財政委員会速記録第十八号

平成二十三年十二月十二日(月曜日)
第二委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長鈴木 章浩君
副委員長たぞえ民夫君
副委員長馬場 裕子君
理事中山 信行君
理事西岡真一郎君
理事宇田川聡史君
加藤 雅之君
福士 敬子君
淺野 克彦君
鈴木 勝博君
田中たけし君
鈴木 隆道君
大塚たかあき君
大沢  昇君

 欠席委員 なし

 出席説明員
財務局局長安藤 立美君
経理部長櫻井  務君
契約調整担当部長石井 正明君
主計部長武市  敬君
財産運用部長奥田 信之君
利活用調整担当部長岩瀬 和春君
建築保全部長末菅 辰雄君
技術管理担当部長室木 眞則君
庁舎運営担当部長藤森 教悦君
主税局局長新田 洋平君
総務部長目黒 克昭君
税制部長田倉 英明君
税制調査担当部長小山 明子君
調整担当部長須藤 充男君
課税部長木村 芳生君
資産税部長阿南 威彦君
徴収部長宗田 友子君
特別滞納整理担当部長西海 哲洋君
会計管理局局長松田 芳和君
管理部長安藤 弘志君
警察・消防出納部長丸山和喜夫君
会計制度担当部長佐藤  敦君

本日の会議に付した事件
 意見書、決議について
 会計管理局関係
報告事項(質疑)
・平成二十三年度資金管理実績(上半期)について
 財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百七十五号議案 都立港地区第二特別支援学校(仮称)(二十三)改築工事請負契約
・第百七十六号議案 東京都議会議事堂(二十三)改修工事請負契約
・第百七十七号議案 東京体育館(二十三)改修工事請負契約
・第百七十八号議案 東京都議会議事堂(二十三)電気設備改修工事請負契約
・第百七十九号議案 東京都議会議事堂(二十三)空調設備改修工事請負契約
・第百八十号議案  東京体育館(二十三)改修空調設備工事請負契約
・第百八十一号議案 環状第二号線隅田川橋りょう(仮称)鋼けた製作・架設工事(二十三 五-環二)請負契約
・第百八十二号議案 環二朝潮運河橋りょう(仮称)PCけた製作・架設工事(二十三 一-環二築地)請負契約
・第百八十三号議案 当せん金付証票の発売について
 主税局関係
報告事項(質疑)
・平成二十三年度東京都税制調査会答申について

○鈴木(章)委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 初めに、意見書、決議について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書二件、決議一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○鈴木(章)委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○鈴木(章)委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、財務局関係の付託議案の審査並びに会計管理局及び主税局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第百七十五号議案、第百七十七号議案及び第百八十号議案から第百八十二号議案までの契約議案につきましては、議長から、事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 報告事項、平成二十三年度資金管理実績(上半期)についてに対する質疑を行います。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○馬場委員 それでは、平成二十三年度上半期資金管理実績の報告についてお伺いしてまいります。
 先般、十一月二十八日、当委員会におきまして、会計管理局で運用を所管しておられます資金について、平成二十三年度上半期の資金管理実績の報告をいただきました。この実績報告では、全体で四兆円という多額の資金、これが歳計現金や基金などの区分ごとに分けられて、預金や債券などで運用が行われている状況が見てとれます。
 公金の運用については、地方自治法において確実な運用をすることが定められており、都においても安全な運用が行われていることとは思いますが、今回は、この資金管理実績に関して、何点か伺ってまいります。
 まず、資金管理実績、これを公表するということの意義についてお伺いいたします。

○安藤管理部長 会計管理局では、歳計現金等とか、あと基金及び準公営企業会計に係る資金の保管、運用を所管してございます。
 これらの資金は、都民からの税金を主な原資としておりまして、運用の結果については、広く都民に報告する必要があります。そのために、東京都資金管理方針に基づきまして、年間及び四半期ごとの資金管理の実績を東京都公金管理委員会に報告した上で、委員会において意見が出された場合には、その意見を付して取りまとめ、公表しているものでございます。

○馬場委員 この報告は、都民に結果、また実績といっていいでしょうか、報告をしていくという目的と伺いました。
 それでは、この報告書の中で使われている用語において、私も、少しというか理解できていない部分があるんですが、例えば資金の内訳ごとに残高が示されておりますが、歳計現金や基金を例にとっても、いわゆる残高というのは、日々、表示が変わっていくといいますか、日々で最小単位、計算されていくというふうに思うんですが、資金管理実績では、その残高が平均残高というふうに表記をされております。
 どういう理由でこの平均残高が使われて、その数値がどういうことを意味しているのかということを伺います。

○安藤管理部長 今お話がございましたとおり、残高は日々変動してございますので、資金管理実績では、運用資金の平均的な規模感を示すために、日々の平均を出しまして、それをとることによりまして、資金の変動による影響をならした平均残高を表記してございます。
 これによりまして、前期などとの比較もわかりやすく示すことが可能になると考えております。

○馬場委員 どういうふうに比較を、何と比較をするか、いつと比較をするかということで、その平均が変わってくるかとは思いますが、いわゆる日残高、期末残高というふうな部分と、この平均残高の使い方については、どういうふうに違うかというようなことも表記をされるというか、見る人にわかるようにお願いしたいというふうに思います。
 次に、運用利回りについて伺います。
 戻りますが、先般の当委員会でも質問させていただきましたが、十四年三月に東京都資金管理方針というのを制定されました。翌年からのペイオフ等に対応していくということです。そして、翌年の十五年度より、東京都資金管理計画というのを毎年立てられております。
 十六年度よりは、運用収入額が四半期ごとに表記をされています。それによりますと、平成十六年度の歳計現金残高の平均利回りは〇・〇一七、基金の平均利回り、利回りも平均であらわされていますよね、〇・〇九%。四年後の二十年度には〇・二七九%、同じく基金〇・八九八%と、上がっているわけです。そして、翌二十一年度は〇・〇九七%、同じく基金〇・五七五%と、今度は急落をし、ことし二十三年度の上半期平均では〇・〇三四%、基金〇・二八七%と、さらに下がっています。
 こうした近年の運用利回りの変化の要因について伺います。

○安藤管理部長 運用利回りの動きでございますが、日本銀行による政策金利に連動する傾向が強くて、近年は、長引くデフレや円高傾向の定着を受けまして、政策金利が低い水準で推移している状況にございます。
 平成二十一年度の運用利回りにつきましては、いわゆるリーマンショックの後、平成二十年十月と十二月にそれぞれ〇・二%、計〇・四%、政策金利が引き下げられたことが大きく影響しております。
 また、平成二十三年度上半期の運用利回りにつきましては、平成二十二年十月に、実質ゼロ金利政策が実施された影響を反映したものと考えてございます。

○馬場委員 私、余りに上がり下がり、上下がすごいので、基金の運用収入というのも、少しさかのぼって調べてみました。
 今回出された報告書も、ほかのものもそうなんですが、なかなか、何年前、数年前、十年前がどうだったかということは書かれておりませんので、今現在がどういう状況かということを見るのは、やはりどうしても過去に少しさかのぼってみないといけないのかなというふうに、わからないなというふうに私は感じたものですから、少し拾ってみました。
 例えばですが、今、例を挙げました平成十六年、このときの運用収入、年間で七億五千万。それが、例を挙げました二十年には二百七十五億、そして、二十一年にはそれが減ってきまして、二十年をピークにして、二十一年は百八十八億、二十二年は九十八億、今回の二十三年上半期は四十三億、これを後期、下半期を勘案しても、昨年の九十八億にはいかないのではないかというふうに思わざるを得ません。
 こうした相次ぐ金利の引き下げなどで、厳しい運用環境に置かれているということはわかりますが、そうした中で、何らかの運用上の工夫というのをせざるを得ない状況だというふうに思いますが、その具体的な取り組みについて伺います。

○安藤管理部長 公金の運用に際しましては、都民から預かった財産を少しでも増加させるという観点から、預金の設定や債券の購入に当たりまして、複数の金融機関に金利を提示させることにより競争性を高める引き合いを実施してございます。
 また、一般的に、運用期間に合わせて利回り水準も上昇するということもございますので、資金の見通しをより精緻に立てることで、資金を運用する期間を少しでも長くするよう工夫を行っております。

○馬場委員 今のお話の、運用上では運用期間を長くするというお話が出ました。この運用期間の長期化ということに関して伺ってまいりますが、資金管理実績については、四半期、年度など、一定のタイミング、一定の期間をもって資金運用の結果を示しているということですが、年度当初には、先ほど申し上げました、その年度の資金の見通しを示した資金管理計画というのを策定していらっしゃいます。
 その中に示されている基金想定配分計画を見ますと、平成十九年度には、利率の高い運用期間五年の債券による運用が一部計画に盛り込まれております。近年は、基金をどう運用していくかということで、預金と債券に大きく分けて表示をされていらっしゃいますが、そのうち、計画の中の債券の配分割合、基金の債券に充てる配分割合は増加傾向にあります。この数字を拾ってみますと、二十二年度第二・四半期には何と五八%、二十三年度上半期、今期お示しいただいたもので五五%。二十三年度上半期の基金の運用中、預金と債券になっているわけですが、今度は、預金の方に割り振られている部分のさらに五五%は信託銀行へという状況になっております。
 そうした債券の配分割合が増加傾向になっているその理由は、どういうことでしょうか。

○安藤管理部長 資金の配分に当たりましては、各年度の財政状況等を踏まえまして、各基金の設置目的及び取り崩しの計画等を勘案しまして、資金の見通しを立てた上で、債券などへの配分割合を設定してございます。
 中でも、将来の都債の償還財源である減債基金につきましては、健全な財政運営を行う観点から、平成十九年度に積立不足を解消いたしまして、以後、満額の積み立てが行われております。その後も残高が安定的に推移することが見込まれましたことから、債券での運用割合が増加しているものでございます。

○馬場委員 今ご答弁いただいた減債基金、確かに基金全体もふえているんですが、減債基金が、その中のかなり大きな割合を占めております。
 さっき、運用収入で年額、例をとってお話ししましたが、平成十六年、運用収入七億五千万という、最近では一番低い運用の折の基金の残高は七千二百億程度、今お話がありました十九年度、減債基金の積み立てがふえた時点、これも基金残高全体で一兆六千六百五十八億円ですか、そして、さらにふえ、二十二年度は二兆八千二百七十五億、二十三年は二兆七千六百七十二億。そして、調べていただきましたが、そのうちの減債基金は、二十一年度で一兆三千三百八十三億円、二十二年度、一兆三千七百六十五億円。
 こうした減債基金も含めて、冒頭申し上げました総額四兆円という、今、東京都は運用資金を抱えているという状況にございます。
 この運用面での工夫をされているということはわかりましたが、その前提として、安全性の確保に留意した運用、これだけの金額を預かっているということでは、まず安全性かなというふうに思います。
 また、今、国際的にも金融の情勢が悪化している中で、そうしたさまざまな配慮がなされて運用をしていくには、何らかの客観的な基準、どれなら、どのくらいなら安心、どういう基準でこの安全性、また運用の、いい運用利回りのものを判断していくかということになるというふうに思いますが、その点。また、公金管理委員会が設置されておりますが、その公金管理委員会の役割とあわせてお伺いします。

○安藤管理部長 会計管理局では、公金の管理運用を行うための指針として東京都資金管理方針を策定しておりますが、その中では、優先度の高い順に、安全性、流動性、効率性を確保することを資金管理の原則としてございます。
 預金につきましては、金融機関の格付を初めとして、自己資本比率などの経営指標や、その他の定性的な評価を行いまして、一定の水準を上回ると判断した金融機関を預金先として選定しております。
 また、債券についても、同様の仕組みで安全性を確認の上、運用対象を選定してございます。
 これらの基準に基づきまして、資金の見通しなどを踏まえながら、預金の設定や債券の購入などを行っているところでございます。
 また、東京都公金管理委員会は、外部の専門家から構成されておりまして、東京都資金管理方針の改定や金融機関及び運用商品の選定基準の決定などに当たりまして、その意見を聞くことにより、金融情勢等に応じた的確な判断や対応を行っているものでございます。

○馬場委員 都民の財産でもある公金の運用状況におきまして、四半期や、また、今回のように半期、さらに毎年の報告という、ある一定の時期を区切って資金管理実績を取りまとめて公表を、都民のためにとご答弁がありましたが、広く示されているということだというふうに思います。
 しかし、公表されている内容が、本当に一般の都民にとって、公金がどうしてこういう結果になったかと--先ほどもお話がありました、結果、実績の報告であって、どういう手順とか、今現在どういう状況にあるかということが、なかなかこの報告書では、都民にとって、私がといった方がいいかもしれませんが、わかりにくいのではないかというふうに思っています。
 数字の比較、前年の同期と比較をするというのが、どういう意味があるのか。また、一緒に出されましたことしの第二・四半期は、第一・四半期と比較をして、ふえた、減ったというふうに表記がされていますが、その第一・四半期と第二・四半期を比べるということが何を意味するのか。そして、そこで差が、相違があった、なかったということが何を意味するのか。そういうことの基本的なことがわかりにくい。この仕組みを知っている方でもなかなか、この数字だけでそのことを判断するのは難しいのではないかというふうに、実は私自身が思って、この質問をさせていただくことにいたしました。
 どういう理由でこうなったか、今の状況がどういうもので、今後、これから後半の下半期に向けてどういう状況になっていくのかとか、会計管理局の皆さんがどういうふうに考えてその運用をしていけば、その計画に合わせた、都民にとって一番いい方法になるのか。
 それが公表をされたときに、数値だけで、前期より、残高なり運用利回りなりが高かった、低かったという、その数字の表記だけでは、なかなかわかり得ないというふうに、私、今回思いました。
 皆さんからすると、公表できることと、できないことがあるというふうにご説明をいただいたんですが、公表いただけないものはいたし方ありません。どこどこの銀行に幾ら、いつにかけて、個別にどういう運用利回りと収益があるかという、そうしたことは、この四兆円ものお金を動かすということについては、本当に、そういう意味では、市場にとっても大きな影響があるでしょう。しかし、これだけの金額がどういうふうになっているのかということを、もちろん皆さんはやっていただいているので、結果として、これだけ毎年減ってきて、これはもう、国際情勢、国の状況、震災やさまざまなことの結果としか思いようがないわけですが、そうしたことがこの報告書の中に何らか、もう少し触れられているということが、つまり、前年より幾ら増加しました、幾ら減りましたということでなく、その動きがわかるような実績報告というものが必要ではないかというふうに考えております。
 そうした意味で、これからも、さらなる公表についての工夫をされることを要望して、私からの質問を終わります。
 ありがとうございました。

○鈴木(章)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○鈴木(章)委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○鈴木(章)委員長 これより財務局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百七十五号議案から第百八十三号議案までを一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○田中委員 本定例会には八件の工事請負契約議案が提案されておりますので、これについてお伺いをいたします。
 今回の議案八件中、五件の契約において低入札価格調査が実施され、このうち四件では、最低の価格での入札者が特別重点調査の基準に該当したため、特別重点調査が行われております。特別重点調査を実施したこの四件の入札金額を見ますと、最低価格は、いずれも七〇%付近の低い率が並んでおります。
 特別重点調査は二年前に導入されたもので、低価格入札のうち、特に低い一定の価格未満での入札について、適切な施行確保の観点から入札内容を重点的に調査するもので、特別重点調査の対象となると、事実上落札できないことから、特別重点調査のラインぎりぎりをねらった低価格入札が多くなっているという現実がございます。
 特別重点調査の導入については一定の評価をいたしますが、一方で、こうした入札が続いている状況におきましては、さらなる低価格入札への取り組み検討が求められると考えております。
 今後、東日本大震災の復興事業の影響がどのように波及してくるのかなど、不確定要素はあるものの、このような低価格競争が続けば、業界全体が疲弊し、将来的に社会資本の整備、維持管理の担い手が不足するおそれがあります。さらに、低価格での落札が相次げば、下請業者へのしわ寄せなどの懸念も出てまいります。
 こうした課題について、都はどのように取り組んでいくのか、まずお伺いをいたします。

○石井契約調整担当部長 特別重点調査の導入によりまして、過度な低価格入札については歯どめがかかったものと受けとめておりますが、一方で、長引く不況の影響などもございまして、特別重点調査のラインをねらった応札が見られ、低価格入札への対応がまだまだ必要であると認識しております。
 今後は、ご指摘のありました、元請と下請との関係にも着目した対策などについても検討してまいります。

○田中委員 今後、さらなる対策を検討していくということでありますが、低価格入札の抑制に寄与するよう、また、下請業者へのしわ寄せを防止するためにも十分な検討を行い、実効性ある制度としていただきたいと思っております。
 一方、受注者側の問題だけではなく、我が党に対する業界団体からの要望事項もありまして、この要望では、工期の延長や工事内容の一部変更等に伴う工事費の増額が十分に認められていないなど、設計変更への適切な対応について、発注者側の課題も指摘されております。
 都も、昨年度から、業界団体との意見交換会が行われていると伺っておりますが、どのような意見があったのかお伺いをいたします。

○石井契約調整担当部長 昨年度に引き続きまして、今年度も九月に、業界団体との意見交換を行ったところでございます。
 その中の主な意見といたしましては、総合評価方式の適用拡大、低入札価格調査制度の改正などに加えまして、設計変更への適切な対応を求める意見がございました。

○田中委員 設計変更への適切な対応について、業界団体との意見交換会でも話題になったとのことでありますが、こうした課題に対して、都としてはどのように対応していくのか、お伺いをいたします。

○石井契約調整担当部長 設計変更につきましては、平成二十一年に工事請負契約設計変更ガイドラインを定めまして、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が相違する場合などの具体的な事例を示しまして、全庁的に運用しているところでございますけれども、実際の運用に当たりましては、工事ごとの内容や施工条件がさまざまであり、それぞれの現場の個別状況に応じる必要があり、一律的な対応とはならないことが多いことから、さまざまな意見が出てきているのではないかと考えております。
 今後は、工事主管部署とも連携し、ガイドラインが一層適切に適用されるよう、意見交換などを行ってまいります。

○田中委員 設計変更は、受注者にしてみればハードルが高い手続ではないかと思いますが、受注者と発注者の関係が対等であるという観点から、適切に対応していくことが重要であろうと考えております。受注者と発注者がよりよい関係を築いていけるよう、引き続き努力していただきたいと思います。
 低価格入札の対応にしても、設計変更にしても、都民の財産である社会資本を守っていくための公共調達の仕組みの一つであり、受注者も発注者も、よりよい公共調達に向けて努力を重ねていかなければならないと思っております。
 このたびの震災を経て、十一月に発表されました都民生活に関する世論調査でも、都政への要望の第一位は防災対策でありました。こうした観点から、一日も早い高度防災都市東京の実現が求められております。このような状況において公共工事が果たす役割を認識した上で、入札契約制度改革に取り組んでいただくことを強く要望いたしまして、質問を終わります。

○鈴木(章)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○鈴木(章)委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。

○鈴木(章)委員長 これより主税局関係に入ります。
 報告事項、平成二十三年度東京都税制調査会答申についてに対する質疑を行います。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木(勝)委員 私は、税制においても、これからの社会のあり方を変えていく一助とする視点が今後重要であると考えております。環境に優しい持続可能な社会を実現することは、現在、地球に生きる我々人類の大きな責務であるということは明らかです。このたびの都の税制調査会の答申も、こうした社会の変化の中で税のあり方を検討いただいております。そこで、私からは、環境を重視した税制の観点から、まず何点か質問をさせていただきます。
 平成二十三年度都税制調査会答申は、環境を重視した税制を税制改革の視点の一つにとらえておりますが、まず、その基本的な考え方をお伺いいたします。

○小山税制調査担当部長 都税調答申における環境を重視した税制の基本的考え方でございますが、大量生産、大量消費、大量廃棄の二十世紀を経て、現在、地球温暖化を初め、人々の生活基盤を脅かすさまざまなレベルの環境問題が生じております。こうした問題を解決し、持続可能な発展を実現していくためには、環境や資源の価値を正当に評価し、適切な利用を図る新たな社会経済システムを構築していくことが必要としております。
 そのため、税制においても、環境負荷に応じて負担を求める、環境負荷をコスト化し、その抑制を図るなど、環境重視の考え方を組み込んでいくとし、まずは、地球温暖化対策として温暖化対策税の導入を図ることが適当であるとしております。

○鈴木(勝)委員 まさに今お答えいただいたように、答申が述べているような、二十世紀の高度経済成長期に我々が追求してきました大量生産、大量消費、大量廃棄の経済システムは、大きな転換を迫られております。
 今期の答申では、温暖化対策税のあり方について精力的な検討がなされております。温暖化対策は極めて重要な課題でありますが、産業界からは、経済成長の妨げになるとの意見も多数出ております。私は、これからの日本は、経済成長と環境戦略とをどのように両立させていくかという、この政策のポリシーミックスが大変重要であると考えています。
 温暖化対策税の検討について、経済成長との両立の視点から、答申はどのように述べているのかを改めてお伺いいたします。

○小山税制調査担当部長 答申は、温暖化対策税の課税は、世界最高水準にある環境技術や、高効率、低燃費な製品のさらなるイノベーションを促すことにより、我が国が環境技術のトップランナーとして世界の温暖化対策をリードするとともに、持続的な経済成長を実現する一助になるものであるとし、また、税収を活用し、環境関連の公共投資を行えば、グリーンニューディールの考え方にも合致し、景気を刺激する効果も期待できるとしております。

○鈴木(勝)委員 先般、私は、大塚委員を団長にドイツを視察調査してまいりました。
 まず、ドイツでは、環境大国として世界のリーダーとなることがドイツの持続的な経済成長につながるという確固たる自信と覚悟があるということです。メルケル首相のもとで、環境省、産業省が両輪で政策実現を目指しており、そこに民間の力が結集されています。まさに政官財が一体となって環境大国を目指していることに、改めて感心をさせられました。
 ですから、ドイツでは、二百を超える環境政策が同時に進められ、そのための財源確保や減税対策などがとられています。もちろん、一方で、環境税などの導入で、成長の足かせとなることや、産業の空洞化を生じさせるなどの議論があったことも事実です。
 今回の答申では、現在の経済環境に十分留意することを条件に、環境税の導入を積極的に提言しています。
 そこで、日本国内の企業が今は六重苦ともいわれる大変厳しい環境の中で、CO2排出抑制という温暖化対策の重要な政策課題とはいえ、燃油や電力にさらなる課税をするということに対し、その是非を都は現時点でどのように考えているのか、その見解をお伺いします。

○田倉税制部長 答申では、中長期的視点から温暖化対策税を導入すべきと提言しております。
 これまで都は、国に対して、地球温暖化対策のための税及び地方環境税については、地方分権改革との整合性、地方自治体が地球環境、地球温暖化対策に果たす責任と役割を踏まえ、地方税を主体として、国と地方で税源を適切に配分すること等を提案要求しております。
 都といたしましても、温暖化対策税の導入につきましては、答申にもあるとおり、経済状況等を総合的に勘案し、国民の理解を得ていくことが重要であると認識しております。

○鈴木(勝)委員 温暖化対策税の課税は、環境性能にすぐれた製品に対する需要の創出、環境技術の向上やイノベーションの促進を通じ、持続可能な経済成長にもつながります。地球温暖化は人類の極めて大きな課題であり、こうした経済への好影響の部分をきちんと評価するべきであると考えております。
 また、環境を重視した税制においては、課税の側面ばかりではなくて、環境に望ましいものに対する減税の側面も重要です。
 二〇一二年の政府税制大綱が、先週未明に閣議決定されました。その中でも、電気自動車やハイブリッド車、あるいは省エネ住宅に対する減税措置がとられています。答申においても、歳出のグリーン化を図るとして、環境性能にすぐれた設備や再生可能エネルギー等の導入、次世代自動車の普及などを着実に進めるべきとしています。
 現在、都は、こうした趣旨から、独自に東京版環境減税を実施していますが、改めてその概要をお伺いします。

○田倉税制部長 東京都では、低炭素型都市の実現に向けまして、自主的な省エネ努力へのインセンティブとして、独自に二つの環境減税を実施しております。
 中小企業者向け省エネ促進税制は、環境局が推進する地球温暖化対策について、自主的なCO2削減の取り組みを税制面から支援することを目的としております。
 具体的には、地球温暖化対策報告書等を提出いたしました資本金一億円以下の中小法人及び個人事業者が、特定の省エネルギー及び再生可能エネルギー設備を取得した場合に、その取得価額の半額について、一千万円を上限といたしまして、事業税額の二分の一を限度に減免するものでございます。
 また、次世代自動車に対します自動車税、自動車取得税の課税免除につきましては、環境負荷の小さい電気自動車やプラグインハイブリッド車の取得を税制面から支援することを目的としております。
 具体的には、平成二十一年度から平成二十五年度までに新車新規登録された電気自動車等につきまして、新車新規登録された年度及び翌年度以降五年度分の自動車税及び自動車取得税を免除し、次世代自動車の取得を税制面から支援するものでございます。

○鈴木(勝)委員 先日、東京ビッグサイトで開かれておりました東京モーターショーに私も行ってまいりました。大変驚かされました。私も車が好きですから、何回もモーターショーは見に行っておりますけれども、ことしのモーターショーは、今までの車の概念を覆す、そういう展示が大変際立ったモーターショーでもございます。車のデザインや性能を競う時代から環境性能を競う時代、さらには車の情報化の時代へと、ドラスチックに業界自体がかじを切っているということでございます。
 先ほど、都の減税は、電気自動車とプラグインハイブリッド車との説明がありましたが、プラグインハイブリッド車も数多く展示をされておりました。今後、一般ユーザーへの販売が大きくこれから拡大していくということでございますので、都の減税も普及の一助となるということを期待しております。
 また、スマートモビリティーシティへの都市の進化の中で、車の役割が大きく変わろうとしています。走行する機能に加え、IT化が進み、スマートハウスのツールとしても活用が進んでいくでしょう。家庭の省エネは、住宅の省エネ性能の向上、太陽光発電等の活用とともに、蓄電池としての車の活用も、今後、大変重要になります。
 こうした車と住宅が一体となった家庭の省エネ、そしてまた自立型エネルギー社会の構築については、今後、都としても大いに促進すべき政策でありますから、私は、民間の力を引き出して消費につなげる新たな税政策を直ちに検討いただきたいと思っております。
 さて、政府は、税と社会保障の一体改革に、まさに取り組んでいる真っただ中でございます。年内に野田政権のもとで素案を決定し、与野党協議の上、大綱を閣議決定しまして、年度内にも法案提出を目指す、そういうスケジュールになっています。
 この税と社会保障の一体改革も、当然、国の成長をなくしてなし遂げることはできません。成長戦略とともに、社会保障も語られていく必要があります。
 民主党政権では、昨年、新成長戦略をまとめ、その中の大きな政策の柱として、グリーンイノベーションにより、環境関連分野で二〇二〇年までに五十兆円の市場創出と百四十万人の新規雇用を打ち上げました。
 元来、日本は、高度成長の中で、公害問題や二度にわたるオイルショックを技術革新で乗り切る中、あらゆる分野で世界一の省エネ技術を持つ国でありました。ところが、昨今、太陽光発電や風力発電の技術では、ドイツやスペインにおくれをとっています。日本が世界の中で目指すべき道は、ドイツなどの環境技術大国に負けない技術立国となることだと私は確信をしております。
 都は、先ほど説明いただきました東京版環境減税など先駆的な取り組みを行って、環境技術のイノベーションに貢献をしてまいりました。
 加えて東京は、日本の首都として、世界じゅうから人、物、金融、情報が集積する国際的な都市であり、日本の経済を牽引する役割も担っております。
 国は、いわゆる総合特区法を成立させましたが、地方自治体の申請が認められれば、現行の枠組みを超えた大胆な規制緩和や税制優遇を行うことが可能となりました。都は、これまで進めてきました都市再生の取り組みと、この総合特区制度を一体的に活用し、大震災の教訓も踏まえて戦略的な都市づくりを展開することで、激化している都市間競争を勝ち抜き、アジアのヘッドクオーターを目指すとしています。
 この九月には、国際戦略総合特区として、民間企業のアイデアも盛り込んだ都のプランを国に対して申請していると聞いていますが、これは我が党が主張する成長戦略につながるということで、この制度を活用して都の魅力を高めることを非常に重要視しております。申請をしています他の自治団体との競争を勝ち抜き、申請が認められることを願っております。
 そこで最後に、この総合特区に関し、主税局としてどのように取り組んでまいるのか、その見解をお伺いいたします。

○田倉税制部長 都が提案しております総合特区は、これまでにない規制緩和や税制優遇を行い、外国企業を誘致し、外国企業と高い技術力を有する中小企業とが刺激し合うことで魅力的な市場を形成させ、東京をアジアのヘッドクオーターへと進化させることを目的としております。
 主税局としても、地方税の優遇措置を検討し、その内容を申請に盛り込んでおります。具体的には、都が設定いたしました特区エリアに新規で進出してまいりました外国企業に対し、法人事業税や固定資産税等を免除するというものでございます。特に法人実効税率につきましては、法人事業税と国の法人税の優遇措置をあわせて、一〇%程度下がる内容となっております。
 今後とも、関係局と連携を図りながら、積極的に取り組んでまいります。

○鈴木(勝)委員 先ほど来、述べたように、日本は、環境技術で世界一を競う国をとことん目指すべきだと考えています。
 そして東京は、世界一の環境都市、スマートグローバルシティを実現すべきです。世界じゅうから人と物と金、そして情報を集めるためには、東京が世界の資本家や企業、ビジネスマンから魅力ある都市として見直される必要があります。そのために、環境に優しい緑あふれる住みやすい都市であること、そして、環境技術を駆使したスマートシティを実現している国際都市であることが何よりも重要であると考えます。
 ぜひ総合特区制度を有効に利用し、先進的な税制の導入を検討いただいて、東京が日本を、世界をリードするスマートグローバルシティを目指すよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。

○田中委員 私も、平成二十三年度東京都税制調査会答申に関連しまして、何点かお伺いをいたします。
 この税制調査会では、平成二十一年度から三年間の議論の成果として答申がまとめられました。このことに対しましては、会長を初め委員の皆様に敬意を表したいと思っております。
 私は、現在の国の動向を見ておりますと、国が進めようとしている方向性は、日本の将来を考えたとき、果たしてこれでよいのかと感じることがあります。
 また、今回、この答申を読み込む中で、また、我が会派の中でも議論を重ねていく中で、現下の経済状況や東日本大震災後のさまざまな状況変化を考慮したとき、率直なところ、幾つか懸念を感じたことがございます。こうした問題意識のもと、本日の質疑を通じまして、都税調でしっかり国に物を申しているのかどうかの確認、そして、さらには幾つかの懸念に対しての確認といった視点でお伺いをしていきたいと思っております。
 税金の役割というのは、これ、いわれているとおりでありまして、公共サービスの資金の調達、そして、所得の再分配、景気の調整というのがございます。この三点の視点に基づいて、ちょっと質問をしていきたいと思っております。
 まず、公共サービスを提供していくのは国と地方公共団体であります。当然、国と地方公共団体の役割分担を明確化していくことが必要であります。現在、大きな流れでいいますと、明治維新以降、中央集権体制だったものが、地方分権に移っている。これは大きな時代の流れであり、住民ニーズの多様化に対応していくといった視点では、正しい方向性だと思っております。この真の分権の実現は、それぞれの役割分担の見直しが必要でありまして、そして、その役割に応じた財源の確保が重要だと認識をしております。
 平成二十一年、政権交代がなされまして、鳩山政権当時、地域主権の確立は一丁目一番地の最重要課題であるということで位置づけられておりました。そういう位置づけである一方で、そういいながらもなかなか、地方の自主財源の充実といった視点では、その改革が先送りされてしまっているのかなと思っているところであります。
 改めて申し上げますが、私は、真の分権を実現するためには、国と地方の役割分担の見直しが必要であり、そして、その役割に応じた権限と財源を地方に移譲する、そのことが真の地方分権につながり、そのことが不可欠だろうと考えております。
 この辺を踏まえながら、税制の抜本改革の方向性について、この都税調での基本姿勢をまずお伺いしたいと思います。

○小山税制調査担当部長 税制抜本改革の方向性につきましては、都民や国民の行政に対するニーズが多様化し、地域の実情に応じたきめ細かな公共サービスの提供が求められる中、医療や介護、福祉、子育てなど、人々の生活の安心を支える社会保障サービスは、そのほとんどを地方自治体が担っておりまして、少子高齢化の進展により、その需要はさらに高まっていくことなどから、今後、地方自治体が果たす役割は増大してまいります。
 地方自治体が自主的、自立的に行財政運営を行い、増加していく行政需要に適切に対応していくためには、国から地方への権限移譲を進めると同時に、地方自主財源の充実、とりわけ地方税の充実が不可欠でございます。
 都税調では、こうした観点から、税制の抜本改革を進めるに当たっては、地方税の充実を図る方向で、税源が全国に普遍的に存在し、税収規模の大きい基幹税を国と地方の役割に応じて分かち合うことが適当である、このようにしております。

○田中委員 地方の役割は確実に大きくなっておりまして、今のご答弁にもありましたように、中でも社会保障分野に対しての地方自治体の役割はふえてきております。このような行政需要に対応するためにも、自主財源の充実が必要であるということは明らかでございます。
 現在、国では社会保障と税の一体改革の議論がされております。これは、社会経済情勢の変化に対応した社会保障制度の確立と、その制度実現のための安定財源の確保といった視点で議論がなされていると伺っておりますが、この内容を見ておりますと、ややもすると、社会保障制度の議論というよりも、財源確保の議論に終始をしているのではないか、そんな思いがしております。
 また、国は、社会保障・税一体改革成案としてその方向性をまとめておりますが、いまだ閣議決定もされておらず、さらには、元代表の方からも、いわゆる消費税の増税を踏まえてだと思いますが、国民との契約違反であるといった発言もある中で、なかなか政府としても、政府内でもその対応が一致しておらず、混迷が続いている状況なのかなというふうに認識をしているところでございます。
 そのような状況の中で、改めてこの内容を見ておりますと、数字合わせにすぎず、消費税も、あわよくば国税でといったところで、国と地方の役割分担を踏まえた議論は進んでいないのかなというふうな思いをしております。
 このような状況にあります国の社会保障・税一体改革成案に対して、都税調はどのような見解であるのかお伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 社会保障・税一体改革成案では、消費税、地方消費税の税率引き上げ分の税収につきまして、社会保障給付における国と地方の役割分担に応じた配分を実現することとしておりまして、現在、その配分割合について議論がなされております。
 これに対しまして、都税調では、成案決定までの過程において、消費税引き上げ分についての国と地方の配分割合ばかりに議論が集中していた嫌いがあり、今後の社会保障制度のあり方等について、議論が十分でなかったことも否めないとしております。
 人々の生活の安心を支える社会保障サービスは、そのほとんどを地方自治体が担っておりまして、少子高齢化の進展により、その需要はさらに高まっていくことなどから、今後、地方自治体が果たす役割は増大してまいります。
 税率引き上げ分の配分割合を決定する上で前提となる地方単独事業の範囲につきましては、地方自治体が率先して取り組み、現在では定着し、全国的に実施されている事業についても広く対象とすることが不可欠であるとしております。

○田中委員 今のこの国の動きを見ておりますと、地方の役割がますます重要になる中、国の実態として、地方に対する熱意のなさが伝わってくるように思えてなりません。さらに、本来、国としてあるべきなのは、給付と負担のあり方はどうあるべきかといった根幹の議論のはずであります。
 先ほどのご答弁もありましたように、地方が果たす役割が大きくなっている中で、その役割に応じた税体系、税制が求められております。そのような視点に立ちますと、今後ますます都税調の役割、果たすべき使命は大きいものがあるというふうに認識をしているところでございます。国での議論もさまざまであり、都税調としてはなかなか難しい状況にあることは理解しておりますが、国の議論が混迷をきわめるときだからこそ、いま一歩踏み込んで、国に強く訴えてほしかった、そんな思いであります。
 続きまして、先ほどの、会派内でも議論をしてまいった中で幾つか感じた懸念について確認をしていきたいと思います。
 先ほど、冒頭、税金の役割として三つ挙げましたが、そのうちの特に所得の再分配といった視点でお伺いしていきますが、今回の答申では、所得再分配が前面に出過ぎているのではないかということであります。
 格差是正は大きな課題で、歳出の充実を含め、総力を挙げて取り組むべきものと認識をしております。しかしながら、行き過ぎた所得再分配では、社会経済の活力を低下させるのではないか、頑張った人が報われる仕組みがなければ豊かな社会を築くこともできないのではないかと、こういった問題意識を私どもは持っております。私は、これからの税制を考えるとき、社会の活力向上の視点が非常に重要だと考えております。
 そこで、社会経済の活力向上について、都税調ではどのような議論があったのかお伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 都税調では、人々の安心を支えるためには、雇用の安定化、社会福祉の充実等が不可欠でございまして、そのためには経済成長の促進が必要であり、特に経済のグローバル化により競争が激しさを増す中で、いかに経済の活力を維持し高めるかが大きな課題であり、また、少子高齢化の急速な進展により、経済活動や社会福祉の担い手である若年層の急速な減少が予想される中、社会の活力をどう維持していくかも重要な課題であるとの認識のもと、検討を重ねてまいりました。
 そして、答申では、経済がグローバル化する中で、日本、特に東京の魅力を高めていくことが重要であり、経済活動を支える公共サービスの提供によりまして、地域の魅力をより高める方向に生かしていく必要があること、少子高齢化の進行により、今後、生産年齢人口が確実に減少する中では、社会保障の支え手をどう育てるかが重要であり、広く負担を分かち合う消費税は、高齢者などにも社会保障の支え手となってもらうという意義がございますが、負担を求めるに当たりましては、それを活用してどのような都市環境、地域づくりを行うかについてのビジョンを示し、納税者の理解を得る必要があることを述べております。
 その上で、税制の役割は、そのための財源を確保することでございまして、地方自治体の自主財源である地方税の充実を図ることが重要であるとしております。

○田中委員 先ほどの税金の役割の所得の再分配といった視点での活用はもちろん理解をしている上でではありますが、それがややも行き過ぎてしまうと、いわゆる社会経済の活力向上を損ねてしまうのではないかと、一方でそんな危惧もしておりますので、今のこういった時代だからこそ、この点についてももっと強く打ち出されれば、さらに充実した答申になっていたのではないか、そんな感想を持っております。
 次の懸念として、国民の負担を求めるといった表現が目立つのではないかという点であります。
 国、地方を合わせた長期債務残高が約九百兆円に上り、財政の持続可能性への懸念が、これまでになく大きくなっている状況であります。このことは十分に認識しておりますが、やはり生きた経済をよく見るべきだと思っております。
 答申では、行政のむだの見直しとともに、国民の負担増への理解を求めることが必要であるとも示されておりますが、ここでしっかり確認をしなきゃいけない、対応しなきゃいけないのは、その実施するタイミングだと思っておりまして、このタイミングを考慮することは非常に重要だと思っております。
 そこで、都税調では、国民に負担を求める時期についてどのようにとらえているのか、お伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 答申では、その条件や時期等につきまして、行政のむだを徹底的に見直し、行政に対する国民の信頼を回復すること、景気好転を前提とすること、低所得者層へ配慮すること、復興財源に伴う国民負担や現下の経済状況等を十分に考慮し、国民の理解を得ていくことなどが重要といたしまして、あわせて、と負担の公平や課税の適正が確保されることが重要であり、税制に対する国民の公平感を高める取り組みが必要であるとしております。

○田中委員 再三申し上げている税金の役割の中に、景気の調整というものがございます。都税調では、今後検討する際には、その景気の調整といった視点もしっかり踏まえていただいて、生きた経済の動きに引き続き十分配慮されるように希望しております。
 次に、今回の答申では、震災復興、防災都市づくりと税制のあり方について検討がなされておりますので、この点についてお伺いをしていきたいと思います。
 石原知事がこの四月、まさに震災が発生した当日に四選出馬表明をされ、その選挙で、震災を受けてでありますが、石原知事からの発言の中にも、東京は貧乏したっていいじゃないかと、東京が率先して復興支援をしていこうよといった力強い発言がございました。
 私自身も同感ではありますが、こういった、我々がしっかりと結束をし、被災地支援、また防災都市づくりに取り組んでいくんだといった前提のもとで、ちょっとお伺いをしていきたいんですけれども、この震災復興、防災都市づくりと税制の検討の関係では、そういった前提を置きつつも、一つ懸念を感じる点があるので、ここで確認をしていきたいと思っております。
 国では、復興、防災のためには増税すべきと、ややもすると、何から何まで防災に結びつけて、防災を口実に増税、財政再建を進めようとしているのではないかという懸念がございます。
 今回、答申では、震災復興、防災都市づくりと税制についてまとめておりますが、どうもこの中で、同じようなことが見え隠れしているのではないかという心配をしております。
 そういった確認といった視点で、都税調ではこの視点についてどのような見解だったのか、確認をしていきたいと思います。

○小山税制調査担当部長 国では、被災地の復興に向けた財源確保のための法案が可決されたところでございますが、これまで、その前提となる復興施策の議論が十分ではなく、増税論議が先行していたとの批判があることは承知しております。
 それに対しまして、都税調では、東日本大震災に伴う電力供給の低下、震災時のリスク低減の観点から電力需給構造の転換について、また、被災地以外の地域における防災性の向上の観点から防災都市づくりの推進について検討を行っております。
 防災都市づくりの推進における税制の役割についてでございますが、防災都市づくりの実現は、効果的な施策展開により図るべきものでございまして、税制の役割は、まずは財源の確保でございますが、重要な政策課題については、ポリシーミックスのもとに政策減税などのアプローチも考えられるとしております。
 そのほか、被災地以外の地方自治体が防災、減災のまちづくりを進めていく上で、地方税により財源調達を行う必要がある場合に考え得る課税のあり方を一通り検討したものでございます。

○田中委員 今ご答弁もありましたように、震災が発生して九カ月が経過している中、なかなか復興が進んでいかない状況にある中で、ややもすると増税論議が先行してしまっている国の状況を見て、冒頭申し上げたような懸念を感じていたわけでありますが、都税調におきましては、東京の防災都市づくりの推進をしていく、そのための税体系のあり方はどうなのかといったことが議論されており、そしてまた、地方税として考えられる方策を一通り検討されたもとでの答申であるということで確認をさせていただきました。
 今回の質疑を通じまして、感じた懸念が幾つか当初はありましたけれども、それら懸念は払拭されましたが、今後は、これまでるる申し上げました点も十分踏まえて、よりよい税体系、都税のあり方を議論し、築き上げていただきたいなと思っているところであります。
 また、答申にもありましたが、防災力の強化の観点からは、建物の不燃化は特に重要な政策課題であると考えております。木密地域の不燃化のための税制の活用については、積極的に検討を進めてほしいと強く願っているところであります。
 こういった時代だからこそ、都税調が担っている役割は大きいと、私自身、改めて感じております。そういった観点から、最後、二点、確認を含めてお伺いしていきたいと思います。
 我が国は、今、かつてない危機に直面をしております。東日本大震災、急激な円高、厳しい雇用環境、生産拠点の海外移転の加速の懸念に加え、欧州危機、新興国の台頭、さらにはTPPの問題なども山積し、まさに国難な状況であり、乱世ともいえる状況にあります。
 こうした国難の今だからこそ、将来にわたり、この豊かな日本を継続的に発展させるため、あるべき姿を踏まえた上での抜本的な議論が必要であると思っております。持続可能な社会経済の発展のため財政再建が急務であること、また、高福祉、低負担などあり得ないということは、だれもが理解をしております。
 ただ、国の動きを見て感じることは、果たして、今すぐ増税なのかということであります。それでは国民の痛みがわかっていないといわれても仕方ないのではないか。抜本的な改革には痛みが伴うのは当然であるが、痛みをどれだけ真摯に受けとめ、理解できているのかが肝心であろうと思っております。今求められるのは、国民の痛みを理解した政治であり、国民の将来の不安を解消し、希望を現実のものにできる政治であります。
 税制を論じるに当たって、国民の痛みを理解した上で議論を尽くすべきであり、あすへの希望を持って暮らせる社会を実現するための税制改革でなければならないと思っております。
 ここで改めて、どういった趣旨で都税調が設置されたのか、確認をさせていただきたいと思います。

○小山税制調査担当部長 東京都税制調査会は、分権時代にふさわしい国、地方を通じた税財政制度のあり方等について、都、さらには地方全体の立場から検討し、提言することを目的に、平成十二年に設置された知事の諮問機関でございます。
 学識経験者、都議会議員、特別区長会や東京都市長会等の会長、都の副知事など、多様な立場の方を構成員としておりまして、幅広い視点から実効性の高い提言を行うことが役割であると認識しております。

○田中委員 国は、小手先の議論に終始し、抜本的な改革には及び腰であります。今こそ必要なのは、この国はどうあるべきかという根幹の議論であると思っております。
 都税調には、都民、国民が安心して暮らせる社会経済を築くために、そして日本の将来を考え、あるべき税制改革の姿を描いていただきたいと思っております。国に対して物を申すという強い気概を持って取り組んでいただきたいと思っております。
 都として、今回の答申をどのように受けとめ、対応していくのか、その取り組みに期待しているところであり、あるべき税制改革の実現に向け、力を尽くしていただきたいと思っております。
 これら議論を踏まえまして、最後に局長のご決意を伺って、質問を終わります。

○新田主税局長 東京都税制調査会は、平成十二年の発足以来、十年余にわたりまして、従来、国だけで議論が完結しておりました税制論議に対し、地方の立場、住民の立場から問題を提起し、一石を投じてまいりました。
 例えば、所得税から住民税への税源移譲や外形標準課税などを全国に先駆けて提言し、その実現につなげてきたところでございます。また、現在、都において実施しております、宿泊税や中小企業の省エネ促進及び次世代自動車の導入促進を図るための東京版環境減税などにつきましても、都税調の答申を踏まえて導入したものであり、この国の税制のあり方に大きな影響を与えてまいりました。
 また、都議会の先生方に特別委員としてご参画いただくなど、独自の運営方式の工夫により、経済実態や住民感覚を踏まえた、まさに生きた経済を反映し発信する貴重な場として重きをなし、一目を置かれる存在感を示してきたと思っております。
 現在、我が国を取り巻く環境は、EUにおけるソブリンリスク問題や、米国における住宅、雇用問題の深刻化等による世界経済の混迷、歴史的な円高水準の高どまりなど、大変厳しい情勢にあり、委員ご指摘のとおり、国難ともいえる状況にある中、あるべき地方税制の姿をしっかりと描いていくことが求められております。
 このたびの都税調答申は、そうした極めて重い課題、背景を抱えて行われたものであり、国内外で、経済、財政、金融の各般にわたりまして流動化が進み、不透明感が増している厳しい局面での取りまとめであったと認識しております。
 ご指摘を賜った諸点につきましては真摯に受けとめさせていただき、今後も、都税調が輝きを失うことなく活発で深い議論が展開されるよう、事務局といたしまして、運営をしっかり下支えしてまいる所存でございます。
 都といたしまして、今回の答申、ご意見を踏まえ、庁内に横ぐしを刺して、関係局とも連携を密にとりながら、施策の精緻化、具体化を図るとともに、都議会の先生方のお力もおかりしながら、暫定措置の撤廃を初め、地方税財政の改革に向け、さらに国に対し強く働きかけ、全力で取り組んでまいります。

○加藤委員 私は、平成二十三年度の東京都税制調査会答申に関しまして、給付つき税額控除と防災都市づくりのための政策支援税制について質問をします。
 全国の生活保護受給世帯数が、平成九年の約六十三万世帯から、平成二十二年には約百四十一万世帯と約二・二倍に増加、また、労働者総数に占める年間労働所得百五十万円未満の労働者の割合が、平成九年の一九・四%から、平成十九年には二四・三%に増加しているように、国民の所得格差の拡大がいわれております。したがって、低所得者に対する支援や所得再分配機能の強化は、我が国の重要な課題であると考えています。
 所得再分配の方法としましては、所得税の累進課税など幾つかの方法がありますが、都税調答申においては、所得格差の拡大に対応した税制として、給付つき税額控除を取り上げています。答申は、この制度の導入についてどのように述べているのか、まず伺います。

○小山税制調査担当部長 都税調答申におきましては、現在の配偶者控除、扶養控除等の所得控除については、所得を超えて適用することができないため、低所得者は、本来適用されるべき所得控除をすべて使い切れない場合があり、また、累進税率のもとで高所得者に有利な仕組みになっているとしております。
 これに対して、給付つき税額控除は、税額から控除額を差し引くことで、低所得者ほど軽減効果が大きくなるとともに、税額を超える控除を認め、その差額を支給することで、課税対象外の者等にも効果を及ぼすものであるとしております。
 こうしたことから、我が国におきましても、所得格差の拡大に対する税制面からの対応策として、積極的にその導入を検討すべきとしております。

○加藤委員 政府は、税と社会保障の一体改革におきまして、消費税の引き上げを図ろうとしております。消費税は所得に対する逆進性もいわれ、低所得者への配慮が必要であることはいうまでもありません。遅まきながら、政府・与党からも、税率が一〇%まで引き上げられた段階で、給付つき税額控除の導入を進めるべきとの発言も出ているようです。
 私は、消費税率の引き上げは将来必要というふうに考えておりますけれども、景気の状況を考慮して、そして社会保障メニューの具体像をしっかり国民に示し、そして、むだの削減、これは実効性のない事業仕分けではなくて、複式簿記・発生主義会計という公会計を活用した事業見直しを徹底的に行った上でということで慎重であるべきというふうに考えております。
 この税率引き上げを検討するならば、低所得者への配慮をしっかりと議論しておかなければなりません。答申は、この消費税率引き上げと低所得者への配慮の観点から、給付つき税額控除をどのように評価しているのか伺います。

○小山税制調査担当部長 給付つき税額控除につきまして、答申は、消費税率を引き上げる際には、低所得者に何らかの配慮をすることが必要であるといたしまして、そのための方策として、給付つき税額控除も有力な選択肢であるとしております。

○加藤委員 私も、所得再分配や低所得者支援の観点から、給付つき税額控除を積極的に導入すべきものと考えます。
 導入に向けて課題もあると思いますが、答申においては、課題についてどのように認識しているのか伺います。

○小山税制調査担当部長 答申では、給付つき税額控除を導入する際には、前提として、所得を総合的に補捉し、適切な執行を担保するために、納税者番号制度の導入が必要としております。
 また、社会保障制度のあり方とあわせた総合的な制度設計のほか、確定申告者の大幅な増加に伴う事務負担の増加など、執行面も含めた実現可能な仕組みの検討が必要であるとしております。

○加藤委員 導入に向けてはまだまだ課題があることは理解をいたしますが、給付つき税額控除の導入は重要であると考えておりまして、引き続き検討を進めてほしいと思います。
 次に、防災都市づくりのための政策支援税制について伺います。
 先日の我が党の代表質問において、知事から、帰宅困難者対策について、民間企業にも食料等の備蓄と一時待機施設の確保などへの協力を求めていくとの答弁を得ました。民間にも一定の公的役割を担ってもらうということになれば、税制の活用も考えられます。
 今回の都税調答申では、帰宅困難者対策についてどのように述べているのか伺います。

○小山税制調査担当部長 帰宅困難者対策につきまして、答申は、行政による対応だけでは限界があり、大学、企業等、民間ビルの協力が不可欠であるとしております。
 首都圏におきましては、民間と行政による帰宅困難者対策に関する協議会が設置されましたが、今後の協議の成果を踏まえまして、民間において実施される自助を超えた地域、社会への貢献に対し、行政による支援が必要とされた場合、税制の活用も考えられるとしております。

○加藤委員 都は、先ごろ東京都防災対応指針をまとめましたが、防災力の向上は都の喫緊の課題であり、とりわけ木造住宅密集地域の整備促進は最重要課題の一つであります。
 都税調答申は、木造住宅密集地域の解消に関連して、どのような方向性を示しているのか。また、議論の過程においてどのような意見があったのか伺います。

○小山税制調査担当部長 答申の示す方向性でございますが、税制の役割は、まずは施策推進のための財源確保であるとしつつも、建築物の耐震化、不燃化など重要な政策課題につきましては、ほかの施策とのポリシーミックスのもとに、政策減税など税制面からのアプローチも考えられるとしております。その上で、事業部門における施策の方向性を踏まえ、役割分担を精査した上で、税制においても必要な連携を図るべきとしております。
 また、議論の過程において、委員からは、これまでの税制措置は主に耐震化を対象としてきたものですが、建てかえが必要となるなど所有者の負担が大きい不燃化の促進について、税制の活用を検討すべきなどの意見がございました。

○加藤委員 ところで、防災都市づくりと政策支援税制という同じ節の中に、耐震化、不燃化へのインセンティブとして、基準を満たしていない住宅等の建築物について、より多くの負担を求める視点もあるという記述がありました。一委員の意見ということですけれども、木造住宅密集地域では、古い木造家屋の建てかえがなかなか進まないことが大きな課題でありますが、住民の方々は、ただそれを怠慢で放置しているわけではなく、建てかえたくても資金がない、土地が売れないので身動きがとれないなど、さまざまな事情を抱えています。看過できない意見と思いまして、指摘をしておきたいというふうに思います。
 都は、木密地域不燃化十年プロジェクトを推進し、まちづくり施策や税制など、新たな誘導策の検討を進め、それらを地域の実情に応じて組み合わせるなど、重点的に取り組みを進めるとしています。木造住宅密集地域の整備促進のためには、思い切った措置が必要です。
 答申でも、不燃化の促進について税制の活用を検討すべきという意見があったということですが、主税局として、都税調の答申を受けてどのように取り組んでいくのか伺います。

○田倉税制部長 不燃化促進のための税制の活用についてでございますが、都は、防災都市づくりという観点から、平成二十年度に独自の耐震化促進税制を創設いたしました。具体的には、二十三区において旧耐震基準で建築された住宅について、平成二十七年までに建てかえた場合または住宅を耐震改修した場合等に、固定資産税及び都市計画税を一定期間減免するものであります。
 今回の大震災を踏まえ、東京におきましては、木造住宅密集地域の整備促進に向け、規制と誘導による新たな実効性のある施策が求められております。不燃化建てかえを促進するための都独自の税制の活用につきましては、答申にもありますように、政策効果と公平性とのバランスや、より有効な手段の可能性、税収への影響等を十分に勘案する必要がございますが、今後、関係局とも連携を図りながら検討してまいります。

○加藤委員 木密解消ということが本当になかなか進まない中で、この木密不燃化十年プロジェクトを進めていくということで、本当に思い切った税制をこれからやっていかなければいけないというふうに思います。
 今ご答弁がありました、都独自の耐震化のための建てかえ、または改修を行った住宅に対する固定資産税、都市計画税の減免なんですけれども、こうしたことも、不燃化十年プロジェクトということであれば、この期間も、今、平成二十七年までというふうになっていますけれども、これはやっぱり期間を延長したり、また、これは今、たしか三年間だったと思うんですけれども、その期間の拡充、そういったこともやっていくべきではないかなと、そのように思います。
 私の地元墨田区も、この木密地域が非常に多くて、総合危険度の上位にも幾つかの地域が載っておりまして、先日も、この地域に住む方から相談を受けました。
 前面道路が非常に狭くて、隣と隣の間も本当にすれすれに建っている、そういう状況で、本当に火災があったら、類焼して大きく地域的に被害が及ぶんだなと、そういうのが一目瞭然でわかるような地域なんですけども、その方が耐震診断助成を受けて診断をやったのですけれども、なかなか危険で、建てかえるといっても、いろんな制約があって、建てかえることもなかなか難しいと。早く引っ越した方がいいみたいな、このような診断だったそうなんですけれども、こういった事例というのは本当に多くあると思います。
 そうした意味で、この都の木密不燃化十年プロジェクトを進めていくということですので、ぜひ今後、各局と連携して安心・安全のまちづくりを進めてもらいたいと思います。そのためにも、この財源もふやしていかなければいけないので、法人事業税の暫定措置の撤廃をぜひ勝ち取っていかなければいけないですし、財源もつくっていかなければいけないと思います。
 今後、本当に各局横断でしっかりと進めてもらいたいことを要望して、質問を終わります。

○たぞえ委員 私からも都税調最終答申について伺いたいと思います。
 東京都税制調査会は、平成二十一年四月九日に、知事から国、地方を通じた税制とこれに関連する諸制度のあり方についてという諮問を受けて、二十一年度と二十二年度の各年度ごとに中間報告を取りまとめてきました。
 私は、中間報告の都度、この財政委員会で、都税調が示した税制の考え方について、問題点を指摘しながら都の認識をただしてまいりました。
 今回、諮問以降二年半ぶりの最終答申ですから、この間の社会情勢の変動、そして大地震という未曾有の災害にどう対処していくのかということが大変問われた答申であるかというふうに思います。
 十日に二〇一二年度政府税制改正の大綱が発表されました。改正大綱では、研究開発減税の上乗せ措置の延長や自動車重量税の減税一千五百億円など、これまで経団連が九月に発表した税制改正に関する提言が含まれています。自動車業界は、自動車取得税と消費税の増税の合計で一五%の税が課せられることになれば、新車販売は壊滅的な打撃を受けるとして、自動車取得税、重量税の廃止を求めていることは周知の事実であります。
 都税調最終答申は、この政府税制大綱に比べて、全文を読んでみましても、額も書かれていませんので、大変地味だなというふうに思いますけれども、まずもって、この政府大綱と都税調はどういうかかわりを持つのか。
 また、政府と見解が異なる事項があった場合や、大綱によって東京都に不利が生じた場合、考え方が違うなどの事例、事項について、政府に都税調は意思を表明できる、そういう性格を持っているのかどうか、初めに伺います。

○小山税制調査担当部長 東京都税制調査会は、政府税調とは全く独立した都独自に設置された知事の諮問機関でございまして、知事からの諮問事項に関し、国、地方を通じた税財政制度全体のあり方等について幅広く検討し、提言をいたしております。
 また、都におきましては、必要に応じて、国に対し提案要求を行っているところでございます。

○たぞえ委員 必要に応じて国に提案要求を行うというのが今の答弁での見解でありますが、私は、今、都政がまずもって緊急に求められているのは、この東京都民を--地震や災害を未然に防ぐための防災対策、高齢者福祉対策、そして育児対策、雇用対策など、これらをどう推進していくのか、そのための支えとなる税制のあり方を政府にきっぱり表明を実行するということが必要だと思います。
 例えば、けさ、NHKのニュースでも大きく取り上げられておりました、都が十一月に発表した都民生活に関する世論調査では、都政に対する都民の要求で最も多かったのが、第一位は防災対策でした。中でも、建築物の耐震化など防災都市づくりへの要求は、災害時の活動体制の充実や防災対策の普及、啓発を抑えてトップを占めています。
 東京の住宅全体の耐震化率は約八〇%ですが、不燃化策などについて、残りは個人の責任だけでは進まない大きな課題があるもとで、課題はまさに山積みであります。
 今回の答申では、どのような事項が都として国に提案するようになると考えているのでしょうか。

○田倉税制部長 これまでも東京都におきましては、東京都税制調査会答申の趣旨を踏まえて、地方税制の抜本改革や地球温暖化対策の推進、並びに都に対する不合理な措置の是正など、国に対し提案要求を行ってまいりました。
 とりわけ、防災の財源に充てるもととなります法人事業税の暫定措置につきましても、繰り返し即時撤廃を強く国に求めてきたところでございます。
 今回の答申につきましても、現在の経済情勢や政策の緊急性、重要性を考慮した上で、必要な提案要求等を行ってまいります。

○たぞえ委員 ぜひ引き続く提案を示していただきたいし、この間、私がここで再三申し上げている、行動することを伴った、そういう動きをぜひつくっていただきたいというふうに重ねて申し上げておきたいと思います。
 政府大綱の発表前に、住宅にかかわる固定資産税の負担軽減について、来年度から一部圧縮する方向で調整に入ったという報道がありました。先日の本会議で付託された請願陳情の中に、多くの都民の方から、固定資産税や都市計画税の軽減措置の継続に関するものが五十件、議会に提出されています。そのすべては二十四年度以降も軽減措置を継続してほしいというもので、これは、私ども日本共産党と思いは一緒です。
 先ほど、重要性を考慮した上で必要な提案を行っていくと部長答弁がありましたが、国の増税によって国民に重大な影響を及ぼす事項について、早速、政府に必要な提案と行動を重ねて要望しておきたいと思います。
 次に、今回の答申では、二十三年度に新たな事項として、東日本大震災を踏まえた防災都市づくりのための政策支援税制などが盛り込まれています。
 東日本大震災について、小委員会では、震災の復興、復旧についてどういうような視点を据えた議論が行われたのか、見解を伺いたいと思います。

○小山税制調査担当部長 副委員長のお話しのとおり、東日本大震災による大きな影響を踏まえまして、今年度の都税調の検討事項に、震災復興、防災都市づくりと税制のあり方を加えております。
 東日本大震災につきましては、被災地の復興が最優先の課題でございます。そのための構想や支援策、財源確保の議論につきましては、政府において具体案がまとめられたところでございます。
 このため都税調では、東日本大震災に伴う電力供給の低下や震災時のリスク低減の観点から電力需給構造の転換と、被災地以外の地域における防災性の向上の観点から防災都市づくりの推進の二つの視点を中心に据えて検討を行ったものでございます。

○たぞえ委員 税制改革の視点で述べられている部分での答申では、震災復興、防災都市づくりと税制で、災害に強い都市づくりを進めるには、効果的な施策を推進するとともに、そのための財源調達が必要で、税制に求められている役割を果たしていく、このように述べています。
 その効果的な施策の推進に向けた財源調達の考え方、税制の役割それぞれについては、答申はどう示しているのでしょうか。

○小山税制調査担当部長 災害に強い都市づくりのために税制の果たすべき役割についての都税調答申の基本的考え方でございますが、まず、地方自治体がみずからの地域に必要な防災施策を的確に計画することが必須であり、その施策の推進のために、もし必要ならば新たな財源調達を行い、また政策減税も活用すべきということでございます。
 その上で、財源調達が必要な場合の負担のあり方について、防災都市づくりは、現役世代のみならず、将来世代の安全・安心をも高めるものである一方、少子高齢化による将来世代の負担増を考えれば過度な負担を残すべきではなく、現役世代、将来世代ともに相応の負担を負うべきこと、必要な財源は、防災都市づくりにおける国と地方の役割分担を明確にした上で適切な負担配分を行う必要があること、また、税制の役割につきましては、まず、施策推進のために必要な財源確保としつつも、建物の耐震化、不燃化や帰宅困難者対策などの重要な政策課題については、他の施策とのポリシーミックスのもとに、政策減税など税制面からのアプローチも考えられるとしております。

○たぞえ委員 今、小山部長がおっしゃった、防災施策の推進に新たな財源調達を行うとともに、政策減税や、それから、必要な財源は国と地方の役割分担を明確にしていくというお答えは、大変意味がある発言だったというふうに思います。
 その中でも、答申では、電力需給構造の転換のために電力需要の抑制が大きな課題だということが述べられているところに、私、今回読んだ中での一番の飛び込んできた、その答申の中身の大きさを実感しています。
 そして、この答申では、処方せんとして、契約電力に対する課税、多量消費に対する課税ということも打ち出しておりますが、これは大変重大な提案だというふうに思います。今でも電気代から消費税が徴収されている上に、今度は使用量を減らすために新設税を設ける。
 この提案について、個人契約者の声はどう生かされてきたのか。その声を答申にどう集約されて議論されたのでしょうか。

○小山税制調査担当部長 答申では、電力需要のピーク抑制につきましては、ピーク抑制を行った方が有利になるよう価格体系を動かすことが重要であり、時期、時間帯別の料金設定を行うことが理想としておりまして、その上で、考え得るさまざまな方策の一つとして税制の活用を検討したものでございます。
 今後、仮に具体的な検討をする場合には、さまざまな分野の意見を踏まえることは当然のことでございます。

○たぞえ委員 さまざまな分野の意見を踏まえるということでありますので、都民への必要な世論調査なども行って、都民の暮らしの実態などを把握した上で、今後、局内議論を行っていただきたいと思います。
 今、国民全体が復興と震災対策に力を尽くしているときです。私は、こうしたときに、電力ピークの抑制策だとして課税方針を大都市東京の税調が示すということは、余りにも大きな電気ショック療法ではないかというふうに思います。課税すれば電力を抑えることができるというのは、一時的な消費抑制の手法にしかすぎません。都民が節電に努めるのは当然なんです。
 必要な電力を使うのも当然であります。でなければ、生活も、生産活動も成り立たない。例えば、私の友人にも酸素呼吸をしている人がおりますが、当然、電気から充電をして持ち歩いているわけですね。電力抑制だといって電力を抑制することになれば、この方は酸素呼吸ができなくなってしまいかねないということもあるわけです。
 ですから、これは、我々の家庭や生産活動局面でいろいろな電力を使っているけれども、この電気の量を減らすというのは、いろんな影響を--この夏にありましたけども、しかし、そこに今度は課税という措置がとられることによって、精神的な、経済的な重い負担が必ず生じるわけですから、今回の提案は節電にふさわしいのかどうか、甚だ問題があるというふうに思っています。
 もともと電力の供給は、電力企業としての最大の社会的な責任です。これを国民にかぶせて抑制させるということは間違いだというふうに思います。
 今、復興財源だといって所得税や住民税の増税が行われておりますが、今回の答申のように電力課税という措置をとったら、日本の社会経済、いろんな点での不安も大きくなる。この点では、少なくとも一般家庭の電力課税は行うべきではないと、私はそのように考えますが、答申を踏まえて、どういう見解を局はお持ちなのでしょうか。

○小山税制調査担当部長 先ほどお答えいたしましたとおり、都税調では、電力需要のピーク抑制のために考え得る方策の一つとして税制の活用について検討を行っておりまして、答申では、本年夏以降の電力需給対策の効果を踏まえまして、必要性を見きわめるとともに、原子力発電所の停止に伴う発電コストの上昇、福島原発事故に伴う損害賠償等による電気料金の動向、復興財源の調達に伴う国民負担、現下の経済状況等を十分に考慮することが必要としております。

○たぞえ委員 今おっしゃったことは当然のことだというふうに思います。ぜひ多くの家庭の皆さんに、ピーク時の電力需要で節電で頑張ったときに、契約者に料金の軽減を行うなどのそういう思いやる措置を、ぜひ局としても、一つの議論を起こしていただきたいというように思います。
 次に、最後に消費税の増税です。
 国では社会保障と税一体改革という動きがありますが、現在、一体どういう動きになっているのでしょうか。

○田倉税制部長 社会保障、税一体改革の基本的考え方は、社会保障の機能強化とともに、社会保障全体の持続可能性を確保することとされております。
 そして、改革のための財源を確保するため、七月に閣議報告された成案では、二〇一〇年代半ばまでに、段階的に消費税率を一〇%まで引き上げることとされております。今月五日には、厚生労働省が、この消費税率引き上げの前提となる社会保障の見直しにつきまして、高所得者の年金減額や年金受給資格期間の短縮など、成案を具体化する改革案の中間報告をいたしたところでございます。
 今後、政府・与党では、この中間報告等をたたき台といたしまして、年内を目途に、社会保障改革の内容とともに、消費税率の引き上げ時期や引き上げ幅を盛り込んだ素案を取りまとめることとされております。

○たぞえ委員 政府・与党が進める社会保障と税の一体改革、これは、一九九七年の橋本内閣が実施した消費税増税と特別減税の廃止、そして、これに連動して社会保障の改悪で約九兆円の規模を超えるのが今回の検討内容になっています。
 その中心である野田首相は、消費税の上げ幅について、一三年十月以降に三%、一五年四月以降に二%、合わせて五%引き上げる考えを示していますが、一体、この三%というのはどのぐらいの税額になるのかということを試算しましたら、約七・五兆円です。そして、続く二%で約五兆円ですから、十二・五兆円ということになります。これがわずかな期間で一気に行われるということですから、この負担は大変な影響が起こります。
 これにとどまらず、一七年度まで続く厚生年金保険料の引き上げ分で、サラリーマンは約六千億円の負担増、そして、所得税と住民税の増税分、国民健康保険料の引き上げ分、老人医療費の自己負担一割から二割分の引き上げ分、まさに橋本内閣以来の超痛みの打撃を国民は受けなければならない。
 こういうことに対して、経済産業省が公募した二〇一二年度の税制改正要望に寄せられた意見では、国内の代表的な業界から、税制について厳しい意見が寄せられております。
 例えば、日本百貨店協会の会長は、将来不安の解消につながる道筋をつけないまま増税議論が先行しており反対だ、消費税増税を議論するタイミングではないと厳しく指摘をしています。スーパーマーケットの全国団体である日本チェーンストア協会も、消費税率の引き上げは、さらなる消費の低迷や景気の低迷を招くとして、業界を挙げて、消費税増税に反対の態度を表明しています。日本商工会議所は、中小企業への負担軽減措置を講ずることなしに消費税の引き上げを行うことは容認できない、このように表明しており、免税点制度と簡易課税制度の拡充をあわせて求めているところです。
 大変大事な提案が全国組織からこのように出されているわけですが、今度の都税調では、こうした国内各団体の意向をどう反映し、議論の中にどういうふうにして、この声を材料として、委員の方々にこれを提供されてきたのでしょうか。

○小山税制調査担当部長 都税調は、学識経験者、都議会議員、特別区長会や東京都市長会等の会長、都の副知事など、多様な立場の方を構成員としております。そうした方々が、社会の広範な分野のさまざまな声を十分に踏まえまして都税調において議論をされた中から、最終的に答申が取りまとめられているものでございます。

○たぞえ委員 委員の方がいろいろ議論したり、何というのでしょうかね、委員である都議会議員の方々やいろいろな方が、自分たちのその周りの声を集めて調査会で議論をされるというのは、当然のことといえば当然のことだと思うのです。
 私、あえて申し上げたいのは、今度の最終答申が出たから、これでよしということではなくて、ぜひこれからも各界の方を呼んだ公聴会とか、車座意見交換会とか、参考人からの意見を聞く会とか、消費者団体や中小業界を初めとした幅広い都内各団体の方の意見も、都税調としてぜひ聞いていただきたいと。
 とりわけ、私は都税調委員でもありませんので、都議会での都税調委員以外の都議会議員の意見も、ぜひ都税調委員にお知らせいただきたいと。この財政委員会ではいうことができますが、都税調委員以外の議員の方は、いう機会もなかなかないかと思いますので、ぜひ都民を代表する都議会議員の意向も議論のテーブルに、紹介をしていただきたいということを申し上げて、終わります。

○福士委員 それでは、私から、平成二十三年度税制調査会答申についてお聞きいたします。
 三年間の分権と環境の二つの視点から議論し続けてきた集大成といえる答申には、国を先導するという気概と先進性に満ちあふれた項目が続いています。提言をまとめ上げた会のメンバー、事務局のご苦労は評価したいと思います。特に、三月十一日の東日本大震災とその後の計画停電など、節電をめぐる大きな動きを経た中で追加されたピーク時節電誘導政策には、タイミングに合った魅力的な政策や分析が並んでいます。そこでまず、お聞きをいたします。
 これらの提言で、地方税関係など、東京都で独自に取り組めることは先行して取り組むという考えであると受け取ってよろしいのでしょうか。
 それから、税制調査会の提言は、今後どう組み立てられていくのでしょうか、伺います。

○小山税制調査担当部長 東京都税制調査会の答申の内容につきましては、全国制度として地方税法の改正が必要なものと、自治体独自の取り組みとして課税自主権の活用により実現可能なものとがございます。
 独自に取り組むことができるものについては、答申を踏まえ、都において必要性、妥当性を検証いたしまして、その上で、提言を具体化し実施することになるものでございます。

○福士委員 それでは、報告書の中にあるピーク電力の抑制税制について伺います。
 例えば、六〇ページにあります電力需要のピーク抑制と税制の活用の項目を見れば、ピーク時消費の抑制のために、量による課税、いわゆる従量課税に加えて、最大瞬間電力への課税も検討されています。そして、別の項目になりますけれども、六二ページでは、電力消費に関しては地方が課税すべきであると断言しています。
 電力不足の大きな原因は、夏の平日ピーク時の電力需要であり、そこが他の時間帯にずれたり、需要を減らしたりすれば、危険で巨大な原発の発電に頼らずに済むというのは、今や市民の間では一般常識になっております。
 事業概要の質問時にも、学校のPPS取り組みは、社会全体が電力需要ピークとなる時期に、夏休みによる需要減で山を抑えることができることを申し上げました。
 課税によりピーク時の山をなだらかにしようとする政策誘導は、非常に興味深く読みました。その意味では、全国に先駆けて東京都がモデル的に課税自主権を活用し、地方新税として実施する考えととらえてよいのかどうか確認をいたします。

○小山税制調査担当部長 答申におきましては、ピーク需要の抑制を図るには、本来は、需給状況を反映し、時期、時間帯別に電気料金を設定することが理想であるとしつつ、方策の一つとして税制を活用する場合に考え得る課税のあり方を検討したものと位置づけております。
 また、課税の検討につきましては、本年夏以降の電力需給対策の効果を踏まえ、必要性を見きわめること、原子力発電所の停止や、福島原発事故に伴う損害賠償等による電気料金の動向、復興財源の調達に伴う国民負担、現下の経済状況等を十分に考慮することが必要とされているところでございます。

○福士委員 確かに、経済との兼ね合いは重要なことでありますが、どのような電力を使い、節電及び電力使用を効率化し、どこで線引きしながら電力抑制税制を行うかということも必要なことかと思いつつ、原子力発電の記載についてお伺いをいたします。
 この原子力発電の記載は、非常に興味深い提言でありました。一部には言葉足らずで論理展開がおかしな項目もありますが、化石燃料への課税に関連して、原子力、再生可能エネルギーについて触れられた項目があります。四六ページにある、単位電力当たりのCO2排出量で課税した場合、再生可能エネルギーとともに、原子力の割合がふえるほど税率が低減するという現象についてです。再生可能エネルギーについては、その後に調査会での意見としてですが、買い取り制度と重なる部分があるが、相乗効果が期待されるという肯定的な意見が出ていますが、原子力に関しては論点指摘だけにとどまっています。
 原子力のCO2排出数値についても、運転時以外のCO2排出量が考えられていないといった指摘が学者の方々からも一般的にされていますし、私も、そのことは前回、三定の一般質問でも指摘しました。
 こうした議論は調査会でされたのかどうか、また、なぜそうした議論が提言に反映されないのか、お伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 温暖化対策税において、電気への課税を行う場合についてのお尋ねでございますが、都税調では、温暖化対策の観点から、総電力量に対してCO2排出量に応じた負担を求めるとの考えに立ちまして検討を進めてきたこと、また、電気に対しては消費段階での課税を検討してまいりましたが、その段階では電気の由来を区分できないことから、原子力発電のCO2排出数値についての議論は行われておりません。

○福士委員 総電力でいえば、確かに発電時だけで、建設時にまでさかのぼれないことはわかります。グロスで全部考えないと仕方がない部分はありますけど、CO2対策を考えると、建設と廃棄に多くの負荷がかかる原子力発電は重視すべきものであるということを申し上げておきたいと思います。
 今回の提言には、もう一つ、三・一一以降の新しい政策課題に対応して意欲的に項目として新設した、防災都市づくりに向けた政策支援税制があります。建物の耐震化、不燃化等を促進するために、施策の充実にあわせて、必要な連携を図るべきであるとしています。その他、分権と環境の中で項目すらなくなってしまった市民寄附税制といった不十分な部分はありますけれども、それらの中に、都の政策として先行しているものなどもあるようですので、今後は、都においてどのような形で今回の提言を受けとめ、形にしていくのかお伺いをします。

○田倉税制部長 防災都市づくりにつきましては、税の基本的な役割は、行政に必要な財源の確保でありますけれども、防災都市づくりなどの極めて高い公共性を有する重要な施策につきましては、公平性等も踏まえた上で、規制や補助金といった他の方策と組み合わせた税制の活用も考えられるところでございます。
 今後、政策の緊急性、重要性等を考慮し、関係局と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
 市民公益税制につきましては、ことし六月の改正により、認定NPO法人の認定要件が緩和されましたほか、寄附金税額控除対象となるNPO法人を、地方団体が条例に基づき個別指定できる仕組みが導入されたところでございます。この条例個別指定制度の今後の運用につきましては、指定基準づくりなど、他の道府県の動向等を見きわめ、NPO法人の認証、認定を所管する生活文化局において、関係局と調整をした上で判断していく予定というふうに聞いております。

○福士委員 市民公益税制については、生活文化局の方がどういうふうにするかということのイニシアチブを握っていらっしゃるので、ここで余り議論もできないんですが、横並びも結構ですけれども、先行して努力している地域もあるやに伺っています。ぜひ市民の期待にこたえていただきながら、努力を速やかに進めていただくことをご一緒に頑張ってやっていただきたいなというふうに思います。
 次に、防災都市づくりの方向性は結構ですけれども、先ほど、どなたかもおっしゃっていましたけれども、木密の解消法は考慮が必要かと思います。
 私の住む杉並区でも、かつて高円寺で危険度五という、木密地域の駅前再開発案が出たときに、強い反対で大規模再開発が取りやめになったことがありました。そのかわりに、まちの人々は個人のおうちの防災対策を行い、危険度が今、少しですが低くなっただけでなく、通りは狭かったことが幸いしてというか、狭い分、左右の店を行き来しながら買い物がしやすい、にぎわいのある生き生きしたまちが残りました。
 一方、私の住む高井戸駅周辺は、環状八号線が整備され、ビルが建ち、まちは分断されてしまいました。そのために商店街は寂れ、消えていきました。環状八号は車で埋め尽くされて、今はもう、いつでもいっぱいです。そのまま流れてはいますけれども、災害時に追突事故が起きたり、あるいは緊急車両が本当に通れるのか、安全性も危うい状況が残されました。
 税収の面でも、大規模開発が優位といえるのかどうか、私は疑問に思っております。
 大きな道路をつくり、高層建築にするという方向性だけでなく、住んでいる人々の意思を尊重しながら、まちづくりのあり方についての議論を最優先すべきであると考えます。大規模開発などの施策だけで、防災と税制が先行することはないと思いますが、念を押しておきます。
 原子力発電に関しては、相変わらず旧来型の発想から抜け出せていないことを残念に思います。五九ページに書かれておりますように、自立分散型の電力供給への変革であるというのであれば、原子力発電はその対極にあります。依存度を下げ、最終的にゼロにするために、交通局の保有株を利用した株主総会での意思表示を行うなど、すわなち、電力自由化を推進し、PPSも活用した供給主体の多様化、税制の活用など、今回の提言で何度も使われているポリシーミックス、いわゆる政策複合による相乗効果を求めていくべきだということを申し上げ、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○中山委員 私からは、消費税、地方消費税と地方法人課税のあり方、それから温暖化課税の問題について質問させていただきます。
 国におきましては、野田首相が消費税率の引き上げ時期や税率を明記した素案を年内に取りまとめるよう正式に指示されるなど、消費税増税をめぐる論議が山場を迎えております。ぜひ国会においても、国民にわかりやすい論議が展開されることを望んでおります。
 消費税の増税につきましては、景気後退や逆進性に着目して反対する声がいまだ根強いわけでありますけれども、その一方で、本格的な少子高齢社会を迎え、社会保障を初め、地方自治体の広範な公共サービスを支えるためにも、将来的には消費税、地方消費税の増税はやむを得ないと考える人がふえ始めているとの見方もあります。
 最初に、今回の都税調答申では、消費税、地方消費税の税率のあり方についてどのように述べているのか、お伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 消費税、地方消費税につきまして、答申では、税収が安定的であり、広く消費に負担を求めることから、勤労世代に負担が偏らず、世代間の負担の公平を確保できる税であるとしております。
 我が国の少子高齢化の進展に伴いまして、地方自治体の提供する公共サービスの役割がますます増加することを踏まえまして、消費税、地方消費税の税率引き上げについては、実現に向け、より具体的に議論することが必要でございます。
 なお、税率引き上げに当たっては、景気好転を前提とするとともに、行政のむだを徹底的に見直し、行政に対する国民の信頼を回復することも前提であるとしております。

○中山委員 世代間の公平ということがございましたけれども、消費税は公平であるがゆえに、逆に、すべてひとしく皆にかかってくる税金であります。年金保険料や介護保険料などを払っている方々からすれば、消費税の増税分を社会保障だけに限定しながら現在の社会保障制度を維持していくと、二重取り感、二重取られ感といいますかね、そういうものがぬぐい切れないということもあると思います。
 また、消費税には逆進性があるわけですけれども、消費税率を見直す場合には、低所得層への適切な配慮措置を講ずることが前提であります。先ほども、その論議が加藤委員からもございました。
 改めてになりますけれども、今回の答申では、低所得者への配慮の方策としてどのようなことを挙げているのかお伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 答申におきましては、消費税率を引き上げる際には低所得者層への配慮が必要であるといたしまして、その方法として、食料品など生活必需品に対する消費税の軽減税率導入や所得税への給付つき税額控除の導入が考えられますが、社会保障制度など歳出面における政策配慮も含め、検討する必要があるとしております。

○中山委員 確かに、食品とかの日常品に関して対象外とする軽減税率、品目別の税率設定というのは一つの方策ですけれども、なかなか昨今の政治事情を考えると、どの品目を該当させるか、しないかとかいうことで、いろいろ揺れ動いて制度が定まらないとか、ころころ変わるとか、そういうことも考えられますので、その場合には、先ほど加藤委員からもありましたように、給付つき税額控除というものもあわせた形というものを考えていただければなと思っておる次第でございます。
 先ほど二重取り感と申し上げましたけれども、社会保障の負担と給付の問題、そういう問題と、財政の立て直しの問題、これは、実際には数字が入り組んでいて、なかなか分けるのは難しいことだとは思います。しかし、都民、国民に負担をお願いしていく上では、これを分けて提示していかないと理解は得られないと私は思っております。
 消費税の増税を将来お願いしていく必要がある場合には、やはり社会保障をどうしていくのか、先ほども答弁がございましたけれども、そうした事柄を全体像を示した上で理解を得ていくということが大事だと思います。あくまでも、それを除いた財政の立て直しの部分は、徹底した行政改革というものをきちっとやらなくてはいけないというふうに思います。
 その上で、日本は人口ピラミッドが非常に大きく揺れ動いておりまして、働く世代が多い人口ピラミッドから、高齢者が多い人口ピラミッドに移り変わりました。そうしたことによって、例えば消費税率を一々いじらなくてはいけないというような、その税制が一喜一憂して変わっていく、そういう形というのは国民は納得できないのではないかと思います。
 ある面で、所得に応じて負担をしていただける課税について、働く世代、現役世代が少なくなってくる、そうしたこと、あるいは若い世代、教育に係る費用と、それから、医療、介護、年金という高齢者に係る費用、これの比較というものが、人口ピラミッドの変化は非常に大きく影響を及ぼすわけですけれども、ある面では、東京都の財政運営というのが、景気のいいときにはきちっと基金を積み立てて、そして、景気が悪くなったときには対応していく。人口ピラミッドの変化にも対応して社会保障というものを見据えた税制の将来像というものを示した上で消費税論議というのを示していかないと、国民の皆さんに負担をお願いしていくという点では、非常にこれは不信感というものをぬぐい去れないのではないかというふうに思います。
 やはり国が安定していくという将来像、そのためのものだということを理解していただくために、単に税率云々の問題だけではなくて、そのことをきちっと国は示すべきだと思いますし、都の方も、きちっとそういった要望に努めていただきたいと思います。
 その一方で、地方自治体は、地方消費税を、消費税地方分といいますか、それをどれだけもってこられるか。今まさに正念場でありますけれども、一方で、地域偏在の少ない安定的な地方消費税が地方自治体に入ってくるのであるならば、より地域偏在性の大きい地方法人課税の役割は縮小してもいいのではないかという考え方も聞いたことがあります。
 地方法人課税については、答申ではどのように述べているのか、お伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 答申におきましては、法人は事業を行うに当たりまして、道路や上下水道などの都市基盤や治安、防災への対応だけではなく、従業員の育成や生活を支える面からは学校教育、医療、介護、子育て支援など、地方自治体から多くの公共サービスを受けております。
 特に大都市には、行政機能や経済機能が集中していることから、昼間流入人口への行政サービスを含め、膨大な規模の行政需要があるとしまして、地方法人課税は、こうした行政需要に必要な費用を賄うため、公共サービスを受ける法人に課税するものでございまして、地方の重要な基幹税として引き続き維持すべきとしております。

○中山委員 今のご答弁でもございましたけれども、あくまで法人課税というのは大都市需要に対応して得るものでございまして、東京の行政サービスを維持していくためには、法人の本社機能が多く集中している東京、大都市行政の必要な財源として、地方法人課税の役割は今後とも大きい。その上で、プラスとして、地域偏在性の少ない消費税地方分を獲得していくということが道筋だということを、やはり都民も理解しておいていただくように努めていかなきゃいけないと思っております。
 法人関係税につきましては、国際競争力の観点から、法人実効税率を引き下げるべきだという議論もありますけれども、もちろんこれは非常に大事なことでして、企業の国際競争力の強化や立地促進といった政策は大事なんですけれども、これをやたら連発するといいますか、そういうことになっていくと、どんどんそれを下げていかないと、下げ競争みたいになっていっちゃうわけですね。そういう面で、今回の国の特区制度のように、ある一定の枠組みの中できちっとやっていくということが非常に大事だと思います。
 また、その大都市需要という点に関していいますと、先ほど来、話がございましたけれども、東京都にある法人が納めた法人事業税の一部を国税化して、それを人口に応じて全国の道府県に配分する法人事業税の暫定措置というのは、これはまことに不合理ですね。徴収目的と使われ方が違うということになっていってしまうわけでありますので、これは断然納得できないし、即時撤廃すべきだと思います。
 次に、温暖化対策税についてお伺いいたします。
 今回の答申は、平成二十一年度に、分権と環境の視点から国、地方を通じた税制とそれに関連する諸制度のあり方について審議せよとの諮問がされ、これにこたえるものであり、今回の答申は三年間の集大成でありますけれども、その中で出てきた温暖化対策というのは重要な課題でございますが、国民にとりましては増税になるということを忘れてはなりません。導入時期には、我が会派の税調の委員も申し上げたと思うんですけれども、消費税も含めて慎重に対処すべきだということだと思います。
 特に製造業は六重苦といわれる状況でありまして、今回の答申では、電気の消費への課税も検討したようでありますが、製造業の海外移転がふえている今の状況を考えますと、今回、代表質問でも、我が国の電気料金がアジア諸国との電気料金と比べて二倍から四倍も高いというようなことを申し上げましたけれども、その答申をそのまま実行すれば、東京都は何をやっているんだというご批判をいただくことになりかねません。
 温暖化対策税の導入については、時期を見きわめることが大変重要であります。答申は、その点についてどう認識しているのかお伺いをいたします。

○小山税制調査担当部長 答申では、地球規模の深刻な環境問題を解決し、持続可能な発展を実現するには、環境を重視した社会経済システムの構築が不可欠であり、税制においても環境重視の視点を積極的に組み込むべきであるとして、中長期的視点から温暖化対策税の導入を提言しておりますが、その導入に当たりましては、現在、国において見直しの議論が進められておりますエネルギー政策の動向とともに、景気動向を慎重に見きわめまして、国民的な理解を得ることが重要であるとしております。

○中山委員 先ほどのご答弁でも、別の委員の方の論議でもありましたけれども、電気料金の時間帯制とか、そうしたものの本来的な施策が行われて、それがきちっと定着して、そして、それの中で経済成長というのがきちっと図られていくということを見据えながら、そういう電気料金に関する税制というのは論議すべきではないのかなと思います。
 それで、温暖化対策税については、平成二十一年の段階から詳細に検討が行われてきたと思いますけれども、今回の最終答申でどのようにまとめられているのか。また国においても、温暖化対策のための税について審議がされていると思いますけれども、国の審議と東京都の最終答申でまとめられていくものとの違いについてお伺いいたします。

○小山税制調査担当部長 温暖化対策税につきまして、答申は、温暖化がグローバルな課題である一方、CO2の排出抑制に果たす地方自治体の役割の重要性を踏まえまして、国と地方で税源を適切に配分することが重要であり、消費に近い段階での課税を全国ベースの地方税とすることにより、CO2排出抑制のインセンティブも与えることができるとしております。
 また、課税の手法としましては、すべての化石燃料を課税対象とし、燃料ごとに炭素含有量に比例した税率を既存のエネルギー関係税に上乗せすることを基本とするとしております。
 一方、国において審議されておりますのは、石油石炭税に地球温暖化対策のための課税の特例を設けまして、CO2排出量に応じた税率を上乗せするものでございまして、都税調答申と異なる点といたしましては、すべて国税であること、課税段階が消費からは遠い輸入、採取段階での課税であることが挙げられるものでございます。

○中山委員 今のご答弁にもございましたけれども、温暖化対策税を地域限定でやっても、温暖化の結果というのは日本の空気にあらわれたりするわけですから、これは意味がないわけですね。温暖化対策税を導入する際には、産業の協力も不可欠であります。
 こうした税を国税としていきますと、政策のベクトルと税の方向が違ってしまう。先ほど法人事業税の一部国の召し上げの話でも申し上げましたけれども、そうしたことが、また再び起きてしまうわけであります。税の、温暖化課税のその考え方というのは国で統一していかないと、効果としての温暖化対策の効果はあらわれない。
 また、その税で得られた収入については、その温暖化対策に協力してくれる企業の育成をどうしていくのかという、地方に非常にマッチした財源としていかないといけないということだというふうに思います。
 そういった意味で、ある税を国税とするのか、地方税とするのか。これは先ほどの法人事業税の問題もそうですが、非常に重要な課題であります。国の役割は一体何なのかということをきちっと論議していかなくてはいけない。これを明確にして、その上で、国と地方の財源配分というのを見直ししていくということが大事だと思います。
 全体的な方向としては、分権の中にもありますけれども、国の役割をできる限り限定していって、可能な限り地域で使えるようにしていく、徴収していくようにしていく、そういうことが大事だと思います。特に税のコストパフォーマンスという点に関していえば、地方に任せれば、効率化というのは非常に進むのだろうと、そういうふうに思います。そうした意味で、国と地方の役割分担を見直し、それに対応して国と地方の財源を確保していくというのが地方分権の基本であります。
 そこで最後に、真の地方自治を確立する税制のあり方について、局長のご見解をお伺いしたいと思います。

○新田主税局長 我が国の地方行政は、長いこと三割自治といわれるような、本来の地方自治とはほど遠い従属的な状況に置かれておりましたが、近年の地方分権推進の取り組みによりまして、所得税から住民税への税源移譲など、徐々に改善に向け、進展が図られてまいりました。しかし、依然として、事務分担の実態と権限及び税財源の配分との間には大きな乖離が存在しているのも事実でございます。
 今回の答申でも述べられておりますが、また、これは理事もご指摘いただきました、住民に近い現場を抱えている地方自治体においてこそ、住民の生活感覚や地域の実情に応じた公共サービスを効率的、効果的に提供することが可能となるわけでございまして、行政のむだ、むらをなくす究極の行政改革が地方分権ともいえるのではないかと思っております。
 まさに地方分権は時代の要請であり、税制は、自主財源、とりわけ地方税を充実させる方向で改革され、地方分権を促進するものでなければならないと考えておりまして、この点に関して、都税調も軌を一にしているものと認識しております。
 こうした点を踏まえますと、三年前に導入された法人事業税の暫定措置、いわゆる一部国税化は、都の自主財源である法人事業税の一部を国税として引きはがすもので、時代の流れに逆行するとともに、受益と負担という、理事ご指摘の税の基本原理にも反する、極めて不合理な措置でございます。都といたしましては、暫定措置の撤廃に向け、引き続き強く国に求めていく必要があると考えております。
 また、消費税につきましても、現在、議論が混迷し、先の見通しが不透明な状況にございますが、やはり地方税源を充実させる方向で議論がなされるか否か、慎重に推移を見守っていかなければいけないと思っております。
 地方税財源が拡充され、真の地方自治が確立していくということは、一方におきまして、地方自治体、そして自治体職員の責任が同時に増していくことを意味しております。地方行政が住民の信頼を得、その責務の重さに見合った能力、実力を備えていくことが不可欠であり、それなくしては、地方分権も絵にかいたもちになりかねません。このことを肝に銘じまして、主税局は、三千名余の全職員が生活実感を有する税のスペシャリストとなるよう、一層の努力を重ねてまいる覚悟でございます。
 都議会の先生方のご提案、ご指導をいただきながら、地方分権に資する地方税制の確立に全力で取り組んでまいります。

○中山委員 先ほど私、ちょっと言葉足らずだったかもしれませんけれども、温暖化対策税は、基準は国で決めるけれども、これはあくまで地方税。地方税だから、その財源も地方の企業育成のために使えるという形でございます。
 今のご答弁は、本当に、現場を持つ東京都の主税局長ならではのすばらしいご答弁だったと思います。都民感覚を知る東京都が、今ご答弁いただいた視点を生かして、答申の活用に励んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 以上です。

○鈴木(章)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○鈴木(章)委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時二十七分散会

ページ先頭に戻る

ページ先頭に戻る