平成二十一年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第三号

平成二十二年十月二十七日(水曜日)
第二委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十一名
委員長野上 純子君
副委員長田の上いくこ君
副委員長神林  茂君
副委員長中屋 文孝君
吉住 健一君
小山くにひこ君
佐藤 由美君
中山 信行君
西崎 光子君
花輪ともふみ君
泉谷つよし君

 欠席委員 なし

 出席説明員
都市整備局東京都技監都市整備局長技監兼務河島  均君
次長中西  充君
技監升 貴三男君
理事松井多美雄君
理事都市づくり政策部長事務取扱安井 順一君
総務部長石野 利幸君
住宅政策推進部長鈴木 尚志君
都市基盤部長藤井 寛行君
市街地整備部長遠藤 正宏君
市街地建築部長中島 俊明君
都営住宅経営部長瀧本 裕之君
企画担当部長宮良  眞君
民間開発担当部長藤塚  仁君
多摩ニュータウン事業担当部長五十嵐 誠君
病院経営本部本部長川澄 俊文君
経営企画部長黒田 祥之君
サービス推進部長別宮 浩志君
経営戦略・再編整備担当部長齊藤 和弥君

本日の会議に付した事件
 平成二十一年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成二十一年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)
病院経営本部関係
・平成二十一年度東京都病院会計決算(質疑)

○野上委員長 ただいまから平成二十一年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市整備局及び病院経営本部関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十一年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○神林委員 それでは、私の方からは都施行再開発事業について伺います。
 東京都は、本年五月、東京における市街地整備の実施方針を策定いたしました。本方針では、今後のまちづくりにおいては、民間部門もまちづくりの重要な担い手であることから、公と民の連携が不可欠であること、また、効果的に市街地整備を進めていくためには、骨格幹線道路などの重要な都市基盤の整備と一体となった市街地整備などを重点化していくこととしています。
 さて、私の地元の大田区でも、羽田空港の国際化や京急の連続立体交差事業の進捗にあわせまして、民間による再開発事業も始まっております。
 私自身も、今後のまちづくりで肝心なことは、インフラ整備とともに、地元のまちも一緒によくしていくことが重要であり、公と民の適切な役割分担と連携が必要であると考えております。
 そこで、現在、都が施行している北新宿、環状二号線新橋・虎ノ門、大橋、三地区の市街地再開発事業においては、骨格幹線道路の整備と周辺のまちづくりが一体的に進められておりますが、改めてこれら都施行再開発事業の意義についてまず伺います。

○遠藤市街地整備部長 現在、都では北新宿地区、環状第二号線新橋・虎ノ門地区、大橋地区の三つの地区におきまして市街地再開発事業を実施してございます。
 北新宿地区につきましては、青梅街道のバイパスとなります放射第六号線、環状二号線新橋・虎ノ門地区につきましては、臨海部と都心部を結びます環状第二号線、大橋地区におきましては、首都高大橋ジャンクションといった根幹的な道路整備にあわせまして、従前権利者が入居する再開発ビルの建設や周辺まちづくりを一体的に進めてございます。
 これらは、いずれも東京都の重要施策でございます根幹的な幹線道路の整備を目的としておりまして、公共用地率が極めて高く、大規模で関係権利者も多いことに加えまして、制度的、技術的に複雑で難度が高い、このようなことから民間による事業実施は困難でございまして、都みずからが事業主体となって再開発事業を実施しているものでございます。

○神林委員 今、都施行の再開発事業の意義について伺ったわけでございますけれども、そのご答弁の中に、都施行の三地区は民間では事業実施が困難であるといった答弁がございました。
 一方、都施行再開発事業では、民間事業者も特定建築者制度により事業に参画しているわけでございますね。
 そこで、都施行再開発事業における都の役割は一体何なのか。それに、特定建築者の役割は何なのかと。この点についてお伺いいたします。

○遠藤市街地整備部長 都施行再開発事業におきます都と特定建築者の役割についてでございますけれども、都は事業施行者といたしまして、関係権利者との調整を進めながら、計画決定、用地取得、再開発ビルへの権利変換など、事業全体を推進する役割を担っております。
 一方、特定建築者は、都市再開発法に基づきまして、都が決定した計画に従いまして、再開発ビルの建設や保留床の処分を行っております。
 特定建築者制度を導入することによりまして、民間の持つノウハウや資金を活用することなどが可能となってまいります。
 このように、都施行再開発事業におきましては、都は事業推進のパートナーでございます特定建築者の得意の分野を生かしつつも、計画決定や用地取得などにおきまして、都であるがゆえの信頼感を地域からいただきながら、施行者として責任を持って適正な事業執行に努めてきたところでございます。

○神林委員 今ご答弁にございましたとおり、やはりお互いの果たすべき役割を十分把握しながら、当然連携をとり、そして現場の状況に沿った柔軟な対応をぜひこれからもお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 三問目でございますけれども、都施行再開発事業は、幹線道路などと周辺市街地との一体的な整備により、地域の持つ魅力を高め、ポテンシャルを最大限に引き出すことが可能でございます。さらに加えて、都心部の交通渋滞の緩和や地域周辺における開発の誘発など、事業によるさまざまな波及効果も期待できます。
 よって、当たり前のことですけれども、これらの事業効果をできるだけ早く現実のものとするためには、事業を計画どおり進捗させることが何よりも重要でございます。
 そこで、三地区の事業の進捗状況と今後の見通しについて伺います。

○遠藤市街地整備部長 事業の進捗状況と今後の見通しでございますけれども、初めに北新宿地区でございます。この地区、放射第六号線でございますけれども、昨年の二月に四車線の道路として全線開通済みでございます。
 また、再開発ビルにつきましても、既に三棟のビルが完成しております。また、超高層ビル二棟を含みます三棟が現在工事中でございまして、来年度の完成を予定してございます。また、現在まだ未着手となっております三棟につきましても、平成二十六年度までの完成を目指しておるところでございます。
 続きまして、環状第二号線新橋・虎ノ門地区でございますけれども、環状第二号線のトンネル部分につきましては、平成十九年度から順次工事に着手しておりまして、平成二十五年度に完成する予定でございます。
 また、この地区の三棟の再開発ビルのうち最初のビルにつきましては、平成十九年に完成してございます。二棟目につきましては、今年度末に完成の予定でございます。残る虎ノ門地区の超高層ビルにつきましては、現在、実施設計や敷地のクリアランスを行っているところでございまして、来年度早々に着工いたしまして、二十六年度に完成する予定でございます。
 最後に、大橋地区でございますけれども、首都高の大橋ジャンクションにつきましては、ことしの三月に完成、供用してございます。首都高の渋滞が緩和されたことによりまして、新宿から羽田までの所要時間が最大で三割短縮されたと。このような効果が出てございます。
 また、二棟の超高層ビルのうち一棟は平成二十年度に完成しておりまして、現在残る一棟を二十四年度の完成に向けまして鋭意工事を進めているところでございます。

○神林委員 先ほどお話ししましたとおり、やはりしっかりと計画どおり進捗させるということが周りへの波及効果も含めまして大事なことでございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 今までの質問で、都施行の再開発事業の意義とか進捗状況を随時確認させていただいたわけでございますが、今度は収支の件でございますね。一方、これらの三地区の市街地再開発事業は、事業収支をより一層明確にし、事業の透明性や信頼性を高めることによって都民への説明責任を果たすという目的から、この公営企業会計を採用していると私は認識しております。
 そこで、現時点での三地区の事業収支の見通しについて、都の見解を伺います。

○遠藤市街地整備部長 再開発事業の収支の見通しでございますけれども、都施行再開発事業におきましては、特定建築者への敷地処分が事業収入の多くの部分を占めてございます。収支の均衡を図る上で大変重要な要素となってまいります。
 北新宿地区と環状第二号線新橋・虎ノ門地区につきましては、特定建築者制度を導入いたしましたすべての街区におきまして、予定を上回る敷地譲渡価格をもって処分をしてございまして、事業採算の確保の見通しを得てございます。
 他方、大橋地区につきましては、権利者の生活再建を早期に図る必要があったことから、一昨年、現在建築中の再開発ビルにつきまして特定建築者の募集を行いましたところ、折からの急激な景気悪化の影響を受けた敷地譲渡価格とならざるを得なかったところでございます。
 このため、今後、事業の収支につきましてさまざまな取り組みを実施していく必要があると、このように認識してございます。

○神林委員 今、収支状況を確認させていただきましたけれども、やはり気になるのは、いいところはいいんですけれども、悪いところが少し気になってくるわけでございます。
 それで、これら三地区の都施行再開発事業の中でも、当然のことですけれども、収支状況がよい地域、厳しい地域があるということだと思いますけれども、それにも理由があると思います。
 その辺で、今ご説明いただいた中で、それぞれの各地区で事業の収支状況が異なった主な理由が何なのかと。それをちょっとご説明願いたいと思います。

○遠藤市街地整備部長 特定建築者制度を活用いたします都施行の再開発事業におきましては、用地取得や再開発ビルの建設などに多額の費用を要する一方で、その財源は敷地処分の収益が多くを占めているわけでございます。
 このため、資金調達コストの削減や付加価値の高い魅力ある建築計画の工夫など、採算性を確保するためのさまざまな取り組みを行ってまいりました。しかしながら、特定建築者に敷地を処分する際の価格は、その時々の景気の動向や不動産市況の影響を受けやすいと、このような特質がございます。
 北新宿地区や環状二号線新橋・虎ノ門地区につきましては、採算性確保の取り組みに加えまして、堅調な不動産市況の中で敷地を処分することができました。
 他方、大橋地区につきましては、一昨年のリーマンショック以降、内外の景気が悪化し、不動産市況が冷え込む中での敷地譲渡とならざるを得なかったものでございます。
 各地区での収支状況の違いはこのような状況から生じたものと、このように認識してございます。

○神林委員 先ほどからお話ししていますとおり、順調に行っているところは大いに結構ということになろうかと思いますが、気になるのは大橋地域ですか、今のご答弁でもリーマンショック以降、急激な景気の悪化のあおりを受けて、事業の採算の確保については厳しい状況にあると、こういったことだと思います。
 当然のことですけれども、それでは、このような状況を改善するために、都においてはさまざまな取り組みを行っていると思います。
 そこで、大橋地区における収支改善に向けた具体的な取り組みについて伺います。

○遠藤市街地整備部長 大橋地区におきましては、事業の初期の段階から民間の事業協力者を活用いたしまして、再開発ビルの建築計画の立案や建設コストの縮減など、収支均衡に向けた取り組みを行ってまいりました。
 加えまして、不動産不況に対応した国の緊急の補助金制度を活用いたしまして、さらなる国費の確保に努めますとともに、特定建築者との敷地譲渡契約におきまして、市況が回復した場合に、敷地譲渡価格を増額変更する、いわゆるスライド条項を盛り込んでございます。
 また、東京都が所有する保留床につきましても、特定建築者と連携いたしまして、戦略的かつ機動的な販売活動を開始したところでございます。
 大橋地区におきましては、このような収支改善に向けましたさまざまな取り組みを今後とも積極的に進めてまいります。

○神林委員 こういう悪いときほど、やはり現場の特徴に十分に見合った柔軟な対応をぜひお願いしたいと思っております。
 引き続きまして、ただいまの答弁の中にもちょっと出ていたのかもしれませんけれども、事業収支の改善に向けた取り組みの中で、引き続き国費の確保に向けた取り組みをやはりしっかり行っていく必要があろうかと思います。
 事業を着実に進めていくためには、当然ながら国の補助金、交付金を十分に確保することが求められます。
 そこで、各地区における総事業費のうち国費の割合がどのぐらいか、また国費が主にどこに使われているのか、この辺について伺います。

○遠藤市街地整備部長 総事業費に占めます国費の割合でございますけれども、平成二十二年三月末の時点でございますけれども、北新宿地区につきましては総事業費七百七十一億円のうちの一三%、環状第二号線新橋・虎ノ門地区につきましては総事業費二千三百四十九億円のうちの三八%、大橋地区につきましては総事業費二百三十六億円のうちの一八%が国費となってございます。
 これらの国費は、主に道路や公園などの公共施設の整備や再開発ビルの中の廊下や階段、エレベーターといった共用部分の工事に充当されてございます。

○神林委員 今ご答弁いただいても、地区内の道路や公園などの公共施設とか再開発ビルの一部ということで、一三%、三八%、一八%ですか、事業目的である公共施設ですとか再開発ビルの整備の財源としては本当に重要な位置を占めているということを、私も改めて確認させていただきました。
 再開発事業のような都市再生に資する事業において、社会資本ストックなどへの投資は、国の責任で財源を確保していくべきであると私は考えております。
 そこで、国費の確保について、国へ積極的に働きかけるべきと考えておりますけれども、都の考え方をお伺いいたします。

○遠藤市街地整備部長 事業実施中の再開発事業におきまして、仮に予定された国費が計画どおり確保できない、このようなことになりますと、事業進捗のおくれ、事業収支の悪化だけでなく、権利者の生活再建にも支障を来すなど、さまざまな悪影響が生じてまいります。
 こうした事態が生じないように、都はこれまでも国に対してさまざまな場面で財源確保について要請を行ってきたところでございます。平成二十二年度予算におきましても、補助金から社会資本整備総合交付金に制度改正がなされようとする中、議会のご支援もいただきながら、国への提案要求を精力的に行いまして、要望どおりの国費を確保することができました。
 来年度以降の国費の確保については、現時点におきまして社会資本整備総合交付金の動向が非常に不透明となっておりまして、予断を許さない状況にございます。
 今後どのような制度になろうとも、再開発事業の進捗に支障が出ないように、あらゆる機会をとらえまして財源確保を国に強く求めてまいります。

○神林委員 今、ちょっと最後にありましたけれども、どうも最近の風潮からいいますと、公共事業とか再開発事業には厳しい風潮も出ていますので、我々も一生懸命協力しますので、ともに力を合わせて頑張っていきましょう。よろしくお願いいたします。
 また、大橋地区の収支改善に向けた取り組みの中で、戦略的な東京都保留床の販売により新たな収益を確保していくということがあったと思います。最近では、新聞報道等で不動産市況は底を脱し、回復の兆しが若干出てきたという部分も見られるところでございます。
 東京都の保留床の販売に当たっては、こうした不動産市況の動向を的確に把握し、確実に販売することが必要であると思います。
 そこで、大橋地区における保留床販売の取り組み内容について伺います。

○遠藤市街地整備部長 現在建築中の再開発ビルにおきましては、従前権利者が取得することを予定しておりました権利が撤回されたことに伴いまして、都は現在、保留床として四十八戸の住戸を所有してございます。都は、この保留床を販売していく必要がございます。
 民間の調査機関でございます不動産経済研究所が今月発表した首都圏マンション市場動向によりますと、販売戸数の対前年実績、それと好調の目安といわれております契約率七〇%がともに八カ月間連続して上回っているということが報告されてございます。
 また、大橋地区におきまして、先行して完成、分譲いたしました再開発ビルにつきましては、既に保留床を完売したところでございます。
 こうした状況をとらえまして、都は、都が保有いたします保留床の円滑かつ着実な分譲を行うことが必要と考えまして、豊富な販売実績やノウハウを有します特定建築者と連携いたしまして、一貫した販売戦略を立てまして、積極的に販売活動を展開してまいります。

○神林委員 適切なご答弁をいただいてまいりましたんで、大分速やかに質疑が早目に終わりました。
 最後の質問になりますけれども、くどいようですけれども、これまでの答弁で事業の推進ですとか事業の収支の改善のために、東京都がさまざまな努力をしている、頑張っているんだなと。こういう部分は十分理解できたところでございます。
 くどいようですが、今後とも現場の状況に迅速かつ柔軟に対応していただいて、事業を進めていくことを期待しております。
 また、都施行再開発事業は、公共性の高い事業である一方、事業収支が景気動向に大きく左右されるという現実の側面も否定できません。事業採算の確保は、地区ごとにそれぞれ努力を重ねることは当然のこととしても、都市再開発事業会計全体で収支のバランスを見ていくことも重要であると考えます。
 最後に、河島都技監がいらっしゃいますので、東京都の都市再生に資する都施行再開発事業の着実な推進に向けた都の決意を河島都技監にお聞きしまして、私の質問を終わります。

○河島東京都技監 都施行再開発事業について、今ご質問をいただきました。都施行の再開発事業というのは、都市再開発法が昭和四十年代半ばに制定されまして、その四十年代後半から東京都におきましては、白鬚東地区であるとか亀戸・大島・小松川地区であるとか、あるいは白鬚西地区であるとか、当時非常に重要な課題とされていた防災再開発を中心に進められて、それが実施されることによって、密集市街地の更新であるとか、あるいは防災公園の整備であるとか、そういったことが実現でき、東京の防災性に大きく寄与することができた、そういう事業であったというふうに、歴史を振り返りますと感じているところでございます。
 今日、この都施行再開発事業につきましては、今の質疑の中でも明らかになりましたように、環状二号線や中央環状新宿線など、東京の骨格的な幹線道路等の都市基盤の整備により、安全で快適な道路交通ネットワーク実現の極めて重要な一翼を担っておりまして、首都東京の国際競争力を強化し、東京はもとより、首都圏全体の発展にこの事業を通じて大きく貢献しているということがいえるのではないかというふうに思います。
 特にただいまの質問にもございました大橋地区では、当時、首都高速道路公団でございましたが、首都高速道路公団が当初は施行することが想定されていたわけでございますけれども、なかなか計画どおり進捗することが難しく、中央環状新宿線の早期整備を実現するために、東京都が首都高にかわって施行することになったものでございます。
 都が施行することによって、初めて今日のような円滑な中央環状新宿線の整備、開通が可能になったものと私どもとしては自負をしているところでございます。
 また、この再開発事業というのは、都市基盤の整備ということにも大きな効果があるわけでございますけれども、それだけではなくて、周辺のまちづくりと一体的に行うことで、都市の安全性を高め、活力や魅力のある市街地の再編を実現することができる、そういう事業でございます。
 このように都施行再開発事業が今後の東京の都市再生に果たす役割や効果は極めて大きいものであると考えておりまして、ただいまご指摘のあった事業の収支ということにも十分意を配りながら、引き続き私どもとしましては、この都施行再開発事業を着実に推進してまいりたいというふうに思っております。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。

○野上委員長 これより病院経営本部関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十一年度東京都病院会計決算を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○小山委員 病院経営本部の決算審査に当たりまして、私からは二件についてお伺いをさせていただきます。
 一件目としまして、多摩総合医療センターの医療強化に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 病院経営本部は、高度化、多様化する都民の医療ニーズに迅速かつ的確に対応し、都民に対する医療サービスのさらなる向上を目指すことを目的として掲げております。具体的な対応として病院経営本部では、都立病院改革の着実な推進を図るべく、第一次及び第二次の都立病院改革実行プログラムの中で事業計画を定め、より具体的な取り組みとして、毎年行動計画を定めております。
 私の地元であります府中市におきましては、多摩地域の基幹的な医療拠点ともいえる都立府中病院が多摩総合医療センターとして生まれ変わり、平成二十二年三月に運営を開始しました。
 私も府中病院から多摩総合医療センターに変わる様子を現地でつぶさに見てまいりましたが、府中病院の改築、そして移設は、本当に大変なプロジェクトであったと実感をしております。
 今後は、多摩総合医療センターが新しい施設にふさわしい医療機能を備え、これまで以上に多摩地域の都民の信頼を得ていく必要があると思います。
 そこで、平成二十年一月に策定をされました第二次都立病院改革実行プログラムの中では、改築にあわせて医療機能の強化に向けた具体的な取り組みを掲げておりますが、その取り組みがどのように強化をされたのか、確認をしたいと思います。
 まず、旧府中病院でも重点医療課題とされておりましたがん医療について質問をさせていただきます。
 さきの資料説明の中で、二十一年度の入院収益が、改築のため診療規模を縮小し、患者数が減ったという説明がありましたが、平年時における旧府中病院のがん患者の数というものがどのくらいであったのか、まずは旧府中病院のがん患者の実績についてどのような状況にあったのかをお伺いさせていただきます。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 疾病別の患者数につきましては、ICD10といわれます疾病国際分類大項目というものがございまして、それによりますと、退院患者数の疾病別の統計でとっております。
 平成二十年度の統計で見ますと、全統計の疾病患者数が一万九千十名ということになってございまして、そのうちがんを示す悪性の新生物には五千四百五十六名の方が該当しております。全体に占める率で見ますと二八・七%ということになってございます。

○小山委員 ただいまご答弁いただきましたように、約三割の患者さんが新生物、いわゆるがんということだということがわかりましたが、このがんはもちろん皆様ご承知のとおり、日本では一九八一年から死因のトップ、そして、今日では死因の三割を占めております。
 よく日本人の二人に一人ががんになって、そして三人に一人ががんで亡くなられているというお話がよく聞かれるわけですが、私ども日本において、やはりがん対策というものは常に図っていかなければならない課題であると思っております。
 そこで、がんの治療方法には患者さんの状況によりさまざまな方法があると思いますが、多摩総合医療センターでは、この点に関してどのような医療機能の強化を図られたのか、お伺いをさせていただきます。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 多摩総合医療センターでは、患者さんが通院でがん治療を受けられる外来化学療法センターの充実を図るため、ユニットを八床から二十七床に増床いたしました。
 がん治療には、一つの治療法では完治が望めない場合に、幾つかの治療法を組み合わせて、それぞれの治療を補い合って治療するといったがんの集学的治療が重要であるというふうに考えてございます。化学療法センターのユニットの増床は、このことにも寄与しているというふうに考えてございます。
 また、緩和医療に取り組むとともに、情報提供、相談支援体制の充実、あるいは院内がん登録などの取り組みを進めまして、本年四月に東京都認定がん診療病院の認定も受けてございます。
 今後もがん医療提供体制の充実強化を図ってまいります。

○小山委員 ただいまのご答弁の中で、これまでの医療機能の強化ということでいただいたわけでありますが、八床から二十七床に増床されたということ。それから大事な点が、この四月から東京都の認定がん診療病院として認定をされたということ。
 この中には大変大事な部分が幾つか含まれていると思います。緩和ケアであるとか、あるいはやはり情報提供や相談支援体制は、がん患者さんはもちろんのこと、そのご家族のことも含めてこういった体制整備がとられていくということは、私は大変必要なことだと思いますので、ぜひこの点におきましてもさらなる推進を図っていただきたいと思います。
 悪性新生物を原因とする死亡者においては、依然トップであるがんに対する抗がん剤の開発も日進月歩であります。その取り扱いには、もちろん高度な専門知識が必要であるとも聞いております。ぜひともそういった知識の集積等々も含めて、今後とも多摩総合医療センターが多摩地域における先進的ながん医療が提供できる施設として充実をされることを強く要望しておきたいと思います。
 それと、もう一つは、旧府中病院といいますと、多摩地域の救急医療の中心的な役割を果たす病院であったことはいうまでもありません。もちろん、これが多摩総合医療センターとなってからも、その役割は一層重要になってくると思っております。
 そこで、府中病院のERでは、年間五万人から六万人に及ぶ患者さんが受診されているということだったと思いますが、まさしくその対応には大変なご努力がおありだと思います。
 このような状況の中でさらなる向上を図るために、ERの機能強化についてはどのようなことが図られたのか、お伺いをいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 多摩総合医療センターのERは、旧府中病院当時から二十四時間三百六十五日、疾患を問わず応急的な治療を行ってございまして、さらに必要に応じて専門の診療科が手術や入院診療を行う体制をとってまいりました。
 多摩総合医療センターのERでございます東京ER・多摩(総合)では、効率的な救急診療ができるように、診療ブースの増設や専用のCT、エックス線撮影装置等の整備を行うとともに、トリアージ機能の向上を図るなど、ERの特性を踏まえた診療体制の充実を図っております。
 また、小児総合医療センターが担う小児救急医療とも連携して運営も行っております。

○小山委員 ただいま担当部長からお答えをいただきましたように、機能強化ということも十分図られてきているということで、この点からも救急、ERの部分においては、多摩の中心の施設として多摩総合医療センターが位置づけられているわけでありますから、ぜひともこの点についてはさらなる強化の取り組みをお願いをしたいと思います。
 多摩総合医療センターが改築に合わせて、ハード面からの機能強化や医師を初めとした職員の努力によって、重点課題である医療の強化がさまざま図られていることはわかりました。
 多摩総合医療センターに受診されている方の三割が私の府中市の住民であるということも聞いております。これは、もちろん府中市もそうですが、さらには多摩地域全体の基幹病院として位置づけられているわけですから、今後も二十四時間三百六十五日、安心できる医療体制を提供していただくようお願いをしておきたいと思います。
 二件目といたしまして、都立病院におけるボランティアの活用の推進についてお伺いをさせていただきます。
 これも先日、私が多摩総合医療センターに伺ったときに、外来の受付付近でボランティアの方々が患者さんを本当に親身になってご案内されている様子を拝見させていただきました。
 この方々は、エプロンをつけて、本当に高齢者の方だとか、あるいは障害をお持ちの方を含めて、大変懇切丁寧な対応をされていることを拝見しまして、私も大変感じ入ったわけでありますけれども、こういった来院する患者さんとの距離も近い存在であるボランティアの皆さん方がどういった活動をされているのか。その辺をあわせて二件目の質問とさせていただきたいと思います。
 そこで、都立病院におけますボランティアのこういった方々が、外来で患者さんを案内するほかにもどのような場面で活動しているのか、あわせてお伺いをさせていただきたいと思います。

○別宮サービス推進部長 ボランティアの方々には、主に外来患者の案内のほか、小児病棟の患者さんに対する学習指導や本の朗読、また一般病棟における患者さんの話し相手や散歩の付き添いなど、患者さんの日常生活の援助などを行っていただいております。
 また、ボランティアの方々の特技を生かしたものとしまして、院内庭園の手入れなどのガーデニングによって、患者さんや見舞いの方々に対し、憩いの場を提供していただいているとともに、院内コンサートなどを通じまして憩いのときを提供するなどの活動をしていただいております。

○小山委員 ただいまのお答えの中には、ボランティアの方々には、もちろん先ほど私がお話ししました外来患者さんの案内のほかにも、実際小児病棟の患者さんに対する対応であるとか、あるいはそういったコンサートなどを行われたりということで、要は患者さんの内的な部分、心理的な部分にもいろんな支援を行っているということがよくわかりました。こういったボランティアの方々にこういう病院を支えていただいているということは、本当に感謝すべきことだというふうに思っております。
 そこで、こういった都立病院におけますさまざまなボランティアの方々に対する、こういうボランティアの方々が大変重要な役割を担っているというふうに思いますが、そういった方々に対してどのような対応、つまりそういった感謝の念であるとか、あるいはそういったことに対する病院側の対応も含めてどういったことがなされているのかをお伺いをさせていただきたいと思います。

○別宮サービス推進部長 長期にわたり継続的に活動していただいておりますボランティアの方に対しましては、各病院において年に一回、感謝状の贈呈を行いまして、感謝の意を伝えるとともに、その功績をたたえてございます。
 また、院内コンサートなどのイベントの終了時には花束を贈呈するなど、患者さんなどの聴衆から感謝の意を伝えております。
 なお、これまでは無償の活動ということで、すべての経費負担をお願いしてきましたけれども、今年度より病院経営本部におきましてボランティア保険の加入料を負担することといたしまして、より活動しやすい環境を整えたところでございます。

○小山委員 ご答弁ありがとうございました。今お答えの中に、今年度からはボランティア保険の加入を病院経営本部において行われたということ、これは評価をさせていただきたいと思います。
 こういった環境を整えることで、ボランティアの方々が参加をしやすいような環境づくりをぜひともさらに進めていただきたいと思います。
 そして、そういったボランティアに取り組まれている方々に対しては、やはりこの感謝の念をどういった形で顕彰できるかといいますか、皆さんにそういった思いを伝えるかということは、もちろん病院において今行われているということでありますけれども、私はぜひとも、この病院経営本部としてそういった感謝状を渡すとか、そういったことも考えていいんではないでしょうか。
 やはり広くこういった方々に、私ども都の病院経営本部が、そういった都の病院を支えていただいているわけです。そういった方に対するそういう対応もぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 そこで、各病院においてボランティアの方々の活動が評価をされ、感謝の気持ちが伝えられているということもわかりましたけれども、このボランティア活動については、やはり広く都民にアピールといいますか、PRされてしかるべきものだと私は思います。
 そこで、このボランティアの活動についてどのように都民に周知をされているのか、お伺いをします。

○別宮サービス推進部長 各病院では、主として病院発行の広報紙にイベントに参加したボランティアの活動状況などを掲載してございます。また、各病院及び病院経営本部のホームページにおきましても、ボランティアの募集告知とあわせまして、都立病院における活動内容などを紹介してございます。
 このようにボランティアの方々の活動を広く周知することで、活動に対する感謝の意をあらわすだけではなく、より多くの方々の活動につなげていくことができると考えております。
 そこで、広報紙の内容をさらに充実させていくとともに、各病院及び病院経営本部のホームページにおきまして、今後もその活動内容を広く紹介してまいります。

○小山委員 ただいまお答えの中で、病院発行の広報紙によって知らせている、あるいはホームページにおいてもこういった募集の告知とあわせて活動内容も紹介されているということであります。
 ぜひこういったすばらしい活動がなされているということを、やはり広く都民の方に知らせる機会というものを持っていただきたいと思います。そして、こういった活動に参加をしていただく一助となっていただくことをお願いをしておきたいと思います。
 今後も病院や患者さんを献身的に支えていらっしゃいますボランティアの方々に対して、ぜひとも病院経営本部としても感謝の気持ちを折に触れ伝えることを忘れずに、またボランティア活動を希望されている方を積極的に活用されまして、一層患者サービスの向上を図っていただくことを要望いたしまして、私の質問とさせていただきます。

○吉住委員 先月二十二日に厚生労働省が発表した平成二十一年医療施設調査・病院報告の概況によりますと、平成二十一年十月一日現在の医師数は十九万一千百二十五人で、前年に比べて三千百七十七人、約一・七%とわずかではありますが増加をしています。
 その一方で、一般病院の施設数を診療科別に見ると、産婦人科、産科を標榜する施設は千四百七十四施設で、一九九〇年以降では最低の数字となっています。
 また、一九九〇年と比べた減少率は約四〇%にもなっており、仕事の厳しさや訴訟リスクの高さが指摘される診療科の減少傾向に歯どめがかかっていない現実が改めて浮き彫りになったといえます。
 また、今月七日には、東京都人事委員会から職員の給与に関する報告と勧告が出されましたが、その中でも医療人材の確保については全国的に依然として厳しい状況にあり、都においても医療人材の安定的な確保は引き続き重要な課題になっているとして、国の人事院と同様に、医師に適用する医療職給料表(一)については、公民較差に基づく給料表の引き下げは行わないことが適当との意見が出されています。
 医療はすなわち人であり、医療の高度化、専門化が進む中、よりよい医療サービスとよりよい経営の実践を目指すためには、優秀な人材の確保と定着、そして育成が不可欠となります。
 そのためには、まず、医師の勤務環境が重要であると考えますが、優秀な人材の確保に向けて、これまで都立病院ではどのような取り組みを行ってきたかを伺いたいと思います。

○黒田経営企画部長 医師の業務の特性上、救急患者さんの処置、手術、入院対応や、また入院患者さんの急変対応のために、夜間などに緊急に登院を要することも多いことから、病院の近隣に民間の住宅の借り上げを行いまして、職務住宅の確保を行ったところでございます。
 また、院内保育室も設置しまして、平日だけでなく土曜日も開室しているほか、夜間当直勤務の際にも子どもを預けたいというニーズにこたえるために、二十四時間保育を実施しているところでございます。
 さらに平成二十年七月からは、育児短時間勤務制度を導入するなど、ワークライフバランスを推進する勤務環境の整備を進めてきているところでございます。

○吉住委員 医師の勤務環境に関しましては、この間さまざまな取り組みが進められ、改善されていることがわかりました。
 しかし、幾ら優秀な人材が確保できたとしても、都立病院に定着してもらえなければ、成果として十分であるとはいえません。医師にも生活があり、過酷な勤務条件に見合う処遇がなされることによって、都立病院への定着につながっていくことになると思います。
 医師の処遇改善、とりわけ給与面において、これまで具体的にはどのような取り組みがなされたのかを伺いたいと思います。

○黒田経営企画部長 医師の処遇に関しまして、各年度におけます具体的な例を申し上げますと、まず平成十八年度には、初任給調整手当におきまして、それまで月額十四万六千百円であったものを十七万五千百円へと増額いたしました。
 さらに二十年度には、とりわけ過酷な勤務条件といわれております産婦人科の医師について、さらに増額を行ったところでございます。
 また、平成十九年度には宿日直手当を改定いたしまして、それまでの一回一万五千三百円から三万円に増額いたしました。
 平成二十年度には、東京医師アカデミーの開講に伴いまして、日額四千五百円の指導医業務手当を新設いたしました。
 平成二十一年度には、産科医業務手当を新設いたしまして、緊急の度合いによりまして一回一万円、一万五千円もしくは二万円を支給しているところでございます。
 同じく平成二十一年度には、救急医療業務手当を新設いたしまして、一回二万円を支給しているほか、手術や診療のために緊急に登院したときには、医長以上について一万円、一般の医員で三千円をそれぞれ支給しているところでございます。

○吉住委員 医師の処遇が大きく改善されていることはわかりました。とはいえ、医師の確保、定着は処遇改善だけで解決できることではありません。自前の医学部を持たない都が安定的に医師を確保するためには、大学、医局の協力を得るだけではなく、都みずから優秀な若手医師を確保、育成しなければならないと思います。
 そのため、都では、先ほどの答弁にあった東京医師アカデミーを平成二十年度に開講されました。東京医師アカデミーは、都立病院の総合診療基盤に支えられた行政的医療、高度専門医療に基づく豊富な症例を活用し、臨床重視、患者さん本位の総合診療能力を兼ね備えた専門医を育成する、都独自の専門臨床医養成制度と聞いております。
 東京医師アカデミーでは、内科系、外科系のほか、医師不足が顕著とされる産科、小児科、麻酔科等、全十二診療分野の研修コースを設置し、いずれの研修コースにも学会専門医受験資格の取得、総合診療能力の向上を到達目標とした研修カリキュラムを用意しているとのことで、自身のキャリアアップを望む若手医師にとって魅力的な専門臨床医育成システムではないかと思います。
 本アカデミー制度が軌道に乗れば、都立病院のERや救命救急を担う医師、将来の都立、公社病院の第一線で活躍できる優秀な医師を確保するルートができることから、我が党は開講のときから東京医師アカデミーを積極的に支援してまいりました。
 そこで、開講した二十年度から現在までの東京医師アカデミー全体の応募状況、採用状況について伺いたいと思います。

○黒田経営企画部長 東京医師アカデミーには、開講しました平成二十年度には都立病院全体で百九十四名の応募がございまして、百二名を採用いたしました。また、翌二十一年度には百五十八名の応募がありまして、九十二名を採用いたしました。また、平成二十二年度には百七十八名の応募がございまして、百三名を採用しているところでございます。
 東京医師アカデミーは、開講以来、全国ほぼすべての大学の医学部、医科大学から応募がございまして、毎年一・五倍から二倍に近い競争倍率となる応募者をいただいているところでございます。

○吉住委員 冒頭でも申しましたが、医療人材の確保が全国的に依然として厳しい中で、毎年一・五から二倍の競争倍率となっていることは、東京医師アカデミーが魅力ある医師育成システムとして全国から注目されている証左であり、医師アカデミーの取り組みは大いに評価できると思います。
 そこで、東京医師アカデミーを設置後の医師不足が顕著といわれる産科等の診療科の採用状況について伺います。

○黒田経営企画部長 医師不足の大変顕著な産科についてでございますが、これまで十六名、また小児科につきましては四十三名、さらに麻酔科につきましては二十二名のアカデミー生を採用してございます。
 なお、平成二十三年度に採用いたします医師アカデミーの選考は現在行っているところでございますが、例えば産婦人科コースですと応募者が九名、小児科コースでは三十二名、麻酔科コースでは十名となっておりまして、医師不足が顕著とされるコースへの応募者を引き続き確保できているという状況でございます。

○吉住委員 東京医師アカデミーが開講以来、産科等医師不足が社会問題化しているような診療科の医師の確保、育成、定着に貢献していることがわかりました。
 これまでの答弁で、都が医療すなわち人であることを認識し、医師の勤務環境の整備、処遇改善、東京医師アカデミーの運営に真摯に取り組んできたこともよくわかりました。この取り組みの結果、都立病院における医師の充足状況がどのように改善されてきたのか伺います。

○黒田経営企画部長 医師の充足状況でございますが、四月一日現在の定数に対します充足率で比較いたしますと、十九年度には九三・七%、二十年度は九五・六%、二十一年度は九六%、そして二十二年度は九六・四%と毎年上昇しております。
 病院勤務医が全国的に不足している中で、都立病院の医師の充足状況は着実に改善されてきているところでございます。

○吉住委員 さまざまな取り組みが功を奏し、医師の充足状況が年を追って改善傾向にあることがわかりました。
 今年度末、東京医師アカデミーは最初の修了生を輩出すると聞いております。都立病院において、これまで以上に安定的な医師確保を実現するとともに、公社病院、都内の公的医療機関への就職を促進することで、都内の医師不足、偏在の解消が進むことを期待します。
 次に、都立病院の医師の定着対策の観点から、医療クラークについてお伺いします。
 医師の激務緩和、負担軽減について、ER等に医療クラークを配置し、医師の事務作業の負担の軽減を図り、できるだけ本来の業務である診療に専念できる環境を整備したということも承知をしておりますが、さらに充実をさせる必要があると考えております。
 都立病院における現在の医療クラークの導入状況及び業務内容についてお伺いします。

○別宮サービス推進部長 平成十九年度に広尾病院、墨東病院、府中病院のERに労働者派遣契約によりまして医療クラークを配置した以降、平成二十年度には産科医の事務補助として拡大いたしまして、平成二十一年度にはさらに充実し、全都立病院に医療クラークを配置いたしまして、体制の整備を図ったところでございます。
 しかしながら、労働者派遣契約では毎年契約業者が変わることなどで医療クラークの習熟性に欠け、現場からは継続的に雇用してほしいという要望がございました。それを受けまして、平成二十二年度、今年度からは専務的非常勤職員に切りかえまして、継続的な人材確保をできるようにしたところでございます。
 主な業務内容につきましては、医師の指示のもとに診断書などの文書作成補助、診療に関するデータの整理、医師の教育や臨床研修のためのカンファレンスの準備など、医師の事務作業補助となってございます。

○吉住委員 都立病院で医師の事務作業の負担軽減に取り組んでいるということはわかりました。このような取り組みにより、医師が専門性をより発揮することで、都立病院のさらなる医療サービスの向上も期待したいと思います。
 そこで、医療クラークを導入したことによる効果について、例えば何かが短縮されたとか、具体的なことがございましたら伺いたいと思います。

○別宮サービス推進部長 医療クラークの導入によりまして、現場の医師からの声といたしましては、事務作業が軽減されたことで、患者に対しては丁寧な診療上の説明や病棟回診回数の増加など、医師が患者と向き合う時間がふえたということで、よりよい医療の提供につながっている。また、診断書などをより迅速に発行することができるようになり、患者サービスの向上にもつながった。さらに、従前は事務作業に充てていた時間を、研修医の指導に充てることができるようになったなどの効果があったというところでございます。

○吉住委員 医療クラークの導入によって、書類作成等の周辺業務を医療クラークが担うことによって、医師は診療に専念でき、患者に向き合える時間が多くなるということは、都立病院が提供する医療の質を高める上でも重要なことだと考えます。今後とも、医師の事務負担の軽減に努めるなど、定着対策に取り組んでいただきたいと思います。
 これまでの答弁で、我が党が継続して応援してきた医師確保、定着対策が功を奏し、充足状況が改善しつつあることが確認できました。しかし、全国的に見ると、産婦人科、産科を掲げた施設が減少するなど、医師不足の顕著な診療科を初めとして医師の確保はまだまだ厳しい状況にあります。
 こうした状況は、今後も続いていくものと思われますが、今後の医師の確保に対する本部長の決意を伺って、私の質疑を終了いたします。

○川澄病院経営本部長 医師の確保対策は、単に処遇改善だけではなく、勤務環境の改善や事務負担の軽減など総合的な取り組みが必要でございます。都立病院におきましては、こうした観点から、これまでさまざまな医師確保対策を行い、一定の成果を上げてきたところでございます。特に、二十三年四月には、東京医師アカデミーの修了生が輩出され、今まで以上に医師の安定的な確保に寄与するものと考えてございます。
 しかし、ご指摘のように、医師確保をめぐる厳しい状況は続いているところでございます。このためには不断の取り組みが必要であるというふうに考えております。このため、新たな取り組みとしまして、来年度より都立公社病院の中核を担う人材育成を目的として、東京医師アカデミーにクリニカルフェローコースを新たに設定することとしております。
 今後とも、こうしたさまざまな対策を効果的に講ずることによりまして、医師の確保に全力を挙げてまいります。

○中山委員 まず、都立病院におきます省エネ、CO2削減の取り組みについてお伺いいたします。
 地球温暖化に代表される環境危機に対しまして、都は積極的な取り組みを行い、「十年後の東京」において世界で最も環境負荷の少ない都市を実現するとしております。
 一方、医療機関、特に病院は、大量のエネルギーを消費するCO2の大規模排出事業者でもございます。
 世界で最も環境負荷の少ない都市を実現するためには、医療サービスの水準を落とさずに、都立病院もまた省エネ、CO2削減に積極的に取り組む必要があると考えます。また、病院経営の面からも光熱費等の削減は重要であります。
 そこで、都立病院におきまして、省エネ、CO2削減に二十一年度の実績を含めどのように取り組んできたのかお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 病院経営本部では、平成十八年度から地球温暖化防止や省エネルギー対策に積極的に貢献するため、都立病院の設備、施設改修にコスト縮減と環境対策を両立させましたESCO事業を導入してございます。
 この事業により、広尾、大塚、墨東の三病院におきましては、順次、ボイラーなどの熱源を高効率機器に更新するなどの整備を行ってまいりました。この結果、平成二十一年度実績では、三病院の平均で計画を上回る、省エネルギー率二五・五%、CO2縮減率二八・五%を、また光熱水費については三病院合計で約二億三千万円の削減を達成することができました。
 また、すべての都立病院では、平成二十一年度が最終年度でございました地球温暖化対策計画書制度のもとで、各病院の状況に応じまして蛍光灯インバーター安定器への更新、節水器具の導入、ポンプのインバーター化などの省エネルギー対策を実施してまいりました。

○中山委員 ESCO事業に参画された三病院で二億三千万円の光熱水費の削減ということで、大変な成果を上げていらっしゃると思います。
 個々の病院の状況に応じて省エネ、CO2削減が取り組まれていることは、今のご説明でわかりました。このような取り組みは非常に大事なことではありますが、エネルギー、CO2の削減効果の面ではやはり限界がございます。
 エネルギー、CO2の削減が最も期待できるのは、施設の新築や大規模改修時に省エネルギー型設備の導入、省エネルギーに配慮した設備運用等を図ることが大切でございます。
 都では、平成十九年五月に都の施設を最高水準の省エネ仕様に転換し、CO2削減に向けた取り組みを進めるため、省エネ東京仕様二〇〇七を策定しております。この間、病院経営本部では、多摩総合医療センター、小児総合医療センターの整備、仮称でございますけれども、がん・感染症医療センターの全面改修、同じく仮称ですが、精神医療センターの新病棟整備の再編事業に取り組まれてきました。
 これらの再編整備事業において、省エネ東京仕様二〇〇七がどのように反映されているのか、お伺いをいたします。

○別宮サービス推進部長 多摩総合医療センター、小児総合医療センター及び仮称でございますが、がん・感染症医療センターにおきましては、それぞれの整備計画等は、省エネ東京仕様二〇〇七の策定前に公表しておりましたが、その後、必要な修正事項を施設整備業務に追加いたしまして、省エネ東京仕様二〇〇七に沿った整備を行っております。
 具体的には、躯体の断熱等による建物の熱負荷の抑制、高機能型照明制御システムやインバーター式冷凍機などの導入によるエネルギーの高効率化などの取り組みを行っております。
 また、仮称でございますが、精神医療センターにつきましても、省エネ東京仕様二〇〇七策定後の契約であることから、同様に仕様を踏まえた準備を行ってまいります。

○中山委員 ESCO事業、再編整備における省エネ仕様への対応など、その時々の状況に応じて、都立病院が大規模排出事業者としてその責任を果たしてきたことが理解できました。
 一般に、オフィスビルを見るときに、エネルギーは空調が約五〇%を占めるんですね。熱の空気を送り出す管の口径を小さく抑えちゃうと、物すごくファンを回転させなくちゃいけないんですね。そこで電気を食うんです。
 ところが、管を整備してあるスペースというのは、直接お客様用のスペースじゃないので、そこが面積的に抑えられちゃうんです。したがって、そこの管の口径が小さくなって、物すごく電気を食うというようなことがあります。
 そうした事柄だとか、あるいは熱源のところ、先ほどもボイラーの話がありましたけれども、そこに冷たい空気を上から流してやる。これは自然に、上から流したときには冷たい空気は下に行きますから、いわゆる負荷をかけなくても空気の流動が起きるわけですね。これは、置きかえるといいますけど、置換換気と。そういうようなことの取り組みによって、いわゆる目に見えないところでCO2削減ができる可能性がすごくあります。
 あるいは、自然換気という、外の空気を雨とか風の状況に応じてリモートコントロールで取り入れる。そういうシステムを取り入れることによって太陽光発電設備の何倍ものCO2削減ができるとか、そういう実例は既に取り入れられていますので、高度な医療技術に、たくさんいい設備を導入していくためにも、ふだんの日常的な取り組みの中で削減できるところは、ぜひとも今後とも取り組んでいただきたいと思います。
 技術は日々進歩するものであり、「十年後の東京」が目指す世界で最も環境負荷の少ない都市を実現するためにも、今後とも新たな技術に対応するなど、都立病院が省エネ、CO2の削減に引き続き取り組むことを要望して、次の質問に移ります。
 次に、駒込病院におきますがん医療について、現在進行している改修事業に焦点を当ててお伺いいたします。
 かねてより我が党では、がん患者さんとそのご家族などの声に耳を傾け、がん対策基本法の制定に精力的に取り組むなど、我が国のがん対策の充実強化を積極的に推進してまいりました。
 平成二十年三月に策定された東京都がん対策推進計画もこのがん対策基本法に基づいて策定され、都における、がんの予防から治療、療養生活の質の向上に至るまでの総合的な取り組みが進められているところでございます。
 がんは、国民の二人に一人が罹患する、まさに国民病であり、その克服を目指していくことが大変重要な課題となっております。そのためには、生活習慣の見直しなど、予防対策の充実とともに、がんになったときに最先端の効果的な治療を受け、がんになっても日常生活を送ることができる、あるいはがんを克服して一日も早く社会に復帰することができる環境づくりが重要であり、そうした環境をつくり上げていくことが都民、国民の安心の礎になるものと考えております。
 先ほども説明がございましたけれども、現在のがん治療では、病巣そのものを切り取る手術療法、病巣に放射線を照射してがん細胞を死滅させる放射線療法、そして薬剤による化学療法があり、これらを組み合わせて行う集学的治療が行われていると伺っております。
 その中でも、特に、乳がんや肺がんの化学療法においては、がん細胞の増殖にかかわる因子、分子を特定して、これらの機能を抑制する作用を持つ薬剤、いわゆる分子標的薬による治療が近年進められているということでございます。
 分子標的薬というのは、英語でいうとターゲテッド・セラピーというんですか、いわゆる体内の特定の分子をねらい撃ちして、その機能を抑える。正常な細胞とがん細胞の違いをゲノムレベル、分子レベルで解明して、がんの増殖や転移に必要な分子を特異的に抑えたりするという治療だそうでございますけれども、その標的薬治療が近年進められているところでございます。
 この分子標的薬の特徴は、その効果はもとより、がん細胞の増殖因子のみに作用するため、従来の化学療法では課題の多かった白血球の減少や免疫機能低下などの副作用が比較的少なく、体力のない高齢者の方々にも使いやすいといったメリットがあるということでございます。
 また、こうした分子標的薬による化学療法は、通院により日帰りで治療を受けることで、社会生活を送りながらがんに立ち向かうことができ、患者にとって負担が少ないというメリットもございます。
 一方で、むくみや高血圧症の症状など、新たな副作用が出現する可能性もある。これは、最近の研究で明らかになってきているそうですけれども、全く副作用がないというわけではないと。その活用に当たっては、十分慎重な管理を行うことが必要であります。
 そこでまず、分子標的薬など化学療法の実施に十分に対応できる体制を構築していくべきと考えますが、今回の改修を一つの機会として、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 がん化学療法では、お話がございましたように、通院治療による患者さんの生活の質の向上ですとか、分子標的薬を初めとする最先端の治療に対するニーズの高まりに的確に対応していくことが必要であると考えております。
 駒込病院では、現在、二十六ユニットの通院治療センターを開設して、外来での化学療法に対応しているところでございますけれども、今回の改修を機に、五十ユニットに拡充する計画でございます。
 また、がん化学療法に精通した医師、認定看護師、認定薬剤師などを適切に配置することにより、ハード、ソフトの両面から化学療法の実施体制の構築に取り組んでまいります。

○中山委員 そういう粒子線治療みたいな、あるいは分子標的薬とか、最先端の医療というものが比較的廉価といいますか、安い入院治療費で安心して受けられる、そういう都立病院の役割というのは非常に大事だというふうに思っております。
 今後、分子標的薬の開発や普及などに伴い、外来化学療法の実施体制の充実や医療スタッフの連携が一層必要となると思われます。改修により整備される機能を最大限に発揮できるよう取り組んでいただきたいと思います。
 分子標的薬を使用するには、患者が罹患しているがんにどのような増殖因子が働いているのか、また、個々人ごとにどのタイプの薬が効くのかを確認することが重要で、こうした技術は大変高度なものだそうでございます。
 ご本人の体質とか、かかっているがんの特質とか、そうしたものによって変わってくるし、これは内服薬全般そうですけれども、分子標的薬自体も二十数種類あるというふうにお伺いしております。その中でどのタイプがいいのかということを選んでいく。これが非常に大事で、アメリカなんかのがん治療においては、内服薬の専門家の医者が、百数十種類ある治療薬の中からその患者さんに合ったものをちゃんと選んでいくという、個人的な経験かもしれませんけれども、そういうものが培われている。日本においては、これをシステム的につくり上げていく。これは個人の経験、勘だけじゃなくて、非常に大事なことだと思います。
 こうした最先端の治療を開発し促進していくためには、治療を進める現場である臨床部門と、その支えとなる研究部門が密接に関係していくべきであると考えております。
 私は、前の駒込病院の院長さんでした森先生から、ベンチ・ツー・ベッドの話をお伺いしました。ベッド、臨床部門とベンチ、研究部門が一体となって取り組んでいくことが非常に大事だという話をお伺いしまして、感銘しまして、平成十九年の第二回定例会の一般質問、また、平成十九年度決算に関する公営企業会計の分科会質問でも、同じようにこの質問をさせていただきました。
 これまでも私は本会議において、駒込病院をがん・感染症医療センターとして整備するに当たっては、臨床と研究の連携を深めていくべきだと主張したところでございます。
 そこで、がんの高度専門医療を担う駒込病院において、臨床と研究の連携の取り組みを積極的に進めるために、今回の改修に当たってどのような取り組みが行われているのかお伺いいたします。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 今後のがんの高度先進医療におきましては、先ほどお話もいただきましたように、がんの患者さん個々人の病状や病態に応じた適切な治療の実施と、それを推進していくための体制を整えることが重要であると考えております。
 そのため、今回の改修に当たりましては、病院内に研究部門を整備しまして、臨床試験への参加などを通じて、がんの治療法の開発や効果の確認を進めていくことなど、今後の医療技術の進歩に対応しながら先進的な医療の提供を行ってまいります。
 また、東京都臨床医学総合研究所との共同研究の実施などによりまして臨床と研究のさらなる連携を推進していくため、関係局と協議を進めてまいります。

○中山委員 新しい病院をつくるときに研究部門をどうやってつくるかというのはなかなか大変だと思うんですけれども、ぜひ、人的交流が一番大事です。森先生がおっしゃっていたのは、本当は健康によくないんですけど、たばこを吸うスペースだけでもあると、研究する人と臨床の人が一緒にたばこを吸うだけでも意見交換できるんだなんてことをいっておられました。
 そういうような人的なスペースをとっていただいて、ぜひお願いしたいと思います。たばこの問題はまた別に置きまして。
 がんに罹患した患者は、その将来に大きな不安を抱えるものでございます。しかし、がんになったとしても、効果的な治療方法が一つでも多く開発され、臨床現場で活用されることが、そうした不安の解消につながってまいります。
 駒込病院を初め都立病院では、答弁のあった取り組みを率先して進め、より高度で患者ニーズに合致した医療を提供していただくことを要望して、次の質問に移ります。
 次に、医療連携、特に地域連携クリニカルパスについてお伺いいたします。
 平成十八年度の診療報酬改定により、大腿骨頸部骨折、その後の改定で脳卒中等が順次、地域連携クリニカルパスとして制度化されました。これは、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、治療を受けるすべての医療機関で共有することにより、地域連携体制に基づく地域完結型医療を実現するためのものでございます。
 私が足立区の医師会の勉強会に参加させていただいたときに、この地域連携クリニカルパスを導入することによって、治癒期間、病院にいる期間が約半分に減ったというような報告をされていた方がいらっしゃいました。
 診療報酬の改定によって早く病院から出そうという試みよりも、地域連携クリニカルパスによって早く治すことの方がよっぽど医療費全体を抑えられる。そういう効果があるんではないかと思います。
 まず、都立病院におきまして地域連携クリニカルパスの取り組みの現状についてお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 地域連携クリニカルパスにつきましては、墨東病院では、平成十九年二月から大腿骨頸部骨折クリニカルパス、平成二十年六月からは脳卒中クリニカルパスを導入しておりまして、当時の府中病院、現在の多摩総合医療センターにおきましては、平成十九年七月から大腿骨頸部骨折クリニカルパス、平成二十年六月から脳卒中クリニカルパスを導入してございます。また、広尾病院でも脳卒中クリニカルパスの今年度中の導入に向けて準備を行っております。

○中山委員 都内では、急性期の病床に対して回復期の病床が少ないという事情もありますし、都立病院自体が複数の二次医療圏にまたがって、あるいは都全体をカバーして存在しているという面もあって、これはなかなか難しい面もあると思います。
 この地域連携クリニカルパスというのは、ある面では基幹となる病院ごとに、大学病院とかごとにそれぞれ決めているので、幾つかの種類がどうしても同じ診療科でも出てしまうと。これは非常に難しいところだと思いますけれども、地域連携クリニカルパスの導入は、患者さんにとっても、医療資源の面でも有効なものであり、都立病院においても取り組みを強化すべきであると考えます。
 東京都としては、福祉保健局は病院全体に対してそれを推進するようにという立場にあるし、病院経営本部におかれては病院の代表的な中心者として、その連携をみずから模範をもって推進していくといいますか、働きかけるという役割があるんではないかと思います。そうした事柄を踏まえて、行政的にも、そして都民にとっても効果がある医療連携に取り組んでいく上での病院経営本部長のご決意をお伺いしたいと思います。

○川澄病院経営本部長 限りある医療資源を最大限に活用し、都民に対する医療サービスの向上を図っていくためには、それぞれの医療機関が診療機能に応じた役割を十分に果たしながら相互に連携していることが極めて重要でございます。このため都立病院では、急性期を脱した患者さんが、その状態に応じて安心して地域の医療機関や療養型医療機関等に転院できるよう、医療連携を推進してまいりました。
 地域連携クリニカルパスは、これまでの医療連携をより効果的に推進するものであり、安心できる医療を実現する上で非常に有用なものであると認識しております。今後も各病院の医療機能に応じて、地域連携クリニカルパスの拡大を図るなど医療連携を積極的に推進してまいります。

○西崎委員 私からは、まず墨東病院のNICU入院児退院支援についてお伺いしたいと思います。
 ちょうど二年前の十月だったと思いますけれども、一人の妊婦さんが都内の病院へ救急搬送で送られてきて、八カ所、九カ所の病院に断られて、最後は都立墨東病院で亡くなるという大変痛ましい出来事がありました。
 東京にたくさんの病院がありながら、なぜ救急搬送がそのように困難になっているのか。その直後の決算委員会では、周産期医療のあり方、救急医療のあり方が大変議論になりました。
 その中の課題の一つにNICUの問題があったと思います。長期にわたってNICUに入院しているお子さんがいるために、どうしても数が足らなくなってしまう。そういった問題を私も質問に取り上げており、あれからどのように進められてきたのか、検証する意味で伺いたいと思います。
 東京都は、平成九年に出生一万人に対してNICU二十床、都内に二百床という整備を目標に掲げました。周産期母子医療センターの施設整備等の支援を進め、平成二十年度には目標を達成しています。平成二十二年十月現在、都内に二百四十九床のNICUが整備されています。
 しかし、依然ハイリスクの分娩件数や低出生体重児の増加によりまして、NICUは恒常的に満床状態であります。中にはやはり入院が長期化する患者も少なくないと聞いています。このため、緊急であってもハイリスク妊婦の受け入れが困難な事例が発生しています。
 入院が長期化するのは、患者の病状のほか、家族が退院後の在宅生活等に不安を感じていることが影響しており、入院早期からの継続的な家族への支援体制の整備が求められています。
 こうしたことから、東京都は二十一年度からNICUからの円滑な退院に向けた取り組みへの支援事業の検討を開始し、二十二年度からは墨東病院においてモデル事業を開始したとお聞きしています。
 そこで、まずこのモデル事業の概要についてお聞かせください。

○黒田経営企画部長 NICUからの円滑な退院に向けました取り組みへの支援のモデル事業についてでございますが、医療ケアが必要な入院児の円滑な退院に向けました支援体制の確保を図るため、在宅移行が望ましいNICU等の入院児を対象に、在宅等への移行及び在宅移行後の継続した支援をモデル的に実施するものでございます。
 また、墨東病院を中心としました支援体制を検討、実施するとともに、地域での支援体制づくりのため、保健所、保健センター、療育機関、訪問看護ステーション等の関係機関との連携を図っていくものでございます。

○西崎委員 NICUの入院が長期化する家族へのサポートは入院初期から行い、よりスムーズな在宅への移行を図る必要があります。在宅での支援については、今お話にもありました地域の医療機関、訪問看護ステーションなど関係機関の連携は重要になってくると思います。
 私がある訪問看護ステーションの方から聞いたお話では、これまで高齢者の訪問看護を行う訪問看護ステーションはたくさんあり、逆に子どもを専門に行う訪問看護ステーションはまだまだ少なく、そのための研修とか経験は大変重要だということをいわれていました。
 さらに、退院を予定している病院との連携は重要で、ここは東京以外の訪問看護ステーションの方のお話なんですが、退院する前から訪問看護ステーションの方が病院に出向き、家族やお子さんと会い、看護師から細かい状況を把握するように努めているそうです。
 また、ここでは留守番看護という事業も行っていまして、家族が留守にする間、お子さんの面倒を見る。これは家族との信頼関係が大変重要になってくるといっていましたけれども、こういった事業も行いながら支援をしているといっていました。
 在宅に移行するに当たっては、母親だけではなく、兄弟、姉妹や、さらにお子さんが生まれた場合への支援など、さまざまな支援体制の整備が必要です。NICUから退院し在宅へ移行するにはさまざまな課題がある中、二十二年度のモデル事業開始に当たり、二十一年度、墨東病院はどのような検討、取り組みを実施されたのかお聞かせください。

○黒田経営企画部長 平成二十一年度におきまして墨東病院では、看護師、MSW各一名をNICU入院児支援コーディネーターといたしまして、小児科医師、新生児科医師とのチームで事業の実施準備を進めてまいりました。
 具体的には、NICUの長期入院児の状況把握、望ましい移行先との連携及び調整に関する準備や、資料及び帳票の作成を行いました。
 このほか、院内カンファレンスを実施いたしまして、二十二年度のモデルケースの対象としまして五例の患者さんを候補として選定したところでございます。

○西崎委員 墨東病院が位置する区の東部地域においては産科及び産婦人科を標榜する医療機関が減少して、東京全体そういう傾向にはありますけれども、平成二十年、出生一万人に対してのNICUの病床数、先ほど東京が目標にしている数はいいましたが、ここでは十六・七床と、平成九年度に掲げた目標値二十床を下回る状況にあります。
 そうした意味からも、モデル事業を着実に実施して、限りある医療資源を最大限に活用していくことが大変重要だと思います。今年度はどのように取り組んでいかれるのかをお聞かせください。

○黒田経営企画部長 現在、二十一年度に選定いたしました五例の患者さんのうち、二例の患者さんが退院いたしまして、三例の患者さんの退院準備を進めているところでございます。
 また、療育機関、保健所、訪問看護ステーションとの合同カンファレンスを実施したほか、退院後のフォローアップ外来、親の会の運営などについても引き続き着実に実施しているところでございます。
 さらに、墨東病院では、医学的、社会的支援が必要な母親には出産前から支援する必要があるという観点から、当院を受診しているすべての妊婦さんを中心に本事業と同様の支援を進めることとしております。
 具体的には、母体搬送を含む初診時から患者基本情報、家庭環境等をスクリーニングいたしまして、支援が必要な家族の方をカンファレンスで決定しまして、出産前から支援を開始しております。
 今後とも、患者さん及び家族の方にとりまして、よりよい療養環境を確保するための取り組みを推進してまいります。

○西崎委員 ハイリスクの分娩が非常に多いということと、それから、長期にわたってNICUに入所している新生児のお子さんは、一%が呼吸器疾患を持った新生児だというふうに伺いました。
 在宅に帰った場合に、やはり家族の人がそういう呼吸器系の器具とかをどのように扱ったらいいのかということが大変に不安になりますし、また事故の発生にもつながるというようなことも医師の方からお話を伺ったことがあります。
 患者と家族が安心して地域で療養生活を送るためには、入院中から退院後の継続した医療のフォローや容体の急変時における緊急ベッド、いわゆるレスパイトの受け入れシステムを確保することも重要だというふうに思います。
 また、先ほどもお話しさせていただきましたけれども、訪問看護を担う地域医療機関と墨東病院の連携により、身近な地域での医療提供体制を確保していくことも求められていると思います。
 私は、ぜひこのモデル事業を成功させていただいて、ここで行ったことを検証しながら、東京全体にこういった長期にわたるNICUにおける入院患者のお子さんを一人でも多く地域で支援できるような体制をつくっていただくことを要望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。
 もう一つは、松沢病院の精神科医療について伺いたいと思います。
 ことしの都議会第二回定例会で生活者ネットワーク・みらいの一般質問で取り上げましたイギリスの精神保健の取り組みですけれども、イギリスでは精神疾患を三大疾患に位置づけまして、この十年間で先進的な取り組みを進めています。
 この取り組みの中ですぐれていると思われる点は、家族やユーザーの求めているサービスの開発に積極的に投資をし、早期介入サービス、危機対応サービス、家族支援サービスなどを行っていることだと思います。
 そして、そのために専門家の養成に多くの予算をつけまして、精神看護師、心理療法士、医師などのチームで支援にかかわり、医療中心のシステムから精神保健を重点とした政策へ転換し、地域で生活する精神障害者を支えています。
 これからの精神保健医療のあり方は、入院医療中心から地域生活中心へと大きな転換期を迎えています。しかし、日本における精神保健医療は入院医療中心に行われておりまして、在宅医療への取り組みは多くの課題を抱えているのが現状です。
 そこで、精神保健医療改革実現に向けまして、当事者、家族、サービス提供者、あるいは研究者らがこころの健康政策構想会議をことしの四月に発足しています。
 五月末に厚生労働大臣に提言書をまとめました。この提言書の中身は、保健、医療、福祉すべての分野で多職種チームによるアウトリーチ、東京都も福祉保健局でやろうとしていますけれども、アウトリーチをサービスの基本としています。
 この十月には政策コンテストが行われまして、いろいろな政策に対して、福祉分野だけではなく、今の政権の中でのさまざまな事業に対して市民からパブリックコメントがとられています。
 国における来年度の概算要求は十六億円だというふうにいわれていますけれども、ぜひこういった取り組みはこれから進めていっていただきたいというふうに私どもは考えています。
 このような中、都立松沢病院におきましても、入院医療中心から地域生活中心への転換を目指した取り組みが行われていると聞いています。
 そこで、まず具体的な取り組み内容を行っている社会復帰支援室の状況について幾つかお伺いしたいと思います。
 まず、社会復帰支援室の設置目的及び実施体制についてお聞かせください。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 都立松沢病院の社会復帰支援室は、都立病院改革実行プログラムに基づきまして、平成十五年四月一日に設置したものでございます。
 その設置目的は、第一に長期入院患者さんの退院促進、第二に新入院患者さんの退院促進、すなわち新たな長期入院患者さんの発生予防という観点です。第三に、包括的地域医療サービスの実施、第四に医療連携を通じた地域貢献の四点でございます。
 具体的には、医療相談や医療連携、訪問看護、デイケアを実施してございます。また、実施体制は、医師、精神保健福祉士、いわゆるPSW、そして作業療法士、心理職、看護師、事務職など多くの職種により構成してございます。

○西崎委員 長期入院患者のための退院促進とか包括的地域医療サービスなどを提供するために、医師や専門職など多職種で行っているということは今のお答えでわかりました。
 それでは、社会復帰支援室の具体的な取り組み内容と、二十一年度どのような実績があったのかお聞かせください。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 平成二十一年度の実績でございますけれども、長期入院の患者さんの退院促進の実績は、在院一年以上の事例で百八名、退院援助や受診援助等の相談及び支援業務の実績が七万八千七百四件、訪問看護の実績は三千八百六十四件となってございます。
 また、デイケア部門でございますが、これは大きく分けて大規模デイケアと小規模デイケアの二つがございますが、まず長期にわたって地域生活を維持しながら、就労支援などを行う大規模デイケアの実績は、実施日数二百四十二日、延べ利用者数一万一千五百五十三人、一日当たりの利用者数平均は四十七・七人となってございます。
 また、二十代から三十代の比較的年齢の若い方を対象としまして、利用期間を一年に限定した短期通過型のデイケアである小規模デイケアの実績は、実施日数が二百四十二日、延べ利用者数が二千四百四人、一日当たりの利用者数平均が九・九人となってございます。

○西崎委員 都立の松沢病院では、長期入院患者の退院を促進し、地域生活に定着するために訪問看護やデイケアを行っているということ、さらには患者本人などからの相談にも対応していることはわかりました。
 私は、この十月の上旬に行われましたNPO在宅ケアを支える診療所・市民全国大会に参加してまいりました。これは全国の診療所の先生、専門職、あるいは市民の方が参加して、毎年一回、大会が開かれるんですが、ことしは名古屋で開かれました。
 今回、在宅医療の中でも、精神疾患を持つ患者さんを在宅医療で見ていらっしゃる先生のお話を伺ったんですけれども、もう既にご存じかもしれませんが、NHKの番組でも取り上げられました京都の高木先生、高木医院の先生は、大変先駆的な取り組みを行っていまして、重い精神障害のある人が住みなれた地域で暮らせるように、必要な支援をさまざまな職種で構成された専門家チームによりまして、二十四時間三百六十五日、包括型地域支援プログラム、ACTと呼ばれているんですが、これを行っています。
 この取り組みでは、今、申し上げましたように、二十四時間三百六十五日体制で支援をしておりまして、NPOも関連団体でつくっていらっしゃいます。
 今後、このような在宅医療を中心とした取り組みが広がるよう、国や東京都の政策を展開していく必要があると思いますけれども、都立松沢病院において、長期入院患者の退院促進や包括的地域医療サービスを実施していく上での課題もまだ多く残されていると思いますが、この点についてはどのようにお考えかお聞かせください。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 まず、長期在院の患者さんの退院促進に関する課題についてでございますが、現実的に長期在院となっている患者さんは、数年にわたる退院や転院の働きかけにもかかわらず、精神症状の重篤さであるとか、身体合併症、家族の問題などによりまして、現在もなお、残念ながら入院が継続しているものでございます。
 また、包括的地域医療サービスに関する課題について申し上げますと、患者さんが地域で安定した状態で生活する支えとなるよう、患者さんの症状の悪化を早期に把握することや、退院直後の自殺防止等の危機介入の面からも、医師などの多職種チームによるきめ細かな支援や、デイケア、ナイトケアの充実が必要であるというふうに考えてございます。
 さらに、青年期精神科医療における早期発見や早期介入、夜間電話相談の充実にも取り組んでいく必要があるというふうに考えてございます。

○西崎委員 二十四時間三百六十五日の支援体制をつくっていくことは本当に大変なことだと思うんですけれども、このシンポジウムの中でもいろいろな先生がおっしゃっていることは、医療というのは、その人の体の部分部分を見ていくのではなく、その人の生活を見てあげることだというふうにいっていました。
 特に、こういった精神疾患をお持ちの方が地域で安定した生活を送っていくためには、こういった支援体制が大変重要になってくると思います。
 都立松沢病院では、現在、平成二十三年度の開設に向けて、精神医療センター、仮称ですけれども、整備していくと聞いています。
 最後に、精神医療センター開設に向けてどのように取り組んでいかれるのか、今後の展望についてお伺いしたいと思います。

○齊藤経営戦略・再編整備担当部長 平成二十四年二月の精神医療センター、仮称でございますけれども、その開設に向けまして、精神障害者在宅医療の支援策として、多職種チームによる包括的地域医療サービスの実践や、訪問看護、デイケア等の充実、さらにアウトリーチサービスの拡充や効果的な危機介入の実施、訪問看護ステーションや地域生活支援センターなど、地域の福祉施設との連携強化を図ってまいりたいというふうに考えております。
 これらの取り組みを通じて、医療連携や医療福祉相談、デイケア、訪問看護及びリハビリテーションの各機能が包括的に統合された社会復帰促進システムの整備を引き続き推進してまいります。

○西崎委員 都立松沢病院の取り組みは、精神障害者や家族が地域において、家族も患者の方も安心して医療を受けることを目指す取り組みであると思います。
 さらに、新たな精神医療センターとして、その取り組みを充実拡大していくものと今後も期待しておりますので、ぜひ精神疾患の問題、しっかりと取り組んでいただくように要望して、私の質問を終わります。

○佐藤委員 本日、私からは都立病院における医療の質の向上に向けての平成二十一年度の取り組み、特に医療安全管理体制の充実強化についてお伺いをいたします。
 病院経営本部においては、都立病院の運営に当たり、患者中心の医療理念のもと、患者権利章典を策定し、患者さんの医療に対する主体的な参加を支援するとしています。その具体化として、主な事業計画として、医療の質の向上と患者サービスの充実強化を柱の一つとして挙げているところです。
 平成二十一年度、都は医療安全管理体制の充実強化を最重要課題として認識して取り組むとして、リスクマネジャー等に対する段階的な研修、医療事故予防マニュアルの改定等、また産科医療補償制度の導入を行い、総額一億五百万円を予算計上しているところです。
 産科医療補償制度については、一分娩当たり三万円の保険料となっており、平成二十一年は二千六百九十五件の分娩について八千八十五万円と、予算九千八百四十万円に対して執行率八二・一%となっています。
 この産科医療補償制度は、産科医不足や分娩を取り扱う医療機関の減少から、産科医療が十分に提供されていない状況を背景として、二〇〇六年からの検討を経て、財団法人日本医療機能評価機構を運営組織として、平成二十一年一月より開始されたことは周知のとおりです。
 開始直前の平成二十年の厚生委員会でも、その保険料分が分娩当事者負担にならないかという観点からも議論をされているところです。産科医療補償制度は、医療者の過失の有無にかかわらず、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子どもとその家族に補償するのみならず、脳性麻痺発症の原因分析を行い、将来の脳性麻痺の予防に資する情報提供をするものになっております。
 被害者を救済し、また医療者側が過失を問われ賠償責任を負うことで医療に消極的になってしまわないようにすることを趣旨としており、同時に再発防止の機能をあわせ持つ制度としても構築されている点は重要だと考えます。
 さらに、その原因分析に当たっては、分娩機関の意見だけでなく、患者とその家族からの意見も聞くことになっている点を特に注目すべきと考えております。
 都立病院においても、全国から評価機構に提出された案件より報告される原因分析を随時注視いただきたいと思っております。
 さて、都立病院では、特に過去十年前の医療事故を契機として、医療安全対策を積極的に取り組んできたと聞いております。医療事故にどのように向き合い、この十年間、どのように医療安全対策に取り組んできたかお伺いいたします。また、院内感染防止に対する取り組みについても、あわせてお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 医療事故防止のためには、個々の職員の注意や努力が必要でございますが、同時に事故発生の要因を分析し、情報の共有化を図るなど、安全な医療環境を組織として整備することが重要である、そういった教訓を得ました。
 そのために、医療安全対策といたしましては、まず各病院に専任のリスクマネジャーを置きまして、医療安全推進室を設置し、また本部には都立病院医療安全推進委員会を設置するなど、組織を整備いたしました。
 次に、インシデント・アクシデント・レポートの都立病院共通の様式を定めまして、職員に積極的な提出を促し、制度の定着とその活用を図りました。
 また、医療事故が起きやすい事項を中心にガイドラインを作成いたしまして、各病院では、そのガイドラインを踏まえたマニュアルを作成しております。さらに、知識習得や意識向上のためのさまざまな研修を実施しております。
 なお、院内感染対策といたしましては、各病院で感染予防対策委員会を定期的に開催するとともに、専任の感染管理看護師を中心といたしまして、感染に関するモニタリング、院内感染対策の指導、意識啓発活動等を実施してございます。

○佐藤委員 病院として組織、職員意識の向上、ふだんから医療安全に向けた業務の検証を日常業務に取り込んでいることがわかりました。
 今の答弁にありました医療安全推進室と医療安全推進委員会は、どのようなメンバーで構成され、どのような役割を果たしているのかお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 医療安全推進室でございますが、各病院の医療安全担当副院長をトップといたしまして、専任のリスクマネジャー、医事課長、看護科長、各部門のリスクマネジャー等がメンバーとなりまして、医療安全活動の企画立案、インシデント・アクシデント・リポートの分析、各部門への指導等の活動を行っております。
 また、都立病院医療安全推進委員会は本部に設置された委員会でございまして、病院長や看護部長に加えまして、医療安全に造詣の深い外部有識者などを交えた組織でございます。
 都立病院全体の医療安全対策に関し、さまざまな提言を行っております。

○佐藤委員 医療安全推進室において、あらゆる職種の職員で構成されていることは、複数の視点が確保されることにもなって大変有益であると考えますし、継続していただきたいと思います。
 そうした中で、医療安全推進室では、院内で医療安全に中核的に取り組む組織として位置づけられ、業務に取り組んでいるということですが、その中心的な役割、重責を担う専任リスクマネジャー、感染ナースは、どのような資質の職員が担っているのでしょうか。また、その人材育成にどのように取り組んでいるかお伺いをいたします。
 また、医師に対して対等に改善点を指摘することが責務となるわけですが、それを確実に実現するためにも確かな位置づけが必要と考えます。その位置づけはどうなっているのか。さらに、こうした責務を負っている以上、これに応じた手当が必要と考えられるわけですけれども、その予算計上、決算の支出が見られないところですが、その必要性についての所見を伺います。

○別宮サービス推進部長 専任リスクマネジャーにつきましては、看護協会等で所定の研修を受けた経験豊かな看護長を配置してございます。
 また、感染管理看護師につきましても、所定の研修を受け、感染管理や疫学の専門知識、技術を有する職員が担っております。
 人材育成の面では、感染管理など、十九の専門分野を対象に、毎年十名を超える認定看護師を計画的に養成しております。
 位置づけといたしましては、専任リスクマネジャーも感染管理看護師も院内の委員会の方針のもとに活動する形となっておりまして、院全体の安全管理や感染管理を指導できるような仕組みになっております。
 なお、医療安全や感染管理などは、病院全体の安全確保を図る上で重要な業務を遂行していることから、こうした業務に専任で当たる職員に今年度から日額二千七百円の特殊勤務手当が支給されております。

○佐藤委員 医療安全推進室が病院のリスクマネジメント部署として機能すべき環境を整えようとしていることがわかりました。このリスクマネジメント機関設置と並んで、医療安全対策の大きな柱として、先ほどお話しいただいたインシデント・アクシデント・レポート、ヒヤリ・ハット報告の作成については、各担当から報告を作成し、業務を見直すということ自体が、隠さない、ミスがあれば謝罪するという医療において最も重要な医療文化というのでしょうか、そうした姿勢を醸成し、個人レベルではなく、組織としての病院の姿勢を形づくることになるものと考えております。同時に、このリポートに基づいて調査、分析、改善策の立案が不可欠と考えます。
 平成二十一年度の提出状況、また、このインシデント・アクシデント・レポートをどのように活用しているかお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 平成二十一年度のインシデント・アクシデント・レポートは、都立病院全体で約二万件あります。豊島病院の公社化によります病床数減少の影響などによりまして、例年より若干減少しているものの、大きな変動は見られないところでございます。
 インシデント・アクシデント・レポートは、職員が業務に当たって、ひやりとしたり、はっとしたりした事例などにつきまして、ささいな事例でありましても報告書を作成するものでございます。その報告をもとに原因分析を行い、事故防止対策を実施しております。医療事故防止のための重要なツールであり、都立病院の職員の間にほぼ定着していると認識しております。
 各病院では、医療安全推進室におきまして、毎週、その詳細な分析を行いまして、院内の課題を抽出し、実態に応じた対策の立案、実施、検証を行っております。

○佐藤委員 こうしたインシデント・アクシデント・レポートの作成、分析、改善といった流れによって、院全体として、医師、看護師、コメディカルと、あらゆる医療従事者における提供する医療の質の向上、安全に対する意識の向上、そして、組織内における日常の引き継ぎを含めた密接な連絡体制を構築し、具体的な改善策を積み重ねていくことが不可欠と考えます。
 先ほど、対策の一つとして、マニュアルの作成、配布が挙げられました。マニュアルについてはどのような内容を作成しているのでしょうか。また、平成二十一年度改定に当たってはどういった点を改定したか、改めてお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 マニュアルについてでございますが、インシデント・アクシデント・レポートの分析に基づきまして、事例の多い処方、調剤、与薬における事故防止、また、転倒、転落防止対策、また、ライン類の抜去防止対策のほかに、医療事故が起きた際の対応など、八種類を作成しております。
 平成二十一年度には、注射器等の取扱基準、また、点滴ルートからの感染予防、また、都立病院におけるリスクマネジメントにつきまして、電子カルテの導入に伴う取扱変更や技術の進歩に伴います使用器具の変更内容を反映させまして、現在の病院現場の状況に即した内容に改定をいたしました。

○佐藤委員 時代の流れに応じて改定が行われていくことを評価いたします。
 こうした行動ガイドラインの見直し、マニュアルを作成した後には、周知、浸透させることが重要と考えます。実態として、職員一人一人の意識向上はもちろんのこと、医療事故が生じた際に、患者当事者、家族等と真摯に向き合うこと、緊急連絡、迅速に適切な処置等を職員一人一人ができることが求められていると考えます。
 そのために、こうした行動ガイドライン、マニュアルは、どのように行き渡らせ、浸透させているのでしょうか。その周知や安全に対する啓発に向けた研修に係る取り組みについてお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 病院内では、マニュアルを見やすくファイリングして身近な場所に配置しております。また、電子カルテの画面で確認できるようにするなど、周知について各病院で工夫を行っております。また、定期的に院内パトロールを実施するほか、講習会や講演会を実施いたしまして、医療安全対策の定着を図っております。
 一方、本部では、年四回の研修を開催しておりまして、専任リスクマネジャーや各部門の医療安全担当者約百名を対象に、知識の習得と意識の向上を図っております。
 また、平成二十一年度には、一泊二日で集中的に事例の要因分析などを行うワークショップ形式の研修を開始いたしまして、今後、拡充する方向で進めております。

○佐藤委員 研修で学び、意識を高めつつ、日常の現場でそれぞれ小さな改革を積み重ねていく中で、医療安全は少しずつ少しずつ形づくられていくものと思います。
 これまで病院として取り組んできた安全対策について答弁をいただきました。
 さて、現在、患者が病院の医療に関して質問したい場合、また、疑問や不安を感じた場合に、相談するための体制をどのように持って対応しているか、また、平成二十一年度の相談内容、内訳はどうなっているかお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 病院には、治療や薬について、また、支払いや転院などさまざまな相談を希望する患者さんやご家族がいらっしゃいます。そのため、各病院に患者の声相談窓口、看護相談室を設置いたしまして、事務や医療相談員、看護師など、相談内容に適した職種の職員が適切に対応しております。
 医療相談、看護相談につきましては、病院によって違いがございますが、五人から十人程度の職員を配置して、さまざまな相談に対応してございます。
 相談内容といたしましては、退院支援や療養上の問題に関する事項が最も多く、次いで経済問題となっております。合わせると約八割を占める内容となってございます。

○佐藤委員 今お話しいただきましたように、患者の声相談窓口、転院相談などが多いようですけれども、こうした患者窓口はさまざまな潜在的な機能を有する大切な窓口だと考えます。
 患者、家族が退院後の生活のほか、治療方針に不安を持ったり、何か思うことがあればいつでも相談窓口に来て話すことができる体制、日常的な病院に対する不安や不備を聞いて、これらに対応し改善することが必要と考えます。
 直接に主治医や看護師にいえればいいのかもしれませんけれども、忙しそうだから聞いては申しわけないとか、あるいは不満ととらえられて病院にいられなくなってしまうかもしれないというような患者には遠慮や気遣いがあることが実態であり、対話ができるチャンネルは多数存在することが有益だと思います。
 実際、平成二十一年四月から厚生労働省では、医療者と患者の対話をサポートする院内相談員の養成をし、各医療機関に設置するための補助金を申請のあった都道府県に交付する制度を始めています。
 確かに、院内相談員については、その養成においてコミュニケーションのスキルトレーニングに特化した場合に、病院の広報、逆にクレームをシャットアウトするだけの苦情係になってしまう可能性や、あるいは病院と患者、家族との板挟みになってつぶれてしまう可能性も指摘されています。しかし、今必要なのは、治療が医療者と患者の共同作業であるということに改めて立つことではないでしょうか。
 本日の答弁からも、この十年間、医療安全対策について真摯に取り組みを進められてきたことがよくわかりました。こうしたことを踏まえて、次の段階に進んでいただければと思っております。
 こうした指摘があります。患者被害者のストーリーは、どんなデータよりも強力です。被害者のストーリーをもとにして、再発防止、被害者、医療者双方の心のケアを考えていくべきです。
 アメリカの先駆的な病院では、さまざまな医療安全、アメリカでは患者安全と呼ぶそうですけれども、医療事故の被害者、当事者の支援プログラムが被害体験をもとにつくられているといいます。
 医療事故が起きた際に、結果的にお助けできず申しわけありませんでした、あるいはカルテ開示の説明でも最善を尽くしたとか、死因を聞いても、今行政解剖の結果がわからないので答えられないとか、対応のおくれについても認識していないとか、最初のそうした説明がなされないこととか、事務的であることが溝を深めていくことは周知のとおりです。
 また、これは指摘なんですけれども、調査を拒む雰囲気が残る医療機関を前にして、第三者専門機関や裁判所などの存在が必要なことは否定しないし、これはこれとして積極的につくり上げなければならない。しかし、それより前に、医療者から語られることが患者、家族のいやし、時には怒りにもなるのだとは思いますけれども、それになって、また、医療者にとっては、患者、家族に語り、謝罪することが医療者自身のいやしのプロセスを導くものと考えるという指摘があるところです。まずはこうした向き合う場、また、開かれた姿勢が求められていると思います。
 また、医療者側は、事実関係、事実経緯をとらえて、だから予防法はこうだと報告するだけという指摘もあります。事故があった可能性があるので、今調査委員会を立ち上げて調べていますと。ご家族にもお伺いしたいことがありますので、よろしくお願いしますといわれたら、気持ちの上でも随分安心できたと思いますというお話もあります。
 事実の把握一つとっても、双方で認識の食い違いがあるのが通常であり、だからこそ一方のいい分だけでは事実はつかめず、一方だけの事実に基づいた対策、対応策は不完全とも評価され、だからこそ再発防止や予防のためには、被害者、家族側のそうした声を病院側、医療スタッフが知ることが大変重要だと思います。
 また、さらに日本では、医療事故の被害者の心のケアを行うような機関が患者団体以外ないという状況が指摘されています。その当事者の環境や出会いに任せるだけでなく、心のケアをサポートするような体制づくりが必要と指摘されています。
 アメリカの先駆的な病院では、病院内のトラブルに対して、リスクマネジメント担当部署が二十四時間対応するホットラインがあって、その情報をもとに調査チームを立ち上げ対応するシステムを持っているとのことです。その調査チームには最初からセラピストも加わっているため、被害者、医療者の心のケアは主にその人が専門的に行うと。第三者のカウンセラーなどとかではなくて、医療者側の対応チームに心のケアを行う人が入っているところが重要なところと考えます。
 日本では、こういったシステムがまだ構築されていません。安全対策担当者なり、院内相談員なりがその役目をある程度受け持たざるを得ないかもしれませんが、患者の心情に配慮するというのを超えて、患者の視点を反映していくこと、そして、心のケアそのものを確かに位置づけて、これから取り組んでいただくことが必要だと考えます。
 そうした患者の声が循環する枠組みづくりを提言申し上げまして、次に、医療の質の向上を補完するITの活用という視点での質問に移りたいと思います。
 医療の質の向上は、一人一人の医療従事者の高い意識に支えられることは大前提ですが、ITはそれを支援するものと位置づけられます。
 ことしの五月に、厚生委員会の管外視察で訪問した秋田大学医学部附属病院では、電子タグを活用したベッドサイド安全管理システムを開発し、二〇〇四年十一月から導入しています。
 このシステムでは、患者のリストバンドと注射ボトル、看護師のネームカードに張りつけた電子タグラベルを読み取って、無線LANを介して病院情報システム、電子カルテシステムに送信をして、薬剤の取り違え事故を未然に防いでいるものでした。
 この病院で医療機関が抱える課題として四点。医療事故、医療過誤を防ぐ安全な医療の遂行。情報を開示し、説明責任を果たすための証拠記録を残す。三番目、病院の経営状況を把握して健全な経営を維持すること。四番目、多忙をきわめる医師、看護師など、医療スタッフの過重労働の軽減を挙げました。
 医療事故を防いだりする安全な医療の遂行や、記録を残していくことについてはダブルチェックなど、詳細な記録を残すことなど、スタッフの負荷が増すことになるわけですけれども、課題解決と過重労働の軽減ということを解決する手段として、電子タグがあったとのことでした。
 そこで、都立病院の導入している電子カルテシステム、新病院情報システムの医療安全への活用についてお伺いしてまいります。
 まず、コストに関してですが、平成二十一年度、電子カルテ関係経費についてどうなっているかお伺いいたします。

○別宮サービス推進部長 多摩総合医療センターと小児総合医療センター、また、神経病院の三病院への新しい電子カルテシステム導入経費が約七億円、また、全病院のシステム運用、保守等の経費が約二十億円となってございます。

○佐藤委員 次に、電子カルテシステムを導入した趣旨及び導入状況についてお伺いいたします。あわせて、患者認証機能がどうなっているかもお答えをお願いいたします。

○別宮サービス推進部長 電子カルテシステムを導入した趣旨は、医師の所見や検査結果など、医療活動に伴うさまざまな診療情報を正確かつ迅速に処理しながら、円滑に診療を行うことによりまして、安心と信頼に基づいた患者中心の医療を提供することにございます。
 医師や看護師だけでなく、薬剤科など、院内の関連部門におきましても、同時に最新の患者情報を閲覧することができることから、適時に患者情報の共有化が可能となりまして、これまで以上にチーム医療の推進が図られました。
 平成十五年度の府中病院への導入を皮切りといたしまして、平成二十一年度までに七病院に順次導入してまいりました。まだ導入していない松沢病院につきましては、施設整備事業の進捗に合わせまして、新館を開設する平成二十三年度に導入を予定してございます。
 また、電子カルテシステムの患者認証機能につきましては、現在導入しているシステムの基本機能として、バーコードを利用した患者認証の機能が組み込まれております。

○佐藤委員 今お話をいただきました患者認証機能の運用状況と課題についてお伺いをいたします。

○別宮サービス推進部長 都立病院のシステムでは、患者さんのリストバンドと輸血や抗がん剤などの注射用の薬剤ラベルなどにバーコードを印刷いたしまして、投与時に両方を読み取って照合することにより、投与ミスを防止する機能を実現しております。
 バーコードによる認証方式は、比較的低コストで導入、運用できる反面、読み取り機をバーコードに正確に当てて読み取る必要がございまして、その動作に時間を要するという課題がございます。

○佐藤委員 今、お答えをいただきましたように、リストバンドで照合する仕組みがあるところですが、読み取りに課題があるということです。
 電子タグは、接触しなくても、また、見えなくても読み取りが可能で、布団に隠れたリストバンドや汚れた注射ラベルの読み取りも可能になるほか、複数の電子タグを同時に読み取ることが可能な機能を持っております。また、その注射認証行為に係る時間につきましては、バーコードでの読み取りの半分となっている報告があります。
 さらに電子タグでは、業務フローの中で自動認証ができて、業務負担の減少と読み忘れリスクも回避できるという利点があるところです。
 同時に、この電子タグの導入前後で、病院内の薬剤関連のインシデント件数については、三カ月平均で三百六十九・五件から二百四十五件と、有意に減少した効果が報告されており、また、看護師アンケートでも、インシデントの抑止効果、注射における安心感のほか、注射実施入力の効率化の点からも好評で、業務効率性と安全性を両立させるシステムと評価されているところです。
 来年度、二十三年度、この電子カルテシステムを残り一病院に購入することを予定しているところですが、患者認証機能にこうした課題があるところ、こうした構造でいいか検討を進めていくことも必要ではないかと思います。
 業務フローの中で認証ができるかどうか、現場で活用されるかどうかが分岐点になると思います。だからこそ、こうした課題解決について、市販のパッケージをこのシステムは導入しているということですけれども、現場の使用状況から上がってくる改善点をシステム会社に伝えて、技術開発を要望していったりとか、今回視察をした電子タグなど、あらゆる手法を調査して、一歩でも課題解決に向けた検討を不断に進めていくことが求められていると思いますし、要望したいと思います。
 秋田の病院では、もちろんそのシステムではバーコードも使えるわけですけれども、電子タグも使える状況にしています。導入の際、確かに入浴などでぬれてもはがれない衛生的なバンドの開発とか、電子タグは電波で読み取る構造になっておりますが、その電波による誤動作のリスクを回避するために、電波が届く距離について周波帯とかを選定したりした上で導入して、二〇〇四年からですから、もう六年ぐらいの実績があるところだと思います。
 どうか病院経営本部においても、不断にそうした調査を行って、各技術とかシステムはそれぞれに長所と短所があるとは思いますけれども、現場で抱えている課題の解決、業務の課題に対して解決をしていくために、例えばバーコードの認証よりも電子タグが優位になるようなときには、都立病院ではバーコードがパッケージで組み込まれているからということで採用を見送るのではなくて、医療安全の向上の観点から、導入なども検討していただきたいと思います。
 さらに、電子タグに関しては、一つの動作で薬剤の照合を記録、経営面といった複数の機能を有していて、医療スタッフの過重労働の軽減という機能も有しているところです。
 都立病院においても、ITの機能について、病院内の情報共有からシステムの導入が始まっていると思いますけれども、安全な医療の遂行、情報の開示、説明責任を果たすための記録、あるいは医療スタッフの過重労働の削減など、医療の質の向上に向けたITの活用を改めて明確に意識の上、さらなる可能性について幅広く検討していただきたいと思います。
 以上、要望して私からの質問を終わります。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後三時十六分散会

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