総務委員会速記録第七号

平成二十七年六月十九日(金曜日)
第一委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長栗林のり子君
副委員長西沢けいた君
副委員長中屋 文孝君
理事やながせ裕文君
理事徳留 道信君
理事早坂 義弘君
清水 孝治君
上田 令子君
栗山 欽行君
高倉 良生君
田島 和明君
ともとし春久君
山下 太郎君
清水ひで子君

欠席委員 なし

出席説明員
青少年・治安対策本部本部長河合  潔君
総合対策部長横山  宏君
青少年対策担当部長稲葉  薫君
治安対策担当部長村山  隆君
総務局局長中西  充君
危機管理監田邉揮司良君
次長理事兼務中村 長年君
総務部長榎本 雅人君
企画担当部長尖閣諸島調整担当部長兼務野間 達也君
特命担当部長伊東みどり君
訟務担当部長和久井孝太郎君
復興支援対策部長川合  純君
復興支援調整担当部長被災地支援福島県事務所長兼務野口 毅水君
行政改革推進部長三木 暁朗君
自治制度改革推進担当部長奥田 知子君
情報通信企画部長中島  毅君
人事部長内藤  淳君
労務担当部長栗岡 祥一君
主席監察員大朏 秀次君
行政部長西村 泰信君
多摩島しょ振興担当部長大島災害復興対策担当部長
事業調整担当部長兼務
佐々木秀之君
区市町村制度担当部長越  秀幸君
総合防災部長矢岡 俊樹君
防災計画担当部長裏田 勝己君
防災対策担当部長小久保 修君
統計部長中村  豊君
人権部長箕輪 泰夫君

本日の会議に付した事件
意見書について
青少年・治安対策本部関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十一号議案 東京都安全・安心まちづくり条例の一部を改正する条例
総務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十二号議案 職員の再任用に関する条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
・東京都国民保護計画の変更について
・東京都人権施策推進指針(素案)について

○栗林委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書四件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○栗林委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、青少年・治安対策本部及び総務局関係の付託議案の審査並びに総務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより青少年・治安対策本部関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百三十一号議案を議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際、要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○横山総合対策部長 当委員会におきまして、六月三日に要求がございました資料につきましてご説明させていただきます。
 お手元の総務委員会要求資料の表紙をおめくりいただき、まず目次をごらんください。
 今回要求がございました資料は、記載のとおり、一番上の地域における見守り活動支援事業等における防犯カメラに対する都の補助実績など、以下、ごらんの六件でございます。
 まず、一ページをごらんください。地域における見守り活動支援事業等における防犯カメラに対する都の補助実績でございます。
 平成十五年の東京都安全・安心まちづくり条例の制定以降、平成二十六年度までに補助した台数を区市町村ごとに実績で記載したものでございます。
 次に、二ページをごらんください。都内における防犯ボランティア団体数の推移でございます。
 これも、条例制定以降、平成十五年から平成二十六年までの団体数を年ごとにお示ししてございます。
 次に、三ページから四ページにかけましては、都道府県及び政令指定都市における安全・安心まちづくり条例等でございます。
 都道府県と政令指定都市ごとに、それぞれの条例の名称、公布年月日、施行年月日を記載してございます。
 次に、五ページから九ページにかけましては、東京都安全・安心まちづくり条例の改正に関する意見募集の実施状況及び結果について、条文との関係を一覧にしたものでございます。
 次に、一〇ページをごらんください。規範意識の醸成に向けた取り組みでございますが、こちらは、平成二十七年度開始事業と既にやっている既存事業につきまして、取り組み項目と具体的内容をそれぞれ記載したものでございます。
 最後に、一一ページをごらんください。条例改正までの経緯でございます。
 こちらは、東京の安全安心に関する懇談会の開催や安全安心TOKYO戦略の策定など、今回の条例改正案を提出するに至った経緯を時系列でまとめたものでございます。
 以上で要求資料の説明を終わります。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○中屋委員 私の方からは、東京都安全・安心まちづくり条例についての質問を何問かさせていただきたいというふうに思います。
 私はこれまで、安全安心TOKYO戦略について何度か質問してまいりました。誰もが安全・安心を実感できる社会を実現するためには、警視庁や区市町村はもちろん、都民や地域における団体など、幅広い層の協力を得て対策を進めていく必要があると申し上げてまいりました。
 今回、さまざまな関係者の協力をいただいて、東京都安全・安心まちづくり条例の改正が提案されました。この改正は、担い手の育成や都民などの顕彰など、私のかねてからの思いが通じまして、これまでなかった人づくりの規定が盛り込まれました。これらの規定は斬新なものではありませんが、都にとって、そして地域にとって、今後ますます重要になる規定であります。
 背景としては、地域の力の強化があると思います。私の地元文京区も、防犯活動に非常に熱心に取り組んでいる地域ではありますけれども、いろいろと将来に向けての不安や問題を抱えております。その一つが高齢化です。
 警察庁の調査によりますと、全国の防犯ボランティア団体の六割以上は六十歳以上の団体ということになっております。今後、十年たちますと、これらの世代の皆さんが後期高齢者となりまして、その下の世代を取り込んでいかないと、今、活動している団体は確実に衰退してまいります。
 今回の条例の改正の一番の目的は、地域における安全・安心の体制を強化、つまり地域の力の強化であると認識しておりますが、都では、防犯活動等、地域における活動の課題をどのように捉え、地域の力の強化に向けてどのように取り組んでいくのか、まずお伺いいたします。

○横山総合対策部長 地域における安全・安心は、地道に防犯活動等を行う担い手があってこそ、初めて確保されるものであります。地域における課題はそれぞれ異なりますが、主なものとしては、防犯ボランティアの高齢化やその活動の停滞などであります。これらの課題は、ご指摘のとおり、今後、さらなる高齢化と相まって、ますます深刻な状況となることから、都では今回、条例に、人材育成や都民等への顕彰、情報の発信、共有など地域の活動を支援する規定を追加いたしました。
 今後、都は、区市町村を通じ地域の実績や課題を把握し、柔軟な発想で中長期的に地域の安全・安心の体制を強化してまいります。

○中屋委員 一朝一夕には難しいと思いますけれども、効果があらわれるまで数年かかるようなものもあるかもしれませんが、地域における課題や状況をよく把握いたしまして、より効果的な施策はないのか、常にアンテナを張って、先進事例を調べて取り入れていってもらいたいというふうに思います。
 今回、新たに、施策に必要な調査、研究の実施を行う規定が追加されております。そこでお伺いいたしますが、改正の趣旨であります誰もが安全・安心を実感できる社会を形成するため、その前提として、都民の不安要因をどのように把握するのか伺います。

○村山治安対策担当部長 誰もが安全・安心を実感できる社会を形成するためには、まず、現状において都民が一体何に不安を抱いているのか、その要因を把握する必要がございます。
 そこで、今年度、犯罪情勢や地域特性、施策事業との関連性なども考慮し、専門家の助言を踏まえて設問を作成し、都内五カ所において調査を実施いたします。調査結果については、継続して実施することで時系列変化を測定するほか、取り組みの成果を把握して、次の施策へと反映してまいります。

○中屋委員 体感治安に関しましては、警視庁におけるモニター調査等さまざまな機関でも実施されておりますが、同じような設問でありましても、調査によって回答が異なり、設問のつくり方や配布の仕方など、工夫が必要に思います。調査を実施するからには、施策に反映できる意味のある調査となりますように、有識者と十分調整した上で実施していただきたいというふうに思います。
 こうした都民の不安感を解消するためには、地域における安全・安心の取り組みが重要となります。先ほどの答弁にもありましたが、地域の課題に対応するためには、防犯ボランティア等の担い手の育成はもちろん、防犯ボランティア団体などの活動の活性化が重要であります。
 私はかねてから、活動の活性化を図るための防犯団体等の表彰制度を提案しておりました。前の総務委員会におきましては、都独自の工夫を凝らした表彰制度を検討していくとのご答弁をいただいております。将来的には、地域の方々の励みとなるよう叙勲につながるような制度を構築してほしいと思っておりますが、今回の改正に表彰規定が盛り込まれ、都は、今後具体的にどのような表彰制度を構築していくのか、お伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 犯罪の多くは街頭や自宅などの身近な場所で起きており、犯罪を未然に防ぎ、地域で生活する弱者も安全・安心を実感するためには、都民等による自主的な防犯活動の取り組みが欠かせません。
 そこで、都では、条例に規定を設け、長年、地道に防犯活動を継続的に行っている団体や個人等に対して本部長賞の贈呈を行うことを検討しております。
 今後、区市町村等とも調整の上、次年度の実施に向けて、地道に防犯活動を継続していただいている地域の人々の励みとなり、さらなる活動の活性化を促す制度となるよう、効果的な制度を構築してまいります。

○中屋委員 防犯団体等の表彰制度につきましては、具体的な検討がなされているようであります。
 他方で、こうした団体の活動のさらなる活性化のためには、表彰だけでは足りません。地域の若い人たちが気軽に活動に参加して、新たに団体を結成できるような登録制度や、活動の活性化に資する情報の共有の仕組みが必要であるというふうに思います。
 そこで、今回の条例改正で情報の発信と共有に関する規定が盛り込まれておりますが、具体的にどのような取り組みを進めていくのか、お伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 地域における自主的な団体の活性化を図るためには、ご指摘のとおり、若い人たちが参加しやすい環境整備や、行政や警察、学校、町会などにおける情報の効果的な発信と共有の仕組みが必要でございます。現在、都では大東京防犯ネットワークを運営し、防犯ボランティア団体の活動事例や区市町村の取り組みなどの情報を提供しており、約六百の団体等が登録しております。
 今後は、このネットワークの見直しを行い、新たな団体が登録するよう内容の充実を図ってまいります。
 さらに、地域への効果的な情報の提供や安全・安心に関する情報共有のあり方など、専門家による検討会をこの夏にも立ち上げ、検討を進めてまいります。

○中屋委員 ここまで、防犯団体等の表彰や、新たな団体が登録し有益な情報を共有できる仕組みについて伺ってまいりました。
 さらに地域の力を強化するためには、前の総務委員会でも申し上げましたが、こうした地域活動の活性化に加えて、これを補完、強化していくことも重要であります。
 今回の条例改正では、事業者の責務に関する規定が追加され、本定例会における我が党の代表質問において、事業者の協力を得て弱者を見守る、ながら見守り連携事業を創設するとのご答弁がありました。具体的にどのような事業なのか、お伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 地域の安全・安心の向上を図るためには、犯罪や事故等の被害に遭いやすい弱者の見守りなど、対策の強化が欠かせません。
 都では、地域を巡回する事業者と連携し、区市町村を通じて地域からの見守り要望箇所を把握し、事業者が地域社会の一員として、通常業務を行いながら要望箇所を巡回して見守りを行うほか、交通事故に関するヒヤリ・ハット情報の共有など、地域における弱者を見守る仕組みの構築を進めているところです。
 今後は、区市町村においてモデル的に実施した上で、全都的に展開してまいります。

○中屋委員 地域の力の強化には、既存の防犯団体等への支援やその活動の活性化、そして企業などの新たな担い手の確保など、地域の実情を踏まえた上で取り組みを進めていただくことが重要であります。
 最後に、戦略を策定し、そしてその実効性を確保するために、本条例を改正し、警視庁や区市町村、都民や企業等とともに、誰もが安全・安心を実感できる社会を実現していくとする本部長の決意をお伺いしたいと思います。

○河合青少年・治安対策本部長 今回の条例改正は、制定から十年以上経過し、顕著になってきた課題に対応するために行うものであります。
 条例制定以降、地域や警視庁とともに取り組みを進めることで、刑法犯認知件数は着実に減少しました。
 しかし、少子高齢化の進展などにより地域の力の低下が懸念されます中で、少しでも先回りをして安全・安心の向上に取り組む地域の足腰を強化しなければ、これまで減少してきた刑法犯認知件数も再び増加に転じかねないと考えられます。実際、私が勤務しました三重県におきましては、平成二十一年の刑法犯認知件数が増加するという状況があり、改善には大変な努力が必要でありました。
 また、通学路等における安全確保、危険ドラッグと特殊詐欺の根絶といった喫緊の課題については、今、このときに対処しなければ地域への蔓延を食いとめることができないおそれがあります。その意味で、この条例改正がゴールではないことは当然であり、いわば新たな取り組みの出発であります。
 東京が世界で最も治安のよい、そして、誰もが将来への希望を持ち、自由な活動を行い、質の高い生活を享受できる都市となるよう目指していきます。これまで以上に警視庁や区市町村との連携を深めることはもとより、町会、自治会やボランティア、企業など、地域を構成するあらゆる方々の力を束ねて、誰もが安全・安心を一体的に実感できる社会を実現すべく努めていく所存であります。
 今後とも、安全・安心のため、都議会の皆様のご指導、ご鞭撻をぜひともよろしくお願い申し上げます。

○中屋委員 ただいまは本部長の並々ならぬ決意をお聞かせいただきまして、非常に頼もしく思っております。
 安全・安心の実現は、一朝一夕になされるものではありませんが、それが全ての都民の願いであることも疑う余地はありません。今回の条例改正を契機として、関係者が一丸となった取り組みを力強く進めていってもらいたいというふうに思います。
 なお、今回の質問では触れませんでしたけれども、我が党から提案いたしました、そして実現した、特殊詐欺対策のための自動通話録音機の設置につきまして、今月から募集が開始されまして、既に多くの申し込みが集まっていると聞いております。この問題に対する都民の関心の高さがうかがえます。今回は一万台ということでありますが、地域の要望によく耳を傾け、希望する方に全て行き届くよう、場合によっては台数を追加することも視野に入れていただいて、柔軟に対応していただくよう要望いたします。
 最後に、我々都議会自民党としても、地域の安全・安心のために、都民の皆さんと手を携えて取り組んでいく決意であることをここに申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

○高倉委員 それでは、付託議案につきまして質問させていただきます。
 東京都安全・安心まちづくり条例が制定されまして、十年以上が経過いたしました。この間、東京の治安は、ピッキング用具等の使用による窃盗などの犯罪は減少したものの、特殊詐欺のように高齢者などの弱者が被害者となる一部の犯罪は増加傾向にあるわけであります。こうした治安情勢の変化を踏まえまして、本年一月に安全安心TOKYO戦略が策定され、今回、東京都安全・安心まちづくり条例の改正案が提案されたわけであります。
 本日は、条例を改正するに当たりまして、これまでの取り組みの成果と課題、そして、改正により、どう変わっていくのか、取り組みの方向性などにつきましてお伺いしていきたいと思います。
 まずは、これまでの取り組みによりまして、何がどう変わってきたのか、条例が果たしてきました役割についてお伺いしたいと思います。

○横山総合対策部長 東京都安全・安心まちづくり条例は、戦後最悪といわれた治安情勢を背景といたしまして、治安を回復して安全・安心なまちづくりを進めるため、平成十五年七月に制定されました。
 都では、警視庁による取り締まりに加えまして、この条例のもと、警視庁等と連携して、侵入窃盗など身近な犯罪を防止する啓発活動や、地域における防犯カメラの設置補助等の環境整備、都民の自主的な防犯活動への支援などを進めてまいりました。
 これらの取り組みによりまして、地域の安全・安心を支える防犯ボランティア団体が約二十六倍と飛躍的な増加となり、これを受けて刑法犯認知件数が平成十四年から半減するなど、本条例は安全・安心まちづくりの推進に一定の成果を上げたものと認識しております。

○高倉委員 今ご答弁をいただきましたけれども、確かに条例の制定以降、パトロールなどの都民の自主的な取り組みも活発に展開されまして、刑法犯認知件数は減少したわけでございます。
 しかしながら、一方で、客観的な安全は確保されたものの、世論調査等に見られるように、都民の治安対策に対する要望は依然として高いわけでありまして、客観的な安全に見合う主観的な安心が確保されているのかどうか、こうした課題も依然としてあるわけでございます。今回の改正は、こうした都民の意識にも目を向けまして、誰もが安全・安心を実感できる社会を形成するために改正するということであります。
 そこで、このような状況の中で、都民の治安に対する意識をどう捉え、今後、安全・安心を実感できる社会を実現するために、この改正によりましてどのように取り組んでいくのか、ご見解をお伺いしたいと思います。

○横山総合対策部長 東京の治安は、ご指摘のとおり、刑法犯認知件数が低下しているにもかかわらず、都民の不安感は解消しておりません。
 都民の安全・安心は、刑法犯認知件数等の数値だけではかることのできない多様な要因から成る概念であるという認識のもと、今後、都民の不安要因について調査を実施する予定であります。
 なお、不安の背景には、子供や高齢者などの弱者が被害者となる身近な犯罪が多発していることから、こうした犯罪への対応を迅速に行うとともに、都民の安全・安心を確保するための取り組みを進めてまいります。

○高倉委員 今、弱者に対する対応についてのお話がありましたけれども、都民の安心感を高めていくためには、まさに弱者への対応といったことが大変重要であるというふうに思います。
 中でも子供の安全対策については、昨年九月の、世田谷区において車両が下校中の小学生三人に突っ込んで死傷させた事故のほか、都内における不審者による子供への声かけ、また、つきまとい等の前兆事案が昨年一年間で七百件にも上っておりまして、保護者の安心感を高めるためにも、さらなる対策が必要となっております。そのため、今回の条例改正では、通学路等における児童等の安全の確保のための指針を策定して、子供の安全対策を強化していくということにしております。
 そこでお伺いしますけれども、この指針には、警察や学校、保護者などが取り組むべき方向性を示す必要があると思いますけれども、具体的にどのような内容でいつ施行されるのか、お伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 子供の安全対策については、全国における子供の略取、誘拐による被害の件数が高どまりの状況にあります。子供の交通事故についても、ことしに入ってから都内の幼児、児童生徒の交通事故死者数が増加しており、通学路等における安全対策が急務になっております。
 そのため、都では、通学路等における児童等の安全確保のための指針を策定し、警察、学校、通学路等の管理者、保護者、地域等と連携して、子供の安全対策の強化に取り組んでまいります。
 具体的な指針の内容については、通学路の設定、変更の際の警察への意見照会の仕組みのほか、子供一一〇番の家等への駆け込み体験訓練や地域の危険箇所改善指導者講習会など、通学路等における関係者が取り組むべき事項を盛り込み、条例と同時に施行を予定しております。

○高倉委員 子供の安全対策につきましては大変重要な課題でありますので、警視庁や教育委員会とも連携を強化して、しっかりと取り組みをしていただきたいと思います。
 子供の交通事故については、今ご答弁でも、ことしに入ってから都内の幼児、児童生徒の交通事故死者数が増加している、したがって、通学路等における安全対策が急務だというお話があったわけであります。
 私は、交通安全ということについて、かねてから申し上げておりますけれども、例えば、最近いろんなところで、いわゆるビッグデータというようなものを活用するという取り組みが進んでいるわけでありますけれども、こういったことを交通安全対策としても取り組むべきではないかというふうに思っております。
 具体的なお話をしますと、前にも予算特別委員会でもお話をさせていただいたところでありますけれども、このビッグデータ、例えば交通にかかわるビッグデータというのは、車に搭載されているナビがあります。ここの情報を一元化して収集するということが可能でありまして、そこには例えば、単に地図の情報とか、どこに住んでいるとかという、そういうことだけではなくて、車がどちらの方向に向かって、どういうスピードで進んでいるのか、こうした情報が逐一収集が可能なわけなんですね。
 つまりどういうことかといいますと、例えば、常に多くの車が急ブレーキをかけている場所といったものが、そこから特定されてくるんです。急ブレーキをかけるというのは、いわゆる加速の反対ではありますけれども、その車が向かっている方向とどれぐらいの勢いで減速しているのか、こういった情報も簡単に明らかになるというわけであります。つまり、あらゆる車というか、多くの車が急ブレーキをかけているということは、そこに何らかの危険が存在しているといったことが容易に推定されるということなわけです。
 一方、例えば、常に車が制限速度を超えるスピードを出して走りまくっているというか、こういうような場所も明らかになるわけでありまして、そういった情報が、いわゆるビッグデータですから、たくさんのデータが集まりますので、非常に正確な、何らかの大きな課題があるというようなことがはっきりしてくるんですね。
 したがって、それをもとにして、例えばそういった危険箇所が通学路上に存在しているのであれば、これは直ちに確認をして必要な対策をとらなければならないということだと思います。
 従来は、危険か危険じゃないかというのは、皆さんが実際に行って見て、何となくあそこが危なそうだなというようなことがわかったわけでありますけれども、もしこのビッグデータ、プローブ情報ともいいますけれども、これを活用しますと、行ったところと行っていないところがあるということではなくて、例えば都内でそういうデータを収集しますと、あらゆる場所のそういった情報が得られるわけであります。そこが通学路と重なっているようなところは、何らかの問題が潜在的に潜んでいるといったようなことも明らかになるわけでありまして、今のようなITが進んでいる時代にあって、こういった取り組みもぜひ進めていただきたいというふうに考えております。
 そこで、このことについてもお伺いさせていただきますけれども、こうしたプローブ情報などを交通安全対策にも役立てていくべきであるというふうに思うわけでありますが、このことについてのご見解をお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 プローブ情報に関しましては、さまざまな活用方策があり得ますが、そのうちの急ブレーキ情報につきましては、調査、解析を行い、交通管理者及び道路管理者が活用を図るために、検討を引き続き行っているところでございます。

○高倉委員 ぜひ粘り強くといいますか、活用策について検討を進めていっていただければというふうに思います。
 次に、特殊詐欺についてでありますけれども、これまでも警察の取り締まりに加えまして、被害者とならないための高齢者等への啓発を進めてきておりますが、都内においては、前年と比較して減少したものの、昨年も都内の被害総額は八十億円を超えておりまして、全国では五百六十億円と過去最悪となっております。
 最近は、東京から遠く離れた地域の高齢者をだまして、賃貸住宅の空き部屋に現金を送らせまして、住人に成り済まして受け取るといったような新たな手口も相次いでいるわけであります。
 今回、条例において新たに、都民等からの情報提供や建物を犯行の用に供さないといった規定が設けられております。そこで、都民等から情報を提供してもらうことは、特殊詐欺を行いにくくする環境をつくる上で有効というふうに考えておりますけれども、どういった取り組みを進めていくのかについてお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 特殊詐欺につきましては、次々と手口を変えて犯行に及んでおり、最近は、金融機関への振り込みや現金を直接受け取る手口に加えて、郵送や宅配便などを使った現金を送付させる手口が急激にふえております。
 そこで、都では、警視庁と連携し、都民や企業等に対して、特殊詐欺の犯行の手口や情報提供先などをわかりやすく周知し、特殊詐欺の根絶に向けて、官民連携での取り組みを強化してまいります。

○高倉委員 毎年多くの高齢者が特殊詐欺の被害に遭っているため、こうした被害がなくなりますように、警視庁や企業とともに迅速に対応して取り組んでいただきたいと思います。
 特殊詐欺対策としまして、先ほど中屋副委員長さんの方からもお話がありましたけれども、東京都では、高齢者世帯への自動通話録音機の無償貸し出しにつきまして、申し込みの受け付けを開始したところであります。犯人からの電話を警告メッセージと録音機能によって未然に防ぐことができるということで、非常に高い効果が上がるものというふうに私も期待しております。
 そこで、この自動通話録音機の無償貸与の事業につきまして、進捗状況についてお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 六月二十九日から予定している自動通話録音機の貸し出しにつきましては、知事定例記者会見での発表や「広報東京都」への掲載及びパンフレットの作成、配布などを行っております。
 六月一日から受け付けを開始したところであり、現在も受け付け中でございますが、貸し出し窓口である区市町村、警察署の多くからは、申し込みが順調に進んでいると聞いております。

○高倉委員 事業が順調に進んでいるといったことを確認させていただきました。私も、この事業は大変効果があるというふうに思っておりまして、ぜひ一人でも多くの必要とされている方に利用していただくように、地元において積極的に情報提供といいますか、お話をさせていただいているところであります。先ほど中屋副委員長からもお話がありましたけれども、私からも、都として、一万台という枠にとらわれずに、普及に対してさらに取り組んで、高齢者の安全・安心を確保していっていただきたいというふうに思います。
 次に、特殊詐欺と同様に、都民の不安をあおる危険ドラッグについてお伺いしたいと思います。
 危険ドラッグは、違法薬物の成分の分子構造の一部を人工的に改変して合成されるために、次々と新しい分子構造の薬物がつくられ、法令等による規制とのイタチごっこが続いております。危険ドラッグは合成物質であるため、多くの不純物を含んでいることから、強い毒性を持っている可能性もありまして、従来の違法薬物に比べ、どのような反応が出るか予測ができずに、恐ろしい事態を引き起こすこともあるわけであります。
 厚生労働省の外郭団体の調査によりますと、そうした危険性の高い薬物である危険ドラッグの乱用者は、全国で推定四十万人にも上るというふうにされております。都民の生命を害する危険ドラッグ等の危険薬物を根絶するためには、法令等で規制された薬物だけでなく、未規制のものについても、一歩進めて対策を講じていくことが必要であります。
 今回、条例で規定する薬物の定義につきまして、未規制のもののうち地域の安全・安心を脅かすものとして知事が定めるものと規定しておりますけれども、具体的にどのようなもので、都民に対してどう周知していくのか、ご見解をお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 危険ドラッグについては、ここ数年、その乱用が深刻な社会問題となっており、警視庁や関係局等において、販売店舗の摘発や取り締まりなどの対策を強化しております。
 しかし、危険ドラッグは、化合物を組み合わせて規制の目をすり抜けるなど、新たな危険ドラッグが次々につくられ販売されているため、本条例では新たに、未規制のものを含めて対応することといたしました。
 そのため、都民が客観的に認識できるよう、都では法律に基づき、名称、形状、包装等から見て違反品と同一と認められる物品で国が定めるものを、都において告示等により都民に周知してまいります。

○高倉委員 危険薬物の乱用を根絶するためには、都民に対しまして、何が都民の健康を害し、地域の安全・安心を脅かすものなのか、わかりやすく示した上で協力を求め、行政、警察、都民、企業が力を合わせて、根絶に向けて取り組みを進めていくことが大事であるというふうに思います。
 今回の条例では、都民等の防犯活動の支援などの規定のほか、危険ドラッグや特殊詐欺といった喫緊の課題が盛り込まれまして、都民の安全・安心を実現していく上で大きな一歩を踏み出す契機となるものと強く期待いたしております。ぜひとも、本部長以下、職員が一丸となって前へ進んでいただきたいというふうに思います。
 以上で終わります。

○徳留委員 まず最初に、これまでの安全・安心まちづくり条例と前回の改正案についての、この間の我が党の態度について述べておきます。
 二〇〇三年第二回定例会で石原知事が、治安の維持こそ最大の都民福祉といって、現職の警察官僚を副知事に登用するとともに、安全・安心まちづくり条例を提案しました。
 多発する凶悪犯罪の対策を強化することは当然でありますが、本来その仕事は、犯罪予防と取り締まりに責任、権限を持つ警察力によって解決が図られるべきものだと考えております。
 都民要望の多くも、交番のお巡りさんやパトロールなど現場体制の強化を求めていること、当時の条例案は、逆に住民を警察主導の防犯体制に組み込んだり、警察署長の助言の名で住宅建設などにも警察の介入の道を開く問題であったこと、憲法の保障するプライバシー侵害しかねない監視カメラを地域社会に張りめぐらせて監視社会づくりの危険もあるものとして、私ども日本共産党は反対しました。
 同時に、我が党は、都政が犯罪防止のために行うべきことは、警視庁の指揮監督権を握る国に対してその責任をきちんと果たさせること、何よりも安全・安心の土台となる都民生活の安定、福祉の向上に力を尽くすことを主張してまいりました。
 二〇〇九年第一回定例会の条例改正案についても、繁華街を訪れる来訪者に対して、大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、まちの秩序を乱す行為を自粛する責務を課すことなどを内容としたものでした。これまでの自主的規制から権力的規制へと踏み出す道を開く危険をはらんだものとして我が党は反対し、法曹界からも言論、表現の自由に抵触する危険があると指摘があり、都民の反対の声が広がりました。
 我が党は、質疑を通じて、一つは、都民の自主的活動を推進するもので、権利を制限したり規制を課すものでないこと、二つ目には、警察や事業者が行う啓発活動や必要な措置は、パフォーマンス等の街頭行為に対する個別的な指導や注意、要請は行わないこと、三つ目は、都が策定する指針に規制を課するものではないことを明記して広報で徹底することなどを求めてまいりました。
 こうしたこの条例にかかわる我が党の立場と対応を踏まえて、今回の条例改正案について質問いたします。
 まず最初に、都内の刑法犯認知件数がこの間、平成十四年、二〇〇二年から大幅に減少してきている現状について、さまざまな要因がある中で、主に何が要因で教訓だと分析しているのか。
 本来、犯罪の予防と取り締まり、交通安全対策などは警察の職務であり、その警察はこの間どうだったのかについてお伺いしたいと思います。

○横山総合対策部長 刑法犯認知件数減少の要因といたしましては、警視庁による取り締まりは確かにございました。
 それに加えまして、都における防犯の啓発活動や防犯カメラの設置促進、それから防犯ボランティア団体の活動などが挙げられます。とりわけ防犯ボランティア団体の数が大幅に増加するなど、社会全体による取り組みが展開されてきたことが大きな成果につながり、自助、共助の取り組みが特に重要であるということの教訓を得たと思っております。今回の条例改正を通じまして、より一層、警視庁や区市町村、都民等との連携を深めてまいります。
 一方、この間、警視庁におきましては、ひったくりや侵入窃盗、強盗などに重点を置いた取り組みが進められたと認識しております。

○徳留委員 刑法犯の認知件数の減少は、実は全国的には共通しておりまして、二〇〇二年以降、大幅に減少しております。二〇一四年、平成二十五年度の--警察白書などでは、刑法犯の認知件数の減少は全国的に共通しており、この間の警察官の増員、約十年間で二万七千人の増員などによって、取り締まりの強化が減少につながったとも報告されております。
 もちろん、自主的な防犯ボランティアの影響もあったと思います。私もPTAの役員をしているころ、夜間の防犯パトロールにも出ましたし、あるいは子供たちの登校班の交通安全対策のパトロールにも参加したことがありました。
 同時に、犯罪白書では、減少のかなりの部分が窃盗犯であることも報告されております。そして、警察白書や犯罪白書では、社会情勢、特に経済情勢など、複雑多様な要因が犯罪の大もとにあるということも指摘しております。今後とも、そういう点の分析調査を行って、犯罪の要因にふさわしい解決策に当たる必要があると考えております。
 次に、なぜ今回の条例改正案において、本会議の質疑でもあったストーカー犯罪、一昨年から昨年にかけて発生件数が一・五倍、それから検挙件数が三倍、こういうストーカー犯罪やサイバー犯罪などが増加して社会的な関心、注目が高まる中で、条例の改正案の第二十八条から三十条に掲げられた危険薬物の乱用の根絶と、それから第三十一条から三十三条に掲げられた特殊詐欺の根絶の二つのみを特別に取り上げることになったのか。
 危険で弱者が被害者となるさまざまな犯罪類型がある中で、二つだけを取り上げて自主的な防犯活動の対象にするのは、ほかの法令による規制と整合しないということにもなるのではないかと心配しておりますが、いかがでしょうか。

○横山総合対策部長 まず、危険薬物の乱用でございますが、これに起因いたします事故や事件がこのところ大変多発しております。また、特殊詐欺の被害も、高齢者を狙うなど、その被害内容も大変深刻化しております。いずれも都民に対して深刻な不安感を与えておりまして、知事の発言にもありますように、今や都が直面する大きな喫緊の課題となっている二つでございます。
 危険薬物と特殊詐欺に関しましては、マンション等の一室が製造や販売、また犯行等の拠点になるなど潜伏化し、非常に摘発しにくい状況にございます。そこで、今回、この条例におきます安全・安心まちづくりの観点から、他の法令、薬事法とか刑法とかありますが、そういうものとのすみ分け等の整合を図りながら本条例に規定することといたしました。

○徳留委員 それでは、新たな危険な犯罪や不安を広げる犯罪がもし増加すれば、それはまた条例に追加して対応することになるならば、ますますこの条例の目的、条例が持っている本来あるべき自主的な活動、自治会活動あるいはボランティア活動などの目的や性格が変わってしまうことになるのではないかということも指摘しておきたいと思います。
 次に、この条例の本来の目的は、第一条、第二条にあるように、個人の生命、身体または財産に危害を及ぼす犯罪の防止のために自主的活動を図ろうとするもので、特定の犯罪を対象とするものではありませんでした。だからこそ、一つの条例の中で、自主的な防犯活動をキーワードとして規定する意味があったのではないかと思います。
 それが行政の活動が警察化したり、本来は住民の自主活動であるべきものが、責務として住民への規制あるいは住民の動向の報告にまで及んでくる、あるいはそれが住民の権利侵害になるようなことに絶対なってはならないと思いますけれども、いかがでしょうか。

○横山総合対策部長 現行条例は、かつて侵入窃盗ですとか、ひったくりなど、さまざまな街頭犯罪が横行していた状況を踏まえまして、これらに対する犯罪を予防するため、そうした犯罪が起きにくい環境の整備とか取り組みを規定してまいりました。
 今回の改正では、新たにこれに危険薬物の乱用と特殊詐欺の根絶が喫緊の課題となったわけでございまして、これらを追加して犯罪を予防するため、従来と同様に、犯罪が起きにくい環境の整備や取り組みを規定するものでございまして、これまでの条例と特に矛盾するものではございません。

○徳留委員 それでは、今後、同じような事犯、刑法犯が起きれば、この条例の中にさらに追加するということになるのでしょうか。

○横山総合対策部長 この条例は、安全・安心のまちをつくるために、地域に脅威を与えるものに対して、それを根絶していくということを大きな目的としております。ですから、その時点において、そういうような必要があれば、その都度、必要に応じてそういう規定を設けていくということになります。

○徳留委員 そうなりますと、本当にほかの刑法犯などとの関係で大きな矛盾になりまして、この安全・安心まちづくり条例の中にさまざまな犯罪が盛り込まれていくということにもなりかねない問題をはらんでいるのではないかなと思います。
 そこで、防犯カメラの設置と活用は、犯罪防止の抑止効果といわれておりますけれども、その一方で、プライバシーの侵害になりかねない側面も持っていると思います。その点で、この防犯カメラの活用上あるいは運用上、どのような配慮がなされているのか、ご答弁をお願いいたします。

○村山治安対策担当部長 都の補助事業においては、捜査機関からの要請など特別な事情がある場合を除いて、映像記録の保管期間を一週間程度に限定させることや、閲覧ができる者の範囲を必要最小限の者にとどめることを補助金交付の要件としているなど、防犯カメラのメリットとプライバシーの保護を両立させております。

○徳留委員 防犯カメラについては、警視庁のホームページを見ますと、街頭防犯カメラシステムの運用については、掲載されている内容を見ますと、厳格な運用の具体化として、一つは、国民の権利を不当に侵害しないよう慎重を期す、二つ目は、設置区域を標示板により明示する、三つ目は、データの活用状況は毎月東京都公安委員会に報告するなど、三点を掲載しています。こうした厳格さが求められるのではないかと思います。
 防犯カメラを張りめぐらせることをめぐっては、肖像権をめぐる最高裁の判例では、令状もなしに撮られた人の意思に反して撮影ができる限界は、現に犯罪が行われ、もしくは行われた後に間がないと認められる場合となっており、憲法十三条の人権やプライバシーの侵害になりかねない問題だとして、厳格な対応を求めておきたいと思います。
 次に、特殊詐欺についてでありますが、この問題は刑法犯の一部ではないかと思います。だとしたら、特殊詐欺の根絶のためには刑法の強化で取り締まっていくのが筋ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○横山総合対策部長 特殊詐欺の被害を防止するためには、警視庁によります刑法犯としての取り締まりはもちろんやっております。それに加えまして、自助、共助による取り組みも極めて重要でございます。都といたしましても、区市町村や都民、事業者等と連携した対策を講ずる必要があると考えております。
 実際に、平成二十六年の都内における特殊詐欺の被害額は約八十億円だったのに対して、逆に、警視庁以外の金融機関の窓口において声かけ等による未然防止の額は約五十億円にも上っております。

○徳留委員 特殊詐欺の防止のために、先ほども同僚委員から発言がありましたけれども、都として、電話機などに装着して活用する振り込め詐欺防止機能がついている機器、自動通話録音機と呼んでいるんだそうですけれども、その機器の貸与、普及状況、ここまでは先ほど答弁がありましたけれども、実際にその効果はどうなっているのか、短期間だと思いますけれど、ぜひご報告いただきたいと思います。

○村山治安対策担当部長 自動通話録音機を設置した世帯においては、特殊詐欺の被害発生はゼロになるものと考えております。このため、六月二十九日から自動通話録音機の貸し出しを予定しております。
 この事業を始めるに当たりましては、既にお答えしておりますように、知事定例記者会見での発表などを行っております。
 六月一日から受け付けを開始したところで、現在も受け付け中でありますが、貸し出し窓口である区市町村、警察署からは順調に進んでいるというふうに聞いているところでございます。

○徳留委員 効果についてはご報告があるでしょうか。

○村山治安対策担当部長 効果についてのお尋ねでございますけれども、まだ配布は行っているところではございません。
 自動通話録音機の効果といたしましては、冒頭申し上げましたとおり、設置世帯におきましては、特殊詐欺の被害は発生がゼロになるものというふうに考えているところでございます。

○徳留委員 こういう機器を普及啓発することは、犯罪の抑止にとって非常に大事だと思います。実際にインターネットを引きますと、電気製品としてもかなり普及されているといいますか、キャンペーンがされているようなので、この普及は非常に大事だということを私も痛感いたします。
 そこで、次の質問ですが、危険薬物の乱用根絶についても、既に福祉保健局所管の東京都薬物の濫用防止に関する条例が制定されております。東京の安全安心に関する懇談会においても、警視庁の生活安全部長が薬物濫用防止条例の検討について発言して、そこの改定をするのが筋ではないかという発言をしておりますけれども、もし規制が不十分であるならば、都の薬物濫用防止条例を改正して対応するのが筋ではないかと思いますけれども、どうして今回の安全・安心まちづくり条例を改正案にしてこれを盛り込んだのか、その検討をお聞かせいただきたいと思います。

○横山総合対策部長 東京都薬物濫用防止に関する条例は、科学的な知見から薬物の成分を特定し、それに対して直接規制等を行うものでございます。今回の場合の本条例の改正のように、安全・安心まちづくりの観点から、建物提供の適正利用のように、間接的な建物の提供者などに関する取り組みを行うような場合については、この条例の適用は適しておりません。
 ですから、先ほど、いろんな事例ができた場合について今後もふやすのかという話もありましたが、あくまで現条例、安心・安心まちづくり条例の安全・安心まちづくりの観点、つまり、まちづくりの観点に適したものについては、おのおの得意な部分が対応するということでございます。

○徳留委員 改正案では、都民等に、特殊詐欺に係る情報や危険薬物の販売等に係る情報を知った場合は、警察官や都に通報する努力義務を課す条項が新設されております。努力義務とはいえ、幅広く都民等に責務として情報提供を呼びかけており、監視社会を推進することにもなりかねず、場合によっては、市民のプライバシーなど人権の侵害になりかねないのではないかという声も出ておりますが、こういう声に条例改正案としてはどういうふうに対応することになっているのでしょうか。

○横山総合対策部長 危険薬物及び特殊詐欺に関しましては、その形態が、マンション等の一室が製造ですとか販売、また犯行等の拠点になりまして、それがさらに潜伏化し、非常に摘発がしにくい状況にございます。そのためにも、その根絶のためには地域の都民の情報提供が非常に重要でございます。
 その運用に当たりましては、警視庁とよく連携いたしまして、個人情報に十分配慮するとともに、犯行の手口や見分けるポイントなどをわかりやすく周知してまいります。

○徳留委員 条例の改正案では、公務員ではない一般の人に事実上の犯罪の通報を義務づけるようなことになれば、一般人には犯罪報告、告発の義務はないとされる刑事訴訟法の二百三十九条二項に反するのではないかという声もあります。基本的人権の侵害を招くおそれがないのかどうか、見解を伺いたいと思います。

○横山総合対策部長 本条例におきます都民の情報提供の責務は、今おっしゃった、犯罪を申告し処罰を求める意思表示でございます告発とは異なります。

○徳留委員 通報は、それには当たらないという判断でしょうか。

○横山総合対策部長 繰り返して申しますと、刑事告発というのは、犯罪を申告し処罰を求める意思表示でございますので、本条例に定める都民等に課してございます情報提供、これは通告も入りますが、そういうものはこれに当たりません。

○徳留委員 文言として責務として明記されて、努めることとなっておりますので、かなり微妙な提起になるというふうに思います。そういう点も専門家からは心配されています。
 しかも、通報すべき情報も、どのような情報を求めるのかも不明になっています。非常に危険薬物の場合は難しい側面もあると思います。もちろん特殊詐欺の場合も、どういう情報が犯人の逮捕に役立っていくのかというのは、素人の判断は容易ではないと思います。
 そういう中で、隣人間の不確実な情報、動向を責務として通報するということになりますと、人権侵害や隣人間の疑心暗鬼を広げることになって、かえって地域のまとまりといいますか、交流を壊す、コミュニティを壊すことにもなりかねないのではないかという心配もあります。
 条例改正案の中で、こうした乱用を防止するような規定、担保があるのかどうか、お伺いしたいと思います。

○横山総合対策部長 通報すべき情報につきましては、広報や啓発活動を通じまして、地域の安全・安心を脅かす危険薬物や特殊詐欺を根絶するという趣旨を、とにかく都民にわかりやすく周知いたしまして理解していただくということでございます。
 一般の犯罪におきましても、住民からの情報提供はございます。その際も、よくその趣旨を理解していただきまして、正しく通報していただくという意味の情報をいただくという啓発に努めております。

○徳留委員 一般の人が自主的な判断で情報提供するというのと、今度の条例の中では、努めなければならない、それから責務とするという条文があることが微妙なところで、住民に対して一定のプレッシャーがかかって、一生懸命情報を通報するということが人権侵害に当たらないのかということを心配して聞いたわけであります。
 次に、賃貸借の契約規制についても、特殊詐欺と危険薬物の二つについて、根絶のためには、建物を貸し付けする者に書面で確認して、違反の際の解除条項を契約書に入れることになっておりますけれども、なぜ二つの犯罪類型だけが、しかも、なぜ本条例改正案で規制することになるのか、その点についてお伺いします。

○横山総合対策部長 危険薬物及び特殊詐欺に関しましては、マンション等の一室が製造や販売、また犯行等の拠点となり、それが潜伏化することによって、非常に摘発しにくい状況にあるということでございます。
 ですから、危険薬物の販売等及び特殊詐欺の犯行の用に供されないよう、あらかじめ書面の確認ですとか解除の特約を規定して、とにかく根絶を図りやすいような形にしたということでございます。
 この規定は、何かこう、重たいものを建物提供者に対して課したわけではなくて、危険薬物とか特殊詐欺を根絶したいという都民の方々の希望に沿うために、とにかく根絶できるような手法をいろいろここに用意したということでご理解願いたいと思います。

○徳留委員 それに関連して、建物貸し付けの契約解除の規定については、東京の安全安心に関する懇談会で、先ほども紹介しました警視庁の生活安全部長が、実際の業者の中には、契約違反がわかっていても契約解除をやらない所有者もいると指摘して発言しています。
 誰がどういう判断によって契約解除の実行が担保されることになるのでしょうか。

○横山総合対策部長 建物貸し付けの解除等は、建物が知事指定薬物等の販売等または特殊詐欺の用に供されている場合で、当該行為が信頼関係を損なうときに、貸し主、建物提供者ですね、貸し主の意思に基づいて契約の解除及び建物明け渡しの申し入れをする努力義務を課したものでございます。
 都内の九割以上の事業者が加入いたします不動産業界団体等と協定を結びまして、警視庁とも連携をとりながら、情報提供の対応等、サポートを行ってまいります。

○徳留委員 たな子さんがそのオーナーの建物を借りているということから、薄々そういうことはわかっていても契約解除にならない例があるのではないかというのを警視庁の生活安全部長はいっているわけですよね。だから、そこをどうやって本当に絶っていくかというのは検討が必要ではないかと思います。
 次に、インターネットを悪用して危険薬物の販売や授与などを行った場合、どのように対応していかれるのでしょうか。

○横山総合対策部長 危険薬物の販売や授与等につきましては、実質店舗の販売であるか、インターネット上の販売であるかを問わず、既に関係法令等によって規制されている事実がございます。

○徳留委員 次に、主観的安心、体感治安の問題が条例の中にも出てまいりますが、児童等の規範意識の問題として捉えておられると思いますけれども、これが今、都民の中の不安をめぐる現状の分析として正確な判断になるのかと、ちょっと心配いたします。
 都民の不安を助長している根拠はさまざまあると思いますけれども、この不安感というのは、規範意識の欠如ということが大きな要因だというふうに判断されているのでしょうか。

○横山総合対策部長 都民の治安に対する不安感といたしましては、高齢者や子供等の弱者が被害者となる犯罪の多発ですとか、危険ドラッグに起因した事件や事故など、社会的に反響の大きい事案の発生ももちろんございます。それ以外に、少年非行の低年齢化ですとか、青少年のルール、マナー違反など、規範意識の乱れ等が要因であるということも大きいと考えております。
 これら都民の不安感の要因につきましては、今回の条例改正のもとになりました今年一月に策定された安全安心TOKYO戦略において記載されているところでございます。

○徳留委員 認知件数が大幅に減ったということは客観的な事実としてあるにもかかわらず不安感が残るというのを、今のような分析をされているということですけれども、一つの根拠になっている都民生活の世論調査では、確かに、ベストファイブの都民の要望の中の一位とか二位によく出てきます。しかし、それ以外のベストファイブの四つまでは、消費生活とか、医療、衛生とか、高齢者とか、自然災害であります防災ということも出てきているわけで、不安という場合に、確かに犯罪、自分のところが直接犯罪を受けるかもしれないという不安はそのとおりだと思うのですけれども、生活をめぐるさまざまな不安が一方ではあるということもよく見ておかなければいけないのではないかなと。格差と貧困の問題を含めて生活上の不安感もあわせて、こういう不安の広がりになっているのではないか。
 ところが、外国の人から見ると、東日本大震災のときの日本国民の動きとか、それからブラジルのサッカーワールドカップでのスタジアムの清掃の問題とか、あるいは国内においても、観光客がいっぱい来ている背景には、円安の問題もありますけど、治安が非常にいいという受けとめもあるのではないかというふうに思うんです。
 そういう意味では、不安感の要因というのを正確に分析した上で、評価すべきところは評価して対応していかないと、十把一からげに不安感の要因は規範意識の欠如だというだけだと、本当に力を発揮するのかということを感じます。
 そこで、青少年の規範意識について、規範や、言葉としてルールやマナーやモラルと述べられておりますけれども、その醸成や涵養について、一体、誰がどこでどういう内容をどういう方法で徹底していくのか、その点についてお伺いします。

○稲葉青少年対策担当部長 都は、親と大人が自覚と責任を持ち、みずからが手本となりながら、社会の基本的なルールや心得を伝えていく取り組みでございます、こころの東京革命の普及啓発を通じて、子供の規範意識の醸成及び社会の一員としての意識の涵養を図っています。
 主な内容といたしましては、家庭や地域などでの取り組み指針を示しました行動プランを策定しますとともに、家庭でのしつけについての出前講演会やグループワーク、スポーツ指導者を対象にした研修会など、さまざまな事業を実施してまいります。

○徳留委員 青少年にとっては、規範意識だけではなくて、青少年の社会人としての健全な成長発達にとって、基本的人権の尊重や民主主義、平和などのテーマの普及啓発も重要であるにもかかわらず、治安に関する規範意識だけを統一させるということは、著しく偏った内容ではないかと思いますけれども、その点についてはどのように考えていらっしゃるでしょうか。

○横山総合対策部長 本条の趣旨は、安全で安心して暮らせる社会を形成する上で、社会の秩序の尊重やルール、マナー等を尊重する意識が基本になるとの認識のもと、児童等の規範意識の醸成に係る規定を設けたものでございます。
 ここで規範意識について、特に治安に係るものに限定しているわけではございません。例えば他人に対する思いやり等も、ルール、マナーの遵守等に非常に役立つものと考えております。

○徳留委員 あわせて、子供だけの問題ではなくて、大人の世界にも規範意識が問われるような現状があることも事実であります。そこで、本来、健全な成長を支援して保護すべき弱者であるはずの子供や青少年を犯罪予備軍のような対象として捉えて規範意識の徹底というだけでは、本当に青年、子供たちの健全な成長発達へいかないのではないかと思います。
 それで本当に青少年の健全な成長発達と不安の解消になるのかどうか、その辺はどう分析されているのでしょうか。

○横山総合対策部長 繰り返しますが、本条例は、安全で安心して暮らせる社会を形成する上で、社会の秩序の尊重やルール、マナー等を尊重する意識が基本になるとの認識のもと、児童の規範意識の醸成をその健全育成とあわせて規定したものでございまして、そもそも児童を取り締まりの対象としているわけではございません。

○徳留委員 犯罪をめぐる背景や社会情勢については、先ほど犯罪白書や警察白書の内容も少し紹介しましたけれども、単なる規範意識の欠如や取り締まりの強化だけでは解決できないさまざまな要因、複雑な要因があるのではないかと思いますし、そういう分析もされてきております。
 今後、そうした要因もよく調査研究、分析して、都庁横断的に総合的な対策も必要ではないかと考えますけれども、認識をお伺いしたいと思います。

○横山総合対策部長 犯罪をめぐる背景には、お話のようにさまざまな要因があると考えられますが、今後も、犯罪や事故の減少を目指しまして、警視庁やその他関係部局等とも連携しながら有効な対策を講じてまいります。

○徳留委員 舛添知事も、青少年・治安対策本部長の挨拶の中にも、オリンピックに向けて世界一の安心・安全の東京といわれる際に治安ももちろん入っていると思いますし、本来の生活の安心、先行きへの安心というのも非常に大事だと思います。
 今回の条例改正案の内容は、これまでの二回、二〇〇三年、二〇〇九年の定例議会で我が党が質疑を通じて問題点として指摘した内容を引き継ぐ面もあると思います。
 私は、五十歳代の現役労働者として働きながら、約一千世帯もある自治会の会長から、現在の活動の苦労や行政への要望などを聞きました。先ほども答弁の中にもありましたけれども、高齢者が増加して後継者の人材不足の中で、一番現場の自主的な活動をされている方々が求めているのは、やっぱり自主的な活動への支援だということをいわれておりました。
 一方で、行政からは、自助、共助の名のもとに次々とさまざまな役割が提起されて、とてもではないけれども、やり切れないと。例えば民生委員一人とってみても、自治会の責任で選んでくれといわれたりして大変苦労しているということをいわれました。そうした現状、期待される現場の自主的な活動を担っている方々の思いは、どこでも共通ではないかと思います。そういうところに自主的自治会活動、自主的防犯活動の域を越えての責務の提案は、本当に応えられるのかどうかということを大変心配いたします。
 そういう意味では、犯罪の解決、撲滅に向かって、本来の仕事である警察力の強化あるいは日常的なパトロール、それから交通安全対策の力を強めるということが大事ではないかというふうに思います。
 条例改正案では、新たに二つの個別犯罪への対策などを中心にして、本来住民の自主的であるべき活動に対して努力義務、責務を求めるものが提案されております。質疑でも指摘した諸問題のある条例改正案の内容となっており、我が党としては反対の立場を表明して、質問を終わらせていただきます。

○西沢委員 東京都安全・安心まちづくり条例の一部を改正する条例について、私からも質疑させていただきたいと思います。
 今は都民の責務について議論があったところでございますが、この条例案の第三条では都についての責務がございまして、都が実施する調査研究について、まず伺いたいというふうに思います。
 これも先ほど質疑がございましたが、調査をどのようにしていくのかということで、何に一体不安を抱いているのかというものを把握するために行っていくんだというようなことでございましたが、内閣府でも意識調査をしております。また、警視庁でも調査をしています。生活文化局でも調査をいろいろしているわけでございますけれども、今回あえて都が条例に規定してまで都民の安全・安心に関する意識調査を行うということの意義でございますが、この条例の規定に基づき行う調査は、これまでほかで行われた調査とはどのような点で異なるのか、お伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 今回の条例改正は、誰もが安全・安心を実感できる社会を実現するために行うものであり、そのためには、まずは都民の不安感の要因の把握が必要となります。これまでも内閣府や警視庁等において治安に関する意識調査を行っておりますが、規模、質問内容、手法等から、都民の不安要因を地域に密着して把握しようとするものではございません。
 そこで、都では、都内の犯罪状況等を踏まえて、地域を選定し、専門家と調整した上できめ細かな調査を実施し、今後の施策に反映してまいります。

○西沢委員 これまでの国や警視庁が行ってきた調査よりも専門的な調査であるというようなことがわかりました。調査をやるからには、具体的な施策に反映できるような有効な調査にしてもらいたいというように思います。当然お金がかかるものでございますから有効に、連携できるところは、ほかの調査とも連携して進めていくなど、工夫を凝らしていただきたいというように思います。
 次に、連携という言葉がキーワードになりますが、地域の連携のあり方についてお伺いいたします。
 この条例案では、随所に連携というような言葉が出てくるわけでございます。東京都、区市町村、警察や都民等の連携が一つのキーワードであります。地域における連携の重要性については、これまでもこの委員会でも私も主張してきたところでございますけれども、この連携というものが容易でないこともまた事実でございます。連携というのは、何をもって連携というか非常に難しいものでもありまして、電話一本にしても、区市町村との連携ともいえるかもしれませんし、どういった連携をしていくのかというのは非常に重要です。
 そこで、安全・安心の向上を図るため、地域の連携に向けて、都としてどのように進めようとしているのかお伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 都内の治安情勢は地域によってそれぞれ異なるため、その実情を踏まえた、きめ細かな取り組みに対応した連携が求められます。そのため、住民にとって最も身近な区市町村が中心となって、警察や地域の団体等と連携して、地域の特性を生かした安全・安心の取り組みを進めていくことが重要となります。
 都では、広域自治体として、区市町村担当課長会などを通じて、安全・安心に関する情報の提供や防犯活動等への支援など、地域の連携強化に向けた取り組みを促進してまいります。

○西沢委員 地域の連携の中心は身近な区市町村であるというのは、私も全くそのとおりであるというように思います。区市町村とは担当課長会などを通じて連携していくというような答弁でもございました。これはこれとして、ぜひ進めていただきたいというようにも思います。
 地域という言葉も大きなポイントであるというように私は思うわけでございますけれども、当然、区市町村の下にも--一概に地域といっても、いろいろあるわけでございます。地域の単位ですね。
 本条例では、連携を進める地域の基本的な単位はどのように考えているのか、お伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 連携を進める地域の基本的な単位については、地域の実情や取り組みの内容に応じて異なるものと認識しております。
 地域における見守り活動支援事業については町会、自治会を想定しておりますが、通学路等の安全確保に関する取り組みにおいては小学校区を想定しており、それぞれの取り組みに合った形で効果的な連携ができるよう支援してまいります。

○西沢委員 連携を進める単位というのは、事業ごとにも違うし、地域の実情によっても違うということでございましたが、例えば、通学路の安全確保については小学校区が単位になるというような、こうした答弁もございました。
 私は、連携を効果的に進めようとしていく中では、今お話もありました基本的な単位のイメージとしては、小学校区であったり、中学校区というような単位というものが基本になるのではないかと考えております。公立の学校出身の方であれば何となく、小学校や中学校というのは地元の、自分が歩いたり自転車で行ける単位の、まさに地域、地元と呼ぶような単位になるのではないかと思うわけであります。
 さらに、小学校や中学校区の単位で考えると、こうした中には、当然、今お話もありました町会がございますし、商店街などもございます。また、新聞配達の専売所であったり、宅急便の配送センターであったり、それから学校もあります。まちのお医者さんだとか、不動産屋さんなどの企業や店舗など、あらゆるこうした団体、企業が集まっているわけでございます。地域を構成するいろいろな主体がより効果的に連携できる、こうした仕組みというものが必要ではないかと思うわけであります。
 私も新聞配達員をやっておりましたけれども、町会の方々が日中に活動する中で見えてくるものと、例えば新聞配達員は、私は午前三時に集まって午前六時ぐらいまでに朝刊は配り終えるのですが、三時から六時の間に地域を回るということは、そういった人たちにしか知らないことがあるんですね。この時間にだけ帰ってくる人がいる、この時間に活動を始める、出かけていく人がいる、また、新聞受けに新聞がたまっていても、この方は月曜日になるとなくなるとかいうことが、新聞配達員であればすぐにわかったりすることがあるんです。
 町会の方々、地域の方々がそういった情報を共有する仕組みというものも当然必要で、学校の先生が児童などの通学路についての情報を持っている、お医者さんがこういった情報を持っている、そして、配達される方々が当然独自の……。こうした方々の情報が共有できることで、地域の見守りのネットワークというのがより強固になっていくのではないかと思います。
 基本的な単位というのは議論の余地があろうかとは思いますけれども、こうした地域を構成するあらゆる主体を巻き込んだ見守りのネットワークづくりというものが大切だと考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 地域における見守りにつきましては、これまで町会、自治会などを中心に、先ほども答弁した地域における見守り活動支援のほか、子供見守りボランティアリーダーの育成などを実施しております。
 今後は、従来の活動への支援に加えて、地域における担い手を補完、強化して、事業者など新たな主体を巻き込んで地域における見守りの目を強化し、ネットワークづくりを促進してまいります。

○西沢委員 私は、こうした主体になる方々の懇親会というような場をつくるだけでも違うと本当に思うんですね。地域のことを知っている宅配便のよく訪ねてくる方、名前も顔もわかっている方々、だけれども町会の人とは全く縁がない、こうした方々が、何かあったときに、懇親会などで顔見知りの関係になっておくと、ちょっとこういうことがあるんだけど、この家、留守なのかどうかわからないんだけどとか、ああ、あの人はこの時期は海外旅行に行っているよとかというのが、いろんな主体の方々がすぐに情報を共有できる。そういったことが目指すところなのではないのかなというように思います。
 今の答弁で、事業者など新たな主体を巻き込んでいくというようなご答弁がございましたから、こうした部分を積極的にぜひ進めていただきたいというように思うわけでございます。
 この事業者でございますけれども、事業者の協力を得るという視点は大変重要でございます。この条例改正案においても、事業者の責務として、地域社会の一員として安全・安心まちづくりを進める旨を規定しているわけでございますが、条例で事業者の義務を課す以上は、事業者が安全・安心まちづくりに参加するための情報提供なども行うべきだと思いますが、見解をお伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 事業者に対しましては、これまでも、地域における安全・安心まちづくりを推進するため、東京都安全・安心まちづくり協議会を設置し、安全・安心に関する情報の共有に努めてまいりました。
 今回、条例に事業者の責務を規定したことから、事業者への情報提供が一層重要となります。そこで、今後は、区市町村と連携して、事業者が安全・安心まちづくりに参加しやすい環境を整備してまいります。

○西沢委員 事業者も巻き込んだ安全・安心まちづくりでございますけど、例えば、私が住んでいるのは、商業地域にほど近い地域に住んでおりまして、先日、地域でも運動会なんかがありましたが、地域の町会員も多いんですけれども、事業者の方が多く参加されることなんかもございます。その中にはチェーン展開されているようなお店なんかも実際あるのですけれども、夜警なんかにも、そうした店舗の方が参加していただいたり、事業者の方が地域の活動に非常に参加していただいている地域でもございますが、安全・安心まちづくり協議会という中で、もう少し細かい単位で、こうした事業者の方々のご意見などをいただける機会をいただいたらいいのではないかというように思います。
 いきなり義務を課しますというような形だとびっくりしてしまいますが、こうした事業者の方々でも地域に貢献したいと思っている方々がいらっしゃいます。そうした方々が支援しやすいような情報提供、工夫をぜひしていただきたいというように思います。
 それと同時に、事業者を巻き込んでいくためには、その意欲というものを引き出していくということも重要でございます。今回の改正には都民等に対する表彰制度の規定が追加されましたが、これは、事業者もその対象に含めるということが一つのインセンティブになるのではないか、都民だけではなく、事業者についてもそうした対象にすることがいいのではないかと思いますが、見解をお伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 今回の表彰制度は、地域で地道に活動を行っている方々の励みとなるよう創設するものでございます。
 条例では、都民等を表彰することができると規定しており、事業者を排除しているものではございません。現在、地道に防犯活動を継続していただいている地域の人々の励みとなり、さらなる活動の活性化を促す制度となるよう、事業者も対象に検討してまいります。

○西沢委員 条例では都民等ということで、都民だけではなく、この等の中に事業者が入れられることがあるのではないか、排除しているわけではないということで検討していただいているということでございますので、私の住んでいるような地域事情などを鑑みると、ぜひこうした事業者の方も対象に入れて検討していただきたいということを私から要望させていただきたいと思います。
 そして、次は危険ドラッグや特殊詐欺のことですが、質疑がさまざまございました。
 一問だけ、私から質問させていただきたいと思いますが、危険ドラッグや指定薬物、特殊詐欺について、実際に借り主が指定薬物の販売や特殊詐欺の用に供したとしても、大家さんは怖くて、建物の貸し主の方から、大家さんの方から明け渡しや解除というものをいいづらいというようなことがあるのではないかと思います。これについての支援策などがあるのかお伺いいたします。

○村山治安対策担当部長 危険薬物や特殊詐欺に関する解除に関する規定につきましては、マンション等の一室が販売等や拠点などに利用されるケースが多くあることから、貸し主が当該建物の契約を解除できるよう新たに設けたものでございます。
 都では、先月、不動産業界二団体及び警視庁と協定を締結し、危険薬物の乱用及び特殊詐欺の根絶に向けて連携した取り組みを強化することといたしました。
 今後も、警視庁等とも密接に連携して、貸し主が円滑に解除、明け渡しの申し入れを行うことができるよう準備を進めてまいります。

○西沢委員 具体的にはこれからなんだと思いますけども、大家さんの立場でお話を聞きますと、わかっているんだけど、何となくわからない方が、当然家賃も普通に振り込まれるというような方もいらっしゃるのも確かであります。しかし、おかしいと思ったときに気軽に相談できるような窓口であったり--そうした対応をやって逆恨みを抱くことに恐怖を覚えて解除できないというような連鎖が続くといけないと思います。
 しっかりと対応していただきたいということを要望しまして、私の質問を終わらせていただきます。

○やながせ委員 私からも、安全・安心まちづくり条例の改正条例について幾つか質問していきたいと思います。
 通学路で事故があったということで、ことしに入ってからも、何件かこういったことはメディアで発信されています。そのたびに非常に痛ましい思いをするわけであります。
 また、大田区の方では大田区不審者情報というのを発信しておりまして、ちょっとこれを読みますと、例えば、きのう来たメールですけれども、六月十八日午後六時ごろ、女子小学生が〇〇五丁目付近を通行中、男に跡をつけられました、男の特徴云たらで、六月十六、十七日にも同様の事案が近隣で発生しており、不審者情報を発信しておりますということで、私は登録しているわけですけれども、これは区が発信しているんですけど、こういったメールはほぼ毎週、何がしか入ってくるんですね。
 こういうことを鑑みると、件数的には減っているということもそうなんでしょうけれども、潜在的なものはどうなのか。また、安心というものには、まだまだ大きな課題があるのではないかなというふうに感じるところでございます。
 今回、通学路の安全ということを目標として、さまざまなことをやっていこうということなんですけれども、今回の第二十七条、通学路等における児童等の安全確保について、通学路の設定、変更の際には警察署長の意見を聞くという規定が追加されたわけであります。
 そこで、現状、警察署長にどれくらいの意見照会を実施しているのかということについて、まずお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 通学路につきましては、学校等の管理者が設定するものでありますが、必ずしも設定が義務づけられているものではございません。
 現状においては、都内の区市町村のうち、通学路の設定または変更をする際、警察へ意見照会を行っているのは六割程度でございます。なお、警察と調整を行っていない区市町村において、通学路等の管理者、保護者または地域住民のいずれかと調整を行っている場合もあります。

○やながせ委員 今、答弁でもありましたように、まず、通学路というものが必ずしも設定が義務づけられていないということで、設定がなされていない学校も、レアケースではあるけれども、あるということで、これは教育庁の問題でありますけれども、これもちょっと問題があるのかなというふうに思います。
 今、現状、警察へ意見照会を行っているのは六割程度ということで、ちょっと少ないなというふうな印象を受けます。私の近隣の小学校では、幾つかヒアリングしてみましたけれども、警察とはちゃんと連携してやっているんだというお答えが非常に多かったので、六割程度なのかなというふうにちょっと疑問に思ったわけですけれども、今回、これがしっかりと規定されたということは前進だと思います。今回、これが規定されたことによって警察の責任が明確化したということが一つの大きなポイントなのだろうというふうに思います。これは前進だと思います。
 ただ、通学路の設定、変更に関しては、私は、またこれも規定されていないわけですけれども、地域の近隣の皆さん、また、地域の町会、自治会等のコミュニティの皆さんとしっかりと調整が必要だというふうに思うわけであります。先ほどの議論ともかぶるわけですけれども、地域の方、近隣の方がここは危険なんだということを一番よく熟知されているということですので、そういった皆さんと調整することが何よりも必要なのではないかというふうに私は思うわけですけれども、この点について見解を伺います。

○村山治安対策担当部長 通学路等における児童等の安全確保につきましては、警察、学校、通学路等の管理者、保護者、地域等が連携して取り組んでいくことと条例に規定しております。そのため、学校等の管理者が通学路の設定、変更をする際は、必要に応じてそれらの関係者と協議し、調整を行います。

○やながせ委員 必要に応じてということなんですけれども、つまり学校の管理者は、今回の条例で規定されたように、努力義務ではありますけれども、通学路の設定、変更の際には警察署長の意見を聞かなければいけないという義務づけはされたけれども、そのほかの人とは特に調整しなさいということが何ら規定に書かれているわけでもない。ただ、連携しなさいよというのがその前段でいわれているということだと思うんですね。
 ですから、私は、地域の近隣の方と、その通学路が設定される前の家や後ろの家とか、そういったところとしっかりと調整していくということが何よりも重要だろうと。ただ、それは大変な作業量が発生しますので、非常に面倒な作業になるかもしれませんけれども、そこを丁寧にやっていただけるように推し進めていただきたいなというふうに思います。
 先ほど、これまでは六割程度が警察署と連携して通学路の設定をしてきたんだというお話がありましたけれども、これからの新設に関しては、しっかり義務づけがされたということですが、それでは、これまでの既存の通学路に関してはどうやって安全を担保していくのかという、この点についてお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 既存の通学路の安全確保につきましては、国の通達等により、警察、学校、道路管理者が保護者等の協力を得て、定期的に合同で通学路の点検を実施するなど、通学路の安全確保に向けた継続的な取り組み等を推進しております。こうした取り組みを踏まえ、通学路等の関係者が連携して、既存の通学路も含めて通学路等における子供の安全対策を強化していきます。

○やながせ委員 ぜひお願いしたいというふうに思いますけれども、これは九条にも絡んでくるんですけれども、先ほどもずっと議論がありましたけれども、地域の方をどうやって巻き込んでいくのか、地域の方とどうやって連携してこの事業を進めていくのかということが何よりも大事なことなのだろうというふうに思います。
 地域では、交通事故が非常に多く発生する場所があるわけですけれども、警察はその情報を持っているけれども、地域の人たちはそれを知らないということもあります。これは実際あると思います。また、逆に、地域の皆さんはここは危険なんだけどなということをみんなわかっているけれども、その情報は警察は知らない、学校も知らない、そういうことも多いと思います。
 ですから私は、連携をする上で情報を共有するということが何よりも大事なことだろうというふうに思うわけですけれども、この九条について、こういった警察が持つ交通事故等の情報を地域へ提供するとともに、地域からも情報を吸い上げて対策を講じていくことが必要だというふうに思いますけれども、具体的にはどのような取り組みを行っていくのかお答えいただきたいと思います。

○村山治安対策担当部長 地域における交通事故等の情報を地域で共有し、対策を講じていくことは、地域の安全・安心の向上を図る上で重要でございます。現状におきましても、交通事故発生マップによりまして、警察から地域等に対して幅広く情報提供を行っているところでございます。
 また、都では引き続き、町会、自治会、防犯ボランティア等を対象とした地域の危険箇所改善指導者講習会を実施するほか、事業者の協力を得て高齢者や子供等を見守る、ながら見守り連携事業を創設しまして、区市町村と事業者とで交通事故に関するヒヤリ・ハット情報を共有することも含め、仕組みの構築を進めてまいります。

○やながせ委員 情報提供、情報の共有が連携の一番のきっかけになるというふうに思いますし、一番の方策だというふうに思いますので、これを進めていただきたいとお願い申し上げたいというふうに思います。
 それで、危険ドラッグについて申し上げたいというふうに思いますけれども、質問がかぶっておりますので、一部はしょりますけれども、二十九条、都民等の責務ということで、努力義務であるとして、都民等は危険薬物の販売等に係る情報を知った場合は都に情報を提供するように努めるということです。
 これは通告していないのですけど、先ほど共産党さんの話の中で、これは法律に反するのではないか、刑訴法に反するのではないかということに対して、答弁がちょっと曖昧だったようなんですけれども、その点について確認していいですか。

○横山総合対策部長 先ほどの情報提供の努力義務というのは、犯罪ですとか、いろんな規制ですとか、取り締まりのあくまで端緒となるような情報を提供していただきたいという、そういう主体的なお願いを都民に対してしているということでございまして、いわゆる刑事告発というのは、特定の犯罪内容を決めて、それを起訴することを前提とした形で具体的に行うということで、根本的にその中身が違うということで、それではないということでお話ししたつもりでございます。

○やながせ委員 今の部長の答弁は私は理解するんですけれども、多分理解できない方もいらっしゃるというふうに思います。だから、その点は、あくまでもそういうことをいわれるそしりを受けないように、しっかりと定義づけ等々をしていただきたいというふうに思います。
 私は、例えば虐待防止法の中で、児童虐待を見たら通報しなさいよと、これは努力義務が課されているので、特に何か問題があるというふうには思いませんし、また、こういった都民の情報提供は大事なことなんだというふうに思います。ぜひその辺を整理して告知に努めていただきたいというふうに思います。
 危険ドラッグ等に関して、警察にどれくらい通報があるのか、この現状について教えてください。

○村山治安対策担当部長 危険ドラッグ等に関する通報につきましては、平成二十六年の危険ドラッグ等に関連する一一〇番通報は、年間で合計六百七十九件でございまして、前年の三百五十八件と比べると二倍に増加している状況にございます。

○やながせ委員 増加傾向にあるということで二倍になっているということで、意識は高まっているんだなということはよくわかります。
 ただ、いかんせん六百七十九件ということで、この情報でどこまで危険ドラッグの撲滅に寄与できるのかというのはちょっと疑問なところで、この数をしっかりとふやしていかなければいけないだろうというふうに思います。その上で大事なことは、先ほど他の委員からも指摘がありましたけれども、どういう情報は通報してほしいのかということをはっきりしないと、ちゅうちょしてしまうと思うんです。
 例えば、私は先ほど議会のパソコンでグーグル検索して、ハーブ、販売というふうに打って出てくるページがあるんですけれども、具体名は控えますけれども、合法ドラッグ、合法ハーブ専門店と書いてあるんですね。当店は合法ですと書いてあるわけです。話題の合法ハーブや合法ドラッグをどこよりも早くご紹介するということが売り物なわけです。それは、危険ドラッグをこれは危険ドラッグですよといって売っている人はいないわけで、きな臭い感じがするわけじゃないですか、私が見て。じゃ、これを通報したらいいのかな、どうなのかなと非常に迷うわけであります。通報するというのは、非常に大きなハードルを乗り越えなければいけないというふうに思いますので。
 ですので、危険ドラッグですよということが明らかにわかるような場合は、多分、通報に至るということはあると思うんですけれども、ただ、それは非常に例が少ないのではないかなと。その中では、こういう怪しいもの、こういうパターンのときには通報してくださいということをしっかりと例示する必要があるだろうというふうに思います。先ほど、その例示に取り組むんだというお話もありましたので、それをしっかりとやっていただきたいというふうに思います。
 ただ、それと同時に、やっぱり一一〇番通報というのはしづらいんですよ。私は結構頻繁に一一〇番していますけれども、別にいたずらじゃないですよ、何かあったら一一〇番かけるようにしていますけれども、ただ、普通の一般市民の方が一一〇番するというのは、目の前で人が刺されたとか、大きな事故が起こっている、それは一一九番なんですけれども、そういうときにはそういったモチベーションになると思うんですけれども、一一〇番通報してくださいというのは、なかなか敷居が高いのかなというふうに思います。
 ですから、専用のフリーダイヤルを設けるとか、都民等が情報を提供するに当たって、情報提供しやすい専用窓口を設けるべきではないかというふうに思いますけれども、対応をお伺いしたいと思います。

○村山治安対策担当部長 危険薬物や特殊詐欺に関する情報につきましては、警察において、警察署、交番等が窓口として対応してまいります。なお、警視庁においては、警察署等が都民などの情報提供に対し窓口として適切に対応するよう、指導、周知するというふうに聞いているところでございます。

○やながせ委員 わかりました。こういった責務を課すわけですから、ぜひ都民が、どこの部分からはちゃんと通報してください、こちらの方に通報してくださいということがしっかりとわかるようなシステムづくりをしっかりとやっていただきたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わります。

○上田委員 東京都安全・安心まちづくり条例の一部を改正する条例につきまして、まず最初に、パブコメ関係の方について触れさせていただきたいと思います。
   〔資料配布〕
 また、机上配布させていただきました資料につきましても、後ほど言及したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本年五月に意見募集しました条例改正に伴うパブコメについて、資料の五ページ、提出をいただきました。
 都民の意見でありますパブコメの反映を、資料にのっとって具体的にご説明いただければと思います。
 また、パブコメの件数、募集期間についてのご所見もあわせて伺います。
 高齢者、女性、子供、事業者、学校、児童福祉施設等の関係当事者からはどのような意見が寄せられたのか、把握している範囲でお答えください。

○横山総合対策部長 先月実施いたしました意見募集につきましては、都民の皆様から危険薬物の乱用根絶の規定を支持するご意見をいただいたほか、具体の実施内容に当たっての提案等が多いため、条例案の文言の修正にまでは至っておりません。
 次に、意見募集の期間は十四日間でございますが、内容やスケジュール等を勘案して決定しておりまして、適正であると考えております。都知事の定例記者会見等を通じまして多くのマスメディアに取り上げられたほか、東京都安全・安心まちづくり協議会の関係者及び区市町村へも広く周知いたしました。
 件数につきましては、先ほどいいましたように、その結果でございまして、都として、これが多い少ないというような見解を述べる立場にはございません。
 また、意見募集に当たりましては、氏名、在住の区市町村名等を記載の上、ご意見をいただいておりますが、お話のような関係者かどうかについては把握しておりません。

○上田委員 ありがとうございました。
 先ほど来、同僚議員からも、るる体感、意識の科学的根拠についての疑義を問うようなご意見もありましたけれども、それだけ不安を都民が持っているということで、さぞかしパブコメにもご意見が寄せられるのかなといったところで注目しておりました。
 各種マスメディアにも取り上げられましたところ、五ページでは、七つ、十五件ということでありまして、この条例の趣旨としましては、これから都民に協力を願う、情報提供を願うという中では、なかなか情報を得ていくのが今後課題があるのかなというふうに拝察しました次第でございます。
 しかしながら、少ないながらも寄せられた意見につきましては、関係条文の方にきちっと把握され、都の考え方の方もしっかりと吸収しているというところは評価したいと思います。
 次に、まちづくりについてお尋ねします。
 改正案には、都民、都民等、何人とありますが、その使い分け、区分について、どのような解釈になるのかを踏まえてご説明ください。特に何人の場合は、自然人全てとなりますので、このようないい方が適当なのかお答えください。
 また、これらの条項によって民事責任が問われることが起こり得るのか、その可能性もお答えください。

○横山総合対策部長 まず、都民は、都の区域内に住所を有する者及び都内で勤務する者でございます。
 また、都民等は、第二条記載のとおり、都民、地域の団体、ボランティア、事業者を意味いたします。
 次に、何人はとは、自然人全てを指します。
 また、都民と都民等につきましては、対象に個人以外の事業者等を含めるか否かにつきまして、条例の趣旨を勘案して使い分けることになります。
 次に、第三十条第一項及び第三十三条第一項の建物貸し付けにおける措置等におきましても何人もと規定いたしましたのは、都内に在住または在勤の方以外の方につきましても、都の区域内に所在する建物を危険薬物の販売等または特殊詐欺の用に供することを禁ずる原則規定を述べたものでございます。
 民事責任につきましては、第三十条第一項及び第三十三条一項によって問われることはございません。

○上田委員 例えば三十条以下では、何人ではなく、建物の所有者、管理者等とする方が対象が明確になるように思われましたが、同条は罰則が伴うものではないのですけれども、仮に今後、罰則や公表などの対応が検討されるときには、この点を留意していただきますよう強く求めておきます。
 さて、条例改正に先立って本年一月に策定された安全安心TOKYO戦略において、地域における犯罪抑止効果の低下が指摘され、それを受けて、安心・安全まちづくりの推進並びに人材育成を改正事項として、重点政策であろうことを理解しております。
 安心・安全のまちづくりは全ての犯罪を抑制する原点であることから注視をし、事務事業や予算調査で指摘してまいりました防犯カメラ設置事業並びに見守り活動事業でございます。
 町会、自治会に補助する地域における防犯設備についてのみが本部の直轄事業であり、商店街における防犯設備整備は産業労働局、通学路における防犯設備整備は教育委員会へ執行委任しているという形になっている点につき、るるご指摘をさせていただいたところでございます。
 執行委任については、予算上の事務手続の便宜から同種の事業を実施しているということを理由に委任しているという説明を既に頂戴しているところですが、同じような事業が三種類に分かれ、担当部署が違うということに、統一感を持った見守り活動ができるのか懸念してきました。
 防犯設備の整備に関する補助事業のうち、商店街を対象とする防犯設備の整備に対する区市町村補助及び通学路を対象とする通学路防犯設備整備事業については町会等を対象とする地域における見守り活動支援事業により、平成二十二年度以降、二千百二十二台の防犯カメラに対し補助を行うなど、同種の事業は先行して実施し、防犯設備の整備に関する知見を蓄積してきました当本部において予算措置を行ってきたということでした。
 子供見守りボランティアリーダー育成事業は、都と区市町村の業務などとの重複はないか確認いたしましたところ、平成二十五年度に開設した都独自の講座は、学校、警察などと連携した活動が展開できる高度な能力を有する、子供の見守りに特化したボランティアリーダーの育成を目指すとのことでした。
 さて、条例改正に当たり、改めまして、本部、それぞれの設置当事者となる商店街や公立小学校に関する事務に精通した産業労働局及び教育庁、警視庁、区市町村との役割分担、連携、見守り活動から得られた情報や教訓、知見、防犯カメラの映像などを犯罪捜査に提供できるかなど、犯罪抑止力に向けどのように取り組んでいくのか、具体的にお答えください。
 また、二十七条二項にて、通学路等における児童等の安全確保のための指針を定めるものとするとしていますが、具体的な指針の策定スケジュールと、どのような場で共同して策定するのかお答えください。

○村山治安対策担当部長 防犯設備の整備に関する補助事業のうち、商店街を対象とする事業及び通学路を対象とする事業につきましては、事業実施に当たって、商店街や公立小学校に関する事務に精通した産業労働局及び教育庁にその執行を委任し、緊密に連携しながら取り組んでおります。
 カメラの映像につきましては、要綱等に準拠し、設置者が定める基準にのっとり、犯罪捜査等の際には警察へ提供していると聞いております。
 通学路等における児童等の安全確保のための指針につきましては、警視庁や教育庁とともに、条例と同時に施行を目指し策定してまいります。

○上田委員 連携体制の模様、場合によっては、カメラ映像については警察へ提供しているということを確認させていただきました。
 これらの事業展開に当たり、その成果と再評価はどの部署が行っていくのか、区市町村、地域、条例で定めるところの都民、地域の団体、ボランティア及び事業者、専門知識を有する人材と情報共有していくのか、お答えください。

○村山治安対策担当部長 防犯カメラ等への補助につきましては、区市町村を通じて提出される実績報告等のほか、一部の設置団体に対し取材を行うなどにより、その成果につきまして確認を行っております。
 取材を行った防犯カメラの設置事例や地域団体の見守りなどの取り組み状況等につきましては、ホームページを通じて情報提供を行っているところでございます。

○上田委員 報告、取材とドキュメンテーションを使っての連携状況はわかりましたが、第三条二項の改正に当たって、国及び区市町村との連絡調整を緊密に行うとあったものが、国及び道府県と連携し、及び協力するよう努めるものとするとなっており、区市町村との連携が弱くなったかのような印象がありますが、なぜ区市町村が抜け、努力義務となったのか、その意図をお答えください。

○横山総合対策部長 区市町村との連絡調整に関する規定でございますが、第三条第一項におきまして、既に区市町村との連携を規定しているところでございます。したがって、二項の方は、区市町村を抜きまして、国及び道府県との広域的な連携を規定して条文を整理したということでございます。
 また、第三条第二項につきましては、国及び道府県との連携は施策ごとに必要に応じて行うものとしてあることから、努力義務といたしました。

○上田委員 施策ごとということで理解いたしました。
 次に、第十条ですが、高齢者、女性、児童など、その他特に防犯上の配慮を要する者とありますが、その他特に防犯上の配慮を要する者とは具体的にどのような者をイメージしているのでしょうか。
 障害者は明記されていないのですが、虐待や性的搾取の対象となっている状況に対して、こういったことが犯罪、例えば風俗等々でも障害者が被害をこうむるというようなことも仄聞していることから、具体的にお示しいただければと思います。

○横山総合対策部長 ここで、その他特に防犯上の配慮を要する者でございますが、障害者も含めて犯罪や事故等の被害に遭いやすい者を意味しております。
 また、障害者が虐待や性的搾取の対象となっている状況につきましては、障害者虐待防止法というのがございまして、国や地方公共団体等の関係機関の連携による虐待の早期発見の努力義務や養護者による障害者虐待に係る通報等の規定を定め、対処しております。

○上田委員 障害者に対する犯罪被害対策は、主にほかの機関、法律、条例に伴い、他局とも取り組む様子が読み取れましたところでございますが、今回の改正案で第十条が規定されることとなり、障害者の性的搾取等の虐待防止に取り組むその他機関、他局との取り組みにつきましてはどのような影響があると想定されているのか、お答えください。

○横山総合対策部長 条例案第十条の規定は、安全・安心まちづくりの趣旨から、犯罪や事故等に遭いやすい障害者も含めて、弱者への対応を規定したものであります。
 障害者の虐待防止につきましては、既に関係の他機関で取り組んでおりまして、事件、事故などに該当した場合は警察で対応しております。

○上田委員 DV、ストーカー、女性や子供を狙った卑劣な犯罪については、地域の早期の通報や相談により、事なきを得ていることが多いと仄聞しております。新設十条にも、女性、児童等その他特に防犯上の配慮を要する者の安全・安心の確保とあります。
 平成十六年より、警視庁と教育委員会の相互連絡制度、スクールサポーター制度が締結されております。警視庁とも連携を図る本部としては、教育庁、地域の学校との連絡強化、犯罪の芽を早い段階で摘んでいくご努力をお願いしたいと思います。
 本部で行う見守り活動、教育委員会、警視庁、産業労働局へ執行委任している見守り啓発事業と、どうしても責任の所在や情報共有が曖昧になり、そのはざまに地域住民がこぼれ落ちることはないかということを懸念しているところでございますので、私としては、今後は条例にも登場いたします区市町村に安心・安全まちづくり事業を委ね、区市町村の事業をサポートする側を東京都は担っていくことを要望するものでございます。
 重ねて、他局や国、区市町村等の関係機関との業務の重複を回避し、効率性を重視するとともに、常に連携のあり方を見直し、常に連携体制で都民がこぼれ落ちることない組織間の構築を望むものでございます。
 次に、規範意識についてでございます。
 第七条を新設するに当たり、これまでの取り組みの経緯と今後の予定につきまして、資料一〇ページに提出をいただきましてありがとうございました。これまでの取り組みがどう規範意識醸成に寄与してきたか、明らかにしたいと思います。
 ついては、既存事業について、提出いただいております資料にある事業全体の募集と応募数の相関関係が気になるところでございます。参加状況と課題について伺います。

○稲葉青少年対策担当部長 規範意識の醸成に向けました取り組みとして実施しております、こころの東京革命の普及啓発事業の多くは、会場等の制約がある場合を除きまして、定員を設けずに実施しているものもございます。昨年度は、延べ四万五千人以上の保護者やお子さんに参加いただきました。
 都では、事業実施時にアンケート調査を行っておりますが、おおむね好評をいただいているところでございます。
 昨年度、オリンピック・パラリンピック開催に向けて改定いたしましたこころの東京革命行動プランを踏まえまして、親や大人一人一人に活動の理念が確実に伝わるよう普及啓発を進めていくことが重要と考えております。

○上田委員 既存事業の成果と課題につき、ご答弁いただきました。
 それらを受けての新規事業を開始されるに当たり、検証結果をどう生かされたのか、その契機と狙いを具体的にご答弁ください。また、既存事業や他局及び区市町村関連事業との重複がないか、どのように検討されたのかお答えください。

○稲葉青少年対策担当部長 新規事業につきましては、行動プランの改定を踏まえ、親や大人一人一人にこころの東京革命の理念を確実に伝えていくことを目的に実施することにいたしました。
 親や大人の意識改革を進めていくためには、各主体が重層的に繰り返し訴求していくことも必要でございます。都では、このような観点から、都、区市町村、関係諸団体で構成するこころの東京革命推進会議におきまして情報の共有と事業調整を図りながら普及啓発を進めております。

○上田委員 ありがとうございました。
 さて、新規事業でございますスポーツ指導者向け講習会ですが、去る五月二十一日、教育庁から発表されました平成二十六年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握についてでは、教育による不適切な部活、スポーツ指導による体罰が列挙されております。
 七条には学校等も含まれておりますことからも、まず指導者自身の規範意識の醸成が重要と考えておりますが、教員、指導者向けの事業展開はどのように考えていらっしゃるか、お答えください。

○稲葉青少年対策担当部長 スポーツ指導者向け講習会は、技術指導だけではなく、スポーツを通じ、社会のルール、マナーを身につけていくことの重要性や、みずからが手本となっていくことも指導者の大切な役割であることを再確認してもらい、それぞれの活動の中で実践してもらうことを目的としております。
 東京都体育協会や東京都スポーツ文化事業団等の協力を得ながら、各地域で子供のスポーツ活動に携わる関係者に一人でも多く参加してもらえるよう取り組んでまいります。

○上田委員 ぜひ指導者の規範意識の醸成を最優先にお願いしたいと思います。
 一口に規範意識といいましても、親によってはかなり温度差があるものだと感じております。これまでの石原都政から続くこれらの事業の経緯から拝察いたしますと、いわゆる今風のお母さんへ、特に規範意識を持たせたいのであろうなと受けとめざるを得ません。事業の成果を求めるのであれば、このターゲットにピンポイントで、例えば先ほど報告いたしました各種イベントに是が非でも参加していただきたいところではございませんでしょうか。
 つきましては、既存事業、新規事業どちらも、本部が規範意識の醸成が必要だとする対象はどのような保護者や子供と想定されているのか、その想定する対象へ事業をどう知らしめて参加者募集などを図っているのか、具体的にお答えください。
 また、意識の涵養に努めるとありますが、思想、信条、良心の自由に対してはどのような配慮を払っていらっしゃるのかもお考えをお答えいただければと思います。

○稲葉青少年対策担当部長 こころの東京革命の普及啓発は、子供にかかわる全ての親や大人を対象としておりまして、今年度から、都内全ての公立小学校新一年生の保護者に対して行動プランを配布し、啓発を進めることとしております。事業につきましては、学校を通じ保護者に案内するほか、都やこころの東京革命協会のホームページ、ツイッターなどにより周知を行っております。
 また、条例第七条は、社会生活を営む上で守るべき基本的なルール、マナーの習得や、社会の一員としての役割と責任についての意識の涵養について規定したものでございまして、思想及び良心の自由に影響を与えるものではございません。

○上田委員 新一年生の保護者全員、また、今風のツイッターでの普及についての取り組みの方は大いに理解しましたところでございます。
 先ほどいいましたように、指導者、教員への規範意識の醸成、涵養を大いに期待するところでございますが、一方、東京都という行政機関に、殊に我々母親が手とり足とり規範意識を押しつけられることには少々違和感を持たざるを得ないところでございますが、全体の底上げをしたいという東京都の方向性も理解できなくもございません。
 既に規範意識合格ママには、実はもう必要ないのではないかとも感じております。税金の適正配分のため、限られた資源は大切にし、ターゲットを定めて事業の展開をされることを重ねて希望するところでございます。あわせまして、既存事業温存あるいはこころの東京革命、規範意識の継承のため、条文追加が手段の目的にならないことを強く求めて、次に学校安全について質問させていただきます。
 第二十四条、学校等における児童等の安全の確保ですが、私も一般質問にて、学校安全のあり方について当時の比留間教育長に確認、学校保健安全法第二十六条にのっとるとのご答弁を頂戴しております。
 つきましては、学校等の範囲が第七条で明確になったところで、学校保健安全法二十六条とこの条例改正二十四条との関係につき、お答えください。

○横山総合対策部長 学校保健安全法に規定いたします学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校を指します。本条の学校等とは、そこで大学を除くそれらの学校のほか児童福祉施設等も含みまして、この二十五条に規定いたします指針に基づき、児童等の安全確保に取り組むことになっております。

○上田委員 児童福祉施設まで範囲を広げているということは安心材料でございます。くれぐれも法律と条例のはざまで子供たちが置き去りにされ悲劇が繰り返されないよう、本部こそが各局の中核、かなめとなり、法律と条例相互が連関し、二重のセーフティーネットとなるよう本領を発揮されることを大いに期待いたします。
 薬物中毒についてです。第二十八条以下の薬物乱用の根絶に向けた取り組みについてお伺いします。
 本改定案では、危険薬物、いわゆる危険ドラッグ対策についてのみ条文が新設されようとしております。ただ、本日配布いたしました東京都監察医務院の調査研究によれば、二〇一三年に集計した薬毒物による中毒死は、危険ドラッグは九件に対し、医薬品等の検出件数は七百八十三件となっております。
 まず、このデータについて本部で把握されていたか、福祉保健局との情報共有がなされていたのか、所見を含めてお尋ねいたします。

○横山総合対策部長 今お話がありました当該調査につきましては、当本部も把握しておりまして、福祉保健局とも情報を共有しております。ただ、医薬品等の中毒死に関しましては、その多くが自殺、過剰摂取等でございまして、こうした対応につきましては、自殺防止の取り組みや、国により乱用防止の規制を行っております。
 本条例は、これに対して、地域の安全・安心を脅かす危険薬物の乱用の根絶に向けたものでございますから、医薬品等の中毒死については本条例で扱うものではございません。

○上田委員 ただ、この調査結果を見ますと、危険ドラッグの約八十七倍になっている医薬品等による中毒死についても、やはり看過できない状況だと思います。多量多剤の悪影響も昨今話題になっていることから、また、上場企業の女性幹部が薬物のことで逮捕もされているあたり、医薬品におきましてもドラッグ風に使われている昨今もあるところながら、本改正案の検討に当たりまして、こうした薬物中毒、さまざまな薬害について、議論の念頭にあったのか、その理由と経過についてもお答えいただきたいと思います。

○横山総合対策部長 繰り返しになって申しわけございませんが、先ほど申しましたとおり、医薬品等の中毒死に関しましては、その多くが自殺、過剰摂取等でございまして、こうした対応につきましては、自殺防止の取り組みや、国による乱用防止の規制を行っております。
 本条例は、地域の安全・安心を脅かす危険薬物の乱用の根絶に向けたものでございますから、医薬品等の中毒死につきましては本条例で扱うところではございません。したがって、議論の俎上にはのっていないというふうに考えております。

○上田委員 薬物中毒と自殺等の問題は切り分けてお考えということがわかりましたが、向精神薬を過剰摂取したことにより、かえって自殺衝動が起きたという症例も散見されております。一九九八年以降、向精神薬の市場規模がほぼ十倍と飛躍して増加しているにもかかわらず、患者数も増加、自殺者も高どまりしたままで、自殺者の中には精神科の受診者も相当数含んでおるところでございます。
 配布した資料の下の部分、一二三ページの考察というところでも、薬物乱用、依存による異状死は、精神神経用剤、抗てんかん剤の件数が増加ともあります。この点につきましては、今回の条例改正ではカバーしていないということですが、重大な問題でございますので、今後の課題とさせていただきたいと思います。
 さて、これまでの条例改正案の策定までの経緯についてお尋ねします。
 ご答弁いただいたような大宗であることは確認させていただいたところでございますが、子供をめぐる地域、治安、薬物中毒、極めて重要な問題でありますことから、議論の重要性は大事でございます。
 しかるに、策定過程がどのようになっていたのか確認いたしたく、資料請求、一一ページでございますけれども、させていただきました。つきましては、どこでいつどのような契機となり、庁内で条例改正が課題認識されたのか。また、資料にありますように、平成二十六年十月に、東京の安全安心に関する懇談会にて条例改正すべきとの意見も出たようですが、この会の議論も含め、具体的にお答えください。あわせて、今後、このような懇談会は持たれるのか、持つ場合はどのようなときを想定されているのか、考え方をお答えください。

○横山総合対策部長 庁内におきましては、練馬区での小学生切りつけ事件など、都民の不安をあおる事件の発生などを背景といたしまして、平成二十五年六月ごろから安全・安心の施策に関する検討を事務的に開始しております。
 翌年十月に有識者によります東京の安全安心に関する懇談会を設置いたしまして、安全安心TOKYO戦略を策定いたしました。また、懇談会におきましては、有識者から条例改正の必要性についてご意見をいただき、懇談会でのそうした議論なども踏まえまして、戦略の実効性を確保するために改正案を提出することといたしました。
 なお、今後も、このような懇談会におきましては、必要に応じて設置する場合もあると考えております。

○上田委員 必要に応じて第三者機関を置かれる方向性は評価したいと思います。
 最後に、今後の展開について伺います。
 既存、新規事業とも、これまで確認させていただきましたところでございますが、条例改正に伴いまして、本部におきます関連事業への影響はどのようになるのか、それに伴う予算措置についての対応状況と来年度以降も含めた今後についてお答えいただければと思います。

○横山総合対策部長 条例改正はまさに本定例会で行っていることでございますから、予算措置といたしましては、来年度以降、実施していく予定でございます。

○上田委員 それでは、今後も注視させていただきたいと思います。
 類似事業がふえることなく、また予算も膨らまないご努力を続けていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○栗林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で青少年・治安対策本部関係を終わります。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十六分休憩

   午後三時三十分開議

○栗林委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより総務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百三十二号議案を議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○榎本総務部長 六月三日の当委員会におきまして要求のございました資料のうち、付託議案に関する資料二点についてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元にお配りしてございます総務委員会要求資料の一ページをごらんください。1、再任用職員と一般職員の勤務条件でございます。
 勤務時間、給与、休暇及び社会保険について、再任用職員と定年前の一般職員の比較を掲げてございます。再任用職員については、フルタイム勤務と短時間勤務で分けて記載しております。
 二ページをごらんください。2、再任用職員数でございます。
 平成二十七年四月一日現在の再任用職員数について、フルタイム勤務と短時間勤務に分けて掲げてございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○上田委員 資料一ページ、二ページのご提出ありがとうございました。
 再任用職員の待遇は、福利厚生を含めて、定年前職員と比較して何かしら違いがあるのか確認させてください。
 また、資料だけ見ましても、手当の違いがにわかには理解しがたく、再任用職員と一般職員の手当の違いについてもご説明ください。

○栗岡労務担当部長 再任用制度は、雇用と年金の接続を図る観点から、定年退職者を継続任用することによりまして、在職中に培った知識や経験を活用することを趣旨としてございます。
 再任用職員の処遇につきましても、国や民間における高齢期雇用者との均衡を図るため、定年前職員と同様に、人事委員会勧告を踏まえて給与の種類、水準等を決定してございます。
 その結果、年収水準につきましては、定年時と比較しておおむね六割程度となってございまして、昇給はございません。
 また、生活関連手当であるという扶養手当や住居手当等は支給されず、退職手当も支給されないこととなってございます。

○上田委員 明確になりました。
 また、再任用されている職員の職位、分掌が気になるところでございます。局長級、部長級、課長級の再任用職員はいらっしゃるのか。いるとしたらば、それぞれ何名ということをお答えいただければと思います。

○栗岡労務担当部長 都では、定年退職者が在職中に培った知識や経験を有効に活用するため、管理職につきましても、選考を経た上で、適任者を再任用職員として引き続き配置してございます。
 その人数は、平成二十七年四月一日現在、部長級職員で二十五名、課長級職員で九十四名となってございます。なお、局長級職員は在籍してございません。

○上田委員 ありがとうございました。局長級はいらっしゃらないということで、これまでもご答弁もいただきましたけれども、知識や経験を有効に活用するため、局長クラスは外郭団体というような形なのかなということを理解させていただきました。
 引き続き、再任用のあり方につきましては研究させていただきたいと思います。ありがとうございました。

○栗林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○栗林委員長 次に、報告事項、東京都国民保護計画の変更について外一件に対する質疑を一括して行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○榎本総務部長 六月三日の当委員会におきまして要求のございました資料のうち、報告事項に関する資料三点についてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元にお配りしてございます総務委員会要求資料の三ページをごらんください。3、人権に関する相談件数と分野別内容の推移(過去五年分)でございます。
 東京都人権プラザで受けた相談について、分野別に平成二十二年度から二十六年度までの実績を掲げてございます。
 四ページをごらんください。4、人権部が実施する主な事業でございます。
 現在、人権部が実施しております事業について、分類別に主なものを掲げてございます。
 五ページから六ページにかけましては、5、同和問題解決に係る人権施策の予算、決算額の推移(過去十年分)でございます。
 同和問題解決に係る人権施策について、平成十六年度から二十五年度までの十カ年の予算額及び決算額を掲げてございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○栗山委員 このたび、総務局から人権施策推進指針素案の報告がなされたところでございます。それに先立ち、我が党は、さきの第一回定例会、舟坂議員の一般質問において、オリンピック開催都市にふさわしい、世界で一番の都市東京を実現するためには、さまざまな背景や属性のある都民や来訪者など、全ての人々がお互いを認め合い、幸せを追求できる都市であることが必要であり、そのためには人権尊重の理念が幅広く社会全体に浸透していくことが求められる、こう指摘をさせていただきました。
 また、一昨日のきたしろ議員の一般質問では、人権施策について、人権を尊重し、差別を許さないことは当然のことであるが、人権を強調する余り、利己主義を助長することにならないかといった懸念を指摘したところでもございます。
 今回公表された素案では、基本理念において舟坂議員が指摘した内容が反映され、また施策展開に当たっての考え方では、人権を尊重することには、他の人の人権や公共の利益との調和を図る公共性の考えが含まれていることを踏まえて施策を実施していくことが明記をされ、バランスのとれた内容となっており、このことを評価いたしたいと思います。
 さて、このたびの指針は十五年ぶりの改定であるとお伺いをいたしております。素案を審議するに当たり、改めて確認をさせていただきますけれども、今回、なぜ十五年ぶりに指針を見直すことになったのか、その背景や指針の必要性についてお伺いをいたします。

○箕輪人権部長 都は、昨年十二月に策定した長期ビジョンにおきまして、東京が目指す世界一の都市を、生活習慣、文化、価値観などの多様性や人権が尊重され、誰もが幸せを実感できる都市、誰もが住み続けたいと思う都市と示し、その実現に向けて取り組んでおります。
 一方、現行の指針が策定された十五年前と比較いたしまして、人権課題は多様化、複雑化してございます。
 また、オリンピック・パラリンピック開催都市にふさわしい、人権が尊重される社会の実現が求められているなど、都の人権を取り巻く状況は大きく変化しております。
 こうした状況に対応するため、このたび東京都人権施策推進指針の見直しを行うことといたしました。

○栗山委員 今回の指針の策定が、オリンピック・パラリンピックの開催都市にふさわしい、人権が尊重される社会の実現のためということが理由の一つであることがわかりました。
 しかしながら、人権施策はオリンピック・パラリンピックがゴールではなく、あくまでも一つの契機であるということを忘れてはならないと思います。大会終了後も人権尊重の理念を浸透させるため、さまざまな面に目配りした施策の展開をお願いしたいと思います。
 さて、人権啓発は地道な取り組みが求められている事業でありますけれども、そうはいっても、効果的な取り組みを探求し実績を残すことは極めて重要なことであるというふうに捉えております。
 昨年の総務委員会の事務事業質疑において、我が党は、オリンピックを切り口にした人権啓発を進めていくことはオリンピック・パラリンピック東京大会の大きなレガシーになり得るという認識を示しております。
 今回発表された指針の素案では、スポーツ、文化団体等と連携した啓発の推進が掲げられております。今後、ますますスポーツ団体との連携に力を入れ、機運を盛り上げていくべきと考えますけれども、都は、新たな指針に基づき、今後どのようにオリンピック・パラリンピックを切り口にした人権施策を展開していくのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 都はこれまでも、Jリーグの試合会場で選手の人権メッセージを上映したり、また、日本ブラインドサッカー協会によるプレゼンテーションを実施し、その魅力と可能性について紹介するなど、スポーツ団体と連携した取り組みを行ってまいりました。
 オリンピック・パラリンピックを切り口にした人権啓発は、世界で活躍するオリンピアンが直接都民に人権を訴えることにより強く印象に残すことができ、また、パラリンピアンが心のバリアフリーの必要性をみずからの体験に基づき訴えることができるなど、効果的な取り組みを行うことが可能でございます。
 今後とも、アスリートによるトークショーの開催やパラリンピアンによるパラリンピック競技の紹介など、スポーツ団体などと連携し、より効果的な人権啓発に取り組んでまいります。

○栗山委員 オリンピック・パラリンピックの開催まであと五年余りとなりました。この五年間というのは、長いようであり短い、大変重要な時間であると思います。
 そこで、最後に、史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現、その先にあります世界で一番の都市東京の実現に向けた人権施策の取り組みへの総務局長の決意をお伺いいたしたいと思います。

○中西総務局長 一千三百万の都民が暮らし、世界中からさまざまな人が訪れます国際都市東京におきまして、人権尊重の理念が浸透した成熟した都市の姿を示すことは、長期ビジョンに掲げます世界一の都市を実現する上で不可欠なことでございます。
 また、二〇二〇年に開催されますオリンピック・パラリンピックは、こうした人権尊重の理念が浸透した社会を実現するためのまたとない機会でもございます。この機会を逃すことなく、新たな指針のもと人権施策を推進し、オリンピック・パラリンピックを成功させ、さらに、大会を起爆剤として、長期ビジョンに掲げます生活習慣、文化、価値観などの多様性や人権が尊重され、誰もが幸せを実感でき、誰もがそこに住み続けたいと思う都市東京の実現に向け、全力で取り組んでいく決意でございます。

○高倉委員 それでは、東京都人権施策推進指針素案について質疑をさせていただきます。
 今月三日に人権施策推進指針素案が公表をされました。この指針は、都の人権施策の基本的な考え方を示す大変重要な指針であります。
 私ども都議会公明党は、昨年の第二回定例会の際に人権施策推進指針について取り上げさせていただいたところでございます。
 その際に、この人権施策推進指針が五年を目安として施策の見直しを行いながら進めることになっている中で、策定から昨年の質問のときまで十四年間にわたって見直しが行われていなかったのではないかということを指摘させていただいたわけでございます。そして、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの開催に向けて、国際的にも日本あるいは東京が注目される今こそ、この指針の見直しをすべきであるということを訴えさせていただいたわけでございます。
 この質問に対する答弁で総務局長は、近年、子供や高齢者に対する虐待などの人権問題に加え、インターネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害の増加など、人権を取り巻く状況は複雑多様化しているといたしまして、今後の人権施策の基本的な考え方について検討する外部有識者の会議を設置し、人権施策推進指針の見直しに着手をする、このように答弁したわけでございます。
 こうした質疑を踏まえまして、今回、この指針の見直しが図られたということでありまして、私ども都議会公明党は、こうした積極的な取り組みに対しまして、都の姿勢を大いに評価するところでございます。
 今回は十五年ぶりの見直しということになるわけでありますけれども、素案の中身を見ますと、現行の指針とは大きく変わってきているというようにも思うわけでありまして、新たな指針素案の狙い、特徴はどういったところにあるのか、素案について中心になって取りまとめてこられた次長のご見解をまずお伺いしたいと思います。

○中村次長理事兼務 東京都は、内外からさまざまな背景や属性のある多くの人々が集まる国際都市でございます。オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、全ての人々がお互いに生活習慣、文化、価値観等の違いを認め合い、心のバリアフリーを実現し、幸せを追求できる都市とすることが必要でございます。
 このため、三つの基本理念といたしまして、人間としての存在や尊厳が尊重され、思いやりに満ちた東京、あらゆる差別を許さないという人権意識が広く社会に浸透した東京、多様性を尊重し、そこから生じるさまざまな違いに寛容な東京を示し、東京都が目指すべき国際都市にふさわしい人権が保障された都市のありようを明らかにいたしました。
 また、現在の指針の策定から十五年が経過し、人権問題が複雑化、多様化したことから、新たに七つの人権課題を加え、人権課題を十七課題といたしました。
 さらに、啓発、教育等の観点による総合的な取り組みの展開、民間団体、国、自治体等との連携に加え、人権尊重の理念が浸透した社会を実現するための起爆剤として、四つの重点プロジェクトを示してございます。

○高倉委員 今ご説明をいただいたとおり、今回の指針の見直しに当たっては、人権をめぐるさまざまな状況が大変多様化、複雑化をしているということをしっかりと反映させた内容になっているというふうに思っております。
 そして、昨年の第二回定例会の代表質問において、私ども都議会公明党は、東京大会を史上最高の五輪大会にするためには、日本の文化を世界に発信するだけではなく、外国の文化、生活習慣などを理解し、相互に尊重し合うという多文化共生の理念の高まりが不可欠であるというふうに主張をさせていただいたところでございます。
 これに対して、そのときの舛添知事の答弁では、多文化共生社会の実現に向けて、多様性への理解と、差別はあってはならないという人権尊重の理念を都民全体で共有できるように積極的に啓発に取り組むとともに、都の姿勢を国内外に発信する、こうした答弁があったわけでございます。
 私どもが強く主張した多文化共生の理念というものは、人権の尊重とは切っても切り離せない大変重要なものであるというふうに思っております。
 今回公表された素案では、多文化共生への取り組みについても掲げられているというふうに思いますけれども、今後の取り組みについてご所見をお伺いしたいと思います。

○箕輪人権部長 素案では、オリンピック・パラリンピックの開催に向けまして人権尊重の理念が浸透した社会を実現するための起爆剤として重点プロジェクトを掲げ、その一つとして大型啓発キャンペーンの実施を挙げてございます。これはタイムリーな人権課題をテーマとして取り上げまして、わかりやすく親しみやすい手法を取り入れ、若い世代から高齢者まで幅広い層の都民が人権の大切さについて考え、理解するための大規模キャンペーンを展開するものでございます。
 今年度は秋に、多文化共生社会の実現をメーンテーマに挙げ、大学や企業及び国、区市町村等と幅広く連携して実施する予定でございます。

○高倉委員 ただいま、今回の素案の中にあります重点プロジェクトの中の一つ、大型啓発キャンペーンについて、その実施の時期も含めてご答弁をいただいたわけでありますけれども、また新しい取り組みということでありますので、ぜひ大成功するように私どもも祈っておりますし、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 今回、新たな指針をつくるに当たりまして、つくった指針がしっかりと有効に役割を果たさなきゃならないというふうに思っております。そうした意味では、そのことを自主的に進めていけるような仕組みづくりといったことも重要ではないかというふうに思います。
 今、重点プロジェクトの中の一つの説明があったわけでありますけれども、今回の重点プロジェクトの中には、人権施策を推進するための第三者機関の設置ということも挙げられているわけであります。複雑多様化する人権施策の推進に当たっては、行政以外の視点や専門性も必要でありまして、第三者機関の設置が今回の素案の中で取り上げられたということを評価申し上げたいというふうに思います。
 特に中立公正の立場から人権施策を推進するためには、第三者機関というのは不可欠のものであるというふうに思っております。この第三者機関について、現在、都が考えている内容についてお伺いをしたいと思います。

○箕輪人権部長 近年、人権を取り巻く環境が複雑化、多様化する中、人権施策を推進し、指針の基本理念を実現していくためには、都に蓄積された知見だけではなく、外部の有識者による専門的見地からの視点も必要でございます。
 学識経験者、実務の経験者から成る第三者機関を設置し、専門的かつ中立公正な立場からの助言を得て、指針の基本理念の実現に取り組んでまいります。

○高倉委員 今回の質疑の中では、人権課題ごとの施策の方向性という、それぞれの課題についての質疑は申し上げませんけれども、今ご答弁もいただいた第三者機関は本当に重要なことだというふうに思いまして、今回大きくその内容を変えたといいますか、今の状況に合わせた形での十分な内容を盛り込んだ今回の指針の基本理念をしっかりと実現していただきますように、ぜひ取り組みをよろしくお願いしたいと思います。
 以上で質問を終わります。

○徳留委員 東京都国民保護計画の変更について質問をさせていただきます。
 この計画は九年前に策定された計画で、私は当時知りませんでしたし、二年前に都議会に来てからも、本格的に中身を見たのは今度の変更の報告があってからですので、こんな計画が九年前に具体化されていたのかという、大変びっくりをしております。まさに武力攻撃事態を想定した計画ということで、まだ憲法問題も今のように大騒ぎになっていないときから、こういう具体化をされていたのかと本当にびっくりしています。
 しかも、国会で大きな焦点になっている安保関連の法制の議論、それから、五月の大型連休前の四月二十七日のアメリカでのガイドライン改定の中身も先取りをされたような計画になっているなと。そういう国の計画が、法定受託事務ということで余り自治体としての自主性を発揮できないような形での具体化が求められていると聞きました。
 改めて、憲法の大原則の立場から、幾つか基本問題について認識を伺いたいと思います。
 まずは最初に、国民保護計画の目的は、外国からの武力攻撃事態や大規模テロ等から都民を迅速、的確に保護するためと書かれています。今回の変更の理由として、策定から九年が経過して状況の変化を反映させるとあるけれども、どういう状況の変化があったのかについてご報告をお願いします。

○小久保防災対策担当部長 東京都国民保護計画を策定した平成十八年以降の状況変化でございますが、海外で大規模なテロが発生するなど国際情勢が緊迫の度合いを深める中、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が決定し、テロ等への対処が大きな課題となったことが挙げられます。
 また、東日本大震災等の大規模災害を経験し、災害対策法制度が見直されるとともに、国全体における危機管理意識が高まっている背景も重要でございます。
 さらに、国が覚知した緊急情報や警報を自治体や住民へ伝達するシステムであるEm-Net及びJ-ALERTの運用開始、住民の安否情報を収集、提供する安否情報システムの運用開始など、運用面での変更も生じております。

○徳留委員 国際情勢が緊迫の度合いを深める中で五年後にオリ・パラ大会がやられるということに備えるということなんですけども、この中でテロ等への対処が大きな課題になっていると書かれておりますけれども、テロの多発は、首都直下の地震とは違って決して自然現象ではありませんし、テロのテロリストを製造した責任は、無法なイラクやアフガンへの攻撃を繰り返したアメリカにあるのではないかという主張もあるぐらい、当時、二〇〇六年、国民保護計画がつくられる過程で既にイラクへの攻撃が進んでおりました。
 一方で、本当の意味での都民の危機感という点でいえば、首都直下型地震、三十年以内に七割の確率でといわれていることが最も緊急の事態ではないかと思います。
 そこで、国民保護計画の中で、国民保護をめぐる状況として武力攻撃事態及び緊急対処事態を想定しておりますけれども、この文言からすると、かなり切迫した状況と受け取れるのですけれども、日本と都民をめぐってどういう状況を指しているのか、お答えいただきたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 冷戦終結後四半世紀が経過し、我が国に対する本格的な侵略事態が起こる可能性は低くなっていると思われますが、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応は、差し迫った課題になっていると認識しております。
 そのため、万が一の事態に備え、都民を保護するため、国民保護計画に基づき平素から必要な備えをしておくことが重要と考えております。

○徳留委員 二〇〇六年当時、この保護計画がつくられたときにも、武力攻撃事態などをめぐって議論されましたけれども、当時の政府・与党の関係者からの答弁でいいますと、大規模な国家間の戦争は非常に可能性が低くなってきたと当時の大森官房副長官補は答えておりますし、あるいは当時の久間防衛庁長官は、北朝鮮が先に攻めてきたり、侵略してくることは現実にはないと思うというふうに答えながら、こういう計画が具体化をされてきたということであります。
 しかも、四月二十七日に策定された、ここにあります日米防衛協力指針、ガイドラインの改定、外務省がつくった冒頭の国民への普及の文章の中では、日本への直接的な武力攻撃の可能性は少なくなってきたものの、同時に、アジア太平洋には不安定な状況があるという書き方になっています。まさに軍事的な緊張をあおるような、そういう文言になっているのではないかなと大変痛感をします。
 今、七十年間、日本が今の憲法のもとで戦争をしないでやってきたそういう条件を生かして、攻められたり、緊急事態にならないような状況をつくることこそが国民保護の最大の役割ではないかなというふうに思うんです。
 五年後のオリンピック・パラリンピックを考えても、やるべきことは、東京都としていえば、都市間外交などでいわれているような周辺の都市との交流で友好、信頼の関係、共存共栄の関係をつくっていくことこそが、こういう危険な有事の事態をつくらない上で自治体としてやれる大きな仕事ではないかというふうに思います。
 そこに有事を前提にした国民保護計画ができていけば、逆に緊張を高めて、下手をすれば一触即発ということにもなるようなことをやってはいけないというふうに思うんです。
 そこで質問ですけれども、武力攻撃事態のうち、武力攻撃が発生する明白な危険が迫っていると認められる事態とはどういう状況を指しているのでしょうか。これは、計画の二一ページの一番上のところに書かれている文言ですけれども、お答え願いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 政府見解によると、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる事態とは、その時点における国際情勢や相手国の軍事的行動、我が国への武力攻撃の意図が明示されていることなどから見て、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指しております。

○徳留委員 そういう切迫した事態が想定される中で、自衛隊はどうやって都民を保護することになるのか。その中で、東京都を初め警察や消防は具体的にどのようにかかわり、どういう役割を果たしていくのか。また、それぞれのそういう事態の中での指揮系統というのはどういうふうになるのか、ご報告いただきたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 自衛隊は、武力攻撃事態への対処として、我が国を攻撃するものを自衛力をもって排除する侵害排除のため、防衛出動または治安出動を行っていると想定されますが、別途、国民保護法に基づく知事の要請を受けた場合は、国民保護等派遣により避難住民の誘導、救援などを行います。ただし、防衛出動等に支障のない範囲での活動となり、部隊については区分されると聞いております。
 また、武力攻撃災害等に際し、主として、消防は消火、救助、救急等の活動を、警察は警報の伝達、警戒区域の設定など必要な活動を連携して行い、都は避難の指示、救援の実施のほか、都における国民保護措置の総合調整を行うこととなります。
 指揮命令は、国民保護等派遣に係る自衛隊は防衛大臣、都及び東京消防庁は都知事、警視庁は警視総監が基本的に担いますが、必要に応じ、現地連絡調整所等において相互の情報共有、活動の調整が図られます。
 なお、防衛出動及び治安出動に係る自衛隊の命令権者は内閣総理大臣でございます。

○徳留委員 今述べられたような緊急事態のような状況あるいは武力攻撃事態のような状況になったときに、自衛隊が第一義的に対応するということにならざるを得ないと思うんですけども、そういう中で、この計画が策定をされて九年経過しましたけども、この間どういう訓練がやられてきたのか、どのくらいやっておられるのか、ご報告をお願いします。

○小久保防災対策担当部長 東京都国民保護計画が策定された平成十八年以降は、東日本大震災の影響で実施できなかった平成二十三年度を除き、毎年度、国や関係機関、区市等と連携した国民保護訓練を実施しております。
 本訓練は、主に大規模テロ災害への対処をテーマとして、大規模集客施設や交通機関における化学剤や爆発物を使用したテロ等が発生した場合を想定した訓練となっており、基本的に実動訓練と図上訓練とを隔年で実施しております。

○徳留委員 その訓練の際には都民は参加することになっていたのか、あるいは訓練の模様は都民に公表され、周知されてきたのか、ご報告をお願いします。

○小久保防災対策担当部長 訓練内容にもよりますが、平成二十四年度の東京スカイツリーにおけるテロ対処訓練や昨年度の地下鉄日比谷駅周辺におけるテロ対処訓練では、実動訓練の避難者役として都民が参画しております。
 また、訓練の実施については基本的にプレス発表を行っており、報道等を通じて訓練の模様は都民に公表、周知されております。

○徳留委員 都民にとっては、緊急事態として切迫しているのは首都直下型地震などの大規模な自然災害ではないかと思うんですけれども、そういう大規模な自然災害との連動といいますか、そういうものはどうなっているのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 自然災害は災害対策基本法に基づく地域防災計画での対応となり、国民保護法に基づく国民保護計画では基本的に対象とはなりません。しかし、突発的に大規模テロ等が発生した場合、緊急に都民の安全を確保する必要があるため、国民保護計画においても、政府による事態認定がなされるまでは災害対策基本法に基づく体制である災害対策本部体制などの仕組みを取り入れております。
 また、J-ALERTなどのシステムでは、弾道ミサイル情報だけではなく、緊急地震速報などの情報伝達も行うこととなっております。

○徳留委員 国民保護計画の五ページに、災害対策の仕組みを最大限に活用ということで、武力攻撃事態等に迅速かつ円滑に対処するため、東京都地域防災計画等により構築された災害対策の仕組みを最大限に活用するというふうに書かれて、東京都は、国民保護措置を実施するための組織、体制の整備、救援物資等の備蓄、訓練の実施等に当たり、災害対策との有機的な連携に配慮すると書かれています。
 今のお話ですと、国民保護計画と災害対策の方は余り連携、連動がないようないい方で、最小限J-ALERTの活用だとか幾つかあるようですけども、保護計画の中に書かれている、この仕組みを最大限に活用するというのは具体的にはどういうふうになるのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 先ほどのご答弁の繰り返しになるかもしれませんが、いざ大規模事故等が起こりました際に、まだテロ等と事態認定されるまでは国民保護法に基づく本部体制がとれないということがございますので、とりあえず災害対策本部体制をしくといったような連動があり得ると考えております。

○徳留委員 この計画の具体的な取り組みに当たっては、あるいは具体化の中身は、在日米軍とのかかわり方というのはどういうふうになっているのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 米軍との関係でございますが、国民保護計画においては、横田基地が住宅地域と隣接し、広大な面積を占めることを踏まえ、基地内の米軍関係者や日本人従業員に対する警報等の伝達や避難誘導、事態発生時における情報交換、住民避難に関し、緊急の対応が必要な場合における基地内通行などにおいて連携を図ることを想定しております。

○徳留委員 今、在日米軍とのかかわりでいいますと、国民保護計画でも保護する対象のレベルで在日米軍はとどまっているんですけれども、今度改定された日米ガイドラインでもそうですし、これまでの政府解釈のレベルでいいますと、ベトナム戦争にしても、イラク、アフガンへの攻撃にしても、日本のかかわり方は、憲法九条があるからということで、基地の使用は認めてまいりましたけども、直接応援する、支援するということではありませんでした。
 しかし、これからはそれを直接応援するということになれば、在日米軍とのかかわりというのは、このレベルでは絶対とどまらないのではないかというふうに思うんですけれども、ガイドラインが二カ月前に改定されたことに伴って、今後、国民保護計画の中に反映されていくというような動きは何かあるのでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 国民保護法において、都道府県の国民保護計画は、国の国民保護に関する基本指針に基づき作成することとされております。現時点で基本指針の変更については特に通知等はございませんが、今後、基本指針の変更等があった場合は適切に対応してまいります。
 なお、先生から、国民保護計画があることで逆に緊張が高まるのではないかというご指摘を頂戴したところでございますが、国民保護法及びそれに基づく国民保護計画は、あくまでテロ等から国民の生命、身体、財産を守ることを基本的な目的としたものでございまして、武力攻撃排除を目的とした他の有事関連法とは一線を画しているということで、指摘は当たらないものと考えております。

○徳留委員 しかし、実際に武力攻撃事態とか緊急対処事態というのが起これば、それを無視しての国民保護計画の具体化、実行というのはあり得ないんじゃないでしょうか。だから、本当にそういう事態をつくらないための役割というか、仕事というのが、今、私は求められているというふうに思うんです。
 ですから、保護計画をつくることが大前提というんじゃなくて、もちろん、そういう状況があることを前提にして計画をつくっているわけですから、そういうふうにならないように、東京都も自治体としての役割を踏まえて、アジア周辺との都市間外交だとか友好関係、信頼関係をつくることが非常に大事じゃないかというふうに思うんです。
 これは法定受託事務ということですから、国の法律や国の計画に基づいて具体化するという性格になっているというふうに聞きますから、東京都の自治体としての独自の具体化という点では限界があるというふうにも報告を受けております。
 しかし、これからさらに具体化していくということになると、情報を都民にしっかりオープンにしていく、それから、最大限、自治体としての東京都が中心になって、都民の目線で、本当に都民の生命、財産を守るというのにふさわしい中身になるように、ぜひ心得て取り組みを進めていただきたいということを要望して、私の質問を終わらせてもらいます。

○西沢委員 私からは東京都人権施策推進指針についてお伺いをしたいと思いますが、議論がございましたが、さらに絞って、まずヘイトスピーチについてでございます。
 外国人の人権ということで、オリンピック・パラリンピックを迎える今、東京には多くの外国人が訪れるわけでございますけども、そんな中でも、いまだに都内でヘイトスピーチを行うデモというものが見受けられるわけでございます。ヘイトスピーチの対象とされる方々の恐怖心は非常に大きなものがございまして、実効性のある対策というものが求められているわけでございます。
 そんな折の人権施策推進指針の素案の発表でございますけども、これによってどのように都の姿勢が変わっていくのか、ヘイトスピーチに対する都の基本的な考え方はどうなっていくのかお伺いいたします。

○箕輪人権部長 特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動、いわゆるヘイトスピーチは、一人一人の人権が尊重され、豊かで安心して生活ができる成熟した社会を実現する観点から、あってはならないことだと考えてございます。
 また、オリンピック憲章では、人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別を禁じてございまして、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会を世界一の大会とするためには、ヘイトスピーチをなくし、外国人の人権が尊重される東京を実現することが不可欠であると考えております。

○西沢委員 もちろん、東京都も取り組みます。国も取り組まなければいけない問題だと思いますけども、昨年、大阪市の橋下徹市長が在日特権を許さない市民の会の当時の会長に直接語りかけるというようなことがございまして、大きな注目を集めました。
 これは注目を集めましたが、批判的な声も多くありまして、これをやれという意味ではないのですけども、都としても、ヘイトスピーチを行う団体へ、直接の働きかけであったり、条例による規制など、より実効性のあるヘイトスピーチの根絶に向けた取り組みを行うべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○箕輪人権部長 ヘイトスピーチの規制ということでございますが、表現の自由との兼ね合いなどから、一地方自治体ではなく国全体で取り組むべき課題であると考えてございまして、現在、国レベルではさまざまな議論が行われていると聞いております。
 都は引き続き、国等の動向を注視しつつ、外国人の人権尊重に向けた啓発活動を一層強化していくことで、ヘイトスピーチが行われることのない社会の実現に向け、取り組んでまいります。

○西沢委員 国の仕事だというようなことでございましたが、私は都としても積極的に取り組むべきだと思います。
 大阪府で、先日、ヘイトスピーチを規制する取り組みが、条例がございましたが、これが見送られることになったと。話によると、これは先進的な取り組みであるがゆえに、大阪の方では様子を見るというような、そういった雰囲気を持って見送られたというようなことが報道でもされているわけでございます。
 やはり東京都が全国に先駆けて何かをするということは、全国的な広がりを見せる影響力もありますし、これまでも先進的な取り組みをさまざま施策として実行してまいりました。オリンピック・パラリンピックを控えた東京都だからこそ、このヘイトスピーチに関しては、都がさらに積極的に取り組むことが私は望まれるのではないかというふうに思います。このことを申し上げておきたいと思います。
 次に、同じく、この素案に記載されております人権課題でございます性的指向についてお聞きをいたします。
 本年三月に、渋谷区で、同性カップルのパートナーシップを結婚に相当する関係として認め、証明書を発行することなどを定めました男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例、話題になりました条例が成立をいたしました。
 一方で東京都は、指針の素案においては、性的指向に関する問題を指摘しつつ、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立しという憲法規定をあえて引用しているわけでございます。これを引用することで、あえて差別を強調する、深めることになるというような声もございます。
 なくしてほしいという意見も私は聞いたわけでございますが、この同性愛などの性的指向を持つ人々の人権についてどのように考えているのか。そして、同性カップルのパートナーシップを結婚に相当する関係として証明することとした渋谷区の条例を都として制定する考えというものがあるのかないのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 性についての多様性があることへの理解を深め、性的指向の異なる人たちへの差別と偏見をなくし、全ての人々の人権が尊重される社会であることが重要であると考えてございます。
 こうした社会の実現のために、都は啓発等に取り組んでまいります。
 なお、憲法では、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立と規定してございます。同性婚、同性パートナーシップを結婚に相当する関係と認めることは、社会の基本的な制度である家族のあり方にかかわることでございまして、国民的合意形成が必要であると考えてございます。

○西沢委員 こちらの課題についても国民的合意形成、つまり、国の方でやるべきなんじゃないのかということであると認識をいたします。渋谷の方が先んじたのじゃないかということだと思うんですね。
 確かに、この条例についてさまざま賛否がございますけども、そういった方々からは、大まかは賛同していくというようなことでございます。ぜひそうしたところも見ていただきたいと思うのと、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立という言葉、これは学者の間でも賛否が分かれるところでございますから、これをあえて引用しているというところは、この指針の素案の中で私は少し浮いているように感じるわけでございます。都として方針を出さないのであれば、確かにここについては、もう少し踏み込むか、もしくは誤解のないように書くかした方がいいんじゃないかなというように思うわけでございます。
 最後に、ヘイトスピーチ、性的な指向を原因とする差別、偏見をなくすために、都として啓発について力を入れていくというような大型啓発キャンペーンの話もございましたけども、こうした活動を行っていくということは大変重要であるというように私も思います。
 そこで、東京都は、幅広い都民に向けた人権啓発を行うためにどのような取り組みを行っているのか、その内容と実績についてお伺いいたします。

○箕輪人権部長 オリンピック・パラリンピックの開催を見据えまして、異なる民族、文化等多様性を理解し合い、人権を尊重する意識を醸成していくことが重要でございます。
 都はこれまでも、人権週間や憲法週間に合わせて講演会を毎年三回開催するとともに、昨年度は多文化共生をテーマとしたテレビCMを作成するなど、国や区市等と連携して取り組んでまいりました。
 とりわけ、プロ野球やJリーグといったスポーツ団体と連携し、選手みずからが出演した映像の上映などを行う啓発活動を年三回実施いたしました。
 また、本年二月から、インターネット上の東京都人権部チャンネルによる動画配信を開始いたしまして、これまで啓発動画「外国人の人権」など合わせて六本を配信し、延べ約六千五百回のアクセスがされたところでございます。
 都は引き続き、数多くの都民が人権の大切さについて考え、理解する場を提供するため、人権啓発を推進していく所存でございます。

○西沢委員 この啓発は非常に重要でございますけども、もちろん取り組みをさらに加速していただきたいというふうに思いますが、例えば、今この啓発についての動画の再生回数六千五百回とございましたけども、オリンピック・パラリンピックを見据えて大きく注目が集まる中で、六本の動画で六千五百回です。見てみると、二千近くある動画もあれば、数百、三百とか四百ぐらいの再生回数の動画もございます。これからなんだと思いますけども、ちょっと寂しい気がします。もう少し--内容は工夫されているところもあると思いますし、もう少しやわらかくしてもいいとか、個人的に思うところはございますが、再生回数をふやすような取り組みもぜひ引き続きしていただきたいなと思います。
 いずれにしても、改めて、ヘイトスピーチ、それから性的指向も含めた課題について、引き続き工夫を凝らした人権啓発活動を推進していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

○やながせ委員 私からは、国民保護計画について何点か質問していきたいというふうに思います。
 私は、かねてより危機管理が行政にとってはかなり弱点になっているなというふうに考えてまいりました。
 例えば、感染症対策ですね。新型インフルエンザが初めてはやり出した六年前にも私は質疑をしましたけれども、そのときに、どれぐらいの広がりがあって、どれだけの患者が出て、人工呼吸器がどれだけ必要になってと、被害想定はある。でも、じゃ、その被害にどうやって対応するのかといったときに、実際にはそれだけの人工呼吸器はない。特に、それだけの小児の人工呼吸器なんてないんです。でも、それだけの被害が出るから、これは何とかしなくちゃいけない。そこに向かっていくのかと思いきや、なかなかそうはいかないということで、なかなか危機管理というのはイメージが湧かない。湧かないですよね。
 今回、国民保護計画で対象としているのは武力攻撃や大規模テロということで、日本はこれを経験したことがないわけですから、当然これはイメージが湧かないわけです。でも、そのイメージが湧かないからといって、この大きなリスクに対してしっかりとした計画をつくっておかなければ当然、計画も立てずにこういった事態が発生したときに、何か対処できるはずもありません。ですから、私は、国民保護計画も非常に重要な計画だなというふうに思います。
 ただ、こういう計画をつくる上では、机上の空論にならないように、しっかりと実効性のあるものにしていただきたい、このことをまず申し上げたいというふうに思います。
 その上で、何点か質問していきたいと思います。
 今回、武力攻撃や大規模テロが想定されているわけですけれども、都は、都において発生する可能性が高いと考えているのはどのような事態を考えているのか、この点について、まずお聞きしたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 世界の各都市で大規模なテロが多発している中、都においては、オリンピック・パラリンピック競技大会やラグビーワールドカップなど国際的な大規模イベントを控え、大規模集客施設等を狙った爆破など大規模テロ等が発生する可能性があると考えております。

○やながせ委員 そうですね。今おっしゃっていただいたように、これまでは国と国とのいわゆる戦争です。武力攻撃が想定されてきたのかもしれませんけれども、今はやっぱりテロですね。国と国との戦いであれば、それは当然、その前に外交努力があって、で、危機が増してきてということなんでしょうけれども、テロはいつ起こるかわからないということですね。昨今のISISですか、通称イスラム国といわれているところも、一つの信念に基づいて、世界各地であらゆる難癖をつけてテロを起こしているわけです。それを正当化しているというような事態ですから、これがいつ都内で発生してもおかしくない事態であると。当然、人の集まるところ、またオリンピックといったようなイベントは狙われる可能性が高いということで、この計画に真摯に取り組まなければいけないというふうに思いますけれども、テロについては、最も可能性が高いのはサイバー上のテロだと思います。
 安倍総理も、昨日ですか、サイバーセキュリティーを強化せよというような指示も出されているようですけれども、サイバーテロへの対応をしっかりやっていくことがまず大事なことだろうというふうに思います。
 この国民保護計画では、テロ対策の専門家や関係機関との連携により、テロの動向や対策に関する情報収集に努めるというふうにあります。
 そこで、サイバーテロも含めて、具体的にどのような専門家から話を聞こうとしているのか。また、その他情報収集と書かれているわけでありますけれども、これはどのように行っていくのか。特に、私は国との連携、国からの情報というのが必要だというふうに考えますけれども、連携がしっかりととれているのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 話を伺う専門家としては、テロ災害の種別ごとに専門的な知見を有する有識者や警察、消防、自衛隊等関係機関において、テロ対処や研究等の実績がある実務家等を想定しており、既に数名の専門家を招聘し、庁内関係者で情報共有を図っております。
 ご指摘のサイバーテロについては、物理テロへつながるおそれもあることから、関係部署と調整し、情報セキュリティーの関係機関の専門家などへのヒアリング等を今後検討してまいります。
 国からの情報収集については、総務省消防庁等から、各種会議やメール、その他人的ルートを通じて国際テロの関連情報、ミサイルの発射情報など、必要な情報を適時得ております。

○やながせ委員 そうですね、都は非常に重要なインフラを保持しています。ライフラインですね。水道、下水道もそうですし、都営地下鉄等々もあります。こういったものは、全部、今はIT管理されているわけでございまして、こういったところにテロが仕掛けられるという可能性も非常に高いんだろうというふうに思います。ぜひこのサイバーセキュリティーの観点、国も今進めようとしていますけれども、都もしっかりこれを進めていただきたいというふうに思います。
 とはいっても、都ができることには限界があるだろうと。基本的には国が専門的な知見を持っているということだと思いますので、危機管理監がいらっしゃるわけですから、国としっかりと連携をとっていただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。
 この国民保護計画の中に、大規模テロが仕掛けられる場所ということで、危険物質を有する施設への攻撃、また大量殺傷物質を用いた攻撃が想定されているわけですけれども、それに当たる都内施設の場所、また大量殺傷物質の保管場所、これらの状況を都は把握しているのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 攻撃を受けると大きな被害が発生する危険物質を有する施設として、都内には石油類施設や高圧ガス施設が存在します。主な施設については、地域防災計画大規模事故編において、平成二十年時点の都内の事業所及び貯蔵所の数を地区別、種類別に集計しております。
 また、大量殺傷に使用されるおそれのある物質の保管場所としては、毒物劇物取扱施設については、平成十九年時点の都内の営業者及び業務上取扱者を地区別、業態別に集計しており、放射線等使用施設について、平成二十年時点の都内の主要施設を地区別、機関別に集計しております。
 各施設については、その所管局や警視庁など関係機関において実態を把握するとともに、事業者が安全確保を講じられるよう指導等を行っております。

○やながせ委員 それで、この質問をしたときに、データは平成二十年時点のものということなんです。つまり、今、都が総務局の方で把握しているのは、平成二十年時点のこういった危険物、大量殺傷物、また劇物の取扱施設でしかないということで、ちょっと危惧を抱いています。今は平成二十七年ですから、七年前時点のものだということです。
 それで、どういう施設があって、そこでどういうものが保管されていてというのは、一元管理をする必要があると思います。そこで、総務局が施設等の最新の情報についてどのようにキャッチをして情報共有していくのか。
 情報を一元管理したら、当然、それは地域と共有していただきたいということなんです。特に地域の警察や消防、少なくとも警察や消防と、この地域のここの場所にはこれだけの大きな化学物質を扱っている施設があるんですよということをしっかりと共有していくことが必要なのではないかというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 いわゆる危険物施設等については、当該危険物を所管する各局及び機関において、施設に対する立入検査や実態調査を適宜行うことなどにより最新の状況を把握しております。
 また、例えば事業者に対し講習会等を開催し、保守点検等の励行、事故発生時における対応措置及び定期防災訓練の実施等を指導するなどの対応措置も講じられております。
 地域の警察及び消防機関のかかわりは危険物によって異なってくるものの、関係機関相互の協議のもと、事故に備え、必要な情報を適宜共有することについては有益であると考えます。

○やながせ委員 共有することについては有益であるというふうにお考えになっていらっしゃるということですので、ぜひこれは共有していただきたいというふうに思います。
 地元からも、化学工場が爆発したという事件があったときに--私の大田区というのは町工場なんですね。町工場、私の家の隣も工場ですし、裏も工場なんです。そこで何を扱っているかはよくわかりません、それは。ただ、ちょっと変なにおいがしてくるわけですけれども。近くにどんな危険な施設があるかというのは、なかなかこれはわからないわけです。当然、みずからそれもいわないでしょうし、ただ地域としては、その状況、情報をしっかりと把握しておかないと、その後の話になりますけれども、大規模な避難をしていくといったときに、右に行くのか左に行くのかという、その判断がつかないわけです。右に行ったら大量の化学物質があるところで、ここが爆破されたら大変なことになるというようなことがわかっていれば、それは左に行こうとするわけですから。
 ですから、こういった危険物質等々に関しては、しっかりと一元管理をして、少なくとも地元の警察、消防等と共有をしていただきたいということを強く要望申し上げたいというふうに思います。
 それで、先ほどから申し上げているとおり、計画が机上の空論であってはならないというふうに思います。そういった意味では、綿密な計画をつくらなければいけないんですけれども、例えば、議論の一つの糧として、十時間後に弾道ミサイルが、私の選出のところです、大田区に着弾をすると。大田区全体が被害を受けるということが想定された場合に、着弾前に大田区の住民全てを避難させることができるというふうに考えていらっしゃるのか。また、どこへどのように住民を避難させようとするのか。一つの例ではありますけれども、見解を伺いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 弾道ミサイル攻撃の場合、基本的には、発射後短時間での着弾が予想されるため、迅速な情報伝達により、当初は屋内避難をするよう警報が発令され、警報と同時に、住民をできるだけ近くのコンクリートづくりの堅牢な施設や建築物の地階、地下街、地下駅舎等の地下施設に避難させます。
 仮に、ご質問のような着弾まで十時間という時間が判明しており、かつ被害が区内全域に及ぶと予測される場合は、ミサイル防衛等が前提とはなりますが、国から避難措置の指示があり、避難先地域が示されると想定されます。
 これを受け、都は、主要な避難経路及び避難のための交通手段を示し、大田区長を経由して区民に避難の指示を行い、大田区が住民の避難誘導を行うことになります。
 具体的な避難場所や避難方法は、本想定だけでは特定しがたいですが、一般論として、区は、避難住民をいっとき集合場所または避難場所等を経て、車両、公共交通機関等で区外の避難所へ誘導するということになります。

○やながせ委員 十時間後に弾道ミサイルが着弾するというのは、なかなか考えにくいことだというふうに思いますけれども、大規模に避難をするというのは大変難しいことだなというふうに私は思っております。三宅島の全島避難があったと。この国民保護計画の中にも書かれておりますけれども、あれも三日間かかっているんですね。三日間かかっているということの記載もありました。
 でも、あれも非常に少ない島民だったということで、大田区民七十万人いますから、この大田区民七十万人を、じゃ、この十時間で一斉に避難させるといったときにどうやってやるんだということ、それが十時間前に知らされて、じゃ、今からやってくださいといわれてすぐにできるようなものではありません。
 ですので、この保護計画の中では、住民を避難させるに当たって、事前に区市町村が複数の避難実施要領のパターンを作成することというふうになっているわけです。
 実際の避難の実施要領というのは、その事態が起こって、指示を受けて区市町村がつくるということなんですけれども、その前に幾つかのパターンを想定してつくっておきなさいよということが書かれているわけであります。
 ただ、このパターンの作成については、区市町村だけでは対応が非常に困難なのではないかというふうに思うわけですけれども、都は、これにどのような支援を行っていくのかということについてお伺いをしたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 区市町村においては、都からの避難の指示があったときは、避難実施要領を定め、住民等に伝達し、避難の誘導を行う必要があることから、あらかじめ可能な限り多くの避難実施要領のパターンを作成しておくことが重要でございます。
 しかし、ご指摘のとおり、避難実施要領のパターン作成は区市町村にとって負担が重いことから、作成率が上がっていない状況でございます。都としては、必要に応じてアドバイスを行うなど作成支援に努めてまいります。

○やながせ委員 そうなんですね。これ、実際に国民保護法によって最初の国民保護計画ができたのは十八年ですよね。そのときにも避難パターンをつくりなさいよ、つくらなければいかぬということはいわれていたわけであります。その手引も示されているんです。
 そのときに示されているのが市町村国民保護モデル計画、これですね。この中で、避難パターンを幾つかつくりなさい、こういうことに基づいてつくりなさいということがいわれたわけですけれども、残念ながら、つくったのは都内で三割の自治体ということにとどまっているわけであります。つまり、八年間あって、都内の三〇%の自治体しか、このパターンの作成に至っていないということなんです。
 私は、これは非常に残念だなと思いますし、切迫感が足りなくて問題だというふうに責めたい気持ちもあるんですけれども、同時に、想定しづらいものに対してどういうふうにパターンをつくったらいいのかよくわからないと。私も、この計画のパターン作成の手引みたいなものは読み倒しましたけれども、これをつくるのは、各自治体ではなかなか難しいだろうというふうに思います。
 ですから、都の支援が必要なわけですけれども、今回、この改定に当たって、どれくらいの自治体にいつまでにこのパターンを作成してもらうのか、私はこの目標をしっかりと決めて作成を促した方がいいというふうに思いますけれども、この点について見解を伺いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 平成二十三年に、総務省消防庁において避難実施要領のパターン作成の手引をまとめ、区市町村へ作成を促しているところでございまして、都としても、理事ご指摘のとおり、目標を決めてというご指摘の趣旨を踏まえまして、できる限りの早期の作成に向け働きかけてまいります。

○やながせ委員 できる限り早くつくってほしいということは、それはそうなんですけど、ただ、自治体にこれを渡して、いろんなパターンで、ここに武力攻撃があった場合、ここにあった場合、ちょっといろいろつくりなさいよということを促しても、まあ、とりあえずつくっておけといってつくっておく。これでは実効性がないわけです。
 ですから、私はこの策定が非常に難しいと思いますので、ぜひ区市町村の担当者を集めて、危機管理監が中心になって、こういうときにはこういうふうにするんだということをしっかりと検証していく、そして、区市町村の担当者のスキルをアップしていくということが必要なのではないかというふうに思いますけれども、見解を伺いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 全国での調査結果によりますと、未作成の理由として最も多いのは、担当職員が少なく着手できないこと及びその他の計画を優先的に作成していることであると報告されております。
 次いで多い理由は、想定する事態が多様であり、被害予測が困難なこと及び具体的な作成内容、方法がわからないことでございます。
 後者の理由を踏まえると、未作成の団体が集まって作成するというご提案につきましては一定の意義があるものと考えられることから、ぜひ今後の参考とさせていただきたいと存じます。

○やながせ委員 今、未作成の理由として、職員が足りないんだ、また、その他の計画を優先的に作成しているんだという報告があるということですけれども、これは理由にならないですよね。八年間ですよ、この間。その間にテロがなかったから別に、作成していなかったということも明らかにならなかったし、その対処も問題にならなかったわけでありますけれども、この間にこういった事態が起きていたら、当然その責任は大きく問われるんだろうというふうに思われます。それをしっかりと促す都の責任というものも、これまたあるだろうというふうに思いますので、都が中心となって、ぜひこの作成ができるように支援をしていただきたいというふうに思います。
 同時に、東京都国民保護計画、こういったものがあるんだよということを広く国民に周知することも必要であると思います。
 私が問題だと思うのは、こういったことは起きないだろうとみんな思っているわけです。その中で起きると、やっぱり大きな混乱状態になる。こういうことが起きた場合にはこういうふうにしましょうと。
 先ほどの弾道ミサイルの話だと、すぐに弾道ミサイルは着弾しますから、堅牢な建物の中央部に入りましょう、そして換気扇とかを全部目張りしましょうと、こういったことが示されているわけです。少なくとも、これぐらいの知識を国民がみんな共有していくということも大事だろうというふうに思います。
 ぜひこういった国民の意識を高めるための対応が必要だと考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

○小久保防災対策担当部長 理事ご指摘のとおり、都民や事業者が国民保護に関する措置の重要性について理解を深めるとともに、大規模テロ等に際して適切に行動できるようにするためには、多様な機会を活用した普及啓発が必要でございます。
 このため、都は、国や区市町村と連携し、広報紙、パンフレット、テレビ、インターネット等のさまざまな媒体を活用するとともに、講演会、研修会等さまざまな機会を通じて、国民保護措置の内容、協力の趣旨等について継続的な普及啓発に努めてまいります。

○やながせ委員 ぜひお願いしたいというふうに思います。
 これはモデル計画の中にあるわけですけれども、住民に対する情報提供のあり方ということで、武力攻撃やテロについては、我が国においては余り意識されてこなかったため、自然災害以上に希望的観測を抱き、災害の発生を軽視もしくは無視し、適切な行動をとらない。これはノーマルシーバイアスということで正常化の偏見が起きやすいということも書かれています。また、逆に、小さな事象に対して過剰に反応する。これはカタストロフィーバイアスという、この二つのバイアスが書かれているわけであります。
 つまり、こういったことがあったときに、ふなれな都民はさまざまな混乱が生じて被害を拡大していくということは容易に想定できるわけですから、当然、こういったバイアスもかかるんだよといったことも含めて、しっかりと情報伝達をしていただきたいというふうに思います。
 都民の生命と財産を守るというのが都政の大きな役割ですから、リスクがあれば、それに対処をする、リスクがあれば、それを想定して備えておく。これは当たり前のことです。しっかりとこの計画が実現--そういうことがあってはいけないと思いますけれども、来るべき日には、都民は一人の命もなくさないんだということのために、しっかりと実現性のある計画にしていただきたい。このことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

○上田委員 私は、国民保護計画並びに人権施策推進指針素案について、二点についてお尋ねし、まずは国民保護計画からです。
 変更するに当たりまして、活発な議論の場となったでありましょうテロ対策東京パートナーシップ推進会議についてお尋ねいたします。
 ホームページを見る限り、最近の取り組みが読み取れないところなんですけれども、現状と今後の活用について、変更点を踏まえまして具体的にお示しください。

○小久保防災対策担当部長 テロ対策東京パートナーシップ推進会議においては、東京都や警察、消防、自衛隊などの関係機関のほか、ライフライン事業者、鉄道運輸事業者、各種協会、団体、大規模集客施設などが参画しており、平成二十年から総合的なテロ対策を推進するためのさまざまな取り組みを行っております。
 最近の主な活動としては、テロを許さないまちづくりを訴えるポスターの作成や、都も参画している年二回の推進会議があり、直近の先月の会議では、世界的なテロの脅威を背景に、テロ対策東京パートナーシップの重要性についてのパネルディスカッション、出席者間での討議、パートナーシップの活動内容の報告等を行いました。
 また、警察署単位の地域版パートナーシップの活動として、合同パトロール、テロ対策研修会、合同訓練なども実施しております。
 今後、都としては、本推進会議を活用し、参加している関係機関や企業等と一層の連携を図り、危機情報等の共有とテロ等発生時の緊急連絡、情報伝達、避難誘導を初めとする協働体制を構築してまいります。

○上田委員 これまでの議論の中でも、各委員から有事のときに具体的にどうなるのだというようなお話も出てきたところで、まさにこのテロ対策東京パートナーシップ推進会議におきまして実働部隊が実際に地域で活動をされているということでありますが、警視庁のホームページでは情報刷新がまだのようでございましたので、このあたりの方も、連携を図りまして都民への報告の方をしていただきたいと思います。
 このところ火山活動も活発になりまして、瞬時に警報を出すシステムがまさに重要視されているところであります。世界にも誇れる先進的なシステムでありますJ-ALERTの活用が新たに加わったところを注目しております。
 東日本大震災の前後まで、誤作動、ふぐあいが報じられていましたが、現在は改善され、問題がないのかどうか、重要なところでございますので、確認させていただけますでしょうか。

○小久保防災対策担当部長 J-ALERTについては、過去、ミサイル発射情報が誤って流された平成二十年における福井県美浜町、愛知県庁及び出先機関の例や、平成二十二年のチリ地震における津波警報、津波注意報の誤放送などの例がございます。
 これを踏まえ、情報伝達の実効性を高めるため、日々の点検のほか、都道府県及び区市町村が参加する全国一斉情報伝達訓練を年一回実施しております。この訓練でふぐあいが見られた団体については、原因を解明し、改善を図った上で再訓練を実施しております。
 また、全国を対象とした緊急地震速報訓練を年二回実施するとともに、不定期ではありますが、気象庁からの電文配信訓練、試験等を実施しております。
 これらにより、J-ALERTシステム自体については、現状では問題はないと聞いております。ただし、昨年度の全国一斉情報伝達訓練では、区市町村の機器等のトラブルや人為的ミスが原因となったふぐあいが一部確認されました。都としては、訓練への参加の呼びかけと、日常的な点検及び改善によりふぐあいをなくすよう、引き続き注意喚起を行ってまいります。

○上田委員 J-ALERTにつきまして、しっかりと現状について把握していることを確認させていただきました。システムと区市町村のかけ橋となってミスやトラブルを防いでいくことこそが、国民保護をする東京都の役割と期待しております。
 東京都は、常に有事に備え、先んじて計画を実践的に取り組んできました。つきましては、たてつけと根拠法が違うとは思われますが、都の各種計画事業はそれぞれ関連性を持って総合的に展開されておりますことから、保護計画と長期ビジョン、都市外交基本戦略との連関につきまして、テロ対策をどこもうたっているところでございますことから、お示しいただければと思います。

○小久保防災対策担当部長 東京都国民保護計画は、武力攻撃事態や大規模テロ等から都民等の生命、身体及び財産を保護し、都民生活や都民経済への影響が最小となるよう、国民保護措置を的確かつ迅速に実施することを目的として定めた計画であり、国民保護法に基づく法定受託事務として知事に作成が義務づけられたものでございます。
 一方、昨年末に策定した東京都長期ビジョンは、世界一の都市東京を目指す都政の大方針であり、今後十年間の具体的な政策展開を明らかにしたものでございます。
 また、東京都都市外交基本戦略は、東京都長期ビジョンの目指す都政の目標達成の一端を担うものであり、今後の都の都市外交の基本的考え方と政策の方向性を示したものでございます。
 したがって、国民保護計画と長期ビジョン及び都市外交基本戦略との間には明確な関係性があるものではございません。
 なお、国民保護計画の内容との関連でいえば、例えば長期ビジョンには、テロ等への対応力強化としてテロ対策東京パートナーシップ推進会議の記述があり、都市外交基本戦略には、自然災害やテロ、大規模事故への対応等、各都市が有するさまざまな経験やノウハウを共有するという記述がございます。

○上田委員 法律と計画、それぞれ国と都ということで、たてつけが違うので関連性はないということですが、実際有事が起これば、恐らく協力はできるような状況にあるかなというように思います。
 国民保護法を初め、いわゆる有事法制については、イデオロギー的な議論が本日も散見されましたが、最優先は国民、都民の命、財産、自由であり、それこそが安心・安全のまちづくりにつながるものと考えております。
 オリ・パラを迎え、世界を牽引する国際都市となる東京都が先鞭をつけ、本計画に基づき実効的な施策展開がされることを心より期待するものであります。
 次に、東京都人権施策推進指針素案についてでございます。
 基本的人権の尊重は法の精神の根幹をなすものであるということは、いうまでもないところです。あらゆる政策において、人権への配慮は明文化されていなくとも大前提となっております。人権が尊重される社会の実現に向けて、人権の政策化とともに、都の各政策が人権に基づいて、よもや人権を侵害することがないようにする政策の人権化が進められる必要があります。その実現に向けて、十五年ぶりとなりました本指針の策定は極めて有益なものであります。
 一口に人権といっても、時代とともに意識も進化し、私の祖母の時代は女性への人権意識が低く、選挙権どころか、財産権すらなかったのであります。当時女性は、人権を擁護されるべき主体ですらなかったからです。
 殊に人権とは、それに付随した行政事業はどうあるべきか、組織はどうあるべきか、常に共有し議論をし、時代と情勢に合わせて変革していくべきものであり、そのための指針策定と理解しているところでございます。
 このたび、中身の詳細を人権政策の専門家とともに再検証させていただきました結果、人権を侵害された場合の被害者救済のための施策が少し少ないのではないか、また、都民よりも、まず職員最優先の人権啓発、教育ではないかという指摘を受けましたことを申し述べ、質問に入ります。
 まず、策定までのプロセス、特に当事者参加がどのように行われてきたのか伺います。また、有識者懇談会の提言を受け、昨年度中にパブコメが行われるとされていたものが今月になった理由につき、ご説明ください。

○箕輪人権部長 平成二十六年七月に東京都人権施策推進指針に関する有識者懇談会を設置いたしまして、七回開催いたしました。
 懇談会におきまして、高齢者、障害者等の関係団体や有識者から聴取した意見を踏まえまして、基本理念や人権課題など提言の内容を検討したところでございます。
 今回公表した素案は、懇談会から受けた提言の内容を最大限尊重いたしまして取りまとめました。
 パブコメについてでございますが、前回の指針の策定から十五年が経過してございまして、社会経済状況が変化し、人権課題が複雑化、多様化していることから、大幅な見直しを行うとともに、重点プロジェクトに関する検討を行ってまいりました。
 こういったことから、指針の取りまとめに時間を要し、今月、パブリックコメントを実施することとなったわけでございます。

○上田委員 大幅にスケジュールがずれ込んだことに関しましての難産といいますか、人権といいますと、各方面にさまざまな受けとめ方がございますので、ご苦労はお察しするところであります。
 恐らく指針に向けての準備を東京都としてはしていたのだろうと私が拝察することの一つといたしまして、平成二十五年に生活文化局が既に実施しております人権に関する世論調査というものがございました。有識者懇談会の検討におきまして、これをどのように検証段階の中で反映されてきたのか、お尋ねいたしたいと思います。

○箕輪人権部長 有識者懇談会では、平成二十五年に実施いたしました人権に関する世論調査の結果を踏まえまして、東京都における人権状況を分析、把握いたしました。
 世論調査の結果を踏まえまして、委員による議論を行っていただきまして、人権施策の基本的な考え方や指針で取り上げるべき人権課題などを提言の内容に反映してございます。

○上田委員 都の局が違いましても、この世論調査の方をしっかりと活用していただけたことが理解できました。
 さて、本指針の冒頭、一ページの人権を取り巻く現状には、国際的な人権規程の語が使われております。国際法の専門家からは、人権規約が一般的ではないかとの指摘を受けたところでございます。
 「法律学小辞典」によりますと、規程とは、一定の目的のもとに定められた一連の条項の総体をいう、必ずしも国、公共団体等の定めるものに限らない、この意味の規程は、個々の条項の定めを指す場合に用いる規定と紛らわしいため、現在では規則といいかえることとされている、このような一連の条項の総体としての法令の具体的名称である法令の題名に用いられる、この場合、法令の形式、内容は問わないが、形式的には府省令、訓令の場合が多く、内容的には行政機関の組織、事務執行の準則等を定める場合が多い、なお、両議院の議決、両院議長の会議その他各議院の事務総長により定められるものについても規程の名称が付されているとあります。
 一方、国際人権規約を初め、国際的な人権に関する宣言、憲章に関しては規約とされているものが多いのではないでしょうか。
 規程は、規約より対象が狭まるように感じますが、なぜ人権規程としているのかお答えください。

○箕輪人権部長 国際的な人権規約といたしますと、例示で書いております国際人権規約と混同するおそれがございます。このため、素案では、世界人権宣言、国際人権規約や女子差別撤廃条約等を広く総称するものとして国際的な人権規程という表現を用いました。

○上田委員 ご説明をいただきましたが、パブコメを経まして指針の策定まで精査をいま一度なさいまして、適切な表現を採用されることをお願いいたしたいと思います。
 次に、人権施策推進会議(仮称)という第三者機関が設置されるということですが、いつごろから具体的にどのような活動を展開していくのか、今後についてお答えください。
 特に有識者について、当事者及び当事者団体やNGO、NPOなどに参加していただきたいと考えております。つきましては、有識者だけなのか、広く呼びかけての人選をなさっていくのかも含め、基本的な考え方をお示しください。
 また、会議の事務局体制についてもお答えください。

○箕輪人権部長 近年、人権を取り巻く環境が複雑多様化する中、人権施策を推進し、基本理念を実現していくためには、都に蓄積された知見だけではなく、外部の有識者による専門的知見からの視点も必要でございます。
 可能な限り早い時期に第三者機関を設置いたしまして、専門的かつ中立公正な立場からの助言を得て、指針の基本理念の実現に取り組んでまいります。
 さまざまな人権課題が顕在化している中で、人権にかかわる取り組みを行っている人々、団体には、さまざまな立場の人々がいらっしゃいます。第三者機関の委員構成をどういうふうにしていくか、また事務局の体制をどうするかにつきましては、今後慎重に検討してまいります。

○上田委員 国におきましても、憲法解釈におきまして議論百出しているところで、さまざまな有識者の方もいるかと思いますので、バランスのよい、そして、何よりも当事者、そうした方々を入れていただきたいということを要望いたします。
 さて、この指針でございます。十五年の歳月を経まして、ようやくまた新しく見直すということでございますので、この鳴り物入りの指針につきまして、都庁全体、全局でどう共有されていくのか、本指針の実効性確保のための取り組み、職員への周知についてお示しください。

○箕輪人権部長 人権施策に関する関係課長会議を開催いたしまして、指針に掲げる都の人権施策の基本的な考え方や人権課題ごとの施策の方向性などを説明いたしまして、庁内への周知を図ってまいります。
 庁内の職員に対しましては、全ての職員が受講することが義務づけられている人権研修などの機会を通じまして、人権施策の基本的な考え方を周知するとともに、人権尊重の意識の浸透を図ってまいります。

○上田委員 職員におけます人権意識の共有ということの今後について、大体理解したところでございます。
 都民全体の人権意識の涵養に当たっては、まずもって教育現場における教員の人権教育、権利学習が不可欠だと思っております。子供たちも含めまして、指導者については先ほどの議論にも出させていただきました。
 人権施策推進会議の事務局には、ぜひとも東京都教育庁、教育委員会も加わってもらいたいと考えております。本指針の実施に当たっては、東京都教育委員会との連携をどのように進め教育現場に反映していくのか、具体的な取り組みについてお答えください。

○箕輪人権部長 これまでも都教育委員会では、人権尊重の理念を広く社会に定着させ、さまざまな人権課題にかかわる偏見や差別をなくすために、国が策定した人権教育・啓発に関する基本計画を踏まえるとともに、東京都人権施策推進指針などに基づきまして人権教育を推進しております。
 先ほどお答えいたしました人権施策に関する関係課長会議には、都教育委員会も出席しております。
 また、都教育委員会と人権部では、人権啓発、人権教育に関する情報共有、意見交換を日常的に実施してございまして、今後もさまざまな場面を通じて連携を図ってまいります。

○上田委員 また、人権意識を職員の皆様も共有されるということで、私ども議会も情報共有をさせていただければと思います。
 誰もが人権が尊重される差別のない都市は、自由な気風のもと、外資を呼び込むともいわれております。政策企画局でもMICE並びに国家戦略特区、アジアヘッドクオーター特区で企業誘致を呼びかけていながらも、なかなか苦戦していることからも、全局一丸となって本指針の実施に取り組んでいただきたいです。
 東京都の人権指針いかんによって、日本、アジア全体に相乗効果をもたらすものと期待をしております。
 二〇一五年の現代社会において人権政策の根底に流れるものは、東京都や国といった政府や自治体が人権啓発を人々に施すという上からの視点で行うものではなく、それまで力を持てない状況に置かれ、人権を認められてこなかった人々が自己の権利や自尊心を回復できるエンパワーメントの下からの視点があってのものだと考えます。
 ちょうどきのうで、女性への議会におけます蔑視の発言がありまして一年がたちました。女、子供に人権意識を高めたり権利を与えると増長すると危惧をするよりも前に、今、目の前の女性蔑視の言動をする、ヘイトスピーチをする侵害行為者への人権教育が最優先であり、そして、声を上げられない、自分が差別されているかもわからない、こうした方々への人権救済策、エンパワーメントに主眼を置いた人権施策を私は願うものでございます。
 最後に、五年後に迫りましたオリンピック・パラリンピック大会の成功に向けまして、国際都市として誇れる本指針が都庁全体隅々、全職員一人一人に至るまで行き渡ると同時に、力強く取り組まれ、東京全体のみならず、日本、そして世界で一番の人権都市、人権自治体となることを心より希望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

○清水(ひ)委員 東京都人権施策推進指針素案について伺います。
 昨年、私は総務委員会の事務事業質疑において、改正を予定している人権施策推進指針に、人権の基本理念である日本国憲法の尊重を明確に記載すべきであるというふうに指摘をしてまいりました。しかし、今回示された素案には、その記載がありません。
 国の最高法規である憲法が規定する基本的人権を基本理念に明記すべきと考えますが、いかがですか。改めて伺います。

○箕輪人権部長 指針の素案では、我が国においては、日本国憲法に定められた基本的人権を具体的に保障するため、法制度の整備など、さまざまな取り組みを行ってきたと示してございますが、このように、我が国の人権施策の基本的な法律である人権教育及び人権啓発の推進に関する法律は、憲法に規定する基本的人権の趣旨を踏まえて制定されたものでございます。
 この法律には、その地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施するという地方公共団体の責務について規定がございまして、これを受けて策定された指針の素案には、当然に憲法に規定する基本的人権の趣旨が反映されていると考えてございます。

○清水(ひ)委員 趣旨を踏まえているんだというお答えですけども、しかし、七回ほどやられた有識者懇談会の中でも、日本国憲法を入れたらどうかという指摘があったことを考えておくという発言がありました。また、先生方の中からもこうした言葉が出ていました。
 実際、山口県の人権推進指針では、指針の趣旨というところで、国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義を基本原理とする日本国憲法のもとで、国政の全般にわたり人権に関する諸施策や諸制度の整備が推進されているとし、身の回りにある人権問題の取り組みを推進するとして位置づけております。
 人権の基本となる根本の日本国憲法の言葉を明確に位置づけるよう、引き続き要望しておきます。
 次に、同和対策の位置づけについても、前回の事務事業で指摘をさせていただきました。人権課題の全体の中で、また、具体的な取り組みの中でも公平ではないのではないか。例えば、これは局長にも直接お尋ねしたところですけども、なぜ同和課長というのが二人いるんですかということで是正を求めてまいりました。
 同じく前の会議の中の答弁で、東京における就職差別はなくなっている、結婚による差別はなくなっているということをお答えいただいたわけです。そうであるにもかかわらず、都の人権施策がいまだに同和対策が重要な位置を占めているという、これに対して改めて見直しが必要ではないですかということをお聞きします。

○箕輪人権部長 同和問題につきましては、都は、平成十四年三月の同和問題解決のための取組に関する基本方針等に基づきまして、その早期解決のため、一般対策の中で差別意識の解消に向けた教育、啓発を主たる課題として取り組みを行ってまいりました。
 しかしながら、最近でも、都内において同和問題に関する差別落書きや土地差別調査などさまざまな差別事象が発生しております。
 国の平成二十六年版人権教育・啓発白書におきましても、同和問題に関する結婚差別、差別発言、差別落書きなどの事案は依然として存在しているとされていることから、他の人権課題同様、同和問題も重要な人権課題として、引き続き適切に取り組んでまいります。

○清水(ひ)委員 重要な人権課題として取り組むのはいいんですよ。しかし、今の答えでも、都内での事例も、差別調査、さまざまな差別が発生していますよと。そして、就職差別や結婚差別には、国のということで国の人権白書を引いているわけです。現在の実態というのはそういうわけなんです。
 それで、例えば就職差別の問題でも、産業労働局が出している「採用と人権二〇一五」の冊子、六万部を発行しているようです。いろいろな課題とあわせて二千万ほどつけているようなんですけど、この中身は、日本国憲法があって、そして都の人権指針があって、就職差別につながるおそれのある人権問題の理解のためにということで、一番として同和問題と書いてあるわけです。これは、人権指針の中でそう書いていて、人権指針を使っているからこうなっているわけでしょう。これが一番でいいんですか。これはないといっているでしょう、今の答えの中で。ないっていっているわけですよ。
 それが、もっともっと就職差別の問題ではいろんなことがあるんじゃないですか。今いろんなことが出ている。これを何ページも使って、そして企業の啓発活動に使っているわけです。東京で起きていない事例を使って六万部も発行しているということで、そうであるのだったらば、今回の人権施策推進指針を策定したときに、まずこれの内容もきちんと変えるように私は指示していただきたいというふうに思います。要望しておきます。
 次に、指針の素案では、同和問題に関する記述で、現在もなお、同和地区の出身という理由でさまざまな差別を受け、基本的人権を侵害されている人々がいますという記載がありますが、同和地区というのは何を根拠に同和地区といっているのですか。

○箕輪人権部長 同和地区という言葉についてのお尋ねでございますが、日本の同和対策の基本的な考え方を示した同和対策審議会答申がございますが、ここで、差別の対象となっている人々が形成している共同体的集落を同和地区というふうにして表現してございます。
 同和地区という言葉は、同和問題を説明する際、一般的に使用されてございます。国等におきましても同和地区という言葉を使用してございまして、これにつきましてはそういう根拠でございまして、特に問題はないと考えてございます。

○清水(ひ)委員 今ご説明のあった審議会答申ですか、それはいつできたのですか。それはいつのですか。

○箕輪人権部長 昭和四十年ということで、五十年前でございます。

○清水(ひ)委員 そういう昔の資料を使っていっていると。しかし、実際に、もう法律はないわけですよ。法律というのは廃止をされた。この同和地区といういい方は、もともと同和事業にかかわる法律があって、事業を実施する上で対象を特定しなくてはならないことから、こう表現したのではないのですか。法律が廃止されたら、同和地区住民というのはないんじゃないですか。
 これを残しておくにしても、こういう言葉を使ったら、こういうことがあるのかな、こういう地区があるのかな、どこのことをいうのかなというふうにして、反対に差別を助長する、思い起こすというようなことになるということで、私はこの表現は少なくとも削除するべきであることを求めておきます。
 次に、指針に記載すべき人権課題ですけども、実際に都民の生存権が脅かされている問題、生活保護の打ち切りとか、保育所の待機児童の問題とか特養ホームの待機者の問題とか、非正規労働の横行とかブラック企業などなどの労働問題、介護、医療の問題など、本当に人権が侵害されているという実態があるわけですけども、これらの重要な人権にかかわる課題こそ触れるべきではないですか。お伺いいたします。

○箕輪人権部長 指針の素案に掲げました人権課題につきましては、有識者懇談会での提言や国が掲げる人権課題を踏まえたものでございます。指針に掲げた人権課題のほかにも、社会の中にはさまざまな問題があるということは認識してございます。
 都はこれまでも、福祉、労働、環境などそれぞれの課題ごとに、各局が経緯と状況を踏まえ施策を推進してまいりました。
 今後、社会状況の変化に伴い、さまざまな人権課題が顕在化することも予想され、指針の素案にも記載しておりますとおり、こうした課題にも適切に対処してまいります。

○清水(ひ)委員 記載するように要望しておきます。
 次に、施策の15、性的指向の記述について、先ほど別の委員から質問もありましたので、私、質問させていただくのですけども、五行目に、我が国では、憲法で婚姻は両性の合意のみに基づいて成立しと規定していますということを、この「現状」という文の最後に書いてあるんですね。
 この理由はなぜですか。憲法は書かないと、いろいろ前でいっていて、ここの部分だけ何で取り出すのですか、憲法の条文を。

○箕輪人権部長 婚姻につきましてはさまざまな意見がございまして、社会の基本的な制度である家族のあり方にかかわることでございます。国民による慎重な議論が必要であると考えてございまして、このため、婚姻についての憲法の条文を記載したところでございます。

○清水(ひ)委員 明確に憲法に違反、違法しているということではないわけですね。そういう意味で書いているのですか。
 さまざまな議論があるということでしょう。いろんな議論があるということはわかるけども、憲法はこう書いてあるよというのは、これだったら、婚姻は両性のみの合意というんだから憲法では認めていないんですかという話になるじゃないですか。それをなぜ、これをあらわすことによっていろんな議論があるということがわかるのですか。

○箕輪人権部長 繰り返しになりますが、性的指向における婚姻の問題につきましては、さまざまな意見があるところでございます。
 それにつきましては、社会の基本的な制度である家族のあり方にかかわるということで、国民による慎重な議論が必要と考えてございますので、そのために、婚姻についての憲法の条文を記載したというふうに考えております。

○清水(ひ)委員 多くの憲法学者が、この規定は同性婚を否定しているものではないといっております。だから、いろんな意見があるというわけでしょう。いろんな意見があると。
 渋谷区などでは、事実上、パートナーを異性でなくても認める条例をつくっているわけです。そして、世界でも今、一三年の時点で十二カ国が同性婚を合法としてきているように、世界でも都内でも動いているわけですよ。そういう受け入れられる要素というのも全くないわけじゃないわけです。
 受け入れられる要素もあるというときに、あえてこれを入れる必要はないというふうに私は思いますが、削除をすることを求めておきますけど、どうですか。

○箕輪人権部長 何度も繰り返して恐縮でございますが、憲法では、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立と規定しているところでございます。
 こういった社会の基本的な制度である家族のあり方にかかわることにつきましては、国民的合意形成が必要と考えておりまして、自治体が判断するということではないというふうに考えてございます。

○清水(ひ)委員 いろんな意見があるから、ここでこういうふうに書いたら、そういうふうには受け取れないでしょうと私はいっているんです。そのことを要望しておきます。
 次に、その前の14、そしてまた、今の15にかかわるのですけども、性的少数者の人権にかかわる啓発について伺います。
 私の知り合いでですけども、三十歳ぐらいの方で、女性として生まれたんですけども、幼稚園のときも、小学校のときも、中学校のときも、高校生と成長するときに、何か女の子の遊びも、何々ちゃんと呼ばれる呼び方も、ランドセルの色も、洋服も、ひな祭りとか、全てが嫌で嫌でしようがなかったということで、体だけどんどん女性になっていくのが嫌で嫌で仕方がなかったと。その間、ずうっと誰にもいえない。もちろん家族にもいえないといって、本当に中には--そちらが出した資料を見させていただきました。この啓発冊子を読ませていただきましたけども、女性として生まれて男性に変わってと、これをずっときのう電車の中で読ませていただきました。これは女性なんですけども、いろんなことを書いて皆さんも啓発しているようなんです。
 この方も本当に小さいときは、自分が何で嫌なのか、この気持ちというのは何だろうかというのがわからなかった。私の知り合いの方の謎が解けたのが、ずっと以前にテレビ放映された金八先生だったんだそうです。そこで取り上げられたのが性同一性障害であって、そしていろいろ、ずっと長い経過はありますけれども、二十数歳で家族に告白した。母親は腰が抜けるほど驚いた。長い間、受け入れることができなかったと。
 法律が制定されて、そしてその方は名称を男性名にして、今、誰にもいえなかったものが、告白して、家族、それから友人、知人などに広げることによって本当に理解を得て、胸の手術とかホルモン注射を行って、そして職場にも告白して、男性職員として勤務しているということです。
 この方は手記を書いているんですけど、世の中には、自分の気持ちを心に秘めて苦しみ、自分にも周りにもうそをついている人はたくさんいる、セクシャルマイノリティーの認知が低く偏見も多い、みずから命を絶つ人もいる、自分は、ありのままの自分を受け入れるまでに二十数年かかった、性別の不一致があるという点では今でもつらいが、この体が嫌いで憎くて仕方がない、家族や職場に理解を得て、人の温かさに触れることができた、多くのマイノリティーがもっと堂々と生きていけるようにしてほしいということで、今では数%いるということがわかってきているわけでしょう。こういう方たちの啓発などをもっともっと早く、もうなくなっているようなものをいつまでもお金をかけてやるんじゃなくて、こういう人たちの取り組み、啓発--私も今回の質問を通して理解を深めたんですけども、これが毎日の生活の中で、すごく頭に残って仕方ないんですけども、そういう思いをしている人がたくさんいるなということで、人権問題の課題に取り上げたことは重要だと評価します。
 そういう人たちの生活向上、社会的な地位の向上という面では、いろいろな面で対応が必要だと思うわけですけども、これらこういう人たちは、国際疾病分類といって疾病として認めているようですけども、社会で十分に認識されていない現状があるようです。
 性的少数者に対する差別や偏見をなくすために、正しい理解を求めるための啓発が必要であると考えるけれども、ご所見をお伺いいたします。

○箕輪人権部長 指針の素案に記載のとおり、いわゆる性的少数者は、社会の中で偏見の目で見られたり、差別的な扱いを受けることがございます。
 都ではこれまでも、人権イベントにおける啓発冊子の配布であるとか、パネル展示などの啓発を行ってまいりました。
 新しい指針のもと、性的少数者に関する正しい知識の普及や、偏見や差別の解消を目指した啓発を行ってまいります。

○清水(ひ)委員 この方がいっておられるんですけども、先生に話したときは、理解してくれる先生かなと思ったけども、理解してもらえなかったというんですけど、まあ、教育者もそれは予測していないわけですよね。それは責めることはできないと思うんですけども、だから、やっぱりもっともっと早く、まず小さいときにそういう思いをしたら、そういうことがあるかもしれないというような予測ができるような先生方の啓発とか、そういうことを行っていただきたいと思います。
 次に、ことし四月に、文部科学省は、性同一性障害者に係る児童生徒への具体的な配慮事項などを取りまとめた通知を各都道府県教育委員会宛てに通知したようです。また最近では、武蔵野市が今議会で、印鑑登録原票から性別の記載をなくす条例改正を予定しているというようなことで、自治体での積極的な対応も行われているようです。
 それで、東京都としてはどのような取り組みをこれまで行ってきたのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 平成十六年に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が施行されまして、一定の条件のもと、戸籍上の性別の取り扱いの変更が認められるようになりました。
 この法律の施行を受けまして、当時、各局に対して、行政文書上の性別記載に関する現状把握と適切な対応を依頼したことがございます。

○清水(ひ)委員 それに基づいて現状把握と適切な対応というのは何をしたのですか。

○箕輪人権部長 各局が業務の中で使っているいろんな行政の文書、申請書等に性別の記載があるわけでございますが、そういったものの必要性などにつきましての現状把握と、事業の性格を踏まえて、それが必要かどうかというようなことの対応をしていただくということでございます。

○清水(ひ)委員 対応というのはどんな対応がされたのか、お伺いいたします。

○箕輪人権部長 各局の文書につきましては、それぞれが各事業の性格などを踏まえて、そういった必要性等について判断し、各局において、例えば、そういった性別欄をなくすとか、あるいは、必要であればそのまま残すというふうに、適切に対応されたと認識してございます。

○清水(ひ)委員 どの局の文書で、幾つ性別欄が削除されたものがあるのですか。

○箕輪人権部長 その現状把握につきましては、各局で適切に対応されているというふうに考えてございます。

○清水(ひ)委員 明確にお答えいただけなかったのですけども、どの局がどの文書で性別削除をしたのかということをきちんと報告してくださいよ。だって、十六年当時、この法律ができて、それに取り組んだ人たちがいたわけでしょう、職員で。それを熱心にやったわけでしょう、性別を取り払うということで。これが今、人権指針の中に入っているその到達でしょう、東京都として。だから、経過、この問題で東京都は何をやったんですかというときに、十六年にこういうことをやりましたということはいう必要があるじゃないですか。そのときの職員の努力は何なんですか。それをはっきりさせてくださいよ。後でいいですから、はっきりさせていただきたいと思います。
 社会の中には、いまだに性的マイノリティーへの誤解や偏見が根強く存在します。そのもとで、自分の自然な性的指向や性自認を否定的に捉え、強い疎外感や社会不信、自己否定の気持ちに駆られる人もいるということです。こうした人たちも、同じ一人の人間として堂々と自分らしさを主張でき、個性豊かに暮らせる社会をつくることが求められています。引き続き、啓発などの活動を強めていただきたいと思います。
 最後に、都のヘイトスピーチに対する認識、また、ヘイトスピーチに対する取り組みをどのようにして行ってきたのか。そして、あわせて、明らかにヘイトスピーチを行う団体が公の施設を使用してきたりしたときに、都が毅然とした対応をすることが求められますが、いかがですか。

○箕輪人権部長 ある特定の国籍の外国人を排斥する趣旨の言動、いわゆるヘイトスピーチでございますが、一人一人の人権が尊重され、豊かで安心して生活できる成熟した社会を実現する観点からは、あってはならないことであると認識してございます。
 これまでの具体的な取り組みでございますが、例えば、「広報東京都」十二月号に人権特集を掲載いたしました。その中で、ヘイトスピーチはあってはならないとする知事のメッセージを掲載するなどの取り組みを行ってまいりました。
 それから、公の施設の利用の関係でございますが、これにつきましては、各施設で決められております利用条件等に基づきまして、それぞれの貸し出し目的などを勘案しながら、施設の管理者が適切に判断していくものと考えております。

○清水(ひ)委員 先ほどの前の方につけ加えますが、武蔵野市では各局で百十四事業、性別欄を取り除ける可能性があるということで、今、二十五事業が上がっているようで、今回、一つだけ条例改正を行っているようです。
 東京都としても、今後、性別欄を除く。男、女というだけでない方がいるということがわかっているわけですから、だから、それを除けるような書類があるのかどうなのかということを調査して、そして、その書類から性別欄を除くようにしていただきたいということを要望して、終わります。

○栗林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で総務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時三十八分散会

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