総務委員会速記録第十八号

平成十二年十二月十二日(火曜日)
   午後一時五分開議
 出席委員 十四名
委員長今井 悦豊君
副委員長吉住  弘君
副委員長藤川 隆則君
理事土屋たかゆき君
理事丸茂 勇夫君
理事新藤 義彦君
木内 良明君
東野 秀平君
鈴木 一光君
前沢 延浩君
坂口こうじ君
佐藤 裕彦君
渋谷 守生君
木村 陽治君

 欠席委員 なし

 出席説明員
総務局局長大関東支夫君
理事早川 良躬君
総務部長高橋  功君
行政改革推進室長組織担当部長兼務山内 隆夫君
参事荒川  満君
参事中田 清己君
人事部長三宅 広人君
主席監察員反町 信夫君
行政部長松澤 敏夫君
地方分権推進担当部長脇  憲一君
災害対策部長岡部 恒雄君
災害対策調整担当部長地域振興担当部長兼務和田 正幸君
勤労部長尾井 幹男君
法務部長金岡  昭君
統計部長早川  智君
学事部長小野田 有君
人権部長関  正子君
選挙管理委員会事務局局長南  靖武君
次長田口 正一君

本日の会議に付した事件
 意見書、決議について
 選挙管理委員会事務局関係
  付託議案の審査(質疑)
  ・第二百八十二号議案 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例の一部を改正する条例
  ・第二百八十三号議案 東京都議会議員及び東京都知事の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部を改正する条例
 総務局関係
  付託議案の審査(質疑)
  ・第二百七十八号議案 平成十二年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、総務局所管分
  ・第二百七十九号議案 特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
  ・第二百八十号議案  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
  ・第二百八十一号議案 東京都震災対策条例
  ・第三百二号議案 消防事務の受託の廃止及び受託について
  ・第三百七号議案 職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
  ・第三百八号議案 職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
  ・第三百九号議案 東京都知事等の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
  報告事項(質疑)
  ・平成十二年度行政評価制度の試行における評価結果について
  ・監理団体改革実施計画について
  ・東京都人権施策推進指針について

○吉住副委員長 ただいまから総務委員会を開会いたします。
 議事に入る前に、委員の皆様に申し上げます。
 今井委員長から、所用のため本日の委員会におくれる旨の申し出がありました。かわってその間、私が委員長の職務を代行いたしますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 初めに、意見書、決議について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書二件、決議一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉住副委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○吉住副委員長 本日は、お手元配布の会議日程に従い、選挙管理委員会事務局、総務局関係の付託議案審査並びに総務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより選挙管理委員会事務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第二百八十二号議案及び第二百八十三号議案を一括して議題といたします。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際、資料の要求はいたしておりませんので、直ちに質疑を行います。
 発言をお願いいたします。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○吉住副委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉住副委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で選挙管理委員会事務局関係を終わります。

○吉住副委員長 これより総務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第二百七十八号議案、平成十二年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、総務局所管分から第二百八十一号議案まで、第三百二号議案及び第三百七号議案から第三百九号議案までを一括して議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しております。
 その際要求した資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○高橋総務部長 それでは、十一月二十九日の当委員会におきまして、付託議案に関しましてご要求のございました資料につきましてご説明をさせていただきます。
 恐れ入りますが、お手元にお配りをしております資料第1号、総務委員会要求資料、二枚おめくりをいただきまして、一ページをごらんいただきたいと思います。
 公共施設耐震診断と補強工事の実績でございます。
 東京都所有の建築物のうち、耐震診断が必要な建築物、耐震診断を実施いたしました建築物、望ましい耐震性能を有していない建築物、耐震改修工事等措置済みの建築物、それぞれの実数をお示しをしてございます。
 二ページをごらんいただきたいと思います。
 政令指定都市における民間木造住宅への耐震診断・改修に対する補助などの制度でございます。制度のございます各市ごとに、制度の名称、補助、融資の別、対象建築物、限度額、補助率、金利、開始年度につきまして、それぞれお示しをしてございます。
 三ページをごらんいただきたいと思います。
 消防団定数と団員数・平均年齢の十年間の推移でございます。条例定数、現員、平均年齢につきまして、平成二年度から十一年度までの数値をお示しをしてございます。
 四ページをごらんいただきたいと思います。
 防災拠点となり得る施設数とその耐震率でございます。都の施設につきまして、警察署、消防署、病院等、それから高校等、庁舎等の三つの項目ごとに、耐震診断実施件数、望ましい耐震性能を有していない件数、耐震改修工事等措置済みの件数をお示ししてございます。
 以上、甚だ簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。どうぞよろしくご審議をお願いいたします。

○吉住副委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○新藤委員 本委員会に、市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例が付託されております。それで、私は、市町村の財政運営に関連するという観点から、市町村における固定資産税等の減免措置に対する東京都の財政支援について、確認の意味も含めて何点かお伺いいたします。
 我が党は、今回の減免措置が、景気対策、それから良質な住宅ストックの形成に資するという政策目的を持つことから、多摩の市町村においても行えるように東京都の財政支援策を強く求めてきたところであります。
 さきの第三回定例会において、この問題について知事から、課税自主権に配慮しながら、景気対策といった今回の減税措置の目的や都議会での決議などを十分踏まえ、適切な財政補完に努めてまいりたいというお答えをいただきました。これは知事が東京都として財政支援をすることを明らかにしたことと理解しております。
 しかしながら、さきの十一月の市長会において、多摩の二十七市の共通の見解として、減免を行わない旨の最終的な申し合わせが行われてきたと聞いております。この点について、どうしてそのようになったのか、経緯も含めて申し合わせの内容を教えていただきたいと存じます。

○松澤行政部長 ただいまお話がありましたとおり、さきの第三回定例会におきまして、知事の方から、都内市町村が固定資産税等の減免措置を行う場合、都として財政支援を行うことを明らかにしたことを受けまして、十月の市長会でその旨の説明をさせていただきました。その際、財政支援の率につきましては、市町村の課税自主権に配慮する観点などから、市町村の自主的な判断を侵すおそれのある全額補てんであるとか高率の補完は困難であることをあわせて説明したところでございます。
 これに対しまして、十一月の東京都市長会では、この固定資産税等の減免措置問題に関して検討を重ねた結果、各市においては、減免に伴う税収減を補てんできる新たな財源が見当たらないことなどから、二十七市が統一して減免を実施しない旨の申し合わせがございました。
 なお、東京都町村会におきましても、十一月下旬に、同様の理由により全町村が減免を実施しないとの判断を行った、このように聞いております。

○新藤委員 ただいまご答弁いただきましたが、市町村財政が極めて困窮しているという現在において、都の支援が全額補てんもしくは高率補てんでなければ、今回の減免措置の実施が困難であるという判断だと思います。同じ都民であっても、区部と多摩とで税制面で差があるということは決して好ましいことではございません。
 一方で、私は、市町村の持つ課税自主権は自治体にとって重要であり、課税自主権を持つ市町村の自主性を阻害しないように考えなければならないと思っております。これらのことから、市町村は減免措置を実施しないという苦渋の選択をしたのではないかと思うわけでございます。
 そこで確認の意味でお伺いいたしますが、市町村が二十三区と同様の減免措置を実施した場合、五年間でその減収額はどのくらいになるのか、また、総務局として、平成十三年度の予算要求に当たり、財政支援としてどのような要求をしたのか、あわせてお伺いいたします。

○松澤行政部長 都内の全市町村が今回、都が二十三区内で実施した措置と同様の減免措置を講じた場合の減収額でございますが、平成十一年に新築された住宅の件数をもとに試算いたしますと、市町村全体で五年間で約二百五十二億円でございます。
 また、これに伴う平成十三年度の予算要求についてでございますが、総務局といたしましては、平成十三年度の減収見込み額が約二十八億円という試算に基づきまして、その二分の一を財政支援していきたいということで、約十四億円を予算要求したところでございます。

○新藤委員 五年間の減収額は二百五十二億円、そして都が要求しております支援を行った場合、来年度で十四億円、五年間で百二十六億円の財政が浮くということになるわけです。市長会、町村会からは、当面する市町村財政を維持確保するためにも、総合的な財政補完施策である市町村調整交付金あるいは振興交付金を大幅に増額するよう、過日、予算編成に対して重ねて要望があったと聞いております。私は、都の財政の厳しい状況は十分理解しておりますが、こうしたこれまでの固定資産税の減免措置の経過を含めて考えると、限られた財源を重点的に配分して、市町村調整交付金や振興交付金の増額を図る必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○松澤行政部長 ただいまお話のございました市町村調整交付金、振興交付金の両交付金につきましては、ご案内のとおり、都内市町村の各種施策に対する一般財源を補うことを目的とした包括的な財政補完制度として、これまで市町村の行政水準の向上や均衡ある発展などに大きな役割を果たしてきたものでございます。現在、都財政は大変厳しい状況にございますが、市町村財政も同様に厳しい状況にあることを十分踏まえまして、今後ともこの両交付金につきましては、市町村の行財政運営を考慮しながら適切に対処していく考えでございます。

○新藤委員 この問題については、市町村も最終的に判断したことでありますから、これ以上はあれこれ申し上げませんが、市町村の均衡ある発展や、市町村における行政水準の向上のためにも、都の市町村調整交付金や振興交付金が非常に重要な機能を果たしていることを踏まえまして、ぜひとも両交付金の増額を強く要望して、私の質問を終わります。

○前沢委員 私は、第二百八十一号議案、東京都震災対策条例、震災対策予防条例を全面的に改めた新しい条例の提案でございますが、これに関しまして質問をさせていただきます。
 ことしは、現在も全島避難を続けている三宅島の噴火災害を初めとして、伊豆諸島の群発地震とか有珠山の噴火、また鳥取県の西部地震、さらに東海地方の豪雨による大水害など、大規模な自然災害が相次いで発生をいたしました。そのため、都民の中にもこうした災害の到来、こういうものに対する不安、こういったものが大変高まっていると思います。
 一九九五年の一月十七日に発生した阪神・淡路大震災、これは大都市を襲った地震としては関東大震災以来の大きな被害をもたらしたわけであります。東京で大きな地震が起きたら一体どうなるのか、これは都民にとって当然の不安であります。この不安にこたえる震災対策を発展させること、これは政治の責任でありますし、また、都政の大変重要な課題であるというふうに思います。
 ところが、今回都が提案している震災予防条例の全面改定、そして新たな東京都震災対策条例、この案は、阪神・淡路大震災の教訓を生かす、こういうことを掲げているにもかかわらず、実際の内容には、むしろ阪神・淡路大震災の教訓を否定するような、そういう後退まで含まれていると私ども感じております。
 しかも、条例改定案を提出するに至る過程も、有識者あるいは都民の意見を広く反映させながら進めていくという姿勢に欠けていることも指摘しなければならない問題だというふうに思います。
 私たち日本共産党は、このような条例の全面改定を拙速に進めることに反対をし、徹底審議を求めてまいりました。そして、震災対策の原則にかかわる内容につきまして、最低限の中身に限って修正案を明日提出する予定でございます。各委員の皆さんにも既にその内容をお示ししてありますけれども、あわせてご検討を願うものであります。
 それでは、この私たちの修正案、ここで示した方向に沿って、震災対策の原則にかかわる問題について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、前文についてでありますけれども、行政主導、予防対策中心、この震災対策から転換を掲げた今回の条例の全面改定の趣旨は、前文の全面書きかえにはっきりあらわれている、このように考えるわけであります。
 私たちは地震対策における都民自身の努力や助け合いについては極めて大切であると考えております。また、応急対策、さらに復興対策など、総合的に地震対策を進めるのも当然だと思います。ただ、今回の新条例の中で、それらを名目にして、震災予防の原則があいまいにされている、このことは私どもとして認めるわけにはまいりません。その立場から、修正案では現行条例の前文を残すことを提案をいたしております。
 東京は、歴史的に見ても、安政の大地震、関東大震災を初め大きな地震の多い地域であり、地震予知連絡会の観測強化地域にも指定をされているわけであります。今後も大きな地震の起きる可能性が指摘されている、そういう地域でもあります。五年前の阪神・淡路大震災は、六千人を超えるとうとい人命を奪い、大きな衝撃を国民に与えました。同時に、多くの科学者が指摘しているのは、阪神・淡路大震災は日本の都市の弱さ、もろさ、こういうものを示したものであって、東京もまた他人事とはいえない、こういうことだということであります。
 そこでまず第一に、東京に直下型地震が襲った場合にどういう被害が生まれるのか。東京都も、東京における直下型地震の被害想定に関する調査報告書を一九九七年八月にまとめております。いろいろなケースを想定されておりますけれども、最も被害の大きくなる区部直下地震の場合について、予想される死者、負傷者、全半壊する建築物の戸数、焼失する戸数について伺いたいと思います。

○岡部災害対策部長 平成九年八月の、東京都が行いました区部直下の地震の被害想定でございますが、発生の条件としまして、冬の夕方十八時ごろ、マグニチュード七・二、これは阪神・淡路大震災と同じ規模でございます。人的被害は、死者が七千百五十九名、負傷者、軽傷、重傷合わせまして約十五万八千人、住家の被害でございますが、全壊、半壊、一部破損を含めまして約三十六万七千棟、火災は焼失棟数約三十七万八千棟、焼失面積が九十五・七五キロ平米となっております。なお、新たに帰宅困難者を想定しまして、帰宅困難者が三百七十一万出るという想定になっております。

○前沢委員 今数字が示されましたが、死者の方だけでも七千人を超える、そして全半壊する建築物が十四万棟を超えるという、これは大変な大きい数字であります。東京都みずからこれほどの壊滅的な被害を予測している以上、その被害の原因をあらかじめ取り除くことに行政が全力を尽くすのは当然ではないか、私はそう考えるわけであります。もちろん地震は自然災害ですから、地震をなくすことはできません。しかし、地震による被害はそれとは別個の問題であります。
 一九七一年に制定された現行の東京都震災予防条例は、地震と地震による災害を明確に区別をして、地震そのものは防げないが、地震による災害の多くは人災であり、人間の英知と努力により最小限に食いとめることができるという画期的な条文を前文に掲げたわけであります。災害対策といえば地震が起きてから、そういうことばかりが問題にされた時代に、この条例に基づいて東京都の震災予防計画がつくられ、震災防止へのレールが敷かれたのであります。ところが、その後の保守都政のもとで、東京一極集中はますます進められ、東京は地震に非常に弱い危険な都市になってしまいました。
 予防対策において行政の役割は非常に大きいにもかかわらず、今石原都政のもとで、財政再建を口実に、防災生活圏促進事業の予算が年額にして二億三千万円も削られるなど、震災予防の予算まで減らされているのであります。しかも、今回の条例改定案提出に当たり、石原都知事は十一月十七日の記者会見で、震災予防という言葉について、被害をどうやって少なくするかという意味だったのでしょうが、そういう震災のとらえ方、コンセプトが現代的でない、このように述べております。また、先日の都議会本会議における我が党の池田梅夫議員の質問に対する答弁で、災害というのはどのような準備をしようとしまいと一方的にやってくるものとまでいっております。
   〔発言する者あり〕

○吉住副委員長 前沢委員、質問を簡潔にお願いします。

○前沢委員 こういうことでは問題の本質がわからないと思います。これらの発言や答弁を聞きますと、石原知事は地震と災害を明確に区別して理解しているのかどうか疑わしいといわざるを得ないのであります。結局、行政の震災対策を事後対策に矮小化していくのが今回の条例改定のこの方向ではありませんか。
 そこで伺いますが、改定案では予防対策の位置づけはどうなりますか。そして、後退させないためには、都市のあり方への反省と予防の決意をうたった前文の書きかえはやめるべきではありませんか、この点について明確な答弁を求めます。

○岡部災害対策部長 新条例案の前文には、現行条例の理念でございます災害予防の取り組みについては削除しておりません。むしろ、現行条例が全国に先駆けて制定され、取り組んできたことをはっきり成果としてうたっております。
 さらに、第十三条におきまして、防災都市づくりに関する計画の策定を明記し、この取り組みの進展を一層図ろうとしているものでございます。

○前沢委員 予防対策だけでは被害を防ぎ切れないとか、条例案の前文でも、これまでの予防対策の取り組みを評価し、一層進めると書いてあるという説明でありますが、それでも伺ってまいりましたが、今の答弁も基本的には同じ内容にとどまっております。しかし、予防対策だけでは住民の命と財産を守り切れないというのは、実際に予防対策すら後退させている中ではいいわけにもならないんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。

○岡部災害対策部長 予防対策以外にも、新しいこの条例は、行政のすべき迅速な対応、それから復興まで含めた対策を含めまして、総合的な震災対策をつくる条例になっております。

○前沢委員 やはり答えられないですよね。しかも、実際に条例案の中身を見ていきますと、前文を書きかえた、こういう精神で予防対策が後退していくことを条文の上でもはっきりと読み取ることができます。どの耐震診断も都知事の責務から削除しようとしていることなんですね。住宅の耐震性の改善は防災上の緊急の課題として広く指摘されております。阪神・淡路大震災では、国土庁の防災白書も指摘しているように、住宅の倒壊が亡くなられた方の最大の原因となりました。また、倒壊した住宅は道路をふさぎ、避難や消火活動の妨げにもなったわけであります。しかも、被害が木造住宅に暮らす、とりわけ所得の少ない、そういうお年寄りに集中したことは、この問題の解決が自助努力だけでは済まないということを示しました。
 ところが、今回の条例は、原則として都民、事業者の責務であることから、削除する、最終のまとめ、こうなっているわけであります。大きな被害を出すことがわかっている危険を、自助や自己責任といって都民に押しつける東京都の態度は、危機管理、こういう点から見ても本末転倒ではないでしょうか。私たちは、木造住宅に対する無料耐震診断や耐震改修への助成制度の実現のために区市町村への助成制度をつくること、そして、都民に対して指導、相談、支援、このためのそういう対策、さらに技術者の養成、耐震改修工事の費用を安くするなど建設業界にも働きかけていく、こういうことが不可欠だ、このように考えております。
 そこで伺いますが、渋谷区、江戸川区を初めとした都内の区市町村や横浜市などで、無料木造住宅耐震診断士の派遣を行っております。また、川崎市などは、せめて命だけは守れるようにと、安価な耐震改修のための方法、こういうものについて川崎型と呼ばれる金物を開発するなど独自の努力を始めています。耐震診断実施の規定を削除するのではなく、これらの自治体の努力に学ぶべきではないでしょうか、答弁を求めます。

○岡部災害対策部長 一般建築物の耐震診断、耐火性の確保につきましては、民間及び公共を問わず、その所有者または管理者が行うべきと考えております。これまでも、また今後もそれに変わりなく、今回はそれを明確にしたものでございます。
 ただ、耐震性、耐火性の確保は、地震に強いまちづくりを進めていく上で重要なことでありますので、耐震診断の助成につきましては、地域の実情を把握している区市町村が行うべきものと考えております。これまでも各区市町村が実施してきておりまして、都は耐震診断講習会の開催等、技術者の養成を通じまして、耐震診断技術者育成、それから技術面からの支援を実施しているところでございます。新条例ではその方針を明記したものでございます。

○前沢委員 今答弁にもありましたが、これまでも、今後も都民の責任だというのは違うんじゃありませんか。今までは条例で、都知事は必要な場合は耐震診断を実行しなければならない、こういうふうになっていたんです。結局、今までこういう条例がありながら、これが守られてこなかった。それを今回、条例まで変えてしまおうというのが皆さん方の本音なんでしょう。これは明確な後退じゃありませんか。
 しかも、東京都がいう技術的な支援だけでは耐震改修が進まないという現実があるわけであります。だから、実際に区市町村の努力も始まっているわけでありますから、こうしたものに援助をしていくというのが行政の、東京都のやるべき仕事だと思うんです。
 横浜市長はこう語っています。確かに大震災のたびに建築物の耐震基準は見直されている、しかし、それだけで都市が安全になるわけではない、要は、我が国の建物や市街地の現状を十分に踏まえながら、いかに安心で安全な都市に改善しなければならないかという英知と努力である、こういっているんです。市民の生命と財産を守るのが自治体の責務である以上、私としては何としても改善の方法を探らなければならないと考えている、このことは公共の建築物に限らず個人住宅についても同様なんだ、こう横浜の市長さんはいっているんですね。こういう考えで耐震診断は市が行っているんです。これが自治体としての当然の態度ではないでしょうか。
 それなのに、進んだ条例を持つ東京都が区市町村を援助もしない。条例まで変えてしまう。これは一体阪神・淡路大震災から何を学んだのか、こういう批判を受けても、いいわけのしようがないでしょう。こういう批判が避けられないわけでありますから、こういう問題なんだということを私は強く意見を申し上げて、次の質問に移ります。
 この問題をもう一つの別な角度から伺いますが、マンション、集合住宅の耐震改修も非常に重要な課題であります。というのも、阪神・淡路大震災はこうしたマンションなどにも大きな被害を与えました。被災したマンションが、建てかえるのか、改修するのか、合意をつくるのに大変苦労した例がたくさんあるわけであります。マンションは事前に耐震改修をしておくことがとりわけ必要だと多くの方が指摘をしています。しかも、マンションの耐震診断は非常に高額なだけに、なかなか進まないというのが現実なんです。
 横浜市では、マンションも耐震診断の予備調査は一九九八年度から無料で実施をしています。ことしの五月末までの二年間で六百八十三棟のマンションが実際に診断を受けています。こうした診断、また詳細な診断への補助金、こういうものの補助も横浜市では行っているんですね。
 東京都は、マンションの耐震診断の特別の重要性についてどう考えているんでしょうか。耐震診断について、簡易耐震診断は無料にするとか、詳細な耐震診断についても助成制度をつくるべきだと考えます。今までもこれからもこういうものはやらないなどという、こういう非常におくれた考え方を本当に改めていただきたいと思います。この点について答弁を求めるものであります。

○岡部災害対策部長 先ほども申し上げましたように、マンションにつきましても、所有者等の管理者の責任でございます。ただ、東京都としましては、専門の技術者として、講習会等実施し、平成八年以降約二千七百名の技術者を養成しております。
 また、平成十二年七月、東京都既存建物耐震改修促進実施計画を策定しまして、今後、区市町村と連携しながら取り組んでいきたいと考えています。

○前沢委員 マンションは事前に改修しておかないと本当に大変なことになる、これは阪神・淡路大震災の教訓として多くの方が指摘しているわけであります。局の方でもマンションの耐震診断、こういうことが大事だということは認識しておられるというふうに思うんです。都民自身の努力は当然のことですが、しかし、都民の努力も、支援する姿勢が行政になければ決してこの問題は進まない、このことを指摘しておきたいと思います。
 私たちは、条例のほかの条項でも、防災空地の規定がなくなるとか、危険地域などを規制可能にする条項がなくなるなど、こういうことと同時に、この耐震診断の条項の後退--後退というよりも改悪ですね、これは行政主導の予防対策が後退していくあらわれとして厳しく批判をしておきたいと思います。
 続いて、復興対策の問題で質問いたしますが、私たちの修正案は復興対策の問題について三つの原則を確立しようと、こういう積極的な提案をしております。第一が都民参加、都民主体で行うこと、第二に都民の生活の再建と安定を何よりも優先する、第三にコミュニティの維持に努めること、この三つであります。
 このいずれも阪神大震災の教訓なんですね。神戸の復興について、復興格差という言葉がキーワードになっているそうであります。高速道路とか大手企業は復興しているにもかかわらず、住宅街には空き地が目立つ、十分な個人補償が行われないために住民の生活再建が進まない、しかも、住民の頭越しの区画整理事業が生活再建への努力を踏みにじってしまった、こういうことです。また、仮設住宅や復興住宅が郊外に建設される中で、もとのコミュニティも壊されてしまった。そして孤独死が大変な問題になりました。商店なども、住民が帰ってこないので深刻な状態が続いています。
 私たちは阪神・淡路大震災から、住民参加を保障し、生活再建を何よりも優先する、コミュニティの維持に配慮すること、これらのことを本当に真剣に学ぶ必要があると思います。しかも、この原則は、例えば台湾の地震では既に教訓として生かされているんですね。直ちに個人に対する補償が行われました。仮設住宅が被災した地域の近くに建設されたことは有名であります。鳥取県でも住宅の再建への助成が行われました。これらは当然東京でも実行すべきではないでしょうか。
 ところが、今回の改正される条例は、復興計画の策定と推進に当たって、これらの原則が明記されておりません。しかも、あらかじめ震災復興に関する施策及び手続を定めることができるとしていますけれども、そのときも都民は周知させる対象でしかないんです。私は、この点について、これらの原則三つについてきちんと条例に書き込むべきではないかと思うんですが、答弁を求めます。

○岡部災害対策部長 都民の意見の反映などにつきましては、復興の取り組み事業を含んでおります震災対策事業計画の策定に当たりまして、知事は、改正条例案第二条第三項により、都民等の意見を聞くように努めるということになっております。
 また、本項の都民への周知の中には、既に東京都が作成しました都市復興マニュアルの中で、都市復興計画の策定過程で都民の意見を聴取することも含めたものであります。都は、震災対策事業全般にわたって都民に対し十分な意見聴取の機会を設けているところでございます。
 現在、都は三宅島等の災害に取り組んでおります。今回新条例案に規定する復興の規定の中で今後の復興対策に取り組んでいかなければならないということで、本条例の改正案をぜひ本定例会で成立を願うものであります。

○前沢委員 条例の改正案でも、ほかの問題、例えば避難場所の指定などについては都民は意見をいえる、こういうふうに書いていますね。住民参加なども保障する、こういうことであるならば、なおさらそれをきちんと条文の中に書き込む必要があるんじゃないでしょうか。石原都知事が、日の出の処分場でも有明の埋め立てでも、公共の事業のあり方について、住民の反対に対して聞く耳も持たないといったような発言を繰り返しております。このことを考えても、この問題で都民が不安を持つのは当然ではありませんか。復興というこういう大事な問題について住民参加をきちっと入れるべきだということを私どもは改めて主張するものであります。
 こうしてこのような条例改正を行うことは、私は将来に禍根を残すものだ、このように思います。このことを厳しく指摘して、震災予防条例の全面改定案に対する私の質問を終わります。

○木内委員 いわゆる震災予防条例についてお尋ねをいたします。
 私の前の質問者の発言を聞いておりまして、違和感を持った点がありますので、あえて申し上げておきたいと思うのは、この条例の改正案、これはいわゆる付託議案、本委員会における審議の対象になっているものでありますけれども、修正案の提出は、議会原則のルール、基本的な考え方からいきまして、本案に対する質疑、いうところの吟味、精査、チェックが質疑の中で行われて、この中でのさまざまな角度の認識が行われて、その上で修正案というものは出されるのが本来のあり方ではないか。もとより正式にまだ修正案が出されているわけではありませんけれども、今の質疑の中で、例えば前文の問題、あるいは復興計画に言及される部分、修正案ではこう提案をしておりますがと、こういうふうにいわれるわけでありますけれども、修正案なるものはまだ議会として提出されているわけではありませんし、また、質疑が終わっているわけじゃありませんので、その議論というのはいかがなものかという、これは私の主観かもしれませんけれども、違和感を持って聞いておりましたことをまず申し上げたいと思うのであります。
 さて、現在、三宅島火山活動の終息がいまだ見えておりません。東京都は災害対策本部を設置して、島外避難した村民への支援、あるいは島内のライフラインの維持などの対応に追われております。こうした状況のもとで、都民の災害に対する危惧、また不安というものはかつてない大きなものになっているわけであります。こういう状況のもとで今回震災対策条例の全面改正案を本定例会に提案をされたところであります。
 まず、この前文を見てまいりますと、自助と共助と公助という視点からの対応というものがこの条例案に盛り込まれている。さらに、「東京都は、全国に先駆けて東京都震災予防条例を制定し、予防対策重視の視点から地震に強いまちづくりを進め、行政主導の下で震災を未然に防止し、最小限にとどめることを目指してきた。今後は、この取組を一層進めるとともに、危機管理に重点を置いた応急対策及び復興対策をも視野に入れた総合的震災対策の体系を構築し、震災対策の充実及び強化に努めていくことが極めて重要である。」こう述べているのであります。そして、この前文の最後に、「都民や東京に集う多くの人々の生命及び財産を守り、首都東京の機能を維持するという決意を表明するとともに、総合的震災対策の推進の指針を示すため、この条例を制定する。」これまでのいわば条例の過程を踏まえた上で、さらにこの具体的取り組みを一層進める、こううたわれているわけであります。
 そこで、まず端的にお聞きをするわけでありますけれども、こういう状況のもとで現行条例の改正に向けて努力をされてきたと思いますが、その背景と改正の必要性について、これは委員会審議でありますので、後世にこの審議の過程をとどめるためにお尋ねをしておきたいと思います。

○岡部災害対策部長 阪神・淡路大震災では、犠牲者の約八四%が地震直後に発生しております。このように、近年発生しました都市型地震では、犠牲者の多くが地震発生直後の建物崩壊や家具の転倒が原因となっております。そのため、地震発生直後の災害から生命を守るのは、都民自身の防災行動力や地域の人々の助け合いが生死を分けるといっても過言ではありません。一方で、行政にはより迅速な災害対応が求められております。危機管理の視点から、応急復旧対策を充実強化することが必要であります。新しいこの条例では、これらの観点を十分踏まえて全面改正したものであります。この条例のもとで、一人でも多くの生命と財産を守るため、都民、事業者、行政である区市町村、都、それぞれが責務と役割を明確にし、現行条例よりもより一層の相互の連携、協力を推進していくということになっております。

○木内委員 新しいこの条例案の中身を伺っていきたいと思いますけれども、申し上げたように、自助、共助、公助の視点からの各内容になっているわけであります。
 まず、自助の取り組みについて、阪神・淡路大震災の教訓というものは幾つも挙げられるわけでございますけれども、その中の一つに、震災時に行政だけの対応には大きな限界がある、みずからの生命はみずからが守るという防災対策上の都民の自己責任というものが大きくなっている、こういうことも挙げられるわけであります。私も阪神・淡路のときには現場に参りまして、ボランティアの皆さんや、あるいはまた我が党の関係者を初めとして、発災直後の支援態勢にはさまざまな角度から参画をして、いわば市民運動としての、あるいはさまざまな民間団体の活動というものが救助や復興に大きく寄与しているという実態をこの目で見てきたわけであります。申し上げた、みずからの生命はみずからが守るというこの一点はかなり重要な課題の一つである、こういうふうに思います。
 しこうして、新しい条例では、都民や事業者に対して具体的な責務と役割を担ってもらうことを明記しているわけでありますけれども、そこで一つお聞きするのは、こうした取り組みの実効性を確保していくためには、都民や事業者の理解と協力が大前提であり、不可欠であると思います。これまでこの条例案を提出するに当たって、こうした理解と協力を得られるためのさまざまな都民合意を形成していく必要もあったし、また、十分な意見を聞いてくる必要もあったと思います。どのように努力をしてこられたのか。
 また、申し上げたこの都民や事業者の理解と協力、今後重要課題のこの問題について、どのような方策で取り組んでいこうとしておられるのか、伺います。

○岡部災害対策部長 ご指摘のように、条例で定めた規定を都民や事業者が率先して取り組んでいくためには、広く理解と協力を得なければなりません。そのため、都は、今回の条例改正に当たりましては、関係機関、事業者、区市町村が参加した検討会議、学識専門者からの意見聴取、そして中間のまとめを発表し、約一カ月にわたりまして広く都民等からの多くの意見を伺っております。これらのさまざまな意見の要望を取りまとめ、踏まえまして、今回取りまとめたものでございます。
 新条例のもとでも、防災訓練を初め、区市町村と連携協力し、さまざまな機会と手段を通じまして、防災教育や普及啓発活動に取り組んでいきます。また、事業者に対しましては、行政側からの指導と協力要請を積極的に行い、実効性を高めていきます。

○木内委員 自助に次いで共助という点でお尋ねをするのでありますけれども、阪神・淡路大震災でも、地域の防災力がしっかりしていたところは被害が少なかった、こういうことがいわれております。地域の防災力の中心となるのは、例えばふだんから大変な訓練を重ね、そしてまた意識を高め、発災時のいわゆる危機管理にも大変な高い意識を持っておられる消防団の方々、あるいは町会、自治会などの、いうところの防災市民組織というところでありました。寒い季節になりましても、さまざまな訓練に私どももご案内をいただいて拝見しに行きますが、実は、年々歳々、例えば消防団におきましても、高齢化が進んだり、あるいはまたお仕事の合間を縫ってのことでありますから、大変困難な状況の中でこの消防団活動に取り組んでおられるケースが非常に多いのであります。
 加えて、この東京というところは人口の流動化が激しくて、また、申し上げたように人口の高齢化によって組織の活性化がなかなか思うように進まない状況があるわけでありますけれども、こうした新たな時代が直面する課題に新しい条例ではどのような方策を示していくのか、伺います。

○岡部災害対策部長 地域の防災行動力を高めていくためには、常日ごろから地域で防災訓練などの日常的な防災活動を積み重ねることが重要であります。また、こうした活動の中心となる防災リーダーの存在を欠かすことができません。そのため、新しい条例では、現行規定の防災市民組織を通じた防災教育に加えまして、新たに学校教育や社会教育を通じた防災教育の規定を設けるとともに、幅広い防災リーダーの育成を規定したものでございます。

○木内委員 最近は、災害が発生した場合に、被災地域でボランティアやNPOなどの活動が大変注目をされているわけであります。新しい条例でもボランティアへの支援がうたわれておりまして、お尋ねするんですけれども、この場合、既にある地元の防災市民組織などとの連携が問題になってくるだろうと思うんですけれども、こうした課題についてはどのように対応していくおつもりなのか、お聞きします。

○岡部災害対策部長 ご指摘のとおり、大都市におきましては、震災時の助け合いを促進するためには、従来の垣根を越えまして、都民、町会、自治会、防災市民組織、企業、学校、ボランティアなど地域で活動しているさまざまな団体等との連携協力が求められております。今回の新条例では、区市町村の区域で活動する団体が相互に連携し、補完し合うことによりまして、被災者に対して必要な支援活動を一体的に、かつ効果的に行う、地域相互支援ネットワークに対し支援、協力することを規定し、地域に根差した震災対策をはぐくんでいくこととしております。

○木内委員 要援護者に対する施策ということでありますけれども、東京は、また少子高齢化の進行によりまして、それぞれの地域には多くの高齢者が暮らしておられます。同時に、国際化の進展で外国人の増加も著しいものがあります。こうした人たちは災害時に適切な対応がとれないおそれがあるのでありますけれども、こうしたいわば要援護者、外国人も含めた方々に対する取り組みについて具体的な対応をどう想定しておられるのか、伺います。

○岡部災害対策部長 災害時に適切な対応がとれないおそれのある高齢者、障害者、外国人等に対しましては、地域の状況を直接把握する立場にある区市町村がまず対応に当たることとなります。新条例では、区市町村に対しこうした施策を促進するために必要な措置をとる旨の規定を設けております。
 都は既に、災害要援護者防災行動マニュアルの指針や、災害要援護者への災害対策推進のための指針、これは区市町村向けでございますが、そういったものを策定しまして、施策の普及、啓発に当たっているところです。
 また、外国人対策につきましては、ご指摘の語学ボランティアの育成を含め、外国人向けのパンフレットを作成、英文併記の道路標識の設置などを進めております。
 今後ともこうした取り組みに努めていきたいと考えております。

○木内委員 次に、公助の役割を果たす行政の取り組みということについて伺ってまいりますが、これまで現行条例のもと、予防対策の視点から、都は地震に強いまちづくりを進めてきております。しかし、都内にはまだ多くの木造住宅密集地域が残されているのであります。今後、防災都市づくりの取り組みを一層進めていくことが他方極めて重要な課題である、こう思います。
 新条例では、予防の名称が外されて、震災対策条例となっているわけでありますけれども、申し上げたような点、どういう考え方で地震に強いまちづくりの推進を図っていくのか、具体的にお答えを願いたいと思います。

○岡部災害対策部長 防災都市づくりにつきましては、ご指摘のように、まだ多くの木造密集地域がございます。新条例ではその取り組みの一層の促進を図ることを目指しております。そのため、現行規定で財産権の制限から指定できなかった危険地域及び特別危険区域の指定といったような規定を見直すとともに、住民の合意形成の重要性から、防災意識とまちづくりへの熱意を高めるため、まちづくり活動への支援等を図るという考え方に立った防災都市づくり推進をするための計画、これは第十三条に明記してございますが、これを策定し、事業の推進を図ることに努めるようにしております。

○木内委員 きょうは条例の審議ということでありますけれども、これは引き続いてそれぞれの条例の内容に沿ったさまざまな作業の課題があるわけでありまして、議会での議論にゆだねることとしていきたいのでありますけれども、例えば今いわれた防災都市づくりを推進するための計画の策定、あるいは事業の推進を図る規定、こうしたものを設けて今後の進捗を図っていかなければならないということでありますので、引き続いて議論の課題ということにしておきたいと思います。
 次に、救出、救助の活動拠点の確保という点についてであります。
 震災対策上、地震発生直後の初動態勢が被害を軽減させる上で重要である、これは今回の三宅島災害の対応を見ても明らかであります。また、阪神・淡路大震災では、自衛隊の出動要請がおくれたことや、また、出動しても進出する拠点の確保がなかなかできなかったことが大きな反省点として挙げられております。機能があるのに、これを有効に使えないという環境の悪さ、これはぜひ反省すべきは反省をして、今後の対応でやはり新しい展開をしていかなければならないと思うのでありまして、新しい条例に基づいて、申し上げた活動の拠点を確保するための方策を具体的に進めていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○岡部災害対策部長 災害対策基本法では、災害発生後に他人の土地、家屋などを強制的に使用する権限が行政にあることは定めてございます。しかし、地震発生後に迅速な初動対応を行うためには、地震が起こる前の平時にできる限りの準備を整えておくことが重要でございます。そのため、新条例では、新たに救出、救助の活動拠点や震災対策に必要となる空地、家屋の事前確保と、空地等の所有者等に対する協力規定を設け、迅速な応急活動を図っていくこととしております。

○木内委員 ここでは、地震発生後に迅速な初動対応を行うためには、平時から、地震が起こる前からできる限りの準備を整えておくことが重要であるという指摘は、まさにそのとおりだと思います。特に空地等の所有者等に対する協力規定を設けていくという答弁でありましたけれども、これも早急に、条例が通った後の作業として取りかかるべきであろうというふうに、私は答弁を聞いていて今実感をしたわけであります。
 また、オープンスペース等利用計画の策定ということでありますけれども、こういうスペースを東京の密集した都市構造の中で確保していくということは、なかなかに困難なことだと思うのであります。こうしたスペースは、地震発生当初の救出、救助の拠点だけでなく、さらに地震災害が一段落してくれば、当然、今度は倒壊建物の瓦れき置き場や被災者の仮設住宅、また支援物資の置き場などなど、さまざまな用途が出てくることになります。こうした用途に対応していくための取り組みも必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○岡部災害対策部長 少ないスペースを有効に活用し、実効ある対策を行うためには、地震発生直後の救出、救助の拠点ばかりではなく、応急対策以降から市街地復興に至るまで、時系列に沿った用途に対応できるよう事前に利用計画を作成しておくことが必要でございます。そのため、新条例では、こうした利用計画の作成と必要に応じた見直しの規定を設けており、今後都は早急にこの作業に着手し、平成十三年度中には計画を取りまとめていきたいと考えております。

○木内委員 平成十三年度中に作成予定ということを確認ができました。
 次に、帰宅困難者対策でありますけれども、今回の新条例では随所に新しい取り組みが見られておりました。応急対策の中で帰宅困難者対策についても定められています。東京には他県から都内に通勤、通学等で来る方、いわゆる都内に滞在する昼間都民が増加しているわけであります。阪神・淡路大震災では、地震発生が早朝ということもありまして、昼間住民による混乱は起きませんでしたが、事業所、学校、商業、娯楽施設が混在、集中する東京では、応急対策活動を迅速、円滑に実施するためにも、先ほども出ておりましたけれども、三百七十一万人といわれる帰宅困難者対策を確立しておかなければならない。これがないと、大変な混乱を来すことになります。新しい条例案では、帰宅困難者対策をどのように規定しておられますか。

○岡部災害対策部長 東京圏に特有な課題であります帰宅困難者による震災時の混乱を防止するためには、知事の責務として、区市町村、近隣の県、市町村と連携協力しまして、帰宅困難者の円滑な帰宅を確保する対策を規定するとともに、帰宅困難者自身にも、ふだんからの帰宅経路の確認や家族との連絡手段の確保など、必要な準備を行う旨の規定を設けてございます。都はこうした帰宅困難者対策に取り組むため、震災時における昼間都民対策推進計画を策定しまして、区市町村、近隣六県市及び事業者などと連携協力して対策に取り組んでおります。

○木内委員 これはなかなか行政で帰宅困難者にいわば規定を設けて、いうところの法律事項のような扱いをするわけにはいかない。結局、当事者お一人お一人が、家族との連携やさまざまな関係との連携を図りながら、自助努力を行っていただくということが必要なのでありますけれども、まさにそのための震災時における昼間都民対策推進計画というものが今想定されているわけであります。
 次に、震災対策の取り組みに当たっては、地震発生後の混乱がおさまれば、地域の復興並びに都民生活の再建を速やかに進めていくため、当面の応急活動態勢から復興活動態勢への円滑な移行を図っていくことが求められるのであります。
 復興対策等について現行規定では全く触れられていないわけでありますけれども、新条例のいわゆる中身としてどのような規定が行われ、どんな対応をしていかれますか。

○岡部災害対策部長 震災復興の取り組みに当たりましては、都はこれまで都市復興マニュアルや生活復興マニュアルの整備に努めてまいりました。今回、新条例で全国で初めて復興事業の取り組みを行政の責務として位置づけ、復興態勢の確立、震災復興計画の策定、震災復興に関する施策、手続及び都民への周知義務などにつきまして新たに規定しまして、迅速かつ円滑な復興事業を目指すこととしております。

○木内委員 今回の条例改正の背景や内容について伺ってまいりました。都政において防災行政は極めて重要な課題の一つでありまして、都民の生命と財産を守るためにこうした条例の果たす役割は極めて重要であると考えます。きょうもこの内容を伺ってまいりましたけれども、いずれも東京が現在抱えている防災の重要な課題に対処するものばかりであると思います。現在、東京には直下型地震発生の危険性が高いといわれておりますけれども、こうした時期に震災対策の強化がますます求められているわけでありまして、今回の条例改正が大きくこの対応に寄与することを強く願うものであります。
 最後になりますけれども、新しい震災対策条例の制定に当たって、今後の震災対策の取り組みの決意を含め、局長の見解をお聞きします。

○大関総務局長 ご案内のとおり、これまでの災害というのは、人間の英知と努力によれば災害というのは未然に防げるんだということで、東京のまちを地震に強いまちにしていこう、そういうことで地震を防ごうということでやってきたわけでございます。
 しかしながら、これが完全に理想どおりの防災に強いまちづくりを完成させるにはまだまだ一定の期間が必要なわけでございます。こうした間にも地震がいつ発生してもおかしくない、そのことを人の力でとめることができないというのが実態だと思います。その典型的な例が今回の三宅島であろうかと思います。仮にどんなに防災に強いまちをつくっていたとしましても、このことを防げただろうか、こういう思いが強いわけでございます。
 そうした中で、地震による災害から身を守るためにはまずどうしたらいいんだろうか、このように考えたときに、まず最初に自分の命、自分の家族は自分たちが守るということ、このことがやはり責任であろう、こう思うわけでございます。これは生きるための権利であろうかと思いますけれども、まずそのことをしっかりとふだんから自覚していただく。そういう中で、例えばたんすの上に物を置かないようにしようとか、外へ飛び出るときには水と衣類ぐらい持って出ようとか、こういうまず最初のことが訓練されるわけでございます。それで、慌てて出たけれども、何も持たずに出ちゃった人もいるでしょう。そういうときにお互い共助の立場から、余計に持ってきた水をよそに分けてやるとか、余分にある毛布を隣に分けてやるとかという次の段階の共助の段階があるわけでございます。
 そうした中において次に何が必要なのかといえば、地域の行政、これがまず身近な中で支援にすぐに入るということになろうかと思います。このことを、東京都や国の責任だということで待っていたと仮に想定したとすれば、これは家族も守れないし、近所の人たちも助けることができないということになろうかと思います。その意味で今回考えておりますのは、まず予防だけでは助けられないんだ、やはりいざ起きたときの危機管理、初期対応、こういうものが流れの中で時系列的に着実に防止できるようなシステムが必要であろう、このことを条例の中で規定したわけでございます。文章的にうまく書かれてない部分があるいはあって、理解が困難な部分があるのかもしれませんが、私らの思いはそういうものでございます。
 そういう意味で、今まで東京都がややもしますと、東京都の方が都区制度改革前は基礎的でございましたので、東京都が基礎的という立場でその地域の自治体の分もやってきたわけでございますけれども、そのことが本当に地域の行政の中でうまくいったのか、こう思いをいたすときに、ほかの県を見てもわかりますように、一番活躍する自治体というのは何なんだろう、活躍できる自治体はどこだろうということになりますと、やはり区市町村ということになるわけでございます。
 今回も三宅島の村長さんがあれだけご苦労されております。このことは私ども同じ痛みの中で協力しておりますけれども、第一義的には、法律で規定されているだけではなくて、やはり住民というのは身近な自治体のところに頼るわけでございます。そういう点で、そこで頼られてもそのことがきちんとできる態勢もつくってもらわなきゃならぬということになろうかと思います。そういう意味で、今回の新しい条例では、条例をもとにしまして、予防対策を一層進めるということには全く変わりありません。その上で、危機管理に重点を置いた応急対策、復興対策、こういうものを視野に入れて総合的な震災対策を積極的に進めていきたい、このように考えております。どうぞご理解賜りたいと思います。

○坂口委員 それでは、重要な案件でございますので、私の方からも何点か質問させていただきます。
 目的、前文を含めまして、理念的なものに始まりまして、予防対策、さらには応急対策、今の質疑でもございましたが、復興対策などにわたる大変な内容を持つものでございまして、まさに東京都民の、そして日本人の英知が試されているのじゃないかと私には思えてなりません。
 どうしてかといいますと、日本は、東京も含めてでございますが、少子高齢化というんですが、そのメダルの裏側は、世界最長寿国という現実ですね。世界である意味では最長寿国、バッケンレコードを持っている。しかしながら、あわせて、地震災害国だ。地震災害国というのも、これは裏返して見るならば、東西南北に長く、全国至るところに名湯名泉ありということと表裏一体ですよね。火山列島であるがゆえに、温泉も豊富である。その恩恵にも浴しているということがございますね。それから、大変な技術力や経済力を持っている、これも事実であろうと思います。
 そんなことを考えるならば、まさに日本人の英知が、また東京都民の、また東京都の知恵が試されている、そんなぐあいにいってもいいんではないか。ですから、この課題はある意味では創造的な挑戦である、そのように位置づけてもよろしいのではないかと思います。
 前のいろいろな質疑でもございましたけれども、ピンチはチャンス。今局長の方からも三宅の問題がございました。今大変な状態にございますけれども、災い転じて福となすという言葉もあるわけでございまして、阪神・淡路の教訓なども冷めさめやらぬうちに、これからの条例ですとか、条例だけでなくて、日常的な生活の中に、また訓練の中に生かしていかなければならない、そういうことであろうかと思います。そんな認識に立ちまして、以下、通告を若干してありますので、質問をさせていただきます。
 まず、今回の条例でございますが、昭和四十六年に全国に先駆けて制定されたものであるわけでございまして、約三十年ぐらいたっているわけでございますけれども、今若干触れましたようなことも含めまして、この新しい状況に対応できるように全面改正をしたわけでございますけれども、今なぜこの条例を全面改正するのか、そのねらいと新しい条例の特徴について、現行条例と比べてお聞きをしておきたいと思います。

○岡部災害対策部長 現行の条例は、昭和三十九年に発生しました新潟地震で、地盤の液状化により多くの建物が倒壊の被害を受けたという教訓などを受けまして、都が昭和四十六年に全国に先駆けまして制定したものでございます。予防対策重視の観点から、都市施設整備を進め、震災を未然に防止し、被害を最小限にとどめるということを目指したものでございます。
 しかし、条例制定後二十九年の間に社会状況や都市構造が大きく変化したことと、阪神・淡路大震災を初め、近年発生しました都市型地震の犠牲者の多くが、地震発生直後の建物の倒壊や家具の転倒が原因で発生したという深刻な教訓が今回の大きな改正の背景となっております。そのため、新しい条例では、これまでの行政の取り組みを強化することだけではなく、地震発生直後の災害から生命を守るのは、都民自身の防災行動力や、地域の人々の助け合いの行動が大きく寄与することから、こうした取り組みにつきましても新たに規定を設けたものでございます。

○坂口委員 震災対策を進めていくに当たりましては、先ほどもいろいろなやりとりがあったわけでございますけれども、都民が日々過ごす身近な地域において行わなければならない対策、強いていうならば、自分の身近なところにおける、または生活圏におけるミクロ的な対策といいますか、それと首都圏全体を視野に置きました広域的な、またマクロ的な対策の両方が必要になってくるということはもう自明の理であろうかと思います。
 今回の理念の中でも、自助ですとか、または公助ですとか共助--知事は公助、共助というのでなくて、共助、公助といっているわけでございまして、そのような表現をしているのもそのようなことからだと思うんですけれども、新しい条例では、この身近なレベルの対応、自助ですとか共助ということになろうかと思いますが、それと、少し広域的な、または全都的な、マクロ的な視点からの取り組みというようなものについてどのように規定しているのか、お伺いしたいと思います。

○岡部災害対策部長 都は、これまでの都市型地震の教訓から、都民及び区市町村の役割につきまして今まで以上に重視しております。都民に対しましては自己責任原則の考え方から、常日ごろから地震への備えの取り組みを明記し、区市町村に対しましても、区市町村が取り組む事業への支援、協力及び助成の規定を設けております。地域の防災力の強化を目指したものでございます。
 また、都は、広域的防災行政の立場から、これまでの予防対策の取り組みとしての地震に強いまちづくりの一層の強化を図るとともに、危機管理の視点から、応急対策、復興対策の分野に至るまでの規定を新たに設けまして、マクロの対策につきましても、都民及び区市町村と連携協力し、施策の推進に努めていくこととしております。

○坂口委員 日ごろの消防団活動または水害対策、火災や水害など、また三宅の場合でもそうでございますが、また、私どもが経験しているものとしましては阪神・淡路の教訓もあるわけでございますけれども、やはり現場に行ってみますと、まずは当事者がそれに対してどう立ち向かうかということが大変重要になってまいります。
 あわせて、地域でどのように協力し合えるかということですね。例えば阪神・淡路の場合でも、御蔵小学校ですとかその周辺を私は単独で歩いてみました。
 いろいろな方にお会いしたり、または写真を撮ったり、菅原市場の周辺も歩いてみたわけでございますけれども、そのようなことを見ましても、やはり自助努力ということとともに、地域の協力、連帯、そしてそれに加えまして、公的な支援をどうしていくかということが大変重要になってまいります。
 私のそのような今までの経験からいたしますと、この条例の中にもうたわれておりますけれども、発災直後の課題としましては、地域の拠点になる場所をどう確保するか、またはそれに対してどう支援をするかということが大変重要になってくるように思います。
 この条例の中でも十七条のところに、重要建築物の耐震性の強化といたしまして、例えばその二でございますけれども、震災時に緊急の救護所または被災者の一時受け入れ施設となる病院、学校その他これらに準ずる建築物というような表現があるんですが、少し問題を絞り込んでいきますと、学校ですね。病院ももちろん大変重要な役割を担っているわけでございますが、学校が大変な役割を担っているということに気づかされます。今の三宅の例でも、秋川高校に子どもたちがほとんど入っている、そんなことから見ても明らかでございますね。
 それで、学校にもうちょっと視点を当てまして、特に小中学校ですね。資料要求では都立の高校についての耐震診断等の結果が出ておりますけれども、実は、先ほど少子高齢化ということをいいましたけれども、子どもたちにとっても、またはお年寄りにとりましても、一番身近な存在というのは地域の小学校や中学校ですね。
 前の委員会でも別件で申し上げたかと思いますけれども、都内には約千三百六十校の小学校がございます。六百六十校の中学校があります。もうちょっとメッシュを細かくしてみますと、人口一万・一キロ平方に一カ所の小学校があるんですね。子どもたちにとっては一番身近なところ、通いやすいところ、おじいちゃん、おばあちゃんもわかっている、もちろんお父さんやお母さんもPTAですとか父母会の関係で熟知しているというようなところに学校があるわけですね。それで人口二万・二キロ平方に一カ所の中学校があるわけです。警視庁や消防庁のヘリコプターで上空を飛びますと、日本人の生まじめさといいますか、教育熱心さがまさに手にとるようにわかる。感動すら覚える。個人的な感想を申すならば、背筋が熱くなってくるような思いがするわけです。
 この学校というものを一つの拠点として、いろいろ出てまいりましたけれども、日常的な例えば防災の拠点としてきちんと位置づける、または防災のNPOの拠点として位置づける。もちろんもうちょっと細かくいいますと、水や食糧や医薬品というようなことになるわけですが、NPOの拠点として位置づける。それからもう一つ、世界で最古で最強のと私は形容するんですけれども、消防団も大体小学校の学区に、多摩地域などでは一団組織されているわけですね。ですから、それとも連携を図る。また、将来の計画、構想に入ろうかと思いますけれども、例えば福祉ですとかまちづくりの拠点というようなものも恐らくその単位で考えていくのが、これからの分権の時代、市民参加の時代にとっては大変重要なのではないかと考えております。
 そのようなことからいいますと、この自助、公助、共助というわけでございますけれども、小学校の学区または空き校舎、空き教室等ですね、これについても若干データを申し上げますと、もう私の持論のように申し上げているんですが、団塊の世代は二百七十万人。今の子どもたちは百六十万人。今生まれてくる子どもたちは百二十万人。東京都の二〇〇〇年東京構想では八十万人と予測をしておりますね。ですから、先ほど申しました千三百六十校のうち、四十名学級を三十名学級にしなければならない、二十名学級にするというような教育環境の改善ということがあるわけでございますが、私は、それだけにとどまらない、またとどめるべきではない。先ほど災い転じて福と申しましたけれども、その空き校舎、空き教室を有効に使っていく、そのことによって、今申し上げましたような複合的な活用ができる。そして、生命や財産を守るだけでなくて、子どもたちの教育等にも役立てることができる、そのように考えているわけでございますけれども、今申し上げました、条例改正に当たりまして、少子高齢化というようなことを踏まえるならば、小中学校の空き校舎、空き教室が当然ふえてくる。先ほどの数字で申し上げますならば、仮に三分の一が一クラスぐらいになってくるということを想定しますと、その数は小学校だけでも四百校から五百校ということになりますね。これは無視できない数ですね。
 そのようなところに、例えば防災の拠点などを整備していく。福祉局との関連でいうならば、福祉の拠点を整備して、複合的に利用していく。そして生徒たち、または地域住民との、またはNPOとの交流事業を実施する。わかりやすくいうならば、日常的な顔合わせ、腹合わせ--腹合わせというのは心合わせといってもいいと思うんですね、そして力合わせができるような、そのような新しいコミュニティを創造していく、つくっていくということがこの条例を生かしていく意味で大変重要なポイントではないか。それこそが私ども東京都民の、または日本国民の英知の一つになるのではないかと思いますが、最後の質問でございますので、局長のご答弁をお聞きしたいと思います。

○大関総務局長 お話しのように、大都市における震災対策、これはどこだけがやれば解決するということでなくて、やはりそこに住む住民、あるいはそこの中にできているコミュニティである自治会、町会といいますか、あるいは企業だとか学校だとか、あるいはボランティアとか、こういうものが一体となって災害対策を進めるということが非常に大事かと思います。また、それがないと本来の災害対策にならないだろう、このように思っているわけです。
 この考えは条例の中でもそういう思いを強くいたしておりまして、やはり第一義的には、まずみずからの命は自分たちで守ろうということ、それからお手伝いしていく共助の考え方、それでその次は地元の自治体ということで、その後のことを広域的にとらえて東京都が支援に入るということ。それも時間を置くのではなくて、まず間髪を入れずに入っていくということでございますので、形の上では第一次、第二次、第三次と分けておりますけれども、決して東京都が後回しでいいんだという思いはないものですから、その辺につきまして、今回の条例も基本にしまして、ぜひ都民及び区市町村ときずなを一層強めまして災害対策に取り組んでいきたい、このように考えております。

○丸茂委員 私は、今委員会に付託されております一般会計補正予算の関連で伺っておきたい点がありますので、何点か質問させていただきます。
 この補正予算は、三宅島など災害復旧や緊急の雇用対策など、さまざまな対策を担う三宅支庁や災害対策本部の運営費等の経費も挙げられております。そういう中で、いまだ帰島のめどが立たない三宅島島民の避難生活に伴う生活支援とあわせ、いつ帰島することになっても大丈夫な万全な対策を今から検討していくことが極めて重要だ。そういう点で、帰島後の住宅再建を含む個人補償、生活と営業への補償、そのための基金など、被災者に対する生活支援の対策、こういうことをきちんと講じておく。そのことが将来の不安を少しでも和らげる最大の支援だという立場で、本会議でも私ども求めてまいりました。
 そういうもとで私は今回、ハード面で、特に災害復興に関して、雇用の問題を含めて、やはり今から検討しておくべきだということに絞って伺っておきたいと思うんですが、一つは、三宅島、私ども訪問しましたけれども、火山灰の降灰量というのは大変な量で、その処理を含めて、一体どの程度の量で、どういう処理をしていこうとしているのか、その点まずお伺いをしておきたいと思います。

○和田災害対策調整担当部長地域振興担当部長兼務 まず、降灰量でございますけれども、東京大学地震研究所の調査によりますと、現在までの累計で約一千百万立方メートル程度というふうにいわれております。
 それから、この降灰に対する処理の方法でございますけれども、山腹部につきましては、砂防工事や山どめ工事などを行いまして泥流の危険を防止する。それから、山ろく部につきましては、島民の方々の雇用も視野に入れた除去対策を進めていくつもりでおります。
 さらに、この火山灰の有効利用につきましても鋭意取り組んでおりまして、利用方法についての民間企業との共同開発などを積極的に進めているところでございます。

○丸茂委員 一千百万立方メートルですか、相当な量、これはすべてを処理するというわけにいかないので、現実に農地だとか住宅だとか道路だとか、泥流で流れた部分を含めて対応が迫られるかと思うんですけれども、その泥流が流れて、私も現場を見ましたけれども、三宅島の建材工場というんですか、実際の産業の一つになっている、そこが泥流で埋まっているわけですね。その再建策等についても検討を今からすべきだと思いますし、どのような対策、検討が練られているのか、その点お伺いしておきたいと思います。

○和田災害対策調整担当部長地域振興担当部長兼務 村営の建材工場でございますけれども、これは今後の復興対策にとりましては大変大きな役割を果たすということが期待されますことから、三宅村においては、火山ガス等の状況が好転し次第、直ちに再建したいというふうな意向であると聞いております。都といたしましても、村の要望を聞きながら、再建に向けて必要な支援、協力を行っていきたいというふうに考えております。

○丸茂委員 それから、現地、生活再建支援法が適用されたわけですけれども、住宅が全壊したり半壊したり、そういった状況もありますし、また、農地におけるビニールハウス、これも相当数やられている。それから、泥流で車が埋まったまま、これがまた産業廃棄物になりかねないという点で、廃材問題、この処理、それからその処理の対応策というんですか、この点についてもどのような検討がされているのか、お伺いしておきたいと思います。

○和田災害対策調整担当部長地域振興担当部長兼務 災害の廃棄物の処理につきましては、本来三宅村の方で行うものでございますけれども、現在、災害廃棄物の発生状況、それから処理施設の損傷の状況等が残念ながら現下の状況では把握できないという事態でございます。したがいまして、そこからの廃棄物が仮に今後無秩序に放置されるということになりますと、地域の衛生環境に重大な影響を及ぼすというばかりではなく、復旧活動の妨げともなりますので、今後、火山活動が鎮静化するのを待って、村の方とともに現地調査をし、処理施設の復旧、災害により発生した廃棄物の一時保管施設、収集及び処分方法などについて、村を初め関係者と調整しながら必要な支援を行っていきたいというふうに考えております。また、都といたしまして、廃棄物処理法に定める国庫補助制度について国に対して要望を行ってまいります。

○丸茂委員 そういったさまざまな課題があるわけですけれども、三宅島のこちらに避難されている島民の方の就労問題もなかなか困難だというふうに聞いているんですけれども、そういう雇用の問題では現状はどうあるのか、その点についてお伺いしておきたいと思います。

○和田災害対策調整担当部長地域振興担当部長兼務 現在の村の方々の就労の状況でございますけれども、都は、東京労働局、それから三宅村などとともに、多くの企業の協力をいただきまして、就職相談会、職業訓練の実施など、避難をしてきている三宅村の村民の方々の就労対策に取り組んでおります。
 九月の末に行われました合同就職相談会によりまして、四十人の就職が決定したほか、シルバー人材センターによる臨時的就業が延べ九百二十四人日、それからさらに東京都によります臨時応急的雇用として、新島、神津島のものも含めまして二千五百六十人日分を確保しております。今後とも引き続き就業機会の確保、提供を図っていきたいと考えています。

○丸茂委員 私はなぜこういうことを尋ねてきたかといいますと、一番最初の答弁でも多少触れているんですけれども、私、本会議でも取り上げたんですが、三宅島の火山灰を使って建築資材だとか道路の路盤材だとか、そういう技術開発も進んでいます。私、現場を見に行ってきたんですけれども、(実物を示す)これが三宅島の火山灰をセメントとまぜて、これをわずか二分間圧縮するだけで、後は乾けばこういう、もうコンクリート並みの固さになる。中小企業の方にお伺いしたら、三宅島の皆さんが本当に火山灰を含めて大変な被害に遭っている。そしてなおかつ、それを通じて雇用対策に少しでも生きればいい。そしてなおかつ道路や、あるいは土どめ、泥流防止、そういうためにも非常に効果があるんじゃないか。
 もう一つ、これは大谷石と炭がまざっているんですが、建築廃材だとかそういうものもまぜて圧縮すると、硬度のある、さまざまな建築資材にも使える、こういう検討がされているんですよね。
 そういう中で、私はぜひ三宅村長にもこの原盤を見ていただいて、建築材等の工場の再建においても、いずれにしても、今後の復興、それから雇用の面でも極めて大事な問題じゃないかというふうに思いますので、さまざまな雇用の面、それから災害復興する上で、いかに効果を上げるか。なおかつ、実際に廃棄物を出さないで、新たなリサイクルをしていくかという点での検討もぜひしていただいて、これからの新たな産業復興にも生かしていただきたいというふうに思うんですが、お考えなり感想なりあったらお聞かせいただきたいと思います。

○和田災害対策調整担当部長地域振興担当部長兼務 今お話もございましたけれども、三宅の村民の方々は現在こちらへ避難して、その中で生活されているわけでございますけれども、いずれの日か、これが一日も早いことを願っておりますけれども、島へ帰った際の雇用対策、これは極めて重要な問題であるというふうに考えております。
   〔吉住副委員長退席、委員長着席〕
 したがいまして、先ほども申し上げたように、降灰の除去といったような作業に、ご自分たちの住んでいる村でございますので、一番土地カンもあるわけでございます。そういった作業、それからさまざまな工事の面で村の方々にお力を出していただきたいというふうにも考えております。それから、新たな復興に向けて村民の生活の安定、産業の復興、そういったことも視野に入れて、村とも協力しながら努力をしていきたいというふうに考えております。

○今井委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時四十七分休憩

   午後三時一分開議

○今井委員長 休憩前に引き続き委員会を開会します。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○木村委員 私も、今回の震災予防条例の全面的な改定にかかわって質問させていただきます。
 まず、私が大変疑問に思いますのは、震災予防条例、今度は名前が変わって震災対策条例ですか、すべての都民の命と財産にかかわり、東京の将来がかかわる、そういう基本中の基本の条例が大きく変わるという作業に当たって、それを検討する委員会というのがわずか九名で、ことしの一月から作業をスタートして一年で終わったわけですが、わずか九名という東京都震災予防条例改正に関する検討会の構成が、経団連、東京商工会議所、東京青年会議所といういわば財界団体、経済団体から三名、それから、東京電力、東京ガスあるいは東日本電信電話株式会社といういわばライフラインの事業者ですね、これに、区から一人、町から一人、それに東京都という行政側が三人ということで、ここには、都民団体の代表、阪神大震災からその重要性が、この条例の中でも確認をされていますが、さまざまなボランティア団体やNPO、そうした実際に活動している団体の代表というものも加わっておりませんし、それから、地震ですから、地震にかかわる、災害にかかわるさまざまな専門家、学者という人たちも参加をしていないということが、この改正についてのまとめをいただいたときに一番大きな驚きの一つだったんです。こういう形で全面改正をやるというのは、まさに都民不在といわなければならないんじゃないかというふうに思いますけれども、まず、その点を説明していただきたいと思います。

○岡部災害対策部長 条例の改正に当たりましては、本年五月十二日に中間のまとめを発表しまして、五月十二日から六月三十日まで、広く都民の意見をお伺いしております。その後約半年をかけまして、十一月十五日に最終のまとめを発表し、本定例会に提案したものでございます。この間、関係機関、事業者、区市町村との検討会議、学識経験者の意見聴取、そして都民等からも意見を聞く経過を経まして、まとめたところでございます。十分手続を踏んでいると考えております。

○木村委員 今、十分手続を踏んで都民の声を聞いたといいましたけれども、これからの東京都のやり方がそういうやり方になるとすれば、これは非常に大きな問題を含んでいると思うんですね。あくまで検討会議には参加していないんですよ。中間のまとめから、いろいろ意見を聞いたと。それから、確かにここにも、それ以後、その種の会議が何回か行われていますが、あくまで、大学の先生のご意見伺い、外部有識者の意見聴取という形です。
 それは聞くけれども、それがどう生かされて、どういう条例になってくるのかというのは、それは検討会の中にそういう代表者がいて、そして、いろいろ議論して、つくり上げていかなきゃいけないものでしょうね。行政とライフライン業者と財界団体でもってつくるというのは、基本的には、意見は聞いたかもしれないけれども、つくり上げる過程では、都民参加というふうにはいえないと私は思うんです。
 それでは、具体的に、いろいろな大学の先生のご意見を聞いたり、いろいろして、当初予定されていた条例--条例の改定案というのはごく最近発表になったわけなんですが、どういうふうに意見が取り入れられて、ここはどう変わったとか、そういうところがご提示できますか。

○岡部災害対策部長 中間のまとめの意見としまして、これまで、自己責任原則につきましては、事後対策中心の防災へ重点を移行させ、予防対策の位置を引き下げるものというご意見もありましたが、多くは、自己責任の原則ということに賛成のご意見もございました。それから、自治体の責務もあいまいではなかったかというご意見もありましたが、発災直後は行政の対応は不可能であるというご意見もいただいております。それから、都と区市町村の関係につきましては、区市町村の関係に触れます場合は、区市町村という基礎的自治体が第一義的役割を果たすという意見に賛同していただきまして、区市町村と連携協力して事業に努めなければならないというご意見もいただいております。

○木村委員 結局、あれでしょう、こういう意見もあった、こういう意見もあったと。こういう意見もあったけれども、多くはこういう賛成だったというだけの説明で、どこがどう変わったとかいうお話はないんですよね。
 例えば、この検討会が意見を聞いた人の中に、中林一樹都立大学教授がいますよね。この方が、「総合都市研究」という雑誌に、台湾へ行った経験などを踏まえて、震災対策の課題という論文を発表されています。ここで力説しているのは、マンションなどの被害、集合住宅の被災というのは人的被害の大きな引き金になり得ることを留意して、耐震改修の重要性に力を入れるべきだとか、あるいは、神戸の大震災のときに避難住宅を非常に離れたところへ建てたためにコミュニティが壊れたと、そして、そのことを台湾側が学んで被災地に応急住宅を建てたという点は大したものだというようなことを述べておられます。
 これから条例の中身について若干聞いていきますけれども、私は、もし中林教授がこの検討会のご意見伺いの中でそういうご意見をいわれたのだとしたら、教授の話は生きていないというふうに思わざるを得ないんですよ。ですから、あれも聞いた、これも聞いたということだけでは、私たちには、どれだけ都民の意見が反映されたのか、都民参加型でつくられていったのかというのはわからない。これからは、こういう大きな条例改正の場合は、必ず該当する都民団体の代表や学者、経験者などを参画をさせて、行政と事業者と財界だけで進めるんじゃなくてやっていってもらいたいということを、まず第一に強く要望します。
 次に、地域防災計画というのがありますね。それから、この震災予防条例に基づいて、東京都は震災予防計画というものをつくっています。今回のこの条例改正案を見ますと、今度は、それが震災対策事業計画というふうに名前が変わります。この三つの計画はそれぞれどう違うのか、そのことを簡単に説明していただきたいと思います。

○岡部災害対策部長 地域防災計画は、災害対策基本法に基づきまして、都内における防災機関の所管にかかわる予防、応急対策、復旧復興対策につきまして、対策の考え方、具体的な手順、取り組みの役割分担などを具体化したもので、今地震が起こった場合にすぐ取り組む、その行動指針を持ったような性格を持つものでございます。
 これに対しまして、震災予防計画は、都の震災予防対策上の事業について、年次ごとに到達目標を明確にした事業実施計画でございます。
 新条例では、震災対策事業計画は、応急、復興の分野までを含んだ事業実施計画となることとなっております。本計画は、東京の防災上の課題に対処していくために、一般的な国の防災上の取り組みを補完または上回る内容であることは、今後とも変わっておりません。

○木村委員 今ざっと聞いただけではよくわからないんですけれども……。
 従来は、地域防災計画というのは、国の法律に基づいて自治体が義務的につくられるもので、いわば応急対策のマニュアル書のような性格を持っていると。しかし、それだけでは、震災対策というのは自治体としては応急対策だけやっているわけにはいかないというので、震災予防条例ができて、そして、その震災予防という点から東京都の事業計画として打ち出したと、そういう違いがあるというふうに私なんかは理解していました。
 今度は、どうも言葉だけでいうのはなんですけれども、地域防災計画、マニュアル的な計画と、その事業計画たる予防計画の中間的な震災対策事業計画と。限りなく防災計画の方へ近づいていって、結局、やることは、国の法律によって義務づけられた事業を国基準並みに近づけていくという意味合いになりはしないかというのが私の心配ですが、そういう心配はないんですね。

○岡部災害対策部長 震災予防計画は、新条例案では震災対策事業計画に移りまして、応急、復旧までの分野を含んだ事業計画になるところでございます。また、このほか、災害に強いまちづくりのためには、第十三条にございます防災都市づくりのための整備の計画というのをつくることとなっていますので、より強化した条例になっております。

○木村委員 それでは、今度の改定案は前文が変わっているわけですが、この震災予防条例にも前文があり、今回の条例にも前文があります。この条例にこうした前文が必要だという意味合いはどういうことでありましょうか。

○岡部災害対策部長 新条例につきましては、これまでの都市型地震の教訓を踏まえまして、地震発生直後の犠牲を少しでも少なくするために、自己責任原則に基づく、常日ごろの地震への備えや、都民や事業者に対して努力義務を明記しております。震災対策の取り組みに当たりましては、こういった自助や共助の取り組みと、公助の役割を果たす行政が連携協力し、これまでの予防対策に加えまして、応急、復旧対策を含みました総合的な震災対策を積極的に進めていくということでございますので、これは、都民、事業者、行政全体が一緒にやっていこうという宣言をしたものでございます。

○木村委員 質問がうまくかみ合っていないんですが……。
 今のは新しい条例の前文の特徴をいってくれたんだと思いますが、震災条例というと、現行条例も、新条例も、前文が書かれている。都条例に前文があるというのは余りないですよね。法律にも、前文があるというのは憲法と教育基本法だけだというふうに伺いましたけれども、そういう意味で、前文というものの位置づけというのはいわば非常に重要なものではないかと。震災条例の場合、なぜこういうふうに前文がどうしても必要なのかと。その意義ですね、これをまずいっていただきたいと思います。

○岡部災害対策部長 前文の意義でございますが、東京都全体の震災対策のコンセプトをはっきりと都民に明示して、ご理解をいただくという意味合いがございます。

○木村委員 震災対策の全体のコンセプトを明らかにすると。言葉をかえていえば、震災対策というものに立ち向かう東京都の基本的な姿勢あるいは理念、そもそも震災というものをどう考えるか、そういういわば一番理念的なものをうたい込むと。それだけ震災条例というのは非常に大事なものだと、答弁を補足すれば、そういうことをいわれたんじゃないかと思うんですね。
 その大事な前文が、今回は、現行の前文からそっくり変わるということなんですね。先ほどちょっと説明がありましたけれども、自助、共助などの精神を盛り込んで総合的にやるために変えたというようなことをいいましたけれども、今までの前文にそういうものを加えればいいんじゃないでしょうか。何で今までの前文がそっくりなくなって、新しく書きおろしみたいにならざるを得なかったのかというのがまず第一の疑問ですけれども、その辺をひとつわかりやすく説明してください。

○岡部災害対策部長 地震が発生した場合、その犠牲者の大半が、その直後数分間に起こるという建物倒壊や家具の転倒などで発生しております。この間は、どんなに急いでも行政の手は及ぶことはできません。こうした災害から身を守るには、まず第一に、都民自身の日ごろからの地震への備えに基づく行動と、家族や地域の人々の助け合いが必要であります。こうした行動が生死を分けるといっても過言ではございません。新条例では、こうした取り組みを踏まえた上で、公助の役割を果たす行政が、危機管理重視の視点で、応急対策及び復興対策まで見据えて、さまざまな規定を行政の責務として定めたものでございます。
 公助の役割につきましては、現行条例に比べ、むしろ強化しているものでございます。この自助、共助、公助につきましては、先ほど局長からも答えましたように、発災から時系列的に追ったもので、決して行政の役割が後退したというものではないというふうに考えております。

○木村委員 先ほど、前文を、震災対策に対する東京都の全体のコンセプトをいいあらわしたものだという説明がありました。それで、そっくり前文が変わりました。つまり、東京都の震災対策に対するコンセプトが変わったわけですね、そういう意味でいえばね。そして、今のご説明ですと、どんなに行政が頑張っても手が届かない直後の災害も含めて、自助、共助を強調するとともに、公助の果たす役割も危機管理という方向で明確にしたという説明がありました。
 今までの前文はどうだったか。「東京は、都市の安全性を欠いたまま都市形成が行なわれたため、その都市構造は地震災害等に対するもろさを内包している。東京を地震による災害から守るには、必要な措置を急がなければならない。」と。これは、地震災害に対する、東京という都市が抱えている歴史的、社会的な性格をまず述べていますね。「いうまでもなく、地震は自然現象であるが、地震による災害の多くは、人災であるといえる。したがつて、人間の英知と技術と努力により、地震による災害を未然に防止し、被害を最小限にくいとめることができるはずである。」災害の多くは人災だという認識が示されていて、そこで、英知と技術と努力によって防止をすると。最小限に食いとめる。完全になくすことはできないにしても最小限に食いとめることができる、その決意をこの条例はいいあらわしたんだといっています。
 私、この現行の前文の方で述べている、東京における地震の災害というのは非常に都市特有の社会的な性格を持っていて、しかも、だからこそ災害の多くは人災といえる、それを未然に防ぐということが我々のコンセプトだといっていることは、何も否定する必要はないというふうに思うんです。ところが、これがそっくりなくなりました。つまり、人災による災害の予防というコンセプトから、公助というのは危機管理であるというふうに先ほど説明がありました。そう変わったんですよね。確認です。

○岡部災害対策部長 先ほども申し上げましたように、震災対策予防の取り組みについては、新条例におきましても否定はしてございません。第十三条に、防災都市づくりに関する整備の計画を行うことによって予防対策を行うということになっております。これに加えまして、危機管理、それから応急対策の面からも、それから復興対策についてもさらにこの条例に盛り込んだということで、かなり強化したものとなっております。

○木村委員 予防の取り組みを否定していないというならば、なぜ削ったのか。前文からそっくり削っているじゃないですか。それで、今までのはこうだったけれども今後はというふうに、むしろ引用としては否定的に引用しているじゃないですか、前文で新しく。だから、言葉でいろいろいい逃れしてはやっぱりまずいと思うんですよ。
 それでは聞きますけれども、この新しい前文の中で、こういうくだりが最初に出てきます。「地震を予知することが未だ困難な現在、阪神・淡路大震災をはじめとする都市型地震の経験は、改めて地震発生直後の危険性と不断の危機管理の重要性を、行政はもとより多くの人々に知らしめたところである。」ここでいう都市型地震というのは一体何ですか。地震に都市型と田舎型とあるんですか。

○岡部災害対策部長 台湾、ギリシャ、トルコ等の地震、諸外国における、人口の集中した都市における地震の対策について述べたものでございます。

○木村委員 地震そのものを、都市型と田舎型と、地震の違いがあるんですかと。

○岡部災害対策部長 言葉が足りなくて済みません。
 地震には違いございませんが、人口が密集した都市と、それから田舎と、またその災害の形態が違います。それによって、人口が密集したところにつきましては都市型地震という形で規定しております。

○木村委員 つまり、その災害の形態が違う。つまり、震災のことでしょう。地震と災害とは違うんですよ。最初からこの区別がなくて、そのコンセプトを決めようとするから、非常に矛盾すると思うんですね。
 議会局の図書館から借りてきたんですが、石橋克彦さんという有名な学者がいますね。彼のブックレットにこう書いてあります。将来の大地震への備えを合理的に考えるときには、地震とか震災とかいう概念を正確に使い分ける方がよいと思います。科学的には、地下の岩石が破壊して、地震波--地球内部に伝わる岩石の振動--を放出する現象を地震と呼び、地震波が地表に達して大地が揺れるのを地震動といって、二つの現象を分けて理解するようになりました。震災というのは文字どおり地震災害で、強い地震動を受けた地域に人間が暮らしているときに発生する人間的、社会的現象です。その様相は、文明の状況に依存し、社会の実態をあぶり出しています。決して地震の大きいのが震災ではありません。気象庁が兵庫県南部地震と名づけたのは、激しい地震動を伴った地下の岩石の破壊現象のことで、それによって、阪神・淡路大震災という、戦後の五十年目の日本の本質を露呈する社会現象が起きたのでしたというふうに解説をしています。
 一番大事な前文に、こうした地震と震災を混同する、そういう前文を、今までの前文を削った上で出しているということは問題だと私は思うんですよ。それ以上はいいませんよ。
 では、その前文を、自己責任と共助の考え方というのは後から聞くとして、その後、前文のところを見ますと、前の、現行の条例について、全国に先駆けて条例を制定したということで、「行政主導の下で震災を未然に防止し、最小限にとどめることを目指してきた。」というふうに書いています。ここでいう行政主導というのは、何を根拠にいっているんですか。行政が一生懸命やってきたと、主導的だったと、都民の方はやっぱりそうでなかったと、都民の努力が足りなかったとする具体的な根拠を聞きたい。

○岡部災害対策部長 災害に強いまちづくりをするためには、その予防対策として、行政が積極的な役割を果たしてきたということでございます。

○木村委員 行政主導だったという意味合いには、住民が行政に頼り過ぎているという意味合いが含まれて書かれていると思います。現に、この条例の改正の中間まとめには、たしかそういうくだりがありました。だけど、現行条例には、行政主導でやるなんて書いてないんですよ、一言も。
 前文さっき読み上げましたけれども、その後のくだりはこうですよ。「この条例は、その英知と勇気を導くための都民と都の決意の表明であり、都民と都が一体となって東京を地震による災害から守るための合意を示すものである。」これが現行条例の前文の結びです。つまり、行政と都民とが一体となって力を合わせるんだ、それが震災対策に向かっての東京都のコンセプトですというふうに前文はいっているんです。これが、何で行政主導なんですか。いいかえれば、何で都民の方の努力がちょっと足らないんだというんですか。そこの根拠をひとつ示していただきたい。

○岡部災害対策部長 近年の都市型災害の、地震の災害による経験の中から、発生直後の被害が起こるのは、やはり都民自身の自己責任による、自分の命は自分で守るということがなかなか周知できなかったと、そういう現実の経験があるということで、それぞれ個人、都民としても、そういう意識を持って災害対策、防災に努めていただきたいということでなっております。

○木村委員 私、現行条例のせいにしちゃまずいと思うんですよね。東京都自身の都民に対する、警戒だとか、そういうものに絶えず準備していなさいと、そういう行政としてのPRとか努力が足りなかった、そういう反省ならわかるんですよ。現行条例が行政主導型だったというふうにされたのでは、現行条例の前文が泣く、かわいそうだ、こういうふうに思いますね。だから具体的な根拠はないわけですよ。
 さて、前文の中の、さっきからいろいろな答弁の中にも、質問の中にも出てまいりました自助、共助の話を私もちょっとお聞きしたいんですが、私は、確かに危機管理は大事だと思います。それから、自助、共助も大事だと思います。ただ、震災の危機管理に対して、それを担う主体と責任を、自助、共助が第一と第二だよというふうにいって、自分の命は自分で守ることと自分たちのまちを守るという、都民に二つの理念を背負わせて、そこに危機管理の主要な責任、これを負わせるということは、その後、公助の役割を果たす行政とが連携してという言葉が続いていますけれども、やはり行政の責任の後退ということになるのではないかというふうに思うんです。
 危機管理という言葉は昔からあったかどうか知りませんが、政治的には、危機管理というのは、もともと、個人の努力によっては回避し得ないようなクライシス、個人の努力によっては解決できない危険から、国なり都なり、公がどう国民を守るシステムをつくるかということを指すんだと思っているんですが、それを、自助努力ということを持ち出すと、本来危機管理という言葉が政治的に使われてきたことに対して、行政が、責任はそちらだよというふうにいっている、そういうことになるんじゃないか、つまり本末転倒じゃないかということが一つと、そのことを強調すれば、みずからの命をみずからは守れないという社会的な弱者、阪神・淡路大震災でも高齢者、障害者の死亡率が非常に高かったということ一つとってみても、社会的な弱者の切り捨てということにつながるんじゃないかという点について、まず、ご見解を聞きたいと思います。

○岡部災害対策部長 自己責任の原則は、何度も申し上げますように、阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、都民の防災行動力の向上を求めたものでございます。現実に、東京都の政策報道室で行いました平成十一年九月の防災に関する世論調査でも、平成七年では三七・二%の人が大地震への不安を挙げています。しかし、平成十一年には三〇・九%になっております。まさに自助という考え方の風化というものがありますので、この風化というものを、ぜひ、今回の条例改正によって、もう一度地震への心構えを持っていただきたいということで、新しくこの前文に書いたわけでございます。

○木村委員 確かに人間ですから、大震災が起きた後は関心が高まり、しばらくそういう大災害がない場合は関心が薄れるというのは、心がけのいい人、悪い人もいるでしょうけれども、人間の普遍的な傾向だというふうに思うんですね。それを、条例をこういうふうに、震災対策のコンセプトを、第一と第二が自助、共助だというふうにすることによって防げるかというと、それは話が違うだろうと思います。
 私は、そういうふうにコンセプトを、組み立てることが、本来的な意味での危機管理からいうと本末転倒だし、弱者切り捨て、行政の後退ということにつながるんじゃないかというふうに聞いているんです。私の聞いていることがどうもなかなかわからないようですから、それ以上押し問答はしませんけれども、もうちょっと、さっきいいましたように、条例のつくり方も、いろんな代表を入れて、かんかんがくがくオープンの討論をやってつくられていけば、今いっているようないい合いというのは、都民的に、やっぱり克服されていくものなんですよ。
 それでは、具体的に条文に則して聞きたいと思います。つまり、危機管理の責任と主体を自助、共助ということで都民に強調するということは行政の後退につながらないかという心配でありますが、その点で条例を見ますと、地域危険度をおおむね五年ごとに明らかにするというくだりがありますが、新しい条例にはそれがなくなっています。これは、すなわち一つの新たな後退ではないでしょうか。

○岡部災害対策部長 新条例案では、これまで個別に規定をしておりました調査事業の条文を整理した結果、地域危険度の調査も他の調査に含めまして、本調査の実施及びその結果の都民への公表につきまして明記しております。現行条例とその趣旨は変わりません。

○木村委員 変わらなければ結構ですけれども、地域危険度の測定については、おおむね五年ごとに公表されるということになっていましたが、実際には、区部を公表すると次は多摩地域を公表するという形で交互に公表されていて、区部の公表は、一九七五年に危険度が公表されると次は一九八四年と、九年後というふうに、交互になっていますね。だから、現在でも、そういう意味では、厳密にいえば、五年ごとというのはそういう実態になっている。これが、条文上いろいろ整理してまとめてあるんだというふうにいいますけれども、さらに後退しないかという心配は、いろいろな専門家からも出されています。
 さらに、地域危険度の診断ですけれども、例えば都下では、国分寺などが非常に力を入れて発表していますね。やはりこういう先進的な例にも学んで、むしろこれは強化するという必要があると思うんです。
 これが国分寺の例ですが(図面を示す)自分の住んでいるところがどのように分けられるのか、火事が起きたら燃え広がるという地域なのか、あるいは大雨が降ったら浸水する地域なのかというのが一目瞭然で、非常に細かく地域危険度が発表されています。国分寺市がつくると、やっぱり地主さんは抵抗するそうです。こんなことをつくられたら自分の財産が価値がなくなるということですが、その地主さんの抵抗を説得して、命にはかえられないと、やっぱり災害に必要なんだということで、発表を続けているんだそうですね。町ごとにあるんですよね、この危険度の特徴が。
 私は、そういう意味で、今回の条例でいろいろ整理したということはありますけれども、むしろもっと積極的にこうした対策を進めていく必要があるのではなかろうかというふうに思います。
 もう一つ、特別危険区域あるいは危険地域というものを今度の条例ではなくしました。防災都市づくりを進めていくというのが条例ではうたわれていますが、その危険地域、危険区域というものがなくなるわけなので、防災都市づくりをどういうところへ進めていくのかということがあいまいになる。ある意味では、防災という名目で、やりやすいところから、駅前再開発も防災、幹線道路づくりも防災ということになって、本当にその危険区域、例えば白鬚の再開発なんかはそういう手法でもって行われましたけれども、そういうことがなくなって、防災都市づくりが都市づくり一般に改称されて、結局そのときの都市づくりの主要な課題というものが優先するということになるのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○岡部災害対策部長 地域危険度調査につきましては、また引き続き調査を行って、平成十四年度に発表する予定になっていますが、そういったことをもとといたしまして、本条例案では、震災を予防し、震災が発生した場合における被害の拡大を防ぐ見地から、防災都市づくりに関する施策の指針や、地域特性に応じた整備の方針、整備地域の指定等を内容とした防災都市づくり推進計画の策定を知事に義務づけたものでございます。今後、この推進計画に基づきまして防災都市づくりを進めていくということにしておりますので、後退していないと考えております。

○木村委員 それから、東京都の助成制度、これも、都民等への助成とか、それから区市町村への助成ということで、知事の責務として、助成することができると、こうなっていますが、その助成の規定がごく一般的で、具体的には何の施策を助成するのかということが条例上でははっきりしません。現実には、東京都の防災のさまざまな施策の予算が年々減っていて、防災空地の区市町村の用地取得に対する助成などは、今年度から凍結されていますよね。なくなっちゃったということがあります。ですから、この条例で、ごく一般的に、助成することができると書かれているだけでは、具体的な施策に対する助成がどんどん切られていく心配が生まれると思いますけれども、その点はどうでしょうか。

○岡部災害対策部長 今回の新条例案の中では、基礎的自治体である区市町村と連携協力して防災対策を進めていくということが前文で書かれております。そういった中で、東京都は必要な支援、助成をしていくということになっていくと考えております。

○木村委員 条文も一般的なら答弁も一般的ということにならざるを得ない。どうもこの心配が当たりそうだ、行政の後退になりそうだというふうになります。
 第二条で、知事の基本的な責務ということで、震災後の都民生活の再建ということがうたわれていますが、第二条に都民生活の再建がうたわれているだけで、具体的にどういうふうに都民生活を再建するのかというのがその後全然出てこない、書いてないというんですが、これはどういうふうに具体化されていくのか、その点を説明していただきたい。

○岡部災害対策部長 震災後の生活再建のことでございますが、第四章の復興対策ということで、震災復興体制の確立を図るということで条文に明記しております。その中で、現在進めています復興マニュアル、それから生活再建マニュアル等を着実に実行していく計画を作成するということになっております。

○木村委員 先ほど丸茂さんが三宅村のことでいわれましたけれども、復興マニュアルとか、そういう前に、現に被災者が生活をどう立て直していくかということに直面しているという事態がありますね。そういう中で、どんどん、三宅村の人も含めた再建計画なり会議なり検討していくべきじゃないかということも含めて、復興マニュアル、復興計画というものが出る前に、復興で、生活再建を事前に東京都が考えていく、もっと具体的に考えていくということが必要だと思います。そういう点で、この条例は非常に不十分な点があると思います。
 最大の問題は、一般建築物に対する耐震診断というのを削除した点にあります。これは前沢議員が既に指摘したところです。震災予防条例の改正についての最終のまとめには、わざわざ、現行規定の必要と認める一般建築物に対する耐震診断については、原則として都民、事業者の責務であることから、削除するというふうにうたわれています。自助、共助というものが強調されることが行政の後退につながらないかということが、ここに明確に具体例としてこの条例改正で出ているというふうに思いますが、その点についてはいかがですか。

○岡部災害対策部長 前にもお答えしましたとおり、一般建築物につきましては、所有者または管理者が行うべきことを考えております。ただ、耐震性、耐火性の確保は地震に強いまちづくりのためには重要なことでございますので、耐震診断の助成につきましては、地域の実情を把握しています区市町村が行うべきと考えております。これまでも、各区市町村が現実に実施してきております。都は、耐震診断の講習会等を通じまして、耐震技術者の育成等、技術面からの支援を実施してきたところであります。新条例では、この辺の方針を明記したものでございます。

○木村委員 一般建築物は、その所有者の物だから、その所有者の責任でやってもらいたいと。ただし、まちづくりの上では重要だから、診断助成は区市町村がやっていると。区市町村がやっているんですよ。で、区市町村は何をいっているか。東京都に財政支援をお願いしたいと、区長会からも要望が出ていますよね。東京都は何をやっているか。講習会をやっている。毎年講習会をやっていますよ。しかし、講習参加料は八千円、診断士の講習のテキストが三千円ぐらいだそうですが、参加者の負担ですよ。そして、講師を呼ぶ。講師の謝礼、これも参加者の負担です。東京都は何も負担していないんですよ。だから、やっているというけれども、やっているうちに入るかどうかというような仕事なんですね。
 木造住宅については、阪神・淡路の大震災の犠牲者が、そのうちの九割までが一瞬のうちに倒壊した住宅によって圧死したということは、もうご存じのとおりだと思うんです。阪神・淡路大震災の教訓を生かすとすれば、まさに木造住宅の耐震診断と耐震改修の助成に行政が力を入れるということに教訓の生かし方があるんじゃないかと思いますけれども、阪神・淡路の教訓から学んで、耐震診断の必要性というものは感じておられませんでしょうか。

○岡部災害対策部長 東京都では、耐震診断につきましては、既に講習会等で、先ほども申し上げましたように、約二千七百名の専門技術者を養成しているところで、これは、広く一般に閲覧に供しているところでございます。そのほか、昭和五十六年以前の建物につきましては、東京都既存建築物耐震改修促進実施計画、これは平成十二年七月にできたものですが、今後、これに基づきまして、区市町村と連携協力しながら、耐震診断の事業に取り組んでいくというふうになっております。

○木村委員 私の聞いていることにちゃんと答えてください。阪神・淡路の教訓というのは、何といっても、古い木造密集住宅を、とりあえずみんなの命を守るように、耐震診断して改修するというところにあるんじゃないのかと、阪神・淡路大震災からの教訓を学べば、これを削除するというのは逆じゃないのかということを聞いたんです。
 東京都が法に基づいて既存建築物耐震改修促進計画というのをつくっていると、私も承知しています。どう進ちょくしているのか。何にも進ちょくしていないですよ。人が集まるいろんな劇場とか、あるいはパチンコ店とか、そういうところの建物のリストをこれからつくる、それがこの計画です。一般住宅なんか一切入っていません。講習のことももう一回いいましたけれども、講習は、ほとんど参加者の負担でやっているんですよ。講師料まで参加者に出させている。
 確かに木造住宅は個人の財産という側面はありますけれども、しかし、災害時を考えれば、住宅が倒れれば、道路は使えなくなる。道路が使えなければ、消防車が来ても出火点に近づけない、燃え広がっていくということがあります。ですから、阪神・淡路大震災における木造密集住宅の倒壊ということが、死者を一挙にふやしたということだけじゃなくて、あの地域の大災害の直接の原因になったということは明らかだと思うんですね。ですから、個人の財産という面はもちろんありますけれども、これを援助して倒れないようにするということは、公共の側面を持っていると私は思うんです。そういう点はどう検討されたのでしょうか。

○岡部災害対策部長 木造建築物につきましては、これは、まちづくりの促進のために、住民参加型の計画の策定を防災都市づくりを進めるための整備計画として位置づけておりまして、また、災害における弱者が、多くは木賃住宅に住んでいるということもございます。これを、木賃住宅のその所有者の責任をこの条例の中で明らかにしているということで、弱者以前に、まず所有者の責任を明らかにして、耐震の構造の建築物をつくるよう指導していくということになっております。

○木村委員 弱者が木賃住宅に住んでいる場合もあるでしょうけれども、自分のうちにも住んでいるんですよ。阪神・淡路大震災では、自分のうちの下敷きになって死んだ人がたくさんいると。六千人といわれる犠牲者のうちの九割がそういう事態だったというところからいっているのであって、何か木賃住宅に住んでいるから--木賃住宅というと、アパートでしょう--家主の責任とか、そういうふうに話をそらしてもらっちゃ困ると思うんですよ。
 私がなぜそういうことをいうかというと、阪神・淡路大震災のあの教訓から、お隣の川崎市や横浜市は本当に深刻な教訓を学んで、自分たちのところで耐震診断の助成と耐震改修の助成を始めているからなんですよ。前沢さんがもう既に紹介されましたけれども、川崎の場合は、耐震改修といってもお金がかかるし、何とかかからない方法はないかというので、竹中工務店とタイアップして金具を開発をして、何十種類かの金具をただで、自分でやるという場合には貸与しますと、そういう方策でもって進めていますよね。その前にもちろん耐震診断は援助して、補助してやるということですね。
 横浜の場合は、川崎と違って、阪神・淡路大震災が終わってから、半年間、診断士を養成すると。今、東京都は、毎年講習会をやっていますといっていますね。あれから五年間。だけど、横浜の場合は半年でやり上げたんです。そして、その横浜市の診断士を横浜の全行政区に張りつけて、そして、その診断は無料なんです。ですから、耐震診断の実績は、ほかの自治体の実績から比べると二けた多いんですよね。何千という世帯です。そして、その診断を受けて、診断の結果が出ます。〇・七というポイントになると、これは震度六ぐらいになると倒壊するという診断です。これは市の診断士が出した結論。で、そこのおうちには、まず、改修のために二百万円の助成ですよ。しかし、壁などをふやさなきゃならないとかということになると二百万ではできないというので、あと四百万円、無利子で融資します。計六百万。自己資金なしで耐震改修が行われます。
 私、話を伺ってきましたけれども、大体百件ぐらいを予算組んで、ことしは全部使い切ると。使い切っちゃうけれども、年度途中でこれはもう足りなくなりそうだと市長にいったら、市長は予算は心配するなというふうにいったというふうに担当の人はいっていました。つまり、同じ阪神・淡路大震災の教訓を学ぶのでも、東京都と横浜市では全く逆じゃないですか。こちらは条例改正して、わざわざ削除すると。この違いをどう考えますか。

○岡部災害対策部長 耐震診断等の助成につきましては、地域の実情を把握している区市町村が行うべきものと考えております。これまでも、区市町村が事実、実施してきております。都は、広域的立場から、こういった区市町村の技術者の育成とか技術面の指導というものをやっていくということになっております。

○木村委員 区市町村がやっているといいますけれども、区長会の要望は、区のやる震災対策についての財政支援をお願いしたいという項目が出されていて、その中には、区が民間の建築物、民間の保育園なり、民間のさまざまな建物の耐震診断もやらなきゃならない。等と書いてありますので、住宅のやっているところもあるんですよ。しかし、それは区市町村の財政力だけではなかなかできないということで、要請が上がっているんですね。
 ですから、そういうことも含めて、つまり、ほかの自治体のやり方や、それから、現に東京でも、この区市町村がやっていることで悩んでいることについてその支援をするというのが東京都の立場であって、条例改正するときにわざわざそこを削除するというのは全く間違いだということを私は申し上げたいと思うんです。
 これは、何も私たちがいっているだけじゃなくて、阪神・淡路大震災のときに、一気に何千人も住宅がつぶれたことによって圧死したということがわかった後の都議会の中では、やはり耐震診断やるべきだという声が各会派から出ていますよね。
 ちょっと紹介しますと、都市・環境委員会で、当時、一九九五年二月ですから、直後ですけれども、公明党の石川議員の、これはマンションのことでいっていますけれども、先ほどマンションも大変だという話が出ましたから……。できましたら、今後の課題でございますけれども、この調査費に対する何らかの助成ができないかどうかにつきましても、検討していただきたいと要望しておきますと。マンションの耐震診断ですよね。つまり、阪神・淡路大震災の直後は、みんなこれが常識だったんです、東京都がやるべきもの。それが、五年たって、ついに削除というのは、私は、話が違うなというふうに思います。幾ら自助だの共助だのいっても、これは違うと。
 次の問題ですが、前文で、先ほどから出ていますが、区市町村がという話がありました。第一義的責任と役割を震災対策の推進に当たって果たすということが書かれております。確かに区市町村の役割というのは大きいと思うんです。しかし、第一義的役割、第一義的責任というふうにわざわざ前文で書くというのは、これは何かと。区市町村が第一で、東京都はそれをバックアップしますよと。ある意味では、東京都の身軽、後退というふうに解釈することができるんじゃないでしょうか。
 しかし、果たしてそれが現実に合うことか。例えば、東京の場合は、水道を初めライフラインというのは東京都がやっているし、広域的にやっているわけだし、何といったって警察だって消防だって東京都だから。そういう意味で、この第一義的責任ということを、コンセプトを前文でうたっているということは、東京都の役割の後退につながらないかということをまず聞きたいと思います。

○岡部災害対策部長 災害対策基本法では、区市町村の責務としての避難勧告、指示、避難所の運営など、被災地域を直接管轄する区市町村の役割を第一義的責任と、役割を定めております。新条例では、こうした区市町村の役割を重視していることから、災害対策基本法を上回る、あるいは補完する事項として、都は、区市町村が行う地域における相互支援ネットワークづくりなど、区市町村が主体の事業に対し支援協力するということ、次に、災害時における帰宅困難者対策など、区市町村と対等協力の立場から実施する震災対策全般につきまして、区市町村と連携協力を図り、施策の総合的な推進を努めていくということになっております。

○木村委員 災害対策基本法に、区市町村が第一義的に責任を持つなんて書いてないですよ。それは条文にはいろいろ、区市町村の役割について重要だということを意味するいろんな役割は書いてありますけれども、第一義的なんて書いてないですよ。逆に、災害救助法には、第二十二条に、都道府県知事の任務ということが明記されています。むしろ、どちらが第一でどちらが第二かというんじゃなくて、国も、都も、区も市もみんな第一であって、一緒にやらなければいけないということなんであって、区市町村が第一義的というふうに殊さらいうのは、東京の災害の実態からいっても、あるいは財政力の実情からいっても、実態に合わないと私は思うんですよね。
 例えば千代田区なんか、どうするんですか。昼は、居住人口の二十倍の人が昼間人口でいるんでしょう。夜はどうか、夜、災害になったときは。千代田区役所の管理職が七十七人いますけれども、一番新しい職員名簿で管理職の住所を見ましたけれども、千代田区在住は、千代田区長と、あと広報課長一人ですよ。七十五人はみんな千代田区外ですよ。だから、そういう意味では実情に合わないんですよ、殊さら区市町村が第一義の責任というようなことをいうのは。その点はどういうふうに検討されましたか。

○岡部災害対策部長 災害が発生した場合、何よりもまず、被災地の地域を直接管理しております区市町村が当たるということになります。それは避難所の運営等、避難指示、勧告等にあらわれているということで、まず区市町村の役割が重要だと考えております。

○木村委員 区市町村の役割は重要なんですよ。もっと頑張ってもらいたいという思いは、区市町村に対しても僕は持っていますよ。災害というと東京都にいわれてやっているみたいな区もなきにしもあらずという感じというのは、それは、恐らく担当者から見ればあるんじゃないかと思うんですね。もっと積極的にやるべきだと私も思います。また、さっき国分寺の地域危険度の詳細な図面をお見せしましたけれども、多摩の方では、いざというときは東京都なんか当てにならないという思いがあるのかもしれない。だから、非常に進んでいるという経験も出ていますよね。だけど、第一がどこで第二がどこだとか、第一はおまえのところだから、おれたちはそれを連携してやっていくよと、そういうことをわざわざ前文で、震災対策の構えとして、コンセプトとしていう必要があるのかどうかということを聞いたんです。それで、千代田区のような一つの例を出したわけです。
 それでは、その千代田区に大いに関連しますけれども、今度の条例では、帰宅困難者の対策の問題が盛り込まれました。これは非常に大事だと思うんです。大事な点が盛り込まれましたけれども、条文では、何をやるかというと、「あらかじめ徒歩による帰宅経路の確認、家族との連絡手段の確保その他必要な準備を行うよう努めなければならない。」と。これだけでいいのかということなんですよ。何十万ですよね。百万人、何百万という帰宅困難者が生まれる。帰りの経路は、歩いて帰れる道をちゃんと確認しておけよということだけでいいのかと。もしそれだけしか対策がないんだったら、本当に大災害が起こったときには大混乱するんじゃないでしょうか。その点はどうでしょうか。

○岡部災害対策部長 帰宅困難者対策については、新しい課題になっております。東京都は、震災時における昼間都民対策推進計画を策定しておりまして、区市町村、近隣六県及び事業者などと連携協力して、対策に取り組んでおります。今回の新条例の趣旨に基づき、さらに一層、普及啓発、事業所、集客施設における対策などに今後とも取り組んでいきたいと考えております。

○木村委員 この点では、事業者の責任というのは非常に大きいと思うんです。そして、その事業者の責務を明確にさせるのは東京都の仕事だというふうに思います。そういう意味で、もっとより明確にするようにすべきだと思います。
 さて、条例の最後の方になりますが、第四章は復興対策となっています。この第五十五条、第五十六条を見ますと、住民参加ということが書かれていない。これが問題だと私は思います。第二条には、知事の基本的責務として、震災対策事業計画の策定に当たっては、都民、事業者及びボランティア並びに防災組織の意見を聞くように努めなければならないとわざわざ書いてあります。五十六条の震災復興計画の策定にはその規定がないのは一体なぜでしょうか。第二条が準用されるのか、それとも、震災復興計画については住民の意見を聞く必要はないということなのか、どうなんでしょうか。

○岡部災害対策部長 都民の意見などの反映につきましては、前にもお答えいたしましたように、復興の取り組み事業も含んでいる震災対策事業計画の策定に当たりましては、知事は、改正条例案の第二条第三項により、都民等の意見を聞くように努めるということになっております。また、本項の都民への周知の中には、既に都が作成した都市復興マニュアルの中で、都市復興計画の策定過程で都民の意見を聴取することも含めたものでありまして、都は、震災対策事業全般にわたって都民に対し十分な意見聴取の機会を設けていることなど、都民参加を図っているところでございます。

○木村委員 復興計画も含まれているんですね。確認です。といいますのは、第四十三条の2では、避難場所を指定することでは都民は意見を述べることができるというふうに書いています。復興計画では、震災復興に関する施策及び手続は都民に周知をするということになっています。避難場所を指定するときは意見がいえると。復興に関する施策及び手続については知らされるだけ、周知するというふうになって、使い分けられています。この点はどのように解釈したらよろしいんでしょうか。

○岡部災害対策部長 先ほども申し上げましたように、復興の取り組み事業を含んでいる震災対策事業計画になっておりますので、広く都民の意見を聞くようになっているということでございます。

○木村委員 この五十六条に書かれています震災復興に関する施策及び手続ですが、この施策の中には、先ほどお話がありましたように、東京都都市復興マニュアルに位置づけられるものがあるというお話でした。ということは、五十六条でいう施策、計画の中には、ことしの九月、東京都が発表しました震災復興グランドデザイン、中間のまとめですが、これが含まれるということでよろしいでしょうか。

○岡部災害対策部長 震災復興計画は、震災により重大な被害を受けた場合、速やかに計画的な都市の復興を図るため、広域的な見地から、震災後に策定する計画でございます。一方、震災復興グランドデザインは、この震災復興計画の策定及びこれに基づく震災復興事業の円滑化を図るため、あらかじめ震災の前に策定するものでございます。

○木村委員 つまり、これが具体化されると。あらかじめこれをつくっておくけれども、これをもとにして具体化していくんだということになるわけなんですね。これは総務局がつくったわけじゃないんでしょうけれども--都市計画局ですか、一言でいうと、どういうような内容でしょうか。

○岡部災害対策部長 震災復興グランドデザインの策定でございますが、復興まちづくりを迅速に行うためには、復興後の都市像について、あらかじめ都民とイメージを共有していくことが必要でございます。そのための震災復興グランドデザインを策定するということになっております。

○木村委員 「震災復興グランドデザインとは」という文章が一番最初のページにありまして、要するに、地震が起きて甚大な被害が起きてきたということが書かれていて、そして、震災が起きるたびに被害が繰り返されるのは、都市を復興させる際に抜本的な都市改造を行うことができず、将来に課題を先送りしたことが大きな原因と考えられる、震災復興グランドデザインは、このような歴史の教訓に真摯に耳を澄まして云々ということで、この目的が書かれていますね。
 都市計画局がこのグランドデザインを発表したときに、都議会の都市・環境委員会でも、各党の委員がこのグランドデザインについて論議をしております。特徴は、どこの党も、非常に強い疑問、これが必要なのかという疑問を持っている。
 つまり、今度震災が起きたら、いつも起きるたびに被害が起きないように、次の震災に向かってまちを抜本的につくりかえなきゃいかぬ、そのためのグランドデザインだということですよね、さっき読み上げたところは。ですから、グランドデザインのアウトプットイメージの中には、震災復興の戦略プロジェクト構想の中で、主要な戦略プロジェクトを提示する必要がある、震災復興ということを強く意識して大胆な提案を盛り込むというふうになっていまして、あらかじめ、東京じゅうのまちがどう変わるか、都心部は、国際ビジネスセンター構想ですね。それから、環状六号線から環状七号線にかけての広く被災が想定される地域、中央線沿線や多摩地域で被災が想定される地域においては、密集市街地を解消して、次の世代をリードするライフスタイルが展開される住宅市街地を創造するということで、密集住宅市街地は、イラストが書いてありますが、全部アパート、緑豊かなアパート群に変わるというふうになっています。江東区や、下町の方は、高規格堤防の整備によって地盤をかさ上げしてということで、全くイメージが一新するというふうになっています。
 これはまことに大胆な提案ですが、これに対して委員会では、例えば大西委員、まことにいいことをいっています。本当にそのとおりだと、私は議事録を読んで共感しました。こういっているんです。震災によって大被害が一たん発生することを前提にしている、この辺が私はどうも腑に落ちないところなんですねと。この復興計画を実現できれば、次の次の震災に対しては被害が軽減できるというものであれば、なぜ、次の次じゃなくて、次の災害に備える防災計画として今から実現に向けて努力しようとしないのか、その意味で、この計画の姿勢には根本的な疑問を感じているんですと。私はそのとおりだと思うんですよ。私はあくまで現在いるこの時点からスタートすべきじゃないかというふうにもいっています。
 確かに、現実には所有権が細分化されていたり地権者が承知しなかったりしたということで、地価が高くて購入できなかったりして、いろんなプロジェクトが実現されていないと。大地震後といえどもこれらの状況が存在しているんだから、何か大幅な権利制限、強制的な手段によって実現しようとしなさるんじゃないかなと思うんですけれども、もしそうであるならば、どんな手段を講じるのかという心配ですよね。これに対して、都市計画局の方はその心配を否定していませんよ。いわば私権制限ですね。ですから、大西委員は、不幸にして大震災が起こるかもしれません、その場合には、被災者は家族や知人の介護、そして生活の復旧などで大変な思いをすることになります、いわばどさくさに紛れてそういうときに強権が発動されたりするようなことのないようにしていただきたいということなんです。次の次の震災に対しての対策じゃなくて、次の震災にどれだけの人の命が助かり、そして、まちが壊れないか、強いまちづくりをする、このことに立ち返って、やはり復興グランドデザインというよりも防災まちづくりグランドデザイン的な発想、名前でもってやってもらいたいと。私が紹介したのは大西議員です。私は、これ、全面的に賛成です。
 今、やりとりで明らかになったのは、この五十六条でいっている復興のための施策、手続の中には、その施策の前提となるものとしてあらかじめつくったものが震災グランドデザインだというお話がありました。そうなると、重大だと思うんですよ。先ほどからの答弁で、住民の意見を聞くということはやりますというふうに何回もいっていますが、五十六条には書いてないんです、住民参加も、住民の意向の尊重も。意見をいうことができるとも書いてないんです。
 私は、これも実際に阪神・淡路大震災で起こったことだからいっているんですよ。あそこも同じようなことが起きたんです。そのために、住民が帰ってこようにも、区画整理や何かがもう進んでいて帰ってこれないという事態になって、実際の復興がおくれているわけでしょう。そういう意味で、私は、ここに改めて住民参加というのをやっぱり明記する必要があったんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○岡部災害対策部長 震災復興グランドデザインの作成に当たりましても、行政、都民、国民等の東京の復興についての積極的な意見交換を行うとともに、世論の形成を図るという手続をとるということになっております。また、復興計画につきましては、復興計画マニュアルの中で、例えばまちづくり協議会等の設置などを図るというようなマニュアルもございますので、都民に対して十分な意見聴取の機会を設けているなど、都民参加を図っているということでございます。

○木村委員 せっかくそういうご答弁をいただいたので、これ以上の押し問答はいたしません。ただ、これまで私が申し上げてきたものは、現行の条例は、地震災害を自然現象である地震そのものときっちりと区別をして、その災害の社会的性格を見据えて、人間の英知と努力と技術で被害を最も少なくしようと、そのために都民と都が一体となって東京を震災から守ろうじゃないかという決意を表明した。そういう前文が掲げられた、全国に先駆けた条例としてあります。
 しかし、今回の改正案は、地震と震災の区別もつかず、人災の予防よりも、災害は避けられないという立場から、危機管理の重視へとコンセプトが変わりました。都民には自助、共助、区市町村には第一義的責任を強調することによって、都政の責務が後退する危険が非常に心配されます。そして、いざ復興計画となったら、新たな都市づくりの段階で都民を締め出す、そういう条文になっているといわざるを得ない。確かに、二十九年間で、新たな情勢を生かしてつけ加えられた大事な点もあることは認めますけれども、震災から都民を守るという最も基本的な立場が逆転して、自治体の魂を失った改悪となっているということを強く指摘して、私の質問を終わります。
 以上です。

○今井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○今井委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。

○今井委員長 次に、報告事項、平成十二年度行政評価制度の試行における評価結果について外二件を一括して議題といたします。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求をいたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について、理事者の説明を求めます。

○高橋総務部長 十一月二十九日の当委員会におきまして、報告事項に関しましてご要求のございました資料につきましてご説明をさせていただきます。
 資料第1号、総務委員会要求資料の五ページをごらんをいただきたいと思います。行政評価制度の試行における成果と今後の課題についてでございます。
 試行の成果として、本格実施に向けました諸課題の内容と、その他の今後の主な課題につきましてお示しをしてございます。
 六ページをごらんをいただきたいと思います。財団法人東京女性財団についてでございます。
 財団の設立趣旨、これまでの成果、課題、廃止といたしました検討経過、女性の社会参加及び財団廃止に向けましてのこれからの取り組みにつきましてお示しをしてございます。
 七ページをごらんをいただきたいと思います。人権擁護推進審議会の「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」でございます。
 平成十二年十一月二十八日に公表されました国の人権擁護推進審議会の「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」につきまして、その骨子をお示しをしてございます。 以上、簡単ではございますが、説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○今井委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○丸茂委員 今回、行政評価制度の試行における評価結果報告書と、こういう分厚いものをいただいたわけですけれども、それを見て、何点か伺いたいと思います。
 「はじめに」にも、「都民の皆様から評価方法、評価結果等についてご意見を頂ければ」と、こういうこともありますので、率直に私が感じたことを含めて、お伺いをしたいと思います。
 まず最初に、事務的なことにもかかわるんですけれども、五ページで、評価結果の活用というのがありまして、そして、試行のプロセスが示されています。ここでは、平成十三年度本格実施という流れが書かれているんですが、それじゃ本格実施のプロセスはどうなっているのかというのは全く見えませんので、どういうプロセスになるのかなと。
 なぜこれを聞くのかといいますと、この〔2〕には、評価結果については、事務事業の見直し、予算編成等にできる限り反映していきますと、こういう仕組みになっているわけですよね。そうなりますと、なるべくその見直しや予算編成に当たっていろいろな検討をされて、その上、さらに都民のさまざまな意見も反映して、検討がされるべきだろうと。この試行のプロセスだけ見てみますと、政策会議に報告した後、公表して、都民の意見を聞く。それと、政策会議に報告された後は、事務事業の見直し、予算編成は並行して進んでいくという形になっているわけですよね。したがって、そういう都民のせっかくの貴重な意見を反映するというのであれば、どういうプロセスで組まれていくのかということをまずお尋ねしておきたいと思います。

○中田参事 今の先生ご指摘の試行のプロセスは、来年度からの本格実施に向けました行政評価制度の構築に対して都民のご意見をいただくということを意図したもので、試行時の特有のプロセスということでご理解いただきたいと思います。本格実施の際には、評価結果をわかりやすく公表することによりまして、都民のご意見をいただきながら、事務事業の見直しなどに反映させていきたいと考えております。

○丸茂委員 ですから、そういう意味でも、やっぱり本格実施後のプロセスもわかりやすく、都民に、こういうプロセスで、こういう形で、この段階でご意見を寄せていただければこう反映できますよという工夫も含めてお願いをしたいというふうに、これは要望をしておきたいと思います。
 そういうもとで、行政評価制度については、国も、省庁再編と絡んで制度の導入を予定しているということも聞いております。その行政評価の中でも、政策評価制度については、既にアメリカ、イギリスで導入され、もともと、これはレーガンあるいはサッチャー時代に行革という路線に端を発して、行政の効率化を看板にして、実際には福祉や住民サービスの切り捨て、職員の大幅削減、こういうことが進められてきたという側面を持っているということを指摘せざるを得ません。
 私どもは、今国民や都民が求めているのは、やはりむだ遣いで環境破壊の公共事業に対する事業の見直し、こういうものに対して事業評価制度を確立して、公共事業の総点検が必要だと。その場合に、先日の委員会でも述べたんですが、一つには、事業の必要性、採算性、環境への三つの角度から十分な吟味をする、二つには、事業が始まっているからではなくて、計画、事前、事後の諸段階にわたる評価、特に計画段階での評価点検を重視する、三つには、住民、都民の参加を制度的に保障するということが極めて大事だと考えております。
 そうした角度で今度の評価結果等を見ますと、一つは採算性という物差しで見ますと、例えば市街地再開発事業で、活力に満ちた都市づくりの市街地再開発事業で、白鬚西地区、亀戸・大島・小松川地区、これが評価対象になっているわけですけれども、それぞれ優先順位等の順位づけを見ますと、都市づくりの関係では評価一なんですが、オープンスペースの創出では評価が四、そして第二次の評価では評価が四と、結果的には優先順位が高くなっています。こういう優先順位は、事業の貢献度というのが基準になっているからだと思うんですが、防災拠点としての、やっぱり採算性では図れない重要な役割。しかし、この地区は、私この前お聞きしますと、特に亀・大・小ですね、亀戸・大島・小松川地区の再開発事業では、マンションの売れ残り等も、総戸数二千六十七戸に対して二百四戸と、一割近くあると。また、未処分地もあると。こうした実態が考慮されないのかという、評価基準についての意見もあるわけです。
 私、なぜこういうことをいうかというと、一通り、どうやってこの評価を見ればいいのかなということで、さまざまな事業を全部、歳出決算額と、うち一般財源がどのくらい投入されているのか、一般財源の充当額はどうかと一覧表にしてみまして、一般財源、都民の税金が使われる事業はどうなのかなと。そうしますと、やっぱりこういう再開発事業というのは大変な税金がかかるわけで、そういう莫大な負担がかかる、税金投入される、そういう事業は、やっぱりいろいろな角度から評価をして、都民に明らかにする、そういうことが極めて大事じゃないかというふうに考えるわけですが、そういう評価の基準というんですか、見方ということについてどうなのか、お伺いしたいと思います。

○中田参事 今、丸茂理事から市街地再開発のお話が出たんですけれども、今回、試行におきまして、私ども、行政評価におきましては、規模の大きな事業から小さなものまで対象としまして評価を行ったところでございます。
 それぞれの事業の特性を踏まえて評価を行ったということで、その一例でございますが、ご指摘の市街地再開発事業のような、事業期間が長く、規模の大きい、こういった大型事業の場合には、評価する場合におきましては、例えば、これは効率性ではございませんけれども、達成度というところでは、他の事業につきましては単年度の達成度を見ているわけですけれども、こういった長期にわたるものにつきましては、累積といいますか、事業の進ちょく状況、こういったものも把握する、こういった工夫をとらえまして、複合をとりまして、事業の特性に合わせました評価を行ったというところでございます。

○丸茂委員 いろいろ小さな事業まで検討するということの必要性も否定はしませんけれども、今、都財政が云々、あるいは、都民から見て、一体この事業が本当にどういう実態にあるのか、どういう見直しが必要なのか、そういう点では、事業費が大きくかかわる問題について、やっぱりあらゆる角度から都民も判断できる、そういう評価をぜひしていただきたいというふうに思っております。
 次に、事業評価になじむかどうかという表現の仕方がいいかどうかわからないんですが、例えば、今度の評価の中で、試験研究機関の運営関連事務事業という枠で、いろいろ検討がされております。例えば、試験研究機関では、事業局の第一次評価がBで、総務局の二次評価はDと、産業技術研究所の運営等ではそういう評価になっているんですね。
 だけど、こういう試験研究機関というのは、民間企業でも、十年、二十年といろいろ研究して、一つの成果に向けていろいろ積み重ねがあるわけですよね。そういう中で、長年かけてもなかなか成果に結びつかない、そういう研究もあるし、また、その長年の蓄積した中から新しい成果を生み出す。極めて基礎的な研究というのは、相当の期間も含めて、さまざまな問題を抱えているわけですね。したがって、成果がどこまで到達できるかをある程度の目標をつけますと、一般の企業と違って、非常に大きな乖離があるんじゃないかというふうに思うわけで、その点で、事業評価の対象としてなじむのかどうか。その辺は、都民のこれからの意見も含めて、検討する必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○中田参事 試験研究機関も含めまして、都が実施している事業すべてにつきまして、評価の対象としていくことが可能であるというふうに考えております。
 理事お話しの試験研究機関でございますけれども、確かに短期間ですべての研究の成果が、当初予定していたどおりの成果といいますか、効果が出るかどうかというのはなかなか難しい問題があろうかと思いますけれども、そういった点も踏まえまして、あるいはまた、試験研究に関しまして外部評価を取り入れているということも徐々にできつつあります。こういった外部の評価の結果も活用しながら、ただいま先生がおっしゃったような、非常になじみにくい、そういった事業につきましても、的確な評価を行ってまいりたいというふうに思っております。

○丸茂委員 的確な評価というけれども、なかなかその的確な評価をしにくいし、逆にいえば、私はこの一つ一つの研究機関の中身を見ますと、非常に成果を上げているんですね、数字のパーセントを見ていても。それが結果的に、評価の最後の結論にいくと低いランクの評価がされているという点では、やっぱり評価そのものがなじまないか、評価の基準が一律ではこういう評価しか出ないのかなと、逆にそういう疑念を持つわけで、今、外部からの評価も含めてということですから、本当に正確に見れるのであれば、当然評価をして、都民にそれもまた公表して判断をしてもらうということが大事だと思うんですが、そういう試行段階でのいろいろな教訓の、まあ、結果ですから、ひとつ積み重ねて、これは検討していただきたいと思うんです。
 次に、バブル時代の大規模施設というんですか、今、箱物行政の中で負の遺産ともいえるようなそういう施設に対しても、都民からは、一体どのくらいランニングコストがかかっているのか、こういうものについてもやっぱり評価をきちんとして、判断をして、そして、なおかつ根本的な検討もしてほしいと。現に、この都庁舎や、ここでは江戸東京博物館だとか現代美術館だとか、バブル時代に大規模な施設が建設されたんですけれども、こういうものこそ、採算性を含めて、必要性も含めて、事後であっても、やっぱりしっかりと評価して、検討がされるべきだと。それによって今後の検討策も出てくるんじゃないかという意味で、こうした大規模施設の評価についてはどういうお考えなのか、聞いておきたいと思います。

○中田参事 今回の試行におきましては、政策評価関連の事務事業の一部としまして、理事のおっしゃいました都立文化施設、江戸博ですとか現代美術館、こういったものを取り上げております。その利用者動向ですとか事業別収支等を精緻に把握しまして経営分析を行うなど、施設の管理運営から施設経営への転換を図る必要があると、個々の評価ではありませんけれども、そういった概括的な評価をしております。個々についての評価はまたここでは省略させていただきますけれども、今申し上げましたような評価をしております。
 来年度からの本格実施におきましても、効率性の項目などを中心に、施設運営における費用対効果の面から評価を行い、施設運営の実効ある見直し、施設経営への転換と、そういった方に生かしていきたいというふうに思っております。

○丸茂委員 こういう評価は、現実の各事業の今後の見直し、また新たな事業に取り組むに当たってのステップにしていく大事な評価だと思うんですね。そういう点で、改めて、事業の必要性あるいは採算性、それから、今後、今問題になっている環境への吟味だとか、先ほど三点述べましたけれども、都民参加も含めて、公聴会等、やっぱり都民の意見を聞く場もつくりながら、検討をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

○木内委員 行政改革を遂行する上で、今日的に考えましても極めて重要な課題というのがIT化の推進ということでありまして、行革との関連ということで、このテーマについてお尋ねをいたします。
 我が党は、都政の厳しい財政状況を克服し、また都民サービスを向上させる上でさまざまな提言を行ってまいりましたけれども、とりわけ、この行革については先進的な提言を重ねてきているわけであります。
 既に、都政改革ビジョンの中間まとめが出ております。この中で、大きな柱としてIT化の推進を打ち出しているわけでありますけれども、時代の流れ、あるいは社会的背景、こうしたものを考えますと、この中間のまとめは時宜を得た施策である、発表であると、こういうふうにまず評価をしているところでありまして、先日の本会議の一般質問で、我が党の谷口議員がこれについての質問をいたしました。今月末には電子都庁推進計画の中間まとめが出される、こういうふうに聞いているわけでありますけれども、この計画の中間まとめに対しまして、検討状況と、基本的な考え方がどう位置づけられているか、まずお尋ねします。

○高橋総務部長 昨今の社会のIT化の進展には大変目覚ましいものがございます。こうした状況に的確に対応していくためには、都政の抜本的な改革に向けまして、ITの積極的な活用が大変有効であり、また欠かせないというふうに考えてございます。
 現在、電子都庁推進計画を検討中でございますが、年内に中間のまとめをさせていただきまして、年度内に計画として発表させていただく予定でございますけれども、この中で、現在基本的に考えておりますことは、ITを活用することによりまして、都民と都政の間の壁を限りなく取り払いまして、情報交流を推進をしていくこと、また、電子申請、届け出等、ITの特徴を生かしまして、都民サービスの新たな展開を図っていけるようにしたいということ、さらに、行政運営の高度化、効率化を図っていくということを目的というふうに、現在検討しているところでございます。こうした点を計画策定の基本的な考え方に据えまして、都庁のIT化の具体的な方向を示しまして事業の推進を図っていきたい、このように考えているところでございます。

○木内委員 今の答弁でも明らかでありますけれども、一つは、年内に中間まとめが発表され、年度内にその計画の策定が行われる、これに基づいて十三年度の事業が進んでいく、こういうふうに受けとめておりますし、もう一つは、今大事なところは都民サービスの新たな展開を図るという面と、それからもう一つは、行政運営の高度化、効率化を図るためのいわゆる庁内的業務の効率化を図るというようなことであろうかというふうに思います。
 そこで、この計画の位置づけについてでありますけれども、一口に都政のIT化といいましても、大変幅広いものがある、こう思うのであります。都は、ほかの道府県の自治体に類例を見ないほど広範な業務と膨大な組織を抱えているわけでありまして、したがって、施策の分野を眺めてみましても、都市計画や建設などのハード関係の事業があったり、当然でありますけれども、反面、医療や福祉、教育などのいわゆるソフト関係の事業がそれぞれの行政の分野で横たわっているわけでありまして、したがって、このそれぞれの分野でIT化を具体化していく、この作業というものは大変困難であろうし、また多様な課題を抱えているというふうに思います。したがって、この計画に基づいて来年度粛々と進められていかなければならないと思いますけれども、こうした個々の多様化する課題に対して、どういう展開で、この中間のまとめあるいは計画に従ってIT化が進められていこうとしているのか、伺います。

○高橋総務部長 お話のように、都は非常に広範囲な仕事を抱えております。このため、都政のあらゆる分野でITを効率的に進めていくためには、戦略的で段階的な取り組みが必要であるというふうに考えております。
 検討中の電子都庁推進計画の中では、パソコンネットワークの拡充など情報インフラの整備、それから、全庁的に共通します基幹的なシステムを中心に計画をしまして、電子都庁の基盤を確立していきたいというふうに考えております。こうした共通の基盤を整備することによりまして、各局におけるそれぞれの行政分野での多様なIT化の条件を整えまして、各局の取り組みを促進をしていきたいというふうに考えております。各局は、こうした共通基盤を活用しながら、それぞれの事務事業に即したIT化を計画的に進めることによりまして、行政の隅々まで、都民の立場に立った、魅力的で効率的なサービスを充実できるようにしていきたい、このように考えております。

○木内委員 具体的に、電子都庁のあるべき姿、またイメージを伺いたいんですが、先日、たしか郵政省ですか、郵便局を社会システムの中にネットワーク化していくというようなことの一環として、局における住民票や印鑑証明の手続が成るということが伝えられていましたが、私はかねて、恐らく二万以上の規模を有するこの郵便局などは、さきに発表になった住民票や印鑑証明などに限定されずに、さらにパスポートだとか免許の申請だとか、いろいろな社会システムの中に組み入れていったらどうかという提案をしてきたところでありますけれども、こうした国における電子政府が、具体的事例として着々と今結実をしていくということはもう時代の流れだというふうに思うわけでありまして、例えば、国におけるインターネットを利用した申請や手続、こういったものも実は議論をされている。
 一方、都庁では、現在、申請の様式などのホームページへの掲載が進んでいるわけでありまして、こういう状況がどんどん普及をしてまいりますと、いろいろな申請用紙等をとりに都民の方々はわざわざ役所や都庁に来る必要がなくなってくる。大変利便性の向上につながってくるわけでありまして、今後はさらに、自宅にいながら、インターネットでいつでも各種の申請や届けまでができるようになれば、まさに発想の転換、時代の大きな急展開になってくる、こういうふうに思うんです。こういう面はどんどん進めなければいけないし、さらに、考えられるあらゆるIT化、電子化というものを進めていくべきだ、こういうふうに思いますけれども、どうでしょうか。

○高橋総務部長 都庁には、現在、およそ二千種類に上る申請や、あるいは届け出の行政手続があるというふうに集計されております。これらの電子化を図っていくために、現在、全庁の調査分析を進めているところでございます。
 申請あるいは届け出の形態は非常に多様でございまして、手続上、対面による本人確認が必要なものでありますとか、現物の確認が必要なものでありますとか、証明書等の添付が必要なもの等、電子化になじむかどうか、こうした手続をよく整理をしていく必要がございます。また、本人確認あるいは改ざん防止等の電子認証の関係、また、電子申請のための社会的な整備の状況も十分に踏まえていかなければいけないというふうに認識をしております。
 こうした状況の中で、申請手続の内容等を十分勘案しまして、ITを積極的に活用しまして、利便性を高められるものにつきましてはこれの電子化を進めまして、例えば、ご家庭のお茶の間から、あるいはオフィスから二十四時間三百六十五日利用できるような、こういう電子申請、届け出の実現を目指していきたいと考えております。

○木内委員 私も、最近は、書籍の購入、検討を行うときは、インターネットを使って大型書店に申し込みまして、カードの登録番号を入れて、私の自宅は江東区の大島ですけれども、最寄りのコンビニまでこれが運ばれてきちゃう。もうこれは、五年、十年前には考えられなかったような展開でありまして、同時に、反面、気をつけなければいけないのは、まさに今いわれた本人確認の問題ですとか、あるいは改ざん防止の電子認証、クリアすべき課題は極めて多いのです。
 その意味では、私は、都民サービスも含め、業務改革も入れ、総務局のこれからの一年、二年の期間における使命と役割と作業というのは極めて大きなものがある、こんなふうに思っているのです。
 IT化とか電子化といいますと、どうもいい面ばかりが強調されるようですけれども、実は反面、極めてリスキーな面もあるわけであります。こうしたところを一つ一つ押さえ、そしてヘッジをしながら進めていくことが必要だ、このことはぜひ申し上げておきたいと思うわけであります。
 さて、そうした都民サービスの向上とともに、都庁内における業務改革、この業務改革というのも、実はIT化の大きな目的の一つであります。私の友人のソフトウエアハウスの人にいわせますと、これだけ膨大な陣容と組織を持ち、機械をそろえながら、効果的なコンピューター、パソコン等の利用をしていないのは、都庁が恐らく日本で最大じゃないか、こういう指摘をしておりました。
 たしか、三宅人事部長がまだ総務部長のときだったか、私、この議会の議論で申し上げたことがありますけれども、それから随分とご努力をされてきまして、レベルアップはしていると思いますけれども、民間のしのぎを削る現場の感覚からいきますと、決して十分とはいえないIT化である、こういうふうに思うわけであります。
 民間では、IT化の活用によって業務の抜本的改革を行い、組織の活性化、コスト削減を図っている。したがって、東京都庁におきましても、都民から見て、むだのない効率的な事業体制を構築していくための努力は、断じて欠かしてはいけない。むしろこれが今後の大きな行革、あるいは組織整備のかなめの一つであるというふうに私は思うわけですけれども、所見を伺います。

○高橋総務部長 現在の業務処理の中には、依然としまして、人手と紙による仕事が中心というものがまだ大分残っております。こうした点が実質的なコストの削減に大きな障害になっているということがいえるわけでございます。まず文書の電子化を図りまして、紙によらない効率的な情報管理を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 また、役所的な慣習ですとかルールにとらわれました煩瑣な手続、あるいは効率的でない事務処理もまた残ってございます。こうした手続や処理の根拠となっております関係規定、例えば様式等を定めておりますけれども、こういったものの徹底的な見直しを行いまして、業務の簡素合理化を図っていきたいというふうに考えております。
 こうした抜本的な業務改革を進めることによりまして、より安いコストでスピーディーに、質の高い行政サービスの提供を具体化していきたい、このように考えているところでございます。

○木内委員 IT化が成功するか否かというのは、このITを利用し、活用していく能力の向上が可能になるかどうかということであります。
 都民の皆さんを対象にしたIT技術の習得については、ディジタルディバイドの解消に向け、今後、全国的に国が自治体を通じて進めていくIT講習会があります。また、都においても、都民が情報機器を利用して活用する能力、いわゆる情報リテラシーの向上を図っていく、こういうことになっているのですけれども、一方では、電子都庁を支える職員の方も、その能力を高めていくことが重要である。設備はある、機械はある、環境は整っている、そうした環境に身を置いていながら、その機械を使うことができない職員の方々が余りにも多いわけであります。
 私は、さまざまな事務事業に関していろいろな問い合わせを関係局にいたしますと、恐らくパソコンが十二分に駆使されていればこんなものは何秒かで出てくるというようなデータや資料が、半日も一日もかかったり、どの局のどういう業務とはいいませんけれども、ほとんどの局でIT化への余地というものは残されたままになっている状態でありまして、聞くところによれば、東京都の持っている機能、レベルは恐らく相当高い。だけど、それを使いこなしていないという指摘が、これまでたびたびにわたって行われてきたのは残念なことであります。しかし、今回のこうした中間のまとめ等を初めとして、総務局が先頭に立って、こうした現状が改善をしていかれるのであろう、こう思うわけでありますけれども、都庁のIT化を支える職員をどのように養成していくのか、また確保していくことが重要な課題だと思いますが、いかがですか。

○高橋総務部長 IT化に向けまして、職員の養成と能力の向上策、大変重要であるというふうに考えておりまして、これは二つの観点からとらえております。
 まず一つは、職員全体の情報処理関係のレベルの向上をどうするかということでございます。もう一つは、IT推進の組織の中核となる職員をどう育成し、配置をするかというふうにとらえてございます。
 まず、職員全体の対応能力の向上でございますが、基本となりますのは、やはり職員一人一人のITに対する姿勢であるというふうに考えております。これには、興味を持ってパソコンに向かえるような日々の職場の環境づくりが大切であるというふうに考えております。また、研修にも工夫しながら、計画的に職員全体の情報処理、活用能力の向上に努めていきたいと考えております。
 次に、組織の中核となる職員につきましては、これまでも幹部職員研修の派遣等行っておりますが、あるいは情報化研修、これに加えまして、習熟度に応じた効果的な研修を実施していくことを考えております。
 さらに、人事異動におきましても、庁内でITに対する意欲と能力のある職員の公募を行いまして、推進組織に配置をしまして、電子都庁の実現の牽引役としての役割を果たしてもらえるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。

○木内委員 今、答弁にありました第一の分野、第二の課題、それぞれ今後の推進計画というものが具体的に立てられていくのであろうと思いますし、IT化を推進する組織の中核を担う職員を公募して、推進組織にどのように配置していくとか、どういった具体的な手法を経ていくのかということは、今後この委員会でまた議論を深めていきたい、こういうふうに思います。
 いろいろお聞きしてまいりましたけれども、都のIT化を進めていくためには、システム開発や業務の見直しとともに、社会の動きとの連携、あるいは都民のプライバシーの保護、先ほど申し上げたリスキーな点など、さまざまに配慮すべき、また克服すべき課題が多いのも事実でありますけれども、そうした課題を今日的に十分に認識をして、電子都庁の実現を図っていくことが重要だと私は考えているわけであります。
 最後に、局長から率直なご決意と、また考えをお答え願いたいと思います。

○大関総務局長 この電子都庁を進めるに当たりまして、いろいろ職員と議論をしたわけでございます。いわば、ワープロを単なるパソコンにかえるだけというようなことでは電子都庁にならないということで、IT化の進展の中で、飛躍的に都民サービスを向上させるということを考えたときに何が大事なんだ、こう考えると、やはりコストと時間と手続だろう、このように考えたわけでございます。
 そこで、ITの視点で徹底的に事務事業を見直しましてやっていこうということでございます。いわば、単に申請用紙が自宅で受け取れるというのは、これはファクスのレベルでございます。これをやはり自宅で、都営住宅にも入れる、病院にも入れる、あるいはお金も借りられるというようなことがこれからのあるべき姿だろう、こう思うわけでございます。
 ただし、IT化を進めていきますと、ご指摘にもありますように、これは万能ではないわけでございます。私なりに、やはり解決しなきゃならない課題というのは大きく三つあるのじゃないかと思っているわけでございます。
 一つは、ディジタルディバイドといいますか、ITの格差の問題があるわけでございます。パソコンが使える人、使えない人でございます。その使えない方に対して、どのような手法をとるかということでございます。これはやはりいろいろな手法を使ってアプローチしていかなければならない、解決法を駆使しなければならないだろう、こう思うわけでございます。
 二つ目は、セキュリティーの問題がございます。個人の情報の保護でございます。こういう点も、やはり注意しなければならないだろうと思うわけでございます。
 それから三つ目、私はこれからの大きな問題は、課税の問題が出てくるだろうと思っております。
 ご案内のとおり、ソニーなんか見ましても、ここ三年以内にITを使った商取引、三割以上に持っていくということをいっています。ソニーのような場合は、大企業の横出しでありますから、当然そこに発生する利益はカウントされますけれども、そうでない、単なるダウンロードしてもうけていく会社がどんどん出てくると思います。このところの事業税はどこで取るのだということ、これは大変な問題になってくるのじゃないだろうかと思っております。こうした面からの解決も、きちんとしていく必要があるだろうと思っております。
 ですから、いいことずくめではなくて、そういう面も配慮しながら進めていく必要があるだろうと思っています。
 いずれにいたしましても、行政の原点というのは、私なりに三つ考えております。やはり行政は、都民から見て、見られて、さわれて、動かすことができる都政、見られるというのはいわばガラス張りで、都政の中がよくわかるということでございます。二つ目は、都民が参加できる、さわれる、その中で意見が反映される、こういう都政かと思っております。それから動かすことができるというのは、主役である都民が、そのことによって都政を動かすことができる、この三つが、IT化を推進していくことによって、限りなく推進できるのじゃないだろうか、進展するのじゃないだろうか、このように思っております。
 私は、今、そういう視点の中で電子都庁を進めていきたい、このように考えております。

○木内委員 これは質問ではありません。今の局長の答弁を聞いて、大変私も胸を熱くしているのですけれども、非常に時代を見据えた先見性といいますか、冷静な分析を、今、行っていただきました。この推進に当たっては、総務局の使命は極めて重大であります。どうかしっかりご努力をいただいて、中身のある仕事をしていただくように要請をいたしまして、質問を終わります。

○坂口委員 それでは、資料要求をし、また質問通告をさせていただきました行政評価、それから財政監理団体、特にウィメンズプラザの問題、それから第三点で、これまた重要な課題で東京都の人権施策の推進指針、この三つをお願いしていたのですが、時間ももう大分押してまいりまして、当事者の方もいて、まことに恐縮であるわけでございますが、第三の人権問題については、すべて後に文書質問で、あす出させていただきたいと思います。そんなことで、よろしくお願いしたいと思います。
 まず第一点、行政評価について。前回もやりましたので、要点だけ二つくらいにまとめて、大きな方向だけ確認をしておきたいと思います。
 要求資料の、行政評価制度の試行における成果と今後の課題というものを出していただいたわけでございますが、この努力はまず多としながらも、今、局長がいみじくもいわれましたけれども、電子都庁化または情報化ということについて、目で見れる、そして、さわれて、においがかげるといったのは、かの飛鳥田さんでございますけれども、目で見てさわれる、参加できる、さらには動かすことができる、ある意味では真髄だと思うのです。そういう視点が、僕は行政評価の場合にも大変重要だ、そんなふうに思います。
 つまり、ちょっと図式でいうならば、行政の行政による行政のための評価であってはならないと思うのです。しかしながら、どこかが主体的に、私どもはこのような施策をやって、このような評価をしましたというたたき台がないと、これは大変多岐に上っておりますし、専門的な領域が多いわけですから、都民にもわからないということになります。
 要点は、先ほど局長のいわれましたことで、私なりにいわせていただくならば、都民のための行政評価になるような方向をきちんと見定めた上で今後やっていただきたいということであるわけでございます。
 東京都は来年度から本格実施をする、今までは、ある意味ではサンライズ、サンセット、特にサンセットをどう支えるかというようなところに大分力点があったように思うのですけれども、しかし、それだけではないですね。大変重要な、例えば福祉、医療、先ほども災害対策などについてやりました。この辺は、のど元過ぎれば何とやらという言葉もありますけれども、行政として、かなり積極的に取り組んでいかなければならない課題ではないかと思われます。
 そんなことで、今後行政評価、特に来年度からの本格実施に向けまして、わかりやすい公表といいますか、これは情報の公開ですとかアカウンタビリティーということにもなるわけですが、どのような工夫を加えていこうとしているのか、まず、基本的な考えをお聞きしたいと思います。

○中田参事 都が実施しますすべての事業は、税金を納めておられる都民のための事業でございます。したがいまして、都民生活に影響の大きい事業を評価対象として選定し、都民の視点に立ってわかりやすい評価を行い、公表し、都民からのご意見をいただくことが重要なことであると考えております。
 行政評価制度本格実施の際にも、評価票の内容やレイアウト等に精査を加えまして、事業の理解に必要な情報や的確な評価を簡潔に取りまとめ、よりわかりやすい公表となるよう、工夫をしていきたいと考えております。
 また、試行と同様に、評価内容の全文をインターネット等によりまして幅広く都民に公表していきたいというふうに考えております。

○坂口委員 今、インターネット等により幅広く都民に公表していくということがあったわけでございますが、IT化の要諦、これは情報化技術、科学技術全般についていえることであるわけでございますけれども、だれのために、何のために、いかように使うのか、それがポイントなんです。便利になればなるほど、このことが問われていきます。すべての科学技術についていえます。
 それで、これからの方向といいますのは、先ほどの局長答弁にもそのエッセンスがありましたように、情報の公開ですとか地方分権をどう進めていくか、防災の問題などもそれと無関係ではないですね。税財源の移譲、人、物、お金、情報など、どう地域に厚くしていくかということと無関係ではないわけでございまして、そのような方向にあります。
 また、できるだけ、自助、公助、共助という言葉も出てまいりましたが、市民参加、参加から参画へといってもいいかもしれないですね、そのような方向にございます。
 またインターネットの活用。インターネットの特徴といいますのは、これはもう申し上げるまでもなく、双方向性です。単一方向でなくて、放送局のようなものでなくて、お互いに情報のやりとりができる。局長は、ついこの間まで労働経済局の局長をやっておられたわけでございますが、労働経済局が、都みずから産業政策を審議会ですとか専門家を集めてつくるということは、ある意味では、放棄したという言葉がいいかどうかわかりませんが、見直しまして、そして市民からの提案、都民からの提案、一千二百万人も都民がいるわけですから、それに広くボールを投げかけることによって集めて、コーディネーションして、都として何ができるのかというようなまとめ方をしたというのは、まさにインターネット時代を象徴した一つの政策づくりのあり方を示しているのじゃないかと私は評価をしているものでございます。
 実績を上げることがこれから要求をされるわけでございますが、それと同じように、やはり行政評価の場合にも、インターネットにただ登録をして、データベースとして持つ、またはホームページを開示するということではなくて、これからの都民ニーズ、または今申し上げましたようないろいろなレベルの方がいると思うのです。ちょっと見たい、ちょっと知りたいというレベルの方から、積極的に提言、提案を出したい、その中間のところには、要望、要求を出したい、いろいろなグレードがあると思うのです。介護保険ではありませんけれども、五、六段階くらいに整理すれば整理できるのじゃないでしょうか。
 そういうことを意識しながら、これからは評価の結果を公表をして、そして前回申し上げましたが、これは次のプラン・ドゥー・シー、チェック、そして次のプランといくわけですから、政策報道室がやっておりますいわゆる政策の立案、最近の言葉でいいますと、それに伴うパブリックコメントということと無関係ではないと思うのです。
 ですから、政策の評価が、行政評価が次の計画にうまく連動していくような創意工夫が必要なのではないか、そのように思うわけでございまして、来年度からの本格実施に向けまして、それがどのような姿のものとして想定されていくのか、またどのように明らかにされていくのか、行政評価については最後の質問になりますが、お聞きをしておきたいと思います。

○中田参事 本格実施におきましても、政策評価、事務事業評価など、試行の基本的な枠組みは維持しながら、都が抱えます膨大な事業の中から、緊急性、必要性に応じまして評価対象を厳選し、東京構想二〇〇〇において示されます東京都政策指標を踏まえて、評価を行っていきます。さらに、その評価結果が施策や事業の見直し等に有効に活用されるよう、実効ある行政評価制度の構築に努めていきたいと考えております。
 なお、評価対象の選定基準、評価方法、評価結果のフォローアップ、これら具体的な内容につきましては、年内に策定します都庁アクションプランの中で明らかにしていきたいというふうに考えております。

○坂口委員 十人十色、百人百様の関心、また評価があろうかと思うのですが、公表の仕方、そしてまた公表するだけじゃなくて、インターネットの特性をうまく活用しながら、都民のための評価ができるような、そういう評価制度、または政策の立案制度との連携を考えていっていただきたいと思います。
 それでは次に女性財団について、これもいろいろな角度で代表質問、また一般質問等でもございましたので、若干ダブるかもしれませんが、基本的な分だけを確認させていただきたいと思います。
 まず、財団を設立して、いろいろな事業をしてきていると思うのですけれども、男女平等の社会的な風土づくりに一定の成果があった、そのように評価をしておられるわけでございますけれども、具体的にどういう評価があったというように生活文化局、所管局が評価をし、また総務局では受けとめておられるのでしょうか、まずお聞きしたいと思います。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 男女平等の社会的風土づくりの進展によりまして、法令等の整備や施設整備が進展したこと、企業等における参画促進やセクシュアルハラスメント対策、家庭内等における暴力対策の推進についての一定の理解が進んだことなどが成果であると、所管局から聞いております。
 総務局においても、同様に考えております。

○坂口委員 若干上滑りを避ける意味で、ウィメンズプラザ、女性財団の活動の実績を数字で示しております、例えばウィメンズプラザの利用状況などについて見ますと、平成九年度は約二万人、平成十年度は二十一万人、平成十一年度は二十二万人、一日にいたしますと六百名強くらいの数字がここに出ております。
 また、図書資料室の利用なども八万人から九万人くらいに達しております。相談室の活用等につきましても、一般相談、特別相談を入れまして、約六千件から七千件くらいという利用状況であることが確認されます。
 外郭団体、監理団体の評価の中では、三年間にわたりまして、効率的な事業執行、民間活力の活用といった財団活用のメリットが発揮できていないことである、そういう評価がなされているわけでございますが、振り返りますと、このウィメンズプラザも女性財団も、これからの男女平等参画社会を目指しての東京都の姿勢を内外に示すものとしてつくられたと私は認識しております。
 別の言葉でいうならば、シンボル的な存在としてつくられたと承知しているわけでございますけれども、今申し上げましたような効率的な事業執行、民間活力の活用といった団体活用のメリットが十分発揮できていないというような理由が述べられているわけでございますが、どういう理由からそのように判断をしてきたのか、総務局としての受けとめ方をお聞きしたい。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 実施事業に要する収入の大部分が都の補助金に依存しております。それから、常勤職員のすべてが都からの派遣職員であること、こういった点から、団体の活用のメリットが十分発揮されていないというふうに判断しました。
 改めて団体事業の性格に照らしまして、組織経営という観点から見ますと、メリットは発揮していない側面があると認識しておりますが、一方で、東京都男女平等参画基本条例など法整備がされまして、企業における参画促進や、家庭内等における暴力への対応など、男女平等参画は新しい段階を迎えておりまして、本庁と第一線が一体となって行政機関として強力に取り組む必要が生じてきたというふうに考えております。
 こうしたことを考慮した結果、直営化が最も適切と判断し、団体を廃止することといたしました。

○坂口委員 都政の基本的な方向は、先ほどの防災にかかわる震災対策に象徴されますように、できるだけ当事者に自己責任といいますか、自覚を持っていただいて、自立をしていただく、それを支援するという方向にあるように私は理解しているのです。
 それはある意味では、今までの大きくいえば中央集権国家体制といいますか、行政がすべて面倒を見るという形ではなくて、当事者みずからが権利と義務を自覚して、自己決定、自己責任を持てという方向だと思うのです。ですから、それを今内部化するということはどうなんだろうという、素朴な疑問がやはり出てこざるを得ないのです。しかし、そこで問われてくるのは、当事者自身がどう考えているのか、財団自身がどのような論議をしているのか、僕はそこのところだと思うのです。
 あの評価レポートを見ると、財団の方には大変僣越かもしれませんけれども、女性財団の経営改善計画、特記事項などには、書面で見る限り、何も記載されていないのです。それで財団自身の意思が伝わってこない。生活文化局は何か廃止したいようだという情報は伝わっているのですが、財団自身の熱い思いが、どうも伝わってきていないのですね。
 しかしながら、先ほどいいましたように、方向としては、内部化、外部化という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、できるだけ当事者、主体者の自律性を支援していくということが行政のこれからの一つのあり方ではないか、そのように理解をしているわけでございますけれども、財団自身の思いや考えが特記事項に何も記されていないということは、ないのかどうか。
 ただ、定款を取り寄せてみますと、こういうことが書かれているのです。解散及び残余財産の処分については、理事会及び評議員会において、それぞれ理事現在数及び評議員現在数の四分三以上の議決を経、かつ主務官庁の許可があったとき解散することができる、こういう歯どめがあるわけでございまして、それらとの絡みを含めまして、総務局としてどのように受けとめておられるのか、お聞きをしたいと思います。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 団体の廃止という都の方針を受けまして、団体としては経営改善計画を策定することは困難になったということから、お手元にお配りしました資料のような記載になっているということでございます。
 確かに財団の寄附行為では、理事会、評議員会で解散を決議する場合には四分の三以上の理事、評議員の賛成が必要でございます。そういったことから、今後、所管局を中心といたしまして、都民、理事及び評議員、そういった関係者に十分説明いたしまして、理解と協力を求めていくということになろうかと思っております。

○坂口委員 最後にいたしますけれども、男女平等参画に関する議員連盟などもありまして、いろいろとヒアリング等をやって、全体の動きは総務局としてもつかめているのではないかと思うわけでございますが、やはり当事者といいますか、女性財団そのものの活動が、もうちょっとつまびらかに、我々議会だとか行政だけではなくて、都民に明らかにされるという必要があるでしょうし、また財団そのものから、本当に存続をさせたいと、私自身の立場からしますと、冒頭申し上げましたように、積極的な姿勢を内外に示すための、ある意味ではシンボル的な存在としてウィメンズプラザ、女性財団が立ち上がってきておりますので、それをきちんと押さえた上で議論をしていかなければならないですし、また判断をしていかなければならないという思いがあるわけでございますが、当事者、わけても理事会ですとか評議員会ですとか、先ほど男女共同参画議連の話もいたしましたけれども、大変重要になってくると思います。
 これからは、先ほど出てまいりました情報の公開ですとか分権、またはまちづくり、特に福祉ですとか教育ですとか、大変地域に密着した課題が多くなってまいります。ある意味では地方分権時代の特徴だと思うのです。そういった際に、女性の社会参加というようなものをきちんと推し進めていくことなくして、本当の地方自治の発展ですとか民主主義の成熟はないのではないか、そんな基本認識を持っているわけでございまして、女性の社会参加はますます重要になってくる。
 最後になりますけれども、総務局としてどのように考えているのかお聞きをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 総務局としての考え方でございますが、国においても、男女共同参画社会基本法というものが平成十一年六月施行されました。また、都においても、先ほど申し上げました東京都男女平等参画基本条例が本年四月から施行されたことなど、男女平等参画は新たな段階を迎えているというふうに考えております。
 このような状況のもとで、現在、男女平等参画基本条例に基づく都や都民、事業者、それぞれの取り組みを明らかにした行動計画を所管局で策定中と聞いております。本条例に基づく男女平等参画施策の推進に、今後も本庁と第一線が一体となって努めていくというふうに考えております。

○前沢委員 私は、監理団体改革実施計画、これについて何点か質問をさせていただきます。
 この実施計画は東京都監理団体総点検結果と副題がついておりますが、六十二団体について、一つ一つ、設立目的であるとか現状であるとか、あるいは経営分析等々を行って、一定の判断を示す、こういう内容になっているわけでありますが、監理団体の改革という問題について、私は二つの角度があるというふうに思うんです。
 一つは、都民に役立つサービスについては、そういう団体については一層の拡充を図ることだ、このように思うんですね。それからもう一つは、明らかにむだがあるというものについては、徹底したメスを加えていく、そしてむだを省くという角度、こういう立場で改革の分析を行うべきだというふうに思うんです。
 この点で、後ほどまた触れますけれども、臨海三セクや多摩ニュータウン開発センター、こういういわゆる株式会社の抱えている累積損失は一千億円をはるかに超えているんですね。こういう問題について、本当に徹底したメスが入ったんだろうかというふうに、実施計画を読んで感じるんですね。
 ところが、一方、監理団体である東京女性財団、これがやり玉に上がっているということなんです。本年をもって廃止するという方針が示された。これに対して、今、多くの女性団体やウィメンズプラザの利用者から、突然の廃止方針に対して、財団の果たす役はこれからじゃないのか、存続してほしいという抗議や存続の声が上がっています。議会にも請願や陳情ですか、こういうものが出されていますよね。
 そこでお聞きしますが、この東京女性財団が発足して八年になるわけですが、財団の設立目的と、ここ三年間の活動実績及び果たしている役割、こういうものについて、どういう評価がなされているのかという点をまずお聞きしたいと思います。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 団体の設立目的でございますけれども、東京女性財団は、男女平等の社会的風土づくりを男女共同参加のもとに推進し、男女平等社会の実現に寄与することを目的として設立されたものでございます。
 その目的を果たすため、女性問題に関する研究事業、女性問題に関する研修、普及事業、女性にかかわる相談事業などを実施しております。
 最近三カ年の事業実績でございますが、年平均でいいますと、東京ウィメンズプラザの有料施設の利用者が約七万人、図書資料室の利用者が約八万五千人、相談者数が約六千人となっております。
 これまでの評価でございますが、研究、研修、情報提供、相談等の事業を都民、団体等と連携しながら実施してきておりまして、事業実績の面からは、男女平等の社会的風土づくりに一定の成果があったというふうに考えております。

○前沢委員 この女性財団の事業は、もともと都の直営の事業で行う、そういう内容のものだったと思うんですね。ところが、総定数の削減という方針が出されて、そしてやむなく外に出されて、財団として仕事をするようになったという経過だと思うんですよ。
 したがって、設立の当初から補助事業であったり委託事業であるということで成り立っているわけですよね。最初からそういう団体なんですよ。そして、収益など効率的な経営を徹底的に追求していくような性質の団体ではないことは最初からわかっていた。だから、関係者にとってみれば、今さら何だという話になるんですよね。これは怒るのは当然ですよね。
 そういう点で、廃止の理由というか、これはもう明らかに財政的な問題以外に何物もない、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 財団廃止の理由でございますが、女性財団は、都の直営に近い組織、経営状況にございまして、効率的な事業執行、民間活力の活用といった団体活用のメリットが十分に発揮できているとはいえないものでございました。
 一方、東京都の男女平等参画基本条例など法整備がされてきまして、企業における参画促進や家庭内等における暴力への対応など、男女平等参画は新しい段階を迎えております。
 こういったことから、本庁と第一線が一体となりまして、行政機関として強力に取り組む必要が生じてきました。このような状況から、団体事業を直営化し、団体を廃止することとしたものでございます。

○前沢委員 先ほど来出ているように、この東京都男女平等参画基本条例が、ことしの三月の第一回定例議会、ここで制定されました。こういう条例に基づくさまざまな施策の展開がこれからというときに、廃止の方向が打ち出される。都議会の男女共同参画議員連盟が去る五日に、この廃止方針について局の説明を聞きました。同席をされたこの財団側の方から、こういう話がありましたね。理事と評議員に来てもらって説明しました、賛成は全くない、みんな反対だ、こういうことなんですね。
 そこでお聞きしますが、来年度から廃止するというのに、理事会も評議員会も開かれていないんです。そこできちっとした論議も何もない。説明だけはされて、とにかく賛成はなかった、反対ばかりだったということがいわれました。そして、全く一人の賛成者もいないという中で、廃止を強行する、今年度限りで終わる、しかも、予算も局要求にもないということでしょう。このままいったら、三月をもって--四月から何の予算的な措置もないまま、まさに兵糧攻めに遭うような形でなくなってしまうという、本当に情けない、都政にとっても、こんなことをやったら大変な問題ですよ。そして、こんなことは、関係団体はもちろんのこと、到底都民の納得は得られない、このように思います。本当に人権無視、甚だしい人権無視だといわざるを得ない。余りにも性急で乱暴なやり方じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 女性財団は、設立当初から事業収入の大部分を都からの支出に依存した経営となっております。平成九年度及び十年度に実施しました経営評価においても、一層の努力を必要とする経営状況である、そういう評価でございました。
 一方、先ほども申し上げましたが、東京都の男女平等参画基本条例などの法整備がされまして、企業における参画促進や家庭内等における暴力への対応など、男女平等参画は新しい段階を迎えております。行政機関として強力に取り組む必要が生じてまいりました。
 このような経過を踏まえまして、今回の総点検の中で、団体の設立趣旨にまでさかのぼった見直しを行った結果、団体を廃止するということにしたものでございます。
 所管局では、団体事業の直営化及び団体廃止の方針について、都民、理事及び評議員等関係者に十分説明いたしまして、理解と協力を求めていくと聞いております。

○前沢委員 男女共同参画については、国においてやっと法整備ができた、東京都も条例が定められたばかりだ、そういうことですよね。今、職場の問題でも、家庭の問題でも、この社会の現実というのは男女平等とはとてもいえないような実態だと思うんですね。
 確かに戦後の社会の中で、日本ではやっと女性が参政権を得て、そして男女平等という問題が憲法の中でも明らかになる。しかし、実際に我々の社会の生活のあらゆるところで見たら、本当の意味での男女同権などといえるような実態じゃないですよね。
 そういうものが大いに進んだ、そして新しい課題がある、だから、これは行政主体でやらなければいかぬということで、もうこれは廃止だというような--幾つか廃止の方向が打ち出されている、あるいは統合というような計画があるところもありますけれども、来年度、もうわずかですよね。もう三カ月か四カ月もたたないうちに廃止しなければならない。全くだれからも納得を得られるようなやり方ではないというふうに思います。
 そういう点で、先ほども部長は答弁の中で、男女平等の風土づくりに一定の成果があったと、財団の果たしてきた役割について一定の評価もされているわけですから、理事会あるいは評議員会や利用者の意見、要望を本当にくみ上げて、私が先ほど申し上げたように、今の男女同権、共同参画、こういう課題から見て、ますますこれから事業を援助して拡充していくという方向で検討すべき団体ではないかというふうに思います。
 次に、私は、東京都交響楽団のリストラについて言及したいと思うんです。
 この東京都交響楽団というのは、自前の四管編成のオーケストラであります。日本で自前の四管編成のオーケストラというのは、NHK交響楽団と読売交響楽団と、そして東京都交響楽団なんですよ。この三つしかないんです。
 東京都交響楽団の魅力というのは、そのレパートリーにあります。マーラーやリヒャルト・シュトラウスあるいはラベル、こういう十九世紀から二十世紀にかけて活躍した作曲家の作品ですよね。この演奏を得意としているオーケストラなんです。そういうことによって観客を動員しているわけでしょう。これらのいわゆる近代音楽といいますか、この演奏にはどうしても四管編成というのが欠かせないんですよ。
 ですから、まさにそういう都民の文化、芸術、これに対して貢献をしていく、果たしている役割、極めて大きいものがあると思います。
 この実施計画は、採算性重視の事業展開を要求しておりますけれども、こういう東京都交響楽団の演奏活動から見て、じゃ四管編成のこういう編成を縮小して、あるいは八十人だとか七十人だとか、こういうことになったら、もうこのオーケストラは音楽はやめなさい、演奏活動はもうやめなさい、なくなってもしようがないということになってしまうんですよ。
 そういうことから見ても、私は、今出ている、第4章で述べている団体別の見直し結果と改善計画、これはまさに、楽員と、そして一定の事務局がありますけれども、この職員の給料や期末手当の大幅カット--演奏活動を続けるためには四管編成の一定規模のオーケストラを維持しようと思ったら、この枠の中で、結局、自分たちの給料を引き下げて維持していかなければならないという本当に苛酷な立場に置かれるんですね。
 それじゃほかのいわゆるオーケストラに行ったらいいじゃないかといっても、今、この状況の中で、新しくそういう人を採用するような状況にありません。また、音楽教師として別な生き方をしようと思っても、この少子化社会で音楽大学だって生徒が減っている中で、そういう人を雇うというようなことはあり得ないんですね。結局はここで辛抱して、自分たちの演奏技術を磨きながらやっていかなければならないという、本当に苛酷な状況に置かれているというふうに思います。
 私はそういう点で、今度のこういう中身を見ると、改善計画は結局、おまえたち、そういうところで我慢せいという、目的というのはそこにあったのか、そういうふうに感じるわけですけれども、それはいかがでしょうか。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 今回の改革の目的は、団体の設立趣旨にまでさかのぼった見直しを行った上で、団体の自律的経営を促進し、団体経営の透明性の向上を図ることによりまして都民サービスの一層の向上を目指すというものでございます。
 この改革において、団体みずからが作成した経営改善計画の中で、経営の成果が明らかになる仕組みを確立するとともに、人件費の一定部分を補助対象外とするなど、構造改革を強力に推し進めることによって、東京都交響楽団自身の自律的経営を進めるとともに、音楽文化の普及と広く都民に親しまれるオーケストラ活動を推進することを目指すことを、団体みずからの経営方針として掲げているところでございます。

○前沢委員 総務局の先ほど来論議になっておりました行政評価というのがありますね。あの中に歴史財団だとかいろいろ団体の名前があったり、現代美術館とかいろいろなものがありますね。そういうものについて見てみましたら、事務事業評価票というのがあります。すべて、世界に誇れる魅力ある都市文化づくり、あるいは、質の高い芸術文化を広く都民に提供し、芸術の普及を図るとともに、東京における芸術文化活動の振興を図る、こういうことを事業の実施目的に掲げているんですね。
 このことに照らしても、東京都交響楽団のリストラ計画というのは明らかに逆行している、まさに国際都市東京の、東京都が主体になって援助しているこういうオーケストラが、片方では、質の高い芸術文化を広く都民に提供するんだ、世界に誇れる魅力ある都市文化づくりをやるんだといいながら、片方で、こういうような形で全体に我慢せいというようなことがやられる。
 ベルリンフィルというのがございますけれども、これに対するベルリン市の補助を削るという問題があって、大問題になって、ベルリンの市長がリコールされているんですよ。まあお国柄が違うということで片づけられない、こういう問題に対する問題意識というんでしょうか、問題の考え方というのか、片方では、補助金を削ったら市長がリコールされるというのに、片方では、おまえのところはもう、もっと効率的なやり方をやって給与下げろなんていう。今、それじゃ演奏活動をふやしたら収入が上がるかというと、そうじゃないんですよ。この不況の中で、どこのオーケストラでもそうですよ、チケットを三千円にするとか、そういうような形でやっと観客を動員するという努力をされているわけですけれども、本当に東京の誇るべきこういうオーケストラがこんな目に遭うというのは、都民の多くの人が聞いたら、これは怒りますよ。
 そういう点で、私は、世界に誇れる魅力ある都市づくり、これと全く逆行する貧しさ、こういう点でも、さっき申し上げたような拡充すべき内容のものと、本当にメスを加えるべきものと、やはりきちんとやるべきだということだと思うんですが、いかがでしょうか。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 繰り返しになりますが、今回の改革の目的は、団体の設立趣旨にまでさかのぼった見直しを行った上で、団体の自律的経営を促進し、団体経営の透明性の向上を図ることにより、都民サービスの一層の向上を目指すものでございます。
 そういったことから、今回の東京都交響楽団の経営改善についても、団体みずから、経営改善計画の中で経営の構造改革を強力に推し進めるということを決定したところでございます。

○前沢委員 それじゃ次に移りますが、臨海開発など第三セクターの平成十一年度の決算の経営状況について説明をしていただきたいと思います。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 平成十一年度決算では、事業統合を行っている株式会社東京テレポートセンター、竹芝地域開発株式会社及び東京臨海副都心建設株式会社の三社の合計で、当期損失五十億五百万、累積損失七百九十二億七千六百万となっております。
 また、株式会社東京国際貿易センター、東京ファッションタウン株式会社及び、監理団体ではございませんが、事業統合している株式会社タイム二十四、これを加えました三社合計では、当期損失五十二億六千三百万、累積損失二百八十三億一千五百万となっております。

○前沢委員 今、説明がありましたように、統合したテレポートセンター、竹芝地域開発、臨海副都心建設の三社のいわゆる当期損失が五十億、累積損失が七百九十二億七千万、そしてまた、それ以外の東京ファッションタウン、こういうもので当期損失が五十二億、累積損失が二百八十三億、まさにこういうふうなことが起こっているんです。いずれも資本金を上回り、債務超過になるという状況ですよね。
 日経新聞が先日、全国の開発型第三セクターの調査結果を発表しました。累積損失の多い三セク上位十社のうち、四社が臨海建設などの三セクで占められているんです。これら三セクの清算という問題がまさに焦眉の課題になっているんではないでしょうか。
 ところが、監理団体の改革実施計画は、こうした都財政を食い物にしている肝心の三セクについて、経営分析まで行いながら、部分的な経営対策にとどめて、破綻した三セクの清算など抜本的な対策を回避しました。
 本当に徹底したメスを加えなければならないこういう問題については、経営分析までやって、しかし踏み込めない、これは一体どういうことなんですかね。お聞きしたいと思います。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 ご指摘の三社でございますが、臨海部の都市基盤や情報基盤などを整備することによりまして臨海部のまちづくりを先導するという役割を担っております。
 三社では、平成十年三月に経営安定化策を策定いたしまして、平成十年四月より実施しております。引き続き収支の改善に努めているところでございます。
 ちなみに、この収支安定化策によりまして、平成十年度までに償却前黒字達成という目標を掲げておりましたが、これは既に達成しております。十年度、十一年度決算については、償却前黒ということで達成しております。
 今後とも、経営安定化策を着実に実施していくことによりまして、その役割を果たしていくべきものと考えております。

○前沢委員 単年度でそれを推しはかるわけにいかない内容のものだと思うんです。
 もう一つ、東京国際貿易センターですね。これは、もともと東京都から土地の現物給付を受けて設立されたわけでありますが、いわゆる国際展示場、これができて、そして今、ビッグサイトが見本市協会に管理委託された、こういうことによって、本来そこでこの役割は終わっているはずなんですね。
 ところが、経営改善計画で述べているように、この東京国際展示場の開設に伴い、有明パークビルなどの不動産管理賃貸料に転換を図っていったわけですね。そして、現物給付を受けた都有地だった土地を清掃局が二百五十三億で買い取った。本来ならば、そこで解散をして、土地を東京都に返すべきなのに、今度は、この土地を売ったお金でビルを建設していく。ところが、これがうまくいかないんですね。しかも、百億円もの余分の借入をして、それをリスクの高い有価証券の売買に回す。こんなことも監理団体の中で指摘されている項目でありますけれども、そして、債務超過の東京ファッションタウンあるいはタイム二十四、このビルの管理委託を受けるという形で、事実上、事業統合の方向が進められたわけです。
 経営改善が図られているとしておりますけれども、こういうファッションタウンのような百九十数億の赤字を、結局、国際貿易センターが吸収していくという形ですよね。臨海三セクの統合と同様に、今度は国際貿易センターの方にこれを寄せていくという手法がとられています。こういう運営のあり方は、都民の立場から見たら、当然認められない内容だと思います。
 このことについて、所管局は何の責任も持たない、こうした問題点について、今回のこういう改革に当たっての実施計画をつくるに当たって、どういうふうな認識をされたのか。監理団体の改革あるいは経営改善といっておりますが、直営のこの有明のパークビルもうまくいかない、そして東京ファッションタウンとの事業統合も中途半端、こういう問題について、この改善計画の中で、これもまたきちんとした見込みができないという点が本当に問題だというふうに私は思うんです。こういう問題について答弁をいただきたいと思います。

○山内行政改革推進室長組織担当部長兼務 臨海部でビル事業を行っております第三セクターの事業統合についてでございますが、ことしの四月から、この三社については、サブリース契約に基づく事業統合を行っております。
 この目的は、賃料収入の増収や人件費、管理経費等の削減など、徹底した経営努力が可能となりまして、より安定した経営が期待できるということから、サブリース契約に基づく事業統合を行ったものでございます。
 このことによりまして、会社の設立目的でございますファッション産業あるいは情報産業の活性化などを図り、臨海部のまちづくりに寄与することができるものと考えております。
 なお、サブリース契約であるところから、当該三社はそれぞれ独立した法人といたしまして、個別に決算処理を行っております。また、その情報は公開されているところでございます。

○前沢委員 私は、当委員会に報告された監理団体の改革実施計画、これは本当にいじめる相手が違うんだと思うんですね。そして、初めに述べたように、監理団体の改革には、都民要求や事業実績によって、その内容から見て、本当に援助を拡充すべきものと、そうじゃなくて、もっとメスを加えて正していかなければならない、こういう立場で、私はこの監理団体に対する指導というものは行われるべきだというふうに思います。
 最後に、こうした三セクのこういう事態を放置することなく、監理団体に対する指導を一層強化することを求めて、質問を終わります。

○東野委員 私の方からは、東京都の人権施策推進指針について、三点、時間も遅うございますので、簡潔に伺いたいと思います。
 先月の十一月二十八日には、国の人権擁護推進審議会から人権救済制度のあり方に関する中間のまとめが発表されております。
 国の中間のまとめでは、人権侵害の類型として、差別、虐待、それから公権力の人権侵害、そしてメディアによる人権侵害の四項目に分けて、差別を救済の対象に明確に位置づけまして、積極的な救済を必要な項目としています。また、同性愛者など性的指向等を理由にする差別についても、積極的救済の対象にすることを検討する、このようにしているわけでございます。
 東京都において、今回の人権施策推進指針において、女性、子ども、高齢者、障害者、さらに同和問題を初め、具体的に個別の重要人権課題として取り上げていることは、解決しなければならない差別を明確にしているという意味で評価をしたいというふうに思います。
 また、その中に、さきの委員会でも主張させていただきましたけれども、同性愛者の人権が骨子の段階で削除されていたところ、このたび記述が復活したこと、このことについても評価をいたしたい、このように思います。
 人権を、その根っこといいますか、ベースに、社会的弱者及びマイノリティーに対する施策を推進することの大切さといいますか、ある施策が人権という観点でどうなのか、そういった目で見る、ある意味では新たな見方といいますか、従来もちろんあったんでしょうけれども、人権ということを正面に掲げながらさまざまな施策を推進していくことの、私は、ある意味では新しい施策の展開が始まった、また始まろうとしているのではないかなというふうに思っております。
 二十一世紀を目前にしまして、二十一世紀を平和と人権の世紀とするためにも、人権施策推進の上で、まず差別撤廃、この差別撤廃ということは、ある意味で私は最重要課題であると同時に、一日も早く早期に解決すべき課題である、このように考えるところでございます。この点に関しましての所見を伺います。

○関人権部長 今日、女性、障害者、高齢者、同和問題、外国人などをめぐりまして、厳しい差別が存在しているという認識を持っております。
 人権が尊重される社会を実現し、個性と能力に応じて社会に参画する機会を確保する上で、差別をなくしていくことは極めて重要な課題だと思っております。
 今後も、さまざまな差別や偏見の解消に向けて、東京都人権施策推進指針に基づきまして積極的に取り組んでまいります。

○東野委員 次に、二点目でございます。基本理念という中に述べられているんですけれども、機会の平等の約束、この意味合いについてお伺いしたいと思います。
 これまで、差別の撤廃に向けまして、教育や就労、また産業振興、また生活実態改善等々、社会参画推進のためのさまざまな特別対策が行われてきたというのが現状でございます。
 指針でいいます機会の平等とは、現在行われているそういった特別な対策や、男女平等参画社会の条例でも取り上げられました積極的な機会の提供、これをも含む差別の完全な撤廃を目指した取り組みを行う、このような意味であるということを再確認したいと思いますが、いかがですか。

○関人権部長 東京は、活力があって人々が安心して暮らせる都市とする上で、個人の選択に応じましたさまざまな価値観や生き方を尊重し、個性と能力に応じて自己実現と社会的責任を果たすことが可能な社会をつくることが重要だと考えております。
 そのため、さまざまな人々が機会の平等を基礎といたしまして社会参画ができ、持てる力を最大限に発揮できるようにすることが必要であるというふうに考えております。
 都は、それぞれの問題が抱える固有の経過と状況を踏まえまして施策を講じてきております。今後も、各施策体系のもとで、指針の基本理念に沿って必要な施策を実施してまいります。
 さらに、課題が複雑に絡み合いましたり、これまでの施策や手法では解決できない問題につきましては、救済保護、啓発教育、支援助成の三つの観点から総合的に人権施策を推進してまいります。

○東野委員 最後になります。きょうは、細かい質問になりますと、ちょっと時間もあれなんで……。
 この中に指針の策定の背景という部分がございますが、この中に、人権教育のための国連十年、こういった考え方は取り上げられているわけでございますけれども、世界人権宣言、それから人種差別撤廃条約、それから女性差別撤廃条約、さらには子どもの権利条約、こういった国際的人権基準、これを指針において取り入れているという明確なその部分の記載がございません。
 そういうものをベースに今回作成されているというのは私は十分承知はしておりますけれども、この人権施策推進のあり方専門懇談会の提言では、グローバルスタンダード、そういったことを取り入れておったわけでございます。
 そういった意味で、国際人権基準に沿った施策を展開すべき--するんでしょうけれども、すべきということを最後に確認して、簡単ですけれども、質問を終わります。

○早川理事 東京都人権施策推進指針は、人権教育のための国連十年を初めといたしまして、世界人権宣言、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約などの趣旨を尊重し、今日東京において生じているさまざまな人権状況を踏まえて策定いたしました。
 今後、指針に基づき、人間の存在と尊厳を守ることを基軸にいたしまして人権施策を推進し、都民が安心して暮らせる東京の実現に向けて努力してまいります。

○東野委員 グローバルスタンダードという言葉を私はあえて使わせていただきましたけれども、これは一つの言葉であって、今の理事のご説明がございました、国際基準をしっかりと取り入れながら進めておられるということをお聞きしたので、安心いたしました。
 以上でございます。

○土屋委員 人権は、私は、民社人権会議という会議がありまして、そこの専門委員なので……。
 日本は、国際連盟ができたときに、人種差別撤廃条約というのを提案したんです。ところが、白人を主軸とする国際連盟はそれを却下したんです。各地で今、人権条例というのが制定されているんだけれども、東京都でもいろいろ審議を進めている、それはよくわかるんだけれども、他府県でどんな問題が起きているか。
 私はこの前、三重県の津にある人権センターを見てきたら、天皇制は人権に反するという本が公然と並んでいるわけだ。ですから、あらゆる、例えば女性財団もそうなんだけれども、男女共生について私は推進派なんです。推進派なんだけれども、それを利用する勢力がある。そして、三重県だとか大阪だとか神奈川だとか、そういうところで人権の名のもとにいろいろな教育が行われているという実態をよく掌握した上で、さっき東野先生がおっしゃったような、正しい意味の人権がきちっと推進されるように--でないと、本当の意味の差別が撤廃されないですよね。
 生まれだとか身分だとか親の職業だとか経済力によって差別されるというのはよくないですね。チャンスは、機会は平等であって、努力する、しないで差別されるのは仕方ないと思うけれども、平等であるんだから、人権条例をつくるのか、つくらないのか、私はわからないけれども、よくそこら辺注意してください。
 なぜかというと、子どもの権利条例をつくろうという審議会が東京都にあって、正式な名前は忘れたけれども、平成七年にそれが答申を出している。その答申に重要なことが書いてあって、今、手持ち資料として持っていないので、記憶をたどって話をすると、今、子どもたちが教室で荒れている、学校で荒れている、社会で荒れている、これは子どもたちの権利が抑圧されているからだという極めて特殊な考えに立って答申を出している。
 その延長線上に子どもの権利条例があると--極めて私は危険なというか、偏った考え方だと思うんですよ。子どもの権利が抑圧されているから子どもが暴走するなんていう考えは、ごく一部の人の考え方ですよ。もっと多面的に見ていかないと、さっき先生がおっしゃったような、本当の意味の人権を守るような施策というのはできないと思いますので、そこら辺は十分注意できますか。そこだけちょっと確認したいんですけれども。政治的中立を確保できるかどうか。

○関人権部長 先生のご指摘も踏まえまして、しっかりと人権施策を推進してまいりたいと思います。

○今井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○今井委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で総務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時十七分散会

ページ先頭に戻る

ページ先頭に戻る