オリンピック・パラリンピック特別委員会速記録第十四号

令和五年十二月十八日(月曜日)
第四委員会室
午後二時開議
出席委員 十八名
委員長川松真一朗君
副委員長谷村 孝彦君
副委員長小松 大祐君
副委員長小山くにひこ君
理事伊藤しょうこう君
理事小林 健二君
理事伊藤 ゆう君
たかく則男君
星  大輔君
米川大二郎君
細田いさむ君
白戸 太朗君
入江のぶこ君
五十嵐えり君
池川 友一君
藤井とものり君
とや英津子君
あぜ上三和子君

欠席委員 なし

出席説明員
政策企画局局長戦略広報調整監兼務古谷ひろみ君
次長理事兼務木村 健治君
総務部長末村 智子君

本日の会議に付した事件
第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の開催について調査・検討する。
委員会調査報告書について

○川松委員長 ただいまからオリンピック・パラリンピック特別委員会を開会いたします。
 初めに、謹んでご報告申し上げます。
 本委員会の委員であられました高島なおき議員におかれましては、去る十月二日、ご逝去されました。誠に哀悼痛惜の念に堪えません。
 故高島なおき議員のご冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと思います。
 皆様、ご起立をお願いいたします。
 黙祷。
   〔全員起立、黙祷〕

○川松委員長 黙祷を終わります。お直りください。ご着席をお願いいたします。ありがとうございました。

○川松委員長 次に、委員の選任について申し上げます。
 議長から、去る十月二十日付をもちまして、星大輔委員を選任した旨、通知がありましたので、ご報告いたします。
 この際、新任の委員を紹介いたします。
 星大輔委員です。

○星委員 よろしくお願いいたします。

○川松委員長 紹介は終わりました。

○川松委員長 次に、議席について申し上げます。
 議席は、ただいまご着席のとおりといたしますので、ご了承願います。

○川松委員長 これより第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の開催に関する事項について調査を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、委員会報告書についての決定を行います。
 委員会報告書を議題といたします。
 委員会報告書(案)は、お手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

   〔委員会報告書(案)は本号末尾に掲載〕

○川松委員長 この際、本件に対し発言の申出がありますので、これを許します。

○あぜ上委員 日本共産党都議団を代表して、ただいまの委員会調査報告書(案)について、反対を述べたいと思います。
 報告書の中身も東京二〇二〇大会を美化するものが多く見られるなど、賛成できませんが、何よりも、今回の報告書をもって特別委員会を閉じるべきではありません。東京大会の総括は道半ばであり、本特別委員会の果たすべき役割は極めて大きいものがあります。
 第一に、東京大会をめぐっての新たな不正疑惑が相次いで発覚しているにもかかわらず、真相が解明されていないことです。
 談合問題でも、都の調査チームの報告書は、個人の責任や違法性は追及せず、都の派遣職員がこの談合問題を事前に知っていたのか、止められる立場にあったのかどうかなど、いまだに明らかになっていません。
 そればかりか、十二月五日の電通が被告の公判の中で、吉村元財務局長が談合に直接関与し、主体的な役割を果たしていたのではないかという新たな疑惑が浮上しました。この不正疑惑を徹底解明すべきです。
 加えて、馳浩石川県知事の五輪招致に関わる重大発言に関わって、当時の猪瀬知事が二〇一三年二月二十六日の本会議質問の答弁で、絆作戦や友達作戦を駆使してIOC委員に迫っていくと発言をされていることと符合します。猪瀬氏がアルバム作戦を知っていた可能性もあり、その真相も明らかにすべきです。
 大会後、東京二〇二〇大会の談合事件、汚職事件、そして、招致活動での疑惑問題など、次々と発覚しています。特別委員会として、五輪の闇について真相を明らかにすることは重要な責務であり、吉村氏及び馳氏、猪瀬氏の参考人質疑を行うなど、徹底解明すべきです。今、特別委員会を閉じることは、疑惑に蓋をするものであり、到底認められません。
 第二に、清算法人の清算結了はされていません。裁判で談合が確定したら、夢の島アーチェリーの費用は公費、都費が使われており、その損害賠償請求を都として組織委員会に行うこととなります。
 清算結了もしていない、損害賠償請求についても決着していない状態の中で、特別委員会を継続することは都議会として当然の責務です。
 以上のことから、この調査報告書をもってオリンピック・パラリンピック特別委員会を閉じるべきではないということを申し上げ、意見表明といたします。

○藤井委員 東京都議会立憲民主党を代表して、委員会報告書(案)について意見を申し上げます。
 東京オリンピック・パラリンピック大会そのものは無事終了しましたが、大会を開催するに当たっての様々な疑惑、事件については、実態が明らかになったとはいえません。
 総額四百三十億円もの談合事件では、十二月十二日、大会組織委員会の元次長に対し、東京地裁は懲役二年、執行猶予四年の有罪判決をいい渡しましたが、その他起訴されている電通グループなどの判決は、これからといえるものであります。
 賄賂を送った側の五つの企業と十二人の被告の有罪判決が確定しているスポンサー契約などをめぐる汚職事件では、十二月十四日に大会組織委員会の元理事の初公判が開かれ、元理事は公判で賄賂の大半を否定しております。
 当委員会報告書案につきましては、当特別委員会において議論されてきたことが確認されており、この経過については認め、報告書自体は了といたします。
 しかし、様々な疑惑、事件については、引き続き都議会の場において報告、質疑のほか、都においても徹底した検証がなされるべきと強く求め、意見表明といたします。ありがとうございます。

○米川委員 ミライ会議を代表して、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
 特別委員会での調査が終了となります。コロナ禍の中で、無観客ではありましたが大会が開催され、人生をかけて練習をしてきた多くのアスリートの方たちが競技を行うことができたことは、とてもよかったと考えております。
 しかし、五輪談合事件で元次長が懲役二年、執行猶予四年の有罪判決を受けたことは、判決文にもありますが、東京大会を成功に導きたいという責任感から犯行に至った側面は否定できないとして、純粋に私的利益を追求した犯行と異なる点とありますが、とても残念でなりません。
 今後、常任委員会で清算法人等について質疑が行われることになりますが、都は、自ら第三者委員会を設置しての調査や、元次長の上司の管理監督責任などについて取り組むことを求めます。
 最後に、調査報告書一〇ページ、4の結び、四行目の成功の文字についてですが、この成功の言葉は、いろいろと受け止めることが関係者にとってできると考えております。過去のオリンピックでいえば、モスクワ五輪をボイコットして、選手が大会に参加できなかったことや、私の記憶にあります長野五輪のジャンプ団体では、テストジャンパーの方の力で競技が再開し、日本が金メダルを獲得したことが記憶に残っております。
 コロナ禍の困難な中、今回、人生をかけて東京大会を目指して練習を重ねてきた多くのアスリートの方たちが競技を行うことができたことが成功なのだと私はこの言葉を受け止めています。
 東京二〇二〇大会に続くデフリンピックなどは、この様々な成功がたくさん積み重なって大成功となることを期待して、意見とします。

○川松委員長 発言は終わりました。
 これより採決を行います。
 本件は、起立により採決いたします。
 本件は、お手元配布の委員会報告書(案)のとおりとすることに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○川松委員長 起立多数と認めます。よって、委員会報告書は、お手元配布のとおり決定いたしました。

○川松委員長 次に、委員会調査に関する委員長の口頭報告について申し上げます。
 本件は、第四回定例会におきまして、委員長による口頭報告を行うこととさせていただきますので、ご了承願います。
 なお、本会議における委員長の口頭報告については、理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○川松委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
 これをもちまして、第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の開催に関する事項について調査を終了いたします。

○川松委員長 この際、古谷政策企画局長から発言の申出がありますので、これを許します。

○古谷政策企画局長 挨拶に先立ちまして、長きにわたりご指導いただいた高島前委員長のご逝去に対しまして、改めまして謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 本委員会におかれましては、これまでの間、東京二〇二〇大会の開催に係る施設の整備、輸送、大会運営、自治体等との連携協力など、様々な事項について調査、ご審議いただきました。数々の貴重なご意見を賜り、感謝申し上げます。
 東京二〇二〇大会は、コロナ禍による一年の延期、そして、無観客という困難な状況の下、都議会の皆様をはじめ、都民、大会関係者、ボランティアなど多くの方々のご支援、ご協力を得て開催することができました。
 共生社会の実現や環境先進都市の推進など、大会を通じて生み出された様々なレガシーを継承し、今後の国際スポーツ大会に向けた取組の推進や東京のさらなる発展へと着実につなげてまいります。どうぞよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
 簡単ではございますが、お礼のご挨拶とさせていただきます。誠にありがとうございました。

○川松委員長 発言は終わりました。
 この際、私からも一言ご挨拶を申し上げます。
 本委員会は、令和三年第二回臨時会で設置されて以来、議会から付託されました調査事項について精力的に調査検討を重ねてまいりました。東京二〇二〇大会は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、史上初の一年延期、ほぼ無観客開催という過去に例を見ない困難な状況下での開催となりました。
 本委員会では、大会におけるハード、ソフト両面の多様な取組が推進され、また、レガシーや成果などを後世に引き継ぐよう、本日まで取り組んでまいりました。
 私自身は、前高島委員長の辞任に伴い、図らずも、本年八月三十日に委員長に就任させていただきましたが、ここに報告書をまとめることができましたのは、ひとえに谷村副委員長、小山副委員長、小松副委員長をはじめ理事、委員の皆様方のご協力のたまものと心から感謝を申し上げる次第でございます。
 また、理事者の皆様方におかれましては、真摯な姿勢で本委員会の運営にご協力いただきましたことに改めて御礼を申し上げます。
 最後に、本委員会における調査検討の結果につきましては、執行機関において、世界陸上、デフリンピックを成功に導き、次代を担う子供たちにスポーツの価値や感動、勇気を届けていただくことを望むとともに、議会側としても、今後も所管の常任委員会や本会議での審議などを通じて、引き続き、今後の国際スポーツ大会等に向けた取組を推進していくことを申し上げ、私からの最後の挨拶とさせていただきます。皆様、どうもありがとうございました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時十三分散会


オリンピック・パラリンピック特別委員会報告書(案)

 本委員会は、令和3年8月20日に設置され、令和3年に開催された第32回オリンピック競技大会及び第16回パラリンピック競技大会の開催に関する事項について調査・検討を行ってきたところですが、令和5年12月18日に本大会の開催に関する事項について調査を終了したので報告いたします。
 令和5年12月18日
オリンピック・パラリンピック特別委員長
 川松 真一朗
東京都議会議長
 宇田川 聡史 殿

目次
1 本委員会の設置
(1)設置の経過
(2)委員及び役員
2 調査審議及び必要な活動の経過
3 調査・検討の概要
(1)施設・輸送について
(2)大会運営について
(3)気運醸成について
(4)連携協力について
(5)大会経費について
(6)レガシーについて
(7)その他
4 結び
(参考)オリンピック・パラリンピック東京大会に関する特別委員会の経緯

1 本委員会の設置
(1)設置の経過
 本委員会は、東京都議会として、第32回オリンピック競技大会及び第16回パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)の開催に関する事項について調査・検討を行うことを目的として令和3年8月20日の令和3年第二回臨時会本会議において、北口つよし君外86名の動議により、下記の要綱のとおり設置された。


オリンピック・パラリンピック特別委員会設置要綱
1 名称
 オリンピック・パラリンピック特別委員会とする。
2 設置の根拠
 地方自治法第109条第1項及び東京都議会委員会条例第4条による。
3 目的
 第32回オリンピック競技大会及び第16回パラリンピック競技大会の開催について調査・検討する。
4 委員会の組織
 委員の定数は、18名とし、委員長1名、副委員長3名及び理事3名を置く。

(2)委員及び役員
ア 議長は、令和3年8月20日の第二回臨時会本会議に諮り、次のとおり委員を指名した。
 たかく則男君 清水やすこ君
 伊藤しょうこう君 白戸 太朗君
 五十嵐えり君 小林 健二君
 川松真一朗君 清水 孝治君
 池川 友一君 谷村 孝彦君
 山崎 一輝君 入江のぶこ君
 藤井とものり君 とや英津子君
 あぜ上三和子君 高島なおき君
 伊藤 ゆう君 小山くにひこ君
イ 令和3年8月20日の委員会において、次のとおり委員長、副委員長及び理事が互選された。
 委員長  高島なおき君
 副委員長 谷村 孝彦君
 副委員長 山崎 一輝君
 副委員長 小山くにひこ君
 理事  小林 健二君
 理事  川松真一朗君
 理事  伊藤 ゆう君
ウ 議長は次のとおり、委員の辞任を許可し、新たに委員を指名した旨を令和4年2月16日の令和4年第一回定例会本会議で報告した。
 令和4年1月13日付け
 ○辞任  池川 友一君
 ○選任  アオヤギ有希子君
エ 議長は次のとおり、委員の辞任を許可し、新たに委員を指名した旨を令和4年6月1日の令和4年第二回定例会本会議で報告した。
 令和4年4月19日付け
 ○辞任  アオヤギ有希子君
 ○選任  池川 友一君
オ 議長は次のとおり、委員の辞任を許可し、新たに委員を指名した旨を令和4年12月1日の令和4年第四回定例会本会議で報告した。
 令和4年11月24日付け
 ○辞任  清水やすこ君
 ○選任  米川大二郎君
カ 議長は次のとおり、委員が退職した旨を令和5年6月6日の令和5年第二回定例会本会議で報告した。また、同本会議において、議長指名のとおり委員の選任を決定した。
 令和5年4月16日付け
 ○退職  山崎 一輝君
 令和5年6月6日付け
 ○選任  鈴木 章浩君
キ 令和5年6月14日の委員会において、山崎一輝副委員長の退職に伴い、欠員となった副委員長1名が次のとおり互選された。
 副委員長  清水 孝治君
ク 議長は次のとおり、委員の辞任を許可し、新たに委員を指名した旨を令和5年9月19日の令和5年第三回定例会本会議で報告した。
 令和5年6月22日付け
 ○辞任  鈴木 章浩君
 ○選任  細田いさむ君
 令和5年8月22日付け
 ○辞任  清水 孝治君
 ○選任  小松 大祐君
ケ 令和5年8月30日の委員会において、高島なおき委員長の辞任が許可され、欠員となった委員長及び委員長就任に伴い欠員となった理事1名が次のとおり互選された。
 委員長  川松真一朗君
 理事  伊藤しょうこう君
コ 令和5年8月30日の委員会において、清水孝治副委員長の委員辞任に伴い、欠員となった副委員長1名が次のとおり互選された。
 副委員長  小松 大祐君
サ 議長は次のとおり、委員の逝去に伴い、新たに委員を指名した旨を令和5年12月5日の令和5年第四回定例会本会議で報告した。
 令和5年10月2日 逝去 高島なおき君
 令和5年10月20日付け
 ○選任  星  大輔君
2 調査審議及び必要な活動の経過
 本委員会は、14回の委員会及び10回の理事会の開催を実施した。
年 月 日
委員会及び理事会の調査事項
委員会
理事会
令和3年
8月20日(金)
○委員長の互選
○副委員長の互選
○理事の互選
○議席について
・今後の委員会運営について
・運営要領について
・その他

10月11日(月)
○報告事項(説明)
(1)東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催状況報告(速報)について
(2)東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会アーカイブ資産協定の締結について
(3)東京都聖火リレー実行委員会(第20回から第23回)について
○閉会中の継続調査について
・本日の委員会運営について
・閉会中の継続調査について
・その他

12月8日(水)
○閉会中の継続調査について

12月24日(金)
○報告事項
(1)大会経費の見通しについて(説明)
(2)東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催結果について(説明・質疑)
(3)持続可能性大会後報告書について(説明・質疑)
(4)第24回東京都聖火リレー実行委員会について(説明・質疑)
(5)東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催状況報告(速報)について(質疑)
(6)東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会アーカイブ資産協定の締結について(質疑)
(7)東京都聖火リレー実行委員会(第20回から第23回まで)について(質疑)
・本日の委員会運営について
・その他

令和4年
2月17日(木)
○報告事項
(1)第25回東京都聖火リレー実行委員会について(説明・質疑)
(2)大会経費の見通しについて(質疑)
○閉会中の継続調査について
・本日の委員会運営について
・閉会中の継続調査について
・その他

6月8日(水)
○閉会中の継続調査について
・運営要領の改正について
・閉会中の継続調査について
・その他

9月20日(火)
○報告事項(説明)
(1)大会経費の最終報告等について
○閉会中の継続調査について
・本日の委員会運営について
・閉会中の継続調査について
・その他

11月9日(水)
○報告事項(質疑)
(1)大会経費の最終報告等について
・本日の委員会運営について
・今後の委員会運営について
・その他

12月8日(木)
○閉会中の継続調査について

令和5年
3月2日(木)
○閉会中の継続調査について

6月14日(水)
○役員互選
○閉会中の継続調査について

8月30日(水)
○役員互選
○報告事項(説明・質疑)
(1)東京2020大会テストイベントに係る談合報道に関する調査報告書について
(2)TOKYO2020レガシーレポートについて
・本日の委員会運営について

9月26日(火)
○閉会中の継続調査について

12月5日(火)
・今後の委員会運営について

12月18日(月)
○委員会調査報告書について
・委員会の運営について

3 調査・検討の概要
 本委員会は、令和3年8月20日に設置された後、これまで約2年4カ月にわたり14回開催し、精力的に調査・検討を行ってきた。本委員会では、東京2020大会の開催状況等について理事者から報告を聴取し、その内容について調査・検討を行った。本委員会の調査事項は大きく分類すると、〔1〕施設・輸送、〔2〕大会運営、〔3〕気運醸成、〔4〕連携協力、〔5〕大会経費、〔6〕レガシー、〔7〕その他の7つに分けられる。

(1)施設・輸送について
 東京2020大会開催に向けて、競技会場については、国際水準の新規恒久施設が整備されるとともに、既存の都立スポーツ施設についても機能の強化が図られた。また、大会輸送については、都民生活、経済活動との両立が図られつつ、スムーズな運営を支える安全で円滑な輸送が行われた。
 本委員会では、施設整備における都、国、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)の役割分担の下で都が実施した新規恒久施設の整備に当たり、最新の技術を導入するなど様々な工夫がなされ、施工の効率性や安全性向上が図られたことなどが確認された。大会後の新規恒久施設の再開業については、東京アクアティクスセンターは、観客席の縮減や天井の施工等の改修工事に時間を要する一方、他の新規恒久施設については可能な部分から一部再開業されることなどが確認された。また、都立スポーツ施設については「TOKYOスポーツレガシービジョン」に基づき、それぞれの特性を活かし、スポーツやエンターテインメントなど多様な活用を進めていくことに加え、各施設管理者や周辺地域ともさらに連携し、都民の貴重な財産として末永く活用されるよう取り組んでいくことなどが確認された。仮設施設については、その活用方法や、効率的な運営について総合的に検討されることなどが確認された。
 大会輸送については、大会期間中、業界団体や企業も参画した2020 TDM推進プロジェクト等により、人とモノの流れについて移動を減らす、時間をずらす、ルートを変更するなどTDMの実践を呼びかけ、首都高速道路の料金施策、入り口閉鎖などが実施された結果、大会期間を通じて競技運営の支障となるような輸送の遅延はなかったことなどが確認された。また、パラリンピックでは、リフト付きバスや低床バスが輸送に当たり、一部に車いすのまま乗降できるスロープが設置されたことなどにより、円滑な輸送を確保できたとの成果が確認された。

(2)大会運営について
 新型コロナウイルスの感染拡大という過去に例がない困難な状況の中、安全・安心な大会を実現するため、感染症対策を徹底するとともに、国内外の感染状況も踏まえ、今大会は、原則として無観客で開催されることとなった。大会では約7万人の大会ボランティア、約1万人の都市ボランティアが活動し、選手のサポートなどの大会運営や大会の応援、大会の情報提供に献身的に貢献した。
 本委員会では、無観客開催による様々な影響などについて質疑が行われるとともに、新型コロナウイルス感染症対策については、地域医療やワクチン接種に支障が出ないよう大会の安全と地域の医療の両立を図り、必要な医療サービスの提供が行われたことなどが確認された。アスリート等が滞在する選手村では、地域の保健衛生機能を強化するため、東京2020大会保健衛生支援東京拠点を構築し、選手村での感染拡大の防止に貢献したことなどが確認された。アスリート等に対しては、行動ルールについて、日本入国前からオンライン会議などを通じて関係者へ周知され、大会中も組織委員会から各国選手団等に対して行動ルール等の遵守について要請を行ったことなどが確認された。また、水際対策や入国後の行動管理等の結果、大会関係者の空港検疫による検査や大会中のスクリーニング検査における陽性率が低く抑えられたことなどが確認された。
 ボランティアについては、対応の丁寧さや親切さなどについて、選手、大会関係者、国内外の報道やソーシャルネットワークサービス(以下「SNS」という。)を通じ、数多くの感謝と称賛があったことや、障害などにより配慮・支援が必要な方も数多くボランティアとして参加していたことなどが確認された。
 また、組織委員会では、持続可能性に配慮した運営計画において、調達物品の再使用、再生利用率99%の目標を掲げ、その実現に向けた取組を進めた結果、99.97%となり、目標を達成したことが確認された。この他、大会中の食品ロスについては飼料化、バイオマス化などにより削減されたことなどが確認された。

(3)気運醸成について
 東京2020大会は、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、大会期間中の人流を抑制するためライブサイトとパブリックビューイングの実施を大幅に見直し、ステイホーム観戦が呼びかけられた。聖火リレーについては、都内の自治体に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用となり、公道での走行を見合わせた地域においては、各区市町村を走行する予定のランナーにより、セレブレーション会場などで点火セレモニーが行われた。島しょ地域では、点火セレモニーのみを実施した大島町を除き、8町村、10の島々において公道で聖火リレーが実施された。
 本委員会では、ライブサイトの見直しの経緯や、点火セレモニーにおける運営上の工夫、障害を有する聖火ランナーに対する配慮などについて質疑が行われた。
 ライブサイトについては、当初、生中継での競技観戦のほか、競技体験や飲食などが予定されていたが、観客以外の人流対策として、中止又は規模縮小の方向で検討され、集客型のライブサイトやイベントから転換し、自宅観戦に役立つ大会情報や競技、選手等を紹介する特設ウェブサイトなど、デジタルを活用した情報発信が展開されたことなどが確認された。
 点火セレモニーについては、当日走行予定の区市町村ごとの入替え制とし、聖火ランナーの家族以外は無観客とするなど、密集を避ける工夫がなされ、セレモニーの模様はインターネットのライブストリーミングで配信された。また、障害のある聖火ランナーの要望に応じて介添人と一緒に点火セレモニーに参加していただくことや、車いすのための動線確保、ユニフォームに着替えるための専用更衣室、手話通訳など、受入れ体制を整備したことなどが確認された。

(4)連携協力について
 本大会では、選手が日本の伝統や文化を味わえるよう、全国各地から無償で貸与された木材が選手村のビレッジプラザに使用された。選手村の食堂では、地域の活性化や農畜水産物の生産振興、地産地消の拡大につながるよう、被災地産など全国の食材を活用した日本食が毎日提供された。また、本大会は復興オリンピック・パラリンピックとして位置付けられ、被災県と連携し、被災各県の県木植樹や復興モニュメントの設置が行われた。
 本委員会では、大会後、各自治体に返却された木材の取扱いや、大会を契機とした東京、日本の魅力発信、被災県に関する海外での報道のされ方、被災県へ移設された復興モニュメントの状況などに関する質疑が行われた。
 各自治体に返却された木材は、それぞれの公共施設において大会のレガシーとして引き継がれていることや、SNSなどを活用し各国選手が日本食の魅力を発信したこと、さらには世界中から受けた支援への謝意を伝えるとともに復興に向けて力強く歩む被災地の姿が世界に発信された点などが確認された。また、岩手県、宮城県、福島県にそれぞれ移設、寄贈された復興モニュメントが今後、各被災地においてレガシーとして活用されることが確認された。

(5)大会経費について
 大会の経費をはじめ役割分担に関しては、平成29年に都、組織委員会、国、関係自治体が合意し、毎年度、大会経費の状況が公表されてきた。令和2年12月にはコロナ対策関連経費と大会の延期に伴って生じる追加経費を反映した大会経費V5が公表された。令和3年12月にはV5以降の事象に対する都、国、組織委員会の三者合意に基づく大会経費の見通しが公表され、大会経費はV5予算の範囲内に収まり、都と国が新たな予算措置を講ずることなく対応できる見通しが示された。令和4年6月に公表された大会経費の最終報告では、経費の総額は1兆4,238億円となり、大会経費V5を2,202億円下回ることとなった。
 本委員会では、大会経費V5を下回った要因として、国際オリンピック委員会(以下「IOC」という。)、国際パラリンピック委員会(以下「IPC」という。)などとサービスレベル水準の最適化や合理化を検討し、大会の簡素化を図るとともに、大会関係者数の削減、会場運営やセキュリティ等の効率化、無観客開催等に伴う契約の見直しを継続的に行ったことなどにより経費が削減されたことなどが確認された。収入については、チケット売上が減少した一方で、トップスポンサーからの収入に加え、国内スポンサーの確保やライセンシング収入などにより大会延期前の令和元年12月に公表された予算を上回る収入となったことや、その他の収入として国内パートナーによる追加協賛金、寄附金による増収があったことなどが確認された。また、都や国が公費で費用を負担する共同実施事業について都、国、組織委員会の三者による共同実施事業管理委員会により、コスト管理・執行管理等が図られたことや、都が開催都市として安全・安心な大会の円滑な実施の観点から、大会の開催に要した組織委員会の経費について、V5予算の範囲内で共同実施事業負担金を支出して対応したことなどが確認された。また、大会経費の他に、都の施策として支出された大会関連経費についても質疑が行われた。

(6)レガシーについて
 東京2020大会が東京にもたらしたものは、ハードからソフトまで多岐にわたっている。東京2020大会の記録を広く後世に残し、今後の国内での大規模大会や将来の開催都市が活用できるよう、大会の開催に向けた都の取組や成果は、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)東京2020パラリンピック競技大会東京都報告書」(令和4年3月刊)として取りまとめられ、組織委員会においては、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会公式報告書」が公表された。他にも都や組織委員会のそれぞれの取組を詳細に伝える報告書、活動記録、レポートなどが都のホームページなどで順次公表された。
 本委員会では、スポーツ施設の整備などのハード面、パラスポーツの振興、文書保存、ボランティア文化の定着など、様々な観点からレガシーに関する質疑が行われた。
 新規恒久施設やバリアフリー化など機能強化がなされた都立スポーツ施設は、スポーツでの更なる活用とともにエンターテインメントやユニークベニューなど多様な活用を図り、都民へ提供する価値を最大化していくことなどが確認された。パラスポーツの振興については、TEAM BEYOND事業や競技体験機会の創出などを通じてパラスポーツの更なる普及を推進する方針などについて確認された。文書保存については、「東京二○二○オリンピック・パラリンピック競技大会に係る文書等の保管及び承継に関する条例」を踏まえ、組織委員会が組織的に用いたすべての文書が保管および承継され、そのうち、将来の大会関係者に利用を限定する文書は日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)が管理し、広く一般に公開することが可能な文書は都が管理することなどが確認された。さらに、都、IOC、IPC、JOC、日本パラリンピック委員会(JPC)、組織委員会の六者で締結されたアーカイブ協定に基づき、聖火リレーのトーチや競技用備品など大会を象徴する資産を保管、継承していくことが確認された。ボランティアに関しては、大会を契機に高まったボランティア気運を一過性のものとせず、大会後もボランティア活動を継続し、活躍の場を広げるためのポータルサイト「東京ボランティアレガシーネットワーク」を開設し、レガシーとしてのボランティア文化の定着が図られるよう取り組んでいくことなどが確認された。また、TOKYO2020レガシーレポートでは、レガシーを9つの分野に分類して明示し、大会の様々なレガシーをさらに発展させていくことなどが確認された。

(7)その他
 東京2020大会後に組織委員会元理事の受託収賄事件やテストイベントに係る談合事件についての報道があり、委員会において質疑が行われた。
 元理事の受託収賄事件に係る事案については、都が清算法人に対して捜査に全面的に協力するよう求めていることや、捜査を通じて事実関係が明らかにされるものであることなどが確認された。
 談合事件の報道を受けて都が調査公表した「東京2020大会テストイベントに係る談合報道に関する調査報告書」については、第三者である有識者から、都の関与について、大会運営組織が実施する事業全体の支出をチェックする仕組みや、都としての関与や監視を可能にする枠組みが必要であるなどの意見があったことなどが確認された。また、都は有識者の意見を踏まえ、国際スポーツ大会への東京都の関与のガイドラインを充実するとともに、今後の国際大会においては、役員選任の仕組みや情報公開、監査機能の強化が図られるなど、東京2020大会の教訓を活かし、しっかりと取り組んでいくことなどが確認された。

4 結び
 東京2020大会は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、史上初の1年延期、ほぼ無観客という過去に例を見ない困難な状況下での開催となった。大会の運営においては、様々な想定外の事態に対して臨機応変な対応を余儀なくされる厳しい状況の中、アスリートをはじめ、大会関係者、国民、都民にとって安全・安心な大会として成功を収めることができた。
 本委員会では、東京2020大会の開催結果や大会経費の見通しなどについて報告を聴取するとともに、大会におけるハード・ソフト両面の多様な取組について調査・検討を行い、レガシーや成果などを後世に引き継ぐよう、様々な提案などを行ってきた。
 大会を通じて生み出された様々なレガシーにより、来たる2025年に東京で開催される東京2025世界陸上競技選手権大会、第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025を成功に導き、次代を担う子供たちにスポーツの価値や感動、勇気を届けるとともに、東京2020大会で培ったバリアフリーの共生社会づくりの取組をはじめとした数々の大会のレガシーを今後の東京の発展に活かしていくことを強く希望する。

 以上をもって、本委員会の報告とする。

(参考)オリンピック・パラリンピック東京大会に関する特別委員会の経緯

委員会名称
期間
第17期
オリンピック招致特別委員会
平成18年10月5日から平成20年6月25日まで 注釈
オリンピック・パラリンピック招致特別委員会
平成20年6月25日から注釈平成21年6月1日まで

第18期
オリンピック・パラリンピック招致特別委員会
平成21年9月15日から平成22年6月4日まで
オリンピック・パラリンピック招致特別委員会
平成23年12月15日から平成25年6月3日まで

第19期
オリンピック・パラリンピック招致特別委員会
平成25年8月8日から平成25年12月4日まで
オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員会
平成25年10月11日から平成29年6月1日まで

第20期
オリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会
平成29年8月8日から令和2年3月27日まで 注釈
オリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会
令和2年3月27日から 注釈 令和3年6月1日まで

第21期
オリンピック・パラリンピック特別委員会
令和3年8月20日から令和5年12月18日まで

注釈 同日付で名称変更。

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