委員長 | 吉倉 正美君 |
副委員長 | 佐藤 由美君 |
副委員長 | 中屋 文孝君 |
理事 | 伊藤こういち君 |
理事 | 吉田 信夫君 |
理事 | 大西さとる君 |
栗林のり子君 | |
星 ひろ子君 | |
しのづか元君 | |
服部ゆくお君 | |
田島 和明君 | |
吉原 修君 | |
馬場 裕子君 | |
和田 宗春君 |
欠席委員 一名
出席説明員知事本局 | 局長 | 秋山 俊行君 |
儀典長 | 高原 寿一君 | |
次長理事兼務 | 小林 清君 | |
理事 | 大井 泰弘君 | |
総務部長 | 雜賀 真君 | |
地方分権推進部長 | 潮田 勉君 | |
自治制度改革推進担当部長 | 山内 和久君 | |
外務部長 | 中山 正雄君 | |
国際共同事業担当部長 | 熊谷 克三君 | |
基地対策部長 | 市毛 良之君 | |
横田基地共用化推進担当部長 | 新美 大作君 | |
政策部長 | 池田 俊明君 | |
政策担当部長調整担当部長兼務 | 鈴木 勝君 | |
尖閣諸島調整担当部長 | 坂巻政一郎君 | |
投資政策部長 | 松下 隆弘君 | |
計画調整部長 | 澤 章君 | |
総合特区推進担当部長計画調整担当部長兼務 | 瀬口 芳広君 | |
総務局 | 局長 | 笠井 謙一君 |
危機管理監 | 醍醐 勇司君 | |
理事 | 塚田 祐次君 | |
総務部長 | 山手 斉君 | |
訟務担当部長 | 和久井孝太郎君 | |
復興支援対策部長 | 砥出 欣典君 | |
復興支援調整担当部長 | 野口 一紀君 | |
被災地調整担当部長 | 中野 透君 | |
被災地調整担当部長 | 早川 剛生君 | |
行政改革推進部長 | 土渕 裕君 | |
情報システム部長 | 長澤 徹君 | |
首都大学支援部長 | 皆川 重次君 | |
人事部長 | 中嶋 正宏君 | |
労務担当部長 | 内藤 淳君 | |
主席監察員 | 長谷川 均君 | |
行政部長 | 岸本 良一君 | |
多摩島しょ振興担当部長事業調整担当部長兼務 | 鴨原 浩君 | |
区市町村制度担当部長 | 堤 雅史君 | |
総合防災部長 | 村松 明典君 | |
企画調整担当部長 | 箕輪 泰夫君 | |
特命担当部長 | 榎本 雅人君 | |
統計部長 | 松原 恒美君 | |
人権部長 | 並木 勝市君 |
請求代表者 | 松本 智子君 |
請求代表者 | 佐藤 直己君 |
請求代表者 | 柳浦 彰君 |
請求代表者 | 鳥羽 晴美君 |
請求代表者 | 吉田由美子君 |
請求代表者 | 荒木 伸子君 |
請求代表者 | 坂下 香澄君 |
請求代表者 | 宮台 眞司君 |
本日の会議に付した事件
意見書について
知事本局関係
付託議案の審査(意見陳述)
・第百三十四号議案 東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例
報告事項(質疑)
・事業可能性調査について
・官民連携インフラファンドについて
総務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十五号議案 都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
○吉倉委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
傍聴人の数についてお諮りいたします。
本委員会の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上でございますので、さらに三十二名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉倉委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
○吉倉委員長 次に、意見書について申し上げます。
委員から、お手元配布のとおり、意見書二件を提出したい旨の申し出がありました。
お諮りいたします。
本件につきましては、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉倉委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
○吉倉委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、知事本局及び総務局関係の付託議案の審査並びに知事本局関係の報告事項に対する質疑を行います。
これより知事本局関係に入ります。
初めに、付託議案の審査を行います。
第百三十四号議案を議題といたします。
これより地方自治法第七十四条第四項の規定に基づく請求代表者の意見陳述を行います。
意見を述べていただく請求代表者は、松本智子さん、佐藤直己さん、柳浦彰さん、鳥羽晴美さん、吉田由美子さん、荒木伸子さん、坂下香澄さん、宮台眞司さん、以上でございます。
なお、意見陳述の時間は、合計で四十分程度となっております。よろしくお願い申し上げます。
この際、傍聴人の方々に申し上げます。
傍聴人の方々は、東京都議会委員会傍聴規則を守って、静粛に傍聴を願います。傍聴人は、可否を表明したり騒ぎ立てるなど、議事の妨害となる行為をすることは禁じられております。ご協力を願います。
それでは、初めに、松本智子さん、お願いいたします。
○松本請求代表者 それでは、意見陳述を始めます。
私は、昭島市在住の松本智子と申します。二人の子どもを育てております。
私たちは、原発都民投票条例の制定を求めているわけですが、なぜ私たちが昨年の十二月よりこの条例の制定を求めて活動を始めたかということを最初にお話しいたします。
これは、私たちが実際に活動のときに使いました署名簿です。この署名簿には、請求代表者の住所と氏名、そして原発都民投票条例の市民案、そして最後にこの署名欄が印刷されております。
都民投票の署名は法定署名と申しまして、一般に街角で集められている署名とは異なり、住所、氏名のほかに生年月日、そして印鑑もしくは拇印をちょうだいするという大変厳しいルールにのっとって集めたものでございます。
そして、この署名簿の二ページ目には、私たちがなぜこの活動を始めたかという理由と背景について、請求の要旨として書かれておりますので、それにのっとって説明させていただきます。
第一に、原子力発電所の存在と稼働は、立地先住民、そしてその周辺住民のみならず、東京都民を含めたおびただしい数の人々の命と暮らしに影響すること、左右することは、今回の事故により明白になっております。原発を今後どうするかということは、この重要な問題を、これまでのように国と電力会社、そして立地先自治体の一握りの人たちに決めていただきたくないと思っております。
二つ目として、署名活動時点、東京都は東電の第五位の大株主でした。現在は筆頭株主になっております。私たちは主権者であり、そして電力のユーザーでもあり、そして東電の筆頭株主である自治体の住民としてという三つの立場から、この東電の原子力発電所に対して関与する責任と権利があると考えています。
最後に、主権者である私たちがその責任と権利を行使するために、原発に関してとことん互いに討論し合い、意思を表示する重要な機会として、都民投票の実施を求めているものです。
私からの請求の要旨は以上ですが、これから私の仲間たちが意見を述べさせていただきます。どうぞ最後までお聞きくださるようお願いいたします。
○吉倉委員長 松本智子さんの意見陳述は終わりました。
次に、佐藤直己さん、お願いいたします。
○佐藤請求代表者 佐藤直己です。品川区に住んでおります。
私は、昨年の福島第一原発事故による大災害により、原発の危険性がはっきりした以上、原発稼働の是非を主権者へ問うべきであると主張いたします。
私たちが請求する都民投票条例案は、主権者の不断の努力によって、憲法前文がうたう平和的に生きる権利を守るために、そして憲法二十五条に書かれた健康的で文化的な生活を守るために必要なものなのです。
条例制定による日本初の住民投票は、一九九六年に今回と同じ原発問題で、新潟県巻町で行われて以来、四百一件の住民投票が全国各地、四十七都道府県のうち四十六の広域自治体内で行われています。しかし、議員の皆様方もご存じのとおり、唯一行われていないところがあります。それはここ東京都です。四十七都道府県のうち、四十六道府県で行われてきたにもかかわらずです。
直接民主制は、間接民主主義を否定するものではありません。この二つが両輪となって、民主主義をより成熟させていくものです。原発のように重要な問題は、議員たちだけで考えるのではなく、私たち住民も議員たちとともに考え、解決していくことが必要だと思います。住民投票により、主権者である住民の意見を表明する機会をつくるべきです。
次に、石原知事の発言について、私の思うところを述べます。
石原知事は、先日の所信表明で、原子力発電は国策であり、国が決めるべきものだといいましたが、尖閣諸島の問題については、東京都が関与すべきであると述べました。尖閣諸島の件も、これは国策の一つです。一方は都が関与すべきでないといい、他方は積極的に関与するという。これはダブルスタンダードではないでしょうか。
石原知事は記者会見で、直接請求の条例案にどのような意見をつけるかについて問われたとき、条例案をつくるのは都がつくるといいましたが、直接請求について詳しく知らなかったのではないかと思います。
また、石原知事の意見趣旨が表明されたその日の会見では、条例案を読んでいないといっていました。にもかかわらず意見が出てくること自体に驚きました。
さらに、署名を何十万筆も集めてもしんしゃくする必要はないともいいましたが、これは民主主義を真っ向から否定する言葉です。
石原知事の意見の中に、公務員の投票運動について述べられていましたので、一言申し添えます。
憲法的見地から考えれば、自治体職員も職務を離れれば一主権者であり、政治活動は自由に行われるべきものであります。まして、今回の投票の結果は国の将来にも大きく影響する可能性があります。今さら議員にいうべきことではありませんが、法律は必要があってつくられるものであり、時代によって変わるものであります。自治体職員の投票運動についても、最高法規である憲法に照らして問題がない条例をつくればよいのではないでしょうか。
最後に、議員の皆様方は、二元代表制の一員として、都民から個人名で信託を受けております。決して知事に指名されたわけではありません。議員が目を向けるべきは、知事でしょうか。それとも、主権者である都民でしょうか。いうまでもなく都民であることに論をまちません。
信託を受けた議員が集う議会は、首長と異なる感性で主権者の意思を酌み取り、時代を先取りし、市民自治を発展させていく責務を負っております。今回の都民投票について濶達な議論を行い、議員各人の意思で賛成してくださることを期待しております。
ご清聴ありがとうございました。
○吉倉委員長 佐藤直己さんの意見陳述は終わりました。
次に、柳浦彰さん、お願いいたします。
○柳浦請求代表者 私は、中野区在住の柳浦彰と申します。三十五歳の会社員で、三歳になる娘がおります。
私はこれまで、議員や首長の選挙すらろくに行かないような、政治参加意識の非常に低い一般市民でした。実際に議員の皆さんが何をされているのか、日本という国で何が起きているのか、自分が住んでいる区で何が起きているのか、知ろうともせず毎日を過ごしてきました。
そんな中、昨年、あのような人類史上類を見ない原発の事故が起こりました。事故の原因についてはいまだに解明できないと聞きますが、その中の大きな要因の一つに、以前の私のような政治問題、社会問題、あるいは原発の問題に関して無関心であった人たちが数多くいたからこそ、一部の人たちだけが動かしてきた、または建設してきた原発問題に関して、正当なチェックが行われず、ずさんな管理をしてきたと。それが大きな要因であったと考えています。
私たちは、これを教訓にして将来に進んでいかなくてはいけません。これ以上原発の問題を無関心にだれかに任せ、同じ過ちを二度と繰り返すというようなことは、二度としてはいけないのです。私たちの命、国家の存亡すら決めるような原発の稼働の是非という問題について、私たち主権者一人一人が責任を持ってかかわっていかなくてはいけない、そういうふうに考えております。
次に、今回私が体験した直接請求の署名活動のことについても、少しお話しいたします。
先ほど説明がありましたが、今回の法定署名、住所、氏名のみならず、生年月日、拇印まで求めるような厳しい、これが現行の法のもとでの法定署名のルールになります。にもかかわらず、今回私たちは法定署名数を優に超える署名数を東京都の中で集めたという、この意味の大きさをご理解いただきたいと思います。
個人情報保護がこれだけ叫ばれているこの時代の中で、街角で会った初対面の人にここまで個人情報をさらすということがどれだけリスクがあるかということにもかかわらず、私たちは十万筆以上の署名を集めたということをご理解いただきたいと思います。
また、署名活動あるいは市民活動というものは、これまで労働組合や有力な政党が強力にバックアップして進めるということがほとんどであったと聞きますが、今回の私たちはそういうものに属していない一般市民が数多く集まり、起こしたものです。それをまず申し伝えておきます。
そういった私たち一般市民が集まってスタートした署名活動でしたが、最初は署名どころか協力者の方が集まらず、私一人で街頭に立って署名を呼びかけるといったようなこともありました。その中でも、日を追うごとに協力者の方、署名をくださる方、ふえていきました。
署名してくださった方の中には、涙ながらに福島の現状を訴えてこられた方、そして原発作業員の実体験を涙ながらに訴えてこられた方、また、私は事情があって署名ができませんが、カンパならできますといい、一万円札をカンパ箱に入れてくださった方、そういった人たちの真摯な思い、温かさに触れるたびに、くじけそうになっていた自分の心が奮い立たされ、自分がやらなければいけない、まだまだもう一度という形で、私は毎日、街頭に立ち続けることができました。
また、原発の是非を問う住民投票ということでいえば、これまで欧米を中心に数多く行われています。しかし、そのどれもが原発立地先でのものです。
今回私たちは、東京都、原発立地先以外、大量消費地でこれが実現できれば、世界でも初めてのことになります。そうなれば、当然世界じゅうから注目され、これまで原発問題に無関心であった一般市民、以前の私のような人たちも、当然意識が変わり、東京が変わっていくことになるでしょう。
そして、東京が変わるということは、日本が変わるということを意味しています。現に、私たちのこの今回の住民投票運動というのは大阪と東京から始まりましたが、現在、宮城、静岡、新潟、そういった原発立地先での原発の是非を問う県民投票という形で広がりを見せています。
この観点から、今回の原発都民投票条例というのは、都政の一議案の枠を超え、ここ首都東京から世界に向けて日本のあり方さえ示すことができる、それぐらい重要な決断になるという認識を持っていただきたいと思います。
この民主主義、市民自治の歴史の新たな一ページとなるこの今回の決断を、私たちは最後までしっかりと見届けるつもりです。
今回のこの運動を通し、私たちの仲間は意識が大きく変わりました。一人一人が真剣に原発のこと、日本の未来のこと、愛する人の未来のことを考えるようになりました。私自身、そのことはもとより、ロビー活動や勉強会等に来てくださった議員の方から刺激を受け、私が住んでいる地域の行政、あるいは地元の議員さんが何をしているか、そういったことにも関心を持つようになりました。
こういった自立した個々の集合体の輪を広げていくことこそ、今の東京と、そして日本に求められていることではないでしょうか。そのための大きなきっかけとなる原発都民投票条例、その本義を十分ご理解いただいた上でのご判断、どうかよろしくお願いいたします。
以上です。
○吉倉委員長 柳浦彰さんの意見陳述は終わりました。
次に、鳥羽晴美さん、お願いいたします。
○鳥羽請求代表者 北区在住の鳥羽晴美と申します。ふだんは高齢者ボランティアにかかわらせていただいています。
まず初めに、条例案につけられた都知事の意見書のうち、投票資格者に疑義があるという、その点について、以下三点ご説明させていただきます。
第一点、十六歳投票権については、義務教育を終了し、社会生活において自立的に判断し、行動する能力を身につけた十六歳という年齢であれば、原発稼働の是非についての合理的な判断も十分に可能です。また、原発問題では、日常生活に対する影響ばかりではなく、将来にわたるエネルギー政策のあり方も厳しく問われることになります。
原発についての政策決定のあり方としては、次の世代を担う若い人たちの意見を酌むことが必要不可欠なのです。
第二点、永住外国人の投票資格付与について。二〇〇二年に滋賀県米原町の住民投票で、初めて採用され、実施されました。以来、各地で三百八十八件の住民投票が実施されてきましたが、そのうちどのくらいの自治体で永住外国人への投票権を認めているのか、ご存じでしょうか。一割や二割ではありません。約三分の二の自治体で、永住外国人の投票権を認めています。認めていない方が少数派なのです。
そして、万が一原発事故があった場合の影響は、私も、お隣に住む永住外国人も、全く同じなのです。国籍の有無にかかわるものではありませんので、住民としての投票資格を認めることは当然です。
なお、私たちが提出した条例案では、職権登録により一律に投票資格を認めるものではなく、あくまでも本人からの申請に基づいて投票資格を認める、そうした制度設計になっているということを申し添えておきます。
第三点、投票資格者名簿を事前に調製することは不可能という点についてですが、これは、選管の名簿登録事務が煩雑になるという実務上の不満をいいかえたものにすぎません。これまで実施されてきた公職選挙とは異なる投票資格を認める住民投票では、いずれも投票資格者名簿を別途事前に調製しています。投票資格者名簿を事前に調製することは可能です。
さて、原発事故から一年がたちまして、以前と同じ生活を取り戻したかのような私たち東京都民ですが、どこか腰の据わらない漠然とした不安を抱えています。自分たちの将来、子どもたちの未来、日本の行く末が不安でたまらないのです。
五月五日には、国内のすべての原子力発電所が停止しました。子どもの日でした。再稼働の是非については十分な議論が必要になりますが、その議論の場に私たち東京都民を参加させてください。今までのように、国や立地先自治体や電力会社だけで決めてしまうのではなく、電力の消費者である私たち東京都民にも、当事者として議論をし、選択する場をつくっていただきたいのです。
現在の再稼働決定のプロセスは、到底納得できるものではありません。子どもの日にとまった原発を、子どもの将来のために、動かすのか、やめるのか、今こそ一人一人が考え、意思表示する場が必要です。
将来、子どもたちに、あのときお父さん、お母さんたちは何をしていたのかと聞かれたとき、都民投票でみんなで真剣に考えたんだよといいたいのです。そうでなければ、この先しっかりと前を向いて子どもを育てていくことができません。
今なお続く原発事故を乗り越えていくためには、だれかに手を差し伸べてもらうのではなく、みずからの意思で立ち上がり、歩いていかなければなりません。そのために、私たちは原発と正面から向き合い、自分たちの未来を自分たちで決めていくということが必要なのです。
五日の知事発言の中にもありましたように、今こそ日本のために東京が行動を起こすときです。戦後の日本を復興させた先輩たちのように、この原発震災を乗り越えて、私たち一人一人が自信を持って歩き出すために、ここ東京で新たな歴史をつくるべく、住民投票の実施を強くお願い申し上げます。
以上です。
○吉倉委員長 鳥羽晴美さんの意見陳述は終わりました。
次に、吉田由美子さん、お願いいたします。
○吉田請求代表者 品川区在住の吉田由美子と申します。
私は生活クラブ生協の理事長をしております。私たちは、日ごろから自分たちの暮らしの課題の解決を他人任せにしない。自分たちの暮らしを自治する。これらのことを一番大切に考えています。
日々の暮らしの中でこうあってほしいと思うことがあれば、他人任せにせず、その実現に向けてみずから責任を持って実践していくということを意味しています。これは決して自分たちだけの利益を考えているという意味ではなく、自分の暮らしに責任を持つということです。現に私たちは、食、環境、福祉、働き方など、さまざまな分野で、自分たちで責任を持つ暮らし方を実践してきました。
ところが、電力に関しては、責任を持てる仕組みになっていません。具体的にいうと、私たちは、消費者として何を選ぶかに責任を持つということを重視し、実践してきたのですが、電力については選ぶことができないのです。
石原都知事のご意見の中に、原発立地の諸事情を考慮すべきという趣旨のご発言がありましたが、私は同感です。
私たちは、食の分野で、生産者、生産地にとって、生産の持続は可能かという視点に立って、消費のありようを選択してきました。例えば、米や野菜でいうと、農薬や化学肥料を使ってほしくないと思ったら、生産者と協議し、生産者ができるところから取り組み、リスクをとってもらうかわりに責任を持って消費するということを実践しています。そうやって、生産者、生産地と信頼関係を結んできたと自負しています。それが、消費者として自分の暮らしに責任を持つということだと考えているからです。
エネルギーについても同じことだと考えます。電力の選択は福島や柏崎刈羽の人たちの暮らしに配慮して考えるべきなのです。
しかし、そういう消費者になっていくためには、考えるチャンス、学習する場が必要です。その機会があれば、人々は確実に責任を持った消費者になっていきます。私は、生活クラブの実践の中で、それを痛感しています。電力について、生産地のことにきちんと思いをはせ、消費者として責任を持って選択する人をふやしていくためには、この都民投票がよいチャンスになると確信しています。
国の重要な施策、制度について、メディアでは、国民的議論が必要とか、まだ国民的議論が足りないといういい方がされます。国会議員の発言の中にもよく出てくる言葉だと感じています。今後の日本のエネルギーのあり方については、まさに国全体の問題として国民的議論が必要ということについては、論をまたないのではないでしょうか。
では、どうやったら国民的議論を行ったことになるのでしょう。どなたか案をお持ちでしょうか。原発稼働の是非について、大消費地である東京都の有権者が投票という機会を得て議論する場を持つのは、国民的議論の一環としても大いに意味があるのではないでしょうか。
東京都がそれを実施するということは、日本全体にとっても大変意義があることと私は考えております。
以上です。
○吉倉委員長 吉田由美子さんの意見陳述は終わりました。
次に、荒木伸子さん、お願いいたします。
○荒木請求代表者 荒木伸子と申します。渋谷区在住でまちづくり活動に参加しております。
石原都知事が意見書において、原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべき、また立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきと述べられたことについて、意見を申し上げます。
まず、国が責任を持って判断すべきとのことですが、憲法前文に、政府の行為によって再び戦争の惨禍の起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民にあることを宣言し、この憲法を確定すると書かれていることを思い出してください。都議の皆様、国は、政府は、間違うことがある。それゆえ、国民主権の原理に立つ民主国家となると宣言したのではないでしょうか。
都知事は、国が責任を持って判断すべきとおっしゃいますが、国は判断を間違えるかもしれないのです。事実、昨年の三月十一日以来、私たちは国は間違うことがあるという思いを改めて実感いたしました。だからこそ、今まで政治にかかわったことのない三万人に上る受任者の方々が、駅前やスーパーの駐輪場でチラシを配り、署名を呼びかけ、三十四万六千八百二十人の署名を集めたのでございます。これこそ主権者の意思のあらわれといえないでしょうか。
次に、立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきという点について申し述べます。
私が実際に署名を集めているとき、放射能は怖いけれど、景気がもっと悪くなったら困る。温暖化対策はどうするんだ。いろいろなご意見をいただく中、今までこのように重要なエネルギー問題を初めとして、私たちの生活に大きくかかわる社会の仕組みについて、住民同士が話し合う機会がなかったことに気がつきました。この直接請求が可決されますと、選挙管理委員会が賛否それぞれを選んだ場合の詳細なシミュレーションを記した冊子を編集し、全戸配布いたします。投票日に向け、その冊子をもとに各地でワークショップが開催されるようになれば、個人、行政、事業者といった方々がオープンに話し合うことでしょう。
実際、二〇一〇年に総合文化会館建設をめぐり住民投票を行った長野県佐久市では、市主催の討論会は二カ所、説明会は二十一カ所で開催され、会場で出た質問と回答は、その都度市のホームページに上がり、情報紙が全戸配布されました。私たちもワークショップに参加し、議論する中で、同じように理解を深めていくと考えております。
そのために、投票日に備え、署名集めを行った三万人に及ぶ受任者の方々が、署名集めが終わった二月の末から、都内、都下各地で勉強会を開始しております。こうした方々の真摯な活動によって、いっときの感情に押し流された投票にはならず、一人一人が立地地域やその住民の多岐にわたる問題をよく考えた上で、答えを見つけ出していくと確信しております。
議会内に、住民投票を行うには機が熟していない、費用がかさむといった議論があるのはよく存じております。しかし、終戦から六十七年、民主主義社会をはぐくんできた日本で、東京でできないわけがない。投票日に向けた人々のエネルギーの高まりが経済効果を生み出す、そのぐらいの気概を持っていただきたいと思います。
あのときの都民投票で東京は変わった、歴史の転換点だったと後世からいわれるように、一人一人が考え、自立した民主主義社会を築いていきましょう。
原発立地ではなく、初めて大消費地が今までの営みを見直す意味で行った直接請求の意義をどうぞお酌み取りいただき、英断をもって、三十四万六千八百二十人の都民の求めを受けとめ、可決の判断を下されることを願ってやみません。
ありがとうございました。
○吉倉委員長 荒木伸子さんの意見陳述は終わりました。
次に、坂下香澄さん、お願いいたします。
○坂下請求代表者 立川市在住の坂下香澄と申します。
自治体や国政の選挙では、たくさんの政策の中で賛同できないものがあっても、私たち主権者は投票し、議員に信託します。けれども、私たち主権者は白紙委任したわけではありませんので、完璧な民意を反映できるとは限りません。
間接民主制を否定しているわけではありません。多くのことは、議会の議員の方が審議をして決めていく、そういうことが必要です。
しかし、過去三年間、国政、都議会、都知事選、原発の是非が争点になったことはありません。今後の中長期的なエネルギー政策、原発の是非は、党派を問わず、世代を超えて考えていく重要な問題です。人を選ぶ選挙ではなくて、個別の事柄について投票する、そのことで民意を酌み取る必要があると考えます。
十二月九日から署名活動が始まりまして、原発の是非を決めるのはだれという、こういうチラシを配りながら、街頭で皆さんに呼びかけました。原発推進派の方でも、何人もの方が署名をしてくださいました。これは原発反対運動ではないのです。重要な一つの事柄に対して、主権者一人一人が考えて、人ごとにはせず、意思をあらわそうというものです。
五月十三日には、静岡県で原発の是非を問う県民投票の直接請求運動が始まりました。五月五日には、民放の早朝の番組でこのことを取り上げていました。街頭で、やはりこうした原発の是非を問うのはだれが決めるのかということで問いかけながら、政治家か、専門家か、市民かという三択の問題で、シールを張るという活動が紹介されました。断トツで多かったのは、浜岡原発の稼働を決めるのは市民自身であるというものでした。
さて、六月八日、野田首相は大飯原発の稼働をすると発表しました。野田首相がどうのというのではなくて、間違うこともある一人の人間に任せてしまっていいのだろうか、責任を押しつけてしまっていいのだろうか、一人の人間がどうやって責任をとるというのだろうか、大きな疑問を感じます。
こうしてだれかのせいにして正面から問題に向き合わない、そういう主権者の姿勢を、もうやめたいんです。任せて不満をいったり評論したりする有権者から、参加して引き受ける、そういう主権者にかわるチャンスをください。行き詰まったこの政治の状況を、東京都から変えて、民主主義を深めていくチャンスなんです。
都議会議員の皆さんの見識を信じます。都民の意思を受けとめて、都民投票条例の制定、決断してください。どうぞよろしくお願いいたします。
○吉倉委員長 坂下香澄さんの意見陳述は終わりました。
最後に、宮台眞司さん、お願いいたします。
○宮台請求代表者 世田谷区在住の請求代表者、宮台眞司と申します。幼子二人を持つ大学教員です。
本日は、私の役割は、住民投票についてよくある誤解を解いて、国際標準的な理解に基づく住民投票の目的、そして手段、そして今回そのようなものが採用されるべき動機についてご説明をさせていただきたいというふうに思います。
この住民投票条例、つまり都民投票条例は、既にほかの方も述べられましたように、反原発条例ではありません。原発推進であれ、原発反対であれ、住民の意思を表明すること、これを目的としています。実際、街頭で署名活動しているときにも、これは原発推進の方でも署名していただく意味があるものですというふうに申し上げて、たくさんの原発推進の立場の方にも署名をしていただいております。
次に、この原発に関する都民投票条例は、一般のマスコミの一部が語っているようなポピュリズム、衆愚政治的なものではありません。つまり、世論調査に基づく政治的な決定では全くありません。その意味は、住民の民度を上げることで、議会制民主主義のあり得る弊害を除去することが目的というふうにお考えいただきたいというふうに思います。
今、都民投票条例の目的を概略お話しいたしましたが、その意味を、具体的な手順をお話しすることによって、もう少しご理解いただければと思います。
住民投票は、世論調査に基づく決定ではないというふうに申しました。実際には、住民投票までの期間、例えば僕らの条例案では三カ月間ですけれども、この三カ月間の間に、国、自治体、事業者などから情報を出させます。一部は法令に基づくものです。それだけではなくて、論点ごとに立場の異なる専門家を呼んで意見を聴取する。その上で、最終的には専門家ではない市民が合意形成に至る。こういう手順をとるわけです。
例えば、デンマークではコンセンサス会議というワークショップのやり方が考案されています。実は住民投票は、今申し上げたようなコンセンサス会議を含めた、住民投票に先立つ討論会やワークショップにその本体があります。このコンセンサス会議というやり方では、専門家パネルと市民パネルが分かれていて、専門家パネルで、まさに尋問と反対尋問のように、いろんな立場の方々が専門家として意見を表明され、それを市民パネルの方々が聞き、あるいはQアンドAのプロセスを踏むわけですが、その後、専門家パネルの方々には退席をしていただいて、市民パネルの方々が、さていろいろ聞いた、我々はどう考えるべきだろうかというふうに考えるわけですよね。
これは、わかりやすくいうと、日本でも最近普及している医療の領域におけるインフォームド・コンセントとセカンドオピニオンのプロセスによく似ています。以前と違って、担当医が手術をしようといったら手術をするというプロセスは、大きな手術についてもありませんね。別の医者、さらに別の医者の意見を聞いて、最後は非専門家である当事者がどうするのかを決める。これと全く同じプロセスなんだというふうにお考えください。
次に、このような住民投票と討論会ないしワークショップとの組み合わせによって物事を決めていく制度をつくるということの今般の意味、どうしてそのようなものが必要だというふうに考えるのか、あるいは考えるべきなのかをお話しさせていただきます。
原発事故が突きつけてきた問題は、実は巨大なフィクションの繭の中で国策が決定されるこの事実を、我々が目撃したということです。
この日本ゆえの、あるいは日本ならではのでたらめなフィクションの繭、たくさんあります。例えば、日本だけで通用する原発絶対安全神話がそうです。この神話ゆえに、例えば津波想定問題でも明らかなように、追加的な安全対策がとれませんでした。絶対安全だから。
それだけではない。日本だけで通用する、原発は何よりも安いという話。これは最近真っ向から否定されることになりましたけれども、これも皆さんご存じのように、一九七四年、電源三法以降、多額に交付されてきた巨額交付金、こうしたものを全部除外した事業コストのみを算入しています。それだけではなくて、回らない核燃料サイクルシステムを前提にしたバックエンドコストの算定、政府でさえ二〇五〇年まで回らないとしているわけですが、これを最終処分しなきゃいけないというふうにいった途端に、今、資産計上されているものがすべて負債計上になりますよね。
そうした事実を恐れてかどうか、いずれにしても、回らない核燃料サイクルシステムを前提にした非常に甘いコスト算定。そのほか、廃炉コストが全く算入されていない。そして何よりも、天井知らずの賠償費用も全く計上されていない。それで原発が安い。
ご存じのように、原発については、青天井の保険をつくってくれる保険会社は、国際的にどこにも一つもありません。これは、原発の事故がいかに規定不可能なものなのか、これを示しています。
もう一つ、我々にとっては直近の繭、大停電か原発再稼働か。この議論は既にドイツでなされています。そして、このような結論が出ています。大停電は規定可能なリスク、つまり対処可能です。ピークシフトのマネジメントを行ったりとか、系統融通を行ったりとか、あるいは首都圏でも、昨年、二〇%弱の節電に成功しましたが、もちろん節電もありますよね。いろいろな工夫を前提とした対処が可能です。
ところが、原発の事故は規定不可能なリスクを抱えています。予測不能、計測不能、収拾不能です。チェルノブイリの原発事故の被害も、実はまだおさまっていません。一体どれだけの損失が生じるのかは、規定不可能です。
ドイツの原子力倫理委員会の結論はこうです。規定不可能なリスクについて引き受けを決定することは、たとえそれが民主主義のシステムにのっとっていても倫理的に間違っている。何ゆえならば、それは、後は野となれ山となれという態度を意味するからだというふうに議論されています。
さらに、このような巨大なフィクションの繭をつくり出すメカニズムも、もう既に明らかになってまいりました。
まず第一に、専門家会議の虚妄があります。実は、官僚たちが専門家会議のメンバーを決めた時点で、シナリオはほぼ決まっています。その上で、議論の内容にはほとんど意味がなく、最終的には数合わせだけが答申に反映されるということになりがちです。
つまり、これは実際には政治家が役人の人選に物をいうだけの専門性を、政策サポートチームの不在ゆえに発揮できないということが背景にありますけれども、いずれにしても、専門家が決める、イコール役人が決めることと全く同じです。
次に、議会での審議の不十分さについてもお話をしておきましょう。
もちろん、議員さんたちの多くも、政策サポートチームを欠いた非専門家の方々で、一日に十本以上の議案を審議することもあります。その上で、場合によっては党議拘束がある中で決定がなされる。多くの場合には、実質上役人がつくった、専門家のお墨つきを与えたシナリオがそのまま議会で通るということになりがちです。
次に、よくあるQアンドA、Qに対するアンサー、石原知事とは時々ご飯を食べたりする仲ではございますが、原発は国策案件であり、住民は口を出すべきではないというご意見に対しては、このようにお答えしましょう。
巨大なフィクションの中で国策がゆがむ。これは、かつての敗戦の研究の中から出てきたものです。このような巨大なフィクションの繭の中で国策が決まるような状況を回避するための住民投票と討論会ないしワークショップの組み合わせだというふうにご理解ください。
次に、一部マスコミのいうポピュリズム批判、これも先ほど申しました。むしろ議会制民主主義こそがポピュリズムに陥りやすい中で、ありとあらゆる主体から情報を出させて、価値を吟味し合う住民投票、これこそがむしろポピュリズムに対する歯どめになるのです。
次に、十六歳以上あるいは永住外国人という資格についても申します。
これは、選挙資格ではありません。今申し上げたように、討論会やワークショップへの参加資格だというふうにお考えください。自分たちの社会、地域がどのような営みのもとに築かれており、なおかつ、一体どういう人たちが自分たちの社会を成り立たせているのか。最近の若い者はとか外国人は、そうコミュニケーションもなしで偏見を持つことがありますね。だったら、実際に、地域の問題についてワークショップをする、討論会をする中で、だれが真剣に物を考えているのかを見てみようではありませんか。そういう問題ですね。
で、何だかんだいっても、これは原発反対の人たちが多いじゃないか。私は実は原発反対ではありません。二年半前までは原発賛成の意見をラジオ等で表明してきました。二年前からそれをやめました。それは日本が、簡単にわかりやすくいえば、ブレーキのない車だからです。
なぜブレーキが存在しないのか。つまりこれは、原発をやめることよりも、むしろ原発をやめられない社会をやめることが重要だということを示しています。
したがって、よく脱原発の方の一部から、もし住民投票をやって、原発賛成の意思が表明されたらどうするんだ。そう、それで一向に構わないんです。全くそれで構わない。なぜ構わないかといえば、我々は原発をやめることではなくて、原発をやめられない社会をやめる、ブレーキを欠いた車にブレーキをつけること、これを目的とするからです。
以上です。
○吉倉委員長 宮台眞司さんの意見陳述は終わりました。
以上で請求代表者の意見陳述を終わります。
それでは、請求代表者の方はご退室願います。
この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
午後一時五十三分休憩
午後二時十分開議
○吉倉委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
これより報告事項に対する質疑を行います。
初めに、事業可能性調査についてに対する質疑を行います。
本件につきましては、既に説明を聴取しております。
これより質疑を行います。
発言を願います。
○吉原委員 それでは私の方から、既に報告事項としていただいております天然ガス発電所事業可能性調査についての質問を何点かさせていただきたいと思います。
まず初めに、天然ガス発電所プロジェクトについて確認しておきたいと思いますけれども、改めて、このプロジェクトはどのような目的でスタートをされたんでしょうか、お尋ねいたします。
○池田政策部長 東日本大震災を契機といたしまして、安定的な電力供給の前提が揺らいだことを受け、自立分散型エネルギー社会の創出という目標のもと、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトの一環として、百万キロワット級の高効率かつ環境負荷の少ないコンバインドサイクル方式の天然ガス発電所の設置に向けて取り組んでまいりました。
本プロジェクトは、地産地消の東京産エネルギーの確保に取り組むこと、東電の老朽火力発電所のリプレースに向けた先導的取り組みとして、エネルギーの高効率化やCO2削減に寄与すること、電力市場の課題を発掘し、真に自由化された電力市場の実現に向けた取り組みを国に対し提案要求することといった目的のもと、着手したものでございます。
○吉原委員 その目的、今、三つご答弁をいただいたわけでございますけれども、農産物ではありませんけれども、地産地消で頑張っていこうよと。つまり、安定的な電力を供給するためにこの事業を始めた、こういうことだろうというふうに思います。
それでは、このプロジェクトの検討経緯を教えていただければと思います。
○池田政策部長 昨年八月以降、関係九局から成ります東京天然ガス発電所プロジェクトチームにおきまして、発電所設置の具体的な検討に着手をいたしました。
昨年九月には、発電所に適した土地の条件といたしまして、都有地で五ヘクタール以上であること、工業専用地域など建設可能な土地で未利用地であること、天然ガス、電気などのエネルギーインフラの導入が容易で、住宅、学校などの生活施設が隣接していないことといった五項目を選定し、その条件を満たした都有地五カ所を公表したところでございます。
そして、昨年の十一月から、都有地五カ所の事業可能性調査を開始し、検討対象地を三カ所に絞り込むなど、調査結果を取りまとめたところでございます。
○吉原委員 今回の事業可能性調査のうち、技術検討調査の中では、四項目の結果を出していただいていると思います。一つは施設の配置の件、そして事業期間の件、そして建設費の件、さらには維持管理費の件でございますけれども、試算をした、こんな報告を受けているわけでございます。
いろいろこの項目を見ますと、五つのうち三つということなんでしょうけれども、事業期間だとか、あるいは維持管理費というものについては、まあ、それぞれの立地予定のところでも余り変わらないんだろうというふうに思いますけれども、中でも一点、建設費につきましては、中央防波堤のところでございましょうか、一千六百億円と、ほかのところに比べますと三百五十億円前後の違いがあるわけでございます。
この建設費というものの中にはどんな経費が含まれているんでしょうか。そしてまた、この差額というものはどういうことで生じているのか伺います。
○池田政策部長 建設費には、発電設備本体や建屋の設置費など、発電所そのものの経費のほか、基盤整備費用、ガス管や送電線の敷設費用などが含まれております。
また、中央防波堤外側埋立地の建設費についてでございますが、発電所本体の設置費一千億円に加えまして、地盤改良や基礎くいの打ち込みのための経費や、ごみ層の除去費用が含まれていることにより、千六百億円となってございます。
しかしながら、この建設費に維持管理費を加えた総コストを総発電量で割った場合、つまり一キロワット当たりの売電単価を算出いたしますと、十二・八円から十四円程度と、検討対象地三カ所に大きな差異は生じない結果となってございます。
○吉原委員 今のご答弁ですと、立地条件によって建設費の違いは出るけれども、その膨大な発電電力量で割り返した場合、電気を売る際の単価はさほど差がないんだと、こういうお話だろうかというふうに思います。
それでは次に、事業スキーム・採算性検討調査の結果についてお伺いをいたします。
この調査では、事業スキームの選定や採算性の評価等を行ったとの報告を受けました。事業の主体は民間事業者として、都は事業主体に対して、都有地の貸し付けは行うけれども、発電所建設あるいは事業運営費等に関しては、その経費負担はしない、こういう説明があったところであります。
こうした前提で算出した売電単価について、事業成立の可能性があると判断した理由は一体どういうところにあったのか伺います。
○池田政策部長 今回の調査で算出した一キロワット当たりの売電単価は、採算面からプロジェクトを成立させることができる単価の水準をあらわしてございます。この場合、IPPという東京電力への売電事業で十二・八円から十三・七円、新電力PPSへの売電で十三円から十四円の結果となってございます。
この単価は、東京電力が過去入札を行って他社から電力を購入した場合の実績価格である十二・三円から二十九・四円の範囲にあることから、本プロジェクトの事業スキームは採算性が成り立つものとして評価したものでございます。
○吉原委員 今のご答弁をお聞きしておりまして、私たち、ふだん家庭で東電から供給を受けている単価は、一キロ当たり約十七・八七円ということでございますけれども、今ちょうど国に対して、また新たな電力の要請をされているようで、一体いつ決定するのか、七月一日ということでございましたけれども、そのことはまだ、そんな早い時期には決定しそうにないわけでありますけれども、そんな中で、事業者のもうけ、そしてまた新電力が東電の送配電網を利用する際に支払う託送料が、先ほどの答弁にありました売電価格に上乗せさせたとしても、事業として成り立つんだろうなというふうに思います。
さて、事業として成り立つ可能性があるという結果が出た、その後、このプロジェクトは一体どのように進めていくおつもりなのか。また、どのような点に留意をしていくつもりなのか、お伺いをいたします。
○池田政策部長 今後は、当該三カ所の検討対象地周辺の大気、水質、動植物の現況について、この夏から一年かけて環境局が自然環境調査を実施する予定でございます。この自然環境調査の結果を事業者が環境アセスに活用することで、アセス期間全体の短縮を図ることが可能と考えております。
また、この夏に策定が予定されております国のエネルギー基本計画の内容や東電管内の電力需給の状況など、本事業の推進に影響を及ぼす要因を踏まえつつ、事業を着実に進めてまいりたいと存じます。
○吉原委員 東京はこれまで、他の地域、要するに新潟だとか福島にも電力というものは依存してきたわけでございますけれども、都内の中小企業は、安定的な電力の供給がもし断たれてしまったならば、事業の継続が本当に大変になってしまうのではないか。そしてまた、ひいては産業の停滞と空洞化をますます招くおそれが十分考えられるわけでございます。
したがいまして、最終的にどこに決定されるのか、今のところまだ先ですけれども、だれであっても、自分の住んでいる近くに突然大きな発電所が設置される、こんなことになれば、当然のことながら、環境への影響など、それぞれさまざまなことがまだたくさんあるんだろうと思いますけれども、地域住民は不安を感じるというのは、これはもう当たり前のことではないかなというふうに思っております。
そのためには、こうした地域住民の皆さんの理解もしっかり得ていかなければならないわけでありまして、そのためには十分な説明が当然のことながら必要になるわけであります。
これまでの地元に対する説明はどういう形で、どんなふうに行ってきたのか。そしてまた、今後どういうように取り組んでいくのか、お尋ねをいたします。
○池田政策部長 これまで都有地を一定の条件のもとに選別して、五カ所の適地を選定し、事業可能性調査を行ってまいりましたが、その結果を記者会見やホームページ等により広く都民に周知してきたところでございます。また、地元の理解を得るために、広く関係者に対し、直接お伺いをして説明を行ってきたところでございます。
今後とも、関係区や都民に十分な周知を図った上で、発電所の候補地周辺の自然環境調査に着手をし、事業を次のステップに進めてまいります。
○吉原委員 もうご答弁いただきましたように、このプロジェクトというものは自然環境調査という次のステップに進む、こういうことでありますけれども、今ご答弁いただきましたけれども、ぜひとも地元の意向にはこれからも十分配慮をいただきながら、取り組んでいただくように要望して、私の質問を終わります。
○栗林委員 それでは、私の方からも東京天然ガス発電所プロジェクトについて、何点かお伺いをさせていただきます。
六月十二日の我が党の先日の長橋議員の代表質問においても、現在、電力供給が逼迫する中、古い火力発電所をフル稼働させていることは、燃料費の増加につながるばかりではなく、CO2の排出量を増加させるということを指摘をさせていただいたところです。その上で、こうした状況を打開するには、やはりエネルギー効率の悪い老朽火力を最新のコンバインドサイクル発電に早急に切りかえるべきであるとの主張を行わせていただきました。
この天然ガス発電所プロジェクトが、今回行った事業可能性調査で選定した発電機は、最新型のコンバインドサイクル方式であるとの説明を受けましたけれども、どのくらいの発電効率なのか。また、現在稼働しているほかの発電設備と比較しての説明をいただきたいと思います。
また、この発電機について、MACCⅡ、これを想定していらっしゃいますけれども、なぜこの機種を採用したか、この辺を伺わせていただきます。
○池田政策部長 東京天然ガス発電所プロジェクトは、政策目的の一つに、エネルギーの効率的な利用の促進や、CO2の削減に寄与することを掲げてございます。
また、発電効率が高ければ、同量のエネルギーでより多くの発電が可能となるため、燃料費の抑制にもつながります。このため、発電効率が高く、CO2排出量が石炭の半分、石油の七割弱といわれている天然ガス発電所の設置を検討してまいりました。
現在のガスタービンの発電効率は、最高で五八・六%でございますが、今後、平成二十五年には、関西電力の姫路第二発電所が、MACCⅡを採用することにより、六一%まで向上いたします。
そこで、本プロジェクトの事業開始時期が数年先であることを考慮して、現時点で最もエネルギー効率が高く、環境負荷が少ないMACCⅡを採用し、建設基準、建設費等を試算したものでございます。
○栗林委員 選定したMACCⅡによる発電は、高効率で環境負荷が少ないということはわかりましたけれども、燃料費が気になるところでございます。しかしながら、売電価格の約六割が燃料費ということなので、今後、燃料費の動向ということに影響が大きいのではないかと考えます。
今後の燃料費の動向をどのように考えているのか、またどのような見通しを持たれているか伺います。
○池田政策部長 現在、北米市場では、シェールガスの増産によりまして、天然ガス価格が低水準で推移をしております。我が国におきましても、米国等において商社を中心に開発プロジェクトが始動しており、シェールガス輸入開始に向けた取り組みが行われていると聞いております。米国等からの運搬コスト等の上乗せを考慮いたしましても、現在の天然ガスよりも安価な値段でシェールガスを調達することが可能になるものと思われます。
将来、シェールガスの安価な調達が達成されれば、高効率のガスコンバインドサイクルのコスト面での優位性が、より一層明らかになるものと考えております。
○栗林委員 やはり将来的に安価で、かつ安定的な燃料の調達ということが、この事業にとっても大変重要であると思います。今後ともぜひ最新鋭のガスタービンの採用、そしてまた安価な燃料調達ということも念頭に置いて進めていただきたいと思います。
高効率な発電機や燃料費といった、そういう要素とともに大事なのが、このプロジェクトにおいての事業スキームであります。この事業スキームの目的や採算性の面からも、大変重要な課題ではないかと思います。
今回の調査結果は、IPPとPPSへの売電を組み合わせた事業スキームが効率的かつ現実的と説明を受けましたけれども、この辺はどのようなことから効率的かつ現実的とおっしゃっているのか伺います。
○池田政策部長 IPP、いわゆる東電への卸売供給の場合、通常、東電との十五年にわたる長期契約となりますので、長期かつ安定的な売電先の確保を実現することができます。
しかしながら、百万キロワットの電力すべてを東電に売電するには相当の努力を要するということもございまして、余剰電力が生まれた場合にはPPSにその電力を売電し、事業全体の採算性を確保していく必要がございます。
また、現在、PPSは供給力の確保が課題となっていることから、PPSへの売電は電力の自由化にも寄与するものとなります。
以上のことから、IPPとPPSへの売電を組み合わせた事業スキームが効率的かつ現実的であるというふうに評価したものでございます。
○栗林委員 実は、私の地元世田谷区でも、この特定規模電気事業者、エネットだと思いますけれども、電力の供給契約を積極的に東電からPPSに切りかえました。これは平成二十四年四月からスタートしておりますけれども、庁舎とか区民利用施設、また小中学校など百十七の施設で利用を始めています。
これは、導入に当たってはどのようなことがきっかけだったのかと、いろいろ調査してみましたところ、昨年、立川市で導入が始まり、このことを聞いて、世田谷でもこれは導入できないものかということで、調査をしたようでございます。その結果、効果が予測されるということもわかりましたので、この四月より導入に至ったそうです。
この導入をしたことによりまして、やはり大変、区民の皆様からの反響も大きくて、これは一般家庭でも利用できないのか等々の問い合わせも殺到したと聞いております。このように立川市が始められて、そして世田谷、また練馬区も導入されたように聞いておりますけれども、かなり多くの区市で、このPPSの導入ということが積極的になっているようなんですけれども、しかしながら、PPSは販売する電力が不足しているということで、多くの需要家からのPPSに対する期待に対してこたえられないという、供給したくても足りませんということで、今大変厳しい状況にあるというふうに聞いております。
この天然ガス発電所プロジェクトがIPPとして東電に電気を売るだけではなくて、こうしたPPSの方にも、先ほど部長がお答えしていらっしゃいましたけれども、余剰電力をPPSへ電力供給を行うということは、これは大変需要家にとっても、東電以外の選択を広げるということにつながってまいります。
電力会社を選択できる社会を実現していくために、都としてはこのプロジェクトに限らず、さまざまな取り組みを進めていっていただきたいと思います。
このように、自立分散型のエネルギーの供給や、今、東京都が取り組んでいる再生可能エネルギーの拡充、こういったことに積極的に取り組むことが、原発に依存しない社会の実現に向けて行動を起こすことにつながっていくと思います。しっかり取り組んでいただきたいことを要望し、質問を終わります。
○吉倉委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉倉委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
○吉倉委員長 次に、報告事項、官民連携インフラファンドについてに対する質疑を行います。
本件につきましては、既に説明を聴取しております。
これより質疑を行います。
発言を願います。
○しのづか委員 私からは、先日報告がありました官民連携インフラファンドについて、何点か質問させていただきます。
先週開かれたこの当委員会の報告において、四月中旬から約一カ月間、ファンド運営事業者の募集が行われた結果、多数の民間事業者の方々が応募してきた旨の報告がありました。
ファンド運営事業者を選定されている最中でもあるので、回答可能な範囲で結構ですが、いかなる業種の事業者の方々がこの事業にアプローチしてきたのか、まずお伺いいたします。
○松下投資政策部長 ファンド運営事業者の公募に当たりまして、銀行、証券、あるいはそういった証券業などの金融関係者、それから投資事業を営む事業会社、各方面からの応募をもともと想定してございました。
今回の公募の状況を見る限りですが、当初想定したとおりのいろんな業種の方々から反応があったものと認識しているところでございます。
○しのづか委員 想定どおりということで、これからだと思うんですが、次に、現在行われているファンド運営事業者の審査の状況について伺います。
先般の報告では、審査の方法として、応募者が提出してきた書類の審査と、必要に応じて応募者によるプレゼンテーションを実施することにより、ファンド運営事業者としての適格性を見きわめるという説明がありました。
予定どおりであるならば、審査は今、まさに山場を迎えている状況だと思いますが、初めに、現在の書面審査の進捗状況についてお伺いします。
○松下投資政策部長 応募を締め切りました五月以降、応募事業者から提出されました企画提案書並びに事業者の財務情報、あるいは組織情報、あるいは定款、こういったものの各種書類審査を東京都投資評価委員会委員、あるいは東京都専門委員である公認会計士の方々の助言を随時受けながら、精力的に審査を進めてきたところでございます。
応募者から当初に提出のあった分につきましては、書面による審査はほぼ終了してございます。しかしながら、現在、事業者に追加提出を求めておりますので、そういった審査書類等につきまして、鋭意審査を実施しているところでございます。
○しのづか委員 次に、プレゼンテーションについて伺います。
応募者によるプレゼンテーションは必要に応じて実施することとなっておりますが、実施を前提とすべきと考えます。今月末ごろをめどにファンド運営事業者を選定するスケジュールとなっておりますが、プレゼンテーションのこれまでの実施状況、また今後の実施予定はどのようになっているのかお伺いするのと、もう一つ、また、応募事業者によりプレゼンテーションが行われるとする東京都投資評価委員会の概要と委員の構成について、あわせてご答弁お願いします。
○松下投資政策部長 先週ですが、書面審査の状況を踏まえまして、東京都投資評価委員会を二日間にわたって開催いたしまして、応募のあった多数の事業者から、それぞれ投資戦略、組成するファンドのイメージ、あるいは実際の投資案件等に関するプレゼンテーションを実施したところでございます。
なお、この東京都投資評価委員会は、法律、会計、投資業務等の専門家により構成される委員会でございます。
今回のファンド運営事業者の選定に当たりまして、投資評価委員会は、事業者選定のための審査基準の作成を初めといたしまして、応募事業者によるプレゼンテーションに対する評価などを行っているところであります。
また、同委員会の今後の予定としましては、今月末に予定する事業者の選定に向けまして、これから必要に応じて委員会を開催することとしております。
○しのづか委員 昨年末に公表しましたこの「二〇二〇年の東京」では、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトとして、それにおける発電能力の倍増策として、今回の官民連携インフラファンド事業とともに、百万キロワット級の天然ガス発電所プロジェクトが掲げられております。
まず、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトの一つである官民連携インフラファンド事業が目標とする電力の創出量についてお伺いします。また、百万キロワット級の天然ガス発電所プロジェクトが具体的にこれから事業化された場合に、官民連携インフラファンドからの出資を行う可能性があるかどうか、お伺いいたします。
○松下投資政策部長 官民連携インフラファンド事業は、ファンドを通じまして資金を供給すると、こういうことで、PPSなどの新電力事業者の発電事業への参入促進を図りまして、でき得る限り早期に電力の安定供給体制の確立を目指すものであります。
また、ファンド運用は資金供給そのものでありますので、発電規模ではなくて、資金供給の規模をどちらかというとイメージしているものでございます。したがって、官民連携インフラファンド事業では、創出すべき電力の目標値は設定していないところでございます。
また、百万キロワット級の天然ガス発電所プロジェクト、これにつきましては、事業スキーム・採算性検討調査が終了した段階でありますので、今回組成いたしますこの官民連携インフラファンド事業の投資先の対象にはならないものであります。
○しのづか委員 今、ご答弁いただいたんですけれども、これを見させていただくと、私からちょっと指摘をしたいんですけど、三百万キロワット創出プロジェクトとして挙げてあるんです。
その中で三つの柱があって、電力危機を回避するための都の先導的行動ということで、今回の天然ガス発電機の百万キロワット、それと官民連携インフラファンドが二つの二本柱になっていて、自立分散型発電の拡充ということで、コージェネレーションシステム五十万キロワット、これを新たに導入するとなっている。それと再生可能エネルギーの普及として、太陽光発電九十万キロワットとごみ発電の十万キロワット。これを全部足していくと二百五十万キロワットしかないんですよ。
三百万キロワット創出プロジェクトなんだから、きちんと、ある意味数字として目標を持っていただきたいのと、やはりファンドと電力の意味合いは違うといっているんですが、今、一番喫緊の課題としてすぐに取り組めるのが、僕はこの官民連携インフラファンドだと思っています。
非常に注目をしている事業ですので、きちんと明確な数字の目標を持って、そして取り組みを着実に進めていただきたいと、この点を指摘をして質疑を終わります。
○中屋委員 私の方からも、過日の委員会で報告のありました官民連携インフラファンドについて、何点かお伺いをいたします。
今夏の西日本の電力不足解消の決め手となります関西電力大飯原子力発電所の再稼働の見通しは立ったものの、該当地域に居住する人々や立地企業の不安は大変大きいと聞いております。再稼働をめぐる政府のつけ焼き刃的な対応と、判断を避け続けた無責任な姿勢がたたって、電力需要が増大する梅雨明けまでに再稼働が間に合わない可能性も強いといわれております。
一方、ことしの夏、首都圏における電力需給見通しは、記録的な猛暑であっても比較的供給余力があるとされておりまして、昨年の夏よりも状況は改善したとされております。しかし、この需給見通しは、企業や個人の自主的な節電努力を前提としていることや、火力発電所でトラブル発生の懸念があるなど、不安要素も少なくありません。
こうした中で、都みずからが、将来を見据えて、首都圏における電力の安定供給に貢献するべく、電力発電事業に投資するファンドを創設したことは注目に値いたします。
そこで、電力の安定供給という観点から、本事業の目的について確認をさせていただきます。
○松下投資政策部長 昨年末に策定いたしました「二〇二〇年の東京」計画では、東日本大震災により首都圏の電力供給が多大な影響を受けたことを踏まえまして、電力安定供給実現のための取り組みを策定しております。本事業は、まさにその取り組みの一つであるほか、インフラ更新に民間資金を活用するモデルケースともなるものであります。
電力の供給能力全体の底上げを図るため、インフラファンドを立ち上げ、PPSなどの新電力事業者に投資することで、新電力事業者を育成し、もって都民の生活や企業活動の安定化を図ろうとする取り組みでございます。
○中屋委員 昨年発生いたしました東日本大震災では、原子力発電所や火力発電所が被災したことで電力の供給が滞ったわけです。東京電力管内においても、震災直後には計画停電が、また続く夏には厳しい電力使用制限令が課されまして、都民生活や企業活動が大きく混乱をしたわけです。
この経験を踏まえまして、電力の安定供給に万全を期すべく、インフラファンドを活用して発電所の増設を着実に推し進めようとする都の姿勢は、高く評価をいたします。
次に、本事業の具体的な内容について、幾つか確認をさせていただきます。
過日の委員会での報告では、太陽光や風力などのいわゆる再生可能エネルギーをもとに発電する事業者も、インフラファンドの投資対象になり得るという説明がございました。再生可能エネルギーは、環境性の面などですぐれているとされておりますが、課題も多いと聞いております。実際、太陽光の場合、発電の効率性が大変に悪く、原発一基分、約百万キロワット分の電力を得るには、山手線内側の面積に太陽光パネルを敷き詰める必要があるとされております。また、太陽光や風力を利用した発電は天候による影響を受けやすく、発電出力が安定しないなどの問題点があります。
そこでお伺いいたしますが、今回立ち上げるファンドの運営事業者に、太陽光などの再生可能エネルギー発電事業者に対して、投資を行う事業者が選定される可能性はあるのですか。お答えを願います。
○松下投資政策部長 ご指摘のとおり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、エネルギー効率が低く、気象条件により発電電力量が変化してしまう、こういった問題点を抱えております。
しかしながら、その一方で、クリーン電力としての期待も高いため、国の政策としても、この七月から再生可能エネルギー法による電力の全量買い取り制度が開始されるところであります。太陽光発電の場合、出力十キロワット以上の産業用システムで発電した電力は、電力会社が買い取る義務が生ずることとなります。
また、太陽光発電の場合、買い取り価格は一キロワット時当たり四十二円でありまして、事業者の意向に沿う形で高目の価格設定になっているといわれております。
このため、事業者が再生可能エネルギー発電事業に対して投資の価値を見出す、そういったケースは十分に考えられると思います。
○中屋委員 ファンドというその性質上、ファンドの投資先の選定に当たりましては収益確保が重要な判断材料になることは、十分に理解しているつもりであります。しかし、投資先のすべてが安定性を欠き、出力も小さい再生可能エネルギーだけだった場合、正直なところ、必要十分な電力確保を目指すとする本事業の目的が達成可能なのか、若干懸念も残るところであります。
そこで伺いたいのは、ファンド運営事業者の選定に当たりまして、応募のあった複数の事業者から、収益面や環境面などで甲乙つけがたい提案があった場合は、複数の事業者を選定することは可能なのかということです。見解を伺いたいと思います。
○松下投資政策部長 ファンドを運営する事業者は一者の選定を想定しております。しかしながら、予算額である三十億円の範囲内であれば、複数のファンド事業者への出資を否定する理由はございません。
応募してこられました事業者の提案が電力の安定供給に貢献し、かつ確実なリターンが得られると判断した場合には、複数のファンド運営事業者を選定することは、これは可能であります。
○中屋委員 複数の事業者が都の基準に適合している場合は、火力や再生可能エネルギーによる発電事業者を適切に組み合わせることで、電力の安定供給とファンドの収益確保の両立に配慮してもらいたい、このことを要望して、次の質問に移ります。
今後実行されるファンドの投資と大きく関係する電力市場の状況についてお伺いします。
過日の当委員会での報告では、インフラファンドの投資先として、特定規模電気事業者、いわゆるPPSなどの新電力事業者が経営する発電事業への投資が想定される旨、具体的な説明がございました。
一方、先月中旬、電力制度改革を議論中の経済産業省の専門委員会は、電力の小売事業に関して、PPSなどの新電力事業者の参入を、事実上全面的に自由化する方針を打ち出しました。一般家庭において電力購入先の選択肢がふえるということになります。早ければ来年の通常国会にも、関連する電気事業法改正案が提出されるとのことでありますが、報道によりますと、市場の自由化実現までには、紆余曲折も予想されているとのことです。
出資するファンドを通じて、電力事業者にかかわる都としても、市場の活性化を促す意味からも、多数の電力事業者の参入が可能となる仕組みづくりを積極的に推進すべきと考えますが、都の見解を伺います。
○松下投資政策部長 電力の小売事業につきましては多くの規制の網がかかっておりまして、インフラファンドの投資先として想定されるPPSなど、いわゆる新電力の電力市場全体に占めるシェアは現時点で四%に満たないなど、電力業界の現状は適切な競争環境にはないと認識しております。
一方、自治体や民間企業では、電力需給契約の相手をPPSに切りかえる動きが加速しておりますが、今のPPSには新たなニーズにこたえられるだけの供給能力はございません。PPS事業者自体に新たな設備投資が求められている状況でございます。
こうした状況下で、今回の電力小売が自由化されるという国の動きは注目すべきもので、引き続き電力自由化をめぐる国の動きを注視していきたいと思います。
都としましても、PPSなどの新電力が既存の電力会社と競争関係に立てるように、託送料金、あるいはインバランス料金、こういったものの縮減、あるいは電力事業に多くの民間事業者が参入できるための仕組みづくり、こういったものを国に求めていくものでございます。
また、あわせて、東京電力管内の老朽火力発電所の再生、更新に当たりましては、適切な競争環境をつくり上げるという観点から、老朽化した発電所をPPSなどの新電力として再生することを国に求めていくものでございます。
○中屋委員 今後、電力小売の自由化がもたらす効果と副作用は慎重に見きわめていく必要がございますことは、いうまでもありません。電力事業者が育つ前に市場自体が自由化されても、資本や設備で圧倒的な存在である既存の電力会社の独占状態が強化されるだけだとの懸念もございます。
しかしながら、PPSなどの新電力事業者の新規参入を促進するには、電力の供給をめぐって多くの事業者の競い合いが実現する電力市場の実現が欠かせないことも事実であります。都として、今回のファンド創設を一つの契機といたしまして、PPSなどの新電力事業者の新規参入を促進する適正な電力市場の環境づくりに、精力的に取り組んでもらいたいと思います。
次に、四月中旬から一カ月にわたり行いましたファンドの運営事業者公募状況について伺いたいと思います。
審査中でもありまして、先ほどしのづか先生もお話がありましたけれども、答えられる範囲で結構ですが、過日の委員会の報告では、多数の事業者からの応募があったとのことでございました。今回の公募に対して、事業者からいかなる反応が寄せられたのか、事業者側の反応の状況を伺いたいと思います。
○松下投資政策部長 四月の募集開始後、三十件ほどの問い合わせがありまして、そのうち十四者とは面談を行うなど、大変大きな関心を寄せていただいたところであります。
現在は、応募のあった事業者について、今月末を目途としておりますファンド運営事業者の選定に向けまして、精力的に審査を進めているところでございます。
○中屋委員 事業者募集に手ごたえがあったということは何よりのことであります。
いろいろと聞いてまいりましたけれども、今回の官民連携インフラファンドはまさに時宜を得た取り組みで、我々としても大いに期待するところであります。ぜひ頑張っていただきたいと思います。
最後に、局長のこの事業に取り組むご決意をお聞かせいただきたいと思います。
○秋山知事本局長 都が官民連携インフラファンドを積極的に推進している背景でございますけれども、先生方もご承知のとおり、国と地方を合わせた長期債務は、GDPの二倍、約一千百兆円に上るという現実がございます。一方では、これを支えてきているといわれておりました個人金融資産が約千四百兆円。ただ、これには負債が入っておりませんので、負債を除くと、先ほどの長期債務と個人金融資産のすき間がもうほとんどないんじゃないかということが、金融界でもいわれております。
社会資本の整備について、借金に頼るということはちょっと厳しくなるんじゃないかというふうに、かねがね東京都では感じておりました。国に対しても提案要求などで、国が一部出資をすることで、民間の出資を誘引することで、こういった社会資本の更新、整備にファンドを活用せよという提案要求をかねがねしておりまして、また関東知事会、それから九都県市などでもそういう提案を進めてきたところでございます。
しかしながら、なかなか動きが出ないということで、都としても具体的に、都が利用できる案件がないかという研究を個別にも進めてまいりました。ここで、今般のような電力需給の状況になりまして、先ほど申し上げたとおり、PPSに極めて大きな資金需要が認められるというところから、この発電事業へインフラファンドを適用することができるんじゃないかということで、急遽動き出したというのが実態でございます。
都としては、これはもう既に、今月末にでもファンド運営事業者を発表して、事業をスタートいたします。これがモデルケースとなって、国や他の自治体などでも、社会資本の整備に対してこういったファンドの活用が進められることを願って、リーディングケースでやっているわけでございますけれども、そのことにとどまらず、都自身として、さらにほかの事業にこのインフラファンドが活用できないかということも見ていかなくちゃいけないと思っております。特に投資が成立するというのがファンドの条件でございますので、ただ公共事業をこれに切りかえるということではございませんので、そういう面では、社会経済情勢に常にアンテナを張って、検討して、対象事業を見据えていくと。
そういう点からも、先ほど答弁しました松下、投資政策部の部長でございましたけれども、この四月にそういった専門の部もつくって、この案件だけにとどまらず、広くさまざまな案件を検討していきたいというふうに思っています。
○伊藤委員 それでは私からは、初めに、事業者とともに都も出資を行うインフラファンドの投資先について伺っていきたいというふうに思います。
過日の委員会での報告では、ファンドからの投融資と、そして民間金融機関の融資を合わせて、総額で一千億円程度の事業スケールを目指すという説明がありました。また、その一方で、具体的な投資先としては、十万から三十万キロワット級の比較的小規模といえる発電事業者への投資を想定されているという説明もございました。莫大な投資額に比べて、投資対象が小規模の発電所ということで、少々ミスマッチ的な印象を受けないでもありません。
そこで、確認の意味で、今回想定する投資先の全体の概要について伺っておきたいと思います。
○松下投資政策部長 インフラファンドの投資先としましては、首都圏を中心に全国も視野に置いて、主に天然ガスなどの火力発電所、あるいは太陽光などの再生可能エネルギーによる発電所を想定してございます。
特に小規模な火力発電所の新規建設ですとか、あるいは企業所有の老朽化した小規模の自家発電所の設備更新など、こういったものは発電所の稼働までの期間が比較的短くて済みまして、建設などの初期コストにおいて非常に有利であると考えております。
一般的に十万キロワット級のガス火力発電所、これ一カ所当たりの建設コストは百億円程度とされておりますが、投資先のすべてを小規模のガス火力発電所に投資すると仮に仮定いたしますと、こうした小型の火力発電所を大体十カ所程度建設することが可能なスケールであります。
○伊藤委員 今の答弁で、仮に火力発電所に投資をした場合には、小型の火力発電所を十カ所程度建設するということで、大体イメージがわいてまいりました。
次に、東京都がインフラファンドに対して、三十億円を上限として、都民の血税である公金を支出するということに対する公共的な意義を確認しておきたいと思います。
先般の当委員会での報告では、本インフラファンドに都の公金を投入する意義として、PPSなどの新電力事業者による小規模な発電所建設などに必要な資金を調達するための民間資金の呼び水の役割を果たす旨の説明がありました。
電力市場の状況を踏まえて、都の公金を投入する意義を具体的に伺いたいと思います。
○松下投資政策部長 東京電力の値上げ発表直後から、電力需給契約の相手先を東電からPPSなどの新電力事業者に変更しようとする、そういった事業者の動きが目立っておりました。しかし、最近では、PPSの電力供給能力にも限界があることから、この動きは残念ながらかなり下火となっております。
インフラファンドを通じまして、こうしたPPSなどの新電力事業者の設備投資に係る資金需要を充足していくと、こういったことは、多数の新電力事業者の起業であるとか、あるいは発電所の建設、更新に非常に貢献することになり、中期的に見ても、震災により生じております電力需給ギャップの早期の解消につながると考えているところでございます。
また、公的な資金を投入することの重大性については十分認識した上で、ファンドの投資先の選定に当たっても、公共的な見地から、電力の安定供給と地球環境に配慮し、火力発電や再生可能エネルギー発電をバランスよく組み合わせることなどを、ファンド運営事業者に求めていくものでございます。
○伊藤委員 公金を投入することとなる投資実行後のファンドの管理体制について伺っていきたいというふうに思います。
先般の委員会では、ファンド運営事業者選定後六カ月以内に投資が実行され、投資実行の判断については、今回選定されるファンド運営事業者が行う旨の報告がありました。
民間事業者が行うこととなる投資の実行、ファンドの運用状況の把握などについて、都はどのような監視体制を構築する予定なのか、伺いたいと思います。
○松下投資政策部長 年内中に、今回選定されますファンド運営事業者は、出資先に対しまして年内に投資を開始することになりますが、ファンドの運用状況につきましては、運営事業者から当該ファンドに関する決算という形で、都に定期的に報告されるものであります。
また、報告された決算は、東京都専門委員である公認会計士の方々の助言を受けながら、法律、会計、投資業務等の専門家から構成される東京都投資評価委員会におきまして、専門的な見地から検証を受けまして、その適正性が確認されることとなっております。
○伊藤委員 先般の報告では、都は、今回創出するファンドに対して、出資額の範囲内で責任を負うことになる有限責任組合員としての立場で参画するということでありましたけれども、都の公金をファンドに出資する以上は、万全な監視体制をしいてもらいたいと思います。
ファンド法制上は、当該ファンドの運用状況に関する情報の開示については、定例的な決算書等の提出が義務づけられているだけだということでありました。ファンドの運用状況が定例的な決算書による開示のみにより明らかになるということならば、ちょっと心もとない印象も受けますけれども、都として何らかの対応策を講じているのか、伺っておきたいと思います。
○松下投資政策部長 今回のファンド運営事業者の募集に当たりまして、特別な条件といたしまして、当該ファンドの投資意思等を決定する協議機関に、出資者である都がオブザーバー参加することを求めてございます。
ファンドの意思決定等に関する情報収集や意見表明等を通じましても、これまた専門家の助言を得た上でありますが、事実上の監視が可能と考えております。
○伊藤委員 ぜひとも事業の運営に当たっては、わきを固めた堅実な事業執行に努めてもらいたいと思います。
先ほども質問にありましたけれども、確認を含めて、最後に質問させていただきます。投資先として想定をされております再生可能エネルギーについて伺いたいと思います。
官民連携インフラファンドの投資先として、再生可能エネルギーも想定しているとの説明でありました。再生可能エネルギーは、発電量のバランスが悪いなど、技術的に未確立な側面もあるとされております。こうした再生可能エネルギーもインフラファンドの投資先とした、その意義を伺いたいと思います。
○松下投資政策部長 ご指摘にもありましたように、技術的に確立されました火力発電に比べまして、再生可能エネルギーは発電量が安定しない、こういったこともありますので、ベース電源としての役割を果たすためには、これからまだ蓄電技術が完成するなど、数多くの課題が残されているのが事実でございます。
しかし、一方で、クリーン電力であります再生可能エネルギーの社会的な役割は、今後ますます高まることが予想されております。最近では、再生可能エネルギー発電の欠点を補う火力発電や蓄電池との協調運用など、こういった研究や技術革新も急速に進んでいるところでございます。
都としましても、出資するインフラファンドを通じて、再生可能エネルギーの投資に関与する中で、再生可能エネルギーが抱える課題の克服につながるような、電力分野におけるインフラ整備のあり方について、より深く検討を進めてまいりたいと考えております。
○伊藤委員 都が出資する三十億円を毀損することがないように切に願うのとともに、再生可能エネルギーの発展促進のためにも、また都民の生活や産業の維持発展のためにも、官民連携インフラファンド事業に期待をして、質問を終わりたいと思います。
○吉田委員 それでは、私からも報告事項、官民連携インフラファンドについて若干質問をいたします。初めてこの問題について報告が行われ、質疑をする機会となりましたので、主に基本的な点を伺っておきます。
代表質問でも明らかにしたとおり、都は二〇二〇年までに再生可能エネルギーの比率を二〇%に高める計画を進めていますが、いまだに二・九%にすぎません。原発に依存できない状況の中で、こうした再生可能エネルギーなど新たな電力の創出のために、都として支援促進の強化を行っていくことが強く求められていると思いますし、環境負荷が少なく効率性の高い天然ガス発電などの促進策も求められているというふうに思います。
しかし、この官民インフラファンドというスキームは新しい事業手法だと思いますし、今もお話がありましたが、東京都が三十億円の投資を行うということからすれば、具体的な執行に当たっては慎重な検討が求められているというふうに、私は思います。
初めに、官民インフラファンド構想はどのような経過で、そしてどのように検討が重ねられて実施する方針を決めたのか、まずお願いいたします。
○松下投資政策部長 大震災以降でありますが、都においては、被災地の復興に対応すべく、政府主導による官民連携のインフラファンド創設について国に働きかけてまいりました。しかし、残念ながら、前向きな反応は得られなかったところでございます。
一方、都としましても、国と地方の債務残高の状況や、あるいは銀行による貸し出しの状況などについて調査分析を行うとともに、発電事業者等と意見交換を頻繁に行ってまいりました。こうした中で、社会資本整備を公的セクターの資金のみで対応することは困難であると。あるいは、民間資金の円滑な循環のかなめとなっております金融機関におきましても、国債保有率が増加する一方で、民間貸し出しの指標であります預貸率が減少しているという、こういう実態が明らかになってまいりました。
これらの背景を踏まえまして、都においては、社会資本整備における長期的かつ安定的な新たな資金循環システムの構築と、喫緊の課題である電力の安定供給への貢献を目的としまして、官民連携インフラファンドを創設することとなった次第でございます。
○吉田委員 そもそもインフラファンドは、社会資本整備、インフラ整備を民間の資金によって実施をする。かつ、そのためのファンドでの資金運用を魅力的な投資先とするということで、欧米などで実施が始まっているというふうに聞いております。都が進めようとしているインフラファンドは、こうした民間による事業に地方公共団体である都も、企画者あるいは出資者となって積極的に参加し、推進するというものだと認識をしています。
問題は、インフラファンドといいながら、なぜ都が出資し、参加するのかということだと思います。
この点で、都の事業にかかわっている方の報告書を読むと、次のように書かれてありました。政府によるインフラファンド創設に関するその報告ですけれども、独立採算型のインフラ事業において、民間事業に過度なリスク負担を強いることは、事業の安定性を脅かし、民間事業者が事業参入する際の障害となり得ることから、民間投資資金を円滑に引き出すための仕組みとして、官民インフラファンドの創設が検討されてきたという経過があって、こうした趣旨は、政府に関してなんですが、東京都も同じものだというふうに認識をしております。
そこでお伺いしますけれども、本来民間の事業としてインフラファンドが進められているわけですけれども、そこにあえて都が参加するということは、少しでもリスクを回避し、積極的に民間資金を投入するという意図と思われますが、しかしその分、そして東京都は三十億円の出資を決め、執行しようとしているわけですが、問題はそのリスクについてどのように想定し、リスク回避策をどのように東京都として検討しているのかということが問われなければならないと思うんですが、いかがでしょうか。
○松下投資政策部長 インフラファンドは、電力の安定的な供給に資することとなる企業等に対しまして、直接投融資を行うことになりますので、社会経済の情勢等によっては、有限責任の範囲内ではありますが、当然一定のリスクを負うこととなります。都としてリスクを負うこととなります。このため、そのリスクを極力小さくするため、さまざまな工夫を施して本事業に取り組むこととしております。
まず最初にですが、事業全体の、民間も含めたリスクを低減するために、具体的には、まず既存電力会社との競争関係が成り立つ環境づくりなどを国に対して求めていくと、こういったことを行いまして、発電事業への多数の事業者の参入を促進し、市場の活性化につながる仕組みづくりを求めてまいります。これは、官民連携インフラファンドそのものではございませんが、都としてリスクを低減していく取り組みでございます。
また、ファンドの投資実行後、ファンドの状況を継続的に監視するため、東京都専門委員である公認会計士の方々の助言をいただくとともに、法律、会計、投資業務等の専門家により構成されます東京都投資評価委員会の検証や確認を受ける機会を設けることとしております。これは、事業そのもののリスクを低減する取り組みでございます。
○吉田委員 ファンド事業ですから、一定のリスクを負うという危険性、可能性というのは不可避であると。ただ、その場合であったとしても、有限責任、出資額の範囲内であるということですけれども、もちろん、都民の税金、公金である以上、リスクを発生させ損失をつくるということは、私はあってはならないというふうに思いますし、しかも極めて専門的な判断にかかわることです。そういう意味では、どうしても新銀行東京の失敗というものを思い起こさざるを得ないわけです。
また、全国では同様の事業として、PFI事業が展開をされてきました。病院建設でのPFIの採用をめぐっても、全国でさまざまな失敗が起きてきたということも想起をせざるを得ません。
そこでお伺いいたしますけれども、東京都は三十億円を出資をしますが、出資総額は二百億円というふうに想定しています。そして、これまでの経過の中では、九都県市なども共同で出資をするように事業参加を呼びかけてきたというふうに聞いていますが、先日聞いた限りでは、他の八県市の出資は決まっていないというふうに聞いておりますが、現状がどうなのか。あるいは、他の県市の出資がなくても、東京単独で先行実施をするということなのかどうか、ご答弁をお願いいたします。
○松下投資政策部長 九都県市首脳会議におきましては、官民連携インフラファンドにつきまして、都が単独で先行事業として取り組むこととして位置づけられております。このため、昨年、事務担当者レベルの検討会を九都県市首脳会議に設置し、事業の進捗状況等の検証などを開始したところであります。
今後検討を重ね、社会資本整備に当たっての民間資金の供給のあり方など、新たな課題に取り組むこととしてございます。
なお、関東地方知事会においても同様の検討会を立ち上げ、検討しているところであり、まだ八県市あるいは関東知事会などで出資をするといった検討段階には至っておりません。
○吉田委員 したがって、現時点ではという前提になりますけれども、他の八県市は出資するということは決めていないということですね。しかしながら、話は進めていると。そして、東京都としてはあくまでも予定どおり実施を進めていくということになるかと思うんです。
もう一つ、関連でお聞きしたいんですけれども、民間の出資についてです。その二百億円確保の見通しがどのようになっているのか。また、予定どおり二百億円がもし集まらないとしても見切り発車するのか。さらに、その場合、三十億という都の出資をふやすということがあり得るのかということも、念のためにご答弁をお願いいたします。
○松下投資政策部長 東京電力の値上げ発表以来、電力需給契約の相手先としまして、特定規模電気事業者、先ほどから出ておりますが、新電力でありますPPSへの切りかえの動きが出ております。PPSはそれに対応できるほどの供給能力を持ち合わせていないということも、先ほどからご答弁したとおりでございます。
今回組成するファンドの投資先として想定しておりますこうした新電力、あるいはPPS、こういったものは、新たな設備投資のために十分な資金需要を持っていると。資金が必要となっていると考えております。また、ファンド運営事業者募集のプロセスにおきましても、多くの事業者と意見交換を行いまして、各方面から出資の意欲は十分あると、こういったふうに認識しております。
なお、ファンドの規模につきましては、二百億円、これは想定でございまして、二百億円を絶対条件にするものではなく、あくまでも計画上想定した規模感でございます。したがいまして、その前後の数字であれば、十分に投資できるものとして、組合は成立するものと考えております。
したがいまして、東京都が資本に不足がある、あるいは出資に不足があるということで、予算の三十億円を超えて追加出資することはございません。
○吉田委員 初めての事業であり、しかもファンドという一定のリスクを負う危険性を伴うということから見れば、事業の目的、趣旨は重要であったとしても、具体的な執行においては慎重な検討が改めて必要ではないかなというふうに思っております。
事業のスケジュールが示されておりますけれども、私はそれにこだわることなく、適切な進行管理が行われる必要があるというふうに思います。
なお、いうまでもなく、小規模中小企業も含めて、あるいは再生可能エネルギーも含めて、さまざまな新たな事業参入の意欲が広がっていることは明らかです。私は、単にこのファンドという形式だけではなく、さまざまな形で東京都がそれを支援をするということを改めて要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○吉倉委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉倉委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
以上で知事本局関係を終わります。
○吉倉委員長 これより総務局関係に入ります。
付託議案の審査を行います。
第百三十五号議案を議題といたします。
本件につきましては、既に説明を聴取しております。
その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
資料について理事者の説明を求めます。
○山手総務部長 六月四日の当委員会におきまして要求がございました資料についてご説明をさせていただきます。
恐れ入りますが、お手元にお配りしております総務委員会要求資料をごらんいただきたいというふうに存じます。
まず、大阪都構想についてでございます。
恐れ入りますが、表紙から二枚おめくりをいただきたいと思います。現在、大阪府及び大阪市において検討されておりますいわゆる大阪都構想につきまして、公表されている内容をまとめたものでございます。
続きまして、第三十次地方制度調査会における大都市制度のあり方の調査審議状況でございます。
恐れ入ります、裏面をごらんいただきたいと思います。平成二十三年八月二十四日に発足いたしました内閣総理大臣の諮問機関でございます第三十次地方制度調査会の調査審議状況につきまして、諮問事項の一つであります大都市制度のあり方を中心にまとめたものでございます。
以上、簡単ではございますが、説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
○吉倉委員長 説明は終わりました。
ただいまの資料を含めまして、本案に対する質疑を行います。
発言を願います。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○吉倉委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉倉委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
以上で総務局関係を終わります。
これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
午後三時二十三分散会
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