総務委員会速記録第四号

平成二十年三月十七日(月曜日)
第一委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長酒井 大史君
副委員長鈴木 隆道君
副委員長花輪ともふみ君
理事小磯 善彦君
理事松村 友昭君
理事林田  武君
後藤 雄一君
山口 文江君
遠藤  守君
尾崎 大介君
菅  東一君
倉林 辰雄君
吉野 利明君
大沢  昇君

 欠席委員 なし

 出席説明員
知事本局局長大原 正行君
儀典長多賀 敏行君
次長河島  均君
理事政策部長事務取扱前田 信弘君
企画調整部長川澄 俊文君
秘書部長長谷川 均君
企画調整担当部長小林  清君
特命担当部長鈴木 賢二君
調整担当部長角南 国隆君
参事中村 信一君
国政広域連携・首都調査担当部長吉田 長生君
自治制度改革推進担当部長中村  靖君
国際共同事業担当部長猪熊 純子君
青少年・治安対策本部本部長久我 英一君
総合対策部長百合 一郎君
青少年対策担当部長小島  昭君
治安対策担当部長八木沼今朝蔵君
人事委員会事務局局長矢口 幸一君
任用公平部長川村 栄一君
試験室長内藤 泰樹君
参事堀江 正敏君
監査事務局局長白石弥生子君

本日の会議に付した事件
 知事本局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十年度東京都一般会計予算中、歳出 知事本局所管分
付託議案の審査(質疑)
・第三十号議案 東京都アジア人材育成基金条例
・第三十一号議案 東京都公害健康被害予防基金条例
報告事項(質疑)
・「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八について
 人事委員会事務局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十年度東京都一般会計予算中、歳出 人事委員会事務局所管分
付託議案の審査(質疑)
・第四十八号議案 東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 監査事務局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十年度東京都一般会計予算中、歳出 監査事務局所管分
付託議案の審査(質疑)
・第四十九号議案 東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 青少年・治安対策本部関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十年度東京都一般会計予算中、歳出 青少年・治安対策本部所管分

○酒井委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、知事本局、人事委員会事務局、監査事務局及び青少年・治安対策本部関係の予算の調査、知事本局、人事委員会事務局及び監査事務局関係の付託議案の審査、並びに知事本局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより知事本局関係に入ります。
 予算の調査、付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 第一号議案中、歳出、知事本局所管分、第三十号議案、第三十一号議案及び報告事項「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八についてを一括して議題といたします。
 本案並びに本件につきましては既に説明を聴取しております。
 これより本案及び本件を一括して質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木委員 それでは、私からは、アジア製旅客機中小型ジェット旅客機の開発に関して質疑をさせていただきたいと思います。
 東京都は、石原知事が提唱したアジア大都市ネットワーク21の共同事業として中小型ジェット旅客機の開発促進プロジェクトに取り組み、アジア製のジェット旅客機の実現に向けてさまざまな努力を重ねてまいりました。このアジア地域では、欧米製ではなく、アジアの力を結集して旅客機をつくろうという知事の発想は、アジアに新しいアイデンティティーをもたらすものとして、私としては大いに共感できるものであります。
 こうした中、経済産業省と三菱重工業が進めてきた国産ジェット旅客機であるMRJの開発が佳境を迎え、いよいよ事業化に向けた最終判断を行う段階に来ていると聞いております。長年国産旅客機の開発が行われてこなかった我が国にとって、MRJが事業化にこぎつけることは、YS11以来四十年の悲願が達成されることであると考え、私にとっても大変うれしいことであります。
 航空機産業は、高度な技術を集約する付加価値産業であるとともに、部品点数が三百万点にも及ぶすそ野の広い産業であります。一たび国産旅客機の事業化が成功し、量産が実現すれば、都内の中小企業にも幅広く波及効果があるだけでなく、さまざまな新技術の普及が進んで、産業全体の高度化にも結びつくものと期待をされているところであります。国産旅客機の事業化という大きな節目を迎え、東京都としては、アジア製旅客機の開発促進にこれまで以上に力を入れて取り組むことが重要な時期に来ていると私は感じています。
 第一点目として、東京都としてアジア製旅客機開発についてどのような考え方に基づいて取り組みを進めるかについて伺います。

○猪熊国際共同事業担当部長 中小型ジェット旅客機の開発促進は、アジアの航空需要の増大をアジアの航空機産業発展の好機ととらえ、これをアジア連帯の強化、ひいては世界でのアジアの存在感向上につなげるため、アジア独自の中小型ジェット旅客機の開発を促進するものでございます。
 航空機産業は、ご指摘のとおり、最先端の技術を活用し、技術の波及効果も大きく、産業の高度化に資するとともに、産業のすそ野が広く、中小企業を含め東京の産業全体の振興につながるものでございます。アジア製旅客機の開発に向けては、日本を含めたアジア各国政府、航空機メーカーなど、関係者が開発の意義を理解し、取り組みに向けた機運が生まれることが重要でございます。
 都は各方面に働きかけ、その方向に関係者をまとめるための触媒としての役割を担うことが重要と認識してございます。このような考え方に基づき、都はこれまでも国内の航空関係者を広く集めた検討委員会で、求められるアジア旅客機像などを検討してまいりました。
 また、この検討委員会と連携した形で、アジアの航空機メーカー、エアラインなどが一堂に会する国際会議を開催し、アジアでの共同開発の意義、アジア市場の将来性などについて議論する機会を提供し、関係者の理解を促進してまいりました。こうした議論は、今回事業化判断を目前としている国産旅客機の開発にも大きな後押しとなったものと認識しております。
 これらに加えまして、来年度からは新たにアジア人材育成基金を活用し、首都大学東京にアジアの優秀な人材を受け入れ、航空機にも適用できる新技術の開発の研究を実施してまいります。

○鈴木委員 旅客機の開発には日進月歩の技術革新が求められ、それを担う高い専門性を身につけた数多くの人材が必要であるというふうに考えられます。すぐれた技術や研究機関の集まる東京において、アジアと連携して人材育成や技術開発を進める取り組みには大きな意義があるというふうに思います。
 首都大学東京での新たな取り組みには、アジア人材育成基金を活用するということでありますが、まさに基金の趣旨にかなったものとして大変高く評価をしているところでもあります。首都大学東京を活用した航空機関連の人材育成と、新技術開発の取り組みの意義と内容を改めて伺います。

○猪熊国際共同事業担当部長 首都大学におけるこの取り組みは、これまで都が進めてきた機運醸成に向けた取り組みから一歩進んだ、アジア旅客機の開発促進に欠かせない、アジアとの連携をより具体化するものでございます。具体的には、アジアの留学生を首都大学東京博士後期課程に受け入れまして、宇宙航空研究開発機構と共同で、日本が世界的に見て高度な技術を擁する素材の分野におきまして、アジア製旅客機など、次世代の航空機への適用を目指した新技術の研究を行います。航空機用の素材は、自動車や医療機器などへの転用により他産業への技術波及効果が期待され、産業全体の高度化に貢献するものでございます。
 また、留学生が航空機関連の研究機関やメーカーなどで活躍することを通じまして、研究者間の人的ネットワークの構築及びアジア全体の技術力の向上を図ってまいります。

○鈴木委員 今答弁がありましたけれども、アジアの留学生、特にASEAN諸国と、それから日本との関係の中で、私も自分で海外の航空関係の会社を経営している関係で思うのは、また今感じているのは、非常に日本との交流というものをアジアじゅうの方々が望んでいます。非常に日本を高く評価をし、そして日本へのあこがれを持っているという現実があります。もしかするとこれは、日本人が我々の日本というものを過小に評価をしているぐらいのものがあると思います。
 ですから、日本として、また東京として、それだけの技術があるものを、人材を交流する中で、そして日本が持っているものをアジアの平和と安定、または今いった経済の発展に向けての交流に、ぜひその力をかしていくということが、私は本来の国際貢献の意味でもあり、本当の意味でのお互いの協力関係を構築していくという、アジアのアジアネットワーク、石原知事がつくった21の本来の趣旨であろうと思うのです。
 特にこの航空機産業というのは、先ほども答弁にもありましたけれども、非常にすそ野が広く、しかも技術革新が行われていきます。まさにアジアの諸国の若い人たち、留学生も含めてですが、そういう専門的な技術を身につけて、それぞれの国に寄与したいと。その技術を持って自分の国に帰って、その国の国力を富ませるため、または国のために働きたいという、そういう気持ちを持った留学生が非常に今、日本に多く来ているという現実もあるわけでありまして、そういうところを見たときに、この旅客機、またはアジアネットワーク21が果たしている役割の大きさを、議会も、それから理事者の方々もぜひ大きくとらえていただいて、それがこのアジアに対して果たしていく役割の大きさが非常にあるということをぜひ心にとめていただいて、これからも努力をしていただければと思います。
 今申し上げましたが、アジアの旅客機は大きな、大変大きな意味があるということであります。これはもうぜひ積極的に、しかも大胆に決断をして進めてもらいたいと思います。アジア大都市ネットワーク21という、アジアの都市に共通する課題に連携して対処するという、まさに石原知事の先見性に満ちた取り組みは非常に高く評価されるものでありますし、これまで以上に、それをむしろ十分に使いこなしていく、世界のアジアの国々からの期待にこたえて、十分にそれを使いこなしていく必要があるというように思います。
 今後のアジア大都市ネットワーク21の活動の一層の発展にかける局長の決意を伺いたいと思います。

○大原知事本局長 アジアの諸国あるいは諸都市が東京に対して有する期待といいますか、要望、こういったものにこたえて具体的な行動を起こすことが今東京に求められている、これは先生ご指摘のとおりだと思います。
 そういった趣旨でアジア大都市ネットワーク21は、欧米に匹敵するポテンシャルを持ちますアジアの大都市が、儀礼的な国際交流にとどまらずに、危機管理あるいは産業振興など大都市共通の課題を解決するために共同して事業を推進し、アジアの繁栄と発展を目指すものでございます。
 これまでに環境問題や感染症対策など、個別の共同事業では、都の持つ優秀な技術や先駆的な施策の情報提供などによりまして、会員都市の間で新たな取り組みが進みますなど、大きな成果を上げてきたというふうに考えております。また、行政職員の能力の向上につきましても、多岐にわたる分野での研修生の受け入れなど、都はこの分野でも先駆的な役割を果たしてまいりました。
 今後は、新たに設置をいたしますアジア人材育成基金を活用いたしまして、人材育成のさらなる充実を図りますとともに、人材育成と個別の共同事業を有機的に結びつけまして、育成した人材を課題解決に生かすなどの工夫を加えて、着実に実績を積み重ねてまいりたいと思います。このことによりまして、アジア大都市ネットワーク21の活動をさらに充実発展をさせて、アジア全体の繁栄と発展に貢献していく所存でございます。

○遠藤委員 今、鈴木副委員長の方から、このアジア人材育成基金、これに関連して、特にアジア製の旅客機の開発という観点に絞った質疑が展開をされておりました。私の方からは、都民の理解に資するため、今回の育成基金、そしてアジア人材バンクそもそも論から確認をさせていただきたいと思います。
 今回の三十号議案、東京都アジア人材育成基金条例ということで提案をされておりますけれども、これを設置してアジアの未来を担う人材の育成に取り組もうとしているということはよく承知をしております。
 そこで、まず最初に、この人材育成基金の目的と、どのようにこの施策を展開していくのか、端的にお答えいただきたいと思います。

○猪熊国際共同事業担当部長 アジア人材育成基金は、今後十年間に展開する施策を見通し、七十億円を積み立て、アジアと東京の発展に向け、アジアの将来を担う人材の育成に資する施策を推進するものでございます。基金を活用して行う人材育成施策といたしましては、首都大学東京に留学生を受け入れ、高度先端的研究を行うほか、行政職員などの研修、大都市の課題解決に向けた共同研究などを行ってまいります。
 また、育成した人材の情報を登録管理するアジア人材バンクを新たに設置し、東京とアジア諸都市との人的ネットワークの形成に役立て、東京とアジアがともに発展していくための礎を築いてまいります。

○遠藤委員 今、答弁にはございませんでしたけれども、事前にお受けした報告によりますと、今回この基金によって大きく三つの施策を展開するということで、留学生の受け入れ推進に約五十億、そしてアジネットを活用した人的交流の推進で約二十億、そしてアジア人材バンクの設置で〇・五億ということで、おおよそ七十億を向こう十年間で取り崩して活用していくと、こういうご答弁だろうかと思います。
 ところで、次の質問に移りますけれども、世界都市である東京が今なぜ改めてこのアジアに、ヨーロッパでも、またアメリカでも、またはアフリカでもなくて、今この時期になぜアジアに特化をした、焦点を当てた人材育成に取り組もうとしているのか。その背景と理由をお答えいただきたいと思います。

○猪熊国際共同事業担当部長 アジアは欧米に次ぐ世界の第三極として、近年目覚ましい成長を遂げつつあり、東京とアジア諸都市は、経済を初め多方面にわたり互いに深く影響を及ぼし合うようになっております。このような中、人口や経済が集中するアジアの大都市には、環境問題や災害対策など共通するさまざまな課題があらわれております。二十一世紀は都市の時代といわれておりますが、こうした課題が最も先鋭的にあらわれる都市こそが、実態を踏まえ、みずからの手でこれを解決し、未来を切り開く力を持つものでございます。
 アジアが今後も発展を続け、世界の中で存在感を高めていくためには、こうした力を持つ大都市が手を携え、それぞれの国を動かし、課題を解決していくことが不可欠でございます。都は、平成十三年にアジア大都市ネットワーク21を立ち上げ、これまでもアジアの発展と課題解決に向けた取り組みを先導してきたところでございますが、このたび、新たに基金を設置し、これらの取り組みを支える高度な人材育成に取り組んでいくことといたしました。

○遠藤委員 この基金を活用した今後の事業展開には、先ほどご説明ありましたとおり、また私も付言させていただいたとおり、三つあることはわかりました。
 このうち、特に首都大学東京への留学生の受け入れ、これについて関連して申し上げれば、世界各国の将来のリーダーとなろうとする皆さんは、以前と比べれば日本にも多く来られているようですけれども、依然として欧米各国またはオセアニア、そしてこのアジアの中でも英語を母国語とした地域に集まっていく、こういう傾向が強いように思います。また留学生支援といたしましては、例えば国の国費留学制度というものもあります。
 優秀な人材をこの東京に引きつけるには、今回のこの留学生制度も、他国の制度や、または、この我が国日本が国として行っている制度に負けない魅力的なものであらなくてはならないと思います。
 東京都におきましても、以前、平成六年から十二年度にかけまして、姉妹・友好都市または州からの青年を都立の大学に受け入れるという、都費の留学制度というものがありました。それなりに手厚い支援を行っているようでありましたけれども、合計約四十名が、この期間に留学を受け入れられておりました。しかし、この受け入れ終了後も東京都とのつながりを維持してもらうための工夫というのが、決して十分ではなかった。厳しくいえば、ほとんどそうした手当てがとられてなかったと私は思います。そして残念ながら、財政難を理由として、平成十二年度の受け入れを最後に現在休止されたままとなっております。
 今回のこの留学生の受け入れは、こうした都費留学制度の反省点も踏まえて、効果のあるものにしていかなければならないと、貴重な税金を使っての取り組みでございますので、そう強く考える次第でございます。
 そこで、今回の留学生の受け入れがどういう観点で魅力があるものなのか、そして効果が期待できるものなのかをお答えいただきたいと思います。

○猪熊国際共同事業担当部長 今回の留学生受け入れにつきましては、首都大学東京の博士課程等にアジアからの優秀な人材を受け入れ、日本の研究者とともに高度最先端の研究を行うこととなっております。こうした優秀な人材の受け入れは、首都大学東京の研究者や学生にとって大きな刺激となり、大学自体の実力の向上と競争力の強化、ひいては留学先としての魅力を高めることにつながることが期待できます。
 また、留学生にとりましては、各分野の最先端の研究を行うことで研究実績を上げ、キャリアアップにつなげることができます。
 さらに、留学生が研究に専念できる環境を整えるための仕組みといたしまして、一般的に行われている奨学金の支給や授業料免除のほか、住宅の確保や基本研究費の支給、就職や生活全般にきめ細かに支援する相談体制の強化などを行ってまいります。このような取り組みを基金により十年間安定的に実施し、アジア人材バンクにより留学終了後も東京とのつながりを継続できるようにいたします。
 こうした取り組みにより、今回実施する首都大学東京への留学生受け入れがアジアに広く周知され、アジアの発展に資する真に優秀な人材が集まるといった好循環を生み出してまいります。

○遠藤委員 さまざまなきめ細やかな支援体制をとって、今後向こう十年間、充実した基金のもとで留学生を受け入れていくと、こういう趣旨であろうかと思います。
 東京にこの基金によって受け入れられました留学生の皆さんが、将来にわたって東京とのつながりを維持するために、このアジア人材バンク、ぜひとも有効に活用していただきたいと思います。
 ただ、しかしながら、バンク云々というこの仕組みは、広く今回の人材バンクのみならず、いろんな会社でも、または行政機関でも使われている、こういった概念だと思います。
 そこで、今回の東京が提唱して進めようとしているこのアジア人材バンク、東京都とのつながりの継続にどう役立てようとしているのか。また、他のこうした人材バンクとどの辺が違うのか、東京の売りはここだよという点をお示しいただきたいと思います。

○猪熊国際共同事業担当部長 アジア人材バンクは、首都大学東京への留学生や東京に受け入れた行政職員などの人材情報を登録管理し、東京とアジア諸都市との人的ネットワークの形成に役立てるものでございます。
 留学生に対する取り組みといたしましては、ウエブマガジンにより定期的に都の施策や各都市の課題などを情報発信することで、留学生の東京への理解を高めるとともに、帰国後も関心が継続できるようにしてまいります。
 また、専門分野ごとにメーリングリストなどを設置して、東京とアジアの研究者同士の情報交換を促すとともに、専門家の紹介を行うことで、将来にわたる研究交流の基礎を築いてまいります。このような取り組みを通じ、将来にわたってアジアと東京の優秀な人材が連携して課題に取り組むための基礎づくりに役立ててまいります。

○遠藤委員 こうしたことはいわずもがな、人材育成というのは、本当にその効果が直ちにあらわれるものではありません。いわんや、二国間または多くの都市との交流ということで、両国の発展に寄与する、それが目に見えた形で見えるというのは、本当に長いスパンで、ひょっとすると、将来にわたって目に見えないものであるかと思います。
 今、種々、今回の条例、そしてそれに基づくバンクをつくられたということで、きめ細やかな新制度ができたと思います。この十年間かけてこれもまた発展していくんだと思います。
 しかしながら、こうした制度や仕組みを生かすも、やはり責任者の熱意と決意次第でございます。私は、アジアの人材バンクの登録者の中から将来、ノーベル賞を受賞する、そうした方たちが出るぐらいの意気込みを持ってこの人材バンクの活用を進めていっていただきたいと思います。
 最後に、アジアの人材育成施策の推進にかける知事本局長の決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○大原知事本局長 グローバル化が進展をいたしますこの世界におきまして、アジアが世界の第三極として欧米と肩を並べ、その存在感を高めていくためには、アジア各国の頭脳部、心臓部であります大都市が英知を結集し、直面するさまざまな課題の解決に取り組むことが必要であると思います。
 このことから、都は、今回、これらの課題を解決し、アジアの将来の発展を担う人材育成に取り組むためにアジア人材育成基金を設置いたしました。人材育成に際しましては、まず、地球温暖化や新興感染症対策など、アジア諸都市が直面をいたします喫緊の課題を的確に把握をし、実践的に課題解決に当たることのできる人材を育成いたします。こうした人材育成を継続的に行っていくことにより、多様な分野において問題解決に資する人材の厚みを増してまいります。
 さらに、育成した人材を結ぶ人的ネットワークを形成いたしまして交流を促すことで、アジアの連帯をより強固なものとしてまいります。
 これらの取り組みを通じまして、東京が、アジア諸都市に各分野を先導する人材の蓄積ときずなを築くことによりまして、アジアの発展、ひいては広く世界の発展に貢献してまいりたい、このように考えております。

○松村委員 都政にとって今ほど都民の暮らしを守るために何をやるかが問われているときはありません。ところが、「十年後の東京」に向けた実行プログラムでは、二十一世紀の都市モデルをつくるといいながら、貧困の打開策は全く位置づけがありません。
 そこで、その土台となっている「十年後の東京」について伺います。
 「十年後の東京」を都の長期計画としながら、オリンピック招致に向けての三環状道路などのインフラ整備が主で、都民の福祉や暮らし、教育、中小企業などの施策に見るべきものがないのはどうしてでしょうか。

○小林企画調整担当部長 「十年後の東京」は、都がこれまで進めてきた先駆的な取り組みをさらに発展させて、東京が近未来に向けまして、都市インフラだけではなく、環境、安全、生活、文化、観光、産業など、さまざまな分野でより高いレベルの成長を遂げていく姿と、それに向けた政策展開の方向性を都市戦略として示したものでございます。
 オリンピックの招致というお話がございましたが、これは東京を変えていくきっかけではございますが、この「十年後の東京」は、オリンピック開催の有無にかかわらず、東京がさらなる成熟を遂げ、より機能的な都市に生まれ変わるために実現していかなければならないものというふうに考えてございます。
 例えばご指摘ありました都民の福祉についてでございますが、今後、都民の四人に一人が高齢者という超高齢社会が到来し、とりわけ、七十五歳以上の後期高齢者が約百五十万人と見込まれると。こういうことを踏まえまして、最先端技術の活用や多様な主体との連携強化を図りながら、認知症高齢者三十万人の大幅抑制、あるいは、障害者雇用三万人の創出、待機児童五千人の解消など、具体的な目標とその実現に向けた多角的な政策展開を示しております。
 また教育につきましても、いわゆる日本型の雇用慣行が崩壊し、学歴や企業名よりも、どのような専門性や知識を持っているかということが一層重視される、このように予想されることから、主体的なキャリアアップの重要性が高まっており、だれもが人生のどの段階でも意欲的に、意欲に応じて学べるよう、学び直しの支援や大学だけに頼らない複線型の教育ルートを構築するなどを打ち出してございます。
 さらに、中小企業というお話がございましたが、これにつきましても、東京の中小企業が厳しい国際競争にさらされていることを踏まえまして、この「十年後の東京」では、東京のポテンシャルが高く飛躍的な成長が見込まれる産業を重点的に支援することを掲げまして、その成果を東京全体の産業に波及させていくことによりまして、中小企業のすぐれた技術、アイデアの事業化や販路拡大といったものを支援していくということでございます。

○松村委員 今の答弁の中には、この「十年後の東京」で真っ先に書いてあった文言は、世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造すると、世界に先駆けてですね、そういう言葉を掲げているのですね、言葉というか。
 ところが、今も答弁にありましたけれども、施策展開についてはるる述べておりますけれども、私は、具体的な施策として何が掲げられているのかと、そういう福祉や教育、中小企業ですね、よく「十年後の東京」を読み取ってみますと、挙げられているのは、例えば介護とか、それから、生活支援のロボットですよね。それからまた認知症高齢者の三十万人の抑制、それから、障害者雇用も三万人の創出、あとやはり認証保育などでの待機児童五千人ということですけれども--私、一番最初にうたったのは、世界に先駆けたそういう都市モデルを示すということがあるわけですけれども、今幾つかのその政策展開がありましたけれども、今、都民にとって大問題の都民の貧困の一掃、こういう解決を進めることが私は都政の最優先課題であると思いますけれども、ところがやはり「十年後の東京」とその具体化である実行プログラムには、都民の生活水準をどう向上させるのか、深刻な貧困を解消する目標も、その手だても示されていないというふうに思います。
 そこで、私、なぜこのことを今第一に指摘するかというと、オリンピック、このこともありました。しかし、同じやはりオリンピック開催を進めるロンドン市がロンドンプランを掲げ、貧困の一掃に取り組んでいるのとは、大きな違いではないかというふうに思います。
 そこで、今ちょっと先に触れてしまった問題ですけれども、「十年後の東京」のあるべき姿を示したとして掲げられているのは、具体的な施策としては生活支援ロボットとか、三万人の障害者雇用、認証保育などによる五千人の待機児童の解消と。また複線的な人材育成とその構築といっても、具体的にどういう施策をやるのかも、この「十年後の東京」では見られません。果たしてこれで都民生活が豊かになり、高齢者も若者も障害者も安心して生活できる都市になっているといえるのですか。

○小林企画調整担当部長 将来にわたりまして都民生活の豊かさを実現していくためには、東京で生活するすべての人が意欲と能力に応じて活躍できることが重要でございまして、年齢や障害の有無にかかわらず充実して安心して暮らせ、意欲のあるだれもがチャレンジできる社会を実現していく必要があると考えております。こうした考え方のもと、「十年後の東京」では、ただいま、先ほどご答弁申し上げましたように、さまざまな分野におきまして、今ご指摘のあった内容にとどまらず、具体的な目標とその実現に向けた政策展開の方向性を示しているというふうに考えております。
 また、目標と掲げました三万人の障害者雇用でありますとか、あるいは五千人の待機児童の解消、こういったものについて具体的な事業展開は、今回の実行プログラムで、どういうふうにしていこうかということは明らかにしてございますので、あわせましてご理解を賜りたいと思います。

○松村委員 実行プログラムで具体的な施策の展開が図られていると。確かに「十年後の東京」計画とは、違いといいますか、三年間の短期計画というのですか、中期計画も織りまぜた実行プログラムでは、「十年後の東京」をベースに所管局での事業の計画化が図られたことはうかがえます。
 しかし、十年後の土台となるこの東京計画、これがやはり偏っていては、しょせんその上に展開しようとする計画も、多くの点で、私は都民ニーズにこたえたものになっていないというふうに思います。
 例えば高齢者施策では、実行プログラムで、認知症グループホーム、定員を六千二百名に増員という目標を掲げていますが、今東京でおくれているのは認知症グループホームだけではありません。小規模多機能型施設の整備率も、特別養護老人ホームや老人保健施設、療養病床など介護施設の整備率は、東京都は全国で最低水準です。
 しかし、そういう課題、緊急に求められている施策については、目標もないんですね。その施策すらやはり触れられていません。ここに私は、「十年後の東京」が全くのトップダウンで、所管局の関与も薄く、検討を重ねた計画でないやはり問題点があるというふうに思います。
 この点では、昨年の事務事業質疑でも私ただしました。その後、こういう実行プログラムの政策展開があって、今いった位置づけがあるんですけれども、私はそのもととなる知事本局が取りまとめた「十年後の東京」のそういう計画の性格といいますか、ここにやはり大きな問題点があるというふうに思うんです。
 そこで改めて伺いますけれども、「十年後の東京」の策定経過についてどのようになっていたのでしょうか、明らかにしてください。

○小林企画調整担当部長 策定経過についてでございますが、平成十八年六月の第二回定例会の知事所信表明におきまして、二〇一六年の東京の都市像を策定という方針がございまして、これを受けまして知事本局において直ちに検討を開始いたしました。
 また、その七月には、私どもから各局に対しまして、検討の視点というものを提示いたしました。
 例えば、我が国の首都、アジアの拠点としての東京の活力や国際競争力の維持向上でありますとか、環境問題、治安対策など大都市に先鋭的にあらわれる課題への対応、あるいは拡大、成長のステージを経て成熟を遂げた質の高い都市生活の実現など、こういったものを示しまして、各局が所管する施策分野について、二〇一六年の東京の将来展望とその実現に向けた政策展開の方向性について検討を依頼いたしました。
 九月からは、その検討結果に基づきまして、知事本局と各局の間で本格的な意見交換を開始をいたしました。
 また策定の中では、都政モニターアンケートの結果や予算編成におけます区市町村要望、あるいはこれまでの都議会でのご議論、こういったものを踏まえ、さらに専門家や民間事業者の意見も聞きながら検討を進め、平成十八年十二月に「十年後の東京」として公表したものでございます。

○松村委員 今、るるこの作成経過についての話がありましたけれども、それが出されてから私も、当時の所管委員会、例えば公営企業委員会で、従来からホームドア、特に都営の大江戸線、障害者団体から求められていたことに対しては繰り返し求めてきたのに、全くそういう検討が技術的にもできないようなことをいっていて、突然としてこの「十年後の東京」に、都内すべてのですよ、これ民間鉄道事業者においても、このホームドアや転落防止策をとると。改めて所管局に、この「十年後の東京」の計画のどういう検討があったのかといっても、全くそれは知事本に聞いてほしいと。我々はやはり従来から答えてきたとおりであり、そういうことで--何もそれは、名誉のためにいっておきますけれども、交通局だけではありません。もう私たちの会派で、あちらこちらに「十年後の東京」に対しての考え方を求めても、全く要領を得ない、そういう回答しかありませんでした。それは知事本の思いと、各局との意思そごや、すべてがそうじゃなかったという面も多々あるだろうから、全体的にそうだと私はいい切るつもりはありませんけれども、しかし、やはりそういう非常に性格の強いトップダウンでやられた計画じゃないかというふうに思いました。
 そこで、今答弁の中に、外部の専門家の意見を聞いたといわれました。外部の専門家とは、何人の人から聞いたのでしょうか。

○小林企画調整担当部長 専門家の意見についてでございますが、「十年後の東京」を策定する過程では、都市づくりや環境、介護などの分野の学識経験者十名程度の方に、ヒアリング、ディスカッションなどを行い、ご意見を賜りながら策定を進めております。

○松村委員 その一人に安藤忠雄氏が入っていると思いますが、そこで、この東京オリンピック招致委員会チーフディレクターを務めていますよね、建築家の安藤忠雄氏は。それと「十年後の東京」のかかわりについて伺いたいと思います。

○小林企画調整担当部長 安藤忠雄氏は、現在日本人として最も世界的に評価の高い建築家の一人でございまして、二〇一六年オリンピック国内立候補都市の選定に当たりましては、開催概要計画書の策定などにおいてアドバイスをいただきまして、東京が選考を勝ち抜く原動力となったものでございます。
 この「十年後の東京」とのかかわりにつきましては、こうしたことを踏まえまして、オリンピックを契機に東京がより機能的で魅力的な都市に生まれ変わるための方策について、安藤氏にアドバイスを求めました。
 安藤氏からは、例えば海の森から都心の緑をつなぐ風の道、海の回廊をつくることでありますとか、都民や企業と協力しながら緑を大幅にふやしていく、電柱の地中化を推進すること、水辺に建物の顔を向けた、そういったような町並みをつくっていくことなど、今後の東京のあり方について有益な助言をいただいたものでございます。

○松村委員 ここに安藤氏との特命の随意契約書があります。特命理由書にはこのように書かれております。ちょっと読み上げさせていただきますけれども、都ではオリンピック招致、開催に向けて、東京のより機能的で魅力的な姿を都民、国民、全世界に発信することを目的として、二〇一六年の東京の都市像を策定することとしていると。そのためには、長期的な都市のグランドデザインを見据えて、将来の理念を提示できるような専門家の関与は不可欠である。安藤忠雄氏は、現在日本人として最も世界的に評価の高い建築家の一人であり、都市のグランドデザインや建築分野で高い見識を有する人物である。また、二〇一六年オリンピック国内立候補都市の選定に当たり、開催概要計画書の作成やJOCへのプレゼンテーションなどで多大なる協力を受け、東京が選考に勝ち抜く原動力となった実績があると。上記を踏まえ、オリンピック招致を見据えた魅力的かつ戦略的な都市像の策定及びその具体化に資するための相談及び業務支援を行うことができるのは安藤氏のみであることから、同氏と特命契約を行うものとするとされています。
 つまり、「十年後の東京」の都市像は、安藤氏が策定し、その具体化を相談及び業務支援を行うことができる、これは安藤氏のみであるとして、特命の契約を知事本局が結んでいると思います。
 私、ここから読み取れるのは、つまるところ「十年後の東京」は安藤氏が書いた提案ではないかということと、そして安藤氏は建築家です。オリンピック招致のグランドデザインは描けても、それを都の総合的な長期計画とすること自体、どだい無理な話ではないでしょうか。だから、住民福祉の増進に努めるという自治体の根本が欠落してしまう。やっぱりそこに一つの、なぜこの十年後、世界に先駆けた超高齢者社会の先駆的なモデルを実現するといいながら、具体的な施策の展開がないのかということが、私は今の読み上げた問題点によってはっきりしてきたのではないかと思うのですけれども、この点についてはどうでしょうか。

○小林企画調整担当部長 安藤忠雄氏からは、先ほど申し上げましたように、この都市づくりでありますとか、あるいは緑、緑化の推進などのこういった環境も含めた取り組み、これについて都市づくり、建築家、こういった専門家でございますので有益な助言をいただいたところでございます。
 しかしながら、この「十年後の東京」は、冒頭に申し上げましたように、こうした分野だけではなくて、生活、安全、文化、産業、観光などさまざまな分野で高いレベルの成長を遂げていく姿と、政策展開の方向性を全体として示してございます。
 また策定過程におきましても、先ほど、各局は知らないというお話がございましたが、例えばその後出た産業振興の計画でありますとか、あるいは、CO2の削減を二〇二〇年までに二五%削減していくと、あるいは耐震化につきましては、耐震改修促進計画という、その当時並行してつくられたもの、こういった各局とのさまざまな施策との連携もとってこの「十年後の東京」を策定したものであって、安藤氏の個人の考え方だけがここに反映されているものではないと考えております。

○松村委員 そうしますと、先ほど十名程度の専門家のいろいろな意見を聞いたり、アドバイスを受けたという方々も、このように安藤氏と同じような特命の随意契約を結んでいるというようなことをやっているのでしょうか。
 そして、今読み上げた中では、十年後のこの東京の都市像を策定でき、策定及びその具体化に資するための相談と業務支援を行うことができるのは安藤氏のみであると。これ、そういう契約をして、しかも何百万というもちろん契約料が既に支払われているというふうに、そういう資料もありますけれども、しかも期間は何カ月もかけたそういう契約を行ってやっているわけですね。ただ多くの専門家の一人からそういうアドバイスだとか意見を伺ったというようなことではないということは明らかだというふうに思います。
 今後とも、この問題についてもただしていきたいと思うのですけれども、そこで私、とにかく今東京の都政がオリンピック、オリンピックとなっておりますけれども、知事本局は、オリンピックと都民生活のどちらが重要と考えていますか。

○小林企画調整担当部長 どちらが重要かというお話でございますが、このオリンピックの開催を契機に東京をより成熟した都市としていくことは、都民生活の充実にもつながるものでございまして、この両者を何か相反するものというふうに考えるのではなくて、これは当然ともに重要なものであるというふうに考えております。

○松村委員 ともに重要だと。しかし、実際にはオリンピック最優先で、人、物、金をつけ、都民の暮らしは二の次になっているのではないでしょうか。そのことは「十年後の東京」の実行プログラムの事業費を見てもはっきりしています。十年後の都市像を、もっぱら三環状道路により東京が生まれ変わるとして、三カ年事業費の四五%がここにつぎ込まれています。それに対して、世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造する、これには一三%しか振り向けられておりません。都民生活も大事だというなら、少なくとも知事が公約した中学三年生までの子どもの医療費無料化を三カ年事業計画にのせることぐらいすべきが、私は知事本局の役割ではないかというふうに指摘したいと思います。
 それすら果たしていないというのが、この「十年後の東京」の実行プログラムだということを、この点においても厳しく指摘しておきたいと思うのです。
 ところで、石原知事のトップダウン事業といわれるトーキョーワンダーサイト、三宅島での公道バイクレース、豊洲への築地市場移転、米軍横田基地の軍民共用化、そして、現在大問題となっている新銀行東京など、都民にことごとく弊害をもたらしています。こうした事態に対し、知事を支える官房局としての知事本局の認識を伺います。

○川澄企画調整部長 知事のトップダウン事業といわれるものについてでございますけれども、選挙で都民の信を得た知事が、政策形成に当たって明確な方針を示すことは当然だろうと考えております。それぞれの政策の具体化に当たりましては、庁内で必要な議論を行い、都民、区市町村などのご意見を伺いながら、都議会での議論、ご審議を経て決定されているというふうに認識をしております。
 今挙げられました事業につきましては、いずれも重要な施策であると認識をしておりまして、ご指摘は当たらないと考えております。

○松村委員 都民とか区市町村などのご意見とか都議会でのご審議を経て決定されていると。そうなってくると、今、本当に都民からの批判が強まってきて、こういう問題も、確かに都議会での決定、新銀行も一千億円の出資がありました。これは都議会としての責任も問われなければなりませんけれども、しかし、今のこうしたトップダウン事業のいろいろな行き詰まりや破綻状況だとか、そういうことを、これもう議会だというようないわれ方は、これは大問題だと思います。
 やはり都政の主人公は都民であり、知事個人のものではありません。今この点について都民の強い批判の声が上がっているわけですから、知事を支える知事本局としても、改めてこうした自覚に立つように、この点については深入りしません、強く申し上げておきます。
 次に、「十年後の東京」の具体化の一つ、アジア人材育成について伺います。
 まず、三カ年事業費、これ非常にわかりにくいのは、八十七億円というふうにこの実行プログラムで表示されております。これについてのご説明をいただきたいと思います。

○大原知事本局長 先ほどのご指摘に対しまして一言だけ。私どもはいろんな施策の決定につきまして、議会でのご議論、ご審議をいただいておりますけれども、それを、責任を議会に押しつけるというような発想は全くございませんので、それだけは申し上げておきたいと思います。

○猪熊国際共同事業担当部長 三カ年事業費である八十七億円でございますが、基金が七十億円、二十年度予算額四億円、その他二十一年度及び二十二年度に計画しております事業費十三億円を合わせた数字でございます。

○松村委員 ちょっとわからないのですよ。実際は、七十億の基金と、それから四億円ですか、七十四億円なのに、なぜこれ、例えばその七十億円の基金で、三カ年で事業費が八十七億円というならば、七十億と四億、それで、来年度から九年間で例えば一年に七億ずつ取り崩して事業化されるとしても、これ、数字合わないですよね。
 これちょっと事前に詰めていけば時間とらなくて済むのですけれども、率直なところ、私、この質問を出して、きのうの午後の四時前に教えてほしいと出して、実際に回答が来たのがきょうの十一時と。全然ナシのつぶてということも一言、苦情ではありませんけれども、いっておきたいから、この場でもう一度端的にこれ。
 私がいいたいのは、これ違うんじゃないですか、こういう掲示ね。いかにもこの事業が八十七億円、三カ年でやるというような形になるんですけれども、実際はだって七十億の基金と四億で、それで年度ごとに取り崩して、どうして三カ年で八十七億というようなことを書くのかという端的な質問です。

○猪熊国際共同事業担当部長 八十七億円で基金が七十億円、そして二十一年度以降につきましては基金の中から事業費を支出していくということで、重複の計上となっておるため、実際の金額につきましては七十四億円ということになります。

○松村委員 本質問題じゃないので、ただ、これ間違っているんじゃないでしょうかということを指摘したいんですけれども。
 そこで、基金を七十億取り崩して九年間で使うとされておりますが、先ほどその留学生受け入れ、研修生受け入れ、それがそれぞれ基金の留学生は五十億円、研修生が二十億円という答弁が既にありました。そうしますと、留学生一人当たり幾らこれ使うことになるのでしょうか、研修生はどうでしょうか。
 私のこの計算というか、積算で間違っているでしょうか。それだけ答えていただきたいんですけれども。
 この留学生、実行プログラムによりますと、十年間で五十名受け入れると。そうすると、留学生受け入れで五十億円といいますから、実際留学生一人当たり一億円かけるということでよろしいんでしょうか。
 それから、研修生、これも五百人です、十年間で。これが二十億というのですから、一名当たり四千万円の経費をかけるということでよろしいんでしょうか。

○猪熊国際共同事業担当部長 留学生受け入れに伴う奨学金、あるいは高度研究などに係る経費として約五十億円でございます。そして、留学生の受け入れにつきましては、十年間で約五十名受け入れということでございますが、こちらについては、研究に係る経費についてはいろいろな幅があると理解しております。
 また、行政職員その他で二十億円ということで、こちらには大都市の課題解決に係る共同研究などの費用も入ってございます。
 なお、基金の七十億円につきましては、十年間にわたる施策を見通して計上しているものでございます。

○松村委員 いずれにしても、そういう人材育成として留学生を受け入れて五十億円、研修生で二十億というならば、その対象人数が五百名というならば、世間では、私が今いったような経費が一人当たりにかかるという計画だということに間違いないというふうに思うんです。
 そこで、これまでアジアからの留学生の受け入れ体制、首都大学などではどのようになっていたのでしょうか。

○猪熊国際共同事業担当部長 首都大学東京におきまして留学生の受け入れについてでございますが、一定の条件に該当する留学生に対しましては、授業料の減免、分納などの対象となります。また、宿舎につきましては、寄宿舎に一定の枠を用意してございます。さらに、留学生セミナーの開催、あるいは研究や生活などについてのチューター制度を活用した個別支援を行っていると伺っております。
 先ほどの行政職員等の基金の金額でございますけれども、単純計算をいたしますと、一人当たり四百万円ということになります。

○松村委員 今の答弁にあったとおり、これまでも首都大学で、アジアからの留学生を授業料の減免や宿舎の提供などで受け入れているんですね。私は、それらの今までやってきた事業の成果を総括し、個別に大学とも受け入れ状態などを協議し、充実させればいいのではないかというふうに思うんですけれども、なぜ新たな基金をつくって留学生や研修生の受け入れを基金事業でやらなければならないのでしょうか。

○猪熊国際共同事業担当部長 東京都は、アジアの人材育成において、東京に集積する知識や技術力を生かし、先導的な役割を果たすことが求められております。
 人材育成は、長期的視点に立ち、安定的、継続的に取り組むことが不可欠であるため、今後十年間に展開する人材育成施策を見通して基金を設置し、行うこととしたものでございます。

○松村委員 人材育成は非常に大事でありますし、長期的なそういう見通しを持ってやる事業であるということも十分理解しております。しかし、今までも既にやってきて、一定のそういう成果があり、そういう総括といいますか、きちっとしたことなくして、やっぱり新たな基金を積んだ事業ともなれば、私は、これは一たん--取り崩し基金ですから、基金七十億円という、しかも再来年度からだという枠が決まれば、その予算を消化することが第一義的な目的になりかねない、そういう懸念もありますし、ましてやこれまで、人材育成というなら産業労働局も取り組んでおりますし、事実、産業労働局では、アジア人材受け入れ育成支援事業ということで来年度から新規事業を立ち上げるんですよね。そういうふうにも伺っております。
 同時に、この知事本がやろうとしている人材育成、後でもちょっと触れますけれども、やはりこの知事本の、何度この実行プログラムから読み取っても、国家的なエリート養成の意味合いが非常に強く、果たして都政に役立つ人材育成などといえるのか、私は疑問に思わざるを得ません。
 その意義があったとしても、果たしてそういう人材育成というのは都政のやるべき仕事なのかと。首都大学での先端技術の開発というなら、もっと首都大学などの受け入れ側とも協議し、開発にかかわる資金、その目的とか、そういうことをはっきりさせた上での--私は、これは、個別的な研究講座だとか、またはそういう支援ということも幾らでも、今までの産労局がやってきたそういう中小企業に対する人材育成とまた違った新たな展開を行うというんだったら、そういうような検討をさらに重ねて、重ねた上での提案であるべきだというふうに思います。
 聞くところによれば、なぜじゃあ七十億なのかと。どういう講座で、どこを何するかといえば、これから一年間かけて検討するという局側からの説明を事前に受けました。私は、だったら、何も来年度から、基金先にありきじゃありませんけれども、そういうことを決めなきゃいけないのかという点では大いに問題があるというふうに思います。
 ところで、実行プログラム、施策36ですけれども、アジアの将来を担う高度な人材育成の関係局に産労局が入っていないのはなぜですか。

○小林企画調整担当部長 この事業は、「十年後の東京」で掲げたアジアの優秀な人材を育成するということを具体化するものでございますが、アジアの優秀な人材を育成するということに対しまして、この実行プログラムにおきましては、ここにありますように、首都大学東京への留学生の受け入れや行政職員、専門家研修の実施、この事業と、それから先ほど先生ご発言ありましたように、アジアの留学生と海外展開を目指す中小企業のマッチングを行いますアジア人材受け入れ育成支援事業と、この二つを計画化してございます。
 産業労働局につきましては、別の施策30、創造的都市型産業の振興という中で、このアジア人材受け入れ育成支援事業というものを実施していくものでございまして、産業労働局も、アジアの優秀な人材の育成に向けた取り組みを展開していくものでございます。

○松村委員 「十年後の東京」には、日本で学んだ技術を生かし、母国のものづくり産業などをリードする人材を輩出するため、都内中小企業にアジアの優秀な技術者を受け入れると、こういうふうにされていたんですよね。実行プログラムでは、ものづくりや中小企業の視点が、今いったみたいに、こちらの知事本が行う基金の方には入ってないんですよね。
 やはり私は、実行プログラムでは--当初の考えは一緒だったんですよ。一緒というか、そこで位置づけられている。やはりこの点においては、なぜそういうふうに別々に、そういう経験や蓄積があり、やってきた人づくりや、そういう中小企業の人材育成という形でやってきたそれとは別建てに、知事本局において同じような名称でアジアの人材育成という形で設けなければならないのか、理解ができない点であります。
 先ほどジェット機開発の新素材などを首都大学などでやると。そういう目的は目的として、その是非はともかくとして、わかりますけれども、しかし、それだけではないですよね、研修生の受け入れとかいろいろやるわけですから。なぜ今いった産労局ともども一体となった--つくるにしても、そういう事業にしていかなければならないのかという点では、大いに疑問があり、問題点があるというふうに思います。
 この点では、やはり国家的なリーダーの養成という色彩が非常に強いと思いますけれども、それを今後の都政に生かしていこうという、私は、これは本来、やるんだったら国の取り組みですよ。都政がやるべきは、七十億円もあれば、もっと本当に東京都のこれからに役立つ、またアジアに貢献できるような、今までやってきたそういうことも含めた事業展開がなされていいというふうに考えているという点を述べておきます。
 最後に、知事のトップダウン事業の一つであるジェット機開発について伺います。
 アジア大都市ネットワーク21における中小型ジェット旅客機開発促進プロジェクトを立ち上げて既に五年が過ぎましたが、都民、都政にとってどういう成果が上がっているのでしょうか。

○猪熊国際共同事業担当部長 中小型ジェット旅客機の開発促進プロジェクトは、アジアの技術を持ち寄ってつくるアジア独自の中小型ジェット旅客機の開発に向け、機運の醸成などにより、これを促進するものでございます。
 アジアの航空需要は、アジア経済の発展に伴い、今後高い伸びが見込まれ、アジア地域の特性に合った中小型ジェット旅客機が求められております。これまでの本プロジェクトの活動によりまして、航空機開発の意義について国民の理解と関心が高まり、このことがYS11以来四十年ぶりの国産ジェット旅客機の事業化に向けた大きな後押しとなったものと認識しております。
 さらに、この国産旅客機の開発は、アジア旅客機の実現に向けた大きな第一歩であると考えております。こうした航空機の開発製造を支える航空機産業は、高度技術集約的な高付加価値産業であると同時に、すそ野の広い産業であり、国産旅客機の量産、さらにはアジア旅客機の開発が実現すれば、都内の産業全体の高度化が図られ、都内の中小企業へも大きな波及が見込まれます。
 本プロジェクトは東京の発展に資するものでありまして、都は引き続き事業の促進に取り組んでまいります。

○松村委員 この分野で、中小企業が技術開発や受注の拡大を期待していることは理解できるところでありますけれども、実際には、多額の経費を投入して認証を受けなければならないんですね。これは相当高度な安全性が求められていて、その認証を、これは世界的な認証なんですが、受けるためにも大体一千万円以上の経費がかかると。これも東京都は支援するそうですけれども、しかしそう限られた支援はできないですよね。やっぱりわずか、中小企業でも頑張って本当に数社になるというふうに思わざるを得ません。
 既に開発から生産に入ったMRJ、三菱リージョナルジェットですか、これも生産受注企業は、アメリカの企業がたしか六割ですね、新聞報道によりますと。それから、あと日本企業ではトヨタが参入すると。そうすると、どうしてもトヨタの下の、そういう中小はあれですけれども、直接じゃなくて、やっぱり下請のそういう形での受注にならざるを得ないと思いますし、私ども、三菱重工の担当者にも話を聞きました。川崎重工の、新たにこれから、今既に軍用機なども民間に転用する川崎重工に行って、その担当者にも聞きました。
 いろいろ中小企業の参入分野について、私たち関心がありましたから聞きましたけれども、このMRJでは、今いったように、率直なところ、残念ながらそういうふうには広げていくあれはないと。
 また、川崎の方は、どちらかといったら主体は名古屋だとか向こうの方ですよね。東京の方の中小企業にまではやはり及ばないような気がしますけれども、それはとにかくおいておいても、都が企画するアジア旅客機の開発は、どこで、どう具体化されるのですか。
 だって、国内開発といっても、MRJがもう開発されてしまったんです。既にもう生産体制に入って、これから販売。それから川崎重工の方も、いろいろ軍用や貨物機の転用ということで、かなりこれまたそちらの分野では進んでいるわけです。
 新たなこのアジアの旅客機の開発とは、一体何をどう目指して、どこでこの旅客機がつくれて、それに都内の中小企業はどう参入できる見通しがあるのでしょうか。

○猪熊国際共同事業担当部長 アジア旅客機は、アジアの技術を持ち寄ってつくるアジアの特性に合った旅客機でございます。アジア旅客機の実現に向け、都は、日本を含むアジア各国の政府や航空機メーカーなどに対しまして、アジア旅客機開発の意義への理解を深め、機運の醸成を図ることにより、アジア旅客機の開発に向けた積極的かつ主体的な取り組みが行われるよう、触媒としての役割を果たしてまいります。
 こうした都の取り組みを通じ、これらの関係者が一つになって開発を目指すことにより、アジア旅客機は実現するものと考えております。
 また、国産旅客機の開発が進んでいるというお話でございますが、国産ジェット旅客機の開発の成功は、アジア製旅客機開発に向けた大きな第一歩となるものと認識しております。

○松村委員 確かに、今答弁があったように、都の取り組みが旅客機の将来性についての国民の理解を広げるとか、啓発の役割を果たしているということは、先ほどいいました私たちが訪れた三菱や川崎重工の方々もいっておられました。そういう意義は、確かにあるというふうに思います。
 しかし、私は、それ以上のものではないし、ましてや中小企業、これが参入するという形における、やっぱり今までの五年間の取り組みもしっかり総括しながら行わなければいけないというふうに思います。
 最後に、この分野でこれまで使った予算、それから「十年後の東京」の実行プログラムにおける位置づけについて伺います。

○猪熊国際共同事業担当部長 本事業につきましては、平成十三年度アジア大都市ネットワーク21の総会におきまして共同事業として立ち上げ、共同事業別会議を平成十四年度から実施しております。直近三年の決算を申しますと、平成十六年度で約二千万円、十七年度約一千六百万円、十八年度約二千四百万円の経費を使い、機運の醸成等の活動をしております。
 「十年後の東京」実行プログラムにおきましては、首都大学東京博士課程に留学生を受け入れ、航空機用新素材の開発の研究を行うこととしております。

○松村委員 この分野、中小型ジェット機開発も、知事のトップダウン事業の一つであります。やはりこの点でも総括を行い、根本から見直すことを強く指摘し、質問を終わります。

○小磯委員 昨年十二月の第四回定例会の代表質問で、我が党の藤井政調会長が質問いたしました地球温暖化被害への適応策について、この総務委員会の場で確認したいと思います。
 地球温暖化対策は、都の行政組織でいえば第一義的には環境局の仕事であり、また委員会としても環境・建設委員会と、こうなるわけでございます。
 しかし、これはあくまでも温暖化ガスの削減、いわゆる緩和策ということでございます。昨年来、IPCC政府間パネルなどでも、温暖化対策は、緩和策とともに、温暖化により発生する被害にどう対応していくかという適応策、この適応策が重要であるとの見解が示されているところであります。適応策として考えられる行政施策は都政の各分野に及び、環境局のみで対応するものではないわけであります。
 具体的に申し上げますと、近年、地球温暖化に起因する気候変動が起こり、世界各地で洪水、干ばつ、集中豪雨、熱波、海面上昇、台風の強大化など、人類の生存を脅かす具体的な被害が発生しており、さらにマラリアなどの伝染病発生地域の拡大などが懸念をされているわけでございます。
 私の先輩で、麻布大学の教授で、人食いバクテリアの研究の第一人者の方から伺った話でございますが、カエルツボカビ症という、カエルに発症する感染症があるそうであります。感染することによって、カエルの皮膚にカビが繁殖して皮膚呼吸ができなくなって死亡すると。これまで主にアフリカ、オーストラリア、ニュージーランドで問題になっていたわけでありますが、昨年、日本で感染状況を調査した結果、沖縄県の調査を実施したところ、野生のカエルからもこのツボカビ症に感染したものが発見されたと、こんな話をしておりました。
 感染症の研究者の立場からすると、温暖化によって一度温度が上昇するということは、カビやバクテリアの、適した温度ですね、至適温度としてよい状態になるということであります。すなわち微生物の繁殖が活発化することによって、生態系にも大きな影響を及ぼすと。
 また、バクテリアや原虫、ウイルスなどの感染も、地球環境が変化し、それらの至適環境に近づくことによって爆発的にふえるおそれもあると。温暖化という現象はさまざまな分野に影響を及ぼしていると思われると、こんな話をしておりました。ある温度にくると爆発的にふえるおそれがあると、そういったところがやはり気をつけなければいけない観点かなと思っております。
 また、この地球温暖化の適応策といいますか、被害の状況等について、適応策、各県でもいろいろと取り組みを始めるようであります。
 例えば宮崎県は、温暖化で台風の襲来時期がずれたり大型化が予想されたりした際の農水産業へのダメージを心配して、例えば台風で養殖いけすが破壊されないように、事前に海中に沈めて被害を避けるといった実証実験を進めると。また、埼玉県では、今まで埼玉県ではとれるはずもないマンゴーとか観賞用のパイナップル、こういう南国の作物の導入可能性とか栽培条件などをこの三年間かけて研究する、こういったことも二十年度予算で始めると。
 こんなことで、この温暖化の適応策というのは、各自治体でも取り組みを始めているということでございます。
 こうした被害を防ぐ施策は、例えば洪水や集中豪雨に対しては、河川や下水の整備基準を引き上げることが必要でありましょうし、東京が新たに伝染病発生地域に入るようなことになれば感染症対策の強化が必要になるなど、建設局、下水道局、福祉保健局など各局が既存事業として実施している施策の見直しが必要になると考えられます。そういう意味では、あらゆる委員会の審議事項に影響を及ぼすものであり、この総務委員会についても、総括的立場で検討することが必要と思うわけであります。
 そこで質問ですが、地球温暖化被害の適応策について、全庁の総合調整を担当する知事本局としてしっかりと取り組んでいくべきと思いますが、所見をお伺いいたします。

○川澄企画調整部長 理事ご指摘のように、地球温暖化被害への適応策は、各局の既存事業と密接に関連をしてございます。
 例えば、既存の防潮護岸の高さは、伊勢湾台風クラスの潮位に備えて整備をされておりますけれども、海水面の上昇や台風の強大化が予想されれば、それに見合ったかさ上げが必要となります。
 このように適応策を検討するには、さまざまな現象としてあらわれる地球温暖化の影響を捕捉することが、まず最初の重要なポイントになるだろうと考えております。
 このため、地球温暖化が今後東京あるいは首都圏にどのような影響を及ぼすのか、専門的見地から調査分析し、予測を立てていく必要があると考えております。そうした結果を踏まえて、各局が既存事業をどのように見直していくのか、新規事業の必要性があるかないかなど、総合的な視点から全庁を取りまとめてまいります。

○小磯委員 CO2削減など緩和策への取り組みを進め、温暖化ガスの排出を急激に減少できたとしても、熱慣性の働きで地球の気温上昇は当面とまらないと予測されております。
 このため、緩和策と適応策を同時並行で進めなければ、都民の安全を確保することはできません。適応策の推進には、環境局の専門性と知事本局のリーダーシップによる全庁的な取りまとめが不可欠であると考えます。環境局を初めとする関係各局との連携を密にして、この問題に積極的に取り組んでいただきたいことを要望して、質問を終わります。

○酒井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○酒井委員長 異議なしと認め、予算案、付託議案及び報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で知事本局関係を終わります。

○酒井委員長 これより人事委員会事務局関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案中、歳出、人事委員会事務局所管分及び第四十八号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては既に説明を聴取しておりますので、これより質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○酒井委員長 発言がなければ、お諮りをいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○酒井委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で人事委員会事務局関係を終わります。

○酒井委員長 これより監査事務局関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案中、歳出、監査事務局所管分及び第四十九号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては既に説明を聴取しております。
 これより本案を一括して質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○酒井委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○酒井委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で監査事務局関係を終わります。

○酒井委員長 これより青少年・治安対策本部関係に入ります。
 予算の調査を行います。
 第一号議案中、歳出、青少年・治安対策本部所管分を議題といたします。
 本案につきましては既に説明を聴取しております。
 これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○小磯委員 自転車の交通安全対策についてお伺いをいたします。
 自転車は、その手軽さの裏返しとして、各地で自転車の交通事故が頻発をしております。新聞でも報道されたところでございますが、昨年の十一月に渋谷で自転車の死亡事故を起こした会社員が書類送検されると、そういった大事故の例もございます。
 そこで、自転車の交通安全に関して、何点かの質問を行います。
 まず、平成十九年の自転車事故の状況がどうであったか、また、時間帯別の事故発生状況がどうであったか、あわせてお答えをいただきたいと思います。

○八木沼治安対策担当部長 平成十九年の自転車事故の状況についてでございますけれども、自転車事故発生件数は二万五千五百二十一件で、前年と比較しますと、五百三十八件減少しました。死者数は五十二人で、対前年比十人増加となっております。
 また、時間帯別に見ますと、午前六時から午後六時までの昼間帯では一万九千六百四十八件発生しており、全自転車事故発生件数の七七%を占めております。死者数は三十人で、全死者数の五八%となっております。午後六時から翌朝の午前六時までの夜間帯では五千八百七十三件で、全自転車事故発生件数の二三%を占めております。死者数は二十二人で、全死者数の四二%となっております。

○小磯委員 今の事故の発生件数等を伺いますと、発生件数は減少しているものの、死者は残念ながら十人増加をしたということでございます。
 また、時間帯別では、昼間の方が当然その発生件数は多いんですけれども、夜間の方の死者数がそれに比べて多いということでございました。夜間には全自転車事故の約二割が発生しているが死者数は約四割と、夜間には昼間に比べ重大な事故の発生する割合が大きいと、こういえると思います。
 夜間における重大な自転車事故発生の原因の一つに、無灯火が原因となっているのではないかと、こう思うわけでございます。
 私なんかも小さいころは、夜間点灯するとペダルが重くなる、こんなことをいって無灯火で走ったこともございますけれども、ずっと前でございますが、確かに、夜、町を歩いていると無灯火の自転車をよく見かけるわけでございます。また、暗い照明の自転車もよく見かけます。
 道路交通法では、夜間の無灯火運転は禁止されておりまして、夜間の自転車の無灯火運転をなくしていくために都の積極的な普及啓発を行うべきであると考えますが、所見をお伺いしたいと思います。

○八木沼治安対策担当部長 ただいま小磯理事のお話にもございますように、夜間の自転車の無灯火運転は、自転車が歩行者を認識できない、また歩行者や車が逆に自転車を認識できないなど、非常に危険であると考えます。
 都はこれまでも、春秋の全国交通安全運動や平成十九年に提言いたしました自転車緊急アピールにおいても、無灯火運転禁止の普及啓発を実施してまいりました。
 来年度は、さらにルールの遵守やマナーの向上等広く呼びかける二〇〇八自転車安全利用東京キャンペーンにおきまして、自転車の夜間無灯火禁止や自転車の側面への反射材の取りつけ等につきましても普及啓発を図ってまいりたいと考えております。

○小磯委員 この無灯火運転禁止などの普及啓発は、ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。
 さきの答弁にもございましたが、十九年の都内の自転車の死者数は五十二人、十八年より十人も増加をしていると。
 私は、平成十七年の全国の自転車事故死者の損傷部位別の割合について調べたわけでございますが、その約七割は頭部の損傷でありました。全国ではございますが、都も同様の傾向だと判断をいたします。十三歳以下の子どものヘルメットの着用義務が、昨年の道路交通法改正に盛り込まれ、近々に施行と聞いておりますが、大変いいことだと思っております。
 ヘルメットの着用は、頭部損傷の軽減に極めて有効であり、死者を減少するのに大きな効果を発揮するのではないかと期待するところであります。新たに設けられる子どもへのヘルメット着用の普及についてしっかり取り組むべきであると考えますが、都の見解を伺います。

○八木沼治安対策担当部長 今回の道路交通法の改正では、法第六十三条の十におきまして、児童または幼児を保護する責任のある者は児童または幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるように努めなければならないとされ、幼児、児童のヘルメット着用に対する努力義務が明記されております。
 都はこれまでも、幼児用ヘルメットの着用促進につきましては、平成十七年度よりハートフルメットTОKYОキャンペーンを実施してきたところでございます。今回の法改正により、十三歳以下の子どもへのヘルメット着用の努力義務が明記されましたので、警視庁、東京交通安全協会や自転車関係団体等とも連携いたしまして、この五月から開始する自転車安全利用キャンペーンにおいて、道路交通法の改正内容等について普及啓発を行ってまいります。
 特に、都内の全保育所、幼稚園、小学校に通う幼児、児童等への全員に対しまして、子ども向けの自転車の安全利用に関するパンフレットを作成し、配布してまいりたいと考えております。これによりまして、保護者や先生等の理解を得まして、ヘルメットの着用を促進してまいります。

○小磯委員 子どもたちに、このパンフレットをつくって、配布をして普及啓発するということで、大変積極的な取り組みをしていただけると、こう思います。
 自転車の夜間走行時のライト点灯、またヘルメット着用などのルール遵守の普及啓発には、全力を尽くしていただきたいと思います。このことが一件でも事故を防ぐこととなっていくことにつながっていくと思います。
 事故類型別の自転車事故の発生を見ますと、車との出会い頭によるものが大半を占めております。この点について、最近読んだ新聞では、ITSの技術を使い、四輪車同士がお互いの位置を確認し合うことで、出会い頭の衝突や見通しの悪いカーブでの追突を防ぐ交通安全支援システムの実験が行われると報道されておりました。ITSを活用した技術によって、車が自転車の走行情報を知ることができれば、自転車との出会い頭の事故の大半を防ぐことが可能になるのではないかと思います。
 ルール遵守などの普及啓発と、最新のITS技術の実用化の双方を組み合わせていけば、事故の一層の削減が可能と思います。ぜひメーカーなどの開発しているITS技術について情報を収集し、自転車の交通安全にも役立てるよう進めてもらいたいことを要望したいと思います。
 最後に、自転車の交通安全対策に取り組む本部長の決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わります。

○久我青少年・治安対策本部長 六月の改正道路交通法の施行前に、交通ルールを守らない自転車の暴走行為に対する批判が強まり、また親子の三人乗りについての議論が活発に行われるなど、自転車の安全利用に関する社会の関心が高まっております。
 都は、法施行の機会をとらえ、五月から二カ月間にわたり自転車安全利用東京キャンペーンを展開し、夜間のライトの点灯や子どものヘルメット着用を初め、自転車に関する交通ルール、マナーの遵守等について啓発活動を積極的に行ってまいります。
 また、ご提案のように、自転車の交通安全に役立つITS技術の情報を収集してまいります。
 今後とも、警視庁、区市町村、関係機関、団体等と緊密に連携協力し、自転車の交通安全対策に全力で取り組んでまいります。

○山口委員 近年、若者問題が政策課題として重要な位置を占めるようになりました。ここでは、ひきこもりへの対応について何点か伺いたいと思います。
 ひきこもりの若者が全国で二十六万から百六十万人と推計されています。こうした事例は、既に七〇年代後半から報告されていたといいますが、ただ、その一部が長期化されてきたことで、最近、にわかに注目をされてきました。
 ひきこもりの状態にある多くの若者は、孤立感、焦燥感、不安感を募らせ、追い詰められていきます。それは本人だけの問題ではなく、家族も同様で、助けを必要としているわけです。
 この問題は、特別なことではなく、だれにも起こり得る事態であり、回復することも十分可能なわけですが、長引かせず、早期に対応していくことが大切です。
 都では、こうしたひきこもりの問題に対応する相談事業として、二〇〇四年度からひきこもりサポートネットを実施していますが、その事業の実績と概要について伺います。

○小島青少年対策担当部長 ひきこもりサポートネットの概要と相談実績についてでございますけれども、ひきこもりの状態にある若者に直接働きかけるということは、長期間自宅以外の生活の場が失われているというそのひきこもりにある者の特性から、大変難しいというふうにいわれております。
 こうした中で、東京都では、こうした若者本人が相談しやすい環境をつくるために、ひきこもりサポートネットを開設し、本人やその家族等を対象にして、インターネットのメール、加えまして電話による相談に応じております。
 平成十六年十一月に開始されたインターネット相談では、ことし一月までに新規登録者千三百五十五人に対しまして、延べ四千八百十九件の相談対応を行ってまいりました。また、昨年七月に開始いたしました電話相談では、新規登録者五百七十人に対して、延べ八百十件の相談を行ってまいりました。
 先ほど申し上げましたひきこもりの特性から、精神保健や医療等の相談窓口では、本人からの相談が極めて少なく家族等からの相談が多いと、こういう状況の中で、インターネット相談では半数以上が本人からの相談と、こうした特徴が見られます。

○山口委員 相談に当たっては、こうした状態にある本人やその家族の悩みをしっかりと受けとめて、心理的なケアを行うことができる専門家が相談に当たる必要があると思いますが、このひきこもりサポートネット相談体制は、どのようなメンバーで、どのように運営されてきたのか。また、相談を受けた後の対応についてはどのようにされているのか、伺います。

○小島青少年対策担当部長 ひきこもりサポートネットの相談体制についてでございますけれども、本事業の受託機関である東京学芸大学内に相談室を設けておりまして、専門の相談員を配置しております。インターネット相談や電話相談にこうした体制で応じております。
 ひきこもりの相談を担当する相談員は、心理学等に関する専門性が必要となります。そこで、ひきこもりサポートネットの相談員は、民間相談機関での経験者や、大学で精神医学、心理学等を専攻した者を三十名ほど採用いたしまして、さらにサポートネットの相談業務に必要な知識、技術に関する研修を実施しております。
 実際のひきこもり相談では、まず本人や家族等の悩みを真摯に受けとめ、必要に応じて、ひきこもりから脱するためのアドバイスや、家族に対しては、本人への接し方などの助言、また医療など適切な機関の紹介を行っております。

○山口委員 都では、このサポートネットのほかに、精神保健、教育、福祉等の相談機関の担当者で構成する連絡会議を開催して、情報交換などにより実務的な強化を図っているということが先日の一般質問の答弁にもありました。今後とも、相談支援の充実のため、局間連携による取り組みを継続していただきたいと考えます。
 ひきこもりの問題解決に向けて、より効果的な支援策を講じていくためには、ひきこもりの実態を把握することが重要です。都は、今年度からひきこもりへの対応について新たな取り組みを始め、先日ひきこもり実態調査結果の速報が公表されたところですが、この実態調査の概要について伺います。

○小島青少年対策担当部長 ひきこもりの実態調査の概要についてでございますけれども、ひきこもりは、その特性から実態を把握することが難しく、これまでこうした状態にある若者の数や要因等は明らかにされてこなかったという状況がございました。
 都では、ひきこもりの実態を把握するために、都内に居住する三千人の若者へのアンケート調査を行いまして、千三百八十八人から回答を得ました。また、相談機関等を利用しているひきこもりの状態にある個人へのアンケートや面接による調査等もあわせ実施いたしました。
 そして、今回、都として初めて実態把握に取り組んだ結果、都内でひきこもりの状態にある若者は、少なくとも全体の〇・七二%に当たる二万五千人以上との推計値を得たところでございます。
 これらの結果を踏まえまして、現在、有識者による検討会で、ひきこもりに至る要因や若者の意識傾向等について分析をしているところでございます。

○山口委員 今後のひきこもりの状態にある本人や家族に対してきめ細やかな支援を行っていくには、都内でひきこもりなど若者の自立を支援しているNPOとの連携が不可欠と考えます。
 NPOとの連携について、現在どのような取り組みがなされているのか伺います。

○小島青少年対策担当部長 ひきこもりの状態にある若者への支援については、NPO法人が対応してきているということが知られておりますけれども、その活動状況や支援内容については十分に把握されていないという状況にございます。
 そこで、東京都では、昨年より、都内でひきこもり等への支援を行っているNPO法人の取り組みや活動状況を把握することを目的といたしまして、ひきこもり等への支援を行う団体の実態調査を実施いたしました。
 具体的には、郵送調査により若者の自立支援を行っていることが判明した百四十二団体のうち、協力の得られました五十九団体について訪問調査を実施いたしました。
 現在、これらの中で、主にひきこもり等の若者を支援する団体について、実態や取り組み内容、これらを把握分析いたしまして、それらを踏まえまして、今後効果的な支援プログラムの開発をするということで、現在取り組んでいるところでございます。

○山口委員 こうした若者の自立支援を行っているNPOの活動状況について十分に把握していただいて、今後も積極的な連携を図っていただくことを要望しておきます。
 最後に、これらの取り組みを踏まえて、今後どのように展開していくのか伺います。

○小島青少年対策担当部長 今後の取り組みについてでございますけれども、ひきこもりの状態にある本人やその家族に対して、ひきこもりサポートネット等の相談対応を引き続き行うと。これとともに、新たにNPO法人と協働いたしまして、社会参加を促すための支援を実施するなど、きめ細やかな対応を行っていきます。
 また、ひきこもりを未然に防止するため、不登校経験者や高校中退者とその家族等に対しまして、進路に関する情報の提供や助言などの働きかけを行うセーフティーネットモデル事業を実施してまいります。

○山口委員 ひきこもりの問題は、短期間で解決できるものでもなく、また、早急に結果が得られるものでもありません。きめ細やかな配慮と、気長につき合っていく、忍耐を要する仕事だと思っています。
 都のひきこもりへの対応はまだ始まったばかりですが、このような取り組みを一過性のものに終わらせることなく、じっくりと丁寧に取り組んでいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

○酒井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○酒井委員長 異議なしと認め、予算案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で青少年・治安対策本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時四十八分散会

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