令和元年5月13日(月曜日)から5月14日(火曜日)
委員長 石毛 しげる(都ファースト)
平成30年7月に西日本を襲った記録的豪雨による死者は200人を超え、平成に入って最悪の豪雨災害となりました。中でも広島県における死者・行方不明者は100人を超え、住宅被害や土砂災害、浸水被害等、県内全域にわたって大きな被害を受けました。
また、広島市安佐南区・北区においては、平成26年8月にも、局地的豪雨による土砂災害の発生により、70人以上の尊い命が犠牲になるなど、甚大な被害がありました。
都においても近年、豪雨は増加傾向にあり、深刻な浸水被害が発生しています。風水害など、災害時の救助活動などにあたる警視庁及び東京消防庁を所管する警察・消防委員会では、平成30年7月の西日本豪雨及び平成26年8月豪雨時の災害対応、人命救助、避難誘導などの状況について調査するため、広島県において視察を実施いたしましたので、概要について報告いたします。
1日目は、初めに広島市安芸区矢野町の被災地に赴き、現場を視察しました。
広島市安芸区矢野町では、平成30年7月の西日本豪雨時、立ち往生していた被災者を避難誘導していた広島県警の警察官二人が、土石流に流され殉職されたとのことです。
当時、道路の下方を流れる川は、豪雨により増水し、道路面まで溢れ出て、腰ほどまである濁流となっており、避難中の人々はガードレールを掴んで土砂や泥水の流れる中、救助を待ったとのことでした。
また、行方不明者の捜索などには他県の警察から応援を受けましたが、警視庁からの応援部隊もまた、この場所で救助活動を行ったとの報告がありました。
次に、広島県警察本部を訪問いたしました。
広島県警察本部では、平成30年7月豪雨災害における警察活動について説明を受けました。
広島県は、県全体の70%が山地であり、主に花崗岩と流紋岩により占められていることから地質学的に崩れやすく、土砂災害警戒区域の指定状況は全国でも最大の面積となります。西日本豪雨時は、広島県内23市町中、22市町で大雨特別警報が出され、土砂災害の発生個所は1,200箇所余りに上るなど、県内全域に同時多発的に被害が及んだ点が特徴的であったとのことです。河川や交通ネットワークにも甚大な被害が及び、東西の軸となる交通網はほぼ寸断され、被害を免れた道路は大渋滞となって、被災地に近付くのも難しい状況となりました。酷暑の中、徒歩で被災地に入り、大型の重機も入れないため手作業や小型の機材により、二次被害に留意しながらの活動となったとの説明がありました。また、交通渋滞対策として、バス専用レーンの設置や鉄道の代替バスの運行、フェリーを利用した海路での通勤・通学支援などを行ったとのことでした。
委員からは、県の災害関連予算のほか、避難所での性犯罪や災害に関連した特殊詐欺などの事例、災害現場でのドローンの活用などについて質疑が行われました。
2日目は、広島市消防局を訪問いたしました。
広島市消防局では、まず、西日本豪雨災害などにおける消防・救助活動について説明を受けました。
広島市消防局は、広島市の他、熊野町、坂町など、西日本豪雨災害により大きな被害を受けた地域の消防事務を受託しています。通常、消防への通報件数は概ね1日200件程度ですが、西日本豪雨災害時の平成30年7月6日には約2,000件の通報があり、対応に追われたそうです。また、他消防本部からの応援を得て編成された緊急消防援助隊の活動期間中に、台風の接近により派遣元消防本部の管内での被害発生も懸念される事態になるなど、気象変動を勘案しながらの消防活動となった点に苦労したとの報告がありました。
続いて、平成26年8月豪雨災害被災地の復興まちづくりについての説明を聴取しました。
平成26年8月豪雨災害時には、積乱雲が風上で繰り返し発生し、風下で雨が降り続ける「バックビルディング現象」により局地的な豪雨となり、広島市安佐南区を中心に人的被害77人に上る甚大な被害が発生しました。現在は、砂防堰堤や避難路、雨水排水施設の整備などを柱とする復興まちづくり施策を推進しているとの説明がありました。
委員からは、住宅開発規制や他県消防隊との連携体制、消防団の充足率などについての質問が出るなど、活発な意見交換が行われました。
広島市消防局での説明聴取の後、広島市安佐南区八木の平成26年8月豪雨災害の被災現場を視察しました。
土石流により山肌が筋状に崩落している現場では、砂防堰堤や雨水排水施設の建築工事を行っていました。崩落部分のすぐ脇には人家が立ち並んでおり、防災対策が急務であることを強く感じました。バスに同乗していたバスガイドさんの話では、豪雨災害の前に、まさにこの安佐南区に家を購入する話があったそうです。諸事情により実現しなかったとの事でしたが、もし実現していたら、今日この視察に同行して頂く事も無かったかもしれないと思うと、巡り合わせの不思議さ、有り難さを強く実感しました。
以上、2日間という限られた日程ではございましたが、今回の視察の成果につきましては、今後の委員会活動を通じて、都政に大きく反映させ、役立ててまいりたいと考えております。また、今後も、防災体制の充実に積極的に取り組んでいく必要性をあらためて実感いたしました。
ご多忙にもかかわらず、貴重なお時間を頂戴いたしまして、懇切丁寧なご対応をしていただきました、広島県警察本部及び広島市消防局の関係者の皆様に、厚く御礼を申し上げます。
最後になりますが、警察・消防委員会といたしまして、あらためまして、平成30年7月の西日本豪雨及び平成26年8月豪雨で亡くなられた方々とそのご遺族に、深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。また、被災地の一日も早い復興を、お祈り申し上げております。
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