環境・建設委員会 管外視察報告

令和6年4月23日(火曜日)から4月24日(水曜日)
委員長 曽根 はじめ(日本共産党)

 環境・建設委員会は、気候変動対策・都市エネルギー施策、自然の保護と回復、廃棄物対策、道路・河川の整備及び高潮対策、公園緑地・霊園の整備など、都民の暮らしに密接に関連する様々な分野を所管しております。

 東京都は、2050年までの世界のCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向けて、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)する、「カーボンハーフ」を目指しており、地球規模での課題である気候危機への対策として、省エネルギーや再生可能エネルギーの推進等が求められています。また、道路、河川、公園などの都市基盤は、首都東京の都市活動や都民生活を支える上で欠かすことのできない重要な役割を担っておりますが、頻発化・激甚化する豪雨災害や切迫する首都直下地震、橋梁やトンネルを始めとする施設の老朽化など、喫緊の課題を抱えています。

 こうした状況を踏まえ、今回、環境・建設委員会では、当委員会が所管する諸課題に対する調査として、近年度重なる自然災害による被害を経験し、災害復旧事業や災害防止対策などの強化を進めている長崎県における取組について、また、浮体式洋上風力発電事業など再生可能エネルギー施策を推進する長崎県五島市における取組について調査を行うため、4月23日から2日間にわたる現地視察を実施いたしました。

 その概要について、次の通りご報告いたします。

国道202号線外海地区道路崩落現場

国道202号線外海地区を現地視察

 1日目は、初めに、国道202号線外海地区を訪れ、現地視察を行いました。

 国道202号線外海地区では、令和2年(7月6日から同月7日)・令和3年(8月10日から同月17日)の豪雨により、2年連続で道路が崩落し、一時的に全面通行止めとなりました。

 現地では、道路を管理する長崎県長崎振興局から、災害復旧事業の概要(発生日時、場所、被害規模、全面通行止め規制、災害復旧工事等)について説明を受けました。

 説明聴取の後、同局の案内の下、崩落した複数箇所の現場について、実際に路肩部の復旧状況を確認することができました。

長崎県庁

長崎県庁を訪問

 次に、長崎県庁を訪問し、長崎市内の急傾斜地対策事業について説明を受けました。

 長崎県は、川の勾配から分かるように、全国と比べ急峻な地形をしており、土砂災害警戒区域の指定数は、36,380箇所で、広島県に次いで、全国2位(令和5年12月31日時点)となっています。東京都の指定数は、15,600箇所であることから、その警戒区域の多さが分かります。

 今回、長崎県における土砂災害防止対策や急傾斜地崩壊対策事業(地元要望から事業化までの流れ等)について伺うことができ、また、質疑応答では、長崎県内の山から河口までの距離の短さ、急傾斜地崩壊対策事業の独自の内容、地元からの要望ではない長崎県からの働き掛けなどについて、質疑が行われました。

 質疑応答の後、長崎県議会の議場も見学させていただくことができました。

福江港ターミナル

福江港ターミナル

 2日目は、初めに、五島市にあります、福江港ターミナルを訪問し、浮体式洋上風力発電施設の模型を見ながら、その仕組みについて説明を受けました。

 平成22年度から平成27年度の環境省浮体式洋上風力発電実証事業において、戸田建設株式会社等を代表とする受託者グループは、五島市椛島周辺海域にて世界発のハイブリッドスパー型(浮体部の下部をコンクリート、上部を鋼で構成した浮体形式)である2,000キロワット級の浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」の設置(平成25年10月28日)に成功しました。環境省実証事業の終了後は、実証機を崎山沖に移動し、五島市再生可能エネルギー基本構想の下、浮体式洋上風力発電の普及促進を目指し、五島市と五島フローティングウィンドパワー合同会社が共同で、発電所の運転を継続しています。

 質疑応答では、風向きの変化への対応やメンテナンスを行う会社などについて、質疑が行われました。

設置海域(浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」)

 福江港ターミナルでの説明聴取の後、ターミナルから海上タクシーに乗船し、浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」の現地視察を行いました。

 今回、天候に恵まれ、波も穏やかであったため、「はえんかぜ」の至近距離まで海上タクシーで近付くことができましたが、ブレードを間近に見上げると、その壮観さは想像以上でありました。

浮体式洋上風力発電施設
浮体式洋上風力発電施設のしくみ

大津展望台・崎山(海底ケーブル陸揚げ地点)

 次に、浮体式洋上風力発電施設の関連としまして、大津展望台、続いて、崎山(海底ケーブル陸揚げ地点)を訪れ、現地視察を行いました。

 大津展望台では、市街地と浮体式の建造ヤードの遠望ができ、崎山では、海底ケーブル陸揚げ地点(「はえんかぜ」から5キロメートル先)を確認することができました。

 福江港ターミナルでの説明を始めとし、「はえんかぜ」、大津展望台、崎山と、長時間にわたりご案内いただいた一般社団法人五島市観光協会の方におかれましては、随時、現地での質疑応答に対応してくださいました。

大津展望台 崎山(海底ケーブル陸揚げ地点)

五島市役所

 次に、五島市役所を訪問し、再生可能エネルギーの取組やEV(電気自動車)の取組について説明を受けました。

 再生可能エネルギーの取組については、五島市の概要、再生可能エネルギーの取組の歴史、取組の効果、ゼロカーボンシティ宣言・計画、今後の取組の方向性について伺い、また、EVの取組については、EV100台パレードのギネス記録認定、長崎県EV・PHVタウン構想、事業の推進体制などについて伺いました。

 質疑応答では、「はえんかぜ」設置後の漁業への具体的な効果や、EVの導入状況などについて、質疑が行われました。

 質疑応答の後、市役所の庁舎外に設置されている急速充電施設の現地視察を行いました。

五島市役所を訪問 急速充電施設の現地視察

 以上、2日間という限られた日程ではありましたが、現地での取組を直接拝見しながら、貴重なお話を伺うことができ、大変有意義な視察となりました。今回の視察の成果につきましては、今後の委員会活動を通じて、都政に役立ててまいります。

 最後になりますが、長崎県、五島市及び一般社団法人五島市観光協会の関係者の皆様方には、お忙しい中、懇切丁寧に対応していただきましたことに、心から感謝と御礼を申し上げます。