財政委員会速記録第十一号

令和七年十月六日(月曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長平田みつよし君
副委員長北口つよし君
副委員長山田ひろし君
理事吉住はるお君
理事あかねがくぼかよ子君
理事鈴木  烈君
藤崎こうき君
山口せいや君
竹内  愛君
もがみよしのり君
国崎たかし君
岩佐ゆきひろ君
大松あきら君
中田たかし君

欠席委員 なし

出席説明員
財務局局長山下  聡君
経理部長DX推進担当部長女性活躍推進担当部長兼務稲垣 敦子君
主計部長佐伯  亮君
財産運用部長松井  裕君
利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務小西  拓君
建築保全部長金子 陽子君

本日の会議に付した事件
意見書について
財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第二百二十四号議案 都営住宅七CH―一〇一西(調布市緑ケ丘二丁目・調布市施設)工事請負契約
・第二百二十五号議案 都立矢口特別支援学校(七)第二校舎改築工事その二請負契約
・第二百二十六号議案 警視庁愛宕庁舎(仮称)(七)新築工事請負契約
・第二百二十七号議案 東京消防庁池袋消防署長崎出張所庁舎(七)改築工事請負契約
・第二百二十八号議案 東京国際展示場(七)特別高圧受変電設備その他改修工事請負契約
・第二百二十九号議案 東京消防庁立川防災施設電気棟(仮称)庁舎(七)増築及び改修電気設備工事その二請負契約
・第二百三十号議案 都立北多摩地区特別支援学校(仮称)(七)新築給水衛生設備工事その二請負契約
・第二百三十一号議案 都立村山特別支援学校(七)改築空調設備工事請負契約
・第二百三十二号議案 新海面処分場(七)Dブロック東側護岸遮水・裏埋工事請負契約
・第二百三十三号議案 隅田川(水神大橋下流)左岸防潮堤耐震補強工事(その二)請負契約
・第二百三十四号議案 隅田川(駒形橋上下流)左岸防潮堤耐震補強工事請負契約
・第二百三十五号議案 環状第四号線橋梁(仮称)鋼けた製作・架設工事(七 一―環四港南)請負契約
・第二百三十六号議案 稲城多摩トンネル(仮称)(七)擁壁築造工事請負契約
・第二百三十八号議案 土地の信託の変更について
報告事項(質疑)
・「令和六年度東京都年次財務報告書」について

○平田委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書二件を提出したい旨の申出がありました。
 お諮りいたします。
 本件につきましては、取扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○平田委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○平田委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、財務局関係の付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第二百二十四号議案から第二百三十六号議案までの契約議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第二百二十四号議案から第二百三十六号議案まで及び第二百三十八号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○稲垣経理部長DX推進担当部長女性活躍推進担当部長兼務 先日の委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明を申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の財政委員会要求資料をお開きいただきたいと存じます。
 最初に、一ページお進みいただきまして、目次をご覧ください。
 資料は、記載のとおり二件でございます。
 一ページをご覧ください。要求資料第1号でございます。新宿モノリスの都及び都関連団体の賃貸面積割合の推移を表にまとめたものでございます。
 続きまして、二ページをご覧ください。要求資料第2号でございます。新宿モノリスの信託配当の実績の推移を表にまとめたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○平田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木委員 私からは、新宿モノリスの土地信託の変更について何点か伺いたいと思います。
 本件、土地信託の変更についてとありますけれども、内容は契約期間到来を迎えての全面更新なわけです。ゼロベースで数百億円の価値のある都有資産の契約を更新できるというわけですから、都の収入を大きく見直すことのできる重要な機会なんだと思うんです。
 ちょっと驚いたのは、にもかかわらず、いただいた説明資料、こちらいただいたんですけど、これを見ても、毎年、信託契約によって配当金が幾らあるのかの記載もない、もしくは今後、この土地について土地信託以外にどのような活用方法を検討されているのかの説明もない、信託配当金が現在のこの土地の時価評価に対して適正な利回りを確保できているのか、そういった検討がなされたのかどうかも書かれていないという資料になっていまして、これだとなかなか判断ができないなというふうに思いましたので、以下、何点か質問させていただきたいと思います。
 まず、恐らく同じような問題意識を持たれた他会派の方から資料請求が出ていて、新宿モノリスの信託配当の実績について資料をいただきました。まさにこれが見たかったので、ここ、重なると思いますので私の質問を削除したいと思うんですけど、この表を見ていてちょっと疑問に思ったのが、令和三年度まで大分長い間、十二億円の信託配当の実績がずっと続いているんですけれども、令和四年度から一気に十九億四千万円に信託配当が増えているようです。恐らく、昨今の土地価格や賃貸価格の上昇を受けてのものだとは思うんですけれども、非常に上がり幅が大きいなというふうに思うんですけれども、この点についてご説明いただけますでしょうか。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 各年度の信託配当額につきましては、収支状況や大規模修繕の計画などを勘案して決定することとなってございまして、信託運営の状況が良好で修繕積立金も十分な額が積み上がっていることから、令和四年度以降において十九億四千万円に増額となってございます。

○鈴木委員 ありがとうございます。収支状況や大規模修繕の計画等を勘案してというお答えでございました。
 お話伺うと、信託をお願いしているみずほ信託銀行と東京都の側でいろいろと話し合いながら信託配当金額も決められるということで、こういう大きな見直しをされたんだなというふうに理解をしたところでございます。
 続いて、次の質問なんですけれども、そもそもなんですけれども、現時点の新宿モノリスの現在価値について教えていただけますでしょうか。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 令和六年十月時点の新宿モノリスの資産評価額は、約七百二十億円となってございます。

○鈴木委員 ありがとうございます。
 現在の資産価値、これは土地だけですよね。建物も入って。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 先ほどの数字ですが、建物込みとなっております。

○鈴木委員 どうもありがとうございます。現在の時価評価額が七百二十億円、これに対して直近の信託配当金が十九・四億円、年間の利回りに直すと二・七%ということで、想像していたより悪くないんだなと、適正な金額をいただくことができているのかなというふうに理解をしたところでございます。
 続いて、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 信託配当金が適正かどうか以外にも、いろんな選択肢が、検討しなければいけない事項があるんだろうというふうに思うんですけれども、前回、これ五年前でしたか、更新されたときから今回まで、東京都はこの信託運営に対してどのように評価してきたのか伺いたいと思います。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 賃貸ビルである新宿モノリスにつきましては、過去五年間、賃料設定は市場相場をおおむね維持し、入居率は九五%以上、直近ではほぼ一〇〇%でございます。
 また、建物、設備は適切に修繕工事を実施して良好な状態を維持し、都の歳入となる信託配当につきましても安定的に確保できており、健全な資産運用が可能と専門家も評価してございます。
 こうしたことから、これまで堅調な信託運営ができていると認識しております。

○鈴木委員 最後の質問になります。
 今後のことについても関わってくるんですけれども、今回の契約更新にも当たって、この物件を売ってしまってキャッシュを得ようとか、もしくは都自体がもう信託をやめて都自体が運営に乗り出そうとか、いろんな選択肢があったんだろうなというふうに思うところです。
 そういった中で、今回、どのような理由でこの土地信託を延長することにされたのか。つまり、ほかの選択肢を排除したのか。加えて、今回、延長期間をまた五年にされているんですけど、何で五年なのか。十年、二十年ではなくて五年なのかという点についても、併せてお考えを伺いたいと思います。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 今回の信託期間の延長に当たり、信託を継続することのほかに、土地建物を売却することや、都が直接土地建物を所有することを検討してまいりました。
 売却につきましては、極めて貴重な都有地であり、直ちに売却することは適切ではなく、また都が直接所有する場合、テナントとの賃貸借契約も都が承継するなど、直営で行うには課題が多くございます。
 一方、土地信託を延長した場合は、引き続き健全な資産運用が可能であり、信託を当面継続することが現時点において最も有効と判断いたしました。
 なお、延長期間につきましては、信託運営の状況や都の行政需要の変化の可能性を一定期間ごとに改めて検証することが適切であることから、五年間としたものでございます。

○鈴木委員 ありがとうございます。土地信託が順調に運営されていることを理解いたしました。また、確かにこの場所は、都庁もある西新宿にあるわけで、東京都にとっても、いろいろと使い勝手のある重要な土地なんだろうなということも答弁の中から拝察をした次第でございます。
 そんな観点から、この議案については理解できたところなんですけれども、そもそも論なんですけど、説明資料、今、質疑で聞いた内容ぐらいはぜひ、基本的なことだと思うので、あらかじめご説明いただくと審議もスムーズなんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。

○竹内委員 私からも、新宿モノリスの土地信託の変更について質問をさせていただきたいと思います。
 新宿モノリスは、現在の都庁も建っている淀橋浄水場跡地の一角に受託事業者によって建設をされました。一九八六年、昭和六十一年に土地信託の採用が決定され、翌年に契約締結、一九九〇年、平成二年のビル竣工から土地信託による運営が始まりました。現在の受託事業者は、みずほ信託銀行のみとなっています。
 当初の契約期間は、二〇一〇年、平成二十二年までの二十年間ということでしたが、先ほど来ありますように、これまで二〇一〇年、二〇一五年、二〇二〇年と三度の更新がなされ、今回の提案で四度目の延長となります。期間は二〇三〇年までの五年間ということです。
 それでは、幾つか確認をさせていただきたいと思います。
 まず、契約についてです。今回の土地信託の変更に際し、信託期間以外に変更される契約事項はないのかお伺いします。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 今回の変更点につきましては、信託期間のみでございます。

○竹内委員 信託期間以外は当初の契約書のとおりということになると思うんですが、その契約書については前回の委員会で資料要求をいたしたんですが、提出の承認が間に合わないということでいただけておりません。ですので、過去の議事録から改めて確認をさせていただきたいと思います。
 信託の更新や終了の協議について、三年前から行うことになっていると過去の議事録で示されております。
 今回の変更に当たり、いつから、どのような検討を行ったのかお伺いいたします。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 信託契約上、信託期間満了後の取扱いにつきましては、三年前から受託銀行と協議を行うこととなっており、受託銀行と意見交換などを行ってまいりました。また、昨年度から、不動産鑑定士、市場調査会社、建築士などの専門家の意見を聞きながら事業の運営状況を精査するとともに、土地信託以外の具体策の検討も実施し、様々な観点から検証いたしました。
 具体的には、賃料や入居率などの検証を行うとともに、土地建物を売却することや都が直接土地建物を所有することを検討し、信託を当面継続することが現時点において最も有効と判断したものでございます。

○竹内委員 契約のとおり、三年前から協議し検討してきたということなんですが、なぜ三年前なのかということでいうと、契約終了となれば入居者をはじめ様々な手続が必要になると考えられます。その点については理解します。
 つまり、三年前には更新するかどうかを決める必要があるということだと思うんです。であれば、具体的な契約変更手続や今回のような議案の上程の時期とは別にして、本来、その時点で議会に報告すべきではないかなというふうに思います。
 また、信託期間の延長をするかどうかを信託銀行と協議する前提として、東京都が新宿モノリスの土地の利活用を行うかどうかを決める必要があるわけですが、新宿モノリスの土地を都として使用する需要について、いつ、どのような調査を行っているのかお伺いします。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 都有地の利活用につきましては、庁内各局と密接に連携を図りながら進めており、本件土地については、現時点で都として直接利用は予定してございません。

○竹内委員 私は、新宿モノリスの件についてお伺いしたんですが、今のお話だと一般論でのお答えだと思うんです。具体的に新宿モノリスについては答えていただいていないんですが、要は、そのような需要調査など聞いていないということだと思うんです。
 先ほどの答弁でもありましたが、売却や都による所有について検討したと、様々な課題があるため信託の継続が望ましいと結論づけたといわれているので、そもそも需要調査の段階にもなっていないということだと思うんです。
 一方で、都庁周辺には、庁舎機能の一部や関連団体が民間ビルの床を借りて賃料を払っています。こうした状況を考えれば、新宿モノリスが東京都として需要がないといえないんではないかなというふうに思うんです。ほかの活用のときのような需要調査も行わずに、信託期間の延長をいつまで続けるのかということが問われていると思います。
 既に、建物は竣工から三十五年が経過をしています。一定の改修工事が必要と考えますが、建物の補修や改修について、どのような状況になっているのかお伺いします。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 本件建物は、適切に修繕工事を行うとともに、エレベーターや照明設備の更新など大規模改修工事も計画的に実施しており、良好な状態を維持してございます。

○竹内委員 大規模改修などを行う際には中長期的な見通しが必要だと思います。どのように計画をつくり、実施をしているのかお伺いをいたします。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 大規模改修工事につきましては、都と受託銀行とで協議の上、費用の積立てを適切に行いながら中長期的な計画に基づき実施しており、安定した信託運営に努めております。

○竹内委員 五年ごとに延長するということで、今回も五年間の信託期間の延長ということで提案をされているんですが、大規模改修なども中長期的な見通しを持って取り組んでいると、計画的に取り組んでいると。そうなりますと、建物が使える間は信託を継続するということが前提になってしまうんではないかというふうに思います。
 最後に二点お伺いするんですけれども、過去の変更の際にも確認をしていますが、新宿モノリスを実際に管理している事業者についてお伺いします。
 新宿モノリスビルの管理会社は都の関連団体なのか、お答えください。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 新宿モノリスの管理会社である東京シティコア株式会社は、受託銀行の出資により設立されており、都と出資関係はございません。

○竹内委員 過去の議事録を見ますと、この管理会社の歴代の代表者が、いずれも都職員OBであると答弁されています。
 新宿モノリスの管理会社の代表者は現在も都のOBか、お答えください。

○小西利活用調整担当部長運営・調整担当部長兼務 現在の東京シティコア株式会社の代表者は、都のOBでございます。

○竹内委員 都と出資関係はないということなんですけれども、歴代の代表も全員が都のOBと、そして今も、現在も天下り先として温存されているということだと思うんです。
 こうした面も踏まえた判断が今回の議案には問われているということを改めて申し述べて、私の質問を終わります。

○平田委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○平田委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○平田委員長 次に、報告事項、令和六年度東京都年次財務報告書についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○山口委員 私の地元である目黒は、住みたいまちとしてメディアに取り上げられる機会も多くあります。一方で、住宅費や教育費の高さから、結婚や子育てがしにくい、そして住みづらいといった声が寄せられているのも事実です。
 こうした声を、当事者の立場から政治の場に届けるべきだと考えて、私は政治家を志しました。都民のニーズを丁寧に受け止め、若者のみならず、子供から高齢者まで、誰もが安心して暮らせる社会を実現するためには、財政面からの取組が極めて重要だと考えております。
 先日の代表質問において、我が会派の森村団長が指摘したように、都の税収を国が集め、都以外の自治体に配分する、いわゆる偏在是正措置について、さらなる動きが見られています。
 私自身、都議会議員になる以前は、このような不合理な措置が繰り返されていることを報道で目にする程度でしたが、今回、年次財務報告書の解説編に触れ、都財政への影響の大きさを改めて実感したところです。
 都民サービスを確実に実施していく観点からも、都民の大切な税金をこうした動きから守ることは、財政運営上極めて重要であると考えます。
 そのため、本日は、年次財務報告書の内容を質疑によって深掘りして、そして偏在是正措置に関する理解をさらに深めてまいりたいと思います。
 そこで、本日は、偏在是正措置の内容について、これまでの経緯や都財政への影響額も含めてご見解を伺います。

○佐伯主計部長 いわゆる偏在是正措置でございますが、地域間の財政力格差の是正を名目に、地方税を国税化し、地方交付税などで配り直す仕組みでございまして、国は、行政サービスの受益に応じて税を負担するという地方税の原則をゆがめる不合理な税制改正を、これまで幾度となく繰り返してきております。
 具体的には、平成二十年度に、法人事業税の一部を暫定的に国税化し、地方譲与税として地方に再配分する法人事業税の暫定措置が導入をされました。また、平成二十六年度には、法人住民税の一部を国税化し、地方交付税として地方に再配分する法人住民税の交付税原資化が実施をされました。令和元年度には、法人事業税の暫定措置が廃止され、本来であれば地方税に復元されるべき法人事業税の一部を恒久的に国税化し、地方譲与税として地方に再配分する新たな措置が導入をされました。
 こうした一連の措置による都財政への影響額でございますが、導入されていない場合と比べまして、令和六年度決算ベースで年間で約一・五兆円の減収、平成二十年度から令和七年度までの累計で約十・九兆円の減収となっております。

○山口委員 都にこれほど大きな悪影響が生じている事実は、必ずしも広く知られていないのではないかなと感じます。
 一方で、このように膨大な財源が都から流出しているのにもかかわらず、いわゆる東京富裕論、すなわち東京は財政的に豊かだからこそ地域間格差を是正するべきだとする意見が根強く存在しております。
 実際、代表質問でも触れられたとおり、八月には千葉、神奈川、そして埼玉の各県知事が国に対して要望書を提出し、財政力や行政サービスの格差是正を理由に、さらなる税源の偏在是正措置を求めていると伺っております。
 また、今回の年次財務報告書によれば、令和六年度決算における都税収入は、企業収益の堅調な推移を背景に、四年連続の増収となる約六・九兆円に上りました。この数字だけを切り取れば、確かに東京は富裕だと、そういった印象を持たれかねません。しかしながら、報告書の解説編を見ますと、東京都には固有の財政需要、これが存在して、そして将来にわたっても多額の財政需要が見込まれていることが示されています。
 したがって、歳入だけではなくて、歳出面も含めて総合的に議論をすることが不可欠であると考えております。
 そこで、東京都が抱える特有の財政需要の特徴について、都財政にどのような影響が生じているか、ご見解を伺います。

○佐伯主計部長 都が担います行政サービスの範囲は、現行の地方自治制度上、他の道府県と比べまして格段に広く、また大都市であり、日本の首都でもある東京は、特有の財政需要を多く抱えております。
 例えば、他の道府県では一般的に市町村が行っております消防や水道、公共下水道の事務は、サービスの一体性の確保等の観点から都が担っておりまして、令和六年度決算では合計約四千五百億円を要しております。
 また、警視庁は、三百万人を超えます昼間流入人口など大都市特有の需要への対応を行うことに加えまして、国会等の重要施設の警戒や大臣等の要人警護など首都警察としての業務も担っております。このため、都におけます住民一人当たりの警察費は、令和五年度決算ベースで、他道府県や三大都市圏平均の約二倍となっております。
 さらに、道路等を整備するための用地取得費は、東京の地価の高さに起因して他の地域より格段に高額となっており、一平方メートル当たりの費用では、他道府県平均の約二十六倍、三大都市圏平均の約十三倍となっております。
 このように、都財政は、他道府県と比べまして、標準的な行政経費を上回る東京特有の財政需要を多く抱えているものと考えております。

○山口委員 ただいまのご答弁にもありましたとおり、東京都には大都市ならではの財政需要があり、その金額的な影響も極めて大きいと考えております。
 また、現在の状況に対応するだけじゃなくて、そして将来を見据えた財政需要を見通すことも重要だと考えております。
 東京都には、急速に進む高齢化への対応や老朽化が進む公共インフラの更新といった、大都市を維持する上で避けることのできない課題が存在します。さらに、日本全体の成長を牽引する首都として、少子化対策をはじめ多様な分野で国に先駆けた施策を展開していくことも、都の大きな責務であると考えます。
 そこで、東京都が今後抱える財政需要の見通しとそれを踏まえた対応について、ご見解を伺います。

○佐伯主計部長 今後の財政需要についてでございますが、都は、社会保障関係経費の増大や社会資本ストックの維持更新など、将来避けることのできない中長期にわたる財政需要を想定しておりまして、試算として、今後三十年間の累計で、社会保障関係経費で約二十一兆円増加、社会資本ストックの維持更新経費で約九兆円増加すると見込んでおります。
 また、喫緊の課題といたしまして、都民の安全・安心を確保するため、震災対策などTOKYO強靱化プロジェクトの事業規模を二〇四〇年代までで十七兆円と見込んでいるほか、子供、子育て家庭への支援や国際競争力の強化など、直面する様々な重要課題に対する取組にも、毎年度、積極的に財源を振り向けております。
 これらの財政需要に的確に対応し、将来にわたり安定的に行政サービスを提供していくためには、強靱な財政基盤の構築が重要でございます。
 こうした観点の下、事業評価による無駄をなくす取組の徹底はもとより、基金残高や都債の発行余力の確保など、財政対応力にも配慮しながら、持続可能な財政運営に努めてまいります。

○山口委員 東京が今後も魅力ある都市であり続けるためには、強固な財政基盤の確保が不可欠であることを改めて確認いたしました。
 今回の質疑を通じて、大都市の機能維持や将来への投資に充てるべき財源が偏在是正措置によって国に流出しているという現状をより深く理解することができました。この偏在是正措置の問題は、今後の都政にとって極めて重要な論点であり、私自身、地方税財政をめぐる動向を引き続き注視してまいります。
 都としても、さらなる偏在是正措置の動きに対しては、事実に基づく議論を積み重ね、的確に反論、主張を行っていただくとともに、私たち都議会に対しても、丁寧な説明をお願い申し上げます。
 以上を要望し、私の質問を終わります。

○藤崎委員 私からは、令和六年度東京都年次財務報告書に関して何点か質問をさせていただきます。
 東京におきましては、首都直下地震や富士山の噴火など、様々な災害リスクが想定されております。最近でも、九月十一日の記録的豪雨により、都内で河川氾濫や水害被害が起きるなど、今後も激甚化が予測されています。
 私の地元墨田区でも、海抜ゼロメートル地帯が多く、元来、水害リスクが高い地域であり、スーパー堤防の整備など、対策が今まさに議論をされております。
 こうしたハード整備は、東京の強靱化、防災対応力の強化において重要であるわけですが、当然ながら短期的に成し遂げられるものではなく、中長期的視点から事業を推進していくことが必要であります。
 そのためには、財政を取り巻く環境の変化に対応しつつ、安定した事業執行を支える強固な財政基盤が不可欠であると考えております。
 この観点から、財政運営をチェックし必要な提案を行っていくことが、財政委員としての私の使命であると考え、その立場から、都の財政状況について質問させていただきます。
 まず、令和六年度普通会計決算の状況、そこから読み取れる都の財政状況についてどう考えているのかお伺いさせていただきます。

○佐伯主計部長 令和六年度普通会計決算は、企業収益が堅調に推移したことによる都税収入の増加などによりまして、歳入総額は前年度比七・一%増の九兆五千三百三十七億円となりました。
 歳出面におきましては、人への投資といたしまして、私立高校等の授業料実質無償化や公立学校給食費の負担軽減などを実施いたしますとともに、東京港の機能強化をはじめといたしました東京の成長につながる分野に重点的に財源を振り向けております。これによりまして、歳出総額は前年度比六・四%増の八兆八千八百八十八億円となっております。
 歳入総額から歳出総額を差し引いた形式収支は六千四百四十九億円、そこから翌年度に繰り越すべき財源を控除いたしました実質収支は二十六億円となり、収支はほぼ均衡しております。
 また、地方自治体の財政状況を統一的にはかる主な指標でございまして、比率が低いほど財政の弾力性が高いことを示す経常収支比率は八〇・三%、公債費負担比率は五・一%でございます。いずれも、前年度の都道府県平均と比べて低い水準でございまして、財政の弾力性が高い状況にあるものと認識をしております。

○藤崎委員 今のご答弁から、各種指標から都財政の健全性を確認することができました。
 一方、さきの代表質問で、我が会派の小松幹事長が指摘をいたしましたが、現在は堅調な税収に支えられているものの、昨今の激動する社会情勢を踏まえると、都の財政環境は先行きが不透明であり、予断を許さない状況だと思っております。
 こうした中でも、安定的な財源を確保し、事業を推進することが必要であり、その際、家計でいうところの貯金に当たる基金は重要な役割を持つところですが、昨今、一部、都が財政調整基金を全部使ってしまったのではないかという声も都民の中ではあるんですけれども、このことについて、都財政における基金の意義と残高の状況、とりわけ財政調整基金について、その特徴も含めてお伺いをさせていただきます。

○佐伯主計部長 景気変動の影響を受けやすい歳入構造にございます都が持続可能な財政運営を行うためには、年度間の財源調整機能を持つ基金が重要な役割を果たしております。
 このうち、財政調整基金は、税収の減収局面や突発的な財政需要の発生などに備えた虎の子ともいえる基金でございまして、これまでもリーマンショックなど税収が大幅に落ち込んだ際やコロナ対策などにおきまして、財源として有効に活用してまいりました。
 また、都独自の制度といたしまして、地方財政法に基づく決算剰余金などの積立てに加え、税収増が見込まれる場合には、条例に基づき、その一部を財政調整基金に積み立てることを義務づけております。
 令和七年度末時点の普通会計ベースにおけます基金全体の残高見込みは一兆八千六百十七億円、うち財政調整基金は七千二百三十三億円でございまして、ご指摘のありました一部のそういった情報は全くの誤りでございます。
 なお、基金全体で見ますと、リーマンショック前の平成二十年度末時点の残高とほぼ同水準となっておりまして、持続可能な財政運営の観点から、一定の残高を確保しているものと考えております。

○藤崎委員 今回、話題となっている財政調整基金を含め、都は、一定の基金残高を確保しており、急激な景気変動にも対応できる財政基盤を確保していることを理解いたしました。
 また、ご答弁であったとおり、一部心配されている声も大丈夫であるということも確認をさせていただきました。
 一方、冒頭に申し上げたとおり、都市の強靱化やインフラ、鉄道などの都市機能の強化といった事業に対しては、継続して投資していくことが重要であると私は考えております。それを支える財源を確保する観点からは、特定分野の政策を進めるための特定目的基金が重要であると考えます。
 そこで、特定目的基金の趣旨と活用状況についてお伺いさせていただきます。

○佐伯主計部長 特定目的基金は、都政の重要な課題に対しまして、将来の財政需要に備え、安定的かつ機動的に施策を展開していくため、それぞれの目的に応じて設置をしております。
 具体的には、道路や港湾、都立学校などの社会資本ストックを維持更新するための社会資本等整備基金や、自然災害等から都民の生命と暮らしを守り、強靱で持続可能な都市を実現する東京強靱化推進基金などがございます。
 令和六年度普通会計決算におきましては、特定目的基金は三千六百五十三億円を取り崩しており、七年度末時点の残高は一兆一千三百八十四億円と見込んでおります。
 こうした特定目的基金を戦略的に活用していくことで、今後とも強固で弾力的な財政基盤を堅持しながら、東京の持続可能な成長に向けて安定的な施策展開を下支えしてまいります。

○藤崎委員 将来を見据えた財政運営がなされ、必要な投資を継続して実施できる環境にあることは理解をさせていただきました。
 本日、質疑をさせていただいたとおり、施策を安定的に展開するためには、基金を含めた財政基盤が重要であり、これから令和八年度予算編成が本格化していく中で、強固な財政基盤の堅持に努めることはもとより、首都東京の成長を推し進める政策を積極的に展開していくことを求め、質問を終わらせていただきます。

○鈴木委員 私からも、年次財務報告書について何点か質問をさせていただきたいと思います。
 ほかの委員の皆さんからの質問を伺っていて少し感じたんですけれども、私、都民の方からも、東京都は基金切り崩して大丈夫なのかとか、ご意見伺うことあるんですけど、よくそういった方々に申し上げるのは、東京都のバランスシートを見てくださいと、どれだけ充実した資産状況にあるのか、財務状況にあるのか分かっていただけると思いますという説明をさせていただいております。
 今回、いただいた資料でいうと、二三ページに東京都のバランスシートが出ているわけですけれども、非常にすばらしい内容で、ちょっと正直、その将来的な需要を考えても、財務状況が厳しいとか危機になるというよりも、現状、ため込み過ぎているんじゃないかという心配の方が大きいんじゃないかなと、そういう観点から何点か質問をさせていただきたいと思います。
 まず、八ページに普通会計決算の状況についてまとめてございます。
 一番冒頭の収支等の状況の欄で、歳入総額から歳出総額を差し引いた形式収支は六千四百四十九億円、そこから翌年度に繰り越すべき財源を控除した実質収支は二十六億円となり、昨年度に引き続き、収支はほぼ均衡したという表記があるんですけれども、この中にある翌年度に繰り越すべき財源というものが一体どういうものなのか。これ、計算してみると、翌年度に繰り越すべき財源は六千四百二十三億円もあるわけです。
 この評価によって、本当の収支均衡なのか、余ったのをただ基金に積み上げるとか、何か実質を伴わない収支均衡なのか、見方が全然変わってしまうなというふうに思いまして、この翌年度に繰り越すべき財源とは何なのか、まず説明をいただきたいと思います。

○佐伯主計部長 翌年度に繰り越すべき財源とは、年度内に支出を完了できず、その翌年度に実施することとなった場合などに、その歳出に充てる財源でございます。
 令和六年度普通会計決算におけます翌年度に繰り越すべき財源は六千四百二十三億円となっており、主なものといたしまして、年度をまたぐ都道府県間の地方消費税清算に充てる財源や、翌年度に工期を延伸いたしました公共工事に充てる財源などが含まれております。

○鈴木委員 ご説明ありがとうございます。
 翌年度に繰り越すべき財源を別に見るというのは、合理的な見方で納得はできるんですけど、何か内容を伺うと正直疑問が残ります。
 例えば、今、例に出ていた年度をまたぐ地方消費税の清算ですか、これ多分、前年もあったと思うんですよ。前年もあったのを繰り越して、今年支払いをしているんだと思うんです。結局、今年まだ未清算の部分は来年に繰り越している。実質的には、この二つを相殺すると、そんなに金額ないんじゃないのかなと。というのは、消費税の清算金額は毎年大きく変わるもんじゃないと思うんです。
 ですから、その繰り越した金額の項目だけ見ればそうなんですけれども、前年度繰り越して支出した分と相殺して考えれば、これ、主たる内訳とはいえないんじゃないのかなと。
 同じく例示していただいた、工期を延伸した公共工事に充てる財源も、これも恐らく毎年やっている処理なんだと思うんですね。前年度から繰り越したのを該当年度払って、翌年にまた繰り越しをするってやっているんだと思うんですけど、何か本当にそれが実質的に、出入りを相殺した場合、実質的に翌年度に繰り越すべき財源になっているのかなというのは、ちょっと疑問を感じています。
 今後、またこれから事務事業質疑、決算委員会もございますので、そのときに詳しく伺っていきたいというふうに思います。
 次に、いよいよ、私がより深い問題意識のある、企業会計の観点から見た東京都の財務についてお伺いをしていきたいというふうに思います。
 まず、二五ページの行政コスト計算書、拝見いたします。企業会計でいえば損益計算書、PLになるかと思うんですけれども、ここを見ると、今期の収支差額は五千九百八億円と、つまり企業会計でいえば五千九百八億円の黒字になっているということがいえるんだろうなというふうに思います。
 じゃあ、この五千九百八億円がどうなるかというと、貸借対照表の中で、当然、内部留保として蓄積されていくんだろうなというふうに思うんですけれども、二三ページにある貸借対照表を確認すると、内部留保の増減額に当たる正味財産の部合計の増減額を見ると六千五百七億円と、当初の五千九百八億円よりも多い金額が内部留保されていると。
 普通の企業会計でいうと、ここ一致するのになと思って、何で差額が生じるんだろうと思って読んでいきましたら、二八ページに説明がありまして、正味財産の変動計算書という概念があって、企業会計でいうと、固定資産の増減というのはPLに反映されると思うんですけど、この自治体の財政ではちょっと別の処理をするようだなということが分かりました。
 そこで伺いたいんですけど、この正味財産がかなり増えていまして、その多くがこの国庫支出金という欄にある固定資産等の増減、五百二十一億円なのかなというふうに理解をしております。
 普通、例えば固定資産を売却して、簿価よりも高い値段で売れると、それ、利益として、民間企業だとPLに上がると思うんですけれども、そういうことなのかなというふうにちょっと思ったんですけれども、この点、ご説明いただけますでしょうか。

○佐伯主計部長 年次財務報告書、二八ページに記載されております正味財産変動計算書についてでございますが、当期変動額のうちの固定資産等の増減には、令和六年度中に固定資産等に計上された社会資本の整備等に充当されます国庫支出金の額や、事業移管に伴い区市町村等に譲与した都の固定資産の額などを計上しております。
 なお、東京都会計基準では、都有資産の売却による収入額のうち、帳簿価額を上回る、もしくは下回る額につきましては、行政コスト計算書におけます特別収支の部に計上することとされております。

○鈴木委員 詳しいご説明ありがとうございます。なるほど、よく分かりました。
 私の指摘したように、土地の売却等によって利益が生まれた場合は、行政コスト計算書の特別収支の部にちゃんと計上していますよと、それ以外、なかなか民間企業ではない国庫支出金によって社会資本が整備されたとか、そういう部分については別項目で処理をされていると。これは恐らく合理的なんだろうなというふうに感じたところでございます。
 ぜひ、今後の議論のために、委員の皆さんと共有をしたいんですけれども、東京都が特別な自治体だというのは、それはそうだと思うんですね。大都市特有の支出があり、将来的にもいろんなものが懸念されている。
 一方で、収入だってそうなわけですよ。毎年毎年、大都市特有の巨大な収入があるわけです、法人二税をはじめとする。やっぱりそれを、数字を見ながら本当に今が適正なレベルなのかという議論を積み重ねていくことが、私、重要なんだと思うんです。
 そういう意味でいうと、この二五ページの行政コスト計算書に出てくる当期収支差額五千九百八億円。これ、七兆八千八百六十一億円のうちの五千九百八億円ですから、かなり大きな金額が企業会計でいう黒字になってしまっているわけです。これ、本当に適正な数字なのかなと。サステーナブルなとか、将来不安に備えたとかというとかっこいいんですけど、そうやって日本人的な、とにかくリスクを避けようという意識が強過ぎて、私は、今、税金を負担されている方々に対するサービスや、いろんなものが不足する結果になってしまっているんじゃないかなということを危惧するところでございます。
 そんな観点から、次の質問をさせていただきたいんですけれども、この当期収支差額五千九百八億円、これを内部留保して正味財産に繰り入れているわけなんですけれども、これ多過ぎませんかね、収支均衡といえるんでしょうか。
 ちなみに、私、他県の動向も調べてみたんですけれども、やっぱりちょっと東京都は桁外れに大きいなと。まだ直近の数字を拾ってみただけなんですけど、例えば愛知県の場合、二〇二三年度で八百三十億円、大阪府の場合は千八百七十三億円。恐らく、それぞれ昨今のインフレ基調で税収が増えているので、それなりに黒字を計上しているわけではありますけれども、東京都の五千九百八億円というのは、財政規模を考慮しても多過ぎるんじゃないかというふうに感じるんですけれども、これ、どのように皆さんは認識されていらっしゃるんでしょうか。ご説明をいただきたいと思います。

○佐伯主計部長 令和六年度決算におけます収支均衡でございますが、普通会計決算におけます収支の状況を説明しているものでございまして、行政コスト計算書におけます当期収支差額とは性質が異なっております。
 なお、令和六年度の行政コスト計算書におけます当期収支差額五千九百八億円には、先ほどもご説明いたしましたが、地方消費税の清算時期の違いによります収支差額千三百七十三億円が含まれているなど、最終的に都に帰属するものばかりではございません。
 また、当該収支差額の一部は、東京都の場合は地方交付税の不交付団体でございまして、国による財政保障というものが期待できない中にありまして、税収の減収局面や突発的な財政需要の発生に備える、こういう意味を持ちます財政調整基金や都政の重要課題に対しまして、将来の財政需要に備えて安定的かつ機動的に施策を展開していくための特定目的基金、こういったものへの積立金に活用されております。

○鈴木委員 ご説明ありがとうございます。
 普通会計決算において収支均衡といっているけれども、必ずしも発生主義的な観点で計算をしている新会計制度に基づいた収支均衡とはいっていないという理解でいいんですかね。それはまた別ですよというご説明だったのかなというふうに理解をしています。
 じゃあ、普通会計と発生主義に基づく新会計、どっちを重視すべきかというと、私は後者だと思うんですね。発生主義によって、本当に実質ベース、入りと出を比べて均衡しているかどうか、それを把握するために新会計制度が生まれたんだろうというふうに思っているんです。もちろん、普通会計で収支を合わすということも、皆さんが実務上重要なことは理解しているんですけれども、都民の立場からいって、払った税金にふさわしいものが還元されているのかと。発生主義的観点から、やっぱりそこがバランスしているということが、私は重要なんじゃないかなと考えるところでございます。
 詳しいことは、またこれから議論を深めていきたいと思うんですけれども、何となく発生主義に基づく新会計制度は決算のときだけ出てきて、何かつじつま合わせみたいな形でつくって、こんな形になりましたというふうに報告されて終わりになっちゃうんですけれども、私は、それこそ予算をつくるときからこれをベースに、本当の意味での収支均衡なのか、都民にとって、いい税金の、バランスの取れた税金の使い方、特に世代間の税負担の公平性ですよね。現役世代は今払っているわけだから、それが将来、幾ら不安があるから幾ら繰り越さなきゃいけない、幾らためていかなきゃいけないといわれても、今払っている人たちにそれ相応の還元をするのって、これは自治体として重要なことだと思うんです。ぜひご検討いただきたいなというふうに思うところです。
 最後に、今度、PLを離れて、バランスシートについて説明をいただきたいというふうに思います。
 二三ページにある貸借対照表に基づいて質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど、冒頭でも触れましたけれども、東京都のバランスシートを見るたびにすばらしいなというふうに思います。私も長年というか、何年か上場企業の経営者もやっておりましたので、こんな財務諸表を見るとうらやましいと思う反面、ここまで内部留保を積み上げてしまうと、民間企業であれば、投資家の皆さんから、幾ら何でも支出を絞り過ぎだろうと、もう少しアグレッシブに借入れを増やして売上げを増やす努力をすべきじゃないかと。自治体に例えれば、住民サービスを増やすべきじゃないかというご指摘をいただくレベルだろうなというふうに感じます。
 私たち起業家は、財務の健全性を図る場合に、自己資本比率という概念を用います。分かりやすくいうと、総資産、東京都が持っている全ての資産のうち、東京都が蓄えてきた内部留保でそのうちのどれだけをカバーできているかという概念です。一〇〇%に近ければ近いほど健全財政といえるのかなと。一方で、これがゼロに近づけば近づくほど借金に依存しているということがいえるわけですから、不健全な財政だといえるのかなというふうに思います。
 これ見ると、東京都の数字が非常にすばらしくて、自己資本比率が八三%、おおよそ民間企業では見たことのないような自己資本比率が達成をされています。これ、自治体ってこういうものなのかなと思って、改めて、先ほど同様、PLの比較と同様、ほかの自治体とも比較をしてみたんですけれども、愛知県が二九%。だから、総資産のうちの七割は借入れに依存しているという体制なわけです。大阪府に至っては二三%。ほぼ東京都と純資産と負債の比率が真逆の状況になっているわけです。必ずしも自治体だから自己資本比率が高いんだとはいえないと。これ、東京都特有の現象なのかなというふうに思っています。
 先ほど、PLの部分の議論で、毎年五千億とか六千億とか蓄え過ぎじゃないですかと、もう少し積極的に住民サービスに還元すべきじゃないですかという議論をしてきたんですけれども、このストックの観点から見ても、過去こうやって毎年毎年何千億ためてきた結果、自己資本比率がとうとう八三%に達していると。
 これ、いわずもがなですけど、東京都のバランスシートって、資産は全部簿価評価なわけですよ。もうはるか昔に買った土地とか全部簿価で、恐らく今の数分の一で計上しているわけです。これ、時価評価に変えると、もう完全な、多分、無借金、自己資本一〇〇%に近い数字が出るんだろうなというふうに思うんです。
 将来不安がいろいろあるのは理解しているんですけれども、ちょっと、いつまでもサステーナブルな、サステーナブルな何でしたっけ、財政運営だとか、将来不安への備えだとか、何かもう紋切り型の言葉で割り切って議論を深めない時期ではないんじゃないかと。
 特に、今、税収が増えていますけれども、実質賃金は下がっているわけです。これは、みんなが好景気で潤っている時期だったら、私は、税収が減収する局面に備えて内部留保を蓄えていくっていうことに合理性があると思うんですけど、今、違うわけですよ。都民の実質賃金も下がって、多くの方々が物価高騰に苦しんでいる中で、なおかつ五千九百八億円もこうやって蓄え続けるというのはおかしいんじゃないのかなと。
 ちょっと話が膨らんでしまいましたけれども、この自己資本比率八三%に対する評価をお伺いさせていただきたいと思います。

○佐伯主計部長 民間企業の純資産でございますが、その充実が財務体質の良好さを示すものでございます。一方、都の正味財産は、貸借対照表の資産総額と負債総額の差額を表しております。
 元来、都の資産総額は、これまで長い時間をかけて整備をしてまいりました道路や港湾、学校など、売却を前提としないインフラ資産や行政財産が六割と多くを占めており、民間企業とは資産の内容など財務構造が大きく異なっております。
 こうしたことから、正味財産の金額の多寡や自己資本比率といった民間企業の経営指標を用いて自治体の財政状況を評価することはなじまないと考えております。

○鈴木委員 想定していたとおりの答弁をいただきました。
 道路や港湾、学校など、売却を前提としないインフラ資産や行政財産が六割を占めており、民間企業とは財務構造が大きく異なっていると。これ、よくおっしゃるんですけど、民間企業だってそうですよ。工場とか店舗とか社屋とか、そういうのは売れませんから。(発言する者あり)何ですか。

○平田委員長 続けてください。

○鈴木委員 売れないのは同じで、決して別に民間のバランスシートだって売却清算を前提につくられているものじゃないと思うんです。一つの考え方としてそういうふうに説明をしているだけで、私は必ずしも行政の特異性ではないんじゃないかなというふうに思います。
 せっかくこういった、いい発生主義に基づく新会計の財務制度を報告していただいているわけですから、資料をつくっていただいているわけですから、ぜひもう少し踏み込んだ議論をこれからの事務事業質疑や決算委員会でさせていただきたいというふうに思います。
 以上です。

○平田委員長 今、鈴木理事の質疑時間、ちょっと二、三分程度ですけど超過しておりましたんで、予定の時間を守りながら質疑をお願いしたいと思います。

○北口委員 私からも、この令和六年度の年次報告書、何点か質問をさせていただきます。
 都議会公明党としても、これまで一貫して都民の声に耳を傾けて、現場の実情を踏まえた政策の実現に取り組んでまいりました。とりわけ、未来を担う子供たち、そして子育て世帯を支える施策、さらには、先日、記録的な豪雨等もございましたけれども、そうした激甚化する災害に備えた東京都の強靱化などに全力を上げてきたところでございます。
 都がこの間、直面する課題に対し、都議会公明党の求めに応じて果断に取り組んできたことは、この決算においても顕著に表れているというふうに思っております。例えば、子供、子育て施策には一兆八千億円、そしてまた、東京の強靱化に向けた施策には約六千億円等を投じているところでございます。他方で、こうした積極的な施策展開をなし得るのは都財政が豊かであるからではないかという、そうした議論も存在することは事実でございます。
 しかしながら、いま一度振り返っていきたいのは、これまで施策を着実に実施、実行し得た背景には、バブル経済が崩壊し、都財政の状況が悪化して以降の不断の施策の見直しと効率的な財政運営の積み重ねで今日があるというふうにも考えているところでございます。
 その中でも、特に重要であるというふうに思っているのが、我が会派が強く推進をさせていただいた、全国に先駆けて導入した、先ほど来も議論になっております複式簿記・発生主義的な新公会計制度であるというふうに思っております。この制度を活用した事業評価こそ、真に効率的で効果的な事業構築を可能とする大きな柱であると思います。都政の透明性と説明責任を高める仕組みとして、これまで機能してまいりました。
 そこで、本日、この新公会計制度を活用した事業評価がこれまでどのように運用されてきたか、そして具体的にどのような成果を上げてきたのか、その実態を明らかにしながら、今後さらなる改善、また活用の方向性について議論を深めていきたいなと、そんなふうに考えているところでございます。
 まず、都が事業評価の取組を導入した経緯について、確認の意味を込めてお伺いをさせていただきます。

○佐伯主計部長 バブル経済の崩壊に伴います都税収入の急激な減少などの影響によりまして、都財政は、平成十年度決算におきまして一千億円を超える実質収支の赤字を計上し、財政再建団体への転落の危機に直面をいたしました。
 このため、二次にわたる財政再建推進プランを策定し、当時といたしましては全国で最も厳しい職員給与費の四%削減をはじめまして、投資的経費の大幅な抑制など、全庁を挙げて施策の見直し、再構築に取り組んだことなどによりまして、平成十七年度には財政再建を達成いたしました。
 事業評価は、こうした自律的な施策見直しの努力を継続していくための仕組みといたしまして平成十八年度に再構築したものであり、限られた財源の中で都政の諸課題に対応するため、事業の効率性、実効性の向上や無駄をなくす取組の徹底へとつなげております。

○北口委員 都は、かつての財政再建期の努力を一過性のものとせず、その後も事業評価という形で継続をしてきたということでございます。この取組によりまして、事業評価を開始した平成十九年度の予算編成以降の十九年間の合計で一兆円を超える財源を確保するに至ったということでございます。
 我が党が強く主張しましたこの新公会計制度もこれらに大きく寄与していると。これらも含めたこうした大きな成果は、各年度において施策のPDCAサイクルを着実に実践をしてきたその積み重ねのたまものであり、まさに不断の努力の結果であるというふうにも考えています。
 そこで、この事業評価の取組を通じて、どのように施策のPDCAサイクルを実施、実践されてきたのか、この新公会計制度の特徴とこれまでの活用事例を併せて伺います。

○佐伯主計部長 都の事業評価の取組では、全ての事業に終期を設定した上で、事業の成果や決算の分析など事後検証を徹底し、その結果を翌年度予算に反映させることでPDCAサイクルを毎年度有効に機能させ、財源確保へとつなげてまいりました。
 また、評価の取組を通じて多面的に事業の分析を行うことは重要でございまして、新公会計制度の活用により、従来の官庁会計では把握できなかった資産、負債等のストック情報や減価償却費などを加味したフルコストでの分析が可能となっております。
 例えばでございますが、河川のごみを回収いたします清掃船の更新の事例でございますが、リース契約の継続か、あるいは代替船を建造するか、これを発生主義によりましてコスト比較したところ、代替船を建造する方が減価償却費を含めても三割ほど削減できるということが判明した、こういった事例がございました。これを受けまして、これまでリース契約であった船舶の新造に転換をいたしまして経費の縮減を実現していると、こういった事例もございました。

○北口委員 都は、毎年度、この新公会計制度を活用しつつ、確実にPDCAサイクルを回しながら、一つ一つの政策、施策について効果的な展開を図ってきたということでございます。
 その結果として、着実に財源を確保し、その貴重な財源を基に待ったなしの課題に果敢に挑み、子育て世帯への支援や都市の強靱化をはじめとする施策展開を実現してきたということだというふうに思います。
 都政課題が一層複雑化、多様化する中、現状の取組に安住することなく、この検証と改善のPDCAサイクル、継続的に回していくためにも、この事業評価の取組をさらに充実をさせていくということが重要であるというふうに思います。その点では、まさに今年度、この事業評価を含む評価制度の見直しが行われているものと承知をしております。
 そこで、この評価制度について、具体的にどのような充実が図られたのか、とりわけこの新公会計制度のさらなる活用という観点を踏まえてお伺いをいたします。

○佐伯主計部長 令和八年度予算編成に当たりましては、成果重視を基本といたしました検証の強化、より客観性の高い評価の実現、施策の見直しの視点強化、これら三つの観点から評価制度のバージョンアップを図っております。
 具体的には、二〇五〇東京戦略の関連事業に新たにKPIを設定するとともに、新たにデジタルや広報といった重点テーマに外部有識者の意見を活用してまいります。
 また、新公会計制度を用いた評価では、これまでの優良事例を各局と積極的に共有をいたしまして、さらなる活用を推し進めてまいります。
 加えまして、減価償却費などを含めたフルコスト情報に基づく老朽化率や利用者一人当たりコストなどを分析いたしまして、その過程を新たに公表することで、アカウンタビリティーの向上などを図ってまいります。

○北口委員 今後、この評価制度においては、二〇五〇東京戦略の関連事業にKPIを設定することにより、これまで以上に施策実施の効果を踏まえた評価や事業進捗の管理が図られることとなります。施策のPDCAサイクルが一層効果的に機能しているものということで、大きく期待をしているところでございます。
 さらに、この新公会計制度に基づく分析結果を活用することによりまして、全国的に公共施設の老朽化が改めて懸念されている中で、適切かつ効率的な施設の維持更新が促進されるなど、効果的な事業実施が実現されることや、都民に対して都財政の見える化、透明化が一層進むことは、大変重要な意味を持っているというふうに考えているところです。
 これまでの質疑を通じまして、都は不断の事業の見直しにより財源の確保に取り組み、そしてその手を緩めることなく、令和八年度予算編成においても取組のさらなる充実が図られているということは確認してきたところでございます。
 今後とも、創意工夫を凝らしながら財政運営を実施していただきまして、少子高齢化への対応や防災力の強化といった中長期的に取り組まなければならない都政課題に着実に対応していただくとともに、先行き不透明な物価高騰への対策など、都民が直面する様々なリスク、機動的に対応されることを強く求めまして、私の質問を終わります。

○竹内委員 それでは、二〇二四年度東京都年次財務報告書について質問をさせていただきます。
 まず初めに、この年次財務報告書の目的と、どのように活用するのかお伺いをいたします。

○佐伯主計部長 年次財務報告書は、都の財政状況を多面的に明らかにし、都財政に関するアカウンタビリティーの一層の充実を図る観点から作成、公表をしております。
 本報告書は、都民の皆様方をはじめ、様々な方々に都の決算状況と財政運営への理解を深めていただくためにご活用いただいているものと認識しております。

○竹内委員 都のホームページを拝見いたしますと、都全体の財務の実態をマクロ的な視点から明らかにする、民間企業でいえば、会社の経営状況を株主や投資家に報告するアニュアルレポートに相当するものと説明をされております。
 これまでも、党議員団が指摘してまいりましたが、東京都でいう株主というのは都民であり、都民生活にどれほど振り向けられているか、ここが重要だと考えます。
 同時に、都財政の現状を分かりやすく伝えることが大事だと思っています。皆さん知りたいのは、現在の都の財政は大丈夫なのか、厳しいのか、こういうことだと思うんですが、この報告書では具体的な表記がありません。
 そこで伺いますが、本報告書には、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づき、健全化判断比率が示されています。いずれも財政の早期健全化や再生が必要と判断される基準を下回っていますと記載されているんですが、このことは財政は厳しくないということと受け止めますが、都の認識をお伺いします。

○佐伯主計部長 健全化判断比率は、財政の早期健全化や再生の必要性を判断する、法律に基づく財政指標といたしまして、地方公共団体の財政状況を客観的に表したものでございまして、現状におきまして、強固で弾力的な財政基盤を堅持しているものと考えております。
 一方で、都は、大都市特有の財政需要や社会保障関係経費など避けることのできない財政需要を抱えておりまして、今後とも積極的かつ安定的に行政サービスを提供し続けていくためには、将来にわたり強靱な財政基盤を確保し、持続可能な財政運営を行っていく必要があると認識しております。

○竹内委員 いろいろご説明をいただいたんですけれども、現状において財政には余力があるということだと思うんです。
 そこで、逆に、いわゆる財政危機というのはどういう状況になるのかお伺いしたいと思うんですけれども、健全化判断比率には四つの指標があります。実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率、それぞれに早期健全化基準、財政再生基準という基準が示されているわけですが、その基準を上回ると、いわゆる財政危機という状況になると思います。
 例えば、指標の一つである実質赤字比率について、東京都の財政再生団体の基準額は幾らになるのかお示しをいただきたいと思います。

○佐伯主計部長 実質赤字比率は、標準財政規模に対します一般会計等の実質赤字額の割合を示すものでございます。このうち、法律に基づく財政再生計画の策定が必要となる財政再生基準、これを都に仮に当てはめた場合、この基準値は、令和六年度ベースで八・六七%、実質赤字額は三千八百六十七億円、このように試算をしておりますが、実際の決算では赤字は生じておりません。

○竹内委員 標準財政規模ということなので、実際の東京都の財政とはイコールではないんですが、都が財政破綻といわれる財政再生団体となるのは、この標準財政規模に合わせると、実質赤字額が三千八百六十七億円ということですから、現状ではあり得ないような事態ではないかなというふうに思います。
 令和六年度は、今回の報告書にもあるように、普通会計における歳出の差額は五千三百五十五億円です。繰り越すべき財源がどうなのかという問題もありますけれども、これを差し引いても黒字ですから、十分な財政力があるといえると思います。
 さらに、財政力をはかる指標についてもお伺いしたいと思います。各種指標の状況から、経常収支比率、公債費負担比率、基金残高、都債残高について、現状維持が望ましいと考えているか、また望ましいと考える基準があればお示しいただきたいんですが、いかがでしょうか。

○佐伯主計部長 委員お示しの各種指標でございますが、社会経済情勢やその時々の地方税財政制度、財政規模の変動などに大きく影響を受けるものでございまして、望ましいとされる基準は一概に規定するものではございません。国からもそうした基準は示されておりません。
 なお、都の経常収支比率や公債費負担比率は、都道府県平均と比べて低い状況にありますことから、財政の弾力性は高い状況にあると考えております。また、一定の基金残高を確保し、都債残高も着実に減少させているなど、将来を見据えた財政対応力を堅持しているものと認識しております。

○竹内委員 財政の弾力性は高い状況にあると。それから、財政対応力を堅持しているということですから、都としても、財政は余力がある、財政力があるんだということを認められたということだと思います。
 一方で、都民の皆さんの暮らしはどうかということなんです。先ほども少しお話ありましたけれども、物価高騰で深刻な状況が続いています
 都も物価高騰対策に取り組んできたわけですが、令和六年度に都が講じた物価高騰対策の支出額、こちらの報告書にもありますけれども、三千二百六億円のうち、国からの財源及び総額に対する比率、三千二百六億円に対する国からの財源の比率、こちらをお答えいただきたいと思います。

○佐伯主計部長 令和六年度は、長期化する物価高騰の影響から都民や事業者を守るために、セーフティーネット支援に加えまして、賃上げを促進する取組など重層的な対策を講じてまいりました。その結果、令和六年度決算におけます物価高騰対策の支出額は三千二百六億円となっており、国からの財源は一千三百六十三億円、総額に占める割合は四二・五%となっております。

○竹内委員 都の支出は六割弱にとどまっているということなんですね。
 私自身は、区議時代から多くの暮らしのお困り事を伺ってきました。
 非正規の仕事を掛け持ちしているシングルマザーの方は、値上げが続き、お米を買うことができず、子供に申し訳ないと苦しんでいます。年金だけで暮らす八十六歳の方が、生活が苦しいので仕事を探していると相談に来られました。四畳半一間で三万円の住まいで暮らしている七十代の方は、助成制度があってもエアコンが買えず、猛暑の中で耐え忍んでいます。
 こうした都民の暮らしの実態は氷山の一角です。多くの方々の暮らしが追い詰められています。
 先ほどもありましたけれども、全国的に見ても東京は非常に財政力があるということは、どの指標を見ても明らかだと思うんです。そうした財政力がある東京都として、もっとやるべきだったんじゃないかと強く指摘をしておきたいというふうに思います。
 最後に、都債の繰上償還について、この考え方と財源をお伺いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○佐伯主計部長 都債の繰上償還に当たりましては、繰上償還をせず継続した場合の利払い総額と、繰上償還時に必要となる返済コストを試算比較した上で、利払い費の縮減を図ることができるものを対象としております。
 令和六年度は、都債の発行金利が上昇局面にあり、今後、新たに発行する都債の利払い費の増加が見込まれる中、最終補正予算編成時点で執行しないことが明らかな事項や経費の節減などにより財源を確保できたことから、後年度負担を軽減するため、過去に発行した都債の繰上償還を行うことといたしました。

○竹内委員 令和六年度は、最終補正で基金から一般会計に繰り入れる予定だった額を縮小したり、都債の発行抑制や、今ご答弁いただきましたとおり、多額の繰上償還が行われております。その結果、公債費も都債の残高も圧縮されてきているわけです。基金総額は二兆五千二百八十億円にも上っているわけです。こうした財源というのは、経費節減とおっしゃりますけれども、都民の暮らしや営業を支援したり、教育や福祉の充実のために使えるお金なんです。
 これから決算の審査、さらに来年度予算編成に進んでいくわけですけれども、こうした財源は、暮らしの厳しい都民にこそ還元すべきだということを最後に改めて申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。

○もがみ委員 まず、東京都の年次財務報告書に関連して何点かお尋ねさせていただきます。
 社会経済情勢や人々の価値観は、時代とともに移り変わっていきます。こうした変化を的確に踏まえ、限られた財源を最も効果的な分野に振り分けてこそ、今の東京都、そして財政当局に求められる姿勢ではないでしょうか。私は、この観点から、年次財務報告書を確認させていただきたいと存じます。
 まず、同報告書の一五ページには、三十年前の平成五年度と比較した都民一人当たりの歳出が掲載されています。ここでは、三十年という長い時間を経て、都の歳出構造がどのように変化したのか端的に示されており、重要な示唆を含んでいると受け止めております。
 そこでまず、令和六年度、財政再建期以前を比較した場合に、都民一人当たり目的別歳出がどのように変化したのか、また、そこからどういった傾向が読み取れるのかお尋ねいたします。

○佐伯主計部長 令和六年度と財政再建期以前を比較するというお尋ねでございますが、都民一人当たりの目的別歳出につきましては、財政再建期以前で歳出規模が最大となっておりました平成五年度と、これと直近の令和六年度を比較した場合でございますが、道路整備費などの土木費は、事業の重点化などを進める中で、十六万四千円から七万五千円へと減少しております。
 一方、子育て支援や高齢者福祉などの経費に当たります民生費は、子育て支援の強化や高齢化の進展などに伴いまして、三万九千円から九万九千円へと約二・六倍に増加をしております。
 このように、時代とともに変化する社会経済情勢や都民ニーズを的確に把握しながら、限られた財源を必要な施策に適切に配分しております。

○もがみ委員 ご答弁ありがとうございます。今、答弁がありましたように、社会状況や都民のニーズに合わせて、歳出のウエートは土木費から民生費に移り変わり、都民の関心が社会の変化に応じた見直しが図られてきたものと受け止めております。このように、より必要とされる分野へ財源を振り分けていくことが当然重要でありますし、しかし同時に、個々の施策そのものに注目し、果たして、より適切な手段はないかという観点から不断に見直しを行っていくことも極めて大切だと考えます。
 例えば、生活保護に関してですが、憲法に基づき国民を対象とする制度ではありますが、現実には外国人の方にも支給されている現状があり、制度と運用の間には一定のそごが見受けられます。財政負担の増大、日本人との公平性、ひいては国民の信頼を損なう可能性を内包しています。
 また、移民政策などを包括的に設計しない日本にとっては、外国人生活保護の在り方が場当たり的になりやすい点も指摘されます。例えば、ドイツなどにおいては、難民や移民などにおける現金給付などではなく、食料や住居などのバウチャー方式などの現物支給を導入し、現金支給による不正利用や過度の財政負担を抑制しています。アメリカにおいても、生活保護の対象を市民権保持者や永住者に限定する一方、教育や医療などの特定分野の公共サービスを通じて、社会的セーフティーネットが整えられています。これらは、多様性を尊重しつつも、国民負担と外国人需給のバランスを意識した制度設計といえます。
 これに対して、東京都の、国の制度を補う形で現金給付を行う現状は、将来的な財政負担の観点からも持続性に課題があるのではないかと考えています。給付の在り方については、国際的な事例を参考にしつつ、バウチャーや現物支給といったような多様な手法を検討していくことも必要であると考えています。
 本日は、生活保護を例に申し上げましたが、ほかの事業においても同様に、予算編成の中で絶え間ない見直しを進め、財政健全化や都民の理解の確保をしつつ、つながる工夫を重ねていただくことを強く要望し、次の質問に移らさせていただきます。
 そして、都民の理解、協力を得ながら事業を着実に推進していくためには、まず都民が置かれている状況や施策の効果を丁寧に分析し、その上で、個々の施策の在り方について適切に見直していくことが大変意義深いものと認識しています。
 このような観点で年次財務報告書を見ると、八二ページには、事業の見直しを含めた財政運営について記載されています。
 そこで、参政党として関心を持っている脱炭素政策、これを例に挙げ、事業の見直しの在り方について伺います。
 申すまでもなく、ゼロエミッション東京の実現は、都にとって極めて重要な政策目標であり、その方向性を否定するものではございません。しかしながら、実際に事業者や脱炭素の取組を進める多大なコストが生じ、都内製造業や中小企業の経営を圧迫し、産業基盤を弱体化しかねないという懸念がございます。加えて、物価高騰が続く中に当たっては、エネルギー価格上昇を通じて、都民生活や事業者の経営に過度な負担を及ぼすことがないよう、十分な配慮が求められます。
 国際的に見ても、アメリカやエネルギー価格高騰を背景に、脱炭素政策の一部の見直しが行われております。JPモルガンなどのネットゼロ・バンキング・アライアンスからの離脱が報じられ、欧州などにおいてもドイツの大手金融機関が再生可能エネルギーへの投資を縮小するなど、各国の自国の経済や国民生活の実情、そして柔軟な対応を行っている実態がございます。
 東京都が先進的に施策を転換する意義は大きいものの、事業者や都民の生活が物価高の直撃を受ける今日においては、施策のコストや効率性、観点などを踏まえ、事業の的確な見直しを一層徹底していくことが求められるのではないでしょうか。そして、こうした施策の在り方の不断の見直しは、環境関連経費にとどまらず、あらゆる政策分野において欠かせないものと考えております。個々の施策を着実に推進していくためには、都民の理解と協力を得ることが不可欠であります。
 そのためには、社会情勢の変化や都民のニーズに的確に応えているのか、また費用対効果が十分であるかという観点から、過去の実績などを踏まえながら、施策の実効性や効率性、不断の検証をし、見直しを行っていくことが極めて重要です。
 そこで、これから本格化する令和八年度の予算編成の中で、事業の見直しに向けてどのように取り組んでいるのか見解を伺います。

○佐伯主計部長 限られた財源の中で都政の諸課題に的確に対処していくためには、施策の実効性や効率性などを不断に検証しながら、事業の見直しに着実につなげていくことが重要でございます。
 こうした考えの下、令和八年度予算編成においても、事業実績が目標を大きく下回るなど、さらなる見直しが必要な事業につきまして、原則としてマイナス一〇%シーリングを設定しております。
 また、事業評価の取組といたしまして、全ての事業に終期を設定し、終期が到来する事業の事後検証の徹底を図ることとしております。
 こうした取組を通じまして、各局による自主的な事業見直しを促進することで、社会経済情勢や都民ニーズの変化を的確に捉えた施策の構築を図ってまいります。

○もがみ委員 ご答弁ありがとうございます。今後とも、社会経済情勢や国際情勢の変化を的確に踏まえつつ、施策の効果や実効性を不断に検証し、必要に応じて柔軟に見直しを行っていただきたいと思います。そうした不断の取組こそが、都民一人一人の理解を、協力を広く得ることにつながり、さらには都政全体への信頼を一層高めるものと考えております。この点を強く要望申し上げ、私の質問を終わらさせていただきます。

○平田委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○平田委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時三十二分散会