財政委員会速記録第十五号

平成二十二年十月十九日(火曜日)
第二委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長高木 けい君
副委員長吉田康一郎君
副委員長たぞえ民夫君
理事菅  東一君
理事中谷 祐二君
理事上野 和彦君
福士 敬子君
くりした善行君
斉藤やすひろ君
鈴木 隆道君
田島 和明君
大西さとる君
斉藤あつし君
酒井 大史君

 欠席委員 なし

 出席説明員
会計管理局局長新田 洋平君
管理部長安藤 弘志君
警察・消防出納部長稲田 正純君
会計制度担当部長佐藤  敦君
収用委員会事務局局長藤井 芳弘君

本日の会議に付した事件
 収用委員会事務局関係
事務事業について(質疑)
 会計管理局関係
事務事業について(質疑)

○高木委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、収用委員会事務局及び会計管理局関係の事務事業に対する質疑を行いたいと思います。
 これより収用委員会事務局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○吉田委員 よろしくお願いいたします。
 近年、公共事業の予算が長期にわたって縮減傾向にあることに伴って、重点的かつ効率的な事業の実施が従来にも増して必要となるとともに、その事業効果の早期の発現が求められております。公共事業による効果を早期に発現していくためには、事業期間に占めるウエートが高い用地取得期間を短縮していくことが不可欠であり、用地取得をできる限り円滑化、迅速化することが強く求められていると思います。
 しかし、用地買収の現場では、補償金額に対する不満、あるいは起業者の対応に対する不満、さらには公共事業そのものに反対であるなど、さまざまな理由で、土地所有者などの権利者に買収に応じていただけないケースがあります。そういった場合、公共事業を推進し、安全・安心、そして、よりよい都民生活を一刻も早く実現するためには、どうしても事業へのご理解、ご協力、任意買収に応じていただけない権利者などからも用地などを取得する必要があり、そのために土地収用制度が設けられているわけであります。
 都民生活の向上のため、公共事業推進のため、収用委員会は非常に重要な役割を担っている、こういう認識を改めて申し上げ、そして、そうした重要性を踏まえ、任意交渉による用地買収が困難となった場合には、積極的に収用制度を活用していかなければいけない、こうした観点から幾つか伺ってまいりたいと思います。
 まず、近年の収用事件の取扱状況と、収用事件の処理に当たって、申請から裁決までどのくらいの期間を要しているのか、伺います。

○藤井収用委員会事務局長 過去五年間の収用委員会におけます取扱件数でございますが、平成十七年度が百十三件、十八年度、百二十五件、十九年度、百八件、二十年度が九十一件、二十一年度は百四件というように、毎年百件程度で推移しております。取扱件数といたしましては全国トップでございます。
 また、申請から裁決までの平均処理日数でございますが、それぞれ裁決のあった年度に属することになるわけでございますが、平成十七年度は三百十八日、十八年度は三百十日、十九年度は三百六十三日、二十年度は三百九日、二十一年度は五百五十八日となっております。
 なお、この平均処理日数には、和解あるいは取り下げなどにより短期間で解決した事件については含まれておりません。

○吉田委員 ありがとうございます。
 事業概要を読ませていただきますと、収用委員会事務局では、申請から裁決までの事件の処理期間について、平成十三年度から導入している指名委員制度を活用して、事件ごとに担当の収用委員を選任し、迅速かつ適正な審理手続などにより、十カ月程度での処理を目指すとしております。しかしながら、実際の処理期間は、ご答弁をいただきましたように、十九年度が三百六十三日、二十一年度が五百五十八日と、過去五カ年で三百日を大きく超過している年もあるわけであります。このように長期化する要因については、どのように考えておられるのか伺います。

○藤井収用委員会事務局長 収用事件には、さまざまな理由で長期化するものがございます。マンション事件など権利者が多数の場合や、相続が発生いたしまして相続人の認定に時間を要する場合、さらには土地所有者等権利者が非協力的な場合などには、権利関係の調整や意見書の提出などに時間を要しまして、裁決までの処理期間が長期化することがございます。
 例えば二十一年度で申し上げますと、海外に居住している相続人の認定に時間を要した事件、あるいは申請された土地の区域が特定できず、その認定に時間を要した事件などが当該年度に最終的に処理されましたことにより、平均いたしましても、なお五百日を超える状況となっております。
 また、起業者が意見書の作成など手続にふなれで提出に時間を要する場合など、個々の事情により事件処理に要する日数は異なります。
 収用制度活用プランでは、処理期間十カ月程度を目指しておるわけでございますが、この想定は、事件の争点が早期に明確になりますように、起業者あるいは土地所有者や借地権者などの関係人の理解と協力が得られまして、意見書などが円滑に整うことを前提としております。

○吉田委員 いろいろご説明がありました。確かに、起業者や土地所有者などの協力が必要な面もあるのはわかりますが、冒頭に申し上げましたとおり、用地取得のおくれがありますと、それに伴って、例えば道路整備などの事業がおくれると都民全体が不利益をこうむることになるわけであります。収用委員会には、ぜひともさまざまな工夫、努力をしていただき、収用事件の迅速処理に努めていただく、こういう必要があるわけであります。
 そこで、収用委員会を支える事務局として、迅速処理に向けてどのような取り組みを現在行っているのか、伺います。

○藤井収用委員会事務局長 副委員長からご指摘いただきましたように、任意で既に用地をご提供いただいている方々との公平への配慮からも、事件の早期解決は必要と考えております。
 まず、事件処理を迅速化するため、起業者や土地所有者などの権利者に対しまして申請予定案件の事前相談を受け付けておりまして、さらに申請後につきましても、早期解決のため、速やかな現地調査を行いまして問題点を把握いたしております。
 また、事件ごとに処理スケジュールを作成いたしまして、十カ月を目標に事件処理が図られるよう適切に管理しておるところでございます。
 具体的には、関係者への事情聴取や進行管理会議を毎月開催いたしましてスケジュールを確認いたしております。その場合、遅滞が予想される場合には、その原因を明らかにいたしまして、その後の改善方法を検討するとともに、困難な課題を抱える事案につきましては、随時、検討会を開催いたしまして論点を整理いたしております。その論点整理に従いまして今後の処理方針を明確化するなど、きめ細かな対応に努めておるところでございます。
 また、円滑な事件処理のため、職員の専門的知識の向上にも取り組んでおります。平成二十一年度から、経験豊富な主査と経験の少ない若手職員をペアで組み合わせまして事件処理を行うペア制の導入をいたしておりまして、事前に具体的な課題を与え調査研究を行うなど、取り組んでおるところでございます。
 事務局内で発表させる実務研修の実施など、そのほかにもさまざまな取り組みを行い、職員の能力向上にも努めておるところでございます。

○吉田委員 ただいまご答弁をいただきましたような、申請を受け付ける事務局側の迅速な処理、あるいは職員の能力向上など、本当に引き続きご努力をお願いしたいと思いますが、一方で、実際の事業を行う区市など収用を申請する側においても、収用申請をちゅうちょすることなく、適正、迅速に手続を進めていってほしい、このようにも思うわけであります。そのためには、収用委員会事務局においても、区市町村の用地担当職員に対して、収用を積極的に活用できるよう、具体的手続などの制度の周知に努めることが必要なわけだと思います。
 事務局では、これまで個別の区市などからの要望に応じて実施してきた出前研修、これに加えて、本年度は、過去に収用の実績が少ない市や町も含めて、すべての区市町村を対象とした実践的研修を開始したと伺っております。この区市町村の担当職員に対する具体的な支援の内容についてお伺いをいたします。

○藤井収用委員会事務局長 都内の収用事件でありますれば、すべて東京都の収用委員会が取り扱うこととなります。したがいまして、区市町村職員に対する支援も、また重要なことと考えております。
 区市等の用地担当職員に対する支援といたしましては、二十二年度は、これまでに都内二十五団体の用地担当部署を訪問いたしまして、出前研修、出前相談を実施しているところでございます。
 また、本年度から新たに、区市町村職員を対象といたしまして、収用制度の基礎と申請書や意見書の作成方法を具体的に学ぶことができます収用制度活用基礎講座を実施いたしたところでございます。九月に第一回を実施いたしまして、十四区三十二名、十二市から二十九名、合計六十一名の参加を得ております。研修後のアンケートでは、おおよそ理解できたとの回答も含めまして、合わせて九六・五%が理解できたという内容になっております。このアンケート結果を踏まえまして、さらに十二月には第二回を予定しており、区市町村職員へのさらなる収用制度の周知と支援に努めてまいろうと考えております。
 このほか、事務局の中に設置しております相談支援センターにおきまして、区市等の用地担当職員から収用手続に関して相談を受け付けますとともに、個別具体の申請予定案件について、申請に必要な書類等が適正に作成できるよう支援も行っておるところでございます。

○吉田委員 ありがとうございます。
 ただいまご答弁いただいたような研修、その他、本当に地道ですけれども、大切なお取り組みだと考えます。引き続き、区市町村などの起業者に対し、積極的な支援をお願いしたいと思います。
 また、収用制度の円滑な活用を図るためには、制度の意義やまちづくりに大きく貢献できるという点を、一般の都民に向けてもさらに周知し、理解を求めていくことも必要だと思います。
 これも意見にとどめさせていただきますが、本日は収用委員会の取り組みについて幾つかお聞かせをいただいてまいりましたが、最後に、今後ますます重要になってくると思われます収用制度の迅速な活用に向けた局長の決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

○藤井収用委員会事務局長 副委員長から冒頭にもお話がございました、収用事件を迅速に処理するということにつきましては、公共事業の効果を早期に発現するためにも非常に重要なことであると認識いたしております。
 収用委員会事務局といたしましては、今後とも、区市町村においても収用制度が迅速に活用されますように、出前研修、出前相談、また、新たに始めました収用制度活用基礎講座などの機会を通じまして、用地取得の実務を担います区市町村職員に対して収用制度の理解促進と個別具体的な支援に努めてまいりますとともに、広く都民にも的確に情報を提供いたしまして、制度の意義や効果を正しく理解していただけるよう取り組んでまいります。
 今後も、引き続いて収用委員会を補佐し、公正、迅速な事案の処理を図り、収用案件の一日でも早い解決に向けて、万全を期して取り組んでまいる所存でございます。

○菅委員 私の方から、道路などの都市基盤整備に向けた収用制度の活用促進という観点で質問をさせていただきます。
 私の地元板橋区では、環状八号線の整備によりまして、人や物の流れが円滑になり、周辺道路の交通渋滞が緩和され、また、バリアフリーが確保された緑豊かな歩行者空間が創出されました。このように道路整備は、物流の改善を初め、地域の環境改善や防災性の向上に寄与するとともに、沿道の緑化など多くの効果をもたらすものであります。
 また、ことし九月には、実施上、事業が中断しておりました東京外かく環状道路の練馬から世田谷間において事業用地の買収も始まりました。
 道路網や鉄道等の整備は、首都圏の潜在能力を生かし、かつ高める上で必要不可欠な広域的都市基盤であります。都民が安心して快適な生活を送るためには、道路などの都市基盤整備のほか、土地区画整理事業や都市再開発事業などによる市街地整備を着実に推進し、早期に実現していく必要がございます。
 「十年後の東京」計画では、「十年後の東京」の姿について、道路交通ネットワークの整備により快適で利便性の高い都市生活が実現しているとし、三環状道路が約九〇%整備されている、区部環状道路や多摩南北道路が約九五%整備されているなどとしております。
 三環状については、首都高速中央環状新宿線が平成二十二年三月に開通し、平成二十一年度末での整備率は四七%となっております。また、区部環状道路の整備率は八五%、多摩南北道路で七一%となっております。
 三環状道路を初めとする都市基盤の整備は、いまだ道半ばであり、今後も着実に推進していかなければなりません。そして何より、道路の整備に当たって、その前提として計画的に用地の取得を行っていくことが求められております。
 しかしながら、用地の取得に際しては、マンションなどの共有物件の増加や関係権利者からの要求の多様化など、困難な課題が山積しており、任意の交渉による売買契約が難航している場合も少なくないと聞いております。その意味で、収用委員会においては、都市基盤の整備を円滑かつ着実に進めるため、収用制度の活用を推進し、現代社会において大きな役割を担っていくことが重要であると考えます。
 そこで、初めにまず、先日の事務事業説明の際に若干のお話がありましたけれども、改めて、最近の収用事件の傾向と事件処理の実績についてお尋ねをいたします。

○藤井収用委員会事務局長 理事ご指摘のとおり、「十年後の東京」計画に掲げられております区部環状道路や多摩南北道路などの整備事業を円滑に推進していくためには、用地取得の困難な案件については、公正中立な第三者機関として、起業者と権利者との間に立ちまして、私有財産との調整を図りながら公共の利益を実現していくという収用委員会の果たすべき役割は非常に大きいと認識しております。
 お尋ねの最近の収用事件の傾向ですが、事業別で見ますと、「十年後の東京」計画にも掲げられてございます虎ノ門-汐留間の環状二号線や首都高速道路中央環状品川線などの三環状道路や、区部環状道路の整備、鉄道連続立体交差事業に関する収用案件などが多く申請されております。
 また、近年の特徴といたしましては、都内の土地評価額が低下傾向にあることから、権利者が資産確保の目的で早期に補償を求めるような、土地所有者等の権利者からの収用の申し出が増加していることや、マンションの収用事件のように、当事者が多数になりまして意見の確認等に時間を要するもの、あるいは土地の境界が未確定なものなど、権利関係が複雑で事件処理が難しい案件が増加していることなどが挙げられます。
 事件処理の実績でございますが、毎年度、おおむね五十件から六十件程度を処理しておりまして、年間の取扱件数は、平成十二年度以降、百件を超える件数で推移しております。

○菅委員 事業概要の八ページには、平成十三年の法改正を踏まえて、収用委員会が紛争の早期解決を通して東京のまちづくりに一層寄与できるよう、収用制度の活用促進に向けた具体的な行動計画として収用制度活用プランを作成したとされております。
 この平成十三年度の法改正に至る経過を振り返りますと、日の出町にある二ツ塚廃棄物処理場の土地買収に際して、反対派による大規模なトラスト運動が起きまして、約四百六十平米の土地に二千八百二十九名の共有者が存在することとなったために、土地の補償金は、もともと五千七百万円というところが、海外や日本全国に散らばる権利者への支払いに約十億円かかったという大きな事件といいますか、事実がございました。
 この教訓を踏まえて、私ども都議会自民党が石原知事とともに国に法改正を働きかけ、事業所が行う事業認定手続については、公聴会の開催など、より慎重な手続とする一方で、収用手続については、補償の内容に直接関係のない主張の制限などの審理の合理化を図り、より円滑な制度に改めたものであります。
 このような法改正を背景に、平成十六年度に収用制度活用プランが策定されたと理解しておりますが、収用制度活用プランの作成のねらいを改めて伺います。
 また、策定から六年経過した現在、プランに基づく取り組みについてどのように評価をされているのか、この点についてもお尋ねいたします。

○藤井収用委員会事務局長 収用制度活用プランについてでございますが、このプランは、平成十六年十一月に、二十一世紀の東京のまちづくりに収用制度がその役割を適切に発揮できますよう、収用制度の現状と課題を明らかにするとともに、収用制度の周知とその活用を図ることを目的といたしまして、区市町村への支援の働きかけや事件処理の適正化、効率化などを柱にして作成したものでございます。
 プランに基づく取り組みですが、区市町村への支援の働きかけといたしましては、区市の首長等を対象といたしましたPR活動の実施や、区市等の担当実務者に対します収用制度の理解を深めていただくための集合研修や、個々の区市等への出張研修等を行ってまいりました。本年度におきましても、十一区十四市の用地部署を訪問いたしましてPRを行うとともに、区市等への出張研修につきましては、五区七市で行っているところでございます。
 また、平成十七年度には相談支援センターを開設いたしまして、区市を初めとする起業者や一般の都民の方々からも、収用制度に関する総合的な相談をお受けできる体制を整えたところでございます。
 事件処理の適正化、効率化に向けまして、内部研修による職員の事務能力の向上や指名委員制度の活用による事件処理期間の短縮化にも、あわせて取り組んでおるところでございます。
 プランの策定前におきましては、収用裁決申請件数におきます区市の割合でございますが、おおむね一〇%程度でございました。これが昨年度は二七%となり、区市からの申請は増加しております。これは、制度に対する区市の理解が進んだ結果と考えております。
 これは結果の一例でございますが、道路や鉄道などの整備事業を実施する起業者や土地所有者等の権利者に対する相談支援、また事件処理期間短縮への取り組みは、公正で迅速な収用審理を支えるために非常に大切なことでもありまして、今後ともプランに基づく取り組みを継続してまいります。

○菅委員 「十年後の東京」に掲げられた三環状道路の整備等も含め、道路や鉄道連続立体化などの都市基盤の整備を着実に実現していくためには、必要に応じて収用制度を積極的に活用し、迅速で計画的な用地取得を推進していかなければなりません。
 ただいまの答弁では、収用制度活用プランの策定後、収用制度のより一層の活用を目指し、公共事業を実施する起業者や土地所有者などの権利者を対象として、収用制度を理解していただき、その活用を促進するために、さまざまな取り組みを進めてきたとのことでありますが、二十一年度の事件取扱状況を見ると、新規事業は六十件を超えておりますが、処理件数は、ここ二年間、四十件程度にとどまっております。
 「十年後の東京」を確実に実現させるために、都や区市が取り組んでいる都市計画道路の事業化計画に掲げられた対象路線の整備を着実に進めていかなければなりませんが、用地取得が進まないと本体工事に着手できないわけでありますし、多くの都民、国民が何十年も当該公共事業の効果、便益を享受できないことになってしまいます。その意味からも、紛争を解決する機関たる収用委員会の存在意義というものは非常に大きいものと考えます。
 そこで、区市を含めた東京全体の都市基盤整備を底上げしていくという視点に立って、都民の理解も得ながら、より一層、公正かつ迅速な事件処理が進められるよう、事務局の行動計画である収用制度活用プランの見直しに取り組むべきと、こういうふうに考えますが、この点についてどうでしょうか。

○藤井収用委員会事務局長 今後、東京のまちづくりを推進いたしまして、「十年後の東京」計画や第三次事業化計画等にございます道路や鉄道連続立体交差などの事業を実現していくためには、ご指摘のとおり、紛争解決機関である収用委員会の存在意義は非常に重要と考えております。
 これらの計画実現に向けまして、事業者としての重要度が増してくる区市を初めといたします事業者への支援の働きかけをこれまで以上に充実していくとともに、事務局職員の専門的能力や調整力の向上による事件処理の適正化、効率化につきましても、より一層強化をしていく必要があると考えております。
 また、制度の円滑な活用を図り、公正で迅速な事件処理を促進していくためにも、都や区市等の起業者だけでなく、土地所有者や都民に対しても、収用制度の意義や効果について正確にご理解、ご協力をいただくことが重要と考えております。
 今後も、都の収用委員会には、大都市東京ゆえの特色でございます権利関係が複雑な案件など、処理の困難な申請事案が増加していくことが予想されるわけでございますが、区市などの事業者への支援の強化や職員の専門能力の向上、収用制度の周知徹底など、ただいま申し上げましたような視点に立ちまして、理事ご提案の趣旨を踏まえて、収用制度活用プランの改定に鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
 事務局といたしましては、今後とも、東京のまちづくりに果たす役割を十分に認識いたしまして、収用委員会の運営をしっかりと支え、公正かつ迅速な事件処理のために頑張ってまいります。

○菅委員 ただいま局長より、収用制度活用プランの見直しに取り組む、こういう答弁でございました。ぜひ、事業者にとっても、権利者にとっても、よりよい収用制度となるように鋭意取り組んでいただきたいと思います。
 冒頭申し上げましたとおり、都は現在、「十年後の東京」計画の実現のため多くの事業を進めておりますが、中でも、少子高齢化社会を迎え、将来の子孫に対して三環状道路などの優良なストックを引き継いでいくことは、現代に生きる我々の大きな責任でもあります。このような観点からも、必要なときには収用制度を適切に活用して都市基盤を着実に整備していくことは極めて重要だと、こういうふうに考えておりますので、収用委員会としても、公正かつ、より一層迅速に事件処理を進めていただくことを重ねてお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○高木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高木委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で収用委員会事務局関係を終わります。

○高木委員長 これより会計管理局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○くりした委員 私からは、会計管理局の所管であります公会計制度改革の推進への取り組み、及び会計事務におけるコスト削減に向けての取り組みの二点に関して質問させていただきます。
 まず、東京都における公会計制度改革の推進についてでありますが、行財政運営を支える会計制度は、いうまでもなく極めて重要な制度であります。過去との比較、分析を行っていく上では会計制度に一定の一貫性が必要な反面、時代の変化に対応していくことも、また重要であります。
 都は、平成十四年に石原知事が都の会計に複式簿記・発生主義会計を導入する旨を発表して以降、東京都会計基準の策定などを経て、平成十八年四月より新たな公会計制度の導入を実現しました。平成十八年度決算からは、従来の官庁会計決算に加え、複式簿記・発生主義会計による財務諸表を作成し、一般会計及びすべての特別会計についての財務諸表を公開しています。本日は、この新たな公会計制度について、まず質問をさせていただきます。
 東京都が全国の自治体に先駆けて複式簿記・発生主義会計を導入したことは大いに評価をされるべきでありますが、改めて、都が認識をしているその効果について伺います。

○佐藤会計制度担当部長 新たな公会計制度についてでございますが、都は、平成十八年度から全国に先駆け、従来の官庁会計に複式簿記・発生主義の考え方を加えました新公会計制度を導入して財務諸表を作成しております。
 これによりまして、これまでの官庁会計ではわからなかった資産、負債などのストック情報や、減価償却、金利などを含むフルコスト情報の把握を通じまして、自治体経営の視点を確立するとともに、都民に対する一層の説明責任を果たしてございます。
 都におきましては、さらに、財務諸表を施策内容の検証に活用しまして、その結果を予算編成に反映させるなど、効率的かつ効果的な行財政運営のツールとして役立ててございます。

○くりした委員 ご説明をいただいた中にあった、複式簿記・発生主義会計を導入したことによって、ストック情報や金利等を含むコスト情報の把握が容易になったことは大きなメリットであると考えておりますが、公会計制度改革の目的の一つとして掲げられている都民への説明責任を果たすという観点からすると、まだ改善の余地が残されているのではないでしょうか。大きなポイントとして、情報量の充実が必要ではないかと思います。
 財務諸表のエキスパートである会計士の方々も、現在の大まかな財務諸表の区分では、各事業の効率性について論じるには不十分であるという指摘もなされております。少なくとも事業別で作成するなど、さらなるブレークダウンを行うことが重要ではないでしょうか。事業名と費用が結びつけば、都財政における個別の事業の軽重について判断をすることも容易になります。
 そこで、東京都における事業別財務諸表に対する取り組みはどのようになっているのか、お伺いをします。

○佐藤会計制度担当部長 都の新公会計制度におきましては、職員が日々の会計処理の段階から、一件一件、複式簿記の仕分けを行ってございます。このことから、会計別の財務諸表だけでなく、局別や事業別など、多様な財務諸表の作成が可能となってございます。このような多様な財務諸表の作成というものは、都の方式の特色でございまして、現在のところ、他の自治体にはない取り組みでございます。
 財務諸表の作成に当たり、会計管理局におきましては、都政運営のインフラであります会計制度と財務会計システムを所管する立場から、各局に対する財務諸表の作成方法の指導や会計データを提供する役割を担ってございます。そして、都の一般会計及び特別会計の財務諸表につきましては、当局で作成しております。
 一方、局別財務諸表や事業別の財務諸表につきましては、各局において作成をしておりまして、事業別の財務諸表につきましては、財務局が毎年度作成しております主要施策の成果において公表いたしますとともに、事業評価等に活用し予算編成に反映するなど、財政運営に役立ててございます。

○くりした委員 ただいまご説明いただいた中で、会計業務におけるフレームワークと、それをつかさどるシステムの管理、運用を行うのが会計管理局であり、現在、どこまでの情報公開を行うかの判断については、各局にゆだねられているという内容であったと思います。
 しかし、説明責任を果たすということは、もちろん都政全般に求められるものでありますので、会計管理局、そして、実際に現場との調整を行う財務局が各局と連携して局横断的に進めていかなくては前進し得ないと思います。東京都には、他の自治体と比較しても多数の事業が存在をしていますから、一朝一夕に実現させるのは非常に困難なことかと思いますけれども、都民の都政に対する信頼をさらに増していくためにも、検討を進めていただけるようにお願いをいたします。
 また、先ほど申し上げた、中長期的な観点からだけではなく、都民に対してわかりやすく説明することに対しては、可能な限り工夫を凝らしていかなくてはならないと考えますが、現状において、東京都はこの点についてどのような取り組みを行っているのか、お伺いします。

○佐藤会計制度担当部長 財務諸表を説明する取り組みでございますが、財務諸表を理解するためには、会計の専門的な知識をある程度必要とするなど、決算資料をそのまま公表するだけでは、必ずしもわかりやすいものにはならないというふうに考えております。
 そのため、会計管理局といたしましては、都民への説明責任を果たしていくという観点から、カラーの図表やグラフを用いるなどの工夫をいたしまして財務諸表を解説した概要版を作成しております。
 今後も、各局とも連携をとりながら、都民への説明責任を一層果たすべく努めてまいります。

○くりした委員 ただいまご説明をいただいたように、会計管理局の皆様におかれましては、さまざまな陰の努力を続けられていることかと思います。他の地方自治体を牽引する東京都の会計制度の新たな展開として、事業別財務諸表の公開についても推進をしていただきますよう改めてお願いを申し上げて、次の質問に移ります。
 さて、冒頭申し上げたとおり、会計管理局においては、新たな制度を導入するだけではなく、長年続いている会計制度に関しても、時代に応じて見直しを行っていかなくてはなりません。このたびの事業概要において、興味深い取り組みに関して記述がございましたので、それについて質問をさせていただきます。
 従来、運転免許証やパスポートの更新手続の手数料の徴収においては、平成二十一年度まで、昭和三十九年に定められた東京都収入証紙条例に従って、証紙による収入の形がとられてきました。多くの方々が経験されたことがあると思いますが、パスポート更新手続の際にも、申請窓口とは別に証紙の販売窓口が隣接をされており、申請者は、手続手数料分の収入証紙を購入し、窓口に持参するという形がとられておりました。
 これについては、現金を扱う業務を集約できる反面、窓口の運営コスト、証紙の印刷コスト等が余分に必要なことや、申請者から見て余計な時間がかかるという問題点が存在していましたが、それを受けて、東京都収入証紙条例を廃止する条例が施行され、平成二十二年三月末をもって証紙での納付を廃止し、窓口において現金で納付をする形に移行されました。
 そこで、改めてとなりますが、なぜ収入証紙制度を廃止したのか、その理由について伺います。

○佐藤会計制度担当部長 収入証紙制度の廃止の理由でございますが、収入証紙は、本来、行政が手数料などを収入する際に必要な手続としております納入通知書や領収書の発行を省略できることなど、導入当初におきましては、行政事務の効率化といった面から一定の効果があったものと考えております。
 しかしながら、長い年月が経過する中で、種々の手続で来庁された都民の方から見ますと、窓口で証紙を購入して張りつけるという手間がかかりまして、その場の手続が煩瑣な状況となってございました。
 そこで、都民にとって利便性をより向上させるという観点と、証紙は金券でございますので、都としては、これを厳重な取り扱いをしてございましたが、その金券の保管管理に要する事務を解消するなど、行政の内部事務の一層の効率化も図るということを理由といたしまして、収入証紙制度を廃止したものでございます。

○くりした委員 ただいまの答弁の中で、事務の効率化とありましたが、証紙の印刷経費などのコストも削減されるのではないかと思います。収入証紙を廃止したことによって、コストがどの程度削減されたのか、お伺いします。

○佐藤会計制度担当部長 証紙の廃止のコストの面でございますが、収入証紙の廃止に伴いまして、事務手続の切りかえのために、レジスターなど関連備品の導入経費等、いわゆるイニシアルコストは必要となりましたけれども、印刷経費等のランニングコストが削減されることによりまして、年間およそ一千万円のコスト削減効果を見込んでございます。

○くりした委員 長年続けられてきた制度においても、絶えず見直しを行っていくことで、都民の利便性と都財政における収入増を両立させたすばらしい事例であると、そのように思います。こういった柔軟な発想と行動力を持ち合わせて、東京都の会計制度においては、全国に先駆け、会計基準の整備を行ったわけですが、これにとどまることなく、都民の利益追求のために、さらなる創意工夫を行っていただけるよう強く要望いたしまして、私からの質問を終わらせていただきます。

○鈴木委員 それでは、今、公会計制度の質問が出ましたが、私もちょっと違う観点から質問をさせていただきたいと思います。
 都は、国や全国自治体に先駆け、従来の官庁会計に複式簿記・発生主義会計の考え方を取り入れた新たな公会計制度を導入いたしました。しかしながら、全国の自治体の取り組みは十分に進んでいないというのが現状であるかのように思います。このような状況において、我が党もかねてから主張をしてきたように、地方自治体のリーダーとして、他の自治体への支援や普及活動に取り組むことで公会計制度改革に寄与してきたことは、また、その東京都の役割は、ますます重要となってきていると考えています。
 都がこれまで取り組んできた、他の自治体に本格的な複式簿記の導入を促す普及活動の結果として、大阪府や町田市が都と同じ新公会計制度を導入したことは大きな成果であると思います。その大阪府と東京都は、この四月に共同プロジェクトを立ち上げ、公会計制度改革に向けたさまざまな取り組みを展開しております。
 そこで、まず最初に、大阪府との共同プロジェクトを立ち上げた経緯と目的、さらに、この半年間での具体的な取り組み、進展についてお伺いをいたしたいと思います。

○佐藤会計制度担当部長 大阪府との共同プロジェクトでございますが、大阪府につきましては、昨年四月、橋下知事から石原知事への協力要請を受けまして、都として、職員の相互派遣などを通じて複式簿記導入のノウハウの提供などを行ってまいりました。その後、大阪府は検討を進めまして、平成二十四年度に都の方式に準じた複式簿記を本格導入することを昨年十二月に決定いたしました。また、大阪府は、この導入作業を進める一方で、他の自治体の新公会計制度の導入に協力をするとしてございます。
 こうしたことから、本年四月、大阪府との共同プロジェクトを立ち上げまして、複式簿記・発生主義会計の全国的な導入を促進するためのさまざまな取り組みを共同して展開していくこととしたものでございます。
 本プロジェクトの具体的取り組みといたしましては、まず、本年五月に、本格的な複式簿記導入のメリットを十分に理解していただけるよう、自治体のトップなどに向けたパンフレットを作成いたしました。このパンフレットにつきましては、都が九都県市首脳会議等において、また、大阪府が近畿ブロック知事会議の場におきまして、近隣府県に対して本格的な複式簿記導入の利点をアピールしてございます。
 さらに、この十一月に公表いたします公会計改革白書の作成や、同じく十一月に開催いたします公会計制度改革シンポジウムに向けて、現在、共同して準備を進めてございます。

○鈴木委員 今、答弁があったように、東京都が大阪府と支援を、本格的な複式簿記を導入するということで、大阪府と都がパートナーとしてほかの自治体にも普及活動を行う。支援、普及を行っていく範囲も、かなり広範囲に広げて、今まで以上に広がることになるということであります。
 半年間、都がこれまで首都圏において行ってきたアピール活動などが、大阪府との共同プロジェクトを展開することによって、近県においても広がってきたということになると思います。
 我が国の東西の両雄ともいえる東京と大阪府が共同して取り組む新たな展開により、全国の公会計制度改革を一層促進させていただきたいと思います。
 二十三区の方も、恐らくこれから、それぞれの区議会の中でも、また市議会の中でも、一般質問で、かなりこの公会計制度を導入すべきということが質問をされているというふうにも聞いていますので、ぜひ一番自分の足元である二十三区、三多摩においても--町田が今やっていますが、そのように進めるような方向で区議会もかなり動いていると聞いておりますので、その辺のところも調べて、協力歩調をとって、より一層進めてもらえれば大変ありがたいということも付しておきたいと思います。
 公会計制度改革については、もう一点、新たな動きがあることにも注目をしたいと思います。
 さきに行われた都議会第三回定例会において、我が党の代表質問に対して、局長から、九月三十日に設置される国の研究会に対し、積極的に意見を反映していくとの答弁がありました。この国の研究会の設置の趣旨と現在の状況についてお伺いをいたします。

○佐藤会計制度担当部長 国の研究会についてでございますが、総務省は本年九月三十日に、今後の新地方公会計の推進に関する研究会を設置いたしました。この研究会のメンバーは、会計や財政分野の学識経験者を初め、国際公会計基準の専門家、公会計の分野に詳しい実務家から構成されておりまして、このほか、オブザーバーとして東京都と大阪府、財務省が加わっております。
 これは、都がこれまで国への提案要求などにおきまして、自治体の参画を得て全国標準となる会計基準の整備に着手することを再三働きかけてきた成果であるというように考えてございます。
 現在の状況でございますが、この研究会では、自治体の財務諸表の作成状況についての検証や、国際公会計基準及び国の公会計等の動向を踏まえた新地方公会計の推進方策、クラウドコンピューティングの活用の可能性などの検討が予定されております。
 都としましては、ともに研究会に参加する大阪府と連携いたしまして、積極的に意見を反映させてまいります。

○鈴木委員 今の答弁によれば、総務省の研究会は、公認会計士の先生方または専門家から構成をされ、自治体からは東京都や大阪府、国からも財務省等の職員の方でしょうね、そういう方も恐らく参画して検討を進めていくものであるということであります。
 しかし、私はちょっと、前の総務省の対応に関してかなり疑問を持っておりまして、総務省は自治体の意見も十分に聞くということをしないで、基準モデルを総務省の改定モデルとして、しかも、大きく異なった二つの公会計モデルを作成したというのが私の認識でありまして、その二つのモデルを推奨して、昨年度末までに全国の自治体に財務諸表を作成するような要請をしていたというのが現状だと思うんですね。
 そういう見解に立った総務省が果たして--確かにそれぞれのそういう公認会計士の方、また専門の方を招いて議論をしても、導いていく方向というのが、どの方向に行くのかというのが全く見えてこないというのは、普通、一般に考えてみれば当たり前のことなのかなと。実際に総務省の取り組みを見ていると、研究会が立ち上がったからといって、それがどういうふうに変化するか、にわかに安心はできないような状況に私はあるというふうに、今述べたように思っています。
 ですから、都は大阪と力を合わせて、その研究会の場で今までしてきた主張をしっかりとして、また、東京都がやってきた現実的な数値まで挙げて、先ほどくりした委員もいっていましたけれども、すべての手法を提示するぐらいのことまでしてでも、国の今のどんぶり勘定の、要するにやり方の決算というものが、いかに世界でおくれているかということをはっきり示すぐらいの決意をもって、やはりこの場で対応してもらいたいと。そのことがやはり、真に役立つ公会計制度の構築にとって一番必要なことだというふうに思っています。
 また、それを率先してやっている東京と大阪というのは、我が国の地方の公会計制度の今後の進展を左右するという、また、世界の中で日本の、きちっとした会計制度を持って、国民の税金に対してきちっとした使い方をしているということを自負を持っていえるようなシステムだということを考えて取り組んでいただきたいということも述べていきたいと思います。
 総務省の対応を見てもわかりますように、国はこれまでも、かたくなに複式簿記・発生主義の導入に真剣に取り組もうとはしなかったというのが現状だと思います。
 行政は、住民から税金をいただいて行政サービスを提供するものである以上、財政の透明化を図り、住民に対する説明責任を果たしていくことが必須であると思います。むだを省き、自治体経営の合理性を進めていくためには、民間と同じ感覚で判断し、対応できる会計方式の導入が、これはもう至極当然で必要であるというふうに思います。そのために、行政が企業会計の指標である複式簿記・発生主義会計を取り入れることはむしろ自然のことでありまして、今申し上げたように、世界に目を向けてみれば当たり前のことであります。
 そこで、あえてお伺いいたしますが、世界における複式簿記・発生主義会計の導入状況について、これは予算委員会で公明党の東村さんが聞いているんだよね……(「予算委員会でね」と呼ぶ者あり)予算委員会で聞いていますが、改めてお伺いをしたいと思います。

○佐藤会計制度担当部長 複式簿記・発生主義会計の世界における導入状況でございますが、主な先進国におきましては複式簿記・発生主義会計の導入が積極的に進められておりまして、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなどにおいては既に導入をされております。これを含めて、世界では、導入を予定する国も入れますと、五十カ国以上が発生主義会計を採用してございます。
 また、OECDやEUなどの国際機関でも発生主義会計が採用されておりまして、国連でも二〇一〇年から採用する目標となってございます。
 まさに委員ご指摘のとおり、行政に複式簿記・発生主義会計を導入することは、世界的な流れといえるものと認識をしております。

○鈴木委員 今の答弁からもわかるように、この公会計制度というのは、世界の趨勢から考えてみても、日本が今すぐにでも導入して、事務事業も含めてそうでありますが、国で行う、または都、地方自治体が行うすべてのそういう住民のサービスの観点も含めて、実際はそれがいかに必要かということは、だれが見ても明らかなことでありまして、このままでいけば、もう世界の二流、三流国だといわれても仕方がない。
 これは知事もいっていましたけれども、私たちも、例えば企業をやっている人たちと集まって、都は企業会計を始めましたよ、国はいまだにやっていないんですよという話をすると、それはうそだろうとか、そういう答えが返ってくるんですよ。まさか国がまだこういう公会計制度、企業会計、一般の複式簿記をやっていないなんて、だれも思っていないという現状があるという現実も、知事がこの間、テレビか何かで指摘していましたが、現状としてあるんですね。私はびっくりしました。
 ですから、やはりもう少しその辺のことをはっきりいっていけば、国民の皆さんも、それはもう簡単に理解しますよ、企業をしている人は。いまだにそれを聞いたら信じられないという人がいるぐらいですから、やはりきちっとその辺のことも声を大にして、国に行っても、マスコミに対してもはっきりと物をいって、東京から改革の歩を進めていくということをぜひ自信を持って、今まで東京都が望んできた改革でありますから、進めていただきたいというようなことを思います。改めて局長の決意を伺いたいと思います。

○新田会計管理局長 公会計制度改革の推進についてでございますが、現在、我が国行政におきましては、財政の透明性を一層高め、住民への説明責任を果たしますとともに、自立的な行政運営に向けて経営的支援を導入していくことが強く求められております。複式簿記・発生主義会計の導入という公会計制度改革は、都のみならず、全国自治体が取り組んでいくべき重要な課題になっているものと認識しております。
 こうしたことから、都はこれまで、国に対し、全国標準足り得る会計基準の整備に着手すること、そして、その検討に当たっては地方自治体を参画させ、自治体の事例や国際公会計基準の考え方を参考にすることを提案要求してまいりました。そうした中、このたび、ようやく総務省におきまして、公会計制度改革に向けた研究会が設置され、東京都と大阪府が研究会にメンバーとして参加する運びとなりましたことは、都のこれまでの実績を初め、自治体の実務から得られた知見や実情を制度に反映していく道が開かれたものと受けとめております。
 しかしながら、総務省の取り組みは、まだ緒についたばかりでございまして、委員ご指摘のように、研究会が立ち上がったことをもって安心していられる状況にはなく、公会計制度改革の確実な進展を担保していく上で、これからの都の取り組みは、ますますかぎを握るものとして重要性を増し、まさに真価が問われてくるものと考えております。
 都といたしましては、この研究会の場を最大限活用しながら、あらゆる機会をとらえて、国際基準等を踏まえた本格的な複式簿記・発生主義会計の導入をこれまで以上に強く国に働きかけてまいりたいと思っております。公会計制度改革のフロントランナーとしての自負と自信を持って、我が国の公会計制度改革が行財政運営に真に資するものとなりますよう、全力を尽くしてまいります。

○上野委員 私からも、公会計制度改革について何点か質問したいと思います。
 財政状態を正確に把握して、そしてまた住民に対してこれを明示していくこと、これはもう地方財政運営における基本中の基本でございます。
 我が党は、これを実現する方法といたしまして、平成十四年、東村議員が都議会で初めて、この複式簿記・発生主義会計を導入すべきであると主張いたしました。先見の明がある知事はいち早く導入を決断いたしまして、都は、本格的な複式簿記・発生主義会計による新たな公会計制度を平成十八年度から導入したわけでございます。
 その結果、明らかになった隠れ借金の解消への努力がなされましたし、減価償却の考え方から将来の施設更新需要に備えるという発想が出てきたのでございます。さらには事業評価や予算編成にも活用するなど、数々の成果を上げていっていることは、既に周知のとおりでございます。
 このように、都が着実に公会計制度改革による実績を重ねる一方、さきの第三回定例会で述べましたとおり、国を初め全国自治体での公会計制度改革のおくれは好対照をなしているわけであります。
 都の普及活動の成果として、大阪府や都内の町田市において二十四年度から本格的な複式簿記が導入されるということになりましたけれども、全国的に見れば、こうした動きというのは、まだまだ本当に少数でございます。
 そのおくれの原因の一つは、総務省が二つの会計モデルを提示している、統一的な会計基準がないことも挙げられます。統一的な物差しである会計基準がなければ、自治体間の比較も難しいし、財務諸表を活用した分析も限られたものとなってまいります。全国統一の会計基準を整備することがまさに急務であります。国が早期に取り組むよう、都としてさらなる働きかけを行うことが必要でございます。
 もう一つの原因は、いまだに複式簿記・発生主義会計導入の必要性が真に理解されていない、危機感に欠けていることでございます。こうした面についても、ぜひ都としての実績を踏まえ、全国自治体に導入の必要性やメリットへの認識を高めていく、そうした取り組みに力を入れていただきたい、このように思うわけでございます。
 そうした中、都は、大阪府と共同プロジェクトで公会計改革白書を作成し、十一月に公表すると、このように第三回定例会でもいわれました。
 そこでまず、改めて、この公会計改革白書を作成する意義、目的について、都民の方にもわかるようにご説明を願いたいと思います。

○佐藤会計制度担当部長 公会計改革白書についてでございますが、まず公会計制度改革につきましては、総務省が、平成二十一年度末までに全国自治体に財務諸表を作成することを要請しておりまして、本年三月末までに約七割の自治体が作成を行っております。
 しかしながら、各自治体の財務諸表の作成は進んではおりますが、そのほとんどが、官庁会計の決算を複式簿記の様式に組みかえて作成をする、いわゆる決算組みかえ方式によるものでございまして、単に財務諸表の体裁を整えただけの不完全なものでございまして、本格的な活用には限界がございます。
 今後、改革を着実に進めてまいりますためには、全国自治体へ複式簿記の必要性やそのメリットをさらにアピールする必要がございます。そのため、東京都方式に準じた複式簿記を導入するという大阪府と共同いたしまして白書を作成することにより、全国自治体への普及活動に活用していくことといたしました。この白書の作成に当たりましては、本年四月、公認会計士など専門家の参加を得た検討会を設置いたしまして、十一月に公表すべく検討を進めております。
 この検討会では、公会計制度の現状や課題、海外の状況などを専門的な見地から検討を行っておりまして、また、全国自治体へアンケートやヒアリング調査も実施いたしまして、その結果、自治体の現状や課題が明らかになりつつあります。これらを白書として取りまとめまして、複式簿記の必要性やメリットを自治体職員等に訴えてまいります。

○上野委員 先ほど私は、導入の必要性が真に理解されずに危機感に欠けていると、このように述べましたが、海外の状況を見ますと、公会計制度について日本がいかにおくれているか、先ほどの鈴木委員のご質問もありまして、ご回答を聞いてもわかります。
 石原知事も、この複式簿記を導入していないのは北朝鮮と日本ぐらいだというような、そういった答弁も、発言もあったわけでございますけれども、海外の状況を調査して我が国のおくれた実態を示すということが、国や全国自治体の認識を改めていく上では大変重要であると考えております。
 そこで、まだ作成中であると思いますけれども、海外、例えばお隣の韓国の複式簿記の導入、こういったものについてどのような状況になっているのか、お尋ねいたします。

○佐藤会計制度担当部長 白書を作成するに当たりましては、先ほど申し上げました検討会の中で海外の状況調査を行ってございます。
 具体的には、先進的に導入しているイギリス、アメリカ、フランス、カナダ、それから韓国におけます複式簿記・発生主義の導入の目的と経緯、また導入後の活用状況などを調査しております。その結果、把握できましたこととしまして、各国とも、行政運営やアカウンタビリティーの点から現金主義の限界を認識し、複式簿記・発生主義会計の導入を進めてございます。
 例えばイギリスやアメリカなどでは、一九九〇年代から複式簿記導入が進んでおり、理事お尋ねの韓国では、中央政府では二〇〇九年から導入をされております。また、韓国では、中央政府に先んじて、地方政府が二〇〇七年から導入をしてございます。

○上野委員 韓国は、政府が二〇〇九年から、また、地方政府はそれに先立ち二〇〇七年から導入されているという、こういうご答弁でございましたけれども、韓国におきましても、まず地方から導入が始まって、そして国を動かしたと、こういうわけでございます。
 韓国といえば、港湾や空港など、物流の基盤整備による産業発展は目覚ましいものがありますが、この公会計の世界でも、残念ながら日本は韓国におくれをとっているのでございます。
 このように、海外の状況をよく認識し、日本も公会計制度改革を早急に進めていかなきゃならないという意識を高めていくことが重要であります。この改革の機運を盛り上げていくためには、こうした危機感を各自治体が共有することが出発点、このように考えます。その意味では、先ほどの答弁で、全国自治体にアンケートを実施したと、このようにございました。この全国自治体の現状認識を正確に把握することは大変重要であります。
 そこで、このアンケートの結果、見えてきた課題にはどのようなものがあるのか、お尋ねいたします。

○佐藤会計制度担当部長 アンケートでございますが、これは、全国都道府県と市及び都内、大阪府内の町村、九百弱の団体に対して行ったものでございます。
 その内容でございますが、まず財務諸表の作成、公表につきましては、総務省が、先ほど申し上げましたように、二十一年度中に財務諸表を作成することを要請していることもございまして、今回アンケートの回答をいただきました九割以上の団体で財務諸表の作成、公表を行ってございます。
 しかしながら、住民に対するアカウンタビリティーの向上に役立っているというご回答は五〇%にとどまっておりまして、財務諸表を公表することによる効果を十分に認識している状況ではないことがうかがわれます。
 また、現在、財務諸表を活用しているとしました団体は二%程度でございまして、活用に際しての課題、精度が十分でない、あるいは活用の方法がわからないといった回答がございました。
 これらのことから、財務諸表の公表、活用に当たりましては、精度の高い財務諸表の作成を進めていく一方、活用方策を研究していくことが必要であるといえるものと考えております。

○上野委員 今、何点か、アンケートの結果から明らかになった課題について答弁がございました。全国の自治体においては、形だけは財務諸表を作成しているものの、公会計制度改革に本来求められている目的や役割からは、かけ離れたものになっていることを実感しているような、そうした状況の一端がうかがえるように思います。
 このように、アンケートによって現状を分析し、課題を明らかにしていくことは、この公会計制度改革を進める上で方向性を示す意義深いことではありますが、ただ課題を明らかにするにとどまっていては十分ではありません。その先を見据えて改革を進めていかなければならないと思います。そうした中で、都がこれまで培ってきた精度の高い財務諸表の作成ノウハウや活用方策の事例などの実績は、現状打開に向けた大きな力になっていると思っております。
 総務省がこの九月に、先ほど話がありましたけれども、公会計改革を推進していくための研究会というのを設置いたしました。都もこれに参加していると、先ほどから話がありましたけれども、都は、これまでの実績を踏まえまして、国や全国自治体を牽引していかなくてはなりません。そのために、先ほどの鈴木委員からもお話があったように、この白書を発信力のあるものとして、総務省の研究会の議論をぜひともリードしていってもらいたい、このように思うわけでございます。
 そこで、この白書においては、今後の公会計制度改革の方向性にまで踏み込んでいく必要があると考えますけれども、見解を求めます。

○佐藤会計制度担当部長 理事ご指摘のとおり、白書を発信力のあるものにしていくためには、課題を明らかにするだけではやはり不十分でございます。そのため、本白書では、課題だけでなく、自治体における公会計制度の今後のあり方につきまして、提言という形ではございますが、検討の方向性を具体的に示してまいりたいと考えております。
 この白書を発信力のあるものとしまして、十一月十一日に開催をいたします公会計改革シンポジウムで公表することを皮切りに、同じくその近くで開催されます九都県市首脳会議など、さまざまな場面で活用してまいりたいと考えております。また、この白書の内容を踏まえて、総務省の研究会におきましても議論をリードし、公会計制度改革の推進に寄与してまいりたいと考えております。

○上野委員 今ご答弁にありました白書の公表は十一月十一日ということで、現在、最後の取りまとめをしているところだと思いますけれども、ぜひこのような点を踏まえました発信力のあるものとしていただきたいと思います。
 この白書につきましては、第三回定例会の我が党の代表質問で、新たなツールである白書を活用しながら、新公会計制度を主要テーマとした大都市を擁するサミットを開催するなど、角度をつけたアプローチを積極的に行っていく必要があると、このように主張してきました。先ほどの答弁にも、十一月に開催するシンポジウムや九都県市首脳会議などで活用していくとのことであり、ぜひ積極的な取り組みを進めていただきたいと思います。
 この新しいツールであります白書の活用により、全国の公会計制度改革の取り組みも一段と進むものと考えますけれども、最後になりますが、局長のその決意を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。

○新田会計管理局長 全国の公会計制度改革に向けました取り組みについてでございます。
 理事ご指摘のとおり、全国自治体における公会計制度改革を着実に進めていくためには、関係者が複式簿記・発生主義会計の利点や必要性を深く正確に理解し、危機感を共有することが前提となってまいります。そのため、このたび作成いたします白書におきましては、日本の公会計の現状や近時の海外事例などを調査、分析することを通しまして、我が国のおくれた取り組みの実態を明らかにいたしますとともに、これからの公会計の方向性を示してまいりたいと考えております。
 このような形で、国内のこれまでの経緯から海外の状況、そしてこれからの方向性まで網羅したこの白書は、公会計の分野では、これまでにない画期的なものになると考えております。ご指摘の点も踏まえ、白書が改革を進展させ得る発信力のあるツールとなりますよう、十一月の公表に向けまして、白書作成の詰めの作業に拍車をかけてまいります。
 総務省も、都のこれまでの働きかけもあり、ようやく重い腰を上げてきております。今まさに公会計制度改革が本格的に動き出そうとしております。大阪府とも協力しながら、さまざまな機会をとらえ、この白書をツールとして活用し、全国の自治体に改革のムーブメントの輪を広げてまいりたいと考えております。

○斉藤(や)委員 私の方からは、各委員、公会計制度についてのご質問が続いたこともございます。この事業概要二十二年度版の局の重点課題を見てみますと、そこに、事務事業における重点課題の一つとして、安全で効率的な資金管理、こういったものも掲げられているわけでございます。
 会計管理局といいますと、一般都民からはどうしても、公会計制度改革や、あるいは、当然ですけれども、適正な会計事務の確保に取り組む局というイメージが強うございますけれども、それだけではなくて、平成二十二年度に二兆七千億円もの莫大な金額を基金として運用するなど、資金管理の果たすべき役割というものは大変大きいというふうに考えております。
 そこで、私の方からは、本日は会計管理局の資金管理について、都民によく知っていただく意味からも、幾つか質問をさせていただきたいと思うわけでございます。
 初めに、平成二十一年度の資金管理の状況につきまして、改めて確認をしたいわけでございます。資金残高、運用収入、そして利回りなどはどうなっておりますでしょうか。

○安藤管理部長 会計管理局におきましては、日々の支払いなどに備えた資金でございます歳計現金、それから、特定の目的のために財産を維持して資金を積み立て、また定額の資金を運用する基金、それから、地方公営企業法の規定の一部が適用される準公営企業会計、例えば病院事業会計の資金などについてでございますが、こうしたものについて運用を行っております。
 平成二十一年度におけるこれらの資金の全体の状況でございますが、平均残高は約三兆八千億円、運用収入は約百八十八億円で、利回りは〇・四九七%でございました。前年の平成二十年度の実績との比較におきましては、平均残高は約二百五十億円増加したものの、運用収入で約八十七億円、利回りで約〇・二四ポイントの減少となってございます。

○斉藤(や)委員 今のお話を伺いますと、平成二十一年度の資金管理におきましては、資金残高は、ほぼ横ばいであるようですけれども、運用収入、利回りとも、前年度に比較して三分の一近く減少しているようです。
 このように運用収入や利回りが減少した要因、これ、さまざまあると思いますけれども、お伺いしたいと思います。

○安藤管理部長 平成二十年に発生しました世界的な金融危機を受けまして、日本銀行は、平成二十年十月と十二月にそれぞれ〇・二%、計〇・四%の政策金利の引き下げを実施いたしました。これによりまして市中金利が低下しまして、実際の運用における約定利回りが低下したことにより、運用収入や利回りが減少することになったものと考えてございます。
 このような状況に対しまして、会計管理局としても、可能な限り効率性の追求に努めましたけれども、結果として、先ほども申し上げたとおり、運用収入で約八十七億円、利回りで約〇・二四ポイントの減少となったものでございます。

○斉藤(や)委員 ご答弁によりますと、平成二十一年度の資金管理の実績における運用利回りの低下幅、〇・二四ポイントの低下に、これはある面とどまっているという見方ができるわけでございますが、そこにさまざまな複雑な要因がはらんでいるかと思います。
 そこで、会計管理局としまして、これは事務事業の冊子の中にも詳しくは書いてございますけれども、金融情報を収集するその力、情報力、収集力を強化したり、あるいは預け入れの金融機関に競わせていく、こういったことが大切であると思いますが、局の見解を伺いたいと思います。

○安藤管理部長 委員ご指摘のとおり、金融情報収集力の強化や預入機関相互における競争性の確保ということは大変重要なことであると考えてございます。
 そのため、金融情報収集力強化の観点から、大手銀行や証券会社のリーディングルームで採用しているものと同じレベルの情報端末を設置いたしまして適時的確に利回りの増嵩を把握して、債権を最適な価格で購入できるよう努力を行ってきてございます。
 また、預金につきましては、複数の金融機関による引き合いを実施して、高レートを提示した金融機関に預金を行うことによりまして競争性を高め、運用金利の上昇を図るといった取り組みを行っております。
 厳しい金融環境が続いておりますが、今後とも、金融情報収集力の向上や預入機関相互における一層の競争性の確保に努めてまいりたいと考えてございます。

○斉藤(や)委員 世界的な金融危機の影響を受けたこの市中金利の低下という外部環境の変化の中、局として、少しでも運用収入や利回りを向上させるべく努力を行っておられることを理解しております。
 しかしながら、会計管理局の運用する資金は、これはもう公金でございまして、利回りを追い求める余りに多大なリスクをとった結果、資金が毀損するということは絶対に避けなければならないことでございまして、適切なリスク管理がこれまで以上に強く求められるものと考えるわけでございます。
 そのためには、会計管理局として、世界的な金融、経済情勢や資金の運用先である金融機関の経営動向など、さまざまな情報を的確にとらえていかなければならず、それにふさわしい体制を整えることもまた必要不可欠であると考えます。
 過去においても、ペイオフ解禁や金融機関の再編及び経営危機など、さまざまな波があったわけですけれども、資金管理にとって厳しい状況に会計管理局も直面してきたと思います。
 そこで、このような状況に対応するべく、都の会計管理局におきましては、どういった体制をとってきたのか、お伺いしたいと思います。

○安藤管理部長 都では、ペイオフ解禁後の資金管理に万全を期すために、平成十四年四月、そのころは組織改正前でございましたので、会計管理局がまだ出納長室といっていたときですけれども、当時の出納長室内に新たに公金管理課を設置いたしました。公金管理課におきましては、適切なリスク管理を行うために、金融機関の経営分析や運用商品の調査、分析などの業務を行っているところでございます。
 また、公金管理課の職員につきましては、専門知識を有する職員を多数配置してございます。
 さらに、資金管理に関する的確な判断、対応を行うためとして、学識経験者など八名で構成いたします公金管理委員会を設置しておりまして、最新の金融情勢などについて適宜助言や指導を受けることによりまして、的確な情報に基づいた適切な資金管理を行うことができているというふうに考えてございます。

○斉藤(や)委員 会計管理局といいますと、確かに、新たな公会計、これは国をリードしていく、そういったとても大きな使命が今注目されているわけでございますけれども、このような会計管理の体制を一つ見ましても、私は、自治体中ですぐれて、この会計管理のあり方を模範とするようなものがいっぱいちりばめられているんじゃないかと、改めて今回わかったわけでございます、理解したわけでございます。
 会計管理局が適切な資金管理のために、そのような体制を整えていることは理解できましたが、今ご答弁にございましたけれども、一昨年の世界的な金融危機以降、不安定な金融情勢が続いている中、十月五日には、日本銀行が金融緩和策によって、またより一層その金利を下げ、いわゆるゼロ金利状態が復活したわけでございますが、そのような状況のもと、会計管理局が行う資金管理におきましては、安全性を確保しつつ効率性も追求するという、非常に困難なそういった使命を果たさなければならない局でございます。
 そこで、今後の資金管理に対しましてどのように取り組んでいかれるか、局長のご決意を伺ってみたいと思います。

○新田会計管理局長 今後の都の資金管理への取り組みについてでございますが、委員ご指摘のとおり、公金の運用におきましては、資金を毀損することは絶対に許されず、金融環境が厳しさを増している中、資金管理におけるリスク管理の重要性は、これまで以上に増大しているものと認識しております。
 こうした状況を踏まえまして、当局といたしましては、資金管理における一層の安全性の確保に向け、専門家の知見を活用するなどの手法によりまして最新の金融情勢をより適切に把握しますとともに、他自治体の事例なども踏まえ、リスクを極力分散するための運用手法等につきましても、引き続き研究していく所存でございます。
 また、資金管理における効率性につきましては、ゼロ金利政策のもと、非常に厳しい命題ではございますが、安全性の確保を最優先にしながらも、金融機関相互における競争性を確保することなどによりまして、可能な限りこれを追求することで、当局としての使命を最大限果たしてまいりたいと考えております。

○斉藤(や)委員 会計管理局の行っている資金管理は、都にとって重要な業務であるにもかかわらず、その内容が金融という非常に専門的な分野に関することであるがゆえに、局の仕事ぶり、その努力の成果が、なかなか一般都民からは見えにくいという特徴があるのではないかと思います。
 本日は、会計管理局の資金管理に関しまして、その現状や局の取り組みについて幾つか質問を行いましたが、今ご決意を局長から伺いましたけれども、今後とも局においては、厳しい環境下ではございますけれども、地に足のついた資金管理を行っていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

○高木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高木委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時二十三分散会

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