総務委員会 管外視察報告

令和8年7月9日(木曜日)から7月10日(金曜日)まで
委員長 福島 りえこ(都民ファ)

 総務委員会は、令和8年7月9日から10日の日程で、群馬県高崎市、長野県長野市及び須坂市において、管外視察を実施しました。

 当委員会では、政策企画局、子供政策連携室、総務局、デジタルサービス局、選挙管理委員会事務局、人事委員会事務局、監査事務局の7局を所管しています。

 東京都では、現在、デジタル社会の急激な進展を見据え、次代を担うデジタル人材の育成を喫緊の課題として事業展開するとともに、子供政策においては、とうきょう すくわくプログラム推進事業等により、乳幼児の豊かな心の育ちをサポートする取組が進められています。また、人口減少への対応が課題となる中、多摩・島しょ地域において地域資源を活かした移住・定住の促進策に取り組まれています。

 このような状況を踏まえ、総務委員会では、当委員会が所管する諸課題に対する調査の一環として、群馬県の「デジタルクリエイティブ人材の育成」について、また、長野県が推進する「信州型自然保育(信州やまほいく)認定制度」の取組と、学校法人いいづな学園こどもの森幼稚園における「自然保育の取組」、さらに、長野県須坂市の「移住・定住施策の取組」について調査を行うため、管外視察を行うこととなりました。

 以下、その概要についてご報告します。

TUMO Gunma・デジタルクリエイティブ人材の育成(群馬県)

 1日目、まず、群馬県高崎市内の「TUMO Gunma(ツーモ グンマ)」を訪問し、「群馬県のデジタルクリエイティブ人材の育成」について調査を行いました。説明聴取、質疑応答の後、TUMO Gunmaの施設見学を行い、各エリアで実際に学習用ソフトを体験しながら、専門的・先進的な学習環境が整備された施設を視察しました。

 群馬県が運営するTUMO Gunmaは、デジタルクリエイティブ産業の創出に向けた人材育成の柱として、Gメッセ群馬内に設置した学習拠点です。アルメニア発祥の国際的な教育プログラムを導入し、12歳から18歳までの若者が無料でデジタルクリエイティブ分野(3DCG、アニメーション、プログラミング、ゲーム開発、映像制作など8分野)を体系的に学べる環境を整えています。こちらでは、各分野に専門講師を配置するとともに、セルフラーニングと専門講師によるワークショップを組み合わせ、生徒が自分の関心に応じて学ぶ点が特徴です。

 質疑応答では、委員から、受講者の属性や傾向、学校教育との連携、大学・企業との連携、今後の課題への認識等について、活発な議論が行われました。

 県教育委員会と連携し、TUMO Gunmaでの受講を学校の成果単位として認定する仕組みを導入しており、実践的なデジタル技術を学ぶ機会を確保しながら、学校教育とも接続させている点は大変参考になりました。さらに、小中高校生を対象とした同様の学習施設「tsukurun(ツクルン)」を県内に増やしており、学習機会における地域差を減らす取組が進められていました。

 今後、県では大学・企業との連携強化により、TUMO Gunmaで学んだ経験が大学進学や就職時に評価される仕組みづくりを検討するとのことでした。デジタル技術を持つ人材が社会で必要とされる中、若者の創造力や主体性を育む先進的な取組として大きな可能性を感じました。

TUMO Gunmaを訪問 TUMO Gunma施設見学 実際に学習用ソフトを体験

信州やまほいく認定制度(長野県)

 次に訪れた長野県庁では、「信州やまほいく認定制度」について調査を行いました。

 豊かな自然環境に恵まれた長野県では、屋外体験活動を積極的に保育に取り入れる、信州やまほいく(信州型自然保育)を普及促進しており、実施する保育・幼児教育施設を「信州やまほいく認定制度」で認定しています。子どもの「自ら学び成長する力」を育み、たくましく成長することを願い、平成27年に開始された制度です。

 認定基準として、自然保育の計画的実践、保育者の研修の実践、安全管理の担保の観点から24の規準を設けており、屋外を中心とした体験活動の時間数によって普及型・特化型に区分されます。現在の認定園数は、普及型301園、特化型16園で、山間部だけでなく市街地も含めた県内全域で自然保育の普及が進んでいることがわかりました。

 説明を聴取した後、質疑応答では委員から熱心な質問がなされ、制度実施による効果検証の方法、保育環境の安全管理、保育人材の育成・研修、暑さ対策等について、活発な議論が行われました。

 やまほいくの効果について、豊富な自然体験を通じて子どもたちの感性が育まれ、生きる上で基礎となる非認知能力を育むとの説明に加え、子どもの主体性、学習意欲や探究心を高める契機となっているとの現場の声も紹介されました。一方で、効果検証に向けたエビデンスの確立が課題との認識が示されました。

 やまほいくの普及にも力を入れており、保育者研修事業、SNS等を通じた広報活動、フォーラム開催等により、県内外へ発信しています。やまほいくを目的に県外から移住する家庭もあり、特色ある保育環境が地域の魅力となり、移住促進にも寄与しているとのことでした。

信州やまほいく認定制度を聴取 長野県議会を訪問

自然保育の取組(学校法人いいづな学園こどもの森幼稚園)

 視察2日目は、まず、飯綱高原の「学校法人いいづな学園こどもの森幼稚園」を訪問し、「自然保育」の取組について調査しました。

 こちらの園は、信州やまほいく認定制度の特化型認定園にあたり、四季の豊かな自然を日々の教育に取り入れている幼稚園です。

 視察では、まず、外遊びの様子を視察しました。木漏れ日の中、急な斜面が多い園庭で子どもたちが自由にそり滑りや泥遊びなどで遊ぶ姿が見られました。年長児は、飯盒炊飯のための火起こしに挑戦しており、仲間と協力し工夫しながら、マッチで火が着くまで粘り強く取り組む姿が印象的でした。自ら考え、挑戦し、失敗から学び、主体的に活動する経験が、自己肯定感や社会性、人への思いやりを育むことにつながるとの説明がありました。卒園後も園とのつながりが強く、地域への愛着が育まれているとのことです。

 その後、自然保育の取組について、説明聴取・質疑応答を行いました。委員からは、自然保育のメリットと課題、保育環境の安全管理、移住者の割合、都市部での自然保育、教職員の採用・育成、認定制度への所感等について質疑がなされ、熱心な議論が展開されました。

 安全管理については、日常的に園庭や活動場所の下見・点検・情報共有を行うなど、子どもが思い切り遊べるよう事前の環境整備を念入りに行っており、自然保育と安全確保を両立させるための不断の努力が重要であることを学びました。

 さらに、同園では、令和4年に園と保護者・卒園児とのつながりの強さを生かし、自然保育がもたらす非認知能力の傾向について、追跡調査を実施したとのことでした。この調査からは、内閣府の調査に比べ、自己肯定感や意欲・対話力などの対人関係構築力が高い傾向が見られ、幼児期に自然保育がもたらす長期的な効果の一端を感じました。

外遊びの様子を視察 自然保育の取組を調査 自然保育の取組について聴取

移住支援信州須坂モデル(長野県須坂市)

 最後に、「須坂市役所」を訪問し、「移住支援信州須坂モデル」について調査いたしました。市庁舎にて担当者からの説明を聴取した後、質疑応答を行いました。

 長野県北東部に位置する須坂市は、人口4万8千人の市で、ブドウに代表される果樹栽培や、歴史ある蔵の町並みなどの地域資源を有する一方、人口減少や少子高齢化への対応を課題と捉えています。このため、同市では、仕事・住まい・生活の3つの側面から移住希望者の不安を解消し、スピーディーに移住へつなげる仕組み「移住支援信州須坂モデル」を展開しています。転職や就農に向けた相談対応、空き家バンク等住まいの相談、移住体験ツアーの提案、先輩移住者との交流などを通じて、相談者ごとに移住後の暮らしのイメージを具体化していく伴走型のサポートが特徴です。

 中でも、移住体験ツアーは、オーダーメイドで内容を決め、実際に案内しながら須坂の暮らしぶりや魅力を伝える取組で、希望に応じて企業訪問や農業体験を組み込む等、移住希望者に寄り添った支援を行うことが特徴的です。移住希望者の負担軽減のため、移住体験ハウスを安価で貸し出す等、移住希望者をきめ細かくサポートする体制を整えていました。

 移住後の定着支援としては、地域おこし協力隊OBが相談対応や交流イベントを実施しており、新たな住民が地域に溶け込みやすい環境づくりを進めていました。移住者同士や地域住民とのつながりを重視する取組は、定住促進において重要な視点であると感じました。

 質疑応答では、このほか、移住実績と傾向分析、子育て世帯向けの広報、須坂モデル登録企業の充実、空き家の賃貸、移住後の定着支援など、活発な議論が行われました。

須坂市役所を訪問 移住支援信州須坂モデルについて調査

 今回の視察は、2日間という限られた日程ではありましたが、現地で貴重なお話を伺い、活発な意見交換を行うことができ、当委員会にとりまして大変有意義な視察となりました。ここで得た知見は、今後の委員会活動に活かし、都政に大きく反映させてまいります。

 最後になりますが、群馬県、長野県、学校法人いいづな学園こどもの森幼稚園、須坂市の関係者の皆様には、ご多忙の中、貴重なお時間を頂戴し、真摯にご対応いただきました。この場をお借りいたしまして、厚く御礼を申し上げます。