公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第四号

平成十七年十月二十八日(金曜日)
第二委員会室
   午後一時十三分開議
 出席委員 十一名
委員長ともとし春久君
副委員長山田 忠昭君
副委員長斉藤あつし君
副委員長古館 和憲君
石森たかゆき君
たぞえ民夫君
上野 和彦君
大西由紀子君
吉田康一郎君
松原 忠義君
田代ひろし君

 欠席委員 なし

 出席説明員
都市整備局局長梶山  修君
次長村松  満君
技監小林 崇男君
技監依田 俊治君
総務部長安藤  明君
都市づくり政策部長福島 七郎君
都市づくり政策部長矢島 達郎君
都市基盤部長成田 隆一君
市街地整備部長石井 恒利君
市街地建築部長野本 孝三君
都営住宅経営部長小林 計代君
住宅政策担当部長水流潤太郎君
航空政策担当部長小山  隆君
多摩ニュータウン事業担当部長酒井 洋一君
再編整備推進担当部長庄司 静夫君
参事北村 俊文君
参事飯尾  豊君
参事金子 敏夫君
参事中沢 弘行君
参事山室 善博君
参事山口  明君
参事渡辺  滋君
参事今井  光君
参事宇多田裕久君
病院経営本部本部長大塚 孝一君
経営企画部長奥田  匠君
サービス推進部長徳毛  宰君
参事及川 繁巳君

本日の会議に付した事件
平成十六年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成十六年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)
病院経営本部関係
・平成十六年度東京都病院会計決算(質疑)

○ともとし委員長 ただいまから平成十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、都市整備局及び病院経営本部関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 初めに、理事者の欠席について申し上げます。
 石井経営改革担当部長は病気療養のため、また安井都市景観担当部長は公務のため、本日の分科会に出席できない旨、申し出がありました。ご了承願います。
 これより決算の審査を行います。
 平成十六年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○安藤総務部長 十月十四日の当分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元に配布しております当局の平成十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会資料の表紙をめくっていただきまして、目次をごらんください。
 資料は、1の北新宿地区市街地再開発事業の概要外二件でございます。
 それでは、まず一ページをお開き願います。1の北新宿地区市街地再開発事業の概要でございます。事業の経緯、計画内容を記載してございます。
 次に、二ページをお開き願います。2の環状第二号線新橋・虎ノ門地区市街地再開発事業の概要でございます。事業の経緯、計画内容を記載してございます。
 三ページをごらんください。3の大橋地区市街地再開発事業の概要でございます。同じく事業の経緯、計画内容を記載してございます。
 以上で資料説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○ともとし委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○山田委員 それでは、私、北新宿地区再開発事業によります放射六号線の整備についてお尋ねをいたしたいと思います。
 私、住まいが西東京市ということでありまして、こちらの都庁に通うには、今は西武池袋線の練馬で大江戸線に乗りかえて都庁に来ております。たまには車で来ることもあるんですが、そういうルートで都庁に来ております。
 そして、車を利用して来るときには青梅街道を利用させていただくわけなんですが、青梅街道を利用して都庁に来るときに、中野坂上あたりからいつも自動車が渋滞するということです。それは、新宿駅の大ガードの渋滞が起因して、中野坂上あたりから込んでしまうということなんでしょうけれども、こういう意味では、青梅街道は多摩地域と都心を結ぶ大変大事な幹線でもありますし、また青梅街道の整備にとっても大変大事だと思っていますし、新宿周辺の活力向上はもちろん、多摩地域の発展にとっても、この放射六号線の整備の早期完成を望んでいるところであります。
 都は現在、この青梅街道のバイパスとして、放射六号線の青梅街道から小滝橋通りの約一キロ区間を整備しておりますけれども、この一部を北新宿地区の再開発事業によって整備しているというわけでございます。このため、放射六号線を整備する北新宿地区の再開発事業には、その関係する市民も含め、都民も含め、大いに関心を寄せてきたところでもございます。
 そこで、本日は、放射六号線整備の観点から、北新宿地区再開発事業の意義や効果について何点かお尋ねしたいと思います。
 まず、北新宿地区再開発事業の概要と意義についてご説明いただきたいと思います。

○石井市街地整備部長 北新宿地区の再開発事業は、都市計画道路の放射六号線と青梅街道の交差部に位置する約四・七ヘクタールの区域で行っております都市計画事業でございまして、平成六年に都市計画決定され、十年に事業化されたものでございます。
 この地区周辺は、もともと新宿副都心の一角に位置しながら、狭隘な道路が多く、宅地も細分化され、木造住宅が密集するなど、有効な土地利用が図られていなかった地域でありました。これをもう少しわかりやすくデータでお示しいたしますと、道路が狭いため、緊急車両の通行がままならないなど、地区内の道路の状況は、従前の道路率で申し上げますと一〇%にも満たず、また地区内の建物につきましても、燃えやすい木造住宅が八割を占めていた地域であります。
 この再開発事業は、こうした地域の状況を踏まえ、今、副委員長がご指摘の新宿周辺の交通の混雑緩和、とりわけ新宿駅の大ガード周辺の渋滞の緩和に向けまして、放射六号線を整備することとあわせまして周辺のまちづくりを一体的に行うことによりまして、都市再生緊急整備地域の一角をなす、この地域の防災性の向上や副都心にふさわしい土地利用への転換を図り、ひいては東京の再生に寄与することを目的とするものでございます。
 また、この事業では、都市計画道路である放射六号線のほか、生活道路四路線や公園などの公共施設を面的に整備するとともに、従前の建物にかわって七棟の再開発ビルを建てる計画でございます。
 以上でございます。

○山田委員 今、意義についてご説明いただきましたけれども、そういう数多くある意義の中でも、やはり混雑緩和が重要性が高いと私は思っております。
 私も最近、現地を改めて視察させていただきましたけれども、中野坂上から現地を見渡しますと、大久保の方向が大分見えるようになってきております。事業が着実に進んでいるというようでありますけれども、放射六号線の予定地はどれくらいすいているんでしょうか。再開発事業によります放射六号線整備の進捗状況についてお伺いいたします。

○石井市街地整備部長 再開発事業による放射六号線整備の進捗についてのお尋ねでございますが、既に道路予定地の九割以上を確保しており、下水道などの供給施設の整備を進めているほか、一部では放射六号線の築造工事に既に着手しております。

○山田委員 用地取得も九割ということでありまして、道路の築造工事も始まっているようであります。一日も早い道路の交通開放を期待いたしているところであります。
 放射六号線につきましては、都施行再開発の区間に加えて、その東側の区間、組合施行再開発事業や街路事業で整備していると聞いております。こちらの方のパンフレットにもそのご説明がございますけれども、ただ、道路については、一つの区間だけ整備できればというわけではないと思います。やはり道路というのは、全面供用開始といいますか、できることによって道路が生きてくるわけであります。
 この再開発事業については、今ご説明がありましたように、三つに分けた形で整備しているということでありますけれども--失礼しました。組合施行再開発事業、街路事業で整備しているということだと思いますけれども、この事業者が連携して整備していくことが何よりも大事だと思います。
 そこで、全線開通に向けて事業者間で具体的にどのような調整を行っているのか、お尋ねいたします。

○石井市街地整備部長 放射六号線の青梅街道の淀橋から小滝橋通りまでの一キロメートル区間につきましては、新宿方向に向かいまして、淀橋から順に、都施行の再開発事業、次に組合施行の再開発事業、そして街路事業の三つの事業が分担して整備をしておりますことから、これまでも三事業者が連携、共同して道路整備に取り組んでまいりました。
 具体的に申し上げますと、交通開放に向けて各事業者がそれぞれ課題を抱えているわけでございますが、それぞれの課題を抱える中、事あるごとに情報交換や工程調整を行ってきたほか、各事業者が共同して交通管理者との協議や地元説明を行うなど、常に協力し合い、一体となって対応してきております。

○山田委員 今、三つの事業者が事業を分担してということでご説明がありましたけれども、そうした事業者間で工程調整などを行った結果、整備の見通しについてはどうでしょうか。整備の見通しはついたのかどうか、ご説明いただきたいと思います。

○石井市街地整備部長 ただいまご説明申し上げましたように、放射六号線の整備につきましては、事業者の緊密な連携による取り組みが功を奏しまして、このほど、今年度末には全線にわたって当面二車線で交通開放する見通しがついてございます。これにより、大ガード付近での混雑の激しい青梅街道を初め、新宿周辺の交通混雑の緩和に寄与できるものと考えております。
 以上でございます。

○山田委員 この放射六号線が開通するといいますか、このことによりまして、青梅街道と職安通りとの間がショートカットされれば、新宿大ガード付近の交通量が分散し、通過時間が大きく短縮されるものと期待できると思います。これは、新宿周辺地域はもとより、多摩地域にとっても極めて大きな経済効果だといえると思います。
 本日、先ほどよりお話をお聞きいたしましたけれども、この新宿地区の事業がいかに大変大事な、重要な事業であるかということは論をまたないと思います。再開発事業の推進にはさまざまな課題や苦労があると思います。この事業も決定されてから十年以上経過して、最後の事業、終盤戦に今入っていると思いますけれども、引き続き事業の推進に努力していただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。

○斉藤委員 今回の決算についてですが、三カ所の再開発事業が対象となっているという、大変シンプルな決算であります。
 北新宿、大橋、環状第二号線新橋・虎ノ門と、この三つ、ちょうど二十三区の中であります。今、山田副委員長の方の質問の中では、私は小平ですから、西東京市のお隣なわけですけれども、そういった流れの中で、青梅街道に関係する部分というのは、私どもはイメージができる。北多摩の人間から見れば、新宿に向かう中でイメージができる部分なんですが、ちょっとわかりにくい大橋と、そしてあと環状第二号線について幾つか質問したいと思います。
 特に、今回の決算を見ますと、徐々にこの計画が進んでいく中で、そうはいっても、まだスタートラインに立ったような感じの印象を受けます。決算の一〇ページを見ましても、まだ不用額の方も大分出ておりますし、翌年度繰り越しも結構出ています。こういった中で、本当にこれからという感じがするんですが、そういった際に、やはり東京都がかかわる事業ということで、多摩の地域の都民から見ても事業に対して納得ができる収支のバランスなど、そしてまた環境や周辺との調和という点で理解ができるようにしなければなりません。区部の事業とはいえ、東京都の事業である以上、どこの都民から見ても納得されるような事業であることが一つの理想であります。
 そういったことを踏まえまして、幾つか質問させていただきます。
 では、まず、環状二号線の地区について伺います。
 この地区については、立体道路制度を活用して、環状二号線と建築物とを立体的に重ねて整備を行うということで伺っております。この立体道路制度、大変珍しい印象を受けますが、どのような制度で、これを活用して整備するという具体的な部分について、箇所について説明をいただきたいと思います。

○石井市街地整備部長 まず、立体道路制度に関する質問にお答えいたします。
 従来は、道路の上下の空間には、建築物などの設置は原則として認められておりませんでした。それが、平成元年の道路法等関係法令の改正によりまして、道路の上下に例外的に建築物などを設けることができるようになったわけでございます。この制度を立体制度といいまして、これを再開発事業に適用することとしたわけでございます。
 環状第二号線新橋・虎ノ門地区内で立体道路制度を活用している箇所とのお尋ねでございますけれども、その場所は、この再開発の中で一番大きなビルが建つ、私どもが虎ノ門街区と呼んでいる街区がございますが、この中で環状二号線と建築敷地とが重複している部分がございまして、ここに適用してございます。
 この重複部分の面積は約七千平方メートルでありまして、道路の延長は約百七十メートルであります。重複利用している部分では、地下道路のさらに下を駐車場や機械室に利用したり、あるいは道路の上にビルなどを建設し、道路と建物とが立体的に重なる計画となっております。

○斉藤委員 なかなか事例を見ることが少ない、大変特殊なつくり方をするようですけれども、こういった事業の中身みたいなものが話題になるにつれて、具体的にここまで新しい手法をとるメリットについても、多分一般の方から興味が出てくると思います。
 この再開発事業にとって立体道路制度を活用する具体的なメリットについて、ちょっと詳しく教えていただければと思います。

○石井市街地整備部長 再開発事業は、改めて少し申し上げますと、道路用地と再開発ビルの建築敷地の両方を同時に確保しながら進めていく事業でございます。
 立体道路制度を活用することによりまして、重複利用区域の用地取得費は、道路側と建物側の両者で負担することができるようになりますので、それぞれ用地の取得費を軽減することができます。この結果、再開発事業全体の事業費の軽減につながります。
 また、新橋・虎ノ門地区のように地価の高い都心部では、流通する不動産物件も少ないというようなことから、権利者が移転先を確保しにくいというのが通例でございます。こうした地域で立体道路制度を活用することによりまして、再開発区域内の道路上に再開発ビルの敷地を確保することができるわけでございますので、道路整備によって移転を余儀なくされる権利者にとっては、以前と同様な場所で居住や営業を継続することも可能となりまして、生活再建に役立つことになるわけでございます。

○斉藤委員 建物とか、そのものを見てしまうと、なかなかその背景みたいなものがわかりにくいんですが、今、答弁を伺った中で、代替地になるような不動産物件が少ないということについては、なるほど、これは多摩の地域の方から見るとなかなかわかりにくい背景ですので、今のように答弁いただくと、ちょっとこの場所の事情が理解できるかなという感想も持ちます。
 それでは、実際にどんな感じに最終的にできるのかなと。まだ本当にそのスタートラインの部分ですので、イメージがなかなかつかめないわけなんですが、東京近郊で実際にこの立体道路制度を活用している事例がありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。わかりやすい事例がありましたら、その概要についてもわかる範囲でお願いしたいと思います。

○石井市街地整備部長 余り事例のない立体道路制度の事例でございますけれども、立体道路制度の適用事例としましては、事業中や計画段階のものも含めて、全国で二十例余りがございます。ここでは、このうち東京周辺で行われております二つの事例をご紹介させていただこうかと思います。
 まず一例目でございますが、埼玉県和光市における事例であります。これは、東京外かく環状自動車道の建設に合わせまして、トンネル構造物の上に、当時の住宅・都市整備公団、現在の都市機構が賃貸住宅を建設したものでございます。
 次に、最近の例としましては、さいたま副都心の中での事例がございます。これは、総合的な文化施設でありますさいたまスーパーアリーナなど幾つかの建物の地下に首都高速道路を通したものでございます。
 なお、東京都内におきましては、住宅を含む建物に立体道路制度を適用した事例がございませんで、この再開発事業への適用が都内で第一号となります。

○斉藤委員 ありがとうございます。実際の事例をちょっとお話しいただくと、パンフレットを見てある程度わかる部分もたくさん、この事業についてはあるんですけれども、なかなか他の事例なんかが詳しく載っている様子がありませんので、実際にどういうところで行われているかがわかると、より理解しやすくなります。
 ただ、その中で、今回実際には住宅に絡むという点で考えると、第一号的な事業であるということがお話の中にありました。そういうふうなことを聞きますと、メリットが大きい反面、課題もあるんではないかという心配が出てくると思います。
 特に、建設するときや将来、管理するときに、一般的な建築物とは異なる工夫というもの、そしてまた異なる配慮みたいなものが考えられると思いますが、そうした課題と対応策について教えていただきたいと思います。

○石井市街地整備部長 立体道路制度の課題と対応策というお尋ねかと思います。
 まず、建設時の課題といたしましては、道路と建物が重複いたしますので、その互いの構造が拘束されてまいります。そうした拘束の中で、道路と建物それぞれに求められる安全性や機能を確保することが挙げられようかと思います。そこで、道路と建物双方の耐震強度や防火性能を確保するために、設計や施行段階から十分な調整を図ることが不可欠でございます。また、道路の騒音、振動が建物に伝わらないように、道路構造と建築構造とを分離し、その間に緩衝材を設けるなどの対策をとることも十分検討しなければなりません。
 したがいまして、これらの課題について、再開発事業者が将来、道路管理者と十分に協議しながら連携をとっていくことが必要不可欠と認識しております。
 また、完成後の課題でございますが、道路と建物が不可分な関係の中で、双方の維持管理や更新を適正に行うことがあるわけでございます。特に、火災など緊急時の対応や大規模改修のときなどは、道路側と建物側との協力が欠かせません。そのため、将来にわたりまして道路管理者と建物所有者との間で取り決めるべき基本的なルールについて管理協定を締結するなど、適切に対処していく必要があると、このように考えております。

○斉藤委員 それでは、環状第二号線については大体わかりました。
 次に、大橋地区についても伺いたいと思います。
 目黒区の大橋地区には、首都圏の三環状道路の一つであります中央環状新宿線と東名高速道路、これにつながる首都高速三号線とを結ぶ大橋ジャンクションが既に建設中と聞いております。
 こちらの場所、私、学生時代にはアルバイトで何度も通りまして、大体場所のイメージがつかめるんですが、ここにこれだけ大きな建物ができるというのは、ちょっと、地元の方はいろいろ情報があるでしょうけど、多少離れた人間から見ますと、結構想像がつかない感じがいたします。
 この大橋ジャンクションについては、その完成によって高速道路のネットワーク形成が図られ、首都高速道路を効率よく走ることができるようになり、渋滞解消や大気汚染の改善に加えて、東京の経済活力の向上などに大きく寄与するというふうに聞いています。
 ただ、これだけの大きな工事でありますから、技術的にも難しい部分が多々あると考えられます。経済効果と実際にかかる建設コスト等のバランスは、大変気になるところではあります。
 それ以上に、地下三十メートル、地上三十メートルの高低差六十メートルというループを密集地につくるわけでありますから、本当に難工事ということが予想されますので、安全と周辺への配慮に対しては最大限の努力を願うものであります。
 さらに、この施設をつくることと再開発事業がどのように結びつくのかがなかなか都民の方にはわかりにくいんではないかと思います。再開発といいますと、こういった大きなものだけではなくて、いろいろなものが複合しているというイメージがありますから、この辺なかなかわかりにくいのかなというふうに思います。敷地全体の大部分を、スタジアムのような形になっていますジャンクションループにとられておりますので、再開発という名称に対して奇異な感じを受けるというのも率直な感想であります。
 この建造物が、大きなループが、それ以外の部分とどのように関連性を持っていくのか詳しく伺いたいと思います。いかがでしょうか。--ちょっと今、言葉が足りませんでした。そこで、大橋ジャンクションの建設ということに関係して、どうしてこの再開発事業という形になったのか、そういうふうな必要性になったのか、改めて伺いたいと思います。

○石井市街地整備部長 大橋ジャンクションと再開発の関係についてのお尋ねでございます。
 この大橋ジャンクションは、平成二年に都市計画決定がなされ、平成六年には事業化されましたが、ジャンクション整備を道路事業で進めますと、地元の住民の皆さんは住みなれた土地から転出を迫られるという、それだけでなく、地域が分断されてしまうという不安と危機感を抱いたというような状況がございます。
 このため、当時の首都高速道路公団は、次の二つの要求、要望にこたえる必要に迫られました。一つは、地元住民から、この地域での生活再建がジャンクション整備の条件であるという強い要求でございます。もう一つは、地元目黒区からの周辺まちづくりへの要望でございました。
 こうしたことから、その後、地元住民によるまちづくりへの機運が高まる中、東京都、目黒区、そして首都高速道路公団との間で調整を図りまして、地域住民の生活再建はもとより、周辺環境に配慮したにぎわいのあるまちをあわせて形成していくため、土地の高度利用を図りながら、ジャンクションに隣接して再開発ビルを建設し、ジャンクション整備と一体となった周辺のまちづくりを都施行の再開発事業により実現することとしたものでございます。

○斉藤委員 それでは、この大変大きなジャンクションのループが建ちますと、再開発で大変大きな四十一階までのビルが建つようですが、この再開発ビルのテナントに対して、このループの存在が、テナントにとってみれば圧迫感を感じる部分があるんじゃないかと思います。もちろん、場所が非常にいいところでございますので、それなりに借り手の方が全くないということはまずあり得ませんけれども、ただ、こういった圧迫感とか景観といった問題で、多少マイナス要素が出てくるんじゃないか。例えば、応募とか、テナント料もしくは賃貸料、価格という点で多少なりとも評価にマイナス影響が出るんじゃないかというふうな部分が心配なんですが、そのあたりについてはどのようになっているんでしょうか。

○石井市街地整備部長 先ほどもご答弁申し上げましたように、この再開発事業は、地元住民や地元区の要請に基づき、ジャンクション整備と一体となったまちづくりを進めるために、都が施行するに至ったものでございます。このため、この再開発事業は、ジャンクションが既にあるものとして、これを織り込みまして、再開発ビルの床の利用計画や収支計画を立ててございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、ビルの床利用計画におきましては、ジャンクションに面することとなりますビルの低層部に駐車場や駐輪場などの非生活空間を配置いたしまして、一方、環境の良好なビルの上層部には住宅を配置するなど、さまざまな工夫を凝らしております。
 そういうことで、ビル全体の価値が下がるのではないかという副委員長のご心配は、大変ありがたく受けとめさせていただきたいと思いますけれども、私どもとしてはそのような心配はしておりません。

○斉藤委員 過去、これまである住宅とか店舗等との兼ね合いもありますので、いきなり建つビルとは少し性格が違うということかと思います。
 もう一つ、最後の質問なんですが、再開発地域に隣接する地域にとっては、今までバスの車庫程度の場所だったものが、いきなり巨大な建物、高層ビルができるわけですから、大変その環境変化は大きいと思います。このあたりについてどのような配慮をしているのか確認したいと思います。

○石井市街地整備部長 今、副委員長からお話がありましたように、このジャンクションは確かに大きな構造物でございますことから、その整備に当たりましては、いかにこの周辺地域と調和させていくかが大変重要であると考えているところでありまして、再開発事業と一体となって整備を進める意義はまさにそこにあると、このように認識しております。
 このため、現在、再開発区域とその周辺地域とのまちづくりの一体性や連続性の確保を図るため、この地域の住民と東京都、目黒区、首都高速道路株式会社の四者が懇談会を設置し、開催し、意見交換を行っているところでございます。この懇談会におきましては、基本的にこの事業に対する賛同が得られておりまして、この事業を契機として、良好な景観づくりや住環境の保全など、地域のまちづくりに対する機運が醸成され、盛り上がりつつあると、多少手前みそでありますが、そのように認識しております。

○斉藤委員 最後に、質問ではありませんが、一言いわせていただきます。
 この地区の再開発事業に関しての概要はわかりました。大事なことについては、地区内に住んでいる皆さんの生活再建、定住の確保について、行政として親身に取り組んでいただく姿勢ではないかというふうに考えます。ジャンクションという特殊な建物を、ある意味で逆手にとって、地権者の方々だけではなくて、地域の皆さんにも、都民にも上手に還元していただけるようお願いします。
 だんだん工事が進むにつれて、それなりの、最初にはわかりにくかったトラブルも出てくるかと思いますが、それこそ親身に対応していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 以上です。

○上野委員 私からは、北新宿地区の事業について三点ほどお伺いいたします。
 私の地元江戸川区におきましては、亀戸・大島・小松川地区、そういった都施行の市街地再開発事業が行われておりまして、今年度をもって施行完了の予定でございますが、実は、私はその小松川地区の一角のマンションに住んでおります。また、都の職員時代には市街地再開発事業を手がけたこともございまして、再開発事業の進捗状況や事業収支については、日ごろから大変関心を持っているところでございます。
 ご存じのとおり、再開発事業の会計面での難しいところというのは、事業の中で独立採算を図らなければならないということでございます。いわゆる工事費や用地買収費、建物などの補償費といった支出費用を、公共施設管理者負担金や国、都からの補助金、また保留床処分金などの収入で賄っていかなければならないということでございます。そのために、亀・大・小などの市街地再開発事業は、特別会計を設置して事業の経理を明確にしているところでございます。
 今回の北新宿地区及び環状第二号線地区、大橋地区、これでは、同じ都施行再開発事業でありながら、企業会計方式を導入されていらっしゃいます。そこで、まず改めて、今回対象の三地区で公営企業会計制度を採用するに至った理由と、その意義についてお伺いいたします。

○今井参事 委員からご紹介されました亀戸・大島・小松川地区や、あるいは白鬚西地区等、いわゆる既施行の再開発地区におきまして行ってきた経理方法は、再開発事業が保有する資産ですとか負債などの状況が制度上、明確となりませんで、会計情報が必ずしも十分でなかったということが反省点として挙げられます。このことを踏まえまして、北新宿地区を含む三地区の会計におきましては公営企業会計制度を導入いたしました。
 その意義でございますが、事業収支の均衡が重要な課題となっております都施行の再開発事業にあって、収入と支出、あるいは資産と負債などの財務内容を正確に把握いたしまして、事業収支をより一層明確化することでございます。このことによりまして、採算性をさらに重視しました事業運営が可能となりまして、また、事業の透明性とか信頼性が一段と高まることによりまして、都民への説明責任も果たせることになると考えております。

○上野委員 財務諸表の作成によって、事業収支をより一層明確化させるということでございますけれども、この北新宿地区は都庁から歩いて行ける距離ですので、先日も私、見てきました。現地では、既に本当に空き地もかなり大きく広がっております。また、グランドテラス新宿という再開発ビルも一棟建っておりまして、事業の推進に努力されている要素というのがうかがえたわけでございますが、その一方では、これまで多くの予算を支出し、事業費確保のための企業債も相当発行してこられたことと思います。このため、少しでも早く、少しでも多く収入を確保することが、事業収支の均衡を図る上で大変重要であると思うわけでございます。
 今回の決算説明資料の一三ページ、こちらの方を見てみますと、この地区の処分収益収入率は一二七・七%と上がっております。そこで、この処分収益の内容をお伺いいたしますので、よろしくお願いいたします。

○今井参事 決算説明資料の一三ページにございます、北新宿地区で計上されました処分収益四十三億七千七百万円余でございますが、委員ご紹介のように、地区内で最初に完成されました再開発ビル、グランドテラス新宿と名づけましたが、この百十三戸を譲渡したことによる収入でございます。
 この内訳でございますが、二十五億六千万円余は、従前からここに権利者として住んでおられた方の従前資産をこの中に置きかえた、いわゆる権利床、この七十四戸の資産相当額でございます。また、十八億一千七百万円余は、広く一般の方に売り出しました保留床三十九戸を売却したことによる収入でございます。
 保留床は、昨年の夏に分譲いたしましたが、地域の立地特性を十分反映した商品企画の採用でございますとか、あるいは民間のノウハウを活用した販売戦略の展開によりまして、全戸、即日完売いたしました。また、この結果、一億円余りの利益を上げております。

○上野委員 順調に収益が上がっているということでございますが、北新宿地区全体で事業収支が果たして確保できるのかが、今後の大きな関心事でございます。
 いただいたパンフレットを見ますと、放射六号線と青梅街道に挟まれました1街区は、相当大きな街区でございます。こうした敷地の売却も重要な収入源となるわけであります。
 そこで、事業収支確保の見通しと、今後の事業推進に向けましたご決意をお伺いいたします。

○石井市街地整備部長 都施行の再開発事業にとりましては、ただいま委員からお話がありましたように、保留床や敷地を売却し、地区全体で収支を均衡させていくことは極めて重要でございまして、この地区では、これまでに全体事業費の約八割に及ぶ予算を起債を含めて投じてきておりますことから、それに見合う収入を早期に確保していくことが何としても欠かせません。
 お話の1街区は、一・四ヘクタールと広い面積を有しまして、二つの幹線道路に面しました大変ポテンシャルの高い敷地でありますことから、その売却収入が地区全体の収支を大きく左右することになります。このため、都は、1街区を初めとする敷地の売却に当たりまして、市場動向の調査を行うとともに、地域の活力やにぎわいの創出、再開発ビルの魅力アップなど、敷地のポテンシャルを最大限に生かすさまざまな方策の検討を進めております。
 あわせまして、最近の不動産市況も見きわめつつ、これまでの投資に見合う事業全体の収入の確保を図っていくこととしております。
 本事業は、放射六号線の整備による交通混雑の緩和、密集市街地の改修による防災性の向上、さらには副都心にふさわしい土地利用への転換など、多岐にわたる事業効果を持つものであり、お尋ねの事業収支の均衡に十分配慮しつつ、この地区の事業を積極的にこれからも推進してまいる所存でございます。

○上野委員 大変力強いご決意を伺いました。
 再開発事業は、確かに時間はかかりますけれども、完成すれば、今のご答弁にありましたように非常に大きな効果がございます。災害にも強くなるし、生活環境も大幅に改善されるし、活力と潤いのある総合的なまちづくりに大いに寄与するものでございます。
 事業者としましては、産みの苦しみも多々あるかとは思いますけれども、今後とも決して油断することなく、事業収支の確保に向けまして万全の方策を講じていただきたいと思うわけでございます。
 特に、北新宿地区は極めて公共性の強い、重要な事業でございます。確実に、また着実に進めることはもちろんでございますけれども、事業の採算性も重要なファクターであります。確かに、事業の採算をとるというのは、初めにお話ししましたように大変なことでございますが、公営企業会計を採用した趣旨に照らしまして、今後とも事業の推進と効率化に努めつつ、ぜひとも収支の確保を図ってもらうようご要望いたしまして、私の質問を終わります。

○古館委員 それでは、私も東京都都市計画事業大橋地区第二種市街地再開発事業について質問いたします。
 この公共による第二種市街地再開発事業は、高速道中央環状新宿線大橋ジャンクションを含む、土地の高度利用を図るための第二種市街地再開発事業を行うというものです。しかし、高速道路新宿線並びに大橋ジャンクション以降の品川線につきましては、私ども日本共産党はことしの第一回定例会で指摘をいたしましたが、現在は公団から株式会社になりました首都高速道路株式会社が自己資金で賄い、本来は料金で回収すべきものが、この高速道路の建設であります。それを今回は、民営化されると資金調達は困難、先行きが不透明、このようにいいまして、東京都が直轄事業として行うという前例のないことまでやっていることであります。この品川線につぎ込む都財政は一千億円、大橋ジャンクションはその結節点となっており、その関連で出てきたのが大橋地区の再開発計画であります。
 そこで、お伺いいたしますけれども、この大橋地区再開発は、今も指摘いたしましたけれども、大橋ジャンクションの建設によりまして、この再開発計画が出たものであり、都が行う必要など全くないものだと考えています。やり手がいないなどの口実で都施行で進めていくなどは、見直しをし、中止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○石井市街地整備部長 この地区の再開発事業を都施行で行う理由といたしまして、四点あるかというふうに認識しております。
 まず、先ほども少々お話をいたしましたけれども、従来から、東京都施行での再開発事業の実現というものを地元及び地元区が強く期待し、求めてきたこと。
 次に、中央環状新宿線の早期供用開始に向けて、これに合わせた再開発事業を進めることがぜひとも必要といった緊急性があること。
 第三に、この事業は、極めて難しい工事であるジャンクション整備と、一方で、困難な権利調整を求められる再開発事業と一体的、同時にさまざまな調整を経て進めていかなくてはならないという事業の困難性があること。
 最後に、民営化を控えた、当時の首都高速道路公団が新たに再開発事業を実施することが、状況の中で大変難しい情勢となったこと。
 以上の四点から、地元の長年にわたる議論の成果を具体化すべく、国土交通省及び当時の首都高速道路公団から強く要請を受けまして、総合的に判断した結果、都施行による再開発事業を実施することとしたものでありまして、引き続き積極的に推進していく所存でございます。

○古館委員 今、四点の東京都なりの意味合いというのが表明されたわけでありますけれども、それは住民の意向だというふうにいっておりますけれども、もともとジャンクション計画というのはなかったと思うんですね。
 この計画を見ましても、平成二年の八月に都市計画決定がされて、ジャンクション計画が出てきたというのは最近の十一年ですからね。ですから、もともとジャンクション計画というのはなかったわけです。
 このジャンクション計画によって、ジャンクションのための用地がどうしても必要だと。そのために土地の高度利用を進める再開発計画が出てきたわけでありまして、率直にいえば、やむを得ない住民の対応なんだということを、やはりきちんと押さえておくことが大事だと私は思っています。
 なぜかというと、今後、そのような考え方で、住民の合意だと、住民が求めてきたということでやっていったら、本当にこれからどういうふうになっていくんだろうか。やはりそれは主客転倒ということになるんじゃないかと思うんですね。
 冒頭、私は、これらは本来、首都高速道路株式会社が行うべきもので、都が直轄事業で巨額を投じて行うというところに大きな問題点がある、このようにいいましたけれども、この点については、私はそのとおりだというふうに確信しているところであります。
 この東京都都市計画事業大橋地区第二種市街地再開発事業につきましては、総事業費が百八十九億七千百万円。その内訳は、市街地再開発事業費補助が五十五億五千百万円で、国が十一億五千八百万円、都が負担金として四十三億九千三百万円。都の負担が四十四億円に上る。
 そこでお伺いしますけれども、都の負担が国に比べまして四倍も大きいというのはなぜでしょうか。詳しく述べていただきたいと思います。

○石井市街地整備部長 大橋地区再開発事業の事業費についてのお尋ねでございます。話が少しややこしくなることがあるかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います。
 大橋地区再開発事業の事業費の構成は、補助金と保留床処分金とから成っております。さらに、補助金は通常、国庫補助金と地方公共団体負担金、この場合ですと東京都の負担金になります。それから施行者負担金、この三つで構成されまして、それぞれの補助金の補助率は、国庫補助金が三分の一、地方公共団体負担金は三分の一、残りは施行者負担金となっております。
 また、この事業は、首都高速道路株式会社が進めようとしたわけでございますけれども、これまでちょっとお話ししましたように、その結果がうまくいかず、東京都が施行することとなった経緯がありますことから、その費用を首都高が負担するという協定を結んでおりまして、その協定に基づき、施行者負担金に首都高からの拠出金を充てる措置をとっております。
 こうした補助制度や措置によりまして、都負担金は約四十四億円とされておりますが、そのうち約三十二億円は首都高からの拠出金を充てており、東京都の実質負担金は約十二億円となります。したがいまして、国の補助金約十二億円と同額でございまして、ご指摘の四倍ということにはなりません。
 なお、この十二億円につきましては、ご承知のとおりかと思いますが、施行者がだれになろうとも、補助制度上、地方公共団体の負担金として必ず生じるものでございます。

○古館委員 今そのようにいわれましたけれども、もともとこの首都高なんていうことについていいますと、私ども日本共産党は、常に、これはお金を出す必要もないものを出しているじゃないかと。出資金だとか、あるいは貸付金だって無利子で貸し付けているわけですからね。だから、首都高が三十二億円持ちますよといったって、もともとは東京都が一生懸命援助してあげているものであって、そのように今、私の質問に対して答えたけれども、私はその問題について、ああ、そうですかというふうに正直に聞く気はありません。この問題については、そこまで首都高のことをいうんだったら、やっぱり首都高にやらせるべきなんですよ。
 それで、私の質問に答えていないので、もう一回聞きますが、この使途については何なんでしょうか。これは答えていないです。

○石井市街地整備部長 再開発事業の使途といいましょうか、事業全体としましては、最初にいる地権者の方々の補償金、土地代であるとか建物の補償金、それから周りの道路などの工事の整備費あるいは再開発ビルの建築費でございます。

○古館委員 つまり、今のお話ですと、周りの人たちに出ていってもらう、あるいはそこへ後から入るのかもしれませんけれども、そういう補償金とか、用地費も入りますよね、土地。こういう場合は、国はゼロ負担じゃないですか、建物に対しては国は三分の一持つけれども。だから、ゼロ負担ということは、東京都が持つと。それをいうと、また、首都高が持ちますよというんで、これはもういいです。質問はしません。
 そこで、三番目の質問ですが、保留床処分金が百三十四億二千万円ですけれども、保留床処分金とは具体的にどういうものなんでしょうか。さらに、平米は幾らぐらいを考えているのでしょうか。

○石井市街地整備部長 先ほど保留床処分金の話と、用地費、国が負担していないじゃないかという話がかかわりますので、少しご説明させていただきたいと思いますが、再開発事業では、転出したいという方に対しては、東京都の施行の場合ですけれども、土地を買収いたします。その買収した土地はだれのものになるかというと、施行者のものになるわけでございます。その施行者のものになった土地を等価で床に交換いたしまして、床を処分するわけですので、そこでは差し引きゼロになる。きちっと売れれば差し引きゼロになる。そうしたことから、国は補助金を入れてございません。そういった関係になっております。
 そうして、その保留地処分金をもって、今まで買い取ったものを売っていく、それを事業費に充てていくというような仕組みでございまして、今お尋ねは、保留地処分金が大変大きいけど幾らかというようなことかと思います。百三十四億円です。具体的に幾らかというようなお話かと思います。
 その辺についてお答えしたいと思いますが、この地区の周辺のマンションの取り引き事例を調査いたしますと、最近のマンションなどの分譲価格は、床一平方メートル当たり約八十万円程度でございます。資金計画上の保留床処分金を求める際の敷地価格というのは、私ども特建者制度というのを使ってここの事業を進めてまいろうと考えておりますので、建物そのものを施行者がつくるのではなく、敷地を処分する方法をとっておりますが、その際の、敷地価格の算出には、より採算性を重視するという観点から、慎重を期してこの採算を見込む必要がありまして、地区周辺の今申し上げたマンション分譲価格より若干低めの価格をもとに収益還元法という鑑定方法をとりまして、敷地価格を算出してございます。
 この敷地価格を一平方メートル当たり幾らぐらいで見込んでいるかという非常に具体的なお尋ねでございますけれども、これにつきましては、今後行われる、今お話ししました特定建築者の公募に際しまして公平性や競争性を損なうおそれがあるため、今の段階では公表できません。幾らで売るんだなということがすぐわかってしまいますので、そういうことはできません。こうした慎重を期して求めた敷地価格の総額が、今お話がありましたように、約百三十四億円であると、こういうことでご理解をぜひいただきたいと思います。
 繰り返しになって恐縮でございますが、市場の動向に基づいた処分性の高い価格を前提に資金計画を立てておりまして、現在のような経済状況のもとであれば、事業の採算性は十分確保できると考えております。
 加えて申し上げますと、大橋地区は、ご存じのとおりでございますが、田園都市線で渋谷駅から一駅の交通利便性に大変すぐれた立地に加えまして、近年の都心回帰傾向による住宅需要の増大など踏まえますと、今後は住宅地としての評価が高まるものと予想されますことから、特定建築者など民間のノウハウを大いに活用いたしまして、確実な保留床処分に努め、事業収入の確保を図ってまいる所存でございます。

○古館委員 先ほど、近隣のマンションの取り引き事例が一平米当たり八十万円と、そういう金額ですから大体推計つくわけですけれども、それで、特定建築者制度を使うと。再開発やりますと。保留床処分金というのは、いわゆる売却見込み額ということで、その額がいわゆる百三十四億二千万円ということだと思うんですね。
 平米幾らで見積もっているかということはいえないんですが、仮にA業者が落札をしたとしますと、いわゆる特定建築のやり方、制度でやるわけですので、建築者制度でやるので、そうすると、買った値段では売れないですよね。もうけは当然プラスアルファはとらないとその業者は成り立ちませんから。そうするとかなり、そういう意味でいえば、A業者が落札したとしても、売り出すときには利益を上げなきゃならないので、上積みして売り出すということになる。こういう理解でいいかと思います。
 正直いって、都施行の大きな再開発計画は、私ははっきりいってほとんどうまくいっていないのが実態だと思っています。
 そこで質問ですけれども、都施行で亀・大・小、白鬚西、赤羽北の再開発計画では、はっきりいって失敗していると思うんですね。欠損金が、知事がよくいいますが、隠れ借金といっていますが、この三つの再開発計画だけで千二百億円にも隠れ借金、いわゆる欠損金が上っていると、このように聞いていますけれども、この二の舞になるんじゃありませんか。いかがですか。

○石井市街地整備部長 亀戸・大島・小松川地区などの再開発事業が失敗したのではないかというご指摘でございますが、これに対しましては少々反論をさせていただきたいと思います。
 亀戸・大島・小松川地区など、これらの再開発事業は密集市街地をクリアランスし、建物の不燃化、土地の高度利用化を図り、緊急時の避難広場を整備することにより、震災に強い安全で快適な市街地を創出した事業であります。
 とりわけ亀・大・小地区や白鬚西地区ではその効果が大きいというふうにいわれておりまして、これまで副委員長からも評価をいただいているものと信じてまいりました。そして、この事業により、周辺千百ヘクタールの住民三十二万人の避難場所を確保するなど、大きな成果を上げてきていると自負しておりますが、残念ながらバブル崩壊後の不動産価格の大幅な下落やデフレ経済の進行という大きな経済変動の波に対応できず欠損金が生じた次第でございます。
 一方、この大橋地区再開発事業では、事業収支の均衡を図ることを、今までお話ししましたように、十分意識した計画となっております。さらに、より採算性を重視した事業運営が可能となるよう、既に北新宿地区と環状二号線新橋・虎ノ門地区において導入した公営企業会計に大橋地区も加えまして経理することとしたものでございまして、今後にわたり確実かつ健全な事業執行を目指してまいります。

○古館委員 先ほどいいましたけれども、欠損金がいわゆる隠れ借金という名前で--これは私自身が評価というよりも、知事は、隠れ借金、隠れ借金といつもいって、それ自体の中に含まれているのが千二百億円で、この三つの再開発計画だということは紛れもない事実だと思うんですね。
 先ほど委員さんが質問ありましたので、ダブったところは質問しないでいいますと、公営企業会計で扱うと。したがって、バランスシートでのチェックというのが歯どめの一つになるという趣旨だと思うんですけれども、しかし私は、臨海開発のように、売れなくなっていけば結局は都が負担をかぶることになってどうしようかという話になっていくわけですね。ですから、この問題については、はっきりいいまして、公営企業会計の歯どめには、私は、そのように一つは役に立つとは思いますけれど、しかしそのことによって本当にこれが成功裏に終わるかどうかというのは全くこれからやってみなければわからないというふうに思っております。
 品川線には都として一千億円も、先ほどいいましたけれども、これは本来、国の事業ですからね、それなのに一千億円もつぎ込むと。こういう計画全体が、再開発も含めて大変な財政投入になっていくことはもう明らかであります。
 しかも、環境の問題もさらに深刻になることは必至です。大橋地域を走る車は、警視庁の平成十五年の調べによりますと、十二時間測定によっても九万六千台近くにも上っていますし、二十四時間でこれを測定したとしますと十万台をはるかに超していることはもう容易に推測がつきます。もともと交通量の極めて多いところにジャンクションをつくって、四万二千台から四万四千台というのが、これがジャンクションを利用する、このように予測されていますけれども、車の集中は一層激しくなることは疑いのないところであります。
 環境アセスメントではすべて基準値以下となっているようでありますけれども、竣工以降にこうした基準値がクリアされるかどうかも含め、重大な問題意識を持っております。こうした事業そのものの中止を改めて私は求めて、質問を終わります。
 以上です。

○大西委員 先ほどから出ています亀戸・大島・小松川の都施行の市街地再開発事業、この会計が特別会計を設置して行われておりましたが、必ずしも会計情報が明瞭でなかったということの反省をもとに、平成十四年度、この再開発事業を公営企業会計というものに移して行っているという説明がありましたので、私はこの三事業を確認の意味で少し質問していきたいと思っております。
 まず、北新宿地区、説明資料の中の七ページ、北新宿地区の敷地処分収益、これ四十三億七千七百万かな、それと、その次のページの北新宿の敷地等処分原価、これを見ますと原価を下回っているんじゃないかというふうに思ったんですが、それはどういうことなのか、なぜ下回っているように私が感じたのか、ちょっと教えてくださいますか。

○今井参事 北新宿地区の営業収支についてのお尋ねでございます。
 事業会計の決算報告書の説明資料七ページと八ページに記載してあるものでございますが、営業収支の状況を見る場合でございますが、営業収益と営業費用を比較するということが必要でございます。ここで、営業収益を見ていただきますと、五十七億六千三百万余でございまして、その内訳が敷地等処分収益四十三億七千七百万余、それに加えまして一般会計補助十三億八千六百万を加えているものでございます。
 また、営業費用は、委員ご指摘のように八ページに記載してございますが、五十五億四千四百万余でございます。したがいまして、営業収益が約二億円、営業費用を上回っているということでございます。
 再開発事業は、先ほど来議論がいろいろございましたけれども、公共施設を整備いたしまして、防災性の向上を図るなど、非常に公共性の高い事業でございます。したがいまして、補助金を受けながら施設整備を行っておりまして、その収入を一般会計補助金として営業収益に計上しているものでございます。
 なお、この営業収益が営業費用を上回った二億円でございますが、この計算では消費税額を含めて収支計算をしております。先ほど私が上野委員にお答えしました答弁で、グランドテラス新宿の利益は一億円余と申しましたが、この場合の利益は消費税額を除いて計算したものでございます。

○大西委員 そういうことだということでわかりましたけれども、事業の完成時期、総事業費の見通し、この中にも書いてあるんですけれども、現況の状況を織り込んだ上での再度確認の意味でお尋ねします。

○石井市街地整備部長 現状といいましょうか、事業の進捗状況なども踏まえた今後の事業の見通しというお尋ねかと思います。
 昨年度に当地区で最初の再開発ビルでございますグランドテラス新宿が完成したわけでございます。現在はこのグランドテラス新宿の再開発ビルに隣接する街区で特定建築者が建築工事を行っております。
 なお、特定建築者とは、ご承知かと思いますけれども、都の決定した計画に従いまして、施行者である都にかわって再開発ビルを建設する事業者でございまして、公募により決定いたします。今後は、残る三つの街区も特定建築者制度を活用し、再開発ビルの建築工事を行う予定でございます。
 また、具体的な現在の進捗率ということでございますが、事業費ベースで約八割までの進捗を見ております。事業の完成時期でございますが、地区内の公共施設は平成十九年度までに完成させまして、それまでに建築工事に着手することとしております。
 また、総事業費は起債償還金分を含めまして、約千三百億円であります。このうち起債償還金分は重複計上されることになりますので、これを相殺いたしますと、実質的な事業費は約九百十億円となります。

○大西委員 次に、環状二号線新橋・虎ノ門地区についても確認をさせていただきたいと思いますが、この完成年度、現在の進捗状況は、つまりスケジュールは順調なのかということなんですけれども、その辺はいかがでしょう。

○石井市街地整備部長 環状二号線の地区の事業の完成年度と現在の進捗状況、スケジュールは順調かといったようなお尋ねでございます。
 環二再開発事業の完成は、平成二十三年度を予定しております。現在は、引き続き用地買収を行っており、また、最初の建築物でございます、私ども青年館街区と呼んでいる街区がございますが、そこの街区の建築工事を特定建築者が行っているところでございます。
 また、今後、環状二号線道路工事に着手するとともに、新橋街区、虎ノ門街区の建築工事にも順次着手することとしております。現在のところは大変事業は順調に進捗しておりまして、予定どおり平成二十三年度に事業完了する見込みでございます。

○大西委員 今、順調だということなんですけれども、当初の総事業費と、それから現状までの支出状況を踏まえて、総事業費の見通し、これも再度、ちょっと確認でお願いいたします。

○石井市街地整備部長 環二再開発事業の総事業費は起債償還金分を含め、約一千六百六十億円でございます。このうち、先ほど来申し上げましたように、起債償還分は重複計上されておりますため、これを相殺いたしますと、実質的な事業費は約一千五百四十億円となります。なお、この額は、環状二号線の地下本線の工事費を除いたものであり、また、特定建築者制度を活用するなどして、建設にかかるコストを縮減した結果の数字でございます。
 現在までの主な支出は、用地買収と補償費でありまして、今後も引き続き用地買収を行っていくとともに、建築工事や道路地上部の整備などを行ってまいりますが、事業費については当初の見通しどおり、一千六百六十億円を予定してございます。

○大西委員 ここは今、用地取得というものが一番メーンになっているということで、この説明書の中でも非常に二百五十三億円という支出が多く出ていたんですが、それは主に用地費ということで理解をさせていただきます。
 次に大橋地区なんですが、事業に対する地域内外の住民合意についてどのように把握していらっしゃるのか、伺います。

○石井市街地整備部長 大橋地区の事業に対する地域内外の住民合意についての把握状況ということでございます。地区内におきましては、地権者、東京都、目黒区、それから首都高速道路株式会社の四者で構成されます大橋一丁目地区再開発協議会、このような協議会がございますが、この協議会におきまして、定住性はもとより周辺環境に配慮したにぎわいのあるまちの実現に向けた話し合いを毎週のように開催し、検討を行ってきております。
 また、地区外におきましては、目黒区が設置した大橋一丁目周辺地区まちづくり懇談会とも加わりまして、地域住民との意見交換を行ってきており、その中では、再開発事業に対する推進について理解が得られております。

○大西委員 大橋の再開発事業の実施に当たっては、事業協力者制度、特定建築者制度を活用するということで行われていくようになるそうですが、事業協力者、それから特定建築者の選定方法、これはどのようになっているんでしょうか。

○石井市街地整備部長 事業協力者、特定建築者の選定方法についてというお尋ねでございますが、ご承知の方もいらっしゃるかと思いますが、少し、事業協力者とは何か、特定建築者とは何かということもあわせましてお答えをさせていただきたいと思います。
 事業協力者とは、事業の初期段階から施行者と権利者の双方に対しまして、それぞれのパートナーとして必要な情報の提供や、例えば周辺の不動産状況であるとかそういったことでございますけれども、さまざまな提案を行い、特定建築者が決まるまでの間、権利者調整や市場性の高い魅力ある再開発ビルの企画設計に関する協力を行うものでございます。その募集につきましては、東京都の要綱により公募を原則としており、将来、特定建築者に応募の意思のある者という条件のもとで、企画提案能力、参画意欲や熱意、実績などを総合的に評価し、選定しております。
 一方、特定建築者とは、民間事業者が都の決定した計画に従って、施行者である都にかわり、再開発ビルの建設を行い、保留床処分等を行うものでございます。その募集につきましては、都市再開発法に基づき、公募を原則としており、資力信用調査を行い、財務体力等のチェックを経た上で、土地価額と建築計画とを総合的に評価して選定しております。
 また、その選定は、両者とも局内に特定建築者等選考委員会を設置し、公平かつ適正な審査を行い、決定されるものでございます。

○大西委員 今確認させていただきましたが、三つの事業ともほぼ予定どおり順調にというような印象を受けました。
 この三つの事業ともに民間事業、公的な事業、そして採算性と費用便益と、両面から評価しなければならないわけですが、こういう事業評価というか、達成度の評価というのが非常に難しいように思うんですけれども、どのように行っているんでしょうか。

○石井市街地整備部長 このジャンクションを含む中央環状新宿線の都市計画--環境影響評価ということではなくてという意味ですか。(大西委員「ではなくて。事業の……」と呼ぶ)事業評価という意味でございますか。

○大西委員 そうなんです。今お聞きしている中ですべて順調に進んでいるというふうに印象をとります。いろんな資料をもらう中でもなかなかそれが、本当にそうなのかというのが把握できないということもあります。それで、これは先ほどいいましたように、公的な事業でもあり、そこにまた民間が入っていき、そして採算面も考えなければいけない。さらに、費用便益というんですか、そういうものも考慮しなきゃいけない。こういう総合的なものを、達成度がどうあるのかとか、どこまで来ているのかとか、それから総合的な事業評価というものをどういうふうな基準ということで判断して先ほどの答弁になったのかということだと思うんですけれども、そういう……。

○ともとし委員長 現状までのやつでいいんでしょう。現状までの評価で。

○大西委員 今の評価をするもととなっている基準というんですかね。

○ともとし委員長 基準がね。今ずっと答弁された現状までの評価の基準、その辺のことを答弁いただきたい。

○石井市街地整備部長 具体的な事業評価の仕組みというのは、この事業については現段階ではございませんけれども、それを補足する意味で、公営企業会計のこうした委員会での議論があると、このように考えております。

○大西委員 これを見せていただいていろいろ質問するに当たって、こちらの経験不足もあることながら、やはりすごい評価をしにくい。つまり、こういう長期にわたる事業ですから、一年ごとにどうなのかというようなブレークダウンをするとか、細目に分けて評価できるような仕組みをつくっていただきたいなと改めて思いました。そして、ことしは何をやったかということが、この委員会でみんなが認識できて次に行けるような形。公営企業会計になって、いろいろ会計制度、取り組んでいますよね。バランスシートだ、それから対照表化--バランスシートのこともそうなんですけれども。こういう財務諸表を公表すればすべての説明責任ができたかということではないと思うんですよね。
 そういう意味でももう少し、一年ごとに、ここまでやれた、ここまでやれたというような仕組みをぜひつくっていただかないと、決算委員会で決算をするだけでは、やはり都民に対しての説明責任が立たないんじゃないかと思っているんですけれども、どうでしょうか。

○石井市街地整備部長 ちょっと説明が不十分だった点がありまして、失礼申し上げました。
 用地等、この事業によってどれだけ買収してきているかとか、あるいは、もう少したちますと、建物がどれだけ建ってきているかとか、そういうことは当然にして皆様方にというか、こういう場で公表してまいりたい、質問にもお答えしてまいりたいと、このように考えておりまして、そうした意味での事業の進捗率はきちんと把握してございます。
 それから、公営企業会計をつくりましたので、これまでにどれだけの金をつぎ込んだかということと、どれだけの資産を保有したかということが明らかになろうかと、このように思いますので、事業達成度といいましょうか、そうしたものは、それらを組み合わせることでおわかりいただけるものと、このように考えております。
 もう少し具体的に会計のお話がございましたら、調整担当参事からお答えしたいと思います。

○今井参事 委員のご質問と若干関係するかもしれませんので、お答えさせていただきますが、委員が一番最初にご質問になりました決算報告の説明資料の七ページ、八ページというのは、具体的にこの北新宿地区で昨年度完成いたしましたビルの収支が具体的に明らかになっているものでございます。つまり、一つ一つの具体的な個別のビルの収支がここで明らかにされているという意味で、一つの事業評価の指標になるのではないかというふうに思っております。
 それから、個別の建物だけではなくて、地区ごとに事業収支も出すことができますので、そういう意味では、一年ごとに、事業の進捗に応じて資産や負債の状況でありますとか、収支の状況が明らかになりまして、このようなご説明ができるということも、一つの事業評価の進歩ではないかというふうに考えております。

○大西委員 いろいろ聞いている中でちょっと疑問に思ったものを聞いてしまったんですけれども、やはりいつも会計報告という意味では、本当にわかりやすい決算表ということが常に問題になってきます。そして、特に都市再開発事業というのは長い長いスパンでやっていくわけですから、亀・大・小のこういう特別会計であっても、そのときにもう何十年も前の問題がずっとずっと積もり重なって、今ここにいる段階ではだれも責任がとれないという状況の中できて、その反省からこういう公営企業会計になったわけですから、もう一つ、やはり短いスパンで、ここまでやっている、達成度をもう一回確認できるような取り組みもぜひ今後やっていただきたいなということを要望して、質問を終わります。

○田代委員 この大橋地区の再開発事業のパンフレットを見せていただくと、超高層の再開発ビル二棟に約七百戸の住宅や業務床や商業床、数フロアずつできる複合ビル計画となっているわけですけれども、この再開発事業の必要性については、これまで質疑の中で理解をしてきたわけですが、これはうまくいけば、当たり前のことですけれども、当然、地域内の人口も増加するわけですね。増加すればそれだけ、今のこういう社会ですから、車の量も多くなってくる。
 私はたまたま自分の仕事のエリアがここに近いということもあるんですが、ここには目黒、品川、世田谷、その他周辺のいわゆる基幹病院として仕事をしている東邦医大の大橋病院や自衛隊の中央病院--この自衛隊の中央病院は、東京都の直下型が来たときに、ここに日本で一番大きな野戦病院をつくろうというところですから、すべての人たちを収容できるということはあり得ないとしても、そのつもりで今、自衛隊中央病院が取り組んでいるわけですけれども。それから、三宿病院もある。
 救急車--せんだっても消防庁の訓練のときにちょっと倒れる人がいて、大橋病院に頼んで搬送したんですけれども、なかなかいっぱいでやりとりが大変でした。入院させることはできない、できるということをいって、基本的には入院になったんですけれども、なかなか込んでいる病院。この三つとも。そして、大した距離ではなかったんですけれども、やはりそばまで行って救急車が渋滞に巻き込まれてしまう。こういうことに……。
 地域が渋谷ですから、これしようがないと思うんですけれども、特にこの大橋一丁目地区の救急車平均到着時間は六・四分なんですね。今ある程度、ご存じのとおりに、一分過ぎるとどれほど違うかという致命率のデータも出ているわけですから、一刻も早くこういうものを、患者さんの搬送をさせていただきたいわけですけれども。この大橋地区再開発事業によって、地区内の人口がどの程度ふえ、それに伴って、地区内から出たり入ったりする、利用する自動車交通量の増加も、どの程度周辺道路に影響を与えるのか。そして、もう一つ、再開発地区内では緊急車両の通行など防災の面で、何か効果が期待できるような工夫とかアイデアがあるのか、この二点を教えていただきたいと思って、質問を終わります。

○石井市街地整備部長 初めに、二点のご質問かと思います。
 地区内の人口増加と自動車交通量の増加により周辺道路の影響がどうかというお尋ねと、もう一つは、地区内での防災面での何か工夫というようなことかと思います。
 まず、この開発事業による人口増加と自動車交通の問題についてお答えいたしますが、この再開発事業によりまして、エリア内では人口が約一千人増加するものと見込んでおります。また、地区内からの出入りする自動車交通量は、本再開発事業の完了時点で、一日当たり一千七百五十台程度増加するものと予測しております。増加する交通量は国道二四六号線や山手通りに分散されますが、これらの道路の全体交通量に対する割合で申し上げますと、一%強の増加に相当いたしますので、軽微であるというようなことから、交通管理者との事前協議におきましても、渋滞を生じるなどの緊急自動車等の通行に影響を及ぼすものとはならないと、このように確認されておるところでございます。
 一方、地区内での防災面での何か工夫という点につきましては、先生十分ご存じだと思いますけれども、事業の開始前のこの地区は木造住宅の密集した箇所が少なからず存在していたわけでございまして、狭隘で行きどまりとなっている目黒区道というのも二カ所あったというような状況でございます。
 この再開発事業によりまして、こうした木造住宅は、再開発事業でございますから、耐震性にすぐれたビルに生まれ変わるとともに、地区外周の区画道路も、幅、今現在四メートルでございますが、これらを拡幅しまして、幅九メートルないし十一メートルとなることから、再開発区域内に住むすべての住民に対して緊急車両のアクセスがこれまでに比べて格段によくなると、このように考えております。
 このようなことから、本地区の再開発事業は地震時の防災対策や緊急車両の円滑な通行の確保においても大きな効果をもたらすものというふうに私どもは自負しているところでございます。

○田代委員 大変ありがたいお話で、一番ほっとしたんですけれども、先ほど途中のお話で、一%ぐらいしかふえない、そして緊急自動車に影響はないというお話だったんですけれども、一%でも今はふえてほしくないときなんですね。普通のエリアで千台や二千台ふえたってどうってことないじゃないのと、おっしゃるとおりなんですけれども、緊急自動車はなかなかそういうわけにはいかないので、今やはり五分を切りたいというのが我々の希望ですから、少しでも便利になっていただきたい。
 多少ふえても変わらないというお答えだったので大変残念だったんですけど、最後にお話しいただきましたように、木密地域が多いところが変わっていくことによって劇的に効果が上がれば大変ありがたいと思いますので、そういうことも踏まえながら事業を進めていただきたいということを要望して、終わります。

○吉田委員 お疲れさまでございます。都市整備局の皆様の担っておられる仕事は大変に重要であるということを認識し、またそして委員長の議場整理に適切に従いながらご質問をさせていただきます。
 世界の都市間競争というのが大変に激化しておりまして、この極東でも上海ですとかシンガポールとかあちこちとの都市間競争というのに東京は今負けつつあるというような状況があると私は認識をしております。
 こうした中で、日本の玄関口首都東京、これを競争力、効率、そして魅力、こういう面できちんとした都市にしていくその基盤をつくっていく、こういうお仕事をされている局員の皆様は大変に重要な責務を担っておられるというふうに認識をしております。
 日々のご苦労には大変頭の下がる思いでございまして、私も連日皆様にいろいろとお聞きを申し上げまして、その対応に苦慮されておられることを思い、頭の下がる思いでございます。
 しかし、そうして連日一生懸命お聞きをしている中でも、まだまだ、私当選してまだ間もないこともあり、認識できていない点、お聞きすべきだけれどもまだお聞きできていない点ということがある中で、本日質問させていただくことを、おわびを申し上げますとともに、しかし、日々連綿といろいろな複雑な制度と仕組みに精通されて業務をされている皆様、行政の皆様に対して全く違った立場と観点から、素人であるけれども、一定の常識と判断力を有すると有権者に負託を受けてこの場に立たせていただいている人間がいろいろとご質問を申し上げるということは、都民のために必要な機能ではないかと思います。
 そうした観点で、ここまで進んでおります事業について、何を今さら質問するかという内容もあるかとは思いますが、それを承知の上で、いわばドン・キホーテのようかもしれませんが、あえてご質問申し上げますので、ぜひ前向きなお答えをいただければと思います。
 私からは、北新宿における事業について幾つかお伺いいたします。
 まず、この北新宿地区は平成六年二月策定の副都心育成・整備指針に基づく副都心育成整備の一環と位置づけられていると認識しておりますが、そういう認識でよろしいでしょうか。

○石井市街地整備部長 そのとおりでございます。

○吉田委員 どのように位置づけられておるのでございましょうか。

○石井市街地整備部長 副都心育成・整備指針は、平成六年に策定されておりますけれども、これは新宿、渋谷、上野、浅草、錦糸町、亀戸、大崎の六つの副都心の育成整備の指針を策定したものでございます。
 この指針は、多心型都市づくりの施策の一環として都市環境、防災及び福祉のまちづくりに配慮しつつ、個性ある副都心づくりを目指していくことを基本に置いております。

○吉田委員 その中でこの北新宿地区というのは、多岐にわたる副都心の機能の中でどのような機能を担うということで位置づけられているんでしょうか。

○石井市街地整備部長 副都心育成・整備指針と北新宿地区再開発事業との関係ということになろうかと思いますけれども、副都心育成・整備指針では、新宿副都心育成整備の基本的な考え方が示されておりまして、育成整備の重点施策として、北新宿地区では、都施行の市街地再開発事業により定住人口の確保を目指し、業務・商業機能と住宅、公園、ペデストリアンデッキ、幹線道路等の整備を図ると位置づけられており、この北新宿地区の事業の上位計画となるものでございます。

○吉田委員 その中において、都市計画道路放射第六号線というものの整備、この中にまた位置づけられてこの事業が進められているということだと思いますが、この六号線の整備の目的、これは先ほど他の委員からご質問がありお答えがありましたので、この交通量はどのように変化していくのか、これについて予測をしておられると思いますので、お伺いいたします。

○石井市街地整備部長 都市計画道路放射六号線の将来交通量でございますけれども、小滝橋通り方向は--ちょっと済みません。
 失礼しました。大変お待たせしました。淀橋から小滝橋通り方向には日二万台、小滝橋通りから淀橋方向への下り方向といいますか、こちらが日一万六千五百台でございます。

○吉田委員 ありがとうございます。当然この放射六号線、これは青梅街道のバイパスというか、逆にこの放六が通った後は青梅街道の交通量が多少緩和するということが求められるというふうに考えております。
 逆にいえば、これまで青梅街道が担っていたさまざまな機能、すなわち、この青梅街道より南側に位置しますさまざまな交通を、北側にバイパスとしてつくります放六が受けとめるという機能を有していると認識しておりますが、その認識でよろしいでしょうか。

○石井市街地整備部長 放射六号線が一部青梅街道の機能を担いまして、大ガード周辺の混雑緩和に寄与するということでございます。

○吉田委員 この新宿の青梅街道より南側の地域からの車の流入ということで、この地域よりかなり西にあります山手通り、そして、これよりかなり東にあります小滝橋通り、この中間でこの交通量を担うのが十二社通りだと認識をしておりますが、まずこれはそのとおりの認識でよろしいでしょうか。

○石井市街地整備部長 委員長、この十二社通りの話は私どもが担っております北新宿の再開発事業の区域内の課題ではございませんで、申しわけないんですけれども、お答えいたしかねるかと思いますが。

○ともとし委員長 吉田委員に申し上げます。
 その件については所管の委員会の方でやっていただいて、その辺からの答弁をいただきたいと思います。当委員会については当委員会の与えられたそうした中で答弁をいただくようにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○吉田委員 じゃ、この地区内に関連する話として、しかしこの地区の開発というのは、当然、周辺地域との整合性というものが必要だと。離れ小島で開発をしているわけではなくて、周辺の大変な人口、いろいろ経済活動、こういうものとの、これを円滑にしていく副都心の一部として担っていくという観点ですから、これが当該事業に関連がないとおっしゃるのは甚だ疑問ではございますが、意見だけ申し上げますと、この十二社通りからこの北新宿地区に抜けるということが、放六に抜けるということが今はできない計画になっている。南から上がる道路は一度青梅街道で左折して大変なUターンをして放六に上がる。あるいは、このエリアの東側にあります細い区道を通って、多分大変な渋滞が予測されますが、これを通っていかざるを得ない。こういう計画になっていることについて、大変残念な計画に基づいて事業をしておられるということを申し上げます。
 そして次に、この北新宿地区の北側で東西方向に計画をされている新宿区道二号線でございますが、この道路は再開発事業の決定当時の区域どりの関係がありまして、ジグザグな線形になっております。そして、この区道二号線の東側半分と、それから区道四号線、これは一方通行の道にする予定だと、このように伺っております。
 地区内の生活道路ですから、通過交通の流入を防ぐためにジグザグで構わないんだと、そして一方通行がよいというご説明をいただいたと認識をしておりますが、この認識でよろしいでしょうか。

○石井市街地整備部長 少し内容について私どもからご説明を申し上げたいと思いますけれども、地区内の区画街路のうち一方通行道路として整備を考えている路線としては、今、委員からお話しありましたように、二つ路線がございます。
 一つは、地区北側に位置する新宿区道二号線の放射六号線から新宿区道三号線との交差点までの間、もう一つは、2街区と3街区の間を走る新宿区道四号線、ちょうど間に入っている道路でございます。
 いずれも東から西へ向かう一方通行道路でございますが、これらの通行方向は接道家屋の状況であるとか、道路幅員等をかんがみつつ、公安委員会が道路交通の安全性を踏まえて判断したものでございます。
 個別に申し上げますと、新宿区道二号線につきましては、五差路での--五差路がちょうど放射六号線のところに出てまいりますので、五差路での交通処理が危険との判断によりまして、五差路方向からの進入交通のみとなっております。
 一方、新宿区道四号線につきましては、通過交通を極力排除し、居住者や地域内へのサービス車両、緊急車両が通行する、いわゆる生活道路でございまして、一方通行道路として公安委員会が判断したものでございます。
 このように、道路の通行方向といいますのは、公安委員会が道路管理者--私ども道路管理者ではございません。再開発事業の施行者でございますが、道路管理者ではございません。公安委員会が道路管理者と協議し、交通安全の見地から必要な措置として判断したものでございます。そして、先ほど区画街路が少し曲がっているのはどうかというご疑念でございましたけれども、これも生活道路でございますので、多少曲がっているということについては支障のないものと考えております。

○吉田委員 まず、生活道路とおっしゃっているわけでございますが、この北新宿地区というのは、例えば私どもの中野なり、あるいは多摩なりの郊外の戸建て住宅が並ぶ住宅街というわけではございません。副都心として整備する区域の中で、そして戸建て住宅を建設する予定というのではなくて、九階建て、六階建て、五階建ての鉄筋コンクリートのマンション並びに三階建ての業務ビルを建設する。そして、放六と青梅街道沿いには百九十メーターを超える大きな高層ビルというものを整備する、そういう区域に設置する道路であるわけでございます。
 防犯、治安、こういう観点からも、交通の円滑な通行という観点からも、ぜひこれは、ジグザグではなくて、直線的な道路にすべきであると。そして、通過交通を流入するのを排除するためであれば、諸外国あるいは日本でも導入されてきているとおり、バンプを置くとか、さまざまな標識を置くことでもこれは防ぐことができると認識をしております。
 そこで、まず計画決定当時の区域どりの考え方について、都市計画を変更して区域を拡大し、四軒ほどの家屋を区域に取り込めば、それだけで区道二号線の道路線形は真っすぐにできるんではないかというふうに考えております。
 そのような形で検討がかつて行われたのかどうか、区域どり決定の経緯、その後の検討状況についてお伺いします。

○石井市街地整備部長 施行区域の決定は、権利者の意向や生活再建、地域の利便性あるいは事業の採算性及び緊急性などを考慮しつつ、原則として、道路のような土地の境界が比較的明確な公共施設で定めるということとしております。
 事業の緊急性等を考えますと、そうむやみに広げるということが必ずしも適切ではありませんし、そうかといって事業効果を考えますと、余り小さいというのも意味のないものでございます。そうしたことを計画時点で十分議論をしまして定めてきている、こういう経緯でございます。

○吉田委員 以前のご説明で、かつてはもう少し北に広がった形で区域を設定していたけれども、反対者等もあったためにやむを得ずこの区域内に設定したという経緯があるととらえておりますので、これは大変なご努力の中で決められたことだとは私も認識をいたしております。
 しかし、今後ともぜひ、道路の形状というのは、建物は更新が行われますが、一度引いた道路というのは、いわば百年、二百年、再開発をしない限りずっと残っていく。その道を皆さん通っていくということですので、ぜひ前向きな取り組みを今後期待できればなと、これは要望いたします。
 そして、この区域に多くの人が今後居住し、多くの往来が予測されることにかんがみまして、また狭隘なということではなくゆとりある都市づくりをやはり進めていかなければいけないという観点から、現在計画されております五・五メートルの車道を五十センチほどでも拡幅して六メートルとしてこの事業区域内のすべての区道を相互通行とすることが望ましいということを、要望を申し上げます。
 私は、財政委員会にも所属してございまして、収用委員会の事務局も所掌する委員会でございますので、先日、収用の現場を勉強したいとお願いをして、そうしましたら、たまたま放六にかかわる案件でございます、職安通りから小滝橋通りを越えたちょっと先のところ、これについていろいろとご説明をいただきながら視察をさせていただきました。計画を立てて、この実現に向けて実際に取り組みを進めるということの大変さというものは本当に並々ならないということは私も認識は持っております。
 そして、さらに、一度決定された計画を変更するなどというのは、正気のさたではないとはおっしゃらないでしょうけれども、大変なエネルギーが必要で、なかなかそんなことには踏み出せないということも認識をしております。
 しかし、今後五十年、百年という、使われる街区、これを形成する、これを都民の合意と努力と我慢と、そして税金で行う。そして、今後、魅力ある日本と東京をつくっていくという観点で、ぜひこの北新宿、私は、百年の風雪に耐えるような計画であるのか疑問なしとしないということを申し上げまして、ぜひこの計画が、よりよい計画に変更することも次年度以降、事業計画の中に盛り込んでいただくことを切に要望いたしまして、私からの質問を終わりますが、最後に局長に所見をお伺いいたします。

○石井市街地整備部長 それでは最後に、ご意見等、最後に、あわせていろいろ都市計画を変更すべきではないかと、百年に向けて計画を考え直すべきではないかというようなお尋ねが局長にございましたけれども、私からご答弁申し上げます。
 北新宿地区につきましては、平成六年度の都市計画決定以降、十一年の年月がたった事業でございまして、都市計画決定以前から、従来からお話ししていますが、十分に住民と話し合いを行い、合意形成を図ってきたところでございます。
 仮にご提案のような都市計画変更を行えば、結果として事業の完了をおくらせることになりまして、事業効果や収支に多大な影響を与えることが懸念されるほか、これまでも事業に協力してくれました多くの権利者や周辺住民の信頼を裏切ることになると、このように考えております。
 都市計画、事業計画などの必要な法手続につきましても、縦覧や意見書の受理、都市計画審議会での審議など適正な手続を踏んで、都民の意見を聞いた上で決定してきている事業でもございます。
 さらに、都議会におきましても、事業化時点で施行規程を条例として議決いただいたほか、各年度の予算審議、決算審議など数多くの場で議論いただき、その了承をいただきながら進めてきた事業でもあり、ご提案のような計画変更は必要ないと、このように考えております。
 以上、何点か申し上げましたが、こうしたことから、繰り返しになりますけれども、ご提案のような都市計画変更は現実的ではなく、必要ないと、このように考えております。

○ともとし委員長 ほかに発言なければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ともとし委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係は終わります。
 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後三時七分休憩

   午後三時十八分開議

○ともとし委員長 それでは、休憩前に引き続き分科会を開きます。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 これより決算の審査を行います。
 平成十六年度東京都病院会計決算を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料はお手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○奥田経営企画部長 去る十月十四日の本分科会において要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます平成十六年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、東京都立母子保健院跡地の売却状況から、6、特別の療養環境に係る病床利用料金、いわゆる差額ベッド料の状況まで、六点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、東京都立母子保健院跡地の売却状況でございます。
 売却の相手方ごとに面積及び価格を記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費)でございます。
 平成十二年度から平成十六年度までの一般会計繰入金と、このうち施設整備関連経費について記載してございます。
 三ページをごらんいただきたいと存じます。3、一般会計繰入金の推移(施設整備関連経費以外・病院別)でございます。
 平成十二年度から平成十六年度までの一般会計繰入金のうち、施設整備関連経費以外の経費について、病院別に記載してございます。
 四ページをお開き願います。四ページから六ページにかけましては、病院別患者実績の推移でございます。
 四ページには平成十二年度から平成十六年度までの病院別の平均在院日数、五ページには入院患者実績率、六ページには外来患者実績率について記載してございます。
 七ページをごらんいただきたいと存じます。5、紹介率及び紹介状持参患者数等の推移でございます。
 平成十二年度から平成十六年度までの紹介状持参患者数、救急車等搬送患者数及び紹介率について、病院ごとに記載してございます。
 八ページをごらんいただきたいと存じます。6、特別の療養環境に係る病床利用料金、いわゆる差額ベッド料の状況でございます。
 都内医療機関と都立病院とに分けて、平成十二年度及び平成十六年度における、いわゆる差額ベッド料を徴収する病床について、料金区分ごとに病床数及び割合を記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○ともとし委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田代委員 きょうは、いつもの質問とちょっと違って、総論、各論という順番じゃなくて、各論、総論でちょっと教えていただきたいと思いますけれども、今、高齢者に対する健康づくりというのが、世の中で機運が大変高まっております。それとともに、少子化問題、これも大きな問題になっている。安心して産み、育てていく環境をつくるために医療が果たす役割というのは大変大きなわけでございますけれども、妊娠中の方の薬の問題というのは、これはかなり昔から問題になっておりまして、我々の外来でも、妊娠中の方がいらしたときに、どの薬が安全であるかという説明が、やはりうまくできないことが多々あるわけですね。大学病院でもそういうことがあります。
 これはデータがないのは当たり前でありまして、人間の胎児のデータと動物実験の胎児のデータは若干違うからで、当たり前なんですが、そういう理由はどうであろうと、患者さんからすれば、安全か安全じゃないかはっきりいってくれ、これは当たり前の要望でありまして、特に、私は妊娠中ですから薬は絶対飲みません、病気が悪くなってもとおっしゃられちゃうと、やっぱりそれは科学的な根拠のある説明ができなくちゃならないので、それができないから、余計不信感を持たれてしまうと思うんです。
 国においては、この十月から国立成育医療センターの中で妊娠と薬情報のセンターを設置して、服薬による影響について相談あるいは情報収集事業なども開始しているわけですが、これは実際問題、大変申しわけないんですけれども、私のいます世田谷区だけが対象なんですね。国の仕事でありながら、東京都にありながら、世田谷区以外の人は相手にしないことにしているんです。
 これはスタートしたばっかりで現実にできないからでありまして、意地悪でとか、そんな意味は全くないんですね。物理的にもうこなせないためにそうしている。ということは、逆にいうと、薬に対する心配というものが一般の都民の方々、特に妊娠中の方々のご家族に物すごく強いということなんですね。だから物理的にできない。
 やっぱり東京都も、都立病院において、妊婦さんや妊娠している可能性のある女性に対して、医薬品に対する情報を的確にお伝えする、これも一つの大きな事業じゃないかと思うんですけれども、そこで、東京都の方、いわゆる都立病院で、妊娠と薬情報センターのような事業を実施できないか、見解を伺いたいと思います。

○奥田経営企画部長 患者さんが病気であるとか治療について正確な情報を持つというのは、極めて重要なことでございます。このため、ただいまお話のありましたような妊婦さんの不安を解消するために、都立病院では、リーフレットを配布したり、あるいは、個別に妊産婦の服薬に関するご相談に対応しているというような状況でございます。
 今後のことでございますが、ただいまお話のございました成育医療センターのセンターにおける相談事例、あるいは情報収集の結果についても十分参考にいたしまして、今後、必要な情報提供に努めていきたいというふうに考えております。

○田代委員 積極的に取り組んでいただきたいと思います。少子高齢化、その対策を立てるとしても、やっぱり一つ一つ具体例が必要ですから、今おっしゃられたように、都民の不安を解消するような方向を実行していただきたい。要望しておきます。
 次に、今、問題になっているアスベストの問題ですけれども、アスベスト、もういろいろな予測がされていて、WHOの方でいっているのと、各国でいっているのと若干差異はあるんですが、我が国でも二〇三〇年ぐらいまでには十万人前後の方が死亡するだろうというデータが出ているわけですね。確実に今から死亡症例が出てくることがわかっている。
 そして、今、せんだっての厚生委員会でもお願いしましたけれども、アメリカでは認証された薬が日本では認証されていない、こういう問題について積極的に国に要望を出していただきたいとお願いしたわけですけれども、C型肝炎の問題にしろ、エイズの問題にしろ、やはり行政が後手後手になったときというのは、大変大きな悲惨な結果をあらわすことになりますし、そういう中でこのアスベストの問題、ある部分では行政に全く責任がないというわけでは、皆さん方にあるないじゃないんですよ。昔、そういう指導をしたわけですから、やっぱりそこは責任を持って対処していかなくちゃいけないんだと僕は思うんですね。
 都立病院で、この問題になっているアスベストに対して、しかも死亡症例が十万人を超えるだろうと予測されるような病気に対して、ちゃんとした一種のスタンダードな治療方針、あるいは考え方というものを示していくことが必要だと思うんですね。これは民間の病院でやれといっても、なかなか難しいことでありますから、当然国もやるでしょうけれども、都民の安全を守るという意味で、都立病院でやっていただきたい。
 そこで、広尾病院でアスベスト専門外来を開設するということになったわけですけれども、このアスベスト外来の内容について、どのようなものなのかを教えていただきたいと思います。

○奥田経営企画部長 先生のご指摘もいただきまして、十一月の一日から広尾病院でアスベスト外来を開設することといたしました。この内容でございますが、毎週火曜日午後に専門枠を設けて呼吸器科の医師が対応を行うもので、具体的には、まず問診から始まりまして、胸部の単純エックス線撮影、あるいは胸部CTでアスベスト関連疾患の可能性の有無を判断いたします。さらに、気管支鏡の検査であるとか、あるいは外科と協力して胸腔鏡の検査も、必要に応じてやるということでございます。
 アスベスト問題が大きな社会問題となっているということで、都民の不安の解消に都立病院としても取り組んでまいる考えでございます。

○田代委員 悪性中皮腫という独特な病気、これは普通、人間には起きない病気ですから、アスベストの指摘を受けてから急激にふえてきたわけで、因果関係がこれだけはっきりしている病気、しかも対応策がまだ都民の間で認知されていないとか、広報されていない。大変不安なところがあると思うんですね。
 うちの近所の空手道場へ行っても、そこもアスベストがむき出しになっていて、どう対応していいんだかわからないけれども、子どもたちにはなるべくそれを知らせないようにしましょうみたいな話になっちゃっているものですから、空中のパーセンテージがどのぐらい以上がだめで、どのぐらい以下が大丈夫であるとかというのがまだまだガイドラインがはっきりしてませんから、何ともいえませんけれども、やはり治療方針というものを東京都が一つ出すということは大変大きな意義があると思うので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 ことしまでにいろいろな都立病院の中で公社化の動きがあって、平成十六年の四月には大久保病院、そして四月には多摩の老人医療センターが公社に運営を移管されて、多摩北部医療センターになったわけですけれども、僕を含めて、僕が不勉強なのかもわからないんですけれども、都議会議員の中で、公社化病院と都立病院の差、何でそういうものが必要なのかというのが、いま一つ読めていない。
 確かに行政的医療を都立病院がやって、地域医療の強化を公社化病院がやるんですと。じゃ、何でそれをしなくちゃいけないのか。どういう方向性で見ていくのか。地域医療というものと行政的医療というものをどう分けていくべきで、将来、東京都の病院経営がどうあるべきかということ、これは大きな問題だと思うんですけれども、基本的な都立病院と公社病院の役割の違いについてお話をいただきたいと思います。

○大塚病院経営本部長 そもそもから申し上げますと、都立病院は、明治の十二年、当時流行したコレラの伝染を防ぐ対策として、大久保と駒込と、現在の墨東病院の前身でございます本所の三つの避病院を開設したことに始まります。そうした現在までに百二十年に及ぶ連綿と続く歴史の中で、現在私どもが取り組んでいる病院改革は、都立病院が高度専門医療を提供しながら地域医療に果たしてきた役割を整理しまして、行政的医療を中心とする病院と地域医療を中心とする病院に主たる機能を重点化させて、時代の要請にこたえていこうとするものでございます。
 このため、都立病院は全都を対象とした行政的医療の提供を主な役割とし、公社に移管する地域病院は、地域の医療機関との緊密な医療連携のもとで地域医療の底上げをしていくことを主な役割としております。地域の医療機関との連携を強化しながら、こうした役割分担を行うことによりまして、限られた医療資源の制約のもとで都民に対する総体としての医療サービスを向上させようとするのが私どもの考え方でございます。

○田代委員 大変模範的な回答で、それはそれでいいと思うんですけれども、今、患者さん方が、あるいは都民の方々が一番困っているのは、自分の病気に対して何が一番必要で、そして、何が一番的確な結果を出すのか、それを自分たちが選択するチャンスというか、知識を与えられない。一番大きな問題は我々医師にあると思うんですが、やはり医師だけがそれに取り組むわけではなくて、システムをつくっていかなくちゃならないわけですね。都立病院が高度先進医療で培ってきたものをもとにして行政的医療をやっていく。そして、公社化病院が地域医療との連携をしていく。じゃ、地域医療との連携、一番基本的なことは、町の医者とどれだけコンタクトを持っていくかということですね。
 僕は前も申し上げましたけれども、荏原病院で第一号の病診連携の申し込みをしたんですけれども、実際それは私が責任者をやっていた医師会の責任者としてやらなくちゃいけないということもあってやったわけですけれども、じゃ、それから行っているかというと、それほど行っている暇もなければ、行っても、そういう場所もない。いや、来れば、ちゃんとカンファレンスに出れるんですよとおっしゃるけれども、なかなか一般の開業医の先生が行けない。その大きな理由は、やはり医者が都立病院に行ったとき、あるいは公社化病院に行ったときに、自分の診療所、地域の医療を守るためにどうしたらいいのかという、穴があいちゃうわけですね。
 今、私、東京医科歯科の大学改革の仕事もさせていただいているんですけれども、医科歯科だけではなくて国立病院、昔と違って、今、すべてアルバイトを認めています。時間の制限は当然ありますよ。だけど、どういうたぐいの病院に行っちゃいけないとか、どういうことをやっちゃいけないということは、もう全然ありません。都立病院は、アルバイトについてはどうなっているんですかね。

○奥田経営企画部長 都立病院のドクターは地方公務員法の対象ということで、その規制を受けております。基本的に兼業、兼職は行ってはいけないという範疇の中で、原則禁止の状態でございます。ただ、行政的医療というような目的の中でもって、一部医療機関を支援するような必要がある場合にのみ、限定的に、いわゆるアルバイトが許されているという状況でございます。

○田代委員 当然行政的医療を支援するなんということは世の中にあり得ないことですから、ないことの話を聞いてもしようがないんですけれども、そのときのアルバイト料はどうなんでしょうか。

○奥田経営企画部長 兼業許可をとった中であれば、一定の報酬を受け取ることができる。ただ、最近の規則改正の中で、受け取ったその報酬額に応じた形で給料が調整されるというような状況でございます。

○田代委員 そのとおりなんですね。どこかでもらっても、どこかがへっこむわけですから、アルバイトにならないんです。僕はそこは問題にならないと思うんですよ。国立病院の方でもそれはある程度調整しているんですけれども、国家公務員である国立病院が、もうそれを認め始めているわけですから、地方公務員のレベルでといっちゃ申しわけないけれども、そろそろ新しい考え方を持っていただきたい。
 法律を破れないことで皆さん方を責めているわけでは全くないんですよ。それはおっしゃるとおりに法律を遵守することはとても大切ですけれども、そろそろそこを変えて、もっともっと普通に、本部長がお答えになった地域医療をやりたい。どういう地域医療をやりたいんだという話になったときに、本部長、返事に困っちゃうと思うんだけれども、もうちょっと具体的なことをやっていかなきゃしようがない。
 それが皆さん方が持っている条例が足を縛って、手を縛っているのであれば、そこをちょっとずつ変えていって、町の医者のためにじゃないですよ、患者さんのために、患者さんが何を求めているかということを、ぜひとも実行していただきたい。
 そして、高度先進医療、さっき本部長おっしゃったけど、高度先進医療の研究は、我々大学の医者が今までやってきたわけですけれども、都立病院自身は、逆にいうと行政的医療のことで、高度先進医療というものは行っていく立場にも、また、必要性もなかったんですね。それは高度先進医療を行う指定病院という制度ができて初めて、点数が変わってくるから、あれやろうこれやろうということになって、この近くの東京医大でもああいう事件があったから、いろいろ問題になって、この保険点数のあれが変わってくる可能性が出てきている。こういう値段が違うから高度先進医療をやろうという時代。これは悪いといっているんじゃないんですよ。
 じゃ、今までやってこなかった高度先進医療をやろうというのであれば、そのスタッフを集めなくちゃならないし、また、当然そういう指導機関をつくっていかなくちゃいけない。特に、今、県の名前は避けますけれども、東北、北陸地方で、産科が全く機能しない派遣病院がとてもふえています。これはもう新聞、あるいはニュースでもいわれているとおりに、産科の病院というのは、麻酔科医がいなくちゃ、今、許可されないんですね。麻酔の医者は、東北六県とはいいませんけれども、ほとんどいないんですね。恐ろしいほど今、麻酔科の医者がいなくなってきている。
 何でそうなったかというと、今度のマッチングという研修医制度ができて、都会にみんな流れてきた。僕たちは、半分半分よしあしはあると思うんですよ。昔のように大学の医局というところにしかいられなくて、自分が例えば秋田大学に入ったら、そこからほかに行けない状態、それはかなり人間の自由を損なっているような気はするんですけれども、今、日本が行ってきた医療というのは、社会主義的な一つのパッケージされた医療の中で予算を使ってきて、それである程度成功してきているわけです。
 シンガポールの約二分の一の値段で日本の医療が行われている。アメリカの五分の一の医療でやられている。GDP対比でいうと二十七位ですね、全世界の中で。そして、世界で第一位の医療の提供が行われている。かなり苦労はいろんな行政の方がなさってきたんだと思うんですけれども、やはり社会主義的発想でやってきたことがプラスにはなっているわけですけれども、そろそろそのパッケージを破ろうということで研修医制度を始めちゃったわけですけれども、そうなると、今度は地方の大学病院に入局する人が全然いなくなってくる。東京だけよければいいというわけじゃなくて、やはりこの大東京、東京の中での医療というものは、都立病院は、近県に、あるいは日本全体に、医療の適正化はこうあるべきだということを発信していくような基地であってほしいと思うんですね。
 そこで、この研修医制度も、マッチングで七倍から八倍ですか、十何倍というところもありますね。これだけ来て大変ありがたい。昔の都立病院じゃ思いがけない。僕が医局長のときに一番困ったのは、都立病院に派遣で医者を頼まれると、行くやつがだれもいなくて、えらい苦労した覚えがありますけれども、それがまるで夢のような話に今変わっているわけですけれども、この話がいつまでも続くと思ったら大間違いなんで、やはり各大学、僕が今仕事をしている東京医科歯科、昔の国立二期校ですけれども、ここだって、今、マッチングのために教育システムを一生懸命つくろうとしているわけです。
 いわゆる大学病院という教育システムのプロの集団が、まじめに今から、今まで以上に頑張ろうというときに、都立病院の中でその教育システムをつくっていくというのは、とてもいいんだけど、今までやらなくていいとやってこなかったところが、たまたま君が古いから、じゃ、研修医システムの部長をやりなさい、君が次長をやりなさいといわれたって、医者も面食らっちゃって困っているわけですね。システムの部屋もなければ、具体的な予算もしっかりつけてもらわないと困る。
 だけど、今からの都立病院というのは、実はそういうことを一生懸命やっていくことが必要であって、余り採算性みたいなものを考えて、まあ採算性を考えなくていいというわけじゃないんですけど、まず都民が何を一番求めているかということが一つと、同時に、医療の質というものを担保していく。高かろう悪かろうが一番いけないのは当たり前ですけれども、安かろう悪かろうでも患者さんたちは困るので、医療費が高い、安いということを国民に聞くと、医療費が高いといっている人は、いい医療を受けてないから高いんですよ。いい医療を受けている患者さんたちは、決して高いなんていいません。ただ、本当に収入がない方たちに対しての制度というものは、これはもう確立していなくちゃいけないのは当たり前のことですけれども、しかし、それ以前に、医療に対して文句をいう人たちの話を聞いてみると、医者の対応が悪かったり、病院の対応が悪かったり、やはりメンタル的な、感情的なことが大きな問題であって、あるいは、内容がちゃんと報告されていない、説明されていない。
 我々の仲間でも、やっぱり見ていて、これはどうかなと思うような医者が、かなりではないかもしれないけれども、一部いることは間違いないことなんですね。そういうものに対して我々医師会も自浄作用を持っていかなくちゃいけないのは当たり前ですけれども、一つのガイドラインを示すことができるのは、今、日本の中に都立病院しかないんですよ。いわゆる予算があって、そしてある程度一般会計から補てんを受けることができる可能性があるところ。実は、先ほど申し上げました東京医科歯科、国立大二期校も、これは独立行政法人になりますから、もう自分たちでやれということになっていますね。全部自分たちでやれということになったから、我々は今は改革に向けて働いているわけですけれども。
 そうなると、その中でEBMという、この病気は、このぐらいの薬をこのぐらいの期間与えて、こういう結果が出たらこうなればいいという一つのガイドライン、今までは、医者のさじかげんでみんな決められていたことが、ある程度患者さんにも説明できる、そういうガイドラインみたいなものをつくっていくときに、国がつくると、やはり安かろう悪かろうになってしまう嫌いがあるわけです、医療費の総量規制ということがあるから。
 都立病院は、東京都ではこのぐらいのレベルの医療というのは、アジアの中心の町であるんだから普通なんだよ、こういう結果を患者さん方は求めているんだよというようなことのガイドラインをつくっていただくような努力をしていただきたい。それがある意味では都立病院であり、また、公社化病院は地域医療、先ほど申し上げたような、しっかりとしたアルバイト体制ができるような、あるいは病診連携という、町の医者と病院がもっともっと親密に話ができるようなシステムをつくる。
 それは公社化病院になる前に都立病院が一つの方向性を決めておきませんと、これはうがった見方なのかというと、僕は今でもまだ覚えているんですけれども、だれがいったとはいわないけど、しょせん都立病院は、もう東京都がやるべきことじゃないなら、ぽんと売っちゃうのはまずいから、公社化病院にしてから民間に売っちゃうんですといわれると、それは伝聞の伝聞だから、本当ではないと思いますけど、我々のように、仲間で幾つかの大きなコングロマリットの病院のチェーン店を経営している人間から見れば、非常にありがたい話ですよ。社会的資源がどんどんどんどん安く手に入るわけだから。だけど、これは都民にとっては非常に恐ろしいことで、間違ったことになる結果が大きいんですね。
 やはり都立病院こそ、キャップもない、青天井でいい、説明ができればですよ。一般の方からどんどんどんどん予算が入って、僕は問題ないと思うんですね。それがたまたまごく一部の政治的に非常に偏った看護師たちの運動に使われたりとか、政治活動に使われたりという過去があることは非常に大きな問題だと思うけれども、そういうものを透明性をもっと高めて、都民が一番求めているものが何であるかという説明ができないと、都立病院がどうであって公社化病院がどうであるという説明にならないと僕は思うんですよ。
 実際問題、今、問題になっている来年の医療費削減、これで何%とまだ出ていませんけれども、我々の感覚としては、一けたの上の方、あるいは二けたの下の方になるだろうと読んではいるんですけれども、このまま行くと、都立病院の経営というのはなかなか難しいかなと思うんですね。当然、経営をしっかり行っていかなくちゃならない、予算だってしなくちゃならないんですが、その中で、やはり今の世の中で一番求められている、病気になって医者に行くんじゃなくて、いかに医者に行かなくて済むかという予防医学というものを都立病院も取り組んでいくことを両建てとして、予防医学をやることによって医療費の総量規制に役に立つ。
 しかし、これからの医療法改正によって、現実に入ってくる収入が減ってくる。それによって都立病院が持っている、先ほど本部長がおっしゃられたような理念、理想というものが損なわれないような対策を立てていただきたい。これに対して病院経営本部はどのように取り組んでいくのかを教えていただきたいと思います。

○奥田経営企画部長 医療費の圧縮というか削減のために一歩進んで予防医学を充実すべきだというお考えでございますが、具体的には生活習慣病の患者等をできるだけ防いでいく、そういう取り組みを進めろというお話であろうというふうに考えます。そうした取り組みが非常に重要な課題になっているということについては、都立病院としても十分認識をしております。
 ただ、予防的対応に関しましては、保健あるいは健康政策的な意味合いから、全都的な対応、あるいは全国的な対応が必要な課題でございまして、そういった大きな課題であるということを十分念頭に置きながら、都立病院としても医療面から、都民の健康を守る拠点であるという意識を持ちながら、最大限の努力をしていきたいというふうに考えております。

○田代委員 僕は一番聞きたかったのは、来年からのその取り扱いについて、現実に収入が一割減っていくわけですけれども、それで、しかも高遠なる理想を掲げて頑張っているときに、そのギャップをどうやってきちっとクリアしていくのか。一般会計との関係、そういうことをお聞きしたかったわけですけれども、それはちょっと今の決特とは違いますので外しますけれども、やはり医療というものは単年度で考えるわけではなくて、五年、十年、十五年、二十年というスパンでそれぞれ考えていかなくちゃならないわけですから、決特にも十分考え方が反映されていくべきだと僕は思うんですね。それは今すぐお答えいただくことは難しいですが、そういう考えを持っていただきたい。
 それから、予防医学は、よく一例として僕は挙げるんですけれども、糖尿病の患者さん、今非常にふえているという問題になっています。国民の一割から二割といわれているんですけれども、その中の約八%ぐらいの人たちは、これはやむを得ず、遺伝的にもうそうなるんですね。これは必然性があるので、しようがない。これは治療の対象となります。残りの約九〇%近くの人たちは生活習慣病ですから、それさえコントロールすれば、もう全く我々医者と縁が一生ない生活が送れるわけです。そして、毎年毎年三千人の人が新たに失明しているわけですね。そして七千人の人が人工透析を受けているわけです。
 この医療費、それから、当然障害第一級を取るわけですから、その租税公課のなさといったら申しわけないけれども、税金を払わなくてよくなっちゃうわけですから、そういう意味では、とても大きな損失。しかも、その人たちは税金を払わなくてうれしいわけではなくて、非常に苦しみの多い生活を何十年と続けなくちゃならないわけで、やっぱり糖尿病一つとったって、予防できるものは--いたし方がない遺伝の病気はこれはしようがないですよ、遺伝子治療をちゃんと我々が努力してやっていかなくちゃいけないことはわかっていますから。それ以外の医者の手を離れているような生活習慣病については、これは医者の問題ではないんですね。行政の問題です、この生活習慣病という病気は。しかし、これは物すごく大きなウエート、痛風の問題にしろ、脳血管障害にしろ、物すごく今ふえている。
 で、先ほど申し上げたように、世界じゅうの対GDP比でいうと、二十七位なんですよ。こんな恐ろしく低い、ほかの国の名前をいいませんけれども、そんな国に負けているのか。台湾より下なんですよ、うちは。それで世界で一位の医療を誇るというのは、それはすさまじい努力を医者もしているつもりですし、皆さん方もさらに努力をなさっていらっしゃるわけですけれども、ただ努力をすればいいんじゃなくて、いうべきことはいって、必要な経費は請求、要求して、ちゃんとアカウンタビリティーのもとに、都民にとってどういう医療を我々は提供したいんだから、これだけのお金が必要なんだということをおっしゃっていただきたい。
 それは皆さん方のためというより、日本の医療が適正な値段、今、患者さんが一番困っているのは、本当に医者って、いいのかよ、悪いのかよ、もうかっているのか、もうかってないのか、変なことがあるのかないのか、不正があるのかないのかということが、一番不透明なんですよ。これが、こういうガイドラインなんですよ、うちがそのガイドラインより安いのは、こういう理由で安いんですよ、うちが高いのは、こういう理由で高いんですよという説明ができると、患者さん方も少しは安心なさると思うんですね。
 そのガイドラインをつくるのは、個人的につくらせたって、必ずベクトルがかかっちゃうわけですから、やはり一番、先ほど申し上げたように、日本でただ一つ、中立である可能性のある都立病院がやっていくしかない時代に入っているわけで、国に任せるのではなく、あるいは他の地方の、いわゆる補助金をもらっている公立病院に任せるのではなく、都立病院が取り組んでいただきたいということを要望しておきます。
 そして、最後に、さっき申し上げました研修医システムとオープンシステムですけれども、これについては何か実行していこうという考え方があればお答えいただいて、質疑を終わりたいと思います。

○奥田経営企画部長 オープンシステム、先生かねがねご主張の相互交流あるいは大学、他機関との交流というお話であろうと思います。研修システムについては、一つは初期の臨床研修というのを都立病院が全体で受け入れるというのは当然でございますが、都立病院独自の施策として、既に一定の臨床経験を有するドクターを初期の研修に引き続いた形で受け入れて、例えば救急であるとか、小児、精神なんかの専門分野の研修医の育成を行っているわけですが、これについては、さらに積極的に行っていきたいというふうに考えております。
 また、オープンシステムにつきましては、これまでも事実上、例えば、都立病院のベテランの医師に大学の臨床指導医として大学の方に行っていただく。あるいは、若手の医師については、逆に大学で勉強をさせていただくというような形で、これも大学に派遣をする。必要に応じては、海外の大学の附属病院に派遣するというような多様な取り組みを行っております。
 これに対して大学からも、逆に大学病院の若手のドクター、臨床例を経験したいということでもって都立病院の方に送ってくるということについては、積極的に受けとめて共同で診療をさせていただくというような形の、事実上のセミオープンみたいな形の取り組みはやってまいりました。
 かねがね先生ご主張の、もっとフリーに、もっとオープンに、いろいろな形でもって大学等ともっと太く交流して、それで育成の大きな柱にしていけということにつきましては、やはり制度上の問題等々ございまして、今すぐにはご指摘のような状況にするのは難しかろうと思います。
 ただ、既に今までやっている、今お話し申し上げましたような交流、こういったものについてはいささかも後退させることなく、むしろもっと充実するという形で、実質的にその交流の度合いを深めて、医師の育成にこういった形でも努めていきたいというふうに考えております。

○田代委員 大変力強いお答えでありがたいんですけれども、途中でおっしゃられた制度上の問題、これは奥田部長を責めるわけでは全くないんですよ。当然皆さん方は、さっき申し上げたように、法の遵守というのは大切なことですから。ただ、ある部分では都民にとって必要なことの改正はしていただきたい。やはりセミオープンではなくてフルオープンにしていただくことが、医者にとってではなくて都民にとって非常に安心なんですね。
 話がちょっと横になって申しわけないけれども、前から僕が申し上げている、東京で一番、都立病院で問題なのはERで、ERは、看板をERとつくるのはすごい簡単ですけれども、救命救急は、ご存じのとおり、僕の日本医大が日本一というか、東洋一なんですね。これはいろんな経過があって、経過は長いから省きますけれども、断トツ第一位なんです。ですから、日本医大に入院して亡くなっても裁判にならないと、今でもよく冗談でいわれるぐらいに、最先端の救命救急をやっているわけですけれども、東京都の中で今ERをやっていこうというときに、僕はその経験で考えると、今までの医局の約三倍の人数と五倍の予算を立てないと救命救急はできないという実質的な経験があります。
 ところが、今ERの方にそれだけの人数とそれだけの予算がついているかというと、ついていない中でやっているから、本当にERは大変だなと思いますよ。皆さん方の努力は本当にすさまじい、僕たちが想像できないほど努力なさっているけど、やはりそこは余り無理なさらないで、予算立てもしっかりやっていかなくちゃならないのと、今回、私立の日本医大と国立の医科歯科がジョイントするなんということは、今までは想像すらできなかったんですけれども、今度の救命救急センター、医科歯科にできるやつは、例えば、日本医大に患者さんが四人来て、やけどをしながら二階から落ちて、顔をちょっとぶつけて骨折してしまったなんというときには、四人のうち、やけどがひどい人だけは日本医大が受け取って、残りの顎顔面の骨折がある人は、すぐ医科歯科から医者が来るシステムに今度したんですね。もう回すんじゃなくて、医者がいつでも自由に動ける。
 やっぱり都立病院の中で、もうちょっと医者が、荏原にいる人が墨東に行っちゃいけないとかね--いざとなったら、巡回をふやすというのは変な話だけれども、どんな方法でもいいから、救急車に乗せてでも医者をどんどんどんどん使い回ししていくということは、医者にとっても非常にいい勉強になります。人手がないからお断りします、どこかあいているところもないわけではないので。じゃ、そこが急に埋まったらどうするの。またどこかからこうやっていくしかないんですよ。
 医者というものを眠らせる資源にしちゃいけないわけで、都立病院はもうちょっと人的な交流というものを、何月から何月までどこにやりましたという悠長なものじゃなくて、瞬時にして、どこかに何かがあって足りないときには、医者が、その日、その場で動かせる、そして、終わったらまた帰ってこれるというような、やっぱり患者さん本位の医者の動かし方というものを考えていただくことを要望して、質疑を終わります。

○斉藤委員 先週、ちょうど厚生委員会の中で病院経営本部に対して質問ができる機会があったんですが、田代先生もそうなんですけれども、今回、公決があるということで、そのときは割愛しまして、きょう質問いたします。都立病院、幾つかありますが、その中で今回は松沢病院に絞って質問をさせていただきます。
 精神科の専門病院として我が国でもトップクラスの病院でありまして、ちょうどうちの近所に国立精神神経センター武蔵病院という国の病院があるんですが、精神神経センターといっても神経系が半分なものですから、多分精神ということで考えたときに、そこよりも松沢の方が、私はいろんな意味で細やかな対応ができる病院じゃないかなと、松沢を評価しています。患者さんからの期待も大きいですし、その分、やはり期待にこたえる努力をしなきゃいけない、そういった責任もしょっているというふうに思っております。
 ただ、この松沢病院については、こうした機能を持っているにもかかわらず、いわゆるほかの精神病院と同様、社会的入院と呼ばれている人が結構いらっしゃるというふうに聞いています。例えば高齢者病棟なんかについては、今でこそ高齢者の病気が、その中でも特に認知症というものについては一般化しましたが、多分、過去、福祉的な社会支援が非常に足りなかった時代に、松沢病院でなくても対応できるけれども、実際ほかに行くところがなくてということで対応して、入院をしたという経過を持っている方も多いんじゃないかと推測されます。
 現在、社会復帰、そして在宅療養、そして対応可能なほかの病院への移行によって、松沢病院におけるスタッフや施設予算といった部分での余力というものはもう少し高めることが、ひょっとしたら今の時代できるのではないかなという感想を持っています。一方、その余力ができた分を、ほかの病院では受け入れ不可能な困難事例の患者さんに対して対応していくのが、松沢病院の本来の姿ではないかというふうに常々思っています。
 そこで、一問目なんですが、松沢病院が近年取り組んでいる、一年以上入院しているいわゆる長期入院患者の社会復帰支援策について伺います。
 精神保健において諸外国に比較しますと大変おくれている感があるこの社会復帰、在宅療養支援に対して松沢病院がどのようなアプローチを行っているのか、また、その実績について教えていただきたいと思います。これは私のみならず、多分多くの精神病患者の方、そして、その家族の方が、あの松沢がどういうふうにしているかというのは大変関心を持っているところじゃないかと思いますので、細かく伺いたいと思います。
 ちなみに、きょういただいた資料を見ますと、平成十二年度には約二百日あった入院日数が、十六年度には百三十日ぐらいになっている。ほかの病院に比べて格段に短縮されておりまして、三分の一が減っているわけですね。こういった部分も含めると、この部門に関する成果というものは大変上がっているかと期待されるんですが、どうでしょうか。

○及川参事 松沢病院では、患者の早期社会復帰の促進と、退院後の地域生活を援助することを目的といたしまして、平成十五年度から、精神科医師を室長といたします社会復帰支援室を設置いたしておりまして、現在、医師一名、精神科ソーシャルワーカー十二名、看護師八名、事務職二名の体制で、職種を超えた連携のもとで、入院後に、できる限り早期の段階から個別援助など患者の社会復帰支援に取り組んでおります。
 実績でございますが、平成十六年度では、退院総数二千五百五十六名のうち、長期の入院患者を含めまして七百二十一名の患者さんにつきまして退院支援を行っております。こうした取り組みの結果、五百名を上回る長期の入院患者数でございますが、社会復帰支援室設置前の平成十四年度末と平成十六年度末を比較しますと、約三割強、減少しております。

○斉藤委員 松沢病院の取り組みに関して、これだけの数の患者さんが地域社会に戻るということができたことは、大変大きな実績だと思います。こういったことがなかなか今まで大きな取り組みとしてできなかったというのは大変残念だったと思いますし、逆に松沢病院そのものについても、多分こういうふうにやってしまえば、こういった活動ができたにしても、なかなかそこまでの経緯に今まで至らなかった時代があったんじゃないかと思います。その点に関しては、過去できなかったものを今やっているという点で、大変評価できると思います。
 そこで、その培ったノウハウの活用について伺いたいと思います。先ほどいいましたように、松沢病院というのは大変特化している病院であり、また、なかなかああいったことをまねできる病院というのは少ないわけなんですが、こういったアプローチは、ほかの精神病院--松沢は見てわかるとおり、世田谷に大変大きな土地を持っていまして、八幡山と上北沢の二つの駅を同じ病院が結ぶぐらい大きいわけです。そんな病院なんというのはなかなかないわけでございまして、それだけの病院があってできるということもあるんですが、一方で逆に、そういった中で研究したことを、ほかの地域の住宅地にあるような、そこそこ入院施設がそれなりに若干なりともあるような病院に対して、やはりノウハウを取り入れることができるのか、このあたりについて伺いたいと思います。

○及川参事 入院医療中心から地域生活中心へというような大きな精神保健福祉施策の変化がある中で、入院患者さんが早期に円滑に地域生活へ移行していくための社会復帰支援は、松沢病院だけでなくすべての精神病院での共通した課題でございます。ただいまお話がありましたように、社会復帰支援室で取り組んでおりますが、こういった効果について院内でさらに検証いたした上で、松沢病院のそうしたノウハウを他の病院にも提供していくということについて検討してまいります。

○斉藤委員 まだ今軽々に、一、二年で取り組んだ部分を表に出すというところにまだ至らないのかもしれませんが、ある程度ほかの病院でも応用がきく部分でまとまりましたら、ぜひそういったノウハウをほかの病院に広げていっていただきたいと思いますし、また、それが役目じゃないかと思います。
 もう一つ、ほかの病院ばかりじゃなくて自治体に対しても、やはりぜひ広げていってほしいというのが私の思いであります。こういった社会復帰に向けた活動は、やはり一病院だけでの取り組み、例えば、その地域に精神病院というのはそんなにたくさんありません。こういった精神病院だけでの取り組みでは限界がありまして、それは病院自身もよくわかっています。そういった中で、今後、東京都でいえば福祉保健局、保健所とか、そういった部分を含めて、そしてまた、地域、各市区町村に対して協力を求めて連携を進めていくことが必要だと考えますし、また、これがなければ、実際にそれを進めていくことは不可能だと考えています。
 今回、この新しくつくった支援室の方でいろんな取り組みをやっているわけですが、いわゆる地方との連携という部分について、自治体との連携についてどういうふうに考えているか、もしくは、今のところの取り組みでこういうことがわかったとか、そういうのがありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。

○及川参事 今お話がございましたけれども、社会復帰や在宅療養支援を一層進めていくためには、一病院だけの取り組みでは限界がございます。そのため、精神障害者の受け入れ施設の整備や在宅での福祉サービスの提供など、精神障害者が地域で暮らしていくための福祉サービスの充実が必要となっております。
 また、転退院の促進、あるいは早期の社会復帰の取り組みを効果的に継続的に実施していくためにも、今後とも、福祉保健局や保健所、福祉事務所等関係機関と十分に連携を図りますとともに、地域の訪問看護ステーションなどにノウハウを提供してまいります。

○斉藤委員 ありがとうございます。確かにまだなかなか、松沢病院でできたからといって、今度またそれを地域にそのノウハウを移していくというには、またそれはすごく大変な努力があると思うんです。この辺については、福祉保健局などと連携をして上手にやっていただきたいと思います。
 正直申しまして、都立松沢の方でやっている部分については、まさにさっきいいましたように、患者、そして家族の方にしてみれば、どんなことをやっているんだ、例えば、うちの息子はどうしたら社会復帰できるんだろう、もしくは病院から出られるんだろうと、いろんなことを患者さんの家族は思っています。そういった中で、それこそ松沢みたいなところが、何を考え、何を研究し、何をやることが一番いいのかということを考えているか、本当に聞きたいという方がたくさんいらっしゃいます。
 先日、研究機構の方に聞きましたら、一般の患者さんのご家族からの講演会への参加の申し込みが大変多いと聞いています。このあたりなんかについても、ただ単に研究したものが研究者の間だけで流れるというだけじゃなくて、一般の方も聞きたいという、精神病ゆえの状況を松沢病院がよく理解をして、それこそ地域に返していく、自治体に返していくという部分というのを努力していただきたいと思います。
 特に今、病院の方と、そしてまた地域の話をしたのですが、最初にご答弁いただいた中で、今回の社会復帰という中で精神科のソーシャルワーカーの動き方も、今までと大分違うということをちょっと耳にしております。私自身は社会福祉士なんで、ソーシャルワーカーになられた友達もいっぱいいるんですけれども、やっぱり上手な使い方をしていない場合もあるし、また、病院との連携が、きょうは田代先生いらっしゃるんで、あんまりいってもあれなんですが、ドクターとの連携がいい病院と悪い病院というのはすごい差があるんですね。
 そういった中で、なおさらその中で、ただ単にソーシャルワーカーとしてやっていくだけでも環境が整わない病院があるにも重ねて、精神となると、やはりそれに興味を持つソーシャルワーカーは物すごく限られてくるんですね。今、市町村なんかで、ソーシャルワーカー、いわゆる社会福祉士の免許を持っている公務員の方が福祉の部局に勤めているケース、結構あるんですけれども、なかなか精神そのものが、市区町村の方で受けたのは最近の話ですから、そこに興味を持って勉強して、非常に難しい患者さんの対応、地域で療養中の住民の方、いわゆる外来患者として通院されている方をバックアップしていこうという方が、やっぱり比率的に非常に少ないんですね。
 そういった中で、例えばヘルパーさんでも、最近は精神保健福祉士の免許を取ろうと勉強したりしている人もいて、実際には現実のニーズ、そしてまた、こういった機会とのマッチングが、なかなか人材の面でうまくできてない現状を、松沢病院が提案することによって打破していただきたいというのが正直な思いであります。
 それに加えてぜひお願いしたいことがまだいろいろあるんですが、その一つとして、松沢病院では、ほかの民間精神病院では絶対に診られないような疾病への対応をしていると思います。特に、合併症病棟に関して大変大きな面積をとっておりますし、私も看護学生の実習で二週間ほどお世話になったときは、整形外科合併病棟の方にいたんですけれども、大変難しい患者さんを対応していました。大変努力をしていると思いますし、今後も期待するものであります。
 そのことを踏まえながら、冒頭申し上げましたように、民間の精神病院と適切な役割分担、松沢でしかできないところと、ほかの病院でもできるところというのを明確にして、それこそ松沢しかというところに、そういった疾病に重点的に対応していく、それがこの松沢病院の公共性という立場からも望ましいと考えています。
 先般、各会派に対して各種団体の方から予算要望ヒアリングがあったと思いますが、その中で、アスペルガー症候群の方で、なおかつその方がアルコール依存症になってしまった。いわゆるアスペルガーの合併症という方がいらっしゃいました。そういった方に対して松沢病院の方にも親御さんが相談に行かれたんだそうですが、ちょっと対応が難しいということで受け入れてもらえなかったということをいっていました。
 ただ、これはその親御さんの方もおっしゃっていたんですけれども、松沢病院は恐らくこういった精神に関して非常に造詣が深いために、うちのところでは基本的にまだ扱えるような受け皿がなかなかないんだということが、聞いてわかったんだと思います。つまり、自分たちの限界を知っているからお断りせざるを得なかったというようなことで、そういうふうになってしまったんじゃないかなと、その親御さんは大変好意的に、前向きに理解しておりました。そういうことがあるかなと私も思います。
 ただ、それを聞いて、しかし松沢病院というのはこういった非常に特化した病院です。ここで断られてしまったら、本当に次がないという方がたくさん、このアスペルガー以外にもいらっしゃいます。このアスペルガー症候群そのものを精神病としてくくるかどうかという問題もまたあるんですが、私がいいたいのは、そういった一つの症候群の話じゃなくて、なかなかほかの病院で対応できない、すき間に落ちてしまった疾病なんかに関しても、本当に松沢で受け入れるようにするというのが、松沢病院そのものの本来の責任ではないか、もしくは理想ではないかというふうに思うということです。
 こういった高次脳機能障害など、過去、疾病として認識されなかった疾病への対応が現在望まれております。本当に松沢病院を行き場のない困窮した患者や家族の最後のとりでとなるように育てていくべきである、それを病院経営本部にお願いしたいということを思いながら、次の質問をいたします。
 例えば、精神科の合併症患者に対して十分な対応ができない民間の精神病院も多く、こうした対応が困難な患者の受け入れに松沢病院が積極的に取り組んでいるということは、もちろん承知をしているところですが、そのほかに民間病院から松沢病院に期待されている医療機能について、松沢病院が本当はこういうことをこれからしたいなとか、こういうのが課題としてあるんだということになるかと思いますが、そういった医療機能についてはどういうものがあるか、ぜひ教えていただきたいと思います。

○及川参事 都内の民間の精神病院では、一般的な精神科の入院治療に対する対応、これは当然できているというふうに考えてございますけれども、お話にありましたような精神科身体合併症医療のほか、精神科の救急医療、精神科の特殊医療であります薬物依存症への専門治療等への対応につきましては、まだ十分とはいえないというふうに考えております。
 したがいまして、松沢病院におきましては、引き続き精神科救急医療に対応していきますとともに、こうした精神科特殊医療など、精神医療センターとしてふさわしい機能の一層の充実を図っていくことが必要だというふうに考えてございます。

○斉藤委員 そうした精神医療センターの機能を充実するためには、現行の松沢病院の施設の多くは老朽化が大変進んでいるんじゃないかと思います。私がちょっとお世話になったときは、もう十二年ぐらい前なんで、大分前になるんですが、そのときも、もう結構古びた感じがございました。
 そこで伺うんですけれども、そういう状況で、これからの医療機能のさらなる充実、これは多分考えていらっしゃると思います。これについて対応していけるのか、これを確認したいと思います。

○及川参事 現行の松沢病院の施設の多くは、老朽化が著しい上に手狭な状況でございまして、将来の医療機能の充実に対しまして、施設的に限界がある。また、現在の配置でございますが、低層の分散型になっておりまして、その動線が長いということで、患者さんの利便性等にも課題があるというふうに認識しております。
 現在、松沢病院を精神医療センターとして整備をしていくというような検討を進めているところでございますが、こうした課題に対応した都の精神医療の拠点としてふさわしい施設整備、設備の整備を行っていく予定でございます。

○斉藤委員 ありがとうございます。
 最後に、ちょっと意見を述べさせていただきます。
 今後、精神医療センターの整備においては、必要な施設整備をしていくということでございますが、施設面の充実だけではなくて、地域との結びつきも含めた病院のあり方というものをぜひ望むものであります。
 逆に、松沢は施設が云々という、あれだけ土地があって、あれだけいろんな施設が入っていれば、施設云々の話の部分が、見た感じだけでいえば、あると思うんですが、それ以上に内部のソフトの部分が、本当に患者さん、そして家族の方には非常に期待する部分であります。建物も含めて一層の充実というのをお願いしたいところであります。
 特に今後、社会復帰が促進されて、患者さんの出入りが活発化したことによって、恐らく病院内の雰囲気も、私がいました十数年前とは比較にならないほど活気があるんじゃないかと思います。私がいたときには、何となく時間がゆっくり流れているような、そんな印象がございました。
 恐らく、先ほどもいったとおり、入院の平均日数、平均が三分の二になっているというのは大変な話でございまして、そういった中で、多分、病院内の雰囲気も大分違うんじゃないか、スタッフの心意気も違うんじゃないかということを思います。
 私がいたときにリハビリ施設、当時から非常に充実していたんですが、例えば屋内プールなんかも立派なものがあったんですけれども、なかなか十分に生かしている様子が、ちょっと遠目から見て、余りなかったです。ところが、今いったみたいに活性化されれば、当然デイサービスなども今後期待ができますし、そういった中で、ずっと家の中で余り活動しないような形で在宅療養していても、デイサービスで松沢に行くとプールも自由に使える、プールで体を動かして、それこそ精神だけじゃなくて、健康の維持という点でもいろいろ配慮をしてくれるというふうになれば、当然、外来の患者さんについても、雰囲気が変わってきますし、また傾向も変わってくると思います。そして、松沢に行けば答えがあるというふうに家族から思われるような、そんなプログラムを、そしてまた、一つの指導も期待できるんじゃないかと思います。
 ぜひとも、そのあたりを取り組んで、もちろん一朝一夕にできないこともありますけれども、ぜひ努力をしていただきたいと思います。本当に一般の地域の家族、患者さんの期待は大きいですので、今回もちょっと励ましということも含めて、質問させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。

○上野委員 私からは、都立病院の再編整備と危機管理体制について、何点かお伺いいたします。
 まず、都立病院の再編整備でございますけれども、ご存じのとおり、多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターの整備計画、これは現在の府中病院を多摩広域基幹病院として、また、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院を移転統合の上に小児総合医療センターとして再編整備することとしております。府中病院の隣接地に施設を一体的に整備して、相互に連携しながら医療を提供するとしております。
 この整備に当たりましては、都立病院として初めてPFIを導入するということでございますが、PFI事業としましては我が国最大規模のプロジェクト事業ということで、かねがね我が党も着実にその成果というものを上げるように、大きな関心を持って見詰めているところでございますが、まず、十六年度以降のこのPFI事業の進捗状況と今後の予定についてお伺いいたします。

○及川参事 多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターのPFI事業の進捗状況でございますが、まず、十六年九月に二病院の開設時期を平成二十一年度末とする事業計画を公表いたしました。また、十二月には、都として本事業をPFI手法により整備する特定事業として選定し、公表を行っております。
 さらに、本年、第一回定例会におきまして、本事業に係る債務負担行為の議決をいただき、三月三十日に入札公告を行いました。その後、事業者の資格確認を行いますとともに、病院におきます現場説明会を実施するなど、現在に至るまで事業者の選定手続を順調に進めてございます。
 今後でございますが、価格も含めて応募者の提案を総合的に評価する総合評価一般競争入札を行いまして、平成十八年一月末に事業者を決定する予定でございます。

○上野委員 昨年九月に公表されました事業計画におきましては、当初予定しておりました開設時期を二年変更し、二十一年度末となっております。これは、多摩地域の都民が安心して産み、育てることができるよう、平成十五年に当時の健康局と共同でまとめた多摩地域における小児医療体制検討会における検討結果を踏まえて、小児総合医療センターについての当初の構想を上回る機能の充実強化を行う、施設の拡大を図る、こういうことでなったというふうに聞いております。
 そこで、改めて確認のために、この医療機能をどう拡充したのか、具体的にお答え願います。

○及川参事 拡充した医療機能でございますが、まず、小児の救命救急に対応する小児ICUの整備や手術室の拡充、救急車など緊急車両の進入路の複数整備、救急災害用ヘリポートの設置、障害を持つ患者さんの在宅療養を支援するための搬送手段の整備、また、小児科専門医やコメディカルスタッフなど医療を支える優秀な人材育成のための体制整備、そして患者、家族を支えるサービス機能の強化策といたしまして、小児医療情報センターの整備などでございます。

○上野委員 申すまでもなく、小児医療の充実や多摩地域の医療提供体制の整備というのは喫緊の課題でございます。多摩広域基幹病院と小児総合医療センターの二つの病院を集約して整備するというメリットを生かしながら、多摩地域の医療拠点としてだけではなくて、私はぜひとも都民全体の期待にこたえられるように、これまで以上のよい都立病院を整備していただくよう、強くご要望いたします。
 私は、大事なことは、この小児総合医療センター、PFI事業で建設し、たとえ立派な設備になったとしましても、そこで働く優秀なお医者さんがいなければ、その機能を十分に活用することはできないのではないか、このように思います。
 特に、小児科の医師不足は社会問題となっております。先ほども話があったように、小児総合医療センターの機能の充実強化に向けまして、具体的な取り組みの中で小児専門医の育成という説明がございました。こうした状況の中で、都立病院としましても、人材の育成確保の観点から、小児医師の育成システムを構築し、さらに魅力ある病院にしていくことが必要と考えますが、小児総合医療センターの機能の充実強化に向けて、小児科専門医の育成はどう取り組んでいるのか、お伺いいたします。

○奥田経営企画部長 都立病院におきましては、初期臨床研修を修了いたしましたドクターを対象といたしまして、清瀬小児病院と八王子小児病院で、現在七名のドクターが小児科医を目指して修練をしております。
 さらに、その上位の課程といたしまして、例えば小児腎臓内科などといった専門領域で学会認定資格取得も視野に置きながら、二名のドクターが清瀬小児病院で修練を開始したところでございます。

○上野委員 ぜひとも今後も優秀な医者の育成と確保に向けて取り組んでいただきたいと切に願うところでございます。
 次に、都立病院における危機管理体制についてお伺いいたします。
 今月の八日、パキスタンで強い地震が起こりました。死者数も五万人を超えると報道されております。こうした大災害というのは、パキスタンではなくて東京においてもいつ起きてもおかしくないと、このようなこともいわれている状況でございます。都民の安全安心のために万全の備えをしておく、このことが急務でございます。
 東京都におきまして、昨年八月に七つの病院、約九十名の隊員による東京DMATが発足しました。我が党は、発災時に対応するにはもっと拡充をするよう主張してきたところでございます。その結果、本年九月には十三病院、約二百五十名へと体制が増強されております。都立病院では、広尾病院、墨東病院、府中病院の三病院が発足当初から参加していると伺っております。
 そこで、さきの本委員会で、昨年十月に発生した新潟県中越地震に東京DMAT隊を派遣し、また、昨年十二月下旬のスマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対する国際緊急援助医療チームの一員として、都立病院の医師、看護師を派遣したとの報告がございましたが、そのときの活動の内容について具体的に説明していただきたいと思います。

○奥田経営企画部長 新潟県中越地震では、地震発生の翌日、府中病院のDMAT隊員である医師二名、看護師一名が自衛隊ヘリで現地の新潟県小国町に派遣されまして、二日間にわたりまして、現地の医療スタッフと一緒に避難所あるいは診療所で緊急の医療救護活動に従事をいたしました。
 スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害では、独立行政法人国際協力機構、JICAでございますが、国際緊急援助医療チームとしての派遣要請を受けまして、第二次医療チームとして、墨東病院の医師一名を約二週間、それから第三次医療チームといたしまして、広尾病院の看護師一名を約一週間、発生翌月の一月に派遣をいたしました。派遣先は、インドネシア共和国のバンダ・アチェという地域で診療活動等に従事したところでございます。

○上野委員 東京DMATや国際緊急援助医療チームの一員として、私ども都立病院のお医者さんや看護師の方々がその災害救助活動に多大な貢献をされた、このように聞きまして、本当に頭の下がる思いでございます。今後とも、病院経営本部としましても、こうした活動に積極的に参画することを期待するものでございます。
 そこで、危機管理でございますが、これは平素からの準備が不可欠であります。都立病院では、医療危機管理体制を整備することとし、具体的には、都立病院改革実行プログラムにあるように、広尾病院を救急災害医療センターとして整備し、同病院を中心とする医療危機管理ネットワークの構築を目指していると聞いております。
 そこで、ネットワークの構築に向けまして、病院経営本部としてどのような具体的取り組みを行ってきたのか、お伺いいたします。

○奥田経営企画部長 平成十五年度から十六年度にかけての取り組みでございますが、都立病院の医療危機管理ネットワークの中心となります広尾病院には、防災倉庫であるとか、あるいは職務住宅、さらに発災時に臨時病室に転用できる研修施設などを合体いたしました救急災害対策用施設を新たに整備いたしました。あわせまして、発災時に必要となる簡易ベットであるとか、あるいは医療資器材等につきましても、配備をいたしました。
 また、ソフト面では、発災時に即応できるよう医療救護班を常時編成したほか、災害医療専門スタッフの育成研修であるとか、広く職員に知識や技術等を修得させるための研修、さらに発災を想定した訓練も実施するなど、都立病院の医療危機管理体制のモデルとなるような取り組みを行ってまいりました。

○上野委員 ご答弁がありましたように、広尾病院では、ハード面での施設整備に加えまして、ソフト面での対策もとられている。広尾病院のこうした取り組みを、ぜひとも都立病院全体に広げていくことが重要であると思います。
 そこで、最後にお聞きいたします。今後、都立病院における医療危機管理ネットワークの構築に向けまして、病院経営本部ではどのような取り組みを進めていこうとされているのか、具体的にご説明をいただきたくお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○奥田経営企画部長 救急災害医療センターとして都立病院の医療危機管理ネットワークの中心となります広尾病院での取り組みを一層充実いたしますほか、局所的な災害で広尾病院自体が機能停止をするというような場面も想定をいたしまして、墨東病院と府中病院に代替の補完機能を整備していく考えでございます。
 また、ご指摘のように、広尾病院が蓄積いたしましたノウハウを都立病院全体で共有化して各病院の災害医療体制の充実を図るために、全都立病院スタッフに対する研修訓練、こういったものを実施するとともに、各都立病院に医療救護班を常時編成して、発災時に即応できる体制を確保するなど、多様な取り組みを通じて都立病院の医療危機管理ネットワークを構築していきたいというふうに考えております。

○たぞえ委員 私は、都立松沢病院について何点か伺います。
 まず、都立松沢病院の特徴とは何か、伺いたいと思います。

○及川参事 松沢病院は長い歴史を有しておりまして、常に日本の精神医療をリードしてきた病院でございます。現在、精神科救急医療、精神科身体合併症医療、薬物依存症等への専門的医療など、高い専門性を持った精神医療を提供しております。

○たぞえ委員 人権を擁護して適切な医療、介護を提供する。地域との連携も図る。貴重な精神科医療センターの存在として機能を果たしていると思います。
 東京都内では精神障害者は約二十四万三千人といわれていますが、そのうち、入院している患者は二万五千人です。病床数の八八%が民間病院で、公立の精神科病院が非常に少ない、これが特徴です。
 そこで、松沢病院の各病棟にはそれぞれの病棟特有の機能があると思うんですが、どのような病棟群に分けているのか、説明をいただきたいと思います。

○及川参事 松沢病院では、緊急的入院や急性期の患者を受け入れる救急・急性期病棟、新規の入院患者や救急急性期病棟からの転棟患者を受け入れる新入院病棟、いわゆる社会的入院等の長期在院患者のための病棟である長期入院病棟、身体合併症患者を受け入れます合併症病棟などに分かれております。

○たぞえ委員 今、説明のあった病棟は、それぞれが一般の精神科病院としての機能を持つ病棟と、都の行政機能を担う病棟に分けられているわけです。こうした病棟の中で治療を受けている患者に対して、重い精神障害で長く入院をしたり、入退院を繰り返している人でも、医療と福祉を組み合わせた適切な支援を提供すれば地域で暮らせる、こういう方向で、八〇年代にイギリスやアメリカなどで定着をしてきた包括的地域生活支援プログラムが、日本でもようやく動き始めました。
 精神医療はこれまで施設が中心で、本来なら入院が必要ない人までも施設に入れられていた。その主な原因が、地域に十分なサポート体制がないからでした。世界的に壁のない病院を、これが合い言葉になって、看護師や精神科医、ソーシャルワーカー、そして職業カウンセラー、多種業種の専門家がチームを組んで精神障害者の生活をバックアップする、こういう動きが今、広がっているわけです。
 そこで、東京都でも、二〇〇三年、松沢病院内に社会復帰支援室がつくられ、スタートしましたが、この都の支援室が設置された目的について伺いたいと思います。

○及川参事 患者さんの早期の社会復帰の促進と、退院後の地域生活を援助するということを目的として設置をいたしました。

○たぞえ委員 それでは、十六年度に退院支援を行った患者数の推移を示してください。

○及川参事 平成十六年度に松沢病院を退院されました患者さんの総数二千五百五十六名のうち、退院支援を行った方は七百二十一名でございます。

○たぞえ委員 今の答弁ですと、何の支援もないまま退院した方が約千八百人に及びます。しかも、七百二十一人の退院支援というのも、ちょっと信じられない数字なんですね。土日を除いて毎日三人の退院ですよ。精神障害の長期入院患者の退院支援というのは、最初の動機づけからアフターケアまで大変難しいと聞いています。時間もかかる。だから、先進的な取り組みを進めている大阪でも、精神患者への社会復帰事業で、大阪府全体でですよ、三年間で九十七人が支援対象になって、社会復帰して退院した患者は五十三人です。これは大阪府全体なんです。
 その大阪で、一人一人の患者に対して外出の支援や退院のフォローが行われてきました。事前面接とか作業所への外出の支援、退院後の支援、そして家族への働きかけ、四十七人の支援職員が二千三百四回にわたって支援を行うんですね。退院支援を行った患者さんは、一人当たり大体八・九カ月かかって退院をさせるわけです。長い人は二年以上かかるといわれています。
 この事業によって退院して社会復帰した患者さんの中では、患者の表情がよくなった、身だしなみに気をつけるようになった、将来のことを話すようになった、意欲が出てきた、こういう積極的な方向に患者さんが目を輝かせるようになってきた。これまで退院に非常に消極的だった家族が、この事業がきっかけで協力的になっていったという報告も大阪から寄せられました。
 これだけきめ細かくやっても、二二%の人が病状が悪化して、そして一二%の人が通院や薬を中断しがちになってしまう。で、二六%の人がまた再入院をしてしまう。これだけ暇がかかって難しいですから、三年間で五十三人に大阪ではとどまっているわけです。
 そこで、伺いたいのは、松沢病院では病棟を減らしていますが、何病棟、何病床減らしてきたんでしょうか。

○及川参事 平成十五年度末に一病棟、これは予算定床数でございますが、四十九床、それから平成十六年度末にやはり一病棟、これも予算定床として四十八床を休止をしてございます。

○たぞえ委員 東京都は二〇〇五年四月までに患者を退院、または転院させてきましたが、この中で退院と転院の割合はどうだったでしょう。

○及川参事 ご自宅や社会復帰施設等への退院でございますが、これが五百二十五名で、約七三%。転院につきましては百九十六名、約二七%でございます。

○たぞえ委員 約二百人の方が都立の病院から移るということです。転院になった患者はどこに移動されたんでしょう。

○及川参事 転院先でございますが、主に都内の民間の精神病院でございます。その際、患者さんの病状、それから希望、住所要件等を考慮いたしまして、その転院先を選んでおります。

○たぞえ委員 松沢病院は患者数を縮小するといっていますけれども、どのような規模まで縮小をする計画ですか。

○及川参事 現在、整備を検討しております精神医療センターでは、急性期中心の精神医療を提供するということにしておりまして、現在の一千六十三床に対しまして、八百九十床程度の病床規模を予定しております。

○たぞえ委員 かなり長期にわたって入院をしていた患者さんを、今後はこのまま入院していたんでは採算が合わないと、マスタープランで経営優先が打ち出されてきました。退院支援七百人といいますが、地域ケアが不十分なままに外に出てしまうことになってはいないでしょうか。社会的入院といわれる患者の社会復帰促進は大変重要なんですが、経営効果優先で病棟の閉鎖や病床削減のやり方はやめるべきです。
 長期入院の患者は非常に症状が重くて、社会復帰もできない方々が大勢います。しかし、地域で一定の厚い支援が行われていても、不十分な退院で、本人の希望があってもグループホームに入れない。保証人もいなくて住宅を確保することもできない。授産施設にも入れない。こうした人々に対する保健所や精神障害施設等の丁寧な対応がなければ、こうした人々の社会復帰の道は開かれないと私は思います。
 現実に地域によって福祉施設が足りなかったり、精神科救急の体制が整っていないと、こうした患者さんが制度から取り残されてしまうことになりかねないわけです。その意味でも地域の受け皿づくりの体制確立が急がれています。
 実は先日、松沢病院の風祭院長先生が本を出版されまして、読んでみました。この先生、六年間院長をされていたわけですが、この先生が最後のところで、こういっていました。松沢病院は今後は東京都の精神科医療のセンター的存在として、全国に模範的なモデルを示すべきだろう。しかし、これは現在のような都立病院の採算至上主義では不可能である。要するに、お金をかけるのはどうかなと、そして採算がとれないのはどうかなという発想から医療はできないということを、この院長先生は警告をして、私はこの本を読んで、やはり精神障害という社会の中でも一番重い方々の救援・救済医療は、地方自治体、国が挙げてやらなければならない。そのための地域との意思疎通を図っていくことが大事だと。
 とにかく病棟、病床を減らすということに眼目を置いたような社会復帰では、患者の希望は実らないということを申し上げて、質問を終わります。

○大西委員 小児精神医療について、何点か伺いたいと思います。
 子どもを取り巻く社会環境の変化の中で、不登校やいじめの問題、家庭内暴力や児童虐待など、精神医療にかかわりの深い社会問題が深刻化してきております。このような社会状況の中、児童、そして思春期における精神科医療の必要性が高まっていますが、全国的にも小児精神科の専門家は少ない。そして、小児精神の専門病院は、都内では梅ケ丘病院だけです。
 そこで、この梅ケ丘病院について伺いたいんですが、十六年度における梅ケ丘病院の患者実績はどのようになっているのか。また、どのような症状の患者さんに対応しているのか、伺います。

○徳毛サービス推進部長 十六年度の梅ケ丘病院の患者実績でございますが、一日当たり入院で二百四名、外来で百三十二名でございます。
 このうち、入院患者の主たる疾患は、統合失調症が約二三%、自閉症が約二〇%、適応障害が約一三%の割合となっております。
 また、これを性別で見ますと、男子は自閉症、多動性障害などの発達障害、女子は社会的不適応を来す適応障害が増加傾向にございます。

○大西委員 都内唯一の小児精神の専門病院として、小児精神の医療ニーズが非常に高いということが今の答弁でもわかるんですけれども、こういう症状の患者さんに対して、梅ケ丘病院ではどのような取り組みが行われているのか、伺います。

○徳毛サービス推進部長 梅ケ丘病院では、自閉症児、学習障害児及び注意欠陥多動性障害児のための発達障害の専門外来、さらには摂食障害、ひきこもり、こだわりなどの専門外来で各種の検査、診断治療を行っております。
 また、医師、看護師、心理職員等が協力いたしまして、スポーツ、音楽、料理等の作業療法や、精神科デイケアを実施するなど、小児精神に関するリハビリテーション医療にも積極的に対応しております。

○大西委員 子どもの精神医療というのは、成長と病気というものをどういうふうに見るかということでも非常に微妙な問題なんですが、そういう中でも小児精神の場合、薬というものがあります。薬が子どもたちに与える副作用というのが、いろいろと心配されております。依存症を引き起こす精神安定剤や、副作用、そして自殺への衝動を引き起こす抗うつ剤などの副作用に大変不安を持っている方々からの声も、私どもの方にも届いております。
 薬の副作用は患者さんの親の関心も高いんですが、梅ケ丘病院ではこの薬というものに対してどのような認識を持っていらっしゃるのか、特に子どもに対する薬の副作用。

○徳毛サービス推進部長 子どもの精神症状に対する治療方法といたしまして、疾患によっては薬物による対応は有効な方法の一つでございます。この治療方法といたしまして、精神療法や運動療法と並行して行っているところでございます。
 なお、薬物による対応では、対象となる子どもの年齢や疾患に合わせまして、慎重を期す必要がございます。患者本人及び家族に対しまして、十分ご説明し、協力も得ながら、副作用に注意するなど適切に対応しております。

○大西委員 子どもと薬という微妙な問題、ぜひしっかりと注意深く取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思います。
 梅ケ丘病院には東京都立青鳥養護学校の分教室が設置され、教育の機会を確保しております。子どもの病気の早期発見や治療、社会復帰促進のためには、学校や医療機関などとの連携が必要ですが、十六年度、梅ケ丘病院ではどのような取り組みを行ったのか、伺います。

○徳毛サービス推進部長 都内の養護学校はもとより、教育関係者等を対象といたしました公開講座を、十六年度は、虐待への取り組み、自閉症の理解と対応というテーマで二回開催いたしました。
 また、十五年度から都内の小児精神科専門医療機関の参画を得まして、子どもたちの疾病の早期発見治療や社会適応力の向上を目指す小児精神科治療連絡会を開催しておりまして、十六年度は梅ケ丘病院におけるデイケアの状況や参加医療機関の診療内容について意見交換などを行いました。
 教育・専門医療機関との連携につきましては、今後も充実強化していく考えでございます。

○大西委員 いろんな病気がそうなんですが、特に小児の患者の場合、やはり親や家族への支援や援助が重要になってまいりますが、現状はどうなんでしょうか。

○徳毛サービス推進部長 ご指摘のとおり、患者、家族への支援、指導は重要と考えております。外来患者の家族に対しましては、家族も治療者の一人として病気や障害に対する理解を深めていけるように、医師、心理職員、保育士、精神保健福祉士が講師となりまして、グループミーティングも取り入れながら家族教室を行っております。
 また、入院患者の家族に対しましては、個別に対応することはもちろん、各病棟において月一回、家族会を開催いたしまして、患者さんの容体や生活状況について説明しております。

○大西委員 そんな中、小児総合医療センターに統合するということになりますが、そのメリットと、それから梅ケ丘病院が小児総合医療センターに統合されると、やっぱり区部の外来機能は手薄になるんではないかという疑問が出てくるわけですが、それがどうなのか、最後にお聞きして、終わりたいと思います。

○徳毛サービス推進部長 まず、小児総合医療センターに統合するメリットでございますが、小児総合医療センターにおきましては、子どものさまざまな身体疾患に対する高度専門的な医療はもとより、小児専門部門と緊密に連携して、心から体に至る総合的な医療を提供していく計画でございます。
 さらに、隣接する多摩広域基幹病院と連携することによりまして、出生から小児期、思春期、成人に至るまで、心と体に関しまして、一貫して継続的な医療を提供していくこととする予定でございます。
 また、区部の外来機能との関係でございますが、梅ケ丘病院の機能は基本的に小児総合医療センターに引き継いでまいります。
 なお、現在、梅ケ丘病院が有している医療機能のうち、小児精神科の外来機能やデイケア機能の一部を大塚病院に整備いたしまして、区部における機能を確保する予定でございます。

○石森委員 それでは、私ども八王子にとりましては大変大きな問題とされております都立病院の再編整備計画につきまして、お尋ねをしたいと思います。
 都では、平成十六年九月に多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターの整備計画を公表いたしました。それによりますと、八王子小児病院、清瀬小児病院、梅ケ丘病院の三病院を府中キャンパス内に移転統合することとしたのは、小児科領域における医療の多様化や全国的な小児科医師の減少など、近年、小児医療の取り巻く環境が厳しさを増していることに加え、各病院とも施設の老朽化が進んでいることなどを踏まえ、限られた医療資源を最大限に有効活用していくためとしております。
 小児医療の拠点整備が進むことは、現在の医療状況の中では大変意味のあることでありますけれども、一方で、移転統合されてしまう側の地域の小児医療体制がどうなっていくかというのも、大変重要な部分でもございます。
 私ども八王子市内では、八王子小児病院が果たしてきた役割、これは非常に大きいものがございまして、そうした中で小児病院が移転するということは、地域の医療機関あるいは地域住民にとりましても大きな影響を与える、そういうことになろうかと思います。
 そこで、まず、お聞きしたいと思いますけれども、基本的な事項についてでございますが、都立病院がこれまで地域の医療機関とどのような形で医療連携を進めてきたのか、お尋ねをしたいと思います。

○及川参事 都立病院では、限られた医療資源を最大限に活用するために、かかりつけ医を初めといたしますさまざまな医療機関等との緊密な連携の構築に努めてまいりました。具体的には、紹介、逆紹介等の実施を初め、高度医療機器等を使う検査の受け入れ、また、最新の医療技術や今日的な症例に関する合同研究会を実施することなどを通じまして、医療連携に積極的に取り組んでおります。

○石森委員 今のご答弁にありましたように、この医療連携の取り組みというのも、長年地域において行ってきた都立病院の一つであります八王子小児病院が移転するということは、地域にとっても大変大きな影響があることは避けられない、そんなところであろうと思います。
 東京都が八王子小児病院の移転統合計画を示す一方で、八王子市においては救急医療体制を構築するなど、具体的な取り組みが一部で進んでおります。これに関連いたしまして、平成十六年度における八王子小児病院の患者動向はどのようになっているのか。
 きょういただいた資料の中には、入院患者あるいは外来患者の実績、前年対比でパーセンテージで載っておりますけれども、かなり落ち込んでいる状況にございます。その内容についてお伺いをしたいと思います。

○及川参事 平成十六年度におきます八王子小児病院の入院患者数でございますが、延べで二万六千三百十三人、一日当たり七十二人となっております。平成十五年度と比較いたしますと、一日当たり七人の減となっております。同様に外来患者数でございますが、延べ三万七千七百三十九人、一日当たり百二十八人となっておりまして、平成十五年度と比較しますと、一日当たり三十人の減となってございます。
 これは、平成十五年度に開始をいたしました八王子地域の小児救急システムが機能し始めたことが一つの原因だというふうに考えております。また、具体的には、八王子夜間救急診療所で小児の初期救急診療事業が開始されましたことに加えまして、東海大学付属八王子病院及び東京医大八王子医療センターで小児の二次救急に対しまして対応を始めたということによるものと考えております。

○石森委員 救急医療につきましては、市の体制が構築されたことによりまして、八王子小児病院と地域の医療機関との間で一定の役割分担を図った効果があらわれてきたわけでございますけれども、そういう意味では市の取り組みが大きく効果を上げているといえます。
 この間、八王子小児病院を所管しております病院経営本部としても、市とさまざまな協議を実施してまいりましたけれども、地域における小児医療の充実についてはまだ道半ばといえると思います。
 八王子地域における小児医療の充実につきましては、これまで八王子市と協議を進めてきたとお聞きしておりますけれども、その現状と今後の方向性につきまして、お尋ねをしたいと思います。

○及川参事 八王子市との協議でございますが、平成十四年八月から八王子市の保健医療に関する検討会を設置をいたしまして、保健サービスや地域医療の実態に関しまして検討を行ってまいりました。この中で、八王子の地域におきます保健医療の実態につきまして、都と市が相互に現状を認識し、確認し、その内容は平成十六年十月に、八王子地域の保健医療に関する検討会まとめとして公表いたしました。
 こうした経緯も踏まえまして、平成十七年四月には、八王子地域における小児医療に関する協議会を設置いたしまして、現在、地域におきます医療の充実策について検討を進めるところでございます。今後とも地域の小児救急医療体制を初めとした諸課題につきまして一層の充実を図ってまいりますために、市と十分に協議を行ってまいります。

○石森委員 八王子小児、清瀬小児、梅ケ丘小児、三病院の円滑な移転統合に当たりましては、これらの病院が地域で実際に果たしてきた役割を十分に踏まえて、住民が安心して身近な地域で適切な医療が受けられるよう、今後とも、都の関係局を含めたさまざまな支援策を講じることはもとより、市や地域の医療機関等の協議を精力的に継続していくことが重要であると思います。
 特に、東京都全体を小児科を標榜する医療施設を一〇〇%とした場合には、病院では区部が七二%、三多摩が二八%、診療所においてはそれぞれ七四%と二六%、三多摩につきまして三割に満たないといったような状況にございます。小児科の医師の数についても同様で、非常に三多摩格差というのが大きな問題とされているのも、これも一つの医療の実態でもございます。
 ぜひ移転統合の問題につきましては、従来にも増して真剣な協議を行っていただいて、地域の意見あるいは要望等をできる限り取り入れることを期待いたしまして、質問を終わります。

○吉田委員 私からは、都の病院の看護師の育成の問題について何点かお伺いをいたします。
 大変多様な専門の方が密接に連携して医療サービスを提供しておられる病院では、その中心でありますお医者さんが重要であることは、だれもが承知しております。しかし、これをサポートする関連の医療スタッフの役割というものも、同様に大変重要でございます。
 ところが、近年、病院における看護師の充足が困難になっているという話をときどき耳にするわけでございます。我々都民が療養生活を行う上でも、あるいは医師にかわって相談に応じていただくということからも、看護師の役割は大変重要であると考えます。
 十八歳人口が年々減少している中、一方でまた、女性の社会進出の機会や場が大変に広がっている中で、若い人に看護業務に対する興味を抱いてもらって、看護職に引きとめておくためには、各病院で相当なご努力をいただかなければいけないと認識しております。
 そこで、看護職員に関して都立病院の取り組みを伺います。
 まず、十六年度におきます看護職員の確保の状況についてどうであったか、お伺いいたします。

○奥田経営企画部長 十六年度四月時点では、都立十二病院全体で充足されておりました。ただ、年度途中に退職する職員が多く出まして、十月には五病院で欠員を生じるという状況になりました。

○吉田委員 年度の途中に退職する職員が多かったということでございますが、十六年度中の年度途中の退職者、これは過去と比べるとどういう推移になるのか、ふえているのか、減っているのか、お伺いをいたします。

○奥田経営企画部長 定年退職というものがございますので、これを除いた数値でございますが、一年間で中途退職した看護職員、五年前の十二年度が二百八十六人、十三年度が三百十一人、十四年度が三百二十人、十五年度が三百二十七人、十六年度が三百九十六人というふうに、やや増加傾向にございます。

○吉田委員 増加傾向ということで、年度途中の退職者が増加傾向にあるという原因はどのように分析しておられるか、伺います。

○奥田経営企画部長 退職の理由を見てみますと、結婚、進学、育児専念などとなっておりますが、家事都合というような事由で退職いたしました者の増加が特徴的にあらわれております。
 そこで、私どもで、この家事都合の内容について各病院から聞いたところでは、進学準備であるとか、引っ越し、他の職種への転職といったもののほかに、高度化、専門化する医療技術の進歩についていけないというような事情も見受けられているということでございます。

○吉田委員 いろいろお伺いした中で、高度化、専門化する医療技術の進歩についていけないことが原因の一つとなっているということは、これはちょっと問題であろうと思います。この高度化、専門化する医療技術の進歩というのは、もちろん都民、国民にとって大変歓迎すべきことであり、これに即してお仕事をしていただかなければいけないと期待されるわけでございます。
 そこで、お伺いしますが、大変進歩の早い医療の現場におきまして、これに対応する形で看護師が自信を持って安心して働き続けていただけるために、都立病院ではどのようなお取り組みをしておられるのか、してこられたのか、今後の方針についてお伺いをいたします。

○奥田経営企画部長 都立病院では、今年度から、採用職員の習熟度というものに応じまして、指導看護師という先輩を組み合わせまして、段階別の到達目標を定めまして、短期間に自立した看護師になれるような計画的な教育指導に取り組んでいるところでございます。
 また、中堅職員のキャリアアップを支援するために、平成十六年度から、感染看護であるとか、がん性疼痛看護などの専門分野においてリーダー的役割を果たします認定看護師の養成を開始するなど、看護師の能力向上に向けて取り組んでいるところでございます。

○吉田委員 看護職員に対する人材育成のお取り組みを熱心にいただいているということがわかりまして、一つこれは本当に安心をいたしました。
 やはり今後は介護士とか、いろいろな仕事がある中で、看護師という仕事に魅力を感じていただく。そして、その職場に魅力を感じていただくということのためには、やはり都立病院としてもスキルアップを支援するという取り組みは大変重要だと認識をいたします。
 都民が安心して療養に専念できるように、引き続き、看護職員にとって魅力ある職場づくり、そして看護師の皆さんが自分の能力を一層向上させて、能力を最大限発揮していただくように、お取り組みを強力に進めていただきたいとお願い申し上げまして、私からのご質問を終わります。

○古館委員 それでは、きょう最後の質問者ですけれども、きょうは各委員さんの議論を聞かせていただいて、本当にこもごも都立病院の果たしている役割とか、これから果たす役割などが語られて、私自身、大変力強い思いをしたわけであります。
 しかし、現実には、都立病院のいわゆるマスタープランに基づく統廃合、さらには民営化などの方針によりまして、既に母子保健院がなくなり、大久保病院が公社化され、また、荏原病院も公社化などという話が出ています。
 私の地元の板橋区にある都立老人医療センターと都立豊島病院も、マスタープランではそれぞれの役割と機能が異なっているにもかかわらず、この二つを一つに統合して、かつ民営化するとの計画が示されておりました。この動きに対して、板橋区民を初めとする都民から異議ありの声が大変上がりまして、とりわけ老人医療センターは、区議会が超党派で都立としての存続を都議会議長にも申し入れ、板橋区医師会なども都立としての存続を求めてまいりました。この立場は現在でも変わらない要求になっています。
 こうした中で、板橋区が都のマスタープランへの対応として、豊島病院については板橋区への移管を要望し、これを受けて、昨年三月には都区間で都立豊島病院板橋区移管に関する東京都と板橋区の協議会が設置され、協議が続けられてまいりました。
 都の統合民営化方針は、この時点で、私はなくなったものだ、このことをしっかり押さえた上で、以下、話を進めていきたいと思っています。
 しかし、この十月二十六日ですが、都と板橋区がそれぞれの都区双方の考え方に著しい乖離があるとのことで、区への移管計画は破談になってしまいました。
 そこで、板橋区が区への移管に手を挙げ、協議をしてきたことについて、都としてどのように受けとめているか、率直にお聞かせいただきたいと思います。

○及川参事 板橋区が地域医療連携に多くの実績を有します都立豊島病院の区立病院化に取り組もうとしたこと自体は、地域医療の一層の充実につながるだけでなく、特別区の自治権拡充の面からも意義のあったことだというふうに考えております。

○古館委員 それでは、まとまらなかった大きな理由、要因は何でしょうか。

○及川参事 いろいろと協議をしてまいりましたけれども、一番大きな要因でございます移管に伴う費用面で折り合いがつかないといったことなど、資産の取り扱いにつきまして、都区双方の考え方に著しい乖離があったためというふうに考えております。

○古館委員 そうなんですよね。それで、財政の開きであります。
 私どもは、豊島病院は都立、都営でと、このことを区民の皆さんなどと一貫して取り組んでまいりました。実は、この思いは当板橋区もあったわけですよね。何とか統合民営化を避けたい、こういう思いが強くありました。しかし、結果として、財政的支援の差が大きいとの説明で、だめになったわけですが、私は、このことについては後で述べます。
 私、二年前の公営企業病院会計、この決算の質疑で、豊島病院が四百五十八床の病院で稼働するはずだったのが、なぜ三百六十床で開業し、それがずっと今日に至るも三百六十床のままなのかということを問いただしました。そのときの答えは、都立病院の改革の一環として行われる再編整備の方向が明らかになるまで全面開設を差し控えたとのことでした。豊島病院の六階のフロアは、今でもがらんどうで、空っぽになっております。
 当時の豊島病院の院長、この院長さんは既に退職されておりますけれども、平成十四年の都立豊島病院の事業概要の「はじめに」というところで、このようにつづっております。平成十三年五月には病室の規模が三百六十床から四百五十八床になる予定であったが、前年秋に始まった改革プランで見送りになってしまった。この百床近い一般病床分が使用できていたら、病床利用率を高め、都立病院としての運営を経営の面でもしっかりやっていくことができたとする無念の言葉が三回もつづられて、述べられておりました。
 そこで、質問しますが、このフロアは今も空っぽです。都立としての病院の使命をしっかりと果たそうという気概は、今でも豊島病院の事務職員、医師、看護師の間に脈々と生きています。予定した病床も用意しないで、しっかり経営をしなさいと、条件整備もしないで統合民営化に走る。私は、この事態の改善こそ求められていると思っています。
 都立老人医療センターは、日本で最初の高齢者の専門病院として百三十年の歴史を刻んでおります。これは、医療と福祉、研究の三位一体の、東京都として、都立として全国に誇る施設であります。こうした歴史的積み重ねの中で、愛知県大府市に国立長寿医療センターが、都立老人医療センターのノウハウを吸収しながら、昨年から本格稼働しました。都立老人医療センターは、板橋区も区議会も、そして医師会なども一致して都立のままでの存続を強く求めているものであります。
 都立豊島病院は、百余年の歴史を通じて、いつでもだれでも安心してかかれる病院として信頼関係を築いてきております。医師会役員も、都立豊島病院が地域医療連携の核として、その存在に信頼を寄せております。
 板橋区のある幹部の方がこのように話していたのが印象的でありました。区への移管をということで話を始めたときは、都立病院としての存在が余りよくわかっていなかった。病院のあり方や病院経営のことの認識を深めていく中で、都立病院の果たしている役割がどんなに大きいか実感した、このように述べておられました。
 そこで、質問しますけれども、板橋区が投げかけた提案は、区民も区議会も都立豊島病院と老人医療センターとの統合民営化には反対だという意思表示であることを、しっかりと押さえた対応をとることこそ都としての務めだと考えますけれども、いかがでしょうか。

○及川参事 先ほどお話しがございましたとおり、この二十六日に板橋区との関係で断念をしたということを出したところでございます。
 先生お話しの老人医療センターにつきましては、私どもの所管ではございませんで、福祉保健局の所管の施設でございますので、私どもの独断の判断でなかなかできるというものでもございません。
 また、時期としましても、区立病院との関係が出たばかりでございますから、今後、老人医療センターとの関係も含めて検討していくということになります。

○古館委員 私は先ほど、都立豊島病院との問題について板橋区との協議が始まった時点で、この統合民営化計画というのはなくなったものだ、このことを述べましたが、改めてこの際、主張させていただきたいと思います。
 区立病院構想にいたしましても、結局は、都立病院としての機能を維持することができない、これが実は金額の面にも出てだめになったわけでありますけれども、統合も民営化もだめ、それぞれが都立、都営でこそ都民の命と健康、地域医療の充実に真に寄与することができる。このことを私は一番誇りとしている方々が、ここにおられる病院経営本部の幹部の皆さんだし、そうでなければならない、このように確信をしています。
 私も駅頭や商店街などで、都立病院を守ってという署名の取り組みを地域の皆さんと一緒に行っておりますけれども、どこでも、都立病院ぜひ守ってくださいなど、町ぐるみで応援している、この実感を強くしています。
 これからも我が党は、都民、区民の命と健康、安心してかかれる都立病院・豊島病院として存続できるように、さらに共闘を広げていくことの決意を表明して、この質問を終わります。
 以上です。

○ともとし委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ともとし委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 以上をもちまして第二分科会における決算審査は終了いたしました。
 なお、本分科会の審査報告書につきましては、分科会委員長において取りまとめた上、委員会委員長に提出いたしますので、ご了承願います。
 これをもちまして第二分科会を閉会いたします。
   午後五時十九分散会

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