委員長 | 小林 健二君 |
副委員長 | たきぐち学君 |
副委員長 | 斉藤まりこ君 |
副委員長 | 松田 康将君 |
石島 秀起君 | |
もり 愛君 | |
たかく則男君 | |
林あきひろ君 | |
森口つかさ君 | |
阿部祐美子君 | |
とくとめ道信君 |
欠席委員 なし
出席説明員下水道局 | 局長 | 神山 守君 |
次長 | 松川 桂子君 | |
総務部長 | 田中 彰君 | |
職員部長 | 白川 敦君 | |
経理部長 | 坂井 吉憲君 | |
計画調整部長 | 佐々木 健君 | |
施設管理部長 | 猪八重 勇君 | |
建設部長 | 袰岩 滋之君 | |
企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 | 福島 大起君 | |
技術開発担当部長 | 青木 知絵君 | |
施設管理担当部長 | 鈴木 豊君 | |
流域下水道本部 | 本部長 | 佐々木秀之君 |
管理部長 | 後藤 徹也君 | |
技術部長 | 小団扇 浩君 |
本日の会議に付した事件
令和二年度東京都公営企業各会計決算の認定について
下水道局関係
・令和二年度東京都下水道事業会計決算(質疑)
○小林委員長 ただいまから令和二年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
本日は、お手元配布の会議日程のとおり、下水道局関係の決算に対する質疑を行います。
これより下水道局関係に入ります。
初めに、先般の人事異動に伴い、幹部職員の交代がありましたので、局長より紹介があります。
○神山下水道局長 十月二十五日付の人事異動によりまして異動のございました当局の幹部職員を紹介させていただきます。
次長の松川桂子でございます。総務部長の田中彰でございます。
以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔理事者挨拶〕
○小林委員長 紹介は終わりました。
○小林委員長 決算の審査を行います。
令和二年度東京都下水道事業会計決算を議題といたします。
本件につきましては、既に説明を聴取しております。
その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
資料について理事者の説明を求めます。
○坂井経理部長 さきの分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
お手元の令和二年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会要求資料をご覧いただきたいと存じます。
恐れ入りますが、一ページをお開き願います。二十三区における主な浸水被害状況の推移でございます。
平成二十八年度から令和二年度までの浸水棟数をお示ししてございます。
二ページをお開き願います。多摩地域における主な浸水被害状況の推移でございます。
区部と同様、多摩地域における浸水棟数をお示ししてございます。
三ページをご覧願います。政策連携団体への委託内容と委託料の推移でございます。
当局が所管しております政策連携団体、東京都下水道サービス株式会社への主な委託内容と委託料の推移をお示ししてございます。
四ページをお開き願います。再生可能エネルギーによる主な発電設備の規模と発電量の実績の推移でございます。
項目ごとに、設備の所在する施設名、施設規模及び平成二十八年度から令和二年度までの年間発電電力量をお示ししてございます。
五ページをご覧願います。下水道マンホールと下水道管の接続部の耐震化が完了した施設数の推移と仮設トイレの設置ができるマンホールの数でございます。
マンホールと下水道管の接続部の耐震化が完了した施設数の推移及び仮設トイレの設置ができるマンホールの数をお示ししてございます。
六ページをお開き願います。下水道料金の減免実績でございます。
令和二年度に減免措置を実施した使用件数と減免額の実績をお示ししてございます。
七ページをご覧願います。下水道事業における公共雨水浸透ますの設置状況でございます。
平成二十八年度から令和二年度までの設置個数をお示ししてございます。
八ページをお開き願います。災害時における他都市への支援実績でございます。
平成二十三年度から令和二年度までの支援実績をお示ししてございます。
九ページをご覧願います。流出解析シミュレーション技術の主な活用の経過でございます。
資料の説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
○小林委員長 説明は終わりました。
ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
発言を願います。
○石島委員 それでは、下水道事業会計決算について質問させていただきます。
東京都区部では、平成六年度末に下水道が一〇〇%普及概成し、安全で快適な都民生活環境や、首都機能が集積する東京の都市活動を支えています。
一方で、これからは、高度経済成長期以降に大量に整備した古い下水道管が道路陥没などの事故を引き起こさないように、防止策を計画的に進めていくことが重要です。
そこで、区部における令和二年度の下水道管に起因する道路陥没件数の状況について見解をお伺いします。
○猪八重施設管理部長 令和二年度の区部における道路陥没件数でございますが、対策を計画的に進めてまいりました結果、陥没の兆候となります路面の落ち込みも含めまして、約三百三十件となっております。
これは、ピーク時の平成十二年度と比較いたしまして、約四分の一まで減少しております。
○石島委員 昨年度の下水道管に起因する陥没が、平成十二年、つまり二十年前の約四分の一と着実に減少しているということは、局の計画的な取組の成果といえます。
もう少し詳しく確認させていただきますが、この下水道管に起因する道路陥没について、どのような要因により、どのような箇所で陥没が発生しているのか、見解をお伺いします。
○猪八重施設管理部長 下水道管に起因する道路陥没の多くは、家庭などからの排水を受けて下水道管につなぐ取付け管の破損に起因しております。発生件数全体の約七割を占めてございます。
取付け管の破損の要因といたしましては、平成元年までに整備された取付け管の多くが陶器製であり、衝撃に弱いこと、また、比較的浅い位置に埋設されていることから、車両通行による振動の影響を受けやすいことなどが挙げられます。
○石島委員 家庭などからの排水を受ける取付け管が道路陥没の七割を占める要因であり、特に陶器製の取付け管は衝撃に弱いということですが、下水道局では、取付け管における道路陥没対策に具体的にどのように取り組んできたのか、見解をお伺いいたします。
○猪八重施設管理部長 下水道局では、区部における道路陥没が多い地区など六十四地区を道路陥没対策重点地区と位置づけまして、陶器製の取付け管を衝撃に強い硬質塩化ビニール管へ取り替えるなどの対策を令和元年度までに完了させております。
また、劣化の著しい路線や、道路陥没が発生した場合の影響が大きな国道や都道などの路線を優先いたしまして、道路陥没対策を実施しております。
加えて、整備年代の古い都心部の処理区の第一期再構築エリアでは、下水道管の再構築に合わせまして、取付け管を硬質塩化ビニール管へ取り替える取組も実施しております。
今後も、道路陥没などの事故を未然に防止するため、引き続き、計画的に対策を推進してまいります。
○石島委員 道路陥没対策については、陥没が多い地区などを重点化して対策を進めているだけでなく、下水道の整備年代の古い、いわゆる第一期再構築エリアでの再構築に合わせて効率的に対策を実施し、陥没件数が大幅に減少しているとのこと。引き続き、着実に取組を推進していただくことを要望させていただきます。
次に、区部下水道事業における主要施策の代表選手ともいえる下水道管の再構築事業についてお伺いします。
区部の下水道管の総延長は、よくいわれるように、東京とシドニーを往復する距離に相当する一万六千キロメートルに及び、日々、都民生活を支えている一方で、老朽化が進んでいます。
下水道管のうち、家庭などから下水が直接排水される枝線は、二十三区内の道路の下に膨大に張り巡らされており、一たび損傷すると、下水道機能に支障を来し、都民生活に深刻な影響を及ぼすため、予防保全として下水道管の再構築は計画的に取り組む必要があります。
そこで、下水道管の枝線の再構築の考え方について見解をお伺いします。
○佐々木計画調整部長 老朽化した枝線の再構築に当たりましては、ライフサイクルコストの最小化や中長期的な再構築事業の平準化などを図るアセットマネジメントの手法を活用し、計画的かつ効率的に事業を実施しております。
具体的には、下水道管の状況を調査し、計画的な維持管理を行うことで、法定耐用年数の五十年から、経済的耐用年数である八十年程度まで延命化を図り、その上で、老朽化対策と併せて、雨水排除能力の増強などを一体的に推進しております。
また、事業の実施に当たりましては、区部を整備年代により三つのエリアに分け、整備年代の古い都心部を第一期再構築エリアとして優先的に再構築を進めております。
○石島委員 整備年代の古い都心部を優先的に再構築を進めているとのことですが、第一期再構築エリアの再構築に関して、令和二年度の目標及び実績について見解をお伺いします。
○袰岩建設部長 枝線の再構築につきましては、令和二年度は、目標の整備面積七百ヘクタールに対し、七百九ヘクタールを実施したところでございます。
その結果、令和二年度末までに第一期再構築エリア一万六千三百ヘクタールの六二%に当たる一万八十二ヘクタールを完了し、経営計画二〇一六の目標を達成したところでございます。
引き続き、令和十一年度までの第一期再構築エリアの完了を目指し、整備を進めてまいります。
○石島委員 最も古い第一期再構築エリアについては、着実に取組を進めた結果、六割以上の面積が完了し、整備が進められていることを理解しました。
また、雨水排除能力の増強を併せて対策を図るなど、単なる老朽化への対応だけでなく、効率的な取組を進めている点は評価させていただきます。引き続き、着実に事業を推進されることを要望させていただきます。
次に、インフラ整備というと再構築事業などのハード整備が注目されがちですが、ソフト面での対策もまた重要であり、同時に進めていく必要があります。
特に、浸水対策については、ハード整備には時間を要するため、都民の浸水への備えに対する支援など、ソフト面における対策が重要です。
例えば、建築基準法で地下室には位置づけられない、いわゆる半地下のような地盤よりも低い床面を持つ家屋では、雨水が流入することにより、豪雨時に通常の家屋に比べて被害が大きくなることは明らかです。半地下家屋の使用者や居住者の中には、浸水に対して特に注意が必要であることを知らない方もおり、建物所有者が責任を持って対策を講じなければなりません。
このことから、都民の安全・安心を確保するためには、建物所有者に半地下家屋の危険性について十分周知する必要があります。また、現在、半地下の建物に住んでいる人だけではなく、これから建物を建築する段階で働きかけることも重要と考えます。
そこで、半地下家屋への浸水への備えを周知する取組について見解をお伺いします。
○鈴木施設管理担当部長 下水道局では、半地下家屋にお住まいで、排水用のポンプ施設を設置していない方や、過去に浸水被害があって、今後もそのおそれがある方などを戸別に訪問し、リーフレットを配布して浸水被害への備えを促しております。
また、当局のホームページにおいて、土のうや止水板、排水用のポンプ施設の設置など、リーフレットに記載されている内容の紹介のほか、大雨の際に半地下家屋に雨水が浸入する様子を模型を使って紹介する動画も掲載しております。
加えて、当局から区へ要請し、区のホームページにも同様に必要な対策を掲載していただいております。
さらに、建物の計画段階から、排水用のポンプ施設の設置などの対策を講じるよう、建築指導関係機関へ要請をするとともに、住宅展示場にもリーフレットを配布し、半地下家屋の危険性について、ハウスメーカーや設計事務所などにも周知を図ってございます。
○石島委員 リーフレットを活用しながら積極的に情報発信を行い、また戸別訪問を行うなど、都民の皆さんに広く周知を行っているとのことですが、膨大な対象建物の件数、安全対策の具体的取組のサポートなど、大変な作業であると思いますが、引き続き、取組を強化されることを要望させていただきます。
再構築や浸水対策と安全・安心なまちづくりに関する取組についてお伺いしてきましたが、続いて、良好な水環境と環境負荷の少ない都市の実現に向けた取組についてお伺いします。
東京の区部の下水道の多くは、汚水と雨水を一本の下水道管で流すことで早期に整備ができる合流式の下水道を採用しています。
この合流式下水道は、強い雨が降ると、市街地を浸水から守るため、汚水混じりの雨水を河川や海などへ放流せざるを得ないという課題があり、下水道局では、合流式下水道の改善に向けた取組を進めています。
経営レポート二〇二一を見ると、私の地元中央区では、日本橋川が重点的に対策に取り組む十四水域の一つに指定されており、着実に対策が進められていますが、下水道局における合流式下水道の改善に向けた取組状況について見解をお伺いします。
○佐々木計画調整部長 合流式下水道改善の主な取組といたしましては、雨水吐き口からのごみなどの流出を抑制する施設の整備、雨天時の下水をより多く水再生センターへ送るための下水道管の整備、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設の整備の主に三つがございます。
このうち、ごみの流出を抑制する施設の整備につきましては、令和二年度に対策を完了しており、下水道管の整備につきましても、おおむね完了しております。
現在は、下水を貯留する施設の建設を進めており、令和二年度までに累計で百五十万立方メートルの整備を完了し、経営計画二〇一六の目標を達成しております。
○石島委員 ありがとうございます。引き続き、必要な貯留量の確保に向けた貯留施設の整備を積極的に進め、良好な水環境の創出に努めていただくよう要望させていただきます。
次に、合流式下水道の改善のために、貯留施設の整備を進めているとのことですが、貯留した下水を処理するためには、当然に多くのエネルギーが必要となり、対策の進展に伴い、温室効果ガスである二酸化炭素も多く発生することになります。
下水道局では、持続可能な社会の実現のため、下水道事業における地球温暖化防止計画書として、アースプラン二〇一七を策定し、温室効果ガスの削減に積極的に取り組んでいるとのことですが、アースプラン二〇一七の考え方について、改めてお伺いいたします。
○佐々木計画調整部長 アースプラン二〇一七では、浸水対策や高度処理、合流式下水道の改善など、下水道サービスの向上による温室効果ガス排出量の増加が見込まれる中、下水道事業から発生する温室効果ガス排出量を二〇三〇年度までに二〇〇〇年度比で三〇%以上削減する目標を設定しております。
本計画では、最新技術の先導的導入などの基本方針の下に、徹底した省エネルギー、再生可能エネルギーの活用、水再生センターなどにおける処理工程、方法の効率化など、六つの取組方針を掲げ、温室効果ガスの削減に取り組むこととしております。
○石島委員 温室効果ガス排出量について、二〇三〇年度には二〇〇〇年度比で三〇%以上の削減をするという目標を設定しているとのことですが、このアースプラン二〇一七の目標を達成するために、令和二年度の具体的な取組の内容と進捗状況についてお伺いいたします。
○佐々木計画調整部長 具体的な取組の内容についてでございますが、アースプラン二〇一七に掲げた取組方針のうち、徹底した省エネルギーでは、水処理を行う微生物に必要な空気を水に溶けやすい小さな気泡にして送風量を少なくし、約二割の電気使用量を削減できる微細気泡散気装置を森ヶ崎水再生センターなどで導入いたしました。
また、処理工程、方法の効率化につきましては、従来型の焼却炉よりも電力や補助燃料を大幅に削減する焼却炉を、みやぎ水再生センターに導入しました。
このような取組の結果、昨年度の温室効果ガス排出量は二〇〇〇年度比で二八%の削減となっております。
引き続き、目標の達成を目指して取り組んでまいります。
○石島委員 温暖化対策の取組について、二〇〇〇年度比で二八%の削減ということで、達成まであと二%となっています。これは着実に事業を進めてきた結果であり、良好な地球環境を次世代に引き継ぐために、ぜひ引き続き頑張っていただきたいと思います。
これまで伺ってきた下水道の各施策に関して着実に継続し、安定的に下水道サービスを継続していく必要がありますが、今後は、少子高齢化、人口減少により、長期的には料金収入が減少することが見込まれます。
こうした中、持続可能な財政運営を進めていくためには、不断の経営効率化に努めるとともに、経営基盤を強化することが重要です。
その一つとして、下水道局が所有する資産の有効活用による収入の確保も必要と考えますが、これまでの資産の有効活用の具体的な取組と今後の見通しについて見解をお伺いいたします。
○坂井経理部長 資産の有効活用の主な取組といたしまして、芝浦水再生センターにおいて、合流式下水道改善のための貯留施設の上部に借地権を設定いたしまして民間事業者に貸し付け、その民間事業者が業務商業ビルを建設し、運営してございます。
当局では、本事業により土地の賃料収入を得るほか、ビル床の一部を借地権の設定対価として取得し、それを事業者に貸し付けることによりまして、令和二年度は約七十八億円の収入を得てございます。
また、東京駅前の常盤橋街区再開発事業におきまして、当局も地権者として参画してございます。本プロジェクトにつきましては、令和九年に完成の計画でございまして、今後、当局は、当該区域内に権利変換により取得した土地建物を貸付けする予定でございます。
これに加えまして、用途廃止いたしました施設跡地の売却、それから、利活用可能な用地の貸付けなど、可能な限り資産の有効活用を進めまして、今後とも収入の確保に努めてまいります。
○石島委員 ありがとうございます。常盤橋街区の再開発事業は、我が地元でもありますけれど、東京駅前という立地条件も優れていることから、この再開発により資産を有効活用し、下水道局の新たな収入となることが大きく期待されます。
今後も様々な制約はあることと考えますが、新たな資産の有効活用についても積極的かつ継続的に検討されることを要望させていただきます。
最後に、これまでの質疑を通して、都の下水道局事業が、ハード対策からソフト対策、また地球温暖化対策に至るまで幅広く推進されることが理解できました。下水道は都民の生活に欠かせない重要なインフラです。
今後も安定的なサービスを提供し、これらの取組を一層加速させるとともに、経営基盤を強化し、安定した事業運営を続けていかれることをお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
○たきぐち委員 それでは、令和二年度東京都下水道事業会計決算について伺いたいと思います。
決算審査という観点から、初めに、財政状況について確認をいたします。
昨年度は、新型コロナの感染拡大によって、外出自粛や飲食店への時短要請など、社会経済活動が様々制限されると同時に、新しい日常の定着など、都民の生活様式に大きな変化が見られました。こうしたコロナ禍における様々な変化は、下水道事業にも影響を及ぼしたのではないかと考えます。
そこでまず、コロナの影響も含めて、令和二年度決算における収入面での状況について伺います。
○坂井経理部長 令和二年度決算の収益的収入につきましては、区部下水道と流域下水道事業を合わせまして、税抜きで約三千六百五十一億円でございまして、令和元年度と比較いたしますと、約百十億円の減収でございました。
そのうち、主な収入でございます下水道料金収入額につきましては約千四百四十六億円でございまして、令和元年度から約百三十七億円、率にいたしまして八・七%の減収となってございます。
これは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐ観点から人流が抑制されたことによりまして、主に駅、それから空港、ホテルなどの汚水排出量が減少したことが大きな要因であると考えてございます。
なお、東日本大震災に伴いまして、原子力発電所事故の対応として実施いたしました汚泥焼却灰などの検査や処分に係る経費につきまして、令和二年度中に東京電力から賠償を受けた約五十四億円を特別利益として計上してございます。
○たきぐち委員 独立採算を原則とする下水道事業会計として、その主たる収入源である下水道料金収入が、人流抑制によって大きく落ち込んだことで、令和二年度の財政状況は大変厳しかったものと考えます。
コロナの影響という観点では、水道料金同様、下水道料金についても、一時的に支払いが困難な方に対し支払い猶予を実施しておりますが、令和二年度末までの下水道料金の支払い猶予の受付実績について伺います。
○坂井経理部長 当局では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いまして、一時的に支払いが困難な二十三区のお客様に対しまして、最長一年間を猶予期間といたしまして、支払い猶予を実施してございます。
制度を開始いたしました令和二年三月二十四日から令和二年度末までの受付実績でございますけれども、件数といたしまして約一万八千件、支払い猶予金額は約五億三千万円となってございます。
○たきぐち委員 支払い猶予につきましては、水道局の決算質疑で森口委員からも言及させていただきましたが、下水道料金についても、水道料金同様、昨年度、一旦受付を終了しましたが、我が会派の要望を受けまして、新規受付を再開し、さらに、期限を来年三月まで延長している状況だと承知をしております。
現在、緊急事態宣言が解除され、徐々に社会経済も動き始めているとはいえ、依然と厳しい社会情勢にある中で、分割支払いなど、個別の状況なども踏まえた対応や、都民の皆様や事業者などに寄り添った対応を図っていただくようお願いをしておきます。
支払い猶予については、未収金に計上され、決算上は収入減に直接結びつくものではありませんが、冒頭のご答弁のとおり、下水道料金収入が大きく落ち込む一方で、下水道事業は、都民の生活と事業活動を支える重要なインフラとして、日々の汚水処理から始まり、施設の老朽化対策や浸水対策、震災対策など、持続的なサービスを提供するための諸課題に対応していかなければなりません。
そこで、事業実施に係る支出の状況について、令和二年度決算のポイントとなる点について伺います。
○坂井経理部長 水再生センターやポンプ所などの維持管理費等の収益的支出でございますけれども、区部下水道と流域下水道事業を合わせまして、税抜きで約三千四百七十二億円となってございます。
これを令和元年度と比較いたしますと、約十八億円の減となりましたが、主な要因といたしましては、新型コロナウイルス感染症の影響などによりまして、処理水量が約四・四%減少したことによるものでございます。
また、建設改良事業費などの資本的支出でございますけれども、こちらにつきましても、区部下水道と流域下水道事業を合わせまして、こちらは税込みで、令和元年度から約四十五億円増の三千五百八十二億円となってございます。
これによりまして、当局の主要事業でございます再構築や浸水対策事業などを着実に実施したところでございます。
○たきぐち委員 長引くコロナ禍による下水処理量の減少は、下水道料金収入の減少に直結すると同時に、その処理に係るコスト、支出の減にもつながっているというところでありますが、今回の下水道料金収入の落ち込みは、過去のリーマンショック後や東日本大震災の影響による減収、このときは五十億円程度の減収というふうに聞いておりますけれども、このときと比べても大変大きなものになったのではないかと思います。
こうした中でも、資本的支出は前年度から増加しており、主要事業を着実に進めているということは理解をいたしました。
私たちが生活していく上で、下水道は欠かすことができない重要なインフラであるということはいうまでもありません。今年度に入ってからも、コロナの影響を受けているものと考えますが、こうした重要インフラを安定的に稼働させるためにも、今後も持続可能な事業運営が必要であると考えます。
今後、どのように財政運営を行っていくのか、財政状況の現状認識を含め、見解を伺います。
○田中総務部長 当会計の主たる財源である下水道料金収入は、将来的な人口減少等により長期的に逓減傾向となる見込みでございます。
一方、施設や設備の安定稼働に必要な維持管理費につきましては、労務単価や電気料金の上昇などにより増加傾向にあります。
加えて、建設改良費の財源として発行している企業債の元利償還金は減少傾向にあるものの、依然として重い負担となっております。
このように、下水道事業を取り巻く経営環境は厳しい状況にあると認識しておりますが、今後とも持続可能な下水道サービスを提供していくため、新たな技術の導入による建設維持管理コストの縮減や、下水道施設の上部利用等の保有資産の有効活用をはじめ、様々な企業努力を行ってまいります。
また、企業債につきましては、将来の財政負担を見据え、発行規模や利率のバランスなどを検証しながら適切に発行管理を行ってまいります。
こうした取組を着実に推進し、財政基盤の強化を図るとともに、将来にわたり安定的な財政運営に努めてまいります。
○たきぐち委員 今年三月に策定した経営計画二〇二一で、今後十年間の財政収支を推計していますが、下水道料金収入は、令和二年度決算が既に同計画で示されている予算と比べても百六十五億円のマイナスとなっています。
ご説明があったとおり、企業債の元利償還金や企業債残高は今後も減少基調にあるものの、維持管理費は高い水準で推移すると見込まれておりまして、企業努力を進めることで財政基盤の強化に向けて取り組んでいただきたいと思います。
次に、主要施策について見ていきたいと思いますが、まず、下水道管の老朽化対策について伺います。
二十三区内の下水道は、平成六年度に普及率が一〇〇%概成となり、現在は、一万六千百キロメートルにも及ぶ膨大な下水道管を管理しています。
特に、高度経済成長期以降に集中的に整備された下水道管については老朽化が進行しておりますが、下水道管は地下に埋設されているため、当然、道路上からは見ることができません。
そのため、マンホールの中から実際に下水道管の状態をしっかりと把握して対策を立てていくということが重要であります。
そこで、二十三区内の下水道管について、老朽化をどのように把握し、結果を活用しているのか、また、令和二年度の調査実績はどのくらいあったのか伺います。
○猪八重施設管理部長 下水道管の調査でございますが、腐食のおそれの大きい下水道管や、国道、軌道下など重要な路線に埋設された下水道管等を対象に調査頻度を定め、計画的に実施をしております。
調査に当たりましては、人が入ることのできる比較的大きな口径の下水道管では、調査員が直接目で見ることにより確認をしております。
また、小さな口径の下水道管では、劣化状況について、デジタル技術により撮影、診断、記録の各作業を一連で自動化できるミラー方式テレビカメラを活用するなどして、効率化や精度の向上を図りつつ調査を実施しております。
その上で、管径、勾配など、管渠の構造に加え、損傷状況などの調査結果を下水道台帳システム上で一元的に管理いたしまして、劣化に応じた部分的な補修や再構築の推進に活用してございます。
令和二年度における下水道管の調査延長の実績は約八百七十キロメートルでございます。
○たきぐち委員 口径が大きいものは人が入って目視、小さなものはテレビカメラの活用ということで、それぞれの方法で調査を実施しているということでありました。
計画的な補修など、予防保全の考え方は非常に重要でありまして、継続して推進をしていただきたいと思います。
さて、直径数メートルもあるような規模の大きな下水道幹線も老朽化が進行してきています。幹線は規模が大きく、道路を掘削して新しい管に取り替えることは困難でありますが、老朽化が進行し下水道管の機能に支障が生じた場合には、規模が大きいだけに都民への影響は甚大なものとなりかねません。
そこで、下水道幹線の再構築の進め方と、令和二年度の実施状況について伺います。
○佐々木計画調整部長 下水道幹線の再構築は、昭和三十年代以前に建設した整備年代の古い四十七幹線や、調査に基づき対策が必要と判明した三十七幹線など、約三百キロメートルを対象に再構築に取り組んでおります。
施工に当たりましては、道路を掘削せず、比較的短い期間かつ低コストで既設管をリニューアルすることができる更生工法を活用し、事業を推進しております。
令和二年度は、八キロメートルの整備目標に対し、入札不調の影響や降雨により施工ができなかったことなどにより、目標を一キロメートル下回る七キロメートルを再構築しており、累計の完了延長といたしましては、八十七キロメートルとなっております。
○たきぐち委員 工事の規模が大きく、入札不調や天候の影響など様々な要因によって、昨年度は目標が未達成ということでありました。
対象となるのが残り二百十三キロということで、大変時間のかかる事業であるかと思いますけれども、引き続き、着実に幹線の再構築事業を進めていただきたいと思います。
さて、更生工法のうちSPR工法は、下水道局が開発を行った技術と聞いております。このSPR工法の技術開発の取組について伺います。
○青木技術開発担当部長 SPR工法の技術開発の取組についてでございますが、高度に都市化された東京では、ガスや水道などのインフラがふくそうして埋設されているほか、道路交通事情、周辺環境など、様々な制約があるため、道路を掘削せずに下水道管をリニューアルする工法が必要と考えました。
そのため、下水道局では、昭和五十九年から、道路を掘らずに下水道管を更新する工法の調査研究に取り組み、昭和六十年より、政策連携団体である東京都下水道サービス株式会社及び民間事業者と共同で技術開発を実施し、昭和六十二年にSPR工法を実用化いたしました。
その後、一般的な円形管以外の四角形の下水道管など、多様な形状に対応できるようにするとともに、直径二十五センチメートルの小規模な枝線から五メートル程度の大規模な幹線まで幅広く対応できるよう改良を重ね、現在は多くの再構築工事で採用しているところでございます。
このSPR工法は、東京だけではなく、国内や海外の都市においても採用されております。
また、かつての水路を下水道幹線に転用したもののうち、強度が低い幹線にもSPR工法が適用できるよう、平成二十七年度から技術開発に取り組み、令和元年度から令和二年度にかけて試行工事を行い、品質等に問題がないことを確認いたしました。
今後は、本格採用に向け、引き続き工事の事例を積み重ねてまいります。
○たきぐち委員 下水道が普及概成する前から普及後の下水道事業の課題を見据えて技術開発を行い、実用化してきたという点は評価をしたいと思います。
また、現在でも改善を重ねて技術開発に取り組んでいるという状況も理解をいたしました。
このSPR工法は、国内のみならず海外においても採用されているということでありますが、SPR工法の国内外における実績を伺います。
○青木技術開発担当部長 国内外においての実績についてでございますが、SPR工法の施工実績は、令和二年度末において、国内では、全ての都道府県で採用されており、全国累計で約千四百十五キロメートルの施工がされております。
海外においては、シンガポール、アメリカ、ドイツなど二十の国と地域で採用されておりまして、施工延長の累計は約百六十九キロメートルとなっております。
今後も、東京発の下水道技術であるSPR工法等について、国内外の技術会議や展示会等の機会を通じて広く発信してまいります。
○たきぐち委員 このSPR工法というのは、掘削をしないでマンホールから製管機を管の中に入れて、管の内側に硬質塩化ビニール製プロファイルの更生管をつくって、その更生管と既設管の隙間に特殊な埋め込み材を注入して一体化していくものというふうに理解をしております。
こうした東京の課題解決のために開発された技術が、国内外を問わず広く下水道事業の課題解決に貢献しているということは確認できました。将来的には、さらに先を見据えた対応というのも当然検討しなければいけないという時期にも来ようかというふうに思います。
引き続き、様々な課題を解決に導く技術開発を進めていただくとともに、東京の技術が世界をリードするためにも、国内外への発信も継続していただきたいと思います。
次に、震災対策について伺います。
今月七日には、千葉県北西部を震源とする、都内でも十年ぶりとなる最大震度五強の地震が発生し、多数のけが人が出たほか、火災や漏水、また、一部地域で停電も発生するなど、社会インフラに対しても影響を与えました。被害に遭われた方々にはお見舞いを申し上げますとともに、改めて大地震への取組の重要性を認識したところであります。
下水道局からの報告によりますと、下水道施設には被害がなかったということで幸いでありましたけれども、今後、いつ発生するか分からない首都直下地震に備えるためにも、震災への備えは万全にしていかなければなりません。
特に、震災時に停電が発生しても下水道が機能することは重要であります。
経営計画二〇二一によりますと、区部の水再生センター、ポンプ所において、非常用発電設備の整備を進めているということでありますが、区部における令和二年度の非常用発電設備の整備状況について伺います。
○袰岩建設部長 下水道局では、区部の水再生センターやポンプ所九十八か所におきまして、震災時などにおける停電の際にも下水処理機能や雨天時のポンプ排水機能を維持するために必要な電力を発電可能な非常用発電設備の増強を進めているところでございます。
令和二年度は、荒川区にある白鬚西ポンプ所など五か所の施設で発電容量の増強を行い、累計八十三か所で整備を完了いたしました。
引き続き、残る施設につきましても非常用発電設備の増強を推進してまいります。
○たきぐち委員 全ての施設で非常用発電設備が整備されていますが、その増強を図っているということでありまして、残りの十五か所についても確実に進めていただき、停電による下水処理機能の喪失という事態を回避すべく取り組んでいただきたいと思います。
さて、大地震が発生した際には、非常用発電機を確実に動かすための燃料確保も重要な課題であります。過去の震災の際には、広域にわたり流通網が混乱し、燃料の調達が困難になった状況も発生いたしました。
非常用発電設備が確実に機能するためには、燃料調達が困難な状況に対する備えも重要と考えますが、その取組と令和二年度の実施状況について伺います。
○袰岩建設部長 東日本大震災の際に、発電燃料の調達が困難な状況がありましたことから、燃料の確保に向けた取組といたしまして、都と石油関係の組合との間で、大規模災害時における石油燃料の安定供給に関する協定を締結しておるところでございます。
また、東日本大震災では、耐震性に優れている中圧の都市ガス管からのガス供給には支障がなかったことから、発電設備の再構築に合わせまして、灯油のほかに都市ガスにも対応できるデュアルフューエル型の非常用発電設備を、水再生センターで導入を進めているところでございます。
令和二年度は、葛西水再生センターなど二か所の水再生センターにおいて導入したところでございます。
○たきぐち委員 災害時の燃料確保、危機管理の対応として、ハード、ソフトの両面から対策を進められているということが分かりました。今後発生が予想される首都直下型の地震に対して万全の備えをしていただくために、引き続き、対策は進めていただきたいと思います。
次に、浸水対策について伺います。
昨年の事務事業質疑や今年度の予算審議においても取り上げましたが、一昨年の台風十九号を受けて、都は、東京都豪雨対策アクションプランを策定し、浸水から都民の生命、財産を守るため、貯留施設などの下水道施設整備を推進していくこととしております。
台風十九号では、大田区、世田谷区で内水氾濫が発生するなど、浸水対策の課題も改めて浮き彫りになりましたが、下水道局では、地区を重点化し、下水道幹線やポンプ所などの施設整備を進めるなど、積極的に浸水対策に取り組まれております。
十九号では、全五十六か所の雨水貯留施設の総貯留量が約六割に達したほか、八か所で満水になったことが報告されておりまして、こうした施設整備が一定の効果を発揮したことが示された一方で、地球規模の気候変動による予測しがたい気象動向に対して、ハード整備だけで対応することには限界があり、住民の自助を促す取組、ソフト面での対策が急務であると考えます。
そのためには、住民自らがリスクを認識し、防災意識を高めるためのハザードマップが有効でありますが、昨年十一月の時点で、水防法改正を踏まえた想定最大規模降雨を反映したハザードマップの見直しをしているのは、十三区である状況を確認しました。
残る十区のハザードマップの見直しに向け、ハザードマップの基となる浸水予想区域図の見直しを令和二年度中に完了させると答弁をいただいておりましたが、改めて浸水予想区域図の作成状況について伺います。
○佐々木計画調整部長 下水道局では、平成十二年に発生した総雨量五百八十九ミリ、時間最大雨量百十四ミリの東海豪雨と同規模の雨が降った場合を想定して、都内の対象十六流域の浸水予想区域図を関係局などと連携して作成しております。
その後、平成二十七年度の水防法の改正を踏まえ、浸水想定に用いる降雨を、国土交通省が定める総降雨量六百九十ミリ、時間最大雨量百五十三ミリの想定最大規模降雨に変更して見直しを順次進めてまいりましたが、令和二年度に隅田川及び新河岸川流域など二流域の浸水予想区域図を作成し、全ての流域で見直しが完了しております。
○たきぐち委員 昨年度、十六流域全ての見直しが完了したということであります。全国的には、水防法改正を踏まえたハザードマップを作成している自治体は五%程度にとどまっているという状況に対して、都内での取組は進んでいるものと考えます。
未作成の区市での取組を後押しするとともに、引き続き、河川管理者や区市と連携を強化しながら、ソフト面での対策を推進していただきたいと思います。
最後に、高度処理について伺います。
私の地元である荒川区にある三河島水再生センターの日々処理した下水の放流先は、東京を代表する河川でもある隅田川でありまして、そしてその先には東京湾につながっております。
このため、高度処理を導入し処理水質を向上させることは、東京の良好な水環境を創出する上で大きな役割を果たすことになります。
一方、水再生センターにおける下水の処理そのものは非常に多くの電力を使用いたします。これは、微生物と下水を混合した反応槽に空気を送り、微生物の力で汚れを分解する際、送風に多くの電力を使用するためと聞いております。
したがって、処理水質を向上させていくに当たっては、省エネルギーに取り組むことも重要であります。
そこで、省エネルギーに配慮した処理水質の向上について、三河島水再生センターにおける令和二年度の取組について伺います。
○猪八重施設管理部長 下水道局では、運転管理の工夫に加えまして、既存施設の改造により、一定の水質改善を早期に実施可能な準高度処理の導入を進め、省エネルギーと処理水質の向上について両立を図っているところでございます。
その取組の一つといたしまして、水処理を行う微生物に必要な空気を水に溶けやすい小さな気泡にして送風量を少なくし、電気使用量を削減できる微細気泡散気装置の導入を進めております。
三河島水再生センターにおける令和二年度の取組でございますが、二つの反応槽の設備の更新に合わせまして、一日当たり七・二万立方メートルの準高度処理を導入し、累計では一日当たり三十三万立方メートルの準高度処理施設を整備いたしました。
○たきぐち委員 都庁最大の温室効果ガス排出者である下水道局において、処理水質の向上と併せて、省エネルギーへの配慮にも鋭意取り組んでいるということは理解をいたしました。
我が国最初の近代下水処理施設として、三河島汚水処分場が稼働してから来年で百年を迎えます。新たな技術の導入、DXの推進などによって、さらなる事業の効率化やサービスの向上を図り、都民の安全・安心を支える重要な社会インフラとして、今後ますます事業を推進していただけるよう期待いたしまして、私の質疑を終わります。
○たかく委員 それでは、私の方から、令和二年度東京都下水道事業会計決算について何点か伺います。
東京の下水道は、二十四時間三百六十五日、休むことなく日々の暮らしや経済活動によって汚れた水を浄化し川や海に戻すことで、快適な生活環境と都市の水循環を支えております。
さらに、宅地や道路等に降った雨水を速やかに排除して、市街地を浸水から守る役割を担っており、都民生活や東京の都市活動にはなくてはならない重要な基幹インフラであります。
一方で、現在の下水道事業は、時代の大きな変化に伴い、震災対策や浸水対策など、解決すべき課題は顕在化しております。
特に、今月七日、千葉県北西部を震源とする最大震度五強を観測した地震が東京の二十三区で十年ぶりに発生、改めて東京の地震に対するリスクの高さを認識いたしました。
首都直下型地震が今後三十年以内に発生する確率は七〇%の高確率といわれており、これら地震時にも下水道の機能を維持するために、平時から地震対策を着実に進めていくことは欠かせません。
そこで、最初に、下水道管の耐震化の基本的な進め方についてお伺いいたします。
○佐々木計画調整部長 下水道管の耐震化につきましては、震災時の下水道機能の確保とともに、緊急輸送道路などの交通機能の確保という二つの面から実施しております。
下水道機能の確保といたしましては、避難所や避難場所、災害復旧拠点などを対象として、これらの施設から排水を受け入れる下水道管とマンホールの接続部の耐震化及びマンホールの浮上を抑制する対策を実施しております。
また、交通機能の確保といたしましては、液状化の危険性の高い地域における緊急輸送道路などを対象に、マンホールの浮上を抑制する対策を実施しております。
○たかく委員 下水道管の耐震化については、都民の命と衛生環境を守るとともに、速やかな救助活動や復旧を支えることにつながる重要な取組であり、着実に取組を進めていただきたいと思いますが、下水道管の耐震化について、令和二年度の取組状況と経営計画二〇一六の目標に対する達成状況について伺います。
○袰岩建設部長 下水道機能を確保するため実施しております下水道管とマンホールの接続部の耐震化といたしましては、ターミナル駅や災害復旧拠点、地域防災計画などに定められている防災上重要な施設から排水を受け入れる下水道管を対象に、令和二年度は二百四か所で対策を実施しております。
令和二年度末までに経営計画二〇一六の区部における目標値であります四千百五十五か所を上回る四千三百十五か所で対策を実施してきたところでございます。
交通機能を確保するため実施しておりますマンホールの浮上抑制対策といたしましては、液状化が予想される緊急輸送道路と避難所などを結ぶ道路におきまして、令和二年度は約十六キロメートルで対策を実施しております。
令和二年度末までに、経営計画二〇一六の目標値である対象約千二百五十キロメートルの対策を完了したところでございます。
○たかく委員 下水道管とマンホールの接続部の耐震化とマンホールの浮上抑制対策については、令和二年度までにそれぞれ経営計画二〇一六の目標を達成しており、下水道管の耐震対策については進められているということを確認いたしました。
過去の震災では、避難所でトイレが使えない事態が発生したとの報道もあり、震災時のトイレ対策は急務と考えます。トイレが使えないという深刻な事態を防ぐために、震災時にも下水道がしっかりと機能することが何よりも重要と考えております。
私の地元世田谷区内における下水道管の耐震化の取組状況についてお伺いいたします。
○袰岩建設部長 世田谷区内の下水道管の耐震化の取組状況でございますけれども、下水道管とマンホールの接続部の耐震化といたしまして、災害復旧拠点などから排水を受け入れる下水道管を対象に、令和二年度は区内の三十二施設で対策を実施しました。
令和二年度末までに、経営計画二〇一六で目標となっております三百二十二か所で対策を完了しております。
マンホールの浮上抑制対策といたしましては、避難所などを結ぶ道路におきまして、令和二年度は約一・八キロメートルで対策を実施しております。
令和二年度末までに、経営計画二〇一六で目標となっております約十・三キロメートルで対策を完了してございます。
○たかく委員 世田谷区内における下水道管の耐震対策が着実に進められていることは理解いたしました。引き続き、下水道管の耐震化について、継続した取組をお願いいたします。
次に、浸水対策について伺います。
宅地や道路などに降った雨を速やかに排除し、浸水から都市を守る下水道の機能については、災害に強い強靱な都市を実現していくために極めて重要と考えます。これまで下水道局が浸水対策に果たしてきた役割は非常に大きいと実感しておりますが、決算特別委員会として、事業の進捗状況等、改めて下水道の浸水対策について確認してまいりたいと思います。
まずは、下水道局における浸水対策の基本的な進め方について伺います。
○佐々木計画調整部長 下水道局では、東京都豪雨対策基本方針などに基づき、区部全域で時間五十ミリ降雨への対応を基本に、早期に浸水被害を軽減するため、地区を重点化して施設整備を推進しております。
具体的には、繰り返し浸水が発生している地域など、浸水の危険性が高い地区や、かつての川を下水道として利用した浅く埋設された幹線の流域などを重点地区として位置づけ、幹線や貯留施設などの整備を進めております。
また、浸水被害の影響の大きい大規模地下街や甚大な浸水被害が発生している地区におきましては、時間七十五ミリに対応する施設を整備しております。
○たかく委員 今の答弁では、浸水対策については、地区を重点化して効率的に取り組んでいるとのことでありました。事業規模が大きい浸水対策は、施設の完成までに時間がかかるが、その分、地域へのメリットも大変大きいものと考えます。
重点化した地区など、施設整備を進め、着実に効果を上げていただきたいと考えておりますが、重点化して進めている地区のうち、令和二年度に完了した地区については、どのようになっているか伺います。
○袰岩建設部長 令和二年度におきましては、重点化して進めております地区のうち、七十五ミリ施設整備地区である渋谷駅東口地区で事業が完了いたしました。
これまでに、重点化して施設整備を行う五十七地区のうち、二十五地区で対策が完了しております。
○たかく委員 これまで五十七地区中二十五地区が完了するなど、浸水対策は充実してきているとのことであります。しかし、まだまだ残っているところもたくさんあり、また、令和三年度では、世田谷区野毛地区や目黒区自由が丘、世田谷区奥沢地区など、新たに重点地区が三か所追加されました。早期に工事着手できるように求めて、次の質問に移ります。
次に、私の地元である世田谷区の浸水対策事業についてお聞きしたく思います。
ここは、平成二十五年には区部で豪雨が発生し、世田谷区でも弦巻地区や深沢地区で甚大な被害が発生しました。
被害が発生した弦巻地区には、下水道の幹線として蛇崩川幹線がありますが、昔は名前のとおりに川が流れておりました。地形的には水が集まりやすい場所でもあります。
これまでも、こうした状況に対し、下水道局では、弦巻地区における小泉公園に貯留施設を整備し、本地区の浸水対策を進めてきたと思いますが、この小泉公園に整備した貯留施設の平成二十五年の豪雨時における雨水の貯留状況についてはどうだったのかお聞きいたします。
○猪八重施設管理部長 世田谷区弦巻地区では、委員ご指摘のとおり、区立小泉公園の下部及び道路内におきまして、二十五メータープールにして約二十杯分に相当する五千七百立方メートルの雨水を貯留可能とする施設を平成二十一年に整備しております。
平成二十五年七月二十三日の豪雨時には、本貯留施設は満管となりまして、弦巻地区の上流側に隣接する上馬地区の一部も含めまして、地域の浸水被害軽減に寄与したところでございます。
○たかく委員 今、説明がありましたけれども、しかし、この二十五年の豪雨時には、このような施設があったにもかかわらず、蛇崩川幹線流域全体で床上浸水と床下浸水合わせて六十件以上の浸水被害が発生したということであり、いかに豪雨の規模が大きなものだったか、うかがい知ることができます。
また、その後、平成三十年八月の集中豪雨では、世田谷区内で床上浸水が二百八十四件、床下浸水が二十四件発生し、蛇崩川幹線流域では九十件近い浸水被害も発生したと聞いております。
こうした経験を受け、下水道局でも、弦巻地区や深沢地区を時間七十五ミリ降雨に対応する施設整備を行う重点地区に位置づけて、弦巻地区では蛇崩川増強幹線の整備を進めてまいりました。また、住民の要望は強く、早期に施設を完成させていただきたいと考えております。
そこで、弦巻地区の整備状況についてお伺いいたします。
○袰岩建設部長 世田谷区弦巻地区におきましては、既設の蛇崩川幹線の排水能力を強化するため、蛇崩川増強幹線整備事業を平成二十九年度から進めております。
本事業は、既存の蛇崩川幹線沿いに、直径最大五メートル、延長約六・八キロメートルの蛇崩川増強幹線を整備するものでございます。
上流部の二・八キロメートルを先行して整備する区間といたしまして、令和二年度末までに工事の基地となる世田谷区丸山公園及び弦巻三丁目東公園におきまして、深さ最大約四十三メートルの立て坑の整備と約〇・八キロメートルまでの管渠整備が完了したところでございます。
残りの区間約二キロメートルは、本年九月からシールド工法により施工に着手したところでございます。
先行整備区間につきましては、工事完成後、事業効果を早期に発現するため、雨水を暫定的に貯留する施設として活用することといたしております。
○たかく委員 事業効果を早期発現させるために、整備区間を分けて効果的に工事を進めているとのことで、聞くところによりますと、令和八年度まで工事がかかると聞いておりますが、一刻も早い施設の完成を望みます。
次に、もう一つ、七十五ミリ施設整備地区として整備をしている深沢地区の整備状況について伺います。
○袰岩建設部長 世田谷区深沢地区におきましては、既設の呑川幹線の排水能力を強化するため、呑川増強幹線整備事業を平成二十八年度から進めております。
本事業は、直径最大三・二五メートル、延長約四・七キロメートルの下水道管をシールド工法などにより整備するものでございます。整備完了後には、浸水を軽減することを目的とした取水工事を順次実施し、事業効果を発現させることといたしております。
下水道管の整備につきましては、令和二年度末までに、シールド工法の発進基地でございます東京工業大学グラウンド及び区立三島公園におきまして、深さ最大三十二メートルの立て坑の整備を完了させまして、シールドの掘進を開始したところでございます。
また、浸水被害の軽減に向けた早期の取組といたしまして、平成二十五年八月に浸水被害を受けた世田谷区深沢六丁目付近におきまして、呑川幹線へ流れる雨水の一部を別の下水道管へ流下させるバイパス管を令和元年度末までに整備したところでございます。
このバイパス管の整備によりまして、下水道管の能力不足により被害が生じた地区の雨水を比較的余裕がある下水道管に導水することで効果を発揮しているところでございます。
○たかく委員 この深沢地区の呑川幹線についても、早期に対応できるよう進めていただきたいことを要望させていただきます。
今まで浸水対策について何点か伺ってまいりましたが、下水道事業の大切な役割の一つに、快適な生活の実現に向けた公共用水域の保全があります。下水道事業は、水を流す下水道管と水をきれいに処理する水再生センターが一体となってシステムが機能しております。
東京都の水再生センターでは、毎日約五百七十万立方メートルもの下水をこの水再生センターで処理しておりますが、処理水を放流している河川や、その先の東京湾の水質が改善されており、都民には喜ばれております。
一方で、東京湾では、いまだに赤潮が発生するなど、水再生センターの処理水質については、さらに改善していくための取組が必要と考えます。
そこで、水再生センターの処理水質を高めるためにどのような取組を行ってきたのか伺います。
○佐々木計画調整部長 下水中に含まれる窒素やリンは、東京湾の赤潮の発生要因の一つになっております。
このため、標準的な処理法と比べ、窒素やリンを大幅に削減できる高度処理の導入を進めておりますが、高度処理は、標準的な処理法と比べ、規模が大きい施設を新たに整備する必要があることから、用地の確保とともに整備に時間を必要といたします。
そのため、窒素とリンの除去率は若干低いものの、既存施設の改造などにより、効率的かつ早期に水質改善を図ることのできる準高度処理の導入を水処理施設の設備更新に合わせて進めております。
○たかく委員 既存施設を活用しながら、水質の改善について、スピードアップを図っていることは理解いたしました。
昨年度も、我が会派のうすい都議より、決算委員会において確認をさせていただきましたが、決算の質疑として、水質改善の進捗状況を改めて私も確認したいと思います。
そこで、高度処理の令和二年度の整備状況について改めて伺います。
○佐々木計画調整部長 令和二年度は、八王子水再生センターや森ヶ崎水再生センターなど七か所におきまして、高度処理と準高度処理を合わせ、一日当たり四十四万立方メートルの処理能力を有する施設の整備が完了いたしました。
これにより、令和二年度末までに高度処理と準高度処理を合わせた一日当たりの処理能力は、経営計画二〇一六の目標値でございます四百三十万立方メートルを超える四百五十五万立方メートルに達しております。
○たかく委員 高度処理について推進していることは確認いたしました。引き続き、処理水質の改善をお願いいたします。
最後に、下水道施設における臭気対策について確認させていただきます。
以前、世田谷区内の商店街で、地元の方より臭気の苦情を受け付けました。下水道局には、防臭キャップ等をつけていただくなど、臭気対策の対応をしていただいたことはあります。
そのときに下水道局の職員の方に聞きましたが、こういった臭気の苦情は必ずしも下水が原因というわけではなく、地下室にあるビルの排水槽が原因のことが多いとのことでした。
二十三区全体を見れば、繁華街を中心に多くのビルが建ち並んでおり、臭気苦情が多いと思われますが、令和二年度の下水道からの臭気の苦情件数、また、ビルの排水槽が占める割合についてお伺いいたします。
○鈴木施設管理担当部長 令和二年度に下水道局に寄せられた臭気に関する苦情は七百三十五件で、そのうちビルの排水槽、いわゆるビルピットが原因と思われる苦情は五百九十四件、約八割を占めております。
○たかく委員 今の答弁ですと、臭気苦情七百三十五件、そのうち、いわゆるビルピットが原因と思われる苦情が五百九十四件、約八割とのことで、臭気苦情の多くがビルピットが原因と考えられるものであるということでありました。
このような臭気に対して、まずはビルオーナーが対処すべきものであるものの、下水道局も積極的に対策に取り組んでいくべきと考えておりますが、ビルピットの臭気の発生原因と下水道局の取組についてお伺いいたします。
○鈴木施設管理担当部長 まず、臭気の発生原因ですが、ビルピットの適切な維持管理がなされず排水が長時間貯留されると、腐敗して硫化水素が発生いたします。この腐敗した排水をビルピットから下水道に排出する際に、道路上の雨を下水道管に取り込む雨水ますなどから臭気が外部へ拡散いたします。
こうしたビルピットに起因する臭気対策につきましては、建築基準法を所管する都市整備局、建築物における衛生的環境の確保に関する法律を所管する福祉保健局、悪臭防止法を所管する環境局及び区の所管部署と、私ども公共下水道を管理する下水道局で連携して取り組んできております。
下水道局では、臭気の苦情を受けますと速やかに現地を調査し、原因のビルが特定できた場合には、個別のビルごとに所有者等に対し、関係部署と連携して改善要請を実施しております。
こうした発生対応に加えまして、臭気苦情の多い繁華街などを重点対策地区に設定し、苦情が寄せられる前に調査を行う予防保全型の対策にも取り組んでおります。
○たかく委員 ビルピットの臭気については、ビルオーナーの理解や協力が必要なこともあり、対策にはかなり時間がかかると思いますが、引き続き対策に当たられることをお願い申し上げます。
下水道局では、都民の生活と東京の都市活動を支えるために、浸水対策をはじめ、良好な水環境の創出に向けた高度処理、そして、地域の課題解決まで幅広い役割を担っております。
引き続き、取組を積極的に推進していただくことを望み、私からの質問を終わらせていただきます。
○とくとめ委員 公営企業としての下水道局の皆さんの仕事は、コロナ禍や気候危機の下で、都民の命と安全、そして財産を守る上で重要な役割を果たしているものとして注目をしています。
そこで、下水道局の浸水被害対策の問題を中心にして質問をいたします。
資料要求は大変ありがとうございました。
下水道局の事業計画の経営計画二〇一六でも明記されております、私の地元の板橋区で進められている時間降雨五十ミリ対策の重点地区内の向原幹線の増強施設、下赤塚幹線の増強施設、成増幹線の増強施設の三つの下水道の工事の進捗状況について、この間、公営企業委員会でも質問してまいりましたけれども、浸水対策の現状と下水道工事の取組について伺ってまいりました。
提出してもらった資料要求にもあるように、二十三区内と多摩地域内の二〇二〇年度の浸水被害は、その前の二〇一八年度、二〇一九年度と比較しても浸水被害が極端に少なくなっています。
しかし、その前の二年の浸水被害の数は、去年の数に比べても数百倍の規模になっています。今後、日本でも世界でも気候危機が広がり、巨大な台風や豪雨の頻発が予想される下で決して油断できる状況ではなく、ますます警戒が必要になっていると思います。
そこで、改めて、板橋区内の重点的な地区内の現在の下水道建設など、浸水対策の現状とともに、工事完成に向けた見通しを含めて、どのような進捗状況になっているかについて教えていただきたいと思います。
○袰岩建設部長 下水道局では、東京都豪雨対策基本方針などに基づき、早期に浸水被害を軽減するために地区を重点化し、下水道幹線などの整備を進めており、板橋区では、成増地区、小茂根、向原地区、西台、徳丸地区の三地区を選定し、事業を推進しております。
成増地区では、既設の成増幹線流域の雨水排除能力を強化するため、抜本的な対策として新たな幹線を整備することとしており、実施設計に着手しております。
これまで緊急対策として、既設成増幹線の中流部に雨水の流れをよくするための新たなバイパス管を令和元年五月に完成させ、下流部においても新たなバイパス管を令和三年六月に完成させたところでございます。
小茂根、向原地区では、既設の向原幹線流域の排水能力を強化するため、新たな幹線を整備する計画であり、現在は、幹線に雨水を取り込む取水管を先行して整備しております。
この取水管は、令和四年度内の完成を目指して工事を進めており、完成後は、早期の浸水被害の軽減のため、暫定貯留管として稼働させる予定でございます。
西台、徳丸地区では、既設の下赤塚幹線流域の排水能力を強化するため、新たな幹線等を整備する計画であり、現在は、ルートや規模等に関わる調査検討を進めております。
○とくとめ委員 答弁にあったように、浸水対策の緊急対策として、既設成増幹線の中流部に雨水の流れをよくするためのバイパス管の完成、バイパス管というのは、既設の管では受け止め切れない水量が流れ込んできたときに、管に新たに雨水路となる管を敷設しておくことで水を流していく役割を持つ管のことで、非常に今の説明でも分かりました。
また、取水管の完成を目指して工事しながら、完成後は、早期の浸水被害を軽減するための暫定貯留管として活用している努力や工夫も分かりました。
そこで、三つの重点的地区の長期間の工事期間中にも、これから五月とか十月までの出水期と重なることがあれば、豪雨などが発生した場合に、地域での浸水被害を最小限に防止する取組として、雨水の流れをよくするためのバイパス管の整備や、一部完成した施設の全体の完成前であっても、暫定的に活用する取組は、板橋区の実例としても紹介がありました。
板橋区内の五十ミリ対応の三つの重点的地区の工事では、こうした取組はどのように具体化され、そして、効果の検証はどうなっているんでしょうか。質問いたします。
○袰岩建設部長 新たな下水道幹線の工事の完成まで時間を要することから、早期に浸水被害の軽減を図るため、雨水の流れをよくするための新たなバイパス管の整備や、一部完成した施設を暫定貯留管として稼働させるなどの取組を進めております。
成増三丁目付近では、平成七年から平成二十八年までの間に四回の浸水被害が発生しておりますが、当該バイパス管が完成した令和元年以降、浸水被害は発生しておりません。
引き続き、五十ミリ施設整備を進め、地域の安全・安心の確保に取り組んでまいります。
○とくとめ委員 これまで取り組んできた緊急対応として、新たなバイパス管を整備したことや、一部完成した施設を暫定的に貯留管として活用することなどの取組が、これまで有効性が証明されたということでした。
今後も、長期間の工事期間中には出水期と重なることがあると思いますが、一部完成した施設を、全体が完成する前から暫定的に浸水対策の機能を発揮できる取組は、下水道局として方針化されているんでしょうか。
○袰岩建設部長 経営計画二〇二一の浸水対策の取組方針においても、下水道幹線などの規模の大きな施設整備には長時間を要するので、一部完成した施設の暫定供用など、様々な工夫により、完成した施設の効果を速やかに発揮していくこととしております。
○とくとめ委員 下水道局の方針として、下水道幹線などの大規模な施設整備は期間が長期に及ぶため、一部完成した施設の暫定供用など完成した施設を、様々な工夫で効果を速やかに発揮しているということでした。
次に、文京区千石地域、豊島区南大塚地域の千川増強幹線の工事計画の問題について質問をいたします。
この地域は、二〇一三年八月の集中豪雨で、豊島、文京区の両地域において百十三件の床上浸水、床下浸水が発生して、合計百三十一件の被害件数の大水害のあった地域です。この大きな浸水被害を踏まえて、下水道局は、時間降雨七十五ミリの豪雨に対応するために、もともとあった千川幹線を増強するものとして、新たに千川増強幹線として整備するということでした。
東京都の豪雨対策基本方針、経営計画二〇一六で紹介され、今回の委員会の決算の概要でも説明がされていました。時間降雨七十五ミリ施設整備にも載っております。直径が三・七五メートル、長さが二・五キロメートルの巨大な貯留管の建設を中心にした工事計画になっています。
しかし、この間、三年間の工事を通じて、今年の三月に完成することになっていた工事計画は変更になり、今年の十月から改めて約三年間の工期延長となり、住民の方からは、不安の声や、がっかりしたという声などが上がっていると聞いております。
そこで、なぜ千川の増強幹線の工事の工期が、今年の三月に完成予定だったものが、三年間も工期が延長になったのか、住民の皆さんがその主な原因について納得できるように説明をしていただきたいと思います。
○袰岩建設部長 文京区千石、豊島区南大塚地区では、既設の千川幹線及び第二千川幹線流域の排水能力を強化するため、千川増強幹線の整備事業を平成三十年度から進めております。
本事業では、シールド掘進中に、当初設計時には想定していなかった大きな礫が発現し、土砂を排出するための排管が閉塞したため、その除去、清掃作業に時間を要しました。
また、豊島区宮仲公園における千川増強幹線に雨水を収容する取水工事とシールド工事を同時並行で進めることで工期短縮を図る予定でありましたが、取水工事が行われる宮仲公園に隣接するマンションにおきまして大規模改修工事が実施されることになるなど、地元町会から周辺環境への影響について懸念が示され、同時並行で工事を進めることができなくなりました。
このため、シールド工事が完成した後、千川増強幹線に雨水を収容する取水工事を施工することとしたため、工程を見直しました。
○とくとめ委員 三年間の遅れの原因については、シールド工事の障害となった地中の大きな礫があったことや、地元住民の要望に配慮した結果が重なり、やむを得ない遅れが発生したということは分かりました。
しかし、千川増強幹線の工事が完了することは、古くから浸水被害が繰り返されている地域の住民の皆さんの安全・安心にとっては、特別の悲願になっている工事でした。千川という地域は、名前が千の川となっているように、古くから多くの浸水があったところであり、その川が塞がれた暗渠の上につくられた地域、まち並みでした。戦前の一九三三年、戦後の一九六二年、そして最近の二〇一三年の大型浸水被害など、繰り返し浸水被害が起きている地域です。
今後も、気候危機の下で、三年延期された工事期間中に浸水被害が繰り返される可能性も否定できないと思います。こうした工事期間中に、六月、十月の出水期が重なったときに、台風、豪雨の浸水などの被害をどうやって防いでいくのか、担当の下水道局の責任は大変重いというふうに思わざるを得ません。工事期間中に豪雨による浸水をどうやって防止していくのか、真剣に検討して地域住民の命と財産を守り抜くという立場で取り組んでいただきたいと思います。可能な限り工事期間中の早期に新しい浸水対策を具体化してほしいと思います。
私が特に注目したのは、こうした暫定の浸水対策の具体化にとって、東京都豪雨対策基本方針改定版の中に、下水道整備の方針の内容が書かれているものを発見しました。読んでいて初めて知ったわけですけれども、そこには、夏季に頻発する局地的集中豪雨に対して、できるだけ早期に整備効果を発揮できるよう、一部完成した施設を暫定的に稼働させるなどの取組を求めていると、そういうことが書かれていました。
そこで質問ですけれども、こうした下水道局の基本方針からも、下水道局として住民の命と財産を優先する立場から、千川増強幹線の工事期間中でも浸水被害に緊急対応できるよう、早期に具体的な対策を検討すべきだと思いますけれども、どういう緊急対応を行うんでしょうか。お答えください。
○袰岩建設部長 新たな下水道幹線の工事の完成まで時間を要することから、早期に浸水被害の軽減を図るため、浸水被害があった既設の千川幹線沿いの豊島区南大塚において、直径三十センチメートル、延長約五十メートルのバイパス管を、浸水被害のあった平成二十五年の翌年の雨季前であります平成二十六年五月に完成させました。
このバイパス管の整備により、下水道管の能力不足により被害が生じる地区の雨水を、比較的余裕のある下水道管に導水することで効果を発揮しております。
○とくとめ委員 浸水被害のあった二〇一三年の翌年、二〇一四年に、雨季前に緊急対応を行うことで、基本方針どおりの積極的な対応として評価される対応だと思います。
同時に、この緊急対応だけでは今後の豪雨の状況に不安でもあることから、追加の暫定対応などの工夫とともに、地元区や周辺自治会、あるいは地元住民との協力、協働、検討もぜひしていただきたいと思います。
この工事延長に関わって、下水道局と関係住民との信頼関係、納得と協力の関係を大事にすることが重要だと思います。そのためにも、三定の公営企業委員会の契約案件報告において、引き続き千川増強幹線人孔設置工事の報告がされました。そのときに、日本共産党の、今日こちらにも副委員長として出席しておりますけれども、斉藤公営企業委員が発言をして、工事が地域住民の理解と納得を得て円滑に進行するよう、住民の思いが反映された二つの要望を行われております。
一つは、あと三年の工事延長になることに驚き、今年から取水ができると安心して思っていた方々にとって、浸水の不安が続くことになります。特に、浸水被害のあった地域の皆さんには丁寧な説明と宣伝が不可欠です。全ての方々に丁寧な説明の機会をつくってほしいという要望です。
二つ目は、千川増強幹線には、地元公園での立て坑の建設に対する協力や理解、豊かな樹木移植などへの協力をいただいています。新しい工事でも、現場の安全確保と公園の円滑な樹木移植などについて、住民の協力と理解のための要望が内容になっています。
以上の二つの要望に応える丁寧な対応は、今後の工事完成に向けて、住民の納得と理解、協力を広げる上で極めて大事だと思っています。
そこで質問ですけれども、これまでの工事期間の延長や工事期間中の緊急対応について、どのように関係住民の皆さんに周知徹底の努力をされてきたんでしょうか。また、今後改めて工事の延長期間、工事の変更などについても、関係住民の理解を求めて丁寧に説明、周知すべきだと思いますけれども、具体的な計画が予定をされているんでしょうか。いかがでしょうか。
○袰岩建設部長 お話の下水道工事の実施に当たっては、地元区や地元町会、沿線住民の皆様への丁寧な説明、周知を行うとともに、地元要望に対応するため、工事工程等を適宜見直し、進めてきました。
具体的には、シールドの発進基地である豊島区上池袋公園及び到達基地である文京区窪町東公園の周辺の町会等とは設計段階から協議を行い、住民の皆様の意向を踏まえ、入念な調整を行いながら立て坑用地を選定するとともに、設計と工事の地元説明会も実施してきました。
公園周辺の住民の皆様には、工事着手から毎月詳細な工事内容のお知らせをポスティングするとともに、デジタルサイネージなどでの掲示も行っております。
千川増強幹線沿線の住民の皆様には、シールド掘進前の家屋調査に合わせ、工事工程などの工事概要も説明しております。
千川増強幹線に雨水を収容する取水工事に当たっても、今月から、千川幹線沿線の二十一町会や沿線住民の皆様に、工事概要や今後の工事工程などの最新の情報を既にお知らせしているところでございます。
今後とも引き続き、住民の皆様の理解を得てまいります。
○とくとめ委員 ただいまの答弁にあったように、こうした大規模な工事は、一人一人の住民の命と安全がかかっています。住民の皆さんの目線と思いに立って、丁寧で納得のいく説明が不可欠ではないかと思います。
今回の場合は、工事に関係する公園の人たち、あるいは自らのマンションの工事に関わる関係者もいらっしゃいます。そういう住民の皆さんのお互いの関係が乱れることがないように、本当に丁寧にやらなければいけないというふうに実感をします。
私が板橋区の下水道工事の問題で実感したのは、少なくない住民が、データで見ますと、十年、二十年と長期にわたって床下、床上浸水被害を体験しているために、安心・安全の確保の問題は本当に真剣で切実です。一体いつになったら解決してくれるんだと、行政への不信を含めてお叱りを受けることを何度も経験いたしました。それだけに、誠意を持って対応することの重要性を受け止めております。
浸水被害の中で、防止のために地元区や地域住民が協力して、金網のような鉄製のグレーチングという側溝蓋の活用で雨水の流れがスムーズになり、浅い浸水被害に、小さくして防ぐようなことも、そういう中でできているというふうに聞きました。
気候危機と呼ばれる地球の異常気象が、世界中各地で豪雨や台風や猛暑や森林火災など大問題になっています。これは、身近な首都圏でも、東京でも決して例外ではなく発生すると思われます。特別の警戒と対策が不可欠であると思います。
それだけに、公営企業としての下水道局の皆さんの役割はますます重要になっており、期待も重くなっているのではないかということを強調して、下水道局の会計決算についての質問を終わります。
○阿部委員 令和二年度下水道事業会計決算について質問をいたします。
下水道事業において、令和二年度は、五年間の事業計画の指針である経営計画二〇一六の最終年度に当たります。都市生活に欠かせない下水道機能の維持向上のため、施設設備の老朽化対策、災害対策、さらには環境への配慮など、様々な観点にわたり着実に事業を進めてこられたことと受け止めております。
また、令和二年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により社会全体が大きな影響を受けました。これは下水道事業も例外ではありません。
そこで、新型コロナウイルス感染症拡大による下水道料金収入への影響と、その減少要因を、下水道局としてどのように考えているか伺います。
○坂井経理部長 令和二年度決算の下水道料金収入額でございますけれども、税抜きで約千四百四十六億円でございまして、令和元年度から約百三十七億円、八・七%の減収となってございます。
その主な要因といたしましては、自粛要請に伴います人々の往来の減少、それから、テレワークの推進などによりまして、駅や空港、それに加えて、オフィスビルなど汚水を大量に排出している大口使用者の汚水排出量が大きく減ったことにあるのではないかというふうに考えてございます。
○阿部委員 大口使用者の排出量減少が大きく響いているとのことです。
新型コロナにより経済活動が停滞する中で、収入が減少し、下水道料金を含む公共料金の支払いが厳しくなった個人や事業者の方も少なくありません。
下水道局では、下水道料金の支払い猶予制度を設けておりますが、制度を開始してから令和二年度末までに支払い猶予を行った件数と金額について改めて伺います。
○坂井経理部長 当局では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いまして、一時的に下水道料金の支払いが困難な事情にございます二十三区のお客様に対しまして、最大一年間を猶予期間といたしまして、支払い猶予を実施しているところでございます。
令和二年三月二十四日に制度を開始してから令和二年度末までに、お客様から支払い猶予の申出がございました件数は約一万八千件、支払い猶予金額は約五億三千万円となってございます。
○阿部委員 支払い猶予は負担の先送りであり、猶予期間終了後に一括して料金を支払う必要があります。一時的に収入が減って猶予を受ける方にとっては有効な制度ですが、失業などで困窮状態が続く方にとっては、猶予期間後に一度の支払い額が大きくなってしまい、かえって支払いが困難になってしまいます。
先ほどの質疑の中でお答えがありましたので、繰り返しの質問はいたしませんが、分割払い等の対応をしているということはお伺いをいたしました。
二年度の支払い猶予件数は約一万八千件とのご答弁でしたけれども、年度内の完済は半数程度と聞いており、下水道料金の支払いが困難なご家庭が少なくないことを強く感じさせます。
東京都社会福祉協議会が実施しているコロナで家計が急変した方のための支援では、令和二年度の総合支援資金の決定分だけで十一万八千八百五十三件、下水道の猶予件数はその約一五%にすぎません。困窮した方への支援策として十分機能していないのではないでしょうか。
水道事業会計決算でも申し上げましたが、困窮世帯への減免制度の拡充の検討並びに個別に相談する中で福祉が必要な方については、自治体の福祉窓口や制度につなげる、きめ細かい対応を強く求めます。
次の質問に移ります。
また、二年度は、新型コロナがまだまだ未知のウイルスであり、どのような場面で感染が広がるのか情報が錯綜していました。下水を通しての感染に、現場で働く方々や都民の方々の中に不安の声もありました。
そんな中で、下水道局は、下水中の新型コロナウイルスの感染性について調査を行われましたが、その内容並びに結果がどのように役立っているかお伺いをいたします。
○猪八重施設管理部長 下水道事業を安定的に運営する上で、下水中の新型コロナウイルスの感染性に対する下水道関係者の不安を払拭することは極めて重要でございます。
そのため、昨年、局が所管する全二十か所の水再生センターの流入下水及び放流水中の新型コロナウイルスの感染性を調査いたしまして、全ての水再生センターの下水中から感染性のある新型コロナウイルスが検出されなかったことを確認いたしました。
この調査結果につきましては、下水道関係団体に周知をいたしましたが、そのほかにも、ホームページや新聞、雑誌等の様々な媒体を通じまして積極的に発信し、他自治体も含めた下水道界全体で情報共有をいたしました。
これらの取組によりまして、下水道関係者の安心確保に貢献できたものと考えてございます。
○阿部委員 下水中から感染性のあるウイルスが検出されなかったことが確認できたこと、エッセンシャルワーカーである下水道関係者の方々全体で共有できたことは大変貴重だったと評価したいと思います。
さて、冒頭申し上げたとおり、令和二年度は経営計画二〇一六の最終年度でした。経営計画の総括として、計画の達成状況について伺います。
○福島企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 達成状況ですが、下水道局では、経営計画に掲げた主要施策の進捗状況をお客様である都民の皆様にお知らせするため、事業指標を設定しております。
経営計画二〇一六に掲げた三十三指標のうち、計画期間五か年の目標値に対し一〇〇%以上達成した指標は、枝線の再構築や下水道管の耐震化など、二十一指標でございます。
また、八〇%以上達成した指標は、流域下水道における主要設備の再構築など、五指標となっており、おおむね計画どおりに事業を実施いたしました。
引き続き、全ての指標の達成に向けて、困難な施工環境への対応など、適切に対策を講じながら事業を着実に推進してまいります。
○阿部委員 ありがとうございます。二十一の指標で一〇〇%またはそれ以上達成、五つの指標で八〇%以上となったこと、特に耐震化や合流式下水道改善に関わる項目で目標を達成したことは評価できます。
一方で、大規模な工事となる都市部での浸水対策は未達項目が多く、引き続き全力で取り組んでいただきたいと思います。
その上で、経営計画に照らして、今後どのような課題があるのか、その課題は経営計画二〇二一にどのように反映したのか伺います。
○福島企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東京の下水道は、初期に整備された下水道管や水再生センターなどの老朽化が進み、機能維持の対策が必要となっております。
また、気候変動に伴い激甚化、頻発化する豪雨への対策や、下水道事業を支える人材の確保などの課題にも適切に対応していく必要がございます。
経営計画二〇二一では、これらの課題を見据え、お客様の安全と安心を守り、快適な生活を支えるとともに、良好な水環境と環境負荷の少ない都市の実現に貢献することを目指して、老朽化施設の再構築や浸水対策、合流式下水道の改善などの施策を着実に推進してまいります。
また、一部の水再生センターに包括委託を導入し、下水道局、政策連携団体、民間事業者の三者が連携して安定的に運営を行っていくとともに、AIなどを活用した技術の開発、導入や手続のデジタル化など、DX、デジタルトランスフォーメーションを積極的に推進し、下水道サービスの向上に取り組んでまいります。
○阿部委員 その具体的な取組の一つとして、合流式下水道の改善があります。
例えば、品川区内にある目黒川と立会川における合流改善対策について、どのような改善を図ってこられたのか、取組状況を伺います。
○袰岩建設部長 下水道局では、強い雨が降った際に合流式下水道から河川や海などへ放流される汚濁負荷量を削減することで、良好な水環境の創出に貢献しております。
目黒川や立会川は、潮の干満の影響を受け、水が滞留しやすいことから、雨天時に放流された汚水混じりの雨水の影響を受けやすいという特徴がございます。
そのため、雨水吐き口からのごみなどの流出を抑制するため、これまでに、目黒川と立会川で合わせて約六十か所で水面制御装置の設置を完了させました。
また、降雨初期の特に汚れた下水を貯留するため、目黒川では池尻幹線、新駒沢幹線の改造などにより、約十五万立方メートルの貯留施設が稼働しております。
さらに、立会川幹線からの雨水の放流先を立会川から京浜運河に変更するための直径五メートル、延長約八百メートルの二本のトンネルの整備を進めておりまして、令和元年度に本体の工事を完了させ、現在、トンネル内を仕上げる工事を実施しているところでございます。
○阿部委員 それぞれありがとうございます。
目黒川は、貯留施設の整備などで以前と比べれば水質改善が感じられるものの、ご答弁にあったように潮の影響を受けやすく、天候や季節によっては、今なお臭気に悩まされます。この先、何ができるのか、引き続き課題意識を持っていただければと思います。
また、立会川の工事については、工事の着手から二十年以上が経過をし、完成見込みも何度も変更をされており、周辺住民の負担も長期にわたっております。大変難しい工事であるということは承知をしておりますが、既に本体工事は終えているとのことで、一日も早い完成を目指すとともに、見通しが立ち次第、周辺への周知もお願いをいたしたいと思います。
また、先ほど挙げられた課題の一つとして人材の確保が挙がりました。事業を継続していくためには、現場を支える人材の確保、育成が重要です。
政策連携団体や民間も含めた下水道業界全体への人材育成への取組として、どのようなことを行っているのか伺います。
○白川職員部長 将来にわたり下水道サービスを安定して提供するためには、下水道局と政策連携団体である東京都下水道サービス株式会社が緊密に連携し、民間事業者も含めた下水道界全体の人材育成や技術継承に取り組むことが不可欠でございます。
そのため、当局では、平成二十五年に開設した下水道技術実習センターを活用し、局職員のみならず、民間事業者のニーズに合わせた様々な研修を実施しております。
当センターでは、実際の工事現場や水再生センターの施設などを再現した実習施設を有し、令和二年度までの八年間で累計八百四十四件、約二万四千名の利用実績となっております。
今後も、当センターの施設の充実やPRに努めることで活用を促進し、下水道界全体の人材育成と技術力の向上に貢献してまいります。
○阿部委員 下水道技術実習センターを東京都が設置し、民間を含めた業界全体で人材育成を図っていることは大変貴重であると思います。
ところで、下水道局並びに政策連携団体において、職員の男女比率並びに管理職の男女比率はどうなっているのでしょうか。ご答弁をお願いいたします。
○白川職員部長 令和三年三月三十一日現在でございますが、他団体への退職派遣者を含む下水道局職員に占める女性職員の割合は一二・五%、下水道局の管理職に占める女性の割合は七・四%でございます。
また、政策連携団体である東京都下水道サービス株式会社の固有社員に占める女性の割合は六・一%でございまして、現在、女性の管理職はおりません。
○阿部委員 政策連携団体において女性管理職がゼロという状態は、ぜひ早急に解消を図るべきではないでしょうか。技術系職員が九割以上を占め、過去において女性社員の採用そのものが少なかったという背景もあるのでしょうが、近年では、各業界においても技術系の職員に就く女性が増えております。
東京都下水道サービス株式会社におかれましても、女性管理職を組織として育成する努力もされていると聞いておりますので、女性もキャリアパスを描きやすい職場づくりをさらに積極的に進めていただきたいし、また、そのことが新たな人材確保にもつながるものと思います。ぜひ早期の実績につながるよう、下水道局として今後も強く働きかけていただきたいと思います。
一方で、現実問題として、下水道管の保守点検については、きつい、危険、あるいは困難な現場も少なくないと思います。新たな技術を積極的に開発、導入し、負担を軽減していく努力も必要です。
下水道局では、どのような技術を採用しているのでしょうか。また、どのような課題が残り、それに対してどのような技術開発を進めているのか伺います。
○青木技術開発担当部長 下水道局では、人が入ることのできない小さな下水道管は、デジタル技術により下水道管の損傷状況を自動診断できるミラー方式テレビカメラを採用し、効率化や精度の向上を図りつつ調査を実施しております。
下水道施設の中には、水位が高いことや下水の流れが速いなどの理由によって調査を行うことが困難な箇所がございますため、ドローン等により、安全に遠隔で調査を行う技術の開発に取り組んでおります。
○阿部委員 ドローン等を使った新たな技術開発にも取り組んでいらっしゃるということで、さらなる点検水準の向上と負担軽減に期待をいたします。
下水道は、快適で衛生的な都市を支えるために不可欠な機能です。しかし、そのほとんどは地中にあり、建物内でもできるだけ目に触れないよう設計をされ、一般の生活の中でその重要性を改めて意識する場面は少ないのではないかと思います。
下水道事業の大切さを都民に理解してもらう上で、下水道局では、PRにおける課題をどのように捉え広報活動を行っているのでしょうか。
○田中総務部長 令和元年度に実施いたしました東京の下水道に関する都民意識調査では、下水道事業に関心を持っていると回答した割合は三割程度でございまして、特に若い世代ほど下水道の役割に対する認知度が低くなる傾向があり、こうした世代への認知度向上が課題となっております。
そこで、令和二年度は、SNS等のデジタルメディアを活用いたしまして、若い世代にも下水道事業への関心を高めてもらうため、ふだん目にすることが少ない下水道の仕組みなどを積極的に発信してまいりました。
また、水再生センター等におきましては、従来の施設見学にデジタル技術を組み合わせるなど、下水道事業を分かりやすく説明する取組を行ってきたところでございます。
引き続き、若い世代を含め、多くのお客様である都民の皆様に下水道事業への理解を深めていただけるよう広報活動に努めてまいります。
○阿部委員 水再生センターでの見学はコロナで中止しているところも多いようですが、VR体験のコンテンツをブラッシュアップするなどして、充実に努めていただければと思います。
また、下水道局のホームページでは、大地震の際には排水設備の破損がないか確認してからトイレを使うよう呼びかけておりますが、このことはあまり知られておりません。破損の確認方法が分からず、災害時には、専門業者に連絡を取ったり、点検、修理してもらうまでに相当な期間を要することも想定されます。
特に集合住宅では、自宅避難の前提も崩れてしまうことになりかねません。こうしたことも含めた広報の充実をお願いいたします。
さて、決算書に戻りますが、令和二年度には約六十億円の特別利益が計上されており、その大部分は二〇一一年の東日本大震災時における原発事故に係る東京電力からの損害賠償とのことです。
どのような内容なのか、賠償の対象となった費用、期間を含め、改めてご説明をお願いいたします。
○田中総務部長 東日本大震災に伴う原子力発電所事故の対応といたしまして、当局では、放射能の影響により資源化ができなくなった汚泥焼却灰の運搬、埋立処理や、施設の敷地境界の空間線量測定などを実施いたしました。
このため、平成二十五年七月に決定した都の方針に基づきまして、事故によって支出を余儀なくされた全ての経費につきまして、東京電力に対し賠償請求を行っております。
令和二年度決算において、特別利益として計上した金額のうち、約五十四億円は、平成二十三年度以降、令和元年度までの請求額約八十五億円に対して、令和二年度中に賠償を受けた金額でございます。
○阿部委員 ありがとうございます。東日本大震災における原子力発電所の事故によって、汚泥焼却灰から放射性物質が検出されたため再資源化ができなくなり、汚泥の運搬と埋立てなどに要した費用などに対して損害賠償を受けているとのことです。
区部における汚泥焼却灰の令和二年度までの十年間の放射能濃度と資源化の推移についてお伺いをいたします。
○猪八重施設管理部長 区部の汚泥焼却灰の放射性セシウム濃度でございますが、東日本大震災後の平成二十三年度より測定を開始しております。
平成二十三年度は、一キログラム当たり千三百ベクレルから五万五千ベクレルの範囲でございましたが、令和二年度には、二十八ベクレルから七百三十ベクレルの範囲に減少しておりまして、安全に処理するための法令基準でございます八千ベクレルを下回ってございます。
また、区部の資源化率でございますが、平成二十三年度は約一割でございましたが、令和二年度には約六割まで向上してございます。
○阿部委員 この十年間で汚泥焼却灰の放射性セシウム濃度は基準を大きく下回る範囲にまで減少しておりますが、資源化率は事故前の七割という水準には戻っていないとのことです。
今後も、放射性物質濃度の測定は引き続き計測を続けるべきだと考えますが、ご見解をお願いいたします。
○猪八重施設管理部長 汚泥焼却灰の放射能濃度の測定でございますけれども、今後とも、資源化率の向上とともに、都民の皆様や作業従事者等への安全・安心の確保のため、汚泥焼却灰の放射性物質濃度等の測定を継続いたしますとともに、測定結果につきましてはホームページで公表してまいります。
○阿部委員 最後に、マイクロプラスチックについてお伺いします。
マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題になっており、私も昨年、環境系の事業者とともに区部の河川で調査を行ったところ、いずれの地点でも一定量が検出をされました。
下水にもマイクロプラスチックが含まれていることが強く想定をされますが、下水中にどのくらい入っていて、水再生センター経由でどのくらい排出されているかの調査など、何か対応を行っているのか、お尋ねいたします。
○猪八重施設管理部長 マイクロプラスチックに関しましては、様々な機関が調査研究を行っておりますが、下水道について技術的に統一した手法は確立されていないということから、引き続き情報収集に努めてまいります。
○阿部委員 ぜひこの問題についても情報収集を重ね、具体的な取組につなげていただければと思います。
以上で質問を終わります。
○小林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小林委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
以上で下水道局関係を終わります。
以上をもちまして第二分科会における決算の審査は終了いたしました。
なお、本分科会の審査報告書につきましては、分科会委員長において取りまとめの上、委員会委員長に提出いたしますので、ご了承願います。
これをもちまして第二分科会を閉会いたします。
午後三時八分散会
Copyright © 1999
Tokyo Metropolitan Assembly All Rights Reserved.