財政委員会速記録第十一号

令和六年九月三十日(月曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長林あきひろ君
副委員長清水やすこ君
副委員長和泉なおみ君
理事清水とし子君
理事吉住はるお君
理事慶野 信一君
かつまたさとし君
阿部祐美子君
藤井とものり君
長橋 桂一君
菅野 弘一君
河野ゆうき君
増子ひろき君
荒木ちはる君

欠席委員 なし

出席説明員
財務局局長山下  聡君
経理部長DX推進担当部長兼務稲垣 敦子君
主計部長佐伯  亮君
財産運用部長松井  裕君
建築保全部長金子 陽子君

本日の会議に付した事件
財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百七十七号議案 令和六年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、予算総則、歳入
・第二百三十七号議案 都立北多摩地区特別支援学校(仮称)(六)新築工事請負契約
・第二百三十八号議案 都営住宅六H−一二九東(北区桐ケ丘二丁目GN十二街区)工事請負契約
・第二百三十九号議案 都営住宅六H−一三八東(足立区江北七丁目)工事請負契約
・第二百四十号議案 東京国際展示場(六)東展示棟改修空調設備工事その二請負契約
・第二百四十一号議案 東京国際展示場(六)東展示棟改修給水衛生設備工事その二請負契約
・第二百四十二号議案 稲城多摩トンネル(仮称)(六)トンネル及び擁壁築造工事請負契約
・第二百四十三号議案 環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事(その二)請負契約
・第二百四十四号議案 新中川護岸耐震補強工事(その二十三)及び中川護岸耐震補強工事(その五十四)請負契約
報告事項(質疑)
・「令和五年度東京都年次財務報告書」について

○林委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、財務局関係の付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第二百三十七号議案から第二百四十四号議案までの契約議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承をお願いします。
 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百七十七号議案、令和六年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、予算総則、歳入及び第二百三十七号議案から第二百四十四号議案までを一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○清水(や)委員 よろしくお願いいたします。
 私からは、まず、補正予算について伺います。
 先日の代表質問でも取り上げましたが、今回の補正予算については、物価高騰対策と喫緊の課題への対応の二本の柱について、今なすべき施策を迅速に取りまとめて編成されたとの知事答弁がありました。
 まず、物価高騰対策ですが、八月の消費者物価指数が、前年から二・六%の上昇となるなど上昇トレンドが継続しています。都民ファーストの会は、こうした物価高騰に苦しむ都民や事業者の不安解消などに向け、早急に対策を講じるよう要望してきました。私たちの要望を踏まえ、都は、繰越金を活用して補正予算を編成したとのことでございます。
 そこでまず、国の交付金を待つことなく物価高騰対策に係る補正予算を編成した趣旨を伺います。

○佐伯主計部長 物価高騰が長引く中、国際情勢のさらなる緊迫化等によりまして、その影響が一層深刻化することが懸念をされております。一方で、国は、秋にも物価高騰対策を含む経済対策を策定するとしておりますが、その時期は定まっておりません。このため、物価高騰対策は、一義的には国の役割ではあるものの、東京の物価が全国に比べて高い水準にある中、都民や事業者が不安を抱えている状況を踏まえ、都として必要な対策を速やかに講じていく必要がございます。
 こうした考えの下、今回の補正予算では、国の対策も見据えつつ、現に苦境に立たされていらっしゃる都民や事業者を下支えし、物価高騰の影響に速やかに対応するため、前年度からの繰越金を活用し、国に先駆けて迅速かつ効果的な対策を講じていくこととしたものでございます。

○清水(や)委員 現に多くの都民や事業者がしわ寄せを受けています。国の動向が不透明な中、一刻も早い支援に向け、国に先駆けて対策を講じてくださったことを高く評価いたします。物価高騰においては、特に食料費や光熱費の影響が大きく、都民の生活や事業者の経済活動に直結しています。
 そこで、今回の補正予算における物価高騰対策の具体的な内容をお伺いいたします。

○佐伯主計部長 今回の物価高騰対策は、医療機関など物価高騰の影響を価格に転嫁することが困難な事業者に対しまして支援を実施いたしますとともに、家計の負担の軽減を図るものでございます。
 まず、事業者に対する支援といたしましては、医療機関等におけます光熱費高騰分といたしまして、一施設当たり最大で十五万円を補助いたします。また、保育所や介護施設など食事の提供が必要な施設では、光熱費に加えまして、食材費の支援も行います。
 さらに、燃料費高騰に直面する運輸事業者や公衆浴場向けの支援のほか、特別高圧電力や工業用LPガスを利用いたします中小企業者への支援など、エネルギー価格高騰への対策を行ってまいります。
 加えて、都民生活を支援いたしますとともに、消費を下支えし経済を活性化するための緊急対策といたしまして、都内店舗において商品購入やサービス利用等の支払いをQRコード決済で行った利用者に対しまして、最大一〇%のポイントを還元するキャンペーンを実施してまいります。

○清水(や)委員 医療機関など価格転嫁の難しい事業者への支援や消費を喚起するキャンペーンを実施することが確認できました。早速、私のところには、苦しい状況の中、都からの支援が見えてきて本当にありがたい、その中でも、支援金の単価が上がったということに、医療機関の関係者からも多くの感謝の声が寄せられています。都民や事業者がその効果を実感できるよう迅速な執行を求めておきます。
 次に、二つ目の柱である喫緊の課題への対応についてです。
 都は、令和六年度当初予算で学校給食費の負担軽減に向けて二分の一を支援することとしましたが、市町村の一部がまだいまだに給食費を無償化できていません。
 また、来月からは、新たに新型コロナワクチンの定期接種も始まります。こうした現下の状況を踏まえた対策も必要です。
 そこで、今回の補正予算で計上した喫緊の課題へどのように対応していくのか、主な取組と併せて伺います。

○佐伯主計部長 今回の補正予算では、都政を取り巻く喫緊の課題に迅速に対処いたしますため、子育て世帯の負担軽減や今年の冬におけます新型コロナウイルス感染症の感染拡大への備えなど、今なすべき施策を講じることとしております。
 具体的には、食材費の高騰が続く中、全ての市町村が学校給食の無償化を実現できるよう、国が無償化について自らの責任で実施するまでの間、特例的に市町村総合交付金を拡充することといたしまして、三学期相当分の経費を計上しております。
 また、十月から開始されます新型コロナワクチン定期接種につきましては、都独自の自己負担軽減策といたしまして、区市町村に千円補助することで、対象者の自己負担を二千五百円以下に抑えてまいります。これによりまして、接種率の向上を図り、感染拡大の防止につなげてまいります。
 さらに、石川県の復旧復興に向けまして、国や県の協力依頼に基づいて、令和六年能登半島地震におけます災害廃棄物の受入れに迅速に対応できますよう、債務負担行為を設定いたしまして、災害廃棄物を輸送するコンテナの製造に速やかに着手してまいります。

○清水(や)委員 こうした対策にスピード感を持って取り組むことはとても重要なことです。
 特に、学校給食費無償化については、補正予算案を公表する前は、三十九ある市町村のうち、西多摩も五つありますけれども、十一市町村が無償化に踏み切れていませんでしたが、この増額により、多くの団体が前向きに検討している状況です。私の地元西多摩地域含め、今回の都の方針を踏まえ、新たに羽村市やあきる野市などが三学期から無償化することとしており、西多摩地域の全市町村で給食費の無償化が実現される見込みとなっています。
 給食費の無償化は、一度きりで終わることなく継続することも重要です。給食費の無償化に向け、しっかりと国への働きかけを行うとともに、国による制度が構築されるまでの間は、どうか都において財政支援を講じるよう求めまして、質問を終わります。

○慶野委員 補正予算についてお伺いします。
 エネルギー価格や物価の高騰が長引く中、都民生活や中小零細企業の経営を取り巻く環境は依然として厳しい状況であります。
 都民の不安や心配の声が一層高まっていることを受け、都議会公明党は、この間、補正予算を編成し、物価高騰に苦しむ都民や事業者への支援を早急に実施するよう、知事に対して重ねて緊急要望を行ってまいりました。
 また、来月から開始される、重症化が懸念される高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種への負担軽減策を実施することを要望してまいりました。
 今回の補正予算では、こうした我が会派の要望を踏まえ、電気やガス料金、燃料費など、長引く物価高騰の影響から都民、事業者を守るため、家計の負担軽減を図る取組や中小事業者への支援が実施されることを高く評価いたします。
 また、喫緊の課題への対策として、新型コロナワクチン定期接種に係る都独自の対策などが盛り込まれておりますが、定期接種の開始は、明日十月一日であります。本来は、中身に関しては厚生委員会で質疑することになりますけれども、都が区市町村と連携することで、速やかにワクチン接種の自己負担軽減が実施されることが見込まれております。
 九月十七日時点で、各区市町村の今回の六十五歳以上に向けた新型コロナワクチンの接種助成、これを調べてまいりました。二週間前のデータではありますけれども、全区市町村の中で、既に七区が自己負担ゼロを決定しております。ちなみに私の地元荒川区では、既に自己負担ゼロの接種券がもう対象の方々に届いているということで、うれしい声が届いております。七区がゼロ、そして四区が七十五歳以上に限ってゼロに踏み切った、こうした状況がある一方で、五つの区市が現在検討中ということでありました。
 これは当然、都議会でのこの補正予算が成立するのをやはり待たなければいけないという実情と、それに裏返しの形ではありますけれども、事前の東京都と区市との連携で、こうした予定があるということで、国の動向を見据えつつも、区市との連携をしていくことで、荒川区を含む多くの地域で自己負担軽減策に既に踏み切って、明日十月一日からの接種を開始できる。基礎疾患のある方にとっては、本当に重要な問題ですので、これは所管外なので、これ以上のお話はできませんけれども、こうした自己負担軽減策が実施されるようになったことを評価したいと思います。
 物価高騰については、必要とする方々に支援が行き届くことが重要です。都はこれまでも、物価高騰対策を講じてきたところですけれども、今回の対策の実施に当たっては、これまでの支援の継続にとどまらず、支援を必要とする方々が対象者に含まれているのかしっかりと確認する必要があります。また、今後の物価動向が不透明な中、不安を抱える都民や事業者がどのぐらいの期間にわたって支援を受けることができるのかということが重要になってまいります。
 今回の補正予算において、具体的にどのような支援対象の拡充が図られたのかという点と、物価高騰対策全体の支援期間を併せて伺います。

○佐伯主計部長 都は、物価高騰の影響を受けます都民、事業者を支援するため、昨年度におきましても、補正予算を編成するなど機動的に対策を講じてまいりました。
 今回の補正予算では、燃料費高騰に直面する運輸事業者の負担軽減に向けました緊急対策といたしまして、これまでの営業用貨物や乗合バス事業者を支援するとともに、新たに今回価格転嫁することが困難なタクシー事業者を支援対象に加えました。さらに、物価高騰に直面いたします医療機関等の負担軽減に向けた緊急対策といたしまして、病院や診療所等に加えまして、新たに歯科技工所を対象といたしまして、支援の拡充を図っているところでございます。
 また、こうした物価高騰対策の支援期間につきましては、今後も見込まれる影響に対応するために、今年度の下半期分を計上いたしまして、必要な支援を着実に実施していくこととしております。

○慶野委員 ありがとうございます。新たに加わった支援対象が歯科技工所やタクシーということでありました。
 代表質問でも都議会公明党、指摘いたしましたけれども、国はこれまでも、タクシーを支援の対象から除外をしておりませんでした。公共交通としての役割、バスと同様、今、タクシーに求められる、コミュニティバスも含めてですけれども、各地域ではこの重要性がますます上がっております。こうした中で、都がいよいよ初めてタクシーに対しても支援をしていく。しかも一回の、いっときの支援ではなくて、半年にわたる向こう下半期分の支援をするということで、高く評価したいと思います。
 我々の、都議会公明党の要望を踏まえた支援策が盛り込まれたことを改めて評価して、物価高騰に苦しむ都民や事業者への支援が着実に実施されていくことをしっかり要望しておきます。
 その上で、国際情勢の不安定化によって、エネルギーや原材料価格の上昇の見通しはいまだ不透明です。また、新たな感染症の発生など、今後も緊急的な課題の発生に備える必要もあります。さらには、都は、激甚化する災害に備えた都市の強靱化や待ったなしの少子化対策など、将来にわたって継続的に取り組んでいかなければならない課題も抱えております。
 こうした様々な財政需要に着実に対応していくために、中長期を見据えた財政運営を行っていくべきと考えますけれども、見解を求めます。

○佐伯主計部長 都は、長引く物価高騰への対応など喫緊の課題への対処に加えまして、高齢者人口の増加等に伴います社会保障関係経費の増大や社会資本ストックの維持更新など、避けることのできない財政需要を抱えております。
 また、全ての人が輝く明るい未来の東京を実現するために、チルドレンファースト社会の実現や国際競争力の強化、都市の強靱化など、将来を見据えた施策を積極的に展開していく必要がございます。
 こうした中でも、将来にわたり安定的な財政運営を行っていくため、新公会計制度の活用はもとより、政策評価、事業評価、グループ連携事業評価を一体的に実施をいたしまして、施策の目標や成果に対する分析を強化するなど、効率性、実効性の高い施策構築に向けた取組を進めてまいります。その上で、将来に向けた財政対応力にも配慮いたしながら、基金や都債を戦略的かつ計画的に活用することで、中長期にわたり持続可能な財政運営を行ってまいります。

○慶野委員 社会経済情勢の変化に機動的に対応しながら、ただいまご答弁いただいたとおり、人への投資はもちろん、将来を見据えて、インフラの整備や成長産業への投資など、国際競争力の強化に向けた施策も積極的に講じていくことが重要です。
 そのためにも、引き続き、新公会計制度も活用した事業評価の取組の強化や基金、都債の戦略的な活用などにより、持続可能な財政運営を行うことを求め、質問を終わります。ありがとうございました。

○阿部委員 補正予算についてお伺いをいたします。
 先ほどもお話がありましたように、八月の区部の消費者物価指数、前年同月期プラスの二・六%、中でも、食料、光熱、そして水道など暮らしに欠かせない分野で大きく上がっており、物価高騰の長期化によって、都民の生活、特に家計に余裕のない都民ほど厳しい環境に置かれております。
 賃上げの実施率を企業規模別に見ると、大企業が九四%で前年度四・一ポイント、中小企業八二・九%で前年度マイナス一・三ポイントと、その差が一一・一ポイントまで拡大をしております。
 こうした状況の中で、東京都が今月、補正予算を発表したところであります。
 まず、今回の補正予算の内容や考え方について、改めてお伺いをいたします。

○佐伯主計部長 今回の補正予算では、長引く物価高騰の影響から都民、事業者を守るため、家計の負担軽減を図る取組を行うとともに、運輸事業者や医療機関など価格転嫁が困難な事業者への支援を実施してまいります。
 また、喫緊の課題への対応といたしまして、学校給食費の市町村負担の軽減や新型コロナウイルスワクチン接種に係る都独自の対策などを実施してまいります。

○阿部委員 物価高騰対策としては、予算三百三十七億円、そのうち昨年度から実施されてきた運輸事業者や医療機関、さらには福祉施設などへの対策は、この継続がされていることは納得ができるものです。また、運輸事業者にタクシーが加わったなどの改善点も評価をいたします。
 ただ、一方で、この予算のほぼ半分、約百五十億円、これはそうした事業ではなく、都の単費で行う、もっと!暮らし向き向上緊急サポート事業、こちらになっております。この事業の在り方、この事業そのものについて否定するつもりはありませんが、この在り方については、先週、経済・港湾委員会でも、我が会派の中田理事が数々の質疑をしたところです。そこでの議論でも、昨年度の百億円の事業でも、この施策が誰にどのように届いたのか、これが十分に説明をされませんでした。
 また、少なくともQR決済事業者は利益を得ている、あるいは、事業者はQRコードでの売上げは伸びたとのことですが、現金、その他の決済への影響は分からない。そして、都民や都外の方々がどのように使ったかという割合、属性なども分からないわけですね。
 特に私が見落としてはならないと思っているのは、この事業の中では、QRコード決済を行えない都民、例えば、QRコード決済の使い方が分からないとか、あるいは経済的にスマホを持っていない、あるいはスマホは持っていても通信費が払えなくて止められてしまっている方々、そんなに少なくはありません。私も区議会時代に、そういう方々のご相談、いろいろと伺ってきました。また、スマホは持っていても、QRコードに先にお金を入れておかなければ使えないわけですから、そうした余裕がない方々もいらっしゃいます。
 つまり、今回の物価高騰対策では、全ての都民等を対象として平等に支援ができているのか、この施策の在り方、事業の行い方自体が、全体のバランスを考慮されて予算編成がなされているのか伺いたいと思います。

○佐伯主計部長 都は、物価高騰から都民生活等を守るため、令和五年度最終補正予算におきまして、低所得者世帯への緊急支援を行いますとともに、令和六年度当初予算におきましても、様々なセーフティーネット支援を実施するなど、重層的な対策を講じております。
 加えまして、今回の補正予算では、物価高騰が長引く中、家庭等の負担軽減に向けまして、もっと!暮らし向き向上緊急サポート事業やLPガス支援など、国に先駆けて、迅速かつ効果的な対策を講じております。
 こうした対策を総合的に展開いたしますことで、現にしわ寄せを受けている都民生活等をしっかりと支えてまいります。

○阿部委員 この事業が、事業者のためのものなのか、それとも都民のためなのか、それは先日の経済・港湾委員会の中でもいろいろ議論があったというふうに承知しておりますので、ここでは割愛をいたします。
 ただ、東京都全体の事業を見る財務局の立場として、様々に出てくる事業が、一体、経済的に困窮している層にどの程度届いているのか、必要なところに届いているのか、こちらばかりに偏りがないかという全体のバランスを見ていくというのは、これは各局ではなくて、やっぱり全体を見る財務局で行うべきことだと思っております。
 この秋も、さらに物価は上昇しております。お米の価格も随分と上がりました。厳しい状況にあります。このタイミングでの補正だからこそ、やはり事業者向けだけではなくて、経済的に困窮している層にもしっかりと刺さる、そうした事業が本来必要だったのではないかと思います。
 支援とばらまきの違いというのは、その施策が必要な人に必要なだけ届くように丁寧に設計されているかどうかという違いであると思っております。ぜひ、ワイズスペンディングの視点で頑張っていただきたいと思います。
 以上です。

○林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○林委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○林委員長 次に、報告事項、令和五年度東京都年次財務報告書についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○河野委員 令和五年度東京都年次財務報告書に関連して、何点か質問させていただきます。
 今般公表されました年次財務報告書によりますと、財政の弾力性を示す指標である経常収支比率は八一・三%、全国平均は九五・四%ということです。公債負担比率は四・七%で、全国平均は一六%であります。この各種指標を見ますと、ほかの道府県と比べて、都の財政状況は健全であるということが読み取れます。
 こうした状況でありますが、都は、日本全体の成長と発展を牽引していくべく、スタートアップや新規産業の育成、インフラ整備など、将来に向けて多岐にわたる投資も必要であります。また、強靱化、二〇四〇年までに十七兆円を見込んでおり、東京、そして日本の未来のため、政策のグレードアップを図っていく必要もあります。首都東京ならではの財政需要への対応が欠かせないと思っております。そのため、下支えとなる強靱な財政基盤の堅持というのが不可欠であり、その鍵を握るのは、基金と都債であると考えております。それにつきまして、幾つか確認したいと思います。
 まず、基金についてですが、景気変動の影響を受けやすい、地方交付税の不交付団体である東京都は、ほかの道府県以上に自立的な財政運営が求められております。その中で、家計でいうところの貯金であります基金、重要な財源であると認識しております。基金をどれだけ蓄えておけばよいのか、その適正な水準というのはなかなか判断しにくいところがありますが、しかしながら、コロナ禍のような突発的な財政需要や、いつ起きるかも分からない首都直下型地震、南海トラフ地震、大型台風による風水害、また富士山の噴火による降灰被害など、計り知れない不測の事態に対応していくために、一定の基金残高を確保していくことが必要であると思います。
 そこで、現在の基金残高についてどのような水準にあるか、どう評価しているのかと、過去の基金残高の推移を併せて伺います。

○佐伯主計部長 税収動向にかかわらず安定的に施策を展開していく上で、年度間の財源調整機能を有します基金は重要な役割を果たしております。
 これまで都は、都税の増収局面では基金を着実に積み立てる一方で、減収局面や突発的な財政需要が発生した際には適切に取崩しを行うなど、基金を戦略的に活用してまいりました。
 基金残高の推移を振り返りますと、リーマンショックに伴う税収減の際には約四千億円を取り崩しており、平成二十三年度末の基金残高は約一・四兆円でございました。その後の増収局面におきましては、様々な将来の財政需要に対応するため、計画的に基金を積み立て、二十九年度末の残高は約二・八兆円となりました。その後、東京二〇二〇大会のほか、新型コロナ対策や未来の投資などに積極的に活用いたしまして、令和六年度末時点の基金残高は一兆九千二百四十六億円を見込んでおります。これは、リーマンショック前とほぼ同水準でございまして、持続可能な財政運営の観点から一定の残高を確保していると考えております。

○河野委員 現在の基金残高は約一兆九千億ということで、過去と比較しても、一定の水準を保たれているということでございました。基金をやみくもに積み立てたり、使い果たしてしまうようではなく、めり張りを持って、必要な投資はしっかりと行い、逆に、必要性が乏しい事業については時には大胆にカットしていくなど、今後の財政環境の見通しをしながら、過去の状況も踏まえて適切な基金残高の確保に努めていただきたいと思います。
 次に、都債について確認します。
 都債は、都市の強靱化に向けたインフラ整備等、投資的経費の財源として大変重要であります。しかしながら、将来に過度な負担を強いるようなこともしないようにすることも、大切な視点の一つだと思います。
 そうした中で懸念されるのが金利の動向であります。報告書にあるとおり、今年三月に長らく続いたマイナス金利が解除され、七月には追加の利上げが決定されるなど、金融市場や経済市場への影響が注目されております。
 そこでまず、都債の発行金利の最近の動向について伺います。

○佐伯主計部長 都債は、定例発行しております十年債を資金調達の主力としておりまして、その発行金利は、令和三年度は平均〇・一四%、令和四年度は平均〇・四六%に対しまして、令和五年度は平均〇・七七%と上昇傾向にございます。
 今年三月の日本銀行によりますマイナス金利政策の解除以降、今後の利上げ観測などによりまして市場金利はさらに上昇をしております。それに伴いまして、都債の発行金利も、今年五月には十二年ぶりに一%を超えるなど、今年度は直近九月までの平均で一%となっております。

○河野委員 近年の発行金利が上昇基調にあるということです。都債は発行のタイミングによって利払い費が大きく左右され、一たび金利が上昇すると、それに伴い利払い費ももちろん増加するというリスクを抱えております。
 都債の利払い費について、過去の実績と比較して、今後の見込みとこれからの金利変動リスクにどのように対応するのか、お聞きします。

○佐伯主計部長 利払い費に影響があります都債残高につきましては、これまで計画的に償還を進め、将来負担を見据えながら発行額を抑制することで、着実に減少をさせてきました。令和五年度末の都債残高は三兆七千九十五億円でございまして、ピーク時の平成十二年度の半分まで減少をしております。
 こうした取組の成果によりまして、金利の上昇が見込まれる中でも、令和六年度の利払い費は一般会計ベースで四百十二億円と、ピーク時の平成十二年度の利払い費二千四百六十二億円と比較いたしまして、約六分の一となっております。
 また、国の試算条件を参考に、将来の都の利払い費を試算したところ、令和九年度でピーク時の約四分の一にとどまる見込みでございます。
 今後も、財政状況等を勘案しながら、都債残高を圧縮し、利払い費負担の軽減を図っていくとともに、発行年限の多様化や東京グリーン・ブルーボンドなど、都債の商品性向上によりまして、有利な条件での発行に努め、金利変動リスクに適切に対応してまいります。

○河野委員 現在の利払い費が、都債残高を着実に減少させてきたことで、ピーク時に大きく下回る水準であり、当面の間、金利上昇による負担増が限定的であるということであります。安定的な財政運営を進める上で、望ましい状況であると思いました。
 今後の都債を戦略的に活用し、東京の発展につなげる施策展開に資する財政確保と堅固な財政基盤の維持の両立を努めていただきたいと思います。
 さて、ここまでは、基金と都債について確認させていただきました。
 これから、来年度予算編成の作業が本格的になってくると思います。冒頭申し上げたように、東京、日本の成長に向けて、多くの政策の種をまいていかなければなりません。人口減少、少子化の進展など、社会情勢が急速に変化する中、これらの種を成果として大きく開花させるためには、一つ一つの事業について施策の効果を高めていくことが重要であります。そのために事業の評価をする肝というのが重要であり、全庁一丸となって評価の取組を前に進めていただく必要があると思います。
 そこで、来年度予算編成に向けて、評価制度の取組を充実し、事業の見直しを一層強化することで、実効性のある施策構築につなげていくべきと考えますが、見解を伺います。

○佐伯主計部長 時代の変化するスピードが一段と加速する中、東京が日本の成長を牽引し、持続可能な都市へと発展していくためには、都民のニーズや社会状況の変化に迅速かつ的確に対応していく必要がございます。こうした観点から、従来にも増して事業の妥当性、有効性を検証し、施策の見直しを一層徹底していくことが重要でございます。
 こうした考えの下、令和七年度予算編成では、持続可能な執行体制を構築するため、生成AIなど先端技術の活用等による事業の見直しを進めるとともに、都民や事業者の視点で類似事業の整理を強化するなど、評価制度のさらなる充実を図ってまいります。
 これらの取組を通じまして、効率性、実効性の高い施策の構築につなげてまいります。

○河野委員 時代の変化に機敏に対応しながら、都民や事業者の目線で真に必要な施策をつくり上げていただきたいと思います。
 本日は、将来の投資の土台となる財政について質疑を行いましたが、近年、ほかの自治体では、住民のウエルビーイング、生活の豊かさの実感を高めることを重視した政策立案が広がりを見せております。都においても、時代とともに大きく変化する都民のニーズや生活の満足度をしっかりとキャッチアップして、都民のウエルビーイングの向上につながる予算を編成していただきたいと思います。
 近年の堅調な財政動向の恩恵もありますが、現在の健全な財政基盤というのは、一朝一夕に構築できたものではありません。だからこそ、未来を見据えて財政運営のかじ取りをしっかりと進めていただきたいことを強く要望して、質問を終わります。

○和泉委員 共産党都議団の和泉なおみです。よろしくお願いします。
 本定例会閉会後、各会計決算特別委員会、公営企業決算特別委員会において、令和五年度の決算審議が行われていくこととなります。この財政委員会で報告されている年次財務報告書は、令和五年度の東京都の普通会計決算について、都全体の財務の実態をマクロ的な視点から明らかにしたものであり、民間企業でいえば、会社の経営状況を株主や投資家に報告をするアニュアルレポートに相当するものであると、より多面的に都の財政状況を示すものだと、財務局のホームページに記載されています。
 では、この東京都の年次財務報告書において、株主に当たるのが誰かといえば、それは都民であり納税者ということになろうかと思います。日本共産党都議団は、一国の国家予算にも匹敵する都の財政において、都民が納めた税金が、都民の暮らしを支え、東京の経済を立て直すことに役立っているのか、都民の願いに沿うものになっているのか、決算審議でしっかりチェックをしていきます。その立場から、今般、報告をされている年次財務報告書について幾つか伺います。
 歳入が八千五百六十三億円の減となっている一方で、都税収入は一千五百八十二億円増、決算ベースでも過去最高とのことですが、三つのシティ実現に向けた基金の積立てを二千四百五十八億円増やしています。本来は、物価高騰に苦しむ都民の暮らしや中小企業、小規模事業者の支援をもっと大胆に行うことができたんではないかというふうに思います。
 歳入で大きく減っているのは国庫支出金で、主にコロナ対策に係る国からの交付金の減少によるものだというふうに思いますが、令和元年度から令和五年度まで、病院会計も含め五兆七千八百五十六億円のコロナ対策を実施してきたとありますが、このうち、国からの財源については幾らになっているのか伺います。

○佐伯主計部長 コロナ対策では、都の財源に加えまして、国の交付金も活用しながら、総合的に施策を展開することで感染拡大の防止につなげてまいりました。
 令和元年度から五年度までの歳出総額五兆七千八百五十六億円のうち、地方創生臨時交付金や緊急包括支援交付金などの国庫支出金は三兆八千四百六十六億円となっております。

○和泉委員 つまり、六六%は国からの交付金ということになります。大半を国の予算に依拠しつつも、それでも都財政から二兆円近くの財源を割り当ててきたということになりますが、現在はそのほとんどの対策が打ち切られている状態です。
 コロナによって浮き彫りになった公衆衛生や医療提供体制の不十分さは、抜本的な改善をいまだ見ていません。独法化した都立病院も、五百九十床が休床のままだということは、今定例会の我が党の代表質問で明らかになっています。
 コロナ感染拡大の波は、今年も繰り返されている、その下で、新たな感染症の流行に備える意味でも、都民の命と健康を守る上でも、体制の強化が必要だということを申し述べておきます。
 都民の貴重な税金によって成り立っている都財政において、都民の暮らしや中小企業、小規模事業者の営業を支える取組に財源を振り向けることこそワイズスペンディングだと考えますが、財務局の見解を伺います。

○佐伯主計部長 都はこれまでも、子育て環境の充実や高齢者の暮らしへの支援等に加えまして、中小企業制度融資の充実など、都民や事業者を支えるために必要な取組を行っており、今回の補正予算におきましても、長引く物価高騰の影響から都民生活や事業者の経営を守るための対策を講じております。
 あわせて、限られた財源を有効に活用し、国際競争力の強化や都市の強靱化など、未来への投資も着実に進めていく必要がございます。
 このため、都は、事業評価など評価制度のさらなる深化を図り、事業の無駄をなくす取組を徹底することで、施策の効率性、実効性を高めるとともに、必要な施策に的確に財源を振り向けております。

○和泉委員 この間、都民の世論と粘り強い運動によって、子供の支援が前進してきたことは重要です。一方で、高齢者や事業者に関しては、もっと手厚い支援が必要です。
 私たちは、今回の補正予算においても、拡充された部分は前向きに受け止めていますが、なかなか終わりの見えない物価高騰の中で、都民の暮らしの実態に照らせば不十分だといわざるを得ないとも考えています。
 さらに、ワイズスペンディングの取組を徹底しているとただいまご答弁されましたが、果たして本当にそうでしょうか。
 特定整備路線では、小池都知事は、二〇一八年、二〇一九年、そして二〇二一年の予算議会で、特定整備路線の予算を事業の進捗状況を踏まえて減額したことをワイズスペンディングの一環だと答弁してきました。しかし、その後ワイズスペンディングといわなくなり、予算の増額へと転じました。
 今年度予算では、機動取得推進課まで立ち上げ、円満解決を原則としてきた運用まで変えて、何が何でも進めようという立場です。事業が進んでいないのに、なぜ予算を増やしたのか、用地取得を強力に進める体制まで構築して推し進めるのはなぜなのか、そして、このような小池都政の重大な変質がどこから始まったのか、この報告書には明らかにされていません。
 防災のために必要だと都は繰り返し答弁してきましたが、特定整備路線の決定に当たって、防災の専門家にも相談していなかった。これも裁判の中で明らかになっています。
 このような事業の見直しこそワイズスペンディングなのではないか、私は厳しく指摘をしておきたいというふうに思います。
 今年八月に発表された「未来の東京」の実現に向けた重点政策方針では、失われた三十年から脱却し、成長型の新しいステージへと移行しなければならない、スタートアップと金融の力で新たなイノベーションを創出と記載されています。しかし、私たちは、実体経済が動いてこそ、失われた三十年から脱却できると考えています。
 日本共産党は、昨年九月に、経済再生プランを発表しています。賃金を上げるにはどうすればいいのか、国内の消費を温め、成長路線へと導くためにはどうしたらいいのか、その道筋を具体的に提起しています。日本共産党都議団もこの立場で、この東京においても、都民の暮らしをよくし、東京の経済を立て直す提案を行っていきたいと思います。
 都の財政運営においても、私たちは、英語スピーキングテストが六年間で二百十億円もの支出が見込まれているにもかかわらず、債務負担行為が設定されず、契約のルールの適用もないことを取り上げてきました。また、プロジェクションマッピング事業も、二年で四十八億円も使う事業でありながら、情報公開の規定もあやふやで、契約のプロセスも明らかにされない実行委員会形式で行われていることなど、財政民主主義の観点から見過ごすことのできない事案を幾つか取り上げてきました。
 都民に知らされず、都議会も関与できない形式で様々な事業が行われ、莫大な財源が充てられることは、透明性、公正性の高い財政運営といえるのか。予算編成に当たって、財務局は、各局の様々な事業について、透明性、公正性の観点から、どのようなチェックを行っているのか伺います。

○佐伯主計部長 予算編成に当たりましては、各局からの要求に基づきまして、一つ一つの事業について各局と議論を重ね、社会的要請や事業の必要性はもとより、有効性や費用対効果、見積りの妥当性など、様々な角度から分析と検証を行い、必要な予算を計上しております。
 また、各局の予算要求の状況、財務局の予算調製や知事査定等の結果について、その都度公表いたしますとともに、東京都予算案の概要やTOKYO予算見える化ボードなどによりまして、都民の皆様に分かりやすく情報をお伝えし、予算編成の透明性を高めた上で、都議会に予算案として提案をしております。
 副委員長ご指摘の都庁舎におけるプロジェクションマッピング運営事業につきましては、予算案の概要などで広く都民に公表した上で、議会に適切にご審議をいただいているというふうに考えております。

○和泉委員 プロジェクションマッピング事業については、実行委員会形式だからということで、この間その詳細は都議会にも報告をされていないはずです。
 英語スピーキングテストにしても、プロジェクションマッピング事業にしても、まるわかりブックやTOKYO見える化ボードには記載されていません。都民に分かりやすく発信しているといいますが、その内容は、いってみれば、都が公表しても差し支えない範囲にとどまっています。これではちっとも見える化になっていないと思います。
 今回、知事が発表したお台場の噴水も、つくるのに一体幾らかかるのか、維持費に幾らかかるのか、明らかにされていません。予算案の概要等に明らかにされていない問題点が幾つも指摘をされ、それが都知事選挙でも大きく批判が広がった。このことを、都も正面から受け止める必要があります。
 日本共産党都議団は、税金の使い方だけでなく、都の財政運営のあるべき姿を今後も厳しくチェックしていきます。
 以上です。

○阿部委員 私からは、年次財務報告書について二点ほど質問をしたいと思います。
 まず、この令和五年度の決算の歳入の状況を見ますと、企業収益の堅調な推移に伴う法人二税の増などで、前年度から増収となっております。昨年も、私どもの会派、宮瀬委員から、都税収入の決算額と都が令和元年度に公表した長期推計からの上振れについて質問がありました。今年も税収が引き続き増収となっているということで、今回の決算に照らして状況を確認したいと思います。
 そこでまず、令和五年度の都税収入について、長期推計での数値と実際の決算額についてお伺いをしたいと思います。

○佐伯主計部長 財政収支の長期推計は、今後二十年間を見据えた中長期にわたる都の財政運営上の課題や方向性を分析することを目的といたしまして、経済成長率などについて、上位、中位、下位の三つのシナリオを基に、一定の前提を置いた上でシミュレーションを行ったものでございます。
 長期推計におけます令和五年度の都税収入は、上位シナリオで五兆二千四百億円、中位で五兆一千七百億円、下位で五兆六百億円となっておりまして、令和五年度決算の都税収入は六兆三千四百五十一億円でございます。

○阿部委員 この都税収入の長期推計というのは、今後の東京都の中長期の様々な政策を考えていく上での非常に大きなファクターの一つであると受け止めております。
 今ご答弁いただいたとおり、予測をはるかに一兆円以上上回る、上位予測をさらに一兆円以上上回る税収となっておりますけれども、この税収が伸びるということ自体は、都の財政にとって、もちろんありがたいことであります。ただ、その一方でですね、歳出も含めた収支全体で見ると収支均衡となっておりまして、この四年間、税収は大きく伸び続ける中で、収支というのは四年連続でほぼ均衡状態という形で落とし込んでいるわけですね。
 これ、とても素朴な疑問なんですけれども、収入が大きく上振れしているのに、何で毎年、収支が均衡なのか。この状況というのは、要は、収入が伸びた分だけ使っている、いわゆる財布に入ったらそれだけ使っているというふうにも見えるわけです。この点について、ぜひ説明をしていただければと思います。

○佐伯主計部長 都は、毎年度、収支均衡の予算を編成しておりまして、歳出面では、終期が到来した事業の事後検証を徹底いたしまして、施策の見直しを着実に行った上で、チルドレンファースト社会の実現や国際競争力の強化、都市の強靱化など必要な施策に対し、的確に財源を振り向けております。同時に、中長期的な視点に立ちまして、都税収入が堅調な時期には、都債の発行や基金の取崩しの抑制、将来に備えた基金の積立てなど、将来を見据えた持続可能な財政基盤の確保に努めております。
 なお、令和五年度決算につきましては、都税収入が予算額を上回った一方で、予定していた基金の取崩し額を抑制したことなどによりまして、収支均衡となっております。

○阿部委員 大きなところでは、基金の取崩しを抑制したり、あるいは都債の発行などを抑制したりというようなことだろうと思うのですけれども、この堅調といいますか、大きく見込みよりも収入が増えているという中で、実際にお金の使い方というのが、不要不急の大型事業に充てられやすくなってしまっているのではないか。むしろ私たちとしては−−例えば、高過ぎる国保料ですとか、都立学校の老朽化、どんどんと進んでいます。そして、教員の不足も進んでいる。あるいは、障害者や高齢者、なかなか東京都の中で暮らし続けることができない。こういう財政がいいときにしかなかなか手を出せない大きなそのベーシックサービスの部分にしっかりと取り組むことが、今お金が、税収が豊かなときにこそすべきものではないかと思います。
 ぜひ、こうしたベーシックサービスが広く行き渡るように、トータルで政策展開をこの時期だからこそやっていただきたい。それを意見として申し上げ、以上といたします。

○藤井委員 私からは、年次財務報告書に関連して三点お伺いをしたいと思います。
 報告書にあります新公会計制度による財務報告について、具体にどのように活用されているのかということについてお伺いをしたいと思います。
 まず、その前段といたしまして、普通の決算の方ですね、令和五年度の普通会計決算の概要についてお伺いをいたします。

○佐伯主計部長 令和五年度の普通会計決算は、新型コロナウイルス感染症対策に係る国庫支出金の減少やそれに伴う経費の減少などによりまして、歳入総額は、前年度比八・八%減の八兆八千九百八十七億円、歳出総額は、前年度比九・一%減の八兆三千五百三十三億円となってございます。
 また、歳入総額から歳出総額と翌年度に繰り越すべき財源を控除した実質収支は六十一億円の黒字となっておりまして、収支はほぼ均衡となっております。

○藤井委員 都が全国に先駆けて導入した新公会計制度は、資産や負債といった東京都全体のストック情報の把握が可能となるなど、これまでの官庁会計とは異なる視点からの財務分析が行われる制度と認識をしているところであります。
 令和五年度は、コロナ対策に加えまして、長期化する物価高騰への対応など、都民の暮らしや東京の経済を守る取組が求められていましたが、こうした取組を進めた中で、都の財政状況がどうなっているのか確認する必要があると思います。
 そこで、新公会計制度を用いて、令和五年度決算から何が読み取れるのかお伺いをいたしたいと思います。

○佐伯主計部長 令和五年度普通会計決算を新公会計制度の視点から分析をいたしますと、貸借対照表の資産の部につきましては、東京強靱化推進基金への積立ての増などによりまして、資産全体で前年度比四千二百二十一億円の増となっております。
 また、負債の部では、歳出精査による事業費の減少などによりまして都債の発行が減ったことなどから、負債全体で前年度比一千二百八億円の減となっております。
 この結果、資産と負債の差額でございます正味財産は、前年度比五千四百二十九億円の増となっておりまして、資産に対する負債の割合も一七%となり、前年度と比較して低い水準となっております。
 こうしたストック情報から、令和五年度におきましても、必要な施策を講じつつ、持続可能な財政基盤を堅持しているというふうに考えております。

○藤井委員 ただいまの答弁にございましたとおり、都財政は、一定程度、健全性を保っていると理解をいたしました。
 新公会計制度の財務諸表には、従来の官庁会計制度の決算書と比べまして、多面的な財務情報の把握、説明責任の充実、あるいはマネジメントの強化などのメリットがあるものと認識をしているところでございます。これらのメリットを生かすためには、実際にこれらを都政の中でしっかりと活用していくということが大切な視点であろうかと思っています。
 財務局が実施をしております事業評価の中で、新公会計制度を活用した評価を実施しているということでありますけれども、そこでお伺いをいたしますが、新公会計制度を導入している効果について、改めて答弁を求めたいと思います。

○佐伯主計部長 都はこれまで、新公会計制度によって得られる資産等のストック情報や減価償却費なども含めたフルコストの情報を事業の分析ツールとして活用をしております。
 事業評価での活用事例といたしましては、令和六年度予算編成におきまして、東京武道館の改修に当たって、ストック情報を活用して建物の老朽化率を分析した結果、都の平均の老朽化率を上回っていたことから、計画的に維持更新を進めることとするなど、施策のマネジメント力の強化につなげております。

○藤井委員 最後にいたします。この公会計制度でございますけれども、それなりにやっぱりウン千万円というような経費がかかっているものでございますので、そのコストをかけた分、しっかりと有用な情報を把握して、今後の都庁の施策の中で生かしていただきたいと思います。
 以上です。よろしくお願いします。

○林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○林委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時散会