総務委員会 管外視察報告

令和5年5月16日(火曜日)から5月17日(水曜日)
委員長 松田 康将(自民党)

 総務委員会は、政策企画局、子供政策連携室、スタートアップ・国際金融都市戦略室、総務局、デジタルサービス局、選挙管理委員会事務局、人事委員会事務局、監査事務局の8局という、常任委員会の中で最も多くの局を所管しております。

 その中において、今回は、令和4年4月に設置された子供政策連携室に係る子供政策・少子化対策の取組、令和5年4月に設置されたスタートアップ・国際金融都市戦略室に係るスタートアップ施策の取組、総務局に係る火山対策の取組などを調査するため、熊本県及び鹿児島県において視察を実施いたしました。

 以下、その概要について、ご報告いたします。

スタートアップ ハブ くまもと

スタートアップハブくまもとを訪問

 1日目は、熊本県内を視察しました。

 初めに、スタートアップハブくまもとを訪問し、スタートアップハブくまもとにおけるスタートアップ支援について、説明を聴取しました。

 スタートアップハブくまもとは、県内で創業・開業を志している方を支援するためのプラットフォームとして、肥後銀行によって、令和4年4月に開設された施設です。この施設が開設された背景には、コロナ禍の3年間で、西日本一のアーケード街と言われた約3,000テナントの商店街等のうち2割に当たる約600テナントが休業・廃業したこと、県内での就職・進学離れによる若年層の県外流出などがあるとのことでした。

 持続可能な事業・雇用創出に取り組む創業・開業プラットフォームとして、産官学金をつなぐ・ビジネスパートナーをつなぐ・地域をつなぐというコンセプトを設定し、5年間で創業・開業700件、雇用創出数2,100人を目標としています。スタッフは、常駐する肥後銀行員5名のほか中小企業診断士や税理士も入っており、ファイナンス、事業計画作成、お店づくりのノウハウ、不動産のあっせん、税務相談など、創業・開業に必要な課題をワンストップで相談・解決できる場所としています。また、起業後のアフターフォローのセミナーも開催しているとのことでした。

 その後の質疑応答では、ビジネスパートナーと連携するに当たっての取組について、創業・開業資金の提供事例について、ビジネスパートナーと起業ニーズとの関連性についてなど、活発な質疑が行われました。

XOSS POINT.(クロスポイント)

 次に、XOSS POINT.を訪問し、こちらでは熊本市のスタートアップ施策及び子供施策について、説明を聴取しました。

熊本市のスタートアップ施策について
XOSS POINT.を訪問

 まず、熊本市のスタートアップ施策について、お話を伺いました。

 熊本市は、これまで、スモールビジネス中心の創業支援を行ってきましたが、熊本地震の復興需要の剥落や、コロナ禍による大きな社会変革等を踏まえ、今後の地域経済をけん引する産業の創出に向けてスタートアップやベンチャー企業の支援、起業家の発掘・育成に着手したとのことでした。

 XOSS POINT.は、熊本市初のスタートアップ支援施設であり、成長ステージに合わせた支援プログラムや起業家コミュニティの形成を図るなど、熊本市のスタートアップ支援の拠点として、新たなビジネスモデルや新産業創出を目指しています。具体的には、人手を必要とするスタートアップとスキル修得に関心を持つ学生をマッチングする起業家育成インターンシップ支援事業の実施、クリエイター・ダイバーシティ座談会、高校生アイデアコンテスト、老若男女のビジネスプラン合宿、資金調達の多様化セミナー等の各種イベントの開催、熊本市に移住して就業または起業等をされた方への移住支援金の交付などの様々な取組を行っているとのことでした。

 施設内には、起業家支援スペースや一室当たり30平方メートル程度のスモールオフィスが10室設置され、既に満室となっていました。また、スモールオフィスに入居する10社のうち7社は県外の企業で、他県からの企業進出も非常に多くなっているとのことでした。

 その後の質疑応答では、ビジネスチャンスを求めている企業の種別及び割合について、今後のスタートアップ拡大に向けたマインドについて、大学発スタートアップの取組内容についてなど、活発な質疑が行われました。

熊本市の子供施策について
子供施策について聴取

 続いて、熊本市の子供施策について、お話を伺いました。

 熊本市は、15年ぶりに組織再編を行い、令和5年4月に、こども局を創設しました。出生数の減少と少子化、児童虐待・子供の貧困率の急増などの様々な課題が山積していることから、複雑・多岐にわたる課題へ迅速・丁寧に対応し、全庁的・総合的なけん引役を担うため、こどもの権利サポートセンター開設準備室、こども育成部、こども福祉部、児童相談所を置く、こども局の創設に至ったとのことでした。

 その中で、主に、二つの主要課題について説明を受けました。一つ目は、出生数の減少と少子化への対応についてです。平成27年までは年間7,000人くらいで推移していた出生数が急激に減少し、令和3年には6,093人と少子化が加速しました。出生数の減少を食い止めるため、こども医療費の拡充、現金給付による子育て家庭の経済的支援、結婚を希望する方を支援するためのイベント開催費用の助成など、様々な取組を行います。二つ目は、児童虐待・子供の貧困率の急増など、子供をめぐる複雑な課題への対応についてです。児童虐待対応件数は、令和2年度1,360件、令和3年度1,325件と10年前から約1,000件増加しており、子供の貧困率は14%(7人に一人に相当)という実態となっています。こうしたことから、家庭や学校に居場所のない子供への支援、社会的養護を受けている子供の権利擁護の推進、潜在的なヤングケアラーの支援体制の強化などの取組を行います。そして、子供を核としたまちづくりの推進を目指していくとのことでした。

 その後の質疑応答では、少子化対策への中長期的な取組について、婚活ボランティアの取組の具体的な内容について、早期結婚や早期出産につながる取組について、病児保育の深夜の予約受付について、こどもの権利サポートセンター設立に当たっての経緯等について、子供の最善の利益に関する条例等の検討についてなど、活発な質疑が行われました。

桜島公民館・湯之平展望所

火山対策などを聴取

 2日目は、鹿児島県に移動し、鹿児島市の桜島公民館を訪問しました。

 こちらでは、火山対策及び桜島噴火等に関する事業について、説明を聴取しました。

 桜島は、60年以上の長きにわたって火山活動を続けており、桜島及び周辺地域の住民生活を始め、農作物等各面にわたって大きな影響を与えています。約60万人の市民が生活している鹿児島市では、ハード・ソフトの両面から火山防災対策に取り組み、様々な試行錯誤を経ながらその充実に努めてきたとのことでした。

 都においては、富士山噴火に伴う降灰による被害は、少量の火山灰であっても、社会に与える影響が大変大きいことが想定されることから、今回は、様々な取組の中から特に降灰対策を中心に説明を受けました。

降灰対策などを聴取

 降灰対策については、道路降灰除去、宅地降灰除去、学校降灰除去等を行っているとのことでした。道路降灰除去では、気象台による噴火情報や天気予報による風向き等の情報を収集し、巡視による状況確認後に作業区域を決定し、路面清掃車や散水車による車両体制94台で除去作業を行っており、1回の降灰について3日以内に除去作業を完了する計画としています。宅地降灰除去では、克灰袋(宅地内の降灰を入れる袋)を市が無料で配布しており、市民が宅地内の降灰を克灰袋に詰めて指定の場所に搬出したものを収集・運搬・検収・処分しています。学校降灰除去では、校庭やプールにたまった火山灰を定期的に除去しています。その他、学校教室へのクーラー設置、水道施設の覆蓋、変電施設の屋内化などの降灰対策を行っているとのことでした。

 鹿児島市では、こうした長年の経験や実績に裏打ちされた火山防災対策を「鹿児島モデル」として世界に発信し、国内外の火山災害の被害軽減に寄与する火山防災トップシティを目指しており、防災訓練等、犠牲者が出ない体制の構築や火山防災対策に係る海外への情報発信などの取組内容についても説明を受けました。

 その後の質疑応答では、降灰の再利用の研究について、降灰が太陽光パネルやWi-Fi環境等に与える影響について、降灰の処分における関係機関との連携について、克灰袋による降灰の除去・収集が難しい高齢者世帯に対する支援について、散水による降灰除去が下水に与える影響について、健康被害への調査の継続の有無についてなど、活発な質疑が行われました。


 桜島公民館でお話を伺った後は、湯之平展望所の視察をさせていただきました。移動する際には、噴火に伴う噴出物から身を守るためのシェルターである退避壕(ごう)や降灰除去専用の路面清掃車(ロードスイーパー)を見学しました。

 湯之平展望所は、標高373メートル、北岳の4合目に位置し、桜島において一般の方が入ることのできる最高地点となります。当日は、北岳の荒々しい山肌や、眼下に広がる大正溶岩原など、活火山を間近に見ることで、自然災害がもたらす脅威と桜島の資源や恵みという「防災」と「観光」という表裏一体の関係を感じることができました。

湯之平展望所 北岳

 以上、2日間という限られた日程ではございましたが、現地で貴重なお話を伺い、活発な意見交換ができ、大変有意義な視察となりました。この視察の成果を、今後の委員会活動を通じて、都政に大きく反映させ、役立ててまいりたいと考えております。

 最後になりますが、ご多忙にもかかわらず、貴重なお時間を頂戴いたしまして、懇切丁寧なご対応をしていただきました、株式会社肥後銀行、熊本市、鹿児島市の関係者の皆様に、この場をお借りいたしまして、厚く御礼を申し上げます。

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