財政委員会速記録第二十二号

令和二年十二月十一日(金曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長加藤 雅之君
副委員長清水 孝治君
副委員長山内  晃君
理事池川 友一君
理事成清梨沙子君
理事入江のぶこ君
小林 健二君
増田 一郎君
伊藤しょうこう君
大松あきら君
本橋ひろたか君
清水ひで子君
森村 隆行君
宇田川聡史君

欠席委員 なし

出席説明員
財務局局長潮田  勉君
経理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務古川 浩二君
主計部長山田 忠輝君
財産運用部長五十嵐 律君
運営・調整担当部長矢部 信栄君
利活用調整担当部長小泉 雅裕君
建築保全部長佐藤 千佳君
主税局局長砥出 欣典君
総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務川上 秀一君
税制部長丹羽恵玲奈君
税制調査担当部長長田  稔君
課税部長萱場 明子君
資産税部長池田 美英君
徴収部長菊澤 道生君
会計管理局局長佐藤  敦君
管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務副島  建君
警察・消防出納部長中村 佳史君
会計制度担当部長筒井 宏守君

本日の会議に付した事件
決議について
会計管理局関係
報告事項(質疑)
・令和二年度公金管理実績(上半期)について
財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百八十七号議案 令和二年度東京都一般会計補正予算(第十三号)中、予算総則、歳入、歳出、債務負担行為-財務局所管分、都債
・第二百一号議案 東京都東村山福祉園(二)改築工事請負契約
・第二百二号議案 神津島港津波避難施設(二)新築工事その三請負契約
・第二百三号議案 都営住宅二H-一〇七東(北区浮間三丁目)工事請負契約
・第二百四号議案 都営住宅二H-一一二東(足立区花畑七丁目)工事請負契約
・第二百五号議案 雑司が谷環状第五の一号線トンネル(仮称)(二)立坑築造工事その二請負契約
・第二百六号議案 中川護岸耐震補強工事(その五十一)請負契約
・第二百十六号議案 当せん金付証票の発売について
・第二百十七号議案 土地の信託の変更について
主税局関係
報告事項(質疑)
・令和二年度東京都税制調査会答申について

○加藤委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 初めに、決議について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、決議を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件につきましては、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○加藤委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、財務局関係の付託議案の審査並びに会計管理局及び主税局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第二百一号議案から第二百六号議案までの契約議案及び第二百十七号議案の土地の信託に関する議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 報告事項、令和二年度公金管理実績(上半期)についてに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○加藤委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、潮田財務局長から発言の申し出がありますので、これを許します。

○潮田財務局長 議案の訂正についてご報告いたします。
 令和二年十一月二十六日付で一般会計補正予算の専決処分を行ったことに伴い、第百八十七号議案、令和二年度東京都一般会計補正予算(第十二号)を(第十三号)に変更するとともに、既定予算額等に一部変更が生じましたことから、先日の委員会でお配りした資料を再度提出させていただきます。
 なお、補正予算の規模や事項等に変更はございません。
 ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○加藤委員長 発言は終わりました。

○加藤委員長 次に、付託議案の審査を行います。
 第百八十七号議案、令和二年度東京都一般会計補正予算(第十三号)中、予算総則、歳入、歳出、債務負担行為、財務局所管分、都債、第二百一号議案から第二百六号議案まで、第二百十六号議案及び第二百十七号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○古川経理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 それでは、先日の委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元配布の財政委員会要求資料をごらんください。
 最初に、表紙をおめくりいただき、目次をごらんください。今回要求のありました資料は、記載のとおり一件でございます。
 それでは、一ページをお開き願います。要求資料第一号、各種基金の残高状況です。
 こちらは、各種基金の四定補正後見込みを反映させた状況をお示ししたものでございます。
 説明は以上です。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○加藤委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○入江委員 昨日は、都の新型コロナウイルス新規感染者数が六百二人で最多となりました。第三波と思われる感染拡大は終息をできておりません。全国で病床の逼迫、そして医療スタッフの疲弊などの報道が日々飛び交っております。
 都は、こうした中、そのほとんどがコロナに対する緊急対策ということで、十一月十七日に総額二千三百八億円の補正予算案を発表し、十一月二十六日には、営業時間短縮に対しての感染拡大防止協力金にかかわる二百億円の専決処分を行ったところです。
 補正予算の考え方につきましては、先日の代表質問で、我が会派の小山政調会長から質問し、小池知事にご答弁をいただいたところですが、本日の委員会では、それを補足する観点から、補正予算の財源、都債の活用、今後の追加対策について確認いたします。
 まず、今回の補正予算の財源について、詳細とその特徴について伺います。

○山田主計部長 本定例会に提案しております補正予算二千三百八億円の主な財源は、国庫支出金が一千八百十三億円、都債が三百四十四億円、福祉先進都市実現基金繰入金が百五十一億円などとなっております。
 全体の約八割を占めている国庫支出金につきましては、具体的には、医療提供体制等の強化充実に一千百五十九億円、生活福祉資金貸付事業補助等に六百五十五億円を財源として見込んでおります。
 また、これまで発行余力を培ってきた都債を、第三回定例会の補正予算に引き続き、中小企業制度融資の財源として活用をしております。
 これらの財源を積極的に活用することによりまして、年末年始を見据えた診療、検査体制の確保や中小企業の資金需要への備え、年度末までの医療提供体制の確保、セーフティーネットの強化充実などの対策を財政調整基金の取り崩しを行うことなく講じることができるものと考えております。

○入江委員 ご説明のとおり、今回の補正予算でも国庫支出金を可能な限り財源として確保した上で、三定補正に引き続き、都債の活用が図られております。
 これまで、補正予算累計一兆六千億を超える財政出動をしてきた現下の状況を踏まえますと、発行余力があり、信用もある都債をさらに積極的に活用することが必要です。
 先日、使用目的をコロナ対策費に特化した全国で初めての地方債、いわゆるコロナ都債が発行され、通常の都債以上に広く機関投資家から受け入れられました。
 これは、正式にはコロナ都債という名前がついたものではありませんでしたが、第二回定例会一般質問において、我が会派の増田議員が、都債を出すのであれば、使用目的をコロナ対策に限定して、コロナ都債と銘打って発行した方がより投資家の共感を得られて発行条件がよくなる、つまり、都民の負担が軽くなるという提言をされて実現に結びついたものと考えております。
 そこで、コロナ対策が継続的に求められる中、この報道にありましたコロナ債といわれる都債の内容確認も含め、今後、都債をどのように活用していくのか伺います。

○山田主計部長 都債は、年度間の財源調整と世代間の負担の均衡を図る重要な機能を有しており、財政環境が厳しさを増すことが想定される中、財源として有効に活用していくことが重要であります。
 コロナ債と報道されました今回の都債は、調達資金を新型コロナウイルス感染症対策に全額充当する旨を明示して発行した都債のことであり、今月六百億円を発行したところでございます。
 発行に当たりましては、資金使途を丁寧に説明することで、趣旨に賛同する投資家の需要を喚起し、新たな投資家層の開拓にもつなげることができたと考えております。
 一方で、都債を財源とできる事業は、地方財政法第五条の規定により、公共施設の建設事業費や公営企業に要する経費、貸付金などに限定されております。
 今回発行した都債についても、中小企業制度融資における金融機関への貸し付けとなる預託金に充当したものでございます。
 今後も、都財政や充当される事業の進捗状況などを踏まえ、適切に都債を活用してまいりたいと考えております。

○入江委員 都債発行は財源確保のための有効な手段である一方で、その使い方や充当可能な規模についても一定の制限があります。コロナ債と聞くと、新型コロナウイルス感染症対策の財源は全て地方債で調達可能であるかのように思われる場合もありますので、そうではないことを改めて認識しておく必要はございます。
 情勢の変化に応じて迅速に手だてを講じていくことは重要ですが、そのための財源は、財政規律に留意した上で、国庫支出金や基金、さらには歳出の見直しなど、さまざまな工夫を組み合わせて調達していただくことを改めて求めておきます。
 さて、さきの代表質問で、我が会派の質問に対し、知事は、今回の補正予算により、年度末までの医療提供体制の確保と年末年始の医療機関の体制支援や企業の資金需要への備えを講じたと答弁されました。
 一方で、足元の感染状況は、引き続き予断を許さない状況にあります。政府も先般、財政支出四十兆円、事業規模七十三・六兆円の追加経済対策を発表したところです。
 都としても、今後の感染状況や経済情勢によっては、医療提供体制の一層の強化、中小企業制度融資の拡充を初めとしたセーフティーネットの充実など、さらなる対策を迅速に打ち出すことも十分に想定しておかなければなりません。
 そこで、コロナ対策の追加支出も想定される中、国庫支出金も含め、今後どのように財源を確保して対策を行っていくのか伺います。

○山田主計部長 新型コロナウイルス感染症の動向は、いまだ予断を許さない状況にあり、医療提供体制の強化及び経済活動と都民生活を支えるセーフティーネットの強化充実など、今後も必要な対策を途切れることなく実施していくことが重要であると考えております。
 こうした中、十二月八日に閣議決定された国の総合経済対策には、医療体制の強化に向けた緊急包括支援交付金の増額や営業時間短縮要請に応じた飲食店向け協力金などにも活用可能な地方創生臨時交付金の一・五兆円の拡充など、地方自治体への財政支援策が盛り込まれております。
 都といたしましては、今回の総合経済対策に関する国の予算措置の状況など詳細を早急に把握するとともに、都の実情を踏まえた財政支援となるよう、国に主張してまいりたいと思っております。
 今後も、国庫支出金の確保に努めるとともに、特定目的基金や財政調整基金、都債など、これまで着実に培ってきた都財政の対応力を最大限発揮することで、迅速に必要な対策を講じてまいりたいと考えております。

○入江委員 今ご答弁にございましたとおり、国庫支出金を確保すること、このことは、これまでも繰り返し我が会派が申し上げてきましたが、大変重要なことです。
 東京は、世界から人と物とマネーが集まり、我が国の経済活動の中心を担っています。新型コロナを乗り越え、日本経済を復活させるためには、首都東京での感染拡大を食いとめ、東京の経済をしっかりと支えていくことが不可欠です。そのためにも、東京の感染状況、人口規模、企業の集積状況など東京の実態を踏まえた財源を手当てするよう、庁内で連携して、国には強く求めていただきたいと思います。
 今後は、東京オリンピック・パラリンピックの追加経費負担、約一千二百億円も見込まれております。これまで以上にワイズスペンディングを徹底し、事業の実効性、効率性を一層向上させることで、無駄な支出をなくし、必要な施策にしっかりと財源を振り向けていただくよう、財務局には力を尽くしていただくことを要望しまして、この質問は終わりにさせていただきます。
 続いて、宝くじについて伺います。
 本定例会では、令和三年度の東京都内における宝くじの発売限度額に関する議案が提案されていますので、直近の状況について確認します。
 東京都内における最近の販売実績の推移と傾向の分析について伺います。

○山田主計部長 東京都が発売する宝くじには、ジャンボ宝くじやロト7などの全国自治宝くじと東京都宝くじがございますが、その発売実績は、平成三十年度が一千百九十四億円、令和元年度が一千百四十八億円と近年減少傾向にございます。
 販売額が減少した要因といたしましては、主要購買層の高齢化による購買力の低下と趣味や嗜好が多様化する中、若年層への商品アピールが不足していることなどが挙げられます。
 加えて、今年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて緊急事態宣言が発令された四月から五月に店舗での販売を自粛したことや、宣言解除後においても、店舗の多い繁華街への人出の戻りがおくれたことにより、依然として販売環境が厳しい状況が続いております。

○入江委員 前年の令和元年度の売上額は一千百四十八億円とのことでございますが、さらに確認しますと、発売計画額は一千四百十九億円、議決した発売限度額は一千七百四十五億円と、売上額との間には大きな差がございました。
 民間のビジネスであれば、翌年度の販売額を予測し、到達可能性を念頭に置きながら発売目標を立てるのが一般的です。
 宝くじの売り上げ実績は、残念ながら減少傾向にあり、なおかつ令和元年度の売上額の実績を踏まえれば、今回、令和三年度についても、発売限度額を一千七百十五億円とするのは、実際の売上額との間に大きな差が生じてしまうように思えます。
 例年、都議会に提案される発売限度額と実際の発売額との間に差が生じておりますけれども、発売限度額は、どのような考え方により算出されているのか伺います。

○山田主計部長 宝くじは、発売計画に基づき、各回ごとに定められた枚数のくじ券を発行し、市中店舗や公式サイトで発売をしております。
 一方で、ジャンボ宝くじや数字選択式宝くじにつきましては、計画枚数を超えた発行が可能であることから、例年一定の割合で余裕を見込んだ発売限度額を設定しているところでございます。
 このことによりまして、速やかな増額発行が可能となり、売り切れによる販売機会逸失を防ぐことが可能となるものでございます。

○入江委員 ご答弁によりますと、売れ行きが好調なときにチャンスを逃さないための備えを見込んだ額であるということがわかりました。そういう機会が頻繁に到来するように、宝くじの売り上げの拡大に努めていただきたいと思います。
 宝くじの売り上げが伸び悩む原因の一つに、若年層の購入が伸びないことが挙げられています。今後の宝くじの売り上げを支える層に関心を持ってもらうことは大変重要です。
 その取り組みとして、宝くじでも、現在、アニメ「ワンピース」とのタイアップを行っています。若年層に人気の高いキャラクターの力をかりれば、その絵柄がある宝くじに関心を持ち、購入のきっかけとして大きな効果が見込めると思います。
 キャラクターの権利者に許諾してもらえるか、高額な権利料に見合う効果があるのかなどハードルもありますが、最近、コラボ商品の売り上げを爆発的に伸ばしているアニメ「鬼滅の刃」やゲーム「あつまれ どうぶつの森」などとのタイアップも、ぜひトライしていただきたいです。
 また、店舗での販売状況についても説明がございましたが、インターネットに親和性の高い若年層にとって、インターネットによる宝くじ購入は、店舗の購入に比べ、大変手軽で身近です。その拡大により購入者をふやすことができるはずだと考えます。
 宝くじ売り上げ向上のためには、こうした若年層が親しみやすい取り組みに力を入れていくことが効果的と考えますが、最近の取り組み状況とその効果について伺います。

○山田主計部長 キャラクターとタイアップする際には、宝くじの商品性や顧客特性と作品の世界観が折り合えるかが課題となります。引き続き、効果的なコラボレーションが実現できるよう、若年層の流行の状況を注視してまいりたいと考えております。
 また、平成三十年よりスタートいたしました宝くじ公式サイトでのインターネット販売は大変好評であり、公式サイトに登録し、宝くじを購入できる会員数は、全国で令和二年十一月末現在で約百六十三万人に達するなど、着実に浸透をしております。
 今後とも、効果測定や市場調査を行いながら、宝くじ購買層拡大に向けた取り組みを積極的に進めてまいりたいと思います。

○入江委員 ジャンボ宝くじについても、ことしから若年層に人気の若手俳優五人がきょうだいという設定のコミカルなテレビCMを目にする機会が多くなりました。その効果もあって、サマージャンボ以降のジャンボくじの売れ行きは好調だと聞きました。今後とも、最新のマーケティングデータを取り入れた販売促進を展開していただきたいです。
 その際、公式サイトでの販売で得られるデータを販売促進策の質の向上に活用することもあるかと思いますが、個人情報の管理には十分留意していただくようにお願いいたします。
 続いて、宝くじの収益の活用についてお聞きします。
 東京都における宝くじの収益金の主な使い道にはどのようなものがあるか伺います。

○山田主計部長 宝くじの収益金は、地方財政法の規定により、公共事業のほか、国際化の推進や人口の高齢化、少子化等への対応など十二の事業に財源充当することが可能でございます。
 都における主な使途は、令和元年度では、子育て推進交付金に百五億円、待機児童解消区市町村支援事業に九十六億円、都立学校校舎改築等に二十七億円などのほか、東京二〇二〇大会協賛くじの収益から、共同実施事業等に四十九億円を充当しているところでございます。

○入江委員 収益金は、公園整備のほかに、子育て支援などソフト事業や東京二〇二〇大会の準備などに使われているとのことがわかりました。
 先ほどの答弁にありましたが、先日発行した都債については、使途を丁寧に説明したことで、ふだん都債を買わないが、コロナ対策に使う債券という使途に共感し、社会貢献性を評価した投資家も集まって、人気を博し、円滑な資金調達が実現しております。
 一方、宝くじについては、一般の都民が、日常の生活の中で、その使い道を意識する機会は余りございません。宝くじの収益金についても、その使途や財源としての重要性を都民に丁寧にPRし、広く共感を得ることで、宝くじそのもののファンだということだけではなく、購入者の裾野が広がり、売り上げ増につながると考えますが、見解を伺います。

○山田主計部長 PRを通じて、地方財源の調達という宝くじの発売意義について、都民の理解を得ることは重要であると考えております。
 これまでも、宝くじ公式サイトにおいて、各都道府県の収益金の主な活用例について、動画を用いてわかりやすく公表するとともに、都独自の取り組みとして、毎年九月、「広報東京都」に、宝くじ発売の意義や収益金の充当予定について掲載をしております。
 今後とも、多くの方に共感を持って宝くじを購入いただけるよう、宝くじ収益金の使途や財源についての重要性について、ツイッターやホームページなどの媒体も多く利用し、積極的にPRをしていきたいと思っております。

○入江委員 さて、新型コロナウイルス感染症の感染状況は、日々刻々と変化しておりまして、迅速に対応するために、国庫支出金や基金、都債とあらゆる手段を活用し、迅速かつ確実に調達するようにお願いをしたところでございます。
 一方、宝くじの収益金の使い道である待機児童対策などの子育て支援や都立学校校舎改築など教育環境整備といった、こうした状況にあっても、将来を見据えて計画的に進めるべき事業に必要な財源をしっかり確保することも大変重要です。
 そうした観点で見ますと、財源としての宝くじ収入の重要性は、今後ますます高まると考えます。
 財務局には、宝くじを発売する他の自治体や銀行など関係者としっかり連携して、宝くじの売り上げ確保に向けて知恵を絞っていただくよう強く要望しまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○伊藤委員 それでは、第二百十六号議案、当せん金付証票の発売、いわゆる宝くじについてお尋ねします。
 宝くじの歴史について、我が国では、江戸時代にさかのぼり、神社や寺の修復費用を集めるなどの目的で富くじが発行され、人気を得ていたようですが、その後、天保の改革により幕府から禁止されました。
 昭和に入りますと、日中戦争の戦費調達のために制定された臨時資金調整法に基づき、福券や勝ち札が発行された後、昭和二十三年に、戦災で荒廃した復興資金の調達を図るため、当せん金付証票法が制定され、昭和二十九年に、現在の全国自治宝くじが発行されたそうです。
 その当せん金付証票法の第一条には、宝くじは、経済の現状に即応して、当分の間、当せん金付証票の発売により、浮動購買力を吸収し、もって地方財政資金の調達に資することを目的とするとあります。
 さて、先ほどの都の販売状況は近年減少傾向にあり、主要な購買層の高齢化や若年層への商品アピール不足が要因との答弁がありましたが、こうした傾向は全国の状況と共通したものなのか、まず伺います。

○山田主計部長 全国での宝くじの発売実績は、平成十七年度の一兆一千四十七億円をピークに、その後、新商品の発売などにより、一時的に売り上げが増加したものの、徐々に減少いたしまして、平成三十年度は八千四十六億円、令和元年度は七千九百三十一億円となっておりまして、これは、都における発売実績とほぼ同様の傾向であると考えております。
 また、ここ数年、近隣県からの購入者が多く、販売量も多い一部人気売り場での売り上げ減少が大きくなっていることが都の発売実績に影響を及ぼしているところでございます。

○伊藤委員 全国の宝くじの販売実績の推移や傾向なども確認をいたしました。
 今回の議案で、発売の目的は、公園整備等の費用の財源に充当するためとありますが、東京都においては、これまで、公園整備や都立学校の校舎改築、また東京国際映画祭や外国青年招致事業、子育て推進交付金、文化財の保護などのほか、昨年のラグビーワールドカップ開催準備費用にも充てられ、貴重な財源となってきました。
 また、今年度予算では、公共事業などに約六百十九億円が使われることとされており、その内訳は、待機児童解消区市町村支援事業に約二百七億円、子育て推進交付金に約百五十七億円、認証保育所事業に約三十八億円、その他、公園整備や中小河川整備など都民生活を支える基盤整備に役立てることとなっており、販売額は減少傾向とはいえ、都財政を支える貴重な財源になっています。
 さて、今回の議案では、令和三年度については、発売計画額千三百八十三億八百万円、議決限度額千七百十五億円、発売益金等収益見込み六百九億六千九百万円となっています。
 これらは対前年比で、それぞれマイナス、すなわち減額の計画になっていますが、その理由は何か伺います。

○山田主計部長 令和三年度の発売計画額は、令和元年度及び二年度上半期の売上実績を踏まえた全国の宝くじの発売計画に都の発売実績シェアを反映して算定しております。全国の売上額及び都の発売シェアが減少したことによりまして、前年比減の計画となったところでございます。
 あわせまして、東京二〇二〇大会協賛くじの発売が令和二年度で終了することも計画額減の一因となっております。
 また、議決限度額や発売益金等収益見込みにつきましては、発売計画を踏まえて算定することから、それぞれ前年比マイナスとなっているところでございます。

○伊藤委員 全国の状況等による影響も勘案しながら、発売予測を立てた結果、残念ながら、発売計画額、議決限度額、収益見込みのいずれもがマイナスとなったとのことです。
 さて、日本宝くじ協会では、無作為抽出で全国を対象に、宝くじに関する世論調査を実施しているそうです。協会では、過去に一度でも宝くじを購入したことのある人を宝くじ購入経験者とし、最近一年間に一回以上購入した方を宝くじ人口、また毎月一回以上購入した方を宝くじファンと称し、宝くじ購入者を分類しています。
 宝くじの発行は、こうした宝くじ購入者によって支えられていますが、購入者の最近の意向調査の結果はどのようなものなのか、また、その結果に基づき、どのような対応をしているのか伺います。

○山田主計部長 一般財団法人日本宝くじ協会は、三年ごとに宝くじの購入有無や購入パターンを初め、購入実態と意識、評価等を把握するための世論調査を実施しております。
 令和元年九月の調査によりますと、宝くじ人口は推計で約四千四百二十二万人と、前回調査に比べて約七百九十七万人減少しており、特に若年層の減少が顕著であるとされております。
 また、宝くじの購入理由といたしまして、賞金目当て、宝くじには大きな夢があるからが上位に並ぶ一方、宝くじを購入しない理由といたしましては、当たると思わないからがトップとなっております。
 調査結果につきましては、発売団体であります都道府県及び政令市、受託銀行にフィードバックされ、若年層をターゲットといたしましたPR活動の充実や賞金体系の企画立案等に役立てているところでございます。

○伊藤委員 宝くじ購入者の意向を踏まえた対応を実施していると、こういう答弁ですが、もう少し詳しく確認したいと思います。
 宝くじと一口にいっても、さまざまな種類があります。抽せんで決定した番号と一致すると当せん金を受け取ることができるジャンボ宝くじなどの普通くじ、また、削ったその場で当たりがわかるスクラッチ、そして、自分で数字を選ぶロトなど当せん金の設定もさまざまです。
 さて、宝くじの一枚の価格は、百円、二百円、三百円、五百円と決められているそうですが、その根拠はどのようなものなのか。私には、一枚五十円のくじも発行してほしいという声も寄せられていますが、そのような声に応えることはできないのか伺います。

○山田主計部長 宝くじの単価につきましては、総務省が定める当せん金付証票発売許可基準によりまして、現在、原則といたしまして百円、二百円、三百円または五百円のいずれかとするものとされておりまして、商品ラインナップや発売スケジュール上のバランスを考慮いたしまして、現在は百円、二百円、三百円の単価のくじを発売しているところでございます。
 発売に当たりまして必要なくじ券の印刷費や売りさばき手数料などの経費を勘案すると、確実な収益確保の観点からも、最低百円とする単価設定は妥当なものであると認識しているところでございます。

○伊藤委員 宝くじの単価は、総務省の発売許可基準により、原則として百円、二百円、三百円または五百円と決められていると同時に、経費や収益の観点からも、最低百円とする単価設定は妥当と、こういうことでした。単価五十円の希望があった方には、二枚買ったつもりで百円くじを買ってくださいと伝えておきます。
 さて、平均的な宝くじ一枚単価の使途割合は、四六・五%が当せん金、三八・五%が地方への財政資金、一三・七%が印刷や手数料など、そして一・三%が社会貢献広報費となっていますので、購入者への還元となる当せん金は約半分となっています。
 そこで、当せん金と当選率についても伺います。
 普通くじについては、ジャンボ宝くじ、全国通常宝くじ、ブロック宝くじの三種類がありますが、現在発行している年末ジャンボ宝くじの仕組みを事前にお聞きしました。発行計画では、六十億円を一ユニットとし、二十二ユニット、すなわち千三百二十億円の発売総額を全国で予定しています。一ユニット、すなわち発売額六十億円分として、二千万枚発行して、一等賞金は七億円と高額ですが、一枚であり、当たる確率は、すなわち二千万分の一となります。また、末等の七等の三百円は十枚に一枚当たるので、全体の当せん率は一一・三%となるそうです。
 こうした高額当せん金も庶民の夢といえますが、五十万円でも百万円でもいいので、たくさんの人に当たる宝くじを発売してほしいとの声も寄せられています。
 それでは、当せん金額と本数の設定はどのように決められているのか、このような多様な庶民の夢にも応える内容になっているのか伺います。

○山田主計部長 当せん金付証票法第五条に、当せん金品の総額が発売総額の五割を超えてはならないとの定めがありまして、各発売団体は、この範囲内で等級ごとに当せん金額と当せん本数を設定しております。
 現在、都では、直近の発売動向や購入者のニーズを踏まえ、一枚三百円で高額賞金を訴求するジャンボ宝くじから、一枚百円で一等賞金が十万円の東京都宝くじまで、多様な賞金条件の宝くじを発売しているところでございます。
 また、今年度は、ジャンボ宝くじにおきまして、五万円や一万円の当せん本数を増加させるとともに、東京都宝くじにおきまして、発売総枚数二百五十万枚に対しまして、一等十万円が五百本、二等一万円が五千本当たるくじを発売するなど、当たり実感を持ってもらう取り組みも実施しているところでございます。

○伊藤委員 買いやすい、当たりやすいくじが欲しいという宝くじファンの声を受けて、いろいろな工夫をしていることは確認できました。
 しかし、庶民の娯楽としてなじみの深い宝くじですので、私見ではありますが、くじによっては、当せん金十万円台から五十万円ぐらいの本数をふやす工夫も必要かと感じます。
 今後、新型コロナウイルス感染症による影響を見通すことが難しい中で、必要な施策を着実に実施していくためには、都税や基金、都債といった主たる財源とともに、宝くじによる地道な収入確保の重要性も高まっています。
 宝くじの目的は、浮動購買力を吸収することによる資金調達でありますので、売り上げを過度に追い求め、いたずらにギャンブル性を高めることは望ましくありませんが、娯楽が多様化する中でも、引き続き選ばれるよう、魅力を高めることとともに、買いやすさを高める工夫も必要だと思います。
 最後に、宝くじ収益の安定的な確保に向けた今後の取り組みについても伺います。

○山田主計部長 宝くじが、今後とも都民に幅広く親しまれていくためには、宝くじを取り巻く環境の変化、要望の把握に努めつつ、常に商品の魅力向上を図っていく必要があるものと認識をしております。
 このため、販売プロモーションを通じました顧客ニーズの把握やインターネット販売の拡充など販売チャンネルの多角化、新商品の開発を含む商品性向上など宝くじ購買層の期待に沿えるよう、関係自治体や受託銀行の協力を得ながら、創意工夫をもって必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

○池川委員 私からは、仮称都民の城の債務負担行為について質問します。
 まず初めに、基本設計について、債務負担行為を行う必要性、これがなぜ必要になったのか。また、これまでのスケジュールからはどのように変わるのでしょうか。
 まず、この点についてお伺いします。

○矢部運営・調整担当部長 仮称都民の城改修工事基本設計につきましては、今年度当初予算に計上し、年度内に委託を完了する予定でございました。
 しかし、本年五月に発出された依命通達に基づきまして、全庁的に新型コロナウイルス感染症対策に注力することとなりました。そのため、本基本設計を休止いたしました。
 この休止期間を挟んだため、基本設計の委託期間が令和三年度にわたることになり、必要な債務負担行為を計上したところでございます。

○池川委員 五月に出された依命通達、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた当面の都政運営についてに基づいて、全庁的にコロナ対策に注力する観点から基本設計を行わずにいたということです。一時休止したことは、必要な対応だったと思います。
 今後の対応について確認をします。実施設計、改修工事スケジュールはどう変わるのでしょうか。また、それに伴い、運営や名称等についてはどう検討していくのでしょうか。見通しがどうなっているのか確認をします。

○矢部運営・調整担当部長 実施設計につきましては、当初は令和二年度の着手を予定していましたが、基本設計委託完了後の令和三年度に着手となる見込みでございます。
 改修工事等実施設計以降の具体的なスケジュールにつきましては、今年度着手予定の基本設計の中で検討してまいります。
 また、運営や名称等につきましては、引き続き、庁内検討組織が中心となり、基本設計等と並行して検討を進めてまいります。

○池川委員 具体的なスケジュールについては、基本設計の中で検討するということでした。
 これまで、子供のための機能、演劇などのための劇場機能をつくることを求めてまいりました。若者の居場所、活動の拠点となる場としての活用についても検討を求めてきたところであります。
 この施設が、都民から心から歓迎され喜ばれるものになるよう、子供、若者が参加し、意見を表明することができる場をつくること、また、コロナ災害で危機的状況に追い込まれている演劇関係者の声を聞くことを強く求めておきたいと思います。
 同時に、コロナ対策に注力するためには、経費を初めとする見直しについても、さまざまな角度から総合的に検証する必要があると考えます。当事者参加と経費等の見直しについては、対立するものではなく、両立できると思います。ぜひ、さまざまな角度からの検討をしていただきたい、そのことを強く求めておきます。
 当初の基本計画から、スケジュールがどうなるかについては、基本設計の中で検討するということでありますが、仮にスケジュールが延びることになれば、二〇二三年度に供用開始できないというケースも想定することができます。
 基本計画の中では、長期利用の具体的な検討を進める中で、都民の城(仮称)については、最短で令和十一年の建物解体等の可能性を含めて、その取り扱いを定めるとされています。
 改修をしたけれども、すぐに解体するという事態になることは、都民の理解を得られるものではないと考えますが、どう検討されているでしょうか。

○矢部運営・調整担当部長 仮称都民の城の建物につきましては、今後設置する、周辺都有地と合わせた一体的な活用案を描く有識者検討会の中で、令和十一年以降の取り扱いを定めていく予定でございます。

○池川委員 今後設置をする有識者検討会の中で定めるということですが、せっかく改修した建物をすぐに壊すということは、都民の理解を得られるものではなく、これは絶対にやってはならないということを改めて強調しておきます。都民に喜ばれる施設にして、長く使ってもらうことができるように、ぜひしていただきたいと思います。
 昨日、新型コロナの新規陽性者数は、六百二人と過去最高になりました。徹底した検査が必要です。一人でも感染者が出た集団への検査、重症化リスクの高い集団への一斉、定期的な検査を実施することが求められています。また、国とも連携をして、中小企業、小規模事業者への営業補償などを行うことも必要です。
 今、新型コロナの影響が、あらゆる人、分野に及んでいます。来年度予算編成に向けても、新型コロナから、都民の命と暮らし、営業を守る立場でぜひ取り組んでいただきたい。また、都民施策の充実についても取り組んでいただきたいということを、あわせて申し上げて、質問を終わります。

○加藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。

○加藤委員長 これより主税局関係に入ります。
 報告事項、令和二年度東京都税制調査会答申についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○増田委員 それでは、私の方からは、東京都税制調査会の答申についてお伺いをいたします。
 東京都税制調査会は、今からちょうど二十年前、平成十二年に、地方分権の時代にふさわしい地方税制、国、地方を通じた税制全体のあり方、そしてこれらに関連する諸制度について検討することを目的に、地方自治体では唯一の税制調査会として設立された、そういう経緯がございます。
 そして、それ以来、その時々の課題を捉えながら数々の提言を行ってきたわけであります。そのベースとなっているのは、住民の意思に基づき、みずからの判断で施策を決定することが可能な地方分権の確立には、自主的、自立的な財政運営を可能とする地方税を初めとした地方税財源の拡充が不可欠であると、こういう考え方に基づいているわけであります。
 今回の答申は、誰も経験をしたことがない未曽有のコロナ危機に臨んで、感染症対策と税制に特化して、コロナ危機に必要と考えられる税制措置案のみならず、この危機を契機に進んでいくであろうテレワークや行政のデジタル化など社会変化にも対応し、それを促進するための税制を提言するとともに、国に先んじて復興財源案や国内外の感染症対策財源案の枠組み案を示すなど、例年の答申とは全く異なり、かつ非常に踏み込んだ内容になっているものと理解しております。
 また、従来であれば、三年を一つのタームにして提言をまとめてきているんですけれども、本来、今回はその三年目となるはずであったんですけれども、あえてそれを一年延ばして、今回はコロナ危機に絞った、いってみれば緊急答申的な内容となっているものであります。
 目下、このコロナ禍から、都民の生命、健康、生活を守るため、給付金を初めとした緊急支援策はもちろんのこと、いわばあらゆる英知、あらゆるリソースを投入していかなければならない状況下にあるわけですが、将来の感染症や災害の発生リスクを真正面から見据えて、税制に何ができるのか、こういう観点から議論を深めていくことは非常に重要であると思います。
 そこで、今回の提言の内容を確認する前に、まず、今回の答申の狙いと特色についてお伺いいたします。

○長田税制調査担当部長 今年度は、本来、三年を一期とする東京都税制調査会の最終年度でございますが、新型コロナウイルス感染症が社会経済に甚大な影響を及ぼしている状況に鑑み、時宜にかなった提言を行うべく感染症対策における税制のあり方をテーマに絞って検討を行ってまいりました。
 本答申は、コロナ禍が日本経済に及ぼしている影響や社会変化を加速させている状況から、感染症対策に必要と考えられる税制措置や経済回復を見据えた中長期的な税制を提示しております。

○増田委員 いわゆるウイズコロナ、そしてアフターコロナを見据えた今回の答申の狙いと特色について確認をさせていただきました。コロナ禍という未曽有の状況に直面して非常に強い危機感からまとめられた、これまでと全く異質の答申であるというふうに受けとめるものであります。
 さて、今回の新型コロナウイルスの感染拡大については、過去百年で最も深刻な公衆衛生上の危機であるともいわれておりますし、グローバル化が進展した現代社会が初めて経験する世界的な脅威であるともいわれております。
 また、先月十八日に内閣府が公表した世界経済の潮流という報告書によれば、世界の実体経済への影響は、そのスピードと深さ、国際的な広がりの速さで、短期的には大恐慌あるいはリーマンショックを上回るほどのショックとされており、我が国においても、各種経済指標が示すとおり、その経済的な打撃の深刻度は既にリーマンショックやあるいは東日本大震災を上回っているといわれております。
 いわゆるコロナショックの経済への影響度については、今、楽観的なものから悲観的なものまでさまざまな専門家や学者等の見方があり、事態も、今、終息していない中で、どれが正しいということはできないわけですけれども、より多くの専門的見地からさまざまな見解を得ておくことは、我々も政策を考える上で重要であると考えるわけです。
 そこで、今回の答申において、コロナ危機が、過去の危機、例えば、リーマンショックや東日本大震災と比較してどのような特徴があると分析されているのか、この点についてお伺いします。

○長田税制調査担当部長 本答申では、過去の危機とコロナ危機との決定的な違いは、生産や消費といった経済活動自体が被害を拡大するおそれがあるという感染症の特異性からくる、危機の規模及び持続期間の不確実性の高さであると分析しており、危機からの回復に当たっては、感染拡大から終息に向け、複数のシナリオを想定しつつ、財源確保策を検討する必要があるとしております。

○増田委員 今もご答弁の中にありました危機の規模、そして持続時間の不確実性の高さ、要は、どのくらいの深い影響が、どのくらいの長さ続くのかということが全く見えない、それがコロナ危機の特徴であるということは、まさにそのとおりであると思います。
 そのような中で、今、社会の仕組みが大きく変容していこうとしている中で、今回の答申では、特にテレワークについて、それが一つのキーワードとして着目されていると思います。人が移動するかわりに、情報が県境や国境を越えてデジタル空間で高速に移動することで、従来のビジネスのあり方や働き方を根底から変えてしまう可能性があると、このような指摘でありますとか、あるいはテレワークの普及により、今後、働く場と居住の場が融合した職住近接のライフスタイルを選択することが定着すれば、自律分散型社会の形成を促すことになると、このような見解も示されております。
 一方で、情報技術や金融など技術革新が相次ぐ分野においても、クリエーティブな経済活動には、一定の、いわゆるリアルの場、つまりオフィスにおける対面での何げないやりとりも重要であると、このような見方も同時に示されております。つまり、テレワークの重要性を認めつつも、それが全面的、一方的に広がるかというと、そうではなく、リアルとバーチャルのハイブリッド都市へと変容していくことが感染症にレジリエントな、いわゆる対抗力のあるしなやかな都市としてのみでなく、イノベーションが起きやすい都市としても東京が世界から評価をさらに高めることにつながるのではないかと、このように指摘がされております。
 新型コロナ禍がもたらしたデジタル化、テレワーク化の波というのは、恐らくもう戻ることなく進んでいくものと考えられますので、今後の都市や社会のあり方を我々が考える上でも不可欠の視点であると思います。
 そこで、この点に関して、今回の答申では、テレワークを推進する税制の提言が上げられていると思いますが、ポストコロナも見据えたテレワークのさらなる定着に向け、都の税調の委員からどのような意見があり、答申では具体的にどのような税制優遇措置が提言されているのかお伺いいたします。

○加藤委員長 マスクを外して、ご答弁願います。

○長田税制調査担当部長 テレワークに関する都税調委員からの意見についてでございますが、企業が社外にテレワーク用オフィスを整備する際に要した費用、具体的には、パソコン、周辺機器、机などが想定されますが、これらの費用の一部を税額控除として認められることが考えられるとの意見がございました。また、従業員がテレワーク環境整備に要する費用の相当額を企業が負担する場合、現行の通勤手当と同様に一定額まで非課税所得とすることも考えられるとの意見もございました。さらに、テレワークに限らず、デジタル人材の雇用や育成などを通じて生産性向上に取り組む企業の税制優遇措置を検討するべきとの意見もございました。
 本答申の提言としましては、テレワークの定着に向け、地域の職住環境などを踏まえつつ、企業課税及び従業員の所得課税の両面において、テレワーク環境整備に要する費用について控除対象を拡大するなど、さらに税制優遇措置を検討するべきとしております。

○増田委員 ご答弁いただきましたが、感染拡大防止の観点からも有効であるといわれているテレワークを税制という面からも推進していくことは重要でありまして、都政が今いろいろと進めようとしている各施策とも方向性を一にするものと思うわけであります。ぜひとも早期に具体化されることを期待したいと思います。
 また、生産性向上に向けたデジタル人材の確保や育成は、今や官民問わず急務となっているその現状を踏まえ、委員の意見としても出されたというデジタル投資全体に対する控除についても、引き続き、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。
 さて、感染症や災害のリスクの高まりなど不確実性が高まる中にあって、将来にわたって安心・安全な都市東京を実現するためには、いざというときに、都民、国民の暮らしや仕事を守るセーフティーネット機能の強化が必要であります。
 そのような中、今回の答申では、給付つき税額控除というものが提案されております。それは、簡単にいってしまえば、一定の所得がある人々には税額控除、そして、所得がそこまで高くなくて税額控除のメリットを十分に享受できない人たちにはその分の給付をという、その二つを組み合わせて税負担の軽減を図るという仕組みであると理解いたします。そして、それはセーフティーネットの一つとして機能することが期待されておりますし、また、所得格差の是正にも役立つものと理解しております。
 実際にやろうと思ったときには、所得情報の的確な把握など課題もありましょうし、早急な実現というのは簡単ではないかもしれないんですけれども、こうした社会基盤を平時から着実に整備しておくことによって、今回のコロナ禍のような緊急時において、支援を必要とする方々に、迅速かつ円滑な給付を行うことが可能になるという意味で、コロナ禍に直面する今、我が国における給付つき税額控除、この導入の可能性について論じることは大変意義があると思います。
 そこで、この制度についてより具体的に理解するために、実際に給付つき税額控除が導入されている代表的な国、そして、その制度がどのように運用されているのか、その概要についてお伺いしたいと思います。

○長田税制調査担当部長 諸外国における給付つき税額控除は、主に三つに類型化されます。具体的には、アメリカなどが導入する就労へのインセンティブを高めるための勤労税額控除、イギリスなどが導入する母子家庭や子育て家庭への経済支援を目的とする児童税額控除、カナダが導入する消費税が持つとされる逆進性の緩和を目的とする消費税逆進性対策税額控除でございます。

○増田委員 今の事例で、先進国で幾つかにおいて、その国の実情に応じて就労支援であったり子育て支援、あるいは消費税の公平性を確保するために、この給付つき税額控除の仕組みが用いられているということがわかりました。これら諸外国の導入事例も参考に、我が国に適した仕組みのあり方について具体的な研究を深めていっていただきたいと思います。
 次に、財源というところに視点を移しまして、感染症対策の財源を確保し、活用するための税制について伺ってまいります。
 感染症対策においては、今回の一連のコロナ禍の経験から、地方あるいは地域の役割が非常に大きいというところが広く共有され、認識されるところとなったかと思いますけれども、地方税、地方債、財政調整基金など、地方自治体が独自に感染症対策の財源を確保することにはやはり限界がある中で、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金など、国からの交付金が地方自治体の重要な財源となったことは周知のとおりであります。
 国は先般、コロナの感染拡大を防ぐとともに、コロナ後の経済構造の転換や国土強靱化などの施策も盛り込んだ追加経済対策を決定しました。報道によれば、その財政支出額は四十兆円、事業規模として七十三・六兆円になるとのことで、年明けからの通常国会で審議が予定されている第三次補正予算案には、十九兆円程度が計上される見通しとのことであります。
 第二次補正予算の成立の時点で、既に予算の公債依存度、これはリーマンショックの時点で五一・一%だったんですが、それを超える、既に五六・三%となっておりまして、今後予想される税収減、そして国債の追加発行を考えれば、公債依存度というのは、さらに高まることは容易に予想されるところであります。もちろん必要な財政支出は実施すべきでありますけれども、今後の新たな感染症に備えるための財源については、国債に依存するというばかりでなくて、新たな財政確保についての議論も同時に進めていくべきではないかと考えるわけです。
 そこで、今回の答申では、コロナ禍で新たに創設された国の交付金について、どのように評価しており、また、こうした地方への交付金の原資にもなる国の感染症対策の財源を新たにどこに見出そうとしているのか、この点についてお伺いします。

○長田税制調査担当部長 本答申では、新型コロナウイルスが感染拡大する中で、国が創設した地方創生臨時交付金や緊急包括支援交付金は、緊急対策としては地域における感染症対策に非常に大きな役割を果たしたと考えられると評価しております。
 一方で、今後は、感染症や自然災害など将来の巨大リスクに備え、被害を最小限に食いとめるための体制の構築や財源の確保に必要な税制のあり方について、より抜本的に検討していく必要があるとの見解を示しております。
 都税調では、これらの国の交付金の拡充、継続を積極的に検討するとともに、世界共通の課題である感染症対策の財源確保に向けては国際協調の視点が必要であるとしております。

○増田委員 今、国際協調という言葉が出てきたわけでありますけれども、今回のコロナ禍の最大の特徴といってもいいんじゃないかと思いますが、全世界で、ほぼ同時に同じ問題が発生している、世界中が同じ問題に今、直面しているということではないかと思います。当然、どの国でも、今、財源について、同じように難しい状況に直面していると。その問題に対応するためには、国際協調という、これまでになかった視点が、この答申の中でも初めて意識されている、そういうことではないかと思います。
 そこで、この感染症対策の財源確保には、国際協調を基調とした検討が必要と、こうされているわけなんですけれども、具体的にどのような税源案が今回上げられているのかお伺いいたします。

○長田税制調査担当部長 都税調の議論では、新型コロナウイルス感染症が全世界に広がった背景には、世界各国で進む経済開発やグローバル化の進展などがあるとの意見がございました。また、感染症は、気候変動と同様、一国だけで解決できる課題ではなく、地球規模の課題であることなど、解決には国際社会の協力が必要であり、財源についても国際協調の視点が必要ではないかとの意見が多数ございました。
 こうした議論を踏まえ、各国が協調することで対応可能な税源候補として、デジタル課税、為替取引税、国境炭素税などが挙げられました。本答申では、国際協調については困難が予想されるとしつつも、各国との合意形成の余地を探る意義は少なくないなど、これらの税源の導入の可能性について模索すべきと提言をしております。

○増田委員 今のご説明の中で、為替取引税でありますとかデジタル課税、そして国境炭素税など、新たな税源案が出されているということがわかりました。
 いずれも国際間の大きなボリュームの取引に対して、広く薄く課税することで、まとまった財源を得ようという、そういう発想ではないかと思います。特定の財源を強く提言しているというよりは、感染症対策の趣旨に立ち戻って、その効果の及ぶ範囲を幅広に捉えて、次のパンデミックに備える中長期的な観点から、考え得る税源候補を最大限提示したものではないかと受けとめます。
 こうした国際協調という視点を入れることで、例えば、他の国ではこういう事例があるよとか、そういったアイデアも共有することができるようになるでしょうし、また、導入する段になっては、これは別の国でもこうやって行われていることだよとなれば一定の納得感も得られやすい、そういった効果があるのかもしれないと思います。
 いずれもスケールの大きな話も含まれますので、すぐに実現するには困難も伴うものも少なくないかもしれませんけれども、今後さらに議論を深めていただき、また、国においても、ぜひ今回の答申で都の税調が踏み込んだ、これらの先進的な提案に真摯に耳を傾け、将来に向けた感染症対策の財源確保に努めていってほしいと思います。
 そして、最後の質問になりますが、今回の答申は、今までこのように見てきたように、例年にも増して都民の命と健康に直結する重要な提言を含んだ内容となっております。都として、この税調から出された答申を積極的に活用していくべきと考えますが、最後に局長の所見を伺います。

○砥出主税局長 新型コロナウイルスという未曽有の危機に直面する中、その脅威から都民の生命と健康、そして生活を守るため、地方自治体が果たしている役割は極めて重要でございます。
 こうした地方の役割に見合う地方税財政制度の改革を進めていくためには、地方自治の根幹をなす地方税財源の拡充や課税自主権の強化など、将来を見据えた本格的な議論の積み重ねが必要でございます。
 本答申では、感染症の影響によって生活に困窮する方々に対し、税制の観点から何ができるのか、こうした論点について重点的にご検討いただき、また、感染症という世界共通の課題に対し、国際協調のもとで税源を模索するという着想をいただきました。
 我が国には、少子高齢、人口減少社会の到来などのさまざまな課題が山積しておりまして、また、社会経済状況が急速に変化する中で、地方自治体は、地方分権の理念のもと、それぞれの地域の課題解決と持続的発展を支えていくことが何より求められております。
 都としては、都議会の先生方のご協力をいただきながら、引き続き都税調の答申も活用して、しっかりと我が国の将来像を踏まえた税制のあり方について、さらに議論を深めてまいります。

○増田委員 ありがとうございます。まさに今ご答弁いただいたように、税制の観点から何ができるかと、こういう議論を重ねていくことが本当に大事なことではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 結びに、ちょっと一つ申し添えておきますと、今回のこの税調の答申につきましては、十一月二十五日付の日本経済新聞に論説記事がありまして、取り上げられているんですけれども、その内容は、政府の税調から具体的な提言が出てくる前に、給付つき税額控除や、あるいは国際協調といったことまで視野に入れた、一自治体の税調としては非常に一歩踏み込んだ内容で、首都である東京から国の税制のあり方について議論を提起するという、進取の気性を示したものだということで、非常に高く評価されております。国の税調にもこのような役目を期待したいとも、その記事には書かれております。
 このように、今回の答申は非常に注目度も高いですし、また未曽有の危機対応ということで、重要な意味を持つものかと思います。これまでにない新しい解決策も必要だと思いますので、従来の枠にとらわれない柔軟かつ大胆な発想で、採用できる提言については真摯に検討していただくことをお願いしまして、質問を終わりたいと思います。

○伊藤委員 私からも、東京都税制調査会の答申について伺います。
 東京都税制調査会、すなわち都税調は、平成十二年に当時の石原知事の東京から国を変えるという強い思いで設置されました。都税調ではこれまで、宿泊税など東京都独自の新税の導入、子育て、環境、防災に配慮した税制などを提言し、具体化されてきました。都税調の提言は、こうした東京都独自の制度にとどまらず、例えば、外形標準課税の導入のように、国の税制を動かす契機ともなりましたし、また、国のいわゆる偏在是正措置には、真の地方分権を実現する立場から反論してきました。
 さて、都税調発足からの二十年間で、経済のデジタル化や少子高齢化の急速な進展、自然災害や新興感染症の多発など、我が国を取り巻く内外の環境は大きくさま変わりしてきました。こうした内外の環境変化を的確に捉え、我が国が直面する重要課題に対応するため、国、地方を通じた税制全体のあり方について学識経験者と都議会議員が一体となって自由闊達に議論し、地方の立場から積極的に提言を行う都税調の存在意義は、発足から二十年を経ても、むしろ高まっているとも考えます。
 そこで、改めて、東京都税制調査会の基本的役割について確認のため伺います。

○長田税制調査担当部長 東京都税制調査会の初年度の答申には、次に述べる三つの基本的役割を掲げており、現在も基本的には同様の役割であると認識しております。
 第一に、国、地方の税財政制度のあり方について、都民、国民に率直に問題提起すること。第二に、我が国における二十一世紀の経済社会にふさわしい税財政制度を率直に提案し、その実現に向けて都民、国民とともに徹底して闘うこと。第三に、税財政改革にかかわる議論の核心を地方の立場から明らかにするとともに、都民、国民や他の自治体などと連携して改革を求めていくこと。以上の三点でございます。

○伊藤委員 東京都税制調査会の基本的役割を確認しました。当時の石原知事の東京から国を変えるという信念が都税調にも色濃く反映されているようです。
 さて、今回の答申は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、感染症対策と税制に検討テーマを絞ったと伺っております。コロナ危機はリーマンショックを上回る経済の落ち込みを招いており、本格的な景気回復に向けた道のりはいまだ不透明でありますが、コロナ禍がマクロ経済に与えた影響は甚大であり、その動向を踏まえて、今後の税制のあり方を検討することが重要です。
 また、マクロ経済の動向を広い視野で全体を把握することだけではなく、今回の答申にもあるとおり、観光や飲食などのサービス業が大きな打撃を受ける一方で、電子商取引や動画配信サービスなどは、むしろコロナ禍において概して大きな収益を上げており、産業や種別によりコロナ禍が与える経済的影響はかなり異なるという認識に立って、税制の検討を進めることも必要と考えます。
 さらに、今回の答申では、雇用や事業活動への影響に関する現状認識も示されていますが、最新の状況についてはどうなっているのか伺います。

○長田税制調査担当部長 総務省によれば、十月の非正規雇用労働者数は前年同月比で八十五万人減、八カ月連続の減少となっている一方、正規雇用労働者数は前年同月比で九万人増加しており、五カ月連続の増加となっております。
 また、厚生労働省によれば、新型コロナウイルス感染症に起因する全国の解雇等見込み労働者数は、十二月四日時点で累計で七万五千三百四十一人であり、そのうち非正規雇用労働者数は三万六千二百六十六人と四八%を占めております。
 次に、民間調査によれば、全国の新型コロナウイルス感染症関連倒産件数は、十二月九日時点で七百八十三件となっております。

○伊藤委員 コロナ禍による経済的影響について、雇用や事業活動への影響に関する最新の状況を確認しました。
 さて、コロナ禍においても、都民、国民の生活と雇用を守り、日々変化する経済を再生していくことは最重要課題であります。こうした観点から、政府は緊急事態宣言下において、スピード重視の一人一律十万円の特別定額給付金を決定しました。
 今回の答申では、こうした緊急時の給付について、緊急事態において一律給付をする場合、年末調整や確定申告の際に、税により調整を行う新たな仕組みを検討するべきとの税制の観点からの提言もありましたが、どのような趣旨でこの提言がなされたのか伺います。

○長田税制調査担当部長 産業や業種、雇用形態や事業形態、事業規模などにより、コロナ禍による影響は一律でないため、本答申では、本来であれば、その影響の程度や態様に応じたきめ細かな対応が求められるとしております。その上で、終息の見通しが立たない状況下で、支援の必要な方と必要ない方を給付金の支給を決定する時点で見きわめるのは困難であることから、緊急事態において一律給付を実施する場合においては、税により事後的に調整を行う仕組みが提言されたものと認識しております。

○伊藤委員 繰り返しになりますが、コロナ禍は、戦後最悪となる経済的な影響を国民、都民に与える一方で、一部の産業や業種によっては大きな収益を上げております。
 すなわち、その影響はかなり異なりますので、スピード感ある一律給付と支援の必要がない方についての税による事後的な調整の両立については、意欲的な提言として評価しておきます。
 さて、昨日の与党税制改正大綱では、商業地や住宅地など全ての土地に係る固定資産税の税額の据え置きを発表しました。コロナの第三波ともいわれる現在、忘年会の自粛や時短営業の影響もあり、飲食店を初め、中小企業の経営環境の厳しさが増している中、固定経費である家賃や固定資産税等の支払いは、負担感が依然として大きいことは否めません。
 よって、こうした地方税の軽減措置は、コロナ禍の影響を踏まえれば、必要と考えますが、他方で、地方自治体が行政サービスを行っていく上で欠かせない重要な財源の一つでもあります。
 地方の財源について、本来的には、地方自治を確立する観点からも、自治体の課税自主権を広げていく議論が必要ですが、そもそも課税自主権の強化や活用の可能性について、感染症対策と税制のあり方を検討した今回の答申では言及されているのか伺います。

○長田税制調査担当部長 都税調ではこれまでも、超過課税や不均一課税、法定外税の創設など、ご指摘の課税自主権について継続的に議論し、活用を提言する一方、課税自主権に限界があることも述べてまいりました。
 今年度は、感染症対策と税制をテーマとし、感染症対策のための財源についても、課税自主権の行使による自治体独自の財源確保の可能性を議論したところであり、都税調において、今後も引き続き議論を深めてまいります。

○伊藤委員 今回の新型コロナウイルス感染症対策の規模等を踏まえれば、その全てを独自財源で確保することには限界があるのは理解しますが、答申で提言されている感染症対策のための将来の税制構築を今後検討する際には、改めて課税自主権の観点もぜひ入れていただきたいと思います。
 さて、答申にもあるとおり、コロナ禍による経済的影響は甚大である一方で、産業や業種により、その影響の度合いは異なっています。特に、GAFAMと呼ばれる巨大IT企業を筆頭に、むしろ大きな収益を上げているデジタル企業も少なくないと認識をしております。こうした企業に対し、支店など恒久的施設がなくても、利用者がいる国で課税するデジタル課税の問題は、OECDにおいても、何年もの議論が重ねられているそうです。
 経済のデジタル化に対応した新たな国際課税ルールの策定に向け、最終合意にあと一歩のところのようですが、昨年暮れの米国の新たな提案や新型コロナウイルスの世界的流行により、予断を許さない状況が続いているものと認識をしております。
 そこで、今回の答申のデジタル課税に関する提言は、具体的にどのようなものなのか伺います。

○長田税制調査担当部長 本答申では、昨年度の答申に続き、OECDにおけるデジタル課税の国際的な合意形成が難しい場合に備えて、各国で導入が進むデジタルサービス税導入の可能性について模索するべきであるとし、コロナ危機の中で巨額の収益を上げている企業の超過利潤への適切な課税の観点からも、改めてデジタルサービス税の導入を検討するべきであるとしております。

○伊藤委員 経済のデジタル化の急速な進展に加え、コロナ対策に必要な巨額の財源確保の必要性の高まりが、(5)のデジタルサービス税導入の動きにつながっているものであり、我が国においても、今後はこうした議論を避けては通れないと考えます。
 今までも、都税調は、地方分権の時代にふさわしい税制の実現に向けて、さまざまな提言を行ってきましたが、今回は、コロナ禍を受け、国内外の感染症対策に必要な財源確保の観点から、地方税財源の確保、拡充を含む、よりスケールの大きな提言となりました。
 地方の課税自主権の強化を初め、都税調の原点である東京から国を変える提言を引き続き期待し、私の質問を終わります。

○小林委員 私からも、東京都税制調査会答申についてお伺いをいたします。
 昨日、脱炭素や新型コロナウイルス対策を軸とする与党税制改正大綱が決定をされました。税制改正では、土地価格の上昇に伴う固定資産税などの負担を今年度と同水準に据え置くなどの措置がとられております。
 東京都税制調査会は、与党税調とは異なり、この分野の一線で活躍する有識者と都民生活の現場に根差す都議会議員が、東京都にとどまらず、地方全体の立場から中長期的展望を持って、あるべき税制を幅広く議論していく意義があると思います。都税調のこうした性質を踏まえれば、現下の日本が直面する経済のグローバル化やデジタル化、人口減少、超高齢化の進展など、さまざまな課題について、将来を見据えた議論が求められると考えます。
 今年度は、三年を一期とする都税調の最終年度となりますが、今年度は新型コロナウイルス感染症と税制のあり方に絞って議論し、最終答申については、来年度に取りまとめを行うこととされております。
 そこで、改めて、今期の都税調では、今までどのような議論がなされてきたのかお伺いをいたします。

○長田税制調査担当部長 今期の初年度である平成三十年度は、国の偏在是正措置をめぐる動きを捉え、地方法人課税のあるべき姿や、地球温暖化など環境問題を踏まえた税制のグリーン化について提言を行っております。
 また、令和元年度は、現在の国際課税原則のもとでは、国境を越えて活動する企業に対し、支店などの恒久施設がない市場国で適切に課税できないデジタル課税の議論を地方の立場から初めて問題提起したほか、金融所得に係る分離課税の税率引き上げなど、時代の変化に対応した税制について提言を行ってまいりました。

○小林委員 サイバー空間の中でビジネスを展開するGAFAなどのグローバルIT企業などは、既存の税制度では適切に捕捉できない典型例であるといえます。
 昨年度、都税調がこうした課題を捉えて、国際課税分野の議論を踏まえて地方税の課題も指摘しております。都税調は、都政にとどまらず、こうした国際的な潮流をも捉えて、あるべき税制を中長期的な視点から議論されてきたことと思います。
 一方で、今回の新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く捉えて、コロナ対策、アフターコロナにおける税制のあり方について議論を試みたことは意義深いことであると思います。
 そこでまず、新型コロナウイルス感染症がもたらした影響や社会の変化を都税調はどのように捉え、どのような観点で議論をされたのかお伺いをいたします。

○長田税制調査担当部長 答申では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、人々の移動及び対面の機会を大幅に縮減させることにより、社会経済活動の停滞をもたらした一方で、わずか数カ月の間に、テレワーク、オンライン授業、遠隔診療などの利用を普及させ、デジタル化が社会を大きく変革しつつあるとしております。
 また、この感染症が、日本経済、特に雇用及び事業活動に深刻な影響を及ぼしていること、そして、人々のライフスタイル、都市そのものの変容を招く可能性についても指摘しております。
 こうした認識に立ち、感染症対策としての税制措置のあり方、さらに将来の感染症リスクを見据えた地方自治体の課題、経済活動が回復した段階における税制の構築などについて議論をいたしました。

○小林委員 新型コロナウイルス感染症の影響は、非正規雇用労働者を初め、低所得者層ほど大きく、所得格差のさらなる拡大、ひいては教育格差の拡大も懸念をされております。
 このたびの答申では、新型コロナウイルス感染症対策における生活と事業活動を支える税制措置について言及されていますが、コロナ禍における生活困窮者への支援として、緊急的な一律給付に関する税制の仕組みと平時からのセーフティーネットとなる仕組みとして、給付つきの税額控除を提言しております。
 給付つき税額控除については、これまでも都税調において議論されてきたと認識していますが、給付つき税額控除に関するこれまでの議論の経緯についてお伺いをいたします。

○長田税制調査担当部長 給付つき税額控除につきましては、過去にも都税調において提言がなされておりますが、その背景には、人口構造や社会経済の変化の中で、世代交代及び世代内における所得格差の拡大が、我が国の大きな課題となっていることが挙げられております。
 今のコロナ禍において、休業や外出自粛など社会経済活動の抑制により、非正規雇用労働者、フリーランスなどの低所得者層に影響が強くあらわれているため、多数の委員から、感染症対策に資するセーフティーネットの構築と税制の観点からは社会保障給付と税額控除が一体化した給付つき税額控除の仕組みが有効ではないかとの意見があり、今回改めて提言することに至ったものでございます。

○小林委員 給付つき税額控除については、社会保障と税の一体改革や消費税率一〇%への引き上げの際にも大きな議論となりましたが、所得情報の管理や不正受給の防止など、導入にはさまざまな課題があるかと思います。
 諸外国の低所得者対策を見ると、給付つき税額控除だけでなく、最低所得を保障するベーシックインカムの制度なども実験的に導入されています。都税調には、サステーナブルリカバリー、持続可能な回復の観点から税制を活用したセーフティーネットの仕組みについて、引き続き議論を深めていっていただきたいと思います。
 また、答申の中では、個人住民税の現年課税化の推進についても触れられています。地方税の個人住民税は、国税である所得税と異なり、前年の所得に対して、一年程度おくれて税負担を求める税制度であります。
 このため、退職や転職などによって所得が減った人からすれば、住民税の負担が重く感じられ、ここから生じる課題について、私も今までさまざまなご相談をいただいてまいりました。所得の減少と納税額が連動していなければ、いたずらに重税感をあおり、納税者の理解が得られないのではないかと思います。現年課税化の議論は、かなり前から継続的に行われていると聞いておりますが、いまだ実現に至っていない現状がございます。
 現年課税化の実現に向けて、さらに議論を進めて実施していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○長田税制調査担当部長 個人住民税の現年課税化が実現していない要因の一つとして、都税調では、市町村によって住民税の税率が異なっていること、従業員が一月一日現在、どこの市町村に居住しているのか、住所地の正確な把握が必要であることなど、特別徴収義務者となる企業や市町村の事務負担が大幅に増加することを挙げております。
 一方で、今後、マイナンバーカードの普及や行政のデジタル化が進むことで、これらの事務負担の軽減が期待できます。
 都税調の答申では、ご指摘いただいた個人住民税の現年課税化も含め、国民、住民がデジタル化の恩恵を心から実感できるよう、社会全体のデジタルトランスフォーメーションを推進していくことが重要であるとしております。

○小林委員 コロナ禍の影響に応じたきめ細やかな対応、給付つき税額控除や個人住民税の課題、これらを実現するためには、個人の所得情報を正確に、そして即時に把握できる基盤の整備が必要であります。今ご答弁にあったとおり、答申では、社会全体のデジタルトランスフォーメーションを推進していくことが重要であると述べられていますが、税務手続においても、さらなる簡素化、迅速化、統一化の取り組みが必要である、現在の電子申告、申請などは、複雑な制度に基づいて構築されているため、利用者に相当な知識と労力を求め、システムにも大きな負荷がかかっているとも指摘されております。
 現在、国、地方を挙げ、社会全体でデジタルトランスフォーメーションを進めていますが、行政のデジタル化について、都としても、利便性向上のため、これまで以上の推進をお願いしたいと思います。
 新型コロナウイルス感染拡大により、テレワークが進められましたが、こうしたデジタル技術の活用が浸透した反面、都内のオフィスの空室率が上昇する傾向が見られるとの調査もあり、中長期的な視点に立てば、都市の持つ機能も大きく変容していくことも念頭に置かねばならないと思います。
 国土交通省は本年八月に、新型コロナ危機を契機としたまちづくりの方向性と題して、コロナ後の都市政策の新しい方向性に向けた検討に着手したようですが、これを受け、答申の中では、地方税財政制度においても、都市として必要な基盤は何かという原点に返り、制度のあり方について議論を深めていく必要があると指摘されています。
 将来を見据え、税制についても、変化を捉えて議論を深めていくべきでありますが、この点における都税調での議論についてお伺いいたします。

○長田税制調査担当部長 テレワークの普及により、異なる場所にいながら、社員同士または顧客とつながり、場所を選ばずに事業活動を行うことが可能になります。
 こうしたことから、今年度の都税調においては、例えば、所得課税や法人課税においては納税地のあり方や、固定資産税においては課税標準の特例措置が設けられている住宅用地のあり方など、現行税制度の見直しを検討する余地が生じる可能性があると考えられるとしております。
 今後とも、コロナ禍により加速したデジタル化などの社会変化を捉え、税制のあるべき姿について、都税調において、引き続き議論を深めてまいります。

○小林委員 今年度の都税調では、新型コロナウイルス感染症を世界共通の課題と定め、その対策に必要な財源の原資を国際協調のもとで模索すべきとし、その候補となる税源を具体的に挙げております。昨年度のデジタル課税もそうでしたが、都税調は、時代の先を見据えて課題を提起し、方向性を見出す役割も果たしていると思いますので、今後も、コロナ後の世界を支える骨太の議論が行われる来年度の最終答申で、私もさらに勉強して、議論を深めていけるようにしてまいりたいと思います。
 以上で質問を終わります。

○池川委員 私からも、東京都税制調査会答申について質問します。
 新型コロナは、これまでの社会のあり方を問うています。新型コロナが明らかにしたのは、社会保障を初め、公的サービスを切り捨て、自己責任を押しつける新自由主義という考え方の破綻です。新自由主義は、全てを市場原理に委ね、あらゆる規制を取り払い、資本の目先の利潤を最大化していくことが目的となっていましたが、そのことで、社会がもろくなってしまっていたと思います。
 今回の都税調答申は、新型コロナパンデミックの中で、税制がどうあるべきなのか、また、給付の方法はどうすべきなのか、国際協調をどうすべきなのかなどについて議論され、取りまとめられています。
 答申の中で注目した言葉があります。それはコロナ危機という言葉です。都税調答申の中で、コロナ危機という言葉が用いられていますが、その意図はどういうものでしょうか。

○長田税制調査担当部長 新型コロナウイルス感染症拡大は、人々の移動及び対面の機会を大幅に縮減させることにより、社会経済活動の停滞をもたらしております。
 また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、一過性のものではなく、世界経済、特に雇用及び事業活動に及ぼしている甚大な影響が、社会のあり方までも変化させる事態であることを踏まえ、将来を見据えた感染症対策のための税制のあり方について議論を深めていくことを意図したものであると考えております。

○池川委員 一過性のものではなく、さらに社会のあり方までも変化させる事態だという視点。また、その中で、このコロナ危機という言葉を用いて、現状を表現している、こういったとても重要な視点ではないかと考えます。
 新型コロナの危機は、人々がそれぞれに体験し、実感をしています。そして、コロナ前の社会に戻るのではなく、よりよい社会をつくっていこうという動きにさまざまな分野で広がっていますし、今後も広がっていくと考えます。
 新型コロナは、社会全体に影響をもたらしていますが、改めてその中で表面化したのは、貧困と格差の深さです。
 もともと貧困率の高いひとり親家庭の実態は本当に切実だと感じます。NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむとシングルマザー調査プロジェクトが行った一千八百人の実態調査には、仕事が減り、子供たちには一日二食で我慢してもらい、私は二日に一食が当たり前などの深刻な声が寄せられています。子供支援のNPO法人による都内ひとり親家庭高校生給付金利用者の調査では、八割の家庭が赤字で、高校中退の可能性があるとの回答が三割を超えています。
 一方で、コロナ危機のもとで、史上最高に膨れ上がっているのは富裕層の試算です。一千億円以上のミリオネアの資産は、コロナ前の十四兆円から十九兆円に膨らんでいます。
 こうした格差を正し、貧困をなくしていく必要があります。貧困と格差を是正することは、税制の一つの役割だと思います。今回の都税調答申では、どう位置づけているのでしょうか。

○長田税制調査担当部長 本答申では、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞の影響は、低所得者層により強くあらわれていると指摘し、今後、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、所得格差がさらに拡大することも懸念されるとしております。
 その上で、平時から継続的に生活困窮者を支えていくセーフティーネットの構築が必要であるとし、税制の観点から考えられる仕組みの一つとして、給付つき税額控除を挙げております。

○池川委員 コロナ危機を乗り越え、貧困と格差を正すためにも、私は富裕層への課税は今こそ必要だと思います。
 東日本大震災の最大の被災地である岩手県陸前高田市に行った際、現地で伺った話が大変印象に残っています。それは、平時に住民に役立つ仕組みをつくっていくことの重要性です。いざ震災が起きて、住民へのさまざまな支援をやろうと思ったときに、新しいものをつくろうと思うと時間も労力もかかる。既存の制度を拡充したり、変更して対応することができた、これはとても重要だったと実感を込めてお話をされていました。
 今回のコロナ危機でも、住居確保給付金の支給要件の緩和など、既存制度を変更して対応しましたが、平時からのセーフティーネットが緊急事態にも役割を果たした一つだったというふうに思います。
 同時に、緊急事態の場合は、超法規的措置が行われたとしても、それが平時に適用されないことは大きな問題だと思います。緊急事態だけの対応では、貧困と格差を正すことはできません。緊急事態に行った施策は、その後の平時の制度にしておく必要があることを強調しておきます。
 また、貧困と格差を本気で正すためには、低所得者ほど負担の重くなる不公平税制である消費税を今こそ減税する必要があります。世界では、個人消費に直接的に影響のある付加価値税などについて、減税を行う対応をしている事例が幾つもあり、日本でも踏み出すことを求めておきたいと思います。
 コロナ危機における緊急事態対応として実施されたのが十万円の特別定額給付金です。都税調答申で、一律定額給付について、簡素な仕組みであり、生活困窮者に迅速に支援できる点で有効としていることは重要だと思います。
 都税調で、一律給付についてどういう議論があったのでしょうか。また、あわせて、主税局の認識についても伺います。

○長田税制調査担当部長 一律給付について、都税調では、生活困窮者に迅速に支援できる点で有効であるという意見がありました。コロナ禍における影響は一律でないため、本来であれば、その影響の程度や態様に応じたきめ細かな対応が求められるという意見もございました。
 こうしたご意見を踏まえ、本答申では、緊急時に一律給付を実施する場合、年末調整や確定申告の際に、所得状況に応じ、税により事後的に調整を行う仕組みを検討するべきとしております。
 なお、一律給付の制度につきましては、国において検討され、実施されたものであると認識しています。

○池川委員 税の原則も公平、中立、簡素といわれますが、給付も、迅速に支援するために簡素な仕組みが有効であると考えます。
 コロナ危機の中で、我が党も一律給付を求めてきましたが、それは広範囲にわたり影響が出たからにほかなりません。これまでは、一定以上の所得があった方々の中にも、コロナ危機で一気に所得が減った事例が少なくなかったからです。所得の減少は、そのまま生活を直撃し、例えば、家賃や住宅ローンの支払いが滞る事態が今も起こっています。しかし、それらは決して自己責任ではないと思います。
 コロナ危機によって、中高所得者の所得の急減、セーフティーネットの脆弱さの指摘もされていますが、都税調ではどういう議論があったのでしょうか。

○長田税制調査担当部長 都税調では、感染拡大防止のための休業など社会経済活動の抑制により、平時は中高所得者であった者も所得が急減するなど、一時的に生活に困っている者も多く、我が国のセーフティーネットの脆弱性を指摘する意見がございました。
 これを受け、答申では、我が国においても、平時からのセーフティーネットの一つとして、給付つき税額控除の導入の検討を始めるべきとしておりますが、制度設計においては、既存の社会保障制度や税制との役割分担の明確化、所得情報の正確な捕捉と管理、不正受給の防止などについて十分な議論を行う必要があるとしております。

○池川委員 都税調の中では、給付つき税額控除について言及があったということであります。
 課題認識についても答弁がありましたが、その内容については共有できる点もあります。同時に、個人情報の取り扱い、マイナンバーを前提にすることは問題があるということも一言指摘しておきます。情報漏えいや、なりすまし防止のために、個人情報を一元管理せず、分散管理していることでリスクを減らしているのが今の状態です。
 個人情報保護法には、個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものと基本理念を定めており、プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権です。どんな個人情報が集められているのかを知り、不当に使われないよう関与する権利、自己情報コントロール権、情報の自己決定を保障することなどが必要だと思います。
 また、どういう制度が効果を発揮するかについては、議論していくことが重要だと思いますが、その前提として、新自由主義の旗印だった社会保障削減路線とは縁を切ることが必要だと私は思います。この点については、都議会の中でも、各会派の皆さんとともに税制問題について議論をしていきたいと思います。
 ここまで、都税調答申で幾つかの論点について質問をしてまいりましたが、今回の都税調の答申を受けて、都政の中ではどのように生かしていくのか伺いたいと思います。

○長田税制調査担当部長 東京都税制調査会は、平成十二年の発足以来、地方分権の時代にふさわしい地方税制及び国、地方を通じた税制全体のあり方を検討し、都の立場からだけではなく、地方全体の立場から提言をいただいております。
 今年度においては、感染症という世界共通のテーマに、国、地方の視点のみならず、グローバルな視点を取り入れた国際協調まで言及していただきました。
 都税調は、常に地方の役割を重視し、山積する課題を乗り越えるためのあるべき改革の方向性は、地方分権の推進とそれを可能にする地方税財源の充実であることを提言しております。
 都としては、真の地方自治の確立に向け、引き続き、税制のあり方について議論を深めてまいりたいと考えております。

○池川委員 地方自治の視点を重視して、引き続きやっていくということです。
 答申の中には、注目すべきことがほかにもあります。
 例えば、地域における感染症対策の中核的機関と位置づけられた保健所が重要な役割を担っているなど、感染症対策における地方の役割についての言及です。
 さらに、その後の記述では、新興感染症に対する地域の備えという項目があり、こうした法律上及び実際の感染症対策における地方の役割や権限の大きさ、休業要請に伴う地方自治体独自の給付金の支出、地方における検査拡大及び医療提供体制の強化拡充の必要性、そして、世界的に増大する感染症リスクに鑑みれば、国による緊急経済対策が文字どおりアドホックな対応で終わってよいはずがない、必要なのは、中長期的な視点で新興感染症等に備える地域の体制を平時に整備しておくことであると、大変示唆に富んだ内容が指摘もされています。
 ぜひ、この都税調答申、知事に答申されているわけですけど、主税局だけのものとせず、東京都として大いに生かしていただきたいということを求めておきたいと思います。
 最後に、今回の都税調答申で、もう一つ注目した問題についてお伺いをします。それは国際協調であります。環境問題への対応、デジタル課税を初めとするグローバルな視点で取り組みを求めていることは大変注目すべきことだと思っています。
 さらに、答申では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、過去百年で最も深刻な公衆衛生上の危機であり、グローバル化が進展した現代社会が初めて経験する世界的な脅威であるともいわれる、感染拡大を防ぐためにも、国際社会が一致協力して対策に取り組む必要がある、感染症も気候変動も、ともに地球規模の課題であるというふうにしています。新型コロナ危機は、国際協調であらゆる課題に取り組むことの重要性を提起しています。
 都税調では、国際協調で取り組むことについて、どういう議論があったでしょうか。

○長田税制調査担当部長 都税調の議論では、感染症対策には、国境を越えた取り組みや感染拡大時の社会経済活動への影響を最小化する備えが必要であるとの意見がございました。
 また、感染症の拡大を防ぐために、国際社会の一致協力が必要であり、財源についても国際協調の視点が必要ではないかとの意見が多数ございました。
 こうした意見を踏まえまして、答申では、感染症対策に必要となる膨大な財政需要を賄うため、合意形成には困難が予想されるとしつつも、感染症対策は世界共通の課題となっている現在、その財源の確保については、国際協調のもとで模索していく必要があるとの提言に至りました。

○池川委員 グローバル化の中でさまざまな矛盾が明らかになっています。
 我が党は、新型コロナパンデミックの終息に向けた国際社会の連帯と協力を呼びかけていますが、次の四つの視点を提起しています。
 一つは、医療、保健における大規模で包括的な協力、二つ目に、途上国に対する国際的支援、三つ目に、世界の紛争地での即時停戦、核兵器廃絶を初め軍縮を行い、コロナ対策に力を集中すること、四つ目に、富裕層などへの課税でコロナ対策の財源をつくることなどにより、公正な世界を目指すことを四つの指針として、このコロナパンデミックの終息に向けた国際社会の協調を今呼びかけさせていただいているところです。
 困難はありますが、国際協調で取り組むことなくして解決の道は見えてこないと考えます。この点では、首都東京が世界に向かって発信すること、さらに、このことについて、都政の場、また都議会の場でも、党派の違いを超えて取り組んでいくことは極めて重要だというふうに思いますし、ぜひ他の会派の皆さんとも意見交換をしながら、首都東京からさまざまな問題提起をしていく、そのために力を合わせたいということも重ねて呼びかけまして、質問を終わりたいと思います。

○加藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○加藤委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時散会

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