総務委員会速記録第九号

平成二十四年六月十五日(金曜日)
第一委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長吉倉 正美君
副委員長佐藤 由美君
副委員長中屋 文孝君
理事伊藤こういち君
理事吉田 信夫君
理事大西さとる君
栗林のり子君
星 ひろ子君
しのづか元君
服部ゆくお君
田島 和明君
吉原  修君
馬場 裕子君
和田 宗春君

 欠席委員 一名

 出席説明員
知事本局局長秋山 俊行君
儀典長高原 寿一君
次長理事兼務小林  清君
総務部長雜賀  真君
地方分権推進部長潮田  勉君
自治制度改革推進担当部長山内 和久君
外務部長中山 正雄君
国際共同事業担当部長熊谷 克三君
基地対策部長市毛 良之君
横田基地共用化推進担当部長新美 大作君
政策部長池田 俊明君
政策担当部長調整担当部長兼務鈴木  勝君
尖閣諸島調整担当部長坂巻政一郎君
投資政策部長松下 隆弘君
計画調整部長澤   章君
総合特区推進担当部長計画調整担当部長兼務瀬口 芳広君
選挙管理委員会事務局局長影山 竹夫君

本日の会議に付した事件
 知事本局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十四号議案 東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例
陳情の審査(質疑)
・二四第三九号 「原発」都民投票の実現に関する陳情

○吉倉委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
 傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上でございますので、さらに三十二名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉倉委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○吉倉委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、知事本局関係の付託議案及び陳情の審査を行います。
 これより知事本局関係に入ります。
 初めに、理事者の出席について申し上げます。
 過日の理事会におきまして、本日の委員会に選挙管理委員会事務局の理事者に出席を求めることを申し合わせております。
 本日は、影山事務局長にご出席いただいております。ご了承願います。
 次に、理事者の欠席について申し上げます。
 大井理事は、公務のため、本日の委員会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 この際、傍聴人の方々に申し上げます。
 傍聴人の方々は、東京都議会委員会傍聴規則を守って、静粛に傍聴を願います。傍聴人は、可否を表明したり騒ぎ立てるなど、議事の妨害となる行為をすることは禁じられております。ご協力を願います。
 付託議案及び陳情の審査を行います。
 第百三十四号議案及び陳情二四第三九号を一括して議題といたします。
 付託議案につきましては、既に説明を聴取しております。
 それでは、陳情について理事者の説明を求めます。

○山内自治制度改革推進担当部長 お手元の請願・陳情審査説明表に基づきご説明します。
 一ページをお開きください。陳情二四第三九号、「原発」都民投票の実現に関する陳情について説明いたします。
 この陳情は、大阪府、難波希美子さんから提出されたもので、その要旨は、原発都民投票を実現させていただきたいというものでございます。
 本件に関する現在の状況をご説明します。
 まず、これまでの経緯ですが、平成二十四年五月十日に、知事に対し、都内の有権者の五十分の一以上の有効署名数をもって、東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例案の制定請求がなされました。
 これに知事意見を付し、六月五日に東京都議会へ付議し、昨日、本委員会にて請求代表者による意見陳述が行われたところでございます。
 次に、条例案及び条例案に付した知事意見の概要ですが、こちらは、六月四日の本委員会にて、既にご説明させていただいております。
 まず、条例案の目的でございますが、東電管内の原発について、その稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするための手続を定めるとしております。
 投票資格者及び投票の方法については、記載のとおりでございます。
 次に、投票結果の尊重でございますが、有効投票総数の過半数の結果が投票資格者数の四分の一以上に達したときは、知事及び都議会は投票結果を尊重し、東電、国等と協議して、東電管内の原発の稼働に関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならないとしております。
 罰則などについては、記載のとおりでございます。
 次に、条例案に付した知事の意見の概要についてご説明申し上げます。
 知事の意見は条例の制定に反対するものですが、その理由は大きく四点ございます。
 まず、第一に、原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきであるということでございます。第二に、立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきであるということでございます。第三に、投票資格者などに疑義がある点でございます。最後に、地方自治法に抵触する規定がある点でございます。
 以上の問題点があるにもかかわらず、条例案は、投票結果を尊重して行動することを知事及び都議会に義務づけており、都の政策判断に大きな影響を与えるものであることから、条例案に反対するものであります。
 以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○吉倉委員長 説明は終わりました。
 これより付託議案及び陳情に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○佐藤委員 私からは、三十二万筆を超える有効署名をもって直接請求されました第百三十四号議案、東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例案について質疑を行わせていただきます。
 五月十日、直接請求が出されたわけですけれども、その見込みでありました三月から、都議会民主党としては、この皆さんの行動に対して、真摯に受けとめまして、さまざまな立場からのエネルギー政策、また住民投票の意義、こうした原点に立ち返りながら検討、そして議論を重ねてまいりました。福島第一原発事故を受けて、改めて自分たちの社会、また未来をみずからの責任のもとで守るのだというやむにやまれぬ思いで行動を起こしたのだということを、昨日の八名の請求代表者の方からの意見陳述で改めて認識をしたところでございます。
 都政の一議案という枠を超えて、日本国内はもとより、世界に向けて日本のあり方さえ示すことができる、日本を変えていくことができる、そうした非常に重要な決断になるという訴えもありました。この認識のもとで、一つ一つ質疑を行いたいと思います。
 まず、エネルギー政策の位置づけについてでございます。
 知事は、原発の再稼働の是非は専ら国の問題であるとしています。すなわち、一定期間にどれだけの経済成長を計画し、そのために必要なエネルギーをいかに確保するのか、それを計画するのは国の責務であると意見を付しているところです。しかし、この内容自体、都内の総生産が九十兆円を超える、そうした規模を持つ東京として、どれだけのエネルギーをどこからどの程度調達し確保するのかという計画を立てることは、本来、自治体の観点からも必要なことではないでしょうか。
 東京都は、ただ座して待っているだけなのか。都として、エネルギー政策の取り組みについて伺います。

○澤計画調整部長 東日本大震災後の社会経済状況の変化を踏まえまして、都は、昨年十二月に新たな長期ビジョンとなります「二〇二〇年の東京」計画を策定いたしまして、エネルギー政策を都政における最重要課題の一つとして位置づけをいたしました。
 具体的には、経済成長と低炭素化の両立化を基本に定めまして、エネルギー安定供給体制の構築、自立分散型エネルギー源の確保、エネルギー利用の高効率化・最適化、この三つを政策展開の基本的な方向性としてお示しをし、その象徴的な取り組みといたしまして、自立分散型発電を普及拡大し、都内の発電能力を倍増いたします東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトを打ち出したところでございます。

○佐藤委員 今ご答弁いただきましたように、エネルギー政策は都の政策、しかも重点課題として上がっているところです。すなわち、エネルギー政策は専ら国の問題というわけではなくて、自治体としての政策課題であることは明らかです。
 そもそも、国、民間、自治体の政策分担の中で自治体がいかなる政策責任を負うかということは固定的なものではなく、動態的に決まってくるものと指摘があります。自治体は、総合行政主体として、潜在的にはすべての政策に関与し得るものです。国がやらない場合、あるいは不十分な場合には自治体が先行して政策を推進する、それがまさしくこれまでの自治体の取り組みの原点であったのではないでしょうか。
 こうした中で、例えば大阪市では、本年二月、直接請求をされました関西電力管内の原子力発電所の稼働に関する大阪市民投票条例案に対して大阪市長意見を付していますが、このなお書きの中で、大阪市として関西電力の株主として経営方針の変更を促すことはもとより、エネルギー大消費地であるなどの地域特性を踏まえて、原子力中心から多様なエネルギー源への転換とともに、地域分散型エネルギーシステムの構築や防災力の向上などに取り組み、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入促進などエネルギー政策を積極的に推進していくとして、原子力中心から多様なエネルギー源への転換を挙げているところです。そして、エネルギー戦略会議を立ち上げて、この六月までに、二月に立ち上げてから十二回の開催をしている状況があります。
 こうした中で、先ほどご答弁のあった東京都におけるエネルギー政策の方針、この中で具体的に原子力の位置づけ、エネルギー源のあり方についてどのような方向性で取り組むのか、見解を伺います。

○澤計画調整部長 都は、エネルギー源のあり方につきまして、「二〇二〇年の東京」計画において、最適なエネルギーミックス、すなわち、さまざまなエネルギーの最適な組み合わせを目指していくとしておりまして、コージェネレーションシステムなどの自立分散型エネルギー源の拡充や戸建て住宅への太陽光発電の普及などを通じまして、エネルギー利用の高効率化、最適化を実現してまいります。
 なお、原子力を含め、エネルギー問題は国家発展のかなめでありまして、高度に発達した社会を支える我が国の経済を発展させるため、いかなるエネルギーをどれだけ確保するのか、政治が責任を持って決断し、基本戦略を策定すべきであると認識をしております。

○佐藤委員 原子力の問題は国の問題であるという最後のご答弁がありましたけれども、さて、五月の十六日に開催された首都圏広域で共有する課題に取り組む九都県市首脳会議において、原子力災害対策に関して議題になったところです。しかし、この原子力災害対策の体制整備をめぐって、国民の生活に不安を与えている、あるいは原子力発電所以外の原子力事業所に係る防災対策については、いまだ見直しに着手されていない、あるいは原子力発電所以外の原子力事業所について、防災指針における防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲などの対策の見直しを早急に行うことといった要請文章が削除されてしまったということが報道をされているところであります。
 まさにこうした危険性について、石原知事のセンチメントとして報道されているわけですけれども、安全に向けての検討すら一蹴をされているのが今の状況ではないでしょうか。リスクを直視することを避けて、目の前にある危機を前にして、すべきことをやらないこと、これをもって石原知事はセンチメントと呼ぶわけですけれども、そのまま石原知事のセンチメントとして非難されるべきところではないでしょうか。
 原子力の問題は、エネルギー政策側面からの電力政策といった政策枠組みの組み上げとともに、環境、公害対策における、こうした放射線からの被害に対しての対策、あるいは災害対策、危機管理における原子力安全政策といった、さまざまな政策の組み上げ方があるということは周知のとおりです。この点、東京都としてどう取り組んでいくのか伺います。

○澤計画調整部長 原子力の問題は、国が、安全性はもちろんのこと、経済性、産業政策、温暖化対策、安全保障などを複合的に考慮いたしまして、専門的な知見も踏まえ、理性的かつ冷静に対応すべきであると認識をしております。

○佐藤委員 まさにさまざまな取り組みが、東京都は、自治体としてなかなか進んでいないという現状があるのが明らかになります。
 都は、東京電力の株主としての側面もあります。昨年第二回定例会で、都議会民主党代表質問で、改めて原子力発電所の安全性について質問をしているところです。平成十九年に中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災した際に放射性物質を含む水が漏れまして、こうした事態を受けて、都議会民主党としては首都圏の危機管理として、都として、どう安全対策に取り組んでいくのか質問をしているところですけれども、自治体みずからがこうした安全性確認を行うことが必要と考えるわけですけれども、東京都として緊張感を持って、こうした危機管理に取り組むことが必要と考えますが、見解を伺います。

○池田政策部長 平成十九年の新潟県中越沖地震におけます柏崎刈羽原発の事故発生直後の七月でございますけれども、東京都は東京電力に対し、出火や放射能漏えいなどの原因究明、安全対策、電力の安定供給を要請したところでございます。
 また、その後、平成十九年十一月には、国への提案要求活動の機会をとらえまして、原子力安全・保安院に対し、国による原発の危機管理体制の強化を要請いたしました。
 さらに、その二年後の平成二十一年二月でございますが、東京都と東京電力との意見交換の場におきまして、改めて原発の危機管理体制の強化を要請した際に、安全強化のための耐震性関連工事などについて報告を受け、確認をするという取り組みを行ってきております。

○佐藤委員 自治体として、電力政策に対して働きかける回路がなかなか少ない中で株主であるということは、大変重要な回路であります。そうした中で、株主でありながら原発に対して厳しい態度をとってこなかったことも、こうした福島での事故を招いた一つの原因ではないかと改めて反省をするところであります。
 こうした中で、これだけの署名が集まり、直接請求につながったのではないでしょうか。
 まさしく東京都は、株主、あるいは消費者の集合体という観点からの政治力の行使とともに、行政主体として、さまざまな政策手法をもってエネルギー源のあり方、原子力問題に対する方向性に係る議論、取り組みを進めていく必要があると思います。
 戦後これまで、電力の事業については、戦時中の統制期の国家管理を経て、そのまま電力会社の供給する電力エネルギー源、そうした観点に関しての決定に関して、国が監督権を持ち、そして決定を作成してきました。住民も、また地域住民の利害を反映させる自治体も、なかなかその政策に対しての回路が持てなかった現状があります。
 また、福島第一原発事故を受けて、原子力のリスクが顕在化をして計画停電が実施されるとともに、昨年、電力消費ピークを乗り切ったのは、電力の使用制限令とともに、各住民、企業の節電努力が相まった中、改めて電力のサービスは電力会社の努力だけでなく、さまざまな国内の当事者の理解と協力なしには維持できないのが実態としてあります。にもかかわらず、当事者である、そして消費者が、自分の意思を表明する手だて、回路がなかった実態があります。
 こうした中で、原発を再稼働するかどうか、また、東京の安全にかかわる問題として、これまでの構造上の課題すら顕在化をさせた中で、現在、そして将来にわたる問題であると。この問題に関して、都民自身みずからが判断を示したいと考えるのは当然のことであると考えます。
 まさに住民の生活に重大な影響がありながら、エネルギー政策のあり方、安定供給やエネルギー源のあり方について議論が十分に、まさに原発を再稼働するかどうかについても、みずからの手で、その自治体で議論が十分になされておらず、あるいは放射線に対する不安がある中で、安全対策の取り組みもなかなか進まない状況のままであるからこそ、また都民みずからが当事者でありながら、議論も意思を表明する機会もなかったからこそ、都民投票を求めて直接請求をされたと認識をしています。
 都民投票は、都民が議論と意思表示をする重要な機会であります。こうした中で、知事は総論として住民投票の意義を認めていながら、今回の条例案については、投票の対象として疑義があると、そうした反対意見を付しています。しかし、住民投票は、繰り返しになりますが、議論と意思表示をする重要な機会であるとともに、その投票対象については制限はないとするのが通説です。一自治体の判断になじまないという意見も付されているところですけれども、新潟県の巻町は原発の立地の候補地であった町ですけれども、国が立てたという、その計画の中で議論を行い、意思を示してきたことは周知のとおりでありますし、また、沖縄県の基地に係る住民投票の例を見ても、国の施策に関連する事項であったとしても、当該地域の住民の権利や利害に深くかかわる事項は住民投票が行われています。
 意見書には、都民が利害当事者であるという観点からの記載がありません。意見が付されていませんけれども、その点について、都としての認識を伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 エネルギーは、国家を支える重要な基盤の一つでございます。原発は我が国の主要な電源の一つであり、その稼働の是非は、我が国の将来に大きな影響を与えるものでございます。したがって、国が安全性はもちろん、経済性、産業政策などを複合的に考慮し、専門的な知見を踏まえ、理性的かつ冷静に判断すべきであり、一自治体の住民投票にはなじまないものでございます。
 他の自治体の住民投票については、それぞれの判断でなされたものであり、都として論評する立場にございませんが、お話のあった巻町は、まさに原発立地が計画されていた地域であり、その町の住民にとっては、原発の建設は住民の安全、生活、雇用、また町の政策にとって極めて大きな影響がある事項であったと考えられます。みずからの地域の問題を、その地域の住民が判断されたものだと考えております。

○佐藤委員 都民の信託を受けた都政が、その信託に即した議論や取り組みがなかなか十分ではない、ないのではないか、そうした問いかけを、この住民投票、都民投票条例案の条例の制定を求めた直接請求は問うているというふうに考えます。殊さらに住民投票を否定するのは、まさしくみずからの自己否定になるのではないでしょうか。
 もし、住民投票という手法をもって、都民の直接的な参加と議論、意思表示の場が求められている中で、都がこれを反対するという状況でありますけれども、こうした直接的な参加を求めるこの思いに対して、どのような手法を用いてこたえていくのか伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 直接民主制は、間接民主制を補完する重要な手段でございますが、行政課題が多岐にわたり、また高度に専門分化している現状においては、議会での審議を通じて複雑な課題を総合的視野から議論し、決定していくことが基本であることも、また確かなことであると認識しております。
 都のエネルギー政策についても、議会の場で多様な視点でさまざまに議論が行われております。しかし、今回条例案が提出されている原発の稼働の是非に関していえば、繰り返しになりますが、安全性はもちろん、経済性、産業政策などを複合的に考慮し、専門的な知見を踏まえ、理性的かつ冷静に国が判断すべきものであると考えております。

○佐藤委員 どういった答弁も、すべてが国の問題というふうな答弁に終始することしかできなかったということが、改めてチェック・アンド・バランスが国家機構の基礎でありながら、この電力エネルギー政策については、国家管理体制のまま、そのまま継続をしているという構造上の問題を改めて顕在化をさせていると考えます。
 先ほど来、繰り返しになりますけれども、住民生活を支えるこうした電力エネルギー政策の根幹は、国あるいは自治体がそれぞれの責任を持って、それぞれの観点から取り組みを進めるべきであるというふうに考えます。
 東京都、この直接請求、直接的に参加をしていく手法に関しては、コンセンサス会議や討論会、あるいは都民公募参加の審議会や懇談会方式など、さまざまな手法があることは周知のとおりです。まさに政策フォーラムを立ち上げることも一つの手段ではないでしょうか。
 住民投票は、さまざまな議論の末に、その方向性を決定する。最終的に実施される場合もあれば、こうした課題があるのだと争点化をさせるために、今回のようにキックオフとして住民投票を実施すべきだと、これを契機に議論を巻き起こしていこうという動き、そうした位置づけもあるところです。
 改めて、国は国の観点から、自治体は自治体の観点から、それぞれの取り組みを進めるべき、住民サービスに必要な電力の事業に対して住民の自治を回復することが求められていると考えます。
 まさにお一人お一人が議論と意思を表明し、一人一人がその責任を引き受けていくのだと。今回問われているのは、まさにそうした民主主義のあり方ではないかということ、そういう観点から、改めて、この都民投票の実施が必要なこと、この条例の制定は今の東京都の重要な課題として、重要な課題に対しての解決を一つ提示をする重要な機会であるということを申し上げまして、私からの質疑を終わります。ありがとうございました。

○中屋委員 自由民主党の中屋文孝でございます。まず、東電管内の原発の稼働に関する都民投票条例案について伺います。
 この条例案は、三十二万人を超える方々が制定を求めており、我々都議会自由民主党も重く受けとめております。
 原発については、福島第一原発事故の収束が急がれております。また、事故の調査、検証が内閣と国会によって現在進められております。
 内閣には、事故調査・検証委員会が設置され、そこでは失敗を否定的にとらえるのではなく、むしろプラスにとらえて有効利用しようというベストセラー「失敗学のすすめ」の著者、畑村洋太郎東京大学名誉教授をトップに、調査検証作業が行われております。
 国会では、新たな法律に基づく国会事故調査委員会が設置され、黒川清元日本学術会議会長をトップに、ノーベル賞を受賞した田中耕一氏など各分野の専門家が活動しております。
 既に多数の関係者からヒアリングがなされているとのことです。原発事故という未曾有の事態を改めて冷静に精査し、苦い経験を未来への糧と転化し、世界の信頼を回復していかなければなりません。
 また、原発についての安全性の評価方法や基準が改めて検討し直されることにもなっております。これらは、次代を担う子どもたちのための作業でもあり、今後も国会の動き、政府の動きを注視してまいりたいと思います。
 我々は、今回の条例案を検討するに当たっては、安全性の確保が最も重要だということの前提に立った上で、立地地域との関係、我が国の将来のエネルギー政策、電力の安定供給や電気料金の問題などを複合的に考慮することが必要だと考え、こうした観点から質問をさせてもらいます。
 まず、立地地域との関係について伺いたい。
 東京は我が国の政治経済の中心でありますが、エネルギーや食料の自給率は低く、旺盛な都市活動に要する膨大なエネルギーの多くを他地域に依存してまいりました。
 そこで、東京の電力需給はどうなっており、これまでどれだけの電力を他地域に依存してきたのか伺います。

○澤計画調整部長 東京における昨年夏の一日最大の使用電力は、都民の方々の節電努力もありまして約一千五百万キロワットでございましたが、震災前の平成二十二年の夏におきましては、約一千七百万キロワットでございました。この一千七百万キロワットというのは、日本全国の使用電力の約一割、東電管内では約三割に相当いたします。
 一方、都内で発電されております電力は約三百万キロワット、使用電力の約二割にすぎず、残りの約八割を他の地域に依存している状況でございます。
 震災前には約九百万キロワットの発電能力を持つ福島第一、第二原子力発電所と約八百万キロワットの発電能力を持ちます柏崎刈羽原子力発電所から多くの電力が送られてきており、東京は原発立地地域からの電力を長年にわたり享受し、繁栄の基盤としてまいりました。
 このように、日本最大の電力消費地である東京は、他の地域からの電力供給に大きく依存しているところでございます。

○中屋委員 今あったように、東京の繁栄は立地地域からの電力供給なくしてはあり得なかったわけです。これを別ないい方をするならば、我々東京のために、立地自治体とその住民は原発の立地、建設、稼働に向き合い、数々の困難を乗り越えてきたのであります。我々東京は、立地地域に感謝と敬意を表するのが道理であります。電力消費地は、立地地域のことにもっと思いをいたさなければならないのです。
 つい最近でも、宮城県女川町の須田町長は、原発の多くは人口の少ない自治体にあり、安定した電力を人口の多い自治体に送ってきた、財政上のメリットもあるが、リスクを負って電気をつくってきた立地自治体の立場も理解してほしいといっておりました。
 我が都議会自民党は、きのう、きょうという話ではなく、既に平成十年にエネルギー問題等調査特別協議会を設立いたしまして、現在に至る、十四年にわたる原発立地地域などとの交流や意見交換を重ねてまいりました。
 平成十一年には、柏崎刈羽原子力発電所を視察いたしまして、地元の皆さんと意見交換も行いました。平成十九年七月に発生した新潟中越沖地震の際には、被災地支援を迅速に行うよう知事に緊急要請を行ったのであります。さらに、平成二十一年二月には、地震の影響で停止していた柏崎刈羽原発を再訪問し、また、被災地の復興状況を確認したところであります。
 時には、電力消費地域が当たり前のように電気を使っている無神経さに厳しいご意見をいただいたことも多々ありますけれども、我が自由民主党は、原発の立地地域である新潟や福島と電力消費地域である東京都のかけ橋となりまして、東京はもとより、首都圏への安定した電力供給の一端を担ってまいりました。
 立地地域と電力消費地が対立することは不幸なことではありますが、最近、福井県と関西の自治体で構成する関西広域連合の間でいろいろな動きが出ております。
 そこで、原発の稼働をめぐって、福井県知事などの立地地域の首長が電力消費地域に対してどのような発言をされているのか、お伺いいたします。

○山内自治制度改革推進担当部長 福井県には全部で十三基、約一千万キロワットの発電能力の原子力発電所が立地しております。関西電力管内では、原子力発電の比率が二〇一〇年は約五割となっておりまして、大阪を初めとする管内の府県は、電力供給で福井県に多くを負ってきました。関西圏では、こうした実情があるにもかかわらず、一番恩恵をこうむってきた電力消費地域が、供給地の事情や感情を無視して、一方的に福井県の原子力発電所の再稼働に反対する声が沸き起こったことに対し、原子力発電所の立地地域を預かる西川福井県知事は、関西の発展は福井に原発が存在するからという認識が足りないと発言しております。
 こうした西川福井県知事の発言は、電力消費地域における立地地域に対する理解不足に対して苦言を呈したものと考えております。

○中屋委員 立地地域は苦難を乗り越えて電力を供給し、電力消費地域、すなわち、大都市を支え、さらには日本の経済を支えてきた自負があります。そうした立地地域の苦労や立場を十分理解しないで原発に関して電力消費地域が一方的に意見をいえば、立地地域が反発するのは当たり前の話であります。立地地域の雇用や地域経済などの課題と原発とを切り離して考えることは到底できませんし、大都市のために原発とともに生きることを決めた立地地域の思いや悩みをしんしゃくせずに一方的にあれこれいうことは、これまでのことを、恩をあだで返すことにもなりかねません。
 東京は、電力を一方的に当然のように享受してきました。頭ごなしに原発稼働を云々する前に、まずは立地地域の苦悩や思いに目を向けて、彼らにどのように協力すべきか、ともに手を携えて何ができるのか、例えば、福島が立ち直るためにどういった支援ができるのかということを考えることこそが必要だと申し上げておきたい。
 また、我が国が将来どのような形でエネルギーを賄っていき、この国を成り立たせていくのか、そうした観点からこの問題を考える必要があると思います。
 改めて申し上げるまでもありませんが、エネルギーの確保は国家存立の生命線です。エネルギー不足により経済が回らなくなれば、福祉、医療、教育を維持できなくなります。エネルギー不足で先細りする社会では、若者も希望を持てません。
 そこで伺います。現在、政府は、大震災後の状況の激変に対応した将来のエネルギー計画の策定を進めておりますが、その策定状況を教えていただきたいと思います。

○澤計画調整部長 現在、国は、エネルギー戦略につきまして、四つもの検討組織でそれぞれの分野ごとに検討を行い、さらに、それを最終的には統合する形で、この夏を目途に革新的エネルギー・環境戦略を決定しようとしております。
 この四つの組織の内訳を申し上げますと、まず、総合資源エネルギー調査会では、原発、再生可能エネルギー、火力発電、コージェネレーションシステムという電源をいかなる割合で組み合わせるべきかという検討を行っております。また、原子力委員会では核燃料サイクルの検討を、中央環境審議会では地球温暖化対策の検討を、また、コスト等検証委員会では、電源別のコスト算出の検討をそれぞれ行っております。
 当初の予定では、この春を目途に、これら四つの検討組織を取りまとめるエネルギー・環境会議におきまして原子力発電を含めた電源構成について複数の選択肢の原案を提示する予定でありましたが、六月に入り、ようやく原案の中間整理案が出てきたという段階でございまして、革新的エネルギー・環境戦略のこの夏の決定は厳しい状況となっております。

○中屋委員 我が国の将来を左右する重要な計画であり、早急な策定が求められるにもかかわらず、国の検討状況は全く切迫感が感じられません。
 検討の中では、どのような論点と課題があるのか伺います。

○澤計画調整部長 国がまとめた中間整理案では、原発、再生可能エネルギー、火力発電、コージェネレーションシステムという電源の組み合わせを複数設定をいたしまして、それが電力料金、実質GDP、温室効果ガス排出量などへ、どのように影響するのか試算を行っております。
 最大の論点は、電源別の組み合わせ、特に原発の割合と再生可能エネルギーの割合をどうするかでございまして、原発反対派の委員とそれ以外の委員の間で意見が対立し、大震災から一年以上が経過したにもかかわらず、いまだに政府はまとめ切れていません。
 また、試算結果を見ますと、原発の割合が下がりますと、その代替として火力発電の割合が上がるため、燃料費の追加コストがかかり、電気料金が上昇いたします。
 また、それが企業の収益悪化につながり、結果としまして実質GDPが下がるという傾向を読み取ることができます。
 二〇一〇年度現在、二六%である原発割合を二〇三〇年度時点でゼロにするという極端なケースでは、二〇一〇年度実績と比べまして、平均家庭の月額の電気料金は九千九百円から約一万円増加、つまり二倍になります。実質GDPは最大で年間約三十一兆円減少と試算されておりまして、日本経済や家計への影響が最も大きいものとなっております。

○中屋委員 お役所答弁なので、かなりオブラートに包んだいい方ですけど、国の動きが余りに遅いということなんですよね。日本は世界じゅうの新興国から追い上げられて厳しい国際競争にさらされています。
 繰り返しますけれども、エネルギーの確保は日本の存立、日本の国際競争の生命線です。国が将来どれだけの経済成長を目指すのか、そして、そのために必要な電力量はどのくらいなのかを算出して、それをどういう発電方法の組み合わせで確保するのがいいのかということが議論されなければならないといっているわけです。
 しかし、今の国の議論を見ていると、先に原発の割合や再生可能エネルギーの割合を決めてしまって、こういう組み合わせだと電気料金や実質GDPはこうなりますよという試算をしているにすぎないんです。これは全く順序があべこべなんです。将来の日本をどうしようと考えているのか、ビジョンが全く見えない。
 例えば、二〇三〇年時点で原発をゼロにして、再生可能エネルギー三五%にするという選択肢があるが、現状では再生可能エネルギーの比率は一一%にすぎず、これを二〇三〇年までに三五%に引き上げることが本当に可能なのか甚だ疑問です。
 一例を挙げれば、仮に大規模風力発電で使用される二千キロワットクラスの風車で原発一基分の百万キロワットを賄おうとすると、千七百基も必要で、これを百メートル間隔で並べると百七十キロも必要なことから考えても、かなりの理想論であることがわかります。机上の議論と批判されてもやむを得ません。
 私が地元の企業経営者、あるいはビジネスマンの皆さんから話を聞きますと、異口同音に悲鳴に近い声を上げております。全くもって政治は何をやっているんだと、こういわれます。
 昨年六月には、日本電産の社長が、このまま電力不足に加え電気料金の高どまりが続けば、日本に拠点を置くのが難しくなると指摘をしています。このまま電力不安が続けば、企業の海外移転の加速が懸念されるという厳しい現実から目を背けることはできないのです。
 大工場が海外に移転すれば、下請、孫請の中小企業、零細企業の仕事が失われます。関連するサービス業だって痛手を受けます。大工場と一緒に海外に出ていくなんて、そうできるものじゃないんですよ。仕事場が失われて、技術が失われ、若者の希望も失われ、日本経済は一段と落ち込んでいってしまうんです。
 国は机上の議論に明け暮れるのではなくて、経済の現場の声にも十分に耳を傾けて、現実的な検討を進めて、今後の日本経済の成長も見据えたエネルギーの基本戦略を早急に策定すべきなのです。こうしたマクロの議論とともに、電力の問題を考える上では目の前のこの夏をどのように乗り越えていくのかということが重要です。
 昨年の夏は電力不足の影響で、東電管内でも大口需要家に三十七年ぶりに一五%の削減を義務づける電力制限令が発動されました。そんな中、特に製造業では既に徹底的な省エネ対策をとり、さらなる節電が難しかったにもかかわらず、多くの企業が被災地の厳しい状況を我が身に置きかえ、土日や夜間操業などの厳しい対応に取り組み、その結果、大口需要家では、最大二九%もの削減が達成できたと聞いております。
 電力の安定供給が損なわれると、企業、事業者の中でも、とりわけ中小企業や個人事業者に深刻な影響があります。
 そこで、東日本大震災直後の計画停電の実績についてお伺いをいたします。

○澤計画調整部長 東京電力管内では、昨年の三月十四日から二十八日までの平日のうち、合計で十日間の計画停電が実施され、延べ約七千万世帯に影響がございました。
 地区によりまして停電の状況は異なりますが、多い地区では計画停電が合計七回も実施されております。特に、三月十七日につきましては、一日二回、合計六時間の計画停電が実施された地区もございました。

○中屋委員 今ありましたように、計画停電は東京の中小企業にも大きなダメージを与えました。一日三時間の停電でも、例えばメッキ工場では、溶剤を使ってメッキする工程は途中でやめることができません。結局、操業停止に追い込まれた工場も多数出たと聞いております。
 また、計画停電が実施されるかどうかは直前にならないとわからない。実際に計画停電がなかったとしても、工場は製造ラインを一たんとめるなどの対応を余儀なくされたわけです。ほかにも、商店などで豆腐の製造ができない、冷蔵庫やレジが使えないなど、計画停電が中小企業に及ぼす影響は極めて広範にわたり、すべてを述べるにはいとまがありません。
 特に影響が出るのが医療機関です。八王子の病院では、実際に救急患者の受け入れができず、また、手術や検査も延期せざるを得なくなったというケースが発生をしました。これは患者の命にも影響を及ぼしますし、まさに震災の二次被害ともいえる状況にもつながりかねない重大なものでありますことから、昨年四月七日には、計画停電が実施される場合には、できる限り正確な情報が医療機関に周知されるよう政府及び東京電力に働きかけるよう要請する緊急要望を石原知事に行ったところであります。
 ことしの夏は、北海道、関西、四国、九州の四電力で電力不足の見通しで、特に関西は一四%を超える大幅な電力不足の見通しとなっております。これらの管内では計画停電の可能性もあり、昨年の首都圏同様、国民生活や産業活動、経済に重大な影響が及ぶことを懸念されております。
 そこで、東電管内のことしの夏の電力の需給見通しはどのようになっているのか伺います。

○澤計画調整部長 政府の需給検証委員会によりますと、この夏の東京電力管内の供給力は五千七百七十一万キロワットでございまして、平成二十二年並みの猛暑の場合、需要想定は五千五百二十万キロワット、供給予備率は四・五%となっております。
 今回は需要想定に気温上昇リスクを見込んでおりますが、通常は瞬間的な需要変動への対応、計画外の電源脱落、気温上昇による需要増を考慮いたしまして、七から八%の供給予備率が必要とされております。
 また、フル稼働させている火力発電所は、その四割が運転開始から三十五年以上経過した、いわゆる老朽施設及びその予備軍でございまして、万一トラブルが発生いたしますと、一気に電力不足に陥る可能性がございます。
 事実、昨年の夏も火力発電所のトラブルで、最大四百四万キロワットの供給力が低下した日がございまして、この夏も決して安心できる状況ではございません。

○中屋委員 お話ありましたように、老朽火力発電所の事故の可能性という、供給側の話がありましたけれども、まさに需要見通しの方は昨年並みの節電努力を前提としていると聞いております。
 昨年は震災直後で国内の生産水準も低く、緊急対応的に厳しい節電に取り組めたことは不幸中の幸いでありました。しかし、ことしは被災地の復興も本格化し、生産が上昇局面にあり、製造業を中心に昨年はぎりぎりの状況、ことしも同様とすれば大変な苦労。ことしは設備稼働率を上げようと考えていたところ、仕事と生活のバランスを考えると自動車関連産業企業の土日操業といった対策をとるのは難しいなどといった切実な声が上がっておりまして、電力供給を不安視しています。
 今とりあえず去年のようなことにはならないかといって、全く安心してしまうわけにはいきません。気を抜かずに、いざというときにどうするかを考えていかざるを得ないし、またそうした事態がやってくることを想定しないわけにもいかない。まさに想定外ということにならないようにしないといけないことを指摘しておきます。
 一方で、先ほどの質疑の中で、電気料金が一万円上がるという話がありました。電力が不足し、料金も上がるというのでは、事業者にとっても家庭にとってもダブルパンチですよ。原発の代替として火力電力の割合が大幅に高まっていることで電力会社の燃料費負担が増加をし、その追加コストにより電気料金の引き上げが避けられないといわれておりますが、どうなのかお伺いをします。

○澤計画調整部長 本年五月に、東京電力は、経営合理化方針といたしまして総合特別事業計画を発表いたしておりますけれども、これに取り組んだとしましても、原子力発電所の稼働を停止したことによりまして火力発電への依存度が高まり、原価の四割以上を占めます燃料費が大幅に増加し、電気料金への影響が避けられない状況にございます。
 産業界におきましては、製造業、非製造業ともに業績悪化を懸念しておりまして、家庭においても大きな負担増とならざるを得ません。
 東京電力は、ことしの四月に企業向け料金を平均で約一六%値上げをいたしまして、家庭向け料金につきましても、平均約一〇%の値上げを申請しているところでございます。
 この値上げは三年間とされておりますが、平成二十五年度中の柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が前提とされておりまして、仮に再稼働できない場合、火力発電の燃料費の追加コストによりまして電気料金が再値上げされて高どまりする可能性があり、企業、家庭への重い負担が続くことになります。

○中屋委員 東電がさらなるリストラを行うことは当然のことなんですよ。我が都議会自民党も本年一月の電力料金発表以来、再三再四、東京電力の役員から説明を受けております。事業者、家庭の負担について切実な声があることを突きつけ、また質問書を提出して料金値上げの見直しを迫ってまいりました。
 中小企業向けの新しい料金メニューを引き出すなど、一定の成果も上がっておりますけれども、東京電力の努力はまだまだ足りません。今後も徹底して東電に改革を求めていくことをここでお約束をさせてもらいます。
 一方で、リストラだけですべてが解決するわけではありません。現在、取りざたされております燃料費高騰分の料金値上げをなしにするためには年間四千六百六十六億円が必要ですが、会社員がただ働きをしても三千四百八十八億円の財源捻出にしかなりません。
 感情論で東電をたたいているだけでは道は開けません。原発の稼働と電気料金については、原発が稼働しないと代替の火力発電所の燃料費がかさみ、結果として電気料金が高くなるという関係にあります。原発稼働は、電気料金の値上げを通じて、家庭、産業に大きな影響を与えるという冷厳な事実から目を背けるわけにはいきません。
 これまで、立地地域との関係、将来のエネルギー政策との関係、電力供給や電気料金の問題について聞いてまいりました。その議論で改めて明らかになったことが、原発の稼働の是非は、当面の電力の安定供給をどのように確保するかといった短期的な問題や、将来のエネルギーをどうすべきかという長期的な問題など、さまざまな要素を複合的に考慮するということが必要だということです。
 しかし、今回の条例案では、そうした点を排除し、原発の稼働について是か非かという、余りにも単純な二者択一で判断しようとしております。その投票用紙を目にした都民は、昨年の計画停電での苦い思いや、もしかしたら自分の故郷にある原発へのさまざまな思いをどのようにあらわせばよいのか悩むに違いないのです。都民投票という手法では、東電管内の住民生活や産業活動を守る責任は果たせません。
 都として、今取り組むべきことは、都民生活や都内の産業を守るために具体的な行動を起こすことです。都では、既に電力の安定供給や電気料金に関する取り組みを始めていると聞いております。都のエネルギー政策の基本的な考え方と東京電力に対してどのような経営改革を要求しているのか、お聞きします。

○澤計画調整部長 二つのご質問を賜りました。多少長くなりますが、お許しを願いたいと思います。
 まず、都のエネルギー政策についてでございますけれども、都は、東日本大震災後の社会経済状況の大きな変化を踏まえまして、昨年十二月、新たな長期ビジョンとなります「二〇二〇年の東京」計画を策定いたしました。この計画におきまして、今回初めてエネルギー政策を都市政策の中軸に据え、都政における最重要課題と位置づけました。
 そのエネルギー政策の中身でございますけれども、経済成長と低炭素化の両立化を基本に定め、エネルギーの安定供給体制の構築、自立分散型エネルギー源の確保、エネルギー利用の高効率化・最適化、この三つを政策展開の基本的な方向性としてお示しをしました。
 そして、その象徴的な取り組みといたしまして、自立分散型発電を普及拡大し、都内の発電能力を倍増いたします東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトを打ち出したところでございます。今後、このプロジェクトの実現に向けまして、百万キロワット級の高効率な天然ガス発電所の設置、民間の力を最大限活用したコージェネレーションシステム五十万キロワットの導入、都内の全戸建て住宅の六分の一に相当します三十万戸への太陽光発電の整備などによる再生可能エネルギー百万キロワットの創出に取り組んでまいります。
 そして、二つ目の東電に対します経営改革の要求につきましてでございます。
 東電に対しましては、電気料金の値上げの発表に合わせまして、本年一月二十六日に、経営情報などの情報開示、電気事業への民間事業者の参入促進、多様かつ柔軟な電気料金メニューの設定、中小企業等への特段の配慮を求めます電気料金の値上げに対する緊急要望を行うとともに、二月十日には九都県市として、また二月十五日、三月二十八日、六月一日には関東地方知事会として、同様の要請を行ったところでございます。
 さらに、四月二十七日には、都として初めて株主提案権を行使いたしまして、経営理念の確立、経営の透明性の確保、設備投資の競争原理導入、民間事業者を活用した老朽火力発電所設備の更新の推進につきまして提案を行ったところでございます。

○中屋委員 今いわれたことは、我々都議会自民党の考えと、考えが一致しております。ぜひとも今後も強力に進めてもらいたい、このように思います。
 また、我々も経済産業大臣と東京電力に対して、電力エネルギー供給と料金値上げについての緊急要請を行ったところであります。都議会自民党はこうした取り組みを通して、都民への安定的で安価な電力供給を実現してまいります。
 最後に、この都民投票を実施すると、条例上や実務上の問題はないのか伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 条例上や実務上の問題点としましては、まず、未成年と永住外国人に投票資格を認めておりますが、現状では、選挙権や国民投票権は二十歳以上の日本国籍を有する者に認められていることから、現在の法制との整合性などについて慎重な検討が必要でございます。
 また、条例案には投票資格者名簿の作成の時期、名簿登録の基準日についての規定がないことから、投票日時点の投票資格者名簿を事前に調製することが物理的に不可能でございます。これは規定上の問題として不可能でございます。
 さらに、都民投票の妨害行為等について条例で定めることができる上限を超える罰則を定めた法律、国民投票法でございますが、この規定を準用していることや都民投票に関して、法律の根拠なく公務員の政治的行為を制限した地方公務員法の規定の適用を除外していることは、地方自治法の規定に反し、違法でございます。
 加えて、通常の選挙と異なるため、新たに区市町村に対して事務処理特例の手続をとる選挙事務を区市町村に委託する必要がございますが、そういった手続に関する部分ですとか、また未成年者や十六歳以上の外国人を含めた新たな投票資格者名簿を作成する必要があることなどから、条例施行後九十日以内での投票実施は非常に困難であると考えられます。

○中屋委員 今ありましたように、さまざまな問題があることがわかりました。これまでの質疑で確認してきたように、長年電力の供給をしてきた立地地域の意向を尊重せずに、東京で原発の問題を云々するのは避けるべきです。東京が立地地域とのきずなをどのように考えるかという問題です。そして国は、我が国の将来をも左右するエネルギー戦略を早急に立てるべきです。そうしないと都民生活や産業活動を守ることができません。一瞬たりとも電気がとまるようなことがあっては、断じてならないのであります。
 また、電力料金の値上げは、国民生活や産業活動の上で大きな負担になるものであり、とりわけ中小企業などは、それだけで利益の大半が吹き飛んでしまうと悲痛な声を上げております。
 こうした目の前の問題から目を背けるわけにはまいりません。原発の稼働の是非は、当然、安全の確保が第一です。ただ、原発の安全性に対する不安の問題ゆえに、他のさまざまな問題を何ら対策や解決案もないままにすべて無視してしまうわけにもまいりません。
 子どもたちの未来に原子力への不安のない社会を渡してやることも必要だし、先人の努力を受け継いだしっかりとした経済を堅持し、便利で快適な生活を子どもたちの代でも続けられるようにしてやることも必要です。
 そのためには、大きく全体を俯瞰しながら、具体策を通じて電力の安定供給を図り、そして東電に一層の経営合理化などを求めるなどにより、電気料金の値上げを最大限抑えるなど、政治が都民生活や都内中小企業を守っていくことが求められております。
 それには、政治が国家的見地に立ちつつ、都民の生活をよくよく考えながら、複合的に冷静に判断していくしかありません。
 住民投票をやって、具体的に原発の安全性が向上するわけでもなく、この夏の電力不安が解消されるわけでもありません。一自治体である都民の投票に付するべき問題ではないのです。直接民主主義の重要性、住民投票の重要性は認識しております。三十二万人の署名の重みも理解しております。しかし、原発稼働の是非は都民投票にはなじみません。
 以上の理由から、我が党は本条例案には反対することを申し上げて、質問を終わります。

○伊藤委員 都議会公明党の伊藤こういちでございます。
 私からも東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例案について質問をさせていただきます。
 東日本大震災、そして福島第一原発事故は、甚大な被害とともに、これまでのエネルギー政策の課題の核心をつく問題を露呈しました。私たちは、現世代を生き抜く人たち、未来を担う今の子どもたち、そして生まれ来る子どもたちのために現実的な持続可能な社会を構築していかなければならない責任があります。
 一方、このたびの三十二万三千七十六筆もの署名を携えた都民投票条例案に取り組まれた方々、住所、氏名、生年月日、押印までされた方々、こうした方々も、また未来への責任感から都民による直接投票を望み、取り組まれたことと思います。
 都議会公明党は、皆様のこの思いを深く重く受けとめております。
 私からは、まず、都がこのたびの条例案を提出までの請願者の皆様の思いをどのように受けとめているのか、伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 地方自治法の定める直接請求、直接民主制は、間接民主制を補完し、住民自治の徹底を図るもので重要な手段であると認識しております。直接請求は、それを行うために必要な署名数が定められており、法定署名数が集まって初めて請求できるものでございます。今回、二十三年ぶりに法定署名数を大きく超える署名数が集まり、条例制定の請求がなされたことについては、都として重く受けとめております。

○伊藤委員 以下、私からは条例案の各項目について、都の見解を聞いてまいりたいと思います。
 まず、第一条の、中長期的エネルギー政策に係る住民自治を推進とありますけれども、このことについて都の見解を伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 第一条の中長期的エネルギー政策とは、原発を含めた我が国全体の今後のエネルギー戦略と、それに基づいて行われる国の具体的なエネルギー政策を指すものであると考えております。一方、住民自治とは、一般的に地域のことは地域の住民で決めるということを指す言葉でございます。
 したがって、この部分は原発を含めた我が国全体の今後のエネルギー戦略と、それに基づいて行われる国のエネルギー政策に地域の住民の意思を反映させたいという請求者の思いを述べたものであると考えております。

○伊藤委員 次に、第一条の目的に、稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするため、そして、第二条の都民投票の欄には、都民の意思を明らかにするためとあります。原発の稼働に関しては、都民を初め、さまざまな都民の意思、また意見があると思いますけれども、都としてどのような意見があると認識をしているのか、伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 原発の稼働に関して、今回の都民投票条例の制定に賛成する意見が寄せられていることは認識しております。一方で、昨年の計画停電や電力制限令の厳しい経験を踏まえて、電力の安定供給を求める意見も多数寄せられております。昨年の計画停電のときには病院が救急患者の受け入れ停止を余儀なくされたり、手術や検査などを延期せざるを得なくなるなど、都民生活に大きな影響がございました。また、自家発電設備を持たない中小企業などでは、休業せざるを得なくなった。また、交通機関等にも大きな影響がございました。
 さらに、電力制限令が発動された昨年の夏には、大口需要家では一五%の削減が義務づけられ、土日操業などを初めとする厳しい節電に取り組むことになりました。
 原発のかわりに火力発電所をフル稼働させていることによって、天然ガスや原油などの燃料が余分にかかり、発電コストが増加し、電気料金が大幅に上がってしまうことへの不安を訴える声があることも承知しております。

○伊藤委員 第五条の投票資格について、投票日において住所を有し、また年齢満十六歳以上の日本国籍を有する者、年齢満十六歳以上の永住外国人とありますけれども、これは通常の選挙と異なる部分があると思います。
 投票資格者名簿の作成手順で何か違いがあるのか伺いたいのと同時に、また、今回の都民投票にどのぐらいの費用がかかるのか、伺いたいと思います。

○影山選挙管理委員会事務局長 公職選挙法では、選挙人は投票日に選挙権を有することを求められており、同時に選挙人名簿に登録されることが求められております。
 今回の条例案では、十六歳以上の都民や永住外国人にも投票資格を認めておりますので、新たな名簿の作成が必要になり、そのためのシステム開発などが別途必要であると考えてございます。
 また、通常の選挙における選挙人名簿では、あらかじめ名簿作成のための基準日と登録日を定めて名簿の登録を行うとともに、投票日までの間に異動があれば修正や表示を行い、投票日に確定させるという取り扱いをしているところでございます。
 しかし、条例案にはこうした名簿作成の時期や登録の基準日についての規定がなく、そのため、この条例の規定による名簿の作成は困難ではないかと考えております。
 また、経費の面でございますが、都民投票に要する経費は、昨年の都知事選挙での経費、これは決算ベースで四十三億円ほどかかっておりますけれども、それをもとに算定しますと、まず増加要因として、通常の選挙とは異なる十六歳以上の都民ですとか永住外国人を含む新たな名簿の作成に必要なシステム改修経費を十億円と見込んでおります。逆に減少要因といたしましては、ポスター掲示場経費などが不要と考えられますので、そういうことを勘案し、さらに、投票の詳細は規則にゆだねられている部分も多く、その不確定要素を考慮しますと、約四十七億円から四十九億円を要すると見込んでおります。

○伊藤委員 次に、第七条の投票の方法についてでありますけれども、稼働に賛成するとき、稼働に反対するとき、みずから丸の記号を記載との二者択一となっております。
 先ほどの第一条、第二条ともに、都民の意思を明らかにするためという文言がありますけれども、この手法によって都民の意思については反映されるのか見解を伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 原発の稼働については、安全性はもとより、我が国のエネルギー政策、電力の安定供給、電気料金への影響、立地地域への影響、温暖化対策、安全保障など、さまざまな問題を複合的に考慮する必要があり、都民、または企業などがそれぞれのお立場で多様な意見をお持ちになっていると考えられます。
 また、投票を行うことができる個人お一人を見ましても、例えば子どもを持つ親でもあると同時に厳しい競争にさらされている会社に勤める職業人であるなど、さまざまな立場を持ち合わせている場合も多いのが現実でございます。
 そもそも、原発の稼働の是非という複雑な問題に関しまして、多様な意見を単純に二者択一に当てはめようとすることには無理があり、都民の多様な意思が反映されるという点では難しいものがあると考えております。

○伊藤委員 次に、第十一条の情報の提供についてでありますけれども、選挙管理委員会は、都民投票を実施する際、都民投票公報の発行、都民投票広報広告の掲載等、都民投票資格者が賛否を判断するのに必要な広報活動を行うとしておりますけれども、通常の選挙と違い、稼働について、是はだれがどのように作成をして、非はだれがどのように作成をすることになるのか、見解を伺いたいと思います。

○影山選挙管理委員会事務局長 通常の選挙における選挙公報は、公職選挙法の規定に基づきまして、候補者から提出された政見や政策等が記載された原稿を、選挙管理委員会がそのまま印刷し有権者に配布しているところでございます。
 一方、条例案が定める都民投票公報の発行や都民投票広報広告については、こうした作成上のルールは記載されていないところでございます。
 これまで実施されてきた住民投票では、市のレベルにおきまして、住民に身近な施設の設置の是非について、市の広報誌を使って有権者に判断材料を提供した例や、あるいは住民投票の対象事項や内容、投票方法についての周知ですとか案内等の広報を実施してきた例はございます。
 しかしながら、原子力発電所稼働の賛否については、これらの事例とは大きく異なりまして、安全性ですとか電力の安定供給、立地地域への影響など、さまざまな問題が複雑に絡み合った、より多様な意見や考え方が出されると考えられております。
 このような複雑かつ多様な意見や考え方を公正かつ中立に取り扱い、稼働の是か非かの二者択一的な投票の判断材料を提供することは、非常に困難であると考えております。

○伊藤委員 次に、第十二条の都民投票運動及びその規制についてでありますけれども、公務員の政治的行為を制限する法律上の規定は、適用しないとありますけれども、法令上、これは可能なことなのかどうか、見解を伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 条例案では、都民投票運動を、賛成または反対の投票をし、またはしないよう勧誘する行為と定義しております。これは、地方公務員法第三十六条第二項で禁止されている勧誘運動そのものであります。
 法体系の中においては、憲法があり、法律があり、条例という、そういう体系があるわけでございますが、条例は、あくまで法令に違反しない限りにおいて制定できるものであり、ご質問の規定は、条例によって法律の制限を勝手に排除するものであり、違法なものと考えております。

○伊藤委員 次に、第十五条の投票結果の尊重についてでありますけれども、この中には、知事及び都議会は投票結果を尊重、稼働に関する都民の意思が正しく反映されるようとありますけれども、先ほどの質疑でもあったように、原発の稼働に関しては多様な意見があり得ると思われます。そうした多様な意見をどのように尊重し、反映をさせるのか。
 例えば、是と非が六対四とか、あるいは三対七のような場合に、是も非も、どのように尊重し反映させるのか、見解を伺いたいと思います。
 あわせて、東京電力、国及び関係機関と協議してとありますけれども、どのように協議することになるのか、見解を伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 条例案は、有効投票総数の過半数の結果が投票資格者総数の四分の一以上に達したとき、是、または非のどちらかの結果を尊重するよう定めておりますが、そもそも今回の条例のようなやり方では、多様な意見、都民の意思を反映することは難しいと考えております。
 質問の中で、六対四、七対三といいました比較多数の話がございましたが、仮に、この条例が成立して、都民投票を実施した場合に、この問題のように複雑でかつ多様な意見がある問題に関して、二者択一の選択肢のうち、過半数をとった片方の意見を単純に都民の意思であるとすること自体、議論があることと思われます。また、住民投票の結果が出たにしても、原発の稼働につきましては都に権限がなく、国や東電、関係機関に対して、国に対する、例えば提案要求ですとか、東電に対する要望ですとか、そうした強制力のない任意の協議を行っていくことになるところでございます。

○伊藤委員 次に、知事の意見書の各項目について何点か質問をさせていただきます。
 仮に、都民が稼働に反対をし、東電管内の他の八県が原発の電気を必要とした場合、東電管内の九都県のうち、原発による電力を東京だけに送らないということができるのか、伺いたいと思います。
 また、全国の電力供給に影響が及ぶというふうに知事意見の中にありますが、これはどういうことなのか、あわせて見解を伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 原発から東電管内、都民が稼働に反対し、原発からの電気について、それを東京に送らない、東電管内の他の八県が原発の電気を必要とした場合、条例案の対象とする原発の電力について東京だけ送らないことができるかというご質問かと思いますが、立地地域からの送電の系統と都県の境というのは異なっております。したがって、東京だけに原発の電力を送らないということは不可能でございます。
 また、東日本大震災以降、全国的に電力供給が逼迫していることから、電力会社の間で電力を融通し合うことで供給不足を避ける取り組みが行われております。例えば、昨年の夏は、東電管内は大幅な電力不足が心配され、電力制限令が発動される厳しい状況でございました。しかし、この電力不足に対しまして、まず、需要面では、家庭におきまして、それぞれ個人が冷房の温度設定の見直しなど節電に懸命に取り組んだほか、企業では休日の変更、操業時間をシフトさせるなどの工夫や空調設定温度の見直しなど、ピークカットや節電の取り組みを行ったところでございます。
 また、供給面では、それまでは使っていなかった老朽火力発電所の運転を再開させるなど、かなり無理をしてではございますが、一定の供給力を確保しました。
 その結果、昨年の夏は東電管内で計画停電といった事態を何とか避けることができました。さらに、大震災に加えて、豪雨災害に見舞われ、発電所が被災し、発電能力が非常に低下しております東北電力に対しまして、東電管内から最大約二百万キロワットの電力融通も行うこともできました。
 このように、東電管内における電力確保の問題は、都内だけで完結するものではなく、東電管内のほかの八県を初め東北地方など全国にも影響を及ぼすものでございます。

○伊藤委員 続けて、知事の意見書の中に、項目についてお伺いしますけれども、原発の稼働について、知事の意見書の中には国家の安危を左右するということが記載をされておりますけれども、この国家の安危を左右、これについて多くの都民にわかるように説明をしていただきたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 電力は現代社会を支える重要な基盤で、一瞬でも電力の安定供給が途絶えると、国民生活や産業活動に大きな混乱を生じてしまうところでございます。そのことは、大震災後の計画停電の経験からでも明らかでございます。
 先ほどの答弁と一部重複しますが、病院が救急患者の受け入れ停止を余儀なくされたり、手術や検査などを延期せざるを得なくなるなど、都民生活に非常に大きな影響がございました。また、自家発電を持たない中小企業などでは、やむなく休業せざるを得ないといった事態も起こりましたし、鉄道などの交通機関も、本数を減らすとか甚大な影響を与えました。
 他国の例を見ましても、仮に首都東京においてブラックアウト、大停電が発生すれば、首都機能が麻痺することで、さまざまな経済活動だけでなく、医療機関への影響を初め都民、国民の健康など国民生活に与える影響もはかり知れないものでございます。
 また、現在、原発のかわりに老朽火力発電所を含めた火力発電所をフル稼働させておりますが、老朽火力発電所のトラブルによる停止の可能性もあり、CO2排出量の増加に伴う温暖化対策への影響も懸念されるところでございます。さらには、燃料費の高騰によって、電気料金を通じて国民生活や産業活動に大きな影響を及ぼすだけでなく、火力発電所の燃料である化石燃料の大部分を中東などからの輸入に頼らざるを得ない我が国においては、例えば、ホルムズ海峡が閉鎖されたりとか、そういった問題が起こりましたら、輸入が厳しくなるといったことも考えられます。
 したがって、原発の稼働の是非はエネルギーの安全保障にも深くかかわる問題でございます。
 原子力発電は、我が国の主要な電源の一つであり、原発の稼働の是非の問題は、我が国の社会に重大な影響を及ぼすものでございます。

○伊藤委員 このたびの都民投票条例は、稼働についての都民意思を反映できるものになり得るものなのかどうか、都の見解を伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 先ほどの答弁ともちょっと重複する部分がございますが、原発の稼働については、安全性はもとより、我が国のエネルギー戦略、電力の安定供給、電気料金への影響、また立地地域への影響、温暖化対策、安全保障など、さまざまな問題を複合的に考慮する必要があり、さまざまな観点から多様な意見、都民の意思があり得ると思われます。
 したがって、そもそもこうした問題について、このやり方で、そうした意見を的確に反映することは難しいものと考えております。
 また、原発の稼働については、都に法的な権限がございませんので、国や東電、関係機関に対し、提案要求、要望、要請など任意の協議を行い、場合によっては、協議先の対応によっては協議が成立しないこともございます。
 ですから、原発の稼働につきましての都民意思を反映することが、場合によっては難しい場合もあるかと思われます。

○伊藤委員 最後の質問になりますけれども、知事の意見書の中には、都の政策判断に非常に大きな影響を与えるとありますけれども、大きな影響とは具体的にはどういうことなのか、伺いたいと思います。

○山内自治制度改革推進担当部長 この条例による都民投票条例の投票結果は、直接都の判断を義務づけるものではなく、都に投票結果を尊重し、国や東電、関係機関に対して協議することを求めているものでございます。しかしながら、議会で議決され、その議決に基づき実施された住民投票の投票結果は重い意味を持つものでございます。こうした重い意味を持つ投票結果は、原発を含むエネルギー戦略の方向性はもちろんのこと、資源の輸入先の国際情勢、国際社会において世界の国々とどのようにして歩調を合わせて進めていくかということで今苦心をしている地球温暖化対策など、エネルギーを取り巻く状況が複雑に変化していく中で、その変化に的確に対応していかなければならない行政の運営にも大きな影響を及ぼすものでございます。
 さらに、原発の稼働につきましては判断権限を国が有しており、立地自治体との事前協議を行った上で決定するものでございます。仮に、本条例が成立して住民投票を行い、一定の結果が出た場合でも、都はその結果を尊重して国や東京電力との任意の協議をすることしかできないものと考えております。

○伊藤委員 科学の発達とともに、人々の生活を豊かに発展させてきた裏側には、一たび事故となれば人類の手に負えない事態が引き起こされる可能性が潜み、今現実に取り返しのつかない事態が発生していることから目を背けることはできません。
 この現実に直面した私たち公明党は、深く思慮するとともに、エネルギー問題と原子力発電について、三原則を明確に示しております。
 それは、一つ、新しい原発の着工は認めない、二つ、再稼働は確かな安全基準にのっとり、住民、国民の理解を得て判断すべき、三つ、安全・安心エネルギー社会を構築するの三点であります。
 二度と東京電力福島第一原発のような事故を起こしてはなりません。そして、今後、だれ一人として原発による苦しみを味わわせてはいけません。そのためには、原発に依存しない安全・安心エネルギー社会への転換を急ぐ必要があります。
 都議会公明党は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及や電気使用量の見える化などによる思い切った省エネ、節電の推進、また燃料の約六割分を廃熱として捨てている火力発電の効率化などに力を注ぎ、脱原発依存を具体的に進めていきたいと思います。そして、次世代へ安全・安心の東京を引き継ぐことができるよう都民とともに歩んでいきたいと申し上げて、質問を終わります。

○吉田委員 私も東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例案に対し、意見を表明しつつ、知事の反対意見を中心に質問いたします。
 日本共産党都議団は、本条例の制定を求め署名した三十四万余の都民の思いを重く受けとめるものであり、本条例に基本的に賛成するものです。一部意見のある箇所については、修正を提案するものです。
 日本共産党は、そもそも原子力発電所について、稼働の当初から技術的に未完成で危険なものだと反対してきました。また、福島第一原発についても、津波による電源喪失の危険性などについて、国会でも福島県議会でも早くから繰り返し警鐘乱打してきました。
 福島第一原発事故を受け、私たちは原発の撤退を決断するとともに、原発ゼロのプログラムを策定し、その実現に直ちに踏み出すことを提案しています。
 もちろん、原発問題は国民的合意が前提です。今、原発依存からの脱却の方向が国民的に模索されていますが、原発のあり方について国民的討論を重ね、その合意をつくり上げてゆくプロセスが重要と考えます。そのためには多様な取り組みがありますが、今回の都民投票条例も、そうした都民的な討論を広げる一環だと考えます。
 ところが、知事は、条例案に対する反対意見の第一として、先ほどから意見が出されておりますけれども、原子力発電所の是非は国が責任を持って判断すべきであり、いわば都民が口を出すことではないかの主張をしていることは驚きです。
 福島第一原発事故と、その深刻な放射能被害を体験した多くの国民、都民は、政府の安全神話がいかに虚構だったかを知り、もう政府に任せるわけにはいかないとの思いを強めています。それは当然のことだと私は思います。
 そこで、改めて聞きますけれども、知事は福島第一原発の重大な事故の原因として、安全神話を振りまき、国際原子力機関からの警告も無視し、必要な対策もとらずに原発を推進してきた歴代政府の責任があるという認識はないのでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 福島第一原発の事故につきましては、政府の事故調査検証委員会で今検証が進められておりますが、昨年十二月にまとめられました中間報告では、事前の津波・シビアアクシデント対策と事故後の対応の二つを大きな問題点として指摘をしております。特に、事前の津波・シビアアクシデント対策では、いわゆる貞観津波に関する数値シミュレーションなどの新たな知見を国、原子力安全・保安院及び東電が認識していたにもかかわらず、具体的な対策工事に着手していなかったこと、東電の不十分な全電源喪失対応策を中間報告で指摘しております。
 また、不十分な全電源喪失対応策につきましては、同時多発テロを受けて、原発の全電源喪失対応策として、アメリカで義務化された対策を国、保安院が二〇〇八年まで研究していたにもかかわらず、電力会社に伝えず活用されていなかったことが中間報告後の聞き取り調査でも明らかになっております。
 国、東京電力の不十分な事前対策や事故後の対応の誤りなど、不適切な管理、オペレーションが問題と指摘されております。

○吉田委員 今極めて実務的、技術的な話がありましたけれども、私は最大の問題は、歴代政権が電力業界の経営陣とともに安全神話にしがみつき、繰り返しの警告を無視して、重大事故への備えをとらなかったことが今回の深刻な事故を招いた最大の原因だと思います。
 具体的にいえば、例えば、スリーマイル、チェルノブイリという二つの重大原発事故を経て、IAEA、国際原子力委員会は一九八八年、原子力発電所のための基本安全原則の勧告を各国に行いましたが、日本政府はこの勧告さえ無視し、日本では過酷事故は起こり得ないという方針で、過酷事故を防ぐ備えを怠ってきた。そういう根本的な姿勢が私は問われなければならないことだと思います。
 さらに、こうしたこれまでの対応だけではありません。今大きな問題となっています関西電力の大飯原発の再稼働での現在の政府の態度も不信を募らせるものだといわざるを得ません。福島第一原発の事故原因の解明もされていません。政府自身が決めた三十項目の安全対策もとられていません。にもかかわらず、国民生活のためだという理由で、首相は再稼働宣言を行いました。こうした野田首相の再稼働宣言への批判は、原発立地県の知事からも上がっていることに注目を寄せる必要があると思います。
 地元紙によると、新潟県知事は次のようなコメントを上げています。新たな安全神話を創造することになり、極めて無責任だという声です。来年には、柏崎刈羽原発の再稼働が計画をされているだけに、こうした新潟県知事のコメントというものは極めて重く受けとめる必要があると思います。
 さらに、知事の原発容認発言の問題でも、知事に原発問題の判断はもう託すことができないというふうに都民が考えるのは、私は当然だと思います。例えば、知事は原発反対の主張に対してセンチメントというふうに批判をし、要は立地が海岸で悪かっただけであるかのように主張し、繰り返し繰り返し、千葉県鋸山の上につくればいいという極めて非常識な発言を繰り返しております。
 我が党が原発容認の科学的根拠について繰り返し質問しても、いまだに明確な答えはありません。そういう知事の原発に対する認識と対応を見て、知事に託すことはできないと都民の皆さんが思うのは、私は当然の結果だといわざるを得ないと思います。
 次に見過ごせないことは、知事が所信表明で住民投票が国を滅ぼす危険なことになりかねないと発言をしていることです。
 そこでお伺いしますけれども、知事は、どのような理由から今回の住民投票条例について、国を滅ぼすと発言をしているのかお答えください。

○山内自治制度改革推進担当部長 意見書などにおきましては、エネルギーは国家を支える重要な基盤の一つであり、産業経済はエネルギーを消費して新しい富を生み出し、それが医療、福祉、教育、防災、治安などに回り、高度な発達した社会を支えている。しかし、国はいまだエネルギー戦略の明確な方向性を見出せていないし、高度な発達社会を支える我が国の経済を発展させるために、どのようなエネルギーをどれだけ確保するのか、政治が責任を持って決断し、早急に基本戦略を策定すべきとしております。
 また、原発は我が国の主要な電源の一つであり、その稼働の是非は我が国の将来に大きな影響を与えるものでございます。
 そうしたことから、国家の将来を大きく左右する原発につきましては、住民投票という手法で、ただ観念的に是非だけを問い、その結果に効力を持たせることが、結果として国を誤った方向に導くおそれがあると申し上げたものでございます。

○吉田委員 しかし、知事も認めざるを得なかったように、直接民主制、住民投票は、間接民主制、代議制を補完する重要な手段であるということは、知事も形の上では認めていますよね。そうした住民投票制の拡充は、政府の自治制度の検討の中でも、これまで議論をされてきた経過があります。しかも、今回の住民投票は、住民投票の結果の尊重を求めるもので、知事と議会を機械的に拘束したり、さらに代議制を否定しようとするものでは決してないと思います。私たちは、代議制を否定するような主張や必要以上に不信感をあおるような論調に、もちろんくみするものではありません。
 しかし、特定の課題で直接住民が意思を示すことは尊重すべきであり、全国の住民投票実施の経験は大いに評価されるべきだと考えます。
 先ほどからエネルギー問題についてさまざまな議論がありました。エネルギー政策は国の責任でという主張も私は間違っていると思います。なぜなら、東京都自身、自立分散型エネルギー社会を掲げ、東京から新しいエネルギー政策を発信するということについて、知事本局が実務的には中心になってまとめた昨年の「二〇二〇年の東京」の中で、あるいはその実行プログラムの中で明記をしているではありませんか。自分たちでそうした分散型の自主的なエネルギー政策を主張しておきながら、国の責任だからといって、これを退けようとするということは通用しないことだと思います。
 さらに、エネルギーの問題は、社会のあり方にかかわる大問題です。一人一人の生活スタイルにもかかわる問題だからこそ、国民的、都民的議論を行うことは私は重要だと思いますし、必要だと思います。
 さらに、原発問題は、エネルギー問題とともに命と安全にかかわる問題になっているということを注目しなければなりません。
 福島第一原発事故によって、放射能汚染は私たちの住む首都東京にも及びました。先日、日本共産党の調査結果を明らかにいたしましたが、葛飾区水元公園の中で二十五万ベクレル、十一万ベクレル、空間線量でいいますと一メートル高で一・一マイクロシーベルトという高濃度のホットスポットがあり、そうした事態を通じて多くの都民が不安を抱えているのが現実だと思います。
 また、食品などによる内部被曝の不安も払拭することはできません。まさに原発問題は、エネルギーの問題だけではなく、都民の生命、子どもたちの未来に直結をした問題となっています。
 そこでお伺いいたしますけれども、それだけに原発に対する私たち都民の思いを聞いてほしいという、また、その都民の声を尊重してほしいと多くの都民が願うのは当然ではないでしょうか。どのようにお考えでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 繰り返しの答弁になるのでございますが、エネルギー政策につきましては、国が第一義で判断すべきものと考えております。そうした中で住民投票の、ないしは直接民主制の重要性ということについては論をまたないところでございますが、このエネルギー政策に関する原発の稼働に関しましては、一自治体の住民投票にはなじまないものと考えております。

○吉田委員 それは、私は意見を述べました。その上に立って、エネルギー問題だけではなく、命と安全にかかわる問題になってきているのが現実じゃありませんか。そういう立場から多くの都民の皆さんが意見を表明したい、それを尊重してほしいということは受けとめることができないんですか。もう一度ご答弁お願いします。

○山内自治制度改革推進担当部長 さまざまなご意見があることは承知しております。しかしながら、先ほどもご答弁させていただきましたけれども、原発稼働の是非に関しましては、国が安全性はもちろん、経済性、産業政策などを複合的に考慮し、専門的な知見を踏まえ、理性的かつ冷静に判断すべきものであり、都という一自治体の住民投票にはなじまないものと考えております。

○吉田委員 先日、私たちが一メートル高、一・一マイクロシーベルトの具体的事実を示しましたけれども、東京都は調査した結果、〇・九九マイクロシーベルトだったということをもって除染しないという態度をとったことは驚きでしたけれども、今述べた原発を通じて、多くの皆さんが子どもたちの未来を憂い、安全、健康を憂いていることに対して全く受けとめようとしないという態度についても、私は極めて驚きと批判を強める以外ありません。
 そうした都民の思いを拒否し、国を滅ぼすなどと発言することは私は知事の資質そのものが問われる問題だといわざるを得ません。たとえ選挙で選ばれても、常に都民の声に耳を傾けて行政を進めていくのが知事の本来のあり方でなければならないと私は思います。
 次に、選挙資格に関してです。
 条例案が十六歳以上、さらに永住外国人にも選挙資格を付与するということについて知事は反対を表明しています。私は、こうした主張は全国や世界の趨勢からも逆行するものだというふうに思います。
 事実についてご答弁お願いしたいんですけれども、全国のさまざまな住民投票条例がありますが、常設型の住民投票に限って結構ですので、二十以下、十八歳あるいは十六歳以上に投票権を与えている事例はどの程度あるのか、ご答弁お願いします。

○山内自治制度改革推進担当部長 平成二十二年十月現在のデータでございますが、常設型の住民投票条例が施行され、未成年者に投票資格を与えているものは二十四件となっております。

○吉田委員 二十歳以下ということで、二十四件という事例を紹介されましたが、私の見た限りでは十六歳以上ということで見ても、神奈川県大和市を初め、既に実施が始まっています。十八歳以上という点で見れば、広島市、あるいは大阪府岸和田市、大東市などで実施が広がっています。
 また、通常の選挙制度で見ても、私が見た文献では、選挙制度のある百八十九カ国のうち、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアを初め、約九割に当たる百六十六カ国で十八歳以上に選挙権を与えていると。我が党は、戦前から十八歳選挙権を主張してきましたが、実は百年以上以前の民法で規定された二十歳選挙権は時代おくれになりつつあるといわざるを得ないと思います。
 さらに、これは選挙権では今回の場合ありませんけれども、原発稼働についての意思表明を十六歳以上というふうに拡大する点について、あえてこれを抑える必要はないと思います。
 さらに、次に、永住外国人に対してですけれども、全国の常設型住民投票条例で永住外国人への投票資格を認めている自治体を紹介してください。

○山内自治制度改革推進担当部長 平成二十二年十月時点での調査でございますが、この首都圏一都三県で申し上げれば、埼玉県美里町、鳩山町、千葉県我孫子市、神奈川県川崎市、逗子市、大和市の六つの市町で永住外国人に投票資格を認めております。
 総務省によれば、平成二十二年十月現在では、常設型の住民投票条例を施行されている件数が三十七件でございまして、そのうちで永住外国人に投票資格を与えているものは二十四件と聞いております。

○吉田委員 今のご答弁であったように、常設型の住民投票で限って見ても、多数が永住外国人の方々に資格を与えているということになりますし、諮問型という住民投票条例で見れば、さらに、永住外国人に資格を与えている事例は多数を占めているのが現実だと思います。しかも、一九九五年二月に法律をもって選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されるものではないという最高裁判決が下されております。この永住外国人、地方参政権という点で見ても、我が党だけではなく、多くの会派の皆さんがこの点では共通の主張だと認識をしています。
 そもそも地方自治の担い手として納税の義務を負っている外国人に地方参政権を認めることは当然のものだというのが私どもの見解です。
 次に、選挙資格について条例が投票日において都内に住所を有しと規定していることについて、知事意見では、投票日時点での投票資格者名簿を事前に調製することは物理的に不可能としている問題について、お聞きをしたいというふうに思います。
 先ほどからの質疑がありますから重ならない形で行いますが、投票資格者名簿の調製については、本条例では六条で、知事は、都民投票の投票資格者について、投票資格者名簿を調製するものというふうにしております。通常の資格者名簿は、たしか告示日の前日をもってこの名簿を調製するということになっています。
 このように、告示日の前日に名簿がつくられていれば、もちろん、投票日において住所があるかないかということが問われたとしても、何ら物理的に不可能ということではないんじゃないですか。また、投票日という規定を置くのは、これはもう当然のことだと思いますが、いかがでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 今回、その点につきましては、条例案では投票資格者の名簿の作成時期や基準日などの規定がないことから事前調製することができないと意見書では指摘しているものでございます。これは公選法では、第二十二条になりますが、本文に基準日及び登録日を定めております。
 本条例においても、同様に登録の基準日や登録日などの投票資格者の権利にかかわる基本的な事項をあらかじめ条例に定めておく必要があるものであるのが、今回、この条例案にはそういう規定が見当たらないことから、そういった名簿の作成は難しい、困難ではないかということで、意見書では記載したものでございます。

○吉田委員 せっかく選挙管理委員会から出席をいただいておりますけれども、改めて確認をしたいんですが、通常の選挙では告示日の前日に名簿を調製すると。しかし、あくまでも投票資格ということになれば、その投票日において住所を有すると。ないし事前の投票の場合にはその投票日ということもあるようでありますけれども、事前に調製さえしておけば、何ら物理的には投票日当日資格を有するという規定で執行上問題はないんじゃないですか。実際どのようになっているか、改めてご答弁お願いします。

○影山選挙管理委員会事務局長 通常の選挙の場合、区市町村の選挙管理委員会では、告示日の前日を基準日、登録日として、三カ月の居住要件を満たしている者について選挙人名簿に登録しているところでございます。その後、投票日の前日までの間に住所移転などで選挙権を失った者については、選挙人名簿にその旨を表示しておきまして、投票日当日は確定した名簿により投票の管理を行っているところでございます。

○吉田委員 今ご答弁ありましたけれども、しかし、少なくともこの知事意見は投票資格を当日に置いているがゆえに、物理的に調製が不可能だという記述になっていますが、もし、皆さん方の主張だったら、投票資格者名簿の調製日が不明であるという程度の話じゃありませんか。しかも、実際のこれまでの通常の選挙と同じ時期に作成すれば何ら問題が起きないということを改めて指摘をしておきたいというふうに思います。
 次に、投票運動の規制についてです。
 条例案では、原発投票運動の規制について、罰則を伴う規制をしようとしており、しかも、日本国憲法の改正手続に関する法律の準用というふうにしています。しかし、住民投票において、既に十二条一項で規定しているようなルールが定められています。したがって、私どもは、罰則まで科すことは適当ではないというふうに考えます。
 そもそも諮問型住民投票は、住民の自由な研究、討論を通じて問題についての認識を深化させ、政策についての民意を形成するところに意味があり、そのプロセスは最大限自由でなければならないと考えます。その意味で条例案が運動の自由を明記し、自由な意思を拘束、あるいは不当な干渉ということで考え方を示していることは当然ですけど、にもかかわらず、住民投票に広範な罰則、禁止を持ち込めば、住民運動が警察の監視のもとで展開されるという危険もはらみます。しかも、準用される刑罰の上限は三年以上の懲役ということで矛盾が生じます。
 しかも、私も改めて調べてみましたが、全国の住民投票条例では、すべてとはいい切れないかもしれませんが、私の見た限りでは、多くは罰則規定というものは設けておりません。それで何ら支障なく進められてきたのが現実ではないかという意味から、私どもはこの十二条二項の罰則規定は適切ではないというふうに考えますし、ましてや法曹界でも意見のある日本国憲法の改正手続に関する法律を準用するということは適切でないと考え、これは削除をするという修正案を準備しているところです。
 次に、同じく十二条の次の三項に関してですが、知事は、地方公務員法三十六条、政治的行為制限の規定を通用しないとしていることについて、地方自治法の規定に抵触するとして反対を表明しています。
 私たちは、地方公務員への不当な規制は見直しをすべきと思いますけれども、少なくとも、現行の地方公務員法で禁止をされている対象には自由な討論によって民意の形成を図る、こうした住民投票というものは含まれていないというふうに解釈をして妥当ではないかというふうに考えます。
 したがって、提案されている条例案は妥当であるというふうに考えます。
 最後に、知事意見で、立地地域やその住民への考慮の必要性を強調している点です。先ほどから議論がありました。もちろん、稼働の是非において立地自治体、その住民の意向は尊重されなければならないことは当然です。別に無視するなどというふうに、私は条例はなっていないと思います。条例は、十五条で、東京電力、国及び関係機関と協議し、都民の意思が正しく反映されるように努めなければならないというふうに規定しています。先ほどからもご答弁がありましたけれども、都民投票の結果が出たとしても、東京電力、国及び関係機関等々と協議をするということがそもそも条例では定められているわけですよね。そういう意味からすれば、立地自治体を盾に都民が電力の供給を受ける原発の稼働について意見をいうべきではないというふうに抑えることは、理由が成り立たないし妥当ではないというふうに思います。
 立地自治体、立地自治体というふうに強調しますけれども、私はどうしてもこの点聞いておきたいことがあるんです。
 そもそも知事は、考慮すべきといいながら、あるいは原子力発電所に向き合ってきた立地地域やその住民に支えられてきたということも述べていますけれども、石原知事自身、柏崎刈羽原発が立地をする柏崎市を訪問し、市長や市民と意見交換をしたことがあるのかということを質問いたします。

○雜賀総務部長 福島第一原発の事故以降、石原知事が柏崎市を訪れた事実は確認できておりません。
 ただ、なお、柏崎とともに、本条例に福島が示されておりますけれども、福島につきましては、震災二週間後の三月二十五日に訪れまして佐藤知事ほかと意見交換したほか、先日、都の呼びかけでも関東地方知事会が福島で開催されまして、その後、佐藤知事などとも意見交換をしております。

○吉田委員 私は本条例の検討のために柏崎刈羽原発を調査するとともに、柏崎市長にもお会いし、話を聞いてきました。現実に五千人も地元住民が原発で雇用されている現実の中で、市民の安全をどう守るのかという点では重い責任が問われていることを痛感しました。しかし、市長は、福島第一原発の事故を受け、もはや原発は安全とはいえない、中長期的には、原発に依存しない方向に進むべきだということを私たちに明確に答えられました。
 さらに、柏崎刈羽原発について、我が党の代表質問に対し、知事は具体的な危険性を指摘しながら答えることはできませんでした。柏崎刈羽原発は、地下に活断層が複雑に走っている上に存在し、火災を起こした五年前の中越沖地震から、いまだに完全な復旧には至っていません。
 最近では、過去の津波の痕跡も確認されました。また、使用済み核燃料は既に許容量に対して、一号機は九五%、全体でも八割近く。私が東電に聞きましたけれども、三年で満杯になるという現状です。こうした危険性をはらんでいることについて、我が党は具体的に本会議でも質問しましたが、知事は原発立地、原発立地といいながら答えることはできませんでした。
 ちょっと感情的になっていますけれども、実は私の実家は柏崎刈羽原発から二キロのところにあります。多くの同級生は、なぜ原発設置のときに反対できなかったのかということを悔やんでいます。私の同級生は、原発差しとめの請求の原告代表となって立ち上がっています。私は、福島、そして柏崎の立地地域の住民と東京都民がともに力を合わせ、原発から脱却の道を模索すべきだと考えます。
 また、原発立地の再生は容易なことではありません。再生と復興は国の責任ではありますけれども、東京都も可能な限り手だてを尽くすべきだと思います。
 最後に、原発問題に対する見解を述べさせていただきます。
 福島第一原発の事故を通じて、一たび事故が起き放射性物質が外部に放出されれば、被害は空間的にもどこまでも広がり、時間的にも将来に影響を及ぼし、さらに地域社会の存続を危うくする異質の危険があることが浮き彫りとなりました。
 また、現在の原発技術は本質的に未完成で危険なものであることが福島第一原発の現実は教えています。さらに、世界有数の地震国、津波の危険が高い日本に集中的に立地することも原発の危険性を深刻にしています。したがって、原発からの撤退、自然エネルギーの本格導入に向け、国民的、都民的討論を広げ、合意を広げていくことを心から呼びかけるものです。
 もちろん、原発についてはさまざまな意見があります。しかし、今こそ、この原発問題にどう向き合うかが国民、都民に問われています。都民投票は、そうした都民的な議論の場となる意味で極めて重要だと考えます。
 以上で私の質問を終わります。

○吉倉委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時九分休憩

   午後三時二十五分開議

○吉倉委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○星委員 よろしくお願いをいたします。
 昨日の意見陳述を聞かせていただき、改めて三十二万三千七十六筆の都民の署名の重さをずっしりと感じるとともに、それぞれの立場、思いでこの運動の輪を広げてきた請求代表者の方々の熱い思いと説得力のある陳述内容、そして真摯な姿勢に心を打たれました。
 直接請求制度は、鈴木元知事が自治省官僚時代に導入されたものと聞いておりますが、署名集めは、その受任者となった人が住む自治体でしか署名を集めることができないルールとなっており、仕事や活動の場がほかの自治体にある人も多いことや、印鑑もその場不所持の人も多く、拇印を押すことへの抵抗があるなど、東京という大都市で行うにはシステム的に無理が多くなっています。
 そんな中で、真冬の寒さの中、街頭で集まった三十二万もの署名の重さを私はしっかりと受けとめたいと思います。
 まず、都民の権利として、選挙権と並んで直接請求権がありますが、これまで東京都に出された直接請求による条例提案はどのくらいありましたでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 都におきましては、過去に合計六件の直接請求に基づく条例案が都議会に付議されております。昭和二十七年の公安条例を廃止する条例案、昭和四十八年の日当たり条例を制定する条例案、昭和五十五年の環境アセス条例案、それと昭和五十七年の私学助成条例を制定する条例案、それから平成元年のいわゆる四十人学級条例案と、もう一つは食品安全条例案ということで、過去に六件条例制定が請求されております。
 ちなみに、住民投票に関する直接請求は、今回が初めてのものでございます。

○星委員 それらの直接請求が、都議会で通ったということはなかったということだと思います。
 住民投票条例は、全国でもかなり多くの直接請求が行われたと思いますが、その件数と内容及び成否はどうだったのでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 総務省の調査が平成十九年、二十年の二カ年ということなので、その範囲でお答えさせていただきますが、その二カ年におきます住民投票条例の直接請求は二十六件でございます。このうち、市町村合併に関する住民投票条例は十一件付議され、三件が可決され、一件が修正可決されております。
 また、市町村合併以外に関する住民投票条例につきましては、十五件が付議され、このうち一件が可決されております。

○星委員 次に、投票資格についてお伺いをいたしますが、小さな自治体における市町村合併の是非を問う住民投票条例では、未成年者を認めている事例もあるのではないかというふうに思いますが、先ほどもお答えがあったと思いますけれども、この事例についてお答えをいただけますでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 市町村合併の是非を問う住民投票で、未成年者に投票資格が与えられている事例があることは承知しております。
 秋田県の岩城町で実施された市町村合併の相手方選択の住民投票におきまして、初めて未成年者に投票権が与えられました。また、住民投票に関しては、先ほどご紹介したような関係でも未成年者に投票権が付与されております。
 今回の条例案に関してですが、本条例案の対象になっている原子力発電所の是非につきましては、非常に複雑かつ複合的な判断が必要ということで、未成年者に対する投票資格の付与については、現在法制との整合性などについて慎重な検討が必要であると考えております。

○星委員 私どもの調べた調査なんですが、国立国会図書館に資料がある百八十五の国や地域の選挙権年齢を見ますと、十八歳を基準にしているのは百五十四、つまり、八三%ほどです。二十を基準にしているのは日本や台湾、モロッコ、カメルーンなど七カ国、わずか四%でしかありません。
 世界的な潮流は、十八歳選挙権です。日本では、地方自治体の条例などで投票年齢引き下げを先取りしている例があります。神奈川県大和市では、二〇〇四年十月四日、同市議会本会議で、十六歳以上に住民投票権を与える自治基本条例を賛成多数で可決しました。常設の住民投票条例では、十八歳以上に投票権を与えた広島市や愛知県高浜市などの自治体は複数ありますけれども、大和市の十六歳以上への投票権付与というのは、これは全国初でした。
 市の自治基本条例の素案策定を目的に、公募市民二十六名を含む三十二人で構成したつくる会、これが二〇〇二年十月から実に百三十回以上もの討議を重ね、地方自治の次の担い手となる子どもたちが政策づくりにかかわることが必要であるということ、子どもの権利を明記し、子どもは年齢に応じて政策形成等に参加することができるとしています。住民投票の投票権でも、子どもの権利を尊重し、義務教育を終えた十六歳以上に権利を拡大することにしています。
 国の憲法改正を問う国民投票法、これがいいかどうかは別にしても、これでは十八歳を投票資格としていますが、実際に十八歳を基準にした有権者名簿の用意は、現在どうなっていますでしょうか。

○影山選挙管理委員会事務局長 都内の区市町村選挙管理委員会では、平成二十一年度及び二十二年度の二カ年にわたり、年齢満十八歳以上の者を被登録資格者とする国民投票のための投票人名簿を調製するために必要となる投票人名簿システムを構築したところでございます。

○星委員 ということでありますと、十八歳であれば新たに名簿をつくる時間と費用は、それほど必要ないというふうに私は感じます。
 次に、永住外国人を含む住民投票条例の事例についてお聞きをしたいというふうに思いますけれども、先ほど吉田理事からも同様の質問が出ておりますので、私は意見として申し上げたいと思います。やはり地域の構成者として当然のこと、永住外国人の方にも、投票の資格というものは同様に与えるべきではないかなというふうに思っております。
 次に、これまで行われた住民投票では、選挙管理委員会ではどのような広報活動を実施してきましたでしょうか。

○影山選挙管理委員会事務局長 これまで行われました住民投票のうち、都道府県単位で実施されたものは、沖縄県で平成八年九月に実施された日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票のみと聞いております。この投票に際しましては、県選挙管理委員会ではなく、県知事が投票に関する事務を行うとされ、実際の広報活動として、テレビ、ラジオのCM、新聞広告、広報誌、ポスター、チラシの発行、講演会の開催等が行われ、県民投票で問う内容や投票方法等についての周知が行われたと聞いております。
 そのほか、市町村において選挙管理委員会が広報を行った事例としては、例えば、埼玉県富士見市で平成十五年十月に合併をめぐる住民投票が実施されており、その際、市選挙管理委員会は、投票の対象事項、投票日時、投票所の案内等を広報等により有権者に周知する情報提供を行っているところでございます。

○星委員 次に、東京都における直近の直接請求についてお伺いをしたいと思います。
 先ほども六件という中にありましたけれども、食品安全条例の直接請求のことですが、一九八七年に起きたチェルノブイリ原発事故による食品の放射能汚染を経験したことで東京都民の危機感が大変高まり、一九八九年、東京都に食品安全条例制定を求める直接請求、これは五十五万筆という大量な署名数でしたけれども、集めて提出されました。
 このときのことは、私自身も、実は乳飲み子を抱えておりましたので、大変、記憶しております。輸入食品のみならず、国内の生産物においても放射能汚染に脅かされ、大変不安な気持ちでおりました。食の安全について強い関心を持ったきっかけともなっています。ですから、今日、子育て中の方々の大変不安な気持ちは痛いほど理解できます。
 この直接請求による食品安全条例についての審議経過についてお伺いをいたします。

○山内自治制度改革推進担当部長 食品安全条例につきましては、平成元年九月十八日、第三回定例会に付議され、総務生活文化委員会に付託後、継続審査となりました。その後、同年十一月に、総務生活文化委員会におきまして請求代表者からの説明を聴取するとともに、同年十二月には、同じ総務生活文化委員会において参考人からの意見聴取も行っております。その後、平成二年三月に、第一回定例会で議決され、否決されました。

○星委員 継続審査が行われ、そして参考人からも意見を聴取したというようなことを記憶しております。大変丁寧な審議が行われたということも記憶をしております。
 このときに付された鈴木知事の意見ですが、消費者生活が多様化、高度化、個性化する中で、輸入食品の増加や放射能による食品汚染、残留農薬等の問題が指摘され、都民の間に食品の安全性についての関心が高まっているとしながらも、既にある食品衛生法、農薬取締法、東京都の消費生活条例による調査研究機能の強化、情報の収集提供体制の準備等を推進していくことで、条例案の目的とする食品の安全性の確保は図られるものと考えられるので、新たに条例案を制定する必要はないというものでした。
 東京都消費生活条例は、一九七五年に制定されたものですが、第八条に、実は申し出制度というものが設けられました。これは大変画期的な条項で、審議も三回の定例会にわたって熱心に、記憶をしております。この申し出制度というのはどういうことかと申しますと、単に個人が消費者被害や苦情を申し立てることだけではなくて、例えば、輸入バナナの残留農薬調査を求めるなど、行政に調査を依頼し、そして、その結果を公表させることができる消費者の権利をまず認めたもので、大変すばらしい制度だったというふうに思っております。現在も、これは当然のごとく利用をされています。
 直接請求による食品安全条例の制定ということは実現はしませんでしたけれども、このことをきっかけに食品安全にかかわる予算は、検査機器の整備や食品監視センターの整備などで倍増するとともに、食品安全行政連絡会議や消費生活対策審議会に食品等安全対策部会が設けられました。
 チェルノブイリ原発事故による放射能汚染についても、健康安全研究センターで大気中の放射性濃度や輸入食品の検査などの測定が今日もずっと続けられてきたことを今回の事故で改めて再認識、再確認することができました。
 二〇〇四年、石原知事になってから、BSE問題や食品偽装などが相次ぐ中で、知事提案で東京都食品安全条例が制定され、全国の自治体に食品安全条例がつくられていく先鞭をつけたものと受けとめています。
 食品衛生法や農薬取締法など生産する側を取り締まるだけではなく、消費者は安全なものを食べる権利があるという立場から発想しての条例がつくられたことは、まことに意義深いものだと思います。
 次に、福島原発事故以降の対応について、お聞きをしていきたいと思います。
 今回の事故以降、食品の放射能汚染に対する都民の関心は非常に高まっていますが、食の安全に関する東京都の基本的な考え方についてお聞きをいたします。

○澤計画調整部長 食品の安全確保は、都民が健康的で豊かな生活を送るための基礎となるものでございます。
 都は、昨年十二月に制定いたしました新たな長期ビジョン「二〇二〇年の東京」計画の施策の十八、住み訪れる人が安心・快適に過ごすことができるまちをつくるにおきまして、食の安全・安心を守る取り組みの強化を重要な政策の一つとして位置づけております。
 今後も、食品に対する検査体制の充実によりまして、被害の未然防止及び拡大防止を図るとともに、緊急時において迅速な対応が可能な体制を強化するなど、食品の安全・安心確保対策を推進してまいります。

○星委員 これまで食の安全・安心の確保に向けた取り組みといえば、事業者の衛生管理の徹底と輸入食品の検査などが中心でしたけれども、国産といえども安心できるものではなくて、衛生管理を徹底しても十分とはいえない状況にあります。
 すべての食品が放射能に汚染されていないかどうかが、特に子どもを持つ若い家族にとっては最大の問題になっており、原発からできるだけ遠いところに転居した人も少なくありません。原発の是非を問う都民投票の活動に今回積極的に参加したのも、この世代であったと私は聞いています。
 そうした感覚を、過剰反応だとかセンチメントと片づけてしまうことは大変問題だというふうに私は思います。
 「二〇二〇年の東京」の実行プログラム二〇一二に、食の安全・安心を守る取り組みの強化を重要な政策の一つとして位置づけられたのは心強いですが、具体的に未然防止の観点で見直しをしなければ、福島原発事故の教訓を生かしたことにはならないというふうに考えます。
 ところで、今回の原発事故は、立地地域だけの被害にとどまらないことが明らかになりました。東京都も放射能測定を拡充し、都民要望にこたえて、放射能汚染対策をこの間進めてきております。
 これらに要した費用及び今後も長く続く対策についてお伺いをいたします。

○澤計画調整部長 東日本大震災の発生を受けまして、都は、首都として直ちになすべきことを取りまとめた東京緊急対策二〇一一を昨年の五月に策定いたしました。
 その中におきまして、放射能測定体制の強化と正確な情報提供などの事業費といたしまして約百三十億円を計上いたしました。
 また、同年十二月に策定した「二〇二〇年の東京」への実行プログラム二〇一二においても、都民の安全・安心を目指した放射能対策の充実といたしまして、必要な事業費を計上いたしております。
 引き続きまして、都内八カ所のモニタリングポストでの測定やゲルマニウム半導体核種分析装置等での検査体制を強化するとともに、都内産の農林水産物や流通食品等に対する継続的な検査を実施いたしまして、放射能対策に取り組んでまいります。

○星委員 今のお答えにありますように、今後も、本当に長く東京都も対策をとっていかなければならない、まさに大変な問題が今起きているんだなというふうに思っております。
 昨年五月に策定した緊急対策二〇一一において、放射能測定体制の強化と正確な情報提供の事業費として、今約百三十億円が計上されて測定機の購入などが実行されたというお答えいただきましたけれども、情報の真偽について、都民の信頼というのは、まだまだ私は十分とはいえないというふうに思っています。現在、都民自身が自分で測定をするというようなことも起こってきておりますけれども、こういったことについても東京都は今後支援をしていくことが重要だというふうに考えています。
 二十五年前のチェルノブイリ原発事故の影響は、現地ではいまだに続いております。子どもの健康診査や食品の放射能検査などが身近な学校などで受けられるよう、理科の先生を中心とした体制も構築しています。
 東京都においても、子どもへの放射能の影響を最小限にするために継続的な測定体制を整備していく必要があるというふうに思います。
 それでは、エネルギー政策は果たして国が決めるべきものなのかということについてお聞きをしたいと思います。
 知事は、エネルギー政策は国が決めるべきものというふうにいっておられますが、東京都が発信することの重要性は、実は知事自身がこれまでいろいろな場面で何度もいってきたことです。エネルギー問題について伺うのは、この条例案にとって必要な議論だからです。
 東京都は、二〇〇八年三月に策定した環境基本計画において二〇二〇年までに東京の温室効果ガス排出量を二〇〇〇年比で二五%削減することを定めました。また、二〇五〇年には少なくとも現在の半分以上削減するという将来像が述べられています。これらは、バックキャスティングの考え方を踏まえて目標値を設定したもので、さらに再生可能エネルギー戦略で、再生可能エネルギーの利用目標を二〇二〇年までに二〇%程度に高めることを目指すとしています。こうした目標は非常に意欲的なものとして私は評価しています。
 三月の定例会の討論で、パラダイムシフトの必要性を述べさせていただきました。多くの方々が三・一一以前と以後で時代が変わったというふうに感じています。バックキャスティングの考え方は、まさに社会全体の規範や価値感が変わるパラダイムシフトの出発点です。
 知事は所信表明で我々がどの程度の経済成長を目指し、そのために、いかなるエネルギーをどれだけ確保していくのか大きなシミュレーションを行うことだといっておられますけれども、環境問題においては、もはや積み上げ方式の考え方では解決できず、必要な将来像を描くこと、それに向けてロードマップをつくる手法が求められています。
 つまり、原発のある社会を選ぶのか、原発のない社会を選ぶのかを出発点にして、そこに向けて電力システムのあり方そのものを問い直し、何が必要かを考えていくのであるというふうに思います。
 東京都の意欲的な目標は、数字についてもそうですが、何といってもこのバックキャスティングの考え方をとったことに先見性、先駆性がありました。東京都は、再生可能エネルギー戦略や地球温暖化対策指針などを策定、環境確保条例を改正し、キャップ・アンド・トレードの仕組みを導入するなど、創エネ、省エネともに先駆的、積極的に取り組んでおります。新たなエネルギーをつくり出すという点でも自立分散型発電を進めています。
 東京産電力について、そのメニューと目標を改めてお伺いをいたします。

○澤計画調整部長 都は、「二〇二〇年の東京」計画におきまして、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトを打ち出したところでございまして、今後、百万キロワット級の天然ガス発電所の設置やコージェネレーションシステムによる発電五十万キロワットの導入、太陽光発電などの再生可能エネルギー百万キロワットの普及などを進めてまいります。
 このプロジェクトを強力に推進することによりまして、新たに三百万キロワットを生み出し、都内の発電能力を倍増してまいります。

○星委員 今お答えがありましたように、東京都は自立分散型エネルギーの一つとして、コージェネレーションシステムの導入を積極的に進めているのは存じ上げております。
 規模の大きなビルだけではなくて、家庭用コジェネについても推進していますけれども、この取り組みについてもお伺いをいたします。

○澤計画調整部長 平成二十三年度の東京ガス管内におけますコージェネレーションシステムによる発電は、約百五十万キロワットとなっております。このコージェネレーションシステムというのは、発電とともに発生した熱を、冷暖房や給湯などに有効利用する非常に高いエネルギー効率を実現するシステムでございます。
 「二〇二〇年の東京」計画では、このシステムによる五十万キロワットの創出を目指しておりまして、自立分散型発電の拡充を図ってまいります。

○星委員 東京における再生可能エネルギーにつきましては、導入への補助金などで太陽光発電がふえ、二〇一〇年度末には二〇〇四年度末と比較して約五倍に拡大をしております。太陽光発電にも積極的に取り組んでおりますけれども、来月から始まります固定価格買い取り制度によって、さらなる拡大が期待されています。
 再生可能エネルギーの普及についてお伺いをいたします。

○澤計画調整部長 都はこれまで、集中的な補助事業によります太陽光発電の導入支援などを行っておりまして、平成二十二年度末現在で都内には約十二万キロワットの太陽光発電設備が導入されております。
 今後、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトにおきまして、都内の全戸建て住宅の六分の一に相当します三十万戸への整備を進めるなど、九十万キロワットの太陽光発電の導入を強力に推進してまいります。

○星委員 再生可能エネルギーについて、るるお答えをいただきましたが、今のご答弁にあるように、東京都全体の計画でもあります「二〇二〇年の東京」でもエネルギーをつくり出すことについては重要なテーマとして述べられておりまして、東京産の電力を三百万キロワット創出するというふうにしております。環境局でもさまざまな施策を展開しております。
 こうした自立分散型エネルギーをふやしていくことが原子力発電への依存度を下げていくことに、まさにつながるというふうに思います。
 家庭用コジェネや太陽光発電に見られますように、自立分散型エネルギーは都民の参加で進めていくものです。ライフスタイルの見直しを含めて、まさにこの都民の参加による再生可能エネルギーの使用、選択ということは、これからの私たち自身に突きつけられています。都民の意思を問う都民投票の意義は、エネルギーについて、都民参加で考えることではないかというふうに私は解釈をしています。
 次に、三・一一以降、節電意識やライフスタイルの見直しなど省エネ意識が高まっています。それらの意識啓発がこのまま原発依存でいいのか否か、直接請求の輪の広がりに結びついたのではないかというふうにも感じています。
 そこで、省エネの取り組みについて少しお伺いをしたいと思います。
 電力需給の逼迫が心配された昨年の夏ですが、省エネキャンペーンによる事業者や家庭の節電が功を奏して、東京都内でもかなりの電力消費量の削減が達成できたとのことであります。今後、家庭での省エネをさらに進めるためには、市民のエネルギー問題への関心を高める啓発が必要であり、今回の直接請求を通じて、市民の間にエネルギー問題への関心が高まったことを前向きにとらえるべきだというふうに考えます。
 全体でどれくらい減らすことができたのか、また、大口、中小、家庭、それぞれについてどれくらい節電が進んだのか、お伺いをいたします。

○澤計画調整部長 東京電力によりますと、東京におけます昨年八月の電力消費量は、対前年同期比一八・七%の減となっております。
 また、大口需要家、小口需要家、家庭におけます昨年八月の電力消費量は、対前年同月比で、それぞれ一八・五%、一九・七%、一七・六%の減となっております。

○星委員 東京での電力消費量の削減は、これまで東京都がキャップ・アンド・トレードを国に先駆けて制度化し、事業者の省エネ、排出削減を誘導してきたことの成果でもあります。一五%削減は、緊急の取り組みではありましたけれども、達成できたのは、これまでの取り組みの積み上げ、積み重ねの結果であると考えられ、電力消費量の削減の定着についても期待できる。実際、昨年の原発事故を経験し、高まった省エネ意識を現在も維持している都民は大変多いというふうに思います。
 東京都では、先月、省エネ・エネルギーマネジメント推進方針をつくりました。賢い節電の普及を図っています。全体の電力使用量が減れば、再生可能エネルギーの割合が高まるし、それだけ原発に頼らないで済むことになります。
 質問に戻りますけれども、原発の是非を判断するためには、判断の材料となる情報が正しく提示されることがまず大前提だというふうに思います。エネルギーの需給に関する情報もその一つであると考えます。
 これまで東京電力は、ずっと電気が足りないといってきましたが、現在、日本で原発は一台も動いていないにもかかわらず、電力不足は起こっていません。ことしの夏の電力需給の見通しについて国で検討されましたが、その試算はどうなっていますでしょうか。

○澤計画調整部長 政府の需給検証委員会によりますと、この夏の東電管内の供給力は五千七百七十一万キロワット、猛暑を前提といたしました需要想定は、五千五百二十万キロワットであり、供給予備率は四・五%などとなっております。
 この見通しは、需給想定に気温上昇リスクを見込んでおりますが、通常は瞬間的な需要変動への対応、計画外の電源脱落、気温上昇による需要増を考慮しまして、七から八%の供給予備率が必要とされております。

○星委員 ご答弁のとおり、東京電力管内では、これは猛暑の場合でも四・五%の予備力があるというようなことです。もちろん、節減努力が必要であることは当然ですが、NGOの試算ではさらに余裕があるという主張もございます。
 ことしの夏は東京電力管内に原発の電気は来ないことが確実になっておりますけれども、猛暑であっても電気は足りるということです。しかも、国は、大飯原発を再稼働しようとしておりますけれども、関西電力管内で昨年の東京で実施したような節電対策を施すこともなく、東京電力から関西へ電気の融通も見込まれております。
 原子力発電所稼働の是非を東京都民に問うことは、自分が使っているエネルギーについて考えることになり、原発のある社会を選ぶのか、原発のない社会を選ぶのかを都民自身が議論することになる、自立分散型のエネルギーを推進し、都民の省エネ努力を促す東京都の施策を私は後押しするものというふうに考えています。
 これからのエネルギー政策についても、少し質問をさせていただきたいと思います。
 一度原発事故が起きれば、人間の予測と制御を超えてしまうことを、今回の福島第一原発で私たちは経験しました。政治が果たすべき責任は、産業界だけではなくて、子どもたちや将来世代に対するものであると考えますけれども、見解をお伺いしたいと思います。

○雜賀総務部長 政治行政の果たすべき役割についてでございますけれども、まず、エネルギーは、社会を支える重要な基盤の一つでございまして、産業経済はエネルギーを消費して新しい付加価値を生み出し、その中から貴重な税金を納めていただきまして、その税金は教育、福祉、医療、環境などに回って、高度に発達した社会を支えてございます。
 都は、この貴重な税金を財源としまして、例えば、都立高校改革、あるいは私学助成の充実など教育の質の向上といった教育分野、さらには都独自の認証保育所制度創設を初めとする保育サービスなど子育て分野、東京ERの設置による救急医療体制の強化など医療分野、またディーゼル車規制などの大気汚染対策、さらには委員からもお話がございましたキャップ・アンド・トレード制度による地球温暖化対策などの環境分野など、さまざまな分野で先進的な施策を積極的に実施してきてございます。
 このように、エネルギーを基礎としたさまざまな都市活動における施策を多様に展開し、将来世代も見据えた政策を行うということでございます。

○星委員 今回の福島第一原発の事故は、それを引き起こしたきっかけは大地震と大津波ではございますけれども、それに対する備えがなかったということが全世界に放射能をばらまく大災害につながったというふうに思います。
 しかるに、日本海側には大津波が来ることはなく、福島レベルの過酷な事故は起きないという想定のもと、生活や産業に対する今夏の電力不足を解消するための政治責任ということで再稼働に踏み出しました。にもかかわらず、関西電力大飯原発三、四号機の再稼働は期間限定ではないという総理の発言に私は違和感を感じております。
 今後のエネルギー政策を示さないままで、なし崩しの再稼働は大変問題であるというふうに考えております。
 また、福島では、運転を停止していた四号機の使用済み核燃料への不安が大きくなっています。もし、再稼働されれば今後もふえ続ける使用済み核燃料の処理をどうするのか。これまでも、トイレのないマンションとやゆされ、再処理の見通しもないまま保管される原子力のごみに対し、後世の人々にどのように申し開きをするのでしょうか。
 次に、東京都交通局では、電気事業を多摩の三カ所の水力発電所で行っている関係で、東電の株を取得しておりますけれども、これまで、株主として、総会で発言してきたことはなかったというふうに私は聞いています。東電の筆頭株主である東京都は、今回、株主として東電にどのような対応をしてきたのか、お伺いをいたします。

○池田政策部長 東京電力が顧客サービス第一を使命とする電力会社に生まれ変わるためには、不退転の覚悟でみずからの経営改革に取り組む必要がございます。
 こうした認識のもと、筆頭株主としての使命を全うするため、本年四月二十七日、東電に対し東京都として初めて五項目から成る株主提案を行いました。これら提案のうち、特殊法人改革などに実績のある公認会計士を社外取締役に推薦した件につきましては、五月の十四日、東電が本件を受け入れたことによりまして、東電内部からの改革が進むこととなりました。
 残る四項目は、顧客サービス第一を使命とする経営理念を定款に明記すること、徹底した情報開示により経営を透明化すること、設備投資への競争原理を導入すること、高効率で環境負荷の少ない火力発電設備への更新を行うことでございますけれども、これらはいずれも、東電がみずから改革を進めていく決意を内外に示すために必要不可欠なものでございます。
 こうした東京都の提案に対しまして、多くの株主の方々の賛同を得ることが、これからの改革を進める上で大きな力となることから、今月六日、十万株以上の株式を所有する約四百法人に対しまして、東京都の株主提案についての賛同要請文を送付いたしました。
 また、その他の株主の方々につきましては、東京都のホームページなどで広く賛同の呼びかけを行っているところでございます。
 今月二十七日の株主総会には猪瀬副知事が出席をいたしまして、一万人を超える株主の前で直接株主提案の趣旨説明を行うとともに意見表明を行いまして、抜本的な東電の経営改革を訴えてまいります。
 また、東京電力の新体制発足後には、社内に経営改革本部が設置される予定でございますが、都としましては、この改革本部との定例会合などを通じて、東電の構造改革を迫ってまいります。

○星委員 原発事故以降、計画停電やPPSの託送中止などが行われ、東京都民も非常に迷惑をこうむりました。これらの対策に対して、株主としてはどう対応したのでしょうか。

○池田政策部長 原発事故後の計画停電やPPSの託送中止などは、都内の該当地域において、都民生活や産業に大きな影響を与えました。
 電力の大消費地であります東京都は、これまでに遠隔地に立地する大規模な電源にエネルギー供給を依存してまいりましたが、電力の安定供給が大きく揺らいだことを受けまして、東京みずからが行動を起こし、エネルギーの地産地消に取り組んでいくことが重要になってございます。
 そこで、他県や他地域に頼らない東京産エネルギーの確保に向けた方策として、自立分散型システムの導入や再生可能エネルギーの拡大とともに、高効率かつ環境負荷の少ない大規模天然ガス発電所設置の検討に着手をいたしました。
 昨年の八月以降、関係九局から成る東京天然ガス発電所プロジェクトを始動いたしまして、発電所の立地に適した都有地の選定や事業可能性を探る調査を実施してきたところでございます。

○星委員 東京都では、今もご答弁がありますように、自立分散型電源の確保を目指して、さまざまな施策を、これからさらに展開をしようとしています。私は、適正な競争によって電気料金が決定される仕組みづくりといった方向に転換をしていくべきというふうに考えます。
 東京都は、電力自由化について、どのようにお考えになっていますでしょうか。

○池田政策部長 電力市場の自由化が進展すれば、利用者が電力会社やサービスメニューを自由に選択することが可能になると考えております。
 しかしながら、現在、自由化部門に占める新電力、PPSのシェアはわずか三・五%でありまして、需要家が東電以外の事業者と電気供給契約を結ぼうとしても、この期待にこたえられる状況にございません。
 そこで東京都は、電力市場の自由化の進展に向けて取り組みを進めておりますけれども、まずは新電力を育成するために参入障壁を取り除くなどの政策誘導を行うことによって、多くの民間事業者が参入できるようにしていくことが重要でございます。
 具体的には、東電などの一般電気事業者の送配電網を利用する際に支払う託送料について、新電力の負担を軽減する措置を講じるなど国へ提言をしてまいりました。
 また、東京都みずからの取り組みといたしまして、今後、公営水力発電事業の売電先について、これまで条例により東電のみを売り先の相手としてきたものを、他の事業者に売却が可能となるように検討を進めてまいります。
 さらに、同一事業所において、東電と新電力の双方から電力供給を受ける、いわゆる複数契約の推進などを通じまして競争環境の創出に取り組んでまいります。

○星委員 それでは、前段に戻りまして、改めて都民投票の意義について二点ほどお伺いをしたいと思います。
 食品安全条例の際に、食品の流通は国全体にかかわることであり、国の法律で安全が担保されるべきという議論もありました。しかし、都民が求めた食品安全条例制定運動はほかの自治体にも広がり、国の食品安全政策を動かすことになりました。
 このことを考えると、原発の是非を都民に問いかけることも、国を動かすことにつながることになるのではないかというふうに考えますけれども、ご所見をお伺いをいたします。

○山内自治制度改革推進担当部長 原子力発電所の稼働の是非につきましては、立地地域におけるさまざまな問題、安全性、経済性、産業政策、温暖化対策や安全保障上の問題などを複合的に考慮した上で、専門的な知見も十分踏まえて、国が冷静に判断すべきものと考えております。
 食品安全のように、国が全国的な見地から施策を講じ、都は地域特性を踏まえた施策に取り組むもののように、国と都の役割分担ができる施策と、本来、国が判断すべき原子力発電所の稼働の是非を同様に取り扱うことは適切ではないと考えております。

○星委員 食品安全の問題とは役割分担というところの観点から、同等に扱うことは適切ではないというお答えをいただきました。実に役所的な答弁だと思います。
 私は、正直申し上げまして、食品安全の問題、食の問題というのは命の問題だというふうに思っておりまして、このエネルギーの問題は、もちろん経済を支える、まさに国の安危というふうに知事もおっしゃっておりますけれども、そのことも最も大切だと思いますけれども、やはりこの原発のエネルギーということに関しては、まさに命の問題であるということを、今回の福島の原発事故は私たちに今突きつけているというふうに私は思っています。
 原発稼働の是非は、これまで立地自治体の住民の意思のみに問われてまいりました。しかし、三・一一以降、一たん事故が起これば被害は立地のみにとどまらないことをみんなが認識しています。その上に立っての都民投票条例の提案だというふうに思います。
 知事は、直接請求を行った都民にセンチメントではなく対案を示せというふうにおっしゃっておりますけれども、それこそ、私は東京都としての対案を問いたいと思いますが、ぜひお伺いをしたいと思います。

○雜賀総務部長 この問題に対する都の考え方でございますけれども、既に意見書でお示ししているとおりでございます。
 繰り返しになりますけれども、エネルギーの問題は国家発展のかなめでありまして、一定期間にどれだけ経済成長を計画し、そのため必要なエネルギーを、原子力発電所も含め、どれだけ確保するかについての基本戦略をまず国が策定すべきであるというふうに考えております。
 その上で、原子力発電所の稼働の是非について、安全性はもちろんのこと、経済性、産業政策、温暖化対策、安全保障上の問題なども複合的に考慮した上で専門的な知見も十分に踏まえて、国が冷静に判断すべきだということでございます。
 同時に、都はエネルギーの問題に関して、都独自の取り組みも進めてきてございます。
 東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトの推進などによる電力の供給面、さらには省エネルギーの推進などの需要面での取り組み、また需給両面の最適化の取り組みを推進しているほか、国に対しては抜本的な電力制度改革を、また東京電力に対しては、経営改革の確実な実行をそれぞれ求めてきております。

○星委員 それでは、最後に意見を申し上げたいと思いますが、知事の反対意見では、稼働の是非は国家の安危を左右するもの、さまざまな問題を複合的に考慮した上で専門的知見も踏まえて、国が冷静に判断すべきというふうにおっしゃっています。しかし、原発の管理と事故後の対応を専門家に任せてきたことがいかに問題だったか、専門家と称する人々への不信が今高まっています。
 今必要なことは、さまざまな立場の人々が意見を出し合い、エネルギー政策についても、自分たちが選択をしたという実感を持つことではないかと思います。
 本日、都民が直接請求という形で条例制度を求め、そして私たちは、この場で審議をしているわけですけれども、このような形で都民、都議会、行政、さまざまな場面で広範な議論をすることこそ、とても大切なことであるというふうに考えます。
 確かに、実際の投票行動はマルかバツの二者択一でございますけれども、それに至るまでのキャンペーン、プロセス、そして今までわからなかったこと、わからないことが余りにも多過ぎたこと、これが、情報公開がされていくこと、こういったことが本当にこの経過、プロセスというものを通じて民主主義が成熟していくのではないかというふうに考え、私は、この行動に対して賛意を表したいというふうに思います。
 以上です。

○馬場委員 東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例案につきましてお伺いをさせていただきます。
 本条例は、反対の知事意見を付して議会に提出され、本日質疑されているわけですが、議会としても、知事の意見というものは重いものであるというふうに承知をしております。
 私は、しかしながら、多くの都民の皆さん、昨日は意見陳述も聞かせていただきました。私も、この条例を何とか成立をさせたいという思いを持って質問をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
 この原子力発電及びこのたびの都民投票についての知事意見について、まずお伺いをしていきたいというふうに思います。
 知事の考え方、ご理解がどういうことなのかなと、この意見を拝見して思いました。この間、今回の都民投票条例の運動が始まってからもありますが、この問題は、やはり昨年の大震災と福島の原発事故、このことが大きな課題だというふうに思っております。ですので、知事のご意見というものも、ちょっとさかのぼって、昨年の二十三年六月十七日、都議会の所信表明からもう一度拝見させていただきました。
 このときは、震災後初めての都議会であり、知事も四選をなさっての都議会ということで、この文書はもう時間がありませんから読み上げませんが、私もさすが知事というふうに思った箇所が何点かございます。特に、都民、国民の連帯で大きな潮流をつくっていく、エネルギー政策や、さまざまな都民がこれから生活していく上で都民、国民の連帯でというふうにこのとき述べられています。
 それから、毎回の、もちろん所信表明でもエネルギー施策について言及をしておられます。
 また、知事、東京都は、この原子力施策について、この間、国が判断すべきものというふうにいわれてきています。国にとって大事なこと、大事なことは国が決めるとおっしゃっているわけですが、大事なことは国を形成している国民、都民一人一人にとっても大事なことだと私も思っております。
 昨年の福島の原発事故以来、原発の再稼働を心配する都民、国民の声は大変大きくなりました。それがこの原発稼働の是非を問う国民投票の実現に向けて、大きく動き出したということだというふうに思っています。この動きは、まず再稼働に反対の意思表示をされていた橋下市長の大阪市で請求がされました。続いて、東京でも三十二名の請求代表によって都民投票条例請求という形、つまり声が形になってきた、その結果、今都議会定例会で条例制定への賛否が問われていると思っています。
 自治法では、提出された条例案に知事の意見をつけて議会に条例提案することとされており、石原知事並びに東京都は反対の意見を付しての提案です。
 知事は、この件に関して、先ほども申し上げましたが、七カ月、こうした運動が都民から起こるということがわかった十月二十八日、十二月九日、署名が始まったとき、二月十日、二カ月の署名が終了に近くなったとき、五月十一日、これがまとまって、皆様から請求が十日に出ましたからその翌日、そして五月二十五日の五回、こうした行動、活動の節目節目に記者会見で問われて、その記者会見の発言は、昨日もありましたし、きょうも委員の皆様からも出ています。
 その中でいろいろ発言されているんですが、私が心が痛くなったのは、その請求受理の翌日の五月十一日、意見はどうですかという質問に、意見についてはわからないとか、条例案は知らないという知事記者会見のお答え。そして、さらに五月二十五日、反対意見が私どもの方に出た後ですが、まだその意見は、見ていないというふうな、一生懸命、そういう意味ではこの条例を成立させたいということで署名活動した多くの都民の皆様のその感情を逆なでするような発言だったというふうにいわざるを得ないと思っています。
 さらに、今回の反対意見の中では、住民投票は国を滅ぼすものとか、絶対に反対は知事のご意見ですが、こうした知事の意見については、この都民投票について、知事が少し理解をされていないのではないか、認識不足ではないかというふうに思わざるを得ません。
 所管の知事本局は、この住民投票条例について、知事にどのような説明をされてこられたのか伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 今、知事会見のことなんかのお話がございましたが、知事には、先ほど節目節目のことで会見の日程を挙げられたと思うんですが、署名収集活動の開始、終了、そういった節目節目で活動状況をご報告しまして、本請求がなされてからは条例案の趣旨、目的、内容等についても説明し、意見書を決定いただいたものでございます。

○馬場委員 知事本の皆さんとしては説明したけれども、ああいう知事の会見だったと。まあ何と申し上げていいかわからないような心境ですが、そうはいっても、知事本局は、知事のトップマネジメントを補佐する、重要な施策の企画立案、総合調整、報道機関との連絡調整、都市外交の推進に関する事務などを行うというふうになっています。また、地方主権の確立に向け、地方自治制度に関する調査研究をするところというふうに伺っております。
 都民投票条例、この請求が受理をされて、都知事が反対の意見を付して議会に提出しているということは、都民が投票権を持てるその当事者になれるか、なれないかという大事な事項だというふうに思いますが、知事本局のホームページを拝見しても、このことに関して一行も、一言もといっていいでしょうか、触れられていない。このトップページの中に、このことについて、中もですが触れられていない、この七カ月の間のことで。請求がされてからであれば、少なくとも知事本局として、このことをしっかりと担当局として触れて、都民にこういう状況ですよということぐらいはあってしかるべきではないかというふうに私は考えております。
 都として、知事本として、今回住民投票制度に基づいて都民が直接請求に向けた署名収集活動をしているわけですが、この請求者の意見とか思いとかというものをどのように受けとめて対応をなされたのか伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 まず、今回の直接請求に関しまして、いろんな諸手続につきましては、都庁、私ども知事本局だけではなく総務局も含めて、真摯にこれは対応させていただいております。
 それから、今お話がありました直接請求の趣旨ということなんですが、これはもともと、直接請求制度といいますのは、今回の条例案でしたら、条例案をつくり、それからいろんな請求の趣旨については、請求者の方が請求の趣旨ということで示されるわけです。私どもにつきましては、それを提出されて、それを受けて、それで知事の意見書としておつけするということですので、今先生が質問なさったことについて十分に対応できていると思っております。

○馬場委員 先ほども申し上げましたこの請求を出したら、知事は賛成か反対かの意見をつけて議会に出さなければならないわけですよね。そのことはもう重々わかっていらっしゃるわけで、それで、その都度、状況は報告なさったというふうにさっき答弁をいただきました。
 その上で、この反対意見をつけて議会に出されたというふうに思いますが、じゃあ趣旨をどう生かして今回の賛成、反対--最終的には反対で出されたわけですが、東京都として、知事として、どういうふうにこの趣旨を受けとめて、この条例案を協議したのか、どういうふうに関係局、これは先ほどからお話があるように、いろいろなところに関係してくる趣旨だというふうに思います。
 それでは、この関係各局との協議とか意見集約とか、知事本はどんなふうになされたのでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 今回の請求がなされまして、それについては庁内各局、庁内で関係する部署といろんな問題について、法的な課題ですとか、行政執行上の問題、内容の妥当性などについて検討を行っております。
 意見書でいいますと、一、二の部分については内容的な問題ということで考えております。それから、三のところですが、行政執行上の問題ということで、いろんな問題があると。それから、四のところについては、これは適法か違法かという問題の部分があったかと思いますが、そうしたものについて内容の妥当性、行政執行上の問題、法的課題を検討した上で問題点を意見書として取りまとめて、知事に決定をいただいたものでございます。

○馬場委員 ありがとうございます。意見といっても、私も拝見して、今答弁いただいたように、目的について、この条例に適しているのかどうかという大きな問題と、それから今お話のように、この提出された条例が手続上どうなのかというその大きな、まあ分ければ二つあるというふうに思います。
 おっしゃられたように、内容の妥当性であれば目的ですよね。あと今おっしゃられた違法性のチェックとか行政執行上の課題とかというのは、主なところで構いませんが、どこの局とどういうことを協議なさったのか、教えてください。

○山内自治制度改革推進担当部長 本件につきましては、先ほどいいましたとおり、内容の妥当性ですとか、あとは行政執行上の課題、それから法的な問題ということで、大きく分けて三つぐらいの中身、内容的なものがあるのかなと考えております。それにつきましては、当然のことながら、庁内のそれぞれの部署に専門のノウハウを有しておりますので、それに従って分担をしております。
 内容全体の妥当性につきましては所管局である知事本局が、法的な問題につきましては主に総務局の方で分担しております。
 それぞれ検討、討議しまして、あと選挙管理委員会事務局から実務上の課題についても意見を聞きながら、意見書を作成しました。
 反対意見を付した理由につきましては、意見書にまさに記載したとおりでございます。

○馬場委員 それでは、ここで、まず違法性と、それから執行上の課題、つまり、この条例が原案のままではだめなんだということですよね。そうすると、原案のまま出されたものがだめだから、それでこれが成り立たないということでは、都民投票条例というのが、都民から原案をもって署名運動をして、署名活動をして、その原案を上げてきて初めて、ある意味私どもの協議のテーブルに上がってくるわけですから、そこを何とか明確にしないと、どうやって成立をさせたらいいかということの観点から考えると、そこがちょっと重ねてお聞きしていきたいところです。まず違法なものは削除をしなければならないというふうに思いますが、そうした原案についての問題、それを私たちも、反対意見で出されたわけですから、議会で何とか修正なり、新しい条例をつくるとか、何かそういうことを考えざるを得ないというふうに思っているんですが、そもそも今申し上げましたように、都民の皆さんが先に原案をつくって署名をして、知事のところ、議会に出してくるという手順でこの都民投票条例はできているわけです。都民は専門家ではありませんよね、スタッフがそんなにいらっしゃるわけでもないですし。そうすると、こうして先ほどから、都民投票ということは知事も皆さんも、これは大事な制度だというふうにご認識いただいているということであれば、都民から出されてくるものの中に不備があったりするものをどういうふうに取り扱ったらいいかということ、このことをやっぱりきちんと検討しておかなければならないというふうに思います。
 都としても、投票行動を伴う条例は初めてのことですので、先ほどから皆さんからご質問が出ているようなことも含めて、それではどういうふうにすればいいのかということが今問われている。なぜなら、出して、それは不備だったから条例として適さないということであれば、そもそも、都民投票条例というのは絵にかいたもちで使い物にならないということになってしまうと私は心配をしております。
 それで、先ほど関係局と検討したというご答弁がありましたけれども、こうした違法性や行政執行の課題ということを含むものであれば、この期間、例えば、今お話があった総務局さんとどういうふうに協議をなさって、この条例を取り扱う、この反対意見をつくられたかということを伺います。

○山内自治制度改革推進担当部長 まず直接請求の条例制定の手続について、若干ちょっとご説明させていただきたいと思うんですが、直接請求の条例制定手続といいますのは、五十分の一の署名をもって、それで請求者の方が条例案をつくられる。その条例案について、それがそのまま請求されて、知事が--今回知事でしたが、長がかわって、それを提案することになっております。ですから、本請求までにそういった内容についてのご相談等があれば、内容について、それを修正、アドバイスという意味ですか、そういったことは可能ではございますが、本請求があった後については、もう一切それは直接請求の条例案については、逆に請求を受けた行政側が手を加えられないことになっております。
 それで、今回本請求までの手続を担当した総務局にお話を聞いているんですが、請求に係る手続面ではいろいろ相談を受けたので誠実に対応したと。しかしながら、条例の内容については、請求者から相談は一切受けていないということでございました。
 ちなみに、今回の請求されているメーンの団体につきましては、大阪でも同様な請求をなさっておりますし、同趣旨の条例で請求が行われております。ですから、内容面については、今回東京都としては相談を受けておりませんし、そこについて、それが不備だとか、そういうお話は、その請求後、もう一切それは手を触れられないものですから、その問題点について意見書で明らかにしたということでございます。

○馬場委員 そうですね。自治法では、事前審査権というのをこの都民投票条例に対して、皆さんの方にといったらいいんでしょうか、そういうものは認められていないので、都民から出されたものは、そこに賛成か反対かの意見だけつけて議会に出されてくるという状況だというふうに思います。
 ただ、出された後にというか、反対の理由に、条例が不備だからとか違法性があるということであれば、それは都民、請求者の皆さんも、署名を集めていて、それで結論が条例の不備とかということであれば、それはどうなんだということが問題になるというふうに私も思っています。
 ですので、そこを何とか解明をしていきたいのですが、それでは、今回特に投票を伴うということで、十六歳、いろいろな投票資格者の問題とかも先ほど出ました。きょう選管事務局長、いらっしゃいますが、この東京都選挙管理委員会は、この条例案の問題点というのはどんなふうに認識していらっしゃいますか。

○影山選挙管理委員会事務局長 まず条例案では、都民投票の管理執行事務について、知事から選挙管理委員会に委任する旨規定しておりますが、通常の選挙における名簿登録事務ですとか投開票事務は、区市町村選挙管理委員会が専ら行っておりまして、都選挙管理委員会だけでは実施できないのが実情でございます。
 また二点目として、都民投票資格者名簿について、投票日において東京都内の区市町村に住所を有する者と規定されていますが、先ほどから答弁しておりますように、その作成の時期や基準日が条例に規定されていないということでございます。
 三点目に、これも答弁させていただきましたけれども、都民投票公報の発行ですとか、都民投票資格者が賛否を判断するのに必要な広報活動の実施が規定されておりますけれども、原子力発電所の稼働の賛否という複雑かつ多様な課題を含む問題について、さまざまな立場の人々の意見をどのように収集、集約し、投票の判断材料として、公平かつ中立的な情報を提供するのか非常に困難な側面があるというふうに思っております。

○馬場委員 ありがとうございます。私どもも、この件で都選管と二回ほどヒアリングをさせていただいております。そのところでも、役割範囲外というご意見はいただきましたが、今回のご意見の中にある不可能というようなことは、お聞きをしていなかったように思います。不可能ということは、もう断定的なものだというふうに思いますので、例えば、大阪の例と条例を、東京都に置きかえてつくられたという部分も、これはさっき申し上げたように、専門家ではいらっしゃらないと思いますので、そこで都選管、大阪は大阪市ですが、東京は東京都ということで都選管と区市の選管とは役割が違うというようなことも含めて、もう少し、今の件、どうやったら、それぞれの課題を解決できるのかということを専門家の都選管からお伺いをしたいと思います。

○影山選挙管理委員会事務局長 まず一点目につきまして、区市町村で都民投票の名簿管理や投開票事務を行うためには、地方自治法第二百五十二条の十七の二に基づきます条例による事務処理の特例という方法がございますので、この事務処理特例条例を改正する必要があるのではないかと思われます。
 二点目の投票資格者名簿についてですけれども、これについては先ほど知事本の方からも答弁がありましたように、作成の時期や登録基準日のような投票人の権利の得失にかかわる事項については、あらかじめ条例に明記されておくべきではなかったかと考えております。
 三点目ですが、広報活動の実施につきましては、住民投票の対象事項や内容、投票方法についての周知や案内等で広報により投票人の便宜を図ることを中心にした広報が適切であると思われます。

○馬場委員 大変難しい状況だというふうには思いますが、実際にこの都民投票条例を施行するにはどうしたらいいんだろうかということで考えております、何度も申し上げて申しわけありませんが。
 そうすると、これからでも条例に明記すればいいもの、それから削除すればいいもの、この辺はわかりました。
 一つ大事なのが広報の部分だというふうに思いますが、先ほどもありました、都選管が広報を難しいということであれば、例えば議会がやるとか、知事本がやってくださるとか、そういうことも含めて、この成立をどうやったらいいというようなことは、どういうふうに考えたらいいでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 今選挙管理委員会の方からご答弁しましたことも当然あるんですが、今、広報のことを一つ挙げられたんですが、広報につきましては、先ほどご答弁差し上げましたけれども、内容的に非常に難しいと。原発の稼働の是非、是と非ということについて、どういうふうに区分をするのかと。
 例えば、ほかの実際に今やられています公職選挙法に基づく選挙なんかですと、候補者の方をご紹介するとか、政党をご紹介するということで、内容的な部分がはっきりしているわけなんですが、この原発の稼働に関していえば、是の意見でもいろいろあります。非の意見でもいろいろありますということで、非常に幅の広いところで、それを二者択一の形での広報を行うことというのは、非常に難しいだろうということで、先ほど選挙管理委員会の方からもご答弁がありました。
 ですから、それを例えば行政側としてできないかということもちょっとお話があったんですが、それもかなり困難かなと思っております。

○馬場委員 ということは、この条例の目的、何についてというところで、広報とか、いろんなことが変わってくるわけです。投票の先ほどの投票資格者をどういうふうに規定していくのか、それから、今のお話のように、どういうふうに広報するのか、どうあれば都民の皆さんにきちんとした判断をしていただけるような準備ができるのか、それは議会なり都側がすることなのか、都民がもっと自由にしていいことなのかとかということを、結局決めていかないといけないというふうに思います。
 これは、その都度、常設の条例ではありませんので、その目的に合わせて、例えば規則で決めていくというふうな、この条例の中にもたくさん出ていますが、この規則で定めていくというところでフォローできないのでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 再三ご説明申し上げているんですが、この条例に関しては、先ほどいった広報の問題ですとか、あといろいろな規定上の問題、その他もろもろの問題がございます。
 それで、特に一番問題だというのは、これは意見書の一に書かせていただきましたけれども、なかなか、今回、国のエネルギーにかかわる重要な課題について、それを一自治体の住民投票で行うということに関しては、その目的もさることながら、いろんな中の実務上の問題も非常に大きな問題があると。それから、違法な問題もあるということで、ですから、そういった問題、それについて議会でご審議いただいて、それをご判断いただくことになるかと思うんですが、我々としましては、そういった問題点があるということだけを、多分問われればお示しするしかないかなと思います。

○馬場委員 ありがとうございます。お話伺っていくと、一つ一つ難しいなと本当に思うわけですが、一番簡単というか、でき得る方法は公職選挙法に準じるような形でやるということを選ぶというんですかね、目的でイコールというふうにはならないかもしれませんが、そんなことも考えながら、この条例を、どうやったら都民条例がうまく成立をするのかということをずっと考えております。
 ただ一点、先ほどから出ました違法だというところを、何がどういうふうに違法かというところは、できれば文書か何かでいただけると、私もですが請求人の皆さんも、違法といわれて、これを賛成していくとか、このままでやるということは不可能なわけです。それこそ不可能なわけですから、そこのところだけ、後でいいのですが、文書でいただければ、どういう場合、考えられ得る範囲で違法な状況をお示し、お知らせいただけると、後で、またこうした運動のときに大変役に立つのではないかというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

○秋山知事本局長 文書でいただきたいというお話がございましたので、都としましては、もう知事の意見書を提出しておりますので、その中で違法の理由なども明記してございますので、提出することは不可能かと思っております。
 今のやりとりをそのまま放置しますと、我々の方から、また新たな文書を出さなくてはいけないということになりますので、手続上も問題があるかと思っております。

○馬場委員 今局長おっしゃられましたが、違法であるというところ、先ほどもお話がありましたが……(発言する者あり)違法であるということが明確であれば構わないんですが、文書でというか、後でその辺はよくよくお伺いをするということで、じゃあ、私も急に申し上げましたので、文書でというところは撤回をさせていただきます。
 それでは、違法であるところは削除をしていく、それから必要なところはつくっていくという形で私たちも一緒につくり上げていかなければ、この都民投票条例は成り立っていかないということだけは確かなんだなというふうに今思っております。
 最後、目的のところに触れて終わりたいというふうに思います。
 都は、原発再稼働について、国と東電に、先ほどもご質問ありましたが、国と東電の判断に任せるということでよろしいのでしょうか。もう一度お答えください。

○山内自治制度改革推進担当部長 原発の運転再開につきましては、今いろいろな動きがありますが、まず電力会社が国に運転再開を申請し、国が安全性を審査し、原子力安全協定により地元自治体が同意し、最終的に四大臣が協議して国が判断するものと認識しております。

○馬場委員 東電の判断ということでしたが、東電の筆頭株主として意見を求められたときにはどういうふうにお答えになられるということになるのでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 これは繰り返しになりますけれども、運転再開につきましては、電力会社が国に、運転再開を申請し、国が安全性を審査し、原子力安全協定により地元自治体が意見を求められ同意をし、最終的に国が判断するものとなっておりますので、仮に東電の株主という東京都の立場であれば、それは意見を求められるということが今の再開に関する手続として入っておりませんので、そうした意見、そういう仮定の話については、ちょっとなかなかお答えにくいのかなと思います。

○馬場委員 そこのところが大阪と違って、大阪は、知事は稼働に反対している、マニフェストでもはっきりして、それで当選もしているということで、この条例は反対というわかりやすい状況でございましたと私は認識をしています。
 東京の場合は、そういう意味では判断はしないと。知事、首長として判断はしないと。しかしながら、東電さんが再稼働するときは、どうあったらいいかということは、必ず株主として発言を求められるのではないかと私は思っています。それから、知事が何度もおっしゃっているこの稼働の是非は、専門的、冷静で理性的な判断が必要だ、住民投票にはなじまないというご意見ですが、これはやはり皆様おっしゃっているように、大事なことは知事と議会が決めると。都民は決める力を持ち得ていないというふうにどうしても聞こえてしまうのですが、知事を選び、私たち議員を選び、今の政治にきちんと参画をしているお一人お一人の都民の皆さんの意見は、しっかり持っていらっしゃるべきだと。それでなければ、知事にしても私たちにしても恥ずかしい。そういう皆さんに選ばれている私たちだというふうに思いたいんですね。ですので、この知事の主観的なご意見ではちょっと納得できないのですが、客観的な、この反対の理由というような形でご答弁いただけますでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 この話も何度も繰り返しご答弁申し上げているんですが、今回の原発の稼働にかかわる問題というものは、エネルギー問題であり、エネルギーは国家を支える重要な基盤でございます。そして、原発は我が国の主要な電源の一つで、その稼働の是非は、我が国の将来に大きな影響を及ぼすということで申し上げております。
 したがって、原発の稼働の是非は、国が安全性はもちろん、経済性、産業政策も複合的に考慮し、専門的な知見を踏まえて理性的かつ冷静に判断すべきであり、一自治体の直接民主制というか、そういったものにゆだねて、住民投票を行うことについてはなじまないものだということを再三ご答弁申し上げているところです。

○馬場委員 意見を申し上げて終わりにしたいというふうに思います。
 私も議員をさせていただいておりますが、この都民の皆さんと一緒にいろいろ考えて、そして、国であれ、都であれ、各自治体であれ、さまざまな政治に参画をしていく中で、責任を持った暮らしをしていきたいというふうに考えております。
 先ほど、この原子力については、国が考えることということになると。私も意見を申し上げる立場ではないのかなと残念ながら思わざるを得ません。
 この条例を何とか成立をさせて、私も一票を投じたい、その原子力施策について賛否をしっかりとあらわしたいというような今思いでございます。
 議会の皆様には、ぜひとも、この条例が成立し、都民投票が実現するようお願いをして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○大西委員 民主党の大西さとるでございます。本日、最後になりますが、よろしくお願いを申し上げます。
 昨日、八人の方から意見をお伺いいたしました。本当にありがとうございます。いろんな意見を伺いまして、ああ、そうかなというのもたくさんありました。しかし、残念なことが一つございます。東京の東部地区の方がだれもおられなかった、そのことでございます。
 私は、選挙区は足立区でございます。実は足立区というのは、荒川区、そして小平市、町田市と一緒に計画停電を受けております。私の家もその対象になりました。全部で七回やりました。一日に二回あったこともありました。この話は、僕も都議会本会議場で、余りにも不平等があるんじゃないかという話をさせていただきました。
 私は十九階に住んでいるんですけれども、夜間になったときは、ある一定の前のところまで真っ暗で、その先が電気がこうこうとついている、そういう状況の中で、その暗い中の大きな道路では、もうお巡りさんが体を張って交通整理をしていた。そんな思いを見ているところでございます。
 先ほど中屋さんの質問の中で、七回、日に二回あったところもありましたと。ああ、僕のところが最大値なんだなという思いをしたところでもございますが、我が家は一般家庭ですので、夜、子どもと一緒に真っ暗な中で星を見ながら話をすると、そういういいことにもなったわけですけれども、やはり先ほどいろんな方から出ましたけれども、まち工場や自営業、もう大変な思いをされたわけです。
 要するに、電気というものは、もう我々が普通にあって当たり前のごとく使っている。十九階まで歩いたら、本当はエレベーターがとまったら大変な思いなんですよね。でも、自営業の人はもっと大変な思いをされている。この電気がいかに大切なものかというのは、今回の計画停電でもすごく私は感じたところでもございます。
 そして一方では、私の一番下の子どもは、当時、幼稚園の年中組でございました。真ん中の子が四年生、ともに遊び盛りでございます。幼稚園の砂場も禁止をされて、青いブルーシートが張られて、結局、しばらくして土の入れかえをしなきゃいけない。要するに、足立区とか葛飾、被災地に近いところになればなるほど、ホットスポットは別にあるとしても、やはり放射能が高いというのは現実でございました。それがゆえに、非常に子どもを持つ親としては、私も幼稚園とか小学校でおやじの会をやっているので、そういうお父さんやお母さんとよく話をしますが、みんな心配をされていた。これは事実だと思います。
 こういうことが起きて初めて、我々としても、この放射能という問題に初めて向き合うこととなったわけですが、それがゆえにでしょうが、今回、三十二万人、これだけの署名を集められた。それも判こと生年月日まで書く大変な思いをされた。我々こちらにいる人間は、いつも選挙で僕にといって、いっているのがどれだけ聞き入れてもらえないかというのは、もう痛いほどわかっておりますので、その皆さんの行動には本当に敬意を表したいと思います。
 それを最初にちょっと伝えさせていただきまして、質問をさせていただきたいと思いますが、今回の条例の中で、ちょっとまた残念なところがあります。例えば、一番簡単なところでいいますと、よく出てきますね、タイトルにもなっております。東京電力管内の原子力発電所と書いております。要するに、東京電力管内という、管内という言葉がそこらじゅうに出てきております。
 さて、ここで質問。東京電力管内には、原子力発電所は存在しないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 条例案で稼働の是非に関する都民投票の対象とされている柏崎刈羽原子力発電所は、これは新潟に存在しております。それから、福島第一、福島第二原子力発電所は、福島県に存在しております。
 東京電力の管内というのは、東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、群馬、栃木、それとあとは山梨と静岡の一部というふうに聞いておりますので、その九都県が管内、それが電力の供給エリアですので、それからすると、この原子力発電所については、いわゆる東電、東京電力の管内の区域の外に存在するということがいえるかと思います。そういう意味で、条例案にある管内という表現は、言葉の使い方としてやや不正確かと思われます。

○大西委員 括弧で柏崎と福島一、二が入ると書かれているんですが、管内というのは、本来は電力を供給する場所というふうに定義されていることから見ても、この管内というのは不適切というか、今答弁にありましたけど、不正確だということなんです。
 実は、先ほど馬場先輩への答弁の中で、山内部長も東京都として、今回は事前の相談を受けていないと。ああ、それでかと私も思ったわけですけれども、やはりちょっとしたこういう手直しはね、これはちょっとおかしいんですよということで変えることがまずは必要じゃないかなと思っているところでもございます。
 その次の質問に入りますが、十六歳以上ということで若者が政治参加すること、これは、少しでもこういう練習といったら語弊があるかもしれませんけれども、どんどんいろんなことで政治参加することは必要だと思います。きのうも八人の中のうちの一人の方、三番目の中野区の柳浦さんでしたか、三歳の娘を持ちながら、ほとんど政治に関与しなかったといわれていますが、早いうちに何かのきっかけで政治に関与するということは当然必要なことで、皆さんも運動される以上は、これからも、そういう方もどんどんやっていただきたいと思いますが、この十六歳以上と外国人の参政権に対して費用が十億円ぐらいかかると。それで、三カ月ぐらいの時間が必要だということは、再三、先ほどから答弁にあったところでございます。
 そういうことは、九十日以内に定めるという条例案では、これはもう実際間に合わないということになると思うんですけれども、その辺はどうでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 本条例案の場合、今、大西先生の方からご指摘ありましたとおり、通常の選挙と異なるために、投票資格で十六歳以上ですとか、永住外国人という新たな資格者を投票資格者として含めるために、そういったシステムの改修、新しい資格者を資格者名簿として入れるためのシステムの改修なんかも必要でございます。
 それから、この都民投票条例につきましては、公職選挙法の適用はございませんので、通常の、これも繰り返しになりますが、議員、また長の選挙みたいなものが区市町村に委任されるというところではできない形になっております。ですから、そういったものについての区市町村への委任を可能にするような事務手続等が必要になりますので、もろもろのことを考えると、条例案で書かれている九十日というのは非常に困難であると考えております。

○大西委員 そういう問題もあると。
 次の問題として、条例案では投票結果の尊重という形になっております。現実にはどのような対応をとるということになるのか、お伺いをいたします。

○山内自治制度改革推進担当部長 この件についても、先ほどちょっとご答弁も申し上げていると思いますが、この条例による都民投票結果は、直接都の判断を義務づけるものではございませんが、都及び都議会は投票結果を尊重し、東京電力、国及び関係機関と協議して、この対象となる原子力発電所の稼働に関する都民の意思が正しく反映されるよう努めることとされております。
 具体的には、国や東京電力、関係機関等に対して、投票結果を踏まえて、提案要求とか、いろんな要望とかいう形で協議を行うということになるかと思います。

○大西委員 ありがとうございます。
 次ですけれども、先ほど馬場先輩の方から出ましたが、違法とは一体どこなのかと。私は、この違法の一つに、十二条の二項が該当するんじゃないかなと思うんですけれども、これは日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法の条文を、この条例案では準用するということになっております。
 国民投票法の第百八条は、憲法改正にかかわる国民投票と選挙と重なった場合に、政党などの公職選挙法の確認団体等の団体は、国民投票運動を行うことができるとする、公職選挙法による政治活動の規制との調整となっております。
 これは、都民投票条例の規定で準用することについてはなじまないと考えていいんでしょうか、お答えをお願いします。

○山内自治制度改革推進担当部長 今ご質問のありましたところは、条例案の第十二条の第二項のところで、国民投票法の百八条を準用する部分なんですが、この中身は、国民投票と公職選挙法に基づく選挙が重なった場合に、それについて、通常ですと公職選挙法に基づいて政治活動の規制が行われている部分が、国民投票法が、国民投票運動とそれから選挙活動、通常の公職選挙法の選挙活動が重なった場合には、その公職選挙法の規制を除外するということの規定でございます。
 具体的には、演説会、街頭演説会ですとかポスター、立て看板類の掲示ですとかビラの配布とか、宣伝告知のための自動車、船舶、拡声機の使用ということで、これについて、通常選挙では規制を受ける部分があるんですが、国民投票ということが実施されている間、国民投票運動が行われている間につきましては、公職選挙法の確認団体等の団体が国民投票運動の期間中は、そういう規制がかからない形でできる部分があるということでございます。
 ご質問の規定が、都民投票運動を国民投票運動に置きかえる形で準用しているわけなんですが、これにつきましては、条例において公職選挙法の規制を除外しようとするものでありまして、条例は法令に違反しない限りにおいて制定できるという地方自治法の規定との関係で違法の問題が生じるおそれがあるものと考えております。

○大西委員 違法だということですね。先ほど、公職選挙法は適用されないと。かぶらなかったときですけれども、公職選挙法が適用されないということでいいわけですよね。
 そうすると、その場合、戸別訪問というのは許される、また、例えば、拡声機、選挙の場合は、僕ら選挙するときは拡声機は一個しか使えないんですけれども、いってみれば制限がなくなるわけでしょうか。また、僕らは選挙が始まったら、八時からしかマイクは使えないわけです。政治活動のときはいつでもいいんですけれどもね、選挙活動のときはだめなわけです。そうすると、朝の五時から、六時から原発賛成、反対とやっていいのかと。
 また、我々の選挙と比べますと、費用は上限が決められるわけです、これ以上お金を使っちゃだめですよと。そういうことも全部なくなる、このように考えていいんでしょうか。

○影山選挙管理委員会事務局長 都民投票に関する投票運動は、公職選挙法による規制の対象とはならず、ご指摘の戸別訪問等の行為についても、特段の規制はないものと考えております。

○大西委員 今の十二条の二項では、国民投票法の第百九条から百二十二条を準用しているとしています。これは先ほど吉田先生がちょっと意見でいわれて、結局聞かなかったんで、ちょっと僕が聞きます。さっき吉田先生が聞いたら僕は外そうと思ったんですけれども。
 これらの条文の中では、国民投票に関する諸犯罪とそれぞれの罰則上限を記しているが、それらは懲役、または禁錮七年から五年、四年、三年などとなっております。
 一方、地方自治体において条例で定めることができる罰則は、例えば二年以下の懲役、もしくは禁錮などとなっております。
 そうなると、条例が法を逸脱してしまうんじゃないかという危惧がありますが、いかがでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 委員の今ご質問にありましたとおり、条例は、あくまで法令に違反しない限りにおいて制定できるものでございます。今回の国民投票法を準用している部分につきましては、本来、地方自治法上の条例の規制に関するというか、本来、法が規制しているものを、それを条例の国民投票法の準用ということで、例えば罰則の上限を超えてしまうとか、いろんな問題が出てくるかと思います。
 ですから、こういった条例が法を逸脱してしまうということについては、まさにご指摘のとおりで、違法の疑いが強いと思います。

○大西委員 違法の疑いが強いと。当然、山内部長も法律家じゃないから、そうなるのかわかりませんけれども、そういう可能性があると。
 もう一つの可能性があるところが多分十二条の第三項になると思います。
 これは、十二条の第三項では、地方公務員法で制限されている政治的行為を都民投票運動を行う上では行っても構わないとするものであると。法の制限を条例で行えることとするのは、この地方自治法に反するんじゃないかとも考えますが、いかがでしょうか。

○山内自治制度改革推進担当部長 これも再三、何度かお答えさせていただいていますが、条例は、あくまで法令に違反しない限りにおいて制定できるもので、この条例案の第十二条第三項というのは、地方公務員法の制限している政治的行為を都民投票運動を行う上では行っていいということで、法律の根拠もなく政治的な行為の制限を勝手に排除しているものですので、これは違法と考えております。

○大西委員 今何点か質問させていただいたら、それに対して、ちょっと条例に問題があるというところが明らかになったかとは思います。しかし、一方で、昨日の八人の中の方で二番目の方、品川の佐藤さんでしたか、ダブルスタンダードだと。国が今、尖閣の問題で動かないから都が動くんだといっている反面、原発に関しては国がやるべきだと。国が動かないんだったら都がやるべきだという意見も僕はあると思います。
 また、先ほど何度か山内部長の答弁の中にもございましたけれども、二者択一の中で、片方を都民の意思とはできないというご答弁もございましたが、どちらが重いかという判断材料には十分なるんじゃないかと。また、そして、その結果をもって、国と都、電力会社との任意の協議ができるとありましたが、当然その任意の協議をするときに、都民の意思の参考ということには十分になるのではないかと私は思います。
 何よりも、今回の請求者の皆様がとられた膨大な行動と、その意義、これに関してはだれもが、きょうの質疑の中で認められていたわけでございます。ならば、やってみてもいいんじゃないかと私は思います。
 本日、このようにさまざまな問題が明らかになったわけです。これらの問題をまず少なくすることが必要じゃないか。他党の先生からも問題点の指摘がたくさんございました。請求者、そして署名をされたたくさんの方などの意思をぜひ尊重するためにも、それを目的として、私どもは志を全く同じとする、きょう星先生おられますが、都議会生活者ネットワーク・みらいの皆様とともに修正案を提出させていただくことを表明させていただきました。これに関して、各会派の皆様のご同意をぜひともいただき、そしてこの都民の意見がはっきりと示される、この条例の実現を目指していきたいと思っております。よろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○吉倉委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 付託議案及び陳情に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉倉委員長 異議なしと認め、付託議案及び陳情に対する質疑は終了いたしました。
 以上で知事本局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時十七分散会

ページ先頭に戻る

ページ先頭に戻る