公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第四号

平成十六年十月二十七日(水曜日)
第二委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十一名
委員長前島信次郎君
副委員長高橋かずみ君
副委員長酒井 大史君
副委員長かち佳代子君
村上 英子君
鈴木 一光君
土持 正豊君
近藤やよい君
池田 梅夫君
古賀 俊昭君
大河原雅子君

 欠席委員 なし

 出席説明員
都市整備局局長梶山  修君
次長中路 有一君
技監小林 崇男君
技監杉浦  浩君
総務部長村松  満君
都市づくり政策部長森下 尚治君
住宅政策推進部長安藤  明君
都市基盤部長成田 隆一君
市街地整備部長石井 恒利君
市街地建築部長野本 孝三君
都営住宅経営部長小林 計代君
連絡調整担当部長加藤 英夫君
住宅政策担当部長水流潤太郎君
外かく環状道路担当部長道家 孝行君
多摩ニュータウン事業担当部長酒井 洋一君
参事飯尾  豊君
参事金子 敏夫君
参事中沢 弘行君
参事山室 善博君
参事小山  隆君
参事渡辺  滋君
参事今井  光君
参事安井 順一君
参事石井 一夫君
参事庄司 静夫君
参事松村  進君

本日の会議に付した事件
平成十五年度東京都公営企業各会計決算の認定について
都市整備局関係
・平成十五年度東京都都市再開発事業会計決算(質疑)

○前島委員長 ただいまから平成十五年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、都市整備局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより都市整備局関係に入ります。
 初めに、過日の分科会で紹介できませんでした幹部職員につきまして、局長から紹介があります。

○梶山都市整備局長 去る十月十五日の当分科会を欠席いたしました幹部職員を紹介させていただきます。
 住宅政策担当部長の水流潤太郎君でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
   〔理事者あいさつ〕

○前島委員長 紹介は終わりました。

○前島委員長 これより決算の審査を行います。
 平成十五年度東京都都市再開発事業会計決算を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○村上委員 私から質問させていただきます。きょう、質問者が少ないので、もっとたくさんの質問を用意すればよかったと思うんですが、予定ですのでお願いをいたします。
 都市再生に向けたさまざまな開発プロジェクトがスタートし、副都心である新宿においても、平成十四年に都市再生緊急整備地域に指定され、魅力的な街並みへと変貌しつつあります。東京都も、この中で北新宿地区の市街地再開発事業を進めております。都市再生の効果はさまざまありますが、子どもへの犯罪の急増する昨今、犯罪の防止や青少年の育成を考える上で、犯罪の起きないような環境をつくることも大切なことと考えます。
 そのためには、コミュニティの形成や死角の解消に力を入れる必要があると思います。北新宿地区が、放射六号線の整備による渋滞の解消や木造密集地域の解消による防災性の向上など、効果の多い事業であることは認識しております。防犯の視点も大切であると考えます。
 そこで、北新宿地区の都が進めている再開発事業について、こうした観点から幾つか質問をさせていただきます。
 まず、本事業の実施により、防犯の観点からどのようなまちになるのか、お伺いいたします。

○石井市街地整備部長 防犯の側面から本事業の効果をというお尋ねかと思いますけれども、この事業効果を見ますと、区画街路やオープンスペースが再開発事業によりまして整備されるとともに、適切な照明を行うことによりまして、物陰になるような場所、委員から今お話がありましたようないわゆる死角ですね、そうしたものが少ない、明るく良好な環境が形成されるということがいえようかと思います。
 加えまして、この事業によりまして地区内の定住人口が増加いたしまして、再開発ビル居住者や地区内施設の利用者など多様な人々の交流が期待でき、絶えず人の目が行き届く環境が確保されます。
 さらに、この事業によりましてつくられます再開発ビルの設備面におきましても、テレビモニターつきのオートロックシステムであるとか、エレベーター内の防犯カメラの設置など、セキュリティーを重視した計画としております。
 これらによりまして、防犯上、安全なまちが創出されるというふうに私ども期待しているところでございます。

○村上委員 次に、現在の進捗状況についてお伺いをさせていただきます。

○石井市街地整備部長 事業の進捗状況でございますが、平成十五年度末で、再開発事業費ベースで約六八%の進捗を見ております。これまでに買収を必要とする土地の面積、北新宿ではこれが約四・二ヘクタールございますけれども、このうち三・六ヘクタールを既に取得したほか、現在、グランドテラス新宿と名づけました当事業で最初の再開発ビル、これを建設中でございまして、今月末に、間もなくでございますが、完成を予定しております。あわせまして、グランドテラス新宿周辺の基盤整備も進めているところでございます。

○村上委員 事業が進んだことで、現地は空き地や空き家がふえ、人の目が行き届かないようになっていると思います。実は私も、夜間ではありましたけれども、現地を見てまいりました。事業が完了する将来は良好な住環境が形成されるのでしょうが、事業途中の現在は、防犯上、大変心配に思います。
 そこで、事業途中段階における防犯への取り組みについてお伺いをいたします。

○石井市街地整備部長 日ごろより、所轄警察や地元町会並びに新宿区と定期的な意見交換をするなど、密接に連携いたしまして、多くの防犯対策を実施しているところでございます。昨年九月には、東京都安全・安心まちづくり条例が制定されたわけでございますけど、この制定に伴いまして、さらなる警察との合同総点検なども実施してまいりました。
 もうちょっと具体的にこれを申し上げますと、都の職員による地区内の毎日の巡回、それから、先ほど申し上げたような死角となるような樹木がありますと、これを剪定いたしましたり、防犯灯を設置する、それから街路灯を補修するなどを行っております。
 また、都が買収した土地建物につきましては、あいている状態になっておりますので、何かと物騒な面もあろうかということで、侵入防止さくの設置や建物の早期解体に努めるなど、防犯の観点から適正な管理を実施しているというふうに考えております。

○村上委員 犯罪を防止するには多くの人の目を確保することが最も重要なことは、先ほども述べました。事業を一層推進し、一日も早く再開発ビルを建て、住民に入居してもらう必要があると考えます。
 そこで、現在入居中の再開発ビルの入居の状況と、時期についてお伺いをいたします。

○石井市街地整備部長 先ほどお話をいたしました、現在建設中のグランドテラス新宿は、最終的には住宅戸数が百九戸、店舗が二区画、業務が二区画及び駐車場を含む地下一階、地上九階建ての建物でございます。このうち住宅七十戸と店舗及び業務につきましては、既に従来からの地権者の方々の入居が確定してございまして、一般的に、それを除く部分を保留床販売という形で販売したわけでございますが、この販売は、住宅で三十九戸ございます。これにつきましても、おかげさまをもちまして八月に即日完売いたしました。十月末の間もなくの建築工事完了後、入居点検等行いまして、十二月の一日より入居を開始する予定でございます。

○村上委員 防犯を考える上で、何よりも早期に街並みを整備することが重要だと考えております。
 そこで、最後に、今後の事業の見通しと決意をお伺いいたします。

○石井市街地整備部長 今後の事業の見通しと決意というお言葉でございます。この事業は、放射第六号線--これは新宿の渋滞解消に大変大きな役割を果たす道路というふうに考えておりますが、この放射第六号線と低層の密集住宅地とを一体的に整備することによりまして、副都心にふさわしい土地の高度利用と都市機能の更新を図ることを目的とした事業でございまして、東京の都市再生にとって大変重要な意義を持つ事業と認識しているところでございます。
 今後の事業スケジュールでございますが、放射第六号線につきましては、十七年度の交通開放に向けまして、鋭意整備を進めてまいりたいと考えております。
 また、地区内の建築物につきましては、グランドテラス新宿に続く再開発ビルを来年の春には着工する予定でございます。残りの再開発ビルにつきましても、順次整備をしてまいります。
 このことによりまして、今回委員からご指摘のありましたような防犯性の向上や地域の活性化など、身近な生活環境の向上にとってもこの事業は大きく寄与するものと考えておりまして、一日も早く本事業を完成させるよう努めてまいります。

○村上委員 再開発が防犯にも寄与する事業だということは、本日の議論を通して改めて認識することができました。今回は取り上げませんでしたけれども、防犯の観点に加えて環境問題についても、敷地内緑化や屋上緑化などのヒートアイランド対策など、東京都として率先して進めていると伺っております。今後も十分配慮して事業を進めていっていただきますようにお願いを申し上げます。
 そしてまた、新潟での大震災があった、こういったものの教訓を踏まえて、防犯だけではなくて、防災面についても十分配慮して進めていっていただきたいと思い、質問を終わらせていただきます。

○かち委員 再開発事業が公営企業会計となって二年目の決算ということになります。再開発事業を考えるときには、これまでの都施行の再開発事業を振り返らざるを得ません。亀・大・小地区、白鬚西地区などのように、その目的が木造密集地域における防災拠点としての位置づけがあり、また、住居確保ということで、都営住宅など公営住宅も確保して取り組んできた経緯もあります。
 ところが、赤羽北地区においては、環八の拡幅と駅前広場の増設などとリンクして行うことになり、時期的にも、ちょうどバブルの破綻の影響を大きく受ける時期でもありました。このころ、全国的にも駅前広場とのセットで再開発があちこちで行われましたけれども、ことごとく破綻をしているのが現実です。
 改めてお聞きしますが、これら既存の再開発事業における損失額は、今、どれくらいになっているのでしょうか。

○石井市街地整備部長 亀・大・小といっていますけれども、亀戸・大島・小松川地区、白鬚西地区、赤羽北地区の欠損額の見込みということのお尋ねかと思います。平成十三年一月の都予算原案の、大分古くなりますけど、発表時点での各地区の欠損見込み額は、三地区合計でおおむね千五百億円でございました。その後、事業の再構築を図ることによりまして、約三百億円の収支改善ができる見込みとなりまして、その結果、三地区合計の欠損見込み額はおおむね千二百億円としてございます。
 欠損が生じた主な原因でございますけれども、今、副委員長がお話しのように、バブル経済の崩壊によりまして、事業の財源となります土地や保留床の処分価格が、皆様ご承知のように大幅に下落したこと、また、この事業の特徴でもあるのでございますが、これまでの事業の特徴といっていいかと思いますけれども、権利者との調整に大変長い時間を要しまして、事業期間が長期化し、起債利子が増加したことなどが考えられます。
 なお、今お尋ねの既施行三地区の欠損見込みの額は、この公営企業会計では計上してございませんで、特別会計で経理されているものでございます。

○かち委員 欠損額は千二百億の見込みということで、直接この企業会計には連動はしていないわけですけれども、こういう経済性と公益性というものをどう兼ね合っていくかというのは、再開発においては大変重視していかなければならない課題だというふうに思います。
 平成十四年度からの再開発事業というのは、今ご質問がありました北新宿地区と環状二号線地区のことなんですけれども、これら二つの総事業費はそれぞれ、北新宿は千三百億円、環二が千六百六十億円というふうに聞いています。この環二の方は、本線が、開削というんでしょうか、掘り割りというんでしょうか、そういうふうにして、本線をつくる部分は建設の方の事業ということで、直接この道路増設の費用は入っていないということなんですけれども、用地買収費というのはここに入ってきているわけですよね。
 この中で都の負担分は、北新宿は三百四十億、総事業費の約二六・二%、環二は実に七百十億円、四二・八%というふうに、かなりの負担額になっています。それぞれ財産収入を四百八十億円、二百五十億円を生み出さなければ、また一般会計に負担をかけることになるという、大変リスクを抱えた開発事業だということです。
 今、進捗状況をお聞きしようと思ったんですが、新宿北については六八%ということでした。では、環二の方の進捗状況と今後の見通しはどうなっていますでしょうか。

○石井市街地整備部長 環状二号線地区の進捗率は、再開発事業費ベースで約二九%でございまして、平成二十三年度に完了する予定となっております。

○かち委員 再開発事業によって木造密集地域の解消を図り、生活環境の改善や防災の観点から進める事業を否定するものではないんです。しかし、こうした都施行による第二種再開発事業というのは、原則として、従前権利者からの用地買収によって賄う、進めていく方式なんですよね。結果として、従前の住民を追い出しかねないという問題をはらみます。とりわけ弱小の地権者や借家人など弱い立場の人々が、そこに住み続けたい、あるいは営業を続けたい、こういう思いと本当に合致して進められるのかどうか、大変困難な課題ではないかなというふうに思います。
 今回事業化している二つの地区は、いずれも環六、環二の幹線道路増設を伴う開発だということの共通性があるわけですが、今年度から事業化される大橋地区の再開発も、首都高新宿線の大橋ジャンクションの増設に伴う再開発事業ということで、いずれも幹線道路とリンクした開発事業だということなんですね。
 北新宿と環二の地区での事業決定時のそれぞれの権利者の数と現在の数、そして、その内訳、入居したいと思っている方がそれぞれどのくらいいるのかをお聞きします。

○石井市街地整備部長 お尋ねのように、北新宿地区は放射六号線を整備していく、環状二号線地区は、その名のとおり環状二号線を整備していく。これは通常ですと用地買収でやっていく、こういうことになるわけですけれども、そういう中で、そのままそこにいたいという人がいる場合には、通常、用地買収ですと、どうしてもそこを立ち退かなければならぬ。これに対しまして再開発事業は、残ることも可能でございますし、希望によって転出することも可能でございます。そういう事業でございます。
 お尋ねの、計画決定時と現在の権利者数と、残っていたいという方の数について具体的に申し上げますと、北新宿地区の権利者数は、事業計画決定時点であります平成十年五月におきまして三百九十四人おりました。そのうち再開発ビルに入りたいという、いわゆる入居希望者は二百四人、約半分でございます。それから、現在の北新宿の権利者数でございますが、転出される方はどんどん転出されまして、現在、百十二人になっております。そのうち入居、再開発ビルにまだ入りたいというふうに引き続きいっておられる方は六十六人でございます。その間に調整がついて、転出に気持ちを変えられて出ていった方もおられます。
 それから、環状二号線地区の権利者数でございますが、事業計画決定時点でございます平成十四年十月におきまして九百四十二人でありました。そのうち入居希望者は三百五人でございまして、三分の二の方が転出を希望されております。現在の権利者数は六百十五人でございまして、そのうちの入居希望者は二百三十六人でございます。

○かち委員 今のお話ですと、北新宿の場合は、決定前には三百九十四人の権利者がいらっしゃったんですけれども、結局今は百十二人、そのうち今でも入居したいと思っていらっしゃる方は、たったの六十六人しかいないというのが現状なんですね。この中には、自分の事情で、ここにいるよりもかえって転出した方がうまくいくだろうという計算によって出ていく人ももちろんいることは承知の上なんですけれども、多くの方が、ここにもともといた方で借地、借家だった方が、このまま残れるという保証は本当にないわけですよね。こういうこと。
 それから、環二の場合は、九百四十二人いた方が現在六百十五人ですけれども、入居希望者は二百三十六人。今の進捗状況だとまだ三〇%未満ですから、もっともっとこれが減っていくだろうということは優に予想されるわけです。結局、新しい再開発は進めて、きれいなビルはできたけれども、従前そこに住んでいた方々は、大体一割から二割しかそこに住み続けることができない、これが今の進めている再開発の姿ではないかと思うんですね。そういうことで本当にいいのだろうかというふうに思います。
 都施行の再開発計画であればこそ、従前の権利者が、借地、借家人も含めて住み続けられるまちづくりでなければならないと思います。従前居住者の一〇%から二〇%台まで減ってしまっては、まさに、そこのけそこのけ道路が通る、こういうまちづくりだというふうに思うんです。まちづくりというのは、つくり上げてきたのも、つくり上げていくのも、そこに住む人たちによって賄われていかなければならないものだというふうに思います。そういう意味で、この再開発が本当に公共性が確保されているといえるかどうか、大変大きな疑問を持ちます。
 都施行による再開発であるならば、最大限、住みなれたまちに住み続けたいと思う方々の住居を保証する、こういうことが必要ではないかと思うんです。そういうためには、再開発住宅あるいは都営住宅などを当然代替措置としてそこにつくる必要があると思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○石井市街地整備部長 再開発事業における借家人への対応というお尋ねかと思いますけれども、具体的にその両地区について、少しご説明したいと思います。
 北新宿地区の借家人への対応につきましては、私どもの住宅部門や新宿区など関係機関の協力を得ながら、他地区の再開発住宅や新宿区の事業用住宅、あるいは近傍の一般都営住宅のあっせんなど、既存の賃貸住宅のストックがたくさんございますので、そこを有効に活用していきたい、このような考え方で進めてまいりまして、現在のところ、再開発ビルへ入居を希望する借家人、--先ほど申し上げましたのは、借家人ということではなくて全体数でございましたが、借家人の方で再開発ビルへ入居を希望している方は、残り一名となっております。現在も、最後のお一人の方について、移転先のあっせんを積極的に行っているところでございます。
 また、環状二号線地区の借家人でございますけれども、現在、再開発ビルへ入居を希望している借家人のうち、住居系の方は、環二地区の場合三名、店舗等の営業をしたい、再開発ビルに入って営業したいという方が百六名でございます。
 再開発事業における再開発住宅というのは住宅が基本でございまして、営業用の賃貸ビルの建設は、立地面であるとか、それから建物内の配置の問題、高いところでは商売がなかなかできないというようなこともあります。それから賃料の水準、新築ビルということになると、なかなか支払えないというようなことを考慮いたしますと、事業として賃貸のビルを用意することは極めて困難でございます。
 このことにつきましては、かねてから環状二号線地区の地元に対しまして十分説明をいたしまして、理解を得てはおりますが、なかなかこれが課題でございまして、そこで、都といたしましては、権利者の個別の事情を個々に聞きながら、事業協力者制度というのが今ございますので、その事業協力者が提供してまいります賃貸物件、付近の賃貸物件あるいは家賃の見合う賃貸物件、さまざまございます、そうした物件に関する情報を積極的に活用しながら、地域の方々の生活再建を図っているというのが実情でございます。

○かち委員 賃貸物件については営業用があるので、なかなか、この地域でかわりになるものをつくるのは難しいんだ、だから、近傍のところで物件を探しているんだというお話でしたけれども、環二の地域、特に新橋付近の方に寄るほど、営業というか店舗というか飲食店というか、そういう方々は大変多いわけですよね。そういう方々がこの地域で営業し続けたいということはおよそかなわぬ問題だということなんですね。
 都としては、代替の住居とか営業用の店舗をつくるというようなことは考えていないということですか。もう一回そこをお聞きします。

○石井市街地整備部長 先ほどお答えしたように、環状二号線は、東京都として都市再生のためにどうしても抜かなければならない事業である、このように考えております。
 その際の事業の進め方として、用地買収事業方式であれば、そういうことは当然起きるわけでございます。再開発事業におきましては、どちらも可能でございますが、実質的に、店舗等を賃貸されている方についてはなかなか実態が、そういった形で実現することは難しい。床を大家さんが再開発で取得されても、なかなか賃貸条件と申しましょうか、家賃が変わったりいたしますので、すぐに入るということはできない。で、従来の契約が切れるということになるわけでございます。その際にどういう道がいいのか。近所に店舗があれば、そういったものを積極的にあっせんするというのがより現実的な対応かと、このように考えて進めているところでございます。

○かち委員 都としては、そういう住宅をつくる気はないというふうな答えの意味だったと思うんですけれども、かつては、二種の再開発事業であっても、用地買収方式であっても、代替の住宅をつくってきた経過もあるわけですよね。そういうことをもう一回やっぱり検討していただきたいというふうに思います。
 再開発を進めることで一番利益をこうむるのは、大手ディベロッパーとかゼネコン企業ではないかというふうに思われます。少しその件についてお聞きしたいと思うんですけれども、この間、こうした再開発がより進められやすいように、いろんな規制緩和が進みましたよね。道路法や都市計画法や都市再開発法、それから建築基準法など、どんどん規制緩和がされました。
 例えば環二の場合でいえば、土地の有効利用という名のもとで、立体道路制の導入がされました。道路の上に、用地の上にビルを建てることができるということも可能になりましたし、今先ほど部長がお答えいただいたように、事業を進めるに当たって、事業協力者方式あるいは建物を建てるときに特定建築者制度など、いろんな手法が取り組まれて、都としての開発事業が、いえばやりやすくなってきているというふうにも思うんですけれども、それでは、環二地区の事業協力者というのはどういう仕事をする立場で、また、これは公募というふうになっておりますけれども、具体的にどこが請け負っているのでしょうか。

○石井市街地整備部長 環二地区の事業協力者の役割と、具体的にどこが受けているか、そういうお尋ねかと思います。
 事業協力者の役割は、先ほど少し述べましたけれども、事業の初期段階から、施行者と権利者双方に対しまして、それぞれのパートナーといたしまして、必要な情報の提供や提案を行って、特定建築者が決まるまでの間、権利者調整やビルの企画設計に協力することでございます。ですから、先ほどお話ししたような賃貸物件のあっせんなんかも、権利者の間に入って調整をしているということでございます。
 それから、私どもにもさまざまな企画提案もしている。具体的に申し上げますと、転出希望者に対する賃貸物件や代替物件に関しての不動産情報の提供とともに、市場性の高い魅力ある再開発ビルの企画提案を行うことでございます。
 現在、環二地区の事業協力者は、森ビル株式会社と西松建設グループの一社一グループでございます。

○かち委員 この事業区間で第三街区というのが立体道路制で、その上にビルを建てる地域になっているわけですけれども、そこの上には、権利者の中でも一番大きな権利を持つ森ビルがあるわけですよね。その森ビルが事業協力者となっているわけですね、西松建設グループと一緒になって。
 それで、今おっしゃったように、最新の不動産情報を提供して、借地借家人の皆さんなどが転出しやすいように一生懸命アドバイスをするというようなことで、合意形成を速めて事業のスピードアップを図るとともに、その一方では、市場性の高い魅力ある再開発ビルをつくる。どういうビルをここに、どういうふうにつくったら、どういう収益性があるか、そういうことも一緒になって考えて協力をしていく役割を果たしているのが、この事業協力者制度ということなんだと思うんですけれども、それでは、特定建築者というのも公募になっていますけれども、二街区--二街区というのは港区の持っている青年館のあった場所なんですけれども、そこの特定建築者は丸紅に決まったというふうに聞いておりますけれども、残った一街区と三街区については、先ほどの事業協力者はこれに応募する資格があるのでしょうか。

○石井市街地整備部長 事業協力者は、当初募集する段階で、将来特定建築者として応募する意思のある者という条件のもとで募集してございます。

○かち委員 ということは、この再開発事業に特定建築者として応募する意思があるという者を、事業協力者として指定してきたということなんですよね。
 そうしたら、今度二街区と三街区について公募するといっておりますけれども、公募ですからだれが選ばれるかはわかりませんけれども、少なくともこの森ビルや西松建設が入らないということにはならないわけですよね。入る可能性があるというふうに見ていいんですか。

○石井市街地整備部長 事業協力者は、今お話し申し上げましたように、将来特定建築者として応募する意思のある者という条件のもとで募集しておりますが、都市再開発法に基づきまして、民間の特定建築者、これは事業協力者とは違いますが、特定建築者は公募しなければならないとされております。したがいまして、制度上、事業協力者が自動的に特定建築者になるということにはなりません。
 このため、事業協力者が選定されることも選定されないこともあり得ますが、東京都といたしましては、地域に溶け込み、円滑な合意形成に大変な努力をし、事業推進に大きな役割を果たしている事業協力者を評価しまして、今後とも積極的にこの制度を活用していきたい、このように考えております。

○かち委員 このパンフレットに書いてあります、事業協力者も特定建築者も公募というふうになっておりますけれども、今のお話の流れでいえば、この再開発事業に大きくかかわって、大きな協力もいただいてきている森ビル株式会社に対しては、今後、特定建築者としてもかかわっていただきたいという東京都の意思があるというふうに今受け取れてしまいますよね。そういうことなんだといわれれば、そうなんでしょうけれども、本当にそういう意味では、公募の意味もなくなってしまうなというふうに思います。
 結局、森ビルなどがやってきたことは、本来なら東京都が用地買収のために地権者に対して何度も足を運んで、出ていっていただく方にはいろんな情報を提供して、個別に、何度も繰り返し対応しなければならなかった、そういうことを一手に森ビルなどが民間のディベロッパーとしてのノウハウを生かして情報提供をどんどんやって、要するに立ち退きをスピードアップさせる、そういうことに大変協力をしてきたその森ビルが、この事業計画そのものの、絵もかいてありますけれども、こういうものをこういうふうに建てようという具体的な中身まで一緒に相談をして、結局そこに特定建築者としてもかかわっていくんだと。全く森ビルの再開発事業そのものに東京都がお手伝いをする、本末転倒のような感じに受け取れてしまいます。本当にこれが公共性といえるのだろうかというふうに思います。
 それで、第二街区の、港区から用地取得をされているわけですけれども、ここの用地取得費はどのくらいで、ここに八十メートルのビルが建つわけですけれども、住居系だからマンションのようなものなんでしょうけれども、特定建築者というのはどれくらいでこれを買ったのでしょうか、東京都から。

○石井市街地整備部長 今お話しの青年館街区というのは二街区というふうに承知しておるわけでございますが、その用地取得費は幾らかということと、今回特定建築者に売却したわけですけれども、その売却額は幾らか、こういうお尋ねでございますが、ちょっとどういう意図でお尋ねなのかよくわかりませんが、それぞれの金額はそれぞれ性格が異なりますので、大変説明が難しいのですが、少し時間をいただきまして、それぞれこういう金額であるということをご説明させていただきたいと思います。
 今回、特定建築者を募集した二街区、青年館街区というところには、港区の旧青年館と福祉施設というのが二つ併存されておりました。このうち、再開発ビルに港区が床を取得する、そういう部分と、それから、そうでなくてお金でそのままもらってしまう部分と二通りございまして、そのままお金で解決したというか、従前資産を床で取得する部分、これを除いて実際に支払いをした部分、そういう金額が三十二億円です。まだ港区は再開発が一部残っているわけですね、床でもらう部分がある。
 それと、特定建築者は保留床に対する敷地処分を取得することになっていまして、保留床ですね、将来自分が売るところを取得することになっておりまして、この持ち分、これはマンションの共有持ち分になるわけですけれども、その持ち分は全敷地の二八%でございます。これの譲渡価格が今回特定建築者に売却した価格でございまして、約二十億円でございます。それぞれ性格の違う金額でございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、港区から買った転出分の土地は千五百平米、それから、売却をいたしました丸紅の共有持ち分の面積は、全体面積二千平米の約二八%でございますので、五百六十平米、相当な規模が違います。その規模の違いでというか、違いと、いろいろありますが、金額が、この譲渡価格は約二十億円でございます。そうした金額でございます。

○かち委員 ここのビルに港区の青年館と福祉施設を床の部分として入れ込む分と、それから権利者の権利床を入れ込む部分を東京都が負担をしなければいけないわけですけれども、ここに港区以外の権利者の分は一体何人分なのかということと、それからビルの建設費は総枠でどのぐらいで、都の負担分はどのぐらいなんでしょうか。

○石井市街地整備部長 権利床としてこのビルに入る方々の人数は、港区を含め二十七名。そして、権利床を戸数で申し上げますと七十戸相当になります。保留床は五十二戸を考えておりまして、先ほど申し上げました二八%というのは、この五十二戸の土地の共有持ち分、こういうことになります。
 そして、再開発ビルの建築費でございますが、再開発ビルの建設費は、全体で三十九億円でございます。
 先ほど、このうち都が負担するというお話がございましたけれども、この分については、先ほどいった権利床の七十戸、これに相当する建築費を、権利者の資産を都が直接買収せずに等価交換をして床を用意する、そういう考え方をとってございますので、そういう仕組みでございますので、この建築費を東京都が支払います。ただで土地をとっているわけですから--ただというのは変ないい方ですけれども、等価交換で確保しているわけですから、これを東京都が床で確保して差し上げなければならない。その差し上げる床を特定建築者がつくりますので、その分を東京都が支払う、この金額が二十五億円でございます。

○かち委員 いろいろ細かい数字を聞いて恐れ入ります。
 いろいろな計算方式が技術的にはあるんだろうというふうに思いますけれども、今のお話を聞いて、大枠ですけれども、結果的には、金額でいえばその三分の一ぐらいの用地費しか払っていないのに、その二千平米の土地の上に八十メートルもの高い高層のビルを建てることができたわけです。しかも、今の金額からすれば、三十九億円のうち二十五億円は権利床の等価交換のお金ということで、実際に丸紅が払った分は三十九億円のうち十四億円ということになるわけですよね。そういうことからして、その分だけ丸紅が売れば丸もうけということになるわけですから、こういう大手の企業にとっては大変魅力のある再開発事業だというふうには思うわけですけれども、ここに入れる人もたったの二十六人しかいない、こういうことからすると、本当にだれのための再開発なのかといわざるを得ないわけですけれども、再開発事業が住み続けられるまちづくりとはほど遠い感じがいたします。都施行といえども、このようなやり方では、都が直接事業を行うことからどんどん遠ざかってしまって、もう本当に不動産屋さんのような今のような状況だというふうに思うんです。
 こういう民間主導の再開発というのは、もう一回検討し直すべきではないかと思いますけれども、ご所見はいかがでしょうか。

○石井市街地整備部長 先ほど数字の話を出されまして、少し誤解があるといけませんので、改めてここでご説明しておきたいと思います。
 丸紅株式会社がこの土地を取得しまして、特定建築者になったわけでございますけれども、土地代だけで保留床を売れるわけではございません。先ほど申し上げました、東京都が金を、建築費を支払う、こういう部分は権利床の七十戸分でございまして、全体が三十九億円で建築費二十五億円払いますと、残りの十四億円は、丸紅が自分の保留床の床をつくるために自分で出す費用でございます。したがって、十四億円プラス土地代で自分の事業の採算を特定建築者がとりつつ、全体の事業を、権利者の床も含めて整備をしていく、こういう仕組みでございます。
 これからこの事業をどう進めていくんだと、今そういう、何か民間事業者ばかりもうかるようなご指摘がございましたけれども、決して私どもはそう思っておりませんで、特定建築者制度とは、民間事業者が都の決定した計画に従いまして、コントロールしているのは東京都でございます。施行者である東京都にかわって、再開発ビルの建設と保留床の処分を可能とした制度でございます。あくまでもそうした制度でございます。
 特定建築者制度の導入によりまして、これまで私どもが比較的不得意としておりました保留床の処分、おかげさまで、この間北新宿はどうやら頑張って売り切ることができましたけれども、これはなかなか大変でございます。私どもは物を売るというふうなことになれていない職員が多うございますし、組織としてもそういうふうな形にはなかなかなっておりません。
 そういう状況の中で、再開発事業を、赤字が出ないように、欠損金が出ないように頑張ってやるためには、ぜひとも特定建築者制度を導入しなければならない、このように考えております。そして事業のスピードアップ、総事業費の縮減、そして、今お話ししましたような保留床処分のリスク軽減などを図りまして、そして一刻も早い再開発事業と都市基盤の整備に全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

○かち委員 決して民間主導ではなくて、都の計画にのっとって特定建築者制度をやっているんだというお話でしたけれども、こういう大きな再開発事業にかかわってこれる事業者というのは、やっぱり大手のディベロッパーとか大手ゼネコンでなければできない仕事であって、その人たちが損をするような仕事はやらないわけですから、その点ではやっぱり民間を利するというか、大手の企業には利するけれども、同じ対象となっている、そこに住み続けたいという小さな人たちは出ていかざるを得ないというこの構図が、本当の都市全体をつくるという点で公平性があるのかということを申し上げたいのです。
 しかも、きょうの、ここの再開発とは直接関係ないんですけれども、この再開発事業とともに、延伸される、つくられる環二の掘り割り方式の本線、これが二十三年に完成する予定で、そうしますと、交通量が三万二千台になるといわれております。この環境対策をどうするのかという点では、土壌浄化をするからいいんだというふうにいっておりますけれども、伺った段階では、本当にこれ、土壌浄化といっても、大和町や松原橋の経験を生かすんだといっておりますけれども、あれはいずれも国土交通省がやっているもので、まだ実験段階のものなんですよ。あれが本当に耐久性がどうなのか、それから、吸着した金属有機物質はどうなっていくのかということまでまだ検証されていない。そういうものをやるからいいんだということで、道路をつくることが先にありきのような形でこういう再開発事業が進められていくことにも、私は大きな異議を感じております。
 財政負担の問題から見ても、住み続けられるまちづくりからしても、環境対策からしても、このような再開発の進め方については再検討をしていただきたいということを述べて、質問を終わります。

○前島委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、これをもちまして終了したいと思いますが、ご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○前島委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後一時五十四分散会