財政委員会速記録第八号

平成三十年六月二十二日(金曜日)
第二委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長まつば多美子君
副委員長小松 大祐君
副委員長石川 良一君
理事増田 一郎君
理事上田 令子君
理事曽根はじめ君
おじま紘平君
伊藤しょうこう君
うすい浩一君
藤井あきら君
清水やすこ君
宇田川聡史君
長橋 桂一君
清水ひで子君

欠席委員 なし

出席説明員
財務局局長武市  敬君
経理部長財政企画担当部長
オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
初宿 和夫君
契約調整担当部長五十嵐 律君
主計部長山田 忠輝君
財産運用部長山根 恭子君
利活用調整担当部長鈴木 光祐君
建築保全部長小野 幹雄君
技術管理担当部長飯泉  洋君
庁舎運営担当部長後藤 徹也君
オリンピック・パラリンピック施設整備担当部長小野寺弘樹君
主税局局長目黒 克昭君
総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務小山 明子君
税制部長副島  建君
税制調査担当部長栗原 哲治君
調整担当部長菊澤 道生君
課税部長安藤 敏朗君
資産税部長大久保哲也君
徴収部長川上 秀一君
特別滞納整理担当部長新井 裕二君
会計管理局局長土渕  裕君
管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務野口 一紀君
警察・消防出納部長加藤 政弘君
会計制度担当部長斎田ゆう子君
担当部長木島 暢夫君

本日の会議に付した事件
会計管理局関係
報告事項(質疑)
・平成二十九年度公金管理実績(年間)について
・平成三十年度公金管理計画について
主税局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百二十四号議案 東京都都税条例並びに東京都都税条例及び東京都都税条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
・第百二十五号議案 東京都宿泊税条例の一部を改正する条例
・地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
報告事項(質疑)
・宿泊税十五年間の実績と今後のあり方について
財務局関係
付託議案の審査
・第百三十八号議案 十三号地新客船ふ頭ターミナル施設(三十)新築工事請負契約(質疑)
・第百三十九号議案 都立水元特別支援学校(三十)改築工事請負契約(質疑)
・第百四十号議案  都立町田の丘学園(三十)東校舎棟改築及び改修工事請負契約(質疑)
・第百四十一号議案 東京スタジアム(三十)改修工事請負契約(質疑)
・第百四十二号議案 東京消防庁多摩消防署庁舎(三十)改築工事請負契約(質疑)
・第百四十三号議案 中防内五号線南側アプローチ(三十)建設工事請負契約(質疑)
・第百四十四号議案 新宿歩行者専用道第二号線Ⅲ期-一工区整備工事(三十 三-主四青梅街道)請負契約(質疑)
・第百四十五号議案 街路築造工事(三十 二-補二十六三宿)請負契約(質疑)
・第百四十六号議案 和田堀公園調節池工事その二請負契約(質疑)
・第百四十七号議案 野川大沢調節池工事(その二)請負契約(質疑)
・第百四十八号議案 権利の放棄について(質疑)
・第百四十九号議案 土地の売払いについて(質疑)
・第百六十四号議案 東京スタジアム(三十)電気設備改修工事その二請負契約(説明・質疑)
報告事項(質疑)
・入札契約制度改革の本格実施について
・工業用水道事業のあり方に関する有識者委員会の報告書について

○まつば委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、主税局及び財務局関係の付託議案の審査並びに会計管理局、主税局及び財務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第百三十八号議案から第百四十七号議案まで及び第百六十四号議案の契約議案については、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 報告事項、平成二十九年度公金管理実績(年間)について外一件に対する質疑を一括して行います。
 本件については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○藤井委員 東京都の平成三十年度公金管理計画について質問を行います。
 東京都の平成三十年度の予算規模は十四兆円を超えており、一つの国家に並ぶ予算規模とされ、スウェーデンやギリシャなどよりも大きい規模となっております。平成三十年度当初予算では、一般会計でも、七兆四百六十億円、都税収入は五兆二千三百三十二億円。
 平成三十年度の公金の平均残高の見込みは、歳計現金等、基金、準公営企業会計資金の合計で約五兆五千七百五十億円の見込みとなっておりますとのことなんですが、一般の都民、人々には、公金管理といわれましても何がどうなっているのか、なかなかわかりにくいのではないかと思います。
 そこで最初に、改めて、都の公金管理における資金の流れについて、公金管理の枠組みの中で都税がどのように管理されているのか、お伺いをいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都民から都税として収納されました公金は、まず、歳計現金として収入されます。歳計現金とは、地方公共団体において、歳入歳出に属する現金であり、日々の支払いも歳計現金から行われます。
 歳計現金のうち、日々の支出に対応する支払い準備金につきましては、支払いに支障が生じないように、当座預金や普通預金など、いわゆる流動性預金で保管、管理しており、これを上回る運用可能資金につきましては、資金の収支状況を確認しながら、定期性預金を中心に保管をしております。
 また、基金につきましては、歳計現金からの支出により積み立てが行われ、取り崩す際は一旦歳計現金に収入され、そこから支払いが行われます。基金の運用に当たりましては、各基金の設置目的を踏まえ、それぞれの積み立て及び取り崩しの計画に適切に対応できるよう、金融商品及び運用期間を設定しております。

○藤井委員 支払われた都税は、歳計現金と基金として大きく管理されていることがわかりました。基金と歳計現金は、固定されているわけではなく、基金を積み立てる際には歳計現金から、基金を取り崩す際には一旦歳計現金へなど、行ったり来たりしながら運用されているということがわかりました。
 それでは、その歳計現金、そして基金がどのように運用される計画となっているのか、平成三十年度の公金管理計画についてお伺いをさせていただきます。
 まずは、預金での保管を基本とする歳計現金等について、平成三十年度の公金管理計画では、想定資金配分の割合が昨年度から変更になっている点が若干あるかと思います。歳計現金等の想定資金配分の割合が平成二十九年度から変更されている、その理由をお伺いいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 歳計現金等の想定資金配分割合につきましては、平成三十年度も前年度に引き続き、流動性確保のための支払い準備金を同額の四百億円と設定しており、その全体に占める割合は四%から三%となっております。
 配分割合が変化いたしましたのは、歳計現金等の全体の平均残高想定が、前年度公金管理計画の一兆四百億円から一兆一千八百億円に増加しているためであり、金額面での基本的な枠組みは前年度から大きく変わってはおりません。

○藤井委員 割合が昨年度から変更になっている原因が、基本的な枠組みの変更ではなく、全体の金額の増加分を受けてのことと理解ができました。
 では次に、基金の想定ポートフォリオについてお伺いをいたします。
 金融商品別のポートフォリオにおいて、預金の割合が減り七五%となる一方、債券が平成二十九年度の実績の二一%から二四%へと増加をしております。
 金融商品別のポートフォリオにおいて、預金から債券への資金シフトが行われている、その背景及び理由についてお伺いをいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 日銀によります金融緩和政策が現在も継続されていることで、国内金利は極めて低い水準での推移となっております。こうした金融環境に対応していくためには、時々の状況に応じて柔軟にポートフォリオの最適化を図る必要がございます。
 都の公金は、主に預金と債券で運用しておりますが、預金につきましては、例えば普通預金金利が〇・〇〇一%といったようなほとんどゼロに近い水準にあるのに比べ、都が運用対象としている債券の中には、預金よりも有利な条件で発行されるケースがございます。
 さらに、安全性の観点でも、地方債や財投機関債などのいわゆる公共債は、格付的にも安全度が極めて高いため、公金運用における債券の割合を引き上げることといたしました。

○藤井委員 柔軟にポートフォリオの最適化を図った結果、格付的にも安全度が高い地方債や財投機関債などの公共債の割合を引き上げているということがわかりました。
 続きまして、債券種別ポートフォリオに関してなんですが、国債、政府保証債の割合が減少し、今申し上げました財投機関債の割合が二〇%から三〇%へと大幅にふえておりますが、その背景、理由をお伺いいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 国債及び政府保証債につきましては、日銀の金融政策などによって、現在もほとんどの年限において利回りがマイナスとなっております。
 このため、国債や政府保証債と同等の信用力を有し、確実にプラスの利回りが確保できる財投機関債等の割合をふやしております。

○藤井委員 債券につきまして、マイナス金利の環境下、確実に安全性を確保した上で、プラスの利回りが確保できる財投機関債等への割合をふやすという計画であることが理解できました。
 一方、預金の金融機関別ポートフォリオについてです。地方銀行の割合が、平成三十年度の見込みでは一一%から一三%へとふえております。
 地方銀行の割合がふえているその背景、理由について、こちらもお伺いいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 計画策定に当たっては、都の預金対象であります金融機関に、個別に資金調達動向についてヒアリングを実施しており、その結果を踏まえて想定割合を設定しております。
 地方銀行の中には、東京での事業展開に注力しつつあるところがあり、新規預金先としての対象数がふえていることから、今年度は地方銀行の割合を増加させております。

○藤井委員 ありがとうございます。地方銀行については、さまざま議論のあるところでございます。上場する地方銀行の実に過半数が、ことし三月の決算で減収、そして赤字となっているという報道も目にしております。
 また、地銀については、今後、再編の可能性というものも否定できません。
 ことしの四月十一日に、金融庁の有識者会議でまとめられた、地域金融の課題と競争のあり方、その報告書でも、地銀の経営統合、合併は、金融機関の健全性を維持するための一つの選択肢だとして提示をされております。
 昨年十二月の財政委員会の中で、我が会派の増田一郎委員から指摘のありましたとおり、そのような地銀の再編が起きたときに、運用を柔軟に対応できることが重要だと考えております。
 ポートフォリオの変更によって、これまでよりもリスクをとっていないか、その点についてお伺いをさせていただきます。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都では、公金管理におきましては、大前提として、元本の安全性の確保を最重要視すると定めております。
 平成三十年度の公金管理計画につきましては、金融分野の専門家等で構成されます東京都公金管理アドバイザリー会議におきましても、ポートフォリオの安全性の観点から検証が行われ、妥当なものとの判断をいただいております。

○藤井委員 それでは、都は、これまでの公金管理の中で、安全性を損なった、そういった事例があるのか、お伺いをさせていただきます。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都の公金管理におきましては、資金の元本を毀損した事例も、受取利息が未収となった事例もございません。

○藤井委員 平成三十年度の東京都公金管理計画の中で、これまでよりもリスクをとっているわけではないということを理解することができました。
 加えて、東京都の公金管理の中で、これまで安全性を損なった事例はないということも確認ができ、大変心強く思っております。
 これまで、安全性について議論をしてまいりましたが、一方、マイナス金利下で効率性の面の追求というのは、なかなか議論がしづらいところでございます。
 平成三十年度の東京都の公金の年間平均残高見込みは五兆五千七百五十億円というかなり大きな金額となっております。シンプルに五兆円と考えても、年間〇・一%、その運用の利率が違ったら五十億円変わってまいります。さらに〇・〇一%でも五億円になります。
 これは、都民の皆様から預かっている税金が原資でございますので、非常に大きな金額が都民の財布に直結しているということだと理解をしております。その運用は、常に安全性を図りつつも、少しでもよいものを追求していただきたいと一言申し添えさせていただきます。
 さまざまな対応策のもとに、安全、確実な公金管理が実施されていることが理解できました。何より公金は、都民からの税金が原資でありますので、公金管理業務について、都民にとってのわかりやすさは非常に大事なポイントであると考えております。
 そこで、最後になりますが、都民にとってのわかりやすい公金管理のあり方について、現在の情報公開の状況、そして今後の取り組み方針についてお伺いをいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都では、都民の皆様への情報公開として、公金管理の基本的な考え方である東京都公金管理ポリシーや、年度ごとの公金管理計画、四半期ごとの公金管理実績をプレスリリースするとともに、局のホームページに随時公開をしております。
 また、情報公開におきましては、専門用語に解説や注釈をつけ加えるなどの工夫をしており、今後も都民の皆様にとってわかりやすい情報発信に努めてまいります。

○藤井委員 ありがとうございました。大事な都民のお金をまさに預かる会計管理局の皆様には、これからも安全性、流動性、効率性を追求したプロフェッショナルな運用をしながら、都民ファーストの視点で、都民にとってわかりやすい情報提供をお願いして、私、藤井あきらからの質問を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。

○うすい委員 報告のありました資料に基づきまして、平成二十九年度の公金管理実績を振り返りまして、平成三十年度の公金管理計画について質問させていただきたいと思います。
 まず初めに、昨年度の金融環境について確認をさせていただきます。
 国内金融市場では、日本銀行の金融緩和政策が継続をされていますことから、平成二十九年度における預金及び債券の市場金利は極めて低い水準のまま推移をし、現在もその状況が続いております。
 日本銀行が公表している資料によりますと、国内銀行の預金金利の代表的な指標である六カ月物の定期性預金の平均年利率は、おおむね〇・〇一%以下になっております。また、財務省が公表している国債金利情報によれば、国内債券利回りの代表的な指標である日本国債十年物の平均利回りは、おおむね〇・〇一%から〇・一%の範囲内で推移をしております。
 平成二十九年度公金管理実績を見ますと、都の公金管理においても、こうした金融環境を反映して、公金全体の利回りは〇・〇六五%から〇・〇四三%へと低下をし、全体の年間運用収入は約二十三億七千万円となり、先ほどありましたけれども、前年度比で約十億円減少している状況でございます。
 そこで、この平成二十九年度公金管理実績について、都はどのように捉えているのか、基本認識をお伺いしたいと思います。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 委員ご指摘のとおり、日本銀行による金融緩和政策の継続により、平成二十九年度における市場金利は極めて低い水準のまま推移いたしました。
 そのため、平成二十九年度に満期となった預金と債券について、再運用する金利が設定時の金利より低くなる状況が継続していることから、運用利回りの低下は避けられず、年間運用収入は前年度比でさらに減少しております。
 しかし、都では、安全性確保のためリスク管理を徹底しつつ、金融機関等の資金調達ニーズを精緻に情報収集し、日々きめ細やかに最も有利な預金設定や債券購入を実施する等の工夫を行った結果、利回りの減少幅を最小限に抑えることができたものと認識しております。

○うすい委員 実績については、厳しい金融環境にあっても、預金先金融機関等のリスク管理を徹底し、安全性を確保しながら着実な運用管理を行った結果と受けとめております。
 さて、新聞報道によりますと、金融機関を取り巻く厳しい環境、すなわち、長期にわたる低金利環境を背景に、平成三十年三月期決算では、本業のもうけを示す実質業務純益が大手銀行五社中四社が減益となり、地方銀行でも約六割が最終減益となり、銀行の収益力、すなわち稼ぐ力が低下しているとされております。
 また、決算説明会でも多くの銀行トップが厳しい経営状況に関するメッセージを出しており、既存のビジネスモデルは岐路に立っていると指摘をされているところであります。
 都の公金管理実績を見ますと、運用商品別では、預金が全体の約八五%を占めておりまして、こうした点を踏まえますと、都においても、預金先金融機関のリスク管理の重要度が一層増していると私は考えます。
 そこで、預金先金融機関のリスク管理を強化し、公金の安全性を確保していくために、都はどのような取り組みを行っているのか、お伺いをいたします。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都では、東京都公金管理ポリシーに基づきまして、預金先金融機関の決算期ごとに評価基準に沿って財務分析を行うとともに、さらに詳細で重要な情報を収集するため、決算説明会への参加や金融機関へのヒアリングなども精力的に実施しております。
 また、債券利回りや株価を初めとした金融動向を適時的確に監視していくため、銀行や証券会社のディーリングルームで採用しているものと同水準の情報端末を導入し、日常的に活用しております。
 さらに、金融機関の評価基準につきましても、東京都公金管理アドバイザリー会議における有識者の意見を踏まえながら、これまでも適宜見直しを実施してきており、昨年度には、取引先金融機関のリスク管理を一層強化したところでもございます。
 一つは、一般的に金融機関の財務体力をあらわす指標とされます自己資本比率について、国際基準の改正も踏まえ、評価基準をより厳格化いたしました。
 さらには、現在課題となっております金融機関の収益力低下を踏まえ、収益性に係る指標を評価基準における定量的な評価項目として新たに導入し、より精緻な安全性評価ができる仕組みに改善いたしました。

○うすい委員 都では、刻々と変化する金融情勢を的確に捉えて、適切にリスク管理を行い、公金の安全性確保に努めていることがわかりました。
 公金は、都民の皆様から負託されたものでありまして、安全性の確保は最も重要なことであります。
 一方で、時々の金融情勢に応じて一定の運用収入を確保していくことも公金管理には求められていると思います。
 前回の質疑でも指摘をさせていただいたところでございますが、近年のような低金利状況の中で、公金を毀損させることなく、一定水準の運用収入を確保していくことは、非常に難度の高い課題であると考えます。
 そこで、現在の金融環境を踏まえて、都は、安全性と効率性を両立していくという困難な課題に対して、今後どのような考え方で対応していくのか、最後に局長の認識をお伺いしたいと思います。

○土渕会計管理局長 先週行われました日本銀行の金融政策決定会合では、現行の大規模な金融緩和政策を当面継続することが決定されました。平成三十年度公金管理計画にも記載したとおり、金利は極めて低い水準で推移していく見通しであり、公金管理を行う立場からは、なお厳しい状況が続くものと認識しております。
 一方、国外に目を転じますと、米国は、先般、追加の利上げをした上で、今後の利上げペースをさらに速める見通しを公表し、欧州におきましても、年内に量的緩和策を終える方針を発表しています。米国と欧州が金融政策正常化の出口へと向かう中で、我が国におきましては、日本銀行における出口戦略の見通しは明らかとなっていない状況にあります。
 各国の金融政策に温度差が広がり、先行き不透明感が増す中にあっても、公金全体の安全性を最重要視し、柔軟かつ効率的な保管、運用を目指していくことが、私どもに課せられた責務であると、このように考えております。
 今後とも、都の公金管理におきましては、適切なリスク管理などを通じて安全性を確保した上で、金融情勢を的確に捉えて、機動的にポートフォリオの最適化を図るなど、柔軟かつ効率的な保管、運用を徹底していくことにより、安全性と効率性の両立の実現に向け、全力で取り組んでまいります。

○うすい委員 非常に難しいということは十二分にわかっております。その上で、安全性と効率性を適切に両立をしていただきまして、効率的な保管、運用をよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。

○上田委員 毎年度のご報告の、私のいつもの定点観測をさせていただきたいと思います。
 平成二十八年度から二十九年度にかけて、運用収入が十億二百四万円減少したと報告がありますが、この運用収入の減少理由について、当局が把握していることを詳細にご報告ください。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成二十九年度におきましても、市場金利は極めて低い水準で推移いたしました。
 そのため、平成二十九年度における金利水準よりも高い金利の預金と債券が満期を迎え、これらを再運用する際の金利の方が低くなったことから、公金全体の運用利回りが低下し、運用収入の減少につながったものでございます。

○上田委員 分析の方、把握いたしました。
 公金管理については、るるほかの委員も指摘をされているように、安全性を重視し、流動性を十分に確保した上で、柔軟かつ効率的な保管、運用に努めるという公金管理の安全性、流動性、効率性の三原則にのっとっているかとは思いますが、約十億円の運用収入の減少に対して、安全性の確保などの公金管理の三原則は堅持できたのかということについてもお示しください。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 約十億円の運用収入減となりましたのは、市場金利が極めて低い水準で推移したためでございます。
 都といたしましては、安全性を最重要視し、流動性を十分に確保した上で、可能な限り利回りの低下を抑えて効率性を確保しており、公金管理の三つの原則は堅持できているものと考えております。

○上田委員 現状、三原則は堅持とのことです。
 最後に、この公金管理の運用について、どのような状況、どの程度の損失をした場合に、三原則から乖離されていたと考えられるのか、その基準となるものをお示しください。

○野口管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 公金管理の三つの原則のうち、効率性につきましては、金融環境などに応じて状況が変わるため、定量的な基準というものはございませんが、安全性につきましては、資金元本が損なわれ損失が発生した場合、また、流動性につきましては、手元資金がショートし、支払い等に支障を来した場合に、公金管理の三つの原則から外れることとなると認識をしております。

○上田委員 昨今の低金利の中において、運用収入を上げていることは高く評価したいと思います。
 公金管理の三原則である流動性について、手元資金がショートし、支払い等に支障を来した場合に、公金管理の原則から外れるとの答弁については、さらに細かな基準を設ける必要性があるのではないかと考えております。
 引き続いてのご努力、お取り組みをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

○まつば委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○まつば委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○まつば委員長 これより主税局関係に入ります。
 付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 第百二十四号議案、第百二十五号議案及び地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について並びに報告事項、宿泊税十五年間の実績と今後のあり方についてを一括して議題といたします。
 本案及び本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○副島税制部長 去る六月七日の当委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の財政委員会要求資料の表紙をおめくりいただき、目次をごらん願います。今回要求のございました資料は一件でございます。
 それでは、一ページをお開き願います。要求資料第1号、宿泊税に係る他自治体の導入状況でございます。
 この表は、他の自治体における宿泊税の導入時期、税率、税収規模をお示ししたものでございます。
 要求のございました資料に関する説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○まつば委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本案及び本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○藤井委員 宿泊税十五年間の実績と今後のあり方の報告書について質問をいたします。
 宿泊税は、国際都市東京の魅力を高めるため、観光の振興を図る施策に要する法定外目的税として創設をされております。
 最初に、改めてですが、宿泊税創設のその経緯をお伺いさせていただきます。

○副島税制部長 宿泊税は、平成十二年度の東京都税制調査会答申において提言を受けましたホテル税につきまして、実施に向けた検討を行った上で、宿泊税として条例提案し、都議会における議論を経て創設されたものでございます。その後、平成十四年三月の総務大臣の同意を経て、同年十月から施行されたところでございます。

○藤井委員 ありがとうございます。約二年間の議論を経て創設されたということがよくわかりました。
 宿泊税は、五年ごとに見直しをして、現在十五年がたち、三回目の見直しのタイミングとなっていると認識しております。これまでどういった議論がなされてきたのかというのも知っておく必要があるかと思います。
 今回、十五年間の実績と今後のあり方について報告がございましたが、五年目及び十年目の実績と今後のあり方、その報告においてどのような議論がなされてきたのか、お伺いをさせていただきます。

○副島税制部長 宿泊税は、条例の施行後五年ごとに、施行状況や社会経済情勢の推移等を勘案し、検討を行うこととされております。
 五年目及び十年目の実績と今後のあり方に係る都議会への報告の際には、課税継続の適否、都の観光振興施策への活用状況、特別徴収義務者の理解を得るための取り組みなどにつきまして議論がなされました。

○藤井委員 ありがとうございます。五年目、十年目の時点でも、さまざま議論があったということが理解できました。
 今回の十五年間の実績と今後のあり方の報告書を見ますと、宿泊税は、一時期を除き十億円を超える規模で安定的に推移していることがわかります。特にこの五年間は、急激に徴収金額がふえております。
 平成三十年度の予算における宿泊税の税収と、直近の増収の要因についてお伺いをさせていただきます。

○副島税制部長 宿泊税につきましては、平成二十九年度補正後予算の約二十三・三億円から、平成三十年度当初予算では、一・七億円増の約二十五億円を計上しております。
 増収要因といたしましては、東京都の観光PRなどの施策の効果、ビザの発給要件の緩和措置などによりまして、都内の宿泊者数の増加を見込んでいることなどによるものでございます。

○藤井委員 ありがとうございます。平成三十年度の予算では、過去最高の二十五億円が見込まれているということで、今後ますます伸びるということが予測される海外からのインバウンドなどの対応、観光施策等に、有効に活用していただきたいと思います。
 それでは、都の観光産業振興費に占める宿泊税の割合についてお伺いをさせていただきます。

○副島税制部長 平成三十年度当初予算におきまして、宿泊税の税収は約二十五億円、これに対しまして観光産業振興費は約百六十六億円であり、観光産業振興費に占める宿泊税の割合は約一五%となっております。

○藤井委員 ありがとうございます。
 過去の財政委員会の議事録などを拝見させていただきますと、平成二十四年度では、その割合が四三・一%との答弁がございました。平成二十七年度から、東京都おもてなし・観光基金を設置したことにより、そちらからの支出がふえていて今回一五%と、以前よりも下がっていることが見受けられます。これは、その観光産業振興費自体の旺盛な需要を示しているのではないかと考えております。
 では、実際、宿泊税として集めたお金がどのように使われているのか、平成二十九年度、昨年度の実績として、宿泊税の具体的な使い道をお伺いいたします。

○副島税制部長 宿泊税の税収は、その全額が観光振興に関する事業全般に広く充てられております。
 平成二十九年度の観光振興施策の主な事業といたしましては、例えば、WiFiやデジタルサイネージなどの利用環境の整備、都内の観光案内所の運営等に充てられております。

○藤井委員 ことしの三月に、国の観光庁が発表した海外旅行者のアンケートでも、海外からの旅行者は、日本の旅行中に困ったものとして、施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれないというところが一番多く、次いで多言語表示がないというところ、さらには無料の公衆無線LANの環境がないといったようなところが挙がっております。まだまだ整備が必要な状況というのが続いているということは一言申し添えさせていただきます。
 宿泊税の徴収には、ホテル、旅館などの事業者に加えて、宿泊者の理解が不可欠であります。宿泊税について、理解促進のため周知活動に努めてきたと報告書に記載がございますが、その具体的な内容と、その効果についてお伺いをさせていただきます。

○安藤課税部長 広く宿泊税について理解を得るため、日本語に加え、英語、ハングル、中国語に対応したリーフレットを作成し、都の観光情報センターやホテルのフロント、客室等に備えつけております。
 また、東京の観光公式ガイドや主税局ホームページへの掲載など、各種媒体を活用し周知を図っております。
 これらの取り組みにより、宿泊税は都税として十分に浸透してまいりました。
 今後も、宿泊税のさらなる理解促進のため、積極的に周知を図ってまいります。

○藤井委員 これまで、都民の理解を得るためにさまざま活動してきたことが理解できました。より効果的な周知活動について、引き続き、新たな施策も含めてご検討いただくことをお願いいたします。
 一方、税の公平性の観点からは、適正に申告している旅館、ホテルが不利益をこうむることというのは避けなければなりません。運用面に関しても三点ほど確認をさせてください。
 我が会派の西多摩選出の清水委員は、税にかかわる仕事をしてきた中で、申告税では不正や過少に申告するケースを多々見てきたそうでございます。申告納税方式である宿泊税にも、その可能性があるのではないかと考えております。
 いわゆるラブホテル、そしてレジャーホテル、カップルズホテル、ブティックホテル、ファッションホテルなどは、そもそも旅館、ホテル業として届け出をされていますでしょうか。
 都では、宿泊事業者についてどのような対応をしているか、お伺いをいたします。

○安藤課税部長 宿泊税につきましては、旅館業法における旅館、ホテル営業の許可を受けた経営者のうち、一人一泊について一万円以上の宿泊がある場合、特別徴収義務者としての登録を知事に申請しなければならないとされております。
 宿泊税の適正な申告を担保するためには、当該事業者の申告内容の確認調査や、新たに対象となり得る事業者の捕捉調査が重要でございます。
 既存の登録施設につきましては、帳簿などの関係書類の内容や料金改定の有無等について確認をしております。
 また、旅館、ホテル営業を行っているものの登録のない事業者につきましては、事業者ホームページの料金表や関与税理士への聞き取りなどにより登録要否の再調査を行っております。
 加えて、新規事業者の捕捉につきましては、保健所への照会により、旅館業営業許可状況を把握し、旅館、ホテル営業の許可を受けた全ての新規事業者に登録の要否を確認しております。
 これらの各種調査により適切な登録、申告を行わせております。

○藤井委員 保健所の営業許可の状況から捕捉をするとのことですが、登録施設数のうち、どんな方法に基づき、どの程度の調査を行っているのか、お伺いさせていただきます。

○安藤課税部長 平成二十九年度では、保健所から得た情報に基づき、新規営業許可施設百三十三件に対し、宿泊料金設定等に関する文書による照会を行っております。
 そのうち特別徴収義務者登録がなされた三十一件に対しては実地調査を行い、宿泊税の算出方法の確認や適正な申告に向けた指導を行っております。
 その他百件余りの新規事業者につきましては、電話での聞き取りやインターネット等を活用した宿泊料金の確認調査等を行うことで、特別徴収義務者となる事業者を把握しております。

○藤井委員 新規登録時、そして既存の施設の見直しなどの際に、きめ細かくチェックをしているということが理解できました。
 調査をしっかりすることに加えて、簡便に納付できること、申告できることも重要であると考えます。
 我が会派の清水委員の地元の西多摩地区では、金融機関などのない標高数百メートルのところに高級旅館があるようなところもあるそうでございます。
 自動引き落としなど、負担のない納税方法が必要と考えますが、都の所見をお伺いいたします。
 あわせて、申告については、東京共同電子申請・届出サービスの平成二十八年度までの利用がゼロ件と伺っておりますが、現状をお伺いさせていただきます。

○安藤課税部長 宿泊税につきましては、原則として毎月末日までに前月分の実績について申告納入することとされております。一方、特別徴収義務者の負担軽減を図るため、所要の条件を満たす場合には、申請により毎月の申告納入によらず、三カ月分をまとめた年四回となる申告納期限の特例というものを設けております。
 また、申告につきましては、平成十七年一月から東京共同電子申請・届出サービスを活用し、電子申告を受け付けております。平成二十九年十一月より、本人確認方法の簡素化を図ったこともあり、平成二十九年度の電子申告実績は、三十五施設となっております。

○藤井委員 ありがとうございます。申告に関して三十五件とふえているということは、大変喜ばしいかなと思っております。
 今後とも、より皆さんの使いやすい環境を整えていただければと思います。
 宿泊税のこれまでの経緯や必要性、そしてその運用の取り組みについてお伺いをしてまいりましたが、今後の課題二点についても触れさせていただきます。
 今回、改正条例案も提出されていますオリンピック・パラリンピック期間における課税停止の影響、その金額についてお伺いをさせていただきます。

○副島税制部長 今回提案いたしました宿泊税の課税停止に伴う減収額は、約五・五億円を見込んでおります。

○藤井委員 ありがとうございます。三カ月間で約五・五億円減収するということが理解できました。
 もう一点は、民泊に関してです。
 つい先日、六月十五日、国の住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が施行されました。民泊そのものについてさまざまな議論があるところではございますが、この民泊も宿泊税の対象にすべきではないかという議論もあるかと思います。
 そこで、民泊に対する宿泊税の課税について、東京都の検討状況をお伺いします。

○副島税制部長 都の宿泊税の課税対象は、旅館業法における旅館、ホテルにおける宿泊であり、いわゆる民泊については課税対象としておりません。
 民泊に対しましては、税の公平性の観点から課税すべきとの意見もございますが、現状において、一人一泊一万円以上の民泊は極めて少なく、仮に課税した場合にも税収効果が限定的であり、調査などの徴税コストが高くなるおそれがございます。
 都といたしましては、住宅宿泊事業法の施行後の状況を注視しつつ、民泊をめぐる状況に大きな変化が生じた場合には、課税の公平性や税収効果、徴税コスト等を踏まえ、適切な時期に総合的に検討していくこととしております。

○藤井委員 民泊に関しては、徴税コストとのバランスを見ながら、今後考えていくということで理解をいたしました。
 東京都が先鞭をつけたこの宿泊税でございますが、他自治体への広がりを見せております。資料要求の中にもあったかと思うんですが、大阪府、京都市そして金沢市で導入が決まっており、さらに検討中の自治体も多いと聞いております。
 自治体によっては、宿泊税の税額がさまざま違うような状況かと思いますが、ことしの十月一日から施行される京都市では、一人一泊五万円以上の宿泊に対して宿泊税の税率を千円と、結構高額な税率を設けております。
 都として、高額の宿泊に対する税負担をどのように考えているか、お伺いさせていただきます。

○副島税制部長 現在の税率区分につきましては、創設時におきまして、観光振興の予算額と必要な税収規模、諸外国の類似の税の状況、納税者の税負担などを総合的に勘案して設定いたしました。
 高額の宿泊に対して新たな税率区分を設定することにつきましては、今後の都の観光振興施策の展開を踏まえつつ、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。

○藤井委員 最後にですが、今後さらに増加が見込まれますインバウンドの需要への対応など、観光振興の重要性を踏まえた上で宿泊税に対する考え方を改めてお伺いいたします。

○目黒主税局長 東京を訪れる外国人旅行者の数は五年連続で過去最高を更新するなど、東京は世界有数の観光都市として注目を集め、評価を高めてきたところでございます。
 都の観光振興施策の方向性を示す東京都観光産業振興実行プラン二〇一八におきましては、東京を訪れる外国人旅行者数について、二〇二〇年には二千五百万人、二〇二四年には三千万人という数値目標を設定し、効果的な観光施策を展開していくこととしております。
 宿泊税は、観光振興施策に使途を限定した法定外目的税として、これまで安定的な税収を確保し、観光振興施策の推進を財政面から支えてまいりました。
 今後も、宿泊税の課税を継続することにより、安定した財源を確保し、東京二〇二〇大会とその先を見据え、産業としての重要性が一層高まっております観光振興に財政面から貢献してまいります。

○藤井委員 ありがとうございます。今後も、重要性が一層高まる観光振興に財政面から貢献していくということで大変心強く感じました。
 私は、府中市選出の都議でございますが、府中を含めた多摩地区では、まだまだインバウンドの取り込み、海外からの旅行者をどのように地元に呼び寄せるかというところに苦労しているところが多いというのが実情かと思います。
 私も、地元の会合などに参加しますと、地元企業や商店街から、いかに、オリンピック・パラリンピック、そして二〇一九年のラグビーワールドカップに向けて、海外から来るお客様をおもてなしして呼び込むかというところのアイデアを出してほしいと求められることも非常に多くなっております。
 もちろん、そういった海外からの観光客を集めるのは、市町村などの基礎自治体の努力であったり、地元企業などの民間が盛り上げていくということも重要ではございますが、東京を訪れた観光客が都内を回遊するようにするなど、そういった面での観光振興施策、そして、そういった観光のデザインをつくっていくというのは、東京都としても、まだまだ必要ではないかと考えております。
 東京だけではなく、さらにいえば、東京を訪れた観光客が日本中、地方へも行くようにすることが、東京と地方が力を合わせて日本を盛り上げていくためには重要ではないかと考えております。
 来年控えております二〇一九年ラグビーワールドカップ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを契機として、東京から観光立国日本の基礎をつくっていくためにも、宿泊税を今後も有効活用するように要望いたしまして、私からの質問を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。

○伊藤委員 それでは私からも、宿泊税十五年間の実績と今後のあり方についてお伺いをいたします。
 宿泊税の概要を改めて申し上げますと、目的は国際都市東京の魅力を高め、観光の振興に要する費用に充てることであり、納税義務者は都内のホテル等の宿泊者で、税率は宿泊一人一泊につき一万円以上一万五千円未満が百円、一万五千円以上が二百円となっています。
 宿泊税は、東京都税制調査会の提言をもとに、都議会との議論を経て創設をされて以来十五年が経過したところです。自治体の独自課税として宿泊に課税することに対しては、当初さまざまな議論もあったようですが、時間の経過とともに定着してきたと思います。近年では、ほかにも都に追随する動きも見られ、全国の自治体を指導する役割も果たしています。
 そこで、十五年目の節目に当たり、改めて宿泊税の根幹である税負担のあり方や使い道について議論することで、今後につなげていただきたいと思います。
 それでは、確認の意味も含めて、宿泊税創設の趣旨について、まず伺います。

○副島税制部長 宿泊税は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、当時立ちおくれているとされた東京の観光振興を展開していく上で必要な財源を安定的に確保するために、都が課税自主権を活用し、法定外目的税として創設したものでございます。

○伊藤委員 当時立ちおくれていた観光振興の財源とするために課税自主権を活用して創設をしたと、こういうことでありました。
 宿泊税の条例案は、平成十三年の第四回定例会に提案をされました。その議決に際して、我が党は、本条例の目的を踏まえ、税収の使途については、効果的な観光施策の遂行に資するという付帯決議を申し入れました。
 それでは、決議を踏まえて、宿泊税の税収は、これまでどのように活用されてきたのか伺います。

○副島税制部長 宿泊税は、創設時の付帯決議も踏まえまして、その税収の全額が観光振興に関する事業全般に広く充てられております。
 その具体的な使途につきましては、二〇二〇年に向けた実行プラン及び毎年度更新する東京都観光産業振興実行プラン等の計画において示される事業に活用されておりまして、例えば、WiFiやデジタルサイネージなどの利用環境の整備や都内の観光案内所の運営等に充てられております。

○伊藤委員 宿泊税が課税目的のとおりに観光振興に大きく貢献していることや充当されている事業の具体的な内容もご答弁をいただきました。
 また、税収の全額を都の観光施策に充当しているとのことですが、来年のラグビーワールドカップや東京二〇二〇オリ・パラ大会の開催を控え、都の観光振興策を支える宿泊税は一層重要な存在となります。
 そこで、宿泊税の税収規模と、都の観光産業振興費の総額、そしてそれに対する宿泊税の割合、またその推移、どうなっているのか、確認のためお伺いをいたします。

○副島税制部長 宿泊税収の規模は、創設初年度及び東日本大震災の影響を受けました平成二十三年度を除きまして十億円台で推移しておりまして、平成二十七年度以降は二十億円台で推移しております。訪日外国人観光客数の増加などを受けまして順調に拡大しております。平成三十年度当初予算ベースにおいては約二十五億円でございまして、宿泊税創設以来、最高額となる見込みでございます。
 また、都の観光産業振興費は、平成三十年度当初予算におきまして約百六十六億円でございます。観光産業振興費に対する宿泊税の割合は、最大で八割を占める年度もありましたが、観光産業振興費の増加に伴い、平成三十年度当初予算ベースで約一五%となっております。

○伊藤委員 以前は、観光産業振興費に占める宿泊税の割合は、最高で八割と非常に高かったようですが、近年は低下して、今年度の予算ベースは一五%ほどということであります。
 さて、ホテル、旅館は、都内全域で約二千件ありまして、そのうち課税対象となる登録施設数は年々増加して約六百二十件あるそうです。
 すなわち、課税対象とならないリーズナブルな宿もあれば、一泊十数万円もする高級スイートなどもあるようで、年間の納税実績で見ても数百円から数千万円と千差万別であるそうです。
 それでは、宿泊一人一泊につき一万円以上一万五千円未満は百円、一万五千円以上は二百円となっておりますが、そもそもこの税率の設定理由はどのようなものに基づくのか、お伺いをいたします。

○副島税制部長 宿泊税の税率につきましては、観光振興施策に充てるための一定の財源確保という視点が重要であるとともに、宿泊者にとって過度な負担とならないよう配慮しつつ、適正な水準を設定する必要がございました。
 また、創設当時、諸外国で実施されている宿泊税等がおおむね一人一泊百円から二百円程度であったことも参考にし、税率を百円または二百円に設定いたしました。

○伊藤委員 ご答弁いただきましたが、諸外国の宿泊税も参考に税率を設定したとのことですが、例えば、パリにおける滞在税やニューヨークにおける客室占有税など、現在の諸外国の宿泊税などは東京よりも高い設定であるとも聞いております。
 また、宿泊税を昨年導入した大阪府は百円から三百円、そして、きょう資料にもありますけれども、導入を今後予定している京都市、金沢市においても、東京より高い税率を設定しているようです。
 さて、納税者からすれば、課税については本来、できるだけ負担を少なくすべきというのが基本であります。
 一方で、導入から十五年が経過し、観光産業振興費に占める割合が低下している現状や、諸外国や国内の同様事例からしますと、税率を上げる、または区分を再設定して税率を見直すなどの考えもあるかと思います。
 それでは、宿泊税について議論をした東京都税制調査会では、昨年度どのような意見があったのか伺います。

○栗原税制調査担当部長 平成二十九年度の東京都税制調査会の議論におきましては、宿泊税の税率について、観光産業振興費が増加していることを踏まえると、引き上げを検討すべきではないかという意見や、検討に当たっては観光施策の中身について踏み込んだ議論が必要という意見がございました。
 こうした意見を受けまして、昨年度の東京都税制調査会答申では、旅行者のためのインフラ整備に充てる経費について、旅行者からも応分の負担を求める必要が生じた場合、第三者の意見も含めた評価、検証を行った上で、宿泊料金に応じた新たな税率区分を設定することを検討すべきであると提言しております。

○伊藤委員 都税調の中でもいろいろご意見があったようでありますし、また、答申でも、必要が生じた場合には新たな税率区分も検討すべきと、こういうようなこともあったようであります。
 さて、事前に確認をしたところ、宿泊税の平成二十八年度実績では、課税人員、すなわち課税した宿泊客数は約千六百万人、調定額、税収額は二十二億一千七百万円とのことでありました。
 一回当たりの税額は大きくないとはいえ、税負担者は宿泊者となりますので理解の促進は不可欠であります。また、ホテル、旅館業などの皆様に納税の負担をおかけしており、それらの方々のご意見の反映も大切であります。
 それでは、関係団体等の意見の反映や宿泊者に対する周知や理解の促進についても、どのような取り組みをしてきたのか伺います。

○安藤課税部長 宿泊税の制度創設時には、関係団体等に向け、宿泊税の説明会及び特別徴収義務者の登録説明会を開催し、新税への理解と協力を得られるように努めてまいりました。
 特に、宿泊税の特別徴収義務者であるホテル等が徴収事務を円滑に行えるよう、制度創設時から引き続き、宿泊税の概要や特別徴収義務者の登録、申告納入の手続などに関する説明を盛り込んだ宿泊税の手引を作成、配布し、活用いただいております。
 また、現在も、広く宿泊税について理解を得るため、多言語に対応したリーフレットを作成し、都の観光情報センターやホテルのフロント、客室等に備えつけるほか、東京の観光公式ガイドや主税局ホームページへの掲載など、各種媒体を活用して周知を図っております。
 これらの取り組みにより、宿泊税は都税として十分に浸透してまいりました。
 今後も、宿泊税のさらなる理解促進のため積極的に周知を行ってまいります。

○伊藤委員 さまざまな取り組みをされてきたということでありますけれども、東京都からすれば、十五年たって既に十分認知をされているということでありますが、相手方は初めてであったりしますので、引き続き、努力をお願いしたいと思います。
 また、宿泊税以外の独自の地方課税についても伺います。
 独自課税については、ご案内のとおり、地方税法で定められた住民税などの税目以外に、各自治体が条例により課税を行うことであります。
 納税者の立場でいえば、税負担はできるだけ軽くというのが基本でありますが、一方で、住民サービスを確保していく上で、独自課税も含めて、課税のあり方そのものも常に検証しなければなりません。
 各自治体で導入された独自課税としては、法定外普通税、目的税の実例として、宿泊税以外にも遊漁税や産業廃棄物税などがあるそうです。
 それでは、東京都は、独自課税についてはどのような検討をしてきたのか伺います。

○副島税制部長 平成十二年度の東京都税制調査会答申におきましては、法定外税といたしまして、大型ディーゼル車高速道路利用税、産業廃棄物税、パチンコ税及び昼間流入人口等への課税が提案されましたが、実施に向けた課題等を検討いたしました結果、ホテル税をもとにした宿泊税のみが実現したものでございます。

○伊藤委員 東京都でも、宿泊税以外に導入を検討したようですが、実現をしていないということであります。
 私の地元八王子市でも、かつて幾つかの具体的な税目について検討をいたしました。
 例えば、世帯数を大幅に上回る三十万基ともいわれる墓地がありますので、お彼岸の時期の交通渋滞対策やごみの処分などに着目して墓地税を検討しましたが、所有者の把握や徴税経費の問題があり、実現には至りませんでした。
 もちろん、私が申し上げたいことは、課税そのものが目的ではなく、あくまでどのような住民サービスを提供する必要があるかが出発点であり、その延長線としての財源論に課税があるということであります。
 そこで最後に、宿泊税の今後について伺います。
 税収の推移も、課税人員も、登録施設数も、この十五年間で波はありますが上昇傾向です。これまでの間、課税目的である、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充ててきました。
 それでは、最後にお聞きしますが、導入後十五年が経過し、宿泊税の負担のあり方と今後の展望について、どのように考えておられるのか伺います。

○目黒主税局長 宿泊税は、創設当初から安定した税収を確保し、都の観光振興において財政面から重要な役割を担っており、今後もその課税を継続していくことが適当であるものと認識をしております。
 宿泊税のあるべき税収及び税率の水準は、都の施策展開や都財政の状況、宿泊者の負担感等を踏まえ、総合的に判断していく必要がございます。
 来年十月に予定されている消費税率の引き上げや、来年一月からの国際観光旅客税の導入によりまして、宿泊や旅行に係る税負担が重くなることを踏まえますと、現時点では、税率の引き上げを行うタイミングではないと考えておりますが、今後につきましては、社会情勢の変化等をつぶさに注視しつつ、見直しの必要があると判断した場合には、時期を逸することなく、税率の引き上げ等についても、速やかに、そして具体的な検討を行っていく所存でございます。

○うすい委員 東京二〇二〇大会に伴う宿泊税の課税停止についてお伺いしたいと思います。
 提案された条例案では、東京二〇二〇大会の全期間を網羅する平成三十二年七月一日から同年九月三十日までの三カ月間、全ての宿泊に対し宿泊税を課税停止することとなっているわけでありますが、そもそも本件は、東京二〇二〇大会招致の際の立候補ファイルにおいてIOCと約束をしている内容と聞いておりますが、立候補ファイルには、具体的にどのように記載されていたのか、お伺いをしたいと思います。

○副島税制部長 立候補ファイルは、東京二〇二〇大会の招致に向け、大会の詳細な開催計画を記載したものでございまして、ビジョンや財政、競技など全十四テーマにわたりIOCからの質問へ回答する形で構成されております。
 その中で、宿泊税の取り扱いにつきましては、大会関係者に対して大会期間中の宿泊税が免除されると記載されております。

○うすい委員 立候補ファイルでは、免除の対象は大会関係者に、また、期間は大会期間に、それぞれ限定されていたとのことでありますけれども、一方、今回提案された条例案では、対象は全ての宿泊に、期間は大会期間を含む三カ月間に、それぞれ拡大しておりまして、立候補ファイルの内容と比べて都の減収額が大きくなると考えられます。
 そうした中で、なぜ立候補ファイルに記載された内容よりも対象及び期間を拡大したのか、その趣旨をお伺いいたします。

○副島税制部長 東京二〇二〇大会の成功に向け、開催都市である都として最大限の対応を行う観点から、大会を契機として東京を訪れる観光客を含む、全ての宿泊者の負担軽減を図る必要があると判断いたしました。
 また、特別徴収義務者であるホテル等の事務負担に配慮するとともに、一部の対象者のみを課税免除とした場合、フロント業務にかかる時間が大幅に増加することが見込まれます。また、ホテル等に滞在する全ての宿泊者にも影響を与える点も考慮いたしました。
 期間に関しましては、大会開催期間や宿泊税の申告が一カ月単位であることを踏まえ設定いたしました。

○うすい委員 趣旨については理解できましたが、大会中は、ホテルの稼働率が上昇することが見込まれるため、減収額は五・五億円よりも大きくなる可能性が高いと思います。
 そうした観点から、大会に関係なく東京に観光に来て宿泊する人にまで、宿泊税を免除しなくてもよいのではないかとの意見もあるのですが、それに対する都の見解をお伺いいたします。

○副島税制部長 仮に、大会関係者に限って課税を免除する場合におきましては、大会関係者の範囲をどのように設定するかという課題がございます。
 例えば、組織委員会が発行いたしますADカードの所持者のみを免除対象とする場合が考えられますが、この場合におきましては、ホテルのフロントにおいて個別に確認作業が必要となります。また、多くの宿泊者が見込まれる中、特別徴収義務者の事務負担がさらに増加いたしまして、宿泊客にも影響を与えることとなります。加えまして、都市ボランティアなど、ADカードが発行されない大会関係者が免除の対象外になってしまうという問題も生じるところでございます。こうした点につきましては、ホテルの業界団体からも懸念する声が寄せられております。
 これらのことを踏まえつつ、都として最大限の取り組みを行う観点から、全ての宿泊者を課税停止の対象といたしました。

○うすい委員 過去のオリンピックでも大会期間中にホテルの宿泊料金が高騰していたと聞いておりますし、あらゆる方が東京を訪れやすくするためには、少額の宿泊税であっても、負担軽減に貢献する点では確かに重要だとは思います。
 また、免除の対象を大会関係者とした場合に、公平性の点で課題があるという点は、確かに大きな問題とも考えます。
 例えば、大会に関するボランティアは十一万人を募集するとされておりますけれども、大会関連施設において、大会運営に携わる活動を行う大会ボランティアと、空港や主要駅、また観光地等で案内などに携わる都市ボランティアのいずれもが大会の成功にとって欠かすことのできない存在であります。こうしたボランティアについて、大会関係者の捉え方により宿泊税の取り扱いが異なるとなれば、それは望ましいことではないと思います。
 大会の成功に向けては、ボランティアに限らず、都民、国民一人一人の協力を得ながら取り組んでいくことが不可欠であり、施策全体としてもそれを促していくことが重要であると考えます。そうした点からは、本提案が、公平性に配慮しながら広く大会に関する方々に対して負担軽減を図っている点で、一定の合理性があり、大会の成功に資する取り組みであることを確認することができました。
 今回提案された宿泊税の課税停止は、東京二〇二〇大会の成功に向けた税制面からの取り組みでありますが、最後に、こうした都の重要施策を後押しするための課税自主権の活用について、局長の見解をお伺いいたします。

○目黒主税局長 主税局の使命は、第一に、都の事務事業を支える都税収入を着実に確保していくことでありますが、加えて、都の施策を効果的に推進するために課税自主権を行使していくことも重要でございます。
 これまでも都は、課税自主権を活用し、防災対策や福祉施策を初めとした都の重要施策を後押しするため、政策支援税制の創設に取り組んでまいりました。
 本定例会では、都の最重要施策の一つであります東京二〇二〇大会の成功に向けて、宿泊税の課税を一定期間停止する条例案を提案しておりますが、提案に当たっては、立候補ファイルの記載内容はもとより、宿泊者への影響や特別徴収義務者の事務負担、税収への影響などさまざまな観点から検討を進めてまいりました。
 今後とも、歳入所管局といたしまして都税収入の確保に努めますとともに、公平、中立、簡素という税の基本原則を踏まえつつ、関係局と連携し、課税自主権の活用などにより都の重要施策を税制面から後押ししてまいります。

○うすい委員 二〇二〇大会の成功に向けて、また、二〇二〇大会以降も、税の活用が都民のための施策の後押しとなるようお願い申し上げまして、質問を終わります。

○上田委員 宿泊税についてお尋ねします。
 資料6にありますように、登録施設数が二十八年度末時点で六百十九施設ということでございます。この六百十九施設が特別徴収義務者ということと認識しておりますけれども、徴収コストというのもそうですけれども、納税者の事務負担ということも、やはり重要に考えなくてはならないと思っております。
 その事務負担がどのような状況なのか、具体的にご説明いただけますでしょうか。

○安藤課税部長 宿泊税は、ホテル等の宿泊事業者が特別徴収義務者として宿泊税の納税義務者である宿泊者から税を徴収し、かつその徴収すべき税を東京都に納入する特別徴収制度をとっております。その特別徴収義務者は、特別徴収義務者の登録及び宿泊税の徴収、申告納入のほか宿泊者数等を帳簿に記載し、保存することとされております。

○上田委員 ということは、資料にもありますように一千六百万人ということで、それを帳簿に記載して保存しているというふうな、簡単ですけれども理解になると思うということは、すなわち、少なからぬご負担があるということを確認させていただきました。
 一方で、民泊からは徴収しないということになっておりますが、これだけ手間暇をかけて民間事業者さんが自分たちのコストでやって、さらに税金を払っているということは、かなり倍の、払って、コストも負担してという、要するに支払いコスト、税金を納めるコストをかけるわ、税金を払うわという六百十九の施設さんと、民泊からは徴収しないということですが、この辺の不公平感というのをどう捉えているのか、ご回答ください。

○副島税制部長 民泊への課税につきましてでございますけれども、今回ご報告させていただきました宿泊税十五年間の実績と今後のあり方の中で課題の一つとして検討を行っております。
 現在の民泊事業は、非常に低廉な料金の施設が多く、ほとんどが宿泊税の課税対象外となります。また、そうしたことから増収額が極めて限定的であるということ、あるいは増収額を大幅に上回る徴税コストの発生が見込まれるといったことから、住宅宿泊事業法施行後の状況を十分注視しつつ、民泊をめぐる状況に今後大きな変化が生じた場合には、適切な時期に総合的に検討していくといたしました。

○上田委員 私は、どちらかというと、民泊からも取らないのかというよりも、やっぱりこの六百十九施設というのはかなり大規模施設ということで、法人税なども、ほかの税金もしっかりと払っていらっしゃるという認識で、また、お支払いになっているということは、取れるところから取るのかなという発想ともとられかねないなというふうに考えるものでございます。
 そもそも、石原都政時代に財政難に陥り、本当に、建て直したという実績は非常に評価をするところでございますけれども、苦肉の策で誕生したともいえる法定外目的税であったという認識でございます。
 オリンピックの三カ月は凍結ということではございますけれども、当時の石原都政時代とは、もう大分違いますが、現在の必要性を伺いたいと思います。

○副島税制部長 平成十二年四月の地方分権一括法による地方税法の改正によりまして、法定外普通税について許可制から協議制に改められるとともに、新たに法定外目的税が創設されたことで、各自治体で法定外税の検討が進められるようになりました。
 こうした中で、都は、二十一世紀における観光産業の重要性を踏まえまして、観光振興に必要な財源を安定的に確保するために宿泊税を創設したものでございます。
 現在におきましても、観光振興施策に使途を限定した目的税といたしまして、引き続き安定した財源を確保することにより、その役割を着実に果たしていくことが期待されておりますことから、その必要性は変わらないものと考えております。

○上田委員 必要性が変わらないという、目的税として都の観光事業に活用しているということをほかの委員も確認をされておりまして、具体的使途は、平成三十年度に予算化されている事業を例にとれば、WiFi、デジタルサイネージなどの利用環境の整備や都内の観光案内所の運営に充当というご回答をされておりました。
 さらに、加えて私の方で伺いたいのは、宿泊税が観光振興にどのような貢献をしているのかということの認識をお聞かせいただきたいと思います。

○副島税制部長 宿泊税は、都が独自に課する法定外目的税といたしまして、観光振興施策を推進するための安定した財源を確保するという役割を果たしてまいりました。
 引き続き、安定した財源を確保することによりましてその役割を着実に果たしていくことが期待されていること、あるいは現行制度が広く定着し十分理解を得られていることから、課税を今後とも継続していくことが適当であるというふうに考えております。

○上田委員 今のは、当初の導入目的を果たしたというようなことですか。一応ですね、その前の貢献についてのことは、もう一回お答えいただけますでしょうか。

○副島税制部長 失礼いたしました。平成三十年度当初予算におけます宿泊税収は、約二十五億円を見込んでおります。観光振興施策実施に必要な財源の一部といたしまして、財政面から都の観光振興施策の推進に貢献しているものというふうに認識をしております。

○上田委員 導入当初の目的というのは、観光振興施策の推進のための安定した財源を確保したということで、引き続き財源を確保し、課税を継続していくことが適当ということなんですが、ほかの委員さんのご指摘もあったように、今、観光産業振興費の一五%程度になってきたということでございます。
 主税局は、入りをチェックする部門でありますけれども、いつもオリ・パラのときも私聞いていたんですけれども、集めるのはいいのですけれども、機運醸成が、幾ら経済波及効果があるのかということを、私はいつも着目をしておりまして、課税のそこに着目した上での課税の是非を常に問うていただきたいというふうに思っているのでございます。
 資料の方も取り寄せていただきまして、大阪府が七・八億円、京都市が四十五・六億円、金沢市が七・二億円と見込んでいると。東京は十億平均ということでございますが、一般会計予算を見ますと、大阪府は二・五兆円で、京都市は七千八百億円、金沢市は一千六百八十七億円ということで、特に、京都などは、本当に観光がメーンの都市でございます。四十五・六億円といったら、大変、七千八百億円のうちの一〇%でもないですが、非常に大きな、ここがメーンでこの市は生きていくのだというようなところのやるものと、十四兆円のうちの十億円ということの必要性というのを改めて私は考えたいと思うんですね。
 宿泊税については、導入当初、都の独自財源の確保の取り組みとして注目をされたわけであります。銀行への外形標準課税の呼び水になったとも考えております。
 当時とは、本当に財政状況が大きく変化をし、徴税側も納税側も負担があるんじゃないのかなと思うんですよね。
 この六百十九施設、一生懸命、手引やリーフレットとかつくっている、それも徴税コストになりますよね。一方で、民泊から集めるのはコストかかるからやらぬというのは、だったら相殺ゼロでいいんじゃないのかなというふうに思わないでもありません。
 私としては、当初の目的は達せられ、財源を使うことが目的化しているように思えてならない節があります。公平、中立、簡素というのが税制の基本原則ではないのかなというふうに思っています。
 徴税コストがある、あるいは支払う側のコストも多いという、そこの部分は、むしろ積極的に事業者さん、民間にもどんどん観光振興をやっていただいて稼いでいただく。観光客にはお買い物してもらって、それで税金を払ってくださるんですから、何もここにこだわる必要はないのかなというふうに考えます。
 先ほどいったように、税制の基本原則に立ち返られまして、オリンピック・パラリンピック期間中に限らず廃止をすることこそが、我が国の観光産業の発展に資することになると私は考えるものでございます。
 質問を終わります。

○まつば委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○まつば委員長 異議なしと認め、付託議案及び報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。

○まつば委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百三十八号議案から第百四十九号議案まで及び第百六十四号議案を一括して議題といたします。
 本案のうち、第百六十四号議案及び過日の委員会で要求のありました資料について理事者の説明を求めます。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 第二回定例会に提出しております議案についてご説明を申し上げます。
 お手元の資料第1号、平成三十年第二回定例会提出工事請負契約議案の概要について(追加分)をごらんください。
 一ページをお開き願います。今回、追加でご説明いたします契約議案は、調布市西町地内におきまして、東京スタジアムの電気設備改修工事を施行するものでございます。
 契約の方法は一般競争入札によるもので、契約の相手方は、きんでん・住友・岸野建設共同企業体、契約金額は三十一億六千四百四十万円でございます。
 入札経過等につきましては、次ページ以降に記載しておりますので、あわせてごらんいただきたいと存じます。
 本案件を加え、今定例会でご審議いただきます契約案件は合計十一件でございます。
 引き続きまして、先日の委員会におきまして要求のございました付託議案に関する資料についてご説明申し上げます。
 お手元に配布してございます財政委員会要求資料をごらんください。
 表紙をおめくりいただき、目次をごらんください。今回、付託議案に関して要求のございました資料は、要求資料第1号から第4号までの四件でございます。
 一ページをお開き願います。要求資料第1号、平成三十年第二回都議会定例会契約案に係る入札参加条件及び辞退理由でございます。
 こちらは、本定例会に提出いたしました契約案の入札参加条件及び辞退理由をお示ししたもので、一ページから一一ページにわたり入札参加条件を、一二ページに辞退理由を記載してございます。
 一三ページをお開き願います。要求資料第2号、低入札者への聴取の日時及び内容でございます。
 こちらは、本定例会に提出いたしました契約案のうち、低入札者への聴取を実施した案件の件名及び調査の概要をお示ししたものでございます。
 一四ページをお開き願います。要求資料第3号、土地の売払いに係る経緯についてでございます。
 こちらは、第百四十九号議案、土地の売払いにかかわる経緯をお示ししたものでございます。
 一五ページをお開き願います。要求資料第4号、土地売払価格の積算根拠、周辺不動産の取引状況及び足立区予算計上額でございます。
 こちらは、第百四十九号議案、土地の売払いにかかわる価格の積算根拠、周辺不動産の取引状況及び足立区の予算計上額をお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○まつば委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○うすい委員 私から、足立区江北四丁目の土地の売り払いについてお伺いをしたいと思います。
 本議案は、私の地元であります足立区の案件でありまして、本委員会に所属する唯一の地元選出議員ということもありまして、幾つか確認の意味も込めまして質疑を行いたいと思います。
 本案件につきましては、私自身、昨年までは足立区議会議員の立場で、東京都からこの土地を購入すべく長年心血を注いできた一人でもございます。住民福祉の向上を目指し、東京女子医大病院を誘致するその第一歩が今、実を結ぼうとしているというのは感慨深くも思うところでございます。
 一方で、この土地の売り払いということをめぐっては、適正性、公正性が何よりも重要であることはいうまでもありません。そういう観点も踏まえつつ質疑を行わせていただきたいと思います。
 まず、本件土地の売却に至った経緯について、改めて確認のためにお伺いをします。

○山根財産運用部長 都有地は、都民から負託を受けた貴重な財産でありまして、最大限有効活用していくことが必要であると認識しております。
 まず、一般的な流れについてでございますが、行政としての用途が廃止された都有地につきましては、まずは、都の事業での活用の意向を各局に確認し、有効活用を検討いたします。
 都において利用の意向がない場合には、地元区市町村に情報提供をいたします。
 その上でも公共利用が見込めない場合には競争入札による民間への売却等を検討していくことになります。
 本件土地につきましては、都営住宅としての用途が終了し、ほかの都事業での活用意向がなかったため、地元の足立区に情報提供いたしましたところ、強い取得要望があったものでございます。
 足立区は、基本計画等において位置づけた区事業の実現のために、本件土地の取得を要望しているものでありまして、その事業について公共性が認められることから、都として協力すべきと判断し、売却するものでございます。

○うすい委員 都有地を売却するなど利活用に当たっては、まずもって公共的な利用を検討するということで、住民福祉の向上を第一に捉え、地元と十分に連携しながら進めているということがわかりました。
 こうした中で、本件土地は、三十七億円で売却する予定であるということでありますが、もとより都有地の売却に当たっては、いわずもがな適正な価格ということが大前提であることは論をまちません。
 そこで、本件土地の売却価格について、都としてどのように決定したのかについてお伺いいたします。

○山根財産運用部長 本件土地の売却価格についてでございますが、外部の専門家である不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、不動産鑑定評価基準等にのっとって取引事例比較法や開発法を適用して、いわゆる市場価格として三十七億円と算出されたものでございます。
 その上で、本年二月には、不動産鑑定士や弁護士等の外部の学識経験者が委員となって都有財産の処分に関する適正な価格などを審議する東京都財産価格審議会での評定を経て、売却価格として決定したものでございます。

○うすい委員 本件土地の売却価格が正当な手続のもとに決定されたということが確認できました。
 一方で、足立区における本件土地の取得に係る予算計上額は七十億円と聞いております。本件土地の売却価格は適正なものであるとは思いますが、両者の差異については疑念を持たれないような説明が必要であります。
 そこで、本件土地の売却価格と足立区の予算計上額七十億円との差異についてお伺いいたします。

○山根財産運用部長 足立区の予算額につきましては、外部鑑定評価をとるのではなく、比較的簡易な算定方法として、直近の相続税路線価に一・二五を乗じた金額、すなわち一般的な土地取引の指標であります地価公示価格に相当する額となりますが、これに予定地の面積全体を掛け合わせて算出した見積額であると聞いております。
 一方、都では、外部鑑定評価をとり、取引事例比較法や開発法を適用して売却価格を算出しております。
 具体的には、本件土地は、土地の規模が広大であることなどから、宅地分譲、すなわち戸建て住宅用地として開発することが最も有効な使用方法として鑑定評価において判断されたものでございます。
 広大地を開発するには、敷地内に道路等を整備する必要がありますので、実質的に使用できる面積が減少いたします。また、そうした道路造成等のコストも発生することから、それらを考慮の上、市場価格として算定した結果、地価公示価格と比べると低い価格となりますが、適正な価格であると認識しております。

○うすい委員 本件土地の売却価格は適正な価格であるということが確認できました。
 今後、本定例会での議決がなされた暁には、いよいよ正式に土地の売却が行われることとなるわけですが、病院整備が遅滞なく進むことを切に願うものでございます。
 そこで、本件土地の売却等に係る今後の予定についてお伺いいたします。

○山根財産運用部長 本件土地は、現在、足立区と土地売買契約の仮契約を締結している状態でございます。本定例会でご審議いただき、議決を賜りましたら、速やかに本契約を締結する予定でございます。
 なお、本件土地が区に売却された後には、平成三十三年度に病院が整備される見通しであると聞いております。
 今後とも、足立区とともに速やかに諸手続を進めてまいります。

○うすい委員 ただいまの答弁のとおり、病院の整備に向けて着実に手続を進めていただくことを切にお願いしたいと思います。
 これまでのやりとりの中で、都が適正な手続を踏んで適正な価格のもと、本件土地を地元へ売却するということ、また、病院整備が遅滞なく進んでいるということを確認することができました。
 今後とも、適正な財産利活用を行いつつ、都民生活のさらなる向上のため都有地を有効に活用していくことを期待して、質問を終わります。

○曽根委員 私からは、きょうの議案のうち、第百三十八号議案の十三号地新客船ふ頭ターミナル施設の新築工事及び百四十五号議案の街路築造工事、世田谷の三宿の街路ですが、補助二六号線について、二議案について質疑をさせていただきます。
 まず、百三十八号議案ですが、この議案は、晴海の客船ターミナルを、まだ建物として十分使える状態であるにもかかわらず、五輪の選手村の整備とその後のマンション開発のために、ターミナルを廃止して、選手村に一部活用するようですけれども、その後、撤去する、そのかわりに、新たに客船ふ頭として計画された経過があります。
 そして、東京湾では、地理的に有利な横浜港に既に東京港の約六倍、年間百七十八隻の大型客船が寄港している上に、現在、横浜の大黒ふ頭の大型改修が進み、横浜新港のふ頭整備も進み、大さん橋の国際客船ターミナルという三つのふ頭整備が進んでいる状況の中で、東京都は、あえて需要の見通しの不明確なままで、横浜の十倍近いお金をかけて、三百八十億円もかけた巨大ふ頭を整備するという、こういう開発のあり方の問題もあります。
 さらには、横浜港に比べて大型客船を受け入れるだけのノウハウの蓄積も東京都にはなく、公共交通機関の整備もおくれているという問題があります。
 私、実は、晴海の客船ターミナルができた直後に都議会議員になったんですけれども、せっかく新しいターミナルができたのに、その海側にレインボーブリッジをつくるということになったんですね。
 そのレインボーブリッジが、たしか海抜四十五メートルぐらいで、当時、「クイーン・エリザベスⅡ世号」が通らないと。いや、通るんですと。満潮を避ければ、そしてマストの一部を除去すれば何とかくぐれるんですという話があって、どうなんだという批判はあったんですが、その後、大型客船が次々と建造された結果、やっぱり避けられてしまったと。やっぱり閑古鳥が鳴いているわけですよね、いつ行っても。
 そういう経過も含めて、東京都は横浜港と争って、大型クルーズ客船を誘致できる力が--何も国内の港と競争しなくてもいいんじゃないかというふうに私は思いますけれども、こうした問題の中で、今回の議案はさらに、一者入札の中止案件となった経緯もありますので、その経緯も含めて、ちょっと質疑をしておきたいと思います。
 まず、お聞きしたいのは、今回、昨年十月の入札で一者入札のために一時中止になりました。その後、あと二回入札が行われているわけですが、その経過について少し詳しくお聞きしたいと思います。

○五十嵐契約調整担当部長 第百三十八号議案の入札経過でございますが、計三回公表いたしまして、三回目の今回で仮契約に至ったものでございます。
 一回目の入札は、予定価格五十四億一千八十万円、申請者一者、五洋を第一グループとするJVでございますが、平成二十九年十月三十日に申請一者のため入札手続を中止したものでございます。
 二回目は、予定価格五十四億一千三百八十万二千四百円でございまして、前回より三百万二千四百円の増額の上で再発注いたしまして、申請二者、株式会社塩浜工業、五洋・東亜・東洋JVの二者から申請がございまして、入札の結果は、塩浜工業が入札辞退、もう一者のJVが応札いたしましたが、一回目の入札では予定価格超過となりまして、再度入札を実施いたしましたが辞退となったため、不調となりました。
 三回目でございますが、予定価格六十億四千五百六十九万九千六百円、前回から六億三千百八十九万七千二百円の増額の上、再々発注いたしまして、申請一者、五洋・東亜JVが応札し、入札結果は五十九億八千百四万円、開札一回目で落札となったものでございます。落札率は九八・九三%でございます。

○曽根委員 この経過を見ますと、最初は、五洋、東亜、東洋という三社の一つのJVしか入札しなかった。二回目には塩浜工業が出てきましたけれども、辞退したと。結局、不調になってヒアリングを行ったわけですよね。その結果、予定価格を当初の一一・七%、二回目から比較すればもう少し低いんでしょうけれども、それに増額をした上で、これは事前公表されまして、高落札率で五洋を中心とするJVが落札をしているという経過です。
 この新客船ふ頭のこの間の整備の経過を見ると、やはり港湾のふ頭整備と、そして客船ターミナルの建設という、非常にある意味で特殊な工事であるということもあって、入札の企業が非常に限られているというふうに思うんですが、この新客船ふ頭整備にかかわる工事案件、何十件かあるようですけれども、金額の多い順に上から順番に五つぐらいの契約案件について見ると、落札企業というのはどういうふうになっているでしょうか。

○五十嵐契約調整担当部長 財務局がこれまで発注いたしました新客船ふ頭関連工事のうち、予定価格が高いものから順に申し上げますと、一番高額なものは、今回、第百三十八号議案でございます。
 二番目に高額なものにつきましては、平成二十九年第四回定例議会の付議案件で、平成二十九年九月に開札した岸壁工事でございまして、予定価格五十億五千二百三十万四千八百円に対しまして、落札者は東亜・本間JV、落札金額は四十八億八百十六万円、落札率は九五・一六%でございました。
 三番目は、平成二十九年第一回定例議会付議案件で、平成二十八年十二月に開札いたしました駐車場等用地建設工事で、予定価格は四十九億四千五百三十七万四千円に対し、落札者は五洋・あおみ・みらいJV、落札金額は四十八億七千八十万円、落札率は九八・四九%でございました。
 四番目は、平成二十九年第二回定例議会付議案件で、平成二十九年四月に開札いたしました駐車場等用地建設工事、予定価格三十四億三千百二十万三千二百円に対しまして、落札者は五洋・清水・りんかい日産JV、落札金額は三十二億九千四百万円、落札率が九六%でございました。
 五番目は、平成三十年第一回定例議会付議案件で、平成二十九年十二月に開札した岸壁工事でございます。予定価格二十八億四千九百二十九万九千二百円に対しまして、落札者は東洋・不動テトラJV、落札金額は二十七億六千二百六十四万円、落札率は九六・九五%でございます。

○曽根委員 今五つ挙げていただきましたが、その全てに今回落札のジョイントを組んでいる五洋と東亜と東洋のいずれかが入っているわけです。五洋は三つ入っているわけです。いずれもいわゆるマリコンといわれる大手の、こうした港湾施設を得意とする企業なんでしょうけれども、それにしてもこの五つの契約で、三百八十億円といわれている総事業費の半分以上を使っての大型の事業が行われるということになっています。
 私は、こうした特殊な施設ですから、これがどうしても必要な場合には入札企業が限られるということはあり得るとは思いますけれども、しかし、こうした巨額の予定額の案件を、一者入札かつ九九%以上の落札率で特定のスーパーゼネコンがとっていくというようなことは、主に、都民の要望や何かとかけ離れたところで起きることが多いんですよ。
 例えば、豊洲の汚染対策工事や、それから施設建設にかかわる、私どもも入手した談合疑惑も、やはり一者で、かつ一〇〇%近い落札率でした。この構造と、今回の新客船ふ頭についても非常に似通ったものを感じるわけです。国の方ですけれども、外環道の今談合疑惑が出ている、これも一者入札、四つの地中拡幅工事のブロックをそれぞれスーパーゼネコンが各一者ずつ頭になって落としていくというやり方などを見ても、やはり、都民に理解されるような透明性を確保した、また、正当な競争が保障されるような方向に東京都の入札のあり方を改革していくためには、私たちはその第一歩として、一者入札、高落札率のものについてチェックするということは、改革の入り口にはなるというふうに評価したんですけれども、しかし、さらに本当に突っ込んでこの実態を改革していくためには、その大前提として、まず疑惑を生み出す温床となっている都民の要望や利益にかなわないようなゼネコン優先の巨大開発の根を断ち切る必要があると、財政運営のかなりの部分が都民の要望から離れた点につぎ込まれているんじゃないかと、この点の改革が必要だということを申し上げておきたいと思います。
 それからもう一つ、今回の契約案件で、一者入札で中止をし、やり直した案件であります第百四十五号議案についてもただしておきたいと思います。
 これは世田谷区三宿の特定整備路線の補助二六号線の街路整備工事ですけれども、これは住宅地域に、あえて盛り土をして道路をつくり、その道路と交差する生活道路は、盛り土の下のトンネルで通すという特殊な構造のために、周辺地域の住民にとっては、道路でまちが分断されるだけではなく、それと交差する道路はくぐらなきゃならないという点で、周辺住民の反対が非常に強いものです。
 また、道路の両側を擁壁で固める部分がありますので、工事費の見積もりも難しいという問題もあったみたいです。
 それで、本契約案件では、三回にわたる入札が行われましたが、応じた企業またはジョイントベンチャーが入れかわったというような経過があると思いますけれども、どういう経過でしょうか。

○五十嵐契約調整担当部長 一回目の入札におきましては、平成二十九年八月二十五日に、申請一者、新舘・高橋組興業JVの申請で、一者以下の申請だったために入札手続を中止いたしました。
 二回目は、平成二十九年十二月十一日に開札し、単体で応募した二者、北野建設、関電工と、JVを組んで入札に参加した新舘・高橋組興業JVの計三者が参加いたしまして、北野建設のみ応札がございまして、入札率は一一二・二六%ということで予定価格を超過したため、不調としたものでございます。
 第三回目につきましては、平成三十年四月十二日に開札いたしまして、単体での応募、北野建設一者が応募いたしまして落札となったものでございます。

○曽根委員 この議案の場合は、一回目の応札者が二回目で途中で断念をして、残った北野建設が三回目でようやく、ほぼ満額ですね、九九%以上で落札をしているという形です。
 この案件の問題点は、一つは道路構造の難しさで、平地に道路を通すよりもはるかに手間がかかる案件なんですよね。
 また、盛り土と擁壁の上に道路を通す形ですから、周辺住民から見れば、目の前を塞がれ、その向こう側へはトンネルを抜けないと行けない、その上から自動車騒音と排気ガスがおりてくるという、到底納得できないという方が多いわけです。
 工事を請け負う企業からしても、地権者の住民はもう立ち退いた後ですが、しかし、周辺住民から非常に迷惑の目で見られながらの工事や擁壁の工事など、リスクも大きいと。地域住民が反対している方が大変多い、環境問題やまちを分断する道路計画として、本来ならば見直しが求められている事業を、特定整備だということで、かなり強引に進めているということが、こうした困難と矛盾を生み出しているということを指摘しておきたいと思います。
 後で、入札改革についての質疑も行いますが、一者入札、高落札率については、中止をして見直しをするということは、改革の第一歩として評価をいたしますが、それだけで東京都の抱えている入札問題を打開していくのは、かなり難しいだろうと私たちも考えております。
 さらに突っ込んだ改革の道が求められているということを指摘して、議案案件についての質疑は終わります。

○上田委員 まずは、資料1にあります契約議案についてでございます。
 入札参加条件を決める規則、要綱、要領それから基準などがあるのか、あればお示しください。

○五十嵐契約調整担当部長 提案しております契約案の入札参加条件につきましては、関係法令はもとより、東京都契約事務規則、東京都指名業者選定委員会規則、東京都工事請負指名業者選定基準、共同企業体が参加しうる入札案件における建設工事の発注取扱要綱などに基づき、案件ごとに設定しているところでございます。

○上田委員 ありがとうございます。基準について、都庁ホームページ内の検索窓から、いろいろ検索、当該基準のフル固有名詞を入力してもヒットしなかったのでございまして、こっちの探し方が悪かったのかもしれませんけれども、それについては、今後、都庁ホームページの検索窓でヒットできるシステムというのが欲しいかなというふうにも思っておりますので、これはまた改めて、いろいろと確認させていただきたいと思います。
 今のご報告につきまして関連しますが、誰がそれぞれの入札参加条件を決定するのか、指名業者選定委員会などの組織において決定しているのか、確認させてください。

○五十嵐契約調整担当部長 まず、一般競争入札の入札参加条件につきましては、地方自治法施行令の百六十七条の五及び同条五の二の規定に基づきまして、工事の実績、経営の規模あるいは技術的適性の有無について、通常は、恣意的にならないよう過去の同種工事で付している標準的な条件を基本として設定しておりますが、特殊な工事等におきましては、工事特性について事業局の意見や、それから入札参加者数の確保などについて検討した上で、競争性と適正な履行を確保する観点から、必要最小限の入札参加条件を付すこととしております。
 次に、こうした入札参加条件を含めた契約案件の最終決定につきましては、東京都事案決定規程及び財務局事案決定実施細目に基づきまして、契約手続所管課の担当者の起案に対して、直属の課長が審議するほか、契約制度を所管する部署の部長、課長の協議を経るなど、組織的チェックを十分に行った上で、契約案の予定価格に応じた決定権者、具体的には、局長、部長等が案件ごとに決定しております。
 なお、指名業者選定委員会は、入札参加条件に基づき、入札参加資格の確認、指名等の審議を行っているところでございます。

○上田委員 重ねて確認させていただきますけれども、各工事案件に係る入札参加条件、いろいろ、るる今ご説明いただきましたけれども、どれ一つ外しても都民にとって不利益になるものなのかどうか、ご見解をお示しください。

○五十嵐契約調整担当部長 先ほども答弁申し上げましたが、入札参加条件につきましては、競争性と適正な履行を確保する観点から、必要最小限の入札参加条件を付すこととしております。
 都といたしましては、競争性の観点から、より多くの事業者に入札に参加していただくことが望ましいと考えておりますが、技術的難易度の高い工事や大規模な工事につきましては、十分な技術力や経験を有しない事業者が受注した場合、適正に工事を施工できず、事業執行に大きな影響を与えるおそれがあることから、発注工事の確実な履行と品質を確保するため、入札参加条件には一定の技術的要件を付す必要があるというふうに考えてございます。

○上田委員 広く門戸を広げたいが、技術的な要件を満たすという、二つのバランスをとりながらの条件設定という、あとは都における選定というところが、途中まで確認できました。
 では、十一件の工事案件それぞれの入札参加条件において、都の登録事業者中、入札参加可能事業者数は幾つか教えてください。また、そのうち入札に参加した事業者数は何者なのか、各工事案件の入札結果一覧としてお示しいただければと、お願いします。

○五十嵐契約調整担当部長 それぞれの入札参加条件につきましては、入札参加可能業者数及びそのうちの入札参加申請者数につきましては、お手元の資料第1号、財政委員会要求資料一ページの番号1から順に追ってご説明申し上げます。
 まず、番号1でございます。十三号地新客船ふ頭ターミナルは、単体またはJVの第一順位となれるものは四十者、入札参加者数はJV一者でございます。
 それから、番号2、水元特別支援学校は、単体またはJVの第一順位となれるものは九十三者、入札参加者数は単体で七者、JVが三者の計十者でございます。
 番号3、町田の丘学園は、単体またはJVの第一順位となれるものは百六十五者、入札参加者数は単体で六者、JV二者の計八者でございます。
 番号4、東京スタジアムは、単体で五十者、JVの第一順位となれるものは三十七者、入札参加者数はJVのみで一者でございます。
 番号5、多摩消防署は、単体で二百九十一者、JVの第一順位となれるものは三百十一者、入札参加者は単体のみで十五者でございます。
 番号6、中防内五号線は、単体またはJVの第一順位となれるものは百九十六者、入札参加者は単体で十九者、JVが二者の計二十一者でございます。
 それから番号7、新宿歩行者専用道は、単体またはJVの第一順位となれるものは六十三者、入札参加者はJVのみで一者でございました。
 番号8、街路築造三宿につきましては、単体またはJVの第一順位となれるものは百五十五者、入札参加者は単体のみで一者でございます。
 番号9、和田堀公園調節池は、単体で五十者、JVの第一順位となれるものは六十八者、入札参加者は単体のみで二者でございます。
 番号10、野川大沢調節池は、単体で百五十三者、JVの第一順位となれるもので二百四十五者、入札参加者は単体が一者、JVが六者の計七者でございます。
 番号11、東京スタジアムの電気工事につきましては、単体またはJVの第一順位となれるもので四十四者、入札参加者は単体が一者、JVが一者の計二者でございました。

○上田委員 ご報告ありがとうございました。口頭での報告になるので、次回からは、ぜひ委員会の皆様と共有したいので、資料要求をしたいと思います。
 今のご報告と今回の資料要求の資料と、そして第二回定例会の契約案件入札等結果は、委員の皆さんもお持ちだと思うんですけれども、この三者を照らし合わせますと、一者入札、入札制度改革というものの概要が見えてくるのですけれども、分母が、本来は何者エントリーが可能で、そのうち何者がエントリーしているのか、何者しかエントリーしていないのか、その上、エントリーしたのにやっぱり辞退する人もいるという、全容が見えてくるということでご確認をさせていただいております。それも、やはり制度改革の中でのどう改革をしていったらいいのかというのを、この委員会で共有ができるかなということで、今、たださせていただいている次第でございます。
 では、技術者の配置困難を入札辞退の理由とした業者がございますが、この理由での入札辞退は、散見されるんですけれども、防ぐ方法があるのか、あるいはこの理由での入札辞退を認めない入札参加条件、先ほど説明いただきましたけれども、可能かどうかについてご説明ください。

○五十嵐契約調整担当部長 入札を辞退する理由といたしましては、予定価格を超過するとか、あるいは必要とされる技術、それから施工現場の状況、他工事受注による技術者配置や施工体制確保が困難だといったような理由がございます。
 お話の技術者配置困難による入札辞退を禁止するということにつきましては、事業者、特に技術者の少ない中小企業に対しましては、他の自治体や民間工事の受注を事実上制約するようなこと、それから確実に受注できるとは限らない都の競争入札への参加を減少させ、かえって競争性の低下を招くおそれがあるというふうに考えております。

○上田委員 門戸を開いてもやはり、入札辞退するような理由ができちゃうと、別にこっちがフェアでも--まあ、辞退する自由というのもあるというようなことなのかもしれません。
 では、低入札の方に、ちょっと今視野を向けてみたいと思います。
 失格基準による失格業者及び調査票等の不足不備の業者、もしくは未提出の業者に対するペナルティーなどはあるのでしょうか。

○五十嵐契約調整担当部長 低入札価格調査時の基準となります低入札価格調査制度に係る調査マニュアルにおきましては、落札者としない基準、失格判定の基準等を定めております。
 この中では、失格基準による失格者及び調査票の不備不足または調査票の未提出者は落札者としないというふうに決めておりまして、それ自体が、お話のペナルティーに該当するものというふうに考えております。
 低入札調査制度を悪用したような、悪意を持った事業者が、意図的に談合等を目的として辞退するというようなことについては、その可能性は全くないというふうにはいえないところでございますが、予定価格の事後公表を適用する大規模な工事におきましては、事業者が低入札調査基準価格を正確に積算することは、かなり難しいことでございまして、基準価格をもとにした談合等の可能性については極めて低いものというふうに考えてございます。
 そうした中で、事業者が積算した入札価格が、都の設定した基準価格を下回った場合に、談合に関する証拠がない、あるいは談合の可能性ということで、調査票の未提出や不備をもってペナルティーを科すことにつきましては、なかなか事業者の納得を得ることが困難だというふうに考えております。
 その結果、かえって事業者が、都の競争入札に参加する意欲を損ね、競争性の低下を招くおそれがあるのではないかというふうに考えてございます。

○上田委員 ご説明いただきましたが、私は、低入札ペナルティーについて、落札者としてならないことが、低入札ペナルティーであるシステムを利用することが、従前の一者のみ予定価格以内でその他の入札参加者が全て予定価格をオーバーとする高額談合の逆パターンである談合にならないかと懸念しているものであります。
 仮定であっても可能性があらば、それらを一つ一つ修正し、より適正なシステムを構築していくことが、都民から信託を受けていくと思いますので、引き続いての検証をお願いしたいと思います。
 このような状況を踏まえて、今後の対応と入札への反映についての見解をご説明ください。

○五十嵐契約調整担当部長 低入札価格調査制度につきましては、受注者、発注者双方の事務負担の軽減の観点からも改正する予定はございませんけれども、お話の技術者配置困難による入札辞退を防ぐことを含めまして、より多くの事業者の入札参加を促すことは重要と認識しております。より多くの事業者が参加することによって、談合もしにくくなるという効果があるというふうに私ども考えてございます。
 そのため、都では、発注工事が年度後半に集中することによって生じている配置技術者不足を解消いたしまして、入札辞退、不調を抑制するため、関係各局と連携いたしまして、工事発注時期の平準化に現在取り組んでいるところでございます。
 あわせて、電子調達システムの入札情報サービス上で、年間発注予定表に工事発注規模を明記することで、事業者が受注計画を早期に検討し、都の入札への参加の判断や準備がしやすくなるよう改善を図っているところでございます。
 今後とも、こうした取り組みを着実に進めまして、入札の競争性、透明性、公正性を確保し、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

○上田委員 それではまた、るる課題が、入札制度改革の方で質問をさせていただきたいと思います。
 土地の売り払いについてです。
 足立区におきます区東北部の足立区における病院整備の基本方針、江北エリア計画と東京都の連携状況について。ともかくこの女子医大のセンターですね、足立区、荒川区といった、同じ医療圏の中での移動ということで、余り皆様に、地域住民に迷惑をかけず、足立区にとっては、同僚委員もいいましたけれども、待望の東京都の二次医療指定、そして厚生労働省の三次医療指定病院ができるということは、地元についても待望の計画だったというふうに聞いております。
 その連携状況等々、足立区におけます計画の連携状況について、資料3にもございますけれども、時系列で経緯を伺いたいと思います。

○山根財産運用部長 本件土地につきましては、平成二十五年に都営住宅としての用途は終了いたしまして、除却が完了しました後、平成二十九年七月に、ほかの都事業での活用意向を各局に確認いたしましたが、特段の意向がなかったことから、同九月に地元足立区に情報提供をいたしました。
 一方、足立区では、平成二十九年三月に、区東北部の足立区における病院整備の基本方針を策定し、また、現在策定中である江北エリアデザイン計画を実現するために、本件土地が必要との考えから、平成二十九年九月に、都に対して取得要望があったものと認識をしております。

○上田委員 つきましては、東京女子医科大学東医療センター建設における売却後の土地建物の所有者とそれぞれの費用負担について確認をさせていただきたいと思います。

○山根財産運用部長 本件土地の売却につきましては、足立区が契約主体として費用負担し、土地所有者となるものでございます。
 売却後は、土地を借り受ける予定であります学校法人東京女子医科大学が、その費用負担で東京女子医大東医療センターを建設し、その建物を所有すると聞いております。

○上田委員 ということは、土地以外の建設費は、女子医大の方が全て建設費も出して負担をするということであります。確認させていただきました。
 奇遇にも、うすい委員と問題意識が一緒ということで、私も同じになるとは思わなかったのですが、資料4号は私が集めさせていただきまして、足立区の方にも確認させていただきまして、七十億円ということで準備をしていたと。
 売る場合は三十七億円で、ここは今、森友問題でも騒がれていますことから確認もしたいということで、もっと調べますと、足立区は基金として百二十億円積み立てておりまして、そういったことの中で、この辺の乖離が、なぜ生じたのか。今確認させていただいた、建設した後というのは病院側が全部負担をする中で、財政調整交付金が最も多い足立区において巨額の投資ということになることで、いま一度、私の方の問題意識も踏まえまして、4号に基づきましての妥当な、資料のように、足立区の予算編成において土地相場価格は調べたはずではなかったのか。
 財政調整交付金第一位の足立区には巨額の投資になるにもかかわらず、乖離が発生した理由について、上田の問題意識につきまして、ご回答いただければと思います。

○山根財産運用部長 本件土地の売却価格についてでありますが、都は、外部鑑定評価をとりまして、近隣の大規模な土地の取引事例との比較や広大地による開発コスト等を踏まえまして、市場価格として算出いたしました。
 一方で、足立区の予算額につきましては、直近の相続税路線価を参考に算出した簡易な見積額であると聞いておりまして、こうした算出方法の違いによって、価格の差異が生じたものと考えております。

○上田委員 確認いたしました。予算等余れば、それはまた振りかえる等、足立区の方でなさると思います。
 さて、これ、ことしの三月の二十七日に、売買契約、仮契約ですけれども、なされているということで取り寄せさせていただきました。というのも、やっぱり森友問題じゃないんですけれども、土壌汚染、豊洲の問題もありました。売ったもののどうなっていくのかということで、私たちは大変、百条委員会等でも大いに議論をしたところで、土地売買契約仮契約書を取り寄せたところ、第八条、甲はこの土地に隠れた瑕疵があってもその責めは負わない、要は、東京都はもう売ったらば、何の瑕疵も負わないということで、都としては、特にこれから費用負担が出ないのかなということは一安心したんですが、当該土地に土壌汚染、地下埋設物が発見された場合の除去費用負担についてはどうなっているのか、契約の詳細について改めて確認させてください。

○山根財産運用部長 本件土地につきましては、土地利用の履歴等から、土壌汚染のおそれがないものとして環境局への届け出も完了しております。
 また、地下埋設物につきましては、都営住宅除去の際に撤去をしておりますほか、位置的に敷地外に影響を及ぼす可能性があるものは一部残置しておりますが、それらは鑑定評価において考慮をしております。
 このように、事前に予見し得るものは既に考慮済みと考えております。が、それでもなお、事前に予見し得ない土壌汚染や地下埋設物がもしも発見された場合には、隠れた瑕疵として、都はその責めを負わないものとするとの契約内容になっているものでございます。

○上田委員 今までのさまざまな対策もとられ、有事の際も都は負担しないでいいということを確認させていただきまして、安心して正式な売買契約が結べるということを確認させていただきましたが、都有地は貴重な都民財産でございます。
 区市町村のニーズに応じての売却は、公益性のもと有効活用となりますことですが、適正な価格とプロセスの透明性を今後も確保されまして説明責任を果たすよう求めまして、私の質疑を終わります。

○まつば委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○まつば委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十九分休憩

   午後三時三十五分開議

○まつば委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 報告事項、入札契約制度改革の本格実施について外一件に対する質疑を一括して行います。
 本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 それでは、先日の委員会におきまして要求のございました報告事項に関する資料についてご説明申し上げます。
 お手元に配布してございます財政委員会要求資料をごらんください。
 表紙をおめくりいただき、目次をごらんください。今回、報告事項に関して要求のございました資料は、要求資料第5号から第8号までの四件でございます。
 一六ページをお開き願います。要求資料第5号、「入札契約制度改革に係る業界団体からの知事ヒアリング」における各団体からの要望でございます。
 こちらは、本年四月二十六日に開催しました知事ヒアリングに出席いただきました業界団体の一覧と各業界団体からの主な意見及び要望を事項ごとに一六ページ及び一七ページにお示ししたものでございます。
 続きまして、一八ページをお開き願います。要求資料第6号、予定価格の事後公表と事前公表との使い分けに係る考え方についてでございます。
 こちらは、低価格帯の工事案件における予定価格の取り扱い及び予定価格を事前公表とする範囲の設定について記載してございます。
 一九ページをお開き願います。要求資料第7号、予定価格の公表時期を区分する価格帯別の契約実績でございます。
 こちらは、予定価格の公表時期を区分する工事種別ごとの価格帯別の契約実績を、平成二十五年度から平成二十九年度の各年度別に一九ページ及び二〇ページにお示ししたものでございます。
 二一ページをお開き願います。要求資料第8号、工業用水ユーザーの業種別等件数内訳及び集合住宅の区別件数等内訳でございます。
 こちらは、上段に工業用水ユーザーの地域別、使用水量別、使用開始年度別に、業種別の内訳を、下段に集合住宅についての区別の件数及び供給戸数内訳をお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○まつば委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○石川委員 入札契約制度改革についてお伺いいたします。
 東京都は、昨年六月から、財務局所管の入札契約案件について改革を試行し、各局も十月から試行を実施いたしました。試行の主な点は、予定価格の事後公表、JV結成義務の撤廃、一者入札の中止、低入札価格調査制度の適用拡大等となっております。
 そして、入札契約制度改革は試行期間を終え、その経験を踏まえて本格実施の方針が示されたところであります。
 そこで、この間の経緯を全体的に総括をしながら質疑を進めていきたいと思います。
 猪瀬、舛添知事と二代続けて知事が辞職をするという事態に至ったことは記憶に新しいところであります。私も二年前の総務委員会で、舛添知事のさまざまな疑惑の究明のため質問に立った一人であります。辞職に至った理由を大くくりすると、古くて新しいともいえる政治と金の問題と公私混同疑惑をめぐってといえるわけであります。
 煎じ詰めると、都民国民の税金を一円たりとも無駄にしないということであり、その使途に説明責任を果たすということが必要になるわけであります。
 小池知事の出発点はここにあり、果たすべき第一の使命は、このことにしっかり応えられるための諸施策の検証であり、具体的な改革といえるわけであります。情報公開の重要性も、政策決定プロセスや結果のアカウンタビリティーを高める手段といえるわけであります。
 知事の交代は、議院内閣制の国の政権交代とは違いますが、ある種の政権交代であり、人事の停滞や制度のゆがみを正していくための揺らぎを与えることで、組織の活性化や制度の安定化、資源配分を正すことを図っていく機会となるわけであります。
 都政を進める上で、今まで何回となく特別顧問の活用による政策見直しは問題があるとの意見が出されましたが、しかし、一定の期間、外の目で施策を見直ししていくための手段として、顧問制度を選択することは何ら問題がないことと指摘をしておきたいと思います。
 都議会も、議員自身、身を正す意味もあって、議員報酬の削減、政務活動費の削減、費用弁償の廃止を初め、情報公開のための常任委員会のインターネット中継等、議会改革も今も取り組んでいるところであります。
 本年三月、入札監視委員会から、入札契約制度改革に係る検証結果報告書が示されたところであります。小池知事及び都政改革本部主導の改革は、これまで行政側からはなし得なかった幾つかの変化を実現した、入札監視委員会の審議が原則公開されるようになったと記しておりますが、具体的にどのような経緯と内容だったのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 平成二十九年三月末に公表いたしました入札契約制度改革の実施方針において、入札監視委員会の機能強化は、入札契約手続のチェック体制の強化策の一つとして位置づけられており、昨年度から積極的に取り組んでいるところでございます。
 具体的には、委員の定員を七名から十二名に増員し、制度部会と監視部会という常設の二種類の専門部会を設置し、議題に応じて集中的に審議できる体制を構築するとともに、審議は可能な限り公開で実施し、後日、議事録を公表するなど情報公開の徹底も図っております。
 今回の入札契約制度改革につきましても、試行の検証作業を実施した制度部会におけるさまざまな議論は、全て公開の場で実施したところでございます。
 こうした取り組みを通して、試行の検証作業に係る客観性を高めることができたものと考えております。

○石川委員 情報公開は、政治や行政における決定プロセスが不透明だと非効率な事例や不公正な事例が生ずるおそれがあるため、誰がどのような根拠で決定を行ったか、都民、国民が監視することができるようになるわけで、隗より始めよの例えのとおり、入札監視委員会の透明性をまず高めてきたことは答弁からわかりました。
 入札契約制度の見直しは、都民の税金の支出が適正に行われているかどうかチェックする上で最も重要な仕事の一つであり、制度の検証は、当然行わなければならなかったわけであります。
 ただ、制度にはおのおの歴史があり、法律の根拠があるわけですが、そこで、地方自治法では、入札契約制度についてどのように言及をしているのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 地方自治法第二百三十四条におきまして、売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約または競り売りの方法により締結するものとされております。このうち、指名競争入札、随意契約または競り売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができると定められており、地方公共団体の契約は、一般競争入札によることが原則とされております。
 また、一般競争入札または指名競争入札に付する場合におきましては、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申し込みをした者を契約の相手方とする、いわゆる最低価格自動落札方式を原則としておりまして、その例外として、最低制限価格制度、低入札価格調査制度や総合評価方式が定められているところでございます。

○石川委員 入札契約に係る事務の基本は、地方自治法に定める最少の経費で最大の効果を求めることであり、東京都は、都民の皆様から預かった税金の無駄な支払いを排除し、最も効率的、効果的に行政施策を実現するために活用する責務があるわけであります。
 総務省のホームページでも、地方公共団体における調達は、その財源が税金によって賄われるものであるため、よりよいもの、より安いものを調達しなければなりません、そのため、地方公共団体が発注を行う場合には、不特定多数の参加者を募る調達方法である一般競争入札が原則とされています、一方、この原則を貫くと調達の準備に多くの作業や時間が必要となり、結果として当初の目的が達成できなくなるなど弊害が生じることがあり得ます、このため、指名競争入札や随意契約による調達が例外的な取り扱いとして認められております等々と述べられており、さらに地域活性化の観点から、地元企業が受注し地域経済に貢献することも求められており、この点も踏まえ調達がなされる必要がありますと述べております。
 競争性、透明性、公正性、経済性の観点から、競争入札を基本とし、競争性をどう確保していくのかが、まず検証の対象になるわけであります。
 そこで、都の入札契約制度改革のバブル経済崩壊前から現在に至る経緯についてお伺いいたします。

○五十嵐契約調整担当部長 国や地方公共団体の入札契約制度は、戦後から高度経済成長、バブル期を通じて、指名競争入札、最低価格自動落札方式を中心として運用されてまいりましたが、バブル経済崩壊以降、制度を取り巻く環境は大きく変化してまいりました。
 平成十二年に制定された入札契約適正化法では、この間の談合事件や汚職事件などの不正行為の多発に対応するため、予定価格の公表、一般競争入札の拡大など、入札手続の透明性の向上に向けた取り組みが強化されてまいりました。
 また、バブル後の景気後退により、建設投資の減少が続き、公共工事のダンピング受注が増加し、品質低下の懸念が高まる中で、平成十七年には品確法が制定され、総合評価方式の拡大等の品質確保に向けた取り組みの強化が図られてまいりました。
 さらに、平成二十六年の改正品確法では、老朽化する社会資本の維持更新を支える建設労働者の高齢化に伴う担い手不足について、中長期的な育成、確保の観点から、社会保険等への加入などの労働環境整備などの取り組みを進めていくことが追加されたところでございます。
 都におきましては、こうした国の動きを踏まえながら、バブル期以降、予定価格の公表、最低制限価格制度の見直し、総合評価方式の適用拡大などを進めてまいりました。
 平成二十八年三月には、品確法の改正や東日本大震災に伴う入札不調などへの対応といたしまして、入札に参加しやすい環境の整備に向けての取り組みを開始いたしまして、適正な予定価格の設定、ダンピング対策の推進、発注時期の平準化などの取り組みを進め、平成二十九年六月からは、今回の入札契約制度の実施方針に基づき、事後公表、JV結成義務の撤廃などの試行を実施してきたところでございます。

○石川委員 バブル経済崩壊以降の流れはよくわかりました。
 そこで、入札価格事前公表制度が導入された理由について伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 都におきまして、従来非公表としていた工事案件の予定価格について、平成十年より一部案件を除き事後公表を実施しておりましたが、平成十三年に都で発生いたしました工事契約に係る汚職事件を踏まえ、契約の透明性の一層の向上や不正行為の可能性の排除を目的に、平成十四年より競争入札に付す工事契約案件の全てに事前公表を導入したところでございます。

○石川委員 入札価格の事前公表は、予定価格の積算等の情報漏えい事故を防ぐことが可能であることに力点が置かれたわけであります。
 また、事前公表は、各事業者が入札価格を積算する上でのメルクマールともなってきたことも確かなわけであります。
 今回の入札契約制度改革を始める要因として、豊洲新市場建設などに見られる一者しか入札に参加せず、しかも予定価格の事前公表で、予定価格の九九・九%で落札をされるという結果が、都民から見て競争性や公正性に疑義が持たれることにつながることも挙げられているわけであります。
 そこで、予定価格の事前公表、一者入札でどのように競争性を担保してきたのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 競争入札におきまして、競争性を担保するためには、予定価格の事前公表、事後公表のいずれであっても、より多くの入札参加者を確保することとともに、入札参加者が自分以外の他の入札参加者の存在をわからないようにすることが重要と考えております。
 都が採用しております電子入札のもとでは、入札手続のほぼ全てをインターネット上で行うため、入札に参加する事業者は、落札者が決定されるまでの間、自分のほかに誰が入札に参加しているのかを知る手段はなく、結果的に一者だけの応札になった場合でも、応札した事業者は自分以外の応札者の存在を前提として入札することとなるため、事前公表であっても潜在的に競争性は担保されているものと考えております。

○石川委員 都では、ほぼ全ての手続をインターネット上で行う電子調達システムが導入されていることから、他に参加者がいるかどうかわからないことから競争性は担保されてきたということなわけであります。
 しかし、一者入札については、競争の過程が潜在化しており、都民に見えにくく、都民に疑念を抱かせるおそれがあることから、競争入札における契約の透明性、公正性を高めるため、入札参加希望者が一者以下の場合は入札手続を一度中止し、入札参加条件の緩和など試行では行ってきたわけであります。
 試行の後、一者入札を許容することになった経緯について伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 一者入札の中止につきましては、試行を検証した入札監視委員会から、都の事業進捗へのおくれを発生させ、ひいては都民サービスの低下につながるおそれが高いとのご指摘がございました。
 また、業界団体からは、一者入札の中止により入札に参加するための積算等の準備が無駄になってしまい、安心して入札に参加できないという意見もいただいたところでございます。
 一方で、今回の制度改革の主な狙いである、より多くの事業者に入札に参加してもらう環境の整備につきましては、JV結成義務の撤廃など他の取り組みにより着実に成果が出ているところでございます。こうしたことを総合的に勘案いたしまして、本格実施におきましては、一者入札の中止は実施しないこととしたものでございます。
 なお、今後は、入札参加者が一者以下となった場合には、辞退者等にその理由を聴取するなど、これまで以上に原因調査の取り組みを強化することにより、入札参加者をふやす努力を、今後、継続してまいります。

○石川委員 入札参加がそもそもない工事などもあり、また不調の多い工事、施工困難工事など、特別な事情がある場合、事業停滞を防ぐために一者入札を認めることも、試行の中で、その必要性が明らかになったわけであります。
 また今回、議案として出されております契約案件は、先ほど説明がありましたけれども、参加者が極めて少ないのが目立つわけであります。
 例えば、東京スタジアムに係る工事の議案は、入札参加可能であるのは四十四社であり、そのうちの一JVのみが参加をしたということになったわけでありますけれども、最初に東京スタジアムが建設された工事に参加しているわけでもない、建設のノウハウを蓄積しているわけでもないにもかかわらず、一JVしか希望企業がないということは、これは民需等が今は非常に強いということが推察されるわけであります。入札参加者数は極めて景気等に左右されるということになるかと思います。
 入札契約において重視しなければならないのが品質の確保と納期、竣工時期の厳守なわけであります。商品売買と同じで、工事でも高かろう悪かろうは問題外なわけでありますけれども、安かろう悪かろうも防がなければならないわけであります。ダンピングによる入札契約がこれに当たるわけであります。
 この間、工事の入札契約について、受注者が倒産をした件数と内容について伺います。
 また、倒産によって発注者である都の利益はどのように守られているのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 平成二十五年度から二十九年度までの間に、工事請負契約において受注者の経営不振や破産手続開始等により、都が契約を解除し、受注者が入札参加禁止措置を受けた件数は二十一件ございまして、対象企業の多くが結果的に倒産に至っているところでございます。
 受注者の履行不能により契約解除となった場合には、契約保証金を免除している場合を除き、都の経済的損失に対し、履行保証保険や契約保証金により金銭的な補償がなされることになっております。
 一方、解除された工事請負契約の未完成部分については、別の事業者との契約を結び施工することとなりますが、契約等に係る事務負担が生じることに加えまして、完成時期が当初の見込みよりおくれる場合、都民サービスにも影響を及ぼすおそれがあるというふうに考えております。

○石川委員 入札契約の実態を工事関係で見ますと、平成二十五年以降、事業者の経営悪化、すなわち倒産によって、契約の履行不能件数は二十一件であり、事業は一時的に中断されることになっても、それらは新たに入札契約を実施し、事業は完遂されているわけであります。
 さらに、都の工事関係事業に参加する各事業者は、保証会社の保証をつけることを義務づけられており、当事業を契約した事業者が契約を履行できなくなっても、都の損害は実質的には発生しない仕組みになっています。
 このことによって、入札契約における工事履行上の財政上の安全性は、受注事業者が倒産をしても確保されているというふうにいえるわけでありますし、工期延長による影響を除けば、結果として都の利益は守られてきたわけであります。
 低入札で契約に至った場合、工事の質はどのように担保されているのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 受注者の適正な履行を確保し、ダンピングを防止する観点から、低入札価格での契約につきましては、厳格な低入札価格調査を実施し、確実な履行がなされると判断できる場合に契約を締結することとしております。
 現在、低入札価格調査では、下請業者に不当なしわ寄せを生じないよう法定福利費が適切に計上されているかなど、積算内訳書の妥当性のチェックに加えまして、施工体制に関する調査や過去の工事成績評定をもとに、その履行状況の確認等を行うことで、当該案件の内容に適合した履行能力があるかどうかを判断しております。
 また、契約締結後におきましても、施工体制台帳などにより、粗雑工事の防止のための技術者の増員配置や下請業者の社会保険加入が適切に行われているかどうかを厳重に確認することとしております。
 今後も、こうした厳格な運用を続けることにより、工事の品質確保とダンピングの防止に努めてまいります。

○石川委員 低入札についても、低入札価格調査制度によって、工事の質の低下を防止するために、都の工事の主管課は落札業者に対して、技術者の増員を図り、監督体制の強化を図ることとなっており、工事成績評定も厳密に行うことになっております。
 今までに、低入札ということで際立った問題が発生したことはなく、この面での工事履行の安全性は図られているわけであります。
 また、そこで働く人たちの社会保険等の加入についても、施工体制台帳で確認がされているわけであります。
 公共工事の現場では、地域の業者に活躍する場を提供し、中小企業の成長や育成を図っていくことも大きな政策課題となっております。
 官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律において、地方公共団体は、国の施策に準じて、中小企業者の受注の機会を確保するために必要な施策を講ずるように努めなければならないとされております。各地方公共団体において、これらの規定を適切に活用していくことが求められているわけであります。
 JV制度は、中小企業の受注機会の確保や大規模工事経験の少ない中小企業の育成もあって進められてきたわけであります。
 中小企業の育成がJVによってどのようになされ、そのことはどのように検証されてきたのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 都は、中小企業の受注機会の確保等を目的といたしまして、昭和五十年より、高価格帯の工事案件を対象にJV結成義務を課してまいりました。
 こうした中で、昨年六月からの入札契約制度改革の試行では、JVの結成義務が事業者の入札参加の障壁となっていると考えられるため、より多くの入札参加者を確保する観点から、単体でもJVでも参加できる混合入札を取り入れたところでございます。
 この取り組みに対しまして、中小企業の業界団体からは、技術力向上に寄与するJV結成の意義を訴える意見が多く寄せられ、また入札監視委員会からは、混合入札の導入により入札参加者が増加するという効果が見られ、この取り組みを継続すべきとの評価がございましたが、それと同時に、中小企業の技術研さんの機会の確保と育成効果の検証に取り組むべきという提言もなされたところでございます。
 こうしたことを踏まえまして、本格実施に当たりましては、大企業と都内中小企業とのJV結成を条件とした技術者育成モデルJV工事を導入し、中小企業の技術研さんの機会を確保するとともに、JV工事の施工を通して中小企業が習得した成果等の報告を義務づけることにより、中小企業の育成効果を、今後しっかりと検証していくこととしております。

○石川委員 今後は、技術者育成モデルJV工事の導入によって、技術研さんの内容をしっかり検証することになったわけであります。名前だけのJVということになるようなことはあってはならないわけでありまして、着実に進めていただきたいと思います。
 入札契約の本格実施を前にして、我が会派、都民ファーストの会は、本年四月二十六日、都民ファーストの会東京都議団として、建設業関係団体から意見、要望を伺い、会派としての考えを取りまとめ、入札契約制度改革への反映を要望いたしました。その内容は四点に絞られ、概略は以下のとおりでございます。
 一、予定価格の事後公表は、多くの団体から事前公表の要望があり、低価格帯の工事については配慮すること、二、JV結成義務の撤廃については、今後も継続することとし、中小企業にとって技術力を養う機会であり、担い手育成という観点でJV活用を検討すること、三、一者入札の中止については、都の事業の進捗の支障にならないよう抜本的な見直しをすること、四、低入札価格調査については、調査を継続し、ダンピング対策を徹底することでございます。
 都民ファーストの会の要望を初めさまざまな要望を最終決定にどのように取り入れてこられたのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 今回の試行につきましては、入札監視委員会の検証結果報告書、業界団体とのヒアリングで寄せられた意見、要望、それから都議会における議論などを通じ、さまざまな意見を頂戴したところでございます。
 業界などによって意見が隔たっている部分もある中、見直しによるメリットやデメリットを総合的に判断し、今回の本格実施の内容を決定したところでございます。

○石川委員 ただいまの答弁にありましたようなプロセスを踏んで、私どもの四点にわたる要望も取り入れられたことは確認ができました。
 今回の試行後の本格実施の最終決定は、特に、中小企業が都の入札に参加しやすい仕組みをつくることによって、中小企業の積算等に係る負担等を考慮し、低価格帯の案件については予定価格を事前公表とするなど参入拡大を図っていることや、都事業の時間的進捗にも配慮していることから、我が会派としても評価をし賛同するものであります。
 ただ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック後は、建設需要が落ち込み、消費税の税率アップなども想定され、厳しい景気の落ち込みも想定されております。入札契約制度に絶対はないわけで、経済状況や事業者の実態等を勘案し、時代状況に合わせた一者入札や価格の公表のあり方や低価格帯の見直し、総合評価方式の拡大など、変化に応じて見直しを実施する必要があるわけであります。
 今後の入札契約制度改革について、最後に財務局長の見解を伺います。

○武市財務局長 入札契約制度のあり方につきましては、地方自治法の理念に基づき、競争性、公平性、透明性の確保を基本としつつ、品確法、官公需法が求めるダンピングの排除、公共工事の品質確保、担い手の育成、中小企業の保護、育成などさまざまな要素のバランスをとりながら、総合的に検討を行っていく必要がございます。
 その際には、過去リーマンショック以降の時期には、低入札が問題となるような状況が発生いたしました。また、東日本大震災後には、入札不調が多発するようなそういった事態も生じております。
 そのように、目まぐるしく変わる社会経済状況の変化に対応した制度設計を行うことが求められるというふうに考えております。
 このような基本認識に立ちまして、入札契約制度改革につきましては、この間の試行状況や関係団体のご意見などを踏まえまして、これまでの試行において成果のあった部分は継続しつつ、明らかになった課題には適切に対応を図った上で本格実施に移行することとしたものでございます。
 今後、景気や社会状況の変化に伴いまして、入札契約制度を取り巻く環境も変わっていくことが考えられますので、今後とも、制度を取り巻く状況を見きわめまして、時代の変化を踏まえたよりよい制度の構築を目指して不断の努力を続けてまいりたいと考えております。

○宇田川委員 私からは、報告事項の中で、工業用水道事業に関することで、ちょっとやりとりをさせていただきたいと思っています。
 工業用水道事業は、地下水揚水に伴う地盤沈下防止のために行政施策として開始された事業であります。このことは、私もたびたび本会議や委員会で発言をしてまいりました。
 昨今、ようやく都議会の中でも重要課題として認識をされまして、局所的ではなく議論をされることは、給水地域選出の議員としてもありがたいことだと思っています。また、これを機に、東部低地帯の重要課題を再認識していただきたいとも考えておりますが、それはそれとして、しかし、それにしても、いかにも遅きに失したといわざるを得ません。
 今申し上げたとおり、地下水揚水に起因をしており、地下水施策、もっといえば揚水規制の議論とは切っても切れない事業であります。
 ここに工業用水道事業の現状と課題という資料がありまして、中身を見ると、平成十八年度の数字が書いてあって、私がいただいたのは十九年度末なので、恐らく十九年度のしかるべき時期につくられたものだと思います。
 一番後ろに担当が書いてあるんですが、水道局の浄水部、それから環境局の自然環境部、産業労働局の商工部、この三つが窓口として書かれています。中には幾つか書いてありまして、今までの経緯と現状でありますとか、経営努力だとか、施設の老朽化について、また、財政の見直し、最後のところに、地下水揚水規制のあり方を踏まえた上で、お客様への影響を調査するなど工業用水道事業の廃止を含めた検討を都庁全体で進めていますと。廃止を含めた検討をと書いてあるんですね。後ほど触れますが、そこから余り進んでいないという現状であります。
 この間、地下水保全と適正利用について検討をしてきた地下水対策検討委員会という組織があったんですが、平成二十二年には、区部低地帯では現状以上の揚水を行った場合、地下水位が低下し地盤沈下が進行する可能性が高いため、現行の揚水規制は不可欠と書いてあります。この検証結果が出されているわけでございます。
 これを踏まえて、適正利用の検討を開始し、検討に当たっては、科学的なデータが不可欠だとされ、平成二十七年に出した検証の方向性の中では、モニタリングの実施、観測井データ--井戸ですね、井戸のデータの解析、そして地下水位の監視を行うべきということが報告をされています。
 当時、打ち出していた年度計画を見ますと、平成三十年、ことしの夏ごろにモニタリングデータの検証をする予定となっておりましたが、現在の地下水対策検討委員会における適正利用検討は一体どうなっているんでしょうか。所管は環境局かもしれませんが、かなり密接にかかわっているのでお答えをいただきたいと思います。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 地下水対策検討委員会の報告書では、甚大な地盤沈下を経験した過去の経緯と水循環基本計画等の今日的要請を踏まえ、地下水の保全と適正な利用の調和をいかに図っていくかが重要であるとしております。
 また、東京において、地下の構造や地下水の利用形態が地域によって大きく異なることを踏まえ、今後は、地下水揚水モニタリングにより揚水と地下水位等の関係性を長期的に分析するなど、地下水の多様な実態を把握する取り組みを推進する必要があるとされており、地下水揚水モニタリングにつきましては引き続き、地下水対策検討委員会において議論を深めていくと環境局から聞いております。

○宇田川委員 引き続き議論を深めていくことは大いに結構なことだと思います。地下水揚水が起因となっている地盤沈下は、東部低地帯の我々、住まう我々にとって、まさに命にかかわることでございまして、そうしたことをしっかりと受けとめていただいた上で進めていただくことをお願いしたいと思います。
 都は、今後の地下水揚水のあり方についてどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 過去、都内において著しい地盤沈下が進行しましたことから、都では、法の規制に加え、条例による独自の揚水規制を行ってきておりまして、近年、地盤沈下は鎮静化しつつあると考えております。
 しかしながら、地盤沈下は、不可逆的な現象でございまして、過剰な揚水が行われれば再び地盤沈下が進行する可能性があることから、適切な揚水規制が不可欠です。地下水につきましては未解明な部分が多いことから、環境局においては、地下水対策検討委員会の議論を踏まえ、現行の揚水規制を継続しながら、科学的データの収集、蓄積などにより実態把握に努めるなど、時間をかけ丁寧な検証を進めていく必要があると考えております。

○宇田川委員 おっしゃるように時間をかけて丁寧に検証を進めていくというのは当然のことだと思っています。
 しかし、延々と検証を繰り返して何も結論が出ないということじゃ困りますから、一定のスケジュール感を示していただくことを、ぜひ環境局にもお願いしてほしいと思います。
 知事が、このたび所信表明において工業用水道事業について言及されたこと自体は、私は評価しております。しかし、課題解決までの道のりを考えると批判せざるを得ない場面もあります。ですから、手放しで賛同というわけにはいきません。
 この工水事業の廃止は、築地の豊洲への市場移転に、私は非常に似通った点が見受けられると思っています。行政施策としてさまざまな積み上げがなされて、その中で時の知事が決定したこと。中小企業が影響を強いられる政策であり、関係者のほとんどが中小企業であること。また事業者、ユーザーといっていますが、それが個々個別にさまざまな課題を抱えているということ。そのために、政策決定に批判的な意見が多々あること。これほとんどが築地と同じような状況だと私は考えています。
 しかし、市場問題の議論と大きな違いが一つあるんです。これが、さっき知事のいったことにまるっきりもろ手を挙げてといえないところなんですが、それは関係者への説明であるとか、意見の聴取などをきちんと、しっかりと行わずして知事が決定に至り、突如、公式の場で発表したことであって、このことに対してユーザーたちは大きな声で反発を表明しています。
 今も、入札契約制度改革の話がありましたが、このときも同じですよ。去年の第一回定例会、三月三十日に閉会した次の日に、議会の議論を避けるようにして突如発表された。これが入札契約制度のときの話。その上で意見交換なんかもなされたのも発表した後ですよ。それで皆さんは、事業者は、混乱を強いられたということであります。
 ですから、手続の間違いがあったということを指摘させていただいておきます。
 そして、所信表明では、有識者委員会からの提言を踏まえとおっしゃっておりましたが、今さらといった感が拭えません。
 平成十六年度包括外部監査報告において問題提起がなされ、その三年後に発行されているであろう、先ほどお見せした、この工業用水道事業の現状と課題、こういう資料があるんですが、これを見ても、そしてこちらにあるのが、東京の工業用水道、これ水道局浄水部管理課で発行している冊子ですけれども、この発行は、はっきり書いてありまして、平成十九年八月の発行になっております。これを見ても経年による数字の変化は当然あります、何年かたっていますので。しかし、その内容、ここに書いてある内容と、このたび六月に出されたこの有識者委員会の報告書、ほとんど差はないんですよ。今まで何をやってきたんだといいたくなる。
 有識者委員会報告書の五ページ、六ページに写真があるんですね。この鉄鋼業の冷却、染色業の洗浄、トイレとか車の写真があるんだけれども、これ平成十九年のこの資料と全く同じ写真をただコピーして使っているんですよ。同じなんです。こうしたことで、本気でやっているかどうかがわかっちゃうんですよ。
 この有識者委員会報告書の最後のページに、五回開催されたと記載があるんですね。三年間で五回、とてもやる気があるとは思えません。
 平成二十六年当時、事務局は財務局じゃなくて知事本局に置かれていました。有識者委員会のスケジュールが示された知事本局の資料、私持っているんです。
 これによりますと、平成二十六年度末に、ユーザーの状況や意向の実態調査をまず行う。そして平成二十七年四月に、委員会において現状の課題の整理、把握を行う。六月には、事業の存続の方向性について検討を行う。その夏、七月から九月ごろにかけて、支援策等の希望をとるための実態調査、ユーザーへの二回目の意向聴取、これを行う。翌月十日には、支援策の検討を行って、年末十二月には最終報告に至るという、スケジュールが示されたものはあるんですよ、一年弱というスピード感を持ったスケジュール。
 しかし、実際は三年かけて報告が出てきた上に、残念ながら内容に進展はない。お粗末としかいいようがない。
 揚水規制から始まった行政施策であるにもかかわらず、有識者会議のメンバー、どんな方ですかと事前にお伺いをしましたが、この中には、環境とか、地質学とか、水文学とか、地下水の専門家一人もいないんですよ。念のためいっておきますが、この委員の皆さんがお粗末といっているわけでも何でもないんですよ、そうではありません。皆さんはきちっとやっていただいているんですが、会議の進め方、運営する都に問題がありということで誤解をしないようにお願いをしたいと思います。
 こうしたことを考えれば、所信表明における有識者云々という言葉は、アリバイづくりですかと疑いたくなる。よもや委員会の先生方への責任転嫁などはないと思いますが、いずれにしても実が見えてきません。
 さて、去る今月十一日、用水型皮革関連企業協議会から知事宛てに、工業用水道事業廃止に係る要望書というのが提出されました。我々都議会自民党も、同内容の要望を受けておりますし、恐らく他会派の皆さんもお受けになっていることだと思います。この要望書にある支援策、彼らの希望、その一つ一つにどう応えていかれるのか、都の考え方を伺います。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 皮革関連産業は、東京の代表的な地場産業の一つでございまして、中小零細企業が工業用水ユーザーの多くを占め、生産工程において水を大量に使用いたしますことから、工業用水道を廃止し、上水道へ切りかえた場合には、ユーザーの事業経営に大きな影響を与える可能性がございます。
 加えて、都内の事業者全体の五割近くが工業用水ユーザーであることから、廃止に向けた動きを進めるに当たりましては、要望書にあります、業界を取り巻く環境なども勘案しつつ事業経営への影響を最小限にとどめるための方策を講じていく必要があると認識しております。
 これまでも、都の工業用水道のあり方や、仮に廃止した場合の支援策の検討状況などを随時説明し、意見交換を図ってきたところです。将来にわたって安心して企業活動が展開できるよう今回の要望内容の一つ一つについて関係局と連携しながら多面的に検証を行い、都としての支援策検討を進めてまいります。

○宇田川委員 支援策検討を進めていただきたいんですが、ちょっと一つご注意いただきたいんですが、昨年の事務事業質疑において、私、この工水を取り上げ、質疑の中でも申し上げたんですが、同業種で工水を使われている方と、既に上水を利用されている方と、ここにもう既に差が出ている。だから、営業とか、その企業のバランス、これを含めて支援策をつくり上げていただきたいと思っています。そうしないと、東京都の支援に非常にばらつきが出てしまうということはお願いをしておきたいと思います。
 各ユーザーの課題は、本当にさまざま、ばらばらであります。移転される市場業者と同様だと先ほど申し上げましたが、市場移転の議論の際にも我々提言をしてきたことですが、まずは真摯に向き合っていくこと。私は、夜討ち朝駆け、膝詰めという言葉を委員会や本会議、または予算委員会で何度か使いましたが、そうした気構えで個々のユーザー、事業者と向き合い、まずは信頼関係を築くということが大事だと思います。
 今後、どうした形でなされていくのか、お考えを伺いたいと思います。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都の工業用水道事業を廃止する場合には、業種や企業規模によりユーザーの事業経営に与える影響が異なることから、個々のユーザーの利用状況や経営状況等の実態を把握しつつ不安や心配の声の解消に努めていくことが重要です。
 こうした観点から、利用者から寄せられる相談や問い合わせに一元的に対応するための窓口を設置するだけでなく、今後、職員が一人一人のユーザーのもとに直接足を運び、膝を突き合わせながら、上水道に切りかえた場合の料金シミュレーションや切りかえに伴う関連工事などの説明を行うとともに、利用者からのさまざまな声に耳を傾けてまいります。
 このような取り組みを通じて、個々のユーザーに真摯に向き合いながら、きめ細かく丁寧な対応を行ってまいります。

○宇田川委員 先ほども申し上げた要望書の中にも書かれておりましたし、過去行ったアンケート、私の記憶では三回アンケートを行った記憶があるんですが、その中でも厳しい状況を訴える声がかなりの数上がっています。ユーザーの中には、もう皆さんおわかりの方も大変多くいらっしゃいますが、上水道への切りかえを余儀なくされたときに水道料金負担が膨れ上がる、五、六倍からひどいところは十二倍なんて数字も出ていますが、これによって、事業の継続もままならない、廃業への道を進まざるを得ないという悲痛な声も上がってきています。
 市場移転業者に対しては、当時、中小企業診断士などに協力を仰ぎまして経営支援も行ってきました。ぜひ、これと同様に、ユーザーの皆様方にも経営支援を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 企業ユーザーの多くは中小零細企業が占めており、その業種や企業規模は多岐にわたるほか、取り巻く経営環境や経営状況もさまざまでございます。
 工業用水道を廃止する場合には、こうしたさまざまな企業ユーザーへの影響を最小限にとどめ、経営の安定化を図る必要があることから、料金差額支援はもとより、個々の企業の実態や経営状況に応じた効果的な手だてを講じることが重要です。
 こうした観点から、お話の中小企業診断士も含めて、関係各局と連携しながら、きめ細かな実効性ある経営支援策を検討してまいります。

○宇田川委員 お話のとおり、ぜひ、きめ細やか、実効性、言葉はいいんですが、ちゃんとしたものをつくっていただいて、やっていただきたいと思っております。
 最後に、今後の東京都並びに議会の対応について、若干申し上げたいと思います。
 まず、行政である都の対応でありますが、この課題が表面化してきた当初、事務局は、先ほどいった知事本局にあったんですね。現在は財務局です。
 課題の整理等であれば、財務局の皆さんのお力でもいいのかなと思いますが、ずっとお話ししてきたとおり、これから先は支援策等を具体化させていかなければいけないわけですから、財務局が主体でないと私は思っております。そう思っていらっしゃる方、非常に多いんだと思いますよ。なぜ工業用水道事業が財務局で扱うことになったか、いきさつを知らない人もいっぱいいると思いますよ。
 事業主体はもちろん水道局でありますし、地下水検証等は環境局、支援という点では産業労働局や下水道局、そこに財務局が加わっている、私はそんなふうに思っています。
 多数の局にまたがっているという点でも、市場移転のときと同様なんですよ。だとすれば、知事なり副知事なりをトップとした、それこそ知事はいろんな会議体つくっていますけれども、関係局長会議でもつくられたらいかがでしょうかね。その方が丁寧な対応になりますし、財務局も楽になると思いますよ、私は。
 ここに、昨年十一月二十八日に開催された第十二回都政改革本部会議の議事録があります。工業用水道について川澄副知事が発言されています。工業用水道事業ですが、これはかなり前からの課題で、今までもいろいろな検討をしてきたところではあるんですけれども、いよいよ老朽化の方もせっぱ詰まってきているということで、この際、関係局としっかり議論していただきたいと思うんですと。
 何か非常に、いい方もあるのかもしれませんが、人ごとみたいな発言だなと受けとるのは私だけかもしれませんけれども、なぜそう思うのかというと、この十数年を振り返ればですよ、平成十六年度の包括外部監査から見て、振り返れば、川澄さんが知事本局の幹部だったとき、長谷川さんが財務局の幹部で活躍されていたとき、少なからずや工水にかかわっていたはずですよ。先延ばしになってきた責任はあなたにあるって、そこまではいいませんけれども、取りまとめに力を尽くすべき立場だと思いますよ。今の財務局の皆さん、かわいそうだと思っています。
 ぜひ、そうしたことで、全庁一丸といっているんですから、こうした、知事、副知事も含めて、精力的に動いていただきたいなとお願いをさせていただきたいと思います。
 議会においても、財政委員会で審議するものだと思えないです、私も。ですから、連合審査会とか特別委員会、こうしたものを立ち上げて集中審議すべきだと私は考えます。こうしたことが、ユーザーの課題解決のために必要なんだと思っています。
 そして何より重要なのは、知事自身が、ユーザー、利用者と直接、意見交換や要望聴取を行うべきです、市場のときはやったんですから。
 何度も繰り返して申し上げますけれども、工業用水道事業と市場の移転、非常に似ているところが多いんですよ。だとすれば、同様に対応していく必要があると私は考えます。知事みずからが課題解決に乗り出すべきであり、また、ユーザーの皆さんからもその声は上がってきています。
 今後の都の対応についてお伺いいたします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都の工業用水道事業は、昭和三十九年から地下水揚水規制の代替水を供給する行政施策として開始し、以来五十年以上の長きにわたり地域の産業基盤を支えてきました。
 一方、工場の都外移転などが進み料金収入が減少する中、今後も需要の増加が見込めず、また、老朽施設の更新にも多大な費用を要するなど厳しい経営環境に直面していることから、有識者委員会からの提言も踏まえ、事業廃止に向けた動きを進めることとしております。
 工業用水道のユーザーは、いずれも高度成長期に都の経済を支えてきた東京の産業の一翼を担う重要な存在であり、東京の持続的成長を実現する上でも欠かせない屋台骨であることから、こうしたユーザーが将来にわたって安心して事業経営を図ることができる環境づくりは重要な行政課題であると認識しております。
 こうした観点から、廃止に向けた動きを進めるに当たりましては、ユーザーに対して事業の方向性を丁寧に説明するとともに、一つ一つの意見や要望に真摯に向き合いながら、知事のもと関係各局が一丸となって、料金差額支援や経営技術支援など、多面的で実効性ある支援策の検討をしっかりと進めてまいります。

○宇田川委員 いずれにいたしましても、老朽化の進行はとめられないわけでありまして、これ以上先延ばしするわけにはいかないんだと思っています。
 この報告書によると、今の施設を全部更新すると、たしか二千三百何十億という数字が出ているんですが、この平成二十年の時点だと一千九百億、もうこの時点で四百億が超過で必要になっているというのが、現実あります。
 ほかにも支援策として激変緩和だとかいろんな数字が出ているんですけれども、やっぱり状況が進んでいるわけですから、いずれの数字も過去の数字より上がっているんですよ。こうしたこともやっぱりしっかりと、ワイズスペンディングですからね、やっていかなきゃいけないんだと思いますよ。
 ぜひ、お話の都庁一丸、関係局が一丸とおっしゃいましたから、それで、スピード感を持って進めていただくようお願いを申し上げて、私からは以上で終わります。

○うすい委員 私から最初に、入札契約制度改革の本格実施についてお伺いします。
 この制度改革については、昨年度から委員会の質疑でしばしば取り上げてきたところでございますが、先月、これまで実施してきた試行の内容を一度見直した上で本格実施に入るということが、小池知事の記者会見で発表がなされたわけでございます。
 中身を見ますと、低い価格帯の工事案件を事前公表とすること、JV結成義務を課したモデル工事の試行を行うなど、さきの第一回定例会で公明党が提案してきた内容を踏まえたものとなっております。
 特に、一者入札の中止について、私もこれまでこの財政委員会で、都民の生命や財産を守るためのインフラ整備事業などのおくれにつながりかねないことを申し上げてきたところでありまして、今回の見直しについては評価をするものでございます。
 これまで申し上げてきたとおりに、都の公共工事、特に防災や減災にかかわる公共工事は、都民の安全や安心に直結するものでありまして、着実に事業進捗を進めてもらいたいと思っております。
 今後、入札契約制度改革は、本格実施というステージに移るわけでございますが、財務局が答弁などでよく述べている、より多くの事業者に入札に参加してもらう環境を整備していくためには、今回の見直しにとどまることなく、さらなる改善に向けた取り組みを着実に進めていってもらいたいと思うわけでございます。
 特に、インフラの整備、維持管理などで地域の守り手として大きな役割を果たしている都内の中小建設会社が、その力を発揮し、活躍しやすい環境づくりが重要でございます。今回の本格実施には、本年三月に出された入札監視委員会の検証結果報告書も大きな影響を及ぼしていると思います。
 私もこの報告書を読ませていただきましたが、その中には、今後の検討課題という項目がありまして、今後の改善に向けた重要な視点が幾つも見受けられました。これらは、私が日ごろ地元の建設業者の方々との意見交換でもよく耳にする内容とも重なるものでございまして、都の取り組みの現状や今後の取り組みの方向性などについて、順次確認をしたいと思います。
 まず、工事発注時期の平準化についてであります。
 入札監視委員会の報告書にも、受注者の応札行動に影響を与える要因としては、入札契約制度に加えて、民間工事や他の公共工事との需給バランスなどが挙げられますが、特に重要な要因は発注のタイミングとあります。
 個々の契約案件を見ると、希望者の多い人気のある案件、なかなか希望者が集まらない案件など、案件によりさまざまでありますが、建設業者の方々と人気、不人気の要因について話をしている中で、施工の困難性などとともに多く耳にするのは、一定の時期に同種の工事が多く集中しているということでございます。年度の後半十月くらいが多く、逆に四月ごろは少なくなっており、もう少し分散すると手が挙がりやすくなるのではないかとのことでございました。
 そこで、都において、発注時期の平準化に取り組んできたことは承知をしておりますけれども、平成二十九年度までの取り組み状況と、今後どのように取り組んでいくのかについてお伺いいたします。

○五十嵐契約調整担当部長 発注時期の平準化につきましては、事業者の受注環境を安定させるとともに、発注者にとっても、計画的かつ着実に事業を実施する上で重要と認識しております。
 都が平成二十八年三月に定めた目標は、発注件数で約三倍の開きのある、十月から十二月の集中期と三月から五月の端境期との比率を、平成三十年度を目途に一・五倍程度まで半減することといたしました。
 この目標を達成するために、関係局と連携し、設計業務を含めた発注の前倒しや、十二カ月未満の工事への債務負担行為の適用などを積極的に活用することなどにより、集中期と端境期の発注件数の比率を、平成二十九年度には二・二倍にまで改善し、着実に平準化に取り組んでいるところでございます。
 目標最終年度である今年度は、引き続き各局と連携し、目標達成に向け着実に取り組んでいくとともに、これまでの取り組み内容を分析の上、平成三十一年度以降の新たな数値目標を検討し、工事発注時期の平準化を積極的に推進してまいりたいと考えております。

○うすい委員 また、入札監視委員会の報告書の中には、建設業の働き方改革に向けた取り組みの推進についても言及をしておりまして、建設労働者の健康確保やワークライフバランスの改善、より働きやすい職場環境づくりを行っていくことが重要としております。
 現在、国会においては、働き方改革関連法案の審議が大詰めを迎えておりますけれども、建設業については、一定の猶予期間が設けられているものの、就業者の高齢化、若年入職者の減少が続く中で、東京都も発注者として、建設業の働き方改革を後押ししていくことが求められていると思うわけでございます。
 働き方改革を推進するための方策としては、私が第一回定例会の予算審査の財政委員会で質問した週休二日モデル工事の実施など長時間労働の是正、最新のICT技術などを活用した生産性の向上に加えて、建設労働者が安心して働けるよう国民健康保険、厚生年金保険、また雇用保険など、いわゆる社会保険加入のさらなる推進を図っていくことが必要であると思います。
 都は、今回の入札契約制度改革の本格実施に合わせまして、都発注工事の受注者が社会保険未加入の事業者と一次下請契約を結ぶことを禁止することとしておりますけれども、どのように実効性を担保していくのかについて見解を求めます。

○五十嵐契約調整担当部長 今回の取り組みは、社会保険の加入促進を図り、工事現場で働く方が安心して働ける労働環境を整備し、高齢化が進んでいる建設産業の持続的発展に必要な若手を中心とした人材を確保することを目的としております。
 具体的には、全ての工事契約案件について、契約約款に社会保険未加入業者との一次下請契約の禁止を明記するとともに、その加入状況を、受注者から提出される施工体制台帳等によって確認することとしております。下請業者の未加入が確認された場合には、受注者に対して未加入業者への加入指導を行うとともに、それでもなお未加入の場合は、受注者に対して工事成績評定の減点措置を行うことで、その実効性を担保していくこととしております。
 国においては、働き方改革をさらに加速させるため、社会保険の加入を建設業許可更新の要件とする仕組みづくりの検討に着手し始めたところでございますが、都としても、国の動向も注視しつつ、社会保険未加入対策を初めとする働き方改革に向けた取り組みをさらに推進してまいります。

○うすい委員 さらに、入札監視委員会の報告書では、平準化への取り組みや適正な予定価格の設定に加えて、都の技術職員の技術力の向上が提言をされております。
 都有施設は、災害発生時に拠点となる施設でありまして、生活を豊かにする文化施設など都民生活をさまざまな面から支える重要な役割を担っているわけでございます。民間の就職動向の好調が伝えられる中で、都職員は少数精鋭での取り組みをなお一層進めていかなければならないと思いますが、そのためには、新規職員には極力、即戦力として活躍してもらう必要があるとも考えます。
 さらに、都有施設の整備に当たっては、省エネ化やバリアフリー等さまざまな社会的要請もありまして、発注者としてこのような責務を果たしていくためには、設計や工事を担う監督員としての技術力の向上や底上げが重要であると考えております。
 そこで、職員の技術力向上のためどのように取り組んでいるのか、また、さらにどう向上させていくのかについてお伺いいたします。

○飯泉技術管理担当部長 新規採用者など業務の初心者に対しましては、技術職としての基礎的な能力の向上を図るため、設計や積算業務の基礎など、さまざまなテーマについて技術研修を実施しております。
 また、工事現場での体験も重要であることから、ベテラン職員が実地で若手職員にアドバイスを行う機会を設け、技術の継承を図っております。
 さらに、これまでも電気主任技術者資格など業務に必要となる資格の受験料を支援しており、今年度からは、合格後に電気主任技術者になるための申請手数料についても新たに支援を開始するなど取り組みを充実させているところでございます。
 今後も、新たな技術の動向にも注視しながら、適切に研修の実施などを行ってまいります。こうした取り組みにより、職員の技術力向上を図り、都民への良質なストックの提供に努めてまいります。

○うすい委員 本日は、入札契約制度改革の本格実施に踏まえまして、今後さらに取り組むべきという課題について、確認とともに議論をさせていただきました。
 東京都においてコントロールできない部分でもあるかと思います。本日の質疑では取り上げませんでしたが、地元の建設業者の方々から聞こえてくるのは、オリンピック・パラリンピックが近づくにつれて、労働費や資材費など建設にかかわるコストがさらに上昇していくのではないか、また、オリンピック・パラリンピックが終わった後、どのように推移をしていくのかという心配の声があります。
 もちろん、これらの価格は需給バランスにより決まってくるもので、今から将来の水準を予測することは困難であるとしても、仮に急激な変動があった場合には、不調が頻発することも懸念されるわけでございます。
 これまでも適正に実施していると考えておりますけれども、資材価格等の大幅な変動があった場合には、速やかな単価改定やスライド条項の適用など、市場動向を踏まえた適切な対応をとっていただくよう求めまして、次の質問に移ります。
 工業用水道について質問いたします。
 我が党の代表質問でも言及したところでございますけれども、施設の老朽化が限界を迎える中で、今回、都が廃止に向けた動きを進めるとして、その方向性を示したことは一歩前進であると思います。
 一方で、改めていうまでもなく、行政として、都の工業用水道を廃止するのであれば、何よりもユーザーの声にしっかりと耳を傾けながら、都としての支援策を早急に検討していくことが必要でございます。
 こうした視点に立って幾つか質問をさせていただきます。
 知事は、今定例会において、このたびの有識者委員会の提言も踏まえた上で廃止方針に至ったと表明されたわけでありまして、廃止に伴い、都として、今後、具体的に検討していく支援策についても、恐らくこの報告書の提言内容がベースとなるのであろうと思います。
 とりわけ、この報告書に盛り込まれているユーザーアンケートの中で最も多い支援の要望は、上水道への切りかえに伴う、一定期間の料金差額支援であります。
 そこで、今回の有識者委員会報告書における料金差額支援の考え方について、確認の意味も含めまして、改めてお伺いをいたします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 工業用水道を廃止し、上水道からの供給に切りかえる場合、上水道料金と工業用水道料金の料金差額倍率は平均で約五倍、一部ではあるものの値上がりの影響が大きいユーザーについては最大で約十二倍となるなど、料金負担の増加が見込まれます。こうした急激な負担増を招かないよう、今回の有識者委員会報告書では、平均値の約五倍に着目したA案と、最大値十二倍に着目したB案の二つのパターンの支援期間を試算しております。
 この試算では、廃止決定後、早期に上水道への切りかえを行ったユーザーが割高な上水道料金を適用されるという、順序によるユーザー間の不公平を避けるため、切りかえ期間である四年間は料金を据え置いた上で、その後、段階的な値上げを図ることとし、切りかえ期間を含めた支援期間について、A案は八年、B案は十二年としております。
 なお、事業開始の経緯や使用実績等を踏まえ、雑用水ユーザーの差額支援期間は、工業用水ユーザーのおおむね半分程度としております。

○うすい委員 このたびの有識者委員会からの提言内容は、専門的かつ中立的な立場から多角的な検討を行った結果とされておりまして、私も貴重な報告であることに、いささかも異論の余地を挟むつもりはございません。
 しかしながら、都が今後、具体的に支援策の検討に着手するに当たっては、この報告書の内容を絶対視し過ぎず、ユーザーの意見、要望に直接耳を傾けながら進めていくことが重要であると思うわけでございます。こうした中、一部の報道にも出ておりましたけれども、今月四日には、業界が主催するユーザー説明会に都が出席したと聞いております。
 そこで、この説明会の場において、ユーザーからは支援策に関してどのような意見や要望があったのか、具体的にお伺いをいたします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 今月四日に、用水型皮革関連企業協議会が主催いたしました工業用水道事業に関する説明会におきましては、支援策につきまして、ご出席いただきましたユーザーの皆様から多岐にわたるご意見、ご要望をいただきました。
 まず、工業用水道を廃止し、上水道への使用に切りかえるとなれば、平均で約五倍の料金値上げとなる見込みであることから、料金差額支援を長期間にわたり実施してもらいたいとのご意見をいただきました。
 また、業界を取り巻く厳しい経営環境や実態を踏まえた、経営を後押しする的確かつ効果的な産業支援や、地下水の活用や揚水規制の緩和を求めるご要望などをいただきました。

○うすい委員 繰り返しになりますけれども、何よりも大事にすべきは、事業廃止の影響を直接受けるユーザーからの生の声、その声をしっかりと肝に銘じていただきたいと思います。
 さて、有識者委員会からの廃止提言と、本定例会における知事からの廃止の動きを進めるとの表明もありまして、一部報道からは、これで、あたかも山場は越えたかの印象を受けかねないわけではありませんが、都としての支援策の検討はこれからで、課題は山積みしております。ようやくスタートラインに立ったばかりであると思います。
 じっくりと時間をかけてという考え方もあるかもしれませんけれども、施設の老朽化は、限界でもはや待ったなしの状況にあります。さらに、工業用水道の存廃の検討にこれまで十年以上も費やしてきて、このままの状況で、今またいたずらに時間が過ぎるだけの宙ぶらりんの状態が続くとなれば、もう自分たちはこの先一体どうなるのかという、ユーザーの皆様の不安と心配はますます増大するばかりと考えます。
 そこで、都として廃止方針を打ち出した以上、利用者の意見や要望に対応しつつ、ユーザーの不安を一刻も早く解消するため、早急に都としての具体的な支援策の検討に着手すべきと考えますが、都の見解をお願いいたします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 工業用水道の廃止に向けた動きを進めるに当たりましては、ユーザーの理解を得ることが何よりも重要であり、丁寧かつきめ細かく対応していくことが必要でございます。
 一方で、今後の設備投資や設備更新など、ユーザーの事業経営等への影響を最小限にとどめるためにも、寄せられた意見や要望に真摯に向き合いながら、スピード感を持って支援策を構築していくことが重要です。
 こうした観点から、今後、関係各局と緊密に連携しながら、料金差額の支援期間を初め、都としての支援策を早急に検討してまいります。

○うすい委員 寄せられた意見や要望に、スピード感を持って支援策を進めていただくことを強く要望しまして、質問を終わります。

○曽根委員 私からも、まず、入札改革の本格実施について質問いたします。
 今回の入札改革の出発点は、豊洲新市場の本体工事など、この契約にかかわって、一者のみが応札し、かつ九九%かそれ以上という高落札率が相次ぎ、談合の疑いがあるのではないかと、都民の疑念や不信が高まったことにあります。その中で、こうした事態の再発をいかに防止するかが問われてきました。
 その視点から見て、我が党は、小池都政が昨年発表した入札契約制度改革の実施方針について、一者入札の中止、入札価格の事後公表、入札監視委員会の機能強化という前進面があることを評価する一方で、最低制限価格の廃止や、また、JV結成義務の撤廃などについては、建設業界の持続的発展や中小建設業者の保護育成などの観点から見たとき課題があることを率直に指摘し、また、今後、丁寧な検証や業界からのヒアリングが重要で、問題が生じた場合には、中止を含む大胆な見直しをすべきだと提案してきました。
 今回、約一年間の試行期間を経て本格実施の方針が発表されましたが、その中で特に、一者入札の中止を全面的に撤回したことには疑問があります。
 専門誌が行った土木工事についての調査で、二〇一六年度の東京都の実績で、一者入札は八百四十八件、全体の二三・六%ぐらいあるわけですが、この一者入札案件の中で、九九%以上という高い落札率の件数が三百七十四件、つまり四四%、半分近くに及ぶわけです。一方で、一者入札とならなかった土木工事は、全体で三千五百八十九件ですが、九九%以上の落札率は百七十七件、五%弱にすぎません。
 こうした数字の違いは、やはり一者入札となった案件については、事前に競争相手がいないことを何らかの方法で察知していた可能性がかなりあるということを示していると思います。
 一者入札の中止を全面的に撤回するというのであれば、少なくとも、入札の透明性と競争性をどのように確保するかの方策を出すべきだと考えます。
 以上の点を踏まえて、今後の対策について幾つか質問をしてまいります。
 まず、先ほど紹介した専門誌の情報でも、直近の公共工事で、他の自治体に比べて東京都の工事には、一者入札かつ高落札率の案件が多いという印象を私受けるんですけれども、東京都の入札改革の取り組みでは、現状ではどうなっているでしょうか。

○五十嵐契約調整担当部長 都は、昨年六月より、より多くの方に入札に参加いただき、入札の競争性や透明性を高めることを目的として、予定価格の事後公表や、単独企業でもJVでも入札に参加できる混合入札を試行してまいりました。
 試行の結果、財務局契約案件における一者応札の割合は、試行開始前の平成二十八年度は二五・二%でございましたが、二十九年度の試行開始後は一三・九%と大きく減少しているとともに、落札率九九%以上の割合につきましても、平成二十八年度の一九・四%から、二十九年度の九・九%に減少しているところでございます。
 直近の他団体の一者入札の発生割合や高落札率の発生割合につきまして、その詳細は把握しておりませんが、都における入札の競争性、透明性は高まってきたものと認識しております。

○曽根委員 先ほども紹介しましたけれども、入札改革に取り組むまでの二〇一六年度の一年間で、土木分野で見て、一者入札は二三・六%。今、五十嵐部長がお答えになったように、工事入札全体では二五・二%、大体同じ傾向だと思います。土木では、一者入札の半分近くが高落札率だったと。工事全体からいっても、一割以上になるわけです。これに対して、同じ資料で、例えば、関西の大阪、名古屋、兵庫などと比べても、いずれも一者入札かつ高落札率はゼロか、もしくは数件で、ほとんどありません。
 これは、やはり東京オリンピック準備や震災復興事業などが多いことで、公共工事以外にも仕事が多いことが影響しているかもしれませんが、いずれにしても、それだけに、公共工事での公正な入札を行うための意識的な努力が必要だということは間違いないと思います。
 例えば、Aランクの工事で、その中でも数十億円など一定規模以上の入札の場合、これは、実態に応じて入札参加を強く促す仕組みが、一者入札を中止する前の段階で、やはりどうしても必要じゃないかということが、先ほど取り上げました今回の契約案件の中でもいえるんじゃないかと思いますが、こういう仕組みの必要性については、いかが認識しているでしょうか。

○五十嵐契約調整担当部長 今回の入札契約制度改革では、入札への参加者数をふやし、入札の競争性、透明性を高めることを目的として、一定規模以上の案件におけるJV結成義務を撤廃し、混合入札を導入しております。
 あわせて、従来、中小企業の単体での入札参加を認めていなかった大規模工事においても、意欲と能力のある中小企業が単体で入札に参加できるよう、入札参加条件を緩和したところでございます。
 これらの入札参加者をふやす取り組みを実施した結果、混合入札の対象案件の平均希望者数は、試行開始前の平成二十八年度が二・五者であったものが、試行後の平成二十九年度は四・七者に増加するなど成果が着実に出ているところでございます。
 制度改革の本格実施におきましても、これらの取り組みを継続し、引き続き、入札参加者の増加に努めてまいります。

○曽根委員 今お話しになったように、混合入札や、それから予定価格の事後公表などが、一定の、一者入札で、しかも高落札率というものを防ぐための効果としてあったことは間違いないと思いますが、さらに今後も、とにかく大きい案件で、特に特殊な工事などについては、やはり一者入札が出てくる、これを防ぐための、あらゆる対策を今後も追求していただきたい。
 同時に、ジョイントベンチャーと単独の混合入札にする場合、中小企業の建設関係の多くの方から、やっぱりジョイントベンチャーに参加できることが自分たちの人材育成や、また、技術向上の上でも大きな意味があるんだという要望を私たちも受けております。
 この点については、ジョイントベンチャーを組む場合のポイントを高くするなど、対策が必要だと思いますが、具体的にはどのように考えておられますか。

○五十嵐契約調整担当部長 昨年度から実施してまいりました入札契約制度改革の試行におきましては、先ほども答弁いたしましたが、より多くの入札参加者を確保することを目的に混合入札を導入いたしましたが、一方で、JVがこれまで中小企業の育成等に果たしてきた役割を含め、都内中小企業を含むJVを結成した場合には、総合評価方式において加点する措置を講じてきたところでございます。
 こうした取り組みに対しまして、試行の検証を行った入札監視委員会からは、都内中小企業の育成という観点で、JV結成のインセンティブをさらに高める取り組みを検討すべきとのご提言を頂戴いたしました。
 そうした点を踏まえまして、本格実施では、総合評価方式におけるJV結成時の加点幅を引き上げるとともに単独項目での加点とすることといたしました。
 今後とも、より多くの入札参加者を確保しつつ、東京の公共事業に欠くことのできない重要な担い手である都内中小企業の育成に取り組んでまいります。

○曽根委員 この点で、これは時間の関係できょうは結論だけ申し上げますが、ジョイントベンチャーを組んだ場合と、単独でゼネコンが落札をして後は下請でという場合に、結局は現場のところで、現場労働者、現場作業員の方の待遇、賃金がどうなるかで差があっちゃいけないわけですよ。現実には、やっぱり下請が何階層もあると、どうしても下がってくるんですよ、待遇も悪くなる。
 したがって、最終的にこの問題は、私たちは、公契約条例など、現場段階での賃金を保障する、待遇を保障するという制度がどうしても必要になってくると思いますので、このことは申し上げておきたいと思います。
 それから、この機会に、豊洲の地下汚染対策工事で今回とられてしまった指名停止の企業に対する特命随意契約、これは再発させてはならないと。全国で、こういうことが原則禁止されていないのは東京都以外にないということはこの間指摘しました。
 自治体としても、これは当然、最低限のモラルの問題として是正すべきだと思いますが、これは東京都の姿勢自体で、やりたくないことははっきりしているんですから、原則禁止の規定はちゃんと設けるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○五十嵐契約調整担当部長 法令上、指名停止中の事業者との随意契約を締結することを禁止する規定はなく、随意契約の可否については、各自治体の判断に委ねられているところでございます。
 都では、指名停止中の事業者との特命随意契約につきましては、特定の相手方と契約しなければ契約目的を達成することが困難な場合に限定して、適正な手続のもと、必要性や理由を慎重に判断した上、契約することとしておりまして、現行の手続で十分対応可能というふうに考えております。

○曽根委員 我々は--絶対何があっても例外なしというふうな規定はもちろん、全国的にもとっていないし、いろんな場合があり得るわけですよ。けれども、例えば、豊洲の地下のコンクリート打設が、どうしてもその企業じゃなきゃできないような工事でないことは誰が見ても明らかであって、これは原則がなかった、しかも時間切れというような問題を盾にして足元を見られたということは明らかなんですよ。
 したがって、こうした企業に、きっぱりとした態度をとるという上でも、東京都としての原則規定は最低限必要だということは申し上げておきたいと思います。
 それから最後に、入札監視委員会の客観性の担保と機能強化について。これは、私たち、おととしの決算委員会で、我が党の和泉議員から、当時の入札監視委員会に元市場長が、しかもその市場長のときに契約した豊洲の建物の案件が審議の対象となっていて、審議対象から外されたと。審査案件にそれを選ばなかったということを問題にして、少なくとも東京都のOBなどは委員に選ばないという是正は、その後されてきました。
 さらに、どうしても防ぎ切れないゼネコン優先の案件についての、こうした不明朗な入札などを最終的にチェックするには、こうした徹底してその案件について詳細に調査する委員会が必要だと思いますけれども、そういう点での機能強化にどう取り組むのか、姿勢をお聞きします。

○五十嵐契約調整担当部長 都では、入札及び契約手続等の運用状況の審議を通じ、入札及び契約の過程や契約の内容の公正性、透明性を確保することを目的に、第三者機関である入札監視委員会を設置しております。
 入札監視委員会の機能強化につきましては、平成二十九年三月末に公表した入札契約制度改革の実施方針において、入札契約手続のチェック体制の強化策の一つとして位置づけられており、昨年度から積極的に取り組んでいるところでございます。
 委員会の機能強化という点では、委員の定員を七名から十二名に増員すること、それから制度部会と監視部会という常設の二種類の専門部会を設置し、議題に応じて集中的に審議できる体制を構築するとともに、監視部会での審議対象とする契約案件を年五件程度から二十件程度にふやすなどの取り組みで審査の強化を図っております。
 また、客観性の担保の点では、都職員OBの委員就任の禁止や審議対象案件に関する利害関係者の議事からの除斥、審議案件を行政の関与なく委員みずからが選定することなどに加えまして、審議は可能な限り公開で実施し、議事録を公表するなど、情報公開の徹底を図っているところでございます。

○曽根委員 契約議案の質疑でも述べましたけれども、大規模な公共工事で一者入札かつ高落札率がこの間頻発してきた温床として、ゼネコン優先の道路や港湾などの巨大開発の問題があるということをいわざるを得ません。この点の根本的な改革が、この問題の大前提として不可欠だと思います。
 また、都民にとってどうしても必要な工事を着実に進めるために、競争が担保しにくい場合もあり得ます。この点では、実態を十分調査する必要がある場合に、入札監視委員会の役割は大変重要であって、特に金額の大きな工事については、慎重で綿密な調査ができる体制の強化を改めて求めておきたいと思います。
 それでは、次に、工業用水の廃止方針の問題について質問いたします。
 利用者が減少している実態、また、老朽化の実態を踏まえて、今後どうするかということの早急な対策が求められているのは間違いありませんが、工業用水の廃止を、もし方針として具体化をしていく場合には、最大の問題は、利用者の圧倒的多数が中小零細業者もしくは都営住宅など集合住宅の住民だという点で、利用者の意見、要望をよく踏まえて支援を十分に行うということが必要だということにあります。
 それで、工業用水のユーザーが、新規に利用し始めたのはいつごろからなのか、平成になってからの利用者はどうなのか、この点について、まずお聞きします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 お話の工業用水の新規利用者数についてでございますけれども、平成二十八年度時点の百八十五件の内訳で見ました場合、城北地区で供給を開始しました昭和四十六年度の四十六件が最も多くなっておりますが、平成元年度以降は、新規利用者がゼロ件となる年も少なくございません。直近の新規利用者は、平成二十六年度から利用を開始いたしました一件となっております。

○曽根委員 つまりユーザーの多くは三十年以上が圧倒的だということですね。代がわりしていなければ、ユーザーのご主人、高齢者が大変多いと思います。利用料金のわずかな負担増があっても耐えられない、そういう厳しい状況が多いと考えられます。
 それで、こういう場合、先ほど来お話があるので繰り返しませんが、多い方は十二倍もの料金値上げになるというような場合も含めて、ユーザーは、例えば皮革だとかメッキだとかそういう高い水準を持っていながらも大変零細な状態での営業、仕事をやっていますから、死活問題になってしまうと。これがないことが、もうとにかく最大の東京都の課題だということであります。
 先ほど上水使っている業者もいるからというようなお話もちょっとありましたけれども、今、工水を使っている業者と同じように上水使ったら商売になりません、ほとんどだめだと思います。つまり、そこはくみ上げができるとか、揚水規制が工水使っている地域に比べてかかっていないとか、いろんな条件の中でやっているわけですよね。ですから、工水使わざるを得ない、使ってこそ商売は何とか成り立っているというところが実態なんだと、この実態をこれ以上悪くできないんだということを大前提にして、都としての支援を考えていただきたい。
 それで、具体的に申し上げますと、据置期間は四年間と、これは全体が上水に切りかえる工事などを含めた期間を公平にするために据え置き期間四年としているというお話でしたけれども、私は、さらに全体が切りかわった後も、かなり長期にわたって料金を据え置くということがあっていいんじゃないかと。その後にどうするかについては、例えば、十年ぐらいの期間を置いて、その後、検討するということもあり得ると思うんです。
 設備を更新することと、料金とは別に考えた方がいいんじゃないかということは思うんですけれども、こういう点での都の支援について、今どういう対策を考えているのか、お聞きします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 お話の支援期間につきましては、やはり利用されている方の間での不公平があってはならない、こういう視点に立ちながら、一方で、現在お使いになっている工業用水ユーザー、例えば、その経営が立ち行かなくなるというようなことがないようにする、つまり、現在お使いになっているユーザーの方への影響を最小限にとどめ、それから、使っている方、使われていない方の不公平をなくす、こういった視点を大切にして、今後取り組んでまいりたいと思っております。

○曽根委員 わずか百八十億円なんですから、くれぐれも利用者の声を踏まえてやっていただきたい。
 それから、住宅の場合、多くは公共住宅、URや都営住宅、また、マンションなどもあるようですけれども、住宅の負担増というのは、平均で大体幾らぐらいになるのかということをお聞きします。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 住宅の負担増についてでございますけれども、現在、雑用水をトイレ洗浄用に供給しております集合住宅は、平成二十八年度末時点で、約三万五千戸となってございまして、工業用水道を廃止して上水道へ切りかえたとすれば、一般家庭の標準的な使用水量でございます一カ月当たり二十四立方メートルの使用を想定して試算した場合、水道料金は月に六百円程度の負担増となることが見込まれております。

○曽根委員 住宅の場合も、建設から二十年以上の建物が多いと聞いておりますので、高齢化も進んでいると思われます。たとえ月数百円でも年間では数千円になり、やはりそれに見合った長期の激変緩和を行って、例えば、公営住宅などでは、住宅の居住者が変わったところで変更するというような、負担感がないような変更の仕方も一つの案だと思いますし、いずれにしても利用者の要望や実情をよく把握して対応していただきたいと思います。
 それから、差額の支援期間の設定がA案、B案などがあることについては、先ほどちょっと質問があったので省略をいたしますが、これはやはり、限られた数であっても、大量の工業用水を使っている企業を基準に支援期間は考えるべきだということは意見として申し上げておきたい。
 それから最後に、公共施設で結構工水使っているんですよね。多いところは、江東区のように釣り堀、公園その他で、これを全部、何というか財政支援なしに上水に切りかえると八百万円ぐらい影響が出るというようなことが報道されております。
 これについては、区民利用施設が多いわけですので、この料金負担のために、その施設をそのまま利用する、もしくは運営することが難しくなったり、また、区民負担にはね返るような可能性が出てはならないと思いますので、この点については、負担増にならないような対策をきちんととるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都の工業用水道につきましては、公園や緑地等の区の公共施設におきましても、修景用水などを雑用水として供給を行っており、今回の有識者委員会の報告では、上水道への切りかえに当たり、公共施設も含めたユーザー全体を対象に、切りかえ期間である四年にわたって料金差額支援を行うことが必要であるとしております。
 工業用水道が給水されているこうした関係区に対しましては、これまでも工業用水道のあり方に関する都の検討状況やユーザーアンケートの結果等について説明を行い、情報共有に努めてまいりました。
 今後とも、工業用水道事業に関する都の検討状況等を随時報告するとともに、区からの意見も聞きながら、区の行政運営に支障を来さないよう適切に対応してまいります。

○曽根委員 官公庁ユーザーだから支援は必要ないというふうに、最初から決めるのではなくて、区民や都民サービスを低下させないような立場で、関係各区ともよく協議をして、必要な配慮をしていただきたいということを最後にお願いしておきたい。
 以上です。

○上田委員 入札制度改革について、まずお尋ねします。
 試行錯誤が続いた結果、今回の検証の結果がもたらされたものでございます。
 改めて、どのような入札改革の目的と、どのような成果を期待しているのか、今まで問題がなかったことに逆に悪影響などは出なかったか、また、五月以降の方針で影響がどう出るか、今から想定していることがあればご説明ください。

○五十嵐契約調整担当部長 今回の入札契約制度改革は、より多くの方に入札に参加していただき、入札の競争性や透明性を高めることを大きな目的として、予定価格の事後公表、一者入札の中止、JV結成義務の撤廃、低入札価格調査制度の適用範囲の拡大など、四点を柱に試行を実施してまいりました。
 この間の入札監視委員会による試行の検証では、特にJV結成義務の撤廃などの取り組みによって、入札参加者数が大幅に増加するなど、成果があったとの評価がございました。一方、予定価格の事後公表などによる不調発生率の上昇や一者入札の中止により、都の事業進捗への懸念が示されるなど、試行を通じて明らかになった課題についても指摘がございました。
 こうした議論等を踏まえまして、一部制度を見直した上で、平成三十年六月下旬より本格実施に移行することとしておりますが、今回の対応により、制度改革の成果を維持しつつ不調発生率や事業進捗の改善など、こういった課題の対応も図られていくものというふうに考えております。

○上田委員 そのようなご説明をいただくに当たるに、一つの根拠となりました十六団体に知事がヒアリングをされたということでございますけれども、この十六団体、資料5号、一六ページですけれども、選定した基準や要望について、普遍的な都民要望にかなうものだったと評価しているのか、例えば、十六団体の選び方に偏りなどなかったのか、また、その要望自体の偏りなどなかったのかを伺いたいと思います。

○五十嵐契約調整担当部長 入札契約制度改革の本格実施に向けて、平成三十年四月に、知事みずからヒアリングを実施した十六団体につきましては、これまでも都の入札契約制度のあり方を検討するに当たり、入札監視委員会の場において意見交換を行ってきた団体を中心に選定したものでございます。
 これらの十六団体は、建築、土木、設備のそれぞれの業種において、大企業を構成員の中心とする団体や中小企業を中心とする団体に加えまして、専門業を中心とする団体まで多岐にわたっており、さまざまな立場の団体から幅広くご意見をいただいたものでございます。
 このヒアリングでは、契約の競争性、透明性、公正性の確保に加え、都民生活を支える社会資本を高い品質で維持していくという長期的な観点なども含め、入札契約制度についてそれぞれの現場の実態に即した率直なご意見を伺ったものでございまして、本格実施の準備に向けて大変参考になったというふうに考えております。

○上田委員 入札監視委員会の場において意見交換を行ってきた団体を中心に選定ということですが、ここから漏れている事業者さんもいらっしゃいます。ともすると業界団体というのは、政治選挙、推薦をするとか、そういったことで都民の厳しい目にさらされることもあるということで、その選定とヒアリングの状況--あと各会派などにも恐らくいろいろと、ロビー活動でもないんですけれども、行われていることもあるかと仄聞をしておりますけれども、決してそこが、都議会の方も偏らず、知事及び都庁当局におかれましても偏ることはないと、当然だと思いますけれどもお願いをいたしますし、私の方も監視してまいりたいと思います。
 そして、予定価格の事後公表と事前公表、使い分けをすることになったということでございます。金額等々はご説明もいただいておりました。
 ここで、各事業者に、それぞれの使い分けによりまして、利益、不利益などが発生しないのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 入札契約制度改革の本格実施において、予定価格の事前公表と事後公表は、業種により定める価格帯によって使い分けることとしており、個別発注案件の入札参加者は全員、予定価格が事前公表もしくは事後公表という等しい条件のもとで入札に参加していただくことになります。その点におきまして、入札に参加する各事業者に、利益、不利益は発生しないというふうに考えております。

○上田委員 入札条件というところが出てきまして、ゆえに、先ほども一つ一つの契約議案の方につきましても、入札条件についての確認をさせていただいたところでございます。
 さて、入札参加者が一者以下となった場合の入札辞退の原因調査の取り組みとは何か、具体的に説明を求めます。
 辞退理由の掲載を義務化の上、それを公表する予定はないか、また、通常の契約案件においても、私がこの委員会で常に指摘をしておりますように、辞退談合が疑われないよう、多発を鑑み、義務化、公開の考えがないのか、情報公開が一丁目一番地でございますから、小池知事の、その公開の考えはないのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 入札参加者数につきましては、案件の発注のタイミング、地域性、施工の困難度、発注者の設定する条件等、さまざまな要因により影響を受けるものでございまして、入札の競争性と透明性を確保するため、より多くの事業者に入札に参加していただく仕組みとする必要があるというふうに考えております。
 今回の検証を行った入札監視委員会から、発注者としてできる限り一者入札とならないよう工夫していくことが重要であるというご意見をいただいております。
 こうしたことを踏まえまして、本格実施に当たり、都の発注の仕方等の改善を図る観点から、入札辞退の原因調査の取り組みを強化していくこととしております。
 具体的には、入札辞退の理由を適切に把握するため、電子入札を行う工事契約案件につきましては、電子調達システム上で辞退届を提出する際、現在の、任意に辞退理由を記入する方法から、今後は、辞退事由を選択する方法に変更するなどの検討を行っているところでございます。
 なお、契約自由の原則のもと、発注者と受注者は対等の関係であることや、事業者にとっては受注が確実とはいえない競争入札という契約手法であることを鑑みまして、各案件において事業者が特定される形式での辞退理由の公表につきましては、辞退の理由を問わずに事業者が辞退できるという自由を制約し、かえって入札参加者の減少を招くおそれがあるというふうに考えております。

○上田委員 入札参加者数の減少を招くおそれというのも、ちょっと別件になりますけれども、私、虐待問題では、警察との共有をしてくれというと、警察が入ると保護者が相談しづらいというような、何かちょっとその同じような、行政の考え方だというふうには思います。
 やっぱり入札するからには、それなりの条件をクリアして入ってくるのに、何度も私も調べさせていただいているように、突然ばらばらと辞退をしちゃうというのは非常に不可思議なところでありますが、一応把握をしていく方向性並びに辞退理由を選択する方法に変更すると検討しているということは評価したいと思います。
 また、一者入札にならないように、やはり私たち委員会も、先ほどご報告いただいたように、入札可能者数ってこのぐらいあるんだ、そこからどれだけ手を挙げてくれたのかなということも委員会で把握をしていければというふうに、私個人も把握したいですが、共有していきたいとも思っております。
 次は、総合評価、社会保険の労使折半の負担が大きくて、社保に加入したくてもできない下請事業者の現状と課題について、都はどのように考えているのか、現状と課題をお示しください。

○五十嵐契約調整担当部長 社会保険は、一部の適用除外を除きまして、法令で企業の加入が義務づけられておりますが、これまで建設業における加入率は高いといえる状況ではございませんでした。
 社会保険未加入の企業を放置することは、建設業界への入職希望者にとって公的保障が確保されず、担い手確保を阻害する一因となるばかりか、社会保険未加入企業が競争に参加した場合、適正に社会保険に加入して法定福利費を負担している企業が競争上不利になるという矛盾した状況が生じることとなります。
 こうしたことから、国を挙げて建設業における社会保険の未加入対策に取り組んできた結果、国が昨年十月に実施した公共事業労務費調査においては、公共工事に従事する建設企業の社会保険加入率は、全国平均で九七%、東京都においても九六%に達しているという結果となっております。
 建設業の持続的発展に必要な人材を確保し、また、健全で公平な競争環境を構築していくためにも、社会保険への加入は重要であり、今後とも、加入促進の取り組みをさらに推進してまいります。

○上田委員 やはり社保加入をして、労使、非常に安定、安心した状況で働くということは大事だと思いますが、なかなか経営上大変な事業者さんもいるというところでありますが、そういった声も受けとめて推進していっていただきたいと思います。
 また、総合評価方式一部改正に当たって、建設業の将来の担い手確保のために、若手技術者や女性技術者を配置した場合の加点措置をするということは、非常に前向きな取り組みだと思うんですが、本当に人材が足りないというところでございまして、具体的な数値目標や、どのように実際に確保できるのか、今想定していることがあればご説明ください。

○五十嵐契約調整担当部長 建設業界におきましては、現在、若者の新規入職者の減少に伴い、就業者の高齢化といった問題が生じておりまして、その課題への対応が求められております。
 そうした中、将来にわたる社会資本の品質確保と機能の維持を図るためには、建設業の将来を担う人材として、これまで以上に若手技術者や女性技術者といった多様な人材を受け入れ、育成していくことが重要と認識しております。
 そこで、今回の制度改革では、若手や女性の登用を促進し、建設現場において中心的な役割を担う経験と実績を積んでもらうことを目的に、総合評価方式において、若手技術者や女性技術者を配置予定技術者とした場合、入札時の評価点に加点することといたしました。
 発注者である都が、契約上の数値目標を定めることについては難しいところでございますが、今後もこの取り組みによる効果や課題を検証しながら、担い手確保に向けた取り組みを継続してまいります。

○上田委員 このことで、本当にふえているのか、どうなのか、また把握していっていただきたいと思います。
 入札は、契約自由の原則のもと、競争性、透明性が担保されてこそ成立するというのは、皆様、釈迦に説法というか、認識されているところでございますが、小池知事就任以降、改革をしようという思いはよくわかるんですが、結果的には試行錯誤を繰り返し、ほかの委員も心配しているように、殊に中小零細の事業者さんが大変な状況にあるという結果が、結果的には出てしまった次第でございます。JVや、中小企業の技術継承という新たなチャレンジも一方見られ、引き続き、成否を見守ってまいる所存でございます。
 次に、工業用水道についてでございます。
 工業用水道事業のあり方について、今後切りかえるユーザーに対しての工程を具体的にお示しください。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 今後、工業用水道を廃止し、上水道へ切りかえるとなれば、個々のユーザーの実態を踏まえた上で理解を得ながら進めていくことが重要です。
 こうした観点から、今後、まずはユーザーに対して事業の方向性を丁寧に説明するとともに、一件一件、ユーザーを個別に訪問しながら、現在の工業用水の使用状況や宅地内の配管状況、切りかえ時の影響などについて技術的な観点から調査を行うことが必要です。また、ユーザーの事業経営に支障を来さないよう、必要に応じて逆流防止のための受水タンクや塩素除去装置の設置も検討いたします。
 こうした取り組みを通じ、切りかえに伴うユーザーの事業経営への影響を最小限にとどめられるよう、ユーザーの実態把握に努め、要望を丁寧に酌み取りながら対応してまいります。

○上田委員 切りかえにある程度思い切った、決をしたユーザーに関しての工程の方は、丁寧に進めていくことが確認はできたと思います。
 工業用水道事業ですけれども、損をするユーザーと全く関係がないというユーザーがありまして、資料の方を見せていただくと、後者の方が絶対数というふうに見てとれます。経過措置は仕方ないものとしても、逆に過剰な損失補償にはならないのかどうか、伺います。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 工業用水道の廃止に当たりましては、ユーザーの事業経営への影響を最小限にとどめるため、料金差額の支援を行うことにより、急激な料金負担の増加を抑制することが不可欠です。
 一方で、工業用水道を供給していない地域において、従来から上水道を利用して事業を展開する事業者との公平性を勘案することも必要です。
 こうした観点を踏まえ、ユーザーの意見や要望にも向き合いながら、都として、早期に多面的な支援を構築するよう検討を進めてまいります。

○上田委員 今、工業用水を利用していらっしゃるような企業さんと同種の企業の方も江戸川区内にいますが、その当時、さまざまな経緯があって工業用水をやっぱり利用できなかったということで、やはり不公平感を--もともとその方は工業用水ではない中で経営を頑張っていったわけでございます。
 そういうのを見ていて、改めて受益者負担の考え方ということを伺いたいと思います。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 工業用水道事業会計は、住民の暮らしを支え、公益、公共目的を果たすために、自治体がみずから経営する事業を区別して整理している公営企業会計の一つであり、事業に要する経費は経営に伴う収入をもって充てるという、独立採算制を原則としております。
 しかしながら、工業用水道事業につきましては、契約件数や使用水量が落ち込み、平成二十八年度の料金収入は、ピーク時の昭和五十八年度の二十九億円と比較して四分の一の七億円となっております。
 このように料金収入が減少する中でも、工業用水道事業の経営を安定的に維持していくため、地方公営企業法第十七条の三に基づき、配水施設の不採算部分を対象として、平成二十八年度は一般会計から六億円を繰り出しております。

○上田委員 公営企業法の本来の理念の独立採算制ということを原則とするということを確認させていただきました。
 資料第6号の四ページなんですけれども、国庫補助金返還金十七億円ですが、これは返す必要があるのか、論拠をお示しいただきたいと思います。

○初宿経理部長財政企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第二十二条では、補助事業により取得した財産を各省の長の承認を受けずに、補助金等の交付の目的に反して処分してはならないと定められており、各省の長が、補助事業により取得した財産の処分を承認する場合には、補助金相当額を国庫に納付することを条件に付さなければならない旨、平成十六年六月十日付の国の通達で示されております。
 一方、同法の施行令第十四条に基づき、補助金の交付目的や財産の耐用年数を勘案して各省の長が定める期間を経過しているといった一定の条件を満たす場合には、各省の長の承認を受けずに財産を処分することが認められております。
 こうした法令を踏まえた上で、今回の有識者委員会の報告書では、三園浄水場等の用地や配水管などの残存簿価相当額等に基づき、国庫等に納付する補助金相当額を十七億円と試算しております。
 今後、事業を廃止し、財産処分を行う場合には、国等と協議しながら適切に対応してまいります。

○上田委員 工業用水は、高度成長期の遺産というか、遺物になっているような時代に入ってしまいました。中小の事業者の水資源確保には一定の役割を果たしてきましたが、産業構造すら現在変化をしてきております。受益と負担の公平性を確保しつつ移行していくことは理解できました。
 そして、知事が明言されたように、廃止の方向性についても評価するものでございます。
 国庫補助金の返還に当たっては、財産の転用ではなく、不採算事業の廃止に伴うものなので、都民負担を最小化すべく、粘り強く国との交渉に、一銭でもおまけをしてもらうように交渉していただきますよう求めまして、私の質疑を終わらせていただきます。

○伊藤委員 それでは、入札契約制度についてお尋ねします。
 都議会自民党は、都内の努力する中小企業と人材を育成することが大事と、これまで繰り返し訴えてまいりました。
 このたび本格実施ということになりましたので、まず、試行の結果に対する東京都の認識についてお尋ねします。
 施策や制度を改善していくためには、計画を立てて実行して、その結果に対して適切な評価を行い、問題点を洗い出し、改善策を実行するサイクルが重要であることは都政運営の基本方針であります。つまり、現状や問題点を的確に直視しなければ改善は図れません。
 今定例会冒頭の知事の所信表明によると、以下のとおりでありました。
 昨年の六月より試行を進めてきた入札契約制度改革では、応札者の増加など、入札の競争性、透明性を高める上で成果があらわれました。今般、その成果を生かしつつ、中小企業への配慮等の観点から制度を一部改善し、改革を本格実施いたします。今後とも、制度を取り巻く状況を常に見きわめながら、競争性の確保と、公正かつ透明な運用を徹底してまいりますとのことでした。
 この発言をお聞きして、正直、驚きました。そのまま素直に聞けば、試行の結果はよい成果しかなく、それをベースにさらに改善するとのことであり、この現状認識には、私は全く納得できません。
 改革には功罪があります。マイナス点もきちんと認識しないと今後の改革の方向が間違ってしまいます。
 それでは、今回の制度改革の成果と問題点をどのように認識しているのか、まず伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 今回の入札契約制度改革は、より多くの事業者に入札に参加していただき、入札の競争性や透明性を高めることを目的としており、一年間の試行では、応札者数が増加するとともに、応札者が一者の案件が減少するなどの点で成果が上がっているものと考えております。
 一方で、予定価格の事後公表に伴う中小企業の積算負担の増や、一者入札の中止による事業進捗への影響の懸念など、一年間の試行を通じて明らかになった課題もあり、こうした課題もしっかりと認識し、その対応を図った上で、今回本格実施に移行することとしたものでございます。

○伊藤委員 成果と課題について答弁をいただきましたが、この間、誤った認識と、それに基づく対応により、多くの時間と労力が浪費され、市場移転やオリ・パラ大会準備にも多大な悪影響が出ました。試行を決めた知事や特別顧問はこの場所におりませんが、この一年間、何だったのか、猛省してほしいと指摘をしておきます。
 それでは、次に、入札契約制度の本格実施について伺います。
 入札監視委員会による検証結果報告、業界団体ヒアリングでのご意見、都議会における議論などを踏まえ、試行内容を一部見直した上で本格実施とのことでありますが、中小企業が入札に参加しやすい環境づくりと、都の事業進捗への影響を配慮した仕組みづくりという二つの視点とは、具体的にはどのようなことなのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 都の事業進捗への影響を配慮した仕組みづくりという視点から実施する取り組みは、具体的には、一者入札中止の取りやめのほか、主に中小企業が入札に参加する各局案件で不調が多く発生していることを踏まえ、低価格帯の案件において予定価格を事前公表とすることがございます。
 また、中小企業が入札に参加しやすい環境づくりという視点から実施する取り組みにつきましては、積算業務の負担軽減のため、低価格帯の案件における予定価格を事前公表とするほか、混合入札で総合評価方式を採用する案件における、都内中小企業とJVを組んだ場合の加点を拡充することがございます。

○伊藤委員 本格実施についての具体的な内容をお答えいただきました。
 さて、よりよい公共事業を実現するために、パートナーである事業者の技術力、経営力を高め、現場の声にも耳を傾けながら、これまで都と都議会は、実態に即した入札契約制度を推進してきましたが、知事は、昨年三月の一定終了直後、議会や事業者への相談はおろか意見を聞くこともなく、制度改革を強行しました。
 そもそも、今回の入札契約改革のきっかけは、豊洲新市場などの建設工事の入札者が一者で、予定価格の九九・九%の落札率であったことに疑問を持った知事が、競争性や透明性を高める目的で行ったものでありました。
 しかし、一つの疑問点だけに目が行き、現場の事情も十分理解せず、唐突に実行した結果、事業のおくれや事業者へのしわ寄せ、現場の混乱など、ほとんど成果が出ず、まさに木を見て森を見ずとなってしまったのではないでしょうか。
 結果として、改革の実施方針として掲げられた予定価格の事後公表、JV結成義務の撤廃、一者入札の中止、低入札価格調査制度の適用拡大の四つの項目も、我が党や関係事業者の要望も踏まえ、ほぼ従前どおりの方針に戻し、運用していくことになりました。
 そこで、試行内容の本格実施についてもお尋ねをいたします。
 まず、予定価格の公表について伺います。
 先ほど資料提出もあったようですが、中小企業の負担などを考慮して、事前公表とする予定価格については、建築四・四億円未満、土木三・五億円未満、設備二・五億円未満となりましたが、これらの根拠は何なのか、また、中小企業の負担軽減に具体的にどうつながるのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 低価格帯の案件で予定価格を事前公表することにつきましては、事後公表により中小企業の積算に係る負担が増加しているという意見を踏まえまして、中小企業の中でも、特に積算に十分な人員を配置することが難しいと推測される規模の小さな企業、具体的には従業員二十人以下の小規模企業に着目し、検討を行ったところでございます。
 具体的には、建築業種及び土木業種の各等級格付の事業者数に占める小規模企業の割合を見ますと、B等級では約六割を占めるのに対し、A等級では一割程度であることから、予定価格がB等級の発注予定金額以下となる工事案件について、予定価格を事前公表といたしました。
 また、設備業種では、A等級の事業者数に占める小規模企業の割合が、なお四割程度あることから、予定価格がA等級の価格帯の工事案件の中でも、JVが参加できる比較的大規模な工事案件、こういったものを除いて予定価格を事前公表といたしました。
 これにより、中小企業が多く参加する各局契約案件の全てと財務局契約案件の一部が事前公表になることから、中小企業の積算に係る負担は大きく軽減されるものと認識しております。

○伊藤委員 次に、JV結成義務の撤廃についても伺います。
 今回、本格実施に当たりまして、都内中小企業とJVを組んだ場合の総合評価方式の加点を拡充して、単独項目で加点をして、加点幅も倍に引き上げるとのことです。
 また、大企業と都内中小企業のJV結成を参加要件とする技術者育成モデルJV工事も実施するとのことですが、それぞれ具体的にどのように都内中小企業のプラスになるのか、あわせて伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 総合評価における、都内中小企業とJVを組んだ場合の加点の拡充については、大企業が都内中小企業とJVを組もうとするインセンティブを高める目的で実施するものでございます。
 具体的には、これまでのJVに関する加点措置では、評価項目の複数ある内訳の一つとしていたため、その内訳に複数が該当している場合は、上限で頭打ちとなり加点につながらないことから、今回の見直しでは、確実に加点できるよう内訳ではなく単独項目での加点とし、加点幅も倍にふやすことといたしました。
 この取り組みにより、例えば、技術力評価型総合評価方式での評価点の差は、最大一点であったものが、今回の見直しで最大三点となります。
 また、技術者育成モデルJV工事につきましては、比較的大規模な工事案件の入札参加者を、大企業と都内中小企業で構成するJVに限ることにより、中小企業が大企業から技術等を学ぶ機会を創出するものでございます。
 対象案件は、建築業種では予定価格九億円以上、土木業種七億円以上の、主として大企業に発注してきた案件から選定し、都内中小企業の技術者には、四十五歳以下の若手や中堅の技術者を一名以上配置すること、JVへの参加を通じ習得した技術等について、報告書を提出すること、こうしたことを要件としておりまして、モデル工事を実施することの効果等について検証していくこととしております。

○伊藤委員 予定価格についても、JV結成につきましても、ここで、ご答弁のように本格実施をされるということなので、ぜひしっかり検証していただきたいと思います。
 さて、試行内容の一つであります一者入札の中止については、二月末時点で、中止発生率は一七・三%にも上り、再入札時の発注者並びに事業者の事務量の増加や事業のおくれなど、都民サービスの低下を招き、白紙撤回となりました。
 試行結果は、先ほど申し上げたとおり、ほとんど運用をもとに戻し、それに一部改善を加えたのみとなりました。
 もちろん入札契約制度は、法や制度面、さらにその時期の経済情勢、また事業者の実情など、さまざまな角度から、できるだけ最適な方法を行うものであり、常に検証が必要でありますので、今後もそのことを十分留意していただきたいと思います。
 さて、入札監視委員会がまとめた検証結果報告書に記載のある、今後の検討課題についても、二点確認させていただきます。
 これまで、工事請負契約を対象とする本格実施について議論をしてまいりました。しかし、公共工事の品質確保の前提条件となるのは、設計業務などが適切になされることであります。検証結果報告書にも、都の職員による設計ではなく、委託による設計が主流となっている現在では、設計委託の業務の質を高める取り組みも有効と記載をされておりました。
 先日、設計業務等の品質確保に向けた取り組みをさらに進めるべきと、我が党の代表質問に対し総合評価方式の適用拡大についての答弁もありましたが、その狙いや、今後どのように検討を進めていくのか伺います。

○五十嵐契約調整担当部長 設計業務や測量、地質調査といった工事に関連する委託業務につきましては、後続の建設工事等の内容を決定するための重要な業務であり、これらについても、品質確保の取り組みを進めていくことが必要と認識しております。
 総合評価方式は、価格点に加え、過去の履行成績などを踏まえた技術点との両面から契約相手方を決めるものでございまして、これまで一部の局において、総合評価方式の試行を実施してまいりました。
 今後、その適用範囲を拡大することにより、総合評価方式適用案件における品質確保に寄与することはもとより、価格による通常の競争入札においても、今後の総合評価方式への参加を見据え、よりよい業務を行うインセンティブとなることを期待しているところでございます。
 一方、総合評価方式が多くなると、実績のない事業者の新規参入が難しくなるといった側面もございますので、制度のメリットやデメリットを見定めながら、今後、具体化に向けた検討を進めてまいります。

○伊藤委員 一つ試行すれば、またいろんなメリット、デメリット出てくると思いますが、ぜひご検討いただければと思います。
 最後に、予定価格の上限拘束の撤廃についても伺います。
 この件については、約十年前に都議会自民党が一年かけてプロジェクトチームで議論を行い、公共工事の正しいあり方について提言をした項目の一つです。
 現在の入札契約制度の大原則として、発注者が決めた予定価格を受注者側は超えることはできません。したがって、発注者が示す予定価格は、受注者にとって絶対的な基準となります。
 そもそも予定価格とは、当該工事案件について、発注者が定めた仕様や設計に従って、よりよい品質を目指し、資材や人件費、会社の経費など細かく積算して積み上げた価格であるため、予定価格は適正価格であることが前提です。仮に、予定価格の公表が事前でも事後であっても、本来は、それが適正価格であればあるほど予定価格に近い金額で落札されるべきともいえます。
 ですから、予定価格を下回れば下回るほど、本来の適正価格からかけ離れていくことになり、品質の確保や事業者へのしわ寄せなど、マイナスの影響が出ることにもなります。
 繰り返しになりますが、現在の制度の大原則は、発注者が決めた予定価格を受注者が超えることはできません。
 しかし、発想を転換して、上限拘束を設けていない欧米各国のように法改正も視野に入れ、上限拘束を撤廃して、一定の範囲内であれば予定価格を上回っても落札できるような制度をつくることはできないでしょうか。
 例えば、発注者が定めた品質や機能を確保するだけでなくさらによりよい提案があった場合や、資材や労務単価の変動の激しい時期など、このような制度を取り入れてもよろしいのではと考えますが、予定価格の上限拘束の撤廃についての見解を最後にお尋ねいたします。

○五十嵐契約調整担当部長 ご指摘のとおり、地方公共団体におきましては、地方自治法の規定によりまして、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申し込みをした者を契約の相手方とするとされておりまして、予定価格を超えての契約は、国による法改正が必要でございます。
 法体系が異なる欧米各国では、予定価格制度自体が設けられていないこと、国内でも、法令上の制約のない高速道路会社等において、予定価格を上回った応札者との契約を可能とする方式を一部の工事で試行的に実施していることは認識しております。
 今後、予定価格の上限拘束性につきましては、入札監視委員会からの提言も踏まえまして、国内高速道路会社等の事例の研究を進めてまいりたいと考えております。

○まつば委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○まつば委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時二分散会

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