豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会速記録第十三号

平成二十九年五月二十四日(水曜日)
第十五委員会室
午後三時開議
出席委員 二十二名
委員長谷村 孝彦君
副委員長上野 和彦君
副委員長こいそ 明君
副委員長酒井 大史君
理事あさの克彦君
理事野上 純子君
理事ほっち易隆君
理事島崎 義司君
理事きたしろ勝彦君
理事吉田 信夫君
小林 健二君
おときた駿君
舟坂ちかお君
神野 次郎君
西崎 光子君
河野ゆうき君
小山くにひこ君
桜井 浩之君
古賀 俊昭君
かち佳代子君
曽根はじめ君
三宅 茂樹君

欠席委員 一名

出席説明員
中央卸売市場市場長村松 明典君
次長澤   章君
理事福田  至君
事業部長白川  敦君
企画担当部長吉村 恵一君
渉外調整担当部長有金 浩一君
市場政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務金子 光博君
移転支援担当部長赤木 宏行君
新市場整備部長岡安 雅人君
新市場整備調整担当部長影山 忠男君
移転調整担当部長前田  豊君
事業支援担当部長西坂 啓之君
基盤整備担当部長村井 良輔君
技術調整担当部長鈴木  理君
施設整備担当部長佐藤 千佳君
建設技術担当部長吉野 敏郎君

本日の会議に付した事件
議席について
付託事項の調査
豊洲市場移転問題に関する次の事項
(1)築地市場から豊洲市場への移転に関する経緯及び両市場の適正性
(2)東京ガス株式会社などとの交渉及び土地売買に関する経緯
(3)豊洲市場の土壌汚染対策及び豊洲市場の主な建物下に盛り土が行われなかった経緯
(4)豊洲市場建設工事における契約事務
(5)その他調査に必要な事項
意見開陳

○谷村委員長 ただいまから豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会を開会いたします。
 初めに、議席について申し上げます。
 本委員会室における議席につきましては、お手元配布の議席表のとおりといたしますので、ご了承願います。

○谷村委員長 これより豊洲市場移転問題に関する付託事項について調査を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、各会派の意見開陳を行います。
 初めに、記録の提出について申し上げます。
 去る三月十一日及び四月四日の委員会において、提出期限を延長していた記録について、お手元配布の記録の提出一覧のとおり、議長宛て提出がありました。
 なお、本記録の中には個人情報等も含まれておりますので、その取り扱いについては十分注意されますようお願いいたします。
 次に、請求した記録のうち、お手元配布の「不存在」「一部不存在」とされた記録一覧の記録につきましては、不存在とのことであります。
 理事会協議の結果、これをもって記録提出の請求を閉じることとなりました。ご了承願います。
 これより意見の開陳を行います。
 順次発言を願います。
 河野ゆうき委員。

○河野委員 都議会自民党を代表して、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会のこれまでの審議について意見開陳を行います。
 小池知事が豊洲移転を延期し、豊洲市場への移転に関する都民の関心が高まる中、豊洲市場移転問題特別委員会、いわゆる市特が設置され、その審議の経過の中で、豊洲の東京ガス跡地に市場を移転することに決まった経緯、その間の東京ガスと東京都の交渉の経緯などについて事実関係を明らかにするため、強力な調査権限を有する本百条委員会が設置をされました。
 本委員会は、事実関係を調査するため、これまで五日間にわたり、延べ二十四人の証人、時間にして二十三時間に及ぶ証人喚問を行ってきました。
 各証人におかれましては、それぞれ古い記憶を思い出していただきながら、誠実な証言を行っていただいたことと、この場をおかりして、改めて感謝の意を表するところであります。
 最初に、三月十一日には、東京都の元副知事、元市場長、そして東京ガスの現会長と社長及び役員OBの方々、総勢十一名の方々から、東京都が豊洲の東京ガス跡地を築地市場の移転先に決定した経緯や、東京ガスが自社所有の土地を市場用地として東京都に売却することに協力するに至った経緯を確認いたしました。
 そして、例えば、護岸対策工事費を東京ガスが負担しないこととなったのは、計画変更による結果にすぎず、東京都が東京ガスから豊洲を市場用地として入手するに際して、東京ガス側に対して何かしらの不正不当な利益が供与されたということはなかったということが我々の質問で確認されました。
 三月十八日には、市場の四人の元市場長の方々と、豊洲市場の土地購入時の東京都財産価格審議会の会長など四名の方から、土壌汚染対策に関する確認書、費用負担に関する合意、建屋の下に盛り土を行わなかった経緯、契約案件の審議状況などについて質問させていただきました。
 その中で、東京ガスの七十八億円、土壌汚染対策費の負担については、法的に何ら責任がないのにもかかわらず、企業の社会的責任として、追加の負担をしていただいたものであることが確認されました。
 三月十九日には、豊洲市場の移転交渉を、東京ガスと行った濱渦元副知事には、当時、交渉が行き詰まった中、どのように両者の調整を前に進めていったのか確認しました。
 そして、あたかも裏取引があったかのようにいわれていた水面下での交渉とは、いわゆる密約といった類いのものではなく、売買交渉に当たって事務的に具体的な細部を詰めていくということを表現した言葉にすぎなかったものであったということも確認がされました。
 翌二十日には、石原慎太郎元知事に対して、なぜ築地から豊洲に移転すると判断したのかについて直接確認をいたしました。
 そして、四月四日には、それまでの証言を踏まえ、豊洲市場移転に関与した当時の知事本局長、政策報道室理事、担当部長の三名から、石原知事、濱渦副知事のもとで、実際にどのような事務手続が進められたのか確認をいたしました。
 この中で、いわゆる二者間合意といわれる、あたかも密約があったかのようにレッテルを張られた平成十三年七月の東京都と東京ガスの部長級間での確認書も、それまでの担当レベルで協議した内容を確認したものにすぎなかったことがわかりました。
 また、東京ガスから提出された資料にありましたXデーという表現も、この委員会で一部の委員から、勘違い、的外れな指摘がされており、週刊誌等もいわくありげに報道されておりましたが、実際は、Xデーとは東京ガスがみずから汚染対策を定め、公表することをそう呼んだだけのことで、実は、何ら問題のない事柄であったこともはっきりといたしました。
 また、土壌汚染対策に関する費用負担についても、法令基準を満たす土壌汚染対策と、卸売市場用地という特別の条件を勘案したさらなる土壌汚染対策、それぞれについて東京ガスと東京都双方が了解のもと、取り決めがきちんと行われたことも明確になりました。
 さらに、多岐にわたる交渉が互いの了解のもとで円滑に進むように、東京ガスと東京都双方の部長級職員が交わした覚書に関しても、あたかも不正があったかのような質疑もありましたが、東京ガスと東京都双方の当事者の証言からは、そうした事実につながる発言を見出すことはできませんでした。
 つまり、証人喚問の結果、豊洲への移転を決めるに当たって、東京都と東京ガスが交渉を進める過程や、東京ガス、東京都双方における当時の検討作業において、その正当性を疑う事実は何ら発見できなかったということです。
 しかしながら、ガバナンスの問題、情報公開、横の連絡、縦の連絡など、今後の都政運営に反省として生かさなければならない点は多数あるということも指摘しておきます。
 なお、今回の当委員会全般にわたる証人喚問について、一言申し上げておきます。
 喚問は、証人から事実を聞くためのものであり、質問者が想定したシナリオのもとに、シナリオに都合のいい言質を引き出すためのものではありません。
 ところが、我が党以外の質問者の中には、みずからの想定したシナリオに固執した質問に終始するとともに、時には、提出された資料の一部を曲解し、何の裏づけもないまま、証人喚問の場を使って、みずからが創作した、事実と異なるストーリーをアピールするといった質問者までいました。
 事実関係を調査する際、最も肝心なことは、予断を持たず、公正、中立の立場で、提出された資料を読み、証言を聞くという謙虚な姿勢であります。この基本中の基本が本委員会の審議においておろそかにされた委員がいたことは、非常に残念に思います。
 さて、百条委員会は、調査が厳正に行われるよう、証人喚問において偽証の証言を行ったと認められた場合には、告発しなければならないとされております。延べ二十四人の証人の方々は、宣誓の上、当時の記憶を思い起こし、非常に誠実に証言をされていました。
 しかしながら、現在、当委員会が行った証人喚問の証人のうち、特定の証人に対し、偽証の陳述を理由に偽証の認定をすべきであるとの主張が、我が自民党を除く、ほかの会派から提出されております。
 そして、虚偽の陳述に当たると考えられる案件一覧には、各会派が偽証の陳述、つまり偽証に当たると考えられる陳述とその根拠と考える資料が記載され、当委員会に提出されておりますが、我々は理解に苦しんでおります。
 虚偽の陳述とは、事実と異なるとの認識を持ちながら、あえて違うことを証言することです。要するに、故意にうそをつくということだと思います。つまり、時間の経過などによって忘れてしまった、勘違いのため結果的に事実と異なる証言をした場合は、虚偽の陳述とはならないのです。
 ある証言を虚偽の陳述であるとして告発するためには、これが客観的事実と相違する証言であるというだけでは足りず、事実とわかっているのに、故意に、記憶に反して、事実に反する発言をしたという点まで証拠によって立証する必要があります。
 したがって、虚偽の陳述を主張する会派の中には、メモなどに矛盾する記載があることを重視しているようですが、こうしたメモの存在だけでは偽証告発の根拠としては甚だ不十分といわざるを得ません。
 例えば今回、濱渦証人がかかわったのが平成十三年七月の基本合意までであり、それから先は全く知らないとか、一切相談もあずかっていないなどと証言をされております。
 この証言に対し、それ以後にも、濱渦証人に都の担当者が報告をしたかのような資料が存在することをもって、濱渦証人が、自分の記憶に反して、あえて事実と異なる証言をしたのだということの証明にはならないです。
 そもそも基本合意締結後において、濱渦証人に報告した可能性を示す資料もわずか数点しか存在せず、当時、日々多くの業務に追われていた証人が、十年以上前のことについて、例えば、覚書の締結といった大きなトピックスとかであれば覚えていたとしても、日々の細かい報告事項についてまで、正確に事実を記憶していなくとも、これはやむを得ないと考えざるを得ません。
 また、当委員会において行われた今回の証人尋問においては、例えば、贈収賄などのような、ほかの刑事事件に発展しそうな内容や、東京ガスに対して不当な便宜供与を図ったというような内容は皆無であり、各証人があえてうそをつかなければならない必然性が全く見当たりません。つまり、偽証の陳述をしなければならない動機そのものがありません。
 このように、故意の発言であると、根拠も薄弱なまま、また、偽証する動機すら見つからない中で、あえて偽証認定をすることは到底容認できませんし、パフォーマンスといわざるを得ません。
 私は法律の専門家ではありませんので、弁護士の方からもご意見を伺う必要があると判断し、我が党の顧問弁護士の方に、虚偽の陳述に当たると考えられる案件一覧に記載されている資料を検証していただきました。
 その結果、百条委員会に提出された証拠書類関係で、偽証の事実を証言したと認定することは困難であり、ましてや、告発をしたとしても、これをもって検察が起訴に持ち込むことは大変難しいといわざるを得ないとのご見解でありました。そして、議会局の顧問弁護士の方からも、ほぼ同様の見解が示されております。
 つまり、法律の専門家の方々が、今回の証人喚問の議事録、資料等を検討したところ、偽証の認定は困難で、偽証告発は困難であるということが、共通した見解と示されております。
 本委員会の目的は厳正な調査であり、偽証告発は厳正な調査を担保するための手段にすぎません。偽証告発は偽証罪による刑事処分を前提とするものですから、都議会が都民の代表として告発する以上は、十分な根拠と法的な裏づけが必要不可欠です。
 都議会として証人を告発して、証人を刑事被疑者の立場に追いやるということの重大さは、ここであえて指摘することでもないと思います。
 我々都議会議員は、与えられた権限が大きければ大きいほど、その誤った運用は、時には関係する方々の基本的人権を損なうおそれすらあることを忘れてはなりません。決して政治的思惑や単なる思い込みによって権限を恣意的に運用し、証人の方々の基本的人権を侵害するおそれのあることを行ってはならない。
 我が党はこれまで、こうした信念のもと、委員会の審議、そして証人喚問に挑んでまいりました。
 しかし現在、我が党を除く、公明、共産、都民ファースト、東京改革、生活者ネットの各会派は、我が党から見ても、また法律の専門家から見ても、非常に曖昧かつ薄弱な理由で、数に物をいわせ、偽証認定を行おうとしております。
 偽証認定を主張する各会派は、都議会として告発するにもかかわらず、結果として証人が不起訴処分になったとき、その責めをどのようにとられるつもりなのか。その点についての覚悟を十分に認識されているのかお聞きしたい。
 百条委員会を立ち上げ、何も出なかったから格好がつかなかったという思いがあるのかもしれませんが、都民の代表である都議会が、告発するという重みを十分に認識し、確実な証拠に基づいて告発するべきであり、立証が見込まれないような告発は厳に慎むべきであります。
 今回の偽証認定と告発に向けた動きは、あたかも偽証告発をもって本委員会の成果と位置づけ、百条委員会を設置したことに一定の評価を与えようとするための告発、まさに、ためにする告発ではないかと疑念すら覚えます。
 現在、本委員会では、偽証の認定と告発に向けた取りまとめがなされようとしておりますが、刑事告発を前提とした偽証認定を行うという以上、法的な検討を踏まえた慎重な対応が必要です。
 そして何よりも、二十四人に及ぶ証人の方々の真摯な証言を率直に受けとめ、法律家の方々のご指摘を謙虚に受けとめ、当委員会の調査に真摯に応じていただいた証人の方々の人権を不当に侵害しないよう、都議会議員として責任ある行動をとるべきです。
 そこで、都議会自民党は、当委員会がまとめた虚偽の陳述に当たると考えられる案件一覧を検討した結果、偽証認定される事実は発見できなかったことを本委員会において決定すべきことを主張し、意見開陳を終わります。

○谷村委員長 河野委員の発言は終わりました。
 上野和彦副委員長。

○上野委員 都議会公明党を代表し、本委員会の調査、尋問を通して明らかになった事実とともに、二度と同じことを繰り返さないために、取り組むべき都政改革の具体的な提案について意見を述べさせていただきます。
 本委員会の最大の焦点は、平成十二年十月から翌平成十三年七月にかけて行われた濱渦武生元副知事による水面下交渉で一体何があったのかという点でありました。それまで豊洲の土地を売却することに消極的だった東京ガス株式会社に対し、当時の石原慎太郎都知事の特命で濱渦氏が水面下交渉を行い、その結果、東京ガスが一転して東京都に市場用地として豊洲の土地を売却することを決めました。その交渉内容は、まさに水面下で行われ、当時の資料はほとんど明らかにされず、どのような交渉が行われたのか、今日に至るまで謎に包まれたままでありました。
 それゆえに、なぜ東京都が八百億円を超える多額の経費をかけて土壌汚染対策を行っているのか。そして、土地の売買契約において、土壌汚染の原因者である東京ガスに対し、今後の汚染土壌の処理費用については負担を求めないとして、瑕疵担保責任を放棄してしまったのはなぜなのか。
 こうした土壌汚染をめぐる問題が改めてクローズアップされ、その真相を解明するために、十二年ぶりに百条委員会として本委員会が設置されたわけでございます。
 本委員会の調査、尋問を通して、濱渦氏が主導した水面下交渉の全容が明らかになりました。さらには、都民に知られると不都合な合意事項を盛り込んだ交渉結果を、組織として隠蔽しようとしていた事実。そして何より、交渉を部下に一任し、その内容について適切な指示、判断を下さなかった当時の都の執行部の無責任体質も浮き彫りになりました。
 公明党は、現在の土壌汚染をめぐる問題を招いた原因は、濱渦氏による強引で無責任な水面下交渉にあったと結論づけ、交渉の責任者である濱渦氏と、交渉を濱渦氏に任せ切りにした石原氏の責任は極めて重大であると厳しく糾弾するものであります。
 その上で、こうした事態を二度と繰り返さないために、都議会が行政の重要課題についてきちんとチェックできる体制を構築する、その道筋をつけることも本委員会に課せられた重要な使命であると考えます。後述いたしますが、公明党は、既に公営企業に関する土地売買契約に対して議会のチェック機能を強化するルールづくりを具体的に提案しております。
 本委員会での調査を契機として、一層の議会改革、都政改革に全力で取り組むべきであることを、まず強く訴えさせていただきたいと思います。
 さて、濱渦氏による水面下交渉では何が行われたのか、公明党が明らかにした真相を三点、指摘したいと思います。
 第一に、東京都の安全軽視の交渉姿勢であります。
 用地取得が至上命題であった東京都は、水面下交渉において、東京ガスに強い政治的圧力ともとれる言動で売却を迫っていたことが、東京ガスが本委員会に提出した記録から明らかになりました。
 それによれば、平成十二年十二月二十二日、東京都側の交渉の実務責任者であった政策報道室の赤星經昭理事は、濱渦氏の指示として、豊洲の土地の土壌汚染が明らかになれば土地の価格が下がって困るだろう、市場が豊洲に出ることを知事が宣言することは、豊洲が安全であることの保証と思ってほしいなどと発言したとされます。
 東京ガスは、この発言について同じ記録に、知事の安全宣言で救済するから用地売却の結論を出せなどと書き残しており、明らかに圧力と受けとめていたことが見てとれます。
 赤星氏の発言は、知事の安全宣言を利用した一種のおどしともいえる言動であります。しかも、土壌汚染対策を具体的にどうするのかという最も肝心な点が抜け落ちており、とにかく知事が豊洲移転を表明すれば安全宣言になるのだから、早く売却を決断しろというものであります。こうした交渉姿勢は安全軽視といわざるを得ません。
 第二に、今日の土壌汚染問題の淵源ともいえる確認書の存在であります。
 それは、平成十三年七月十八日に締結された基本合意に当たっての確認書、略して基本合意の確認書と呼びますが、この文書は、十二日前の七月六日に、東京都と東京ガスが豊洲への移転で正式に合意した基本合意の具体的な内容を記載した重要文書でありました。
 基本合意の確認書には、汚染土壌の処理について、現処理計画により対策を実施しと書かれており、この現処理計画とは汚染が残る計画でありました。東京ガスは、基本合意に向けた具体的な協議事項を確認した平成十三年二月二十八日の覚書の確認において、既に土壌汚染対策は、汚染が残ることを前提とした現処理計画で行うとの方針を東京都に伝えていましたが、東京都は、これを重く受けとめなかったのか、そのまま基本合意の確認書に盛り込まれたのであります。東京都がこの時点で土壌処理は汚染が残る計画でよいと認めたことが、後に瑕疵担保責任の放棄につながり、八百億円を超える多額の土壌汚染対策費用を東京都が負担する原因になったのであります。
 第三に、基本合意の確認書からは、防潮護岸の開発者負担をゼロにするなど、合計四百八十六億円に上る東京ガスの利益確保を図っていたことも明らかになりました。
 交渉記録からは、土壌汚染対策の具体的な検討よりも、開発者負担の軽減を優先して交渉していた実態も明らかになり、安全・安心より双方の目的達成が交渉の焦点だったことも判明しております。つまり、豊洲の土地取得を優先する余り、十分な土壌汚染対策を約束させることもなく、東京都が東京ガスの負担を肩がわりして、不透明な形で東京ガスの利益を確保していたのであります。
 以上の三点から、東京都は当時、安全軽視の姿勢で交渉に臨み、市場用地としては不十分な土壌汚染対策を認めるとともに、不透明な形で東京ガスの利益を確保するなど、安全・安心をないがしろにして交渉を進めていたことが明白となりました。これが水面下交渉の真相であります。
 また、基本合意の確認書については、当時の東京都が組織ぐるみで隠蔽した実態も明らかになりました。
 基本合意の確認書は東京ガスの提出資料から見つかったものですが、東京都からは当初は提出されませんでした。これを公明党の谷村孝彦議員が証人尋問で取り上げ、都に対し再度開示請求を行い、ようやく提出されたのは、平成十九年四月十七日の日付で、どこからかファクスで送られてきたものを印刷したものでありました。
 実は都庁内には基本合意の確認書の原本が存在しなかったのであります。しかも、東京都から提出された基本合意の確認書にはマル秘の印字があり、東京都は、この資料を秘匿していたことも判明しました。基本合意の確認書は移転交渉にかかわる極めて重要な文書であり、都庁内に原本が存在しなかったことはゆゆしき事態であります。
 四月四日の証人尋問で、基本合意の確認書に署名をした東京都側の当事者である野村寛元知事本部首都調査担当部長は、確定した案文については、所管局に戻すことになっていたので、当然そうした作業をしていると証言しましたが、現実には、どの局からも、原本どころかそのコピーさえも出てこなかったのであります。
 基本合意の確認書の各項目についても野村氏は、基本合意に至るまでの間に所管局が東京ガスの各担当と合意した中身について記載したもの、知事本部は窓口であり、具体的な交渉の中身については承知していないと証言し、土壌汚染対策についても、誰の責任で判断したのか答えませんでした。
 また、基本合意の確認書を誰の指示でまとめたのか、あるいは誰に報告したのかも、具体的な名前は明らかにされませんでした。結局、自分たちに都合の悪い内容は責任を分散させるという組織ぐるみの隠蔽体質が露呈したのであります。
 なぜ隠蔽しようとしたのか、それは、基本合意の確認書において汚染が残る土壌処理計画を認め、東京ガスに多額の利益確保をもたらす約束を交わしていたという不都合な真実を隠したかったからであると断言しておきたいと思います。
 本委員会の調査、尋問では、当時の東京都執行部の無責任体質も明らかになりました。
 これは、豊洲移転にかかわる一連の問題における根本的なものと考えます。それが如実にあらわれたのが石原氏への証人尋問であります。
 公明党の野上純子議員の尋問に対し石原氏は、水面下交渉について濱渦氏に一任していたとして、協議の内容などは一々報告を受けていないといい放ちました。無責任きわまりない証言であります。野上議員が指摘したように、みずからが出した指示に対して報告を受けるのは当然の責務であります。しかも、豊洲移転問題は東京都にとって極めて重要な課題の一つであり、本来、最高責任者である知事が、交渉の状況や結果について報告を受け、適時適切に判断を下すべきものであるはずです。石原氏がそうした対応を行わず、全て部下に任せていたというのは、知事としての責任放棄という以外にありません。
 石原氏は小池百合子知事に対し、豊洲への移転を決断しないのは無作為の責任があると批判しましたが、当時の石原氏の対応にこそ無作為の責任があったと指摘したいと思います。
 ここで、本委員会で述べられた証言について、偽証の疑いがあるものを指摘しておきたいと思います。
 一つ目は、基本合意の確認書について、濱渦、赤星両氏が知らないと証言したことであります。
 濱渦氏が主導した水面下交渉は、本格的な協議入りを確認した平成十三年二月二十一日付の覚書と具体的な協議事項をまとめた覚書の確認、そして、協議結果の大枠を示した基本合意とその細目が書かれた基本合意の確認書、この四つの文書がそろって初めて全容がわかります。交渉の当事者として基本合意の確認書を知らないというのはあり得ません。
 平成十三年二月二十八日に結ばれた覚書の確認では、既に土壌汚染対策などを盛り込む基本合意の確認書の締結を確認しており、この覚書の確認の内容について、赤星氏と野村氏が東京ガス側と交渉していた記録も残っております。
 平成十三年六月二十八日に行われた都と東京ガスとの会談においても、赤星氏は東京ガスから、土壌汚染対策などの合意事項について七月末までに確認文書の作成、取り交わしと記載された資料の説明を受けております。
 しかも、会談で赤星氏は、引き続き本件は担当するようにいわれていると述べており、赤星氏が基本合意の確認書を知らないわけはないのであります。
 さらに、東京ガスとの協議の結果、土壌汚染対策については基本合意ではなく、基本合意の確認書に盛り込まれており、このことからいっても、交渉の当事者である濱渦氏、赤星氏が基本合意の確認書を知らないというのは筋が通らないのであります。
 また、交渉の実務者だった野村氏は、基本合意の確認書について、基本合意に至るまでに各局が東京ガスの各担当と合意した中身を記載したものと証言し、内容は濱渦氏が交渉に関与していた基本合意までに固まっていたとの認識を示しております。
 さらに野村氏は、組織としては当然上司に報告し、さらに上司に上げるのは当然のルールとも述べており、基本合意の確認書は交渉の責任者である濱渦氏に報告されていたとの認識も示しております。
 したがって、濱渦、赤星両氏が基本合意の確認書を知らないという証言は明らかに偽証であります。
 なお、赤星氏は覚書の確認についても知らないと証言しましたが、平成十三年二月十九日に赤星氏本人が覚書の確認について東京ガスと協議していた記録が残っており、野村氏も、当時の上司すなわち赤星氏に報告したと証言しております。よって、赤星氏の覚書の確認を知らないとする証言も明らかに偽証であります。
 次に、濱渦氏の平成十三年七月六日の基本合意の後は、土壌汚染に限らず、一切相談にもあずかっていないとの証言であります。
 東京都から、知事及び濱渦副知事に上がった全ての文書として提出された資料には、平成十五年五月二十二日付の濱渦副知事様と書かれた文書があり、知事本部の部長ら三人の連名で、同年三月に濱渦氏から指示を受けていたことや、都の対応方針の確認、さらには、今後も必要なご指示を仰ぎたいと明記されておりました。
 また、平成十六年七月二十二日付の豊洲開発、東京都打ち合わせという議事録には、副知事には昨年の五月以降は一切上げていないと書かれており、これは、それ以前は副知事に上げていたということにほかなりません。
 さらに、平成十五年二月十日には、濱渦氏が当時の市場長からブリーフィングを受けております。この資料には副知事発言として、わかりましたなどと記載されており、濱渦氏がブリーフィングを受けたことは明白であります。
 東京ガスの提出資料にも、濱渦氏が平成十三年八月七日に江東区を訪問し、区長らに市場移転への協力を要請したことを示す記録があります。また、平成十四年から約三年にわたり、知事本部長、知事本局長を務めた前川燿男氏は、四月四日の、私、上野和彦の尋問に対し、濱渦さんは在任中一貫して市場を所管しておりました、市場行政についての実態として、庁内の最高決定権者であったことは紛れもないと思います、そういう責任をずっと負っておられましたと証言しております。
 また、前川氏は、知事の分身として濱渦さんが力を振るっていたことは事実、局を越えて、直接部課長を指揮していたと、当時の局長飛ばしの実態も生々しく証言しております。このことからも、平成十五年五月二十二日付の文書が、部長から直接濱渦氏に上がっていた可能性は極めて高いのであります。
 さらに前川氏は、平成十七年の土壌処理に関する確認書について、担当の部課長に確認し、濱渦氏にお手紙を出して、特段の指示はなかったという報告を聞いたとも証言しております。
 これほどの証拠と証言があるわけですから、濱渦氏の平成十三年七月六日の基本合意以降は相談にもあずかっていないという証言は、明らかに偽証であります。
 また、濱渦氏は、平成十五年五月二十二日の文書について、そもそも担当部長が連名で来ることはあり得ない、そういう問題は局長がお話しに来るし、ペーパーも局長経由で来ると証言しましたが、先ほど紹介した局長飛ばしの実態などから、この証言についても明らかに偽証であると断言したいと思います。
 最後に、石原氏が、瑕疵担保責任の免責について、昨年初めて知った、すなわち、それまでは知らなかったという証言であります。
 平成二十一年から平成二十三年まで市場長を務めた岡田至氏は、三月十八日の証人尋問で、着任してすぐ、早い段階で知事に負担の考え方、その考え方に基づいた試算、八十億円を知事に説明したと証言しております。この証言と一致する文書が、石原知事と中央卸売市場とのやりとりにかかわる全ての文書として東京都から提出されております。それは、平成二十一年八月二十八日付の土壌汚染対策に関する東京ガスの負担についてという文書であります。
 この文書には、東京ガスは環境確保条例に基づく土壌汚染対策を実施して、条例上の手続を完了しており、法令に基づく請求は困難なため、対策経費の一部の負担を求めるとして、今後、この負担額八十億円について協議していきたいと書かれております。つまり、東京ガスに土壌汚染対策の費用、当時は五百八十六億円でありましたが、これを全て負担させるのは法令上困難であり、八十億円の一部負担にとどめて協議する方針を石原氏に説明しているのであります。そして、実際の交渉の中で、東京都の担当者が知事に八十億円と説明していると話している記録も存在します。
 つまり、石原氏が八十億円の負担を求める方針を了承したからこそ、実際の交渉で知事に説明した八十億円をめぐって協議が行われ、結果として、東京ガス側の負担は七十八億円とし、今後、土壌汚染に係る費用負担をしないと明記した協定書を石原氏の名前で締結しているのであります。
 なお、岡田氏は、交渉の結果についても、平成二十三年三月二十二日に知事に報告した資料があり、そのときに説明したと思うと証言しており、同日付の資料も東京都から提出されております。
 このことから、石原氏が瑕疵担保責任の免責について説明を受けていたことは間違いなく、これを知らなかったという証言は偽証の可能性が高いと指摘したいと思います。
 公明党は、本委員会を通して、豊洲移転問題の疑惑解明にとどまることなく、二度と同じことを繰り返さないために、取り組むべき都政改革に向けた新たな提案を打ち出しました。
 その一つは、地方公営企業法第四十条で、契約の締結並びに財産の取得、管理及び処分について、議会議決の適用除外になっていることであります。
 今回の豊洲用地の取得に関しては、土地の売買契約を締結する上で非常に重要な土壌汚染対策費用の負担合意の都議会への報告は、契約締結の約二カ月半後である平成二十三年六月十五日の経済・港湾委員会というのが実態でありました。このような制度が今回の問題発生の一因ともなっており、このままでは都民の目から見ても非常に不透明であります。
 この点については、本年三月二十七日の予算特別委員会で公明党は、公営企業会計においても、議会に事前に報告する都独自のルールづくりの必要性を指摘させていただきました。小池都知事は、ご指摘の趣旨については十分受けとめさせていただきたいと答弁。
 また、二月二十八日の本会議で公明党は、決算委員会への知事の出席の制度化も主張しました。公営企業にかかわる業務であっても、事前に議会に報告するルールをつくることで、予算執行のチェック機能を高める必要があります。また、決算委員会への知事の出席も含め、都政の見える化につながる改革を進めるべきであります。
 このほかにも、公文書の保存や管理、情報公開の仕組みなど、都庁が抱える課題が明らかになりました。
 都議会としても、盛り土問題や一連の経緯を見抜けなかった反省を踏まえ、公明党は、議会のチェック機能の強化を初め、都政改革に全力で取り組む決意であることを申し上げ、意見表明とさせていただきます。

○谷村委員長 上野和彦副委員長の発言は終了しました。
 酒井大史副委員長。

○酒井委員 私は、東京改革議員団を代表して、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会に付託された調査事項について、濱渦武生元副知事が築地市場の移転に関する実質の最高決定権者であり続けながら、平成十三年七月以降の関与を一切否定しているため、その責任を追及するとともに、その他の諸問題の真相を都民に明らかにする立場から、意見の開陳を行います。
 本委員会は、豊洲市場に関する諸問題である東京都における意思決定の経緯や東京ガスなどとの交渉、土地売買の経緯などを調査するために、二月二十二日、本会議において全会派一致で設置されたものです。
 濱渦元副知事は、石原都政において知事本局や中央卸売市場を所管する副知事で、実質の最高決定権者でありました。
 また、濱渦元副知事は、豊洲に市場用地を取得するために、東京ガスの要請に伴って水面下の交渉を受け入れ、都庁全体に東京ガスに損をさせない仕組みづくりの構築を指示し、減価や支援策などによる譲歩や利益供与を実行し、都民に大きな負担をかけてきたにもかかわらず、本委員会における我が会派の理事からの尋問で、平成十三年の合意の後、東京ガスや豊洲市場の案件にかかわってはいないという話がありましたが、これに間違いはありませんかと問われたところ、濱渦元副知事は、基本合意以降のことは私は存じませんと答弁しました。
 そのため、東京改革議員団は全証人尋問の証言を読み込み、また、百七十四箱の提出記録の中から濱渦元副知事の偽証を証明する記述を複数確認して、本委員会に提出しております。濱渦元副知事が本委員会における諸問題の真相究明を妨げたと考え、偽証認定の協議を進めて告発も視野に入れるなど、厳正に対処していくべきだと申し上げます。
 それでは、これまでの調査事項に対する調査結果から現在までに明らかになった事実、さらに諸問題に対する再発防止策について述べてまいります。
 まずは、豊洲市場の移転問題が石原元知事就任時に既定路線であったのか、なぜ豊洲が移転候補地となったのかについて述べます。
 石原元知事は就任当初、青島元知事からの引き継ぎ事項の文書の中に豊洲地域に市場を移転する文言があって、築地市場の豊洲移転の方針が既定路線であったと述べていますが、私たちが調べたところ、知事事務引き継ぎ書には移転の文言はありません。説明をしたとされる福永元副知事も、私は豊洲で決まったというような発言はしていませんと証言しています。
 さらに、石原都政で中央卸売市場長に就任した大矢元市場長も、少なくとも私が赴任する段階では、既定路線であったというのは、知事は何か誤解をしていると証言し、平成十一年当初、築地市場を豊洲へ移転させることは都において既定路線ではなかった、石原都政において移転を推進させていったことがわかりました。
 豊洲が初めて築地市場の移転候補地となったのは平成七年、バブル崩壊後の地価下落によって臨海副都心開発事業会計が悪化、破綻に瀕していたときです。都港湾局が豊洲へ築地市場を移転する構想を掲げ、臨海副都心開発事業に一般財源を投入しやすくなる案を考えました。
 都が非公式に東京ガスに移転案を打診したところ、東京ガスに、これまでの豊洲開発協議を根本的に覆すもので受け入れられないと断られました。しかし、平成十年には、築地市場業界から臨海部移転の調査要望を受けて都が調査を実施し、平成十一年、福永元副知事、大矢元市場長が石原元知事の命令で東京ガスに土地取得交渉依頼を行い、平成十二年に濱渦元副知事、赤星元政策報道室理事に引き継がれました。
 東京ガスは都に対して、豊洲・晴海開発整備計画が進んでいることから、水面下での交渉を求め、濱渦元副知事は、石原元知事からの至上命令、豊洲に市場用地を取得するために、水面下交渉を受け入れ、都庁全体に東京ガスに損をさせない仕組みづくりの構築を指示しました。
 東京ガスが都と土地取得の協議を行う上での条件は、平成十年の豊洲地区開発整備にかかわる基本合意時の開発利益と事業採算性を確保することでした。これが後々まで都が東京ガス側に豊洲開発負担において譲歩をし続け、石炭ガス工場跡地でベンゼンやヒ素などで汚染された土地を高値で購入し、新市場の安全・安心を担保するために、法令を超えた膨大な費用による土壌汚染対策に取り組まなければならなくなった原因だと考えます。
 次に、平成十一年十一月の石原元知事、上原元東京ガス社長の直接会談と、平成二十二年の石原元知事による豊洲移転の決断について述べます。
 我が会派の事前調査によって、元知事と元東京ガス社長が直接会談を行っていたことがわかりました。証人尋問で大矢元市場長は、知事が上原社長に会ったことは聞いた、知事から築地市場の移転を東京ガスにお願いに行けと指示され、当時、福永副知事と訪問をしたと証言をしています。
 当事者である石原元知事に尋問をし、当時、知事が東京ガス社長に会ったと議会で答弁をしていると述べたところ、詳細には覚えていませんと、会ったことは覚えていると証言を修正しました。
 石原都政における移転交渉の発端として、石原元知事と上原元東京ガス社長のトップ会談があり、平成二十二年の市場移転の最終決断についても、石原元知事が、私が判断したと証言して、石原元知事がみずから責任を持って決断をしたことが確認されたことから、豊洲移転の最高責任者は石原元知事であったことが改めてわかります。
 また、都が提出した石原元知事に対する豊洲新市場に関するブリーフィング資料においては、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策についてや、土壌汚染対策に関する東京ガス株式会社の負担について、新市場の用地取得と土壌汚染対策に関する東京ガスとの負担合意についてなどの資料によって、石原元知事に事前に報告をされていたことがわかりました。
 しかしながら、昨年秋の、東京都から石原元知事への質問書に対する石原元知事の回答では、土壌汚染対策に関する東京ガスの追加負担や用地買収価格について、石原元知事は、判断を求められたことはありませんと明確に回答しているにもかかわらず、三月二十日の証人尋問においては、詳細なことについては記憶にございません、覚えていませんと答え、事実と異なった不明瞭な証言をしていることから、豊洲移転に関する真相を解明する本委員会の活動に対して、石原元知事は真摯に協力をしているとは思えない。責任回避であり、その責任は重いと申し上げておきます。
 次に、東京都と東京ガスとの豊洲の土地取得、土壌汚染対策交渉について述べます。
 石原元知事は、濱渦元副知事に一任していたと述べ、濱渦元副知事は、平成十三年の基本合意以降のことは存じませんと証言しました。
 しかしながら、平成十五年三月、都環境局が濱渦元副知事に東京ガスとの土壌汚染対策交渉について報告をし、濱渦元副知事は、操業由来の汚染は東京ガスに処理させることを指示しています。その後、東京ガスは、そもそも市場の移転は濱渦副知事を含めた話であり、そのために土地を売却するものであるから、今の土壌汚染処理計画が不満なら話が白紙に戻ると、豊洲への市場移転を白紙撤回も辞さないとした発言を行い、知事本部と環境局、中央卸売市場の三部長が濱渦元副知事に指示を仰ぐ文書を作成し、相談を行っていますが、濱渦元副知事は記憶にございませんと否認をしました。
 平成十七年、都と東京ガスは、土壌処理に関する確認書を合意しました。この合意内容についても、濱渦元副知事に上げられていたとの前川元知事本局長による証言があります。石原元知事が週に二日、三日しか登庁しない中、濱渦元副知事が豊洲問題についても所管局を越えて部課長を指揮していた実態が明らかになりましたが、濱渦元副知事が認めないことから、本委員会における問題の真相究明を妨げる行為であると強く断ずるものです。
 次に、豊洲の土地売買と東京ガスの土壌汚染追加負担について述べます。
 東京ガスが土壌汚染対策を行った豊洲の土壌から環境基準四万三千倍のベンゼンが検出されたため、都が東京ガスに土壌汚染対策の追加負担を申し入れたところ、東京ガスは、法令に基づき対策を行ったため、瑕疵担保を免責することと追加負担には割り増しを含むこと、都が今後追加請求を行わないことを求めました。
 そこで都は、十七年確認書による法的責任を追及することはせず、瑕疵担保に関する条項を記載しないこと、負担額は、十七年確認書で定めた対策を改めて実施した場合の経費として精算払いとしないこと、土地売買については、土壌汚染の処理費用を東京ガスとの協議で別途取り扱うこととし、平成二十三年三月、石原元知事と岡本前社長名で七十八億円の費用負担に関する協定書と五百六十億円の土地売買契約書を締結しました。
 しかしながら、私たちは十七年確認書を締結した森澤元市場長に、東京ガスが土壌汚染対策を行えば、都はそれ以上の対策を求めることができない合意だったのかと尋問したところ、何か疑義があれば改めて協議をするとの文書で担保を行ったとの証言を得ており、東京ガスに追加対策の免責を約束したわけではないと認識をしています。
 一方で、費用負担協定書を結んだ岡田元市場長からは、東京ガス側が追加負担がない限りは協定書を結ぶことができないと述べたことから、主張を受け入れて最終合意を行ったとの証言を得ています。濱渦元副知事による交渉時から豊洲の土地を取得することが至上命題であった都として、土壌汚染対策、追加負担についても譲歩せざるを得なかったと考えるものです。
 次に、豊洲市場建物下に盛り土がない問題について述べます。
 平成二十一年、都の技術会議は、盛り土も含めた五百八十六億円の土壌汚染対策工事を都に提言し、石原知事はその内容を盛り込んだ豊洲新市場整備方針を策定しました。しかし、市場内部では、豊洲新市場の建物下に地下空間を書き込んだ断面図を作成するなど、盛り土を行わない構想を検討していました。
 平成二十三年、日建設計との建設工事基本設計打ち合わせにおいて、中央卸売市場の建築ラインがモニタリング空間の範囲を提案したことから、建物下全体に地下空間が描かれることになりました。市場のトップである岡田元市場長は、建物下が大きく掘り込んであったような記憶がないと証言し、中西元市場長も、建物下にモニタリング空間を設ける説明と並行して、同じ新市場整備部から敷地全面に盛り土を行う説明を受けていた、責任を自覚していると証言したことから、都庁内部のガバナンス機能に問題があると考えます。
 豊洲市場移転に関して浮かび上がったさまざまな問題に対して、再発防止策として取り組むべきことを申し上げます。
 石原元知事が週に二、三日しか登庁しない中、濱渦元副知事が所管局を越えて部課長への指示、決定を繰り返し行っていたことや、港湾局が臨海副都心開発事業の立て直しのために築地市場を豊洲へ移転させようとしていたこと、豊洲の土地取得にこだわって不利な交渉での立場を決定づけたこと、中央卸売市場幹部が市場長に報告せずに豊洲市場の建物下に盛り土を行わなかったことなどから、最大の問題点は、都の意思決定における責任の所在が不明瞭であったことだと考えます。現状変化に伴って柔軟な対応をとることも含め、都庁内のガバナンス機能を強化することを求めます。
 また都は、東京ガスの豊洲土地取得を最優先させたため、都庁全体に東京ガスに損をさせない仕組みを構築し、土壌汚染対策を初めとして、東京ガスの要請に伴って、減価や支援策などによる譲歩や利益供与を実行し、都民に大きな負担をかけました。
 都として、東京ガスとの協議の総括を作成するとともに、今後、地方自治体として、公平、公正な立場で都民に説明ができる協議を行うことを求めるものです。
 さらに、都は東京ガスから、公共施設の土地取得協議として不適切な、情報公開を避けるために口頭で確認を行うことなど、水面下での交渉を受け入れてきました。そのため、協議文書が作成されないなど、豊洲市場移転問題に関する記録が欠落をしていることから、公文書の作成、管理、保存を徹底することを求めます。
 築地市場の豊洲移転に関する協議事項(確認)と築地市場の豊洲移転に関する東京都と東京ガスとの基本合意に当たっての確認書を都と東京ガスの間で締結する際に、公印を使わずにサインで記入し、文書の特定や開示を故意に避けるような手法が行われました。
 このような手法が横行しないよう、私文書を問わず、都庁内外とのやりとりに使用した文書全てを対象とする公文書管理条例を制定することを求めます。
 そして、都民が情報公開を求める情報をさらに積極的に提供していくなど、都民に説明責任を果たしていくことを求めるものです。
 ここで、本委員会での委員の発言について申し上げます。
 都議会自民党の河野ゆうき委員より、本委員会に提出された資料の信憑性を疑う発言、そして本委員会の全員一致で出頭を要請した証人に対して、その必要性を否定するかのごとくの発言がありました。これらの発言は、本委員会の権威をみずからおとしめる行為であり、委員みずからが猛省すべきものであると申し上げておきます。
 また、桜井浩之委員長の職責放棄によって二十日間も委員会が開会されなかったことは、委員会での審議、真相の追求に多大な悪影響を及ぼしました。四月二十八日に委員長不信任動議が可決されたことは至極当然のことであり、また、本委員会において記録にとどめるべき事項であると申し上げておきます。
 東京改革議員団は、本委員会での調査結果及び豊洲市場移転問題特別委員会など他の委員会における審議結果を踏まえ、都に追加対策の実施や情報公開の徹底などを求めていくことで、安全・安心な豊洲市場の開場に向けて取り組むことを申し上げ、意見の開陳を終えます。

○谷村委員長 酒井大史副委員長の発言は終わりました。
 吉田信夫理事。

○吉田委員 日本共産党都議団を代表して意見開陳を行います。
 本委員会は、石原元知事の尋問時間が全体でわずか一時間、我が党は九分などの制約がありましたが、百七十四箱もの東京ガスや都の関係局から記録を提出させ、二十四人の証人尋問を行いました。
 その結果、石原元知事の責任を明らかにさせるなど、築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転に関し、闇となっていた一部を明らかにすることができたことは極めて重要と考えます。
 同時に、重大な事実が明らかになりながら、部分的解明にとどまっている課題も残されました。
 さらに、調査項目の中で当初の二・七倍、二千七百九十二億円にもはね上がった工事契約に関する調査は全く行われていません。にもかかわらず、調査、尋問を打ち切ったことは、都民の批判は免れません。
 以下、これまでの調査、尋問で明らかになったこと、さらに、部分的解明にとどまっており今後解明が必要なこと、そして、調査がされていない問題等について意見を表明します。
 本委員会の調査、尋問で明らかになった最大の事実は、石原元知事が、汚染を知りながら豊洲移転を決定し、東京ガスに瑕疵担保責任を免責し、汚染対策費は七十八億円しか求めないことを了解し、売買契約を結んだことが確認されたことです。
 石原氏はこれまで、汚染についても契約内容についても知らない、判断を求められることはなかったという態度をとり、豊洲移転は既定路線だったと説明してきました。
 昨年十月十四日付で提出した小池知事の質問への回答書では、豊洲の中の東京ガスの敷地であるとまでは聞いた記憶はありません、したがって、ご質問のような、すなわち汚染問題は聞いておりませんと回答、瑕疵担保責任の放棄について、ご質問の事項について知事としての判断を求められることがありませんので、全くわかりませんと回答、さらに、汚染対策費の東京ガス負担が七十八億円だったことも、今思えばアンフェアだと思いますが、私の判断を求められることがありませんでしたから全くわかりませんと答えています。
 しかし、百条委員会の調査と尋問を通じて、こうした石原氏の回答が虚偽であることが浮き彫りになりました。これは、移転問題の責任を明らかにする上で極めて重要です。
 まず第一に、築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転は、石原知事以前の既定路線ではなく、石原氏によって決裁がされたことが確認されました。
 大矢元市場長は、移転先を東京ガス豊洲工場跡地とすることについて、自分が説明し、最終的に知事も、そうか、豊洲しかないかと、こういう話で了解しておりますと陳述し、石原氏自身、決裁をお願いされ、わかりました、それでは決裁しましょうということで決裁をいたしましたと陳述しました。
 以上の陳述から、築地市場の移転先を豊洲東京ガス工場跡地と決定、決裁したのは石原氏であることは明白であり、既に決まっていたかのような発言は、責任を逃れようとするものです。
 第二に、石原氏は、東京ガス豊洲工場跡地移転のために、主導的、積極的に動いてきたことが提出された記録によって確認されました。
 中央卸売市場から提出された記録、Gブリ概要では、一九九九年八月十三日、石原氏は市場問題の報告を受けた際、ローリング、すなわち築地再整備だと思いますが、なんかやっていられない、移転しかない、そして築地市場には視察に行くと発言しています。
 さらに、福永副知事が十一月十一日に東京ガスを訪問する前に、石原氏は上原東京ガス社長と面談し、移転問題について話し合っていたことがわかりました。そして、上原社長の正式に聞いていない旨の発言を受けて石原氏が、おまえ何やっているんだという話があって、すぐ東京ガスの社長にお願いに行けといわれたと大矢氏は陳述しています。
 第三に、石原氏は、移転先が東京ガス工場跡地で深刻な汚染があることを承知で移転を決裁したことです。
 先ほど述べたように、石原氏は、汚染問題も東京ガスの工場跡地だったことも知らなかったと小池知事の質問に回答しました。しかし、十一月十七日には、政策報道室など四局で石原氏に豊洲地区の土壌汚染についてをテーマに報告していた記録がありました。報告書には、Gブリ、情報管理は厳重にと記され、表層部を中心とした操業に伴う汚染のほかに、おおむね地下三メートル付近を中心に、土壌環境基準を超えてヒ素、鉛等が存在することが判明したと書かれていました。
 だからこそ大矢氏が、石原氏はガス工場跡地とは知らなかったと回答したことについて、初めて聞きましたけど、信じられませんと陳述したのも当然のことです。
 さらに、石原氏自身、決裁に当たって、豊洲のいろいろ土壌の汚染の問題もあるけれども、それは確かに解決できるんだろうかなと陳述していることでも明白です。
 第四に、石原氏が、瑕疵担保責任の免責も、汚染処理費の東京ガス負担がわずか七十八億円だったことも、知らないどころか、説明を受け了解していたことが確認されました。
 岡田元市場長は、東京ガスの負担額について、市場長就任から早い段階のブリーフィングで知事に八十億円ということを説明した記憶がございますと陳述、さらに七十八億円について、二〇一一年三月二十二日付で知事に説明した資料があり、説明をやったんだろうと思いますと陳述しました。
 実際に、都が提出した、新市場の用地取得と土壌汚染対策に関する東京ガスとの負担合意についてという契約に当たっての知事への説明文書では、東京ガスと合意した負担額として、金額七十八億円(都の実施する対策費総額五百八十六億円)と記載されています。
 また、瑕疵担保責任の免責についても岡田氏は、副知事、そして知事にですね、最終段階で上げて説明をしたんだろうと、そういう形でご了解をいただいたと陳述しました。
 しかも、昨年の小池知事の質問に対する回答では、記憶にないではなく、私の判断を求められることはありませんでしたと回答しているのです。責任を逃れるために記憶にございませんと陳述した石原氏の態度は到底見逃せません。
 以上、石原元知事の移転判断に当たって、予定地の汚染を知らず、売買契約に当たって、瑕疵担保責任免責も汚染処理費の東京ガス負担がわずか七十八億円だったことを知らなかったという主張は全く逆で、全て知った上で、石原氏が移転も売買契約も判断していたことが明白になりました。
 総額で約六千億円を投入しながら、いまだに汚染が残され、使用不能な施設をつくった石原氏の責任は重大であり、到底見過ごすことはできません。
 また、本委員会で、記憶にないとの陳述を繰り返し、責任逃れを図ろうとした態度は、本委員会を侮辱するものです。
 よって、本委員会及び都議会として、石原氏の責任と態度を厳しくただすべきことを提案します。
 次に、本委員会での調査、尋問を通じて、二〇〇一年の覚書、基本合意と一体に、ひそかに東京ガスへの優遇策を約束した確認及び確認書が結ばれていたことが明らかになったことは重要です。
 この確認書によって、都が、土地売却の合意を得ることを優先し、東京ガスいいなりの対応をとってきたことが浮き彫りになりました。これは、交渉を主導した濱渦元副知事の責任の重大性を示すものです。
 基本合意は、初めて東京ガスが豊洲移転に協力することを表明し、その条件について合意をした文書ですが、具体的な条件は確認書に記載されていました。
 その確認書では、東京ガスが求めてきた、防潮護岸整備費の負担を同社はしないと明記し、全体で東京ガスの負担が四百八十六億円も削減されること、さらに、汚染土壌の処理について、現処理計画により対策を実施し、その完了を確認した後、土地の譲渡を行うと明記されています。この現処理計画は、全ての汚染を除去するものではなく、売却時には汚染が残るという計画でした。
 さらに、記録と尋問を通じて、汚染処理は東京ガス側の計画で了承し、防潮護岸の整備費負担をなしにすることは、東京ガスにとって売却決断の重要課題だったことが明らかになりました。
 都と東京ガスとの二〇〇三年四月三日の打ち合わせ概要記録では、東京ガスは、今の処理計画が不満なら話が白紙に戻ると発言、五月二十九日の打ち合わせ概要では、今の計画でよい旨確認している、だからこそ、東ガスは売却に応じたとの発言が記録されています。尋問でも東京ガスの丸山証人は、土壌汚染の問題というのは非常に大きな課題だったというふうに確認し、判断の一つの要因だったと思いますと陳述しています。
 さらに、防潮護岸の負担問題は、移転の交換条件のようなものなのかの尋問に、濱渦氏も、おっしゃるとおりですと陳述しました。
 次に、濱渦氏は陳述の中で、基本合意以降は豊洲移転交渉から外れ、一切の相談もなく、報告もなく、確認書も知らないと述べましたが、記録と尋問を通じて、この陳述は偽証であることが明白になりました。
 我が党は、記録の中から、二〇〇三年五月二十二日に濱渦氏宛てに三局の部長連名で、東京ガスとの交渉に臨む対応方針について判断を仰ぐ文書を発見しました。この文書では、同年三月に濱渦氏から対応について指示があったことも書かれています。
 また、報告の有無に関して、我が党が、二〇〇三年二月十日に当時の市場長が豊洲新市場建設状況について濱渦氏に報告した記録があることも明らかにしました。この記録では、濱渦氏は報告に対し、わかりました、跡地については慌てないことと発言したことも記されています。
 しかも、濱渦氏は四月十日の記者会見で、市場長が説明したことはあった、聞かれたら答えたと事実上みずからの陳述を修正しました。
 確認書について、赤星証人も、知らない、了解していないと陳述を繰り返し、署名の当事者である野村証人は、基本合意と一体の文書であり、組織的な合意文書であると陳述しながら、最後まで決裁者の名前を明らかにしないという態度をとりました。
 こうした異常なまでの態度は、責任者である濱渦氏に責任が及ばないようにするものと推察されます。
 なお、偽証認定、告発をめぐっては、自民党委員長は、理事会での偽証認定の採決に、手続に入ることをみずから提案し、確認したにもかかわらず、その直後にこの協議の過程が無理やりで、ためにする告発などと誹謗し、委員長辞任を表明するという驚くべき事態が起きました。当然、委員長不信任が可決されましたが、偽証告発を妨害するかのような自民党の態度は許されないことを改めて指摘しておきます。
 次に、今回の陳述を通じて、深刻な汚染問題についても、東京ガスから土地を売る約束を引き出すことが優先され、まともな検討がされなかったことも浮き彫りになりました。
 石原氏は、今の技術をもってすると可能、濱渦氏は、技術的には解消できるなどと陳述しました。また、濱渦氏は、可能との判断は市場長に尋ねましたと陳述しました。
 その大矢元市場長は、我が党の尋問に対し、部下が聞いてきた専門家とは誰で、どのような根拠で可能と判断したのか確認はしていなかったと陳述しました。
 さらに注目すべきは、大矢元市場長が、東京ガスが売ってくれるかどうかが最大の戦略目標だったとし、汚染問題について、安易な判断だといわれりゃあそれまでと陳述、濱渦氏も、汚染対策より先に用地の取得の話があると陳述しています。
 このように、石原、濱渦氏が、用地取得が最優先で、汚染の深刻な実態と対策についてのまともな検討もせずに移転を決定したことは重大です。
 次に、本委員会の調査、尋問を通じて、これまで指摘した以外にも、まだ部分的ですが、重要な問題が明らかにされました。
 その一つは、我が党が前川証人尋問で明らかにした、自民党幹部が土壌汚染対策費の負担に関して、前川東京ガス執行役員を通じて打診してきたことです。
 前川氏は、記憶にないという陳述に終始しましたが、東京ガスからの提出記録では、二〇〇八年七月二十三日、内田幹事長ほかから、費用負担も含め、十月末決着したい、東京ガスが自発的に負担する旨、事前にいってほしいとの打診を受けたと前川氏が報告したメモがありました。
 また、八月十一日の星野常務の打ち合わせで前川氏が、内田自民党都連から、対策発表前に東京ガスから費用負担について発表できないか打診ありと発言したことが記録されています。
 重大なことは、記録では、内田氏の打診内容と同じ打診が七月十六日に当時の知事本局の吉川局長からも行われたことです。これは、内田氏の打診は、都の意向、要請のもとに行われた可能性が高いことを示すものです。
 当時、土壌汚染の再調査の結果、基準の四万三千倍ものベンゼンが検出されるなど、広範囲にわたって深刻な汚染が残されていることが明らかになり、都としても移転の再検討が求められていた時期でした。そのときに、あくまでも移転推進の立場からこうした打診をしたことは見逃せません。
 また、自発的な負担という提案は、東京ガスの負担責任を回避させ、深刻な汚染発覚による移転の停滞を避けようとする意図があったことも明らかです。
 結果的に、東京ガスは既に処理責任は果たしており、あくまでも追加負担は自発的だとして、わずか七十八億円しか負担しなかったように、この打診は、東京ガスの負担軽減のレールを敷いたともいえるものです。
 我が党は、内田氏の証人尋問を提案しましたが、この時期に、誰からの要請を受けて、自民党都連の最高幹部が東京ガスに打診を行ったのか、石原知事サイドか、それとも建設事業関係者なのかなど、解明されなければなりません。
 また、記録で明らかにされた以外にも、自民党などが移転と新市場建設をめぐって、どのようにかかわってきたのかも明らかにする必要があります。
 次に、東京ガスに移転協力を約束させる鍵となった確認書をめぐる謎の解明です。
 野村証人は、繰り返し尋問を受けながら、誰の了承のもとに確認書作成を進め、そして、誰の決裁によって確認書にサインしたのか明確に陳述しませんでした。
 しかも、重要な文書でありながら、これが提出されたのは東京ガス側からであり、都が当委員会の再要請を受けて提出をした確認書は、ファクシミリで送付された文書でした。
 誰の指示のもとで重要な文書が東京ガスと交わされたのか、文書はどのように扱われたのか、不明なままにするわけにいきません。
 豊洲移転の真相解明とともに、都政における基本的な決定手続の透明化という点でも、議会として継続調査するとともに、都としても、過去の当事者への聞き取りも含め徹底した調査をすることを求めるものです。
 我が党の調査によって、東京ガスが、都の新市場整備部から途中段階の土地評価額を聞き、それを関係者に伝えていたことを示したことが明らかになったことも重大です。
 記録は二〇一一年一月二十一日付で、本日、新市場整備部より、先方の現段階の概算評価額を口頭で聞きましたとして、画地番号、所有者、概算評価額、換地設計価格が記載されていました。
 我が党は、この行為が事実なら公務員の守秘義務に反する行為だとして、当時市場長だった岡田氏にただしました。岡田氏は、この件につきましては存じておりませんでしたと陳述しました。
 しかし、都の委託で鑑定を行った鑑定士は、我が党の尋問に対し、一人の方は、東京都のご担当の方から、概算でいいから都に数字が欲しいというお話があり、お話ししておりますと陳述。もう一人の方も、数字を東京都の担当の方にお出ししたということは覚えておりますと陳述しました。尋問によって評価額の情報提供が事前に行われていたことが確認されました。
 誰の指示によってこうした情報提供が行われたのか、責任を明確にするとともに、再発を許さないための措置を確立する必要があります。
 次に、東京ガスの記録から、東京ガスの別のガスタンク跡地の汚染したと思われる土壌が豊洲に運ばれ、盛り土や道路下に使われた可能性があり、東京ガス自身が、汚染が明らかになる危険やその場合の対応方針など、顧問弁護士と相談していたことがわかりました。
 この記録は、売買契約を結ぶ直前の二〇一一年二月二十一日付の土地売買、用地費用、課題解決状況と題する文書で、新宿PT盛り土の取り扱いという見出しの文書がありました。そこでは、市場が都市整備と調整しているが、見通し立たずと紹介し、本件(六万四千立方メートル)のみであればリスクは残土搬出(六億四千万円程度)だが、既に道路下等で活用した分に飛び火すると問題が大きいと記載されています。
 さらに、二月二十五日付文書でも、新宿PT仮置き土という見出しで、リスク内容として、区域七に残された六・四万立方メートルから新たな汚染が確認され、全ての除去を求められるとして、リスク回避策が検討されています。
 三月八日の文書では、新宿パークタワーの建設残土の仮置き土で、引き渡しが確認されていない約六万立方メートルという記載があり、新宿PTとは、新宿パークタワーを指すことは明らかです。ここは東京ガスのタンク施設があったところで、東京ガス株式会社淀橋供給所が明治四十五年に竣工し、一九九〇年までガスタンクが置かれていました。その土壌が豊洲に持ち込まれたのです。
 また、記録では、区画整理事業で受け入れた土なので、都としても汚染状況を明らかにしたくないものと想定できると記載されています。市場も都市整備局も汚染土壌と知っていた可能性もあり、汚染の実態、搬入することになった経過など、真相を明らかにする必要があります。
 東京ガスが市場移転を受け入れる上で、東京ガスが以前から進めてきた豊洲開発の推進で都と一致したことも土台にあることが東京ガスの記録から浮き彫りになりました。
 本委員会で取り上げられた二〇〇〇年十二月の東京ガス訪問時の赤星発言は、都が安全宣言で東京ガスを救済することを条件に移転の合意を迫ったことが注目されましたが、文書の作成日も作成部署も記載されていない文書でした。
 一方、我が党は、二〇〇一年一月十七日付、財活推進室の豊洲地区大街区区画整理事業の大転換について(案)と題する文書に注目しました。この文書では、二〇〇〇年十二月十四日、都が東京ガス側に、臨海開発に係る四島で分担する開発者負担をガラガラポンして考え直すと提案したことが記載され、これを、都知事サイドの大転換と東京ガスは評価しています。
 そして、文書では、十二月二十二日の赤星提案として、国費投入による開発の加速や、開発者負担をゼロにするのは難しいがフレームを変えれば負担を減らすことが可能などと記載され、一月十二日の市野会談でも開発フレームの変更が書かれています。
 そもそも九九年十一月五日には、石原知事が会った際に上原社長が重視したのは豊洲の開発でした。そして、合意の出発点となった二〇〇〇年二月の覚書と一体の確認文書でも、基本項目の(1)で市場を盛り込んだまちづくりプラン再構築のための基本フレーム見直しが記載されていました。
 こうした文書を見ると、東京都自身も移転を契機に豊洲地区、臨海部の開発を促進しようという思惑を強く持っていたことが浮かび上がります。こうした問題についても、さらに調査、解明が求められます。
 最後に、本委員会は、本会議で全会一致で可決された豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置要綱に基づいて調査を行うことが義務づけられています。この要綱が定めた調査事項のうち、不十分ながらも調査が行われたのは主に(1)、移転に関する経過、(2)、交渉、土地売買に関する経過です。(3)、土壌汚染対策は部分的にしか尋問されず、(4)、豊洲市場建設工事における契約事務に関しては、調査も尋問も全くされていません。
 豊洲移転問題の闇ともいえる問題の一つが、三街区の施設建設工事がどれも一者入札で落札率九九・八七%、談合の疑惑が濃厚でした。しかも、当初の入札には、いずれの共同企業体もいわば拒否し、そのために、都はゼネコンから要望を聞き、わずか一カ月後に予定価格を六割も引き上げ、二回目の公募をしました。そうしたやり方が、建設費が約一千億円から二千七百億円に急増した原因です。しかも、談合情報が寄せられながら、都はこれを無視しました。
 また、共同企業体参加企業の中には、自民党幹部が監査役を務める企業もあり、受注企業と政治家との関係の解明も求められました。にもかかわらず、工事契約について調査も尋問もしない結果となったことは、百条委員会にとどまらず、都議会自体が都民から厳しく問われるものです。
 我が党は、理事会等の中で、あくまでも調査項目によって調査を行うこと、とりわけ工事契約をめぐる真相解明のために、受注したゼネコンなどの証人尋問を行うこと、証人尋問は継続することを提案しました。
 しかし、自民党委員長は、理事会で証人尋問の打ち切りを提案しました。我が党だけでなく、東京改革、都民ファースト、生活者ネットの皆さんも尋問継続を求めました。公明党は打ち切りに反対を表明しませんでした。この結果、尋問は打ち切られてしまいました。工事契約などの重要な調査を残しながら、尋問打ち切りを推進した自民党の責任は重大です。また、打ち切りに反対しなかった党の責任も問われます。こうした対応と結果は、都民の批判を免れないものです。
 我が党は、都民の期待に応え、都議会としての責任を果たすために、引き続き独自の調査を進めるとともに、都議選後の新たな議会のもとで引き続き百条委員会を継続して設置し、調査課題の全面解明を行うことを提案するものです。
 最後に、まだ全面解明には至っていませんが、これまでの本委員会の調査、尋問によって、築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転がいかに重大な問題があるかが明確になりました。またこの間、都民を欺いて進めてきたことも浮き彫りになりました。
 よって、東京ガス豊洲工場跡地への築地市場の移転は速やかに中止し、築地での再整備に向け、英知を尽くすべきことを述べ、意見開陳を終わります。

○谷村委員長 吉田信夫理事の発言は終わりました。
 おときた駿委員。

○おときた委員 私は、都民ファーストの会東京都議団を代表し、本委員会に付託された調査事項について、これまでの調査結果を踏まえ、東京ガスからの土地売買における水面下交渉に重大な過失とガバナンスの不在があったこと、そして、一連の疑惑をこれまで隠蔽してきた濱渦元副知事を初めとする関係者と、任命責任、決定責任を負っていた石原元知事らに対して、厳しく責任を問うていくという立場から意見表明を行います。
 本年二月に全会一致で可決、設置をされた本特別委員会では、段ボール箱、最終的に百七十四箱にもなる資料の調査と二十三時間に及ぶ証人尋問を経て、多くの事実が明らかになりました。
 限られた今回の調査期間では、なぜ豊洲になったのか、東京ガスが難色を示していた土地売却が、石原、濱渦体制のもとで行われた水面下交渉によって、どうして一転してまとまることになったのか、こうした点を中心に精力的な調査が行われました。
 結論から申し上げますと、我々の調査によって明らかになったのは、当時交渉を主導していた濱渦副知事らが、土壌Xデーなる単語を使って豊洲の土地所有者である東京ガスに政治的圧力ともとられかねないものをかけると同時に、一部の関係者しか存在を知らない確認書によって密約を結び、都民益を損ねることにもなりかねない強引な土地取得交渉を行っていた実態でした。
 豊洲市場の土地購入をめぐる経緯を丹念に読み解くと、濱渦副知事の前任である福永副知事の時代には、東京ガス側は土地売却に強い難色を示し続けていることが、数多く残されている交渉記録から明らかになっています。特に先端部分、現在の六街区、七街区については、ほとんど売る考えはなかったといってもよいでしょう。
 ところが、平成十二年十月四日、交渉担当をバトンタッチした濱渦副知事による、水面下でやりましょうという記録を最後に、都側からの交渉記録は、ほぼ一切がなくなります。
 そして、平成十三年二月、急転直下ともいえるスピードで、土地売却を前提とした覚書が両者の間で交わされることになります。
 なお、その後に再び復活する都と東京ガスの交渉記録では、東京ガス側が、土壌汚染への対応について話が違うと述べれば、東京都側が、いったいわないでもめてもしようがないではないかなどといい返しているやりとりが散見をされます。
 この記録が不存在となっている時期に、一体どんな交渉が行われていたのか。口約束しかできないような、あれほどまめに記録を残していた都側が記録を抹消せざるを得ないような、何らかの穏便とはいいがたいやりとりがあったのではないか。その疑問を氷解させたのが、東京ガス側から提出された記録の中に存在した東京都政策報道室赤星理事との折衝内容なる資料です。
 都側の交渉役である赤星理事は、濱渦副知事からの指示として、土壌Xデーという単語を用い、この日を迎えれば土壌問題が噴出し、東京ガスが所有する土地の価格が下落する、結論さえ出せば石原知事が安全宣言で救済するから早急に結論を出すようになどの旨の内容を伝える様子が記録をされています。
 そのほかにもこの資料には、複数の有力国会議員の名前を出しながら交渉妥結を迫る様子の記載もありました。そして、この東京ガス側の記録の作成者は末尾に、おどかしてきた、これ以上議論をしても無駄など、激しい憤りを節々ににじませつつ、終盤には以下の約束をしたとして、今後は土壌Xデーまでには方向を出すべく双方努力することなどが取り決められています。これによって東京ガスがこれまでの態度を一変させたとしたら、これは驚くべきことであり、国政にまで言及した明白な政治的圧力といえます。
 なお、この土壌Xデーが何を意味しているのかは必ずしも定かにはされておりませんが、都の環境確保条例を上回る厳しい基準が国によって定められる、土壌汚染対策法の方針、内容が発表され、この基準が東京ガスの所有地に何らかの形で影響を及ぼす日を指しているのではないかと推察をされます。
 本来は都民の安心・安全を守る法律や条例などのルールを利用し、石原知事が安全宣言で東京ガスの土地を救済するなどと発言し、交渉を進めていたことが事実であれば、都民に対する重大な裏切り行為であり、批判のそしりを免れることはできません。
 そして、このような高圧的な交渉を展開する一方で、濱渦副知事らは東京ガスと密約ともとれる合意を結んでいたことも明らかになりました。
 これまで述べてきたような強気な交渉がむちの部分だとすれば、一方では、あめともいえる取引も存在していたのです。それが、この特別委員会が開催されるまで東京都がかたくなに隠蔽していた確認書の存在です。
 平成十三年七月に野村元政策報道室部長の私印によって締結された確認書の内容は、驚くべきものでした。そこには、土壌汚染対策について、汚染土壌が残置された状態で可とする旨が明確に記載をされていたのです。
 東京ガスが豊洲の土地売却を渋っていた最大の要因の一つは土壌汚染対策です。ガス工場の操業由来の物質で汚染された土地を完璧に浄化しようと思えば、途方もない手間とコストが発生します。
 しかしながら、その多くを東京都が負担するというのであれば、話は全く別です。何のことはない、濱渦副知事は、困難な交渉をまとめたタフネゴシエーターでも何でもなく、汚染土壌が残置されたままでもよいと大幅な譲歩を行い、交渉を取りまとめただけだったともいえるのではないでしょうか。
 ここで東京都が譲歩した内容が、その後に判明した高濃度の汚染物質除去に対応する際の基準となり、結果として瑕疵担保責任を東京ガス側に強く求めることができず、莫大な都税が汚染除去に投じられることになりました。
 このとき、土壌汚染費用がどこまで膨れ上がるのか、その見通しを濱渦副知事らが持っていたのか、正確なところははかりかねます。しかしながら、都民に不利益をもたらしかねないこの妥協、譲歩は、濱渦副知事らにとって絶対に知られてはいけない暗部だったのでしょう。だからこそ、この確認書の存在は都庁内では闇に葬られ、歴代市場長にも知事本局長にも引き継ぎ共有されることはありませんでした。
 一方で、交渉相手の東京ガスは、この内容を二者間合意として確かに認識しており、この確認書が効力とともに実在していることを証明しています。
 濱渦副知事は、みずからの交渉でこのような妥協を図ったことをかたくなに認めず、証人尋問の中で二つの疑わしい主張をしています。
 一つ目は、平成十三年七月の合意書締結以降は、市場移転問題については一切かかわっていない、自分がいればこんなこと、つまり多額の土壌汚染対策費を都が負担することにはならなかったとする旨の発言。二つ目は、そもそも汚染土壌が残置されるとする確認書の存在を、私は一切知らない、役人が勝手にやったことだとする旨の発言です。
 前者については、平成十七年七月以降も濱渦氏が市場移転に携わった記録は複数存在します。さらに、知事本局長として当時の都庁を誰よりもよく知る前川証人が、当時の体制は、濱渦副知事が実質的な権限者である旨も繰り返し証言をしています。加えて、自分がいればこんなことにはならなかったという主張は、むしろ全くの逆で、濱渦副知事らがここで交わした密約が禍根となっていることは、既に触れたとおりです。
 後者の確認書の存在についても、署名をした野村証人が独断でやったことではなく、上司に報告を上げたことを認めています。
 確かな公的記録の存在、加えて百条委員会における証人の証言、この二つがそろったことで、濱渦氏がもっともらしく主張していた発言の数々は、偽証の疑いが極めて濃厚であると断じざるを得ません。
 同様に、交渉の責任者として証人尋問された赤星理事も確認書の存在を否定していることは、記録の存在から、その矛盾、偽証の疑いは極めて強いといえます。
 以上述べてきたように、これまでの百条委員会の調査、尋問を通じて、今日に至る市場移転、とりわけ土壌汚染対策をめぐる混乱の原因は、濱渦、石原都政下における意思決定にあったことが明らかになっています。水面下でこのような交渉という名の不都合な妥協が行われ、それが共有されていないというブラックボックス状態は、まさに盛り土問題にも通じる都庁のガバナンス欠如を示しています。
 これらの全ての交渉過程において、石原元都知事は、一切を知らない、任せていたという証言をしていますが、その任命責任、政治的責任から免れることは到底できません。
 このような無責任な意思決定体制を看過してきたことは厳しく問われるべきですし、また、証人尋問における証言が、それまでのマスコミへの発言と乖離していた点についても、極めて遺憾であるといわざるを得ません。
 このように、豊洲の土地売却の経緯については真相が明らかになった一方で、本特別委員会では、建設費の高騰や入札不正疑惑などの問題点に、時間的制約などの関係から踏み込んだ調査ができなかったことは大きな心残りの一つです。
 また、調査、尋問の過程において、一部の議員から公的記録の存在を疑問視する発言があったり、あろうことか、委員会をつかさどる委員長がその職責を放棄して任を投げ出すなどといった信じがたい行いも発生しました。これらの行為は、都議会の総意で設置された本特別委員会の権威を著しく毀損するものであり、その責任は極めて重いということを、ここで改めて申し述べておきます。
 こうした事態を乗り越えて、いずれにいたしましても、本委員会での調査によって大きな進展があったことは紛れもない事実といえます。
 土地売却の過程で判明した不適切なプロセスについては、今後の都政運営の課題として抜本的な改善を促すとともに、今回の調査結果をもとに、今なお未解決である市場移転問題の解決に向けて、都民ファーストの会東京都議団として全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げまして、私の意見表明を終わります。

○谷村委員長 おときた駿委員の発言は終わりました。
 西崎光子委員。

○西崎委員 都議会生活者ネットワークを代表して意見開陳を行います。
 豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置要綱において定められた調査事項に沿って意見を述べます。
 まず第一に、築地市場から豊洲市場への移転に関する経緯についてです。
 都議会生活者ネットワークは、豊洲への移転については一貫して反対し、築地再整備あるいは晴海移転を主張してきました。
 本委員会においては、バブル経済崩壊後の豊洲市場移転問題と豊洲・晴海開発計画との関係について、四島(臨海地域、晴海、豊洲、有明北)の開発や、環状二号線、補助三一五号線などの関係についてただしてきたところです。
 豊洲問題の根源には、臨海開発の破綻と豊洲・晴海開発計画との関連があると考えます。バブル崩壊以降、地価が下落し、東京都の臨海開発のスキームが頓挫し、豊洲・晴海開発計画も足踏み状態でした。そのため、市場の豊洲移転を開発の起爆剤としたいとの意思が働き、この計画が始まったということを改めて指摘しておきます。
 次に、東京ガス株式会社などとの交渉及び土地売買に関する経緯についてです。
 この問題と調査事項である豊洲汚染対策については、本委員会の最も重要な課題であったと認識しています。
 そこで、本委員会において明らかになったことについて意見を述べたいと思います。
 第一は、いわゆる水面下交渉の実態が明らかにされたことです。
 結局のところ、水面下交渉とは、基本的には東京都側に交渉記録を残さないということであったという事実が明らかにされたということです。そしてこの問題は、本委員会が東京ガス側の証人を喚問した結果、東京ガス側から大量の書類が提出されたからこそ明らかになりました。
 仮に本委員会が設置されなかったとしたら、大量の交渉記録が作成されていたという事実は明らかにできなかったわけで、本委員会を設置した意義は、この事実一つとっても極めて大きなものであったということを強調しておきたいと思います。
 逆にいえば、東京都は、用地買収交渉という重要な事案の経緯を議会や都民から隠蔽し続けてきたのであって、その責任は極めて重いです。
 第二は、土壌汚染対策と護岸工事に関する問題です。
 土壌汚染対策に関する最終結論は用地売買契約書に表現されています。すなわち、豊洲地区用地の土壌汚染対策の費用負担に関する協定書、用地売買契約と同時に平成二十三年三月三十一日に締結されたものに基づくとされたものです。この協定書は、今後、東京ガス、東京ガス豊洲開発は土壌汚染にかかわる費用は負担しないと明記されていました。いわゆる土壌汚染対策の免責、瑕疵担保責任の免責です。
 また、防潮護岸の整備にかかわる開発者負担の見直しについては、平成十三年二月の覚書(濱渦副知事の公印)によって見直すことに合意し、その後の平成十三年七月の築地市場の豊洲移転に関する東京都と東京ガスとの基本合意(濱渦副知事)に当たっての確認書の存在が明らかになりました。
 この確認書は、本委員会においては二者間合意と呼ばれるものでしたが、この確認書は、当時の知事本部野村寛氏によるサインのものでした。そこには防潮護岸の開発者負担はなしとすると明記されていました。この確認こそが、以降の交渉や契約書を規定することになったのは明白です。
 さて問題は、この土壌汚染対策と護岸整備にかかわる交渉経緯と最終判断、責任の所在の問題です。野村氏サインによる確認書の存在は、本委員会がなければ闇に葬られてしまったものであり、その他の交渉記録はさきに述べたとおりです。
 東京都側に交渉記録がほとんど残されず、公文書である確認書さえ保管されていなかったという事態は、問題の責任所在を曖昧にし、最終責任者であった石原元知事の逃げ道をつくることになりました。
 第三は、本委員会における偽証の問題です。濱渦元副知事と赤星氏の本委員会における偽証は明らかです。
 まず、濱渦元副知事についてです。それは、平成十三年七月の基本合意以降のことは知らないという認識のもとの数々の証言です。平成十五年五月二十二日の三名の部長による、豊洲地区土壌汚染対策について指示を仰ぐお伺い文書や、本委員会における前川証言、野村証言から明白です。
 四月四日の前川証人の発言では、十七年確認について、私も記憶していますが、こういった重大な問題を濱渦さんに上げないということは、これは大変なことでありましたから当時は、担当の部課長に確認をして、お手紙を出して、それで特段の指示はなかったということを聞いたことを覚えていますと証言しています。
 赤星氏については、濱渦副知事からの交渉指示の否定や、平成十三年二月と七月の覚書と基本合意と一体の確認及び確認書という存在そのものは知らないといっていることに対し、野村証人は、基本合意を結んで、そこには基本的な事項、細目について確認書に載せるやり方をとっていたので、当然基本合意を結んだから、それに付随して一体のものを、確認書をつくるという理解をしていましたなどと証言しています。
 このことからも、濱渦氏、赤星氏の偽証は明白です。
 この二人の偽証はもちろん大きな問題で、二人に対する最終的な判断は本委員会において行うことになりますが、もう一つ見逃してならない問題を指摘したいと思います。
 それは、豊洲市場問題がこれだけ大きな問題となり、とりわけ用地取得や土壌汚染対策、建物の建築などに六千億円に迫る費用負担を都民に強いたことに対する責任感の欠如です。
 都庁において、知事を補佐する副知事濱渦氏は、都庁に登庁することの少ない石原元知事にかわる強力な権限を行使していたとの前川証言もあります。赤星氏は、総務局長まで務めた都庁官僚とは考えられないような証言の数々は極めて残念であり、無責任です。
 次に、土壌汚染対策以外の、豊洲市場の主な建物の下に盛り土が行われなかった経緯です。
 この問題では、四人の元中央市場長が証言しました。しかしその証言は、四人とも盛り土がないことについては知らないとの証言でした。
 また、この問題は、小池知事のもとに設置された豊洲市場地下空間に関する調査特別チームが二度にわたって自己検証を行い、第二次検証報告書においては、関与したとされる部長級職員の氏名を報告し、新市場担当部長は職責を全うしていない、管理部長は職責を全うしたとはいえない、市場長は事務方の最高責任者としての責めを免れないとして、責めを負うとされました。これら職員はその後、処分されることになりました。
 しかし、豊洲市場地下空間に関する調査特別チームの報告書はもとより、本委員会においても、石原元知事を初め、最終的な判断は誰が行ったのか、このことについては明らかにされませんでした。
 しかし、本委員会の責任として、都民に対して明らかにすることが必要であり、その当時最高責任者であった石原元知事の責任は重大だと考えます。
 そのほか、調査事項として挙げられていた豊洲建設工事における契約問題については、証人喚問を行うまでには至っていません。
 この課題は現在、都政改革本部の内部統制プロジェクトチームが入札改革のあり方を議論しているところであり、去る五月十五日にも業界団体からの知事ヒアリングが行われています。今後の議論の深化と入札改革に向けた方針が確立されることを求めたいと思います。
 当然、この課題は都議会においても真剣に議論し、意見を集約していかなければならないと考えます。
 第二の問題は、東京都における文書管理についてです。
 東京都における文書管理の問題は、本委員会のみならず、豊洲市場地下空間に関する調査特別チームの検証過程でも明らかにされた課題です。その主な問題は、次の諸点です。
 第一は、東京ガス等との交渉記録が東京都にはほとんど保存されていなかった問題です。
 一度は保存していたにもかかわらず、いつかの時点で廃棄されたのか、もともと保存されていなかったのか、詳細は不明です。しかし、本来、作成し保存すべき交渉記録が、東京都から本委員会にほとんど提出されなかったという事実は非常に重いものがあります。
 第二は、野村氏サインの確認書が本委員会に提出されたものの、それは東京ガスから提出されたものだったという事実です。
 本委員会では、その確認書の存在そのものさえ否定するかのような証言さえあったのです。野村氏は、この確認書が公文書であることを認めましたが、仮に本確認書が保存されていなかったとすれば、問題として二点指摘しなければなりません。
 一つは、公文書作成と保存の一連の過程が無視されたことです。そして二つ目は、都議会や都民に対して事実を隠蔽しようとしたことです。
 第三は、豊洲市場地下空間に関する調査特別チームの検証過程で明らかにされた委託事業者との打ち合わせ記録の問題です。
 現在では、東京都に限らず、委託事業者との打ち合わせ記録は事業者側が作成し、自治体側と確認の上、自治体にも提出される方式になっていると考えられます。したがって、当然、委託事業者が作成したとはいえ、都側、中央市場にも提出されていたもので、事業者側の記録にも記載されています。
 そうした打ち合わせ記録は、中央市場が保存しておかなければならない重要文書です。しかし、残念ながら、この記録も調査特別チームに提出されたのは委託事業者からでした。
 以上のように、豊洲市場問題が明らかにした重要な問題の一つが文書管理の問題です。さすがに東京都も、東京都公文書の管理に関する条例案の概要の公表及び意見募集についての中で、先般、意思決定過程が明確に記録されていないなど、新たな課題が顕在化したと説明しなければならない事態に至っています。
 しかし、この公文書管理条例案も概要しか公表されず、東京都が都民に対して説明責任を果たしているとはいいがたい状況だと考えます。
 生活者ネットワークとしては、公文書管理条例と情報公開条例は車の両輪であると考えてきました。都民の期待に沿った条例案が提案され、都議会においても真摯な議論の展開によって条例が成立することを期待します。
 最後に、四月二十六日の理事会で、突然、桜井浩之前委員長が、これまでの委員会を否定し辞任したことは遺憾です。百条委員会では、証人喚問の尋問や書類の調査など、真摯に対応してきており、本委員会を愚弄し、その職務を放棄し、委員会運営を混乱させた責任は大きいといわざるを得ません。
 最後にこのことを指摘し、都議会生活者ネットワークの意見開陳とします。

○谷村委員長 西崎光子委員の発言は終わりました。
 以上で意見開陳を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時五十七分散会

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