総務委員会速記録第十七号

平成二十七年十二月十日(木曜日)
第一委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長加藤 雅之君
副委員長新井ともはる君
副委員長柴崎 幹男君
理事石川 良一君
理事徳留 道信君
おときた駿君
まつば多美子君
木村 基成君
大場やすのぶ君
近藤  充君
小山くにひこ君
小磯 善彦君
秋田 一郎君
清水ひで子君

欠席委員 一名

出席説明員
選挙管理委員会事務局局長安藤 弘志君
政策企画局局長川澄 俊文君
外務長宮島 昭夫君
次長理事兼務潮田  勉君
理事猪熊 純子君
理事松下 隆弘君
総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務小池  潔君
調整部長中澤 基行君
政策担当部長西坂 啓之君
政策担当部長八嶋 吉人君
技術政策担当部長加藤 直宣君
戦略広報担当部長政策担当部長兼務小沼 博靖君
海外広報担当部長川崎  卓君
渉外担当部長佐藤 直樹君
国家戦略特区推進担当部長山本 博之君
報道担当部長松下 明男君
計画部長小室 一人君
計画担当部長梅村 拓洋君
外務部長横山 英樹君
都市外交担当部長川上 文博君
国際事業担当部長梅田 弘美君
総務局局長中西  充君
危機管理監田邉揮司良君
次長内藤  淳君
理事山手  斉君
総務部長小暮  実君
企画担当部長首都大学調整担当部長尖閣諸島調整担当部長
オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
初宿 和夫君
訟務担当部長和久井孝太郎君
復興支援対策部長菊地 俊夫君
復興支援調整担当部長被災地支援福島県事務所長兼務野口 毅水君
行政改革推進部長自治制度改革推進担当部長兼務三木 暁朗君
情報通信企画部長中島  毅君
労務担当部長栗岡 祥一君
主席監察員藤井 秀之君
行政部長西村 泰信君
多摩島しょ振興担当部長大島災害復興対策担当部長
事業調整担当部長兼務
佐々木秀之君
区市町村制度担当部長小菅 政治君
総合防災部長矢岡 俊樹君
防災計画担当部長小林 忠雄君
防災対策担当部長小久保 修君
統計部長伊東みどり君
人権部長箕輪 泰夫君

本日の会議に付した事件
選挙管理委員会事務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百九十五号議案 東京都選挙管理委員会関係手数料条例の一部を改正する条例
政策企画局関係
報告事項(質疑)
・「『東京と地方が共に栄える、真の地方創生』の実現を目指して 東京都総合戦略 」について
総務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百八十四号議案 行政不服審査法施行条例
・第百八十五号議案 東京都職員の退職管理に関する条例
・第百八十六号議案 審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
・第百八十七号議案 職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
・第百八十八号議案 災害派遣手当等の支給に関する条例の一部を改正する条例
・第百八十九号議案 東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
・第百九十号議案  東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
・第百九十一号議案 職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
・第百九十二号議案 東京都人事行政の運営等の状況の公表に関する条例の一部を改正する条例
・第百九十三号議案 東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
・第百九十四号議案 東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
・第二百二十九号議案 東京都人権プラザの指定管理者の指定について
報告事項(質疑)
・東京都国土強靭化地域計画(素案)について
・東京都震災復興マニュアル(復興プロセス編)の修正素案について
・第三期東京都犯罪被害者等支援計画(素案)について

○加藤委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、選挙管理委員会事務局及び総務局関係の付託議案の審査並びに政策企画局及び総務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより選挙管理委員会事務局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百九十五号議案を議題といたします。
 本案については既に説明を聴取しておりますので、これより質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で選挙管理委員会事務局関係を終わります。

○加藤委員長 これより政策企画局関係に入ります。
 初めに、理事者の欠席について申し上げます。
 村岡渉外担当部長政策担当部長兼務は、所用のため、本日の委員会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 報告事項、「『東京と地方が共に栄える、真の地方創生』の実現を目指して 東京都総合戦略 」についてに対する質疑を行います。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、これより質疑を行います。
 発言をお願いします。

○大場委員 昨年五月、民間の研究機関である日本創成会議が、いわゆる消滅自治体リストを公表し、大きな話題となりました。そこでは、人口問題と東京一極集中の問題が結びつけられており、東京がブラックホールのように若年人口を吸収し、日本全体を衰退させる構造となっているとの指摘まで行われました。
 こうした動きは、我が国の人口減少問題に対して警鐘を鳴らすことにはなりましたが、都市対地方、東京対地方といった格差論にばかり目が行くことになったのではないでしょうか。
 その後、政府において、まち・ひと・しごと創生本部が設置され、法律も成立し、地方創生においては、国と地方が一丸となって地域経済回復の好循環をさらに加速させる取り組みが推進されることとなりました。しかしながら、東京一極集中の是正が当面の目標とされ、東京対地方という構図での議論が続く状況は、残念ながら変わることはありませんでした。
 こうした中、我が党は、都の総合戦略の策定に当たって提言を行い、都が目指すべき地方創生の方向性と総合戦略に盛り込むべき内容を示しました。この総合戦略には我が党の主張が十分に反映されており、今後の取り組みが期待されるところであります。
 本日は、地方創生における東京を取り巻くこうした状況も踏まえながら、都の総合戦略に盛り込まれた政策の着実な推進に向け、幾つか聞いてまいります。
 地方版総合戦略は、まち・ひと・しごと創生法に基づき、国の総合戦略を勘案して策定するものであり、国の調査によれば、全ての都道府県が今年度中に策定するとのことであります。国の総合戦略においては、東京一極集中の是正が一つの目標とされており、その点、総合戦略の策定に対して、都は当然のことながら、他の道府県とスタンスを異にするのではないかと思います。
 そこで、都の総合戦略策定の考え方についてお伺いいたします。

○小室計画部長 地方自治体は、地方版総合戦略を策定し、国と一体となって地方創生に取り組んでいくことが求められております。
 しかしながら、地方創生をめぐっては、委員ご指摘のとおり、東京一極集中の是正が当面の目標とされ、東京対地方という構図での議論が先行しております。しかしながら、東京の発展と地方の繁栄は二律背反の関係ではなく、相乗効果により、互いに新たな魅力を生み出す関係でございます。
 そこで、東京都総合戦略では、特に東京と地方の共存共栄に焦点を当て、東京と地方がともに栄える真の地方創生の実現を目指して策定いたしました。

○大場委員 地方創生の名のもとに行われている東京一極集中是正論などの偏った議論の状況に鑑みると、総合戦略の策定に係る都の考え方をこのように明確に示すことは大変重要なことであります。
 また、都内の区市町村は、国及び都の総合戦略を勘案して、それぞれの総合戦略を策定することになっており、東京全体が一つの考え方で共有されることは意義深いことと考えます。
 ところで、現在の都政の大方針は、昨年、我が党の政策提言を踏まえて策定された東京都長期ビジョンであります。長期ビジョンがある中、都の総合戦略が今回改めて策定されたわけですが、都民の皆様から、総合戦略という名称があたかも自治体の総合計画のようで紛らわしいという声も耳にいたします。
 今回策定された総合戦略と長期ビジョンとの関係について伺います。

○小室計画部長 総合戦略は、まち・ひと・しごと創生法に基づき、地方創生推進のための目標や基本的方向、各分野にわたって取り組むべき内容を取りまとめたものでございます。
 一方、昨年十二月に策定いたしました東京都長期ビジョンは、世界一の都市東京の実現を目指すための今後十年間の都政の大方針でございます。長期ビジョンには、もともと、人口減少社会の克服や成長力の確保といった、地方創生で目指すべき内容が盛り込まれているところでございます。
 そこで、都の総合戦略は、長期ビジョンで掲げた目標や政策を基本に、地方創生の観点から必要な施策の充実強化を図って策定いたしました。

○大場委員 都が地方創生を推進する上でも、都政の大方針たる長期ビジョンの位置づけは変わりません。今後もしっかりとこの点を認識して進めてもらいたいと思います。
 当然のことながら、都の総合戦略は、東京という一つの地方自治体としての創生の推進を目的として策定されるべき戦略であります。よって、単に国が示す総合戦略を勘案し、取りまとめていくということだけでは、都の置かれた立場や考え方を的確に反映したものとはなりません。
 都が総合戦略を策定するに当たっては、そもそも都の目指すべき地方創生とは何かということを明瞭にし、それに沿った戦略を盛り込んでいかなくては意味がありません。
 そこで伺いますが、都が考える地方創生とはどのようなものなのでしょうか。また、それを踏まえた総合戦略の重要なポイントは何でしょうか。伺います。

○小室計画部長 都が目指す地方創生とは、第一に、東京と他の地域が共存共栄し、日本全体が持続的発展をしていくことであり、第二に、少子高齢、人口減少社会の到来に対しまして、正面から向き合い、さまざまな対策を講じていくことでございます。
 こうした基本的な考え方に立ち、都の総合戦略では、東京と地方の共存共栄、首都・国際都市としてさらに発展し、日本経済を活性化、少子高齢・人口減少社会に対する東京の挑戦の三つの視点に沿って、重点的な政策をまとめております。この三つの視点に沿って取りまとめた政策を中心に、真の地方創生の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

○大場委員 総合戦略には多くの政策が盛り込まれています。それらの政策を効率かつ着実に推進していくためには、施策の重点化を図るのはもっともなことであります。
 さて、改めて東京と地方との関係を考えてみますと、地方の生産地にとって東京の魅力の一つは、国内最大の消費地であることです。東京が元気になれば、消費活動は活発となり、地方の特産品もよく売れるようになります。東京と地方の関係は、いわば持ちつ持たれつの関係にあるのです。
 こうしたことを考えますと、地方創生を日本全体の創生につなげていくためには、三つの視点の中でも、特に東京と地方の共存共栄が最重要な視点といえるのではないでしょうか。
 そこで、この共存共栄の取り組みはどのような分野で推進していくのかを伺います。

○小室計画部長 共存共栄の取り組みにおきましては、東京と他の地域が、それぞれの持つ魅力を高め、互いに協力し合うことで、ともに栄え、成長し、日本全体を発展させていくことが重要でございます。
 こうした観点から、総合戦略では、主に、全国各地と連携した産業振興、東京と地方の双方の魅力を生かした観光振興、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした各地域の活性化、東京と地方が連携した芸術文化振興の展開という四分野において、共存共栄の取り組みを展開してまいります。
 政策展開におきましては、東京の持つあらゆる強みを最大限に用いて、他の地域の持つポテンシャルを生かし、地域の発展に結びつく取り組みを進めてまいります。

○大場委員 都の考える真の地方創生の実現においては、共存共栄の取り組みこそが鍵を握っており、今の答弁にありました、産業からスポーツ、芸術など幅広い分野で、東京と地方が手を携えてさまざまな事業を展開していくことが必要です。中でも、産業振興、観光振興の各分野は、日本経済の活性化に直結するものであり、しっかりとした問題意識を持って政策を構築していかなければなりません。
 そこで、この二つの分野について、総合戦略ではどのような取り組みを進め、その効果として狙っているものは何かを伺います。

○小室計画部長 例えば、全国各地と連携した産業振興では、世界有数の経済都市としての強みを最大限に生かしまして、東京のみならず、日本全国の特産物や伝統工芸品を活用いたしまして、新しい技術や商品を生み出す東京発のクールジャパンを推進する取り組みを進めてまいります。
 また、二〇二〇年大会関連のビジネス情報を提供するポータルサイトを構築して、全国の中小企業に幅広いビジネスチャンスを紹介する取り組みなどを展開してまいります。
 さらに、東京と地方の双方の魅力を生かした観光振興では、日本のゲートウエーである東京の特性を生かしまして、日本各地の魅力を発信することにより、旅行需要を喚起し、旅行者を東京から日本各地へ送客することにつながります。
 こうした取り組みの着実な実施により、こうした効果をしっかりと出しまして、東京と地方の双方の経済成長を促してまいります。

○大場委員 二〇二〇年大会関連のビジネス情報に関するポータルサイトの構築は、我が党が二〇一二年のロンドン大会での取り組みを参考として都に提案し、実現した政策であります。これらの取り組みは、東京から日本全国へと大きな経済波及効果をもたらす意義のある取り組みであり、地方と手を携えて着実に進めてほしいと思います。
 単に総合戦略を策定しただけで終わることなく、都みずからが動き、しっかりと全国各地に連携を働きかけることが重要であることはいうまでもありません。全国各地との連携強化に向けてどのように進めていくのかを伺います。

○小室計画部長 共存共栄の取り組みは、各道府県など、さまざまな方々の連携協力があって初めて成り立つものでございます。
 十一月の総合戦略の公表と同時に、舛添知事から各道府県知事に対しまして総合戦略の冊子と書簡を送付し、東京が日本全体の発展に向け、全力で取り組んでいくことを伝えました。また、職員が全ての道府県の東京事務所に直接伺い、総合戦略の策定趣旨の説明を行ったほか、先般、ALL JAPAN&TOKYOプロジェクトを公表し、現在、全国の道府県庁や商工団体を順次訪問の上、産業振興分野における今後の連携策の具体化について協議を進めております。

○大場委員 全国各地との連携の強化については、今後とも積極的に各道府県などに働きかけていくことを要望いたします。
 全国各地と連携した取り組みも重要でありますが、東京自体の活力を高めていくことも必要であります。そこで我が党は、総合戦略の策定に当たっては、共存共栄のほかにも、首都東京からの景気回復、経済再生の実現という視点からの提言も行いました。
 東京には、すぐれた技術を持つ中小企業が数多く集積し、いわゆる縁の下の力持ちであります。こうした企業こそが、東京と日本の経済を支えているのです。都内企業の実に九九%は中小企業であります。しかし、少子高齢化が進展、人口減少社会が到来し、国内需要の減少が見込まれる中、都内の中小企業が持続的に成長発展していくためには、アジア各国の旺盛な海外需要を取り込んでいくことや、新たな国内需要を創出していくことにも取り組むことが必要であります。
 東京の経済活動をさらに活性化していくには、中小企業の活躍が不可欠と考えますが、総合戦略ではどのような政策を展開していくのか伺います。

○小室計画部長 中小企業がさらに活躍していくためには、国内外の新たな成長機会を取り込んでいくことが重要であります。
 そのためには、例えば医療機器などの成長産業分野を戦略的に育成するとともに、こうした分野への中小企業の参入を支援してまいります。
 また、既存産業の技術や最新のIT技術をかけ合わせて、相乗効果により新たな事業分野の創出を支援してまいります。
 さらに、タイに東京都中小企業振興公社の現地拠点を設けて、海外展開を図る中小企業の経営相談を強化するなどの取り組みも進めてまいります。
 こうした取り組みにより、東京が世界に先駆けた技術やサービスを生み出すイノベーション都市として経済活動を活性化させてまいります。

○大場委員 東京の経済活動を支えている中小企業への支援策には、引き続きしっかりと取り組んでいかなければなりません。
 これまで都の総合戦略について、その基本的な考え方や政策展開について明らかにしてきました。地方創生の推進をめぐっては、東京一極集中の是正が当面の目標とされ、東京にとっては今後も厳しい状況が続くことでしょう。しかしながら、この総合戦略の策定をスタートとして、まさに都の考える真の地方創生の実現を目指して、政策の着実な推進を図っていくことが必要であります。
 最後に、改めて、総合戦略策定の意義と総合戦略に織り込んだ政策の着実な推進に向けた政策企画局長としての決意を伺い、私の質問を終わります。

○川澄政策企画局長 地方創生は日本全体の創生でなければならず、人口減少の克服、確固たる経済成長を目指して、全国各地が力を合わせて各種施策を推進し、日本全体の発展に貢献しなければならないというふうに考えております。
 そこで、今回策定した東京都総合戦略では、東京と地方の共存共栄という真の地方創生のありようを示し、全国に共同を呼びかけたところでございます。また、都が直面する急速かつ大規模な高齢化の進行に対しまして、正面から向き合い、さまざまな対策を講じていくという都の姿勢も明確にいたしました。
 さらに、都民の希望出生率一・七六を実現させることを将来的な人口展望として示し、あらゆる分野の施策を凝らして必要な環境整備をしていく都の決意も示したところでございます。
 総合戦略を実効あるものとし、都民生活の向上を実現するため、各局と連携を密にとって着実な事業の推進を図り、東京と地方がともに栄える真の地方創生の実現に向けて、全庁を挙げて取り組んでまいります。

○まつば委員 東京都総合戦略について質問をいたします。
 現在、政府は、地方創生が国の創生につながるものとして、人口減少社会の克服と我が国の成長力の確保を図ることを目標に地方創生に取り組んでおります。
 各地域の経済を活性化し、日本全国の経済の活性化につなげていくことは重要であります。地方創生において、地域経済の再生や雇用の確保、少子化対策の環境整備を図る上で最も大切なのは、地方創生の担い手である人に光を当てることであり、我が党の視点は人にございます。女性、若者の視点を生かし、現場で活躍されている方々の力を存分に発揮していただく人が生きる地方創生の実現が、地方創生についての我が党の姿勢であります。
 こうした視点と姿勢を持ってさまざまな課題を考えたときに、私は、少子高齢化と人口減少が東京の直面する重要なテーマであると考えております。
 現在、日本は晩婚化、晩産化が進み、合計特殊出生率も一・四二と低い水準にとどまっており、特に東京の合計特殊出生率は、二〇一四年で一・一五と、都道府県別でも最も低くなっております。
 こうした状況の中、今回の東京都総合戦略では、希望出生率一・七六の実現を人口の将来的な展望として記載をしております。まず、希望出生率一・七六の実現を人口の将来展望として示した意義についてお伺いいたします。

○小室計画部長 国の人口ビジョンにおきましても、希望出生率の概念を用いて人口展望を示しておりますが、国民、都民の希望をかなえるという考え方は、出生率向上に向けた施策を展開していく上で適切な概念であり、都としてもこれを勘案いたしました。
 今回、東京都総合戦略で希望出生率一・七六の実現を人口の将来展望として示しましたのは、結婚し、子供を産み育てたいという都民の希望がかなう社会の実現に向け、都が人口減少の問題に正面から向き合いまして取り組んでいくという姿勢を明確にするためでございます。

○まつば委員 ただいまご答弁をいただきましたけれども、こうした都の姿勢というのは、人が生きる地方創生という我が党の視点にも沿うものであり、希望出生率一・七六を示したことを評価いたすものでございます。
 先ほど申し上げました合計特殊出生率は、全国で一・四二、東京は一・一五であるわけでありますが、その差と比べますと、希望出生率は、全国は一・八三、東京は一・七六でありますから、その希望出生率の差は極めて少ないといえるのではないかというふうに思っております。東京に住む方々の希望出生率のそれは高いものだというふうに認識をいたしております。
 そうした意味からも、結婚し、子供を産み育てたいという都民の希望をかなえるための環境整備は非常に重要だと考えております。まずその一つは、結婚から妊娠、出産、子育てに至るまでのライフステージに応じた支援であります。
 結婚、出産、子育てなどについて、若い世代の方々が抱えておられる不安を取り除くために、総合戦略ではどのように取り組むのか伺います。

○小室計画部長 安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長していくという人々の希望がかなうまちの実現を総合戦略では目指しております。
 妊娠から出産、子育てまでの切れ目ない支援の充実として、総合的な周産期医療体制の整備を推進するとともに、妊婦健康診査の受診促進等を進めてまいります。また、小学生の放課後等の居場所づくりとして、学童クラブの設置促進や放課後子供教室の拡大をするほか、子育てに配慮した住宅の供給を促進するなど、さまざまな施策を着実に展開してまいります。

○まつば委員 多様なニーズに応じて、こうしたソフトからハードまで、さまざまな支援策を展開していくことは大変重要なことであります。
 また、安心して子供を産み育てるための環境整備の二つ目には、経済的基盤の安定、すなわち安定した雇用就業も重要な課題であります。特に非正規雇用は、低賃金、社内教育を受ける機会が少ないなどの不安を抱えている人もおり、迅速な対策が必要であります。
 非正規雇用者の雇用環境の改善に向けた政策展開について伺います。

○小室計画部長 総合戦略では、雇用就業対策を少子高齢、人口減少社会に対する東京の挑戦という視点に位置づけ、全ての人が自信と希望を持って活躍し、望まない非正規雇用の状況が改善されるよう取り組むことを政策の基本的方向としております。
 政策目標といたしまして、二〇一七年度までに都の非正規対策によって一万五千人を正規雇用化することなども掲げ、さまざまな施策を展開してまいります。具体的には、正規雇用者と均衡のとれた福利厚生制度を整備する中小企業の支援や、非正規雇用者の正規雇用化に取り組む事業主の支援などに取り組んでまいります。

○まつば委員 安定した雇用の実現に向けた幅広い取り組みは、少子化、人口減少という大きな課題と密接にかかわっており、子育て世代を支える重要な政策として着実に進めていただきたいと思います。
 また、安心して子供を産み育てるための環境整備の三つ目には、男女を問わず、長時間労働などを見直して、ライフステージに応じた働き方によって仕事と家庭生活を両立できるようなワークライフバランスの実現が欠かせません。さらに、高齢社会への対応という観点から考えますと、最近では特に介護による離職も増加しておりまして、私もたびたび指摘しておりますが、ワークライフバランスをいかに普及させていくかということは、少子高齢、人口減少社会における切実な問題であります。
 ワークライフバランスを今まで以上に推進していくべきと考えますが、総合戦略における取り組みを伺います。

○小室計画部長 全ての人が希望を持って活躍し、仕事と子育て、介護などの家庭生活を両立させて調和のとれた豊かな生活を享受するためには、働き方の見直しを推進し、ワークライフバランスを充実していくことが大変重要でございます。
 男性の育児休業の取得促進などのため、企業に対して社内制度の整備を支援するとともに、長時間労働の削減や休み方の改善など、企業における働き方改革を東京労働局と連携して推進してまいります。また、東京労働局や経済労働団体、一都三県とも連携して、働き方改革の機運を醸成し、ワークライフバランスの推進を大きなムーブメントへ発展させてまいります。

○まつば委員 ワークライフバランスが日本の社会に根づくように、全力を挙げて頑張っていただきたいというふうに思います。
 東京でも高齢化は一層進み、老年人口も、二〇一〇年の約二百七十万人が二〇六〇年には約四百十万人と大幅に増加するということであります。
 今後、要介護高齢者や認知症高齢者、ひとり暮らし高齢者など、支援が必要な高齢者の増加が見込まれております。高齢者の方の健康や生活実態、経済状況に合わせた介護サービスや多様な住まいの整備などが求められております。
 そこでお伺いいたしますけれども、急速であり、また人口の割合としても大変大きな割合を占める高齢化に対して、総合戦略ではどのような政策の方向性を示しているのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 高齢者が住みなれた地域で安心して暮らせる社会の実現が重要であり、さまざまな施策を着実に進めてまいります。
 介護サービス基盤の整備や多様なニーズに対応する施設の確保等を通じて、高齢者ができる限り住みなれた地域で日常生活を継続できるよう、適切な医療、介護、予防、生活支援、住まいが一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築してまいります。また、二〇二五年度末までに特別養護老人ホームの定員六万人分を整備するなど、高齢者が必要とする施設や住まいの整備を進めてまいります。

○まつば委員 高齢者が住みなれた地域で安心して暮らせる体制整備とともに、特別養護老人ホームなどの施設整備もあわせて重要であります。多くの特別養護老人ホームの待機者がいる現状を考えると、さまざまな選択肢を広げることも考えていく必要があると考えております。
 現在、私の地元であります杉並区におきましては、南伊豆町との連携による特別養護老人ホームの整備を進めております。これは、静岡県南伊豆町の町有地を活用して特別養護老人ホームを整備し、ご本人やご家族の多様なニーズに応えていくというものであります。そして、特別養護老人ホーム入所待機者の早期入所につなげるという取り組みであります。
 やはり、東京の課題、また地方の課題、その課題をお互いに解決していくというウイン・ウインの関係ということを築くということも大事な視点であるというふうに思っております。
 今回、総合戦略の中で共存共栄を取り上げたということは大変意義深いことであるというふうに思っております。そうした共存共栄の分野の中で、今申し上げたような福祉分野における東京と地方の共存共栄ということも一つの視点であるということを考えております。
 さまざまな課題や議論があることも承知はしておりますけれども、こうした福祉分野における東京と地方との共存共栄、そうしたことも今後考えていただければということで申し上げさせていただきます。
 さて、共存共栄の中で、特に被災地との関係ということが重要であります。
 東日本大震災の直後に、私、都議会公明党は被災地を訪問させていただきましたけれども、被災地の厳しい現実を目の当たりにいたしました。その後、被災地に寄り添った都の支援につきまして、現地の方々から感謝の言葉をたびたびいただいたわけでございまして、私から東京都に対して、この間の支援に対して敬意を表し、感謝を申し上げたいと思います。引き続きの復興支援というものを進めていただきたいと思っております。
 また、二〇二〇年大会の開催に向けては、キャンプの誘致や予選大会の実施などを期待する声もありまして、大会を契機として東北が復興した姿を世界に示すとともに、スポーツやオリンピック・パラリンピック教育等を通じて被災地の復興を継続して支援していくことも重要であります。
 総合戦略が期間六年といたしているわけでありますが、二〇二〇年大会を契機として、被災地とどのような連携を進めていくのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 復興に向かう被災地の姿を世界に発信するとともに、スポーツの力で被災地の人々を元気づけ、二〇二〇年大会を通じた復興支援を推進してまいります。
 具体的には、子供たちのスポーツ交流や被災地へのアスリート派遣、国際的なスポーツ交流の場の提供を初め、競技会場のある他都市や被災県等と連携した取り組みを進めてまいります。
 また、オリンピック・パラリンピック教育は、子供たちの知、徳、体を育むとともに、国際感覚を醸成し、共生社会の実現、国際社会の発展に貢献できる人材育成に寄与するものでございます。
 被災地と連携して、二〇二〇年大会参加国の学校等とさまざまな交流を進め、新たなオリンピック・パラリンピック教育の形を世界へ発信してまいります。

○まつば委員 都議会公明党は、被災地の復興なくして二〇二〇年大会の成功はないと、たび重ねて訴えてまいりました。昨日の本会議一般質問で我が党の東村議員の質問に、舛添知事も、開催都市の知事として、復興をより効果的に後押しすべく、来年春、いまだ風評に苦しむ福島に行きたいと考えている、引き続き都は、被災地の声に耳を傾けながら、復興五輪への道筋を確かなものにしていくという趣旨のご答弁をされたわけでございます。
 今ご答弁で、具体的なご答弁でございましたけれども、ぜひともこうした取り組みを着実に実施していただきまして、被災地としっかりと連携をしていっていただきたいというふうに思っております。
 さて、二〇二〇年大会に向けて訪日外国人旅行者も増加の一途でありまして、直近の統計では、昨年、日本を訪れた外国人旅行者数は年間一千三百四十一万人と、過去最多を更新しております。毎日、まち中でも多くの外国人旅行者を見かけるようになっております。海外からの来訪者がふえていることを実感するわけでございます。
 さきの事務事業質疑におきましても私は指摘をさせていただきましたけれども、二〇二〇年大会に向けて、誰もが安心して観光を楽しめる環境の整備を進めていくべきと考えております。今回の総合戦略における政策展開についてお伺いいたします。

○小室計画部長 総合戦略では、多彩な魅力で世界中の人々を引きつけるとともに、おもてなしの心により、訪れた人が快適かつ安心して滞在でき、何度でも訪れたくなる魅力あふれる都市の実現を目指していきます。
 そのために、外国人旅行者等の滞在環境の充実に向けまして、異なる言語、多様な文化、習慣などのさまざまな視点から課題を整理して、充実した政策を展開するよう取り組んでまいります。
 さらに、高齢者や障害者が不安を感じることなく都内観光を楽しめるバリアフリー観光を推進するなどの取り組みにより、世界中の旅行者から選ばれる世界有数の観光都市へ東京を発展させてまいります。

○まつば委員 心からのおもてなしのためには、きめ細やかな取り組みが必要であります。二〇二〇年に向けて万全の準備を進めていただきたいと思います。
 東京都総合戦略の策定に当たりましては、我が党の提言が随所に反映されており、人が生きる地方創生の実現のための基礎となるものであると考えております。今後の着実な政策展開を求めて、質問を終わります。

○清水委員 私からも東京都総合戦略についてお伺いいたします。
 まち・ひと・しごと創生法では、東京圏への人口の過度の集中を是正することを解決すべき課題の一つとして掲げています。
 これについて、安倍内閣総理大臣は、この法案の審議の際にこういうふうにいっておられます。現在の一極集中については、地方を支える人材が東京に流出するとともに、出生率が低い東京への人口集中が我が国の人口減少にもつながっているという大問題がある、また、東京では、その過密化を背景に、住宅価格が高い、通勤時間が長い、待機児童が多いという問題が生じている、大規模な災害リスクの問題があるなどの問題が生じていると認識しているというふうに、国会での我が党の国会議員の答弁に語られています。
 それでは、東京都は、総合戦略は、この創生法に基づき、どのような考え方で策定したのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 東京都総合戦略は、昨年十二月に策定いたしました東京都長期ビジョンで掲げた目標や政策を基本に、特に東京と地方の共存共栄に焦点を当て、東京と地方がともに栄える真の地方創生の実現を目指すものとして策定いたしました。

○清水委員 それでは、この戦略中にあります国際ビジネス環境の創出や国際金融センター構想の実現というものが地方創生にどのように関係があるのか、お答えください。

○小室計画部長 総合戦略では、首都、国際都市としてさらに発展し、日本経済を活性化を視点の一つとして示しております。国際ビジネス環境の創出や国際金融センター構想の実現は、この視点に位置づけられるものであり、これらの実現により、東京が多くの富を生み出し、それを全国に波及させることで、日本経済の持続的成長につなげてまいります。

○清水委員 今の答弁の中の東京が多くの富を生み出すとか、日本全国に、成長につなげていくというようなことをいっておられますけども、それについてはどのような確証があるのかというふうに私は疑問に思います。
 それで、最初にお話ししました一極集中については、私は、これまで東京都が進めてきた施策、都市づくりや経済政策の結果であるというふうに考えております。
 一つの例として、東京消防庁が統計表を出しているのですけども、これは消防署別四階以上及び地階を有する建築物の数ということで(資料を示す)毎年の数が出ています。これをちょっと統計的に調べてみたところ、この一枚のものなので、こちらしかわからないのですけども、二〇〇二年の二十一階建ての建物の数の推移です。二〇〇二年、そしてこちらが二〇一三年。こちらは三十三階建て以上、百メートル以上の建物の推移です。これを見ますと、二十一階以上の建物は、この十年余りの中で二・三倍、三十三階以上の建物で約二・六倍です。
 それで、この間、東京都だけがやったとはいいませんけども、国の都市再生特別措置法というものに基づいて、二〇〇二年には都市再生緊急整備地域指定が行われ、同じく、東京都として東京都アセスメント条例が改正されました。これは対象にする範囲を限ったわけですよね。
 二〇一一年には、やはり都市再生特別措置法の改正がありまして、特定都市再生緊急整備地域指定というのが行われました。二〇一三年には、ご承知のように、国家戦略特別区域指定というものが行われてまいりました。
 これらで見ますと、容積率の緩和、高さ制限の緩和、そして環境アセスの適用除外の拡大、規制緩和策が大規模再開発プロジェクトを推進し、私は東京への過度の集中をもたらしているのではないかと思うわけです。
 私たちは、この東京一極集中の是正が必要だと思っておりますけども、東京都はどのように考えますか。

○小室計画部長 都はこれまで、都民生活の向上や東京の発展につながる施策を着実に推進してまいりました。その結果、東京における旺盛な経済活動、多くの雇用の創出、人や情報などの充実した都市基盤が形成され、多くの企業や若者を誘引いたしました。これはあくまでも自発的な選択の結果によるものだと認識しております。
 企業、人、情報などの集積は、経営の効率化やイノベーションの源泉となるものであり、日本経済の持続的成長を支える役割を担っている東京にもたらす効果は大きいものがございます。
 都は、今後とも、全ての人が魅力を感じることができる都市の実現に向けた施策を着実に実施してまいります。

○清水委員 私が今、説明したように、自発的な選択といいますけれども、この十年余りの中で大きな改正が行われて、容積率緩和とかアセスの対象外とか、そういう誘導がされているというのが実態ではないですか。
 昨日の毎日新聞の夕刊に、見出しだけですけども、東京駅前に日本一、三百九十メートル誕生、超高層ビルなぜ今、供給過剰で家賃の下落も、需要生む政策乏しく、高さ競争は新興国、日本はそろそろ別の道をというようなことで、何人かの方が、ここでこの超高層ビルのラッシュに疑問を呈しているわけです。
 結局、政府は、規制緩和を進めるといいながら、容積率を上げてビルの供給だけふえるような緩和ばかりやっているということじゃないですか、高齢化と人口減で、働き手であるオフィスワーカーは確実に減る、在宅勤務の活用など働き方も変わっていく、最も重要なのは需要をつくることです、ディベロッパーにビルはつくれても需要はつくれない、成長率につながるような新しいビジネスが生まれるような規制緩和こそ進めてほしいという、これを全部肯定するわけではないんですけども、そして、建築家の大学教授の方は、日本はそろそろ超高層の次に来るものを探してもいいのではないでしょうか、既にイギリスは、都心の開発も含め超高層建物の建設をやめています、最大の理由はメンテナンスのコストが高くつくためですというような、いろんな研究者がこうした、昨日の夕刊のことです。
 私たちも、これまでもこういうことをいってまいりました。そして、今度の議会でも、東京都長期ビジョンや平成二十八年度の予算要求において、さらなる大規模開発や外環道や環二の延伸、そして臨海部だけでも三千億円等の計画がされているのではないか。そのために、東京一極集中は、政府の方では是正といっているわけですけれども、さらに推進していくのではないですか。転換が必要だと思いますけど、いかがですか。

○小室計画部長 首都圏の人や物の流れを支える陸海空の広域的なネットワークの強化や、ビジネス、観光、文化など多様な機能を集積したまちづくりを進めることは、東京が激化する国際的な都市間競争に打ち勝ち、日本経済が持続的に成長していく上で重要なことでございます。
 今後とも、交通インフラと拠点機能の整備を推進し、国際都市としての競争力を高めてまいります。

○清水委員 民間のビルの開発だけでなくて、公共投資においても、まずこれを比べると、全国の中でも東京の比重が大きく高まっています。国際競争力強化のためとして進めているわけですけども、やはり私は、この集中、そして大規模な開発計画などは転換をしていく必要があると思います。
 そして、先ほど来も触れられていますけれども、総合戦略では、長期ビジョンに沿ったいろんな施策が進められていますけども、例えば子育ての問題では、やはり今、保育園の増設などは進められているようですけれども、医療の充実など大変重要な施策がまだまだ不十分です。
 若い人たちの子育てで、今、一番願っていることというのは、やはり経済的な支援が必要だと。してほしいということです。とにかく、生まれたときから、ミルク代、おむつ代が本当にかかるわけで、そして、少し大きくなれば医療費がかかるわけです。
 幸いなことに東京都では医療費の無料化が進んでいますけども、ご存じでしょうか、多摩地域ではまだ二十市で、所得制限以上の方は無料の医療証がもらえないということになっております。
 最近では、インフルエンザがはやるよということで、私の近くでも、一歳と三歳のお子さんをお持ちの方が、やはりインフルエンザの注射をしたら二回やるわけで、二回で、それぞれ八王子市民ですから、余り支援がないものですから大変お金がかかるということで、ちゅうちょしていたと。でも、インフルエンザで大変苦しむよりも、やはりお金をかけて予防注射を接種した方がいいよというようなことで、これを泣く泣くやられていました。そういう大きな課題を抱えているわけです。それについてどうなのかということが触れられていません。
 また、八王子では小児病院が府中の方に行って、やはり空白が生まれているわけです。いろんな対策をやっています。しかし、都立の小児病院が担ってきた仕事というのは本当に大事なもので、子供たちの健康が心配だ、命が心配だという声も、最近でもたくさん聞きます。
 この総合戦略で掲げています。掲げていますけれども、やはり安心して子供を産み育てられるという社会の実現には多くの課題が残されていますけれども、そういうことについて、今後はどのように考えますか。お聞きします。

○小室計画部長 総合戦略では、少子高齢、人口減少社会に対する東京の挑戦を視点の一つとして掲げ、安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまちの実現を目指すこととしております。
 今後とも、保育サービス拡充による待機児童の解消、特別な支援を要する子供と家庭への対応の強化など、さまざまな政策を引き続き展開してまいります。

○清水委員 また、非正規雇用の問題でも、東京都はこれまでになく進めてきているというふうには実感します。一万五千人の非正規雇用から正規化を進めるということを進めていますけれども、しかし、国の労働法の改正、改悪なんかもどんどん進んでいるわけで、やはり非正規雇用は増加するのではないか、これは代表質問なんかでも触れました。
 総合戦略において、本当にきめ細かい非正規雇用対策というのを進めていく必要があると思いますけども、ここの記述だけでは非常に十分ではないと。不十分だと思いますが、どのように考えますか。

○小室計画部長 総合戦略では、非正規雇用対策は、少子高齢、人口減少社会に対する東京の挑戦に位置づけており、正規雇用転換等を促進しております。
 今後とも、望まない非正規雇用が改善されるよう、必要な取り組みを引き続き展開してまいります。

○清水委員 きょうは、子育ての問題と非正規雇用の問題だけを触れましたけど、たくさんいいたいことはありますが、時間も限られているので、この総合戦略について、転換をすべきことと、それから進めていただきたいことをピックアップしていいました。
 子育てのことをいいますと、若者の経済的な安定を、そして、妊娠や出産や子育てについて切れ目のない支援だと総合戦略でもいっています。国もいっています。
 そして、都内でつくられている自治体の戦略も、私はちょっと目を通してきたのですけれども、まだ少なくて十自治体にいっていないようですけども、この中で、本当に各市で細かいメニューが出されています。ある市で見ると、中学校での、助産師さんのお話を聞いたり、妊婦さんとか赤ちゃんとの触れ合いの授業を取り入れて、核家族で経験することのできない体験を取り組むことをこれから準備していましたし、実際に聞きました。
 こういうきめ細かい子育て支援などについても、やはり自治体の支援などにも今後取り組んでいただきたいということを要求しまして、質問を終わります。

○新井委員 私からは、十月に策定されました東京都総合戦略について質問をいたします。
 この総合戦略の特徴としまして、共存共栄という重要な視点があるということですが、日本のゲートウエー、交通結節点である東京から日本各地の成長発展へつながることは、東京ならではの地方創生への取り組みの視点として重要なことだと考えております。
 東京は、区部と多摩で地域特性が異なり、東京ならではの特性に対応した地方創生の取り組みが必要です。
 そこで、多摩地域に関連した共存共栄の取り組みについて、どのような施策があるのか、お伺いします。

○小室計画部長 奥多摩ワサビ等の東京産食材など東京の多彩な魅力や日本全国の特産品等を紹介する東京味わいフェスタを開催するほか、多摩地域の企業も多く出展する産業交流展において全国企業ゾーンを拡大し、全国各地の企業等との交流を促進します。
 また、多摩産材に加え、国産材の魅力をイベント等で発信するとともに、都関連施設等におきまして、多摩産材、国産材の利用を促進します。
 さらに、多摩地域を含む都内各自治体と日本の各地が連携して行う、食、伝統文化など多様な特性を生かした観光まちづくりの取り組みの支援も行ってまいります。

○新井委員 食、伝統文化、歴史など共通なもので日本の各地を結び、観光まちづくりの取り組みの支援をするという答弁をいただきました。
 例えば、私の地元日野市では、新選組まつりがございます。新選組ゆかりの地を結んで、そういった取り組みもできると考えております。
 また、先日、小河内ダムの視察へ行ってまいりましたが、最近では全国のダムめぐりをする方が大変多いと聞いております。また、国土交通省と独立行政法人水資源機構の管理するダムでは、ダムのことをよく知っていただこうと、平成十九年度よりダムカードというものを作成しまして、ダムを訪問した方にこれを配布しているということです。これは、いわないと窓口でもらえないというものです。置いてあるものではないというものです。そのカードを集めている方が多く、カードをファイリングしたり、またはSNSなどで交流しているという話もお伺いいたしました。
 また、味わいフェスタですが、有名なレストランシェフの方に、東京産の食材を使って新しいメニューをつくっていただいたということです。ことしは十月の三連休に開催され、とても盛況だったと聞いております。食で東京都と日本全国を結び、みんなに喜んでもらえる取り組みだと思っております。
 一方、東京都ならではの特徴を生かすという観点も考えていかなくてはならないと思っております。外国の方が東京へ来たら浅草へは行くけど、奥多摩などの多摩地域や島しょには行かないというのでなく、どんどん多摩地域や島しょにも足を運んでもらいたいと思っております。
 私の地元の日野市でも、特産品の梨やブドウ、トマトなどの東京産の食材が多く生産されております。多摩地域と全国各地それぞれの特産品を活用した交流は、各地域の活性化につながる重要な取り組みです。また、多摩地域には、ミシュランにも掲載された高尾山があり、外国人の方にも人気の観光スポットとなっております。
 こうした多摩地域の特性を生かして、総合戦略ではいかに観光振興を図っていくのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 東京の多彩な特性を生かし、各地域ならではの観光振興を推進していくために、ウエブサイトやSNSの効果的な活用など多様なメディアを通じて、多摩地域や島しょ地域の魅力や楽しみ方を発信してまいります。
 また、これらの地域における外国人旅行者の興味を引く観光ルートの開発を支援するなど、多摩・島しょの地域資源を活用した新たな魅力の創造発信に取り組んでまいります。

○新井委員 魅力や楽しみ方の発信という意味では、小笠原諸島は、その魅力を多くのSNSでいろいろと発信されて成功していると聞いております。多くの、旅行を趣味にしているブロガーなどに配信していただく仕組みも必要ではないかと思っております。
 近年、観光客増加のキーワードの一つとしましてMICEがあります。報奨旅行や国際会議、国際見本市の開催などで国内外から多くの来訪者が集まります。特に国際会議や国際見本市の誘致に当たっては、アフターコンベンションのための観光メニューの充実も必要であり、多摩・島しょ地域はそうした観光に適した地域でもあります。
 MICE誘致を推進していくため、多摩・島しょ地域をどのように活用していくのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 MICEの開催は、大きな経済波及効果が期待されるだけでなく、主催者や参加者が地域にもたらすさまざまな効果を通じて、産業力の強化や都市のプレゼンス向上が見込まれるなど、都市の競争力強化につながります。
 MICEの誘致を戦略的に推進していくためには、東京の強みや資源を有効活用し、他都市との差別化を進めるとともに、主催者や参加者の満足度を向上させる取り組みが必要でございます。
 そこで、多摩・島しょの魅力的な観光資源を活用した観光ツアーや体験メニューの開発、提供に取り組み、アフターコンベンションの充実を図ってまいります。

○新井委員 観光ツアーや体験メニューを開発、提供するということです。開発するときには、例えば、国際会議が終わった後に、温泉や酒造めぐりをしながら伝統工芸品の文化体験メニューをセットにするなど、いろいろな組み合わせをしていただきたいなと思っております。
 この一、二年で海外からの観光客は大幅に増加しており、おもてなしの充実が必要であると思います。特に外国人旅行者へのおもてなしには、ITの活用も必要不可欠です。しかし、外国人旅行者にとっては、東京の無料Wi-Fiの利用環境が不十分な面もあると聞いております。
 世界有数の観光都市として、無料Wi-Fiの利用環境の改善に向けた取り組みをお伺いします。

○小室計画部長 情報通信分野の技術革新が急速に進み、外国人旅行者が情報を入手、発信する手段が多様化していることを踏まえまして、ITを活用して旅行者が手軽に観光情報等を入手、発信できる環境を整えていくことが必要でございます。
 とりわけ、東京の無料Wi-Fiの利用環境について不満に感じている外国人旅行者の方は、アクセスポイントが少ないことなどを理由として挙げております。
 そこで、無料Wi-Fi利用環境の向上を目指して、外国人旅行者が多く訪れる新宿、銀座、浅草などの重点整備エリアで、歩行空間や観光案内窓口等にアクセスポイントの拡充をしてまいります。

○新井委員 無料Wi-Fi環境の整備を確実に進めていただきたいと思います。
 ITという面からしますと、多言語対応においても活用の余地が大きいと考えております。ITを活用した多言語対応の充実に向けた都の施策展開をお伺いします。

○小室計画部長 外国人旅行者が都内観光を行う際、言葉が通じないことが大きな障壁となっているため、旅行者が多言語で情報を容易に入手できる環境を整備することが必要でございます。
 そこで、観光案内窓口において、翻訳アプリ、デジタルサイネージ等のIT技術を導入し、外国人旅行者の方がひとりでまち歩きを楽しめるよう、多言語で観光情報を提供する環境を充実させてまいります。

○新井委員 先ほどデジタルサイネージの話がございましたが、デジタルサイネージ関連で最近注目をするところは、デジタルサイネージとスマートフォンのアプリケーションの連携です。観光案内をサイネージが日本語で表示してあれば、例えば外国人のスマートフォンには、母国語であります英語だったりとか、また中国語が表示されている。また、観光情報が表示をされていたら、例えば行き先に対して、地図経路をスマートフォンに表示するだけでなくて、進むべき方向を矢印でスマートフォンで表示して、そして目的地までの距離もあわせて表示をする、そういったものもあると聞いております。見知らぬ場所でまち歩きを考えますと、とてもわかりやすいものだなと思いました。
 また、翻訳や多言語対応という意味では、案内支援ロボットの開発も注目されております。都立産業技術研究センターは、東京ロボット産業支援プラザをオープンや、中小企業のロボット産業参入支援にかかわっておりますし、十一月に開催されました産業交流展でも案内支援ロボットが出展されておりました。
 東京都総合戦略の特徴的な取り組みを、多摩・島しょ地域など東京の地域特性も踏まえて質疑をいたしました。東京の多様性に着目した施策を着実に展開し、真の地方創生につなげるとともに、二〇二〇年の大会に向けて、ITを活用したおもてなしの充実を進めていくことを期待しまして、質問を終わりにします。

○石川委員 東京都の総合戦略についてお伺いいたします。
 東京都総合戦略の期間は、東京オリンピック・パラリンピック終了までの二〇二〇年としているわけであります。東京と地方の共存共栄を目指しており、史上最高のオリンピック・パラリンピックを目指すことも明記をされております。
 オリンピック・パラリンピックの主催都市は東京都ではありますが、オールジャパンで取り組むべき課題であり、そのための連携のための組織づくりも始まろうとしているわけであります。観光を初め、特に経済波及効果をいかに全国的なものにするのかについては、大きな取り組むべき課題であります。
 一方、ラグビーワールドカップも二〇一九年に開催をされます。ワールドカップは、この総合戦略がつくられたのと同時期だったということもありまして、明確な位置づけを総合戦略に記述することができなかったのではないかなと思っているわけであります。
 一方、知事は、今回の第四回都議会定例会の所信表明で、二〇一九年ラグビーワールドカップと二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催都市として、今後、世界の注目はますます東京に集まります、この絶好の機会を捉え、東京が日本の魅力、文化の展示場、ショーウインドーとしての役割を果たしてまいります、都庁展望室では全国の物産品販売を通年で行い、都内にある全国のアンテナショップとも連携をする等、日本各地の奥深い魅力を全国に発信しますと述べております。オリンピック・パラリンピックとラグビーワールドカップを連続して位置づけているわけであります。
 この総合戦略では、ラグビーワールドカップをどのように位置づけしているのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 ラグビーワールドカップ二〇一九は、東京も開催都市の一つとなっておりまして、東京スタジアムが開会式、開幕戦の会場ともなっており、スポーツ都市東京を世界にアピールする絶好の機会だと考えております。
 今回の総合戦略では、基本目標2におきまして、誰もがスポーツに親しめる社会の実現を目指しており、その中で、ラグビーワールドカップ二〇一九を初めとするスポーツに関するさまざまな国際大会などの誘致により、スポーツ都市東京の魅力を世界に発信するという施策を掲げております。

○石川委員 事務事業にかかわる長期ビジョンに関する質疑でも触れましたけれども、英国時間九月十九日、ラグビーワールドカップで南アフリカ対日本戦が行われまして、日本が、過去二度の優勝を誇る世界ランキング三位の南アフリカを三十四対三十二で破る大金星を上げたわけであります。この一戦の勝利によって、ラグビーの我が国における位置づけのみならず、世界の位置づけ、ステージが大転換をしたといっても過言ではないかと思うわけであります。
 しかも、ラグビーワールドカップ日本開催は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの前年でもあり、しかも、東京を含めて日本全国の十二都市で開催され、各地方都市にとっての経済効果や国際化に向けて果たす役割は大変大きなものがあると思うわけであります。
 ワールドカップは、まさに東京と地方がともに栄える真の地方創生のテーマにふさわしいものと考えますが、都の考え方をお伺いいたします。

○小室計画部長 都といたしましても、ラグビーワールドカップ二〇一九は、東京にとって大変重要な大会であると認識しております。東京も開催都市の一員として、オールジャパンで大会の成功に向けて取り組んでまいります。

○石川委員 十五人制ラグビーは、二〇一九年に東京スタジアムで開会式、開幕戦等が行われ、二〇二〇年には、七人制ラグビーが同じく六日間にわたって東京スタジアムで行われるわけであります。また、多摩地域には、本拠地を置く社会人ラグビーチームも多く、人口減少が始まっている多摩振興にもつながる事業なわけであります。しかも、ラグビーワールドカップのレガシーをしっかり残していくためにも、また、ワールドカップそのものを成功させるためにも、東京が中心となり、全国の自治体を牽引していく必要があると思うわけであります。経済効果を初め、全国に活力を起こしていくため、まさに東京と地方の共存共栄のチャンスとしていかなければなりません。
 いずれにしろ、オリンピック・パラリンピックと同じような位置づけで対応していただきたいことを要望して、次の質問に移ります。
 総合戦略は、〔1〕、地方との共存共栄、〔2〕、首都、国際都市としての発展、〔3〕、少子高齢、人口減少社会に対する挑戦をテーマとしております。これらの大テーマを実現するために、国と地方の連携が重要なわけでありますけれども、国と地方との関係がどのようになっているのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 国は、まち・ひと・しごと創生法を制定し、同法に基づき、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定することで地方創生を推進しております。
 地方自治体も、同法により地方版総合戦略の策定が努力義務とされており、国と一丸となって取り組むことで日本全体の活性化を加速していくことが求められております。
 都も総合戦略を策定することで、東京と地方がともに栄える真の地方創生の実現という、地方創生に対する都の姿勢を明確化し、日本全体の持続的発展に貢献してまいります。

○石川委員 三つのテーマを実現するためには、国からの指示待ちで全国の自治体が活性化をするならば、これはある種、たやすいことかもしれません。国を見て仕事をしていればよいわけですから。しかし、中央集権型では、地方の真の意味の継続的な活性化を達成することは困難と思います。
 地方にはさまざまな事情があります。同じ東京でも、二十三区と多摩地域にも違いがあり、同じ多摩でも、南多摩と西多摩では、課題も地域性も地域の持っている力も異なるのは当然なわけであります。ですから、地方のことは地方に、地域のことは地域に任せる分権型社会を目指していくことが必要になります。今後、この総合戦略を具体化する上で、財源や権限を地方に移譲していく分権型社会を目指していくことが必要だと思うわけであります。
 この地方分権の考え方と地方創生はどういう関係にあるのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 昨年十二月に国が策定いたしました、まち・ひと・しごと創生総合戦略において、国は、税制、地方財政や地方分権など、あらゆる制度を地方創生の基本的な考え方にあわせて検討するとされております。また、地方分権改革の推進は、地域がみずからの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生において極めて重要なテーマであるとされております。

○石川委員 最後に、テロ対策について伺います。
 先月、パリで起こった同時テロは、来年の伊勢志摩サミットや二〇一九年のラグビーワールドカップ、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを開催する我が国にとっても大きな衝撃であることはいうまでもありません。テロへの対応力を高めていくことは極めて重要な課題であります。
 東京都が建設するオリンピック関連施設として、今回、東京ビッグサイトの隣に建設する拡張棟施設がオリンピック施設から外れることになったわけでありますけれども、テロ対策を初めとするセキュリティー対策のためのバックヤードとして活用する提案などもさせていただいたところでございます。
 オリンピックにかかわらず、テロへの対応力を高めていくことは重要なわけであります。都としては、総合戦略の中で、どのようにテロ対策を計画の中に位置づけているのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控える東京にとって、テロ対策はこれまで以上に対応が求められ、万全な体制を整備する必要がございます。
 総合戦略では、基本目標1におきまして、史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現を目指して、テロ等への対応力を強化し首都東京を守るとしております。その中で、テロ対策につきましては、二〇二〇年大会の成功と安全確保のため、テロ発生に備えた初動対応力を整え、東京に住み、訪れる人たちの生命、身体、財産を守るという施策を掲げております。

○石川委員 去る十一月三十日、稲城市役所の玄関から、ロビーにバイクで乗りつけた四十七歳の男が灯油を市役所内にまいて放火をするという衝撃的な事件が発生いたしまました。煙を吸い込んだ人が病院に運ばれ、また、消火のための水をかけたため、コンピューター機能を守るため、一時停電とし、結局、ロビー階は翌日も業務を停止せざるを得ない状況になったわけでございます。また、犯人は、駆けつけた警察官が停車したパトカーに乗り込み、別のパトカーに衝突をして車はとまり、逮捕されるという事件に発展をいたしました。動機などは公式には明らかにされておりませんが、ロビー等でこのような悪事を働くことはないだろうということを前提に、いわば性善的な考え方で市役所などは運営をされているわけですが、そのことを根底から覆される事件といえるわけであります。
 そういった意味では、都のテロ対策について、総合戦略の中で具体的にどのような取り組みを行うのか、お伺いいたします。

○小室計画部長 総合戦略では、テロから首都東京を守る取り組みとして、例えば警察、消防、医療機関等が連携した共同訓練の実施など、官民一体のテロ対策の推進を盛り込んでおります。
 都は、最高水準の危機管理体制を確立してまいります。

○石川委員 世界的なテロの手段である爆弾や銃火器によるものに対処することは、非常に重要といえるわけであります。しかし、日本では、毒物の散布や放火テロ等の対策も重要なわけであります。
 我が国の場合は、公的施設も含めて、ほとんどは性善を前提につくられ、運営もされているわけであります。今回の放火事件を教訓とするならば、もし灯油でなくガソリンが使われていたと想像するだけでも、身の細る思いがするわけであります。
 こういった類いのテロ行為にどう対処していくのか、都を初め、区市町村を含めて対策を検討していただくことを求めて、質問を終わります。

○おときた委員 私からは、まず、こちらの東京都総合戦略の策定のコスト、労力についてお伺いをいたします。
 こういった長期ビジョンや戦略を立てることは、もちろん無意味なことではありませんが、それ相応のコストが発生をいたします。今回、こちらは法の要請に従って策定しているものになりますけれども、この総合戦略の策定に当たり、外部委託などは行っているのでしょうか。また、策定の経費と期間はどの程度かかったのかをお伺いいたします。

○小室計画部長 東京都総合戦略の策定に当たって外部委託は行っておらず、経費は冊子の印刷に約百四十万円を支出したのみで、最少の経費で策定したものと認識しております。
 また、期間につきましては、本年七月から着手し、十月に策定を終えたことから、約四カ月を要しました。

○おときた委員 外部委託などは行っておらず、自前で作成をしたので、費用としては印刷費の最小限しかかかっていないということでした。
 ただ、その程度の支出で済んだのは、この総合戦略の策定に先立って、昨年度に東京都長期ビジョンが策定されているからにほかなりません。実際、この総合戦略の随所に長期ビジョンを利用した箇所が見られます。したがって、長期ビジョンの作成費用も、こちら総合戦略作成の関連費用として考えられるのではないかと思います。
 そこで、昨年度に長期ビジョンの作成に要した費用の方を伺います。

○小室計画部長 都は、昨年十二月に、世界一の都市東京の実現を目指すための都政の大方針となる東京都長期ビジョンを策定いたしました。その後、まち・ひと・しごと創生法に基づき、全国の地方自治体が地方版総合戦略を策定することとなりました。
 そこで、都の総合戦略は、都政の大方針である長期ビジョンをベースに、外部委託も行わず、コストもかけず、効率的に策定することといたしました。
 そもそも、長期ビジョンと総合戦略はこのように位置づけが異なるものであり、長期ビジョンの作成費用を総合戦略の関連費用とすることは妥当とは考えられません。
 なお、お尋ねの長期ビジョンの策定経費についてでございますが、昨年度、冊子の印刷経費として約一千百六十万円、冊子の作成経費として約一千七百九十万円を支出いたしました。

○おときた委員 東京都としては関連経費とみなしていないということですが、東京都長期ビジョンの作成経費の中には、調査費や、恐らくビジュアルを作成する費用なども含まれていると思います。一定のコストがかかっているということがわかりました。
 さて、こちらの総合戦略の中身を見ますと、いわば総花的で、優先順位をつけた戦略にはなかなかなっていないのではないかと、そういった意見もございます。並んでいる政策の中は、どれも否定できるような内容ではないのですが、極端なことをいえば、国際都市を目指すという政策をとって外国人労働者がふえた場合、治安が悪化して安全・安心のまちをつくるという政策は満たせない、いわばトレードオフの関係になる可能性があります。これは極端な例ではありますけれども、どのような優先順位で実行していくのかを決めるのが政治であって戦略であると考えます。
 本総合戦略における優先順位の考え方を伺います。

○小室計画部長 総合戦略は、長期ビジョンで掲げた全ての政策をまとめ直した上で、そこから真の地方創生の実現に向けた三つの視点に沿って重点的な政策を選び出し、取りまとめました。さらに、その三つの視点の中から、最重点事項として東京と地方の共存共栄に焦点を当てて、さまざまな政策を展開しています。

○おときた委員 こちらの総合戦略は地方創生を目指すものなので、東京と地方の共存共栄の優先順位が上がるということで、そちらは理解できるところなのですが、では、この総合戦略によって地方創生の優先順位が明確化されたことで、東京都全体の長期ビジョンにも影響があるのではないでしょうか。戦略やビジョンというのは何のためにつくるのかという問いに戻れば、これは優先順位をつけるということですから、長期ビジョンにおける地方創生の立場も変わってくるはずです。
 そこで、本戦略が策定されたことで、逆に今後の長期ビジョンにはどのような影響と変化があるのかを伺います。

○小室計画部長 総合戦略には、長期ビジョンの政策の方向性の中で、地方創生の観点から充実強化を図る政策を盛り込んでおります。
 長期ビジョンの策定から一年近くが経過する中、その時々の社会経済状況に合わせて政策の充実強化を図ることは当然であり、これをもって長期ビジョンの政策の方向性自体に影響、変化を与えるものではございません。

○おときた委員 ご答弁をいただきまして、ここになかなか納得しがたい部分があるのですが、長期ビジョンから切り出して強化した戦略を作成したということであれば、この方向性と申しますか、やはり政策の強弱については何らかの影響があるはずです。逆に、それが全くないとすれば、本戦略というのは、計画をするための計画であって何ら意味がない、そういったことにもなってしまいかねません。法の要請に基づいて策定されたものとはいえ、しっかりと戦略策定の意義が満たせる運用をしていただきたいと感じているところです。
 最後に、こちらの長期計画の柔軟性について伺います。
 長期的な計画を複数策定することもよいのですが、例えば大規模な災害やリーマンショックに匹敵するような経済環境の変化など、外部環境が大幅に変化したとき、こういった計画の扱いはどのようになるのでしょうか。前提とされている状況が覆れば、せっかくこのように複数策定したプランが全て無に帰るということにもなりかねません。現時点で想定されている対応についてお聞かせください。

○小室計画部長 国の通知によりますと、総合戦略の改定は、実施した施策、事業の効果を検証した上で必要に応じて行うものとされており、都としても適切に対応してまいります。
 また、一般論でございますが、都の計画は、都政にかかわる重要な社会的変動が発生し、見直しの時期が来たと判断される際には、それまでの進捗状況を踏まえつつ、必要な改定を検討するものと認識しております。

○おときた委員 こちらの国の要請では、特にしっかりとしたアップデートに関する取り決めはないということみたいですので、東京都の自律的な確認、更新作業が必要になります。
 来年度も、また新たな視点から長期計画、アフター二〇二〇年というところが策定されるということも聞いておりますが、かなりこういった計画がたくさんあって、何が何だかわからないというような都民の声も聞かれます。
 こういった策定される長期計画がしっかりと活用される形で運用されて、そして、しっかりと区別がついて影響というのが確認できるような、そのような運用がされることを期待いたしまして、私の質問を終わります。

○近藤委員 それでは、私からもちょっと確認をさせていただきたいと思います。
 先日の事業質疑におきましても、PDCAについてお尋ねをしました。きょうは、提案、ご説明いただいたこの東京都総合戦略の部分のDとCというところでお尋ねをしたいというふうに思います。
 先ほど我が党の大場委員からも、東京都総合戦略の策定の考え方や地方創生に対する都の考え方、東京都と地方がともに栄える真の地方再生を実現するため、都の取り組みについて質問がありました。また、先日の我が党の代表質問におきましても、この総合戦略につきましては、実行に向けて知事の決意をご答弁いただいたところでございます。
 今回の総合戦略におきましては、少子高齢、人口減少社会の東京都の挑戦の論点の一つだというふうに認識をしております。少子高齢、人口減少の問題は、労働力人口の減少や、それに伴う経済成長へのマイナスの影響、社会保障費の増大など、今後の都市のあり方を左右する大きな要素でありますし、首都東京における少子高齢、人口減少の問題は、我が国の将来にも大きな影響を与えるものだというふうに思っています。
 そこで、総合戦略における東京都の人口に対する考え方と少子高齢、人口減少社会への対応について、まずはお尋ねをしたいと思います。
 人口の推計、分析は、東京都長期ビジョンと同様の内容を示しておりますけれども、改めて、どのような推計、分析を行っているのか、お尋ねします。

○小室計画部長 総合戦略におきましては、国が策定を求めている地方人口ビジョンに当たるものといたしまして、人口の現状分析や推計、人口の将来展望をまとめております。人口推計は、二〇一〇年の国勢調査結果をベースとした長期ビジョンの推計と同様としております。
 東京の人口は、二〇一〇年に一千三百十六万人、その後、二〇二〇年の一千三百三十六万人をピークに減少に転じ、二〇六〇年には一千三十六万人と推計しております。また、二〇一四年の合計特殊出生率は一・一五と、都道府県別で最も低い状況でございます。さらに、人口の社会増は続くものの、全国的な人口減少の影響により、縮小に向かってまいります。

○近藤委員 ご説明いただきましたように、東京都の人口は、二〇六〇年には、二〇一〇年に比べ二割も減少してしまうとのことであります。低い出生率が続くことによる影響は、東京という都市のあり方にも影響を与える大きな問題であると認識しています。
 さきの総務委員会では、私は東京都長期ビジョンの進行管理が重要と申し上げたつもりでございます。今回策定された総合戦略も、長期ビジョンを基本に、施策の展開に関して数値目標を盛り込んでいただきました。
 政府は、新三本の矢におきまして、国の基本方針として、希望出生率の一・八の実現をお示しいただきましたが、都の総合戦略では、東京の希望出生率一・七六の実現を人口の将来展望としてお示しをいただいています。
 この希望出生率一・七六という数字は、先ほどの合計特殊出生率が一・一五でありますから、これを踏まえますと非常に高い数値であるというふうに思います。総合戦略におけるこの希望出生率一・七六の位置づけと、今後、その実現に向け東京都はどのように取り組んでいくのか、お尋ねをしたいと思います。

○小室計画部長 今回、都が示した希望出生率一・七六は、都内の若い世代の結婚、出産、子育ての希望が実現するならば向上することが見込まれる水準であり、都の人口の将来的な展望でございます。
 都としては、将来人口の推計期間である二〇六〇年までに、まずは都民の希望出生率一・七六を実現させることを将来的な展望とし、その上で、結婚、出産、子育ての希望をかなえることを政策目標としながら、さまざまな施策を展開してまいります。
 おのおのの政策目標の達成に向けては、重要業績評価指標を設定いたしまして、進行管理にも留意しております。

○近藤委員 ご説明いただきました。先ほども他の委員からも、出生率につきましては質問もありましたけれども、何と申しましても、この二〇六〇年という目標年代というのは、私は残念ながらチェックをする時代にはおりませんから、そういう意味では、段階的にきちっと確認をしていかなきゃいけないんだというふうに思っています。
 この少子化問題におきましては、東京、ひいては日本の将来にも大きな影響を与える問題であります。一方で、出生率の回復には、現時点でも目の覚めるようなびっくりしたグッドアイデア、奇策も決め手もないわけでございます。都が掲げる希望出生率一・七六を展望するためには、我が党が現在提言をしているように、子育て世代に優しい東京の実現が重要となるんだというふうに思います。
 一組の夫婦に対して平均数字が一・七六でありますから、それぞれの考え方の中で、子供を望まないケース、また、結婚しない独身希望のケースというものは計算外ということになります。今後、晩婚化がさらに進んだとき、夫婦になって出産することは非常に大切なことだというふうに思っています。
 子供が好きで産みやすい環境にある人、こういった方をしっかりと支えていかなければ、今お話がありましたように、一・七六を下回る、さらに悪い条件での社会人口構成が訪れてしまうことになるというふうに思います。
 今後、喫緊の課題であります待機児童の解消など、これまで以上に対策を講じる必要があるというふうに思います。その点、総合戦略におきましては、どのように対応しようとしているのか、お尋ねしたいと思います。

○小室計画部長 出生率の低下及び人口減少の問題は、社会の活力、都市づくり、介護、医療等、さまざまな分野に影響を及ぼす大きな問題でございます。出生率を向上させ、人口減少に歯どめをかけることは、行政として真剣に向き合い、対策を講じていくべき重大な課題であります。
 そこで、総合戦略では、都民が安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまちの実現に向けた施策を展開してまいります。特に優先的に取り組むべき課題である待機児童の解消に向け、保育所の設置促進のためのさまざまな施策を推進していくとともに、多様な保育サービスの充実、保育サービス拡充に必要な保育人材等の確保、育成及び定着支援を進めてまいります。

○近藤委員 少子化の一方で、東京の高齢化の問題は、ほかの自治体とも比較して、その速度と規模の点で先鋭的な課題だというふうに思っています。仮に希望出生率一・七六を達成しても、この十数年の出生率の低下によって、理想的な人口ピラミッドとなるには、戻ってくるには、これは大きな時間がかかるというふうに思います。高齢化の問題を真正面から受けとめ、しっかりとした対策を講じていかなければならないというふうに思います。
 さらに、高齢化の問題は、東京だけの問題ではなく、人口三千六百万人を有する一都三県に共通する問題でありますし、そこでの対応は、日本全体の将来像にも大きな影響を与えるものであります。この問題は、各都県だけでなく、他県だけで完結するものではなく、広域的な連携が必要と考えます。
 都は、これまでに経験したことのない高齢化の問題にどのように今後対応されていくのか、また、高齢化の問題は一都三県にとって共通の課題でありますが、その点、総合戦略にはどのように盛り込まれているのか、お尋ねをしたいと思います。

○小室計画部長 急速かつ大規模に進行する高齢化の問題に対しましては、高齢者の方が住みなれた地域で安心して生活を続けられる社会を実現することが重要でございます。
 そのため、さまざまな身体状態、生活形態、経済状況等に応じた介護サービスを提供するため、地域包括ケアシステムの構築や高齢者の施設や住まいの整備、サービスの担い手である介護人材等の確保、育成、定着、そして認知症対策の推進など、さまざまな施策を推進してまいります。
 一方で、急速に進む高齢化の問題は、東京だけでなく一都三県の共通の課題であります。そこで、一都三県の地方創生に関する連絡会議を設置し、介護人材確保に向けた連携強化など、一都三県が連携協力して取り組むことが効果的と考えられる対応を取りまとめ、この総合戦略に盛り込んでおります。

○近藤委員 ご説明いただきましたように、一都三県で連携協力することが効果的とされました取り組みの中には、空き家対策もあると思います。都内の空き家数は二〇一三年で約八十二万戸と、大きく増加をしています。少子高齢化への対策として、空き家の利活用を含め、高齢者や子育て世帯に配慮した取り組みを強化し、豊かな住生活と活力ある地域を実現していかなければなりません。少子高齢、人口減少社会におけるこれからの都市構造としては、国のいう三世代同居、多世代が安心して住み続けられるまちの実現が重要であるというふうに思います。
 今から四十年前の話になりますが、私どもの住む多摩地区では、国のニュータウン構想の中で、核家族化の波でマンション建設または戸建て分譲住宅政策を進められました。その結果、住宅建設関連費が大きな国の富を生んできたのも事実であります。ただ、その施策の結果、今では、ある一部、反省をする点でもあるというふうには思いますけれども、家族のきずなが薄れてしまい、独居老人がふえ、現在の種々の問題を発生させてしまったということは一理あるんだというふうに思っています。
 多分、その時代でも、その政策をよしとして、政治の世界でも議論されてきたんだと思います。私たちは今、孫子の代に責任を持って、この東京を引き継がなければなりません。
 そこで、多世代が安心して住み続けられるまちの実現に向け、総合戦略ではどのように対応されていくのか、お尋ねをしたいと思います。

○小室計画部長 多世代との触れ合いや地域とのつながりを通じて住み続けられる持続可能なまちを目指し、拠点的な市街地の再構築や良質な住宅ストックの活用などにより、豊かで快適な住環境を創出していくことは大変重要なことでございます。
 そこで、大規模住宅団地の建てかえに際して、子育てや高齢者を支援する機能を導入するなど、地域包括ケアシステムと連携したまちづくりを進めてまいります。また、空き家の利活用を促進するため、区市町村が実施する調査や、子育て世代、高齢者向けへの改修助成などに対して財政支援を行ってまいります。

○近藤委員 安定した生産労働人口を確保するこの人口ピラミッドも、単なる理想論で終わらせてはならないというふうに思います。見直しも含め、人口確保に向けて安易な移民政策などは私は個人的には賛成できかねますが、今後の日本、東京の治安維持のためにも容易には受けとめられる話ではありません。
 だからこそ、希望出生率一・七六の数字の重要性を声を大にして申し上げ、政策企画局の川澄局長は福祉保健のスペシャリストでいらっしゃいますから、ぜひ局長を初め政策企画局の皆さんに各論の施策の充実を、要望を心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
 以上です。

○加藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で政策企画局関係を終わります。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時四十二分休憩

   午後三時開議

○加藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより総務局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百八十四号議案から第百九十四号議案まで及び第二百二十九号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○柴崎委員 私からは退職管理条例について質問いたします。
 都の幹部職員の再就職につきましては、平成二十二年第一回定例会の代表質問で、現在の都議会議長であります我が党の川井しげお議員が当時の石原知事に対しまして質問いたしました。石原知事は、都の幹部職員が在職中に培った知識や経験、これらを社会のさまざまな分野で活用していくことは極めて有意義であるという考え方のもとで、再就職につきましては、透明性、納得性、これらを一層高めるために都庁版の人材バンクを整備することを表明し、運用を開始したという経緯があります。
 我が党といたしましても、都職員が都政のさまざまな分野で習得した知識や技術を生かして社会に貢献するというように、人材の有効活用という観点から、都職員の再就職は大変意義深いものであると認識いたしております。したがいまして、再就職につきましては法による規制がない中で、都庁版人材バンクという独自の仕組みを整備し、適切に運用してきたことにつきましては評価をいたしております。
 一方、平成二十六年五月、改正されました地方公務員法が公布されました。この改正法の施行日は平成二十八年四月一日となっております。今回、改正内容は多岐にわたっているようでありますが、退職管理にかかわる改正内容について、まず確認させていただきます。

○内藤次長 地方公務員法の改正内容についてでございますが、まず、全ての元職員が、退職前五年間の職務につきまして、退職後二年間は現役職員に対しまして職務上の行為をするように、またはしないように働きかける行為に対する規制が導入されました。
 この働きかけ規制に対しましては、人事委員会による監視体制が整備され、現役職員は元職員から働きかけを受けた場合、人事委員会への報告義務が課されております。そして、この働きかけ規制に違反した元職員は、不正な行為がなかった場合でも罰則が科されるとともに、働きかけを受けながら人事委員会への報告を怠った現役職員につきましては懲戒処分の対象となります。
 次に、この働きかけ規制の実効性や再就職の透明性を高めるため、各地方公共団体の判断によりまして、条例に基づき再就職情報の届け出を義務づけるとともに、違反者に対しまして罰則を科することが可能とされました。
 さらには、それぞれの地方公共団体の再就職状況や国家公務員法の規制の趣旨を勘案して、必要と認められる措置を各団体の判断によって講ずるものとされております。

○柴崎委員 今の答弁によりますと、地方公務員法の改正によりまして、不祥事の原因ともなりかねない働きかけに、罰則を伴う非常に厳しい規制が導入されているわけであります。これは、管理職のみならず、一般職員も含めた全職員が対象となっているわけであります。この改正で、元職員に対する広範な行為規制が導入されたといえるわけであります。
 さらに、地方公務員法では、それぞれの地方公共団体の再就職の状況を踏まえた退職管理の取り組みが求められております。先ほど述べたとおり、都はこれまで、法規制がない中で都庁版人材バンクという独自の取り組みを行ってきたわけでありますが、今後の退職管理の考え方について伺いたいと思います。

○内藤次長 都を退職した職員が定年またはその直前まで勤務して培った知識、経験を社会のさまざまな分野で活用することは、社会の要請に応えるものでもあり、有意義なことと認識してございます。
 一方、職員の再就職につきましては、都民から公正な都政運営が損なわれるといった疑念を持たれることがあってはなりません。そこで、都は、地方公務員法の再就職に関する法規制が導入される前から、再就職情報を一元的に管理する都庁版人材バンクを独自に整備し、人材の有効活用と再就職の透明性、納得性の向上を図り、適切な運用を重ねてまいりました。
 こうした中、本年の人事委員会勧告では、都のこれまでの取り組みにつきまして、その有効性を認めた上で、法改正を契機に、より一層透明性、公正性を高められる退職管理に努めていくことが重要との意見が述べられております。そのため、都におきましては、再就職後の行為規制である働きかけの禁止に加え、管理職につきましては、退職時の職務に関する利害関係企業等への求職活動を原則として禁止するなど、再就職の前段階におきまして都独自の規制を実施することとしております。
 今後、これまでの人材バンクの取り組みに加えて、再就職の前後の規制を強化することで、より一層透明性、公正性のある退職管理を実現し、人材の有効活用を推進してまいりたいと考えております。

○柴崎委員 今、考え方を聞きました。法改正の趣旨や第三者機関である人事委員会の意見を尊重して、まさにこうした取り組みを実施することは時宜にかなったものであると評価いたしております。
 次に、条例で定められる具体的な取り組みにつきまして、再就職の流れに沿って質問をいたします。
 まずは、再就職する前段階についてであります。この段階で法令による明確な規制はないと認識しておりますが、先ほどの答弁では、より一層透明性、公正性のある退職管理を実現するために都独自の規制をするとのことでありました。
 そこで、再就職の前段階での具体的な規制、どんな取り組みをしているのか伺います。

○内藤次長 職員が再就職する前段階の取り組みといたしまして、管理職については、退職時の職務に関する利害関係企業等への在職中の求職活動を原則として禁止しております。さらに、都を退職した後も、二年間は利害関係企業等へ求職活動をしないよう自粛を要請するものでございます。これは、国においても規制されていない都独自の取り組みでございます。
 また、退職管理のさらなる厳格化とともに、透明性、納得性を一層向上させるため、職員の再就職について審議いたします第三者委員会といたしまして、新たに外部有識者で構成されます退職管理委員会を設置する予定でございます。

○柴崎委員 ただいま、退職管理の透明性、そして納得性を一層向上させるために、外部有識者で構成する退職管理委員会を新設するとの答弁がありました。このことはとても重要なポイントの一つだと思います。
 そこで、退職管理委員会につきまして、具体的な役割、そして機能を伺います。

○内藤次長 退職管理委員会は、再就職の適正、公務の公正及び都民の信頼の確保という観点から、職員の再就職の妥当性について審議をいただくものでございます。具体的には、職員の利害関係企業等への求職活動の承認、民間企業等に対する人材情報提供の適否、都が適材を推薦する団体の指定等について、任命権者から諮問を受け、ご審議の上、ご答申いただくものでございます。
 なお、委員会では、再就職の適正等の確保と職業選択の自由の両面を踏まえた多角的な議論が行われるよう、その委員には、人格が高潔で、法令及び人事管理に関するすぐれた知識や経験が求められるものでございます。このため、学識経験者、経済界、法曹界等、幅広い分野から委員を選任する予定でございます。

○柴崎委員 こうした委員会を新設いたしまして、都の退職管理に第三者の目を加えるということは、透明性を高めるものであり、都民からの信頼の確保や納得性の向上に通じるものと思われます。高度な専門性や識見を持つ委員によるさまざまな角度からのチェック機能が働くことを期待いたしております。
 次に、職員が再就職した後について、今回の法改正によりまして、罰則を伴う極めて厳しい働きかけ規制が導入されたとのことであります。再就職情報の届け出等について、条例で規定することも可能とされております。
 法とは別に、地方公共団体が適切と考える取り組みを行うことも重要と考えますが、再就職後の退職管理につきまして、都の取り組み内容を伺います。

○内藤次長 今回の法改正によりまして働きかけ規制が導入されたことから、都におきましては、その実効性を担保するため、必要な取り組みを再就職後も実施してまいります。
 まず、管理職に対する働きかけ規制につきましては、退職前五年間の職務に限らず、管理職の職についていた期間の全ての職務を規制の対象といたします。この上乗せ規制の対象につきまして、国は本省の部課長級職員等を対象としておりますが、都におきましては、本庁に限らず、事業所も含めた全ての管理職を対象としております。
 次に、管理職に限らず、一般職員に対しましても、再就職情報の届け出を義務づけることといたしております。その上で、管理職につきましては、その職責の重さを考慮し、未届け者に対しては罰則も科するとともに、年に一回、再就職状況の公表を行う予定でございます。さらに、届け出に際しまして、民間企業等へ再就職した職員全員から、書面で働きかけ規制の遵守について誓約させるなどの仕組みも取り入れる予定でございます。

○柴崎委員 働きかけ規制の実効性確保のために、再就職の前段階だけでなくて、再就職後につきましても、法で定められた以上の独自の規制を含め、あらゆる手だてを講じているということで今ご答弁をいただきましたが、こうした都の姿勢というのは、再就職の公正性、納得性の一層の向上につながるものと考えております。都は、これまでの取り組みに加えまして、再就職の前後で法の規制を上回る独自の厳格な規制を導入することがよくわかりました。
 本条例案は、退職管理の適正確保に向けて、まさにフル装備の内容が盛り込まれておりまして、人材の有効活用を積極的に行っていくことこそ、都民の信頼を確保するわけであります。他に例を見ない厳しい規制を導入していく都の姿勢は、他団体に対しても、一つのよいモデルとして参考になるものと思います。
 少子高齢化、人口減少社会が到来する中、五年後に迫ったオリンピック・パラリンピック大会の成功、そして長期ビジョンで掲げる目標の実現、これらに向けて、社会全体においてこれまで以上に人材の有効活用が求められております。都が新たな条例を適切に運用することで、都民からの信頼を確保しながら、社会のさまざまな分野で元職員が在職中に培った知識、そして経験、これらが一層活用されることを期待いたしまして、私からの質問を終わります。

○まつば委員 行政不服審査法施行条例について質問をいたします。
 昨年六月、行政不服審査法の改正法が公布され、平成二十八年四月一日から施行されることとなっております。今回の改正は、昭和三十七年の制定後、実に五十二年ぶりの全面改正であり、公正性の向上や使いやすさの向上などの観点から、時代に即した抜本的な見直しが図られております。
 中でも大きな変更点の一つとして、審理員制度の導入が上げられます。審理員は、審査庁に所属する職員のうちから指名することとされており、その権限で弁明書の提出を求め、口頭意見陳述の審理を指揮し、あるいは鑑定を求めるなど、個別の事件に関する審理手続において、審査庁の指揮を受けることなく、みずからの名において審理を行うこととなります。
 このように、審理員は、新制度において極めて重要な役割を担い、大きな権限を持つことになるため、こうした職責を十分に果たすことができる職員を選任することが重要であると考えます。
 そこで、どのような職員を審理員として指名するのか伺います。

○和久井訟務担当部長 新たな行政不服審査制度においては、審理員は、みずからの責任で行政処分の適法性等を判断するため、審理手続を行うほか、審査請求に係る事前の争点整理を行うなど、高い法的スキルが求められます。このため、法律、行政分野等に関する専門知識や法務事務に関しての豊かな経験を有する管理職、またはこれに準ずる能力を有する職員を審理員として指名し、審理に当たらせます。
 改正法の趣旨を踏まえ、審理員制度を適切に実施していくため、また、都においては審理すべき審査請求事件が極めて多数となることが予想されることから、審理員業務に専従する職員として適材を配置するとともに、審理員間で検討会議や法曹資格を有する者などによる指導を通じ、人材の育成に努めてまいります。

○まつば委員 今回の改正のもう一つの大きな変更点は、有識者から成る第三者機関への諮問手続が加えられたことであります。裁決の客観性、公正性を高めるため、新たに導入された制度であり、改正法では、第三者機関の委員は、公正な判断をすることができ、法律または行政に関してすぐれた識見を有する者であることを規定していますが、行政処分等の適否を法令に照らして正しく判断し、審査庁に答申するという役割から、高度な専門性が求められるものと考えます。
 また、都においては、東京都行政不服審査会を設置するということですが、数多くの案件が諮問されると考えられることから、審議が円滑に行われるよう効率的な運営を行っていくことも重要であります。
 そこで、東京都行政不服審査会の委員の選任及び運営に関して所見を伺います。

○和久井訟務担当部長 東京都行政不服審査会の委員は、審理員が行った審理手続の適正性や、法令解釈を含めた審査庁の判断の妥当性を第三者の立場からチェックする役割を担っており、関係各法やさまざまな行政処分に精通するとともに、連動する行政事件訴訟の動向も視野に入れた上での見解を期待されるなど、高い法的知識が求められます。
 このため、法令の解釈に関して専門的識見を有する法学者、弁護士、元裁判官など法律の専門家や豊富な行政実務経験を有する者の中から女性や若手の有識者の登用も図りながら、公正な判断を行うことができると認められる者を委員として選任いたします。
 あわせて、審議事項や運営に関する規定等を整理することにより審議の効率化を図るなど、委員会が第三者機関としての機能を十分に果たせるよう取り組んでまいります。

○まつば委員 ただいまご答弁がありましたように、法律の専門家や豊富な行政実務経験を有する者など高い専門的知見を持つ委員を選任し、公正な立場でしっかりとチェックをしていただきたいと思います。また、行政不服申し立ては遅滞なき処理が求められることから、審議の効率化など、迅速な処理に向けた取り組みを進めていただきたいと思います。
 行政不服審査法の改正について伺ってまいりましたが、行政不服申し立て制度は、違法、不当な行政処分等によって権利、利益を侵害された者の救済手段として設けられたものでありますので、今後とも、都民の権利、利益が正しく確実に守られるようにすることが重要であると考えております。
 来年度から制度が大きく変わり、現行よりも複雑な手続となりますので、都民への周知や関係機関への情報提供、説明などに努めていただくとともに、計画的な審理など、新制度を適切に実施することによりまして、改正法の趣旨である簡易、迅速かつ公正な手続の実現が図られますよう要望いたしまして、質問を終わります。

○徳留委員 第百八十四号議案の行政不服審査法施行条例案にかかわって質問いたします。
 昨年、国会でも五十二年ぶりに改正された行政不服審査法は、来年四月一日より施行されます。今回の施行条例は、これに伴うものであります。
 今回の国の法改定には幾つかの改善はありつつも、この法律の重要な内容となっている不服申し立て制度の一つの柱である異議申し立てを廃止してしまい、審査請求に一本化して、国民の権利、利益の救済制度の重要な仕組みを後退させてしまったことであります。
 例えば、これまで、行政不服審査法にかかわって、公害健康被害補償法では、公害被害に苦しむ患者の多くが、企業や国の責任とあわせ、健康被害の認定、補償給付の決定などの行政庁の処分に対する異議申し立てを通して、公害被害に対する行政のあり方を問いただしてまいりました。この制度を、多くの被害者の皆さんが、公害患者の多くの皆さんが活用されてまいりました。異議申し立ての廃止は、患者の権利、利益の救済に重大な影響を与えるものです。
 しかも、異議申し立てにかわる再調査の請求は、簡潔な手続で要件事実の当否の確認をするもので、改正によって、現行の新規異議申し立ての鑑定の要求とか、物件の提出要求とか、処分庁による検証、請求人または参考人の審尋、これは口述や文書による自由な発言ということでありますけれども、これができなくなるものであります。
 さらに、異議申し立ての廃止と審査請求への一元化によって、これまで基本的に都道府県単位に申し立て先があったものが、国の大臣宛てへの審査請求を行わなければならなくなります。審査請求が、精神的にも物理的にも、また距離的にも国民から遠ざけられていくことも重大だといわなければなりません。
 そこでお伺いいたしますが、東京都に対して過去五年間に審査請求と異議申し立てがあったそれぞれの件数と、それぞれについて救済された件数についてはどうなっているのかについてお答えください。

○和久井訟務担当部長 過去五年間に知事宛てに提起された審査請求についてですが、平成二十六年度の発生件数は千百三十一件、その前年度、二十五年度の発生件数は千二百七十六件、二十四年度の発生件数が四百七十二件、二十三年度の発生件数は五百十一件、二十二年度の発生件数は四百七十七件でございます。
 このうち不服申し立てを認容したものについては、一部認容も含め、平成二十六年度は五件、二十五年度はなし、二十四年度は四件、二十三年度は八件、二十二年度は五件であります。
 次に、知事宛ての異議申し立てについては、平成二十六年度の発生件数は千百六十二件、二十五年度の発生件数は二百七十七件、二十四年度の発生件数は二百七十二件、二十三年度の発生件数は二百九十八件、二十二年度の発生件数は二百八十三件でございます。
 このうち不服申し立てを認容したものについては、一部認容も含め、平成二十六年度は四件、二十五年度は四件、二十四年度は十四件、二十三年度は十五件、二十二年度は三十九件であります。

○徳留委員 今答弁していただきましたように、行政不服審査法に基づくこの五年間の東京都への不服申し立てのうち、審査請求の総数は三千八百六十七件、今回の行政不服審査法の改正で廃止されることになった不服申し立てのうち異議申し立ての総数は二千二百九十二件です。不服申し立ての全体の中で三七%を占めております。
 重要なことは、不服申し立ての二つの柱である審査請求と異議申し立てによって、不服申し立てが認められ救済された件数が、審査請求では五年間で二十二件に対して、異議申し立ては、五年間で審査請求の三倍以上の七十六件になっており、多くの都民がこの異議申し立てを活用して救済されているということではないかと思います。
 この異議申し立て制度が、昨年の行政不服審査法の改正において一元化、簡略化の名のもとに廃止されたということは、部分的な改善があったとしても、重要な国民の権利や利益の救済の仕組みが後退してしまったということではないかと思います。
 そこで、昨年の行政不服審査法の改定によって、審理手続における審査請求の権利拡充があったといわれていますが、どういうものなのか伺います。

○和久井訟務担当部長 旧法では、審査請求人または参加人は、審査庁に対し、処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができるとしておりましたが、新法では、手続保障の充実を図る見地から、処分庁等から提出されたものに限らず、それ以外の所持人から提出された物件等も対象とするとともに、閲覧に限らず、写しまたは電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができるとしております。
 また、旧法では、口頭意見陳述において、処分庁の職員等の出席は規定されておらず、質問を行うこともできませんでした。新法では、処分庁の職員等が出席した上で、審理員等の許可を得て、処分の内容や理由などに関し、処分庁の職員等に対して質問を行うことができるとするなど、審査請求人の権利の拡充が図られております。

○徳留委員 確かに、今述べられたように一定の改善点はあると思いますけれども、異議申し立て制度を廃止して一元化したことを容認できるものではありません。
 今回の改正でもう一つ重要な問題は、新たに設けられることになった審理員と行政不服審査会制度の問題です。行政不服審査法の改定をめぐる昨年の国会では、同じ行政内から配置される審理員と同じ行政内から任命される行政不服審査会制度の設置をめぐって、参考人質疑においては、今回の法律改定によって、公平性、中立性が本当に担保されて、同じ行政内で決定された処分を覆すことが十分に期待できるかといわれて、これをできると断言された参考人はいなかったという問題です。
 行政の処分や決定に対して不服があり、異議申し立てや審査請求などによって行われる審理の公平性、中立性を本当に担保するものであれば、処分決定を行った同じ行政庁やその上級行政庁の範囲から完全に切り離され、独立して審査を行う資格と能力、十分な身分保障に裏打ちされた人材による審理員の配置、行政不服審査会の設置が必要ではないかと思います。この点でも、今回の改定内容には問題があるといわなければなりません。
 もう一つ、伺いたい問題があります。それは、今回の条例で設置される第三者機関としての行政不服審査会に関する問題です。行政不服審査法施行条例案の第五条七項の規定で、設置される第三者機関としての行政不服審査会の委員は、在任中に政党その他の政治団体の役員となり、または積極的に政治運動をしてはならないとなっておりますが、この規定はかなり個人の基本的人権にかかわる内容にまで触れています。
 実際には、委員の資格だといわれますけれども、どのようにチェックされることになるのでしょうか。

○和久井訟務担当部長 政治団体の役員に該当するか否か、あるいは政治運動の有無については、役員名簿など客観的な書類や具体的な事実により確認できるものと考えています。
 東京都行政不服審査会の委員は、審理員が行った審理手続の適正性や、法令解釈を含めた審査庁の判断の妥当性を第三者の立場からチェックする役割を担っており、客観的かつ公正な判断が求められ、政治的に中立な立場に立って職務に当たることが必要です。
 こうした職務の性質に照らし、政治活動の制限を規定したものであり、必要かつ妥当な規定であって、憲法上の基本的人権を侵害するものではございません。

○徳留委員 答弁では、政治的団体の役員に該当するか否か、あるいは政治運動の有無については、役員名簿など客観的な書類や具体的事実によって確認、職務の性質に照らして政治活動の制限を規定したものであり、必要かつ妥当な規定だ、憲法上の基本的人権を侵害するものではないということでした。
 しかし、何をもって政治的団体の役員なのかも、どういうものを積極的に政治運動と見るかは、思想信条の自由にかかり、内心の自由にも踏み込むもので、チェックすることは容易ではないと思います。憲法の基本的人権に触れる問題ではないかと思います。
 同じように、審査会の専門委員の任命に当たって、第五条七項が準用されるということで、第八条の三項もあります。東京都行政不服審査会の委員あるいは専門委員も、審査庁の判断の妥当性を第三者の立場からチェックする役割があり、客観的かつ公正な判断が求められ、政治的中立な立場に立って職務に当たることが必要だといわれました。そのとおりだと思います。
 だとしても、東京都行政不服審査会の委員の資格について第五条に明記されているように、委員は、公正に判断することができ、かつ法律または行政に関し、すぐれた識見を有する者の規定を厳格に適用すればいいのではないかというふうに思います。
 そもそも、審査会は知事の附属機関であり、その委員も知事が任命するものになっています。処分を行われた当事者である行政に対する審理ですから、審査会は行政から独立して設置されるべきであると思います。委員も独立して任命されるべきものだと思います。
 以上、意見を述べて、質問を終わります。

○おときた委員 私からは、まず、退職管理に関する条例についての幾つかの質問を行います。
 今回の制度の見直しに伴い、現行制度で活用されている都庁版人材バンクが大きな役割を果たすかと思います。そこでまず、平成二十二年度に整備された都庁版人材バンクについて、これまでの取り組み実績の詳細を伺います。

○内藤次長 現在、これまでに経験したことのない少子高齢化、人口減少社会が到来し、働き手の確保が社会的な課題となっている中、国を挙げて、官民を問わず、高齢者の知識、経験を一層活用することが求められていると認識しております。
 都におきましても、退職した幹部職員が定年またはその直前まで勤務して培った知識、経験を社会のさまざまな分野で活用することは、社会の要請に応えるものであり、有意義なものと認識してございます。
 一方、職員の再就職につきましては、都民から公正な都政運営が損なわれるといった疑念を持たれることがあってはなりません。
 そこで、都は、再就職に関する法規制が導入される前から、人材の有効活用と再就職の透明性の向上を図るため、再就職情報を一元的に管理する、ご指摘いただいた都庁版人材バンクを独自に整備し、適切な運用を重ねてまいりました。
 このバンクによります実績でございますが、平成二十二年度は百四十九名、二十三年度は百二十八名、二十四年度は百十一名、二十五年度は百四名、二十六年度は百六名、そして二十七年度は八十九名となってございます。

○おときた委員 ご答弁で都庁版人材バンクの実績がよくわかりました。
 さて、今回の見直しは法改正を契機とするものですが、東京都は、国の法律よりも踏み込んだ規制を条例案として提案してきております。これ自体はすばらしいことではありますけど、このような厳格化するような理由やきっかけが、これまで都庁版人材バンクを運用していく中で何かあったのでしょうか。
 東京都独自の取り組みが提案された背景を伺います。

○内藤次長 都庁版人材バンクを整備して以来、都は制度の適切な運用を重ねてきておりまして、この間、特段の問題は生じていないと認識してございます。
 一方、本年の人事委員会勧告では、都のこれまでの取り組みの有効性をご評価していただいた上で、法改正を契機に、より一層透明性、公正性を高め、退職管理の取り組みを進めていくことが重要との意見が述べられてございます。
 こうしたことから、都は、改めて退職管理の取り組みを拡充し、これまでの人材バンクの取り組みに加えて再就職の前後の規制を強化することで、退職管理の透明性、公正性を一層向上させ、人材の有効活用を推進してまいりたいと考えております。

○おときた委員 都庁版人材バンクには問題はなく、あくまで退職管理の透明性、公正性の向上のためであるというご答弁でした。
 では、このために設けられた都独自の取り組みについて何点かお伺いいたします。
 離職後も二年間は利害関係企業に求職活動をしないように要請という部分について、こちらはあくまで、罰則などを設けて規制するものではなく、要請にとどまっています。これについては実効性に関して疑問が残りますが、なぜこちらを要請にとどめたのか、その理由をお伺いいたします。

○内藤次長 退職後の職員につきましては、まさに一私人でございまして、職業選択の自由が保障されることから、本来、その求職活動を過度に制限すべきではないものと認識してございます。
 しかしながら、一方で、国におきましては、管理職が退職後に若干の期間を置いてから利害関係企業等への求職活動を行うなどの対応が一部問題視されているやに聞いております。都は、こうした問題を未然に防止するため、管理職について、職業選択の自由にも配慮しつつ、公務の公正や都民の信頼をより一層確保するため、退職後二年間、求職活動の自粛を独自に要請することといたしました。
 なお、その実効性につきましては、この要請のみならず、罰則を伴う働きかけ規制や再就職状況の公表など、今回の退職管理の取り組み全体によりまして、公務の公正や都民の信頼等が確保されるものと認識してございます。

○おときた委員 ご答弁をいただきまして、国では、管理職が退職後に一定期間を置いて利害関係企業等へ求職活動を行うことが一部問題視されているということですから、ぜひ東京都ではそういったことがないように運営をしていただきたいと思います。
 また同様に、再就職情報の届け出義務、こちらについても、一般職に拡大を独自に行うものの、管理職とは異なり、罰則は導入されていないのですが、こちらもこのように設定した理由を教えてください。

○内藤次長 再就職情報の届け出につきましては、今回の法改正により導入された働きかけ規制の実効性を高めるため、それぞれの地方公共団体の自主的な判断により、条例により義務づけることが可能とされました。
 都は、働きかけ規制が全職員を対象としていることを考慮いたしまして、全ての職員に対して再就職情報の届け出を義務づけることとしております。
 しかし、罰則につきましては、一般職が、管理職と異なりまして対外的な影響力を有する意思決定権を持たないことや、退職後は一私人としてそのプライバシーを十分に尊重する必要があるため、これを科さないこととしております。
 なお、国におきましては、再就職情報の届け出義務の対象を管理職のみとしておりまして、国が地方公共団体に例示した条例の参考例を見ましても、同様に管理職のみとされているところでございます。

○おときた委員 要請にとどまる点と届け出義務に罰則を設けていない点、それぞれに一定の理由があることがわかりました。
 しかしながら、こうした独自の取り組みが目指す方向性がいかにすばらしくても、その実効性が担保されなければ絵に描いた餅になってしまいます。こうした要請や義務づけをどのように意味ある形で運用していくのか、この点、今後の見解をお伺いいたします。

○内藤次長 これまで都は、能力、業績に基づく公平、平等な選考による実力本位の任用管理を徹底するなど、都独自の人事制度を構築し、その都度、必要な見直しを積み重ねながら制度の実効性を高めてまいりました。退職管理につきましても、そうした人事制度の一環として、法令による規制が導入される前から、再就職情報を一元的に管理する都庁版人材バンクを独自に整備し、厳格な運用を図ってきたところでございます。
 その結果、この間、特段の問題は生じておらず、再就職の適正や公務の公正、都民の信頼確保といった退職管理の趣旨につきましては、都を退職する職員一人一人の意識に根づいているものと認識しております。
 新たな退職管理制度につきましても、今後、リーフレットやホームページ等を活用いたしまして、現役職員や元職員への周知徹底を図りながら、その実効性を確保できるよう適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
 今後とも、より一層透明性、公正性のある退職管理を実現するとともに、人材の有効活用をさらに進めてまいりたいと考えております。

○おときた委員 ご答弁をいただきまして、国の方針より厳しい取り組みを行うということはもちろん賛成でございますが、結局、こうした天下りと申しますか、退職管理の制度については、仏つくって魂入れずで終わることが多いようにも思います。国の制度でも一部問題があったという話がありましたので、ぜひ東京都は、今回はそういった反省点も含めて厳格な運用をされることを要望いたしておきます。
 最後に、職員給与引き上げの条例に関連いたしまして一点だけ。
 今回の改定で、東京都の財政にトータルでどれだけの負担が発生するのかを教えてください。

○栗岡労務担当部長 本年の人事委員会勧告実施に伴います所要経費につきましては、全会計ベースで、例月給が十八億円、特別給、ボーナスが八十三億円の合計百一億円を見込んでございます。

○おときた委員 こちらに関連いたしましては、人事委員会での質疑でいろいろと議論をさせていただきましたが、果たして、都政を取り巻くさまざまな状況の中、合計すると百億円を超える財政負担の発生に都民の理解が得られるのかどうかというのが非常に大きな論点になってきます。こうした数値も吟味した上で、本条例案への賛否をしっかりと判断したいと思います。
 以上で質問を終わります。

○加藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○加藤委員長 次に、報告事項、東京都国土強靱化地域計画(素案)について外二件に対する質疑を一括して行います。
 本件については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○柴崎委員 まず初めに、先月三十日に第三期東京都犯罪被害者等支援計画の素案が公表されました。この素案に関しましては、一昨日の我が党の秋田一郎議員の代表質問におきまして質疑が行われたところであります。本日は、さらに具体的な点について質疑を行いたいと思います。
 まず、この素案の策定に当たりましては、犯罪被害者や支援団体等を対象に実態調査も行っているとのことであります。したがいまして、この調査により、どのようなことが明らかになり、それを踏まえて、どのような考え方のもとで取り組みを進めていくのか伺います。

○箕輪人権部長 都が今回実施した実態調査では、被害者の置かれた状況が世間一般に知られていない、また、周囲の言動で傷ついたとの回答が多く、犯罪被害者等に対する都民の理解が進んでいるとはいいがたい状況にございます。また、被害後の心身の状況につきましては、心的外傷後ストレス障害や不眠の症状を掲げる回答が多く、精神的ダメージの大きさが明らかとなりました。さらに、今後充実が望ましい支援といたしまして、啓発やカウンセリング、相談員等の育成、支援機関、団体間での連携等が上げられております。
 犯罪被害者等への支援を進めるに当たりましては、被害者の立場に立ち、その実情を十分に踏まえたものとすることが重要でございます。そこで、このような犯罪被害者等の実情を踏まえまして、第三期計画素案では、精神的ダメージが深刻な性犯罪等被害者への支援や、スポーツを初めさまざまなイベントの機会を活用するなど、より広い層に向けた広報啓発、さらには、不動産関連団体等の民間団体や区市町村など多様な主体との連携強化に重点を置くことといたしました。
 今後は、第三期計画の取り組みを着実に進め、犯罪被害者等を社会全体で支える支援の実現を目指してまいります。

○柴崎委員 今後につきましては、社会全体で犯罪被害者等を支える支援を実現していくとの今説明がございました。関係機関ともしっかりと連携をしていただいて、都民に対する普及啓発も効果的に行いながら、ぜひ進めていっていただきたいと思います。
 今の答弁では、都は性犯罪等被害者への支援について重点を置くとのことでありますが、さきの第一回定例会の代表質問におきまして我が党の指摘を踏まえ、都がいち早く、ことしの七月から性犯罪等の被害者に対する支援事業を開始したことは評価いたしております。
 しかしながら、被害者の実情を見ますと、まだまだきめ細かな取り組みが必要であると考えます。そこで、都は、第三期計画において性犯罪等被害者支援にどのように取り組んでいくのか伺います。

○箕輪人権部長 性犯罪等被害者の声は埋もれがちでございます一方、被害が心身に与える影響は大きく、被害直後から被害者に寄り添ったきめ細かな支援を開始し、早期救済につなげていくことが重要でございます。
 そこで、都は、第三期計画素案におきまして、被害者の精神的ケアの充実や医療関係者等の人材育成等を重点的取り組みに位置づけました。
 具体的には、まず、被害者に直接接する精神科医等の理解促進を図るなど、精神科医療との連携に向けた取り組みを、また関係機関の協力を進めながら進めてまいります。また、ワンストップ支援事業の協力医療機関の医師や看護師等を主な対象とした実践的な研修を継続的に実施いたします。さらに、学識経験者や医師、弁護士等による専門家懇談会を設置し、さまざまな支援上の課題等に適切に対応するための助言を得てまいります。
 これらの取り組みを通じ、性犯罪等被害者への支援をより一層推進してまいります。

○柴崎委員 もちろん、性犯罪自体を防止する取り組みというのが急務であることはいうまでもないわけですが、こうした被害に遭われた場合、性犯罪被害というのはどうしても潜在化しやすいわけでありまして、被害者が相談しやすい仕組みにすると同時に、切れ目のない支援を提供していただくことを要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、震災復興マニュアルについてお伺いしたいと思います。
 この震災復興マニュアルを見ますと、震災復興に備えて、都民一般向けと行政職員向け、この二部構成から成り立っております。いざ東京で大規模な震災が発生した場合には、まずは救出、救助や物資調達など応急対策活動に追われることになるわけであります。その後、間を置かずに震災復興の局面に移っていくものと思われます。円滑に復興関連事業を進めていくためには、震災復興に対する平時からの備えが不可欠であります。
 そこでまず、首都直下地震のような大規模な地震が発生した場合、都はどのように震災復興に取り組んでいくのか、そして、その際にこの震災復興マニュアルをどのように活用していくのか、それについてお伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 震災復興は、行政のあらゆる分野に及ぶ長期にわたる取り組みであり、速やかに着手し、計画的に事業を実施していく必要がございます。
 このため、都は、大規模震災発生後、一週間程度の早い時期に知事を本部長とする震災復興本部を設置し、基本方針や復興計画を策定した上で、区市町村とも連携し、全庁を挙げて復興事業に取り組むこととなります。
 その際、関係部署は、実施すべき事業について、震災復興マニュアルに掲げられた項目や手順などに従い進行管理を図ることで、混乱の中にあっても時期を逸することなく復興対策を進めてまいります。

○柴崎委員 今、答弁をいただいたわけでありますが、いざ大規模な震災が起きてしまいますと、非常に早い時期から復興へ向けた取り組みを進めなければならないわけであります。災害対応は待ったなしなわけであります。震災復興マニュアルを活用しながら、ぜひとも万全の体制をもって復興に対処していただくようにお願いしたいと思います。
 そして、このたびの震災復興マニュアルの修正は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて平成十五年三月に策定した現行マニュアルをリニューアルするものだということであります。今なぜこのような修正を行うのか、また、その背景及び必要性について伺いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 震災復興マニュアル策定後、平成二十三年の東日本大震災を契機に、災害対策基本法の改正や大規模災害からの復興に関する法律の制定など、法令整備が大幅に進みました。また、この間、都や他県では、東日本大震災や平成二十五年の大島町土砂災害を初めさまざまな災害対応を経験し、震災復興においても活用できる取り組みやノウハウを蓄積してまいりました。
 今回の震災復興マニュアル修正は、主にこれらの内容を反映させるとともに、最新の事例等も織り込み、いつ震災が起きてもすぐに活用できるものとして整備したものでございます。

○柴崎委員 ぜひとも最新の法令ですとか災害対応経験に基づく実効ある震災復興事業を展開していっていただきたいと思います。
 さて、今回の主な修正事項の一つといたしまして、被災地短期借地権制度が上げられております。東日本大震災の教訓を踏まえて新たに制定された法律において創設された仕組みであるわけであります。地域の復興を進めていくために有効に活用していくべきであると思います。
 そこで、この被災地短期借地権制度を活用して、具体的にはどのような取り組みを進めていくことになるのか伺います。

○小久保防災対策担当部長 被災地短期借地権制度は、被災地での暫定的な土地利用のニーズに応えるため、存続期間五年以下で更新のない借地権の設定を認めるものであり、平成二十五年に制度化されたものでございます。
 震災後、長期にわたり進められる復興事業に対応し、本格的な都市復興や住宅再建が完成するまでの期間については、一時的にコミュニティや生活、地域産業を維持していく場として、仮設の市街地、時限的市街地を整備していくことが必要となります。
 このため、今回の震災復興マニュアル修正では、この被災地短期借地権を活用し、仮設の住宅や店舗、事務所を整備することで、地域のコミュニティを維持しながら復興事業を進めていくこととしております。

○柴崎委員 震災復興に当たりましては、多くの関係者が心を一つにして取り組みを進めなければなりません。とりわけ被災された住民自身が意識を高め、自分たちの地域の復興のあり方や将来像等について議論を深めていくことは、復興を進めていく上では重要なプロセスとなるわけであります。そのためには、日ごろより都民の多くが震災復興に対するイメージや心構えをしっかりと持っておくことが必要となります。
 そういう意味におきましては、今回の都民向けのマニュアル復興プロセス編の修正におきましては、具体的な事例の紹介がされております。そして、詳細な用語説明ですとか、図を用いた解説、あるいは都民の視点からわかりやすく、手にとりやすい冊子となるように工夫した箇所も見られて評価できるものと思います。今後とも、都民や市区町村の協力を得ながら、震災復興への備えに万全を期すように要望して、次の質問に移ります。
 続きまして、東京都国土強靱化地域計画(素案)について伺います。
 一昨日の秋田一郎議員の代表質問で言及いたしましたが、我が党といたしましては、強靱化地域計画の策定を強く要望してまいりました。党内におきましてもPTを設置し、積極的に議論し、提言を行ったところであります。今回の素案は、我が党の提言を踏まえたものとなっておりまして、一定の評価をするものであります。
 一方、代表質問でも指摘をいたしました、この計画は策定するだけでは意味がないわけであります。これをどういうふうに活用していくのか、これが極めて重要なわけであります。こうした観点から何点か質問させていただきます。
 この冊子には東京の防災に関することが網羅されており、記載されている内容は多岐にわたっております。既に公表している内容も多いわけでありますが、民間企業の取り組みなど、これまでにない記述も目につきました。
 したがって、初めに、この素案の位置づけ、そして特徴について説明をお願いしたいと思います。

○小林防災計画担当部長 今回公表いたしました素案は、国土強靱化基本法の規定を踏まえまして、東京都における今後の防災施策の指針として策定しておりまして、地域防災計画を初めといたします他の事業計画などの羅針盤となる、いわゆるアンブレラ計画として位置づけてございます。
 策定に当たりましては、東京の地域特性などを踏まえまして、強靱化に向けた目標を設定し、都や国、民間事業者の現行施策の対応力を分析、評価した上で今後の取り組み方針を整理いたしました。多様な主体が議論し、強さとしなやかさを持った国土、地域、経済社会の構築という共通の理念のもと、目標達成に向けた取り組みをハード、ソフト両面から一つの計画として取りまとめたことがこの素案の大きな特徴でございます。

○柴崎委員 今ご答弁をいただきましたが、全ての関係機関が共通の理念や目標達成に向けて一丸となって取り組むことは非常に大事なことであると思っております。その意味におきまして、各地方公共団体が地域計画を策定して、防災にかかわる全ての機関や住民が目に見える形で強靱化の理念を共有することが必要であると思います。こうした問題意識から、ことしの第一回定例会での一般質問、これは我が党の小松大祐議員が区市町村の策定支援について問題提起をしたところであります。
 今のところ、区市町村が計画を策定したという話は余り聞こえてこないようであります。つまり、区市町村レベルでは余り取り組みが進んでいないのではないかと思われます。そうであれば、都が計画を策定した後は、ただ市区町村の動向を眺めているだけでなくて、市区町村の計画策定を積極的にサポートしていくことが求められていると思います。
 現時点での都内区市町村の計画策定状況とそれを踏まえた都の支援について伺います。

○小林防災計画担当部長 国の調査によりますと、本年十一月時点におきまして、都内区市町村で既に計画を策定している団体は、国からモデル調査実施団体に選定された荒川区のみでございます。こうしたことから、都が計画を策定した後には、計画を策定いたします区市町村を支援し、強靱化の理念や取り組みを東京全体のものとしていくことが重要でございます。
 そのため、さまざまな機会を捉えまして都の地域計画を説明いたしますとともに、計画策定の過程で生じる疑問点などに丁寧に答えてまいります。
 こうした対応によりまして、一つでも多くの団体が計画を策定すべく、積極的に支援してまいります。

○柴崎委員 強靱化の普及啓発に向けてしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 また、我が党は、提言におきまして二つの問題提起を行いました。一つは広域的な災害対応、首都機能の役割を踏まえた財源負担、この二つの問題提起であります。中でも我が党といたしましては、財源の確保に強い問題意識を持っております。東京の強靱化に向けて、財源負担のあり方は極めて重要な問題であると思います。
 首都機能の維持には膨大な事業費が見込まれております。しかしながら、現在、地域計画に基づき実施される取り組みに対する国の支援は、所管の交付金、補助金の交付の判断に当たり、一定程度配慮されているのみであります。我が党といたしましては、繰り返し主張してまいりました、つまり、首都機能維持の国家的な意義を考えますと、この財源を都が全て自前で確保するのは筋違いであると考えております。
 今後は、この問題も含めて、課題を確実に解消しながら、東京の強靱化を実現しなければならないわけであります。
 こうした我が党の主張を踏まえまして、東京の強靱化に向けた局長の決意を伺いまして、私の質問を終了とさせていただきます。

○中西総務局長 災害時に首都機能を維持し、都民の生命、財産を守るためには、都庁内の各局はもとより、国、他団体、民間企業、都民の皆様など、東京にかかわるあらゆる主体の取り組みや行動が不可欠でございます。
 東京の防災を束ねます総務局といたしましては、こうした認識のもと、多様な主体のご理解とご協力をいただきながら、ハード、ソフトの両面から防災力の向上を図ってまいりました。
 今後は、計画により共有した理念や目標の達成に向け、引き続き関係機関などと連携しながらマニュアル等の具体化を進めるとともに、実動や図上などの防災訓練を通じ、広域的な災害対応などを含め、東京の防災力をさらに高めていくための具体的な取り組みを進めていく必要がございます。
 ご指摘いただきました財源負担のあり方など、解決すべき課題はございますが、東京の強靱化に向けまして、引き続き全力を尽くしてまいります。

○まつば委員 東京都震災復興マニュアル復興プロセス編の修正素案について質問をいたします。
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成十五年に震災復興マニュアルが策定されてからこれまでの間、東日本大震災を初め大島町の土砂災害などさまざまな災害が発生し、甚大な被害がございました。
 私も、東日本大震災後、被災地支援にたびたび伺わせていただいてまいりました。その際、東京都の現地事務所にも何度か訪問させていただきましたが、職員の方々の奮闘の姿に胸を打たれました。そして、被災地の厳しい現実を何度も目の当たりにしてまいりましたが、被災地に寄り添った都の支援について、現地の方々から感謝の言葉をたびたびいただいてまいりました。震災から五年近くなりますけれども、この間の取り組みに私からも敬意を表し、感謝を申し上げます。
 今回、震災復興マニュアルを修正するに際しまして、こうした復興支援における対応経験をもとにしていくべきだと考えております。そこでまず、東日本大震災の際のさまざまな経験を震災復興マニュアル修正にどのように生かしていくべきと考えているのか、お伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 東日本大震災では、都は、発災直後から延べ三万人を超える職員を派遣して、総力を挙げて被災地を支援してまいりました。また、都内においても、避難者の受け入れや震災瓦れき処理など、被災地に対するさまざまな支援を行ってまいりました。こうした支援を通して得られた経験や教訓は、首都直下地震発生時の復興の取り組みにも生かさなければならないと考えております。
 このため、今回の震災復興マニュアルの修正では、応急仮設住宅について、民間賃貸住宅借り上げや公的住宅の空き住戸活用による確保、都外での確保など、その整備手法を充実するとともに、都外への移転を余儀なくされた広域避難者に対する生活再建支援の継続、震災瓦れきの処理手順の整理など、新たな記述を加えたところでございます。

○まつば委員 ただいまご答弁をいただきましたけれども、支援を通して得られた経験や教訓について生かしていく旨のお話もございました。また、新たな記述を追加したとのご答弁もありました。ぜひ経験や教訓を踏まえて、修正に向けた検討を進めていただきたいと思います。
 さて、都民一般向けに作成している復興プロセス編においては、地域の復興に当たっての理想的な取り組み形態として、地域協働復興という概念が打ち出されております。また、その推進組織である地域復興協議会は全編を通じたキーワードとなっており、都や区市町村はこの地域復興協議会に対する支援を進めていくこととしております。
 そこで、地域協働復興はなぜ理想的な取り組み形態といえるのか、また地域復興協議会とはどのような組織であるのか伺います。

○小久保防災対策担当部長 震災復興は被災者みずからによる取り組みが基本でございますが、被害規模が大きくなれば、自助だけでは限界が生じ、地域力を生かした住民主体の復興が不可欠となります。これが地域協働復興であり、地域が持っている力を生かして住民主体の復興を進めるための共助の仕組みと捉えられます。
 地域協働復興は、復興への強い意欲を持った地域住民が復興のあり方を協議しながら合意形成を図ることで住民の満足度が高まることなどから、理想的な取り組み形態だと考えております。
 地域復興協議会は、地域協働復興推進の核となる組織であり、自治会やまちづくり協議会などの地域組織が母体となります。その活動は、地域の実情に応じた復興計画づくり、地域環境保全に関するルールづくり、地域のための施設の管理運営などでございます。

○まつば委員 地域力を生かした地域協働復興は、自助、共助に基づく住民主体の復興への取り組みであり、目指すべき目標となることがわかりました。
 その取り組みの核として、地域の実情に応じた計画やルールづくりを行う地域復興協議会の役割は重要であります。阪神・淡路大震災時に尼崎市内で結成された協議会では、復興事業の選択は地域住民が決めることを鉄則としたほか、もと住んでいた借家人がもとのように住めるよう家主と協定を結び、家賃を据え置いたという事例があるそうであります。地域復興協議会がうまく機能すれば、高齢の方や障害がある方も地域から離れずに暮らしていけるよう、例えば簡易な仮設のショートステイ施設をつくるなど、要配慮者に十分目配りをした復興の取り組みも不可能ではないと考えております。
 このように重要な役割を果たす地域復興協議会に対し、都や区市町村はどのような支援を行っていくのか伺います。

○小久保防災対策担当部長 都では、震災対策条例において、復興の担い手となる地域復興協議会に対し、情報提供、相談体制の充実、資器材の提供等、必要な支援を行うよう努めることとしております。
 具体的な支援として、都では、災害復興まちづくり支援機構を構成する専門家職能団体との協定に基づき、地域復興協議会に対し、法律、不動産、建築といったまちづくりにかかわる幅広い分野の専門家を派遣し、各種相談に応じてまいります。
 また、区市町村では、NPO、ボランティア、専門家、企業等と連携し、地域復興協議会の結成や活動に対し助言を行うなど、住民同士が協力しながら地域復興に取り組めるよう支援を行ってまいります。

○まつば委員 多様な課題にきめ細かく対応し、個々の被災者や地域の実情に応じた復興を進めていくためには、この地域復興協議会は大きな力を発揮するものと期待しております。都においても、引き続き活動への支援を進めていただきますようお願いいたします。
 さて、生活の面から復興を考えたときには、一日も早く人々の暮らしを震災前の状態に戻し、その安定を図ることが第一の目標になると考えます。被災者が生活再建に向けた行政からの支援を受ける際に、いわばパスポートとなるのが罹災証明書であります。
 都議会公明党は、平成二十三年の東日本大震災の前から、区市町村が罹災証明書を円滑に発行するシステムを早期に導入するよう働きかけていくべきと繰り返し提案してまいりました。その後、都では平成二十三年度に、罹災証明書を迅速に発行する機能を持つ被災者生活再建支援システムを開発しております。
 そこで、被災者生活再建支援システムにつきまして、今回の震災復興マニュアルの修正ではどのように位置づけられたのか、お伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 震災復興マニュアル復興プロセス編では、復興を進める方針の一つとして、被災者の状況に応じた多様な施策を用意し、避難生活期から本格復興までの連続的な復興を推進することを掲げております。
 今回の修正においては、この方針に対応する施策の中に、災害時に住家被害認定調査、罹災証明書発行、被災者台帳作成等を迅速に行えるシステムの区市町村への導入促進を新たに加えております。

○まつば委員 被災者生活再建支援システムにつきましては、今回のマニュアル修正で新たに盛り込まれたということであります。
 今回のマニュアル修正までの間、被災者生活再建支援システムを取り巻くどのような状況の変化があったのか、お伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 東日本大震災では広域にわたる被害が発生しましたが、市町村によっては被害調査の体制が十分でなかったことなどから、罹災証明書発行のおくれや支援の漏れが生じました。
 こうした教訓から、平成二十五年の災害対策基本法の改正では、罹災証明書を遅滞なく交付することが区市町村長に義務づけられるとともに、区市町村長は被災者台帳を作成することができると新たに規定されました。また、被災者台帳に記載した情報については、被災者援護に必要な限度で区市町村内部において利用し、または他の自治体に提供することができる旨、明示されております。
 このように、都が従来から推奨してきた被災者生活再建支援システムにとっても、その必要性の認識や普及促進に向け、追い風となる環境が整ってきたと考えております。

○まつば委員 被災者生活再建支援システムをめぐりましては、罹災証明書の発行義務や被災者台帳の作成が法定されるなど、法的、制度的な枠組みが整いつつあるようであります。それに伴いまして、本システムの社会的なニーズも今後高まってくることは間違いないというふうに考えております。
 そこで、都内区市町村におけます被災者生活再建支援システムの導入状況と、本システムに対する区市町村の評価または課題認識についてお伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 被災者生活再建支援システムについては、昨年度末までに十区一市一町の合計十二自治体が導入済みでございます。
 昨年度、都が区市町村を対象に実施した調査の結果によると、被災者生活再建支援システムを導入していない自治体のうち、七割強の自治体が、基本的には導入に向けた検討を進めたいとの意向を持っております。しかしながら、その多くが、導入当たっての課題として、予算獲得が困難であることや庁内におけるシステム仕様の検討体制が決まっていないことなどを挙げております。
 このことから、システム自体の意義や必要性は理解するものの、主にコストや庁内体制の理由により導入に至っていない自治体が多いことがうかがわれます。

○まつば委員 法改正によりまして、罹災証明書発行や被災者台帳作成の重要性がさらに増しているにもかかわらず、被災者生活再建支援システムの導入がいまだ十二自治体にとどまっているということであります。都としても、課題として認識をしていかなければならないと考えます。
 ただいまご答弁にもございましたけれども、基本的に本システムを評価していると。しかしながら、コスト面が主な課題となっているというようなご回答もあるようでございますので、例えば区市町村と都が共同利用するなど、区市町村が導入しやすいシステムのあり方を再考するなど、都としての導入促進策を改めて検討することも必要ではないかというふうに申し上げておきます。
 東日本大震災被災地などにおける先進事例も調査していただきまして、被災者生活再建支援システムの区市町村へのさらなる導入促進に努めていただくことを要望いたしまして、質問を終わります。

○徳留委員 まず、東京都の国土強靱化地域計画素案について何点か質問いたします。
 策定される国土強靱化地域計画素案は、今後の東京の防災計画の羅針盤として、既に策定のさまざまな防災計画やその具体的な取り組みを束ねるもの、すなわちアンブレラ計画と名づけられています。しかし、実際には、後から計画が検討され、具体化されていくわけですから、東京の各種の既存計画の後追いの印象が強く、屋上屋を重ねるものではないのかという気がいたします。
 そこで質問ですが、この強靱化計画素案の内容は、既に具体化が進行中の長期ビジョンなど各種計画、事業の現在の取り組みとの関係はどうなるのか伺いたいと思います。

○小林防災計画担当部長 国土強靱化に当たりましては、いかなる自然災害が発生しても機能不全に陥らない経済社会システムを平時から確保するため、従来の狭い意味での防災の範囲を超えて、国土政策、産業政策も含めた総合的な対応が求められます。
 今回、素案を公表いたしました地域計画は、こうした強さとしなやかさを持った国土、地域、経済社会の構築という共通の理念のもと、目標達成に向けた取り組みをハード、ソフト両面から一つの計画として取りまとめたものでございまして、長期ビジョンや地域防災計画を初めといたします既存の計画や事業などを包含した指針として位置づけてございます。
 こうした計画の位置づけから、現在行われております事業は、強靱化の理念や目標を共有した上で引き続き取り組むこととなります。

○徳留委員 首都が直面するあらゆる災害に備えて、予防の立場から、東京の強靱化計画の四つの基本目標、八つの推進目標の一番目に人命の保護が据えられ、最大限の位置づけをしていることは重要だと思います。まさに一千三百万人都民の命を守ることを最優先にして、ハードとソフトの両面から東京の強靱化を図ることが重要だということを強調しておきたいと思います。
 次に、強靱化地域計画素案では、脆弱性評価ということで、現行施策の対応力について分析、評価するとなっています。国の国土強靱化基本法第十七条では、脆弱性評価について、国土強靱化の推進を図る上で必要な事項を明らかにするため、大規模災害等に対する脆弱性の評価の指針を定め、これに従って脆弱性評価を行い、その結果に基づき、国土強靱化計画を作成しなければならないといっております。
 どういうことなのか、そして、脆弱性評価は他の計画にどのように反映されていくのでしょうか。

○小林防災計画担当部長 脆弱性評価は、強靱化の観点から、施策の分野を初め、人命の保護や首都機能の維持などの四つの基本目標と、それを具体化いたします八つの達成すべき目標、その妨げとなります起きてはならない最悪の事態四十五の設定など、必要な事項を指針として定めた上で、最悪の事態を回避するための官民のあらゆる分野におけます現行施策の対応力を評価するというプロセスで実施したものでございます。
 脆弱性評価の結果、必要とされました事業につきましては着実に実施されることとなります。
 事業計画につきましては、社会経済状況等を踏まえ対応されるものと考えてございます。

○徳留委員 この強靱化計画の素案に掲載された重要事業の現状は、詳しく見ますと、期限や数値目標などから、現在の進行状況には大きな差がありますし、強弱があります。予想される首都直下地震、頻発する異常気象のもとでの豪雨災害、土砂災害、洪水などの自然災害に備えて、人命を中心に都民の安全・安心を万全のものにするために、脆弱性評価に基づいて事業進捗状況の自己点検を行って、より一層の対策の具体化が求められていると思います。この国土強靱化地域計画に盛り込まれた理念と目標は、都民の命と安全を守る東京の防災事業の評価書として受けとめる必要があるのではないかと思います。
 そこで質問ですが、東京の国土強靱化地域計画素案の推進は、日本にとって特別の意義、一つは世界で類を見ない集中集積、二つ目は首都機能の維持、三つ目は安全・安心な二〇二〇年東京大会の開催があるとされていますが、東京の場合は、首都として国の計画と多くが重なり合うことが多いと思いますが、国との調整はどのようになっているのでしょうか。その際に、東京の強靱化地域計画の数値目標とか実施期限はどうなっているのでしょうか。

○小林防災計画担当部長 地域計画は、強靱化基本法の規定によりまして、国の計画と調和を図ることが定められていることに加え、都の計画策定におきましては、国の機関を含めて構成されております東京都防災会議で検討しておりまして、国の施策とも整合を図るものとなってございます。
 また、地域計画では、数値目標について可能な限り記載しておりますが、都以外の機関も含め、理念や目標を共有するという本計画の趣旨に鑑みまして、個別事業の進行管理は、それぞれを定めた事業計画等で行うこととしてございます。

○徳留委員 さまざまな東京の施策、事業は国と整合を図っているということでした。
 これだけの巨大な東京の国土強靱化地域計画の具体化推進には、巨額の財政支出が求められ、都財政にも大きな負担をもたらすものではないかと考えます。慎重な検討が必要だと思います。
 こうした首都機能にかかわる巨大な計画の具体化には国の支援が不可欠だと思いますが、国の財政支援はどうなっているのでしょうか。都としての予算的な裏づけはどのようになっているのでしょうか。

○小林防災計画担当部長 東京の強靱化に真に必要な事業は適切に予算措置がなされるものと考えてございます。
 一方、国の財政支援につきましては、現在のところ、個々の交付金、補助金の判断に当たりまして、一定程度配慮されるのみでございます。
 首都機能維持の国家的な意義を考慮いたしますと、東京都だけが負担を負うことは適切ではないと考えてございます。これまでも、国土強靱化地域計画に位置づけられました強靱化の取り組みに対して具体的な財政措置を実施することを要望してまいりましたが、引き続き適切に対処してまいります。

○徳留委員 今回の東京都強靱化地域計画素案の具体化が単なる屋上屋の計画倒れにならないよう、特に都民の人命の保護を最優先にして防災にかかわる各種の事業の促進を図っていただきたいということを要望して、東京都強靱化地域計画素案にかかわる質問は終わらせてもらいます。
 次に、東京都震災復興マニュアル復興プロセス編の修正素案について何点か質問いたします。
 震災復興マニュアルは十二年ぶりの修正であり、この間、誰もが衝撃的に体験をした東日本大震災を初め、全国と東京都内での自然災害の事例を十分に検討し、反映させることが重要であることはいうまでもないことだと思います。
 そこで、震災復興マニュアル修正案では、区市町村の各地域で震災復興に当たる重要な組織として、地域復興協議会の結成と活動が重要であると強調されています。住民の合意を踏まえて一刻も早く復旧、復興を進める上で、地域に密着した地域復興協議会の結成と活動は、住民の自助と共助の力を総結集し、行政など公助の力を効果的に発揮していく上で重要な役割を担うものだと考えます。
 しかし、震災を初め自然災害直後の混乱の中では、被害が大きければ大きいほど、復興活動にも大きな困難を抱え、復旧、復興の先頭に立ってこの活動を担うべき行政の関係者も、一人一人の職員が被害者になり得ることは避けられないことだと思います。
 そこで質問ですが、震災直後の混乱の中、行政も大きな困難を抱えるもとで、どのようにして区市町村の各地域に地域復興協議会の結成を進めるのか。実際に地域復興協議会の機能を発揮させていくためにどのような支援を行うのですか。お答えいただきたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 都は、震災後の復興が円滑に進むよう区市町村震災復興標準マニュアルを作成するとともに、復興まちづくりの事前準備について取りまとめた市街地の事前復興の手引を活用し、区市町村の取り組みを支援しております。
 これらを受け、区市町村では、独自の震災復興マニュアルを整備するとともに、地域復興協議会の母体となる地域コミュニティの形成や復興まちづくり計画の事前検討を住民に働きかけるなど、平常時から復興に備えた取り組みを進めております。
 その上で、発災後は、区市町村が地域の自治会や町会へ地域復興協議会への意向を個別に呼びかけるほか、都は、震災復興まちづくり支援機構の専門家を地域へ派遣し各種相談に対応するなど、専門家、NPO、ボランティア等の協力も得て、地域復興協議会の活動が機能するよう支援してまいります。

○徳留委員 私は、東日本大震災の最大被災地の石巻に震災直後から一年間支援に入りました。そのときに、石巻市の職員幹部の皆さんを含めて、多くの職員自身とその家族の少なくない方々が多数犠牲者になられて、大変困難な事態から復旧、復興が始まりました。こういう中で、行政の機能が麻痺し、罹災者への支援、復旧、復興といっても長期に機能しないという状況が続きます。
 そういう深刻な状況を現場で一年にわたって体験した私自身の体験からすると、今回の復興マニュアルには大変気になることがあります。今回の震災復興マニュアルの修正素案に明記されている発災から復興の流れの中で、分野別の復興施策で、暮らしの施策が、前回平成十五年版でも今回の修正素案でも、同じように最後の順番に掲載されているという問題です。
 そこで質問ですけれども、甚大な被害をこうむった被災者への最初で最大の支援は、まず、被災した人たちの命と暮らしを守る支援ではないかと思います。生活再建、コミュニティ再建こそが復興の土台ではないかと思いますが、なぜ最初ではなくて、復興施策の流れの中で最後の順番になっているのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 復興プロセス編では、地域復興協議会を核とした時限的市街地づくりなど、地域における復興まちづくりに取り組むプロセスを特に重点的に解説しております。
 このため、分野別の復興プロセスの章においては、まず、ハードの施策である都市復興及び住宅復興を掲げ、次に、ソフトの施策である産業復興及び暮らしの復興の順に整理いたしました。
 また、暮らしの復興には、福祉、保健、医療のほかに文化、社会教育、消費生活、ボランティア等や専門家との連携など、他の分野に該当しない多様な領域を網羅的にまとめていることから、章の最後に置いたものであります。
 分野の施策の並び順は、重要度の順番ではございません。

○徳留委員 復興のプロセスにとって、被災者の生活再建は、あらゆる災害の緊急にして最大で継続的な課題ではないかと考えます。命と暮らしの再建、安定がないと、復旧、復興への希望も湧いてまいりませんし、地域の住民のコミュニティも再建されないし、地域再建の意欲も湧いてこないと思います。
 三・一一から五年を経過している最悪の現場に最近訪問してまいりました。日常の生活は、大変暮らしが深刻な事態になっておりますし、復興公営住宅にもなかなか入れずに、仮設住宅も四割、五割と人が抜けて、本当に暮らしの不安、将来の不安を抱えている人たちがたくさんおられました。
 そういう中で唯一の希望は、まちづくり協議会を住民同士でつくってコミュニティを再建して、ばらばらになった、被災を受けた同じ地域の被災者が同じ復興公営住宅に入居することが決まったということです。この人たちは、すずり石で有名な雄勝石の産地の雄勝なんですけれども、こういう方々が同じ復興公営住宅に入れるんだけれども、入れるのはあと二年後だと。もう七十、八十の人なんだけれども、同じ地域の人で同じ復興公営住宅に入れるということで大変希望を持っておられました。
 ぜひ被災者に暮らしの安心と生きる希望と勇気を与える復興プログラムのあり方に向けて、少しでも改善すべきではないかということを要望しておきたいと思います。
 次に、東日本大震災などの経験からも、震災復旧、復興にとって大量の災害ボランティアの役割は、被災者の実態とつらい思いに寄り添って、激励しながらきめ細かい支援を行って、復旧、復興を進める上で極めて重要であることが実証されていると思います。
 そこで、いざ発災のときに、可能な限り早急に被災者の皆さんに対して効果的に復興支援ができるように、多数の救援ボランティアを積極的に受け入れることが大事だと思います。そういう災害ボランティアを受け入れる体制を日ごろから準備していくことが大事だと思います。
 日ごろから多くの諸団体と協力、協定関係を結んで、救援ボランティア、災害ボランティアの力を結集する体制を準備しておく必要が大事だと思いますけれども、どのような対策がとられているのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 災害時には、区市町村災害ボランティアセンターにおいて一般ボランティアの受け入れを行うこととなります。
 都は、この受け入れが円滑に進むよう、東京ボランティア・市民活動センターと協働で東京都災害ボランティアセンターを設置し、区市町村災害ボランティアセンターの設置運営支援、災害ボランティアコーディネーターの派遣、資器材やボランティア等の区市町村間の需給調整などの各種支援を行うこととしております。
 また、専門知識等を必要とする防災語学ボランティア、応急危険度判定員などについては、平常時から募集、登録を行い、研修、訓練等を通じ体制を確保しているところです。

○徳留委員 一年間、被災地の真ん中で救援活動を経験した立場からいいますと、災害ボランティアの重要性を本当に痛感いたします。災害ボランティアに駆けつける方々は、何の見返りも求めずに献身的に、とにかく被災者を助けたい、力になりたいという思いで駆けつけてこられます。この思いやりと人間的な連帯、支え合いの気持ちが、心細い不安な被災者にとっては、本当に安らぎや生き抜いていくということ、暮らしの再建への勇気や希望を与えていることを痛感してまいりました。まさに地獄に仏と感謝されてまいりました。
 今回修正される震災復興マニュアル復興プロセス編の修正版と同時に、注目されている防災ブックを一体に活用して、本格的な予防的防災活動の取り組みを推進することが大事だと思います。いざ災害のときの復興の準備体制づくりを今から進めるために、こうした内容の普及啓発は具体的にどのように推進されるのでしょうか。
 防災ブックや震災復興マニュアルが宝の持ち腐れにならないようにするために、この普及啓発活動が特別に重要だと思いますけれども、具体的にどのように進められるのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 震災復興マニュアル復興プロセス編は、地域における復興の基本的な考え方やそのプロセスを示す手引書であり、これを活用し、広く都民に平常時から地域の復興に関する認識を深めてもらうことが重要と考えております。
 このため、本マニュアルについては、区市町村、NPO、ボランティア、専門家などの関係者へ提供するとともに、復興や防災に係る訓練や講演会等の機会を捉え、都民や企業へも配布する予定でございます。
 また、都内全世帯に配布している防災ブック「東京防災」でも、生活再建支援制度など復興に関する記述を設けていることから、震災復興マニュアルとあわせ、「東京防災」も活用しながら都民への普及啓発を進めてまいります。

○徳留委員 防災ブックや震災復興マニュアルも、どこかに積んでおくだけで宝の持ち腐れにしないためには、頭や言葉だけの普及啓発活動だけでなくて、定期的な防災訓練やさまざまな行事の中で、実際に体を動かす実地訓練を通じて身につけていくようなやり方が重要だと思います。
 例えば、東日本大震災のときに、宮城県石巻市の大川小学校の児童生徒が全て亡くなった、あの悲惨な犠牲と対比して紹介される、釜石の奇跡といわれる津波てんでんこが紹介されているように、津波が来たら、とにかく高台に逃げろという教訓は、学校の教育の中でも繰り返し教え込まれ、地域のコミュニティの中でも親から子供へといい伝えられ、身にしみついていたといわれています。
 こうした経験も教訓も生かして、今回のマニュアルあるいは防災ブックなどの普及活動のあり方、工夫が極めて重要ではないかということを強調して、私の質問を終わらせていただきます。

○新井委員 私からは、東京都国土強靱化地域計画について、まずお伺いいたします。
 四つの基本目標をもとに、大規模自然災害を想定して、より具体化し、達成すべき目標として八つの推進目標を設定しております。今回は、その目標でもあります情報通信の確保についてお伺いいたします。
 災害時に適切な対応を行うに当たっては、被害の程度や必要とする救援の規模などの情報を確実に収集、活用することが重要な課題となると思っています。一方で、東京都が収集できた有用な情報を都民へ発信するということも、また必要なことではないかと思っております。
 このように、被害の情報のやりとりということに関し、東京都はどのような考え方で取り組んできたのか、また、行政機関相互と対都民という点で、東京都はこれまでにどのような設備あるいはシステム等の整備を行ってきたのか、お伺いいたします。

○矢岡総合防災部長 災害時に情報を確実に授受することは極めて重要でありまして、発災で民間の通信事業者による電話やファクス等が大幅に機能低下した場合でも、独自の防災行政無線によって、総務局と国、自衛隊、市区町村、各種防災機関等の間で情報連絡できるよう整備に取り組んできております。
 具体的には、行政機関相互においては、国、自衛隊及び市区町村等に防災行政無線を利用した電話、ファクス、テレビ会議システム及び災害情報システムを、また、指定公共機関や災害拠点病院等には電話及びファクスを設置しまして、情報連絡体制を確保してございます。さらには、災害による孤立集落等との情報連絡体制確保のために、移動無線車、衛星中継車を保持しまして、通信の確保が図れるようにしてございます。
 一方で、都民への情報発信につきましては、東京都防災ホームページやツイッターの活用によりまして情報提供を行っております。また、総務省が整備しておりますLアラートによりまして、市区町村からの避難情報を報道機関へ自動的に発信しているところでございます。

○新井委員 次に、電源の確保について質問いたします。
 機器整備がなされていても、その機能を十分に発揮するためには電気が不可欠です。一方で、一旦発災すれば、電力会社からの送電がとまることも考えられますし、復旧の遅延も予想されます。しかし、情報収集のための機器類を十分に稼働させることは災害時こそ必要です。
 そこで、東京都は、各種の情報通信機器類、システム類の整備について、この点を考えて進めてきたのか。つまり、電力会社からの送電ストップや防災行政無線回線の障害があったとしても、災害時の重要通信手段である防災行政無線は確実に稼働できるのか、お伺いいたします。

○矢岡総合防災部長 首都直下地震等が生じた場合は、東日本大震災の例を見るまでもなく、大規模な停電が発生することが想定されます。そこで、防災行政無線の運用に必要となる機器には、当初から停電に備えた非常用電源が用意されております。
 まず、都庁舎におきましては、燃料の補給がない場合でも、おおむね三日間程度の電源供給が可能でございます。また、防災行政無線設備が整備されている市役所、各機関、中継基地等、他の施設におきましても同様な対策がとられてございます。
 一方で、防災行政無線そのものも、非常時に備えた対応がとられておりまして、無線経路のループ化や地上マイクロ波と衛星通信との二重化等が措置されてございます。

○新井委員 防災無線は、停電に備えて非常用電源を用意して、無線回線が万が一の障害があったとしても、経路のループ化や地上マイクロ波と衛星通信の二重化の措置をしているということです。
 この都民の安全を確保する防災行政無線を重要電波伝搬路というのですが、この電波伝搬路上に建物を建てるときには総務省への届け出が必要になると聞いております。電波に影響を与える建物というのは、二百メーター以上の建物というものですが、国の特区の関係で、東京駅から浜松町の間に二百メーター以上の建物がよく建設されて、それによって、最近では影響があることがすごく多いと聞いております。
 実際に担当の方に、年間、建物建設が予定されている、そして電波伝搬路上に影響が出る対応件数はどれだけあるのかお伺いをしましたら、年間で五、六件あるということです。防災行政無線が遮断されたら大変なことでありますから、建物を建てる方へ、都の職員の方がビルの屋上に中継所を建てていただくようお願いするわけでございます。しかし、相手側の理解がなかなか得られず、大変な思いをしているということです。
 電波を遮断する建物を建てる業者の方が、なぜ中継所を建てることに対して理解していただけないかといいますと、コストの問題であったりとか、また、電波法というのがあるんですけど、そこに電波の復旧に向けました費用負担について明確に記載されていない、そういったことが理由として上げられると考えております。ちなみに、中継所を建てるときにどれだけ費用がかかるかといいますと、二億円から三億円かかるといわれています。
 また、クレーンなどが動くときに若干電波の影響があるというときも、クレーンが動くときだけ、専用線を使って電波を、通信をするということなんですけど、専用線を設置するに当たっても諸経費は合わせて一千万円かかるということです。
 それらの建設費用は、大切な東京都の税金、東京都のお金を使うわけにはいきませんから、交渉は難航しますし、東京都の担当の方は精神的にも大変苦労されているのかなと思っております。
 重要電波伝搬路が遮断されるビルの建設は今後もあるわけでございますから、そのたびに交渉が難航するわけです。何らかの働きかけや工夫が必要であると考えていますし、場合によっては、国を含めて働きかけをしなければならないと考えております。
 次に、震災復興マニュアルについてお伺いいたします。
 都民一般向けに作成しております復興プロセス編では、復興の基本的な考え方として住民主体の復興を上げていますが、住民同士が協力しながら地域の復興を進めるためには、都は、区市町村、NPO、ボランティア、専門家、企業などの各主体と連携して地域への支援を進めていかなければならないと考えております。とりわけ住民や地域への直接的な支援の担い手となります市区町村の役割は非常に重要でございます。
 都では、専門家職能団体から構成される災害復興まちづくり支援機構との連携を進めていますが、これを含め、区市町村による復興に向けた活動を円滑に進めるため、震災復興マニュアルに基づきどのような対策を講じているのか、お伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 都では、災害復興まちづくり支援機構の十九団体と、災害時の専門家派遣等に関する協定を締結しております。この協定に基づき、平成二十五年の大島町土砂災害の際には、同機構の弁護士、司法書士、技術士、不動産鑑定士の延べ二十人を超える専門家が現地に派遣され、大島町役場と連携し、被災者からの相談に対応いたしました。
 また、区市町村震災復興標準マニュアルを作成し、市区町村ごとの震災復興マニュアル作成を支援しております。この標準マニュアルは、都の震災復興マニュアル修正に伴い、今後修正を加える予定でございます。
 その他、復興時の地域のまちづくりに備え、事前に行うことのできる対応策を整理した市街地の事前復興の手引の作成や、市区町村職員の意識向上及び都市復興手順の習熟を目的とした都市復興模擬訓練などにより、市区町村の取り組みを支援、促進しております。

○新井委員 災害復興まちづくり支援機構を構成します職能団体は十九団体あるとお伺いしました。災害時の専門家の派遣等はとても心強いものだと思っています。市区町村が復興事業にすぐ着手できるよう、都では、各種資料の作成や訓練の実施により、その取り組みを支援しているということです。
 しかし、一たび首都直下地震に見舞われれば、膨大な数の建物の被害が発生し、被害者の数も相当な数に上ります。これらの被災者に対する支援を遅滞なく進めるには、資料の提供や訓練などソフト面の取り組みだけでなく、効率的に大量の情報を集約、管理できるシステムの活用が不可欠であると考えております。
 この点、都では、罹災証明書を円滑に発行できるシステムとして、被災者生活再建支援システムの導入を市区町村へ推奨しています。私も、本年九月に実施されました都の総合防災訓練におきまして、この被災者生活再建支援システムを活用した訓練を視察しました。この中で、このシステムは、罹災証明書の迅速な発行にとって大きな威力を発揮すると感じました。
 そこで、改めて、確認のため、被災者生活再建支援システムは、市区町村の罹災証明書発行や被災者台帳の作成にどのような効果をもたらすのか、お伺いします。

○小久保防災対策担当部長 被災者が各種支援を受ける際に必要となる罹災証明書を市区町村が発行するに当たっては、まず、家屋の被害程度を一軒ずつ調査することから始めなければなりません。
 被災者生活再建支援システムは、この調査や調査結果のデータベース化を効率的に実施するために、被災度判定チャートや調査票のスキャナーでの読み込み等を行う仕組みを備えており、これにより迅速な罹災証明書発行が可能となります。
 また、本システムは、罹災証明書発行と被災者台帳作成の機能をあわせ持っており、罹災証明書発行に際して取りまとめた被災者の基本情報や住家の被害程度に関する情報を被災者台帳情報としても活用することができます。このため、被災者台帳作成に当たり必要な情報の入力も、発災後の混乱期に最初から入力する場合と比べ、簡便に行うことが可能でございます。

○新井委員 被災者生活再建支援システムは、さまざまな工夫が凝らされており、被災家屋が相当数に上った場合でも、罹災証明書発行や被災者台帳作成を迅速かつ効率的に行える有効なシステムであることがわかりました。都内全体、全域で大規模な被災が予想される首都直下地震に備え、できれば都内の全ての市区町村で本システムを活用していくことが望まれます。
 そこで、これまで都は、市区町村に対し、被災者生活再建支援システムの導入をどのように働きかけてきたのか、お伺いいたします。

○小久保防災対策担当部長 都はこれまで、市区町村に対し、防災担当課長会等の場において、被災者生活再建支援システムの有効性等について説明し、その導入に向けた検討を促してまいりました。また、都の総合防災訓練において、市区町村職員参加のもと、本システムを用いた罹災証明書発行等の訓練を実施したほか、市区町村職員向けに実施している被災者の生活再建支援業務に係る研修においても本システムを活用しております。
 このように、あらゆる場と機会を捉え、本システムに係る市区町村の理解及び導入の促進に努めており、昨年度末までに、十区一市一町の計十二自治体が本システムを導入している状況でございます。

○新井委員 被災者生活再建支援システムの普及拡大に向け、これまで都がさまざまな取り組みに努力してきたことがわかりました。
 いざというときに被災者生活再建支援を考えますと、導入はまだ十二自治体ということなので、今、ほかに西宮システムという被災者支援システムを導入しているところもあると伺っておりますが、本システムは被災度判定チャートや調査票のスキャナーなどを導入しておりまして、明らかに迅速な罹災証明書の発行ができるものです。
 今後、さらに多くの市区町村が本システムを導入し、活用することができるよう、情報提供や助言を初めとした効率的な支援策を積極的に講じていくことを期待しまして、次の質問に移ります。
 先月三十日に第三期東京都犯罪被害者等支援計画の素案が公表されました。我が党は、さきの第一回定例会の一般質問において、この計画の策定に当たっては、素案作成の段階から、被害当事者や支援団体の意見を積極的に取り入れるべきと指摘したところでございます。
 今回、素案を取りまとめるに当たり、犯罪被害者やその家族の声や現場における意見をどのように把握したのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 都は、本年、計画の策定に先立ちまして、犯罪被害者等の実態を把握するためのアンケート調査を実施いたしました。
 この調査におきましては、犯罪被害者やそのご家族、支援団体等を対象としておりまして、特に今回は、性犯罪、性暴力の被害者に特化した質問事項を設けることなどにより、前回声を聞くことができなかった性犯罪等の被害者やその支援団体の実態も把握しております。
 また、学識経験者や民間支援団体へのヒアリングも行うなど、支援の現場の声を広く把握してまいりました。

○新井委員 国で犯罪被害者等基本法が平成十六年度にできたわけで、昨年は基本法ができて十年たったわけでございますが、犯罪被害者等の支援については、全国的にも市区町村の窓口がまだ設置されていないところもあり、まだまだなのかなという報道発表もございました。
 都の犯罪被害者等の状況の把握で今回評価できるのは、これまで余り状況の把握がされてこなかった性犯罪について、SARC東京やTSUBOMIなどの性犯罪の支援団体から被害者の話を聞いて、その実態を把握したところだと思っております。
 そこで、実態調査やヒアリングを行ったところでありますが、犯罪被害者やその家族等についてどのような状況が把握できたのか、お伺いします。

○箕輪人権部長 まず、犯罪被害者等支援の取り組みの評価につきまして、回答いただいた犯罪被害者等の半数近くが取り組みは進んだとしておりますが、前回調査に比べ、その割合が低下してございます。
 また、被害者の状況が世間一般に知られていない、周囲の言動で傷ついたとの回答も多く、犯罪被害者等への理解が広く進んでいるとはいいがたい状況にございます。
 さらに、性犯罪等の被害者の多くが心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDの症状があったと回答するなど、精神的ダメージの大きさも明らかになりました。
 こうした状況を反映し、今後の充実が望ましい支援といたしまして、啓発やカウンセリング等の回答が多くなっております。

○新井委員 実態調査の結果からは、PTSDは、普通の性犯罪以外ですと三割ぐらいなのですが、性犯罪ですと八割を超える方がいるということがわかりました。症状によっては、明かりを消したときには、においとか、感覚だったりとか、性犯罪の被害を受けたときがフラッシュバックをすることもあるということでございます。
 また、実態調査の結果からは、犯罪被害者とその家族は、被害による深刻な精神的ダメージを受けた上、周囲からも理解を得られず、二次的な被害を受けるなど、さまざまな困難を抱えていることがわかりました。
 このような困難を抱えた中、寄せていただいた意見は非常に貴重なものでございます。こうした声をしっかりと受けとめ、生かしていくべきだと考えますが、今回の素案の中にどのように反映されたのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 第三期計画の素案では、犯罪被害者やそのご家族の声を伺い、その実情に沿った形で重点的に取り組む事項をまとめております。
 例えば、実態調査で性犯罪等被害者の深刻な精神的ダメージが明らかとなったことを踏まえ、性犯罪等被害者の精神的ケアの充実を重点的取り組みとして掲げております。そのほか、啓発の充実を望む声に対応いたしまして、スポーツを初めさまざまなイベントの機会を活用し、より広い層に向けた広報啓発を行うなど、被害者の置かれた状況に関する理解の促進にも重点的に取り組んでいくとしてございます。

○新井委員 この素案は、犯罪被害者等の声を踏まえて取りまとめているとの説明がありましたが、今回は埋もれがちな性犯罪等の被害者の声を拾い上げています。
 これまでも我が会派は、性犯罪被害者への支援の重要性を繰り返し指摘してきました。都は、本年七月から性犯罪等の被害者に対する支援事業を開始したところですが、実態調査の結果等を見ますと、依然、取り組むべき課題は多いと考えております。
 そこで、都は今後、性犯罪等被害者支援にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 性犯罪等被害者の声は埋もれがちでございまして、その一方、被害が心身に与える影響は大きいことから、被害直後からの早期救済が重要でございます。
 そこで、第三期計画の素案におきましては、こうした被害者の支援をさらに進めるため、精神科医療との連携や医療関係者の人材育成等を図ってまいります。
 また、学識経験者や医師、弁護士等による専門家懇談会を開催し、さまざまな支援上の課題等に適切に対応するための助言を得るほか、児童相談所や配偶者暴力相談支援センター、弁護士会等との連携強化を図るなど、幅広く取り組みを進めてまいります。

○新井委員 答弁であったように、性犯罪等の被害の声は埋もれがちでございます。窓口に、十年前、二十年前の被害を相談する方もいると聞いております。それだけずっと心に傷を負いながら、相談できずにおられたと思っております。
 また、被害直後から早期の救済をぜひともお願いしたいと思っています。被害に遭われてから七十二時間以内に避妊のピルを投与しなければならないとか、また感染症の対策なども考えますと、これは早期の救済というのは必須だと思っております。
 また、児童相談所との連携という答弁がございました。親や兄弟からの性虐待は、実態がわかりづらいというふうに聞いております。そのため、埋もれている可能性もございますから、その点についても、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 引き続き、性犯罪被害者の状況を把握しながら取り組んでいただくことを要望しまして、私の質問を終わりにします。ありがとうございます。

○加藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で総務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時二分散会

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