平成二十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第二号

平成二十七年十月二十三日(金曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十一名
委員長河野ゆりえ君
副委員長菅野 弘一君
副委員長遠藤  守君
副委員長西沢けいた君
上田 令子君
和泉なおみ君
神野 次郎君
高椙 健一君
島田 幸成君
高橋 信博君
山田 忠昭君

欠席委員 なし

出席説明員
都市整備局東京都技監都市整備局長技監兼務安井 順一君
次長浅川 英夫君
技監邊見 隆士君
理事榎本 雅人君
理事佐藤 伸朗君
総務部長今村 保雄君
都市づくり政策部長上野 雄一君
住宅政策推進部長桜井 政人君
都市基盤部長中島 高志君
市街地整備部長奥山 宏二君
市街地建築部長妹尾 高行君
都営住宅経営部長永島 恵子君
基地対策部長筧   直君
企画担当部長荒井 俊之君
防災都市づくり担当部長山下 幸俊君
多摩ニュータウン事業担当部長宮城 俊弥君
局務担当部長森  高志君
病院経営本部本部長真田 正義君
経営企画部長中野  透君
サービス推進部長野瀬 達昭君
経営戦略担当部長高野  豪君

本日の会議に付した事件
平成二十六年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成二十六年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)
病院経営本部関係
・平成二十六年度東京都病院会計決算(質疑)

○河野委員長 ただいまから平成二十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 初めに、傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上でございますので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○河野委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○河野委員長 初めに申し上げます。
 本日から三日間にわたり、本分科会所管四局の決算に対する質疑を行ってまいりますが、質疑につきましては、平成二十六年度決算の審査から逸脱しないように行っていただきたいと思います。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市整備局及び病院経営本部関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十六年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○今村総務部長 去る十月十六日開催の当分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元に配布しております当局の平成二十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会資料の表紙をおめくりいただきまして、目次をごらんください。
 資料は、1、都市再開発事業会計施行二地区の事業費と財源及び施設建築物の規模外二件でございます。
 まず、一ページをお開き願います。1、都市再開発事業会計施行二地区の事業費と財源及び施設建築物の規模でございます。
 (1)、事業費と財源につきましては、北新宿地区及び環状第二号線新橋・虎ノ門地区の各地区ごとに、事業期間、事業費とその財源内訳並びに年度別決算の状況を記載してございます。
 (2)、施設建築物の規模につきましては、各地区ごとの建物延べ面積とその建物における住宅戸数について記載をしてございます。
 二ページをごらんください。2、二地区のこれまでの進捗状況と今後の予定でございます。
 北新宿地区及び環二地区の各地区ごとに、平成二十六年度末まで及び今後の予定についての事業費及び用地取得面積を記載してございます。
 三ページをお開き願います。3、平成二十四年度から平成二十六年度までの間に工事完了した都市再開発事業会計対象の市街地再開発事業に関する工事完了までの年度別決算状況でございます。
 北新宿地区及び大橋地区につきまして、工事完了までの期間及び年度別決算の状況を記載してございます。
 以上で資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○河野委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○山田委員 それでは、東京都が都市再開発事業会計で進めております北新宿地区及び環状第二号線地区の市街地再開発事業についてお伺いいたしたいと思います。
 平成二十六年度決算によりますと、平成二十六年度には北新宿地区の二棟の建物と環状第二号地区の虎ノ門ヒルズ、合計して三棟の再開発ビルが完成をしております。これにより、都がこれまで当企業会計で取り組んできた三つの地区の全ての再開発ビルが完成を迎えました。
 先日、私もこれら三つの地区を改めて視察させていただきました。市街地再開発事業により整備されたこれらの施設に人々が暮らし集うことにより、にぎわいが生まれ、まちに新たな息吹を与えていることを実感した次第でございます。
 また、都施行再開発事業でしかなし得なかった重要な都市基盤も着実に整備されていることも確認をしております。例えば、本年三月には、首都高中央環状線が全線開通しておりまして、開通後は首都高中央環状線の内側の渋滞損失時間が約五割減少したなどの事業効果も報じられております。
 これらの事業効果は、大橋地区の再開発事業で整備をされた大橋ジャンクションが支えているといっても過言ではないと思います。
 一方、北新宿地区においては、青梅街道のバイパスとなる放射六号線が既に整備され、青梅街道の混雑の緩和にも効果が発現されていると聞いております。
 青梅街道は、都心と多摩地域を結ぶ重要な幹線道路であります。私の地元西東京市のみならず、多摩地域の発展のためにも放射六号線の早期完成を望んでいたところであります。
 北新宿地区は、昨年度、各施設の整備が全て完了したと聞いております。
 そこでまず、北新宿地区における市街地再開発事業の成果について、また、本地区の事業収支についてもあわせてお伺いをいたします。

○奥山市街地整備部長 平成二十六年度末をもって工事が完了いたしました北新宿地区の市街地再開発事業は、区部の骨格幹線道路ネットワークを形成する放射六号線の未着手区間を早期に完成させるため、周辺市街地と一体的に整備を進めてきたものでありまして、これにより、新宿駅周辺において、道路交通における移動時間の大幅な短縮が図られました。
 この放射六号線の整備により、骨格的な延焼遮断帯である骨格防災軸の形成が進んだことに加え、緊急車両が通行可能な区画道路が整備されたことなどにより、木造住宅が密集していた本地域の防災性が格段に向上いたしました。
 また、北新宿地区におけます事業収支につきましては、約七百二十五億円の剰余金が発生しております。

○山田委員 先日、北新宿地区の現地を視察した際には、特定建築者と連携の上、災害時にトイレとなるマンホールトイレや、かまどとして利用できるベンチなど、あるいは帰宅困難者を受け入れるスペースの確保など、東京都が防災性の向上に向け、さらに一歩進んだ対策に取り組んでいることも確認をいたしたところであります。
 事業収支も今ご説明いただいたように良好とのことであり、かつて木造住宅が密集した地域に、放射六号線の整備とあわせて地域の不燃化を図り防災性の向上を達成したことは、この事業の成果であると考えます。
 一方、環状二号線地区では、ポテンシャルの高い港区の新橋、虎ノ門エリアに、環状二号線の整備にあわせて国際交流拠点に資する機能の導入が進められております。
 環状二号線の道路を視察いたしましたが、広域交通を担う本線を地下のトンネル部に収容することにより、地上部道路には広幅員のゆとりある歩道が確保されておりました。
 この地上部道路の検討に当たっては、地元の代表の方々と検討会などが開かれ、広い歩道部分を生かし、四季を感じる街路樹やオープンカフェの設置など、緑豊かでまちのにぎわいに帰する取り組みがなされていると聞いております。
 また、沿道部分の民間建物の建てかえも徐々に進んできていると感じました。
 これらの実現に当たっては、幾多の困難があったことと推測をしますが、都がみずから再開発事業に取り組まなければ、地域の合意形成すら困難であったのではないかと思った次第であります。
 そこで、環状第二号線地区について、これまでの取り組みとその成果についてお伺いをいたします。

○奥山市街地整備部長 環状二号線のうち新橋・虎ノ門間の一・四キロは、都心部と臨海部をつなぐ主要な骨格幹線道路の一区間でありますが、地区外への転出についての合意形成が困難であったことから、長い間事業化できない状態が続いておりました。
 しかし、一般道路では都内初の立体道路制度を活用することで、現地での生活再建が可能となり、急速に地元の合意形成が進み、平成二十五年度末に交通開放を行うことができました。
 この道路は、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックにおいて、ヘリテッジゾーンと東京ベイゾーンをつなぎ、大会を支える基幹的な交通インフラとして活用されることとなり、沿道や周辺における良好なまちづくりの推進にも大きく寄与しています。
 また、平成二十六年五月には、Ⅲ街区に、利便性と快適性を備えた業務、商業、住宅などによる複合施設建築物である虎ノ門ヒルズが完成いたしました。

○山田委員 環状二号線の整備には、立体道路制度の活用が地元との合意形成と事業の推進に大きな役割を果たしたことが理解をできました。
 現在、虎ノ門ビルは多くの人々でにぎわっております。先日、私が視察に訪れた際も、館内では国際的な会議が開催され、活況を呈しておりました。
 ただいまのご答弁で、昨年五月に虎ノ門ヒルズが完成したとのことでありますが、最後に、この虎ノ門ヒルズに導入した機能、またこのビルの完成による周辺まちづくりの効果についてお伺いいたします。

○奥山市街地整備部長 虎ノ門ヒルズには、日本初進出となる外資系のホテルや信託銀行などの外資系企業が入居しているほか、大規模なカンファレンス施設もあり、国際的なビジネス、交流拠点にふさわしい機能の導入が図られました。
 このカンファレンス施設は、三つのホールで約二千名を収容し、セミナー、シンポジウムなどさまざまな会議がほぼ毎日開催され、国際交流や情報発信の新たな拠点となっております。
 また、当地区周辺では、地下鉄日比谷線の新駅や、バスターミナルなどの整備などが進められる予定であり、周辺のまちづくりを連鎖的に進める起爆剤となっております。

○山田委員 虎ノ門ヒルズには、既に外資系の企業が入居するとともに、国際交流に資するさまざまな企業活動が進められ、その周辺では環状二号線の開通を契機として、さらなる開発計画も進められていることが理解できました。
 環状二号線については、今後、都心と臨海部を結ぶBRTの基幹ルートとなることも期待されており、これらの開発とあわせて、東京の新たな魅力を世界に発信する道路となるものと考えます。
 ぜひとも周辺の新たなまちづくりと相乗的に効果を高めていただいて、国際都市東京を代表して、世界へ誇れる豊かな道路空間の実現を図ってほしいと思います。
 以上、二つの地区における都施行市街地再開発事業では、重要な都市基盤の整備とともに、それぞれの地区の立地特性を生かした、魅力ある市街地の形成が図られることが理解できました。
 今後とも、このような事業手法を初めあらゆる整備手法を活用して、世界で一番の都市東京の実現を着実に進めることを期待いたしまして、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。

○和泉委員 私からは、北新宿地区について質疑します。
 この北新宿地区ですけれども、平成二十六年度に二棟の建物が竣工しています。ほぼ事業は終息になっていて、新たな事業は予定されていないというふうに聞いています。これまでの収支について伺います。

○奥山市街地整備部長 北新宿地区の事業収支につきましては、約七百二十五億円の剰余金が発生しております。

○和泉委員 結局、住民が出ていかなければならないような再開発を都施行でやって、七百二十五億円もの剰余金を出したということになるわけです。
 平成二十六年度に竣工した二つの建物の規模、用途について伺います。また、住宅用である場合には、保留床か権利床かについても教えてください。

○奥山市街地整備部長 二棟の施設建築物は、一棟は鉄筋コンクリート造、地上六階建ての分譲住宅、残る一棟は鉄筋コンクリート造、地上五階建ての賃貸住宅であり、これらは全て保留床として整備いたしました。
 なお、従前権利者の方のための住戸等であります権利床は、平成二十五年度までに整備した施設建築物で、全て確保されております。

○和泉委員 今ご答弁ありました二棟ですけれども、五階建ての棟というのは、二の二-Bに建ったもので二十九戸、一LDKもしくは二LDK、そして六階建ての棟は、三の三-一に建ったもので約百三十戸、用途はいずれも住居ということでいいですよね。
 公社の方のマンションの公式ホームページを見ましたけれども、専有面積三十七・三八平米の一LDK、価格は四千二百八十万円です。一平米当たり百十四万円ということになります。
 ちなみに、東京の土地二〇一三によりますと、都区部のマンションの一平米当たりの平均価格は八十六・五万円ですから、それよりもはるかに高いということになります。
 その上このホームページには、月々の返済七万円台で、賃貸に出せば想定賃料が月十五万円、利回り四・二%ですよと、不動産投資としての役割が期待されているんです。
 北新宿地区では、地権者の百七十三人のうち、開発後入居した方は六十四人ということで三七%、三人に二人の方が地区を出ていくことになりました。借家の方に至っては、二百二十一人もいらしたのに入居はわずか一人と、ほぼ残ることはできなかったんです。一方で、この事業でつくり出された保留床は不動産投資として使われているというわけです。
 日本共産党都議団は、北新宿、環状二号線、大橋地区、いずれも自治体が本来手を出すべきでない不動産業であり、住民追い出しにつながるとともに、東京一極集中を都心周辺でさらに加速させるものであることなど、さまざまな重大問題を抱えた開発であると事業そのものに反対してきましたが、そういう事態がやはり北新宿でも進行しているといえるんじゃないでしょうか。
 都施行の再開発事業においては、とりわけ公共性、公益性、経済性をどう見きわめていくのかが重要になっています。再開発事業のあり方について根本から見直すべきだと要望して、質問を終わります。
   〔奥山市街地整備部長発言を求む〕
   〔和泉委員「答弁求めてません」と呼ぶ〕

○奥山市街地整備部長 補足させていただきます。先ほど委員のお話の中で、三-一棟の分譲でございますけれども、百三十とお話しされていたのは百三戸ではないかと思います。
 ただいまのお話の中で、いわゆる追い出しではないかというお話、それから不動産投資ではないかというお話がございました。
 まず、市街地再開発事業では、お話の建物、これは保留床でございますけれども、保留床がなければ事業そのものが成立しないものでございます。三地区の市街地再開発事業では、特定建築者制度を活用いたしまして、施設建築物の整備を行ってきておりますけれども、この制度は都市再開発法に基づくもので、民間の資金や豊富なノウハウを活用し、より魅力的な住宅などの供給を可能とするものでございます。
 また、都にとっても、保留床の処分によるリスクを回避できるというものでございます。
 都にとっても地権者にとってもメリットの大きい制度ということがいえます。不動産投資の対象というご指摘は当たらないというふうに考えます。
 また、当地区では、従前の権利者や借家人の方々につきましては、地区内に残るか、転出するか、これらの方々みずからの選択によるものでございますけれども、転出の希望者に対しては、代替地のあっせん、移転先に関する不動産情報の提供、移転資金の貸し付けなど、生活再建についてきめ細かな対応をしております。これについてもご指摘は当たらないのではないかと考えます。

○西沢委員 私からも、この再開発会計で進めてきた都施行再開発事業三地区についてお伺いをしていきたいというふうに思います。
 この二十六年度決算によれば、大橋地区は平成二十四年度末に既に完了しているということでございます。北新宿地区が昨年度に事業の完了を迎えまして、現在は環状第二号線地区のみが事業中という形になっているわけでございます。
 今も話がございましたけれども、一般に市街地再開発事業というのは、地権者などによって構成される再開発組合などの民間が主導して実施をしているという中で、この三事業について、東京都がみずからこれを進めてきていると。みずから施行者となって事業を実施していくということ、この意義についてを改めて伺うわけでございますが、ことしに限らずこれまでの議事録なんかも見ますと、その効果の中で国際競争力を高めていくというような、虎ノ門の部分については特にそういった話もございました。
 ですので、改めてそういった部分も踏まえて、都施行三地区の市街地再開発事業の意義と効果についてお伺いをいたします。

○奥山市街地整備部長 三地区の市街地再開発事業は、いずれも多数の権利者がいる中、その方々の生活再建を図りながら、民間事業者では取り組むことが困難な根幹的な幹線道路の整備を進めるとともに、防災性の高い良好な市街地への再整備をあわせて実施するものでございます。
 これまでに、大橋地区では首都高速中央環状線の大橋ジャンクション、北新宿地区では青梅街道のバイパスとなる放射六号線、環状第二号線新橋・虎ノ門地区では都心部と臨海部を結ぶ環状二号線が整備され、幹線道路ネットワークの整備に大きく貢献しております。
 さらに、環状第二号線新橋・虎ノ門地区では、平成二十六年度に完了したⅢ街区、虎ノ門ヒルズにおきまして、ホテルやカンファレンスなど、国際的なビジネス交流機能の導入が図られ、国際競争力の強化にも寄与、貢献しております。

○西沢委員 幹線道路という重要な公共施設の整備にあわせて周辺のまちづくりを一体的に行ってきたという、都施行再開発事業の意義というものを確認させていただきました。
 また、今、国際競争力の強化というふうな、効果という面についても確認をさせていただいたわけでございます。
 この開発、北新宿の地区について、私、すごく家が近かったこともあってよく通りました。昔から住んでいたわけではないんですけれども、近隣の方に聞くと本当によく変わったねと。これだけ大きく変わる。タクシーに乗れば、ここ本当に変わりましたねと、そこを知っている人はみんないいますよね。
 それだけ大きく変わることができたというのも、やっぱり東京都がみずから進めなければできなかったんじゃないかなということを改めて感じ取ることもできると思います。
 ただ、この三地区というのは、大変大規模な事業でございまして、大橋地区については約八年間で完了しているわけですが、その一方で北新宿地区は完了まで十六年、環状二号線新橋・虎ノ門地区については事業開始から約十二年経過するということで、長期間にわたる取り組みというようになっております。
 これだけ長期間になりますから、事業開始をしたときからさまざまな要因で事業内容が変更されたということもあるのではないかと思います。
 そこで、この三地区について、平成二十六年度までの、事業開始当初から事業費が大幅に増加、増額となっている地区がないか、また、あればその地区における事業費の変動とその要因についてお伺いをいたします。

○奥山市街地整備部長 三地区のうち事業費が大幅に増額となっているのは、環状第二号線新橋・虎ノ門地区でございます。本地区の事業費は、当初計画では約千四百五十四億円でありましたが、平成二十六年度末時点では約二千三百四十億円となっております。
 これは、長期間を要する事業のため、社会経済状況の変化に伴い、地価上昇による用地及び補償費の増額、建築資材の高騰による建築工事費の増加などの影響を受けたためでございます。

○西沢委員 やっぱり、当初の計画から、まあよくあることですね、ふたをあければ事業費が二倍になっていた、三倍になっていたというようなことなんかがございます。当然、地価の上昇ということであったり、建築資材の高騰ということは納得のできるところでもございます。
 単年度で見ると、この会計自体はいいようにやっぱり見えるわけですね。ですけれども、計画からすると、話があったところから換算するともう七十年ぐらい前からの話、事業自体も八年とか十六年という話でしたけれども、計画の決定からするともう四十年ぐらい前から話があるわけですね。
 やっぱりそれだけの期間があれば、当然変化していくということもあるし、社会情勢も大きく変わっていくということがいえるのではないかと思いますから、最後に、トータルで見て、最終的に完了した大橋地区、そして北新宿地区の事業の収支、そして環状第二号線の地区については収支の見通しについてお伺いいたします。

○奥山市街地整備部長 事業が長期にわたり、敷地処分時期において不動産市況の変動を受けたことなどから、平成二十六年度に工事が完了いたしました北新宿地区につきましては、約七百二十五億円の剰余金の発生、また大橋地区につきましては約十九億円の不足となっており、不足額については企業会計内で適切に処理いたしました。
 現在事業中の環状第二号線新橋・虎ノ門地区につきましては、事業収支の確保に必要な敷地処分の収入が確保されており、収支不足は生じない見通しでございます。

○西沢委員 大橋地区については不足は出たけれども、ほかの地区の事業によって穴埋めすることによって、会計で見ると不足額はないですよ、大丈夫だったんですよというようなご答弁でございました。
 そして、今やっている環状二号線地区については収支不足は生じないということですから、この三地区事業については大丈夫だよというようなことで理解をさせていただきました。
 これからも引き続き収支というところに留意していただきながら、続けていっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

○上田委員 私、ちょうどおとといに消防の落成式がありまして、ヘリコプターでずっと東京周辺をぐるっと回ってきました。戦後七十周年ということで、私の上野の実家も焼失しましたし、東京は震災、そして東京大空襲で焦土と化した中、混乱期を経まして七十年。
 ちょうどこの虎ノ門も見ました。六本木ヒルズもきのう国際映画祭もありました。上から俯瞰して見るというような状況の中、今回、都市整備の方の審査をさせていただくのも感慨深い思いがございます。
 資料、3によりますと、長い年月をかけ、また平成十四年からは都市再開発事業会計を導入し、会計をつまびらかにしていくというご努力の歴史も、この資料を見まして振り返らせていただいたところでございます。
 この3によりまして、各事業の執行状況が大まかに示されまして、竣工に向けまして順調な、先ほど申し上げました努力を執行と受けとめてございます。
 東京都直轄の再開発事業につきまして、るる各委員からも、やはり皆様方の生活、かなりがらっと変わっていったと思います。私もこの間、虎ノ門ヒルズに行って、私、最初は霞が関ビルで就職をしたので、随分変わったなと思ったところでございます。
 去年の決算では、都が定める損失補償基準に基づいて、適正かつ公平な補償を行ってきたと。また、地域で暮らす都民の皆様の生活再建に配慮され、再開発ビルへの入居に係る相談--これが東京都の再開発事業だからできるというところでありましょう、代替地や都営住宅への移転先をあっせんするなど、丁寧に応対をされていたということでございますが、その中では数々の顧みなければならない点、トライ・アンド・エラー、そして今後生かせる点等の経験値がつかれたかと思います。
 今後に生かせる、都政事業に生かせる知見、ほかの再開発事業への反映について、どうこれまでの経験値を有効活用していくのかご所見をお聞かせください。

○奥山市街地整備部長 三地区の都施行市街地再開発事業では、権利者の生活再建を図りながら、根幹的な幹線道路の整備を進めるとともに、防災性の高い良好な市街地への再整備をあわせて実施してきました。
 これらの事業は長期間を要するため、社会経済状況の変化などから、事業費や事業収支などへの影響は避けられず、収支不足額の圧縮などに努めてまいりました。
 事業を実施する中では、特定建築者制度を導入し、民間の資金やノウハウを活用して、魅力的で付加価値の高い再開発ビルの建設を行ってまいりました。
 また、環状第二号線新橋・虎ノ門地区では、一般道路では都内初の立体道路制度を導入いたしまして、長い間未開通であった本区間を開通させました。
 これらの経験から得られた知見につきましては、今後、市街地再開発事業による整備を予定しております二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の選手村の整備を初め、東京が抱えるさまざまな都市づくりの課題の解決に生かしていきたいと考えております。

○上田委員 東京都はこれまで、東京都だからできる、東京都にしかできない都市再開発事業を施行していらっしゃいました。今ご報告いただいたとおり、経験とノウハウを有しておられると思います。
 しかしながらも、やはり東京、民間力もついてきたところで、都施行事業は減少していくこととなりましょうが、都内には区市やUR、民間を実施主体とする再開発事業が複数進められつつあります。その中には、権利者として東京都がかかわる、すなわち都の財産も対象となるものもございます。
 都としては、今までの経験を踏まえられ、都市の再開発事業においても実施主体とノウハウを共有され、事業が展開されることを希望しまして、私の質疑を終わらせていただきます。

○河野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○河野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。

○河野委員長 これより病院経営本部関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十六年度東京都病院会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○中野経営企画部長 去る十月十六日の本分科会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます平成二十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、都立病院における経営指標の推移から、28、都立病院における私債権放棄額の推移までの計二十八点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開き願いたいと存じます。1、都立病院における経営指標の推移でございます。
 都立病院における経営指標の推移を、入院、外来別に記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費)でございます。
 一般会計繰入金と、このうち施設整備関連経費について、その推移を記載してございます。
 三ページをごらんください。3、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費以外・病院別)でございます。
 一般会計繰入金のうち、施設整備関連経費以外の経費の推移を、病院別に記載してございます。
 四ページをお開き願います。4、都立病院の医師、看護要員及び医療技術員等の定数及び現員の推移でございます。
 医師、看護要員及び医療技術員等の定数と各年度十月一日現在の現員の推移を記載してございます。
 五ページをごらんください。5、各都立病院の産婦人科、小児科及び麻酔科常勤医師の定数及び現員の推移でございます。
 産婦人科、小児科及び麻酔科の常勤医師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について、病院別に記載してございます。
 六ページをお開き願います。6、各都立病院の分娩件数の推移及び周産期医療受入件数の推移でございます。
 (1)が分娩件数の推移、(2)が周産期医療受け入れ件数の推移を、各年度、病院別に記載してございます。
 七ページをごらんください。7、各都立病院の薬剤師の定数及び現員の推移でございます。
 薬剤師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について、病院別に記載してございます。
 八ページをお開き願います。8、各都立病院の個室使用料の収益の推移でございます。
 各年度の個室使用料の収益の推移について、病院別に記載してございます。
 九ページをごらんください。9、各都立病院の生活保護による医療扶助を受けた延べ患者数及び当該医療費の推移でございます。
 各年度の生活保護による医療扶助を受けた延べ患者数及び当該医療費の推移について、各年度入院、外来別に推移を記載してございます。
 一〇ページをお開き願います。10、各都立病院の夜間・休日における緊急措置診察の件数(平成二十六年度)でございます。
 平成二十六年度の夜間、休日における緊急措置診察につきまして、病院別の実績を記載してございます。
 一一ページをごらんください。11、各都立病院における精神科外来患者数(平成二十六年十月十五日ワンデイ調査)でございます。
 昨年実施いたしましたワンデー調査における精神科外来患者数について、取扱患者数及び年延べ外来患者数をそれぞれ病院別に記載してございます。
 一二ページをお開き願います。12、松沢病院及び小児総合医療センターにおける精神科デイケアの効果及びプログラム内容でございます。
 (1)は精神科デイケアの効果、(2)は松沢病院と小児総合医療センターのプログラム内容を記載してございます。
 一三ページをごらんいただきたいと存じます。13、松沢病院における再入院率(平成二十六年度)でございます。
 平成二十六年度の松沢病院の再入院率につきまして、退院後一カ月以内、退院後三カ月以内の数値をそれぞれ記載してございます。
 一四ページをお開き願います。14、松沢病院における入院期間別入院患者数の推移でございます。
 各年度の松沢病院における入院期間別入院患者数につきまして、その推移を記載してございます。
 一五ページをごらんください。15、各都立病院における精神疾患による入院患者数及び入院形態別内訳(平成二十六年度)でございます。
 平成二十六年度の精神疾患による入院患者数及び入院形態別内訳を病院別に記載してございます。
 一六ページをお開き願います。16、松沢病院における患者の退院時の状況でございます。
 各年度の松沢病院における患者の退院時の状況について、事由別に記載してございます。
 一七ページをごらんください。17、松沢病院における死亡退院患者の推移(傷病分類別、年齢別)でございます。
 各年度の松沢病院における死亡退院患者数について、(1)は傷病分類別、(2)は年齢別にそれぞれ推移を記載してございます。
 一八ページをお開き願います。18、松沢病院における行動制限実施患者数及び保護室数の推移でございます。
 (1)は各年度の松沢病院における行動制限実施患者数、(2)は保護室数について、その推移を記載してございます。
 一九ページをごらんください。19、松沢病院における電気けいれん療法の実施件数の推移でございます。
 各年度の松沢病院の電気けいれん療法の実施件数について、その推移を記載してございます。
 二〇ページをお開き願います。20、都立病院における医事関係訴訟件数及び事由でございます。
 各年度の都立病院における医事関係訴訟件数と事由について記載してございます。
 二一ページをごらんください。21、都立病院における医師の兼業件数等でございます。
 各年度の医師の兼業件数等を記載してございます。
 二二ページをお開き願います。22、都立病院における誤嚥に関する報告件数及び防止対策でございます。
 (1)は平成二十六年度の誤嚥報告件数、(2)は誤嚥防止対策について記載してございます。
 二三ページをごらんください。23、都立病院におけるインシデント・アクシデント・レポート件数及び主な事由でございます。
 (1)はインシデント・アクシデント・レポートの件数、(2)は主な事由を記載してございます。
 二四ページをお開き願います。24、都立病院医療安全推進委員会の開催状況でございます。
 各年度の都立病院医療安全推進委員会の開催状況について記載してございます。
 二五ページをごらんください。25、多摩総合医療センターにおける虐待疑い例に対する対応手順でございます。
 同病院における虐待疑い例への対応手順について記載してございます。
 二六ページをお開き願います。26、都立病院における救命救急部門の医師及び看護要員の定数及び現員の推移でございます。
 救命救急部門の医師及び看護要員の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について、病院別に記載してございます。
 二七ページをごらんください。27、各都立病院における先進医療の病院別件数(平成二十六年度)でございます。
 平成二十六年度の先進医療の実績につきまして、病院別に記載してございます。
 二八ページをお開き願います。28、都立病院における私債権放棄額の推移でございます。
 各年度の私債権放棄額の推移について病院別に記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○河野委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○神野委員 最初に、病院会計の平成二十六年度決算の状況について確認をさせていただきます。
 病院経営本部は、これまで二期にわたる実行プログラムのもと、医療機能の充実強化を図ってきており、現在は平成二十五年三月に策定した都立病院改革推進プランにより、これまで進めてきた患者中心の医療や人材育成、再編整備など、成果を最大限に生かしつつ、少子高齢化の急速な進行や目前に迫る医療制度改革などにも対応し、医療の質を向上させるための取り組みを進めていくとしています。
 そして、それらの取り組みを継続的かつ安定的に提供するために、経営力の強化にも努めてきたと聞いております。
 平成二十五年度の決算では、一般会計繰入金を除いた自己収支比率が過去最高の七六・三%となり、一般会計からの繰入金も前年度と比較して二・一%減となるなど、効率的な病院経営に向けた経営改善の成果が確認できました。
 そこで、確認のために、都立病院における平成二十六年度決算の自己収支比率及び一般会計からの繰入金の増減について伺います。

○中野経営企画部長 平成二十六年度の自己収支比率でございますが、前年度から一・二ポイント減の七五・一%でございました。
 また、平成二十六年度の一般会計繰入金は六百九十六億一千九百万円でございますが、このうちの二百九十八億一千九百万円は、地方公営企業制度の見直しに伴う退職給付引当金などに対する特別利益としての繰入金受け入れでございまして、経常収益分の繰入金は三百九十八億円でございまして、前年度と比較いたしまして七億四千四百七十八万円、率にして一・九%の増となりました。

○神野委員 平成二十六年度の自己収支比率は昨年度より悪化し、経常収益における一般会計からの繰入金もふえたとのことでした。
 確かに、平成二十六年度の医療関係業務の経営環境は厳しかったと思います。例えば、厚生労働省が行った調査では、全国的に延べ患者数が対前年比で減少傾向にあったという結果が出ています。
 また、平成二十六年度診療報酬改定は、消費税対応分を除くと実質的にはマイナス改定といわれており、病院関係の団体からは消費税対応分に対する不足があると報告されています。
 都立病院においても、消費増税の悪影響が少なからずあったと聞いています。
 そこで、平成二十六年度決算の自己収支比率が悪化した要因及び一般会計からの繰入金が増加した理由はどのようなものであったのかを伺います。

○中野経営企画部長 平成二十六年度でございますが、ただいまお話にありましたように、全国的な傾向として、在院日数の短縮化などにより延べ入院患者数が減少しておりまして、都立病院も同様に、前年度と比べて延べ入院患者数が減少しております。
 しかしながら、入院期間の適正化に努めたことや、上位の施設基準の取得などによりまして、入院、外来ともに診療単価が上昇いたしまして、入院外来収益は増加いたしました。
 一方、費用でございますが、診療体制充実のために医師や看護師を増員したこと、それから給与改定の影響などによりまして給与費が増加するとともに、消費増税により材料費や経費がふえたことにより、結果的に増加となりました。
 また、平成二十六年度の診療報酬改定では、改定率は全体で〇・一〇%のプラス改定でございましたが、消費税対応分が一・三六%含まれていますことから、実質的にはマイナス一・二六%の改定でございました。
 消費税の対応分につきましては、実質的に補填不足でございまして、このことが自己収支比率を悪化させる要因の一つになりました。
 以上の結果、収益は増加いたしましたが、それを上回る費用の増がありまして、自己収支比率が悪化し、それから一般会計繰入金の増加につながったものと考えております。

○神野委員 ただいま自己収支比率が悪化した要因などについて、具体的な答弁がありましたが、都立病院においても、延べ患者数減や診療報酬改定における消費税対応の不足があったとのことでした。
 都立病院に限らず、全国の病院の平成二十六年度決算は厳しい状況にあると聞いています。例えば、国立大学附属病院長会議の集計では、全国四十三の国立大学附属病院の決算の合計が、国立大学法人移行後初めての赤字になったと発表されています。
 また、全国自治体病院協議会が調査した地方公営企業法適用病院の決算見込みでも、経常収支における赤字病院数が増加したと報告されています。
 このような厳しい経営環境の中においても、都立病院は救急、精神、周産期、感染症など、都民に必要とされながらも不採算といわれる行政的医療を引き続き提供する必要があります。
 都民の要請に応える医療を継続的、安定的に提供していくためには、効率的な運用を行うことも重要であり、一層の経営力強化が求められています。
 そこで、平成二十六年度は経営力を強化するためにどのような取り組みを行ってきたのかを伺います。

○中野経営企画部長 まず、入院収益の改善を図るために、疾病ごとに他病院との診療内容につきましてベンチマーク比較を行いまして、入院期間の適正化に努めまして、平均在院日数を前年度と比較して十八日から十七・六日と、〇・四日短縮いたしまして、診療単価の増加に寄与いたしました。
 また、駒込病院におきましては医師の負担軽減のために書類作成等をかわりに行う事務作業補助職員を増員したり、松沢病院では精神科病棟において入院期間の適正化を図ったことなどにより、それぞれ上位の施設基準を取得し、収益の確保を図ったところでございます。
 さらに、地域医療機関から紹介された患者さんにつきまして、都立病院での治療が一段落した段階で、紹介元の医療機関等に戻す返送、逆紹介の取り組みを積極的に進めるなど、地域医療機関との連携を強化し、新たな患者さんの確保に努めたところでございます。
 今後も、これまで充実強化してきました医療機能を最大限活用し、質の高い医療を継続的、安定的に提供していくとともに、経営力強化への取り組みを進めてまいります。

○神野委員 厳しい経営環境の中でも、都民に提供する医療の質を上げつつ、健全な経営基盤の確立に向けて努力していることがわかりました。
 都立病院は、これまで充実強化してきた総合診療基盤を活用し、引き続き行政的医療を適正に都民に提供するとともに、都における良質な医療サービスの確保を図り、医療の高度化や疾病の複雑化に適切に対応していかなければなりません。
 これからも健全な経営に努め、都民に質の高い医療を安定的に提供し続けることを要望いたします。
 次に、感染症の医療体制について伺います。
 昨年の夏には、蚊を媒介して感染するデング熱が広がり、国内では六十九年ぶりの流行となったことは記憶に新しいところです。
 また、西アフリカではエボラ出血熱が大流行し、患者数は二万八千人を超え、過去最大の流行となっています。
 グローバル化の進展に伴い、感染症はもはや一国、一地域の問題ではなくなっています。都内でも、これまで五例のエボラ出血熱の疑似症患者が発生するなど、未知の感染症に対する対策を迫られました。
 エボラ出血熱やペストを初めとした一類感染症といわれる危険性が高い感染症への対応は、専用の病室などの設備や感染者が発生した場合に備えた人員体制の整備などが必要となり、病院経営上は、ある意味不採算医療の最たるものともいえます。
 しかし、都民の命を守るために、都立病院にはこのような行政的医療の分野においてもしっかりとその役割を果たしていただきたいと思います。
 そこで伺いますが、都は、平成二十六年十一月に、東京都エボラ出血熱対策連絡会議を設置しましたが、病院経営本部及び都立病院では、エボラ出血熱患者の発生に備えてどのような対応を行ったのでしょうか。

○高野経営戦略担当部長 エボラ出血熱患者などの一類感染症患者を受け入れることができる都内の第一種感染症指定医療機関は、都立駒込病院、墨東病院及び公社荏原病院と特定感染症指定医療機関の国立国際医療研究センター病院の四病院でございます。
 病院経営本部では、都内でのエボラ出血熱患者の発生に備え、平成二十六年十月に、都立・公社病院感染症対策委員会のもとに、第一種感染症指定医療機関の三病院の医師等を委員としたエボラ出血熱対策専門部会を設置し、二十四時間の情報連絡体制を確立するとともに、患者を受け入れた場合に病院間での医師の協力、応援体制を講じることなど、エボラ出血熱対策を検討し、対応方法を確認いたしました。

○神野委員 感染症対策で最も重要なことは、新たな感染者を発生させないよう封じ込めることだといわれています。
 そのため、感染症対策においては、医療従事者の感染を防ぐため、また二次感染を防ぐために、個人防護具等の備えが重要といえます。
 そこで、エボラ出血熱の患者を受け入れることになる駒込病院、墨東病院での防護服等資器材の備蓄について、平成二十六年度の取り組み実績を伺います。

○高野経営戦略担当部長 平成二十一年の新型インフルエンザの流行を契機といたしまして、病院経営本部では、新型インフルエンザ等に対する個人防護具として、これまで防護服、手袋、マスクなど約五万セットを独自に備蓄してまいりました。
 平成二十六年度には、都立駒込病院及び墨東病院において、エボラ出血熱対策として六千セットの防護服や、ウイルスを含む体液等が防護服に浸透しないように防護服に重ねて着用するガウン、また顔全体を覆うフェースシールド等を新たに備蓄いたしました。
 また、患者が入院する病室で使用するための専用のポータブルエックス線撮影装置や医師が撮影画像をその場で確認できる機器も新たに整備いたしました。

○神野委員 感染症対策では、世界をリードするアメリカの医療機関で、エボラ出血熱にかかった患者の治療に当たっていた看護師が、防護服を着用していたにもかかわらず感染するという事態に驚きを覚えました。報道によりますと、防護服を脱ぐときの手順に問題があったのではないかといわれています。
 隣国の韓国でも、MERSが同様に医療機関での二次感染により広がり、総感染者数は百八十六人にも上り、いまだWHOによる終息宣言が出せない状況にあります。
 患者の治療に当たる医療機関で、二次感染を引き起こすことは絶対に避けなければならないことです。感染症指定医療機関の責務として、二次感染を防ぐ万全の対策が必要と考えます。
 そこで、昨年のエボラ出血熱患者発生の危機に際し、都立病院では二次感染防止に向け、どのような対策を講じたのかを伺います。

○高野経営戦略担当部長 第一種感染症指定医療機関の都立駒込病院、墨東病院では、平時より、一類感染症の患者が来院した場合の対応手順をマニュアルとして定めるとともに、毎月一回、医師、看護師等が防護服の着脱訓練を、また年に一回は病院全体で患者の受け入れを想定した訓練を実施しております。
 平成二十六年十一月には、実際にエボラ出血熱患者が発生した場合を想定し、情報伝達や患者の移送、病院内での検査に関して、福祉保健局、保健所及び東京消防庁と公社荏原病院を含む三病院が合同で実践的な訓練を実施いたしました。
 今後とも、未知の感染症に対しても的確な対応がとれるよう、継続的に訓練に取り組んでまいります。

○神野委員 エボラ出血熱については、ことし九月にリベリアで終息が再宣言され、ギニア、シエラレオネでも新たな感染者は少なくなっていると聞いています。
 しかし、国境を越えた人の往来が活発になるとともに感染症のリスクはますます高まっていくことが予想されます。
 今後も、感染症から都民を守るため万全の対策を講じ、感染症対策の充実を図っていくことを望み、私の質問を終えます。

○遠藤委員 私からも決算についてお伺いをしたいと思います。
 初めに、今回示されました二十六年度の決算の概要、これについてしようと思いましたが、今の神野委員の質疑と大幅にかぶりますので、割愛をいたします。
 今のやりとりの中で、いろいろと数字の悪化というのは示されましたけれども、いずれにしても、繰り返し、ただいまの質疑がありましたとおり、都立病院は行政的医療をしっかりと提供していくと。採算に合わないかもしれないけれども、行政的医療を提供していくということでありますので、今後、高齢化が一層進んで、がん、または急性心筋梗塞、脳卒中という患者さんも増加してまいると思います。
 しっかりと不断の経営努力を行っていただいて、バランスのとれた、安定した経営基盤を確保していただいた上で、必要な行政的医療の提供に、本部を挙げて取り組んでいただきたいと、このように意見だけ述べておきます。
 きょうは、具体的に個別のテーマとして、PFIの病院運営について、そして、都立駒込病院におけるがんの医療、またその周辺の取り組み、最後に、現場を支える医師とあわせて大切な役割を担っていただいている看護職員、看護師さんの方、この確保と、また人材育成という、この個別の三つのテーマについて質問させていただきたいと思います。
 初めに、PFIの手法を活用した都立病院の運営、これについて何点かお伺いしたいと思います。
 いうまでもなく、このPFI手法は、公共の施設の設計ですとか建設、さらにその維持管理、運営等を、民間の資本、さらには経営手法を活用して、より質の高い公共サービスを提供する、海外から日本にやってきた事業手法であります。
 事前にお受けしたレクチャーによりますと、病院事業において、全国で十五の病院がこのPFI手法を現在活用しているという説明でありました。
 都立病院では、これまで個別に委託をしていた施設、建物の管理や医療事務など直接医療に関係ない、もちろんでありますけれども、医療の周辺の業務、これを長期かつ包括的に担うことによって、より専門性を高めるとともに、質の高いサービスを患者さんに提供する。あわせて、各業務間の縦割りの弊害を是正して、一体的にきめ細やかなサービスを提供するということを目的に導入をされたわけであります。
 平成二十一年に駒込病院、二十二年に多摩総合医療センターと小児総合医療センターの二つ、そして、平成二十四年に松沢病院ということで、都合四つの都立病院でこのPFI手法を活用した運営が行われているわけであります。
 この都立病院におけるPFI事業は、いわば第二世代と、このようにいわれているわけであります。第二世代があるということは第一世代があるわけでありますけれども、この第一世代、東京都の四つの病院が導入する前に、三つの病院でPFI事業、他県で実施をされていたわけであります。平成二十一年より前ということでありますが、残念ながら、この先行の三つの病院のうち二つの病院では、PFI事業は既に契約が解除になっているということであります。
 これはもう公になっておりますので、二つの病院とは、一つが滋賀県の近江八幡市立総合医療センター、そしてもう一つは高知医療センターと、三つのうちこの二つが残念ながら契約が解除になっているということであります。
 そのうち近江八幡市立総合医療センターにつきましては、なぜPFIの契約が解除になったかということで、解除になる前に、そのほかにもこの病院の運営については、経営面からいろいろ、検討、是正をしなければいけないということで、医療センターのあり方に関する提言というものが契約を解除する前に出されておりまして、これもいただいた資料で読ませていただきました。
 いろいろ変えなければいけないことがあるということで書いてあるんですけれども、その大半はなぜPFI事業が失敗したかということがつぶさに書いてあります。
 この報告書の中に、初めにということでこう総括をされております。ちょっと読みます。
 平成十八年十月に開院したのが近江八幡市立総合医療センターであり、日本でも数少ない本格的なPFI方式による病院として全国的にも注目をされてきたところである、しかし、これまで自治体病院の優等生といわれてきた近江八幡市立病院が、新病院の開院から一年足らずのうちに経営状況の悪化が明らかになり、市及び病院関係者はその対応に苦慮する事態となってしまった、この原因には幾つかの点が考えられるが、そもそもPFI方式の導入可能性を検討していた段階での各種経営上の試算はまさに丼勘定であったと推測され、PFIという外国発の複雑な制度手法を前にして、近江商人としての矜持を失ってしまったことが根本にあるのではないかということで、のっけから非常に厳しい評価をしております。
 中身を見るとさらに厳しい言葉が並んでいるようでありますけれども、何が問題であったかということで、具体的には、中間業者の介在による医療現場の非効率性という項目を立てております。中間業者というのは、いわゆるPFIの請けでありますからSPCでありますけれども、こういう業者が仲介したことによって、医療現場の非効率性が生まれたということで、具体にいうと四項目、例えば業務運営における指揮命令系統の非効率性、経営判断における意思決定の非効率性、三点目は、病院とSPC双方のコミュニケーション不足、そして最後に、病院PFIの内在的な課題。
 今挙げただけじゃなくて、そもそもはっきりはいっていませんけれども、こういう手法を医療現場に持ち込むことはどうだったのかという、断定はしていないですけれども、そういう疑問が投げかけられております。
 このあり方検討会の委員の皆さんは、学識経験者、大学の先生ですとか公認会計士、弁護士、また、自治体の病院協会の幹部の方、もちろん近江市の関係者も入っておりますけれども、こうした方々がかなり辛辣な評価をされておるわけであります。
 そんな中でスタートした、船出をしたのが都立病院。駒込が平成二十一年にスタートしたわけでありますけれども、この中であえて失敗事例といっていますけれども、こうした先行事例を踏まえた工夫が、都立の病院のPFI導入についてはされたんだと思います。
 その中で、こうした先行事例ということで、一つは、今申し上げましたとおり、病院と、SPCと呼ばれる特定目的会社、この連携がなかなかうまくいっていなかった。さらには、SPCのもとでさまざまな事業を行う協力会社というのか関連業者、そことのコミュニケーションが余りうまくいっていなかったんではないかということで、この相互の連携というか、意思疎通というか、こういうものをしっかりとやっていくことが重要であるという、総括マネジメント機能というようでありますけれども、これをしっかりと都立病院ではやっていこうという、一つ視点が入れられたということであります。
 もう一つは、都立病院でPFIを導入するに当たっては、いわゆる発注元というんでしょうかね、東京都、また、各病院が行う業務にも積極的に助言や協力をいただいて、健全経営に貢献するという、この二つの柱をしっかりと定めた上でPFIを導入したということであります。
 PFIの導入につきましては、平成二十五年十一月十四日の厚生委員会の質疑で、私は取り上げさせていただきました。背景は、今ちょっと申し上げましたけれども、都にPFIを導入しようということで取り組んできたわけでありますけれども、そうはいっても、今指摘した病院とSPC、SPCと関連会社、協力会社間の意思疎通というものがなかなかされていないケースがあるよということで、監査で指摘をされておりました。
 それも単年度だけではなくて、数年連続して指摘をされておりましたもので、ここはしっかりと、本部としてガバナンスを発揮すべきであるという趣旨の質疑をやらせていただきました。
 前置きが長くなりました。平成二十六年度における都立四病院におけるPFI事業者の運営状況と、あわせてその主な取り組みについてご報告をいただきたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 PFI事業者の運営状況でございますが、都立病院のPFI事業においては、各PFI事業者の業務を細分化し、駒込病院、多摩総合、小児総合医療センターで月平均約六百、松沢病院で月平均約三百五十の項目について毎月評価をしております。
 平成二十六年度のモニタリングでは、おおむね要求水準をクリアしていると評価いたしました。
 過去にご指摘いただいたモニタリングの実効性の向上にも取り組み、モニタリングにおけるPDCAサイクルについても実施をしております。
 次に、主な取り組みについてでございますが、平成二十六年度は、SPCが都のパートナーとして発揮している機能の一つである経営支援機能のさらなる充実に重点を置きました。病院とSPCとが協議の上で取り組みテーマを設定し、収益改善や患者サービスの向上に一体的に取り組みました。
 駒込病院の例で申し上げますと、経営改善に向けた取り組みの統括機能を有する経営戦略室にSPC職員が参加するとともに、個別課題を検討する七つのワーキンググループにもPFI事業者の職員が参加しております。
 具体的な取り組みの一例を挙げますと、消化器系の疾患について、患者の提供した医療内容をPFI事業者が分析し、治療効果や患者負担軽減の視点からクリニカルパスの見直しを行い、入院期間の適正化を図りました。

○遠藤委員 PFI事業においてモニタリングというチェック機能をしっかりと働かせることが非常に重要だという趣旨の答弁があったと思います。
 今後も、いわゆるモニタリング、これを単なる評価ということではなくて、いわゆるPDCAサイクルによって、ローリングの中にしっかりと位置づけて、経営改善の取り組み、さらに患者サービスの向上につなげていっていただきたいと、このように思います。
 このモニタリングというのは二つあるようでありまして、まずSPCが関連業者をしっかりとモニタリングするという、これがセルフモニタリングということであります。
 あわせて、今度は発注側である病院または本部の方から、しっかりSPCをチェックするというのがいわゆる広義の意味でのモニタリングということでありますので、狭義と広義のモニタリングをしっかりとしていただく。
 そして、PDCAですから、モニタリングはCのチェックだと思いますので、その後のアクション、また、一巡してプラン、ドゥーということで、しっかりと位置づけていく。やはりそのために一番大事なのは、チェック、すなわちモニタリングであると思いますので、今、答弁がありましたけれども、駒込と多摩総合等では月平均六百、また、松沢では三百五十項目についてさまざま評価をされているということで、一つ一つを全てモニタリングにかけるというのは難しいんだと思いますけれども、そこで生まれてきたさまざまな課題や問題点、欠点等々はしっかりと見逃すことなくチェックをしていただきたいと、このように要望しておきます。
 ところで、先ほど申し上げましたとおり、PFI手法を活用した運用は四つの都立病院で開始されているわけであります。平成二十一年に一番最初にスタートしたのが駒込病院でありますけれども、この間の医療技術の進歩等々で、病院を取り巻く医療環境というのは非常に変わってきているんだと思います。
 PFIの事業契約では、こうした医療環境の変化に対応するために、PFI事業者との協議を、いわゆる五カ年協議ということで、間に中間的な協議の場を設定しているというわけであります。
 先ほどちょっといい忘れましたけれども、失敗した二つの事例は、やはり契約期間が三十年ということで、非常に長いスパンで契約をしていたということが一つの問題の温床になっていたという総括もありました。
 それも含めて都立の四病院は、十五年を契約期間ということで半分に短縮したと。最初の五年間で見直しを図るための協議を、そういう規定を設けているわけであります。
 そこで、今回の決算の年次であります平成二十六年度には、多摩総合医療センターと小児総合医療センター、これが五年を迎えたわけでありますので、この協議内容と成果について答弁をいただきたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 多摩総合医療センター及び小児総合医療センターに係る五カ年協議でございますが、多摩総合医療センターにおいては、救命救急センター及び手術室の医療作業員の増員、小児総合医療センターにおきましては、契約時には想定していなかった医療費の定額払い制度であるDPC対象病院への参加に伴い、PFI事業者に発生する費用の措置や新たに整備されたER病棟に病棟クラークや医療作業員を配置するなど、環境の変化に伴う柔軟な対応を行いました。
 また、医薬品などの調達業務のさらなる効率化や上下水道の支払い額の見直しなど、民活の効果を一層発揮するように変更いたしました。
 この結果、試算では平成二十七年度以降、毎年度のPFI事業費を約三千万円程度縮減できる見込みとなりました。

○遠藤委員 医療環境の変化、また、これまでのPFI事業者の運営状況等を踏まえた見直しを行ったと。また、お金の面でも削減ができた、そうしたアピール度もあったということであります。
 先ほどちょっと読ませていただいた近江八幡の報告書、あり方検討会の報告書の最後に、終わりにということで、こういう興味深い指摘、締めの言葉があります。
 一般的に、PFIの制度自体は、その活用方法に相当な自由度があると思われ、それゆえに個別の案件ごとの活用、運営方法の巧拙が厳しく問われる制度だといえる、そのため、公営企業の中でも内部運営や外部環境がとりわけ複雑だとされる病院事業に対して、PFI制度を効果的に活用するためには、行政側における相当緻密な契約や実際の運用の内容に関する検討が必要だと思われる、このように総括をして、これからPFIを導入する自治体については、PFI事業を病院に入れることについては、相当の緊張感を持ってやることと、無条件で同意するということがないようにしてもらいたいという警鐘が鳴らされております。
 幸い、各都立病院の職員の方、本部の皆さんの尽力、また、SPC、関連会社の皆さんの呼吸が合っていて、現時点ではPFI導入の成果が上がっているということでありますけれども、こうした過去の警鐘をしっかりと踏まえていただいて、まだ十年以上契約期間が残っておりますので、定期的にPFI事業費の妥当性をしっかりと検証していただいて、さまざまな医療環境の変化等々に適切に対応していただき、PFI事業のいわば東京モデルというか、こういうものをしっかりと発信していただきたいと、このように思います。
 次いで、都立病院のがん対策についてお伺いをいたします。
 今の質疑の中で、駒込病院についても触れさせていただきました。ここ駒込病院は、改めていうまでもなく、東京都のがん診療連携拠点病院、有明病院と合わせて二つのがん専門病院の一つになっているわけであります。がん医療においても、リーディングホスピタルとして大きな役割を担われております。
 そこで、平成二十六年度の都立駒込病院の患者数等の実績や取り組みについて、簡潔にご報告をいただきたいと思います。

○高野経営戦略担当部長 駒込病院の平成二十六年度の患者実績でございますが、外来患者数は延べ三十四万七千二十六人、一日当たり千百八十四人、入院患者数は二十四万二千七百八十六人、一日当たり六百六十五人、病床利用率は八三・〇%でございます。
 がんで入院した患者数につきましては八千八百九十五人で、平成二十五年度の八千四百七十七人に対し約五%増加しております。
 また、駒込病院は、都道府県がん診療連携拠点病院といたしまして、東京都がん診療連携協議会の運営を行っておりますが、平成二十六年度には、相談・情報部会におきまして、がん診療連携病院等の整備指針に基づくがん相談支援センターが備えるべき機能などを明確化し、都として相談支援業務を標準化するため、東京都におけるがん相談支援のあり方を取りまとめております。
 さらに新たな取り組みといたしまして、平成二十六年六月には、肝がん発症の主な危険因子でございますC型肝硬変患者に対する医師主導治験を開始し、有効な治療薬が存在しないC型肝硬変に対する新たな治療薬の開発を目指し、現在も治験を継続しております。
 今後もさまざまな観点から、都におけるがんの診療水準の向上に取り組んでまいります。

○遠藤委員 今答弁をいただきました。治療の実績も、患者さんの数も増加しておられる。
 さらには、がんは、がんと診断されたときから、肉体だけではなくて、社会的な、また、さまざまな相談事があるわけでありますけれども、それを都内の各医療機関でどういう相談体制を築くか、そのモデルというか、標準化というか、そういうものをつくるためのあり方、そういったものも駒込病院で今やっていただいている。
 これが将来的には、都内の多くの医療機関で、相談という観点でここでの取り組みが生かされる、こういう取り組みをしている。
 そして、本当に注目に値する答弁は、駒込病院でC型肝炎患者の肝硬変に対する新たな薬、これは医師主導で治験を行っているということで、私も以前、このことについて説明をお受けしたときに、ああ、そういうことがあるんだな、治験というと、製薬会社が一手にやるものだと思っていましたけれども、日ごろの治療等々だけではなくて、こういう研究も先生方一生懸命されているんだなということで、まさに都道府県のがん診療連携拠点病院、首都東京の、大きい役割を担っていただいているんだということがわかりました。
 あわせて、がんといえば、手術、化学療法と並んで、やはり放射線治療の役割が多いわけであります。
 これは、他の委員会、厚生委員会等々でも繰り返し指摘をいたしましたけれども、我が国のがん医療というのは、いささかこれまで手術療法、また化学療法に偏っていたという、いいか悪いかは別として、そういう傾向が日本でありました。
 国において、がん対策推進法ができた折に、放射線治療をその中にしっかりと加えて、手術、そして化学療法、放射線治療、これを三つの柱としてしっかりと位置づけて、国においても、また各医療現場においても、これを整備していくべきだという法的な枠組みができ、東京都の推進計画の中でもそれが位置づけられました。
 それに基づいて、駒込病院ではリニューアル時に三台の最新鋭の高度放射線治療機器が導入をされました。
 そこで、この高性能の放射線治療機器の平成二十六年度の稼働実績について報告を求めたいと思います。

○高野経営戦略担当部長 放射線治療は、がんの進行、病期、ステージごとに手術や化学療法とあわせて行われ、放射線治療技術の進歩により、高齢の方やほかに持病があって手術が難しい初期の肺がん等の患者に対し、狭い範囲に強い放射線治療を行うことで、患者さんの身体的負担を軽減しながら効果的な治療を行うことが可能となっております。
 駒込病院では、平成二十四年度に三台の高精度放射線治療装置を導入いたしまして、肺がん、前立腺がん、転移性脳腫瘍などに対する治療を実施しております。
 放射線照射技術の精度の高さに対する評判も後押しとなりまして、平成二十六年度の三台合わせた高精度放射線治療装置の稼働実績は延べ八千九百三十件で、平成二十五年度の延べ八千百四十七件に対し九・六%増加いたしました。

○遠藤委員 それぞれ高度で、そして取り扱いには非常に高い技術レベルが必要な放射線機器を現場の先生方がうまく活用していただいて、また周辺にも広げていただいて、そうした治療実績が確実に上がっているということである、そういう答弁だと思います。
 都立駒込病院、今、種々やりとりの中で明らかにさせていただきましたがんに対する取り組み、幅広くしていただいておりますけれども、今般、さきの一般質問でも私が指摘をさせていただきましたがん教育、この拠点としても力強い前進をしていただいております。
 今のところは、地元の文京区内の各学校現場との連携でありますけれども、先日の真田本部長からの答弁では、それを他の地域にも広げていくという力強い答弁がありました。
 関係する教育庁が、先般、都内の公立学校の教員を対象とした初めてのがん特別講座というものを開催いたしました。十月七日でありました。私も見学をそっとさせていただきました。
 後に教育庁の担当者の方にどんな反響がありましたかということをお尋ねしたところ、参加者の皆さん、とてもよかったという、非常に好評であったということであります。
 がんの教育の必要性を非常に痛感した、まずは教員が理解する必要性を痛感いたした、さらにはきょう学んだことを子供たちにぜひ伝え、発信していきたい、こういう声があり、そして、これはぜひ病院経営本部の皆さん、また現場の先生にお伝えいただきたいんですけれども、特にこの日講師を務められたのが、がん教育の第一人者といっても過言ではないと思いますけれども、東大病院の准教授の中川恵一先生でありますが、この先生の授業、講義は非常にわかりやすかったと。DVDを使ったり、もちろんパワポを使ったりして、講師の先生の話というか、内容というか、これに非常に魅了されたということで、非常に有意義だったということでありますので、ぜひ駒込病院の先生方も、さまざまな工夫をしていただいておりますけれども、こういった声も参考にしていただいて、さらに進めていただきたい、このことを来年度に向けて要望させていただきます。
 時間もなくなってきました。最後に、看護人材、この確保と育成について質問させていただきます。
 今、さまざま触れましたけれども、高水準で専門性の高い都立病院における医療を提供していくためには、やはりドクターとあわせて看護人材の確保と育成が重要であります。
 看護職員の仕事は患者の命、また、健康に直接向き合う仕事でありますので、大変に心身ともにハードであります。
 一般的に看護職員を取り巻く労働環境は厳しいと、こういわれております。私のもとにも何件かこうした現場の声が伝わってきます。
 さらにあわせて、そうした中でもキャリアアップを目指したい、スキルを向上させていきたい、こういう意欲的な方もいらっしゃいます。
 そうした非常に厳しい、きつい、精神的、肉体的に厳しい仕事である、さらにはキャリアアップをしたいということで、残念ながら離職する方が多いという声も、また数字もございます。
 そこで、都立病院における看護職員の平成二十六年度を含めた直近の離職率の状況について、まず答弁を求めたいと思います。

○中野経営企画部長 都立病院におけます平成二十六年度の看護職員の離職率は九・一%でございまして、過去三年の平均を見ますと九・〇%でございます。
 日本看護協会が実施した調査によりますと、常勤看護職員の離職率は、過去三年の平均で全国が約一一%、東京都全体では約一四%でございまして、都立病院の離職率はいずれの値も下回っているところでございます。

○遠藤委員 今答弁がございました。離職率が全国的にも、また、都内の病院いろいろ含めたとしても、全国では平均一一%、東京都全体では一四%、これが過去三年の平均値であるわけでありますけれども、そうした中で都立病院に限定すれば、二十六年度は九・一%、過去三カ年にさかのぼっても平均で九・〇%ということで、全国平均、また、都内の全ての病院を合わせたものよりも明らかにその率は低いということであります。
 古い資料でありますけれども、厚労省が平成二十二年度に実施した看護職員の就業状況等の調査によると、退職理由で一番多いのは出産、育児のため、そして結婚のためという調査結果が出ております。
 看護職員はもちろん女性の方が多い職種でありますので、この結果にあるとおり、結婚、出産、育児が、女性の方ですから大切な役割を担っているわけなんで、こうした結婚ですとかご出産とか育児、こうしたものを経てもなおやはり働き続けられるような、勤務環境の確保、整備、改善。今、東京都は離職率いいですけれども、こういう取り組みを引き続き協力して強力に行っていくことが必要であると思いますので、これについてどんな取り組みをこれまで行ってきたか答弁を求めたいと思います。

○中野経営企画部長 都立病院では、これまでも働きやすい職場の環境整備の取り組みを進めてまいりました。
 まず、院内保育室でございますが、平成二十年度から順次、二十四時間保育を開始するとともに、利用希望に応じて年度途中でも定員を柔軟にふやすなどの対応を行ってまいりました。
 また、平成二十年七月には、育児と仕事の両立支援のための育児短時間制度を導入いたしました。制度導入以来、利用者は年々増加しておりまして、育児短時間制度、部分休業等、育児中の職員に対する支援制度を利用しながら勤務している看護職員は、平成二十六年九月一日現在、約二百五十名でございます。
 さらには、特に若手職員にニーズの高い二交代制勤務の拡大にも取り組んでおりまして、病棟の夜勤における二交代制勤務の割合は、平成二十七年一月現在で、都立病院全体で約五割。広尾、大塚、駒込、墨東、多摩総合のいわゆる総合病院に限りますと、約六割となっているところでございます。

○遠藤委員 さまざまな勤務環境の整備ということで答弁がありました。こうした取り組みをすることによって、看護職員が働き続けることができる、こういう環境が整備されているんだろうと思います。支援制度も大変に生きているんだと思います。
 一方、先ほど指摘したとおり、看護職員の離職の防止、定着促進のためには、やはりキャリアアップ、このための支援、これも重要であると、人材育成の重要なポイントであると、このように思います。
 ことしの五月に厚生委員会で視察に行ってきました福井大学の医学部附属病院では、パートナーシップ・ナーシング・システム、PNSという制度が導入されておりました。非常に興味深く拝見をいたしました。
 一言でいうと、若手の看護師さんとベテランの看護師さんが二人ペアになって患者さんの療養に努めるという制度でありました。この制度をうまくワークしておりまして、勤務時間の短縮ですとか、さらに仕事の工夫ややりがいを引き出して、結果的に、トータルとして離職防止にもつながっているという説明をいただきました。
 このPNSが直ちに都立病院を含む全ての病院に有効に機能するわけではないと思いますけれども、こうしたさまざまな工夫をしているところもありますので、今、勤務環境整備ということで、都として、これらの取り組みをしていただいておりますけれども、こうしたいいものはどんどん取り入れていただいて、参考にしていただきたいと思います。
 そこで、都立病院における最後の質問でありますけれども、もう一方で重要な看護職員の中長期的なキャリア形成、この支援について、平成二十六年中心にこれまでの取り組みをご報告いただきたいと思います。

○中野経営企画部長 都立病院では、新人からベテランまで一人一人の習熟段階に応じまして、キャリア発達を組織的に支援いたします研修システムを構築し、看護職員の育成に取り組んでおります。
 新人職員に対する教育では、入職後三カ月間は、基本的な技術習得について、心のケアを含めたきめ細やかな指導を行いまして、その後は自立して患者を受け持てるよう、看護計画の立案を学ぶほか、臨床経験の進捗に合わせて、医療安全や看護倫理の知識を深めるなど、三年間で看護職として一人前になるよう、計画的な人材育成を図っているところでございます。
 その後も、専門分野の資格取得や管理者の養成など、職員個々に応じたキャリア形成を支援し、職員のやりがいを引き出しているところでございます。

○遠藤委員 ありがとうございました。
 看護職員の方、私も父をみとって、そのときにお世話になりました。患者さん、家族の皆さんは、医師と接する時間よりも大幅に看護職員の皆さんと接する時間が多いわけでありますので、それゆえの大切な役割があると、このように身にしみております。
 どうか、今、さまざまな観点から取り組みを進めると、こういう答弁がありましたので、ぜひ現場の一人一人の看護師の皆さんにそうした思いが伝わるように頑張っていただきたいと思います。
 きょうは、PFIの話、そしてがんの話、そして看護師さんの確保、育成の問題、この三点に絞らせていただきました。いろいろ忙しい中準備を重ねていただいて、ありがとうございました。

○和泉委員 それでは、私も特別室、いわゆる有料個室について、それと医業未収金について、この二つのテーマで質疑を行います。
 まず、特別室、有料個室ですけれども、都立病院では個室料の値上げは行っていないということですが、提出していただいた資料を見ますと、直近の五年間だけでも個室料の収益は増加しています。これはどのような理由によるものだというふうに考えていますか、伺います。

○野瀬サービス推進部長 都立病院全体の特別入院室料が増加している要因としては、有料個室数が平成十八年度と比較して全体で三十二床増加していることのほか、プライバシーが確保でき、トイレやシャワーなどが専用できる部屋を希望する患者さんが多くなるなど、社会事情が反映された結果と考えております。

○和泉委員 全体として個室がふえていること、有料個室を希望する患者さんがふえていること、そういったことが収益増につながっているということでした。
 では、次に、それぞれの病院の有料個室の金額設定と金額ごとの病床数はどういうふうになっているんでしょうか、伺います。

○野瀬サービス推進部長 都立病院の特別入院室料は、部屋の面積のほか、トイレ、シャワー浴室などの附帯設備の整備状況により、一日当たり二万八千円を上限として十三区分の金額を設定しております。
 都立病院全体では、二万八千円の個室は一床、最低料金の二千五百円の個室は十二床設置され、合計四百四十四床の特別室を設置しております。その中で最も多いのは一万六千円の個室で、全体のうちの五〇%を占めております。
 病院の一例として申し上げますと、墨東病院では一万八千円の個室が七床、一万六千円の個室が六十二床、一万四千円の個室が一床、九千円の個室が二床、合計七十二床となっております。

○和泉委員 民間の病院なんかでも建てかえに伴って有料個室をふやすという傾向が強いようですけれども、建てかえなどを行った都立病院で、建てかえに伴って有料個室をふやしている病院があるという一方で、減らしているという病院もあるようです。
 例えば駒込病院は、七十六床から百二十六床に大幅に有料個室がふえていますけれども、墨東病院は九十七床から七十二床に減っています。病院によってこのような違いがあるのはどういった事情、あるいは理由によるものなのか伺います。

○野瀬サービス推進部長 特別室の設置数についてでございますが、平成二十六年度と建てかえが始まる前の平成十八年度を比較した場合、委員からご指摘ありましたように、駒込病院では五十床ふえた一方で、多摩総合医療センターでは三十七床、墨東病院では二十五床減っております。
 厚生労働省の定める基準によれば、病院の特別室は病床数の五割以下、自治体病院においては三割以下と定められており、さらに病院経営本部では、特別室の数を病院全体の病床数の二割以内と定めております。
 各都立病院は、その範囲内で建てかえに際し建築設計を検討し、各病院の医療特性やこれまでの患者ニーズなどを踏まえて設置数を決定しております。

○和泉委員 資料を出していただきましたけれども、金額設定は二人部屋の二千五百円というのが最低、そこから病室での分娩が可能な最高額の二万八千円の個室まで、十三種類の設定という先ほどの答弁でした。
 そうしますと、この金額設定の中から、その規定の範囲内の個室を病院ごとに設定すると考えていいんでしょうか。各病院の医療特性、これまでの患者ニーズは具体的にどのようなことが配慮されるんでしょうか、伺います。

○野瀬サービス推進部長 例えば駒込病院でございますが、がんの拠点病院ということでございまして、特に心安らぐ環境を希望する患者さんが多いことを想定いたしまして個室を増加させました。
 多摩総合医療センターにつきましては、アメニティー向上のため、従前の二床の特別室をなくし、特別室は全て個室にしたため、全体数は減少しております。
 また、重症者の増加を想定して、重症者加算点数のとれる個室を増加させたことも特別室減少の一因となっております。
 このように、病院の特性や病院に寄せられる患者の声を踏まえまして、病床数を設定しております。

○和泉委員 駒込病院についていいますと、平成二十三年九月に全面改修しています。その際に有料病床を五十床ふやして百二十六床にしているというのは先ほどもいいましたが、駒込病院の入院患者はがん患者さんが多くて、特に心安らぐ環境を希望する患者が多いだろうという想定がされているんだということでした。
 けれども、建てかえに当たって、単に有料病床数がふえたというだけではないんです。九千円の個室はなくなりました。一万一千円の部屋も五十九床から二十四床に減りました。
 一方で、建てかえ前にはなかった一万四千円の部屋が四十八床、二床しかなかった一万六千円の部屋を四十九床にふやしています。つまり、比較的安い部屋をなくし、あるいは減らし、高い部屋にシフトしているんです。これは、事実上値上げといえるんじゃないでしょうか。
 その結果、有料個室の収益がどうなっているでしょうか。資料にあるように、平成二十二年に一億五千五百万円だった有料個室の収益は、平成二十六年度には四億円に上っています。
 がん患者さんたちの多くが望んでいるという心安らぐ療養環境は、高額の個室料を払える人たちにしか保障されないということになるんじゃないでしょうか。
 また、多摩総合医療センターは平成二十二年三月に開設されました。府中病院のときに比べて、有料個室は三十七減って八十六床になりました。けれども、二千五百円から一万四千円までの全ての部屋がなくなって、一万六千円八十二床、一万八千円三床、二万八千円一床というふうになっています。
 その結果、平成二十年度の有料個室料の収益が一億九千五百三十三万円なのに対して、平成二十六年度は三億二千二百万円となっています。有料個室の数は七割に減らしているのに、収益は一・六五倍にふえているんです。比較的安い部屋をなくすか、あるいは減らして高い部屋をふやし、収益を上げているということが数字の上でも示されています。
 これは、厚生委員会でも私述べましたけれども、厚生労働省は、療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等及び保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等の実施上の留意事項についてという通知の中で、特別の療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこととしています。
 この通知を踏まえれば、料金設定について、高価格帯に集中させて患者の選択の幅を狭めるべきではないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 委員ご指摘の通知でございますが、特別室の提供は、患者の意思によって行われる必要があるとしたものでございまして、料金設定についての考え方を示したものではございません。
 都立病院では、部屋の設備や面積などを基準として適切な料金を設定しており、患者さんの同意に基づきながら特別室の提供を行っております。

○和泉委員 適切な料金設定だと、なおかつ患者の同意に基づいているということですけれども、そもそも、さきの厚生労働省の通知も、国や地方公共団体が開設する病院で有料個室を多くし収益を優先させることは、公的性格に鑑み望ましくないと。そう考えているからこそ、有料個室の占める割合を民間の病院より低く設定しているんではないのでしょうか。
 都立病院は、都民の税金を一般会計から繰り入れて運営されていますから、経営というものを全く考えなくていいというつもりはありません。しかし、都立病院がどのような役割を果たすべきかということを考える必要があると思います。
 都立病院の患者権利章典は、一番初めに、誰でも、どのような病気にかかった場合でも、良質な医療を公平に受ける権利があるとうたっています。お金のあるなしで、医療や医療関係が違っていいのかということが問われていると思います。
 個室料の増加について、社会事情の反映された結果だという答弁がありましたが、社会事情ということをいうなら、深刻な貧困と格差の広がりこそ考える必要があります。非正規雇用が広がって、賃金が下がり続けて、年金も減らされる一方で、医療費の窓口負担は引き上げが繰り返され、経済的な負担から十分な医療を受けられないという実態は広がっているんです。
 日本医師会が二〇一二年に行った調査では、過去一年間に経済的な理由で受診しなかったことがあると答えたのは、一割負担の人で六・六%、二割負担、三割負担の患者ではそれぞれ一〇・二%、一一・五%に上り、そのうち半数強の患者が受診を控えた結果、症状が悪化したと回答しています。
 民医連が毎年行っている経済的理由により医療を受けず、手おくれになって死亡した事例の調査では、毎年何十件もの事例が報告されています。
 こうした医療を受けることが困難、ましてや差額ベッド代を払うことができないという方々のことこそ一番に考える必要があるんじゃないでしょうか。せめて都立病院は、どのような経済事情の方にも同じように医療を提供する、そのために差額ベッド代はとらない、少なくとも負担をふやすことはしないということが求められているんだと思います。高い料金設定にかえて収益を上げるというのは、都立病院としてやるべきではないと考えます。
 続いて、医業未収金について伺います。
 医業未収金の増加が四億八千七百九十四万円ということですけれども、このうち無保険者の未収金が幾らになっているかは把握しているでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 医業未収金には、原則三割の個人負担分の未収金以外に、国保連合会及び社会保険支払基金から入金される未収金、いわゆる基金分の未収金も含まれております。
 二十五年度と比較し、二十六年度の医業未収金が四億八千七百九十四万円増加した内訳についてでございますが、基金分は、診療収益の増加に応じて二十五年度、百七十九億五千万円から、二十六年度、百八十五億五千八百万円と六億八百万円増加しております。
 一方で、個人分は二十五年度、二十億九千四百万円から、二十六年度、十九億七千四百万円と一億二千万円減少しております。
 なお、都立病院を受診する患者さんについては、個別に必ず保険の確認を行っておりますけれども、未収金全体について保険か無保険かの観点での集計は行っておりません。

○和泉委員 個人の未収金は減っているんだという答弁でしたけれども、昨年の第三回定例会で、病院経営本部の私債権放棄が六百六件、金額にして六千三百十九万四千五円と報告されました。
 そのうち、無保険で受診した件数が三百九十九件、金額は四千四百八十三万九千七百十六円、当該年度に放棄した債権に占める割合は、件数でいうと六六%、金額で七一%に上っています。まるっきりイコールではないにしても、医業未収金を見る上では相当数が無保険であると考えられますが、いかがでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 過去に行いました都立病院における未収金発生理由調査によれば、保険証のない患者さんの割合は六・二%でございました。

○和泉委員 今ご答弁がありましたのは、平成二十三年九月もしくは十月の一カ月間の徴収猶予申請書調査というものの中の個人未収金の発生理由ということだと思うんですけれども、これを見てみますと、この発生理由の中の保険申請中というのが確かに六・二%なんですけれども、この調査、保険申請中という項目だけではなくて、例えば手持ち金不足だった、保険証を忘れた、公費申請、あるいは交通事故と、そういった数字が含まれています。
 そして、さらに保険証を持ってなかったという保険申請中というのも、必ずしも無保険だった人が全てということにはならないんだというふうに思うんです。そもそも無保険の人を調べる調査ではないわけですから、仮に無保険の方がほかの項目には含まれていなくて、全て保険申請中の人だけだというふうに仮定したとしても、だとしたら、このわずか六・二%の無保険の患者さんたちが、行く行くは債権放棄となる金額の七割を占めるということになるんじゃないんでしょうか。
 回収が困難となってしまうものの多くは、払いたくても払えないということではないんでしょうか。
 病院経営本部として、未収金を減らす根本的な解決のためには、回収を強化するだけでは不十分だと思います。未収金のうち、無保険者がどのくらいいるのか、保険料の滞納によって保険証の交付がとめられてしまったものがどのぐらいあるのか、払いたくても払えない患者さんがどのくらいいるのか、そのような背景も含めて調査や分析をする必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

○野瀬サービス推進部長 病院経営本部といたしましても、未収金発生にはさまざまな背景があると認識しております。
 具体的には、経済的な事情のほか、救急受診による持ち合わせがない、あるいは保険証不携帯、医療費助成を申請中、交通事故による被害者の医療費の調整中、外国人患者さんなどというふうに分析しております。

○和泉委員 さまざまな理由で国民皆保険制度の枠からはじかれてしまって、病院からも遠ざかっている、そういう人々がいざというとき、全額自己負担で受診しなければいけなくなります。
 けれども、結局払えずに医療給付費十割全額が未収金となる、このようなケースをこのまま未収金というだけにとどめて何年も回収するための手間をかけ、それでも回収し切れずに債権放棄する、そういうことがこれまでも繰り返されてきたということじゃないでしょうか。
 少なくとも生活困窮によって生じている未収金に関しては、回収を強化するだけでない方法を探る必要があるのではありませんか、いかがでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 未収金については、回収努力以外にも、未収金を発生させない発生防止策が重要でございます。そのため、各都立病院では、健康保険制度を初め、高額療養費制度や出産育児一時金制度、難病医療費などの公的な医療費助成制度などの紹介や相談に応じております。
 さらに、窓口や病棟の職員が患者さんのさまざまな問題を早期に把握し、経済的な問題を抱えている患者さんに対しては、医療ソーシャルワーカーと連携して相談支援を行うなど、積極的に働きかけも行っております。

○和泉委員 そのような社会保障制度、あるいは公的給付の制度を知らないという方がたくさんいるのは私もよく知っています。さまざまな方からそのような相談も受けてまいりました。
 ですから、公的制度について丁寧に紹介をし説明することは重要ですし、知らないために受けられるはずの給付や支援が受けられない、そういうことがないよう、今後もぜひ引き続きお願いしたいと思っています。
 ただ、それはあくまで公的医療制度、あるいは公的な社会保障制度の枠の中の話です。無保険状態になっている方たちにはこれらは当てはまりません。無保険状態の患者さんの医療費が結果的に私債権放棄の七割に上っているんです。
 ほかの病院では診てもらえない、そういう患者さんたちにとって都立病院が頼りです。都立病院は、都民の命と健康を守ることを使命としているわけですから、ここにも都立病院の非常に大きな存在意義があると思います。
 無料低額診療制度を導入すれば、そのような患者さんたちが安心して受診できます。未収金の発生も減らせます。
 昨年の事務事業質疑のときに、都は、無料低額診療導入のためには、生活保護を受けている者及び無料または診療費の一〇%以上の減免を受けた者の延べ数が取扱患者の総延べ数の一〇%以上であることが必要であるとして、例えば大塚病院の平成二十五年度における延べ外来患者数に占める生活保護受給の延べ患者数の割合は五・一%にしかならない、だから該当しないと答弁しています。
 けれども、生活保護の比率だけではなくて、減免を受けている人も合わせた延べ数が一〇%ということになっているわけですから、ぜひ無料低額診療制度の導入を改めて検討していただくよう強く要望して質疑を終わります。

○河野委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時一分休憩

   午後三時十六分開議

○河野委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○島田委員 私からも二十六年度の東京都病院会計決算についてお伺いをさせていただきます。
 東京都病院会計の決算において、先ほど資料にもありましたけれども、繰入金の推移を見ますと、ここ三年間は四百億を下回る水準ということになっているかというふうに思いますが、本年度より社会保障関連経費、これは東京全体の予算ですけれども、その中で一兆円を上回るということでございます。今後、少子化が進んでいきまして、東京都全体の医療費が増加することは確実であります。
 都立病院は、救急病院、周産期医療、感染症医療を初め、採算性は低いといわれる高度な行政的医療を担っております。一方で、その高度医療の質を維持、高めながらも、経営効率を追求し、支出を抑制しながら収入をふやし、収支のバランスを保つ必要があるというふうに思っております。こうした基本認識のもと、質疑を行いたいというふうに思います。
 平成二十三年の分科会でも、バランススコアカード、いわゆるBSCの活用とその効果についてお伺いをさせていただきました。バランススコアカード、BSCを上手に活用し、病院経営を進めていく必要があると考えております。その後のBSCの活用状況と経営的な効果について確認をさせていただきます。
 そこでまず、平成二十六年度は都立病院でBSCをどのように策定してきたのかお伺いさせていただきます。

○中野経営企画部長 BSCでございますが、顧客、財務、内部プロセス、学習と成長という四つの視点から、バランスよく、多面的かつ関連性を持って実績を捉え、病院の方向性を組織の末端まで浸透させ、その達成、実行を促す経営管理手法でございます。
 BSCは、経営管理の一環といたしまして、平成十六年度から、病院経営本部BSC及び各病院BSCを策定し、運用を開始しました。平成十七年度からは、病院の各部門におきましてもBSCを策定しております。
 平成二十六年度でございますが、本部のBSCと病院BSCの関連性を持たせまして、本部と各病院が一体となって目標達成を目指すことを目的として、八つの共通指標を設定して策定したところでございます。

○島田委員 今もありましたとおり、本部のBSCと、そして各病院のBSCの関連を持つと。本部のビジョンのもと、そして病院と一体的に経営を行っていくということが本当に重要だというふうに思っております。
 病院経営本部のBSCの一番最初のところにビジョンというのがあるんですけれども、そこには、都立病院改革において強化した医療機能を最大限活用するとともに、安定的で強固な経営基盤を確立することにより、都における安全・安心の医療を継続的に提供すると。これが病院経営本部の一番のビジョンでありまして、そのビジョンが各病院、お互い理解のもと、そしてこのBSCをうまく活用し、本部とそれぞれの病院が関連しながら一体的に目標を立てて、そして、その目標を達成することが重要であるなと、そのように考えております。
 ところで、平成二十六年度のBSCにおける各管理指標の達成状況はどうだったのかお伺いをさせていただきます。

○中野経営企画部長 各病院のBSCに設定されております管理指標でございますが、例えば、顧客の視点では患者満足度、財務の視点では給与費比率、内部プロセスの視点では災害医療研修の受講率、学習と成長の視点では医師アカデミーレジデントの定着率などがございます。
 このような指標を各病院でそれぞれ二十指標程度設定しているところでございます。本部と八病院の管理指標を合わせますと全部で二百十三ございます。このうち目標を達成した指標は百九、全指標数に対する達成率は五一・二%になっているところでございます。

○島田委員 今、ご答弁がございましたように、達成率が全体で五一・二%ということですか、全部で二百十三あって、達成したのが百九ということでありまして、五一・二%ということであります。目標には達成していない指標が半数あるということで、今後はこの達成率を高めていく必要があると、そのように思っております。
 ところで、各管理指標におきまして、目標を達成していない指標についてのその後のフォローはどのように行っているのかお伺いいたします。

○中野経営企画部長 それぞれの管理指標につきまして、上半期、下半期ごとに実績値を集計いたしまして、目標が未達成の場合には原因の分析をするとともに、その後の取り組みに反映させているところでございます。
 また、各病院は、前年度のBSCの目標達成状況を踏まえまして、翌年度の管理指標及び目標値を設定しております。
 さらに、年度当初に病院長が病院経営本部長に対して、病院運営に関するプレゼンテーションを行っておりますが、その際、BSCの目標未達成の指標につきまして、改善策などの意見交換を実施しているところでございます。

○島田委員 その目標達成についてのフォローが大事であるということであります。目標未達成の場合には原因分析とその後の取り組みに反映するとの答弁でございますが、各管理指標における目標を達成していない指標の後のフォローが大切だと、そのように思っております。
 それでは、例えば平成二十六年度病院経営本部BSCの管理指標の中に、未収金発生率というものがあります。これは目標は達成していないようであります。
 そこでまず、この未収金発生率の目標値及び実績がどうだったのかお伺いいたします。

○中野経営企画部長 未収金発生率でございますが、その年度の患者の個人負担分の診療費総額のうち、年度末に残った未収金額がどのくらいあったかをあらわす比率でございます。
 八病院の合計を病院経営本部BSCの財務の視点の管理指標として設定しておりまして、二十六年度の目標値は二・七%でございました。
 実績としましては、金額につきましては二十五年度末の未収金額が三億六千万円だったのに対し、二十六年度は約一割減少となりましたが、発生比率としては二・八%でございまして、目標に〇・一ポイント及ばなかったところでございます。

○島田委員 ご答弁の中で、金額は一割減少しているということでありますけれども、目標は〇・一%及ばなかったということでございます。ぜひ、先ほどほかの委員からも、この未収金についてはいろんな課題があるというようなことで議論がありましたけれども、この目標達成に向けて、まずは努力してもらいたいというふうに思っております。
 それでは、この目標を達成しなかったことについて、どのような原因分析を行い、今後の取り組みにどのように反映させていくのかをお伺いさせていただきます。

○中野経営企画部長 二十六年度の目標値でございますが、過去三カ年の数値を参考に設定させていただきました。未収金につきましては、標準業務手順の徹底、各病院への未収金回収専門員の配置、未収金回収業務の弁護士委任、困難案件の本部での処理などの対策を行いまして、その回収に努めているところでございます。平成二十四年度三・三%、二十五年度三・一%、二十六年度二・八%と着実に実績を上げてきております。
 こうした回収対策に引き続き積極的に取り組むとともに、院内の連携により、経済的な課題を有する患者を早期に医療相談に結びつけることや、持ち合わせが少ない方でも可能な限り部分入金していただくなど、発生を未然に防止する対策も強化してまいります。

○島田委員 この未収金の回収の比率ですけれども、二十四年から、三・三%、三・一%、二十六年は二・八%と、実績は上昇しているということでございます。
 この未収金に関しましては、先ほどの委員からのご指摘もありましたけれども、経済的な課題を有する患者さんだとか、あるいは外国人の方々とか、さまざまな課題があるというようなことは承知をさせていただいておりますけれども、この未収金の、全体的には三億にも及ぶ未収金額があるということでございますので、この点、経営的な側面から、ぜひこの未収金回収に対する対応を継続して行っていく必要があろうかと、そのように思っております。
 BSCは作成するだけでなく、その後のフォローも行われているということでございます。BSCについてはその後のフォローも含めて、組織として運営する仕組みが構築されているとのことであって、恐らく目標値を達成していないその他の指標についても、しっかりフォローされているんだろうと考えております。
 ところで、このBSCを見てみますと、経営管理指標の中で紹介率という項目があります。この紹介率とは、地域医療機関に都立病院への紹介状を書いてもらうという医療連携の手続だというふうに思いますけれども、その率を示すものであるというふうに思います。
 この紹介率の目標は達成しているものの、それほど大幅にふえていないようであります。今後、高齢化の進展に伴い、医療需要が増大していく中で行われる病床機能の分化によりまして、患者紹介を通じた地域医療機関との連携は非常に重要な課題というふうに思っております。
 そこで、紹介率の実績はどうだったのか、また、どのような取り組みを行ってきたのかお伺いします。

○中野経営企画部長 平成二十六年度の紹介率の実績でございますが、七四・七%でございまして、目標値を〇・二ポイント上回りました。紹介率を向上させるため、各病院におきましては、診療科の医師を紹介する冊子や医療連携に関する広報紙を作成して、地域医療機関に配布する、あるいは地域の医師との研修会や連絡会を実施する、そして連携医への訪問をすると、医療連携を促進する取り組みを行っているところでございます。

○島田委員 今、医療連携のさまざまな形について答弁がありましたけれども、それで、先ほどは紹介と、あと逆紹介ですか、地域病院から都立病院へ紹介していただいて、都立病院でよくなったらまた地域病院を紹介すると。逆紹介も積極的に進めているという、この前に議論がございましたけれども、そういった形で、これは患者さんの増加にもつながるというふうに思いますので、ぜひ今後とも地域医療機関との連携を引き続き推進していっていただきたいと、そのように思っております。
 病院は一層の経営努力の必要があるというふうに思っております。経営的な努力というと、まず支出の無駄を省くということであるというふうに思います。
 平成二十六年度の決算を見ると、支出で一番金額が多いのは給与費であります。一方で、平成二十六年度のBSCの財務の視点の関連指標の中に給与費比率という項目がありますけれども、平成二十六年度の実績は六五・九%でありまして、目標は達成されておりません。
 そこで、対前年度と比べると給与費比率はどうなっているのかお伺いいたします。

○中野経営企画部長 給与費比率でございますが、医業収益から一般会計負担金を除いた金額に対する給与費の割合でございます。平成二十五年度の実績は六四・七%でございまして、一・二ポイント悪化したところでございます。

○島田委員 人件費の比率は六四・七%ということで、一・二%の悪化ということでございますが、悪化の要因というのはどんなことが考えられるんでしょうか。

○中野経営企画部長 悪化の原因でございますが、人員をふやしたということがまず一点ございます。それから、あと、給与費改定がございまして、結果的に上昇したということでございます。

○島田委員 病院の人件費を削減するというのはなかなか難しいと。医療の質をよくするためには人員を増加していかなくてはいけない、あるいは給与費が公務員の基準に合わせて高くなっていくというようなことで悪化したということでありますけれども、経営的な観点からすると、人件費を削減すれば経営改善に大きく寄与するように見えますが、病院はなかなかそう簡単ではないというふうに思います。
 そこで、人件費についてはどう考えているのか、また、もし今人件費の削減が難しいようであれば、どのような経営努力が行えるのかお伺いいたします。

○中野経営企画部長 病院におきましては、質の高い医療サービスを安定的に提供していくためには、一定の人員の確保が必要でございます。そのため、経営努力という点では、人員の削減というのではなく、まずは収益の確保が重要でございまして、診療内容について他病院とベンチマーク比較を行いまして、医療の標準化を実施し、診療単価の増加を図る必要がございます。
 また、診療報酬の施設基準におきましては、より上位の基準を取得して収益を確保する、あるいは地域医療機関との連携を強化して新たな患者の確保に努める、こうした取り組みを今後強化してまいりたいと考えております。

○島田委員 人件費を削減するということはなかなか難しいということでありまして、そのほかにさまざまな収益の確保があると思います。その中で、先ほど申し上げた医療連携なんかもそうであるというようなことでありまして、今ご答弁にありましたように、さまざまな方法で経営努力を行いながら、収益の確保に取り組んでいただきたいと、そのように思っております。
 ところで、同じ財務の指標の中に、後発医薬品使用率、ジェネリック医薬品ですね、の指標があります。この後発医薬品の使用率を上げれば費用を抑えることができると考えております。この指標は目標値を大幅に上回った実績を上げております。
 そこでまず、後発医薬品の目標値及び実績についてお伺いいたします。

○中野経営企画部長 後発医薬品の目標値でございますが、後発医薬品、先発医薬品、ともにある医薬品におきまして、後発医薬品をどれだけ使用したかという比率を使用率として算定しております。
 二十六年度は六三・六%を目標値といたしました。各病院では後発医薬品をリスト化いたしまして、他病院での使用実績、メーカーの情報提供体制、安定供給の可否等、さまざまな観点から先発薬からジェネリックに変えることが適切か否かを院内の委員会で検討いたしまして、後発医薬品の使用を推進しているところでございます。
 その結果、平成二十六年度は目標値を五ポイント上回ります六八・六%という実績を上げることができました。

○島田委員 今、この後発医薬品が六三・六%の目標に対して、その実績は、大きく上回る六八・六%というご答弁がございました。
 それでは、この後発医薬品を採用することによって、経営的にどのような効果があったのかお伺いいたします。

○中野経営企画部長 共同購入しております後発医薬品を先発品と薬価ベースで比較いたしますと、最低でも約六億円の削減効果があると試算しております。
 後発医薬品の採用につきましては、経営的なメリットとともに医療費の抑制にも寄与するものでございまして、重要な取り組みであると認識しております。
 今後も後発薬の情報収集や病院間での情報共有を進めながら、積極的に取り組んでまいります。

○島田委員 六億円の削減効果というのはかなり大きいなというふうに思っているところでございます。全てを後発医薬品に切りかえるということはなかなか難しいのかもしれませんけれども、この院内の委員会での検討をしっかりして、後発医薬品の推進を行いながら、こうした経営努力により支出を抑えて、そして収入をふやす、そして収支のバランスを保ってもらいたいと、そのように思っております。
 ここまで、BSCを見ながら都立病院の経営について考えさせていただきました。都立病院の経営を進めていくためには、顧客の視点、すなわち患者の満足度をいかに高めていくかが重要だというふうに考えております。目標を高く持ち、そしてその目標の達成に向けて努力すれば、患者さんの満足度も高まり、都立病院はますます発展していくというふうに思います。
 真田本部長のリーダーシップのもと、病院経営本部のさらなる活躍を期待させていただきまして、質疑を終わらせていただきます。

○上田委員 初めに、自治体病院、都立病院というものは、地方自治体としての都の組織であるとともに、医療機関という二つの側面を持っております。
 医療提供についていえば、地方自治体政策の一環として、不採算を度外視した上で、医療サービスを地域住民へ提供する一方で、私的医療機関へは補助を出し、なおかつ、民間である彼らと同様に医療を提供している面から、収支は均衡させねばならないという、いわば相矛盾しかねない二つの要素を求められてしまうわけです。
 しかも、都は都立病院に加え、さまざまな医療部門を抱えております。それを踏まえ、以下伺います。
 まず、総括的に都の医療政策について基本的な考え方を伺います。
 都は都立病院に加え、公社病院、福祉保健局のセンター、監察医務院等さまざまな医療部門を抱えておりますが、どのような都民のニーズを踏まえそれらを整備されてきたのか、その中で都立病院がどのような機能を担うべきなのか、基本的な考えをお聞かせください。

○高野経営戦略担当部長 都民の誰もが、いつでも、身近なところで必要な医療サービスが受けられる体制を実現するためには、都や医療提供施設などがそれぞれに求められる役割を果たすことが必要でございます。
 都立病院では、災害医療や感染症医療など、法令に基づき対応が必要な医療や、救急医療、周産期医療など、社会的要請から特に対策を講じる必要がある医療など、行政的医療と位置づけてきた医療を適正に都民に提供することを基本的役割としております。
 超高齢社会の到来による医療ニーズの増大とともに、合併症や複数の疾病を有する患者の増加が見込まれており、都立病院は総合診療基盤を活用し、引き続き基本的役割を踏まえながら、医療の高度化や疾病の複雑化に適切に対応していくべきと考えております。

○上田委員 では、都はどこまでそれらのニーズに応えるべきか、またその対応が過大になっていないのか、私的医療機関の医療サービスの供給者としてのそれぞれの位置づけ、専門職集団としての医師会との相互協力についての現在の考え方をお示しください。

○高野経営戦略担当部長 入院医療を必要とする都民が必要かつ適正な期間の入院医療を受けることができるためには、病床を効率的かつ適切に活用する必要がございます。そのため、東京都保健医療計画におきまして、医療法施行規則等に基づき、基準病床数を定めております。
 また、都民に対し適切に医療を提供するためには、医療機能に基づく役割分担と医療機関相互の連携が重要でございます。都内には、全国を対象とした高度医療を提供する十五の特定機能病院を初めとした六百を超える病院が存在いたしますが、そのうち都立病院では、都内の病床数の約四%を担い、行政的医療を適正に都民に提供することを基本的役割といたしまして、他の医療機関等との密接な連携を通じて、良質な医療サービスの提供に努めております。

○上田委員 都内の病床数の四%、大きな責任を担われていること、お考えはわかりました。
 都立病院の歴史的背景を踏まえましても、公共的な医療サービスの確保は不可欠であると考えますが、民間医療体制が整備されてきた都においては、都立病院の果たすべき役割は、より公共性が求められ、実現のために地域における医療や社会問題を解決する施設、組織としての役割に集中するため、都立病院改革推進プランにもありますように、医療機関の集約とネットワークの充実強化と患者中心の医療に特化すべきものと考えます。
 その上で、個別の課題について伺います。
 まず、精神医療、特に松沢病院についてです。
 ことしに入りまして、東京以外ではございますが、千葉の石郷岡病院におきまして、男性准看護師が精神科病棟の男性患者を暴行し、首を骨折させ、二年半後に死亡した件から傷害致死容疑で逮捕されました。
 今月一日には、厚労省が行政処分を下した神奈川の聖マリアンナ医科大学の精神保健指定医不正取得問題で医師二十三人が業務停止となり、処分された人数としては過去最多となったと報じられております。
 都においても、精神疾患患者の生活保護受給者を特定医療機関へあっせんした事案がことし四月に明らかとなり、即日、塩崎厚生労働大臣より、都を通じて適切な指導を強く求める異例のコメントが出て、さらに八月には、同省から不適切な受診誘導を発生させぬ旨の通知が発出され、都は、今日的な課題として早急な対応を迫られているところです。
 これらの問題を受けて、都立病院においての精神医療についてお尋ねします。
 都においては、昭和五十六年より顕著に精神及び行動の障害受療率が増加しており、向精神薬の医療費も急増しております。通常、治療薬がふえれば疾患は減退していくはずであるにもかかわらず、増加傾向にあることに矛盾を感じずにはいられません。
 この点を踏まえた精神医療の現状、精神科二次医療機関での救急、多剤多量の課題認識、向精神薬投与についての現状と考え方についてご説明ください。

○野瀬サービス推進部長 精神科医療は、入院中心から精神疾患の患者が地域の中で生活することができるようにする方向に進められており、松沢病院では、地域で生活する患者に時として必要となる精神科救急医療にも積極的に取り組んでおります。
 精神科を受診する患者数の増加の要因については、近年の新型鬱や若者不適応の増加などを背景として、従来は精神科を受診しなかった患者も、メンタルヘルスの治療に精神科を受診するようになっている状況があると考えております。
 次に、向精神薬についてでございますが、向精神薬とは、中枢神経に作用し、精神機能に影響を及ぼす薬物のことをいいますが、この薬も精神疾患に対する万能薬ではなく、治療薬の使用の増加がそのまま精神疾患の減少につながるとはいい切れないと考えております。
 しかし、向精神薬にはさまざまな精神疾患の症状を抑制する効果があり、適切に使用すれば患者の治療に有効であります。この向精神薬は、精神科医療の進歩に大きな役割を果たしておりますが、一方で、その多剤大量投与が問題になっていることも事実でございます。
 松沢病院では、従来から多剤投与による副作用リスクを減らす努力を続けており、院内の調査では、一剤のみの処方が四三・六%、二剤以下の処方で七八%となっております。

○上田委員 適正処方により医療費の縮減もまたできることと思います。
 続きまして、インシデント・アクシデント・レポートによりますれば、通常、薬剤、転倒・転落、抜去の順であるところ、精神科系におきましては転倒・転落がトップになっております。
 昨年二月に、松沢病院職員によります患者への暴行行為が看護実習生のアンケートにより明らかになりました。松沢病院では、資料18によれば、身体拘束も隔離も行われているということです。
 昨年の暴力事案を受けての再発防止はもちろん、障害者虐待防止法にも基づかれた、入院患者への身体的暴行、精神的虐待防止に向けましての患者のQOLの取り組みと、そうはいっても、隔離や身体拘束をしなければならない課題について、対策と考え方をお示しください。

○野瀬サービス推進部長 松沢病院では、患者が個人として尊重されるという権利について、職員の意識を徹底するとともに、組織としての適切な対処を行える体制をつくるため、職業倫理の向上や専門職としての技術向上のための研修、院内の活動を見守る外部有識者を交えた委員会の設置、報告体制の整備、相談しやすい環境づくりやストレスマネジメント研修など、さまざまな患者への暴力、暴言の再発防止対策に取り組んでおります。
 また、精神科医療の質を高めるため、院長のリーダーシップのもと、できる限り身体拘束を行わない取り組みを進め、拘束率も減少させてきております。患者の状況によっては、治療の必要性や、意図的にみずから身体を傷つける自傷を防止する目的で隔離、拘束せざるを得ない場合もございますが、その必要について、毎日多職種でカンファレンスを行い、必要最小限にとどめるよう努力を続けております。

○上田委員 続きまして、死亡退院についてお尋ねします。
 身体疾患を併発していることは承知しておりますが、資料16、17をごらんいただけますでしょうか。死亡退院数は毎年九十件前後を推移、うち六十歳以下では平均十五人、二十六年には十代が二人亡くなっています。
 全国の精神科病床数三十三万七千五百七十九床で死亡退院数は月千七百九十四人、年換算すると二万一千五百二十八人が亡くなっており、病床当たりの年間死亡退院数の割合は六・三八%になります。
 一方、松沢精神科は八百床で、資料によれば死亡退院の五カ年平均は八十七・二人ですから、病床当たりの年間死亡退院数の割合は一〇・九%です。つまり、全国平均と比較すると、松沢病院精神科は、数字だけ見れば二倍近くの死亡退院率とも捉うこともできます。死亡率ということも見てとれます。
 17の傷病分類においては、呼吸器を理由とするものが三六%と、通常の日本人の死因は、がんがトップで三割ということを考えますと、少し異質な状況だと考えますが、嚥下性、誤嚥性肺炎も疑われ、死亡退院の現状と死亡原因についてのご所見を伺います。

○野瀬サービス推進部長 患者の誤嚥性肺炎も含めて呼吸器疾患などによる死亡退院が多い状況となっておりますが、これは、精神疾患を持つ患者が高齢化などにより、身体の疾患を併発し、一般の精神病院から松沢病院の合併症病棟に転院するケースが多くなっているためでございます。認知症を有する高齢者などが誤嚥性肺炎の治療を目的に、他の医療機関から紹介されるケースも多い状況にあります。
 また、精神科病院である松沢病院では、がんの専門的な治療を行えないため、がんの治療については他の病院で行う場合が多いという状況があります。
 こうした病院の特性や機能から、日本人の死因の割合とは異なった死亡原因の比率になっているものと考えております。

○上田委員 今後も定点観測をさせていただきたいと思います。
 さて、身体拘束についてですが、近年その実態が明らかになるとともに、国内外からの批判が高まり、厚労省においても身体拘束ゼロに向けての取り組みが進んでおります。
 松沢病院においても減少傾向にあるものの、資料18では、千五百人もの患者さんがまだ対象となっております。隔離実施患者も、部屋がふえたということで増加しているところも気になる点です。
 患者の人権尊重及びQOLに即した身体的拘束の廃止に向けての取り組み、隔離に関しての必要性と現状の課題、今後どうしていくかについてお示しください。

○野瀬サービス推進部長 隔離、拘束については、精神保健福祉法に基づき、自殺企図や自傷行為が切迫している場合や、一般の病室では医療または保護を図ることが困難な場合に限って行われております。安全に患者さんの治療を行う上で最低限の拘束や隔離が必要な場合もあるものの、今後とも、家族との話し合いなどを行って理解を得ながら、また、関係職員が十分に患者の状態を見きわめつつ、さらに隔離、拘束を減らす取り組みを進めてまいります。
 松沢病院では、民間病院では対応が困難な重症患者を多く受け入れておりますが、身体拘束率は、平成二十四年度は一五・三%、平成二十五年度は九・八%、平成二十六年度は八・一%と着実に減少しております。

○上田委員 身体拘束の状況、ありがとうございます。
 しかれども、当事者である患者や家族にはやはり苦痛が伴うものであることから、当然、患者の人権優先、最小限のもの以外認められるべきではないというところであります。
 患者、家族のインフォームド・コンセント、拘束中、拘束後のケアについての考え方をお示しください。

○野瀬サービス推進部長 治療上、拘束、隔離を行わざるを得ない場合は、患者家族にその理由を明確にして文書で必要性を説明するなど、インフォームド・コンセントに努めております。
 また、拘束中の患者の状況については、頻回に患者の状態をチェックして、肺塞栓症対策にも取り組むなど、安全・安心の医療を提供しているところでございます。
 また、拘束後は身体状況の確認や患者への声かけ、不穏な行動がないかなど、患者の安全に十分配慮しております。
 なお、松沢病院では、拘束を受けた患者に対しても、調査用紙による患者アンケートを実施し、患者の率直な意見を医療スタッフが把握しながら、拘束を減らすよう努めております。

○上田委員 ありがとうございます。
 WHOの二〇〇五年の勧告では、電気けいれん療法は、患者本人、もしくは家族、もしくは保護責任者からインフォームド・コンセントを経た場合にのみに限って使用すべきとしており、効果に懐疑的な神経科医も少ない中、実際に効果が上がっているのか、一千件を超えていることを踏まえての、この治療法に関する対応状況、都としてのご見解をお聞かせください。

○野瀬サービス推進部長 電気けいれん療法については、薬物治療の効果が見られない場合や自殺の危険が迫っているなど、早急に状態の改善が必要な場合であり、かつ治療効果が見込まれるものに限るなど、十分適用を検討した上で実施しております。
 また、安全に行うよう、麻酔科医の協力のもとに全身麻酔で行う修正型電気けいれん療法を実施しております。ほとんどの場合、自殺念慮や興奮が消失するなど顕著な効果が見られ、臨床的に有効な治療法であると考えております。
 なお、松沢病院で修正型電気けいれん療法の実施件数が多い背景としては、麻酔科医の管理のもとにおいて、安全に治療を実施する環境が整っているため、この治療を必要とする患者が一般の精神科病院から紹介されて来院することが多いためでございます。

○上田委員 常に最新の医療情報を集め、その効果についてはゼロベースで毎度毎度検証していっていただきたいと思います。
 次に、松沢病院の大小のデイケアプログラムに及びまして、資料12を取り寄せさせていただきました。社会復帰病棟での成果並びに就労支援に向けて、区市町村、関係機関とのコーディネートと自立支援の実績、成果、評価等についてお聞かせください。

○野瀬サービス推進部長 松沢病院におけるデイケアプログラムは、音楽や絵画、スポーツなどのほか、ソーシャルスキルトレーニングや学習会など、さまざまなプログラムを組み合わせております。このデイケアや社会復帰病棟での入院生活を通じて生活のリズムをつくり、同じ病気を体験した仲間との交流の中で対人関係能力の向上を図るなど、安定した社会生活を送ることができることを目指した取り組みを実施しております。
 また、就労を目指す患者さんについては、地域の就労支援センターやハローワークなどを活用できるよう、ケースワーカーが支援しております。
 デイケアを終了した人の半数程度は、アルバイトや作業所などへの就労や、復学、就学に結びついており、これらの取り組みが患者さんの社会への復帰に効果を上げているものと考えております。

○上田委員 引き続き関係各機関と社会復帰に向けてのサポート、実績を残すような取り組みをお願いしたいと思います。
 さて、資料14によりますと、長期入院患者は激減しているところでございます。一旦退院して、ほかの精神科病院に再入院ということもあるのかなとは思っておりますが、長年にわたる長期入院患者、入退院を繰り返す、結果的な長期入院または措置入院は、医師の一存で法律的にできてしまうことからも、患者と家族の立場に立った治療や、入院を担保するための精神障害者、心神喪失者等医療観察法法律補助のような第三者相談機関の関与などの観点や取り組みの状況の考え方をお聞かせください。

○野瀬サービス推進部長 松沢病院では、これまで長期入院患者の解消に努め、患者の地域移行支援を推進してまいりました。
 一方で、退院後の患者が一時的に状態が悪化し再入院が必要となった場合には、適切に対応しております。
 都が指定する精神保健指定医二名による措置鑑定に基づき行う措置入院は、自傷他害の危険性がある患者に対してやむを得ず行う措置でございまして、状態が落ちつけば速やかに措置入院から医療保護入院へ、さらには任意入院へ切りかえるなど、患者と家族の立場に立った治療や患者支援に取り組んでおります。
 さらに、松沢病院では、第三者の医師、看護師が院内の患者の処遇などを評価し、スタッフと意見交換を行い、医療の質のさらなる向上を図る第三者評価の取り組みを平成二十六年度から独自に行っております。

○上田委員 その長期入院患者の地域移行支援ですが、都区市町村の福祉資源を調べてみると、多岐、多数に分かれております。江戸川区だけでも千八百ぐらいあったかと思います。
 都立病院との地域医療とこの福祉資源をコーディネートして退院患者一人一人に取り寄せたケアマネジメントを構築しているか、今後、地域包括ケアと絡めた取り組みも踏まえたご所見をお聞かせください。

○野瀬サービス推進部長 精神科病院における患者の退院支援は重要な取り組みであり、松沢病院では長年にわたり積極的に取り組んできております。
 具体的には、ケースワーカーがグループホームとの連絡調整を行い、福祉施設、就労センターなどを訪問して関係づくりに努めるほか、地域の福祉事務所、保健所などとの連絡会を開催するなど、地域ネットワークの構築に努めております。
 なお、本年四月からは、患者支援センターを設置して退院支援の取り組みを強化し、ケースワーカーが入院時から退院に向けた支援を行っております。

○上田委員 今後も都がアウトリーチをして、区市町村との強いかけ橋となっていただきたいと思います。
 また、入院患者の精神的ケアですが、精神疾患がなくても、がんなどの命を脅かす疾病に罹患した場合、鬱状態に陥ることは誰しも起こることです。安易な向精神薬投与をしていないかとの指摘もされており懸念をしているところでございます。
 精神科以外の入院患者への向精神薬の投与の状況と考え方、精神的ケアが必要になった場合の患者と家族のサポートにつき、取り組み体制をご説明ください。

○野瀬サービス推進部長 入院患者の精神的ケアについてでございますが、例えば、がんと診断された場合、どのような患者さんにおいても精神的な不安を感じますが、都道府県がん診療連携拠点病院である駒込病院の場合、神経科リエゾンチームや緩和ケアチームなど、精神科医や心理士、看護師などの多職種チームが患者さんの不安を緩和するケアを行っております。
 その上で、どうしても強い不眠や強い不安を訴えるなど、鬱症状のある患者さんに対して、睡眠薬や抗不安薬を処方することはございます。病気に対する不安による鬱症状に対し、安易に向精神薬を投与することはございません。

○上田委員 安易な投与はないということで安心をいたしました。
 都では、積極的に認知症疾患医療センターを指定し、現在、四十一機関となっており、その一つが松沢病院です。高齢者は、身体合併症、精神病状も併発することもあり、松沢病院が担うことにより、長年の蓄積経験値、ノウハウが指定医療機関全体で共有されることを期待するところであります。
 まず、精神疾患患者をもともと抱えている松沢病院において病床数は充足しているのか、また、認知症を初め、高齢者で介護が必要な入院患者について、着がえ、歯磨き、食事の補助等の介護と看護が混在する都立病院の入院患者への接遇の現在の取り組み状況をご説明ください。
 また、認知症状にある退院患者の地域での受け入れ体制構築についても、多様な選択肢をどうコーディネートしていくのか、現状と考え方をお示しください。

○高野経営戦略担当部長 精神病床の病床数は、医療法施行規則等に基づき基準病床数が定められており、現状では、既存病床数が基準病床数を上回っております。
 松沢病院では、民間の精神科医療機関との適切な役割分担のもと、一般の精神科病院では対応が困難な専門性の高い急性期の精神疾患や精神科身体合併症医療等に対応しており、都における精神科医療の拠点としての役割を適切に果たしているものと認識しております。松沢病院の平成二十六年度における病床利用率につきましては八六・六%でございました。
 次に、都立病院における入院患者のケアについてでございますが、食事や入浴の介助などの介護的ケアを含め看護師がケアを行っております。さまざまな状態にある患者に対しまして、適切な看護ケアを提供するため、看護手順を整備し、定期的、継続的に教育を実施しております。
 さらに、認知症等の退院患者の地域での受け入れ体制の構築についてでございますが、松沢病院は、東京都認知症疾患医療センターとして、鑑別診断、身体合併症や行動、心理症状への対応及び精神保健福祉士による専門医療相談等を実施しており、認知症患者とその家族が地域で安心して生活できるよう、人材の育成等を行うとともに、かかりつけ医等が患者の情報を共有して診察できるよう、認知症診断地域医療連携クリティカルパスを活用するなど、地域における受け入れ体制の構築に取り組んでおります。

○上田委員 取り組みの方を確認させていただきました。
 次に、小児総合医療センターを中心とした小児医療についてお尋ねいたします。
 児童・思春期精神科の入院及び外来患者、発達障害医療、特にADHDに関して、その症状に対し安易な投薬が行われることを危惧するものですが、都の、子供への向精神薬投与の考え方、ご家族や保護者並びに本人が投薬を拒否した場合についての対応と所見についてお聞かせください。

○野瀬サービス推進部長 小児における精神科薬物療法については慎重を期しており、特に就学前の子供に対しては、投薬以外の方法を第一選択とすることはいうまでもなく、投薬が必要な場合にも最小限にとどめております。
 なお、投薬に関しては、本人及び親の同意を得ることが必須であり、同意が得られない場合には、投薬以外の方法を選択しております。特にADHDについては、投薬する場合でも就学年齢以降に限り、投与を開始した場合も成長の過程において減薬や中止を試みることを原則としております。

○上田委員 減薬と中止ということを試みていくというところで、重ねて、常に子供たちの状況に合わせた処方、あるいは中止、断薬をお願いしたいと思います。
 次に、ひきこもり、不登校、問題行動などが小児精神医療と結びついた場合の、都立病院における、地域医療機関のみならず学校や児童相談所との連携、子供の情報共有についてのお取り組み、今後の方向性をお示しください。

○高野経営戦略担当部長 都立病院における小児精神医療につきましては、主に小児総合医療センターが担っておりまして、広汎性発達障害等の疾患に対し、地域の小児科医との連携を図りながら対応しております。
 また、福祉保健局から東京都子供の心診療支援拠点病院事業の委託を受け、医療関係者や教員、カウンセラー等を対象に、発達障害、摂食障害等、支援が必要な子供に対する理解を深めるための研修やセミナーを行っております。
 今後とも、関係機関との連携を推進するとともに、子供の心の問題について普及啓発活動に取り組んでまいります。

○上田委員 センターにおける子ども・家族支援部門についてお尋ねします。
 リエゾン医療、グリーフケアなど、退院支援の強化に取り組んでいるということですが、スムーズな教育機関への復学などの実績と、その経験値を都立病院全体で共有しているかについて、取り組み状況をご説明ください。

○野瀬サービス推進部長 教育機関への復学についてでございますが、小児総合医療センターのこころの入院の子供たちについては、担当医師、看護師、心理士、ソーシャルワーカー、院内学級担当者に加えて、児童に関係する地域の教育機関、福祉機関、民生委員などが参加する関係者会議が大きな役割を果たしております。外来の子供たちについても必要に応じて同様の関係者会議を行っております。
 また、もともと在籍していた学校への復学が難しい場合には、本人に適した学級、学校への紹介も行っております。
 さらに、治療及び支援の内容に関しては、心の診療支援拠点病院事業を通じて、都立病院のみならず、医療、教育の関係機関との共有を図っております。

○上田委員 続きましては、入院中の子供の保育、教育についてお尋ねします。
 退院支援の前に、入院中の子供の保育、教育環境の整備が不可欠と考えております。適切なアタッチメントが不足しますと、愛着障害などの問題も懸念されるため、乳幼児の入院におけるケア、就学児童の教育について、都立病院としての取り組みと所見を、子ども患者権利章典7には、あなたは、入院していても、勉強したり、遊んだりすることができますとありますが、これに即してお示しくださいませ。

○野瀬サービス推進部長 小児総合医療センターでは、新生児期から乳幼児期の入院により、親子が離れることで愛着形成に支障を来すことがないよう、看護師や保育士、心理士が家族に密接に関与し、親子の接触の機会を確保しております。
 また、からだの入院については、三百六十五日二十四時間、付き添いを可能としております。
 また、就学児童の教育については、学習のおくれを生じさせないこと、退院後の学校生活にスムーズに戻れることを目的として、病院内に東京都立武蔵台学園府中分教室が設置されております。
 こうした入院環境を整備することで、子供たちの入院中のケアや教育を適切に提供できる体制を確保しております。

○上田委員 乳幼児ですと、やはり子供とずっと一緒にいたいお母さんもいらっしゃると思うので、付き添いが二十四時間可能ということは非常によろしいかと思います。支えるスタッフも大変かと思いますが、引き続き、保護者と子供たちに寄り添っていただきたいと思います。
 次に、虐待事案の通報システム、連携体制についてです。
 二五ページで、例示として多摩の病院の例を挙げていただいております。虐待が疑われる子供の診察、見立てには、幅広い知識や経験値、専門性、事例の蓄積と分析、その情報共有が必要とされます。
 都立病院においては、どのようにそうした知見を共有し、現場で生かされているのかについて考え方をお伺いします。

○野瀬サービス推進部長 小児総合医療センターにおいては、平成二十二年の開院当初から、精神科医師、小児科医師、心理士、精神保健福祉士、看護師、事務職員から成る児童擁護委員会を設置し、この委員会が中心となって院内職員に対して毎年講演会を開催し、意識啓発、情報共有を行っております。
 また、本年より、病院内に児童擁護委員会などを設置している都立病院を含めた十八病院のネットワーク会議を開催し、知見の共有に努めております。

○上田委員 やけどや打撲、こうしたものは専門性のある人が見立てれば、ドクターが見立てれば虐待というのは、わかるというふうにいわれておりますので、ぜひ継承をしていっていただきたいと思います。
 例えば、倉敷成人病センターでは、院内に子ども虐待防止委員会を設置し、来院者に児童虐待が疑われる場合は、医師や看護師から報告を受け、委員会が児童相談所などに通告するシステムをつくった事例がございます。
 二五ページにも例示をしてありますけれども、都立病院全体及び院内での取り組み、警察、児童相談所等各関係機関との連携体制について、取り組み状況、成果をご説明ください。

○野瀬サービス推進部長 小児総合医療センターにおいては、院内に設置した児童擁護委員会により、虐待事例ごとにアセスメントを行い、病院が虐待事例として対処するかどうかを決断し、対応の方向を決定しております。
 児童の保護が必要となった場合には、児童相談所、警察と連携し、保護者への病院からの説明、児童相談所へ通告した旨の告知、児童相談所からの説明という一連のシステムを確立しており、必要な通報、連絡調整を行っております。
 また、他の都立病院においても、それぞれ虐待に対応するための院内委員会を設置しており、虐待ケースに組織的に対応しております。

○上田委員 私の選挙区でございます江戸川区は大変子供も多く、江東児童相談所も虐待件数が最も多いところであります。残念ながら、皆さんもご記憶にあるかと思いますが、小一男子が新しいお父さんに撲殺されました。
 このとき、歯科医はしっかりと発見をしてくださいまして、通報していただけたにもかかわらず、行政と区市町村と児童相談所の連携が図れずに、とうとい命をなくしてしまいまして、私はそのとき区議でしたが、本当に無力感でいっぱいになりましたので、今後は積極的に各連携機関、この少子化の中、二度と子供たちの命が奪われることのないよう、早期発見、早期対応ということをぜひよろしくお願いしたいと思います。
 次に、周産期医療についてでございます。
 都は近年、全国屈指のレベルとその数を誇るハイリスク周産期患者対応、医療技術、施設ともに高度なNICUが整備されてきており、高く評価するものです。
 一方、私の住む江戸川区では、またこれも都内屈指の出生率なことから、リスクのない妊婦さんたちでも墨東病院での分娩を望む声が聞かれております。
 都は、産婦人科地域医療連携システム、大塚モデルにおいて、地域の産婦人科と医療連携を推進し、適切な役割、機能分担をする取り組みを開始し、約五年がたちました。その効果と実績、東京都全体でもこのシステムを広めていかれるのか、妊産婦の多い城東地区で良質な産婦人科医療提供のサポートをしていくか、成果とご所見をお聞かせください。

○高野経営戦略担当部長 都では、安全・安心な周産期医療体制の強化を図るため、東京都保健医療計画及び周産期医療体制整備計画を定めております。安全な周産期医療を提供するため、都内の八つの周産期医療ネットワークグループにおいて、正常分娩からハイリスク分娩を担う医療機関の機能別役割分担と連携を進めております。
 都立病院では、大塚病院、墨東病院及び多摩総合医療センター、小児総合医療センターが総合周産期母子医療センターに指定されており、産科、小児科双方から一貫した総合的かつ高度な周産期医療を担い、それぞれの地域の医療資源の状況を踏まえ、産婦人科医療機関等と連携を図っております。

○上田委員 折しも、きょうの都政新報で、地方創生に関する連絡会議が開かれたということで、妊婦の搬送時に各都県内で受け入れ医療機関が見つからない場合、都県境を越えて搬送受け入れ調整することにしていくということを確認したということで、前向きな取り組みが東京都だけではなく首都圏に広がっているということも評価をさせていただきたいと思います。
 次に、監察医務院との連携についてお尋ねします。
 都は、監察医務院を有し、不審死の検案と解剖を行っています。私は、先月同院を視察させていただきました。福永院長以下、スタッフのスキルの高さと、恐らく世界最先端だというふうな自負を聞きました。設備にも感銘を受けました。
 例えば、長期間体を動かさないでいると、いわゆるエコノミークラス症候群に陥り、血栓が血管を塞ぎ、最悪の場合は死に至るとのことですが、これは監察医務院の研究により、この血栓が足から来ることが明らかになったということです。これにより、移動が困難な入院患者には、血栓防止のため靴下や包帯によるケアがされるようになり、多くの命が救われることになりました。
 これは一例ですが、同院による研究と成果をいかに都立病院の医療に反映しているのか、現状の連携状況と考え方をご説明ください。

○高野経営戦略担当部長 監察医務院で行われております死因究明の過程で得られた貴重な情報は、医学教育や臨床医学等に還元され、医学の進歩に貢献しているものと考えております。
 また、都立病院におきましても、同様に剖検や臨床研究に取り組んでおりまして、それぞれが医学の発展に貢献しているものと考えております。

○上田委員 監察医務院は非常にたくさん調査を行っていて、ホームページに出ていないので残念なんですが、ぜひ積極的に取り寄せて、カンファレンス等で活用していただきたいなと思う次第でございます。
 次に、都立病院に、心肺停止状態で疾病か事故か原因不明で運ばれた場合の対応について伺いたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 都立病院において、心肺停止などで救急搬送後に死亡を確認したものの、その死因が不明である場合には、東京二十三区内においては監察医制度にのっとった対応、多摩・島しょ地区においては監察医制度に準じた対応に努めております。

○上田委員 監察医務院との連携がやはりとれていることを確認いたしました。
 都立病院における死亡例についてですが、仮に遺族から解剖を求められた場合の対応についてご説明ください。死因について説明を尽くすことは当然ですが、遺族からいわゆるセカンドオピニオンを求められた場合、監察医務院や大学病院などの解剖の行える機関を紹介するようなことはあるのでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 都立病院では、死因の究明や病態の把握のための病理解剖を行う体制を整えております。入院中の患者さんが死亡した場合は原則として、ご遺族に病理解剖について説明し、ご遺族の承諾が得られれば病理解剖を行っております。また、遺族から解剖の希望があった場合にも同様の対応をとっております。
 病理解剖の結果は、診療科を超えた臨床病理検討会で検討し、医師の判断技術の向上など、医療の質を高めるだけでなく、研修医や若手医師の教育に大きく寄与してございます。

○上田委員 とうとい命が研修医や若手医師の教育に大きく寄与しているというところで、医療人材ということの大切さを感じております。
 その医療人材の確保についてお聞きいたします。
 資料26によりますと、救急救命部門において現員不足が顕著のように見受けられますけれども、対応状況、いつごろまでに解消できるのか、今後の見通しを含めてご説明いただければと思います。

○中野経営企画部長 各病院におきます救命救急センターでは、院内の各専門診療科との連携体制を構築して診療体制を確保しております。
 具体的には、救命救急医療専門医師で構成される救命救急センターで初療と集中治療を行いまして、その後の診療は患者の症状に応じて各診療科医師に引き継ぐといった応援、連携体制を構築することで対応しております。
 定数に対して現員数が不足している部分でございますが、非常勤医師を必要数確保しておりまして、救命救急センターの必要人員は十分に確保されているところでございます。

○上田委員 まさにER、映画でも取り上げられますけれども、体力勝負といったところだと思います。若手がきっと活躍をして、OJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで実力を身につけていかれる場だと思います。
 そうした都立病院におけます東京医師アカデミーにおいての人材育成が進められていらっしゃるところで期待するところでありますが、医師不足が指摘されて大変久しいです。
 難関である国家試験に合格したドクターが都立病院で働きたいと思うインセンティブがあってこその人材確保であると考えますが、都立病院で働くメリットをどう医師並びに研修医にPRし、人材確保に取り組んでいらっしゃるのか、医師会、医大との連携体制についても伺います。

○中野経営企画部長 東京都では、都立公社病院のスケールメリットと豊富な症例を活用して専門医を育成する東京医師アカデミーを構築し、若手医師を確保しております。
 具体的には、専門医資格の取得に必要な症例数の経験に加え、総合診療能力の向上を図るER研修や実践的な災害医療研修の実施など、東京医師アカデミー独自の研修プログラムを整備しておりまして、平成二十六年度におきましては約二百五十名の医師アカデミー生が研修を行いました。
 なお、都立病院で行っていない治療法ですとか手技を習得する場合には、大学病院等で研修を行うなど、連携を図っているところでございます。

○上田委員 ぜひ積極的に若手、あるいは実績のある方をリクルートして人材確保をしていただきたいと思います。
 また、看護師の人材確保についてもお尋ねしますが、同僚委員からも同様の内容があったので、少し省略をさせていただきます。
 看護師ですけれども、ほかの医療機関を含めて一旦離職した看護師が復職をしようとした場合の対応と直近の実績について把握しておられれば、ご説明をいただきたいと思います。

○中野経営企画部長 平成二十六年度に都立病院を退職しました看護要員のうち、出産、育児、家族介護等を理由としました退職者の割合は約一六%でございました。

○上田委員 一旦離職した看護師の対応について、済みません、よろしくお願いします。

○中野経営企画部長 済みません、看護要員の離職防止策についてでございますが、出産や子育てをしながら長く働き続けられますよう、さきに述べた院内保育室の整備などのさまざまな支援を行っております。
 また、都立病院の中でキャリアアップしていけるよう、段階的、計画的な研修体制の構築や認定看護師、専門看護師の資格取得支援など、資質向上のための取り組みを行っております。
 次に、都立病院では、新規採用のほかに経験者採用選考も実施するなど、他の医療機関も含めまして、一旦離職した看護師にも門戸を開いておりまして、平成二十六年度には、年七回の採用選考を通しまして九十二名を採用いたしました。

○上田委員 看護師のことについては最後になりますが、都立病院におけます人材確保に向け、いわゆる潜在看護師への働きかけ、採用についてご所見をお示しください。

○中野経営企画部長 平成二十六年度の採用選考では、新規採用三百五十八名、経験者採用九十二名、合計四百五十名を採用いたしました。
 また、出産等を契機に医療機関を退職し、しばらく育児等に専念している、いわゆる潜在看護師につきましては、フルタイムの常勤職員だけではなく、非常勤職員や臨時職員として採用し、子育てがある程度落ちついた後に、経験者採用選考を経て常勤採用として働いてもらうようなケースも数多くございまして、本人のライフスタイルに応じた採用を行っているところでございます。

○上田委員 やはり女性はライフプランがちょっと男性と違って子育てが入ってきます。そうしたものに対応した働き方のメニューがあるということ、心強く思いました。
 最後に、経営戦略の方に話をつないでいきたいと思います。債権放棄についてです。
 資料の方にもありますが、平成二十二年度の債権放棄額は、墨東病院のみで百五十三万九千円でした。平成二十三年度は、広尾病院、大塚病院、駒込病院、多摩総合医療センターと四病院も債権放棄がふえまして、金額にして千九百五十五万四千円と、前年度に比べて十二・七倍となりました。過去五年間において、ピーク時は昨年度平成二十五年度の六千三百十九万四千円でございました。今年度平成二十六年度は多少減りましたが、八病院全てで債権放棄があります。
 この主たる原因と評価、今後の具体的な対応策についてご所見をお願いします。

○野瀬サービス推進部長 私債権放棄は、平成二十年度に施行された東京都債権管理条例に基づく手続でございまして、可能な限りの徴収努力を行ったものの、行方不明などの状態で実質的に回収不能となった債権について行うものでございます。
 条例施行当初、各病院の体制が不十分だったこともあり、必要な徴収努力や調査ができておりませんでしたが、平成二十三年度以降、未収金回収に対する専門的なスキルを持った専任の非常勤職員を配置するなど、体制整備を進めたことにより、次第に対応できるようになりました。
 所在不明となる患者など、毎年一定程度の回収不能債権が発生することは不可避であり、また、回収不能の債権を計上し続けることは会計上も不適切であることから、今後とも必要な徴収努力を行った上で、適切に債権放棄の処理を行ってまいります。

○上田委員 ご苦労がしのばれると思います。引き続き努力を続けていただきたいと思います。
 次に、各病院の収益性分析についてです。
 病院会計において代表的な手法として医業収支比率があります。こちらの標準値として、一〇〇%以上であれば利益を出している、すなわち黒字とされます。医業活動本体による収益状況を見る指標ですが、普通病院六病院、小児病院一病院、精神科病院一病院の計八病院において全て一〇〇%を下回っておりました。
 この状況に対する認識についてどのような考えか、まずお示しください。

○中野経営企画部長 都立病院は、精神科救急医療や感染症医療など、法令等に基づき対応を求められる医療、難病医療や障害者歯科医療など、一般医療機関では対応が困難な医療など、不採算な医療を行政的医療として実施しております。
 行政的医療につきましては、一般会計からの繰入金により補填されているところでございますが、地方公営企業法の経費負担の原則に基づきまして、本来、精神科救急医療、感染症医療など、一般会計が担うべき経費分につきましては、医業収益に計上しております。
 一方、難病医療など、病院会計のみで負担することが困難な経費分は、医業外収益で計上しているところでございます。このため、医業収支比率が一〇〇%を下回る結果となっております。
 引き続き、都立病院は行政的医療を担ってまいりますが、一方で、さらなる経営努力により、一般会計繰入金の縮減に努めていくことが必要であると認識しております。

○上田委員 また、その中でも特に数値として悪かったのは神経病院で六四・七%でした。ほかの病院は八〇から九〇%台にもかかわらず、神経病院だけがこれだけ低いのはどのような原因があるのでしょうか、原因とそれに対する対応策、ご所見もお示しください。

○中野経営企画部長 神経病院でございますが、筋萎縮性側索硬化症、いわゆるALS、重症筋無力症、脊髄小脳変性症など各種脳神経系難病医療を行います入院専門の病院でございます。このため、都立病院の中でもとりわけ不採算な医療を担っているところでございます。
 このため、収支不足額を一般会計から繰り入れておりますが、先ほどの答弁と繰り返しになりますが、医業外収益に計上しているため、他病院に比べ医業収支比率が低くなっております。神経病院の性質上、他の都立病院との比較はなじまないものと考えていますが、引き続き効率的な病院運営に向けて経営改善に努めてまいります。

○上田委員 次に、職員給与の比較です。
 職員給与費の比較に当たり、職員給与費対医業収益比率を利用して相対化したところ、広尾病院は六〇・一%、大塚病院は六六・三%、駒込は四七・五%、墨東は五三・五%、多摩総合医療センターは四六・七、小児医療総合センターは五九・五、松沢は五六・一です。
 この七病院の職員給与費対医業収益比率の平均は五五・七%になりますが、神経病院の比率は八九・一%となります。平均から見ても三三・四%も乖離があります。この比率は高ければ高いほど固定費の割合は高くなり、財政が硬直化していることになります。せめて七病院の平均値にする必要があるかと考えますが、この数字の現状を鑑みて、対応策とご所見をお示しください。

○中野経営企画部長 神経病院は、各種脳神経系難病医療を行う入院専門の病院でございまして、先ほども申し上げましたとおり、とりわけ不採算な医療を担っております。都立病院は、それぞれ提供する医療が異なっていることから、給与費比率を比較することは困難であると考えております。なお、引き続き増収に努めるなど、経営改善に努めてまいります。

○上田委員 全体でのバランスの必要性を感じました。ありがとうございます。
 次に、職員給与費については、引き続き監視を進めていくところでございます。改善も求めるところでございますが、各病院の一般会計繰入金医業収益比率と比較したところ、総務省の資料によると、広尾病院は四六・一%、大塚は五五・八、駒込は四五・八、墨東は四七・二、多摩総合医療センターは三八・一、神経病院は一〇七・〇と、小児医療総合センターは六三・六、松沢は七一・六%でした。
 この数字を見てわかるとおり、神経病院は一般会計の依存度が一〇〇%を超えております。自治体病院は独立採算制の趣旨を持ちつつ行政医療サービスを都民に提供していますが、独自での運営が全くできていない状態ではございます。
 先ほどからお伝えしているとおり、医業活動本体により、収益状況にはなかなか収益が上がらないというようなところが見てとれますけれども、なおかつ職員給与費がほかの病院に比べて高くなってしまっていることが独立採算が不可能になっている大きな原因と分析していますが、この点に関する対応策とご所見もお伺いしたいと思います。

○中野経営企画部長 今のご質問にございました一般会計繰入金医業収支比率でございますが、決算統計上は、他会計繰入金対医業収支比率と称しております。この指標は、一般会計繰入金と一般会計繰入金を除く医業収益の比率を用いる指標でございますが、ご質問のあった数値には、医業収益に一般会計繰入金が含まれております。
 また、二十六年度の一般会計繰入金につきましては、特別利益に計上されている退職給付引当金の過年度充当分も含まれておりまして、当該年度の比率としては適当ではないと考えているところでございます。
 また、神経病院の性質上、他の都立病院との比較はなじまないものと考えておりますが、引き続き、効率的な病院運営に向けて経営改善に努め、一般会計繰入金の縮減に努めてまいります。

○上田委員 最後の質問です。
 医業収益比率や職員給与費対医業収益比率において、そう悪くない数字を出していたのが松沢病院です。一般会計繰入金医業収益比率においては七〇%を超える数値です。これは八病院の中で二番目に高い病院となっておりまして、どこに原因があるのか、また対応策をお伺いしたいと思います。

○中野経営企画部長 他会計繰入金対医業収支比率につきましては、先ほどと同様でございます。
 松沢病院は、都における精神科医療の拠点として、精神科急性期医療を中心とした精神科救急医療、精神科身体合併症医療などを実施している精神科病院でございます。これらの医療は採算性が低く、民間医療機関では対応が困難な医療であり、他の都立病院と比べても一般会計繰入金の比率が高いことはやむを得ないものと考えております。ただし、引き続き、他の都立病院と同様に、効率的な病院運営に向けて経営改善を進め、一般会計繰入金の縮減に努めてまいります。

○上田委員 総務省から三月三十一日付で公立病院改革の推進についてが通知されておりますが、その中の新公立病院改革ガイドライン及び総務省が出している平成二十五年度病院事業決算状況に基づき、先ほどお示しした数値を含め、質疑をさせていただきました次第です。
 都としては、独自の算定として医業収益から一般会計繰入金を引いて、一般会計繰入金医療費比率とするということでございますが、総務省としては、公立病院経営の全容を把握するため全国統一基準を設けているとのことでした。これらともそごが生じないよう、新改革プランを速やかに策定し、これを着実に実施されることを期待いたします。
 最後に、自治体病院というものは、中低所得の住民に安定した安価な医療を提供することを目的として設立されてきた歴史があります。知恵とお金を出し合い、地域や職場というつながりで、万一病気になったときに、低負担で医療サービスを受ける相互信用と社会連帯を基盤とし、貧しい人々にも医療を提供することを目指し、平等を意識した世界に類のない日本の医療体制の礎に自治体病院がなってきました。
 収支均衡が求められ、政府においても行政改革の対象となっております一方で、自治体病院がある地域は国保医療費が低いという傾向があります。地域包括ケアの考え方は、実は新しいものではなく、これまで医療人材の育成、予防医療、そして経済的に弱い立場の人にも公平な医療を自治体病院が中心となって、地域と協力し担っていた形を今日的に復元するものではないかと考えるものであります。
 私、警察・消防委員会でして、ちょっと調べてみたんですけれども、消防救急隊による搬送人員は年間三万八百七十七人です--都立病院に搬送されるのは約三万人です。そして、搬送総数は六十六万人ということで、都立病院の病床割合が四%なんですが、割り返しますと、全ての搬送人数の四・六%を都立病院が受け入れているということがわかりました。大変努力をしていただいているなと数字が示しております。
 厳しいことも申し上げましたが、経営の効率化、シビアなガバナンス改革を進めるのは持続可能な患者中心の医療の実現のためでありまして、行政的医療からさらに昇華をし、人権と命を最優先にする、過不足ない医療を提供する自治体病院の原点である住民医療と都立病院がなることを願いまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○河野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○河野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後四時三十六分散会

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