東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会速記録第九号

平成二十二年五月十七日(月曜日)
 第十二委員会室
 午後一時開議
 出席委員 十七名
委員長花輪ともふみ君
副委員長長橋 桂一君
副委員長野島 善司君
副委員長増子 博樹君
理事上野 和彦君
理事鈴木あきまさ君
理事馬場 裕子君
伊藤 興一君
星 ひろ子君
柳ヶ瀬裕文君
田の上いくこ君
高木 けい君
岡田眞理子君
宇田川聡史君
西岡真一郎君
清水ひで子君
三宅 茂樹君

 欠席委員 なし

 出席説明員
中央卸売市場市場長岡田  至君
管理部長後藤  明君
事業部長大橋 健治君
新市場担当部長野口 一紀君
新市場建設調整担当部長宮良  眞君
参事大朏 秀次君
参事横山  宏君
新市場建設技術担当部長砂川 俊雄君
参事志村 昌孝君
 委員外の出席者
参考人
東京農業大学国際食料情報学部教授藤島 廣二君
農業・農協問題研究所事務局長広島大学名誉教授三国 英実君
東京海洋大学海洋科学部教授婁  小波君

本日の会議に付した事件
 東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する調査・検討を行う。
参考人からの意見聴取
・卸売市場のあり方について

○花輪委員長 ただいまから東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会を開会いたします。
 初めに、本委員会の担当書記に追加がありましたので、ご紹介いたします。
 調査部の担当書記の猪倉雅生君です。
 調査情報課の担当書記の松本達也君です。同じく、菅谷賢太郎君です。
 よろしくお願いいたします。
   〔書記あいさつ〕

○花輪委員長 これより東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する事項について調査検討を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、参考人からの意見聴取を行います。
 なお、本日の意見聴取につきましては、お手元配布の実施要領のとおり運営してまいります。ご了承願います。
 これより参考人からの意見聴取を行います。
 本日は、卸売市場のあり方について、東京農業大学国際食料情報学部教授の藤島廣二さん、そして、農業・農協問題研究所事務局長で広島大学名誉教授の三国英実さん、東京海洋大学海洋科学部教授の婁小波さんから順次意見を聴取いたします。
 それでは、藤島参考人、発言席にご移動願います。
 それでは、参考人をご紹介いたします。
 東京農業大学国際食料情報学部教授の藤島廣二さんです。
 本日は、ご多忙のところ委員会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして御礼申し上げます。
 卸売市場のあり方について、ご専門の立場から、ご意見をお伺いしたいと思います。
 なお、藤島参考人には、ご着席のまま発言をしていだきたいと思います。
 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

○藤島参考人 どうぞよろしくお願いいたします。
 私は本日、卸売市場の現状と今後のあり方ということでお話しさせていただきたいと思っております。お手元の資料を見ていただきながらお聞きいただければと思っております。
 まず、卸売市場についてでございますが、卸売市場の社会的役割というのはどういったところにあるんだろうかという点からお話しさせていただきたいと思います。
 この卸売市場の社会的役割につきましては、これはいろいろなことがいえるかとは思うんですが、そこに挙げましたような七点が主なものだというふうに考えております。
 第一番目は、流通コストの縮減ということでございます。よく卸売市場などが入りますと流通コストがふえるのではないか、価格が高くなるのではないかということがよくいわれております。しかし、実際には、卸売市場があることによって価格が安くなっている。都民の皆様あるいは国民の皆様、消費者の方々により安い価格で提供できているというふうに私は考えております。
 その根拠は何なのかと申しますと、例えば消費者の方々は直接生産者から購入することは十分にできます。現に直売所あるいは宅配便を利用して購入されている方々もいらっしゃいます。しかし、そういった直売所の利用あるいは宅配便の利用が日常的に行われているかどうか。決して行われておりません。それよりも卸売市場を経由して小売店で販売されているものを日常的に購入されている。
 それはなぜなのか。消費者の方々が愚かだからなのか。いや、決してそうではありません。消費者の方々は日々、日常的に物を買うときには、小売店で購入した方がコストが安いということを体験から知っているからです。ということは、そういった事実からもおわかりいただけますように、卸売市場を通すということはコストの縮減につながっているんですよと。そのことを説明している図が、これはよく用いられる図なんですけれども、その下の図1の1ということになります。
 例えばここのところで、これはメーカーと小売店ということになっておりますが、生産者と消費者というふうにお考えいただいてもよろしいかと思いますが、直接に取引をしますと、取引回数は、業者が三名ずつであれば、三掛ける三で九回になります。ところが、中間に卸売業者が入りますと、これは掛け算ではなくて足し算になるということで、取引回数が減ってくる。取引回数が減れば、そこにございますように、交渉回数も減りますし、あるいは伝票等のさまざまな事務用品も減りますし、当然、輸送コストも減っております。そして、この輸送コストが縮減するというのは非常に重要でございます。
 個々の消費者が購入されるということになりますと、輸送コストはキロ当たりで見ますとかなり膨大なものになります。ご存じですように、宅配便を利用されるということになりますと、山梨県から高級ブドウを東京都の方が購入されるということになりますと、一ケースで、場合によりますと、宅配便料は五百円ぐらい、一ケース五百グラムぐらいの高級品で、五百円あるいは六百円かかるだろうと思います。ということは、一キロ当たり何と千円とか千円以上かかっていると。
 ところが、卸売市場等が十トン車で九州から運んでくる、あるいは北海道から運んでくるということになりましても、これは冷蔵機能つきでありましても、一キログラム当たりわずかに三十数円から四十円ほどで済んでいるわけです。コストが全然違うんです。
 実際、これはさらに国際的に考えても、実は輸入を考えてみましても、輸入の方がコストが安いということもあります。例えば中国の青島港から東京港に四十フィートコンテナ、リーファーコンテナで物を運ぶと幾らかかるのかといいますと、わずかにキロ十円ぐらいで済んでしまう。もちろん着いてから荷おろしをしなければならない、あるいは東京都内まで運ばなければならないということがありますから、キロ二十円ぐらいにはなるんですけれども、この輸送費というのは、どれだけの大量の荷物を運ぶかによってコストが全然違ってくるということがございます。そういうようなことから、大量に荷扱いのできる卸売市場を通ると、当然、流通コストが縮減できるということでございます。
 そして、いうまでもありませんけれども、卸売市場の場合には、非常に多様な品ぞろえができるという特性がございます。これは、どうしてそういうことができるのかといいますと、卸売市場の場合は、だれもが出荷できる。契約取引であれば、特定の人としか取引ができないわけですけれども、卸売市場の場合は、だれもが出荷できる。自分でつくったものがあれば、それを出荷できます。また、輸入したものがあれば、それを出荷できるということで、非常に卸売市場は多様な物をそろえられる能力が高いということでございます。
 そしてさらに、日々の需給調整ということに関しましても、卸売市場は非常に高い能力を持っております。これは、ここにいらっしゃる方々はご存じのことだろうと思いますけれども、市場外流通が実は需給調整を卸売市場に依存した形で行っていると。契約取引で数量が決まっているようなとき、もし、より多くできたならば、より多くできたものを市場に出荷します。あるいは、足りなければ市場から購入してくるという形で、市場外流通の場合は、需給調整は卸売市場を利用してやるということからもおわかりいただけますように、卸売市場の需給調整機能というのは非常に高いところがございます。
 また、商品価値、これについても、よく目ききという言葉がございますけれども、卸売市場の担当者の方々、担当者といいますか、卸売会社の人々ないし仲卸業者の人々というのは、これは専門家ですから、価値を十分に判断できるというところがございます。ですから、その価値に応じた価格を形成することができる。我々ですと価値を十分に判断することは難しいところがございますので、価値のより低いものを価値の高いものよりも高く購入するということが多々あり得るわけですが、卸売市場の方たちは、そのようなことはほとんどないであろうというふうに考えられます。そういった点からも、商品価値に応じた価格形成能力がある。
 また、代金決済につきましては、ご存じですように、卸売市場の場合は三日から一週間程度の代金決済が可能です。これが、量販店等との取引になりますと、三十日前後というのが一般的だというふうにいわれております。
 そしてさらに、卸売市場の場合は、生産者の方々あるいは輸入業者の方々の販売先、出荷先として非常に重要な機能も果たしている。自分たちがつくったものはいつでも販売できる。卸売市場でいつでも売ることができる。もし契約取引であれば、自分ができたからといって簡単に販売することはできないわけですけれども、卸売市場の場合はそれが可能だということでございます。
 そしてさらに、小売業者といいますか、仕入れる側にしてもそのとおりでございます。仕入れる側の方は、卸売市場があれば、そこからいつでも仕入れることができます。これが、もしも量販店の集配センターが近くにあったからといって、そこからその系列以外の小売業者が仕入れられるかというと決してそうではありません。卸売市場があれば、いってみれば、小売業務を行うだけの資本があればいつでも小売業務を行うことができる。ところが、もしも卸売市場がなければ、卸売業務もできるような資本がなければ小売業務ができないということでございます。
 そのようなことで、日本では、卸売市場があることによって小売店の寡占化が進んでおりません。非常に自由な競争が行われているということでございます。
 実は三月にオーストラリアに行ってきたんですが、オーストラリアでは現在、二つの小売チェーンがシェア七〇%というふうにいわれています。そこのところで聞いた話としては、生産者の方たちは非常に安く買いたたかれている。消費者の方たちは高い物を買わされているという不満が非常に強いということでございました。日本はそういうことがないということでございます。
 そういったようなことで、非常に卸売市場としては重要な機能を果たしているだろうと。そういった卸売市場を、公共的といいますか、あるいは公的な支援を行うということが行われているわけでございます。東京都の場合もまさにそのとおりですが、じゃ、なぜそういった公的支援あるいは公共性ということがいわれるのかということでございますけれども、それにつきましては、次のところにございますように、これも幾つかの理由があろうかと思いますが、主なものとしてはそこに挙げたようなものがいえるのではなかろうかと思っております。
 一つは、卸売市場で取り扱う品目というのは、ご存じですように、生鮮品が中心でございますが、これは日々の必需品でございます。しかも、必需品であるにもかかわらず、需給は非常に不安定です。これは、生産の方でいえば、例えばきょう台風が来ると全くとれないということがございますが、消費側においても非常に需要量は不安定です。例えば、よくいわれることですが、十月ないし十一月に温度が二十度を上回るか下回るかでもって白菜の需要量が全く違いますよと。温度が二十度を上回っていると白菜の需要量は一店舗でわずか一ケースです。一店舗で一ケースしか売れないということなんですけれども、それが温度が二十度を下回ると、なべ需要などが急に出るものですから、一気に十倍の十ケースも売れてしまう、需要量が十倍になってしまう。それほど需要量も大きく変動している。
 そういうふうに、需給が大きく変動するということは、それを扱って商売をするということでありますと、リスクが大きいということでございます。余ればだめになりますし、足りなければ、これまたいろいろと問題が出てくるということがございますから、非常にリスクの大きい商売をしている。そのため、そういったところを、何らかの形でそのリスクに対応できる仕組みをつくっていこうということで公的な支援が行われている。それはもう既に江戸時代に、神田であれ日本橋であれ、そういったところが幕府によって支援されていたのと同じだということであろうかと思っております。
 それから、二つ目でございますけれども、生鮮品が中心ですから、それらは非常に劣化が激しい、腐敗しやすい。当然、衛生的な問題が出てくる。となりますと、これは公的に規制をするということも必要になってきます。あるいは、そういう衛生問題を起こさないために公的に支援するということも必要になってくる。そういった意味で、公共性あるいは公的支援の必要性が出てくる。
 もちろん、三つ目に書きましたように、利用者が全国に分散している。生産者が全国に分散しておりますし、消費者も全国に分散している。そういった利用者の方々が、必要なときに必要に応じて利用できるということで、非常にこれは、卸売市場というのは便利なものになっている。消費者の方々、生産者の方々にとって非常に便利なものであるという意味で、公共性があるんだということでございます。
 また、消費地の問題もございますけれども、申しわけありませんが、ちょっと時間の関係でそこは省かせていただきます。
 こういった卸売市場の役割、機能ないしその公共性、あるいは公的支援の必要性ということがいえるわけでございますけれども、その卸売市場が現在どういった状況にあるのか、どういった環境の変化があるのかということを簡単にご説明申し上げます。
 まず一つは、卸売市場を取り巻く環境の変化ということでございますけれども、その一つといたしましては、流通のグローバル化が進んでいるということでございます。流通のグローバル化ということは、我々日本側から見ると、輸出ということもありますけれども、中心は輸入でございます。その輸入が急速にふえ出したのが、下の図にございますように、一九九〇年代の中ごろ以降でございます。それ以前から小麦、大豆はそれなりの輸入量はあるんですけれども、食料品全般の輸入が進むのが一九八〇年代中ごろからです。これは、いうまでもなく円高の影響によるものです。
 そして、食料品だけではなく、次にもありますように、卸売市場で取り扱っている花き類についても、次の図にございますように、やはり一九八〇年代の半ば以降、非常に輸入がふえております。いずれにしろ、このような形でもって流通の国際化、グローバル化というのが現在かなり大幅に進んでいるんだということでございます。
 そして、二つ目といたしましては、供給過剰傾向が強まっているということでございます。供給過剰傾向というのは、消費量が減っているということからもいえるんですが、それよりは、例えば図2の2の2というところを見ていただきたいと思いますが、ここのところで供給熱量と摂取熱量というのを出してございます。摂取熱量というのは、申し上げるまでもなく、口の中に入る分でございます。供給熱量というのは、口の中に入る分プラスアルファ、ごみなどとして捨てる部分も含んでいるということでございますが、その供給熱量と摂取熱量の動きを見ていただきますと、摂取熱量というのは一九七〇年代以降、一貫して減少してきている。最近は供給熱量も減少はしておりますけれども、摂取熱量に対する供給熱利用の多い差がどの程度なのかというのを見ているのが図2の2の3でございます。
 そこのところを見ていただきますと、一九七〇年には、供給熱量は摂取熱量に対してわずか一二、三%ほどの多い差でしかなかったんですが、現在は三五%前後の多い差になっている。つまり、現在は一九七〇年前後と比べると、かなり供給過剰になってきている。豊かさといいますか、社会が豊かになってきたから、ある意味では供給過剰になるというのは、これは必然的なのかもしれませんが、いずれにしても供給過剰傾向になると。
 そして、供給過剰傾向になっているということはどういうことなのかというと、価格が上がらないということでございます。そのことを示しているのが図2の2の4あるいは図2の2の5ということになります。
 どちらかというと図2の2の5の方がご理解いただきやすいかと思いますので、そちらの方を見ていただきたいと思いますけれども、これを見ていただきますと、レタスの値段、月の平均単価でございますけれども、このレタスの値段は、一九八〇年代末ごろも現在においても、安いときの価格というのはほとんど変わっていないんです。しかし、高いときの価格というのが、これを見ていただくと、どんどん低下してきているというのがおわかりいただけるかと思います。もちろん一九九八年の十二月前後でありますとか、二〇〇〇年末前後のようなときには、レタスの供給量が急に減っておりますので、価格は高騰しておりますけれども、そういったところを除きますと、高いときの価格がどんどん減ってきている。つまり、安いときの価格に収れんするような形で動いてきているというのをご理解いただけるかと思います。
 いずれしましても、そのような形で供給過剰傾向が強まってきている中で、価格は低位なところに収れん化する傾向が強まってきている。つまり、低い価格が、いってみれば普通の価格になりつつある。そのこと自体は、消費者の方々から見れば、生活の豊かさにつながりますから、決して悪いことではありません。しかし、生産者の方々にとってみると、これは大変なことだということになろうかと考えております。
 三つ目の変化でございますが、これはいうまでもなく、高齢化ということでございます。ここにいらっしゃる方々は、既にそのことについてはよくご存じのことですので、私が申し上げるまでもないことなんですけれども、その高齢化によってどのようなことが起きているのかと申しますと、図2の3の4の次あたりのところを、ちょっと整理してあるところを見ていただきたいと思いますけれども、高齢化の中で、人口が減少しているということもあるんですが、そうした中で消費量が減ってきている、さらに減るという傾向が強まっておりますから、先ほど見ていただいた供給過剰傾向、価格の低位収れん化ということは今後も続くだろうというふうに考えて間違いないだろうと。
 そしてまた、高齢化が進んできますと、やはり女性の方々が仕事につかれる割合がふえてくる。そういった方々が仕事につかれる割合がふえてきますと、加工食品でありますとか、中食、外食がふえてくるということがいえるかと思います。
 特に、例えば図2の3の4のところに戻っていただきたいんですけれども、これは私どものところで、イトーヨーカ堂さんの大井町店で調査させていただいたものなんですが、そこのところを見ていただくとおわかりいただけますように、外食の利用というのは、男の方たちの場合ですと五十代がピークで、その後急速に減っています。つまり、仕事をやめられると外食の利用頻度というのは減るんだと。また、女性の方は二十代が一番高くて、その後減っております。かつては女性の方は二十代で仕事につかれていて、その後、結婚等でやめられるということがあったものですから、このようなことになっていたと思うんですけれども、中食の方は、これを見ていただくとおわかりいただけますように、年代が高くなるにつれて利用頻度が高くなってきている。
 つまり、高齢化というのはそういった意味で、中食の利用、外食もこれからはふえてくるだろうと思うんですけれども、そういった利用あるいは加工食品の利用がふえてくるということになってくるだろうというふうに考えております。
 そしてさらに、卸売市場の変化の四つ目といたしましては、卸売市場法の改正ということでございます。この改正につきましては、もう既にここにいらっしゃる方々は十分ご存じのことですので、その要点だけをお話しさせていただきたいと思います。
 コペルニクス的転回というふうに書いてあるところなんですけれども、そこのところに四点ほどまとめてございます。この四点が大きく変わった点でございます。一つは、委託、競り原則が撤廃されてしまったと。従来、卸売市場といいますと、委託、競り原則ということになっていたんですが、これが一九九九年、二〇〇四年の改正によって撤廃されております。
 また、二つ目といたしましては、ご存じですように、公定手数料制度が廃止されております。これは国の方で野菜八・五、果実七、水産五・五というような形で、大まかにといいますか、全国一律に決めていたわけでございますが、これが廃止されております。
 そしてさらに、固定販路制度といいますか、卸売市場においては、卸売業者が仲卸業者に販売し、仲卸業者がさらに一般小売店に販売するんですよというような意味での販路の固定化というのがある程度あったんですが、それも廃止されている。
 また、四つ目といたしましては、中央卸売市場から地方卸売市場の転換が認められるようになった。従来、卸売市場の整備といいますと、これは地方卸売市場を整理して中央卸売市場をつくり出すというのが卸売市場の整備のあり方だったんですが、二回の卸売市場法の改正を契機にして、これが全く変わってしまったということでございます。このようなことで、卸売市場制度は、従来とはある意味では全く異質のものに変わってきております。
 そういった中で、卸売市場そのものがどういう変化を示したのかということでございますが、次の図3の1の1からそのことについて説明申し上げたいと思います。
 まず一つは、いうまでもありませんが、卸売市場経由率、市場経由率が低下し、経由量が減少したということでございます。そのことにつきましては、図3の1の1から図3の1の6のところまで見ていただければ、青果、水産、花き、そして食肉ということでおわかりいただけるかと思います。
 そして、そのような形で市場経由率が低下し、そして市場経由量が減少したことによって、卸売市場における卸売額、取扱額も大幅に減っております。どのぐらい減ったのかというのを図3の1の7と図3の1の8の折れ線グラフで示してございます。
 ここのところでは、野菜と果実でございますけれども、野菜のピークは一九九〇年あたりに三兆円を超えておりましたけれども、現在では二兆円強に減っておりますし、果実の場合は、やはり一九九一年あたりがピークでございまして、このとき二兆円弱ぐらいあったんですが、今では一兆二千億円。両方合わせますと、一九九〇年前後には五兆円ほどの売上高があったんですが、それが現在は三兆二千億円ぐらいに減っているということでございます。
 それでは、どうしてこのような形で市場経由率が減り、そして市場経由量が減少し、さらに卸売額、卸売市場全体の販売額が減ってきたのかということでございますけれども、これは、青果物あるいは水産物等で若干理由は異なっておりますが、青果物につきましては加工品の増加であります。加工品がどのくらい増加してきたのかということにつきましては、例えば図3の1の14を見ていただきたいと思います。
 ここのところで、折れ線グラフが野菜の加工品の割合を示しております。これを見ていただくとわかりますように、現在では、野菜の流通量のうちの二二%強が加工品になっていると。さらに次のページを見ていただくとおわかりいただけますように、果実につきましては四六%ぐらいが加工品になっているということでございます。
 加工品というのは、従来、卸売市場では取り扱わないことになっておりましたので、これがふえるということは、卸売市場経由率が減るということにつながっていくわけです。もちろん全体の青果物の流通量がふえるということならば別なんですけれども、先ほど申し上げましたように、全体の流通量はどちらかというと減少傾向にございます。消費量が減っているということに応じて、流通量は減少傾向にあるものですから、加工品がふえるということは当然、生鮮品の出回り量は減る、比率は減るということでございます。そのことが結果として市場経由率、市場経由量の減少につながったんだということでございます。水産の方はまたちょっと別なんですけれども、一応、青果物についてはそのようなことがいえます。
 したがいまして、じゃ、生鮮物だけで卸売市場経由率はどのくらいなのかということを見てみようとして推計いたしましたのが図3の1の16でございます。
 そこのところを見ていただきますと、実線で示したのと点線で示したのとがございますが、実線で示したのは、白抜きの丸になっているのが野菜の市場経由率、生鮮だけで見たときの市場経由率で、多目に見た場合の推計値でございます。赤く塗りつぶしてある方が少な目に見たときの経由率でございますが、これを見ていただくとおわかりいただけますように、現在でも大体九〇%前後ぐらい、つまり生鮮品の九割前後が卸売市場を通っているということを示してございます。
 また、果実の場合、若干低下傾向にございますが、しかし依然として果実でさえも八〇%、八割ぐらいが市場を通っております、生鮮品に限ればですね。これは全体で見ますと、果実の方は、先ほどの経由率の図で見ていただければよろしいかと思いますけれども、図3の1の2あるいは図3の1の1の方にちょっと戻っていただきますが、果実の経由率というのは現在五〇%を割っております。また、野菜の経由率というのは七七%程度。これは三カ年移動平均値ですから、単年度で見るともう若干低いんですけれども、そのところまで下がってきているわけですが、生鮮品だけですと今申し上げたようなことで、野菜は依然と九割前後、果実も八割前後が卸売市場を通っているということでございます。
 いずれにしましても、このような形で、青果物の場合、加工品がふえることによって市場経由率が減り、そして市場経由量が減り、そして、かつまた卸売額が減ってきているということでございます。
 したがいまして、卸売市場としては、今後このような経由率についてどのように考えていくか、経由率の上昇をどうしたらいいのかというのが、ある意味では一つの大きな問題になっているかと思います。また、そのような形で経由率を上げることによって、より十全な機能を発揮するということが卸売市場にとっては重要になってきているのかというふうにも考えられるわけでございます。
 そのことはまた後ほどお話しすることといたしまして、そのような形で、卸売市場経由率が減って、卸売市場の販売額等が減少してきているものですから、当然のこととして、卸売市場にかかわる変化の二つ目といたしましては、卸売市場の業者数、卸売市場数などが減少傾向にございます。
 図3の2の1は、これは中央卸売市場の業者数、青果物だけでございますけれども、中央卸売市場の卸売業者と仲卸業者の業者数を示してございますが、そのような形で減っている。これは二〇〇五年まででございますので、卸売市場数の変化というのはほとんどないんですけれども、この後、卸売市場数は減っております。二〇〇四年以降、中央から地方に変換してよいということになりましたので、卸売市場数も減少してきているという状況でございます。
 図3の2の2の方は、これは地方卸売市場でございますけれども、地方卸売市場の場合は卸売業者数も減っておりますし、地方市場数も減っているという状況でございます。そういった形で減ってきてはいるんですが、しかし、じゃ、卸売業者の利益が上がってきているか、あるいは仲卸業者の利益が上がってきているかというと、決してそうではありません。
 図3の2の3を見ていただきたいと思います。ここのところでは、中央卸売市場の卸売業者の営業利益率と粗利益率を示してございますが、粗利益率も減ると同時に営業利益率も減っております。
 また、図3の2の4では、これは仲卸業者の営業利益率と粗利益率を示しているんですけれども、仲卸業者の場合は、粗利益率は、この図を見ておわかりいただけますように、ふえてはいるんですけれども、しかし、いろいろな取引上の費用がかさんでくる。どういうような費用かといいますと、よくいわれるのがセンターフィー、量販店の集配センターなどを利用しますと、センターフィーということでセンターを使用する料金を徴収されるということがあるんですけれども、そういった費用などがふえてきているために、仲卸業者の営業利益率というのは、そこにございますように、極めて低くなっております。
 この利益率がどの程度変化したのかというのを若干わかりやすく、今の図でももちろんよろしいんですけれども、次の表3の2の2の方で、どのくらい減ったのかというのをはっきりした数字で示させていただきました。そこのところを見ていただくとおわかりいただけますように、青果物、水産物、花きとございまして、青果物、水産物には卸売業者、仲卸業者のそれぞれの利益率を示してございますが、そこを見ていただくと、青果物の場合の卸売業者の営業利益率は、一九九〇年代の前半に比べますと、最近は半分程度に減っているというふうにご理解いただいてよろしいかと思います。仲卸業者の場合は、かつては〇・四ないし〇・五%ぐらいあったものが、今やゼロ%前後のところまで落ちているということでございます。
 水産物の場合も同じでございまして、卸売業者の利益率というのはほぼ半分に減っております。また、仲卸業者の場合は、それこそよくて四分の一、場合によっては九分の一ぐらいに減っている。よくて三分の一ですか、に減っているということでございます。花の場合も、間違いなく営業利益率は減っているということになっております。
 このような形で、価格が下がっておりますから、当然、卸売額が減るのは、ある意味では当たり前のことでしょうし、そして利益率が減るというのも、ある意味では当然のことかもしれませんが、しかし、そのような形で市場数あるいは業者数が減少しているにもかかわらず、さらに減ってきているということで考えてまいりますと、今後とも市場数、業者数が減る可能性は多分にあるだろうと。
 しかし、果たしてそれでいいのかどうかというところが問題でございまして、できることならば、社会的貢献を果たしつつ、利益をふやすような方策を考えてもよろしいのではないかと。特に卸売業者、仲卸業者はそうでございますが、それと同時に開設者にとっても、例えば東京都の場合には、中央卸売市場への支援というのは赤字になっているだろうと思うんですけれども、卸売市場が収益を上げることができなければ当然、開設者の方も赤字にならざるを得ないということがございますので、卸売市場としての収益というものを今後十分に考えていってもよろしいのではないかというふうにも思っております。
 次に、卸売市場流通そのものの変化の三つ目でございますけれども、三つ目といたしましては、特定の卸売市場への集中が進んでいますよということです。そこのところの図3の3の1を見ていただきますと、これは大田市場と大阪の本場の全国に占めるシェアを示しているんですが、大田市場の方がよりはっきりしておりますので、大田市場の方を見ていただきたいんですけれども、一九八〇年代の中ごろまでは、大田市場のシェアは低下傾向であったんですが、それ以降は上昇傾向に転じております。そしてさらに、都内の大田市場の位置づけなどを見ましても、やはり、かなり大田市場への流通の集中が進んでいるというのがおわかりいただけるかと思います。図3の3の2でありますとか、図3の3の3といったところでございますが、また、水産物につきましても同じようなことでございます。
 そして、こういった動きはもちろん東京都だけではございません。例えば九州ということになりますと、福岡の中央卸売市場や熊本の地方卸売市場に流通が集中しているというような動きがはっきりと見てとれるところでございます。いずれにしましても、そのような形で、特定の卸売市場に流通が集中していくという傾向が強まっている。
 こういった特定の卸売市場への流通の集中というのは、これは出荷側の理由、あるいは仕入れ側の理由があるものですから、今後とも進む可能性は間違いないだろうというふうに私は考えております。
 ただ、じゃ、そういった形で特定の卸売市場に流通が集中して、卸売市場の数がこれからどんどん減っていくことが社会にとってよいことなのかどうかというところがやはり考えなければならない点だろうと思っております。ある程度特定の卸売市場に流通が集中し、そして市場の数が減るというのは、これはいたし方ないところかとは思っておりますが、その減り方が激しくなりますと、例えば出荷する人々にとってみれば、出荷先がなくなってくるという問題があります。あるいは、仕入れする側の人々にとってみれば、仕入れする先がなくなるというような問題が出てくる。もちろん大手の量販店であるならば、そういった問題はないんでしょうけれども、しかし、中小の小売さんにとってみれば、それは非常に大きな問題だろうというふうにも考えられるわけでございます。
 そのようなことで、じゃ、今後どのようにしていったらいいんだろうかということについてお話しさせていただきたいと思いますが、今後のあり方といたしましては、当然のことですけれども、卸売市場の必要性といいますか、強みといいますか、あるいは卸売市場の役割といいますか、そういったものを強化していく、あるいは維持していく上で、卸売市場の方向性を考える必要があるだろうというふうに思っています。
 卸売市場が今後とも維持し、強化すべき機能、役割というようなものといたしましては、4の卸売市場・市場流通の今後のあり方のところの(1)、卸売市場の必要性・強みのところに〔1〕から〔6〕まで出ているんですが、そのようなところを今後、維持強化しながら、これからの卸売市場のあり方というのを考えていかなければならないであろうと。
 一つは、品ぞろえです。卸売市場が品ぞろえ機能は一番高い。品ぞろえということは、消費者にとってみると選択の幅を広げるということですから、消費者の生活の豊かさの一つでもあります。もちろん豊かさというのは、物が豊富にあるというのが豊かなんですけれども、それと同時に、選択する幅が狭ければ、決して豊かだというふうには感じないわけでございますから、そういった意味では、品ぞろえが豊富であるということは非常に重要なことになるわけです。
 また、先ほども申し上げましたように、流通コストを最小化するのは卸売市場だということであるならば、その機能を強めるような形で卸売市場の維持存続を図っていくということが重要であろうと。
 そしてさらに、需給調整機能でございます。この需給調整は卸売市場が行っているんだということであるならば、そういったところをさらに強めるような形で進めていくべきだろうと。
 そして、商品価値の判断もそうですし、多様な出荷者、仕入れ業者への支援、そして迅速な代金決済、そういったようなことを維持強化しながら今後の卸売市場のあり方を考えていくべきだろうといったときに、まず最初に重要なこととしては、品ぞろえとの絡みで、今後の卸売市場のあり方としては、加工品の取り込みなども考えてもよろしいのではないか。
 先ほども申し上げましたように、青果物の場合は、加工品はほとんど取り扱っておりません。水産物の場合ですと、それこそ冷凍水産物などを取り扱うのは当たり前なんですけれども、青果物の場合は冷凍野菜でさえ取り扱うことはほとんどありません。ですが、今後はそういった加工品を取り扱うような形で、品ぞろえをより豊富にしていくということがあってもよろしいのではないか。
 特に、その下の図を見ていただくとおわかりいただけますように、この品ぞろえを行う主体はだれであったのかということを考えますと、かつては消費者でございました。消費者が八百屋さんに行って野菜を買い、魚屋さんに行って魚を買うというような形で、消費者が品ぞろえをしていた。ところが、今や、スーパーさんに行けば、そこでいろいろな物を買うことができる。つまり、スーパーが品ぞろえをするというようなことが行われているわけでございますし、今後は、そういったようなことから考えますと、卸売市場で品ぞろえをしてもよろしいのではないか。
 特に、最近よくいわれるようになったことですが、買い物難民とか買い物弱者ということがいわれております。そして、先日の新聞によると、これが六百万人いるのではないか、現在既にもう六百万人に達しているだろうというようなことがいわれている。その方たちにどういう対応をしていこうかというときに、移動店舗などの話が出てきております。私も今後、移動店舗は非常に重要だろうと思っておりますし、あるいは住宅地の近くに小規模の店舗をつくるということも非常に重要だろうと思っている。
 ただ、そういった移動店舗にしても、あるいは小規模な総合食料品店ができるとしても、そこがどうやって仕入れるのか。幾つもの卸売市場を回って仕入れるということになりますとコストが高くなります。決して利益を上げることができません。ということは、継続的に移動店舗を運営することができない、小規模な小売店を運営することができないということになってくる。ということになりますと、卸売市場のところでそういった品ぞろえをしていくべきではなかろうか。
 ただ単にスーパーマーケットのために卸売市場が総合市場となって品ぞろえをするということではなくて、今後の社会全体のあり方を見たときに卸売市場が品ぞろえをするということはますます必要になってきているのではないかというのが私の考えでございまして、そういった意味で、加工品などを取り扱うということは非常に重要なものではないかというふうに考えております。
 そして、二つ目といたしましては、先ほど特定の卸売市場に流通が集中する傾向が強まっているということを申し上げまして、そしてこの傾向というのは今後も続かざるを得ないだろうというふうに申し上げました。私としては、決して特定の卸売市場に流通が集中するのが悪いというふうには思っておりません。と申しますのは、特定の卸売市場に流通が集中するならば、それをうまく活用して、流通コストを下げる手があるだろうと。
 どのように下げるのかと申しますと、例えば図4の3の1のところにトレーラー出荷というのを書いてございますけれども、より大量に出荷できるような仕組みをつくっていけばいいじゃないか。特定の卸売市場に荷が集中するんだったらば、その集中をうまく活用して、特定の卸売市場においてはトレーラーでの荷を受けられるような機能を持ってもらう。それによってコストを削減していく。
 これは先ほど輸入物のコストが安いんだというようなお話、あるいは北海道や九州からの物が安いんだというお話をしましたけれども、実は佐賀県で、タマネギの輸送に十トン車と二十トンのトレーラーを使ったことがございます。そのときにどれだけコストが違ったか。佐賀県から東京まで持ってくるときに、十トン車で持ってきたときはキロ十円かかっております。これは普通のほろつきのトラックです。冷蔵車ではございません。ところが、これが--失礼しました、これはトレーラーを使ってキロ十円です。普通の十トン車を使うとキロ二十円です。ですから半分なんですね。十トン車にするか、二十トン車にするかでもって、コストが半分も違ってくる。
 実は日本の場合、こういったトレーラーを使った輸送というのが、諸外国に比べると最もおくれております。欧米に行ってももちろんなんですけれども、必ずしも欧米だけじゃなくて、いわゆる新興国と申しますか、そういった国々に行っても、現在トレーラーで輸送する、あるいは二両連結のトラックで輸送するというのがかなり普及しておりますが、日本の場合は、卸売市場でトレーラーで持ち込むなんていうのはほとんどありません。しかし、これからは、そういった形でもって、より大量の荷を運ぶような形でコストを削減していくということがますます必要になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。
 そしてさらに、三つ目といたしましては、今後の卸売市場のあり方ということを考えていった場合、やはり生産、出荷者、あるいは小売、仕入れ業者等に対する支援も強化していく必要があるだろうと。特に国内の生産におきましては高齢化が進んでいるということで、力が弱まっていることもございますけれども、そういった生産をいかに支援していくか。あるいは小売部門におきましても、一般の小売さんにどのように支援をしていくかというようなことなども、今後、卸売市場としては考えてもよろしいのではないかというふうに思っております。
 またさらに、ここのところで環境問題というのを書いてございますけれども、ご存じですように、生鮮食料品というのは非常に生ごみになりやすいものでございますが、こういった生ごみの排出が環境問題につながるということでもございます。そういったごみ問題を解決していくというのを卸売市場が何らかの形で寄与できないだろうか。そういったことも今後、卸売市場としては考えてもよろしいのではないかというふうに私としては強く考えているところでございます。
 そしてさらに、五つ目でございますけれども、一番最後のところに需給調整というのが出てございますが、そういった需給調整機能を高めていく、これも非常に必要だろうと。そしてそのとき、需給調整機能を高める一つとして重要なことは、対面で販売する小売店をいかに育成していくかというのが重要なところでございます。
 と申しますのは、スーパーマーケットですとセルフ方式での販売になっておりまして、スーパーマーケットのセルフ方式での販売が悪いというわけでございません。確かに大量に販売できるので、それはそれで重要かと思うんですが、よくいわれますように、スーパーマーケットでは価格を変えません。価格を変えないかわりに、中身の数量を変えるわけです。きょう物が高ければ、例えばキュウリであれば二本パックにしますよと。安いときは三本パックにしますよと。ただし、そのパックの値段はイチキュッパ、百九十八円ですよという形で販売します。
 これが一概に悪いというわけではないんですが、実はそのような販売の仕方というのは、きょう安いか高いかという情報を伝えていないんです。イチキュッパのままですから、消費者はわからない。消費者が買うときに、どれだけの時間をかけてキュウリを買うか。わずか五秒か六秒で買うわけです。それだったら消費者が見るのはイチキュッパか、どこの産地かぐらいです。決して中が二本か三本かなんて調べません、一々。
 ということで、量販店の販売というのは、ある意味では需給調整機能が非常に弱い。ところが、対面ですと、きょうは奥さん、これ安いですよ。きょうはこちら高いから、こちらの方にした方がいいんじゃないですかという情報を対面販売の方たちというのは常に提供できる。
 情報提供だからITがあればいいだろうと。ITがあったところで、ほとんど見ません。小売店にパソコンの端末を置いたからといって、決して消費者がそれを調べるなんていうことはございません。わずか五秒、六秒、せいぜい十秒ぐらいで買い物をするのに、一々そんな調べていられるわけがないんです。
 ということになりますと、やはり情報の伝達というのは人から人に伝えるのが一番いい。これが一番正確であり、一番早いわけです。そういった対面販売での小売店の育成強化、これを今後、卸売市場としてもしていってよいのではないか。特に仲卸さんあたりはその辺のところに力を入れてもよいのではないか。あるいは仲卸さんが、場合によったら、そういった小売などを行うというようなことも考えてもいいのではないかというふうにも思っております。
 そして、最後でございますけれども、最後は一つお願いでございますが、今後、先ほど申し上げましたように、拠点的な市場といいますか、あるいは流通の集中する基幹的な市場と申しますか、そういった市場がこれからできてくる。そして、そういった市場を有効に活用して、流通コストを削減するということも非常に重要になってくるだろうと思いますが、一方では、ほかの卸売市場の中には、これは量販店と連携していくような市場もたくさん出てくるでしょう。あるいは、特定の卸売市場の場合には、自分のところで小売さんをボランタリーチェーン化するような形で進んでいく卸売市場も出てくるだろうと思うんです。
 決してそういうことが悪いというわけでございませんけれども、しかし、余り特定の小売さんと系列化するということになりますと、ほかの小売さんが仕入れづらくなるということもあるものですから、少なくとも、拠点的な卸売市場といいますか、流通が集中する卸売市場の場合には、そういった系列化をしないような形で独立性を確保できるような仕組みというのをつくり上げていただければと。
 特に、こういったことができるのは、これは政治、行政の方たちだけになるわけです。業界の方たちは、やはり利益を追求していきますから、その過程では、量販店と連携するというのも当然私はあってよろしいかと思うんです。しかし、それだけだと、やはり流通がスムーズにいかないということがございますので、特に政治、行政の方々は、特定の卸売市場、荷が集中するような卸売市場については、その独立性を維持するということを特にお考えいただければというふうに思っております。
 最後にそのことをお願いいたしまして、ちょっと長くなって申しわけございませんでしたけれども、私の方のお話を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

○花輪委員長 ありがとうございました。
 これをもちまして藤島参考人の意見聴取を終わります。
 藤島参考人には、大変お忙しい中、貴重なご意見をお伺いすることができました。心より厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 それでは、どうぞご退席ください。

○花輪委員長 それでは、参考人をご紹介いたします。
 農業・農協問題研究所事務局長で広島大学名誉教授の三国英実さんです。
 本日は、ご多忙のところ委員会にご出席いただきまして、本当にありがとうございます。委員会を代表いたしまして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。
 卸売市場のあり方について、ご専門の立場から、ご意見をお伺いしたいと思います。
 なお、三国参考人には、ご着席のまま発言をいただきたいと思います。
 それでは、先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○三国参考人 ただいま紹介いただきました三国です。よろしくお願いします。
 私は、まず最初に、築地市場の豊洲移転問題が問題になっていますけども、私は単に築地が豊洲に移るという問題ではなくて、豊洲新市場の建設は、今、国が進めている卸売市場整備再編、そういう国家プロジェクトの一つであるということをまずお話ししたいと思うんです。
 レジュメに従っていきたいと思うんですけれども、今、中央卸売市場が問われるということは、公的管理がどうなるんだという問題があると思うんです。それは、今、国家が進めているのは、拠点型市場形成ということなんです。
 そこにおける問題点について、まずお話ししたいと思うんですけれども、ご存じのように、中央卸売市場というのは、一九一八年の米騒動を契機に、政府は国民への食料の安定供給、あるいは日本の主食である米に対しては、米穀法というのが一九二一年につくられているんです。中央卸売市場というのは一九二三年につくられました。今まで野放しだった流通を、国家が国民のためにそういう制度をつくり上げたという歴史があるわけです。
 戦後、一九七一年に新しく、中央卸売市場法にかわって、卸売市場法が制定されました。これでは、単に中央卸売市場だけではなくて、地方卸売市場も含めて、当時、高度成長でどんどんどんどん都市部に人口が集中したものですから、都市部への生鮮食品の安定供給ということを図りまして、例えば県庁所在地等にどんどん中央卸売市場を整備していったという経過があるわけです。
 こういう流れがあるわけですけれども、私は第三期だと思うんです。つくったとき、そして七一年の卸売市場法ですね。そして今は第三期の段階に入っていると思うのは、もう今までつくってきた卸売市場制度を再編整備して、できれば民間に移していくという大きな今流れになっているんじゃないかというふうに思います。そういう点では、〇四年の法改定というのは非常に大きな意味を持っているんじゃないかと思うんです。
 この法改定に伴い、第八次卸売市場整備方針では、要するに、一方では大都市の拠点中央卸売市場を整備するとともに、その他の中央卸売市場については、地方卸売市場へ民間化も含めて転換を図る、促進を図るという方向が出されました。
 それで、〇五年三月に制定された八次整備計画では、拠点となる中央卸売市場の整備として、移転新設と改築ですか、これを今、大都市の市場に関してはその方向が進められたということなんです。
 それで、移転新設としては、東京都の中央卸売市場、豊洲市場ですね、これが含まれています。それからあと、新潟市とか、名古屋市とか。それから増改築としては、札幌市、名古屋市、大阪市、神戸市、福岡、これらの都市を見ていただければわかるんですけれども、要するに巨大都市ということになります。それでこの新設あるいは改築の場合は、できるだけ民間総合資金ですか、ごめんなさい、PFI方式というやつですね、その事業を採用するという方向も示されています。
 ですから、豊洲の場合も、最近何か変えられたというふうに聞いていますけれども、当初はこのPFIを入れて、建設過程あるいは建設後も二十年間くらいですか、そういう民間企業に任せるというような方向がたしか出されていたと思うんですけれども、そういうことだと思うんです。
 それで、第7から8の資料を見てください。資料7及び8を参考にしてもらいたいんですけれども、拠点市場というのはどういうイメージかということで、ここに書いていますように、要するに、大きな産地から拠点市場に入れて実需者に配給するということです。それで、大都市周辺の卸売市場は、要するに拠点市場から転送ですね、そういうものに依存すると。もちろん地元の産地からの供給もありますけれども、こういうふうな二分化の方向というのが非常に強く打ち出されているわけです。
 それで、拠点都市以外の中央市場の動きはどうかということでは、資料9と資料10をごらんください。ここでは、例えば資料9に示されているように、四つの基準が示されていて、このうち三以上の基準が当たる場合は地方卸売市場へ転換しなさいということになっているわけです。
 ただ、これはかなりきつい基準だと私は思うんですけれども、例えば〔1〕の基準をちょっと見てもらえば、開設区域内の需要量に対して供給量がそれ未満であるということになりますと、これはかなりきついんじゃないかと思います。というのは、後でもお話ししますけれども、今、卸売市場の取扱量が減ってきていますし、それから経由率というのも減っていますから、これはかなりきつい条件じゃないかと思います。現にこの方向に従って、既に再編措置済みが十一市場、再編措置を予定する市場が五市場に及んでいるということです。
 昨年、新政権が発足してから、十月に、卸売市場の将来方向に関する研究会というのが発足したんです。これは今年度中に策定するといわれる第九次卸売市場整備方針あるいは計画のための準備の研究会だったわけですけども、そこで卸売市場についてどういう方針になっているかというと、やはり今の拠点型市場形成という考え方は踏襲されているというふうに思います。効率的な物流ネットワークの構築というのを拠点市場に求めるということになりまして、その後に書いているのは、中央卸売市場についておおむね地方ブロックごとに大型産地から荷を大量に受け、周辺の市場と連携した流通を担う拠点市場を位置づけ、その機能強化を進める必要があるとしているわけです。
 また、こうした機能を発揮できない中央卸売市場については、先ほどいいました基準に従って、引き続き地方卸売市場へ転換を図るというふうになっております。
 ここでいう地方ブロックの拠点都市というのはどういうのを想定しているかというと、出された資料等を見ますと、要するに道州制がありますけれども、その道州制の中心となるような、札幌市とか仙台市とか新潟、名古屋、大阪、広島、福岡等々の都市が想定されているわけです。ですから、豊洲の新市場計画も、こうした国のかなり大がかりな再編計画に位置づけられているんじゃないかというふうに私は思うわけです。
 ここで問題になるのは、第一に、地方ブロックの拠点都市としての中央卸売市場ということになりますと、二枚目に入りますけれども、市や都道府県自治体の枠を超えた市場ということになるわけです。ですから、地方自治体が財政支出するという意味が果たしてどこにあるのかということは疑問を持たざるを得ないし、それに伴って、公的管理というものが後退するんじゃないかというのが一つの問題としてあると思います。
 それと、全国にある中央卸売市場は、それぞれの地域の条件に応じた機能を持って、今活動しているわけですけれども、こういった画一的な再編では現状に合わないというような感じがするんです。私は広島にいましたけれども、例えば広島市場があれば、岡山とか例えば高知の中央市場は要らないかと、そういうことにはならないわけです。日本で最初につくられたのは京都です。京都の中央卸売市場は昭和二年にできているんですけれども、大阪があれば京都の中央市場は要らないかというような議論にはならないと思うんです。そういう問題を含んでいるということです。
 あと、大型化すればよいということではなくて、例えば大型化整備をしても、荷が集まらなければ、そこで経営が維持できないという問題がそういうことで起こり得るわけです。というのは、今そういう拠点型市場とか大型市場で荷を集められるというのは、国内の大産地が形成されているとか、あるいはもう輸入がどんどん入ってきているとか、そういうのにかなり依拠しているわけですけれども、今、輸入自体が見直されているし、大型産地形成もいろんな労力の問題とか、冷害障害の問題というのが見直されているわけですから、そういう流れがいつまでも続くという保証はないんじゃないかというふうに私は思います。
 それと、二番目に入りますけれども、もう一つ、〇四年の法改定で、今の問題と関係して大きな変化があったのは、卸売市場の取引原則の緩和という問題があるわけです。この点については、資料7と8を参考にしてください。
 卸売市場法制定時には、原則規定が競り・入札原則、それから委託集荷原則、商物一致原則、第三者販売・直荷引きの取引の原則禁止、卸売市場手数料の公定制というのが原則としてあるわけです。もちろんこれにただし書きがついて、後で読んでいただければわかるんですけれども、そういうただし書きの条件の場合はこの限りでないというような原則があったわけですけれども、その後、平成十一年に改定があって、そこに書いているような規制緩和があって、そして〇四年の規制緩和で、資料11あるいは12に書いているような、12の方がいいかもしれません、この規制緩和があったわけです。
 時間がありませんので、後でこれは読んでいただきたいんですけれども、第一は、委託販売原則が廃止されたと。委託集荷、買い付け集荷、いずれもよいということです。
 それから、第二は、卸売業者と仲卸業者の垣根を取り払うということで、卸売業者が市場の仲卸業者以外へ販売する、これは第三者販売というんですけれども。それから、仲卸業者が卸売業者からじゃなくて、産地から直接荷引きするという直荷引きですね、こういうものもやってもいいということなんですけれども、ただし、ここに書いているような産地との契約があるとか、新商品を開発するとか、そういう条件がついているということです。
 それから、第三は、商物分離です。これは平成十一年のとき、業者から申し込みがあって、市場の開設区域内であれば商物分離を認めていいということだったんですけれども、今度の改定では、これも条件がついて、電子商取引に関しては、要するに、流通は卸売市場を通すが、物流は産地から、あるいは輸入業者から、直接量販店なら量販店に運んでもいいという規定があるんですけれども、そういうふうに変えたということなんです。
 それから、手数料の自由化。これは、例えば野菜は八・五%、果物は七%と決まっていたんですけれども、これは改定すると。ただ、これは非常に営業に大きな影響を与えるということで、五年の据置期間を置きまして、去年の四月から実施するということです。その他ありますけれども、ちょっと時間の関係で省略させていただきますけれども、こういう大幅な取引規制緩和があったというのが、もう一つの特徴なんです。
 ただ、こういう規制緩和に伴って、これがどんどん進んだ場合、果たして中央卸売市場が公共性を維持できるのかという問題が中に含まれていると思うんです。ですから、去年の十月から発足しました卸売市場の将来方向に関する研究会では、〇四年法改定後の規制緩和の進捗状況を示した資料が示されたわけです。
 これは資料13と14をごらんください。これを見て意外だと思うのは、買い付け集荷にしても、第三者販売にしても、直荷引き、あるいは商物分離ですね、これは必ずしも顕著に進むという、わずかに伸びていますけれども、ほとんど伸びない状況にあるということです。手数料改定に至っては、変更したのは二百二十一社のうち二社だけなんです。料率も例えば三年間は変更できない固定制を採用しているところもあるし、たしか東京なんかはそうでなかったかと思うんですけれども、そういう状況です。
 既にもう卸売市場というのは形骸化して、むしろ民間に全部任せた方がいいんだと、そういう原則は全部外した方がいいというような議論ももちろん今あるんです。一方ではあるんですけれども、こういうふうな状況の中、この研究会では、次にお話ししますように、この原則はやっぱり大事だということを確認した意味というのは非常に大きいんじゃないかと私は思うわけです。
 そこだけ読んでみますと、卸売市場における公正な取引の確保、適切な価格形成を確保する観点から、第三者販売、直荷引きの原則禁止など卸売業者と仲卸業者、売買参加者とを対置する卸売市場の基本構想、これは要するに垣根を取り払うのはよくないということをいっているわけです。あるいは差別的取り扱いの禁止、それから商物一致等の取引規制の基本原則を、三枚目に移りますけれども、これを維持することが必要であるというふうにいっているわけです。ですから、公的管理、公共性維持のためには、やっぱりそういう必要性が再確認されているんじゃないかということです。
 今、今年じゅうに恐らく策定されようとしている第九次卸売市場整備方針がどういう方向になるか、これから議論されるわけですけれども、中にはもうこういう原則規定を廃止してしまった方がいいんじゃないかということが一点。その中には、卸売市場の本当の根本原則という非常に重要な第九十六条の差別的取り扱いの禁止条項というのがあるわけです。これは商売に当たって、仲卸とか、それから売買参加人とか、あるいは集荷に当たってはその出荷者を区別してはならないという原則を、これはある意味では卸売市場の生命を守るくらい重要な私は規定じゃないかと思うんですけれども、これさえも廃止してしまえという議論があるんですけれども、今度のこの研究会報告では、そこはそういう方向じゃなくて、原則を再確認したという意味は非常に大きいんじゃないかというふうに思います。
 次に、二番目の問題として、そういう中で、じゃ、今日の卸売市場の役割、今後どういう方向に進むべきかという問題について考えてみたいと思います。
 その前に、卸売市場の集配センター化という問題を提起したいと思うんです。日本の場合、生鮮食料品流通において、卸売市場というのは今日でも非常に重要な役割を果たしているわけですけれども、なぜかというと、今日でもなお、その生産が家族経営を基本とする農漁民によって担われているということです。それから、小売分野でも、もちろん量販店の占めるシェアは非常に高くはなっているんですけれども、まだ専門店とか料理店というのは広範に存在しております。あと量販店といっても、もちろんビッグスーパーもありますけれども、中小スーパー、ローカルスーパーが活躍しているという状況だと思うんです。
 こうした条件のもとでは、生産と消費を結びつけるためには、どうしても収集、中継、分散という流通過程を必要とするということなんです。その中継過程を担っているのが、まさに卸売市場であるということです。しかし、それではどうして例えば大型量販店、大手量販店等は中央卸売市場を利用するのかという問題がそこにあるわけです。
 私は、一九七九年に、ちょうど全農の集配センターがこのころできたんですけれども、そのころに、青果物集配センターの形成と卸売市場の再編成過程という論文を書いているんですけれども、この中で中央卸売市場の集配センター化という問題を指摘しておいたわけです。
 というのは、一九七七年に財界のシンクタンクである日本経済調査協議会の報告を検討しました。これは大消費地域における食品流通の現状と問題点という報告書なんですけれども、この中で、既に卸売市場のあり方として、一つは大消費都市の中核的卸売市場と地域経済と密着した地方卸売市場に機能分担すべきであるということとか、それと小売業のワンストップ仕入れに対応して、卸売市場の附帯施設として、仲買人や買参人の加工、包装施設や配送センターを設置すべきだというようなことをいっています。
 それから三番目は、これは差別的取り扱いの禁止原則にも反するような内容なんですけども、取引単位の大口化と最低取引単位の設定、取引上の効率に即した買い高奨励制とか、それから優遇措置ですね、多く買う人に対する優遇措置、こういうものも提案しています。
 このときは、日本の大手スーパーも集配センターをつくる動きもあったんですけども、やはり都市部で非常に近いところで集配センターを設置するよりも、非常に豊富な品ぞろえの卸売市場、ワンストップ仕入れのできる、そういう施設とか機能を大いに集配センターとして積極的に利用するという方向が追求されたということです。
 その場合、もちろんみずから買参権を持って直接仕入れる場合もあるんですけれども、主として仲卸商の機能を利用する方向を強めたということです。それに関連する資料は、資料15に若干示しておきましたので、ごらんください。さきに見た卸売市場の基本原則の緩和の要求もこうした背景の中で出てきているということを見ておく必要があると思うんです。
 既に東京なんかでも先取り問題が一時非常に大きな問題になって、あれは三割以内でしたか、制限するという条例もあったんですけれども、要するに先取り、予約型相対取引がどんどんどんどん進んできているという状況にあります。
 いわゆる大手量販店のバイイングパワーというのが非常に強まってきているわけで、先ほどの卸売市場の将来に関する研究会でも、仲卸商に対する例えば独占的地位の乱用行為なんかもかなり問題にされていたわけです。最終報告ではもちろん出てこないんですけれども、ここに書いているような行為が問題とされています。
 それで、きのうの農業新聞を見たら、米の場合、大変問題になっているんですね、今。お米を大手の量販店が安売りするために産地に低価格を要求してくるような、これはやってはいかぬということで、農水省の中に独占的地位の乱用行為を監視する窓口をつくったという新聞報道がありますけれども、そういうふうな状況になっているわけで、まだ生鮮食品にはそういうことは起こっていないんですけれども、そういう状況にあるということです。
 ですから、豊洲の新市場移転計画もちょっと読ませてもらったんですけれども、中には、文章として、量販店のための低コスト供給が必要なんだとか、第三者販売のために施設整備が必要だとか、あるいは二十四時間の供給体制も必要なんだということがうたわれているわけですけれども、しかも取引ゾーンとして、従来型もありますけれども、かなり今いった物流中心の通過型のゾーンに重点を置いたような計画になっているんじゃないかというふうに私は思います。
 そういうことではなくて、私は、次の二番目に書いていますように、各卸売市場のバランスのとれた発展というのが今は必要ではないかというふうに思っております。拠点市場をブロック中心都市につくるということも、今の大型量販店等の企業行動と非常に結びついているんじゃないかというふうに考えるわけです。
 ここに書いていますように、三枚目の下の方ですけれども、大手量販店が生鮮食料品を大都市での拠点中央卸売市場から集中的に仕入れまして、これをチェーン店に県域を越えて、四枚目に入りますけれども、配送するシステムを確立しております。そのために、結局、中小規模の中央卸売市場や地方卸売市場からの仕入れがどんどん減少してしまうわけです。それが今の市場間格差を強める大きな要因になっているわけです。地方都市や中小規模の卸売市場では取扱量が減って、結局は大都市の卸売市場からの転送荷に依存せざるを得ないような状況が強まる。
 そういう中で、結局、卸売業者、仲卸業者の経営も悪化する、開設者の市場運営が財政的にも困難になるという状況が今進んでいるのが現状なんですけれども、例えば東京都の八次卸売市場整備計画では、東京都の卸売市場の配置の流通圏の設定は都内全域ということになっているわけです。これは明記されているわけです。しかし、今までお話ししましたような国の八次整備計画や研究会報告に示された新市場建設の位置づけは、やはりこのブロックの拠点という広域中央市場の建設ということじゃないかと思います。
 豊洲新市場の基本構想あるいは基本計画も目を通してみましたけれども、要するに東京だけでなくて、首都圏一円、三千三百万人の卸売市場への供給を担う基幹市場をつくるんだということです。
 例えば水産物の場合で考えますと、例えば豊洲市場自体が取扱量を拡大できたとしても、都内のほかの水産物を扱う市場だけでなくて、首都圏には、横浜、川崎、千葉、船橋、宇都宮に中央卸売市場があるわけです。そういうところの水産物市場が一層減少していくという問題があります。例えば先ほどの再編基準に該当するということで、それらの中央卸売市場も地方卸売市場への転換を余儀なくされるということです。
 ですから、心配なのは、そういうブロック中心型の拠点市場では、どうしても量販店向けの大量に規格のそろった商品の低価格納入が基本になるとすれば、今までの少量多品目の産地とか沿岸漁業からの供給が困難になるだけでなく、周辺にある中央卸売市場に出荷したそういう産地も衰退することが心配されます。
 ですから、資料16、17に国内の輸入、この問題は後で触れますけれども、こうした悪循環というものを断ち切っていく必要があるんじゃないかと私は思うんです。だから、後で見る農林漁業の再建あるいは商店街の活性化という課題とも結びつけて、今の市場再編政策を展開させて、現に存在している中央卸売市場、地方卸売市場、それぞれが個性を発揮した、相互にバランスのとれた発展を可能とするような方策が今求められているんじゃないかというふうに考えております。
 三番目には、その方向として、農林漁業の再建と多元的流通システムの中での卸売市場の役割ということをいっているわけです。
 今、卸売市場の取扱量は減りつつあるといっても、水産物、青果物の約七割は卸売市場を経由しているわけです。例えば国産の青果物に関していうと、その九〇%が卸売市場を流通しております。結局、卸売市場の取扱量の減少あるいは経由率の減少、卸売業者、仲卸業者の経営悪化をもたらしている最大の要因は、私はこれまでの規制緩和政策と貿易自由化政策にあるんじゃないかというふうに思っておるわけです。
 そこでの生鮮食品の大量輸入と国内自給率の低下です。もう時間がありませんので、説明しませんけれども、先ほどちょっといいました表の16と17に、いかに大量の生鮮食品が入ってきているか、魚介類だけで見ても、国内生産は一九八五年の千百四十六万トンから二〇〇七年には五百七万トンまで減っているわけです。輸入量は逆にこの間に二百二十五万から五百十六万トンにふえています。当然のこととして、各品目とも、今の点は野菜も果実も同じですけれども、自給率が低下するという状況にあります。
 こうした輸入生鮮食料品がどこに流れていくかというと、成長しつつある、いわゆる外食産業とか、食品加工業とか、そういう量販店等々にほとんど流れていくということもあるから、卸売市場の経由率も減るという状況にあるということを理解しておく必要があると思うんです。
 今、日本経済も深刻な経済危機を迎えておりますけども、こういう状況を打破するためにも、今こそ内需主導型の経済転換が求められているんじゃないかと思うんです。勤労者の雇用と所得の確保、国内農林漁業の再建、中小企業の経営発展、地域経済の活性化等々が求められていると思います。政府もことし三月に決めた新しい食料・農業・農村計画で、十年後に五〇%まで自給率を高めるという状況にありますから、そういう再建の方向が非常に期待されるわけです。
 最後にここに書いておきましたけれども、四ページ目の最後ですけれども、要するに、日本の場合の国土条件というのは非常に、四面を海に囲まれて、南は沖縄から北は北海道まで南北に長く、四季の変化に恵まれているわけですから、多種多様な生鮮食品を生産、供給する可能性があります。ですから、このためには農漁民の担い手をきちんと育てるような政策が、今は求められています、と思います。
 あと、急いでやりますけれども、都市部の小営業者の問題もあるわけです。ちょっと今、皆さんご存じか、もう知っている方もいると思うんですけれども、フードデザートという深刻な問題が社会問題となっているんですね。きのうの朝日でも、そういう食品難民が六百万人、全国にいるというふうにいわれています。
 それで、要するに車に乗れないような高齢者が近くの生鮮食料品を購入できないため、貧しい食生活を強いられ、健康も害しているという問題なんですね。これは、要するに、この大店法の改正以降、郊外型の大規模ショッピングセンターができたために、中心都市が単にシャッター街の問題ではなくて、そこにあったその影響を受けて、スーパーまでどんどん店を畳んでしまうということです。だから、そこにいる高齢者等はもう本当に買い物をできなくなるという深刻な問題なんですけれどもね。そういう状況がかなりあります。だから、やはり商店街の活性化とか小営業者の活躍というのは、これは卸売市場を活性化するためにも非常に重要な課題でないかというふうに私は思っているんです。
 そこに、要するに今日はかつてとは違って、もう非常に生鮮食品流通の流通形態が多元化していますよね。読んでください、ここはもう時間ありませんので。非常にもう多元化しているのが今の状況です。したがって、これらの多元化した流通量等に対して多元的な販売体制を、それぞれの例えば産直に見られるように、農民や漁民が対応しているということです。
 しかし、こうした流通の多元化が進んでおりますが、この卸売市場が地域住民の安全・安心な生鮮食料品の安定供給、需給調整と価格形成ですね、公正な価格形成という役割は、独自的な役割は今後も重要だというふうに考えます。
 もう本当にかなり時間がなくなりましたので、最後に、都民が願う築地市場の発展ということなんですけれども、昨年の都議選のときに、東京新聞の世論調査によりますと、五七%が豊洲移転に反対していますよね。あと、市場を考える会の調査でも、水産卸業者の七三%。あと、市場の労働組合が調べたアンケートによっても、青果の仲卸業者の九二%が反対しているということですね。
 今、首相をしております首相が、去年の衆議院選挙の第一声として築地市場で発声したと。それは要するに豊洲移転反対、現在地再整備ですか、そういうことで第一声を発したというのも新聞に載っておりましたけれども、要するに、やはり今、ここで最初にお話ししたいのは、築地市場の発展というのは非常に、国内だけではなくて国内外から注目されているというふうに、それはやはり食文化の拠点としての築地市場だということじゃないかと思うんですね。
 今まで築地市場について書いた文献はたくさんありますけれども、私の手元にあるだけでも、つい最近で四冊も出ているわけですね。これは括弧の中に書いておきましたからごらんください。特に、このテオルド・ベスターさんというのは、ハーバード大学の人類学の教授なんですけれども、築地に何度も足を運んで、内外の文献を豊富に読んで、非常に重厚な本を書いているわけですね。これはぜひお読みになった方がいいんじゃないかと思います。それで、要するにこの日本橋からの伝統を引き継ぎ、魚食文化を確立しているこの築地市場の有する意義と役割が、これらの本でも紹介されているわけです。
 そのほか、都内にはよく産地直送という看板が見られますが、この築地の場合、銀座とか新橋、いわゆる繁華街はもとより都内各地のすし店とか料理店、鮮魚店なども買い出しに集まり、頼りにされている市場です。また、今日では世界的な和食ブームが進む中にあって、築地市場の名は世界的にも有名となり、さっきの本の紹介も影響していると思いますよ、そのテオルド・ベスターさんのですね。これは英語で出版されているわけですからね。外国人観光客もふえています。国内から集まる観光客としても観光スポットにもなっているという状況ですから、都民からも、この場外市場も含めて、新鮮で安心・安全な食材が入手できるという市場として親しまれているのではないかと思います。
 もう一つは、この築地市場を支えているのは何かということなんですけれども、私はこの仲卸制度というのは非常に重要な役割を果たしているというふうに考えているわけです。最近この報告のためにもらった築地市場要覧にも、要するにこの重要な、供給圏も含めて、集荷圏も含めて、全国の集散市場としての役割、建て値市場としての役割を紹介していますけれども、例えば、六ページの方に入りますけれども、水産物では約四百八十種類扱っていると。青果物では二百七十種類のものを扱って、豊富な品ぞろえとなっているということも書かれております。築地市場はまさに集散拠点市場としての特徴があり、こうした豊富な品ぞろえの中には、決して大産地だけじゃなくて、全国の中小産地から出荷されております。中には、築地市場でしか売れないような魚も出荷されているわけです。
 確かに相対取引が大半になっているとはいえ、高級鮮魚等では今も現に競りが行われているし、また現物取引が、築地市場の場合、中心になっていることも大きな特徴なんですね。
 こうした特徴を持つ築地市場を支えているのは、仲卸業者です。だから、仲卸業者の役割、重要なのは、上場される物品の評価機能、それと価格設定機能なわけですけれども、生鮮食品は工業製品と異なり、生物生産物であるという特徴を持っているわけですね。ですから、同じ種類、品種でも、生産された場所、地域、気候、あるいは季節、そういうこと、あるいは生産技術等によっても多種な商品特性を有しています。この特性を評価して、この取引価格を設定する機能を仲卸市場は持っているわけですね。
 また、仲卸市場は蓄積された豊富な経験と個々の物品の品質を見抜く能力も非常に高いということですね。だから、市場での食の安全管理という点でも重要な役割を果たしているんじゃないかと思うんです。あるいは料理店、小売店に扱いやすいように、解体処理とか部分加工を、必要な加工等も行っているということですね。
 あるいは、さっきちょっと築地にしか集まらない魚もあるといいましたけれども、だからそういう魚を欲しいという地方市場には仲卸を通して転送も行っているという、そういったのが築地市場の仲卸の機能なわけです。
 このように、築地市場での重要な役割を果たしている仲卸制度が、例えば国で考えているような効率物流ネットワークの構築に重点を置かれたような拠点市場となると、その機能が弱体してしまうんじゃないかということが心配されるわけですね。例えば、神田市場が大田市場に移ってから、仲卸業者が減少するだけじゃなくて、その機能も大田市場は非常に弱体化しているという例から見ると、そういう心配があるわけですね。ですから、そういう移転していくということは、伝統的なこの築地市場の魅力的な卸売市場が東京から消えてしまうんじゃないかということが危惧されるということなんですね。
 ちょっと時間延びるかもしれませんけれども、最後にこの、望まれる現在地再整備という問題についてお話ししたいと思います。
 深刻な有害化学物質に汚染された土地で、毎日都民が口にし、全国からも生鮮食品が集まる、そういう場所に卸売市場を配置ということは、もちろんこれは適しないことは当然のことです。私はその上にさらに、今なぜこの築地市場が移転しなければならないのかということが疑問に思っているわけです。
 今まで述べたように、世界からも注目され、全国の出荷者からも頼りにされ、都民からも親しまれている築地市場の存続は、その再整備を図るものと考えています。東京都中央卸売市場が--これも読ませてもらったんですが、昭和六十三年十一月に決定した築地市場再整備基本方針ですね。これも見ましたけれども、非常によく検討された計画じゃないかと思います。
 この計画には、当時、築地市場の各業者団体も賛成して再整備が決まり、工事に入ったというふうに聞いております。築地市場は、確かに昭和初めに建設したため、施設は非常に老朽化が顕著であります。また、戦後の取り扱いの伸びということもありますので、狭隘化してきていることもありますので、再整備への期待も大きかったものと考えております。
 しかし、最初にお話ししましたように、今、国が求めているようなブロック中心としての大型市場が、量販店対応も含めて集配センター化するというようなことが、今、本当にそういうことのために新市場が必要なのかということを考えてみなきゃならないというふうに思います。これから現地再整備する場合には、老朽化施設をもちろん建てかえるとともに、これは豊洲市場の新設計画でもこれから必要な施設として掲げられております、例えばコールドチェーンとか情報とか荷さばき、加工、包装、こういった施設はもちろんこれからの市場の必要な機能として、こういうものの充実も求められていると思います。
 こういう状況を踏まえまして、私は、現在地再整備の策定に当たって考慮すべき二つの条件変化というのがあるんじゃないかというふうに思っております。
 一つは、以前、再整備を決めた時期は、築地市場の取扱量もピークを迎えた時期なんですね。その時期に比べますと、当時よりも現在は取扱量は、水産物で三〇%、青果物で三五%減少しているわけですね。したがって、今後の計画を立てる場合には、以前よりは必要面積など余裕を持った計画を立てられるんじゃないかというふうに考えます。
 そして、もう一つの変化は、もう二十年たっていますね。この計画が進まなかった要因として、工事期間が計画よりも長引いたためというのがあるんですね。今日の段階では、恐らくこの二十年間に、私、工学専門ではありませんけれども、二十年の間の恐らく工学の進歩というのはかなり進んでいるんじゃないかと思います。ですから、最新の技術と斬新なアイデアを行う、そういうことができるんじゃないかと思うんです。要するに、この完成までの工事期間をより短縮できる工法が期待できるんじゃないかというふうに思うわけですね。
 ですから、これからやってほしい問題としては、そういう技術、工法を広く公開コンペで実施すべきでないかというふうに思っています。
 それから、実際その再整備の場合、仲卸業者等は非常にその再整備のための影響を受けるわけですよね。ですからそこで受ける経済負担とか損失等を救済するために、やはり特別な制度融資というものを考えていくことが必要でないかというふうに思います。
 多少時間をオーバーしましたけれども、以上のようなことから、築地市場の再整備について、やっぱり焦ってもだめだと思うので、やっぱりじっくり時間をかけて徹底的に検討することが、今、必要であるというふうに考えます。努力すれば現在地再整備も必ず展望は開けるものと確信いたします。
 以上で私の報告を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

○花輪委員長 ありがとうございました。
 これをもちまして三国参考人の意見聴取を終わります。
 三国先生には、大変お忙しい中、貴重なご意見をいただきました。どうもありがとうございました。
 それでは、どうぞご退席ください。

○花輪委員長 それでは、参考人をご紹介いたします。
 東京海洋大学海洋科学部教授の婁小波さんです。
 本日は、ご多忙のところ委員会にご出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。
 卸売市場のあり方について、ご専門の立場から、ご意見をお伺いしたいと思います。
 なお、婁参考人には、ご着席のまま発言をしていただきたいと思います。
 それでは、先生、どうぞよろしくお願いします。

○婁参考人 ご紹介にあずかりました東京海洋大学の婁小波でございます。私は、水産物流通の視点から卸売市場のあり方について考えるという課題を仰せつかっております。
 きょう、話をしたいポイントは三つございます。一つは、水産物流通の特徴と卸売市場機構の意義について少しおさらいをしたいということ。それから二つ目は、水産物卸売市場流通の現状と課題について、私なりの考え方を提示したいということ。それから三つ目でございますが、以上を踏まえまして、水産物卸売市場の今後について、私見を述べさせていただきたいというふうに考えております。
 きょう、三名の参考人ということでございまして、私は最後でございますが、一と二につきましてはお二方と大分ダブっているところもあるかもしれませんので、極力割愛させていただきまして、三の水産物卸売市場の今後のあり方についてを中心に、お話をさせていただきたいというふうに考えております。
 それでは、まず最初、第一点でございますが、水産物流通の特徴と卸売市場機構は、その中でどういった意義を果たすのかということについて、お話をしたいと思います。
 四ページを見ていただきたいと思います。ご承知のように、一口に水産物といっても、実はその中身は非常に多様でございます。天然のものもあれば、養殖のものもございます。海のものもあれば内水面のものもございます。その中で、もちろん魚種別によって多様な魚というようなものが水産物として一くくりされていますけれども、そういった水産物を商品形態別でいうと、また、生鮮とか、あるいは冷凍とか、あるいは塩干等の加工品といったような形で分けられておりますけれども、それぞれの商品形態によって当然流通の特徴はございますが、きょうは時間の関係でその詳細についてお話しする時間はございませんが、水産物全体を一くくりにしてお話をしたいと思います。
 こういったような水産物というのは、多様な流通ルートによって流通をされております。四ページで示されたその流通のルートなんですけれども、その主な流通、チャネルなんですが、見ていただきますと、非常に多様なルートが存在しているということがおわかりいただけるかと思います。
 その中で非常に特徴的なのは、産地卸市場というものがありまして、消費地卸市場というものが存在すると。これはほかの生鮮物とは大きな違いがございます。つまり産地市場というものが大量に存在して、それが水産物流通の担い手の一つになっているというようなことで、その流通ルートは非常に長くて複雑というふうにいわれております。
 多分、世の中にある、流通されている商品の中で、水産物は一番長い流通、チャネルを有する商材の一つというふうにいわれております。
 このような長くて複雑な流通チャネルの機能を担っている経済主体も、実は多様に存在しております。それによって価格形成も複数回ございます。
 例えば、卸売市場流通について見ますと、実はその中に五つの経済主体がございまして、四回の価格設定が行われております。この五つの経済主体の中身をさらに見ますと、実は、手数料商人としての性格を持つのが二者、それから差益商人としての性格を有するのが三者ございます。つまり、手数料で稼ぐ、あるいは仕入れ価格と販売価格の差額で稼ぐというような性格の違う業者が、同時に一つの流通チャネルの中に存在しているという特徴を持っております。
 次のページをめくっていただいて、五ページでございますが、じゃ、こういったような特徴を持つ流通チャネルの中で、卸売市場機構は一体どういうような意義があるのか、なぜ存在するのかということについて簡単におさらいをしたいと思います。多分重複する部分がございますけれども、一つは、よくいわれるのはホールの第一原理、つまり取引回数の極小化原理ということでございます。中に、卸売業者あるいは卸売市場を介在することによって、社会的な取引効率が向上されるということがまず第一点。
 二点目は、これは私、個人的な考え方でございますけれども、やはり個別主体の経済的合理性というものがございまして、卸売市場というものが存在するということが考えられます。つまり、卸売市場で取引を行うということは、それなりのメリット、合理性があるわけですが、どういうような合理性なのかというと、そこで行われる取引をすることによって得られる便益と支払う費用の差ということを比べましたら、便益の方が高いというようなことであるからこそ、卸売市場流通というチャネルを選択されるわけでございます。
 その詳細につきましては時間の関係で省略をいたしますが、七ページを見ていただきまして、その便益を決定する要因について若干紹介いたしたいと思います。つまり、そこの価格というものを規定する要因としては、ブランド化等でどれだけ価値創造が卸売市場で行えるのか、あるいはそこにどういったようなバリューチェーンというものが形成され得るのか、あるいはそこの取引を選択することによって、販売ロス率、あるいは販売リスクというものがどれだけ低くなるかというようなことによって、まずその価格、あるいは経済主体の価値というものを得るわけですけれども、それに対して流通費用、取引費用、あるいは管理費用というようなものがかかるわけですから、それとの見合いというか、それとの比較によって、実は経済主体が卸売市場を選択する、あるいは選択しないというような話になろうかと思います。
 これが二つ目の卸売市場機構の存在意義というふうになるというふうに考えております。
 三番目でございますが、これは社会的公平性の実現。これは、卸売市場というのは、当初の法的な一つの理念として、公開、公平、公正というものが掲げられております。近年では効率性というものがつけ加えられまして、卸売市場の一つの基本理念としていわれておりますけれども、私はその中でも、特に社会的公平性の担保というのが、実は卸売市場機構がされているというようなことがあるというふうに考えております。そこにその市場機構の存在意義があるというふうに思います。
 四番目なんですか、これは水産物、あるいは漁業の産業的特性、それから水産物の商品的特性によって、卸売市場機構の存在意義というものが強くあるというふうに考えております。例えば、水産物というのは腐りやすい、それに対して迅速な処理が必要で、卸売市場というものはその制度として機能としていると。
 下のグラフを見ていただきたいと思いますが、これは時間経過とともに、いわゆる水産物の商品価値の変化なんですが、時間は一日あるいは二日というような形で考えていただいて結構だと思いますけれども、要するに時間がたてばたつほど魚というのは価値が下がっていく。価値が下がるということは、実は同じ魚であっても、同じものではないということなんですね。だから、よくいわれるのは、魚というのは、非貯蔵性というような、レジュメには書いてありませんけれども、非貯蔵性という言葉もございます。つまり、貯蔵すればするほど、これは要するにコストをかければかけるほど、魚は価値が下がるという、ほかの商品とは大きな違いというものがあります。そういうことで、卸売市場というようなことが存在することによって迅速な処理ができると。
 二番目は、非規格性に対応する仕分け処理が必要であるということ。三番目は、用途仕向けの多様性に対応する必要性があるということ。それから、漁業生産の移動性、不安定性、季節性に対応する必要がある等の理由で、卸売市場という流通機構が大きな役割を果たすということになります。
 だからこそ、水産物はほかの生鮮物と違って、産地市場も今日なお、非常に大きな流通の役割を担っているということでございます。
 次に行きたいと思います。九ページを見ていただきたいと思いますが、水産物卸売市場流通の課題。現状につきましては多分皆さんよくご案内だというふうに思いますので、割愛をさせていただきました。課題を整理いたしました。ただ、卸売市場流通の課題、あるいは水産物卸売市場流通の課題につきましては、さまざまな視点からさまざまな整理というものがございますが、私はあくまでも経済的現象としての卸売市場流通が抱えている課題として、幾つかの点を挙げました。
 まず、第一点は、市場経由率の低下でございます。これは多分皆さん耳にたこができるぐらい聞かれた現象だと思いますけれども、水産物におきましても、かつて七七%近くあった市場経由率が、現在、六二、三%ぐらいまで落ちているという状況があります。
 なぜこのような経由率低下というものが起きたのかということなんですが、一一ページを見ていただきたいと思います。
 理由の第一は、やはりフードシステム構造が全体で大きく変化をしている中で、卸売市場がそれに対して十分対応できなかったということがあろうかと思います。
 一二ページの図を見てください。これは、食料供給部門の構造変化を示したものでございますが、これを見ていただきますと、一九七五年時点では、国内農漁業、あるいは輸入品、いわゆる素材供給部門が三九%ぐらい占めました。ところが、現在、二〇〇〇年なんですけれども、この二つの部門が食料供給部門の中に占める割合は二三%まで低下しております。
 ご承知のように、卸売市場は素材部門、いわゆる農業、それから水産業、農水産物を対象としてビジネスモデルというものを構築されているわけですから、その食料供給部門の中での全体の地位低下が起きている中で、ほかの部門の商品、いわゆる商品部門、あるいは商材部門というようなものの商品をなかなか取り込めていなかったというのが、市場経由率低下の第一の原因として挙げられると思います。
 二つ目の理由としては、やはり水産物全体の生産量の減少が取扱量の減少をもたらしているのではないだろうかということがございます。この点、農業とは若干違うかもしれませんけれども、水産物の場合は、同じく自然を相手とした産業ではあるけれども、日々の自然を相手にして漁業生産が行われるという点で、農業とは違うわけですね。つまり、計画的な生産ができない。
 したがいまして、どういうことが起きるかというと、その日その日とれた魚というものを水揚げして、それがその日その日の市場規模を決めるわけですね。だから、需要があるから、それに対応して生産を決めるというわけではなくて、これだけ生産があるからその市場規模があるというようなことでございますので、じゃ水産物の場合はどうなのかというと、一三ページを見ていただきますと、実は近年、大きく生産を減らしているわけでございます。
 一九九〇年代初頭まで日本の漁業生産はピークを迎えまして、その後減少の一途をたどっております。現状では、一九六〇年代の生産水準と同水準の国内生産というものがありますので、当然、市場の取扱量というものが減ってくるということが出てくるわけでございます。
 三番目の理由としては、やはり経済主体の合理的選択ということがあろうかと思います。先ほど申し上げましたように、流通を取り巻く環境条件が大きく変化してきている中で、経済主体がコスト、便益構造というものを検証して、その結果、卸売市場流通という一つの取引形態を選ぶよりは、場外流通という一つの取引形態を選んだ方が、より、先ほどいったデルタP、利益が高いというようなことになりますと、当然そっちに走るというようなことが出てきますから、経由率の低下を招くということになろうかと思います。
 四番目の理由として、場外への脱出というふうに表現しておりますけれども、これはある意味では、一種、積極的な対応の結果だと思っております。つまり、場内業者が場外流通に取り組むというようなものが現実として起きているわけでございます。卸売市場法によって縛られるさまざま規制を嫌って、事業展開を制約するような規制を嫌って、場外に事業展開をするというような形での市場経由率の低下というものもあるのかなというふうに考えております。
 次の課題として挙げるのは、一四ページでございますが、チャネルキャプテンとしての役割低下ということでございます。要は、卸売市場が果たしてきたこれまでの重要な流通の過程上の役割というものが、大きくやっぱり低下してきているというようなことが課題として挙げられます。
 ご承知のように、一つの流通チャネルには必ずキャプテン、チャネルキャプテンあるいはチャネルリーダーが存在するというふうにいわれております。
 このことを示しているのが一五ページでございますが、このチャネルリーダーが全体の一つの流通の動きをつかさどるわけなんですが、残念ながら、水産物流通のチャネルリーダーというものは大きく移動してきちゃっているということです。大分昔になりますと、産地の大手問屋というものがチャネルリーダーであった時代もございましたが、やはり長らく中央卸売市場の卸業者が水産物流通チャネルのチャネルリーダーだったという時代があったわけなんですけれども、現在では、それが川下のスーパー等の量販店に移っているというふうにいわれております。
 スーパーの業務の基本方針としては、皆さんご承知のように四定条件というものがございます。あるいは良品低価というような政策も彼らがとっております。チャネルリーダーとなっているスーパー等の量販店は、こういったような基本的な方針というものを、流通チャネル全体の経済主体に、一応押しつけるということよりも、それを基本的な方針として貫くわけでございますので、その中でのいわゆる卸売市場の役割、かつて建て値市場とか、相場をつくるというふうにいわれているような役割というものが大きく低下をしているわけでございます。
 なぜそのような役割の低下があるのかと申し上げますと、やはり一つは小売構造が大きく変化したということがあります。
 一六ページを見ていただきたいと思いますが、これは小売段階における消費者購入先別支出金額の割合を示しております。魚介類、水産物が一番最後の段なんですけれども、これを見ていただきますと、例えば昭和三十九年、一般消費者が魚介類を購入先として選んでいるのが、一般小売店が七七・四%、スーパーが九・五%だったんですね。ところが、現在、平成十六年なんですが、一般小売店が一四%になって、スーパーが六三・九%になります。スーパー、百貨店、生協、いわゆる量販店といわれるような方々のそのシェアを合計しますと、実に八〇・四%になります。
 このような小売構造の変化によって、彼らはビッグパワーを手に入れて、いわゆるバイイングパワーを使ったチャネルキャプテンとしての機能を果たすようになるというわけでございます。
 このことは小売段階だけではなくて、外食産業においても起きているわけです。外食産業は、当然、水産物の需要サイドとしては非常に大きいわけでございますけれども、かつて、じいちゃん、ばあちゃんによって行われてきた零細な飲食店経営というものがどんどん姿を消しまして、それにとってかわった経営はチェーン店化、あるいは大規模店、あるいは差別化店というような形で、零細店は淘汰されつつあるというのが現状だろうと思います。
 このように、末端の需要家の大型化、それからパワーの移動によって、やはり卸売市場の役割、機能というものの低下が生じているわけでございます。
 時間の関係で、詳細なデータの説明は省略させていただきます。
 三番目の問題として、一九ページになりますが、やはり経営問題というものが出てくるだろうと思います。この場合の経営問題というのは、卸売市場経営そのものの問題があると同時に、場内にある業者、卸売業者、仲卸業者の経営悪化という問題もございます。詳細なデータはたくさんありますけれども、その説明をすると時間がかかりますので、結論だけを申しますと、例えば築地の市場においても仲卸業者の自然淘汰というものが毎年起きております。そのまま放置すると、このことが本当に消費者利益になるのかというようなことが、一つの問題としてあるのかなというふうに思います。
 3の4ということなんですが、これは問題ということではなくて、以上の指摘させていただいた三つの問題を抱えている卸売市場流通の中で、東京都中央卸売市場、あるいは築地市場はじゃあ一体どうなのかということなんですけれども、これは全国的な市場状況の中では非常に健闘しているということがいえるのではないかというふうに思いまして、そのデータとして示しております。
 例えば、その搬出地域分布として、ちょっと見づらいんですけれども、東京都ですから都民のための卸市場なんですけれども、実際にその都の中央卸市場で取り扱われている水産物のうちに、都内仕向けが実は四一・二%、それから首都圏三県向けの仕向けが三七・二%、その他仕向けが二〇・七%にも達しております。つまり半分以上、六割近くが、都内ではない、ほかの地域の商圏とするような仕向けの仕方をしているのが一つ。
 それから、もう一つは、全国の中央卸市場に占める東京都の中央卸売市場の取扱量のシェアなんですが、平成九年二〇%、平成十九年二三%、シェアが上がってきていると。だから、その意味では、東京都は全国一の消費人口を抱えておりまして、最も建て値市場として機能してきた一つの面影がまだここにあるというふうにいえると思います。
 それから、もう一つのデータとして、一般小売店、それから総合小売店、スーパー等、百貨店、コンビニの仕向けの構成なんですけれども、直近平成二十一年、総合小売店は二四・数%、約四分の一なんですね。それだけスーパー、量販店対応といわれながら、四分の一程度というようなことを一つのデータとして確認していただけると、やはり一般小売店とか、あるいはほかの業務筋需要家というようなものをやはり対象とした一つの業務というものを考えていく必要があるかなというふうに思っております。
 次、行きたいと思います。以上のような課題を解決するために、それでは、卸売市場流通、どのような機能を強化すべきなのかということについて申し上げたいと思います。
 まず、基本的には市場流通機能の強化ということが当然あろうかと思います。特に水産物に関しましては、一つの基本認識として、水産物の商品特性から、やはり迅速的あるいは効率的なその卸売市場流通システムというのがいまだ必要である。特にこの点は鮮魚流通において強調しなければなりません。
 こういった基本認識を前提にしますと、卸売市場機能の強化としては、二つの側面というものがあるだろうと思います。
 一つは伝統的な機能の強化でございます。ご承知のように、卸売市場の伝統的な機能としては、集荷機能、分荷機能、あるいは価格形成機能、決済機能、品ぞろえ、商品開発、情報伝達、あるいは衛生管理といったような古典的な機能がございます。
 それからもう一つは、市場環境の変化に対応した形で、新たな機能付加というものがずっと続けられてきております。それには、例えば在庫あるいは在庫調整機能、加工機能、商品化機能、配送センターとしての機能や金融機能、リスクヘッジ、小売店支援、情報化、安全・安心といったような機能というものが新たに付加されて、強化する必要があるだろうというふうに思います。
 そういった機能を強化するために何が必要なのかということでございますが、これもよくいわれることでございますけれども、効率的な物流システムを構築すること、安全取引のための商流機能を強化すること、それから、より効率的な情報流というようなものを果たすためのシステムを構築することがいわれております。
 私はさらに、もう一点強調したいと思っているのは、市場のブランド力を向上するというようなことがこういった機能強化につながるということで、最後に挙げておきました。市場ブランド力というものがある意味では一つの総合力でございますが、それが向上されることによって、実は品質競争力が上がる、高付加価値化の力が上がっていく、あるいは高度衛生管理の力が上がる、あるいは市場全体のサービス力というものが上がっていく。逆にいうと、そういったものがなければ、当然市場ブランドというようなものが形成されませんので、表裏一体の関係にあるだろうと思います。
 以上がよくいわれているような機能強化でございますけれども、これから幾つかの具体的な事例を挙げながら、私が考えるこれからの卸売市場流通の機能強化のポイントを説明したいと思います。
 まず一つが、二三ページでございますが、ネットワーク型流通への対応というものが必要ではないだろうかということでございます。サブタイトルとして、市場法的流通の瓦解ということなんですけれども、ご承知のように、卸売市場法、昭和四十六年制定された卸売市場法は、その基本的な取引原則というものを定められております。メーンな原則を例示しますと、例えば委託集荷、受託拒否の禁止、差別的取り扱いの禁止、即日全量上場、あるいは定率手数料率、それから第三者販売の禁止、競り・入札の原則、自己計算の禁止、商物一致の原則、直荷引きの禁止、場内販売といったようなものがございます。これは十一の主な基本原則だというふうにいわれておりますが、ところが数次にわたる卸売市場法の改正によって、こういったような原則というものは廃止されたり、あるいは緩和されたり、あるいは弾力的運用されるというような形で、今日までに至っております。実際、今残っているのが、受託拒否の禁止、即日全量上場、差別的取り扱いの禁止というこの三つ程度だというふうにいわれております。要は、卸売市場法によって定められた卸売市場流通というものが、現在、全く姿を変えていっているという意味での瓦解でございます。
 買い付け集荷比率、あるいは競り入札比率の変化というような数字を出しておりますけれども、もともと委託集荷が基本原則ですけれども、現在、委託集荷ではない買い付け集荷が、鮮魚の場合五三%、半分を超えています。あるいは、競り入札取引が基本原則だったけれども、現在、鮮魚については三六%程度と。私はこの数字でも大きい、高いかなというふうに思っております。
 そういったような市場法的流通の解体によって何が出てきたのかということなんですけれども、二六ページを見ていただきたいと思います。つまり、市場法的卸売市場流通にとってかわって、ネットワーク型流通、ネットワーク型取引というようなものが展開せざるを得ない、あるいはそういったような形で市場関係者は対応しているというふうにいっていいと思います。つまり、そうすることによって、卸売市場法の改正によって、市場流通の性格が大きく変化したというふうにとらえることができます。
 従来の卸売市場では、非常にさまざまな規制によって業者の身動きが取れないぐらい規制があるわけですけれども、ところがその規制によって、市場の仕組みそのものが、物、需要というものが自由に入ることができたわけなんです。物と需要が自由に入るわけですけれども、規制された卸売市場の中ではその自由会合というものが行われていると。
 ところが、その中の自由、規制が撤廃されて、ある程度オープンになっていったときに、卸売市場というのは、中の業者、提携、契約、協調などによってさまざまな形での需給会合というものが行われるようになります。そうなりますと、本来の自由に入っていくもの、あるいは自由にそこでニーズとしてあらわれている需要というものは、ある程度やっぱり制約されざるを得ない。つまり、その提携、契約あるいは協調的な関係の中に入らないと、なかなか取引はできないというような状況が出てくるというふうになります。私はそれはある意味では仕方のない一つの現象だというふうに思います。
 じゃ具体的に、この規制緩和された卸売市場の中で、業者がどういったような形で連携、提携、あるいは協同、協力というような形での取引関係づくりをしているのかということなんですけれども、あるいはそうすることによってどういったような現象が起きてくるのかということについて整理したのが、二八ページでございます。
 二八ページを見ていただきますと、要するにかつての伝統的な疑似的インテグレーション関係から脱却するということが、まず第一義的にあります。それにとってかわって関係性取引というものが出てくるわけですけれども、それがネットワーク型流通というふうに、私は呼んでおります。
 その中で、流通主体、例えば卸売業者、役割が大きく変化をします。あるいは、商人として、経済主体としての性格が変わってきます。つまりどういうことかというと、彼らは新たにコーディネーターとしての役割というものを演じなければならない。そうすることによって、従来、手数料商人的な性格から差益商人としての商売をやらざるを得ない。あるいは仲卸業者につきましては、ネットワーク業者としての役割というものを果たす必要が出てきます。そうすると、従来、彼らは差益商人でございますけれども、手数料商人としての性格も帯びざるを得ないと。
 こういった新しいネットワーキングによって、彼らは出荷者あるいは需要家というものを信頼、提携、連携、パートナーシップ等の形で関係性を締結して、取引関係をつくるということになるだろうと思います。
 もっというと、こういった取引関係というものは、匿名型消費から番地型消費に転換するということが、これからのネットワーク型取引の一つの特徴なのではないかというふうに思います。そうすることによって、従来の高かった流通コスト、取引コスト、管理コストというものは節約されまして、それによって、場外流通と比較した場合、卸売市場が差別化戦略というようなものを展開することによって、その卸売市場流通の競争上の優位性というものを確保することが可能になるというふうに理解しております。
 次のページをめくってください。二九ページでございますが、このようなネットワーク型流通、その機能を強化するためには何が必要なのかということなんですが、まず第一義的には、やはり卸売市場機能を再見直しし、そのための施設整備というものが必要になるだろうと思います。例えば、一元的に管理する物流システム、コンピューターシステム等の構築とか、あるいは小売店支援機能の拡充とか、あるいは加工センター的な機能、物流センター的な機能の確保とか、そういったようなものがやっぱり必要になるだろうというふうに思います。
 ただ、そこで注意しなければならないポイントとして、こういったような機能強化、施設の整備というものが、大手需要家のみに対応するというようなことだけでは、やはり先ほど申し上げました公平性の点で問題があるだろうというふうに思います。むしろ中小零細事業者にも対応できるようなプラットフォームの構築というものが、これからの中央卸売市場に求められるのではないだろうかというふうに考えております。
 これがネットワーク型流通でございますが、次にもう一つ、事業ドメインの構築ということでございます。三〇ページでございますが、特にこれは仲卸機能を強化するために検討しなければならないテーマだというふうに思います。
 ご承知のように、仲卸業者は今、二極化現象が進んでおります。つまり、そこには成長組もあれば、衰退している業者もいます。成長しているのかどうかというような定義もありますけれども、堅実な経営を展開しているような業者は、いわゆる成長市場に事業の領域を置いておりまして、大手需要家に対応しているような場合が多いと。衰退している業者あるいは組は、縮小する市場に事業領域を置いておいて、零細業者、零細だけでというわけではないかもしれませんけれども、そういったような形でのパターンがあるというふうに考えております。
 したがいまして、特に衰退している、あるいは低迷している仲卸業者に対しましては、中小零細需要家の新たな業務展開というものがやっぱりどうしても必要になります。これはつまり新しいサービス、新しい機能の追加によることで実現可能かなというふうに思います。
 具体的には、より川下に事業機能を置く、あるいは事業領域を置くというような形での展開だろうと思います。例えば配送機能、小売店支援、前処理、仕込み、加工納品、調理サービス等々ですね。より川下の方にその事業領域あるいは事業空間を展開するということがやはり求められるだろうというふうに思います。
 そのためには何が必要なのかということなんですが、一つは大手、中小、零細業者間に存在する、いわゆるデジタルデバイドの解消、つまり情報格差の解消というようなものがまず第一に必要になる。それからもう一つは、物流インフラの格差の解消ということでございます。
 なぜそういうことを申し上げるかというと、ご承知のように、スーパー、量販店等が卸売市場で水産物を仕入れる場合、必ずしも安い価格ではないんですね。ほかの小売業者に比べると、あるいはほかの零細な事業者に比べると。にもかかわらず、販売単価では非常に安く売っていると。なぜそういったことが可能になるかというと、やはりその中間の流通、物流、加工、あるいは情報処理といったようなところでシステム化されまして、非常に効率がいい。そういう意味でコストが下げられている。残念ながら、中小零細の業者あるいはそれに対応する中小零細の仲卸業者というものは、それにきちっと対応できる効率的な情報処理システム、物流システムを持っておりません。
 その意味では、それ自体非常に不公平な競争、あるいは同じ土俵に立った競争というようなものができなくなっているという意味で、そういった格差の解消というものがやはり必要なのではないかなと思います。そのためのインフラ整備というものが、公平競争の原則からすると求められているというふうに考えております。これが一つ。
 それからもう一つは、連携、協力、協業、協同といったような、仲卸業者組織間の組織革新というようなものも、どうしても必要になるだろうというふうに考えております。零細のままで対応できるというような部分もございますが、なかなかそれだけでは無理というような部分につきましては、組織革新というものを政策的に支援していくというような一つの方向性もあるというふうに考えます。
 最後、もう一つなんですが--最後ではないです、4の4ですね。三一ページなんですが、コモディティ商品の流通拠点から差別化商品の流通拠点への一つの機能付加ということになるだろうと思いますが、ご承知のように、卸売市場というのは大量生産、大量消費を支える、一つ、非常に効率的な大量流通システムでございます。ただ、その意味ではこの流通システムは非常に効率的であって、大きな社会的役割を果たしてきたわけですけれども、それによってまたさまざま問題を引き起こしています。例えば、昔はよくいわれた社会的空費が発生しているとか、現在では、いわゆる偽装表示問題を助長しているとか、そういった余地を残しているとか、そういったようなことがいろいろいわれまして、消費者不信というような問題が出てきます。
 消費者問題が起きてきている中で、現在、差別化商品のニーズというものは非常に高まってきております。その中で特に安全・安心志向、あるいはブランド品志向というようなものがあるというふうによくいわれておりますけれども、そういうような安全・安心志向とか、あるいは差別化商品ニーズというものに対して、ブランド品、安全・安心商品というものがさまざまな形でチャレンジされているわけですけれども、残念ながらそういった商品の流通に対して卸売市場が十分取り込めているとはいえない状況にあります。むしろ、どちらかというと、情報の伝達が不正確、あるいはその伝達するためにはコストがかかるということで、場外流通に走る傾向がございます。その結果として、卸売市場に入ってくる商品は単価の安いものであると。それがまた取扱金額の減少につながり、経営問題につながっているというようなご指摘もございます。
 そういったような問題に対応するために、やはり差別化商品の流通拠点としての卸売市場というようなものを位置づける必要があるというふうに考えております。そのためには、商品開発機能あるいはコーディネート機能を強化すること。それから、やはり市場ブランドというものを確立すること。何よりも公平競争や新たな取引効率化のためのインフラを整備するというようなことが必要になるだろうと思います。例えばトレーサビリティーシステム、あるいは情報化システム、あるいはコールドチェーンの完備というようなことが挙げられておりますけれども、一つ例を申し上げます。
 例えばトレーサビリティーシステムというものが、今、消費者が求めている安全・安心商品を保証する一つの制度、技術でございます。特に大手のスーパーであればあるほど、そういったトレーサビリティーを要求する、あるいはシステムを構築するというようなケースが多いんですけれども、実態では何が起きているかというと、私が取材したある養殖業者は、スーパー、生協と幾つかの取引があります。ところが、それぞれのスーパー、それぞれの取引先が、それぞれ独自の基準のトレーサビリティーシステムがあるわけですね。
 そうすると、それぞれのスペックに合った文書をつくり、記録をつくり、データを提出するというのは、膨大な事務作業があるんですね。効率が悪い。ところが、かかった経費に対して、その分、じゃあそれに見合ったペイがしているかというと、ないですね。ご承知のように、消費者は安全・安心は欲しいけれども、それに対してコストは余り払いたくないというようなことで、その生産者が非常に高いコストをかけて、あるいは非常に多くの努力をかけてやっているわけですけれども、こういったような安全・安心のための非効率性というものを実は解消できる唯一の方法は、私は卸売市場にあると思うんですね。
 三二ページを見ていただきたいと思うんですけれども、例えばこの三人の生産者と四つの小売業者が、同じトレーサビリティーシステムの商品を供給する場合、これは四通りのシステムというのを皆さん対応しないといけないんですけれども、そういうものを卸売市場が、トレーサビリティーシステムの一つプラットフォームをつくって、皆さんどうぞこれを使ってくださいというふうになれば、一通りのシステムで十分なわけなんですね。
 そういう意味で、新たな社会的な効率性、新たな取引の効率性というものを、安全・安心という面で、実は実現できる。そこでまた卸売市場の有意義性というものが発揮されるというふうに考えております。
 最後になりますが、三三ページ、もう一点として、交流、にぎわい、あるいは産業観光機能の充実というものを、これからの卸売市場機能として挙げていきたいと思います。観光というのは文化と密接な関係がありまして、あるいは文化そのものでございますけれども、食文化は文化の中での一つの大きな分野をなします。特に我々の暮らしの豊かさを演出する役割というものを果たしているわけですけれども、その食文化を支えているのは、実は市なんですね。
 よく、市は都市の原点であるというふうにいわれております。日本では例えば四日市、二日市とか、そもそも市によってまちが形成されている、都市が形成されているところもございますが、その中で、やっぱりこの食文化を支えている原点でもございます。
 したがいまして、卸売市場あるいはその機能を担う流通主体、あるいは流通そのものが、にぎわいを演出し、食文化を支えているというような現状から考えますと、やはり市場の観光、市場というようなものを観光資源として展開するということが、これから我々の暮らし、あるいは文化を豊かにするというような意味で必要ではないかというふうに考えております。
 このことが、実は世界各国でも認知されております。今、築地ではいろいろな問題がありますけれども、実は築地が、海外の観光客の問題ですけれども、日本国内でもその食文化、市というのが観光拠点として機能するというのは、実際、ここ十数年間、非常に大きなうねりとして動いております。つまり、道の駅とか海の駅とか、あるいは産直市が非常に繁盛しているわけですね。こういうのは、要するに従来の市の機能、あるいはその観光としての市というような役割を果たしているというふうに考えております。
 ただ、そのためには、あるいは市場観光というものを観光市場として位置づけるためには、やはり市場開放ルールの確立、あるいは集客施設の充実、それから環境対策強化というものがどうしても必要になります。汚いところでだれも行かないというような状況の中で、やはりそういったような対策は必要だろうというふうに思っております。
 その意味で、今、築地市場が注目されておりますけれども、それは築地市場という一つの食文化を支えているブランドというようなものがありまして、そのブランドの価値、あるいはブランドの資産をどういうような形で維持向上していくかが、これから重要なテーマになるだろうというふうに考えております。
 三四ページをめくっていただきまして、最後になりますが、今、幾つかの機能の具体例を申し上げましたけれども、これからの卸売市場の機能強化、あるいはあり方というようなことを考えるときに、私はやはり、繰り返すようになりますけれども、三つの基本的な視点を重要視する必要があるというふうに思います。一つは、変えていけないもの、こういうものにつきましてはやはり機能強化をしていく必要があるということと、どうしてもやっぱり変えていかなければならないものと、この二つがあるだろうというふうに思います。こういったものにつきましては、積極的に機能を付加していくというようなことが重要というふうに考えております。これが第一の視点。
 第二の視点でございますが、やはり公平競争のためのインフラ整備というものが、これから卸売市場にも求めている、あるいは必要があるというふうに考えております。これはむしろ中小零細業者のための情報インフラ、安全・安心のためにインフラといったような形での整備が必要ではないだろうかと思います。
 もう一つはやはりグローバルな視点、あるいは俯瞰的な視点による卸売市場の今後を考えるということが必要になるだろうと思います。築地市場が拠点市場化するのか、あるいはこれから地方市場化でもいいなのか、あるいはよりローカルな市場にしていくのか、それこそ経済がグローバル化、食のグローバル化が進む中で、グローバルな市場に対応していく築地市場にするのかというような視点も重要なのではないだろうかということを問題提起申し上げまして、私のお話を終わらせていただきたいと思います。
 ご清聴ありがとうございました。

○花輪委員長 どうもありがとうございました。
 これをもちまして婁参考人の意見聴取を終わります。
 婁先生には大変お忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。
 以上で、参考人の意見聴取を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
 午後三時三十分散会

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