を初め、都立の競技会場を誰もが使いやすい施設としていくため、大会におけるバリアフリー化の指針でございますTokyo二〇二〇アクセシビリティ・ガイドラインを踏まえ、適切に準備を進めてまいりました。
 また、障害者団体や学識経験者などから直接意見を伺うアクセシビリティ・ワークショップを設け、平成二十八年三月から平成三十一年二月までの間に八回開催し、いただいたご意見などを反映させ、設計などを行ったところでございます。
 具体的には、車椅子使用者もさまざまな場所から観戦できるように、車椅子使用者席を水平方向や垂直方向に分散して設置したり、トイレを車椅子使用者対応、乳幼児連れ対応といった利用形態に応じて分散して配置するなど、これまでよりレベルの高いアクセシビリティーの水準を確保し、障害のある方のみならず、誰もが使いやすい施設となるよう整備いたしました。
 今後、大会を契機に整備したこれらの施設を活用し、障害の有無にかかわらず、誰もがスポーツに親しめるよう、スポーツの振興に積極的に取り組んでまいります。

○のがみ委員 私たち都議会公明党も、車椅子使用者がいろいろな場所から観戦できるように配置すべきだとか、トイレを車椅子使用者対応とか乳幼児連れ対応、男女共用トイレ、オストメイト対応トイレといった、利用形態に応じて分散して配置すべきだということを申し述べてまいりました。障害がある方のみならず、誰もが使いやすい施設となるよう整備を求めてきました。
 大会に向けても、誰もが使いやすいように、障害のある方のご意見を反映されて、このバリアフリー化を進めてきたということでございます。大会の貴重なレガシーとなっております。
 ぜひ、障害のある方を初め多くの方が競技観戦を楽しみ、スポーツを親しむ場となるよう、積極的に施設を活用していただき、スポーツを通じた共生社会の実現につなげていただきたいと思っております。
 次に、復興五輪について質問させていただきます。
 東京二〇二〇大会は、人類がコロナ禍でスポーツを通じてきずなを再確認する機会であるとともに、十年前の東日本大震災からの復興を示す意義がある大会であります。コロナによる延期などの影響を受けたと思いますが、大会の当初からの理念である復興五輪の実現に向けた取り組みについてお伺いいたします。

○小池オリンピック・パラリンピック準備局自治体調整担当部長 東京二〇二〇大会の原点は復興オリンピック・パラリンピックでありまして、都はこれまで、組織委員会や被災県などと連携して、さまざまな取り組みを実施してまいりました。
 新型コロナウイルス感染症の影響により中止や延期となったイベントもあった中で、被災地の若者が世界への感謝の気持ちや将来を担う意気込みなどを語りかける映像の発信などに取り組んできたところであります。
 いよいよ三月二十五日には、聖火リレーが福島県からスタートいたします。大会に向けて、組織委員会と連携して新型コロナウイルス感染症対策を着実に進め、被災地での野球、ソフトボールやサッカー競技の実施、ライブサイトの開催に万全を期してまいります。
 また、復興のシンボルとなる樹木を都内の競技会場に植樹する取り組みや、被災地の若者から世界中のアスリートに対する応援メッセージ等を記したモニュメントの展示など、さまざまな取り組みの実施に向け、被災県などと検討を進めております。
 ことしは東日本大震災から十年となる節目の年でもあり、復興に向けて歩む日本の姿や、世界中から寄せられた支援に対する感謝を示すため、今後とも、関係者と一層緊密に連携協力しながら、オリンピック・パラリンピックが復興の後押しになるよう取り組みを進めてまいります。

○のがみ委員 三月二十五日にはいよいよ聖火リレーが福島県からスタートするわけでございます。準備の大変さ等がきのうの新聞報道もされておりました。しっかりと現地と連携をとりながら準備を進めていっていただければと思っております。
 次に、ボランティアについて質問します。
 これまでも障害のある方を含め、さまざまな方が安心して参加できるよう求めてきました。最近の感染拡大を受けて、ボランティア活動に不安を覚えている方もいらっしゃると思います。シティキャストが安全・安心に活動できるような対策を講じるとともに、そのことを丁寧に情報提供すべきと考えておりますが、見解をお伺いします。

○小高オリンピック・パラリンピック準備局ボランティア担当部長 都はこれまで、定期的にシティキャストへお送りするメールマガジン等を通じ、都や国が実施するコロナ対策の取り組みや、コロナ対策の調整会議の検討状況をお伝えしてまいりました。現在、調整会議の中間整理や専門家の知見等を踏まえ、シティキャストの感染予防マニュアルの作成を進めております。
 マニュアルにおいては、感染予防策として、参加者の検温や体調確認、マスクや消毒液の配布、観客との距離を確保しやすい活動場所の設定等を行うこととしております。
 また、活動中に体調不良になった場合に、現場の職員による迅速な対応を行えるよう、一一九番通報や医療機関の案内などの必要な手順も定めてまいります。
 なお、暑さ対策との両立に配慮し、活動中も人から離れた日陰でマスクを外し、水分を補給していただくことなども盛り込む予定でございます。
 今月中にはシティキャストへマニュアルの内容をお伝えする予定でありまして、QアンドAなどを通じ、疑問や不安にお答えするとともに、今後実施する研修においても、その内容を丁寧に説明するなど、安心して参加いただけるよう取り組んでまいります。

○のがみ委員 ボランティアには障害者の方も入っております。もちろん高齢者の方も大勢参加する予定になっております。コロナ禍により重症化する可能性のある方も含まれているということでございます。さまざまな方が安心して参加できる環境を整備することが大事ではないかと思います。ユニバーサル社会の実現にこれがつながっていくと思います。
 シティキャストのうち重症化リスクの高い方に対してきめ細かい対応をすべきと考えますけれども、見解をお伺いいたします。

○小高オリンピック・パラリンピック準備局ボランティア担当部長 シティキャストには幅広い年齢の方々が参加し、体力や身体の状況等もそれぞれ異なることから、個々の参加者の状況に適切に対応しながら感染防止を徹底することは重要でございます。
 そのため、まずは全ての方に、日ごろから健康管理に努め、活動前には検温と体調確認を行っていただいた上で、重症化リスクの高い高齢の方や障害、基礎疾患のある方に向け、本人の意向等も踏まえ、さまざまな取り組みを行ってまいります。
 具体的には、ボランティアリーダーなどから本人への積極的な声かけ、観客との距離を確保しやすい場所や手洗いをしやすい場所への配置、活動日数や時間の短縮等を行います。
 また、介助者とともに参加する場合は、介助者にも必要な感染予防策を講じるなど、参加者誰もが安全・安心に活動いただけるよう取り組んでまいります。

○のがみ委員 十分な配慮を行っての実施が大事だと考えております。
 次に、大会に対する世論の受けとめですかね。
 大会に関してさまざまな世論調査が行われております。さまざまなアンケートがとられておりまして、アンケートのとり方によっては、賛成、反対、保留などの数値が変化するので、とり方の工夫が大事だと考えております。
 例えば朝日新聞の調査では、今夏、ことしの夏の開催を望む方は、十月の調査で四一%、十二月の調査では三〇%、一月の調査で一一%となり、コロナの感染拡大を受けて、開催を希望する方が減少しております。
 しかし、共同通信の調査では、来夏の開催を望む声は、七月二三%、十二月三一%、一月一四%であり、上下しております。
 一般にいろんな調査を行っているわけですけれども、結果がさまざま出ているわけでございます。世論調査はその時々の民意をはかる重要な指標である一方、その時々の社会情勢や報道等の影響を受けやすいんですね。
 企業向けの調査を見てみると、NHKが一月に行った調査では、逆に六割の方がことしの夏、今夏の開催を希望しているという結果も出ております。
 いずれもその時々、場面ごとの重要な民意ではありますけれども、コロナの先の希望の光となる大会を開催するためには、都民、国民に十分な安全対策を講じていくことを丁寧に説明し、理解してもらうことが重要と思います。大会におけるコロナ対策について、幅広い年代の方にわかりやすく発信する努力が必要と考えますが、見解をお伺いいたします。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 都民や観客に安全・安心な大会に向けた準備の状況を発信し、広く理解を得ることは重要でございます。このため、調整会議における検討状況や中間整理の内容につきましては、都、国、組織委員会のホームページに掲載するとともに、対策例をわかりやすく図示したパネルを作成するなど、広く周知を図っております。
 今後、中間整理に基づき、アスリートや大会関係者、観客等の感染防止策や行動ルールなどの具体的な対策を工程表に沿って検討を進め、必要に応じて調整会議において議論を行うとともに、こうした検討状況を引き続き都民に発信してまいります。
 また、大会に向けて、国、組織委員会などの関係機関とも連携し、新聞広告等の媒体に加え、ホームページ、SNSなどのデジタルツールを活用することで、幅広い年代の人にわかりやすい情報発信に努めてまいります。

○のがみ委員 あらゆる媒体を使っての情報発信に努めていただきたいと思います。
 次の医療体制については、滝田さんと全く同じ質問だったので、答弁も全く一緒だったので、割愛をさせていただきます。
 次に、大会経費V5について質問させていただきます。
 大会新年度予算案には、関連経費も含めて四千二百二十四億円を計上しております。そのうちの三千五百六十四億円には、大会組織委員会と国で共同実施です。この中には新型コロナの感染防止対策、大会後のレガシーにも支出をしております。
 大会開催を支え、成功を祈念している方々の中に、いわゆる大会スポンサーがおりまして、大会関係V5の組織委員会収入を見ると、トップスポンサーが五百六十億円、国内スポンサーが三千五百億円となっておりまして、大会の成功を支える重要な協力者です。大会の延期により、スポンサー企業もいろいろと対応を迫られたことと思いますけれども、結果、現時点においてスポンサーに変更はあったのか確認いたします。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 IOCのスポンサーでありますトップパートナー十四社につきましては、大会延期後も引き続き大会を支援いただいております。また、組織委員会のスポンサーにつきましては、昨年十二月に全六十八社との間で契約延長に関する基本的な合意がなされ、契約の延長に伴う追加協賛金につきましてもご協力いただけると聞いております。

○のがみ委員 スポンサーは二百二十億円、さらなる経費を協力してくださっております。
 こうした企業を本当はアピールすべきではないかと思っていますが、現在のコロナ禍の状況で大会スポンサーのアピールをすることについては、企業側にもさまざまな事情があることから、組織委員会においても、十二月の延長の基本合意の公表以降は一律にPRするのではなく、企業の判断を尊重していると聞いております。
 それと、フルスタジアムにするのか、五〇%、あるいは無観客などさまざまな臆測や意見がありますけれども、観客の取り扱いについては中間整理において春に決定するとなっております。
 現在はフルスタジアムを前提にしているということでございますが、観客が変動すれば組織委員会のチケット収入に影響が出てきます。その対応についてお伺いいたします。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 お尋ねのチケット収入への影響についてでございますが、今後決定される観客の取り扱いを踏まえまして、組織委員会において改めて精査し、把握していくものと認識いたしております。

○のがみ委員 今回、コロナ対策などの追加経費を含め、大会経費の全体がV5として整理されておりますが、V4と比較して約三千億円ふえております。さまざまな要因はあるものの、コロナで都民が日々の生活に苦しんでいることを踏まえると、その執行にはこれまで以上に厳しい審査、チェックが必要であり、さきの定例会、我が党もその旨を指摘したところでございます。
 特に組織委員会については、その増収努力や経費削減努力で賄い切れなかった場合の費用、収支調整額百五十億円を都が負担することになっていることを踏まえて、一層の精査が求められると思います。組織委員会の大会経費の執行に当たっては、審査、チェックを厳しく行って、都民、国民の理解を得ながら大会準備を進めていく必要があると思います。大会の大成功に向けた中村局長の決意をお伺いいたします。

○中村オリンピック・パラリンピック準備局長 東京二〇二〇大会の開催に当たりましては、何よりもまず、全ての方々にとって安全・安心な大会を実現することが求められておりまして、関係者とともにコロナ対策の検討を加速し、万全を期してまいります。
 大会経費V5におきましては、こうした取り組みを財政面で裏打ちするものでありますが、その経費の執行に当たりましては、大会の延期に伴い増加となる経費などについて、都民、国民の理解が得られるよう取り組んでいく必要があると考えております。
 これまでも大会経費につきましては共同実施事業管理委員会を設置し、コスト管理や執行統制の強化を図ってきたところでございますが、今回追加となりますコロナ対策関連の経費については、この仕組みのもと、新たに作業部会を設置しまして、組織委員会、国、東京都の三者で経費の精査と確認を行ってまいります。
 また、収支調整額につきましては、経費削減や収入確保に向けまして、組織委員会が引き続き最大限の努力を行うことが必要でございまして、東京都がその取り組みをより厳密に確認する仕組みを構築してまいります。
 具体的には、現在も行っております月々のキャッシュ・フローの継続的な把握をベースといたしまして、収入、支出両面における計画と実績を東京都が確認する方策などについて検討しているところでございます。このような仕組みによりまして経費を最大限に生かしていきたいと考えております。
 お話ございましたが、ことしの大会は東日本大震災から十年となる年に開催されます。被災地の復興の姿を世界に発信するとともに、多くの方々の希望となるよう大会を成功させてまいります。
 また、本日はパラリンピックまで二百日という節目になってございます。パラリンピックの成功を共生社会の実現に結びつけるほか、お話ございましたように、施設ですとか安全・安心など、大会に向けた取り組みについて、大会の確かなレガシーへつながっていくよう、全力で取り組んでまいります。

○のがみ委員 ありがとうございました。
 最後に、意見表明をさせていただきます。大会組織委員会トップの森会長の発言についてでございます。
 会長の、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかるという女性蔑視の発言を聞いて、憤りを覚えない人はいないと思います。同じ女性として残念でなりません。差別的な女性に対する思いがふだんからあるので、このような発言になったのかと思ってしまいます。恥ずかしいことです。
 オリンピック憲章にもありますように、東京五輪パラリンピックは人権尊重の大会です。人権に対する深い思いがあれば、あのような発言も出てこなかったのではないかと私は思っております。
 東京都に怒りの電話が百本かかってきたと、先ほどお昼ご飯を食べたときのテレビで放映しておりました。また、大会ボランティアをやめたいとの声もあります。
 せっかくオリンピック・パラリンピック準備局の方々が命がけでさまざまな諸準備をされているのに、もう残念で涙の出る思いです。本当に残念でなりません。
 以上で終わります。

○小山委員長 この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩をいたします。
   午後二時四十六分休憩

   午後三時十分開議
○小山委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○あぜ上委員 本日の質疑に当たって、五輪大会の根本原則にかかわる重大な問題については避けて通れないというふうに思っております。森組織委員会会長の、三日、JOC臨時評議員会の会合における女性蔑視発言についてであります。
 森会長の、女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります。この発言は、謝罪をし、撤回されましたけれども、決して許されるものではありません。他会派からもご意見がございました。
 そこで、都に伺いたいんですが、都は、この五輪憲章に反する発言という認識があるのか、端的にお答えいただきたいと思います。局長、いかがですか。

○中村オリンピック・パラリンピック準備局長 昨日、森会長も会見で申されているとおり、不適切な発言だということです。

○あぜ上委員 不適切な発言であったと。五輪憲章の根本原則にも違反し、アジェンダ二〇二〇にも反する発言であります。組織委員会の委員長を辞任すべきだと思います。当然、開催都市として辞任を求めるべきだと思いますけれども、いかがですか。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局大会企画調整担当部長 森会長は二月四日の記者会見において、昨日、二月三日の発言については不適切な表現だった、発言を撤回したいと述べておられます。
 都といたしましては、引き続き関係者と協力し、大会に向けた準備を着実に進めてまいります。

○あぜ上委員 こんなだから皆さんが失望するんですよ。多くの選手や識者も批判の声を上げていらっしゃいます。先ほどもお話がありましたように、新聞報道でも、東京都に、更迭すべきだ、許せない、こういった抗議の電話が百本を超えていたという報道もございました。
 ヒューマンライツ・ナウの事務局長であります伊藤和子弁護士は、女性蔑視発言は撤回されたところで許されない、女性理事の活動を愚弄し、五輪憲章の理念に反すると批判をされています。
 森氏に対し辞任を求めるかどうかは、東京都の五輪憲章に対する姿勢、またジェンダー平等への姿勢が問われる問題であると私は思います。そのことを厳しく指摘しておきたいと思います。
 その森会長が二日、五輪について、コロナウイルスがどういう形であろうと必ずやるんだという発言をされています。しかしながら、世論は違うわけです。共同通信の一月九日、十日の世論調査では、オリンピック中止三五・三%、再延期四四・八%、朝日新聞の一月二十三日、二十四日の世論調査では、中止三五%、再延期五一%と、いずれも世論の八割を超えて、中止か再延期を求めています。残念だけれども、難しい、コロナに集中すべきときだというのが皆さんの思いだと思います。
 都は、直近の世論調査、八割を超える方々が大会の中止と再延期を求めていることをどのように受けとめていらっしゃるのか伺います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 大会につきましては、これまでもさまざまな調査が報じられていることは承知しております。緊急事態の中、都といたしましては現下の新型コロナウイルス対策に全力を尽くしているところでございます。
 大会の成功のためには、選手、関係者、観客など全ての人にとって安全・安心な環境が提供できるよう準備を進めていくことが重要でございます。
 このため、昨年十二月、国、組織委員会等とともに取りまとめた中間整理で示された、大会における新型コロナウイルス対策を具体化するなど、関係者と連携し、安全・安心な大会に向けた準備を進めてまいります。

○あぜ上委員 そういうお答えでは都民は納得できないと思います。JOC理事の山口香さんは、国民を置いてきぼりにした前のめりの姿勢は、五輪開催でスポーツ本来の価値を実現するのではなく、政治とか経済とか、別の理由や思惑があるのだろうと、さめた目で見られているのだと思うと発言されています。
 私がまちの中を歩いていろいろご意見を今聞いていますけれども、聞く声は、選手は本当にかわいそうだけれども、ことしの夏は無理、オリンピックへの税金投入分は、今は医療体制の確保や医療機関の減収補償などに、まさにコロナ対策に回すべきだということです。こうした指摘や声を真摯に受けとめるべきだと思います。
 私たち日本共産党都議団は、一月二十六日に、現下の状況を考慮すれば、ことしの夏の五輪は中止し、コロナ対策に集中すべきだと知事に申し入れを行いました。その理由は三つあります。
 一つは、第一にワクチンに頼ることができないということ。
 そして第二に、アスリートファーストの立場からも問題があるということです。
 一月三十日付のNHKのニュースで、パラアスリートがパラリンピックのクラス分けのために国際大会への遠征を余儀なくされたという報道がありました。難病を持ち、遠征を断念した陸上の伊藤選手は、選手に命がけの行動を強いるパラリンピックがアスリートファーストといえるのかと疑問を投げかけ、早期の大会の可否の判断をと訴えていました。こうしたアスリートの声を直視すべきだと思います。
 そして第三に、今の医療体制の逼迫の問題があります。
 この医療対策についてですが、大会運営では、二〇一九年七月三十日の組織委員会の資料では、医療サービスの提供体制では一万人の医療スタッフが必要だというふうになっております。先ほど調整をしているというご答弁もありましたけれども、今の都内の医療体制の状況で、都も一万人の医療スタッフの確保ができると判断している具体的根拠は何なんでしょうか。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会運営に係る医療スタッフの確保につきましては、組織委員会とともに、東京都医師会、救急、感染症医療の専門家からも意見を聞きながら、感染状況や地域医療への影響等を踏まえて調整を進めております。安全・安心な大会に向けた準備を着実に進め、必要な医療スタッフが確保できるよう取り組んでまいります。

○あぜ上委員 今行われております通常国会で橋本担当大臣は、一人五日程度の勤務をお願いすることを前提に、一万人程度の方に依頼をし、医療スタッフを確保すると発言をされております。この一万人という人数は、新型コロナ感染症が発生する前の試算でありまして、今、入院できずに自宅で亡くなる方もいらっしゃる。こういった状況で五カ月後に、多数の医療従事者を医療現場から引き離して五輪に向けることは、とても現実的ではないというふうにいわざるを得ないです。
 さらに、選手や関係者のための医療体制として、オリンピック病院が選定をされています。そのオリンピック病院に選定されている都立病院、三つあります。広尾病院を初め、都立墨東病院、都立多摩総合医療センター。ここはほかの診療科目を縮小してコロナ感染症対策に当たっています。その上、大会に人員や施設を割くことができるんでしょうか。どのように大会のために人員を確保するのかお答えいただきたいと思います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会指定病院におけるアスリート、関係者の受け入れにつきましては、組織委員会とともに、感染状況や地域医療への影響等を踏まえ、調整を進めております。引き続き、関係機関の協力を得ながら、安全・安心な大会に向けた準備を着実に進めてまいります。

○あぜ上委員 都立病院では、コロナ感染症の患者を受け入れるために、妊婦さんなど、民間病院に移動していただくなど、今せざるを得ない、そういう状況です。広尾病院は、基本的に新型コロナ以外の診療、入院は休止をし、実質的なコロナ専門病院として奮闘するなど、崩壊の瀬戸際にある都内の医療を支えているわけです。
 こうした今の状況を冷静に見たときに、本当に夏に都立病院に余裕が生じる見通しがあるといえるんでしょうか。そういうふうに考えていらっしゃるんですか。お答えいただけますか。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会指定病院におけるアスリート、関係者の受け入れにつきましては、組織委員会とともに感染状況、地域医療への影響を踏まえて調整を進めているところでございます。引き続き、関係機関のご協力を得ながら、準備を着実に進めてまいります。

○あぜ上委員 このコロナ感染症対策のための医療ですら、今十分できていない。こういう中で本当に受け入れられると考えていらっしゃるんでしょうか。しかも、世界と日本の現状を見れば、この夏にコロナがおさまるという見通しはなく、多数の医療関係者を五輪に振り向けるのは現実的ではないといわざるを得ません。
 報道を見ていますと、そうはいっても、東京都から中止をいい出すと賠償金を払わなければならないのではないか、だから中止といえないんじゃないか。こんな懸念が語られているわけです。
 都が中止を判断した場合、報道によると、IOCとの関係で賠償金を支払うことになるという発言をされている方がいましたが、そのような規定はあるのでしょうか、伺います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 開催都市契約では、六十六条で、大会の中止についてはIOCが権利を有すると定められております。六十六条の規定でございますが、東京都、JOC及び組織委員会は、いかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求及び権利を放棄し、また、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものと定められております。

○あぜ上委員 大変難しいですけれども、六十六条では、中止の権限はIOCにあると。そして、中止になったからといってIOCが損害賠償をすることはないと決まっているだけです。東京都が中止すべきではとIOCに働きかけたから都に財政的な負担が新たにかかると、そういう仕組みではないということであります。
 開催都市契約の七十一条では、予測ができない、または不当な困難が生じた場合、合理的変更を考慮するようIOCに要求できるというふうになっております。決定権のあるIOCに対して働きかけることはできるということであります。開催都市として、今夏の大会は中止を決断し、IOCを初め関係者と協議することを求めますが、いかがですか。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 東京二〇二〇大会につきましては、昨年三月に延期が決定し、本年七月二十三日に開会とする新たな開催日程で関係者が合意し、IOC臨時理事会で承認されております。
 今夏の大会開催に向けて、大会の主催者であるIOCを初め、さまざまな関係者が準備を進めており、IOCバッハ会長は、今夏に開催される大会の成功と安全な開催に全力を尽くすと述べておられます。
 今後とも、国、組織委員会など関係者と連携し、安全・安心な大会の実現を目指してまいります。

○佐藤オリンピック・パラリンピック準備局次長 先ほどの質問で、計画推進部長の答弁の中での先生のお答えの中で、相手側から求められないということでございましたが、六十六条の規定では相手を完全に無害に保つということなので、若干先生の認識が違うということを考えております。

○あぜ上委員 私はIOCが損害賠償することはないというふうにいったんです。

○佐藤オリンピック・パラリンピック準備局次長 IOC側からも訴訟等を求めるなど、とにかくIOCは賠償等について一切責任を負わないという規定になっているということでございます。

○あぜ上委員 私はそういう認識で、今いったとおりです。
 先ほど、開催都市として中止を求めたらどうかということに対しては、今るるお答えがあったわけですけれども、延期を昨年の三月に決定したときと比べても、大変厳しい状況になっていることは誰の目にも明らかなわけです。協議を尽くして、世界の人たちの命を守る、そういう判断をすべきであるというふうに思います。
 昨年十二月に発表されました東京二〇二〇大会の大会経費V5は、二〇一九年末のV4よりも二千六百七十億円増の一兆六千四百四十億円と、また大きく膨れ上がりました。延期に当たり、大会を簡素化することにより三百億円削減したとの報告もいただきましたが、削減と延期やコロナ感染症対策に係る追加経費の差し引きで二千六百七十億円の増だということであります。
 大会の簡素化で三百億円の削減ということですが、この内訳については、この間、一部報道はされていたんですが、議会には正式に報告されていませんでした。先ほど、他の委員の質問によってお答えがありましたけれども、改めて私からも伺いますが、大会の簡素化で三百億円を削減したその内訳をお示しいただきたい。あわせて、都が負担する費用は先ほどのご答弁では六十億とおっしゃっていましたが、その確認をさせていただきたいと思います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会の簡素化につきましては、昨年十月のIOC理事会において、おおよそ三百億円の経費削減効果を報告しております。
 その主な内容は、会場における仮設オーバーレイの仕様の見直し及びサービスレベルの引き下げ等で百五十億円、競技会場、選手村等のルックの削減で十億円、聖火リレーの実施方法の簡素化で八億円、大会関係者の人数の調整で十億円、組織委員会スタッフの要員計画の最適化で三十億円となっております。これらによる都負担の減は六十億円となっております。

○あぜ上委員 今ご説明がありましたように、削減できたのはオーバーレイ、つまり装飾に係る部分や飲食などのサービスレベルの引き下げなどが大きく、また都負担は六十億円減らしたということです。V5予算発表後も大会直前まで簡素化の取り組みを継続し、予算に反映していくということであります。
 そして、追加経費の方ですが、追加経費二千六百七十億円の内訳は、コロナ対策が九百六十億、それ以外の延期に伴い必要な経費が千七百十億。そのうち東京都の負担が千二百億円ということです。
 この金額は、昨年十二月四日に組織委員会、東京都、国の三者で合意し、V5予算に反映されたわけですが、私はここに含まれない経費がさらにかかるのではないかと懸念をしております。
 例えば、IOCのバッハ会長は、一時期ワクチンに大変期待をする発言をされていたわけですが、一方で、組織委員会、東京都、国の三者で開かれてきた新型コロナウイルス感染症対策調整会議では、対策の中心はPCR検査で、ワクチンについてはほとんど議論がされておりません。大会関係者や選手のワクチン接種がどこまで期待できるのかはわかりませんけれども、接種する場合の費用負担はどうなるのかという疑問があります。
 また、一万人の医療スタッフにしても、当初、無償で協力してもらう計画だったのが、コロナ感染拡大のため負担がふえるということで、医療現場や世論の理解を得るために方針を転換して、有償にする方向、協力金や手当を支給する方向と報じられたのは昨年十二月二十九日でありまして、V5の予算発表より後のことでありました。この費用はV5に含まれているのでしょうか。
 聖火リレーや、最寄り駅から会場までのラストマイルの沿道対策など、もともと東京都が大会経費以外の予算で対応することとなっている事業の感染対策などもV5予算にはあらわれてきませんが、追加経費が必要になるのではないかと思います。
 そこで伺いますが、選手などへのワクチン接種、それから一万人以上の医療スタッフを無償から有償にすること、聖火リレーやラストマイルの感染症対策、この費用はそれぞれ幾らなのでしょうか。また、これらはV5予算に含まれているのでしょうか。誰が負担するのでしょうか。それぞれお答えください。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 医療スタッフの確保につきましては、大会経費V5における新型コロナウイルス感染症対策関連の経費九百六十億円の中に計上しております。
 また、都内の聖火リレーやラストマイルにおける感染症対策については、都の大会関連経費として、令和三年度予算案の中で、大会開催に向けた新型コロナウイルス感染症対策三十二億円の中に計上しております。
 なお、ワクチンにつきましては、調整会議の中間整理において、利用可能となった場合の対応を、今後取り扱いの詳細を定める必要がある課題としているところでございます。

○あぜ上委員 今のご答弁で、聖火リレーやラストマイルの感染症対策はV5の外で、都の予算として三十二億円を計上しているということで、ワクチンは今後の課題ということで、現状ではV5予算には計上していないし、幾らかかるかも、誰が負担するのかもまだわからないということですね。
 すると、医療スタッフの経費は、感染症対策に必要なスタッフの分はV5のコロナ対策経費に計上しているというふうに今ご答弁されたんですが、もともとのコロナ前に必要だった医療スタッフの有償にする分というのはどうなるんでしょうか。お答えいただけますか。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 先ほどもご答弁申し上げましたが、医療スタッフの確保については、大会経費V5における新型コロナウイルス感染症対策関連の経費九百六十億円の中に計上しております。

○あぜ上委員 ワクチン接種にしても、医療スタッフへの手当にしても、追加経費二千六百七十億円にとどまらず、さらに膨らむ経費があるということであります。これは重大な問題だと思います。しかも、既に二千六百七十億円の追加経費の組織委員会の負担分については、組織委員会の収入ではもう賄い切れないということで、そのうち百五十億円を東京都が負担することになっています。
 ということは、これからもしかしたらさらに膨らむ、そういう経費については、組織委員会はもう負担できないので、東京都と国が負担しなければならないということになっていくと思います。こうしたことについて、もっとしっかりと都民に明らかにしていただきたいと、これは強く求めておきたいと思います。
 次に、選手村についてです。
 選手村は、再開発事業の特定建築者であります三井不動産など大手ディベロッパー十一社から、建設したマンションを借りて使用する予定で、その賃料は東京都が支払っています。
 そこで伺いますが、もともとの契約は、昨年末の終了、そして更新はしないとなっていました。延期に伴い、どのようになったのでしょうか。

○斉藤オリンピック・パラリンピック準備局選手村担当部長 選手村は、都が実施する再開発事業におきまして、特定建築者が建築する建物を一時借用し、大会期間中に宿泊棟などとして活用するものであり、大会後は借用した建物を返却し、特定建築者が再開発事業として、分譲などに向けた内装改修工事を進める予定となっております。
 建物の借り受けに当たりましては、令和二年一月一日から十二月三十一日までを賃貸借期間とし、更新は行わない旨の条項を含む定期建物賃貸借契約を締結したものでございます。
 大会の延期に伴い、都、組織委員会及び特定建築者で、令和三年の使用についての協議を行い、昨年十一月に、都と特定建築者の間で、令和三年一月一日から十二月三十一日までを賃貸借期間とする新たな定期建物賃貸借契約を締結したところでございます。

○あぜ上委員 結局、新たに契約を結び直したということですね。それで都として、昨年と同額の税込み四十一億八千万の賃借料を払って、ことし一年間は選手村として借りるということで確認したいと思います。
 選手村については、おととしからマンションとして分譲が開始されておりまして、大会延期による入居時期などへの影響が懸念されていました。
 つい最近は、引き渡しが一年程度延びる見通しだが、ディベロッパー側は予見できなかったと補償を拒否し、説明会も開催されず、購入者の一部は東京地裁に民事調停を申し立てる予定という報道がされていました。
 この中央区晴海の市街地再開発事業を進めるに当たり、東京都は都有地を一平方メートル九万七千円という、周辺価格の十分の一の超低価格で大手ディベロッパーに売却しました。私たち日本共産党都議団は、この大手ディベロッパー優遇について何回も議会で批判をしてきました。住民訴訟にもなっております。
 この市街地再開発は目的に選手村の整備が含まれていて、選手村として使用するという条件があるので超低価格で売却するのだという説明がされてきました。だとするならば、やはり五輪延期への対応はディベロッパーの責任で誠実に、適切に行うべきだ。これは申し上げておきたいというふうに思います。
 さて、組織委員会の負担のうち百五十億円を東京都が負担する問題についても伺いたいと思います。
 資料の中のV4予算とV5予算の比較表を見てみましたら、V5予算での東京都の追加経費は千五十億円となっていまして、千二百億円のはずなのにおかしいなというふうに思ったら、別のペーパーの組織委員会の歳入のところに、収支調整額という名称で、都の負担額百五十億円の計上がされていました。つまり、これまでの枠組みとは違うところで、東京都が百五十億円を組織委員会に出すという構造になっています。
 この百五十億円の使途や契約ルールはどうなっているんでしょうか。公正で適正な支出のための東京都のチェックが必要だと思います。どのように行うのでしょうか。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5では、組織委員会の負担のうち、同委員会の経費削減努力や増収努力によっても賄い切れない費用について収支調整額として計上しております。
 これについては、組織委員会が経費削減や収入確保について、今後も可能な限りの努力を行っていくことが必要でございます。都がその取り組みを確認していくため、組織委員会のキャッシュ・フローについて継続的に確認するとともに、収入、支出両面における月次での確認をより厳密に行っていく仕組みを検討してまいります。

○あぜ上委員 先ほど、他の委員の質疑の中で共同実施事業のご説明もありましたけれども、組織委員会の事業に都の公費を入れることになった大枠の合意。ここでは、公費が投入される経費等について組織委員会内で区分経理し、収支の明確化を図ると。組織委員会、東京都、国、関係自治体により共同実施管理委員会を設置し、コスト管理と執行体制の強化を図るというふうにされて、都民の税金の使い道については共同実施事業として都がチェックをしてきました。
 この百五十億円についても共同実施事業と同じようにチェックをし、情報公開をするという理解でよろしいんでしょうか。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 収支調整額につきましては、組織委員会が経費削減や収入確保について、今後も可能な限りの努力を行っていくことが必要であります。都がその取り組みを確認していくため、組織委員会のキャッシュ・フローについて継続的に確認するとともに、収入、支出両面における月次での確認をより厳密に行っていく仕組みを検討してまいります。

○あぜ上委員 都の税金でございますから、組織委員会が自由に使ってよいということには到底ならないと思います。使い道や契約の方法、情報公開など、税金投入にふさわしい管理とチェックを徹底する必要があると思います。少なくとも共同実施事業と同じ水準で行っていただきたいと強く要望しておきたいと思います。
 次に、チケット収入についてです。
 チケット収入は、先ほどもご答弁ありました、九百億円ということで見込んでいるということなんですが、その内訳は明らかにされていません。さらに、収容率を制限したり無観客となれば、九百億の新たな負担が発生する可能性があり、心配です。
 外国人観客の方がコロナの感染症の影響を受けやすい。入国できないこともあり得るわけですね。
 そこでちょっと伺いたいんですが、チケット販売額の国内、国外の内訳を明らかにしていただきたいと思います。また、パートナー企業に配分されるチケットのチケット代は九百億円に含まれるのかどうか伺います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 組織委員会では、これまでのチケット販売につきましては、販売戦略上の理由から、その内訳も含め、公表してございません。
 また、組織委員会予算V5におけるチケット売り上げ九百億円の中には、パートナー企業が購入するチケットに係る収入も含まれていると組織委員会からは聞いております。

○あぜ上委員 国内、国外のチケット販売額は非公表だということです。また、九百億円の中にはパートナー企業が優先購入したチケット代は入っているけれども、それの金額は不明ということであります。
 無観客や収容率の制限をして開催となった場合のチケットの減収分は誰が補填するのでしょうか、伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 観客数の上限については、調整会議における中間整理において、国内外の感染状況等を踏まえ、国内の上限規制に準じることを基本として、最終的な決定は今春までに行うこととしております。いずれにしても、大会経費V5をもとにして、関係者と連携し、経費削減や収入確保などの努力を行うとともに、コロナ対策の具体化を図り、安全・安心な大会の実現に向けて取り組んでまいります。

○あぜ上委員 最終的な決定はこの春までということで、もう二月ですから、あと一、二カ月の間に決めることになるわけですね。しかし、チケットの減収マイナス分は誰が負担するのかということについてはお答えがなかったんですが、定まっていないということだと思います。
 開催都市契約では、大会が赤字になった場合は都が負担することになっていますが、最後は全て都の負担でやるということになれば、都民の納得は得られません。チケットの減収の可能性やその試算について都民に明らかにすべきですし、減収の場合の負担については、やはり組織委員会、国、IOCとも公平な議論をして、その経過も公表すべきだというふうに思います。
 チケットについては、そもそも無観客でのオリンピック・パラリンピックがあり得るのかという問題もあると思うんです。先ほど来、無観客というお話も出ていましたけれども、やっぱり技術的には無観客試合や、選手の宿泊や移動も全て隔離する、いわゆるバブル方式といわれる、この方式での開催も可能であるとしても、それが果たしてオリンピック・パラリンピックといえるんだろうかという意見もいただいています。
 世界中の人々が集い、交流する中で、お互いを理解し、平和な社会の構築や人類の発展につなげるという五輪大会の理念を貫けるのかという観点も必要だというふうに私は思いますが、無観客開催になるという事態は、海外からの観客も、国内の観客も来ない。都市ボランティアもなかなか参加できない。競技外での選手同士の接触も極力避けることになるわけですね。五輪大会の趣旨に照らし、それが本当に五輪大会といえるのかという議論も必要だということを指摘しておきたいと思います。
 V5予算では、大会延期による東京都の負担増は千二百億円、負担の総額は七千百七十億円となります。立候補ファイルのときの都民との約束は、都の負担が千五百三十八億円ですから、実に立候補ファイル時の金額から五千六百三十二億、約四・七倍にふえたということになります。
 東京都は、コロナ対策で九千億円あった財政調整基金をほとんど使ってしまったといわれています。来年度予算案では、税収は四千億円の減の見込みだともいわれています。都債も積極的に活用して財源確保に努めるという状況です。そうすると、追加負担千二百億円はどこから生み出すのかなという懸念も生じるわけです。V5予算での東京都の負担増、千二百億円の財源をどのように確保するのか伺います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5における追加負担の財源については、昨年度の決算剰余金や今年度予算の歳出を削減、精査することで対応を図っております。

○あぜ上委員 今のご答弁だと、二〇一九年度の決算剰余金、つまり余ったお金が千四百億円あったうち、既に半分の七百億は財政調整基金に積んでいますが、七百億円残っています。それと、今年度の歳出を削減、精査で生み出した財源を合わせて、千百九十五億円を今年度の最終補正予算でオリンピック・パラリンピック開催準備基金に積み立てて、来年度予算で使うというわけですね。
 私はこのコロナ禍で、都民の税金を一体何に使うかは都民の意見を聞く。このことが本当に重要だなと思っております。
 実は、私たち日本共産党都議団は昨年の第四回定例議会で、暮らしに役立つ五つの条例と銘打ちまして、五本の条例提案をしました。学生の給付金とか、ひとり親家庭の児童育成手当の増額など、コロナの影響で学費や生活費に苦しんでいる都民に役立つ条例をと提案させていただきました。給付金や手当の増額財源が必要ですから、そのとき私たちが想定したのはこの決算剰余金だったんですね。
 コロナ禍で今、飲食店だけではなく、酒屋さんも、クリーニング店も、洋品店も、そして文化芸術団体の皆さんも本当に大きな打撃を受けております。私も商店街を今回って、いろいろお困り事を聞いて歩いているんですが、本当に深刻です。都民の税金をどこに使うのか、本当に考えなければならないことだというふうに思います。
 そして、来年度予算案では、大会経費三千七百三十六億円、関連経費四百七十九億円、その他、これは国から経費が入ってくるんですけれども、総額四千二百二十四億円の予算となっております。さらにこれまで、先ほど申し上げたように、ワクチンの費用とか、チケット収入の減収など、都の負担はさらに増加する可能性もあるということであります。
 都負担の増については都民の納得のいく情報の公開と丁寧な説明、そして、やっぱり都民が納得できるようなものでなければならないと思うんです。そのことが不可欠ですが、いかがでしょうか。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 これまでも大会に係るさまざまな検討につきましては、随時当委員会に報告をしてきております。大会経費については、IOCとの調整状況や大会の簡素化、新型コロナウイルス感染症対策に係る検討状況、三者会談による追加経費の負担の合意など、これまでに経過を報告し、公表してきております。

○あぜ上委員 これまでも私たち日本共産党都議団は、共同実施事業は都の支出だけれども、財布は組織委員会という仕組みのものはどうしても非公開のものが多いと、改善を求め、東京都の方も本当に努力されてきたわけです。引き続き、都民の貴重な税金の使途を明らかにするよう努力を重ねていただきたいと思います。
 今、都民が切に願っているのは、都がコロナ危機に集中して、総力を挙げてほしい。総力を挙げて取り組んでほしい。財政もコロナ危機打開のために使ってほしい。そして、一日も早くコロナ危機から抜け出すことができて、そして安心して暮らせて、ことしの夏の大会は無理でも、心から平和とスポーツの五輪大会を世界の人たちと共有できるようにしてほしいんだと。この願いに応えることこそ開催都市としての英断だと私は思います。
 そして、医学や医療の専門家の知見やアスリートと国民の意見も踏まえ、この夏開催中止について、東京都がIOCや組織委員会、JOC、国と開かれた場で協議を行うこと、このことを強く求めまして、私の質問を終わらせていただきます。

○山口委員 それでは、私からも質問させていただきたいと思います。
 与えられる条件や、また厳しい社会情勢の中で、本当にご苦労の中、皆様方が日々の仕事に邁進をされていることに心から敬意を表し、そして都民を代表してというか、都民の一人として、心から感謝とお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。
 さて、本日の質疑の議題でありますが、V5の予算などについてであります。そもそもことしの夏にオリンピックを開催することに対して、都民の皆様の不安が大きいこと、これはもう事実であります。
 ただし、私は、現下の緊急事態宣言という状況に流されて、拙速に物をいうだけではなくて、年末に公表された調整会議の中間整理にもあるとおりに、まずはこの春までに決定をするとしている観客数の上限であるとか、外国人観客の取り扱いをどのようにしていくのか。その上で、春の時期を過ぎてもなお、海外を含めて感染が抑制できる状況にないのかなどを見据えつつも、できる準備はしっかり行っていくべきだというふうに考えるわけであります。
 都民の皆様にも注目をいただいているであろう質疑でありますから、まず基本的なこととして確認をさせていただきますが、大会の中止を決定する権限は誰にあるのか伺いたいと思います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 開催都市契約におきまして、IOCは、戦争状態や内乱、ボイコットなどの場合や、IOCがその単独の裁量で、大会参加者の安全が、理由のいかんを問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合には、本契約を解除して大会を中止する権利を有することとされております。

○山口委員 つまりは、あくまで最終的な決定権者はIOCであって、東京都は、言葉は悪いけれども、基地を、場所をしっかりと提供する招致都市であるということ、その立ち位置にあるんだということを今確認させていただいたわけでありますが、ただ、都民の皆様は、全国、日本国民の皆様はこう思うかもしれません。そうはいっても、一九七六年の例えばデンバーの冬季オリンピックのように、大会直前ではないにしたって、開催都市であるデンバー市側から開催の返上を働きかけたような例もあるわけでありますが、開催都市側から働きかけることはできないのか。その際にはどのようなデメリットがあるのかお伺いしたいと思います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 開催都市契約の六十六条で、大会の中止についてはIOCが権利を有すると定められております。六十六条ですが、東京都、JOC及び組織委員会は、いかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求及び権利を放棄し、また、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものと定められてございます。

○山口委員 中止になった場合においてもIOCは無害に保たれると。そのツケは東京都、またさらにはJOC及び組織委員会が負うことになるわけであります。
 中止をした際のデメリットとして、IOCが受け取るであろうテレビ放映権料の話がよく出るわけであります。現在、IOCは放映権料を原資として八百五十億円を組織委員会に拠出しておりますが、放送事業者がIOCに放送権料の払い戻しなどを求めた場合、どのような取り扱いとなるんでしょうか。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 お尋ねの場合には、IOC拠出金の払い戻しに関する契約によりまして、組織委員会が拠出金をIOCに払い戻すこととされております。組織委員会が払い戻す金額は、IOCが実際に放送事業者に払い戻す金額に、IOC拠出金の合計額をIOCの全ての放送収入で除して得られる比率を乗じた額とされております。ただし、組織委員会は、IOC拠出金の合計を超える金額をIOCに対して支払う義務は負わないとされております。

○山口委員 求めた場合と聞きましたが、もめた場合にはどうなるのかを確認したかったわけでありますが、答弁に変わりはありませんので、恐らくそういうところなんだろうというふうに思います。
 東京二〇二〇大会の放送収入というのは、まだというか、公表されていないわけでありましたが、例えばロンドン大会での放送収入というのは二十五億ドル、円にすれば二千六百億円、リオ大会にすれば二十八億ドル、二千九百億円だったとも聞いているわけであります。ただ、いずれにせよ、払い戻しの上限は八百五十億円だということもあって、アメリカのテレビ放送局もイベント中止保険を掛けているとも聞いているわけであります。
 臆測の話はさておいて、ところで、仮に中止になった場合、我が国においても、ご協力をいただいているスポンサーはたくさんいるわけでありまして、露出機会を失うことになるわけであります。スポンサーに対しては何らかの補償を求められるようなことになるんでしょうか。また、スポンサーのレベルにもよりますでしょうし、個別の契約内容は答えられないと思いますが、一般的に、こういった点についてはどのような契約になっているんでしょうか。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 スポンサーと組織委員会との契約につきましては、契約当事者双方に守秘義務が課されており、その内容についてはお示しすることができないものでございます。

○山口委員 いつも伺う答弁なんでありますが、これ、もう、こういう事態でありますから、一般論を聞いているわけですから、影響があるのかどうか示すこともできないというんでは、これはやっぱりなかなか議論が進まないわけです。こういうところ一つ一つが、本当に大丈夫なのか、できるのか、不安がないのかというふうに不信を買ってしまうところにつながるんだと思います。
 一方で、今回示された大会経費V5では、イベント中止保険で五百億円の収入を得る、収入というか、保険として宛てがわれることになるわけでありますが、このイベント中止保険、そもそも、その内容もさまざまあるわけですが、今回のイベント中止保険の内容について伺いたいと思います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会経費V5では、大会の延期に伴い、興行中止保険による保険収入五百億円を計上しております。個別の保険契約の内容については、組織委員会に確認したところ、公にすることにより、当該法人の競争上または事業運営上の地位が損なわれるおそれがあることから、公表できないとのことでございます。

○山口委員 公表できないということでありましたが、ことし仮に大会が中止になった場合、再度保険が支払われることになるんでしょうか。確認をしたいと思います。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 組織委員会によれば、保険については検討中とのことでございます。

○山口委員 なるほど、検討中ということでありました。といっても、掛けるも掛けないも、直前に掛けることが本当にメリットがあるのかどうかという検討は当然しなければならないところだろうとも思うところでもあります。本当にこういったところ一つ一つを、やる、やらないの影響というのがこういったところにまで出てくるんだと。それは直前になればなるほど、その影響というのは大きいんだということをこういったところからも感じるわけでありますが、掛金も高くなるとは思いますけれども、常にやっぱりリスクヘッジは考えていただきたいと思うわけであります。
 組織委員会の森会長はいろんなシミュレーションをしているとよくいわれるんですね、述べられるわけですが。よくいわれる無観客、観客半分、マックス五千人の場合、よく例として出されるわけでありますが、例えばそれぞれの場合におけるシミュレーションというのは東京都としてはされているんでしょうか。伺いたいと思います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 観客数の上限につきましては、中間整理におきまして、国内外の感染状況やスポーツイベントの開催状況なども踏まえまして、国内の上限規制に準じて、この春までに最終的に決定することとしております。
 観客の安全を確保するため、現在、中間整理に示した工程表に沿って、競技会場等における感染防止策の徹底や、観客に健康管理を求めるなどの対策につきまして、国、組織委員会等関係者と連携し、検討を進めており、今春の観客の取り扱いに係る決定を踏まえて精査してまいります。

○山口委員 私は、シミュレーションしているのか、していないのかと聞いているわけです。森会長がいろんなシミュレーションをしていると述べられる中で、東京都が何らかのシミュレーションをしていないとは思えないんです。もちろん春までには最終決定なのは構いません。最終決定の結論だけではなくて、今の段階でも、どのようなシミュレーションをしているのかというのをあわせて示していくべきだと僕は思いますが、再度伺いたいと思います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 先ほどのご答弁のとおりでございますが、観客数につきましては、中間整理におきまして、国内外の感染状況やスポーツイベントの開催状況なども踏まえまして、国内の上限規制に準じて、この春までに最終的に決定することとしてございます。

○山口委員 答弁は答弁として理解させていただいて、お立場もあるでしょうから。
 さて、ところで、無観客となればチケット収入九百億円が見込めなくなる一方で、セキュリティーの予算が削減できると一般的にはいわれるわけでありますが、このV5のセキュリティーは九百二十億円と計上されています。このうち東京都の負担分は五百五十億円になるわけでありますが、これらのうち観客にかかわる部分、また選手にかかわる部分はそれぞれどの程度になるでしょうか。伺いたいと思います。

○三浦オリンピック・パラリンピック準備局運営調整担当部長 セキュリティーの予算は、観客や選手、大会関係者等の安全を確保するため、競技会場など対象施設ごとに定める警備計画に基づきまして、セキュリティーカメラ等の機器、資器材等の整備や警備員の配置により、一体的な警備体制を構築するための経費でございます。このため、組織委員会は、観客にかかわる部分、選手にかかわる部分のそれぞれを区分けすることは困難としております。

○山口委員 組織委員会が、観客にかかわる部分、選手にかかわる部分を区分けするのは困難であるといっているのであれば、森会長の発言というのは一体何なんだろうかというのは極めて疑問に感じざるを得ないわけであります。
 また、私たちは、さまざまなシミュレーションをすることに加えて、ロードマップをしっかりと示すべきだと主張してきたわけでもあります。今後の対応工程表においても、月ごとの工程表が示されているわけでありますが、例えばです、今回の重要な判断の一つである観客上限のあり方については、来春までに決定というふうに書かれているわけでありますが、その矢印をじいっと見てみますと、四月から七月のところまでもう伸びてきてしまっているわけであります。
 私は、この決定時期は聖火ランナーがスタートをする三月二十五日より前、春分の日ごろには決定をするんだというふうに勝手に思い込んでいたのかもしれません。しかし、工程表上は四月以降の決定というふうに読み取れるわけですよね。そういったところもどうなんだと思うところもあるんですが、一昨日、二月三日には立春も迎えました。昨日には春一番も吹きました。春とは一体いつなんだろうかと。春が来るまでに決定と解していいんでしょうか。いつを目途として決定をされるのか伺いたいと思います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 観客数につきましては、中間整理にございますとおり、国内外の感染状況やスポーツイベントの開催状況なども踏まえまして、国内の上限規制に準じて、この春までに最終的に決定することとしてございます。

○山口委員 ここがかみ合わないというのは本当に厳しいんですね。もう直前まで迫ってきている状況の中で、この春というのがいつのことを示すんですか、指すんですかということを伺っているわけです。こうしたところが余りにも曖昧過ぎて不明確なことで、さまざまな臆測を招いてしまっているんだと思うんです。私は改めて、わかりやすく、かつ明確なロードマップというものを示していただきたいと強く求めておきたいと思います。
 この春の決定に当たっても、そのプロセスを明確にして、東京都がしっかりと大事な決定に関与できるようにしていただきたいと、その努力をしていただくよう強く要望もしておきたいと思うわけです。
 それを踏まえて、昨年三月二十四日、当時、安倍総理とIOCバッハ会長との電話協議で一年の延期が決まりました。この際のプロセスにおいて、東京都の関与はどうだったんでしょうか。伺いたいと思います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 昨年の大会延期につきましては、昨年三月二十四日に安倍総理大臣とIOCバッハ会長との電話会談が開催され、会談には、組織委員会会長、内閣官房長官、東京オリ・パラ担当大臣等とともに知事が同席してございます。
 会談では、改めて、中止はないこと、安全・安心な大会をおおむね一年程度延期することを軸として、二〇二一年の夏までに開催すること等で一致し、会談後のIOCの理事会で承認されたところでございます。

○山口委員 マラソンの札幌開催の発表のときの東京都の、皆さんもそうでしょう、都民の皆様が知ったときの衝撃、あれはもう忘れられないわけでありますが、あの轍を踏まないように、今回もこの決定プロセスを明確にしておきたいわけです。
 例えば、この決定に総理が出てくることがあるのかどうか。東京都との協議が明確に位置づけられているのかどうか。今回の無観客も含めた決定プロセスについて確認をしたいと思います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 国内の上限規制に準じまして、国内外の感染状況やスポーツイベントの開催状況等も踏まえまして、国、組織委員会等の関係者と議論した上で、IOC、IPCとも協議し、この春までに最終的に決定することとしております。

○山口委員 この春という期間、いつになったら、いつ明確にいろんなことが決まっていくのか。この段階においてこういう状況であれば開催、開催ができないという通知を受けられるんだと思うと。例えば、プロセスにおいても、この段階において、こういうふうにさまざまなことを決定していく。シミュレーションにしても、お客様をこの人数で開催するなら、無観客でやるならば、こういうふうにやっていくんですよということを明確に都民の皆様や世界中に発信することができると。
 この一つ一つを、今の段階で東京都ができ得る全てを、今していただいている努力を踏まえて発信をしていかない限り、世界中の皆さんも、そして国民の皆さん、そして都民の皆様においても、さまざまな具体的な事例を見て、不安が消えて、安心につながって、そして、おもてなしの心を持ってしっかりと世界中の方々を迎えていく。また、観戦ができるできないにかかわらず、選手の皆さんを心から応援する。そういった気持ちになって、歓迎される大会になっていくんじゃないでしょうか。
 今なかなか厳しい状況の中で、最初にもいいました、与えられる条件や厳しい判断材料の中で、皆さんが答弁に苦しまれている気持ちも十分わかるわけでありますが、こういった大会の開催に向けて、小池知事は繰り返し、都民の皆様の共感やご理解が何よりも必要と述べられているわけであります。しかし、現時点において、都民の共感や理解が得られているという状況にあると、ここにいる誰が思えるでしょうか。
 そこで、誰の責任において、そのように都民の共感や納得を得ていくんでしょうか。都の見解を伺いたいと思います。

○末村オリンピック・パラリンピック準備局運営担当部長 大会の開催に向けましては、選手、大会関係者、観客など、全ての方にとって安全・安心な環境が提供できるよう準備を進めていくことが重要でございます。そのため、昨年十二月に、国、組織委員会等で構成する調整会議において幅広く議論された内容を、アスリート、大会関係者、観客の三つのカテゴリーについて場面ごとに整理した対策と、今後の工程表を中間整理として取りまとめ、ホームページなどで広く公表し、対策の具体化を進めております。
 引き続き、都は組織委員会、国と協力し、安全・安心な大会に向けた準備を着実に進めるとともに、丁寧な情報発信を行うことで、都民の理解が得られるよう努めてまいります。

○山口委員 私は、都民の共感や納得を得ていくためには、知事が責任を持って、いわば率先をして都民、国民の皆様に情報を発信していくべきだと考えています。アスリートの皆様も、気候や天候などさまざまな状態を想定してトレーニングに励まれていることと思いますが、大会の延期や中止を想定してのトレーニングでは、いいパフォーマンスにつながるわけがないわけであります。そういった点から考えても、私も今、立場上、るる申し上げてまいりましたが、大会の成功を祈り、そして願ってやまない一人であります。
 何としても、この東京で、一年の延期がされ、その中でも、さらにいい大会を開こうと準備を重ね、さらに計画を練り上げ、コロナ禍という想定もしなかった事態の中においても、心折れることなく、一人の命や健康を害することがなく、笑顔で迎え、笑顔で帰っていただく。その準備のために、どれだけの心を痛めながら、つらい思いをしながら、この答弁に立っていただいている皆様のことを考えると、本当に感謝、ただただ熱い思いが込み上げてくる、そんな思いの一人でもあります。
 さまざま東京都に声が寄せられていることと思います。つらい言葉も、辛辣な言葉もあるかもしれません。しかし、今東京が貫くべき立場を私たちはしっかりと理解し、都民の皆様に本当にあるべき判断の時期、そういったものを示していくためにも、でき得る限りの検討を重ね、そして一つ一つを、改めて都民の皆様、そして全国の皆様、世界の皆様に発信していただくよう強くお願いを申し上げたいと思います。
 スポーツの力は偉大です。みんなが期待を寄せているのは、オリンピックの開催で夢を見、希望を持ち、そして将来、未来につながる明るい光を求めているからであります。そういった思いも込めて、大会開催に向けた局長の決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

○中村オリンピック・パラリンピック準備局長 この年末年始にもさまざまな学生スポーツもございました。また、世界的には、コロナ禍においても、さまざまな安全対策の工夫がなされて、大規模な国際大会も行われているところでございます。
 二〇二〇大会は、スポーツの力を通じて次代を担う若者に夢や希望、目標を与え、さらには日本社会の活力を高める契機ともなると考えております。
 また、二度目の夏季のパラリンピックを開催する世界初の都市として、パラスポーツの魅力を多くの人に伝え、大会後の共生社会の実現にもつなげていきたいと考えております。
 そしてまた、大会の原点でございます復興オリンピック・パラリンピックの理念を実現するため、スポーツの力で、東日本大震災の被災地へ元気を届け、復興へ歩む姿を世界に発信していきたいと考えております。
 ご指摘にございましたように、延期に伴った一年をプラスに変え、計画をブラッシュアップしているところでございます。
 緊急事態宣言を受けまして、現下の新型コロナウイルス対策には全庁挙げて取り組んでいるところでございます。大会に向けては安全・安心が何よりも大切でございますが、新型コロナを乗り越えて大会を実現するため、引き続き、IOC、IPC、あるいは国、組織委員会等関係者全て連携をし、大会準備に万全を期してまいりたいと考えております。

○山口委員 決意、受けとめました。本当に、今積み上げられているさまざまな計画、そしてこの努力、一つ一つの積み重ねは、どのような形になろうとも、これがこれから歴史的に行われていくオリンピックのすばらしい財産となり、そしてレガシーとなっていくことだと思います。しっかりとその点も受けとめながら、東京の立場というものも理解をしながら、応援をし、そして厳しい厳しい判断の中で、与えられる状況の中、一つ一つで進めていただければと思います。
 私ごとでございますが、私もコロナに罹患いたしました。厳しい入院生活を送り、重症となり、厳しい状況の中で、私の後輩でありますが、駒沢大学が箱根駅伝で逆転優勝する姿を病室で、実はテレビも見られる状況ではなかったんですが、その瞬間だけは見ることができました。本当に励まされた。スポーツの力って強いな、すごいなというふうに心から実感した瞬間でありました。後輩がこれだけ頑張っているんだから、俺も頑張らなきゃなと本当に思った瞬間でありました。
 陳腐に聞こえるかもしれません。でも、スポーツの力って本当に偉大だなと感じた瞬間を今まさに思い出したものですから、一言つけ加えて、皆様のご努力に心から感謝と御礼を申し上げ、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○奥澤委員 よろしくお願いします。東京二〇二〇大会のあり方について、きょうもいろいろ皆さんの会派のお考えを聞いていると、やっぱり今の段階で答えを出していく、一つの正解を出していくというのは本当に難しいことだなと改めて思って聞いていました。
 私たち無所属東京みらいというのは、たった三人という少ない人数ではありますけれども、それで議論していても、やっぱり刻一刻とコロナを取り巻く環境は変化していく中で、なかなか一つの答えには行き着かないというのが率直なところです。
 新型コロナが今後終息へと向かうのかどうかは不透明な中で、さまざまなケースについて検討を重ねていることと思いますけれども、そのご苦労には共感し、感謝と敬意を表するものです。
 一方で、やはり日本だけではなく、世界における現在の感染や医療状況を鑑みると、昨年の今ごろに思い描いていたような大会の開催は難しいといわざるを得ません。
 しかしながら、昨年のラグビーワールドカップでも感じた誇りや連帯といったポジティブな感情、それによって起こった有形無形のレガシーを思い出せば、中止、あるいは先の見えない延期というのは避けたいというのが率直な気持ちです。
 私たちが最も大事にしているのはレガシーです。数字であらわせるものもあれば、そうでないものもあります。意識してつくり出すものもあれば、無意識に育まれるものもあると思います。
 本日の大きな議題は大会経費V5、つまり開催にかかるコストですが、常にコストとベネフィット、いいかえるならレガシーを両にらみしながら、レガシーを最大化できる選択肢をとりに行く必要があると考える立場から質問していきます。
 今回提出されているV5予算では、新型コロナ対策や延期に伴う費用の増大によって約三千億円の追加経費となっています。これはインバウンド、つまり大会を目当てに訪日される海外の方々も含めて、フルスペックで観客を入れることを前提とした経費と認識していますが、それでは、大会のレガシーについては、延期前と延期後において考え方に変化はあるのか、どのように考えているのか見解を伺います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 東京二〇二〇大会に向けましては、都は、二〇二〇年に向けた東京都の取り組みを取りまとめ、新規恒久施設の将来にわたる有効活用や、東京全体のバリアフリーの浸透、ボランティア文化の定着など、ハード、ソフト両面のレガシーを見据え、さまざまな取り組みを推進してまいりました。
 また、これまでも大会に向けて進めてまいりましたTDMやテレワーク等のスムーズビズや、大会に向けた新型コロナ対策などの取り組みは、これからの都民の安全・安心な暮らしの実現にも寄与するものと認識しております。
 今後とも、組織委員会など関係者と連携し、大会後のレガシーを見据えながら、大会準備に取り組んでまいります。

○奥澤委員 新型コロナ対策も含めて、それ自体が都民の安全・安心に今後つながっていくように取り組んでいくというお話でありました。現在、緊急事態宣言のさなかということもあり、例えば成人式の中止、あるいはオンライン開催というものが相次ぎました。イベントについては観客数の制限が厳しく適用されています。オリンピック・パラリンピックを楽しみに、大切にしている人がいるのと同様に、成人式にも、各種イベントにも、それを大切に思って、生きる糧にしている人がいることを忘れてはならないと思います。
 感染が拡大しているからやめてくださいということではなくて、感染が拡大している今だけれども、どうしたら開催できるのか、ともに考えましょうと、一緒に新型コロナを乗り越えていきましょうという取り組みの先にある東京二〇二〇大会でなければ、本当の意味で都民、国民の共感を得ることは難しいと思っています。きょうここにいるのはオリ・パラ準備局の皆さんだけですけれども、その都民、国民感情を忘れずに取り組んでいただきたいと申し述べておきたいと思います。
 続いて、レガシーの中でも経済面を取り上げます。
 オリンピック・パラリンピックを初めとする世界規模のスポーツ大会は、大きく経済を動かすてこになるものだということは周知の事実です。例えば、一昨年開催されたラグビーワールドカップ日本大会の経済波及効果は六千四百六十四億円だったという報告があります。
 また、その後もさまざまなCMやテレビ番組でラグビー選手を見るようになったり、ラグビー人口がふえたり、関連商品が売れたりと、その後も経済への好影響は続いているものと考えています。
 一方で、六千四百六十四億円の内訳を見ると、その五四%は訪日客による消費支出であったとされております。冒頭に述べたとおり、訪日客による消費支出を期待することは難しいだろうと私たちは考えています。その場合、東京二〇二〇大会と軌を一にした経済波及効果が得られない可能性があると考えますが、どの程度を見込んでいるんでしょうか。直接的に得ることができない波及効果を踏まえた代替策、つまり終息後のインバウンド拡大を見据えたPRや、日本の文化の力を世界に発信するような仕掛けを考えていく必要があると考えますが、検討状況を伺います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 都は二〇一七年に、東京二〇二〇大会開催に伴う経済波及効果を公表いたしまして、全国への経済波及効果のうち、施設整備費や大会運営費など、大会の直接的効果として約五兆円、また新規恒久施設の後利用や大会関連交通インフラ整備など、大会後のレガシーを見据えた取り組みによる効果として約二十七兆円と試算しております。
 お話の大会を目的とした訪日客を含む観客や大会参加者の消費支出による効果は、直接的効果のうち約四千二百億円を見込んでいるところでございます。それに加えまして、バリアフリーの推進やスポーツの振興、環境先進都市の実現などは、東京の都市としての価値を高めるものでありまして、こういった大会後のレガシーを見据えながら大会準備を進めてまいります。

○奥澤委員 観客をどうするのか決定していない今の状況において代替策を答弁するというのは難しいこととは思いますけれども、大会期間中及び新型コロナ終息後の経済波及効果、そして数字にはあらわせないレガシーの創出に向けて取り組んでいくんだと、そういう意思が示されたものと私は解釈をしておきたいと思います。
 さて、レガシーとひとえにいっても、経済波及効果だけではなくて、むしろ、これによって変わる人々の内面の変化はかけがえのないものであると考えています。
 例えば、ラグビーワールドカップ日本大会では、NPOと連携した支援プログラム「チャイルド・ファンド パス・イット・バック」によって多額の寄附が集まって、アジアの貧困の中で暮らす子供二万人以上の生活にいい影響を及ぼしていくだろうということが期待をされています。
 また、日本で大会を見た十人中九人に、日本を誇りに思う、連帯のすばらしさを感じたといったポジティブな変化が起こっています。
 私もいわゆるにわかファンでしたけれども、世界中で、テレビやインターネット動画なども含めて、実に八億人を超える方々が試合を見たということです。見方を変えれば、これだけ多くの方にメッセージを発信することのできる機会、それはほかにはないというふうに思います。
 各種世論調査などでは中止を求める声が一定程度あるようですが、こうした無形のレガシーも残らない、残せないような選択肢はとりたくないというのが私の本心です。そう考えた場合、観客を減らすこと、あるいは無観客にするといった選択肢もあると思いますが、そうした選択肢については大会開催経費の試算を行っているのか伺おうと思ったんですけれども、先ほども同じ質問がございましたので、これについては質問は割愛させていただきたいと思います。
 なかなかお答えしにくい状況である。これはもう仕方ないと思います。しかしながら、引き続き経費の試算、オペレーションの変更なども出てくると思います。さまざまなシミュレーションを重ねていただきたいということを改めて求めておきたいと思います。
 また、経済波及効果の試算に関して、二〇一七年に行って以降、レガシーの取りまとめというのは行っていないというふうに私は認識をしています。これについても改めてケース別に試算を行うべきというふうに申し述べておきたいと思います。
 私としては、やはり直接的な数値にあらわせるレガシーについては見込みよりも低くならざるを得ないというふうに思うわけですけれども、その分、無形のレガシーを残していくための取り組みがより一層重要になってくると考えるところです。見解をお伺いしたいと思います。

○田中オリンピック・パラリンピック準備局計画推進部長 大会に向けましては、競技会場の整備等ハード面での取り組みに加えまして、パラスポーツの盛り上げ、オリンピック・パラリンピック教育等を通じた多様性を尊重する意識や、国際感覚の醸成、東京の魅力を発信する文化プログラムの展開など、多面的な取り組みを行っております。
 今後とも、関係局と連携し、大会後のハード、ソフト両面のレガシーを見据え、大会準備を着実に進めてまいります。

○奥澤委員 先ほどした質問ではちょっと言及がなかったんですけれども、ここでは文化に関しても言及をいただいたということで、考えを共有していただけたのかなというふうに思っています。
 コストベネフィットという話をしましたけれども、観客数が減るとなると、当然目に見える、そのときに直接的に出てくるレガシー、経済波及効果というのは低下せざるを得ませんし、チケット収入なども当然減少するということになるかと思います。ただ、同時に、経費とか、あるいは人的資源といったコストも多少なりとも減少するものというふうに考えます。
 一方で、今もたびたび申している無形のレガシーというものに関しては、今後さらに高めていく、伸ばしていく可能性もあるというふうに私は考えます。都としても、どこが分岐点になるのだろうかという部分をきちっと見きわめて、特にレガシーについては、今だけを見ることなく、大会後、あるいは新型コロナの終息後も含めた中長期的な視点で考えていただきたいということを改めてお伝えさせていただきます。
 続いて、昨年末の委員会でも取り上げましたが、東京二〇二〇大会が文化の祭典であるということを忘れてはならないと思います。さまざまな事業を通じて文化振興を図るという意味だけではなくて、東京二〇二〇大会から波及するもの、つまり、スポーツを見に来たんだけれども、その隣でやっていた文化事業も見ていったと、そういったようなこともあるはずで、むしろ、今いった後者の方がより一層、文化の裾野を広げていくものだったというふうに認識をしています。
 しかし、大会と軌を一にして行うはずであった文化イベントの開催、あるいは訪日客も含めた集客がなかなか難しい状況が続く今、当初想定していたような自然発生的に起こる波及効果が薄くなってしまうことは避けられないのではないかと思います。
 これを補うためには、例えば競技中継の合間に日本全国で開催する文化イベントを挟み込むことであったり、スポーツとは別の帯で文化事業を放映するといった別の仕掛けが必要になるとも思われます。こうした経費については大会関連経費として計上されるものと思いますけれども、関連経費については増減状況はどうなっていますでしょうか。お伺いします。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 大会関連経費は、行政目的のために行われるものでございますが、大会を契機に重点的に取り組むことで、大会のためにもなり、大会後の東京のさらなる発展につながるレガシーになるものの経費でございます。
 既存体育施設の改修や教育文化プログラム、都市ボランティアの育成、都市のバリアフリー対策、輸送インフラとしての道路整備など、大会に密接にかかわる事業や、大会の成功を支える関連事業について都が実施しております。
 令和三年度予算案においては、平成二十九年度から令和三年度までの五年間の合計で七千三百四十九億円となっております。大会開催に向けた新型コロナウイルス感染症対策等の経費を計上した一方で、経費精査を進めたことなどにより、昨年度見込みの七千七百六十六億円から四百十七億円の減となっております。

○奥澤委員 関連経費については四百十七億円の減少だということです。大会経費V5だけを見ていると見失ってしまいそうになるんですけれども、関連で行われること、関連経費も含めて東京二〇二〇大会になるはずです。今後、観客数が決まっていくような状況の中で、例えばそこでもさらに観客を減らしましょうというような状況があるんであれば、経費も減額されると私は思っていますので、そこで減額された経費をもって、今も話した文化の発信、あるいは被災地からの発信、そして国際交流の機会醸成などに費用を回していく、そういった考え方もぜひ持っていてほしいなというふうに思います。
 さて、最後の質問になりますが、大会をどのような状況で迎えることができるかという点では、ゲームチェンジャーといわれるワクチンが非常に重要です。国によっては、日本に先んじて接種が始まっているところもあれば、ワクチン開発もままならない国があるのが現実です。ワクチン開発や接種ができる比較的豊かな国だけの大会としてはならない。ワクチンが手に入らない国の選手へと手を差し伸べることも必要になると考えます。もちろん日本国内ですら全員に接種することは難しい状況で大会を迎えるわけですから、選手や関係者だけを優遇することには批判もあると思います。
 しかし、オリンピックやパラリンピックの理念に立ち返ったときに、オリンピックを通じて人類がともに栄え、文化を高め、世界平和の灯を永遠にともし続けることこそJOCの理想とされています。そうした世界全体の連帯というメッセージも発する場として、東京二〇二〇大会に期待をしています。
 そこで、ワクチン接種についてはV5予算には計上されていませんが、仮に選手と関係者にワクチン接種をするとなった場合にどれほどの費用が必要になると考えているのかお伺いします。

○菅原オリンピック・パラリンピック準備局調整担当部長 ワクチンにつきましては、調整会議の中間整理において、利用可能となった場合の対応を今後取り扱いの詳細を定める必要がある課題としているところでございます。

○奥澤委員 今後取り扱いの詳細を決めていくということですので、今お話ししたようなことも含めて、ぜひ検討を幅広くしていただきたいというふうに思います。
 きょう、質問は以上になるんですけれども、輸送運営計画V2については取り上げませんでした。冒頭申し述べましたけれども、この議場でお話しできることも、できないことも含めて、職員一人一人がシミュレーションを重ねていることは私たちには伝わっています。どのような場面が訪れてもベストな答えを出してくれると私は確信をしております。
 最後に、意見と、私なりの決意みたいなものですけれども、申し上げたいと思います。
 私は、東京二〇二〇大会が日本人の価値観を変えることが最大のレガシーになるというふうに考えてきました。五輪人権尊重条例における性自認、性的指向への差別的取り扱いの禁止、いわゆるヘイトスピーチの解消、受動喫煙の防止といった、これまでの日本においてはタブー視されてきたようなことについても、大会を契機に世界標準に肩を並べていこうという取り組み、あるいは議論こそが最も大切なことだったというふうに思っています。
 残念ではありますけれども、組織委員会の森会長から女性に対する差別的な、蔑視するような発言があった。これは事実であります。しかし、ジェンダーギャップ指数を見てもわかるとおり、日本はジェンダー平等について世界から大きくおくれをとっているのが現実なんです。確かに発言自体は大変遺憾です。個人的にも許しがたいものです。
 しかし、森会長がやめても、この東京に、日本に、性による差別や生きづらさが残っているということは何も変わらないんです。
 一例を挙げれば、ダイバーシティーをうたうこの東京都にあっても、同性パートナーシップ制度の検討は全く進んでいない。コロナ禍の今も切実な不安を抱えて暮らす方々がいらっしゃいます。また別の例を挙げるならば、都立学校の入学試験において男女別定員制が残っていて、男女間に合格点の格差が生じているのも現実です。
 この場に小池知事がいないのは残念でなりませんが、本当の意味で五輪を迎えるにふさわしい東京に生まれ変わるチャンスなんだと思います。これを機に、パートナーシップ制度の実現やジェンダー平等の実現、こういったことも東京二〇二〇大会の残すべきレガシーの一つにすべく取り組んでいくことが私たちの責務だというふうに考えています。
 怒りや憤りといった感情をそのまま表現することは簡単です。失敗を犯した個人を責めることは誰にでもできます。しかし、その失敗をカバーして、分断を生むことなく、今よりもよい社会をつくっていくことができるのは、私たちにしかできないことなんです。
 本当の意味で東京が、日本が、世界がワンチームになるよう全力を尽くすことをお誓いして、また、これを見ている、聞いている皆様がそういった取り組みをしていただけることを心からお願いして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

○小山委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小山委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時三十七分散会

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