平成二十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第四号

平成二十一年十月二十三日(金曜日)
第二委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十一名
委員長橘  正剛君
副委員長山加 朱美君
副委員長林田  武君
副委員長松下 玲子君
加藤 雅之君
笹本ひさし君
かち佳代子君
三宅 茂樹君
斉藤あつし君
くまき美奈子君
大津 浩子君

 欠席委員 なし

 出席説明員
都市整備局局長技監理事兼務河島  均君
次長岳野 尚代君
技監升 貴三男君
理事加藤 英夫君
総務部長石野 利幸君
都市づくり政策部長安井 順一君
住宅政策推進部長紺野 秀之君
都市基盤部長外かく環状道路担当部長兼務座間  充君
市街地整備部長遠藤 正宏君
市街地建築部長瀧本 裕之君
都営住宅経営部長清水 文夫君
企画担当部長横溝 良一君
民間開発担当部長石川  進君
多摩ニュータウン事業担当部長小澤  弘君
病院経営本部本部長中井 敬三君
経営企画部長黒田 祥之君
サービス推進部長牛島 和美君
経営戦略・再編整備担当部長斎藤 真人君

本日の会議に付した事件
 平成二十年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成二十年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)
病院経営本部関係
・平成二十年度東京都病院会計決算(質疑)

○橘委員長 ただいまから平成二十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市整備局及び病院経営本部関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○石野総務部長 十月九日の当分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます当局の平成二十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会資料の表紙をおめくりいただきまして、目次をごらんください。
 資料は、1の再開発事業三地区のこれまでの進捗状況と今後の予定外二件でございます。
 それでは、まず一ページをお開き願います。1の再開発事業三地区のこれまでの進捗状況と今後の予定でございます。
 北新宿地区、環二地区、大橋地区の三地区につきまして、平成二十年度までの事業費、用地取得面積と今後の予定などを記載してございます。
 次に、二ページをお開き願います。2の従前居住者などの生活再建の状況でございます。
 地区ごとの権利者数につきまして、入居者数及び転出者数を記載してございます。
 三ページをごらんください。3の大橋地区一-一棟特定建築者の公募の経緯でございます。
 特定建築者の選定方法及び敷地価格に関する条件と公募結果を記載してございます。
 以上で資料説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○橘委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○斉藤委員 それでは、都市整備局に対して、今回は三つの事業の中から環状第二号線の新橋・虎ノ門地区の再開発事業及び道路事業に関して若干伺います。
 こちらの場所につきましては、こちらの場所に限らず、今回東京都が事業者となっているわけですけれども、事業者は、都がなっても、民間がやっても、やはり周辺住民に対して公平に、迅速に必要な情報を伝えていくということが非常に大事でございます。これは事業者と地域の方々との信頼関係とか、その地域の方々、地権者間の信頼関係を維持する上でも非常に重要だと思います。
 今回、資料の中では、権利者だけでも九百四十二の権利者がいらっしゃるというふうに書いてありますけれども、こういったことに関して、民主党の地元の大塚議員も大変気にしておりました。特に道路拡張の時期など、沿道地域を含めたまちづくりを円滑に進めるためには関係住民への的確な情報の提供や広報が重要であるというふうに思うわけであります。
 そこで東京都は、この再開発事業、環状二号線の新橋・虎ノ門地区の再開発事業及び道路事業に関して、その進捗状況等の周辺住民への周知をどのように行っているのか、詳しくお聞かせください。

○遠藤市街地整備部長 環状二号線新橋・虎ノ門地区の再開発事業では、さまざまな媒体によりまして住民の方々への広報に努めてまいりました。
 まず、環状第二号線まちづくりだよりを約三千部、二カ月から三カ月に一回の割合で発行いたしまして、地区内の権利者の方々に約四百部、周辺の住民の方に二千六百部を個別に郵送してございます。これまでの発行回数は七十四号を数えております。
 また、事業進捗に合わせましてパンフレットを作成しておりまして、事業説明会において配布いたしますとともに、インターネットのホームページに掲載いたしまして、だれでも閲覧ができるような工夫を行ってまいりました。これらに加えまして、現地の環二地区事務所におきましては、問い合わせや相談に随時応じてきたところでございます。
 再開発事業は最盛期を迎えておりまして、また、沿道のまちづくりについて地元の機運も高まってきておりますことから、さらなるきめ細かな情報提供に努めてまいります。

○斉藤委員 広報誌などを出したり、郵送という少し丁寧な方法をとっていただいているというのは、非常に努力をされているというふうに評価できるかなと思っております。
 こういった広報に関していえば、民間のディベロッパーとかゼネコンなんかがやっていると多少うがった見方があるんですが、それが今回は東京都がやっているというふうになると、住民の方々も、東京都が事業として今回やっていますが、私どもから見ても、なかなかその事業と、東京都という官庁、地方自治体の一般的にやっていることとの区別、その違いは、今回は事業でかかわっているんですよというのが、理解するのが一般の方から見れば非常に難しいと思うんですね。
 そうすると、過剰な期待も時にはあるでしょう。過剰に、ここまでやってくれとか、ここまで情報を出してくれとか、決まっていることならともかく、決まってないことまで聞かれても答えづらいという部分があるかと思います。この部分については、よく東京都の立場を理解いただいて、今後も続けていただきたいと思います。
 そういった中で、まちづくりに関してもいろいろご希望が出てくるとは思うんですが、このあたりのまちづくりが順調に進んでいるかもぜひ伺いたいと思います。
 特にこの場所については、水と緑を残したまちづくりというのが望まれているわけでありますけれども、特にこちらの、いただいたパンフレットなんかを見ると、赤穂藩主の浅野内匠頭が切腹した地だということで、ちょっとコラムが、簡単な説明が載っておりますけれども、歴史ある旧武家屋敷の地域でありますから、それぞれ住んでいらっしゃる方も古くからの方が多くて、それはそれで、それぞれ地域、地域によって住民の思いというのは大変深いものがあって、その部分は、単純に何もないところを開発するのとは違って、いろいろ調整があるかと思います。
 この再開発事業を契機とした地域のまちづくりを円滑に進めていくためには、再開発の事業区域内の関係者との連携や、その関係者間の相互理解について十分配慮する必要があると思います。そのゆえに、先ほどの広報の重要性というのがあるんですが、そこで、環状二号線の沿道のまちづくりにかかわる再開発区域内の権利者と、その区域内でなくて、沿道地域の関係住民との連携の状況についてはどのようになっているか、確認をしたいと思います。

○遠藤市街地整備部長 新橋・虎ノ門地区の環状二号線は、再開発事業により整備を行っております。この道路の整備効果をより高め、地域に活力とにぎわいを創出するためには、地上部道路の整備にあわせまして、沿道のまちづくりを一体的に進める必要がある、このように認識してございます。
 地上部道路につきましては、都は平成十八年から環状二号線地上部道路計画検討会を設置いたしまして、整備のあり方につきまして、地区内の地権者、あるいは地元の町会の方々と意見交換を行ってまいりました。
 一方、地元におきましても、この沿道まちづくりの重要性が認識されておりまして、沿道の地権者によりまして、まちづくり協議会が昨年設置されております。また、ことしの七月には、地元の港区によりまして環状二号線周辺まちづくり勉強会が発足しておりまして、東京都もこれに参画しております。都といたしましては、これらの協議会や勉強会の動向を踏まえまして、環状二号線の地上部道路と調和し、活力やにぎわいを目指した地元のまちづくりを積極的に支援してまいります。

○斉藤委員 ありがとうございます。
 一言、ちょっと申し述べさせていただきますけれども、この地域の皆さんが、それぞれ歴史を持った思いがあるということが、今ちょっと伺った中で、三段階に分けて勉強会をされている、順次、十八年から二十一年まで三つの、対象者の組み合わせが少しずつ違って、勉強会、協議会をされているということで、そういう点では、そういった地域の方の思いというもの、その思いを持った住民がたくさんいるということのあらわれなのかなというふうに思います。
 こういった、地域と連携をしてやっていくという部分で、いい成果が上がれば、こういった手法に関しても今後の事業に生かしていただきたいと思いますし、東京都の立場について正しく理解をいただいた中で、適切に、住民の方の意向をうまくまちづくりに生かせるよう頑張っていただきたいと思います。
 以上で質問を終わります。

○林田委員 大橋地区と環二地区の再開発事業について何点かお伺いいたします。
 私は、都庁へ来るとき、中央道と首都高速四号線を利用しております。中央道では、圏央道が関越から八王子ジャンクションまで開通し、随分渋滞が緩和され、さらに、一昨年十二月に中央環状新宿線の池袋新宿線が開通し、四号線の方も渋滞が減りました。実感として感じております。
 今後、大橋まで開通するということで、さらなる時間短縮や利便性の向上が期待されるところであります。大橋ジャンクションについては、首都高速道路と再開発が一体となった事業として取り組まれ、予定どおり三月に開通すると聞いております。
 そこで、大橋地区の再開発事業は、現在どのような進捗状況になっているのか、お伺いいたします。

○遠藤市街地整備部長 大橋地区の再開発事業でございますが、首都東京の交通渋滞の緩和のために建設されます首都高速道路中央環状線大橋ジャンクションの整備と一体となって都が実施している市街地整備事業でございます。
 再開発事業によりまして、地区内で生活再建を希望している多くの権利者の要望にこたえるとともに、ジャンクションの早期整備促進が図られるものでございます。
 この事業では、地区内の権利者が入居する二棟の再開発ビルを計画しておりまして、事業費の縮減や民間のノウハウを活用できる特定建築者制度を導入いたしまして整備を進めております。
 このうち、一-二棟につきましては、住宅主体の複合ビルでございまして、平成十八年八月に特定建築者を決定いたしまして、本年の四月に建築工事が完成しております。既に五十人の権利者の方が入居を完了しておりまして、現在、保留床の分譲が行われております。
 また、一-一棟は住宅、店舗、業務などの複合ビルでありまして、本年六月に特定建築者を決定しております。
 現在、特定建築者におきまして実施設計が行われておりまして、来年三月に着工、二十四年十二月の完成を予定してございます。この再開発ビルには権利者四十三人の方が入居を予定してございます。

○林田委員 この再開発事業ですが、地区内の権利者の合意を得て事業着手しているとのことで、早期に再開発ビルを完成させ、権利者の生活再建を図っていくことが重要だと考えます。
 権利者が入居する二棟の再開発ビルの中、一-二棟については既に完成し、ただいま五十人が入居済みであるというお話を伺いました。
 そして、一方の一-一棟の特定建築者については、聞くところによりますと、三回の公募を経て決定したとのことであります。
 特定建築者は、総合評価方式により、計画、企画提案と敷地価格の両面から審査して選定するものと聞いておりますけれども、一回目、二回目の公募でも応募者がなかったため、三回目では価格を設定せずに公募したとのことであります。
 昨年の秋、百年に一回という金融危機、リーマンショック以降、不動産市場の急激な悪化という状況の中で、特定建築者の公募に困難をきわめたということだと思います。
 なぜこのような厳しい経済状況のもとで、一-一棟の特定建築者を募集し、選定することにしたのか、お伺いたします。

○遠藤市街地整備部長 大橋地区の一-一棟に入居する権利者の方は、ジャンクションを早期整備するために、住みなれた家を離れまして、地区外に仮移転しております。その協力にこたえるためにも、早期に生活再建を図る必要があると考えております。
 仮移転している権利者の中には高齢者が多く、再開発ビルを一日も早く完成させ、不安定な生活を早期に解消してほしい、このような要望を強く受けてまいりました。
 また、経済の先行きが不透明で、景気が好転するとも限らず、またその期間も見通せない中で事業を中断することは、権利者の不安を増幅させるだけでなく、仮住居補償などで年間約五億円もの追加の費用が発生いたします。
 こうした状況から、再開発ビルの着工をおくらせることはできないと判断いたしまして、三回目の特定建築者の公募に踏み切ったものございます。
 なお、三回目の公募につきましては、民間事業者が市況を踏まえたみずからの経営判断に基づいて応募することが可能になることや、競争性の発揮も期待できると考えまして、予定価格は設定しないことといたしております。

○林田委員 ジャンクションの整備に協力された権利者の方々の生活再建を早期に図ることなど、ご説明をいただきました。
 三回目の募集の結果、応募があった一グループの敷地価格の提案は十九億であったということであります。
 考え方はいろいろあるかと思いますが、仮に不動産市場の回復を待って改めて募集するとなると、権利者の生活再建がおくれ、仮住居補償などの負担がふえ、それは事業収支に悪影響を及ぼすことが想定されます。当時の東京都の判断はやむを得ないものであったのかなと私も思います。
 景気の方もここへ来て厳しい経済環境から少しずつ脱しつつある、不動産市場も少しずつ回復の兆しが見えてきたとの報道もあります。二十二日の読売新聞にも経済が少しずつ回復しているという報道がありました。
 そこで、十九億円で契約した理由はわかりましたが、今後の不動産市場の動向に応じた何らかの対策はないものか、また対策を講じる必要があるのではないかと思いますが、どうですか。

○遠藤市街地整備部長 特定建築者は、建築計画などの計画、企画提案の内容と、敷地価格の提案額を総合的に評価して選定してきております。今回の一-一棟の特定建築者につきましても、この方法により選定を行っております。
 応募者が提案した敷地価格が厳しい不動産市況を反映した価格であると推測されましたことから、都は特定建築者との契約に臨むに当たりまして、今後、市況が回復した場合に敷地価格を増額変更することを求めまして、特定建築者と合意し、協定を締結しております。
 今後も市況の動向を見きわめながら、特定建築者との協議を継続するとともに、さらなる事業コストの縮減や新たな収入の確保に努めてまいります。

○林田委員 この事業は、権利者があって、権利者の理解なしでは進められないのは当然のことであります。
 既に平成十七年三月の事業計画決定から四年半が経過しております。アメリカ発リーマンショックという予想外のことが起こったにせよ、権利者の生活再建を最優先に事業を進めるべきであると思います。引き続き平成二十四年度の完成に向けて着実に事業の推進をお願いいたします。
 次に、環二地区の再開発事業について質問いたします。
 環状二号線は都心と臨海部とを結ぶ重要な幹線道路であります。同時に、東京都では環境軸に位置づけて、豊かな緑の創出にも取り組んでおります。東京の都市再生を図る上でも極めて重要であると考えます。
 このうち、新橋-虎ノ門間については、立体道路制度を活用した東京都施行の市街地再開発事業によって整備が進められております。
 この立体道路制度を活用した再開発事業とすることで、道路の整備とまちづくりが一体に行われることから、事業化が一気に促進されたと聞いております。
 そして、この再開発事業は権利者が入居する三棟の再開発ビルが計画され、順調に工事の方も進んでいるとのことであります。
 そこでまず、青年館街区、新橋街区の整備状況についてお伺いいたします。

○遠藤市街地整備部長 まず、青年館街区でございますが、住宅と港区の高齢者福祉施設から成ります当地区最初の再開発ビルでございます。
 平成十六年十月に特定建築者を決定いたしまして、翌年三月から特定建築者によりまして建築工事が行われ、十九年四月に完成しております。
 次に、新橋街区でございますが、新橋街区につきましては、住宅、事務所、店舗から成る複合ビルでございます。十九年十月に特定建築者を決定しておりまして、二十年七月から建築工事が開始され、二十二年秋の完成を目指して現在工事が進められているところでございます。

○林田委員 残る虎ノ門街区については、立体道路制度を活用した道路と一体となった建築物で、国際交流機能としてのホテルやカンファレンスも導入した地域のシンボルとなる超高層ビルとして計画していて、この虎ノ門街区についても既に特定建築者が選定されたと聞いておりますが、そこで、虎ノ門街区の特定建築者の選定の経緯と今後の工事の見通しについて伺います。

○遠藤市街地整備部長 今、副委員長からもお話がございましたように、虎ノ門街区はこの地区のシンボルとなる超高層の再開発ビルを計画してございます。
 この街区につきましても、特定建築者制度を活用して整備することといたしておりまして、本年四月に公募を開始いたしました。
 募集の結果、一者の応募がございまして、建築計画等に関する計画、企画提案の内容と敷地価格の提案額を総合的に評価いたしまして、本年六月に特定建築者を選定しております。敷地価格は三百七十億円でございます。
 現在、特定建築者によって既存建物の解体工事と実施設計が行われておりまして、来年秋に建築工事に着手、二十六年度の完成を予定しております。

○林田委員 これまでに何年も要したこの事業は、地権者との合意を得て、ようやくここまでまいりました。恐らく地元では早期完成を望んでいると思っております。ぜひとも平成二十六年には予定どおり建物を完成させてほしいと思っております。
 一方で、環状二号線は、東京の道路ネットワークの強化を図るとともに、環境軸にも位置づけられている大変重要な道路であります。
 地元では、特に地上部道路の整備計画については、東京の新たな顔として魅力あふれる道路空間が創出されることへの期待とともに、道路整備を一つの契機としたまちづくりの機運が高まっていると伺っております。
 そこで、地上部道路を含めた環状二号線の整備に向けた今後の取り組みについてお伺いいたします。

○遠藤市街地整備部長 新橋・虎ノ門地区の環状二号線は、主に通過交通を担う地下のトンネル部分と地上部道路から成る二層構造の計画となっております。このうち地下トンネル部分につきましては、建設局によって工事が進められております。
 一方、地上部の道路につきましては、「十年後の東京」計画におきまして、グリーンロードネットワークを形成する道路と位置づけられたことを踏まえまして、幅員四十メーターの空間を生かし、環境軸にふさわしい厚みのある緑を創出するとともに、ユニバーサルデザインにも配慮しながら、だれもがゆとりとにぎわいを実感できる道路として整備していく考えでございます。
 検討に当たりまして、都は地区内の地権者だけではなく、地元区、あるいは沿道の町会などを交えました環状二号線地上部道路計画検討会を平成十八年度から設置して意見交換を重ねてきております。
 今後も地元の意見を十分聞きながら、平成二十五年度の完成を目指して全力で取り組んでまいります。

○林田委員 最後に要望させていただきますが、この事業は我が党の地元港区のきたしろ議員が提唱されている水と緑の都ガーデンシティー東京の実現にも寄与するものであると思います。地元の期待も大きいと聞いておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 今後とも十分に地元の声を聞きながらこの事業を着実に推進されることを要望して、質問を終わります。

○加藤委員 私からも大橋地区の再開発事業について少し質問をさせていただきます。
 三環状の一つであります中央環状新宿線、これは東京の渋滞解消を図る上で重要で、特にこの大橋ジャンクションは、新宿線と高速三号線を結ぶ極めて重要な施設であります。
 大橋地区再開発事業は、ジャンクションの建設にあわせて、周辺も含めた一体的なまちづくりを行っており、東京都と首都高速道路株式会社による道路事業共同型再開発事業という、ほかには例を見ない事業として進められております。
 しかし、昨年のリーマンショックを契機として、百年に一度といわれるほどの経済危機のもと、不動産市況の悪化により、再開発事業にとっては非常に厳しい状況に置かれていると思われます。
 このような状況にあっても、公共事業としての重要性が極めて高い本再開発事業については、立ちどまることなく進めていくことが重要であると私は考えます。
 そこで、ジャンクションの建設と一体的に再開発事業を実施することの効果について、まずお伺いします。

○遠藤市街地整備部長 大橋ジャンクションは、地下構造の中央環状線と高架構造の高速三号線を連絡する重要かつ特殊な構造の施設でございます。
 このため、通常のジャンクションと比べまして規模が大きく、二・四ヘクタールもの用地の取得を必要としております。
 一方、この地区の権利者の方の多くは地区内での生活再建を要望されてまいりました。このため都は、ジャンクションの整備と再開発事業を一体的に行うことを地元に提案しまして、その結果、権利者との合意形成が円滑に進みまして、ジャンクションの早期整備が可能となったというものでございます。
 また、ジャンクション整備と再開発事業を一体的に行うことによりまして、ジャンクションの上部や再開発ビルの中に地元区が要望いたします屋上公園や多目的広場の整備、また図書館など、地域の公益施設の設置が可能となったものでございます。
 加えまして、周辺にはオープンスペースが確保されまして、地域全体の住環境の改善にも貢献するものと考えております。

○加藤委員 今、答弁の中で、ジャンクションが整備されても、権利者が当該地域で生活を継続できるということは特に大事なことだと思います。地域に残りたいという人たちの希望にこたえることができ、そのことによりジャンクションの早期整備が可能となったことに、この再開発事業の大きな効果があるということを理解しております。
 聞くところによると、今後建築が予定されている一-一棟に入居を希望している権利者の方々は、既に地区外へ仮移転されているとのことでありますけれども、そのような方々は一日も早い再開発ビルの完成と新たな生活の開始を待ち望んでいるはずであります。
 私が特に気になるのは、その中でも高齢な方々の生活再建です。この地域では高齢者の権利者も多いというふうに聞いております。
 そこで、一-一棟に入居を予定している権利者、先ほど遠藤市街地整備部長の方から四十三名というお答えもありましたけれども、そのうち六十歳以上の高齢者はどれぐらいいるのか、お伺いいたします。

○遠藤市街地整備部長 一-一棟の入居予定者四十三人でございますが、このうち法人を除きました四十人のうち二十三人が六十歳以上となっておりまして、高齢者の方の占める割合は六割となってございます。

○加藤委員 高齢者の割合が非常に高いということでありますけれども、このジャンクションの建設に協力して仮移転をしている方、その中でも高齢者のことを考えれば、一日でも早い再開発ビルの完成を目指すことが大切です。
 昨年来の危機的な経済環境の中、一-一棟の特定建築者の募集を行いましたけれども、二度にわたって応募がなく、大変厳しい状況であったとお聞きしました。それは今回の資料にも出ておりますし、先ほどもやりとりがあったところでありますけれども、特に高齢者の方々が新しい再開発ビルでの--要するに事業を推進する上で、まずは事業に協力してきた権利者の生活再建、これを最優先に考えるべきであると思います。
 そして、特に高齢者の方々が新しい再開発ビルでの生活を少しでも早く始められることが重要です。その意味で、いつ一-一棟に入居できるか、気になるところですので伺いますが、一-一棟の入居までのスケジュール、これはどうなっていますか。

○遠藤市街地整備部長 一-一棟につきましては、事業に協力してきた権利者から、早期着工と早期生活再建に強い要望がございます。都としてもそれにこたえる必要があると判断いたしまして、三回目の公募に踏み切ったわけでございます。
 本年六月に特定建築者を決定し、現在、特定建築者によって実施設計が行われております。来年三月に着工いたしまして、二十四年十二月に完成する予定でございます。権利者の入居につきましては二十五年一月を予定しております。
 引き続き地元区からの要望、周辺を含めた地域の活性化にも十分配慮しながら、この事業を着実に推進してまいります。

○加藤委員 安全に十分注意しながら、スピーディーな整備をお願いしたいと思います。
 大橋地区再開発事業は、ジャンクションと一体となったこれまでに例のないまちづくりを行っており、高齢者が多いこの地域にとって、住宅のバリアフリー化、あるいは公園、広場の整備による憩いの場の提供など、さまざまな効果もあると思います。また、イベントなどができる多目的広場も整備されると聞いており、地域の活性化にも寄与する事業であることから、地元も早期の完成を望んでいます。
 まだまだ厳しい経済環境にありますけれども、早期に権利者の生活再建が図られるよう、ぜひ着実な事業推進をお願いしまして、私の質問を終わります。

○かち委員 私からも大橋地区の再開発計画を中心にお聞きします。重複するところは避けたいと思います。
 東京都が市況の景気に影響されやすい不動産業のような事業である都施行による再開発事業に参入すべきではないと、日本共産党は一貫して反対してきているものですが、都は三環状道路や幹線道路の促進の中で、三つの再開発を公営企業会計のもとで推進してきました。今回、大橋地区再開発でその破綻的状況が象徴的にあらわれているのではないでしょうか。
 東京都が施行する第二種再開発事業の意義については、先ほどご答弁がありました。道路整備と再開発の一体的な整備だと、従前居住者が住み続けられるまちづくりだというご説明がありましたけれども、大橋地区の開発は、当初は中央環状新宿線と首都高三号線を結ぶジャンクションの計画で、地下ループで接続するということを聞いていましたけれども、その後、品川線構想が浮上し、その接続のためにジャンクションを二重ループにするという大変大がかりなものとなりました。
 そこで、民間の力も取り入れて、限られた用地を活用し、立体道路制度、あるいは特建者制度など、さまざまな規制緩和を駆使して、民間ディベロッパーにとっては魅力的と思える再開発計画を地域住民も巻き込みながら進めてきたのが今日の状況ではないでしょうか。
 この特建者公募の計画の中で、資料に出していただきましたが、一次と二次は応募がなかったということですけれども、途中辞退などという状況はなかったのか。また、この事業の採算ラインというものは幾らなのでしょうか。

○遠藤市街地整備部長 一回目の公募におきましては、三グループ六者から参加の表明がありましたけれども、応募には至っておりませんでした。二回目の公募では三グループ六者から参加の表明がございましたが、応募には至りませんでした。
 事業収支を勘案した敷地譲渡価格は七十九億円と推計しておりました。

○かち委員 当初の百九十億円が高過ぎたのかどうか、公募の意思はあっても、なかなかそこまで至らなかったという状況だったと思いますが、収支は七十九億円、これ以下であれば不採算になるということだったと思います。
 第三回目の公募では、予定価格設定なしということですけれども、都民の財産ということで考えるならば、その半分でもなぜつけられなかったのか、そして、このときの応募は落札者一者だったのかどうか、その背景もお聞きします。

○遠藤市街地整備部長 三回目の特定建築者の公募では、民間事業者が市況を踏まえたみずからの経営判断に基づいて応募することが可能となることや、競争性の発揮も期待できる、このように考えまして予定価格を設定しなかったものであります。
 三回目の公募におきましては、二グループ五者から参加の表明がありましたが、応募がありましたのは一グループ四者でございました。
 それと、敷地譲渡契約に関してでございますけれども、契約に当たりまして、応募者の提案した敷地価格が、厳しい不動産市況を反映した価格であると、このように推測されましたことから、特定建築者と不動産市況が回復した場合の敷地譲渡価格の増額変更を求めまして、合意いたしまして、協定を締結しております。

○かち委員 三回目の公募では、二グループ五者が話を聞きに来たということですけれども、敷地価格はこちらは設定していないわけですから、向こうとしては自由につけられたと思うんですけれども、そこでは競争原理は働かなかったのでしょうか。そこで、競争の結果、今の一者に残ったということですか。

○遠藤市街地整備部長 参加の表明がありましたのは二グループでございます。応募したグループから敷地価格の提案を受けておりますので、敷地価格の提案があったのは一者ということになります。一グループということになります。

○かち委員 予定価格を設定しなくても一者しか応募できないという、この事業の魅力は一体どこにあったのかと思われるわけですけれども、では、大橋地区のこれまでの事業全体の事業協力者というものがいたと思うんですけれども、それはどこなのか。一と二とそれぞれあったと思いますので、それをお聞きしたいのと、今回落札した一-一棟の特定建築者はどこだったんでしょうか。

○遠藤市街地整備部長 大橋地区の事業協力者は二グループございます。一つは、三井不動産レジデンシャル株式会社と株式会社大林組のグループ。もう一つは、東急不動産株式会社、東京急行電鉄株式会社、有楽土地株式会社、株式会社東急コミュニティー、大成建設株式会社のグループでございます。
 一-一棟の特定建築者は、東急不動産株式会社、東京急行電鉄株式会社、三井不動産レジデンシャル株式会社、有楽土地株式会社のグループでございます。

○かち委員 事業協力者も一と二の特定建築者も、いずれも名立たるゼネコンが名前を連ねておりますけれども、グループ的にいえば、三井不動産グループと東急グループで計画、協力から建築まで行うというのがこの実態だというふうに思います。既に、まさに大橋地区は東急と三井の独占的開発事業ということになっている状況です。
 そして、問題なのは、一-一の建設費用の売却が、一回目が百四十九億円の予定価格で応募なし、二回目はその半額でも応募なし、とうとう三回目。まるで何かのたたき売りのような状況です。
 都が予定価格を出せない状況のまま、こうした大手ゼネコンによって十九億円という低価格の落札をするというのは前代未聞の事態だと思います。当初、予定の落札時から既に九カ月が経過した中で、これ以上長引かせるわけにはいかないという、まさに都の足元を見られた落着の結果ではなかったでしょうか。
 地権者に対する仮移転などの補償は毎月四千万円と聞いておりますので、九カ月で三億六千万円の超過経費がかかっているんです。しかし、十九億円というのは、できたビルが、保留床が四百四十三戸ありますけれども、それがたとえ半分しか売れないとか、そういう状況になったとしても、ゼネコンが損をするような設定ではないという価格設定だったというふうに思います。
 一-一棟の特定建築者、公募結果が十九億円でしたけれども、採算ラインが七十九億円ということでは六十億円の欠損が生じるわけですけれども、この穴埋めはどのようにされていくのでしょうか。

○遠藤市街地整備部長 収支上、欠損が生ずるかどうかにつきましては、今の段階では不確定な要素が多く、お答えはできないと考えております。

○かち委員 欠損が生じるかどうかは、二十四年、完成時になってみなければわからないというのもありますけれども、本当にその時点でも全く不透明で、先行きが見えない状況かもしれない。こういうリスクの高いことに都民の税金をつぎ込むということがそもそも問題ではないんでしょうか。
 もう一度確認しますけれども、この六十億円を、落札事業者との関係では、どういうことをしていくという約束をされているのか、もう一度明確にお答えください。

○遠藤市街地整備部長 特定建築者との契約に当たりまして、都は、応募者の提案した敷地価格が、厳しい不動産市況を反映した価格であると推測されましたことから、特定建築者に対しまして、不動産市況が回復した場合には敷地譲渡価格を増額変更することを求めまして、特定建築者と合意しまして協定を締結しております。

○かち委員 景気がよくなったら、その分を払うよという、まるで、あるとき払いの前時代的な約束で、本当に保証がないんですよね。こういうやり方で本当にいいんでしょうか。結局、都民の税金に大きな負担をもたらす、その責任を免れません。今からでも、この計画は見直す必要があると思います。
 しかも、資料にあるように、従前居住者が住み続けられるまちづくりとはほど遠い実態ではないでしょうか。北新宿でも半数以上の地権者が転出し、借家人ではたった一人しか継続居住できません。環二地区でも地権者の七六%が転出、残れる借家人は一%です。大橋地区でも地権者の半数以上が転出、借家人の四%しか残れないんです。これでは、従前居住者が住み続けられるまちとは、とてもいえません。
 このような再開発様式は、大手ゼネコンやディベロッパーのための開発であり、景気の動向によって都民の貴重な財産を損失しかねません。今改めて、都による再開発計画は見直すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

○橘委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○橘委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。

○橘委員長 これより病院経営本部関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十年度東京都病院会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○黒田経営企画部長 去る十月九日の本分科会におきまして要求のございました資料につきましてご説明を申し上げます。
 お手元にお配りしてございます平成二十年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、都立松沢病院における入院患者の在院期間の状況から、10、東京緊急対策Ⅱ(都立病院における周産期医療緊急対策)までの十点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、都立松沢病院における入院患者の在院期間の状況でございます。
 都立松沢病院におけます入院患者の在院期間につきまして、平成二十年度末の状況を記載しております。
 二ページをお開き願います。2、都立病院における経営指標の推移でございます。
 平成十六年度から平成二十年度までの都立病院におけます経営指標の推移を入院、外来別に記載しております。
 なお、本資料から資料番号8までにつきましては、それぞれ同様に、平成十六年度から平成二十年度までの推移をお示ししております。
 三ページをごらんください。3、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費)でございます。
 一般会計繰入金と、このうち施設整備関連経費につきまして、その推移を記載しております。
 四ページをお開き願います。4、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費以外・病院別)でございます。
 一般会計繰入金のうち、施設整備関連経費以外の経費の推移を病院別に記載をしております。
 五ページをごらんください。5、都立病院の医師、看護要員及び医療技術員等の定数及び現員の推移でございます。
 医師、看護要員及び医療技術員等の定数と、各年度十月一日現在の現員の推移を記載しております。
 六ページをお開き願います。6、各都立病院の産婦人科、小児科及び麻酔科常勤医師の定数及び現員の推移でございます。
 産婦人科、小児科及び麻酔科の常勤医師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移につきまして、病院別に記載しております。
 七ページをごらんください。7、各都立病院の分娩件数の推移でございます。
 各年度の分娩件数の推移につきまして、病院別に記載をしております。
 八ページをお開き願います。8、都立病院における看護要員の中途退職者数の推移でございます。
 看護要員の四月一日から三月三十日までの退職者数と三月三十一日の退職者数につきまして、その推移を記載しております。
 九ページをごらんください。9、都立病院におけるPFI事業契約でございます。
 都立病院におけます各PFI事業契約につきまして、契約年月日、契約金額、契約期間、契約の相手方、VFM、応募者を事業別に記載しております。
 一〇ページをお開き願います。10、東京緊急対策Ⅱ(都立病院における周産期医療緊急対策)でございます。
 昨年発表いたしました東京緊急対策Ⅱの中で、都立病院における周産期医療緊急対策としまして取り組んだ新規事業につきまして、その予算額、概要及び進捗状況を記載しております。
 簡単ではございますが、以上で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○橘委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○笹本委員 それでは、私からは、後期臨床研修医制度である東京医師アカデミーについて何点か質問をさせていただきたいと思います。
 今さらいうことではありませんが、旧厚生省の医療政策の誤りによって、数々のいろいろな事故ですとかいろんな問題、本当に深刻な社会問題化していると。特に、医療費抑制ということがあったんでしょうけれども、医学部の定員の削減がしわ寄せとなって、いろいろなところに問題が起こったというようなことがあります。
 とはいっても、自治体病院ですから、当然担うべき使命と役割がありますので、地域の住民の命と健康を守っていくということを再度考えながら質問をさせていただきたいと思います。
 平成二十年四月に開講した東京医師アカデミーですね、深刻な医師不足、中でも勤務医の不足というのは、本当に毎日のようにいろんなところで取り上げられているのではないかというふうに感じるところです。
 診療科目の偏在といいますか、診療科によっていろいろ偏在があったり、地域によって偏在があるということで医師不足ということがあるんでしょうけれども、救急などを担わざるを得ない過酷な勤務などによる医師の病院離れなども原因としてあるのかななんていうふうに思います。
 先ほどもいいましたが、医師総数の抑制を行ってきた国の責任が非常に大きいということだとは思いますが、当然東京都としても、使命、責任というものはあるということを繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。
 医師の育成は、大学医学部で六年、そしてさらに、平成十六年度から義務化された新臨床研修というんですか、初期臨床研修医制度による研修を二年と、合計八年を要するわけでございます。医師としてはひとり立ちということになるんでしょうけれども、多くの医師、ドクターは、さらに専門化した、高度化した診療を希望しているということがあると思いますので、これで十分ということではないということだと思います。
 二年間の初期臨床研修を終えた後、さらに後期臨床研修医として三年程度、臨床の場で症例経験を積んでいくということかと思います。学会が認定する資格を得て初めて、高度な医療を担える専門医、プロフェッショナルとしての第一歩を踏み出していくということだと思います。
 多くの医師がこの道を目指して、研修の場を提供して、いろんな症例もあって、ベッド数も、七千二百だったと思いますけれど、ある都立病院の中で彼らが即戦力として期待をされていくということだと思います。大学病院だけではなく、地域の中核病院がこの後期臨床研修医制度を要しているということだと思います。
 そこで、東京医師アカデミーの設置目的と特徴についてお伺いをいたします。

○黒田経営企画部長 総合診療能力と高い専門性を兼ね備えた若手医師の育成体制を確立し、安定的な医師の確保を目指すため、東京医師アカデミーを設置いたしました。
 医師アカデミーは、都立病院の総病床数のスケールメリットを生かしまして、総合診療能力を兼ね備えた専門医を育成する都独自の臨床医養成制度でございます。行政的医療、高度専門医療に基づく豊富な症例や、東京ERを活用しました研修カリキュラムを設計しているところでございます。
 本制度によりまして、豊富な臨床経験に裏打ちされました優秀な医師の育成を行うとともに、将来の都立、公社病院等の医師の安定的な確保につなげていくこととしております。

○笹本委員 東京医師アカデミーには、都立病院が担う行政的な医療、高度専門医療にかかわる豊富な症例に体系的な研修を行うという、ほかの地区では見ることができない大変大きな特徴と、そして、専門家を育成できるということが理解できました。
 このような特徴で東京医師アカデミーにおいて勉強して、プロフェッショナルになっていこうというふうな若手が、ドクターがふえてくるということは大変期待が持てるのかなというふうに感じております。
 そこで、平成二十年度における東京医師アカデミーの定数、応募人員について、また、平成二十一年度に採用した医師アカデミーの試験は、二十年度に行うということですが、その点についてご説明していただきたいと思います。

○黒田経営企画部長 東京医師アカデミーの定数は、平成二十年度、二十一年度とも約百名でございます。平成二十年度は百九十四名の応募がありまして、申し込み倍率は約一・九倍でございました。平成二十一年度につきましても、定数を上回る百五十八名の応募がございました。
 なお、現在行っております平成二十二年度選考では、例えば、社会問題となっております産婦人科コース等、医師不足が顕著であるコースへの希望者がふえております。

○笹本委員 東京医師アカデミーが徐々にこのような形で軌道に乗っていくということと、冒頭いいました医師不足解消、そして、自治体病院への安定的な偏りのない医師の供給ということに大きな貢献というか、期待ができるというふうに感じております。
 一方、東京医師アカデミーが研修制度である以上、指導する側の医師、診療部長や医長は、高い資質が求められるのと同時に、日常でみずからも診療、診察を行いつつ、それに加えて研修医の制度を行わなくてはならないという点では負担も大きいのかなというふうに感じます。
 そこで質問させていただきますが、指導医の資質向上のために病院経営本部としてどのような取り組みを行っているのか、また、指導に当たる医師のインセンティブをどのように維持していくのか、ご説明いただきたいと思います。

○黒田経営企画部長 指導医の資質の向上のために、医療教育に関して定評のあります内外の大学等の講師を招聘しまして、指導医層を対象にした研修会を実施し、指導体制の充実強化に努めているところでございます。
 指導医につきましては、指導医業務手当を平成二十年度に新設いたしまして、インセンティブの維持を図っているところでございます。

○笹本委員 この東京医師アカデミーが都立病院の医師の確保、戦略上も重要なものとして位置づけられていること、近い将来、常勤医確保に大きな役割を果たすということを期待できるのかなというふうに感じております。
 また、本当に繰り返しいわれております産科ですとか、小児科などもそうだと思いますが、不足が顕著といわれる診療分野においても希望者がふえているということでありますから、この点は大変な期待が持てると同時に評価に値するのではないかなというふうに感じております。
 今後は、後期臨床研修を終えたアカデミー生を対象に、さらに上級の、これはクリニカルフェローというんですかね、制度も検討しているということをお伺いしております。
 深刻な医師不足を解消する施策は、本来、冒頭もいいましたが、国が責任を持って実施すべきであるというふうに考えるのですが、東京都が独自に非常に高度な知識、あるいは技術を持った医師を育成していくということは大変意義があるのかなと思います。
 さらにこのアカデミーの充実を図り、都立病院だけではなく、地域の公的医療機関ですとか、卒業生というか、アカデミー生が活躍をしていくということが期待できるのではないかなと思います。自治体病院の使命というのは、ここであれば東京都の住民の生命と健康を守っていくということは大変重要なことであると思いますので、東京医師アカデミーに大いに期待をしたいと思います。
 以上で質問を終わります。

○山加委員 私からは、都立病院の医療人材確保対策について何点かお伺いをさせていただきます。
 これまでも私どもは再三申し上げてまいりました。都立病院が高度で専門的な医療を都民に提供していくためには、医師や看護師などの医療人材が質、そして量ともに十分に確保されていなければならないわけであります。とりわけ、都立病院は今、社会問題にもなっている新型インフルエンザ、そして、深刻な周産期医療など、現下の医療課題に的確に対応していくことが都民から期待をされております。一方で、改めて申し上げるまでもなく、医師、看護師の不足が深刻な状況は依然として続いているわけであります。
 このために我が党は、医師の大幅な処遇改善や、そして我が党が全力を挙げて取り組ませていただいた東京医師アカデミーの開講、そして、看護師の採用活動の強化など、都立病院の医師、看護師の確保、そして確保しても定着していただかなければならないわけでありますから、定着対策についてさまざまな場面で都議会自民党は提案をし、そしてまた応援をし、実現もさせていただきました。
 そこで、まず初めに、平成二十年度において、病院経営本部が医師、看護師の確保、定着に向けてどのような取り組みを行ってきたのか、改めて確認の意味でお伺いをしたいと思います。

○黒田経営企画部長 平成二十年度、病院経営本部では、医師の確保、定着を図るために、指導医業務手当や異常分娩手当の新設を行うとともに、広尾、墨東、府中病院のER部門と、広尾、大塚、墨東、府中病院の産科で医療クラークの導入を行いまして、医師が診察に専念できる体制の整備を図ったところでございます。
 看護師の確保、定着対策といたしましては、専門試験の廃止によります受験負担の軽減や地方選考の実施等、受験機会の拡大を図ってまいりました。
 また、ゆとりを持った看護を行うことができ、医療サービスの向上にも資する七対一看護基準につきましては、既に清瀬小児病院と八王子小児病院で実施しておりますほか、ワークライフバランスがとりやすい二交代制勤務につきましても、大塚病院の一部病棟で導入いたしまして、あわせて他病院への拡大に向けた取り組みを行ってきたところでございます。
 さらに、女性職員が多数を占める医療現場におきまして、女性職員がキャリアを中断することなく働き続けることができるよう、院内保育室の二十四時間化や育児短時間勤務制度を導入いたしました。このように、医師、看護師確保に向けた重層的かつ多様な取り組みを行ってきたところでございます。

○山加委員 ありがとうございました。
 こうして改めて確認をさせていただくと、我が党の発信をしっかりと受けとめていただき、病院経営本部が医師、看護師の確保、定着に向けて本当にさまざまな取り組みを強力に進めていただいていることは理解いたしました。
 そして、大切なことは、これらの取り組みの結果どうなったかということであります。都立病院における医師、看護師の充足状況は、病院経営本部がさまざまな取り組みを強力に進めてきたことによってどのように改善をしたのか、お伺いいたします。

○黒田経営企画部長 医師、看護師の充足状況を、十月一日現在の定数に対する充足率で比較いたしますと、医師につきましては、十九年度が九三・四%に対しまして、二十年度が九五・六%と、充足率が大きく上昇しております。
 また、看護師につきましては、十九年度が一〇〇・五%に対しまして、二十年度は一〇〇・六%と、わずかながら上昇しておりまして、医師、看護師ともに充足状況に改善の傾向がうかがえております。

○山加委員 さまざまな取り組みが功を奏して、医療人材の確保状況が厳しい中にあっても、医師、看護師の充足状況が改善傾向にあることがわかりました。
 一方、看護師の充足率は、十九年度が一〇〇・五%、二十年度が一〇〇・六%と、充足率〇・一%微増となっているわけであります。確保に向けてより一層の取り組みが必要であると考えるわけであります。
 医療人材が充足することは、患者さんにとっては良質な医療が提供されることに直結でありますから、私は平成二十年度の第四定例会におきまして、こうした医療従事者を取り巻く厳しい状況を踏まえたさらなる確保対策の充実についてただしたところでありますが、病院経営本部では、二十一年度も二十年度に引き続きまして、医師、看護師の確保対策のさらなる充実を図っていると伺っております。
 そこで、今年度実施している具体的な医師、看護師の確保対策についてお伺いをいたします。

○黒田経営企画部長 今年度、病院経営本部におきましては、これまでのご指摘を踏まえまして、医師の確保のために、救急医療業務手当や産科医業務手当の新設、交代制勤務者等業務手当の増額など、さらなる処遇改善を図っております。
 この結果、例えば医師の確保がとりわけ厳しい産科におきましても、四月一日現在の医師数は、二十年度と比較しまして二五%増加しております。看護師につきましては、確保強化対策としまして、試験内容の簡素化や試験実施時期を早期化、複数回化するなどしまして、採用方法の大幅な改正や地方試験の実施によります受験機会の拡大などに取り組んでいるところでございます。

○山加委員 これまで我が党がしっかりと応援をさせていただいた、医師、看護師の確保対策が功を奏して充足状況が改善しつつあること、また、新たな確保対策にも強力に取り組んでいただいていることが確認でき、私も安心いたしました。
 しかし、全国では、医師、看護師不足からやむなく病院を閉鎖する、閉院に追い込まれる病院があるなど、今なお医療人材の確保は大変厳しい、こうした状況は今後も続いていくと思われます。都民に対し、安全で安心な医療を提供するには、医療人材を将来にわたって安定的に確保していかなければならないわけであります。今までも大変汗をかき、頑張っていただいたわけでありますが、さらに頑張っていただきたく、今後の医療人材の確保、定着に向けた中井病院経営本部長の強い決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

○中井病院経営本部長 病院の健全な運営につきましては、医療人材の確保が極めて重要という点については、先生ご指摘のとおりでございます。
 とりわけ、今日の深刻な医師、看護師の不足状況が続く中にありましては、医療人材対策の成否そのものが病院の命運を分けるというほどに大きな影響を持つ状況になっているというふうに認識をしてございます。
 医療人材の確保対策は、単に給与等の処遇改善だけでなく、教育訓練の充実、勤務条件の改善、医療安全体制の整備など、総合的な取り組みが必要なわけでございます。
 都立病院におきましては、こうした観点から、これまでさまざまな医療人材確保対策を行ってまいりまして、先ほど部長から答弁させていただきましたとおり、一定の成果を上げてきているわけでございます。
 しかしながら、先生もご指摘されたように、医療人材の確保というのは、油断をすればまた悪化という、基本的に限られたパイの中での奪い合いというような状況が社会的にはあるわけでございますので、今後も気を引き締めて取り組んでいかなければならない、そういう重要な課題だというふうに認識をしてございます。
 そういう面では、採用活動の強化など、日々の取り組みを充実させていくということとあわせて、中長期的な構造的な取り組みというものが肝要であろうというふうに考えるわけでございます。
 そういった点で、先生にもご指摘をいただきました東京医師アカデミー、医師につきましては、この体制を昨年度からつくり、今、順調に進めているわけではございますが、これの一層の質的充実が必要なんだろうというふうに考えるわけでございます。
 東京都におきましては、自前の医学部を持っていないわけでございます。そういうために、医師の人材確保については多くの大学に頼るという現実にあるわけでございますが、これが東京医師アカデミーの開講によって、大学の医局だけではなくて、医局を離れた若手の医師、臨床経験を積んで一人前になっていく過程の後に、我々の都立病院の中で本格的な戦力として働いていただけると、そういった新たな仕組みができてきているわけでございます。
 二十三年四月からは、いよいよこのアカデミー生、最初の卒業生が出てくるわけでございまして、都立病院の医師の確保については、これによりまして、これまでより格段に安定的な人材の確保ができるものというふうに考えております。また、公社病院、そして他の都内の医療機関に対しても、このアカデミーの卒業生が就職をしていくという形で、東京全体の医師の安定的な確保につながるものというふうに考えているところでございます。
 また、もう一つの点といたしまして、医師、看護師、いずれもでございますが、過酷な勤務ということが疲弊を招き、そして、退職につながるという現実があるわけでございますが、これにつきましては、医師については一直二勤務制度、そしてまた、看護師につきましては七対一看護基準の一層の推進、二交代制勤務の拡大など、こういった取り組みも進めておりますが、これらにつきましては人員の増加、増員が必要でございますので、一朝一夕に最終的な完成形に持っていくということにはなりませんが、これについても力を抜くことなく、拡大に努めていきたいというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、こうした取り組みをさらにさらに強めまして、質量ともに都立病院がすぐれた医師の、看護師の集団として、日本を代表するような病院になれるよう、今後とも職員一丸となって努力をさせていただきたいというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。

○加藤委員 私は周産期医療対策についてお伺いをいたします。
 私の地元にある墨東病院では、昨年起きた母体搬送事案、大変痛ましい内容でしたけれども、一年が経過をいたしました。都では周産期医療協議会や猪瀬副知事をトップとするプロジェクトチーム等での検討と同時に、緊急対策Ⅱとして、当面の対応策も打ち出して取り組んできたというふうに思います。
 昨年発表しました緊急対策Ⅱにつきまして、墨東病院では昨年度どのように取り組んだのか、また現在の進捗状況はどうなのか、本日配布の資料にも出ておりますが、具体的にお伺いをいたします。

○黒田経営企画部長 昨年度、墨東病院では、墨田、江東、江戸川の地元三区の医師会の協力のもと、あらかじめ登録した医師に当直の応援に入っていただく産科診療協力医師登録制度を本年三月から実施したところでございます。また本年一月から、夜間帯の上席の助産師等を助産師等コーディネーターと位置づけまして、決まった時間に院内NICUの情報を収集するとともに、ハイリスク患者の受け入れ対応を行うこととしております。
 さらに、産科医師の事務作業を補助する専任クラークを本年一月から二名配置しておりまして、産科医師が診療業務に専念できる体制を整えたところでございます。
 こうした対応は本年度も継続して実施しておりまして、産科診療協力医師登録制度におきましては、この十月の状況を見ますと、六名の地域の医師の方に延べ十二回分の当直業務を担当していただく予定となっております。加えて本年四月からは、院内保育の対象者をこれまでの三歳児から未就学児まで引き上げる形で拡充しまして、女性医師の多い産科医師の勤務環境改善に努めているところでございます。

○加藤委員 緊急対策の実施は、即産科医師の確保につながるということではなく、慢性的な産科医師不足の中でいかに工夫ができるかというものと理解しておりますけれども、根本的な課題解決にはやはり産科医師の確保が不可欠であると思います。
 まず、確認のために、昨年十月に墨東病院の事案が起きた時点の産科医師数について伺います。あわせて、現在の産科医師数についても伺います。

○黒田経営企画部長 昨年の十月には常勤医師は四名でございました。現在は常勤医師が六名の体制となっております。

○加藤委員 産科の医師数もまだまだ充足されている状況ではありませんけれども、それでも常勤医師数を見ると、昨年に比べて着実に補充が進んできています。
 しかし、地域の先生方のご協力をいただきながら体制を整えていることもまた事実であり、今後とも産科医師の確保を進めていかなければなりません。産科医師を今後とも安定的に確保するためには、処遇改善に限らず、あらゆる取り組みが必要と思われます。昨年度の取り組み状況について伺います。あわせて、今後の取り組みについても所見を伺います。

○黒田経営企画部長 最近数年間にわたりまして医師の処遇改善を行ってきておりますが、昨年度は初任給調整手当の改善や指導医業務手当の新設、異常分娩業務手当の新設などを行ってまいりました。また、育児短時間勤務制度の導入や、二十四時間院内保育室の導入、医療クラークの配置など、勤務環境等の整備も行ってまいりました。加えて本年四月からは、産科医業務手当や救急医療業務手当の新設も行ってまいりました。
 今後ともこうしたさまざまな取り組みを継続しながら、都立病院の魅力を高め、また、若手医師を育成、確保する東京医師アカデミーの取り組みを充実させると同時に、大学医局の協力も得ながら、医師の安定的な確保に努めてまいります。

○加藤委員 都立病院に対する都民の期待が大きい中で、また特に私の地元である墨東病院に対する期待が大きい中で、この周産期医療を強化するには、継続的な医師確保の努力が不可欠です。墨東病院はこれまでも総合周産期母子医療センターとして、限られた人員の中で、母体搬送を初めとするハイリスクの患者を積極的に受け入れてきました。
 一方、地域住民からは、通常分娩再開を待ち望む声が大変大きいものがあります。先ほど答弁にあったように、現在、昨年よりは若干体制が持ち直したものの、まだ地域からも支えてもらっている状況でありますので、まずは最後のとりでとしての墨東病院に対する地域の期待にこたえるためにも、今後とも産科の人員体制を安定的に整えていただきたいことを切に要望いたします。
 さて、ここまでは周産期医療の関係で、緊急的な措置として墨東病院に地域の医師が当直の応援に入るという、一種の連携関係が築かれている状況を確認してきましたが、それぞれの医療機関が役割分担をしながら、医療サービスを効果的に提供していこうという、いわゆる医療連携、この考え方は非常に重要です。
 これも、私の地元の都立墨東病院を例に考えれば、墨東病院は初期から三次までの救急に対応する東京ERを担っておりまして、患者さんの急性期に対応する役割を担っております。患者さんが急性期を脱して容体が安定した場合に、その後の回復に必要な医療を適切に受けられる医療機関に転院ができなければ、墨東病院では新たに急性期の患者さんが診られなくなってしまいます。だからこそ医療連携が必要になるわけですけれども、発症の多い疾病ごとにこうした連携を強めていこうという取り組みは、今後有効になってくると考えます。
 特に脳卒中では、発症から三時間以内の投与で脳血管内の血流を再開させるtPAという脳梗塞の治療薬により、急性期患者を受け入れる医療機関がふえてきたということもありまして、東京都でも脳卒中のネットワークづくりが進められているというふうに聞いています。
 そこで、都における脳卒中のネットワークの取り組み状況はどのようになっているのか、また、墨東病院はどのように位置づけられているのか、お伺いします。

○黒田経営企画部長 都では、東京都脳卒中医療連携協議会を設置しまして、脳卒中を発症した患者さんを速やかに適切な医療機関に救急搬送できる仕組みづくりを行ってまいりました。その結果、本年三月から救急搬送体制が構築されたところでございまして、墨東病院も東京都保健医療計画におけます脳卒中急性期医療を担います医療機関として位置づけられているところでございます。
 また、救急搬送から在宅療養まで、切れ目のない医療介護体制を整えていくためには、地域ごとの医療連携体制の構築が必要でございます。そのため、墨東病院のあります区東部地域では連絡会が設置されておりまして、地域連携パスづくりが行われておりまして、墨東病院もその検討、検証に加わるなど、ネットワークの一翼を担っているところでございます。

○加藤委員 脳血管疾患によって亡くなる人の割合は、がん、心疾患に次いで多くなっており、こうした医療連携体制の構築が急がれます。こうした医療連携の取り組みがうまくいくためには、脳卒中の取り組みにもあるような地域での検討会で系統立てていくことももちろん必要ですけれども、その前提条件として、日ごろから関係機関同士の相互のコミュニケーションがよくとれているような、いわば顔の見える連携関係、これを築くことが重要であります。
 墨東病院でも、地域の医師会との間で医療連携を推進するための委員会を定期的に持っていると聞いておりますが、私の聞くところでは、まだまだこの実効性という部分では不十分という声も一部聞いております。こうした機会を十分に活用して、地域の医療機関の意見もよく取り入れることで、脳卒中の取り組みにとどまらず、墨東病院と地域の医療機関との間で役割分担を推進し、地域全体で患者さんを適切に診ていく体制をつくり上げ、今まで以上に地域住民の期待にこたえていただくことを要望して、私からの質問を終わります。

○橘委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時二十六分休憩

   午後二時四十分開議

○橘委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○かち委員 現在、都立病院には、三つの小児病院があります。八王子、そして清瀬、それに続いて都立梅ケ丘病院があります。子どもの小児精神科病院である都立梅ケ丘病院の役割等についてお聞きしたいと思います。
 都立梅ケ丘病院とはどういう病院であると認識されているのか、ソフト、ハード面両方からその特徴について伺います。
 また、東京における小児精神科医療の課題をどう考えているのか、お聞きします。

○黒田経営企画部長 梅ケ丘病院は、分散立地した建物群の中に緑を配しました、日本でも数少ない小児精神の専門病院として、自閉症などの発達障害、摂食障害や心因性精神障害、多動性障害、学習障害など、さまざまな障害を持つ幼児期から思春期までの小児を対象とした診療を行ってまいりました。
 一方、現在、心の病を持つ患者さんの増加、身体疾病との合併症など、全国的、またこの東京都においても、小児精神医療を取り巻く環境は大変大きく変化をしているところでございます。このため、心から体に至る総合的で高度専門的な医療を提供することがこれまで以上に重要となっているというふうに考えております。

○かち委員 ご説明ありましたように、梅ケ丘病院は単独の独立した小児専門の精神科病院です。分散立地したというふうにありましたように、低層で、本当にいつでも外に出られる環境の中にあるということで、非常に特徴的な面を持った病院です。
 今日、発達障害や心の問題を抱え、家庭や学校、地域社会において対応困難となる子どもの数は増加しています。こうした子どもたちのニーズにこたえてきたのが梅ケ丘病院であると思います。
 では、全国で梅ケ丘病院のような子どもの精神科の専門病院は何カ所、そして何床あるのでしょうか。

○黒田経営企画部長 小児専門の医療機関は、全国で梅ケ丘病院を含めまして二カ所、病床数は三百二十二床となっております。

○かち委員 全国でたった二カ所しかないんですね。大人の精神科病床は全国で三十万床あるにもかかわらず、子ども専用の入院病床は約千床余りで、その四分の一を梅ケ丘病院で占めています。もともと不採算医療であり、全国的にも不足しているのが現状です。
 梅ケ丘病院には、医師、看護師のほか、心理士、精神保健福祉士、保育士、作業療法士など、各種専門職を加え、子どもの精神科独自の運営形態など、半世紀以上も積み上げてきた知識と経験が豊富です。
 全国で児童青年精神科医療を行える病院は少なくありませんが、病院ごとに扱う領域が限られており、外来診療しか行えないとか、病床があってもわずかで、多様な行動上の問題のある子は入院が困難、こんな問題点を抱えています。その点、梅ケ丘病院は八つの病棟があり、独立した病院であり、児童青年精神科のすべてに対応できる病院なんです。
 都立病院改革マスタープランが作成されるに当たり、以前の方針では、梅ケ丘病院は組織的、物理的に独立していることが望ましいという報告がされておりましたが、そのことに対する認識はどうでしょうか。

○黒田経営企画部長 ただいまご指摘のございました方針は、平成九年五月に策定いたしました都立病産院小児医療検討委員会報告書によるものでございます。この報告から既に十年以上が経過しておりまして、この間、心の病を持つ小児患者の増加や、精神疾患と身体疾患の合併症の問題など、小児精神医療を取り巻く状況は大きく変化をしております。
 このため、心から体に至る総合的で高度専門的な医療を提供することがこれまで以上に重要となっておりまして、三病院を移転統合し、小児総合医療センターとして整備をすることとしたものでございます。
 なお、この新しい小児総合医療センターにおきましては、周辺の恵まれた自然環境との調和を図りまして、ルーフコートと呼ばれる中庭部分の設置ですとか、院内のアメニティーへの配慮を行っておりまして、患者さんにとって好ましい療養環境が整備されることとなっております。

○かち委員 子どもの精神医療をめぐる状況は大きく変化しているというお話がありましたけれども、それは確かに分類し切れないようないろんな現象を持つ子どもたちがふえているというのも実態です。しかし、子どもの精神科の特徴としては、やっぱり一般の医療とは別の独立した環境の中で療養することが大変好ましいんだと。この点については変わることがなく、今もその意義は続いているというふうに思うんですね。
 小児の精神科という特徴から、専門機能病院として、医師のほか、多種多様な職種の研修の場であり、これらの機能を十分に発揮するとともに、細心の注意が求められている小児精神科患者にとっての良好な治療環境を確保するためには、一般の小児病院や成人の精神病院とは組織的にも物理的にも独立していることが望ましい。このことは今日でも関係者、医師からも強く指摘されているところであります。この声を真摯に受けとめるべきだと思います。
 厚生労働省が平成二十年から、子どもの心の診療拠点病院事業を始めましたけれども、その意義、目的は何でしょうか。

○黒田経営企画部長 さまざまな子どもの心の問題に対しまして、都民や地域の関係機関への支援を行う拠点病院を整備しまして、地域の関係機関におけます連携体制を構築することによりまして、児童精神保健福祉の向上に資することを目的としております。

○かち委員 子どもの心の診療をめぐっては、世界的には早期診療、早期診断による精神療法や家族療法の研究が進んでおり、アメリカでは、小児科や精神科、児童精神科のトレーニングを積んだ専門医が約四千人います。いろいろ認定制度も確立していると聞いています。
 ところが、日本では、難治例や重症例を診療できる専門医は約二百人程度しかいません。子どもの精神科病院はアメリカの七分の一なんです。こうした中での小児精神科専門医の育成と、経験豊かな療養スタッフと、地域との連携によって、あるべき医療の拠点を各県に一カ所ずつ広げていき、全体のレベルアップと充実を図るための拠点、モデル事業の指定を受けたのが梅ケ丘病院です。
 単に医療技術だけでなく、静かでゆったりとした療養環境や地域との連携の中にこそ目的を達成できるものであり、モデル事業指定中の梅ケ丘病院を廃止して、小児総合医療センターに統合し、その一角におさめてしまうのは同事業の趣旨にももとるものです。梅ケ丘病院は現地に残すことを改めて求めておきます。
 精神科医療のもう一つ、松沢病院についてお聞きします。
 今日、精神科医療においては、今や病院から地域へということで、さまざまな取り組みが行われています。そして、重い精神障害を抱える患者さんであっても、地域の中で生活できるサポート体制がますます必要となっています。
 国のモデル事業でもあるACT、包括型地域生活支援事業は、実験的ではありますが、退院後、こうした方々が地域で自立的に生活していくために、二十四時間対応の医師や看護師、ケースワーカーを初め多職種の専門職がチームをつくり、フォローアップしていく取り組みですが、数年前から、千葉や京都、あるいは三重などというところで有効的な実践報告が出されております。
 千葉県の国立国際医療センター国府台病院での精神障害者に対して実施されている包括的地域生活支援事業、ACTに注目すべきだと思いますが、見解を求めます。

○黒田経営企画部長 包括的地域生活支援プログラム、ACTにつきましては、重度の精神障害者に対しまして、頻繁に入退院を繰り返したり、退院後も引きこもることのないよう、継続かつ安定した地域生活を可能にするため、精神科医、看護師など、多職種から成る共同チームを組織し、利用者のニーズに合わせた包括的なケアプランに基づくサービスの提供を行うものでございます。
 国立国際医療センター国府台病院では、平成十六年五月からこの事業を実施しております。精神障害者が身近な社会福祉サービスを利用しながら地域生活を送るために手厚い支援を行うこの取り組みは、入院医療にかわる効果的な一つの手法として認識をしているところでございます。

○かち委員 都立精神科医療センターとしての役割を今後果たしていく松沢病院、この中で、病院の中での医療をきわめるだけではなく、重症の精神障害を持った方でも地域で生活していくことが可能だという典型をやっぱりつくっていく使命もあると思います。
 そういう意味では、松沢病院でも、また梅ケ丘病院でも、こうした取り組みを先駆的に取り入れて、精神障害者も地域で安心して自立的に生活できる可能性をぜひとも探求していただきたいと要望しておきます。
 次に、地域開業医との協力関係について伺います。
 この間、先ほどもお話がありましたが、都立病院の役割は、急性期医療と高度医療に責任を持つ役割分担だということで改革が進められてきましたけれども、医療環境の変化、医師不足、あるいは連携医療の強化が求められる中で、特に墨東病院の経験から、小児救急医療や周産期医療における都立病院をめぐっての状況変化が生まれていると思います。
 そこでお聞きしますが、この間いろいろな病院でそうした連携協力医療が進められておりますけれども、墨東病院での周産期医療で産科協力医登録制度、これはどのように実施されているのか。また、大塚病院で実施されている小児初期救急医療ではどうか。府中病院の小児科で開業医との共同診療が一部実施されているが、どのようにしているのか。それぞれお答えください。

○黒田経営企画部長 まず、墨東病院におけます取り組みでございますが、墨田、江東、江戸川の地元三区の医師会の協力のもと、あらかじめ登録した医師に当直の応援に入っていただく産科診療協力医師登録制度を本年三月から実施いたしました。現在、六名の地域の医師に当直業務を担当していただいているところでございます。
 続きまして、大塚病院における取り組みでございますが、豊島区から平日夜間小児初期救急診療事業を受託しております。豊島区医師会から派遣される医師を大塚病院の非常勤医師として雇用いたしまして、救急外来におきまして、月曜日から金曜日の午後八時から午後十一時まで実施をしております。
 また、府中病院におきます取り組みでございますが、現在、府中病院の小児科では、開業医の方二名にお願いをいたしまして、一人は外来を月一回、もう一人は病棟当直を月一回行っていただいているところでございます。

○かち委員 この間のさまざまな医療環境の変化の中で、都立は高度医療、地域医療は別だというようなことだけをいっていられる状況でもなくなってきているのが今日の状況じゃないかというふうに思いますと同時に、やっぱり都立病院も、立地している地域医療との連携が密に進んでいかないと本来の役割も果たせない、そういう状況にあるわけですね。
 もちろん、都立病院の医師不足を補うようなことだけでいっているのではなくて、地域の先生も都立病院の医療の実態や状況をつぶさにわかっていただく、そして、みずからも開業医という環境の中だけでは実現できない、もっと救急医療に携わることができる、機器も使える、そういうことがお互いのいいところを向上し合える、そういういい関係がつくれると思いますので、私は地域医療、地域の開業医の先生たちとの協力を、もっと都立病院としても進めていただくことを強く要望したいと思います。
 私が伺った府中の崎山先生というお医者さんがいるんですけれども、開業医でありながら、子どもの救急は医療設備の整った病院が必要だということで、みずから週一回、府中病院の救急外来に勤務しているという方もいらっしゃいます。
 こういう先生がふえてくれば、なかなか自分の診療だけでいっぱいだという先生もいらっしゃいますけれども、意欲を持ってそういうことをやりたいという開業医の先生をもっと引き上げるというか、場を提供するという関係も都立病院の役割として大いに進めていただきたいというふうに思います。
 次に、墨東病院について伺います。
 昨年の妊婦死亡の痛ましい出来事から、医療クラークの導入や周産期医療の搬送体制の強化対策として、都立病院における助産師のコーディネーターの配置など、補正予算が組まれました。これが東京緊急対策Ⅱの資料としても出されているんですけれども、この中で助産師等コーディネーターというものがありますけれども、これは専任で配置されているのでしょうか。予算措置がされているとしたらどれだけなのか。具体的な位置づけと仕事の内容についてお聞きします。

○黒田経営企画部長 都立病院におけます緊急対策といたしまして、平成二十年度補正予算で一億三百四十二万七千円を計上しております。その中に助産師等コーディネーターも予算措置をされておりまして、平成二十一年一月に墨東病院に助産師等コーディネーターを配置することとしたものでございます。
 助産師につきましては、その確保が大変困難である一方で、墨東病院の医師の当直体制が充実してきておりまして、二系列ないし三系列を確保している状況にございます。そうした中で、M-FICU病棟におけます夜間、土日、休日の上席の助産師をコーディネーターとしての役割を担うということに位置づけまして、ハイリスク患者の受け入れ対応を行っているところでございますが、当直体制が非常に充実してまいっておりまして、現在の体制で十分に機能しているというふうに考えております。

○かち委員 ご説明を伺ってちょっとよくわからないんですけれども、助産師について、コーディネーターについても予算措置がされているとおっしゃいましたけれども、実態的にいうと、人をふやしたり、専任に配置をしたりということではないんだよと。今の体制の中で、当直の上席の助産師さんを、あなたはきょうコーディネーターねということで位置づけてやっているのだと。
 しかし、今、当直体制も、いろんな先生の協力なんかがあって、二系列、あるいは三系列で医師がやっているから、実態的に機能していないということなんでしょうか。その辺がちょっとよくわからない。必要がないというふうに、今、聞こえたんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。

○黒田経営企画部長 助産師等コーディネーターが果たしております総合周産期医療に関しての調整機能というのは、大変重要であるという認識でございます。
 このため、助産師等コーディネーターを配置するということで、緊急対策Ⅱというものが打ち出されてきているものでございます。この緊急対策Ⅱが作成された時点におきましては、例えば墨東病院におきましても、産科医の不足から当直体制が非常に厳しい状況がございました。
 しかしながら、先ほどもご答弁させていただきましたが、その後の墨東病院、それから周辺の地区の医師会のご協力をいただきまして、現在は二系列、場合によっては三系列という非常に充実した当直体制がしかれているところでございます。
 このような中にあっては、上席の助産師をコーディネーターとして位置づけることで、十分このコーディネート機能が果たしていけるというふうに考えているところでございます。

○かち委員 今、医師が充実しているから、助産師のコーディネートといっても、一体何をやっているのかなというのはよくわからないんですけれども、特別にその助産師に何かしてもらう必要がないというふうにお答えになったんだろうというふうに思いますよね。
 二系列、三系列で、今、医師が充足しているから、特別に助産師に改めてコーディネートしてもらう必要はあるのかないのか。空きがない場合には、どこかに紹介しなければいけないとか、こういう患者さんをどういうふうに判断して、どうするかというようなことを、実際、コーディネーターとしてやっているのかどうかというところはどうでしょうか。

○中井病院経営本部長 コーディネートにつきましては、大きく二つの役割があるわけでございます。
 一つは、搬送先。自分のところで搬送を受けられるときは必要ないわけですけれども、自分のところで受けられないときには、別の医療機関を探さなければいけないという意味で、外との調整。
 もう一つは、院内。要は受け入れが可能かどうかというのを、各診療のいろいろなセクションに調整をかけて、病院として受けられるかどうかの判断をするという、この二つの機能があるわけでございます。
 助産師のコーディネーター役は、院内の調整について主にやっているという状況でございまして、外との、他の医療機関との調整というのは、現実には、やはり産科医同士が短時間の間で、瞬時にその症状等のやりとりをして、お互いで調整をする、判断をするということが必要になりますので、ドクター同士でやるのが一番適当であるというのが現場の意見でございまして、我々としては、そういった現場の実情、意見を踏まえて、こういった形で対応させていただいているところでございます。

○かち委員 補正予算まで組んで、助産師をコーディネーターに位置づけたということなんですけれども、実態的には、今までやっている仕事の中で、そう変わっていないという状況だと思う。だから、新たな予算措置をコーディネーターのためにつけてということはないわけですよね。あるんですか。それは、私が聞いた範囲では、ないなというふうに思ったんですけれども、ただ、助産師コーディネーターが、そういう緊急症例に対してどういう判断をして、どういう対応をしたかというのは、これからも大変意義のあることだと思います。
 ですから、ぜひ実践報告をまとめ、その効果を検証すべきだということを求めておきます。
 資料で、墨東病院の分娩数の中には、数が二百四十幾つと書いてあるんですけれども、これは正常分娩が含まれているのでしょうか。たしか一昨年暮れぐらいから正常分娩は休止状況になっているんですけれども、実態はどうなっているのか。そして、その再開のめどというのはどうでしょうか。

○黒田経営企画部長 墨東病院の昨年度の分娩件数二百四十八件のうち、救急での母体搬送が百八十七件、紹介予約は六十一件となっておりまして、主にハイリスク患者を受け入れております。
 墨東病院は、総合周産期母子医療センターとしてリスクの高い分娩を最優先に対応しているところでございます。産科の医師が一時期の三名から現在では六名にふえるなど、体制の強化を図っているところでございますが、一般の分娩、通常の分娩につきましては、今後、産科医師の確保に努めていくとともに、地域との役割分担を踏まえながら状況を見きわめていく必要があるというふうに考えております。

○かち委員 ERに指定されて、墨東病院は初期から三次まで本当に大変な医療を頑張ってやっているというふうに思いますけれども、だからといって、正常分娩を取り扱わないということを決めたわけでもないと思うんですね。もちろん、今の体制ですぐにやれとはいいませんけれども、やっぱり地域の皆さん、先ほども加藤委員からありましたけれども、大変強い、この地域で普通に産める病院は少ないという状況がありますので、そういう状況にこたえていく姿勢はぜひなくさないでいただきたいというふうに思います。
 同時に、こういう医師による分娩だけではなくて、本来の役割である助産師、助産師による院内助産なり、近くにつくるなり、いろんなやり方があると思いますけれども、助産師の院内助産を位置づけていくということも必要じゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○黒田経営企画部長 墨東病院は総合周産期母子医療センターといたしまして、先ほどもご答弁させていただきましたが、主にハイリスクの分娩に対応しております。具体的には、合併症妊娠ですとか、切迫早産、胎児異常等のハイリスク分娩に対しまして、高度な周産期医療に対応する役割を担っていると考えております。地域との役割分担を行いながら、リスクの高い分娩を最優先に考えておりまして、院内助産所等の設置は、現在のところ、考えてございません。

○かち委員 現在のところは考えていないけど、将来は考えるかもしれないという可能性を期待したいんですけれども、今、同じような役割を持っている大学病院でも、院内助産の受け入れ準備をやっているというようなことも出ているんですね。それで都立ではやれないということはないと思うんです。
 出産の仕方も多様化していますし、ナイーブになっている妊婦さんへのきめ細かい対応と、医師との連携で安心して出産できる環境づくりが求められています。この期待にぜひこたえていただくように求めておきます。
 次に、看護師確保についてですが、病院経営本部としては、看護師確保、定着にさまざまな努力をされてきておりますけれども、都立病院での看護師定着率の推移というのはどうなっているのでしょうか。改善してきているとすれば、その要因は何でしょうか。

○黒田経営企画部長 看護師の定着率につきましては、平成十八年度が九〇%、十九年度が八九・二%、二十年度が九〇・四%でございます。これは三月三十一日の時点での定着率でございます。
 なお、十月一日現在の看護師の定着状況で比較いたしますと、二十年度が九六・四%に対しまして、二十一年度の数字ではございますが、九八%と一・六ポイント上昇しておりまして、定着状況は改善をしております。
 また、その要因につきましては、研修体制の充実や、勤務環境改善策としまして院内保育室を充実したことなどが要因として考えられます。

○かち委員 初期研修の充実などで定着率の一定の改善が、今年度に入ってですけれども、若干見られるようです。今後の推移をぜひ見守っていきたいと思います。
 働き続けられるためには、労働環境の改善が何よりも必要ですけれども、私はかねてから都立病院でも七対一看護配置基準の導入を求めてきましたけれども、現在の導入状況はどうなっているでしょうか。

○黒田経営企画部長 現在、都立病院におきまして七対一看護を導入している病院は、広尾病院、大塚病院、清瀬小児病院、八王子小児病院でございます。

○かち委員 かなりの病院で進んできているように思いましたけれども、先ほど充足率一〇〇%を超えているというようなお話がありましたけれども、実際、七対一をやっていくとなれば、今の定員ではとても足りない状況にありますので、さらなる努力をしていただきたいと同時に、墨東や府中はいまだ実現していないわけですね。
 この病院は最もERを標榜していて、大変急性期医療であり多忙で、過密労働が強いられる現場ですので、まずそういうところに率先して導入を進めていただきたいというふうに思いますが、都立病院で七対一を導入するために、よくやられることではあるんですけれども、ベッド稼働を少なくしてやるというようなこともありますけれども、よもやこの都立病院でそのようなことはないというふうに確認してよろしいでしょうか。

○黒田経営企画部長 都立病院におきましては、七対一看護基準を取得するために、ベッド稼働の調整をすることはしておりません。

○かち委員 ぜひとも今後ともそのように進めていただきたいと思います。
 今年度から都の育児短時間勤務制度が導入され、功を奏しているというようなお話もありましたけれども、この制度自身はどういうものなのか、また利用者の実績はどうなっているでしょうか。

○黒田経営企画部長 育児短時間勤務制度とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が、常勤職員の身分を有したままで、週二十時間、二十四時間、または二十五時間の短時間勤務を行うことができる制度でございます。
 この制度の利用実績でございますが、十月一日現在で医師が三名、看護要員が四十一名、医療技術員が三名、合計四十七名の職員がこの育児短時間勤務制度を利用しております。

○かち委員 子育てしながらも働き続けられる環境というのは大変重要ですので、ぜひこの短時間勤務、今後も拡充していっていただきたいというふうに思います。
 最後に、PFIについて申し上げます。
 ほぼ同時期に三つの都立病院でPFI手法を取り入れて、新設、増改築などが行われています。我が党は、これまでも再三入札経過やVFM算出の根拠など、問題点を指摘してきましたが、先行して取り組んできた近江八幡の医療センター、高次医療センターも破綻し、契約解除の事態となっています。
 こうした問題を十分検証することなく、都立病院の三つのPFIを続行し、二千四百九十億、千八百六十一億、七百三十五億という巨費を投じて、それぞれ一企業グループが十九年間にわたって一貫して事業を請け負う、こういう契約スタイルは都民の理解を得ることは難しいことです。
 改めて、PFI手法については見直し、中止を求めて、私の質問を終わります。

○大津委員 都民の命を守るためには、日ごろから救命救急医療体制の確立に万全を尽くし続ける努力をしなければなりません。
 東京都内は、一一九番通報をしてから病院の医師の手に引き継ぐまで、救急搬送時間、つまり救急車の搬送時間が四十七・二分かかっています。一分でも早く医師にかかることで助かる命でもあります。
 救急搬送時間の短縮について必要なところでありますが、東京という都市の実態に合った特性を踏まえて、総合的に検討をしていかなくてはなりません。
 東京の実態をひもといていきますと、ご高齢者や精神疾患の傷病者、一方、ホームレスの傷病者やアルコール疾患やリピーターの傷病者、これらの方々が他府県に比べて非常に人数が多いという都市の特性とともに、これらのケースにおいて、救急搬送に時間を要しているということが浮き彫りになりました。
 そこで、消防庁に実際に精神疾患の傷病者の搬送時間について調査をしていただきました。
 昨年の平成二十年十二月十六日から二十二日までの一週間を、東京消防庁管内で救急搬送した全事案から抽出して記録をまとめていただきました。
 これを拝見しますと、救急車が現場に到着をしてから病院が決まって救急車が出発するまでの現地滞在時間、これが三十分以上かかっていた件数が全体の四六・五%、約半分に上りました。その三十分以上のうちの一時間以上というのは全体の一二・三%に上っていますし、全体の一・九%が二時間以上、その現場に滞留をしているままの状態のケースもありました。
 昨年の全救急隊の現場到着から搬送開始までの平均時間は、全部を換算しますと、十九分二十一秒ですので、精神疾患をお持ちの傷病者の搬送にはかなり多くの時間を要しているということが、以上の貴重な救急搬送における医療機関の受け入れ状況等詳細結果からわかった次第であります。
 身体的傷病において、精神疾患を持っているから長くかかるということは、命を救うという観点から見ますと理由になりませんし、これは大いに改善をするという施策の展開が求められます。
 そこで、お伺いします。精神疾患患者の受け入れに時間を要していることについて、いろんな課題がありますが、本部としてはどのようなことが課題であると認識をされているか、お答えください。

○黒田経営企画部長 都立病院におきましては、これまでも精神疾患を有する救急患者さんを適切に受け入れてまいりました。
 しかしながら、救急対応病床が満床の場合など、やむを得ず搬送をお断りする場合もございます。
 常に病床を確保するなど、受け入れ体制を強化するためには、応急的な治療を終えた段階で、転院先として受け入れに協力していただく医療機関でございます後方支援病院との連携を構築していくことが課題であるというふうに認識しております。

○大津委員 それでは、それらの課題に対しまして、どのような検討や取り組みがなされたのか、お答えください。

○黒田経営企画部長 地域の一般医療機関等との強固な連携関係を構築していくことが重要と考えております。
 具体的な取り組みといたしましては、各都立病院におきまして、関係医師会の協力を得まして、地区医師会との会議などの場を活用しましたり、また各病院に対しましては、個別に後方支援病院としての協力要請などを行っていくなど、連携構築に努めているところでございます。

○大津委員 時間がかかるということは、総合的に絡み合って東京は時間を複雑に要しておりますので、やはり現場の実態に合わせた施策が東京の行政施策の本質であると考えています。
 病院から断られたり、決まるまで時間を要するケース、せっかく一個目の病院に到着しても、そこでまた次の病院に回されるケース、また病院側からすれば、どこかしらほかの病院で診てくれるだろうというケース、またホームレスの方だとか、精神疾患を持っていると慎重になり過ぎるだとか、またはそれぞれの事情に応じて断ったりするケース等、いろんな意味で、じゃ、私のところで診ましょうというところばかりではないので、その点、連携というのが重要になってくると思います。
 簡単で協力し合った連携、これが本当は一番重要なんですけれども、これら連携の構築に対して本部のお考えを伺いたいと思います。

○黒田経営企画部長 都立病院におきましては、ただいまお話がございました精神疾患症状を伴う患者さんや路上生活者など、民間病院での対応が困難なケースにつきましても、都立病院としましては、行政的医療を適切に提供し、都における良質な医療サービスを確保することを基本的な役割として考えております。
 例えば、一般科の病院では対応困難な精神疾患を伴った患者さんですとか、また逆に精神科病院では対応が困難な身体的治療を要する患者さんなどを都立病院が対応することで、適切かつ迅速な対応が可能となります。
 これらのことなど、民間の一般科病院や精神科病院との密接な連携ネットワークを構築していくこととしております。

○大津委員 それでは、具体的に精神疾患を有する患者さんの救急搬送について、消防庁、福祉保健局、病院経営本部と全庁的にかかわっているわけでありますけれども、病院現場としては、搬送時間の短縮に向けて何ができるのか、これについてお答えいただきたいと思います。

○黒田経営企画部長 都立病院におきましては、院内精神科のスタッフと連携しまして、精神科治療を行いながら身体的な救急治療を行うなど、迅速な対応に努めているところでございます。
 医療面のみならず、病院から福祉事務所や保健所などに連絡をしまして、患者さんの生活や健康にかかわるケアをしていただくなど、福祉、保健の分野につきましても、連携をして対応しているところでございます。

○大津委員 救急搬送時間の短縮に向けて、これからも都立病院としてさまざまな工夫と実行を行っていっていただきたいと存じます。
 一方、都立病院では精神科救急にも取り組んでおられます。一一九番通報のいわゆる救急医療の流れとは異なりまして、平成三年三月に、保健や医療機関などの情報に関して、多くの都民の需要に対応するための総合窓口として開設をした通称「ひまわり」といわれる東京都保健医療情報センター、これらを経由して精神科合併症患者の救急医療や夜間、休日における精神科救急医療の取り組みを行ってまいりました。
 そこで、今年度決算の委員会なので、二十年度の実績について、「ひまわり」を経由して精神科身体合併症などに関し都立病院が受けた件数と決算額と費目について伺います。

○黒田経営企画部長 まず、精神科夜間休日救急診療事業についてでございますが、これに関する決算金額は三億一千九百十八万五千三百七十六円、取扱件数につきましては七百八十六件でございまして、収益科目は病院事業収益、医業収益のうち、その他医業収益となっております。
 また、精神科患者身体合併症医療事業、夜間、休日に関する決算金額につきましては、千七百六十万五千四百三十九円、取扱件数は九十四件でございまして、収益科目は同様にその他医業収益となっております。

○大津委員 それでは、精神科救急や身体合併症救急については、行政的な重要な役割を果たす都立病院としてそれらを十分認識して、これからも積極的に取り組んでいただきたいと存じます。
 さて、医療救急体制づくりにおいては、ことしの三月からスーパー総合周産期センターが始まり、三カ所指定をした。そして、救急医療の東京ルール、シャープ七一一九に電話をすると、三百六十五日二十四時間体制で救急医療相談ができる、それらが八月の末からスタートして、一カ月半たとうとしております。
 これからいろいろな状況や結果もわかった上で、それをフィードバックして、さらなる改善を期待しております。
 そこで、これらの東京ルールも含めまして、さらに先ほど「ひまわり」も申し上げまして、日ごろからの救急医療体制を早く確立しておくことが、医療だけでなく、三十年以内に来るといわれている直下型大地震や、また災害など、首都東京の防災対策にも通じていくこととなり、これらすべてに反映される救急医療体制を都民が求めているところです。
 救急搬送も、病院経営本部、そして福祉保健局、消防庁の連携が非常に大切です。そしてまた、オール都庁の力の結集が都民の命を守るための一番大切なかぎとなっており、またそれが一番縦割れの東京都の中において横ぐしを刺す、横の横断的な連携がまた一番難しい部分でもあります。
 都市病院、都立病院を持つ本部といたしまして、都市ならではの実態をあわせて、全庁的に施策の展開に取り組んでいく本部長の見解をお聞かせいただきたいと思います。

○中井病院経営本部長 都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関等との密接な連携を通じて、都における良質な医療サービスの確保を図ることを基本的な役割としております。
 また、都民の命に直結する救急医療という面では、入院医療として扱う二次救急医療、救命医療としての三次救急医療について、都立病院では行政的医療として位置づけているところでございます。
 一方で、東京都全体では質量ともに高まる救急需要に対しまして、委員からもご指摘ございましたとおり、救急医療の東京ルール、そしてスーパー総合周産期の仕組みをことし相次いで導入したわけでございまして、救急搬送や受け入れ体制の強化を図ることによって、都民のより大きな安心の実現に向けた取り組みを行っているところでございます。
 これまでも都立病院は、都内の医療機関の一翼を担いまして、救急医療への取り組みを大きな使命として行ってきておりますが、その中では、全国に先駆けて取り組みました東京ERの整備など、先進的な取り組みも積極的に行ってきているところでございます。
 今後とも、福祉保健局など、そしてまた消防庁など、広範にわたる所管部局と密に連携をいたしまして、また、民間等の医療機関とも協力しながら、救急搬送時間の短縮など、救急医療の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

○大津委員 現場を十病院でしたか、持つ経営本部としまして、やはり現場、首都東京ならではの救急搬送の時間の根本にある実態、特徴というのが、特性がありますので、それらを見きわめた施策の展開を全庁的に、横断的にぜひ行って、全庁的に特に現場を持つ本部がリーダーシップ性を発揮して、都民の命の安全と命を守るために、オール都庁の力を示していっていただきたいということを要望して、質問を終わらせていただきます。

○斉藤委員 それでは、私の方からワンテーマで伺いたいと思います。
 要求資料の方で、二ページ目のところ、これ、私が要求したんじゃない、私の方で発案したんじゃないんですが、かち先生が要求資料として提案されたものですが、ちょっとお借りをして説明したいんですけれども、この中で入院の方の病床利用率八八%から、二十年度でも八四%、割と八〇%台ということで、比較的ちょうどいいところに病床利用率があるのかなというふうに思います。
 基本的に病院経営をやっていく中で、やっぱり病床が上手に埋まっているというのは、非常に経営の安定性に直結するんで、大変どこの事務局の方も気にされているようです。
 もちろん、九割以上あってほぼ満床の方が一番経営的にはいいんでしょうけれども、余り公益性の高い病院が病床ぎちぎちですと、やっぱり少し救急とかの対応の部分で苦しくなりますんで、そういう点では八割以上で安定しているところが意外といいのかなと。あとは、各病院のばらつきとか各科のばらつきの部分で上手にそれが回っているかというところになってくるのかなというふうに思います。
 そうはいっても、ずっと患者さんが入っていられれば、時にはいいなというようなことが患者さんや患者さんの家族の側から見たときにありますけれども、現実は皆さんがご存じのように、入院して、手術をして、気がついたら二カ月ぐらいの中盤になってから、来月には出ていってくださいと。できれば病院を次探してくださいというふうにいわれてしまうことがよくあるというのはご存じのとおりであります。
 もちろんこの部分というのは、一月目、そして三カ月目の部分の入院に伴う診療報酬の変わり目の問題から来るものなんですけれども、一方で、先ほど大津先生も、またかち先生の方からも話がありましたけれども、精神科についてはこういった部分が非常に長くなりがちであります。
 要求資料の一ページ目を見ますと、松沢病院の入院患者の在院期間の状況が、年度締めであるわけなんですけれども、四年以上が二六・三%と。四分の一は四年以上いると。ただ、これ、四年で済んでいるわけではもちろんありませんで、恐らくこれにゼロが一つぐらいつくような人も中にはいらっしゃるだろうということで、変な話、結果的には一生いてしまうような場合もたくさんあるというふうには聞いております。
 そういった意味では、一般の病棟と精神科の方の、これ、松沢で例出してもらっていますが、もちろん松沢に限らない話だというふうには思っていますが、民間の精神病院も含めて、一般病院と入院の期間については大分感覚が現実違っていると。これはもう東京都がどうとかじゃなくて、日本全体の話として大きな現状であります。
 そういった中で伺うんですけれども、精神科の入院が三カ月以上という、一般の病院から見れば長期となった場合に、診療報酬単価、どのような変化があるのか、伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

○黒田経営企画部長 診療報酬の単価につきましては、精神病棟入院基本料は、一日につきまして八千円となっております。入院期間三カ月までは、十四日以内では一日につきまして四千五百九十円の加算がございます。同じく三十日以内では二千四百二十円、九十日以内では千二百五十円の加算となっております。
 しかし、入院期間三カ月以上からは、九十一日以上百八十日以内では一日につき二百円と極端に加算額が減額されております。また、百八十一日以上一年以内では五十円となりまして、さらに、入院期間一年以上では加算がなくなる仕組みとなっております。

○斉藤委員 今伺ったこと、実際には松沢病院の三カ月未満の入院というのが三七・八%で、これですと少なくとも千二百五十円の加算が毎日あって、合計で九千二百五十円以上はお金が入ってくる形になるんですけれども、申しましたように一年以上というふうになりますと、大体四二%ぐらいの方がもう松沢病院の場合は一年以上入っていると。そうすると、大体毎日八千円入ってくるけど、それ以上何年いてもこの金額変わらず、ふえることはない。減ることもないけれども、ふえることもない。
 実際に多くの民間病院の中で、こういってはなんでございますが、山の方というか、郊外の方とか、ちょっとひっそりと、余り他に対して極端に前向きな営業活動をしているような感じでなくても、精神病院の方が維持できてしまうのは、恐らく一日当たり八千円が入ってくれば、それ掛ける病床数ということで、それで十分病院が回っていけば、退院に向けての努力とか、もしくは無理した広報活動などはしなくても、十分病院が経営できてしまうというところがあるんだと思います。
 もちろん、そういったことで長く続くことが、患者さんや患者さんの家族にとって楽な部分もたくさんございますので、それが全く意味がないということは私も思いませんし、そういった患者の容体からしてみて、そういうことがやむを得ないというときもたくさんございます。
 恐らく松沢病院にしてみても、実際には高齢者の方の精神科の病棟もあります関係もあるので、若干そういうふうに、ずっと一年以上在院しているということが、実際にやむを得ない部分というのはたくさんあるんじゃないかなと思います。
 ただ、看護師など医療スタッフの方の配置などが大分一般の病院と違いますので、それゆえに日に八千円でも上手に経営できてしまうということも多分にあるんじゃないかなというふうに思います。
 ただ、そういった中で、特に患者さんがどうやってそのお金を払っているかという部分でいえば、精神科の医療の部分についてはいろんな支援があるんですが、かなり生活保護の方も多いと。そうすると、生活保護というのは医療扶助については全く本人の財布を通さず、直接現物支給になりますので、生活保護の場合は、ちょっといい方は悪いんですけれども、とりっぱぐれがないような状態になっているというふうになります。
 実際に、都立松沢病院の例に沿って、どのくらいの割合の入院患者が生活保護を受給しているのか、伺います。

○黒田経営企画部長 松沢病院におけます平成二十年度末における入院患者数は六百六十六名でございます。このうち、一年以上の長期入院患者は二百八十一名でございまして、さらに生活保護受給者の方は七十四名でございまして、これは長期入院患者の約二六%となっております。

○斉藤委員 一年以上の方の四分の一が、またさらに生活保護ということです。比較的生活保護が、一年以内で何とか退院ができる、もしくはまだ入ってから一年たっていないという状況の中では、まだ生活保護を申請しなきゃいけない状況にならなかったり、もしくはひょっとしたらこれからするという方が中心なのかなというふうに思います。
 こういった状況の中で、今回、公営企業会計決算なので、決算的な部分で見ていけば、それでもこういう状況であって松沢病院が運営できているというのは、これは別にいい悪いじゃなくて現実であるわけなんですが、こういった長期の入院が一般になってしまうような病院については、先ほど申しましたように退院に対する努力というものを余りしないまま、そのまま時間がたってしまうということはたくさんあるということなんですね。
 ところが、そういった中で、都立松沢病院については、現在、社会復帰事業を行っております。これは、先ほどいいました退院に向けての努力という部分になります。
 この社会復帰事業、私もちょっと、少し前になるんですが、四年ほど前になるんですが、現地を見せていただきましたときに、ちょうど担当者の方にお会いできたんで、若干話をさせていただきました。まだこれからいろんなノウハウをつくっていくような段階でありましたけれども、私としてはこういった活動が病院のある意味活性化につながっていくということも含めて、大変いい意味合いを持っているのかなというふうに思っております。
 ただ、この事業、正直いいまして、さっき申しましたように、入院があれば、病院経営というのはある意味割と安泰になってくる場合があると。しかし、そういった中であえて退院をさせるというわけなんで、この部分については、時として矛盾をしてしまう部分があると思うんですね。入院していても、その部分で、高くはないけれどもお金が入ってくるんだけれども、そこをあえて退院をさせるわけですから、これは会計上、どういう取り扱いの中でその事業そのものが収益になるのかな、その活動のコストはどこから出ているのかなというふうなのは気になるわけであります。この事業の収支についてはどのようになっているか、伺います。

○黒田経営企画部長 松沢病院の社会復帰支援室が行っております社会復帰事業につきましての退院促進の取り組みにつきましては、診療報酬上は算定されておりませんで、事業としての収益はございません。

○斉藤委員 診療報酬上の算定はないわけですから、普通に考えていれば、まさに不採算事業の一つでありますし、会計上でいえばプラスになる、会計上モチベーションが上がるものではないです。しかも、社会復帰事業を行うということ自身は、いろんな工夫の面で病院としては大変苦労が多いんじゃないかと思います。
 もちろん対外的にいろいろな活動をしなければいけない。その人の住んでいる、戻るべき役所とも連携をしなきゃいけませんし、その人が外に行ったときに、どういった地域の事業所のサービスを受けるかによっても、いろんなやりとりが必要になってくる。大変手間はかかるけれども、しかも収入がないという部分でいえば、やっていくのはなかなか大変なわけですが、しかしながら、私としては、こういうことに取り組んでいくということが、病院の活性化と、また、社会復帰をさせるという意味で東京都の方がそういったやり方を開発していくという点では、非常に重要じゃないかと思います。
 それで伺うんですけれども、こういった、収益がないけれどもやっていくという部分について、一見、会計上矛盾をしてしまう、会計上存在するこの矛盾に対して、病院経営本部としてはどういう解釈をしているのか、伺います。

○黒田経営企画部長 現在、精神科医療のあり方が、入院治療中心から地域生活中心へと移行している中で、患者さんの入院期間は、できるだけ短縮し、地域で生活しながら治療をしていくことが基本となっておりまして、この診療報酬における考え方も、この考え方に沿ったものというふうに理解をしております。
 松沢病院におきましては、社会復帰支援に積極的に取り組んでいるところでございます。この社会復帰支援を行うことで長期入院患者の方の社会復帰を促進させることを目的としているわけでございますが、そうすることによりまして、入院治療を要する新たな患者さんに対して、早期の入院治療を開始することができます。結果として、全体の入院期間の長期化を防止することが可能になるというふうに考えております。

○斉藤委員 大変ですが、松沢に限らず、昔からある精神病院については本当に、入院したら入りっ放しみたいなことを一般の方でいわれる方もいらっしゃったし、実際にそういった場合の病院も多かったんですけれども、松沢病院だって、今見たように四年以上という方が二六%もおりますから、決してそれから全く無縁だというわけではなかったと思います。
 長年のそういった事情の中で、近年の動きも見て、社会復帰事業を積極的にやることによって、長期の方を退院させて、そのかわりに新しい患者さんが入っていく、これは今いったみたいに一年未満であれば八千円を超えたお金がとれるわけですから、多分、会計上もプラスになっていくというふうな発想で理解ができると思います。
 もちろん、お金のことだけでやっているわけではないというのは重々承知しておりますが、会計的にも、ある意味、固定化したような松沢病院の中の各病棟の病院会計の中でも、そういったことで変化を起こすということが可能なのは非常にいいことではないかと思います。
 火曜日に、ちょうど厚生委員会の方の病院経営本部、事務事業の質疑がありまして、スーパー救急についてそのときに伺ったんですけれども、この部分でも、早期の退院というものがスーパー救急の条件に入っているということがありましたが、この辺はなかなか、それをいうはやすく、実際に行うは非常に難しいというふうなことなんだということはよくわかっております。
 そして同時に、そういったことを、スーパー救急でも一般の長期入院者の方であっても、都立松沢病院としては、それこそ社会復帰をさせるに当たって、地域の在宅生活支援を行うインフラというものが、どうしても実績を上げるためには必要になってくると思います。
 また一方で、その受け手になる役所の方も、そして、きょうちょうど午前中に精神の授産施設の皆さんとちょっといろんな意見交換をしたんですけれども、そういった実際に受け手になる施設側から見ても、こういった病院、福祉事業者の方に例えばその患者さんの立場が移っても、やっぱりそれまで入院をしていた病院側の方の、特にその中のPSWとかケースワーカーの方の助言というのは非常に役に立つんですね。
 本当に困ったときにはまたその病院に、本当に悪いときだけ、またもう一回再入院させて、一時的にまた体調を戻していくというようなやりとりをやっていくということが、事業所にとっても、事業所でずっと無理して抱えているんじゃなくて、必要なときに病院に助けを求めるというやりとりがあるということは非常に助かることなんですね。これを当然松沢病院としてもやっていっていただきたいというふうに思っています。
 同時に、そういった連携の中で、いろいろ気がついたことがあります。これはまさに、福祉保健局が本当は管轄する話なんだろうと思うんですけど、病院のケースワーカーの方が先に気がついたり、病院のケースワーカーの方が先に福祉の事業所からいろいろ意見を聞いて、こういうふうにした方がいいよということを聞いたり、そういったことが多分にあるんですね。
 ですから、そういったノウハウをぜひいろんな、都立病院に限らず、外の病院や民間の病院に情報発信をしていただきたいと思うし、また同時に、そういったものを福祉保健局とか、もしくは地域の市区町村の行政の方に発信をしていくということが、この後の社会復帰のためのインフラ整備のために役に立つというふうに思っているんですが、実際にそういった情報発信を松沢病院がどのように取り組んでいるのか、伺いたいと思います。

○黒田経営企画部長 松沢病院全体での取り組みといたしましては、精神保健福祉士、PSWを中心としまして、地域における医療機関や行政機関、並びに社会復帰関連施設等との間で、患者紹介や逆紹介等の医療連携を実施しているところでございます。
 また、地域との連携を強化するために、各種の協議会ですとか連絡会、ケア会議、事例検討会等を通じまして、患者さんに関する病院と地域の情報の共有、目的の共有を図りまして、いわゆる顔の見える連携を進めているところでございます。特に、地元の精神障害者生活支援連絡協議会ですとか退院促進連絡会議などには積極的に参加しておりまして、地域ネットワークの構築に努めているところでございます。
 情報発信の取り組みにつきましては、地域の医師会や医療従事者の方に対しまして、松沢病院の医療機能や診療内容を掲載しました連携だよりという機関紙のようなペーパーを発行しておりまして、これらによる広報活動のほか、各種会議の場を活用した情報発信を行っているところでございます。

○斉藤委員 最後に、一言いわせていただきます。
 こういったことに関しては、やっぱり現場をやっていく中で発展があると思いますし、日本の中で、社会復帰の部分で、すごくあの病院は実績があって、どんどん退院ができて、どんどん地域で生活ができてというふうな、そういったすごい精神病院もそんなにまだたくさんございません。
 そういった中で、都立松沢病院が日本の中でもかなり先進的で、また、非常にレアな疾患についても扱っているということで、全国的にも大変知られているわけですから、その部分で多分全国的に、いろんな社会復帰事業をやっていく中での研究は、この地域や広い範囲にわたってアナウンスをして、その技術を研究した上に広めていただきたいというふうに思っています。
 イタリアとか、また、古くはアメリカあたりになりますと、かなり早い段階で病院の方からの退院をかなり強制的に促して、それで、病院の医療ではない、社会の福祉の中にこの精神障害者の問題というのを広めていったという経緯がありますので、そういったところにいきなり日本が今すぐなるというのは、ちょっとまだ、なかなか難しいのかなと思います。
 ただ、一方で、そういったものに向けて、世界のいわゆるそういった潮流に向けて地域の環境整備をしていく中で、松沢病院がいろんなことを発信していくというのは非常に大事なことでありますので、ぜひともそういったことで研究をしていただいて、すぐ身近にあります福祉保健局などにどんどんハッパをかけて、地域の方の福祉の部分でこういうのが実践的に役に立つよとアドバイスをしていただければ、地域の事業所も大変喜ぶかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 以上で質問を終わります。

○橘委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○橘委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 以上をもちまして第二分科会における決算の審査は終了いたしました。
 なお、本分科会の審査報告書につきましては、分科会委員長において取りまとめの上、委員会委員長に提出いたしますので、ご了承願います。
 これをもちまして第二分科会を閉会いたします
   午後三時四十九分散会

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