総務委員会速記録第十一号

平成二十三年十月四日(火曜日)
第一委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十五名
委員長高倉 良生君
副委員長吉原  修君
副委員長松下 玲子君
理事小山くにひこ君
理事谷村 孝彦君
理事吉田 信夫君
小林 健二君
小宮あんり君
西崎 光子君
鈴木 勝博君
三宅 正彦君
服部ゆくお君
中屋 文孝君
小沢 昌也君
大沢  昇君

 欠席委員 なし

 出席説明員
総務局局長笠井 謙一君
危機管理監醍醐 勇司君
理事塚田 祐次君
総務部長山手  斉君
訟務担当部長和久井孝太郎君
復興支援対策部長砥出 欣典君
復興支援調整担当部長野口 一紀君
行政改革推進部長土渕  裕君
情報システム部長長澤  徹君
首都大学支援部長皆川 重次君
人事部長中嶋 正宏君
労務担当部長内藤  淳君
主席監察員長谷川 均君
行政部長岸本 良一君
多摩島しょ振興担当部長事業調整担当部長兼務榎本 雅人君
区市町村制度担当部長堤  雅史君
総合防災部長村松 明典君
企画調整担当部長箕輪 泰夫君
統計部長荒井  浩君
人権部長並木 勝市君
選挙管理委員会事務局局長影山 竹夫君

本日の会議に付した事件
 意見書について
 選挙管理委員会事務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十五号議案 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例の一部を改正する条例
 総務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十号議案 災害時において応急措置の業務に従事した者の損害補償に関する条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
・東京都防災対応指針(仮称)の策定に向けた検討状況について
・平成二十二年度東京都監理団体経営目標の達成状況・経営実績及び平成二十三年度東京都監理団体経営目標の設定状況について
・平成二十二年度公立大学法人首都大学東京業務実績評価について
・第一期中期目標期間公立大学法人首都大学東京業務実績評価について
・公立大学法人首都大学東京第一期中期目標期間事業報告について
・私債権の放棄について

○高倉委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員からお手元配布のとおり、意見書一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高倉委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○高倉委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、選挙管理委員会事務局及び総務局関係の付託議案の審査並びに総務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより選挙管理委員会事務局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百三十五号議案を議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○松下委員 第百三十五号議案、東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例の一部を改正する条例に関して伺います。
 ことし四月、国会において、地方議会の議員定数を人口に応じて定めていた法定上限が廃止されました。これは、第二十九次地方制度調査会の答申などを踏まえたものとなっておりますが、まずは、この都道府県議会の議員定数を定める根拠となっていた地方自治法の改正の背景、目的についてお伺いいたします。

○影山選挙管理委員会事務局長 都道府県議会の議員の定数は、地方自治法第九十条第二項に基づき、人口に応じた定数の上限が定められていたところであります。しかし、地方分権を一層進め、地方議会の自由度を高めるとともに、議会機能を充実強化させる見地から、法定上限制度の規定は不要であるとして、地方自治法が改正され、廃止されたものであります。

○松下委員 地方分権の推進、地方議会制度の自由度を高める改正ということがわかりました。
 次に、今回の地方自治法の改正により、都道府県議会の議員の定数は、今後、各議会の判断で自由に決定していくこととなったと考えてよいのか伺います。

○影山選挙管理委員会事務局長 このたびの地方自治法改正において、先ほど申し上げた趣旨から、議員定数の上限を定める規定は廃止されたものであります。
 今後は、人口や面積など、さまざまな地域、自治体の実情を考慮した上で、自治体ごとに上限にとらわれることなく、条例により定めることになります。

○松下委員 これから各地方議会は、それぞれの議会においてさまざまな課題を議論、決定していくための議員定数を検討することとなります。
 ところで、最近行われました都道府県議会議員の定数の改正状況をお伺いいたします。

○影山選挙管理委員会事務局長 今回の地方自治法改正は、施行がまだ、八月一日ということもあり、この改正を受けた都道府県議会の定数の改正は現在のところ行われておりません。
 なお、今回の地方自治法改正施行前の例でございますが、大阪府が議員定数百九人から二十一人減の八十八人に改正しております。また、その他、最近の事例としては、静岡県が五人減、宮崎県が六人減などの改正例がございます。

○松下委員 まだ法律が改正されたばかりということもあって、改正後の定数改正はないということで、地方自治法改正に先立った改正ということはわかりました。
 これからは、住民に託された議会の役割を果たしていく自治体の合議体として成り立つ、各自治体、議会が必要とする議員数とはどのくらいか、議会のあり方も含め検討していかなければなりません。
 東京都議会は千三百万人都民を代表する都議会議員で構成される合議体です。都議会は、首都機能を持ち東京都政により運営されている大都市東京において、さまざまな課題に取り組んでおります。議論を尽くし、政策形成を行い、意思決定を行っていく、また、執行機関を監視する役割もございます。
 この法改正を受けて、東京都議会が十分に機能する適正な定数を考えていく必要があります。そして、議会に関するさまざまな制度についても点検をし、議会改革を進める必要があります。東京都議会においてもこれから大いに議論を行っていくべきであると申し上げて質問を終わります。

○高倉委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高倉委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で選挙管理委員会事務局関係を終わります。

○高倉委員長 これより総務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百三十号議案を議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○高倉委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高倉委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○高倉委員長 次に、報告事項、東京都防災対応指針(仮称)の策定に向けた検討状況について外五件に対する質疑を行います。
 本件については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○小山委員 まず、東日本大震災における東京都の対応と教訓について伺います。
 この対応と教訓は、被災地支援や都内の災害対応における都の約半年間の活動を振り返って、さまざまな教訓をまとめたとのことですが、都が行った被災地支援活動についてもまとめられております。
 都はこの間、医療職、技術職、事務職など、多くの職員を被災地に派遣し、被災地で失われた行政機能を補完するべく支援してまいりましたが、こうした支援を通じて、東京都の防災対策に生かすべきさまざまな教訓が見出されているのではないかと思います。
 ある自治体では、被災地に派遣した職員に対してアンケートを実施いたしまして、防災対策に反映させる取り組みを行っているとのことでもありました。
 そこで、十一月に策定をいたします防災対応指針には、被災地に派遣された職員の現地での経験やそこで学んだことを生かし、反映させていくべきと考えておりますが、見解を伺います。

○箕輪企画調整担当部長 今回の大震災におきます被災地支援は貴重な体験でございまして、今後の防災対策の見直しに生かしていくことが重要でございます。
 このため、先に出しました東日本大震災における東京都の対応と教訓、この取りまとめに当たりましては、復興支援対策部や現地事務所の協力を得て、被災地に派遣された職員の体験を調査分析いたしました。このことによりまして、広域連携において留意すべき事項や、住民の早期生活安定化に向けた対策の重要性など、多くの教訓が明らかになったところです。
 この教訓を踏まえて、防災対応指針の策定に向けて、具体的な対応策を検討してまいります。

○小山委員 今ご答弁ありましたが、被災地に派遣された職員の体験を踏まえて対応と教訓をまとめたとのことでもありました。防災対応指針の策定に当たっても、ぜひこうした現場実態に基づく実効性のある対策を構築していただくよう要望しておきたいと思います。
 次に、被害想定などのさまざまな想定について三点お伺いいたします。
 想定外を想定するというのが、今回の震災を経た一つの教訓だと思います。これはなかなか難しいことではありますが、やはりあらゆる事態を想定して、また、その想定さえも裏切られることも想定した上で対策を講じる、こうしたスタンスが必要なのではないかと思います。
 去る九月二十八日の国の中央防災会議の専門調査会、これはまさに東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会というものですが、その中では、自然現象の予測の困難さを謙虚に認識するとともに、今後の地震、津波の想定の考え方などについて、抜本的に見直していかなければならないというスタンスを示されております。首都直下地震についても、いわゆる関東大震災クラスの地震についても、想定地震として検討を行うべきとの報告を示しております。
 そこで、都は被害想定を再検証するとしておりますが、この中央防災会議の報告であります関東大震災クラス、つまりマグニチュード八級の地震についても想定地震とすべきとの指摘を踏まえるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○箕輪企画調整担当部長 中央防災会議の専門調査会が、いわゆる関東大震災クラスの地震についても想定地震として検討すべきとの報告を行ったことは承知しております。
 都におきましては、平成三年に関東地震を対象とした被害想定を、それから平成十八年に、東京湾北部地震及び多摩直下地震を対象とした被害想定を行い、これらの想定に基づき、防災対策を講じてまいりました。
 東日本大震災の発災により、その被害実態等を踏まえまして、現行の被害想定の再検証を行う必要がありますことから、都は、専門的知見を有する委員から成る東京都防災会議の地震部会、これを九月二十一日に開催し、被害想定の見直しに着手したところでございます。
 被害想定の対象とする地震につきましては、関東地震も含めまして、今後この地震部会における専門家のご意見に基づいて適切に判断してまいります。

○小山委員 今、専門家による科学的検討に基づいて決定するということでございますので、ぜひ活発な議論により、都民が納得のできる、また、都民の安全・安心に寄与する、そういった内容になることを期待しておきたいと思います。
 次に、被害想定に関連して、液状化についてお伺いいたします。
 東京都は昭和六十二年に液状化予測図、いいかえると液状化マップを作成し、何度か更新をしてまいりました。地図では、液状化の危険性をわかりやすく知らせる、こういった取り組みを早くから行っていた点については高く評価できるものでありますが、残念なことに、今回、実際に液状化が発生いたしましたのは、危険度が高い赤い色の地域ではなくて、相対的に低い黄色の地域でございました。こうした予測にもちろん誤差はつきものですが、やはり再度の予測のあり方というものを検証する必要があると思います。
 ぜひ液状化対策の十分な検証と充実を求めて、都における液状化対策の現状と課題認識についてお伺いいたします。

○箕輪企画調整担当部長 都はこれまで、橋梁や護岸などの主要構造物の整備に当たりまして、必要に応じて地盤改良や基礎部分の強化を実施してきたところでございます。民間建築物に関しましては、建築確認審査等を通じまして、液状化対策の指導の充実強化を図ってきたところです。
 しかし、今回の震災では、遠隔地の地震にもかかわらず、都内の九の区におきまして液状化現象が確認されております。このため、東海、東南海、南海連動地震を視野に入れた対策、こういった強化も必要であると考えてございます。

○小山委員 ぜひ万全の対策をお願いしたいと思います。
 想定にかかわる三つ目の質問は、異なる災害が同時に、または連続して起こる複合災害についてお伺いいたします。
 先日、東京都の防災対策の参与である志方氏がテレビに出演されているのを拝見いたしました。参与は、今回の大震災の教訓として、複合災害への備えが必要であると力強くお話をされておりました。例えば地震と水害などのように、両方の災害に対応できるような備えを万全にせよということでありました。
 先日の代表質問でも、我が党は複合災害への備えが必要である旨を質疑し、都もその必要性がある旨の答弁をされました。
 そこで、都は、この複合災害に対して、具体的にどのように対応していくのか、見解をお伺いいたします。

○箕輪企画調整担当部長 複合災害が生じました場合につきましても、被害を最小限に抑止する、そのための対策を講じておくことは必要でございます。
 例えば、都はこれまでも、水門、外郭堤防の整備などにより、高潮、津波対策を講じてまいりましたが、台風と地震が複合して発生する場合、ハード策に加えまして、避難誘導などのソフト対策を講じることが重要となります。
 このため、東京都防災会議に、区市町村や防災機関、学識経験者などから成る検討組織を設置いたしまして、避難対策を総合的に検討してまいります。

○小山委員 ぜひとも複合災害への備えのさらなる充実を求めておきたいと思います。
 災害対応というものは、あらゆる事態を想定いたしまして対策を立てていくことが必要であります。その意味で、今回の大震災から多くの教訓を学び、防災対策に役立てようという執行機関側の基本的な姿勢は、評価のできるものであります。大切なことはそれを徹底して貫くということだと思います。十一月には、そうした議論に基づいて、都民の生命、財産を守るためにも、実りある防災対応指針が提出されることを強く求めまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

○三宅委員 我が党は、東日本大震災復旧・復興対策推進本部のもとに、二つのワーキンググループを設け、高度防災都市東京の実現に向け精力的に検討を進めています。日本の中枢である首都東京の防災力向上はまさに喫緊の課題であり、こうした観点から都の防災対策について伺います。
 都が発表した東日本大震災における東京都の対応と教訓は、大震災から半年間を振り返った上で、防災対策全般にわたり幅広く現時点の教訓を明らかにするなど、充実した内容となっていると思います。都は、十一月を目途に防災対応指針を策定するとしていますが、今回、対応と教訓を取りまとめた趣旨と、今この時期に発表した理由についてお聞かせください。

○村松総合防災部長 東日本大震災における東京都の対応と教訓は、従来の災害の概念におさまらない大震災の発災と、この半年間の都の活動を踏まえて、現場における実体験に根差した教訓を明らかにすることを趣旨として取りまとめたものでございます。この時期に発表することで、防災対策について広く議論を喚起し、今後の防災対応指針の策定へとつなげてまいります。

○三宅委員 今ご答弁されたとおり、現場の実体験を踏まえて、地に足のついた施策を展開できることこそ、東京都の強みだと思います。東京の防災力向上に向け、多くの議論を踏まえて、現場感覚に根差した教訓を生きたものにしていくことが求められています。そのためには、今回の教訓を今後策定する防災対応指針に着実につなげていくことが必要です。
 そこで、今回取りまとめた対応と教訓の内容をどのように防災対応指針につなげ、東京の防災力向上に向けた取り組みを進めていくのか、見解を求めます。

○村松総合防災部長 今回明らかになった教訓を踏まえまして、専門家や区市町村の意見を聴取するとともに、関係各局と今後の具体的な対応策についての検討、調整を進め、本年十一月を目途に、防災対応指針を策定いたします。指針の内容を実行プログラム、来年度予算、地域防災計画の修正に反映いたしまして、具体的な施策を実施することで、東京の防災力の向上につなげてまいります。

○三宅委員 ぜひ実効性ある具体的な取り組みへとつなげていただきたいと思います。
 それでは引き続いて、対応と教訓の具体的な取り組みについて質問いたします。
 東京の防災力を高める上では、行政による取り組みも重要です。とりわけ道路、橋梁、防潮堤の整備、ライフライン施設の耐震化などのハード対策については、行政が主体となって着実に進める必要があります。
 一方で、今回、岩手県の田老地区で国内屈指の防潮堤が崩壊してしまった例からも明らかなように、ハード対策だけですべての被害を防止することは現実的には困難です。また、有名な釜石の奇跡の事例から、ソフト対策の有効性も明らかにされています。東京の防災力を向上するためには、ハードとソフトの両面の対策をバランスをとりながら進めていくことが必要だと考えます。
 都は、今回の教訓を踏まえて、ハードとソフトの両面の対策をどのように組み合わせて進めていくのか、見解を伺います。

○箕輪企画調整担当部長 今回の教訓から、災害から都民の生命を守るためには、ハード、ソフト両面の対策を組み合わせることの有用性が明らかになりました。今後このことを踏まえ、具体的な対策を講じていく必要がございます。
 このため、防災対応指針の策定に当たりましては、例えば木造住宅密集地域における整備促進策と意識啓発策の組み合わせ、また、万が一の震災に備えての水門等の整備と避難対策の組み合わせなどの方策について、所管局と検討を進めてまいります。

○三宅委員 行政が担う公助の取り組みはもちろん大切ですが、防災対策の基本はやはり自助、共助の取り組みであり、この取り組みを強化することなしには東京の防災力を高めることはできません。
 隣組の構築に当たっては、地域において実際に行われている取り組みを掘り起こして後押ししていくとのことですが、地域ではぐくまれた取り組みに光を当てることは有意義なことです。こうした取り組みは地域によってさまざまだと思われますが、都は今後どのような取り組みを取り上げていくつもりなのか、具体的な例も含めてお答えください。

○箕輪企画調整担当部長 地域の防災力を向上する上では、地域特性に応じた取り組みを進めることが重要でございます。
 このため、例えば木造住宅密集地域における区民のレスキュー隊、都心部の企業による相互支援活動、あるいは中高層団地における小規模の自治防災活動など、地域ではぐくまれた共助の取り組みを発掘し、これを広く波及することで地域の防災力の向上を図ってまいります。

○三宅委員 災害が起こったとき一人でも多くの命を救うためには、地域における自助、共助が何よりも大切です。この原点を忘れることなく、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 さて、こうした自助、共助に加え、公助もあわせて社会全体で取り組むべき問題が、帰宅困難者対策です。去る九月二十日に発足した協議会は、国、民間事業者など、幅広い関係者で構成されているとのことですが、そのねらいと今後の進め方について伺います。

○村松総合防災部長 帰宅困難者対策は、企業の施設内待機等による一斉帰宅の抑制、官民の協力による一時待機施設の確保、迅速な安否確認と正確な情報提供のための情報提供体制の整備、安全確保後の円滑な帰宅支援の四点の課題がございます。
 こうした多岐にわたる課題に対応するため、今回の協議会には、関係する複数の省庁や、九都県市などの関係自治体はもとより、経済団体、鉄道・バス事業者、通信事業者など、幅広い民間事業者に参画していただいたところでございます。
 今後、関係者が一堂に会した活発な議論をすることで共通認識を深め、また、専門的な課題につきましては、ワーキンググループを活用して議論を掘り下げるなどによりまして、有効な解決策を導き出すように取り組んでまいります。
 また、協議会で統一的なルールを定めた場合には、多くの構成員を通じて徹底を図ることで、実効性を確保することができるものと考えております。

○三宅委員 帰宅困難者対策は、やはり社会全体で取り組むことが必要であり、この問題にかかわるあらゆる関係者を集めて協議し、合意のもと対策を進めていくことは有効な取り組みであると思います。ぜひ効果的な帰宅困難者対策を導き出していただきたいと思いますが、今お話のあった四つの課題のうち最も基本となるのが、一斉帰宅の抑制、つまり、従業員や生徒などが会社や学校にとどまることを徹底することです。このためには当然、備蓄などの備えを講じていくことが求められております。
 知事は、備蓄を促す条例の制定についても述べられていますが、こうした条例の制定も含めて、帰宅困難者のために備蓄をどのように進めていくのか、見解を伺います。

○村松総合防災部長 震災の発災時には、むやみに移動を開始せず、交通機関、道路の状況などをよく確認し、安全な帰宅手段が確保されるまで、会社などそれぞれの施設でとどまっていただくことが必要となります。
 このため、各企業では、従業員のための食料や飲料水などの備蓄が不可欠となることから、今後、国との協議会の中で備蓄の推進について検討をしていくこととしております。それを踏まえまして、条例の制定について検討を進めてまいります。

○三宅委員 条例の詳細な内容についてはこれから検討されることと思いますが、条例の制定に当たっては、事業者の意見を踏まえるとともに、大企業とは異なり経営基盤の弱い中小企業、中小零細企業への配慮も含めて検討されることを求めて、次の質問に移ります。
 島しょの地理的特性に応じた防災対策について伺います。
 平成十二年に三宅島の雄山で大噴火が発生し、大きな被害が発生しました。その際、島内では、土石流によって通信ケーブルが切断され、電話が通じなくなりました。そのため、その後の災害対策や応急復旧活動に大きな支障が生じました。
 三宅島に限らず島しょ地域では、災害が発生した場合、迅速に連絡をとって救援や支援を受ける必要があります。また、島内では、防災関係機関や団体との間での情報共有を図り、相互に協力して災害対策に当たらなければなりません。
 そこで伺います。島しょではその地理的特性に配慮して、災害時における相互の通信手段を確保していくことが重要となりますが、都は今後どのような対策を講じるのか、見解を求めます。

○村松総合防災部長 島しょでは、離島という地理的特性に配慮して、無線などを主体とした多様な通信手段を確保していくことが重要となります。
 現在、島しょにおける通信手段としましては、通信事業者によります回線以外にも、全市町と役場に防災行政無線を配備するとともに、予備としまして衛星回線の使用も可能とするなど、非常時の通信手段を確保しております。
 今後、災害時優先携帯電話など、多様な通信手段の活用について検討を進め、島しょにおける通信の確保を図ってまいります。

○三宅委員 ここまで、対応と教訓のコンセプトやその中身についていろいろと伺ってきましたが、防災対策は非常に幅広く、また、各局との緊密な連携も必要です。ぜひともしっかり取り組んで、首都東京を災害から守る礎を築いていただきたいと思います。
 そこで最後に、防災対策の再構築に取り組む局長の決意を伺って、私の質問を終わります。

○笠井総務局長 東日本大震災の発災以来、都は、都民の安全の確保と被災地の支援に全力で取り組んでまいりました。こうした実体験を通じて得た貴重な教訓を決してむだにすることなく、防災対策の再構築につなげなければならないと思っております。
 そして、この考えに基づいて今回、対応と教訓を取りまとめました。今後さらに検討を進め、十一月を目途に防災対応指針を取りまとめ、来年の夏の地域防災計画の修正に反映させるとともに、事業者に備蓄を促す条例の制定など、実効ある対策を講じてまいります。
 東京の防災力の向上は、都だけではなく、国や他の自治体、さらには都民、事業者が総力を結集して初めて結実するものでございまして、幅広い関係者の連携協力を得ながら、防災対策の再構築に向け全力で取り組んでまいります。

○谷村委員 それでは初めに、監理団体の経営目標及び達成度評価について質問いたします。
 都は、石原知事就任以来、徹底的な監理団体改革に取り組み、多大な成果を上げてまいりました。私ども公明党も、監理団体数の半減、役員退職金の全廃の実現についてはリード役を担ってきたわけであります。平成十三年度から行われております本制度についても、監理団体改革を推し進めていく上で一定の効果があったことと思います。
 先般、昨年度の目標達成度状況と今年度の経営目標について報告がありましたが、その内容について質問をさせていただきます。
 冊子一ページの本制度の概要説明の〔1〕に、団体にみずから経営目標を設定させ、その達成度を評価していると記載してあります。この経営目標の設定の仕方がお手盛りになっては、本制度が全く無意味になってしまうわけであります。
 そこでまず、この各団体の目標設定に当たっての視点、そしてその手続についてお伺いいたします。

○土渕行政改革推進部長 各団体の目標につきましては、民間の経営管理手法であるバランススコアカード、これは、財務数値にあらわされる業績だけではなく、財務以外の経営の状況などから経営を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うための手法でございますが、これを参考といたしまして、顧客満足度などの都民・利用者の視点、自己収支比率などの財務の視点、人事給与制度の見直しなどの内部管理の視点に加え、地球温暖化防止などの社会貢献に努めるとした環境配慮行動の視点の四つの視点から設定をしております。
 また、目標設定に至る手続といたしましては、まず、団体自身が事業目的や特性などに応じて目標の設定を行います。次に、この目標に関して、団体のトップが目標達成に向けた取り組みなどにつきまして、所管局長に対してプレゼンテーションを行うなど、各団体と所管局との間で必要な調整を行います。その後、所管局を通じて提出された各団体の経営目標につきまして、総務局が全庁的な立場から、過去の実績などを参考にしながら、適正な目標水準となるよう調整をいたしまして、最終的には、副知事をトップとする監理団体改革推進委員会に付議の上、経営目標を確定させているところでございます。

○谷村委員 今ご答弁をいただきましたが、各団体の目標の考え方については、まず、視点については、都民・利用者の視点、財務の視点、内部管理の視点、そして環境配慮行動の視点という、東京都の監理団体としての位置づけならではの四視点で目標を明確にしておられると思います。また、その目標の設定方法についても、まず、団体みずからが設定し、所管局にプレゼンをして、その後実務的な調整を行い、総務局が全庁的な立場からの調整を加え、副知事をトップとする監理団体改革推進委員会に付議をすると。本制度では目標設定が大変に重要なファクターとなりますので、かなり重層的に取り組まれていることを今確認させていただきました。
 次に、この制度の概要説明の〔2〕ですが、その冒頭部分に、評価結果については、翌年度以降の経営改善に確実に反映させることにより、団体のさらなる自律的経営を促進させると記載してあります。
 この自律的経営を促進について確認をさせていただきたいと思いますが、都は昨年、東京都監理団体活用方針を策定して、監理団体が都施策を推進する上でのパートナーであるということを明確にしたわけであります。指定管理者制度のもとで一定の条件を満たせば、監理団体に特命をすることができる制度を導入したのも、そのあらわれであると理解しております。
 しかし、一見すると、この都のパートナーとして位置づけることは、都が何でもかんでも関与するということと認識されたり、今回の評価制度で目的とする自律的経営を促進するということとは矛盾をするのではないかと受け取られる向きもあるかもしれないわけであります。
 そこで、この監理団体の自律性と、監理団体をパートナーとする活用方針との関係については、どのように位置づけていかれるのかお伺いいたします。

○土渕行政改革推進部長 昨年策定いたしました東京都監理団体活用方針では、都政を支える重要なパートナーである監理団体の存在意義を明確にし、都施策推進のさまざまな場面におきまして、より一層監理団体を活用していくことを打ち出したところであります。一方で、近年職員の大量退職を初め、景気の低迷などに伴う大幅な税収減など、都政を取り巻く環境が厳しくなっていることから、監理団体におきましては、財政面で可能な限り、都からの支援に頼らない効率的な経営が引き続き必要な状況となっております。
 このため、団体をパートナーとして活用するためには、団体の自律性を向上することが重要であると考えており、今後も、都民に一層貢献する団体として、団体みずからの経営改革を促進し、より効率的な執行体制の確立を図りながら、都と団体が一体となって都政の諸課題に取り組んでまいります。

○谷村委員 監理団体の専門性をパートナーとして活用しつつ、財政的には自律性を求めていくということになるのでしょうか。指定管理者制度の導入などで、この監理団体の位置づけが少しあいまいになりましたが、活用方針の目指す方向性としては私は正しいと思っております。
 また、逆に指定管理者制度の特性を突き詰めていけば、監理団体というものは逆に必要がなくなってくるんだろうなと思いますし、また、何が何でも、何でもかんでも民間でできるというものでもないわけであります。この矛盾を活用方針では乗り越えたものと受けとめております。
 次に、制度の概要説明の〔2〕の後段部分ですけれども、この達成度評価については、達成状況を都民に対して公開することで、都の監理団体として求められる公正で透明性の高い経営を徹底するとともに、都民に対する説明責任を果たす機能を有していると記載してあります。
 平成十三年度に本制度が導入されて十年が経過しているわけですけれども、各団体のこれまでの経営目標、あるいは実績についてどのような推移をしているのか、この冊子では全く読み取れませんので、改めてお伺いしたいと思います。

○土渕行政改革推進部長 各団体の経営目標につきましては、団体ごとの事業目的や特性などに応じ、その時々の状況に見合ったものを設定していることから、一つ一つの個別の目標につきましては、必ずしも経年で見られるものばかりではありませんが、今後は団体単位の達成度評価につきましては、過去の推移がわかるよう検討してまいります。
 なお、これは参考になりますが、団体全体としての経営目標の達成状況につきましては、過去五年間の推移を見てみますと、目標の達成率が九五%以上の評価である達成とした団体、これはすなわち最もよい評価を受けた団体ということですが、平成十八年度では全団体の二六%、十団体であったものが、十九年度は四二%、十六団体、二十年度が三七%、十三団体、二十一年度四八%、十六団体、二十二年度六一%、二十団体と、二十年度には若干下がっておりますが、その後は着実に向上しております。
 一方で、目標の達成率が七〇%未満で達成不十分、これは最も評価が低いというグループになりますが、とした団体につきましては、同じように過去五年間で見ると、平成十八年度と平成二十一年度に一団体ずつありました。これはどちらも異なる団体ですけれども、経営改善を行ったことによりまして、翌年度には達成率が向上し、評価としても前年を上回っていたところでございます。

○谷村委員 十年間取り組んでこられたことで、本制度が経営改善に資する部分があったというご答弁として、今確認をさせていただきたいと思います。
 また、団体の特性によって、その目標と実績が必ずしも一律的に、経年で見られるものばかりではないということもあると思いますが、もう少し都民の方々にこの冊子をごらんいただければ、監理団体としてこういう努力をして、こういう成果が上がっていますよと一目でわかるような工夫もぜひお願いしたいと思います。これは経営目標評価のチェックの仕方というよりは、発表の仕方ということかもしれませんけれども、都民に対する説明責任を果たすという観点で、さらなる工夫を重ねていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 次に、この個々の団体ごとの目標を見てみますと、前年度と比較して数値が低くなっている目標も見受けられるわけであります。前年度ここまで頑張っているのに、次の翌年度の目標は下がっているという、こういう例ですね。これはどういう理由からそうなっているのかお伺いいたします。

○土渕行政改革推進部長 経営目標につきましては、団体の経営改善に向けた努力を促す観点から、基本的には前年度実績を上回る水準での目標設定となるよう指導しております。ただし、特殊事情によりまして、例えば前年度実績が急激に増加した場合ですとか、施設の改修工事が予定されている場合など、客観的かつ合理的な理由がある場合には、例外として前年度実績を下回る水準での目標設定を認めております。
 二十三年度の具体例を挙げますと、財団法人東京都スポーツ文化事業団では、東京武道館が来年一月から改修工事に伴い休館することから、体育施設等の個人利用者数や施設収支比率などの目標数値を下げています。しかし、このような場合におきましても、その後の目標設定の水準につきましては、過去数年分の実績平均などを参考とするとともに、将来的にはその目標及び実績が向上するように指導しているところでございます。

○谷村委員 特殊事情を勘案して目標設定をしているということは、ある意味では当然のことだと思いますので、ただ、そうした特殊事情も冊子を見ればわかるように記載をしていただければよいのではないかというふうに思います。
 先ほどから申し上げておりますが、本制度が導入されてから十年が経過しておりますので、この本制度を振り返ってどのように総括しておられるのかをお伺いいたします。

○土渕行政改革推進部長 経営目標達成度評価制度は、監理団体みずからに経営目標を設定してもらい、その達成度を評価、公表することで、団体の経営責任を明確にするとともに、一層の経営改革を促進するため、監理団体改革の一環として導入したものであります。平成十三年度の導入以来、各団体の経営改善や自律的な経営が促進され、また、団体が行うさまざまな事業によって、都民サービスの向上が着実に図られてきているものと認識をしております。
 現在、監理団体を取り巻く環境は、公益法人制度改革における新たな公益法人への移行など、大きく変化していますが、このような状況変化を踏まえながら、本評価制度につきましても、常に問題意識を持って適切に運用してまいります。

○谷村委員 この十年間で、先ほども申し上げましたけれども、指定管理者制度の導入、そしてただいまご答弁にもありました公益法人制度改革なども含めて、この二つだけでも大変に各団体、ご苦労をされてきたことと思います。また、監理団体それぞれにさまざまな課題も抱えておられることと思います。こうした中で、今後とも制度趣旨の自律的経営の促進と都民への説明責任を果たしていけるように、しっかりと取り組んでいただくことを改めて強く要望いたしておきたいと思います。
 次に、公立大学法人首都大学東京の第一期中期目標期間業務実績評価について質問をさせていただきます。
 今回の業務実績評価は、公立大学法人首都大学東京が平成十七年四月に設立され、六年間の第一期中期目標期間を総括した評価となっております。
 業務実績評価書を拝見しますと、全体的におおむね良好との評価を受けており、都が示した中期目標に沿って、法人運営が順調に実行されてきたものだろうと受けとめられるわけであります。一方、評価書におきましては、第二期中期目標期間に向けた課題が上がっております。本日はこの点について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、項目別評価についてでありますが、評価書の二九ページには、その他業務運営に関する重要目標の情報公開等の推進に関する目標が、評定三、中期目標の達成状況がやや不十分という評価になっております。具体的にどのような点でこれは不十分になったのかお伺いいたします。

○皆川首都大学支援部長 情報公開等の推進に関する目標のうち、個人情報の保護の取り組みについて評価されたものでございます。平成十九年度に首都大学東京でパソコンの盗難、平成二十年度に首都大学東京及び平成二十二年度に東京都立産業技術高等専門学校でUSBメモリーの紛失事故がありました。
 平成十九年度のパソコン盗難事故を契機に、公立大学法人首都大学東京における個人情報の適正な管理に関する規定を制定いたしまして、個人情報の保護に取り組んでまいりましたが、その後も二件の事故が発生し、再発を防止できなかったということで、やや不十分という評価をいただいたものでございます。

○谷村委員 学生の個人情報流出という、教育機関としては絶対にあってはならないことであり、また、教育機関としての公立大学法人としての信用を著しく失墜する事故であると思います。小中学校や高校におきましても、このたぐいの事案というのは、どんなに徹底しても残念ながらいまだに続いているわけでありますが、今後どのような再発防止策を進めていかれるのかお伺いいたします。

○皆川首都大学支援部長 法人では、平成十九年度に制定した規定を見直しまして、平成二十三年二月に、法人全体の情報セキュリティー規定及び情報セキュリティーに関する基本方針を策定いたしました。
 今後、この基本方針に基づき、大学及び高専ごとに対策基準を定めるとともに、大学及び高専のすべての教職員に対して、繰り返し個人情報保護の周知徹底を行うことや、適宜個人情報の管理状況を点検すると聞いております。
 都は、第二期の中期目標において、情報管理を適正に行うよう指示しております。これに基づき、今後とも適切に指導してまいります。

○谷村委員 都の教育委員会でも、教職員に対してパソコンやUSBメモリーの持ち出しを原則禁止し、一定の制限のもとに認めているようでありますけれども、首都大学東京においてもこのような具体的な再発防止策を定めていただいて、組織的な取り組みをぜひ実践していただきたいと思います。
 次に、評価書の九ページで、首都大学東京における大学院の定員充足率の改善を初めとする教育の充実、国際化の推進は急務であり、着実に取り組むことを要望すると、このように記載をされております。
 そこでまず、現在の状況についてお伺いをいたしたいと思います。

○皆川首都大学支援部長 大学院博士後期課程の定員充足率は、第一期中期目標期間平均で六五%となっており、これは全国平均の六〇%を上回ってはおりますが、首都東京の大学としてより一層の充足率の向上を求められております。
 また、国際化の推進では、これまでも海外の大学との大学間協定により、教育研究分野の交流を進めておりますが、留学生数が十分でなく、首都東京の大学としてより一層の国際化の推進を求められているところでございます。

○谷村委員 頑張っておられるとは思いますが、大学院の定員充足率の向上、国際化の推進につきましては、両方とも首都大学東京としては大変に重要課題だと思います。この二点について、今後どのような対応をしていかれるのかお伺いいたします。

○皆川首都大学支援部長 法人が作成した第二期中期計画において、定員充足率については、大学院入学者選抜の各研究科の特性に応じた創意工夫を行い、定員充足率の改善に努めるとしております。また、国際化の推進については、留学生への支援や海外の大学、都市等との教育研究協力の機会の拡大など、国際性豊かな人材の育成環境を整備していくこととしております。
 都は、法人がこの中期計画を着実に達成できるよう、今後とも適切に指導してまいります。

○谷村委員 今回の評価結果を受けて、今後の大学運営に十分に生かしていただき、首都大学東京がより一層魅力のある大学となりますように期待をいたしたいと思います。
 さて、先日の日本経済新聞に、首都大学東京が福島県と共同で、放射性物質を帯びた瓦れきや樹木を燃料として活用するための研究を開始したと、このように掲載されておりました。首都大学東京が教育研究の成果を生かし、このように目に見える形で社会に貢献していることは、高く高く評価させていただきたいと思いますし、この点をもっと多くの都民の方々に広報してもよいのではないかというふうに感じております。
 私も偉そうなことを余り申し上げられませんけれども、そもそも大学の使命というものは大きく三点あると学んでまいりました。一つは教育を通じての人材輩出、二つ目には中長期にわたる研究活動及びその成果、そして三つ目には、社会から隔離した象牙の塔に陥ることなく、現在の社会が抱えている諸課題に果敢に挑戦していくという社会貢献、この三つの分野にわたる競争が、国内あるいは海外の大学との間で行われていくべきものであろうと思うわけであります。
 一つ目、二つ目というのは、これは本当にある意味で長い目で競争し合うべき次元のものかもしれません。ただ、現代文明の転換期を迎えている今日、社会貢献への取り組みは今まさに大学の生命線ともいえるものかもしれません。
 そこで、首都大学東京は、これまでどのように社会貢献に取り組んでこられたのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、高い評価と期待の思いを込めて質問をさせていただきたいと思います。

○皆川首都大学支援部長 首都大学東京は、開学以来、教育研究を充実し、次代の東京を担う人材を育成するとともに、社会貢献も重要な柱の一つとして位置づけております。平成十七年の開学と同時に産学公連携センターを設置し、大学の研究成果の社会還元に積極的に取り組んでまいりました。
 とりわけ、都との関係では、事業連携や人材育成の協力などを積極的に推進してきました。その結果、事業数は六年間で延べ八十三局、二百四十九事業となっております。
 具体的には、ひとり暮らしの高齢者の生活を見守るロボットの開発や、都の政策形成を担う人材の育成を図る都市政策研修などを実施いたしました。
 今後もより一層、地域社会の発展向上に寄与するため、東京都が抱える諸課題を見据えた教育研究に取り組み、都のシンクタンクとしての役割を果たしてまいります。

○谷村委員 大変にありがとうございました。
 関係者の方々から見ればまだまだ多くの課題があるのかもしれませんが、大変に懸命なすばらしいご活躍を関係者の皆さんがされているのだと思います。またある意味、首都東京という、我が国、ひいては世界最先端の課題を抱えている世界都市東京との連携であるがゆえに、他大学ではできない取り組みもできるという優位性は、首都大学東京の強みだとも思います。
 私は、本年第二回定例会の公明党代表質問で、英国の歴史家アーノルド・トインビー博士の挑戦と応戦の理論を引用させていただいて、この歴史の法則に従うならば、試練を乗り越えてこそ未来はある、とりわけ東京は現代文明の象徴ともいうべき巨大都市であり、大震災を機に逆境に立たされた東京が最初に文明転換の道を開き、まさにリード役になるべきであると主張させていただいたところであります。
 フランスの著名な文化人であり歴史家でもあるルネ・ユイグ博士が、かつて東京大学で次のような講演をしておられます。現在の危機は文明の危機である、今日の危機は社会的危機、政治的危機よりも、より根本的な文明の危機というべきものであると警告をしておられます。ここでいう政治的危機というのは、トラスト・ミーといいながらアメリカ大統領を裏切った鳩山政権や、平成の開国と打ち上げながら、隣国とさえきちんと向き合えなかった菅内閣のことではありません。この講演は今から三十七年前のものでありますので、これまでの大学改革の中では関係者の方々に大変なご苦労があり、そうしたご苦労を抱えておられるかもしれません。こうしたありとあらゆる困難を乗り越えていただいて、数多くの人材を輩出しつつ、首都大学東京が今後とも東京都のシンクタンクにとどまることなく、現代文明の大転換をなし遂げる一翼を担っていただけるようなご活躍をしていただけるよう、強く念願いたしております。
 最後に、東日本大震災における東京都の対応と教訓について質問をいたします。
 この対応と教訓は、東日本大震災の経験を踏まえ、その教訓を首都直下地震への備えとしての視点と、東海、東南海、南海三連動地震等への備えとしての視点と、二つの視点から取りまとめられたものとなっております。今回の大震災における対応の中で得た教訓をしっかりと受けとめ、いつ発生するかわからない大規模震災に向けて、備えを万全にしておくことが重要であります。
 そこで今後、この対応と教訓をもとに、仮称東京都防災対応指針が、対応策も含めて策定されていくとのことでありますけれども、都の防災対策をより一層充実させていく観点から、何点か質問させていただきたいと思います。
 まず第一に、地域防災力の向上についてであります。
 十月二日の東京新聞に、今回の震災で一人の犠牲者も負傷者も出さなかった唯一の自治体である岩手県洋野町の記事が掲載されていました。一応宣伝を兼ねて紹介しますと、こちら特報部という特集でございます。
 最大で高さ十五メートルの津波に襲われ、町中心部の魚市場や海浜公園を初め、多くの水産加工会社が全滅、沿岸にあった種苗栽培施設は稚ウニ約六百万個、稚ナマコ約四十万個が水槽ごと流され、町内の漁船の約七割に当たる二百五十八隻が流出され、損害額は六十六億円に上るとされております。
 こうした被害を受けながらなぜ人的被害がなかったのか。ここでは住民の津波に対する警戒心が強く、日ごろから防災訓練を行っており、震度三くらいの地震が来てもすぐに高台に逃げる習慣が身についていたそうであります。
 この町はかつて明治二十九年の明治三陸地震で二百五十四人、昭和八年の昭和三陸地震では百七人、その津波による犠牲者を出しており、海岸沿いには昭和八年三月三日の被害を忘れることのないようにということで、「想へ惨禍の三月三日」と記した巨大な慰霊碑が立っているそうであります。宮城県でもそのような石碑を見たことがありますけれども。
 また、この町では、自主防災組織が高台の避難所につながる幅一、二メートルほどの道を二十本整備し、交代で草むしりをするなどして、いざというときに備えるほか、津波避難目標地点、海抜何メートルと記した看板を二十カ所に立て、避難の目安とするなどの取り組みを行っているということであります。こうしたふだんからの取り組みが、あの大惨事にもだれ一人として犠牲者、負傷者を出さなかったという奇跡につながっているといえます。
 この記事のデスクメモには、取材や編集の感想ですけれども、全員無事だったとは奇跡としかいいようがない、だが話を聞くと、奇跡ではなく当然だったと、このように書いてあります。この例からもわかりますように、大災害が発災したときに人々の命を救うのは、一人一人の危機意識や、地域における地道な防災への取り組みによるところが大変に大きいことと思います。
 そこで、今回の震災の教訓を踏まえ、都民の防災意識を高めるとともに、地域防災力の向上に向けた取り組みをより一層促進していくことが重要であると思います。ご所見をお伺いしたいと思います。

○村松総合防災部長 今回の震災では、東北地方の多くの自治体が甚大な被害を受け、公助が十分に機能しない中、地域住民による自助、共助の取り組みが大きな力を発揮した例が見られました。
 都民一人一人が、震災に対し危機感を持ち、自身が防災の担い手であるという意識を持つとともに、身近な者同士で助け合うことによりまして、一人でも多くの命を救うことができるものと考えております。
 今回の震災の教訓を踏まえまして、防災への関心が高まっているこの時期を逃すことなく、防災隣組という自助、共助の仕組みを東京の中に構築してまいります。区市町村とも連携いたしまして、地域のさまざまな自助、共助の取り組みを発掘し、これを広く波及していくことで、東京全体の地域防災力向上を図ってまいります。

○谷村委員 東京のように人々の連帯というものが希薄だといわれる大都市では、発災時に自助、共助が有効に機能せず、本来助かるはずの命が失われてしまうという悲劇が起こってしまう可能性があります。ただいまご答弁がありましたように、大震災によって防災意識が高まっているというこの機会をとらえて、ぜひとも地域防災力の向上に努めていただきたいと思います。
 次に、計画停電などの電力供給停止に関する諸課題について質問をいたします。
 今回の震災では、遠隔地の地震ではありましたけれども、都内でも電力不足が生じ、計画停電の実施など大きな影響を及ぼしました。こうした教訓を今後どのように防災対策に生かしていくのかお伺いをいたします。

○村松総合防災部長 今回の計画停電は、直前に計画の変更があるなど、東京電力による情報提供が的確に行われず、停電区域や時間等につきましても同一の自治体内で差が生じるなど、自治体、事業者、都民の間に混乱を引き起こすそのあり方には課題があったと認識しております。また、今回の計画停電により、電力に依存していた都市の脆弱性も浮き彫りになりました。
 このような教訓を踏まえまして、今後、突発的に電力供給が不安定化するような事態に備え、人命に直結する医療機関やライフライン施設など、停電時の影響が大きい施設につきましては非常用自家発電設備を設置するなど、電力確保に向けた多様なエネルギー確保対策を構じていく必要があると考えております。

○谷村委員 ありがとうございます。
 今ご答弁にもありましたけれども、東日本大震災は、電力の安定供給を前提とした利便性の高い社会の脆弱性というものを浮き彫りにし、この夏の首都圏では企業、自治体、住民のだれもが電力がパンクするという危機意識を共有し、歴史的ともいうべき大規模な節電対策が展開されたわけであります。
 そこで、もう一つ注目すべきことは、この大震災のショックとあわせて、今回の一連の節電対策は、単に電力消費を控えるということだけではなく、これまで当たり前と思っていた企業活動や生活様式というものを改めて一人一人が見詰め直す、大きな変革の契機につながったのはないかと思います。先ほども申し上げましたけれども、現代文明の象徴とも化したエネルギー多量消費型社会を転換するには、大変いい契機とするべきだと思います。
 サザンオールスターズのある曲の歌詞に、眠らぬまちに夜明けは来ないというフレーズがあるんです。二十四時眠らないまちには夜明けは来ないというんですね。この二十四時間眠らないようなまちが本当によいのかと。例えばNHKもかつては午前零時になると、国歌が流れて放送を終了していたわけであります。こうした生活様式というものを変えていく、その特徴的なものとして、我が国でも何度もサマータイムの導入が議論されてきました。
 サマータイムについては、皆様既にご存じのとおり、昼間の明るい時間が長い期間だけ時刻を一時間進める制度であります。日照時間を有効に活用して、夕方の照明、朝の冷房用電力を節約することで、電力消費を削減することができると。また、夕方の明るい時間を家族との生活や余暇に使うなど、ゆとりのあるライフスタイルにもつながるわけであります。世界では、アメリカ、これはUSAだけではなくアメリカ大陸も大半、そしてヨーロッパはほとんどすべて、合わせますと約七十カ国以上がサマータイムを導入しております。二十九カ国あるOECD加盟国のうち、導入していないのは日本と韓国、アイスランドだけ、アイスランドは白夜の国なので、これはサマータイムは要らないということのようですので、日本と韓国だけだと。
 当初のマスコミの論調というのは、サマータイムの効果についてどちらかというと懐疑的で、導入の是非を問うものも大変多かったようでありますけれども、最近では、サマータイムに伴う働き方や時間管理の工夫は経費の節減、効率的な業務運営、さらには社会的課題となっておりますワークライフバランスの点でも意義ある試みではないかと、再評価する論調もふえてきたような印象があります。
 こうした中、都においては、国や他の自治体に先駆けて、節電対策とあわせ、都庁版サマータイムを導入したところであり、最近の報道では、残業時間も大幅に減少し、マスコミでも大きく取り上げられておりました。広く社会に対して大きなインパクトを与えたものと思っておりますけれども、そこで、今回の都庁版サマータイムについて、仕事の進め方や職員の生活様式の見直しという視点で見たとき、どのような効果があったと認識されているのか、所見をお伺いいたします。

○内藤労務担当部長 今回の勤務時間の分散化、いわゆる都庁版サマータイムは、職員の生活行動パターンの変更を余儀なくさせるものでございましたが、設備系の節電対策の実施や、庁内の電力使用量を一時間単位で見える化した、こうしたことと相まって、各職場職員がこれまで以上に時間の使い方を強く意識する、そういった契機になったものと認識してございます。
 限られた時間の中で仕事を仕上げるという雰囲気が高まっていく中、例えば業務の優先度、手順、あるいは会議時間の設定など、仕事の進め方の工夫がさまざま試みられ、また、定時退庁もより厳格に運用してまいりました。
 この結果、この七月、八月の二カ月の超過勤務時間ですが、前年同期比で約一〇%以上の縮減となってございます。また、子育て中の職員にとりましては、子どもの保育園の送迎等を工夫することで、かえって早出出勤に好意的な声も寄せられたところでございます。
 今回の勤務時間の分散化に伴いますさまざまな取り組みにつきましては、今後業務運営の効率化やワークライフバランスを検討、推進していく上でも、一つのメルクマールとなる効果があったものと認識してございます。

○谷村委員 ありがとうございます。一つのメルクマールとなる効果があったというご認識で承りました。
 都庁版サマータイムの実施は、繰り返しになりますけれども、単に節電対策への寄与だけではなく、とりわけ昨今のようなさまざまな場面で、生活様式の見直しやワークライフバランスの重要性が訴えられる中で、とても有意義な取り組みであると私は評価すべきものと思っております。もとより人の価値観にまでさかのぼる取り組みについては、試行錯誤を繰り返し、トライ・アンド・エラーの積み重ねで実効性が高まっていくものでもあります。都は、ワークライフバランスの旗振り役として企業をリードする立場にもあります。今回の一連の取り組みの分析、検証も参考にしていただきながら、これを一過性のものとしないように、今後のさらなる取り組みを期待いたしております。
 そして次の課題として、都民に対する情報提供のあり方についてであります。
 対応と教訓にも書かれておりますけれども、また、第二回定例会の本委員会でも私が取り上げさせていただきました、ことし三月に水道水の中から、乳児の飲用に関する暫定的な指標値を超過する放射性沃素が測定されたことを受け、都は、一歳未満の乳児のいる家庭に対しペットボトル入り飲料水を配布しました。この対応については、私は高く高く評価をするものでありますけれども、当初の報道発表の段階で都は、暫定的な指標値を超過する放射性沃素が測定されたという事実については公表しました。できれば控えてください、しかし、やむを得ない場合は乳児が飲んでも構いませんという。その対応策について、発表の時点で明らかにできないでいたということについては、これは結果論でありますけれども、いたずらに都民の混乱を招いたことは、今後の課題として検討されるべき事項ではないかと思っております。
 そこで、このことを教訓として、震災時の都民に対する情報提供のあり方をさらに突っ込んで検討すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○村松総合防災部長 震災時におきましては、都民の不安を払拭し、冷静な行動を促すため、正確な情報を迅速に提供することが重要となります。また、情報につきましては、都民に確実に提供できるよう、インターネットなども含めた多様な情報媒体を活用することも重要と考えております。
 今回の震災の教訓を踏まえまして、今後、都民の立場に立ったわかりやすくきめ細かな情報提供の実現に向けて取り組んでまいります。

○谷村委員 ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。
 震災時における情報提供は人命を守り、社会秩序を維持していく上で非常に重要であります。ただ、都民の不安をいたずらにあおることなく、都民の必要とする情報を的確に提供できるような取り組みを検討し、防災対応指針などに盛り込んでいただきたいと思います。
 最後に、初動態勢に関連してお伺いしたいと思います。
 大規模地震等が発災した際には、何よりも初動態勢が重要であります。よくいわれることでありますけれども、被災者の生存率は発災後七十二時間を境に大きく下がるといわれております。発災後は直ちに初動態勢を整え、被害情報等の収集を行い、重傷者等の救命救助活動を行わなければなりません。そのため、いざ発災時には危機管理監の指揮のもと、職員が一丸となって迅速に対応することが求められております。
 そこで、東日本大震災の発災時において、危機管理監はどのような役割を果たされたのかお伺いいたします。

○村松総合防災部長 地域防災計画におきましては、原則として震度六弱以上の地震が発生した場合、知事を本部長とする災害対策本部を設置することとなっておりますが、今回の震災では、都内の最大震度は五強であったことから、三月十一日の発災直後に災害即応対策本部を設置いたしました。
 危機管理監は災害即応対策本部長として本部会議を開催し、庁内各局や区市町村を初め、警視庁、東京消防庁、陸上自衛隊との連絡調整に当たりました。また、被害状況の収集や発表、帰宅困難者の一時待機施設の確保など、震災対策全般にわたり陣頭指揮をとり、的確な初動態勢を行ったものと考えております。

○谷村委員 私が初当選させていただきました平成十三年、二〇〇一年の六月の選挙でありましたけれども、その直後に九・一一のアメリカ同時多発テロが発生をしたわけであります。当時、石原都知事はワシントンにおられたのだと思いますけれども、その後の航空規制で帰国することができないで、第三回定例会の日程が少し変更になったという状況にもありました。
 その九・一一の直後の第三回定例会で、私ども公明党は代表質問で、これからは危機管理は非常に大切である、重要であるということで、アメリカの緊急事態庁、非常事態庁とも訳される、FEMAの東京版を創設するべきだと、都議会公明党の代表質問で主張させていただいたわけであります。その原稿を私が書かせていただいたわけでございますけれども、これを受けて石原都知事は、当時の七都県市で連携調整をする首都圏FEMAをつくった、立ち上げたというのは、もう数々の記者会見で、あるいは数々の場所でお話をされている経緯になるわけでございます。
 非常事態時というのは、通常の常識が逆転をするわけでございまして、先ほどの十月二日の東京新聞のこちら特報部には、消防団が率先退避をしろというのが、そのときの消防署の分署長さんの考え方で、消防団が体を張ってみんなを守れではなくて、消防団が率先して退避をするんだ、消防団が余裕を持ってみんなを守っていると、まだ大丈夫だ、余裕があると思っているというんですね。そうではなくて、消防団員が血相を変えて一番に逃げるんだ、それが、住民の皆さんに対する危機感というものを伝えることによって、皆さんも避難するようになるんだという、そういうことまで紹介をされているわけですけれども、この非常事態時というのは、ある意味で常識を覆した判断もしなければいけないわけでございます。
 この首都圏FEMAの創設後、私ももう一度阪神・淡路大震災の教訓を受けての、兵庫県に行きましたら、防災監という危機管理専門監というものを立ち上げておりました。こういう、東京都としても首都圏FEMAというあいまいな組織体ではなくて、きちんとした専門監を立てるべきだということを、また私ども公明党で主張させていただいて、そして危機管理監というものが設置されたという流れになっているわけでございます。
 首都直下地震のような大規模地震が発災し、災害対策本部が設置された場合には、この危機管理監は本部長である知事の任命を受け、各防災機関を総合調整するとともに、本部職員の動員を初め本部運営を担う役割を果たすことになるわけであります。
 今回も、三・一一の後は都知事選挙がありました。知事は選挙戦で、石原都知事の場合、非常事態だから選挙戦よりも非常事態の態勢を優先するということでありましたけれども、いかなる状況になるかもわからないわけでございます。そういう意味におきましても、この防災対応指針には、この危機管理監の位置づけというのを明確に書き込んでいただいて、今後ともいかなる災害が起こっても的確に対応できるよう、危機管理監を中心とした体制整備を要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○吉田委員 私も、東日本大震災における東京都の対応と教訓について、若干質疑をいたします。
 既に話がありましたけれども、防災対応指針の準備をされているわけですけれども、何よりも未曾有の被害となった東日本大震災からどのような教訓を導き出し、東京の防災対策に生かすのかということが問われていると思います。
 この点で、住民の自主防災力の重要性というものはいうまでもありません。しかし、東京都自治体固有の責任という点でいえば、何よりも災害被害をいかに減らすかという、予防対策の抜本的な強化ということが重要な課題だというふうに思います。
 防災議連が視察をされた岩手県普代村は、行方不明者一名ですが死者ゼロということで注目されておりますが、消防団などの奮闘とともに、防潮堤、水門が機能し命を守ったという事例として紹介されています。また、宅地造成地で深刻な被害が仙台市などで起きていますが、これまでの宮城県沖地震などから強力な地盤対策を行った地域では被害が少なかった、効果があったということも、専門家からも指摘をされております。こうした点についてどのように認識をされているのか、まずお答えをお願いいたします。

○村松総合防災部長 予防対策といたします発災に備えた体制の整備、都民、事業所の自主防災体制の強化、あるいは道路整備や施設構造物の安全化と、こうした予防対策につきましては、当然重要と考えております。

○吉田委員 あえてなぜこうした質問をさせていただいたかといえば、知事の所信表明を見ても、行政による公助の限界ということがまず強調され、そして、専ら自助、共助というものが強調されるという内容となっております。なお私は、公助という概念そのものが極めてあいまいで、これは助けるという性格のものではないと思いますけれども、そうしたことから質問させていただきました。
 しかも、この対応と教訓でも紹介されていますが、亡くなった方の六割以上が六十歳以上の高齢者という現実があります。さらに資料を見てみますと、七十歳以上の方がたしか四五%程度を占めているというふうに思いますが、こういう方々に自己責任だ自己責任だというふうに求めることは、これは極めて妥当ではないというふうに思います。
 改めて伺いますけれども、この大規模災害の被害を軽減する予防対策ということは、個人の努力や地域集団の努力では、もう一定の限界があると。そういう意味では行政の責任が改めて問われていると思いますが、いかがでしょうか。

○村松総合防災部長 都はこれまでも、震災に備えまして、行政の責任として、警察や消防の体制整備、あるいは自主防災体制強化への支援や、三環状道路ネットワークの構築、あるいは施設の耐震化、こういったものの推進など、予防対策を進めてきたところでございます。

○吉田委員 施設の耐震化などを進めてきたというご答弁なんですけれども、私は現実の到達点そのものも、やはりしっかりと見る必要があるのではないかというふうに思います。
 この点で、昨年度までの三カ年計画で、震災対策事業計画が立てられて進められてきたと思います。これはいわば減災計画というふうに位置づけられていたもので、災害を減らすために、三年間でどこまで各分野の事業を進めていくのかという内容だったと思います。この終了から既に半年がたちました。しかし、一体この三カ年計画はどこまで到達をしたのかということは、いまだに示されておりません。
 今後、防災対応指針の準備を進めているわけですけれども、当然、そうした指針の準備を進めるならば、その前提であるこれまでの減災計画、耐震化事業というものがどこまで到達をしたのかということを、まず確認をする。これが前提ではないでしょうか。当然指針発表前に、そのことをまず明らかにすべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

○村松総合防災部長 減災目標の状況を明らかにということでございますが、東日本大震災の発災を受けまして、都の防災対策全般にわたる見直しを現在行っているところでございます。現在、防災対応指針の策定に取り組むとともに、今後、地域防災計画の見直しにも着手しているところでございます。
 減災目標の進捗状況につきましては、こうした防災対策の再構築の状況を踏まえまして、今後の示し方を検討してまいります。

○吉田委員 私はその再構築の状況を踏まえてではなくて、今の到達を明らかにすることが、今後の震災対策を、皆さんのいい方でいえば再構築をしていく土台ではないでしょうか。その到達を明らかにしないで、もし再構築を進めた方針をつくったとしたら、それは現実から乖離するということになりかねないというふうに思います。
 しかも、もちろん総務局が総合防災全体のさまざまな調査や立案で努力されていることは承知です。しかし、この減災計画は各局に振り分けられているわけですから、全局がそれぞれから到達を明らかにするというふうに総務局がイニシアチブを発揮すれば、容易に少なくともできることではないでしょうか。そのことを改めて強く要求しておきたいというふうに思います。
 私はやはり、すべてがおくれているとはもちろんいいませんけれども、極めて重要な問題でおくれているんではないかという懸念があるから、あえてこういう質問をさせていただきました。
 代表質問の中でも紹介をいたしましたけれども、知事は、水門とか防潮堤の整備などを例に挙げて、主体的に進めてまいりましたという旨を強調いたしました。しかし、例えば海抜ゼロメートル地帯が広がる東部地域で、都が管理する主な河川の堤防の総延長というのは、往復で百キロ余というふうに聞いていますが、そのうち、かみそり堤防などというふうに一般的にいわれている特殊堤は六十五キロあります。その中で、このレベル一対応の耐震化すら行われていない堤防が二十一キロ残されているというふうに聞いております。
 また、これも議会で議論になりましたけれども、ライフラインの耐震化という点で重要課題の一つであります下水道のマンホールです。
 マンホールの総数というのは四十七万余あるというふうに聞きました。しかし、どれだけのマンホールが耐震化されたかということについて、下水道局は明らかにしていません。しかし、私の推計では約二万程度、比率でいえば数%にすぎないというふうに思います。よく発表されるときに達成率が高く示されるのは、東京都内のマンホール全体を分母にするのではなく、今、急いで進めようとしている避難所周辺などのマンホール数を分母にしてどこまで達成されたのかということから高く見えますけれども、東京全体から見れば決して高いどころか、極めておくれているという状況だと思うんですが。
 挙げたら切りがありませんが、こうした二例を挙げましたが、こういう進捗状況について、防災を預かる総務局としてどのように認識をされているのでしょうか。

○村松総合防災部長 施設の構造物の安全化等の予防対策につきましては、それぞれの所管局におきまして、適切な取り組みが進められているものと認識しております。

○吉田委員 命と暮らしにかかわる二つの事例を挙げましたけれども、私は極めて重大なおくれではないかというふうに思います。事業局によって縦割りされておりますけれども、やはり防災全体を所管する局として、やっぱり現状の認識と到達というものを明確にして、どう今後の防災対応指針の中で対応していくのかということを明確にすべきだというふうに思います。
 次に、予防対策という観点から、具体の問題についてもう一つ紹介をさせていただきますが、東北全体の被害状況を掘り下げて調査、分析し教訓を出すことが、非常に重要だと思うんですけれども、その一例として造成宅地の問題があると思います。例えば、多摩丘陵地には盛り土等で整備された広大な造成宅地があることはいうまでもありません。そして、今度の大震災の中で、仙台市などでも造成宅地で地すべり被害が起きて、多数の住宅が破壊されたということがあります。津波が大きな問題になっていますから、なかなかこの問題には十分な報道もされていませんけれども、この中でも、事前の対策がとられたところで被害が少なく済んだという事例もあります。
 どういう対策をとったところが被害が少なく、どういう箇所で被害が大きかったのかということは、東京におけるこうした対策をとる上でも、極めて重大な、関心を寄せるべき課題だと思うんですが、こうした点について調査はされたのでしょうか。また、都としてどのような分析、教訓を導き出されているのでしょうか。お答えください。

○村松総合防災部長 今回の震災で、仙台市内の丘陵地におきまして地すべり災害が発生しておりまして、その実態につきましては、去る八月十九日、現地に赴きまして、その被害状況について把握していたところでございます。
 また、今回発表いたしました対応と教訓におきましても、丘陵地が多い多摩地域につきましては、斜面崩壊対策などの必要性を明らかにしたところでございます。

○吉田委員 対応と教訓の中でも斜面対策ですか、明らかにしているというお答えでしたけれども、私も改めて見直しましたが、もし間違っていたら指摘していただきたいのですが、それが書かれているのは四七ページですね。どの項目に書かれているかといいますと、私が発見できたのは、避難所等の被害防止という項目で記述をされています。避難所及びそこに至る道路における斜面崩壊対策などの安全対策も重要であるということになっております。ほかにもあるのかもしれませんが、もしこれだということになれば、あくまでもその避難所及びその道路のための安全対策として、この問題について指摘をされているということになります。
 私はもちろんそれはそれで重要でしょうけれども、やはり、住宅の安全確保ということから見て、この問題にもっと突っ込んだ、どういう対策をとったところで被害が軽減されたのか、どういう地域で造成されたところが被害が大きかったのかということを分析して生かすということは、実践的に重要ではないかと。
 地盤工学会が詳細な報告書を出していますが、その中で地盤災害という言葉が使われていて、なかなか的確だと思いました。液状化対策という点でもそうですし、あわせてこうした造成宅地の対策ということも、改めて掘り下げていくべきではないかなというふうに思います。
 この点に関連して地震の専門家に聞いたんですけども、多摩地域は、武蔵野台地は非常にかたい地盤であるというふうに聞きました。しかし、丘陵地の場合は、特に谷地などでは、それに比べたら決して強くはないと。しかも、実際、今回の地震の震度を見た場合に、多摩の丘陵地で震度五強が多数観測をされて、しかも六弱も一カ所発見されたというふうに聞いていますが、こういう多摩地域の震度の分布などについても参考にすべきだと思うんですが、把握されているんでしょうか。

○村松総合防災部長 都におきましては、都内の区市町村庁舎、消防方面本部及び消防署など、都内各地に地震計を設置しておりまして、そのネットワーク化を図り震度情報を把握しております。
 多摩地区におきましても、震度計を三十七基設置しており、秋川消防署、日の出町役場、檜原村役場、青梅消防署日向和田出張所などに設置した震度計によりまして、丘陵地の震度について把握しているところでございます。

○吉田委員 把握しているかしてないかだけではなくて、震度についても紹介してほしかったんですが。
 私も調べて驚いたんですが、東京ガスは都内だけでも千七百カ所を超える震度測定を行っております。このデータを特別に出していただいて見たんですけれども、例えば、東部地域に震度五強が非常に多く集中していることはいうまでもありません。しかし、東部地域が集中しているだけではなく、多摩地域の中でも丘陵地、八王子の中の丘陵地六十五カ所、町田十九カ所、多摩市十六カ所で震度五強が観測されると。八王子市のめじろ台で六弱が観測されるということがありました。
 そういう意味から見ても、私は避難所及び道路対策という意味からも、その斜面崩壊対策ということは、それはそれで当然でしょうけれども、住宅全体のことを視野に入れて、やっぱり多摩の丘陵地の造成地対策ということは、改めて着眼して検討していくべきだと思うんですが、その点、改めてどうでしょうか。

○村松総合防災部長 先ほどもご答弁させていただきましたが、現在、今回発表いたしました対応と教訓におきまして、丘陵地の多い多摩地域につきましても、斜面崩壊対策などの必要性を明らかにしたところでございます。
 今後それをどうするか、どういうふうに対策をとっていくか、それにつきましては今後の検討のことになろうかと思います。

○吉田委員 次に、東京の防災対策に生かすべき大きな課題として強調したいことが、予防対策の前提となる地震の想定について、若干質問をさせていただきます。
 この点で、対応と教訓では、原発事故について想定外の津波という記述になっていますけれども、本来ならば想定すべきだった津波を想定しなかったというところに、極めて重大な教訓があるし、そこを導き出すべきだと思うんですが、見解、どのようにお考えでしょうか。

○村松総合防災部長 対応と教訓におきましては、今先生の方から、原発事故に関して想定外というお話がございましたが、今回の対応と教訓では、国や被災県が想定していた津波高を上回る津波が発生したことをとらまえまして、想定外と記述したところでございます。
 また、従来の想定を上回る被害を発生させた東日本大震災を踏まえまして、現行の都の被害想定につきましては、東京都防災会議の地震部会において検討しております。

○吉田委員 教訓を導き出す視点という立場からいえば、本来ならば想定すべきだったにもかかわらず、過去の事例を軽視あるいは無視し、想定していなかったと。こういうことをやはり行政としては単に、専門部会の検討ということではなく、行政としてどう受けとめるのかということが非常に重要で、知事自身、原発事故でいえば人災であると、既に事前に警鐘されていたということをいったことからも明白だというふうに思います。
 改めて、行政としての基本的な立場、視点という点で質問させていただきますけれども、どんな過去の事例であっても、また確率が低いものであっても、さらに、津波などの場合には地球的規模での事例であったとしても、無視、軽視しない、想定し対応を考えるということが重要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○村松総合防災部長 都が被害想定を行うに当たりましては、過去の事例発生の可能性が低いものをどうその中で評価していくか、そういったことにつきましては、国の中央防災会議における検討状況や専門家の意見に基づき、適切に判断してまいります。

○吉田委員 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告というのが、つい先日発表されましたよね。それを見てもこの点が非常に重視されているわけです。例えば、確からしさが低くても、地震、津波被害が圧倒的に大きかったと考えられる歴史的地震については、十分考慮する必要があるというふうに指摘をしています。また、施設整備が現実的に困難となることが見込まれる場合であっても、ためらうことなく想定地震、津波を設定する必要があるということも書かれています。
 私はやはり、東京都としてこういう立場に立って、改めて今後の対応指針を考える場合には、あるいは地域防災計画の見直しを進める場合には努力をすべきだというふうに思いますし、そういうことからすれば、首都直下地震の一つである立川断層地震がありますが、この立川断層地震も重視をして想定するのは改めて当然であるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○村松総合防災部長 被害想定の対象とする地震につきましては、東京都防災会議の地震部会において検討してまいります。

○吉田委員 検討してまいりますということですが、本来想定の対象になっていないのが私はおかしいと思うんです。
 先日、立川断層地震の専門家の方から直接説明を受けましたが、なかなかわかりやすい話で、地震の確率というものは天気予報の確率とは違うんだと。降水確率でいえば低ければ雨は降らない。しかし地震はたとえ低いからといって起きないというものではないんだということを、その専門家の方はわかりやすく説明してくださいました。そういうやはり備えというものが大事なんだというふうに思いますし、また、この直下の周辺地域などで、震度七を想定していないということについて聞いたところ、非常に疑問を呈すというお話がありました。
 こうしたことも含めて、私は、今後の想定の中では、あらゆる可能性というものを視野に入れた想定と対策ということを求めておきたいというふうに思います。
 液状化対策や木造住宅の耐震化の促進など、個々具体的に挙げていけば切りがありませんけれども、それはまた別な場で求めていきたいというふうに思います。
 ただ、基本的な問題について、最後にお伺いしておきたいんですが、対応と教訓でも知事の所信表明でも、東日本大震災の教訓として、改めて自己責任、自助、共助ということが非常に強調されています。私はそういう教訓の導き出し方の前提に、都の震災対策条例の防災対策の基本コンセプト、すなわち、そもそも第一は自助で自己責任原則だと。第二が共助だというふうに位置づけていることがあるのではないかというふうに考えざるを得ません。
 そこでお伺いいたしますけれども、阪神・淡路大震災以降、国全体も含めて自助、共助、公助という概念が強調されていることは承知をしています。都の条例では、自助について、単なる努力ではなく自己責任原則というふうに明記をしています。さらに、この自己責任原則を第一というふうに位置づけています。しかし、第一というならば、知事を先頭とした自治体の役割ではないでしょうか。しかも、公助という、助けるという言葉というのが自治体の本来のあり方からすれば、助けるではなく責務というのが本来の姿ではないでしょうか。
 そもそも、災害対策基本法では住民の責務というものは書かれていますが、それは努めなければならないという努力義務ですよね。それに対して都道府県の責務というのは、明確に責務を有するという位置づけになっています。そして、都のように自助というものを一般論ではなくて、自己責任原則というふうに明記をして、第一というふうに規定しているのは、他の道府県の条例では例がないのではないでしょうか。いかがですか。

○村松総合防災部長 震災対策条例におきます自助、共助の考え方でございますけれども、まず、条例では前文で自助の考え方、共助の考え方を示した上で、都民と公助の役割を果たす行政とが連携を図っていくことが欠かせない、こううたっているわけでございます。
 その上で、知事、都民、事業者のそれぞれの責務について定めておりまして、殊さらに条例の上で、自己責任のみを強調している、こういったことはないと考えております。また、発災時にみずからの身を守り、身近な者同士で助け合うことが一人でも多くの命を救うことになるのは、これは紛れもない事実でございまして、このことは今回の震災を含めて、これまでの阪神・淡路の震災でも明らかにされているところでございます。
 また、この震災対策条例におきましては、第二条におきまして、知事は震災対策のあらゆる施策を通じて、都民の生命、身体及び財産を震災から保護し、その安全を確保するとともに、震災後の都民生活の再建及び安定並びに都市の復興を図るため、最大の努力を払わなければならない。このように、公助の役割を担います都の責務についても明確に定めているところでございます。
 なお、他県につきましては、十八の道県で災害対策に関する基本的な条例が定められておりまして、そのすべてにおきまして、自助、共助の重要性と行政の責務について定められております。他県の条例では、自己責任を第一と、このように表現している条例はありませんが、ある県の条例におきましては、行政による公助は自助、共助の補完と明確に示しているものもございます。

○吉田委員 他県の条例の中でも、東京都のように、一般的に自助、共助、公助という言葉は使われていますけれども、自助を自己責任原則というふうに性格規定をしているのは、今ご答弁があったとおりないんですよね。そして第一というふうな規定の仕方も、私も見た限りではありません。
 そういう点で見ると、幾らその条文の個々の条項ごとにどう書いてあるかということがあったとしても、この前文は基本コンセプトを定めたものだというふうに当時、ご答弁がありました。そういう点ではやはり、この前文の規定というものは、極めて異質なものだと、そして、私は防災対策基本法の立場からも明らかに逸脱しているものだというふうに指摘せざるを得ないというふうに思います。
 また、殊さら自己責任のみを強調したものではないというご答弁がありましたが、この震災対策条例を提案した当時の第四回定例会、二〇〇〇年ですが、知事の所信表明を読みますとこのようにいっています。みずからの生命はみずからで守るという自己責任の原則を基本理念に据えということを強調しているわけですよね。そういうことから見れば、こうした考え方、理念というものを改めて今見直すときが来ているのではないかなということを指摘をしておきたいと思います。
 最後に、これは指摘にとどめますけれども、私、新たな戦略が出されて読み、そして今度の対応と教訓を読んで、非常に驚いたことがあります。それは、高度防災都市ということが強調されていますが、どのような目的の高度防災都市なのかということに関連してなんですけれども、首都機能の確保などという文言はありますけれども、二つの文書とも、どこを探しても私が見た限りでは、都民の生命、財産を守るという、最も基本的な目的、理念について発見することができませんでした。
 私はやはり、当たり前だから書かなかったのかというふうに善意で解釈することができるかもしれませんけれども、こういう自己責任第一ということの反映ではないのかなということも危惧されるところであります。したがって、今後の防災対応指針等の策定の中では、改めて自治体本来の責務である都民の生命、財産を守るという立場を明確にして策定されることを強く要望して、私の質問を終わります。

○高倉委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩をいたしたいと思います。
   午後二時五十分休憩

   午後三時開議

○高倉委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○西崎委員 私からも、報告事項、東京都防災対応指針の策定に向けた検討状況について伺いたいと思います。
 今回の震災は日本の政治、経済、社会に及ぼす影響ははかり知れないものがあり、被災地の復旧、復興はもとより、東京の今後のありようを大きく問うものとなりました。
 これまで私は福島県、宮城県の被災地に出かけ、現地の状況を見てまいりました。海岸沿いの被災地周辺は、住まいも職場も大地震による大津波で跡形もなく流され、かつてのまちのにぎわいが失われておりました。被災地は依然として厳しい状況が続いております。
 発災直後の三月下旬、都は被災地支援のため、被災三県に現地事務所を設け、被災地の支援要望を迅速に把握するとともに、直ちに行政職員を派遣して、被災地が必要とする支援を速やかに実施してきています。
 特に甚大な被害を受けた沿岸被災地では、多くの行政職員が行方不明となり、被災地の役場も大きな損傷を受けるなど、避難所運営はもとより、行政機能が麻痺状態に陥ったと聞いています。このような中、対応と教訓によれば、都は避難所運営等の支援として、職員を千六百四十三名派遣したとのことですが、発災直後、職員の派遣は被災地のニーズとして極めて高いものであったと思います。
 そこで、避難所運営等のために派遣された職員は主にどのような支援に取り組んできたのか伺います。

○砥出復興支援対策部長 都は、現地事務所を通じて把握した情報に基づきまして、岩手県陸前高田市、宮城県南三陸町などに職員を派遣し、日々刻々と変化する支援ニーズにきめ細かくこたえてまいりました。
 具体的には、発災直後は避難所における義援物資の搬入や仕分け、小中学校再開に向けた学校清掃業務など、被災地、被災者の生活環境を応急的に復旧する業務に全力を注いでまいりました。また、五月以降は罹災証明、義援金の申請受付業務等に従事し、被災者の生活再建を支援してきたところでございます。このほか、税務業務等の市町村事務への支援につきましては、区市町村職員を派遣してもらうなど、区市町村とも連携して被災地のニーズにこたえてまいりました。

○西崎委員 私は七月に南相馬市に伺いまして、桜井市長にお目にかかったんですけれども、東京からは足立区、杉並区がいち早く支援物資を届けてくれたということで、ほかの自治体も支援に当たっていますけれども、とても感謝されました。
 八月に総務委員会でも視察いたしました南三陸町は、私の地元であります世田谷区からも職員を派遣しておりまして、別の日に私も現地事務所をお尋ねしましたけれども、その職員に伺いますと、地域を二人で回りながら被災地の支援に当たっているということでしたけれども、被災地では住民の方から、大変遠くから暑い中、私たちのために働いてくれてとてもありがとうと感謝される毎日だと伺いました。
 都も発災直後の春から、厳しい宿泊環境の中で、被災地が真に必要とする人的支援を速やかに実施してきたことは高く評価されるべきです。都は、ぜひしっかり現地事務所を通じまして被災地と連絡を密にしながら、今後も効果的な被災地支援に取り組んでいただければと思います。
 さて、被災地への支援をする中で、さまざまな課題が浮き彫りになりました。翻ってみますと、東京に直下型の大地震が起きたときに直面する課題でもあると思います。今回、都は対応と教訓という形で、これまでに見えてきた課題についても整理をしておりますけれども、私はこの中で、特に避難所の運営や被災者の救護、被災者の生活を守る観点から、幾つかお尋ねしたいと思います。
 都内では東日本大地震発生当日は、帰宅困難者が大量発生いたしました。帰宅し切れない多くの人が地域住民の避難所に押し寄せ、混乱をしたという話も聞いています。これまで想定していなかった新たな課題が浮かび上がったはずです。
 そこで、震災当日の様子などから、避難所の運営について、都はどのような課題があると考えているのかお尋ねいたします。

○箕輪企画調整担当部長 東日本大震災発生当日は、都内における被害が限定的であったことから、九万四千名の帰宅困難者、これを地域住民用の避難所を含む約一千の施設で受け入れをいたしました。しかし、首都直下地震が起きれば、多数の地域住民が避難所に避難をするということが見込まれますため、帰宅困難者向けの待機施設とのすみ分けというものが必要となります。
 また、被災地における教訓といたしましては、甚大な被害や長期にわたる避難生活を考慮したメンタルヘルスケアなどの対応、さらには避難所における衛生管理、こういったものが課題になると考えております。

○西崎委員 今避難所運営における幾つかの課題が挙げられましたけれども、実際に避難所を運営した被災地の状況を伺いますと、もっとより多くの課題が浮かび上がってくると思います。
 私は第二回定例会の総務委員会質疑でも申し上げましたけれども、被災地では高齢者、特に女性の避難者向けのきめ細かいケア、妊婦への配慮、また相談窓口の設置など、女性の視点からの防災対策の充実が必要だということを、委員会でもいわせていただきました。ぜひこの点、もう一度、避難所運営指針、区市町村向けに東京都が策定しています指針に、ぜひそのことを盛り込むよう再度要望しておきたいと思います。
 また、今の答弁でも少し触れられておりましたけれども、今回、被災地の避難所では、狭い場所で多くの方が長期にわたり避難所生活を送る中で、衛生管理が大きな課題となったと聞いています。
 これは福島県で原発事故によって多くの方が避難されたわけですけれども、約三千人の方が避難された大規模な施設では、そこの施設で救護所を開設しました、医療活動をした医師からお話を伺ったんですけれども、三千人もの人が集まると、かつて経験したことのない大変な異臭がしたそうです。それはおふろに入れないということもありますけれども、配られるお弁当を隠し持っていた人が腐敗させたり、いろいろなことが起こるということをいわれました。長期間の避難となると、急性胃炎などが集団で発生して、感染症が蔓延した状況が起こったそうです。その対応に大変苦慮したというお話を聞きました。
 そこで、避難所の衛生管理についてどのような課題があるのか、都の認識を伺いたいと思います。

○箕輪企画調整担当部長 避難所では個別に隔離された空間が少なく、また、多くの方々が集団で生活することから、感染症が発生すると避難所全体に蔓延するリスクがあると認識しております。こうした感染症対策として、都は、被災地の避難所に手指の消毒薬を送るなどの支援を行ったところです。
 首都直下地震が発生した場合、断水等の影響により手洗いやうがい等ができないということも想定されるため、消毒薬の準備など、避難所における衛生管理が確実に行われるよう対策を検討する必要があると考えております。

○西崎委員 先ほどお話ししました避難所では、衛生管理を確実に行うために、トイレの清掃、あるいは感染症の患者が発生した場合には、避難所の中でも隔離を行って対応したと伺いました。こういった点もぜひ参考にしていただければと思います。厳しい災害に直面し、何とか命が助かったのに、その後の過酷な避難所暮らしで疲弊していく、そんなつらい状況を生み出さないよう、あらかじめ備えられるものはしっかり備える、こうした取り組みが必要だと思います。先ほども申し上げましたが、避難所運営は区市町村の役割ですけれども、都もさまざまな面からの支援を検討するよう要望します。
 こうした衛生面の配慮に加えまして、医療面でのケアも重要だと思います。震災によってけがをした人への対応はもとより、避難生活が長期化しますと、透析患者など慢性疾患への医療面でのサポートが欠かせません。現実に今回の震災では、けがをなさった方よりも慢性疾患に対する医療的な支援がかなり求められて、必要だったということを聞きました。そのために、避難所では医師、看護師などが、診療所を設けるだけではなく、みずから巡回して避難所のそれぞれのブースを回って対応したそうです。
 都は今回、透析患者を迅速に受け入れましたけれども、首都直下の場合は逆に支援をしてもらう立場になると思います。今回の被災地への支援の中でも、医師はたくさん集まった、あるいは看護師も全国から集まってきたけれども、だれをどこにどのくらい配置するのか、全体をコーディネートする人材がいなかったために、混乱が生じたという話も聞きました。
 そこで、人口規模がけた違いに大きい東京への医療支援は、非常に大規模なものが必要となりますが、必要な医療を的確に把握し、支援にやってくる機関同士が十分に連携を図る必要があると考えますけれども、都の見解を伺います。

○箕輪企画調整担当部長 首都直下地震など大規模災害では、多くの負傷者が発生することから、広域的な医療連携を円滑、迅速に進めることが求められます。
 今回の地震では自治体がその機能を失った地域も多く、被害の全容把握に時間を要し、情報発信もおくれたことから、医療関係者間での調整にも時間を要しました。こうした教訓を踏まえまして、災害医療派遣チームや医療救護班の受け入れなど、広域的な医療連携に係る対策を検討していく必要があるというところでございます。

○西崎委員 医療のコーディネーターは、外部から来たその専門家がよいと聞いています。一人でも多くの都民の生命を守るために何をするのか、具体的な手続を含めた実効性の高い連携、受け入れの仕組みを検討していただきたいと思います。
 また、避難所では子どもの学習環境や遊び場の確保、ペットの対応などさまざまな課題があります。ぜひ幅広い角度からの検討を重ねて要望いたしまして、質問を終わります。

○鈴木委員 先日の代表質問、一般質問、そして、本日の委員会質問の中でも、防災対策については、ハード、ソフトの両面から、実にさまざまな事項にわたる質疑が行われました。
 例えばソフトの面でいえば、知事は防災隣組の構築を表明いたしましたが、その取り組み内容を聞くと、地域ではぐくまれている自助、共助の取り組みを積極的に後押しをするというものです。具体的な内容はこれから出てくるのでしょうけれども、考え方としては、都民の命を守るために都民一人一人の意識を変えていくという意味で、大変大事なものだと考えております。
 私の地元足立区などは、古くからの地域のつながりがまだ残っている地域も多く、防災隣組の取り組みが浸透しやすいのではないかと思っておりますが、これからの効果的な取り組みを期待するものです。
 また、ハードの面での対策ですが、海抜ゼロメートル地帯について、高潮、津波対策や大規模水害への対策を強固なものとしていく必要がありますが、東日本大震災における東京都の対応と教訓でも、そのことが述べられております。綾瀬川や中川などの防潮堤の整備を引き続き推進するなど、しっかりと対策を講じていただきたいと思います。
 防災対策は、このように具体的な地域を想定し、そこで起こり得る課題を取り上げることで、より具体的で実のある議論ができるし、都民にとってもわかりやすいと考えています。
 そこで、私は地元足立区を例にとりながら、防災対策について何点か質問をいたします。
 まず、木造住宅密集地域の防災対策についてでございます。
 足立区を初め下町地域では、いまだに木造住宅がひしめき合う地域があり、危険度五地域に指定されているところが多々あります。老朽化した木造住宅は、建物の倒壊や延焼の危険性が高いとされ、大都市東京の防災の大きな課題の一つです。都はこれまでも対策を講じてきていますが、一層の取り組みが必要とされます。
 そこで、木造住宅密集地域の防災対策について、都のこれまでの取り組みと実績、そして今後の取り組みについてお伺いをいたします。

○箕輪企画調整担当部長 都は、区と連携して防災都市づくり推進計画を策定し、重点整備地域等を定め、延焼遮断帯となる道路の整備や建物の不燃化、耐震化に取り組んでまいりました。こうした取り組みにより、各地域の延焼遮断帯形成率や不燃領域率が向上し、市街地の防災性は着実に改善してまいりました。
 木造住宅密集地域の防災対策につきましては、今後、その取り組みを加速させるため、所管局におきまして住民の意識啓発を行うとともに、延焼を遮断する道路整備や移転先の確保などの対策を進めていくこととしております。

○鈴木委員 ありがとうございます。
 住民の高齢化が進み、また、権利関係が複雑であるなど、取り組む上では課題が多いでしょうけれども、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、隣接する自治体との連携についてお伺いいたします。
 基幹道路の整備や沿道の耐震化などによって、非常時に基幹道路の機能を確保することは大変重要だと認識をしております。しかし、先月の基幹道路防災訓練の中でも、環状七号線内回りの侵入を制限する、大規模な訓練も実行されました。しかし、環状七号線でもし足立区の鹿浜橋が壊れ、そういう危険があった場合に、足立区、葛飾区は東京都区部の中でも陸の孤島となり、物流や医療などが寸断する恐れがあります。
 こうした事態を防ぐために、橋梁の耐震化を進めることも大事ですけれども、万が一、多くの橋が落下し、都内における救援、救護が望めなくなった場合、そういった事態も想定をしておく必要がございます。その場合、隣接する埼玉県の各市との連携により対応する必要があります。具体的な連携は、足立区と隣接する埼玉県の市との間で行うことになりますが、広域的な視点から都、県レベルでの連携も重要です。
 そこで、広域地域において、その広域連携の都の取り組みと今後の方向性についてお伺いいたします。

○箕輪企画調整担当部長 首都直下地震が発生した場合には、都県域を超えて広範囲に被害が及びますため、首都圏を構成する自治体同士が連携して対策を講じる必要があります。
 このため、九都県市では、物資の支援や職員の派遣などを行うことを目的とした相互応援協定を締結するなど、災害時の連携強化に努めてまいりました。今回の震災の教訓を踏まえ、都内区市町村の連携強化はもとより、緊急物資の受け入れに備えた拠点と輸送ルートの整備など、自治体間の一層の連携強化を図ってまいります。
 さらに、首都圏内では対応し切れないライフラインの復旧支援や応急救護につきまして、九都県市にとどまらず、首都圏を超えた自治体との多様な連携策を講じてまいります。

○鈴木委員 足立区は、隣接する埼玉県八潮市、そしてまた川口市、草加市などの災害時での相互応援協定を結び、救援物資の供給、被災者の受け入れ等の相互応援を取り決めているところです。こうした協定が実際に地震が起こったときに有効に機能するように、具体的な事項についてぜひ詰めておくことが必要ですが、都としても、こうした区市レベルの連携がさらに進むよう、ぜひ働きかけていただくよう要望いたします。
 次に、足立区内にある舎人公園ですが、都の防災公園として位置づけられていると聞きます。私も一度、防災訓練を見にいったことがございますが、マンホールを活用したトイレなど、さまざまな設備があることに驚きました。
 防災訓練に集まっているのは、自治会や町会の役員さんなど、もともと防災などに意識がある方ばかりです。舎人公園が防災公園であることは、一般の都民は余り知らないのではないでしょうか。
 そこで、防災公園である舎人公園には、どのような施設、設備を備え、都民にどのように周知をしているのか、また、今後どのように取り組んでいくのかをお伺いいたします。

○箕輪企画調整担当部長 舎人公園は、東京都地域防災計画におきまして、大規模救出救助活動拠点及び避難場所に指定されております。災害対応トイレや応急給水槽、防火水槽などの施設が整備されております。また、緊急大型車両の通行を想定した園路が設けられておりますほか、陸上競技場や野球場はヘリコプターの離発着を想定しております。こうした施設につきましては、公園の指定管理者がホームページやリーフレットで都民に周知をしております。
 今後も、災害時の大規模救出救助活動拠点及び避難場所としての機能が十分に果たせるよう、関係局と連携して取り組んでまいります。

○鈴木委員 日ごろの憩いの場である公園が、いざとなれば、都民を守るさまざまな設備が備えられていると知れば、都民の安心にも、また防災意識の向上にもつながると考えます。施設面の充実とともに、もっと多くの都民に防災公園を知ってもらう努力をするよう、ぜひ要望しておきます。
 以上、地域の目線から防災対策を取り上げました。一つ一つの取り組みは大変地道なものかもしれませんが、こういった地道な努力こそ、しっかりこれを積み上げることで、東京の防災力をぜひ強化いただくことを要望して、次の質問に移ります。
 ただいま質問をさせていただいた東京都防災対応指針も、裏づけられた調査や科学的な根拠、そして最先端の科学技術なくして達成されることはできません。今定例会で首都大学東京の第一期中期目標期間業務実績評価が報告されましたが、この視点から、首都大学東京に対する質問を幾つかさせていただきます。
 首都大学東京の第一期中期目標期間業務実績評価は、中期目標の達成が全体としておおむね良好との評価となっております。第二期中期目標期間がこの四月からスタートいたしましたが、第一期の実績を踏まえ、幅広い分野で、学術研究をこれまで以上に進めていく必要があると考えます。
 そこで改めて、首都大学東京の設立理念、目的を確認いたします。

○皆川首都大学支援部長 首都大学東京は、大都市における人間社会の理想像の追求を使命として、広い分野の知識と深い専門の学術を通して、豊かな人間性と創造性を備えた次代の東京を担う人材を育成するとともに、都民の生活及び文化の向上に寄与することを目的としております。

○鈴木委員 次代の東京を担う人材を育成することや、都民生活の向上に寄与することは、大学の使命として大変重要なことと認識したところですが、さきの東日本大震災は、都民に改めて震災に対する不安や津波などの被害による恐怖、そして放射能被害に対する備えなど、多くの災害について考えさせられることとなりました。
 このようなときこそ、東京の知の集積の教育機関として、首都大学東京の知見を都民に役立ててほしいと思いますが、大学として、具体的に今回の震災ではどのような取り組みを実施したのかお聞きいたします。

○皆川首都大学支援部長 東日本大震災では、水道局や港湾局からの要請に速やかに対応いたしました。具体的には、東村山浄水場の水道水や東京湾内の海水の放射性物質の測定であります。大学が有する学術的、専門的な知見を生かして、現在もそれは取り組んでいるところでございます。
 また、公開講座といたしまして、荒川区などと協力し、都民の放射能に関する正しい知識の啓発も進めてまいりました。

○鈴木委員 水道局や港湾局と連携をして、都民生活に欠かせない水の放射性物質測定などは、都民の不安を解消し、啓発することで、より都民の安全を確保する上で、大変評価できるものです。
 しかし、さきの東日本大震災は、これまでの被害想定を大きく上回るものであり、この教訓を生かした安全・安心の研究が、都のシンクタンクとしての役割を担う首都大学東京には、これまで以上に求められていると思います。
 都が設立した唯一の高等教育機関であります首都大学東京は、今後発生が予想される首都直下型地震への予測や対応、都市復興などの都市計画の研究、人体への放射能被害についての研究など、多くの分野で積極的に研究を進めるべきであって、その成果を都政、都民に還元し、東京の安全・安心にこれまで以上に寄与していくことが責務であると思います。
 第二期に向けて、国際化の推進や個人情報の保護など、課題はありますが、ぜひとも大都市東京の都民の安全・安心をテーマに、大学を挙げて学術研究すること強く要望しまして、私の質問を終わります。

○小林委員 私で最後でございますので、よろしくお願いいたします。
 私からも、東日本大震災における東京都の対応と教訓について、何点か伺わせていただきます。
 この対応と教訓には、大震災からの半年間を振り返り、従来の都の防災対策について網羅的に検証がなされています。広範な内容となっており、取りまとめに至るまでには相当なご苦労があったことと思います。
 この対応と教訓は、十一月をめどに策定される東京都防災対応指針に反映されていくことになりますが、今後、区市町村におけるそれぞれの防災計画も見直し作業に入っていく中、東京都防災対応指針は、区市町村が計画を見直す際の一つの参考になろうかと思います。その意味においても、このたびの都の対応と教訓は非常に重要な意味を持つものと思います。
 そこで、初めに、このたびの対応と教訓は、どのような過程を経て取りまとめをされたのか、確認をさせていただきます。

○村松総合防災部長 東京の防災力の向上を図るためには、東北地方と都内における災害それぞれに対する被災地支援活動や都内の災害対応を踏まえまして、現場における経験に基づいた教訓を明らかにし、今後の防災対策に生かす必要があると考えてございます。このため、都は、各局及び区市町村への照会やヒアリング、地震や防災対策等の専門家からの意見聴取、被災地に派遣された職員の体験の調査分析のほか、被災地への視察及び被災自治体の職員との意見交換などを行った上で、今回の対応と教訓を取りまとめたものでございます。

○小林委員 この現場における経験に基づいた教訓を明らかにするとご答弁にあるとおり、政策を推進していくに当たっては、現場にこそあらゆる知恵があるといっても過言ではないと思います。現場感覚を忘れた机上の空論を振りかざすことほど、都民の皆様にとって迷惑なことはないと思います。常に現場を確認し、現場の目線で都政を進めていけるよう、ともどもに再確認をし、今後の防災対応指針の策定へとつなげていただきたいというふうに思います。
 対応と教訓の中身については、多岐にわたっておりますが、各個別の対策の内容について、何点か確認をさせていただきます。
 初めに、帰宅困難者対策についてお伺いします。
 先日、地元で聴覚障害者の団体の方からさまざまご要望をいただきました。三月十一日の発災当日、交通機関の運行状況や避難所開設などを知るすべが十分ではなく、何時間もかけて徒歩で帰宅したというお声がございました。そこで、聴覚障害者のためにも、立ち寄りが予想されるコンビニエンスストアや公共施設などに、交通機関の運行状況などの必要な情報を目に見える形で張り出すなどの対策を検討してもらいたいとのご要望がありました。
 聴覚障害に限らず、障害のある方も含めたあらゆる人々が正確な情報を得られるような環境を整備すること、これが災害時の安心と安全を確保する重要な課題であると思います。都は国とともに、近隣自治体や通信事業者などを含めた帰宅困難者等対策協議会を設置し、情報提供についても検討しているとのことですが、こうした障害のある方への配慮という視点が大切であると考えます。
 都は、すべての人々が正確な情報を得られるよう、障害のある方々にも配慮した帰宅困難者への情報提供の方策を充実すべきでありますが、見解を伺います。

○村松総合防災部長 障害のある方々は、情報を得るに当たって制約を受けることから、特別な配慮や支援が必要となります。例えば、聴覚障害者の場合には、音声による情報提供が困難であるため、視覚を中心とした手段により情報の提供を行うなど、きめ細かな支援が必要でございます。
 都では、国との協議会のもとに、通信事業者等を含めたワーキンググループを設け、迅速な安否確認と正確な情報提供について検討をしているところでございます。このワーキンググループにおきまして、障害のある方も含めたあらゆる人たちへ、円滑に正確な情報が提供できますよう、大型ビジョンやインターネットなど多様な情報提供手段の活用について検討してまいります。

○小林委員 ぜひこのワーキンググループで現場の声を反映し、こうしたご要望におこたえできるようご努力をお願いしたいと思います。
 次に、災害時要援護者への対応についてお伺いします。
 対応と教訓によれば、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児などの災害時要援護者の安否確認については、今回の震災では、確認を有効に行えた地域もあれば行えなかった地域もあったと指摘をされています。地域性や制度の運用方法など、さまざまな要因があるかと思いますが、いずれにしても、こうした違いが生じた要因を分析、検証して、この制度が真に機能していくよう改善していくことが必要であると考えます。
 そこで、有効に行えた事例と行えなかった事例について、その具体的な内容をお伺いします。

○村松総合防災部長 災害時要援護者の安否確認の取り組みにつきましては、区市町村において、民生委員等の協力を得て地域ごとに取り組みが進められております。
 今回の震災では、安否確認の取り組みが有効に機能した例では、民生委員や自治会、自主防災組織の役割を明確化した上で、関係者全員が連携した枠組みを整え、近隣の住民による協力も得られておりました。一方、災害時要援護者の安否確認に当たる支援者に対し、具体的な活動内容を十分に周知できていなかった事例では、発災後の迅速な安否確認が困難であったと聞いております。

○小林委員 今ご答弁にありましたような具体的な事例、これをさらに検証をして、適切な支援が行われるよう、今後の対策に生かしていただきたいと思います。
 次に、住民の避難対策における動物の受け入れについてお伺いします。
 従来より、災害時におけるペットとの避難体制をどのようにしていくのかは課題となっておりましたが、先月中旬の読売新聞には、福島県と環境省が、東京電力福島第一原発事故で立ち入りが制限されている原発から二十キロ圏の警戒区域内で、飼い主が避難したため放浪している犬の本格的な保護に乗り出したとの報道もあり、この問題が改めて浮き彫りになりました。
 ペットを飼っている方からすると、ペットは家族も当然、一緒に避難したいとの切実な願いがあり、私も地元のわんわんパトロール隊の皆様からもさまざまなご要望をいただいております。ペットとの避難体制の確保というのは難しい問題もはらんでおりますが、決して看過できないテーマであるというふうに思います。
 本年第二回定例会における我が党の高倉議員の一般質問でも、愛護動物の保護について取り上げましたが、改めて、この対応と教訓に取り上げた都の認識と今後の取り組みについてお伺いします。

○村松総合防災部長 発災時に発生する多くの負傷動物等に対しては、動物愛護等の観点から適切な対策を講じることが必要と考えております。
 都は、阪神・淡路大震災を踏まえて、動物の飼育や救護活動について、地域防災計画に位置づけてまいりました。
 今回の震災では、都が開設した避難所の運営を通じまして、災害時の動物の取り扱いに関する飼い主の知識不足、動物の飼育場所やケージ等の資材の確保、一時預かりを行う団体との連絡などの課題が改めて確認されたところでございます。
 現在、所管局におきまして、こうした課題を踏まえた取り組みが進められており、来年度の地域防災計画の修正に反映させてまいります。

○小林委員 最後に、事業継続計画、BCPについてお伺いします。
 公明党は、これまでも一貫してBCPの重要性を訴え、折に触れて質問をしてまいりました。私も総務委員会において過去二回、BCPについて質問させていただきましたが、対応と教訓の中においても、行政のBCP、そして民間企業のBCPと、官民にわたる事業継続計画の策定について触れられています。
 行政のBCP策定については、都の確固たるBCP策定はもちろんのことですが、都内の区市町村の策定も着実に進めていかねばなりません。本年六月二十八日の総務委員会における私の質問のご答弁では、その時点で、策定済みの団体が十七団体、策定中または策定予定の団体が二十七団体という状況でした。まだそれから三カ月程度しかたっておりませんが、確認の意味で、現時点での策定状況についてお伺いいたします。

○村松総合防災部長 本年第二回定例会総務委員会におきまして申し上げました、BCPを策定中または策定予定としておりました二十七団体のうち、現時点までに新たに策定を終えている団体は二団体であり、この結果、島しょ部を除く都内五十三区市町村のうち、現在BCPを策定済みの団体は十九団体となっております。
 大震災の教訓から、自治体におけるBCPの重要性が明らかになったことから、都としては引き続き、区市町村のBCPの早期策定と実効性の向上を図ってまいります。

○小林委員 まだ策定されていない自治体においても、BCPの必要性は今回の大震災の教訓から認識は新たになっていると思いますが、自治体におけるさまざまな事情で、いまだ着手できていない状況もあるかと思います。引き続き都がリーダーシップをとって、実効性のあるBCP策定に向けての支援を改めてお願いしたいと思います。
 最後に、民間企業のBCP策定ですが、災害の発生後も大都市の活動を引き続き維持するためには、民間企業によるBCP策定も重要な視点であります。
 そこで、民間企業のBCPの策定状況と、都が企業によるBCPの策定を支援するために、これまで行ってきた取り組みについてお伺いいたします。

○村松総合防災部長 民間企業のBCPの策定は、震災による生産活動の低下を軽減させるとともに、産業の早期復興を図る上で重要と考えております。
 平成二十二年三月に国が発表いたしました企業の事業継続及び防災の取り組みに関する実態調査によれば、民間企業におけるBCPの策定状況は、大企業では策定済みが二八%、策定中が三一%、中堅企業では策定済みが一三%、策定中が一五%、その他企業では策定済みが一三%、策定中が九%となっております。
 また、所管局において、中小企業のBCPの策定を支援する取り組みとして、研修や個別コンサルティングなどの支援を昨年度から実施しております。

○小林委員 この対応と教訓の中において、民間企業のBCP策定支援に当たっては、今回の震災による被害が電力供給の停止や物流ネットワークの断絶など広範にわたったことを踏まえて、実効性のある計画となるように留意することが求められると指摘されております。
 BCPの策定は、当然のことながら、つくることが目的ではなく、非常時の羅針盤となって、社会を混乱から安定へ、不安から安心へと導くことに意味があると思います。関係局や経済団体などとも連携しながら、策定推進に向けたより一層の対策の充実に努めていただくようお願いをいたします。
 先日、大震災を特集したテレビで、私と同年代の男性のインタビューを見ました。奥さんと息子さんと手をつないで一緒に逃げていたそうですが、奥さんも息子さんも津波で失った、その男性は次のように語っていました。女房も息子も津波にのまれた瞬間の声と姿は忘れられないですね。このように語っておりました。どれほどの悲しみ、そして悔しさ、苦しみがあっただろうと思うと、胸を締めつけられる思いでありました。
 今回の大震災において、東京の今後の防災対策を考えていく上で、さまざまな教訓がありました。それを今後の施策に生かしていくことはもちろんのこと、何より被災された方々、家族や愛する人を失った方々の心の痛み、嘆き、苦しみを、私たちは絶対に忘れてはならないと思います。
 防災対策はソフト面、ハード面とあらゆる角度から講じていかねばなりませんが、その根底は、とうとき人命を絶対に守る、苦しみや悲しみを最小限にしていくとの覚悟と決意を持って取り組んでいかねばならないと考えます。これから策定される東京都防災対応指針、また明年夏に予定されている東京都地域防災計画の修正と、重要な取り組みが続きますが、先ほど申し上げた覚悟と決意を共有して、災害に強い首都東京をともどもに築き上げてまいりたいと申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。

○高倉委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高倉委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で総務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時四十三分散会

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