平成三十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第三号

令和元年十月二十八日(月曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十一名
委員長伊藤こういち君
副委員長小松 大祐君
副委員長白石たみお君
副委員長おじま紘平君
古城まさお君
鳥居こうすけ君
宮瀬 英治君
斉藤まりこ君
奥澤 高広君
森口つかさ君
福島りえこ君

欠席委員 なし

出席説明員
都市整備局東京都技監都市整備局長兼務佐藤 伸朗君
次長総務部長事務取扱桜井 政人君
技監上野 雄一君
理事中島 高志君
都市づくり政策部長小野 幹雄君
都市基盤部長山下 幸俊君
市街地整備部長選手村担当部長兼務安部 文洋君
市街地建築部長青柳 一彦君
基地対策部長高原 俊幸君
企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務朝山  勉君
防災都市づくり担当部長三宮  隆君
多摩ニュータウン事業担当部長松崎 浩一君
局務担当部長奥秋 聡克君
病院経営本部本部長堤  雅史君
経営企画部長児玉英一郎君
サービス推進部長西川 泰永君
経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務樋口 隆之君
計画調整担当部長船尾  誠君

本日の会議に付した事件
平成三十年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成三十年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)
病院経営本部関係
・平成三十年度東京都病院会計決算(質疑)

○伊藤委員長 ただいまから平成三十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市整備局及び病院経営本部関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成三十年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○桜井次長 去る十月十六日の当分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元に配布しております当局の平成三十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会資料の表紙をおめくりいただきまして、目次をごらんください。
 資料は、泉岳寺駅地区の権利者の人数と内訳(平成三十年度末時点)の一件でございます。
 次のページをお開き願います。権利区分ごとに平成三十年度末時点での権利者数を記載してございます。
 以上で資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○伊藤委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○福島委員 それでは、泉岳寺地区の市街地再開発事業に関連して、三点伺います。
 まず、予算の執行率について伺います。
 東京都都市再開発事業会計決算説明資料を見てみると、泉岳寺駅地区都市再開発事業費における執行率が七・二%にとどまっており、事業スケジュールに何らか遅延が発生しているのではないかと懸念されます。
 そこで、本事業の執行率が低い理由について伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 平成三十年度の予算の大部分は、早期に地区外への転出を希望している地権者の用地取得でございますが、地権者と話し合いを進めたところ、再開発ビルへの入居希望に変更となったことから、当初予算で計上した費用が不用となり、執行率が七・二%となってございます。
 本事業につきましては、こうしたことを前提に、予定どおり本年二月に事業計画を決定しておりまして、事業が遅延しているということはございません。

○福島委員 ただいまのご答弁で、予定どおり事業計画が決定できており、事業の遅延がないことを確認させていただきました。
 では、次に、バリアフリーへの配慮について伺います。
 平成三十年度の決算書を見ると基本設計を実施していますが、こうした検討に当たっては、泉岳寺駅地区においては駅と一体的なまちづくりを進めていることから、バリアフリーへの配慮が大切だと思います。
 具体的には、高齢者や車椅子利用者の方々が、タクシーや福祉車両から降車して泉岳寺駅までアクセスしやすい環境になっていることが重要だと思いますが、どのような対応を検討したのかを伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 都営地下鉄泉岳寺駅への歩行者動線につきましては、交通局と連携して検討しておりまして、このまちを訪れる全ての人が安心して快適に移動できるよう、地上から、本事業で整備する再開発ビル内のエレベーターやエスカレーターなどを利用し、地下駅前広場を経由しまして泉岳寺駅構内へアクセスするなど、バリアフリールートを構築することとしております。
 タクシーや福祉車両を利用された車椅子の方が駅へアクセスするルートとしましては、例えば、再開発ビル南寄りの区画道路二号で降車しまして、再開発ビル内のエレベーターを利用して駅へアクセスすることが可能となります。

○福島委員 ただいまのご答弁で、バリアフリーに配慮した再開発ビルの計画となっていることを確認させていただきました。
 さらに、歩道部の切り欠きなど、タクシーや福祉車両が車寄せしやすい工夫や、雨にぬれないための屋根の設置などについても検討していただきたいというふうに思います。
 というのも、福祉輸送サービス事業者によれば、現状の都内の主要な駅では、乗降場所にバリアフリーの配慮がほぼなされていないということなんです。最近、再開発された東京駅や品川駅、新宿駅南口などにおいても配慮が十分ではないということで、再開発というタイミングを逃したことは非常に残念に思います。
 一方、横浜駅では、きちんと輸送車両の乗降場所が設けられており、仙台や岡山といった地方都市の主要駅においては、やはり、一般の乗用車の乗降場所ではあるものの、きちんと雨にぬれない屋根つきで広くとってあるために、非常に利用しやすい、このような状況があるそうです。
 泉岳寺地区の再開発以降、都が主管する再開発事業は現時点では予定はされていないようですけれども、今回の取り組みを皮切りに、今後、民間が扱う駅や大きなビルの開発においても、バリアフリー、そして福祉輸送を考慮した取り組みが進むよう、都市整備局として、制度やガイドラインの制定、見直しなどをご検討いただきたいと思います。
 そして、その際に、福祉輸送において、事業者や利用者を含めたオープンな議論の場が欲しいという声もあるので、あわせて届けさせていただきます。
 最後に、帰宅困難者対策について伺います。
 本事業は、都施行による公共性が高い事業であり、再開発ビルが帰宅支援対象道路にも位置づけられている国道一五号にも面していることから、災害が発生したときの対応、例えば、帰宅困難者対応が可能となるようなことも必要ではないかというふうに思います。
 基本設計の中では、災害発生時にどのような対応ができるように検討したのかを伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 本事業につきましては、誰もが安心できる防災まちづくりが実現できるよう検討を進めてまいりました。
 具体的には、高輪ゲートウェイ駅へアクセスする歩行者デッキと接続しております、三階の南側に配置されるオフィス入り口ロビーの一部を帰宅困難者のための一時滞在施設として活用するとともに、ビル利用者も含め、安全に施設内に滞在できるよう、水、食料などの備蓄が可能な倉庫をオフィス及び住宅の各階などに整備することとしております。
 また、非常用電源等の分散型電源を整備しまして、災害時における電力供給の継続が可能な計画としております。
 このように、防災性の高い再開発ビルとなるように取り組んでおります。

○福島委員 バリアフリーに加えて、帰宅困難者対策についても検討されていることを確認させていただきました。公共事業である以上、これらは、まちづくりにおいては重要なポイントだと思います。ご答弁いただいたことを、引き続き実現に向けて努力していただくようお願いいたします。
 以上です。

○小松委員 私からも、泉岳寺駅地区の市街地再開発事業について何点か伺いたいと思います。
 この再開発については、決算の概要によりますと、令和六年度に完了させるということであります。これは、隣接してJR東日本が進める高輪ゲートウェイ駅を中心とした開発と歩調を合わせるということだと理解しています。
 大変タイトなスケジュールの中で事業を円滑に進めるためには、さまざまな権利者との合意形成が重要であったと考えます。本日の資料にも百二十六名というふうに書かれてありましたが、そこで、本事業でどのように権利者との合意形成に取り組まれてきたのか、伺いたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 本事業における合意形成につきましては、平成二十七年に都施行による再開発事業の実施を表明して以降、地権者とのまちづくり勉強会を経て、平成二十八年には、地権者の代表と都及び地元港区で構成する泉岳寺駅地区再開発協議会を設置しております。
 平成三十年度は、事業計画決定に向けて再開発協議会を七回開催しまして、事業スケジュールや再開発ビルの施設配置などにつきまして意見交換を行うとともに、広報紙えきまちだよりを八回発行し、情報提供に努めてまいりました。
 このほか、平成二十九年度に開設した地区事務所におきまして、個別面談なども実施しております。
 このように、権利者と十分話し合いを重ねるなど丁寧な対応を行い、円滑な合意形成に努めております。

○小松委員 ただいまの答弁によりますと、権利者に対して非常に丁寧な対応をされ、合意形成を図られたということが確認できました。実際に、三十年度だけで協議会を七回開催されたり、私も手元に資料をいただきましたけれども、広報紙も八回発行するなど、私が知る限り、ほかのさまざまなこうした再開発事業の中でも、かなりきめの細かな対応をとっていただいているんだろうというふうに思います。
 このような丁寧な対応に加えて、都が施行者であることから、再開発ビル単体の事業として捉えるのではなくて、地区全体のまちづくりの方向性などを示しながら話し合いを進めてきたことも、合意形成が円滑に進んだ要因の一つではないかなというふうに考えています。
 そこで、これまで周辺のまちづくりについてどのように説明を行ってきたのか、伺いたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 泉岳寺駅地区を含む品川駅北周辺地区につきましては、都や区、学識経験者等で構成する委員会におきまして、まちづくりの基本的な考え方を示した品川駅北周辺地区まちづくりガイドラインを平成二十九年三月に策定しております。
 この中で、品川駅と高輪ゲートウェイ駅、泉岳寺駅の三つの駅が連携し、まち全体をにぎわいでつなぐエキマチ一体のまちづくりを実現することとしております。
 こうした内容等につきまして、地元権利者に対し、再開発協議会において説明するなど、機会を捉えて情報提供を行い、品川駅北周辺地区のまちづくりについて理解を求めてまいりました。

○小松委員 ただいまいただいた答弁によりますと、周辺まちづくりについても権利者に説明し、理解を得てきたということが確認ができました。事業の円滑な推進のためには、地元権利者の方々の協力が不可欠であります。引き続き、合意形成に努力を続けていただければというふうに思います。
 次に、再開発ビルの計画について伺いたいと思います。
 決算の概要を拝見いたしますと、平成三十年度には基本設計を実施したとのことであります。施行地区内の権利者については、業務用ビルやマンションが混在する中、オフィスとしてお使いの方や住居としてお住まいの方、店舗で営業されている方など、非常に多様な方々がいらっしゃると我が会派の地元議員からも伺っております。
 一方で、再開発ビル敷地としては、南北に大変細長い形状でありまして、風の道に配慮し、ビル高層部を北側に寄せるなど、ビルの計画をする際にもさまざま制限があり、多様な用途を一つの再開発ビルにおさめていくには、いろいろと工夫が必要だったことと思います。
 このような中で、再開発ビルの計画をまとめるため、どのような工夫を行ってきたのか、伺いたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 本地区の再開発ビルにつきましては、羽田空港へのアクセス等にすぐれた都営地下鉄泉岳寺駅と直結する地区のポテンシャルを生かすとともに、権利者の現状や要望を踏まえまして、住宅、オフィス、店舗の三つの施設を合わせた複合用途のビルとして整備することとしております。
 再開発ビルの計画に当たりましては、敷地の形状や各施設の特性などを踏まえ、住宅につきましては、眺望も考慮し高層部に、オフィスにつきましては、まとまった床面積が確保できる地上四階から十一階に配置するなどの工夫を凝らしております。
 加えまして、国道一五号沿いの敷地西側では、地下鉄施設の地上部を活用し、道路と敷地が一体となった歩行者空間や、緑豊かなゆとりある広場を整備するなどの計画となっております。
 こうした内容につきまして、権利者との合意形成を進め、施設計画の案を取りまとめて、本年二月に事業計画として決定いたしました。

○小松委員 以上で質問は終わりますが、泉岳寺駅地区における再開発は、国際交流拠点として期待されている品川駅北周辺地区の一翼を担うとともに、羽田空港へのアクセスの利便性を高めるための泉岳寺駅の改良に向けた大変重要な事業であると認識しています。同時に、この周辺は、リニアの中央新幹線の開業も、そう遠い未来ではなくなってまいりました。
 引き続き円滑な事業推進に努力することを要望して、私からの質問を終えたいと思います。ありがとうございました。

○古城委員 私からも、平成三十年度東京都都市再開発事業会計決算に関連して、泉岳寺駅地区の市街地再開発事業について質問をいたします。
 泉岳寺駅地区を含む品川駅北周辺地区は、平成二十九年三月に策定、公表されたまちづくりガイドラインにおいても、その特徴として、羽田空港へのアクセスやリニア中央新幹線の始発駅となり、広域交通結節機能を担う品川駅、都心ターミナル駅へのアクセスにすぐれた地域交通機能を担う新駅、東京の地下鉄ネットワークや羽田空港へのアクセスにすぐれた泉岳寺駅の三つの駅が隣接していることが挙げられています。
 このうち新駅は、昨年十二月に駅名が高輪ゲートウェイ駅に決定し、明年二〇二〇年、令和二年の春ごろに暫定開業の予定であります。
 そして、泉岳寺駅は、羽田空港にアクセスする京浜急行と、都心部や成田空港にアクセスする都営浅草線との接続駅であり、空港需要の増大に伴い、その重要性は高まっています。加えて、泉岳寺駅周辺では、JR東日本の車両基地跡地などを中心として、日本の成長を牽引する国際交流拠点として開発が進むことから、今後、駅利用者はさらに増加することが見込まれます。
 こうした地域の一部において、都施行により再開発を進めるとのことですが、泉岳寺駅地区における平成三十年度の主な事業内容についてまず伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 泉岳寺駅地区につきましては、平成三十年度は、事業計画及び管理処分計画の策定に向けた作業としまして、再開発ビルの基本設計や、用地補償費を算定するための物件調査などを実施いたしました。
 こうした調査をもとに、権利者との合意形成を進めながら事業計画を取りまとめ、本年二月に決定いたしました。

○古城委員 平成三十年度には基本設計を実施したとのことでありますけれども、その内容について確認をしたいと思います。
 全国的に頻発する大規模災害の中でも、東京においては首都直下地震の発生が懸念されています。また、東海、東南海、南海の三つの地震が同時もしくは短期間に起きる三連動地震への対策も必要です。
 長い周期のゆったりとした揺れが続く地震動である長周期地震動は、東日本大震災の際も起こりました。高層ビルでは、揺れる時間が長くなると揺れが増幅しやすいため、長周期地震動の影響を受けやすいといわれています。いずれにしても、再開発事業において耐震性を確保していくべきであると考えます。
 そこで、再開発ビルの地震に対する構造について伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 泉岳寺駅地区につきましては、特定緊急輸送道路に位置づけられています国道一五号の沿道にあることから、耐震性に配慮した施設建築物とすることを事業計画に位置づけております。
 また、基本設計では、建物の構造形式につきまして、建築基準法に基づき、極めてまれに発生する地震動にも耐え得る構造としておりまして、さらに、地震時及び地震後の揺れや風揺れの低減を図り、快適な居住環境を確保できるように、オイルダンパー等を活用した制振構造を採用する計画としております。
 こうした取り組みによりまして、耐震性の高い再開発ビルを実現していくこととしております。

○古城委員 今、答弁いただいた地震対策とともに、水害に対する備えも重要であります。
 先ほど申し上げたまちづくりガイドラインでは、泉岳寺駅の改良とあわせて、地下、地上、デッキをつなぐサンクン広場を特徴とした立体的な視線や緑のつながりと周辺地域からのアイストップとなるような広場を中心とした景観を実現するとあります。
 人々が集う場所として地下に解放的な空間を設ける、いわゆるサンクン広場、サンクンガーデンと再開発ビル、そして泉岳寺駅が接続されることになります。その特徴によって、台風など豪雨時には、開放空間から雨水などが浸入するおそれがあります。
 そこで、本事業ではどのような浸水対策を行うのか、伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 泉岳寺駅地区は、その一部が港区の浸水ハザードマップで浸水域となっておりまして、水深が十センチから五十センチ程度の浸水が想定されております。
 このため、建物内部や地下駅前広場が浸水しないよう、出入り口に防水板を設置するなどの浸水対策を実施することとしております。
 また、港区雨水流出抑制施設設置指導要綱に基づきまして、敷地外への雨水の流出を抑制するため、敷地内に雨水を貯留する雨水流出抑制装置を再開発ビル内に設置することとしております。
 こうしたことによりまして、再開発ビルや泉岳寺駅への浸水被害を防ぎ、安心・安全なまちづくりに努めております。

○古城委員 再開発ビルの耐震構造や、ビル及び泉岳寺駅への浸水被害防止など、地震や水害への対策を確認いたしました。泉岳寺駅地区の市街地再開発事業の着実な進展を望むものですが、災害に強い安心・安全なまちづくりとなることを要望して、質問を終わります。ありがとうございました。

○白石委員 私からも、都市再開発事業会計の利益剰余金の取り扱いについて質問したいというふうに思います。
 都市再開発事業会計は、北新宿地区及び環状二号線新橋・虎ノ門地区の都施行の市街地再開発事業について、収支の一層の明確化を図るために設置されたというのが経緯だと思います。その後、大橋地区が加わって、三つの事業がしばらくの間行われてきましたが、それも既に終わり、現在、この会計の中で行われている市街地再開発事業は泉岳寺駅地区のみとなっております。
 まず、そこで伺いたいと思いますけれども、平成三十年度東京都都市再開発事業会計の貸借対照表において、剰余金というのはどのようになっているのか、伺います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 東京都都市再開発事業会計の剰余金は、区から無償で譲り受けた廃止区道の評価額を計上しております資本剰余金と、都市再開発事業実施により毎年度発生した純損益の合計額であります利益剰余金に分類されます。
 このうち利益剰余金は、議会の議決を経て、都市再開発事業の財源とするために積み立てられました都市再開発事業積立金と、特定の使途、目的を与えられていない未処分利益剰余金に分類されます。
 平成三十年度末における本会計の剰余金は合計約百五十億円でございまして、その内訳は、資本剰余金が約十一億円、利益剰余金は、都市再開発事業積立金約八十一億円と当年度末未処分利益剰余金約五十八億円を合わせまして、約百三十九億円となっております。

○白石委員 今、答弁も非常に丁寧にしていただいたので、長かったと思いますが、この利益剰余金というのは、都市再開発事業の財源とするために積み立てられる都市再開発事業積立金というのがあります。もう一つ、特定の使途、目的を与えられていない未処分利益剰余金というふうに分類されますよということですね。
 本会計の剰余金というのは、平成三十年度時点において合計で約百五十億ということになると思います。内訳は、資本剰余金が約十一億円、先ほどいった都市再開発事業積立金というのが八十一億円、使途が決まっていない未処分利益剰余金というのが五十八億円だというご答弁だったと思います。
 そうしますと、廃止区道に当たる土地の評価額約十一億円を除いた百四十億円の利益剰余金が現在存在をしているということだと思います。
 そこでお尋ねをしたいと思いますけれども、約百四十億円もの利益剰余金というのは、どうやってこれまで積み上がってきたものなのか、経緯について教えていただきたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 利益剰余金は、北新宿地区、環状第二号線新橋・虎ノ門地区、大橋地区、泉岳寺駅地区の各地区におきまして、事業実施により毎年度発生した純損益の合計額となっております。
 利益剰余金の主な増加要素は、平成二十三年度の北新宿地区一街区の敷地処分等によります約七百十九億円の増、主な減要素は、平成二十四年度の一般会計への繰り出しによる四百億円の減などとなっておりまして、これらの増減を経て、平成三十年度末で約百三十九億円となっております。

○白石委員 今ご答弁であったとおり、平成二十三年度、北新宿で巨額の利益剰余金が七百億円積み上がったと。これに対して、一般会計へ四百億円繰り出そうというふうなことがまず経緯としてはあって、そして、今になって百四十億円という剰余金が出ていましたよというふうなご答弁だったと思います。
 利益剰余金というのは、先ほども述べましたけれども、平成二十三年、北新宿の再開発事業で七百億円を超える巨額の利益が上がったのが主な要因だと。一方、その一部、四百億円は、翌年度、一般会計に繰り出しをしたために減っているということになると思います。
 平成二十四年度の補正予算で、都市再開発事業会計から利益剰余金四百億円を一般会計に繰り出したということとなると思いますけれども、なぜ一般会計に繰り出したのか、目的と経緯について伺いたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 北新宿地区一街区の敷地処分によりまして、平成二十三年度決算で約七百億円の未処分利益剰余金が生じました。
 初めて多額の剰余金が生じたことから、財政当局との協議によりまして、当時施行中の三地区の事業完了までに要すると想定された資金を確保した上で、平成二十四年度中に一般会計へ繰り出したものでございます。

○白石委員 北新宿のこの処分で巨額の七百億円という黒が出まして、ここで、この七百億円の巨額の未処分、使途が決まっていない利益剰余金をどう取り扱うかということで財政当局と協議をして、必要な分についてはしっかりと確保した上で、それ以上、膨れ上がったものに対しては一般会計へ繰り出すよということだと思います。その金額が四百億円ということですね。
 そうすると、北新宿の再開発で生み出された黒字は、先ほどもいいましたけれども、当時やられていた再開発に必要な資金は除いた部分を、都市再開発事業会計としては必要なしということで一般会計に繰り入れられたということだと思いますが、ちょっと今の答弁でよくわからないところが、まず、財政当局との協議をしたということだと思いますけれども、財政当局とはどういう協議を行ったのか、説明していただきたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 先ほどもご答弁申し上げましたけれども、北新宿地区一街区の敷地処分で約七百億円の未処分利益剰余金が生じたということで、こちらが多額の剰余金が生じたということで、財政当局との協議によりまして、その後、必要な資金を確保した上で、平成二十四年度中に一般会計へ繰り出したというような経緯でございます。

○白石委員 私が聞いたのは、財政当局とどういう協議がされたのかということなんですね。
 膨れ上がった七百億円をどう扱うかというところで、財政当局から、使途が決まっていない未処分の利益剰余金が多額にあるということは、やっぱりこれは適切じゃないよ、だから、しっかりと一般会計へ繰り出そうというふうな協議があったのだというふうな私は理解なんですけれども、そういう理解でよろしいのかどうか、お答えください。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 先ほどの繰り返しになりますけれども、北新宿地区、こちらで約七百億円の未処分利益剰余金が生じたということで、そうしたことから、財政当局との協議によって、三地区の必要な資金を確保した上で一般会計へ繰り出したといったところでございます。

○白石委員 答弁の繰り返しなんですけれども、否定をされなかったということで、財政当局から、やはり使途が決まっていない未処分利益剰余金というのが膨れ上がるということは適切じゃないから、一般会計へしっかり繰り出して活用していこうということだったというふうに思います。
 一度は四百億円もの繰り入れを行ったと。使途が決まっていないお金が膨れ上がるのは、やはりよくないというふうな指摘があったんだなというふうに思いますけれども、それでも、その後、利益剰余金だけで百四十億円も積み上がっているという状況です。
 一般会計に繰り入れられた四百億円はどのように使われたかというと、私も事前にお聞きしましたが、社会資本等整備基金に積み立てられたとも聞いております。社会資本等整備基金というのは、羽田の再拡張や道路などで問題のある支出もある一方で、学校や警察署、消防庁などの計画的な改築、改修に充てられるものとして大切な役割も持っていると思います。
 今後を考えても、都が保有する建物は、現在、例えば昭和四十年代及び平成の一桁台に集中的に建設されたということからも、築三十年以上が全体の四割、老朽化をしているということだと思います。
 社会資本の維持更新需要は今後ますます増大すると見込まれていますので、また、かつてない規模での豪雨が頻発するもとで、河道であったりとか調節池の整備など、豪雨対策の推進もますます必要性が生じてきているということです。だからこそ、社会資本整備のための財源の拡充は、やはり求められていると思います。
 社会資本等整備基金以外にも、さまざまな都民に向けた予算に充当が検討されても私はいいのではないかと。要するに、使途が決まっていない未処分の利益剰余金をしっかりと一般会計に繰り出して、その分はちゃんと活用していくということが適切に検討があるべきだというふうに思います。
 約百四十億円もの利益剰余金は、さらに一定部分を一般会計に繰り出すことは可能ではないかと思いますけれども、その検討は都市整備局内で行われているのか、伺いたいと思います。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 利益剰余金の処分につきましては、都施行再開発事業の見通しを考慮した上で判断すべきものと考えております。
 泉岳寺駅地区につきましては、本年二月に事業計画決定しておりまして、事業が始まったばかりでございまして、一般会計への繰り出しにつきましては、検討を行う状況にはないと考えております。

○白石委員 検討は行われなければいけないという状況なんですね。だって、これは、これまでの再開発事業でもう終了している事業で、それが原資となって剰余金で積み立てられていると。ただ、全てをやれとはいいませんよ。しっかりと泉岳寺駅地区も含めて必要な分は確保して、それ以上のものは一般会計へ繰り出すというのは、当然しかるべき、毎回あってもいいのではないか、検討はすべきだというふうに思います。
 なので、答弁では、まだ泉岳寺駅地区が始まったばかりだから検討する状況にはないというような答弁でしたけれども、会計上も含めて適切に処理をしていくといったときには、毎回、ここの部分、未処分利益剰余金というのは検討されるべきだというふうに改めて強く強調しておきたいというふうに思います。
 市街地再開発事業は、再開発ビルの保留床の売却によって資金を捻出するものであり、また、公共施設については、それぞれ相応の資金が公共から支払われるはずです。
 巨額の利益剰余金をプールしていくというのは、どういう必要性があるのか、お聞きしたいというふうに思います。必要性についてです。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 市街地再開発事業におきましては、保留床の処分などによって資金が得られるまでの間は、補償費や建築費などの支出に対して別途資金を確保する必要がございます。
 剰余金は、こうした将来発生する可能性のある資金需要に対応するため、確保する必要があると考えております。

○白石委員 市街地再開発事業においては、補償費や建築費などについて別途資金を確保する必要があると、このようにおっしゃいましたが、冒頭の答弁にもあったように、利益剰余金というのは、議会の議決を経て、都市再開発事業の財源とするために積み立てられた都市再開発事業積立金というのがあります。そして、特定の使途、目的を与えられていない未処分利益剰余金という、二つに大きくは分類をされるという答弁もありました。
 市街地再開発の資金として、どうしても一定の額を確保するというのであれば、この未処分利益剰余金を、現在六十億円近く残しておくべきではなくて、その費用を精査した上で、再開発にどうしても必要なら、この都市再開発事業積立金の方にちゃんと積み立てる、そして、残りは一般会計に繰り出すというのがしかるべき筋ではないかというふうに思うんですね。
 都もご答弁されたように、平成二十四年度のときには財務局と協議がされて、施行中の三地区の事業完了までに要する資金を--これは北新宿の巨額な七百億円の話ですね--確保した上で、それを除いた残額は一般会計に繰り出したという経験をお持ちだということなんですね。当時は未処分利益剰余金が約五百九億円残っていて、都市再開発事業の積立金に約百億円積み立てた、一般会計に四百億円というような形で、未処分利益剰余金をその当時は約九億円しか残さなかったんですね。再開発事業にかかわる必要な額は積立金にしっかりと確保して、その余った分、この未処分利益剰余金というのを膨れ上がらないようにする、適切に管理をしていくというのが財務当局からも指摘をされたことなんだろうというふうに思います。
 そういう視点から今現在を見れば、六十億円近く残しているといったところでは、これは適切に検討して、必要以上の膨れ上がった未処分利益剰余金であれば一般会計に繰り出すということが筋ではないかというふうに改めて指摘をしておきたいというふうに思います。
 平成二十四年度から三十年度までの本会計における剰余金の処分の状況について、私も書類をいただきましたが、平成二十四年度に未処分利益剰余金を大きく処分して以降、未処分利益剰余金については、ほかに積み立てたり、繰り出したりしていないんですね。北新宿以来、ほとんど何もされていない。どんどんどんどん未処分利益剰余金というのが現在までに積み立てられてきている、検討されていないというのを資料でもいただきました。このように、ちゃんと利益剰余金のあり方について検討して処理をしてこなかったという経緯は、私はやっぱり問題があるというふうに思います。
 しかも、先ほど、泉岳寺駅地区については、ことし二月に事業計画についても決定したばかりで、一般会計へ繰り出しを検討する段階ではないと、このようにおっしゃいましたけれども、事業計画が決定して、資金計画についても一定の見通しもできたはずですから、むしろ、一層、用途が決まらない、定まらない未処分利益剰余金をそのままにしておくべきではないというふうにいいたいと思います。
 都市再開発に必要だという部分は、議会の議決を経て都市再開発事業積立金に積み立てる、それ以外は一般会計に繰り出す、そういうことを改めて検討する段階に今入っているのではないかというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

○安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 泉岳寺駅地区につきましては、先ほども申し上げましたとおりの事業でございまして、総事業費約五百六十億円となっております。また、本年二月に事業計画決定をして事業が始まったばかりでございます。このため、現時点で泉岳寺駅地区における収入などは確定しておらず、一般会計への繰り出しについて検討を行う状況にはないというふうに考えております。
 泉岳寺駅地区につきましても、敷地処分収入であるとか、そういった収入が資金計画どおり得られなかった場合なども想定されますので、そういったことで、検討を行う状況にないというふうに考えているところでございます。

○白石委員 何かよくわからないですけれども、資金計画も出ているし、計画もちゃんと立っている、総合計が五百億円ぐらいかかるからと。そこで、じゃ、全部そこの未処分利益剰余金を五百億円残さなければいけないのかといったら、そんなことはないんですね。交通局等も含めてしっかりと、その都度その都度、資金ショートしないように計画を持って、打ち合わせもして協議をしていくというのが本来の筋なんですよね。
 だからこそ、北新では、膨れ上がった未処分利益剰余金というのは検討がされて、一般会計へ繰り出されたと。こういう経験から見ても、使途の目的が定まっていない未処分利益剰余金が膨れ上がるというのは、やはり適切ではないんです。だからこそ、しっかりと検討すべきだと私はいっているんですね。全て一般会計に繰り出しなさいなんていうことはいっていません。
 なので、やっぱりこの委員会での質問も、指摘も受けて、しっかりと検討していただいて、この約六十億円近い使途や目的が定まっていない未処分利益剰余金をしっかりと精査して、積立金に積み立てるもの、そして、それ以外は基本的には一般会計へ繰り出していくということを改めて求めて、質問を終わりたいというふうに思います。

○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。

○伊藤委員長 これより病院経営本部関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成三十年度東京都病院会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○児玉経営企画部長 去る十月十六日の本分科会において要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます平成三十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、合計十一件でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開き願います。1、都立病院における経営指標の推移でございます。
 都立病院における経営指標の推移を入院、外来別に記載しております。
 二ページをお開き願います。2、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費)でございます。
 一般会計繰入金と、このうち施設整備関連経費について、その推移を記載しております。
 三ページをごらんください。3、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費以外・病院別)でございます。
 一般会計繰入金のうち、施設整備関連経費以外の経費の推移を病院別に記載しております。
 四ページをお開き願います。4、都立病院の医師、看護要員及び医療技術員等の定数及び現員の推移でございます。
 医師、看護要員及び医療技術員等の定数と各年度十月一日現在の現員の推移を記載しております。
 五ページをごらんください。5、各都立病院の産婦人科、小児科及び麻酔科常勤医師の定数及び現員の推移でございます。
 産婦人科、小児科及び麻酔科の常勤医師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について病院別に記載しております。
 六ページをお開き願います。6、各都立病院の分娩件数の推移及び周産期医療受け入れ件数の推移でございます。
 (1)は分娩件数の推移を、(2)は周産期医療受け入れ件数の推移を、それぞれ各年度、病院別に記載しております。
 七ページをごらんください。7、各都立病院の薬剤師の定数及び現員の推移でございます。
 薬剤師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について病院別に記載しております。
 八ページをお開き願います。8、各都立病院の個室使用料の収益の推移でございます。
 各年度の個室使用料の収益の推移について病院別に記載しております。
 九ページをごらんください。9、各都立病院における非常用発電機の台数、設置場所及び確保日数並びに医療用水、食料、飲料水、医薬品の確保日数でございます。
 非常用発電機の台数、設置場所及び確保日数並びに医療用水、食料、飲料水及び医薬品の確保日数について病院別に記載しております。
 一〇ページをお開き願います。10、延べ患者数及び患者満足度アンケート結果の推移でございます。
 各年度の延べ患者数と患者満足度アンケート結果について入院、外来別に記載しております。
 一一ページをごらんください。11、都立病院における臨床研究の実績の推移でございます。
 都立病院における治験、受託研究、臨床研究の実績の推移を記載しております。
 簡単ではございますが、以上で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○伊藤委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○鳥居委員 平成三十年度東京都病院会計決算について質疑をさせていただきます。
 少子高齢化の急速な進行や国の医療制度改革など、医療をめぐる環境は大きく変化しており、医療提供のあり方は、病院完結型の医療から地域完結型の医療へと転換が求められております。
 このような状況の中、都が運営している八つの都立病院では、これまで強化してきた行政的医療を継続的かつ安定的に提供するとともに、地域医療の充実にも積極的に貢献していくことが重要であるとの認識のもと、平成三十年三月に都立病院新改革実行プラン二〇一八を策定されました。
 より多くの都民に適切な医療を提供していくために、六つの戦略、すなわち、都の医療政策推進への貢献、安全・安心で質の高い医療の提供、地域の医療提供体制の確保、充実への貢献、専門性が高く良質な医療人材の確保、育成、サステーナブルな病院運営体制の構築、都民にわかりやすく病院の状況を見える化を示され、予算が計上されております。
 予算の執行においては、企業の経済性の発揮と公共の福祉の増進という地方公営企業の経営の基本原則にのっとり、都民に対する医療サービスの向上と日々の経営改善努力、これらを不断に積み重ねながら都立病院を運営していただく必要があります。
 そこでまず、平成三十年度の自己収益は一千二百三十五億七千三百万円となりましたが、過去五年間の自己収益はどのように推移しているのでしょうか。自己収益の推移について、ご見解をお示しください。

○児玉経営企画部長 収入全体から一般会計繰入金と特別利益を除く自己収益の推移でございますが、平成二十六年度が一千百六十四億九千七百万円、二十七年度が一千百八十六億八千二百万円、二十八年度が一千百九十九億八千万円、二十九年度が一千二百十億四千六百万円、そして、三十年度が一千二百三十五億七千三百万円と、着実に増加しております。
 都立病院では、収益の確保策といたしまして、新たな施設基準の取得、手術件数の増、地域医療機関等との連携強化及び断らない救急の徹底による新入院患者の確保などに取り組んできており、このことが増収につながったものであると考えております。

○鳥居委員 収入全体から一般会計繰入金と特別利益を除く自己収益、これは、いわゆる病院経営という本業による収益であり、経営状態を示す指標としてよいと思います。経営状態を判断する重要な指標として、この五年間、毎年一%程度を着実に増加させられているのは、一定の評価に値すると考えます。
 引き続きの自己収益改善を期待しておりますが、一般会計繰入金を合わせた経常収益は一千六百十四億一千二百万円となりました。一方で、経常費用は一千六百四十四億三千五百万円であり、経常損失が発生いたしました。その額は三十億二千四百万円です。
 いただいた資料によりますと、都立病院の経常損失は、平成二十八年度から三年続いて発生しております。平成二十八年度から実施された急性期病院の診療報酬改定などが要因の一つとなり、その額は、六億九千四百万円、二十億四千七百万円、三十億二千四百万円と増加傾向にあります。
 経常損失を減少させること、そして、収益を高めることは重要です。本件については、後ほど質疑させていただきます。
 一方で、平成三十年度決算では、入院収益及び外来収益と、自己収益の基盤となる収益は、それぞれ前年比十六億円及び十一億円と増加させられております。
 そこで、入院収益、外来収益を増加させられた要因について伺います。

○児玉経営企画部長 平成三十年度の取り組みとしましては、入院では、例えば、多摩総合医療センターで総合入院体制加算を、墨東病院で地域医療支援病院入院診療加算を取得するなど、各病院において新たな施設基準を取得いたしました。
 また、都立病院全体で、手術件数が前年度と比べ一千六百三十四件増加したことや、新入院患者数が一千二百十四人増加したことなどにより、入院収益が増加いたしました。
 一方、外来につきましては、駒込病院や多摩総合医療センターで、がんの化学療法の外来への移行が進んだことなどにより、収益が増加いたしました。

○鳥居委員 自己収益の基盤となる入院収益及び外来収益をふやす努力は重要であり、環境が変化する中で、都立病院全体で手術件数を増加させることや新入院患者数を増加させるなど、収益増加に向けた取り組みが重要と思います。
 入院、外来収益が増加している一方で、平成三十年度の一般会計繰入金は三百七十八億三千九百万円と、前年比十五億六千百万円減少。この数年間と比較しても、大きく減少させられております。
 そこで、平成三十年度の一般会計繰入金が減少した理由についてお知らせ願います。

○児玉経営企画部長 一般会計繰入金は、都立病院の基本的役割であり、採算の確保が困難な行政的医療を提供するための不可欠な経費として、地方公営企業法などに基づき、一定のルールを定め、算定を行っております。
 算定方法は、救急医療やがん医療、感染症医療などの対象医療ごとに、給与費や材料費といった関係経費から入院収益、外来収益等の関係収入を差し引く方法などにより行っております。
 平成三十年度は、一般会計繰入金の対象となる医療のうち、がん医療や難病医療において収益が改善したことに加えまして、経費や材料費等、費用の節減に努めたことにより所要の経費が減少したことなどから、一般会計繰入金が減少したものでございます。

○鳥居委員 地方公営企業法などに基づき、一定のルールを定めて算出する中で、一般会計繰入対象医療の収益改善や、経費や材料費等の費用の削減などに努められた結果と理解いたします。
 都立病院が行政的医療を将来にわたって提供していくためには、一般会計からの適切な繰り入れは不可欠と考えますが、引き続き、繰入金の対象範囲などについて見直しを行うなど、都民に対する医療サービスの向上と日々の経営改善努力を行っていただきたいと思います。
 さて、医療をめぐる環境は大きく変化する中で、ご存じのとおり、国は平均在院日数を減らす方針であり、早期の回復やリハビリを推進して地域受け入れを促進させ、医療費の削減を進める方向にあると考えます。
 その中で、費用のかかる急性期医療の担い手として、都立病院はなくてはならない役割を果たしております。ご答弁でも、入院収益、外来収益をふやすための努力としてなされたのは、サービス向上による単価の増加と新規入院患者数の獲得促進等であったと思います。
 平均在院日数は、一部ふえている病院もございますが、おおむね減少させることに留意して運営されております。
 一方で、病床利用率を上げる努力は、自己収益を高める経営努力を行う上で必要となりますが、都立病院における近年の病床利用率から判断しますと、一部を除いて減少傾向にあり、その目標は道半ばと判断せねばならないと思います。
 そこで、これまで行われた病床利用率を上げるための取り組みについて伺います。

○児玉経営企画部長 平均在院日数が短くなったことにより、病床利用率は減少傾向となりましたが、病床利用率を改善するために、新たな入院患者の確保に努めております。
 新たな患者を確保するためには、地域の医療機関と顔の見える関係を築くことが重要であり、例えば、院長や診療科部長がみずから医療機関を訪問したり、地域の医療機関の医師を対象とした研修会を開催するなど、紹介患者をふやすための取り組みを行ってきたところでございます。

○鳥居委員 基本的なお取り組みについて理解をいたしました。院長や診療科部長がみずから医療機関を訪問し、地域の医療機関の医師を対象とした研修会を開催するなど、紹介患者をふやすための取り組みを行い、紹介患者数をふやすための努力を行っていることをお話しいただきました。
 一方で、さきにも述べたとおり、平均在院日数を減らす対応を進めると、病床利用率が減少するのは必然です。一方で、本業による収益である自己収益を高める経営改善努力を進めるには、病床利用率を上げる努力が必須となり、戦略を持って進めるべきと考えます。
 そこで、病床利用率の目標設定はどのように行っているのでしょうか。平均在院日数を減らした場合でも病床利用率を達成するために、どのような戦略をお持ちなのでしょうか。

○児玉経営企画部長 都立病院では、職員の経営意識の向上を図り、効率的な病院運営を行うため、バランススコアカード、いわゆるBSCを用いて経営管理を行っております。
 BSCにおいては、病床利用率を評価指標に掲げ、前年度の実績や過去の傾向を踏まえ、原則として現状を上回る目標を設定しております。
 病床利用率の向上を図るには、新入院患者の確保が重要となるため、新入院患者数につきましてもBSCの評価指標に掲げ、各病院において、目標達成に向けたアクションプランを策定し、取り組みを推進しております。
 具体的には、地域の医療機関からの過去の紹介実績や、厚生労働省が公開しているDPCデータを活用し、より訪問効果を得られるように訪問先医療機関を分析し、戦略的に連携医訪問を実施しております。
 また、地域の連携医が緊急で受診相談をしたい場合に、都立病院の医師が直接対応する連携医ホットラインを設け、患者の迅速な受け入れができる体制を構築しているところでございます。

○鳥居委員 BSCにより、原則として現状を上回るよう目標を設定しているとお話をいただきました。
 一方で、都立病院全体の病床利用率は、平成二十六年から平成三十年にかけて、八三・七%から七八・六%まで右肩下がりに減少しており、この五年間、目標が未達であったことに留意をしなければならないと思います。統計学的に見ますと、従来の方法を繰り返しても、V字に回復することはあり得ず、下げどまるまでにとどまることが想定されます。
 都立病院では、高度で先駆的な医療の提供を行い、医療分野の牽引役としての役割を担っております。がん医療や難病医療には拠点となる病院があり、例えば駒込病院は、がんゲノム医療拠点病院としての専門性を発揮し、多くの患者様に医療貢献を行っております。
 医療技術を向上させ、患者様が必要とする新たな医療提供を行うことにより、地域の医療水準を高め、患者様への満足度を向上させ、結果、病床利用率を高め、診療報酬の増加につながる手段の一つになると考えます。特徴的ですぐれた分野を伸ばすための投資を怠らないようにすることは、都立病院が持続的に発展する上でも重要な視点と考えます。引き続きご検討いただきますよう、ご要望いたします。
 次に、平成三十年度に生じた経常損益に関して質疑をさせていただきます。
 まずは、入院収益、外来収益を増加させたにもかかわらず、さきに述べたように、経常損失が発生した理由についてお知らせください。

○児玉経営企画部長 平成三十年度は、先ほども答弁いたしましたが、各病院において、新たな施設基準の取得や新入院患者の確保等により入院収益、外来収益が増加した一方で、給与改定等による給与費や業務委託費などの費用も増加しております。
 病院経営本部では、全ての都立病院の経営戦略担当副院長を中心とした経営改善推進PTを平成三十年四月に設置し、外部のアドバイザーも活用しながら経営改善の取り組みを一層推進し、経営改善を図りましたが、全体の費用増を補うまでの収益増には至らなかったため、経常損失を計上するに至ったものでございます。

○鳥居委員 それでは、発生した経営損失を改善するための策についてお知らせ願います。

○児玉経営企画部長 収益と費用の差となる経常損失を改善するためには、経営改善の取り組みを一層推進することが重要であると考えております。
 このため、新たな施設基準の取得や、地域医療機関との連携強化による新入院患者の確保を図るなどの収益確保策を一層推進することに加え、後発医薬品への切りかえや、医薬品、診療材料の共同購入の推進など、費用節減に向けた取り組みを徹底してまいります。
 また、昨年度設置した経営改善推進PTを活用し、他病院とのベンチマーク分析を行った上で改善の取り組みを進め、その改善効果を測定するなど、経営改善に向けた具体的な取り組みの強化を図ってまいります。

○鳥居委員 ありがとうございました。経常費用のうち、給与費は四八%と、約半数を占める大きな費用となっております。行政的医療の担い手として人材育成を行い、効率を上げることによりサービス向上に努めるとして収益を上げていくことが肝要と考えます。
 都立病院の果たす役割の一つは行政的医療の提供であり、行政的医療を提供するためには高度な技術の蓄積が必要です。この行政的医療を安定的、継続的に提供するためには、高度で先駆的な医療技術の蓄積に向け、適切な投資を進める必要があると考えます。そして、その技術を地域医療機関や患者様へ還元し、医療分野に貢献することが期待されていると考えます。都立病院の存在意義を熟慮して、引き続き都立病院を運営していただくようお願いいたします。
 次に、行政的医療に関する取り組みについて質疑いたします。
 都立病院の果たす役割には、行政的医療の安定的かつ継続的な提供及び地域医療の充実への貢献が挙げられます。
 このうち行政的医療の対象は、がん医療、精神科医療、救急医療、災害医療、島しょ医療、周産期医療、小児医療、外国人患者への医療、難病医療、感染症医療、アレルギー性疾患医療、障害者医療と十二項目があります。その中から、平成三十年度の予算にまつわる主要案件をピックアップして質疑いたします。
 まずは、がん医療についてです。
 がん医療の進歩は目覚ましく、今日では、従来の手術、化学療法、放射線治療などの標準治療に加え、新たにがんゲノム医療などの技術や治療法が研究開発されております。それらの新たな技術を応用できるポテンシャルを維持し、患者が適切な医療を安全に受けられる環境整備が重要です。
 こうした中、駒込病院は、がんの原因となる遺伝子を特定して、より効果が高い治療薬を選択することを可能とするなど、患者一人一人に合った個別化医療に取り組むため、平成三十年十月、がんゲノム医療連携病院として指定されました。
 さらに、本年九月には、がんゲノム医療拠点病院の指定を受けたことにより、遺伝子検査に基づく医療の提供、遺伝子カウンセリングの実施、ゲノム医療に関する情報提供に加えて、遺伝子検査の医学的解釈を駒込病院の施設内で完結させることが可能となりました。
 本年六月には遺伝子検査が保険適用され、がん患者にとっては治療の可能性が広がってきております。
 駒込病院には、都道府県がん診療連携拠点病院としての基盤を生かして、引き続き、がんゲノム医療などの新たな技術を適切に実施できるよう、今後も必要な投資や調整を行い、都のがん医療を牽引していただくことを期待いたします。
 一方で、がん患者の三人に一人は働く世代の方々です。
 そこで、働く世代のがん患者が就労しながら治療できるよう、相談支援体制を充実させ、ライフステージに応じた適切な相談支援を実施していく必要があると考えますが、その取り組みについて伺います。

○西川サービス推進部長 都立病院では、医療ソーシャルワーカーを中心に、多職種により、患者、家族からのさまざまな相談にワンストップで対応する患者支援センターを設置しております。このセンターでは、患者からの就労に関する相談につきましては、医師などと連携しながら、病気に対する治療内容や勤務上配慮が必要な事項について患者が就業先に説明する上での助言などを行っております。
 特に、がん患者の就労支援といたしましては、都道府県がん診療連携拠点病院である駒込病院におきまして、ハローワークと連携し、がんと診断された長期療養が必要な患者が治療と仕事の両立を図ることを目的とした取り組みを実施いたしております。
 具体的には、ハローワークの専門相談員である就業支援ナビゲーターが週に一回病院を訪れ、患者の希望や病状等を勘案しながら、職業紹介や就労に係る相談に対応しております。平成三十年度は、四十三人の方から相談がございまして、そのうち十七人の方の就職につなげることができました。
 今後も、関係機関と連携し、働く世代のがん患者が就労しながら治療ができるよう、相談支援体制の充実を図ってまいります。

○鳥居委員 がんの罹患率は低くはありません。一方で、新たな化学療法や治療法が開発され、治癒の可能性も高まってきております。引き続き、働く世代のがん患者が就労しながら治療できるよう、配慮したご対応をお願いいたします。
 次に、精神疾患医療についてです。
 都内の精神疾患患者数は、平成二十三年度には約二十八万人であったのに対し、平成二十六年度には約五十五万人と、急速に増加していることが示されております。
 都では、精神疾患の日常診療体制として、精神科と一般科との連携体制の充実を図るとともに、措置入院や精神科身体合併症にかかわる精神科救急医療体制の整備や、患者の円滑な地域移行、地域定着を図るための連携を進めてきたと伺っております。
 また、精神科救急は、法令等に基づき対応が求められる医療とされ、行政が積極的に関与し、主体となって担うべき医療であることから、都立病院が取り組む行政的医療の最たるものであると理解しております。
 そこで、松沢病院における平成三十年度の精神科救急医療に係る主な取り組み状況について伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 松沢病院は、精神科急性期医療を中心に、精神科救急医療を初め精神科身体合併症医療、薬物、アルコール依存症等の精神科特殊医療に対応するとともに、他の医療機関や保健福祉施設等と緊密な連携を推進することで、都における精神科医療の拠点としての役割を果たしてございます。
 さらに、地域医療機関に対します症例検討会や訪問看護ステーションへの職員派遣などを通じまして、地域の医療水準の向上に寄与するとともに、地域連携体制の強化にも取り組んでいるところでございます。
 例えば、委員お話しの精神科救急医療のうち、精神科夜間休日救急診療事業は、都全域を四ブロックに分けて対応してございますが、松沢病院は、墨東病院、多摩総合医療センター、豊島病院とともに、この体制の中で、区西南部を初め、区西部、区南部保健医療圏の八区におけます受け入れ病院として役割を果たしてございます。
 平成三十年度の緊急措置診察数は三百三十二人でございまして、そのうち三百七人が緊急措置入院でございました。
 統計がとれます平成二十五年度から二十九年度までの都全体の緊急措置入院患者数に対します松沢病院の受け入れ割合は二八から三〇%程度を占めてございまして、四ブロック中、常に最多の患者数を受け入れてございます。

○鳥居委員 ありがとうございます。都における精神医療の拠点である松沢病院等の存在は重要です。増加傾向にある精神疾患患者に適切に対応するよう、都の精神科医療の牽引役として、その活躍と、都内病院間の連携を進め、都全体の医療向上に貢献していただくよう、引き続きご対応をお願いいたします。
 次に、災害医療についてです。
 平成二十三年度には東日本大震災が、平成二十八年度には熊本大震災が、平成三十年度には西日本豪雨災害や北海道胆振東部地震が、そして本年度には、たび重なる大型台風が猛威を振るい、各地に深刻な災害をもたらしました。そして、診療が制限されたり、困難になるなどの被害が発生いたしました。
 そこで、このような災害に備える準備が重要と考えますが、平成三十年度の実績について伺います。

○児玉経営企画部長 病院経営本部では、平成三十年六月に発生した大阪北部を震源とする地震や、同年七月の西日本で発生した豪雨などの大規模な災害の教訓を踏まえ、都立病院における災害対策に万全を期するため、各病院において、七月から九月までの間、緊急総点検を実施いたしました。
 各病院の施設や設備、ライフラインのほか、備蓄品の状況などについて確認を行い、使用用途等に応じた配置の改善を行ったところでございます。
 特に、都心部唯一の基幹災害拠点病院である広尾病院では、都内の災害医療の水準向上に貢献するために、災害対応力向上研修を合計九回実施し、そのうち二回は出張研修で実施するなど、都内全域の災害拠点病院に対する訓練、研修等に取り組みました。
 さらに、九月には、事前に被害想定等を明かさないブラインド方式で総合防災訓練を実施し、その際には、災害拠点病院や区市町村の災害担当者など、百二名が見学に訪れました。このときの訓練の様子は、東京動画において、広く災害対策関係者や都民に対して公開をしております。

○鳥居委員 緊急総点検を実施されたこと、また、災害拠点病院の一つである広尾病院では、通常の災害対応力向上研修に加え、出張研修を初めて実施されるなど、災害に対する対応力強化に努められていると考えます。今後も継続して、その能力が必要とされるであろう災害拠点病院の一層の充実をお願いいたします。
 次に、小児医療についてです。
 小児総合医療センターは、都における小児医療の拠点として、広範囲の地域医療機関との連携を推進し、心臓病医療や移植医療、先天異常に対する手術など、高度で専門的な医療を必要とする多くの小児患者に対応するとともに、こども救命センターとして小児の重症、重篤患者を受け入れております。
 そこでまず、小児総合医療センターにおける平成三十年度の重症、重篤患者の受け入れ状況について伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 小児総合医療センターは、平成二十二年に多摩地区唯一の東京都こども救命センターに指定され、他の医療機関では救命治療の継続が困難な小児重篤患者を必ず受け入れ、迅速かつ適切な救命治療を行ってございます。
 平成三十年度におきます小児救急患者数は三万五千四百六十九人で、前年度と比較いたしますと九百二十一人増加してございまして、このうち、こども救命センターでの対応が必要となった患者数は一万一千六百七十九人で、前年度と比較いたしまして七百八名増加してございます。
 センターでの主な受け入れ内容といたしましては、気道感染症が最多であり、そのほか、外傷や異物誤飲、頭部外傷などにも対応してございます。
 また、このほかにも、重症系の病棟で専門的かつ濃密なケアが必要な新生児の先天異常に伴います外科的手術や心臓カテーテル治療を合わせて約二百件程度実施するなど、都におきます小児医療の拠点としての役割を果たしております。

○鳥居委員 増加傾向にある、非常に多くの救急患者や重篤な症例に対して対応されていることをお示しいただきました。
 一方で、これだけ多くの重症、重篤患者を受け入れていくためには、こうした患者を適切かつ積極的に受け入れていく病床の体制も強化が必要だと考えますが、見解を伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 増加する重症患者や手術後の患者の集中治療管理の対応を強化するためには、人工の肺や血液ポンプによる補助治療等の実施が可能な重症系ユニット病棟の強化が必要でございます。
 このため、小児総合医療センターでは、平成二十九年度から、小児集中治療室、いわゆるPICUなどの集中治療部門の統合再編に着手してございます。
 平成三十年度には、PICUと一般病棟の中間程度の重症度に対応いたしますハイケアユニット、いわゆるHCUの十二床を廃止する一方で、PICUを十床から十八床に増床してございます。
 平成三十年度におきますPICUの受け入れ患者数は七百三十七人で、二十九年度と比較いたしまして十一人増加してございます。
 今後も、重症、重篤患者を積極的かつ円滑に受け入れていくため、必要となる人員体制の整備とあわせて、PICUのさらなる強化を検討してまいります。

○鳥居委員 小児救急患者数は、前年同様に、しばらく増加傾向にあると想定いたします。引き続きの受け入れ体制の強化を図っていただきたいと思います。
 次に、外国人患者への医療について伺います。
 近年、外国人旅行者数は増加し、平成二十八年度には約一千三百十万人と過去最高となり、また、都が作成した二〇二〇年に向けた実行プランでは、訪都外国人旅行者数の目標を、二〇二〇年には二千五百万人、二〇二四年には三千万人としています。来年の二〇二〇東京オリンピック・パラリンピック大会の成功に向けては、こうした増加する訪都外国人に対する円滑な医療提供体制の整備が極めて重要なポイントとなります。
 そこで、都立病院における外国人患者の受け入れ状況と具体的な取り組み内容について伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院におけます平成三十年度の外国人患者数は、新入院患者数が九百八十七人で、前年度と比較して九十人の増、延べ外来患者数は一万六千六十四人で、前年度との比較では四千七百五十九人の増でございました。
 国籍別に見ますと、中国、フィリピン、韓国、アメリカの四カ国が多く、この傾向は例年と同様となってございます。
 こうした中、都立病院では、東京二〇二〇大会の前年度に当たります今年度末までに、全ての都立病院で、外国人患者受け入れ医療機関認証制度、いわゆるJMIP認証を取得することといたしまして、平成二十八年度の広尾病院に続き、平成三十年度には、駒込病院、墨東病院、多摩総合医療センター、小児総合医療センターの四病院がこちらを取得してございます。
 この認証取得に当たりましては、医療通訳にも対応した映像通訳サービスや、少数言語を搭載した音声翻訳アプリの使用が可能なタブレット端末の導入を初め、外国人患者対応マニュアルの整備、問診票などの帳票や施設案内表示の多言語化など、ソフト、ハードの両面から、外国人が安心して受診できる環境整備を行ってございます。
 さらには、職員の語学研修や異文化理解研修の実施に加えまして、宗教や習慣等の違いから生じる医療現場の課題等に各病院が適切に対応できますよう、外国人異文化理解ハンドブックを作成するなど、外国人患者へのきめ細かな配慮を加味した対応力の強化を図ってございます。

○鳥居委員 JMIP認証の全都立病院での取得を目途に、平成三十年度には四病院について取得され、外国人が安心して受診できる環境整備が整いつつあると認識いたします。外国人異文化理解ハンドブックを作成されたように、引き続き、きめ細かな対応をお願いいたします。
 次に、難病医療についてです。
 私は以前、難病に対する医薬品の研究開発に携わっていたこともあり、難病について大きな関心を持ってまいりました。
 この数年の難病対策は大きく動いており、難病法が平成二十七年一月に施行され、国による医療費助成の対象となる指定難病は拡大し、三百三十三疾病となっていますが、難病は、希少かつ多様であることから、正しい診断や適正な治療が行える医療提供体制が求められております。
 都では、平成三十年度に、都立神経病院と多摩総合医療センターを含め、十一病院を拠点病院に指定し、拠点病院を中心とした新たな難病医療提供体制が開始されました。
 このような中で、私は、ことしの第一回都議会定例会の一般質問において、神経病院における難病医療強化の取り組みについて質問を行い、将来の難病医療センター--仮称でございます--の整備に向けて、さまざまな取り組みを着実に進めている旨の答弁がありました。その後、ことし三月に多摩メディカル・キャンパス整備基本計画が策定されたところですが、改めて以下の要望を述べさせていただきます。
 難病は、治療法が確立されておらず、正確な診断や効果的な治療が行えるよう研究開発を進めていく必要があります。iPS細胞などを活用した再生医療の実用化や新薬の開発などにより、難病の根治治療が期待されるところです。採算性の問題等から、民間企業による新薬の開発が進みにくい状況にもあります。
 約十年後の開設を目指す難病医療センターの医療機能強化に取り組むとともに、研究機関や大学等との連携を積極的に進めていき、新たな診断、治療法の導入や知見の蓄積を行い、都の難病医療の拠点としての存在意義を一段と高めていただきたいと考えます。
 難病医療センターの施設内に新たに整備する臨床研究部門を軸として、多摩メディカルキャンパスの豊富な症例をもとに、医療の質の向上につながる臨床研究や先進医療にしっかりと取り組んでいただくよう要望いたします。
 次に、感染症医療についてです。
 グローバル化の進展に伴い、国境を越えた人の往来が激しくなっており、海外で発生した新興、再興感染症が瞬く間に日本へ持ち込まれ、都民の健康と安全を脅かす可能性があります。
 海外では新型インフルエンザが発生しており、世界的な流行の引き金になることが懸念されております。また、平成二十六年度には、エボラ出血熱が西アフリカで大流行し、デング熱の国内感染者が約七十年ぶりに発生するなど、世界各地で脅威となる感染症が発生しています。今もコンゴでエボラ出血熱の死者が二千人を超えるなど予断を許さない中で、東京二〇二〇大会などによって、人の流れはさらに流動化すると考えられます。
 こうした感染症の脅威に対して、都立病院ではどのような備えをしているのかを伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院では、駒込病院と墨東病院が第一種感染症指定医療機関に指定されており、エボラ出血熱やラッサ熱など一類感染症患者等の発生に対応するため、患者が来院した場合の対応手順マニュアルを備えるとともに、防護具の整備や各種訓練を実施してございます。
 駒込病院、墨東病院を含めました全都立病院では防護具の備蓄を進めており、平成三十年度は七千八百セットを新たに整備した結果、四万九千二百セットを備蓄してございます。
 また、駒込、墨東の二つの病院におきましては、保健所や警察等の地域関係機関とも連携し、一類感染症患者の受け入れ訓練を平成三十年度に合計三回実施してございます。
 このほかにも、防護具の着脱訓練や、院内におきます患者発生時訓練等を定期的に実施するなど、未知の感染症に対し適切に対応できるよう、対策を講じてございます。

○鳥居委員 第一種感染症指定医療機関に指定されている駒込病院と墨東病院の存在は重要です。過去に視察に伺った際にも説明いただきましたが、患者発生時を想定した対策を限られた人材の中で適切に行っていくご努力には敬意を表したいと思います。引き続き、未知の感染症に対して適切に対応できるよう、対策を行っていただきたいと思います。
 次に、地域医療の充実への貢献についてです。
 病院経営本部は、都立病院新改革実行プラン二〇一八において、都立病院の役割として、行政的医療の提供のほかに、地域医療の充実への貢献を挙げております。具体的には、都立病院の高水準で専門性の高い総合診療基盤や医療人材を最大限活用し、地域医療機関等とのネットワークを一層強化することにより、地域の状況に応じて地域医療の充実に貢献するとしております。
 地域包括ケアシステムの構築に向けては、こうした地域特性や病院の強みを生かした地域医療を支える取り組みが必要と考えますが、都立病院の中で特に先行して取り組んでいる大塚病院の状況について伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 大塚病院の所在する豊島区周辺は、大病院が複数存在しているものの、高齢者は移動等が困難なため、地元の病院での診察を希望する傾向にございます。
 こうした背景を踏まえまして、大塚病院では、地域包括ケアシステムの構築を支援するため、地域医療機関や介護施設等との連携を一層強化する在宅復帰支援システムの確立に向けて取り組みを開始してございます。
 具体的には、一般の医療機関では対応困難な合併症を有する在宅療養患者の急変、増悪時の受け入れや、ICTを活用した連携医等との患者情報の共有などを行うことで、在宅療養が円滑に進むよう取り組んでございます。
 平成三十年度は、豊島区内の十一カ所の医療機関との間で、胃瘻交換、誤嚥性肺炎を対象疾患として実施しているところでございますが、今後、対象区や協力医療機関、対象疾患の拡大に向けまして、さらに取り組みを強化してまいります。

○鳥居委員 医療をめぐる環境は大きな変化の中にあり、医療提供のあり方は、病院完結型の医療から地域完結型の医療へと転換が求められております。地域包括ケアシステムの構築を支援するため、地域医療機関や介護施設等との連携を一層強化する在宅復帰支援システムの確立に向けた取り組みが重要です。平成三十年度に取り組まれました大塚病院のように、それぞれの都立病院が各地域の特性に合った取り組みを広げていっていただくようお願いいたします。
 次に、東京医師アカデミーについてでございます。
 人材不足の問題は多くの業種で深刻化する中、医師や看護師の確保に苦労する病院もあると聞いております。
 都は東京医師アカデミーを設立。これは、都立病院、公社病院が一体となって提供する後期臨床研修システムであります。
 基本理念として、総合診療能力を有する専門医を育成すること、先端医療の修得を視野に入れた医師育成のシステムを提供すること、医師キャリアパスの構築を可能とする充実した指導体制を提供することとしております。
 都民ファーストでつくる「新しい東京」二〇二〇年に向けた実行プランでは、東京医師アカデミーにおいて、医師が不足する地域の公的病院への就業支援を行い、公的医療機関との連携体制を構築、災害時の診療等、実践的な研修を行い、災害医療に対して対応できる人材の育成、総合診療能力を有する医師の育成を進めるとしております。
 医師の育成と地域の公立病院への支援、災害時という極めて重要なミッションを持って、これに取り組んでいただいていると認識しております。
 そこで、平成三十年度の実績について、人材確保の点からどのように貢献しているのかを伺います。

○児玉経営企画部長 東京医師アカデミーでは、都立、公社病院のスケールメリットと豊富な症例を生かし、各分野の専門医の受験資格を取得することができるプログラムを提供しております。
 さらに、ERにおける救急医療の研修や島しょ医療機関への派遣、災害医療や感染症対応などの研修を通じて、他の医療機関では従事する機会が少ない行政的医療についても経験することができ、総合診療能力を高め、都の医療を担う人材育成を図るものとなっております。
 平成三十年度に実施した募集では、例年と同様に、百名を超える百八名のシニアレジデントを採用することができました。また、七十七名がアカデミーのコースを修了し、そのうち、六割を超える四十七名を都立病院、公社病院で採用しており、医師の確保においても大きく貢献していると考えております。

○鳥居委員 東京都が自前で都の医療に必要な医師、とりわけ都の資産を生かした研修システムを立ち上げて若手の医師を育成し、そして確保していくという視点は、医師の採用が厳しい状況の中で有益な対策であると考えます。
 引き続き、質の高い医師の育成を行い、安定的な医師の確保につなげていくために、魅力的なカリキュラムの設定や環境の提供を行い、都の資産を生かした人材育成を実施して、優秀な人材の育成と医師の確保に努めていただくようお願いいたします。
 次に、東京看護アカデミーについてです。
 看護職員の確保や、がん医療などの高度専門医療に対応するための育成を背景として、看護職員全体の資質の向上を図るとともに、専門職としての能力を発揮できるよう、研修体系がリニューアルされ、東京看護アカデミーが発足いたしました。
 都民に良質な医療を提供するためには、看護師の研修や育成は大変重要であり、職員の定着と資質の向上を図ってきたと認識しております。
 そこで、平成三十年度の実績について、人材確保の点からどのように貢献しているのかを伺います。

○児玉経営企画部長 東京看護アカデミーでは、看護職員の専門性の発揮や資質の向上を図るため、新人からベテランまで一人一人の習熟段階に応じたキャリア形成を組織的に支援し、新卒看護職員を育成する教育プログラムや認定看護師等の資格取得支援などに取り組んでおります。
 また、在宅療養や医療と介護の連携に必要な知識や経験を積むため、新たに訪問看護ステーションへの派遣研修を開始するなど、地域の状況に精通した職員の育成にも取り組んでおります。
 平成三十年度における都立病院の新卒看護師の離職率は七・二%であり、アカデミーを開始した平成二十二年度と比較しますと、四・二ポイント低下しております。
 また、平成三十一年四月採用の看護師採用選考においては、採用予定数が二百七名のところ、七百二十三名の応募がございました。
 東京看護アカデミーが提供する魅力ある研修プログラムが、看護職員の採用や定着など、人材確保の面においても十分効果を発揮していると考えております。

○鳥居委員 東京看護アカデミーは、新人からベテランまで一人一人の習熟段階に応じてキャリア形成を組織的に支援する研修体系となっており、専門職員にとっては、非常にモチベーションの上がる研修であることと評価いたします。
 また、在宅療養や医療と介護の連携に必要な知識や経験を積むため、新たに訪問看護ステーションへの派遣研修を開始するなど、ニーズに適した研修内容へと更新していることもわかりました。
 人材不足が叫ばれる社会環境の中、離職率の抑制や採用時の応募者数の多さからも、人材確保の面でも十分効果を発揮していると考えますので、引き続きのご対応をお願いいたします。
 最後の質問となります。地方独立行政法人化についてです。
 これまで、都立病院の経営状況や、都立病院の役割である小児医療、難病医療などの行政的医療について、さまざまな質問をさせていただきました。
 こうした行政的医療を安定的かつ継続的に提供していくための経営形態のあり方について検討していくことも重要です。また、経営改善を進めるには、診療報酬改定などの医療環境の変化に対して、迅速で機動的な対応をしていく必要があると考えます。
 しかし、都立病院経営委員会報告では、現行の経営形態においては、法令に基づく予算単年度主義や契約制度上の制約により、医療ニーズや経営環境の変化に迅速に対応することが困難であることが示されました。同時に、都立病院の役割である行政的医療を安定的、継続的に提供するとともに、迅速な経営判断など、効率的かつ効果的な経営を促進していくには、より柔軟な経営形態である一般地方独立行政法人への移行の提言がなされました。
 これを踏まえて、昨年度は、都立病院が直面する課題や、さまざまな経営形態のメリット、デメリットの検証などを進めていると伺っております。
 そこで、他の地方独立行政法人では、制度のメリットを生かしたどのような経営改善の取り組みを行っているのかを伺います。

○船尾計画調整担当部長 公表されております他自治体の地方独立行政法人の業務実績報告書などによりますと、例えば神奈川県立病院機構におきましては、診療材料の共同購入に社会福祉法人を加えた入札を行い、スケールメリットを生かした調達を進め、経費の節減を進めておられます。
 広島市立病院機構におきましても、競争入札によりまして交渉の相手方を選定し、契約締結前に金額交渉を行います、いわゆる価格交渉落札方式の導入など、柔軟な契約手法を活用したことによりまして、調達コストの削減を図っておられます。
 また、静岡県立病院機構におきましては、診療情報管理士の資格取得者を経験者で採用するなど、病院特有の事務に精通した職員を確保、育成することによりまして、事務部門の専門性の向上に計画的に取り組み、入院会計事務を内政化するなどして収益の改善を図っておられます。
 経営形態のあり方につきましては、こうした事例も検証しながら検討を進めているところでございます。

○鳥居委員 ありがとうございました。私も、さまざまな医療関係者の声などを通じて、地方独立行政法人においては、柔軟な経営ができるメリットを生かして経費削減などの取り組みを進めていることを理解してはおります。社会環境や医療環境が大きく変化する中でも行政的医療を着実に提供し、多様化する都民、患者の要望に適切かつ迅速にしっかりと応えていくためには、効率的、効果的な経営による盤石な経営基盤が不可欠です。このような先行事例をよく検証して、経営形態のあり方についての検討を進めていくことが重要であると考えます。
 また、検討に当たっては、都立病院の役割である行政的医療を安定的、継続的に提供するという公益性と、効率的な運営など収益性の両面を踏まえるとともに、今よりもよりよい制度が何なのかを熟慮いただき、そのような制度体制があるならば、ぜひ積極的に検討いただき、スピード感を持って進めてもらいたいと述べまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○小松委員 私は、初めに、経営状況について伺ってまいりたいと思います。
 平成三十年度の東京都病院会計決算説明書によれば、経常損益は約三十億円の赤字となるなど、都立病院全体の決算は、前年度より悪化をしております。
 経営状況を判断するに当たっては、各病院の役割、また、病院が所在する地域の医療資源の状況なども踏まえて行う必要があると考えます。
 八つの都立病院は、それぞれ果たすべき役割が異なっておりますが、一定の類型により傾向が見えるのかなというふうに考えます。
 都は、平成三十年度を始期とする都立病院新改革実行プラン二〇一八において、八つの都立病院を、広域基幹型、大都市機能連携型、専門機能型に類型化をしていますが、まず、この類型化の考え方について伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広域基幹型でございますが、所在する地域に高度あるいは専門的な医療を提供できる医療機関が少なく、広域的に総合的な医療を提供する病院として、墨東病院と多摩総合医療センターを位置づけてございます。
 大都市機能連携型でございますが、所在する地域に大学病院等の高度な医療機関が集積しており、強みを生かしつつ、他の医療機関と役割分担と連携を推進する病院として、広尾病院と大塚病院を位置づけてございます。
 専門機能型でございますが、都全域を対象に、高度な技術や設備を活用して専門性の高い医療を提供する病院であり、駒込病院、神経病院、小児総合医療センター、松沢病院を位置づけてございます。

○小松委員 専門機能型のうち、神経、小児、松沢病院が担う医療は、ほぼ全てが採算の確保が非常に困難な医療であると考えます。こうした病院においても、経営努力ということは欠かさず行うことは重要でありますが、まずは、しっかりと期待される専門機能の役割を果たしていただきたいというふうに考えます。
 一方で、広域基幹型、大都市機能連携型の病院も、がんや救急、周産期医療などを行政的医療として提供しているわけですが、総合病院であるため、経営努力の効果は発揮しやすい側面もあるのかなというふうに考えます。
 そこで、広域基幹型、大都市機能連携型の病院の経営状況について伺います。

○児玉経営企画部長 まず、広域基幹型の病院についてでございますが、平成三十年度の病床利用率を見ますと、墨東病院が八四・六%、多摩総合医療センターが八七・四%と、高い病床稼働状況であり、入院収益、外来収益ともに、前年度より増収でございました。
 病院の経営の自律性を見る上での重要な経営指標である自己収支比率につきましても、墨東病院が七九・一%と前年度から〇・四ポイントの改善、多摩総合医療センターが八七・二%と二・五ポイントの改善となりました。
 次に、大都市機能連携型の病院についてでございますが、病床利用率は、広尾病院が七三・九%、大塚病院が七二・七%と厳しい病床稼働状況となり、入院収益、外来収益ともに、前年度より減収となりました。自己収支比率は、広尾病院が六七・四%と前年度より〇・七ポイントの悪化、大塚病院は七一・六%と〇・二ポイントの改善でございました。

○小松委員 大都市機能連携型の病院は、周辺にほかの医療機関が多く、厳しい経営環境に置かれていると思いますが、医療の質の向上を図り、収益を確保するなど、持続可能な病院運営ができるよう、一層の経営力の強化を図ることを要望しておきます。
 しかし、都立病院は、行政的医療の提供を役割としている以上、収支といった経営状況のよしあしだけで、その存在意義や経営力を判断することはできないというふうに考えています。民間病院ではできないことや先導的な取り組みを積極的に行い、都立病院としての存在価値を高めていってほしいということを改めて強調していきたいと思います。
 もう一点、組織目標を効果的に実現するためには、目標達成の戦略を組織内に浸透させるツールの活用が有益であると考えます。
 都立病院では、この経営管理に当たって、バランススコアカード、いわゆるBSCを長年活用しているということでありますが、その目的と成果、また、課題について伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 病院経営本部では、職員の経営意識の向上を図り、効率的な病院運営を行っていくため、平成十六年度からBSCを活用した経営管理に取り組んでおります。
 BSCは、病院経営本部及び各都立病院に加え、それぞれの病院の診療科など部門ごとに、自己収支比率などの財務的な目標に加え、患者サービスや人材育成など、多角的な視点で作成しております。
 目標とする項目や目標値は、現場の実態に即して定めており、日常的な業務遂行と病院全体の目標達成の関係が明確となるため、職員全員が一丸となった病院運営の実現につながっていると考えております。
 BSCの導入から約十五年が経過し、経営管理ツールとして定着が図られている一方で、経営改善に当たって目標設定した数値の達成が、他の経営指標と比べてやや重視され過ぎる傾向にあることが課題であると認識しております。

○小松委員 このBSCで設定される目標というのは、KPI、いわゆる重要業績評価指標、キーパフォーマンスインジケーターであるわけですが、組織としての目標、また、都立病院のBSCでいえば、ビジョンを達成するために必要なプロセスを評価して可視化したものと認識しています。
 持続可能な病院運営を実現するためにも、目標設定した数値だけではなく、ビジョンとして掲げている最終目標を常に見据えた上で、そこにつながるKPIを適切に選択する戦略や、目標達成に向けた取り組みのPDCAを繰り返し徹底して、見直しについても行っていくことを求めたいと思います。
 ともすればKPI至上主義的になって、本来のビジョンとは異なる方向へ猛進してしまうケースというのは、民間企業でもよく見受けられることだと思っています。KPIの目標を一個一個クリアして、いわゆる木を見て森を見ずじゃないですけれども、そうならないことを常に意識していただきたいというふうに思います。
 答弁を聞いていますと、そうした課題認識については確認ができましたので、引き続き、このことについても注視をしていきたいというふうに思います。
 さて、経営改善を行っていく上で、安定的な経営基盤を確保するためには、収益の増加と費用の抑制、双方の観点からの取り組みが必要であります。
 収益の増加を図る観点からは、診療費の未収金に対する取り組みも重要であります。
 そこでまず、都立病院が有する平成三十年度末の未収金の残高と債権数について、また、これまでの残高の推移についても伺いたいと思います。

○西川サービス推進部長 平成三十年度末時点におけます過年度未収金の残高は約八億九千万円でございまして、債権数にいたしまして約二万八千件でございます。
 また、平成二十六年度末の残高は約十億七千四百万円でございましたが、平成二十七年度から平成二十九年度末までは九億円台で推移し、平成三十年度末までに約一億八千四百万円の縮減となってございます。

○小松委員 ただいまのご答弁によりますと、この残高の推移が確認できたわけですが、未収金の縮減というのが進んでいるということがわかりました。
 これは、さまざま着実な取り組みによる成果というふうに思うわけですが、具体的にはどのような内容で取り組まれたのか、伺います。

○西川サービス推進部長 都立病院におきましては、未収金の縮減に当たり、さまざまな取り組みを実施しております。
 具体的には、全病院共通の回収業務マニュアルを整備することにより、未収金の発生が確認された時点で、迅速に電話や文書による催告を実施するなど、回収の早期着手を徹底してございます。
 また、未収金回収の専任職員といたしまして、非常勤職員を本部及び各病院に計十二名配置し、患者への電話や自宅訪問などによる納付交渉に当たらせております。
 さらに、交渉に全く応じないなど、病院では対応が困難な案件につきましては、弁護士に納付交渉を委任しております。直近の実績といたしまして、平成三十年度の委任件数は百四十件、金額にいたしまして約二千七百万円でございまして、このうち、分割納付により今後支払いがなされるものも含めますと、納付の合意率は、委任金額全体に対して約二九%、金額にいたしまして約七百八十万円でございます。
 これらの取り組みに加えまして、相当程度の徴収努力を行っても回収不能と判断した債権につきましては債権放棄を行っておりまして、平成三十年度の件数は三百五件、金額は約一千七百万円でございました。
 今後も引き続き、回収と欠損処理、双方の観点から適切な債権管理に取り組んでまいります。

○小松委員 未収金対策に当たっては、各病院の体制を強化し、迅速に回収に取り組むだけではなく、弁護士のノウハウを活用するなど、多角的、多面的に取り組まれていることがわかりました。
 未収金の発生については、患者の経済的な事情によるものなど、さまざまな理由があるものと思われますが、支払っている患者さんとの公平性の観点からも、回収努力を続けていくことは重要な取り組みだと考えます。一方で、回収見込みのない案件に、一律に時間や労力等の資源を投入するのは決して効率的ではなく、欠損処理を進めていくということも必要だと思います。
 縮減を進めているとはいえ、未収金の残高はいまだ、決して少ないといえるものではありません。今後も引き続き、未収金対策に適切に取り組むことを要望したいと思います。
 次に、ITシステムの活用について伺ってまいりたいと思います。
 都立病院でのシステムによる業務の効率化についてですが、都立病院では、電子カルテや電子マネー等、医療にかかわる分野でシステム化を進めてきていると伺っています。日々の事務処理の分野においてもシステム化を進めることで、さらなる業務の効率化を実現することが可能だと考えています。
 都立病院におけるシステムを用いた事務処理の効率化について、その取り組みを具体的に伺いたいと思います。

○西川サービス推進部長 都立病院におきましては、収入や支出、予算、決算等の会計処理のシステム化や、診療報酬の計算等を行う医事会計システムの導入等によりまして、事務処理の効率化を図ってきております。
 また、最近の取り組みといたしましては、平成二十八年度に、これまでは紙ベースで処理していた職員の出張に係る申請及び旅費の支払い事務をシステム化いたしました。さらに、平成二十九年度には看護師の夜勤に伴うタクシー代を、そして、平成三十年度には医師等の学会への参加に係る旅費を、それぞれ現金払いから口座振替に切りかえるため、会計処理のシステムを改修いたしました。
 今後も、都立病院における事務分野のシステム化を着実に進めていくことで、業務の効率化を一層図ってまいります。

○小松委員 都立病院において、医療に係る分野だけではなく、事務処理についても、システムを導入することで効率化を図っているということが確認できましたが、業務効率の改善という目的からすると、まだまだ打ち手が小さいのかなというふうな印象を持っています。さらなる検討をお願いしたいと思います。
 また、このIT投資が無駄にならないように、あらかじめしっかりと全体の業務フローの設計などを十分検討していただいて、より成果の出るものにしていただきたいなというふうに思います。
 都立病院においては、こうした点を踏まえ、引き続きシステムを活用した業務の効率化を進めていただきたいということをお伝えしたいと思います。
 八つの大きな都立病院を抱える病院経営本部に限らず、都庁全体の業務、また、都庁が行う行政サービスということを考えると、この分野の改善、いわゆるITシステムの活用による業務の改善やサービスの向上といったものは、大変大きな期待をされるものだというふうに思っておりますので、病院経営本部の中でも、しっかりとこの取り組みをしていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 次に、テロ対策について伺ってまいりたいと思います。
 二〇二〇年大会、オリンピック・パラリンピック大会がいよいよ来年になるわけでありますが、多くの観光客も、東京都を今訪問される方がふえているわけであります。
 一方で、東京都を標的としたテロの危険性についても高まっているものと思います。このことは、都議会さまざまな会派から、質疑をさまざまな場面でさせていただいてまいりました。東京都としても、さまざまテロ対策について強化の策を講じてきているというふうに思います。
 今回、化学テロについても少し触れたいなと思っているんですが、一九九五年のオウム真理教による地下鉄サリン事件から、来年で二十五年がたつわけであります。そのときに全ての病院で対応できたわけではなくて、たしか聖路加病院であったりですとか防衛医大が表に対応していただいたと思います。それは、サリンという化学薬品の対応といったものの治療のことで、専門性が非常に問われたということがあったんだというふうに聞いております。
 今回、二十五年たちまして、化学テロが発生した場合に備えて、都立病院ではどのような対応をされてきているのか、伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 都心部唯一の基幹災害拠点病院である広尾病院は、NBC災害に対する専門的知見を有する医師が在籍しており、東京DMATのNBC特殊災害チームの指定を受けております。
 化学テロ等のNBC災害が発生した際には、東京消防庁の要請により被災現場へ出場し、消防隊への医学的助言や、必要に応じて救命処置を行うとともに、被災者を受け入れる体制も整えております。
 このような活動が円滑に行われるよう、広尾病院では毎年NBC災害対応訓練を実施しており、本年二月の訓練におきましては、他の災害拠点病院などにも訓練を公開し、三十六名が見学したところでございます。
 今後は、広尾病院が蓄積してきたノウハウや知見を他の都立病院や災害拠点病院などとも共有し、都立病院はもとより、基幹災害拠点病院として東京都全体のNBC災害対応力の強化に貢献してまいります。

○小松委員 この間、さまざま取り組み、また、それに向けた体制の強化ということが確認ができまして、安心をしたところであります。ただ、都心部唯一の基幹災害拠点病院である広尾病院ですが、今後、長期にわたる大規模な工事が予定されているというわけでありますので、この間、機能が落ちてしまったということがないように、しっかりと、そうした工事の期間も機能を果たせるようなことを強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 先ほど鳥居委員からも、人材確保の観点から、医師アカデミー、そして看護アカデミーについてもご質問がありましたが、私の方は、育成の実績について少し伺ってまいりたいと思います。
 もうご承知のとおりでありますが、平成二十年度から、この東京医師アカデミーというのは、十年以上、若手医師の育成に当たられてきたわけであります。開講した当時は、平成十六年度の初期臨床研修医制度の開始に伴って大学医局の人員派遣機能が低下したといった、医師の採用環境が極めて厳しい状況であることから、また、高い訴訟リスクや激務といった理由から、全国的に産婦人科や小児科医を中心とした深刻な医師不足の状況もあって、都立病院においての医師の確保も喫緊の課題であった、こういったところがこの発足の理由だったというふうに認識をしています。
 こうした深刻な医師不足に対応するため、大学医局のみに依存せずに、都立、公社病院が一体となって質の高い医師の確保、育成を図るためにこの整備をされてきたわけですが、医師の育成の実績について伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 東京医師アカデミーでは、この十一年間でシニアレジデントを千三十一名、より専門性の高いサブスペシャリティレジデントを九十八名採用し、育成を図ってまいりました。
 この間、産科医師をシニアで六十五名、小児科医師をシニアで百五十三名、サブスペシャリティで七十二名、新生児科医師をサブスペシャリティで二十四名採用するなど、医師不足が顕著な診療科体制の強化につなげてまいりました。
 また、これまでの研修修了者五百五十九名のうち、五割を超える二百八十五名が都立、公社病院に就職したほか、六十八名が都内の医療機関に就職しており、東京都の医療を担う人材を確保、育成してきたと考えております。

○小松委員 次に、東京看護アカデミーについて伺います。
 都立病院では、看護職員に対し、新人からベテランまで一人一人の習熟段階に応じてキャリア発達を組織的に支援するため、これまでの研修体系をリニューアルし、平成二十二年度に東京看護アカデミーを発足させたということであります。
 都立病院が持つ高度な医療機能を十分発揮していくためには、患者さんに一番近くで接する機会の多い看護師が専門性を高め、質の高い医療を提供することが重要です。
 そのため、専門分野においてリーダー的役割を果たす認定看護師や専門看護師の育成を、こうしたアカデミーを通じて図っているわけであります。
 そこで、これまでの認定看護師と専門看護師の育成の実績について伺います。

○児玉経営企画部長 東京看護アカデミーでは、認定看護師、専門看護師の資格取得までにかかる授業料、認定試験の審査料などの費用や服務上の支援をするなど、積極的に養成を図ってまいりました。
 専門看護師につきましては、平成三十年度末で十五名が在籍し、認定看護師につきましては、平成三十年度に八名が新たに資格を取得し、百三十四名が年度末時点で在籍しております。
 資格取得者は、知識を生かした専門外来、研修会やコンサルテーションの実施、委員会活動やチーム医療での中心的役割を担うなど幅広く活躍しており、都立病院の医療の質の向上に貢献していると考えております。

○小松委員 次の東京都政のこれからの十年の課題はさまざまあると思いますが、その一つは、間違いなく急激な高齢者人口の増加であると思います。ハード面のインフラをしっかりと整えることは重要でありますが、それだけでは解決ができません。引き続き、この医師アカデミー、看護アカデミーの取り組みに注目をさせていただきたいと思います。
 さて、超高齢化社会の到来は、医療費の増大も招くわけであります。地域包括ケアシステムの構築には、効率的な医療提供体制の整備が必要であります。
 医療費が縮減しない理由の一つとして、在院日数の長さも一因であるとよく指摘をされています。確かに、日本は、欧米諸国と比較をしますと、病床数が多い上、在院日数も長いといわれています。
 この傾向は、一般病床と比べると、精神病床で特に顕著であります。日本の精神病床の在院日数は、お隣の韓国の約二倍。これは韓国が第二位なわけでありますが、その韓国よりも二倍でありまして、ほかの世界標準と、韓国ですら三倍から十倍の長さなわけでありますので、日本の精神病床における在院日数というものが非常に長いということがよくわかると思います。
 そこで、松沢病院の精神病床における在院日数の推移と増減の理由、また、同様の機能を持つ精神病院と比較してどのようなものなのか、伺いたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 松沢病院の精神科病棟におきます平均在院日数は、再編整備前の平成二十年度が百二十八・〇日、平成三十年度が七十一・五日となっており、十年間で五十六・五日短縮してございます。
 この間、松沢病院は、平成二十四年度の新病院開設に向けまして、平成十五年度に社会復帰支援室を整備してございます。支援室では、医師を初め、訪問介護や退院調整、病床管理等を担当する看護師、相談担当のソーシャルワーカー、医療連携担当の事務職、デイケア等を担当する心理士などの多職種により、入院医療中心から地域生活中心への松沢病院におきます基本理念に基づきまして、地域で生活する精神疾患患者の支援体制を強化してまいりました。
 こうした取り組みによりまして、社会的要因により長期入院となった患者の円滑な地域移行が促進されることなどにより、在院日数の短縮化が図られてきたものと認識してございます。
 また、近隣自治体で同様の医療機能を持つ精神科病院におきましては、地域における医療資源や各病院の人的資源等、異なる背景はございますものの、平成二十九年度の平均在院日数は八十から百日程度でございまして、松沢病院は、ほかの公立、公的精神科病院と比較いたしましても、地域の医療機関との役割分担と連携のもとで、一定程度、効率的に病院を運営しているものと考えてございます。

○小松委員 松沢病院の在院日数が、この十年で確実に、また大幅に短縮されていることがわかりました。また、ほかの精神病院に比べても短いということがわかりました。その背景は、患者の社会復帰、地域移行に向けたきめ細やかな取り組みが功を奏しているというような状況なのかなというふうに理解をいたしました。
 しかし、こうして在院日数が短縮をしているもう一つの理由として、患者の重症度の変化、こうしたことも影響しているのではないかなというふうに推察をするものであります。また、短期間で退院して地域移行を果たした患者さんが、一定期間を経た後にまた再入院をしてしまうというケースの動向も大変気がかりなものであります。
 東京都の見解を伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 松沢病院の精神科患者の重症度は、精神保健従事者や医師が成人の社会的、職業的、心理的機能を評価するために用いるGAF--ガフと申しますが--という尺度により評価してございます。
 GAFは、患者の病態を一から百の数値スケールで評価するもので、診療報酬制度におきます精神医療に関連する施設基準にも採用されており、数値が低いほど重症度が高いとされてございます。例えば、精神療養病棟入院料の重症度加算一は、GAF尺度によります判定が三十以下、同様に、重症度加算二では四十以下が施設基準取得の要件となってございます。
 一方、平成三十年度の松沢病院の精神科患者は、GAF尺度四十以下の患者が全体の九六・五%、三十以下の患者が全体の八八・六%を占めており、重症度が高い患者を多数受け入れているといえると考えてございます。
 また、松沢病院の平成二十七年度から平成三十年度までのGAF尺度四十以下の患者割合は、約九七%から九九%程度となってございます。一方、この間の平均在院日数につきましては、八十七・〇日から七十一・五日と十五・五日短縮していますことから、重症度が高い患者の継続的な受け入れと積極的な地域移行とを両立していると認識してございます。
 なお、地域移行後の再入院につきましては、一定程度発生することは事実でございますが、再度必要な精神医療を提供した上で地域移行が可能となるよう、きめ細かな支援を継続してまいります。

○小松委員 ただいまのご答弁で、一定の成果が確認をされたわけですが、特に重度の精神病患者の方においては、自殺であったりですとか、仕事につけないなどによって貧困などと、ほかの行政的課題とも連鎖する重要な課題と直結するわけでありますので、引き続き努力をお願いさせていただきたいというふうに思っております。
 最後に、江東五区に所在する都立病院における浸水対策ということで、二、三、質問させていただきたいと思います。
 都内のうち江東五区は、中心部を荒川が流れ、隅田川、江戸川、東京湾に囲まれており、海抜ゼロメートル地帯も多く、また、水害のリスクを抱えているわけであります。
 区民や都民の生命や健康を守る病院においては、非常用電源の浸水対策は重要なものであり、実際に、昨年の西日本豪雨や、ことしに入っても、八月の九州北部豪雨、また、先日あった台風十五号、十九号によっても多くの病院が浸水し、電源を喪失して機能不全に陥るといった例が数多く発生しております。
 事実、私の地元の世田谷の方の病院もニュースになりましたが、一階と地下の方が浸水してしまって、都庁の職員の方にも大変、患者さんの輸送の点においても活躍をしていただいて、最悪の事態は免れたわけであります。
 また、病院ではないですが、高齢者施設の方からも、非常用電源を地下に--いわゆる地震のために地下という場所で安全に確保していたことが、今回の場合は逆に作用してしまって一番被害が大きくなってしまったというケースがあるというふうに、業界団体の皆さんからもご心配の声がありまして、さまざま、地震以外のことでのこうした災害対策においても、非常用電源について考えなきゃいけないなというふうな声を聞いています。
 そこで、病院経営本部が所管されている都立病院のうち、墨東病院は江東五区のエリアに位置しておりまして、非常用電源の浸水対策について確認をしなければいけないかなというふうに思います。
 墨東病院におけるこれまでの非常用電源の浸水対策の取り組みについて伺いたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 墨東病院では、災害拠点病院として必要な電力を確保するとともに、これまで、施設整備等の機会に合わせてさまざまな浸水対策を実施してまいりました。
 具体的には、前面道路より地盤を約二メートルかさ上げすることを基本とし、地下の電気設備への浸水を防ぐため、スロープの入り口に防潮板を設置してございます。
 さらに、平成二十六年度の新棟整備に際しまして、非常用発電設備を屋上に、電気室を最上階に設置し、また、これらの設備は、新棟だけではなく、旧棟の手術室やICU、感染症病棟などの重要施設への電力供給を可能としてございます。

○小松委員 墨東病院では、これまでもさまざまな対策を実施していただいてきたということがわかりました。しかし、現在、墨田区のハザードマップに基づく最大浸水深は、墨東病院で最大三メートル未満という大規模な浸水が想定されておりまして、既存の対策に加えて、さらなる対策が求められるのではないかなと考えます。
 平成三十年度において、この取り組みはどのようなものだったのか、伺いたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 昨年の西日本豪雨を契機として実施した全庁的な緊急点検の結果、ハザードマップ上の墨東病院の最大浸水深の想定が〇・五メートル以上三メートル未満であったことを踏まえまして、昨年度より、これまで墨東病院に講じてきた対策を上回る浸水深三メートルに対応できるよう、非常用発電装置の具体的な対策に向けた検討に着手してございます。
 具体的には、さまざまな機材や工法等を調査し、墨東病院に適した整備内容や範囲について技術的検討を行ってございます。
 この結果、基本的な計画として取りまとめ、概算費用、工期、病院運営への影響や整備後の運用面の評価等を踏まえ、地下への浸水を防ぐために、建物の開口部へ防水壁を設置することといたしました。

○小松委員 非常用電源の確保に向けて、さまざまな角度からの方策を検討しているということであり、政策の展開のあり方として高く評価をいたします。この十五号、十九号が起きる前にこうした対策も講じていたということに、改めて評価と敬意を表するものであります。
 また引き続き、最適な手法に基づいて着実に実施をしていただくことを要望いたしまして、私からの質問を終わります。ありがとうございました。

○伊藤委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十六分休憩

   午後三時三十五分開議

○伊藤委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○古城委員 私は、平成三十年第一回定例会の厚生委員会において、平成三十年度東京都病院会計予算の調査に当たり、質疑を行いました。その質疑での提案や要望も踏まえ、平成三十年度東京都病院会計決算に関連して、病院経営本部に対して、患者、家族を支えるさまざまな取り組み、小児医療、アレルギー対策、がん対策などについて質問を行います。
 平成三十年三月に策定された都立病院新改革実行プラン二〇一八で掲げられた視点のうち、とりわけ患者、都民第一は重い意義を持つものであり、都立病院はこれまでも、患者中心の医療の実現を目指して、いわゆるインフォームド・コンセントの充実や患者サービスの向上など、さまざまな患者支援策を実施していると理解しています。これからも患者中心の医療の充実を図るべきであるとの考えのもと、具体的な質問に入ります。
 初めに、患者支援について質問します。
 都立病院では、平成二十七年度に全ての都立病院に患者支援センターが設置され、患者、家族が抱えるさまざまな相談にワンストップで対応する体制が整備されました。新改革実行プランでは、この患者支援センターを仮称患者・地域サポートセンターとして再構築するとあります。
 厚生委員会では、再構築の基本的な方向性について、外来受診時から退院後の地域生活も見据えた一貫した支援を実現するとともに、医療と介護を切れ目なくつなぐ地域包括ケアシステムの構築にも貢献できる旨の答弁がありました。
 私は、平成三十年第一回定例会の一般質問でも指摘しましたが、退院後も住みなれた地域で生活するための支援として、外来や入院時から退院後の地域生活を見据えた支援や、外来部門と入院部門との連携、地域と入院医療機関が連携するための支援が大変重要であると考えております。
 国においても、入院早期から退院直後までの切れ目ない支援を推進しています。平成三十年度の診療報酬の改定でも、入院前、入院後の早期から要支援者の把握と地域の関係者との連携を促進する加算の要件が見直されるなど、入院サポート業務は一層重要になっています。
 これらを踏まえて、委員会質疑の際には、全ての都立病院において、入退院支援に係る新たな診療報酬の改定に伴う加算を取得することを要望しました。
 そこで、患者支援センターにおける入院サポート業務の状況及び診療報酬の加算取得の実績について見解を求めます。

○西川サービス推進部長 入院患者が安心、納得して退院し、住みなれた地域で療養や生活が継続できるようにするためには、地域の関係機関等との連携の強化と、できるだけ早期の段階で退院困難なケースを把握して支援することが重要でございます。
 都立病院ではこれまでも、患者支援センターにおきまして、入院前から検査や手術の説明を行うとともに、患者の詳細な状態把握に努め、必要な支援を行ってまいりました。
 平成三十年度には、従来の患者支援センターの職員に加えまして、退院支援業務に当たる病棟の専従の職員を新たに配置することなどにより退院支援の強化を図り、五つの病院で診療報酬における入退院支援加算の上位の施設基準を算定いたしました。
 平成三十年度の入退院支援加算の算定実績は、都立病院の合計で、前年度と比較し、件数では約九千六百件増の二万五千七百九件、金額では約九千百万円増の一億四千七百万円でございました。

○古城委員 都立病院においては、入院サポート業務の拡充に取り組むとともに、加算の算定による収入増が明らかであることを確認させていただきました。今後の患者・地域サポートセンターへの再構築に当たっても、患者支援の充実を図っていただきたいと要望いたします。
 次に、委員会質疑におきまして、患者支援センターは、患者の相談内容が専門的、また複雑化していくほど、プロ、専門家のノウハウを活用すべきではないかと指摘いたしました。病院経営本部からは、高齢化の進展や患者の生活環境の多様化により、財産や家族に関する法的問題が患者の円滑な転退院を困難にしている場合があるとの認識が示されました。その上で、平成三十年度の早い時期に、全ての都立病院において、法的問題を抱える患者が適切に相談を受けられる仕組みを導入することを求めました。
 そこで、都立病院の患者支援センターにおける弁護士による法律相談の実績について見解を求めます。

○西川サービス推進部長 平成三十年度から、全ての都立病院におきまして、法的問題を抱える患者が適切に相談を受けられますよう、弁護士による法律相談を開始いたしました。この相談は、各病院におきまして原則月一回実施しており、平成三十年度の相談実績は、全都立病院合計で百三十三件でございました。
 主な相談内容といたしましては、借金の整理などの経済問題、遺言などの死後の事務処理の問題、ドメスティック・バイオレンスや離婚及び親権に関する家庭問題の相談などでございました。
 こうした法律相談によりまして、患者の抱える法的問題の解決を支援することで、療養生活における不安の解消や、安心して転退院できるような条件整備を図っております。

○古城委員 患者支援センターが、患者が抱える法的な問題の解決に向けても支援を行っていることがわかりました。専門家の活用などにより多様なニーズに対応できるよう、相談機能の充実を図っていただきたいと要望いたします。
 次に、退院支援の強化について質問します。
 高齢者が病院から退院し、自宅など地域における在宅療養生活に移行するためには、地域の病院とかかりつけ医、訪問看護師、ケアマネジャーなどの多職種の連携が重要です。
 平成三十年第一回定例会の一般質問では、入退院支援の取り組み、病院と地域の医療、介護関係者の連携強化に向けた取り組みを積極的に推進すべきと訴えました。中でも、退院支援を強化するためには、病院に勤務する看護師が在宅医療の状況を十分理解した上で支援していくことが肝要です。
 そこで、都立病院としてどのような取り組みを行っているのか、見解を求めます。

○児玉経営企画部長 退院支援を強化するためには、病院に勤務する看護師は、退院後の患者の療養生活を考えた視点を持ちながら、入院早期から適切な支援をしていくことが重要であると考えております。そのため、平成三十年十月と十一月に、広尾病院の看護師二名を、それぞれ一カ月間、研修生として訪問看護ステーションに派遣する取り組みを試行として実施いたしました。
 研修生は、難病や認知症、終末期といったさまざまな方々を訪問したほか、地域ケア会議や大学病院での退院調整会議に出席するなど、研修を通じて訪問看護業務や在宅医療のシステムを理解し、退院支援に必要な経験や情報を得ることができました。
 さらに、研修終了後に院内報告会を開催することで、必要な知識を広尾病院全体で共有することにより、退院支援の強化や地域連携に向けての院内職員の意識の向上にもつなげているところでございます。

○古城委員 ただいまの答弁で、病院全体で共有というお話がありましたけれども、特に看護師の方については人事異動があることもございます。もちろん病院全体での共有ということでもございますけれども、それぞれ、あくまでも属人的な知識の積み重ねということでなしに、全体での共有をしっかりと図っていただきたいと要望させていただきます。
 次に、患者支援に関連して、神経病院の取り組みについて質問いたします。
 神経病院では、神経難病の進行によって声を失った患者の方の大事なコミュニケーションツールとしてマイボイスを導入しています。
 私は、多摩メディカルキャンパスを視察した際に、このマイボイスにご尽力されている作業療法士の本間先生から、ご本人が自身の声を聞いた以上に家族が喜んでくれる、涙を流す人が多いと伺い、非常に感銘を受けました。自分の声で意思疎通を図ることができるマイボイスを利用するために、都内だけでなく遠方からも患者が来院していると仄聞をいたします。
 そこで、神経病院におけるマイボイスの取り組み及び平成三十年度の実績について見解を求めます。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 神経病院では、神経難病等の病状の進行に伴いまして、発声、発語機能を失うおそれが高い患者自身の声をあらかじめ録音しておき、発声等機能の喪失後に、再生ソフトを用いて、みずからの声でコミュニケーションができるマイボイスの取り組みを平成十六年度より実施してございます。
 平成二十四年度以降、マイボイスの取り組みが新聞やテレビで報道され、普及が進んだこともあり、毎年四十人から五十人程度の実績があり、平成三十年度は四十九人の実績がございました。
 疾患別では、ALS等の神経難病患者が多くを占めてございますが、これまで培ってきたノウハウや経験をもとに、近年ではがん患者にも対応しており、平成三十年度は三人の咽頭がん患者への実績がございました。

○古城委員 神経難病患者の方々に加えて、がん患者の方々にも、このマイボイスをご利用いただいているということでございますので、これからも期待をさせていただきたいというふうに思います。
 次に、小児医療について質問いたします。
 小児総合医療センターは、高度で専門的な小児医療の拠点として整備が図られ、他の医療機関では救命治療の継続が困難な小児重篤患者の受け入れ要請があった場合に、患者を必ず受け入れ、迅速かつ適切な救命治療を行う東京都こども救命センターに指定されています。重症、そして重篤な小児患者のための集中治療室であるPICUの機能が強化されており、視察の際に伺ったところ、PICUでの受け入れ入室数は都内トップクラスの実績とのことでありました。
 委員会質疑では、小児救命医療のまさに最後のとりでである小児総合医療センターのPICUにおいて、一層増加する小児の重症患者を一人でも多く受け入れるため、こども救命センター機能の充実強化に向けて、医療人材の確保と質の向上に取り組んでいただきたいと求めました。
 病院経営本部からは、医師については、東京医師アカデミーにおいて小児科の集中治療や救命救急のコースを設定し、質の高い医師を育成するとともに、新たに人工肺を用いた救命医療や移植医療に関するコースを設定し、救急医、集中治療医として、より高度な専門性を有する医師を育成すること、看護師については、小児救急看護分野の認定看護師や小児看護分野の専門看護師を養成しているとの答弁がありました。
 そこで、平成三十年度の取り組み状況について見解を求めます。

○児玉経営企画部長 小児総合医療センターでは、平成三十年度に、小児科の集中治療コース、救命救急コースにおいてサブスペシャリティレジデントを新たに一名ずつ採用し、合計六名が小児救急医療の特殊性に対応できるよう研さんを積んでおります。
 また、都立病院の中核を担う医師を育成するクリニカルフェロー研修に、委員のお話にもございました、人工肺を用いた救命医療や移植医療に関するコースを新たに設定し、一名を採用いたしました。採用した一名は、体外式膜型人工肺、ECMOと呼んでおりますが、この機器を患者へ導入したり、離脱したりする際に指揮をとるなど、既に重要な役割を担っており、さらに高度な専門医療を実践するための臨床経験を積んでおります。
 看護師につきましては、平成三十年度末時点で、小児救急看護分野の認定看護師が三名、小児看護分野の専門看護師が二名在籍しており、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護を実践しているほか、研修会やコンサルテーションなどを通じて職員育成の面でも貢献しております。
 また、重症の疾患や外傷のある小児に対する体系的アプローチや、呼吸不全、心停止への対応といった二次救命処置について学ぶ外部研修に参加した十五名の看護師に対し受講料を支援するなど、小児救急医療を担う人材の確保、育成に取り組んだところでございます。

○古城委員 小児医療に関連して、新生児聴覚検査について質問いたします。
 私は、先天性聴覚障害を持つお子さんが特別支援学校を卒業し、立派な社会人に育ったお母様のお話を伺う機会がございました。赤ちゃんは、おなかがすけば泣き、おなかがいっぱいになれば笑います。しかし、耳が聞こえているかは、検査を除けば、成長した段階にならなければ周囲の人にはわかりません。新生児に先天性の聴覚障害があっても、早期に発見され、療育が行われた場合には、音声言語発達などへの影響を最小限に抑えることができるといわれており、都議会公明党は、本会議と予算特別委員会で質疑を重ねました。私もこれまで、厚生委員会や総務委員会において、新生児聴覚検査の公費負担を全都で早期に実施することを繰り返し求めてきました。
 知事は、都議会公明党からさまざまな提案をいただき、都として準備を進めてきたと述べ、ことし四月から全区市町村で新生児聴覚検査の公費負担制度を導入すると表明し、さらに、都は、新制度への切りかえの前に母子手帳を受け取っている場合や、他県への里帰り出産も対象に加えることを明言しました。
 そこで、都立病院における平成三十年度の新生児聴覚検査の実績について、まず見解を求めます。

○西川サービス推進部長 平成三十年度の新生児聴覚検査の実績でございますが、産科のある都立病院のうち、総合周産期母子医療センターの指定を受けております大塚病院、墨東病院、多摩総合、小児総合医療センターにおきましては、総分娩件数は、死産も含めまして三千七百四十四件でございまして、このうち検査の実施件数は四千九十四件でございます。検査の実施割合といたしましては一〇九・三%でございました。
 検査の件数が分娩件数を上回っておりますが、その理由につきましては、小児総合医療センターにおきまして、ほかの病院からNICUに搬送された低出生体重児などに対しまして検査を実施していることなどによるものでございます。
 また、主として通常分娩に対応しております広尾病院の実績は、分娩数六百七十件に対しまして、検査件数は四百三十件、その実施割合は六四・二%でございました。

○古城委員 ただいまの答弁から、総合周産期母子医療センターに指定されている都立病院においては、ほぼ全ての新生児に対して聴覚検査が実施されていることが推察をされます。
 一方で、通常分娩が主である広尾病院においては、三分の二に届かない六五%弱の実施にとどまっているとのことであります。
 広尾病院において聴覚検査の実施割合が低くなっている理由についてどのように認識しているか、また、広尾病院の実施割合を高めるための取り組みについて、あわせて見解を求めます。

○西川サービス推進部長 広尾病院の検査実施割合が低くなっている背景といたしましては、NICUがなく、ハイリスク分娩を取り扱っていないことから、親が検査の必要性を強く感じないことや、検査費用がかかることなどがあるものと考えられます。
 病院におきましても、新生児聴覚検査の重要性は十分認識しておりまして、親に対し、検査の必要性などを、出産前に書面により説明を行っております。
 今年度からは、新たに始まりました都内区市町村による新生児聴覚検査費用の助成制度についてのポスターを産婦人科外来の待合及び産科病棟に掲示いたしまして、出産予定の妊婦への周知を図っているところでございます。
 四月から九月までの今年度上半期の実績は、速報値ではございますけれども、分娩件数三百十九件に対しまして、検査を実施した件数は二百五十二件でございまして、実施割合は七九%と大きく増加しているところでございます。
 今後も、聴覚検査の意義等について、親への丁寧な説明を行うとともに、助成制度の一層の周知を図り、実施割合を高めていくよう努めてまいります。

○古城委員 広尾病院においても、今年度は新生児聴覚検査の実施割合がふえている。五人のうち四人、八割弱の赤ちゃんが検査を受けているということがわかりました。これについては、新生児聴覚検査の公費負担制度の導入の効果が大変高いものであるというふうに考えます。ぜひ全ての新生児が検査を受けられるよう、引き続き、お母さん、また、ご家族に対して検査の必要性について十分説明していただくとともに、助成制度の周知もあわせて図っていただきたいと要望いたします。
 次に、アレルギー医療について質問いたします。
 都議会公明党は、アレルギー対策の充実を一貫して強力にリードしてまいりました。平成二十二年の都立小児総合医療センターの開設に当たっては、平成二十年第二回定例会の代表質問においてアレルギー科の設置を提案しました。
 新病院開設と合わせて新設されたアレルギー科は、これまで標準治療では対応困難な患者や重症患者を積極的に受け入れるとともに、アレルギー疾患に係るさまざまな情報提供や人材育成、技術支援等に取り組んでいます。
 アレルギー疾患により医療機関を受診する患者は増加傾向にあり、アレルギー疾患は、場合によって命の危険に直結することからも、アレルギーを持つ子供はもとより、その保護者は、依然として不安を抱えながら、日々アレルギー疾患と向き合っています。
 東京都では、花粉症、ぜんそく、食物アレルギー、またアトピー性皮膚炎など、アレルギー疾患の有症率が全国平均に比べて高くなっています。
 一方で、今、新薬の開発も進んでおり、多くのアレルギー患者は、適切な治療を受けられれば、症状のコントロールをすることが可能になってきているともいわれています。したがって、多くの患者が地域の診療所、クリニックで診察、治療可能、フォローが可能となってくると、総合病院においては、重症患者のフォローや検査とともに、これからはコメディカルの養成が大きな役割として求められます。
 患者教育、例えば、患者や家族が塗り薬や吸引薬などの適切な使用や食事管理などを継続できるように支援していくことが、今後のアレルギー医療の中心になると考えます。そして、そのためには、高度なアレルギーの専門知識と指導技術を持ったコメディカル、例えば看護師、薬剤師、保健師、管理栄養士が必須になってきます。
 そこで、私は厚生委員会で繰り返し、総合病院、特にアレルギー疾患医療の拠点病院には、コメディカルを養成する体制とそれを活用する体制が必要であると訴えてまいりました。委員会質疑では、アレルギー疾患医療の需要に合った医療体制を整えるために、専門医師やコメディカルの確保、育成を行うことを新改革実行プランの中で明確にするべきことを求めました。
 こうしたことを受けて、都は本年二月に、四つのアレルギー疾患医療拠点病院と十三の専門病院を指定しました。小児総合医療センターは拠点病院に指定されましたが、これまでと同様に、豊富な専門知識や技術を有する医師や、患者への指導技術を備えた小児アレルギーエデュケーターなどが主体となって、幅広い領域のアレルギー疾患への対応や、人材育成、普及啓発活動等を中心的に担っていると理解しております。
 そこで、平成三十年度における小児総合医療センターのアレルギー医療に対する取り組み状況について見解を求めます。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成三十年度におけます小児総合医療センターのアレルギー科の外来患者数は六千二百七十五人で、二十九年度と比較すると百八十四人増加してございます。
 また、小児アレルギーエデュケーターの認定を受けました看護師によるアトピー性皮膚炎のスキンケア、ぜんそく治療の吸入療法、食物アレルギーのアドレナリン自己注射による緊急時対応などの指導を一千三十二件実施してございます。
 加えて、小児アレルギーエデュケーター取得予定者の実習受け入れによる人材育成や、地域医療機関の医療従事者や保健福祉関係者、学校、児童福祉施設等の職員向けに、ぜんそくや食物アレルギーの知識と対応、室内環境のあり方と注意点、鼻アレルギーと花粉症について、アトピー性皮膚炎のスキンケアといった研修や講習会の実施による地域支援を行ってございます。
 さらに、普及啓発活動といたしまして、患者、家族などの都民向けに、都民向けアレルギー講演会や子供向けエピペン教室を開催してございます。
 今後も、拠点病院として求められる役割を確実に果たしていくため、こうした総合的な取り組みを着実に進め、都のアレルギー医療提供体制の充実に貢献してまいります。

○古城委員 ただいまの答弁においても、るる触れていただきましたけれども、小児アレルギー医療においては、医師の専門的な診療に加えて、患者教育、生活指導をしっかりとできる小児アレルギーエデュケーターの存在が極めて重要です。
 また、患者や保護者が真に安心することができる小児アレルギー医療体制は、小児アレルギー患者とかかわるさまざまな職種や立場の人々に対する人材育成や技術支援、普及啓発活動の上に成り立つものであると考えます。小児総合医療センターが、今後もアレルギー疾患医療拠点病院として中心的な役割を担うことを期待いたします。
 次に、保護者にかわって病気の子供の看護と保育を行う病児、病後児保育について質問します。
 幼い我が子が病気になれば、親であれば、誰もがそばに寄り添い、看病してあげたいと感じるものです。しかし、責任ある立場にいて仕事を休めないであるとか、核家族で、いざというときに頼ることができる人がいないといった場合に、看護師や保育士などの専門家が子供を見てくれるのであれば、これほど心強い味方はありません。病児、病後児保育を利用できたおかげで、仕事に支障を来さずに子供の体調不良を乗り越えることができた家族の喜びは、決して小さなものではありません。
 都議会公明党は、都立病院や公社病院での病児、病後児保育の推進を強く求めてきました。このような中、都立、公社病院においては、墨東病院が先駆けとなり、墨田区から病児、病後児保育事業を受託し、運営しています。
 そこで、平成三十年度における墨東病院の病児、病後児保育室の利用状況について見解を求めます。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 墨東病院の病児、病後児保育室は、事業主体である墨田区から事業を受託し、平成二十八年二月に開設いたしました。
 開設当初の受け入れ定員は二名でございましたが、墨田区からの要請に応え、二十九年十月からは四名に拡大して運営してございます。
 平成三十年度の利用実績は、延べ利用者数が五百十九人でございまして、定員が異なるものの、二十九年度の二百三十五人と比較いたしますと、二百八十四人、約二・二倍の増となってございます。
 また、平成三十年度の利用率は五三・二%と、二十九年度よりも二〇・九ポイント増加していることからも、着実に地域に定着するとともに、地域の保護者の方々から頼られる存在となってございます。

○古城委員 働く保護者がふえる中、病児、病後児保育のニーズは高まっています。小児科の医師のいる都立、公社病院の病児、病後児保育室に子供を預けることができれば、保護者も安心して働くことができると思います。
 都はこれまでも、病児、病後児保育の事業の実施主体である区市町村の取り組みを支援していますが、都立、公社病院においても、区市町村に積極的に協力していただきたいと要望いたします。
 次に、がん医療について質問します。
 長寿命化が進む中、がん対策の強化は大変重要です。これまで都議会公明党は、がん対策として、予防から治療、終末期、緩和ケアなどに至るまで幅広い取り組みを提案して、都立病院においても実現してきました。
 がん医療に関し、高度医療技術を患者に提供する体制として、駒込病院と多摩総合医療センターに手術支援ロボットが導入されています。ロボット支援下での手術は低侵襲であり、また、開胸や開腹による手術に比較して、傷口が小さく、術中の出血も少ないなど、手術後の疼痛の軽減が期待され、患者の早期回復に資するものです。
 こうしたことを背景に、ロボット支援下手術の保険適用は、平成三十年度の診療報酬改定により、従来の前立腺がん、腎臓がんの二手術から、胃がん、大腸がん、子宮がんなどが対象になるなど、十四の手術にまで拡大されました。
 そこで、駒込病院、多摩総合医療センターで導入した手術支援ロボットの昨年までの手術実績とともに、平成三十年度から適用が拡大された手術実績及びロボットの活用に向けた考え方について見解を求めます。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 駒込病院におきます手術支援ロボット支援下の手術実績は、年度の三月に導入した平成二十八年度は一件、二十九年度は三十一件、三十年度は百十八件でございまして、この百十八件のうち、新たに保険適用された手術につきましては、胃がん五件、大腸がん八十一件でございました。
 多摩総合医療センターにおきましては、年度の一月に導入した平成二十九年度は六件でございましたが、三十年度は四十四件であり、この四十四件のうち、平成三十年度から新たに保険適用された手術につきましては、胃がん二十三件でございました。
 今後とも、保険の適用範囲の状況を踏まえ、患者の状況や現場の体制等を見定めつつ、手術支援ロボットのさらなる活用を図ってまいります。

○古城委員 導入後に稼働件数が伸び、新たに保険適用となった症例についても実績を伸ばしていることがわかりました。一方で、患者個別の状況はもとより、技術の習得のトレーニングなど、医療現場に一定の負荷がかかることも理解をいたします。こうしたことと向き合いながら、適用範囲の拡大を検討していただきたいと要望いたします。
 次に、駒込病院に導入されている二台の強度変調放射線治療、IMRT専用機器について質問します。
 都議会公明党は代表質問などを通じて、高精度の放射線治療器を都立病院に導入し、がんに対する都民の不安を和らげるべきであり、がん治療の拠点病院として機能が一新される駒込病院にこそ、こうした機器を導入するよう提案するなど、都のがん対策の強化を重ねて訴えてまいりました。
 私は、平成二十九年第四回定例会の厚生委員会における契約締結報告の際に、二台目の導入によって放射線治療全体にどのような効果が見込まれるのか、質問しました。
 この際、標準的な治療装置であるリニアックで対応していた症例を高精度放射線治療装置で治療を行うといった運用を見直すことにより、副作用の低減や治療効果の向上など、よりよい治療法の選択肢を多くの患者さんに提供することが可能になるとの見解が示されました。
 そこで、二台目導入から一年を経過したことから、放射線治療装置導入後、昨年までの実績と二台の運用状況について見解を求めます。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都道府県がん診療連携拠点病院であります駒込病院に二台設置しています本放射線治療装置のうち、一台目は平成二十四年一月に導入し、また、二台目は平成三十年二月に導入してございます。
 これらの装置で治療を行った延べ患者数は、平成二十八年度は五千二百七十三件、年度末の二月から二台体制となった二十九年度は五千五百七十五件、年間を通じて二台体制となった三十年度は八千七百八十件でございました。
 新たに導入した装置は全身照射が可能であることから、装置が二台体制になることで、全身照射が必要な白血病等の入院患者には、主にこの新たな装置を使用し、既存の装置は部分照射が中心となる外来治療に主に活用することで外来通院患者の増加に対応するなど、患者の状況に応じた、より適切な治療を提供してございます。
 今後とも、駒込病院が保有するそれぞれの放射線治療装置の運用につきまして、機器の特性を生かして、症例ごとに治療の最適化を図ってまいります。

○古城委員 導入後、着実に実績が伸びていることが確認できました。引き続き、多くの患者の方々によりよい治療の選択肢を提供するために、一層の取り組みを進めていただきたいと要望いたします。
 関連して、医学物理士について質問します。
 これまで私は、がんの放射線治療に関して、高精度な放射線治療装置を安全かつ効率的に運用するためには、優秀な放射線腫瘍医、放射線技師、看護師、そして、専門的な物理工学的知識のある医学物理士との連携が重要であり、とりわけ人材不足が指摘されている医学物理士の確保、育成の取り組みの必要性を訴えてきました。
 平成三十年第一回定例会の厚生委員会では、医学物理士について、必要な診療体制に応じた採用や、診療放射線技師に対する医学物理士の資格取得支援などの取り組みを行っていくとの答弁がありました。
 そこで、平成三十年度の取り組み状況について見解を求めます。

○児玉経営企画部長 医学物理士は、放射線治療の安全性や治療成績の向上に重要な役割を担っており、治療機器の進歩や高齢患者の増加等により、今後も放射線治療の適用患者の増加が予想されることから、医学物理士を確保、育成していくことは重要であると考えております。
 そのため、平成三十年度に資格取得支援の対象資格に医学物理士を新たに加え、受験要件となる学会やセミナーへの参加費や旅費、試験料など、取得にかかる費用や服務上の支援制度を整え、診療放射線技師に対して実際に支援を開始いたしました。

○古城委員 都立病院において、実際に支援を開始していただいたということでございますけれども、これからも、ぜひとも医学物理士の確保、育成の取り組みを進めていただきたいと思います。
 次に、ゲノム医療について質問いたします。
 国立がん研究センターは、がんと診断された人が五年後、三年後に生存している割合を示す五年生存率、三年生存率を発表しました。がん治癒の目安とされる五年生存率、新しい薬や治療法を評価する目安となる三年生存率ともに、前回調査より上昇しており、この傾向の背景には、医療技術の進歩や検診の普及などが考えられます。
 一方で、今回の結果で改めて浮き彫りになったといわれるのが、膵臓がんなど難治性がんの生存率の低さです。難治性がんは、早期発見が難しい上に、転移や再発の可能性が高く、有効な診断法や治療法が開発されていないのが実情です。
 期待される難治性がん対策の一つに、がん患者の遺伝子情報を分析し、遺伝子変異に応じて患者ごとの最適な治療薬を選ぶ、がんゲノム医療が挙げられます。従来の抗がん剤に比べて副作用が少なく、治療効果も高いとされ、六月からは検査の一部が公的医療保険の適用対象となりました。
 国が策定した第三期がん対策推進基本計画においても、ビッグデータやAIを活用したがんゲノム医療を推進して、個人ごとの違いを考慮した、患者に最適ながん医療を推進していくこととされています。
 私は委員会質疑において、都におけるがん医療の拠点である駒込病院でも、薬物療法や放射線治療などこれまでの医療に加えて、最先端の技術を活用した医療を都民に提供していくことが必要であると訴えました。
 そこで、駒込病院は、平成三十年十月にがんゲノム医療連携病院に指定されましたが、その取り組み状況について見解を求めます。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 国は、がんゲノム医療を必要とする患者が全国どこにいてもゲノム医療を受けられる体制の構築を推進してございます。都道府県がん診療連携拠点病院であります駒込病院は、この国の動向を踏まえた体制整備を着実に実施してございます。
 平成三十年度は、遺伝子情報の解析装置である次世代シークエンサーを導入するといった設備面の整備や、遺伝子情報の管理や解析支援等を行う臨床研究支援員などのゲノム医療に求められる新たな人員の配置、加えて、臨床検査室や病理検査室の制度管理やセキュリティー等に関する体制整備を実施するといった、施設と運用面の整備等を行い、十月には、がんゲノム医療連携病院の指定を受けたところでございます。

○古城委員 都立病院でがん医療を受け、見事克服した方ご本人とご家族から話を伺いました。都立病院の医師の確かな技術はもとより、診療、看護、医療技術、事務などのいずれの部門においても、親切、丁寧な対応によって健康と笑顔を取り戻すことができたと、深く感謝していらっしゃいました。都立病院が全国トップクラスのがん対策の中心拠点として、医療体制の強化とともに、がん患者の就労支援など患者支援を充実させていくことを強く希望いたします。
 最後に、行政的医療である島しょ医療について意見を申し述べます。
 東京の島しょでは、約二万六千人が暮らしています。島しょ医療の機能強化は重要です。
 広尾病院と島しょ地域の診療所をつなぎ、エックス線やCT、内視鏡等の画像を見た専門医から島の医師が助言を受けることで、島においても質の高い医療を受けられること、救急搬送時においても、事前に初期診断に活用することなどが可能になっているとのことです。
 私は、先月、小笠原村の父島、母島を訪れました際に村立診療所を視察し、画像伝送システムを調査しました。小笠原村の医療課長からも、画像伝送システムに関するこれまでの経緯と今後の期待とともに、村の医療事情を伺いました。それによると、専門医による診療が、診療科ごとになりますが、年に一回から数回にとどまっているとのことであります。
 都は、八月、5Gネットワークの早期構築を目指して、TOKYO Data Highway基本戦略を策定しました。この中では、過疎地域においても専門医による動画診療を受けられ、遠方への通院が不要にとして、遠隔診療の充実に資する視点も盛り込まれています。病院経営本部においても、5Gを活用した積極的な取り組みにより、島しょ診療に貢献することを強く要望いたします。
 患者、都民第一の都立病院として、超高齢社会における医療需要の一層の増加も見据えて、がんを初め、あらゆる疾患から都民の健康と命を守る質の高い医療が展開されることを望みまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○白石委員 私からも、決算にかかわりまして質疑をいたします。
 都立病院の独立行政法人化にかかわって、何点か質問させていただきます。
 都立病院経営委員会は、二〇一八年一月に、都内八つの都立病院について、現行の都立直営では制度的課題があるとして、独立行政法人化を検討すべきという報告書を取りまとめました。それを受けた病院経営本部は、都立病院新改革実行プラン二〇一八に、独法化を含め、経営形態のあり方を検討すると位置づけ、プランに基づき、平成三十年度から本格的に調査が行われております。
 初めに、基本的なことを伺いたいと思います。
 平成三十年度に行った都立病院の経営のあり方にかかわる調査及び支援業務委託の目的とはどのようなものだったのか、また、調査したものについては、今後どのように活用をしていこうと考えているのか、端的にご説明をお願いいたします。

○船尾計画調整担当部長 都立病院新改革実行プラン二〇一八では、都立病院が、行政的医療の提供など、役割を将来にわたり安定的に果たしていくために、病院の運営実態を踏まえた検証を行い、経営形態のあり方について検討を進めることとしております。
 本委託は、このプランに掲げる方向性を具体化するための都立病院の経営のあり方について、各病院の運営実態を踏まえた検証を行うに当たりまして、公認会計士や医業経営コンサルタントなどの専門家の知見を活用した支援を受けることを目的にしてございます。
 本委託の結果につきましては、都立病院の経営のあり方の検討の参考として活用しております。

○白石委員 つまり調査の目的というのは、公認会計士など専門家からの知見でアドバイスを受けるということです。また、今後の都立病院の経営の方針にかかわる調査であるということになりますね。
 それでは、次に、委託調査費は幾らの予算が計上され、契約額はどのようになったのか、伺いたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 都立病院の経営のあり方に係る調査及び支援業務委託の予算額は一億六千万円で、契約額は約八千万円でございました。

○白石委員 八千万円の契約額ということですが、病院経営本部の調査費用としては、決して安くない金額だと思います。それだけお金のかかる委託調査をどこの業者に発注したのか、また、どのような基準で事業者を選んだのか、一つ一つ確認をしていきたいというふうに思います。
 まず、いつ入札が行われたのか、そして、どこの業者が落札をしたのか、それぞれ伺いたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 本委託は、平成三十年五月二十二日に業者からの入札希望の申請を開始し、平成三十年七月十一日に有限責任監査法人トーマツが落札いたしました。

○白石委員 昨年の七月十一日に監査法人トーマツが受注をしたということになります。
 事業者の選定については、入札額だけで単純に選ぶのではなく、総合評価方式を採用して決定したと、このように聞いております。
 事前に資料もいただきましたけれども、その資料によれば、入札には三者が参加をしておりました。トーマツは、入札価格では二番目で、総合評価の技術点がほかの業者よりも高かったために受注することができたとしております。簡単にいえば、総合評価方式によりトーマツは委託調査を受注することができたと、このような関係であると思います。
 そこで伺いたいと思いますけれども、トーマツがほかの業者よりも技術点が高評価となった、この理由を端的にご説明いただきたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 本委託は、総合評価方式により、技術点と価格点の合計点が最も高い者を落札者とするものでございます。
 技術点につきましては、業者からの技術提案に基づいて評価をいたしましたが、具体的には、本委託に対する理解度及び取り組み姿勢、実施体制、業務への対応、業務実績、政策的評価の五つの項目で評価をいたしました。
 この落札者は、評価項目の全項目で高い評価を得ておりまして、とりわけ評価のウエートの高い業務への対応の項目におきまして、現行業務の分析、今後の方向性の提案などが高評価でございました。

○白石委員 つまり、トーマツが一番この調査の趣旨を理解しており、客観的で確実な調査ができる業者だからこそ選ばれたと、このような理解でよろしいでしょうか。

○船尾計画調整担当部長 入札は三者入札がございましたが、総合評価方式の結果、トーマツが最も価格点と技術点の合計点が高いということで落札をしております。

○白石委員 私がいったことと同等の、つまり、トーマツが一番この調査に適している、適切な業者だったというふうなことが総合評価によって選ばれたいうことになりますね。
 この調査は特定の経営形態への移行を前提としたものではないと、このように伺ってもおります。客観的な調査を的確に行うことができるというのがトーマツであるということだと思います。
 しかし、トーマツは、本当に独法化について中立な立場の事業者であるといえるのかという点が、私は率直に疑問があります。なぜなら、そもそも独法化の推進を提言した都立病院経営委員会の委員に、トーマツのヘルスケアアドバイザー副部長であった山本隆之氏が所属をしておりました。
 山本氏は、昨年八月二十二日の会議まで、その時点では副部長から部長になっておりましたけれども、委員として参加をしておりました。この山本氏が経営委員会やその検討部会で発言した内容を議事録で確認しましたところ、例えば二〇一七年十月十一日、経営委員会、今後の都立病院の経営力向上に向けた取組に関する検討部会で、独立行政法人という経営形態が一番ふさわしいというような、こういう発言など、繰り返し都立病院を独法化すべきとの立場で発言を行っている委員がこの山本氏であるということです。
 さらに、トーマツグループのホームページを見させていただきました。トーマツグループのホームページには、地方独立行政法人化支援業務の経験やノウハウを生かして公立病院などの法人化を推進していると、このように書かれております。また、独法化を支援することを仕事としていることが明記もされております。独法化の支援を仕事としている事業者に本調査を委託し、それが独法化ありきではなく公平、中立に調査がなされると果たしていえるのかと、私は非常に疑問に思っております。
 そこで伺いたいと思いますが、経営委員会の委員が勤めている事業者が入札に参加していることを病院経営本部は認識されていたのか、確認をさせていただきたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 先ほど答弁いたしましたように、当日は三者入札がございまして、その審査等を財務局の規定にのっとって行ったわけですけれども、当然、公平、公正な入札ということで、当日は、ルールに基づきまして、入札者の名前も伏せた上でヒアリング等、提案等を受けておりまして、トーマツが申し込んだかどうかというのは、結果を開くまでわかりませんでした。

○白石委員 今のご答弁で、入札時はわからなかったというふうなご答弁でした。
 だとしたら、当時、入札時も落札時も、トーマツの山本さんというのは経営委員でしたので、いつ、この方が勤めている会社が落札をしたというふうに知ったのか、私、確認したいんですけれども、いかがですか。

○船尾計画調整担当部長 先ほどご答弁いたしましたように、落札結果が平成三十年七月十一日に判明いたしましたので、その時点で私どもは判明をいたしました。

○白石委員 私、本当に、こういうふうなところを見ても、現経営委員の方が勤めている会社、トーマツが落札をして、今回調査を受託するというこの関係性から見ても、非常に疑問があると。
 しかも、落札後も経営委員でありましたので、八月二十二日の経営委員会では、都立病院の財政について、赤字が全て悪であるということではないけれども、今後この部分を改善していくというのは急務、改革が急務だと、このように山本氏は、落札後も、トーマツを肩書として経営委員として入っていて、そして、このような発言もしております。つまり独法化を急げということだと思います。
 こういう事実を通してみると、経営形態の方向性について中立性が保たれる調査になっているのかというのは、甚だ疑問にしか思えないというふうに思います。
 率直に聞きたいと思いますけれども、独法化ありきの委託調査になっているのではないでしょうか。見解を伺いたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 そもそも本委託の仕様書におきましては、業務内容を現行の業務の分析、課題分析、今後の方向性の提案、先行事例の調査などとしておりまして、特定の経営形態への移行を前提とした委託調査ではございませんでした。
 実際の報告書におきましても、地方公営企業法の全部適用、地方独立行政法人、指定管理者へのヒアリングを踏まえて、例えば、各経営形態の選択の考え方や留意点などについて整理がなされております。

○白石委員 済みません、前後してしまいますけれども、ちょっと確認をしたいんですけれども、先ほど、七月十一日までは、現経営委員であった山本氏のトーマツが入札に参加していたということも知らなかったというふうな理解でよろしいのか、そこだけ、ちょっと確認させてください。

○船尾計画調整担当部長 その時点では存じ上げませんでした。

○白石委員 さらにちょっと確認したいんですけれども、経営委員である山本氏は、この委託調査を東京都がするということも知ることはなかったということですかね。お聞きしたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 そこについては、トーマツさんが事前にわかったかどうかというのは、私どもが存じ上げるところではございません。

○白石委員 そこは山本氏じゃないとわからない、トーマツ側じゃないとわからないということでした。
 この総合評価をする中で、落札前には事業者にヒアリングもしていると思うんですけれども、そのときもトーマツだというふうなことは知らなかったということでいいんでしょうかね。確認です。

○船尾計画調整担当部長 事業者へのヒアリングにつきましては、落札後に行っております。

○白石委員 わかりました。この関係、経過については、今後もしっかりと調べさせていただきたいというふうに思いますけれども、どんなに独法化ありきじゃないというふうな趣旨で答弁を繰り返されても、先ほどもいったように、現経営委員であったトーマツの方が落札をして、しかも、ホームページでは、トーマツは独法化を支援する仕事もしているということも掲げていると。こういうふうな業者が公平、中立に、客観的にこの調査をできるのかといったら、誰がどう見ても非常に疑問を抱かざるを得ないのかなというふうに思います。
 このトーマツというのは、独法化を提言した経営委員に委員を出している、独法化の支援も仕事にしている、こういうふうなところで非常に疑問なんですけれども、ちょっと振り返ると、独法化の支援を仕事にしているトーマツの部長が都立病院経営委員会のまず委員に任命され、その経営委員会が独法化すべきと提言を取りまとめる、その提言がもとになって行われる調査業務をトーマツが請け負う。こうした構図にも、私、率直に疑問を抱くというふうに思います。
 さらに、調査の仕方や報告書の内容も疑問を抱かざるを得ないというふうに思うんです。先ほど来から、独法化ありきじゃないよ、前提はなっていないよというふうなことは答弁もされておりました。では、実際、調査の仕方、それから報告書の中身というのは、どういうふうなやり方や、そして聞き方も含めてですけれども、やっていたのかということを、報告書ももらいましたので、見ました。
 例えば都立病院のヒアリング項目については、できなかったこと、不満が出ていることなど、今の経営形態の問題点ばかりを聞いております。中でも、柔軟な人員配置が難しい中でとか、兼業、兼職の要件がネックとなっている中でなど、今の状態は問題がある前提とつけた上で質問をしております。しかし、独法化した病院への質問は、そういうふうにはなっていないんですね。
 加えて、委託調査の仕様書を見させていただきました。経営形態を変えた病院しか調査対象にしておりません。独法化など経営形態の見直しを検討したけれども、変更しないままにしている、この病院は調査の対象から外すことが前提と、仕様書でもこのようにされております。経営形態を変えることが前提となっているということは、仕様書から見ても、思わざるを得ないなというふうに思います。
 しかも、委託調査の報告書では、行政的医療の提供については一ページしか記載をされておりません。独法化した病院の状況についての内容も、地方独立行政法人化では安定的に提供されていたと一言で終わっております。都民にどのような医療を提供する必要があるかなどの、都民にとって最も重要なこの視点が極めて少なくなっていると思います。
 なぜそういうふうな調査となっているのか、理由を具体的に伺いたいと思います。

○船尾計画調整担当部長 そもそも本委託の出発点は、都立病院新改革実行プラン二〇一八でございました。その実行プラン二〇一八では、行政的医療の安定的かつ継続的な提供などの都立病院が果たすべき役割ですとか、その具体的な取り組み内容、今後の方向性などを示したものでございます。
 そして、本委託は、そうした内容を具体化するに当たっての都立病院の経営形態のあり方の検証につきまして、公認会計士や医業経営コンサルタントなどの専門家の知見を活用した支援を受けることが目的になってございました。

○白石委員 つまり、プランで都立病院の果たすべき役割などを示していて、それを具体化するためにどうするかということを調査する、このようなことだと思いますね。
 実際に報告書を見ても、プランが掲げている六つの戦略のうち、組織体制に関するところを重点的に検討する、このように報告書ではなっております。
 医療の内容についての部分が、やはりこの六つの中の二つしかないんですね。重点的にするところは。先ほどもいいましたけれども、六つのうち、組織体制に関するところだけは重点的に検討しますよと、はっきりと報告書に書いております。そして、医療の内容については、この部分が軽視をされているのは、こういうところから見ても明らかである、このように思っております。
 また、経営形態が変われば、これまで果たしていた都立病院の役割や、都民が必要とする医療の提供に重大な影響を及ぼすと思います。例えば、独法化した滋賀県大津市民病院の実態です。
 経済的困難を抱える妊産婦のための入院助産制度が利用できる市内で唯一の助産施設でありました。しかし、この六月から分娩の取り扱いが休止をされました。このことについて、記者会見でも新聞記者からも問い合わせがあって、そして、その記者会見の場でのやりとりですけれども、市長は何といったか。市長は、独法化したから法人が決めることと、他人事のような対応が記者会見のやりとりの中でやられております。
 このように、現実に公的な病院が果たしている役割が切り下げられているということなんですね。
 ほかにも、宮城県では循環器・呼吸器病センターが廃止をされました。東京都健康長寿医療センターも、独法化に合わせて病床数が大きく削られております。
 しかし、そのような事例というのは、この報告書を幾ら見ても、一切触れられておりません。
 独法化は、人事給与制度や財務制度、予算制度など、病院の実情に応じた柔軟な設計が可能と、どの経営形態よりも評価しています。この部分の記述にも多くの疑問がありますけれども、そもそも医療提供の内容について十分な分析がされていないというのがやはり問題だなと思います。
 さらに、都民や住民の声に一切基づかず調査していることは、本調査のあり方として重大であると指摘せざるを得ません。これまで、都立病院の独法化について不安の声や心配の声が相次いでおります。中でも島しょ地域は、広尾病院など都立病院が医療のかなめとなっております。
 そこで伺いたいと思いますけれども、経営のあり方について、島しょ地域の、例えば町村議会や住民からはどういう声を聞いているのか、伺います。

○船尾計画調整担当部長 病院現場を通しまして、都民の方々からは、都立病院の独法化は決まったことなのか、あるいは都立病院はなくなるのか、また、広尾病院はどうなっていくのか、こういった問い合わせがございます。
 また、一部の島しょの議会では、独法化が島民への医療サービス低下につながる旨の質疑ですとか、あるいは、島民の不安が募っているため、広尾病院の存続を求めるべきとの質疑があったと承知をしております。

○白石委員 今答弁がありましたように、島しょ医療のかなめとなる都立広尾病院などの経営形態が独法化などに変わってしまえば、これまでの行政的医療の位置づけが切り下げられてしまうのではないかという声が町村議会や島民の方々から上がっている、こういうふうな答弁でございました。
 先ほども取り上げたように、現実に、独法化により経営が優先とされ、公的な役割や医療が切り下げられているからこそ、こういう声が実際に、独法化にかかわって、経営のあり方にかかわって、島民の方々や、また町村議会のところでも質疑が行われているというのが現実であるというふうに思います。
 しかし、こういう声に対しての視点というのは、委託調査の報告書を何度も見ましたけれども、一切ありませんでした。これまでの質疑でも明らかなように、これは独法化ありきでつくられている調査であると、やっぱりいわざるを得ません。今後の検討材料にするなど、断じてこれを許すわけにはいかない。
 ちなみに、今年度も、同じく委託調査の予算が一・六億円計上されております。この三十年度、昨年度の委託調査の経営のあり方を見ても、非常に偏った委託調査で、こういうことを、この調査を材料にして、今後、都立病院の経営のあり方の参考にしていく、考えていくということなど、断じてこんな偏った調査を使うわけにはいかせないということを改めて強く指摘しておきたいというふうに思います。
 そして、最後にですが、都立病院への一般会計からの繰入金について質問をしたいと思います。
 一般会計からの繰り入れについては、本日の委員会にも、資料要求をして提出されております。これは二ページに入っていますので、見ていただければというふうに思います。見ていただければわかりますけれども、平成三十年度における都立病院への一般会計からの繰り入れは約三百八十億円となっております。
 そこで、この三百八十億円の内訳を具体的に伺います。

○児玉経営企画部長 平成三十年度決算における一般会計繰入金の主な内訳につきましては、小児精神医療を含む精神科病院の運営に要する経費が約九十八億円、救急医療に要する経費が約六十五億円、周産期医療、小児医療に要する経費が約六十七億円、がん医療に要する経費が約五十二億円、難病、膠原病医療に要する経費が約四十七億円、感染症、結核医療に要する経費が約五億円、その他、エイズ医療、障害者歯科等に要する経費が約四十四億円でございます。

○白石委員 今の答弁でも明らかなように、繰入金の内訳というのを見れば一目瞭然です。精神医療や周産期、小児医療など、民間では不採算となり、担い切れない医療ばかりです。つまり、都立病院が公的に保障しなければならないとしている医療を確保することを目的として繰り入れされているのが、この約三百八十億円の一般会計からの繰入金だということは明らかです。
 改めて答弁を求めたいと思いますけれども、都として、この一般会計の繰り入れは赤字の穴埋めで繰り入れているお金だと、このような認識なのか、伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 一般会計繰入金は、都立病院の基本的役割であり、採算の確保が困難な行政的医療を提供するための不可欠な経費として、地方公営企業法などに基づき、一定のルールを定め算定を行っており、副委員長がおっしゃる赤字の穴埋め、いわゆる赤字補填というものではないと認識しております。

○白石委員 明確な答弁でした。赤字の補填ではないという答弁でございました。繰り返しいうまでもありませんけれども、繰入金は赤字の補填じゃないんです。公的に提供されなければならない医療のための繰入金であり、必要不可欠な繰入金だということなんです。
 しかし、これまで一般会計の繰入金について、毎年約四百億円もの赤字だとか、都立病院は慢性的な赤字体質などと、一般会計からの繰入金をあたかも問題であるかのような、このような論調がたびたび都議会でも出されております。そういう論に基づいて、繰入金の削減や抑制をしようとすることは、結局、精神医療であったり、周産期医療、小児医療など、皆さんがいう行政的医療を切り下げるということになります。ましてや繰入金の削減を目的にして行政的医療の範囲を狭めるような見直しというようなことは、財政効率優先で、都民に保障するべき医療を切り捨てるという意味になります。
 私は、こういうような論調、そして、見直せとか抑制だとか、こういうことには断固抗議をしたいというふうに思います。この一般会計からの繰り入れが切り下げられれば、民間では担い切れない不採算の医療である、不採算医療、行政的医療がどんどんどんどん切り下げられるということになるんです。
 都民の医療を受ける権利、そして、公立病院としてこれまで果たしてきた役割をさらに発揮していくためには、やはり、皆さんも頑張っていただきたいと思いますけれども、しっかりとこの一般会計の繰り入れ、私は、抑制とか見直しではなく、拡充に今こそ踏み切るべきだというふうに思います。
 今回の質疑を通して、独法化ありきで進めている実態、そして、赤字論の誤りについて明らかになりました。都民の医療を支えている都立病院は、これからますます重要性が高まるとともに、都民の医療を受ける権利という視点からも重要だというふうに思います。その都立病院を都立直営から切り離すための調査や、そして、そのような論調などは断固認めないということを強く申し述べまして、質問を終わりたいというふうに思います。

○宮瀬委員 では、終盤ですが、よろしくお願いいたします。
 私、ちょっと議事録を見たんですけれども、二〇一四年の十月ぐらいから、災害時の病院のあり方についてずっと関心を持って、議会でも、さきの代表質問でも、災害拠点連携病院、そちらの方がほとんど備蓄燃料がなくて、半数ぐらいが一日もたずに病院の機能を終えてしまうといったことを質疑で取り上げさせていただきました。都の方でも、災害拠点連携病院の非常用電源基準を具体化していくということで、検討部会も動きまして、順次動いていっているのかなと思っております。
 そんな中で、先ほど小松委員からのお話もありましたが、二〇一一年三月には東日本大震災、一六年には熊本地震、こちらでは、病院と災害というテーマで申し上げますと、東日本のときは、岩手、宮城、福島の災害拠点病院の機能がとまってしまった、熊本地震の際は、市民病院が三百十名の入院患者全員に転院や退院を求めざるを得ない状況だったと。大阪北部、二〇一八年六月でありますが、吹田市の国立循環器病研究センターが自家発電機が使えなかったということでございます。大混乱だったと。
 今回、二〇一九年九月九日の台風十五号では、千葉県大停電。一部では十日以上も電気が通電していなかったと。調べましたら、災害拠点二十六カ所のうち二カ所で停電が発生したそうでございます。
 こういった状況の中で、水害ということで今回資料要求をさせていただきました。過去、福祉保健局に、災害拠点病院に関してでありますけれども、自家発電設備がどれぐらい地下にあって、どれぐらいの燃料があるんですかということで確認をとったことがございます。今、八十二ですが、当時は八十の災害拠点病院で、モーターが地下にあるのは四十五だそうでございます。その中で、浸水想定がないものが三十七、実際に浸水してしまいそうなところが八カ所あるといったことが資料要求でわかっているわけでございます。
 その中で、都立病院をつかさどる皆様にお伺いしたいんですけれども、建設局と下水道局による浸水予想区域図に入っている病院というのはどこなのでしょうか。先ほど小松副委員長の方からは江東五区というお話がありましたが、江東五区に限らず、どこか教えてください。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を示します洪水浸水想定区域図におきまして、病院建物自体に浸水域が表示されているのは墨東病院のみでございます。
 また、現時点で想定し得る最大規模の降雨を想定し、河川だけでなく、下水道による浸水をあわせて表示する区域図である浸水予想区域図において、病院建物自体に浸水域が表示されているのは、広尾病院、大塚病院、墨東病院でございます。
 なお、この浸水予想区域図は、現在、降雨量を見直した上で、一部改定作業中とのことでございます。

○宮瀬委員 私は、この質疑に先立ちまして資料要求した九ページ目を見て、恐らく浸水するであろう地域は江東五区の墨東病院だけだろうと思っていたんですが、今初めて、答弁で、広尾と大塚もその範囲に入っているといったことがわかりました。
 江東五区に限らず聞かせていただいたということはどういうことかと申し上げますと、激甚化する洪水の中で、本当に今の体制で病院のあり方はいいのかといったことを説いているわけであります。この表を見ますと、電源が地下にあるのは大塚と墨東でありまして、広尾の電源はまだ屋上にあるケースが多いので、主に大塚と墨東について議論をさせていただければと思います。
 墨東の方は非常用発電が地下にあるということでありますが、実際に地下一階と表記がございます。どのような対策をしてきたのかといったことをお伺いしたいと思いますが、先ほどご答弁をちゃんと聞いていましたので、私の方から申し上げますと、さまざまな浸水対策をして、地盤を二メートルかさ上げすることを基本として、スロープの入り口に防潮板を設置しましたよと。
 私も現場を見に行って、ちょっと高台に、二メートルぐらい土を盛った上に病院が建っていて、地下に行くスロープのところに止水板があったと。また、棟があって、三棟建っていたんですが、屋上に置いてあるものもありますよといったことであります。
 私、現場を見に行って、ちょっとパネルを使いたいんですが、本部長はご存じだと思いますが、これが墨東病院、三棟、三つ並んでいまして、病棟、診療棟、新棟ということで、これはいただいたパンフレットの方からコピーしたものですが、実際に非常用発電が地下にあるのは、この真ん中の診療棟の地下ですよと。今、対策をお伺いして、新棟の上に非常用発電があるので、ここの棟は大丈夫ですということでありましたが、実際にこの三棟は地下でつながっているといった現場を見ました。
 つまり、ここ一棟、水が地下へ入ってしまいますと、診療棟だけではなくて、新棟が水浸しになると、診療棟、発電機がある地下もだめになっちゃうといったことがわかりました。
 そこで、止水対応をしているところは診療棟だったんですが、新棟の方を見てきましたら、横にこのように、道路に面しているところに排気口がありまして、二メートルかさ上げした奥に病院があるわけなんですけれども、つまり、これは現場で確認しましたが、この排気口は、新棟という止水対応の板がないところの建物の横の排気口ですが、ここに水が入ってしまったら、ちょっと議会で入ってしまったらというのもあれですが、新棟の地下に水が入るんじゃないですかとお伺いしましたら、水が入りますと。
 新棟の地下の扉をまた見ましたら……(パネルを示す)ちょっと慌ただしくて済みません。ここの新棟の植木、排気口があって、そこに水が入ったらここへ入ってしまいますよと、新棟の地下に水。ここの診療棟とつなぐ扉は普通の扉でありまして、防水対応がしていないと。
 つまり、前置きは長くなりましたが、止水板を置いている、二メートルといっても、地上すぐ横にある排気口のところから水が入れば、実際に診療棟の下にある非発の電源が水にぬれてしまうといった課題を見つけました。
 またもう一つ、業務委託を受けている人から教えていただきましたが、これが外にある配電盤。ここも病院の普通の道路のところですね。ほぼ道路です。ここから二メートルかさ上げしてあるところに病院があるわけなんですが、この配電盤の高さが、大体、二メートルより低いところにあると思います。ここの配電盤が水にぬれてしまうと、非常用発電機は動くんですかと聞きましたら、動きませんといっておりました。
 つまり、現場で現地、現物を確認していきますと、確かに、地下駐車場に行く真ん中の棟の止水対応はしているんですけれども、横の新棟の水が入ってしまうような排気施設、また、ここの外にある配電盤も、二メートル以下でもう動かなくなっちゃう、そういったことが明らかになりました。
 やっぱり今後、答弁にありました、二メートルのものから三メートルの対応にしていきますよといった言葉ではなくて、トータルで対応していかなきゃいけないと思いますが、見解を伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 今、委員からのご指摘と重なる部分もあります。また、先ほどのご答弁とも重なる部分がありますが、それについてはご容赦を賜ればと思います。
 今、委員の方から、全体を通したというご指摘をいただきました。これは、すなわち新棟、旧棟、そういったものを全体を通した対策をというご指摘というふうに捉えてございます。その点なんですが、先ほどのご答弁と重なります。一応、答弁させていただければと思います。
 昨年の西日本豪雨を契機といたしまして実施いたしました全庁的な緊急点検の結果、ハザードマップ上の墨東病院の最大浸水深の想定が〇・五メートルから三メートル未満ということを踏まえて、昨年度から、これまで墨東病院で講じてまいった対策を上回る浸水深三メートルに対応できるように、非常用発電装置の具体的な対策に向けた検討に着手したところでございます。
 その上でなんですが、地下への浸水を防ぐために、新棟、旧棟、建物全体の開口部へ防水壁を設置することとしたものでございます。まず、その点については答弁をさせていただければと思います。
 その上でなんですが、今現在でございます。建物開口部への防水壁の設置の対策についてですが、個別の課題というのは、現在実施している設計の中で整理してまいりたいというふうに考えてございます。
 例えば、今、委員からご指摘がありました新棟横の給排気口につきましては、給排気口の部分を浸水深より高くかさ増しを行うですとか、あるいは非常用発電装置のポンプの制御盤は移設するといったところ、それについては、一つ一つ丁寧に、その設計の中でやっていくということで考えてございます。
 以上でございます。

○宮瀬委員 ご答弁ありがとうございます。二メートルで対応してきましたよといったことが今まであって、でも、二メートルの対応でよく見たら、二メートルでも対応できていない箇所があったと。三メートルの対応をさらにしていくという中でも、しっかりとその周辺のところをちゃんとフォローしなければ、二メートル、三メートルどころじゃありませんよといったお話でありました。
 簡潔にいって、対応してくれると思っていいのでしょうか。済みません、もう一回、答弁いただいていいですか。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 先ほど来、ご答弁申し上げたとおり、墨東病院、地下への浸水を防ぐために、旧棟、新棟、建物全体の開口部へ防水壁を設置することとして、今現在、具体的な設計業務に入っておるところでございます。

○宮瀬委員 ありがとうございます。これだけいえば、もう十分かと思いますので、また何年かたったら現場を見に行きたいと思います。
 水ですので、どこからどう入ってくるかわかりません。なので、各棟をつないでいる扉を普通の扉ではなくて、ぜひ防水対応の扉にしていただくと、一棟に水が入ったとしても、肝心かなめの診療棟には水が入らない、そういったことにもなるかなと、現場を見て思いますので、ぜひ現場に合った、最悪のことを想定した浸水対策にしていただきたいと思います。
 また、次の病院でありますが、墨東病院のお話をさせていただきましたが、冒頭、ほかにももう一つあると。私も想定外でありましたが、大塚と広尾と。広尾の方は発電機が上にありますので、まだ大丈夫だとは思いますが、位置に関して、大塚病院は非発が地下二階にあるわけであります。
 対策が必要だと思いますが、見解を伺います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 先ほどご答弁申し上げました、現時点で想定し得る最大規模の降雨を想定し、河川だけでなく、下水道による浸水をあわせて表示する区域図でございます浸水予想区域図におきまして、大塚病院の建物自体に浸水域が表示されておるという状況でございます。
 大塚病院では、神田川等が氾濫した場合に浸水が想定される、今申し上げました神田川流域の浸水予想区域図によりますと、敷地の一部が最大浸水深〇・一メートル以上〇・五メートル未満に該当してございます。病院におきましては、地下三階部分に一千百三十五立方メートルの雨水貯留槽を有してございます。浸水予想区域図におきます最大浸水時の浸水量は、先ほどの一千百三十五立方メートルに対しまして一千百立方メートルと想定されることから、雨水貯留槽で貯留は可能であると考えてございます。
 引き続き、さらなる対策についての検討を行ってまいります。

○宮瀬委員 病院の地下にタンクがあるので大丈夫だということでありますが、私、墨東病院でも見たんですが、止水板があるんですけれども、その入り口、病院のエントランスは、普通に人が出入りしているところもあって、人が入れるわけですよ。止水板と大体同じぐらいの高さ。もしそこから水が入ったら、またエントランスから診療棟の地下まで水が入ってしまう。つまり、入り口から非常用発電の地下に通じていましたので、私、通りまして、やっぱり水際といいますか、入り口の対応も必要だと思います。
 これは通告はちょっとしていませんが、簡単なことなので確認したいんですが、大塚病院では、土のうや止水板といったものは置いてあるのでしょうか。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 土のうについては、あらかじめ設けてございます。

○宮瀬委員 いろんな対応の仕方があると思いますので、じゃ、その土のうの数が足りているのか、実際にほかの対応が必要なのか、いろいろ検討していただきたいと思っております。
 次に、今回の資料要求をしている中で九ページを見ていただきますと、今は位置の件で質疑をさせていただきましたが、次は、非常用発電機が稼働する確保日数について申し上げたいと思います。
 私、かねがね、この問題をずっと取り上げてきていまして、病院が本当に三日の燃料の備蓄でいいのかといった問題意識であります。
 実際、東日本大震災のことをちょっと調査いたしますと、被災三県、四百六十八、小児科医療関係に対しまして東北大学の先生がアンケート調査をとったところによりますと、電気が使えなくなった日数は三・八日だそうでございます。宮城県に限っては六日といわれておりまして、実際に電力が喪失しているのが六日あるわけであります。その教訓を受けて、三県平均で五・四日間、宮城県では六・二日間の燃料の備蓄の分量をふやしたわけであります。
 被災に遭った当事者の県が、備蓄の分量を現実に合わせてふやしていまして、どうして東京都は三日のままなんだといった問題意識であります。とりわけ広尾に関しましては、都内の中の都心部唯一の基幹災害拠点病院でありますが、これは三・〇日間しかございません。
 しかし、大塚は、やはり必要だと思ったんでしょう。五・二日間もあります。私、五年前に災害拠点全病院にファクスでアンケートをとりまして、大塚病院、実はそのときの備蓄の分量は三日です。あれから五年たって、大塚の方は、二・二日間、分量をふやしているわけであります。
 そういった状況の中で、このままでは大変だと思っておりまして、来なかったらどうする、なくなっちゃったらどうする。今、東京都では、石油業協同組合から回してもらうということになっていますが、それが来なかったらどうするんだという問題意識でございます。
 広尾に関しては建てかえの計画があるわけであります。決算の質疑でありますので、これ以上は控えますが、ぜひ建てかえの際には、備蓄の燃料、三日以上を確保した設計を組んでいただきたいと思います。
 ちなみに、本部長、今回の台風十五号、病院が動かなくなった千葉県の病院の数をご存じでしょうか。千葉県、七十一の病院が実際に停電が発生いたしまして、その七十一の病院の停電が復旧したのが九月二十三日です。つまり、たった横のお隣の千葉県が、二週間、病院の電力をロスしたままであったわけでありますから、これはあえて意見としておりますので、これを酌んでいただきたいと思っております。
 次のテーマであります。
 今回、資料要求の際に患者満足度というのをとらせていただいております。アンケートでございまして、一〇ページに資料要求をさせていただきまして、入院、外来ともに年度ごとに、来て使っていただいて、入院していただいてどうだったかという、いわゆる顧客満足度に近いものだと思っております。
 その中で不満に思っている方は、一体、一番何に不満を持っているのか、お伺いいたします。

○西川サービス推進部長 患者満足度アンケートにおきましては、外来の患者さんに対しまして、あなたは全体としてこの病院に満足をしていますかという質問を設けておりまして、満足、ほぼ満足、普通、やや不満足、不満足の五つの選択肢で回答していただいております。
 平成三十年度に実施したアンケートにおきましては、やや不満足または不満足を選択した外来患者の中では、その理由といたしまして、診療までの待ち時間を挙げる人が最も多く、その割合は三八・四%でございました。

○宮瀬委員 ありがとうございます。やっぱり待ち時間といった、いろいろ待つテーマは多いんですが、会計を待つ、診療を待つ。あとは受付の対応、看護師、医師の対応、プライバシー配慮等ありますが、診療待ちが一番多いと。
 私もこれは都政だけの問題ではないと思いますが、ぐあいの悪い方が病院に自分の足で行って、ぐあいが悪いのに二時間待って、診察は五分、十分で終わる。全てではありませんが、そういったケースもあると思っております。
 これはちょっとおかしなことではないかなと思っておりまして、都立病院に関しましては、ほかの民間病院とやはり性質も違いますので、工夫が必要ではないかなと思っております。
 その前提といたしまして、都立病院における外来の診察待ち時間は、平均でどれぐらいなのでしょうか。

○西川サービス推進部長 各都立病院におきましては、外来診察室の診療科ごとの割り振りを見直すことを目的といたしまして、独自に診療待ち時間の調査を実施している事例はございます。
 この調査は、病院によって集計方法が異なっており、現在、統一した調査方法により都立病院全体の平均診察の待ち時間を把握することは行っておりません。

○宮瀬委員 やっぱり、私、これは課題だと思っていまして、マーケティング調査をすると、診療待ちが一番の課題だ、不満なんですと。それに対して、じゃ、どれぐらい待っているのかという数字を皆さんがわかっていないといったことは、努力をしたらどれぐらい効果があって、何分減ったのか、また、そういったPDCAサイクルが数字で把握できないじゃないですか。
 しかも、じゃ、これは意味のない数字かというと、そうではありませんで、ほかの病院、神経病院は外来がないと聞いておりますので、七病院中五病院、大塚と墨東病院以外の五病院は待ち時間をちゃんととっている。しかし、東京都は、病院経営本部は把握していませんといったものはおかしいと思っております。
 必要だから五病院はちゃんととっていて、病院経営本部としてちゃんと把握すべきだと思っておりますが、見解を伺います。

○西川サービス推進部長 先ほどのご答弁と重なりますけれども、病院が個別に調査を行っている事例はございますが、病院が提供する医療内容や各診療科の特性によりまして、診察の待ち時間には違いが生じるとともに、病院によって診察待ち時間の集計方法が異なります。
 こうしたことから、病院の意見も聞きながら、各病院の調査内容を把握することを通じて課題を整理するなど、検討を行います。

○宮瀬委員 検討していただけるということで、ぜひ待ち時間を今後ベンチマークの一つとして、その数字がいい悪いの前に、正確に今の現状を把握していただきたいと思っております。
 次に、診察待ち時間のことがテーマでありますが、では、どのような具体的な取り組みを今までしてきたのか、決算でありますので、改めてお伺いしたいと思います。

○西川サービス推進部長 都立病院におきましては、これまでも、診察予約制度の導入や電子カルテシステムの導入、医療クラークの配置による医師の負担軽減、診察前に採血やレントゲンの検査を実施することなどにより、診察の待ち時間の短縮に努めてまいりました。
 また、待ち時間を有効に活用していただくために、一部の病院では患者呼び出し装置を、その他の病院では診察順の電子掲示、表示板を導入して診察を案内しておりまして、さらに、医療に関する情報を提供するスペースの設置などの取り組みを進めてきております。

○宮瀬委員 具体的には、呼び出し装置ですね、私もほかの病院で見たことがありますが、患者さんにポケベルみたいなものを渡して、呼ばれる何組か前に呼び出しをかけるといったことだと思います。それが七病院中三病院、電子掲示板は四病院だと聞いております。ぜひ、いいものは共有していただいて、横に展開していただきたいと思っております。
 都立病院に関しまして最後の質問となりますが、実際に、一つ時間の短縮ということでは、ICTの活用ということがテーマになるかと思います。実際にICT化をどのように活用しているのか伺いたいと思いますが、私の方で、ちょっとドコモさんに話を聞きに行ってまいりました。
 東京都では、5Gだと最近いわれていまして、ドコモさんにアポイントをとってお話を聞きましたら、実際に和歌山県立医科大の方から話を、先方から受けたそうで、過疎化や地方の医師が不足しているということで、ドコモに話があったそうでございます。
 実際に初めて試験をやったそうでありまして、患者さんの健診、心疾患の八十代の男性を診察したと。4Kの画像で、問題なく5Gによる大容量伝送が可能であり、無事成功したと聞いております。
 そういった状況の中で、5G、こういった技術を今後どのように活用していくかも、決算なのに恐縮ですが、教えていただければと思います。

○西川サービス推進部長 都立病院におきましては、現在の多摩総合医療センターである旧府中病院において電子カルテシステムを平成十五年度に導入いたしまして、順次、全病院への導入を行ってまいりました。
 このことにより、レントゲンや血液検査などの検査結果が電子カルテの画面上に表示され、患者が画面を見ながら医師からわかりやすい説明を受けられるようになりました。
 また、医師や看護師が入力した情報を、薬剤やリハビリなど院内の他の部門においても速やかに共有できるようになり、チーム医療の充実に結びついております。
 次に、5Gについてですが、5Gは、さまざまな分野での活用が期待される通信技術でございまして、医療分野においては、超高速、低遅延で通信可能な5Gの特性を生かして、遠隔医療などでの実用化が検討されているものと認識をしております。
 今後は、企業等による研究開発の状況も注視しながら、医療の提供や患者の療養環境の整備などにどのように利用が可能なのか、検討してまいります。

○宮瀬委員 和歌山県立医科大学ができて、東京都立の病院ができないと私は思えませんので、ぜひお願いをしたいと思います。
 意見を申し上げますが、島しょ地域、離島・山間地医療の概要ということで福祉保健局が出しているデータによりますと、先ほど古城委員からもお話がありましたが、島しょ地域の方が、平成二十七年度で全部で二百六十二名、内地に搬送されているそうでございます。そのうち広尾が二百名、多摩総合が二十四名、その他都立が十四名ということで、ちょっと割り算をしましたら、いわゆる東京都の島しょ地域で都立病院に輸送されてかかっている方が、実に二百三十八名、全体の九割であります。ぜひ、まさに遠隔医療が求められている地域で、ご家族の方もお見舞いや付き添いは大変だと思いますので、そういった島にある診療所と都立病院で最先端技術を活用していただきたいと思っております。
 最後のテーマでありますが、入退院について、ちょっと軽く聞きたいと思います。
 実際、地元でよくいわれるのが、病気で入院したけれども、すぐ出ていけといわれちゃうと。まだ病院にいたいという表現もちょっとおかしいんですが、まだ病院にいたいのに、すぐ出ていけといわれてしまうその理由について、先ほどちょっと質疑も聞いていましたけれども、改めてお願いいたします。

○西川サービス推進部長 急速な高齢化の進展を踏まえ、国におきましては、高齢者が可能な限り住みなれた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで送ることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進し、病院完結型の医療から地域完結型の医療へと転換を図っております。
 このため、限られた医療資源を効果的かつ効率的に活用する観点から、急性期から回復期、慢性期まで、患者がその状態に見合った医療サービスを受けられるよう、医療機能の分化と連携の取り組みを推進しております。
 都立病院は、主として急性期の患者の診療を担っておりまして、地域の医療機関等との役割分担と密接な連携のもと、診療所などから患者の紹介を受けるとともに、急性期を脱した場合は、紹介元の医療機関への返送や地域の医療機関への逆紹介を行っております。

○宮瀬委員 となりますと、都立病院では入院期間というのはどれぐらいの日数なのか、ちょっと数字を教えていただければと思います。

○西川サービス推進部長 平成三十年度におけます都立病院全体の平均在院日数は十五・三日でございまして、このうち神経病院、小児総合医療センター及び松沢病院を除いた五つの総合病院については十二・四日でございます。

○宮瀬委員 私のところにもよく相談があるんですけれども、転院先が見つからないのに、早く退院してほしい、退院してほしいといわれて困ってしまうと。
 なので、そういった転院先が見つからない場合は、実際どうなってしまうのか。また、病院が見つからないまま退院させたという事例はあるのでしょうか。念のため、お伺いいたします。

○西川サービス推進部長 急性期を脱した患者の転院に当たりましては、都立病院各病院の医療ソーシャルワーカーや退院調整担当看護師が中心となりまして、患者の病状はもとより、家族の希望や地域にある医療機関等の状況なども踏まえまして転院先を確保した上で、患者に転院をしていただいております。
 したがいまして、転院が必要であるにもかかわらず、転院先を確保せずに退院させるといった事例はございません。

○宮瀬委員 当たり前だと思いますが、今のご答弁、ありがとうございます。次の病院が見つからないんだという方も私のところに結構来ますので、ぜひ丁寧な対応をしていただきたいと思います。
 最後に意見を申し上げますが、今回、質疑に当たりまして、資料要求の中に都立病院における臨床研究の実績の推移ということで聞かせていただきました。平成三十年度は二百六十四件、臨床研究というものを都立病院がやっている。
 これは、さきの予算特別委員会で、私から小池知事に対しまして一つのご提案をさせていただきました。先ほどほかの委員の方々から質疑もございましたが、がんによる死者をどうやってなくしていくのかが大きなテーマだと、会派関係なく思っております。
 私は、国立がん研究センターに大分通いまして、血液一滴で十三種類のがんが超早期にわかる取り組みが、今、臨床研究をまさに行い、課題に直面しているところでございます。そこで、さきの予算特別委員会の中では、血液一滴による十三種類のがんの超早期発見といった絞ったテーマで答弁はいただきませんでしたが、都立病院は、さまざまな臨床研究に協力をして、医療の発展に尽くしていくという知事のご答弁をいただきました。ぜひ、血液一滴で十三種類のがんがわかる取り組みを都立病院の臨床研究の共同研究の一つにしていただきたいと、私は本部長にお願いをしたいと思います。
 なぜか。膵臓がんというのは、先ほど古城委員からもありましたが、見つかるとほぼ手おくれの状態で、わかりません。しかし、血液一滴の場合は、その率が九九%、超早期でわかることが実際にわかっております。
 このように、都民、年間三万四千人の方ががんで亡くなっておりまして、一日当たり百人の方が命を落としております。なので、私は、ぜひ都立病院と連携をしてやっていただきたい。
 開発責任者の国立がん研究センターの先生がつくったパワーポイントなんですけれども、ぜひ東京都と都立病院とがん研究センターが三者になって、この新しい新技術を都民の皆さんにやっていきたいんだと。これは、先生、血液一滴で十三種類のがんが超早期にわかる研究責任者の方、国がんの方がつくった資料であります。
 しかし、今回の質疑に当たりまして、いろいろヒアリングをさせていただきますと、今、都立病院ではすぐにできませんと。なぜかというと、この臨床研究は都立病院の医師じゃないとできないんです、こういった外部の先生と協力してやるといったことは基本はやりませんといった内部の資料をいただきました。
 本来であれば、都民の皆さんのために、いいものはほかの医師と連携をして、ぜひ、血液一滴で十三種類のがんがわかる、この仕組みは、もう世に出る間近のところまで来ておりますので、立場や今までの仕組みにとらわれず、できない理由ではなく、一緒になってできる理由を模索してやっていきたいと私は強くいわせていただきまして、質問を終わります。

○奥澤委員 きょうの最後の質問になります。さまざまな観点から、きょうも質問がされているところですけれども、私の方から、地域の医療連携の体制という観点、それから、テクノロジーをどう活用していくのかという観点、そして、経営をどうしていくのかという観点の、主に大きく三点の方向性の質問をさせていただきたいというふうに思います。
 都立病院新改革実行プラン二〇一八によりますと、都立病院の役割は、行政的医療の安定的かつ継続的な提供、それと地域医療の充実への貢献の二点に集約をされております。そこには、数値であらわされるもの、そして、必ずしも数値であらわせないものがあることを念頭に置いて質疑をさせていただきたいとは思っておりますけれども、今いった二つの役割を将来にわたって果たしていくためには、東京の医療課題に対して、今、宮瀬委員からもすばらしいご指摘というか、ご提言がありましたけれども、積極的に挑戦していく姿勢が求められております。
 一方で、そういった挑戦をしていこうと思えば、財政的な余力がなければ、その創意工夫もできないというふうにも考えておりますので、そういった考えを持っているという前提で、この後の質疑をさせていただければと思います。
 まず、地域医療の充実への貢献についてお伺いします。
 今後の高齢化の進展を見据えて平成二十八年に策定した東京都地域医療構想の実現に向けて、それぞれの医療機関の専門的知見を生かして、モデル的な取り組みをそれぞれの都立病院が推進しているということです。
 まず、小児医療における地域医療体制についてお伺いします。
 患者である子供たちが治療や医療的ケアを受けながら学習を受けられる環境を整備するのみならず、芸術やスポーツ、あるいは地域の方々と交流するような活動、そういったさまざまな場面に接することができるような連携体制を構築できることが理想であると私は考えています。そのためには、病院や学校のみならず、多様な主体が連携を図っていく必要があると考えます。
 そこで、小児総合医療センターにおけるChildサポート東京について、取り組み状況と課題についてお伺いしたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 医療技術の進歩等に伴い、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器等を使用し、また、経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児が増加傾向にあり、地域で安心して暮らしていける取り組みが求められてございます。また、保護者において、レスパイトやデイケア等のニーズも高まっておりますが、多摩地域ではこうした医療資源が特に不足しており、患者家族に負担がかかってございます。
 こうした背景を踏まえまして、小児総合医療センターでは、小児在宅医療におけます包括的なケア体制の構築に向けて、保健、福祉、教育、行政等の関係機関が連携し、地域で支える体制の構築に寄与するための取り組みを始めたところでございます。
 平成三十年度は、地域の人材育成や技術の向上を支援するため、小児総合医療センターの専門看護師や認定看護師が人工呼吸器を装着した患者に対するケアの実技研修を二回実施し、地域の医療機関等から五十一名が参加してございます。
 また、近隣自治体や医療機関との連携に向けまして、小児総合医療センターの担当者が四自治体、十病院を訪問し、連携体制の構築に当たっての課題を抽出するなどの取り組みを開始してございます。
 今後、地域におきまして、国が定めた指針に基づき、関係機関及び当事者団体等から構成される協議の場が設置されていくことになりますが、小児総合医療センターは、この場への積極的な参画を図ることでも、医療的ケア児の地域生活支援の向上に貢献してまいります。

○奥澤委員 私の知人の話になりますけれども、幼くして難病を患って、その治療のため入退院を繰り返すというようなことになって、学習以上に、友人あるいは地域の方々とのコミュニケーションに不安を覚えたというお話を聞いております。子供たちの大事な成長期にどのような環境を整備していけるのか、これは大人の我々が知恵を絞らなければならないというふうに考えますので、今後の取り組みに期待をしております。
 次に、松沢病院の精神医療について伺います。
 地域に開かれた精神医療を提供するということで、松沢版オープンホスピタルを確立すべく取り組んでいるとのことですけれども、オープンホスピタルの前提にあるのは、都立病院と地域の病院、あるいは医師と医師、医師と患者、地域と病院といった、さまざまな主体の信頼関係であるというふうに考えます。
 信頼関係というのは目に見えないものですけれども、例えば機器の共同利用については、コミュニケーションがうまくいっているからこそ可能なことだと考えておりまして、両者の信頼関係をあらわす尺度にもなると考えております。
 そこで、地域医療機関の機器共同利用実績と課題についてお伺いしたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 松沢病院では、地域のかかりつけ医に多くの症例に触れていただき、また、さまざまな検査機器を活用していただくことで、地域の精神科医師の技術向上に貢献できるよう取り組むとともに、精神疾患のみならず、身体疾患のみの患者についても受け入れてございます。
 平成三十年度の主な検査機器の共同利用は、MRIが四百八十一件、CTが三百七件、RIが七十三件、腹部超音波が三十四件となっております。
 RIを除くMRI、CT、腹部超音波検査につきましては、ウエブ予約や地域医療機関専用の予約枠を設けることで利便性を高める取り組みを行ってございます。
 引き続き、松沢病院の検査の質を地域に広く周知し、検査機械を幅広く提供することで、地域の精神科医師との連携をさらに深め、精神科医療水準の一層の向上に寄与するなど、地域医療提供体制の確保、充実へ貢献してまいります。

○奥澤委員 地域の医療機関とのコミュニケーションを重ねる姿勢は大変重要であると思います。地域に開かれた精神医療の第一歩ということで、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
 先日、とある新聞で、松沢病院百二十周年の特集記事で、地域に開かれた精神医療に向けた取り組みとあわせて、院長のコメントを拝読いたしました。患者が退院するのに、最大の抵抗勢力は地域だからねという言葉にはっとしました。
 都では、全ての都民の就労を応援する条例に関する基本的な考え方--こちらは産業労働局ですけれども--が示されましたけれども、働くという観点から見ても、精神障害のある方、あるいは依存症の方々、あるいは認知症の方々といった、なかなか目で見えない障害や暮らしにくさを持っている方々に対する偏見はいまだに根強い。そして、目に見えにくいからこそ、壁が確実に存在しているのだということに改めて気づかされました。
 その点、松沢病院では、地域に開かれた医療を推進するために、都民向け公開講座を積極的に実施しているようですけれども、その開催回数と参加者数、あるいは参加者アンケートでの意識変化などについてお伺いしたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 松沢病院では、患者やその家族、地域住民に対しまして、精神疾患と身体疾患の双方のテーマで公開講座を実施し、都民に対する医療や予防等に関する普及啓発を行うとともに、松沢病院自体を地域に知っていただく機会としてございます。
 平成三十年度の主な公開講座といたしましては、精神疾患関連では認知症の医療と介護、身体疾患関連では血圧と動脈硬化など、合計で九回開催しており、二十九年度と同じ回数となってございます。
 また、平成三十年度の参加者数は七百二十三人で、二十九年度と比較いたしまして二十五人増加してございます。
 参加した都民の方々からは、講師自身の家族の認知症の実例で講義していただき、認知症の家族を介護する身として大変勇気づけられたといった講義の内容に関する感想のほか、地域を巻き込んだイベントが多くなり感謝しているなど、講座の企画自体に関する感想も寄せられてございます。

○奥澤委員 今のお話、認知症の講義も行われていたということです。認知症の方々に優しいまちを目指して、今まで認知症の方々と接することのなかった地域住民の方々、そして、認知症当事者やご家族、医療、福祉関係者がたすきをつなぐRUN伴というイベントがあります。私も毎年参加させていただいておりますけれども、お互いの理解を深めるためには、やはり交流する、交わるということが最も有効だということを実感します。ぜひとも開かれた精神医療の実現に向けて、地域とのコミュニケーションをこれからも積極的に行っていただきたい、その支援をしていただくよう要望しておきます。
 続いて、神経病院における地域連携について。
 これも私の知人の話で恐縮ですけれども、難病治療においては、完治ではなく寛解、つまり、病気の症状が一時的あるいは継続的に軽減した状態、または見かけ上消滅した状態で過ごしているとのことで、ふだんは落ちついていても、いつ症状が出るかわからない不安の中で生活しているとのことでした。
 また、希少な病気の場合、その治療に当たることができる医師が少なく、地域のかかりつけ医が一時的な対応をできるような体制構築や知識の共有を図っていただくことは非常に重要であるというふうに考えています。
 神経病院では難病医療における地域移行推進モデルを展開していますが、その取り組み状況をお伺いします。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 神経病院では、難病患者が身近な地域で安心して療養を継続できるよう、地域医療機関等を支援することにより地域移行を促進する仕組みの構築に取り組んでございます。
 具体的には、地域関係機関との連携強化によります在宅移行患者のレスパイトや、急変、増悪時の受け入れ体制整備などのほか、地域の医療水準の向上に向けた医療、介護関係職員に対します技術指導など、難病患者の地域での療養生活を支援する取り組みを進めてございます。
 平成三十年度は、医師や看護師、ソーシャルワーカー等が二十四カ所の地域医療機関へ訪問して意見交換を行ったことに加えまして、地域医療機関に対するアンケート調査を実施し、二百八十六件の回答を得、在宅患者の急変、増悪時の受け入れ体制やレスパイト患者の対応、専門医等への相談体制などに関する要望や課題の抽出を行ってございます。
 また、地域の医療、介護人材の育成に向けましては、認定看護師によります在宅看護に関する出張セミナーを十回実施したことに加えまして、医師、看護師、放射線技師などが講師となり、地域の医療従事者に対して、難病医療に係る専門的かつ実践的な研修を合計で二十五回実施したところでございます。
 今後とも、地域医療機関からの要望や地域の実情等も踏まえつつ、難病患者の円滑な在宅移行に向けた具体的な取り組みを推進してまいります。

○奥澤委員 地域の関係機関に対して、神経病院が培ったノウハウを提供していく、これは重要な取り組みでございます。もちろん、患者の個人情報の取り扱いについては特段の配慮が必要なことはいうまでもありませんが、ノウハウと情報の共有がなければ地域連携は果たされません。
 その点では、円滑な地域移行の推進には地域連携パスの活用が重要と考えますけれども、活用状況と活用における課題があればお伺いしたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 地域連携クリティカルパスは、患者の診療に当たる地域の複数の医療機関があらかじめ診療内容を患者に提示することにより、患者が安心して前向きに治療を受けることができるように作成するものでございます。
 例えばALS患者は、人工呼吸器や胃瘻等の高度な医療処置を要することから、入院から在宅療養に移行し、維持していくためには、地域医療機関との円滑な連携が極めて重要でございます。このため、神経病院では、地域連携クリティカルパスを運用してございます。
 一方、神経病院で扱う疾患は希少性が高く、オーダーメードの対応が必要であるため、適用件数は少数となっておりますことから、今後は、これまで構築してきた地域医療機関等との関係性を生かしながら、地域連携クリティカルパスの普及に努める必要がございます。
 また、このALSの例のように、各難病疾患の特性、それぞれの地域の状況等を踏まえた地域移行の取り組みを進めることで、難病患者が住みなれた地域で安心して暮らすことのできる体制づくりに貢献してまいります。

○奥澤委員 一人一人の症例が異なるということで、地域連携パスの活用にも難しさがあることは理解できるところでありますけれども、ぜひこちらも積極的な取り組みを期待するところです。
 ここまで医療の地域連携についてお伺いしてきたのですけれども、お話を伺っていますと、医療機関の方々の人間関係なんかもなかなか難しかったりするようなところもあって、長年いわれながら、地域連携というのが進まずにいるのが今の日本の課題になっているのかなと思いますので、これも都立病院が行政的な医療機関として果たすべき役割の一つだということをぜひ自覚していただいた上で取り組んでいただきたいと、一言申し述べておきます。
 今、最後にお話を伺っていた神経病院なんですけれども、ロボットスーツを活用した取り組みを行っているということで、私は大変注目をしています。ロボットスーツといいますと、介護や看護の現場における力仕事をサポートするような活用は既に実用化されておりますけれども、患者さん自身が活用化することには、まだまだ慎重であるのが現状ではないかと思います。
 神経病院では、ロボットスーツの活用による先進的なリハビリテーションを実施しているとのことでありますけれども、その決算額と取り組み状況を、どちらも伺いたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 ロボットスーツを活用したリハビリテーションは、装着した患者の皮膚に電極を張りつけ、脳からの神経信号をロボットスーツが感知して、意思に沿って歩行をアシストする仕組みでございます。
 神経筋疾患であるALSや筋ジストロフィーなど八疾患について、平成二十八年四月から保険適用になっており、神経病院では、平成三十年十月から、難病患者へのロボットスーツを活用したリハビリテーションを試行的に開始してございます。その結果、平成三十年十月から三十一年三月までの半年間に、延べ患者数十名、九十二回の訓練を実施し、ノウハウを積むとともに、そのリハビリテーション効果を見定めて、今年度からの本格導入につなげたものでございます。
 また、平成三十年度の費用ですが、導入に向けてのPT等のリハビリテーションスタッフの研修受講や、二台のロボットスーツのリース代などに要した経費、約八百三十万円でございました。

○奥澤委員 本当にこの取り組みには心から期待をしているところなんですけれども、とはいえ、やはり一人一人の体に電極をつけてということで、慎重にやらなければいけない部分、あるいは冷静に状況も見なければいけないという部分もあわせて持たなければいけないと思っています。
 今お話しいただいたロボットスーツの活用による先進的なリハビリテーションですけれども、この成果と課題について、できれば利用者の方の声も含めてお伺いしたいと思います。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 ロボットスーツを活用したリハビリテーションは、ゆっくりと病気が進行する神経筋疾患により機能が低下した患者の歩行機能の改善に極めて有効であり、QOLの維持にも効果があるとされております。
 入院から退院までの間に、実施計画に基づいて、週に二から三回実施し、合計九回を限度としてワンクールとし、各クール終了時に評価を判定いたします。判定結果が良好の場合には、一カ月のインターバルをあけて繰り返しますが、不良の場合には終了となります。平成三十年十月から三十一年三月までに実施した患者の全てにおいて、判定結果は良好でございました。
 治療後の患者からは、歩行速度が上がった、歩行時のぐらつきがなくなった、椅子からの立ち上がりが楽になった、二十年ぶりに台所に立ったが疲れなかったなど、良好な治療結果を裏づける声が寄せられております。
 今後、昨年度からのロボットスーツによるリハビリテーションの検証を踏まえまして、適用可能な患者の抽出や関係医療機関等への積極的な広報を行うことにより、より多くの患者に対して先進的なリハビリテーションを提供できるように努めてまいります。

○奥澤委員 ありがとうございます。全ての患者さんにおいて判定結果は良好だったということで、大変安心をしました。そして、何より患者さん自身の声が大変うれしく感じます。お話の中で、二十年ぶりに台所に立ったが疲れなかったというのはすばらしいことだと思います。
 これも私の知人の話になるんですけれども、家族が脳梗塞で寝た切りの状態になってしまって、そのリハビリテーションにおいて、海外での事例なんかを引き合いにして、ロボットスーツを活用したいんだということをかかっている医療機関の方に話をしたところ、当時の日本においてはなかなか、いろいろな制度上の問題があったんだと思いますけれども、難しいという結論に至ってしまって、その後も、今、何年たちますかね、もう五年、六年とリハビリテーションを続けているんですけれども、本当に少しずつ、ちょっとした改善を喜んでいらっしゃるんですね。
 その方は、なかなかご家族の表情が戻らないということをすごく気にしながらリハビリテーションをやっているんですけれども、じゃ、その方がいつの先を見て、将来を見てリハビリテーションに一緒に取り組んでいるかというと、やっぱり十年、二十年かかってもいいんだと。私と同世代の方なんですけれども、自分がおじいちゃんになったときに、もし笑ってくれたら、それでいいんだということを思って、地道に、気長にリハビリテーションをやっています。そういった方々にとって、この取り組みというのが、本当に希望の光になると私は思うんですね。
 皆さん自身も、そういった幸せになる方、多分、この中でも、実際に見に行かれた方と見に行かれていない方々がいらっしゃると思いますけれども、ぜひとも見に行っていただいて、患者さんの取り組む姿、あるいはご家族の表情が変化するような、そういったところを思い浮かべながら業務に取りかかっていただきたい、より一層チャレンジしていただきたいということを切に要望いたします。
 この後、ちょっと話を変えまして、役割のもう一つの側面であります行政的医療の安定的かつ継続的な提供についてお伺いしたいと思いますけれども、私は、この役割を果たすためには、経営の持続可能性を高めるということが必須であるというふうに考えています。
 都立病院経営委員会報告においては、地方独立行政法人への移行を検討すべきという記載があって、その是非についても検討が進められているということで、本日も、るる意見は出ておりますけれども、検討に際して、ぜひ大切にしていただきたいのは、二〇四〇年とか二〇五〇年といった将来を見据えた議論をしていただきたいということです。
 一般会計繰入金、先ほど話が他会派の方から出ましたけれども、三百億とも四百億ともいわれますけれども、果たしてこれを二十年、三十年先も出し続けることができると、この中で確信を持っていえる方がいらっしゃいますでしょうか。私は、それを確実にいえる方というのはここにはいないと思っていますし、だからこそ、今できることをやっていかなきゃいけないし、その可能性を広げて考えていかなければいけないというふうに思っています。
 冒頭で、さまざまな創意工夫をするには、財政的な裏づけというか、余力があって初めてできるものだという話をしましたけれども、これに関しては、先延ばしをすることなく、しっかりと結論を出せる状況が迎えられた段階で、しっかりと結論を出していただきたいというふうに思っています。
 とはいえ、その検討結果が出るのを、我々も座して待っているわけにはいきませんので、できることから経営改善を図っていかなければいけないというふうに思っています。
 平成三十年度の予算においては、経営力の向上に関する取り組みがなされておりまして、これは重要な取り組みです。
 この中に、コンサルティングを活用した点、これはこれまでと異なる点かと思いますけれども、取り組み状況についてお伺いしたいと思います。

○児玉経営企画部長 病院経営本部では、全ての都立病院の経営戦略担当副院長を中心とした経営改善推進PTを平成三十年四月に設置し、外部の医療経営アドバイザーも活用しながら、経営改善の一層の取り組みを推進しております。
 平成三十年度はPTを八回開催し、診療データに基づく他病院とのベンチマーク分析をアドバイザーが実施し、課題を抽出した上での具体的な改善策の提案を受け、各都立病院において改善に取り組んだところでございます。

○奥澤委員 今のお話ですけれども、具体的にはどのような助言があって、どのように生かされたと考えておりますでしょうか。成果をお伺いしたいと思います。

○児玉経営企画部長 PTでは、一つの例ではございますが、各病院の主要な疾患のクリニカルパスについて、診療データを用いた他病院との比較により得られた課題と改善策の提案を受け、病院でも検討を行った上で改善策に取り組みました。
 具体的には、駒込病院の食道がんの化学療法において、これまで入院中に実施していた検査項目の精査を行い、必要性が低いと判断したものについて見直しを行いました。
 平成三十年度のアドバイザーの委託料は約九百万円でございましたが、取り組みの成果としましては、都立病院全体で、委託料を大きく上回る約一億八千五百万円の経営改善効果がございました。
 PTで行った分析や改善の取り組み、成果につきましては、都立病院間で共有しており、診療データを活用した経営分析など、経営改善の継続的な活動として生かされております。

○奥澤委員 今も大きな効果ということでお話がありましたけれども、本当に委託料に対して経営改善効果は目覚ましいなと率直に思いました。まだまだ改善の余地が都立病院全体で残されているかもしれませんので、引き続き取り組みを進めていただきたいというふうに思います。
 こうした新しい取り組みをすればこそなんですけれども、必ず課題も見えてくるというふうに私は考えております。そして、それを乗り越えるからこそ、よりよい病院経営、よりよい都政がつくられていくと考えております。
 今後の改善につなげるための課題、そして、今後の見直しの方向性についてお伺いしたいと思います。

○児玉経営企画部長 診療データを分析し、病院が自律的かつ継続的に経営改善を実施していくためには、医療と経営の豊富な知識が不可欠でございます。
 病院経営本部では、診療情報管理士や医療経営士など、病院経営に有用な資格取得に対する支援を行い、事務職員の育成を実施してまいりました。
 今後、経営改善を推進するためには、事務職員の病院経営に関する専門性をより一層高めていくことが課題であると考えております。

○奥澤委員 専門的な知識が必要な病院経営においては、その下支えをする事務職員の専門性を高めることも重要であるということの課題が見えてきたというお話です。これは、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 実は、地域包括ケアシステムというお話においても似たようなものを聞いたことがありまして、患者さんを取り巻く病院や介護施設などの各主体が連携を進めていくためには、その間を取り持つ役割を果たす行政職員の方々が重要であるというお話なんですけれども、残念ながら、行政職員の多くは医療分野の専門知識が乏しくて、話に入れないというか、役割を果たせないことが多いと。あるいは、なれたころには異動してしまうというような話があって、それも一つ、地域連携がうまく進まない要因なんじゃないかという話を医療関係者の方からお伺いしております。
 医療環境の充実には、もちろん医師や看護師などの医療人材の役割が大きいのはいうまでもありませんけれども、その多忙さを解消するためにも、あるいは効率的な経営を進めるためにも、さらには地域連携を進めるためにも、専門的知識を持った事務職員の育成が急務なのかもしれないというふうに思う次第です。
 こうした課題も踏まえて、病院経営本部が都立病院を初めとする東京都全体の医療環境を下支えしていただきますようお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後五時五十九分散会