財政委員会速記録第五号

令和三年三月十七日(水曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長加藤 雅之君
副委員長清水 孝治君
副委員長山内  晃君
理事伊藤しょうこう君
理事池川 友一君
理事入江のぶこ君
西郷あゆ美君
小林 健二君
大松あきら君
本橋ひろたか君
清水ひで子君
成清梨沙子君
森村 隆行君
宇田川聡史君

欠席委員 なし

出席説明員
財務局局長潮田  勉君
経理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務古川 浩二君
契約調整担当部長新田見慎一君
主計部長山田 忠輝君
財産運用部長五十嵐 律君
建築保全部長佐藤 千佳君
収用委員会事務局局長斎藤 真人君

本日の会議に付した事件
収用委員会事務局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 令和三年度東京都一般会計予算中、歳出 収用委員会事務局所管分
財務局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 令和三年度東京都一般会計予算中、予算総則、歳入−財務局所管分、歳出−議会局・財務局所管分、債務負担行為−財務局所管分、都債
・第十五号議案 令和三年度東京都用地会計予算
・第十六号議案 令和三年度東京都公債費会計予算
・第百一号議案 令和三年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、予算総則、歳入、歳出−財務局所管分
付託議案の審査(質疑)
・第八十九号議案 有明アリーナの公共施設等運営権の設定について

○加藤委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、収用委員会事務局及び財務局関係の予算の調査並びに財務局関係の付託議案の審査を行います。
 なお、付託議案中、第八十九号議案の民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づく議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより収用委員会事務局関係に入ります。
 予算の調査を行います。
 第一号議案、令和三年度東京都一般会計予算中、歳出、収用委員会事務局所管分を議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、予算案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で収用委員会事務局関係を終わります。

○加藤委員長 これより財務局関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案、令和三年度東京都一般会計予算中、予算総則、歳入、財務局所管分、歳出、議会局・財務局所管分、債務負担行為、財務局所管分、都債、第十五号議案、第十六号議案、第百一号議案、令和三年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、予算総則、歳入、歳出、財務局所管分及び第八十九号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○成清委員 まず、建設労働者の処遇確保について伺います。
 新型コロナウイルス感染症への対応に加えて、建設業界では、担い手不足が喫緊の課題となっており、将来の担い手確保が危ぶまれるだけではなく、現下の工事現場においても、人材の確保に苦慮していると伺っております。
 このような状況下で、将来にわたって担い手の確保、育成を進めるためには、現場の最前線で働く建設労働者の処遇を改善し、魅力ある業界にしていくことが不可欠です。
 労働者の処遇改善に向けては、適切な賃金の支払いが必要なことはいうまでもございません。そして、下請事業者がその賃金支払いの原資を確実に得るためには、それぞれの建設現場において、下請契約が適正に交わされることが大変重要であります。
 こうしたことから、都議会定例会での質疑や会派からの要望などを通して、都に対し、建設労働者の処遇改善に向け、工事現場での下請契約の実態を把握するよう求めてきたところであります。
 こうした我が党からの提案に対し、これまで都はどのように取り組んできたのか伺います。

○新田見契約調整担当部長 都の工事現場を支える建設労働者の適切な処遇確保に向けては、現場における元請、下請事業者間の適正な請負契約の締結が不可欠でございます。
 そのため、都はこれまでも、元請事業者に対して下請契約の適正化を要請してまいりましたが、今年度は、さらにその実態を把握するフォローアップ調査を新たに実施いたしました。
 今回実施した調査は、都発注の工事現場を対象に、元請、下請事業者間の契約関係について、建設業法等に基づく契約ルールの運用状況を確認するものでございます。
 具体的には、元請による見積依頼から下請代金決定を含む下請契約の締結に至るまでの手続や、下請代金の支払期間とその手段などについて確認を行いました。
 調査の方法は、より多くの工事現場を確認するため、履行中の財務局発注案件の元請事業者、約二百四十社を対象に書面調査を行うとともに、下請事業者へもヒアリングによるサンプル調査を実施いたしました。

○成清委員 都が発注する工事において、下請契約の実態を把握するフォローアップ調査を実施したとのことです。
 その調査では、元請事業者に加え、下請事業者からも実態を把握するよう努めていただいたとのことでありました。
 調査の内容やその実施方法について、今、確認させていただきましたが、こうして実施した調査の結果、都が発注する工事現場での下請契約の実態はどうであったのかお伺いします。

○新田見契約調整担当部長 調査の結果についてでございますが、元請への書面調査、下請へのヒアリングでのサンプル調査ともに、適正もしくは望ましいとされる回答がおおむね九割を超えておりまして、また、下請が元請からしわ寄せを受けているといった状況も確認されませんでした。
 こうしたことから、都発注の工事現場における元請、下請事業者間の契約関係は、全体としておおむね適正であったと考えております。
 一方で、少数ではありますが、元請から下請への見積依頼における条件提示が不十分なものや、元請、下請間での契約変更が生じた際の書面手続が事後となっているものなど、事業者のさらなる理解促進が必要なものも見受けられました。

○成清委員 今回の実態把握をしてみて、さらなる改善が必要な事態が把握されたわけですが、こうして得られた貴重な調査結果を踏まえ、より一層の下請契約の適正化に向け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。

○新田見契約調整担当部長 今回得られた調査結果につきましては、今後の都発注工事現場における下請契約の適正化に向け、しっかりと生かしていかなければならないと認識しております。
 具体的には、得られた調査結果について、調査にご協力いただいた全ての事業者に提供して着実にフィードバックを図り、現在履行中の現場におけるさらなる適正化を促してまいります。
 さらに、元請事業者を主体とする業界団体との意見交換の場などにおいても、調査結果をもとに、改善の具体例を提示するなどいたしまして、業界みずからがより健全な下請契約に向けた取り組みを進められるよう働きかけてまいります。

○成清委員 調査を実施したことで、初めてこうした次につながる取り組みが可能となりました。今回、元請、下請事業者間の請負関係について、現場実態を把握するという難しい部分に一歩踏み込んでいただきました。ぜひ、今後も建設現場における下請契約がより一層適正化されるよう進めていただきたいと思います。
 いうまでもなく、今回の一連の取り組みの目的は、建設労働者の処遇改善により、将来にわたって建設業の担い手を確保していくというところにあります。都内建設業界が将来にわたって担い手を確保し、持続的に発展していくためには、現場を支える労働者がしわ寄せを受けることなく、安心して働ける環境を整備していかなければなりません。
 そのため、都には、発注者としてダンピング防止の徹底や社会保険未加入業者の排除、また、週休二日の取得に向けた取り組みなどを図るとともに、業界団体への働きかけや関係局が連携するなどして、さまざまな取り組みを複合的に展開していくことが求められているものと考えております。
 今後も、建設労働者の処遇改善、そして将来の担い手確保に向けた不断の取り組みを実施していただき、都内建設業界の健全な発展を支えていくことを求めておきます。
 続いて、令和三年度予算編成について伺っていきます。
 我が会派の代表質問でも取り上げましたが、今回の予算編成では、財政環境が厳しくなる中、ワイズスペンディングの取り組みを例年以上に徹底したことが一つのポイントだと認識しております。
 本日の財政委員会では、まずはそのワイズスペンディングの取り組みについて、一〇%のマイナスシーリングと事業評価について明らかにしていきたいと思います。
 まずは、令和三年度予算編成における一〇%のマイナスシーリングの設定によって、どのような経費が幾ら削減されたのか伺います。

○山田主計部長 令和三年度予算は、厳しい財政環境の中での予算編成でございました。こうした中、必要な都民サービスを維持していくことはもとより、現下の都政の諸課題の解決や未来に向けた施策に重点的に財源を振り向けていくため、これまで以上にめり張りをきかせた予算とする必要がございました。
 このため、経常的、定型的な経費であります自律的経費に対しまして、十六年ぶりとなりますマイナスシーリングを設定し、各局において分析や検証を通じた自主的、自律的な見直し、再構築を行い、規模、単価等の積算根拠を十分精査した上で、原則として令和二年度予算額に対して一〇%減の範囲内で見積もることといたしました。
 この結果、シーリング対象となります自律的経費は、要求時点で、前年度に比べて一〇・二%、三百二十四億円減の二千八百六十億円となったところでございます。

○成清委員 都予算の規模から見れば、三百億から四百億円という金額は決して大きな金額ではないかもしれません。しかしながら、平成十七年度以来、十六年ぶりにマイナスシーリングを設定し、要求段階から精査をしていくということは、各局に精査をより徹底するという意識づけの面でも大きな効果があったのではと思います。
 ワイズスペンディングの取り組みとして、もう一つの大きな柱が事業評価でございます。既に事業評価による全体の成果などは、本会議や予算特別委員会を通して質疑されてきており、今年度は、千百十五件の見直し、再構築を行い、千百十億円の財源確保につなげております。
 これについて、具体的な個々の事例でどういった成果が出ているのか、確認しておきたいと思います。
 そこで、令和三年度予算編成におけるワイズスペンディングの取り組みとして、事業評価の具体的な事例について詳しく伺います。

○山田主計部長 事業評価は、予算編成の過程で多面的な検証を行う取り組みとして着実にその実績を積み重ねてまいりました。
 令和三年度予算編成におけます事業評価は、新しい日常に対応するための事業見直しなど、これまで以上に創意工夫を凝らして取り組んでおります。
 具体的には、都市計画法に基づく開発許可区域図等の確認につきまして、これまでは庁舎への来所による閲覧に限定されていたものを、情報をデータ化いたしましてオンライン上で公開することで、自宅や会社等から閲覧できるようにいたしました。
 この結果、導入運用経費は一千八百万円かかるものの、都民の来所時間が不要となることから、年間六千六百万円分の都民便益の向上を図ることができると見込んでおります。
 また、現在、紙書類を郵送している都税の滞納者に対します財産調査につきまして、預貯金照会電子化サービスを新たに導入し、照会から回答までの一連の業務をデジタル化いたします。
 この結果、都職員や金融機関の業務負担を縮減することができ、都職員十八人分の人員を別の業務へとシフトするなど、執行体制の見直しにつなげているところでございます。

○成清委員 こうした好事例は庁内に横展開することで取り組みを定着し、賢い支出を徹底してもらいたいと思います。
 これまでの答弁から、令和三年度予算では、要求段階からしっかり精査を行い、また事業評価を行い、財源を確保しているということを確認しました。
 こうして生み出した財源などを活用して、どういった施策を強化しているのかということが重要であります。
 昨年夏に出された見積方針には、長期戦略の事業案のうち、感染症対策や構造改革の取り組みを初め、新規事業に係る経費はシーリングの枠外としておりました。
 そこで、マイナスシーリングや事業評価などにより生み出された財源を活用して、コロナ対策や構造改革の取り組みとして拡充した主な内容と金額について伺います。

○山田主計部長 令和三年度予算編成では、事業評価のさらなる強化や経費精査の徹底により財源を確保いたしまして、新型コロナウイルス感染症対策や都政の構造改革などのさまざまな施策に財源を振り向けております。
 具体的には、当初予算案におけますコロナ対策には、全体で二千五百六十一億円を計上し、中小企業制度融資や東京都出産応援事業、在宅要介護者等の受入体制整備事業など、コロナ禍で厳しい環境にある都民や事業者の方々に対する支援、感染症に強い都市の実現に向けた施策などを実現してまいります。
 また、都政の構造改革に向けた取り組みには、全体で二百四十一億円を計上し、ワンストップオンライン手続やAIを活用した高潮の水位予測、都営住宅のオンライン申請などに取り組み、都政の行政サービスの向上につなげてまいりたいと考えております。

○成清委員 今後も、各局が自律的に施策の見直しを図ることで、コロナ対策や都民のためになる構造改革に積極的に財源を振り向けていくという好循環を持続してもらいたいと思います。
 次に、都の予算や都財政の見える化など、財政広報について伺います。
 例年にないコロナ対策が続く中、都の予算編成や都財政の状況にも関心が高まりつつあります。実際、私も都財政の状況を聞かれることもふえてきており、ある意味、都民に予算の使い道や都財政の状況をより伝えていく機会が来ているのだなと思います。
 先日の予算特別委員会では、DXの力を活用して都財政の見える化を図っていくという質疑がございました。財務局が開設したTOKYO予算見える化ボードは、私自身も閲覧しましたが、グラフなどで可視化されており、また時系列で数値が比較できたり、新たな取り組みとして、今後さらなる広がりの可能性を感じます。
 そこで、新たに開設したTOKYO予算見える化ボードについて、その特徴や作成に当たって力を入れた点について具体的に伺います。

○山田主計部長 令和三年度予算案の発表に当たりましては、デジタルを活用した都財政の見える化の取り組みといたしまして、さまざまなデータを表やグラフを用いて視覚化するダッシュボード、TOKYO見える化ボードを新たに開設いたしました。
 財務局ホームページ上に開設いたしました本サイトでは、都民の皆様がウエブ上から簡単な操作で予算案の全体像やポイントとなる事業の概要などを検索でき、グラフなどのわかりやすい形式で閲覧できるようにするとともに、各種データを取得することが可能となっております。また、同時に、普通会計決算や財務諸表の情報につきましても、予算と同様にダッシュボードを作成し公表しております。
 この作成に当たりましては、全庁統一で導入いたしましたデジタルツールを活用しておりまして、新たな費用をかけることなく構築しております。
 今回のダッシュボードは、若手職員がデジタルツールに関するスキルを学習いたしまして、職員みずからが構築していることから、都民からの意見等を踏まえまして、内容の充実を随時図ることができるものになっております。

○成清委員 今回の取り組みは、職員の力でコストを抑えて自前で作成し、随時内容の充実を図ることができるという意義のある取り組みだったと思います。こうした取り組みこそ、ぜひアジャイルの視点で、都民の意見を聞いて改善を重ね、一層の見える化を図っていってもらいたいと思います。
 さて、都民の意見という点では、先日の予算特別委員会において、来年度、都民提案事業を実施するというお話がありました。提案や投票の年齢を引き下げ十五歳以上にするということです。より若い世代の方々にも、都の予算や財政状況に関心を持ってもらうよう、さらなる工夫も必要だと考えます。
 そこで、日常生活ではなじみが少ない都財政の役割やポイントをよりわかりやすく伝えていくためには、年齢層などにも留意したきめ細やかな発信が重要と考えますが、見解を伺います。

○山田主計部長 コロナ対策によります累次にわたる補正予算の編成などによりまして、都財政への関心が高まる中、財政当局として、都民の皆様に対する説明責任をしっかりと果たしていくことが、これまで以上に必要になっていると認識をしております。
 都はこれまでも、予算の内容をよりわかりやすい表現で、手にとりやすいコンパクトサイズにまとめました東京都予算案まるわかりブックなどを発行してまいりましたが、都財政に関する普及啓発を一層進めるためには、DXの活用や世代、年齢層に応じたきめ細やかな広報を行っていくことが重要であると考えております。
 そのため、都の事業の内容や予算の仕組みなどをわかりやすい表現を用いて紹介する子供向けの予算資料につきまして、来年度の公表に向け、現在検討を進めているところでございます。
 こうした取り組みによりまして、より多くの都民の皆様に都財政についての理解を深めていただけるよう、工夫を重ねてまいりたいと考えております。

○成清委員 若い世代の方々に関心を持ってもらうためにも、都民提案制度も含め、今後もぜひ工夫を重ねていただくよう求めておきます。
 振り返れば、この一年、都はコロナ対策に全力で取り組んできました。財務局もたび重なる補正予算の編成、その都度苦労もあったことと思います。先が見えないコロナ禍で、来年度も厳しい財政環境が待ち受けていることは十分に想定されます。こうした中にあっても、三年度予算をてこに都民の命を守り、東京の経済を支え、その先の未来を切り開いていかなければなりません。
 そこで、最後に、この間のコロナ対策を初めとした予算編成を振り返りつつ、令和三年度予算の執行に当たって、何を重視し取り組んでいくのか、局長の見解を伺い、私の質問を終わります。

○潮田財務局長 これまで都は、コロナ対策といたしまして二十一回の補正予算を編成いたしまして、切れ目のない対策を迅速に講じてまいりました。
 予算編成に当たりましては、対策の現場を預かる各局からの要求を受け、今必要な施策は何なのか、財源をどう確保するのか、事業の精査を行いつつ、各局と向き合い調整をしてまいりました。
 こうした中、令和三年度予算は、都税収入が大幅に減少する厳しい環境での予算編成ではありましたが、現下の課題の解決と東京の未来をつくる施策へ重点的に財源を振り向けるため、議論を重ねる中で、これまで以上にめり張りをきかせた予算とすることができたものと考えております。
 こうして練り上げました三年度予算の執行に当たりましては、施策の効果を早期に発現させることが重要でありますことから、速やかな予算執行を図り、都政が直面する課題に対し、時期を逸することなく的確に対処してまいりたいと考えております。
 同時に、最少の経費で最大の効果となりますよう、契約段階でも各局と連携をし、創意工夫を凝らすなど、一つ一つの施策の実効性、効率性をさらに高めてまいります。
 今後も厳しい財政環境が続くことが想定される中、引き続き緊張感を持って、基金や都債の計画的な活用など戦略的な財政運営に努めるとともに、都民の皆様への説明責任もしっかり果たすべく、財務局が一丸となって取り組んでまいります。

○伊藤委員 それでは、都有地の利活用について伺います。
 財務局で管理する普通財産の土地は、その実態に応じて、保有財産、貸付財産、管理不適正財産の三つに分類しているとのことです。このうち貸付財産や管理不適正財産は、明治や大正期に埋立地などを貸し付けたものや、終戦直後の混乱期に使用が開始されたものなどであり、保有財産とは、それら以外の財産を指すそうです。このため、いわゆる未利用の都有地は、この保有財産に含まれることになりますので、これについてお尋ねします。
 まず、財務局が所管する普通財産のうち、保有財産の土地はどの程度あるのか、また、そのうち活用できる土地はどの程度あるのか、確認のため伺います。

○五十嵐財産運用部長 財務局が所管いたします普通財産のうち、保有財産に当たる土地は、令和二年三月末現在、財産台帳上の件数、面積ベースで六百三十五件、およそ四百四十ヘクタールでございます。この中には、各局での行政利用を終えて財務局に引き継がれてきた土地のほか、離島や保全緑地など、直接行政利用せず保有して管理すること自体を目的としている土地も含まれております。
 こうした保有財産から管理することを目的とする土地を除いた利活用の可能性のある土地は、令和二年三月末現在で三百十件、面積はおよそ百八十ヘクタールでございます。

○伊藤委員 財務局が所管する保有財産である土地は約四百四十ヘクタールであり、そのうち活用の可能性がある土地は三百十件、面積は約百八十ヘクタールという実態でありました。
 さて、都庁全体で保有する土地は三万六千八百五十ヘクタールと莫大な面積がありますが、大部分は学校や公園、病院、市場のほか、奥多摩から山梨県内に広がる水道水源林など、特定の行政目的に活用されていますが、先ほどご答弁いただいた都有地は、さまざまな経過の中で、現在は財務局が所管となっているようです。
 それでは、こうしたものについて、財務局では、本格的な活用に至るまでの間、暫定の活用を図っているものもあるそうですが、それらは何件程度あり、具体的にどのような活用がされているのかも伺います。

○五十嵐財産運用部長 暫定活用を図っている土地は、令和二年三月末現在、百十七件でございます。
 具体的には、庁内各局での利活用や区市町村等への売却までに一定の期間がかかることなどから、その間、駐車場や公共工事の資材置場などの用途で一時的な貸し付けを行っている事例や、定期借地権を設定し中長期的な視点からまちづくりに活用している事例などがございます。
 なお、残りの未利用地につきましては、狭小な不整形地、傾斜地などが多く、売却、暫定利用ともに困難な実態となっております。こうした土地につきましては、引き続き都有財産として適正な管理に努めてまいります。

○伊藤委員 私の地元八王子でも、当面正式な活用計画がない土地について、農業やスポーツ振興、また青少年健全育成事業など、都民福祉の向上に貢献している例も実際にあります。それらは、有償、無償とさまざまなケースがあり、いずれも都民の財産である都有地を、暫定利用とはいえ、都民に還元されている状況だと思います。
 その一方で、八王子市には、昭和四十年代に東京都住宅供給公社、いわゆるJKKが住宅を整備する目的で用地取得を開始したものの、社会情勢の変遷により、その後、実際には住宅が整備されることなく、都へ無償譲渡された広大な都有地が幾つもあります。買収が完了しない状況で、都へ譲渡したものであることから、非常に不整形で、都有地と民有地が混在していることなどにより、本格的な活用が進まない状態が長く続いています。
 それでは、こうした土地を都が無償譲渡を受けることになった経緯についても伺います。

○五十嵐財産運用部長 東京都住宅供給公社、いわゆるJKKが行う公社住宅整備につきましては、昭和二十年代より、都などからJKKへ資金を貸し付けて行うこととされ、都からの借入金償還後、当該の土地と建物の所有権を無償で都に移転することとなっておりました。
 しかしながら、こうしたことが制約となり、公社住宅の建てかえの支障となっていたことなどから、平成十四年度に方針転換し、不動産または金銭によりJKKが相応の負担を負うこととした上で、公社住宅の所有権を引き続きJKKに帰属させることで建てかえ促進を図ることとしたというふうに聞いております。
 これに従い、都に譲渡された旧JKK用地は、都内全域で六件ありまして、そのうち八王子市内に四件ございましたが、最終的に各局において活用予定がなかった八王子市内の三件が、財務局で普通財産として現在所管しているところでございます。

○伊藤委員 ご答弁のような理由や経過があったようですが、結果として、住宅整備が行えず、財務局が土地を譲り受けたということであります。
 このように、財務局に引き継がれた土地は、現在も八王子市内に三カ所あります。そのうち、新滝山街道沿いにある旧加住用地は、約五ヘクタールの都有地と生産緑地など民有地が入り組んだ形状で、長らく活用されない状態が続いています。
 しかしながら、本件土地は、中央道八王子インターチェンジや圏央道あきる野インターチェンジにもすぐ近くの広域的なアクセスにすぐれ、これに加えて、平成二十五年には、隣接する新滝山街道が全線開通するなど、この間、周辺環境に大きな変化があり、この土地が持つポテンシャルは、従来よりも飛躍的に高まってきています。地元市としても、職住近接や地域の利便性向上に資する産業、業務、流通、物流などの機能集積を図るために、調査や地元調整を行っています。
 こうした経過や動きを踏まえ、この旧加住用地について、財務局として、地元市と協力しながら、今後どのように活用を図っていく考えか伺います。

○五十嵐財産運用部長 旧加住用地につきましては、地元において本件都有地を含めたまちづくりの検討が進められており、地元関係者で構成されるまちづくり協議会で、八王子市に対して、まちづくり計画案を提出したというふうに聞いております。
 こうした動きを受け、市は、まちづくり方針策定に着手する予定としており、本件地の利活用について協力のご要望をいただいているところでございます。
 都といたしましても、地域と協議を行う市の意向を十分に踏まえながら、本件地の今後の利活用の方向性を定めてまいりたいというふうに考えております。

○伊藤委員 地元市近隣住民としても、懸案であった旧加住用地ですが、周辺環境の変化も相まって、活用に向けた機運が高まり、市もそれを後押ししていますので、都としてもしっかり受けとめ、着実に進めていただきたいと思います。
 また、旧加住用地と同様の経緯を持つ旧大谷用地についても伺います。
 財務局所管の旧大谷用地は約二十三ヘクタールという広大な土地で、築地市場跡地とほぼ同じ広さです。北側は中央道に接し、八王子インターチェンジからすぐのところであり、東側は国道十六号バイパス、西側は国道十六号に隣接するなど、こちらも交通アクセスが極めてよい立地となっています。
 この土地は産労局が地産地消拡大のための農地として使用したり、市に農業用地やグラウンドで貸し付けたりしているほか、都が進める大学研究者による事業提案制度でも、緑地と農地と市街地が一体となった新しいまちづくりのモデルに指定されるなど、一定程度の活用が図られている土地ではありますが、いずれも本格的な活用に至っている状況ではありません。
 また、住宅用地としては不完全な形で買収が頓挫した結果、都有地の中に民有地が点在し、所有者に相続が発生した際には、都有地がネックになり処分ができないなどの問題も顕在化しています。
 そこで、この広大な都有地を今後どのように管理、活用していくのか、あわせて伺います。

○五十嵐財産運用部長 本件地は当初、住宅供給公社が、大規模な宅地造成を前提に、住宅用地として買収を進めたことから、広大ではあるものの不整形であり、加えて高低差のある起伏した形状となっております。
 このような本件地の特性から、土地全体を本格的に活用するには困難が伴うところでございまして、そうした中でも、委員からお話ございましたように、都における農業振興施策として地産地消拡大や新規就農者育成事業に活用したり、また、地元市の意向を踏まえながら、市に農業支援用地や市民農園用地、野外活動、運動広場用地として貸し付けを行ったりするなど、可能な限りの活用を図っているところでございます。
 引き続き、庁内、地元市との連携のもと、利活用の推進に努めてまいります。

○伊藤委員 JKKから引き継いだ土地の中には、周辺状況の変化の中、活用が開ける兆しの見えてきた土地もあれば、いまだ課題だらけの土地もあります。いずれにせよ、いろいろな経過があっても、これらの都有地はいずれも都民の貴重な財産です。
 都民生活の向上にしっかりと活用が図られるよう、引き続き関係局や地元市とも緊密に連絡調整しながら、取り組みを進めていくことを強く要望し、質問を終わります。

○小林委員 都議会公明党は、新型コロナウイルス感染症の脅威から都民の命や暮らしを守り抜くという強い決意のもと、我が党のネットワークに届けられた現場の切実な声に真摯に耳を傾けて、都に対して、これまで四十回、三百項目を超える、さまざまな緊急提言や要望を重ねてまいりました。
 令和三年度予算案には、東京都生活応援事業や医療従事者の特殊勤務手当の増額、東京都出産応援事業など、都議会公明党のこれまでの政策提言や要望が幅広い分野で反映されておりまして、評価をさせていただきたいと思います。
 私は先月、幾度となく、地域の皆様とオンラインによる都政報告会を行い、さまざまなご要望、質問をいただいてまいりました。その中で多くの質問としてあったものの一つに、さまざまなコロナ対策を行って、予算も相当支出していると思うが、都財政は大丈夫なのでしょうか、都財政が厳しくなってしまうと、これまで続けてきた施策が中止となってしまうのではないかなど、都財政を心配する声を多く耳にいたします。
 都民の命、暮らし、そして経済を守ることがまさに最優先でありますが、同時に、この先も見据え、現状の都財政はどのような状況にあるのかと、冷静に分析しておくことが必要であると思います。
 そこで、都の財政対応力を推しはかる上で、重要なポイントとなる基金と都債についてお伺いし、都財政の現状を確認させていただきたいと思います。
 地方交付税の不交付団体である都にとって、基金と都債が持つ年度間の財源調整機能を生かした自律的な財政運営が重要であります。
 さきの予算特別委員会における都議会公明党の総括質疑において、令和三年度当初予算では、約八千三百億円の基金の取り崩しや約五千九百億円の都債発行により、必要な財源を確保したと知事が答弁をされました。令和二年度当初予算と比べると、基金の取り崩し額は約七百億円、都債は約三千八百億円増となっているわけでございます。
 そこでまず、令和三年度当初予算における約八千三百億円の基金の取り崩し額の具体的な中身と、昨年度よりも取り崩し額がふえている主な要因についてお伺いをいたします。

○山田主計部長 令和三年度当初予算におけます基金の取り崩し額八千二百九十億円の具体的な中身といたしましては、主なものといたしましては、東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金三千七百四十六億円、社会資本等整備基金一千九百六十一億円、福祉先進都市実現基金六百六十億円であります。
 令和二年度と比較いたしまして、基金の取り崩し額が約七百億円増加した主な要因といたしましては、安全・安心な東京二〇二〇大会の開催に向けた準備の着実な推進に向けまして、財源として、昨年度よりも開催準備基金を約一千百億円多く取り崩しているものによるものでございます。
 なお、開催準備基金を除きました基金の取り崩し額は、令和二年度が四千九百九十一億円、三年度は四千五百四十五億円となっております。

○小林委員 ただいまのご答弁で、一見すると、令和三年度当初予算における基金の取り崩し額は昨年度と比較してふえているように見えますが、その半分近くはオリンピック・パラリンピック開催準備基金であり、それ以外の基金の取り崩し額はむしろ昨年度よりも減となっている状況とのことでございます。
 安全・安心な東京二〇二〇大会の実現に向けて、オリ・パラ準備基金を積極的に活用する一方で、中長期的な視点に立って計画的な活用を行っているともいえるのではないかと思います。
 次に、基金残高というストック面についてですが、基金は毎年の財政環境などに応じて、積み立て、取り崩しを行うことで、年度間の財源調整機能を担っており、基金残高は現時点の都財政の健全性を判断するための重要な要素であると思います。
 そこで、令和三年度予算における基金残高について、過去の基金残高の推移も含めてお伺いをいたします。

○山田主計部長 都の基金残高は、平成四年度末時点で約九千八百億円であったところ、バブル経済崩壊後の景気低迷が長引く中、十五年度末には約二千百億円まで減少いたしました。この間、都は、二次にわたる厳しい財政再建を推し進め、職員定数削減等の内部努力の徹底、施策の見直し、都税の徴収率の向上など歳出、歳入両面での取り組みを進めた結果、平成十八年度に財政再建を達成するとともに、基金残高は約七千二百億円まで回復をいたしました。
 財政再建の達成後も、事業評価の取り組みを通じて見直し努力を継続し、健全な財政運営に努めた結果、都の基金残高は、平成二十九年度には過去三十年間で最高となります約二・八兆円となったところでございます。
 平成三十年度以降は、福祉先進都市の実現、防災まちづくり、東京二〇二〇大会開催の準備などの取り組みを着実に進めるため、三つのシティー実現に向けた基金を積極的に活用してまいりました。
 同時に、今年度は、新型コロナウイルス感染症対策に迅速かつ的確に対応するための財源として活用した結果、令和三年度末の基金残高は七千八百八十一億円となる見込みでございまして、このうち財政調整基金の残高は二千五十二億円と見込んでいるところでございます。

○小林委員 都は、この間、財政調整基金などを活用し、都議会公明党の要請にも応え、新型コロナウイルス感染症対策に取り組んできました。
 確かに、ピーク時と比較すると、基金残高は減少しております。令和二年第二回定例会補正予算の段階では、財政調整基金の残高は五百億円を下回る水準にまで減少したことが報道され、都民からも不安の声が聞かれましたが、現時点の財政調整基金残高見込みは、今ご答弁ございました二千五十二億円となり、基金全体の残高も含めると、現時点では一定の水準を維持しているといえるのではないかと思います。
 次に、都債についてですが、フロー面から都債を分析する指標として、その年度の予算の歳入に占める地方債の割合を示した起債依存度という指標があり、過去の都の数値や、国、地方全体の予算である地方財政計画の数値との比較が可能となります。
 過去三十年間における都の起債依存度の推移と令和三年度当初予算における都、国、地方財政計画の起債依存度が、どの程度の水準にあるのかについてお伺いいたします。

○山田主計部長 地方交付税の不交付団体でございます都は、他の自治体以上に自律的な財政運営を行うことが求められており、これまでも税収の動向に応じまして、計画的に都債を活用してまいりました。
 過去三十年間の当初予算における都の起債依存度は、最も高い値は平成八年度の一一・七%、最も低い値は令和元年度及び二年度の二・八%であり、この範囲で推移をしているところでございます。
 令和三年度当初予算では、都税収入が減となる中、これまで培ってきた発行余力を生かし、充当可能な事業に対しまして都債を積極的に活用した結果、都の起債依存度は七・九%となっております。
 一方、令和三年度当初予算における国の起債依存度は四〇・九%、地方財政計画におけます起債依存度は一二・五%となっております。
 なお、リーマンショック後の企業収益の回復のおくれなどによりまして、税収低迷が継続していました平成二十四年度の都の起債依存度は八・〇%でございます。

○小林委員 起債依存度については、国と比較すると約五分の一、地方の平均と比較しても約六割と、国や地方よりも低くなっており、また、リーマンショック後の平成二十四年度とおおむね同水準ということでございます。
 次に、都債残高というストック面についてですが、都債は毎年の新規発行と償還額の差し引きの結果としての都債残高がどの程度の水準にあるのかということが一つのポイントとなるかと思います。都債残高が多ければ、その償還のための毎年の経費が大きくなり、財政を圧迫することになってしまいます。
 さきの第四回定例会の都議会公明党の代表質問でも言及をさせていただきましたが、今後、都は、コロナ対策の一環として実施している中小企業制度融資の預託金の財源として都債を発行しております。中小企業制度融資の預託金は、数年後に都に返還され、その返還金が都債の償還に充てられるため、いわば中長期的には収支が均衡している状況になろうかと思います。
 そこで、令和三年度当初予算における都債残高がどの程度の水準にあるのか、過去三十年間における都債残高の推移も含めてお伺いをいたします。
 また、中小企業制度融資の預託金の財源として発行した分を除くと、都債残高がどの程度の水準になるのかについても、あわせてお伺いをいたします。

○山田主計部長 都債残高は、平成三年度時点で約一・七兆円であったところ、バブル経済の崩壊後、国の累次にわたる経済対策に呼応する形で、投資的経費の水準を維持するために、都債の大量発行を続けた結果、十三年度には約七・六兆円まで急増をしたものでございます。
 都は、平成十二年度以降、都債の発行抑制を続けるとともに、償還を進めたことで都債残高を着実に減少させており、令和元年度末の残高は約四・八兆円となっております。
 一方で、今年度は、これまで残高を継続的に減らすことで培ってきた都債の発行余力を活用し、新型コロナウイルス感染症対策などの財源として積極的に都債を発行して対応しております。
 これらの結果、令和三年度末残高は約五・三兆円となりますが、そのうち中小企業制度融資の預託金の財源として発行した都債を除きますと、約四・九兆円となります。この水準は、ピークでありました平成十三年度末の残高七・六兆円の約六割となっております。

○小林委員 都債残高については、今ご答弁ございました過去の残高と比較しても低水準を維持しており、都債の発行余力については、財政対応力を堅持しているのではないかといえるかと思います。
 基金と都債について、具体的な数値を使って可能な限り客観的な視点でお伺いし、ご答弁をいただいてまいりましたが、新型コロナウイルス感染症対策に大きな財源を振り向け、迅速に対応してきた中にあっても、現状で一定の財政対応力を残していることといえるのではないかと思います。
 しかしながら、コロナ禍の中、景気動向も依然として不透明な情勢であり、今後も厳しい財政環境が続くことが想定をされます。この先を見据えれば、都財政は決して楽観視できる状況ではないと思います。
 コロナとの闘いを克服して、子供たちの笑顔あふれる東京の未来を実現する、また、医療、感染防止対策に引き続き万全を期すとともに、コロナ禍で浮き彫りとなったさまざまな課題にも、しっかりと対応していく、そのためには、基金、都債の戦略的な活用はもとより、令和三年度予算において約一千百十億円の財源確保へとつなげた事業評価の取り組みのさらなる強化など、現状に甘んじることなく、持続可能な財政運営を引き続き行っていくことがますます重要になってくると思います。
 景気の先行きが不透明な中、厳しい財政環境がしばらく続くことも想定され、都財政を担う財務局、なかんずく、そのリーダーである財務局長も難しい財政運営のかじ取りが求められてくることと思います。
 今後の財政運営についての局長の見解をお伺いいたします。

○潮田財務局長 景気の動向が依然として不透明な情勢にある中、企業収益の悪化などによる税収減など、今後も厳しい財政環境が続くことが想定されております。
 こうした中にありましても、新型コロナウイルス感染症の克服に向けた対策など、山積する喫緊の課題への対応はもとより、東京を世界から選ばれるサステーナブルな都市へと進化をさせていかなければなりません。
 そのため、限られた財源を都政の諸課題の解決に有効に活用する観点から、終期を迎える事業の事後検証を徹底するとともに、全ての事業についてスクラップ・アンド・ビルドの視点から見直しを不断に行うなど、一つ一つの事業の効果が最大限に発揮されますよう、事業評価の取り組みをさらに強化してまいります。
 加えて、事業評価と政策評価を一体的に実施いたしまして、アウトカムをより重視した評価を行っていくなど、施策のPDCAサイクルのさらなる強化を図り、より一層実効性と効率性の高い施策の構築へとつなげてまいります。
 その上で、基金や都債を計画的に活用するなど、これまで以上に戦略的な財政運営に努め、都の施策展開を財政面から支えるという財務局に課せられた使命を確実に果たすべく、全力を尽くしてまいります。

○小林委員 ありがとうございます。
 先ほども申し上げましたが、先月行ったオンラインでの都政報告会は、二十代の青年世代から、またご高齢の方々まで幅広く行わせていただきましたが、都財政を心配する声は、中高年層からもいただきましたが、実は私の思っている以上に青年世代からも多く寄せられました。国難ともいうべきコロナとの闘いにあって、医療体制の強化、支援策の充実など多大な支出を伴っている中、都民の目から見て、こんなにお金を使って大丈夫なんだろうかと、素朴な疑問が生じるのも当然のことといえますが、私は、都財政を心配してくださるご意見を聞き、逆にありがたくも思いました。
 私も可能な限りわかりやすく都財政の状況をお伝えするようにしておりますが、例えば、都として一層の事業評価を行って、一千百十億円の財源を新たに生み出して新年度予算を編成していることをお伝えすると、オンライン上ではありますが、皆様の表情から、そういうこともやっているのかというような思いになっていただいていることも感じます。都財政というとなかなか難解でわかりづらいという嫌いもあるかもしれませんが、コロナとの闘いにおける都の財政状況をできる限りわかりやすく丁寧に都民に向けて発信をしていくことも、都の施策をご理解いただく上で大事なことと思いますので、ぜひとも今後工夫を凝らしていただければと思います。
 また、先ほど局長から今後の財政運営についてご答弁をいただきましたが、厳しい財政環境の中にあっても、コロナ対策など都民の命と暮らし、経済を何としても守り抜く、東京の明るい未来を実現する、そのために施策の推進を支える持続可能な財政運営に全力で今後とも取り組んでいただくことを改めて要望いたしまして、私の質問を終わります。

○池川委員 私からは、まず、契約制度と都内事業者の育成等について質問いたします。
 東京都中小企業・小規模企業振興条例では、都の責務として、中小企業の基盤経営の強化及び事業承継の円滑化を図ることが掲げられています。新型コロナ危機のもとで、都内中小事業者、小規模事業者も大きな影響を受けています。この間、工事の工事時期、設計等の委託も含めて履行期間の平準化を行ったり、また、分離分割発注など、中小企業の受注機会の確保をする施策について、私たちもさまざま提案をさせていただきましたが、都としても一歩ずつ対応していただいているというところだと思います。
 基本的な視点として、都民の税金を使って行う工事などの契約は、基本的には都内事業者が受注できるようにしていくことが重要であると考えます。
 そこでお伺いをいたしますが、都発注の契約で都内事業者を優先していく必要があると考えますが、その点についてのご見解を伺います。

○新田見契約調整担当部長 厳しい経営環境にある都内中小事業者の受注機会の確保は、現下のコロナ禍においては特に重要なものであると認識しております。
 都では、契約制度面から、都内中小事業者を支える仕組みとして、これまでも分離分割発注の徹底、地域性等を考慮した優先的な指名などの取り組みを進めてまいりました。
 引き続き、このような取り組みを通じまして、都内中小事業者の受注機会の確保を図ってまいります。

○池川委員 今の答弁は、平時も重要だけれども、コロナ禍においては特に重要だという認識を示されたことは、私、大変重要だというふうに思います。
 受注機会の確保を行うという点では、私たちも予算要望の機会などに、さまざま提起をさせていただいておりますが、例えば、都発注の簡易な工事、修繕など小規模な工事等について、受注機会を積極的に提供する小規模工事等契約希望者登録制度等、この実施などはさまざま区市町村などで広がっておりますが、大変いい制度だなというふうに、有効だなというふうに思っております。
 また、受注機会の確保を図っていくという答弁でありますが、こうしたさまざまな施策をきちんと実行される、そのことによって、具体的に回っていくその先が見えるような制度にぜひしていただきたいということをあわせて求めておきたいと思います。
 先ほどの部長の答弁の中で、コロナ禍で特にという話がありましたので、ぜひ来年度の取り組みの中でも、そうしたものが目に見える形になるよう強く求めておきたいと思います。
 また、中小企業・小規模企業振興条例は、都の責務として、中小企業の人材の確保及び育成を図ることを掲げています。直接的な支援ということでいえば、都では産業労働局が担う事業が多いわけでありますが、契約制度からも、これらについて後押しし、育成を図ることが重要だと思います。
 都内事業者を育成していくことについての都の認識をお伺いいたします。

○新田見契約調整担当部長 都内の中小事業者は、地域経済を支えるとともに、災害時の復旧対応、雇用の創出など、都民生活の向上に重要な役割を果たしており、契約制度面から都内中小事業者の育成や振興を後押ししていくことは重要であると認識しております。
 一方で、公共調達には、常に競争性、透明性、公正性などの基本的な視点が求められておりまして、これらに基づいて、引き続き適切な制度運用に努めてまいります。

○池川委員 契約制度面からも後押しが必要だということで、こういう話をきちんと認識していただいているということは意義深いものがあるというふうに私は思います。
 建設現場などでは、今、慢性的な人手不足の状態となっています。また、事業承継、また、後継者の問題についても大きな課題を抱えている事業者がたくさんいらっしゃいます。
 中小企業は、都民生活の向上に重要な役割を果たしているとともに、先ほどもご答弁ありましたが、雇用の創出を含め、地域への貢献も含め、さまざまな役割を担っていただいていらっしゃいます。
 東京都が労働者の働く環境を改善していくためにできること、これは契約制度からできることというのは限られているかもしれませんが、これまでの枠組みを超えて、さまざまな知恵も出して支えていただきたいということを重ねて申し上げます。
 また、事業者を契約制度面から後押ししていくということなんですが、これは契約制度についてもさまざま、この間も進展がありますし、これから、とりわけ先ほど答弁にあったコロナ禍でどういう政策が求められているのかということも、これ、契約制度の中でも、ぜひ不断の努力をしていただいて検討していただきたいというふうに思います。
 また、都内の自治体の中では、その自治体の中でなるべく優先的に発注する仕組みをつくっている自治体がたくさんあります。都発注の工事の中でも、元請企業は都内事業者ということがあると思いますが、下請に行くと、私、例えば、町田市ですが、都県境がすぐそこで、下請以降は全部神奈川県の業者ということが間々あるわけです。こうしたものを、やっぱり都の税金を使って発注するものは、なるべく都内事業者が受注し、そして下請も含めて都内事業者がそこに入っていくことができるように、こうしたところもぜひ契約制度面からさまざまな工夫をご検討いただきたいなということを申し上げておきたいと思います。
 都発注の工事における元請、下請契約についてフォローアップ調査を行っていると、先ほども答弁がありました。私も実態調査の結果についていただいて、中身も読ませていただきました。
 共産党都議団としても、このフォローアップ調査については、調査を行っていただきたいということを求めてきたところでありますが、フォローアップ調査の結果の特徴について伺いたいと思います。

○新田見契約調整担当部長 都発注工事における元請、下請事業者間の適正な請負契約に向けて、これまでの元請事業者に対する適正化の要請に加えまして、今年度は、その実態を把握するフォローアップ調査を実施いたしました。
 調査の結果につきましては、元請、下請事業者間の契約関係は、全体としておおむね適正でございましたが、一方で、少数ではございますが、事業者のさらなる理解促進が必要なものも見受けられました。
 今後、業界団体に対して、調査結果をもとに適切な対応を働きかけることなどにより、下請契約の適正化を促してまいります。

○池川委員 おおむね適正だったということではありましたが、結果について見てみると、下請事業者のヒアリング件数は三社だったということです。もちろんコロナ禍での対応で、さまざま工夫をしながら対応していただいていることは承知をしておりますが、実際には元請業者へのヒアリングとともに、やはり下請業者に対するヒアリングというのは、全体像を把握する上では不可欠だというふうに思います。それは、そもそも元請、下請の力関係で、圧倒的に元請業者が強いということは歴然としているからであります。
 そういう意味で、都も毎年、下請負人等に対する契約の適正化及び支払いの迅速化並びに必要な技術者の配置等についてなど、建設業の団体の長の皆さんに対して通知を出されて、さまざま具体化を図ってほしいということをいわれているんだというふうに思います。
 こうした都の取り組みがきちんと広がっていくこと自体は、民民の契約にもプラスの影響が働くこと、つながっていくことになるということが大変期待をされているわけであります。
 今回のフォローアップ調査については、実態調査としては大きな一歩だったと、大切な一歩だったというふうに考えますが、都として、その実態をさらにつかんでいくための取り組みを求めておきたいと思います。
 また、これは、この委員会でも何度も質問しておりますが、公契約条例についても、こうした検討の中からやはり一歩踏み込んだ検討を行うよう強く求めておきます。
 次に、予算編成について質問します。
 来年度予算編成方針では、二つ目の柱に、社会変革に適応したデジタル化による都民サービスの向上が掲げられています。各局の予算説明などをお伺いいたしますと、新規事業はほとんどデジタルという局も少なくありません。
 予算編成を行う財務局として、どのように対応してきたのか、その内容について聞いていきたいと思います。
 昨日の本委員会で、主税局の新しい税務基幹システムの構築について質問を行いましたが、土木や建築のような、これまで長い蓄積のある分野とは違い、デジタル化に伴うシステム開発について、予算が過大にならないようどうやってチェックをやっていくのか、その体制について、主税局としては、きのう、第三者評価を入れる、コンサルを入れて実施をするという体制を構築するんだという話がありました。必要な機能、経費の妥当性を見きわめるという答弁もありましたが、これ以外にも、各局デジタル化の予算さまざまついているわけです。
 予算の調整を行う財務局として、デジタル化に関する予算については、どのような予算の積算を行ってチェックを行ってきたのかについて伺いたいと思います。

○山田主計部長 デジタル化に関する予算のうち、情報システムの改修や新規構築を行う場合には、デジタル化に関しまして専門的な知見を有します戦略政策情報推進本部ICT推進部におきまして、専門的、技術的見地から所管局の予算見積もり時にヒアリング等を実施し、適切な経費となるように各局と調整を図っているところでございます。
 また、財務局におきましても、ICT推進部と連携しながら、情報システムの開発、運用経費やデジタル技術を活用した取り組みに必要な経費について、有効性、実現性、コストなどの観点から多面的な検証を行った上で、必要な予算額を計上しているところでございます。

○池川委員 戦略政策情報推進本部のICT推進部が入って適正になるようにしていく、これが、基本的にはやられて、通過をしたものが財務局にも上がってくるんだという話だったと思います。
 これは、都庁全体として目ききができる、つまり、ここに精通している人たちがきちんと分析し、その予算が本当に適正なものであるのか、スペックがそれで十分であるのかどうかについては、さまざまノウハウを蓄積していく必要があるというふうに思います。
 また、一たびシステムダウンが起こったり、情報が漏えいする、さまざまそういうことが起これば、行政の信用は一気に失墜をしてしまうことにもなるわけです。これは絶対ということがないからこそ、必要な予算を計上しつつ、同時にしっかりと精査を行うという、大変難しいわけでありますが、これは事業局としても、またさらに、財務局としても、こうしたものにきちんと取り組んでいく必要があるというふうに思っています。
 都庁は今、デジタル化がトレンドだというふうに思うんですけど、これはトレンドが何かによって時々の予算編成変わっていくとは思いますが、そのトレンドが出たものに対してもきちんと精査をして、執行に向かってチェックをしていく、それは財務局の大事な役割だというふうに思いますので、その辺のチェックについても、ぜひ引き続き行っていただきたいというふうに思います。
 次に、都債について質問します。
 今年度予算では、中小企業制度融資の都債活用、また、最終補正予算では減収補填債を発行するなど取り組みが行われてきました。
 来年度予算では、当初予算との比較では大きな増額となり、五千億円を超える都債を発行する予定としておりますが、都債の基本的な考え方について伺いたいと思います。

○山田主計部長 都債は、世代間の負担の公平性を確保する機能とともに、年度間の財源調整の機能を有しております。
 都税収入が減少するという財政環境が厳しさを増す中にありましても、必要な施策を積極的に展開するために、財源として有効に活用することが重要であると考えております。
 都はこれまで、将来を見据え、発行抑制に努める中で、都債残高を着実に減少させ、都債の発行余力を培ってまいりました。
 令和三年度予算では、こうした財政対応力を生かし、充当可能な事業に対しまして、都債を積極的に活用することといたしまして、五千八百七十六億円を計上しているところでございます。

○池川委員 必要な施策を積極的に展開するために財源を有効活用するという話で、都債を五千八百七十六億円計上しているということでした。
 また、来年度予算では、ソーシャルボンドを六百億円発行するというふうに予算説明書にも記載をされております。これは通常の地方債、いわゆる地方財政法第五条の中の枠組みの中だというふうに聞いておりますが、具体例として、中小企業制度融資、新型コロナウイルス感染症対応融資の預託金や特別支援学校の整備などが充当事業として、概要には記載をされているところであります。
 都が、このソーシャルボンドを活用するメリットについて伺いたいと思います。

○山田主計部長 ソーシャルボンドは、調達される資金が社会的課題への対処、軽減を目的とした事業に充当される債権でございまして、ESG債の一つでございます。
 都は来年度、国内自治体初となりますソーシャルボンドを発行することとしております。発行に当たりましては、資金使途や事業効果等につきまして外部評価を取得し、適格性や手続の透明性を確保してまいります。
 これによりまして、投資家への訴求力を高め、社会的課題の解決という発行意義に賛同した新たな投資家の参入につなげるとともに、国内におけるESG投資をさらに促進することができると考えております。

○池川委員 適格性、手続の透明性を確保していくということが、発行に当たっての注意点として挙げられたと思います。
 私自身、投資の世界には全く明るくありませんが、今社会課題を解決するところに投資をしていくというのは、一つのトレンドになっているというふうに認識をしているところです。
 また、都債を発行する際に、買い手がつくことがやはり必要になります。そういう意味からも、東京都にとっても、また都債を買う投資家の方にとっても、どこで折り合えるのかということが、それを見つけていくことがすごく重要なのではないかと思います。
 今年度発行した都債の中で、中小企業制度融資について、いわゆるコロナ債だという報道もありました。これは実際にはソーシャルボンドではないということでありますが、そのことによって大きな注目を集めたことは間違いないというふうに思います。
 来年度は、特別支援学校の整備もソーシャルボンドの枠組みで、現時点では一つの選択肢として考えられているということも注目をしているところです。
 今回、自治体初の取り組みということになりますが、今後の展開については、私も大変注視をしていきたいというふうに思います。
 最後に、税収が減少し、基金も減少する中で、従来の延長線ではなく、踏み込んだ予算の見直しが必要だということについて質問いたします。
 都債の活用など基本的な考え方を先ほどお伺いした際に、必要な施策を積極的に展開するというふうにご答弁がありました。財務局、また財政委員会に所属されている議員の皆様にとっては釈迦に説法かもしれませんが、地方債、いわゆる地方財政法第五条の枠の中では、交通事業、ガス事業、水道事業の公営企業会計に要する経費、出資金及び貸付金の財源、また地方債借りかえのために要する経費、災害対応事業、それに加えて、学校、保育所、消防施設、道路、河川、港湾施設などの公共施設や、その土地の獲得にかかわるものに、都債や、いわゆる地方債が活用できるというふうになっております。すなわち、何でも使えるわけじゃないということなんですね。
 先ほどの答弁の中でも、充当可能な事業に対して都債を積極的に活用ということで、活用できるものに充てていくという考え方だったと思いますが、充当していく事業そのものが本当に必要性があるのかどうかの見直しが行われないまま都債を活用するということは、やっぱりあってはならないというふうに思います。それは、すなわち不要不急なものをつくっていく、実施していくということになれば、それは将来世代の負担につながるということになるからだと思います。
 そこで、都債を活用する事業以外も含めて伺いたいと思うんですが、税収減と基金の減少、この数年間の予算編成と大きく違う中で、不要不急の事業の見直しが必要だというふうに考えますが、この点については、予算編成上どのように取り組んだのか伺います。

○山田主計部長 厳しい財政環境の中、限られた財源を有効に活用し、都政が直面する諸課題に的確に対処するためには無駄を一層なくすなど、歳出の精査の徹底が重要であると考えております。
 そのために、令和三年度予算編成に当たりましては、十六年ぶりとなりますマイナスシーリングを設定し、全庁的に自己改革の取り組みを促し、予算要求段階から経費の抑制を図ったところでございます。
 加えて、決算状況を踏まえた経費の精査を行うとともに、終期を迎える事業に対する事後検証を徹底するなど、事業評価の取り組みの強化を通じまして一千百十五件の見直し、再構築を行い、約一千百十億円の財源を確保しているところでございます。

○池川委員 都政が直面する課題に的確に対処するためには、無駄を一掃していくと、歳出の精査の徹底が重要だという答弁だったと思います。さらに踏み込んだ見直しが必要だというふうに思います。
 私たち、繰り返し求めていますが、住民合意のない特定整備路線、また、重大な陥没事故を起こした東京外環道事業は、抜本的に見直す必要があると思います。
 また、今回の五輪は中止をし、コロナ対策に集中すべきだということを申し上げてきましたが、そうした視点からの予算の見直しも求められていると思います。
 コロナ対策に力を集中し、当面、予算特別委員会でも、攻めの検査、守りの検査というふうにいいましたが、コロナ対策の検査体制、医療体制、また事業者への補償等についても踏み込んで行っていくことが今求められているというふうに思います。さらに、必要な都民施策を進めていくことが重要で、暮らしと営業を守るために、スウェーデン、ノルウェーなど、一国の予算規模に匹敵する都政の全てを都民のために使うことが必要だということを求めて、質問を終わります。

○西郷委員 私からは、まず、本予算案の予算編成方針について質問させていただきます。
 予算編成方針の冒頭の文章ですが、ことしは、令和三年度予算は、厳しい財政環境の中にあっても、都民の命を守ることを最優先としながら、東京の経済を支え、その先の未来を見据えて、都政に課せられた使命を確実に果たしていく予算と位置づけられました。昨年度までは、厳しい財政環境の中にあってもという文言がなく、この十年間を見ても、こうした厳しい財政環境という、財政について危機感をにじませる文言は冒頭に入っていなかったと記憶しております。
 改めて、東京都は、こうした文言を入れざるを得なくなった原因をどう捉えていらっしゃるのか、今回のコロナ禍において、令和三年度予算案の編成方針として厳しい財政環境と記述した原因をどう捉えているのか伺います。

○山田主計部長 我が国の景気は、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、依然として厳しい状況にありまして、国内外の感染症の動向が内外経済をさらに下振れさせるリスクなどに鑑みれば、今後の景気動向は不透明な情勢にあると考えております。
 また、都の歳入の根幹をなします都税収入は、法人関係税収の占める割合が高く、景気動向に左右されやすい不安定な構造にあることに加えまして、令和元年度税制改正におきまして、地方法人課税における新たな偏在是正措置が講じられております。
 こうした状況を踏まえ、都として、引き続き厳しい財政環境が続くことを想定しながら、令和三年度予算の編成に臨んだところでございます。

○西郷委員 都税収入の減少というところに主に着目して厳しい財政環境と記述したという答弁だったと思います。
 しかし、私はそれだけではないと思います。もちろん、本年度は、コロナ対策における必要とされる経費を盛り込み、積極的な財政出動をしなくてはならないことも理解しています。
 しかしながら、コロナ以外にワイズスペンディングが果たして行われているのか、今回のコロナ禍において厳しい財政環境となった原因は何なのか、いま一度検証する必要があります。事業の見直しを含めた不断の努力を重ねられることを強く要望します。
 次に、財政調整基金について伺います。
 東京都は、歴代の知事の長年の努力により、この財政調整基金を一定のルールで積み立ててまいりました。
 ところが、コロナ禍で一気に取り崩しがされてしまい、一時は底をつくのではないかという報道もございました。コロナによる補償のための必要性に駆られての処置ではございますが、今回明らかになったことは、知事が必要性を理由にすれば、都の貯金を議会に事前に諮らず、専決処分で取り崩しができるという仕組みです。
 今回、知事の独断かつ専決処分で簡単に財政調整基金を取り崩せることが明らかになったことを踏まえて、財政調整基金の取り崩しは一定の規律を設けるべきと考えますが、見解を伺います。
 また、財政調整基金については、今回の回復策を早急に都民に提示すべきと考えますが、見解を伺います。

○山田主計部長 都はこれまで、累次にわたりまして補正予算を編成し、新型コロナウイルスへの対策を迅速に講じてまいりました。そのうち、議会の閉会中に新規感染者が増加する局面などにおきましては、直ちに対策を講じる必要があったことから、財政調整基金などを活用し、専決処分による予算措置を行ってきたところでございます。
 財政調整基金は、税収の急激な落ち込みや突発的かつ巨額の財政需要の発生など、まさに今回のような財源が不足する場合に活用するための基金でございます。
 都は、法に基づく義務積み立てに加えまして、都独自の制度として、税収増が見込まれる場合に、増加額の一部を基金に積み立てる仕組みを備えております。この制度のもとで着実に基金残高を確保してきたことで、今般、対策を講じるための専決処分を含む補正予算の財源として活用することができており、これは財政調整基金本来の目的に沿ったものであると考えております。
 また、将来に備えて、令和元年度の決算剰余金を速やかに積み立てるなど、基金残高の回復に努めておりまして、今後とも、財政調整基金につきましては、目的を踏まえ、適切に活用するとともに、国庫支出金の確保、事業評価の取り組み強化や歳出精査の徹底などに取り組みまして、持続可能な財政運営に努めてまいりたいと考えております。

○西郷委員 財政調整基金の適切な活用をおっしゃっていただきまして、確かに今回の取り崩しの内容は適切であったとは思います。
 しかしながら、知事が、あるいは都が暴走してしまうと、独断専行で基金が取り崩せることが可能になってしまっている、この現実を重く受けとめていただき、基金の取り崩しについて内部基準を設けること、そして、それを都民に対して公表することを強く要望します。
 偏在是正措置についても伺います。
 国が都に対して行っている偏在是正措置は、東京都の財政基盤を揺るがすものであり、厳しい財政環境と明示された今、一層国に対してやめるよう求めるべき事案でございます。
 初めに、令和二年度と令和三年度を比較した場合において、偏在是正措置の影響がどのようになっているのか、確認します。

○山田主計部長 法人二税につきましては、平成二十年度税制改正以来、国の累次にわたる地方法人課税の見直し、いわゆる偏在是正措置によりまして、国税化が進められてきております。
 これまでの一連の偏在是正措置による令和三年度当初予算ベースの影響額は、仮に税制改正がなかった場合と比較しまして、マイナス七千六百八億円となる見込みでございまして、令和二年度当初予算時のマイナス八千三百八十六億円と比べて影響額は減少しております。
 これは、令和三年度は、令和元年度税制改正による措置の平年度化によりまして影響額が拡大する年度でございましたが、その拡大による影響額よりも企業収益の悪化による課税ベースの減少の影響の方が大きかったものでございます。
 結果として、影響額は令和二年度より減少しているものの、この措置が都財政に及ぼす影響は決して少なくないと認識しております。

○西郷委員 偏在是正措置がなかったとしたならば、昨年は八千億、今年度も七千億以上の財源がふえていたということがわかりました。七千億や八千億という数値は、先ほど申し上げた財政調整基金において、東京都がこのコロナ禍に取り崩した額に匹敵する額でもあり、もし偏在是正措置がなければ、厳しい財政環境という言葉も使われず、より機動的で効果的なコロナ対策ができたであろうと思うと悔やみ切れないものです。
 しかしながら、国による不合理な偏在是正措置について、今年度は、強い反対の意思表示が都から見えてきません。都の財政悪化に鑑み、引き続き断固たる反対の意思と、その理由をわかりやすく明確に示し、他の地方自治体とともに連携し、国に撤廃を求めていくべきと考えますが、見解を伺います。

○山田主計部長 偏在是正措置は、地方自治体がみずからの権限と財源で地域の活性化を目指す地方分権の理念と逆行するものでございます。
 このため、都はこれまでも、さまざまな機会を捉えて、都の主張に対する理解を求めてまいりました。
 今年度も、国への提案要求や九都県市首脳会議を通じまして、国、地方間の税財源の配分の見直しなど、地方税財政制度の抜本的な見直しについて、国に対して要望を行っております。
 今後とも、地方税財政制度の本来あるべき姿を目指し、地方が果たすべき役割と権限に見合った財源を一体として確保できるよう、国に対して働きかけを行ってまいりたいと考えております。

○西郷委員 二〇一八年に出された偏在是正措置に対する東京都の声明は、インパクトのあるものでした。国に対して働きかけを積極的に行っていただくとともに、偏在是正措置に反対する大都市圏の自治体とより強く連携していただくことを要望いたしまして、私からの質問を終わりにいたします。

○加藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時二十六分散会

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