都市整備委員会 管外視察報告

令和6年4月24日(水曜日)から4月25日(木曜日)
委員長 竹井 ようこ(立憲民主党)

 都市整備委員会は、都市づくり全般・住宅に関わる政策の立案、道路や鉄道などの都市基盤の整備、都市再開発事業などによる市街地の整備、住宅及び住環境整備、都営住宅の設置及び管理など、都民の生活に広く関わる幅広い分野を所管しております。

 近年は、気候変動の影響により頻発化・激甚化する風水害や、首都直下地震などの震災等、大きな被害をもたらす災害の発生リスクが高まっており、東京都においても、これまで経験したことのない危機に直面する可能性があり、住宅の不燃化・耐震化や道路の整備などにより都民の安全・安心を確保する都市の強靭化が喫緊の課題となっています。また、都市における緑の保全・創出や社会問題化している空き家対策などについても取り組んでいく必要があります。

 こうした状況を踏まえ、今回、都市整備委員会では、当委員会が所管する諸課題に対する調査として、平成28年の熊本地震で甚大な被害を受け、その経験を活かしながら復興事業を進めている熊本県における取組について、また、福岡県内における取組として、長年継続して取り組まれている建物における都市緑化の事例について、さらに、大牟田市における取組の空き家の有効活用事例について調査を行うため、4月24日から2日間にわたる現地視察を実施いたしました。

 その概要について、次の通りご報告いたします。

震災復興事業

益城町役場(熊本県:益城復興事務所)

 1日目は、熊本県を訪問しました。

 平成28年の熊本地震は、益城町において震度7の揺れが2度発生する大規模災害となり、熊本県内に甚大な被害をもたらしました。

 現地では、初めに、益城町役場の会議室において、熊本県、益城復興事務所及び益城町役場の方から、益城町における復興土地区画整理事業、熊本地震からの復興状況などについて、説明を受けました。当時、震源地に最も近い益城町では、市街地の家屋倒壊等により道路の交通機能が喪失し、緊急・応急活動に支障が生じるなど、防災面での課題も確認されたとのことでした。

 続いて、質疑応答では、首都直下地震を想定した場合に参考となる点、復興土地区画整理事業の施行に当たり苦労した点、県民の災害に対する意識の変化、災害関連死への対応策、被災認定や罹災証明の対応などについて、質疑が行われました。

 説明聴取の後、益城町役場の展望テラス、益城町復興まちづくりセンター、震災記念公園の現地視察を行い、益城町の復興の様子について確認することができました。

震災記念公園 益城町役場の会議室

都市型緑化事業

アクロス福岡(福岡県福岡市)

 2日目は、初めに、福岡市の中心部天神に位置する「アクロス福岡」を訪問しました。

 こちらの施設は、平成7年に、国際・文化・情報の交流拠点として設立された公民複合施設です。「アクロス福岡」では、初めに、都会の山「アクロス山」と呼ばれる屋上緑化施設のステップガーデン及び天神中央公園の現地視察を行うとともに、ステップガーデンを管理するエイ・エフ・ビル管理株式会社の方から、立体的な緑の創出方法、植生の変遷・現状・課題、ヒートアイランド現象軽減効果、雨水貯留機能などについて、説明を受けました。こちらでは、生物多様性保全へのサスティナブルな取組として、動植物の生息地や生態系の形成、四季折々の変化の演出、人工土壌の使用による建物の荷重の軽減などを行っているとのことでした。

 また、質疑応答では、人工土壌の使用において想定と異なった点、植栽の植替えのサイクル、メンテナンス費用などについて、質疑が行われました。

 当日は天気も良く、天神中央公園からステップガーデンの最上階までつながる緑は、なお一体感があるものでした。

アクロス福岡 天神中央公園

空き家対策

みんなの家リクシス(福岡県大牟田市)

 次に、福岡県大牟田市を訪問しました。

 現地では、空き家を地域の交流拠点として利活用した施設「みんなの家リクシス」において、施設の管理者等である社会医療法人親仁会及び社会福祉法人あらぐさ会の方々から、地域交流施設立ち上げまでの経緯や課題、開所後の運営などについて、説明を聴取するとともに、現地視察を行いました。

 また、質疑応答では、空き家全体の件数・空き家率・耐震性の調査、日常的な活動への行政からの支援、運営上の問題点、後継者の有無、固定資産税の免除などについて、質疑が行われました。

 大牟田市は、医療・介護の専門職と連携し、誰もが集える地域の交流拠点として、地域住民相互の支え合いづくりを目指しており、平成29年に開所した「みんなの家リクシス」では、病院主催の模擬店や認知症予防カフェ、商店街主催の出張販売などのイベントを定期的に開催しているなど、地域と連携した取組についても確認することができました。

地域交流施設立について聴取 空き家を地域の交流拠点として利活用

 以上、2日間という限られた日程ではありましたが、現地での取組を直接拝見し、活発な意見交換ができ、大変有意義な視察となりました。この視察の成果を、今後の委員会活動を通じて、都の施策に役立ててまいります。

 最後になりますが、この度の視察に際し、熊本県、熊本県益城町、エイ・エフ・ビル管理株式会社、福岡県大牟田市の関係者の皆様には、ご多忙にもかかわらず、懇切丁寧にご対応をしていただきましたことに、心から感謝と御礼を申し上げます。