財政委員会速記録第十一号

平成二十二年十月四日(月曜日)
第二委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十三名
委員長中屋 文孝君
副委員長原田  大君
副委員長たぞえ民夫君
理事鈴木 隆道君
理事上野 和彦君
理事西岡真一郎君
福士 敬子君
西沢けいた君
関口 太一君
斉藤やすひろ君
菅  東一君
中谷 祐二君
三宅 正彦君

 欠席委員 一名

 出席説明員
財務局局長安藤 立美君
経理部長藤原 正久君
契約調整担当部長奥田 信之君
主計部長長谷川 明君
調整担当部長関  雅広君
財産運用部長松本 泰之君
利活用調整担当部長岩瀬 和春君
建築保全部長金子 敏夫君
技術管理担当部長末菅 辰雄君
庁舎運営担当部長藤森 教悦君

本日の会議に付した事件
 財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十八号議案 味の素スタジアム(二十二)第一種陸上競技場化改修工事請負契約
・第百三十九号議案 都立羽村特別支援学校(二十二)増築及び改修工事請負契約
・第百四十号議案  都立練馬地区特別支援学校(仮称)(二十二)改築及び改修工事請負契約
・第百四十一号議案 東京国際フォーラム(二十二)ホール棟改修工事請負契約
・第百四十二号議案 東京都八丈支庁舎(二十二)改築工事請負契約
・第百四十三号議案 警視庁月島警察署庁舎(二十二)改築工事請負契約
・第百四十四号議案 警視庁有家族待機宿舎桜木住宅(二十二)改築工事請負契約
・第百四十五号議案 東京国際フォーラム(二十二)空調設備改修工事請負契約
・第百四十八号議案 土地の信託の変更について
・第百四十九号議案 建物の売払いについて
報告事項(質疑)
・「平成二十一年度東京都年次財務報告書」について

○中屋委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、財務局関係の付託議案の審査並びに報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第百三十八号議案から第百四十五号議案までの契約議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百三十八号議案から第百四十五号議案まで、第百四十八号議案及び第百四十九号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際、要求いたしました資料はお手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○藤原経理部長 先日の委員会におきまして要求をいただきました資料についてご説明申し上げます。
 要求がございました資料は一件でございます。
 恐れ入りますが、お手元に配布してございます要求資料第1号をごらんください。
 新宿モノリスビルの賃料収入、信託報酬及び信託配当の実績についてでございます。
 これは、平成二年度から平成二十一年度までの各年度ごとに、テナント等の賃料収入、受託銀行への信託報酬及び東京都への信託配当をそれぞれ表にまとめたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○中屋委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○関口委員 まず、私からは、今回、議案が付託されております信託の件について、いろいろと質疑をさせていただきたいと思います。
 まず、今、資料第1号にもありましたが、今回、この新宿モノリスに関して申し上げれば、当初予定をしておった配当、そして、その後の実績に極めて大きな乖離が生じておりますが、その要因、原因をどう局は見解として持っているのかお尋ねをします。

○岩瀬利活用調整担当部長 信託配当が当初の予想と比較して大幅に減額となっている主たる要因でございますが、当時、土地価格が一貫して上昇を続けておりまして、バブル経済の崩壊により収入源であるテナント賃料が大幅に下落していくことを想定し得なかった、こういったことにあったかと思います。

○関口委員 今、予想に比べて実績が乖離している要因として、バブル経済の崩壊という景気低迷が要因で、まさにそれは想定し得なかったということでございます。
 確かに、バブル経済の崩壊を予見することは難しかったと思われます。しかし、このように信託配当が予想に反して大きく下回っている状況の中、都として、局として、当然ながら、何か具体的な対策を講じなくてはなりません。バブル崩壊は想定外なので、配当が大幅に落ち込んでもしようがないというわけにはいきません。
 配当を計画に近づけていくために精いっぱい、局として、都として、やるべきことをやってきたのか。財務局として、受託銀行、受託者にどう働きかけをしてきたのかお尋ねをします。

○岩瀬利活用調整担当部長 信託配当の財源であるテナントの賃料収入の確保に当たりましては、これまで、受託銀行三行の持つ知識、経験を最大限に活用いたしまして、テナント誘致や賃料交渉等に鋭意努めてきております。
 都といたしましては、空き床の解消、適切な賃料設定、管理コストの適正化に向けた取り組みについて、それらを注視し、適宜報告を求めてまいりました。
 結果として専門家からは、不動産運営についても、西新宿のエリアのオフィスビルとして、空き室率、賃料設定ともに平均的なパフォーマンスを維持して推移してきておりまして、当初予定に比べて大幅に配当が減額したとはいえ、これまで健全な資産運営であったと評価をいただいております。

○関口委員 都が働きかけてきた具体的なこととして、空き室の解消であったり、適切な賃料設定、あるいは管理コストの適正化というようなご答弁がございました。
 都が得る信託配当は、賃料総収入から、受託者たる信託銀行の報酬であったり、あるいはビルの管理コストなどを差し引いた額であると契約上明記されております。
 例えば、先ほども触れられたビルの管理委託コストをどう見積もるかで、都が得る信託配当に影響が出るわけです。つまりは、都の収入となる信託配当が激減した中で、都がとり得る施策の一つは、いかにして管理コストを削減するかであります。
 新宿モノリスのこの間の収支を見てみますと、まず、入りの部分では、信託開始当初の平成四年には約七十四億円の信託配当であったのが、翌平成五年には約三十四億円と半分以下に激減しています。他方、この同時期、ビルの管理委託コストはどうであったかというと、六億五千万円だったのが、翌平成五年には七億七百万円と、減るどころか、逆に増加をしています。
 しかも、その後、都の収入たる信託配当は減り続けているにもかかわらず、管理コストはほぼ同水準で維持され、平成四年の六億五千万円を下回るのは、八年後の平成十二年まで待たなくてはなりません。この平成四年、五年、六年、このあたりが、信託配当ががくっと急減しているのは、まさにバブルの崩壊ということになるわけです。
 収入ががくっと減っているんだけれども、管理コストは変わっていない、逆にふえたりしている。平成十二年の都の収入たる信託配当、バブル崩壊になる前には約七十四億円だったのが、ようやく管理コストが下回ってきた平成十二年の収入は、都としては約十一億六千二百万円と、バブルが崩壊する以前と比べて、収入がおよそ八五%減少しているんですが、この間の管理コストは、わずか一%しか減少していない。
 収支を眺めて見る限り、都の入りたる信託配当が激減しているにもかかわらず、管理コストの削減交渉を怠ってきたのかといわざるを得ない。新宿モノリスは、いうまでもなく都民の資産でありますから、都民の資産である以上、最大限の利活用をするべく不断の努力が求められるのはいうまでもありません。
 ここで確認をさせていただきたいんですが、信託銀行との契約上、ビルの管理委託コストについては、財務局はコスト調査などの交渉権を有しているのでしょうか、ご確認します。

○岩瀬利活用調整担当部長 契約書第二十九条では、毎年、当該年度の事業実績報告及び翌年度の事業計画の報告を義務づけておりまして、その中で、きめ細かなヒアリング等を実施し、信託全般の収支計画を検証していく過程において、管理委託コストの動向などについてもチェックしております。
 また、第三十条におきまして、信託財産に関する調査及び監査を行うことができるとしておりまして、必要に応じ、緊急的工事の実施状況やOA機器等の更新計画など、資料もしくは報告を求めてチェックをしてきております。

○関口委員 今の答弁だと、つまりは、都は管理コストについて調査権を有していると理解するんですが、先ほど申し上げたバブルが崩壊する以前、崩壊してから平成十二年のこの時期に、管理コストを下げる交渉をどこまでこの調査権を持ってやったのかというのを疑問に感じるわけです。
 信託配当、つまりは都の収入が激減している中で管理コストが下がっていない点を、私はどう理解をすればいいのか、お答えください。

○岩瀬利活用調整担当部長 管理費についてでございますけれども、管理費につきましては、その時々の物価の変動ですとか、それから緊急工事への対応など、さまざまな要素が影響しているというふうに考えております。
 これまで私どもとして、そういった、今ご質問いただきました調査権の行使ということがありますけども、チェックをしてきておりますが、今後とも必要な報告等を受託銀行に求めてチェックを行うなど、管理コストの適正化に向けた取り組みを進めていきたいと考えております。

○関口委員 古い平成四年、五年の話ですから、資料が明確に明細が残っている、残っていないという話もあるでしょうけれども、何で都の収入が減っているのに管理コストは維持されているんだという疑問について、今のご答弁では、なかなか都民の理解は得られにくいと思いますね。
 そこで、このビルの管理について詳しく質疑をしていきたいんですけども、このモノリスビルの管理はどこの会社が請け負っているのかお尋ねします。

○岩瀬利活用調整担当部長 新宿モノリス株式会社でございます。

○関口委員 新宿モノリス株式会社ということでございますが、この新宿モノリス株式会社の社長、いわゆる代表取締役はどういう方で、この会社は設立二十年と聞いていますけれども、この二十年間、歴代社長はどういう方が務められたのかお尋ねします。

○岩瀬利活用調整担当部長 新宿モノリス株式会社の代表取締役につきましては、現職も含め、歴代六名が就任しております。いずれも都のOBでございます。

○関口委員 今、この新宿モノリス株式会社という、モノリスビルを管理運営する会社の代表取締役の方、六名、二十年間ずっと都のOBの方が務められているということでございました。
 過去二十年、まさに指定席のように社長のポストが都のOBというのは、いかがなものかと思うわけです。しかも、先ほど触れたように、管理コストを下げる交渉が徹底的になされたとは見えない中で、まさに、おざなりな交渉に終始していたんじゃないかと都民から疑念を持たれかねない。
 二十年間、管理会社の社長ポストが、いわゆる天下りの指定席だったという状況を財務局はどう認識し、どうとらえているのか、見解をお尋ねします。

○岩瀬利活用調整担当部長 管理会社は受託銀行の責任において設置されておりまして、受託銀行の指揮監督下にございます。
 財務局といたしましては、信託財産を適正に管理、保全し、信託業務に支障を来すことなく業務を遂行していく上で必要な人材が確保されているものと認識しております。

○関口委員 必要な人材が確保されているものという認識でございますが、社長がだれであれ、それはちゃんと仕事をしてくださっているのであれば、だれも文句はいわないと思うんですけれども、私が指摘をしているのは、信託の配当、つまり都の収入が激減、八割五分も減っているにもかかわらず、この間の管理コストの水準がほぼ同水準で維持しているということについて、その間の交渉がどうだったのかと、ちゃんとやっているのかと。
 局としては、ちゃんとやっていたという答弁でありますが、一般都民の感覚からすると、何だ、その会社の社長がずうっと都のOBだったら、交渉がおざなりになっていたんじゃないか、いいかげんになっていたんじゃないかと疑問を、疑念を持たれかねないということです。
 しかも、さらにお伺いしたいんですが、今回、信託契約が切れるのは新宿モノリスのみでありますが、都は、このほかに四件の土地信託を採用し、そのうち二件が財務局の所管であります。そして、それぞれにビル管理会社が存在しておりますが、それらの社長ポストも都のOBで占められているのか、その状況をお尋ねいたします。

○岩瀬利活用調整担当部長 両国シティコア及びコスモス青山の代表者は、いずれも都のOBでございます。

○関口委員 今ご答弁ございましたように、この信託財産、その財産、資産を管理運用している、ビルの管理をしている会社のモノリス以外のものも、社長は都のOBだということでございます。
 このように、この間、信託配当が計画を大きく下回っている状況の中、配当を少しでも計画に近づけるために、局としては、当然ながら管理コストを徹底的に見直さなくてはならないと思います。その際、都のOBが社長ということで、お手盛りの見直しだと指摘されないような交渉が求められており、この質疑後の管理コストの成り行きも、じっくり注視をしてまいりたいと思います。
 信託は都民の資産であって、局は最大限の利活用責務を有していると強く認識していただくと同時に、天下りと管理コストの関係に疑念を持たれないように、強い交渉を受託銀行側を含めてしていただきたいと強く願うわけでありますが、都の今後の対応についてお尋ねいたします。

○岩瀬利活用調整担当部長 管理費の話でございますけども、今後とも必要に応じて受託銀行に対し報告等を求め、私どもとしても、きちんとチェックを行って、可能な限り管理コストの抑制に努めていきたい、結果として配当を可能な限り大きくしていく、そういう取り組みをしたいと考えております。

○関口委員 次に、この信託、今回の議案は、五年間、さらに信託契約の更新をしたいということでございますが、その五年間更新という方針を局として決めるに当たって、その他の選択肢も当然いろいろと議論をされたと思います。
 例えば、都の収入をよりふやしていくという観点に立てば、信託契約ではなくて、例えば土地と建物の一括マスターリース契約なども検討課題に上ったと考えます。つまり、信託契約の際、現在は受託者である信託銀行が賃料収入の一千分の七を信託報酬として得ていますが、マスターリース契約にすることで、いわゆる中抜きをすることになり、この一千分の七分を差し引くことも可能で、都の収入に寄与するということになります。しかも、ビルの管理ノウハウは、この二十年で新宿モノリス株式会社がしっかりと蓄えているでしょうから、例えば、このモノリス株式会社を含めたところとマスターリース契約の話も進みやすかったんじゃないかと考えるわけです。
 そこで、今回の信託契約更新を局が決めるに当たって、財産利活用の徹底や、あるいは都の税外収入をふやすという観点に立って、今申し上げたマスターリース契約などをどう検証したのかお尋ねします。

○岩瀬利活用調整担当部長 マスターリースの方法を採用した場合、現行の信託契約と比較しまして報酬がアップすること、具体的には、現行の信託報酬が、今お話ありましたとおり、賃料収入の〇・七%、千分の七でございますけれども、これに対しましてマスターリース契約では、最低でも三%から五%という報酬を求められるということでございます。
 また、マスターリースの方法を採用する場合、都が直接商業ビルを所有することになりますので、テナントからの賃料収入並びに預かり金としての敷金、こういった資金管理の方法ですとか、それから事故時の対応、さらには商業ビル運営という民間との役割分担等、さまざまな課題が明らかになってございます。

○関口委員 今ご答弁いただきましたように、単に信託を更新するという議論でなくて、いろんな可能性を検証されたということでございます。それはいいことだと思います。
 しかも、今後数年の間に、今回モノリスでありますが、その他の信託物件も更新時期を迎えるわけです。その際に、私がまず必要であると考えるのは利活用、都民の資産をいかにむだなく利活用するのかという視点です。
 例えば、今後更新時期を迎える一つ、コスモス青山は、渋谷区神宮前の国連大学の裏の一等地にあります。しかしながら、ここも、信託配当の予定が極端にその実績が下回り、現段階で、見込み額一千四百五十億円に対し、わずか三億円の配当しか得られていないと聞いております。あり得ない見積もりの甘さだといわざるを得ませんが、一方、このコスモス青山には、都の政策に関連するワンダーサイトやウィメンズプラザが入居しておりまして、このコスモス青山全体を徹底的に利活用していくという視点に立てば、今申し上げた二つの施設をほかの場所に移したり、そして、全体で利活用することで都の収入を上げていくという視点、これも絶対に議論が必要であろうかと考えます。
 つまりは、今後、この信託物件の契約が切れるに当たって、次なる活用の議論をしていく際には、当該場所、そこの場所でしかこの行政サービスは提供できないのか、ほかの場所でも対応可能ではないのかという視点が必要不可欠であると考えます。
 例えば、青山の一等地でしか都民ニーズにこたえられないと、ここでは生文局と思いますが、所管局がそういうのであれば、財務局としては、だれもが納得できる説明を所管局に求める必要があると考えます。
 今後の契約更新の議論に当たって、利活用の視点が必要不可欠であると考えますが、局の見解を尋ねます。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリス以外の土地信託についてでございますけれども、お話のように、コスモス青山にはワンダーサイトですとかウィメンズプラザ、また両国シティコアですと都民住宅などが、それぞれ行政関連の施設として併存しておりまして、事業特性が異なっております。また、その立地についても、それぞれ地域性が異なっております。
 したがいまして、今後の信託終了後の検討に当たりましては、専門家の意見を聞くほか、こうした事業特性や地域性を踏まえまして、各事業を所管する関係局などとも十分に調整を図りながら、都として最も有利な利活用となるよう、個別に検討を進めてまいります。

○関口委員 今、ご答弁にございましたように、まず、今後の利活用あるいは信託物件の扱いについては、そこに行政サービスを担う各局、現場の局が入っているのであれば、そことの調整は必ずやっていただきたいというのと、先ほど申し上げましたように、そこでしかそれができないというのであれば、それが、なるほどなと、我々都議会議員も、なるほど、それはそこでしか無理だなと納得できるぐらいの理由を各局に、ぜひとも局は求めていただきたいと思いますし、また一方で、冒頭に触れたビル管理会社の都のOB状況と、いわゆる管理コストの関係等々については、まだ信託契約が続いていく物件もありますし、モノリスは更新ということも念頭に入れられているということでありますから、一般の都民が、我々が、その関係があるから管理コストが高いんじゃないかとか、そういう疑念を持たれかねない状況はぜひとも避けるよう、徹底してコスト交渉をしてもらうように強く要望いたしまして、私の質疑は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

○菅委員 それでは、私の方からも、土地信託、新宿モノリスについて伺います。
 昭和六十一年の地方自治法改正によりまして、自治体が行う土地信託の手法が制度化されたと、こういうことであります。当時は、バブル経済の中、不動産価格が著しく高騰し、都として地価高騰への対策が最優先課題となっておりました。一方で、淀橋浄水場跡地などの大規模な都有地の活用も課題となっていました。こうした中で、地価高騰の要因とならない都有地の有効活用策として、この土地信託手法が用いられたわけであります。都は、都有地を信託銀行に信託し、そこに建物を建てさせ、管理運用させるというやり方であります。
 その第一号である新宿モノリスビルが、本年十一月に二十年間の契約満了を迎えるに至りました。このまま契約を満了させれば、予定どおり、信託した土地が都に返還されるとともに、都の負担なしに建築された建物も都に引き継がれる、こういうことになるんだと思います。
 貴重な都民の財産であるこの新宿モノリスの土地、建物を今後どのように活用していくのがいいのか、その答えとして出されたのが、信託期間の五年間延長という今回の提案であります。現下の厳しい不動産市況の中で、一等地にある新宿モノリスであっても、決して楽な経営状況ではないというように思います。我々、不動産の世界というのは、なかなか素人ではわからない部分も非常に多いのだろうと、こういうふうに思います。
 新宿モノリスについて、今回、不動産鑑定士、弁護士、市場調査会社あるいは建築士、証券会社などの専門家による総括と検証を行ったということでありますが、それらの専門家からモノリスについて出された総括、検証の結果について、幾つか質問をさせていただきます。
 まず初めに、西新宿の地域には多くの高層ビルがあり、モノリスと競合しておりますが、基本となる不動産経営についてどのような評価であったのかお尋ねをいたします。

○岩瀬利活用調整担当部長 まず、答弁を申し上げます前段といたしまして、評価を行った専門家についてでございますが、単なる不動産の管理というだけでなく、信託事業の運営全般、例えばテナント誘致や賃料設定、将来の改修計画、不動産としての管理方法等、幅広い部分の検証を行う必要があったことから、さまざまな分野の専門家に意見を求めたところでございます。
 また、検証に当たりましては、公平公正の観点から、受託銀行や管理会社とは別の第三者の立場にある専門家から客観的な意見をもらうことといたしました。
 その上での評価でございますが、お話のように、西新宿エリアには多くの高層ビルがございまして、激しいテナント誘致競争が恒常的に行われております。中でも超高層ビルは、そこに入居することで企業のステータスが高まると感じるテナントもおりまして、人気が高くなっております。
 そうした中で、モノリスの不動産運営については、これまで入居率はおおむね九〇%以上を維持するなど、賃料設定とともに、新宿エリアのオフィスビルとして平均的なパフォーマンスを維持して推移しているとの評価をいただきました。

○菅委員 私も、西新宿の地域においてテナントの引っ張り合いになっている、こういうことは承知をいたしております。そうした不動産状況が厳しい中にあっても、モノリスはよく健闘しているのではないかな、こんなふうに思います。
 次に、建物、設備についてお尋ねをします。
 不動産信託は、その商品でもある建物の価値が重要であると、こう認識しております。モノリスは建築から二十年が経過しておりますが、建物、設備の状況についての評価はどうであったのか、この点について伺います。

○岩瀬利活用調整担当部長 ただいまご質問の建物、設備の状況についてでございますが、モノリスビルは西新宿という一等地にございまして、立地の面では申し分のないところでございますが、それだけに、お話のように、建物、設備の条件は、賃料収入をどれだけ高く取れるかという点で大変重要な要素になってございます。そのため、建物、設備面について、やはり受託銀行や管理会社とは別の第三者の立場にある建築士などから客観的な意見をもらうこととし、検証を行ってまいりました。
 その報告によれば、建物面、設備面ともに適宜修繕を実施しており、おおむね良好な状態であるとの評価を受けました。
 また、OA化への対応もしてきており、西新宿エリアの他のビルと遜色ないというふうに聞いております。

○菅委員 建物というのは、手入れを怠りますと、すぐ老朽化して、その価値を失ってしまう。信託においても、管理コストの縮減努力、これはぜひ必要でありますが、修繕などを怠りますと、結果として信託財産そのものを損ないかねない、こういうふうに思います。
 モノリスビルがオフィスビルとして適切に管理運営されてきた背景には、受託銀行のほか、実際に信託ビルの管理を担っている会社やその社員の方々の大変な努力があったものと私は考えておりますし、そうしたことを高く評価したい、こういうふうに思います。
 五年間の信託延長をすれば、当然、建物も二十年を過ぎてくるわけですから、これまで以上にきちんとした建物、設備の修繕を行っていってもらいたい、こういうふうに期待をいたしております。
 一方で、都への信託配当は、当初予想に比較して厳しいものになったと。先ほど資料にありましたけれども、この点、専門家の評価はどうであったのかお尋ねをいたします。

○岩瀬利活用調整担当部長 当初、配当は二千四百十六億円と予想いたしました。その背景には、地価は、オイルショック直後に一度下がったことを除けば、一貫して上昇し続けており、いわゆる土地神話があったことが挙げられます。
 そのため、モノリスビルにおいて、当初、賃料は二年ごとに七・六%ずつ上昇すると見込んでおりました。これに対しまして、実際には、土地価格の急激な下落という要因によりまして、配当は予想に比べ大幅に減額し、五百三十三億円にとどまることとなりました。
 しかし、この配当の累計五百三十三億円でございますけれども、厳しい経済状況の中にありまして、都として、受託銀行と連携して安定した収入を確保する努力を重ねてきた成果であると考えられます。
 また、建設資金等の借入金は既に完済し、修繕積立金等、一定の内部留保資金を確保しております。
 こうしたことを総合的に見まして、専門家からも健全な資産運営であったとの評価をいただいております。

○菅委員 今、ご答弁にもありましたように、バブル経済の崩壊後、厳しい経済状況であったわけですが、モノリスとしては、厳しい中にあっても大変善戦してきたと、こういうふうに思います。五百三十三億円という額について、それだけ都財政にも貢献してきたことは私は評価したい、こういうふうに思います。全国的に見ても、他の自治体でこれだけの実績を出した土地信託の事例は、私は知りません。
 一方、信託期間満了後の対応ということでは、売却という選択肢も挙げる人もおりますけれども、これだけ有効活用されているものを軽々に売却することのないように私はしてもらいたい、こう思います。貴重な都有財産であるのに、仮にこうした不動産市況の中で売るとすれば、買いたたかれることは明らかであり、売るという選択肢はあり得ない、こういうふうに思っております。
 モノリスビルが関係者の努力によって健全な形で信託事業として運営されている中で、今回、五年間信託契約を延長していくという考え方が出されたものであり、私は、こうした都の対応は十分理解をするものであります。
 都有地の有効な利活用策の一つとして、受託銀行、管理会社を含め、関係者が一丸となって、引き続き適正な運用に努めていただきたい、こう思います。
 今後、両国シティコアを初め、順次信託事業が満了を迎えるということになります。そこでお尋ねをいたしますが、期間満了を迎える信託事業について、どのように対策を検討していくのか。
 また、平成二十四年七月に信託期間満了となる両国シティコアについて、どのようなスケジュールで検討していくのか、この辺についてもお尋ねします。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリス以外の土地信託につきましては、住宅や病院、都施設なども併存し、信託物件の事業特性や地域性が異なることから、専門家の意見を聞くのはもとより、関係者とも十分に調整を図りながら、個別に信託期間終了後の取り扱いについて検討を進めてまいります。その際、当然のことながら、現在の信託事業において可能な限り収益を確保していく努力を、引き続き受託銀行と連携して取り組んでまいります。
 平成二十四年七月に信託の満了を迎える両国シティコアにつきましては、都民住宅のほか、スポーツ施設、劇場もございまして、さまざまな観点から総括、検証していく考えでございます。現在、専門家による検証を始めたところでございまして、本年度末を目途に満了後の方向性について取りまとめていきたい、このように考えてございます。

○菅委員 今後、期間満了を迎えてくる信託事業についても、今回のモノリスと同じように、それぞれ専門家の意見も聞きながら、きちんと総括、検証を行い、きちんと出口対策を検討してもらうように要望しておきたい、こういうふうに思います。
 申し上げるまでもなく、都有財産は都民の貴重な財産であり、都政運営を適切に推進していくための資産であります。今回の定例会には、一方で、旧池袋商業高校の売却についての議案が提出されております。財産の所在地は北区滝野川というふうになっておりますが、その敷地の一部には、私の地元である板橋区の土地も含まれております。
 このたびの売却については、フランス政府からの強い要請によって、在日フランス人学校として活用されるということであり、現在のフランス人学校が二つに分かれていて、かつ手狭となった、こういうために、この広い敷地を活用して新しい学校をつくるということであります。このことは、新宿モノリスと同様、財産の有効活用が十分図られていると、こういうふうに理解をしております。
 また、売却については、都からも地元区に対して説明を行っており、またフランス大使館も、地元区とも、あるいはまた地元町会にも説明を行っていると、こういうふうに聞いております。地元の理解も進んでいることだろうと、こういうふうに思いますし、今後の学校側と地元の交流も、地元の一人としては非常に楽しみにしているところでありますし、着実に推進をしていただきたいと、こういうふうに思います。
 なお、今後の財産の有効活用についてでありますが、この十数年の間に、財産活用について、事業用定期借地権制度や行政財産の貸し付けなど、さまざまな手法が整備されてきております。それらの活用も含めて、引き続き都有財産の最大限の有効活用を図り、都政運営の一層の推進につなげていただきたい、このことを要望して、私の質問を終わります。

○斉藤委員 今回、土地信託の継続と建物の売却に関する議案が合わせて提案、提出されているわけでございますが、私の方からは都有財産の有効活用万般を、ちょっと俯瞰するような部分もございますが、何点かお伺いしたいと思います。
 都有財産の有効活用をめぐりましては、今回の第三回定例会での各党の代表質問あるいは一般質問の中でも、その土地の重要性等を指摘して、それを、各利用についてかなりいろんな提案がされていたというふうに考えます。
 先日、二十三区の特別区長会のご要望も伺う機会がございましたが、例えば特別養護老人ホームは各地域では絶対的に不足しているという指摘の中で、ネックになっているのが非常に高い土地であると。そういった観点から、都有地を安く地元に提供していただけないかという、そういう各区長の訴えもあって、上がっているわけでございます。
 第一回定例会で、当委員会におきましても、私、施策実現のための財産利活用につきましてお伺いをしたわけでございます。そのやりとりの中で、財務局長からは、保有財産に対する施策方針について、売却を含めた財源確保から、保持したままでの有効活用に転換をしていくという、東京都の施策の連動や貢献を進めていくことに軸足を移していると。そのため、今後、一層都有地の有効活用を進めていくという、そういうご答弁をいただいております。
 そのような利活用の基本的な考え方を展開する中で、都財務局は、〇四年に閉校になった旧都立池袋商業高等学校の建物、土地を、今般、フランス政府に売却する議案を定例会に提出しております。
 特定の外国政府に都有地を売却するのは、私の聞いているところでは初めてではないかと思います。仄聞しております。
 そこで、まず伺いますが、今回の売却は、単なる財源確保という観点の売却ではないとは思っておりますけれども、確認のため、あえて売却に至った経緯、またはその理由についてお伺いしたいと思います。

○松本財産運用部長 旧池袋商業高校の跡地につきましては、フランス政府からの強い購入希望があり、日仏友好関係への配慮をすべきこと、在日フランス人子弟の教育充実という公益性のある、公共性のある事業目的であることなどから、フランス政府に対し売却を行うものであり、このことは地元区も歓迎をしてございます。したがいまして、本件売却については、単なる財源確保を目的としたものではございません。
 今後とも、都施策を推進するための財産利活用に軸足を置き、個々具体的なケースに即しまして都有財産の一層の有効活用を進めてまいります。

○斉藤委員 今回の売却は、相手方のフランス政府からの強い取得の要望があった。また、用途も教育関連で、公共の福祉にもプラスになっていくと。地元からの非常にそういう要望、お気持ちも聴取してきたと。したがって、単なる歳入確保のための手段ではなく、広い意味での利活用の一環であるというふうに、今のご答弁を聞いて理解をいたしたところであります。
 財産の利活用という観点から見ますと、今回議案が提出されている土地信託も、都有地の有効活用の仕組みの一つであると理解しているものでございます。
 今回、新宿モノリスの信託期間満了後の取り扱いにつきましては、専門家の意見を踏まえて都としての結論を出されたところだと思いますが、不動産の運営にかかわる事案であり、こうした専門家の意見を十分に聞きながら検討を重ねて結論を出してきたご努力につきましては評価したいと考えています。
 こうした都の実績を踏まえた上で、今後のこのモノリス以外の土地信託についてもきちんと総括、検証して、信託期間終了後の対応策を検討してもらいたいと思います。
 特に、モノリスに続いて信託期間の満了を迎える両国シティコアでございますけれども、商業ビルのほか都民住宅も併設されておりまして、居住者の生活も考慮して、より一層慎重な検討を行っていく必要があると考えています。
 したがって、両国シティコアを初め、今後の公共施設を併用するタイプの信託の、いわゆる出口戦略の検討には、専門家による検証チームの充実した検討はもとより、その公共施設を所管する各部局との密接な連携、さらには地元との協議、調整など、専門的、多角的な見地から検討していく体制がより必要になると考えますが、財務局の見解をお伺いしたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリス以外の土地信託につきましては、各信託物件の事業特性や地域性がそれぞれ異なることから、専門家の意見を聞くことはもとより、関係者とも十分に調整を図りながら、個別に信託期間終了後の取り扱いについて検討を進めてまいります。
 とりわけ両国シティコアにつきましては、ご指摘のとおり、商業ビルのほか都民住宅等も併設されていることから、関係局や地元区とも連携して、都民住宅入居者の居住の安定も含め、さまざまな観点から事業全体として総括、検証し、具体的な出口策について検討を進めてまいります。

○斉藤委員 地元区ともよく連携をするというご答弁をいただきました。
 両国シティコアについていえば、貴重な都民財産の利活用という側面だけではなく、都民住宅を初め、直接都民生活にかかわる事業でもあることから、今ご答弁ありましたように、さまざまな観点から事業全体として総括、検証し、慎重に信託期間の満了後の対策を検討していってもらうよう、重ねて要望しておきます。
 ところで、池袋商業高等学校の跡地や土地信託の用地のような非常に大規模な未利用地ではない、比較的小規模な敷地でありましても、施策への有効な支援に結びつけることは必要であると思います。
 そこでお伺いしますけども、未利用地の具体的な状況、どんな状況になっているのかをお伺いしたいと思います。

○松本財産運用部長 平成二十一年十二月現在で、未利用地は全部で三百四十九件ございまして、住宅展示場や消防訓練場などの大きなものから、自動販売機設置などの小さなものまで、暫定的に利活用しているものが百二十一件でございます。この間、既に各局での活用に供したものや売却済みとなったものが十八件ございますが、それ以外のもので、区市町村などと活用策を調整中であったり、売却や貸し付けに向け、隣接地主等と調整中のものなどが二百十件ございます。
 面積別に見ますと、未利用の都有地のうち、五百平米以上については、百三十五件中、暫定活用中のものが六十件でございます。一方で、五百平米未満を見ますと、二百十四件中、暫定活用中のものは六十一件で、そのうち百平米未満の土地に限って申し上げますと、百五件中、暫定活用のものは二十五件となってございます。

○斉藤委員 数字だけを今お伺いしても、余りぱっとわからない部分もあるかもしれませんが、ざっと大づかみで考えますと、小さい土地で非常に活用が難しい土地が、やはり暫定活用が少ないというふうにも思いますし、規模の大小にかかわらず、立地条件とか、さまざまなものが背景にあるんだというふうに思います。
 自動販売機など小さなものには、そういうものもあると伺いましたが、これは決して単純な自動販売機の設置ではなくて、例えば緑化対策とか環境に資するような政策的な観点からの配慮が当然あるというふうに認識して今お伺いをしておりました。
 今お話があった暫定活用の状況ですけども、施策連動で積極的に活用しているものもあれば、一方で、今お話があったような狭小地、極めて小さい土地、これは、自分も幾つかまちを歩いていて、そういったものを目にすることもございます。ちょっとした花壇になるぐらいの小さなものもあったり、さまざまでございますし、また高級住宅地の真ん中に本当に都有地があったりすることもございますし、接する道路が非常に狭いなというところに都有地みたいなものがあったりします。
 その場所柄、隣接者との関係を考えますと、隣接している方々や他の活用希望者への売却や、あるいは、場合によっては貸し付けによって、少しでも収益を得た方がよいなと思うような土地も見受けられるわけでございます。いろんな角度が、この都有財産をめぐってはいろんな関心が持たれているわけでございますが、民間に売却すれば、これは当然、課税所得の対象にもなるわけですから、そのままいたずらに寝かせておくということのままではいかぬと。何とか活用していくんだと、そういうことが大事だと思っております。
 そうしたものは、売却や貸し付けが可能な状況になったものから、今でも行っていると思いますけども、引き続き積極的な情報の公開とか入札などを進めていっていただきたいと思うわけでございます。
 しかし、やはり一定程度の規模のある未利用地や、小規模であっても施策に有効に使えそうな状況の未利用地につきましては、その規模や地域の状況、社会的なニーズなど、さまざまな要素を勘案して、最大限の活用を都として図っていく必要があると思います。
 これらの土地につきましては、現在でも、福祉インフラ整備などでも都有地活用などを進めていると思いますけども、今後、今、喫緊の課題となっていますが、福祉部局と住宅部局の連携施策、こういった連携のモデル事業に供するとか、あるいは、ことしは生物多様性年ですけれども、間もなく国際会議も名古屋で始まりますが、こういった環境、生物多様性とかいろいろありますけども、特にそういったものに配慮したまちづくりを目指しているところにそういうものを供していくとか、あるいは本会議でも代表質問でもございましたけども、耐震化促進、こういったものにも利用ができます。あるいは産業振興など、さまざまな施策推進を図っていくために、関係する局と十分な連携を図るとともに、多様な手法を駆使して、この土地の有効活用を進めていくことが大事ではないかと考えております。
 各局の施策を積極的に支援していくという重要な責務を財務局は負っていると考えますけれども、最後に、各局支援という点でも、財務局はどうお考えになっているかということをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

○松本財産運用部長 都有財産は、都民から負託された貴重な財産でございまして、その価値を最大限に発揮していくことが求められております。
 そのため、都政の喫緊の課題等、都政運営上、重要な各種施策を推進するために有効活用を図ることは当然のこと、当面利用予定のない財産につきましても積極的に暫定活用していくことが必要であり、その実施に当たりましては、可能な限り都施策の推進に寄与するよう取り組んでいくことが重要でございます。
 都では、例えば暫定活用につきましては、これまでにも、緑化条件つきの事業用定期借地や自動販売機の設置、環境配慮型の住宅展示場への貸し付け、福祉インフラ整備、私学の耐震改修等の支援などの取り組みを行っておりまして、都施策の推進に向け、着実に支援を行っているところでございます。
 今後とも、各局と密接に連携しながら、全庁的な視点に立って財産の総合調整を図り、本格活用から暫定活用に至るまで、都有財産のより一層の利活用を推進してまいります。

○たぞえ委員 初めに、土地の信託の変更について伺いたいと思います。
 都民の貴重な財産である都有地についていえば、都営住宅や保育園、高校、さらには都民が気楽に利用できる文化スポーツ施設、都民の相談に応ずる行政施設など、都民の生活向上に役立つものとして安定的に活用することが求められていると思います。
 ところが、東京都は、二十年前、バブル経済期の右肩上がりの時期に、全国の自治体で初めて都有地の民間信託に乗り出し、その第一号が新宿モノリスでした。その後、新宿モノリスに続いて、都内で四カ所の都有地を民間銀行に信託したわけです。
 そもそも土地信託は、土地の所有者である東京都が信託銀行に土地を預け、建物の建設や資金調達、賃料をゆだねるかわりに、収益の一部を信託配当として都に還元してもらう。つまり都有地でもうけることを目的にするものです。主にビジネスビルとして利用しないと、もうからない。景気の動向によっては不安定だということが常につきまとうわけです。
 そのため、この二十年間、新宿などの一等地でさえなかなかうまくいかない。そのほかのところに至っては、惨たんたる状況になっていると指摘されています。このため、東京都の機関をわざわざ賃貸料を払って入居させるなどということまでもやってきました。
 今回議案になっている新宿モノリスは、当時の安田信託銀行、三菱信託銀行、住友信託銀行の三行が共同受託して、都有地に地上三十階建て、延べ床面積九万平方メートルのオフィスビルを一九九〇年に完成させ、二十年後の契約満了時に土地と建物の所有権を都に移転させるという約束でした。
 大体、都民のために活用すべき都有地をオフィスビルとして利用すること自体、あってはならないというふうに思います。
 当時の都議会第四回定例会の会議録を読みますと、自民党は本会議で、民間活力活用の一形態であり、今後この制度をいかなる都有地に適用していくか、また、二十年後に信託財産が都に返還された後のことも予測しておく必要があると、このように指摘をして、公明党とともにこの議案に賛成しました。
 貴重な都有地は都民のために活用をと、問題をただして、私ども日本共産党は議案に反対をしました。
 今、必要なのは、惨たんたる状況を踏まえて、都有地を土地信託に出すことの是非を含めて、この間の全面的な総括を行い、処理をしていくべきではないか。
 なぜ東京都は、二十年が経過した土地信託の第一号である新宿モノリスの契約を五年間延長させ、問題解決の先送りをしようとしたのか、いかがでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 新宿モノリスについてですけども、都として、この間、専門家の意見を聞いて、事業分析を行ってまいりました。その結果といたしまして、本件信託は健全な資産運用であると考えておりまして、専門家からも同様の評価を得ているわけでございます。
 こうしたことを踏まえて信託終了後における対応策を具体的に検討し、その結果として五年間信託を延長するということを結論として出したわけでございまして、これが現時点における都にとって最も有効な選択肢であると判断しております。
 したがいまして、問題解決の先送りとの指摘は当たらないと考えております。

○たぞえ委員 土地信託の現実は、相当深刻だと思います。全国的にも土地信託方式が苦戦して、破綻をしているというケースが地方でも見られる中で、今回の配当の実績にしても、健全な資産運用だったという状況にないわけだからこそ、マスコミや専門誌から、今後のあり方に課題が残されたと指摘されているんじゃないでしょうか。
 ですから、私は、全面的な総括は、この二十年経過した時点で、相当いろんな角度から深める必要があると思います。
 このモノリスビル事業から東京都が二十年間に受け取る信託配当ですが、予想配当と実績見込みを示していただきたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 平成二十二年までの二十年間の予想配当は、二千四百十六億円でございます。これに対しまして、平成二十一年度までの実績は、累計で五百三十三億円でございまして、実績は予想の約二二%でございます。

○たぞえ委員 累計でも、当初二千四百十六億円を見込んでいたのに五百三十三億円、二割程度にすぎないわけです。
 東京都が受け取る信託配当料は、きょう提出の委員会資料でも明らかなように、平成三年度には入居率九九%で八十七億九千五百万円、平成八年度、入居率一〇〇%で二十一億九千百万円、二十一年度では九〇%で十四億六百万円。当初、最高時で八十八億円であったものが、ここ十年は十億円台にラインを下げ続けています。
 都は、このような信託配当が予想を大幅に下回ったことに、専門家による総括の検証で、健全な資産運用であり、継続的な安定した収入を確保してきた、こういうふうに述べていましたし、先日の本会議の質問の答弁でも、継続的に確保したと、こういっていますが、これはとんでもないことだと思います。これほど配当が下がっているにもかかわらず、これで継続的に安定した収入を確保できたということがいえるのでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 信託配当につきましては、当初予想に比べまして大幅に減額したとはいえ、これまで累計で五百三十三億円を確保してきたわけでございます。継続的に安定した収入を確保して、都財政に貢献できたと考えてございます。

○たぞえ委員 二割程度の配当で、なぜそれが健全な収入だといえますか。配当予測に対して九割とか八割ならば、それなりのところまで来たというふうにいえますけれども、二割でなぜ健全な資産運用、安定した収入を確保できたと。もし仮にこれが二割台から一割台だったとしたら、どういう評価を下すのか。これは大変、局の立場というのは、微妙な立場に立つんじゃないでしょうか。
 東京都は、契約に当たって、土地信託から生じる信託配当を大規模施設の建設に伴う所要経費に充当して健全財政の確保に資する、二十年前の会議録を読みますと、このように答弁しているんです。
 この土地からの配当は、非常に今、不安定です。本来の行政としての目的に沿った活用にした方が、用地費の経費もかからないし、財政的にもよかったんじゃないでしょうか、いかがですか。

○岩瀬利活用調整担当部長 当該土地は、当時の社会情勢を踏まえまして、地価高騰の要因とならないこの土地信託方式を採用することによって、都民の貴重な財産である都有地の有効活用を図ろうとしたものでございます。民間の知識、経験を利用し、財源負担を伴わないで土地の有効活用をするということなど、所期の目的は達成することができたと考えております。

○たぞえ委員 信託配当については社会資本整備基金に積み立てているということだと思うんですけれども、それは当然です。しかし、この社会資本整備基金は、都有地でない、都有財産でないビルに使われるという定義はないことは事実ですので、これはちょっとつけ加えて申し上げたいと思います。
 今、石原都政のもとで都市再生が進められ、大規模な最新鋭のビルが次々つくられております。一体、これに、このモノリスビルが太刀打ちできるのか。都の施策で、これではますます他の民間ビルとの競合で、維持管理すること自身、非常に困難なことになるのではないかと思いますが、見解を伺いたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリスビルは建設から二十年がたつわけですけれども、建物、設備につきましては、これまで適宜修繕を実施してきておりまして、状況は良好であると専門家からも意見をいただいております。
 今後も、西新宿地域において、商業ビルとして賃料収入を安定的に得ることが可能であると考えております。

○たぞえ委員 モノリスは有効だというふうにおっしゃいましたが、では、ほかの四つの土地信託はどうか。予想配当と配当実績を示していただきたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリス以外の四つの土地信託の配当についてでございますが、両国シティコアは、予想配当が約八十三億円、実績が約六億円、七・七%です。東京都健康プラザ「ハイジア」は、予想配当が約千六百八十一億円、実績が九億円、〇・六%でございます。コスモス青山は、予想配当が約一千四百五十億円、実績が約三億円、〇・二%でございます。勝どきサンスクエアは、予想配当は約二十九億円、実績が約二億円となっております。パーセンテージで五・九%でございます。

○たぞえ委員 今いわれましたように、両国のシティコア計画は七・二%、勝どきサンスクエアは六・九、健康プラザは〇・五、コスモス青山は〇・二と、惨たんたる状態です。財産収入はがた落ち、これが共通した実態です。
 この信託制度を利用すれば、自治体は財源負担を伴わないで有効な土地活用を行うことができる、こんな夢のようなスキームを想定できたのは、土地神話が前提にあったからです。しかし、地価の高騰を防ぐ目的としていたのに、土地神話の崩壊によって、自治体にしても金融機関にしても、土地信託のメリットは失われていまして、制度的には破綻をした、このように考えますが、どう認識されておりますか。

○岩瀬利活用調整担当部長 土地信託制度が導入されました当時、地価が高騰する中で、その要因とならない都有地の有効活用、民間の知識、経験を利用した財源負担を伴わない土地活用など、所期の目的は達成してきており、その点については評価できるものと考えております。
 平成十五年には、西新宿地区において新たに公有地信託が実施され、成立している実例も見られます。
 土地信託制度には、信託期間満了後、当該土地、建物が確実に返還されること、財源負担を伴わないで民間の知識、経験を利用して有効な土地利用が可能であることなどのメリットが現時点においても認められ、有効な都有地活用の選択肢の一つであると考えております。

○たぞえ委員 所期の目標は達成したといわれても、土地を信託銀行に預け、建物の建設や資金調達、配当の還元があったのは、それは事実です。問題は配当等の中身で、そこが今回の問題の核心になっているのではないでしょうか。
 モノリス以外の四件についても、来年から二〇一六年にかけて次々に契約満期を迎え、そのモノリス自身も二〇一五年には延長契期が切れるわけです。両国の終了は一二年七月、健康プラザは一三年六月、コスモス青山は一五年九月、勝どきは一六年二月ですが、それぞれの建設費の借入金の残は、今、どの程度の状況でしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 借入金の残高についてでございますが、各信託の経営状況報告によりますと、平成二十一年度末の借入金残高は、両国シティコアは四十七億円、東京都健康プラザ「ハイジア」は六十七億円、コスモス青山は五十七億円でございます。なお、勝どきサンスクエアは返済済みとなってございます。

○たぞえ委員 既に完済しているモノリスのほか、一カ所を除いて、今の時点で完済できる見込みは、この終了期間までにあるのでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 信託期間満了後のモノリス以外の信託事業の取り扱いの検討についてでございますが、信託としての債権、債務のほか、建物の資産評価等も含め、専門家の意見を聞いて信託財産の評価を正確に行い、把握する必要があると考えております。
 その上で、信託物件の事業特性や地域性が異なることから、それぞれの信託事業ごとに総括、検証を行って、個別の信託期間終了後の取り扱いについて検討してまいります。

○たぞえ委員 結局、土地信託による施設の多くは、信託期間の終了時に、借入金の残存債務、敷金の返済債務など、これらが東京都に引き継がれる、こういう都にリスクが生まれることも危惧されます。今、金額をいわれましたけども、賃料収入から見れば過大な残務が残っている。結局、都がこれを背負うことになるということもいわざるを得ません。
 一時的なバブルに踊って不動産事業に手を出して、これでは失敗した臨海副都心と同じ構図ではないでしょうか。これでは、進むも地獄、退くも地獄と、このように指摘されているのも当然だと思います。
 そこで具体的に聞きますが、五年間の延長の手続です。二十年の経過を経て信託の終了を前にして、局は、土地信託方式の手法やマネジメントのあり方を検討したといっていますが、どのような内容だったのでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 専門家の意見を踏まえまして、信託を継続した場合、都が所有し商業ビルとして賃貸を継続する場合、自己使用する場合、売却処分する場合について、具体的に検討してまいりました。

○たぞえ委員 その議論を行う構成メンバーはだれですか。

○岩瀬利活用調整担当部長 不動産鑑定士、弁護士、市場調査会社、建築士、証券会社などでございます。

○たぞえ委員 これらのメンバーである、今いわれた不動産鑑定士や弁護士等々の専門家チームを立ち上げたのはいつですか。

○岩瀬利活用調整担当部長 昨年の十二月でございます。

○たぞえ委員 三つの信託銀行と東京都が、新宿副都心三号地の二、現在の新宿モノリスの地で土地の信託契約を締結した際の文書が土地信託契約書という文書であります。
 この文書の第三十四条で、甲及び乙は、信託期間満了の日の三年前から契約の更新または信託財産の返還方法について協議を行うものとすると、このように条項で定めているわけですね。
 専門家による検討に入ったのは、今、答弁あったように、今から約一年前です。明らかに条項の三年前からという規定があるのに、ずるずる直前まで延ばしてきた、そういうことではありませんか。それが今いわれた答弁の事実だと思うんです。
 真剣に総括して、検討案を都民に明らかにする、そういうことを実行してこなかったこと自身に、この契約に定めている期間をずるずる延ばしてくる、まさに東京都の失政だと思いますが、見解を伺いたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 専門家による検討を開始いたしましたのは、先ほどご答弁申し上げたとおり、昨年の十二月からでございますが、それ以前から、当然のことながら、受託行との意見交換ですとか内部検討は行ってきております。
 今回の検討結果は、専門家の意見を聞いて総括、検証を行い、その上で対応策の検討をきちんと行ってきたものでございまして、結果として五年間の延長という結論を得たものでございます。お話のような東京都の失政ということには当たらないと考えております。

○たぞえ委員 受託銀行との意見交換や内部検討をされても、契約書で明記している公式な契約の更新についてではないというふうに思います。仮にも公式だと述べられても、検討の機会であって、協議ではないと。このことを私は今、答弁でも感ずるわけです。
 土地信託契約書の第三条で、施行日の翌日から二十年間の信託期間と、このように期間を定めていますが、今回五年延長したそのものの理由とは何でしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 現在の信託を継続していくことにより、安定した収入の確保が可能であること、仮に五年の満了前であっても、財政状況や事業環境の変化にも的確に対応できるよう、適時適切な利活用策への転換が可能であることなどのメリットが挙げられます。
 こうしたことを踏まえて、当面キャッシュ・フローを享受しながら適切な運用に努め、変化する不動産市況もにらみながら、数年後に改めて出口戦略を検討することが、現時点における都にとって最も有効な選択肢であると判断いたしました。

○たぞえ委員 結局、数年後に改めて出口戦略を検討すると今述べられましたが、問題解決を五年先送りしたと、このようにいわざるを得ません。しかも、有効な選択肢と今、力んでいいましたが、先送りした事実は消せないんです。その場しのぎにすぎない、こういうふうにいわざるを得ません。
 今後、五年以内にはモノリスの大規模改修が行われる予定になっています。〇九年度の資料によりますと、年間の賃貸収入は三十八億百万円に対して、信託報酬と信託配当を合わせた十四億三千三百万円を除いた経費が、いわゆる修繕、管理費や税金、二十三億六千八百万円として支出されます。〇九年だけでもこのように経費がかかっているわけで、今後も賃料の目減りが与える影響が想定される中で、大規模改修の経費の見込みや支払いをどう確保していくのか。五年間の延長策でしのぐというのはどういう根拠なのか、どうそれを考えていらっしゃるのでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 五年間の信託延長につきましては、専門家の意見も踏まえて、ビル運営上必要な経費等を考慮して検討した上で、安定した収入の確保が可能であり、都にとって最も有効な選択肢であると考えております。
 なお、今後予想される大規模改修工事や不測の事態に対応するため、修繕積立金の積み立てを適切に行ってきております。

○たぞえ委員 モノリスはそれだけの修繕積立金を持っているでしょうが、ほかの四つが、果たしてそういう時期を迎えて適切な修繕費で対応できるのかどうか、それは今後の大きな議論の的になるというふうに思います。
 いずれにしても、テナントの入居率がモノリスの場合はよくても、テナントの賃貸料が上がらないどころか、二十年近くにわたって下がり続けている。だからこそ、三つの信託銀行が協議を行って、三菱と住友は、信託では利益が上がらないとして、結局、撤退の選択をせざるを得なかったんです。
 そもそもバブル経済が崩壊したもとでテナント料の収入の減少や配当の減少という中で、五年の延長と相まって、他の土地信託の状況から考えれば、新たな都財政の持ち出しも想定されます。
 こういう状況のもとで、今回、その第一号となるモノリスの期間延長は、他の四つの土地信託への大きな影響を与えかねないと思います。
 同時に、今、都民の自主的な活動が各地で活発に行われており、しかし、公的な施設が不足しているということも、都民の中から大きく声が寄せられています。
 都庁には、都議会議事堂の一階に都民ホールが、ちょうどこの下、一階ですが、ありますが、この施設は、東京都が主催もしくは共催している場合に限り使用されるもので、来年の三月まで予約はいっぱいで、ふさがっています。今月から、来年四月以降のホールの使用の予定を決めることになっていますが、第一庁舎、第二庁舎の会議室やホールも、ふだんは予約でいっぱいです。都庁に近いところに公的施設がないからこそ、こうして、たった一日のこまに何局もが申し込んでも、なかなか使用ができないという状況が生まれています。
 ほかの県では、県庁所在地の周辺に県民が使える公的な施設を考える、これが普通です。例えば、モノリスを都民が利用できるように、そういう検討だって、この五年間の枠の中で検討に値することではないかと思いますが、いかがですか。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリスビルは、商業用のオフィスビルとして設計、建設され、これまで管理運用されてきておりまして、西新宿エリアにおいてその役割を十分果たしてきていると思います。そうしたことを踏まえまして、専門家の意見を聞きながら、信託期間満了後の取り扱いについて検討を進めてきたところでございまして、現在の信託を当面継続していくことが、現時点における都にとって最も有効な選択肢であると判断したものでございます。

○たぞえ委員 あくまでも商業ビルだから都民には開放しないと。結局、民間企業や東京都の公的機関ばかりを寄せ集めて、都民は使わない。これが本当に都民の貴重な都有地の使い方のあり方なのかどうか、このことが改めて、土地信託二十年を経過した時点で問われる問題じゃないでしょうか。
 今、都営住宅の事故住宅の募集がこれから始まりますけれども、かつてはそういう住宅にすぐ入れたのに、今はそれすら入れないですよ。身近なところにという声もたくさんある。
 そういう中で、これだけのビル機能を持っている施設が、さきの定例会で問題になった道路整備保全公社などにはちゃんと使ってもらうけれども、例えば都民のそういった集まり等、相談活動だとかに使われないというのは、私は、土地利用としては改めていくべきじゃないかということを主張しておきたいと思います。
 次に、池袋商業高校跡地の建物の売却です。
 今回の議案は、池袋商業高校の旧校舎などの建物を二億五十五万円で売却を行う跡地の処分であるのに、議会にかからない土地も、貸付用地もあります。このような分割処分は、都政のこれまでの過去にあったのでしょうか。

○松本財産運用部長 単独の相手方に対しまして、敷地の一部を売却し、一部を貸し付けた事例は、把握している限りではございません。
 なお、土地の処分が議会にかからなかったという点でございますけれども、これは、土地につきましては二万平米以上という条件があるため、今回の議案については、建物の売り払いのみとさせていただいております。
 地元区等への説明については、土地処分を含めた全体について行っております。

○たぞえ委員 都政のこれまでの過去にあったのかと聞いたんですが、それ以外のことを答えられてもしようがないんですよね。なかったといっていただければ、それで終わりなんです。区民に説明したとか何とか、私何も聞いていないわけですよ。
 今回のこの議案書にも、不用な財産の処分と提案していますが、校舎の建物は、基準になっている二億円をわずか五十五万円超えて二億五十五万円なので、議決に要する要件は整っていると。それはそうでしょうね。しかし、土地を売却する価格としては三十九億五千万円という多額な額であっても、要するに建物がかかっていない土地については、二万平方メートル以上で、その額が二億円以上でなければならないという、二つがセットにならなければ議案にならないという仕組みのために、今回、二億五十五万円の案件だけ、議会に議案として出てきたわけです。
 どんなに高額であっても、仮にこれが三十九億五千万円でなくて百五十億円だったとしても議会にはかかってこないんですよ。それを財務局は議会にかけずに売却処分ができるという今の仕組みになっています。
 都民のだれが見ても、一方で売却、一方で貸し付けする、しかも、その売却以外の方法は、二つの要件、二万平方メートル以上であり二億円以上でなければ議案にならないという、そういう複雑な仕組みで、都民の目には届かないままに処分されていく、そういうことにならざるを得ないといわざるを得ません。
 こういう方法が、都民に対して説明責任が果たされたのかどうか、どのように受けとめていらっしゃるのでしょうか。

○松本財産運用部長 今回の売却に当たりましては、売却に至りました経緯でありますとか、その目的でありますとか、そういったものにつきましては、地元区に対しまして、都から丁寧に説明を行っております。また地元町会に対しましても、フランス政府から、都と地元区の立ち会いのもとで説明を行っておりまして、地元区は、本件について了解するとともに、歓迎の意向を示しているというふうに聞いております。こうしたことから、私どもとしては十分説明責任を果たしているものと考えております。

○たぞえ委員 そうでしょうか。副知事の議案説明、財務局長の当財政委員会での議案説明、いずれも提案説明は、不用財産を売り払う必要があるという説明で、貸し付けについては、地元住民に話しても、この委員会ではまだ一言も説明がないんです。議案になっていないことも裏づけでありますけれども、ないんです。しかも、個々の議員に対して説明したとしても、公式の場には、この委員会ですらまだありません。全体を説明しているという認識は、議会の記憶にはないんです。貸付部分が存在していることは、私が今聞いたから、初めて分割して処分があるということが明らかになったのではないでしょうか。
 この建物はフランスの学校の用地として使われるわけでありますが、議案になっていない土地の部分があることが明らかになったので聞きますけれども、この土地の貸し付け期間は何年か。また、土地の面積と年間の貸付額は幾らなのでしょうか。

○松本財産運用部長 土地の貸付期間は二十年でございまして、貸付地の面積は八千八百三十平米であり、年間の貸付料は四千三百二十三万一千六百八十円となってございます。

○たぞえ委員 東京都はこれまで、都民が望む福祉や教育の充実のための施設にという要望には厳しい姿勢で臨んで、各地で売却を行ってきました。
 実は、私の長女も都立高校に通っていたんですが、卒業後間もなく、都有地、都立高校の土地は売却され、自分の母校がなくなったと、このように嘆いていました。都立母子保健院も結局売却され、民間マンションになってしまう。各地で都有地がそのように行われてきました。
 しかし今回は、買い取ることを前提に貸し付けを承認する。相手側とは、買い取りと貸し付けがセットで販売される、それも外国との関係で初めてだと。こんな重要な議案はないというふうに思うんですね。買い取ることを条件で貸し付けるというのでは、買い取るまでどうぞ使ってください、そういうことになるんじゃありませんか、どうですか。

○松本財産運用部長 本件の土地を行政目的、教育財産に使うというようなことにつきましては、私としてはお答えする立場にございませんけれども、本件につきましては、用途を用いなくなった施設の跡地利用ということでございまして、庁内には、そういう行政目的も含めて調査をし、そうした目的による利用はないということを確認し、また、地元自治体に対しましても利用予定を調査し、行政目的での利用がないかを調査した上でフランス政府に売却するというものでございます。
 旧池袋商業高校の跡地については、以上申し上げましたように、こうした手続を踏んだ上で、貸付部分を含めまして行政目的での利用がないということを明らかにして行っているものでございまして、本件につきましては、適切かつ有効な都有地の有効活用であるというように考えております。
 なお、本件貸付契約では、適正な時価による貸付料を徴収するとともに、使用目的も明確に定めてございます。

○たぞえ委員 適正な価格による賃貸料を相手が払うというのは、これはもう当然のことなんですよ。ただで貸してあげるなんてあり得ない。
 問題は、初めに聞いたように、敷地の一部を売却して、一部を貸し付けた事例はこれまでにない中で、貸し付けの土地は、期限が定められている限りは、その期限内ならば借り受け続けられる、そういう約束が契約で結ばれる、これは紛れもない事実なんです。相手にとっては、将来、買い取る縛りがかかっているけれども、しかし、学校という使用目的が続く限りは、借り受けられる関係が二十年間は存続をする。そういう内容ですから、お金は払っていても、継続して使っていける権利が、現にこれから存続をしていくことになるわけです。
 そこで、もう一個聞いておきたいと思いますが、通常、定期借地では保証料を取ります。三十カ月とか十二カ月とか払うことがあると思うんですが、今回の貸し付けの際、保証料の徴収は行われるのでしょうか。

○松本財産運用部長 今回は、建物所有を目的としていないグラウンド部分の土地貸付契約でございまして、保証料は発生をいたしません。

○たぞえ委員 ちょっと寝床ぐらいの土地じゃないわけで、しかも、建物の部分でいう土地代が三十億円を超えるわけですよね。そして、グラウンドも年間四千三百万を超える賃料を払っていくわけで、相当な資産だというように思うんですよ。そういう重要な、この売却と貸し付けという選択を承認したことは、相手側であるフランス政府への資金繰りへの配慮ではないか。相手に有利な条件を提供するものではないかということを私はいわざるを得ません。
 もともと池袋商業高校は、昭和二十三年に開校して、高校進学希望者が専門性を身につけていく上で、東京で欠かせない教育機関でした。平成九年の第一次都立高校改革推進計画で、この隣接地には牛込商業、赤羽商業があって、半世紀にわたって均等なバランスのもとで教育運営がされてきたのに、ばっさりと、この池袋と牛込、二校を廃校にしてしまいました。この計画に、都民から、中止の声は当然大きく広がったわけです。結果的に、全日制十九校を十四校に、五校減らしたうちの一つがこの池袋商業高校でありました。
 今、都立高校に入りたい応募者がふえています。希望する子どもたちが高校進学ができるように、これは都民の願いです。また、急激な所得の低下の中で、働きながら学校に入学したい、こう定時制を希望しても入れない子どもたちがあふれて、ことしの三月は第二次募集もしなければなりませんでした。障害のある子どもたちが今、急増して、特別支援学校、一つの教室に、カーテンで区切りをつくって二クラスも入れてしまう。もっと増設してほしい、こういう声はどこからでも起こっています。こういうためにこそ、都のこうした跡地資産を有効に活用するべきじゃないでしょうか。
 フランスが学校機関をつくるといっても、そこは日本の学校教育機関ではないんです。確かに、買ってくれる、そして借り受けてくれるという条件があっても、教育庁などこれまで資産を持っていた行政機関が、やはり今の都民のニーズにこたえて積極的な教育施設の再構築に頑張るというのが、私は地方自治体の役目だと思うんですね。都立高校を廃校して、それを外国に売ってしまう、こういうやり方は、とても都民にとっては、教育を大事にする東京都政だとはいえないということを私は痛感いたします。
 こういう意味で、池袋商業についても、モノリスについても、貴重な都有地をこうして引き続き企業の手にゆだねる、そして外国の手にゆだねるということが、果たして今の地方自治体の役割として適切なのかどうか、このことを私は強く申し上げておきたいと思います。
 以上です。

○福士委員 今までもずっと出ておりました土地信託について、ちょっとだけ質問させていただきます。
 今回議題に上がっているモノリスの土地信託事業は、一九八六年の地方自治法改正以来、急速に全国に広まった手法です。モノリスはその先駆けとして、三銀行が共同で信託を受けて行っています。総額約五百三十三億円余の配当実績は成功例として話をしておられますけれども、それでも、当初の予定、二千億円以上の収益予定に比べれば四分の一弱にとどまっています。
 東京都には、モノリスのほかにも四つの信託事業があります。したがって、今回、基本的な土地信託事業についての判断を下すときの考え方、そして仕組みについて質問いたします。
 この土地信託方式ですけれども、過去、全国的には失敗例もあります。そもそもバブルの時期に、土地も値上がりし、賃料も値上げし続けることを前提に組み立てられてきたと思いますが、その前提が失われている中で大苦戦しているのが現状です。
 例えば、大阪市のアメリカ村という、渋谷に似た繁華街で事業開始したビッグステップ、徳島県のコート・ベールというゴルフ場など、土地信託がうまくいかず破綻してしまったケースがあります。実は、それぞれの事業の土地信託にかかわっている銀行は、モノリスの信託銀行とも重なっています。
 民間のノウハウも必ずしも万能ではありません。いただいた土地信託経営状況説明によれば、東京都の残りの四つの信託は、それぞれ性格が異なり、単純比較はできないものの、モノリスと異なり、敷金より現金預金と金銭信託の合計が少なく、また借入金も多く残っている信託もあり、決して楽観できる状況ではありません。二〇〇九年度の決算によれば、配当も、モノリスが約十八億円に対して、四つの施設は、よくても数千万円と、けた違いの低配当です。
 ちなみに、テナントの場合は、時期に応じたリフォームも必要です。そのお金は本来、信託銀行側が持つべきですが、他の自治体では、負債の膨らみを恐れて先送りしたケースも見られます。大阪市は、そのことによって、業者の怠慢について行政が訴訟を起こしています。逆に、兵庫県では、業者からリフォーム代未払い請求の訴訟を起こされ、一審では行政に追加費用なしとされたものの、二〇一〇年八月の二審判決では、行政側に支払い責任を求める判決が下されています。
 ほかにも問題があります。売却しようにも、単純に契約を打ち切って売却益を負債に充てるというわけにはいきません。契約解除の場合は、すぐさまその後の管理をどこが担うかの問題などが生じるので、処分型信託契約という形に切りかえられる手法しかないようです。こうした処分を実施する場合も、現在の入居者との関係が問題となります。
 土地信託に苦しむ大阪市では、二〇〇六年一月、民間の有識者を含めた土地信託事業検討会議を設置、同年九月には中間まとめを、翌年四月には最終報告を発表し、今後の方向性などの議論を丁寧に積み重ねてきています。
 今回の新宿モノリスについても、民間の専門家を招いて検討を進めてきたとのことですが、専門分野の異なる専門家の意見を取りまとめるために、合議を行うなど議論をしてきたのでしょうか。また、どのような手順で今回の結論を得たのか、お伺いいたします。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリスの事業分析に当たりましては、必要に応じて各分野の専門家が連携し、総括、検証を行ってまいりました。
 例えば、資産評価に当たっては、マーケット調査は不動産マーケット会社が、建物、設備関係の調査については建築士がそれぞれ行い、連携して鑑定評価を行ってまいりました。
 また、今回、信託を五年間延長するとした結論は、不動産市況、建物、設備の修繕計画、不動産の管理方法等、さまざまな観点から専門家の意見を聞き、これらを踏まえて都として判断してきたものでございます。

○福士委員 全体の合議がもしあれば、いろんな知恵が、お互いに専門外の方々と相互、アイデアが浮かぶとか、そういうこともあるんじゃないかと思って今の質問をいたしました。
 モノリス以外の四つの土地信託事業においても資料をいただきまして、今後、専門家の意見も聞きながら個別に検討していくと伺っています。今までもそういうお答えが何度かされておりますけれども、商業ビルであるモノリスと比較して、公的施設が混在するなど、事業内容も多様で、経営状況もより厳しいものを検討していくことになります。
 そこで、今後の土地信託の将来像を検討していく過程において、検討結果や方向性など、適宜都民に公開し、さまざまな意見を聞きながら進めていくべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 モノリス以外の土地信託につきましては、各信託物件の事業特性や地域性がそれぞれ異なることから、専門家の意見を聞くとともに、建物があります地元区等とも調整を図りながら、個別に信託期間満了後の取り扱いについて検討を進めてまいります。

○福士委員 今までも似たようなお答えをいただいておりますので、これからまた別個の機会があったときに、さらにお伺いしたいと思います。
 信託財産というのは、土地、建物、いずれも貴重な都民の財産です。これも皆さんおっしゃっておりました。今回のモノリスの土地信託事業の変更については、貴重な土地の有効活用のための検討時間であり、その期限延長に私の方は異議はありませんけれども、今後、都民ニーズを十分に踏まえて、都民にとって納得のできる対応策をとっていただきたいと思うものです。
 今や経済は、都内や日本だけで判断できるものではなく、世界の状況をも考慮しなければならない時代になりました。経済的見地だけで土地信託をとらえると、二十年という長いスパンで、どこまで安全性を見通せるのか、困難な社会的変化があります。基本はやはり、都民にとっての必要性であり、事業手法とともに情報の共有であろうと思っております。
 都民への情報公開に向けても、信託以外の選択肢との比較を含めた検討結果や、敷金返還に備えた準備金などの内部留保状況、土地、建物の評価額を公開していくとともに、注意書きや解説をつけるなどの方法もあろうかと思いますので、信託事業経営状況報告書を都民にわかりやすく改善していくこと、そして、何でも国の施策に飛びつくことなく、都独自の見識を持つことを強く要望して、質問を終わります。

○中屋委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時四十六分休憩

   午後三時開議

○中屋委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○中谷委員 国では法人税の実効税率の引き下げが検討されておりまして、東京都税においても、実は法人二税の税収減で、かなり厳しい台所状況になってきております。そしてまた、この法人二税というのは、仮に景気が上向いて企業収益が上がってきたとしても、法人二税の税収が上がってくるのには、恐らく四、五年おくれて上がってくる。要は、繰り越しで七年間会計処理ができるということを考えると、まだまだ財政状況は厳しい時代だと思います。
 そうした中で、やはり税外収入を確保するということは極めて大事なことであります。高齢化、そして少子化、人口減少社会という中で、東京都がその都市構造の変化に対応して、都が所有する施設の見直しをするということは大変大事なことであります。
 例えば、使わなくなった学校施設を高齢者向けの施設にするであるとか、そういったことが、まだまだ例は少ないですけれども、それぞれ自治体において展開をされております。低利用、未利用の不動産の活用というものは、国はもちろんですが、地方公共団体の解消すべき課題であります。
 公有地の活用方法というのには、もちろん売却もありますし、定期借地権、PFI、証券化、そして、今回のこの土地信託というものが、昭和六十一年五月の地方自治法改正によって自治体も土地信託を活用できるようになったということは極めて大きなことでありました。
 本来、土地信託のメリットというのは、その専門家がその知識や経験、またはその経営能力を発揮して、資金調達力を活用する、そういうふうにうたわれておりますけれども、必ずしもそれがうまくいっていないのも実態であります。
 事業収支の計画は、建設費であるとか資金調達方法、建物の賃貸条件、管理運営経費などによって策定をされます。予想配当は、受託者である信託銀行の企画書による、あくまで計画値であります。東京都からすれば、土地の所有権を留保しながら民間活力を活用できる。テナントの確保であるとか、賃貸料の改定など賃貸条件については、民間のノウハウを活用する観点から、信託契約上は委託者への通知事項とされております。
 ここで伺います。この二十年間で、監理団体や報告団体など、都と密接な関係のある団体が入居しておりますけれども、その賃料水準が果たして妥当なものであったのか。特に、この新宿モノリスビルに入居する必要があったのでありましょうか。
 都が監理団体などに対して、近隣相場よりも高い賃料で入居をさせ、結果として、信託による受益として都へ還流させているのではないかという懸念もありますが、そうした懸念を晴らすためにも、賃料水準について、そしてまた、その団体が入居に至った経緯について、財務局としてどのようにとらえているか、認識をお伺いいたします。

○岩瀬利活用調整担当部長 新宿モノリスビルに入居している都の監理団体の賃料水準でございますけども、モノリスの賃料の平均的なものというふうに聞いております。入居に当たって、監理団体だけが特別に扱われているということはございません。
 入居に至った経緯につきましては、入居者それぞれの事情によるものであると考えられ、その経緯については詳しく承知しておりません。

○中谷委員 管理会社は先ほどの指摘で、新宿モノリス株式会社で二十年間にわたって都から下っている社長がいると。その割にはちょっと冷たいお話でございまして、この監理団体がみずからその拠点を構える際に、新宿モノリスビルではなくて、より負担が少なくて済む近隣の物件というものが本当になかったのか。
 今回、実は、道路整備保全公社というのが賃貸のスペースを借り増ししているんですね。これは平成七年に借りておりまして、また平成二十年に借り増しをしたと。そして、今回借り増しした部分の賃貸借契約期間が、二年なのか、三年なのか、そこは私は承知をしておりませんけれども、いずれにせよ、今回の全体の信託の期間は五年間の延長でありますから、その期間内に道路整備保全公社の賃貸借契約の更新の方が恐らく先に迎えるものだと思われます。そのときに、新宿モノリスビルから退去して、賃料がモノリスよりも安い他の物件に移る可能性というものは、全くゼロではないという状況だと思います。
 つまり、委託者である東京都は、道路整備保全公社の経営状態を把握しているとともに、受託者の今回の信託銀行との関係においては、テナントの選定、賃貸料の改定など賃貸条件について、あらかじめ東京都に通知するものとすると、これは原契約の第九条二項にあります。東京都は、委託者であるとともに、この本件信託の受益者でもあります。
 道路整備保全公社の賃貸借契約について、財務局としてはどうとらえているのか、いま一度お伺いしたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 東京都道路整備保全公社の賃料等賃貸条件につきましては、お話のとおり、受託者から通知を受けまして、都としてその内容を把握してございます。
 一方、道路整備保全公社が入居している事情につきましては、必ずしも私ども詳細を把握しておりません。
 道路整備保全公社の賃料水準につきましては、市場実勢に基づき適正に設定されておりまして、妥当なものとなっていると考えております。

○中谷委員 このモノリスの二十六階には、監理団体である財団法人道路整備保全公社が事務所として賃借をしております。ワンフロアを借り切っている状況でありまして、平成二十一年度の包括外部監査報告書によりますと、平成二十年度において、一千七百万円をはるかに上回る金額を増額して、新宿モノリスビルの一部を借り増ししたということでありました。その一平方メートル当たりの賃借料というものは、平成七年当時のものと比較しても、大幅に高くなっているという記述がありました。
 一九九八年、今からもう十二年前になりますが、四月十六日の朝日新聞によると、当時のコスモス青山の賃料を、都の関連施設に対しては、実は一坪当たり三万二千四百円で貸している、一般の民間には坪当たり二万一千八百円で貸している。つまり、坪当たり一万円以上高い設定で貸しておりました。この九七年度だけで約二十四億円以上の賃料が、三つの外郭団体など都の関連施設から支出をされたという事実があります。過去にはこのようなことが行われておったのは紛れもない事実でありますので、都の監理団体の入居に当たっては、その支払い賃料の妥当性というものについては、より慎重な判断が求められてしかるべきであると考えております。
 続いて質問いたします。
 「ハイジア」と両国シティコアについてでありますが、この二物件については、二年目から信託による収入、いわゆる予想配当に比べてではありますが、大きく減少をいたしております。この二年目というのが、確かに時代的にはバブルの崩壊という時期ではありますが、その経済変動を受けたという説明が、確かに先ほどの答弁でもありました。
 しかし、それはそれで非常に先見性のないことでありまして、それとも何か特段、別の事由があってこの配当が上がらなかったのか。当初計画のこの二年目の予想配当額と実際の配当をお示しいただき、具体的な理由についてお伺いをしたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 まず、信託配当についてでございますが、「ハイジア」について申し上げますと、平成七年度、これ二年目になりますが、二年目の信託配当は六千二百万円でございます。これが実績でございます。それに対しまして予想配当、これは単年度ごとの予想配当は出しておりませんので、二十年間、単純に割り返してということで申し上げますと、八十四億ということになります。
 それから両国シティコアでございますが、配当実績が一億六百万円ということでございますが、一方で、これの予想でございますけれども、こちらも単年度ごとの予想を出しておりませんので、二十年間の平均ということで予想を出しますと、四億円ということになります。
 いずれも、お話のように、前年度の配当と比較をいたしまして下がっているという形になっております。
 配当につきましては、その年の賃料収入から管理費等を引きまして、その残りから配当ということになってまいります。したがいまして、その年々の賃料収入の変動、あるいは、物件によって異なりますけれども、管理費、例えば建物にかかわる管理費等、それから、借入金の返済額、あるいは建物に係る固定資産税、こういったものは初年度で出てくる、出てこないということもありますし、先ほど申し上げた賃料変動ということもございます。そういった要素が影響したものと考えられます。

○中谷委員 公租公課の負担とかは、おおよそ見当のつく数字でありますから、賃料収入が大きく予想よりも落ち込んだということが最大の理由だとは思います。ただ、このモノリスについて申し上げれば、予想配当がもともと二千四百十六億円だったわけですね。じゃ、これが、予想配当が一千億だったら契約をしなかったのかどうかですね。
 確かに信託配当というのは実績配当主義でありますから、もうけが多ければ当然配当が大きいと。配当が当初見込みほどないからといって、直ちに受託者の責めを期すべきものではないかもしれませんが、そもそもこの時代の賃料、賃貸の設定というのが、まずは入居率が一〇〇%の設定にしているということ、それから賃貸料が毎年八%上昇するということ、それから敷金の八十カ月、これはいろいろな評価があるかもしれませんし、その後、敷金を下げたかもしれません。ただ、少なくとも賃料を毎年八%ずつ上げるということは、十年間で実は賃料が二倍になるんですね。そういう契約というのが、当時、実はこのモノリスだけじゃないんですけれども、あり得ない想定で信託契約をしているというのが非常に多かったと思います。
 これは、このモノリスに限らず、民間が土地を信託する場合にも、そういう似たような条件でやってきたことを私も把握しておりますけれども、それにしても八%ずつの賃料上昇というのは、やはりそこでだれかが気づくべき条件であったのではないかなということをご指摘しておきたいと思います。
 この新宿モノリスについては、信託期間を一応、五年間延長するということでありますけれども、もしそうであるならば、リスク管理の面からも、この過去の二十年間の信託をしっかりと検証して、いわゆる今まで以上に東京都が物をいえる、そういう環境をつくっていくべきであると考えております。
 少なくとも、五年後までの間には大規模な修繕が必要であると。また、二十年前に建てたビルが、本当に今の時代のOA化に対応している、いわゆるインテリジェントビルとしてこれからも生き残っていけるのかどうかですね。
 信託期間を五年延長したとはいえ、この満了後についてはどういう対応をするかというのは、先ほどの答弁の中で幾つか方策がありました。売却あるいは都が所有して一括転貸であるとか、リニューアルをして信託の継続とか、幾つかあると思いますけれども、信託財産の引き渡しについては、信託満了期間の満了日の三年前から契約の更新、信託財産の返還方法について協議するとあります。そうすると、二年後の二〇一二年には協議を始めなければなりません。
 先ほどご答弁がありましたけれども、多少重複をしますけれども、実際、協議を始めるのはこの二〇一二年の、要は信託満了の三年前という認識でよろしいのでしょうか。

○岩瀬利活用調整担当部長 信託継続後の受託者との協議でございますが、今後、引き続き専門家の意見も聞きながら、変動する不動産市況をにらみ、数年後に改めて出口戦略を検討したいと考えておりまして、方向性がまとまり次第、協議に入っていきたいと、このように考えております。

○中谷委員 あと、「ハイジア」、コスモス青山と、この物件についてちょっと簡単に触れたいんですけれども、実はこの二物件は、本来の予想配当が事業費を相当に上回る予定の事業でありました。事業費四百八十六億円に対して、「ハイジア」については一千六百八十一億円の予想配当、コスモス青山については、事業費が二百七十一億円に対して、予想配当は一千四百五十億円、そういう計画でありましたけれども、今の配当実績からすると、いずれも一けたの九億円、三億円というのが配当実績であります。
 そうすると、将来、負債つきの土地が東京都に返却されるおそれがあるのではないか。要は、これからの信託満了までの数年間で今までの分を挽回するようなことというのは、起死回生というのはあり得ないと思います。そうすると、総事業費に占める借金の割合がどの程度あるのか。そして、信託期間満了まで、あと三年ないし五年と迫っておりますが、この二物件についての見通しについてお伺いをしたいと思います。

○岩瀬利活用調整担当部長 コスモス青山の総事業費が二百七十一億円、それに対しまして、二十一年度末の借入金残高は五十七億円ございます。「ハイジア」につきましては、総事業費が四百八十六億円、それに対しまして借入金の残高は六十七億円。これはいずれも昨年度末の借入金残高でございますけども、経営状況報告による数値でございます。
 信託期間の満了に当たりましては、それぞれ信託としての債権、債務のほか、建物の資産評価等も含め、専門家の意見を聞いて、信託財産の評価を正確に行い、把握していく必要がございます。その上で、信託物件の事業特性や地域性が異なることから、それぞれにつきまして総括、検証を行い、個別に信託期間満了後の取り扱いについて検討してまいります。

○中谷委員 「ハイジア」については、特に幾つかの物件が複合して建っている建物でありますから、それを分割して売却するというのも一案として考えているかもしれませんが、恐らくこれは総合設計で建てた建物だと思いますので、技術的に分割の売却が可能かどうか、その権利関係も含めて、今から検証していく必要があるんだと思います。
 都有財産の有効活用を進めるためには、いわゆる東京都全体の組織として知恵を出し、考えていかなければならないと思います。
 毎年、未利用土地については、夏から秋にかけて調査を行っているということでございます。さきの定例会でも私がご指摘申し上げましたけれども、そもそも未利用地という言葉の定義があいまいではないかと。既に暫定活用を何十年間もしている土地についても、依然として未利用地という表現をしている。利活用を促進するという概念と、現場の言葉の表現の差が余りにもあり過ぎると。
 その後、いわゆる未利用地という言葉の定義を変えたのかどうか、お伺いをいたします。

○松本財産運用部長 未利用地の定義でございますけれども、都有地の中で財務局が所管している普通財産のうち、現に恒久利用に供していない土地を未利用地として分類してございます。
 これは恒久的な利用という観点から分類したものでございまして、未利用地の中には、暫定活用中の土地と利活用検討中の土地が混在していることから、財産利活用の有無という切り口からはわかりにくい面もございます。
 そのため、都有地について、実際の財産利活用に関する状況をわかりやすく説明するという観点からは、さらなる工夫も必要であると考えております。
 今後とも、都有財産の有効活用を推進し、その取り組みをよりわかりやすく都民に対して伝えるよう努めてまいります。

○中谷委員 今のお話ですと、特段変わっていないというふうに私はとらえました。暫定利用だから、あるいは他局に事業監督が移行したわけではないという理由で未利用地だという認識は、やはり変えていかないといけないと思います。
 せめて暫定利用地には、庁内のウエブで管理をしていると思いますけれども、そのウエブ上でもいいですから、何か共通のマークをつけるとか、暫定の利用期間を表示するとか、そういった工夫をして、未利用地という認識であったとしても、庁内ではすぐにこれが暫定利用の期間、それが即座にわかるということが必要であると思います。
 私ども地元で、待機児童の解消のために保育園の絶対数が足りないとか、また、都営住宅に応募したけれども、毎回毎回平均倍率は三十倍だと、そういう日常的なご相談をよく受けます。各局が、いわゆる社会福祉施設などの特定の行政目的で都有財産を活用したいと考えたときには、都内のどこにどんな土地があって、場合によってはどんな建物が建っていて、それが瞬時に確認できるようなデータベースが必要であると思います。
 庁内ウエブというものはもちろん、この庁内ウエブとは別で、一般の方が見れる東京都全体の財産の一覧がありますが、これは警視庁、消防庁関連とか都市整備局、建設局、それ以外という形で分別されておって、土地、建物、その他という表記があって、全部合わせると、実は六万七千七百三十件、物件がばっと出てきますね。ただ、これは正直使いづらいというか、私は見ましたけれども、これで果たして機能しているのかなという気持ちを持ちました。
 実際、我々が土地を使いたいと思ったときの欲しい情報というのは、土地の場合だと、所在、面積、道路づけ、それから交通の条件、インフラの整備状況、要は上下水管がどういうふうに入っているかとか、行政的条件といえば、建ぺい、容積、用途地域とか、更地なのか、それとも何か建っているのか、現況が使用中なのか、遊休地貸付なのか、一時使用されているのかという、そういう情報が欲しいと思うんですね。
 ところが、少なくとも一般に公開している情報では、それはもちろん全く見ることができなくて、実はきょうになっていただいたんですけれども、財務局の中には公有財産台帳というのがあって、それだと結構細かく出ておりますが、それは逆に細か過ぎて、一物件についてA4の紙が十枚程度ひもづけされているような資料をいただきましたけれども、もう少しその間をとるような、何かうまい手法はないのかなと思いました。
 今のデータベースは、確かに都民の方からは広くアクセスができるというものでありますけれども、実際、現場でそういう利活用の財産を扱っている皆様にとっては、決して十分なものではないと思います。今のデータベースはもちろん最大限活用して、それに新たな情報を加えていくと。
 都の財産というものは、そもそも公有財産、物品、債権、あとは基金、そういうものがありますけれども、とりわけ公有財産については、その総合調整は、事務的にはやはり財産運用部が受け持っているわけであります。利活用を促進するにふさわしい物件情報の提供を、庁内を横断的に行わせる務めというのは財産運用部にあると思います。
 ちょうど財務局長を委員長として、東京都公有財産管理運用委員会というものがありまして、年間十五回程度開催されていると聞きますけれども、実際、この委員会というのはどのような機能を果たしているのか、端的にお答えをいただきたいと思います。

○松本財産運用部長 東京都公有財産管理運用委員会は、公有財産の適正な管理及び処分を図るとともに、公有財産の効率的運用を行うため設置されております。そして、公有財産の管理及び処分の方針に関すること、行政財産の使用許可や貸し付けに関すること、普通財産の貸し付け、売り払い、譲与、交換、出資等に関することなどについて調査、審議を行っております。

○中谷委員 今後、人口構造とか社会環境の変化を背景に、東京都が保有するそういう施設においても、いわゆる利用の目的を終了したものがたくさん出てくると思います。
 例えば都有施設の建設年度別延べ床面積のデータベース、これ、もし既にあるんだったら、あるといっていただければ結構なんですけれども、要は、昭和三十年代ぐらいから始まって、大体何年ぐらいには何平米ぐらい、その当時建てた建物があるというのが一目瞭然にわかるようなものをつくるということは、これから都有施設を新規整備、更新していく、そういう施設の優先順位を把握することができると思います。建設年度であるとか、修繕の履歴、面積、構造、階数、耐震化の実施状況などもその中にあわせて情報として入れ込めば、公共建築物の維持管理更新システムの貴重なデータとなり、予算計上の助けにもなるんじゃないかと思います。
 将来的には、インフラとして上下水道や道路、そういったものにまで手を広げて、老朽化した施設なども、単に建設された年度だけではなくて、その建物が実際どの程度使用に供したか、利用頻度があったのか、そういうことも係数化して、所有資産全体の把握と、そのメンテナンスに係る必要な費用というものを、ちょうど東京都が今進めるこの公会計制度のもと、財務諸表にもそういうものが将来的には反映されていくということが、一つは目指すべき姿なのかなと思うのであります。
 各局が利活用を主体的に日常的に考えていくためには、そういった意味での検索機能というものが、やはりもっと充実をする必要がありますし、こうした情報は、とても財務局だけで把握ができるというものではないと思います。今のデータベースを見直しして、項目や、検索機能や、頻繁な更新などをぜひとも検討していただきたいと思います。
 そして、全庁的に財産の利活用を進めるというところにおいては、どうしても各局の所管という壁があると思います。
 例えば都営住宅の跡地について、昔建てた都営住宅というのは、かなり建ぺい、容積に余裕がある中で建てておりますから、今、同じだけの戸数を確保しようと思ったら、かなりの部分で余剰地というものが出ると思います。このせっかく出た余剰地も、なかなか思うように使えない。
 確かに、今は特別会計が所管する土地であっても、昔は一般会計で取得した土地であるでしょうし、この都営住宅の建てかえのときに出る余剰地というものは、いわゆる一団地指定という都市計画法上の概念から転用ができないと。
 ただ、この一団地指定というものも、指定基準に関しては、法律上の決まりではなく、特定行政庁の裁量に任されているということでありますから、これは都庁内で解決のできる話であります。
 ですから、そういう意味で、ぜひとも財務局にリーダーシップをとっていただいて、第一回の定例会でも財政委員会で指摘をしましたけれども、こういう都住の跡地といいますか、建てかえによって出た余剰地の活用について、何か具体的な検討が進んでいるのか、改めてその認識と取り組み状況をお伺いしたいと思います。

○松本財産運用部長 都有財産は、都民から負託された貴重な財産であることから、財産の価値を最大限発揮させることが必要でございます。
 したがいまして、財産の利活用を推進するためには、所期の行政目的を終了した財産については、速やかに次の用途に供することができる状況にしなければならないと考えております。
 そのため、財務局は、毎年、都有地の実地調査及び未利用地調査を実施し、新たな利活用の検討対象となる財産を把握し、これに基づき、各局と次の利活用に向けた調整を実施しております。
 また、必要に応じ、財務局は、各局の所管である土地について、これは先ほどの住宅の土地もそうですけれども、土地調査や測量業務を行うとともに、境界確定や地下埋設物の除去等、専門知識を要する財産について助言等を行うなど、新たな財産利活用の推進に向け、各局を積極的に支援しているところでございます。
 今後とも、財務局としては、各局と連携しながら、全庁的な観点に立って総合的な調整を実施し、財産の利活用をより一層推進してまいります。

○中谷委員 ぜひ全庁的に、その財産の利活用を進める趣旨というものを徹底していただいて、かつ実効性のある取り組みを進めていただきたいと思います。
 ただ、そのためには、今できていないということは、何かやはり問題があるわけで、それが一つは体制の整備なのかもしれません。
 例えば財務局長か、あるいは副知事がトップとして、構成メンバーは各局の部長とか課長級の職員の皆さんで構成されるような、これは全く仮称でありますが、公的な不動産戦略統括会議というものを設置してみてはどうかと。
 ちょうど今、副知事のお一人は、もともとの財務局長である村山副知事でありますから、ぜひそこにも見識のある、明るい、そういった部分で、このタイミングを逃すことなく、そういう提案をさせていただきたいと思います。
 庁内の連携を深めて情報の共有化を進め、タイムリーな財産利活用にこういう組織編成というものは効果があると思いますが、見解をお伺いいたします。

○松本財産運用部長 全庁的に都有財産の利活用を推進していくためには、各局が財産の利活用に主体的に取り組むことが重要でございます。
 そのため、財務局では、都有財産について、長期的、全庁的視点に立ち、局の壁、会計の壁を越えて効果的、効率的な運用を図るために、財務局長を委員長とし、各局総務部長等で構成される都有財産利活用推進会議を設置しており、財産利活用に関する節目などをとらえて開催し、全庁的な利活用の推進を図っているところでございます。
 そして、その上で、各局が主体的に都有財産の利活用に取り組めるよう、庁内向けホームページを立ち上げ、利活用に関する事例の紹介やマニュアルの提供、個別相談など、さまざまな支援を行っております。
 今後とも、都有財産のさらなる有効活用を図るために、これらの取り組みをより一層推進してまいります。

○中谷委員 今、部長におっしゃっていただいた都有財産利活用推進会議、これを設置していると。節目をとらえて開催をしているというお話でありましたけれども、確認いたしましたら、前回の節目は二年前であったということでありますから、余りにも長い節目でございまして、それはなかなかリアルタイムな利活用という部分では、節目が二年前じゃどうなんだという意見が果たして局内で出ないのかどうか。
 ぜひとも利活用を推進する、各局を越えてやると。これはどんなケースの財政委員会でもそういう声はずっと出ているわけでありながら進まないということは、体制を変えるか、何か方策を練らないと、恐らく、また次回同じ質問をしても、節目がといいながらも、この会議自体が開催されていない可能性もあるんじゃないかと思います。
 自治体経営の重要な使命というのは、行政サービスを効率的に、そして効果的に提供することだと思います。質の高い行政サービスを提供すること、またそのコストの削減をそれぞれ別個に取り組むのじゃなくて、費用対効果の視点でその最適化を図るということ、土地信託の今後の対応、モノリス以外にもあと四件あるということでありますし、都有財産の利活用をもっとスピード感を持って推進されることをお願いして、私の質問を終えます。

○中屋委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中屋委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○中屋委員長 次に、報告事項、平成二十一年度東京都年次財務報告書についてに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○西沢委員 先日発表されました東京都の年次財務報告書につきまして、これに関しまして質問させていただきます。
 この年次財務報告書の公表も、今回で四回目となったわけであります。しかし、過去の三回の取りまとめは、都税収入が比較的堅調な時期であって、財政を取り巻く環境も良好ともいえる中での取りまとめでありました。
 しかし、今回は、都税収入が一兆円以上の減収となるなど、過去三回の報告書とは異なる大きな財政状況の変化の中での取りまとめとなりました。
 そこで、今回、報告書を取りまとめるに当たりましての基本的な考え方と今後の財政運営上の課題についてお伺いをいたします。

○長谷川主計部長 二十一年度の決算は、過去最大の税収減に直面し、そうした中におきまして、都民の生活にかかわる課題等に的確に対処するため、歳出の精査はもとより、比較的税収が好調だったときに積み立ててきた基金や、発行を抑えてきた都債を活用することで、都がなすべき役割をしっかりと果たしてきたという特徴がございます。
 このため、今回の年次財務報告書では、財政対応力の活用という視点で特集を組みまして、財務諸表を用いながら、都債や基金の推移などを分析し、都財政の現状について都民により理解を深めていただく工夫を凝らしながら、取りまとめを行ったところでございます。
 一方、今後についてでございますが、来年度の都税収入も大きな好転を期待できず、厳しい環境が続くと見込まれる中での財政運営となるものと考えます。
 加えて、国庫補助負担金の一括交付金化や法人実効税率の引き下げといった都財政に影響を与えかねない国の動きも見られるなど、先行きが不透明な要素も存在しております。
 こうした状況を踏まえると、引き続き都政に課せられた使命を確実に果たすためにも、これまで実施してまいりました事業評価の取り組みのさらなる強化など、むだを省き、施策の効率性や実効性を高めていくことが必要と考えます。
 今後とも、こうした取り組みを徹底した上で、都債や基金を計画的に活用することにより、財政対応力を堅持し、都政の諸課題に着実に対応していかなければならないと考えております。

○西沢委員 ただいま答弁にもありましたとおり、東京都はこれまで、事業評価の取り組みを進めてきたとのことであります。確かにその取り組みは認めますけれども、本当にむだな事業や税金のむだ遣いがすべてなくなったといえるのでしょうか。
 今回の報告書にもあるように、経常収支比率が、昨年度の八四・一%から、急激に悪化をいたしまして九六%となりました。また、将来負担比率も、昨年度に比べて大幅に悪化をしております。将来負担比率には、東京都が損失補償をしている第三セクター等の負債などが算入をされているわけであります。監理団体や第三セクターへの過剰でむだな出資などが、将来世代の負担を重くするようなことがあってはなりません。
 監理団体につきましては、都議会民主党としても、しっかりと検証していくというように、今後もしっかりとやっていくつもりでございますが、報告書では、平成二十一年度末の時点で、財源として利用可能な基金残高を一・三兆円確保するなど、都財政は健全性を保っていると指摘しております。
 しかし、基金には限りがあります。都税収入も大きな好転を期待することはできません。これまでの取り組みをもう一歩も二歩も進め、本当にむだのない行政を実現しなければ、限りある基金をいつか食いつぶすということになってしまいます。
 決算についての詳細な検証や評価は決算特別委員会にゆだねますが、経常収支比率の悪化という現状も真摯に受けとめ、さらなるむだ遣いの排除の徹底を要望しておきます。
 重ねて要望なんですけれども、東京都の年次財務報告書の中であります科目別ごとにある、これは当然、議会であったり、都民の皆様、そして各局が検証を進めていくことができるツールという位置づけでもあるわけであります。これは、ほかの自治体や、世界的に見ても、東京都はかなり進んできているというようなことではありますけども、今後、今回四回目の報告書が出て、これからはしっかりと活用をどのようにしていくかという段階に今来ているんだと思います。
 予算の編成に、これまでの事業評価の取り組みであるとか、こういった事業別ごとの諸表というのも、都民、そして議会や局に対してわかりやすく伝えていくということが大事ではないかということも申し述べておきたいと思います。
 そして、今後の財政運営に当たりまして、東京都の努力だけではあらがい切れない、国によるさまざまな動きがあります。先ほどの答弁にも関連をいたしますけども、年次財務報告書において、今後の都財政に影響を与えかねない国の動きとして、法人事業税の暫定措置だけでなく、国庫補助負担金の一括交付金化や法人実効税率の引き下げが挙げられております。
 現在でも、暫定措置によって二千億円もの税収が奪われているわけでありますが、このような措置が今後とも続いていけば、基金も枯渇するおそれもあるといえるのではないでしょうか。
 そこで、法人事業税の暫定措置についても一言申し上げますとともに、関連して、国の動きについてお伺いをいたします。
 そもそも法人事業税の一部国税化は、福田政権下のもと、自治体間の税収格差を是正するということを目的に導入されたもので、地方分権に逆行し、地方税の原則を踏みにじるものであることから、私ども都議会民主党は一貫して即時撤廃を求めてまいりました。
 先般、地方主権、地方分権に造詣のある片山総務大臣が就任をされましたけども、地方法人特別税については、地方税制としてあるべき姿がどうかという、こういった問題意識を示しながらも、即時の撤廃については否定をされたというようなことであります。
 もちろん、地方自治について明るい方が大臣になられるということは、それはそれでよろしいことなんですけども、都民生活を第一に考える都議会民主党としましては、いわゆる霞が関官僚主導のもとでつくられた東京富裕論に対しては、本来あるべき税収を都民の手に戻すように、しっかりと国に対して働きかけてまいります。
 あわせて、先日の我が党の代表質問において、都財政に影響を与えかねないこうした国の動きについて、地方自治の現場の声を反映させるよう積極的に働きかけているということがありましたが、そこで、法人実効税率の引き下げについてお伺いをいたします。
 菅総理は、雇用拡大を元気な日本の復活のための第一の柱と掲げ、マニフェストや新成長戦略において、日本の国際競争力の維持、強化等や外資企業の立地促進などを進めております。
 その一つの手段として、法人実効税率の引き下げが検討されているということですが、法人実効税率を引き下げることによって企業の競争力が向上して、結果として税収がふえるというのであれば、地方も実効税率の引き下げに協力してもいいではないかということがありますが、この辺についてご見解をお伺いいたします。

○長谷川主計部長 法人実効税率でございますけれども、法人所得に対する国税と地方税を合わせた租税負担割合をいいまして、我が国の実効税率は四〇・六九%でございます。
 お話の法人実効税率の引き下げが企業の競争力を向上させるという議論については、国政の場でも広がりつつあると認識しております。
 この点についてはいろいろと意見があるところでございますけれども、平成二十年度の東京都税制調査会答申によりますと、我が国の法人実効税率は諸外国と比較すると高い水準にありますが、社会保険料の事業主負担分を含めて比較すると、企業の公的負担は必ずしも高いとはいえないとされております。また、我が国よりも実効税率が低いイギリス、フランスなどが、国際競争力に関して我が国よりも低い評価を受けているなど、さまざまな例示がなされております。
 この答申では、こうしたことから、実効税率を引き下げたとしても、国内への投資や雇用機会の増加に必ずしもつながるとはいえないとされております。
 したがいまして、実効税率の引き下げが税収の確実な増加につながるという明確な根拠はないのではないかというふうに考えております。
 また、地方財政への影響の観点からは、仮に地方税である法人二税が引き下げられた場合の影響だけではなく、国税である法人税の引き下げによる法人住民税の減収や地方交付税総額の減少もあわせて考慮しなければなりません。
 こうした中では、法人実効税率の引き下げは、地方財政に影響を与え、多様な公共サービスを提供する上で大きな支障を来しかねないという懸念がぬぐえないことがございますので、国が国家戦略として法人実効税率を引き下げるとしても、地方財政に影響を与えないよう十分に配慮すべきと考えております。

○西沢委員 実効税率の引き下げが、必ずしも国内の投資や雇用機会の増加につながらず、税収増につながらないのではないかと、そういうような意見があるということがわかりました。
 また、地方の果たしている役割という観点から、実効税率の引き下げは地方税財政に影響を与えないよう行うべきであるということも理解ができたところであります。
 実効税率の引き下げについては、国際競争力の向上という目的だけでなく、このようなさまざまな意見を踏まえて、しっかりとした議論を尽くす必要があるのではないでしょうか。
 これまでの歴史をひもとけば、こうした正論を無視して税率を一方的に引き下げたというような事例があります。
 自民党政権下の平成十一年度に、国際競争力の向上を目的として法人実効税率の引き下げが行われました。その際、国から一方的に法人事業税の税率を引き下げられた経緯がありますが、この減税に伴って、地方の減収を補てんするために創設された減収補てん特例交付金、平成十九年度には廃止されるということなど、自民党政権下で、まさに地元の、地方の足元をすくうような改正が行われたわけでありますが、地域主権を標榜する民主党政権のもとでは、当然、このような行為は政治主導のもとに排除されていくべきであるというように考えます。
 しかしながら、先日の報道がありましたが、この税制改正を担当する財務副大臣が、法人実効税率について、地方の法人二税、特に法人事業税が高いのではないかとの見方もあるというような発言をいたしました。そこで、法人税率の引き下げを、地方法人二税の税率引き下げも含めて行われるかもしれないというようなことについて、東京都としての認識を伺います。

○長谷川主計部長 法人二税は地方の基幹税の一つでございまして、地方税としての位置づけについて、しっかりとした議論のないまま、仮に国の都合によって地方税の税率を一方的に引き下げるということになるのであれば、それは地方分権改革に逆行するものであるというふうに考えます。
 そもそも法人住民税は、地域の構成員である法人が、公共サービスの経費を広く分かち合うという考え方に基づく税でございます。また、法人事業税は、法人の事業活動と地方自治体の公共サービスとの受益関係に着目した税でありまして、このように法人二税は、国の一方的な政策誘導の手段としてなじむものではございません。ましてや都には多くの企業が集積しており、一方的な税率の引き下げが行われた場合には、都財政に大きな、多大な影響を与えることが懸念されます。
 こうしたことから、法人実効税率の引き下げは、税制の抜本的改革全体の中で、地方財政に与える影響や地方税の原則などを十分に踏まえて議論すべきというふうに考えております。

○西沢委員 地方税には、それぞれ地方が賦課徴収するべき理由があり、それらが国策によって一方的に引き下げられるということが、税の原則からも不合理であるということや地方分権に逆行するであるというようなことについて、私も認識を深めさせていただきました。国に対しまして、都議会民主党としても、冷静な議論を求めてまいるというような所存でございます。
 次に、ひもつきの補助金の一括交付金化について伺います。
 一括交付金化の目的は、あくまで中央支配の象徴となっているひもつきの補助金を廃止して、地方が自由に使えるようにすることによって、地域のことは地域が決める、地域主権を確立するということであります。
 かつて小泉政権のもとで行われた三位一体の改革では、国庫補助金、国庫補助負担金の一兆円を超えるスリム化が行われたわけであります。現在なされているひもつき補助金の一括交付金化の総額削減の議論は、地方分権の名のもとに国の財政再建のツケを地方に回したという三位一体の改革に似ているといわれるわけでありますが、そこで、現在行われているひもつき補助金の一括交付金化の動きについて、東京都としてどのような疑念、懸念を抱いているか伺います。

○長谷川主計部長 現在、国で進められております国庫補助負担金の一括交付金化の議論におきましては、総額の決定方法や対象範囲、あるいは配分方法について、漠然とした方向性が示されただけで、制度の具体的内容はいまだに明らかにされておりません。
 制度設計によっては、かつての三位一体の改革のように、国の財源捻出のために補助金等の総額削減の手段として利用されるのではないかと懸念しているところでございます。
 また一部には、国庫補助負担金の性質を考慮せずに、一括交付金に地方間の財源調整機能を持たせるべきという意見もございますが、地方間の財源調整は、本来、地方交付税で行われるべきでありまして、到底容認することはできません。
 このような懸念を払拭するためにも、国は速やかに制度の詳細を明らかにし、地方と協議を行うべきと考えます。

○西沢委員 国のひもつきの補助金によって、地方ががんじがらめとなってしまうわけであります。国庫補助負担金の改革は大いに進めていくべきであるわけであります。
 ただし、一括交付金化が単なる国庫補助負担金の総額削減の手段だというふうにされたり、地方間の財源調整の手段とされることは、この地方主権の観点から違うものではないかというようにいわれるわけであります。
 そこで、国庫補助負担金改革、本来どのように進めていくべきなのか、見解を伺います。

○長谷川主計部長 国庫補助負担金改革は、本来、地方の自由裁量を拡大し、国からの依存財源ではなく、最終的には、自主財源である地方税として税源移譲することが目的でございます。このためには、まず、国と地方の役割分担を見直した上で、国の関与の必要のない事務に係る国庫補助負担金については原則として廃止し、権限の移譲とあわせて、必要な財源を地方に確実に措置するというのが本筋でございます。
 国は、地方分権に資する地方税財源の拡充に向けて早急に議論を始めるべきでありまして、ましてや、一括交付金の導入によって、こうした議論が後退してはならないというふうに考えます。

○西沢委員 地方の自由度を高めるという、ひもつき補助金の一括交付金化の目指す方向性というのは間違っていないですが、しかしながら、本来なすべき本質的な議論というのがまだ残されておりまして、その議論が不十分なために、総額削減や財源調整機能を持たせるなどといった、国庫補助負担金改革の本質とかけ離れた議論が行われている原因となっているのではないでしょうか。
 仮に国庫補助負担金について地方にむだな支出があるのであれば、いわば兵糧攻めのように、国が一律かつ一方的に国庫補助負担金の総額を削減するのではなく、地方みずからの判断や工夫により、このむだ遣いを削減していくことが重要であります。だからこそ、地方においても、外部の目を利用した、活用した事業仕分けのような制度を導入するべきであり、地方がみずから事業を検証していくというようなことが、地域主権の本来あるべき姿にも合致するべきものであります。
 一括交付金の総額削減の声には、単に反対の声を上げるだけではなく、事業仕分けなどの導入によって、地方みずから事業を検証して、むだを廃する仕組みというものを導入していくべきということを改めて申し述べておきます。
 最後に、こうした国の動きに対する都への影響についてですが、答弁にもありましたが、地方自治体は、地域住民の安全・安心の確保のために、幅広い分野で積極的に施策を展開しており、また、新成長戦略においても、重要な施策の担い手の一つとして、地域のニーズに応じた行政サービスを一層充実させるということが求められているわけであります。
 政権交代以来、霞が関官僚主導の中央集権体制を改め、地域主権を実現するため、国と地方の協議の場の設置や地域主権大綱の策定など、積極的な取り組みを行っております。国と地方の関係は対等であり、国のあり方、地方自治のあり方を国が一方的に決めるような、そういった時代ではありません。
 政権を支え、かつ東京の将来に向け責任を担う都議会民主党として、改革の成り行きを単に国の議論にゆだねるということではなく、地方自治の現場の声を反映させるよう、今後とも国に対して積極的に働きかけていくことを述べまして、簡単ですけれども、質問を終わらせていただきたいと思います。

○鈴木委員 それでは、私からは、年次財務報告書で公表されました平成二十一年度普通会計決算に関連してお伺いをしたいというふうに思います。
 いわゆる財政健全化法に定める比率は、実質公債費比率が二十年度の五・五%から三・一%にも改善をしているなど、引き続き良好であると見受けられます。
 一方、今回の決算における大きな特徴であり、かつ気がかりな事項として、今、西沢委員もおっしゃっておりましたが、経常収支比率が挙げられます。これは、人件費や公債費のように容易に削減することが困難な経費に、税などの経常的な収入がどの程度充当されているかをはかる指標であります。この比率が高いほど、新たな行政ニーズに対応できる余地が少なくなり、財政は硬直化しているといわれるものであります。
 この経常収支比率が、二十年度決算の八四・一%から約一二ポイントも上昇し、二十一年度決算は九六%となっています。経常収支比率は、一般的に七〇%から八〇、八五%の間が適正な水準とされておりますが、今回の九六%という数字は、この適正水準を大きく上回るばかりか、都が財政再建に取り組んでいた時期と同水準の数値となっているわけであります。
 都は、二十一年度決算について、財政の健全性は保っていると説明をしておりますが、経常収支比率の上昇は紛れもない事実であり、都財政は本当に大丈夫なのか、この場でしっかりと検証をしていかなければならないと考えています。
 そこで初めに、九六%という数値をどのように分析し、受けとめているのかを、見解を伺います。

○長谷川主計部長 経常収支比率は、ただいまご紹介のありましたとおり、税収など経常的な収入に対する人件費や扶助費、公債費などの経常的な経費の割合を示すものでありまして、一般的に財政の弾力性を示す指標とされております。
 二十一年度決算におきましては、九六%と上昇しておりますけれども、これを分子である歳出と分母である歳入に分けてその原因を分析すると、まず、分子となる経常的な経費については、歳出を洗い直すなど、むだを省きつつ、必要な施策は積極的に進めた結果として、前年度とほぼ同水準となっております。一方、分母となる経常的な収入につきましては、急激な景気悪化の影響を受け、都税収入が一兆円を超える過去最大の減収となったことで大幅に減少しており、これが原因で経常収支比率は上昇することとなったものでございます。
 このように、二十一年度の経常収支比率は、景気動向により税収が大きく左右されてしまうという都財政の特徴が顕著にあらわれた結果であると認識しております。

○鈴木委員 今答弁にあったわけでありますが、経常収支比率を算出する上で分母となる税収は、景気動向などに左右されるものであり、とりわけ今回のような一兆円の減収、税収減に関しては、恐らく都としても対応のしようがないような実態でありましょう。一方、分子に当たる歳出は、予算編成やその執行を通じ、みずからの意思である程度コントロールできるものといえます。
 とはいえ、都民にとって必要な施策はしっかりと対応しなければならず、逆に厳しい環境だからこそ、やるべきことはしっかりと、具体的な施策として行わなければなりません。経常収支比率の上昇の理由は、一兆円もの税収減の中で、都が必要な施策を積極的に行った結果ともいえ、ある意味やむを得ないものであります。
 しかしながら、それは、徹底してむだを省き、分子である歳出をできる限り減らした上で判断すべきことであります。歳出の精査が十分行われたのか、その点をきちっと確認していく必要があります。
 そこで、むだを省く取り組みとして、二十一年度において具体的にどのような努力が行われたのかをお伺いいたします。

○長谷川主計部長 二十一年度当初予算の編成に当たりましては、既に都税収入の大幅な減収が想定される中におきまして、経費のむだを省き、施策の目的を最少のコストで達成する観点から、新たな公会計制度なども活用いたしまして、事業評価の取り組みをこれまで以上に充実させるなど、都民の期待にこたえる実効性の高い施策の構築に向けて、予算の見積もり作業を進めたところでございます。
 ところが、編成作業の終盤である十二月に入りまして、リーマンショックの影響もあって、都税収入の減少がさらに拡大し、前年度予算と比べ七千五百億円の減となるという見通しが明らかになったため、事業の内容や執行方法の見直し、歳入の確保などについて再度洗い直しを行うよう、知事から改めて全庁に対して指示が出され、庁内を挙げてさらなる精査を進めて予算を編成いたしました。
 この予算の執行の過程では、年度途中で都税収入が、さらに当初予算から五千億円を超える大幅な減収となることが見込まれるという事態になりましたので、最終補正予算において、都民サービスに支障を生じさせないということを前提に、給与関係費の縮減や不要不急な経費の一部先送りなど、歳出の精査を行うことなどによって所要の財源を確保いたしました。こうした取り組みによって、二十一年度決算では、昨年度に引き続き、実質収支をほぼ均衡させることができたという経過でございます。

○鈴木委員 確かに、二十一年度当初予算編成時においては、財政再建期の身を切るような努力を進化させた事業評価を活用して大きな成果を上げたと。今の答弁にもありましたが、公会計制度、または企業会計を入れて、やはり一つ一つの事務事業の見直しと、それと外部監査を入れた、そういうような成果というようなものが着実に私は出てきているような気もいたします。
 年度途中でのさらなる減収に対して、既に都庁内部に根づいている自主、自立的にむだを省くノウハウを十分に発揮した、このように評価することが妥当であるというふうに考えます。
 さらに検証をいたしますと、特にもう一つ確認をしておかなければならないことがあるというふうに思います。
 今回の決算では、税収減を補う策の一つとして、これまで養ってきた都債の発行余力を活用して都債を発行し、また基金を一部取り崩しています。こうしたいわゆる財政対応力は、厳しい環境の局面を迎えたときの備えとしてきたものであり、都財政の健全性を図る重要な要素であります。
 ただ、こうした都債や基金は、今、検証した経常収支比率には影響を及ぼさないものであるはずですが、大事なことでありますので、きちんと確認しておく必要があると考えますので、都債や基金と経常収支比率との関係性について、簡潔にお答えいただきたいと思います。

○長谷川主計部長 経常収支比率は、人件費や公債費などの経常的な経費を、税収などの経常的な収入でどの程度賄うことができたかを示す比率でございます。したがいまして、理事お話しのとおり、臨時的な財源である都債や基金の取り崩しは、経常収支比率算出上の収入には含まれておりません。また、都債残高の減少や基金残高の増加など、これまで培ってまいりました財政対応力を示すストック情報についても、経常収支比率の算出には反映されないものでございます。

○鈴木委員 ただいま答弁のあったように、経常収支比率は、都債や基金の活用状況、ましてや都債の発行余力や基金残高は一切反映されていないものであります。そうであれば、この比率は財政状況をはかる一つのツールではありますが、これだけで二十一年度の財政状況の評価を行っても不十分であります。都債や基金残高などのストック情報もあわせて評価することが重要であります。
 なぜそのようにいえるのかは、端的な例をもって確認をしてみたいと思います。例えば、財政再建の真っただ中の平成十四年度が、税収や経常収支比率が二十一年度とほぼ同水準で、かつ大幅な税収減という環境も似ていると聞いております。
 そこで、都債と基金の状況を踏まえ、二十一年度決算を十四年度と比較してどのように評価できるか、見解を伺います。

○長谷川主計部長 二十一年度決算と十四年度決算を比較いたしますと、お話のとおり、経常収支比率や都税収入の状況はほぼ同じでございますが、都債や基金の残高といった財政対応力を示すストック情報を見ると大きく異なっております。
 まず都債残高は、平成十四年度末が約七兆六千億円であるのに対して、二十一年度末は約五兆八千億円と、十四年度末に比べて一兆七千億円減少しており、こうしたことなどで都債の発行余力を確保してきたといえると考えております。
 また、活用可能な基金残高は、十四年度末時点で約三千億であるのに対しまして、二十一年度末は約一兆三千億円と、十四年度末に比べて一兆円増加しております。
 これらのことを総合的に評価すると、二十一年度決算は十四年度決算と比べて、都債の発行余力や基金残高といった財政対応力の面で大幅に良好であり、そうした面では都財政の健全性は確保されているといえると考えますが、経常収支比率が大幅に上昇したことは紛れもない事実でございます。今後も厳しい財政環境が続くことが想定される中、このことを謙虚に受けとめ、引き続き堅実な財政運営に努めてまいります。

○鈴木委員 経常収支比率が同水準であっても、ストック情報まで含めて分析いたしますと、二十一年度と十四年度の財政状況は全く違うものであるということがわかります。
 ここまでをまとめますと、経常収支比率は、あくまで都財政の一面をとらえたものにすぎず、全体を把握するにはストック情報を含めた評価が不可欠であります。したがって、二十一年度決算は、経常収支比率が上昇する中にあっても、都財政の健全性が確保されているということが明らかになったということでありましょう。
 しかしながら、比率の上昇は、税収を中心とした、いわばフロー面だけを見れば、財政状況の悪化を示したものであることに違いはありません。すぐに税収の好転が期待できない中にあって、これからも都民の負託にこたえていくためには、都財政の健全性を維持していくことが重要であります。それには、これまで養ってきた財政対応力を堅持していくことが不可欠であり、徹底した歳出の精査や収入の確保など、これまでの堅実な財政運営を行ってきた取り組みをさらに進化させていくことを強く望みたいと思います。
 さて、今回の決算は、リーマンショックに端を発する、一昨年秋以降の急激な景気の落ち込みに端を発した、過去に例を見ない厳しい環境の中での財政運営の結果であります。法人二税を中心に税収の激しい増減に常にさらされる都財政を取り巻く環境が、いかに不安定なものであるかがうかがい知れるものであります。
 しかしながら、税収のうねりにただ身を任せたのでは、都民、ひいては国民の負託にこたえていくことにはなりません。我が国経済が停滞し、活力を失っている今だからこそ、東京が先陣を切って閉塞感を打破しなければなりません。そのためには、先ほど申し上げた、積極的な施策展開を支える堅実な財政運営が何よりも重要であるということはいうまでもありません。
 それに加えて、景気対策、経済対策について私なりの考えを述べさせていただきますが、こうした施策そのものは、一義的には国の役割でありますが、その国をも先導し、落ち込んだ経済を立て直し、それに連動し、落ち込んだ税収を増加させる、そのための取り組みを積極的に進めることも、日本の牽引役としての首都東京の使命であります。
 さらにいえば、経済のグローバル化が進む中において、失われつつある企業の国際競争力を強化していくことも、まことに重要であります。一国にも相当する力を持つ、中国を初めとした外国企業と対等に渡り合い、激化する国際競争を勝ち抜くには、もはや一企業の力だけではどうにもなりません。国家レベルで成長戦略をきちんと持ち、技術革新を間断なく進めるなど、競争力に富む産業企業を育てるとともに、円高対策に取り組み、輸出産業の業績を回復させなければならないと思います。これらの政策により企業に利益が生み出され、いわば経済力が備わり、結果として国、地方の財政基盤の安定化が図られていくのではないでしょうか。
 こういった意味では、二十二年度予算において、中小企業に対して、海外販路開拓や知的財産の保護など海外事業展開の支援を進めるとともに、経済効果もあわせ持つ投資的経費を、国が二割削減したのとは対照的に、石原都政初の八千億円台とした都の姿勢はまことに評価に値するものであります。
 こうした都の使命を将来にわたり果たさなければならないにもかかわらず、それを支える都財政の屋台骨を揺るがしかねない懸念材料が存在しています。それは我が党が先日の代表質問で主張したとおり、西沢委員もいっておられましたが、地方分権を進めるべき国の動きが、逆に都財政、ひいては地方財政に悪影響を与えかねないということであります。
 まず何よりも、法人事業税の暫定措置であります。景気の悪化により税収が大幅に減少する中、さらに追い打ちをかけるように、暫定措置による影響が二十一年度から生じており、減収分は基金を取り崩して対応しています。これは財政対応力の低下に直結するものであり、一刻も早く撤廃されなければなりません。
 また、年次財務報告書において懸念が示されているとおり、国庫補助負担金の一括交付金化について、創設の際に、補助金総額を減額する方針が政府内部で示されたと報道されるなど、今後の都財政に影響を与えかねない動きも見られます。
 こうした国の動きが与える影響は、東京のみならず地方全体に及ぶものであり、大きな視点でとらえなければならないものであります。
 翻って地方財政全体を見ると、財源不足が過去最大の規模に拡大するなど、非常に厳しい状況に置かれているにもかかわらず、国はこれまで有効な手だてを講じていません。地方総体としては、もはや場当たり的な対応では救えないほど疲弊し切っています。これを根本的に救うには、法人事業税の暫定措置のような都市から財源を奪う小手先の手法では何ら解決せず、地方財政制度そのものを一から見直すような抜本的な解決が不可欠であります。
 今申し上げたことは、地方財政の将来を左右しかねない非常に重要なことであり、今後、本格化する国の議論を、ただ眺めるだけではなく、都の考えを強く発信していく必要があると考えています。
 そこで最後に、最近の国の動向を踏まえ、地方税財政のあり方について局長の所見を伺います。

○安藤財務局長 先般の本会議で知事がご答弁申し上げたとおり、真の地方自治の実現には、地方がみずからの権限とそれに見合う財源に基づいて自主的、自立的に行財政を行うことのできる仕組みづくりが必要でありまして、それには地方税財政制度の抜本的な改革が不可欠であるというふうに思っております。
 しかしながら、最近の動きを見ますと、改革の全体像や分権時代にふさわしい将来像が示されることもなくて、国庫補助負担金の一括交付金化など、部分的な議論が進められているというふうに思っております。その一方、法人事業税の暫定措置については、撤廃に向けた議論も行われておりませんし、このまま東京の財源が不合理に奪われていくようなことになりますと、東京の活力をそぎ、ひいては日本全体の成長にも支障を来しかねないというふうに思っております。
 今後、お話がありましたように、我が国の成長に向けては、地方の役割がこれまでより大きくなるということでありますし、社会保障関係費の増大も見込まれますので、これらを踏まえますと、地方財政が厳しい中にあって、地方消費税の引き上げや税源移譲を含めた地方税財源の充実こそが我が国のとるべき本来の道筋であろうというふうに思っております。
 地方主権の理念を実現するためにも、国と地方は、こうした本質的な問題に対して真正面から取り組まなければならないというふうに考えております。
 本日もさまざまな議論をちょうだいいたしました。今後とも、時期をとらえて、国に対して必要な主張を行ってまいりたいというふうに思います。

○上野委員 年次財務報告書の公表も、今回で四回目となりました。我が党が提唱してきました新しい公会計制度が都政運営にしっかりと定着していることは、まことに喜ばしいことでございます。
 二十一年度は、税収が前年より一兆円以上減少するという史上最大級の大波を受けたわけでございます。財務局も、財政のかじ取りには、さぞかし苦労をされたことと察する次第でございます。
 私からは、公会計のマクロ的視点から、二十一年度の財政運営がどういうものだったのか、このことについて幾つか質疑を行っていきたいと思います。
 このたびの年次財務報告書、こちらの九ページになりますけれども、新たな公会計手法による分析という項目がございます。財務諸表の概要の冒頭に、平成二十一年度は、都税収入が前年度と比較して約一兆円の減となったものの、歳出の洗い直しや、これまで培った財政対応力の活用により、都民サービスに支障を生じさせることなく、都がなすべき役割を果たすとともに、強固な財政基盤を確保していると、このように総括されているわけでございます。このことが財務諸表の中でどのようにあらわれているのか、これをしっかりと確認していきたいと思います。
 そこでまず、都税収入が一兆円も減少する中、行政サービスにかかわる費用をどう賄ったのか、そのことを確認できるのが行政コスト計算書でございます。この行政コスト計算書で読み取れる二十一年度の財政運営の特徴について、まず初めに伺います。

○長谷川主計部長 二十一年度の行政コスト計算書では、通常収支の部における費用は五兆六百九十四億円と、前年度とほぼ同規模であるのに対しまして、収入は、都税収入が一兆円を超す過去最大の減少となったことによりまして、五兆一千八百三十四億円と、前年度に比べ九千三百八十二億円の大幅な減収となっております。
 こうした厳しい状況にありまして、一年間の行政サービスの収支をあらわす当期収支差額につきましては、前年度に比べ大幅に減少はいたしましたが、一千二百十二億円の黒字を引き続き確保しております。
 二十一年度は、都がなすべき役割を果たしつつも、歳出の精査などの努力を行うことで、費用を昨年度と同じ水準にとどめまして、行政サービスに必要な費用を、大幅な税収減の中にあっても、すべてこの年度の収入で賄うことができたといえるものと考えております。

○上野委員 財政当局を初めとした各局の努力によって、都民サービスに支障を生じさせることなく、都がなすべき役割を果たしたということでございます。
 次に、年次財務報告書では、二十一年度は、これまで培ってきた財政対応力を活用するとともに、強固な財政基盤を確保していると総括されていますが、財務諸表のどこからそれが読み取れるのか、お伺いいたします。

○長谷川主計部長 都債や基金といった二十一年度における財政対応力の活用につきまして、キャッシュ・フロー計算書によって説明させていただきますと、都債発行については、財務活動の収入のうち、都債が四千七百六十六億円計上されておりまして、前年度と比べ一千七百二十億円の増という形であらわれております。
 また基金の取り崩しにつきましては、社会資本整備等投資活動の収入のうち、法人事業税国税化対策特別基金や財政調整基金などの基金繰入金が三千四百六十八億円計上されておりまして、前年度と比べ二千七百六十八億円の増という形であらわれております。
 一方、財政対応力をどの程度堅持しているかという点につきましては、二十一年度は、このように財政対応力を活用は一方でしているものの、貸借対照表によれば、基金の残高は前年度末とほぼ同水準を維持しておりまして、また、このうち活用可能な基金残高は、二十一年度末現在で一・三兆円以上となっているということなどで、引き続き強固な財政基盤は確保されているものと考えております。

○上野委員 さて、今回の年次財務報告書では、財政対応力の活用という章を改めて設けまして、そもそも財政対応力とは何か、どのように培い、活用したのか、後年度に影響を及ぼす財源である都債と基金積立金に着目し、財務諸表を用いて、これまでの取り組みを経年的に読み解いております。
 四年間の経過を通じた分析を見ますと、二十一年度がこれまで培ってきた財政対応力を初めて活用した年であり、まさに財政面で新たなステージに突入したことがよくわかります。このように、財務諸表の経年的比較は、新公会計制度をツールとして、うまく活用したからこそ得られた、非常に興味深い情報であります。
 今回テーマとなった財政対応力とは、少し俗っぽく例えるならば、ローンと貯蓄に代表されるものであります。貯蓄に当たる基金積立金は、残高と毎年の増減を見ることで現在の状況を容易に理解できます。一方、ローンに当たる都債残高は、単年度の増減だけを見ていても、都債の発行余力を正確に把握できるものではありません。個人や会社がお金を借りる際と同様に、資金使途と返済能力が重要であります。
 資金使途とは、都債を発行する目的のことでありますが、設備投資によって資産と負債がふえているのか、それとも赤字補てんの資金繰りのために負債だけがふえているのかという違いは、将来のバランスシートに大きな影響を及ぼします。
 また、返済能力とは、後年度の財政負担に耐えられるかどうかということであります。このため、将来の返済への備えや都債発行額の大きさなども確認することが重要であります。
 そこで、都はこれまで、都債の発行余力を培ってきたとしていますが、都債の発行余力をどのように培ってきたのか、具体的にお伺いしたいと思います。

○長谷川主計部長 お話のございました、都債の資金使途と返済能力という観点に沿ってご説明させていただきます。
 まず初めに、都債の資金使途という面につきましては、都はこれまで、世代間負担の公平の観点から、都債の充当事業については、地方財政法が定める社会資本ストックを形成、更新するための経費などに限定し、起債に対して過度に依存しない財政運営を行ってまいりました。
 平成二十一年度には、大幅な税収減に直面いたしまして、減収補てん債を一千三百九十億円発行しておりますけれども、これも建設事業等の財源としてすべて充当しておりまして、いわゆる赤字債は発行しておりません。
 また、返済能力という面でございますけれども、この面でも、その確保に意を用いまして、後年度に過度な財政負担とならないように、堅実な都債の発行と管理に取り組んでまいりました。
 具体的に申しますと、都債の新規発行額を石原知事就任の前後で比較いたしますと、平成四年度から十一年度までは年平均発行額が七千六百億円であったというのに対しまして、知事が最初に予算を編成した十二年度から二十年度までの年平均の発行額は三千百億円と、四割の水準まで抑制してきております。さらに、十九年度及び二十年度には、国の減税措置に伴い発行した減税補てん債等についての借りかえを抑制いたしまして、元金償還を着実に進めることで都債残高の圧縮を図るとともに、一時期、積立不足のありました減債基金につきましても、現在は確実に積み立てておりまして、将来の償還に向けた備えもしっかりと行っております。
 このように、資金使途、返済能力の両面から発行余力を高めてきたことによりまして、今回のような大幅な税収減に際しても適切に対応することができたというふうに考えております。

○上野委員 都債は、社会資本ストックの適切な形成、更新の財源として非常に重要であります。また、必要に応じて適切に活用する必要があります。したがいまして、単に各年度の増減を取り上げてよしあしを判断すべきではありません。
 そうはいっても、将来確実に支払わなくてはならない負債であることは間違いありません。これからも都債の発行余力を確保し、適切な運用に努めていただくよう要望するものでございます。
 さて、年次財務報告書が初めて報告されました平成十八年度は、複式簿記・発生主義による新公会計制度を導入した年であるとともに、財政運営にとっては、第二次財政再建プランの最終年度として、新たな財政運営が始まる大きな節目ともいえる年でございました。そして、十八年度以降、景気回復の影響などを受けまして税収が堅調に伸びていく中であっても、年次財務報告書に示されているように、基金の積み立てや都債残高の圧縮に積極的に取り組むことで、都は財政対応力を着実に培ってきたのでございます。
 そこで、新公会計制度を導入した十八年度からこれまで、複式簿記・発生主義の視点を踏まえました財政運営の基本的な考え方はどのようなものであったのか、改めて伺います。

○長谷川主計部長 平成十七年度決算で実質収支が黒字に転換いたしまして、財政再建を達成することができましたが、そもそも収入の大宗を占める都税収入は、その構造上、景気変動の影響を受けやすい不安定なものでございます。このため、社会経済状況が大きく変化する中にあっても、都がなすべき役割をしっかりと果たして、新たな財政需要にも確実に対応できる強固な財政基盤を確立することが、この間の財政運営の大きな目標でございました。
 こうした中、新公会計制度を導入いたしまして、複式簿記・発生主義に基づく財務諸表を作成し始めたこともありまして、これを活用して、将来起こり得る負担を把握して備えを充実させるということなど、中長期的な時間軸の中で財政運営をとらえるという視点を改めて強化いたしました。
 こうした視点のもとで、税収減に備えた基金残高の確保に努めるとともに、将来の施設更新等の円滑な実施に向けて、年度間の負担の平準化を図るために社会資本等整備基金への積み増しを行うなど、財政対応力を培ってきたところでございます。

○上野委員 ただいまの部長のご答弁の中に、図らずも、中長期的な時間軸の中での財政運営という発言がございましたが、これこそまさに我が党が新公会計制度導入を推進した趣旨に合致するものでございます。
 今回、年次財務報告書で、財務諸表を経年的に読み解き、二十一年度の財政運営を分析したことは、住民に対する説明責任を十分に果たし、財務諸表をマクロ的に活用したものとして、私は高く評価するものでございます。今後も、ぜひこうした視点から、各年度の財政運営について説明していっていただきたい、このように思います。
 財政環境は当面厳しいと予想されますが、都は、今後も将来にわたりまして都民の安心を支える施策を、都民が信頼できる財政状況を堅持しつつ展開していかなくてはなりません。そのためにも、職員一人一人にこうした新公会計制度の考え方を一層浸透させ、行政を経営するという視点から職務に取り組んでいくことが重要でございます。ぜひとも、都の職員お一人お一人にも、今回の財政対応力の活用という分析編を熟読し、理解していただくことを期待するものでございます。
 さて、自治体が真に自立した行財政運営を実現するということは極めて重要なことでございます。そのためには、複式簿記・発生主義を有効なツールとして活用し、多面的な分析を行い、行政運営に経営の視点を取り入れる、いわば行政が経営力を発揮することでございます。このことは、単年度実績や前年度との比較ばかりに着目する、従前のいわゆる大福帳的な官庁会計でできるものではありません。
 こうした観点から、今後も新公会計制度を活用しながら財政対応力を堅持していくなど、中長期的な視点に立った財政運営に努めることが必要だと考えますが、最後に局長の見解を伺いまして、私の質問を終わります。

○安藤財務局長 これまでの質疑の中にございましたように、改めて振り返りますと、二十一年度は、それまで培ってきた財政対応力を活用するという、都財政にとっては新たな局面に入った年となったわけでありますけれども、これが可能となりましたのも、やはり複式簿記・発生主義会計を取り入れながら、ご指摘がございましたが、中長期的な時間軸を念頭に置きまして、将来に備える財政運営、将来への影響を考慮した財政運営を行ってきたからであるというふうに思います。
 他方、都財政を取り巻く環境を見ますと、税が期待できませんので、引き続き厳しい環境が続くことになりますが、こういうときでありますからこそ、官庁会計で把握できない減価償却費を初めとするコストを把握するなど、新たな公会計制度を一層活用することで事業評価における評価手法などを充実させる。そして、これらによりまして、都民の税金が効率的で効果的に活用されているか、事業の将来にわたる費用対効果を見きわめて、個々の施策を今まで以上に検証していく必要があるというふうに思っております。
 また、都が担う役割を将来にわたり継続的、安定的に果たしていくためには、基金残高、鈴木先生からもご指摘ありましたけれども、基金残高をできる限り確保するなど、財政対応力を保っていくことが極めて重要だというふうに思っております。
 今後とも、複式簿記・発生主義会計のメリットを生かし、中長期的な視点に立ちまして堅実な財政運営を行い、都政の諸課題に着実に対応してまいりたいと思います。

○中屋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中屋委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時三十三分散会

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