公営企業委員会 管外視察報告

令和元年5月14日(火曜日)から5月15日(水曜日)
委員長 川松 真一朗(自民党)

 公営企業委員会は、交通局、水道局及び下水道局の公営企業3局が実施する各事業を所管しております。

 このたび、公営企業委員会では、5月14日から15日にかけて、管外視察のため、福岡県を訪問いたしましたので、概要をご報告いたします。

福岡市役所

ロープウェイ構想について聴取

 14日は、初めに、福岡市役所を訪問し、福岡市の「新たな交通システム」としてのロープウェイ構想について、説明を聴取しました。

 このロープウェイ構想は、現在、再整備が計画されている、博多港に面した「ウォーターフロント(WF)地区」と博多駅地区とを結ぶ、新しい交通手段として検討されたものです。

 WF地区は、MICE施設が集積し、クルーズ船が多数寄港するなど、国内有数の国際交流拠点ですが、再整備を行うことにより、更なる都市機能の向上や、国際競争力の強化を図ることなどが計画されています。この地区は、現在でもイベント時などは交通渋滞が生じている地域ですが、交通量の増加により渋滞の悪化が見込まれることから、新たな交通システムの導入の必要性が指摘されていました。

 ロープウェイ構想に当たっては、再整備の最終ステージである20年後までを想定して、人・自動車などの交通量の算出が行われ、それに基づき、地下鉄やモノレールなどの8つの交通システムを対象に輸送性・経済性・安全性や景観面までを含めた様々な観点からの比較検討がなされたとのことで、その内容についても今回、説明を聴取させていただきました。

 このロープウェイ構想は、私自身もかねてから注目していたものですが、今年の2月議会に検討のための予算案が提出されたものの、市議会における審議の結果、当該予算を削除する修正案が賛成多数で可決されることとなり、福岡市長は構想を白紙に戻すことの表明を行いました。

 福岡市としては撤回とはなりましたが、このたびの構想の過程での様々な分析・検討内容は、同様の課題を抱えている他都市にとっても大変貴重な資料であり、今回の視察において、その詳細の内容を聴取できたことは、大変有意義なものとなりました。

 説明聴取の後、委員からは、BRTの導入について、整備計画のスパンや費用負担について、MICEの経済効果の分析について、貨物物流の渋滞対策についてなど、様々な観点から質疑が行われるとともに、今後、ロープウェイ構想を再検討する可能性などについても意見交換させていただきました。

福岡市役所を訪問

福岡市中部水処理センター

福岡市中部水処理センターを訪問

 次に、福岡市中部水処理センターを訪問しました。

 福岡市中部水処理センターでは、下水処理の過程で発生したバイオガスを原料として水素を製造し、施設内の水素ステーションにおいて燃料電池自動車に供給する事業を行っています。

 この事業は、国のプロジェクトとして平成26年に採択され、福岡市、九州大学、地元企業の連携により、共同実施されているもので、下水を活用したものとしては世界初の試みとのことです。

 下水の処理と並行して汚泥からバイオガスを取り出し、バイオガスの主成分であるメタンに水を加え、約900度の高温の中で反応させることで、水素を生成します。

 国内にある他の水素ステーションの大部分が、石油や天然ガスなどの化石燃料を原料として水素を製造しているのに対し、この施設では下水処理により取り出されるバイオガスから水素を製造することで、カーボンニュートラル(二酸化炭素を発生・増加させず中立的)なものとなっていることが特徴とのことです。

 また、約900度に加熱するためのバーナーの燃料も、化石燃料を使用することなく、バイオガスからのメタンを使っており、原料と燃料の両面からカーボンニュートラルを達成しているそうです。

 福岡市の方からは、二酸化炭素の排出が少ない、新たなエネルギー資源の一つとして、下水道を積極的に活用していきたいとのお話しがありました。

 説明聴取の後、委員からは、施設の運営形態や運営人員、会計経理についてなど、質疑が行われ、その後は、水素ステーションの視察をさせていただきました。

水素ステーションの視察

福岡県矢部川発電事務所(木屋発電所)・日向神ダム・松瀬ダム

矢部川発電事務所を訪問

 翌15日は、福岡県の電気事業についての視察を行うため、福岡県矢部川発電事務所を訪問しました。

 矢部川発電事務所は、木屋発電所を建物内に併設しているほか、大渕発電所など、複数の発電所の遠方監視を行うとともに、近隣のダムの管理を行っています。

 ここでは、まず、県の電気事業全般についての説明を聴取した後、日向神ダム及び松瀬ダムにおける水力発電について、説明を聴取しました。

 日向神ダムは、元々は矢部川の氾濫防止を主な目的に建設されたダムだそうですが、治水の他にも利水・発電の役割を持つ「多目的ダム」で、ダムからの取水を利用して、大渕発電所で水力発電が行われています。この大渕発電所では、最大出力7,500キロワットで矢部川発電事務所からの遠隔操作により運転が行われ、使用後の発電用水は直下の松瀬ダムへ放流されているそうです。

 他方の松瀬ダムでは、木屋発電所への取水ゲートが設置されており、ダムからの取水を利用し、木屋発電所において、最大出力6,000キロワット(24時間稼働)で発電が行われているとのことです。この松瀬ダムは、日向神ダムのすぐ下流にあり、大渕発電所から放流される発電用水を一時的に貯め込み、下流の矢部川水位を安定させる役割を持つ、いわゆる「逆調整ダム」でもあります。

 説明の中で、現在の課題としては、全国的な水力発電の建設需要の高まりを受け、発電施設の修繕や工事に際し、納期の遅延や工賃の上昇によるコスト高が生じていること、今後の取組としては、中長期的な視点による更新、長寿命化などを計画的に行いつつ、発電量の向上や経費節減を図っていきたいとのお話しがありました。

 委員からは、ダム堤体の構造や更新について、発電所での監視体制について、各家庭への送電の仕組みについてなど、質疑が行われました。

 質疑応答の後は、木屋発電所の配電盤室、発電機室を視察させていただき、その後、日向神ダム、松瀬ダムの現地を視察させていただきました。

日向神ダム 木屋発電所の配電盤室、発電機室を視察 松瀬ダム

 以上、2日間という非常に限られた日程の中での視察ではありましたが、現地での取組を直接拝見し、貴重なお話を伺うことができましたことは、今後の委員会活動を進めていく上で、大変、参考になりました。こうして得た成果を、今後の委員会活動を通して都政へと役立ててまいります。

 最後になりますが、このたびの視察に際し、御多忙の折、懇切丁寧に対応していただきました福岡市役所及び福岡県庁の関係者の皆様には、心から感謝と御礼を申し上げます。

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