平成二十三年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第四号

平成二十四年十月二十六日(金曜日)
第二委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十一名
委員長上野 和彦君
副委員長興津 秀憲君
副委員長吉原  修君
副委員長相川  博君
加藤 雅之君
鈴木 章浩君
山内れい子君
かち佳代子君
伊藤まさき君
門脇ふみよし君
和田 宗春君

 欠席委員 なし

 出席説明員
都市整備局局長技監兼務飯尾  豊君
次長目黒 克昭君
技監安井 順一君
理事藤井 寛行君
理事田崎 輝夫君
総務部長浅川 英夫君
都市づくり政策部長町田 修二君
住宅政策推進部長細渕 順一君
都市基盤部長石川  進君
市街地整備部長鈴木 昭利君
市街地建築部長砂川 俊雄君
都営住宅経営部長瀧本 裕之君
企画担当部長佐藤 伸朗君
防災都市づくり担当部長西倉 鉄也君
防災都市づくり調整担当部長加藤  隆君
多摩ニュータウン事業担当部長栗岡 祥一君
病院経営本部本部長塚田 祐次君
経営企画部長和賀井克夫君
サービス推進部長中野  透君
経営戦略・再編整備担当部長齊藤 和弥君

本日の会議に付した事件
 平成二十三年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成二十三年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)
病院経営本部関係
・平成二十三年度東京都病院会計決算(質疑)

○上野委員長 ただいまから平成二十三年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市整備局及び病院経営本部関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十三年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○浅川総務部長 十月十五日開催の当分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元に配布してございます当局の平成二十三年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会資料の表紙をおめくりいただきまして、目次をごらんください。
 資料は、1の都市再開発事業会計施行三地区の事業費と財源及び施設建築物の規模外一件でございます。
 それでは、まず一ページをお開き願います。1の都市再開発事業会計施行三地区の事業費と財源及び施設建築物の規模でございます。
 北新宿地区、環状第二号線新橋・虎ノ門地区、大橋地区の三地区につきまして、事業期間、事業費と、その財源内訳並びに年度別決算の状況を記載してございます。また、地区ごとの建物延べ面積とその建物における住宅戸数について記載してございます。
 次に、二ページをごらんください。2の三地区のこれまでの進捗状況と今後の予定でございます。
 地区ごとに平成二十三年度末まで及び今後の予定についての事業費及び用地取得面積を記載してございます。
 以上で資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○上野委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○和田委員 環状第二号線新橋・虎ノ門地区の第二種再開発事業にかかわって質問をいたします。
 この環状第二号線新橋・虎ノ門地区を含むエリアというのは、東京臨海地域といたしまして、都市再生特別措置法に基づいた特定都市再生緊急整備地域ということで指定されております。
 この地域の周辺は、ご承知のとおり、汐留地区都市区画整理事業、あるいは大規模な複合の開発プロジェクトなどが連々と続けられてきていることは、皆さんご承知のことだと思いますが、たまたま都心の霞が関、あるいは丸の内などの伝統的なオフィス街とも隣り合わせておりますから、ますますその意味では成長が期待される地域ということになっております。
 この新橋・虎ノ門地区の事業は、まさに今申し上げたとおり、都市の骨格、ほお骨を形成いたしまして、東京の都市構造の再生、あるいは再編成というものを導く、誘導する環状第二号線、この極めて重要な道路を整備するとともに、立体的な道路制度、これは後ほど触れますけれども、これを活用して、道路の上空及び地下、路面下など建築物等の整備を一体的に行って、防災はもとより景観、そういうものに配慮したまちづくりとしてのにぎわい、そこから出てくる魅力といったものを複合的な市街地として形成するということを目的になされているというふうに思います。
 都心部における居住、その機能の維持や回復、さらに周辺の商業と文化、こういうものの交流機能も当然立地、業務機能の質的な高度化を図るということで、この計画が着々と進められてきたと思っております。
 この淵源につきましては、事業概要で私も承知をいたしておりますが、改めて都施行で再開発事業が行われてきているということの経緯、経過についてお尋ねをいたします。

○鈴木市街地整備部長 環状第二号線は、昭和二十一年に戦災復興の一環で神田佐久間町から新橋まで計画決定いたしまして、平成五年に新橋から有明まで計画を延伸した都市計画道路でございます。現在、神田佐久間町から虎ノ門までの間は、外堀通りとして供用されております。
 一方、新橋-虎ノ門間につきましては地価の高い都心部にございまして、権利者が移転先を確保しにくいという地域特性上、地区外転出による合意形成が難しかったため、長い間事業化に至りませんでした。
 しかし、平成元年に立体道路制度が創設されまして、この制度を活用した再開発事業を都がみずから進めることを地元にご提案申し上げたことによりまして、地元合意が急速に進み、平成十四年度に事業化に至りました。

○和田委員 今、説明いただいたとおりの経過かなと思うんですが、それでは、どういう人口並びに地権者、あるいは業態も含めて周辺環境があったかというふうに調べてみますと、これは平成十三年の十二月時点の数字でありますけれども、人口は大体三百三十人、それから世帯は百七十世帯、地権者、これが問題でありましたが、地権者のうち、土地の所有者が百十七人、土地の建物の所有者というのは二百三十一人、借地、建物の所有者が百十人、借家人の方が四百八十四人、合わせると九百四十二人、一千人近い権利者がそこにいるわけであります。
 用途別の建物利用状況を見ましても、専用住宅が二十七棟で構成比が一〇%、併用住宅が八十七棟で三二%、店舗が三八店舗で一二%、事務所が百一カ所で三七%ということで、二百七十棟という大きな棟数をここに擁した再開発用地になるわけでございます。
 ここまで錯綜した権利者数がある中で、そしてまた、用途別の建物利用状況を見ましても、事務所あり、あるいは専用住宅あり、併用住宅ありということで、店舗もありますが、大変多岐にわたる権利者と用途別建物がある中で、どういうふうな形で今日まで権利者を東京都主導で調整をしてきたり、あるいはもとよりこれは港区の場所でありますけれども、港区の当局とどういうふうに交渉を重ねてきたのかということについてお尋ねいたします。

○鈴木市街地整備部長 地元の権利者や港区の動向についてのご質問だと思いますが、この地区では立体道路制度を活用しました再開発事業を地元にご提案したことによりまして、従前権利者の地区内での生活再建が可能となりましたことから、権利者の理解が急速に進んだ経緯がございます。
 また、地元へのご提案と同時に、地元港区とも調整を進めまして、事業に対する協力を得ることができました。
 また、その後、具体的な再開発事業の範囲や整備内容などにつきまして、地元の方々と調整を図りながら、平成十四年度に事業化を図ったものでございます。
 それ以降も、環二地区再開発協議会などにおきまして、権利者及び地元港区の声を聞きながら、引き続き順調に事業を推進しているところでございます。

○和田委員 地元港区との大変スムーズな調整並びに権利者との調整ということで、あらゆる環境条件が整った中でこの事業が進められてきたという様子がわかりました。
 私は、この環状二号線の新橋・虎ノ門地域を見てみますと、ほかの地区にはない特徴点が一つ、二つあると思っておりますし、またその特徴点が融合することによって、この再開発事業の特色でもあり、長所でもあると思っているんです。
 その一つは、立体道路制度の活用という問題です。これは、平成元年に道路法や都市計画法や都市再開発法の改正によってつくられた新しい制度だというふうに概要にも書いてあります。
 これは、どういうような内容と効果をこの環状二号線の新橋・虎ノ門地区の開発に発揮してきたんでしょうか。

○鈴木市街地整備部長 立体道路制度の内容、効果等についてのご質問だと思いますが、立体道路制度は、委員ご指摘のとおり、平成元年の都市計画法などの改正によりまして制度化されたものでございまして、土地の有効活用を図るため、道路の区域を立体的に限定し、それ以外の空間を建築物などに利用することを可能とする制度でございます。
 具体的には、都市計画に道路と建築物などをあわせて利用すべき区域を平面的に定めるとともに、建築などが可能な上下の範囲を定めた区域を立体的に定めた上で、その範囲内で道路管理者と建築物の所有者のそれぞれが施設の設置や管理を行うものでございます。
 当地区では、地区内での生活再建を希望する従前権利者のご意向に配慮しまして、虎ノ門側に位置する最も広い三街区におきまして本制度を適用し、再開発ビルの中を環状第二号線が貫通する形で整備を進めております。

○和田委員 これは、三街区の大きな、一番特徴的なビルでありますが、そこの足元というんでしょうか、腹といってもいいかもしれません。そこを道路がぶち抜かれているという大変ダイナミックな設計と、それから立体道路制度の活用をしっかり生かしている。
 元年にできたときでありますから、当然、過密都市の解消とか道路が再開発を阻害しているというような問題を脱却するために、道路の上に建物をつくる、道路は建物の中をというか、すそ野を通って、まっすぐ従来どおりの計画を曲げずに完遂するということでありますから、これは今までの建物を迂回するとか、あるいは建物を高く越えるとかということじゃなくて、そのまま平地で貫通する、あるいは場合によっては地下を潜るというようなことで、上空を通るのと違って、近隣環境にも大変配慮した制度をここに当局は活用したというふうに私は思うんです。
 これは、私が調べる限り、東京では初めての事業だと思います。それを大胆にも取り入れながら、この環二の新橋・虎ノ門地区には一つの特徴点として、また権利者に余り不安や、あるいは権利変換に対する、あるいは移転に対する動揺など与えずに、スムーズに計画が進んできた要因がここにあるだろうというように思っているんですが、これは適切な制度活用だったと思います。
 次に、もう一つの特徴は、特定建築者制度というのをこれまた活用しております。これまた、従来持っている権利者の方を余り刺激しないで、そしてその方々のいい分をしっかり聞いて、行政の方がそれに従う、あるいはそれに行政のほうが理解を示すというような配慮を示している制度だと私は思うんですが、これも改めてその内容と効果についてお尋ねいたします。

○鈴木市街地整備部長 特定建築者制度は、再開発事業の実施に当たりまして、再開発ビルの建築に民間のノウハウや資金を活用し、事業の円滑な推進を図ることを目的として導入されております。
 都は、具体的な事業実施に当たりまして、都市再開発法に基づき、公募により特定建築者を選定し、特定建築者は都の決定した計画に従いまして、再開発ビルの建築及び保留床の処分を行うというものでございます。

○和田委員 当局の立体道路制度、それから特定建築者制度を活用したその行き方に、港区もきちっと呼応する形で、これは二十四年三月になりますけれども、環状二号線周辺地区のまちづくりガイドラインというのをつくって、当該の港区でできる範囲のことを住民の皆さんに正しく、そして丁寧に説明しようという形で読みやすく編集された、そして図解がしっかり使われている冊子が出されております。
 こういうふうに東京都のひとり頑張りじゃなくて、それを受けとめる港区の方でも、それなりに努力を重ねてきた結果、そこで利害関係者である権利者ですとか、そういう関係者が気持ちよくこれに応じて、今日までスムーズに予算執行も事業執行もできてきているというふうに思うんです。
 二十三年度の決算を含め、事業並びにその進捗率、すなわち執行率などについてどういうふうになっているんでしょうか。

○鈴木市街地整備部長 環状第二号線新橋・虎ノ門地区において、平成二十三年度は三街区の建築工事に着手したほか、用地買収や移転補償などを行っております。
 平成二十三年度の再開発事業の執行額でございますが、約九十億円でございまして、その結果、事業費ベースの進捗率は七三%から七六%へ約三%増加してございます。

○和田委員 この事業の完成年度は平成二十六年であります。したがって、残された時間は二年余ぐらいしかありません。
 その中で、二十二年度に七三%、二十三年度決算ベースですけれども、これが七六%ということで、三%増加して、九十億円の予算執行であったということですが、これは、当然のことながら、二十六年度のゴールには時間どおりテープを切れるだろうというふうに思っておりますが、七六%を残り二カ年余ぐらいでしっかり追いつけるのかなということで、仕上げの時期ですから、基礎とは違って進捗率はスムーズに来ると思いますけれども、これをとりあえずしっかり二十六年度の最終完成目標に沿った形で、今までの港区とも、あるいは権利者とも協議、協力しながら、スムーズに進めていただくことによって、考え方も手法も東京の再開発にとっては金字塔ともいえる環状二号線の新橋・虎ノ門地区の再開発事業が日の目を見るだろうというふうに私は思いますから、ここのところはゴールテープまでしっかり今のペースを変えずに、予定どおりの完成にぜひぜひ臨んでいただきたいというふうに思うところです。
 ところで、今申し上げたとおり、二つの制度、すなわち立体道路制度、それから特定建築者制度というこの二つの、ある意味では再開発にとっては伝家の宝刀を使いながら、ここまで順調に来ました。
 私どもはそういうふうに考えるわけでありますけれども、地域にはどういうふうに具体的な波及効果、いい意味での波及効果があって、それがどのように評価をされているのかなということが気になります。
 あくまでも私が申し上げたいのは、都市整備局の方の決断、判断、手法ということについては、私なりにどうしてもおくれがちな、執行率が伴わない大規模事業をここまで持ちこたえてきたというのは評価するんですが、肝心な受けとめ方がどういうふうに権利者や港区ではなされているのかということに、当局はどういう自覚をされているのか、お尋ねいたします。

○鈴木市街地整備部長 この事業に対します地元の受けとめでございますが、環状第二号線の用地取得が進みまして、地上部の道路空間があいてきたことに伴いまして、平成十九年度に沿道の地権者によるまちづくり協議会が設置され、こうしたことを契機に、沿道を含む周辺地域においてまちづくりの機運が高まってございます。
 さらに、地元の港区におきましては、こうした地元の動きをとらえまして、環状第二号線周辺地区まちづくりガイドラインを本年三月に策定いたしました。先ほど委員ご指摘のとおりでございます。
 まちの将来像や方向性を示してございまして、環状第二号線の整備が地元で極めて高く評価され、受けとめられていると考えてございます。

○和田委員 港区のガイドラインを見ますと、大変丁寧にエリアが六分割されていて、それでこういうイメージのまちになりますよ、こういう港区の新橋・虎ノ門地域になりますよということが書いてあります。
 それを受けてスムーズに事業が進んできているということは、区も住民も東京都も、三者それぞれがスムーズに歯車がかみ合って、回転してきているというあかしだと思うんですが。
 例えばこのまちづくりガイドラインを見ますと、愛宕・慈恵医大周辺エリアというのが一つあります。それから、新橋南エリア、隣にあります。それから、新橋駅の駅前エリアというのが広々と、あそこに機関車の模型なんかが飾ってありますけれども、そういう場所。それから、新橋西エリアというところ。虎ノ門エリア、さらに環状二号線沿道エリアというふうに六つがうまく配置をされて、一部ダブるところもありますけれども、このイメージで新橋周辺、あるいは申し上げた虎ノ門地域がこうなりますよということで、港区の方もまちづくりの大きな特徴点として生かしているということです。
 私は、こういう波及効果がまち全体に広がる、東京都にも広がってくるわけでありますけれども、こういう成功事例を重ねることによって、再開発すると何となく高いビルだけで、潤いのない、そして無機質なまちになるのかなという印象があるんですが、先ほど来申し上げているとおり、商店街や権利者、あるいは区、そういう方々がそれぞれ、東京都があくまでも主導して、導いて、こういう事業を進めることによって、東京都の信頼感が増してくる。行政全体に信頼感が増してくると、都市整備局だけではなくてほかの局にも、東京都のやることには信頼できるのかなという期待感もある意味ではわかせるぐらいに、この事業は突出した形で港区にとっても、新橋・虎ノ門地域にとっても、いい結果が今のところ出てきていると思うんです。
 さて、今、私どもがるる評価してきたこの再開発事業でありますけれども、これから学ぶべき教訓、すべていいだけではなくて、これからどういうふうにしたら、より高度なまちづくりに都市整備局が挑戦できるのか。場合によっては建設局と共同しできるのかという何らかの教訓を学んだのではないかなと思うんですが、それについてはどういうふうに今度の事業を通じてお考えになっているんでしょうか。

○鈴木市街地整備部長 委員ご指摘のとおり、都は、地区内での生活再建を希望する権利者の意向に配慮いたしまして、権利者の理解を得ながら、立体道路制度を活用した再開発事業の都市計画決定を行ったものでございます。
 また、事業施行者としまして、関係権利者との調整を進めながら、事業計画決定、用地取得、再開発ビルへの権利変換など、事業全体を推進する役割を担ってまいりました。
 さらに都は、特定建築者と連携しまして、付加価値の高い魅力的なビルを建設できるノウハウなどの民間事業者の得意分野を生かしつつ、事業施行者としてきめ細やかな権利者対応を図るなど、事業を円滑に進めてまいりました。
 こうした本地区事業で培われましたさまざまな経験を生かしながら、今後とも本地区を含めた都施行再開発事業を着実に推進してまいります。

○和田委員 先ほど来たびたび出ているまちづくりガイドラインの中で、港区長の武井区長さんはこんなことをいっているんですね。
 新橋から虎ノ門に至る環状二号線周辺地区は、新橋駅周辺のにぎわいのある商業、業務機能、愛宕山付近に広がる寺社や豊かな緑、虎ノ門駅周辺での業務機能などの集積、さまざまな地域特性が複合的に組み合わさり、旧来からの居住機能とともに、市街地が形成されている。
 また、戦後、本地区の東西にわたって、環状二号線が都市計画決定され、現在、東京都により整備がされていて、一方、この地区は老朽化した建築物の更新、防災機能の強化、都市の形成、これにふさわしい都市基盤の整備などの課題も顕在してきている。
 このことから、環状二号線の開通を契機として、周辺のまちづくりを進めながら、まちの課題を改善し、快適で魅力的なまちづくりに取り組むことが期待されているというふうに、現在進行形の形でありますけれども、武井港区長はこういう評価をされて、期待もしています。
 さきに立ち返って、平成二十六年が完成になっておりますから、これに向けて港区長が現在進行形の期待じゃなくて、でき上がって、区民の皆さん、一緒によかったですね、東京都の仕事として評価できますねというふうな武井区長のあいさつがいつの日にかどこかで発表されるというふうなことを私は期待をしているわけです。
 それまで、ここまで順調に来たこの新橋・虎ノ門地区の再開発事業でありますから、けがのないように、事故のないように、しっかり最後のゴールテープを切るまで、総力を挙げて努力いただくことを期待して、私の質問を終わります。

○鈴木委員 私の方からも、いよいよ都市計画決定をされて五十年以上がたったこの環状第二号線新橋・虎ノ門地区市街地再開発事業について、幾つかご質問をさせていただきます。
 戦後六十年以上が過ぎまして、高度成長期に建設された都市インフラというものの更新時期を迎えております。そして、さらに東京は昨年の東日本大震災を踏まえて、これから以降、また首都直下型地震等による被害想定の見直しも踏まえて、これからさらに高度防災都市としてのまちづくり、そしてさらに日本の首都としての国際競争力を兼ね備えたまちづくりをしていかなくてはいけないわけでございます。
 そうした中で、私は今回のこの事業というのは、こうした成熟した東京の都市再生には今後欠かせなくなっていく重要な事例になっていくものというふうに思っております。そうしたことを踏まえて、この東京の都市再生という観点から何点か質問をさせていただきます。
 当地区は、都市再生緊急整備地域にあって、今回の審査の対象となる三地区の再開発の中では最も都心に位置しており、東京の都市再生に果たす役割が大変大きい事業であるわけであります。
 この二十三年度の決算書を見ますと、二十三年度に三街区の建築工事に着工したと記載されておりますが、この三街区のビルも高層階まで現在立ち上がってまいりました。
 そこで、環状第二号線新橋・虎ノ門地区の都施行再開発は、東京の都市再生にどのような役割を果たすものとお考えか、改めてお伺いをいたします。

○鈴木市街地整備部長 整備中の環状第二号線は、特定都市再生緊急整備地域でございます東京都心、臨海地域を貫く形で計画されておりまして、都心部と臨海部との連携を強化し、周辺地域の都市再生の促進に寄与する極めて重要な幹線道路でございます。
 環状第二号線新橋・虎ノ門地区の再開発事業は、この環状第二号線の最も都心寄りとなります新橋-虎ノ門間の整備を目的としてございます。
 また、新橋・虎ノ門地域でございますが、都心部でポテンシャルが高いため、道路上に再開発ビルを建設することなどにより、東京の都市再生に寄与するよう整備していく計画でございます。
 このように、本事業は都の重要施策でございます根幹的な幹線道路の整備とあわせまして、周辺まちづくりを進める公共性の高い大規模な事業であることなどから、都みずからが再開発事業を実施しております。
 これらの整備は、環状第二号線の沿道を含む周辺地域のさらなるまちづくりの力を引き出す契機となると考えてございます。

○鈴木委員 改めてご説明をいただきまして、この環状第二号線新橋・虎ノ門地区の役割、そしてまた都がみずから実施している理由については大変よくわかりました。
 当地区では、環状第二号線の道路整備の目的が際立っておりますが、そもそも事業手法は再開発事業であります。パンフレットを見ますと、この事業では、一、二、三街区の三棟の再開発ビルを建設することになっております。
 そこで、一、二、三街区それぞれ再開発事業上、どのような位置づけであるのかをお伺いいたします。

○鈴木市街地整備部長 新橋側に位置する一街区は、住宅、事務所、店舗から成る複合ビルでございまして、平成二十三年に完成しております。
 また、虎ノ門側に位置する二街区は、住宅と港区の高齢者福祉施設が入った当地区最初の再開発ビルでございまして、平成十九年に完成しております。
 一、二街区とも権利床が六割から七割を占め、従前権利者の早期の生活再建を図るために整備したものでございます。
 虎ノ門側に位置し、道路の直上にある三街区でございますが、従前権利者の生活再建に加えまして、都市再生の役割を担う街区として整備中でございます。

○鈴木委員 この地域に残りたいという地元地権者の意向を酌みながら、そしてまた、さらにこの地域のニーズを踏まえて、この一街区及び二街区は、主として従前権利者の早期の生活再建、そして三街区は、それに加えて都市再生の役割を果たすということがわかりました。
 それでは、この三街区には、都市再生の役割を担うために具体的にどのような機能を持たせているのかをお伺いいたします。

○鈴木市街地整備部長 当地区の核となる三街区でございますが、都市再生の役割を担う街区として、業務、文化交流、居住など多様な機能を備えた国際競争力の強化に貢献する、緑にあふれた、潤いある街区として整備中でございます。
 具体的には、国際的ニーズに対応可能なオフィス、会議場、ホテル、住宅などが機能的に複合した地域のシンボルとなる超高層ビルを建設するとともに、敷地内には約六千平方メートルに及ぶ緑豊かな交流広場も整備する予定でございます。さらに、再開発ビルの地下部分に立体道路制度を活用して、環状第二号線の本線を整備してございます。
 三街区では、昨年度より建築工事に着手しており、平成二十六年度の完成を予定してございます。

○鈴木委員 ただいまの答弁で、この三街区のビルが地域のシンボルというよりは、都市再生のシンボルというべきビルだということがよくわかりました。
 それで、この三街区では、先ほどのお話にもありましたけれども、立体道路制度を活用しているとのことであります。この立体道路制度を活用したことにより、さまざまなメリットが生まれたというふうに思っておりますけれども、具体的にご説明をお願いいたします。

○鈴木市街地整備部長 新橋・虎ノ門地区のように、建物や人口が集中する都心部において幹線道路を整備するということは、地元の合意形成を得ることに非常に困難を伴います。
 この地区では、地域に残りたいという従前権利者のご意向に配慮しまして、立体道路制度を活用した再開発事業を実施することにより、道路上の再開発ビルにおいて、従前権利者の居住や営業の継続が可能となりました。
 また、道路用地と建物敷地を重複利用することによりまして、道路と建物がそれぞれ別に事業を実施するよりも都市空間の有効利用が図られるとともに、経費の低減につながるものでございます。

○鈴木委員 この立体道路制度という手法を活用しますと、本当に権利者の生活再建はもとより、こういった新橋・虎ノ門地区のような地価の高い都心地域においては、事業費の面でも道路と建物の双方に大きなメリットがあるわけであります。
 それに加えて、環状第二号線が地下と地上の二層構造になっており、地上部に広い空間が確保されたことも、私はこの事業の大きな効果であるというふうに考えております。
 この地上部の道路は、都心部でポテンシャルの高いこの地域において、経済波及効果の大きい道路と考えられます。
 そこで、環状二号線の地上部道路をどのような道路として整備していく考えなのかを改めてお伺いいたします。

○鈴木市街地整備部長 新橋-虎ノ門間の環状第二号線は、計画幅員四十メートルを有する道路で、広域交通を担う地下本線と地域内交通を担う地上部道路の二層構造となっているため、地上部の道路については、ゆとりある広い歩道空間を確保することが可能となりました。
 この空間を生かして、地域の交流やにぎわいを創出するとともに、グリーンロードネットワークにふさわしい緑豊かで魅力ある道路として整備していく考えでございます。
 また、この地上部道路は、地域の方々のアクセスに利用され、沿道を含む周辺のまちづくりに重要な役割を担うことから、地域の活性化にも資するよう整備してまいります。
 そこで都は昨年度、地元権利者に地元区や学識経験者を加えまして、地上部道路景観検討委員会を設置し、東京を代表する道路景観の創出を目指して、質の高い道路デザインを立案いたしました。
 このデザイン案を踏まえ、今年度から地上部道路の工事に本格着工し、平成二十五年度完成を目指して整備を進めてまいります。

○鈴木委員 ただいまの質問の中で、この環状第二号線新橋・虎ノ門地区の再開発事業というのは、これからの東京の都市再生の重要な事例になっていくというふうにも私は思っております。
 この東京の都市再生を進める上での大変重要な役割を果たす事業でございますので、これからもしっかりと地域に配慮しながら取り組んでいっていただきたい、そして計画どおりすばらしい都市再生になるように期待をしているところでございます。
 また一方、ほかの二地区に目を移せば、北新宿地域では放射第六号線が、そして大橋地区では首都高大橋ジャンクションが既に供用が開始されて、道路渋滞の緩和に大きく貢献しているわけでございます。
 私は、このように都施行の再開発事業が、東京のまちづくりに極めて大きな役割を果たしているものと考えております。この三地区とも、事業は本当に終盤を迎えております。東京の都市再生に向け、引き続き都施行再開発事業を着実に進めていただくとともに、こうした幹線道路の整備に合わせた都施行事業の役割を十分生かしつつ、今後のまちづくりにつなげていただくよう要望いたしまして、質問を終わります。

○加藤委員 私からは、都施行の再開発事業三地区のうち、北新宿地区について質問をいたします。
 先ほど現地を見てまいりましたけれども、既に放射第六号線が供用し、青梅街道も拡幅され、再開発ビルも六棟が完成するなど、新宿副都心にふさわしい新たなまちが創出されていました。一部工事は残っているものの、完成間近という状況です。
 この地域は従前、青梅街道沿いの一部を除き、老朽化した木造の戸建て住宅やアパートが密集し、宅地は細分化され、狭隘な道路も多く、防災上の課題が多い地域だったと聞いています。
 そこでまず、この地区で都施行再開発を実施した目的について伺います。

○鈴木市街地整備部長 北新宿地区の再開発事業は、放射第六号線の整備にあわせまして、周辺の市街地を一体的に整備する事業でございます。
 さらに、放射第六号線は、青梅街道のバイパスとして、新宿駅周辺の交通混雑の緩和に資する上で欠かせない道路でございます。
 当地区の従前の状況は、狭隘な道路が多く、木造住宅が密集する防災上危険な地域であり、放射第六号線はその中を斜めに横切るよう整備する計画となってございました。このため、多くの住民の皆様は、その整備に当たり、地域内に残りたいと強く要望されておりました。
 こうした地域住民の皆様の要望にこたえつつ、放射第六号線の整備を進める必要があったことから、都施行の再開発事業により、道路の整備と同時に、周辺のまちづくりを行うことといたしました。

○加藤委員 当地区のように木造住宅が密集する地域では、長年地域にお住まいになっている方々が少なくありません。
 このような地域において、道路の整備にあわせて周辺のまちづくりを進めるこの事業は、生活再建を望む権利者の要望にこたえる上で非常に有効な事業だと思います。
 ところで、我が会派は、被災三県を何回か訪れて、現地の要望を直接聞いて、都としての支援策を探ってまいりました。先日、私も宮城県に赴きましたが、まだまだ被害のつめ跡が至るところに残っており、復興への道のりは遠いなと感じました。それだけ被害状況は想像を絶するもので、震災への備えが改めて必要であることを強く実感した次第です。密集市街地の多い東京においても、それは同じであります。
 そこで、北新宿地区の防災性、これはこの事業によってどのように高まるのか伺います。

○鈴木市街地整備部長 本事業で整備する放射第六号線は、幅員約三十メートルを有した道路であり、この地区の延焼遮断帯となるものでございます。
 あわせて、八割を占めていた木造住宅がすべて解消され、九棟の再開発ビルを建築することによりまして、地域の不燃化が図れるものでございます。
 また、狭隘道路にかわり、緊急車両の通行が可能な幅員を持つ生活道路を新たに整備することにより、地区の防災性が向上いたします。

○加藤委員 事業前は非耐火建築物が八割を超えていたわけですから、再開発事業によって地区全体の防災性が格段に向上することが理解できたわけですが、昨年三月の東日本大震災以降、民間の高層ビルでは、非常用電源の確保など防災の取り組みが行われています。都が施行する再開発事業においても、そうした防災上の工夫が施されているのか気になるところであります。
 平成二十三年度の決算書を見ると、一街区は最も面積が広く、二棟の超高層ビルが建っています。超高層ビルというと、長周期地震動の影響を想像いたします。
 そこで、一街区に建築された再開発ビルには、防災面でどのような配慮がなされているのか伺います。

○鈴木市街地整備部長 一街区は、二本の幹線道路に面した当地区で最も広い約一・四ヘクタールの面積を有した街区でございまして、委員ご指摘のとおり三十五階建ての業務棟と二十階建ての住宅棟の二つの再開発ビルを建築してございます。
 これらのビルでは、制震構造や免震構造を採用して耐震化が図られており、家具や什器などの転倒による被害も抑えられます。
 また、ビル内には防災備蓄倉庫を整備するとともに、エレベーターや水道の給水が継続できるよう自家発電を備えることにより、地震が発生しても直ちに逃げなくても済むよう、配慮がされております。
 さらに、敷地内には約七百平方メートルの防災広場を含む約五千平方メートルの空地を確保し、マンホールトイレやかまどとして使えるベンチを整備しておりまして、災害時における地域住民の皆様のいっとき避難場所として機能することが期待されております。

○加藤委員 本日の質疑を踏まえ、これまでに整備してきた再開発ビルとは一味違った、新たな防災性能を備えたビルとなることがわかりました。
 自家発電は七十二時間、三日間もつとも聞いており、いざというときに役立ちます。道路の整備と相まって、地区全体の防災性が向上するばかりか、防災性能を備えた再開発ビルもでき上がるなど、北新宿地区の再開発事業の果たす役割は大きいといえます。
 都は、今、高度防災都市づくりの一環で、木密地域不燃化十年プロジェクトを立ち上げています。密集市街地が占める割合の多い地元墨田区も、二地区がプロジェクトに指定されています。
 二十三区内の木密地域を抱えている区では、それぞれその解消に向けて頑張っていると思いますが、ノウハウなどの面でその対応に苦労しているところもあります。
 そこで、こうした都施行再開発で培われた経験やノウハウを、木密地域対策を初めとした東京のまちづくりに活用すべきと考えます。木密地域不燃化十年プロジェクトの推進に対して、これまでの都施行再開発のノウハウを生かし、都においても支援してほしいと思いますが、見解を伺います。

○鈴木市街地整備部長 北新宿地区を例にとりましても、お話のように延焼遮断帯となる道路を整備し、周辺市街地を整備する再開発事業は、木密地域対策として大変有効な事業でございます。
 都内の木造住宅が密集する地域においては、再開発事業のほかにも、土地区画整理事業、沿道一体整備事業、防災街区整備事業、住宅市街地総合整備事業など、これまでさまざまな手法のまちづくりが進められております。
 木密地域不燃化十年プロジェクトについては、現在、先行実施地区の整備プログラムを地元区と共同で作成している段階でございまして、都は来年度以降、取り組む本格実施地区を含め、各地区で行う不燃化特区における事業に対してさまざまなまちづくりのノウハウを活用し、積極的に支援してまいります。

○加藤委員 先行実施地区から都に対してさまざまな提案がなされていると思いますが、税財政支援や規制緩和等、最大限の支援を行って、木密解消に努めていただくことを要望して、質問を終わります。

○かち委員 私からも質問させていただきますが、都施行による三つの再開発事業も大橋地区は、今年度、来年の三月末で事業が完了する、こういう時期を迎えておりますので、振り返ってこの都施行による再開発事業のあり方について、検証していきたいというふうに思います。
 東京都は、以前には都施行の再開発事業として、亀戸・大島・小松川地区、白鬚西地区、赤羽北地区などで行ってきましたが、バブル崩壊など市況の影響を受け、三地区合計で一千二百億円の損失を出しました。
 都施行の再開発事業においては、とりわけこういう公共性、公益性、経済性をどう見きわめていくかということが大変重要になっています。
 今回、三つの開発については、特定建築者制度を取り入れた都施行による都市再開発事業ですが、では、そのメリットとリスクについてどのように認識されているかお聞きします。

○鈴木市街地整備部長 都施行再開発におきましては、特定建築者制度の活用によりまして、民間のビル事業のノウハウを活用するなど、再開発事業の円滑な推進を図っております。
 一方、着実に再開発事業の執行を図るためには、特定建築者が再開発ビルの適正な建築を確実に実施できる資力等を持ち合わせている必要があるなど、一定の資格要件について慎重に審査してございます。

○かち委員 余りぴったりしたくだりではなかったんですけれど、かつてこういう委員会で何度か繰り返されておられる皆様方の見解というのは、道路建設とまちづくりの一体開発ができる、従前住民が住み続けられるまちづくりができるんだと。保留床処分のリスクが小さい。結果的に税金をつぎ込むことは少ない。民間と一体の事業で、都の予算制度に縛られない。事業のスピードアップが図られる。利息を生む。事業費の縮減などがある。こういうことをるる述べられていたわけですが、しかし、リスクとしては、市況、景気に大きく影響されるという問題をはらんでいるというふうに思います。北新宿地区、環状二号線新橋・虎ノ門地区、大橋地区の三開発については、それぞれの事情を抱えての都施行となったわけです。
 北新宿地区では、バブル期に地上げ屋が開発目的で土地を買いあさって、虫食い状態になった土地で、その後バブルがはじけて、土地の買収も頓挫していたのを都市再開発機構が買収し、それを東京都が汐留開発地区の一部と等価交換をして、この地区の民間開発の失敗を救済したような形になったわけです。しかし、このときも、都は四百五十億円で購入した土地を百六億円で売却することになり、三百四十四億円の損失をつくったんです。
 環状二号線地区新橋・虎ノ門地区の開発では、第三街区の超高層の森ビルを、立体道路制度を導入して容積率の大幅アップを生み出すために、たった一・三キロメートルの道路整備を地下化し、地上部についても開削で掘削するなど、検討もいろいろあったわけですが、結局、地上にも道路を整備することになり、二層構造の道路建設となり、その分、事業費もかさんだわけです。
 北新宿も環状二号線地区も、幹線道路建設と再開発をセットで行うことから、都の一般財源も事業費の三〇から四〇%前後が投入されています。
 大橋地区については、本来、首都高株式会社が再開発を施行することになっていたものですが、首都高の民営化など、財政事情からできないということになり、首都高には中央環状新宿線に専念してもらう、それを早く完成してもらうということで、東京都が施行者になったという経緯があります。よって、都費の投入は基本的には行わず、事業収益で賄う計画でした。
 これらの再開発を進めるために、土地の高度利用や立体道路制度などを駆使して、建築物の容積率に反映させてきました。この活用により、三つの開発それぞれ容積率はどのようにアップしたのでしょうか。

○鈴木市街地整備部長 都施行の再開発事業は、重要な都市基盤整備を目的としているため、それに伴う土地利用の変更によりベースの容積率が見直されます。さらに、空地、緑地の確保等の公共貢献に見合った容積率の緩和を実施してございます。
 三地区の事業実施によりまして、法定容積率は北新宿地区で三〇〇%から七〇〇%が四〇〇%から九〇〇%に、環状第二号線新橋・虎ノ門地区では、六〇〇%から七〇〇%が五〇〇%から一一五〇%に、さらに大橋地区で三〇〇%から五〇〇%が八〇〇%といたしました。
 なお、容積率の緩和は、高度利用地区や再開発促進区を定め実施しているものでございまして、立体道路制度によるものでございません。

○かち委員 いろいろな手法を組み合わせて、このような容積率アップになったということですけれども、こうした手法を取り入れることによって、特定建築者にとっては保留床をより多く建設でき、収益になるというわけです。
 特定建築者制度の活用で、民間事業者が、東京都が取得した用地を買収し、その上に設計と建築をする。その中から、権利床分を都が買い取って、残りは建築者が保留床として売却する。これが、保留床が多ければ、その分もうけになるということです。
 それぞれの保留床、分譲戸数は、総戸数中の何戸になるのでしょうか。

○鈴木市街地整備部長 現時点における保留床の戸数でございますが、北新宿地区の総戸数約六百六十戸のうち、約五百十戸、環状第二号線新橋・虎ノ門地区の総戸数約三百八十戸のうち約二百二十戸、大橋地区の総戸数約九百戸のうち約六百二十戸でございます。

○かち委員 ちょっと数字が動くのかもしれませんけれども、今のご答弁によりますと、北新宿では約七〇%、環二では五七%、大橋地区では六三%が特建者の保留床で、そして大橋での権利床返還分が四十八戸ということですので、これは権利床として新宿マンションに戻る予定だった方が結果的に転出されてしまったので、都が引き取って売却せざるを得なくなった分です。実に権利床中の二割を占めることになったんです。
 保留床の処分売益状況ですけれども、大橋地区においては、一-一棟のクロスエアタワーについては、順調に売却が進んでいるとはいえない状況ではないでしょうか。ネットなどを見ますと、第五期二次販売予定住戸が五件出ています。先着販売住戸が九戸売り出されておりますけれども、そのうち三戸が都の保留床分とのことでした。この先着分とは、以前にも乗り出したんだけれども、買い手がつかなかったのでまた出たということです。
 今の経済環境の中では、マンション業界全体も弱含みで、都心部で利便性の高い高級マンションが敬遠されている傾向との報道もあります。この先も厳しさが予想されるわけです。
 大橋一-一地区の特建者公募において、不動産鑑定のもとに公募したときに、第一回目は百九十億円で出しましたけれども、不調に終わりました。二回目は、都が既に用地買収で費やした費用、採算ライン七十九億円で出しましたけれども、これも不調に終わりました。
 結果として、三回目は相手のいい値、十九億円で落札という経過をたどってきたわけです。
 大橋地区一-一棟の採算ラインの七十九億円を大きく下回った売却落差六十億円の差額をどのように穴埋めしていくのか、この間の取り組み状況を伺います。

○鈴木市街地整備部長 大橋地区におきましては、大規模でかつ極めて重要な大橋ジャンクションの整備と、地域内権利者の生活再建を同時に実現するために、周辺のまちづくりを一体的に行う再開発事業としたものでございます。
 一-一棟については、平成二十年度に実施しました特定建築者の公募において、リーマンショックによる厳しい経済状況を反映した敷地価格が提案されましたが、権利者の生活再建を早期に図る必要があることなどを考慮し、市況が回復した場合に敷地譲渡価格を増額変更する、いわゆるスライド条項を付して、特定建築者と契約いたしました。
 さらに現在、不動産市況に対応した国の緊急の補助金制度を活用したさらなる国費の確保に取り組んでいるところでございます。
 また、都が権利を有する保留床につきまして、特定建築者と連携した戦略的かつ機動的な販売活動を行いまして、収益の確保に努めているところでございます。

○かち委員 こういう状況でも、特建者は都の当初予定価格の十分の一の値段で取得し建てた物件ですから、多少の売れ残りがあっても想定内ということになるでしょう。
 しかし都は、既に採算ラインを割っているのですから、四十八戸の保留床を一戸でも多く処分し、六十億円の穴埋めをしなくてはならないわけです。その解決のために、今幾つかの方法を組み合わせて努力をされているということでしたけれども、都の保有床四十八戸の売却、国から都市再生の補助、それから、特建者からスライド条項による調整で賄うということでしたけれども、それぞれの実績と見通しについて具体的にお答えください。

○鈴木市街地整備部長 昨年の六月以来、東京都保留床四十八戸を順次販売しまして、これまで着実に販売実績を伸ばしてございます。今後も完売に向け、販売活動を精力的に推進してまいります。
 国からの補助は、都市・地域再生緊急促進事業補助を確保しておりまして、二十三年度決算時点で約十二億円でございます。
 また、スライド条項による敷地譲渡価格の変更額につきましては、特定建築者が保留床分譲を行っている最中でございまして、保留床の分譲価格や販売経費等の流動的な要素があるため確定してございません。

○かち委員 四十八戸については、都が精力的に販売活動を行っているんだということでしたけれども、どれだけ売れているのか見通しはという点では、なかなかはっきりとしたお答えはないわけですが、国からより多くの補助金を引き出すといっても、それに見合う規定があるわけでもない。特建者のスライド条項の中身は、完売できたときにお互いに協議することになっているんだということですけれども、一体どうなるのか。いずれをとっても、今の欠損を補てんできる確たる保証はないというのが今の時点の状況だと思います。
 都が特建者制度を取り入れた都施行開発を取り入れた理由は、都職員はマンション販売などは得意としない分野なので、民間のノウハウを活用するんだとかつて答えていましたけれども、結局、都みずからが販売に乗り出さざるを得ない事態になっているわけです。
 民間と一緒になって、都の職員の皆さんがマンション販売に奔走している一方で、こういう開発によって住みなれた土地に住み続けることができなくなった人々も相当数いるわけです。
 三つの再開発事業におけるそれぞれの従前権利者のうち、再開発後に入居した権利者数の数、借家人数は何人になるのかお答えください。

○鈴木市街地整備部長 再開発事業におきましては、地権者や借家人の方々は、みずからの選択により地域内に残ることも、また転出することも可能でございます。また、転出を希望されました借家人に対しても、生活再建対策として都営住宅等へのあっせんに努めるなど、きめ細かな対応をしてございます。
 北新宿地区では、地権者百七十三人、借家人二百二十一人、このうち再開発後に入居した地権者六十四人、借家人一人でございます。
 次に、環状第二号線新橋・虎ノ門地区では、地権者四百五十八人、借家人四百八十四人、このうち再開発後に入居された地権者百七人、借家人六人でございます。
 また、大橋地区でございますが、地権者百八十一人、借家人百六十五人、このうち再開発後に入居した地権者八十六人、借家人六人でございます。

○かち委員 北新宿地区では、権利者が三百九十四人いらっしゃいましたが、残った地権者は一六%、借家人は一人だったんですね。
 環状二号線地区は九百四十二人の権利者がいましたけれども、残った地権者は一二%、借家人は六人でした。
 大橋地区では三百四十六人中、残った地権者は二六%、借家人は六人とのことです。特に借家人に至っては、ほとんどが転出しているのが実態です。
 最初に、都施行の都市開発のメリットは、道路建設と一体でまちづくりをするんだと。従前居住者が住み続けられるまちづくりなんだと。民間のノウハウを取り入れてスピードアップで進めることができるんだというようなことでしたけれども、結局、大半の方は住み続けることができず、転出しているのが実態です。
 また、都施行という名のもとに、民間大手のデベロッパーや大手ゼネコンを利するこのような再開発事業の公益性が問われています。
 市況に多く影響を受けるハイリスクをはらみながら、従前居住者が住み続けることのできない都施行の再開発事業のあり方は根本から見直すべきことを申し上げて、質問を終わります。

○上野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○上野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。

○上野委員長 これより病院経営本部関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十三年度東京都病院会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○和賀井経営企画部長 去る十月十五日の本分科会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます平成二十三年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、都立病院における経営指標の推移から、7、各都立病院の薬剤師の定数及び現員の推移までの七点でございます。
 資料番号1から資料番号5までと資料番号7につきましては、平成十九年度から平成二十三年度までの五カ年の推移を、資料番号6につきましては平成二十一年度から二十三年度までの三カ年の推移をお示ししてございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、都立病院における経営指標の推移でございます。
 都立病院における経営指標の推移を入院外来別に記載してございます。
 二ページをお開き願います。一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費)でございます。
 一般会計繰入金と、このうち施設整備関連経費につきまして、その推移を記載してございます。
 三ページをごらんください。一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費以外・病院別)でございます。
 一般会計繰入金のうち、施設整備関連経費以外の経費の推移を病院別に記載してございます。
 四ページをお開き願います。都立病院の医師、看護要員及び医療技術員等の定数及び現員の推移でございます。
 医師、看護要員及び医療技術員等の定数と各年度十月一日現在の現員の推移を記載してございます。
 五ページをごらんください。5、各都立病院の産婦人科、小児科及び麻酔科常勤医師の定数及び現員の推移でございます。
 産婦人科、小児科及び麻酔科の常勤医師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について、病院別に記載してございます。
 六ページをお開き願います。6、各都立病院の分娩件数の推移及び周産期医療受け入れ件数の推移でございます。
 各年度の分娩件数の推移及び周産期医療受け入れ件数の推移について、病院別に記載してございます。
 七ページをごらんください。7、各都立病院の薬剤師の定数及び現員の推移でございます。
 薬剤師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移について病院別に記載してございます。
 簡単ではございますが、以上で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○上野委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○興津委員 それでは、私の方から質問させていただきたいと存じます。
 まず、多摩地域の小児医療体制について確認をさせていただきたいと存じております。
 清瀬、八王子小児病院は、多摩総合ですね、府中の方に新設されました小児医療センターに平成二十二年三月に統合されてから足かけ三年目ということになりました。その後の進捗は、昨年の質疑におきまして、地域医療の中核病院などとの連携を踏まえ充実してきているというふうに伺っています。
 地域の皆様が安心して子どもを育てる環境と感じているか、また、当該病院のドクターの負担感、また地域の医師会の先生方が過度の負担感を持たずに、この体制に理解、協力を得られているのか。また、地元自治体との連携を密にして、小児医療の状況を見詰めて、地域の方々が安心できる医療体制を確保することが何よりも求められているというふうに感じております。
 そこで、特にこの一年間の経過を踏まえまして、小児病院移転後の両地域の小児医療の後医療体制につきましてお伺いさせていただきます。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 両地域の中核病院である多摩北部医療センター、東海大学八王子病院及び東京医大八王子医療センターでは、小児病院移転に合わせまして、小児病床の上昇により受け入れ体制を確保してきております。
 その際、都では当初より継続して小児総合医療センターの専門医を派遣いたしまして、受け入れ体制の支援を行ってまいりました。
 また、地域の中核病院で対処できない高度専門的医療が必要な症例が生じた場合には、小児総合医療センターが密接な連携を図りながら、迅速、円滑な受け入れを行っておりまして、現在の小児医療体制について地元市などから評価をしていただいているものと認識しております。
 平成二十三年度の両地域の小児医療の状況でございますが、北多摩北部地域では多摩北部医療センターのほか、公立昭和病院などの医療機関においても受診機会が適切に確保されてございます。
 また、八王子地域では、東海大八王子病院、東京医大八王子医療センターのほか、小児科が新設されました南多摩病院などの医療機関が患者さんの受け皿となっておりまして、両地域とも入院、外来ともに引き続き大きな混乱はなく、安定的に推移しているものと考えております。
 例えば東海大学八王子病院で申しますと、小児病床が三十六床ございますが、平成二十三年度の実績は、入院の延べ患者さんの数で見ますと一日当たり十九・六人と、移転前の平成二十年度比で四・七%増、平成二十二年度に比べてほぼ同数となっております。
 また、外来の患者さんの数は一日当たり九十八・二人と、平成二十年度比十二・七人の減、平成二十二年度に比べて八・六人減となるなど、入院及び外来とも落ちついた状態が続いているというふうに聞いております。

○興津委員 大変ありがたいなと思います。私の住んでいる国分寺、国立近辺では、多摩総合さんが大きく開業されていましたので非常に助かっていますし、この状況を今のご報告を伺う限りにおきましては、東京都の方の努力もあり、そしてまた民間さんのご努力もあり、大きな混乱が生じていないということであるというふうに承りました。
 今後とも、この地域の小児医療の充実のためにご努力いただきたいということを重ねてお願いさせていただきたいと存じます。
 それでは、次にPFI関係につきましてお伺いさせていただきます。
 経費的に考えましたPFIですけれども、石原都知事が就任後、都立病院運営をPFI事業化されています。この病院運営をPFI事業化した根本的な理由及びPFI事業におけるSPCに管理が移行した病床数は合計何床でしょうか。そして、PFI四病院の病床数は全体の何%に当たるのか、まずはお伺いし、そしてPFI化したことによって起きたであろうという地域医療への影響がありましたらばお聞かせください。

○中野サービス推進部長 PFI事業の実施に伴いまして、SPCに業務運営を移行した病院は、多摩総合医療センター、小児総合医療センター、駒込病院、松沢病院の四病院でございます。
 PFIの導入に当たりましては、まず、各事業につきまして導入可能性調査を実施し、調査で得られた結果を踏まえ、さらなる検討を踏まえ、民活手法検討委員会に付議いたしました。
 同委員会の審議により、PFI手法を導入した場合に、事業機関全体で都の財政負担額の縮減効果、いわゆるVFMと業務の効率化によるサービス水準の向上など、財政面及び患者サービス面での一定の効果があることが確認されたため、特定事業として選定されたものでございます。
 なお、落札時のVFMは多摩及び小児は六・七%、駒込は四・三%、松沢は四・五%でございます。
 次に、平成二十三年度の予算病床数でございますが、普通病床数で見ますと、PFI事業を導入した四病院の病床数の合計は千八百三十八床でございまして、全都立病院の病床数の三千七百六十九床に占める割合は四八・八%でございます。
 これに精神、結核、感染症を加えました全病床数で見ますと、PFI事業を導入した四病院の病床数は合計二千九百六十三床でございまして、全都立病院の病床数四千九百六十四床に占める割合は五九・七%でございます。
 PFI事業を導入したことによる地域医療への影響でございますが、四病院におきましては、維持業務や建物管理などの医療周辺業務はSPCが包括的に担いまして、診療業務や経営などは引き続き都が責任を持って担ってまいります。
 各病院では、これまでも地域医療連携に取り組んでまいりましたが、今後も患者さんが、症状に応じ適切な医療が受けられますよう、地域の医療機関との連携をより一層進めてまいります。

○興津委員 ご報告いただきましたとおり、PFI事業化された四病院の全病床数のパーセントが約六〇%ということになるわけですね。もう既にそこまで進捗しているということの結果だというふうに思います。
 私は、個人的な意見ではありますが、余りこれが進捗して一〇〇%に近づくことがあってはいけないのかなと実は思っているんですけどね。その結果として、地域の病院と医療関係さんと連携をきちっととっておいていただきたいなと思います。
 そしてまた、バリュー・フォー・マネー、VFMですね、ここの部分があるんだということによって、これが進捗しているんだということなんだろうと思います。その件もきちっと図っていただいて、その価値を高く見出すようにご努力いただきたいということを重ねてお願いさせていただきます。
 そこでですけれども、PFI事業の導入後の医療品、医薬品ですかね、これの購入の取扱方法はどのように変化されたでしょうか、お伺いいたします。

○中野サービス推進部長 PFIの導入前は、標準化の可能な医薬品につきましては、都立病院全体での共同購入を行いまして、その他の医薬品につきましては各病院が購入しておりました。
 PFI事業を導入した病院では、事業契約に基づきまして、薬品の調達業務をSPCが担っておりまして、SPCは民間事業者の経験やノウハウを活用し、経費の縮減を図りながら調達を行うよう努めております。
 なお、PFI事業を導入していない都立病院におきましては、引き続き共同購入を実施しております。

○興津委員 はい、わかりました。ありがとうございます。PFI事業化された病院さんに関しましては、SPCですね、特定事業者さんの方が独自に共同購入していると。共同購入じゃないですね。単体で購入しているということですね。というふうに承りましたけれども、医薬品など都の共同購入に参加してからどのように変化していますでしょうか。
 つまり、PFIを導入していない都立四病院の薬品費の医療収益に占める割合、これとPFI導入している都立四病院の比較並びに二十年度と二十三年度、これ、会計決算が出ていると思いますので、その対比における医療収益増加率、これはどのようになっているかお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 医薬品につきましては、平成二十年度から全都立病院におきまして共同購入による調達方式を導入し、コスト削減を図ってまいりました。その後、PFI手法による再編整備事業の推進に伴いまして、平成二十一年度の駒込病院を初めといたしまして、多摩総合医療センター、小児総合医療センター、松沢病院の計四病院におきまして、医薬品の調達業務の大部分をSPCに委託しております。
 このほかの広尾病院、大塚病院、墨東病院、神経病院の四病院につきましては、引き続き共同購入を実施しております。
 次に、PFIを導入した四病院とPFIを導入していない四病院とに分けて医業収益に対する薬品費の割合を比較いたしますと、平成二十年度では、PFIを導入していない都立四病院では一二・五%、現在、PFIを導入している都立四病院では一九・九%でございました。平成二十三年度におきましては、PFIを導入していない都立四病院では一一・九%、現在、PFIを導入している都立四病院では一七・三%でございました。
 平成二十年度と二十三年度の実績を比較いたしますと、PFIを導入していない都立四病院では〇・六ポイント、現在、PFIを導入している都立四病院では二・六ポイントの改善となっております。
 最後に、平成二十年度と二十三年度の対比における医業収益の増加率でございますが、PFIを導入していない都立四病院では一九・四%、PFIを導入している都立四病院では二二・四%でございます。

○興津委員 ご報告ありがとうございました。この数字の対比をどのように感じるかっていうことなんだと思います。先ほどもご答弁をいただきましたとおり、PFI事業を行うということは、バリュー・フォー・マネーをかち取るんだという視点からのPFI事業化であったというふうな答弁をいただいたところでありますが、この医療収益増加率は、PFIを導入していない都立四病院が一九・四%の増加、PFIを導入している都立四病院が二二・四%の増加ですと。その差は三ポイントちょうどですけれども、実は医薬品の割合は、PFI導入四病院の方、平成二十年度まで七・四ポイント、平成二十三年度は五・四ポイント、この差がついています。
 この比率差についてどのように分析をされていらっしゃるかお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 平成二十年度におきましては、PFI手法を活用した医薬品の調達は、それぞれの病院ではまだ実施しておりませんで、単純な比較は難しいものと考えます。
 病院が使用する医薬品は、病院の特性や診療内容に応じまして種類や量が大きく異なります。例えばPFIを導入している駒込病院は、都道府県がん診療連携拠点病院に指定され、他の医療機関では対応困難ながん治療に取り組むなど、都におけるがん診療の拠点の一つとなっております。
 また、エイズ診療中核拠点病院に指定されるなど、専門的な感染症医療にも重点を置いております。こうした医療特性から、駒込病院は他の都立病院と比較して、抗がん剤や抗HIV薬等の購入量が多いことが特徴となっております。抗がん剤等の医薬品は薬価が高いものが多く、他の都立病院と比較しまして薬品費は必然的に高くなります。
 医薬品の購入に当たりましては、PFI導入病院につきましては、民間事業者のノウハウと専門知識を生かした価格交渉を行いまして、PFIを導入していない病院におきましては、市場価格の調査等により予定価格を精査した上で、スケールメリットを生かした共同購入等による価格交渉を行うなど、ともに効率的な調達を行っております。
 これらの結果、現在PFIを導入している四病院、PFIを導入していない四病院ともに、平成二十年度と比較いたしまして、医業収益に対する薬品費の割合が減少したものと考えております。

○興津委員 ありがとうございます。この医薬品の割合が減少しているということは、例えばジェネリック剤等の利用もここのところ進んできているのかなということも一つ影響があるのではなかろうかというふうに私は思っているんです。
 先ほど申し上げたとおり、ここから先、要望といいますか、提案といいますか、お聞きいただければというふうに思っているんですけれども、PFI事業化をされた病院さんは単体でやる、都立病院は共同購入している、こういう話だと思うんですね。
 ですので、もしこれが可能であるならばということなんですが、基礎的な薬剤であれば、PFIを行っている四病院、こちらも薬剤を限定した上でもいいと思うんですけれども、共同購入を八病院で進められて、それこそもっと大きなスケールメリットを得られるような、そんな仕組みというのはぜひ考えていただけたらいいなというふうに思っております。
 医薬費も先ほどから申し上げているとおりに、医療費のうちの非常に大きなパーセントを占めますので、東京都としてもスケールメリットを、今までやったものを失うのではなく、またそれを取り返していただければなというふうに思ってもおりますので、ご検討いただければと思います。
 それでは、次に参ります。医療安全についてです。
 医療安全についてですけれども、インシデント、アクシデントの件数につきましてレポートを拝見いたしました。平成二十三年におけるインシデント、アクシデントの総計は二万二千九百十一件、インシデントは二万二千二百七十件で九七%、アクシデントの方、六百四十一件、三%というご報告でした。
 また、インセント、アクシデントの合計として、PFIを導入していない都立四病院では一万八百七十八件となり、予算病床対比として一床当たり五・四四件、PFIを導入している都立四病院では一万二千三十三件、予算病床対比として一床当たり四・〇六件となります。
 このPFIを導入していない都立四病院の方が多少高い傾向も示されていますが、病院は患者に健康な状態を取り戻していただく場所であります。残念ながら、ヒューマンエラーとしてインシデント、アクシデントが起こってしまう場合もあると思います。
 インシデント、アクシデントの発生は限りなく少ない方が私は望ましいと思いますけれども、この解決策に向けましての取り組みをお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 重大な事故の発生を防止するためには、まずは病院内で発生したさまざまな事象を正確に把握することが重要であります。このためには、一定数以上のインシデントやアクシデントに関する報告数を確保することが不可欠でございまして、冷やりとしたり、はっとした事例など、ささいなものを含めまして、なるべく多くの事例を積極的に報告するよう職員に働きかけております。
 ここ数年の報告件数から見まして、インシデント・アクシデントレポートによる報告制度は、都立病院の職員の間にほぼ定着していると認識しております。
 次に、医療安全対策の取り組みでございますが、都立病院における注射器等の取扱基準等、リスクの高い事故を中心に八種類のガイドラインを作成いたしまして、各病院ではガイドラインを踏まえたマニュアルを作成しております。
 また、各病院に専任リスクマネジャーを配置いたしまして、院内の医療安全活動の中心として、インシデント・アクシデントレポートの集計、分析、予防策の企画立案やそれに基づく院内各部門への指導、院内パトロール等の定期的な実施、講習会や講演会の実施など、医療安全の推進に向け日々活動しております。
 一方、本部では、年四回の医療安全研修を開催しておりまして、専任リスクマネジャーや各部門の医療安全担当者約百名を対象に、知識の習得と意識の向上を図っております。
 また、平成二十一年度からは、一泊二日で集中的に事例の要因分析を行いますワークショップ形式での研修を行いまして、医療安全に関する意識の向上を図っているところでございます。

○興津委員 ありがとうございます。過去における悲しい事故があったというふうにも記憶していますけれども、重篤な状態になるようなインシデント、アクシデントですね、これが本当に発生しないようにしていただきたいということを重ねてお願いするんです。
 また、発生する一つの要因として、緊急搬送時等における専門医の不在という懸念も実はあったりします。内科医、外科医、整形外科医など、診療科目における専門のドクターさんがいらっしゃいますが、そのドクターの診療科目ごとの第二次医療圏における偏重があるのではないかと危惧されているところであります。
 また、緊急事態に備える職員さんの激務である勤務状態も危惧されているところであるというふうに私は感じておりますので、専門診療ドクターの適切な配置も視野に入れて、今後の人事配備を考えていただければということは要望させていただきます。
 次に、医療費の未回収、不納欠損についてお伺いをさせていただきます。
 昨年のこの本委員会でも質疑があったんですけれども、少し視点を変えて、また再度お伺いさせていただきますが、未収金の残高の高さから、未収金の解消に向けて全力を挙げて努力していただきたいと、これが去年の本委員会での総括であったわけです。
 そこで、今回は視点を変えまして質問、確認をさせていただきますが、平成二十三年度における過年度個人未収金の金額はどれくらいであったでしょうか。また、平成二十三年度新規に発生した過年度未収金はどれぐらいでしょうか。お伺いいたします。

○中野サービス推進部長 平成二十三年度末における過年度個人未収金額でございますが、約十一億四千九百万円でございます。これまでは増加傾向にありましたが、今回前年度と比較して約三千五百万円減少いたしました。
 次に、平成二十三年度に新たに発生した過年度未収金、すなわち二十二年度末の未収金のうち、二十三年度に回収できなかった未収金額でございますが、約一億五千百万円でございます。

○興津委員 三千五百万円減少というふうに伺いました。一定のご努力がそこにあったんだなというふうに感じているところであります。
 そこでですけれども、平成二十三年度の不納欠損を行った件数、金額及び未収金残高に対する割合はどれぐらいあったでしょうか。また、その発生理由はどのようなものでしょうか。お伺いいたします。

○中野サービス推進部長 平成二十三年度に不納欠損を行った件数は百十七件、金額は約二千五百万円でございました。
 平成二十三年度過年度未収金残高に対する不納欠損額の割合でございますが、約二・二%でございます。不納欠損の主な発生理由は、行方不明、相続放棄、破産による免責でございます。

○興津委員 確認させていただきました。不納欠損の金額が二十三年度には約二千五百万円という巨額であります。
 赤ひげ先生というわけにはなかなかいかないのも一方では事実であろうと思うんですね。ですので、ご負担いただける方にはきちっとご負担をしていただかないと、今後の先々の経営というのが当然成り行かなくなるわけでありますので、このようなところに立ち至る前に回収をしていただきたいという、回収の努力をしていただくのもまた一つ必要ではないかと思うんです。
 未収金の経年における回収金額並びに回収率はどのようになっていらっしゃるでしょうか。また、未収金の回収についてどのような努力をされていらっしゃるんでしょうか。法的取り組み等も視野に入れて考えるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

○中野サービス推進部長 未収金の回収金額及び回収率でございますが、例として、平成二十一年度に新規に発生した過年度未収金について見てみますと、二十二年度末におきましては約四千百万円を回収いたしまして、一年間の回収率は約一七・七%、二十三年度におきましては約四千四百万円を回収いたしまして、回収率は約二三・一%でございました。
 未収金の縮減に向けましては、病院窓口におきまして高額療養費の現物支給制度や出産育児一時金直接払い制度等の公的な支援制度につきまして、該当する患者さんに情報提供し、制度の活用を促しております。
 また、医事担当職員だけでなく、医療ソーシャルワーカー、医師、看護師等が連携いたしまして情報共有し、発生防止に努めております。
 未収となった案件につきましては、電話による支払い催告や催告書の送付を行うとともに、必要に応じ住所の確認や現地調査を行うとともに、分割納付や保証人による支払いの交渉などの徴収努力を重ねております。
 医療費の消滅時効につきましては、民法第百七十条におきまして三年の短期消滅時効として規定されております。三年という短期間でございまして、今まで申し上げた努力にもかかわらず、なお納付されないものにつきましては、支払い督促等の法的措置を含め検討してまいります。

○興津委員 ご苦労さまでございます。例えば税金等と違って、これは短期なんですね。三年間ということですので、短い間に対応を進めていかないと、不納欠損というところにも立ち至ってしまうという結果もあるのかなと思います。
 また、この数々のご努力もあるということでもありますし、税金と違ってなかなか、取り立てるという単語は変かもしれませんけれども、いただくというのが難しい部分が若干あるのかなということもありますが、一つの債権でもありますので、この法的措置ということで支払い督促ということも検討されているということでありますので、こういった法的な視点からも検討していただければというふうに思っております。
 それでは、最後になりますが、災害時の対策についてお伺いいたします。
 現在、都におきましては、地域防災計画の見直し等に入っています。東日本大震災の事例を引くまでもなく、発災時に多くの患者さんが都立病院に駆け込んでくることは容易に想像ができます。
 この被災者対策として、都立病院の果たすべき役割は非常に重要であるということはもう論をまたないと存じます。
 そこで、発災時の対策として、都立病院の建物、備品、避難対策などは従前に十分に果たされておくべきだというふうに考えていますけれども、現在の取り組み状況及び今後の対策の予定がありましたらばお聞かせください。

○和賀井経営企画部長 まず建物ですが、平成十三年三月に制定されました東京都耐震改修促進計画、平成二十年三月に策定されました東京都が所有する防災上重要な公共建築物の耐震化整備プログラムを受けまして、再編整備事業において、多摩総合医療センター、小児総合医療センター、松沢病院、駒込病院の耐震化を計画的に実施してまいりました。
 現在、平成二十五年度に改修工事が終了する予定の松沢病院社会復帰病棟を除きまして、病院本体の耐震化はすべて完了してございます。
 また、医薬品、診療材料等につきましては、災害時においても医療を継続するため、三日分をランニングストック方式で各病院が備蓄を行っております。
 しかしながら、災害時には物流など復旧のおくれに伴いまして不足が生じる可能性もあることから、地域防災計画の修正内容を踏まえまして、医薬品の供給体制の整備を改めて検討してまいります。
 避難対策につきましては、発災時に入院患者に対し円滑な避難誘導を行えるよう、各病院で毎年度、地震災害や火災を想定した防災訓練を実施しております。
 今後も繰り返し訓練を行うことで、職員の災害対応能力を強化し、災害時において都民の生命を守るため、全力を尽くしてまいります。

○興津委員 ありがとうございます。医薬品の供給体制は、激甚な状況に陥るというのは、今回想定される四つの地震におきましては、地域がある意味、多少限定されている部分もあると思いますので、その中核病院とかそのほかの病院から必要な資材、薬剤等を迅速にお届けできるような供給体制を検討するということでありましたので、ぜひぜひ検討いただきたいと思います。
 本日、このように質疑をさせていただきましたけれども、今後とも都民の命と健康を守るために、さまざまなご努力を一層していただきたいということを改めてお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○吉原委員 それでは、私の方からPFI事業を中心に何点かお伺いをさせていただきたいと思います。
 平成二十三年度の決算では、二十二年度に比べまして、入院患者、そして外来患者ともに実績数がふえてきた。そして、医業収益も増加したわけでございます。
 このことは、PFI事業として導入した多摩総合医療センターと小児総合医療センターが本格的に稼働したこと、また同様に改修していた駒込病院も全面供用開始になったことによるものと本部長より過日説明がございました。
 もともとPFIの導入に当たりましては、平成十三年に策定されました都立病院改革マスタープランの中で、今後の都立病院に当たっては、PFIについて有効性の検証と十分な検討をした上で導入を図るとされていたわけでございます。
 我が会派といたしましても、当時病院事業においてPFIの手法を取り入れました先駆的な経営として評価の高かった高知県の高知医療センターを視察してきたこともございましたので、都はさまざまな角度から検討を重ねて決定されたものと承知いたしているところでございます。
 その意味では、PFIの手法を導入した都立病院が順調にスタートしているものと、この時点では高く評価をさせていただいているところでもございます。
 しかし、一方では、先ほどお話しいたしました高知県の高知医療センターは、開設当初は高い評価がそれぞれのところでされたわけでございますけれども、残念ですけれども、たった五年でPFI事業の契約解消に至ってしまったと、こういう経過があるわけでございます。
 当然のことながら、都立病院においては、高知医療センターのような状況になることはあってはならないことだと、こういうふうに思っているわけでございまして、まず最初にお伺いをいたしますけれども、今回のPFI手法の病院運営と従来の病院運営方法を比較検討する中で、ことし五月、新たにスタートした松沢病院を含めて、立て続けに四病院、PFI手法を導入するに至ったわけでございますので、この経緯、そしてまた、四つの病院の改築、改修が連続した理由をお伺いさせていただきます。

○中野サービス推進部長 まず、PFI手法を導入するに至った経緯についてご説明申し上げます。
 平成十一年九月、PFIの促進を図ることを目的としました民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、いわゆるPFI法が施行されました。
 東京都では十二年十二月に、都におけるPFIの導入の考え方や手順等を示す東京都におけるPFI基本方針を策定いたしました。先生のお話にあったように、都立病院におきましては、平成十三年十二月に策定いたしました都立病院改革マスタープランで都立病院の再編整備を行うこととしまして、あわせて、PFIの有効性の検証等を検討した上で導入を図ることといたしました。
 その後、平成十四年度と十六年度に実施しました導入可能性調査をもとに、それぞれの事業についてPFIの適用を検討し、実施方針の策定と公表を経て、民活手法検討委員会に付議いたしました。
 同委員会では、事業の実施規模や収支計画の妥当性などにつきまして審議いたしまして、コスト面ではPFI手法と都が直接実施する場合とを比べて、都の財政負担額の縮減が図られること、また運営面では施設の建設、維持管理及び運営の一体的な発注による効率化やサービス水準の向上が期待されることから、平成十六年度に多摩総合医療センター及び小児総合医療センターが、十七年度に駒込病院が、十九年度に松沢病院がそれぞれPFIによる特定事業として選定されました。
 次に、四つの病院で改築、改修が連続した理由でございますが、それぞれの病院は昭和四十年代を中心に建設されていたため、老朽化が著しく、改築等の整備が急がれておりました。
 また、新たな医療課題に対応するため、最新の医療機器の導入や良好な療養環境を整備する必要があり、時期を同じくして改築、改修を実施することになったものでございます。

○吉原委員 定められた基本方針や手順にのっとってそれぞれやってきた、こういうことで理解は一定させていただきたいと思っております。
 今回の四病院以外にも、都立病院は四病院あるわけでございますし、また公社病院も所管されているわけでございますので、今後、建てかえや改修の必要性がある場合には、コストの低減、そしてまたサービスの向上など、多面的に整備方法、あるいは運営方法をぜひ検討していっていただきたいというふうに思っています。
 さて、多摩総合医療センター、そして小児総合医療センターでは、昨年の三月、病院開設と同時に特別目的会社も設立されまして、連携をとりながら業務運営も開始されてきているわけでございます。
 今、本格的に病院が稼働している中で、運営面、あるいは患者へのサービスの面でのメリットについて伺いたいと思いますけれども、特にドクターや看護師はさまざまな業務に追われていて、本来の仕事に専念ができないんじゃないかということが時たまいわれてきたわけでございます。
 今回の特別目的会社、要するにSPCでございますけれども、このSPCの業務運営により、ドクターや看護師の本来の仕事以外の負担軽減にどういうふうにつながったのか、具体的に伺いたいと思います。

○中野サービス推進部長 PFI事業では、これまで個別に委託しておりました医療周辺業務をSPCが包括的に担うことにより、業務間の連携や業務の代替方法などを工夫し、医師や看護師などの医療従事者が診療業務等に専念できる環境を整える仕組みとなっております。
 従来の個別の業務委託と異なりまして、SPCが病院のQC活動に参加する姿からも見られるとおり、病院と目的を共有いたしまして、日々の業務運営の中から業務改善を積極的に提案しております。
 医師の負担軽減の例を申し上げますと、例えば病院とSPCが協力いたしまして、肺塞栓の予防チェックシステムを開発いたしました。電子カルテからリスクのある患者さんの抽出が自動化されまして、医師はカルテを一人一人開くことなく、対象患者を確認することができるようになりました。
 また、同じく協力いたしましてリューマチの患者さんの問診をノートパソコン上で行えるシステムを導入いたしまして、医師は、診察室内の端末で生活動作や痛みなどを数値化した指標を参照することが可能となりました。
 こうしたシステムの開発などにより、医師の診療準備の負担を軽減しております。
 次に、看護師の負担軽減の例といたしましては、PFIの導入以前は、医療作業が不在となる夜間、休日におきまして、ベッドの交換を看護師が行っておりましたが、SPCが医療作業と洗濯業務の業務調整を行いまして、洗濯業務がリネン類の準備に加えて、ベッドメーキングも行うようにいたしました。
 また、夜間救急診療では、出血ですとか嘔吐ですとかによりまして、診察室内や廊下に汚れが発生いたしますが、SPCが夜間の緊急清掃を導入したことで、看護師がその処理に当たることなく、本来の業務に専念できるようになりました。
 こうした取り組みによりまして、看護師が本来の業務に専念することは、看護師の負担軽減のみならず、医師の負担軽減にもつながるため、今後ともSPCと協議しながら、業務の効率化を図ってまいります。

○吉原委員 ドクターや看護師は、病院にとって診療という意味では当然かなめでございますので、今お話をお聞きしたところによりますと、SPCの連携によって、大分以前と違う形が見えてきたのかな、そんな思いをいたしました。
 これからも引き続き本来の仕事に支障が出ることのないように、ぜひとも工夫をより一層していただきたいというふうに要望しておきたいと思います。
 さらに、患者に対するサービスは何よりも大事でございますので、PFI導入によって不安を抱えながらの患者へのサービスがどのように向上してきたのか、お伺いいたします。

○中野サービス推進部長 長期継続契約のメリットを生かしまして、業務の実施方法につきまして、SPCと病院が運営開始前から協議を重ねたことによりまして、病院の要望を取り入れた業務内容を構築し、患者サービスの向上を図るとともに、状況の変化に応じて柔軟に業務変更を行っております。
 例えば入院患者さんの検体検査を朝六時から開始する業務手順とすることで、外来検査が集中する時間帯との重なりをなくし、外来での待ち時間の減少を図っております。
 また、外来での医療費計算を計算受付と外来の四つのブロック受付で行う分散方式を導入いたしまして、会計での待ち時間短縮を図っております。
 現在、診察を終えた患者さんがその日の検査や診察の終了を確認してから計算終了の案内を行うまでの時間は、おおむね十分となっております。
 都立病院患者満足度アンケートの中で、会計の待ち時間はどうですかという質問をしておりますが、二十一年度、旧府中病院ではほとんど気にならなかったが回答者の四九・六%だったのに対し、二十三年度、多摩総合医療センターでは八〇・八%に向上しております。

○吉原委員 ありがとうございます。患者に対してもさらなるサービスの向上に全力を尽くしていっていただきたいなというふうに思います。
 今、会計処理のお話もございましたけれども、私もこの近くの大学病院に時たま行くことがあるんですけれども、その際も会計、本当に二十人、三十人並んでいても、事務的な作業がすぐ終わって、そしてまた、会計のところに行っても数分で終わってしまう、こういう環境が今、どこでも求められているわけでございまして、引き続きそういった面でも頑張っていただきたいなというふうに思っています。
 都立病院のPFI事業では、SPCから病院に対する経営支援を行うことも求めているわけでございます。当然のことながら、都立病院の経営は都の責任ですから、SPCによる民間のノウハウを生かした経営支援もPFI導入のメリットの一つであろうというふうに思っています。
 SPCは、病院に対する経営支援としてどのようなことを行っているのか、お伺いをいたします。

○中野サービス推進部長 PFIの契約では、SPCに病院への経営支援機能の発揮を求めております。薬品、診療材料につきましては、SPCが調達や物品管理業務を包括的に担っておりまして、こうした業務を行う中で、不稼働物品などの調査の実施によって、病棟ごとの定数の見直しですとか、品目数の縮減の提案を行っております。
 また、多くの診療材料を消費いたします手術部門における診療科別消費データを病院に報告するなど、病院のコスト削減を支援しております。
 病院の収益である診療報酬に関しましては、同一疾病に関する検査、処置、投薬などの実施内容を他病院と比較分析し、改善の方向性について助言を行っております。
 今後とも、SPCの提案を病院の経営改善に役立ててまいります。

○吉原委員 ぜひとも民間の発想を積極的に取り入れていただきまして、きめ細かな、そして有効な経営改善を進めていただきたいというふうに思います。
 PFI事業は、施設整備後約十五年の長きにわたりまして、SPCによる業務運営が続く長期契約になっているわけでございます。先ほどPFI導入によるメリットをお伺いいたしましたが、PFIを導入した意味は、そのメリットが限りなく向上していくことが当然望ましいわけでございまして、PFI事業においてSPCの業務水準を維持向上させる仕組み、そして工夫についてお伺いをいたします。

○中野サービス推進部長 性能発注でございますPFI事業では、事業者が行う業務の履行状況をチェックする仕組みといたしまして、いわゆるモニタリング制度を取り入れております。
 モニタリングでは、SPCみずからが個々の業務をチェックするセルフモニタリングの実施と都への報告を義務づけておりまして、患者ニーズなどの変化を敏感に察知することで、サービスの提供方法をSPCみずからが見直しております。
 都は、毎月SPCの報告をもとに、SPCが提供するサービスをチェックし、要求水準を満たしていない場合には改善を促す仕組みとしております。
 なお、平成二十三年三月十一日の東日本大震災の発生に伴いまして計画停電が起きました。その際、SPCは施設の設計、建設から維持管理までを一体的に担っているという、こういったメリットを生かしまして、十分なシミュレーションのもと、病院内の電力供給をコントロールしたため、診療への影響を防ぐことができました。
 その後もSPCは、効率のよい電力供給計画を立案いたしまして、主体的に節電に努めているところでございます。

○吉原委員 どうもありがとうございます。都立病院のPFI事業は、まだまだ導入されてから日がたっていないわけでございまして、病院経営本部はSPCとこれからも引き続き手を携えながら、患者サービスや業務水準の向上をぜひ目指して頑張っていただきたい、こういうふうなことを要望して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○上野委員長 この際、議事の都合によりましておおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十二分休憩

   午後三時六分開議

○上野委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○加藤委員 私からは、都立病院におけるがん対策について何点か伺います。
 東京都におけるがん患者数は年々増加しており、死亡原因は、昭和五十二年以降、第一位を占めております。国は、平成十九年六月にがん対策推進基本計画を策定し、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図ってきました。
 都においても、国の計画を踏まえ、平成二十年三月に東京都がん対策推進計画を策定し、高度ながん医療の提供とがん医療水準の向上を目指してまいりました。計画策定から五年が経過し、この間、がん診療連携拠点病院や東京都認定がん診療病院の整備と、連携体制の構築がなされてきました。
 そして、駒込病院は都道府県がん診療連携拠点病院に指定され、都におけるがん医療ネットワークの中心的な役割を担っています。このような中、駒込病院では、がん診療機能を強化するためリニューアル整備を進め、平成二十三年九月、全面供用を開始しました。
 私ども都議会公明党も、二十三年十月に視察に訪れ、最新鋭の機器を見てまいりました。そこでまず、平成二十三年度の駒込病院の患者数や利用率など運営状況について、平成二十二年度の実績と比較して説明を伺います。

○和賀井経営企画部長 平成二十三年度駒込病院の延べ入院患者数は二十三万二千百二十三人、一日当たりにしますと六百三十四・二人、病床利用率は七九・二%でございました。
 なお、このうち全面供用を開始いたしました九月以降を見ますと、病床利用率は八四・二%となってございます。
 その前年、平成二十二年度の入院患者数は、改修工事中のこともあり単純な比較はできませんが、延べで二十一万四千四十六人、一日当たり五百八十六・四人でございまして、順調に実績を伸ばしてございます。
 一方、二十三年度の外来患者数は延べ三十三万二千二百八十九人、一日当たり千百二十六・四人でありまして、このうち九月以降では一日当たり千百四十九人となってございます。

○加藤委員 駒込病院の改修工事は、診療を行いながら改修をするという大変な工事だったと聞いております。そのような状況の中でも多くのがん患者の診療を行い、全面供用開始後は順調に患者数をふやしていることがうかがえます。
 医療の質の面でも、駒込病院は、改修によって強化された機能を発揮していると聞いております。特に駒込病院では、集学的治療の推進を行い、患者に最も適した治療方法を検討しているとのことです。そこで、駒込病院の集学的治療とはどのようなものなのか、駒込病院での取り組みについて伺います。

○和賀井経営企画部長 集学的治療とは、内科や外科、放射線科などの各分野の専門医が協力して一人の患者の治療に当たる治療方針のことをいいます。
 がん治療には、外科的な治療、内科的治療、放射線治療といった基本的な体系がございまして、それぞれ手術療法、化学療法、放射線療法などがございます。これらの医療分野におけます進歩は著しいものがありまして、各診療科だけの知識や経験だけでは必ずしも最良の医療を提供することができない場合もございます。このため、集学的治療としまして、それぞれ異なる専門分野の複数の医師や医療従事者が患者の治療計画を包括的に議論し、最適な治療方法を決定するための仕組みが必要でございます。
 このような集学的治療を実施するための場をキャンサーボードといいまして、駒込病院では以前から診療科を超えて横断的な症例検討会を行い、現在ではほぼすべての臓器に対応させた十二のキャンサーボードを整備し、部位別に症例検討を行っております。
 平成二十三年度では、治療方針を検討するキャンサーボードを計四百二十四回実施しております。今後も患者の治療の選択肢の幅を広げるとともに、治療レベルの向上に資するためのキャンサーボードの積極的な活用を図ってまいります。

○加藤委員 新薬や医療機器の発展が、患者に最も適した治療方法につながることが重要であると考えます。同時に、専門的な治療方法をわかりやすく患者さんに説明することも必要でありますので、あわせて対応をお願いいたします。
 また、駒込病院には、我が党が要望した高精度放射線治療装置、トモセラピー、サイバーナイフなど三台が導入され、順調に稼働を始めたと聞いています。この放射線装置は、周囲の正常な組織を傷つけずに、がんの部分のみに放射線を集中して高精度に照射を行い、身体に優しく、がんを効果的に治療できるようにするものです。
 超高齢社会では、患者の負担を少なく治療することも重要なことであり、先ほど答弁のあったように、専門性の高い治療方法を最適化して患者の治療に当たるためには、日々の検討会など大変な努力があると思います。引き続き、患者にとって最適な治療の研究をお願いいたします。
 次に、がん対策に関しては、がん治療の一層の発展のため、病気、手術などの経過を医学的に予測する、いわゆる予後の調査が不可欠で重要なものであり、東京都保健医療計画でも、その重要性から、院内がん登録を進めていくとしております。がん治療の実態を正しく把握する必要があります。
 駒込病院は、都道府県がん診療連携拠点病院に指定されており、みずからも院内がん登録を充実させ、さらには、がん診療を行う病院にその意義や重要性を理解してもらうことも役割の一つとされています。そこで、駒込病院における院内がん登録の状況について伺います。

○和賀井経営企画部長 院内がん登録は、病院内でがん診療、治療を受けたすべての患者さんについて、がんの診断日、発見された経緯、治療方針等の診断情報やその部位、腫瘍の進行度等の腫瘍情報、生存確認日、死亡情報などの予後の情報を登録することによりまして、病院内のがん診療の実態を把握するものでございます。
 この登録情報を活用、分析することで、がん患者の受療状況、生存率の把握などを行うとともに、臨床研究、疫学研究に活用することで病院のがん医療水準を評価し、医療の質の向上を図るものでございます。
 駒込病院では、五名の病院事務専門医が院内がん登録業務を行っております。平成二十三年度につきましては現在集計中ではございますが、平成二十二年一月から十二月の登録件数は三千六百二十件となっております。今後も、当該院内がん登録の精度向上を図るとともに、都道府県がん診療連携拠点病院としての役割を果たしてまいります。

○加藤委員 院内がん登録は、日々の地道な努力が将来のがん治療に役立つことになる重要な情報です。がん診療を行う病院すべてがこれに参画して、将来の地域がん登録につながっていくわけですが、このほど駒込病院内に地域がん登録施設が設置され、七月から地域がん登録がスタートいたしました。
 私も以前、本会議の一般質問でこの地域がん登録について、院内がん登録を実施する医療機関の拡大に一層努め、地域がん登録につなげるべきと訴えました。そうした意味で、今回のこのスタートを高く評価いたします。
 また、リニューアルした駒込病院には緩和ケア病棟が新設されました。がん患者は肉体的にも強い痛みを伴い、病気と闘うため、本人のみならず家族も精神的な苦痛が大きいものです。そのため、緩和ケアは、治療の初期段階から退院後の在宅医療まで、心身の痛みを和らげるため、さまざまな工夫をしたと聞いています。そこで、駒込病院の緩和ケア病棟の稼働状況やその取扱内容について伺います。

○和賀井経営企画部長 駒込病院では、以前より緩和ケア医療に取り組んできたところではございますけれども、平成二十年四月に新たに緩和ケア科を設置しまして充実を図りました。
 今回の改修では、設備面において緩和ケア病床を全室個室で二十二床とするほか、患者と家族の方が触れ合う場として多目的室、談話室、食堂などのほか、ミスト浴室を整備するなど、療養環境に配慮した専門の病棟を整備いたしました。
 平成二十三年度におけます緩和ケア病棟の延べ入院患者数は五千八百十一人、一日当たり十五・九人となっております。また、退院患者を対象にしました緩和ケア外来患者数は、平成二十三年度で三百六十七人、一日当たり一・二人となっています。
 さらに、院内に設置されております緩和ケアチームが、一般病棟に入院しております患者に対する緩和ケアを提供しておりまして、医師、看護師、薬剤師、心理士などで構成した緩和ケアチームが主治医からの依頼を受けて病棟に往診し、緩和治療、ケアに関する専門的なアドバイスを提供しますコンサルテーション型の活動を行っております。
 患者からの依頼内容は、疼痛に関するものが最も多く、不安、倦怠感、呼吸困難などが続いております。また、家族の問題や治療方針など、多岐にわたる相談に応じております。緩和ケアチームに対します新規依頼患者数は、平成二十三年度は延べ二百五十三人でございました。

○加藤委員 答弁にもありましたけれども、駒込病院の緩和ケア病棟の稼働や、緩和ケアチームが、実際に患者さんが前向きにがんとつき合い、納得した医療を受けられるよう役割を果たしてきたものといえます。
 こうした活動においては、特に患者さんやその家族とより身近に寄り添う、認定看護師の存在も重要であります。公益社団法人日本看護協会が認定する認定看護師は、その専門分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、看護現場において実践、指導、相談の三つの役割を果たすことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ることに貢献する役割があるとしております。
 認定看護師専門分野は二十一分野あり、がん医療に関する分野は五分野で、都立病院におけるがんに対する緩和ケア医療において不可欠な存在となっているとのことであります。そこで、都立病院の緩和ケア医療にかかわる認定看護師はどのような取り組みをしているのか、また、その配置状況はどのようになっているのか伺います。

○和賀井経営企画部長 緩和ケア医療にかかわる認定看護師は、緩和ケア認定看護師及びがん性疼痛看護認定看護師でございます。
 緩和ケア認定看護師は、都立病院全体で七名、そのうち三名を駒込病院に配置しております。また、がん性疼痛看護認定看護師につきましては、都立病院全体で六名、そのうち駒込病院には四名を配置しており、患者の体の痛みや心の苦悩を緩和し、患者のQOL向上のため、患者とそのご家族とともに寄り添う看護を提供しております。
 なお、都立病院では、がん医療にかかわる専門看護師が三名おりますが、全員を駒込病院に配置しております。

○加藤委員 最後に、私の地元である墨東病院のがん対策について質問をします。
 都では、平成二十四年十月現在、二カ所の都道府県がん診療連携拠点病院と、二十二カ所の地域がん診療連携拠点病院を整備するとともに、がん診療連携拠点病院と同等の高度な診療機能を有する東京都認定がん診療病院として、都独自に十カ所を認定しています。
 一方で、墨田区、江東区、江戸川、三区から成る区東部二次保健医療圏では、地域住民のがん診療を担う病院が他の医療圏に比べ少ないという状況でありました。
 こうした中で、墨東病院が平成二十三年四月、東京都認定がん診療病院に認定されました。その経緯はどのようなものか伺います。

○和賀井経営企画部長 墨東病院では、区東部二次保健医療圏におけますがん医療の中心的な役割を担う必要があるとの認識に立ちまして、医療人材の育成や外来化学療法、院内がん登録、セカンドオピニオンなどに積極的に取り組んでおります。
 東京都認定がん診療病院の指定を受けるため、肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんといった五大がんを初めとするがんについて、高度な集学的治療を提供するとともに、地域の医療従事者を対象として、緩和ケア研修の開催などを通じ、がん診療の充実を図ってまいりました。
 その結果、国の指定する連携拠点病院と同等の高度な診療機能を有する病院としまして、平成二十三年四月に都の認定を受けたところでございます。今後は、地域の医療機関と連携を図り、区東部地域のがん診療のさらなる充実に努めてまいります。

○加藤委員 過日、がんで入院された知人のお見舞いに行きましたところ、墨東病院の治療の対応がすばらしくて大変感謝しておりました。関係者にお礼をいってほしいともいわれておりました。
 これまでも墨東病院は地元の基幹病院として、また、大きな医療機関の少ない地域での最後のとりでとして医療を提供してきました。墨東病院が東京都認定がん診療病院として指定されたことで、住民の墨東病院に対する信頼はさらに高まったことと思います。
 現在、墨東病院は、東京都地域医療再生計画において、感染症対策など、さらなる機能強化を図っています。今後も、地域の医療機関と連携のもと、地域の医療水準の向上と、墨東病院の有する医療機能を最大限発揮することをお願いして、質問を終わります。

○かち委員 まず、都立病院の防災と災害対策について伺います。
 改めまして、昨年の東日本大震災の直後から、被災地からの広域搬送拠点臨時医療施設への職員の派遣、またDMAT三班を宮城県気仙沼への派遣を初め、多くの医療職員の派遣と救護活動に従事されてきました。こうした皆さんに敬意を表したいと思います。同時に、学ぶことも大変多かったのではないかと思いますが、それらの教訓をぜひ今後の医療活動に生かしていただきたいと思っています。
 この教訓からも、災害直後から医療機能を発揮しなければならない災害拠点病院として、その機能を確保しながら、負傷した患者、重傷者を緊急的に受け入れなければならない使命を持っているのが都立病院の役割です。迫りくる首都直下の大地震にも備え、都民の命を守るとりでとしての都立病院の現状と課題についてお聞きします。
 まず、都立病院は、通常以上の電力、水、医材、薬剤、食料などの確保が求められていますが、どのように準備をされているのでしょうか。

○和賀井経営企画部長 各都立病院では、必要な電力を発災後三日間、七十二時間賄えるように非常用発電機用の燃料を備蓄するなど、対策を講じております。また、医薬品、医療資器材、食料、飲料水などにつきましても同じく三日分を備蓄しております。

○かち委員 病院という施設ではさまざまな電気、電子機器が作動しており、より大量の電力を消費する施設です。停電に見舞われた場合、各病院に整備されている非常用発電の容量では、最低の電力確保はできるものの、電子機器類は停止し、照明も最小限にすることが求められます。日常診療に制限がかけられることになります。だからこそ、病院は、日常的に自立型の電力設備が必要であると考えます。
 電力確保という点では、非常用だけでなく、エネルギーの効率化、ピークカットなどにもこたえられる常用のコージェネレーションシステムを全都立病院に整備していくことが重要ではないかと思いますが、また省エネ、環境対策も求められています。太陽光発電など再生エネルギーの活用で自立型のエネルギー確保にも取り組むべきですが、どうでしょうか。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 ガスによるコージェネレーション設備は、効率的な熱利用によるエネルギー供給のために導入しておりまして、既に大塚病院、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターに導入されております。加えまして、現在、広域基幹災害医療センターである広尾病院におきまして、整備を進めているところでございます。
 他の都立病院は、既存の設備との接続や効率的な運用方法など、導入効果の検討を行っているところでございます。また、太陽光エネルギーを活用した発電設備については、松沢病院に導入をしております。

○かち委員 大塚病院、多摩と小児総合医療センターには導入済み、広尾病院には新たに導入を検討しているということですけれども、駒込病院や墨東病院など拠点病院では、いまだ導入されていないという状況です。
 昨年の東日本大震災後、緊急災害対策の補正予算として、電力確保のため三億一千九百九十万円が計上されていますけれども、その内容と実績について伺います。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 広尾病院の中圧ガスを利用した常用の自家発電機の導入に向けた設計、あるいは墨東病院の非常用発電機等の設備の改修などを行ったところでございます。

○かち委員 墨東病院はER病院なので、常用自立型電力確保が必要だと思います。改めて、すべての都立病院でのコジェネシステムを計画的に導入、完備されることを求めておきます。
 阪神・淡路大震災のときには、水が断水で透析医療に大変支障を来したという体験を聞いております。透析医療には水が欠かせません。その他、医療現場では水が不可欠です。透析患者、手術などという事態からも、飲料水も含め大量の水の確保が求められておりますが、その取り組み状況はどうでしょうか。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 水の確保につきましては、災害時などに供給が停止した場合におきましても、全都立病院が約三日分の水を確保しております。
 なお、水が不足する場合は、東京都地域防災計画に基づきまして、医療施設などへの応急給水が車両輸送によって行われることになっております。

○かち委員 発災時に緊急医療体制の確保や物流ルートが寸断された場合の電力、燃料、医療資器材の確保など、BCPの作成が必要なために二千万円が計上されておりますけれども、その進捗状況はどうでしょうか。

○和賀井経営企画部長 平成二十三年度は、広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターの四病院でBCPを策定いたしました。その他の病院につきましては現在作成中でございます。

○かち委員 四病院で作成済みとのことですが、残りの半分も早急に作成し、いざというときに何をどうすればいいかという、東日本大震災を教訓としたマニュアルは必然のものですが、同時に、日常的にそれが職員に身についていなければ、いざというときに役に立たなくては意味がありません。そういう意味で、日常的な訓練を重ねておく必要があるというふうに思います。
 次に、がん医療について伺います。
 今日、がん患者の治療形態が大きく変化してきております。通院による化学療法なども広がっています。現在、都立病院で緩和ケア病棟があるのは駒込病院だけですけれども、外来化学療法に取り組んでいる病院はふえてきています。外来化学療法に取り組んでいる都立病院と、それぞれの規模についてお聞きします。

○中野サービス推進部長 平成二十四年三月末現在、広尾病院、大塚病院、駒込病院、墨東病院、多摩総合医療センター、小児総合医療センターの合計六病院、八十二床におきまして外来化学療法を実施しております。
 平成二十三年度の外来化学療法の実績は、都立病院全体で二万五十四件でございます。

○かち委員 ほとんどの総合医療を行っている病院では導入してきているということですけれども、昨年は、駒込病院では外来化学療法のベッド五十床のうち三十六床の稼働、続いて、墨東病院は十床、多摩総合医療センターで二十七床、その他というふうな状況でした。がん治療を通院で治療するということが当たり前の時代になってきているんですね。
 しかし、待ち時間が長いなど、いろいろ課題もあるようです。実際、体力の弱っている方、疼痛に耐えている方、呼吸困難など重い症状を抱えながらの外来治療は大変負荷のかかることであり、少しでも待ち時間の短縮が求められています。
 がん医療においては、ターミナル、イコール、緩和ケアという考え方が根強くはびこってきましたけれども、しかし、既にがん治療を始める時点から緩和ケアを導入することの効果が上がっていることから、当初から緩和ケアを導入し、治療経過の中で、終末期に向かわざるを得ない患者さんにその比重を高めていく必要があるといわれています。診療報酬改定の中でも位置づけられるようになりました。
 こうした中で、がん性疼痛のコントロールや将来への不安、うつなど精神的ダウンへの支えなど、緩和ケアチームの果たす役割が大きく求められています。このチームは認定資格のある医師二人、内科と精神科、看護師一人、薬剤師一人の構成で保険点数上の加算対象となりましたが、各都立病院での取り組みを伺います。

○中野サービス推進部長 入院患者に対する緩和ケアチームの診療体制について評価する緩和ケア診療加算の施設基準は、都道府県がん診療連携拠点病院である駒込病院では平成二十年四月から、地域がん診療連携拠点病院である多摩総合医療センターでは平成二十二年四月から既に取得しております。また、外来患者に対する緩和ケアチームの診療体制について評価する外来緩和ケア管理料の施設基準は、同じく駒込病院、多摩総合医療センターの二病院で取得しております。

○かち委員 二人に一人ががん患者といわれる時代です。今や、どの病院でもがん患者が入院、通院治療をしているわけですが、そこにこたえる緩和ケアチーム体制が追いついていない状況です。総合診療を行っている都立病院では、早急に体制を確立していただきたいと要望しておきます。
 現況は、診療報酬加算の要件が整っていないけれども、不完全ながら緩和ケアチーム対応を行っている病院もあるやに聞いております。問題は、これらのチームが実質的に効力を発揮できるかどうかということです。
 がん医療のセンターとしての役割を持つ駒込病院における緩和ケアチームは、スタッフも充実していて、二〇〇九年にベストチーム・オブ・ザ・イヤー賞を受賞したこともある、高度なチームケアを行っています。どの都立病院でも同水準の緩和ケアができるよう、研修などを含めレベルアップを図ることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○中野サービス推進部長 都立病院では、以前から認定看護師養成派遣研修、コメディカル系職種の資格取得支援によって専門性の高い職員の育成に取り組んでまいりました。このことにより、がん性疼痛看護認定看護師を三病院、計六名、緩和ケア認定看護師を三病院、計七名、がん薬物療法認定薬剤師を五病院、計十二名配置いたしまして、がん患者の全身の疼痛管理や患者、家族へのケアに当たっております。
 また、このほかにもがん医療にかかわる専門看護師を駒込病院に三人配置しております。また、認定看護師が講師となりまして、都立病院等の看護職員を対象に、疼痛マネジメント、がん化学療法看護、緩和ケアにおける家族支援に関する研修を実施するほか、がん性疼痛看護ケアガイドを作成いたしまして、患者や家族に対する支援に役立てております。
 このほか、都道府県がん診療連携拠点病院である駒込病院、地域がん診療連携拠点病院である多摩総合医療センター、東京都認定がん診療病院である墨東病院におきましては、地域の医師等を対象に、がん性疼痛治療の方法や身体症状、精神症状に関する緩和ケア、コミュニケーション技術等に関する緩和ケア研修会を開催しております。

○かち委員 がん患者の三人に一人が亡くなる状況の中で、患者のそばで苦悩する家族も多くいます。患者をみとった後の残りの人生は意味がないなどと思い詰め、うつやPTSDに陥る方もいます。グリーフケア、悲嘆ケアが、イギリスやアメリカでは浸透していますが、日本では埼玉医大国際医療センターで遺族外来を開設していますけれども、そして、ことし二月から、複数の遺族同士が語り合うグループ外来も始めたとのことです。ケアは医師だけでなく、看護師や臨床心理士、カウンセラーなどとの連携が必要です。都立病院の緩和ケアチームとして今後遺族ケアも先進的に取り組んでいくことを提案しておきます。
 この間、緩和ケアチームのメンバーとしても位置づけられ、薬剤師の業務と役割が大幅にふえてきているようですが、改めて、薬剤師業務の変遷とその位置づけについて伺います。

○中野サービス推進部長 医薬分業の進展に伴いまして、薬剤師の業務は、外来調剤中心から入院患者中心へと業務内容がシフトしてきております。また、平成二十二年四月の厚生労働省のチーム医療の推進についての報告書では、チーム医療において薬剤師が主体的に薬剤療法に参加することが有益であるとされております。
 薬剤業務は、これまでの調剤業務に加えまして、医薬品情報管理業務、医薬品安全管理業務、さらには服薬指導や病棟常駐など多岐にわたってきておりまして、チーム医療を推進し、医療の質の向上や医療安全面でその役割を担っているところでございます。

○かち委員 薬剤師業務は、病棟での医薬品に関する安全対策の強化とか薬剤管理指導件数の増加、病棟ごとに薬剤師夜勤体制の確保に加え、何よりも重要なのが、抗がん剤の薬剤師によるミキシング作業であります。当然、高度で新しい業務範囲がふえているわけですから、薬剤師の従来定数の増が求められてきたと思いますが、それらへの対応、取り組みについてお聞きします。

○和賀井経営企画部長 薬剤業務につきましては、抗がん剤のミキシング以外にも、服薬指導や調剤業務などさまざまな業務がございます。都立病院全体の薬剤師定数につきましては、平成二十年度以降、抗がん剤ミキシング業務等のために、平成二十年度の定数百三十二から平成二十三年度の定数百四十七と十五名ふえております。
 なお、現在は、公益財団法人東京都保健医療公社に移管しました豊島病院の定数を除きますと、平成二十年度の定数は百二十三でございまして、平成二十三年度までに二十四人、約二〇%増員をしております。

○かち委員 薬剤師のレベルアップの要請にこたえ、教育制度も四年制から六年制になって、ことしから卒業生が輩出されるようになったことなど、薬剤師をめぐる環境変化が大きくなってきております。
 都立病院では、資料を出していただきましたが、全体では定数もふやしているけれども、昨年の現員は二名足りていません。都立病院では二十四時間対応が求められており、現場の実態はとても回り切れない現状です。また、業務の特性から、少しのミスが患者さんの症状悪化や命に直結する業務でもあり、実態に見合った定数改善が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○和賀井経営企画部長 平成二十三年十月一日現在の定数百四十七に対しまして、常勤の職員の現員は百四十五でございますけれども、このほかに、再任用職員を四名配置しております。この再任用職員を常勤換算いたしますと百四十八・二人となりまして、必要な人材は確保済みでございます。

○かち委員 定数は満たしておるよということですけれども、現場の実態に見合った定数の見直しということを、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 次に、発達障害を含む児童精神科外来の必要性について伺います。
 年々、発達障害児がふえています。梅ケ丘病院が停止されてから東部地域の子どもたちが東部療育センターに集中し、本来かかるべき重心の児童が一カ月も予約待ちとなる状況があると聞いております。
 発達障害を含めた児童精神科の医師不足が当事者たちを悩ませています。大田区から昭島の病院に通っているお子さんもいます。民間の小児科医で診てくれる専門医は極めて少ないんです。早期に発見し、父母や学校、保育園、医療、福祉事務所など関係者が認識を一致させて適切に対応すれば、十分にその子の長所を伸ばすことができるのに、現状では、親も子も周りも疲弊しているのが実態です。
 関係者も含め、発達障害に対する社会的理解を高めていくことや、早期発見のシステムの確立はもちろんですが、そのかなめとなるのが児童精神科医の存在です。民間医療ではとても採算がとれないので敬遠されがちな分野ですが、医療として希望する医師は少なくないと思うのですが、現在、都が行っている医師アカデミーから小児精神科医師の輩出は毎年何名ぐらいいるのでしょうか。

○和賀井経営企画部長 平成二十三年度の修了者は四名、平成二十二年度の修了者は五名でございました。

○かち委員 毎年四、五名の修了者が輩出されているということです。発達障害医療は社会的に需要が高まっているにもかかわらず、診療報酬が低く、開業は成り立たない、診療、開業する医師、医院が少なく、まさに行政的医療です。都立病院としてこれにこたえるべきと思いますが、いかがでしょうか。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 発達障害医療を含む小児精神医療につきましては、都立病院が担う行政的医療に掲げまして、小児総合医療センター及び大塚病院におきまして積極的に取り組んでいるところでございます。今後とも引き続き行政的医療としての役割を担ってまいります。

○かち委員 行政的医療にこたえているんだといわれても、都立病院では、小児総合医療センターと大塚の小児外来だけです。もっとふやしてほしいんです。
 梅ケ丘病院の跡地は、現在どうなっているのでしょう。病院経営本部が管理しているとのことならば、これまでの果たしてきた梅ケ丘の役割を生かして、小児総合医療センターのブランチとして小児精神科外来を開設することを求めますが、いかがでしょうか。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 梅ケ丘病院の跡地につきましては、平成二十三年十二月から解体工事に着手をしておりまして、現在は整地などの工事を行っているところでございます。
 小児精神科外来の開設ですが、梅ケ丘病院を小児総合医療センターに統合した目的の一つは、医師や看護師などの医療人材の集約化によりまして、小児精神医療をさらに充実強化することでございます。小児精神医療は、医師、看護師のほか、作業療法士、心理士、精神保健福祉士、保育士がチームとなって治療に当たるものでございまして、限りある医療資源を効率的に活用しなければならないと考えておりまして、小児精神科外来を新たに設置する考えはございません。

○かち委員 医療っていうのは、一点、拠点病院だけでは需要を賄うことはできないということなんです。高額な器材の整備は必要ないんです。専門医と若干のスタッフがいれば、子どもたちの願いにこたえることができるんです。都立病院として新しく柔軟な診療形態を切り開くという試みがあってもよいのではないでしょうか。強くそのことを要望し、質問を終わります。

○山内委員 ちょっと声がお聞き苦しいのをお許しください。地域医療との連携についてお伺いいたします。
 二〇〇八年一月策定の第二次都立病院改革実行プログラムは、医療をめぐる環境の変化等を踏まえながら、都立病院改革を次のステージに推し進めるために策定されたとのことです。この計画では、患者中心の医療を実現していくために、患者にとって必要な医療情報を積極的に提供し、患者の意思と同意を前提とした患者の選択による医療を実現していかなければならないとしています。患者の視点でのサービスの提供が進むものと期待しているところです。
 また、この計画に基づき都立病院の再編整備が実施され、二〇一〇年三月、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターが開設されました。多摩総合医療センターは、人口四百万人を超える多摩地域の基幹的な医療機関として、また、小児総合医療センターは、都における小児医療の拠点として位置づけられており、いずれの病院も、地域の医療機関と密接に連携しながら運営されることが求められています。
 こうした観点から、平成二十三年度の病院会計決算について伺っていきます。
 まず、地域の医療機関との連携状況を確認する意味で、平成二十三年度における多摩総合医療センター、小児総合医療センターの地域の医療機関との連携実績についてお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 平成二十三年度の患者紹介率の実績でございますが、多摩総合医療センターで八八・七%、小児総合医療センターで七六・九%となっております。
 次に、都立病院から紹介元の医療機関に患者さんをお返ししたり、地域の医療機関に患者さんを紹介する返送、逆紹介率の実績でございますが、多摩総合医療センターで四〇・一%、小児総合医療センターで四八・五%となっております。

○山内委員 全都立病院ではありますけれども、平成二十二年度の紹介率は六八・七%、返送率は三七・一%と以前報告されておりますけれども、患者紹介率なども上がっており、地域の医療機関との連携も進んでいるようであります。
 一方、いざ退院となりますと、患者にとって退院後の医療やケアが大きな不安となります。不安にこたえ、病院側は、個々の患者、家族の療養生活上のニーズに応じて、退院後の療養生活を安定させるため、地域のかかりつけ医や保健福祉施設等と病院が連携し、患者に対する退院支援を進めていくことが重要であると考えます。そこで、多摩総合医療センターでは、患者や家族に対し、どのように退院支援を行っているのかお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 多摩総合医療センターにおきましては、在宅療養に移行するに当たりまして、かかりつけ医を持っている場合には、病院からかかりつけ医に情報提供を行いまして、かかりつけ医を持たない場合には、近隣の医療機関や往診できる医師をご紹介しております。
 加えて、在宅医療に円滑に移行するため、あるいは施設で療養を行っていくために、入院早期から医師、看護師、医療ソーシャルワーカーが患者や家族と面談いたしまして、退院後の生活や療養を見据えて情報収集し、今後の方向性を確認するとともに、患者、家族、在宅主治医、地域のケアマネジャー、訪問看護ステーションの職員などと調整し、安心して在宅や施設療養に移行できるよう支援しております。

○山内委員 退院しても在宅療養が必要であったり、転院したりする場合には、特に患者、家族のニーズや気持ちに寄り添った支援が展開されることが重要です。経済的対策支援や福祉制度、地域のサービスや医療連携、また急変時の対応など、患者にとってはわからないことが多いのが現状です。
 患者にかかわる多職種の人たち、例えば医療ソーシャルワーカー、MSW、これは、医療チームの一員として保健、医療、福祉に関するさまざまなサービスなどを紹介し、活用しながら、患者や家族が自立的に解決できるように援助、協力する役割を担っていますが、そうした役割は非常に大きく、退院前に十分に患者、家族と相談し、不安を軽減するためのきめ細かな仕組みの拡充を要望いたします。
 次に、精神疾患を伴う救急医療体制についてお伺いいたします。
 東京都地方精神保健福祉審議会では、精神疾患における救急医療体制について議論が行われ、本年四月にまとめられた意見具申の中で、精神身体合併症救急患者は、速やかに、かつ適切に身体面及び精神面のいずれにおいても症状に応じた医療を受けられるような流れを整備することが必要であるという提言が出されています。
 精神疾患における医療体制づくりは、都全体で考えるべき課題ではありますが、都立病院等が担う役割は大きいものと思います。そこで、精神科救急の受け入れの仕組みと、平成二十三年度における都立病院等の実績など、どのようになっているのかお伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 都における精神科救急は夜間、休日に実施されておりまして、これを大別いたしますと、本人や家族の方々などの依頼による精神科初期、二次救急医療、二つ目が警察官通報による精神科緊急医療、さらに、お話のございました精神疾患の患者さんが身体疾患を併発し、精神症状と身体症状がいずれも重い、精神身体合併症救急医療の三つに分類されておりまして、そのうち、精神科緊急医療、精神身体合併症救急医療につきまして都立病院が中心となって対応しております。
 まず、警察官通報に基づく精神科緊急医療でございますが、墨東病院、松沢病院、多摩総合医療センターの都立三病院と保健医療公社の豊島病院を加えまして、四病院で都内全域を担っております。平成二十三年度は千百九十二件の診察を行いまして、そのうち九百八十一件が緊急措置入院となっております。
 また、精神身体合併症医療につきましては、広尾病院、墨東病院、松沢病院、多摩総合医療センターの都立四病院と保健医療公社の豊島病院、合わせて五病院が、福祉保健局との契約のもと、都内全域を担っておりまして、平成二十三年度は七十五件を受け入れております。

○山内委員 急性期の精神科医療については、都立病院を中心に対応している状況はわかりました。しかし、自殺未遂等で救急外来で運ばれた患者の中には、精神科との連携が必要なケースがあり、受け入れに困難を来す場合もあると聞いています。現実に受け入れを拒否された不幸な事例も起きています。
 多摩地域は、救急外来が不足している事例と考えます。東京都地方精神福祉保健審議会の提言でも、一般救急患者として受け入れた後に、精神症状について精神科が院内連携で診ているケースも少なくないとされています。
 また、救急医療体制について、精神科初期救急、二次救急、身体合併症の受け入れの整備が十分には進んでおらず、救急患者の受診、入院までに時間がかかるケースがあると指摘されており、その改善が重要です。しかし、その実態はなかなか把握されていないと聞いています。
 自殺予防が喫緊の課題でもあります。多摩地域での救急救命の実態調査、実態把握をすることは、受け入れ体制の整備、その後の入退院等での精神科や医療ソーシャルワーカー等々、多職種による連携、共働の拡充、ひいては自殺予防、再入院防止対策へと結びついていくと考えます。そのために実態把握を強化するなど、携わる方々の意見を反映し、救急救命のさらなる改善に努めていただきたいと思います。
 次に、小児総合医療センターについてお伺いいたします。
 最初の質問に対するご答弁で、小児総合医療センターへの紹介率は七六・九%、返送、逆紹介率は四八・五%とお伺いいたしました。小児総合医療センターについては、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院を統合したことから、三病院の患者さんたちが非常に心配していたところです。
 平成二十二年度の予算特別委員会において、生活者ネットワーク・みらいの西崎委員の質問に対し、重症心身障害児が地域で安心して暮らせる医療体制を確立するためには、小児総合医療センターや地域の医療機関等との適切な役割分担と密接な連携が重要であると認識している。そのため、小児総合医療センターでは、在宅医療の支援や重症化した場合の受け入れ体制づくりに向けて、地域の中核病院や医療機関等から成る療育ネットワークの構築などについて検討を進めていくこととしており、その具体的な内容について引き続き調整していくとのご答弁を得ました。そこで、多摩療育ネットワークの平成二十三年度の状況についてお伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 多摩療育ネットワークは、小児総合医療センターの移転統合に合わせまして、地域の医療機関や療育施設などとの連携強化を図る目的で導入したものでございます。
 平成二十三年度は、多摩地区の療育問題の検討や情報の共有化を図るために、小児総合医療センターや府中療育センターなどが中心となりまして、地域の中核病院やかかりつけ医などが参加するメーリングリストの構築に向けた検討、整備を進めてまいりました。
 具体的な取り組みを申し上げますと、メーリングリストによる症例検討や相談、紹介のほか、セミナーや勉強会の開催、在宅重症児の身体的状況などを情報共有するなごみ手帳の試行開始などの取り組みを着実に進めており、ネットワーク参加機関も六十一施設、医師百三十二名まで増加をいたしました。今後とも参加機関をふやす努力を行うなど、ネットワークの構築をさらに推進し、重症児や患者さん、そのご家族が安心できる環境づくりを行ってまいります。

○山内委員 身体障害のお子さんたちが地域で安心して暮らせる療育体制の充実にさらに努めていただきたいと思います。
 また、平成二十二年度公営企業会計決算特別委員会での星委員の質問に対しては、児童精神科では、梅ケ丘病院と同様、治療開始前後に患者の家族が気軽に相談できる電話相談事業を実施し、退院後、症状が安定した後は、紹介のあった地域の診療所等に戻して、急性的な症状が出れば、すぐに対応できるよう適切な医療連携を図っているとのご答弁も得ています。
 小児総合医療センターは、児童精神のセンター病院でもあります。精神障害の子どもへの医療の拡充、そして地域で安心して暮らせる仕組みづくりを期待しております。また同時に、小児の発達障害に関しても、乳幼児から中学生、思春期でしょうか、までを対象にする病院として、今後ますます重要性が増してくるものと思います。そこで、小児総合医療センターの医師のうち精神障害に対応する医師、そして、発達障害に対応する医師はどのような状況にあるのかお伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 小児総合医療センターでは、統合失調症やうつ病などの精神障害、注意欠陥多動性障害、いわゆるADHDなどの発達障害を持つ幼児期から思春期までの小児を対象に診療を行っております。
 専門の常勤医師十二名を初めとしまして、看護師、ソーシャルワーカー、保育士などの専門職が共同して診療に当たっております。

○山内委員 小児総合医療センターにおいて、発達障害の患者の受け入れや医療提供はどのように行っているのかお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 小児総合医療センターでは、病気の原因が体か心か不明な症例や、体と心の両面からの治療アプローチが必要な症例につきましては、総合診療部におきまして治療を行うほか、必要に応じて、こころの専門診療部を含む院内の他の専門診療科を紹介しております。
 また、こころの電話相談室を設けまして、患者、家族や学校の先生などの関係者から子どもの行動や心の発達などに関する相談を受け付けるとともに、必要に応じ、こころの専門診療部への受診方法をご案内しております。
 発達障害が疑われる患者さんにつきましては、こころの専門診療部におきまして評価、診断した後に、患者の居住地近辺の保健機関、医療機関、福祉施設と連携しながら発達支援を行いまして、入院治療が必要な場合には、小児総合医療センターで専門的な医療を提供しております。
 さらに、院内に、子ども家庭支援部門を設置いたしまして、医師、作業療法士、医療ソーシャルワーカー、心理士、保育士、看護師等のスタッフが小グループによる発達支援、スポーツや創作などの作業療法、医療、福祉に関するさまざまな相談、子どもと家庭の心理的支援、退院支援、在宅療養支援などを行っております。

○山内委員 ある新聞の投稿欄にこんな記事がありました。小さいころから、相手がなぜ自分に対して怒っているのか、よくわからないことがあった。そのためか、小中高大学時代、友人や同級生とトラブルが生じ、取り返しのつかない状態になったり、嫌がらせやいじめを受けたりした。一時、流行したKY、空気が読めないという言葉にショックを受けた。みずから病院を探して、医師から広汎性発達障害の疑いがあると診断を受けました。小さいころからの悩みが解けたように感じたと。
 この記事を投稿した方は、発達障害とわかって、今、資格取得の勉強をしているといいます。遠回りをしたが、未来が見えてきたということです。発達障害とわかったことでやっと納得でき、未来に向けて進むことができる。本人が理解し、周りも理解することで、ともに暮らしていけるのだと思います。ここに、早期発見、早期対応が必要であるとされるゆえんがあると思います。
 しかし、発達障害は、まだまだ理解されず誤解も多い。しつけや家庭環境のせいにされたりします。殊に、母親の接し方、育て方が原因だという誤解も受けたりします。
 また、なかなか本人も家族も受け入れにくい状況です。DVの対象になったり、いじめの対象になったりもします。小児総合医療センターの二十歳未満、外来新患主診断の診療実績を見ますと、発達障害が非常に多くを占めています。発達障害への対応の拡充が期待されていることを示しているものと考えます。
 そこで要望なんですが、病院としての専門的見地から、関係機関と連携して、発達障害に対しての理解を広げるとともに、社会的に認知されていくよう努力すること、そして、診断や説明に対して丁寧に対応していっていただきたい。そして、地域での生活、学習や生活の環境づくり、そういった総合的な支援の仕組みづくりに、病院としても専門家の立場から努めていただきたいと思います。
 実は、ある保護者の方が、意を決して小児総合医療センターに診断に行ったところ、三歳のときに心理相談の先生に、専門医の診察を勧められたんだそうです。二、三カ月いろいろ考え、悩み、ようやく診察の予約を入れ、両親と子どもで長時間かけて、緊張しながら病院に向かったんだそうです。しかし、いざ診療となったときに、お子さんがぐずって診察室に入らなかったので、仕方なくご主人が子どもを見て、お母さんが先生に状況を話したのだそうです。そして、先生は、子ども本人を診ることなく、お母さんのお話だけで、あっさり、広汎性発達障害ですねといったんだそうです。
 恐らく、先生は丁寧にお話ししたつもりだったのだと思いますが、先ほども述べましたように、家族はなかなか障害を受けとめられにくいんです。私は、丁寧な診断と納得がいく説明があってしかるべきであったと思います。診断して終わりなのではないんです。専門診療や子ども家庭支援の充実を求めるとともに、小児総合医療センターに期待をいたしまして、私の質問を終わります。

○和田委員 それでは、まず初めに、医療と死生観にかかわる質問をし、とりわけ、具体的には、胃瘻、胃に穴をあける胃瘻ですね、それに関連して質問いたしたいと思うんです。
 残念な例えになりますが、三・一一以降、私どもの身辺に、亡くなるというか、死というか、そういうものが身近に残念ながらなってしまいました。また、しばらく前には、お葬式の映画などが一般的に広まってきて、日常生活の中にひそかに存在していた死というものが、数多く、そしてまた、心理的に私たちの心をとらえるようになりました。
 そして、また一方、行政的には、樹林葬というふうに、新しい東京の埋葬の仕方も小平などでなされまして、大変関心を持つ方が多いという数字も挙げられております。いうならば、弔い、あるいは、我々を最終、そこに存続させる死というようなことが、日常生活の中に根づき始めてきているという状況を否定することはできないと思うんです。
 そういう中で、都立病院はどういうふうな存在であるべきなのか。病院はただ医療、治せばいい、患者さんを元気に家庭に戻せばいいというだけではなくて、今申し上げたように、日本全体を包み込んでいる死というものとのかかわりも、都立病院も免れることはできない。直接ではないにしても、そういうかかわりの中に存在しているということを私は自覚してほしいと思っているんです。
 ダイイングノートなどというものをつけるようになって、自分の最期の終末をこうあってほしいということを家族で話し合うような、そういう明るい話題に死がなりつつあります。そういう状況の中で、私は胃瘻という問題を考えてみたいと思うんです。
 胃瘻というのは、難しい瘻という字を書くんで、ストマックの胃に平仮名でろうと書いて我々は目にしますけれども、これについて当局はどういうふうな認識を持っていらっしゃるでしょうか。お伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 お話にありました胃瘻とは、口から食事がとれない方や食べてもむせ込んで肺炎などを起こしやすい方に、内視鏡を使って、おなかに小さな口をつくりまして、直接胃に栄養を入れる方法のことでございます。この方法につきましては、患者さん、あるいはご家族とお話の上で、適切に都立病院においても措置を施している状況でございまして、平成二十三年度に都立病院で行われた胃瘻の件数は、造設が二百四十二件、交換が四百十四件となってございます。

○和田委員 確かに壮年期、青年期で脳梗塞とかその他の病臥をもって、倒れられて、積極的にご自分のお口から栄養をとれない場合に、おなかにというか腹部に穴をあけて、直接栄養分を胃に注入するといいましょうか、そういうことだろうと思うんです。
 私が手に入れた、胃瘻をつくるのを造設といい、それをかえるのを交換というふうなデータの締めくくりになっていますけれども、都立病院で胃瘻造設が二十三年度、一番多かったのは、広尾病院で七十件、次に駒込で造設が四十件、大塚が三十六件というふうになっております。
 これは、一回つけますと、胃の酸とか何かでその器具が傷むものですから、数カ月ごとにかえるという、これを交換というようですが、交換については広尾で十件、それから大塚で二十七件、駒込で十件というふうになっておりまして、これはきょうの質問の趣旨じゃありませんから触れませんが、神経病院では造設はなくて交換だけ、三百二十二件、二十三年度、行われているという数字が載っております。
 要するに、人工的に、自分で嚥下できない、飲み下せない器官を、直接胃に栄養物で与えるということのやり方です。お若い方でしたらそれは当然なのですが、高齢になられて、ほとんど寝たきりになられた方も同じように胃瘻をされています。自分で飲み下せない、飲むと嚥下性の肺炎になってしまうから、お医者さんの方で直接ここの胃に栄養物を入れましょうということで処置されるケースも多い。もとより、先ほど答弁いただいたとおり、お医者さんだけではなくて、承諾書を前提にこの栄養を与えるという工夫はされているわけですが、私は、当然そういうことはあっていいのですが、高齢者で、自分の意思がはっきり表現できない、他の病気を持っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
 私は、この方々の生に、あるいは死にかかわる問題ですから、ご本人や家族、あるいはそういう方々の判断で当然なのでありますけれども、つい最近、世田谷区の芦花ホームという特別養護老人ホームの石飛幸三さんという人が、平穏死を考える、「『平穏死』という選択」という、そういう本を出されました。この方と私は三十年以上前に知り合った方でありますが、今はその芦花ホームで平穏死ということを進めています。
 これは何かというと、まさに、胃瘻をやめて、自然に亡くなっていく道を選んだらどうだろうかという、ある意味では、お医者さんに対する一つの抵抗といいましょうか、反論をこの方はなさっている。慶應大学を卒業されて四十年間、外科医をずっとやってきて、今回その芦花ホームに行って、気がついて、今まで切って切って切りまくってきた外科のやり方、そしてまた科学的な根拠で生き長らえさせるというよりも、自然に亡くなっていくこともその方の人生の一つの締めくくり方で、大事ではないのかということで、この方が、今、注目をされるというか、亡くなり方の一つの選択肢に自然死、あるいは平穏死を出されております。
 この方の主張によりますと、要するに、ホームと、それから医療機関というもののたらい回しによって胃瘻に到達して、ご自分の自覚がないままに人工的な延命措置のような形で亡くなっていかざるを得ないんだ、したがって、もっと、先ほど申し上げた自分で自分の死を見詰めて、自分が意識して自分の死を計画するような、そういう人たちもいていいんではないのか、またふやすべきではないのか。石飛先生によると、胃瘻は一年、一人五百万円の医療費がかかるんだ。医療費にかけがえのない命ではありますけれども、選択の余地としては、平穏死という考え方ももっと医療界、あるいは介護界の中に浸透していっていいのではないかというようなことを提起されております。
 私は都立病院の充実も知っておりますけれども、やはりどこまでも科学的、医学的な一つの患者とのつき合いではなくて、そこに科学的な、医学的なものを超えた精神といいましょうか、生命というか、そういうもののエリアも存在しているということをぜひ皆さん方にも知っておいてほしいということを、まず冒頭に申し上げた次第です。
 二十三年度の胃瘻造設、あるいは交換の数字は大変貴重な数字ですので、これからの私の勉強の糧にさせていただきたいと思います。
 次に、臨床医制度に関する質問をさせていただきます。
 臨床医というのは、昭和二十三年にインターン制度からスタートしました。戦後、国家試験の受験資格を得るためには必要な課程だということで、二十三年にスタートしました。それから昭和四十三年に臨床研修医制度というのが出されまして、これは、医師免許取得後二年以上の努力義務としてこの制度がつくられました。強制ではなかったんですね。そして、平成十二年に医師法と医療法の改正で臨床研修は義務化されたと。これが、昭和二十三年から平成十二年にかかって改善された一つの大きな義務化の改革でありました。
 引き続いて、十六年に、いわゆる医療界でいわれる新制度の施行という形が行われました。具体的には、二十二年にも改正されているわけでありますが、こういう経過の中で臨床研修医制度というものがスタートしているんです。
 そこで、当局は、平成十六年の新臨床研修制度がスタートして、医学部卒業生に対する臨床研修は、都としてはどのように把握をし、変化をさせてきたのかというふうなお答えをいただきたいと思います。

○和賀井経営企画部長 お話のとおり、平成十五年度以前は医学部卒業後の医師に対する臨床研修は努力規定でございました。平成十六年度から制度が改正されまして、医師免許取得後二年間の初期臨床研修は必修となっております。都立病院では、必修診療科を設けまして、いわゆるプライマリーケアと呼ばれる医師にとって必要な基本的な診療能力を習得することを目標としております。
 なお、定数ですけれども、平成十五年以前は、努力規定の中で、二十九名を臨床研修医として採用しました。十六年度以降、必修化後は受け入れ人数をふやしまして、現在は五十三名を受け入れております。

○和田委員 一足飛びに患者さんを診るのではなくて、そこでちゃんと、昔のインターン制度、今では臨床研修ということを経て、最低二年ですけれども、そこで臨床に当たりなさいよというようなことだと思うんです。
 この十六年の義務化のときに、私は後の質問にもかかわるんでここで強調しておきますが、医療面接がここで義務化されました。医療面接ですね。いわゆるお医者さんと患者さんの面接ですね。それが義務化されました。このことによってお医者さんと患者さんの間の会話が義務化されたということでありまして、一方的にお医者様がああだこうだというんじゃなくて、患者との、病状を含めそういうことの会話が義務化されたのが十六年、これは大事な大きな改善だというふうに思っております。
 そういうことを前提にしながら、次に進みますが、制度改正後ですが、医学部卒業生の研修先の選択は、都立病院などの臨床研修病院、それと大学病院というふうに大きくは分かれたと思うんですけれども、その力関係といいましょうか、その経緯といいましょうか、平成二十二年度の最新の制度改正を含めてお答えいただきたいと思います。

○和賀井経営企画部長 義務化前の平成十五年度ですけれども、この際には、研修医の七二・五%が大学病院に所属をしていたのに対しまして、必修化後の平成十六年度は、大学病院の受け入れ率が五五・八%に低下し、その分、臨床研修病院での受け入れ率が向上しております。平成二十三年度を見ますと、大学病院四五%に対しまして、臨床研修病院は五五%でございました。
 次に、平成二十二年度の制度改正の内容でございますが、必修科目診療科が七科目から内科、救急、地域医療の三科目に変更されております。また、平成二十一年度まで必修とされておりました小児科、外科、精神科、産婦人科などは選択必修科目となりまして、二科目を選択して受講することとされております。また、指導医一人当たりが受け持つ研修医の人数は五人までになっております。また、臨床研修病院の要件としまして、年間入院患者数が三千人以上でなければならないことも規定されております。募集定数は、都道府県ごとに上限を設定しまして、人口見合いで募集定員を設定することなどが主な改正内容でございます。

○和田委員 二十二年改正は、先ほど僕はちょっと医療面接のことをかいつまんで申し上げましたけれども、その種の改良があったり、あるいは科目数の変更ということがあったり、研修医の人数が一指導医当たり五人までとか、そういう具体的な数字の改善があって、私どもの知り得る、四百人ぐらいですから中規模程度の病院は、これを大変評価しておりました。したがって、十六年、二十二年度の改正によって、この制度が使いやすくなってきたなというようなことを私は、私の知り得る限り聞いているんであります。
 ただ、そこで、臨床研修病院の受け入れ率が上がってきたということは、大学病院、端的にいえば東大とか慈恵医とか、そういう有名な病院志向の研修医が減って、そして、都立病院も含めて、そういう病院の方にも人が集まってきて、いい人材を都立病院も採りやすくなったというような状況だと思うんですが、これについて改めてその理由をお伺いいたします。

○和賀井経営企画部長 新しい制度では研修医は公募制となりまして、医学部の卒業生がマッチング制度によって研修病院を自由に選択できるようになりました。それに伴いまして、都立病院など臨床研修病院は研修医の受け入れ数をふやしまして、新制度に適合した研修体制を整備したため、それまでは卒業後、大学で研修していた医師が臨床研修病院を選択しやすくなったことが原因だと考えております。

○和田委員 有名大学病院志向が少しなだらかになったという、私は大変結構だろうと思っています。私の知っている中規模病院の先生は、こういうことをいっていました。たまたまきょう、研修医制度のある一つの結果が出ているようですけれども、その先生は、自分のところにいる、もう既に研修が終わっている先生が、ドクターが、研修医を採るときにオープンセミナーのように一対一で面接をして、ここの病院はこういうところがすぐれているぞ、こういうところを改善すればもっとよくなるんだぞということをお話しするそうです。それは病院の先生というか、指導的な先生を抜きにして、先輩後輩の関係で。そこで、はっきりその病院のよさとか患者さんに対する接遇の問題とか何かをいうと、随分応募する人数がふえてきて、五倍とか六倍になったよなんていうことを申されました。
 そのように、一般の企業と同じように、お医者さんの中にも自分の病院にいい人材を集めようよという人は、積極的にマンパワーの獲得のために動いているというのを病院の先生から聞いたんで、随分、その病院などは頭のやわらかい先生が集まっているんだなというふうに思いましたけれども、そういうふうに世の中も変わりつつあります。
 そういう研修医制度の二十二年改正から、正直にそれを受けて、自由化の波に乗っていこうという人材獲得の病院もあるということで、感心したところです。
 さて、その新制度によって、大都市と地方という研修医の採用数は変わってきたんでしょうか。また、その理由についてお伺いいたします。

○和賀井経営企画部長 義務化前の平成十五年度と平成二十三年度の研修医の採用数を比較いたしますと、この間、減少しました都府県は東京都が三百四十四名の減、京都府が百四十一名の減、福岡県が百六十名の減などでございます。逆に増加した県は、神奈川県が百四十七の増、埼玉県は百二十六名の増、静岡県が四十六名の増、沖縄県が四十二名の増などでございます。
 東京都が最も減少が大きくなってございますけれども、これは、東京都には大学病院が多いことから、制度改正によりまして、大学病院で採用されていた研修医が臨床研修病院を希望することになったことが主な原因だと考えております。

○和田委員 これも二年前の地域主権戦略会議で問題になりました、この研修医がですね。そのときに、国の方の戦略会議の方では、いや、もとへ戻そうよなんて話があったんですが、いろんな働きかけをして、暫定的に今のままで残しておくよという形で、今の制度が続いている。見直しの年が去年あったんですけれども、それを延長させてきているという経緯があって、今答弁いただいたとおり、中央志向から地方分権というか、地方の方に人材が広がってきているという傾向が強くなってきているという、私は今、答弁の中にそれを感じ取ったところでございます。
 さて、都立病院や公社病院では、この新しい臨床研修制度の発足についてどういうふうな取り組みを行ってきたか、具体的にお答えいただきたいと思います。

○和賀井経営企画部長 都立病院、公社病院では、研修医の受け入れ数を大幅に増加させまして、若手医師の確実な都立病院、公社病院の獲得を図ったところでございます。
 また、病院間で必修となります診療科目が不足する場合には、相互に研修医を交流、ローテートさせまして、全病院で同等の研修を受けられるような体制を整備して、研修の質の担保をしているところでございます。

○和田委員 都立病院、それから公社病院で、一定の基準のところは当然、レベルアップした上で、合わせていくというのは大事だと思うんです。そのことが当然の、都立病院全体の対患者、対病理に対する発展だろうと思うんですけれども、しかし、どこの病院へ行っても同じだよというんではなくて、やはりあの病院はあそこがすぐれている。基本的には全部すぐれているんですけれども、特にあそこだよ、あの科目がすごいよというふうになれば、患者さんの方も、そこに特化した形でその病院、あの病院。しかし、一般的な病気についてはどこでも大丈夫なんだよ、都立病院は信用できるよ、信頼できるよという形になろうと思うんですね。
 したがって、全体的なレベルをアップしながらも、各病院の特色をこれからつくっていく。ある病院はもう既につくって、国際的にも有名になっている病院もありますけれども、それに後を追うような形で、ほかの病院もやっぱり特化する形で、あの病気についてはあの病院というふうなところも、一般的なスタンダードな基準を乗り越えた上で求めていく必要があるだろうというふうに思うんでありますが、何か具体的に考えていらっしゃることとか、お答えください。

○和賀井経営企画部長 平成二十二年度に制度が一部改正となりましたため、一部の必修の診療科は選択制となっております。そのため、自由選択期間というのがふえまして、各病院の個性を生かした臨床研修が行えるようになったところでございます。
 都立病院におきましても、自由選択期間を活用した研修プログラムを整備いたしまして、一定期間はその病院の特徴を生かした研修を行っております。例えば一例でございますけれども、救急災害医療センターの機能を有します広尾病院では、救命医療を必修としまして、また選択科目として島しょ医療研修を用意するなど、広尾病院の特色を生かしたプログラムを用意してございます。

○和田委員 島しょは特に医療難といわれているところもあって、ヘリコプターなどを飛ばさないと救急には対応できないというような特殊事情もございます。しかし、同じ私どもの都民の中で、医療に差があってはなりません。それを広尾が特化して受けとめていただいているというのは、私は一つの特徴だろうと思っております。
 さて、しばしば申し上げております平成十六年、二十二年の改正で一貫しているのは、医療研修の基本理念というのがあります。そこでは、医師には診療の能力、あるいは専門能力のみならず、人格形成を促して、全人的な医療を提供できるような研修を行うべきだという考え方が一貫してあります。
 都立病院や公社病院では、医師の人格形成、人格涵養、基本理念では涵養という言葉が使ってありますけれども、形成でもいいですが、に関するための研修プログラムをどのように考えているか、お伺いをいたします。

○和賀井経営企画部長 お話のように、臨床研修制度の基本理念というものは、国の方で定められております。その基本理念を読み上げますと、臨床研修は、医師が、医師としての人格を涵養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるよう、プライマリーケアの基本的な診療能力、態度、技能、知識を身につけることとされております。
 この理念に基づきまして、医療人として必要な基本姿勢、態度を習得することは行動目標として掲げられております。
 都立病院では、研修プログラムを通じまして、患者と医師の良好な人間関係、チーム医療の実践、患者の問題を把握し対応する能力、安全管理、症例提示、医療の社会性の理解の各項目を身につけることを視野に入れた臨床研修を行っております。また、他病院の研修医、指導医との交流も積極的に行い、広い視野の育成に務めております。

○和田委員 この人格涵養の一つのあかしかもしれませんが、お医者さんでいながら短歌の有名人であった斎藤茂吉さんとか、あるいは精神科のなだいなださんとか、あるいは北杜夫さんとか、そういう方もいます。それは別に人格とは関係ないにしても、お医者さんとは違う視点で物を見るプロとして生活してきた人たちもいるわけですね。
 そういうふうに、お医者さんだけ、あるいは学校の先生だけじゃなくて、ほかに何らかの幅広い人柄、人格を持つことによって、対患者さんに対する接触の仕方、対病院に対する自分のかかわりの仕方、どうしても自分の世界に埋没しがちな、そういう日々の多忙な業務の中で、少しく別な視点から自分を見直す、あるいは自分の所属している社会を見直すというようことも、私は基本理念の説いている精神を一つ包含しているだろうというふうに思っているものです。
 したがって、お医者さんの中にも、いろんな趣味を持って、いろんな人間的な広がりを持った人が都立病院の中にもぜひ出てきてほしいなと。今のは強制するわけじゃないんですよ。結果としてそういう人が出てくれば、その人間的な潤いが患者さんにも伝わっていくのかな。それが、全体的に都立病院の中の雰囲気も、ただ単にお医者さんということじゃなくて、人間的にも幅のある人もいる都立病院になっていくのかなというふうに思っているわけであります。
 さて、都立病院、公社病院のこのような臨床研修の達成度をどういうふうに自己評価されているんでしょうか。

○和賀井経営企画部長 都立病院、公社病院では、平成十六年度以降、毎年おおむね定数どおりその人数を確保できておりまして、また、ほぼその全員が、二年間の研修期間を履修し修了するなど、着実な成果を上げてきているというふうに考えております。

○和田委員 確かに昔のインターンの人が研修医を務められて、幅広い科目を歩いて、その科目のご苦労だとかそういうことを知ることによって、内科しか知らないというんではなくて、耳鼻科も知る、歯科も知るとか、いろんなそういう場面を知った上でお医者さんになっていくということは大事だと思います。この二年間がいいかどうかは別にして、時には、ほかの科目を見ることによって、専業化しがちな自分を客観的に見ることができるということもありますので、私は今の達成度は、脱落者の皆さん方もいないし、それからほぼ定数を確保できているということでは、これから先、より励んでいただきたいというふうに思うところです。
 さて、今の研修医制度の上部に、東京医師アカデミーがあります。これは専門医の養成制度でありますから、研修医制度とは違うんでありますけれども、この関係についてはどういうふうになっているでしょうか。

○和賀井経営企画部長 東京医師アカデミーは、大学卒業後三年目以降の医師を対象としまして、臨床研修が修了している者を対象に、専門医の教育を行う制度でございます。
 毎年度、都立病院で臨床研修を修了する研修医のうちの半数以上が東京医師アカデミーへ進みまして、高度な専門性を担う研修を受けておりまして、優秀な専門医の安定的確保に貢献しているものと考えております。

○和田委員 この東京医師アカデミーは、厚労省からいわれたわけでもなくて、東京都が独自につくり出した養成組織なんですね。したがって、臨床研修医だけではなくて、もう少し幅広く深みを持った研修をしたいという方は、このアカデミーに進んで、自信を持って臨床できるようなところまでやる。そういう、私は、ほかの道府県にはない研修制度だろうと思って注目をしてきたところでありますが、ますます、五〇%以上の人が研修医からアカデミーへ進んでいるということでありますから、こういう方々のいい傾向を継続していただきながら、東京の医療スタイルの一つとして、ぜひこれを発展させていただきたいということを申し上げて、研修医制度についての質問を終わります。
 次に、精神医療と自殺対策についてお伺いいたします。
 国においては、十四年連続の三万人自殺という大変残念な記録で、ほぼ東京都も十分の一でありますから、十四年間、三千人の自殺者を出してきているという状況であります。未遂も含めると大変な数になるわけでありますが、自殺で亡くなった方の数は大体毎年三千人ぐらい出ているということです。
 これは、医療に限らず福祉、あらゆる行政にかかわる人の死、冒頭申し上げた人の死でありますから、これは都政の中でも大変深刻な課題だろうと私は思ってきております。
 東京都では、東京における自殺総合対策の基本的な取り組み方針というのを策定しまして、あらゆる局を網羅した形で重点施策としては取り組んできておりますが、病院経営本部におきましては、今私が申し上げた取り組み方針に基づいて、どういうふうな自殺対策にかかわりを持っているでしょうか。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 東京都は、自殺総合対策としまして、全庁的な対策会議、自殺総合対策東京会議を設置しまして、自殺総合対策推進のため、都民、企業に対する普及啓発、教育、それから早期発見、早期対応、遺族支援といった三本の柱を中心とした対策を進めているところでございます。
 私ども病院経営本部では、幹事としまして設置当初より同会議に参加をしております。都民の皆様に良質な医療を提供することを目的としている都立病院におきましては、自殺対策も非常に重要な施策だというふうに認識しております。
 具体的に申し上げますと、都立病院における精神科部門と救急部門などとの連携や、自殺対策研修の実施、あるいは教育機関や都民を対象としました精神疾患に関するセミナーの開催、あるいは小児総合医療センターにおきまして、子どものこころの電話相談室を設けまして、児童や親御さんからの相談に応じているところでございます。

○和田委員 かつて、自殺をする人という方の受けとめ方は、精神科での治療を受けないでいて、精神科の受診を促せば自殺を防止できるという考えがありました。受けないから精神病になってしまったんだと、自殺をしたんだというような受けとめ方があって、精神科の診療を受ければ、自殺はなくなってくるんだという考えがありました。
 しかし、福祉保健局によりますと、これは自殺実態調査、平成二十一年のものでありますけれども、自殺者の五四%が自殺前に精神科、あるいは心療内科の医療機関に相談しているんですね。その結果が、こういう五四%という数字に明らかになっています。受診が自殺を防げない、あるいは場合によっては加速しているという議論もあるんですね。
 例えば、ある事例では、精神科医療の現場では、自殺や中毒死の手助けを精神科のいろんな仕組みがしているんじゃないかというふうな極論まであるんです。かつての、精神科にかかっていないから自殺だということから逆になって、精神科にかかっているから自殺してしまうんだというような実態については、私は大変残念だろうと思うんです。
 そこで、都内病院における精神科の患者数の推移を伺いたいと思います。それから、自殺意図で都立病院に搬送されて、自殺をした結果、都立病院に搬送されて入院となった患者の中で、精神科の受診歴がある患者はどれほどいるのか。さらに、精神科病棟の死亡人数と自殺、病棟でですよ、自殺した過去の五年間の人数についてお伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 都立病院精神科における患者さんの数の推移は、入院患者数で見ますと、広尾、墨東、多摩総合医療センター、小児総合医療センター及び松沢の五病院で、平成二十二年度は延べ三十万九千五百四十人、一日当たりにしますと約八百四十八・一人となっております。これに対して二十三年度は、延べ三十三万六千二百二十四人、一日当たりにして約九百十八・六人となっております。延べ入院患者数を対前年度比で見てみますと、約八・六%の増となっております。
 同様に、外来患者数を見てみますと、広尾、大塚、駒込、墨東、多摩総合医療センター、小児総合医療センター及び松沢の七病院で、平成二十二年度は二十万四千三百六人、一日当たりにしますと約六百九十四・九人、平成二十三年度は二十一万三千四百十七人、一日当たりにしますと約七百二十三・四人となっております。この外来患者数を対前年比で見ますと、やはり約四・五%の増となっております。
 都立病院に搬送された患者さんの中で、精神科の受診歴がある患者さんの数につきましては、統計をとっておりませんので人数は不明ですが、同一の患者さんが搬送されてくるケースもございます。
 また、都立病院の精神科病棟における死亡退院数でございますが、平成十九年度が六十二名、平成二十年度が六十二名、平成二十一年度が五十三名、平成二十二年度が五十五名、平成二十三年度が四十七名となっております。
 なお、自殺をされた方の数につきましては、統計をとっておりませんので、正確な数値は不明でございます。

○和田委員 ここで私が問題にしたいのは、外来患者、あるいは、延べ入院患者数の前年対比を見ますと、入院患者が八・六%、前年よりふえている。それから、外来についても四・五%、前年よりふえているということです。ふえたのは別に病院の責任ではありません。しかし、いろんな要素、要件でこれだけの人がふえてきて、外来患者数を見ましても、一日当たり七百二十三人とか、大変多い人数になっております。
 これは、世の中のいろんな複雑な仕組み、あるいは環境の中でこうなっているといわざるを得ませんし、その受け皿としての病院ですから、都立病院の方としては、いかんともしがたいということはわかります。
 ただ、私が問題だと申し上げたのは、答弁の中で、都立病院に搬送された患者の中で、精神科の受診歴がある患者については統計をとってないと。とっていないからわからないということ。ただ、同一の患者が搬送されてくるケースもありますよという答えだけです。
 それから、もう一点は、都立病院の精神科病棟で亡くなって退院する、死亡して出ていくんだから退院なんでしょうが、これが十九年度で六十二人、二十年度で六十二、平成二十一年度で五十三人、二十二年度で五十五、二十三年度で四十七と、これは亡くなって退院です。しかし、私がそのほかに求めているのは、自殺をされた方がいないのかといったら、これはいないというんでもないんですね。統計をとっていないんで正確な数値は不明だと、こういう答え。
 要するに、精神科の過去の受診歴がある患者数についても統計をとっていない、統計がないから受診歴のある患者さんについては触れられない。病院で自殺した数も統計をとっていないから不明だよということ。これはどうでしょうか。少なくとも、お医者さんが、先ほどいった医療的な面接をした中で、あなたは過去に受診歴はありませんかと普通聞くんじゃないでしょうか。
 あるいは、病院で自殺をしたら、どういう亡くなり方かはともかくとして、ここで亡くなったということで、当然、医師や看護師が確認しなきゃ、自殺にならないわけです。こういう、やっぱりざくっとしたお答えは私は不満でありまして、必ず、死んでいることはいいませんよ、死んでいるかどうかは別にして、正確な数値が不明だという答弁はおかしい。ないならないとはっきりいってもらう。統計をとっていないためというのはおかしい。統計をわざわざとる必要はないけれども、結果としてこういうことが出ていますよ、受診歴がある人は二十三年度こうでしたよという数字は出していいじゃないですか。統計を毎年毎年とれといっているわけじゃないんですね。
 二十三年度決算で私が今指摘をしている、そのことだけ、少なくとも二十三年度には受診歴があった患者さんは何人いましたよ、この病院で亡くなった、自殺をした人は何人いましたよという数字は、統計じゃありません。これは事実です。事実がなぜ出せないのかと私は強く申し上げておきたいと思います。
 さて、私の知人で、うつ病で入院して、入院した後、人柄が変わっちゃったという人もいます。また、私の出たある講演会では、うつ病から自殺につながるケースが一番多いというふうにいわれております。
 松沢病院は歴史的に都における精神科医療の中心として、急性期ですね、急に発症した精神医療の役割を果たしてきているんですが、それについてお伺いをいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 平成二十三年度に松沢病院を受診した患者さんのうち、うつ病を含む気分障害の診断となった入院患者数は、平成二十二年六月末時点での一日当たり入院患者数が三十二名でありましたが、平成二十三年六月末時点の一日当たりの入院患者数は五十二名となっております。

○和田委員 それこそ統計じゃなく、二十二年度と二十三年度、決算のこの年の数字と比べて、一概に三十二から五十二、二十名もふえているよというふうには、すぐに短絡はしませんが、少なからず、先ほど申し上げたとおり、時代の趨勢とともに患者の方がふえてきていることは間違いない。その中に松沢病院も同じ流れの中にあるわけですから、ふえてきているだろうと思うんですが、ここはとりわけ精神病院として長い伝統もあり、そういう実績もあるところでありますから、そこがこれだけの数がふえてきているということは、私は、一日当たりですから、驚くべき状態に精神科の患者さんを含め精神科医療の世界が陥っているなということを、ここから読み取っていきたいと思っているんです。
 そもそも、精神科疾患の中で、うつ病という疾患の診断自体が難しいものだと思うんです。うつ病という病気があるのかどうなのか。躁うつの、うつという状態になる形式をうつ病というんでありまして、うつ病をもっと細分化すれば、いろんな病があって、総称としてのうつ病だろうと私は思っているんですが。
 さて、精神科の診療の場において、その疾患の特質上、患者の立場や発言力がどうしても弱くなって、お医者さんが絶対的な力となって、支配、被支配というとあれですが、そういうような関係になるようなことはないんだろうか。また、ずさんな診断や治療、特に不適切な投薬ですね、薬。患者が追い込まれたり、みずから命を絶つ、そういう例も珍しくないと私は聞いております。そこでお伺いするんですが、都立病院の精神科で診断の際に、患者に何をどういう配慮をしているのかお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 都立病院では、患者中心の医療の理念のもとに患者権利章典を定めております。医療は、患者さんと医療提供者が互いの信頼関係に基づき、協働してつくり上げていくものと考えております。このため、患者、家族との信頼関係を構築し、それに基づき診断に必要な情報を聞き取り、その上で適切な医療を提供しております。
 特に精神科におきましては、身体的な医療と比べまして検査法が少ないことから、患者との面談、また患者に病識がない場合には、家族との面談を重視した診断を行っておりまして、患者、家族から治療への理解が得られるよう努めております。

○和田委員 今の答弁で、患者に病識というのは、病気の知識という理解でいいですね。病の識と書いて病識と読むらしいんですが、病気の知識がない場合には、かわって患者との面談を重視した診断を行っているということです。
 逆にいうと、これはまれな例かもしれませんけれども、家族が本人の気持ちと違った形でお医者様に、いや、この人はこうなんですよといって、本人と違うことを家族がいってしまって、本人が、嫌な言葉ですけれども、誤解されて、陥れられてしまうというケースもないわけではないと聞いています。
 したがって、家族は必ず患者の代弁をしているということだけではなくて、家族は患者を、言葉は悪いんですけれども、疎ましく思って、この子はこういっているけれども、こうですよということで、お医者様と家族の方で話ができ上がるというケースもないわけではないと聞いています。これはまれなケースだというふうに思いますけれどもね。
 したがって、家族だからといって、これを重視した診断というだけではなくて、やはり家族という感情のこもらない、第三者的なクールな、冷めた形での、そういう人の意見も、そこに陪席するか何かを含め、これからの制度はつくっていかないと、家族だからいいだろうということは、大きいか小さいかわかりませんけれども、私は落とし穴になる可能性があるということも、ぜひ申し上げておきたいと思います。
 次に、精神科、心療内科への受診が自殺を防ぐことになっていないという結果もあります。ずさんな診断や不適切な投薬、薬の副作用などによって被害に遭う危険性についても、都民に啓発する必要があると思うんです。精神科において医者と患者に一方的な主従関係が生じることを防ぐためには、先ほど私が申し上げた第三者が診察に立ち会うことや、診療内容を検証できるような仕組みが大事だと私は思います。そこで、都立病院の精神科を受診している患者の立場を守るために、どのような取り組みを具体的にとっているかをお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 都立病院では、診療科医師、看護師等が合同カンファレンスで情報を共有した上で治療方針を決定し、チームによる医療を進めております。また、診察時に看護師の立ち会いを行うことや、医師とは別に相談を受け付けます患者の声相談窓口を設置しております。
 さらには、医療ソーシャルワーカーが病気や心身の障害によって生じる療養生活上のさまざまな問題について相談に応じたり、退院患者の自宅に看護師が定期的に訪問し、心の悩みの相談や体調、薬の管理等についてアドバイスする訪問看護を実施し、家庭や地域の中で安心して療養生活が送れるよう支援しております。

○和田委員 これは具体的な事例でお伺いしたいんですが、都立病院に通院している患者さんが、あるいは入院していてもいいんですが、多剤多量の不適切な処方で悩んでいる、苦しんでいる。どこに相談したらよろしいんでしょうか。

○中野サービス推進部長 処方薬によりまして体調不良などが発生した場合には、まずは主治医に連絡、相談することになるかと思います。それから、松沢病院を例にとりますと、単剤投与や服薬指導を行いまして、適切な服薬管理に努めております。
 また、処方に当たりましては、薬剤師が薬剤の用量、用法、副作用などについて患者、家族にご説明するとともに、処方についての相談にも応じております。

○和田委員 薬剤については大変微妙な問題だと思いますが、都立病院においては薬剤の処方はどういうふうなやり方で行っていますか。

○中野サービス推進部長 都立病院では、薬剤師が医師の記載した処方せんにつきまして、薬の量、使用方法、飲み合わせ、副作用の有無などをチェックいたします処方せん監査を行いまして、疑問のある場合には医師に確認しております。その上で薬を調合し、でき上がった薬を調合した薬剤師とは別の薬剤師が処方せん監査及び薬の内容に間違いがないかをチェックする調剤監査を実施しております。また薬剤科では、医薬品情報活動業務、いわゆるDI業務といっておりますが、院内の医師等に対しまして医薬品に関する情報を提供いたしまして、医薬品の適正使用に努めております。

○和田委員 これはもう一部テレビで公になりましたから、ごらんになった方もいると思いますが、二〇一一年の十一月四日のフジテレビ、「とくダネ」というところで、向精神薬の安易な処方が多くの自殺、中毒死に結びついているという問題が特集されました。そこで、都立墨東病院、都立監察医務院のお医者さんがテレビに出て、それはビデオかわかりませんけれども、発言をいたしております。
 そこを読んでみますと、東京都の監察医務院が、二〇〇六年から一〇年までの死亡原因がわからない異常死一万三千四百九十九件について行政解剖を行い、そして調査したところ、覚せい剤による死亡が百三十六件だったのに対し、医薬品による死亡が二十五倍、三千三百三十九件もあった。このうち、〇八年から〇九年にかけて急増しているのが、向精神薬による死亡でありまして、一〇年には睡眠薬によるものが三百六件、精神神経薬が三百三件に上っているというふうに、墨東病院のある先生はテレビの中でいっています。
 それから、監察医の先生は、覚せい剤はむしろ減ってきているんだけれども、医師が処方する、お医者さんが処方している薬の方が随分と死に関与しているということで、驚いているというコメントを出しています。このように、東京都にかかわる監察医務院とか墨東病院の先生でさえも薬の多剤多量ということによる自殺を含む異常死が多いということをいっているわけです。
 その反面で、当局の方は、先ほどの自殺件数などについても、統計をとっていません、わかりませんということなんですが、そのギャップは大変広い、大きいと私は思っています。そこで、都立病院では、向精神薬などの大量処方についてどういうふうな対策をとっているのかお伺いいたします。

○中野サービス推進部長 都立病院では、向精神薬につきましては、一カ月を超えることのないように処方を行っております。また、患者の服用忘れや一時的な過量服薬がないように、診察や看護ケアを行う際、医療従事者から声かけを行っております。
 さらに、薬剤師は、患者の併用薬剤数を確認いたしまして、その結果を処方医に提供することにより、可能な限り単剤投与をするように努めております。過量服薬で救急搬送された自殺未遂者の方に対しましては、過量服薬のリスクを理解してもらい、再発防止につながるようケアを行っております。

○和田委員 そこで、病院で処方される薬については、医薬品の専門家である薬剤師から服薬指導、薬の飲み方の指導などがなされているのは当然でありますが、中でも精神疾患の患者に処方される薬は通常の薬よりも特に念入りに服薬指導が必要だというふうに私は思っているんです。
 習慣性になるというふうによくいわれておりますから、それまで十錠が十五錠にふえていくというようなことを抑えるためにも、くれぐれも丁寧に服薬指導がなされていない限り、患者自身は習慣になるからだんだんふやしていきたくなってしまうのを抑える服薬指導がなければ、患者さんの自由にどんどん量がふえていく。そうすると、体に異常が出てくるということになるわけでありますから、多剤多量の問題というのはそこから出てくると思うんで、そういうことをしっかり指導していくのが大事だと思うんです。
 そこで、都立病院における向精神薬を含めた服薬指導をどのように行っているのか、改めてもう一回お答えください。

○中野サービス推進部長 都立病院での平成二十三年度の服薬指導件数実績でございますが、入院患者への指導件数四万五千五百四十五件、外来患者への指導件数十万二千五百五件でございます。服薬指導に当たりましては、入院患者、外来患者ともに、薬剤師が患者に直接口頭または書面を使用しまして、薬の量、使用方法、飲み合わせ、副作用の有無についてご説明しております。
 また、持参薬につきましては、入院時に薬剤師が持参薬の内容について確認を行い、重複投与による副作用の防止に努めております。特に向精神薬につきましては、患者の服薬に関する理解度や、必要に応じましてご家族にも同席していただくなど、適切な服薬指導できるよう配慮しております。

○和田委員 監察医務院における薬物検出の実態に関する研究というのを読みました。そうすると、二〇〇六年から二〇一〇年の五年間に行われた、先ほどとダブりますけれども、監察医務院での検案事件の六万五千五百四件の中で、死因究明のため行政解剖の行われた一万三千四百九十九件の薬毒物検査と薬物の検出結果を調査しているんですね。
 そこで、検査依頼件数と検出薬物件数はともにふえてきております。検出薬物では医療品等が増加して、医療品などの検出では、睡眠剤と精神神経用剤の件数が増加してきているという傾向が、監察医務院の実態調査の研究によると明らかになっておりますが、これについての感想はいかがですか。

○中野サービス推進部長 毒薬物の検査や検出結果につきましては、覚せい剤や違法ドラッグの横行を初めとしまして、患者本人の過量服薬などさまざまな要因があることから、その傾向を一概にいうことはできませんが、東京都は、薬物乱用対策推進計画に基づきまして、関係機関が連携し、都民に対する啓発や指導、社会復帰への支援など、さまざまな取り組みを行っております。
 都立病院では、こうした都の計画を踏まえ、薬物に関する専門病棟の整備を初め、患者、家族に対する服薬指導、薬の相談に対応するなど、薬物治療に関する専門医療の提供に努めておるところでございます。

○和田委員 表面上のお答えだと思います。私は監察医務院のこの結果としての数字というのは、さかのぼってくると、やはり都立病院のかかわりの中に触れる部分だと思っているんです。もとより都立病院以外のところでも大きな原因を持っているのはわかりますけれども、しかし、都立病院の中にもその要素がないわけではない。したがって、常にこの種の問題に点検をする、是正をしていくという精神を持って事を取り扱ってほしいし、精神医療と自殺問題については、これからも私は取り上げますけれども、より深い問題であると。
 何しろ、年に三千人も自殺という形で亡くなっている中の多くが、精神疾患であるうつ病を中心にした方だというデータもあるわけでありますから、それにかかわる東京都の病院の中の神経科も大きな役割を担っていると思います。
 私が最後に、細かなことでありますけれども、希望しておきたいことは、先ほど申し上げた、新しい臨床制度の中で、医療面接が義務づけられましたよとこういいました。精神科についていえば、精神科面接ですね、これが、患者さんとお医者さんとの間で唯一、人間的な触れ合いのできる場所。ここのところを大事にして、多少時間がかかっても、その患者さんの抱えている精神的な問題、生活の問題も含め、引き出してきて、信頼関係をつくる中で、お医者さんと患者の人間のきずなをつけていく。
 そういうことを率先して都立病院は、神経科を抱えている病院を中心にして、面接医療、患者との面接ということを大事にしながら、あらゆる科目に当たってもらいたいということを申し上げます。とりわけ精神科については極めて濃度濃く当たってもらいたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

○上野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○上野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 以上をもちまして第二分科会における決算の審査は終了いたしました。
 なお、本分科会の審査報告書につきましては、分科会委員長において取りまとめの上、委員会委員長に提出いたしますので、ご了承願います。
 これをもちまして第二分科会を閉会いたします。
   午後五時五分散会

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