財政委員会 管外視察報告

令和6年5月8日(水曜日)から5月9日(木曜日)まで
委員長 林 あきひろ(自民党)

 財政委員会は、都の税財政制度や会計制度、公有財産の管理、契約、庁舎等都有建築物の設計及び施工など、都の財政等の分野を所管している委員会です。

 東京では、来年(2025年)に世界陸上、デフリンピックという大規模な国際スポーツ大会の開催が予定されており、開催地である東京都は、両大会の成功に向けて大会の実施主体と協力しながら、大会運営に必要な収入の確保や実施主体の予算執行の適正化などを図っていく必要があります。

 また、2050年ゼロエミッションの実現に向けては、2030年までの行動が重要であり、東京都は、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)するカーボンハーフを表明していますが、多大なエネルギーを消費する一事業者の立場としても、都有建築物のゼロエミッション化などを推進していく必要があります。

 こうした状況を踏まえ、今回、財政委員会では、当委員会が所管する諸課題に対する調査として、大規模な国際イベントである「大阪・関西万博」の開催に向けた準備を進めている大阪府及び実施主体の取組について、また、省エネと創エネによりZEB(注釈1)を目指した庁舎の先行事例である国土交通省近畿地方整備局及び兵庫県伊丹市の取組について、主に調査を行うため、5月8日から2日間にわたる現地視察を実施いたしました。

 その概要について、次の通りご報告いたします。

大阪府・大阪市万博推進局

万博関連経費の説明を聴取

 1日目は、初めに、来年に開催予定の「大阪・関西万博」の準備に取り組む、大阪府・大阪市万博推進局及び公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以下「協会」という。)を訪問しました。

 「大阪・関西万博」では、大阪府・大阪市は地元自治体として、開催主体である国、実施主体である協会と連携を図りながら、万博の成功に向けて様々な支援を行っており、特に万博関連経費の執行管理等の視点から説明を聴取しました。

 最初に協会から、「大阪・関西万博」の概要(開催の概要、会場配置計画、協会事務局組織体制、これまでの取組と今後のスケジュール等)及び協会における予算の全体フレーム(会場建設費、運営費、協会が受託する事業費)並びに会場建設費の執行状況と工事の進捗状況等について説明を聴取しました。

 「大阪・関西万博」は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、令和7年4月13日から10月13日までの184日間、大阪市の夢洲(ゆめしま)において開催が予定されています。協会は、国・大阪府・大阪市・経済界等の職員で構成され、万博の準備及び開催運営等の事業を担っています。

 次に、大阪府・大阪市万博推進局から、万博関連経費の府市の執行管理(費用の内訳、府・市の費用分担等)について説明を聴取し、万博の開催に向けた機運醸成のためのPR活動方法、建設価格高騰に伴う会場建設費の増額への対応策、大阪府・大阪市万博推進局の組織構成等について質疑応答を行いました。

 説明聴取後、今回訪問した咲州庁舎から隣接する万博会場予定地の視察を行い、会場建設工事の進捗状況を確認しました。

万博会場予定地の視察 万博推進局を訪問

国土交通省近畿地方整備局

国土交通省近畿地方整備局を訪問

 次に、国土交通省近畿地方整備局を訪問し、庁舎におけるZEB化への取組(建物の概要、各フロア構成及び執務フロア概況、ZEB化のために採用している省エネ手法<日射負荷抑制、エコボイド、地中熱利用、空調熱源システム等>)について説明を聴取しました。

 今回視察した大手前合同庁舎(大阪府大阪市)は、様々な省エネ手法の採用により、建物のエネルギー消費量を標準庁舎と比較して47%削減し、「ZEB Oriented」(注釈2)を達成されたとのことです。

 説明聴取後、屋上に設置されている太陽光パネルや、庁舎内部に自然採光を取り入れるために設置されたエコテラスなどを視察し、建物全体の省エネ設備について確認することができました。

庁舎に採用している省エネ手法の説明を聴取 エコテラスを視察

伊丹市

ZEB技術の紹介を聴取

 2日目は、兵庫県伊丹市を訪問しました。こちらでは、市議会を含む伊丹市新庁舎のグリーン化への取組(庁舎建替えの経緯と新庁舎の概要、導入したZEB技術の紹介と運用結果等)について、説明を聴取しました。

 伊丹市庁舎は、令和3年度に庁舎の再エネ100%電力供給を達成するとともに、令和4年度に太陽光発電、蓄電池設備等の創エネ及び高効率空調設備等の省エネの導入により、建物のエネルギー消費量を従来の庁舎と比較して54%削減し、「ZEB Ready」(注釈2)を達成されたとのことです。さらに、残りのCO2排出量を他自治体からの森林・ブルーカーボンクレジット取引により相殺し、以上の取組の結果、全国初のゼロカーボン庁舎を実現したとのことです。

 説明聴取後、新庁舎建設の工費を抑える工夫、カーボンクレジットの手法等について質疑応答を行い、その後で、市議会議事堂を含む市庁舎内の省エネ設備の視察を行いました。

市議会議事堂を視察 市庁舎内省エネ設備の視察

 以上、2日間という非常に限られた日程ではありましたが、今回の視察において、各行政現場で実際に課題に対応しておられる職員の方々から直接、お話を伺い、現地を視察できましたことは、当委員会にとって大変有意義なものとなりました。こうして得た成果については、今後の委員会活動を通して、都政へと役立ててまいります。

 最後になりますが、大阪府、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、国土交通省近畿地方整備局及び伊丹市の皆様には、大変ご多忙な折にもかかわらず、懇切丁寧なご対応をしていただきました。

 あらためて厚く御礼を申し上げます。


注釈1 ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。

注釈2 ゼロエネルギーの達成状況に応じて、「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」「ZEB Oriented」の4段階のZEBシリーズが定義されている。